米国版「ホームレス狩り」、月1人以上が殺害 - 米国
【ワシントンD.C./米国 19日 AFP】
「ボート乗り場に寝ていた女性が川に投げ込まれ溺死」「野球バットで殴打された男性が死亡」
「車いすに乗った男性が火を付けられ死亡」−−このような「興奮」を味わうためだけに
ホームレスを捕まえ、暴行したり、殺害する事件が、米国の若者たちの間で増加している。
■ホームレス虐待を取り扱ったビデオ「バムファイツ」
ホームレス擁護団体や犯罪学者らによると、「ホームレス狩り」で死亡するホームレスは、
過去5年間に月に少なくとも1人以上という。加害者の大半は10代の若者だ。
ホームレスを狙う暴力事件の増加の一因として、 ホームレスが暴行や虐待、屈辱を受ける
「バムファイツ(Bumfights)」というビデオと、その模倣品に人気が集まったことが挙げられると、
人権擁護活動家らは指摘する。
ちなみに、Bumとはホームレスの意味で、軽蔑(けいべつ)的な言葉として使われるときがある。
「『バムファイツ』が発売された後、ホームレスへの暴行事件や殺害事件が急増した」と、
ワシントンD.C.に拠点を置く全米ホームレス連合(NCH)のMichael Stoops氏はAFPの取材に答えた。
「これらの映像は、間違いなく若者たちに影響を及ぼしている。『バムファイツ』を見た後、外出し、
地元のホームレスを暴行するのがごく自然な行動だ。10代の若者たちはそのような考え方をするのです」
■5年間で30万枚の売れ行き
1枚20ドル(約2360円)で販売されている「バムファイツ」のDVDは、18歳の人物が制作した。
2001年の発売直後に、シリーズの著作権を150万ドル(約1億7700万円)で売却している。
売り上げは、過去5年間で30万枚にのぼる。
ビデオにはホームレスのRufus Hannahさんが「スタントマンのRufus」として登場し、木箱に
頭突きをするなど危険な技を見せたり、親しいホームレスとけんかしたりする。
現在カリフォルニア州で職を得たHannahさんは、AFPの電話インタビューで制作者に関して
次のように答えている。
「我々を酔っぱらわせて、何でも言うとおりにさせたんだ」
各パフォーマンスに対し、数ドルが支払われている。
■動物保護の法律の方が充実
「スケートボードの激しい技やスポーツを追求するのと同じように、激しい暴力を求めてしまう。
また、社会的弱者層を追い回すという一般には理解されない興奮やスリルを求める10代の若者を、
このビデオが刺激しているのだ」
カリフォルニア州立大学で「憎悪犯罪・過激思想研究センター(Center for the Study of
Hate and Extremism)」の所長を務めるBrian Levin氏はこう解説する。
「多くの点で、ホームレスを保護する法律よりも動物保護に関する法律の方が充実している」
(Levin氏)ため、Levin氏とStoops氏は、この問題に関心を集めることで、議会が
憎悪犯罪の解釈を拡大し、ホームレスに対する犯罪も含める方向で法改正するよう働きかけている。
現在、米国の路上生活者の数は1晩につき約80万人と推計されている。
最後にLevin氏は、
「この流行が消え、代わりに新しく社会の役に立つことが流行するよう願っています」
と、若者たちが「ホームレス狩り」よりも夢中になれることを見つけることを願っていると述べた。
写真はハリウッド(Hollywood)で、ソファーで眠るホームレス(2003年6月10日撮影)。
(c)AFP/HECTOR MATA
http://www.afpbb.com/article/1106741