イランやシリアとの対決姿勢を強調したブッシュ米政権のイラク新政策(今月10日発表)
を巡り、中東が親米アラブ諸国と親イラン陣営に色分けされる構図が鮮明になりつつある。
イランの影響力拡大を懸念する親米アラブ諸国は16日、ライス米国務長官の中東歴訪に
あたり新政策への支持を表明、「イラン封じ込め」で足並みをそろえた。
しかし、親米アラブ諸国には中東地域の不安定化を避けたい意向も強く、米国の強硬姿勢に
対する懐疑論もくすぶっている。
サウジアラビアなどのペルシャ湾岸諸国6カ国で作る「湾岸協力会議」(GCC)とエジプト、
ヨルダンなどの親米アラブ諸国は16日、クウェートでライス国務長官を交えて外相級会合を
開き、共同声明で米国の新イラク政策への支持を表明。
さらに「すべての国々にイラクの内政に干渉しないよう要請する」として、名指しは避けつつ
もイスラム教シーア派国家のイランをけん制した。
イスラム教スンニ派が政権を握る親米アラブ諸国にはイラクやレバノンのシーア派民兵組織
ヒズボラを通じてイランが中東で影響力を拡大していることへの危機感が強い。
このため、声明は新政策に盛り込まれた地対空迎撃ミサイル「パトリオット」のペルシャ湾岸
への追加配備方針を「(米国の)湾岸防衛関与を歓迎する」と評価した。
米新政策はイラン、シリアとの直接対話を拒否、中東を「敵」(イランを筆頭とするシーア派
陣営)と「味方」(親米アラブ諸国)で線引きする意図がうかがえる。
それが「中東冷戦」(ジュアン・コール米ミシガン大教授)とも呼ばれる緊張関係を生む結果
となっており、エジプトのアブルゲイト外相は親イラン色の強いイラクのマリキ政権に
「シーア派民兵組織との対決」を求め、ヨルダンのアブドラ国王やサウジのサウド外相は
「スンニ派の権利擁護の必要性」を強調している。
一方、アラブ・メディアでは米新政策発表を機に「イラクと土地の交換」というキャッチ
フレーズが使われ始めている。
「親米アラブ諸国が米国のイラク新政策に協力する見返りとしてパレスチナ問題への米国の
関与が必要」という意味だ。
ライス長官がイスラエル、パレスチナ自治政府首脳との3者会談を後押ししている背景には、
こうした親米アラブ世論の要請がある。
親米アラブ諸国は同時に、米新政策が中東分断による新たな抗争の種をまき、地域の不安定化
を招くことを危惧(きぐ)している。
AFP通信によると、クウェートのサバハ首長はライス長官に「シリアとの対話は言うまでも
なく、イランとの対話も地域の安全保障上必要だ」とくぎを刺した。
ニュースソース:
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070119k0000m030118000c.html