VIPPER襲来落ちなど認めんぞ、断じてだ
スレ立て乙!
マメに保守しないとダメだね…
保守
1乙です
6 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/08(日) 20:19:23.87 ID:eBhBXORtO
びっぱー来襲保守age
前スレもう落ちたか
ほしゅ
9 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/09(月) 05:32:08.71 ID:aRy/k5bdi
おーぷんなり、ひろゆきんとこなりに避難するのも考えたほうがいいかもね。
とりあえずほしゅ
☆
SS速報とかもあるけど、スコーンちゃんが書きやすい所が一番だよね…
☆
13 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/09(月) 12:24:07.74 ID:2EIKI1Pz0
ここまでの流れを
さらっと復習したい、、、、
たまにワケわかんなくなるお
理解してる人おせーて
ただ、有志によるスレ立ても良いが、スコーンは下記書き込みをしているので
そんなに急がせないでゆっくり見守るのもありかと・・・
247 名前:1 ◆Vwu55VjHc4Yj [] 投稿日:2013/08/29(木) 13:58:49.13 ID:r8kB/gSuP [36/36]
>>246 ありがとう!
一通り読んできました
ルール違反はしたくないので
一応、もし落ちた時は
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ こっちに、その時のスレと同タイトルで立てることにします
名前も1 ◆Vwu55VjHc4Yj で立てますね
幼女とおやつを作るので後ほど来れたら!
最初のスレ立ての時にいたけどまだ続いてたのか
俺に勇者になれだと?みたいな感じのスレタイだったのは覚えてる
☆
☆
19 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/10(火) 08:10:24.22 ID:7cOkBY2aO
スコーンちゃん気付いて…
20 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 09:22:04.29 ID:T6RCdzRQ0
おはようございます!
前スレもう落ちちゃったんだね……
なんか本当にごめん、そんでありがとう
家のごたごたと幼女の風邪でPCすらつけれずに
ご迷惑おかけしました
21 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 09:25:51.59 ID:T6RCdzRQ0
現状、母が亡くなった事でばたばたしてるのと
幼女の事もあるし、新たな就職に向けてなかなか時間が取れないので
vip+だと厳しい事もあるかもしれん……ので
区切りがついたら、SS速報の方にお引っ越ししようかなと思います
携帯から覗いてはいるんだけど、P2駄目になってから
携帯からの書き込みが全く駄目なんだ。
保守お任せになっちゃって本当に申し訳ない。
とりあえず、時間ある限り任せっきりにしないで
なるべく自分も来ます。
このスレはありがたく使わせてもらう!
乱立させてしまって本当にごめんね。
ありがとう!
って事でお迎えまで!
22 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 09:39:47.21 ID:T6RCdzRQ0
魔王「…… ……」
姫「私の居場所は……ここなのかしら?」
魔王「…… ……」
姫「……貴方に聞いたってわかんないわよね」
魔王「す、すみません」
姫「謝らなくて良いわ……どうせ誰にもわからない事ですもの、ね」ハァ
魔王「ここ、は」
姫「え?」
魔王「……どこなんでしょうね」
姫「……私に聞かれたってわかるわけないでしょ」
魔王「いや、それはそうなんでしょうけど……そもそも」
魔王(さっきまで……青年と、姫様に会うまで居たあの場所だって何処かもわからん)
魔王(『死んだ筈』の父さんや、癒し手……あ、俺はまだ死んでないのか)
姫「……魔王?」
魔王(否、そんな事いっちまえば金髪紫瞳の男はどうなる?)
姫「魔王」
魔王(あいつは本来なら、まだ……生まれてすら居ない筈だ)
姫「…… ……」
魔王(あ、そうか……俺だってまだ確実に死んでる訳じゃ無い)
姫「魔王、ってば!」バシッ
魔王「うわあ、はいすみません!」
姫「もう、何回も呼んでるのに!」
姫「考え事するのは結構だけど……私もここに居るのよ?」
魔王「……ハイ」
姫「で、何?」
魔王「はい?」
姫「話し相手にすらならないの、私は?」
魔王「あ……いえ。でも……」
23 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 09:47:43.07 ID:T6RCdzRQ0
姫「……帰りたくても帰れないのよ?」
魔王「で、すよね……」
姫「役目、だとか……それが何なのか、本当にそんな物が私にあるのか」
姫「それすらわからないわ。何もわからない。だけどね」
魔王「…… ……」
姫「ここで貴方と顔つき会わせて黙ってたって、何にもならないわ」
魔王「……はい」
姫「勿論、話し合ったって……どうにもならないだろうけど、ね」
魔王「まあ、眉間に皺寄せ合うなら……黙ってるよりしゃべってた方が良いですよね」
姫「……そういう事ね」ニコッ
魔王(癒し手にそっくりなのに。表情や言葉一つで、こんなにも印象が違うモンなんだな)
魔王(……青年は姫様似、だったんだな)フッ
姫「何笑ってるのよ」
魔王「似てるなぁ、と……あ、いや。似てないなと思って」
姫「は?」
魔王「いえ、何でも無いです……姫様」
姫「何よ」
魔王「さっき……どうして迷いも無くあっちへ」スッ
魔王「歩いて行ったんです?」
姫「え? ……ああ。なんと無く、よ」
姫「……歩いていたら、誰かが……迎えに来てくれるんじゃないかしら……なんて」
魔王「誰か?」
姫「…… ……寂しいわよね」
魔王「はい?」
姫「私は、死んだわ。紫の魔王も」
魔王「…… ……」
姫「死は誰にだって平等な筈でしょう?」
魔王「え……ま、まあ……そう、かな」
姫「そうよ。どれだけ力の強い魔族でも、不老不死、な人は居ないのよ」
姫「限りなくそれに近かったとしても、絶対じゃ無い」
魔王「…… ……」
24 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 09:57:10.79 ID:T6RCdzRQ0
姫「まあ……確かに、紫の魔王は規格外だったけど」
姫「自分を『器』と『中身』に分けてしまって、本当に……」
姫「……本当に、『魔王は勇者に倒される』事実を作ってしまった」
魔王「使用人だったか、后だったか……えっと、俺の母さん、だったか。忘れたけど」
姫「?」
魔王「……いや、先に行っておきます。責める訳じゃ無いんですよ?」
姫「……何よ」
魔王「姫様が、塔で眠らされる前に……紫の魔王に言った事、覚えてます?」
姫「私が、紫の魔王に?」
魔王「はい……誰が言ったかってのは、本当に忘れちゃったんだけど」
魔王「『貴方は勇者よ』……みたいな、事を」
姫「!」
魔王「……エルフの嘘は、本当になってしまう、って」
姫「……それも、私の所為、だと……」
魔王「あ! だから、責める訳じゃないですって!」
姫「…… ……」
魔王「それに……魔王は勇者に倒される為にいるのかもしれないって」
魔王「そう言い出したのは、紫の魔王なんでしょ?」
姫「…… ……」
魔王(……き、機嫌損ねちゃった、か?)
姫「…… ……」
魔王「あ、あの……姫様?」
姫「…… ……」
魔王「…… ……」ハァ
姫「……いいえ。違う」
魔王「え?」
姫「やっぱり違うわ」
魔王「は?」
姫「いえ、でも…… ……」ブツブツ
魔王(さっきは話し相手にぐらいなるって言ったくせに、この人は……)ハァ
姫「ねえ、魔王」
魔王「はいはい」
姫「…… ……」ムッ
魔王「はい!」
姫「『紫の魔王』と『紫の魔王の側近』は…… ……完全に失われた、のよね?」
魔王「え? ……ああ。そうであろう、って推測だと思いますけど」
姫「でも、貴方のお父さん……金の髪の魔王は、まだ……えっと」
姫「貴方や、癒し手の居た場所にいる、のよね」
魔王「……え、はい」
姫「…… ……同じ、よね」
魔王「?」
25 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 10:03:18.26 ID:T6RCdzRQ0
姫「私と同じ。役目は終わっているであろう筈なのに」
姫「まだ、完全に失われていない」
魔王「…… ……」
姫「本来ならば『器』と『中身』…… ……紫の魔王が失われたのならば」
姫「彼だって……金の髪の魔王だって、失われてしかるべきよ」
魔王「危惧してるところでもあるんです、よ」
魔王「何故、父さんがまだあそこにいるのか? ……俺たちは」
魔王「この『腐った世界の腐った不条理』は、まだ……断ち切れないのか、って」
姫「……じゃあ、私はまだ、紫の魔王に会える可能性があるのかもしれないわね」
魔王「……え?」
姫「女剣士は紫の魔王の側近に会えた。最後の最後に、願いを叶えた」
姫「……きっと、彼女も……失われたんでしょう」
魔王「……ええ、と」
姫「彼女だけがずるい、って言いたいわけじゃ無いわ。やっぱり、誰にも」
姫「役目があるとすれば…… ……」
魔王「…… ……」
姫「なんと無く、わかった気がするわ」
魔王(俺にはさっぱりわかりませんが)
姫「でも、まだここに居るって事は、『時間がある』って事よ」
魔王「は?」
姫「……ま、のんびり話でもしていましょ」フゥ
魔王(……俺、まだつきあわされんの?)
姫「ねえ、もう一度最初から話してちょうだい」
魔王「な、何をですか」
姫「私が眠ってから……えっと。とにかく最初から。さっきの話よ」
魔王「え!?」
姫「貴方が知ってるすべて」
魔王「……もう一回?」
姫「もう一回よ。そう言ったでしょ」
魔王(……癒し手。やっぱり俺を助けてくれ)
……
………
…………
26 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 10:14:28.46 ID:T6RCdzRQ0
青年「!」ハッ
勇者「…… ……」
青年(……空、暗い…… 夜、か? ……僕は……)キョロ
青年「……勇者、様?」
勇者「!! 青年! どこも痛くない!? 気分は!」ガバッ
青年「!? ……ちょ、重……ッ …… ……」
勇者「よ、よかった……よかったぁ……! 心配したんだよ!?」ボロボロ
勇者「ま、まどう、しも……けんし、も……ッ」ウワアアアアン
青年「……あ、ああ……」
勇者「あれから、ずっと……目、さ……ッ 覚まさない、し……ッ」ギュウ
青年「…… ……うん。ごめん……大丈夫だよ」ギュ。ポンポン
青年「ごめんね、勇者様……魔導師と剣士は?」
勇者「あ……魔導師はさっきまでここに居たんだけど」
勇者「魔物の気配もないし、ってお城跡の方に行ったよ」
青年「城の方へ?」
勇者「うん……剣士は、あそこ」スッ
青年「……?」
青年(丘の……端。空見あげて何をしているんだ?)
勇者「……お母さんに心話が届かないか、ずっと試してるみたい」
青年「ああ……よいしょ」ムクッ
勇者「お、起きて大丈夫?」
青年「ああ……勇者様、悪いけど剣士呼んできて」
勇者「あ、うん!」
青年「……魔導師のところへ行こう。あいつ、何してるんだか知らないけど」
青年「調べ物でもしてんなら、なかなか戻らないだろうし」
青年「……どうせ一本道だ。どこかであうだろう」
勇者「で、でも動いて大丈夫?」
青年「……勇者様がキスしてくれたらさらに気分よくなるかな」クス
勇者「な、何いってんの!?」カァッ
青年「エルフは嘘はつけないよ、勇者様?」
勇者「……ッ だ、大丈夫そうだね! そんな調子じゃ!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクス
27 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 10:27:41.71 ID:T6RCdzRQ0
青年(……ただの夢、では無い……よな)
青年(僕は……言葉、知識として知ってはいるが)
青年(……姫様の事なんかしらない。魔王様の事だって……)
青年(…… ……)
青年(母さん……母さんは、確かに死んだんだ)
青年(……だけど。魔王様の言葉を借りるなら)
青年(『完全に失われては居ない』!)
青年(……間に合うのかもしれない。『向こう側』の様に……だけど)
青年(ならば。僕たちが、こうして……『否定して行く』事に)
青年(意味は……あるのか?)
スタスタ
剣士「青年」
青年「……おはよう。悪かったね、心配かけて」
剣士「否……無事ならば何より、だ」
勇者「本当に大丈夫なの?」
青年「平気だって。さっきの役得で、元気出たよ」
勇者「役得?」
青年「……勇者様の柔らかい胸の感触?」
勇者「! ……ッ ば、ばか!」カァッ
剣士「いい加減にしろ、お前は……」ハァ
青年「嘘じゃ無いよ」クスクス
勇者「青年!」
青年「……思ってくれる気持ちってのは嬉しい物だよ」
青年「僕の身を案じて、抱きしめてくれる暖かさが身にしみたって事さ」
勇者「青年……」
剣士「…… ……」
青年「ありがとう、勇者様。回復魔法もずっとかけててくれたんだろ?」
勇者「……あ、うん……でも……」
青年「そういう気持ちがね、嬉しいんだよ」
勇者「……うん!」ニコッ
青年「でも、本当に知らない間に育ったよねぇ……揉みごたえがありそ…… ……」
バッチン!
勇者「やっぱり最低だ!青年の馬鹿!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクスクス
剣士「……本当に、いい加減にしておけよ、お前は」ハァ
青年「痛いなあ……力も強くなったね」クス
剣士「もうちょっと素直になれば良い物を……」ボソ
青年「え?」
剣士「……行くぞ。一人には出来んだろう」
スタスタ
青年「ああ……魔導師は城跡に行ったんだろう。そっちへ」
剣士「わかっている。さっさと歩け」
青年「……なんだよ。もう少し優しくしろよな!」
スタスタ
28 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 10:40:48.03 ID:T6RCdzRQ0
……
………
…………
魔導師(……まあ、わかっていました、けど)ハァ
魔導師(僕にはやっぱり何も聞こえない……何も感じない)
魔導師(瓦礫の山……)パキ
魔導師(……ッ と。何か踏んだか……)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(しかし、ここにも魔物の気配が無い……后様の炎は)
魔導師(凄いんだ、と……言うことの証明なのか)
魔導師(……だけど、青年さんの言う様に、念には念を……)ブツブツ
ガサガサ……
魔導師「!」
魔導師(……魔物か…… ……ッ)バッ
勇者「魔導師!」
魔導師「! 勇者様!?」
剣士「俺たちも居る」
魔導師「剣士さん、青年さんは…… ……!」
青年「まさか放置されるとは思ってないでしょ、魔導師」
魔導師「……ああ、気がつかれたんですね、よかった……!」ホッ
青年「お前だから心配はしないけど……何か調べるにしたって、夜の闇の下じゃ」
青年「見つかる物も見つからないぜ?」
魔導師「……捜し物をしていた訳では無いんですけれどね。それより」
魔導師「急に歩いて大丈夫なんですか? ……結構長い時間」
魔導師「意識を失っておられたんですよ?」
青年「……びっくりしたよ。目を覚ましたら夜だったからね」
29 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:10:07.29 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「まあ……無事ならばよかったです。ご気分は?」
青年「ああ……」
魔導師「青年さん? まだ気分が優れないなら……」
青年「いや、そうじゃない……話したい事がある」
勇者「? ……やっぱり、あの呪いの……感じるの?」
青年「え? ……ああ、そうじゃないんだ、勇者様」
青年「剣士」
剣士「何だ」
青年「……后様には、心話は通じたのか?」
剣士「否…… ……駄目だな。見てはいる、のだろうと思いたいが」
青年「そうか」
魔導師「! ……まさか、何か夢を見たのですか!?」
勇者「夢?」
青年「当たらずとも遠からず、かな……とにかく、野宿をするつもりでないなら」
青年「船に戻ろう……ここには、もう何も無い」
剣士「何も……ない?」
青年「……呪いが、とか言う意味じゃ無いんだ」
青年「なんと言っていいか……確実に言えるのは」
青年「大地に……『世界』に」
魔導師「!?」
青年「染みこんでしまった物は、そう簡単に消えないだろうって事だ」
剣士「…… ……」
青年「后様の炎でも完全に消し去れなかったあの呪いを、今の勇者様の炎で」
青年「消してしまえるとは思えない。力の差、もあるが」
青年「……時間が経ちすぎている。魔導師が言っていたように」
青年「醜聞、や……『運命に選ばれし光の子』が炎の魔法を使えると知る人は少ない」
青年「それを考えれば、ここは……放置すべきだって思っただけだ」
勇者「……私の力が、お母さんに遠く及ばない、ってのはわかるよ。でも」
勇者「青年は……それで良いの?」
青年「ちょっと時間がかかるけれど、勿論全部話す」
青年「……だけど、結論を出してから、ここに炎を放って」
青年「さあ、出発しよう……は、意味が無いと思う」
魔導師「意味が無い……?」
青年「ああ」
剣士「……炎に関しては、俺が手を貸す、と言う方法もあるぞ?」
青年「それも考えた。だが……それでも、だ」
30 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:21:20.83 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「…… ……」
青年「勇者様もそもそも、火を放つのに乗り気ではなかっただろう?」
勇者「そ、そりゃあそうだけど……」
剣士「意味が無い、と言うのは根拠があるんだろうな」
青年「当然だ……だが、まあ、最終的な判断は勇者様に任せるよ」
勇者「え!?」
青年「『仲間』からの意見、だね。決定するのは君だ、勇者様」
勇者「え、ええと……」
剣士「……お前の話を聞かん事には、どうにも判断できん、が」ハァ
魔導師「そうですよ、青年さん。何も話されずそれでは……」
青年「僕が倒れて、長く目を覚まさない間」
青年「『夢』を見ているのでは無いか、って。思ってたんだろう?」
魔導師「……まあ、推測ですけど」
青年「あれを夢と言っていいのかどうかわからないが……僕は『夢』の中で」
青年「魔王様と姫様にあった」
勇者「! お父さんに!?」
剣士「……姫、だと?」
青年「そうだ……あれが何処かはわからないけど、眼下に広がる幻の様な景色は」
青年「……あそこ。あの丘の上だ」
魔導師「!」
青年「僕が倒れてて、勇者様が、必死で回復魔法をかけてくれてた」
剣士「…… ……」
青年「君は似たような経験があるだろう、剣士?」
剣士「……魔導師もだろうが」
青年「あ、そうか」
勇者「お父さん…… ……」
青年「まあ、そこでいろいろ話した上で……意味が無い、と判断したんだ」
魔導師「…… ……」
31 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:30:14.28 ID:T6RCdzRQ0
勇者「……わかった。船に戻ろう」
剣士「良いのか?」
勇者「確かに、私の炎じゃ力不足……剣士の力を借りても」
勇者「『意味が無い』って判断した……『仲間』の意見を尊重するよ」
青年「…… ……」
勇者「『エルフは嘘がつけない』……青年は嘘なんか……『つかない』」
青年「!」
魔導師「……まあ、向かう場所にもよりますけど」
魔導師「それでもここに火を放つべきだと思えば、何時だって戻ってこれます」
剣士「……間に合えば、な」
魔導師「『16歳』を区切りとするなら、まだ時間はあります」
勇者「……剣士、補給の必要は?」
剣士「港街か書の街だな。どこに行くにせよ……必要だ」
勇者「わかった。じゃあ、まずはどちらかに向かおう」
青年「……ありがとう、勇者様」
勇者「ちゃんと話してくれるまで寝かさないからね」
青年「大胆だな」クス
勇者「青年!茶化さない!」
青年「はいはい」
32 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:35:28.66 ID:T6RCdzRQ0
剣士「この辺は海の魔物もそれほどの力を持たない……とはいえ」
剣士「飛ばして向かっても、夜ではどうしようも無い」
魔導師「そうですね……近いのは、港街ですが」
剣士「どちらにせよ船で朝を待つ事になる」
勇者「戻りながら考えよう……火を放つ必要が無いにしても」
勇者「……気分はよくないでしょ、青年?」
青年「まあ……ね。丘の上ほど、空気は良く無い。雰囲気もね」
魔導師「早く聞きたい、と言うのはありますが……僕たちも少し眠るべきです」
魔導師「勇者様は魔力も随分消費したでしょうし」
青年「……だな」
剣士「長居は無用だ……行くぞ」
スタスタ
魔導師「はい……行きましょう、勇者様」
勇者「うん……ねえ、青年?」
青年「うん?」
勇者「……お父さん、何か言ってた?」
青年「子供を気にかけない親なんか居ないよ」
勇者「…… ……うん」
スタスタ
魔導師(『夢』……魔王様に会った、のはともかく)
魔導師(姫様…… ……今頃、どうして?)
青年「……魔導師」
魔導師「あ、すみません」
スタスタ
33 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:43:50.21 ID:T6RCdzRQ0
青年「……何も隠さないよ」
魔導師「そんな事疑っていませんよ。仲間なんですから」
青年「……ああ」クス
魔導師「必死だったんですよ、勇者様」
青年「見てたよ」
魔導師「…… ……」
青年「何だよ?」
魔導師「いえ……」
青年「言いたい事があるならはっきり言えよ」
魔導師「……姫様、は。亡くなられてから、随分時間が経っているのに」
魔導師「今頃、何故……と思っただけです」
青年「……『役目』だそうだ」
魔導師「え?」
青年「……戻れば話す。勇者様を休ませないとな」
魔導師「寝かさないって言われてましたけど」
青年「ベッドの中なら歓迎だけどね」
魔導師「……それ、本人に言っちゃ駄目ですよ」
青年「言わないよ……前にも言っただろう?そんな目で見ちゃ居ない」
魔導師「……僕も、前にも言いましたよ?」
青年「『終わらせる』んだよ、魔導師」
青年(……金髪紫瞳の男……『向こう側』の僕と……勇者様の息子、には悪いけれど)
青年(もう……ごめんだ)
青年(『この世のどこからも失われる』事が、真の安らぎならば)
青年(……まだ、母さんが存在するのならば。終わらせなければ……!)
魔導師「……青年さん?」
青年「……行こう。遅れたらまたどやされる」
……
………
…………
34 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 11:44:40.42 ID:T6RCdzRQ0
お昼ご飯食べてお迎え!
35 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 12:43:34.66 ID:T6RCdzRQ0
コンコン
少年「少女、いるか?」
少女「少年? ……うん。どうしたの」
カチャ
少女「また、お客さん?」
少年「いや、見た事の無い船が止まってるらしいんだ……それで」
少女「見た事の無い船? でも、この街の港には……」
少年「……まあ、定期便以外にも行き来するってのは聞いたよ。でも」
少年「見た事は無かっただろう?」
少女「……まあ、そうだけど。あ、でも!」
少女「私、お使いの途中で一度……大きな船を見たわ」
少年「ああ……沖の方に停泊してたやつな。俺も見たよ。でもそれじゃ無くて」
少女「……違うの?」
少年「と、思う。 ……小さな船だ、って言ってた」
少女「誰に聞いたの」
少年「裏の洗濯屋のおばさんさ」
少女「……あのおばさん、噂好きだからね」
少年「お姉さん達も何人か、見に行ったんだよ」
少女「……それで、私たちも行こう、って?」
少年「少女は、いや?」
少女「ううん……別にかまわないけど」
少年「大丈夫だよ。後ろからこっそり行けば、俺たちが娼館の小姓だなんて」
少年「気付かれないさ」
少女「…… ……」
少年「もし、お前に目をつける様なやつがいたら、俺がぶっとばしてやる!」
少女「……馬鹿ね。本末転倒でしょ」
少年「俺は……お前が客を取るなんて許さないって言ってるだろう」
少女「まだ何年も先の話よ」
少年「……もう何年か、しかないんだ」
少女「…… ……」
少年「……少女がどうしてもいやなら、行かないけど」
少女「少年は行きたいんでしょう?」
36 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 12:44:28.18 ID:T6RCdzRQ0
ほんまにいってきます!
いてら
38 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 15:44:59.87 ID:T6RCdzRQ0
少年「…… ……」
少女「少年?」
少年(別に……詳しく言わなくて良いか。少女には、まだ……)
少年(多分……賛成はしてくれない。反対はしなくても……)
少女「……?」
少年「うん、行きたい、けど……少女が嫌なら、無理には誘わないよ」
少女「それは、私が嫌だって言えば、自分一人で行く、って事でしょ……良いわ」フゥ
少女「仕事が無いときに何してたって怒られる訳じゃないし……行きましょ」
少年「……うん!」ホッ
少女「男の子は、好きよね。船……とか」
少年「とか、って?」
少女「冒険……とか?」
少年「ああ……まあ、そうかもね。でも、少女だって」
少年「そういう本、読んでるじゃないか……ほら、手」スッ
少女「手、つないで行くの? ……良いけど……本って、これ?」
少年「うん……そう言うの」ギュ
少女「確かに、冒険とかのお話もあるけど……でもね」ギュ
少女「童話の中の王子様は……とても素敵なのよ」
少年「…… ……王子様?」
少女「そう。お姫様が悪いやつに攫われても必ず助けに来てくれる」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年? ……そんなに強く握ったら、痛い」
少年「攫われてからじゃ遅いだろ。俺なら……少女を誰にも渡さない」
少年「絶対に、守るよ」
39 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 16:06:25.86 ID:T6RCdzRQ0
少女「少年……?」
少年「……行こう。昼過ぎたらまた混み出すよ、店」
少女「……ええ …… ……?」
スタスタ、キィ、パタン
少年「ほら、あっち」
スタスタ
少女「そんなに引っ張らないで……」
娼館の女「何だい、アンタ達も来たの?」
少年「ああ、姉さん……うん、誰か降りてきた?」
娼館の女「いや……昨晩、朝方、かな。あそこに止まったきりだって」
娼館の女「まだ誰も……」
少女「……難破した、とかじゃ無い……よね?」
少年「それは……どうなの?」
娼館の女「さあ……アタシは船の事なんかわかんないけど……あ!」
勇者「……魔導師、なんか、あの」
勇者「すっごい人が集まってる、んだけど……」
魔導師「……剣士さんは降りない方が良さそうですね」
少年「男の人と……女の人、だよね?」
娼館の女「女の子の方は若そうだね」
少女「……! あの子……!」
少年「え?」
少女(金色の、瞳……!? ……ううん、見間違い……?)
魔導師「青年さんは、どうします」
青年「……剣士が降りれないんなら、僕が行くしか無いか? ……否」
青年「魔導師が行くのなら、問題ないか。補給の方法とかはわかるか?」
魔導師「剣士さんに一応、一通り教えてもらいましたけど……」
娼館の女「……? あの金髪の男……見た事あるような……?」
少年「え?」
娼館の女「……否、でも……」
少女「お姉さん、知ってる人?」
娼館の女(『魔法使い』の客だった男に似てる……けど)
娼館の女(……あいつだったら、若すぎる……でも)
少年「お姉さん?」
娼館の女「……否、見間違いだろう。年齢があわない」
娼館の女(随分綺麗な顔をした男だったのは覚えてる。けど)
娼館の女(……不公平だね、世の中ってのは)ハァ
少年「あ、こっち向いた……!」
青年「……!?」
青年(少女!? ……否…… ……あれは…… ……!)
魔導師「青年さん?」
40 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 16:15:52.81 ID:T6RCdzRQ0
青年(距離があるから、はっきりとは見えないが……)
青年「……任せて良いなら任せる。僕も何度か出入りしてるからな」
魔導師「え、ええ……まあ、何十年と経ってる訳では無いですからね」
魔導師「そう仰るのなら、かまいませんけど」
青年「……勇者様から離れるなよ。特に用事が無いなら、補給を済ませて発とう」
魔導師「はい」
勇者「…… ……」キョロキョロ
魔導師「勇者様、行きましょうか……貴女と、僕は堂々としていて良いんですから」
勇者「あ、うん……じゃあ、行ってくるね、青年」
青年「ああ」
スタスタ
青年(……遠目だ。見間違い……は、十分にあり得る)
青年(だけど……同じ顔をした、男と女……あれは、多分……)
青年(少女……『魔法使い』の子供……!)
