ひと:金井昭雄さん 23年間の難民支援でナンセン賞受賞
経営する眼鏡販売会社の社員たちと23年間、タイやネパールなどの難民キャンプに通って、
眼鏡を贈る活動を続けてきた。その功績が認められ、ジュネーブの国連難民高等弁務官事務所
(UNHCR)で、グテレス高等弁務官=写真右=から賞を贈られた。日本人としては初の受賞だ。
81年に、難民を支援する非政府組織(NGO)からの要請で、業界団体が中古眼鏡を
贈ったことがあった。だが、眼鏡は一人一人のニーズに合わせて作るもの。
「検眼しなければ、その人に合った眼鏡は渡せない」。
米国留学中に身に着けたボランティア精神を刺激され、難民キャンプへ行こうと思い立った。
タイのキャンプへ初めて行った83年、持参した寄贈用の眼鏡500個がバンコク国際空港の
税関で一時没収されるなどトラブルが続発。「とても続けられない」と思ったが、UNHCRから
「ぜひ続けて」と要請された。「視援隊」と名付けたミッションは24回を重ね、
これまでに寄贈した眼鏡は約11万個に上る。
強度の近視や遠視、老眼の難民たちが、自分に合った眼鏡を作ってもらう。
新しい眼鏡をかけた時、誰もが笑みを浮かべ、何度もうなずく。眼鏡を手渡そうとする
社員に抱きついてキスする人もいる。「眼鏡をかけてよく見えるなんて、
日本では当たり前だけど、彼らには違う。私たちにとっても、他では得られない経験なのです」
視援隊のミッションは今後も続く。(澤田克己)
【略歴】金井昭雄(かない・あきお)さん 樺太生まれ。終戦で北海道に引き揚げる。
米国の大学に留学中、先住民への検眼・眼鏡提供ボランティアを経験。
息子2人は米で視力ケアを学ぶ。63歳。
毎日新聞 2006年10月6日 1時04分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061006k0000m070155000c.html