シンガポール四面楚歌 ベトナム急接近
2月15日8時0分配信 産経新聞
■タイ「軍事機密を盗聴」/インドネシア砂供給停止/マレーシア「洪水の元凶」
【シンガポール=藤本欣也】小国ながら東南アジア随一の経済発展を遂げたシンガ
ポールと近隣諸国との関係がぎくしゃくしている。タイからは「軍事機密を盗聴して
いる」と名指しされ、インドネシアからは、建設に欠かせない砂の供給を突然止めら
れた。政治・経済的に緊密な関係を築いてきたタイのタクシン政権が崩壊した影響は
大きく、国家戦略の見直しを迫られたシンガポールは新たなパートナーとしてベトナ
ムに橋頭堡(きょうとうほ)を築こうとしている。
「わが国はトリプル攻撃に見舞われた」。シンガポールの英字紙ストレーツ・タイ
ムズがこう指摘したように、同国は今、四面楚歌(そか)の状況に置かれている。
まず、軍事クーデターで失脚したタイのタクシン前首相が1月、シンガポールを訪
問した際、友人のジャヤクマル副首相が面会したことにタイ当局が激怒。両国間の交
流を一部制限した。タイ軍部も、シンガポール政府系企業の傘下に入った自国の通信
会社を通じ、軍事機密がもれている疑いがあると広言し、シンガポール政府が打ち消
しに躍起となっている。
次にシンガポールに降りかかった難題は“砂”不足だった。シンガポールは建設用
コンクリートに必要な砂をインドネシアから輸入していたが、今月6日、インドネシ
ア政府は突然、砂の供給をストップ。建設費の高騰が懸念されている。
インドネシア側は環境保護を理由に挙げるが、「(国境問題など両国間の未解決問
題で)歩み寄ろうとしないシンガポールへの報復」(ジャカルタ・ポスト紙)との見
方がもっぱらだ。
さらに、洪水に見舞われた対岸のマレーシアからは、「シンガポール領の埋め立て
のせいで河口が狭まり、洪水が引き起こされた。悪いのはシンガポールだ」との非難
の声が上がっている。
小国なのに経済発展を謳歌(おうか)するシンガポール人へのやっかみもあり、シ
ンガポールと隣国のインドネシアやマレーシアとの関係はこれまでもよくなかった。
「マレー人の海に浮かぶ華人の島」(リー・クアンユー顧問相)のシンガポールはこ
こ数年、華人系のタクシン政権との関係をテコに域内での発言力を確保しようとして
きた側面がある。それだけに、タイのクーデターで国家戦略の見直しを迫られた格好
となっている。
その点で注目されるのは最近の同国とベトナムの急接近ぶりだ。リー顧問相が1月、
東南アジア・トップの経済成長率を持続するベトナムを約10年ぶりに訪問し、政府
要人と会談を重ねた。シンガポール企業のベトナム進出や、シンガポールによる証券
市場整備なども相次いで決まっている。「シンガポールは長期的戦略に立った対越支
援に乗り出した」(外交筋)との見方が出ている。
最終更新:2月15日8時0分
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