青年(茶の瞳の双子だと言っていた……)
パタン
剣士「何だ、お前も残ったのか」
青年「……ああ」
剣士「まあ、良い……魔導師が表に立つ事が多くなるのは」
剣士「あいつ自身も納得しているだろうしな」
青年「…… ……」
剣士「どうした。疲れが取れないのなら、眠っていれば良い」
青年「それは……別に良い」
剣士「……勇者は、本当に寝かしてくれなかったからな」クス
青年「魔王様の名前を出しちゃったからね……気になってたんだろ」
青年「それでも、聞き終わったら螺旋の切れた玩具みたいに寝ちゃったろ」
剣士「……色んな意味でショックだったんだろう」
青年「…… ……君は休まなくて良いのか。舵も任せっきりだし」
剣士「そもそも俺に、休息や食事の必要があるのかも怪しいんだ」
剣士「……気にするな」
青年「補給がすんだら、またすぐに発つんだぜ? ……数時間は……」
剣士「構わん」
青年「……いろいろ、ショックだったのは君だろう」
剣士「…… ……」
青年「僕たちは『否定する』事に囚われすぎている」
青年「……結局は……あるべき所へと帰結するに過ぎない、と」
青年「言ったのは、剣士自身だ」
剣士「…… ……」
青年「あれから……口数も少ないし」
剣士「……元々だ」
青年「そうか?」
剣士「……ああ」
青年「…… ……」
41 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 16:24:41.42 ID:T6RCdzRQ0
剣士「……お前、話して居ない事があるだろう」
青年「え?」
剣士「エルフの知人……その言葉を、姫がお前に伝えた事も」
剣士「それによって……呪いの完全消去を今の侭では望めない事もわかった」
剣士「……不思議な場所で、お前と魔王と姫が交わした話も聞いた」
剣士「癒し手が……この『世界』から『完全に失われていない』事も」
青年「……何言ってるんだよ。僕は嘘は…… ……」
剣士「嘘をつく事と、黙っている事は違う」
剣士「……寝落ちる寸前の勇者に、他には無いのかと問われ」
剣士「『続きはまた今度』と言ったのが良い証拠では無いのか?」
青年「…… ……」
剣士「はっきり聞こうか。 ……続きが、あるんだろう」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「勇者様には……まだ言えない。魔導師にも、かな」
剣士「……魔導師に言えないのは何故だ」
42 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 16:43:01.19 ID:T6RCdzRQ0
剣士「勇者に言いにくい事、と言うのは……内容の想像がつくわけでは無いが」
剣士「わからんでも無い。あいつは……『魔王にはなりたくない』と言っていたからな」
青年「…… ……」
剣士「だが、魔導師には何故だ?」
青年「……魔導師達が戻れば、すぐに船を出すつもりか?」
剣士「? ……おい、人の話を…… ……」
青年「聞いている。から、問うてる……時間があるのなら」
青年「ちょっと軽く一杯、ね……付き合う?」
剣士「『まあ……良いだろう』」ハァ
青年「昔……言った事、覚えているか?」
剣士「?」
青年「鍛冶師の村でだ……僕と君が『初対面』の時に」
青年「『又一緒に酒を飲もうって約束、してたみたいだ』……って」
剣士「……ああ」
青年「あれは……向こう側の『僕と君』だったのかもしれないな」
剣士「…… ……」
青年「だとすれば、願いは叶った……のかな」
剣士「そうやって……俺たちは、二人で酒を飲んだ……のか」
青年「どうなんだろうね?でもそんな機会は一回ぐらいはあったんじゃない」
青年「魔導師曰く、『向こう側』の僕たちは……僕と君に限った事じゃないみたいだったけど」
青年「友好的じゃ無かったらしいけどね」クス
剣士「……あいつの話じゃ、俺とお前より、魔導師とお前、だろう?」
青年「それすらも否定してるって考えると……おもしろいよね」
剣士「……俺は別に、お前と仲良しこよし、してる自覚は無いが」ムッ
43 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 16:51:45.07 ID:T6RCdzRQ0
青年「睨むなよ……つれないな」
剣士「気持ち悪い事を言うな……だが」
青年「?」
剣士「言った事があるか否かは忘れた、が」
剣士「……俺は、お前が嫌いでは無い」
青年「『知ってるよ……僕もだ。否、むしろ……好きかな?』」
剣士「…… ……」
青年「だから眉間に皺寄せるなって……嬉しい癖に」
剣士「『気持ち悪い事を言うな、と言ってるんだ』」ハァ
青年「『素直じゃ無いなぁ』」
剣士「『そっくりその侭返してやる』」ジロ
青年「『僕? ……僕は素直だよ』」ニコ
青年「………意外」
剣士「お前こそ俺を何だと思ってる」
青年「……言っていいの?」
剣士「………」ジロ
青年「………」ニコ
剣士「お前は……何を知っている?」
青年「『たいしたことじゃ無い。腐った世界の腐った不条理を断ち切るために』」
青年「『尽力したいだけ……母さんの為にも。勇者様の為にも……世界の為にも、ね』」
青年「……だけど、少しばかり……ここが」トン
青年「痛む、んだ……『知ってしまった』から、んだろうけど」
剣士「……意味が分からん」
青年「立ち話はここまでだ……『続きは後で』」
剣士「…… ……」
青年「『だけど……話させてくれ……君にしか、言えない、まだ』」
……
………
…………
44 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 17:06:37.30 ID:T6RCdzRQ0
后「…… ……」
側近「…… ……」
后「…… ……」
側近「……『手が震えている。大丈夫なのか』」
后「『貴方こそ』喋っていて大丈夫なの、側近……『人の事は言えないわよ』」
側近「体力には自信がある『つもりだった……だが……!』」
后「……そうね。体力の問題じゃ無い……私だって……否!」
后「嬉しいのよ。嬉しくて……震えが、止まらないのよ……でもッ」
后「信じがたい話だわ……『癒し手がまだ、失われていないなんて!』」
側近「……想像『もしなかった……できなかった……ッ』」
后「そう、よね……」
側近「……青年は……『喜んだんだろうか』」
后「どうかしらね……でも『私たちは喜ばなくてはいけない』」
側近「『…… ……』」
后「否定しなくては……いえ、否定して行くんだって、決めて……」
后「青年だって、覚悟はしていた筈よ。あの子は……癒し手が風に攫われて消えてしまうのを」
后「……実際に、見ている。だけど『夢の中』で魔王と、姫様にあって……」
后「その覚悟が、揺らいでいる……筈よ」
側近「……会いたいと思うだろう。願うだろうな。俺ですら……!」
后「……考えた筈よ。間に合ってほしい。変わってほしい……でも」
后「そうじゃ無いのよ。一番に思う事は……」
側近「……『もう一度会いたい』…… ……か」
后「それが……『否定する』事を裏切る『事実』に繋がってもね」
后「だけど……心の中までは読めないから」
側近「…… ……」
后「『どうなるかはわからないわ……変わってしまったの事は、それこそ』」
后「『……動かし様のない、事実なのよ』」
側近「何れ、知るさ……俺たちも、あいつらもな」
后「そうね……」
側近「しかし、お前は大丈夫なのか?」
后「ええ……魔王の傍に居るからかしらね」
側近「皮肉だな」
后「こうして、魔王の魔力を借りることで……多分、抑える事にもなっているのよ」
側近「……成る程な」
后「『でも、それが……魔王の、いえ……魔王と癒し手の干渉を』」
后「『妨げる要因になっているかもしれない……のよね』」
側近「……だが、こればかりはどうしようもない。干渉を受け入れ、魔王が」
側近「……自我を持た無い侭、勇者の到着を待たない侭に……目を覚ましてしまったら」
后「…… ……」
側近「腐った世界の腐った不条理を断ち切る、唯一の亀裂」
后「そう、前代未聞の特異点……『本当に』間に合わなかった時の、為に」
側近「……ああ。会いたい。変えたい……断ち切りたいを、一緒くたには出来ん……」
側近「『魔王を押さえない』選択肢は……選べない」
側近「癒し手の存在で……歪んだ運命の輪……か」
側近「まだ、大丈夫だ……『希望が見えた』」
后「『会えるかもしれない?』」
側近「『……俺には、複雑な事はわからないが』」
后「癒し手……いいえ。『完全に失われて居ないのなら』……ギリギリ……まで……『待つわ』!」
側近「癒し手……無事で、居てくれ……!」
45 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 17:17:28.97 ID:T6RCdzRQ0
……
………
…………
少女「……綺麗な、人だったわね」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年、痛いって……あ! 降りてきたわよ」
少年「!」
少年(……さっきの、あの金髪の男は……居ない)ホッ
少女「! 見て、少年……あの人、やっぱり……!」
少年「?」
娼館の女「……金の瞳? ……まさか、勇者様!?」
少年「!? 勇者……様!?」バッ
少年(まさか……ッ)
勇者「……本当に、凄い人なんだけど」
魔導師「そこはにこって笑って、手を振るんですよ」
勇者「…… ……」ニコッ
魔導師「……引きつってますけど」
勇者「無茶言わないでよ……!」
ワアアアアアアアアアアア!
ユウシャサマ……ユウシャサマダ!
ワアアア! キャア!キャア!
勇者「……うえぇええ、勘弁してよ」
魔導師「慣れてください、って前にも言ったでしょう」
魔導師「『特別』なんです……『勇者』ですから」
勇者「…… ……」
少女「……勇者、様」
少年(よりによって、勇者様の船だって……!? 糞、これじゃ……)
少年(いや……待て。違う……思った以上に、ラッキーなのかもしれない)
少年(相手は……『世界を救う勇者様』だ)
少年(……俺たちの事も……見捨てる筈は無い……!)
少女「見て、少年……あんなに、綺麗な瞳をしてる」
少年「え? ……あ、ああ……うん」
娼館の女「……はあ、あんな小さな子が、勇者様…… ……」
46 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 17:25:18.59 ID:T6RCdzRQ0
娼館の女「しかも……女の子、ねぇ……」ハァ
少年「お姉さん、あの隣の男は?」
娼館の女「え? ……なんだってアタシに聞くの」
少年「え、だって……さっきの、金髪の……」
娼館の女「……ああ、ありゃ見間違いだってば。それに……アンタ、まさか」
娼館の女「勇者様のお供が、アタシらを買いに来ると思うかい?」
少女「…… ……」
娼館の女「そんな顔しないの、少女……職業に貴賎はどうとか、そんな話じゃ無くて」
娼館の女「女の子のお供、が……娼館に行ってきます、とは言わないだろうって事さ」
少女「……うん」
少年「…… ……」
娼館の女「あーぁ、残念だけど今回ばっかりは期待は出来ないね」
娼館の女「見栄ばっかりの客共も、まさか勇者様滞在中に、ほいほいと」
娼館の女「娼館には足は運ばないだろうし……しばらく閑古鳥かもね」フワァ
娼館の女「あァ、帰って寝よう……あんた達も程ほどにして戻りなさいよ」
スタスタ
少女「少年、私たちも…… ……少年?」
少年「あ ……ッ う、うん……そうだね」
少女「……? どうしたの」
少年「何でも無いよ……もう少し、だけ」
少女「? ……あ、勇者様、こっちに……」
少女(……少年、じっと勇者様を見てる…… ……どうしたのかしら)
スタスタ
魔導師「あの、すみません」
少女「は、はい!」
少年「! ……な、なんだよ!」
少女「少年! ……すみません」ペコ
魔導師「ああ、いえいえ……あの。船の補給をしたいんですが」
魔導師「どなたに聞けばよろしいか……わかります?」
47 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 17:52:10.52 ID:T6RCdzRQ0
少年「ここは港なんだから、それらしい男に声かけたら教えてもらえるよ」
魔導師「そうですか……ありがとうございます」
少女「少年……?」
勇者「……同じ顔してるね。双子?」
少女「あ……はい」
勇者「瞳の色まで一緒なんだね……ええと、茶色って事は……」
魔導師「雷の加護を受ける事が多い…… ……です、ね …… ……!?」
魔導師(雷の加護…… ……双子?)
魔導師「…… ……」ジィ
少年「な、何だよ」
勇者「雷かぁ……ん、魔導師、どうしたの?」
魔導師「い、いいえ……」
魔導師(……勇者様の前で……名前を出すわけには……)
少女「お兄さん、魔導師さん、って言うのね」
魔導師「え? ……ああ、はい」
少女「で……勇者様は……」
勇者「私? ……私は勇者。貴女達は?」
少女「私は少女……こっちは、少年です」
魔導師「!」
魔導師(……やっぱり……!)
少年「補給……の為に寄った、のか」
勇者「え? ああ、うん……済んだらすぐに出るんだっけ?」
魔導師「え……ああ、いえ……勇者様が望まれるなら、一通り街を回りますか?」
勇者「んん……青年達がどういうか……」
魔導師「別に反対はしないと思いますけど」
勇者「まあ、どっちにしても一回戻らないと、だよね」
少年「……案内、してやろうか?」
少女「少年?」
少年「お姉さんも言ってただろ……この分じゃ暇だ、って」
魔導師(接触……を、拒むべきか否か……しかし……)
勇者「お姉さんがいるの?」
少女「あ、いえ……その」
魔導師「……どちらにせよ、貴女達も許可を取らなければいけないでしょう?」
少年「え?」
魔導師「その『お姉さん』のですよ」
少年「あ……うん、それは、まあ」
少女「少年……本気なの?」
魔導師「僕たちも、船に仲間が居ますから。貴女達に案内をお願いするにしても」
魔導師「連絡しておかなければなりません」
勇者「そうだね。もし君たちの保護者の許可がおりたら、お願いしようかな」
魔導師「…… ……」
勇者「駄目?」
魔導師「……いえ。勇者様がそう言うのであれば、僕は構いません」
魔導師(まさか……娼館に連れて行かれる訳では無いだろう)
魔導師(……多分この子達の言うお姉さん、は……あそこで働く人達)
魔導師(『少女』さん、の子であるのなら、確実に……)
48 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 18:00:46.68 ID:T6RCdzRQ0
少女「勇者、様……の、仲間って」
少女「さっきの……金髪の男の人のこと?」
勇者「え? ああ。そうだよ……彼は……」
少年「…… ……」
少年(……少女……そんなに、あの金髪の男が気になるのか?)
魔導師「勇者様。先に用事を済ませてしまいましょう」
魔導師「案内をお願いするにしても、それほどゆっくりする訳じゃ無いんですから」
勇者「あ……そうだね」
少年「どれぐらいかかるんだ?」
魔導師「そ……うですね。補給をお願いして、伝えて……戻るのに」
魔導師「小一時間もあれば」
少女「わかったわ……行こう、少年」
少年「あ、ああ」
少女「一時間後に、ここで良いですか?」
魔導師「はい……構いません。駄目だと言われた時は、無理はしないでくださいね」
魔導師「……僕たちも、そうしますから」
少年「わかった」
魔導師「では、行きましょう勇者様」
勇者「あ、うん……じゃあ、後でね!」
スタスタ
魔導師「……嬉しそう、ですよね?」
勇者「え? ……だって、初めてでしょ、港街」
魔導師「小さい頃に来てますよ」
勇者「そうだっけ?」
魔導師「……まあ、覚えて無くても無理は無いですが」
49 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 18:11:52.40 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「船を下りたとき……『お帰りなさい、勇者様』って」
魔導師「誰かの声、聞こえませんでした?」
勇者「あ……そういえば。でも、さ」
魔導師「はい?」
勇者「……始まりの国が焼けてしまったと時、私は行方不明……みたいに」
勇者「なってたんでしょ? だから…… ……かと思って」
魔導師「そうだったら、あんな簡単に着岸許可降りませんよ」
魔導師「目印の為に、甲板にいてもらったんですから」
勇者「……あ、そうか。私の瞳の色を見ればわかる……か」
魔導師「そういうことです」
勇者「……なるほどね」
魔導師「あ、あの人で良いかな……すみませーん」
勇者(双子、かあ……同じ顔してたな、あの子達)
勇者(凄いなぁ……性別違うのに、あれだけ似るんだ……あ、でも)
勇者(そんな事言っちゃえば、私も……父さんも、おじいちゃんも、か)
勇者(…… ……よく考えれば、剣士も、だ)クス
勇者(仲よさそうだったな……少女と、少年…… ……ん?)
勇者(少女、って…… ……何処かで聞いた事ある名前……?)
勇者(まあ……良いか。でも…… ……キョウダイ、って良いな)
勇者(魔導師も、青年も剣士も、お兄さんみたいだけど……でも)
勇者(魔導師以外は、見た目、変わらないからなぁ……)
魔導師「勇者様!」
勇者「ん、はいはい?」
魔導師「補給はしてくださるそうですが、夕刻以降になりそうですね」
魔導師「出航出来るのは」
勇者「まあ、時間できて丁度良いじゃない。買い物もしたいし」
魔導師「……その分、あの二人は船に缶詰になりますけどね」
勇者「青年も降りてこないのかな」
魔導師「…… ……こないでしょうね。まあ、それに、ほら」
魔導師「勇者様が本当に寝かさないから、昨夜」ハァ
勇者「……気になっちゃったんだもん」
魔導師「とりあえず、伝えに行きましょう」
勇者「夕刻かぁ……言うほど時間無いよね」
魔導師「まあ、実際の出発は朝になるでしょうね」
勇者「……船で寝るのは慣れたけど。たまには暖かい布団で寝たいよね」ハァ
魔導師「わがまま言っちゃいけません……降りれるだけ、あの二人よりは」
魔導師「恵まれてるんですからね」
勇者「はぁい……」
……
………
…………
50 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 18:24:28.05 ID:T6RCdzRQ0
館長「まあ……別に構わないけど」
少女「本当に!?」
老婆「……良いのかい?」
少年「…… ……」
館長「どうせあの船が出て行くまで、暇には違い無いよ」ハァ
館長「……男共のくだらないプライドが、世界を救う勇者様の登場にゃ勝てるとは思わないよ」
館長「事実、キャンセルの知らせがすでに数件来てんだ」
老婆「まあ、ねぇ……だけど」
館長「……いいさ。言っておいで。ただし、門限は守る事」
少年「わかってるよ」
少女「ありがとう、館長さん! ……行こう、少年!」
少年「ちょ……ッ 少女、引っ張らないでよ!?」
スタスタ、パタン!
老婆「……良いのかい」
館長「かまやしないさ……それに、考えてみな」
館長「あの二人は、一日休みをやったって、二人で部屋にこもって出て行かないんだ」
老婆「……少女が出たがらないからだろ」
館長「目立ちたくないんだろう、ね……良い機会だよ」
館長「勇者様ご一行がどう思ってるか、は知らないが」
館長「この街に住むやつらは、あの双子がここの小姓だって知ってる人間がほとんどさ」
館長「……あの子達、本当に『魔法使い』にそっくりだからね」
老婆「? ……それが、何か?」
館長「『勇者』って目立つ存在が側にいるんだ……霞むわけで無く」
館長「自分たちにも、視線が集まる事をわかっちゃ居ない」
老婆「ああ……アタシが心配してるのはそれじゃ無くてね」ハァ
館長「何だい?」
老婆「少年だよ……いや、乗り気なのは少女の方に見えたけど」
老婆「……でも、少年は……少女を連れて逃げだそうって企んでんじゃないかってね」
館長「ああ、何だ……そんな事かい。だったら余計に心配いらないさ」
老婆「え?」
館長「確かに『世界を救う勇者様』の船だ。でもね。だからこそ……」
館長「……勇者が必要な時代に、訳ありだろうたかだかガキ二人を」
館長「保護なんてすると思うかい? ……そりゃ、この後どこに向かうかなんて知らないけど」
館長「関わりあってる暇なんて、無いだろうよ?」
老婆「……ああ、なるほど」
館長「本気で、ここから逃げ出したいって洗いざらいぶちまけるなら尚更さ」
館長「……自立なんて出来ないガキを、どこの街で下ろすってんだい?」
老婆「『勇者』である以上……中途半端は出来ない、ね」
館長「そういうこと……少年の思惑通りには行かないさ」
51 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/10(火) 18:25:33.95 ID:T6RCdzRQ0
お風呂とご飯!
またです!
怒涛の更新乙!!
スコーン乙!!
体には気をつけて!
はやく落ち着けるといいね
54 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/11(水) 02:59:21.95 ID:h5xMtH0xO
スコーンちゃん、無理しないでね
保守ageします
ごめんなさい
☆
56 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/11(水) 08:54:35.52 ID:C/IGAgvW0
ほ
57 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 10:46:10.85 ID:MVM9/cl00
おはよう!
今日はお昼ご飯食べてこれたら!
うおぉぉぉぉ
楽しみに待ってます
でも、無理はなさらぬよう
59 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 15:14:10.61 ID:MVM9/cl00
館長「まあ……脱走したところで、咎める権利も無いんだけどね、アタシらにゃ」
老婆「ん? ……まあ、ね」
館長「借金で縛り付けてる訳でも無い……部屋を貸してやっているだけだ」
館長「あいつらを食わしてやってるのは『魔法使い』への敬意もある」
館長「……あの子はよく働いてくれたからね」
館長「可愛い娘……『商品』への感謝の意でもある、と……言ったところでね」
館長「あの子達が、理解できるとも思えないよ」
老婆「……どうしたんだい。随分殊勝じゃないか」
館長「悪者になるつもりは無いよ。どう思われてるかは知らないけど」
館長「嘘じゃないだろう? ……気持ちは、ね」
老婆「……まあ、ね」
館長「そりゃ、少女や、少年が……大きくなってこの店で稼いで」
館長「金を納めてくれりゃ、言う事は無い」
館長「今ここで小姓として働かせて、給料もやってる。先行投資と言われりゃ」
館長「否定もしないよ」
老婆「……だが、少年はいつかやらかすよ。そんときゃ」
老婆「少女も同時に失う」
館長「……今回の事で、学んでくれりゃ良いけどね。何、簡単な話だろう?」
60 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 15:32:54.05 ID:MVM9/cl00
館長「『お世話になりました』って一言いって、頭下げて出てきゃいいのさ」
老婆「まあ……そりゃ」
館長「それすら考えつかない糞ガキの脳みそじゃ、くだらない少年の」
館長「『企み』も……『大人』にゃ通用しない」
老婆「余計意固地にならなきゃ良いがね」ハァ
館長「……そんな考えじゃ、どこに行ったって通用しやしないよ」
館長「ここから『外』に出て、生きていけるはずも無い」
館長「……苦労するなら『外』じゃなく、この腕の中にいる間にすりゃあいんだよ」
館長「そうすりゃ、安心して放り出してやれるってのに、全く……」ハァ
……
………
…………
青年「港街の案内、ねぇ」
勇者「……駄目?」
剣士「勇者がそうしたいと言うのなら反対する理由も無い……だろう?」
青年「まあ、そうだけど……」
勇者「補給が終了するの、夕刻過ぎなんだよね?」
魔導師「え? ……ええ、そうです」
青年「…… ……?」
勇者「夜は出航出来ないだろうし、出来れば、さ……」
勇者「……一泊、してきちゃ駄目かなぁ?」
青年「何、そんなに魔導師と一夜を過ごしたいの」
魔導師「…… ……」
勇者「せ、青年!!」
剣士「…… ……」ハァ
青年(……? 何ぼうっとしてるんだ、魔導師の奴)
青年(普段なら怒号が飛んでくるってのに)
勇者「どうして青年は、いっつもそういう事ばっかり言うわけ!?」
勇者「ねえ、魔導師も何か…… ……魔導師?」
魔導師「あ、はい!?」
勇者「……どうしたの。眉間に皺寄ってる。青年みたいだよ」
青年「……あのね、勇者様?」
魔導師「す、すみません、ちょっと考え事を……」
剣士「……次は書の街に行くんだろう?」
勇者「あ……うん、そのつもりだけど」
剣士「……俺は構わん。のんびりする時間も、残り少ないだろう」
剣士「ただし明日の朝一で出る。それまでには必ず戻れ」
勇者「あ……ありがとう、剣士!」
青年「やれやれ……仕方ないね。魔導師、勇者様を頼んだよ」
青年「まだ子供なんだから、手を出すなら考えてからにしろよ」
勇者「せーいーねー……ッ」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「はい」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者「……魔導師?」
魔導師「…… ……あ、はい!?」
61 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 15:46:37.97 ID:MVM9/cl00
青年「……ちょっと、こっち来い」ガシ、ズルズル
魔導師「え、ちょ……な、何ですか!?」
ズルズル、スタスタ、パタン
勇者「……ど、どうしちゃったの、魔導師……」
剣士「何かあったのか?」
勇者「え? ……ううん、別に……無いと思う、んだけど……」
剣士「……そうか」
勇者「さっきも言ったとおりだよ。街であった子達が、案内してくれるって」
勇者「言うから、さ」
剣士「それだけ、か?」
勇者「と、思うよ……? 別に、私達の事知ってる……いや、そりゃ」
勇者「私は『勇者』だから……知ってるだろうけど、さ」
勇者「初めて来る街じゃ無いって魔導師は言ってたけど」
勇者「私は……覚えてないからさ」
剣士「……まあ、そうだな」
勇者「でもね、綺麗な顔した双子ちゃんだったよ」
剣士「……双子?」
勇者「何かさ、ほら……剣士も青年も、魔導師も、えっと……お兄ちゃん、みたいだし」
勇者「自分より幼い子、と一緒に居る事って無いから……ちょっと、嬉しくて……」
剣士「…… ……」
勇者「剣士?」
剣士「……名は聞いたのか?」
勇者「え? ああ、うん。少年と少女だって」
剣士「!」
勇者「茶色い瞳って初めて見た。雷の魔法は、剣士の魔法剣で見慣れてるけどさ」
剣士(……あの態度の理由はそれか)ハァ
キィ、パタン
魔導師「……ごめんなさい、お待たせしました」
勇者「あ……うん」
青年「勇者様、何かちょっと魔導師調子悪いみたいだし」
青年「あんまり無理させちゃ駄目だよ」
勇者「え……大丈夫!?」
62 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:01:39.31 ID:MVM9/cl00
魔導師「平気です……すみませんでした」
青年「勇者様」
勇者「ん?」
青年「魔導師にも言ったけど……いくつか、約束してほしい事がある」
勇者「え、うん……な、何?」
青年「僕と剣士は船を下りれないから、魔導師に任せる事になるけど」
青年「宿屋では一つの部屋で寝る事」
勇者「え!?」
青年「変な意味じゃ無くて……君を守るためだ」
勇者「……う、うん」
青年「同じベッドにするかどうかは任せるけどね」
勇者「ちょ……ッ」カァ
青年「それから……無闇に頼み事は聞かない事」
勇者「……ん?」
青年「確かに僕たちは『世界を救うために魔王を倒す旅』の途中だ」
青年「だけど、時間があるとは言えない。だから」
青年「……要するに、妙な事に巻き込まれないでくれよ、って事だ」
勇者「だ、大丈夫だよ……」
青年「最後は、僕と剣士の事は口にしない事……船に仲間が居る、ってのは」
青年「良いけど、それ以上の情報開示は厳禁だ……理由はわかるよね?」
勇者「……うん」
魔導師「僕たちはあくまでも、補給の為にこの港街に寄っただけ、何です」
魔導師「それを……わかってくださってれば、大丈夫ですよ」
剣士「……朝には戻れよ」
魔導師「わかっています……すみません、わがまま聞いていただいて」
青年「勇者様だからね……仕方ない」
魔導師「……そろそろ約束の時間ですね。行きましょうか」
勇者「あ、うん! ……ごめんね、ありがとう!」
スタスタ、パタン!
