欧州航空機大手、エアバスは2月28日、経営再建計画「パワー8」を発表し、主要
労働組合に提示した。計画は、4年間で1万人の人員を削減するとともに、主要株主
国であるフランス、ドイツ、英国内の工場を整理することが柱。
超大型旅客機「A380」の納期遅れに伴い悪化した経営の立て直しを急ぐ。
ルイ・ガロワ社長兼最高経営責任者(CEO)が同日発表した再建計画によると、人員
削減の内訳は、仏4300人、独3700人、英1600人、スペイン400人。
整理の対象工場は、仏のサンナゼール、メオルト、独のファレル、ノルデンハム、
ラウプハイム、英のフィルトン。
2010年までに50億ユーロ(1ユーロは約156円)の経費削減を目指す。一方、
人員削減に伴う早期退職金などのリストラ費用は今年1〜3月期だけで6億8000万
ユーロに上る見通しだ。
再建計画には、工場への出資や売却などを通して協力企業に製造を委託し、コストを
引き下げるする方針が盛り込まれており、候補として英GKN、伊フィンメカニカ、
米スピリット・エアロシステムズなどの名が浮上している。
英紙タイムズなどによると、すでに外部委託比率はライバルの米ボーイングが80%、
ブラジルの同業エムブラエルが75%にも達しているのに比べ、エアバスはわずか
25%にとどまっていた。
今回の再建計画とりまとめでは、欧州各地の拠点を一体的に再構築することで効率的な
事業体制の確立を目指した。しかし、この目標が実現できたかは疑問だ。
株主各国の政府要人がエアバスに対し、自国内にある工場で人員削減を行わないよう
活発な働きかけを行った。中でも大規模工場を抱える仏独両国の調整は難航し、2月
(23)日に行われた首脳会談で同等の痛みを分かち合うことでようやく決着。
メルケル独首相は28日、再建計画に「満足している」と述べたが、再建計画に政治的
バランスが反映された結果、十分なリストラに踏み込めなかった面があることは否め
ない。
工場の整理でも、仏独が自国での製造を狙って対立した次世代中型機A350XWBは
仏トゥールーズで生産されることになり、見返りとしてトゥールーズから独ハンブルク
工場にA320の製造が移管されるなど、すべての面で政治が経営に優先する格好と
なった。
不安要素はまだある。再建計画の説明を受けた労組側は「どの工場であろうと閉鎖には
反対する。解雇も受け入れられない」(欧州金属労連)などと強く反発し、各地でデモ
やストが行われている。
AP通信などによると米調査会社JSAリサーチは、人員削減には欧州の労働法が障害
になると指摘しており、労使合意を含め、計画の実現が難航する可能性もある。
また、ドル安ユーロ高が進む中、エアバスは米ボーイングとの輸出競争の面でも不利な
立場に置かれており、再建への道のりは険しそうだ。
エアバスは1971年に仏、独、英、スペインが共同で創立。製造分担を仏独35%、
英20%、スペイン10%としてきた。
ニュースソース
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200703020007a.nwc