金型取引の悪しき習慣
大企業の好決算が伝えられているが、中小企業の状況は必ずしも良くないのは周知の通りだ。
数年前のような、「先の見えない長期不況期」に比べれば状況が良くなっているとはいえ、
資材は高騰し、しかも入手難。中国価格を引き合いに出されて加工単価は上がらず、
しかも滅茶苦茶な取引条件を押しつけられている。
下請け企業は想像を絶するような取引条件を押しつけられている。私の知り合いの金型屋が
言うには、代金の支払いは「検収後翌翌月末締め、4カ月手形」だそうだ。つまり金型屋は、
金型製造に着手してから約1年間(金型製造に6カ月かかると仮定した場合)は代金を一銭も
支払われず、しかも完成してからも約半年は代金の一部すら受け取れないことになっている。
しかも最近はもっとひどくなって、手形は発行手数料などがかかるので、手形を振り出さず、
「検収後翌翌月末締め、4カ月後に現金で振り込み」という形が始まったという。このやり方
だと手形がないから、手形を金融機関に割り引いてもらうこともできない。しかも、4カ月間は
いわば「口約束」状態だ。こんなべらぼうな取引慣行は、世界中どこを探しても、あるもん
じゃない。
中国の金型ユーザーが金型メーカーに支払う場合は、地域によって若干違うが、おおむね
「着手3割、中間3割、検収時点で3割、残りは1〜2年のうちに(この「残り」がくせもので、
支払われないことも多いのだが…)」というパターンが一般的なようだ。日系の金型ユーザーが
中国金型メーカーに支払う場合は、こうした中国の慣習に従うくせに、日本の金型屋に対しては
「検収後翌翌月末締め、4カ月手形」だ。
従って、日本の金型屋は大変な資金負担を強いられていることになる。日本で自動車用ボディー
金型を作る世界的大メーカーが行き詰まったのも、莫大な資金負担に耐えられなくなったからだと
言われている。日本的支払い条件は、厳しく見直されるべきであろう。
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070531/126111/