バスラに非常事態宣言、シーア派の内部対立で情勢緊迫 2006年06月01日15時21分
イラクのマリキ首相は31日、治安が悪化している南部の都市バスラに非常事態宣言を発令した。
市内に検問を設け、治安部隊を増強するという。
ロイター通信によると、バスラを訪問した同首相は
「治安対策を1カ月間強化して違法な武器を押収し、その間に事態を打開するよう求める」と語った。
バスラの治安悪化の原因は、シーア派内の勢力争い。
イラクでは宗派や民族間の対立だけでなく、同じ宗派の中での抗争も激しくなっていることが浮き彫りとなった。
バスラ周辺は油田地帯で、イラク唯一の石油積み出し港もあり、イラク経済の生命線といえる地域だ。
シーア派が多数を占め、スンニ派武装勢力の侵入を防いできたことから、これまで治安は比較的安定していた。
だが、石油の利権などを巡り、
シーア派のイスラム革命最高評議会(SCIRI)やサドル師派、ファディーラ党などの間の対立が深刻化。
大規模なテロや攻撃はまだないものの、石油の密輸が横行し、殺害や拉致、治安維持を担当する英軍への攻撃も起きている。
イラク政府は、バスラの石油・港湾施設が機能不全に陥るとイラク経済全体に影響する、と恐れている。
マリキ首相は同日「ギャングには鉄拳を下す」と強い調子で語った。
(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0601/012.html バスラの治安、急速悪化 イラク情勢
【バスラ(イラク南部)=飯塚恵子】
急速に治安が悪化し、非常事態が宣言されたばかりのイラク第2の都市バスラに31日、記者(飯塚)は入った。
英軍が駐留するバスラでは、5月だけでヘリ撃墜や路上爆弾などで英兵計9人が死亡。
イラク戦後、バスラの治安は比較的安定、多国籍軍兵士の死者数も最近は月平均2、3人にとどまっていただけに、突出した数字だ。
カタールを経てC130輸送機でバスラ入りした英兵の一人は、
同乗の記者に「部隊の士気は高いが、個人的には意気軒高というわけではない」と沈痛な面もちで語っていた。
イラク南東部多国籍軍司令部のセバスチャン・マンツ陸軍少佐は同日、
「連日テロが起きるバグダッドとは比較にならない」としながらも、
「バスラの経済が好転せず、若者の失業率が5割を超える状況で、今春以降、民兵の力が広がっている。
治安はイラク戦争以降、最も悪い」と話した。
自衛隊が駐留するサマワは、バスラから北西約250キロの距離にあり、バスラ同様、治安悪化が懸念されている。
(2006年6月1日14時23分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060601i208.htm 31日未明、イラクのバスラに向かうC130輸送機の中で物思いにふける英軍兵士=中村光一撮影
http://www.yomiuri.co.jp/zoom/MM20060601142557363M0.htm