【フランス暴動】「移民が入り、フランス人が出ていって、おかしくなった」 移民と社会 溝深く 騒乱の街ルポ[11/10]

このエントリーをはてなブックマークに追加
1筆返しφ ★

 フランス全土に拡大し、夜間外出禁止令発令の事態にまで至った若者の暴動は、移民が多く住み、
高失業率や貧困にあえぐ大都市郊外の問題を浮き彫りにした。暴動が起きた低賃金者用の公共集合
住宅が立つ地区は全国に約七百五十カ所。その一つで、暴動が最も激化しているパリ北東郊外の
セーヌサンドニ県クルヌーブ市を歩いた。 (パリ・井手季彦)

    ■アパート群
 駐車場にはボンネットが焼けただれた車、落書きだらけの塀のわきには灰になったゴミの山。
騒乱の後始末をする清掃車の音だけが響く。
 パリ中心部から地下鉄と路面電車で約五十分。サルコジ内相が治安対策の象徴として取り上げ
「社会のくずを掃除する」と言ったクルヌーブ市レ・キャトルミル地区は、日本の団地を思わせる
中高層アパート群だ。
 「サイレンが鳴り、あちこちで火の手が見えて夜は出られない」と、パン屋を営むチュニジア出身の
ウニさん(40)。「(社会のくず発言は)大臣の使う言葉じゃない。サルコジが辞めれば事態は少しはよくなるさ」
 地区の中心には大きな店舗ビルがあるが、小さなスーパーとアフリカの食材を売る店が入っている
だけでがらんとしている。厳しい警戒のせいか、若者は見かけない。

    ■深刻な失業
 地区から徒歩で五、六分のところに公共職業安定所があった。求職に来ていた北アフリカ系の女性
アニマさん(31)は「求人を見て窓口に行っても条件が合わなかったり、条件が合って履歴書を出しても
断られたり。三カ月も同じことを繰り返している」と嘆く。
 統計では、保有資格などが同等の失業者が再就職するまでの期間は全国平均で十カ月弱だが、非欧州系
移民は一二・一五カ月。また、クルヌーブ市民の平均所得は二〇〇三年の調査で十二年間に15%も減少している。
 「でも失業が暴動の原因だとは思わない。警察に何度も呼び止められて、若者は頭にきているのよ」とアニマさん。
 同じく仕事を探していた西インド諸島の海外県マルティニーク出身の男性クリスチャンさん(24)は違う
意見だ。「この地域はスポーツ施設など発散できる場所もない。学校で落ちこぼれ、仕事もない若者は、
石を投げ、車に火をつけて楽しんでいる」と言う。

    ■問題の本質
 一方、近くには移民以外の人たちも住む。定年退職者の男性ジョセフさん(72)は一九七〇年代からの住人だ。
「八〇年代に公共住宅ができたころは低所得のフランス人が住んでいて問題なかった。移民がどんどん入り、
フランス人が出ていって、おかしくなった」と冷たい視線を向ける。
 道端で会った男性クロールさん(60)も、移民らしき人が通るたびに声をひそめた。「彼らはフランスの新聞も
読まず文化的に同化しようとしない。不衛生な生活をして、麻薬取引の巣になっている。政府は問題の本質に
目をつぶっている」

 隣り合っていながら決して交じり合わない、一般社会と移民の世界の深い溝を見た気がした。

http://news.goo.ne.jp/news/nishinippon/kokusai/20051110/20051110_news_009-nnp.html