剣士「……嬉しいんだろう。単純に」
青年「ん?」
剣士「さっき言っていた。自分より幼い者に触れる機会など無かったから、とな」
青年「……わからなくも無いが。よりに寄って……」ハァ
剣士「少女と少年…… ……『少女』の子供達か」
青年「…… ……」
剣士「勇者様は何の疑いも持っていない」
青年「そりゃわかってる……覚えてないだろうよ」
剣士「……魔導師にも口止めしたんだろう、お前の事だ」
青年「するまでも無いでしょ……じゃなきゃ、あんなにぼうっとしないって」
青年「あいつもさっさと言えば良い物を」ハァ
剣士「責めるのは間違えてるだろう……俺たちが降りられない以上」
剣士「あいつは常に勇者と行動を共にするんだ」
63 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:19:20.14 ID:MVM9/cl00
青年「……『魔法使い』と言う名前だけはくれぐれも口にするな、とは」
青年「言ったけど……」
剣士「……言われなくとも、だろう。しかし」
剣士「向こう二人はわからんぞ」
青年「彼らが……って、そりゃどんな子になってんだか知らないけど」
青年「それを口にするとすれば余程だろう。だから先手を打ったんだ」
剣士「……『頼み事』な」
青年「僕の杞憂に終われば良いけどね」
剣士「お前も過保護だな」
青年「……無くなってしまった国の事に、何時までも振り回されたく無い」
剣士「お前は……『王』だろう?」
青年「……再建させる気なんか無いよ。曾御祖母様程、人の事まで考えてなんか」
青年「いられないよ。僕は」
剣士「……少し休んでこい、青年。飲みに出るとしても深夜過ぎだろう」
青年「……寂しく無い?」
剣士「ぶん殴られたくなければ早くいけ」ハァ
青年「はいはい……何かあったら呼んでくれよ」
剣士「……ああ」
……
………
…………
少女「あ……勇者様、魔導師……さん」
魔導師「お待たせしました……いかがでしたか?」
少年「ああ、あんた達が良いなら、案内できるよ」
勇者「本当!? 良かった」
少女「……あの、お二人、ですか?」
魔導師「……ええ。船を無人にするわけにはいきませんので」
少女「そう……ですか」フゥ
少年「…… ……」
勇者「えっと、まず……宿に案内してもらえないかな?」
少女「宿……ですか? でも……」
魔導師「ええ。夜に出航は出来ませんから……」
少年「……明日の朝、発つのか」
魔導師「はい。その予定ですよ」
64 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:29:22.86 ID:MVM9/cl00
勇者「あ! あっちで何か売ってる!」
タタタ……
魔導師「あ、勇者様!?」
少女「……子供みたい」クス
少女「一緒に行ってきます。あそこのクレープおいしいんです」
タタタ
魔導師「……小さな子に子供みたい、て言われる勇者ってのもどうなんでしょうかね」ハァ
少年「宿も丁度あっちだ……俺たちも行こう」
魔導師「貴方はクレープ、食べないんです?」
少年「……俺は、良いよ」グゥ
少年「…… ……」カァッ
魔導師「僕も甘い物は好きなんですよ。行きましょう」クス
スタスタ
勇者「まろうひ!おいひいお、こえ!」モグモグ
魔導師「……勇者様、お姉さんなんですから」ハァ
少年「少女は何にしたんだ?」
少女「あ……私は……」
魔導師「貴女達も遠慮なさらずにどうぞ。案内のお礼にごちそうしますよ」
魔導師「僕は……チョコとイチゴで」
少年「……俺、ポテトサラダ」
勇者「あ、それもおいひほう」モグ
少女「良いんですか? ……じゃあ、私はブルーべーリーソースの……」
勇者「凄いよねぇ、人一杯」
魔導師「人気なんですね。前に来たときはこんなのあったかな……あ、おいし」モグ
少年「あの角の建物が宿だ」
魔導師「ああ……じゃあ、ちょっと先に予約してきましょうか」
勇者「待ってて良い?」
魔導師「……動かないでくださいよ?」
スタスタ
少年「……なあ、勇者さ」
少女「勇者様!」
勇者「はい?」
少年「!」
65 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:50:10.64 ID:MVM9/cl00
少女「……あの、船にいらっしゃった……金髪の、男の方、は」
勇者「?」
少女「お仲間、様なんですよね?」
勇者(青年の事か……そういえばちらっと甲板に出てたな)
勇者「それがどうしたの?」
少女「……いえ。綺麗な人だったな、と思ったので」
少年「…… ……」ムス
勇者「まあ……確かに、綺麗な顔してる、けど」
勇者「……エロいよ?」
少年「は!?」
少女「え……ッ」カァ
勇者「……あ、ごめん。子供に言うことじゃ無かった」
スタスタ
魔導師「お待たせしました」
勇者「部屋、取れた?」
魔導師「ええ……一部屋だけあいてました」
少女「え……どうするんですか」
魔導師「ああ……大丈夫ですよ、ベッドは二つですから」
少年「同じ部屋で寝るのか!?」
勇者「…… ……」ドキ
魔導師「この方は『勇者』様ですから……目を離す訳にはいきません」
魔導師「ですから、問題はありません。ね?」
勇者「う、うん……さ、さあ!次行こう次!」ドキドキ
魔導師「……急に大きな声出さないでください」
少女「あ、えっと……少年、どこから行こう?」
少年「そうだな、市場の方に……」
魔導師「……教会跡、にもう……建物は建ったんでしょうね」
少女「教会?」
魔導師「ええ……あっちの、街の外れの小さな丘の……」
少年「…… ……」ドキ
少女「あ……あそこは、そうです。今は、大きな建物が……」
魔導師「……そうですか」
勇者「魔導師、知ってるの?」
魔導師「僕は来た事ありますからね……いえ、良いんです」
魔導師「市場の方へ案内してもらえますか? 勇者様、無駄遣いは駄目ですからね」
魔導師「……先に言っておきます」
勇者「……わ、わかってますよーだ!」
少年「市場はあっちだよ。行こうか」
少女「私も何か買おうかな……折角だし」
スタスタ
魔導師「お土産にお酒でも買っていきましょうか」
勇者「魔導師も飲むの」
魔導師「……僕はもう、お酒は良いです」
勇者「…… ……」クスクス
66 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:55:14.50 ID:MVM9/cl00
スタスタ
少女「…… ……」
少女(教会、があったんだ……あの、建物のあった場所)
少女(……お母さんは知ってたのかな)チラ
少年「…… ……」
少年(行きたい、って言われなくて良かった。魔導師の方は)
少年(この街の事知ってるみたいだし……)チラ
少女(それにしても……残念。もう一度、会えるかもって思ったけど)
少女(……そんなに甘くないわね。あの……金髪の男の人)
少年(勇者に言うべきか、魔導師に言うべきか……でも)
少年(保護者で、決定権を持ってるのは魔導師の方か)
少女(少年は……嫌そうな顔してた。あの男の人の事、口にすると……)ジィ
少年(少女は……嫌な顔するだろうな。俺の考えてる事、口にすると……)ジィ
少女(まるで、童話に出てくる王子様みたいだった……どうにか)
少年(宿に帰るまでが勝負か……どうにか)
少女(少年に聞かれないように……どうにか、勇者様とどこかで、二人きりに……!)
少年(少女に聞かれないように……どうにか、魔導師とどこかで、二人きりに……!)
少女「…… ……」ニコ
少年「…… ……」ニコ
勇者「あ! 魔導師、ほら! 何か杖みたいなの……」
魔導師「いりませんって……使いませんから」
少女(並んで歩くって手が良いかな。今の私と少年の様に)
少年(並んで歩くって手が良いか……今の俺と少女の様に)
……
………
…………
67 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 16:56:23.12 ID:MVM9/cl00
訂正
↑の
……
………
…………
は、無しで orz
68 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 17:32:39.39 ID:MVM9/cl00
少女「……ねえ、勇者様」ピタ、クルッ
少年「……なあ、魔導師」ピタ、クルッ
魔導師「はい?」
勇者「ん?」
少女「あの露天の髪飾り、勇者様に似合いそうですよ」ギュ
少年「この魔導書、俺でも読めるかな?」ギュ
ズルズル、ズルズル
勇者「え、わ……ッ と……あ、本当だ、可愛い」
魔導師「ちょ、ちょっと待ってください……ええと」
少女(道を挟んで反対側。姿が見えれば心配もしないでしょう)
少年(人通りが多い場所だ。小さい声までは聞こえないだろう)
勇者「へぇ、可愛いの一杯あるなぁ」
少女「ね……勇者様の髪の色だったら……これも良いかな」
魔導師「……ふむ。初級魔法の本ですかね。字は読めます……よね?」
少年「馬鹿にすんなよ……魔法の知識はあんまり無いんだけどさ」
少女「これも……ああ、でもこれだったら、金髪とかに似合いそう」
勇者「私こっちの方が好きかな」
少女「……ねえ、勇者様」
少年「魔法自体は使えるんだけど……ここには誰も教えてくれる人なんかいないからさ」
魔導師「そうですね。それほど高価な本でもありませんし……」
少年「……なあ、魔導師サン」
少女「あの金の髪の人……に、会う事は出来ませんか?」
勇者「…… ……は?」
少年「勇者様が寝てからで良い……抜け出してくるから、二人で会えないか?」
魔導師「…… ……は?」
……
………
…………
青年「とりあえず、乾杯!」
剣士「……ああ」
69 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 17:44:14.50 ID:MVM9/cl00
青年「で……言っていいの?」
剣士「……先に聞きたい事がある」
青年「そう……何?」
剣士「……お前は『本当はどう思ってるんだ?』」
青年「『? ……何をだよ』」
剣士「勇者様の事だ」
青年「…… ……」
剣士「何故……黙る」
青年「僕が……君に話そうと思っていた事に関係があるから……かな」
青年「否……だから、びっくりした、が。黙った事への答え……か」
剣士「……お前、最近執拗に勇者に、魔導師を意識させようとしていただろう」
青年「剣士は見てて何とも思わないのか? 勇者様は……」
剣士「……魔導師に惹かれているだろう事は、わかる。だが」
剣士「アレは、『兄』に対する憧れと大差ない様な気……も、するが」
青年「『も』って事は、少しは認めるって事だろ」
剣士「…… ……」
青年「それに『兄への憧れ』って言うなら、僕にでも剣士にでも……」
剣士「……条件的には当てはまる、が……それだけだろう」
剣士「俺たちは見た目も変わらない……勿論、常に一緒に居るんだ」
剣士「見た目の変化など……あまりわからないのかもしれんが……」
青年「……一番厳しいのも、一番優しいのも……一番、過保護なのも魔導師さ」
青年「『人間同士』……一番身近に向き合える。淡い感情を抱くには」
青年「もってこいの相手だと思うよ」
剣士「……で、お前が話したかった。魔導師にも勇者にも言えない話、てのは」
剣士「そんな、お前の勇者への淡い恋心の相談、とかじゃ無い……だろうな」
青年「……自分から聞いといてそりゃないだろう、お前……」
剣士「お前の下世話な台詞には慣れたが、最近は少し目に余るからだ」
剣士「……勇者と言えど、年頃の娘だぞ」
青年「さっきのは訂正する。君は兄では無く父、みたいだな」ハァ
剣士「……赤ん坊の頃から見ていれば、そんな心境にもなる」
青年「僕だって似たようなモン、だって……自分に父性なんてあるとは思えないけど」
青年「勇者様に対して、そんな風に……淡い恋心、なんて抱きようが無い」
剣士「……だが、その『話せない話』には関係するんだろう」
70 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 17:54:23.62 ID:MVM9/cl00
青年「エルフは嘘をつけない……言ったとおりさ」
青年「母がハーフエルフ。父は人間……『否、元人間の魔族で……』僕は、僕」
剣士「『勇者も魔導師も、お前を』疑って『も居ないだろう』」
剣士「知っていて言わないのは嘘を吐く内には入らないだろう『し、気がついているとも思わん』」
青年「……何れ知るさ『、わかってる……何時までも黙っているつもりは無いんだ』」
剣士「何を『聞いたんだ? ……魔王に。姫に』」
青年「『彼ら……否、勇者様は確実に』今聞いたって、混乱するだけだ」
青年「……君は信じない、とは思わない『。だから……先に話そうと思った』」
青年「勇者様と魔導師には言えないな……まだ」
剣士「まだ……?」
青年「ああ、まだ……ね。言ってるだろう。何れ知るんだ」
青年「『腐った世界の腐った不条理が、断ち切れない限り』」
剣士「…… ……」
青年「僕からも質問だ」
剣士「……何だ」
青年「君は、何者だい?」
剣士「『今更なんだ? ……俺は、紫の魔王の欠片だろう』」
青年「…… ……」
剣士「分かっているんじゃ無いのか?」
青年「推測に過ぎない……何時か確かめようとは思ってい『る』」
剣士「『何の話…… ……』」
青年「『姫様は、あの場所で……魔王様の事も『欠片』と呼んでいた』」
剣士「!」
青年「『以前に港街に来た時に話した話を覚えているか?』」
剣士「……? どれ、の事だ」
青年「『だんだんと劣化してるんじゃないか、って話さ』」
青年「君は……『君も、魔王の欠片』だろう?」
剣士「『……何が言いたいんだ』」
71 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 18:04:38.61 ID:MVM9/cl00
青年「……劣化、の原因だよ」
青年「元は……『紫の魔王』だ。それが、『紫の魔王の側近』に目玉を分け与え」
青年「『残りの紫の魔王』も『器と中身』に別れた……そして『欠片』……君だな」
剣士「…… ……」
青年「紫の魔王が、使用人に残したキーワード……すべてを集めれば」
青年「『劣化した者』は『完全な者』になる」
剣士「……理屈は、理解できる。だが」
剣士「それは、お前の話に……何か関係があるのか?」
青年「……魔王様は、姫様と僕が居た場所とは、また違うところにいたんだと」
青年「話しただろう?」
剣士「ああ……癒し手も居たんだな。金の髪の魔王……も」
青年「ああ……それから、もう一人」
剣士「もう一人……?」
青年「『金髪紫瞳の男』……彼は……ああ、っと。便宜上『向こう側』って言うけど」
青年「……向こう側では、勇者様と……僕、の子供だったらしいんだ」
剣士「! ……い、否、まあ……『終わらなかった』のだとすれば」
剣士「……わからん話では無い。向こう側で俺は…… ……消滅している」
剣士「し……そもそも、生殖能力等……」
青年「……まあ、こんな言い方するのもあれだけど」
青年「勇者様から見れば、僕か魔導師の二択だからね」
剣士「……そ、うか」
青年「ここで終われば、彼は……存在しなかった事になる……否、それ自身は良い」
青年「……と言うか、彼の人権まで話し出したらどうにも収集つかないな」
剣士「…… ……」
青年「……もし、こちら側で同じ轍を踏めば、だ」
剣士「? ……ああ。別に……それは構わないだろう」
剣士「……『終わらない』と言う結末があるだろう事は……あまり考えたくは無いが」
青年「違う! ……『金髪紫瞳の男』は ……絶対に魔王にはならない……なれないんだ」
剣士「……何故だ」
青年「……僕は、何だよ」
剣士「お前は、エルフの…… ……ッ」ハッ
青年「そうだ。エルフは……魔には変じられない」
72 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 18:15:11.09 ID:MVM9/cl00
剣士「……まて。勇者は人間として生まれてくるんだろう。ならば……」
青年「絶対……と言ったが、勿論……わからない、けどな」
青年「だが、彼は魔王にはなっていない」
剣士「……何?」
青年「倒したんだよ……『最強の女魔王』を」
剣士「!」
青年「僕だって詳しく隅々まで話を聞いたわけじゃ無い……だけど」
青年「彼は……最後の最後、光を世界に解放し……魔王を滅ぼした」
青年「……そう、魔王様から聞いた」
剣士「…… ……」
青年「絡繰りなんてわからない。それが、正解なのかどうなのかも。ただ……」
青年「……もし。もし僕たちが終わらなければ。その時は……そのとき、こそ」
青年「僕は……否定しなければならないんだ……!」
剣士「…… ……大筋は、理解した。だが」
剣士「何故……お前が悩む必要がある?」
青年「え……」
剣士「……その『金髪紫瞳の男』の身を案じる気持ち、があるか否かはともかくとして、だ」
剣士「実際……勇者の気持ちが、憧れであれ恋であれ」
剣士「……魔導師に向いているのは、確かだ」
青年「……あ、ああ。わかってる」
剣士「今の侭ぐいぐい押してうまくいくかは知らん。が……」
剣士「……まあ、言い方は悪い、が」ハァ
剣士「勇者が魔導師を子供の父親に『指名』すれば」
青年「…… ……ッ」
剣士「……あいつは、拒む事はしないだろう。事実……『向こう側』とは違う」
剣士「向こう側の魔導師は……16やそこらの子供だっただろうが」
剣士「勇者が16になる頃……には、あいつは20も超えている……とっくに」
青年「…… ……」
剣士「お前が言ったんだろう。終わってしまえば『人間同士』」
剣士「そうで無くとも……『魔族同士』だ」
青年「…… ……」グイッ ゴクゴク…… ゴホッ
剣士「…… ……」
剣士(……本当に恋愛相談だったとか、勘弁してほしい)ハァ
青年「何でため息つくんだよ」
剣士「……酔っ払ったお前を抱えて帰るのはごめんだ、と思っただけだ」
73 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 18:15:43.68 ID:MVM9/cl00
お風呂とご飯!
明日はお出かけします。時間があれば!
74 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/11(水) 18:33:08.42 ID:C/IGAgvW0
乙〜
75 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 23:01:40.41 ID:MVM9/cl00
青年「……僕たちは『否定』するんだ。徹底的にね」ヒック……ゴク
剣士「おい、もう……やめておけ」
青年「そう言ったのは君だ、剣士」
剣士「? 何の話……」
青年「『紫の魔王の側近』『使用人』……そして、僕」
青年「魔導師は、素質を持つのはその三人だと行っていたはずだ」
剣士「……劣化がどうの、の話をした時か? ああ……確かに……」
青年「共通点は?」
剣士「?」
青年「だから、お前が言ったんだぞ……『親では無い』」
剣士「あ、ああ……」
青年「だから、僕が、勇者様の、相手…… ……だ、と……」グビ
剣士「……言ったのは覚えてる、と言うか思い出した。だが……」
青年「それを否定すれば……あの『金髪紫瞳の男』が…… ……」
剣士「……青年?」
青年「う、まれ…… ……僕、と……勇…… ……ま、の……子……」スゥ
剣士「…… ……」ハァ
剣士「だから、それをも『否定』するのか?」
青年「…… ……」
剣士(潰れたか……聞こえてないだろうな)
剣士「どっちなんだ、全く」ハァ
剣士(魔導師と……くっついて欲しいのか。それとも……)グイッ
青年(スゥ)
剣士「……お前は、どうしたいんだ、青年?」
剣士(返事等、帰ってこないな……しかし)
剣士(……どこからどこまでを、鵜呑みにして良いやら)ハァ
剣士(否定の否定、は肯定か?それとも未知の何かか?)
剣士(……否。癒し手と魔王の『干渉』も結局は……同じ轍を踏ませているんだ)
剣士(あそこで否定しなければ……青年は居ない。勇者もだ)
剣士(違った形で存在していたかもしれないが……それは、また『別の物語』)
剣士「……尽力を惜しまん、か」ズル……
青年「ん、ん……」
剣士(気持ちはありがたい、んだが)
剣士(……姫が、そうしたように。癒し手が……何処かで『完全に失われる』のを)
剣士(待つ様に…… ……俺は……)
スタスタ、ズルズル……パタン
剣士(……俺の『役目』を、終えるだけだ)
剣士「……糞、重いな……こいつ」
76 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 23:14:30.52 ID:MVM9/cl00
剣士(恐らく……『紫の魔王の欠片』……『向こう側』で言う)
剣士(『代々の魔王の残留思念』と言う役割が変わらない以上)
剣士(……運命は、変わらない)
青年「……ぅ、う」
剣士「何だ、気持ち悪いのか?」
青年「…… ……さ。ま」
剣士(こいつも……素直じゃ無いな)クッ
……
………
…………
勇者「ん…… ……」
勇者(目、覚めちゃった……『あれ、ここは……』)
勇者「あ……そうか」
勇者(『昨夜、少年の少女と……ご飯食べて、それで……』)
魔導師(スゥスゥ)
勇者「『…… ……ッ』」
勇者(そうだ……魔導師と、同じ部屋で、二人で……!)
勇者(外は……もう明るい、か)
勇者「…… ……」グゥ
勇者(『魔導師、ぐっすりだ』……起こすのも悪い、よね)
勇者(お腹すいたし……)
スタスタ、パタン
女将「おや、おはよう早いね……お嬢ちゃんだけかい?」
勇者「あ、おはようございます……うん『えっと……彼は、まだ』寝てるみたい」
女将「そうかい……何か食べる?」
勇者「うん……お腹すいちゃった」
女将「じゃあ、サンドイッチとスープでも用意しようか」
勇者「あ、嬉し……お願いします」
女将「すぐに準備するから、座って待ってな」
勇者(魔導師に……言いそびれちゃった、な)
勇者(……結局、断ったけれど……少女は、青年の何が知りたかったんだろう?)
勇者(あの後……少年と魔導師も険しい顔してたし)
勇者(まあ、ご飯の時は表面上は……みんな楽しそうにしてた、けど)ハァ
女将「はい、お待たせ……熱いから気をつけな」
勇者「あ、ありがとう! ……いただきます」パク
勇者(ん、このスープ美味しい……)
勇者(今日中に……『書の街に』につける『よね』)
勇者(青年は『面倒事に巻き込まれるなとか』言ってたけど……)
勇者(『断ったし……大丈夫、だよね?』)
勇者(……私がもう少ししっかりしてたら)
勇者(『こういうとき……もっと、上手く対処できたのかな』)
カチャ、パタン
魔導師「『勇者様、ここでしたか』」ホッ
勇者「ん?あ、魔導師……おはよう。『ごめん、ぐっすりだから起こさなかった』」
魔導師「『ああ……すみません、でも……ちょっと心配しました』……一緒のテーブル、良いですか?」
勇者「勿論」ニコ
魔導師「流石に寝過ぎた様で……お腹もすきましたし」
魔導師「すみません、女将さん……彼女と同じ物を」
勇者「『その割には疲れた顔してるけど……大丈夫?』」
魔導師「『……平気です。勇者様こそ』随分、難しそうなお顔、されてましたけど……?」
77 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 23:28:23.73 ID:MVM9/cl00
勇者「ん……今日、さ……『書の街』に向かうじゃない?」
勇者「『……ちょっと、気にかかる事が……あって、さ』」
勇者(魔導師には……言っておくべき、だよね)
魔導師「……何か、ありました、か?」
勇者「大した事じゃ無いんだろうけど……うん。ちゃんと話しておく」
勇者「『自分一人で解決できないのは情けない気はするけど……』」
勇者「私……勇者なのにね」ハァ
魔導師「勇者様……『僕たちは、仲間でしょう?』」
勇者「え……うん」
魔導師「些細な事でも良いんです。言ってください。内緒にされるのは……辛いですよ」
魔導師(人の事、言える様な立場じゃ無いけど……)ハァ
魔導師「『僕も……後で話したい事があります』」
勇者「魔導師も?」
魔導師「……はい。秘密は無し、って今言った手前、ね」
勇者「……うん。実は……昨日ね?」
魔導師「はい」
勇者「ええと……市場で、かな。少女に……青年の事を聞かれたんだ」
魔導師「……青年さんの?」
勇者「うん。もう一度会いたい、って」
魔導師「……もう、一度?」
勇者「私達が船で着いたときに見ていたみたい……なんだろうな」
勇者「……ああいう表情は、うっとり、って言うのかな」
魔導師「ああ……まあ、綺麗な顔していらっしゃいますからね」
勇者「他意は無いのかな、って思ったんだけど……」
魔導師「勇者様は、なんて言ったんです?」
勇者「彼が降りないって選択をした以上、私は無理強いは出来ないって」
勇者「……だから、願いは叶えてあげられないかな、って……」
魔導師「……そうですか。少女さんはなんと?」
勇者「……そう、ですか。って。しょげてたけどね」
魔導師「…… ……」
勇者「皆でご飯食べたときは、普通にしてたけど、ねぇ」
魔導師「……なるほど。双子ってのは……何か、不思議な力でもあるのかもしれませんね」ハァ
勇者「え?」
魔導師「多分、勇者様と少女さんが話してる時だと思います。僕は」
魔導師「少年さんに、言われたんです……後で、二人で話がしたい、と」
勇者「……?」
魔導師「勇者様が寝入った後で良い。自分も抜け出してくるから」
魔導師「……こっそり会えないか、とね」
勇者「え!? ……で。ま、魔導師、会ったの!?」
魔導師「……はい。宿屋の裏手で」
勇者「…… ……」
ガヤガヤ……オカミサン、メシー!
魔導師「……人が増えてきましたね。続きは船に戻ってからにしましょう」
勇者「え、で、でも……」
魔導師「どちらにしても、青年さんと剣士さんにも隠せない話です」
魔導師「……船にはあの二人がいますから、大丈夫だと思いますけど……」
勇者「??」
魔導師「お約束もありますし、ね……食べたら行きましょう」
勇者「あ、え……うん。でも……」
魔導師「……結論だけ言うと、少年さんの話は、簡単です」
魔導師「『自分たち二人を、船に乗せてくれ』です」
勇者「え!?」
魔導師「……一緒に行きたい、とかでは無いんです。ただ……」
魔導師「逃げ出したいのだ、と。二人でどこか……誰も知らない所へ行きたいんだ……と」
……
………
…………
78 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/11(水) 23:40:22.13 ID:MVM9/cl00
少年「連れて行ってくれるだけで良いんだ!」
魔導師「…… ……無茶を、言わないでください」ハァ
少年「何でだよ! ……あんたら、『世界を救う勇者様達』だろう!?」
魔導師「だからこそ、です……申し訳ないですが、そんな道行きの中で」
魔導師「……貴方達の私情に、関わっている時間は無いんですよ」
少年「飯の時にも言ってたじゃないか! 書の街に行くんだろう!」
少年「……そこで良いよ! 俺と少女と二人、下ろしてくれりゃいい!」
少年「金もいらないし、文句も言わない! ……何時までも、こんな場所に」
少年「少女を……おいていく訳にいかないんだ!」
魔導師「……それは、貴方達が娼館にお世話になっているから、ですか」
少年「!?」
魔導師「……別に、それに対してどうこうではありません、よ」
魔導師「一緒に街を歩いていれば、人の声も耳に入りますからね……」
魔導師(『少女』……彼らにとれば『魔法使い』か)
魔導師(不用意にその名前を出すわけに行かないのは話しにくいな……)ハァ
少年「……知っているなら、尚更だ」
少年「後数年すれば、少女は客を取れって言われる様になるんだ!」
少年「こんな事、頼めるのはあんた達しか居ないんだよ!」
魔導師「……話に、聞いただけですけど」ハァ
魔導師「この街の娼館は、働き手に無茶をさせないと言う条約が」
魔導師「……まだ、健在だった頃の始まりの国の王様との間で取り決められていた筈です」
魔導師「それを伝えても、逃がさない、とでも言われたのですか?」
少年「そ……ッ そんなの、守ってくれる訳ないだろう!?」
魔導師「……堅実な商売をしているからこそ、あの……丘の上の教会跡に」
魔導師「新たな建物を建てる事が出来る程に、働き手が増えた……のでは無くて、ですか」
少年「…… ……ッ」
魔導師「……それに、そもそも少女さんも……同じ事を願っているんですか」
少年「!」
魔導師「知っているんですか。貴方が、こうして…… ……」
少年「……ッ 少女は、絶対についてくる」
魔導師「双子の感、ですか」
少年「少女は……随分、あんた達の仲間に関心があるみたいなんだ」
魔導師「え……」
少年「降りてくる前に、甲板に出てきただろう。金の髪の……綺麗な顔の、男」
魔導師(青年さんか……)
魔導師(……親子だなぁ、なんて……言ったら、青年さんに殴られるかな)フゥ
少年「……童話だとか、何だとか。そんなのに出てくる王子様みたいだ、なんて」
魔導師「……王子様、ね……なるほど」
79 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/12(木) 00:02:35.15 ID:cxm17Plx0
魔導師「ならば、尚更です……彼は、誰よりも面倒事を嫌います」
魔導師「『仲間』の為にも……僕は、その条件は飲めません」
少年「何でだよ!?」
魔導師「……貴方が、娼館の責任者に何をどう伝えたのか」
魔導師「伝えてさえいないのか、わかりません、知りません……けど」
80 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/12(木) 00:03:00.98 ID:cxm17Plx0
限界のご様子 orz
おやすみなさい……
81 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/12(木) 00:16:40.83 ID:9zObzi2j0
おやすみ☆
82 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/12(木) 07:12:31.82 ID:xVlsYROi0
あさほ
☆
84 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/12(木) 16:12:55.25 ID:cxm17Plx0
ただいま!
帰って来たけど、今日はちょっと時間がなさそう……
また夜、か明日!
85 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/12(木) 16:25:34.95 ID:fMbVjf5ci
おっけー
ほしゅしとく!
☆
☆
89 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/13(金) 11:41:36.64 ID:UDhwGczw0
おはよう!
お昼ご飯を食べたらお迎えまで!
後ほど〜
おつー
91 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/13(金) 13:00:49.28 ID:UDhwGczw0
……と、思ったら時間が無くなりましたorz
用事で出かけて参ります……
今日は夜にこれると思う!
92 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/13(金) 17:36:52.94 ID:g8McWEfU0
☆
93 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/13(金) 20:30:11.72 ID:Ox8IOq3h0
ほしゅっとな
☆
95 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/14(土) 07:34:46.34 ID:wcpB63NC0
☆
96 :
スコーン ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/14(土) 12:19:27.60 ID:6bhuQtF30
おはようございます……
寝かしつけるつもりが寝かしつけられましたorz
土日日中は厳しいので
時間があるときにこれたらきますー
97 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/14(土) 18:19:43.43 ID:TpSwdczO0
あわてない あわてない
98 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/14(土) 23:13:17.81 ID:wcpB63NC0
☆
99 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/15(日) 08:05:38.56 ID:hH8/YLGU0
☆
100 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/15(日) 13:39:50.64 ID:3LKOnLNu0
☆
101 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/15(日) 17:31:17.88 ID:1f873Hxv0
確実に来れるのは水曜日かな……
明日明後日用事で出るので、夕方来れたら!
