サウジアラビアへの戦闘機売り込みをめぐる英大手企業の便宜供与疑惑問題の
捜査をブレア英首相が中止させ、批判にさらされている。
首相は「安保上の国益」を重視したと弁明するが、商談優先で法のルールを逸脱
したとの声も出ている。
問題とされたのは、BAEシステムズが80年代後半にサウジに戦闘機トーネード
などを売却した合計400億ポンド(約9兆2000億円)とされる取引。
サウジ王家のメンバーに旅行や贈り物などさまざまな便宜供与が行われた疑いがある
と英メディアが04年に報じ、英重大不正捜査局が捜査を進めていたが、ブレア首相
は昨年暮れ、同盟国サウジとの関係悪化を招くとして突然、中止を指示した。
BAEもサウジ側も不正を否定。このまま捜査を続ければテロリスト情報の共有で
サウジの協力が得られなくなる、との判断が中止の理由と言われた。
だが、当時は英国がサウジと新たに覚書を交わしたBAEのユーロファイター戦闘機
(独伊スペインと共同開発)売却交渉(総額60億ポンド=約1兆3800億円)が
ヤマ場に差しかかっていた時期。
捜査に不満を持つサウジ側がキャンセルする可能性があると伝えられたほか、BAE
従業員の雇用への影響も懸念されていた。
野党の中には「サウジの脅しに屈した」という指摘があるほか、16日の英紙ガーディアン
は、対テロ戦でサウジ側が協力を拒むという情報はなかったと報道。
MI6(英秘密情報局)のスカーレット長官が「安保上の懸念に関する首相見解を是認する」
との文書に署名を拒んだと伝えるなど、イラク戦争前と同様、政権と情報機関トップの
不協和音が露呈する事態になっている。
ブレア首相は16日の定例記者会見で「サウジとの関係は対テロ戦で致命的に重要だ。
捜査継続は我々の戦略的パートナーシップを著しく損ねることになっただろう」と
中止を正当化したが、武器貿易を監視する市民団体は「法のルール」の不公平な
適用を批判。
経済協力開発機構(OECD)が国際商取引に関するOECDの不正防止規約に反していない
かどうか調査を始めるなど、波紋はまだ収まらない。
ニュースソース
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070118k0000m030041000c.html