「再訪・パキスタン:1年後の被災地/5止 両親失い、姉妹も離散」
◇ずっと一緒に暮らしたい
テントの中にあるのは三つのベッドだけだ。アイシャちゃん(11)、ガザラちゃん(10)、
ライバちゃん(7)の3姉妹は地震で両親を、そして洪水で新しい家と家財道具を失った。
パキスタン北東部の山間の村、カガンで両親と姉妹8人で暮らしていた。
地震後、アイシャちゃんら3人は故郷の南70キロにあるグルデリ村の伯父(60)に
引き取られた。その村を今年8月27日夜、洪水が襲う。姉妹はカガンに帰省中で
無事だったが、村は廃虚となり7人が死亡した。大切な教科書も流され、お父さんが
買ってくれた一着の服だけが残った。
アイシャちゃんは左手をいつもショールの下に隠している。4歳の時の骨折が原因で
成長が止まり、握ることができない。でも洗濯のお手伝いがある。もうお母さんはいない。
その時は洗濯物を小さな左手に巻き付け、右手でひねって絞る。
「たくさん絞った夜は痛くて眠れないの」
冬が近づく。まもなくカガンに住む姉たち3人が越冬のためにやってくる。
「ここでずっと6人で暮らしたいな」。アイシャちゃんは私が構えたカメラのレンズから、
うるんだ瞳をそらした。
再訪した被災地の悲しみをどれだけ伝えられただろうか。私たちが忘れかけても、
そこに生きる人々の涙は枯れない。
引用元:毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/ (2006年10月15日 東京朝刊)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/archive/news/2006/10/15/20061015ddm041030103000c.html