【ジャカルタ井田純】密輸先のタイからインドネシアに送還される予定だったオランウータン46頭の移送計画が、
タイのクーデターとインドネシアの森林火災のために土壇場で中断している。インドネシアの環境保護団体は「動
物たちのために一日も早い返還を」と訴えている。
スマトラ島とボルネオ島(カリマンタン)だけに生息するオランウータンは、密猟や森林破壊のために絶滅の危機
にひんしており、野生の個体数は数万頭といわれる。
送還されるはずだったオランウータンは、バンコク近郊の動物園などで違法に飼育されていたうちの一部。04年
にインドネシア政府などがタイで行った調査で、100頭以上のオランウータンがボクシングの出し物などにさせら
れていた実態が判明した。タイのタクシン政権は今年4月に送還を決め、DNA検査でインドネシア産と確認された
46頭を9月23日に移送する予定だった。
しかし、その4日前のクーデターでタクシン政権が崩壊。移送に使うインドネシア国軍輸送機の受け入れ取り消
しや政府内の混乱で、計画はいったん白紙となった。
インドネシア側でも、受け入れ地カリマンタンで森林火災による煙害が拡大。今月、タイ側に改めて延期を申し入
れた。インドネシア林業省の担当者は「煙害がひどい場所に移送してオランウータンの健康に影響が出ても困る」
と説明するが、自然保護団体は「両国政府にとって環境問題の優先順位が低いことを示しているのではないか」
と不信感を募らせている。
毎日新聞 2006年10月19日 10時09分
ソース
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20061019k0000e030012000c.html