魔王「真に美しい世界を望む為だ」【2】

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11 ◆Vwu55VjHc4Yj
魔王「真に美しい世界を望む為だ」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1383291095/

の、続きです
21 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 13:21:45.54 ID:ofgIcMWeP
王子「……転移、だったか」
后「え?」
王子「以前、剣士の姿が目の前で消えた……あの方法で」
王子「来た、んだよな?」
后「……はい」
王子「戦士は……青年、と。癒し手は?」
后「側近は魔王の城に残っています……癒し手と、青年は旅立ちました」
后「……この子が産まれてしまった以上、魔王は……」
后「癒し手は、その魔力の増幅に耐えられないと思います」
王子「……此処に、一緒に来れば良かった……とは、言えないか」
王子「お前も、もう……戦士と同じで……」
后「!」ハッ
后「王子様……あれは、何なんですか!?」
王子「あれ?」
后「……空が真っ暗でした。それに……!」
王子「『黒い物』 ……否、黒い靄、か?」
后「見えているのですか……他の人にも!?」
王子「ああ……違う。えっと……少し前、剣士が来たんだ」
后「え……」
王子「……とにかく、そっちのベッドに勇者を寝かせたら良い」
王子「何時までも抱いているのもしんどいだろう」
王子「……後で、もしくは、明日。城へ案内する」
后「え……で、でも」
王子「『何人も通すな』とは言うが、勇者とその母であるのなら」
王子「話は別の筈、だ」
后「……城で、何がおこっている、んでしょうか」
王子「……解らん。確かに俺はもう引退した身……」
王子「…… ……駄目だな」ハァ
后「王子様?」
31 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 13:42:13.54 ID:ofgIcMWeP
王子「……王に任せるつもりで、未来を託したつもりで居たのに」
王子「つい、首を突っ込もうとしてしまう」ハァ
后「……親、として心配するのは当然の事でしょう」
王子「しかし……結果として、王の……」
王子「…… ……」
后「王子様?」
王子「……王は病気なんだ」
后「先ほど、お大事に、と……仰ってましたものね」
后「……そう言えば、国王様もお体がそれほど強く無かったと聞いてます」
王子「…… ……違う。身体じゃ無い。その」
后「え?」
王子「…… ……ここ、かな」トン
后「……胸?」
王子「『心』だ」ハァ
后「!」
王子「…… ……戦士達から、聞いていないか?」
后「不安定、だとは確かに。でも……」
王子「急に『王』を押しつけたからな」
王子「……今まで、弟王子と二人して政から遠ざけていた癖にと」
王子「確かに……随分と反発された。それもあって」
王子「……俺は引退してから、関わらない様にしようとは……したんだが」
王子「…… ……否。俺が悪かったのかな」
后「王子様……」
王子「口ではそう良いながら……関わろうと、してしまっていたのかもしれない」
后「でもそれと……反発と、心の病……と言っていいのか解らないけど」
后「今の王の状態、は違う……でしょう?」
后「責任や原因の一端はあるかもしれません。だけど。結局は」
后「ご自身の弱さ……です。王子様」
王子「……なら、良いんだけどな」
后「お言葉に甘えます。勇者……寝かせて貰います」
王子「あ、ああ……お茶を入れる」
王子「……ゆっくり、聞かせてくれ」
41 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 13:44:48.84 ID:ofgIcMWeP
用事すませてこれたらまたー
5名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 13:50:01.72 ID:8rS+go7qP
なぜこのタイミングで新スレ?
61 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 14:06:49.47 ID:ofgIcMWeP
書いたつもりが抜けてた
512超えたから書けません、てなっちゃったんだ

ごめん
7名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 14:06:51.50 ID:cZSeOvw20
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8名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 14:22:30.22 ID:MlNvB/ggi
スレの容量オーバーやね。
あっちはもう書けない。
おつかれさん。
9名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 15:25:40.88 ID:X7pJEW98P
定番の容量オーバーか
101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 17:57:35.11 ID:ofgIcMWeP
……
………
…………

青年「お母さん……お母さん?」

キィ、パタン

癒し手「…… ……」
青年「……お母さん?」ソッ
癒し手(すぅすぅ)
青年(寝てる……)ナデ
癒し手「ん……」
青年(あ……)パッ
癒し手「……ああ、お帰りなさい、青年……あった?」
青年「うん……これと、こっち……二種類で良いんだよね?」
癒し手「……うん、あってる。ありがとう……貴方は優秀ですね」
癒し手「私と違って」クス
青年「良く間違えて、怒られたんだっけ、神父様に」クスクス
癒し手「うん……ああ、そこに置いておいて下さい」
癒し手「後は……私がやりますから」
青年「顔色が悪いよ、大丈夫。僕がやるよ」
青年「ご飯出来たら起こすから……寝てて良いよ?」
癒し手「うん……でも、もう目は覚めましたから」
青年「じゃあ、横になってな。それだけでも疲れは違うでしょ」
癒し手「……雨、振ってます?」
青年「え? ……ううん。振ってないけど」
癒し手「そう……ですか」ハァ
青年「振りそうな気配も無いけど……」
癒し手「なら、良いんです」
青年「? ……もう少し掛かりそうだし。起き上がれるのなら」
青年「お茶でも入れようか? ……庭のハーブが良く育ってた」
癒し手「ああ……良いですね。嬉しい」
青年「ん、じゃあちょっと待ってて」

スタスタ、パタン
111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 18:09:32.48 ID:ofgIcMWeP
癒し手「……よ、いしょ」フゥ
癒し手(……魔王様の城を出て、どれぐらい経ったんだろう)
癒し手(青年と二人の暮らしは、随分と……のんびり、ゆっくりで)
癒し手(時間の流れが解らない……否)
癒し手(一日の殆どを、寝て過ごしてしまっている。だからかな……)
癒し手(……青年が、良くやってくれているから)
癒し手(これが……幼子であったなら。側近さんや、使用人さんや……)
癒し手(……もしくは。后さん……誰かの、手を煩わせていたんだろうな)
癒し手(否。どころか……私の命が……もし、もう終わっていたなら)
癒し手(……青年。この短い間で、随分大きくなった)
癒し手(生き急がせてしまっているのは、私自身……)ハァ
癒し手(……ごめんなさい。青年)

カチャ

青年「お母さん?」
癒し手「……はい?何でしょう」
青年「ううん、何でも」ホッ
青年「すぐにお茶入れるよ」
癒し手「急いで、怪我とかしないでね」クス
癒し手(外から戻る度。私を呼んで……返事があるとほっとする)
癒し手(……癖になってしまっている、んだろうな)
青年「……昨日、何処まで聞いたっけ」
癒し手「目当てはそれですか」クス
青年「お母さんの話は、飽きる事が無いよ」
青年「……僕も、随分大きくなった。難しい話も理解出来る」
青年「だから、もっと教えてよ……お母さんとお父さんを」
青年「魔王様や……『世界』を」
癒し手「……やっぱり、貴方は勇者様について行きたいのですね?」
青年「違うよ……ついて行く、んだ」
癒し手「…… ……」
青年「魔王様の城で、産まれたばかりの勇者様を見たのは」
青年「……何年も前の様な気がする」
青年「僕は、エルフの血を引いてるから、成長の度合いが『人間』とは違うから」
癒し手「…… ……」
121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 18:22:33.99 ID:ofgIcMWeP
青年「……ついこの間の事なのに。でも」
青年「それで良いんだと思う。勇者様の成長は」
青年「人間と同じなんだろう?」
癒し手「……ええ。勇者様は『人間』ですから」
青年「……おかしな話だよね。『魔王』の子なのに」
癒し手「もう……発ったのかもしれませんね」
青年「始まりの国へ?」
癒し手「ええ。魔王様のお力が強くなれば……」
青年「……僕も一度、見に行きたいな」
癒し手「…… ……」
青年「あ……ッ じょ、冗談だよ!? お母さんを置いてなんて……!」
癒し手「良いんですよ、青年。貴方は、ずっと此処にお母さんと」
癒し手「一緒に居なくても良いんです」
癒し手「好きな時に、好きなところに行ってください」
青年「……いや、だってば」ギュ
癒し手「せ、いねん……」ポンポン
癒し手「どうしたんです、小さい子みたいに」クス
青年「……行かないよ、何処にも」
癒し手「勇者様について行きたいんでしょう……いえ、行くんでしょう?」
青年「まだまだ先の話だ。それに……その頃には」
青年「お母さんの具合だって、良くなってるかも……否、きっとなってるよ!」
癒し手「……エルフは、嘘は吐けないんですよ」
青年「願えば叶うんだろう!? 絶対大丈夫だよ!」
青年「元気になれるよ!」
青年「……だから。大丈夫。そうすれば、后様にお母さんをお願いして」
青年「僕は……安心して、勇者様と旅に出る」
癒し手「……そろそろ、良いかもしれませんね」
青年「え?」
癒し手「青年、私の荷物を」
青年「……?」
癒し手「エルフの弓が入っています……貴方が、旅に出る事を望むなら」
癒し手「私が、手解き致しましょう」
青年「お母さん、が……?」
癒し手「……人の子で言うと、10歳ぐらいでしょうか。今の貴方は」
癒し手「もう……大丈夫でしょう」
131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 18:34:28.83 ID:ofgIcMWeP
癒し手「私よりもエルフの血は薄い……でも」
癒し手「……貴方には確実に、強靱なお父さんの血も流れていますから」
青年「……お父さんは、人間の頃から、強かったんだよね」
癒し手「はい。魔法に関しては……何も、でしたけれど」
癒し手「……貴方の瞳が、産まれてから少しの間」
癒し手「緑にも蒼にも見えたのは……」
青年「……僕が、回復魔法も風の魔法も使える事と、関係ある、の?」
癒し手「関係があるとすれば……貴方が私のお腹に宿った時」
癒し手「……お父さんは、既に魔に変じていたから、かもしれません」
青年「…… ……」
癒し手「前后様……黒い髪の魔王様のお母様は、出産を機に」
癒し手「回復魔法が使えなくなった、と言っていました」
癒し手「『勇者』が前后様の『人間』の部分を奪って産まれてきたのだとすれば」
癒し手「……言葉は、悪いですけど」
青年「表現なんかどうでも良い……続けて、お母さん」
癒し手「だとすれば、回復魔法が使える……部分。『人間』が」
癒し手「前后様が失ってしまったと言うのも、解らなくは無いかなと思います」
青年「でも、お母さんは……まだ、回復魔法使えるでしょう?」
癒し手「使おうと思えば、多分……でも」
青年(……そんな体力が無い、のか。でも、だったら……!)
青年(弓を僕に教える事なんて……!)
癒し手「エルフ、が特別なのかどうかは解りません」
癒し手「だけど……考えように寄っては、青年」
青年「え?」
癒し手「貴方には『エルフ』『魔』『人間』の、三つの血が流れている事になります」
青年「…… ……」
癒し手「普通、人……『命』は。二つの加護を持つことは出来ません」
青年「でも、紫の魔王様は……『剣士』って男は」
癒し手「……そうですね」
青年「……御免。続き……聞かせて。考えよう、って?」
癒し手「側近さん……お父さんは元は人間ですから」
癒し手「……黒い髪の魔王様のお力で、魔に変じたとは言え」
青年「魔に変じた後で……僕が、出来た、からか」
癒し手「それを『血が流れている』と表現して良いのか否か……解りかねます」
青年「……言葉なんて、どうでも良いんだ、お母さん」
141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 18:43:40.55 ID:ofgIcMWeP
癒し手「でも貴方は確かに、水の加護を受けている」
癒し手「今は、真っ蒼な瞳をし、私と同じ……優れた水の加護を受けている」
青年「……ああ。確かに風の魔法は使えるけど、優れた加護がある訳じゃ無い」
癒し手「『素質』はあるのでしょうね」
青年「素質?」
癒し手「ええ。前に話した……紫の魔王の側近様。彼は……」
青年「ああ……回復魔法しか使えなかったのに、攻撃魔法も使える様になったんだよね」
癒し手「ええ。それに……金の髪の勇者様を送り出してから、始まりの国から」
癒し手「最果ての地……魔王様の城まで。転移していると聞いています」
癒し手「……あの方の場合は、紫の魔王様の瞳を与えられて居た、と言うのも」
癒し手「あるんでしょうけど」
青年「……『魔法なんて使い様』だったっけね」
癒し手「そうです……使用人さんも『素質』を持つ一人でしょうね」
青年「……防護壁、だっけ。それに、この……お母さんの石を包んでる、布も」
癒し手「ええ……随分助けられました」
青年「……『素質』って言うより」
癒し手「え?」
青年「お父さんの『人間』の部分を、僕が奪って産まれた、んじゃないのかな」
青年「その方がしっくりくるよ……だから、お父さんの緑の加護……」
青年「……風の魔法は、そのおかげ」
癒し手「……ふふ」
青年「な、何?」
癒し手「いえ……だとすれば、『親の愛』かな、と」
青年「え……」
癒し手「私……お母さんも、勿論お父さんも」
癒し手「貴方を、愛していますから。青年」ニコ
青年「……ッ な、何だよ、恥ずかしいな……!」
癒し手「…… ……」クスクス
青年「あ……! お茶! い、入れてくるから!」
青年「……ご飯も、作るからさ。その間も話続けてよ」
青年「お母さんが、しんどくなければ、だけど……」
癒し手「大丈夫ですよ……ええと、何処まで話ましたっけ?」
青年「…… ……」コポコポ
癒し手「青年、まだ頬が紅い……」クス
癒し手「ああ、そうそう……『人間』の部分を、でしたね」
青年「……お父さんは、変わりなかったの?」
癒し手「使い様、と言ってしまえばそれまでかな、とは思いますが」
癒し手「剣士さんにビジョンを送ったり、転移石を防護壁の外側から」
癒し手「発動させたり……やはり、彼も」
癒し手「『魔』に……『完全な魔』になった、のかもしれませんね」
151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 18:46:03.52 ID:ofgIcMWeP
おふろとごはんー!
16名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 22:29:05.82 ID:9ovUMGAz0
まだ続いてたのか
一旦読むのやめたら追いつかなくなってしまった...
もうすぐ一年だな
17名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 23:00:10.07 ID:LO749XnW0
見てるよ!がんばって!
18名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 06:37:10.70 ID:0NwQKKiWP
これまでの話

勇者「拒否権はないんだな」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1359954466/

魔王「ああ……世界は美しい」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1360896387/

勇者「俺は……魔王を倒す!」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1362110935/

魔王「私が勇者になる……だと?」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1364816859/

魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1366599266/

魔王「私が勇者になる……だと?」 【3】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1370104139/


勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1372895662/


勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1375328067/

勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1376663328/

勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1379112932/

魔王「真に美しい世界を望む為だ」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1383291095/

魔王「真に美しい世界を望む為だ」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1390363927/

イマココ


別作品
男「俺が……勇者?」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1363502289/
19名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 06:43:10.99 ID:0NwQKKiWP
話の流れの概要と、主な登場人物おさらい
お話のリンクは>>18

プロローグ三部作
■勇者「拒否権はないんだな」
■魔王「ああ……世界は美しい」
■勇者「俺は……魔王を倒す!」

紫魔王の話
■魔王「私が勇者になる……だと?」

今の流れ
■勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
■勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
■魔王「真に美しい世界を望む為だ」(←イマココ

プロローグ三部作と、紫魔王の物語まで登場した
(世代と話の順番は必ずしも同じではない)
≪登場人物≫
第ゼロ世代
【炎魔王の時代】
◇魔王パーティ
炎魔王、后、鴉、狼、(あとだれか…?)
◇勇者パーティ
戦士、魔法使い、僧侶(側近)

第一世代
【紫魔王の時代】
◇魔王パーティ
紫魔王、姫、側近、使用人
◇勇者パーティ
勇者(魔王)、僧侶(后)、魔法使い(魔導将軍)、戦士(側近)

第二世代
【金髪金目魔王の時代】
◇魔王パーティ
金髪魔王、后、側近、魔導将軍、使用人
◇勇者パーティ
勇者(魔王)、魔法使い(后)、僧侶(癒し手)、戦士(側近)

第三世代
【黒髪金目魔王の時代】
◇魔王パーティ
黒髪魔王、后、側近、癒し手、使用人
◇勇者パーティ
勇者(女魔王)、青年、魔道士(闇の手)

第四世代
◇魔王パーティ
女魔王、闇の手 (使用人は闇の手に知識を受け継ぎ引退)
◇勇者パーティ
勇者、青年、魔法使い

第五世代?
第四世代の勇者、魔法使いの子供は男の子と女の子の双子
平穏に暮らすも、魔導国の領主らによりとらわれ、一方は魔に、一方は光に転じた…?

次の輪廻?
201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 10:06:25.51 ID:7JBXnqHQP
青年「お母さんのエルフの血……否、ハーフエルフの血が」
青年「僕に……水の優れた加護と、回復魔法の術をくれた」
癒し手「……お父さんの人間の血が、貴方に風の魔法を使わせる、ですか」
青年「そう考えると、後付の『魔』の部分は……」
癒し手「……貴方に二つの加護の魔法を使わせてしまう、それが」
癒し手「『魔』の血の所為なのかもしれませんね」
癒し手「……血の一滴、細胞の一つ一つ全てが、変化するのだと言っていました」
癒し手「そうして、その全てが『歓喜する』」
青年「……暴走、だっけ」
癒し手「お父さんは……元々魔法に長けていた訳では無いですから」
癒し手「大丈夫でした、けどね」
青年「……后様は」
癒し手「身の内に押しとどめた……と、仰って居ました」
癒し手「女性の魔導将軍は、力を放出し、真っ赤な翼と成したんです」
癒し手「后さんは……同じは厭だ、と」クス
青年「后様も、『素質』を?」
癒し手「どうなんでしょう……遠見されたり、気配を追われたり……多分」
癒し手「転移術もお使いになれるでしょうね。でもそれは」
青年「……『勇者』を産んで完全な『魔』になった、から」
青年「でもそれだけじゃ無いよね、多分……」
癒し手「『母』は強いのでしょうね……さっきの話では無いですけど」
癒し手「『子を思う親の愛』……何にも勝ります。きっと」
青年「『使い様』か」
癒し手「『素質』と言う物が、どう言う物なのか、表現としてあっているのかも」
癒し手「わかりません。でも……本当に、様は『使い様』」
癒し手「使用人さんも、后さんも……魔導国……今は、書の街ですが」
癒し手「そこで育ち、基礎はしっかりとされています。だがら」
青年「んん……複雑だな。誰かが正解をこうだよ、これだよと」
青年「教えてくれる訳でも無いし」
癒し手「……そうですね」コホッ
青年「お母さん!?」
癒し手「……大丈夫、です。さあ、青年。食事を済ませたら」
癒し手「弓の練習をしましょう」
211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 10:30:54.38 ID:7JBXnqHQP
青年「……無理しないで」
癒し手「大丈夫です。口頭で伝える位しかできませんが」
青年「顔色、悪いよ……」
癒し手「……ねえ、青年」
青年「え?」
癒し手「私の命が終わるまで、何処まで伝えられるかは解りません」
癒し手「この小屋に来てから、ずっと……貴方には全てを伝えるつもりで」
癒し手「色々と話してきました。けど」
青年「お母さん!」
癒し手「……後は、ちゃんと自分の目で見て、感じて……知って」
癒し手「終わらせて、下さい」
青年「……お母さん!」
癒し手「腐った世界の腐った不条理を、断ち切って下さいね」
青年「…… ……」
癒し手「でも、まだまだ大丈夫です。ね?」
癒し手「……お腹、すきました。起き上がるの、手伝って貰えます?」
青年「此処まで運ぶ、から……待ってて」
癒し手「……ありがとうございます」
青年「さっき……雨が降ってるかって言ってたよね」
癒し手「ああ……なんか、そんな気がしたんですけど」スッ
癒し手「窓の外……良いお天気ですね」
青年「……雨は、嫌いだ」
癒し手「そうですか?」
青年「何となく……凄く、厭なんだ」
癒し手「何でしょうね」
青年「凄く……悲しい気分になる。何でだかは……わかんないけど」
癒し手「雨が降れば大地は潤って、綺麗な花が咲くんです」
癒し手「……雨上がりの空の美しさも、良い物ですよ」
青年「……お母さんがそういうなら、そうかもしれないね」
青年「待ってて、すぐに運ぶ」
癒し手「ええ。青年の料理は美味しいから、お母さん、毎日幸せです」ニコ
221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 10:45:09.19 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………

剣士「魔導師」
魔導師「わッ ……ああ、吃驚した……剣士さんですか」
剣士「……子供達が寝たから、飯にするだとか」
魔導師「ああ、シスターさんですか」
剣士「呼んで来い、とな」
魔導師「……すみません。忙しいでしょうに」
剣士「別に構わん」
魔導師「北の街はどうでしたか」
剣士「……此処と変わらんな」
剣士「以前は造船もしていたと聞いていた……が」
魔導師「え?船?」
剣士「ああ……今は材料も、人出も足りんらしい」
魔導師「……へぇ」
剣士「で、お前は此処で何をしてるんだ」
魔導師「あ……えっと。一応、片付け……を」
剣士「……本を広げて、片付けか」
魔導師「……ご免なさい」
剣士「別に俺に謝る事じゃ無いだろう」
魔導師「魔石……」
剣士「…… ……」
魔導師「……魔石を、作る人はもう、居ません」
剣士「……まあ、そうだろうな」
魔導師「どころか、鍛冶をする人も」
剣士「だから『片付け』なのだろう?」
魔導師「はい。此処は……潰して」
魔導師「子供達の遊び場にするそうです。だから」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「?」
231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 10:54:47.76 ID:7JBXnqHQP
魔導師「……こんな事、剣士さんに話して良いのか解らないけど」
魔導師「僕、鍛冶を学びたいんです」
剣士「…… ……」
魔導師「教えて貰える大人は皆死んでしまったし」
魔導師「……魔石ですら、もう……皆、忘れようとしてる」
剣士「…… ……」
魔導師「どうにか、此処……残せないかなって思ってるんですけど」
剣士「誰も耳を貸さん、か」
魔導師「……仕方無いとは思うんですけど」
魔導師「解ってるんですけど……」
剣士「息子……村長や、誰かに話してみたのか」
魔導師「いえ。まだ何も……子供が何を、って言われるの、目に見えてますし」
魔導師「……確かに、僕はまだ……子供ですし」
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さんは、書の街に行ったことがありますか」
剣士「『魔導国』の頃になら……否」
剣士「ここへ来る前に寄った。図書館が新しくなったと聞いたからな」
魔導師「そうですか……」
剣士「それがどうした」
魔導師「……いえ。僕もいつか、行きたいなと思って」
剣士「……魔法を志す者には、憧れの街『だった』んだそうだな」
魔導師「らしいですね……僕には、あんまりピンと来ません」
魔導師「……この村の人達は『書の街』の名前ですら……嫌がります」
剣士「解らんでも無い」
魔導師「……あの、剣士さ……」

タタタ……!

シスター「剣士さん! 呼んで来てって言ったのに」
シスター「……何話し込んでるのよ、もう」ハァ
剣士「あ、ああ……悪い」
シスター「魔導師も! ……ああもう、片付けてって頼んだのに……」
魔導師「……御免、でも!」
シスター「ああ! 本まで持ち出して……!」
魔導師「ちゃ、ちゃんと片づけるよ!戻すから……」
シスター「当然です! ……でも、先に食事にするわよ」ハァ
241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 11:01:04.19 ID:7JBXnqHQP
剣士「……行くぞ、魔導師」
魔導師「あ……はい。剣士さんも一緒に?」
シスター「アンタを待ってたのよ!」
魔導師「ご、ご免なさい」
シスター「……ねえ、魔導師」
魔導師「え?」
シスター「本を読むなとは言わないけど、鍛冶場はね、もう……」
魔導師「わ……解ってる、てば!」

タタタ……

シスター「あ……」
剣士「……彼は此処を残したいんだろう」
シスター「……興味を持ってる事は知ってるわ」
シスター「幼い頃から、魔石の生成に成功したり」
シスター「……鍛冶を生業にする大人達を見て育ってきたんですもの。でもね」
シスター「もう……必要無いの。いえ……無理なのよ」
剣士「教える者が居ないから、か」
シスター「それもあるわ。でも…… ……忘れたいの。皆」
剣士「…… ……」
シスター「魔法剣に拘っていた村長さんも死んでしまった。技術だって」
シスター「どんどん、廃れていくの。もう……」
剣士「…… ……」
シスター「……此処は、子供達の為に遊具を置くのよ」
剣士「魔導師に聞いた」
シスター「兄や、魔導師もそうだけど……『子供』は」
シスター「この村を守る為に力をつけようとしてる」
シスター「……それで良いのよ。今は、それしか出来ないの」
剣士「……縛られるのが厭だと言う者も居るだろう」
シスター「そりゃね。魔導師は……反抗期、だろうし」
シスター「……でも、この村を、未来を守っていくのは子供達自身よ」
シスター「自分の身を。大切な存在を……この、村を」
シスター「足場を固めないと、他の何も出来ないわよ」
251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 11:08:37.02 ID:7JBXnqHQP
剣士「……言っている事は解る、がな」
シスター「今はもう、殆ど旅人なんて来ない」
剣士「? ……ああ、そう言えば……船を見ないな」
剣士「定期便は復活したんだろう?」
シスター「乗客が居なければ、船を出しても仕方無いでしょう?」
シスター「……そう言う事よ」
剣士「……お前、は」
シスター「夢を壊したくなんて無い。やりたい事をやらせてあげたいわ。でも」
シスター「……望んでも、願っても……無駄な物は無駄」
シスター「それを……教えてあげるのだって大人の……『親』の役目でしょう」
剣士「…… ……」
シスター「さあ、行きましょ」
剣士「……ああ」
シスター「あ……」
剣士「え?」
シスター「流れ星? ……まだ明るいのに」
剣士「……西の空」
シスター「……真っ暗よね、向こう。最近ずっとそうだわ」
剣士「……あの、光……は……」
シスター「な、何よ」
剣士(始まりの国? ……勇者か!?)
剣士「…… ……」
剣士(産まれたのか……否。后か!)
剣士(……勇者を連れて、転移した……のか)
シスター「ちょ、ちょっと。剣士さん?」
剣士「! ……否、何でもない」
剣士(……とうとう、か)ハァ
シスター「どうしたのよ……蒼い顔して」
剣士「……そうか?」
シスター「え?」
剣士「……喜んでいるんだ」
シスター「は!?」
剣士「喜ばなくてはいけないんだ……俺達は」
261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 11:18:40.09 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………

近衛兵「止まって下さい。お嬢さん、申し訳ありませんが、今城には……」
后「立入禁止、と言うのは伺っております」
王子「……王に謁見を求めて、来られたんだ」
近衛兵「王子様! ……聞いております。知人が訪ねて来られたと」ハァ
近衛兵「しかし……」
后「……この手のひらの文様をご覧下さい」スッ
近衛兵「え? ……!」
后「今は起きております……どうぞ、瞳の色を」スルッ
近衛兵「!!」
后「……勇者をお連れしました。どうか、王にお目通りを」
后「私は……『魔法使い』と申します」
王子「彼女も……戦士と僧侶……それに、『勇者』と旅をした」
王子「『帰還者』の一人だ」
近衛兵「…… ……ッ」
后「この子は、間違い無く『勇者』です」
后「……『魔王』は復活します」
近衛兵「ま、待ちなさい……待って下さい! おい、誰か!」
后「…… ……」
王子「この女性の身元は俺が保証する。王に謁見の許可を」
近衛兵「……す、すぐに、王に伝えて参ります!」

バタン!

后「……宜しかったんですか、王子様」
王子「ん? ……まあ、俺まで通して貰えるとは思ってないけど」
后「…… ……」
王子「そっちこそ……良かったのか。魔法使いだ、と」
王子「……『帰還者』だと、明かしてしまって」
271 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 11:26:58.20 ID:7JBXnqHQP
后「……希望になるでしょう。その方が」
后「この、黒い靄……」スッ
王子「……俺には、解らないけどな」
后「何かは解りません。でも……剣士が言っていた様に」
后「……確かに、地下から感じます」
王子「…… ……」
后「癒し手が居なくて、本当に良かった」
后「……ま ……『黒い髪の元勇者』の、傍にも居られないだろうけど」
后「此処も……彼女には……」
王子「……癒し手が言っていた『黒い物』は、それなのか?」
后「……わかりません。でも良くない物、に違いは無いわ」
王子「……俺に、出来る事は。これぐらいしか無い」
后「え?」
王子「否、俺が居なくても……この子は間違い無く勇者だ。だから」
王子「通れただろうと思う。だけど」
后「……王子様とお話ししなければ、自分を『帰還者』だと名乗るって」
后「事は思いつきませんでした。それに……」
王子「……そうだな。俺の決心もつかなかった」
后「……はい」
王子「話すべきだったんだ。最初に。俺が……何も知らせない侭で」
王子「……『未来』を担う王達に、彼ら自身に選ばせようとしたのが」
王子「間違いだったんだ」
后「…… ……」
王子「今から話して、信じて貰えるかは解らない」
王子「……王の、その。病の……状態にも寄る。だが」
后「…… ……」
王子「王が望むのなら、全て話そう。選択肢すら与えなかったのは……」
王子「……俺が、間違えてた」
后「……実際、どれぐらい悪いんですか」
王子「解らない……だが、落ち着いて居るときは大丈夫だと」
王子「衛生師に聞いているから」
281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 11:40:31.04 ID:7JBXnqHQP
后「……近衛兵長様、ね」
王子「ああ。最近はめっきり来なくなった、けど」
王子「……なんだかんだと、報告と言うか、愚痴というか」
后「あ……」

ギィ……

近衛兵「王が、お会いになるそうです」
后「ありがとうございます!」
近衛兵「王子様も、ご一緒にどうぞ」
王子「……良いのか」ホッ
近衛兵「ただし、勇者様のお顔の拝見が済んでから個別に、です」
王子「あ、ああ……解った」
后「…… ……」
近衛兵「では、魔法使いさんはこちらへ……王子様は」
近衛兵「あちらの部屋でお待ち下さい」
王子「ああ……では、後でな、魔法使い」
后「はい。ありがとうございました」

スタスタ

近衛兵「此方で、少しお待ちを」
后「……はい」
勇者「あー」
后「うん。ごめんね、ちょっとだけ待ってね」

カチャ

近衛兵「……どうぞ。王に失礼の無いように」
后「……初めて、お目に掛かります、王様」
衛生師「貴方が、魔法使いさんですか。それから……勇者様」
衛生師「ご苦労様でした。貴方は下がって下さい」
近衛兵「はッ」

スタスタ、パタン

后「…… ……?」
衛生師「……本当に、金の瞳をしている、のですね」
后「あの……王様?」
衛生師「……何か」
291 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 12:04:51.91 ID:7JBXnqHQP
后「……失礼を承知で申し上げますが、あの……」
衛生師「ああ。貴女は伯父上と一緒にいらっしゃったのですよね」
衛生師「……僕の病気の事でしょう」
后「え、ええ……否。お元気になられたのであれば、何よりです」
衛生師「ありがとうございます」
衛生師「……勇者が此処に居る、と言う事は、魔王は……復活した、んですね」
后「……はい」
衛生師「貴女は……『帰還者』ですね、魔法使いさん」
后「はい」
衛生師「……『黒い髪の勇者』は?」
后「『黒い髪の勇者』は……死にました」
衛生師「え!?」
后(間違いじゃ無い。嘘でも無い……『前勇者』は死んだ)
后(……『魔王』として、復活しただけで)
后(この話は……王子様にお任せした方が良いんだろうな)
后「この子の父は……『黒い髪の勇者』その人です」
后「……形見として、これも持参しました」シャキン
衛生師「そ……れは」
后「……光の剣という、魔法剣だと聞いています」
衛生師「…… ……形見」
后「はい」
衛生師「そうですか……亡くなった、のですか……」
后「……国王様、も」
衛生師「?」
后「王子様から、弟王子様もお亡くなりになったと聞いています」
后「……戦士と、僧侶がこの国で祝言を上げ、青年と言う男の子を産んだのだと」
后「言う事も」
衛生師「……ええ。戦士……兄様、も僧侶さんも。もう……この国を発ちました、が」
后「……はい。私も、『黒い髪の勇者』を亡くし、行く当てもありません」
后「それに、この子は……『勇者』です」
后「……『金の髪の勇者』様も『黒い髪の勇者』も」
后「この街から、旅立っている……だから。縋るところも此処しか無いと」
后「王様に謁見を願い出たのです」
301 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 12:13:03.00 ID:7JBXnqHQP
衛生師「……ええ、事情は理解致します」
衛生師「勇者がまた、この国に戻るであろう事は……聞いていました」
衛生師「拒む理由はありません。勇者と貴女の生活の全ては」
衛生師「我が国で面倒を見させて頂きます」
后「ありがとうございます!」
衛生師「すぐに、城の中に部屋を用意させましょう」
后「あ……いえ……あの」
衛生師「?」
后「……お城の裏手に、小屋があると思います」
衛生師「……小屋」
后「?」
衛生師「あ、いえ……それが、何か」
后「そこに住まわせて頂くことを許可頂けませんか」
后「光の子は未来の、この『世界』の希望にはなるでしょう」
后「……ですが故に。幼い内は、余り……人目にはさらしたくありません」
衛生師「……解りました。母である貴女がそう望むのであれば」ホッ
后「…… ……?」
后(何だろう……違和感? ……それに、彼は)
后(王子様や……国王様に、似ていない様な気がする、んだけど)
后(お母様似、なのかしら)
衛生師「……お疲れでしょう。今日はひとまず、城の部屋でお休み下さい」
衛生師「すぐに小屋の方の、準備をさせて頂きます」
后「……ありがとうございます」
衛生師「魔法使いさん」
后「? はい」
衛生師「勇者の誕生と……貴女の、帰還」
衛生師「それを……世界に宣言する事は、認めて下さいますね?」
后「…… ……そうですね。必要な事、でしょう」
衛生師「所在は明らかにはしません……貴女達の事は、我が国を上げて」
衛生師「きっちりとお守りします」
后「ありがとうございます」
衛生師「……今度こそ、魔王を倒す事ができるのでしょうか」
后「……私は、そう信じています」
后「『願えば叶う』と……信じています」
衛生師「そう、ですね」
衛生師「……近衛兵!」
311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 12:20:08.34 ID:7JBXnqHQP
パタン

近衛兵「はッ」
衛生師「魔法使いさんと勇者を、お部屋にご案内して下さい」
近衛兵「畏まりました」
后「あ、あの……王子様には……」
衛生師「大丈夫です。ちゃんと伝えておきます」
衛生師「……お疲れでしょう。今までの事……お聞かせ願いたいのは山々ですが」
衛生師「今日は、お休み下さい」
后「…… ……」
衛生師「……どうなさいました」
后「いえ……失礼致します」
后(しまったな……前后様みたいに『一切を聞いてくれるな』って)
后(先に言っておくべき……だったか)
近衛兵「では、どうぞ……こちらへ」

スタスタ、パタン

衛生師「…… ……やれやれ」ハァ
衛生師(覚悟はしていたけれど……疲れるな)
衛生師(しかし……母親が『帰還者』だって!?)
衛生師(予想していなかった。以前もそうだったのか?)
衛生師(王様から聞き出す訳には……いかないな)
衛生師(……聞いておくべきだったか。あの、地下牢で……)ハァ

コンコン

衛生師「……はい?」
近衛兵「お部屋にご案内しました」
衛生師「ご苦労様……『王』は?」
近衛兵「……本当に、良いのですか」
衛生師「王子様自らの願いだろう……仕方無い」
衛生師「……此処まで来たら引けないだろう?」
近衛兵「…… ……」
衛生師「お連れして……最悪、どうにでもなる」
近衛兵「はッ」
衛生師「……否、良い。僕が行くよ」
近衛兵「……え?」
衛生師「見届ける必要があるだろう……暴れ出して騒がれても困るし」
衛生師「医師に言って、鎮痛剤を貰ってきて」
近衛兵「は、はい……」
321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 12:49:28.91 ID:7JBXnqHQP
衛生師「見張りは二人。扉の前で待機」スッ

スタスタ

近衛兵「ハッ」

パタン

……
………
…………

王子「…… ……」
王子(何となく緊張するな……一刻。そろそろ、かな?)

コンコン

王子「はい」
衛生師「王子様」
王子「衛生師か……」

カチャ

衛生師「ご無沙汰しております」
王子「……いや」
衛生師「……お連れしましたよ」
王子「あ、ああ……魔法使いと、勇者は?」
衛生師「……済んだら、って聞いてません? 王様、どうぞ」
王「…… ……」
王子「王…… ……!?」
衛生師「…… ……」

パタン
331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 12:57:55.09 ID:7JBXnqHQP
王「…… ……」
王子「……ず、いぶん……そ、の……」
王子(痩せた……否、やつれた……それに……)
王子「髪……ッ 真っ白、じゃ無いか……!?」
衛生師「……随分前からね。夢見が悪いのだと仰って」
王子「夢……?」
王「…… ……」ブツブツ
衛生師「……『僕は悪く無い』とか『呪い』とか」
王子「え……」
衛生師「……『最後の王』だとか」
王子「最後の王…… ……?」
王「う、うぅ……わあああああああああああああああ!!」
王子「!」
衛生師「…… ……」
王「違う! 僕じゃ無い!僕が殺したんじゃない!」
王子「お、おい……王!?」
王「何でだよ! 何で僕だけを愛してくれないんだ、少女!!」
王「僕は王だ! お父様にも、兄様にも ……誰にも、負けないんだ!」
王子「王!」
衛生師「……大丈夫です、王。貴方が悪いんじゃありませんよ」プツン
王「…… ……ッ」ハァ、ハァ
衛生師「大丈夫です。もう……誰も居ません。すぐに、効きますから」
王子「お、い……今の、は……」
衛生師「……鎮静剤です。これが無いと、ね」
王「…… ……」フラッ
王子「!」ガシッ
王子(……服の上からでも解る。枯れ木の様な腕……!)
衛生師「……魔法使いさんと勇者には、僕が会いました」
王子「え……?」
衛生師「幸い、王様と面識はありませんから」
王子「!」
衛生師「大丈夫です。小屋へ案内して、勇者が無事旅立てる様に」
衛生師「……全面的にバックアップします。お約束します」
341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:03:46.36 ID:7JBXnqHQP
王子「……お、前……」
衛生師「こうする他無いでしょう……ただでさえ」
衛生師「丘の麓の街や、港街……書の街でさえも」
衛生師「この国は呪われているだの、何だの……噂されているんです」
王子「……王?」
王「…… ……」
王子(うつろな目……ッ)バッ
衛生師「…… ……」
王子「! こ、れは……!」
衛生師「……暴れ出すと手が着けられないんです」
衛生師「きつい薬ですが……もう、これしか効かないんですよ」
王子「注射の跡だらけじゃ無いか……! 衛生師!これでは……!」
衛生師「……ちゃんと医師の元での処方です」
衛生師「僕も、ある程度の知識はありますしね」
王子「……中毒症状、じゃ無いのか!?」
王子「お、俺は……解らんが、でも、これでは……!」
王子「根本的な治療になんか、ならないだろう!?」
衛生師「……そんな事、不可能ですよ」
王子「衛生師……!」
衛生師「勇者が戻ったんです。しかも、母は『帰還者』だと言う」
衛生師「……王子様」
王子「な、何だ」
衛生師「貴方、何を知っているんですか」
王子「え……」
衛生師「国王様……弟王子様と、二人で……王を遠ざけていた理由、ですよ」
衛生師「……戦士君も知っているんですか?」
王子「……何の話だ」
衛生師「何も無いなら良いんですけどね」ハァ
衛生師「……とにかく、城の立入禁止の理由は解って頂けましたか」
王子「…… ……」
王子(確かに、これでは……否、しかし……!)
衛生師「納得いかない、って顔してるな」
351 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:10:21.82 ID:7JBXnqHQP
王子「……少女は、どうした」
衛生師「本当に、貴方の悪い癖です」ハァ
王子「え……」
衛生師「『俺は引退した身だから』と……言う癖に」
王子「!」
衛生師「……何か、言えない『真実』でも隠してらっしゃるのかと」
衛生師「思ってたんですけど」
王子「……だ、だったとしても、だ!」
王子「王が、この状態では…… ……」
衛生師「まあ、そうですね。何を語ろうと、何を問おうと」
衛生師「王は何も語らない」
王子「…… ……」
衛生師「ああ……少女、ですね。彼女は今も、この国に居ます」
衛生師「……年が明ける頃には、子供が産まれるでしょう」
王子「! 王、の子…… ……か?」
衛生師「……彼女は、『王の婚約者』ですからね」
王子「否、待て……年が明ける頃……?」
衛生師「……皆まで言う必要は無いと思います。『元騎士団長様』」
王子「…… ……」
衛生師「ご内密にして頂ける、と……約束して下さいますね?」
王子「なに、を……だ」
衛生師「全てを、です」
王子「ど、どう言う意味だ……!」
衛生師「……そう言う意味です」ハァ
衛生師「そして、もう関わらない、と」
衛生師「貴方が言ったことです、王子様。もう引退された身なんだ」
衛生師「……未来は、『王』が紡ぐ物です」
王子「この状態で、どうやって……!!」
衛生師「僕が影武者になると言うのは、もう決まったこと何です」
衛生師「……ああ、別に権力とかどうでも良いんですよ? 本当に」
衛生師「『王の婚約者』が『次期王』を産めば……その子に譲る」
衛生師「それまでの、代わりに過ぎませんから」
王子「……本当に、王の子、なのか」
361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:17:25.67 ID:7JBXnqHQP
衛生師「『血』に拘るんですか」
王子「……否、だが……『王』は……」
衛生師「解ってます。盗賊様の遺言でしょ」
衛生師「……『王』を絶やすな。意味は解りませんけど」
王子「…… ……」
衛生師「貴方は、知っているんですか?」
王子「……お前、さっきから何度も聞くけど、それ」
王子「俺が何か知ってる……何か隠してる、って」
王子「……確信して、訪ねているんだろう」
衛生師「まあ、否定はしません。さっきも言ったでしょう?」
衛生師「……僕は元々、衛生部隊に居たんです。薬の知識はある程度持ってます」
衛生師「無理矢理聞き出す事だって可能です」
王子「!」
衛生師「……が、まあ。先ほどのお約束を守ってくれるのであれば」
衛生師「そんな、手荒なことはしたくありません」
王子「…… ……」
衛生師「…… ……如何です、王子様」
王「…… ……」
王子「解った……一つだけ、聞かせて欲しい」
衛生師「助かります……なんでしょうか」
衛生師「……あ、答えられる事、に限らせて貰いますけど」
王子「……地下に何がある?」
衛生師「…… ……」
王子「地下牢が封鎖された話は聞いている。だが……」
衛生師「……だが?」
王子「……良くない気が、立ちこめている気がする、んだ」
衛生師「誰に何を吹き込まれたのやら」ハァ
衛生師「……何もありませんよ。それに、解るんですか、そんな事」
王子「い、いや……何となく、な」
衛生師「……魔法も使えない貴方が、ですか」
王子「…… ……」
衛生師「ま、良いでしょう。何もありません。本当に」
衛生師「もう、使う必要が無くなったから、です」
371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:24:56.85 ID:7JBXnqHQP
衛生師「……こんな状態の王様が、フラフラ迷い込んでも困るでしょう?」
王子「…… ……」
王「……地下、牢……」
王子「王?」
衛生師「…… ……」
王「違う!僕じゃ無い! あいつらを殺したのは僕じゃ無いんだ!」
王子「!?」
衛生師「王!」
王「やめてくれ! こないでくれ……ッ 僕は!」ブンブンッ
王子「! 王、落ち着け……王 …… ……ッ」ドン!
王子「…… ……え」

ボトボト……ボト

王子「……ッ !?」ズキンッ
王子(腹が、暖かい…… ……血……!?)
衛生師「ナイフ!? 何時の間に……ッ」
王「うわあああああああああああああ! くるなあああああああああああ!」

ザクザクザク……ッ

王子「う、あ…… ……アァ ……!!」
衛生師「! 王、待て …… ッ …… ……」
衛生師「…… ……」
王「死ね!死ね……ッ 僕が、僕が王だ!何が最後の王だ!」
王「この国は僕の物だ! 少女は、僕だけの……ッ」
王子「…… ……」
衛生師「……王様。もう、死んでます」
王「…… ……ッ」ハァ、ハア……
衛生師「…… ……王は、貴方ですよ」
王「……し、んだ。そう、か……そうだ。皆、死んだんだ」アハハ……
王「地下の皆は、もう! 皆! 死んだんだ!」
王「アハハハハハハハ! そうか!そうだった!」
衛生師「……ほら、もう。ナイフ……要らないでしょ?」スッ
王「ああ、そうだ!  ……あ、あ……少女。少女……どこ?」パシンッ
衛生師「痛……ッ」
381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:32:16.99 ID:7JBXnqHQP
王「少女……少女……」
衛生師「……王、少女が待ってますよ」
王「え……?」
衛生師「ほら、少女の所に行きましょう。でもね?」
衛生師「……ナイフ、怖がりますから。預かります。ね?」
王「ナイフ……あ、ナイフ……誰の、だろう……」ブツブツ
衛生師「…… ……」スッ ……ホッ
王「……えいせいし。居た、の……少女は……」
衛生師「はい。大丈夫です……こっちへ」
王「…… ……」フラ
衛生師「…… ……」ブンッ ……ザク!
王「…… ……え」

ヒュ……ゥ……ボタボタボタ……ッ

衛生師「…… ……」
王「…… ……ッ」パクパク
衛生師「……頸動脈、切ったから。血は止まりませんよ。押さえても」
王「…… ……」

バタンッ

衛生師「…… ……」ハァ
衛生師「……まさか、王子様を殺してしまう、とはね……」
衛生師「まあ……仕方無い、か」

カチャ

衛生師「……悪いけどね」
近衛兵「はい…… ……!?」
衛生師「シッ……とにかく、どうにかしよう、これ」
近衛兵「王子様……王様!?」
衛生師「……『王様が暴れ出して、もみ合ってる内に』ね」
391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:38:37.42 ID:7JBXnqHQP
近衛兵「…… ……ッ」
衛生師「……公にする必要は無いよ」
衛生師「ああ……王子様はまずいか、いくら何でも」
近衛兵「あ、の……」
衛生師「……取りあえず、王子様は城に滞在してる事にして」
衛生師「明日の朝一で、魔法使いと勇者は小屋へ」
近衛兵「…… ……」
衛生師「……聞いてる?」
近衛兵「あ……は、はい!」
衛生師「後……医師は…… ……まあ、呼んでくれる?」
近衛兵「……始末、するんですか」
衛生師「物騒だな……」
近衛兵「…… ……」
衛生師「後で良い。取りあえず……これ、片付けて」
近衛兵「……畏まりました。あの、その……何処に……」
衛生師「裏の庭の隅にでも埋めておけば良い……ああ、夜中にこっそり、ね」
近衛兵「……は」

スタスタ

衛生師「…… ……」
衛生師(あちこち血だらけだな……もうこの服は着れないか)
衛生師(……何か、知っていたんだろうな)
衛生師(母親や……貴族達から聞き出したアレ以外……?)
衛生師(……もう、確かめる術も無いか)ハァ
401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:47:21.23 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………

衛生師『…… ……』
母親『! ちょっと、そこの貴方!私をこんな所に閉じ込めてどうするつもりなの!』
衛生師『…… ……』
母親『私はね! 魔導国の領主の……!!』
衛生師『この国の牢に捕らわれて、まだそんな文句が通用すると思っているんですか?』
母親『……ッ 剣士を呼んで頂戴!』
衛生師『彼は此処にはいません』
母親『……ッ なら、国王を呼びなさい!』
衛生師『だから……貴女の言い分が、通る訳無いでしょ?』ハァ

魔王(…… ……何だ、これ)

衛生師『色々聞きたいのはこっちです、全く……』
母親『冗談じゃないわよ! ……お父様は、どうしてあんな……ッ』
母親『勇者達は何処に行ったの!? 魔法使いは……!』
母親『…… ……ッ 出しなさい! 出しなさいよ!』ガシャン、ガシャンッ
衛生師『暴れないの……痛いだけですよ、手』ハァ
母親『……そこにいたって無駄よ!私は何も話さないわ!』
衛生師『散々喚いて置いて良く言う……』
母親『剣士に会わせなさい!』
衛生師『だから、居ませんって』
母親『……連れてくれば良いでしょう! 彼が居なきゃ何も話さないわ!』
衛生師『……へぇ、剣士さんが居れば、お話ししてくれるんですか』
母親『とにかく連れてきなさい! 剣士なら、私をここから出してくれるわ!』
衛生師『……剣士さんって話した事無いから、どんな人かは知りませんけど』ハァ
衛生師『そんな都合の良い話、あると思ってるんですか……』

スタスタ

衛生師『…… ……』ジッ……ガシッ
母親『……な、何よ…… ……ッ!? ……は、離して!』ブンブンッ
衛生師『……会いたいんでしょ』プツン
母親『!? 痛ッ ……な、何の薬よ、それ!?』
衛生師『願いの叶う薬……ああ、大丈夫。気持ち良いらしいですから』
母親『!?』
衛生師『僕の本業は薬師なので……』
母親『……ッ あ、ァ…… ……ッ』クラッ
衛生師『本来は麻薬……ま、毒草の類ですね。幻覚作用のあるね』
411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 13:48:24.56 ID:7JBXnqHQP
おむかえー
42名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 16:27:23.01 ID:qd901d6d0
BBA乙
衛生士地下牢のせいで黒くなったかと思ったら元々だったのか…
この城はどうなるのかな
43名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 16:59:00.74 ID:t4VHcLGxP
ここまで犠牲を出した以上国だけは守り通すと信じたい
441 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 17:35:53.90 ID:7JBXnqHQP
魔王(……暗いな。何処だ?)
魔王(否……会話から察するに……始まりの国だ)
魔王(こんな場所、あったんだな……)
魔王「…… ……」
魔王(声、出ない……『夢』か?)
魔王(しかし……)

母親『ァ…… ……ッ あ ……ッ』ガクンッ
衛生師『不用心ですよねぇ……貴女、捕虜なんですよ?』
母親『あ……剣士!? 剣士……!!』ガシャンッ
衛生師『…… ……』
母親『ああ……剣士……!!』ガシャン!
衛生師『成る程。一番会いたいのは、娘の魔法使いでは無く……』
衛生師『……剣士、何ですね。まあ、そうだろうと思ってたけど』
母親『会いたかったわ、剣士……ねぇ、ここから出して!』
母親『此処は……寒いの!お願い……!』
衛生師『良いですよ。僕の質問に答えてくれたら』
母親『答えるわ!何でも……何でも、答えるから……!』
衛生師『……勇者達は何処に行ったんです?』
衛生師『騎士団が到着した時には、騎士団長様から』
衛生師『貴女を捕らえる様に、とそれしか聞かなかった』
母親『知らないわ! 急に光が……』
衛生師『光?』
母親『貴方もみていたじゃ無いの!剣士!』
衛生師『答えて……約束、でしょ』
母親『……ッ 急に光で……包まれて。気がついたら勇者達は居なかったのよ!』
母親『私は言った筈よ! 光の剣を寄越せと……ッ』
衛生師『……光の剣。何故?』
母親『私達はね、最果ての地に唯一住む事を許された選ばれた人間なの!』
母親『……魔の血を引く、優れた民なのよ!』
衛生師『……そんな話は聞いたことが無い』
母親『始まりの姉弟は、優れた加護を……ッ 雷の、優れた……ッ』ブンブン
衛生師『……効き目が短いのが玉に瑕、だなぁ……』プツンッ
母親『あ……ッ ァ』
451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 17:43:50.47 ID:7JBXnqHQP
衛生師『で……その選ばれた民が何だって言うんです』
母親『……ゥ、う……ッ 光の、剣を……ッ』
衛生師『ああ、そっちでしたね……光の剣を勇者から奪って』
衛生師『どうするつもり、だったんです?』
母親『……魔王、に……ッ』
衛生師『…… ……』
母親『魔王に、貴方がなるのよ、剣士……!』
衛生師『!?』
母親『剣士は少年なんでしょう!?』
衛生師『……少年?』
母親『そうよ!紫の瞳を持ち、加護に捕らわれず様々な魔法を使うじゃないの!』
衛生師『!?』
母親『少年にそっくりじゃないの!剣士! ……記憶を無くして居るのは残念だけど』
母親『貴方は、何年経っても見た目も変わらない!』
母親『人で無いのは明らかよ!否……貴方が、少年なのよ!』
母親『……そして、貴方が魔王なのよ!』
衛生師『……さっぱり解らないな。だが……興味深い話だ』
衛生師『続けて、母親』
母親『優れた加護も持たない、劣等種なんて気にする事無いわ!』
母親『私達、選ばれた者だけで、『世界』を作り替えましょう!?』
母親『『私達が支配する為の世界』を!『私達に支配される為の世界』を!』
母親『魔法使いなんて放っておけば良いのよ! 勇者だと言ったって』
母親『所詮、優れた加護も持たないの! 少し特別なだけの、ただの人間よ!』
母親『ねえ、剣士!貴方と私なら……いえ、魔王!』
母親『どんどん、優れた子を産めば良いの! 雷の加護を持つ、優れた姉弟を!』
母親『『始まりの姉弟』の生まれ変わりを、作れば良いのよ!!』

アハハハハハハハハ、アッハハハハハハアハハッハ!!

