「”アンデルセンの童話『人魚姫』の自己犠牲の精神は、デンマーク人の
心をよく表しています。私達は難しい思想はわかりませんが、ユダヤ人の
ことが気の毒だったので助けました”だって。ナチスの迫害からユダヤ人を
助けた数少ないヨーロッパの国はデンマークなのか。でも、私あの童話は
あまり好きじゃないわ」
「どうして?」
「だって、王子様が幸せになるところに自分がいないなんて嫌よ」
「そうよねえ。利己的で現実的な日本の女の私も、あの話には違和感がある」
「自爆テロって、あまり女性的じゃないことの一つよね」
「そう。同時多発テロが発生したとき、私実はものすごく違和感があったの。
ハイジャック犯たちが世界をどうしたかったにせよ、自分たちの行為の結果
を見ることができないっていうところが」
「見届けたいわよね。絶対に」
「ほんと、ほんと」
「だいたい、私は思想のために死ぬなんていや」
「普通女って思想のためには死なないと思う。他人のためにも死なないわよ」
「そうね。女の命って子どものためにあるのかも」
「私たちもまだ見ぬ我が子のために、この命はとってあるのよきっと。
子どものためなら死ねるっていう人多いじゃない?」
「行き過ぎると、自分と子どもだけよければいいってことにもなるけど」