了解☆
103 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/16(月) 07:26:28.20 ID:YcgKasWH0
★
104 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/16(月) 14:53:14.47 ID:8QWk0LZE0
☆
105 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/16(月) 14:54:30.76 ID:542bRA6Y0
☆
107 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/16(月) 21:43:06.14 ID:U57FBMOq0
ほ
☆
109 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/17(火) 07:12:13.32 ID:e1ujkdJG0
☆
ほ
し
く
ず
の
115 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 01:10:31.05 ID:dHvmlnzw0
な
116 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 02:03:11.95 ID:rgVumxl20
み
117 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 07:13:45.10 ID:Fisehvfh0
だ
たいへんよくできました
119 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 09:49:43.83 ID:gpKRr/B90
少年「……い、言ったさ! でも……!」
魔導師「……本当に?」
少年「と……当然、だろ……」
魔導師「なのに少女さんは知らない、んですか?」
少年「し……ッ 知ってるよ! さっき…… ……」
魔導師「さっき貴方は、少女さんは絶対に着いてくる、と言いましたよ」
魔導師「せ…… ……金髪の男に、興味があるみたいだから、と」
少年「あ、あれは……ッ」
魔導師「……絶好のチャンス、ですか?」
少年「…… ……ッ」
魔導師「そう言う話し方はね。ただでさえ、自分に……貴方にとって不利な状況を」
魔導師「悪化させるだけです、少年さん……嘘を吐いても、良いこと等ありません」
少年「…… ……」
魔導師「推測、ですけど」ハァ
魔導師「娼館の方々にも、少女さんにも内緒……この件は貴方の独断でしょう?」
魔導師「さっきも言いましたが、『勇者様』なら」
魔導師「困る人を見捨てる事等しないだろう、って」
120 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 09:57:51.78 ID:gpKRr/B90
魔導師「……そう言う魂胆なんでしょうが」
魔導師「彼は面倒事を嫌います……でもそれは、彼に限った事じゃ無い」
魔導師「勇者様も、僕もです……『世界を救う旅』の途中に」
魔導師「生活能力もない、子供二人を……どうして、放り出して行けますか?」
少年「放り出して行けないんだったら……ッ」
魔導師「ああ、ご免なさい。言葉が足りなかった」
魔導師「『別の街に』放り出すこと等できません、ですね」
魔導師「……此処にいれば、貴方達には寝る場所もある。ご飯も食べられる」
魔導師「貴方達の……我が儘だけで」
少年「!」
魔導師「……生活の保障のない場所に放り出す事は」
魔導師「『勇者が、困る人を助けた』事に……ならないでしょう」
少年「…… ……」
魔導師「……だから。このお願いはきけませんよ」
121 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 10:18:12.69 ID:gpKRr/B90
少年「……わかったよ。もう良い」
魔導師「ちゃんと話してみる事です。娼館の人にも、少女さんにも……」
少年「…… ……」
魔導師「恩はあるかもしれませんが、でも……」
少年「もう良いって言ってるだろう!?」
魔導師「…… ……」
少年「……時間取らせて、悪かったな」
スタスタ
魔導師「…… ……」ハァ
……
………
…………
青年「……成る程ね」
剣士「事実、どうなんだ」
青年「ん?」
剣士「……関係の無い、話だと言うのは解っている、が」チラ
勇者「…… ……」
青年「ああ……魔導師の想像であってる、と思うよ?」
青年「『少女』に聞いた話もそうだ。無理に働かされる事は無いと言ってたさ」
勇者「え?」
魔導師「まあ……そうで無ければ、働き手が順調に増えて、建物が……」
勇者「あああああああ! 思い出した!」
青年「……勇者様煩い」
勇者「少女、って……! そうだ、新王様の……!」
魔導師「彼女の子、ですよ……あの双子は」
勇者「え!? ……でも、少女さん……って、紅い……瞳……」
青年「遺伝する訳じゃないからね」
勇者「あ……そうか。あれ、でも、って……事は!?」ジィ
青年「……何」
勇者「青年と、血が…… ……」
剣士「違う…… ……あれは、衛生師の子供だ」
勇者「…… ……あれ?」
122 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 10:35:19.32 ID:gpKRr/B90
魔導師「だいぶん混乱してますね、勇者様」
剣士「……良い機会だ。ちゃんと説明してやれ」
青年「……やれやれ」ハァ
魔導師「隠し事は無し、何でしょ?」
青年「……仕方無い、ね」
勇者「何!? なんか私に隠してたの!?」
青年「そう言う訳じゃ……いや、まあ……うん」
青年「……大した事じゃないんだけどね……でも、先に……」
勇者「先に話して!」
青年「……違うって。出発しよう」
魔導師「そうですね。何時までも此処に船を止めて置いても仕方無いですね」
勇者「…… ……」
剣士「そうだな……じゃあ、書の街へ……」
勇者「待って。補給の必要は暫く無いんだよね?」
剣士「? ……ああ、だが……」
勇者「鉱石の洞窟へ行こう」
青年「え?」
勇者「光の剣を修理するのに……必要なんでしょう?」
剣士「……それも確かな話ではない。勇者が行きたいと言うのならば止めはしないが」
魔導師「前に剣士さんに行って貰った時の話は覚えて居ますか?」
勇者「うん。何れは……と思っていたけど、今でも問題は無いでしょう?」
青年「……そりゃ、ね。目で見て納得するのなら、見てみれば良い」
青年「戦闘は……まあ、どうにかなるだろうし」
勇者「……その後、補給の必要があるなら書の街に向かう。その後」
勇者「北の街に。それで…… ……最果ての地、へ」
123 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 10:46:16.34 ID:gpKRr/B90
青年「…… ……」
勇者「……私が決めて良いんでしょ?」
青年「勿論、だ……だけど、どうした?」
勇者「え?」
青年「……否、良い。先に出発しよう」
青年「勇者様、魔導師と船の中を見回ってきて。剣士と僕は操舵室に行こう」
青年「……異常が無ければ、操舵室に集合」
勇者「? ……うん」
魔導師「はい」
スタスタ、パタン
剣士「……焦っている、な」
青年「勇者様……な」
剣士「ああ……少年と少女の話を聞いて……」
剣士「『早く世界を救わなきゃ』……か?」
青年「そんな所だろうな……そりゃ、腐るほど時間がある訳じゃ無いから」
青年「決定に文句がある訳じゃないが……ッ ……」
剣士「……大丈夫か」
青年「……軽い二日酔いだ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「さっさと離れるに越したことはない……忍び込まれたらそれこそ」
青年「海の上へ捨てる訳にも行かない」
剣士「……流石に気配で気付くだろう」
青年「だと良いけど?」
剣士「それに、そこまで危惧するなら、自分で行けば良かっただろう」
青年「魔導師を行かせただろ。あいつまで情にほだされるとは思わないぜ」
剣士「……勇者を信じていない様な口ぶりだが」
青年「そう言う訳じゃ無い……けど」
青年「……勇者様をもう少し……そうだな」
青年「あいつ等が『勇者』じゃなく『まだ子供とも言える年齢の女の子』と」
青年「……『特別扱い』をしていなかったら、面倒だっただろうな」
剣士「…… ……」
青年「子供ってのは正直なもんだ。保護者だろう『大人』の魔導師に話したんだから」
剣士「……言いたいことは解る、が」
青年「『特別』って奴も、偶には役に立ったか」フン
剣士「お前がイライラしてどうする」
青年「……僕が? まさか」
剣士「子供に話すより、大人……それは正しいんじゃないか?」
青年「どうだかな……面倒事に巻き込まれず助かったのは事実だろ」
剣士「子供の方が情にほだされやすい、と言う邪推も」
剣士「大人の目線だろう?」
青年「……まあ、そうだけど」
124 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 10:50:06.73 ID:gpKRr/B90
剣士「……まあ、良い。落ち着け」
青年「だから、僕の何処が……」
剣士「……戻ったな」
青年「…… ……」
カチャ
勇者「あれ、まだ此処に居たの……オッケーだよ」
魔導師「……誰も何も、居ませんでしたよ?」
剣士「ああ……」
スタスタ
勇者「ほら、青年も行くよ」
青年「……ああ」
青年(僕の何処が……イライラしてるって言うんだ)ハァ
魔導師「大丈夫ですか、青年さん。ご気分悪いんです?」
青年「お前まで……」ハァ
魔導師「え?」
青年「……何でもない。少女の話、な」
スタスタ
魔導師「……??」
125 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 10:50:32.18 ID:gpKRr/B90
おむかえ!
昼からは……わかりませんorz
これたら……
乙ー!
127 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 15:43:35.71 ID:Z6kZvwa+0
おつ
128 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 16:50:06.48 ID:PB1LDbJ+0
乙
保守…
129 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 16:58:05.16 ID:gpKRr/B90
……
………
…………
少女「……行っちゃった、ね」ハァ
少年「…… ……」
少女「少年? ……どうしたの」
少年「別に」クルッ
スタスタ
少女「あ……少年、どこ行くの?」
少年「買い物頼まれたんだよ。すぐ戻る」
少女「私も一緒に……」
少年「……少女はゆっくりしてな」
タタタ……ッ
少女「あ……」
少年(……何が、世界を救う勇者様、だよ)
少年(少女だって……あの男が居るって言えば、ついてきたはずだ)
少年(このチャンスを逃したら、少女は……この町で……!)
少年(こうやって……あいつらは、俺たちをこき使って……)カサ
少年(何買って来いって……?)ハァ
少年(……本、に……化粧品……に……)
少女「少年……どうしたのかしら」
少女(朝から、なんだか機嫌が悪そうだった)
少女(ため息ばっかり……私だって)ハァ
少女(残念だわ。あの人……もう一回会いたかった)
スタスタ、キィ
館長「おや、一緒に行かなかったのかい」
少女「あ……買い物ですか? ……うん」ハァ
館長「そうかい……まあ、丁度良い。お茶を持って行ってくれるかい」
少女「…… あ、はい」
館長「二人一緒、は構わないけどね。もう部屋で待ってるんだよ」
少女「わかりました……行ってきます」
館長「ああ。二階の右の部屋だ。頼んだよ」
130 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:03:37.86 ID:gpKRr/B90
少女「はい」
館長「?」
館長(なんだか……元気が無いね)
館長「少…… ……」
スタスタ、パタン
少女「……?」
少女(館長さん、何か言いかけた? ……まあ、良いか)
少女(戻れば聞けば良いわ……ええっと、お茶の準備は)
カチャカチャ
少女(右の部屋……新規のお客様、ね)
少女(老婆さんや館長さんは、嫌ならやめれば良い、って言うけど)
少女(こうして、慣れていって……街の人にも、顔を知られて)
少女(……他の街に行くにも、お金がいる。だけど、この町で他の仕事なんて……)ハァ
カチャ……スタスタ
少女(勇者様は……会わせてくださらなかった)
少女(恋人? ……ううん。大事な、仲間……誰にも会いたくないって)
少女(船を下りないって……行ったのは、彼自身だって言ってた)
少女(私は、まだ子供だけど…… ……もう一回、会うだけで良かったのにな)ハァ
コンコン
少女「失礼いたします。お茶をお持ちしました」
??「……はい。どうぞ」
少女「…… ……」
カチャ
少女「いらっしゃいま…… ……!?」
131 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:11:43.73 ID:gpKRr/B90
??「? ……私の顔に、何かついていますか」
少女「あ……い、いえ! ごめんなさい!」
少女(ビックリした……)ドキドキ
少女「……お、お茶、ここにおきます」
??「貴女が、お話相手をしてくれる少女ちゃん?」
少女「は、はい……え、っと……あの……」
??「……そんなに、驚かないでよ」クス
??「ビックリする気持ちはわかるけどね……」クスクス
少女「……い、いいえ」
??「良いのよ、別に…… ……子供だけど。ここで働いている以上」
??「ある程度わかっているんでしょ……どういう場所か。何をするのか」
少女「…… ……」
??「どうぞ、お座りなさい……あ、ごめん、私はね、雷使いと言うの」
少女「…… ……」
雷使い「私みたいな客は初めて?」
少女「は、はい…… ……あ、あのッ」
雷使い「ん?」
少女「……その、あ……の、ここに居るのは、その……」
雷使い「知ってるわよ、女性ばかりでしょ?」
少女「……は、はい」
雷使い「……もう一人は少年君、だっけ」
少女「!」
雷使い「何時も、彼と二人で……って。さっき館長さんが言ってたからね」
132 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:19:47.64 ID:gpKRr/B90
少女「…… ……」
雷使い「今日は貴女一人なのね」
少女「……少年は、今……買い物に……」
雷使い「そっか……あ、別に良いのよ」
雷使い「……ねえ、少女ちゃん」スッ
少女「!」ドキッ
少女(顔が、近い……ッ)
雷使い「別に貴女を取って食おうなんて思ってないわよ……少年君の事もね」
少女「あ、あの……」
雷使い「……今度は、二人に会えるかしら」
少女「え……あ、あの……はい……多分」
雷使い「そう……楽しみね」
少女「…… ……」フイッ
雷使い「顔、真っ赤。可愛いわね」クス
少女「……ッ」カァッ
コンコン
少年「失礼します。準備が出来ましたので、お部屋の方に案内いたします」
少女(この声……少年!?)
カチャ
少年「!?」
雷使い「あら……次回までお預けかと思ってたけど。ラッキーね」
少年「…… ……え!?」
雷使い「同じような反応するのねぇ……流石双子ね」クス
雷使い「……ありがとう。じゃあ、案内してもらえる?」
少年「…… ……」
雷使い「少年君?」
少年「あ……ッ し、失礼しました!」
少女「…… ……ど、どうぞ」
雷使い「ええ。ありがとう」
カチャ……スタスタ
vip+にスレ立て荒らしが襲来してるから注意してね
134 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:35:22.49 ID:gpKRr/B90
少年「……ここ、です」
少女「…… ……」
雷使い「ありがとう。今度はお土産持ってくるわね」
少年「…… ……」
コンコン
少女「お姉さん、失礼いたします。お客様をお連れしました」
雷使い「じゃあね……」
パタン
少女「…… ……」
少年「…… ……」
少女「……女性、だよね」
少年「……だと思う、よ」
少女「…… ……」
少年「……少女」
少女「……あ、何?」
少年「館長が呼んでたよ」
少女「……あ」
少女(そういえば、さっき……何か言いかけてた)
少女「わかった……行くわ」
少年「僕も行くよ」
少女「…… ……」ギュッ
少年「!」ドキッ
少女「手、つないで行こう?」
少年「……う、うん」
スタスタ
……
………
…………
雷使い「様になってるじゃないの『お姉さん』?」クスクス
雷使い「でも……偽名ぐらい使っても良かったんじゃないの、水使い」
水使い「知られて困る名前じゃありませんから、良いんです」
雷使い「ふん……相変わらず可愛げの無い子ねぇ、全く」
水使い「そっちこそ……ばれなかったんですか」
雷使い「ばれる要素なんて無いでしょ? ……まあ、女が女を買いに来た、なんて」
雷使い「変態だと思われてるぐらいよ」
水使い「……事実でしょう」
雷使い「口の減らないのも相変わらずね」グイッ ……チュッ
水使い「!」
雷使い「……変態はアンタもでしょう、水使い?」
雷使い「男の相手ばかりで、辟易してるんじゃないの」
水使い「……そんな事ありません」
雷使い「そうね……アンタ、どっちもイケるんだもんね」
水使い「…… ……」
雷使い「アンタの『仕事』に支障がなけりゃ、何だって構わないのよ」
雷使い「……お金、居るのだって事実なんだから」
水使い「どうして……急に来たんですか」
雷使い「あら、私よりあの男の方が良かったの……で、どこ?」
水使い「……テーブルの上です」
135 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:42:07.09 ID:gpKRr/B90
スタスタ
雷使い「あの男からも聞いてたけど」ジャラ
雷使い「儲かるのねぇ、『娼婦』って…… ……凄いじゃ無いの」
水使い「…… ……」
雷使い「自分の生活費はちゃんと抜いてるんでしょ」
水使い「……はい」
雷使い「まあ、身なりを整えるのも仕事のうちね。こういう仕事は」
水使い「…… ……」
雷使い「今回から私が来るから……安心しなさい」
水使い「……どっちでも、一緒です」
雷使い「喜びなさいよ。本当に可愛くない」グイッ ドン!
水使い「きゃ……ッ」ドサッ
雷使い「……久しぶりでしょ。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」チュッ
水使い「…… ……ッ あ、貴女は、何をしにきたのか、わかって……ッ ん……ッ」
雷使い「……お金と、様子を見に来るのはあの男も私も一緒よ、確かに」
雷使い「でも、こういうことするのだって……一緒でしょ?」チュッ、チュ
水使い「……んっ」
雷使い「話はすっきりした後で、ね……喜びなさいよ」
雷使い「アンタが居なくなって、私も寂しかったのよ?」
水使い「……ッ 好きに出来る相手が、居なくなったから、で……ッ」
雷使い「口は慎みなさい? ……私は貴女が気に入ってるのよ」
雷使い「だから、多少は目をつむってあげる……でもね?」ギュッ
水使い(! ……首、に指が…… ……ッ)ゲホッ
雷使い「『出来損ない』は所詮『出来損ない』よ……雷の加護も受けないくせに」
水使い「…… ……ッ」ゲホッ
136 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:53:34.37 ID:gpKRr/B90
雷使い「……必要なの。さんざん説明してあげたでしょ」
水使い「…… ……ッ」
雷使い「『書の街』だなんて……あんな、くだらない」
雷使い「『出来損ない』共に……居場所を奪われ」
雷使い「……街に残っていた子達の行方もわからない」グッ
水使い「ち、から……ッ を…… ……ッ」
水使い(苦しい……ッ)
雷使い「こうなってしまった以上、私達が……『魔導国』が復活するためには」
雷使い「必要なのよ……あの双子が、ね」パッ
水使い「……ッ」ゲホ、ゲホゲホ……ッ
雷使い「……母親様や父親様の直径じゃ無いけど。でも彼らは」
雷使い「少女と違って……雷の加護を持って生まれた」
水使い「……『始まりの姉弟』……は、双子では無かった、んでしょう?」
雷使い「良いのよ、そんな事は……確かめようも無い。でもね?」
雷使い「残念ながら、私やあんたより……あの双子は母親様達の血筋に近いのよ」
雷使い「……秘書様の子だったら、もう少しやりがいもでるけど……」ハァ
水使い「…… ……」
雷使い「仕方ないわ。炎の加護しか受けていなかったけれど」
雷使い「でも、『少女』は秘書様の双子の妹だもの」
水使い「…… ……」
雷使い「大きな役目を……出来損ないのくせに、アンタは委ねられたのよ」
水使い「……監視、だけじゃな……いですか」
雷使い「重要よ……でも、アンタは良くやってる方よ」
水使い「『出来損ないのくせに』?」
雷使い「……否定でもして欲しいの」
水使い「…… ……いいえ」
雷使い「勇者一行の船が居たんですってね」
水使い「…… ……はい」
雷使い「『この街から離れたがっている二人』を、勇者は連れては行かなかった」
雷使い「……風向きは良いのよ。だから、私が来たの」
雷使い「あの男じゃ、駄目よ……あいつは、少女を気に入っていたからね」
水使い「……貴女は手を出さない、と?」
雷使い「あの男じゃ双子を結ばせる事なんて出来ない、と言っているの」
137 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:57:35.30 ID:gpKRr/B90
雷使い「先に自分が手を出しちゃうわ……下半身で物を考える様な」
雷使い「馬鹿な男にはつとまらない……私はしばらくこの街に居るわ」
水使い「…… ……」
雷使い「大丈夫よ。アンタも一緒に連れて行ってあげるから」チュッ
水使い「…… ……」
雷使い「側仕えは必要だからね……ああ、時間がなくなっちゃうわ」
雷使い「……ほら、脱ぎなさいよ」
水使い「…… ……はい」スル……
雷使い「本当に……久しぶりね」チュッ チュッ
水使い「……ッ」ビクッ
雷使い「相変わらず過敏な体ね……あの男に抱かせるには……いえ」
雷使い「『出来損ない』共に開かせるにはもったいない」
雷使い「……ぴったりよ、水使い……淫乱なアンタ、には」
……
………
…………
138 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/18(水) 17:58:20.41 ID:gpKRr/B90
お風呂とご飯〜
明日明後日は用事で出るので難しいかな
これたら来ます、がわかりません(・△・)
では!
乙乙
140 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 20:43:30.42 ID:ShMGFoUYi
あげ
141 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/18(水) 22:15:36.74 ID:j2DhzDG00
ほしゅ
☆
143 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/19(木) 08:03:08.36 ID:9EIRPyFz0
☆
期待☆
ほ
146 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/19(木) 21:55:15.65 ID:9EIRPyFz0
も
147 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/20(金) 01:15:11.59 ID:tFr0DMY90
ほ
か
ろ
150 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/21(土) 03:16:54.04 ID:nHBxtOUL0
ん
ぬ
152 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/21(土) 11:48:13.56 ID:Czc70MFS0
勇者「……あそこに見えてるのが鉱石の洞窟?」
魔導師「そう……でしょうね。僕も来た事はありませんから」
勇者「船では行けないから、途中から泳いでいった、んだっけ」
魔導師「光の剣、持ちましたね」
勇者「大丈夫……青年にしっかり背中にくくりつけてもらったし…… ……ッ」
ガリガリ……ッ グラグラ……
魔導師「わぁッ!?」
カチャ
青年「勇者様、魔導師大丈夫か?」
魔導師「僕たちは……船は無事ですか?」
青年「……ちょっと底すったかもな……これ以上は無理だ」
カチャ
剣士「青年、碇を……怪我は無いか、勇者。悪かった」
勇者「大丈夫……それより、船、船!」
剣士「大事ない……筈だ。戻ってきたら船が沈んでた」
剣士「……なんて事は無いと思う、が」
魔導師「……珍しく弱気ですね」
剣士「専門家では無いんだ…… ……船体が小さいからと」
剣士「素人判断で無茶する物では無いな」
青年「底に穴なんか開いてたらあっちゅーま、だろ……準備は出来てるね?」
勇者「う、うん」
魔導師「……では、行きましょう」
剣士「青年、勇者と一緒に後ろから来い……魔導師、行くぞ」
魔導師「はい」
ドボン……ッ ドボン!
153 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/21(土) 11:58:16.63 ID:Czc70MFS0
中途半端でごめんorz
お昼食べたら幼女と出かけるので
またです!
BBAお疲れーー!
ほ
156 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/21(土) 20:21:21.55 ID:nHBxtOUL0
ら
157 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/21(土) 22:17:12.51 ID:QFTTho/v0
拒否権のない選択〜で読むの諦めちゃって久々に見たらまだ続いててワロタ
158 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/21(土) 22:17:35.03 ID:+9c9MwXY0
☆
スコーンちゃん、無理しないでね
160 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/22(日) 09:27:40.25 ID:4vyRg36A0
☆
161 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 14:30:09.40 ID:aX4HW53+0
おはよう!
おやつ作り終わったら来ます!
162 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 16:22:59.06 ID:aX4HW53+0
勇者「…… ……」
青年「大丈夫……深呼吸して、勇者様」
勇者「う、うん」スゥッ
青年「…… ……」スッ
勇者「え?」
青年「手」
勇者「あ……ああ、うん」ギュ
青年「……魔導師と変わった方が良いかい」
勇者「……しつこいよ、青年」
青年「…… ……」ギュ
青年「行くよ」
勇者「…… ……うん」
ドボン、ドボン!
青年「剣士達について行こう……泳げるね?」
勇者「……大丈夫」
ザバ、ザバ……
剣士「……勇者達は……来ているな」
魔導師「青年さんが一緒ですし、大丈夫でしょう」
剣士「さっさと上陸しないとな……襲われたら厄介だ」
魔導師「……以前、剣士さん一人で来られた時」
剣士「? なんだ」
163 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 16:36:29.03 ID:aX4HW53+0
魔導師「いえ……後にします。洞窟に着いてから」
剣士「……ああ」
魔導師「今余計な話して、おぼれるの嫌ですしね」
剣士「そういえば……お前泳げないとか言って無かったのか」
魔導師「……わかってて一緒に来てくださったんじゃ無いんですか?」
剣士「……何?」
魔導師「ここは幸い足がつきますけど……ずっとそうじゃないですよね?」
剣士「…… ……抱えて泳げ、と?」
魔導師「駄目なら転移できるから……なのかな、と……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「かろうじて足がつくだろう……多分、な」ハァ
ザバザバ
魔導師「あ……お、おいていかないでください!?」
ザバ、ザバ
青年「……なんだ、足つくんだな。勇者様、手をつないだ侭で良いね」
勇者「う、う……私ぎりぎり……うん……ッ」ケホッ
青年「なるべくくっついてな……よいしょ」
ザバザバ
勇者「…… ……ッ」クシュッ
青年「寒い?」
勇者「ううん、大丈夫…… ……あ、あれか」
164 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 16:50:56.32 ID:aX4HW53+0
ザバザバ
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何でそんなに疲れてんの、二人とも」
ザバッ
青年「勇者様、ひっぱるよ……っと」
勇者「うん……んっ」トン
魔導師「……あの洞窟ですね」
青年「あれ、お前手ぶらだったか?」
魔導師「剣士さんに持ってもらいましたよ。僕泳げないんで」
剣士「…… ……もう良いだろう、ほら」ポイッ
魔導師「あ、あああ放らないでください!」
勇者(剣士が疲れてるのはそれか……)クス
魔導師「……何笑ってるんです」
勇者「え、いやいや……ごめん」
青年「……魔物の気配が無いな。剣士の話どおりだ」
165 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 17:26:50.54 ID:aX4HW53+0
勇者「私が小さい頃に……剣士が一人で来たんだよね、ここに」
スタスタ
剣士「ああ……鉱石の欠片でも持ち帰れれば良かったんだがな」
青年「あれ、どうしたんだ? ……砂みたいな奴」
勇者「砂?」
魔導師「剣士さんが持ち帰ってくれた鉱石です」
勇者「え?でも今……」
剣士「……欠片とは言えん。砂の様に……もろく崩れてしまうんだ」
魔導師「だから、これ……鍛冶師様の残してくれた……というか、まあ」
魔導師「始まりの国が焼けたときに持ち出した道具、ね」ガサ
勇者「ああ……剣士に持たしてた奴ね」
魔導師「はい。これがあれば……少しぐらいは、持ち帰れるかもしれませんからね」
ガサ……
勇者「ん?」キョロ
青年「勇者様?」
勇者「……なんか、音聞こえなかった?」
魔導師「え?」
剣士「…… ……」スッ
青年「……? どうし…… ……ッ」
ガサ……ガサ……ッ グルル……ッ
勇者「!」
魔導師「魔物の声……ッ どこから……!?」
166 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/22(日) 17:44:04.45 ID:q0t2+ssJ0
すげー
まだやってたんだ
167 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 17:47:18.00 ID:aX4HW53+0
剣士(気配は感じなかったぞ!? ……音は…… あっちか……)スゥッ
剣士「炎…… ……」
勇者「待って!」
青年「!?」
グゥ…… グルルル……ッ
魔導師「あ……」
勇者「あれ……まだ、赤ちゃんだよ……?」
剣士「……と言うことは、親が側に居るはずだ」
グルルル……ッ
勇者「……ッ 剣士……ッ」
剣士「……かわいそう、と言いたいのか?」
勇者「…… ……」
青年「ちょっと、無駄話してる暇は無いでしょ」キリキリキリ……
勇者「!」
魔導師「……本当に赤ちゃん、なら。親が側に居ます」
魔導師「群れで襲われたら…… ……わかりますね?」
青年「……そういうこと」シュン!
勇者「!!」
ドス! ……キャァアン!!
勇者(外した……違う! わざと足下を狙ったんだ……!)
青年「……これで逃げてくれれば良かったんだけど」キリ……ッ
魔導師「……氷よ!」
青年「!?」
ピキピキ……ッ ギャ、ア…… ……ァア……ッ
勇者「あ……ッ」
168 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 17:58:13.98 ID:aX4HW53+0
魔導師「……勇者様の気持ちを尊重した、とかでは無いんですよ」フゥ
勇者「…… ……」
青年「……おやまぁ」コン
剣士「氷付け、か……」
魔導師「早々溶ける事は無いと思いますけどね……まあ」
魔導師「溶けたところで、生き返るなんて保証は全くありませんし」
魔導師「……腐っていくのが先延ばしされるぐらい、でしょうけど」フゥ
勇者「…… ……」
青年「行くよ、勇者様」グイッ
勇者「あ……ッ」
青年「のんびりしてる暇は無い。多分本当に、側に親だか群れだか居ると考えてしかるべきだ」
剣士「……そうだな。早く洞窟の中に入ろう」
スタスタ
魔導師「…… ……」
169 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/22(日) 17:58:48.20 ID:aX4HW53+0
お風呂とご飯ー
また明日……多分、進めます
おつー!