衛生師『……うーん』
衛生師『もうダメ、かな……他には?』
母親『話したわ!話したじゃ無いの!』
母親『……ねえ、早く抱きしめてよ。此処は寒いの……ッ』
衛生師『…… ……終わり、か』ハァ
461 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 17:56:23.71 ID:7JBXnqHQP
衛生師『……薬が切れたら、どっちにしろ禁断症状で』
衛生師『大丈夫、だとは思うけど』プツン
母親『ァ、あ……アァァアああああアア!?』

ゴロンゴロンゴロンッ

衛生師『念には念を入れて……ね』
母親『あ、あ……剣士、け……ん、し…… ……ッ』

魔王(……ひっどい事しやがるな、こいつ……)
魔王(しかし……なんだ?これは……)
魔王(俺は……確か、城で…… ……ああ、そうだ)
魔王(……后と、勇者は……旅立った、んだよな)
魔王(意識はハッキリしてるのに……身体は動かないし、声も出ない)
魔王(……なんだよ。悪い夢見てるみたいじゃ無いか)ハァ

??「過去しか見れない、んだそうだ」
魔王(!? ……誰だ!?)
??「……お前から見たら『過去』だもんな」
魔王(……そこに、誰か居るのは分かる。でも、姿が見えない……!)
魔王(声も、出ない)
??「『願え』……そうすれば、叶う」
魔王(え? 何だって?)
??「今度こそ、終わらせるんだろう……『黒い髪の魔王』」
魔王「!」
??「…… ……」
魔王(喋れるんだったら喋ってるっつーの!)
??「俺からみれば、これは『未来』だ」
??「……『俺の知る過去』も、ちゃんと教えてやるから」
魔王(何言ってやがる! ……ああ、もう!糞!)
魔王(どうすれば……ッ)
??「……次、だ。まあ……ゆっくり見ろ。魔王」
魔王(ゆっくり?次? ……ッ な、に……!!)

パアアアアアアアアアアアァッ

魔王(眩し……ッ)

……
………
…………
47名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 18:01:51.68 ID:0NwQKKiWP
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン       バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゙ン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
    \/___/ ̄
481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 18:14:21.38 ID:7JBXnqHQP
衛生師『……なんですって?』
王『捕らえた貴族は皆殺しにしてください、と言ったんです』
衛生師『……手荒なことはしない、って少女に約束したんじゃないんですか』
王『しませんよ『僕』は』
衛生師『!』
王『……命令です、衛生師』
衛生師『王!』
王『大丈夫です。誰にも言いません。誰にも知られません』
王『……仕事熱心な貴方の事です。断らないでしょう?』
衛生師『…… ……』
王『ああ、秘書には気付かれない様にね?』
衛生師『……解りました』
王『従順な人は好きです……少女も、そうであれば良いのにな』ハァ
衛生師『……抵抗はしなくなったんじゃ?』
王『人形を抱いても面白くありません。早く子供は欲しいですが』
衛生師『……正式に、祝言を上げてしまえば良いでしょう』
衛生師『王子様にも言われたんですよ……って、前に言いましたよね』
王『……あの人の言葉の何一つ、従いたくありません』
王『それが、『白』でも、あの人の言葉だと言うだけで』
王『僕には……『黒』何だ』
衛生師『…… ……そうですか』
王『子供が出来れば、すぐにでもそうします。それは揺るぎない真実でしょう?』
衛生師『真実?』
王『はい。僕の子供……僕の血を継ぐ、僕の次の『王』』
王『お祖母様は『王』を絶やすなと言っていらっしゃった』
王『僕が『最後の王』になる訳には行きません』
衛生師『…… ……』
王『戦士兄様の子供にも、彼にも、譲る訳にも行かないんです』ジロッ
衛生師『……何も言ってませんよ』
王『……お父様の、前国王の甥で、帰還者だ等と……ッ』
王『しかも、騎士団長の息子で……ッ』
衛生師『……落ち着いて下さい、王』
衛生師『戦士君はそう言うのに向きませんよ……『王』は貴方です』
衛生師『……それに、彼の子供の性別だってまだ解らないんだし』
491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 18:18:26.36 ID:7JBXnqHQP
王『……男で無いと『王』になれない決まりなんて無いでしょう』
王『初代国王……お祖母様は、盗賊様は女性です』
衛生師『……そうでした』
王『でも、女の子であれば良い。できるなら、僧侶さんそっくりの』
衛生師『…… ……』
王『さっさと産んで……さっさと出て行けば良いんだ……ッ』
衛生師『……大丈夫です。王様。『王』は貴方しか居ません』
王『……ああ。そうですね』フゥ
王『すみません。取り乱しました』
衛生師『いえ……大丈夫ですか?』
王『……少女の所へ行きます。毎日毎日、抱いているのに』
王『どうして……彼女には、子供が出来ないんだ……ッ』ブツブツ

スタスタ、バタン!

衛生師『…… ……』ハァ

魔王(……王、って事は、国王様の……弟王子様の、子供、だよな?)
魔王(側近の従兄弟……確かに、よく似てる。だけど)
501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/23(木) 18:19:09.03 ID:7JBXnqHQP
お風呂とご飯ー!
またあした!
51名も無き被検体774号+:2014/01/23(木) 20:14:14.01 ID:mnWAuKnhi
またあした!
しかしハッピーエンドが見えないぜ
52名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 07:00:52.68 ID:IhLRCBU8O
おはようの保守
53名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 07:29:21.11 ID:vKieL49Y0
今がんばって最初から全部読んでるぜ!
もうちょっとで追い付く!
がんばって!
541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 10:17:27.70 ID:kOga+gXoP
魔王(……随分、神経質そう、と言うか。何と言うか……)
魔王(しかし……これが、『過去』?)
魔王(否……二人の会話からすると間違い無い、んだろうな)
魔王(まだ青年が産まれてない、みたいだし……でも、何だよ、これ)
魔王(夢……? 違う、『過去』)
魔王(…… ……さっぱりわからねぇ)ハァ

衛生師『手荒なことはしない……『自分は』が抜けていた、と言いたい訳ね』ハァ
衛生師『……直接手を下さないだけで、僕にやらせるのなら一緒じゃ無いか』
衛生師『……まあ良い。母親の話以上に、何かが聞けるなら』

スタスタ、キィ……バタン

見張り『あ……近衛兵長様!』
衛生師『君が新しい牢番だね……えっと。名前で呼んで貰えると嬉しいかな』
見張り『はい!い、以後気をつけます!』
衛生師『見張りさん、だったよね』
見張り『はい! ……衛生師様が、私をこの役目に推薦して下さったと聞いています』
衛生師『……王様に?』
見張り『はい。わざわざ声をかけて下さいました』
衛生師『…… ……』
見張り『身よりも無い老骨で御座います……そんな私に役目を下さるとは』
見張り『……感謝してもしきれません』
衛生師『まあ、囚人達は牢の中だしね。体力を使う仕事でも無い』
衛生師『……聞いていると思うけど』
見張り『解って居ます。此処で見聞きした事、口外相成らず、と』
衛生師『うん……なら良い』
見張り『……そう考えると、これほど私にぴったりな役目もありますまい』
見張り『実際は、牢に降りる事もありませんし、中の音は聞こえませんから』
衛生師『良いんだよ。君がその約束を守ってくれるのならね』
見張り『はい!』
衛生師『……貴族達はもう、中に居るんだよね?』
見張り『あ、はい。先ほど近衛兵様達が』
見張り『もうすぐ、食事の時間だと……』
衛生師『成る程、了解……ありがとう』

スタスタ

見張り『ご苦労様です!』
551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 10:25:36.79 ID:kOga+gXoP
衛生師(丁度食事の時間か……秘書の分にはたっぷりと眠り草でも入れとくか)
衛生師(……母親はあの調子だしな。その間に……)
衛生師『ああ、ちょっと待って、君』
近衛兵『衛生師様? ……どうされました』
衛生師『それ、牢に持って行く食事だろう?』
近衛兵『あ、はい』
衛生師『一人分、僕に』
近衛兵『は? ……はぁ』
衛生師『……秘書があんまりにも煩いから、ちょっと強制的に眠って貰う事にする』
衛生師『狂われて、母親の様になっちゃっても困るからね』
近衛兵『ああ……わかりました』
衛生師『うん、預かるよ……で、他の貴族達の分だけど』
近衛兵『はい』
衛生師『後で、僕が運ぶよ。先に大人しくしておいて貰いたいし』
衛生師『少し時間ずらすから、適当に置いておいてくれる?』
近衛兵『は、はあ……でも、昨夜から何も……』
衛生師『人間、一食抜いた位じゃ死なないよ』
近衛兵『畏まりました』
衛生師『うん、大丈夫。僕が責任取るし……王様にも『許可』貰ってるから』
近衛兵『はい。では……失礼致します。お願い致します』
衛生師『ん……』
衛生師(さて……)ゴソゴソ

スタスタ、パタン

見張り『あれ……近衛兵長様?』
衛生師『衛生師だってば』
見張り『し、失礼致しました!』
衛生師『……ちょっと下に降りるから、僕が出て来るまで』
衛生師『誰も近づけないで……王様の許可はあるから』
見張り『了解いたしました!』

カチャ
561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 10:36:15.57 ID:kOga+gXoP
ギィィイイ、パタン

衛生師『秘書、起きてる?』
秘書『…… ……』
衛生師『……ま、騒がれるより良いけど。はい、食事』
秘書『…… ……』スッ ガブッ
衛生師『本当に素直だよね』クス
秘書『私は生きてここらか出るんだ! 母親様をお救いし……ッ』
衛生師『魔導国を再建する、って? ……夢見ちゃって』
秘書『黙れ!』
衛生師『いやいや、良い心がけです……元気で居て貰わないとね』
衛生師『……君に、位は』
秘書『何……?』
衛生師『いいえ、こっちの話……』

アハハハハ……アハハハハ!

秘書『母親様!』
衛生師『……狂ってるアレ、救い出せたとして、どうする気なんだか』
秘書『誰の所為だと思っているんだ!』
秘書『……生きてさえ、生きてさえ居られれば……ッ』
衛生師『……凄いよね。自分が……自分さえよければ良いんだね、本当に』
衛生師『少女も可哀想に』ハァ
秘書『何が可哀想だ! 雷の加護も持たない、あいつが……!!』
衛生師『はいはい。話が通じないのはもう、良く解ってるよ』
秘書『覚えて居ろよ、衛生師……! お前、と……お、う……の』クラッ
秘書『か、お……だ…… ……け…… ……は』バタン!
衛生師『忘れない、って? ……光栄な事で』
衛生師(寝た、な……さて)

スタスタ

魔王(…… ……)
魔王(注射……! 母親に使ったのと同じ奴か!?)

衛生師『……ふむ。他は?』
貴族『……剣士、は……魔王……』

『少年は、紫の瞳で……剣士にそっくりな男』
『魔導将軍は魔王に反旗を翻し……』
『……雷の加護こそ至上』
『始まりの姉弟は優れた雷の加護を持ち……』
『近親婚を繰り返した結果……』
『領主様の血筋は……』

魔王(おいおいおい……そこら中で皆、泡拭いてるぞ……!!)
魔王(やめてやれよ! ……つか、お前人間か!?それでも!!)
魔王(俺の身体、動けよ! やめろ……やめろって!!)

衛生師『……似た様な話ばっかりだな』ハァ
571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 10:41:49.10 ID:kOga+gXoP
衛生師『……あんまり、何の役にも立たないね』
衛生師『まあ……王様には『皆殺しにしろ』としか言われてないしな……』スッ

魔王(ナイフ!? おい!やめろ、お前……!!)

ザク、ザク……ブシュウ……ッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!

魔王(…… ……ッ)

衛生師『……王様も人が悪い。どうせ見張りの事も見捨てる気なんだろうけど』
衛生師『これが……『僕』の仕事だからね』ハァ

スタスタ……バタン!

魔王(ひ、どい……ッ)
魔王(どうして……どうして、こんな……!!)
??「最悪だな、あいつ」ハァ
魔王「!」
魔王(また、お前か……!)
??「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み始める筈だったのにな」
魔王(え?)
??「否……それは確かだ。だけど……これじゃ……」
魔王(お前!……糞、声……ッ)
魔王(誰なんだよ、お前は!)
??「『願えば叶う』……しっかりしろよ、魔王」
魔王「…… ……だから…… ……ッ あ!?」

パアアアアアアアッ

魔王「ま、た……かよ!」
魔王(光……ッ)
581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 10:46:06.54 ID:kOga+gXoP
……
………
…………

魔王「!?」

王『僕とのおしゃべりに付き合ってくれるのだったら』
秘書『え……』
王『……その後で良ければ、母親を牢から出しましょう』
衛生師『王!』
王『どうです?秘書さん』
秘書『……ッ い、良いだろう……ッ』
衛生師『おい!』
王『『始まりの姉弟』の話です』
秘書『!』
王『母親は、魔の血が混じってると信じていたようですが』
王『強ち、間違いでも無いかも知れませんよ』
秘書『!?』
王『近親婚を繰り返した所為で、随分と人口は減った様ですが』
王『それでも、ああして……一つの街を支配する迄になった』
衛生師『…… ……』
王『永い年月は必要だったんでしょうけど』
衛生師『……僕は、失礼しますよ。王様』
王『……興味、ありませんか?』

金の髪の魔王「……弟王子、無念だろうな」
魔王「お前……! ……あ、声、出る……動く!」パタパタ
金魔「久しぶりだなぁ、息子よ」
魔王「父さん!?」
魔王「な、何なんだよ、これ……!?」
金魔「……ほら、見逃すぞ」
591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:10:06.14 ID:kOga+gXoP
衛生師『『知らない権利』もあるって所で』

魔王「こいつ……!」
金魔「……知る事はできる。だけど俺達にはどうすることも出来ないんだ」
魔王「……これは、何なんだ?」
金魔「さぁ……俺にも良く解らん」
魔王「……父さん」
金魔「ん?」
魔王「……生きて、る……訳、じゃ無い、よな」
金魔「…… ……」
魔王「俺が……確かに……」
金魔「まあ、そうだな。お前が魔王になった、って事は」
魔王「…… ……」
金魔「正直な、俺も良くわかんないんだよ」
魔王「え?」
金魔「同じだったよ。気がついたら……ずっと」
金魔「……繰り返し、繰り返し……『過去』を見てた」
魔王「『過去』……」
金魔「厳密に言えば……俺から見たらこれは『未来』だ」
金魔「『金の髪の勇者』は居なくなった後、だからな」
魔王「……過去しか見れない、って言ってなかった、か?」
金魔「……『表裏一体』なんだ、魔王」
魔王「!」
金魔「『繰り返される運命の輪』」

??「……おい、目を反らすなよ」

魔王「増えた!?」
金魔「……酷いな」
魔王「え……?」
601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:22:16.14 ID:kOga+gXoP
ドンドン!ガンガン!

王『……身寄りの無い、年老いた貴方が居て下さって助かりました』
王『ありがとうございます。礼を言います』
見張り『王様! おうさ……ッ』

ガン!

王『…… ……』

スタスタ

見張り『王様ああああああああああああああああああ!!』

魔王「……!」
金魔「……何処で間違えた、んだろうな」ハァ
魔王「……どうにも、出来ないのか?」
金魔「過去に干渉なんか出来ないだろう……それこそ」
金魔「……『変わってしまう』」
魔王「!」

シュゥン……

金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「げ」
金魔「……青年、か」
魔王「え、青年!? ……違う!父さん、違うだろう、だって青年は……!」
金髪紫瞳の男「……確かに俺は『青年』と言う名だ」
魔王「せ、青年は側近と癒し手の息子だろう!?」
魔王「お前……同じ顔してるじゃ無いか!」
魔王「……それに、紫の、瞳……!」
金髪紫瞳の男「そう言われてもな……名を貰ったからな」
魔王「こ、こいつも……魔王!?」
金髪紫瞳の男「違う……俺は『魔王にはなれなかった』」
魔王「え?」
金魔「よく見ろ。魔王……これが、始まりの国が滅んだ『原因』」
魔王「え、え!?」

秘書(……何処だ。何処で間違えた)
秘書(どうして、こんな事になってしまったんだ!?)
秘書(……ああ、母親様。領主様。遠い、始まりの姉弟よ!)
秘書(狂い違った選択肢を、どこかで選び直す事ができるのならば……ッ)
秘書『……ふ、フ……ふふふ……ッ』
秘書『血は、滅びん……ッ 必ず、必ず……ッ』
秘書『お前を不幸にしてやる、少女!』
秘書『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』
秘書『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』
秘書『……ああ、紅い。暖かい……母親様……ッ』ピチャ、コリコリコリ……
秘書『ああ……世界は、美しい……ッ』
611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:30:50.64 ID:kOga+gXoP
魔王「……く、食ってる!? ……母親、を……!?」
金魔「…… ……」
魔王「…… ……狂ってる……!」
金髪紫瞳の男「そうだ。そもそも……『世界』が狂ってる」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「まだ見てないんだな」
金魔「……ああ、教えてやるって約束したな」
魔王「え、え?」
金髪紫瞳の男「……確かに『世界』は狂っている。だけど」
金魔「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み出した。確かに」
魔王「……はい?」
金髪紫瞳の男「もう暫く……ゆっくり見てると良いよ」
金髪紫瞳の男「『過去』は『現在』で『現在』は『未来』だから」
金魔「……そして『未来』は『過去』だ」
魔王(側近じゃ無いけど……甘い物が食べたい気分だ)ハァ
金魔「……紫の魔王は消えたぞ?」
金髪紫瞳の男「……違う道を歩んでいるのは確か、何だろう?」
魔王「…… ……」
金魔「だと良いけど。あいつ……『器』だけが消えても」
金魔「『中身』……俺が此処に居るって事は」
金魔「……あんまり、楽観視できねぇよな」ハァ
魔王「おーい」
金魔「ん?」
魔王「……置いてけぼりにしないでください」
金魔「ああ、悪い悪い」ハハッ
魔王「……思ってないだろ、父さん……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まった」スッ
魔王「え…… ……!?」
金魔「……よく見ておけよ、魔王。『何度も繰り返す』」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「『繰り返し回り続ける運命の輪』……まだ、断ち切れて無い」

……
………
…………
621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:40:41.76 ID:kOga+gXoP
ボーゥ…… ……

剣士「……? 汽笛?」

タタタ……

兄「剣士さん!」
剣士「兄か……どうした?」
兄「息子さん……知りませんか!?」
剣士「……家にいるんじゃないのか」
兄「……船が、近づいて来ているんです」
剣士「ああ……汽笛が聞こえた」
兄「ぼ、僕……知らせて来ます!」

バタバタ……

剣士「あ…… ……」ハァ
剣士(……まだ少し遠い、な……確かに、久しい)
剣士(しかし、あれほど怯える事では……否)
剣士(……この現状で、村に人を入れるのを憚る理由は解らんでも無い)
剣士「ん……あれは」
剣士(……始まりの国の……剣の文様!?)
剣士(定期便……では無いのか!?)

スタスタ

魔導師「…… ……」
剣士「魔導師」
魔導師「わあッ ……け、剣士さん」
剣士「何ぼさっと突っ立ってる」
魔導師「……あ、だ、だって……船、が……」
剣士「兄が息子を呼びに行った」
魔導師「……定期便、でしょうか」
剣士「否……始まりの国の剣の文様が描かれた旗が見えた」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師(見えた……って、この距離で!?)
剣士「……見に行くか?」
魔導師「……え」
剣士「気になるのだろう」
魔導師「い、良いんですか!?」
剣士「…… ……」

スタスタ

魔導師「あ、け、剣士さん! 待って下さい!」
631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:50:07.78 ID:kOga+gXoP
パタパタ……

……
………
…………

青年「……?」
癒し手「……せい、ねん? ……どう、したの」
青年「あ、母さん……ううん、ちょっと……船の音が聞こえた気がして」
癒し手「……船。ああ……鍛冶師の村に、定期船……来た、んですかね」フラッ
青年「……起き上がっちゃ駄目だ」
癒し手「……大丈夫」
青年「…… ……」
癒し手「私には……聞こえません、でした、けど……そう……」
青年「母さん……」
癒し手「……鍛冶師の村、までの……道、は……解り、ますね?」
青年「!?」
癒し手「……行きたい、んで……しょう……行って、良い……ん、です……よ」
青年「馬鹿な事言うな! 僕は、母さんを置いてなんて……ッ」
癒し手「…… ……」
青年「母さん……?」
癒し手「……弓、上手になりました」
青年「……母さんの教え方が良いから」
癒し手「薬草の扱いも、お母さんより上手ですし」
青年「母さん、喋らなくて……良いから……ッ」
癒し手「……伝えなくてはいけない、事……は、もう、全部……」
青年「行かないよ! 僕は……母さんを置いて何処にも行かない!」
青年「だから……!」
癒し手「…… ……雨、振ります。だから、早く……」
青年「行かないってば!」
青年「……振らないよ!まだまだ、雨なんか降らない!」
青年「良い天気だよ……! 此処に居るから。一緒にいるから」
青年「……だから、ほら、横になって!」
癒し手「……可笑しい、な…… 雨の日、だった筈……なんです」
青年「母さん……?」
癒し手「……雨の、中で……私…… …… ……ああ、違う、の、かな?」
青年「母さん…… ……かあ、さ……ッ !?」
癒し手「……かわ、った…… ……の、か……な……」サラ……
青年「!?」
青年(母さんの身体が、霞んで……違う! 崩れて……!?)
641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 11:58:49.72 ID:kOga+gXoP
癒し手「……あ、ぁ。側近…… ……さ……」サラサラサラ……
青年「母さん! ……いやだ!母さん!」ギュッ ボロ……ッ
青年「!!」
癒し手「……せい、ね…… ……あい、して……ます」サラ……サラ……
青年「か……ッ」
癒し手「…… ……」

ザアアアアアアアアア……ッ …… ……ッ

青年「か……あ、さ……ッ 母さん……ッ」ポロポロポロ
青年「……う、そ……だ……ろ……」
青年「何で……何で、母さんだけ……ッ 母さんの、身体だけ……!?」
青年(『強大な命』を産む代償!? 何故だ!)
青年(……姫様……お祖母様は、どうだったのか解らない、だけど!)
青年「何でだよ! 僕は、ただの……ッ」
青年「……エルフの血、何て……母さんより薄いんだぞ!?」
青年「何で……何でこんな風に……消えちゃうんだよ! 母さん!」
青年「…… ……」ヒック
青年(……何が、どうなっている、んだよ……!)
青年(魔王も、勇者も、どうでも良い……ッ 僕には、母さんが居れば)
青年(それで良かったのに……母さん……ッ)グッ
青年(…… ……)ゴソゴソ、コロン
青年(……勇者、様も、持ってる……母さんの、浄化の石)
青年(『エルフの森を探したい』……母さんの、夢)
青年(何時か、平和な世界を……父さんと、一緒に……)
青年「…… ……ッ 母さん……ッ」
青年「母さんの、望みなら……なんだって叶えてあげるよ……ッ」
青年「……勇者様を守って、世界を……平和にして……」
青年「貴女が一緒に旅をして、惹かれた光……ッ」
青年「黒い髪の魔王を倒す……ッ」
青年「……母さん」
青年(もう……一緒に、眠る事も……出来ない……)
青年「…… ……」ギュッ

スタスタ

青年「……弓、と、マント……と」ゴソゴソ
651 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 12:04:41.08 ID:kOga+gXoP
青年「…… ……ッ」

スタスタ、パタン

青年「……神父様」
青年「母さんを育ててくれて……ありがとう」
青年「自分が死んだら……隣に埋めてくれ、何て言ってたよ」
青年「……綺麗な棺桶、用意しなくちゃ、なんてね」
青年「寂しい? ……そんな事無いよね。僕の方が余程寂しい」グスッ
青年「……こんな世界、僕が終わらせてやる」
青年「こんな、こんな……腐った世界……ッ 僕から、母さんを奪った世界……ッ」
青年「『回り続ける運命の輪』だなんて物、絶対に断ち切ってやる!」
青年「…… ……ん?」

ポツ、ポツ……
ザアアアアアアアアア……

青年「! ……雨……ッ」
青年「…… ……嫌いだ。雨なんて……ッ」

クルッ

青年「濡れると……母さんが心配する」
青年「……もう、行くよ」

タタタ……

青年(鍛冶師の村は……あっちだな)
青年(……船、間に合うか……)

……
………
…………

剣士「……雨、か」
魔導師「つ、冷たい……ッ」
剣士「戻るか?」
魔導師「い、いいえ……!」
661 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 12:15:16.80 ID:kOga+gXoP
剣士「……風邪引くなよ」
魔導師「だ、大丈夫です! ……間近で見ると、大きいです、ね」
剣士「あの国の船、だからな……」
剣士(しかし……態々……なんだ?)
剣士(数ヶ月前に、見たあの流れ星の様な光……あれは)
剣士(……后と勇者、だろう。そう考えれば)
剣士(その知らせ……か? ……だが、こんな大がかりにする必要は……)
剣士(……何か、あった……のか)
魔導師「あ……誰か降りてきます!」
剣士「…… ……」

スタスタ

近衛兵「すみません、この村の方ですか」
剣士(……ローブを被ってきて正解、か)グイッ
魔導師(あ……瞳、見られたくないのかな)
魔導師「はい……鍛冶師の村の……えっと」
近衛兵「この書簡を、村長様にお渡し下さい。後」
近衛兵「補給の許可を頂けますか」

パタパタパタ……

息子「……魔導師!?」
剣士「……俺が連れて来た」
息子「あ……ああ、そうですか……」
息子「すみません……えっと、貴方達は……」
近衛兵「ああ……申し訳ありません。始まりの国の近衛兵で御座います」
息子「……こ、近衛兵?騎士様……では、無いのですか?」
剣士「……騎士団は解散したんだ」ボソッ
息子「え!?」
剣士「…… ……」
671 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 12:17:54.82 ID:kOga+gXoP
おひるごはーん
681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 12:49:37.32 ID:kOga+gXoP
近衛兵「王からの書状をもって参りました」スッ
魔導師「……すみません、息子さん」
息子「ああ、いや……確かに。受け取りました」
近衛兵「貴方が村長さん、ですか」
息子「はい、そうです」
近衛兵「補給の許可を頂きたいのですが……」
息子「……ああ、それは勿論、と言いたいところですが……」
剣士「魔導師、戻るぞ」グイッ
魔導師「え、あ……」
剣士「……雨が酷くなる」

スタスタ

魔導師「ま、待って下さい、剣士さん!」

タタタ……

シスター「魔導師!アンタ、居ないと思ったら……!」
魔導師「!」
剣士「……早く入れ」
魔導師「え、え……でも」
剣士「身体を拭いて、暖める方が良い」
シスター「ほら、早く!」

カチャ、カランカラン……

シスター「ご免なさい、女将さん何か拭くもの貸して頂戴!」
シスター「……後、暖まるスープか何か」
女将「あらあら、雨!? ……ちょっと待っててよ!」

パタパタ……

シスター「剣士さん、貴方ね? 魔導師を船の所まで連れて行ったの……!」
剣士「一緒ならば危険は無いだろう」
魔導師「…… ……」
シスター「だからって、ね! ……もう。そうで無くても」
シスター「魔石だか、鍛冶だかに興味持っちゃって困ってるのに……」
魔導師「……別に良いだろう、それは!」
691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 12:54:37.94 ID:kOga+gXoP
シスター「……あのね、魔導師。貴方一人がどれだけ望んでも」
シスター「あの鍛冶場はもう取り壊し決定しちゃったの!」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方、充分な魔法の腕があるじゃ無いの」
シスター「もう少し大きくなったら、兄みたいにこの村を守れる様になるわ」
シスター「……もう、魔石だの鍛冶だの、忘れなさい」
魔導師「……ッ」

カチャ、カランカラン……

息子「ああ、参った!」
シスター「息子さん……まあ、そんなに振ってきた!?ずぶ濡れじゃ無いの!」
シスター「女将さーん!」

パタパタ

魔導師「…… ……」ムスッ
剣士「……お前は、兄やシスターには本当に反抗的だな」
剣士「俺にはそうでも無い、のに」
魔導師「……だって。剣士さんは、あの人達みたいに」
魔導師「頭ごなしに僕を否定しないじゃないですか」
剣士「…… ……」
魔導師「あそこが、取り壊しになるのは仕方無いかもしれない。でも」
魔導師「……本とか、そんな物まで燃やしてしまおうと言うのは」
魔導師「間違えてる!」
剣士「本?」
魔導師「……参考書、と言うか。そう言う本があるんです」
魔導師「古い物から、最近の物まで。稀少な物なんです!」
魔導師「この村がこんな風になってしまった以上」
魔導師「価値も計り知れないのに……!」
701 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:03:31.81 ID:kOga+gXoP
息子「すみません、俺もお邪魔しても良いでしょうか」
剣士「あ、ああ……」
魔導師「…… ……」
息子「魔導師?」
魔導師「…… ……」
シスター「こら、返事ぐらいしなさい!」
息子「まあ、まあ……良いですよ、シスターさん」
シスター「息子さんは魔導師に甘いですって!」
魔導師「……息子さん、鍛冶場の……」
シスター「魔導師!」
剣士「……お前も待て」
シスター「でも……」
剣士「……気持ちは解る。所詮『何かを傷付ける物』だ」
剣士「戦争の道具……『魔導国』の出身のお前には辛いのだろう」
魔導師「……!」
魔導師(あ……そうか、シスターさんは……)
剣士「魔導師も、だ。怒りにまかせていては、本当の望みは伝わらないぞ」
魔導師「…… ……」
息子「……魔導師、何だい?」
魔導師「鍛冶場が……無くなるのは、仕方ありません」
魔導師「……でも、出来れば、残して置いて欲しいとは思います」
息子「うん……俺も、ね。辛くないと言えば嘘になる」
シスター「…… ……」
息子「ずっと鍛冶を生業にしてきたし、今でも、携わりたい気持ちはあるんだ」
息子「……でもさっき、剣士さんが言った様に、『武器』と言うのは……」
息子「他者を傷付ける物だ。勿論、身を守る為の装備でもある」
息子「……だけど。此処で、特殊な物を作り続ける必要の無い世界になっていこうとしてる」
魔導師「…… ……」
息子「すぐには武器なんか無くならない。身を守る為に」
息子「大事な人を守る為に、必要だ。まだまだ……」
711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:10:01.00 ID:kOga+gXoP
息子「……でも、『魔法剣』は……もう……」
魔導師「……だ、だったら、せめて!」
魔導師「本だけは……処分しないで欲しいんです!」
魔導師「……知識を持っておくことは、悪い事では無いはずです!」
シスター「悪用されたらどうするの!」
息子「……シスターの気持ちはご尤も、だけど」
息子「大丈夫。燃やしたりなんかしないよ」
シスター「息子さん……」
息子「……俺にとっても大事な物なんです。シスターさん」
息子「俺の家に、大事に保管しておく。何時でも読みに来たら良い」
魔導師「あ……は、はい!」
シスター「…… ……」ハァ
息子「貴方が……拒否感を示すのは仕方無いと思います」
息子「でも……これは、理解して……否。理解は出来なくてもいい」
息子「……でも、ごめんなさい」
シスター「……強制する権利なんか、ありません!」プイッ

スタスタスタ

息子「あ…… ……」ハァ
剣士「……こればかりは相容れないな」
息子「……ですね」
魔導師「あ、あの……すみません」
息子「君が謝る事じゃ無いよ、魔導師」
剣士「良いのか?放って置いて」
息子「……後で、謝りに行きます」
剣士「お前が謝る事でも無いと思うけどな」
息子「……惚れた弱み、です」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……俺にはその方が理解出来ん」
721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:21:48.31 ID:kOga+gXoP
魔導師「む、息子さんとシスターさんが!?」
息子「お、俺の一方的な片思いだよ!?」
剣士「……船はもう出たのか」
息子「あ……ああ、そうでした。書簡……」ゴソゴソ
魔導師「汽笛、聞こえてませんよ?」
息子「補給させてあげたいのは山々なんですけどね……まあ、出来る範囲で」
息子「……と、しか言えなくて。資源も少ないですし」
魔導師「まだ、出ないんですか」
息子「うん……明日の朝とか行ってたかな」
剣士「……始まりの国に戻る、のか」
息子「北の街と書の街にも行くって言っていましたよ」
剣士「……無駄な航路だな」
息子「……思うところが、あるんじゃないでしょうか」ペラ
息子「おお……ッ」
魔導師「え?」
息子「勇者様が、お生まれになったそうですよ!」
剣士(やはり、その知らせか……)
魔導師「勇者様!?」
息子「……しかも、お母様は『帰還者』だそうです!」
剣士「!」
魔導師「き……かんしゃ?」
息子「前勇者様の……娘さんだそうですよ」
剣士「…… ……娘!?」
息子「え、ええ……」ペラ
魔導師(きかんしゃ、ってなんだろう……)
息子「それに、王様がご結婚されたそうですよ!」
剣士「…… ……」
息子「細君はご懐妊されているともありますね」ペラ
剣士(王……が、結婚。病気だと聞いていたが)
剣士(……否。あれも噂に過ぎん、か)
息子「……あ」
息子「…… ……」
魔導師「息子さん?」
剣士「……どうした?」
731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:27:13.87 ID:kOga+gXoP
息子「……元騎士団長様が、お亡くなりになったそうです」
剣士「!? 王子が!?」
息子「あ……そうか、貴方はお知り合いだった、のですよね」
剣士「あ……ああ……」
息子「……前国王様のお兄様、でしたね。そんな……お歳、だったのでしょうか」
剣士「……あの男が、死んだ」
剣士(……『黒い靄』 ……まさか、な)
魔導師「剣士さん?」
剣士「あ……否。何でも無い」
剣士(……そうだ。人は平等に歳を取る。不思議では……)
剣士「……息子」
息子「な、何でしょう」
剣士「船は、明日の朝だったな」
息子「え、ええ……」
剣士「……乗せて貰えるか頼んでみる」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師「い、行ってしまわれる、んですか!?」
剣士「……元々、それほど長く滞在するつもりは無い」
息子「そ、そうですか……いえ」
息子「……毎日の見回りや、剣の指南のおかげで」
息子「どうにか、俺達だけでも自衛できるだろう、魔導師」
魔導師「で、でも……こんなに早く……!」
息子「何れは、自分達だけでやらないと行けないんだ」
息子「……俺も、一緒に頼みましょう」
剣士「否、それには……」

キィ……カラン、コロン

剣士「…… ……!?」
魔導師(わ、綺麗な人……男の人?女の人? ……あれ)
魔導師(どこかで、あった事あるような……?)
741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:32:41.06 ID:kOga+gXoP
女将「ああ、いらっしゃい……あらあら、まあ」
青年「……ああ、御免。濡れた侭で」
女将「そんなの良いよ! お兄ちゃん……で良いんだよね?」
女将「風邪引くよ……ちょっと待ってな、拭く物持ってくるから」

タタタ……

青年「…… ……ッ ……!?」
青年(紫の髪に……紫の瞳!?)
青年「…… ……まさか」
剣士「…… ……」
剣士(癒し手に似てる……が、しかし、これでは……)
剣士(……15.6と言っておかしく無い見た目)
剣士(あいつがいくらエルフの血を引いていると言っても……!)
魔導師「……お、お知り合い、ですか? 剣士さん……」
青年「剣士……!」
剣士「…… ……」

タタタ……

女将「はい、ほら、拭いて拭いて! ……何突っ立ってるんだい?」
女将「座りなよ……すぐに暖まるもの持って来るからね!」
青年「……君が、剣士」
剣士「お前……は……」
剣士(俺を知っている……!? と言う、事は……)
剣士「……青年、か」チラ
魔導師「?」
剣士(戦士、僧侶……と、名を出すと……魔導師が気付くか)ハァ
青年「…… ……」
剣士「側近と、癒し手の……息子、何だな」
青年「!」
息子「あ、あの……お知り合い……なんですよね?」
751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:39:00.73 ID:kOga+gXoP
息子「……もしかして、船に乗って居らっしゃった、のですか?」
青年「船? ……ああ、違うよ。僕は……」
青年「……僕は、このすぐ近くの小屋に母親と住んでいたんだ」
剣士「!」
剣士(目と鼻の先……に、居たのか……否)
剣士(癒し手は……まさか!?)
息子「え……あ、あんな場所に?」
青年「……僕は嘘はつけない」
魔導師「え?」
剣士「癒し手は……」
青年「……それより、あの船は何処の船なんだい?」
剣士「…… ……始まりの国だ。俺はあれに乗って、始まりの国へ行く」
青年「……君が?」
剣士「…… ……」
魔導師(な……なんか、空気が怖い……ん?)チカッ
青年「ん?」チカッ
剣士「!」
息子「え?今なにか……光った?」
青年「……!」
青年(母さんの魔石!? ……何で、こんな……否)
青年「……君」
魔導師「は、はい!」
青年「……それ、もしかして同じ物持ってんじゃない」コロン。チカチカ
魔導師「あ! ……ちょ、ちょっと待って下さい!」コロン。チカチカ
青年「…… ……それ、どうしたのか聞いても良いかい?」
魔導師「あ、こ、これは……」
息子「……僧侶さんに貰った魔石、か……」
魔導師「そ、そうです。僕の……お守りです」
青年「……『僧侶』 ……ああ、そうか……」
剣士「…… ……」
息子「……悪いが、二人ともしまってくれないか」
761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:44:37.22 ID:kOga+gXoP
青年「え?」
息子「勝手を言って申し訳無いが……」
魔導師「あ……す、すみません」ゴソ
魔導師(で、でも……どうして光ってるんだ? こんな事、今まで無かったのに)
青年「……ああ、まあ良いよ」ゴソ
剣士「…… ……」
息子「申し訳無い……村の人達は、その」
息子「……魔石には良いイメージを……その、ね」
青年「インキュバスの魔石の所為か」ハァ
魔導師「!」
息子「ど、どうして……」
青年「……僕は、世界の謎を探してる」
剣士「世界の謎?」
青年「『そう言う事』だろう……君が。僕が成そうとしている事は」
剣士「…… ……」
青年「『腐った世界の腐った不条理』を断ち切る為には」
青年「……『世界』の『謎』を探しだし、紐解くことが必要だ」
剣士「…… ……」
息子「……あ、の。すみません、えっと……」
青年「……青年」
息子「青年さん、ですね……俺は、この村の村長の息子と申します」
青年「村長さんは貴方のお父さんじゃ無かったの」
剣士「……亡くなったそうだ」
青年「……そう。失礼」
息子「で、こっちは……」
魔導師「あ……魔導師と申します!」
青年「ああ……氷の加護を受けてるんだよね」
魔導師「え!?」
青年「……何で驚くの。瞳を見れば解るだろう」
魔導師「あ、ああ……そうですね……」
771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:49:57.34 ID:kOga+gXoP
息子「剣士さん」
剣士「?」
息子「……始まりの国の方達には、一応伝えておきます」
剣士「あ、ああ……すまない」
息子「いえ……折角のご再会でしょうし、失礼致します」
息子「魔導師、行こう」
魔導師「あ、え……でも…… ……はい……」
青年「良いよ、魔導師本人は良いなら、だけど……居てくれても」
魔導師「え!?」
青年「……その石の話、知りたくないかい?」
魔導師「あ! ……それは、でも……」チラ
息子「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「……いえ、あの……失礼します」
青年「……そう」
魔導師(この人……なんか……苦手だ)

スタスタ、カラン……パタン

剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「『癒し手は』と聞いたね?」
剣士「……ああ」
青年「……母さんは、死んだ」
剣士「!?」
青年「さらさらと……風に攫われて消えてしまった」
剣士「な……ッ !?」
青年「……紫の魔王のお母さんと同じだ」
剣士「…… ……」
青年「ねえ」
剣士「な、んだ」
青年「……剣士はお酒飲めるの」
剣士「は? ……まぁ」
青年「じゃあ、乾杯しようか……すみません!」
剣士「……おい」
青年「『折角の再会』だって……」クス
青年「確かに、僕たちはお互いを知っている。初対面なのにね」
剣士「…… ……」
781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 13:50:55.72 ID:kOga+gXoP
おむかえー
79名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 14:22:32.14 ID:79sbdWCq0
BBA乙
この2人が始まりの国へ向かったらどうなるのかな
ワクワク
80名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 14:37:33.56 ID:GO3sZb0f0
やっと追いついた!
応援してます!
81名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 17:08:43.20 ID:OoytCEg1P
やはり青年は酒好きなんだな
821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 17:24:21.43 ID:kOga+gXoP
剣士「……ビールで良いんだな」
青年「良く解らないから何でも良いよ」
剣士「……何?」
青年「母さんと二人で、そんな機会があると思うかい?」
剣士「お前……」
青年「……なんだろうな。良く解らない。君の顔を見たときに」
青年「飲みたいと思ったんだ……飲んでみたいと、かな」
剣士「……気分が悪くなったら、やめろよ」
青年「ビール、二つね」
女将「あいよ!」
青年「後、オニオングラタンスープ?だよね、さっきの」
青年「それ、お変わり……それから、チキンの香草焼きと、えっと……」
女将「……お兄ちゃん、細いのによく食べるねぇ」
青年「そうかな……剣士は?」
剣士「……チーズと、クラッカーを」
青年「何だよ、格好つけて」
剣士「それだけ食うのを見せられるんだろう……腹も一杯になる」
青年「後、ペペロンチーノと……ああ、シーザーサラダもね」
剣士「…… ……」ハァ
青年「……そんな厭そうな顔をするなよ」
青年「ここから始まりの国まで、遠いんだろう」
剣士「!? ……一緒に行くつもりか!?」
青年「書の街までかな」
青年「……それより。君は船なんて使わなくても……」
剣士「ちょっと待て……お前、何処まで知ってる?」
青年「……君と大差ないと思うよ。母さんから……母さんが知る限りの」
青年「全ては、聞いた」
剣士「…… ……」
青年「君は、勇者様について行くんだろう、剣士」
剣士「俺は」
青年「『魔王を倒さなければならない』」
剣士「……ああ」
831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 17:36:35.81 ID:kOga+gXoP
青年「……選ばれる自信は?」
剣士「……『願えば叶う』」
青年「成る程」クス
剣士「…… ……」
青年「僕もだ。僕も……勇者様と一緒に行く」
青年「……産まれたのは知ってるよね?」
剣士「……ああ。聞いた。さっきの息子が……始まりの国からの書簡を受け取っていた」
青年「……もう、あの国に?」
剣士「ああ。それから……『王』の結婚と、細君の懐妊」
青年「……弟王子様の子供か。婚約者は少女、だったかな」
剣士「王子の……死」
青年「!?」
剣士「…… ……『黒い物』の話は?」
青年「聞いている」
青年「……勇者様に何かがあるとは思えないけど」
剣士「ああ……だが、俺は近寄らない方が良いかもしれん」
青年「? 何だよ、行くんだろう?」
剣士「……船を選んだ理由はそれだ」
青年「?」
剣士「迂闊に転移で飛び込んで……あっちが俺に引きずられるのは避けたい」
青年「……近づくだけなら平気、って保証も無いんだろう」
剣士「それを確かめに行く……どうせ、まだ時間はある」
青年「……16年間、ね」
女将「はい、おまちどおさま!」ドン!
剣士「……あ、ああ」
青年「じゃあ、乾杯?」スッ
剣士「……ああ」スッ

チィン

剣士「…… ……」
青年「……苦ッ」
841 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/24(金) 17:55:54.94 ID:kOga+gXoP
お風呂とご飯!
また……明日は無理かもw
85名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 19:03:23.37 ID:OoytCEg1P
おつ!!
86名も無き被検体774号+:2014/01/24(金) 22:57:37.03 ID:LGKi7Gw/i
乙やでー。
女勇者パーティの面々が、ここで顔を合わせるとはな。
87名も無き被検体774号+:2014/01/25(土) 00:03:16.20 ID:ehyslLGU0
やっぱ、青年と剣士と魔導師が仲間になったパーティなのかな

うーっ、wktkが止まらないぃぃぃっ!
88名も無き被検体774号+:2014/01/25(土) 20:24:43.99 ID:o976we7Di
スコーン乙
新スレ気付かんかったw
しかしこの展開は・・・wktk
89名も無き被検体774号+:2014/01/25(土) 20:43:52.43 ID:q3NSRqLxP
願えば叶うってみんな言ってるけど叶ってない事の方が多いよな
901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/26(日) 08:44:30.29 ID:9vuU59vhP
剣士「…… ……」クッ
青年「……笑うな」
剣士「無理はするな」
青年「何だよ……酒ってこんなに苦いのか」ハァ
剣士「……甘いのが好みならばそう言うのもある……此処に」
剣士「あるかは解らんがな……それより」
青年「?」
剣士「さっきの……光は何だ」
青年「……僕が聞きたい。あんなのは初めてだ」
剣士「…… ……」
青年「『三つ』ある筈なんだ」
剣士「……『三』」ボソ
青年「え?」
剣士「否……お前と、魔導師と……もう一つは?」
青年「勇者様だ。母さんが……あの城を去る時に后様に渡したと言っていた」
剣士「…… ……」
青年「まさか、魔導師と此処で会うとは思わなかった。そんな事があったんだ、と」
青年「聞いては居たけど……そんな子供の事なんて忘れてた」
青年「……大事にしてくれてる、てのは嬉しいけどね」
剣士「しかも光った」
青年「……そうだ。居てくれても良いよ、なんて言ったけど」
青年「僕自身が……聞きたかったのかな。母さんの話」
剣士「…… ……」
青年「息子?だっけ……あの人の様子見てると、御法度っぽいけどね」
剣士「……インキュバスの名等出すからだ」
青年「仕方無いだろう……事情なんか知らないんだから」
剣士「……話してくれるのか」
青年「何をだい」
剣士「俺が知らない……お前の知る話」
青年「そっちが、僕の知らない君の知る話を聞かせてくれるのならね」
青年「……書の街までは一緒だ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「これ以上この村に滞在したって仕方無いだろう」
青年「……勇者様の所へ行くまで、まだまだ時間はある」
剣士「やっぱり着いてくるんだな……まあ、良いだろう」
911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/26(日) 08:53:40.71 ID:9vuU59vhP
カチャ……コロン、コロン

剣士「……魔導師?」
青年「え?」
魔導師「あ……良かった、まだ居たんですね」ホッ
青年「どうしたの……子供はもう寝る時間じゃ無いの」
魔導師「ま、まだそんな時間じゃありません!」
魔導師「……あの、始まりの国の船……乗せてくれるそうです」
剣士「……そうか」
魔導師「えっと……お兄さんも、行くんですか」
青年「僕? ……ああ、そのつもりだけど」
魔導師「……そうですか」シュン
青年「まだそんな時間じゃ無いんだろう?」
魔導師「え?」
青年「どうぞ、隣……話、聞きたかったんだろう」
剣士「それはお前だろう」
青年「……いちいち言わなくていいだろ」
魔導師「い、良いんですか!?」
青年「さっき言ったと思うけど。僕は青年」
魔導師「あ、ありがとうございます、青年さん!」
魔導師「……あ、でも……」
青年「石を出さなきゃ良いんだろ」
剣士「まだ光ってるのか?」
魔導師「……そうみたいです。ちらっと覗いたら……」
青年「僕のもだ……それに、何だか妙な気分なんだ」
剣士「もう酔ったのか?」
青年「違うよ! ……なんて言うか……悲しい様な、切ない様な」
魔導師「あ……!」
剣士「苦しい様な……嬉しい様な、か」
青年「……何故」
剣士「……癒し手と側近と共に居る時、その石が傍にあると」
剣士「俺も、似た様な気分になった……からだ」
921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/26(日) 09:12:25.61 ID:9vuU59vhP
青年「……君は持っていないんだろう?」
剣士「俺は『何』だ? ……特性を考えると」
剣士「……苦手だと思ってもおかしく無いか、と言われたな」
青年「ああ……成る程」
魔導師「??」
青年「……まあ、良い。かあさ……癒し…… ……」
青年「ああ、もう。話にくいな」
剣士「『僧侶』の話か」
青年「……確かに、嘘にはならないけどさ」ハァ
魔導師「あ、あの……?」
青年「……自己紹介、しようか」
魔導師「え?」
青年「僕と剣士は……まあ、ほら。お互いをある程度知ってるし」
青年「君と剣士も、だろう? でも、君と僕は正真正銘初対面だ」
青年「……石よりも先に、お互いを知るべきだろう?」
魔導師「わ、解りました……えっと」
青年「言いにくい?僕から話そうか」
魔導師「いえ……あの、えっと。名前は魔導師です」
魔導師「……氷の加護を受けています」
青年「うん」
魔導師「……青年さんは、このすぐ傍に住んでいらっしゃった、んですよね?」
青年「ああ……まあ、そうなんだけど」
青年「ずっと母さんと二人で、殆ど外に出たことが無いんだ」
青年「自己紹介ついでに、この村の事も教えてくれると嬉しいな」
魔導師「え、でも……あの、その、魔石の話……」
青年「……ああ、まあそれはね。何て言うかな」
青年「ここ何年かの話、てのは……知らないから」
剣士「…… ……」
青年「さっき君が聞いてたかは解らないけど」
青年「……僕は『世界の謎』を紐解きたい……否」
青年「僕にはその義務がある、と思ってる」
魔導師「…… ……」
青年「だから、何だって良いから……知りたいのさ」
青年「……母さんからある程度、この村の話も聞いたけど」
青年「鍛冶について、母さんはさっぱりだっただろうからね」
魔導師「……ッ」
剣士「…… ……」
青年「……あれ、どうしたの」
931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/26(日) 17:28:25.54 ID:9vuU59vhP
今日はもう難しそうだなー
また明日、かな!
94名も無き被検体774号+:2014/01/26(日) 20:23:19.16 ID:qfXvqJaVi
スコーン乙
今規制が厳しくて書き込めない大勢の奴らも楽しみにしてると思う
ガンガレ!

