祭典迫る:トリノ五輪あと1カ月/下 街はいま 「バルセロナと同じことを期待」
◇観光都市化の夢、熱く
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広場近くに2店舗ある公式グッズ店も親子連れなどでにぎわい、ようやく市民から祭典
ムードの高まりが感じられるようになった。だが、五輪への関心度は国内総じて低く
「夏季五輪じゃないからね」という声も頻繁に聞こえてくる。
政府も五輪の開催意義や効果をそれほど重視していない、という見方が一般的だ。政治家の
大きな関心は、4月に予定される総選挙だ。そんな冷めた雰囲気の中で、トリノ市だけは
五輪効果に熱い思いを寄せる。市に本拠地を置く世界有数の自動車メーカー「フィアット」
の業績不振が続き、抜本的な景気回復策が求められているためだ。
関係者の多くは、92年に夏季五輪を開いたスペイン・バルセロナを「理想の都市」に
挙げる。大会組織委員会(TOROC)の幹部の一人は「バルセロナは五輪を機に
ファッショナブルな観光、経済都市となった。トリノに期待するのは同じこと」と話す。
「工業都市から観光都市への脱却」を目指す市は、五輪に合わせて地下鉄を開通させる
などインフラ整備に積極的だ。しかし、「環境破壊、税金の無駄遣いだ」と、近代化路線へ
異を唱える市民も少なくない。
昨年12月には、市内から五輪のスキー競技会場へ通じるスーザ渓谷で、トリノと
フランス・リヨンを結ぶ高速鉄道建設に反対するデモ隊と警官隊が衝突。国内過激派の便乗で
大騒動となり、約20人の負傷者が出た。
現在は沈静化しているが、市内には「NO TAV」(高速鉄道反対)の落書きが目立つ。
過激派による「五輪を中止させよう」とのメッセージもインターネットで一時広まり、
五輪への影響も懸念される社会問題となった。五輪警備を統括する内務省高官は「デモはまた
行われるかもしれない」と話し、テロだけではなく、おひざ元での反乱にも目を光らせる。
世界中の注目を集める五輪招致を機に、古都は転換期を迎えようとしている。そこに暮らす
人々と協調し、街をどう潤していくのか。祭典後も、街が背負う責任と期待は大きい。
毎日新聞 2006年1月12日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/feature/news/20060112ddm035050075000c.html