171 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/23(月) 15:34:57.86 ID:Q9fuEgq60
ぎゃーす
☆
173 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/24(火) 07:59:23.22 ID:2gA6LHtx0
★
☆
★
*'``・*。
| `*。
,。∩ *
+ (´∀` ) *。+゜
`*。 ヽ、 つ *゜*
`・+。*・'⊃+゜
☆ ∪~。*゜
`・+。*・
177 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/25(水) 08:01:38.67 ID:Y1l8QvVK0
☆
☆
179 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/25(水) 19:13:28.98 ID:59v+OOFZ0
★
180 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/26(木) 00:47:14.07 ID:4xqKsEvl0
★
181 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/26(木) 08:29:01.34 ID:hVDhqP6m0
☀︎
182 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/26(木) 10:29:38.35 ID:SYiPzor10
書けるかな?
183 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/26(木) 10:30:53.85 ID:SYiPzor10
お。行けた。
就職準備でちょっとばたばたしてます。
明日は休みなので、また…
マッチョるww
☆
186 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/27(金) 08:24:27.44 ID:3HOvy0IAO
☆
187 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/27(金) 19:56:59.41 ID:I0x2agoJ0
☆
188 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/27(金) 20:22:05.04 ID:zv4dfA150
幼女ねかしたらきます(`・ω・´)
☆
190 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/28(土) 04:50:08.74 ID:iHAd+JLB0
幼女なかなか寝ない(´・ω・`)
幼女元気だなぁ
無理しないで自分のペースでね〜
192 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/28(土) 15:31:01.71 ID:K2p4O5lg0
頑張れすこーん!
193 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/28(土) 17:18:06.42 ID:HvVwAUho0
ごめん、昨日は私が寝かされたorz
今日の晩こそ起きたいのです。
うんうんよくある話だw
無理するなよ〜
195 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/28(土) 19:35:54.10 ID:oNIR9ocJ0
飲み過ぎないようにします…
後ほど!
196 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/29(日) 01:10:18.43 ID:C/UA0Fp60
ほ
197 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/29(日) 08:01:00.92 ID:kFRdWjt20
期待待機しちゃうからこれるときにきてー;;;;
198 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 09:54:49.75 ID:j5+2mzeP0
おはよう!
>>197 ご、ごめん、気をつけるよ;;
199 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 10:02:43.52 ID:j5+2mzeP0
青年「魔導師?」
魔導師「……あ、いえ…… ……行きましょう」
スタスタ
勇者「…… ……」
青年「勇者様も、早く……」
勇者「…… ……」ナデ
青年「……氷撫でても冷たいだけでしょ」
勇者「魔導師の氷の魔法……簡単には溶けない……よね」
青年「…… ……」
勇者「……ごめん。行こう」
スタスタ
青年「…… ……」
タタタ……ッ
剣士「ここだ……この中。この奥の壁一面が、あの鉱石で覆われている」
剣士「……炎よ」ボゥッ
魔導師「!? 剣士さん、何を……」
剣士「明かり代わりだ。俺だけなら良いが……勇者も居る」
剣士「中は薄暗いからな」
青年「便利だな、君は」クス
勇者「……器用、って言うんじゃ無いの」
剣士「コントロールを覚えれば出来るだろう……行くぞ」
コツン。コツン……
200 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 10:40:44.61 ID:j5+2mzeP0
勇者(剣士はコントロールって言うけど……そんな簡単に)ハァ
勇者(さっきの魔導師の魔法もそうだ……小さい時の事なんて覚えてないけど)
勇者(……でも、元々魔導師は、将来を期待されてた、って聞いた)
勇者(赤ちゃん、って言ったって、魔物…… ……かわいそう、なんて)
勇者(思っちゃいけない、んだろうけど……)ハァ
コツン、コツン
青年(素質だ、才能だ……そんな物はどうでも良い)
青年(……やっぱり、僕がとどめを刺しておくべきだったか?)
青年(否。血のにおいに惹かれて集まってこられても困る)
青年(……魔導師の策が最適だった。筈だ……でも)フゥ
青年(勇者様は……『仕方ない』と口にしただろう。でも……もし)
青年(僕がとどめを刺していたら……きっと、悲しんだだろう)
青年(……それが、なんだ。糞……ッ)チラ
魔導師「……剣士さん、もう少し前の方を照らせますか」
剣士「それほど深い洞窟じゃない……ほら、あそこだ」
青年(……人間同士。良いじゃ無いか、それで)
青年(あの……『金髪紫瞳の男』の事なんか……)
コツン、コツ
勇者「?」スッ
勇者「……わぁ!」
青年「……なんだ、もう到着か」
魔導師「こ、れは……凄……い……」
勇者「こ、これ……壁一面!?」
魔導師「…… ……」コンコン
魔導師「ふむ…… ……一見、と言うか。触った感じは……」
剣士「見てろ……こうして、柄で……」コン
パラパラ……
魔導師「!」
201 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 10:47:30.28 ID:j5+2mzeP0
青年「……曾御爺様は、どうやって持ち帰ったんだかな」ハァ
魔導師「……とにかく、やってみます」
魔導師「青年さんと剣士さんは、見張りをお願いしますね」
魔導師「……あ、やっぱり剣士さん、手伝ってください。明かりがいるし……」
剣士「ああ」
青年「じゃあ、勇者様と僕はこっちで…… ……ん?」
勇者「うん…… ……ん?」
チカチカ
青年「…… ……」ジィ
勇者「え。な、何?」
青年「……光ってる」
勇者「??」
青年「君の背……光の剣だ!」
勇者「え!?」
魔導師「…… ……」コン、コン……ボロ……ッ
魔導師「ああ……ッ すみません、剣士さん、やっぱりちょっと離れてください」
魔導師「炎に負けてる……」
剣士「……消すか」
魔導師「ああ、駄目です!明かりはいります……!」
剣士「無茶言うな!」
青年「……ありゃ今何言っても一緒だな。こっちへ」グイッ
勇者「あ、う、うん……」タタ……
202 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 11:00:00.71 ID:j5+2mzeP0
青年「後ろ向いて……」
勇者「…… ……どう?」クルッ
青年「…… ……」ゴソゴソ、シュル……
青年「……光ってるな、間違い無く」
勇者「…… ……」チラ
青年「? ……ああ」
青年(剣士を見てるのか……確かに、あいつは『欠片』)
青年(光の剣に何かがあるとするのなら……あいつの身にも何か……)チラ
剣士「……駄目だな」
魔導師「ですね……仕方ありません、僕一人でやります」ハァ
青年「勇者様、これ持って……ちょっと待っててね」
スタスタ
勇者「あ、うん……」
青年「おい、二人とも」
剣士「? 何だ」
魔導師「青年さん、後で……」
青年「勇者様を見ろ……光の剣が光ってるんだ」
魔導師「……え?」クルッ
剣士「何?」クルッ
勇者「…… ……あ、えっと。うん。ほら」スッ
チカチカ
203 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 11:17:12.79 ID:j5+2mzeP0
魔導師「…… ……え」
勇者「……あ、あの、えっと」
剣士「いつからだ?」
青年「気がついたら……だが、ここに入ってから、じゃ無いか」
魔導師「剣士さんの魔法に反応した……訳では無いですよね」
勇者「それは……うん。今までこんな事なかったでしょ?」
剣士「…… ……」
青年「何とも無いのか」
剣士「俺か? ……ああ、特に……」
魔導師「……と、すれば、こっち」コン
魔導師「ですよね、この鉱石」
青年「……曾御爺様がこの鉱石を使って修理した、から? ……しかし」
剣士「鍛冶師が修理した部分は……紫の魔王と金の髪の勇者が」
剣士「対峙した時に、崩れ落ちたと聞いているが」
魔導師「…… ……しかし、貴方が何も感じない、のなら」
青年「そう考える方が妥当、だと言うのはわかるが……」
剣士「……見せてみろ」スッ
勇者「! 駄目!」バッ
剣士「!」
勇者「……ッ ご、ごめん、でも……ッ」
剣士「……俺の身に何かあれば、か」
剣士「気持ちは……ありがたい、だが」
魔導師「ですが……剣士さんは、あまり触れられない方が良いと思います、僕も」
剣士「……尚更、だ」
勇者「え?」
剣士「……黒髪の魔王。現魔王……と、俺は」
剣士「『触らない方が良い』だろうと、皆の見解も一致していた、が」
剣士「……これが、意味が無い……と、思うか?」スッ
勇者「で、でも……」
剣士「……勇者」ハァ
勇者「え?」
剣士「『俺たち』は何の為に旅をしている?」
勇者「……え」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「『魔王を倒す』……そして」
青年「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』だろう」
204 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 11:26:24.52 ID:j5+2mzeP0
魔導師「…… ……」
剣士「……お前達が色々と、俺が消滅しないように、と」
勇者「!」
剣士「模索して……くれている、のは知っている。気持ちはありがたいと」
剣士「素直に思う……『向こう側を否定する』事も」
剣士「別に……反対する訳では無い。だが」
剣士「この間の青年の『夢』の話を聞いて、尚更……思った」
魔導師「……避けて通れない、ですか」
勇者「魔導師!?」
青年「剣士」
剣士「……睨むな。あれは自分で話す事だ……お前が」
青年「…… ……」
魔導師「……?」
剣士「……俺たちは、確かに色々と否定して……来た、つもりだ」
勇者「つもり……?」
剣士「そうだ……青年のその夢の話にもあっただろう」
剣士「『あの時黒髪の勇者が、魔法使いでは無く僧侶を選んでいたら?』」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「魔王達の居る場所から、『干渉』出来てしまった。しかしそれは」
剣士「……『違う道』を歩んだように見える。だが、結局は」
剣士「それ自身を……自らの手で『否定』したのと同じだ」
青年「待て! ……そんな事を言えば、今の僕らの行動が意味の無い事になる!」
剣士「そうは言わん……否、言いたくない、と言うのが正解かもしれないが」ハァ
剣士「……変えられない部分もあるのだ、と言う事は……頭に入れておくべきだ」
魔導師「…… ……」
剣士「魔導師、さっき言いかけた話は何だ?」
魔導師「え?」
剣士「……海を渡っている時に。向こうで言うと言っただろう」
205 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 11:39:10.78 ID:j5+2mzeP0
魔導師「ああ……一人で来られたときは、魔物に会わなかったのですか、と」
剣士「……船の上で何度か戦闘はしたが」
魔導師「……そうですか」
剣士「それがどうした?」
魔導師「……いえ。魔王の復活に際しては、魔物が強くなり、数も増える筈なのに……」
青年「居たじゃないか、さっき」
魔導師「……まあ、そうですけど。でも赤ちゃんでしたよ」
勇者「…… ……」
魔導師「親なり、群れなりが寄ってこないうちに、とは思いましたけど」
魔導師「……赤ちゃん単独で、って言うのも……おかしいなぁって思いません?」
剣士「……まあ、そうだが」
青年「剣士も魔導師も……そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」
剣士「……すまん。話の腰を折ったな」
206 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/29(日) 11:50:50.08 ID:j5+2mzeP0
お昼ご飯ー
★
☆
★
210 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/30(月) 09:55:12.45 ID:0MS+rQVj0
☆
211 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/30(月) 12:36:24.15 ID:XZOojVpdi
★
212 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/06/30(月) 18:05:51.71 ID:BCT1F5B30
いま帰宅orz
明日も出かけるので、水曜日かな……
なかなか進めずごめんなさい
213 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/06/30(月) 19:48:30.57 ID:iigUjJF60
乙ー
無理せんでええやでー
214 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/01(火) 01:40:48.79 ID:aG/1OVX90
ほ
☆
216 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/01(火) 14:01:53.56 ID:0qN6OxCvi
★
217 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/01(火) 19:56:11.38 ID:XHQsidA20
☆
★
219 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/02(水) 02:19:21.70 ID:Ae46Y/Xr0
☆
220 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/02(水) 09:45:09.80 ID:HIfWSapb0
剣士「魔導師」
魔導師「は、はい」
剣士「『向こう側』では、后の炎で光の剣を鍛え、俺の力を注ごうとした」
魔導師「……はい」
剣士「だが結果……俺の中に光が吸い取られる様に見えた、んだったな」
青年「……おい」
魔導師「そう……です」
剣士「俺が全てを思い出し、実際に光の剣を……完璧に戻したのは」
剣士「……勇者が、魔王になってから」
魔導師「……はい。勇者様が黒髪の魔王様と対峙され、倒された……否」
魔導師「新たな魔王となられる時の衝撃で思い出された……んだと思います」
剣士「…… ……」
勇者「……剣士? 何を……」
剣士「心配するな。俺は……『向こう側の俺』と違って」
剣士「記憶が無い状態、の侭だ」
勇者「え?」
剣士「……知識として知っている、に過ぎない」
青年「……とは言え、だ。急にそんな話をしだしてさ」
青年「物騒なこと、企んでるんじゃないかって、心配するのは……」
剣士「当然とは言わんが……理解は出来る」
221 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/02(水) 10:16:35.31 ID:HIfWSapb0
幼稚園から呼び出しがorz
ごめん、中断!
222 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/02(水) 16:13:03.90 ID:WZ6zG0SAi
なんだろ
大したことじゃないといいね
223 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/02(水) 18:37:31.27 ID:o3othDBt0
お熱とかかな?
☆
225 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/03(木) 07:57:03.09 ID:P9JpXXmd0
★
226 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/03(木) 11:18:45.74 ID:zvdR+UZq0
勇者「剣士…… ねえ、やめて、よ?」
剣士「……魔導師、作業を続けてくれ」
魔導師「大体の想像はつきます。でも……無理です、剣士さん」
魔導師「僕には……出来ない」
勇者「…… ……」ホッ
青年「まだ早いんじゃない、勇者様」ボソ
勇者「え?」
魔導師「確かに、鍛冶師様の道具は持ってきました……でも」
魔導師「採掘できたと仮定しても、此処で剣を鍛え直す事はできません」
剣士「…… ……」
魔導師「道具も、火も……足りません。だから……」
剣士「……鍛えた剣に俺が触れ、向こう側を繰り返す、と言いたいのだろうが」
青年「このままでも充分、って言いたいのか」
勇者「!?」
剣士「何故光っているのか。俺が『欠片』で『魔王達の残留思念』そして」
剣士「……『光の剣』自体の欠片でもあるのなら」
勇者「え!?」
剣士「……でなければ、向こう側で俺が消滅し、剣が直った事実を」
剣士「どう説明つける」
魔導師「……今の侭で充分だと言うのなら、どうして僕に作業を続けさせるのですか?」
剣士「念のため、だ。俺の考えが……もし、真実に近いなら」
剣士「剣は……俺は、覚えて居るはずだ」
青年「? 何をだ」
剣士「……この鉱石が一時期、『一緒であった事』」
勇者「だ……ッ だから、って!」
剣士「推測だ。だが、試せる事があるのならばやってみるべきだろう」
剣士「……ずっと思っていた。今も思っている。気持ちはありがたい」
剣士「だが…… ……それに甘んじる事はできん」
227 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/03(木) 11:28:29.77 ID:zvdR+UZq0
剣士「『魔王を倒す』……記憶の無い俺には、それしかない」
魔導師「…… ……」
スタスタ、コンコン……
勇者「魔導師!?」
魔導師「……僕も一緒です。勇者様もでしょ?」コンコン……サラサラ
魔導師「魔王を倒す者…… ……それが『勇者』です」
青年「魔導師!」
魔導師「……どうして、癒し手様は亡くなったのです」
青年「!?」
魔導師「本当ならばもう少し、生きられた……否、エルフの長であれば」
魔導師「実際のご寿命だったのかもしれません。でも」
魔導師「……何を思って、貴方に託したのです、青年さん」コン……
青年「…… ……ッ」
剣士「……勇者、光の剣を」スッ
勇者「……ッ」ガシッ フルフル
剣士「駄々をこねるな…… ……お前は、世界を救う勇者だ」
剣士「あれほど、何度も言っていただろう」
剣士「『私は魔王に等なりたくない』と」
勇者「…… ……ッ」ポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「……駄目ですね。どれだけ削っても一緒だ」フゥ
剣士「形にはならんか……」
魔導師「本当に……凄いお方だったのだ、と想像はつきます。鍛冶師様……」
青年「…… ……」
剣士「……勇者」
勇者「!」ビクッ
剣士「俺達だけじゃ無い。お前の親だけでも無い」
剣士「……紫の魔王に関わった全ての者達……どんな思いで」
剣士「親しみを覚え、傍で共に過ごしてきた者達が」
剣士「……『魔王』を倒し、『世界』を救えと」
勇者「…… ……」
剣士「口にしてきたか……もう一度、考え……否」
剣士「『想って』……見て欲しい」
勇者「…… ……」ポロポロ
228 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/03(木) 11:47:53.35 ID:zvdR+UZq0
魔導師「剣士さん、これを」スッパラパラ……
剣士「…… ……」ギュ
青年「握りしめたからって、何か変わるのか」
魔導師「……考えつく限りをやってみるのは、悪い事じゃ無いでしょ」
勇者「ど……ッ どうやって、帰るの!?」
青年「!?」
勇者「剣士が居ないと船、動かせないよ! そ、それに……ッ」
勇者「わ、わたし、私達は、仲間でしょ……!?」ボロボロボロ
魔導師「……勇者様」
青年「…… ……」
剣士「船の運転ならば、青年でも出来る。それに……」
勇者「て、転移は!? 転移なんて……!」
青年「勇者様、こんな時に……!」
魔導師「シィ…… ……引き留めたい、のは同じでしょう」
青年「…… ……」
魔導師「僕達じゃ、無茶苦茶な……我が儘なんて、口に出来ないでしょ」ボソ
青年「…… ……ッ」
剣士「勇者」
勇者「……ッ」
剣士「願えば叶う」
勇者「……ッ う、ぇ……ッ」ウワアアアアアア
剣士「……光の剣を。勇者」スッ
勇者「……ッ ゥ、う…… ……ッ」スッ
青年「剣士! 待て……ッ」
魔導師「青年さん、お情際悪いですよ」
青年「魔導師、お前……ッ」ハッ
魔導師「…… ……」ポロポロ
剣士「…… ……」
勇者「……剣士」
剣士「……?」
勇者「決心が鈍る前に、早く……ッ」
剣士「……ああ」
青年「勇者様、僕の後ろに……何があるかわからないから」
勇者「う、うん……」
魔導師「……では、剣士さん……柄を握って………願ってください」
剣士「…… ……」ギュ……!
チカチカ……パァ!
229 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/03(木) 11:48:56.87 ID:zvdR+UZq0
お昼ご飯とおむかえー
昨日はごめん。七夕の笹貰いに行く日なの忘れてたorz
幼女は元気です……
230 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/03(木) 14:06:25.54 ID:MjR710Sui
そいつぁうっかりだね☆
231 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/04(金) 01:21:32.21 ID:f1qhj3ns0
★
232 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/04(金) 07:09:22.74 ID:rrLUqEQCO
☆
233 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/04(金) 17:54:08.14 ID:oaN5Wsad0
風邪引いてます( ゚д゚)
234 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/04(金) 20:28:16.49 ID:9UP6cdTN0
お大事に。
療養中
236 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/05(土) 13:48:19.94 ID:Y4La/M8+0
☆
237 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/05(土) 20:52:27.68 ID:fSqch3s80
★
☆
239 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/06(日) 15:03:57.63 ID:lsi2ms850
☆
★
っいやらしの魔石☆
242 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/07(月) 10:38:20.70 ID:xFv6Rsqfi
元気になーれ
★
244 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/07(月) 23:15:16.53 ID:DpHKatmki
保湿
保温
246 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/08(火) 07:10:27.03 ID:W6pylO4o0
☆
★
★
249 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/09(水) 02:14:50.23 ID:hWoOT3v7i
ホカホカ
250 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/09(水) 04:32:46.96 ID:3MW9bZep0
ほか弁
251 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 09:46:29.70 ID:TqMVtY4U0
おはようございます。
マウスがいかれて超不便。
今日はがんばる!
252 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:02:28.84 ID:TqMVtY4U0
剣士(握って……願う……)
剣士(……ッ)
剣士(……こ、れは……ッ く……ッ)
魔導師「ぐ……ッ」
魔導師(『まぶしい……ッ』)
シュウ、シュウ……ッ
勇者「あ、あ……ッ 光が……ッ」
青年「出るな、勇者様ッ」ガシッ
パアァァァ……ッ
剣士「………う、うわああああああああああああ!」ガシャン!
魔導師「あ、つ……ッ 剣士さん!?」
剣士(体が、動かない……ッ)
剣士(光…… ……灼かれそう、だ…… ……)
剣士「…… ……」
バタン!
勇者「剣士!……ッ 青年、離して……ッ」
青年「駄目だ、勇者様…! ……危ない!」
剣士(……声が、遠い。目の前、が…… ……暗、く…… ……)
……
………
…………
紫魔『ああもうまどろっこしい。身体かせ』
紫魔の側近『へ? ……ぅッ!』
剣士(……ッ あれ、は……!)
253 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:11:28.29 ID:TqMVtY4U0
インキュバス『……う、嘘だろう……何で、あいつが……こんなに ……!?』
紫魔の側近?『……来い、私の剣よ』
キュィイイン……
剣士(! 体が……ッ 引っ張られ……!)グッ
剣士(ぅ、うわ……ッ)
インキュバス『……な、そ、それ……は!? 魔王、さまの……!? な、何故……!?』
紫魔の側近?『確かに、これは私……魔王の剣だ。慣れない身体で魔法を使うと壊してしまいそうだからな』
インキュバス『君、何言って……!?』
剣士(……ぐ、う……ッ これは……紫の魔王の、魔力、か……ッ)
剣士(流れ込んでくる……これほど、強大な力、受け止めきれな……ッ)
紫魔の側近?『……語る言葉は無い。死ね、インキュバス』
グルン……ザシュ!
剣士(やめろ……ッ 体が……ッ ばらばらに……ッ うわああああああ!!)
インキュバス『な、か、身体が、動かな……ッ あああああアアアアア!?』
ブシュゥウウ……!
インキュバス『……ぐ、ぁ……ッ 、ァ……』
紫魔の側近?『娼婦は……教会か』クル
インキュバス『……し、ね……ッ そ、きっ…… !! 炎……よ!』
ゴォオオ!
紫魔の側近?『!』
剣士(ぐ、ぅ……ッ)
パキィイン!
剣士(うわああああああああああああ!?)
インキュバス『な……剣で、弾い……、た……!?』
紫魔の側近?『……そうか。インキュバスは他者の精気を吸い生きてる……生命力は』
紫魔の側近?『桁外れだったな』ガシ……グイ!
紫魔の側近?『放っておけば……何れくたばるだろうが』
インキュバス『ぅ……ッ お、まえ……誰だ……側近じゃ……ない、な……』
インキュバス『そ、の……剣、どこ、か……!!その、紫……!!』
剣士(紫、の……瞳……俺……否。紫の、魔王……か……?)ガクガク
剣士(……やめて、くれ……もう……ッ 体、が……ッ)
254 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:20:30.35 ID:TqMVtY4U0
??「……落ち着け。大丈夫だから」
剣士「!?」
??「しっかり目を開けて……深呼吸して」
剣士(だ、れだ……これ、は……ッ)
??「落ち着けって……見えないのか?」
??「仕方ないな……ほら、俺の『瞳』を使え……見えるだろ?」
??「これは元々、紫の魔王様の物だからな」
剣士(!? 紫の魔王の、瞳……!? まさか……ッ)
??「『見ろ!』…… ……あ、悪い。俺お前の名前しらねぇや」ハハッ
剣士「紫の魔王の側近!?」パチッ
紫魔の側近「……おう。誰かしらねぇけど。良く出来ましたー」
紫魔の側近「頭ナデナデしてやろうか?」
剣士「……お前が、何故……」
紫魔の側近「俺が聞きてぇよ。何がどうなってんのか、なんて……あれ?」
紫魔の側近「何でお前、俺の事知ってんの?」
剣士「…… ……」
剣士(あれは……紫の魔王……だ。銀の髪のあの男は、インキュバス……)
紫魔の側近「おい、聞いてる?」
剣士「…… ……」
剣士(紫魔の側近の体を借り、紫の魔王自らが……魔王の剣を召還して……)
紫魔の側近「おーい」
剣士「…… ……」
剣士(! ……これは、過去だ……『夢』!?)
紫魔の側近「もしもーし。聞いてるー!?」
剣士「煩い。ちょっと黙れ」
紫魔の側近「酷い!」
255 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:27:31.14 ID:TqMVtY4U0
剣士「……ここは……どこ、だ」
紫魔の側近「いや、だから俺が聞きたいって」
剣士「紫の魔王が、お前の体を借りて、剣を……俺を呼んだ、のか」
紫魔の側近「? ……お前を呼んだ?」
剣士「あ、いや……」
紫魔の側近「なぁんか訳ありっぽいナァ。まあ……暇つぶしには良いかな」
紫魔の側近「俺も紫の魔王様に乗っ取られて、どうしようもネェし」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「んで、ほれ……なんか忘れてねぇ?」
剣士「?」
紫魔の側近「助けてもらったんだから、お礼ぐらい言いなさいよ!?」
剣士「助け…… ……あ……」
紫魔の側近「まあ、お前がどこの誰サンかしらねぇけどさ」
紫魔の側近「両目塞いで、のたうちまわってっから」
紫魔の側近「優しい俺としては、ね? ……まあ、助けてやらなきゃ仕方ねぇだろ」
剣士「……俺の声が聞こえた……否、姿が見えた……のか!?」
紫魔の側近「……お前ね、鏡見た事ある?」
剣士「何……?」
紫魔の側近「そっくりなんだよ。紫の魔王様に」
紫魔の側近「絡繰りはこの際あっちの方にぽーいって投げといて良いんだけど、全然」
紫魔の側近「……ただでさえ、面倒ってか、ややこしい事態になってんだし」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「俺が一番ビックリしたね!自信あるね!」
紫魔の側近「……紫の魔王様にそっくりの他人が、目の前でのたうち回ってんだからさ」
256 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:35:52.16 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「助けない理由は無いだろ……放置しておいて後で」
紫魔の側近「紫の魔王様にばれたら、俺が紫の魔王様に殺される」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「お前、さっき『俺を呼んだ』と言ったな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ。教えてもらおうか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……チッ。なぁんか調子狂うナァ」ハァ
紫魔の側近「おい。お前名前は? 無いのか?」
剣士(話して、良いのか……しかし……)
紫魔の側近「無いなら俺がつけてやるぜ? 紫の魔王様二号!」
剣士「……剣士、だ」
紫魔の側近「あら。素直」
剣士「ここは……どこなんだ」
紫魔の側近「お前な……だから、それは俺が聞きたいって」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ?俺の名前、呼んだじゃねぇか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「同じ顔してる癖に、無口だねぇ……」ハァ
257 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:45:56.83 ID:TqMVtY4U0
剣士「多分……知っている。だが……」
紫魔の側近「お?」
剣士「話して良いのか……判断がつかん」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「恐らく……これは『夢』だ」
紫魔の側近「夢?」
剣士「しかし……」
剣士(俺が干渉すれば……未来は、変わってしまう……?)