おやすみ☆ミ
95名も無き被検体774号+:2014/01/26(日) 20:52:26.90 ID:rHYPQVFQ0
楽しみにしてる!

王子が殺されたのは悲しすぎるけど(´;ω;`)
魔王の過去を見ている中で、紫の魔王がまた出てきたら嬉しいなー
96名も無き被検体774号+:2014/01/26(日) 23:13:34.13 ID:8pC2Npzn0
今までまとめでしか2ch見てなかったから待つのが耐えられん!

待ってる間に他のSSを見たいんだがオススメないかな?
97名も無き被検体774号+:2014/01/27(月) 00:43:06.59 ID:D11D05m10
勇者「拒否権はないんだな」
1 9 名前: 名も無き被検体774号+ Mail: 投稿日: 2013/02/04(月) 14:07:46.61 ID: G6CSV7KI0

あと1週間で一年だね。
ガチでなんかお祝いしたい気分だw

続き頑張ってくれ!
つ イヤラシノマセキ
98名も無き被検体774号+:2014/01/27(月) 00:45:07.88 ID:c3SBlglt0
もう一年も経つのか……
991 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 09:35:02.48 ID:EFBzWVUiP
おはよう!
おむかえまで!

ほんまやね、もうすぐ一年やなぁ……
でもまだもう少し続きそうですwww
100名も無き被検体774号+:2014/01/27(月) 09:59:41.56 ID:tdb+1N0zP
あの日から毎日見に来てんだな…
毎日の楽しみだよ!
1011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 10:05:33.77 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……」チラ
魔導師「……昨年、この村で流行病が……その」
青年「……御免、なんか悪い事聞いたか」
魔導師「いえ ……その」
剣士「随分、亡くなられたそうだ。その知識や技術を持った」
剣士「……大人達が、な」
青年「……そうか」
魔導師「鍛冶場も……取り壊しが決定しました」
青年「…… ……」
魔導師「世界は平和になっていくから。だから、特殊な鍛冶の技術は」
魔導師「もう、いらないんだって」
青年「……確かに、平和にはなっていくのかもしれない。だけど」
青年「魔王は復活したし、魔物だって強くなっている。なのに?」
魔導師「単なる武器、ならこの村での生成に限らないんでしょう?」
剣士「……こんな物、たかだか鋼。だからな」
青年「魔法剣の知識、技術自体は……とうに廃れてしまった、と言う事か」
剣士「聞いてたんだろう?」
青年「ある程度はね」
魔導師「本だけは、どうにか残して貰えることになりました」
魔導師「……息子さんは、何時でも見に来て良いって」
青年「剣を鍛えられる人、てのは……居ないのか」
剣士「……息子ぐらいの物みたいだな。だが……とうの本人も、な」
青年「魔導師は、興味があるんだね?」
魔導師「え……あ、はい。でも……僕は、まだまだ、その」
魔導師「……です、子供、だしって……」
魔導師「鍛冶場にも、危ないからって近寄らせては貰えませんでしたから」
青年「曾お爺様、嘆くな……」ハァ
魔導師「ひいおじいさま?」
剣士「青年」
青年「……あっと」
魔導師「??」
剣士「……魔石生成の技術だってそうだ。とうに……」
青年「……魔除けの石を残して、だったな。それも」
青年「魔導国の解体で、もう…… ……」
1021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 10:20:22.81 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕が、もっと大人だったら」
魔導師「どうにか、出来たのかな……」
剣士「…… ……」
青年「……『人間』はね、どれだけ生き急いだって」
青年「成長するスピードなんか変えられないんだ」
魔導師「…… ……」
青年「勇者様だってそうだ。倣うならば、16年」
青年「……僕たちは16年、彼女の成長を待たなければならない」
魔導師「そうだ……勇者様、女の子なんですよね」
青年「……だよね?剣士」
剣士「らしいな」
魔導師「あれ? でも……どうして、青年さんが知っているんです?」
魔導師「……僕達はさっき、書簡で知ったけど……」
魔導師「青年さん、ずっと……小屋に住んでらした、んですよね」
魔導師「なんで……」
青年「……困ったな。僕は嘘は吐けない」
魔導師「さっきも……言ってましたね。何なんです?」
青年「…… ……」
剣士「……阿呆」ハァ
魔導師「??」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!」
青年「……剣士」
剣士「何だ」
青年「……僕は、彼じゃないのかな、と思うんだけど」スッ
魔導師「え? 僕? ……が、あの。な、なにか……」
剣士「……癒し……『僧侶の魔石』か」
青年「確かに、単なる偶然なのかもしれない。意味なんか何も無いのかも知れない」
青年「……魔石の作り方を教えてくれたお礼」
青年「それだけだったのかもしれない、けど……」
魔導師「あの……?」
1031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 10:35:27.20 ID:EFBzWVUiP
青年「……さっきの疑問に答えるよ、魔導師。でもちょっとだけ待って」
青年「僕と剣士は……勇者様について行くつもりなんだ」
魔導師「……え!?」
青年「君は今幾つだい、魔導師」
魔導師「も、もうすぐ……9歳、です」
青年「例外なく彼女が16歳になる時に……と考えると24.5歳だな」
魔導師「……ちょ、ちょっと待って下さい!?」
魔導師「ぼ、僕ですら、そんな歳になるんです! お二人は……!」
青年「……まあ、それは良いから」
魔導師「良くないでしょう!?」
魔導師「そ、それに……勇者様に選ばれるっていう保証も……!」
剣士「……『願えば叶う』」
魔導師「剣士さん……!?」
青年「さっきも言った。僕は嘘は吐かない」
青年「……僕は勇者様について行く。選ばれる保証は確かに無いが」
青年「君と僕が持つ、その石……同じ物を、勇者様も持っているはずだ」
魔導師「え!?」
青年「……やっぱり、偶然じゃ無いのかもな」
剣士「一人で納得するな……それに」
剣士「魔導師、だとして、だ……まだ子供だ」
青年「選ばれなければ選ばせれば良い」
剣士「……無茶苦茶だな」
魔導師「…… ……」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「……勇者様が、光の剣を持って魔王を倒す、って事は知ってる?」
魔導師「あ……はい……あの。兄さんに聞きました」
青年「うん。じゃあ……その光の剣が完璧な状態じゃない、って事は?」
魔導師「え!?」
1041 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 10:59:18.79 ID:EFBzWVUiP
剣士「……おい」
青年「さっき君が言った事はクリアできるだろう、剣士」
青年「確かに魔導師はまだ子供だ。だが、勇者様が旅立つ頃には」
青年「……見た目だけで言えば、僕や君より余程『大人』さ」
魔導師「え……?」
剣士「おい」
青年「魔導師」
魔導師「……は、はい」ビクッ
青年「話を戻すよ……光の剣は完璧じゃ無い」
青年「……あれも確かに『魔法剣』だ。まあ、随分と特殊だけれど」
剣士「…… ……」
魔導師「そ、そんな事を……あの、言われても……」
青年「まあ、ご尤も、だね」
魔導師「……僕は、確かに……その、鍛冶には興味があります」
魔導師「もう……その、終わった技術だって、大人達は言うけど」
魔導師「魔石にだって……本当は……」
青年「うん」
魔導師「でも!いくら僕が、これから……学んだって……!」
魔導師「まさか、光の剣を治せる様になんて……!!」
青年「確かに、ずっとこの村に居るだけじゃ無理だろうね」
魔導師「え……」
青年「その本、だっけ? ……を読んだ所で」
青年「此処は、鍛冶場も壊されてしまうんだろう」
青年「鍛冶について、は僕も解らないけど」
青年「……狭い『世界』に居たって、何も得られないだろうとは思うよ」
剣士「……おい、待て、青年」
青年「何だよ」
剣士「まさか……連れて行くつもりか!?」
青年「……望むならね」
剣士「!」
青年「……ねえ、魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「君の魔法の腕は大したモンだって、母さんから聞いてる」
魔導師「!?」
青年「実際、魔石の作り方を母さんに教えたのは君なのだろう」
1051 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:07:20.56 ID:EFBzWVUiP
魔導師「え……青年さんのお母さん、に……?」
魔導師「いえ、あの……僕は、貴方のお母さんには……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「会っているよ、その石をくれたんだろう?お礼にって」
魔導師「…… ……え?」
青年「『僧侶』……今の名は、『癒し手』だ」
青年「エルフの血を引く美しい人で、僕の母さんだ」
青年「……知りたいのなら全て話してあげる。僕と剣士が知ってる事に限られるけど」
青年「『世界の裏側をちょっとだけ』」
魔導師「え…… ……え、え!?」
剣士「待て、青年」
青年「止めないでよ……『三人目』は彼だ」
剣士「……待て、って。思考がついていってない」
魔導師「…… ……」ポカーン
青年「……あらら」
剣士「まだ子供だと言っただろう」ハァ
青年「……しっかりしてるから大丈夫かと思ったけど」
剣士「無茶苦茶だ、と言っただろう……」
青年「魔導師?」
魔導師「は……はい!?」
青年「……まあ、ゆっくり考えておいてよ」
魔導師「な、何をですか!? 今でも、さっぱり……!」
剣士「当然だな」ハァ
剣士「……お前も、もう少し順序立てて話せ」
青年「僕の中ではちゃんと納得してるんだけど」
剣士「予備知識も何も無い子供に通用する様に話せ、と言うんだ」
青年「……反対はしないんだな」
剣士「今更何を言う……断りも無しにペラペラと」
青年「もし着いてくると言うのなら、全て教えてやるつもりだけど?」
剣士「……それについては何も言わん。だが」
剣士「まだ10にも満たない子供だと言うんだ、相手は」
剣士「それに……『三』だ」
青年「さっきも言ってたな……なんだよ、それ」
剣士「魔王達と立てた仮説の一つ」
魔導師「ま……え!? 魔王!?」
1061 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:23:06.07 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……」
青年「……君も人の事言えないじゃないか」
剣士「……すまん」
魔導師「……お、お二人は……一体、何者なんですか!?」
青年「……知りたければ一緒においで?」
魔導師「ぼ……くが!?」
青年「ああ。勇者様についていきたいと思うなら」
青年「……光の剣に興味があるなら。世界の裏側を知りたいなら」
魔導師「…… ……」
青年「無理強いはしないよ……僕は君だと思うけれど」
魔導師「あ、あの……」
青年「僕は、剣士と明日、あの始まりの国の船に乗って」
青年「この村を発つ……その時に一緒に行こうとは言わないよ」
青年「でも、忘れないでくれると嬉しいかな」
魔導師「…… ……僕が、勇者様、と……」
剣士「…… ……」
青年「ま、そんな道もあるって事」
青年「……『知』を求めるには、自分から動くことも必要だよ、魔導師」
魔導師「!」
青年「剣士が居れば、何時だって迎えに来れるしね」
剣士「……お前な」
青年「事実だ」
魔導師「……剣士、さん」
剣士「? ……なんだ」
魔導師「剣士さんは……僕に、教えてくれました、よね」
剣士「……?」
魔導師「『目で見てしまった物を、否定するのは難しい』って」
剣士「……ああ」
魔導師「僕は……まだ、何も、その。見て、無いんですけど」グッ
魔導師(……まだ、光ってるみたいだ。僧侶様の石)
魔導師(こんな事、無かった。魔石が光るなんて、否、これだけじゃ無い)
魔導師(でも、確かに……青年さんのと、僕の……!)
1071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:28:57.42 ID:EFBzWVUiP
青年「…… ……」
魔導師「……か、帰ります」スッ
剣士「送ろう」
魔導師「大丈夫です……一人で、帰れます……」フラフラ

パタン、カラン、コロン……

青年「…… ……」
剣士「お前、態とだろう」
青年「何の事だい」
剣士「……魔導師の興味のありそうな事ばかり一方的に与えて」
青年「ならどうやってでも止めれば良かっただろう」
剣士「……見てしまったからな」
青年「…… ……」
剣士「今更反対はしない。俺も……彼かもしれないと思う」
青年「ああ、そうだ。『三』って何だよ」
剣士「……船の中で話してやる。着いてくるんだろう」
青年「一緒に行く、って言ってくれる方が嬉しいんだけど」
剣士「やめろ、気色悪い」
青年「……不思議だな」
剣士「?」
青年「ずっと知ってた奴と、一緒に飲んでるみたいだ」
剣士「……酒飲むのすら初めての癖に何を言う」
青年「そうなんだけどさ……なんだろうな」
青年「『又一緒に酒を飲もう』って約束、してたみたいだなって」
剣士「……酔ってるのか」
青年「流石にそれは無いって……」
剣士「『初めてなのに、そうじゃ無い様な感覚』か」
青年「……ずっと知っているのに。何度も経験しているのに」
青年「『初めてじゃ無いのに、そうじゃ無い様な感覚』かな」
剣士「……『回り続ける運命の輪』か」
青年「下らないな」ボソ
剣士「……何?」
青年「振り回されるのは御免、だ」
1081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:37:45.36 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……飲み過ぎるなよ。明日は早いぞ」
青年「君は何処に?」
剣士「息子の家だ」
青年「……僕は宿だ。明日、船着き場で」
剣士「ああ」

スタスタ、パタン

青年「……母さん」ギュッ
青年(僕は……間違えて無いはずだ)
青年(彼……魔導師だ。鍛冶や魔法の知識に興味を持ち)
青年(彼ならば……必ず、力になる。利用すると言えば言葉は悪いが)
青年(……否。それでも言い。言葉なんて何でも良い。誰に何を思われても良い)
青年(母さんの願いは……必ず、僕が叶える……!)

……
………
…………

魔導師「……兄さん?」

キィ

魔導師「ご免なさい、遅く…… ……あれ?」
魔導師(居ない…… ……ん、メモ?)
魔導師(『息子さんの家に行っています。先に休む様に』)ペラ
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(『明日は朝から見回りに行くので、孤児院に行って』)
魔導師(『読み聞かせのお手伝いをお願いします』)
魔導師「……シスターさん、か」ハァ
魔導師(まだ、ぼんやりしてる。でも、僕……興奮、してる)
魔導師(青年さん……怖い人じゃ無かった。不思議な人だけど)
魔導師(何言ってんのか、さっぱりわかんないや)
魔導師(……勇者様、魔王……ああ、そうか。剣士さんも)

スタスタ

魔導師(あの二人、何者なんだ……?)ボスッゴソゴソ。モソモソ
魔導師(青年さんは、あんな事言ってたけど)
魔導師(僕が、勇者様と一緒に!? あの二人と一緒に!?)
魔導師(……エルフ。勇者。魔王……世界)
魔導師(何だろう。引っかかる気が……知ってる気が、する)
魔導師(……僧侶さん)ゴソ。チカチカ
魔導師(まだ、光ってる……可笑しいな)
1091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:45:09.34 ID:EFBzWVUiP
魔導師(今まで、こんな気持ちにならなかった)
魔導師(持っていると落ち着いた……でも)
魔導師(苦しくて、悲しくて切なくて……ええと、嬉しい、だっけ?)
魔導師(……なんか、良くわかんない。けど)
魔導師(何だろう。喉が苦しい。胸が……痛い)
魔導師(僕は…… ……)ゴソゴソ。コロコロ
魔導師「…… ……ッ」ガバッ
魔導師(……ベッドに入っても眠れない!)

スタスタ

魔導師「全く!青年さんの所為だ! あの人は……!!」
魔導師(『知りたいのなら一緒においで』)
魔導師(…… ……)

ゴソゴソ

魔導師(鍛冶場で、読んだ本……一冊だけ持って来ちゃった)
魔導師(…… ……)ペラ
魔導師(光の剣…… ……魔法剣)
魔導師(鍛冶師様、だっけ……聖職者様と、ならんで)
魔導師(この国の勇者……否)
魔導師(『勇者だった人』…… ……どんな人だったのかな)
魔導師(兄さんは、聖職者様の話が好きだったから)
魔導師(僕が、鍛冶師様の話を聞きたがると、何となく厭そうな顔してた)
魔導師(……この村を出て行ってしまったから?)
魔導師(違うか……始まりの国と魔導国で、戦争があって……)
魔導師(……聖職者様を、悪者にした、から?)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(……眠れない)
魔導師(勇者様……女の子、か)
魔導師(どんな……子なのかな)
魔導師(『知りたいのなら……』 …… ……ッ)ブンブンッ
魔導師「ぼ、僕には……関係……ッ …… ……」
魔導師「…… ……」ハァ、チラ……チカチカ
魔導師(目で見て、しまった物を…… ……)
1101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 11:54:57.95 ID:EFBzWVUiP
……
………
…………

衛生師「全て滞り無くすんだか。問題は?」
近衛兵「はッ ……特に何もありません」
衛生師「……ご苦労様。では、下がって下さい」
近衛兵「はい。失礼します」

スタスタ、パタン

少女「…… ……」
衛生師「体調はどうだい、少女」
少女「……どうって事は無い」
衛生師「そう。ならもう部屋に戻りな」
少女「衛生師」
衛生師「……王、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「君らしくないな。お情際の悪い」
少女「到底受け入れられる事では無いだろう」
衛生師「……もう遅いよ。何もかもね」
衛生師「『嘘も突き通せば誠になる』のさ」
少女「……魔法使いは『帰還者』なのだろう!?」
衛生師「葬儀の知らせは入れたよ。流石にね……だけど」
衛生師「彼女は小屋から出てこない……望み通りに、ね」
少女「お前のか……それとも彼女のか」
衛生師「どちらも、だ」
少女「…… ……」
衛生師「『王』の母親の処分も済んだ」
少女「!」
衛生師「……魔法使いは勇者が旅立った後、どうにでもなる」
少女「……魔法使いは、領主様の血を引くお方だ」
少女「おいそれと……ッ」
衛生師「だが彼女は、優れた加護は持たないんだよ」
少女「…… ……な、に!?」
衛生師「君と同じだ、少女……紅い瞳をして」
衛生師「母親にも……まあ、疎まれていた、程じゃ無いかも知れないけど」
衛生師「それでも……彼女も『特別』じゃ無い」
少女「嘘を吐くな!」
衛生師「嘘吐いたって仕方無いだろう……事実だよ」
少女「……事実だとして、何故お前が知っているんだ!」
1111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:04:28.29 ID:EFBzWVUiP
衛生師「…… ……」
少女「……一度、聞いてみたかった」
衛生師「何だい」
少女「お前は、何の為にこんな事をするんだ」
衛生師「…… ……『国』の為さ」
少女「『王』はもう居ない!」
少女「……命令だからと。仕事だからと……お前は『王』に従順だった」
少女「なのに、その王もお前自ら……!」
衛生師「声が大きいよ、少女……自分の首を絞める結果になるって」
衛生師「解らない程の馬鹿じゃ無い筈だけど……説明した筈だ」
衛生師「『王と王子様は、もみ合いの末』……」
少女「……最後は狂った王が、自らの首を掻き切った、と!?」
衛生師「……そう。狂っているのは誰の目にも明らかだっただろう?」
少女「王は……ずっと」
少女「『最後の王』等になど、と……ッ」
衛生師「だからだよ。それが答えだよ、少女」
少女「え……?」
衛生師「僕は王に従順だ……命令には、全てはいと言って従ってきた」
衛生師「……『王』を絶やす訳には行かないのさ」
少女「……盗賊様の遺言だからか」
衛生師「『王』の望みでもある」
少女「だから今、お前がその椅子に座っていると……言いたいのか!?」
少女「詭弁も甚だしい!」
衛生師「……何と思って貰っても良い」
衛生師「だけど、僕は……それが仕事なんだ」
衛生師「『王』の望み通り。『王』を絶やしては居ない」
衛生師「……その子が産まれれば。すぐにでも譲るよ」
少女「……お前と私の子である以上。これは『王』では無い」
衛生師「それこそ詭弁だ」
衛生師「……『血』に拘る必要なんか無いんだ」
少女「…… ……ッ」
衛生師「『国』だけは守らないとね……『王』として」
1121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:13:35.37 ID:EFBzWVUiP
少女「……お前が解らない」
衛生師「…… ……」
少女「お前の……原動力は何なんだ?」
少女「権力に興味など無いと言いながら。お前のしている事は……!」
衛生師「……『知』かな」
少女「え……?」
衛生師「知りたいだけさ」
少女「…… ……」
衛生師「それに、仕事でもある」
少女「……衛生師」
衛生師「王」
少女「…… ……」
衛生師「仕事、だよ少女……守って行く義務がある」
衛生師「この『国』を守ったときに、何が見えるのか」
衛生師「……もしくは、国が滅んだときに何が見えるのか」
少女「!?」
衛生師「どうしてこの国が作られたか知ってるかい」
少女「……蔑まれて来た出来損ない達が」
少女「……盗賊様と、鍛冶師様が……彼らを解放して、と言うのが始まりだろう」
衛生師「いや、まあ……そうなんだけど。それのもっと前、さ」
少女「前……?」
衛生師「一度滅びた国があったそうだよ。此処にね」
少女「え……」
衛生師「何故か? ……そこまでは僕も知らない。だけど」
衛生師「どうやったら、『国』が滅びるのか……」
少女「!?」
衛生師「……興味はあるけどね」
少女「……お前……ッ」
衛生師「別にこの国を滅ぼす気なんて無いよ」
衛生師「……僕が産まれて、育った国だ」
少女「……『好奇』なんだな」
衛生師「え?」
少女「お前の原動力、だ…… ……それは『知』とは言わない」スッ

スタスタ、パタン

衛生師「…… ……『王』が絶えればどうなるか」
衛生師「成る程。『好奇心』を刺激させられるな」
1131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:21:45.06 ID:EFBzWVUiP
……
………
…………

スタスタ

青年「あれ、もう来てたのか」
剣士「お前が遅いんだ」
青年「……まだ船出てないんだから良いじゃ無いか……って」キョロ
剣士「……来るはず無いだろう」ハァ
青年「充分に彼の好奇心を刺激したつもりだったんだけどな」
剣士「お前……」
青年「ていうか、暑くないの、そのローブ」
剣士「……顔を見られるよりマシだ」

タタタ……

近衛兵「失礼、船に乗せて欲しいと言うのは貴方ですか?」
剣士「ああ」グイッ
近衛兵「動力に不安定な部分がありまして、もう少し遅れ……」
近衛兵「……此方の方は?」
剣士「……連れだ」
近衛兵「え? ……ええと、一人、って聞いてたんですが」
青年「僕も乗せて貰えると嬉しいんだけどね」ニコ
近衛兵「は、はあ……それは構いませんけど」
青年「案外緩いな」
近衛兵「お祝いに駆けつけたいと言う方が結構乗ってますから」
青年「そうなの?」
近衛兵「王からも、そう言う方が居たら断らない様に言われています」
近衛兵「……もう、軍隊ではありませんから」
剣士「……成る程」
青年「まあ、こっちに取っちゃ好都合、だけど……で、どれぐらいになりそう?」
近衛兵「早ければ昼過ぎ……には」
剣士「結構時間があるな」
青年「お茶でもしてようか、お腹すいたな」
剣士「朝飯食ってないのか」
青年「食べたよ……減るもんは減るの」
剣士「…… ……」ハァ
近衛兵「準備が整いましたら、汽笛を二回鳴らします」
近衛兵「それを合図に、もう一度お越し下さい」
1141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:28:20.89 ID:EFBzWVUiP
剣士「解った」
青年「飛んで行けばすぐなのに」
剣士「……昨日話しただろう」
青年「解ってるよ……まあ、君と抱き合って、てのも御免だけどね」
剣士「……突っ込む気にもならん」

……
………
…………

魔導師「『そうして、エルフのお姫様は』」
魔導師「『どこからも失われてしまったのです……』」

「ねえ、赤ちゃんどうなったの?」
「お姫様、死んじゃったの?」

シスター「どうなったと思う?」

「死んじゃったらかわいそう……」

シスター「そうね……さて、今日はここまで!」
シスター「本を読んで下さった魔導師のお兄さんに」
シスター「皆、感謝のご挨拶をして頂戴?」

アリガトウゴザイマシタ!

魔導師「いいえ、どういたしまして……」
シスター「『……心ここにあらず、だったわね』」
魔導師「『……そうですか?』」
シスター「『昨日、随分遅くまで起きてたんでしょう』」
シスター「……目の下、クマができてるわよ」
魔導師「『……それより。』小さな子にこの物語は……難しいのでは無いでしょうか」
魔導師「相当古い本でしょ、これ……描写も少々、残酷ですし」
シスター「……魔導師は、どうなったと思う?」
魔導師「……はい?」
シスター「このエルフのお姫様、よ」
魔導師(……前から思ってた。僧侶さんにそっくりだ)
魔導師(そう思うのは……青年さんに会って、青年さんの話を聞いたから、なのだろうけど)
1151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:36:48.78 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕は」
シスター「本当は、ああして読み聞かせた後に、子供達の考えを聞いて」
シスター「色々、話をするのよ」
魔導師「『何時もやってるじゃないか』」
シスター「『今日は貴方が、本当に上の空だから、よ』」
魔導師「…… ……」
シスター「ここは孤児院だから。親の愛情を、ほとんどの子が知らない」
魔導師「『…… ……』」
シスター「『それだけじゃ無いけどね……』」
魔導師「え?」
シスター「『貴方も覚えてるでしょ? ……この、表紙のエルフ』」
魔導師「……僧侶さん、に似てるよね」
シスター「……昨日、僧侶にそっくりな男が剣士と一緒に居たんでしょう」
魔導師「息子さんに聞いたのか」
シスター「…… ……馬鹿な事、考えないのよ、魔導師」
魔導師「何だよ、馬鹿な事って」ムッ
シスター「あの僧侶にそっくりな男が何かは知らないけど」
シスター「……彼らとは、生きる世界が違うの」
魔導師「…… ……」
シスター「私達は、この狭い村……此処だけが世界なのよ」
魔導師「……この、エルフのお姫様の様に、か」
シスター「…… ……」
魔導師「出て行ったら、碌な事にならないとでも言いたいの?」
シスター「……魔導師」
魔導師「……て、言うか、これ……ページ、抜けてるよね」ハァ
シスター「『え?』」
魔導師「多分、だけど……エルフの森に雨が降った下りから」
魔導師「旅人が矢に打たれるところが唐突すぎて……繋がらない」
シスター「『……司書様の形見ですもの。雑には扱っていないわ』」
魔導師「『……持って来られたときから、抜けてたのかもしれないよ』」
シスター「『……そうね。古い本だって言ってたし』」
シスター「……新しい本を買ってあげる余裕も、正直無いからね」ハァ
1161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:44:22.29 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕、もう行くよ。昼寝の時間だろう?」
シスター「え、ええ……そうね。ありがとう」
シスター「午後からもまた、遊び相手になってあげて頂戴」
魔導師「え……鍛冶場の片付けだろう?」
シスター「それはもう良いのよ……貴方に任せると」
シスター「片付けにならないもの」
魔導師「……それは、でも」
シスター「本は纏めて息子さんが整理してたわ」
シスター「……諦めなさい、魔導師」
魔導師「…… ……ッ」
シスター「食事は女将さんに伝えておくから」
魔導師「……解ったよ!」

クルッ スタスタ

シスター「兄と一緒に行くのよ! ……ああ、もう」

魔導師(息子さんの家、か……兄さんと食事済ませて)
魔導師(行こうかな。ああ、でも午後から……)チラ
魔導師「!? え、なんで……!?」
魔導師(まだ、船が居る……何故……ッ)
魔導師(…… ……)
魔導師(今なら、まだ……ッ)

タタタタ……ッ

兄「あ、魔導師!」
魔導師「!」ビクッ
兄「孤児院の帰りか?」
魔導師「……兄さん」ドキドキ
魔導師(今なら、まだ……!!)
兄「毎日ご苦労様」
魔導師「うん……でも今日でもう終わりだよ」
1171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:53:18.34 ID:EFBzWVUiP
兄「……『え?』」
魔導師「『僕は……僕の世界は、此処では終わらない!』」
兄「な、何言ってるんだ?」
魔導師「丁度良かったよ。『この村には……僕の見たい世界は無いんだ』」
兄「……ま、魔導師?」
魔導師「『兄さん……エルフなんて……本当にいると思う?』」
兄「な、何だよいきなり……そりゃ、魔物が居るぐらいだからなぁ」
兄「……ああ、あれか。司書様の本を読んだんだな?」
兄「あれは、ただの御伽噺で…… ……」
魔導師「『……目で見た物を、否定するのは難しいんだ』」
兄「……魔導師、どうしたんだ?」
兄「お前、言ってることがさっぱり解らないぞ?」
魔導師「……エルフは、嘘は吐けないんだ」
兄「……は?」
魔導師「……僕は、魔石を作りたい!魔法剣を作りたいんだ!」
魔導師「魔法の腕を磨いて、知り得る事を知りたい!」
兄「お、おい、魔導師!」

ボーゥ……ボーォォオウ……

兄「ッ 汽笛……?」
魔導師「!」

タタタ……

兄「お、おい、魔導師!?」
魔導師「……兄さん!僕は……勇者様についていく!」
魔導師「勇者様と一緒に、『世界』を見に行く!」
兄「え!? ……あ、こら、待て、魔導師……ッ」
魔導師「……ご免なさい、僧侶さん。約束……ッ」
魔導師「でも、傷はつけないから……ッ 氷よ!」

ピキィイン! パリパリパリ……ッ

兄「!」
1181 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 12:58:23.23 ID:EFBzWVUiP
シスター「何の騒ぎ……ッ !? 氷の魔法!?」
シスター「魔導師……ッ !?」

タタタ……ッ

キィ、パタン

剣士「おい青年、早く…… ……!?」ピタッ
青年「急がなくてもだいじょ…… ……!?」ドン!
青年「おい、何だよ急に…… ……!?」

タタタ……

魔導師「……青年さん、剣士さん!」

青年「あの氷の壁……魔導師が!?」
青年「……大したモンだ」
剣士「感心している場合か……急げ」
青年「え?」
剣士「……連れて行くんだろう?」
青年「……ああ、そうだね。攫うのがお姫様じゃ無くて」
青年「ちびっこ一匹、とはね」クスクス
剣士「……面倒はお前が見ろよ」
青年「えええ……」

魔導師「僕も! 僕も行きます!」ハァハァ
青年「ほら急げ……さっさと船に乗りな」
剣士「……完璧に悪者だな、俺達」
青年「大丈夫だ。魔導師、誰も傷付けてないね?」
魔導師「……そう、りょさん、と……約束、しました、か……ら……ッ」ハァッ
青年「……偉い偉い……じゃ、ちょっとだけ手助けしようか」
青年「……風よ!」

ゴオオオゥ……ッ

魔導師「え!?」
1191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 13:04:35.05 ID:EFBzWVUiP
兄「魔導師、まど……ッ う、ぁ……ッ」

剣士「……おい」
青年「足止めだってば……魔導師と原理は一緒」
青年「風で壁作っただけさ……傷はつけないよ」
剣士「そうじゃない……まあ、良い」ハァ
剣士「……ほら、さっさと乗れ」
近衛兵「あ、あの……!?」
青年「ほらほら、さっさと船出して!」
魔導師「…… ……」ポカーン

シスター「魔導師!!」
息子「…… ……」ポン
シスター「! 息子さん、魔導師が……!」
息子「……剣士さん達が着いているんでしょう。大丈夫ですよ」
シスター「……ッ だから、鍛冶の本なんて……!」
息子「関係ありませんよ……魔導師本人の意思、でしょう」
シスター「…… ……ッ」
息子「それより、兄は?」
兄「あ……大丈夫、です …… ……あいつ、凄いな」ハハッ
シスター「足、見せなさい……信じられないわ!」
シスター「実の兄に魔法をかけて傷付ける、何て…… ……あら?」
兄「……冷たく無いんです。痛くも」
息子「…… ……」
息子「……風も止みましたね」
シスター「…… ……」
兄「…… ……」
息子「……でもね、魔導師」
息子「世界は……広いんだよ」
兄「……すみません。ご迷惑おかけしました」ペコ
1201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 13:14:52.10 ID:EFBzWVUiP
シスター「……兄の所為じゃ無いわよ」ハァ
息子「シスターさんはね……もう、誰も傷付けたく無いだけなんだよ」
兄「…… ……」
シスター「いえ……私も、ムキに……なりすぎたわ」ハァ
兄「解ってる、と……思います、よ」
兄(……魔導師。死ぬなよ?)

……
………
…………

青年「…… ……」フフッ
剣士「何笑ってるんだ」
青年「……いや、嬉しいんだよ」
青年「僕達は喜ばなくてはいけない……だろ?」
魔導師「…… ……」ジィ
青年「ん? ……な、何だよ。大丈夫だって、君と一緒さ」
青年「僕も、誰も傷をつけては……」
魔導師「ち、違います!」
剣士「……だから言っただろうが」ハァ
青年「え?」
魔導師「何で蒼い目をしているのに、風の魔法を使えるんですか……!?」
剣士「見た目通りの加護で無い場合もあるんだ、稀に……だがな」
魔導師「え……そうなんですか?」
剣士「……ああ、だが……」チラ
剣士(こいつの加護は間違い無く水、だ……だが)
剣士(……まあ、良い。どうせ放って置いても説明するんだろう)
青年「ああ、僕の加護は水だよ?」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「え!?だって、さっき……!」
青年「風の魔法も使えるんだよ。不思議な事にね」
魔導師「…… ……ええええええええ!?」
剣士「煩い」
魔導師「……す、すみません」
1211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 13:27:05.45 ID:EFBzWVUiP
青年「心配しなくても、全部説明してあげるよ」
青年「……北の街を経由して、書の街、だったっけ?」
剣士「そう聞いてる」
青年「北の街に用事は?」
剣士「俺は無いな……魔導師は」
魔導師「え? ……いえ、僕は……」
青年「特に無いなら下船の必要は無い……北の塔には行ってみたいけど」
青年「乗ってるのがこの船じゃね」
剣士「……書の街までは随分かかるな」
青年「僕はそこで降りる……けど、はいさようなら、とは」
青年「……行かないね。これじゃ」チラ
魔導師「?」
剣士「言い出しっぺはお前だ」
青年「……まあ、仕方無い」ハァ
魔導師「あ、あの……僕も、書の街には行ってみたいです!」
剣士「まあ……暫くの滞在先はあそこだな」
剣士「……だが、俺は目立つな」
青年「瞳の色だけは変えられないからな」
魔導師「……お二人とも目立つと思いますけど」
青年「え?僕? ……何処が?」
剣士「……自覚無いのか」ハァ
魔導師「…… ……」ハァ
剣士「どのみち、北の街で降りる訳にはいかん」
剣士「……此方の大陸には滅多に船も来ない」
剣士「港街と書の街辺りであれば、まあ……人の出入りも多いしな」
青年「そうだな……魔導師はともかく、僕と剣士は一所には留まれないし」
魔導師「……と、とにかく!教えて頂けるんですよね!?」
青年「あ、忘れてた……それは、勿論だ」
青年「これを理解してくれないと、始まらない」
剣士「…… ……」
青年「剣士も。約束だからね?」
剣士「解ってる」
魔導師「……本当に、お二人は何者なんですか」
青年「『世界の裏側をほんの少し』知っているだけ、さ……」
青年「僕も、剣士も……れっきとした『命』だ」
青年「以上でも以下でも無い」
1221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 13:31:17.46 ID:EFBzWVUiP
おむかえー
1231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/27(月) 18:43:30.34 ID:EFBzWVUiP
時間なくなっちゃった
またあしたー
124名も無き被検体774号+:2014/01/27(月) 20:15:44.32 ID:cSnFnhl3i
モツカレスコーンノシ

…うまそうだな、モツカレスコーンw
125名も無き被検体774号+:2014/01/27(月) 23:33:49.01 ID:bvulc8Y10
モツカレーうまうま。
126名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 00:25:09.07 ID:DDxFrJWG0
前スレっていくつまでいったの?
127名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 00:25:46.12 ID:DDxFrJWG0
レス数
連投すいませんm(_ _)m
128名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 00:55:03.81 ID:olVJ6/M10
807で終わってるね。
129名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 03:24:14.65 ID:0BXc0Y+10
どうしても青年にカヲル君のイメージがついて離れない
130名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 06:10:59.81 ID:DDxFrJWG0
>>128
m(_ _)m
1311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/28(火) 13:34:16.00 ID:kFiGU1nSP
剣士「『命』か……それすらも危ういな、俺は」
魔導師「え?」
青年「『欠片』だからと言いたいのか」
剣士「…… ……」
青年「酒飲んで飯食って、寝て。 ……何処が『命』じゃ無いと言うんだ」
剣士「……そう、か」
青年「生殖能力の有無まではわかんないけど」
剣士「おい、子供の前で……」
青年「随分長く『居る』んだろう。経験無いとは言わせないよ」
魔導師「……?」
剣士「やめろ……全く。癒し手が嘆くぞ」

スタスタ

近衛兵「そこの三人……君達が鍛冶師の村から乗って来た人達?」
青年「ああ……そうだけど」
近衛兵「王様の命だとは言え、この船はそもそも客船じゃ無い」
近衛兵「船室と呼べる立派な物も無いし、大部屋で……」
青年「……ちょっとちょっと。こっち」グイ
近衛兵「え? ……あの、ちょっと!?」
魔導師「せ、青年さん!?」
剣士「……放っておけ」
魔導師「でも……」
剣士「金でも握らせるんだろう」
魔導師「え!?」
剣士「話を聞かれるのも困るが、俺もあいつも……厭でも目立つ」
剣士「荷物部屋でも何でも良い。個室を得られるなら手段を問うてはいられない」
剣士「……て、所だと思うがな」
魔導師「で、でも……」

スタスタ

青年「船底のきったない狭い部屋で良いなら使って良いってさ」
魔導師「…… ……」
青年「……何で睨むんだよ」
剣士「大部屋に入れられても困るだけだろう、と説明したんだ」
青年「……なんか、僕を悪者にしてないかい」
1321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/28(火) 13:42:40.54 ID:kFiGU1nSP
剣士「さっさと行くぞ」

スタスタ

魔導師「…… ……」
青年「文句、ある? ……別に、無理矢理脅した訳じゃないぞ」
魔導師「文句は、無いですけど……」
青年「そんな苦虫噛み潰した様な顔しないの。ちゃんとした取引でしょ」
魔導師「……目的の為には、手段を選ばない、んですか?」
青年「また大袈裟な……そんな事言ったら。傷付けない様にしたとは言え」
青年「……君のさっきの、氷の魔法とどう違う?」
魔導師「!」
青年「……そう言う事だよ。これの方がよっぽど安全な解決策さ」
青年「僕達にも、さっきの彼にも利がある」
魔導師「……他にも、個室が使いたいという方が居ればどうするんですか」
青年「あのね、魔導師。だからって僕が遠慮しなくちゃ行けない理由は?」
魔導師「え……あの、でも」
青年「でももだっても無いの。さっきの彼が、その個室を使いたい人に」
青年「僕の倍の金を貰ったから出ろと言うなら、僕はさらに倍を払うだけさ」
青年「そうしないと、今の僕達のこの旅は継続できない」
魔導師「…… ……」
青年「……悪い事した訳じゃ無いんだから。気にしなくて良い」
魔導師「……でも」
青年「……厭なら降りるかい?」
魔導師「え?」
青年「北の街から鍛冶師の村までならそう遠くは無い。君の魔法の腕があれば」
青年「……まあ、生きては帰れるだろう」
魔導師「そ、そんな!」
青年「……自分で選んだ、んだろう?」
魔導師「…… ……」
青年「僕達と一緒に行く。勇者様についていくって」
魔導師「…… ……」
青年「……子供の扱いって難しいな」ハァ
青年「悪かったよ。次からはちゃんと相談する」
魔導師「あ、いえ、あの……そう言う訳じゃ」
青年「じゃあどう言う訳さ」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」ハァ
青年「まあ、此処で言い争いしたって不毛なだけだ。とにかく行こう?」
魔導師「……はい」
青年「……手、繋いでやろうか?」
魔導師「い、いりませんよ!?」
1331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/28(火) 13:44:09.53 ID:kFiGU1nSP
おむかえー
1341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/28(火) 18:51:02.74 ID:kFiGU1nSP
今日はばたばた忙しかった…
また明日!
135名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 19:04:24.16 ID:d902HCbE0
乙ー
楽しみに待ってる
でも無理はしないでね
136名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 19:35:13.83 ID:Vx/na2DmP
青年が相変わらず下品で安心した
あの両親にしてこんな息子なのが不思議ではあるが
137名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 20:18:03.20 ID:XyeLi5IM0
時間経過があまりわからんのだけど、青年は成長が早いから16,7歳に見えるだけで実際は魔導師より年下だよね?
138名も無き被検体774号+:2014/01/28(火) 22:30:50.88 ID:0BXc0Y+10
まだ女勇者が生まれて間もない頃だし、青年もまだ0歳?
あれ?
1391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 09:41:45.30 ID:Ig20+I6EP
青年「…… ……」クスクス

