チェチェンが紛争損賠請求の動き 独立派封じへ…露、泥沼の援助
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【モスクワ=内藤泰朗】
ロシア南部のチェチェン共和国議会がこのほど、
12年間にわたるチェチェン紛争の損害を算定する委員会を創設、
連邦政府に巨額賠償を請求する動きを見せ始めた。
チェチェン独立派のテロ活動に加え、今度は親露派たちが“反乱”を試みたとみることもできる。
チェチェンはすでにロシアの復興資金を無限に吸い込む「ブラックホール」と化しており、
プーチン政権を大きく揺さぶっている。
ロシアの日刊紙コメルサントによると、創設された委員会は、議員や専門家からなり、
1994〜96年までの第1次チェチェン紛争と、99年から現在までの第2次紛争で
チェチェンが被った損害総額を来年4月1日までにまとめてロシア側に提出する。
戦闘により住居や財産を失ったチェチェン人たちには
1人当たり35万ルーブル(約150万円)の一時金が支給されているが、
同委員会のテミシェフ副委員長は
「これは実際に失った財産の補償でなく補助金のようなものだ」と述べ、
委員会がすでに産業分野の損失だけで約3兆ルーブル(約13兆5,000億円)と試算し、
全体の損害額は、その2〜3倍に達するとの見通しを明らかにした。
これに対し、コザック南部連邦管区大統領全権代表は、紛争による損害額算定について
「必要であるならば、委員会はロシア連邦議会(下院)に設置されなければならない」と述べ、
チェチェン共和国内で損害額を算定することには反対の立場を表明した。
ロシア政府は今年度、52億ルーブル(約234億円)の復興資金をチェチェンに送ったが、
その多くが使途不明のまま消えてなくなった。
2008年からこのチェチェン復興資金の大幅増額が予定される中、
ロシア側は、さらにチェチェン側の主導で復興資金を増額し
「黒い穴」(会計検査院)に資金をつぎ込むことに懸念を抱いている。
しかし、数々のテロ破壊工作を続けるチェチェン独立派を封じ込めるには、
親ロシア派を旗印とするチェチェン共和国政府の協力は欠かせない。
紛争を終結させたいプーチン政権には、「ブラックホール」に資金が消えても
現在の共和国政府を支援し続ける以外に選択肢はないというわけだ。
親ロシア派のチェチェン側は今後さらに、算定した損害額をもとにロシア側に、
非課税特権や油田の利用権など共和国の経済特区化を求め、
事実上の経済的な独立に向けた動きを加速させてくるとみられる。
ただ、今夏には、北部カレリア地方のコンドポガで、チェチェン人追放を求める暴動が起きたほか、
11月にはモスクワ中心部でカディロフ前大統領の前警護隊長が
同じチェチェンの警察当局に射殺される内部抗争事件も発生。
ロシア人の反チェチェン感情は高まっており、
チェチェン問題は再び、選挙の季節を迎えたロシア政治の時限爆弾になりつつある。
★ ソースは、産経新聞 [日本] とか。
http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/061220/wld061220000.htm