【シンガポール=藤本欣也】エネルギー不足に悩むインドが、イラン
の核開発問題などの対応に苦慮している。同問題の国連安全保障
理事会への付託に賛成するようインドに迫る米国は、原子力発電の
技術協力をちらつかせるが、インドはイランとの間でも天然ガスのパ
イプライン建設計画を進めている。米国はシリアにおけるインドの油田
開発にも反対しており、ブッシュ米大統領の訪印を三月に控える中で
インド政府のかじ取りに関心が集まっている。
インド外務省は二十七日、イランの核問題に関する声明を発表し、
「関係国は対立を回避し、互いに受け入れ可能な解決策を模索すべき
だ」として、安保理への付託回避に向けたロシアなどの動きを評価し
た。しかし一方で、来月二日の国際原子力機関(IAEA)理事会で安
保理付託に賛成票を投じるか否かは明らかにしなかった。
これは二十五日に、インド駐在のマルフォード米国大使が「インドが
付託に賛成しなければ、米印の原子力協力は米議会につぶされるだ
ろう」と“警告”したのを受けたもので、インド政府の苦悩を物語ってい
る。
ブッシュ政権にとって、イランに核開発を断念させるための国際包囲
網を形成するには、非同盟諸国でいまなお影響力を持つインドの支持
は欠かせない。
昨年九月のIAEA理事会でイラン非難決議が採択された際には、
当初、インドは同決議案に反対していたが、米印首脳会談などを通じ
た米国の働きかけにより、最終的に賛成に回った。
このとき米側がちらつかせたのも両国間の民生原子力技術協力
だった。エネルギー不足に悩むインドにとって、現在総電力の3%程度
とみられる原子力発電は今後の有力なエネルギー源だ。しかし国際
社会は核拡散防止条約(NPT)非加盟のインドに対し、原子力関連物
資や技術の輸出を規制している。米国との協力実現はこれに風穴を
開けるものとなる。
一方のイランは、昨年のIAEA理事会におけるインドの“背信行為”
に反発、「経済協力を再考する用意がある」と天然ガスのパイプライン
建設計画の見直しを示唆している。
米国、イラン両国ともインドの泣きどころのエネルギーを使って圧力
をかける形となっており、インド政府は難しい対応を迫られている。
ソース:産経
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060130-00000010-san-int