◇インド初の月探査、米が協力 宇宙分野で蜜月
【シンガポール=藤本欣也】米国とインドの協力関係が宇宙分野に広がっている。
来年打ち上げ予定のインド初の月探査衛星に、米国が最新鋭の観測機器を
提供することになった。協力の背景には、米国自身の有人月探査計画に向けた
調査の意味合いだけでなく、ロシアの支援を得て米国優位の宇宙開発にくさびを
打ち込もうとする中国を牽制(けんせい)する狙いもある。来年は中国や日本も
月探査衛星を打ち上げる計画で、米、露に続く“宇宙大国”の座を目指し
競争が激しさを増している。
インドが来年末にも打ち上げ、上空からの月面探査を計画しているのが
無人衛星「チャンドラヤーン1号」。米航空宇宙局(NASA)は、搭載する
観測機器のうち鉱物分布観測機器と、水の存在などを調べる
合成開口レーダーを提供することになり、九日、インド南部バンガロールで
調印式が行われた。
インドは一九六二年に宇宙開発研究をスタート。七五年、旧ソ連のロケットで
初の人工衛星を打ち上げ、四年後には国産ロケットによる人工衛星の打ち上げに
成功した。指揮をとるインド宇宙研究機構(ISRO)は約一万五千人の技術者らを抱え、
NASAに匹敵する規模を誇る。
これまでは主に通信や地表観測、遠隔医療といった「農村などに住む国民の
生活向上のために宇宙利用を進めてきた」(ナイールISRO理事長)が、近年の
経済発展により方針を転換、各国がしのぎを削る月探査競争に名乗りを上げた。
月探査では、六九年にアポロ11号が月面着陸し、米国が旧ソ連との一番乗り競争に勝利。
その後、宇宙探査の焦点は火星に移った。しかし、火星への中継地として月の存在が
再び脚光を浴びるようになり、ブッシュ米政権は月面基地の建設に向け、二〇一八年をめどに
有人宇宙探査を再開する方針を決めている。
国威発揚などを目的に宇宙開発で米国に対抗しようとしているのが中国だ。
九〇年代に宇宙船ソユーズを購入するなどロシアとの間で宇宙協力を推進し、
有人宇宙飛行に成功。現在、〇七年に無人探査衛星を月に打ち上げる計画を進めている。
当初は〇八年以降の打ち上げ予定だったインドが、それを前倒しして〇七年末までの
打ち上げを目指す背景には、「ライバル中国への対抗意識が働いているのは間違いない」
(外交筋)。今年三月、民生用の核協力でインドと合意した米国が宇宙分野に
対印協力を拡大するのも、中国をにらんだ布石とみられている。
日本も来年夏、延び延びになっていた月探査衛星を打ち上げる計画だ。
宇宙航空研究開発機構では、「インドはロケットの打ち上げや衛星の
運用実績をみてもレベルは高い。月探査でも米国の協力を得て
中国よりは性能がいい」とみている。
ソース(goo 産経新聞)
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/kokusai/20060512/m20060512010.html