【バーミヤン=共同】アフガニスタン中部にある国連教育科学文化機関(ユネスコ)の
世界遺産バーミヤン遺跡で、仏僧の礼拝などの場として使われていた5−6世紀の
「塔院」跡や、高さ3メートルはあったとみられる10体以上の立仏像のひざ下部分が
発見された。同遺跡で立仏像が新たに見つかるのは極めてまれ。塔院跡は一帯に
あった大規模な仏教施設の一部と考えられ、バーミヤンの仏教を研究する上で貴重な
発見となりそうだ。
アフガン政府考古局とともに調査に当たったアフガン考古学保護協会のゼマリアライ・
タルジ代表は「7世紀にバーミヤンを訪れた(三蔵法師として知られる)玄奘三蔵が
『大唐西域記』の中で見たと記した幻の涅槃(ねはん)像が付近にあるかもしれない」と
話している。
塔院跡があったのは、旧タリバン政権が破壊した東大仏立像跡の東約100メートル
付近。中心部に主仏塔(ストゥーパ)の一部が残っており、この仏塔を囲むように、小型の
仏塔(奉献ストゥーパ)や立仏像のひざ下部分が配置されていた。付近では一連の調査
で、今回の立仏像と別に大小30以上の仏頭も見つかっている。
しっくいで覆われた主仏塔側面の柱状の装飾部分にはギリシャ文化の影響を受けた
植物の葉の彫刻が施されていた。奉献ストゥーパは階段状の構造で、同代表はバーミ
ヤン独自の様式としている。
タルジ代表は昨年の調査で、塔院跡の東側に僧侶らの生活の場である僧院の跡を
確認。今回、6世紀ごろの別の仏塔の基壇部分も発掘した。約30メートル四方の大型
のものとみられる。
◇極めて重要な成果
■バーミヤン遺跡に詳しい和光大の前田耕作名誉教授(アジア文化史)の話
バーミヤンの石窟群以外で、これだけの規模と構造がはっきりした仏教施設(塔院跡)が
確認されたのは初めてで、極めて重要な成果といえる。玄奘三蔵が旅行記「大唐西域記」
の中で記した「先王の建てた伽藍(がらん)」とは、塔院跡を含むこの一帯の大規模な
仏教施設のことだったのではないか。
<バーミヤン遺跡>アフガニスタンの首都カブールの西約240キロにある山岳地帯の
仏教遺跡。東西約1300メートルのがけ面に約1000の石窟(せっくつ)が並ぶ。一般に
5−8世紀の造営とされるが、それ以前との説もある。世界最大級の高さを誇った約38
メートルと約55メートルの東西2体の大仏立像は旧タリバン政権が破壊。国連教育科学
文化機関が2003年に世界遺産に登録した。(共同)
http://www.chunichi.co.jp/00/kok/20060925/mng_____kok_____000.shtml