その序文で森下は、「論点の混乱と意図的な誤用が捕鯨紛争を悪化させて いる」と不平を述べている。これはおそらく正しい。しかし森下と 日本政府がしばしばこの戦術の張本人なのである。たとえば彼は 「鯨は絶滅危惧種となっている」という大雑把な発言が、鯨属の さまさまな種の保存状況に照らしてみるならば誤導にあたるとし、 このような単純化を「単に馬鹿げている」とレッテル貼りしている。 しかしSCに加盟している名のある科学者で、このような発言を した者はいないのである。 これとは対照的に、捕鯨紛争のあらゆる面で、日本がしばしば このような一般化を流布していると銘記しておこう。たとえば 日本政府はしばしば「鯨は(whales)」魚を喰いすぎていると主張する。 森下もその記事(p.804)において、自らの一般化に対する 注意を無視し、「科学的捕鯨プログラムの一部として胃の内容が 分析されたとき、髭鯨が大量の商業的に重要な魚を食している ことが見いだされた」と記している。 この単純化された発言が、この問題の複雑性を不明瞭なものにし、 いくつかの生態学的な鍵を握る事実を無視させることになっている: ______________________ 雑誌タイトル:Marine Policy 31 (2007) 314-319 記事表題:The whaling issue: Conservation, confusion, and casuistry 筆者:Phillip J. Clapham, Simon Childerhouse, Nicolas J. Gales, Lorenzo Rojas-Bracho, Michael F. Tillman, Robert L. Brownell Jr.