剣士(……しかし。否…… ……)
紫魔の側近「わかったわかった、んな複雑な顔すんな」
紫魔の側近「……実際良くわからねぇからな。今、俺の体がどうなってんのか、も」
剣士「……紫の魔王に体を貸している、んだろう」
紫魔の側近「さっきも言ったけど乗っ取られた、が正解だ」
紫魔の側近「……本当に規格外なんだから、あの人は」ハァ
剣士「俺に……そんなあっさり話して良いのか?」
紫魔の側近「ん? ……んな、紫の魔王様と同じ面してる奴に」
紫魔の側近「そんな事聞かれるとは意外」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「それにお前、俺の『瞳』……ああ、いや。正確には紫の魔王様の、だけど」
紫魔の側近「持ってるだろ、今」
剣士「! ……そうだ、あれは……!」
紫魔の側近「何だろうなぁ。貸してやろうって気になったんだよ」
紫魔の側近「あ! 後でちゃんと返せよ!?」
剣士「……どう、やって」
紫魔の側近「…… ……さぁ?」
剣士「おい……」
紫魔の側近「何とかなるだろ……願えば…… ……」
剣士「願えば叶う、か」ハァ
紫魔の側近「……やっぱ知ってやがるな」クッ
紫魔の側近「まあ、良いよ。お前がどこの誰でも……そうしなきゃならねぇって」
紫魔の側近「思っただけだからな……俺の目も見えてるし?」
剣士「!」
剣士(……ま、さか……)
紫魔の側近「で、まあ……ここが何処か、だが」
紫魔の側近「俺にもわからん。わからんけど……まあ、さっきお前が言ったのが」
紫魔の側近「案外正解に近いのかもな」
剣士「……夢、か」
紫魔の側近「頭が回る様で何よりだ……俺には、紫の魔王様に体乗っ取られたからって」
紫魔の側近「んじゃあ、紫の魔王様の体おかりしまーす、なんてできねぇからな」
258 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:51:55.91 ID:TqMVtY4U0
剣士「…… ……」
紫魔の側近「今は何より、娼婦ちゃん助けないとな」
剣士「インキュバス……か……」
紫魔の側近「心配すんな。紫の魔王様が倒した……お前も見てただろ」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「見ようとしてみれば見れるはずだ、お前にも」
剣士「……紫の魔王の瞳……」
紫魔の側近「本当に便利ってか、規格外ってか……」
紫魔の側近「俺の体は玩具じゃねぇっつの」
剣士「魔王の剣」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……お前の体を借りるだけで無く、紫の魔王は……」
紫魔の側近「何でもありだ。あいつは」
剣士「…… ……」
剣士(まだ、この時点では……あれは、光の剣じゃない)
剣士(この後だ……紫の魔王が、力をコントロールできなくなって……)
剣士(……剣の魔力を吸い取り、そして……剣は)ハッ
剣士「まさか……」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……あ、いや……」
紫魔の側近「? 何だよ…… ……ッ」ウッ
剣士「どうし…… ……ッ」グゥッ
剣士(何だ……ッ 目の奥が、痛い……ッ!?)
259 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 10:59:50.11 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近?『……許せよ、娼婦』パァ
剣士(これは……紫の魔王の声……)
剣士(うぅ……ッ また、体が……ッ 引き裂かれそう、に……ッ)
紫魔の側近「え、ちょ……お、ぅえエエエ……ッ」
シュゥウン……
フッ
剣士(!? 何も、見えな…… ……ッ)
剣士(紫魔の側近の気配が……消えた……!?)
剣士(糞……ッ 頭が、回る……ッ)
……
………
…………
剣士「……う、ぅ……」
魔導師「剣士さん、剣士さん!」
青年「……どいて、魔導師……勇者様を」
魔導師「は、はい……! 勇者様、こちらへ……」ギュ
勇者「…… ……」ガタガタ
青年「……剣士?」ポウ……
剣士「……う、ぅ…」
青年(気を失ってる……が)
青年(……剣は?)チラ
勇者「せ、青年……剣士は?」
青年「……気を失ってるだけだろう」スッ
青年「…… ……」チャキ
魔導師(剣は……無事、いや、だけど……!)
青年「……『まだ光ってる』」
魔導師「…… ……」
勇者「『向こう側と、違う!……どうして……!』」
青年「『向こう側では』刀身は……完璧に治ってた…よね?魔導師」
魔導師「は、はい!后様の魔法の炎で……」
青年「『向こう側と同じになる事を望んで、剣士にこの剣を渡したわけじゃないだろう、勇者様?』」
勇者「『そ、そりゃそう……だけど……!』貸して……!」チャキン
勇者(前より、軽い……手にしっくりとなじむ……だけど)
勇者(……『光った侭……いや、それより、剣士は……!』)
勇者「……どうして」
剣士「う……ッ」ムク
260 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 11:04:51.73 ID:TqMVtY4U0
勇者「剣士!大丈夫!?」
剣士「あ、あ……」フラ
青年「……無理しない方が良い」
剣士「……どうなった?」
青年「こっちが聞きたい……とにかく、座れ」
剣士「………ぅ」
青年「話せるかい?」
剣士「ああ……大丈夫だ。剣は?」
青年「『まだ光ってるよ』」
剣士「『…… ……』」
魔導師「勇者様……」チラ
勇者「『何も……変わったように見えない、けど』」
勇者「でも……手になじむ様な気が……する」
青年「『剣士が手にした瞬間……眩い光があふれたんだ。それから……』」
青年「……紫色の、光が見えた。一瞬……だが」
魔導師「……あの光の中で良く見えましたね」
青年「わからない。そう感じた……から、見たように思ってるのかも知れないけど」
青年「魔導師は……どうだった?」
魔導師「『僕には……何も。だけど、前の様に……熱さは感じませんでした』」
青年「『前……向こう側、か』」
勇者「『お母さんの炎の魔力が……あるわけじゃ無いから』」
剣士「何かが流れ込んでくるのを感じた」
剣士「身体を……焦がすほどの光……しかし」
261 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 11:38:48.10 ID:TqMVtY4U0
剣士「青年の言うのは……お前の、見たのは」
青年「?」
剣士「……紫の魔王の魔力だ。俺の体に……急激に流れ込んで……否」
勇者「え!?」
剣士「引き寄せられたんだ」
魔導師「……ど、う言うこと、です?」
剣士「紫の魔王が、インキュバスと対峙した時……の夢を見た」
剣士「……紫魔の側近の身を借りた時だ。紫の魔王が魔王の剣を召還した、あの時……」
青年「!」
剣士「圧倒的な力だ……ッ ものすごい、魔力……!」
魔導師「…… ……」
剣士「体がちぎれて、ばらばらになるかと思った……それを、助けてくれたんだ」
青年「? 紫の魔王が、か?」
剣士「違う。紫魔の側近だ。あいつは……落ち着いて、見ろと言った」
剣士「……『紫の魔王の瞳』を貸してやるから、と」
勇者「え!?」
剣士「あれがどこだったかはわからん……が、俺は……紫魔の側近にあったんだ」
魔導師「…… ……」
剣士「……つじつまがあうんだ」
青年「…… ……」
剣士「干渉してしまったんだ。俺は」
魔導師「あ……!」
青年「……紫の魔王と、金の髪の勇者に別れたとき、か……!」
剣士「あの時点では、紫の魔王はすでに、剣の魔力を吸収していたはずだ」
剣士「……その『欠片』の俺が……召還の衝撃に引き摺られ、なおかつ」
剣士「紫魔の側近と接触した……瞳に、触れてしまっていた」
勇者「…… ……だから、彼は……あの時光を、視力を奪われた?」
剣士「……ああ」
青年「おかしいだろう。だったら、何故紫魔の側近はその話を皆にしなかった!?」
魔導師「……この時点、で確定してしまった、んですよ。それに」
魔導師「夢、であったのなら……覚えていなくても、不思議は無いです」
勇者「で、でも……!」
剣士「何を知っているんだ、と問われたが……」
勇者「え?」
262 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 11:44:27.85 ID:TqMVtY4U0
剣士「話す事をためらった。話してしまった事で、未来が……否、過去か?」
剣士「……ともかく。何かが変わってしまう事を恐れたんだ。だが……」
青年「ば……ッ か、ばかしい!! ……ッ すべて、予定調和だとでも言いたいのか!?」
青年「だったら、母さんはどうなるんだ! 母さんだけは……絶対に間に合わないんだ!」
魔導師「……落ち着いてください、青年さん……癒し手様はまだ、完全には失われて居ません」
魔導師「それは、貴方が一番ご存じな筈です」
青年「……ッ し、しかし……!」
剣士「勇者」
勇者「は、はい!?」
剣士「……もう一度、光の剣を貸せ」
勇者「え!?」
剣士「もう一度……否、今度こそ、だ」
魔導師「……まさか、思い出した、のですか」
剣士「……否、だ」
青年「剣士」
剣士「……だが、わかった。紫魔の側近に……触れ」
剣士「剣の魔力を含む……俺。『欠片』となった時、あいつの視力を奪い」
剣士「ここに……こうして、存在し『魔王を倒さなければいけない』と思う」
剣士「……『俺のすべきこと』がわかったんだ」
勇者「!」
263 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 11:53:51.45 ID:TqMVtY4U0
剣士「『紫の』魔王の魔力に当てられて……あれは、想像を絶する程苦しかった」
剣士「身体がばらばらになってしまうような感覚だった」
剣士「奥の奥から身を不気味な炎に焼かれ、焦がされていくような」
剣士「……歓喜と、悲しみの混じった言い様の無い、感覚」
魔導師「…… ……」ゾッ
青年「『引き摺られて』存在を失いかけたか」
剣士「……そうかもしれない」
剣士「『紫の魔王が召還した剣……それに引き摺られた瞬間』」
剣士「……『紫の』魔王の魔力が確かに歓喜した『のがわかった……あれは』」
剣士「『娼婦を苦しめるインキュバスを屠る悦……あの侭では』狂ってしまうかと思った」
剣士「『紫魔の側近に、瞳を借りた時』……それが、急に楽にしてくれた」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「あの時『あの侭であれば……俺はここにも戻れず』」
剣士「良くて消滅悪くて……『紫の』魔王に、取り込まれていただろう」
魔導師「『で、でも、そんな事になっていれば……!』」
青年「『歴史が、過去が……未来が、すべてが変わる!』……そして世界は」
勇者「自我を失った魔王の手により、消滅……『してた、かもしれない』」
勇者「そうなったら……私達は、存在しない……否、それどころじゃないね」
勇者「……生まれてすら、居なかった事になっていた、のかもしれない」
264 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 12:06:25.71 ID:TqMVtY4U0
魔導師「勇者様……」
剣士「……俺は、『紫の』魔王が、『金の髪の』勇者『と別れた時に』」
剣士「『紫魔の側近の視力を奪い、飛び出した、欠片』だ」
青年「『その時に……魔王の剣は』光の剣に『に変じたのだと』母さんから聞いている」
剣士「そうだ。光の剣は……『魔王の剣』」
剣士「代々の『魔王』の『魔力を恐らく……吸い取り、その加護に変じる』……魂の欠片『を宿した剣』」
勇者「魂の……欠片……?」
剣士「魔王は、勇者。勇者は、魔王……」
青年「…… ……」
剣士「『鍛冶師は確かに、凄い腕を持っていたのだろう。だが』」
剣士「……この鉱石では、やはり……修理など、出来ない」
青年「ああ…… ……ッ」グッ
剣士「光の剣を完璧に戻す方法……一つしか、ない」スッ
勇者「!」ビクッ
剣士「『勇者、剣を』……元は同じ物、だからな」
魔導師「…… ……ッ」
勇者「『剣士…… ……ッ』」
剣士「『否定するには……これしか無い。今度は……しくじらん』」
265 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 12:07:24.24 ID:TqMVtY4U0
お昼ご飯〜
俺も。
267 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:13:20.22 ID:TqMVtY4U0
青年「……勇者様」
勇者「…… ……ッ」
剣士「勇者。光の剣を」
勇者「……駄目だ、って言って、聞く?」
剣士「否」
勇者「だよね……うん。一度……覚悟した事……だよね」ス…
魔導師「剣士さん……やめてください、剣士さん!!」
青年「魔導師……!?」
魔導師「わかってます、こうするしか無いって、理解は出来ます!」
魔導師「でも……ッ」
魔導師(これじゃ、一緒だ……! 否定する、って決めたのに……!)
魔導師(これじゃ、向こう側と……『向こう側の僕』と……でも……!)
剣士「……これも、運命だ」
剣士「俺の中に、ずっと……魔王を倒さなくてはいけないと言う想いがあった」
剣士「この事だった『んだ』……『これが、俺の』なすべき事『。俺がここに、存在した理由』」
青年「剣士『…… ……ッ』」
剣士「具現化したのは、この為だったとするなら……」
剣士「それは勇者の、魔王の……『世界の』意思だ……この腐った世界の、腐った不条理を断ち切り」
剣士「新しい世界を紡ぐ為の……全ての意思だ」
剣士「『否定も、意味が無いのかもしれない。過去も未来も、変わらないのかもしれない。だが』」
剣士「『これが……俺の『役目』だ』……俺の全てを魔力に変えて、光の剣を復活させる」
青年「『…… ……ッ』」
勇者「……私達は、喜ばなくてはいけない!」ポロポロポロ
魔導師「勇者様!」
勇者「私は、『必ず魔王を倒す!』」
勇者「私は最強の盾になる……!この世界の崩壊を守る為の」
勇者「『私』は、最強の剣になる!この世界を……救い、新しい世界を紡ぐ為の」
魔導師「勇者様……ッ」ポロポロ
青年「…… ……ッ」スッ
魔導師「……青年さん?」
青年「剣士、約束だ」
剣士「?」
268 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:18:19.58 ID:TqMVtY4U0
青年「……僕はそんな感傷になんか浸ってやらないよ。さようならだって言ってやらない」
青年「『お前と飲んだ酒は美味かった……また、後で』」
剣士「…… ……」
青年「勘違いするな。次こそ終わらせる……だから、待ってろ」
青年「……僕も必ず、後から…… ……『今度こそ、完全に、消えてやる!』」
剣士「……違うなよ?」クス
青年「約束は守るもんだ」ポロポロ
勇者「……剣士」
剣士「……なんだ」
勇者「私は必ず、この……腐った世界を終わらせる」
勇者「だから、力を貸して欲しい」
剣士「……承知した」
魔導師「剣士さん、剣士、さ……ッ」ズルズルッボロボロボロ
剣士「『ここを出たら……北の塔へむかえ』」 グッ
魔導師「剣士さん………ッ」
剣士「『…… ……』」ギュ……ッ スゥ
パア……ッ
勇者「……ッ 眩ッ」
青年(……身を焦がす程の、光……ッ)
魔導師「剣士さああああああああああああああああん!!」
269 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:25:30.31 ID:TqMVtY4U0
剣士(叶う、ならば……ッ これが、最後……ッ)
剣士(……勇者。必ず、魔王を倒せ……ッ)
シュゥウン…… ……シュゥ、シュウ…… ……
グルル…… ……グルルル…… ……
……
………
…………
グルル……ガウ……グルルルル……ッ
魔王(何の声……だ?)パチ
魔王(あれ……また俺一人、かよ……)ハァ
グルル……
魔王「? ……声は、あれか…… ……て、何だありゃ」
魔王(氷付けの……魔物? ……あれは、ええっと……どこだ?)
魔王(奥に見えるのは洞窟……か?)
魔王(……洞窟、洞窟……ええっと……あ!)
魔王(父さんが行ったって言ってた……鉱石の洞窟、かな)
魔王(……まだ子供、じゃ無いか。あの狼……かな?)
魔王「……周りにいるのは親か? でも……何で……」
パアアアアアアアアアアア……ッ
魔王「うわッ!?」
魔王(まぶしい……ッ 何だ、光!? ……洞窟の中から……ッ)
魔王「び…… ……ッ くり、した…… ……なんだよ、もう……」
魔王(あ……あれか? 父さんが一回だけ、使ったって言う……光の魔法……?)
魔王(……んん? でもアレって、三つ頭の化け物って…… ……ん?)
270 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:35:15.49 ID:TqMVtY4U0
癒し手「ビックリしましたね」
魔王「うわあああああああああ!?」
癒し手「!?」ビクッ
魔王「……い、い。癒し手……ッ」
癒し手「す、すみません……」シュン
魔王「いや……うん、大丈夫……ビックリした、けど……」
癒し手「……金の髪の魔王、様でしょうか。あの光……」
魔王「俺もそう思った、んだけど……でも、多分違う」
癒し手「え……」
魔王「……三つ頭の、だろ?」
癒し手「あ……そう、でしたね」
癒し手「……氷付け、ですもんね…… ……ッ あ!?」
魔王「? ……!!」
魔王(氷の中で何か、蠢いて…… ……生きてたのか!?)
癒し手「……ひ、ぃ……ッ」
魔王「どうし…… ……ッ !?」
魔王(ぶ、分裂してる……!?)
癒し手「……周り、見て……ください……!」
魔王「! ……他の狼たちが……苦しんでる……」
癒し手「…… ……あの、氷の中の、魔物の所為、じゃ無いですか」
魔王「何か……感じるのか?」
癒し手「あ、いえ……流石に、わかりません……これが」
癒し手「『何時の時代の物か』もわかりませんし……」
魔王「あ…… ……そうだよな」
癒し手「ッ……あ、氷が……!」
魔王「割れた…… ……う、わ……ッ」
癒し手「!」フイッ
魔王(……二つに割れた頭が、他の魔物を食ってる……)
魔王(もしかして、これ……これ、が……!)
癒し手「いずれ…… ……あの、三つ頭……に、なるのです……ね……」
魔王「…… ……」
魔王「と、すれば…… ……これは、過去、か」ハァ
魔王(しかし……何で今更、こんな場面…… ……)
癒し手「……消え、ました」ホッ
271 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:44:34.33 ID:TqMVtY4U0
魔王「……ああ …… ……ッ ぐ、ぅ……!?」ガクンッ
癒し手「! 魔王様!?」
魔王(な、んだこれ……ッ な、にか…… ……ッ く、る……!?)
癒し手「魔王様!?」
金の髪の魔王「下がれ、癒し手」
シュゥン……
癒し手「金の髪の魔王様!」
魔王「…… ……ッ」
魔王(父さんの……否、違う……ッ これ、は……!)
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
癒し手「魔王様!?」
魔王(な、んだ……ッ 急に……ッ うぅ……からだ、が……ッ)
魔王(目が、回る…… ……ッ !?)
癒し手「魔王様、まおうさ…… ……ッ」
……
………
…………
后「…… ……ッ」ポロポロポロ
側近「剣士…… ……ッ」
后「わかってた……わかってた、けど……ッ」
后「…… ……」スッ
側近「后?」
后「……もう、必要無いわ。もう……あの子達を見守る必要は……無い」
后「魔王の……力を借りる必要も無い」
側近「…… ……ああ」
后「でも……私ももう、離れられないわね。魔力を使って、ああやって……見てた事が」
后「魔王を結果的には押さえていた、んでしょうけど」
側近「……最後まで確かめないで良いのか」
后「『北の塔へ』って言ってたでしょ」
后「……多分、剣士は最後の力で、あの子達を転移させたんだわ」
側近「姿が消えたから……そうだろう、とは思う、が」
后「あの子達が立てた仮説の通り。望む場所……行かなくてはいけない場所?だったかしら」
后「……でも、あの子達の目的地は……ここ、だもの」
側近「…… ……ああ」
后「すぐにでは無くても……勇者達は必ず、ここに来る」
側近「……ああ …… ……ッ !?」ビリッ
后「!?」ビリビリビリ……ッ
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
ビリビリビリ……ッ
后「! 魔王!? そんな、押さえているのよ!?」
側近「糞……ッ 魔王、落ち着け……ッ」
タタタ……ッ ドンドン!
使用人「側近様、后様!?」
側近「使用人、入るな!」
272 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 13:58:27.79 ID:TqMVtY4U0
使用人「し、しかし……!」
后「……ッ 駄目よ、使用人……貴女には……ッ」
使用人「后様!」
側近「大丈夫だ。どうにかする……だから、お前は離れろ!」
后「行きなさい、使用人!」
使用人「…… ……ッ」
パタパタパタ……ッ
ビリビリ……ビリビリ……ッ
后「ど……どうして、こんな、急に…… ……ッ」
后(やっぱり……一人、足りない……の!? ……癒し手……!)
側近「ぐ、う……ッ」
側近(俺と后だけじゃ、駄目なのか…… ……ッ 癒し、手…… ……!)
ビリビリ、ビリビリ……ッ
魔王「……ぅ、ウ……ッ」
后「魔王……まだ、駄目……ッ 駄目…… ……ッ」
側近「……く、そ……ッ 勇者……ッ」
……
………
…………
シュゥン……ッ
勇者「うわあああああああ!?」ドサッ
青年「……グッ」ドン!
魔導師「わああああ!」ゴン!
勇者「いったぁ……? ……ここ、は…… ……?」ムニ
勇者「……むに?」
青年「……勇者様、どいて」ハァ
勇者「うわあああ、ごめん!」ピョン!
魔導師「……ッ 北の塔!?」
青年「痛て ……」キョロ
青年「……最上階の、あの部屋か…… ……!?」バッ
魔導師「青年さん?」
??「…… ……」
青年「誰だ!?」
勇者「え!?」
魔導師「!? ……こおり……ッ」
青年「! 待て……ッ」
魔導師「え……?」
青年(僕は…… ……この気配、知っている……!)
青年「……おばあちゃん?」
273 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:08:41.53 ID:TqMVtY4U0
姫「おばあちゃんって呼ぶなって言ったでしょ……」
スゥ……
勇者「ぎ……ぎゃあああああああああああああああ!?」
魔導師「うわ……ッ」キィン……
青年「……なんて声出すんだよ」
勇者「お、お、おおおおおおおお、おばけ!? やだ……ッ」
姫「……失礼ね」ムッ
青年「仕方ないでしょ……透けてるし」ハァ
姫「まあ、でも良かったわ。見えるのね」
青年「……ちょっと、勇者様?」
勇者「…… ……ひ、ひ、ひめ、さま!? え!? 癒し手様の、お母さん!?」ガシッ
青年「あのね、しがみつくのは良いけど、痛い」
勇者「……だ、だって…… ……ん?」
チカチカ。チカチカ
勇者「! ……浄化の石が!」
青年「光ってる……」
魔導師「あ……ぼ、僕のも、です!」
青年「! それより! 光の剣は!?」
勇者「あ……!」
姫「そこにあるわよ。貴女の足下」スッ
勇者「あ、ああ……ッ」ガシッ
魔導師「! 治ってる……!」
青年「……当然だろ。剣士が…… ……命を、賭けたんだから」フゥ
姫「…… ……」
魔導師「……何が、なんだか」ハァ……チラ
姫「何よ」
魔導師「……いえ、あの。何か……ご存じないか、と思い……まして」
姫「……さっきまで、魔王と一緒に居たわ」
青年「! 僕が……戻った後、か」
勇者「父さん……」
魔導師「では……どうやって、ここへ?」
姫「さあ……話してた。彼と……でも、急に、魔王の姿が消えたの」
青年「消えた……?」
姫「ええ。忽然と消えてしまった。呼んでもどこにも居なかった」
姫「……一人は嫌だったのに。でも」
姫「ああ! ……そうだわ、光」
青年「…… ……」
姫「眩い……光が見えた。そうしたら……ここに居たのよ。多分」
勇者「多分?」
姫「……青年が私を呼んでくれたから、気がついた」
青年「まさか、とは思ったけど……でも、母さんの気配とは違う」
青年「……だから」ハァ
姫「……それ、魔王の剣ね」
274 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:16:48.32 ID:TqMVtY4U0
勇者「え…… ……あ、そうか……はい」ギュッ
勇者(軽い…… 刀身は、完璧に戻ってる)
勇者(なのに、前より軽い…… ……でも、何だろう)
勇者(……握ると。口の中が……苦い様な、気がする)ハァ
姫「……いえ、光の剣、だったわね、今は」
青年「おば……姫様は、何でここに……って、聞いてもわかんないだろうけど」
姫「当たり前でしょ」
青年「……何でここに居ると思う?」
姫「…… ……」
青年「貴女は、僕が……『王』だと。『お帰りなさい』と伝えるのが役目だと言っただろう」
姫「ええ」
青年「……でも、君は他の……紫の魔王様や、紫魔の側近の様に失われなかった」
姫「魔王とも話していたの。私にはまだ、他に役目が……あるんじゃないかって」
魔導師「他の……役目、ですか」
姫「それが何なのかわからない……だけど、一つだけどうしても……諦められない思いがあるの」
勇者「思い……?」
姫「……女剣士は紫魔の側近に会えたんでしょう?」
姫「私も、紫の魔王にもう一度会いたいと思ったわ。でも……それ以上に」
姫「会いたい人が居るの。その人は紫の魔王と違って、まだ失われて居ない」
青年「!? ……まさか……ッ」
姫「……それに、多分。必要な事なんでしょうね。私が今、ここに居る理由……」
姫「それに……感じるわ」
勇者「え?」
姫「……これは、魔王の歓喜」
魔導師「! まさか、魔王様が目を覚ましそう、なのですか!?」
姫「それ、貸して頂戴」
青年「え?」
姫「貴方達の持つその……蒼い石。癒し手の作った物なんでしょう」
275 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:22:25.55 ID:TqMVtY4U0
勇者「あ……で、でも!!」
姫「『彼ら』には必要な筈よ……貴方達にも、ね」
青年「…… ……」スッ
魔導師「青年さん!?」
青年「……母さんに会いたいと思っているのは、父さんでも、姫様だけでもない」
青年「僕だって……会いたいさ」
勇者「……あの……返して、くれます、よね?」スッ
姫「失礼な子ね。泥棒なんてしないわよ……それに、触れないしね」スッ
魔導師「え!?」
姫「……私の体は風になったのよ」
魔導師「……姫、さま」
姫「何……ほら、後は貴方だけよ」
魔導師「あ、は……はい」スッ
姫「私の側に置いて……」
青年「……これが、貴女の役目、なのか」
姫「わからない。でも……」
青年「…… ……」
姫「……こう、しなければいけない気がするの」
魔導師「あ、あの……僕たちは、どうすれば良い……んでしょう?」
姫「え? ……私は、知らないわよそんなの」
魔導師「え!?」
青年「……扉を開けて、進むだけだ。僕たちは……」ハァ
勇者「扉……」
青年「僕たちの道に後退、は無いんだ。前を向いてひたすら進んで行くしか無い」
姫「…… ……」
チカチカ、チカチカ
276 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:29:38.67 ID:TqMVtY4U0
青年「……あれだ。あの扉。入り口であり、出口……」
魔導師「……行くべき所へ続く扉、ですね」
勇者「…… ……」
姫「暖かいわね」スッ
姫「……触れない、け…… ……ど……」
スゥ……
勇者「姫様!?」
魔導師「消えた!?」
青年「……石もだ」
勇者「ど、どこに……!?」
青年「……行くべき所に行くだけ、だ」ハァ
勇者「……ねえ、私達、どうやってここに来たんだろう」
魔導師「…… ……剣士さん、でしょうね」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
魔導師「もう、戻れません……否、戻る選択肢なんて、ありません」
青年「拒否権すら無いんだ」
勇者「……うん」
青年「勇者様」
勇者「?」
青年「……君が、扉を開くんだ」
277 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:36:58.17 ID:TqMVtY4U0
勇者「……うん……ッ」
魔導師「……あっという間、でした」
青年「何だよ、こんな時に」
魔導師「……いえ。続きは、後にします。魔王……様を、倒した後で」
青年「…… ……」
勇者「開くよ……良いね!?」
魔導師「はい」
青年「……ああ」
勇者(……お父さん、待ってて。私は、もう迷わない)グッ
勇者(剣士と約束した。必ず……貴方を、倒す!)
魔導師(本音を言えば、すべての謎を解きたかった。この手で)
魔導師(……だけど、許されない。でも……それで、良いんだ。剣士さん……!)
青年(母さん…… ……会える、と願って良いよね?)
青年(剣士の思いを無駄には出来ない。僕たち三人で……!)
キィ……パァア……!
青年「……ッ 眩し……ッ」
魔導師「……うぅッ」
勇者「待ってて……お父さん!」
……
………
…………
278 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:42:50.82 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お別れだな、癒し手」
癒し手「魔王様…… ……ッ ……え!?」
シュゥン……!
癒し手「魔王様!?」
癒し手(消えた……! ……ッ)ハッ
癒し手「……とうとう、勇者様が……いらっしゃった……の、ですね……」
癒し手(私は……どうして、ここに……側近さん……!)ギュッ
金の髪の魔王「……お前は、どうするんだ?」
癒し手「え?」
金の髪の魔王「お前も『拒否』するのか」
癒し手「……どういう、意味です?」
金の髪の魔王「変わるかもしれない。変わらないかもしれない」
癒し手「…… ……?」
金の髪の魔王「結論が同じでも、歩んできた道は確実に違う」
金の髪の魔王「……だろう?」
癒し手「え……あの……? …… ……ッ!?」グイッ
癒し手(何? ……何かに、引っ張られ…… ……!?)
金の髪の魔王「……さようなら、だ。俺…… ……も、やっ ……終われ…… ……」
癒し手(金の髪の魔王様が、歪んで……どこに、行くんです!?)
癒し手(声が、出ない……ああ、目が……回る……ッ)
癒し手(側近、さ…… ……ッ)
グルグルグル……
癒し手(回る……ああ……ッ)
グイッ
癒し手(……誰……誰の、手……側近さん?)
