【パリ=渡辺覚】国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第1作業部会は2日、
地球温暖化の分析・予測をまとめた第4次評価報告書「気候変動2007―自然科学の論拠」を正式に発表した。
洪水、暴風雨、雪氷融解など世界中で見られる現象を、
人間活動による二酸化炭素など温室効果ガス増加に起因する温暖化と明確に位置づけ、
気候変動の厳しい現実を突き付けた。京都議定書とその後のより長期的な削減体制をめぐる国際協議への影響は必至だ。
報告書はまず、「平均気温や海面水位の上昇などから、気候システムの温暖化は、疑う余地がない」と強調し、
「20世紀半ば以降の温暖化は、人間の活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と言い切った。
「可能性が高い」とする2001年の第3次評価報告より踏み込んだ。
過去100年間の平均気温は0・74度上昇し、同0・6度とした第3次報告書に比べ、
温暖化が加速していることを示し、各国に緊急課題として取り組む必要性を指摘した。
今後の予測では、
〈1〉省エネに転換した持続発展型の社会
〈2〉化石燃料に依存したままの社会
〈3〉非化石エネルギーを重視した社会――など六つの「シナリオ」を想定。
持続発展型社会を実現できれば、今世紀末の平均気温の上昇を1・1度、海水面の上昇を18センチに抑制できる可能性があるが、
最も温暖化が進む化石燃料依存型の社会では、平均気温は最大で6・4度、海水面は59センチそれぞれ上昇すると予測した。
このほか、北極海の海氷は21世紀後半の晩夏にはほぼ消滅すると予測した。
猛暑や熱波などの異常気象が増加し、台風も大型化するとの予測も提示した。
温暖化の影響で、海水の酸性度を示すpHは0・14〜0・35下がり、海の酸性化が進む事態にも警告を発した。
報告書を取りまとめたIPCC第1作業部会のスーザン・ソロモン共同議長は2日の記者会見で、
「温室効果ガスと地球温暖化の行方は、今後の社会のあり方をめぐる選択にかかっている」と述べ、
途上国を含む世界各国に対し、有効な対策の実施を求めた。
IPCCはこれまで、1990年、95年、2001年に3次にわたる報告書をまとめた。
今後IPCCは、温暖化の生態系や社会・経済への影響を評価する第2作業部会報告を4月に、
気候変化への対策を評価する第3作業部会報告を5月にまとめる。
(2007年2月2日22時19分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070202it14.htm 関連情報
気象庁-気温・降水量の長期変化傾向
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/temp/index.html 気象庁-温室効果ガスに関する基礎知識
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ghghp/20gases.html 気象庁二酸化炭素濃度の経年変化
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ghghp/21co2.html The Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC)-
http://www.ipcc.ch/ 地球産業文化研究所-
http://www.gispri.or.jp/menu.html