露、汚職摘発を本格化 税関幹部大量更迭 保安機関の権限強化
【モスクワ=内藤泰朗】
ロシアのプーチン政権が、ロシアで最も汚職が蔓延(まんえん)しているとされる税関当局の
幹部を大量解任するなど、汚職との戦いに本格的に乗り出した。プーチン大統領は
税関当局の新たなお目付け役に、旧ソ連国家保安委員会(KGB)時代の最側近を任命。
エネルギーに続き税関を掌握した保安機関は、ロシアでの影響力を一段と強化する。
ロシア親政権派の有力日刊紙イズベスチヤによると、プーチン大統領は中国製品の
密輸入に関与していたとして、税関当局のほか、内務省や検察、KGBの後継機関
である連邦保安局(FSB)の幹部ら十人余りを更迭した。
大統領は、密輸事件の捜査が進展すればさらなる更迭人事もあることをにおわせた。
ただ、更迭された幹部は、「密輸事件に関与した」としながらも、逮捕には至っていない。
さらに一連の更迭劇が「目に見えることにしか過ぎない」としたうえで、大統領の真の目的が
外国と接するロシアの国境付近で統制を強化し、「権力の垂直化」を進めることにあると
明らかにした。
税関当局は、これまで経済発展省の管轄下にあったが、事件を受け、
同省の管轄から外され、フラトコフ首相が直接監督する。
ただ実態は、プーチン大統領がKGB時代に東独でともに働いた元保安機関要員が
統制することになる。
プーチン政権を牛耳る保安機関は、世界的に高騰が続く石油、天然ガスなど
エネルギーのみならず、大消費ブームを迎えて輸入品が大量に流入する税関当局の
利権を事実上獲得したことで、政権内における影響力がさらに拡大した形だ。
ロシアの政治アナリストで、民間のシンクタンク「パノラマ」代表、プリブイロフスキー氏は、
「低い給与水準の見直しを含む抜本的な改革を行わない限り、汚職はなくならないだろう。
わいろは別の官僚のポケットに入るだけだ」と言明。大統領の出身地サンクトペテルブルク
から連れてきた「シロビキ」と呼ばれる保安機関を中心にした権力構造が強化された
だけだと指摘した。
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200605170005a.nwc