世界遺産と生きる:/1 ギザの3大ピラミッド 観光と保全、両立目指し
カイロ中心部から南西に10キロ。古代エジプト文明の象徴である3大ピラミッドは
ギザ周縁の砂漠地帯にそびえ立つ。世界中から年間150万人の観光客が訪れる。
輸出産業がぜい弱なエジプトでは観光業が重要な外貨獲得源。02年度には
スエズ運河の通航料収入を上回る37億ドルを稼ぎ出した。エジプト観光の目玉の
3大ピラミッドは経済を支えている。
だが、エジプト考古庁最高評議会長官でエジプト学の世界的権威、ザヒ・ハワス氏は、
ピラミッドの保全と観光振興の矛盾に深刻な懸念を抱いている。「率直に言えば、
観光はピラミッドの敵だ」と厳しい。
ハワス氏が遺跡保全の観点から最も問題視するのは、ピラミッド内部の湿度変化だ。
ピラミッド内の見学は夏季1日300人、冬季500人と制限されているが、「呼吸や
発汗によって観光客は1人当たり約20グラムの水分をピラミッド内部に残していく」と
ハワス氏は指摘する。ピラミッドに使用されている石材は水に弱い石灰岩。わずかな
湿度の上昇でも石質の劣化を促す。「過去数十年間に観光客がピラミッドに与えた
悪影響は、それ以前の4000年を上回る」という説もある。
このため考古庁最高評議会は、3大ピラミッドのうち1基を1年ずつ閉鎖する対策を
取っている。閉鎖したピラミッドでは壁のひび割れを補修し、表面に付着した塩分などの
汚れを除去する。だが、しょせんは応急処置だ。
(中略)
「今、脅威を認識することができなければ、古代エジプト文明の遺産は100年後には
荒れ果ててしまうだろう」とハワス氏。エジプトは観光と遺跡保全の両立に苦悩している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/egy/news/20051002ddm007030183000c.html