米国政府は、こう着しているイスラエル-パレスチナ自治政府間の対話再開を支援し、
中東和平プロセスの推進を強化すると誓った。
背景には、中東地域から米国自身が向けられている懐疑を振り払い、低下した地域での
影響力を獲得しなおしたい、との思惑も読める。
イラク開戦から4年、無残な流血抗争が泥沼化するイラクから抜け出せない米軍を抱え、
米政府は周辺国のイラン、シリア、レバノンなどへも圧力をかけている。
しかし、中東地域が平和の夜明けを迎える見通しはほとんどない。
前週、中東・欧州歴訪を終えたコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官は、
帰路立ち寄ったロンドンでこう述べた。
「過去数年間、中東では様々なことが起こった。そして中東における様々なことが明確に
なった」。
2006年夏、レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派武装勢力ヒズボラ(Hezbollah)と
イスラエル軍の間で発生した戦闘など、「世界を揺るがした出来事が転機をもたらした」
と語った。
ライス長官は、中東地域に新たな環境が成立しつつあり、それによりパレスチナ国家建設へ
向け、イスラエル政府とパレスチナ自治政府が徹底的に検討しあう機会が提供されうる
だろうと強調した。
しかし、ブッシュ政権に対する批判派は、ライス長官の言及した新中東和平構想に関し、
根本的な地政学的建て直しは現実的でないと指摘する。
シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファンデーション(New America Foundation)」の
研究者のひとりAnatol Lieven氏は、「こうした修辞的表現は、現実離れしているという
点で、もはや旧ソ連のようだ」と述べた。
批評家たちの矛先は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領へ向かう。
これまで6年間の在任期間中、中東和平に対する真剣な取り組みをおろそかにし、
中東地域における米国の影響力をただ無駄に消耗した、という批判だ。
特に故ヤセル・アラファト(Yasser Arafat)パレスチナ評議会議長との対話を拒否した
点が指摘されている。
米国内で中東和平進展を期待する向きにとっても、対話再開に意気込むライス長官の談話
は唐突に聞こえるようだ。
Lieven氏は「控えめに言っても、困惑するだけの発言だ」と突き放す。
また、米軍の迷走するイラク占領は、中東地域の反米勢力を勇気づけ、増強しているだけだ、
との批判も多い。
ライス米国務長官は2月に中東地域を再訪する予定。また、2月2日には、ホワイトハウスに
イスラエルのエフド・オルメルト(Ehud Olmert)首相、パレスチナ自治政府のマハムード・
アッバス(Mahmud Abbas)議長を迎え、ブッシュ大統領の3首脳会談を持つ。
この会談で、ライス長官自身が議長役を務めるとしている。
「ここ(中東)には、まだまだ本当に困難な問題があると思う。しかし、地殻変動が起こり、
これまでの争いとは異なる変化が感じられるはずだ」とライス長官は述べる。
しかし、双方の指導者は、和平交渉再開の際に予測される厳しい妥協点を、イスラエル国民
やパレスチナ自治区民それぞれに、納得させられるだけの力はないのではないか、との指摘
もある。
ヒズボラを壊滅させることに失敗した2006年昨夏以来、オルメルト首相の支持率は急落して
いる。また、アッバス議長は過去数か月、自身の率いるファタハ(Fatah)と与党ハマス
(Hamas)の勢力争いが激化する一方で、パレスチナ自治区の統一政府樹立に苦心している。
ニュースソース:
http://www.afpbb.com/article/1259410