スペインからの分離独立を訴える北部バスク地方の非合法組織「バスク祖国と自由」
(ETA)への対応をめぐり、スペインのサパテロ政権が窮地に立たされている。
マドリード空港でETAの犯行とみられる爆破事件が起きてから6日で1週間を迎えたが、
ETAとの和平対話を進めてきた左派・社会労働党政権に対し、野党側からETAへの
対決姿勢の甘さを批判する声が強まっている。
空港爆破事件は、サパテロ首相が昨年最後の会見で「ETAとの交渉の状況はよくなっている」
と明るい見通しを示した翌日に発生。
19人が軽傷を負ったほかエクアドル人2人が遺体で発見された。
この事件以降、ETAとの和平対話継続に世論は厳しくなっている。
さらに、その後バスク地方2カ所で大量の爆発物が発見され、空港爆破事件で使われた爆発物
の種類や爆破力との共通性が指摘されたことで、ETAがさらに爆破事件を計画しているの
ではないかと不安が広がった。5日には国内2カ所の空港に爆破予告電話があり、一時緊張した。
首相は事件直後にETAとの和平対話を「中断する」と発表したが、右派野党・国民党は
「中断などという生ぬるい反応はあり得ない。『決別し、闘う』と宣言すべきだ」と猛反発。
このためルバルカバ内相は「ETAこそが和平過程を崩壊させ、葬った」と和平対話の終息を
表明する事態に追い込まれた。
ただ首相は、再来週に国会でテロ対策の具体策を表明する一方、「テロ防止の最大の武器は和平
対話」との原則を堅持し、今後も水面下で和平への折衝を進めるとみられる。
5日の日本人記者団との会見でも対話終息に「現時点では」と条件を付け、含みを持たせた。
ETAの政治部門「バタスナ」の最高幹部は、「空港爆破事件は予想外だった」と犠牲者への
哀悼の意を表明しており、空港爆破にETAが関与していたとしても、ETA内部の意思統一
はなかったとみられる。
このことは、政治部門がいくら和平対話を進めようとも軍事部門や急進派への統制が効かない
ことを示しており、和平への遠い道のりを示唆している。
ETAは過去40年余の間、犠牲者850人を生むテロ活動を繰り広げたが、昨年3月に
「恒久的休戦」を宣言。
サパテロ政権は6月末からETAとの和平対話を続けていたが、ETA政治犯の釈放問題などで
行き詰まっていた。
ニュースソース:
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070107k0000m030041000c.html