禁固刑、罰金か奉仕活動 スイス、改正刑法を施行
2007年01月10日02時12分
6カ月までの禁固刑は罰金か社会奉仕活動で済ませることができる改正刑法が
スイスで今年から施行された。短期間の禁固は再犯防止に効果がないというのが
表向きの理由だが、収容能力が限界に来ている刑務所の混雑解消が大きな狙いだと
政府は認めている。年々増え続ける犯罪者の大半は出稼ぎの外国人労働者や不法
滞在者。刑務所の収監者の8割が外国人という実態が背景にある。
改正刑法によると、窃盗や傷害罪などのうち量刑が6カ月以下の禁固刑の判決を
出す際に裁判官が罰金か奉仕活動を選ぶことができる。罰金は罪状や被告の経済
状況に応じて1日当たりの額(最高3千スイスフラン=約28万8千円)を算定し、
刑期と同じ日数分払う。奉仕活動は病院や高齢者福祉施設などで刑期と同じ期間、
1日4時間働く。
05年のスイスの収監者(未決囚、予防拘束者含む)は6111人。司法警察省に
よると、01年から5年間に約1千人、20%増えた。国内122カ所(定員
6540人)の刑務所の収容率は93%だが、都市部を中心に約50カ所が満員か
定員を超えて収監している。たとえば、ジュネーブ州は162%の超満員状態だ。
ところが、スイス国籍を持つのは2割に満たない。滞在許可を持たない不法滞在
外国人が4割、滞在許可を持つ外国人が25%、亡命申請をしている難民などが
18%――となっている。過去20年ほどでは、スイス人はむしろ減り、
旧ユーゴスラビア諸国やアルバニア、アルジェリア、シエラレオネ人などが急増した。
古くから近隣諸国からの労働者や難民受け入れに積極的だったスイスは、総人口の
2割が外国人。比較的新しくやって来た人々が90年代からの経済低迷で職を
得られず、犯罪に走っている状況が浮き彫りになっている。
「人道国家」を掲げてきたが、外国人犯罪などが国民を非寛容にさせ、昨年は
国民投票で「欧州で最も厳しい難民規制」(国連難民高等弁務官事務所)といわれる
移民・難民規制法の導入を賛成多数で決めている。
asahi.com国際
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