癒し手(あ……抱きしめられてる……暖かい…… ……あれ)
癒し手(ゆらゆら…… ……揺れ、る…… ……)
姫「……悪かったわね、貴女の旦那様じゃなくて」ハァ
癒し手「!?」
279 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:48:33.31 ID:TqMVtY4U0
姫「……冗談よ、そんな顔しないで」クス
癒し手「! ……あ、なた……は!?」
姫「初めまして……て、変な感じね」
癒し手「……まさか、まさか!?」ギュッ
姫「癒し手……いえ、僧侶? ……私の、娘ね」
癒し手「お母様…… ……お母様!? どうして……!?」
癒し手「……ッ いいえ、いいえ……お母様……!」ギュッ
姫「痛いわよ……もう」クス
癒し手「あ、あ…… ぁ、ぁ……!」ポロポロポロ
姫「……泣かないの。貴女にはまだ、やる事が残ってるでしょ」
癒し手「え……」
姫「……間違えて無かったわね。私の役目は……これだったのね」
癒し手「役目……?」
姫「終わらせるための、私の役目……行ってらっしゃい、癒し手」
姫「……時間は無いみたい」
癒し手「!」
姫「一瞬でもあえて嬉しかったわ。普通に生きていれば、絶対に出来なかった事だもの」
癒し手「お母様……」ポロポロポロ
姫「……私は長になるもの。長を生む者……だから」
姫「抱けて、あえて……幸せよ。後は」
姫「……貴女の役目を終えなさい」ドンッ
癒し手「きゃ……ッ」
癒し手(お母様……! 待ってください、お母様!?)
クルクルクル……
癒し手(いや……ッ また、目が……!?)
……
………
…………
280 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 14:55:36.77 ID:TqMVtY4U0
魔王「……ゥ、ウ……ウアアアアアアアアアアッ」
側近「魔王……ッ 糞……ッ」
后「魔王! しっかりして、お願い……!」
魔王「アアアアア! ウアアアアアアア!」
側近「癒し手……もう、すぐだ……『もうすぐ、お前の所に……!』」ハァ
后「まだ早いわ……まだ、やることがある『! 諦めんじゃないわよ、側近!』」ゼェゼェ
側近「ああ……俺たちは」
后「……喜ばなくては、ならない……ッ ああ……ッ」グッ
側近「后!? ……ッ 手から、血が……ッ」
后(魔王の魔力、こんなに……圧力に、耐えられない……でも……!)
后「か、まわないわよ……ッ 平気……ッ」ポロポロポロ
側近「…… ……癒し手……ッ」
后「……うッ」キンッ
側近「……なんだ」 ハァ
后「来たわ……街の外れ、ね」
側近「!」
后「もう少し……もう少しだけ……耐えて、魔王!」
后「すぐに……すぐに、勇者が……!」
フワ……パアアアァ……
后「!?」フッ
側近「……な……ッ!?」フワン
后(! ……傷が、癒えた!?)
魔王「……ぅ、ウ……」
側近「こ、の……気配、は……!」
后「気を緩めないで、側近!!」
后(でも…… ……これは……ッ)
癒し手「……大丈夫ですか、側近さん、后様」
側近「…… ……ッ」
后「い……や…… ……ッ」
側近「癒し手!!」
癒し手「…… ……」
癒し手(私の、役目。私の……すべき、事)
魔王「…… ……」
癒し手「間に合い……ました。約束、しましたもん、ね」ニコ
281 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:01:09.45 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
勇者「……こ、こは」
魔導師「……『紫』色、の空」
青年「最果ての街……『だな』」
勇者「……前も、ここに?」
青年「『向こう側か? ……ああ。でも、ペンダントの力……だった筈だ』」
魔導師「『一人、足りない……のも』違いますね……寒ッ」
勇者「城は……あれか。歩けない距離じゃ無いな」
青年「『父さん達の時とも違う。』前后様の転移術で呼びつけられた、らしいからね」
青年「『違って当然、だ』」
魔導師「…… ……」
勇者「『剣士はここで……ここに? ……生まれた、んだよね』」
青年「感傷に浸ってる時間は無いよ『勇者様』」
魔導師「青年さん『……』」
青年「……君たちは感じないのか?」
青年「魔王の、気配……」
勇者「……ピリピリ、肌を刺すような」
魔導師「……寒さの原因は、それですね」
青年「……歓喜と、寂寥」
魔導師「僕たちは、喜ばなくてはいけない……」
青年「……そうだ」
勇者「行こう……時間が無い」
勇者「……姫様の……事も気になる。石の事も……だけど」
スタスタ
282 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:16:21.53 ID:TqMVtY4U0
勇者「……静か、だね」
青年「廃墟だからね」
魔導師「…… ……」
勇者「……城門だ」ピタ
魔導師「誰か……居ます」
青年「……わかってる、だろ」
使用人「お待ちしておりました、勇者様方」
勇者「……『使用人、だね』」
使用人「『はい』」
勇者「お母さんは……?」
使用人「……后様も、側近様も、玉座の間におられます」
使用人「『お話は……可能ならば、後で』」
青年「……可能なら、ね」
使用人「……どうぞ。ご案内致します」
キィ…
魔導師「う、わ……ッ」
青年「これは……見事だね。もっと禍々しいの想像してたけど」
勇者「……『覚えてないの?』」
青年「『流石にね』」
使用人「……剣士さん、は?」
勇者「…… ……」シャキン
使用人「!? ……ッ」
魔導師「説明は、後で……ですよ。可能ならば、ですが」
使用人「……か、し……こまりまし、た……」
青年「…… ……」
スタスタ
使用人「……どうぞ、まっすぐお進みください」
勇者「…… ……うん」
使用人「叶うなら、もう……二度と、相見えません事を祈ります」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
使用人「…… ……」ペコ
スタスタ、パタン
勇者「あっさり……だね」
青年「……言葉も出ない、て言うのさ」
魔導師「……勇者様、扉を」
勇者「…… ……うん」
グッ
283 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:24:33.27 ID:TqMVtY4U0
勇者「……ッ」
ビリビリビリ……ッ
勇者(扉の向こうから、凄い……凄い魔力が伝わってくる……!)
青年(……ッ これが、魔王様の……本当の、魔力……!)
魔導師(……終わるんだ。終わらせるんだ。必ず……!)
勇者「……行くよ!」
ギィ…… ……
癒し手「……ありがとうございます。勇者様、魔導師君……青年」クルッ
青年「母さん!」
魔導師(姫様……間に合った、のか……!)ホッ
勇者「お母さん……お父さん……ッ」
后「……ああ、勇者……ッ」ポロポロポロ
側近「青年…… ……大きく、なった、な」ポロポロ
癒し手「……何も、説明する必要は、無いはずです」
魔王「……ぅ、ウ」
后「!? ……剣士、は!?」
勇者「……こっちも、説明はしなくて……良いはず、だよ」シャキン
側近「!」
勇者「…… ……」ポロポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
后「……勇者、『今度こそ』世界を救いなさい!」
后「勇者は必ず、魔王を倒す……ッ」
側近「……癒し手『だけじゃない……皆の思いを』無駄にしないでくれ」
側近「腐った世界の、腐った不条理を……断ち切るんだ!」
癒し手「……その光の剣で、魔王様を貫くのです、勇者様!」
勇者「……ッ わかってる……ッ 私は、勇者……!」
284 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:34:33.43 ID:TqMVtY4U0
青年「勇者様、早く……!」
魔導師「勇者様!」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
勇者「あ、あ…… ……ッ」グッ
勇者(お父さん……ごめんなさい、私は……ッ)
勇者(魔王になんて、なりたくない……ッ!)
魔王「……ぅ、ウ」
勇者「うわああああああああああああああああああああああ!!!」
ザク……ッ
勇者「あ、あァ…… ……あ!?」ガクガクガク
勇者(わ、私……お、お父さん、を…… ……ッあ、あ …… ……!?)
青年「!」
青年(……胸を……一突き……ッ ……!?)
魔導師「やった……!」
魔導師(倒した……魔王様を、倒した!! ……!?)
后(魔王……ついに……これで……! ……!?)
側近(……やっと……終わる、のか……! ……ッ!?)
癒し手(魔王様……勇者様……! ……ッ !?)
パ、ア……アアアアアアアアッ
勇者「……ッ」
勇者(何……ッ …… ……光!?)
285 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:47:49.69 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
魔王「……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……あれ?お前、なんで居るの」
魔王「……え!?」
金の髪の魔王「……癒し手は、もう行ったぞ」
魔王「もう行った……て、え!?」キョロキョロ
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王(居ない……間に合った、って事……か?)
魔王「じゃあ、勇者は……」
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男も消えた。俺は、てっきり……」
魔王「……消えた?」
金の髪の魔王「ああ……正確にはいつの間にか居なかった、だが」
魔王「じゃあ……俺は、死んだのか? 終わった……のか?」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「父さん……?」
金の髪の魔王「……お前が、終わったのなら、俺も消える筈……なんだが……」
金の髪の魔王「……ッ !?」
魔王「? 父さ…… ……ッ」グッゴホゴホゴホ……ッ
金の髪の魔王「……魔王」スッ
魔王(な、ん……ッ 痛い……ッ ……ん? 胸……?)フッ
魔王「!?」ドクドクドク……
金の髪の魔王「……黒い、血?」
魔王「…… ……あれ」
金の髪の魔王「……な、何だ」
魔王「違う」
魔王(もう痛く無い……それに、これは血、じゃ無い……)
シュゥウン……ッ
金の髪の魔王「!」
魔王「え……」
剣士「…… ……ッ」スタッ
金の髪の魔王「……お前は」
魔王「剣士!? ……お前、なんで……!?」
剣士「……なんだ、これは」
286 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:53:04.79 ID:TqMVtY4U0
魔王「……俺が聞きたいよ」
金の髪の魔王「剣士……欠片、か」
剣士「…… ……何故、だ!? 俺は……ッ」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「……お前、死んだ……のか!?」
剣士「……解放したんだ。光の剣を完璧に戻すために」
魔王「!」
剣士「『向こう側』ではお前を……魔王を倒してからだった」
剣士「……終わらせる為には、光の剣を完璧に戻す必要がある。だから」
魔王「……なら、この傷は」
剣士「!」
金の髪の魔王「……勇者のつけた傷、か。だが……なら、何故……」
魔王「……こんな事は、あった……のか? 否、癒し手も、間に合ったんだろう!?」
剣士「何?」
金の髪の魔王「……ここに居た、と言う事は、そう言うことな筈だ」
金の髪の魔王「ここには……『特異点』しか来られない」
剣士「…… ……」
魔王「……でも……否、じゃあ、て言うか!」
魔王「『これ』は! ……この、傷は何だ……!?」トン
剣士「…… ……」
287 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 15:58:59.23 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お前の姿は、癒し手よりも前に消えたんだ」
金の髪の魔王「癒し手も、居るはずだ……なのに、何故……」
剣士「……紫の魔王は、失われたんだろう。紫の魔王の側近も」
剣士「そして、お前……金の髪の魔王と、俺……『揃っている』筈なのに」
剣士「……何故……」
『お……さ、ま…… ……、まおう、さま……!』
金の髪の魔王「!? ……なんだ?」
魔王「! 癒し手の声だ!」
『やめて……ッ 落ち着いてください、魔王様……ああ……ッ』
剣士「……ッ 何も、見えん」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「糞……ッ 何だよ、どうなってるんだ!? 勇者は、俺を……!」
魔王「魔王を、倒したんじゃ無いのか……ッ!?」
『魔王! やめて……もう……ッ く、ゥ……ッ』
魔王「! 后!」
魔王(糞……何が、起こってる……何が……!?)
魔王(どうすれば……!)
『勇者様! 勇者様……! しっかりしてくれ!勇者様……!』
剣士「青年……!」
シュゥン……
勇者「…… ……うわああああああああああああああああ!?」ドサッ
288 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:05:39.71 ID:TqMVtY4U0
剣士「! 勇者!?」
勇者「……へ? ……け、剣士!? 何で…… ……」キョロ
勇者「…… ……」
魔王「ゆう、しゃ……?」
勇者「…… ……」キョロ、キョロ
金の髪の魔王「…… ……勇者? ……何故」
勇者「……ッ きゃあああああああああああああああああああ!?」
魔王「…… ……ッ」クワンクワン
勇者「な、な、な、なにここ、どこ、なに、なんで同じ顔ばっかり……!?」
魔王「……お前もだから……」
勇者「あ! お父さん!? ……あれ、さっき、私、光の剣で……」ガシャン!
勇者「ぎゃああ!?」
剣士「……煩い。落ち着け」ハァ
魔王「……これ、か」トン
勇者「……ッ ひ、い……ッ」
金の髪の魔王「自分でやったんだろうに……」ハァ
勇者「……な、何、これ……どう、なって、んの……どういうこと……?」
魔王「誰も答えは持ってないみたいだぜ」ハァ
勇者「ちょっと待って……私も、死んじゃったの……?」
魔王「……何?」
勇者「お父さんを、刺、して……動かなく、なって……倒した、と思った……けど」
勇者「……そしたら、急に……ッ あばれ、出して……!!」
魔王「俺が!?」
勇者「……違う。光だ」
剣士「……光?」
勇者「そう、光……剣を突き刺したら、お父さんから、光が……!」
289 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:11:12.07 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「……俺は、どう……否、死んでない、のか?」
魔王「! 他の皆は……!?」
勇者「……私、多分、倒れた……んだと思う、けど」
勇者「皆……お母さんも、側近様も、癒し手様も……お父さんを止めようと……」
剣士「青年と魔導師は?」
勇者「……皆、だよ。皆で、お父さんを…… ……! 戻らなきゃ!」
金の髪の魔王「……待て、勇者」
勇者「え?」
金の髪の魔王「……お前は、生きているのか?」
勇者「……え?」
剣士「……魔王はともかく。俺も、金の髪の魔王も……すでに……」
勇者「!」
金の髪の魔王「もしくは…… ……お前は……」
勇者「な、何……」
金の髪の魔王「……もう、魔王になったか、だ」
魔王「!? な、何でだよ!? 俺、死んでないんだろ? ……ん?」
魔王「……いや、ともかく! 光の剣だって……!」
剣士「…… ……俺も、金の魔王も消滅していない説明もつかん」
勇者「まさか……何も、断ち切れなかった……の……?」
勇者「……まさか……『向こう側』を……否定したから!?」
290 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:16:32.83 ID:TqMVtY4U0
剣士「……ッ」
魔王「じょ、冗談じゃ無いぞ!? ……このままじゃ……ッ」
魔王(世界は、終わってしまう……!)
勇者「そんな……!」
勇者(何で……剣士を……犠牲に、してまで、がんばったのに……何で……!?)
勇者(どうして……ッ)
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男が消えた事と関係あるのか……」
剣士「消えた……?」
金の髪の魔王「勇者が生まれ、女魔王は姿を消したんだ」
魔王「あ、そういえば……」
勇者「女魔王?」
魔王「あー……えーと」
剣士「……『向こう側』の勇者、か」
魔王「ああ、そう、だな」
勇者「! ……魔王になる、選択をした、私……!?」
魔王「そういうことだ。金髪紫瞳の男は……お前の息子」
勇者「!?」
剣士「……!」
金の髪の魔王「お前と、青年の子だ」
剣士「……あいつ、話して居なかったのか」
勇者「…… ……え!? ……青年、知ってたの!?」
291 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:22:11.65 ID:TqMVtY4U0
勇者「……てか、剣士、知ってたの!?」
剣士「……自分の口から話す、と言うから……すまん」ハァ
勇者「私と……青年の、子……? ……次代の、勇者……」
魔王「…… ……」
金の髪の魔王「…… ……」
剣士「お前が、魔導師に惹かれているのはわかっていたからな」ハァ
勇者「!」カァ
剣士「……以上に、お前は……魔王になんてなりたくない、と言っていただろう」
勇者「あ……!」
魔王「……それは、仕方ないだろう。はいそうですかと受け入れられる訳じゃ無い」
魔王「しかも……勇者は、后や、青年や……剣士に。すべてを聞いて育ってきたんだ」
魔王「……対峙していきなり、今決断しないと世界滅びます、とか言われりゃ」
魔王「諦めもつくけどさぁ……」
金の髪の魔王「……すまん」
魔王「え、いや……謝る事じゃないけど、てか。謝られても」
金の髪の魔王「まあ、そうだな」
魔王「……切り替え早ッ」
勇者「…… ……ッ」グッ
魔王「勇者?」
勇者「……どっちにしても、このままお父さん放っておくと」
勇者「世界は……滅びちゃう」
金の髪の魔王「……俺たちが消えない理由はそれか」
魔王「え?」
金の髪の魔王「紫の魔王は確かに消えた……失われた、が」
金の髪の魔王「……俺と剣士がここに……居る以上」
金の髪の魔王「『腐った世界の腐った不条理』は終わらない……断ち切れない」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……形を変えて……また…… ……」
剣士「……否定は、できん、な」
魔王「お、おい……剣士まで……」
292 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:27:21.81 ID:TqMVtY4U0
勇者「…… ……」グイッ
魔王「!? お、おい、勇者?」
勇者「もっかい、突き刺して良い、お父さん」
魔王「へ!?」
金の髪の魔王「……おいおい」
剣士「勇者……!?」
勇者「完全に、お父さんを倒さないと、世界は……私は……ッ」ポロポロポロ
魔王「勇者……」
勇者「……その、前に」
魔王「……な、なんだ」
勇者「ぎゅー、ってして。ぎゅーって」
魔王「…… ……はい?」
勇者「ぎゅう! だっこ!」
魔王「は、はい!」ギュ
勇者「…… ……えへへ」ギュ
剣士「…… ……」ハァ
金の髪の魔王「……覚悟を決めるんだな、魔王」ハァ
魔王「死にたいわけじゃ無いけど……まあ、仕方ない、よなぁ……」
勇者「……あ、でも。私……すでに魔王になってるかもしれない、のか」
金の髪の魔王「……手のひらを見てみろ。勇者の印を……」
勇者「あ……そうか」スッ
魔王「俺のは真っ黒の侭だ」
金の髪の魔王「当たり前だろ」
魔王「……あ、そう……」
勇者「金色だよ……光ってる。ほら」ポロポロ
魔王「……ん」スッ
魔王「やっぱ、ぴったり合うんだな」ピタ
勇者「……うん」ピタ
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ
勇者「!?」
魔王「ウワアアアアアアアアアア!?」
剣士「な……ッ ん…… ……!!」
金の髪の魔王「!!」
……
………
…………
293 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:38:34.38 ID:TqMVtY4U0
后「……ぐ、ゥ……癒し手!」
癒し手「も、もう……力、が……ッ」
側近「癒し手……!」ギュ……ッ スカッ
側近「!?」
癒し手「……ごめんなさい。私に、実態は…… ……!! 側近さ……ッ」
魔王「アアア!」ゴオオオッ
側近「! ……ッ うわああああああッ」
魔導師「氷、よ……こお、り …… ……ッ」ハァ、ハァ……ッ
魔導師(だ、めだ……もう、魔力、が……ッ)
青年「…… ……ッ」ハァ、ハァ
青年(なんて、魔力だ……ッ これだけ、皆で……かかって、も……ッ)
青年(……勇者様、早く……気がついてくれ……ッ)
后「……魔王……ま、お……ッ」ゴホゴホッ
青年「! 后様……ッ」ポゥ……ッ
青年(駄目だ、僕ももう、魔力が……!)
癒し手「……何故……ッ 光の剣で、貫かれた、のに……ッ ……ッ」サラサラ……ッ
癒し手「!!」
癒し手(体が……維持できない……ッ ああ、私は、もう……今度こそ……!)
側近「……癒し……手 ……ッ」ゴホッ
癒し手(側近さん…… ……ッ)
魔王「『ウワアアアアアアアアアア!?』」
后「!」
后(魔王…… ……もう、駄目……ッ 世界、が……ッ)
側近(滅びて……しまう、のか……!?)
勇者「!」パチッガバッ
魔導師「……ゆ、う……しゃ、さま…… ……?」
勇者「…… ……」キィン……
魔王「…… ……」
青年「……勇者様の、体が……ひか、って…… ……?」
癒し手「……全き、光……?」
勇者「…… ……」スッピタ
魔王「…… ……」スッピタ
后(手のひら……勇者の、印……?)
側近(! ……急に、楽になった……!?)
癒し手「……あ……ッ」サラ…… ……
癒し手(体が……崩れるのが……止まった?)
バチバチバチ……ッ
294 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:47:31.18 ID:TqMVtY4U0
魔導師「あ……あ、ま……魔王、様が……ッ」
青年「目を、開く……ッ」
魔王「勇者は、魔王を倒す……『お前は確かに、俺の体を貫いた』」
魔王「魔王は勇者の光を奪い去る……そして」
勇者「そして……勇者は、魔王の闇を手に入れる」
青年「……勇者様?」
魔王「弱くもあり、強くもある……汝の名は人間」
勇者「…… ……私に」
勇者「私に、魔王になれ……と言う、んだね?」
パア……ッ
后「!」
側近(また、光った……ッ 違う!?)
癒し手「……いれ、変わる……違う!?」
青年「……吸収、してる。勇者様が、魔王様の……闇、を……!」
魔導師「……光が、消えていく……!?」
勇者「違う……光の行き先は、ここ」グッ……シャキン
魔王「光の剣……皆の魂の宿る、属性を移す魔法剣、だ……勇者」
勇者「…… ……」
魔王「もう一度、貫くのだろう」
后「魔王、貴方……!?」
側近「……正気、なのか……?」
癒し手「魔王様……!」
魔王「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切れ』!」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
勇者「……お父さん。ぎゅ、してくれて……ありがと」ブン……ッ
ザク……ッ
魔王「お前が…… ……望む、なら、いつ……だ……て……」ギュ
勇者「…… ……ッ」ギュ
295 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 16:56:35.17 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
金の髪の魔王「……ん?」
剣士「? どうした」
金の髪の魔王「何か聞こえないか」
剣士「……? ……否……別に」
シュゥウン…… ……
魔王「……愛してるよ、勇者」ギュ
剣士「…… ……」
魔王「ん? 堅い…… ……うわあああああああああああああああ!?」
剣士「…… ……」バキッ
魔王「いってぇ!?」
剣士「……もう一回死ぬか」
魔王「……不可抗力だ、不可抗力! ……おえぇ」
金の髪の魔王「……無事に終わった、か」
魔王「あ……后! 后は!?」
金の髪の魔王「勇者の次は后か……」ハァ
剣士「節操なし」
魔王「え!? いや、娘と奥さんだし!? おかしくねぇだろ!?」
金の髪の魔王「……俺も后には……お前の母さんには会えてない、って」
金の髪の魔王「教えてやった筈だけどな」ハァ
魔王「……あ……そうか」
剣士「……また、何か来た」ハァ
魔王「え?」
シュゥン……
紫魔「……む?」
金の髪の魔王「……え?」
剣士「何……?」
魔王「……あぇ?」
紫魔「……なんだ、揃いも揃って」
魔王「え、ええ!? いやいやいや!? アンタ消えたんじゃ無いの!?」
紫魔「そのはず……なのだが」
シュゥン……
紫魔の側近「おぉえええええええええ!」
魔王「うわあああああああ!?」
金の髪の魔王「紫魔の側近!?」
紫魔「遅いぞ、側近」
紫魔の側近「いやいやいやいやいや! お前、それは無いだろ!?」
魔王「…… ……」
剣士「……しっかりしろ」
魔王「いや、無理だろ」
剣士「…… ……そうか」
金の髪の魔王「どういうことだよ……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……まさか……ッ」
紫魔の側近「ん? ……ああ、んな深刻な顔しなさんな」
296 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:03:13.47 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「……ちょっと忘れ物、拾いに来ただけさ」
金の髪の魔王「忘れ物?」
紫魔「……やっと揃った、んだ」
剣士「…… ……」
魔王(なんつーか……すべての元凶が……揃ってる……ん、だよな、これ……)
紫魔の側近「やっと思い出したぜ、剣士」
剣士「……何をだ」
紫魔の側近「忘れたとか言っちゃう!? 俺の視力奪っておいて!?」
剣士「不可抗力、だろう」
魔王「…… ……」ジッ
剣士「……なんだ」
魔王「いや、何でも……」
魔王(あいつも殴られれば良いのに)チッ
紫魔の側近「……別に恨んじゃいネェよ」
紫魔の側近「おい、魔王様。さっさとしろよ!」
魔王「え、俺?」
紫魔の側近「お前じゃネェよ!俺の魔王様は、紫の魔王様だけだっつーの」
紫魔「……断る」
紫魔の側近「愛の告白じゃねぇええええええええ! さっさとしろ!」
紫魔「まあ、待て……一番厄介なのがまだだ」
紫魔の側近「えー……」
紫魔「……女剣士だけずるい! ……って、責められるのはお前だと思うが?」
紫魔の側近「何で俺なんだよ! ……ああ、でも姫様ならやりかねん」ハァ
魔王「……何の漫才?」
金の髪の魔王「お前な……」
シュゥウン……
姫「きゃ……ッ ……!?」
紫魔「……来た、な」
紫魔の側近「よーう、迎えに来たぜ、姫様」
姫「側近…… ……ッ 魔王!?」
タタタ……ッ
297 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:13:39.77 ID:TqMVtY4U0
紫魔「……死して尚、お前に責められるのはごめんだからな」ハァ
姫「紫の魔王……!」ギュッ
紫魔「……うん」ギュ
姫「……会えると、思ってなかった……ッ」ギュウ……
紫魔「何を言う……私達は、夫婦なのだろう」
姫「……ふふ」
紫魔の側近「……かんっぺきに俺らの事忘れてるよな」
剣士「こんな状況で気にされてもな」
魔王「……あれが、姫様!? 何、ツンデレなの!?」
金の髪の魔王「……なあ、側近」
紫魔の側近「ん?」
金の髪の魔王「后には……俺は、后には会えないのか?」
紫魔の側近「……心配すんな。お前ももうすぐ、完全に失われる」
紫魔の側近「俺も。紫の魔王様も……今度こそ」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……そう、か。完璧に失われたら……もう、何も……」ハハ……
金の髪の魔王「后…… ……」
魔王「父さん……」
紫魔の側近「何か忘れてるぜ、お馬鹿さん」
金の髪の魔王「え?」
紫魔の側近「……願えば叶う、のさ……楽しみにしてろよ」
金の髪の魔王「……?」
紫魔の側近「ここは……特異点だけがこれる場所。女剣士は……ありゃ、まあ」
紫魔の側近「……要するに、紫の魔王様が、無理矢理……俺のために呼んだだけだ」
金の髪の魔王「呼んだ……?」
紫魔の側近「……あいつは、そもそも完全に失われてる筈だった、んだとよ」
紫魔の側近「それをね。俺を思うあまり、うろうろとさまよってたわけ」
魔王「……それを、ここに呼んだ?」
金の髪の魔王「……本当に、何でもありなんだな」
紫魔の側近「お前の半身なんだぜ、あの化け物は」ハハッ
紫魔「誰が化け物だ、阿呆!」
紫魔の側近「間違えてねぇだろうが! つか、さっさとしろって!」
紫魔の側近「お前待ちなんだからね! 皆!」
紫魔「……ふむ、仕方ない。続きは後にするか」
姫「続き?」
紫魔「……あれほど私に逢いたいと願っておいて」
紫魔「『お前に指一本触れない』と言う約束が、まだ有効だとは言わせんぞ?」
姫「……仕方ないわね」クス
紫魔の側近「だからさっさとしろってえええええええええ!!」
紫魔の側近「いちゃいちゃすんのは後にして!」
姫「うらやましいの?」
紫魔の側近「違うわあああああああああああああああああ!!」
298 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:19:33.91 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「…… ……」ゼェゼェ
姫「相変わらずね、側近」クス
紫魔の側近「……もう良い。突っ込むのも疲れる。もう良い!」
紫魔「拗ねるな……さて。金の髪の魔王……私の、半身よ」
金の髪の魔王「……ああ」
紫魔「剣士、だったか……『欠片』よ」
剣士「…… ……」
紫魔「……我らは、今度こそ、本当に……完全に失われるのだ」
金の髪の魔王「……俺たちは、喜ばなくてはいけないんだな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……長居しても仕方ないだろ。ここは、不安定な場所なんだ」
紫魔の側近「囚われる訳にはいかん……おい、黒髪の魔王」
魔王「あ、え? ……何」
紫魔の側近「んな顔すんな……お前も、すぐだ」
紫魔の側近「『また、後で……な』」
シュゥン
魔王「あ……ッ」
紫魔「……案ずるな。お前なら……お前の娘ならば、出来る。必ず」
シュゥン……
姫「……ちょっとの間だけど、楽しかったわ、魔王」サラサラサラ……
魔王「姫様……」
姫「ありがとう……癒し手にあえて、嬉しかった」サラサラ……
サラ…… ……
魔王「…… ……」
299 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:24:34.97 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お前の后に会えるように、祈っておくよ、息子」サラサラ……
魔王「父さん……」
金の髪の魔王「あれほど早く、終わってしまいたいと思ったが」サラサラ……
金の髪の魔王「……いざとなると、ちょっと寂しいな」サラ……
魔王「あ……ッ」
サラ……
剣士「……魔王」サラサラ……
魔王「剣士!?」
魔王(……そうか。剣士も……)
剣士「…… ……」サラサラ……
サラ……
魔王(あいつは……最後まで無口だな……)ハァ
魔王(喜ばなくてはいけない、か……わかってる。わかってるけど)
魔王(……寂しい、な)ポロ
魔王(父さん……母さんに、会えると良いね……)
……
………
…………
300 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:29:21.29 ID:TqMVtY4U0
側近「奇跡だな」
癒し手「奇跡ですね」
側近「……まさか、一緒に逝けると思わなかった」
癒し手「私もです……ごめんなさい。約束、守れなくて」
側近「……否。こうして、帰ってくれた」
癒し手「……はい」
側近「抱きしめられなかった時は……少し、悲しかったけれど」クス
癒し手「今は、触れられます。こうして」ギュ
側近「……ああ」ギュ
癒し手「お母様に、会いました……会えました」
側近「姫様に……?」
癒し手「はい……向こう側と違って、体毎朽ちてしまった私を」
癒し手「……勇者様と、青年さんと。魔導師君の」
癒し手「……私が遺した、浄化の魔石を使って、具現化してくれたんです」
側近「そう……だったのか……」
癒し手「……抱きしめて、もらえました」
側近「……うん」
癒し手「夢の様です。貴方にも会えました」ギュ
側近「ああ……ッ」ギュ
癒し手「もう……離れません。死んでも、一緒です」
側近「癒し手……愛してる」
癒し手「私も。死んでも良いぐらい、愛しています」
シュゥン……シュゥン……
后「…… ……」
后(癒し手、側近…… ……わかる。もう)
后(あの子達は、完全に……失われた)
后(……空、飛んでるみたい。私も、もう……)
后(魔王……どこ? ……きっと、また会える、わよね……?)
