「陸自イラク撤収、調整大詰め 英豪と共同歩調に腐心 米の同意・現地情勢…流動的」
イラク南部サマワの陸上自衛隊の撤収をめぐる検討が、最終局面を迎えた。政府は米国との
関係はもとより、サマワの治安維持を担う英、オーストラリア両軍との共同歩調に腐心
している。イラクの宗派対立の激化も判断を曇らせがちだが、外務、防衛両省庁は来週
前半をメドに撤退の対処方針を決め、首相官邸と最終調整に入る。
≪選択肢≫
昨年十二月のイラク国民議会選挙を受け、政府は今年に入り陸自撤収の検討を本格化させ、
三月に撤収を最終的に決め、五月に完了する方針を固めている。
サマワでは、東部方面隊(総監部・東京都練馬区)を主力とする第九次イラク復興支援群が
活動している。撤収の際には、施設補修などを行う施設部隊を縮小し、その要員を警備部隊に
振り向け増強し、撤収作業に着手する。
九次群には陸自最強の戦闘能力をもつ第一空挺(くうてい)団の約百人のレンジャー
隊員が含まれており、警備の要となる。これとは別に、新たに百人規模の撤収支援部隊を
クウェートなどに送り込み、物資輸送に充てることも検討。そのための手続きとして、
(1)派遣部隊の純増(2)九次群との一部入れ替え(3)部隊の編成命令などの発令−など、
複数の選択肢が考えられている。
≪綱引き≫
「日米英豪はさまざまなレベルで緊密な連絡をとっている」。額賀福志郎防衛庁長官は
二月二十八日の記者会見で、各国との共同歩調を重視する姿勢を強調した。「日本だけ
米国の意向を無視して撤収することはあり得ない」(防衛庁幹部)との判断からだ。
日豪両国は、麻生太郎外相も出席し今月十八日にシドニーで開かれる日米豪の安全保障対話で、
ライス米国務長官から部隊撤収の了承を取りつける方針だとみられる。
しかし、米国の抵抗感は強い。今秋に中間選挙を控えるブッシュ政権には、「同盟国の
関与の象徴として、地上兵力の駐留継続への期待が大きい」(政府筋)のは確かだ。
イラクの本格政府が発足すれば、「陸自の活動継続を正式に要請するよう、米側がイラク
政府に働きかける」(同)との見方もある。
米側は日本政府に、軍、文民で構成し治安維持と復興を同時並行で進める「地方復興チーム
(PRT)」への陸自幹部参加も打診してきている。だが、陸自は治安維持は担えず、
政府は「法的に困難だ」(額賀長官)と拒否の姿勢を崩していない。
≪疑問視≫
日本政府は、クウェートとイラク南部で輸送任務にあたっている航空自衛隊の活動範囲を
拡大することで、米側の理解を得たいところだ。具体的には、米中央軍が前線司令部を置く
カタールに加え、バグダッドも対象地域とする案も、防衛庁の背広組の間に浮上している。
ただ、制服組は「撃墜される危険性が高い」(幹部)と難色を示しており、“綱引き”も
活発化しそうだ。
イスラム教シーア、スンニ両派による抗争が激化しているイラクの現地情勢も、陸自の
撤収スケジュールを流動的なものにしかねない。政府内では「撤収をどうこう言える
状況にはない」「事態の推移に柔軟に対応すべきだ」と、三月中の撤収決断を疑問視する
声も上がり始めている。
(後略 記事全文は
>>2 以降をご参照ください)
引用元:産経新聞
http://www.sankei.co.jp/ (平成18(2006)年3月2日[木])
http://www.sankei.co.jp/news/morning/02pol001.htm >>1 よりの続き
≪拓殖大海外事情研究所長・森本敏氏≫
■「次」へ態勢見直し不可欠
自衛隊の撤収を決断するにあたり、重要な基準として(1)本格政府の発足を含めた
イラク情勢(2)英軍とオーストラリア軍の撤収時期(3)日米関係−が挙げられる。
この基準を元に、陸自撤収、空自残留を選択する理由は二つある。
第一に、イラク情勢が改善されない状況で英軍とオーストラリア軍が撤収すれば危険が
高まるためだ。陸自の無傷での撤収が今後の海外活動を可能にし、傷つけば二度と海外に
出られない。第二はイラク派遣が国際協力と同時に、日米同盟にも基づいていることだ。
米国は何らかの貢献を求めており、空自の活動を継続させる必要がある。空自の航空輸送
任務は多国籍軍のニーズが多い。インド洋の海自とともに、対テロ戦争への日本の貢献の
シンボルにもなる。
デメリットもある。陸自の人道復興支援の痕跡が消え、陸自宿営地を使ってきた外務省
職員の政府開発援助(ODA)活動の根拠基地がなくなる。地方復興チーム(PRT)
への参加は法的、政治的に無理があり、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上兵力)」で
陸自の駐留継続も求めている米国との調整は難題だ。日米間には米軍再編もイランも
横たわる。同盟国として何をしているのか、トータルで問われかねない。
日本政府にとって、自衛隊の次の国際活動に向けた法的、政治的な態勢の見直しも不可欠だ。
入り口戦略と出口戦略を明確にするため、イラクでの反省と教訓を自衛隊の海外派遣に
関する恒久法制定に生かすべきだ。(談)
引用元:産経新聞
http://www.sankei.co.jp/ (平成18(2006)年3月2日[木])
http://www.sankei.co.jp/news/morning/02pol001.htm
イラク治安部隊支援へ 南部駐留の豪軍
【シドニー14日共同】オーストラリアのネルソン国防相は14日、ABC放送に対し、
イラク南部サマワで活動する陸上自衛隊の警護などを行っているオーストラリア部隊
約450人について、自衛隊の撤退後、イラクの治安部隊などへの支援活動に
移行させる考えを明らかにした。
自衛隊のサマワからの撤退時期は明確になっていないが、国防相は、3−4カ月の
うちにオーストラリア部隊を支援活動に移行させ、イラクの治安部隊、警察、
地方政府を支援、イラク政府の要請に応じるとしている。
オーストラリアはイラクとその周辺に約1300人の部隊を派遣。約450人は
サマワを拠点に陸上自衛隊の安全確保やイラク軍の訓練に当たっている。
(共同通信) - 3月14日12時58分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060314-00000111-kyodo-int