■強権王室への不満増大 各地で抗議行動 ネパール
ネパールのギャネンドラ国王の強権政治に反対し、民主主義回復を求める抗議行動が同国各
地に広がっている。主要7政党は10日、6日から9日までの予定だったゼネストと抗議活動
を続行した。一般市民にも自発的な参加者が出ており、王室政府への不満が顕在化しつつあ
る。政府は10日もカトマンズやデモの激しい都市に外出禁止令を発令。デモ隊に発砲するな
ど強硬な姿勢を変えておらず、事態打開の明確な出口は見えない。
カトマンズではこの日、午前11時から午後6時まで外出禁止令が出たため、中心部の店や
会社がシャッターを閉めた。
数カ所でデモがあり、市内ゴンゴブ地区では、王制打倒を叫ぶデモ隊が気勢を上げた。
デモに参加した登山ガイド、シリ・ポクレルさん(31)は「民主主義を勝ち取るまで続け
る」と言う。
ネパール憲法では国王が国軍の統帥権を持ち、「憲法が機能しない」と判断すれば、完全に
行政権を掌握できる。国王の権力乱用を許さない新たな憲法制定を求め、政党と武力闘争を続
ける共産党毛沢東主義派(毛派)は昨年末までに一致した。
だが、腐敗した政党政治にも、暴力をやめない毛派にも、市民はこれまで否定的と言われて
きた。1月に政党が大集会を計画し、政府は外出禁止令を出して抑え込んだとき、政党側が試
みたデモに市民の姿はほとんどなかった。
だが、今回は地方都市のデモに数万人が参加。デモの列に加わったり、遠巻きに見守ったり
する市民の姿が目立つ。
カトマンズ南西に隣接するキルティプル市では10日、街の入り口の通りを多数の民衆がふ
さぎ、「国王は国を去れ」「民主主義の勝利を」と叫んだ。
最前列の大学教授クリシュナ・カナルさん(52)は「禁止令に対抗する平和的なデモだ。
参加者は1万人は超えているはずだ」。後方にいた観光業、マノジ・シュレスタさん(29)
も「昨年の国王の全権把握以降、社会がよくなるかと期待したが、状況は悪くなる一方だ。昨
日も近くの村で軍が発砲した。国王はいらない」と話した。
日刊紙「カンティプル」のグナ・ラジ・ルイテル副編集長は「国王の全権掌握後、市民には
『国王が何かしてくれる』との幻想があった。だが、国王は自分に力を集中したいだけだと気
づき始めた」と指摘する。
今のところ、国王が要求に応じる姿勢は見えない。だが、ネパールの新年にあたる14日の
恒例の演説で、何らかの姿勢を示すとみられている。
一方、政党側の幹部は10日、ゼネストを13日まで続ける意向を明らかにした。14日以
降は、税や公共料金不払いなども市民に呼びかけ、政府に圧力をかけることを検討している。
ソース:asahi.com 2006年04月10日21時20分
http://www.asahi.com/international/update/0410/015.html