「外国は手を出すな」露の強硬外交支える地下資源
03/08 23:33
ロシアが石油や天然ガスなどの地下資源を国家統制下に置き、それらを外交上の武器とする
強硬な政策を際立たせている。最近ではウクライナなど反露的な近隣諸国に対してはエネルギー
供給を停止し、環境問題を口実に日本企業も参画する開発事業「サハリン2」の経営権をも奪い
取った。こうしたロシアの強硬姿勢を支えるのが、国内に眠る膨大な地下資源だ。開発の最前線、
東シベリア・クラスノヤルスクの今をみた。(クラスノヤルスク 遠藤良介)
広大なシベリアを貫くエニセイ川は、氷点下20度以下の酷寒の中、川面に水蒸気を立てつつ
静かに流れていた。左岸の小高い丘の上では、クラスノヤルスクの基礎を築いたアンドレイ・
ドゥベンスキーの銅像が今も街を眼下に収める。
東方への領土拡大を進めた帝政ロシアのコサック隊長、ドゥベンスキーがこの地にたどり着き、
異民族を平定したのは1628年。後に「赤い絶壁」(クラスノヤルスク)と名付けられた
この地だが、今ではロシア辺境の地ではない。
近年、この地は別の意味で“フロンティア”の熱気を帯びる。従来、ロシアの高度経済成長の
源泉である石油・天然ガス生産の7割は西シベリアに集中していたが、いまや開発の手は、
クラスノヤルスク以東の東シベリアにまで伸び、石油・天然ガス企業の関係者が押しかけて
積極的な探査活動を展開している。
クラスノヤルスク地方のエドハム副知事によると、同地方内の確認埋蔵量が石油で26億トン、
天然ガスで1・5兆立方メートルにのぼる。これはロシアの石油生産量で5・5年分、天然ガスでは
2・5年分にあたる。副知事は「探査が進めば確認埋蔵量はさらに増えるのが確実だ」と強気の見通
しを示す。
しかし、石油で世界2位、天然ガスで同1位の生産量を誇るロシアの資源も無尽蔵ではない。
一部の専門家からは「ロシアの石油・ガス生産はすでにピークに達している」との見方も出ている。
ロシアが資源大国であり続けるためには、自然条件の厳しい東シベリアでの新たな油田やガス田開発は
急務だ。
ただ、クラスノヤルスク地方での探査状況は各企業に強い自信を与えており、プーチン政権が進める
強硬な外資排除政策と軌を一にする。同地方で活動する国営石油ロスネフチ子会社のポポフ社長は
「資金不足は全くなく、(技術的にも)外部からの援助は一切不要だ」と自社だけでの開発が可能だと
強調。国営天然ガス独占企業体ガスプロムの現地子会社も、メジャー(国際石油資本)との協力の可能性
を否定した。
「未来の大統領候補」とも目される同地方のフロポニン知事にいたっては、「外国企業がロシアの
地下資源を開発するのが良いことだとは思えない」と発言。同地方の資源開発分野で日本企業が協力する
余地はあるのかという問いにも、「なぜ日本が原料に手を出す必要があるのか。加工に投資するなり、
製品を受け取ればよいではないか」と、この分野では外国企業の関与を許さない強い意思を示した。
強気の背景には、同地方が石油・ガスのみならず、金やプラチナ、アルミニウム、ニッケルといった
非鉄・貴金属に富んでいることもある。金属市場高騰で、同地方内の各企業の業績も絶好調で、
地方税収は4年間で4倍増に。
こうしたなか、同地方に拠点を置く非鉄金属大手ノリリスク・ニッケル社が昨年末、「スポーツ振興
のため」と約21億ルーブル(約88億5000万円)を気前よく拠出、クラスノヤルスク市郊外の
山中に大規模スキー場をオープンさせたほどで、すでに“カネ余り”現象は始まっている。
ただ、資源ナショナリズムがロシア自身の首を絞めるとの見方もある。
在モスクワ外国人アナリストは「今後のロシアにとって重要な東シベリアや北極圏、大陸棚の資源開発に
は高度の技術が要求され、ロシア企業だけで本当に開発できるかには疑問がある」と指摘。「ロシア政府や
企業は『技術は金で買える』と考えているようだが、そんなに都合のいい話はない」と、冷ややかな目を
向けている。
(産経iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/42439/ (地図)
http://www.iza.ne.jp/images/news/20070308/18500_c350.jpg