スタスタ

魔導師(……怖い人じゃ無い、と思う。でも……)
魔導師(良く解らない。剣士さんも、青年さんも……)
魔導師(僕……大丈夫かな。着いてきて……良かったのかな)ハァ

カチャ

剣士「……何やってるんだ、お前達は」
青年「ごめんごめん……で、此処か。確かに……狭いし汚い」ハァ
魔導師「……わ、黴くさ……ッ」ケホッ
剣士「横に……はなれんな」
青年「……これ、樽? ……この上に座って休むしか無いな」
魔導師「せ、せめて掃除する物ぐらい……」
青年「すぐ慣れるさ……二週間ぐらいだろ、書の街まで」
剣士「北の街から……と考えると」
魔導師「え?」
剣士「大海の大渦を大きく迂回して行くんだろう……もう少し掛かる」
青年「詳しいな」
剣士「……船には長く乗って居たからな」
青年「ああ、そうだったっけ……海賊船だったな」
魔導師「海賊船!?」
剣士「……順に話そう」
青年「…… ……剣士」
剣士「何だ」
青年「先に伝えておく……亡くなった、そうだ」
剣士「!? ……船長、が、か…… ……」
青年「…… ……」
剣士「あいつは……『人間』だ。おかしい話では無い、ん……だ」
青年「……聞く?」
剣士「? ……続きがあるのか」
青年「彼女のお父さんと同じ、だそうだよ」
剣士「!」
青年「……魔詩にやられ、自ら人魚に」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
魔導師(珍しい……剣士さん、険しい顔をしてる)
魔導師(……仲の良い、人……だったのかな)
1401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 09:52:38.19 ID:Ig20+I6EP
剣士「……そうか。では……あの船は……もう」
青年「子供が居ただろ?」
剣士「……?」
青年「知らないのか?」
剣士「船長に? ……否。俺は……知らん」
青年「……君の子、では無いだろうけど」
剣士「……さっきの話の元はそれか」ハァ
魔導師「??」
青年「……さて、お待たせ魔導師」
魔導師「あ、は、はい!」
青年「…… ……何処から話そうか」
魔導師「全部、話して貰える……というか」
魔導師「聞かないといけない、んでしょう?」
青年「まあね。ついでに理解して貰わないと困る」
剣士「順序立てて話せよ」
青年「……努力はする。なるべく正確に話すつもり、だけど」
青年「僕も……聞いただけでみた訳じゃ無いからね」
青年「君もだ、剣士……魔王様と立てた仮説。それも聞かせてくれよ」
剣士「解ってる」
魔導師「……魔王、様?」
青年「すぐ解る……まあ、とにかく。ええと……」
剣士「紫の瞳の魔王の話、からだろう」
魔導師「紫!?」
青年「……そっくりなんだぜ、剣士と紫の魔王は」
魔導師「……え?」
青年「だけじゃないな。金の髪の勇者も、黒の髪の勇者も、だ」
魔導師「え、え!?」
青年「……否、その前にエルフのお姫様の話からかな」
魔導師「!? あれは御伽噺では!?」
青年「え? ……ああ、そうか」
1411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 10:01:39.04 ID:Ig20+I6EP
青年「あの村には司書、だっけ……が、持ってきたあの本があるんだったな」
青年「読んだ事は?」
魔導師「……あ、あります。子供達に……ついさっき、読み聞かせを……」
剣士「子供に読ます内容では無い気がするが、な」
魔導師「……数が少ないんです。ですから……」
魔導師「僕も驚きました。結構……残酷な内容だったので」
青年「なら話は早い。あれは……実話だよ」
魔導師「……は?」
青年「あの話を書いたのは、紫の魔王だ。で、あのお姫様ってのが……」
魔導師「あ、あの、ちょっと!?」
剣士「……混乱するのも無理は無い、が」
青年「何度も言っただろう?僕はエルフの血を引いている」
青年「決して嘘は吐けない」
魔導師「……し、信じない訳じゃありません。でも!」
魔導師「それも、その……そもそも、それは、あの!?」
剣士「……おちつけ」
魔導師「……すみません。えっと。その……嘘を吐けない、と言うこと自体」
魔導師「事実……なのですか!?」
青年「聞いた限りは……ね。そのお姫様、ってのが、言っていたそうだ」
青年「……あの話のモデル。表紙は覚えてる?」
魔導師「あ……は、はい。僧侶さんによく似てました、から……」
魔導師「新緑の髪に、湖の如く澄んだ蒼の、瞳……でした、っけ」
青年「……うん。あれは……僕のお祖母様だ」
魔導師「…… ……え?」
青年「母さんにそっくりな筈だろう。母さんの母さん、何だから」
魔導師「…… ……」
青年「姫……お祖母様が、言っていたそうだ。エルフは嘘を吐く事ができ無い」
青年「皆が必ず一つ、持って生まれてくる……『加護』」
青年「それは解るね?」
魔導師「え、ええ……それぞれの力を持った精霊と、産まれる時に交わす」
魔導師「契約の様な物、ですね」
青年「そう。そして、エルフは優れた……力の強い、と言えばいいのか」
青年「高位な、て言えばいいのかな。まあ、要するに」
青年「そう言う精霊と契約できる確率が高いと言われている」
魔導師「……『優れた加護』って奴ですね」
青年「そう……お祖母様も持っていた。勿論、母さんも」
魔導師「……貴方も、ですか。青年さん」
青年「ああ」
魔導師「…… ……」
1421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 10:24:22.12 ID:Ig20+I6EP
青年「寿命も人よりも長い……まあ、魔族には及ばないらしいけどね」
魔導師「……実話、と言いましたね、あの話」
青年「まあ、最後の方は捏造らしいけど」
魔導師「え?」
青年「まだ母さんがお祖母様のお腹の中に居る頃に書かれた物なんだ」
青年「……あの話の最後、姫様は娘を産んだだろう?」
魔導師「え? ……いえ、あの」
剣士「……?」
青年「……え?」
魔導師「ええと、確か……」
魔導師「『エルフのお姫様は、どこからも失われてしまった』……か、何かで」
魔導師「終わり……だった気が、するんですが」
青年「……あれ? 母さんに聞いた話と違う……な」
剣士「終わりでは無い筈だ……俺は、魔王の城で読んだ」
魔導師「ま、魔王の城!?」
青年「書いたのが紫の魔王なんだ……魔王の城に残ってても不思議じゃ無いだろ?」
魔導師「……そ、そう言う、もの……? ……あ!」
青年「な、何だよ」
魔導師「……僕が読んだあの本は、多分落丁してたんです」
魔導師「ええと……旅人が矢で打たれる所、かな、確か……」
魔導師「『誰に打たれたか』の説明が無くて」
青年「……そうなの?剣士」
剣士「はっきりと一語一句覚えて居る訳じゃ無いが……エルフの若者が」
剣士「旅人に矢を放った……か何かだった気がする、が」
魔導師「……そこは、読んでないです……!」
青年「……まあ、良い。古い本には違い無いし」
青年「内容を考察したい訳じゃ無い」
魔導師「……あの、続き、て言うのは?」
魔導師「僕が読んだのが、最後では無いんですよね?」
青年「ああ。まあ……紫の魔王が、捏造したってのが」
青年「さっきも言った通り、『娘を産んだ』って部分だ」
剣士「……癒し手が産まれると決まっていた訳では無い、からか」
1431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 10:33:01.71 ID:Ig20+I6EP
青年「まあ、ちゃんとした本を読む機会はあるかもしれないし」
青年「それは良い……実話だと言う事を頭に入れて置いてくれれば」
剣士「?……どう言う意味だ」
青年「僕達は必ずあそこにたどり着く、だろう」
青年「……『勇者は必ず、魔王を倒す』んだから」
剣士「それは……そうだ、だが」
剣士「終わってしまえば、もう……」
青年「……君は終わると思うの?」
剣士「!」
魔導師「あ、あの……?」
青年「それは後。取りあえず魔導師に説明するのが先だ」
剣士「…… ……」
青年「エルフのお姫様のお話は、実話。そこまでオーケー?」
魔導師「は、はい……一応」
青年「ん。で……何故紫の魔王が、姫を知っていたか。だけど」
青年「……まあ、出会ったから、何だけど」
剣士「はしょるな……要するに、エルフの森からでた姫の所へ」
剣士「紫の魔王が……『偶然』転移してきた、訳だ」
魔導師「て、転移!?」
青年「……魔法なんてのは使い様」
青年「魔力があれば、それをどんな用途にどのように作用させるか」
青年「……それを理解出来れば、どんな風にも出来るって事」
魔導師「……それは……魔王の特権、ですか?」
青年「でも無い」
魔導師「え!?」
剣士「……俺も出来る」
魔導師「ええ!?」
青年「後で説明するけど、剣士も特殊、だからね」
青年「……他にも出来る人が居る、ってのだけ覚えて置いて」
魔導師「は、はあ……」
青年「紫の魔王は訳あって……此処は省いても良いよね?」
剣士「……まあ、後でも良いだろう」
青年「魔王の城を出た。で、さっき剣士も言ったけど」
青年「『偶然』 ……姫と出会った。まあ、結果的に助ける事になって」
青年「同行することになる。行き先が……『魔導の街』だ」
1441 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 10:49:32.83 ID:Ig20+I6EP
魔導師「……魔導の街」
青年「そこで紫の魔王と姫は、盗賊……僕の曾お祖母様だね」
魔導師「え!? ……あ、あ……そうか、僧侶さんの子供……んん?」
青年「あってるあってる……盗賊に出会ったんだ」
魔導師「……盗賊様と、鍛冶師様の子供が」
魔導師「騎士団長様と、前国王様で……ええと……」ブツブツ
剣士「騎士団長の息子が、戦士だ」
青年「僕の父さん、だ……それより、続き、良い?」
魔導師「あ、は、はい!?」
青年「盗賊は、二人に『魔導大会に出て優勝して欲しい』と願った」
青年「代わりに『エルフの弓』をあげるから、とね」
魔導師「……え、エルフの弓!?」
青年「これだ」ゴソゴソ
魔導師「! ……こ、これ、が……エルフの、弓……!?」
魔導師「……さ、触っても良いですか」
青年「どうぞ?」
魔導師「し、失礼しま……え、軽い!?」ヒョイッ ……ガシ!
青年「そりゃそうさ。身体的には優れていると言えないエルフでも」
青年「……『僧侶』だった母さんでも易く扱える物」
青年「どころか逆に、力のある奴が使ったら、壊しちゃうかもね」
1451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 10:50:26.12 ID:Ig20+I6EP
おむかえー
146名も無き被検体774号+:2014/01/29(水) 15:34:23.38 ID:v+6ao65L0
しえん
1471 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:18:59.62 ID:Ig20+I6EP
魔導師「確かに……細いし、凄く軽い、のに」ク……ッ
魔導師(少し引くだけで……僕の力でも、折れそうだ)
魔導師(……しなやかなんだな。か細く見えて……強靱なんだ)
魔導師(どう言う理屈……ん、んん?)
青年「魔導師、興味があるのは解ったから……先に話聞いて?」
魔導師「あ! ……す、すみません」
青年「で、まあ……これが此処にあるって事は?」
魔導師「ええと、姫さんから、僧侶さんに……で、青年さん、に」
青年「うん。て事は姫と紫の魔王は、優勝したって事」
青年「詳しい話は今は省く……盗賊の目的は『劣等種の解放』だった」
魔導師「……れ、劣等種?」
剣士「『優れた加護』も持たない者の総称だったんだ」
剣士「勿論、魔導の街だけで、の話だが」
青年「魔導の街の人達はそういって、優れた加護を持たない人達を迫害してきたらしい」
青年「語源とか、詳しい話は……これも後回し、な」
青年「取りあえず、出来事をざっと説明する」
魔導師「……は、はい」
剣士「……到底信じられる話では無いだろうが」
剣士「出来るだけ、偏見無くして聞いて欲しい」
魔導師「……実際、僕の知識なんて知れてるんです」
魔導師「なるべく……素直に、聞きます」
青年「嬉しいね……まあ、三人の利害は一致した、んだ」
青年「結果も、残した……まあ、戦ったのが魔王であれば、当然だけど」
魔導師「……怪しまれなかった、んですか。紫の魔王、は」
魔導師「……その。剣士さんにうり二つ、だったんでしょう?」
剣士「試合に出たのは姫の方だ」
魔導師「え!?」
剣士「……まあ、決勝戦に出て来た『魔導将軍』と言うのが」
剣士「魔族だったから、結局は魔王が戦った……」
魔導師「ま、魔族が!? 魔導の街に!?」
青年「……ああ、そうか。それも説明しないといけないのか」ハァ
1481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:24:59.48 ID:Ig20+I6EP
剣士「一気に全部を詰め込む必要も無いだろう」
剣士「ただでさえ、ややこしい話…… ……ッ」

グラグラグラ……ッ

魔導師「わ、あ……ッ」
青年「……船底でもこんなに揺れるのか?」
青年「大渦ってのは……」
剣士「違う…… ……」
青年「え?」
魔導師(うぅ、酔いそう……渦……?)チラ
魔導師「!」
剣士「まだそんな場所まで行かない筈……」
魔導師「うわああああああああああああ!?」
青年「!? ……な、何だよ!?」
魔導師「ま、まままま、まど!窓の、外!!」
青年「窓? 海しか見えな…… ……!?」
剣士「……何かよぎった」
魔導師「め、目が!目が!!」
青年「……目?」

〜♪ 〜♪

青年(……これは!)
魔導師「あ、れ…… 目、がまわ……」クラッ
剣士「人魚か!」バッ
青年「待て、剣士!」グイッ
剣士「……ッ 離せ! 加勢を…… ……ッ !?」クラッ
青年「……僕には聞かない。確かめたい事もある」
青年「魔導師はともかく、君が操られると最悪の状況にもなり得る」
青年「……まさか、食い破ってまでは来ないだろ。此処に居ろ」

スタスタ

剣士「ま、て……せいね……ッ」

バタン!
1491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:32:11.00 ID:Ig20+I6EP
剣士「…… ……ッ」
剣士(眩暈……ッ 何だ、これは……ッ)
剣士(……この、感覚…… ……どこか、で…… ……)
魔導師「…… ……」グッタリ
剣士「ま……ど…… …… ……」

……
………
…………

剣士『……俺は、魔法は使えん。さっき言ったとおりだ……が』
青年『が?』
剣士『……剣を媒介にすることで、魔法剣となすことが出来る』
勇者『魔法剣!』
魔導師『嘘!?』
剣士『……見れば分かる。戦闘時に見て確かめろ』
青年『……加護は?』
剣士『何?』
勇者『……ああ、そうだ。紫の瞳って珍しい』
剣士『………』
青年『言いたく無いんだね……魔導師、分かる?』
魔導師『……連想になっちゃいますけど』
青年『だよねぇ』
勇者『青年は?』

魔導師(何、これ……夢……え!?)
魔導師(僕が居る!?)
魔導師(あれは、青年さん!? ……今より、少し大人っぽい)
魔導師(剣士さんは変わらない……いや、それより……)
魔導師(あの女の子は……誰……?)

パアアアアア……ッ

魔導師(ひ、かり……!? 何、眩しい……!!)
魔導師(…… ……ッ)ハッ
魔導師(さ、さっきの人達は……!)
1501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:38:56.59 ID:Ig20+I6EP
青年『母から貰った大事な物。水の魔力の篭もった、浄化の石』コロン。チカチカ
勇者『……私もだよ。お母さんがくれた……魔とか遠ざける浄化の、魔除け石』コロン。チカチカ

魔導師(! 僧侶さんの、魔石……だよね?)

魔導師『綺麗、ですね。魔石の類はいくつか目にした事がありますが……これは、凄い』

魔導師(え…… ……)

勇者『魔石、なんだよね。持ってると落ち着くんだ。癒されてるみたいで……でも』
勇者『何で光ってるんだろう……』
青年『そうだね。僕も……こんな風に光っているのは見たことが無い。君に会うまでは、ね』
魔導師『魔石とは、基本……魔力の高い者が、その魔力を何か……形のあるものに封じ込めた物の事なんです』

魔導師(!?)

青年『そうだね。市場にも出回ってる魔除けの石なんかがそれだ』
魔導師『はい。位の高い聖職者が、清浄な水とその魔力で清め、そこに力を込めた物……ですね』

魔導師(……違う……! 似てるけど)
魔導師(な、んだ……これは!? 夢!?)

青年『ご名答。出回ってる、って言ったって……高価な物だけどね』
勇者『そうなの?』
青年『そうさ……たかだか、聖職者如きの力を封じ込めたタダの石ころの本当の力なんて』
青年『気休めに他ならない。力の弱い、知能の低い魔物には多少効果はあるかも知れないけど』
青年『強い力を持つ魔族なんかには、別に驚異でも何でもない』
勇者『……じゃあ、意味無いじゃ無い』
青年『だから気休めだと言っただろう?』
魔導師『王国の城下町などに住んでいる人の場合、騎士様が守って下さいますし』

魔導師(騎士様……?)
魔導師(……やっぱり、違う。騎士団は解体した筈だ)

魔導師『そういう所では、それほど強い魔物は目撃されていませんしね』
青年『そういうこと。これがあるから大丈夫……さ』
青年『高価な石を買うことが叶わないような、もしくは物流が悪い地域に住んでる様な人達は』
青年『弱い魔物ぐらい、撃退できる術を持ってる。 …そうじゃなきゃ、即、死に……繋がる』
勇者『……成る程』

魔導師(……僧侶さんの石を、持っている女の子。まさか……勇者様!?)
魔導師(良く見ると……剣士さんにそっくり……ッ)ハッ
魔導師(……間違い無い!勇者様だ……金の、瞳……!)
1511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:49:36.63 ID:Ig20+I6EP
魔導師(でも、おかしい……青年さんの見た目はともかく)
魔導師(……あれは、僕……だろう?)
魔導師(もし、そうであるなら、勇者様と一緒に、居るのなら)
魔導師(僕は……20歳をゆうに超えている筈だ!)
魔導師(……あの、『僕』は……勇者様と同じぐらいにしか、見えない……ッ)

パアアアアアッ

魔導師(また……ッ)

魔導師『……僕は、確かに勇者様に憧れていました』
魔導師『誰も持ち得ない光の加護を持ち、その光に導かれる、運命の子……』
魔導師『世界に二人と存在することを許されない、選ばれた勇者……』
魔導師『勇者様のお力になりたくて、一杯本を読み、知識を得ました』
魔導師『勇者様の剣を鍛えられるならと、鍛冶の勉強だって頑張りました』
魔導師『全部、勇者様の為です!か弱い女性の身で、魔王を倒すという偉業を成し遂げるため……!』
魔導師『そんな、素晴らしい人の傍に居たかったんだ!だから……ッ』

魔導師(……え?)

青年『だから、どんな不思議があっても無条件で許せる、って言いたい訳?』
魔導師『……勇者様ですから。選ばれた、運命の光の子です!』
魔導師『そんな、そんなの……誰も手に入れられないものを持つのは』
魔導師『勇者様しかあり得ちゃ……いけないんだ!』

魔導師(…… ……)
魔導師(……違う。憧れてなんて……僕は、勇者様の事なんて、何も知らない)
魔導師(なのに……なんだ?これ……胸が……締め付けられる……ッ)

パアアアアアッ

魔導師(…… ……ッ)

剣士『闇……では無いのか、青年』

魔導師(闇……?)
1521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 17:56:37.66 ID:Ig20+I6EP
魔導師『……闇?雷では無いんですか?』
勇者『闇の属性なんて……聞いた事ないよ?』
青年『僕は色から推測しただけだよ。それに、言っただろ、剣士……君は』
剣士『……加護に縛られない加護か』
魔導師『……どういう、意味です?』
剣士『……光と闇以外であれば、どの属性でも魔法剣となす事ができる』
魔導師『……やっぱり規格外じゃないか』

魔導師(規格外……そりゃそうだ、剣士さんは……『魔王』の……)
魔導師(……ん?)

勇者『闇の加護って……そう言うモンなの?』
青年『いや、違うと思うよ? ……だから、色から想像しただけだってば』
魔導師『………』ウーン
勇者『魔導師?』

魔導師(は、はい!? …… ……あ、違う。僕じゃ無い)
魔導師(僕だけど……『僕』じゃ無い)

『魔導師(もう驚くもんか……これ以上吃驚する事なんか……!)』

魔導師(!? ……今のは、僕!? 違う……『僕』!?)
魔導師(……ち、がう ……違わない…… ……なんだ、これは!?)

青年『魔王が産まれれば、勇者が産まれるってのは知ってるね?』
勇者『魔王を倒すために……って事ね』
青年『そう。そして勇者が産まれれば魔王が産まれる』

『魔導師(……え?)』

剣士『……何故だ?』
青年『勇者に倒される為に、さ』
勇者『……どういうこと?』
青年『さっき、僕は魔王の正体を知っていると言ったね?』
勇者『?………うん』
青年『僕は、魔王に会ったことがある』

『魔導師(え!?)』

剣士『何!?』
勇者『……は?』
1531 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:02:57.36 ID:Ig20+I6EP
魔導師(……剣士さんは、知ってる筈だ。何故……)
魔導師(『こっち』の剣士さんは……しらない!?)

青年『抱っこして貰った事もある……らしい。流石にこれは覚えて無いけど』
青年『勇者様の母上にも会ったことがある』
青年『前に言っただろう?この……浄化の石』
青年『僕の母さんが作った物だ。そして……勇者様の持っているのは』
青年『母が、君の母上にあげた物だ』
勇者『ちょ、ちょっと待ってよ……?』
青年『ハーフエルフの母は、優しい僧侶だった。僕の父は、偉大な戦士だった』
青年『君の母上は……とても優秀な魔法使いだった』
青年『そして、君の父上は……誰よりも強い、勇者だった』
青年『黒い髪に、優しい金の瞳をしていた』
青年『……僕は、君が産まれた時に一緒に居た』
青年『僕たちの両親は、以前の勇者一行だ』
青年『そして、君は……魔王の娘だ。勇者様』

魔導師(……勇者様が、魔王の娘!?)
魔導師(魔王が……元、勇者…… ……)

『魔導師(……い、くら、何でも……)』
『魔導師(信じられませんよ、そんな話……ッ!?)』

魔導師(あ……また、だ。僕と『僕』が……)
魔導師(……当然だ。『僕』は僕だ)
魔導師(僕は……『僕』だ……!)
魔導師(……僕、は……!!)

パアアアアアアアアア!

魔導師(さっきから、何回も、何回も……!!)

『魔導師(光ってる……ッ 何で……!?)』
1541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:11:27.83 ID:Ig20+I6EP
シュウ、シュウ……ッ

勇者『あ、あ……ッ 光が……ッ』グイッ
青年『出るな、勇者様ッ』ガシッ

パアァァァ……ッ
シュウゥ………

剣士『………う、うわああああああああああああ!』ガシャン!

『魔導師(あ、つ……ッ 剣士さん!?)』

剣士『……!!』バタン!
勇者『剣士!……ッ 青年、離して……ッ』
青年『駄目だ、勇者様…! ……危ない!』

パアアアアアアアアアア!!

青年『……ッ 眩しッ』
剣士『……!!』

『魔導師(……うぅッ)』

勇者『待ってて……お父さん!』

魔導師(お、とう……さん…… ……!)
魔導師(黒い髪の、勇者……!?)
魔導師(……あ……ッ)

魔王『………ゥ』

后『来たわね、勇者……』
側近『大きくなったな、青年』

勇者『お母さん……』
青年『……』

『魔導師(こ、れが魔王……なんだ、この魔力は……ッ)』
『魔導師(これが、本当に……元勇者……!?)』

剣士『……感動の再会だな、青年』
青年『茶化すな……父さん』
側近『……癒し手にそっくりだな』
青年『母さん……間に合わなくて、御免』
側近『…… ……』
青年『母さんは……』
側近『器だけでも、間に合った……ありがとう』

魔導師(器……だけ?)
1551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:20:17.02 ID:Ig20+I6EP
魔王『………ぅ、ウ』

勇者『お父、さん……う…ッ!?』チカチカチカッ
青年『う、ぅ……母さ、ん……ッ』チカチカチカッ

『魔導師(……!浄化の石が!?)』

剣士『……ッ う、ァ……ッ』

魔王『……う、ゥ…ッ』

パリン! ……ピカ……

剣士『うわあああああああああああああああッ!!!』

魔導師(!? ……あ、ぁ……!!)

パアアアアアッ……

『魔導師(剣士さああああああああああああああああん!!)』

ガシャン!

魔導師(!)ハッ
魔導師(……今の音は、何だ)
魔導師(……皆、居る……『僕』、『魔王様』、『使用人さん』)
魔導師(…… ……ん!?)
魔導師(使用人、さん……え、なんで……)
魔導師(……ああ、そうか……『僕』が知っている、から……)
魔導師(違う! 僕はしらない! ……それに、魔王じゃない!)
魔導師(あれは、勇者様……!)
1561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:36:05.06 ID:Ig20+I6EP
魔導師(……違う。黒い髪の魔王は、倒された……そうだ!)
魔導師(剣士さんは…… ……ッ !?)ブンブンッ
魔導師(な、なんだ……ッ 頭が、割れそうに、痛い……ッ!?)

使用人『…… ……』ジィ

魔導師(……な、んだ……誰……ああ、使用人、さんだ……)
魔導師(じっと……『僕』を …… ……違う)
魔導師(僕、を…… ……見てる!?)

使用人『私の中にある『知』を。お授け致します』

『魔導師(……知?)』

使用人『はい。語り継がれてきた、知。見て、知り、感じ得た……全てを』

『魔導師(ど、どうやって……)』

使用人『大丈夫。願えば……叶います』
使用人『……知りたいのならば、ですが』

『魔導師(知……今知り得るだろう知の、全て……ッ)』ゴクリ
『魔導師(……僕は、知りたい。『全て』を知りたい……!)』

使用人『そう言って戴けると思っていました』ニコ
使用人『耐えてください、魔導師様』
使用人『人の身の貴方では、知を授けるのに器が耐えられませんから』

魔導師(…… ……え?)
1571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:47:11.84 ID:Ig20+I6EP
パアアアアアア!

『魔導師(……ッ なんだ、吸い取られる……ッ う、ぅ。これは……ッ)』
『魔導師(う、ぅ ……あああああああああああッ)』ガクッ

青年『なんだ、蒼い、 ……光ッ!?』
魔王『魔導師!?』

魔導師(何だ!? これは!?)
魔導師(『魔族』になる為には、こんな思いをしないといけないのか!?)

使用人『……ッ 暴走!?』

魔導師(『暴走』!? 冗談じゃない! ……ッ 僕は!)
魔導師(……大丈夫だ! 僕は……『僕』は知っている!)
魔導師(『あの時』『后様』に『聞いた』んだ!)
魔導師(『僕』は……僕、は……ッ 『知』を……!)

シュウゥ……

『魔導師(ハァ、ハァ、は……あぁ)』
『魔導師(し、ぬかと………思った……)』フゥ

使用人『お見事、です……』

『魔導師(……后様に、聞いてた、んだ……)』

魔導師(そうだ。后様に聞いた。確かに)

青年『……! 具現化の方法、か……』


『魔導師(そう……です)』
魔導師(そう……具現化の方法。僕は……『僕』は)
魔導師(勇者様と魔王を倒し、そして…… ……)
魔導師(……『魔』に変じる為に。確かに、『聞いた』!)

使用人『魔導師様。少しお休みください……お疲れでしょう』

『魔導師(いや、良い……大丈夫です)』

使用人『……そうですか』

『魔導師(早く、知りたい)』

使用人『では……目を閉じてください』

『魔導師(ん……)』

使用人『頭の中に、直接……送ります』
1581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 18:52:49.54 ID:Ig20+I6EP
『魔導師(……ッ)』

魔導師(あ、あ……ああ……!)
魔導師(流れ込んでくる……!)
魔導師(使用人さんが、知る全て……)
魔導師(『過去』だ! ……否、『未来』か!?)
魔導師(違う……『回り続ける、運命の輪』……!)

『魔導師(……『知』『全て』……僕の、中に)』

魔導師(『全て』……そうだ。これが……『全て』だ!)

『魔導師(……なんだろう。喜ばしいのに……少し、悲しい)』

魔導師(悲しくて……切なくて苦しくて……嬉しい)
魔導師(ああ……ッ …… ……?)クラッ

使用人『では、…… …… 様……最 ……に、 ……を……』
魔王『…… ……、と』

魔導師(え、今、なんて……何と、呼びました、か……)
魔導師(まお ……さ…… ……)

……
………
…………

剣士「……師、魔導師!」
剣士「しっかりしろ!」
魔導師「!」パチッ
1591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 19:02:37.37 ID:Ig20+I6EP
青年「……大丈夫か?」
魔導師「青年、さん…… ……魔王様は!?」ガバッ
剣士「……お前も、夢を見たのか」
魔導師「お前……も?」
青年「……そんな急に起き上がって、大丈夫かい」
青年「しかも、魔王様って……」
魔導師(……船底。もう、揺れてない)
剣士「気分は?」
魔導師「……平気、です。 ……ああ、そうだ。人魚は……」
青年「どうにか撃退した……僕は優れた水の加護があるから」
青年「平気って解ってたんだ。だから此処は剣士に任せて、外に出たんだ」
青年「確かめたい事もあったからね」
魔導師「……人魚、夢…… ……」
青年「……何時間も目を覚まさないし、急に叫び出すし……吃驚したよ」
青年「大丈夫、かい? 本当に……」
魔導師「……はい。ありがとうございます。それより……」
剣士「何の『夢』を見た?」
魔導師「お前も、と仰いましたね……剣士さんも?」
剣士「否。俺はお前が目を覚まさないから離れる訳に行かないし」
青年「……君が魅了されちゃったらどっちにしろ困るってば」
剣士「どうにか部屋に、防護壁を張って、耐えた」
魔導師「……防護壁。そんな事も……出来るんですね」
青年「驚かないんだな」
魔導師「……加護に縛られず魔法を……魔法剣を操る剣士さんです」
剣士「!?」
魔導師「流石に……驚きません」
魔導師(……否。これも……『僕』のおかげ……)
青年「……まあ、あれだけ一緒に居れば、知ってるか」
剣士「…… ……」
1601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/29(水) 19:04:54.19 ID:Ig20+I6EP
中途半端だけど!
お風呂とご飯!
161名も無き被検体774号+:2014/01/29(水) 23:43:21.69 ID:4JzOKPB1i
スコーン乙

いい流れだ
鬱エンド回避を切に願う
王子と王の同時退場が心に痛い
あの世で揃って弟王子に怒られてしまえ(涙)
162名も無き被検体774号+:2014/01/30(木) 02:01:29.26 ID:Gte38Bve0
この段階で知を受け継ぐのか。
1631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/30(木) 19:07:53.54 ID:kXJkT9WwP
魔導師「では……お前『も』と言うのは……?」
青年「以前……黒い髪の勇者と……」
剣士「待て」
青年「……え?」
剣士「……お前、何故……知っている?」
青年「は?」
剣士「『加護に縛られず』『魔法剣を』だ」
剣士「……魔法剣、と言っていいのか解らんが」
青年「知ってるんだろ? インキュバスの魔石を……」
剣士「それは、良い……俺は魔導師の前で魔法を使ったことは無い」
魔導師「…… ……はい」
剣士「しかも……加護に縛られず、とはどう言う意味だ?」
魔導師「剣士さんは……光と闇以外の魔法を、剣を媒介にする事によって」
魔導師「……魔法剣と、なして……」
青年「光と闇以外の魔法……?」
魔導師「……『夢』の中で、使用人さんが教えてくれました」
青年「え!?」
剣士「!?」
魔導師「……否、あれは……多分、青年さんと剣士さんの知る『使用人』さんじゃない」
魔導師「『赤茶の髪の女勇者様』も……違う」
青年「……僕、勇者様の髪の色なんか言ってない、よね」
剣士「…… ……お、前……?」
魔導師「先に……人魚の話と……いえ。さっきの、話の続きを聞かせて下さい」
魔導師「……今の僕なら、もっとすんなりと理解出来ると思います」
青年「別人みたいだな」
魔導師「……いいえ。僕は『僕』です……『僕』……は、僕です」
剣士「…… ……気配は変わらん。何も」
魔導師「お願いします、青年さん、剣士さん」
1641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/30(木) 19:09:05.24 ID:kXJkT9WwP
今日は時間が無かった!
又明日!
165名も無き被検体774号+:2014/01/30(木) 19:17:05.30 ID:sqW+AFfR0
乙コーン!
166名も無き被検体774号+:2014/01/30(木) 22:12:52.04 ID:IRXiwWc6P
スーん!
167名も無き被検体774号+:2014/01/30(木) 23:47:54.62 ID:tYc7SYic0
乙ーン!
1681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 09:21:29.56 ID:8cmqsm8mP
おはよう!
おむかえまで!
1691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 10:03:05.57 ID:8cmqsm8mP
青年「……『夢』か」
魔導師「青年さんの言った、『確かめたい事』に関係あるのかもしれません」
剣士「…… ……」
青年「まあ、良い……理解が易くなった、と言うのが本当なら」
青年「……で、どこまで話たっけ?」
剣士「『魔導将軍』が……魔族が、魔導の街に居た、所までだ」
魔導師「……紅い翼を持つ、女性ですよね?」
青年「!?」
剣士「……違う。そっちじゃない」
魔導師「え?」
青年「君の言う魔導将軍は……」
魔導師「……金の髪の勇者様の、仲間。魔に変じた際に」
魔導師「溢れる魔力を体外へ放出して……」
剣士「……お前、本当に……」ハァ
青年「謎解きは後だ……紫の魔王に倒された魔導将軍は男だよ」
青年「魔導の街が私設軍隊を作るだとかなんだとかの話を手助けしたのか」
青年「そそのかしたのか……そこまでは解らないが、とにかく」
青年「紫の魔王に反旗を翻した一人、だ」
魔導師「……複数、居るんですか?」
青年「狼将軍と……インキュバスだ」
魔導師「!」
剣士「……お前が何かを『知った』から、と言って」
剣士「順を追わないとややこしくなる。先走るな」
魔導師「……すみません」
青年「魔導の街の領主は力を欲した。魔導将軍も、だな」
青年「まあ、利害が一致した、んだろう……」
剣士「『始まりの姉弟』……あの一族に魔の血が流れている……と」
剣士「そんな噂……言い伝えもある」
剣士「……手を組むのも容易かったんだろう」
青年「魔族側が信じてたか……知ってたか、まではわかんないけどね」
魔導師「『始まりの姉弟』?」
1701 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 10:12:36.66 ID:8cmqsm8mP
青年「魔導の国の領主の血筋……彼ら曰く『選ばれた民』だ」
青年「最果ての地に、唯一住む事を許された人間達」
魔導師「え!?」
青年「これに関しては確かな話じゃ無い……し、どうせまだ話に関わってくる」
青年「詳しくはその時に、ね」
剣士「……紫の魔王は魔導将軍が関与してると知って、姫の代わりに奴と対峙した」
剣士「姫では……及ばないと思ったんだろう」
魔導師「え?でも大会……か何かだったのでは?」
青年「『魔王』だぜ? ……姫と姿を入れ替えたんだ」
魔導師「……何でもありですね」
青年「瞳の色までは変えられなかった筈だ。魔導将軍も気がついてたんだろうが」
青年「……『魔族』ってのは、短絡的だって言うからね」ハァ
剣士「使用人に聞いた話では、紫の魔王は『無能』だと思われていたそうだ」
剣士「……また少し遡るが、魔族でも……見た事の無い紫の瞳をしていた故に」
剣士「紫の魔王の父……紅い瞳の魔王は……」
魔導師「!? 魔王の父親が……魔王!?」
青年「…… ……」
魔導師「魔王は、元勇者では無いのですか!?」
剣士「……紫の魔王までは、違ったんだ」
魔導師「…… ……」
青年「『魔族』が『魔王』……自分達の『王』に反旗を翻す、なんてさ」
青年「……今よりも……『勇者』と『魔王』の、この時代よりも」
青年「もっと血生臭い時代だったと聞いている」
青年「紫の魔王の前が赤の魔王。その前……じいさんだな」
剣士「……そいつが、随分と好戦的だったそうだ」
剣士「大海の大渦。あそこには元々小さな島があった」
魔導師「え……」
剣士「……紫の魔王の側近。金の髪の勇者を連れて、始まりの国に来た男」
剣士「そいつが住んでいた場所だと言う……」
青年「その小さな島を、炎の球一つで沈めてしまったらしい」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
1711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 10:26:21.33 ID:8cmqsm8mP
青年「もう、そこまで遡るとまたややこしくなるだろう!」
剣士「……すまん」
青年「とにかく! ……ええと」
青年「紫の魔王が、魔導将軍を倒して……ええっと。魔導の街を解放した」
青年「『劣等種』達を解放したんだ。港街は解るね?」
魔導師「……はい」
青年「あそこは、魔導の街を逃げ出した劣等種達の隠れ家だった」
青年「そこに新たな街を作る事になった。だが」
青年「……金が要るだろう。それで、紫の魔王が考案したのが」
剣士「魔石、だ」
魔導師「!」
剣士「『劣等種』等と呼ばれても、『加護』は命を持つ者全てに等しい」
剣士「……しかも、彼らは生まれは魔導の街……基礎はしっかりとした者が」
剣士「多かった筈だ」
青年「盗賊はそれを紫の魔王に教わり、流通させる事にしたんだ」
魔導師「……でも、廃れてしまった、と聞いています、けど」
青年「後々、ね。そんな事をしなくても……人が集まれば物も金も回る」
青年「……鍛冶師の村に今まだ……ああ、いや。もう……」
魔導師「…… ……」
青年「廃れてしまった後も、技術が残って居たのは、鍛冶師のおかげ……だろうな」
魔導師「鍛冶師様……盗賊様と、結婚された、からですか」
青年「魔法剣、なんて特殊な技術を持つ場所だった、てのも大きいだろうけどね」
剣士「『鍛冶師の村の勇者』なのだろう。インキュバスとならんで」
魔導師「…… ……」
青年「魔導の街からの援助と、なんだかんだと人も増えて」
青年「港街だけでは手狭になった……紫の魔王が目をつけたのが」
剣士「始まりの国……『昔、魔王に滅ぼされてしまったのだろう廃墟』だ」
魔導師「え!?」
青年「これも詳しいことは解らない」
魔導師「…… ……」
剣士「……『王』が必要だったんだ」
魔導師「『王』?」
青年「自分でややこしくなるって言っておきながらなんだけど」
1721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 10:33:47.60 ID:8cmqsm8mP
青年「……大海の大渦の島。紫の魔王の爺が沈めてしまった奴な」
魔導師「は、はい」
青年「そこには『王』が居たと言う……それに、多分」
青年「『始まりの国』と言う位だ……滅ぼされてしまった、そこにも」
魔導師「……『王』」
剣士「紫の魔王は、子を成せなかった」
魔導師「……はい?」
剣士「エルフの姫は、盗賊だったか、魔導将軍にだったか……そこは失念したが」
剣士「『妻』かと、問われそうだ、と言ってしまった」
剣士「……『エルフは嘘が吐けない』」
魔導師「…… ……」
青年「なぜなら、エルフの吐いた嘘は『本当になってしまう』からだ」
魔導師「え!?」
青年「……何でもかんでも、じゃないよ。そんなに都合が良くは無い」
青年「自分に関する事、だったかな」
剣士「こじつけとも取れるがな……だが、妻である姫の産む『者』は」
魔導師「……僧侶さん。癒し手様……ですね」
青年「そうだ。エルフは生涯、一人しか子を産むことが出来ない」
青年「しかも、姫は『長』だ」
魔導師「『長』?」
青年「……エルフの中でも、少し強い力を持つ者だ」
青年「長は必ず『長になる者』を産む」
青年「……姫の子は?」
魔導師「……僧侶さん、は……エルフの、長」
青年「そう……母さんの『感じる力』はそれなんだろう」
魔導師「……では、青年さんも……」
青年「…… ……」
1731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 10:46:49.79 ID:8cmqsm8mP
剣士「堕胎させようとした、姫の父の気持ちも解らんでも無い……と」
魔導師「!?」
剣士「言えるのかもしれん……人の子とのハーフ」
剣士「『何』が産まれる?」
魔導師「……ハーフ、エルフ」
青年「そんな言葉があるのかどうか知らないけどね」
青年「……随分揉めたんじゃ無い? もし堕胎させてしまったら」
青年「姫には二度と子供が出来ない」
魔導師「あ……」
青年「……しかも、ね」
魔導師「?」
青年「『強大な力を持つ者を産む代償』がある」
魔導師「え……」
青年「……死んでしまうんだよ。エルフの『長になる者』を産んだ人は」
魔導師「!」
剣士「……また、少し戻るが」
剣士「紫の魔王の母もそうだったらしい」
魔導師「……え?」
剣士「……身体がサラサラと、砂の様に……崩れて」
青年「……ッ」
剣士「風に攫われ…… ……ッ」ハッ
青年「…… ……姫がどうなったのか、僕は知らない」
青年「母さんを産んだ後、そうなってしまったのか、否か」
青年「だが、母さんは……あの小屋で、死んだ」
剣士「…… ……」
青年「魔王の城で……魔王の魔気に寿命が削れていたとはいえ」
青年「……僕は。僕には半分以上……人の血が流れている」
青年「なのに……ッ 母さんは……ッ」
魔導師「青年さん……」
青年「……剣士には話したな。母さんも……その身を崩して……ッ」
青年「『強大な力を持つ者』なんかじゃ、無いのに……ッ」
1741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 11:23:17.57 ID:8cmqsm8mP
魔導師「え……!?」
剣士「……癒し手は当てはまらないだろう。確かに、寿命は……」
魔導師「違う!」
青年「な、何だよ! 何がだよ!」
魔導師「……『夢』の中で、后様と側近様は!」
剣士「!」
青年「…… ……」
魔導師「『器は間に合った』と……!」
青年「…… ……器?」
魔導師「! そうだ、確かに、癒し手様はそこに居た……!」
青年「……からかってる、んだったら承知しない、けど」
剣士「青年」
青年「……解ってるよ。魔導師」
魔導師「あ…… ……」
青年「『間違い探し』は後だ……その話は、是非詳しく聞きたいけどね」
青年「……否。ちょっと休憩しよう。混乱してきた」
剣士「…… ……」
魔導師「……す、すみません」
青年「ちょっと風に当たってくる」クルッ

スタスタ、パタン

魔導師「…… ……」
剣士「放っておけ」
魔導師「……解ってます」
剣士「脱線しまくったな……まあ、無理も無い」
魔導師「……この『世界』は何なんでしょう」
剣士「……?」
魔導師「僕の見た……『夢』は何だったんだろう……」
剣士「……青年が戻る迄に、続きを話そう」
魔導師「え?」
剣士「年表を追うだけだ……大体、知っている、んだろう?」
剣士「……何を『見た』かは知らないが」
魔導師「……はい。多分。あ、でも……」
剣士「?」
魔導師「……いえ。聞かせて下さい」
1751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 11:31:51.03 ID:8cmqsm8mP
剣士「ああ……紫の魔王は……」
魔導師「あ!ちょっと待って!」
剣士「……今度は、何だ」
魔導師「紙と書く物、借りてきます!」
剣士「……は?」
魔導師「口頭だからややこしくなるんです!」

タタタ、バタン!

剣士「…… ……」ハァ

……
………
…………

コンコン

使用人「側近様?」
側近「……なんだ」
使用人「入っても宜しいでしょうか」
側近「……出る。ちょっと待て」

キィ……

使用人「まだ……大丈夫だと思いますよ」
使用人「魔王様に、張り付いていらっしゃらなくても……」
側近「……ああ。解っては居る、んだが」
使用人「やる事もありませんでしょう」
側近「…… ……」
使用人「話しません。動きません……目も、あけませんから」
側近「皆、どうやって時間を潰していたんだか」ハァ
使用人「以前の側近様は、好き勝手やっていらっしゃいましたよ」
使用人「……まあ、魔導将軍様がいらっしゃいました、けど」
側近「……そう、だな」
使用人「お一人の時は、本を読んだり…… ……庭を走り回ったり」
側近「…… ……犬か何かか」ハァ
使用人「鍛錬、じゃ無いのですか」
側近「……で、どうした」
使用人「ああ、いえ……お茶でも、と思いまして」
側近「……砂糖たっぷり、な」
使用人「だから……それほど眉間に皺を寄せられなくても」
1761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 11:36:38.83 ID:8cmqsm8mP
側近「小難しい話は苦手なんだ」ハァ
使用人「……まあ、無理にお付き合いしろとは言いません」
側近「……良い。どうせやる事も無い」
使用人「……私も、暇なんです」
側近「…… ……知ってる」

ピィ……チチチ……

使用人「……?」
側近「何か聞こえたか?」
使用人「小鳥……でも、今日は外は雨ですよね?」

コツン、コツン……

側近「窓…… ……黄色い小鳥、だな ……!」
側近「……文が着いてる!」

タタ……キィ

ピィ!

使用人「あ……! ……でも、癒し手様、の小鳥じゃ……ッ」ハッ
使用人(……無理だ。癒し手様のお力は、もう……)
側近「おいで…… ……ん。痛い。突くな」カサ
側近「…… ……!」
使用人「側近様?」
側近「…… ……青年だ」
使用人「…… ……え!?」
1771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 11:52:20.04 ID:8cmqsm8mP
側近「『まだ終わらない。女勇者様は最強の魔王になる』……何!?」

バサバサバサッ

使用人「な、何ですか、この紙の束……」カサ
側近「あ……ッ」

ピィ……シュゥン……

側近「……消えた ……ん?」ヒョイ
使用人「……ッ」カサ、バサバサッ
側近「それは、何だ……?」
使用人「……年表、です」
側近「は?」
使用人「……子供の字、ですか……これ……」
側近「青年の字……では無いんだろうな。文の物と違う」
使用人「……『使用人、1000歳』……は!?」
側近「……お前、そんなに生きてるのか?」
使用人「冗談じゃありません! ……あれ、同じ物が二つ……!」
使用人「違う!」バサバサッ
側近「……な、何なんだ……見せてくれ」カサ
側近「魔王の復活まで60年……!? 何……!?」
使用人「……『転移石の作り方』!?」
側近「な……ッ !?」
使用人「! ……転移石!」

バタバタバタ……!

側近「お、おい、使用人!?」

バタンッ

側近「……な、何が、どうなってる?」
1781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 11:53:06.80 ID:8cmqsm8mP
おひるごはーん
179名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 12:17:23.93 ID:2oOVv9gMP
歪みが生じてきたな
180名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 12:20:03.81 ID:wcu/uqcd0
wktkが止まらない
支援
1811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 12:47:30.58 ID:8cmqsm8mP
側近「…… ……」カサ
側近(…… ……)バサ、バサッ
側近「……こ、れは…… ……!?」

バタバタバタ、バタン!

