■反米諸国の資源に触手
インドが年間5000万バレル規模の大量の原油を南米ベネズエラ
から輸入することになった。インドはエネルギー資源分野でベネズエラ
以外の中南米諸国との関係も強めつつあり、中南米の反米左派政権
と米国との対立激化の間隙を縫い、たくみな資源獲得戦略を繰り広げ
ている。
ブルームバーグによると、インドの民間石油最大手、リライアンス・イ
ンダストリーズはベネズエラ国営石油公社(PDVSA)から年間2400
万バレルを上回る原油を輸入する長期契約を結ぶことで基本合意した。
ベネズエラは米国にとって第3位の原油輸入元だが、米国向け輸出を
削減し、インドに回すものとみられている。
インドとベネズエラが政府間で5月に交わしたほぼ同規模の契約と
合わせると、取引される原油はインドの年間輸入量(約6億5000万
バレル)の8%弱に当たる5000万バレル規模となり、両国の今年の
貿易額は昨年の7・5倍にあたる10億ドル(約1130億円)に達すると
みられる。
ベネズエラのチャベス大統領は同じ反米左派のキューバ、ボリビアと
接近し、米国の対立軸を構成しつつある。エネルギー資源分野からも
米国企業の締め出しを進めており、代わりに、インドなど新興経済国と
の関係強化を進めている。
≪中国としのぎ≫
一方のインドは、エネルギー需給の逼迫(ひっぱく)を解消しようと、
中国としのぎを削り、海外での資源獲得に全力を挙げている。
中でも中南米では、5月に印国営石油会社ONGCヴィデシュが、
米国の経済制裁の対象国となっているキューバとの間で海底油田開
発で合意した。
また反米政策を掲げるボリビアでも今月、印民間鉄鋼大手がボリビア
で過去最大の投資を行うことで合意するなどここへ来て投資を加速し
ている。
≪米国を刺激も≫
こうしたインドの行動は米国を刺激する可能性もある。米国はインド
にとって最大の貿易相手国であるだけでなく、首脳会談で合意した
民生用核技術供与も米議会の承認待ち状態にあり、インドにとっては
大きな冒険といえる。
ただ、米国は「大口の原油供給国であるベネズエラに強硬策をとれ
ない」(丸紅経済研究所・今村卓チーフ・エコノミスト)という事情に加え、
キューバへのエネルギー資源投資についても議会で規制緩和の動き
が出ている。インドはこうした米国の足元を見透かし、巧妙に立ち回って
いるようだ。(黒川信雄)
ソース:フジサンケイビジネスアイ
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200606130006a.nwc