戦前、農商務省(現・農林水産省)の技官としてアフガニスタンで農業指導を行い、
写真や日誌など数多くの記録を残した山口県防府市出身の尾崎三雄氏(1902〜85年)の資料集が、
日本貿易振興機構(ジェトロ)・アジア経済研究所(千葉県)から発刊された。
当時のアフガンで農村部の実情を示す貴重な資料として関係者も注目している。
資料集はA4判で370ページ。農作業の記録や紀行文などを記したフィールドノート10冊分のほか、
日本でラジオ放送された原稿などを収録。
原稿では「若き『アフガニスタン』を育て上げるのは亜細亜の明(盟)主日本の責務ではないでありませうか」と
支援を呼び掛けている。同研究所図書館で閲覧できる。
尾崎氏は帰国後、山口県農業試験場(山口市)の場長を務めた。亡くなる1週間前、
養女の尾崎昭子さん(68)(防府市在住)に資料の存在を伝えた。現地で買い物をした際のレシート、
メモなども含め、900点以上が倉庫で積み上げられていた。
昭子さんは2001年9月の米同時テロをきっかけに「もっとアフガンを知ってほしい」と同11月、
夫の幸宣さん(71)と、尾崎氏の資料を基に地元の公民館で写真展を企画。
尾崎氏に興味を持った県立高校教諭の藤村泰夫さん(46)と一橋大の大学生だった
河村俊江さん(26)(現・一橋大大学院生)が昭子さん宅を訪れ、資料の研究が始まった。
03年にはアジア経済研究所の鈴木均・副主任研究員らも加わり、同大との共同で分析を進めてきた。
鈴木研究員は「アフガンは今でも農村部の実情が把握されていない。日本政府などによる、
兵士らの『武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)』事業は農村部の復興がかぎとなるため、
参考になりそうだ」と評価する。
今夏には、都内で研究所などが資料展を開催、今後、資料集を一般向けに出版する計画だ。
幸宣さんは「不幸な事件をきっかけに日の目を見たが、多くの人の役に立ってくれれば」と話している。
読売新聞
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_06041827.htm