使用人「側近様、こ……ッ」

バサバサバサッ

側近「……良く歩いて来れたな」ハァ
使用人「……す、すみません」
側近「呼べば良い物を……全部書庫から持ってきたのか」ヒョイ
使用人「どうせ片付けるのは私です」ヒョイ
側近「……『具現』…… ……具現化の方法、か?」
側近(こっちも……表紙は掠れて読めん、な)フッ
側近「……ッ」ケホ
使用人「……余り関係無いと思って、放って置いたんで、埃が」
側近「これは……なんだ?」
使用人「……紫の魔王様が、読んでいらっしゃったんです」
使用人「多分、この辺りから……魔石の作り方とかを考案されたんだと思います」
使用人「……それより、えっと…… ……」バサバサ
側近「……埃立てるな」ゲホッ
使用人「我慢して下さい……あった!」バサ!
側近「……『……石の ……方』? ……解らんな」
使用人「『転移石の作り方』!」
側近「?」
使用人「この、紙です!」バサッ
使用人「……字、見て下さい!」
側近「掠れて、はっきり…… ……!?」ペラ、ペラ
使用人「…… ……『力の強い者の魔力を結晶化させて』!」
使用人「同じ、です! ……字も、文も……!」
側近「ま、待て待て待て!」
側近「……そんな馬鹿な話があるか! この紙は……新しい物だろう!?」
使用人「でも……! ほら、此処!」トン
側近「……インクが滲んでる」
使用人「今日は雨です! ……ほら、この紙の方と、本と……」
側近「……!」
使用人「……『同じ物』です。これ……!」
側近「偶然だろう!いくらなんでも……!」
使用人「……『回り続ける運命の輪』」
側近「…… ……ッ」
182名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 12:51:47.95 ID:wcu/uqcd0
鳥肌立った!すげぇ!!
1831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 12:55:10.02 ID:8cmqsm8mP
使用人「この世界が何度も……何度も、同じ時を経験しているのなら……!」
使用人「『運命』から外れた者が、いるのなら……その、者が……!」
側近「……落ち着け!」
使用人「!」ビクッ
側近「……お前らしくも無い、使用人」ハァ
使用人「…… ……すみません」
側近「前に言っていたな。后が旅立ってすぐ」
側近「……もしも『運命』から外れ、その者が」
側近「あの本を。神話を。古詩を書いたのならば、と」
使用人「…… ……」
側近「……『世界』の『欠片』」
使用人「でも、これ……!」
側近「…… ……」ペラ。ペラ
使用人「……同じ、です。新旧はともかくとして」
使用人「この、子供の様な字。滲み方……!」
側近「しかし、これだと足りないぞ」
使用人「……書き足して、後ほど束ねたのだとしたら?」ペラ
側近「そんな事、言ってしまえば、お前……」
使用人「……そう、ですけど。でも」
使用人(追記の部分……字が違う。確かに……でも、似てる……!)
側近「……これは青年の字では無い。こっちの年表も」
側近「誰かが書いた物を……持って来た、のか?」
使用人「何処から……否、誰が……」
側近「…… ……それは今考えても仕方が無い」
側近「それより、この年表…… ……みたいな、物」
使用人「……こっちは『この世界の出来事』です」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王の側近様の旅立ちから…… ……女勇者様の誕生まで」
側近「青年には……癒し手が全て話した、のだろう」
側近「……エルフの姫の事も細かく書いてある」
1841 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 13:15:06.50 ID:8cmqsm8mP
使用人「もう一つは……『金の髪の魔王』……からです」
使用人「『魔導将軍』『側近』『后』……」
側近「…… ……」
使用人「『勇者が魔王を倒し、復活するまで50〜60年?』!」
使用人「……どう言う事、ですか。これ。しかも……!」
側近「さっきお前が自分で言っただろう」
使用人「え?」
側近「『この世界の出来事』」
使用人「!」
側近「……成る程な。深く考えようとしない方が、か」
使用人「……では、これは……別の世界の出来事、だと?」
側近「それも、さっき言ってただろう……」ハァ
側近「『回り続ける運命の輪』」
使用人「!」
側近「……『勇者と魔王の腐った連鎖』だけの事を指すのでは無いのだとすれば」
側近「この、転移石の作り方。この新旧の『同じ』物」
側近「…… ……『運命』を外れた者の、箱庭で……ッ」
側近「俺達は、操られているだけなのか!?」
使用人「そ、側近様……!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……そうと、決まった訳じゃ……」
側近「だが、これでは……ッ」
使用人「落ち着いて下さい!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……何故、こっちの……『別の世界』の物が」
使用人「『金の髪の魔王』からしか無いのかも解りません」
使用人「『金の髪の勇者』でない理由も」
側近「…… ……」
使用人「……誰が、何の為に、こんな物を書いた、かも!」
側近「……青年は、知っている……んだな」
使用人「……私達、よりかは」
1851 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 13:25:42.33 ID:8cmqsm8mP
側近「……あの小屋に、行く……事、は」
使用人「私では、魔王様を押さえる事は……」
使用人「…… ……側近様」
側近「?」
使用人「誰が書いた物かは解りませんが……青年様と共に居る方だと」
使用人「仮定して……まあ、間違いは無いでしょう」
側近「あ、ああ……まあ、それは」
使用人「……と、言う事は。青年様は、癒し手様と離れられた、と言う事では?」
側近「! ……な、ならば癒し手はあそこに一人で!? ……否!」
側近「……共に……!」
使用人「……そんな余力が、あると……」
側近「……ッ な、何が言いたい!?」
使用人「…… ……」スス……トン
側近「何…… ……!? 『癒し手の器は間に合った』……!?」
使用人「…… ……ッ」グッ
使用人「考えたくは、ありません……が……ッ」
側近「まさか! これは……ッ 別、の世界だ!」
側近「癒し手は……ッ」
使用人「…… ……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……すみません」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……使用人」
使用人「は、はい」
側近「……ここを、見ろ」
使用人「え……? …… ……!」
側近「『代々の魔王の残留思念、剣士の力を持って』」
側近「……『光の剣を完璧な状態へと戻し』」
使用人「…… ……なッ ……!!」
使用人「『1000年を生きた使用人から、知を授かる』!?」
側近「……『知を受け継ぐ者』」
使用人「な、ん……!? 私、さ、さっきも言いましたけど」
使用人「1000年も生きてません!」
1861 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 13:32:05.14 ID:8cmqsm8mP
側近「……なんなんだ、これは」
使用人「どう……なっているんです……」
側近「……俺が聞きたい。何が、何だか……」
使用人「青年様は……どう言う目的で、これを……」
側近「……これの、真偽は分からん。だが」
側近「青年は……勿論」
使用人「…… ……」
側近「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に、これを」
側近「寄越した、んだろう…… ……癒し手が、全てを……」
側近「話した、のならば。確実に」
使用人「…… ……悪い、夢を見ている様です」ハァ
側近「……俺もだ」
使用人「……お茶にしましょう」
側近「は?」
使用人「糖分、足りませんでしょう……それに、これ」
使用人「貰ってしまった以上、どうにか紐解かなくてはなりません」
使用人「解るところまで、だけでも」
側近「…… ……」
使用人「后様が戻られるまで、時間はあります」
側近「…… ……」
使用人「……そんなうんざりしたって顔に書かないで下さい」
側近「……書いてない」
使用人「『別の世界』の……この出来事を、もし倣うのだとすれば」
側近「!」
使用人「青年様の文が真実なのだとすれば……『女勇者様』は」
使用人「『最強の魔王様』になられます」
側近「……それは、信じるに値するのか?」
使用人「……『魔王は勇者を産む』」
側近「え……」
使用人「もし、次で終わらなければ。まだ、続くのならば」
1871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 13:49:01.50 ID:8cmqsm8mP
使用人「今度、『勇者』を産むのは『魔王』自身です」
側近「!」
使用人「前后様も……后様も……」
側近「……! ……力を、強くして……」
使用人「……『強大な力を持つ者』イコール『勇者』」
使用人「……イコール『後の魔王』です」
使用人「魔に変じた人間が……『人間』の部分を奪い去られ『母』となる」
使用人「残るのは……『魔』です」
側近「……ッ」
使用人「その仮説が、正しいのなら、まさに……!」
側近「『最強の魔王』……!」
側近「……し、しかし! 勇者は必ず、魔王を倒す……のだろう!?」
側近「今まで、そうだった筈だ!」
使用人「…… ……何時、終わるのです……」
側近「!?」
使用人「『終わらさなければいけない』んです!」
使用人「此処で! ……『最強の魔王』を、生み出す前に……!」
側近「…… ……!!」

……
………
…………

后「…… ……」ジッ
后(雨……止まないわね。空、真っ暗)
后「…… ……勇者?」
勇者(ぐぅ)
后「……良く寝てる」クス
后(……日に日に、大きくなっていく)
后(勇者と……赤ちゃんと、同じみたいだわ。あの……『黒い靄』)
后(……小屋には、防御壁を張った。『魔』に『母』になった私の力)
后(大丈夫……だと、思いたい……けど……!)
后「この国は……一体、どうなっているの……ッ」
1881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 13:50:24.67 ID:8cmqsm8mP
おーむかーえー!
1891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 17:36:23.40 ID:8cmqsm8mP
勇者「……ふぇ」
后「あ……ッ」ギュ
勇者(…… ……)ウトウト
后「…… ……」ホッ
后(……窓から、見ても解る。空が真っ暗)
后(日に日に、厭な……気配が増えていく。どういう事……なの!?)
后(……これが、無ければ。行きたかった……!)
后(王子様が、まさか……あんなに、急に亡くなるなんて……)
后(……私が、勇者が。この国に来て……一ヶ月ほど?)
后(あんなに……まだ、元気でいらしたのに……!)

コンコン

后「!」ビクッ
近衛兵長「魔法使いさん、食料などをお持ちしました」
后「あ……あ、ありがとう。そこに……置いておいて下さい」
近衛兵長「……はい。では、失礼致します」
后(彼らは……平気なの!?)
后(……此処へ、何時も来てくれるのは、近衛兵長だって言ってたわね)
后(彼と、王様しか……此処への道はしらない、のだと)
后(……騎士団は、無くなった。もう、戦争は終わったのだ、と)
后(人、だから? 私が……彼らと違って、魔だから?)
后(……平気、なの。こんなにも……厭な気が漂っているのに……!)
后(不自由は無い。手紙を置いておけば)
后(何だって、用意してくれる……多分、今までの『勇者』と変わらない)
后「でも……ッ」
后(……否。勇者は、人間。だから…… ……)
后(この、靄の中で育っても……解らない……?)
后「…… ……」
后(地下。城の地下に……何が、あるの……)
后(確かめに行きたくても……勇者が居ては……)ハァ

『…… ……き。 后……』

后「…… ……?」
190名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 17:39:59.69 ID:GyQcWhMfP
(`• ω •´ )
1911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 17:42:36.74 ID:8cmqsm8mP
『……き……え、るか……』

后「!? ……だ、れ……ッ」
后(何処から…… ……!?)キョロ

『お…… ……黙れ、お前ら!』

后「!?」
后(……気配、は無い…… ……!)
后(前后様も言っていた……! 確か、心話……!?)
后『……誰?』

『……ああ、聞こえるんだな』

后『…… ……』
剣士『俺だ……剣士だ』
后『! 剣士!? ……貴方、どうして……!?』
剣士『……紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈が無い』
后『え?』
剣士『説明は後だ……今、小屋に居るんだな?』
后『え、ええ……貴方、は……』
剣士『……俺は、青年と』
后『!?』
剣士『魔導師、と言う……』
后『魔導師!? ……まさか、鍛冶師の村の!?』
剣士『……そうだ』
后『どうして……』
剣士『説明は後だ、と言っただろう……小屋には、お前と勇者だけだな』
后『え、ええ……』
剣士『……今、俺達は始まりの国に居る』
后『!』
剣士『だが……』
后『……『黒い靄』ね』
剣士『……ああ。小屋に……そこに、何かしたのか』
后『え? 何か、って……』
剣士『……だから、黙れと! ……ああ、すまん』
后『??』
剣士『……その小屋の周りだけ、黒い靄が……無い、と言うか』
1921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 17:51:31.71 ID:8cmqsm8mP
剣士『触手を伸ばせない様に、見える』
后『……魔法で防御壁を張ったわ』
剣士『それか』ホッ
剣士『……青年の身も心配だ。すぐにそちらへ行く』
后『え!? ……ちょっと、剣士……!』

シュゥウン……!

后「!」
青年「……ッ ……あ、ぁ……ッ」ハァ
魔導師「うわあああああ! ……あ、 ……ぁ、あ!?」
青年「死ぬかと思った……!」ストンッ
后「あ……貴方、青年……!?」
后「……! 魔導師……!?」
青年「……ご、めん……后様……ちょっと、休ませて」ハァ
魔導師「お、お久しぶり、です……魔法使いさん……」
魔導師「……いえ、后様」
后「!」
剣士「……確かに、ここなら……安心、否。安全……か」フゥ
后「い、一体……何事!?」
勇者「……あぁう」チカチカ
后「あ……ッ ……!?」
后「……え、何、これ……癒し手の、魔石……光ってる!?」
魔導師「……ああ、やはり」スッ チカチカ
后「!」
青年「これが無いと、絶対……僕、死んでたな……」ハァ……チカチカ
后「…… ……どういう……こと、な……の……」
剣士「……后」
后「な、何よ……」
青年「……やっぱり、船なんか使わないでこうした方が早かったじゃないか!」
魔導師「そんな事無いですって! ……船に乗らなきゃ、人魚の魔詩も」
魔導師「『夢』も解らなかったでしょう!?」
剣士「だからお前ら、ちょっと黙れ!」
后「大きな声を出さないで!勇者が起きちゃうわ!」
1931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 18:05:07.79 ID:8cmqsm8mP
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者(すぅ)
后「……説明、して頂戴」
后「何が……どうなっている、のよ……」
剣士「……『回り続ける運命の輪』」
后「! ちょ、ちょっと、剣士……」チラ
魔導師「……全部、聞きました、后様」
魔導師「それから……『欠片』も、僕は知っています」
后「え……?」
剣士「人魚の『夢』だ。お前だろう?癒し手に……人魚達の魔詩が」
剣士「あの『古詩』だと……言ったのは」
后「……え、ええ……だけど、それが、欠片……?」
青年「僕は……母さんと、鍛冶師の村の近くの小屋……母さんが育った」
青年「あの小屋に居たんだ。魔王様の城を出てから」
后「! ……ッ そ、そうよ! 貴方、青年なのよね!?」
后「……城を出たとき、貴方は……!」
青年「今の魔導師よりも、小さかった……だろう」
后「…… ……」
青年「僕はエルフの血を引いている。だから……」
后「……否。良いのよ……元気で、いるのなら……それで……!」
后「あ……ッ 貴方が、此処に居ると言うことは……!」
青年「…… ……」
后「癒し手は、一人で小屋に……!?」
青年「……母さんは、死んだ」
后「! ……ッ 嘘、よ!」
后(……! 夢……ッ 勇者を産む時に見た、あの夢……!)
后「……雨の、中……で、ま、さか……」
魔導師「!」
后「倒れたの!? あの、小屋の……庭で……!?」
青年「……違う。母さんは…… ……ッ」
青年「……母さんは、風に……攫われて行った」
青年「サラサラと身体が、砂の様に…… ……」
后「…… ……」フラッ
剣士「! 后!」ガシッ
1941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 18:17:01.52 ID:8cmqsm8mP
魔導師「……后様、何故『雨の中で倒れた』と?」
后「え……」
青年「……僕の事は気にしなくて良い。教えて欲しい、后様」
后「ちょ、ちょっと待って! ……ええ、と……」
剣士「ゆっくりで良い。后」
魔導師「……雨の中で倒れた癒し手様を、今の姿よりもう少し大人な青年さんが」
后「!?」
魔導師「鍛冶師の村の神父様の眠る、隣に……埋葬した、んですか?」
剣士「…… ……」
后「ちょ、ちょっと待って! ……私がみた『夢』は」
后「……もう少し、大人に見える青年……だろう、男が」
后「死……んだ、癒し手を抱きしめて泣いている夢、よ……」
青年「…… ……」
后「それに! ……こ、この話は、側近と使用人にはしたけれど……!」
魔導師「……後で、説明しますけど。僕は……『1000年生きた使用人』さんから」
后「は!?」
剣士「ややこしい言い方をするな……」
魔導師「……すみません」
青年「……『同じ』なんだな……多分」
后「……青年!?」
青年「后様」
后「……な、なに……なんなのよ!」
青年「以前、黒髪の勇者と、父さんと后様は」
青年「人魚の魔詩で夢を見た、んだろう」
后「え……ええ……」
青年「僕は、母さんが知るだろう全てを聞いた」
青年「……夢の話も、勿論だ。と言っても、母さん自身は見ていないけど」
青年「『初めてなのにそうじゃ無い』ようで『初めてじゃ無いのにそうじゃ無い』ような」
剣士「……悲しくて切なくて、苦しくて。でも、嬉しい……感覚」
后「…… ……」
魔導師「『繰り返されている』のは、『運命の輪』は」
魔導師「『勇者と魔王』だけじゃ無いんです。多分」
后「え……?」
魔導師「この『世界』そのものが、何度も何度も……繰り返されている」
魔導師「僕は、此処に来るまでの船の中で人魚の魔詩で夢を見ました」
1951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 18:24:40.48 ID:8cmqsm8mP
魔導師「……赤茶の髪の勇者様と、僕。青年さんと、剣士さん」
魔導師「四人は、黒い髪の魔王様と対峙していた」
魔導師「……勇者様は、魔王を……お父さんと呼んでいた」
后「!?」
魔導師「そして……勇者様は魔王を倒しました。でも……」
剣士「……終わらなかった」
后「な……ッ!?」
魔導師「赤茶の髪の勇者様は、魔王となり」
魔導師「僕は……魔に変じ、使用人さんの『知』を受け継ぐ道を選びました」
后「!」
魔導師「……夢の中で、僕は」
魔導師「その、使用人さん、の……その時までに知り得ただろう全ての『知』を」
魔導師「受け継いだんです……不思議な事に、その『知』は」
魔導師「今、ここに居る……僕、の『中』にも……あるんです」
后「そ……んな……!?」
青年「母さんが死んでから行った鍛冶師の村で僕は剣士と魔導師にあったんだ」
青年「……母さんの魔石が、今みたいに光った」
后「…… ……」
青年「勇者様が同じ物を持っているのは聞いていたから、僕は……彼」
青年「魔導師が、『三人目』だと思ったんだ」
后「……『三』」
剣士「……その話も、もう伝えてある」
魔導師「僕は魔石や、魔法剣の事を勉強したかった」
魔導師「……その時はまだ、勇者様についていきたい、なんて思わなかったけど」
青年「着いてくるかい、と聞いたら……魔導師は、まあ、結果的には、だけど」
青年「イエス、と言った……だから、全てを教えようと思ったんだ」
青年「勇者様についていくのは……恐らく、剣士。僕……此処までは間違い無いと」
青年「信じて……いたから」
后「…… ……」
1961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/31(金) 18:25:56.82 ID:8cmqsm8mP
又中途半端だけどお風呂とご飯!
そして明日は仕事!
また明後日……か、明明後日!
197名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 18:34:16.16 ID:GyQcWhMfP
りょ!!おつ!
198名も無き被検体774号+:2014/01/31(金) 21:00:38.44 ID:4+wiP+K8i
ついに物語が収束してくな
楽しみやわ
199名も無き被検体774号+:2014/02/01(土) 00:36:13.55 ID:+HuiJlfmi
じれったいwww
でも待ってるwww

>>197
了解、お疲れの略なのか両津なのか…
前者ならいいが後者ならどうしてくれようw
200名も無き被検体774号+:2014/02/01(土) 10:29:13.03 ID:Hg/4s9g9P
>>199
前者のつもりだったが、なるほど。
これからは「両津!」と書けば「了解!お疲れ様!!」の略になるな!
201名も無き被検体774号+:2014/02/01(土) 11:01:48.63 ID:3D2TliQT0
>>200
ん。あまり面白くない
202名も無き被検体774号+:2014/02/01(土) 21:50:07.87 ID:i/ChQMldi
スコーンがいるときはwktk☆で正座で待つ
スコーンがこれない時は皆で保守

この不文律を我々書き込めるスレ住人が義務としてはたす
書き込める諸君、規制組のため、ひいてはスコーンのため
共にがんばろう(・ω・)ノシ

保守
203名も無き被検体774号+:2014/02/02(日) 07:50:46.79 ID:wZmp9jqrO
204名も無き被検体774号+:2014/02/02(日) 16:30:47.43 ID:yE3rE5B+i
こまけえこと言わずに保守
205名も無き被検体774号+:2014/02/02(日) 21:17:51.89 ID:E01IJMUJ0
ほしゅ
206名も無き被検体774号+:2014/02/03(月) 01:35:06.13 ID:W9MT3nv/0
捕手
2071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 09:19:39.14 ID:JR1uxqdkP
おはよう!
お迎えまで!
208名も無き被検体774号+:2014/02/03(月) 09:53:32.41 ID:jRK5Ih0ni
しえーん
2091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 09:54:22.67 ID:JR1uxqdkP
魔導師「……結果的には正解、でした。まあ、その……僕の見た『夢』が」
魔導師「『過去』の出来事で」
魔導師「『現在』がそれに倣い、『未来』を紡いでいくと決定しているのなら」
魔導師「……ですけど」
剣士「船の中で、俺と青年は……魔導師に全て話した」
后「…… ……」
魔導師「僕も、話しました。夢で見た全て……と」
魔導師「受け継いだ『知』の全て」
青年「…… ……」ハァ
剣士「……大丈夫か」
后「顔色が……悪いわ、青年」
青年「……剣士と后様にとって……あれは、気分の良い物なのか」
后「え?」
剣士「俺は否定したはずだが」
青年「ああ、そうだった……后様はどう?」
后「あれって……『黒い靄』?」
后「良い筈無いでしょう! あんな……悪意の塊みたいな……!」
魔導師「……僕はまだ、人間なので、正直何も見えないし」
魔導師「何も……感じません。でも」
剣士「……随分とイライラする、だったか?」
魔導師「今、后様に『悪意の塊の様な物』と聞いて納得しました」
青年「……魔族にも、良い感じはしない、んだな」
魔導師「剣士さんだって魔族みたいなモンです」
后「! そうよ、剣士、さっき貴方……!」
后「『紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈は無い』って……!」
剣士「……説明はする。お前の意見も聞きたい」
青年「僕は…… ……ああ、御免。やっぱり平気とは強がれないな」ハァ
魔導師「……あっちこっち説明しても埒があきません。后様」
后「え、な、何……」
魔導師「先に……その『黒い靄』とやらをどうにかしましょう」
后「どうにか、って……」
2101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 10:18:35.45 ID:JR1uxqdkP
魔導師「さっきも言った通り、僕は『まだ』人間なので」
后「…… ……」
魔導師「何も解りません……が、イライラ、するんです」
魔導師「勇者様に……影響が無いとも言い切れませんよ」
后「!」
魔導師「光の加護を持つ……と、言っても、人間です」
魔導師「それに……まだ、赤ん坊だ」
后「で、でも……!」
剣士「勇者が大きくなり、この国から旅立つとき」
剣士「魔導師の言う『イライラ』を抱えて過ごしてきたこの国の者達が」
剣士「……勇者に与える影響は小さいと思うか?」
后「!」
魔導師「……青年さんの体調、もそうですけど」
魔導師「どうにも出来ないのであれば……離れた方が賢明だと思うんです」
魔導師「でも、それも出来ないというのであれば」
后「……どうにか、するしか無い、のね」
剣士「后。この地下に何があるか……知っているか」
后「いえ……」
剣士「……牢、だ」
后「牢……?」
剣士「あのままであるとするのなら……母親が捕らわれている」
后「!? …… ……お母様!?」
剣士「…… ……」
后「…… ……」
2111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 10:27:46.47 ID:JR1uxqdkP
剣士「どうにかできるとすれば……お前しか居ない、后」
青年「……僕は后様のお母さん……母親、の事は」
青年「話でしか聞いてないし、ハッキリどうとか、知らないから」
青年「……何とも、言えないけど」
魔導師「……インキュバスの魔石の、傍にずっといらっしゃった、のでしょう」
后「あ……!」
后「お爺様は、あれで……あの石の所為で……魔、物になったんだった、わね」
后「……では、この黒い靄は……!!」
剣士「……何か、感じないのか?」
后「いくら……勇者を産んだからって、私にそんな力は無いわよ」
青年「……推測でしか無い。だけど、これは……后様の言うとおり」
青年「『凄まじい悪意』だ……『怨み』だよ」
后「…… ……」
青年「話は、後にしよう、后様……否、して欲しい」
青年「……マシになったとは言え、辛い」
后「……場所は解るのね、剣士」
剣士「大体は……後は気配を辿れば良いだろう」
剣士「心配するな。俺も行く」
魔導師「勇者様は、僕と青年さんで見ていますから」
后「…… ……解ったわ」
剣士「掴まれ……俺が転移しよう」
后「…… ……」ギュ

シュゥン!

魔導師「…… ……大丈夫、ですか?」
青年「まあ……后様の魔法と、母さんの石があるから」
青年「……少なくとも死にそうじゃ無い」
魔導師「あのお二人ですから、心配は要らないと思いますけど」
2121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 10:36:51.15 ID:JR1uxqdkP
青年「……『心配』はその後だろう」
青年「どうせ……城には入れないのだろうしな」
魔導師「それは……大丈夫でしょう?」
青年「え?」
魔導師「剣士さんなら城に忍び込めます」
青年「……お前」ハァ
魔導師「手段を問わず、ってのは青年さんに習ったんです」
魔導師「あんな物、って言っても、僕には見えないけど」
魔導師「……否、まあ……王様とかにも見えないんでしょうけど」
魔導師「『地下』に母親って人を連れて行ったのは、王様なんでしょうし」
青年「……『国王』様だよ。弟王子様」
魔導師「あ、そうか……でも」
青年「……まあ、この事態にさせたのは新しい王様の方だろうけどね」
青年「病気だって聞いた、んだろう?」
魔導師「剣士さんがそう言ってました……まあ、噂、何でしょう、けど」
魔導師「……従兄弟、でしょ?」
青年「父さんのな」
魔導師「……ああ、そうか。何て言うんでしょう」
青年「……呼び方なんてどうだって良いさ」
青年「血が繋がっている事に変わりは無い」
魔導師「まあ……そうですけど…… あ」
青年「何?」
魔導師「いえ……」
魔導師(もし、の話なんてしたって仕方無いけど)
魔導師(『血』の繋がりで行くのなら……)
魔導師(……青年さんにも、この国の『王』になる資格がある、のか)
魔導師(全力で拒否りそう、だけど)ハァ
青年「……で、本当に剣士に忍び込ますつもりなのか」
魔導師「え? ……ああ」
魔導師「素直に頼んで、くれると思いますか?」
魔導師「……僕は、王様がどんな人かも知りませんけど」
2131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 10:43:54.98 ID:JR1uxqdkP
青年「僕だって知らない……勇者様の為、って言えば」
青年「貸して、ぐらいはくれるんじゃないの」
魔導師「……問題は誰がどうやって説明するか、ですけど」
青年「…… ……まあ」
魔導師「だったら、こっそり持って来る方が早いですよ」
青年「で……后様に炎を打ち出して貰うのか。お前の見た『夢』に倣って」
魔導師「…… ……」
青年「そして、剣士は…… ……」
魔導師「……でも、あれは。『黒い髪の魔王』を倒した後の話です」
青年「……ま、断らないだろうさ。剣士は」
魔導師「…… ……」
青年「自分が居なくなると分かってても」
青年「……『魔王を倒す』為ならな」
魔導師「…… ……」
青年「倒した後でも、倒す前でも……一緒だろ?」
青年「あいつは……剣士は『代々の魔王の残留思念』」
青年「……『欠片』だ」
魔導師「やっぱり……反対なんですね」
青年「何度も言っただろう……当然だ! ……ッ」
魔導師「青年さん!?」
青年「……大きな声、だすと眩暈がする」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何もかも、『過去』に倣う必要なんか無い」
青年「……そもそも、随分違う、じゃないか」
魔導師「……はい」
青年「だったら、他の方法だってあるかもしれない」
魔導師「……剣士さんも、そう言ってました」
青年「……最終手段だよ」
魔導師「…… ……」
青年「まあ、その最終手段の為に?」
青年「……手に入れておく必要は、確かにある、んだろうけどね」ハァ
魔導師「……鍛冶師の村の鍛冶場が、取り壊されてしまった以上」
2141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 10:45:29.59 ID:JR1uxqdkP
ちょ、ちょっと用事で離席!
2151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:00:24.92 ID:JR1uxqdkP
魔導師「……剣を、魔法剣を鍛えられるだろう道具は」
魔導師「鍛冶師様が、昔あの村から持ち出されただろう物、しか……」
青年「……まあ、確かに始まりの城にはあるだろうな」
青年「まだ残って居れば、の話だけど」
魔導師「……処分されていない、と信じるしかありませんが」
青年「それよりも、だ」
魔導師「……はい」
青年「母親……后様の母、か」フゥ
青年「…… ……」
魔導師「青年さん?」
青年「……『凄まじい悪意』だ。……『怨み』」
青年「…… ……」
魔導師「あ、の……」
青年「あ? ……ああ、いや」
青年「生きているのかな、ってさ……」
魔導師「……どう、感じますか」
青年「……どっちもどっちだ、正直」
魔導師「え?」
青年「生きながらにして……これだけの、って考えると」
青年「『人間』の執念ってのは……凄いな、って感心する」
魔導師「……死んでいる、と仮定すればオカルトですね」
魔導師「呪い、祟り……」
青年「……死んでも尚、って思えば」ハァ
青年「それはそれで……感服するさ」
青年「……どれほどの感情なんだ。それって……、さ」
魔導師「……優れた加護を持っているとは言え」
魔導師「たかだか、人間に。そんな事出来るんでしょうか」
青年「さてね」
魔導師(死して尚……か)
魔導師(……僕から見れば、夢の中の『僕』は……過去)
魔導師(死して、尚……願えば、叶う)
魔導師「……『思い』って……凄いんですね」
青年「…… ……」

……
………
…………
2161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:08:37.38 ID:JR1uxqdkP
シュウン……
スタ……スタッ

后「……こ、こが……地下牢?」
剣士「……否。確か、廊下の先に……扉と階段が」キョロ
后「……見える?」
剣士「明かり……が必要だな。真っ暗だ……しかし、酷い匂いだ」
后「鼻が曲がりそうね……ちょっと待って。炎よ……」ポゥ
剣士「便利な物だ…… ……ッ 止まれ!」グイッ
后「キャッ!? な、何…… ……ヒッ ィ……ッ」
剣士「…… ……死体?」
后「! ……ッ」
剣士「……厭なら、見るな。手だけ……明かりだけ、此方へ」
后「…… ……ッ」スッ
剣士「…… ……」
后「な、何なの、よ……」
剣士「掴んでおいてやるから……動くな。目も開けるな、よ」
后「…… ……ッ」ギュッ
剣士「…… ……」
剣士(……男? ……制服、のような物)
剣士(騎士団のか……否)
剣士(近衛兵、だったか…… ……と、言う事は……)
后「な、何か喋ってよ!どうなってるの……!」
剣士「あまり大きな声を出すな……厭なんじゃ無いのか」
后「……で、でも……」
剣士「……男、だな。多分……城の兵士、の服……だろう、これ」
后「…… ……」ソロ……
后「!」
剣士「……厭なら見るな言っただろう」
后「で、でも……」
剣士「……腐臭か」
后「ふ、古い……し、たい……なの」
2171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:14:39.95 ID:JR1uxqdkP
剣士「……近衛兵の服だとすれば、そうでも無い筈だ」
后「……! 剣士!」
剣士「大きな声を出すなと……なんだ」
后「……! と、扉……ッ」
剣士「扉?」クル
剣士「! …… ……」スタスタ
后「ちょ、ちょっと待ってよ!」タタ
剣士「后、明かりを」
后「……ハッキリ見えちゃうじゃないの」ス……
剣士「確かめにきた、んだろう」
剣士(……手の形の、血の……跡。壁を叩いた跡、か……)

ガチャガチャ!

剣士「……固定されてる、な。外側からか」
后「……地下牢に続く扉?」
剣士「違う……方向的に、城の中へ、の方だ」
后「え?」
剣士「…… ……」クル
剣士「……地下牢への扉は、アレだ」スッ
后「…… ……」クルッ
后「! ……鎖、に鍵!?」
剣士「…… 封鎖したんだな」
后「で、でも……この、人……!」
剣士「……閉じ込められた、んだろうな」
后「そ、んな……! ……事故……!?」
剣士「……本当にそう思うか?」
后「…… ……」
剣士「行くぞ」スタスタ
后「……ッ」スタスタ
218名も無き被検体774号+:2014/02/03(月) 13:36:58.54 ID:NO6iFmV+0
C
2191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:40:36.36 ID:JR1uxqdkP
剣士「……随分頑丈な……」
后「…… ……」チラ
剣士「だから……厭なんじゃ無いのか」ハァ
后「……ッ 厭でも気になっちゃう、のよ!」
剣士「……取り残された見張りの兵士、と考えれば」
后「え?」
剣士「…… ……この下。牢の中の母親は……」
后「…… ……ッ」
剣士「…… ……」
后「……ッ 行きましょう」
剣士「……良いんだな」
后「……もし、インキュバスの魔石に当てられて」
后「お爺様の様に、なってしまった……のだとしたら」
后「あの……兵士さんには、勿論、お気の毒、だけど……!」
剣士「…… ……」
后「……仕方が無かった、のかもしれないわ」
后「何も……知らなかった。教えなかったのでしょう、新王様には」
剣士「……ああ」
后「国を守る為の……措置だったのかも、しれないわ」
剣士「……否。それにしては……おかしい」
后「え?」
剣士「自分が言ったんだろう……『悪意』だと」
后「え、ええ……でも、別に……」
剣士「……魔王という凄まじい力を持つ者しか成し得ないかもしれない」
剣士「『魔へ変じさせる行為』だ」
剣士「……それをたかだか、インキュバスの……魔族の作った魔石で、だぞ?」
后「?」
剣士「……言い方を変えるか」ハァ
剣士「お前達が前后の魔法で消えた後、魔物に変じた領主を倒したのは俺だ」
剣士「……あれに、自我がある様には見えなかった。理性もな」
后「あ……!」
剣士「『同じ』と考えて……これだけの『悪意』を」
剣士「……『怨み』を、放出できると思うのか?」
2201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:45:43.03 ID:JR1uxqdkP
后「…… ……」
剣士「青年の言葉を思い出せ」
剣士「『凄まじい悪意』『怨み』だ……あいつは、エルフの長の血を引く」
剣士「『感じる力』を持つ……エルフは嘘が吐けない」
剣士「……だとすれば?」
后「……そんな! まさか……ッ 生きている侭に、見捨てたと!?」
后「……ッ」
后(でも……だと、すれば……)
后(お母様は……何を。私を?勇者を……? ……『世界』を)
后(怨みながら……死んで行った!?)
剣士「……王に、問いただす事は……出来るだろう」
后「…… ……」
剣士「お前が望むなら、だがな……」
后「……とにかく、行きましょう」
后「真実が何であれ……あんな、あんな母親……で、あれ……!」
后「……このままに、して置く訳には、いかない……出来ないわ」
剣士「……少し下がっていろ」
后「え?」
剣士「……お前の炎で溶かすより、早い」シュッ ……チャキ
剣士「……風よ!」
后「!」

シュウン……ザクザクザク……ッ
ガシャン……ガシャン!

后「…… ……開くの」
剣士「駄目なら扉ごと切り裂けば良い」グッ

ガチャ……ギィ
2211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:49:57.65 ID:JR1uxqdkP
剣士「……階段か」
后「照らすわ……」スッ
剣士「気をつけろよ、足下」
后「……ええ」

コツン、コツン……

后「! ……ッ」
后(比べものにならないほどの……腐臭……ッ)
剣士「……待て、これは……ッ」
后「な、何…… ……う、ゥ……ッ」
剣士「…… ……ッ」
后「ヒ、ぃっ ……ッ」
剣士「…… ……地獄、だな」
后「あ…… ……ッ ぁ……ッ」ガクガク
剣士「……もう見るな。明かりも良い……そこに、いろ」
后「…… ……」ペタン
剣士「…… ……」ハァ
剣士(動けん、か……どちらにしても)スッ シャキン
剣士「炎よ……」ポゥ
剣士(……最初からこうしておく方が早かった、か)

スタスタ

后「け、剣士……ッ」
剣士「……目、閉じておけ。先に戻っても構わん」

スタスタ

剣士(……一つ、二つ…… ……数えきれん、な)
剣士(死体の山…… ……正に、地獄だな)ハァ
2221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 13:51:05.45 ID:JR1uxqdkP
おむかえー
223名も無き被検体774号+:2014/02/03(月) 18:42:41.48 ID:jRK5Ih0ni
おつー
2241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/03(月) 21:00:40.00 ID:JR1uxqdkP
明日は仕事!
また明後日!
225名も無き被検体774号+:2014/02/03(月) 21:04:29.89 ID:Wx+b5eSji
お疲れスコーン
いい子にして待ってる
226名も無き被検体774号+:2014/02/04(火) 02:08:37.40 ID:1aqF1Gox0
途中で飽きて半年位読んでなかったけど戻ってきた
この世代で終わる気がしないんだよなぁ
227名も無き被検体774号+:2014/02/04(火) 12:23:33.30 ID:7tIDZj2H0
后変わり果てた母親の姿を目の当たりにしたら正気でいられるのかね。
秘書に食い散らかされてるのか、残さずきれいにいただかれたのかわからんが。
あんな母親でも母親だからなぁ。
228名も無き被検体774号+:2014/02/04(火) 20:00:48.04 ID:afk+brRm0
そういえば、后の母親だったね
なんか忘れてたわ
229名も無き被検体774号+:2014/02/05(水) 04:46:57.73 ID:IAwoVYCa0
ほしゅ
230名も無き被検体774号+:2014/02/05(水) 09:35:07.12 ID:KX9lXEah0
保守
2311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 12:55:36.34 ID:UifMzoGNP
幼女お熱ですー……
また後日……
232名も無き被検体774号+:2014/02/05(水) 13:01:02.67 ID:D+l39/OhP
あらら…
幼女お大事に…
2331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 14:56:30.05 ID:UifMzoGNP
幼女寝たから、ちょっとだけ。
起きたら多分、唐突に消えます
2341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 15:03:36.46 ID:UifMzoGNP
后「……ど、う……なってる、の」
后(ちらっと見えた……地面の膨らみのような物は……多分……人)
后(否、人だった……もの……!)
后(……一つじゃ、無かった。この中に……お母様も……ッ)
后(腐臭……死、の匂い…… ……悪意、は。怨みは……この人達、の……!?)
剣士「……後だ」

スタスタ

剣士(……誰が誰だか……解らんな。母親がどこに居たのかも……)
剣士(どれぐらい前に、死んだ……のかも)
剣士(ん…… ……?)

スタ……ピタ

后「……剣士……?」
剣士「…… ……」
剣士(この死体だけ……食い荒らされている……? ……しかし……)
剣士(どれが……誰だか…… ……判別のしようもない、な)ハァ
剣士「…… ……后」
后「な、何」
剣士「…… ……否。生きている者は居ない様だ」
后「…… ……」
剣士「動くなよ」

スタスタ

后「お……か、あさま、は……」
剣士「……立てるか?手を」
后「…… ……」ギュッ
剣士「……判別が着かん。誰が誰だか……」
后「……ああ……ッ」
2351 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 15:17:11.51 ID:UifMzoGNP
剣士「……しかし『黒い靄』の正体は……ハッキリした、だろう」
剣士「食事も与えられず、永遠にこんな……暗い、場所に捨て置かれたのだと」
剣士「……知れば」
后「……狂ってしまえれば、楽だったのかも知れないわね」
后「正気を保ち続けて居たのだとすれば……誰かを」
后「何かを……怨みたくなって……とう、当然だわ……ッ」
剣士「……ああ」
后「あの、『怨み』……」
剣士「?」
后「……お母様の物では、無いのかも知れないと、思って」
后「わ、私……ッ どこか、ほっとしてる……!」
后「……最低、だわ…… ……ッ」
剣士「…… ……責めはせん。流石に、これでは……」
后「…… ……」
剣士「……炎で、清めてやるのが一番、良いのだろう、が」
后「城の地下、なのでしょう……こんな場所に、火をつけたら……」
剣士「…… ……」
后「……ねえ」
剣士「? 何だ」
后「青年は、この街に……城に近づいて、気分を悪くしたの?」
剣士「……否。この国に近付くにつれ、徐々にだ」
剣士「随分遠くから、この国の空は……黒く、見えた」
后「……炎よ」ボウッ
剣士「! 后……ッ!?」
后「『手遅れ』になる前に、よ」
剣士(炎の廻りが、早い……ッ)
后「……『黒い靄』は空だけじゃ無い……!」
后「『知人のエルフの加護』と同じよ……徐々に、染み出していくのだとすれば」
后「……この城だけ……この国だけじゃ無く……」
后「大陸そのもの……『世界』が……ッ」
剣士「……ッ 戻るぞ!」グイッ

シュゥウン……ッ!
2361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 16:05:09.29 ID:UifMzoGNP
……
………
…………

バタバタバタ……バタン!

衛生師「……何事ですか」
近衛兵「か、火事です!王様!」
衛生師「……火事!? どこから……ッ」
近衛兵「……し、城の、地下の方から……ッ」
衛生師「な……!?」ガタンッ
衛生師「詳しい火元の特定と、消火を急げ!」
近衛兵「……そ、それが……その、あの……何処からも、入れなくて……」
衛生師「!」
近衛兵「少女様の元にも、兵士が向かいました」
近衛兵「勇者様の元には、近衛兵長様が……!」
衛生師(地下……まさか、あそこ!?)
衛生師(し、しかし、発火する様な物なんて……何も……!)
衛生師(誰かが……否!ありえない……ッ)
近衛兵「……王様!」
衛生師「……ッ」ハッ
衛生師「私は最後で良い。城の中の人達を、早く……」
近衛兵「既に皆、避難を始めています!」
近衛兵「……ですから、早く……!」
衛生師「…… ……ッ」

シュゥウン……!

近衛兵「う、わああああああああ!?」
衛生師「な……ッ」
剣士「…… ……」ブンッ

近衛兵「……ッ!」バタンッ
衛生師「あ……ッ」
剣士「……殺しては居ない」
衛生師「け、んし……!? き、君……今、どこから……ッ」
2371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 16:32:32.07 ID:UifMzoGNP
剣士「何故、お前がそこに座っている」
衛生師「…… ……」
剣士「……王は何処だ」
衛生師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ……ス、チャキ
衛生師「何の……真似だ」
剣士「……地下に何がある。否……何をした?」
衛生師「……何の話だ」
剣士「…… ……」チラ
剣士「この男と同じ制服を着た男の死体」
衛生師「!?」
剣士「……牢には、死体の山」
衛生師「…… ……」
剣士「あの中には、母親も含まれているのか」
衛生師「…… ……」
剣士「もう一度聞く……王は、どこだ」
近衛兵「う……ぅッ」
衛生師「! ……おい! この男を捕らえ……ッ」
剣士「!」グイッ
衛生師「ア……ッ !?」ギュッ
剣士「……動くな」スッ
衛生師(首元に……剣……糞ッ)
剣士「動くと切れるぞ」
近衛兵「う、あ!? お……王様……ッ」
剣士「……王? 何を言って……」
近衛兵「お、お前……ッ 王様に、何を……!」
衛生師「…… ……」
剣士「……『王』 ……お前が?」
2381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 16:57:37.97 ID:UifMzoGNP
近衛兵「王様! こいつは……!」

バタン!

少女「……ッ おい、火事ってどういう……!?」
衛生師「! ……ッ 逃げなさい、少女!」
少女「…… ……ッ !?」
剣士「……動くな、と言っただろう、衛生師」
少女「!」
剣士「……おい、そこのお前」
近衛兵「な、な……ッ」
剣士「その女を連れて、早く逃げろ……この建物は古い」
剣士「……すぐに火が回るぞ」
少女(紫の髪、紫の、瞳……! ま、さか……!?)
少女「……剣士、か……!?」
剣士「…… ……」
衛生師「……少女! 早く……ッ」
少女「……『魔導の街の勇者』……」
近衛兵「な……!?」
剣士「…… ……」ハァ
衛生師「近衛兵!命令です!」
近衛兵「!」ビクッ
衛生師「……少女を早く、安全な場所へ。僕は大丈夫ですから」
少女「お、おい……、待て!」
衛生師「……僕は大丈夫です。だから、早く」
剣士「……『王妃』はお前か」ジッ
少女「!」
剣士「…… ……」
衛生師「……早く!」
近衛兵「は、はい! ……少女様、こちらへ!」
少女「で、でも……ッ」
衛生師「行きなさい! ……君一人の身体では無いんだから」
衛生師「……剣士も。剣を下ろしてくれませんか。逃げません、から」
剣士「質問に答えたらな」
衛生師「…… ……早く……行きなさい」
近衛兵「……は、はい!」
少女「…… ……」

パタパタ……パタン
2391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 17:09:28.70 ID:UifMzoGNP
剣士「……王は、どこだ」
衛生師「僕が……王、です」
剣士「何……?」
衛生師「……約束は違えちゃ居ない。『王』を絶やすな」
衛生師「盗賊様の……遺言は違えちゃ居ない!」ドンッ
剣士「!」グラッ

バッ……タタタ……ッバタン!
ガチャ!

衛生師「馬鹿め……ッ 甘い男だ……ッ」ハハッ
衛生師「……煙に巻かれて、死ねば……良い……ッ」

シュゥン、スタ!

衛生師「!?」
剣士「……馬鹿はどっちだか」
衛生師「な、な……!?」
剣士「もう忘れたのか。俺は……こうして」
剣士「さっきも、お前の目の前に、姿を現したはずだ」
衛生師「…… ……ッ」
剣士「殺しはしない…… ……」キョロ
剣士(……熱い。もう持たない……か)グイッ
衛生師「!」
剣士「付き合って貰う……鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「な、何……?」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ、と聞いたんだ」
衛生師「…… ……」
剣士「……共に煙に巻かれたいのか」
衛生師「か……鍛冶師様の部屋に、何の用事が……!」
剣士「……奴の道具は、残って居ないのか」
衛生師「何……?」

パチパチパチ……

衛生師「! は、離せ……! 此処で、僕が死んだら……!」
剣士「……『王』が途絶える? ……王妃なのだろう」
剣士「さっきの、少女と呼ばれた……女は」
衛生師「……ッ」
剣士「……妊娠している、と書簡を届けたのはお前だろう」
2401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 17:29:04.51 ID:UifMzoGNP
剣士「……王が病気だと言う噂は耳にしていた」
剣士「身罷られたのを、隠したのか? ……勇者が戻る」
剣士「その為に……お前が『王』になったのか」グッ
衛生師「……おい、離せ……ッ 火が……ッ」
剣士「お前の言う通り。『王』を絶やさない為に」
衛生師「……離せ、剣士! 僕は、まだ死にたく無い……ッ」ブンブンッ
剣士「……まあ、良い。お前を問い詰めるのは後だ」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「し、知らない!そんな物……!」
衛生師「……離せ! 僕が、死んだら……『王』は……!」
剣士「…… ……」ハァ。スッ
衛生師「!?」
衛生師(腕が……ッ)
剣士「……一人で、逃げ出せると思うのか」
衛生師「……!」

ダダダ……ッ バタン!
ゴオォオオ!

衛生師「! ……ッ うわあッ ひ、火が……ッ」

バタン!

剣士「……俺なら連れ出してやれるが?」
衛生師「! ……か、鍛冶師様の、道具を……どうする、気だ!」
剣士「お前に話す必要は無い……もう、時間も無い」
剣士「……勝手に探させて貰う」スタスタ
衛生師「ま、待て……!」
剣士「…… ……」
衛生師「……本当に、連れ出してくれる、んだろうな」
剣士「残って居るんだな?」
衛生師「……多分」
剣士「多分?」
衛生師「……僕は、鍛冶の道具になんて興味は無い!」
衛生師「誰かが処分していないなら……そのまま、ある筈だ」
衛生師「早く! ……火が回る。上だ」

コツン、コツン、コツン……

剣士「……嘘だったら放って行く」
衛生師「僕は……まだ、死ねない……!」
2411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 17:35:50.31 ID:UifMzoGNP
衛生師「……此処だ。部屋は……そのままの筈だ」
剣士「…… ……」

カチャ

衛生師「は、早くしてくれ!」
剣士(……ッ 埃、黴……)ケホッ
剣士(あった! ……これ、か)ホッ
衛生師「……どうやって運ぶんだよ!」
剣士「少し、黙ってろ」

剣士『后。見つけた』
后『! あったのね!?』
剣士『……青年はどうだ』
后『清められた……のか、場所の所為か解らないけど』
后『随分マシな様よ……長居は、出来ないでしょうけど』
剣士『そうか……こっちへ来れるか』
后『え!?』
剣士『……人と、道具。どちらも運べない』
后『……人!?』

衛生師「おい、剣士! ……何やってるんだ!早く……!」
剣士「……黙って居ろ」
剣士『説明は後……頼む。場所は解るか?』
后『……城の中、よね? ……良いわ。貴方の気配を手繰る』

シュゥン!

衛生師「! ……ま、魔法使い……!?」
后「王様!?」
剣士「…… ……こっちの、道具を頼めるか」
剣士「彼は俺が連れて行く」
后「え……え!?」
剣士「……話は後。先に行くぞ」

シュゥン……ッ

衛生師「! ……道具、毎……消えた……!?」
后「……王様?」
衛生師「ッ」ビク!
后「…… ……とにかく、逃げましょう。掴まって下さい」
衛生師「え、ええ……」ギュッ
衛生師(これは……なんだ!? 何故、勇者の母親が……!?)

