【パリ11日安倍雅信】
パリ19区の小学校で今月7日、19歳の少年がエアガンを発砲し逮捕された。
さらに翌日の午後、南郊外エッソンヌ県サヴィニ・シュル・オルジュにある中学校で、
16歳の少年がエアガンを発砲し、現場に居合わせた英語教師と生徒1人が、
それぞれ手と肩に軽傷を負う事件が起きた。
この一連の事件を受け、ドロビアン教育相は「受け入れがたい暴力」として、
早急に対策を協議し、実行力のある処置を取ると述べた。
特に関係自治体、警察、関係省庁が協力して対策に乗り出すよう指示したとしている。
フランスでは最近、来春の大統領選挙で有力候補となっている
野党・社会党のロワイヤル現ポワトゥー・シャロント地方議会議長が、
現在の学区制度の見直しに言及し、大きな政治議論に発展している。
ロワイヤル女史は、子供を公立学校に通わせる場合、
当局が決めた学校にしか基本的に行けない現行制度は現実に合わないと指摘している。
フランスには学区地図があり、居住する学区内で、
それも当局の判断で、学校が振り分けられている。
親は校内暴力が頻発する問題校を避けるために、
わざわざ引っ越しするケースもあり、問題地区の学校の荒廃は加速化している現状もある。
また、親の選択権のない公立校から私立校に子供を移す現象が、ここ数年、増え続けている。
ロワイヤル女史は、親に学校選びの選択の自由を与えるべきという意見だが、
教育の機会均等、学校レベルの平均化などを推進してきた社会党にすれば、
党の方針に反した案として、ジョスパン元仏首相などから批判を受けている。
フランスでは、大都市郊外の中・高校の荒廃問題は深刻で、
教師と生徒、生徒同士の傷害事件の増加が社会問題化している。
今年6月に仏内務省が発表した報告によると、〇二年〜〇六年の四年間で
犯罪総数は8・8%減少したものの、傷害事件は27・4%も増加し、
過去10年間で見ると80%も増加している。
特に青少年の犯罪件数は増加の一途を辿り、
内務省総合情報局の報告によると、2005年度の青少年非行件数は、
未成年犯罪3万4000件を含む7万9000件が報告され、
そのうち、校内での凶器による傷害事件は、
667件で前年比73・2%増という驚異的数字となっている。
今年六月、ロワイヤル女史は、青少年の非行対策で、
左派らしからぬ提案をして話題を呼んだ。
軍人の娘でもあるロワイヤル女史は、
16歳以上の軽犯罪者を、専用の軍隊的組織に送り込み、
軍事教練や職業訓練、社会奉仕活動を課すべきと提案した。
この発言も社会党内から反発が起きたが、ロワイヤル女史への支持率は上昇している。
青少年の非行問題は、来春の大統領選挙の争点の一つとなる可能性が高い。
昨年末に起きたアラブ系・アフリカ系移民による大規模な暴動も大きく影響している。
今回のエアガン発砲事件により青少年犯罪、
校内暴力に対する国民の危機感は、ますます高まったと言えそうだ。
■ソース
Sekai Nippo[2006/9/11 14:56]
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/060911-145623.html