欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会高官は3日、EU加盟の4〜5カ国
が、未回収の税金などを担保に銀行融資を歳入に組み込むなどの手法で事実上の
「財政赤字隠し」を行っているとの見方を明らかにした。EU加盟国には単年度の
財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以下に抑える義務があり、同義務違反の回避
が狙いとされる。同委員会は他の加盟国でも同様の手法が行われている可能性が
あるとみて、詳しい調査に乗り出す一方、3月をめどに赤字査定基準の見直しを行う
方針だ。
同高官によると、未回収の法人税や、将来、売却を予定する政府不動産などを担保
に、加盟国が銀行から融資を受ける例が、5カ国前後で確認された。一部では民間の
投資銀行が、赤字隠しとみられるこうした手法を政府に「指導」しているという。
これは「資産の証券化」と呼ばれ、元来は銀行や企業が自身の債権や不動産などを
裏付けに小口の証券を発行し、資金調達したり、帳簿から外す手法。違法ではないが、
同高官は「未払いの税金などが将来、回収できる確約はなく、赤字削減につながらない。
一時しのぎの手法で、財政が不健全になる」と批判している。
また、破たん企業への政府出資をめぐり、新たに別会社を設置して旧会社の資産と
負債を移転する手法で、本来、破たんによって政府が抱えるべき赤字を回避した例も
あった。
EUでは「財政安定協定」で「赤字はGDPの3%以下」と決められており、守れ
ないと制裁金が科される場合がある。昨年はギリシャが、97〜99年に赤字を過少
申告したことが判明し、欧州委から是正勧告を受けた。一方で、04年には独仏も
含めて12カ国が3%を超す赤字を計上。このためEUは、東西ドイツ統合の財政
負担などを赤字に含めないよう決め、同協定が空文化している実態もある。
しかし、欧州委はこうした「赤字隠し」の手法が水面下で広がって
いる可能性があるとみて問題視している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20051104k0000m030095000c.html