シュゥン……! 
2421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 17:53:05.14 ID:UifMzoGNP
……
………
…………

魔王「…… ……」
魔王(……何度も、何度も……繰り返される『世界』)
金魔「……説明するより、見た方が早かった、だろう?」
魔王「信じられん! ……これが、『繰り返される運命の輪』……!?」
金魔「……『過去』だ。だが……お前は。『黒い髪の勇者』は」
魔王「え?」
金魔「『違う道を歩み始めた』……俺は『間違えては居なかった』」
魔王「……俺が、父さんを……殺した、時に言ってた、な」
金魔「お前、さっき……『現在』を見ただろう?」
魔王「え?」
金魔「……衛生師、だったか。あいつが……始まりの国の地下で」
金魔「及んだ愚行」
魔王「あ、ああ……でも、アレも『過去』じゃ無いか」
金魔「……俺にとっては『未来』だ」
魔王「……え?」
金魔「初めて見る、んだよ」
金魔「こうして……お前に。自分の息子に、『勇者』に」
金魔「……倒される度に、何度も何度も……同じ光景を見せられた」
魔王「…… ……」
金魔「俺達は『過去』しか見られない……筈なんだ」
魔王「だから……アレは、過去……」
金魔「お前にしてみれば、な。俺は……見た事が無い。ああ、もう」
金魔「どう言えばいいか……」ハァ

シュゥン……

魔王「…… ……?」
金髪紫瞳の男「『分岐』したんだ……それで良いんじゃないか」
魔王「……青年、か」
金魔「分岐……ああ、そう、か。それで良いのかな」
魔王「……?」
金魔「……自分の息子だけど、お前……頭悪い、よな」ハァ
魔王「な! と、父さんの説明が悪い!」
2431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 18:07:23.91 ID:UifMzoGNP
金髪紫瞳の男「……紫の魔王は『終わった』」
魔王「え?」
金髪紫瞳の男「文字通り……『終わった』んだ……彼は、もう」
金髪紫瞳の男「この『世界』の何処にも存在しない」
魔王「……そ、そりゃ……父さんが倒した、からじゃないのか」
金魔「『俺はあいつ』『あいつは俺』だ」
金魔「……あいつが『終わった』なら、何故俺は……ここに居る?」
魔王「あ……」
金髪紫瞳の男「紫の魔王の側近も……もう居ない」
金魔「ああ、俺だけじゃ無いな……『剣士』もまだ『終わっていない』」
魔王「……ん、ん?」
金髪紫瞳の男「『特異点』」
魔王「…… ……」
金魔「考えるの放棄すんな」
魔王「し、してねぇよ!」
金魔「……今までは。ここで、こうして……何度も何度も繰り返される」
金魔「繰り返されてきた、過去しか見る事はできなかった」
金魔「勿論、干渉する事も、何かを変えることも」
金髪紫瞳の男「何も知らないまま、同じ過ちを繰り返し」
金髪紫瞳の男「今度こそはと願っても……何も、変わらなかった」
金魔「……だが、お前は違った」
魔王「え……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まる」
魔王「え、え!?」
金魔「……『自分が生きた時代の夢』自体」
金魔「見れなかった筈、何だよな」
金髪紫瞳の男「……ああ」
魔王「な、何の話してるんだよ!?」
金髪紫瞳の男「良いから……見ろ。魔王」
魔王「……ッ」

パアアアアァァ……ッ
2441 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 18:15:05.24 ID:UifMzoGNP
僧侶『……勇者様』
勇者『ん?』
僧侶『私……ずっと、貴方の事を考えて居ました』
勇者『え!?』
僧侶『光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか』ジッ

魔王(……ん ……あ!)

勇者『……ッ』ドキッ
僧侶『……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい』
勇者『…… ……』

魔王(アレは……俺と、癒し手……!)
魔王(……どこ、だったっけ……ええと……)

僧侶『不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど』
僧侶『貴方と共に行かなければ、と思いました』
勇者『僧侶…… ……』
僧侶『この気持ちが……何なのか、良く解らないのです』
勇者『…… ……』ドキドキ

魔王(あ、そうだ……鍛冶師の村に向かう途中の、船……)
魔王(……そうだ。俺……最初は、癒し手に……僧侶に……惹かれて)

僧侶『だけど…… ……』
勇者『そ、うりょ……』スッ
僧侶『!』ドキッ
勇者『…… ……目、閉じて』

魔王(でも、駄目なんだ……そうじゃない……!)
魔王(……そうじゃ無いんだ! 違う……!)

僧侶『は、い…… ……』ソッ
勇者『…… ……』
僧侶『…… ……』

魔王『違う!』

??『違う!』

勇者『!』
僧侶『!?』

魔王(あ! ……声、が……出た!? ……否 ……ッ)
魔王(……今、の……こえ、は……!?)

パアアアァ……ッ

魔王(! ん、この……光、は…… ……!?)
2451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/05(水) 18:38:11.88 ID:UifMzoGNP
魔王「…… ……あ、あれ?」
金魔「どうした……自分のラブシーンは恥ずかしいか」クス
魔王「うわあッ ……い、居た、のかよ……」
魔王「……否、それより、今……」
金魔「……ん?」
魔王「俺……声が、出た……」
金魔「…… ……」
魔王「あの声は……あの時の、『違う』って、声は……」
魔王(俺自身……だった、のか?)
金髪紫瞳の男「……俺達は『過去しか見れない』筈だった」
金魔「さっき言っただろう。これは『俺にとっては未来』だと」
魔王「……ええ、と。それは……『繰り返し』から」
魔王「外れているから……って、事で良いのか」
金魔「……確定、では無いだろうけどな。でも確かに」
金魔「こんな物は見たことが無い」
魔王「……でも」
金魔「ん?」
魔王「もし、あの時……俺が、止めて無くて」
魔王「……もし、俺と癒し手が…… ……あれ?」
金魔「どうした?」
魔王「……もう一つ。声が……聞こえた」
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「『違う』と、確かに……それに……」
魔王(あの……蒼い、光。どこかで……)
魔王(俺……知ってる?)
金魔「…… ……『特異点』だよ。魔王」
魔王「え?」
金魔「特異点って、何の事だ?」
魔王「え……剣士、か…… ……癒し、手……」

シュゥン……!

癒し手「……あの時、あの『違う』と言う声は」
魔王「!?」
癒し手「間違い無く……私の声、でした」
魔王「な……ッ なん、で……!?」
246名も無き被検体774号+:2014/02/05(水) 23:48:42.69 ID:JR2hECfk0
幼女お大事に(´;ω;`)
247名も無き被検体774号+:2014/02/06(木) 08:03:18.16 ID:HdCGe4dqi
おはほしゅ
248名も無き被検体774号+:2014/02/06(木) 08:44:13.99 ID:CAreBmA3P
紫の魔王が消滅済みと、分かっていても作中で明言されると辛い……
赤の魔王は世代交代と共に退場したようなのでループの起点がその辺り?
2491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 16:45:12.48 ID:20l19zaUP
癒し手「…… ……」
金髪紫瞳の男「言っただろう。俺達は……」
魔王「『過去』しか見るしか出来ない……」
金髪紫瞳の男「……そうだ。勿論……『干渉する事』もできない」
癒し手「でも『違い』ました」
魔王「癒し手……」
金魔「……此処に居られるのは『勇者か魔王』だけだった筈、なんだがな」
金髪紫瞳の男「紫の瞳の側近も居ただろう」
金魔「あいつは……『紫の魔王の瞳』を持っていたからだろう?」
金髪紫瞳の男「自分で言っていただろう……あいつは」
癒し手「『特異点』」
魔王「!? 紫の魔王の側近……も!? 特異点!?」
金魔「『特異点』とは何だ、魔王」
魔王「え?」
金魔「……紫の魔王の側近は、俺に、そう問うた」
魔王「え……えっと……」
癒し手「『特異点』とは……何かしらの『基準』があって、それに当てはまらない事象」
癒し手「それを指す、言葉……だった筈、です」
金魔「そうだ……彼は結局、最後までは教えてくれなかったけど、な」
魔王「…… ……」
金魔「お前も見ただろう……『世界』は何だった」
魔王「『世界』……赤ん坊……? あの、双子の……」
金髪紫瞳の男「……『光と闇』は『表裏一体』である筈……否」
癒し手「そう、あるべきである……もの」
魔王「癒し手……?」
癒し手「『光』無くしては『闇』は存在出来ないのです、魔王様」
癒し手「……私も、見ました」
魔王「え!?」
癒し手「此処では……無かったような。此処だったような」
癒し手「場所は解りません。だけど……心地よく揺蕩う中で」
癒し手「……『双子』は『全き光』と『全き闇』に引き裂かれ」
癒し手「そうして……『世界』は産まれた」
2501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 16:55:05.34 ID:20l19zaUP
魔王「……願わされた、って奴か」
癒し手「『支配する為の世界』と『支配する為の世界』……」
癒し手「……一緒、です。『光』と『闇』」
魔王「え……?」
癒し手「揶揄ですけどね……でも、一緒なんです」
金魔「さっき、紫の魔王の側近に『特異点』とは何だと問われた、と言っただろう?」
金魔「俺は、最初『紫の魔王』だと答えた」
金魔「奴は、何だ?」
魔王「え、え!?」
癒し手「『紫の魔王』は『器』」
金髪紫瞳の男「……『金の髪の勇者』は?」
魔王「え、ええええ、えっと!?」
金魔「……俺は『中身』だ」
魔王「あ、ああ……う、うん」
金魔「……我が息子ながら」ハァ
魔王「ため息着くなよ……」
金魔「『特異点』は『紫の魔王』と『金の髪の勇者』だ」
金髪紫瞳の男「『闇』と『光』」
癒し手「生の理を介さず……産まれてしまった『特異点』」
魔王「!」
癒し手「『全く光』と『全き闇』です……魔王様」
魔王「双子と……一緒!? で、でも!」
魔王「双子は……お、お前、の!」ジィ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「…… ……あれ?お前は…… ……何、だ?」
金髪紫瞳の男「俺も『特異点』だ」
金髪紫瞳の男「……『魔王』を倒し、『魔王にならなかった元勇者』」
魔王「!」
癒し手「……だけどあの双子は…… ……」
金髪紫瞳の男「そうだ。あいつらも『瞳の色を変えてしまった者』」
魔王「あ……!」
金髪紫瞳の男「光を世界に放った俺は、『勇者』では無くなった」
金髪紫瞳の男「だが、『魔王にもなれなかった』者」
2511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:03:16.25 ID:20l19zaUP
金髪紫瞳の男「瞳は金の侭……手の勇者の印は闇に染まり」
魔王(! 『光』と『闇』……ッ)
癒し手「そうして、『子』……『次代』を産んだ」
金魔「『光』と『闇』は……どちらを欠いても存在出来ない」
魔王「……だから、双子……だった、のか?」
癒し手「……そうなのかもしれません。交われる様に」
魔王「!」
金魔「……何度も見る中で、気がついたか否か解らんが」
癒し手「男の子が『闇』だったら、女の子は……『光』」
金髪紫瞳の男「……娘が『闇』の時は息子が必ず『光』だった」
魔王「……!」
癒し手「『揃って』いれば……『世界』は産まれるのです」
金魔「そうして、二人は混じりあい、『光』を『世界』に託して」
金髪紫瞳の男「二人は……必ず『闇』になる」
魔王「……ッ そ、そんな! ……でも、それじゃ……!」
金魔「『何時までたっても終わらない』だろ?」
魔王「あ…… ……ああ」
金魔「……俺もそう思ったよ」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「だが、お前は……確実に『違う道を歩み出した』」
魔王「!?」
金髪紫瞳の男「『干渉』してしまった」
魔王「あ!」
魔王(さっきの……か……! あ、でも!)
魔王「お、俺だけじゃないじゃないか! 癒し手も……ッ !?」
魔王「……そうだ。何で……何で癒し手が、此処にいるんだ……?」
魔王「い、いくら『特異点』だからって……!」
癒し手「……そうですね。此処には、生ある身では……」
魔王「え!?」
癒し手「『来られません』から。私は…… ……」
癒し手「もう、死んだんです。魔王様」
魔王「!?」
癒し手「『終わった』んです……魔王様」
魔王「…… ……ッ」
金魔「それは、まだだ。癒し手」
癒し手「……でも、『変わった』」
癒し手「『違う』んです……貴方は『間違えて居なかった』……金の髪の魔王様」
2521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:17:09.50 ID:20l19zaUP
金魔「……そう言って貰えると嬉しいね」クス
金魔「でも、まだだよ……俺が、先だ」
癒し手「……はい」
魔王「ちょ、待て待て待て! なんか、何だよ!? おい!」
金髪紫瞳の男「……落ち着けよ」ハァ
魔王「何でそんな、あの、何!?」
癒し手「ま、魔王様……」
魔王「……解らん! もう!」
金魔「拗ねるなよ」ハァ
魔王「拗ねてないわ!」
癒し手「……あの。すみません」
金魔「癒し手が謝る事じゃ無いよ」
魔王「…… ……もし、さ」
金魔「ん?」
魔王「あの時……俺と、癒し手が……その。くっついてたら、さ」
魔王「また……『違う未来』があった、のかな」
金髪紫瞳の男「……見たいか?」
金魔「見れるのか?」
金髪紫瞳の男「さあ、どうだろう……もし、そうであったなら、だ」
魔王「……いや、良いよ。人生に『もし』なんてネェよ」
癒し手「でも……あそこで、もし」
癒し手「私や、魔王様の『干渉』が無ければ……この『繰り返される運命の輪』は」
癒し手「……断ち切れていた、のかもしれません。もっと……早くに」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「…… ……」
金魔「…… ……」
魔王「な、なんで?」
金髪紫瞳の男「……さっき言っただろう。此処は」
金髪紫瞳の男「『特異点』しか来られない」
2531 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:26:26.41 ID:20l19zaUP
金魔「『紫の魔王』『俺』『紫の魔王の側近』」
金髪紫瞳の男「『魔王』……お前、だな」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「それから……『女魔王』」
魔王「え!?」
金髪紫瞳の男「唯一の女勇者。唯一の女魔王」
金髪紫瞳の男「……お前の娘で、俺の母だ」
魔王「……!」
癒し手「『その腹で勇者を育む魔王』様です」
魔王「な……ッ 終わらないのか!? どうして……!」
癒し手「……『彼』が失われて居ないのが、何よりの証拠では無いでしょうか」スッ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「そうだ……お前、『青年』って……」
金髪紫瞳の男「……俺は、『最強の魔王』を倒し、父の名を貰ったからな」
魔王「! ……そ、ん……ッ」
癒し手「彼が此処に要る……と、言う事は……まだ、終わらないと言う事、でしょう」
金髪紫瞳の男「……だろうな」ハァ
金髪紫瞳の男「『女魔王』も特異点……説明する必要もないよな?」
魔王「……では、お前は?」
金髪紫瞳の男「さっき言った通りだ」
金髪紫瞳の男「『唯一、魔王にならなかった勇者』」
魔王「…… ……」
金魔「あれ? ……でも」
金髪紫瞳の男「ん?」
金魔「女剣士様は……何で……」
金髪紫瞳の男「……あれは……『夢』だ」
癒し手「夢?」
金髪紫瞳の男「推測でしかないが……『もう一度紫の魔王の側近に会いたい』と」
金髪紫瞳の男「……願った、彼女の。『強くて弱い人間』が」
金髪紫瞳の男「昼夜問わず。願った『夢』」
癒し手「……ロマンチックですね」クス
2541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:40:19.12 ID:20l19zaUP
魔王「……なら、俺は……俺も、願えば」
魔王「死んだ後……娘に倒された後、后に会えるのか?」
金魔「…… ……」
金髪紫瞳の男「…… ……」
癒し手「……あ、の?」
金魔「癒し手を前にして、言うのも……あれだが」
癒し手「え……?」
金髪紫瞳の男「『姫』には会えなかったな。紫の魔王は」
癒し手「!」
金魔「俺も。前后……お前の母さんにも、会えてない」
魔王「!」
金魔「魔導将軍にも、前側近にもな」
金髪紫瞳の男「……あの二人は」
金魔「……ああ、そうか」
魔王「な、なんだよ?」
金髪紫瞳の男「……俺もだ。双子の母には……会えてないよ」
癒し手「え……」
魔王「じゃあ、なんで……女剣士様だけ……!」
金魔「……まだまだ、謎だらけ……なのかもな」
金魔「何せ、お前は『違った道を歩み出した』」
金魔「俺は『間違えては居なかった』」
金魔「……言っただろう? 俺達は『過去』しか見られない……筈、だった」
金魔「だが、これは……お前と、癒し手にとっては『現在』で」
癒し手「…… ……」
金髪紫瞳の男「金の魔王と、俺に取ったら……『未来』だ。今は、まだ」
魔王「『今は』?」
金髪紫瞳の男「……何れ、解る」
癒し手「……あ!」
魔王「な、何だ!?」
癒し手「…… ……ッ 始まりの、国が…… 城が!?」
魔王「え……ッ!?」
2551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:43:09.56 ID:20l19zaUP
今更ながら訂正orz

>>241

剣士「…… ……こっちの道具を頼めるか」
剣士「彼は俺が連れて行く」



剣士「…… ……彼を頼めるか」
剣士「道具は俺が持って行く」


御免……
2561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:53:07.35 ID:20l19zaUP
……
………
…………

パチパチ……パチパチ……ッ

少女(城、が……燃えて、る……ッ)

ドォオオンッ

少女「!」
近衛兵「少女様、早くあちらへ……此処は、危険です……ッ」
少女「……これだけ離れて居れば、音しか聞こえない」
少女「それより、衛生師は……!?」
近衛兵「……王、は……ッ」
少女(彼は、出て来ていない……! まさか……!?)
少女(剣士と一緒だった……まさか、殺されて……!)
少女「…… ……ッ」
少女(……崩れて、行く……ッ)

ガラガラ……ッ 

少女「……城、が…… ……ッ」

ポンポン

少女「!」ビクッ
魔導師「……少女、さんですよね?」
少女(こ、ども……?)
魔導師「あの……?」
少女「……君、は?」
魔導師「……魔法使いさんと、剣士さんに頼まれました」
少女「え……?」
魔導師「『少女さんを連れて来い』って」
少女「!」
2571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 17:59:06.96 ID:20l19zaUP
少女「し、しかし……」
魔導師「……衛生師さんも、一緒です」
少女「……ッ」
近衛兵「こら、何処の子供だ、このお方は……!」
少女「……い、良いんだ」
近衛兵「え?」
少女「ま……街の人の避難を手伝わなくて良いのか」
近衛兵「あ……それは、でも、王が……」
少女「……ッ 王の命令を待たねば、自国の民の命も救えないのか!」
近衛兵「……ッ」ビクッ
少女「此処に彼が居ない以上、『王妃』として命令する! 行け!」
近衛兵「で、でも……ッ」
少女「早く行け!」
魔導師「…… ……」

タタタ……

少女「…… ……」ハァ
魔導師「ご免なさい」
少女「え?」
魔導師「……この炎は、消してしまう訳に行かないんです」
少女「は?」
魔導師「いえ、何でも無いです……行きましょう」
少女「……何処、に」
魔導師「港へ向かう方に、小さい丘があるのはご存じでしょうか」
少女「……あ、ああ」
魔導師「その上に、居ます」
少女(子供の足で……此処まで、一人で来た、と言うのか!?)
魔導師「……身体、冷えてしまいますよ」
魔導師「赤ちゃん、居るんでしょう。お腹の中に」
少女「!」
魔導師「……マントか何か借りてきたら良かったかな……すみません」
少女「……衛生師の、命令か? こんな、小さな子に……」
2581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 18:14:50.74 ID:20l19zaUP
魔導師「……大丈夫です。ちゃんと守ります」
少女「…… ……君、が?」
魔導師「不安……でしょうけど。大丈夫です」
魔導師「『魔除けの石』の様な物も持ってますから」
少女「え……!?」
魔導師「こっちです」グイ
少女「あ、ちょ、ちょっと……!?」

……
………
…………

青年「…… ……」
青年(空が、真っ赤だ……もう、夜なのに)
青年(……后様の炎。凄いな……そりゃそうか。彼女は……『魔族』)
青年(みるみる、『黒い靄』が飲み込まれていく)
青年(……急に、気分が楽になったのは間違い無く、あれの所為……否、おかげ、か)ハァ

シュゥン!

青年「……后様、もど……ッ」

ドサドサ! スタ!

剣士「…… ……」ハァ
青年「剣士か。后様は?」
剣士「……衛生師を連れてすぐに戻るだろう」
魔導師「……『衛生師』、さん? ……王様は……」
剣士「すぐに解る……魔導師」
魔導師「は、はい?」
剣士「……『少女』と言う女を連れて来てくれないか」
魔導師「少女、さん?」
剣士「『王妃』だ」
魔導師「え……」
剣士「城からは避難している筈だ……紅い髪に、紅い瞳の少女」
剣士「……妊娠している筈だから、ゆっくりで良い」
魔導師「え、で……でも」
剣士「……魔法使いと俺に頼まれた、と言えばいい」
剣士「後……『衛生師』も居る、とな」
魔導師「は……はい、でも、あの……」
剣士「大丈夫だ……癒し手の魔石は、魔除けの効果もあるはずだ」
剣士「……炎に怯え、寄っては来ないだろうがな」
青年「……何がどうなってんのか、説明してくれるんだろう」
剣士「…… ……来たな」
青年「え?」

シュゥン……!
2591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 18:23:22.12 ID:20l19zaUP
后「剣士!」
衛生師「う、うわああああああああああああああ!?」
魔導師「……この、方が、王様? ……いえ」
魔導師「え、えっと……」
青年「……衛生師……か」
衛生師「な、な……ッ 何、が……おこっ ……ッ」ウェッ
后「剣士……衛生師、ってどういう事? この方は……」
青年「……違うよ、后様」
后「え?」
青年「…… ……父さん、や……お爺様の、血の気配がしない」
后「!」
衛生師「……ッ」ゲホゲホッ
剣士「……そう言う事だ」
剣士「魔導師、頼めるか?」
魔導師「あ、は……はい!」

タタタ……

后「……どう言う事? 王様……じゃ、無いの?貴方……」
衛生師「そ、そっちこそどう言う事だ!」
衛生師「……貴女は……勇者の母では無いのか!?」
后「あ! 勇者は……!?」
青年「ちゃんと此処に居るよ……はい」スッ
后「ああ……良かった、勇者……」ギュ
勇者(すぅすぅ)
青年「……こんな事態の中で良く寝てるよね」ハァ
衛生師「! 近衛兵長はどうした!?」
青年「近衛兵長?」
衛生師「勇者を助け出せと、言った筈……!」
青年「……ああ、そうか。小屋までは一本道だからね」
青年「僕達は地下牢から戻った后様の転移魔法で此処まで来たから」
青年「会ってないな……知らないよ」
衛生師「て……転移魔法!?」
2601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 18:31:32.39 ID:20l19zaUP
剣士「……お前に話す必要は無い話だ」
剣士「それより……此方の質問に答えて貰おう」
剣士「『王』は何処だ?」
后「あ……ッ そうよ、貴方が王じゃ無いのなら……!」
衛生師「何度も言っただろう! 王は……僕だ!」
衛生師「嘘など吐いちゃいない! ……僕は……!」

タタタ……

魔導師「剣士さん! 后様!」
少女「! 衛生師……!」
衛生師「違う! ……僕は……ッ」
青年「……一体、何がどうなっているんだか」ハァ
后「私が聞きたいわよ……」
少女「……貴女が、魔法使い……さん」
后「え? ……ええ」
少女(紅い髪……紅い瞳。私と同じ色彩を持つ……)
少女(……魔導国の領主様の、孫娘)
少女(優れた加護を持たない、『出来損ない』と呼ばれるはずだった人)
少女(……腕に抱いているのは、勇者か)ハァ
少女「……もう、観念すればどうだ、衛生師」
衛生師「少女……」
青年「……君」
少女「え?」
青年「……君が、王妃?」
少女「…… ……」
魔導師「青年さん?」
衛生師「!? 青年、だと……!?」
2611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 18:40:24.67 ID:20l19zaUP
衛生師(お父様、お爺様……戦士君と王子の事……否! 馬鹿な!)
衛生師(戦士君の子供ならば、まだ、この……)
衛生師(……この、蒼い瞳の子供よりも小さい筈だ!)
衛生師「は、離れなさい、少女!」
少女「え!?」
衛生師「に、偽物だ、何もかも! ……得体の知れない、女に」ジッ
后「…… ……」
衛生師「魔導国の、勇者だと……ッ」
剣士「…… ……」
衛生師「青年だ等と、名乗って……!」
青年「…… ……」
衛生師「残念だな! 戦士君の子供は、まだそこの子供より小さい!」
衛生師「お前が……お前が、黒幕か!剣士!」
衛生師「やはり、お前は……人では無いのだな……ッ 『少年』!」
剣士「……何故お前が、その名を知ってる?」チラ
少女「…… ……」
剣士「お前は俺を知っていたな……少女、だったか」
少女「……私は魔導国……で育っている。貴方の名を知らない者はあの国には……居ない」
少女「……だが、私は衛生師に貴方の話をした事は無い」
衛生師「少女!?」
少女「……王、はもう居ない」
青年「……どういう意味だ」
少女「『正気を失った王と王子はもみ合いの末、事故で命を失った』」
后「!?」
剣士「な……ッ!?」
少女「『王子を殺してしまった王は、自ら命を絶った』」
魔導師「そ、んな……!」
衛生師「少女!!」
少女「……と、言う『建前』の元」
衛生師「黙れ、だまれだまれええええええええええ!」
少女「衛生師が、『穏便に勇者をこの国に迎える為に王になった』」
2621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/06(木) 18:42:34.86 ID:20l19zaUP
青年「……お爺様、を……王、を……殺した、のか」
剣士「…… ……ッ」
衛生師「違う! 王子は、王に……ッ」
少女「焚きつけたのはお前だろう、衛生師!」
少女「……そして、止めずに見ていたのも」
衛生師「…… ……ッ」
少女「……その後、王を殺したのは確かにこの男だ」
后「!」
少女「お前は、ことある毎に『権力に興味など無い』と言っていたな」
少女「……『王』を絶やす訳には行かない。盗賊様の遺言だから、と」
263名も無き被検体774号+:2014/02/06(木) 21:07:47.28 ID:LoYxj34SO
怒涛の更新乙です
幼女は大丈夫?
264名も無き被検体774号+:2014/02/06(木) 23:19:39.43 ID:pnRATQof0
乙やでー
265名も無き被検体774号+:2014/02/07(金) 12:22:03.90 ID:/Bw2UFVzO
266名も無き被検体774号+:2014/02/07(金) 20:12:53.67 ID:ynKJJpQs0
テスト
267名も無き被検体774号+:2014/02/08(土) 02:09:49.71 ID:Cae+mffQ0
保守
268名も無き被検体774号+:2014/02/08(土) 10:26:17.83 ID:KPqPP9P00
ほしゅしゅ
2691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/08(土) 11:28:59.02 ID:RIx11ttlP
おはよう!
幼女は大丈夫!ありがとう!

今日はちょっと出かけるので、孵って時間あったらー!
270名も無き被検体774号+:2014/02/08(土) 12:05:53.99 ID:DLOxYcBu0
いったい何が孵るのか
271名も無き被検体774号+:2014/02/08(土) 13:09:29.01 ID:/nOWSsrU0
そりゃお前幼女とかだろ
272 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/08(土) 16:39:39.15 ID:3Ko161E30
273名も無き被検体774号+:2014/02/08(土) 21:08:16.11 ID:rm6Bh+hNi
しゅ
274名も無き被検体774号+:2014/02/09(日) 08:37:33.34 ID:Znq42ZALO
275名も無き被検体774号+:2014/02/09(日) 11:25:39.91 ID:8/vEMhOG0
276名も無き被検体774号+:2014/02/09(日) 16:17:09.64 ID:lZj+8c/Ri
277名も無き被検体774号+:2014/02/10(月) 07:55:15.17 ID:v25G61qtO
2781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 09:21:56.01 ID:RX8zmVBqP
おはよう!
おむかえまでー

幼女がもう一匹孵ったら私破産するわ……
2791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 09:38:03.05 ID:RX8zmVBqP
衛生師「だま……ッ」
少女「黙るのは貴方だ! こんな事で、ごまかせる訳など無いと言っただろう!」
剣士「…… ……」チャキ
魔導師「剣士さん!?」
剣士「……直接的で無いにしろ、こいつは王子を……王を殺した」
剣士「俺には……許すことは出来ない」
青年「……ッ」
青年(……霧散していく黒い靄が、集まってる? ……ッ息、が苦しい……ッ)
后「……青年?」
青年「……ッ」ハ、ァ
青年(! 剣士の『怒り』に触発されているのか!?)
剣士「…… ……」
青年「待て、剣士……ッ」
魔導師「! 青年さん!?」
后「剣士、待って! ……青年が……ッ」
少女「……?」
衛生師「く、糞……ッ」タタ……ッ
魔導師「あ……ッ」
剣士「風よ!」

シュゥンッ
ザクザク……ッ

衛生師「うわああああッ!?」バタッ
青年「…… ……あ、あッ!」ガクッ
魔導師「青年さん!?」ガシッ
后「落ち着きなさい!剣士! ……青年! 大丈夫!?」
青年「だ、めだ、剣士! ……お前は、『欠片』なんだ!」
剣士「!」ビクッ
青年「……紫の魔王は、怒りでその力を統べる理性を無くしかけたんだぞ!」
后「……え?」
少女「!? 紫の、魔……魔王!?」
2801 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 09:58:37.45 ID:RX8zmVBqP
衛生師「う、うぅ……ッ 血、血が……ッ」
青年「全く、世話の焼ける……」フラフラ、ガシッ
衛生師「わああああああああ! やめてくれ……ッ」
青年「回復するだけだ……魔導師、君のローブ貸して」
剣士「青年!?」
魔導師「え!?」
青年「また逃げられると困る。適当に手、縛って」
魔導師「あ、は、ハイ!?」
青年「……君と后様には見えるだろう? ……黒い靄は消えてないんだ」
青年「僕にはハッキリ見える。剣士の……怒り、に。この男の血に」
青年「……あの触手は歓喜してる」
后「!」
少女(な……何なんだ、こいつら、は……!?)
少女(黒い靄?触手? ……何の、話)キョロ
青年「……失血死されたら困るからね」パァ
衛生師「……ッ」
剣士「…… ……」
魔導師「今、どうなっているんです?」
后「……黒い靄が完全に無くなっていない、のは私にも解るわ」
青年「城を焼いただけじゃ……遅かったのかもしれない」
少女「……さっきから、貴女達は何の話をしているんだ?」
少女「黒い靄だの、何だの……」
青年「……先に聞くけれど。街の人達は放って置いていいのか」
少女「え? ……あ……」
魔導師「先ほど、少女さんが『王妃』として命令されていましたよ」
魔導師「『助けろ』ってね」
青年「……ああ。近衛兵、とやらがいるんだっけね」
衛生師「……君は、そんな……ッ」
少女「『建前』であっても、お前は王で私は王妃だ」
青年「…… ……君のそのお腹の子。王の子では無いだろう」
少女「! …… ……ああ。この子の父親は、この男だ」
剣士「何……?」
后「落ち着いて、剣士…… ……『血』を感じないのね」
青年「……ああ」
2811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 10:06:25.27 ID:RX8zmVBqP
后「……とにかく、場所を移しましょう」
魔導師「そうですね。少女さんにも、勇者様にも……」
魔導師「……夜風は良くありませんよ」
少女「…… ……」
青年「……悪いけど、僕は此処に居る」
后「青年?」
青年「此処は……微かでもエルフの守りがある。この国の何処に居ても」
青年「あの黒い靄は……もう……」
后「…… ……」
后(炎と、黒い靄が……空を渦巻いている)
后(……城を焼いただけでは、もう……間に合わなかった?)
后(それほど……お母様の。あの、人達の……『怨み』は……)
剣士「……后。ペンダントは?」
后「え?」
剣士「あれに移したんだろう。姫は……このエルフの加護を」
魔導師「で、でもあれは姫様が北の塔に……」
后「……無いよりマシでしょう。青年、これを」チャリン
青年「…… ……ッ」
青年(……確かに。微かにだけど…… ……気分がマシになる)
青年「…… ……どこに行く、って言うんだよ」
后「ひとまず小屋に戻りましょう。あそこなら私の防護壁もあるわ」
少女「…… ……」
剣士「青年、衛生師を捕まえていろ」グッ
青年「……オーケィ」

シュウン……ッ

少女「!? き、消えた!?」
后「……鍛冶師様の道具は後で取りに来ると良いわ」
魔導師「そうですね……」
后「……二人とも、私に掴まって」
少女「あ……貴女も、あんな真似が出来るというのか!?」
少女「……それに、私……も?」
魔導師「放って置けないでしょう?」
后「……勇者、御免ね」
勇者(すぅ)
魔導師「……大物になりますね、勇者様」ハァ
2821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 10:13:12.22 ID:RX8zmVBqP
少女「…… ……」スッ

シュゥン……!

……
………
…………

衛生師「…… ……」
青年「……生きてるの、こいつ」
剣士「回復したのはお前だろう」
青年「転移のショックで気を失ったのか……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「落ち着けよ」
剣士「……解ってる。悪かった」
青年「やっぱり……お前も『魔王』なんだな」
剣士「『欠片』だ……俺は」
青年「一部には違い無いだろう」
剣士「…… ……」
青年「あの魔導師の話……『夢』が、『過去』で」
青年「……『現在』が倣う、なら」
剣士「それについて、異論は無いと言ったはずだ……ああ」
剣士「……后にも説明せねばならんな」
青年「…… ……」
剣士「『他に何か方法があるかも知れない』と言いたいんだろう?」
青年「『未だ先だ』……どちらにしても」
青年「……お前が、光の剣を…… ……」
剣士「…… ……」
青年「……『黒い髪の魔王』を倒してからだ」
青年「どれだけ早くても、まだ15年以上もあるんだ」
青年「……勇者様との旅立ちまでには、まだ」
剣士「…… ……」
青年「それまでに、何か方法が……見つからないとは、限らない!」
剣士「……后も、同じ事を言うかもな」
青年「……取りあえず、目の前にあるこいつ」コツン
剣士「蹴るな」
青年「起きないだろ……どうにかしないとな」
2831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 10:23:45.79 ID:RX8zmVBqP
剣士「……少女は全て知っている、んだろうか」
青年「さてね……だけど」
青年「……あの腹の子は、王の子じゃ無い」
青年「『血』に拘る必要なんて無いと思うよ」
青年「……元々、盗賊様も鍛冶師様も、『この国』の人じゃない」
青年「盗賊様の言葉通り『王』を絶やさない事、だけが」
青年「紫の魔王の、あの言葉の通りであるとするなら……」
剣士「……問題は無い、んだろうがな」
青年「…… ……」

シュゥン

剣士「…… ……」
少女「きゃああ……ッ ……ッ !?」
少女「!? ……こ、こは……!? ……ッ 衛生師!?」
后「……気を失っている、の?」
魔導師「后様、勇者様寝かせますよ」
后「あ……え、ええ……」
少女「な……、んなんだ、貴女達は!?」
后「…… ……」
青年「君に教える義務は無いね」
少女「!」
后「……青年」
少女「否……当然、だろう」
剣士「……話を聞かせて貰える、のだろうか」
少女「私が知る限りで良ければ」
后「……貴女、どうして?」
少女「え?」
后「その子、この男の子、なんでしょう」
少女「…… ……どこまで、王子様から聞いているか解らないが」
2841 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 10:37:10.37 ID:RX8zmVBqP
少女「私は……書の街の代表者だった」
剣士「…… ……」
少女「王は、まだ……弟王子様がご存命の時に」
少女「王子様に連れられて、身分を隠した侭……書の街に来たんだ」
少女「そこで、私に一目惚れをしたのだ、と」
后「…… ……」
少女「弟王子様が身罷られ、王が次期国王となるその戴冠式のお誘いを受けた」
少女「……その時、私の双子の姉が」
后「双子?」
少女「秘書、と言う……彼女が、『少女』だと偽り」
少女「この国に来て……結果、あの地下牢へと捕らえられた」
魔導師「え!?」
少女「母親様を救い出すつもりだったのかもしれない。姉は……秘書は」
少女「幻想を捨てきれずに居たんだ。何れ、魔導国を再建するのだと」
青年「……出られるはずも無い、のにか」
少女「旧貴族達と同じだ。自分達は優れた民である。選ばれた者達だと」
后「…… ……」
少女「……それしか、頭に無いんだ。自分達は『支配する者』であり」
少女「他は、『支配される者』である。優れた自分が」
少女「……何より、優遇されて当然なのだ、とな」
后「…… ……何も変わらない、のね」
少女「私は直系では無い。だけど、雷の加護を持たない、と姉や」
少女「……旧貴族達に、虐げられてきた」
魔導師「でも、貴女は……優れた加護は持っているんでしょう?」
少女「……『出来損ない』と同じ扱いはされなかった。だが」
少女「姉は、雷の加護を持っていたんだ。同じ双子でも……違ったんだ」
青年「……馬鹿馬鹿しい」ハァ
后「青年」
少女「構わない……本当にその通りだと思う」
少女「……街の代表者として、祭り上げられたのもその為だ」
少女「王だ何だと言え、『出来損ない』と交わす言葉等無いと、な」
2851 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 10:46:54.55 ID:RX8zmVBqP
后「…… ……」ハァ
少女「王子様にも言われた。はいそうですかと変われないだろう、と」
少女「……旧貴族達は、実質私を窓口に、何時か母親様を奪還し」
少女「魔導国を再建……する。出来るつもりで居た、のだろう」
少女「だが……」
剣士「……あの地下牢の死体は、その秘書とやらと……旧貴族達か」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
少女「……秘書は、国を騙そうとしたんだ。代表者、を名乗ってな」
少女「それも『旧貴族達が良からぬ事を企んでいる』」
少女「『身の危険を感じるから、保護を求めたい』、と」
青年「……は?」
少女「自分の保身しか考えて等居ない。その場その場を切り抜けようと」
少女「後で発生する矛盾など、お構いなしの愚か者だ」
青年「…… ……」
少女「騙せると思って疑わなかった……のだろう」
少女「取り入ってしまえばこっちのもの、だ…… ……王は」
少女「『少女宛』に書簡を送ってきていた。戴冠式で会えるのを楽しみにしています、と」
少女「……実際には初対面では無かったが、そんな事を知らない秘書は」
少女「私だけが……甘い汁を吸うのは許さない、とな」
青年「……信じられないな。頭は大丈夫なのか?」
魔導師「青年さん」
少女「……良いんだ。その通りだ……私にも信じられない」
少女「結果、秘書は捕らえられた。そうして……彼女の言葉通り」
少女「……旧貴族達も、だ。王は……『むやみに力に訴える事はしない』と」
少女「私に約束してくれた……が」
后「…… ……ッ」ブルッ
少女「……死体の山、だったのだろう」ハァ
2861 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:01:00.52 ID:RX8zmVBqP
少女「……少し戻るけど、私は……秘書がこの国に来てすぐに」
少女「王子様に保護されて、この国に来た」
衛生師「少女!」
剣士「……黙っていろ。今度こそ殺されたくなければな」チャキ
衛生師「……!」
少女「……秘書を牢に入れる時、私もこっそり後からついていった」
少女「王子様が取りはからってくれた、んだが……」
青年「……だが?」
少女「…… ……」チラ
后「?」
少女「…… ……」ハァ
少女「……牢には、母親様が居た」
后「……そう、ね」
少女「既に……狂って、いらっしゃった」
后「え!? …… ……あ」
少女「え?」
后(……インキュバスの魔石、の影響……なんでしょうね)
后(あの中で、正気で居なかったのは……お母様は、寧ろ)
后(救われたのかも知れない……厭、ね)
后(……私、やっぱりほっとしてる)ハァ
剣士「……続けろ」
少女「あ、ああ…… ……そこで、王は秘書に」
少女「自分も優れた加護を持っている、と」
后「え?」
少女「……羨ましいだろう、と言う様な事、だったか」
少女「とにかく、秘書を挑発したんだ」
少女「……私を蔑んだ、彼女を許せないと」
少女「『幻滅しないで欲しい』と言う様な事を言っていたな。そういえば」
青年「自分の、そう言う……部分、をか?」
少女「解らない。でも……王は、酷く不安定だったんだ」
剣士「いつだったか忘れたが、王が病気の様だと言う噂は」
剣士「……耳にしていた、な」
衛生師「……う、ぅ……ッ」
青年「……やっとお目覚め、か……おい」
衛生師「! う、うわああああああああ、あ…… ……あ!?」
少女「……衛生師」
衛生師「少女!」
衛生師「…… ……こ、こは……」
后「ここはあの小屋よ。私達が住ませて貰って居る、ね」
2871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:08:46.83 ID:RX8zmVBqP
剣士「大人しくしていろ。今度こそ殺されたくなかったら、な」チャキ
衛生師「…… ……」
少女「その後……王は、旧貴族達に私を接触させる訳には行かない、と」
少女「……事実上、軟禁されたんだ」
后「軟禁? どうして……」
少女「『僕だけを見て欲しい』『僕の事だけを愛して欲しい』と」
少女「……何度も何度も、犯された」
魔導師「…… ……」
少女「あ…… ……その、ご免なさい。小さな子の前で……」
魔導師「……いえ、あの…… ……はい」
后「…… ……」
少女「旧貴族を捕らえたと聞いたのは、もう少し後だったと思う」
少女「……さっきも、言ったが。王は……」
青年「『むやみに力に訴えない』?」
少女「……ああ。母親様の狂った叫びを聞き続ければ」
少女「遅かれ早かれ、秘書も……ああなるだろうと想像はついた」
少女「だから、王に……秘書が死んだら教えて欲しいと、伝えて貰ったんだ」
后「え!?」
少女「……私も、狂っているのかもしれないな」ハァ
少女「……そうして、少しして、地下牢への扉……は、封鎖されたと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「全員、死んだ……否、殺されたのだろうと、すぐに解った」
少女「……もう、その頃王は完全に……おかしくなっていた」
少女「私の部屋へ来ては、夢に魘されていたんだ」
少女「『僕じゃ無い』『来るな』『最後の王なんかじゃ無い』……と、か」
剣士「……『最後の王』?」
少女「……書の街は、私や、旧貴族達が居ない方が」
少女「上手く……発展していくのだろうと聞いていた」
少女「私は……『代表者』は捕らえられ、処刑されただの」
少女「……とにかく。私は『もう居ない者』になっていたのだろう」
少女「だが……あの街は、その方が平和だったのかもしれない」
2881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:28:05.96 ID:RX8zmVBqP
后「ちょっと待って……『最後の王』ってどういう意味よ?」
少女「……私と、王との婚姻は」
少女「私に子が出来たら、と言う事になっていたらしい」チラ
衛生師「……ッ ぼ、僕が注進したんじゃないぞ!」
衛生師「それは、確かに王がそう言ったんだ!」
剣士「何故だ」
衛生師「……知るか! ……『最後の王』になる訳には行かないと」
衛生師「王は……確かに言っていた。だから……!」
青年「だから、王様を殺してお前が王になったと?」
衛生師「……ッ あんな状態で『王』なんて務まるものか!」
少女「……それは、私もそう思う。実際、政を取り仕切っていたのは」
少女「この男だ」
后「……だからって……ッ 殺して、自分が王に成り代わるなんて!」
衛生師「違う! ……勇者が戻る時、あれでは、と……」
衛生師「……早い内に、と……!」
少女「会議で正式に決まったのだ、と言っていたな」
剣士「!」
青年「……随分な話だ。近衛兵、とやらまで知っていたのか……!」
少女「城は……許可無く立入禁止だった。勿論、最初は王の病気を隠す……」
少女「否。広めない為、だったんだろう」
少女「……衛生師が玉座に座るようになってからは、許可を出さなければ良いのだと」
后「……それで、王子様まで閉め出した、のね」
衛生師「あの人はもう、引退した人だ……それに!」
衛生師「……王は、嫌っていたからな」
青年「お爺様を?」
衛生師「……何時まで青年君になりきるつもりだい」
青年「残念だけど、僕は本当に戦士と僧侶の息子さ」
青年「……アンタが知ってたかどうか、解らないけど」
青年「母さんはエルフの血が流れてる」
衛生師「!?」
青年「……エルフは人と成長するスピードも、生きる長さも違う」
衛生師「エルフ、だと!?」
后「確かよ。私は……ずっと一緒に旅をしていたんだもの」
289名も無き被検体774号+:2014/02/10(月) 11:34:18.02 ID:ic6qnIwt0
>>286
衛生師は一度喋って剣士に脅された後に、また気を失った…の?
2901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:37:18.80 ID:RX8zmVBqP
衛生師「な……ッ」
青年「僕の事なんかどうでも良いだろ。信じないならそれで良い」
青年「……それより、王がお爺様を嫌ってたってどういうことだ」
衛生師「……ッ 遠ざけたのはあの人達だ!」
青年「…… ……」
衛生師「……政から遠ざけ、唐突に『王』を押しつけ」
衛生師「なのに……帰還した戦士君や僧侶さん」
衛生師「……それから、君だ。剣士」
剣士「…… ……」
衛生師「王は、自分より戦士君の方が良いのかと、言っていた」
衛生師「勇者と旅をし、帰還した血族が、その……子を孕んだ細君と共に戻り」
衛生師「得体の知れない紫の瞳の男まで一緒に、自分を退けて……話し込んでいる」
后「…… ……」
衛生師「王子様も王子様だ! 『未来』はお前達が作る物だと良いながら」
衛生師「……何かある毎に、首を突っ込もうとして!」
青年「…… ……」
衛生師「……自業自得さ!」
少女「だからって、お前が王にすげ変わる必要など……!」
衛生師「何度も言っているだろう!? 『王』を絶やす訳には……!」
魔導師「……居るじゃありませんか」
少女「え?」
魔導師「『血』で行くのならば。青年さんが次の『王』でしょう」
后「あ……」
衛生師「し、しかし……ッ」
衛生師「え、エルフの……否! 本当かどうかも解らない、そんな……!」
剣士「エルフは嘘は吐けない。青年の言葉は『真実』だ」
少女「え……?」
青年「…… ……いや、あのちょっと待ってよ」
魔導師「しかも、青年さんは……『エルフの長』でもある」
魔導師「『王』は確かに、いらっしゃいます。此処に」ニコ
青年「……おい、魔導師!?」
2911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:38:27.78 ID:RX8zmVBqP
>>289

あ……ごめん、ぐちゃぐちゃ書いてたからだorz
2921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:39:37.31 ID:RX8zmVBqP
>>286

少女「……少し戻るけど、私は……秘書がこの国に来てすぐに」
少女「王子様に保護されて、この国に来た」
少女「……秘書を牢に入れる時、私もこっそり後からついていった」
少女「王子様が取りはからってくれた、んだが……」
青年「……だが?」
少女「…… ……」チラ
后「?」
少女「…… ……」ハァ
少女「……牢には、母親様が居た」
后「……そう、ね」
少女「既に……狂って、いらっしゃった」
后「え!? …… ……あ」
少女「え?」
后(……インキュバスの魔石、の影響……なんでしょうね)
后(あの中で、正気で居なかったのは……お母様は、寧ろ)
后(救われたのかも知れない……厭、ね)
后(……私、やっぱりほっとしてる)ハァ
剣士「……続けろ」
少女「あ、ああ…… ……そこで、王は秘書に」
少女「自分も優れた加護を持っている、と」
后「え?」
少女「……羨ましいだろう、と言う様な事、だったか」
少女「とにかく、秘書を挑発したんだ」
少女「……私を蔑んだ、彼女を許せないと」
少女「『幻滅しないで欲しい』と言う様な事を言っていたな。そういえば」
青年「自分の、そう言う……部分、をか?」
少女「解らない。でも……王は、酷く不安定だったんだ」
剣士「いつだったか忘れたが、王が病気の様だと言う噂は」
剣士「……耳にしていた、な」
衛生師「……う、ぅ……ッ」
青年「……やっとお目覚め、か……おい」
衛生師「! う、うわああああああああ、あ…… ……あ!?」
少女「……衛生師」
衛生師「少女!」
衛生師「…… ……こ、こは……」
后「ここはあの小屋よ。私達が住ませて貰って居る、ね」

訂正しておきます。
すみません。
2931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:46:13.12 ID:RX8zmVBqP
衛生師「……ッ 馬鹿な! 認めない、認めないぞ、僕は……!」
后「……貴方に認めて貰う必要なんて無いと思うけど?」
青年「……ちょ、ちょっと!? 后様まで……!」
后「『便宜上』……あの言葉に倣う、だけなら、確かにそうよね」
剣士「それに、その腹の子……王の子では無いんだろう?」
衛生師「! 少女、お前……ッ」
少女「……真実だ。これこそ、な」
衛生師「……ッ」
少女「権力に興味など無いんだろう!? ……否、何よりも」
少女「お前が『王』であれ、なんであれ……!」
少女「……王子様と、王を殺したのは、お前だ」
衛生師「違う! 王子は、王に……本当に……!」
剣士「……だが、お前が王を手にかけた事に変わりは無いんだろう」
少女「……お前まで、狂ってしまったのか、衛生師」ハァ
衛生師「……ッ 僕は、興味があっただけだ!」
衛生師「『最後の王』が…… ……ゥ、ウッ」ドクン!

