ブログ(日記風ホームページ)を主な活動舞台にする米国のフリー・ジャーナリストが、
警察とデモ隊との衝突に発展した政治抗議活動に関する取材記録を
当局に提出することを拒んだとして収監された。
たとえ法に反してでもニュースソースを守る「取材源の秘匿」はマスコミだけでなく、
ブログ記者にも求められるのか。サイバー空間の報道倫理が議論を巻き起こしている。
収監されたのはフリー・ジャーナリスト、ジョシュ・ウォルフ氏(24)。
ウォルフ氏は昨年7月、サンフランシスコで反資本主義団体らによるデモが
警察当局と衝突したもようをビデオに撮影し、インターネット上で公開した。
検察当局は捜査の一環として編集前ビデオの提出を求め、連邦大陪審から召喚状が出された。
ウォルフ氏は「ジャーナリストには取材源の秘匿が認められるべきだ」と主張し拒否。
このため、ウォルフ氏は今月1日に保釈されるまで約1カ月間、
カリフォルニア州内の刑務所に収監された。
取材源の秘匿は報道活動の大原則で米国ではシールド法で保護されているが、
米中枢同時テロ以降、情報漏洩(ろうえい)への締め付けは徐々に強化されている。
昨年の米中央情報局(CIA)工作員名漏洩事件では、ニューヨーク・タイムズ紙の
ジュディス・ミラー元記者が取材源についての証言を拒絶し、法廷侮辱罪で85日間収監された。
これを機に「取材源の秘匿」がどこまでジャーナリストの権利として保障されるのか改めて議論が高まった。
ミラー元記者はウォルフ氏に共感を寄せ、収監された刑務所の前で同氏を支持するコメントを発表している。
政権中枢を直撃したCIA工作員名漏洩事件と違って、ウォルフ氏の場合、
デモ隊と警察との衝突現場のビデオ映像が「取材源」といえるのかどうか。
同氏はオンラインニュースのCNETのインタビューに
「私の取材源はミラー氏の取材源とはタイプが違うが、それでも取材源の保護は必要」と述べている。
日本では裁判証拠としてビデオなど取材資料の提出を求められたテレビ局が
「報道目的以外の利用」として拒否した例がある。
インターネットの倫理問題に詳しいプレム・ディバンブ・カリフォルニア大デービス校教授は
「ジャーナリストに取材源秘匿権は認められるべきだが、多くのブロガー(ブログの筆者)はプロではない。
しかし両者に明確な境界がないのも事実。最終的には公共性の観点から個別に判断するしかないだろう」
とコメントしている。
Yahoo!ニュース(産経)
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