22日投票 切り崩しに躍起
今月、改選となる国際海洋法裁判所の裁判官選挙に立候補している元駐米大使の
柳井俊二・中央大大学院法学部教授が、苦戦を強いられている。イラクの外務次官が
三月になって突如立候補を表明し、「新生イラクへの同情票」が集まる可能性が出て
いるためだ。政府は国連安全保障理事会常任理事国入りに向けた「前哨戦」と位置づけ、
二十二日予定の投票に向け、谷内正太郎外務事務次官を選対本部長にラストスパートを
かける方針だ。
柳井氏の立候補は現職の山本草二裁判官(前上智大教授)の任期満了に伴うもの。
昨年九月に立候補を表明した。裁判官の立場は中立というものの、海洋に関する紛争を
取り扱うだけに「選挙の当落は国益に大きく影響する」(外務省幹部)。日本は東シナ海の
石油ガス田開発に絡み、排他的経済水域(EEZ)の境界線をめぐって中国との係争拡大も
想定され得るだけに、負けられない選挙となっている。
アジアグループ五カ国の中で今回改選されるのは日本と韓国で、改選定数は二。
日本も韓国も裁判官としての実績があるだけに、「両国に挑む国はないだろう」
(政府関係者)とし、事実上の信任投票への期待感が高まっていた。
ところが、国際社会への復帰を目指すイラクのハムード外務次官が立候補を表明。
日本政府も「うかうかしていられなくなってきた」(外務省筋)。
韓国は、過去九年間の実績を誇る国際法学者で現職の朴椿浩氏が続投を表明。
一方のハムード氏はイラク戦争前から国際法を専門としてきたイラク屈指の外交官と
いずれ劣らぬ強敵だ。
政府はイラク戦争後に自衛隊を派遣しイラクの復旧・復興支援に取り組んできたが、
「それとこれとは別問題。イラクには悪いが、裁判官ポストは渡さない」(同)と必勝の構えだ。
(略)
http://www.sankei.co.jp/news/050607/morning/07pol002.htm