ガタガタ……ガタガタ……ッ

青年「……う……ッ !?」
魔導師「じ……地震!?」
剣士「……外だ」
后「え…… ……!?」
后(窓の外が……『黒い』! ……これ、は……)
后(夜の闇、じゃ無い……!)
勇者「う、ぅ……ああぁん……ッ」
后「! 勇者!」タタタ……ギュ!
2941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:52:47.51 ID:RX8zmVBqP
少女「な…… 何の、音……!!」
魔導師「青年さん! 大丈夫……!?」
剣士「魔導師、青年から離れるなよ……ッ」
青年「! 君は駄目だ、剣士!」
剣士「し、しかし!?」
衛生師(……な、んの声、だ……ッ これ、は……ッ)
衛生師「……『決して、幸せにな……ど……ッ』」
后「!?」
衛生師「『なれると、思うな……!』」
少女(この声、は……!?)
衛生師「……『貴様が最後の王だ!』」
青年「!」
少女「…… ……お姉さま!?」
衛生師「『この身に宿る、選ばれし民の血と、母親様の血に、誓って!』」
后「!?」
衛生師「『最果ての、魔物の血に願って!』」ブチブチ……ッ
魔導師「え、衛生師さん……!」
魔導師(拘束を力ずくでほどいた……!?)
衛生師「『何時か、必ず我らは蘇るのだ!』」
衛生師「『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』」
衛生師「『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』」

タタタ……ッ

后「! 何処へ行くの、出ちゃ駄目……!」
勇者「うわああああああああんッ」
青年「勇者様……!?  ……ッ」
勇者「わああああん、わああああああんッ」

ボゥッ

后「あ……ッ 熱ゥッ ……!?」
剣士「!? 后……ッ」
2951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 11:57:45.65 ID:RX8zmVBqP
勇者「うわああん、ふえ……ふえぇ……」
青年「! 剣士、早く! ……魔導師、こっち!」グイッ
魔導師「うわああああ!?」
剣士「! 后……ッ」
后「あ、あ……ッ 勇者! 勇者!?」
剣士(四人……五人!? ……ッ 糞、少女までは……!)

シュゥウン……!

少女「あ……ッ …… ……」

アハハハハ、アハハハハ……ッ

少女(この声は……やはり、お姉さま……!!)
少女(……熱く、無い。魔法使い……否、后?だった、か)
少女(魔法の炎…… ……しかし)
少女(……『熱い』と、言っていた。勇者様……か?)
少女(……勇者は光の子。炎の魔法等……)

ガラガラ……ッ

少女「!」

タタタ……ッ

少女「…… ……」
少女(二度も、火事に…… ……あ)
少女(……城に居たときも、熱さなど感じなかった)
少女(では、あれは……魔法の炎?)キョロ
少女(……誰も、居ない。一人……か)ハァ
2961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:03:30.58 ID:RX8zmVBqP
少女(……逃げなきゃ。いくら魔法の炎だと言え……)
少女(否……しかし、城は…… ……あ)
少女(そうか。あれが……魔法の炎であるのなら、私なら)
少女(…… ……)ナデ。キョロ
少女(……もう、聞こえない。衛生師は……狂って?)
少女(解らない…… ……一体、何がどうなっているのか)
少女(……お姉さま。貴女は、一体何を願ったのです)
少女(私を、怨んで…… ……この、国を怨んで?)
少女(……たかだか、『人間』が!?)
少女(…… ……否。考えるのは後だ)
少女(逃げないと……!)

タタタ……ッ

タスケテ……キャアアアア!
アツイ! アツイ!

少女「!」
少女(街にまで、火が……!)
少女(……これが、魔法使いの炎だとするのなら、彼女は……!)
少女(とんでも無い魔力の持ち主だ……!)
少女(……母親様。『出来損ない』だと言う、貴女の……娘は)
少女(…… ……)

タタタ……タタ……

……
………
…………

船長「……ちょ、ちょっと!」
海賊「……見えてますって」
船長「どうなってんだ、あれ……燃えてる!?」
海賊「……まさか助けに行くとか言わないでしょうね!?」
2971 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:11:03.95 ID:RX8zmVBqP
船長「……ッ」グッ
海賊「始まりの国、か……」
船長「……始まりの、国?」
海賊「勇者様が戻られた、って聞いてますけど……」
船長「勇者?」
海賊「……あの国、呪われてる、なんて噂もありましてね」
船長「え?」
海賊「王が、病気だとか、何だとか……」
船長「でも、あの国は……魔導国、だっけ」
船長「……戦争に、勝ったんだろ?」
海賊「敗戦国の呪い…… ……相手があの魔導国、じゃね」
海賊「ああ……今は、書の街、ですけど」
船長「…… ……」
海賊「船長、離れますぜ」
船長「え?」
海賊「……だから、助けに行くとか言わないでしょ、って」
船長「…… ……で、でも」
海賊「俺達、海賊なんですぜ? ……そりゃ、意味も無く強奪とかしないっすけど」
海賊「『正義の味方』じゃないんだから」
船長「……わ、解ってるよ」
海賊「解ってりゃ結構……さて、どこ行きますかねぇ……」ブツブツ
船長(……凄い、炎だ)
船長(行ったって……何も出来ない。あれだけ、燃えちゃったら、もう……!)
船長(……誰も、生きてない、かもしれない。どころか)
船長(死体の、山……)ゾクッ
船長(……『地獄』だ!)

……
………
…………

シュゥン……!

勇者「うわぁ、うあああ…… ……」ヒック、ヒック……
后「勇者……ッ あ、あ…… ……」ハァ
魔導師「こ、ここ……は?」
剣士「……さあな。とにかく遠くへ、としか……」ハァ
青年「…… ……后様、大丈夫? 回復するよ」パァ
后「あ……え、ええ……ありがとう……」ホッ
2981 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:17:21.59 ID:RX8zmVBqP
后「……勇者……」ホッ
剣士「……あれは。あの炎は……勇者、か?」
青年「僕にも、そう見えた……良し」
魔導師「……あ、泣きながら寝ちゃいました、ね」
后「! 少女、は!?」
剣士「……そこまで、手が回らなかった」
后「あ……!」
青年「……大丈夫だろう。あの子、炎の優れた加護を持っているんだろう」
魔導師「…… ……」
青年「助けてやる義理も……無い。そう……思っておく方が良い」
后「…… ……」
青年「后様、忘れないうちに、これ……返す」チャリン
后「あ……」
青年「……お祖母様のペンダント、だろう?」
后「……ええ」
剣士「……海。島……か?」
魔導師「わ、凄い星空……!」
青年「感動している場合じゃないでしょ、魔導師……ここ、何処なんだい」
剣士「……来たことがある場所、なのだろうとは思う」
剣士「とにかくどこか遠くへ、と……願いはした、が」
后「……明かりが見える」
青年「……目、閉じて何言って…… ……遠見、か」ハァ
后「少し先ね……歩けない距離じゃなさそう。小さい島みたいね」
剣士「……蒸し暑い、な」
魔導師「さっきの……あの、火事の所為、じゃ無くて、ですか?」
青年「……火照ってる? の、はあるかも知れないけど」
青年「でも確かにじめじめするな」

スタスタ

后「あっちよ……あ、家がある!」
青年「……僕には見えないけどね」
魔導師「僕も、です」
剣士「! ……ここ、は」
后「知ってるの?」
2991 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:22:17.22 ID:RX8zmVBqP
剣士「……一度来たことがある」
剣士「南の方の……小さな島だ。宿も会った筈……」

タタタ……

青年「……取りあえず、落ち着ける、か」ハァ
魔導師「青年さん、気分は?」
青年「もう平気だ……遠いんだろう。始まりの国から」
后「…… ……!?」ピタ
魔導師「后様?」
后「こ、……れ……ッ !?」
青年「何……像…… ……!? 母さん!?」
魔導師「え!?」
后(……少し……否、やはり、癒し手にそっくり……!?)
后「な……何で……」
青年「…… ……」
魔導師「た、確かに……似てます、けど……でも……」

スタスタ

剣士「おい、何やってるんだ」
后「……剣士、貴方来たことあるのよね?」
剣士「? ……ああ、エルフの像か」
青年「エルフ……」
剣士「村長だったかの趣味だ……と言っていたな」
剣士「……成る程。どこかで見た事が、と思っていたが」
剣士(癒し手に……青年に、似ていた、のか)
剣士(…… ……『過去』『現在』)
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「剣士さん……?」
3001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:27:29.61 ID:RX8zmVBqP
剣士「……明日、明るくなってからにしろ」
剣士「あれだけ何度も転移を繰り返せば、流石に疲れた」
后「……あ、ああ……そう、ね……」チラ
青年「…… ……良いよ。先に行って」
魔導師「……后様、行きましょう。勇者様……」
后「……ええ」
剣士「こっちだ」

スタスタ

剣士「…… ……」
魔導師「ご免なさい……僕……なんか、どっと疲れが……」
后「……ええ、部屋でゆっくり休んで頂戴」
魔導師「后様達は、まだ起きてらっしゃいます?」
后「…… ……色々ありすぎて、目が冴えてるわ。でも、勇者……」
魔導師「……僕で良ければ、一緒に寝ます」
剣士「俺も……もう少し起きていよう」
后「……話も聞きたいわ」
魔導師「剣士さんは全て知ってます……お願いします」
后「結局、何も聞いていない侭、ですものね」
后「一緒に行くわ、魔導師。勇者が寝入ったら……お願い」
魔導師「はい」
剣士「……すぐ隣に酒場がある。そこで」

スタスタ

カチャ、パタン

魔導師「…… ……」ハァ。ボスッ
后「……ぐっすり、ね」フゥ
魔導師「あ、どうぞこっちに…… ……后様、大丈夫ですか?」
后「大丈夫、とは……言えない、わね」ハァ
魔導師「……ですよね」
3011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:34:55.07 ID:RX8zmVBqP
后「でも…… ……」
魔導師「……何だったんでしょう、ね」
后「……『怨み』『悪意』……『呪い』って、言ってたわね」
魔導師「……女性の声、でした。少女さんは、『お姉さま』と」
后「…… ……最低ね、私」
魔導師「え?」
后「お母様じゃ無い、と解って……やっぱり、ほっとしてる」
魔導師「后様……」
后「……謎解きは明日にしましょう。勇者、お願いね」
后「起きたら、すぐに解ると思うから。すぐに……戻るから」
魔導師「あ……はい!」

スタスタ。パタン

魔導師(よく寝てる。可愛い)クス。ポンポン
魔導師(僕もこうして、何時も……兄さんに寝かして貰った)
魔導師(……さっきの炎は……間違い無く、勇者様、だった)
魔導師(やっぱり……『同じ』なのか……!)
魔導師(あ……鍛冶師様の道具、置いて来ちゃったな)
魔導師(折角、剣士さんに無理、言ったけど……)ファ
魔導師(…… ……やっぱり『必要無い』って、事……な ……の)
魔導師(…… ……)スゥ

……
………
…………

剣士「……こっちだ」
后「青年はまだ、なのね」
剣士「……放っておいてやれ」
后「…… ……」
剣士「何処まで聞いた?」
后「何も……とにかく、あの黒い靄、だったじゃないの」
剣士「……そうか」
后「私……間違えた、のかしら」
剣士「?」
后「あそこで……火を、着けなければ……!」
3021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:46:56.81 ID:RX8zmVBqP
剣士「……終わってしまったことだ。それに」
剣士「放っておいても、衛生師は、何れ……同じ道を辿った、のかもしれない」
后「……あの人も『狂っていた』と?」
剣士「解らん……だが、あの時の声は……衛生師の声では無かった」
后「『怨み』……『呪い』」
剣士「……少女が言うところの、姉……『秘書』か」
后「『魔の血に』……とか、言ってたわね」
剣士「母親は、自分達の祖先には魔が居るのだと言っていたからな」
剣士「……どれも、確かめる術の無い話だ」
后「……お母様……ッ」ポロポロ
剣士(あんな母親でも……やはり、悲しい、と感じる……のか)
后「……ッ」グイッ
后「恐ろしい……言葉、よね」
剣士「え?」
后「『願えば叶う』」
剣士「…… ……」
后「秘書……で、あるのなら。あの、声……」
后「彼女は、叶えてしまった……怨みを、悪意を……『呪い』に変えた」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』……か」
剣士「……青年が居る」
后「いえ、そうじゃ無くて……コンプレックス、だったのかしら、ね」
剣士「……王、か?」
后「ええ……少女との間に、子供が出来なくて」
后「……私は。自分に優れた加護が無くて」
后「どうして私だけ、って……思ってたけど」
剣士「…… ……」
后「彼は……持っていた、のに。でも、それでも」
后「本当に欲しい物が、手に入らなくて……」
剣士「……少女は、傍に居ただろう」
3031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 12:56:11.14 ID:RX8zmVBqP
后「心は?」
剣士「?」
后「……彼女は、王を愛していた?」
剣士「…… ……」
后「……大丈夫、だったかしら」
剣士「魔法の炎で焼かれることは無いんだろう」
后「…… ……」
剣士「……精一杯だったんだ」
后「御免。責めたい訳じゃ無いのよ」
后「……鍛冶師様の、も置いて来ちゃったわね」
剣士「あれは……魔導師にどうしてもと頼まれたんだ」
后「……光の剣を、修理する、気なの?」
后「でも、誰も魔法剣なんて……」
剣士「……今のうちに、話しておこう」
后「え?」
剣士「『夢』だ……魔導師が、人魚の魔詩で見た、夢」
后「……『知』を授かった、て奴ね」
剣士「あの『夢』が真実、だとしての前提だ」
剣士「……この『世界』そのものが何度も、繰り返している、と言う前提」
后「……良いわ」
剣士「女勇者が、黒い髪の魔王を父と呼び……倒した、のだと言っていた」
后「ええ……そして、終わらなかった、のよね?」
剣士「……ああ。『夢の中の俺』は、その後」
剣士「全てを思い出し、光の剣を完璧な状態へと戻した」
后「!?」
剣士「……俺は、代々の魔王の『残留思念』」
后「ざ…… ……え!?」
剣士「使用人から聞いているだろう」
剣士「……紫の魔王の側近から飛び出した光」
剣士「どこかへと飛来していった『欠片』」
后「な……!?」
剣士「……紫の魔王は、剣の力を吸い取ってしまっていた筈だ」
3041 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:05:05.84 ID:RX8zmVBqP
剣士「『夢』の中で……俺は、思い出したのだ、と」
剣士「……そうして、この『器』と『中身』……『俺の全て』を」
剣士「『解放』する事で……光の剣は、元の姿へと戻った」
后「そ……そんな!?」
剣士「……その話を聞いて、合致したのは『欠片』と言う言葉を」
剣士「知っていたから、だけでは無い」
剣士「俺の……『思い』だ」
后「……『必ず魔王を倒す』」
剣士「…… ……」
后「で、でも!!」
剣士「……あの二人は、必ず他に道があるはずだ、と言って聞かなかった」ハァ
剣士「だが……『こっち』では、あの村ではもう、鍛冶は行われていない」
后「え!?」
剣士「数年前、か何かの流行病で、大人達が……随分、亡くなったそうだ」
剣士「……鍛冶場も、取り壊されてしまった」
后「それで……鍛冶師様の物を……」
剣士「……それも、もう……手に入らないだろう、がな」
后「……で、でも、誰が修理すると言うの!?」
剣士「『知』を授かった、と言っただろう」
剣士「……『向こう』の魔導師は、旅立ちの頃で」
剣士「14.5歳の少年だ……が、鍛冶師の村で鍛冶を学んでいる」
后「!」
剣士「……黒い髪の魔王に対峙する前に」
剣士「お前の炎で、光の剣を打ち直した、とも言っていた」
后「な……」
剣士「……そうして、俺が魔法の力で強化しようと試み……失敗した、んだったかな」
后「…… ……」
剣士「……色々、違ってきているんだそうだ」
后「違い?」
剣士「癒し手の事だってそうだ……お前も夢に見たんだろう」
剣士「……否。『北の塔』での出来事も、そうか」
后「!」
3051 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:13:20.99 ID:RX8zmVBqP
剣士「……『あっち』では癒し手は『器は間に合った』」
后「え!?」
剣士「……青年が、あの鍛冶師の村付近の小屋の庭に、埋めたのだと」
剣士「掘り返しに言ったのは、お前だそうだ。側近は、動けないからな」
后「…… ……」
剣士「どういう絡繰りかは解らん。が……もう一度、会えたと」
剣士「『また後で』と……約束したから、と言っていたそうだ」
后「……癒し手…… ……ッ」ポロポロ
后「で、でも……『こっち』の癒し手は……!」
剣士「……風になって、消えてしまった、と言っていたな」ハァ
后「…… ……ッ」
剣士「そうした……差違もある。ああ、そう言えば」
后「え?」
剣士「……赤茶の髪の勇者は、炎の魔法も使えたそうだ」
后「!」
剣士「……さっき、証明された……な」
后「で、でも……何で……!?」
剣士「『あっち』の使用人曰く」
剣士「……身の内に押しとどめた、のだろう。お前が……魔に変じたとき」
后「!」
剣士「『人の部分』を奪い去り『勇者は人間』として産まれて来るのなら」
剣士「……だ」
后「で、でもどうして……!」
剣士「……絡繰りなんて誰にも解らん。だが」
剣士「これは全部、魔導師から聞いた話だ……その絡繰りすら」
剣士「わからない……『何故』『どうして』を問うて」
剣士「誰も応えて等……くれないのだ、と言う事しか」
后「……わからない、のね……」

キィ

青年「……剣士。后様も!?」
剣士「青年か……」
3061 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:22:02.87 ID:RX8zmVBqP
后「…… ……」
青年「……ああ、話してた、んだな」
青年「顔色が悪いよ、后様」
后「……だって、到底信じられない話よ」
后「否……信じるしか、ない、けれど……!」
青年「……うん」
剣士「大丈夫か? ……お前の方が、顔色が悪い」
青年「休んだ方が良いんだろうけどね。そうも……言ってられない、よ」
青年「……何処まで聞いたの」
后「『夢』の話よ……勇者が、炎の魔法を使えたり」
后「……剣士が、その……ッ」
青年「ああ……『終わらなかった』のは、小屋でちらっと言ったよね」
后「……魔王に、なってしまった、のよね」
青年「そう……『夢の中』で、魔導師は……魔に変じている」
青年「勇者様は……確かに魔王に、なったんだ」
后「…… ……」
青年「……簡単に、だけど」
青年「魔導師が、船の中で年表みたいなもの着くってね」
后「年表……?」
青年「『過去』と『現在』の差違……時間の経過が随分違った」
青年「……使用人は、1000年程生きているのだと言って」
后「……そう言えば、そんな事も言ってたわね」
青年「僕が小鳥に文を結んで、最果てに……飛ばしてある」
后「え!?」
青年「向こうは向こうで、色々と知恵を絞ってくれるんじゃないか、とね」
后「……混乱してるでしょうね」ハァ
剣士「俺達だってそうだ」
剣士「……あの船は、北の街と書の街を経由して」
剣士「始まりの国に戻る筈だったが」
剣士「……青年が、書の街の近く辺りから……気分が悪いと言い出して、な」
青年「…… ……」
后「『呪い』ね……」
3071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:29:51.59 ID:RX8zmVBqP
剣士「……結局、転移で小屋に行く羽目になったからな」
青年「結果的には……良かっただろう」
后「え……」
青年「……あんなもの、それこそ……勇者様の旅立ちまであそこにあったら」
青年「それこそ、国は滅びていた筈だ」
青年「……あの衛生師って男。元々の性格もあるんだろうけど」
青年「あいつ……あいつからも、黒い気配が漂っていた」
后「…… ……」
青年「何がどうなってそうなったのか、解らない、けど」
青年「……さっさと焼いてしまって、正解だよ后様」
后「……そ、う……かな。そう……よね」
青年「……あの、エルフの加護のあるあの丘」
青年「あそこだって、何れは浸食されていたと思う」
剣士「…… ……」
青年「凄い『怨み』だ。それこそ……『呪い』だ」
青年「……それに、いくら盗賊様の……曾お祖母様の遺言だからと」
青年「『王』があれでは……意味が無い」
后「……失われて居ないでしょう」
青年「……后様まで、僕が『王』だなんて言いたいの」
剣士「……厭なのか?」
青年「そう言う問題じゃ無い!」
青年「……守るべき国はもう、失われた」
青年「勇者も、あそこから旅立ったりはしない……できない」
青年「……別に僕が『王』でも構わないさ」
青年「何か『形』がある訳じゃ無いからな……でも」
后「…… ……」
青年「『血』がどうとか、認めてしまえば」
青年「それこそ、同じになるよ……魔導の街の人達とね」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』を認めれば……彼女の『呪い』の成就にもなるわよ」
青年「…… ……」
后「……否。下らない言葉遊びよね」
3081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:37:41.85 ID:RX8zmVBqP
后「……詳しい話は、明日聞くわ」
后「魔導師が居るとは言え……勇者の所に戻らなきゃ」
剣士「……当面の事は明日、話し合おう」
青年「そう……だな」
后「じゃあ、お先に……」

カチャ、パタン

青年「……ショック、なんだろうな。后様」
剣士「俺には……解らん」
青年「人魚の話はしたか?」
剣士「……否。出来事が多すぎて、整理してもしきれん」
青年「だ、よな……」
剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「休まなくて良いのか」
青年「……眠れないよ」
剣士「…… ……」
青年「……なあ」
剣士「?」
青年「もし、だ……少しずつ、『世界』は変わっている、として」
剣士「…… ……」
青年「黒い髪の魔王様で、終わる可能性って、高いと思うか?」
剣士「……どうにか。勇者様が……黒髪の魔王を倒せれば」
青年「…… ……」
剣士「曰く……俺が、光の剣に戻れば、だろう」
青年「……ッ」
剣士「模索の道を探そうと言う……気持ちは、ありがたいんだ」
青年「…… ……」
剣士「だが……俺は……」
青年「君は、君だ!」
剣士「……『あっち』ではこれほど好かれていなかった筈だがな」クス
青年「…… ……『仲間』に違いは無いだろう!」
剣士「倣う必要など無い、と……思いたい。俺だって」
剣士「……だが。『否定』してしまうと、俺は俺では無くなる、青年」
青年「…… ……」
剣士「俺は……俺達、は。魔王を倒すんだ、青年」
青年「…… ……ッ」
剣士「……先に戻るぞ」
青年「……ああ」
剣士「…… ……」

スタ、スタ……カチャ、パタン
3091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/10(月) 13:39:03.86 ID:RX8zmVBqP
おーむかえー
310名も無き被検体774号+:2014/02/10(月) 16:14:38.84 ID:FVjQseE40
えーっと、国、滅びちゃった?
311名も無き被検体774号+:2014/02/10(月) 23:19:32.07 ID:T8l3xu6R0
捕手
312名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 01:56:51.10 ID:MCLyatsr0
BBA乙
まだ『王妃』も『王』も一応いるが国の土地自体が色々大変なことになっちゃったな
一応の『王妃』はどんな行動をとるかな
313名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 16:19:18.54 ID:m7cuC1bV0
ほしゅ
314名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 21:36:29.90 ID:wzMBUFs+0
いっちばん初めから全部読んできた!
一ヶ月くらいかかったぞ?
面白い!はやくつづきを!
315名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 23:16:08.31 ID:JJ8hArb40
316名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 23:27:15.23 ID:mRVXBCx6i
>>314
もう一度最初から読んでみてみ
ループ前後の些細な違いに気付いてもっと面白くなるぜ
ようこそスコーン・ワールドへ!
317名も無き被検体774号+:2014/02/11(火) 23:36:14.00 ID:4VTt3PWI0
何それおいしそう
318名も無き被検体774号+:2014/02/12(水) 16:12:05.43 ID:9TSM6T0EO
3191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/12(水) 17:29:35.38 ID:QJheWPglP
ちょっとお家の事情で中々来られなくてごめん……
のぞける時にはのぞきたいんだが
BB2Cも書き込めないんだよねorz

一レスでも書けるときには書くよ。書きたいしね!

御免よ!
320名も無き被検体774号+:2014/02/12(水) 19:00:24.01 ID:M1/WCkOpP
>>319
大丈夫
スレはなくならない
321名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 03:53:26.36 ID:R3M3beZf0
謝るのは書く気が無くなった時だけでよろしおまっせ
322名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 04:18:05.36 ID:BbcL7DgZ0
書く気失せたら困る、最初から見てると言う事でひとつ
323名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 08:56:16.59 ID:dii4tTfdP
ここはスコーン一つで手を打ってくれねえか
324名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 12:42:55.45 ID:sC/+QYPoO
325名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 21:26:39.09 ID:bmBDkDdgi
326名も無き被検体774号+:2014/02/13(木) 23:38:40.32 ID:x4Mu4IlN0
今更やめるとかありえね
生活のリズム狂うわ
ゆっくりでも確実に頼む
327名も無き被検体774号+:2014/02/14(金) 03:55:15.81 ID:gn7ODqt40
保守やで
328名も無き被検体774号+:2014/02/14(金) 11:16:29.13 ID:rAiBLB+ji
焦る必要はないけど、
楽しみにしてるで。
329名も無き被検体774号+:2014/02/14(金) 23:14:26.00 ID:PWeCNJVg0
バレンタインデー
チョコ3個頂きました






デュフフ
330名も無き被検体774号+:2014/02/14(金) 23:30:25.87 ID:xyB1Cp/NP
いくらもらっても、本当にもらいたい人からもらえないんじゃ意味ない
今日のわたし
331名も無き被検体774号+:2014/02/15(土) 00:36:10.89 ID:yroWcYx40
おれのでよかったら⚫️〜
332名も無き被検体774号+:2014/02/15(土) 09:11:42.12 ID:6v5XKya00
保守
3331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/15(土) 09:16:13.63 ID:RPZgGJ+AP
おはよう。
ちょっと、暫くこれないと思う。
やめる気はないから!
ログはとってあるから、落ちても再開するから。

ごめんな。
334名も無き被検体774号+:2014/02/15(土) 09:32:15.27 ID:Zsi3KvHkP
大丈夫だぞ!
ゆっくりおちついてな!
335名も無き被検体774号+:2014/02/15(土) 09:35:26.61 ID:j7lhe/T+0
>>333
戻ってくるまで待ってるぉ
なんかわからんが(,,゚Д゚) ガンガレ!
336名も無き被検体774号+:2014/02/15(土) 11:24:50.89 ID:Cr3Tw5GjO
幼女に何かあったんじゃないよね?
待ってるから元気で戻ってきてね!!
337名も無き被検体774号+:2014/02/16(日) 02:56:52.30 ID:c4QbgydoO
338名も無き被検体774号+:2014/02/16(日) 23:51:59.26 ID:lEw6SUnS0
ho
339名も無き被検体774号+:2014/02/17(月) 06:22:53.63 ID:BCBrjzzTO
340名も無き被検体774号+:2014/02/17(月) 13:01:25.61 ID:f4piJKVh0
mo
3411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/17(月) 17:07:50.96 ID:JQ9xRQAkP
少し来ない間にモリタポ期限切れてた……
本当に一年経ったんだな

幼女は元気ですよ。ありがとう

ちょっと落ち着いたけれど、色々バタバタしてるので
のんびりやります

ありがとうね
342名も無き被検体774号+:2014/02/17(月) 17:09:59.05 ID:oEGk9MB40
大雪?
343名も無き被検体774号+:2014/02/17(月) 20:37:27.17 ID:y+6lOVD/0
拒否権からやっと追いついたわ
支援、BBAがんばれ!
344名も無き被検体774号+:2014/02/18(火) 01:03:37.31 ID:G8nXDfEv0
345名も無き被検体774号+:2014/02/18(火) 14:00:14.67 ID:iUWNmhSeP
346名も無き被検体774号+:2014/02/18(火) 15:25:51.75 ID:+JUxZWgA0
ほっしゅ
347名も無き被検体774号+:2014/02/19(水) 02:00:20.97 ID:5SkNZlgR0
おほしさま
3481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/19(水) 10:40:48.41 ID:2gEwtctMP
書き込めるのかな?
3491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/19(水) 10:42:12.37 ID:2gEwtctMP
あ、良かった!
復旧したのね……

お迎えの時間なので、行ってくるけどwww

幼女と遊びつつ、ゆっくり再開します
保守してくれてアリガトウ

取りあえず。来れたら後ほど!
350名も無き被検体774号+:2014/02/19(水) 12:25:55.19 ID:zcmjEKyF0
スコーンきたー!!
ゆっくりでいいからね!!
無理すんなよ!!
351名も無き被検体774号+:2014/02/19(水) 15:36:57.83 ID:vFUl/YMl0
2ch存続やばげだから避難所作ったほうがよくね?
352名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 05:25:06.07 ID:L5aJLSNX0
んー、どだろねー
353名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 08:43:47.98 ID:5y7CNmBPP
避難所立てるところとか決まってたよね?
3541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 09:37:00.38 ID:IJzjP1aLP
おはよう!
おむかえまでのんびりと。

避難所なー。
SS速報VIP、だっけ?
に、落ちた時のスレタイで立てるよー

ツイッターとかフェイスブックでも良いんだけど
まあ、↑で探して下さい

やめないから!絶対!
3551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 10:02:45.63 ID:IJzjP1aLP
青年「…… ……」
青年(『あっち』と『こっち』……本当に、何か違う、のか?)
青年(……そもそも。この『世界』はどうなってるんだよ……否)
青年(……何なんだ、よ)ハァ

……
………
…………

使用人「…… ……」ハァ

コンコン

使用人「はい」

カチャ

側近「……いくら、片付けるのはお前、だとは言え」
使用人「いてもたってもいられませんよ」
使用人「……書庫の中、本当に……見た侭」
使用人「ひっくり返しました」
側近「……俺も後で手伝おう」ハァ
使用人「すみません……でも」
側近「ん?」
使用人「後にして。こっちと、これだけ、食堂に運んで下さい」
側近「……羊皮紙の束?」
使用人「あの文……青年さんから届いた、あの」
使用人「『年表』と『転移石の作り方』」
側近「…… ……」
使用人「確かに、子供の様な字でした。誰が書いたのか、はともかく」
使用人「……こっちが、城にあった物です」トン
側近「最後が書き足してある、んだったな」
使用人「似てる気はするんです。もう少し、字は……綺麗になってますけど」
側近「…… ……」
使用人「で、これです」バサ
側近「見て良いのか」
使用人「……何言ってるんですか」
側近「掠れてる、が……!? 『鍛冶……』!?」
使用人「……他の物にも、出て来ます」
側近「…… ……ッ」バサ、バサッ
3561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 10:19:48.55 ID:IJzjP1aLP
使用人「『魔力の押さえ方』……これなんて、もしかしたら」
使用人「紫の魔王様も、参考にされたかもしれません」
側近「……魔力をぶつけて、『魔王』を押さえていた、んだよな」
側近「前側近や……魔導将軍、達は」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「でもこれには『魔王の力を魔石と成し』と書いてあるんですよ」
側近「!?」
使用人「……それの活用方法も。それを使用して」
使用人「……この、人……これを書いた人は」
使用人「転移石を作っています」
側近「……紫の魔王も、自分の魔力を封じ込めた石を」
使用人「……そうです。それで転移石を作って下さってます」
使用人「これを参考にされたのは、間違い無い……筈です」
側近「……どう、なっているんだ」
使用人「私が聞きたいです」
側近「…… ……」
使用人「……勇者様が、始まりの国から旅立たれるまでまだ」
使用人「まだ……時間があります」
側近「……しかし、時間だけがあっても、だな」
使用人「…… ……」
側近「!?」バッ
使用人「? ……側近様?」
側近(何だ、これは……何か、来る!?)
使用人「側近さ……ッ」
側近「下がれ……ッ」

シュゥン……スタ

后「…… ……」
使用人「き……ッ 后様!?」
3571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 10:30:25.79 ID:IJzjP1aLP
側近「后…… ……ッ!?」
勇者(すぅ)
使用人「……ゆ、勇者様、まで……」
后「置いて来れないもの、まだ」
側近「……まだ」
后「でも、長居は出来ないわ…… ……魔王は?」
使用人「……今の所、大人しくされています、よ」
后「そうね……側近が此処にこうしているぐらい、ですもの」ハァ
側近「お、お前、それより……ッ」
側近「始まりの国に居たんじゃないのか!?」
后「……青年から、文は届いて居る、わよね」
使用人「!」
后「ぐちゃぐちゃですものね、書庫」クス
側近「な…… ……何で、お前がそれを知ってる」
后「二人とも落ち着いて聞いて。って言っても……私もまだ」
后「混乱しているけど……」
側近「…… ……」
使用人「后様が、勇者様と此処にいらっしゃる、と言う事は」
使用人「始まりの国に何かがあった、と思って良い、のですね」
后「…… ……あの国は、もう無い」
側近「な、に!?」
后「側近……貴方には、ずい、ぶん……ッ」ポロポロ
側近「……お、おい」
后「つ、らい……話を、沢山……ッ 聞かせなくては……ならないの……!!」
使用人「き、后様……!」
后「……話が終われば、私は……南の島に帰るわ」
使用人「南の島……?」
后「ええ。そこで、旅立ちまで……勇者を育てる」
后「今はばらばらになってしまったけど」
后「……皆、戻って来る。勇者と共に旅立ち、魔王を倒しに来るまで」
側近「……誰、の事だ。それより……!」
3581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 10:37:23.76 ID:IJzjP1aLP
后「解ってる……ちゃんと話す」
后「勇者の『仲間』はね。剣士と青年と……覚えて居るかしら」
后「魔導師って男の子よ」
使用人「魔導師……? あの、鍛冶師の村の、ですか」
側近「…… ……」
后「年表、あるわよね、使用人」
使用人「え!? あ、はい!」
后「あれを書いたのは魔導師よ。彼は……『夢』の中で」
后「『1000年生きた貴女』から」
側近「!」
后「それまでに知り得ただろう『知』を受け継いだ」
使用人「夢!?」
后「……『あっち』の貴女、って言えばいいかしら」
側近「待て、待て、后!」
后「側近……」
側近「…… ……此処は寒い。勇者も居る」
使用人「あ…… ……わかりました」
使用人「側近様は、その『資料』を ……『御伽噺』も要りますね」
側近「……わかった。運ぶ」
后「…… ……」クスクス
側近「后?」
后「本当にいつも、私達こんな事ばかりしてる」
后「笑っちゃ行けない、んだけど」
使用人「食堂の方へ。お茶にしましょう。甘い物も一杯用意します」
側近「……頼む」
后「私は、勇者に『全てを授ける』わ」
使用人「え?」
后「……すでに勇者の仲間達は皆、『知り得る全て』を知っている」
后「だから、この子にも…… ……この子が『最強の魔王』になる前に」
使用人「! 終わらないと言うのですか!?」
后「……選ぶのは『勇者』よ」
側近「…… ……」ハァ
3591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 10:39:26.85 ID:IJzjP1aLP
ちょっとお買い物いってきまーす
3601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 13:11:17.05 ID:IJzjP1aLP
使用人「……『選ぶ』」
后「そうよ。私達も……『金の髪の勇者達』も、選んだ筈よ」
側近「魔王になるか否か、か。しかし……」
后「後者を取れば『世界が滅びる』わ」
使用人「で、でも……!」
后「貴女がまだ生きている理由……」
使用人「……え?」
后「魔導師は『夢』の中で……貴女から『知』を受け継いだ」
使用人「…… ……」
后「詳しくは後で話すけど……それは、あの時点で」
側近「……おい」
后「知り得た『全て』……『こっち』じゃ無い」
側近「あの『時点』と言うのは……何なんだ」
后「アレは多分……『過去』」
使用人「『過去』……」
后「そう、『繰り返される運命の輪』よ。使用人」
后「……『勇者と魔王』だけじゃない。何度も、何度も……この、世界そのものが」
后「繰り返されている……」
側近「…… ……」
后「驚かないの?」
側近「……それも……後で話そう」
使用人「先に行きます。側近様、本とか、お願いします」
側近「お前も先にいけ、后……勇者、寝かせてやれ」
后「……ええ」
3611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 13:19:12.49 ID:IJzjP1aLP
スタスタ、カチャ、パタン

后「ねえ、使用人」
使用人「はい? ……あ、開けますね」

カチャ

后「……この部屋も久しぶり、だわ」
后「まだ、それほど時間なんて経ってないのに」
使用人「どうぞ、此方のソファに勇者様を。すぐにお茶入れます」
使用人「后様は座ってお待ちを」
后「ええ……あの、ね」
使用人「? はい?」
后「終わらないのか、とさっき聞いた、わよね?」
使用人「……『最強の魔王』」
后「考える事は、一緒……よね」
使用人「……終わらせないと、いけないでしょう」
后「魔導師が言うには、『夢』の中で自分は、魔に変じたのだ、と」
使用人「…… ……」
后「倣うのならば、終わらない」
使用人「で、でも……! そんな事を言ってしまっては……!」
后「……そうよ。終わりなんて来ない。永遠に」
使用人「…… ……ッ」
后「『貴女自身』が……まだ、生きている理由」
使用人「え……?」
后「前に話した事があった、わよね? ……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私がずっと、受け継いできたのは……でも……」
使用人「魔導師さんに、受け継いだのならば……!」
后「誰に授けるか、よね……終わるのならば、もう……」
使用人「……見届ければ、終わるのだろうと思っていました」
后「魔導師もそんな事を言っていたわ」
使用人「え?」
后「『使用人』は『魔導師』に全てを受け継がせ、姿を消した……と」
使用人「…… ……」
后「側近が戻ったら、話しましょ。最初から、ね……」

カチャ

側近「待たせたな」
3621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 13:40:52.32 ID:IJzjP1aLP
使用人「……お座り下さい。すぐにお茶を入れます」
側近「ああ……で、何だ。何なんだ」
側近「……この、世界は、どうなってる……!!」
后「『年表』を……使用人」
使用人「は、はい」
后「ここから行くわ……『金の髪の魔王』を『黒い髪の勇者』が倒した」
后「……これは、私達よ、側近」
側近「…… ……」
使用人「何度も読みました。私と、側近様で……」
后「そうよね……違う点、は」
使用人「『時間』ですね」
后「……ええ」
側近「『50年〜60年』?」
后「でもね。勇者が魔王を倒し、新たな魔王になってから」
后「次の勇者を産むまで、60年、として、よ」
側近「紫の魔王、金の髪の魔王、黒髪の魔王……180年、まあ多く見て200年、か」
側近「『1000年生きた使用人』……」
使用人「私は……『使用人』は置いておきましょう。過去が解らない以上」
使用人「スタート地点を見つけられませんし」
側近「……そうだな」
后「まだあるわよ。『向こう』では……書の街は無かったの」
使用人「え?」
后「正確に言うと『魔導国』も無かったのよ」
側近「……ん?」
后「魔導の街は魔導の街、の侭、存在していたのよ。ずっとね」
后「……勿論、始まりの国だって滅びていない」
側近「! そうだ! ……ッ 王は、どうしたんだ!? 親父は……ッ」
后「…… ……『黒い靄』」
使用人「黒い靄?……癒し手様が仰って居た……新王様に黒い物が見えた」
使用人「……と、言う奴ですか?」
后「…… ……」
側近「后」
后「ちゃんと話すわよ……待って」
后「……始まりの国の、地下から……その黒い靄は漂っていた」
后「私は此処を出て、勇者を連れてあの小屋に行ったの」
后「……その時、王子様にもお会いしたわ。城は立入禁止になっていたし」
3631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/20(木) 13:47:42.59 ID:IJzjP1aLP
おむかえー
364名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 13:57:33.74 ID:5y7CNmBPP
読者が把握してる事実の再確認なんか、サクッと終わらせて次の話題に行って欲しいわ
かくかくしかじかレベルでよくないか?これ
こいつらにとっては必要な会話なのかもしれんけど読者は把握してるんだから省略してほしい
365名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 14:29:43.35 ID:fR/b27kf0
単なる事実の確認ではないだろ
この物語とはまた別の次元?の話も入ってるし
366名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 14:39:15.96 ID:6251TGl+i
>>364
ごちゃごちゃ言わんと黙っとれ
367名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 14:44:35.76 ID:/4jb0CJH0
>>364
ストーリーの流れとして必要でしょ
嫌なら見るな
368名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 17:21:15.32 ID:5y7CNmBPP
いや、黒い霧の話を例にあげるけどさ
俺らの目線からしたら

事実を直接読む→青年たちに説明する→側近たちに説明する
と何度も同じ事実を繰り返し読まされてるわけで
何度同じ説明読まされなきゃなんないんだ、早く次の話にしてくれって思っただけよ
369名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 21:16:17.98 ID:JGsoDkkD0
>>368
じゃあ全部終わってからまとめで好きなとこだけ拾って読めばいいんじゃない?
読みたくないのにリアルタイムで付き合う必要ないだろ
370名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 21:23:11.61 ID:qiQYtKpx0
とりあえず仲良くしよーぜ!
>368
アドバイザーは邪魔なだけ。黙って読もうな?
371名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 22:15:54.26 ID:L5aJLSNX0
気持ちはわかる。
俺も正直、この話何回目だよ……と思うこともあるけれど
何か意味があることなんじゃないかと思ってる。
ちゃんと伝わってる部分と、そうでない部分があって
王国の悲劇は、ちゃんと伝わってないことが原因だったり。
いずれにしても、早く続きを読みたいんだよね。
でも書いてくれるスコーンのモチベーションを下げるのも怖いし。
372名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 22:39:25.10 ID:zK/06c7D0
ループ系の話しは読む方も書く方もこんがらがるから確認の意味も兼ねていいんじゃね?
まぁ、俺の個人意見だが

あんまぐだぐだ言うようなら読まなきゃよろし
373名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 22:43:54.15 ID:Rj+2wn440
文句あるなら読むなってのはちと乱暴でないかい。
批判したくなるほど先が楽しみで好きで読んでるんだろうからさ。
率直な感想だよ。
374名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 22:46:16.20 ID:zK/06c7D0
ふむ、まぁ確かに言い過ぎたか
少なくともここまで読んできてるんだもんな
半年ROMるわ
375名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 23:19:27.51 ID:wm71Kb8e0
どうやら黒い靄の影響がこんな所にまで…

皆ただ楽しみにしているだけなはずなのに…
376名も無き被検体774号+:2014/02/20(木) 23:27:28.39 ID:sf5P0XEl0
BBAも意見はありがたいと思うんじゃね?
377名も無き被検体774号+:2014/02/21(金) 00:56:34.91 ID:0dUUdU690
BBA乙
俺もちょっとしつこいかなとは思うけどここでかなり『過去』と違う展開になってきたし細かいところがどう違うか分かってないところもあるから整理して欲しい
まあ自分が読み直せばいいだけなんだけどさ
3781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/21(金) 18:58:21.78 ID:3vuNawdoP
ごめんな、ちょっと考えるわ……

とりあえずまた、時間のあるときに!
379名も無き被検体774号+:2014/02/22(土) 02:47:43.78 ID:40DWKxmT0
追いついた!
BBAはまだ20代だろ
俺からすれば小娘だ
スコーン娘頑張れ!
380名も無き被検体774号+:2014/02/22(土) 18:56:09.00 ID:1pcMwEupP
>>371>>372が俺の気持ちを代弁してくれた
381名も無き被検体774号+:2014/02/23(日) 01:04:21.97 ID:Npoi09m80
ほしゅ☆
382名も無き被検体774号+:2014/02/23(日) 20:56:51.73 ID:56wVWL0wi
383名も無き被検体774号+:2014/02/23(日) 20:59:53.58 ID:h3RZjlAH0
俺は>>1の世界観に惚れてずっといるし、気にせず好きに書いてくれ〜
そろそろまた必要か?w
つ イヤラシノマセキ
384名も無き被検体774号+:2014/02/24(月) 06:41:14.43 ID:ygGAz+VZO
385sage:2014/02/24(月) 16:40:51.77 ID:CSbXIp+Z0
ほしゅ
3861 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 09:47:14.92 ID:Gqa4WaY3P
側近「立入禁止……? 親父まで、か?」
后「…… ……ええ」
后「王はご病気だと言う事でね……でも、私が会った『王』は」
后「とても健康そうに見えた……心を病んでいらした、と知ったのは」
后「後からだったはずだけど」
側近「……確かに、不安定なところはある奴だった、みたいだが」
使用人「側近様に取っては……従兄弟、ですよね、王様って」
后「…… ……」ハァ
側近「后?」
后「……全て話すわ、と言っておきながら、私がまだ混乱してる」
后「どこから、話して良いのか……」
使用人「その『黒い靄』と言うのは……」
側近「……こういうのは、順序立てて話さなければ混乱を引き起こす」
側近「出口の無い迷路に迷い込むのは、できる限り避けたい」
后「側近……」
側近「俺達は今までも、そうしてきたはずだ、后」
后「……そうね」
側近「……ああ、すまん。話を脱線させたのは俺、か……」
后「いえ……現状確認が先よ。話を続けるわ」
后「間違い探しは後……よね」
使用人「話しやすいところからで結構ですよ?」
后「……避けては通れない話よ」ハァ
后「勇者と私は王子様と一緒に始まりの国の『王』の所に行った」
后「『同じ』……小屋を与えて貰ったけれど、その黒い靄の所為で」
后「私は一歩も小屋を出ることが出来なかったのよ」
使用人「后様が……ですか!?」
后「勇者に何かあったら困るもの。小屋には防護壁を張ったわ」
后「そのおかげで、小屋の中は無事だった。だけど……」
后「……青年から聞いた話では、国だけじゃ無くて。広く……」
后「その、黒い靄は……とても広く、広がっていた、らしいの」
側近「……城の地下、からじゃ無いのか」
使用人「それに、らしい、と言うのは……」
后「ああ……そうね。先に……どうしてあの子達が一緒に居たか、から」
后「話すわ……御免。ぐちゃぐちゃね」
使用人「大丈夫です……あ、ちょっと待って下さい」ゴソゴソ
3871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 10:14:51.89 ID:Gqa4WaY3P
側近「使用人?」
使用人「魔導師さんに倣って、私も……記録を取ります」
使用人「……后様にも、時間が無い。ここに長く勇者様を置いておく訳にも」
使用人「行かないでしょう……」
后「……そうね。お願いするわ」
使用人「被っても結構です……えっと、后様と勇者様がこの城を出られて……」カリカリ
后「始まりの国の『王』に会った」
使用人「…… ……」カリ
側近「…… ……」
后「防護壁を張った小屋に居たときに、剣士から心話が届いたの」
側近「え!?」
后「剣士は……『紫の魔王に出来て、自分に出来ない筈が無い』と言ったわ」
側近「…… ……『欠片』だから、か」
后「ええ。その年表の話……魔導師の『夢』の話ね」
后「剣士と青年は、その話を全て聞いて、あの小屋に三人で転移してきた」
后「鍛冶師の村で合流した三人は、船で始まりの国に向かってた」
后「北の街と書の街、港街……も、だったかな」
后「経由する始まりの国の船だったと言っていたけど」
后「……青年の気分が、始まりの国に近づくにつれて、悪くなっていったそうよ」
使用人「それが……『黒い靄』の所為、ですか」
后「ええ。あの国……あの島だけで無く、結構な広範囲に広がっていたんですって」
后「『人間』には見えない様だとも言っていたわ。魔導師はけろっとしていたし」
側近「青年は……エルフの血を引いている、からか」
后「『感じる力』ね……剣士は、まあ……今の私達と似たような物だから」
后「目に見えても不思議は無いと思う」
后「……その黒い靄は、小屋にだけは触手を伸ばせない様に見えるからって」
后「三人で転移してきた、のよ」
使用人「……青年さんと、魔導師さんを抱えて、ですか」
后「そう……で、先に黒い靄をどうにかしないと、って、魔導師がね」
側近「どうにか、って……出来る、のか?」
后「……剣士と二人で地下に転移して……焼き払ったのよ」
側近「!?」
使用人「……『浄化の炎』です、ね」
后「『黒い靄』の正体は『凄まじい悪意』……『呪い』」
側近「『呪い』?」
3881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 10:35:08.20 ID:Gqa4WaY3P
后「……余りにも、根深い。この『世界』その物を呪う、『想い』」
后「少女と言う名の……王妃の、双子の姉……『秘書』の」
側近「!」
后「……凄まじい、想いよ」

