東京新聞コラム:新世界事情
http://www.tokyo-np.co.jp/00/nwt/20051228/ftu_____nwt_____002.shtml 「五十年前は毎日完売だった。今は約七割が売れ残って、捨てられてしまう」
カイロの街頭で五十年以上、宝くじを販売している最長老の“売り子”アブデルナイーム
さん(65)は、最近の不人気がちょっと残念そう。
白いターバンを巻き、一枚二十五ピアストル(約五円)から一ポンド(約二十円)のくじを
どっさり手提げかばんに詰め、お得意さんの事務所や自宅にも立ち寄りながら売りさばく。
一等賞金は一万二千ポンド(約二十四万円)。
エジプトの宝くじはもともと、民間の外国人が始めたとされるが、くじに不正な操作が
あったなどと非難され、一九六七年に政府の管理下に移された。
「お役人はたとえ宝くじが売れなくても給料をもらえるから…」とアブデルナイームさん。
宝くじ復活にはビジネス感覚の導入が大切と言いたいようだ。
「昔、宝くじを運営していた外国人は、当せん番号の前後の数字も当たりとする前後賞を
採り入れた。客を引きつけるためいろいろなアイデアがあった」
ただ、売り上げ低迷の原因はほかにも考えられる。近年、スカーフを着用する“宗教熱心”
な女性が増えるなど、「エジプト社会のイスラム化」と呼ばれる現象も見逃せない。
イスラム法ではそもそも賭け事が禁じられており、「原理主義者が宝くじも『禁止』
という。これが売り上げに響く」と、アブデルナイームさん。
「くじの売り上げは慈善事業にも回される。かつては救急車がくじを販売したこともある
のに、原理主義者は頭が固い」としきりに嘆いていた。