后(……私達は、悠久の空へ還り、世界へと孵る……そうで、あるのならば)
后(……勇者。貴女は…… ……もう…… ……)
シュゥン…… ……
……
………
…………
勇者「!」パチ
301 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:39:05.00 ID:TqMVtY4U0
魔導師「勇者様!勇者様!」
勇者「……! お父さんは!? お母さん達は……!」ガバッ
青年「……急に動かない方が良い」
勇者「魔導師、青年……ッ大丈夫!?」
青年「……生きてるよ。不思議だけど」
勇者「……どうなった、の?」
青年「……勇者は必ず魔王を倒すんだろう?」
勇者「…… ……」
青年「君は……気を失って、目を覚ました後……」
勇者「あ……待って……そこは覚えてる」
青年「……二度。魔王様を貫いた、んだ」
魔導師「勇者の印は……如何です」
勇者「あ……!」バッ
勇者「……真っ黒、だ」
勇者「お父さんと、手を合わせて……それで。青年の言うとおり……」
勇者「……魔王になっちゃった、んだね」
魔導師「…… ……」
青年「いろいろと聞かせてほしい、ところだけど」ハァ
青年「結構長い事気を失ってたんだ……今はゆっくりと体を休める方が良い」
勇者「……大丈夫だよ。力が……あふれて来るみたいだ」
魔導師「…… ……」
勇者「そんな顔をしないで、魔導師……わかってる。これ見ても、まだ勇者だとは」
勇者「……言えないでしょ」
青年(勇者の印。真っ黒だ……あの時。勇者様の体は……否、勇者の印は)
青年(……確かに、魔王様の闇を……吸い取っていた)
魔導師「……す、みません……貴女は、あんなにも……ッ」
魔導師「魔王に、なりたくないと言っていた、のに……ッ」ポロポロ
勇者「……泣かないでよ。悔やんでも……仕方ない」
勇者「あのままお父さん、放っておく訳にいかなかったし、ね」
勇者「……ねえ、青年」
青年「ん?」
勇者「教えて……私の瞳の色は、何色なの」
青年「……紫だ。闇のように深い、紫の瞳」
勇者「…… ……」クス
魔導師「勇者様?」
勇者「……『最強の魔王』、か」
青年「勇者様……」
勇者「……もう、魔王で良い」
コンコン
使用人「お茶をお持ちしました……失礼します」
カチャ
使用人「ああ……もうお目覚めでしたか、ま…… ……勇者様」
魔王「……私はもう、魔王だ」
使用人「……はい。魔王様」
302 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:53:56.66 ID:TqMVtY4U0
魔導師「ゆ……魔王様……」
使用人「どうぞ、皆様……お座りください」
青年「……久しぶり、って言うべきなのかな」
使用人「そうですね……多分、魔導師様とも」
魔導師「!」
使用人「……『向こう側』の私と、でしょうけれど」
魔導師「……年表は、読んでいただけてますよね」
使用人「勿論です……その話は、追々。まずは」
魔導師「……僕は、魔になります」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
魔導師「そして、もう一度貴女の……今の貴女の持つすべての『知』を」
魔導師「僕に、授けていただけませんか」
使用人「……勿論です。私は……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私の持つすべての『知』……それから。私の『すべて』を」
使用人「貴方に、譲ります。魔導師様」
青年「!? ……まさか、向こう側と同じ様に、隠居するとでも言いたいのか」
使用人「……向こうの私と違い、1000年も生きていませんから」
使用人「寿命、はわかりませんけど。 ……ですが」
魔王「じゃあ……何故?」
使用人「……一言で言えば、疲れました」
魔導師「使用人さん……」
使用人「途中で放棄すれば、紫の魔王様にお叱りも受けましょうが」
使用人「……本当の意味の『知を受け継ぐ者』……それは、貴方でしょうから。魔導師様」
青年「…… ……」
使用人「ですが……すぐに、とはもうしません」ハァ
使用人「……悪い癖です。ですが……私も」
使用人「今知り得る、すべてを知ってから……終わりたい。そう思います」
魔王「……自分で命を絶つつもり?」
使用人「え? ……いえ。そんなつもりは」
使用人「……軽く失える命ではありません。先の事はまだ考えていませんが」
使用人「まだしばらくは……ここで、貴女に仕えます。魔王様」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
青年「……君は、どこに居たんだ」
使用人「はい?」
青年「……黒髪の魔王様達と……僕たちが対峙している間、だ」
使用人「……書庫に。魔王様のお役に立つであろう、書物などをまとめて降りました」
魔王「あの騒ぎの中?」
使用人「…… ……」
魔王「……確信してたの。私が……魔王になるだろうって」
使用人「……あの人数でぶつかって、黒髪の魔王様を倒せる自信がありましたか?」
魔導師「…… ……」
303 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 17:59:59.85 ID:TqMVtY4U0
使用人「手を取るしか無いだろう……そうしなければ、確かに無駄です」
使用人「相見える事の無い様……祈って、おりました。ですが」
魔王「……終わった事を言っても仕方ない」ハァ
魔王「これから……どうするか、だ。考えなくてはいけないのは」
使用人「…… ……」
魔王「青年」
青年「? ……何」
魔王「……私と、子供を作ってくれるね?」
青年「な……!?」
魔導師「……ッ」ブッ
魔王「……魔導師、汚い」
魔導師「す、すみません」フキフキ
青年「な、何を言ってるんだ、君は、魔導師が……!!」
魔導師「…… ……え?」
魔王「……『金髪紫瞳の男』だ。私の……息子」
青年「!? ……剣士に……!」
魔王「違う」
青年「え……?」
魔王「……いやなの?」
青年「え? ……いや、あの……ッ ま、魔王様!?」カァ
使用人(可愛い所あるんだな……)クス
青年「……何で笑うんだよ」
使用人「……いえ、別に」
魔王「魔導師も、反対しないよね?」
魔導師「え!? ……あ、はい、あの。それは、まあ……」カァ
魔王「……今日は、ゆっくり休もう。私も、ごめん」
魔王「多分……混乱してる。魔導師、魔に、て言うのは……」
魔導師「あ……! 魔王様さえ、おつらくないのでしたら、僕は……すぐでも」
魔王「…… ……」
魔導師「……ごめんなさい。時間がたっぷり、あるのだろう事は、わかっているんです、けど」
304 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 18:07:19.38 ID:TqMVtY4U0
魔王「私は良いんだけど……魔王になったから、かな」
魔王「……力が、あふれてるんだ。でも……二人とも、怪我とか……」
青年「……君が黒髪の魔王の闇を吸い取った時、かな」
青年「……不思議な光があふれた。君の体から出た『全き光』は」
魔王「全き光?」
青年「……母さんがそう言っていた。それが、剣に吸い込まれていったのは、見た」
魔王「! あ、そうだ……光の剣は……!」
魔導師「……大丈夫です。ここにあります」シャキン
魔王「! …… ……そう、か」
青年「気がついたら、皆癒えてたんだよ。僕も、魔導師も……后様や、父さんも」
魔王「……お母さん達は……」
魔導師「『悠久の空へ還り、世界へと……』」
魔王「……孵る、だったか」ハァ
青年「……だから、僕たちの体を気遣う必要は無いよ」ハァ
青年「何にしたって、僕は魔になんて変じられない、けどね」
青年「……君と、子供を作る……にしたって。僕は母さんと同じだ」
青年「この……城の中。魔王様の側じゃ……どうせ、それほど長く、は……」
魔導師「……それについては、あまり心配ありません」
青年「え?」
魔導師「……これを」コロン、コロン
青年「! 母さんの魔石……!」
魔導師「……はい。三つ、ちゃんとあります」
魔導師「研究します……貴方を、ちゃんと生かします」
青年「……僕はモルモットじゃないぞ」
魔導師「魔王様と子供を作るんでしょ」
青年「…… ……ッ」
魔導師「……無駄に死なせません。僕と貴方と……二人しか居ない、んですから」
305 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/09(水) 18:07:49.30 ID:TqMVtY4U0
お風呂とご飯!
終わらなかったorz
明日は出かけるので、また明後日ー!
姫と僧侶の母子ご対面泣けたわ。
超乙。
紫の魔王と姫様再会できて良かった〜
超乙!
308 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/09(水) 20:36:46.34 ID:fONsE5Bbi
また、繰り返しちゃうかー
終わらなかったっつーか
また終わらなかったつーか
引っ張り方からしてこの世代で終わるもんだと思ってたw
紫魔の側近カワユス
311 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/10(木) 00:36:57.25 ID:apeMNDhG0
超乙
思ったんだけど全き光が剣に宿ったのであれば次は勇者生まれないんじゃね?
何にせよどう転ぶのかが楽しみだ。
312 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/10(木) 11:21:48.95 ID:K5tglFeii
どーなんの、どーなんの?
313 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/10(木) 23:41:12.32 ID:jmqyAJg60
☆
314 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 10:23:29.97 ID:RrKAbwUR0
青年「……その石は、何処にあったんだ?」
魔導師「気がついたら……傍にあったんです。光の剣と一緒に」
魔導師「推測でしかありませんが……癒し手様は、多分この」
魔導師「石に残るご自分の魔力で……此処に」
魔王「姫様の力添えもあったんだろうね」
使用人「……姫様!?」
青年「ああ……北の塔で、ね。会ったんだよ……実態は無かったようだけど」
使用人「……まさか……ッ !! では、癒し手様は……!?」
青年「……見ていなかったから知らないな、そりゃ」
魔王「間に合ったんだ。『向こう側』と同じ……まあ、全く一緒じゃないけどね」
魔王「勿論。同じだったら否定した意味も無い、けど」
使用人「……ほ、んとう……に……?」
青年「よく知っているだろう。エルフは嘘は吐けない」
使用人「…… ……」
魔導師「姫様は『私の役目』だと仰って居ましたよ」
使用人「『役目』?」
魔導師「はい。北の塔であった時点では、何か……具体的には教えて下さいませんでしたけど」
魔導師「……癒し手様を、間に合わせる事。だったのかな、と」
使用人「…… ……」
青年「『親の愛』だろ」
魔王「え?」
青年「僕を思う母さんの気持ちとか。母さんを思う姫様の気持ち、とかさ」
青年「……否。会いたかったんだよ、どうしても。もう一度」
使用人「…… ……」
315 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 10:34:39.36 ID:RrKAbwUR0
魔王「使用人? どうしたの、険しい顔して……」
使用人「……『知を授ける』のが私の役目であるのなら」
使用人「やはり、私は……ここで、お暇すべき……否」
使用人「……舞台から、下ろされるのでしょう」
魔導師「え?」
使用人「時間は、あまりないのかもしれません……少々お待ちを」
スタスタ、パタン
魔王「……?」
青年「時間が無い、か」ハァ
魔導師「……長生きして貰います、ってば」
青年「死に急ぐつもり何てないよ。でも……」
青年(確かに、浄化の石があれば可能性はあるかもしれないが……)
カチャ、パタン
使用人「……お渡ししようと思っていた物は、これです。一部ですけど」スッ
魔導師「? これは、僕が小鳥に託した……?」パラ
青年「それにしては……随分古い紙だな。あれ、お前こんなに字、綺麗だったか」
魔王「見せて」パラパラ
青年「……後ろの方だけか? 急に読みやすく……」
使用人「…… ……」
魔導師「こ、れ……は……!?」
使用人「此処を、見て下さい」トン
使用人「……魔導師様から届いたあの日、雨が降って居て一部滲んでいたんです」
魔導師「…… ……ッ 違います! この、後半部分……これは、僕じゃ無い!」
魔導師「僕は、こんな事は……書いて無い……!」
青年「……え?」
使用人「……あの日、魔導師様から受け取ったのは、此方です」パサッ
魔王「……紙が新しいね」
青年「どういう……事だ?」
316 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 10:42:40.45 ID:RrKAbwUR0
使用人「先にお渡ししたのは、昔から城にあった物です」
使用人「……恐らく、これを参考にして、紫の魔王様は魔石を考案したのだと」
使用人「思われます」
魔王「……ん、ん?」
使用人「一番最後のページを見て下さい」
魔導師「……『闇の手』?」
使用人「恐らく筆者のサインです…… ……誰の事かは、解りますよね?」
魔導師「!」
青年「……! 『向こう側』の魔導師か!?」
魔王「え!?」
使用人「歴代の魔王様に寄って、人から魔へと変じた者は」
使用人「……新たな名を与えられて来た。と言うのはご存じでしょう」
魔導師「……では、これは……『向こう側』の僕が……魔に変じた後」
魔導師「書いた物だ、と仰るのですか!?」
青年「……まて、辻褄が合わない! 『向こう側』は……!」
使用人「全ての絡繰りを、完璧に紐解くことは……恐らく、不可能です」
使用人「ですが、今まで何度も何度も、繰り返し、繰り返し……」
魔王「…… ……」
使用人「……狂った世界が、紡がれ続けて来たと、仮定すれば」
青年「それでもだ! 永遠に廻り続けて居たとしても、おかしいだろう!」
使用人「……一分の狂い無く、同じ道を歩み続けてきたと」
使用人「言う保証も無いんです、青年様」
青年「…… ……」
使用人「『こちら側』……今回だけが」
使用人「特別に違う、と証明は出来ないでしょう?」
青年「そ……れ、はそうだが……」
魔王「……少しずつ、ずれが、歪みが生じて居た、と?」
使用人「勿論……その保証もありませんけど」
使用人「『世の中に絶対は無い』……んです。魔王様」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
使用人「……そう考える方が、解り良いでしょう?」
使用人「誰も、真実の答えなど、持っていません、から」
317 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 10:49:39.74 ID:RrKAbwUR0
魔導師「……やっぱり、時間が必要ですね」ハァ
使用人「…… ……」
魔王「使用人」
使用人「? はい」
魔王「さっき、魔導師に『知』を受け継がせるのが貴女の役目だって言ったよね」
使用人「はい。それが何か……」
魔王「……役目を終えたら、貴女は終わってしまうの?」
青年「魔王様?」
使用人「確証はありません、けど……ですが」
使用人「それが本当に私の役目であるのなら。可能性は高いのでは無いかと思います」
魔王「……だったら、魔導師を魔に変じるのはもう少し後の方が良い」
使用人「? ですが」
魔王「さっき自分で言ったじゃ無い。知り得る全てを知って終わりたい、って」
魔王「……それに、約束したでしょ。可能ならば、だけど……」
魔王「『また、後で』って」
使用人「……まあ、それはそうですが」
魔導師「僕も賛成です。全ては無理でも、可能な限り紐解いて見たい」
魔導師「……それには、貴女の力も必要です、使用人さん」
青年「……別に、魔に変じるのを待つ必要は無いんじゃ無いの?」
魔王「え?」
青年「研究だか実験だかするんだとすればさ。時間の事もあるけど」
青年「……魔力だなんだ、人で無い方が便利なんじゃ?」
魔王「青年が魔力……魔の気に晒される時間が増えるんだよ」
青年「!」
魔王「……はいそうですかって、子供なんか出来る訳でないでしょ」
使用人「……単純にその選択が、私の時間を増やすことに繋がるかどうかは」
使用人「わかりかねますが……」
318 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 10:55:05.34 ID:RrKAbwUR0
魔王「青年は、魔導師を魔へと変じさせといて」
魔王「使用人から知を受け継ぐのを待て、って言いたいんだろうけど」
青年「……言葉で説明するより、その方が確実で早いと思うよ」
青年「人だから、魔気に晒され続けても平気だって保証も無いんだ」
魔導師「……女剣士さんは、暫く此処に滞在されていた、んでしょう?」
魔導師「だったら……」
使用人「……此処にいた『人間』は女剣士様だけではありませんが」
使用人「確かに、青年さんの言う事も尤もです。暫く、の期間が」
使用人「何処までが良くて、何処までが駄目なのか……やはり」
使用人「保証の出来る問題ではありませんから」
青年「……それに、君は確実に『老いる』んだ、魔導師」
魔導師「…… ……」
青年「君は『向こう側』と『こちら側』の今……同時点、って考えても」
青年「既に年齢が違うんだよ……まあ、それは魔王様もだけど」
魔王「……だね。本来なら、もう数年後だった筈、だ」
魔王「でもね、青年。青年の身体が……!」
青年「……許可を貰えるなら、僕はこの城を離れる」
魔王「え!?」
319 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:01:53.53 ID:RrKAbwUR0
青年「戻るよ、必ず……それは約束する」
青年「……君がどうして『金髪紫目の男』の事を知っているかはおいておいて、今は」ハァ
青年「それでも……もう少しよく考えて欲しい。本当に僕で良いのか」
魔王「…… ……」
青年「本人が気付いてるか知らないけど」チラ
魔導師「?」
青年「……僕は君の気持ちを知ってる。魔王様」
魔王「…… ……ッ」カァッ
青年「魔王になっちまったからか知らないけど、しっかりしようと」
青年「……凄く背伸びしてるようにも見える」
使用人「…… ……」
青年「みんな揃って此処に居ても、昔と違って」
青年「世界情勢を知らせてくれる『船長』も居ないんだ」
青年「……僕なら、小鳥を飛ばせる。足があれば、戻って来る事もできる」
使用人「どうやって、です。転移石ももうありませんよ?」
青年「北の塔だ」
使用人「……北の塔? さっきも、そう仰って居ましたが……」
魔導師「最上階の部屋まで行き、扉……入口であり、出口ですね」
魔導師「それを開くと、望む場所……と言うか、行くべき場所、かな」
魔導師「そこに、出る事ができるんです」
使用人「!? ……確か、ですか!?」
青年「……今までは、ね。次はそりゃ、保証は無いけど」
青年「どうにでもなる話だ。金さえあれば、此処まで出してくれる船だって」
青年「……ああ、そうだ。船長で思い出した。あいつが居るじゃないか」
使用人「……女船長さんの息子、ですか」
青年「ああ」
魔導師「しかし……!」
青年「ベストな方法が無いなら、ベターで妥協する必要があるだろ」
魔王「…… ……」
青年「勿論、決めるのは魔王様だ。だけど……」
320 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:13:54.87 ID:RrKAbwUR0
青年「……身を案じてくれるなら、ね?」クス
魔王「……意地悪だな。反対する理由を全部消してくれたね」ハァ
青年「すぐじゃ無い。準備もいるし」
青年「……もう少し、話も聞きたいし。約束事を詰める必要もあるだろう」
魔王「…… ……」
魔導師「魔王様……」
使用人「…… ……」
魔王「……解った。だけど、此処からどうやって行くの?」
青年「…… ……」
使用人「『忘れてた』って顔に書いてありますね」
魔導師「……案外抜けてますね、青年さん」
青年「う、うるさい!」
魔王「ねえ、使用人。私が青年を吹っ飛ばす事って可能?」
青年「……吹っ飛ばす?」
魔王「あ、転移させる、かな」
青年「……物騒だな」ハァ
使用人「勿論、可能だとは思いますけど……そうすると」
使用人「先ほどの魔気に云々、の話が破綻しませんか」
魔王「剣士と何度か一緒に転移してるでしょ?」
青年「……ま、あ」
魔王「私も『なりたて』だし、そもそも魔王の力が大きくなるのって」
魔王「勇者を産んだ後、何だよね?」
魔導師「……まあ、そう、ですよね」
使用人「今のうち、ですか」
321 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:30:36.81 ID:RrKAbwUR0
青年「……自分が言い出したことだから、文句は無いけど」ハァ
魔王「どうせなら、早いほうが良い。お父さんが……死んで」
魔王「私が、魔王になって……何がどう変わって、何が変わらないのか」
魔王「青年に見てきて欲しい」
青年「……勿論だ」
魔王「私も……魔導師も、魔になってしまったら」
魔王「歳を取らない……で、良いんだよね、使用人?」
使用人「え? はい」
魔王「……だったら、特に期間は決めないけど。なるべく早めに帰って来てね」
魔王「『勇者』の事もあるし」
青年「……よく考えろ、って言っただろ」ハァ
青年「ああ、そうか」
魔導師「え?」
青年「……何年か城離れても、歳取らないんだよな……」ハァ
魔王「? 今使用人がそう言ったじゃん」
青年「…… ……」ジィ
魔王「な、何」
青年「……子供抱く趣味は無いんだけ…… ……ッ」
ブン……ゴン!
使用人「……魔王様、ティーカップは武器じゃありませんよ」
魔導師「割れてないですよ、大丈夫です」
青年「し……ッ 心配すべきは僕の頭だろ!?」
魔導師「……ぶつけられて当然です。相変わらず下品なんだから」ハァ
322 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:38:57.56 ID:RrKAbwUR0
青年「堂々と『子供作ろう』って宣言した魔王様と何が違うんだ!?」
使用人「……違いすぎます、下品です。青年様は」
青年「…… ……」
魔王「とにかく! ……青年の出発は明日!」
青年「え!?」
魔王「……だらだらしてても仕方無いでしょ」
青年「……まあ、そうだけど」
魔王「今日は……皆ゆっくりと休むべきだ。幸い」
魔王「皆、時間はそれほど、だけど。気にしなくて良い体なんだ」
魔王「……身体、になるんだ」チラ
魔導師「…… ……」
魔王「使用人、悪いけど、青年に色々準備してやって」
使用人「はい」
青年「……いや、別にこれといって無いけど」
魔王「お金とか必要でしょ。それに……その侭の格好で行かない方が良いと思うけど」
青年「僕? ……え、なんで」
魔王「目立つよ。貴方は」
青年「……かといってね」
魔導師「……少女さん達の事もありますし」
青年「少女?」
魔導師「船での移動が主になるなら、港街には必ず寄るでしょう?」
魔導師「……幼い子だとは言え、随分青年さんにご執心でしたしね」
青年「……覚えてるもんか」
魔導師「警戒は怠らない方が良いです。し、貴方、本当に」
魔導師「ご自分で思われてる以上に、目立つんです!」
青年「……でかい声だすな。解ったよ……」
323 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:45:45.61 ID:RrKAbwUR0
魔導師「それから……」
青年「まだあるのか?」ハァ
魔導師「エルフの弓、置いていって下さい」
青年「……は!?」
魔導師「世代交代した直後なんです。魔物は消えないだろうけど」
魔導師「……力も弱まるし、数も減る筈です。貴方は魔法にも長けてるし」
青年「おいおい、だからって」
魔導師「それ含めて目立つんですって……」
青年「……し、かし。これは……」
魔導師「……姫様の。癒し手様の……もっと言えば、盗賊様とかの」
魔導師「形見の、大事な物だってのは重々承知してます」
魔導師「……でも、少し研究と……できそうなら、強化させて下さい」
青年「……できるのか?」
魔導師「無茶はしないと約束します。し、無理そうなら諦めます。でも」
魔導師「……魔王様は、確実に……最強の魔王になられます。だから」
魔王「…… ……」
魔導師「次の、勇者様の為にも」
青年「……わかったよ」ハァ…… カタン
魔導師「……ありがとうございます」
使用人「では、青年様。こちらへ」スッ
青年「? 金なら明日で良いだろう?」
使用人「……目立ちますから。私に……良い考えがあります」
青年「……どことなく嬉しそうに見えるのは気のせいか」
使用人「はい」
青年「……厭な予感がするのも気のせいか」
使用人「はい」
青年「…… ……」
魔王「諦めなよ、青年」クスクス
青年「…… ……」ハァ、スッ
スタスタ、スタスタ
使用人「では、魔王様、魔導師様、失礼致します」
使用人「戻りましたら、お部屋にご案内致しますので」
パタン
324 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:49:16.71 ID:RrKAbwUR0
魔導師「……間違い無く何か企んでますね」
魔王「まあ、良いんじゃない」クス
魔導師「……あ、お茶お変わり入れましょうか?」
魔王「うん…… ……ねぇ、魔導師」
魔導師「はい?」
魔王「……本当に、良いの?」
魔導師「……はい」
魔王「…… ……」
魔導師「終わらなかったのは残念です。小さな頃から」
魔導師「……后様、お母様と離してしまって」
魔導師「あれほど、魔王になんかなりたくないって、言ってた貴女……が」
魔導師「こんな風な結果に……その。なってしまったのは……」
魔王「…… ……」
魔導師「申し訳無い、気持ちはあります、でも……」
魔王「……魔導師の所為じゃない。誰の所為でも無いよ」
魔王「剣士の思いとか、色々……そりゃ、悩んだし」
魔王「…… ……」
魔導師「…… ……」
325 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 11:58:23.74 ID:RrKAbwUR0
魔王「……私の、この手で。お父さんを、殺す……なんて」
魔導師「…… ……」
魔王「そうしなきゃいけない。そうしなきゃ、世界が……」
魔王「……わかっててもさ。はいそうですかって」
魔王「受け入れられるもんじゃない」
魔導師「……はい」
魔王「しかも、断ち切れなかったら……今度は、自分の子供に」
魔王「また、同じ事をさせてしまうんだ」
魔王「……お母さんも、こんな気持ちだったんだろうな」
魔導師「魔王様……」
魔王「でも…… ……私は、受け入れてしまった」
魔王「……そりゃ、そうせざるを得なかった。けど」
魔導師「…… ……」
魔王「こうなってしまった以上、今度こそ……」
魔導師「……はい」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王「明日、青年を見送ったら」
魔導師「? はい」
魔王「……貴方を、魔に変えよう」
魔導師「! ……はい」
魔王「私の……魔王の側近として。知り得る全てを知る頭脳として」
魔王「右腕として……傍に、居て欲しい」
魔導師「……勿論です」ニコ
魔王「…… ……」ドキッ
魔王(……ずっと、傍に、か)
魔王(…… ……)ハァ
コンコン
使用人「失礼します」
カチャ
魔王「! ……あ、ああ。お疲れ様」
326 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/11(金) 12:00:46.06 ID:RrKAbwUR0
お昼ご飯〜
おでかけるまでに時間があったら来ます。
327 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/11(金) 12:01:59.40 ID:CNu9WPu20
乙!
328 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/11(金) 16:27:31.13 ID:GJvlgaM20
今北産業
魔王が子供を産まなければ魔力が暴走しない→世界は守られるんじゃない?
>>329 暴走しないように子供に分けてるのかもよ。
333 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/12(土) 03:24:44.19 ID:OHD9LK9F0
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334 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj @転載は禁止:2014/07/12(土) 07:29:35.22 ID:PTOKODpa0
おはようー
土日は厳しいのでまた月曜かなー
335 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/12(土) 08:06:28.51 ID:AYPypq5A0
この話の夢を見るくらいハマってる
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338 :
名も無き被検体774号+@転載は禁止:2014/07/12(土) 20:15:38.89 ID:idNBfn2p0
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