ロシアがバルト3国の1つ、リトアニアへのパイプライン送油を7カ月以上も停止
している。リトアニア政府は「ロシアの政治的行動」との見方を強め、今月8−9日
のEU(欧州連合)首脳会議で問題提起する方針だ。
ロシアとEUは今年11月、お互いの基本条約ともいえる「パートナーシップ協定」
が更新時期を迎える。リトアニア問題がこじれれば、露−EU関係に悪影響を及ぼす
恐れもある。
ロシア産原油の東欧向けパイプライン「ドルージュバ(友好)」のリトアニア向け
ルートで、ロシア国営パイプライン企業トランスネフチが昨年7月末、ロシア西部
での「油管破損」を理由に送油を停止した。
同じパイプラインによるベラルーシ向け送油は数日後に再開したが、リトアニア向け
支線への送油は「復旧の見積もり中」との理由で完全にストップしている。
このパイプラインはバルト3国で唯一のマゼイキウ製油所(リトアニア)に直結して
いるため、同製油所はこの間、代替手段としてタンカーで原油を調達している。
リトアニア外交筋は「これまでよりも原料費がかさみ、精製量も減少した」と危機感
を示す。
欧州向け輸出拠点として地の利がある同製油所は昨年、ロシアの石油最大手ルクオイル
ではなく、ポーランド企業に売却された。送油停止で“兵糧攻め”にし、ロシア企業
が奪取するのが狙いとの見方が有力だ。
リトアニアのパビリオニス外務次官は「油漏れは数週間で修理できるはずで、送油停止
は政治的行動だ」と明言。ポーランドが昨年来、ロシアによる牛肉禁輸措置に対抗し、
新パートナーシップ協定の交渉開始に拒否権を突きつけているのを引き合いに出し、
「われわれは“もう1つのポーランド”になり得る」と対露共闘の構えを見せる。
強硬な資源外交を展開するロシアに依存しなければエネルギーを確保できない弱みを
克服しようと、バルト3国とポーランドは大型原子力発電所を2015年までに
リトアニアに共同建設することで合意した。
しかし、リトアニアが原油の90%以上をロシアから輸入するなど依然、ロシアへの
依存度は高く、当面はEU頼みでロシアに対抗するしかないのが実情だ。
ロシアとEUのパートナーシップ協定(期限10年間)は1997年12月、将来的
な自由貿易圏創設を視野に、経済、財政、司法分野での協力や共通基準の達成を目的
として発効した。対立の恐れをはらみつつも改訂を重ね協力分野を増やしてきており、
エネルギーの安定供給もその柱の1つとされる。
新協定の交渉開始にはEUに加盟する全27カ国の同意が必要とされる。
ニュースソース
http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070301/wld070301004.htm