……
………
…………

少女「すみません……お世話かけます」
老婆「気にする事無いよ、お嬢さん……それにアンタ、身重だろう?」
少女「…… ……はい」
老婆「しかしまぁ、大変な事になったもんだねぇ」ハァ
少女「でも……おばあさんは、どうしてですか?」
老婆「ん?」
少女「確かに、城は焼けて……始まりの街は随分な状態になっています」
少女「……と、聞いています、けど」
老婆「……らしいね」
少女「でも……あの、丘の麓の小さな村の人達まで、こんな……」
老婆「……港街まで、逃げる必要無かっただろう、って?」
少女「……はい」
老婆「まあね……でも。あの国はね……呪われてるって噂もあったし」
少女「…… ……」
老婆「アンタは、行ったことあるかい?」
少女「え?」
老婆「あの小さな村、さ」
少女「……いえ。私は…… ……始まりの街から、出た事無くて」
老婆「そうか……あの村も始まりの街も、確かに平和だっただろう?」
少女「……と、思います」
老婆「うん……勇者様が代々、旅立たれる国だしね」
少女「…… ……」
3891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 10:45:56.73 ID:Gqa4WaY3P
老婆「……また、魔王が復活するって言うじゃ無いか」
少女「勇者様……ですか」
老婆「ああ。居たんだろう?国に」
老婆「……詳しくは知らないけどさ。そりゃ目出度いことだよ」
老婆「でも、魔王は……何年か後に復活するんだろう?」
老婆「……前の時だって、国を挙げてさ……色々やったのに」
老婆「もう、御免だよ。どうせ……本当の平和なんてやってこないんだ」
老婆「……だったら、こんな機会でも無きゃ」
老婆「タダで、船になんか乗せて貰えないしね」
少女「……あれは、港街の船だったんですよね?」
老婆「ん?アタシ達を乗せてくれた船かい? ……そうらしいね」
老婆「そりゃ、あんなけ派手に燃えりゃ……助けぐらい出してくれるさ」
少女(港街は……元は、出来損ない達の隠れ場所)
少女(……盗賊が尽力し救い出し、建設された街)
少女(勿論……尽力は惜しまない……だろうな)
3901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 10:46:38.36 ID:Gqa4WaY3P
おかいものー
391名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 11:14:38.70 ID:rU30kjY30
いってらー
3921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 11:49:44.07 ID:Gqa4WaY3P
老婆「……何処に居たってね。魔王の恐怖からは逃げられないんだ」
少女「え……」
老婆「そうだろう? 勇者様が現れて、魔王を倒したって」
老婆「何回も何回も。何年か経った後、また……同じ事の繰り返しだ」
少女「…… ……」
老婆「その間に戦争だの、呪われてるだの……」
老婆「……そんな国、そんな島にね。住んでいたくなんか無いって」
老婆「考えたって不思議じゃ無いって事」
少女「……そう、ですね」
老婆「でも吃驚したよ。アンタ、始まりの街の方からフラフラ」
老婆「あんな薄着で……しかも子が居るって言うじゃ無いか」
少女「……本当に、お世話になりました」
老婆「それは良いって……でも、これからどうするんだい?」
少女「え? ……ああ、そうですね……でも」
少女「こうして、港街に来れましたし」
少女「……何か、仕事でも探します」
少女(仕事……仕事、か)ハァ
少女(私に……何か出来る事があるだろうか?)
少女(……こんな……身重で……ッ)
老婆「ふぅむ…… ……まあね。面倒見てやるって言っても、ね」チラチラ
少女「え!? いえ、そんな! ……一緒に船に乗って貰って」
少女「……食事まで、ご馳走になったのに」
老婆「いえね……アタシはこの街に知り合いが居るからさ」
老婆「それでよけりゃ、紹介ぐらいはしてやれるけど」
少女「え……?」
老婆「……アタシもそこで働かせて貰うつもりなのさ。ああ、いや、ね」
老婆「アタシはもう、おばあさんだから、あんた達みたいな」
老婆「娘さんの世話焼きババァ、だけどね」ジロジロ
少女「…… ……?」
3931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 11:59:54.12 ID:Gqa4WaY3P
老婆「肌つやも良いし、綺麗な顔してる」
少女「あ、あの……?」
老婆「……ま、身重ってのが難点だけど……」
少女「…… ……」
老婆「産んでしまえば、後は元気に働ける様になるだろうよ」
少女「……あ、あの。お話しは嬉しいのですが……」
少女「何のお仕事、です?」
老婆「……この街に娼館があるのは知ってるだろう」
少女「!?」
老婆「何もいきなり、客を取れとは言わないよ」ハァ
少女「娼……館!?」
老婆「……最初は、客と話し相手したり、お茶出したりしてりゃ良いのさ」
老婆「産んじまえば、後は女達が交代で世話できるんだ」
少女「ちょ、ちょっと待て! 待って……私は……!」
老婆「……今すぐにアンタ、そんな身体で」
老婆「他に仕事があると思うのかい?」
少女「…… ……ッ」
老婆「……アンタ、金だって持ってないんだろう?」
少女「……そ、れは」
老婆「アタシは明日、その連れの所に行くからさ」
老婆「ま。気が向いたら声かけておくれよ」
少女「…… ……」
老婆「今日は、宿は無償で提供されるみたいだし、雨露凌げるし」
老婆「……腹も膨れただろう?さっさと行かないと部屋が埋まっちまうからね」
老婆「アタシは、行くよ」スッ
少女「…… ……ッ」
少女(望まれた子じゃ無い。だけど……ッ)
少女(……この子が居なくても、私は、生きていかなくてはいけない)
少女(否……ッ 見知らぬ男に身体を開くぐらいならば、いっそ……!!)
老婆「……子供を生かして行くこと、第一に考えるんだよ?」
少女「え……」
老婆「アンタ、もう母親なんだから」
少女「…… ……」
3941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 12:07:05.33 ID:Gqa4WaY3P
少女(子供を生かす為に、私は……私に)
少女(身体を、売れと!?)
少女「…… ……」
老婆「やれやれ……そんな思い詰めた顔しなさんな」
老婆「でもね、お嬢さん。生きてるだけで儲けモン、なんだ」
老婆「……どうしても厭なら、話し相手や茶の相手、してる間に」
老婆「出来る事を見つければ良い。そうすれば、身体なんて売らなくて済むんだよ」
少女「…… ……」
老婆「『母は強い』って事だけ、覚えておきな」
少女「…… ……」
老婆「…… ……」ハァ

スタスタ

少女(……始まりの国の港で、この港街行きの船に拾われて)
少女(あの老婆と共に……海を渡った)
少女(……衛生師はもう、居ない。始まりの国ももう、無い)
少女(誰も……助けて等、くれない。解ってる)
少女(この子を産む為に。この子を育てる為に)
少女(……私は、身体を売って、金を……稼ぐ?)
少女(そこまでして、産みたいのか!?)
少女(そこまでして、育てたいのか……生きたいのか!?)
少女(……否。私は、生きたいのだろう。魔法使い……勇者の『炎』で)
少女(この身が焼ける事は無いのに。私は……逃げ出した)
少女(この子を思って……走った。瓦礫に埋まっても良かった)
少女(あの船の上から、身を投げても良かったんだ……)ハァ
少女「…… ……宿」スッ
少女(孕んでいるから、なんて言い訳にならない。誰も譲って等くれない)
少女(……早く、行って休まなければ)フラ

スタ、スタスタスタ……
3951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 12:16:25.34 ID:Gqa4WaY3P
……
………
…………

魔導師「では、お気をつけて剣士さん」
剣士「……本当に一人で大丈夫なのか?」
魔導師「たっぷりお金も頂きましたし。大丈夫です」
魔導師「僕一人なら、この街に長く滞在しても怪しまれませんしね」
剣士「……しかし、子供一人で」
魔導師「『普通の子供』なら……ですけど」
剣士「…… ……」
魔導師「大丈夫ですって……それより、ちゃんと迎えに来て下さいよ」
剣士「解って居る。様子も見に来る」
魔導師「渡航代もったいないですからね」
剣士「……お前な」
魔導師「冗談です……剣士さんは、何処に?」
剣士「……青年次第だな」
魔導師「そうですね……后様、大丈夫でしょうか」
剣士「あいつは何処にでも行けるだろう」
魔導師「そうですけど……」
剣士「勇者が居る……『母』は強いんだろう」
魔導師「……ですね」
剣士「では……頼むぞ」
魔導師「はい……大丈夫ですって。僕は……僕も」
魔導師「『勇者様の仲間』ですから」
剣士「…… ……」

シュゥン……

魔導師「…… ……さて」フゥ
魔導師(何時までも宿の部屋に居てもしかたない)
魔導師(こんな身体……子供、じゃ、働く訳にも行かないし)
魔導師(誰かに何か聞かれたら、修行の身とでも言えばいいだろう)
魔導師(図書館……の、前に。書の街を歩いてみるかな)
3961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 12:23:33.13 ID:Gqa4WaY3P
スタスタ

魔導師(魔導の街、か……行きたいって『僕』は思ってた)
魔導師(……鍛冶の勉強。魔法の勉強をする為に)
魔導師(どうにか……剣士さんが)
魔導師(あんな、方法で……ッ 失われなくて済む、方法を探さないと……!)
魔導師(『過去』に倣う必要なんて無い。これは『現在』だ)
魔導師(『夢』の中の知を紐解いて……『全て』を知らないと……!)

……
………
…………

青年「…… ……」
青年(見事に、瓦礫の山、だ……)
青年(……城の焼け跡。酷い匂いだ)
青年(随分、人が死んだんだろうな……気分が悪い)
青年(后様の浄化の炎……勇者様の、炎の魔法)
青年(……なのに、大地までは……完全に、浄化されていない。清められていない)
青年(何故だ!? ……あれほど、強力な……ッ)

シュゥン、スタ!

青年「剣士か。遅かったな」
剣士「……悪い」
青年「良いよ、別に……なあ」
剣士「何だ」
青年「……見えるか?」
剣士「黒い靄、か…… ……ああ。少しだけな」
青年「…… ……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「大地に染みついてしまった『穢れ』までは……后様でも払えなかった、のか?」
剣士「……それほどに、あの秘書の『悪意』が凄かった、のか」
青年「……『遅かった』のか」
3971 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 13:08:26.01 ID:Gqa4WaY3P
剣士「『遅かった』……か」
青年「…… ……」
剣士「……気分は悪くないのか」
青年「良い気分じゃ無いけどね」
剣士「……長居する必要も無いだろう」
青年「そうなんだけど……何かに、呼ばれて居る気がするんだ」
剣士「? ……人の気配等感じないぞ」
青年「違う……そうじゃ無くて……」
剣士「?」
青年「……まあ、良い。それより、魔導師は?」
剣士「書の街に送り届けてきた……当分、図書館に入り浸る、そうだ」
青年「……勇者様が育つまで、時間は随分あるさ」
剣士「お前はどうするんだ」
青年「……僕はこのまま、港街に行ってみようかなと思うんだけど」
剣士「港街?」
青年「人の気配がしない、って行っただろう、君……」
剣士「……ああ」
青年「この街の、国の……人達が逃げ出したとすれば、あそこだろう」
剣士「……丘の麓にも小さな村があっただろう?」
青年「さっき見てきた。人っ子一人いなかったよ」
剣士「……そうか」
青年「もう一度あの丘に戻って……それから港の方に行く」
青年「……悪いが、港街に飛んで貰えるか」
剣士「それは構わん、が」
青年「……君はどうする、剣士」
剣士「一緒に行く訳には行かないだろう……目立ちすぎる」
青年「まあ……そうだな。君のその瞳の色は……」
剣士「……お前、本当に自覚無いのか?」
青年「僕?」
剣士「……癒し手にそっくりな上に、光の様な金の髪だ」
青年「…… ……」
剣士「碧玉の瞳……童話の中の王子様だな、さながら」
青年「やめろよ」ムッ
3981 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 13:17:55.31 ID:Gqa4WaY3P
剣士「事実だ……認めろ」
青年「……フン」
剣士「そっちはお前に任せる……俺は……」
青年「……君は?」
剣士「海賊達を探してみる」
青年「船長は……もう……」
剣士「……解って居る。だが、行きたい場所がある」
青年「? 君は何処だって行けるだろう?」
剣士「行ったことのある場所ならな。ビジョンを思い浮かべれば飛べる。だが……」
青年「……何処に行こうとしてるんだよ」
剣士「…… ……南の洞窟だ」
青年「! あの鉱石の、か!?」
剣士「何の助けにもならんかもしれんがな……もう、お前達二人に泣いて」
剣士「縋られるのは御免だ」
青年「な、泣いてたのは魔導師だけだろ!?」
剣士「……そう言う事にしておく」クッ
青年「やな奴だな、君は……!」
剣士「魔導師にも、適当に迎えに行くと伝えてある」
青年「……どうにか南の島に位、たどり着けるさ」ムッ
剣士「后は后で、『人魚』の謎も探ってくれるだろう」
青年「……ああ。あの神話?は……書の街には無いのか?」
剣士「どうだろうな。俺は興味が無い本には手を着けなかったからな……」
青年「……まあ、あったら魔導師が見つけるだろうし」
青年「何れは、読めるんだ」
剣士「……終わらないと思っている、のか。まだ」
青年「さてね……どちらにしたって」
青年「僕達は、『魔王の城』にはたどり着く」
青年「……『勇者は必ず魔王を倒す』のさ」
剣士「…… ……」
399名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 13:21:20.78 ID:ityKCH35P
まおゆうの二番戦時だな
4001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 13:47:11.47 ID:Gqa4WaY3P
青年「……ほら、もう行くよ」
剣士「? ……ああ。丘の上に行くのか」
青年「ああ……悪いけど、付き合ってくれ」
剣士「…… ……」

スタスタ

青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「僕が一人で歩いてる時も思ったけど」
剣士「?」
青年「……魔物の姿が、無いんだ」
剣士「あれだけ派手に燃えればな……小さな島とは言え」
剣士「緑の豊富な場所だ。どこかに隠れているんだろう」
青年「……だろう、けどね。あの、黒い靄……あの、呪い」
剣士「…… ……」
青年「惹かれて、寄ってきても不思議は無いのにさ」
青年「……魔物達まで、怯えてるみたいだ」
剣士「魔物だの、魔族だの……そんな物、よりも」
青年「?」
剣士「……思い、ってのは余程、恐ろしい物なんだろう」
青年「…… ……」
剣士「『願えば叶う』なんて言葉にしたってそうだ」
剣士「……本来ならば、願っただけで何でも、思い通りになるはずが無い」
青年「…… ……」
剣士「そうなる様、少しでも望む形に近づくように」
剣士「動く、からそうなるに過ぎない……筈だ」
青年「……それを、本当に……『現実に形作ってしまう力』?」
剣士「…… ……着いたぞ」
青年「景色だけは変わらないね……相変わらず美しい」
剣士「…… ……」
青年「エルフの加護自体は、お祖母様がペンダントに移してしまった、んだよな」
剣士「それも、北の塔で眠りに着いたときに」
剣士「……力を解放してしまっている筈だ」
青年「ああ、そうだった……やっぱり、此処は……島の中の何処よりも気分が良い」
青年「……まだ、マシ……程度だけどな。もう」
剣士「……此処も、浸食されるかもしれなかっただろう」
剣士「それを、防げただけでも……遅くは」
青年「それは、違う……剣士」
剣士「?」
4011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 13:50:52.35 ID:Gqa4WaY3P
青年「大地が……浄化されていない以上、何れは冒される」
剣士「…… ……」
青年「雨が振れば地に染み入り、吸い上げ咲いた花の蜜を鳥が運ぶ」
青年「……遅かった、んだ。もう。それこそ、島毎」
青年「もう一度、完全に焼き尽くしてしまうでもしない限り……もう……」
剣士「…… ……」
青年「君も后様も、僕が居る……僕が『王』だ等と言うけれど」
青年「……それは、違う。確かに、認めてしまえば」
青年「それは彼女……『秘書』の呪いの成就になるのかもしれない。けれど」
青年「……もう、滅んでしまったんだ。この国は」
青年「『最後の王』は……死んだのさ」
剣士「……言葉遊び、何じゃなかったのか」
青年「それこそさっきの話と『同じ』さ」
青年「……『願えば叶う』? …… ……さて、ね」
4021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/25(火) 13:52:38.06 ID:Gqa4WaY3P
おむかえー
403名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 14:09:14.51 ID:aLtSq15dP
てらー
404名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 18:04:00.92 ID:zLHkwbo9i
乙!

それにしても『少女』は娼館でお茶汲みする伝統なのか……w
405 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/25(火) 20:15:32.51 ID:o/G+hK+D0
>>404
ってことは片腕になっちゃう⁈
406名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 20:24:59.48 ID:X/gRx1le0
しばらく読んでなかったんだが、何回ループした?そろそろ終わり見えた?
407名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 20:25:19.13 ID:ypbXC6Jk0
>>405
それは娼婦
408名も無き被検体774号+:2014/02/25(火) 22:50:30.54 ID:VwvWUx0H0
前ループで青年が会ってた「娼館の少女」はどうなるのかと思ってたけど、この流れだと…?
4091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 09:34:19.94 ID:ec2NuAM/P
剣士「……遺言なのだろう。盗賊の」
青年「紫の魔王の言葉、でもあるな……でも、だからって」
青年「もう、終わってしまったこと、だ」
剣士「…… ……」
青年「『国』も無いのに、どうやって『王』になる……否」
青年「あったとしたって、僕は……興味無いね」
剣士「……癒し手の願いでもある、んだろう」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「行こう。もう……本当に用事等無い」

スタスタ

剣士「……待て」ゴソゴソ
青年「? ……何やって…… ……あ」
青年「それ、鍛冶師様の……魔導師が、君に持って来いって言った奴か」
剣士「どれが一番必要なのか解らんが……持てそうな物だけ、でもな」
青年「……鉱石の洞窟だの、鍛冶の道具だの」クッ
剣士「何故笑う」
青年「『俺は魔王を倒す』んだと。それが叶うなら何をも厭わないと言う割に」
青年「……君は、僕達の意見に結局……賛成してくれるんだな、と思って」
剣士「やれる事はやる……最終手段だとして、厭わないと」
剣士「話し合った、だろう?」
青年「……まあ、ね」
剣士「此処にこのまま、あったのに置いて言ったと知られれば」
剣士「……それこそ、魔導師に怒られるだろう」
青年「『夢』の話を聞いた限りじゃ……結構、きついもんな、あいつ」クスクス
剣士「良し…… ……ん?」
青年「? 何だよ」
剣士「…… ……船だ」
青年「船?」
4101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 09:40:59.88 ID:ec2NuAM/P
剣士「……」スッ
青年「……こっちに向かってるな。港か」
剣士「……どうする」
青年「走れば間に合うな……行くよ」
剣士「良いのか?」
青年「様子を見に来た船ならば、港街迄ぐらい乗せてくれるだろう」
青年「君は?」
剣士「俺は……何処にでも行けると言っただろう。早く行け」
青年「ああ……又後で、剣士」

タタタ……

剣士「…… ……」

シュゥン……

……
………
…………

船長「流石にもう、火は消えてるか」
海賊「誰も居ないと思いますけど?」
船長「解ってるよ…… ……でも」
海賊「……はいはい。何度も聞きましたよ」
海賊「『何かお宝があるかもしれない』からでしょ」
船長「お、おう」
海賊「……で、生き残りが居れば救いたい、んですよね?」
船長「! お、俺そんな事……!」
海賊「顔に書いてあります、って……でもね、船長」
海賊「あの炎で逃げちまったかも知れないけど」
海賊「この大陸の魔物は、弱い方、ですけど!」
船長「……解ってるって。無茶はしないから!」
海賊「……ついでに、俺達ァ正義の味方じゃないんですからね」
船長「それも……ッ」
4111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 09:52:45.89 ID:ec2NuAM/P
海賊「解ってんなら良いんです…… ……ん?」
船長「……な、何だよ」
海賊「人、だ」
船長「え!?」

タタタタ……

青年「!」
青年(……船員……だろう、か。片方は……随分若いな)
海賊「……おう、兄ちゃん。こんな所で何やってんだ?」
青年「……あの船は、君達の?港街から来たのか?」
船長「俺達は海ぞ……ッ ……!?」ムグッ
海賊「先にこっちの質問に答えて貰おうか」
青年「僕は……」
船長(ムガムガムガ!)
青年「…… ……離してやれば」
海賊「答えろって」パッ
船長「……ッ」ハァ
青年「様子を見に来ただけだ。親戚が住んで……た、からね」
船長「…… ……」ジロジロ
青年「何だよ?」
船長「あ、いや……」
船長(この兄ちゃん、似てる……じいちゃんの島にあった、あのエルフの像に……!)
海賊「……誰か、生き残ってたか?」
青年「否。死体の数までは数えてないけどね」
船長「……アンタ、そんな細い身体で、大丈夫なのか?」
青年「え?」
船長「弱いとは言え、魔物が出るんだろ?」
青年「……ああ、それは別に。この大陸の魔物ぐらい」
青年「それに……今は、姿を見せないよ」
4121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 10:33:39.14 ID:ec2NuAM/P
海賊「……あんなけ燃えりゃ、な」
青年「だろうね」
船長「…… ……」ジロジロ
青年「……君は、なんなんだいさっきから」
船長「知ってる人に、似てるんだ」
青年「……僕が?」
船長「ああ」
青年「……他人の空似、じゃないの」
船長「アンタみたいな綺麗なの、そこら中に居てたまるかよ」
青年「あいにく僕は、天涯孤独、な身だけど?」
船長「そうなのか? ……僧侶さんにそっくりなのに」ボソ
青年「!?」
青年(僧侶!? 何故こいつが……!?)
青年(……目立つ、か。僕も……母さんも……)ハァ
海賊「船長。喋りすぎですぜ」
青年「……何!?」
海賊「な、何だよ」ビクッ
青年「……船長。君が!?」
船長「な、何だよ! そりゃ、まだガキかもしれないけど!」
船長「俺は……!」
青年(あれは……あの船は、海賊船か……!?)
青年「……否、疑っている訳じゃ無い」
青年(……しまったな。剣士と別れるんじゃなかった)
青年(必要としていたのは、あいつなのに……僕が)
青年(鉱石の洞窟に行ったところで……)
4131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 10:40:19.43 ID:ec2NuAM/P
海賊「……まあ、良い。とにかく、生き残りは居ないんだな?」
青年「え? ……ああ……と、思うよ」
青年「あの……丘の麓の小さな村にも」
青年「誰も残ってなかったみたいだけど」
海賊「ですってよ」
船長「……そうか」ホッ
青年「何だよ。海賊の君達が人助け、とでも言うのかい」
海賊「!?」
船長「な!? 何で……!?」
海賊「……俺の後ろに、船長。アンタ、何モンだ?」
青年「物騒な物出さないでよ? ……別に、怪しい者じゃ無いよ」
海賊「信じられると思うか? ……こんな場所に一人で」
海賊「フラフラして……」
青年「……まあ、そうか」ハァ
青年「お前、僧侶を知ってるんだろう?」
船長「え!?」
青年「……親類が住んでた、って言っただろう」
船長「え、え!? ……だ、だって、アンタ、さっき……天涯孤独、って……」
青年「死んだからさ」
船長「……!」
海賊「……僧侶さんの、親戚……か?」
青年「まあ……血のつながりがあるのに間違いは無いね」
青年(親戚、と言うか……母親、だけど)
青年(……それは、言えないな)
4141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/26(水) 10:47:31.05 ID:ec2NuAM/P
おむかえー
415名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 10:52:18.75 ID:ImEuLZULP
がんばって見たけど単純に面白くないな。
何を読ませたいんだろう。まおゆうと決定的に違うのはそこだよな。
416名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 11:10:36.68 ID:SP1GdE5Li
無理に読めとは言わないさ
俺たちみたいに、楽しんでいる者は楽しんでいる
417名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 11:32:17.33 ID:bPcRbmea0
まぁ否定はしないけど、なぜ他人の褌で相撲取るような事してるのかって思うよな。
それも面白くないから猶更だし。
418名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 12:58:53.40 ID:iRx8aOGP0
他人のふんどしって、RPGの元祖意外はドラクエもFFも他人のふんどしじゃね?w
419名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 13:10:10.14 ID:MNk6eTvO0
アンチはどこにでも沸くからねー。
私は大好きなので楽しみにしてる
できれば紙媒体で欲しいくらいお気に入りですわwwww
420名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 13:22:52.65 ID:ImEuLZULP
>>418
そのままドラクエもFFも丸パクリしてるわけじゃないだろうに。
これはそのまんま丸パクリしてるからって意味じゃね?

>>419
アンチか。ってかまおゆうっていう偉大な作品を勝手に
丸ぱくった挙句つまらないってのがアレって感じ。
平野走ってるだけじゃね?この偽まおゆうもどきは。
421名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 13:37:07.87 ID:MNk6eTvO0
まおゆうも買って読んだけど、
アレこそDQ3とルビ伝ネタそのまんま使用じゃんよw
懐かしすぎて吹いたわw
アレはアレで好きだけどwwww

420はルビ伝が何かもわからないだろうなw
422名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 13:53:16.62 ID:gha6GempP
>>414
いてらー
423名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 16:05:59.40 ID:O4T+bpHh0
この我のものとなれの奴?丸パクって言うほど似てるとこある?
それとも俺が読んでた奴と違うんかね
424名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 16:34:27.11 ID:RcTaNeAC0
辛うじて似てると言えるのは地の文がないところと魔王と勇者が出てくるところくらいか?
それなら何番煎じだって話だけどなw
425名も無き被検体774号+:2014/02/26(水) 18:41:10.26 ID:1Z7rDBg40
こんだけいろんな作品があったら似てたりしちゃってもおかしくないだろ
426名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 00:36:12.44 ID:6JOITou20
BBA気にすんなよ!
俺はお前の物語の全てをみたいんや!

あと、幼女を下さい
427名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 06:54:21.22 ID:XPiZosON0
いいよ
428名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 07:15:05.44 ID:TQYeVFijP
パク元と言われている作品は、剣と魔法のファンタジーの
有名どころではあるがご本家ではないよね。
大枠が共通なら嫌でも似るわ。
固有名詞抜いて書式揃えりゃ尚更。
429名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 08:08:07.82 ID:5sX7QHTY0
まだやってたの?
430名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 08:51:07.72 ID:p+O/gpif0
狭い知識の中であれとこれが似てると指摘しても恥かくだけだわな
それでこの話はおしまい
じゃあスコーン続きをお願い
4311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 09:30:37.79 ID:Kv9cvE1tP
おはよう!
おむかえまでー
4321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 09:37:12.18 ID:Kv9cvE1tP
船長「…… ……」
海賊「…… ……」
青年「……疑わないの」
海賊「船長?」
船長「……寧ろしっくり来るよ。アンタ、本当にそっくりだ」
船長「髪と瞳の色は違うけど……」
青年「……僧侶、から聞いてる。君のお母さんの事もね」
船長「え!?」
青年「君が話したんだろう? ……『チビ、会いたかった』と……彼女は……」
海賊「おい!」
船長「……俺は大丈夫だ」
青年「…… ……」
船長「アンタ、名前は?」
青年「青年だ」
船長「海賊も、ほら。もうそんな怖い顔やめろって」
船長「……兄ちゃ……青年は、怪しい奴じゃ無いって証明されただろ」
海賊「……そりゃ。そんな話されりゃ疑いようもネェですけど」
青年「身の潔白が証明された所で、相談なんだけど」
船長「ん?」
青年「港街までで良い。連れて行って貰えないか?」
青年「……此処に何時までも居ても、仕方無いからね」
船長「そりゃ、別に……良い、よな?」チラ
海賊「……船長の命令は絶対ですからね」ハァ
青年「勿論金は払うよ?」
船長「え、えーっと」
海賊「当然です!」
船長「……うん」
4331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 09:44:35.14 ID:Kv9cvE1tP
青年「君、船長なんだろ……」
船長「な、何だよ!」
青年「もうちょっとしっかりしないとな」クスクス
船長「わ、解ってるよ! ほら、着いてきな!」

スタスタ

海賊「…… ……」
青年「……なんだよ。何か言いたげだな」
海賊「あんまり、要らんこと吹き込まないでくれよ?」
青年「船長に、か?」
海賊「ああ」
青年「……港街までなんて、すぐじゃ無いか」
海賊「船長は『知りたがり』だからな」
青年「……まあ、好奇心旺盛なモンでしょ、あの年頃の子は」
海賊「行き過ぎた詮索ってのはな……」
青年「時に身を滅ぼす、んだろ? 後……仲間ってのは信用するもん、だったか?」
海賊「……アンタ、女船長の事も知ってんのか」
青年「知人から話を聞いたに過ぎないよ」
海賊「知人……?」
青年「……紫の瞳のね」
海賊「! ……お前、本当に何者だ!?」
青年「そんな顔するって事は、知ってるんだな、剣士の事」
海賊「…… ……」
青年「不思議じゃ無い筈だ。彼は……歳を取らないんだから」
海賊「何で、俺にそんな話をするんだ」
海賊「……簡単に手の内を明かす何て、馬鹿のする事だぜ」
青年「……必要としてたからさ」
海賊「?」
青年「剣士が、君達を……船を、かな」
海賊「な……?」
4341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 09:55:27.60 ID:Kv9cvE1tP
青年「僕が代わりにお願いしても良いけど、多分意味が無いし」
青年「……僕には、他にやらないと行けない事もある」
海賊「……さっぱり意味がわからねぇ」
青年「これ以上話す気は僕にも無い。けど……」
青年「……剣士にどこかであったら、願いを叶えてやって欲しい」
海賊「そんな義理は……」
青年「あるだろ、君達と剣士の間には」
海賊「…… ……船長が決める事だ」
青年「それで良いさ」

船長「おーい! 二人とも、さっさと来いよ!」

青年「……短い間だけど、宜しく」
海賊「…… ……」

スタスタ

……
………
…………

魔王「…… ……」
癒し手「……魔王様」
魔王「ああ……大丈夫、だよ」
金魔「……これも、『無かった事』だな」
金髪紫瞳の男「ああ」
魔王「始まりの国が滅びてしまう事、か? でも……」
435名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 10:54:31.27 ID:qeKXTJmk0
wktk
4361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 13:03:00.22 ID:Kv9cvE1tP
金魔「ん?」
魔王「一度、滅びているんだろう?」
癒し手「あ……そうですね。紫の魔王様も…… ……知らない、時……代」ハッ
魔王「癒し手?」
癒し手「……『今』」
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「え?」
癒し手「……今も、紫の魔王様は、知り得ない時代」
金魔「…… ……」
魔王「え? え?」
癒し手「私達……は、『過去』しか見られない筈だった」
癒し手「なのに、『違う』んです、よね?」
金魔「……ああ。お前達には『現在』の出来事だ」
癒し手「……そうですね。肉体は朽ちたけれど」
魔王「…… ……」
癒し手「『私達の時代』に間違いは無い……筈です」
金髪紫瞳の男「俺達にしてみればこれは確実に『未来』」
金魔「……だな」
魔王「ん、んん?」
金魔「……そろそろちょっと不憫に思えてきた」
魔王「あ、哀れんだ目を向けるなよ!」
癒し手「『違う』筈なのに……『同じ』なんですね」フゥ
金髪紫瞳の男「……偶然、では無い、んだろうな」
魔王「…… ……」ハァ
癒し手「えっと……すみません、ややこしい言い方して」
金魔「癒し手の所為じゃ無い。本当に我が息子ながら……」ハァ
魔王「煩いな!」
癒し手「『紫の魔王様の知らない時代に、始まりの国は滅びた』んですよ」
癒し手「『過去』も『現在』も……『未来』も」
癒し手「この事実は……変わらない、んですよ」
魔王「…… ……うん」
金魔「お前解ってないだろ」
魔王「そ、そんな事無い!」
4371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 13:09:54.54 ID:Kv9cvE1tP
魔王「……あれ?」
金魔「やっぱり解ってないじゃないか」
魔王「違う! それじゃ無くて……」
魔王「……此処には、特異点が集まってる、んだよな」
金魔「まあ、そうだな」
魔王「……女魔王は、どうしていないんだ?」
金髪紫瞳の男「『生きている』からだ」
魔王「え……」
金髪紫瞳の男「正確に言えば、お前もまだ死んでは居ない、が」
金髪紫瞳の男「『夢』の様な物だからな。眠った侭、目も開かない、動かないお前が」
金髪紫瞳の男「見ている、夢……」
魔王「…… ……」
金魔「お前が俺を倒そうと旅立った後。お前が産まれた後、か」
金魔「……俺も、ずっとこんな『夢』を見てたんだ」
金魔「その時には、女魔王は居たぞ。お前は……居なかったがな」
魔王「……過去の、俺も?」
金魔「『同じ』なんだよ、俺達は……多分、だけどな」
金魔「同時に同じ人物が二人、あっちとこっちに、何て」
金魔「……流石に、そりゃ不可能だろうよ」
魔王「……な、るほど…… ……?」
癒し手「…… ……」クスクス
魔王「笑うなよ……」
癒し手「……ご免なさい」
4381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 13:22:59.50 ID:Kv9cvE1tP
魔王「……同じ、じゃないさ」
癒し手「え?」
魔王「俺は『干渉』した。癒し手もな」
魔王「……それに、呪い」
癒し手「…… ……」
魔王「あれは……良く解らないけど、今までに無かった、んだろう?」
金魔「……まあ、正直喜べる変化とは言えないだろうが」
魔王「それに何より……紫の魔王はもう居ない」
金髪紫瞳の男「……ああ」
魔王「完全に『消失』してしまったんだろう? ……だったら」
魔王「『同じ』は、もう……繰り返さない筈だ」
金魔「……そう、だな」
魔王「后達は……逃げたんだろう」
癒し手「……ですね。後は、勇者様が育って、旅立たれて……」
癒し手「……今度こそ。断ち切って下されば……」
魔王「でも……癒し手、お前は……」
癒し手「はい。私も見ました……『過去』は」
癒し手「……『器は間に合った』」
魔王「……お前の『器』は、消えてしまった、んだよな」
癒し手「ええ。だから……さっき、言った様に」
癒し手「私は、終わったんだと思ったんです。又後で、の……」
癒し手「……約束は、果たせなくなってしまった、けれど」
魔王「しかし…… ……お前は、此処にいる」
癒し手「…… ……はい」
金魔「俺達に出来る事は何も無い」
金魔「……なあ、魔王」
魔王「ん?」
金魔「『勇者』がたどり着くまで。仲間は、魔力を『魔王』にぶつけて」
金魔「押さえてくれている。暴れ出さない様に」
魔王「あ、ああ……」
金魔「前后……お前の母さんとさ。魔導将軍と、前側近が」
金魔「……ずっと、魔力を注いでくれてる時、思ったよ」
魔王「?」
4391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 13:40:11.57 ID:Kv9cvE1tP
金魔「あれは……『想い』だ」
魔王「想い……?」
金魔「ああ。絡繰りなんてもんは、何も解らない」
金魔「『世界』の事も、『運命の輪』も、『特異点』って奴も、何も」
金魔「だけど、あいつらの魔力は『想い』だ」
癒し手「…… ……」
金魔「俺を想ってくれる気持ちだったり、世界を救おうとする気持ちだったり」
魔王「…… ……」
金魔「……お前も、解るよ。后と側近の『想い』」
魔王「……うん」
金髪紫瞳の男「……俺にだけは、解らないんだな」
魔王「え? ……ああ、そうか、お前は……」
金髪紫瞳の男「俺は……俺だけは『魔王になれない』」
癒し手「…… ……あ!」
魔王「癒し手?」
癒し手「……貴方は、女勇者様と、青年の……子供」
魔王「それがどうした?」
癒し手「…… ……」
金魔「…… ……」
魔王「? 癒し手?」
癒し手「……貴方は、どうあがいても、魔には変じられない」
魔王「え? 何で…… ……あ!」
癒し手「青年の子である以上。彼は……純粋な人間では無いからです」
魔王「で、でも! ……『勇者』は人間なんだろう!?」
魔王「何で……ッ」
金魔「……何度も言うが、本当に絡繰りなんて解らない、んだよ」
金魔「だが、彼は確かに『魔王にはならなかった』」
魔王「…… ……」
癒し手「でも、不思議です。魔王様の言う様に」
癒し手「……勇者は……人間、なのに」
金髪紫瞳の男「これは……俺にも解らない」
4401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/27(木) 13:43:01.27 ID:Kv9cvE1tP
おむかえー
441名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 13:44:40.91 ID:5WlXoTLgP
てらー
442名も無き被検体774号+:2014/02/27(木) 16:45:17.37 ID:pZO/pUyL0
てらー。
443名も無き被検体774号+:2014/02/28(金) 00:46:00.05 ID:CqmOc80H0
保守っ
444名も無き被検体774号+:2014/02/28(金) 02:52:36.25 ID:mrUAQ+Ea0
保守
445名も無き被検体774号+:2014/02/28(金) 16:37:33.01 ID:GUeglaaY0
鯖落してたなー
回復記念保守
446名も無き被検体774号+:2014/02/28(金) 16:55:04.59 ID:/mYJ5Wagi
SS速報vipも落ちてるしなー
4471 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/02/28(金) 18:11:43.17 ID:4CrBywqhP
あ、やっぱり落ちてたのね
もう書き込めるかな

土日は用事があるので、また月曜に〜
448名も無き被検体774号+:2014/02/28(金) 22:22:45.21 ID:t8V7gyK70
待ってるよー
449名も無き被検体774号+:2014/03/01(土) 17:13:59.84 ID:udrH2GTji
ほしゅ
450名も無き被検体774号+:2014/03/01(土) 20:02:46.32 ID:ieeZFGDk0
マッチョる。ひたすらにマッチョる。
451名も無き被検体774号+:2014/03/02(日) 03:15:01.24 ID:MP3PGQq/0
ほす
452名も無き被検体774号+:2014/03/02(日) 14:11:24.56 ID:NREnFcUx0
保守
453名も無き被検体774号+:2014/03/02(日) 22:21:17.53 ID:Ia4I6ZjxO
454名も無き被検体774号+:2014/03/03(月) 02:39:31.84 ID:6MAfmRho0
保守
455名も無き被検体774号+:2014/03/03(月) 09:39:27.57 ID:oGAbfIaFi
待機ー
4561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 10:32:46.25 ID:VRQZbvv0P
おはよう!
先にお買い物行ってきます!

後ほどー!
4571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 11:29:50.25 ID:VRQZbvv0P
魔王「『魔王にならなかった』んじゃなくて……なれなかった、のかもな」
金魔「……どっちでも良いさ、そんなもん」
金魔「お前が駄目で……女勇者が駄目で」
癒し手「…… ……」
金魔「もし、こいつが、今度駄目だったとしたら、それはそれで」
金髪紫瞳の男「『変わる』か」
金魔「……そうだ」
癒し手「……でも、どこかで、必ず、断ち切る必要があるんです」
癒し手「今度、こそ……!」

……
………
…………

スタスタ

船長「なあ、青年」
青年「ん……船長か。何だい、君……舵握って無くて良いの」
船長「……まだ一人では出来ないんだ。任せてきた」
青年「……幾つ?」
船長「え?俺? ……何でだよ」
青年「子供に見える、からさ」
青年(まあ……魔導師よりかは大きい、か。それでも……)
船長「……そりゃ、まだガキだよ。でも……!」
青年「解ってるよ……『船長』は君だ」
青年「だからこそ、だ。一人では無理でも」
青年「……放って置いて良いのかい」
船長「…… ……」
青年「港街はすぐそこだ……で、何?」
船長「え?」
青年「用事があったから来たんだろう?」
4581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 11:36:21.13 ID:VRQZbvv0P
船長「……アンタ、勇者じゃ無いのか?」
青年「……は?」
船長「だ、だって!勇者は……『金色』何だろう?」スッ
青年「……金の髪の奴なんて、腐るほど居るだろ」ハァ
青年「それに、勇者が金色ってのは……『瞳』の話だ」
船長「え?」
青年「勇者以外、誰も持ち得ない『金の瞳』……『光の加護』」
青年「……どう頑張ったって、瞳の色だけは変える事ができない」
船長「金色の、瞳…… ……あ!」
青年「な、何だよ」
船長「……あ、いや」
船長(少し前に、船から見た……! 海上ですれ違った、小さな船……)
船長(……あの船には、金の瞳の人が乗ってた!)
青年「おい?」
船長(……でも、あの人は金の髪じゃ無かった)
船長(それに…… ……)ブツブツ
青年「おい、ってば」
船長「わぁッ」
青年「……何なんだよ。急に黙って」
船長「あ、ああ……ご、ごめん」
青年「…… ……」
船長「そっか……アンタじゃ無いのか」
青年「……何。勇者を船に乗せたとあれば。船に箔がつくとでも言いたいの」
船長「え!? ……そ、そんなんじゃネェよ!」
青年「……そう」
船長「……なあ」
青年「ん」
船長「さっき、海賊から聞いたんだ」
青年「? 何を」
4591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 11:45:11.35 ID:VRQZbvv0P
船長「……剣士、て人の話、さ」
青年「……ああ」
船長「『逸話』? って言うのか?」
青年「?」
船長「残ってる……てか、聞いた事がある」
青年「…… ……」
船長「母さんが、拾った紫の瞳の人、の話」
船長「まだ母さんが若い頃の話だって言ってた。海のじいさんが人魚に……」
青年「…… ……」
船長「……食われて、死んで、少しした頃に。その人を、母さんが」
船長「最果ての地で、拾った、って」
青年「……らしい、ね」
船長「紫の髪に紫の瞳で、歳を取らない不思議な人だったって言ってた」
青年「…… ……」
船長「魔法剣、って言うのか。剣を媒介にして、様々な魔法を使いこなす」
船長「……凄く強い人だった、って」
青年「それが……どうかしたのかい?」
船長「……行き過ぎた詮索は身を滅ぼす」
青年「…… ……」
船長「それは、解ってるんだ。でも!」
船長「その、剣士って人に会えば、俺……!」
船長「……母さんの事、知る事ができるのかと思って」
青年「君はずっと……この船に乗ってたんじゃないのか?」
船長「昔は、そうだったよ。でも……母さんが死ぬ前に」
船長「俺は一回、この船を下りてる。父さんのじいちゃんの島で暮らしてたんだ」
青年「島?」
船長「行ったら吃驚するぜ……僧侶さんにそっくりの、エルフの像があるんだ」
青年「!」
船長「じいちゃんの趣味は骨董品……てか珍品集め、でね」
船長「……正直あんまりセンス無いと思うんだけど。でも」
船長「あのエルフのお姫様の像は綺麗だった。誰が作ったかは知らないけど」
青年「…… ……」
青年(……あの村長か。あれが……この船長のじいさん)
船長「機会があれば見てみると良いよ。アンタにもそっくりだよ、青年」
青年「…… ……」
4601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 12:16:51.90 ID:VRQZbvv0P
船長「俺が、もう一回船に乗ったのは……母さんが死んだ後だ」
船長「……父さんは船を下りた。海は……もう怖い、んだって」
青年(あの島に……父親がいるのか)
青年(……じいさん、そんな事一言も言ってなかったな)
船長「その時に僧侶さんに会ったんだ」
船長「……僧侶さんと、戦士さん。それから」ジッ
青年「?」
船長「その二人の、子供……青年、って名前だった」
青年「!」
青年(僕も……居たのか!?)
船長「金の髪に蒼い瞳の綺麗な男の子だったよ」
船長「……最果てまで送っていったんだ。俺の初航海だ。忘れるはずも無い」
青年「…… ……」
青年(勇者様が……産まれる前……そうか)
青年(……よく考えれば、解ることだ。こんなご時世)
青年(最果てまでの船なんて。海賊船以外……!)
船長「さっき、始まりの国でアンタの名前を聞いたときにはピンと来なかった」
船長「……だけど、良く考えて見ると……」
青年「その、二人の息子の『青年』と、僕が同一人物だとでも言いたい訳?」
船長「思い出したんだよ」
船長「その子は、『母さんはエルフだから嘘が吐けないんだ』って言った」
青年「!」
船長「それから……『今度は勇者を連れてくるから。その時には又』」
青年「…… ……」
船長「『船長の船に乗せてくれるか?』 ……って。だから」
船長「あの男の子。小さい青年は、実は……勇者だったのかと思ったんだ」
4611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:19:51.37 ID:VRQZbvv0P
青年「……だから僕にあんな事を聞いた、のか」
船長「俺は……何時も、知りたがって海賊達に怒られる」
青年「…… ……」
船長「エルフってのは、不思議な生き物だってじいちゃんが言ってた」
船長「……僧侶さん達を乗せた時に聞いた時は、子供の……」
船長「他愛ない、さ。お話しだと思ってたんだ」
青年「…… ……」
船長「でも、アンタは……『自分は勇者じゃ無い』ってハッキリ否定した」
青年「……本当に違うからな」
船長「そうだな。瞳の色が変えられないってんならそうだろうな」
船長「……僧侶さんは、エルフだったのか?」
青年「…… ……」
船長「アンタも、エルフなのか? あの時の……青年なのか?」
青年「…… ……答える必要は無い、な。海賊からも言われたよ」
青年「お前に、妙な事を吹き込むなって」
船長「否定も肯定もしないんだな」
青年「…… ……」
船長「約束は守ってやるよ」
青年「え?」
船長「剣士って人が、来たら。船に乗せてやる」
青年「…… ……」
船長「母さんの話も聞いてみたい」
船長「それから、もし『青年』が『勇者』を連れてきたら」
青年「…… ……」
船長「その時も。ちゃんと、乗せてやる」
青年「…… ……」
船長「…… ……」

ボーゥ……

青年「!」ビクッ
船長「……着港だ。行かなきゃ」
青年「あ、ああ……」
4621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:25:31.60 ID:VRQZbvv0P
船長「なあ」
青年「……なんだよ。まだ何かあるのか」
船長「アンタは勇者じゃ無い」
青年「……そう言っただろ」
船長「でも、勇者はいるんだよな?」
青年「……ああ」
船長「今度は、ちゃんと答えてくれたな」ニッ
青年「!」
船長「見てろよ、青年! 俺はまだガキだけど」
船長「母さんや、海のじいちゃんに負けない位、立派な船長になって」
船長「約束、守ってやるからな!」

タタタ……

青年「…… ……」ハァ
青年「一人で……好き勝手喋って行きやがって」
青年(立派な船長に、か)
青年(……彼も、運命の輪、の中の一つ……なのか?)

スタスタ

海賊「おう」
青年「……何。別に何も喋っちゃ居ないよ」
海賊「……船長が、剣士の居そうな場所を聞いておけ、ってよ」
青年「先にその話を船長にしたのはそっちだろう」
海賊「解ってる……睨むなよ。責めたい訳じゃ無い」
海賊「……なんか知らんが、立派な海賊になるだの、船長になるだの」
海賊「はりきってんだよ、船長」
青年「……良いんだか悪いんだか」ハァ
海賊「一生懸命仕事覚えようとしてくれるのは……まあ。飯の食い上げに」
海賊「なる可能性が低くなるっつー事だろうよ」
青年「……成る程。でも、残念だけど」
4631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:33:43.80 ID:VRQZbvv0P
青年「剣士が何処にいるか、行くのか……は」
青年「僕には解らないな」
海賊「……そうか。まあ、ならそれで良い」
海賊「俺たちゃ海賊だ……海がある場所なら、何処にでも行ける」
青年「……世話になった。金は言われた通り用意しといたよ」ジャラ
海賊「ああ……じゃあな」
青年「あ、そうだ」
海賊「ん?」
青年「『またな』って……伝えて置いて」
海賊「? 船長にか?」
青年「ああ。『男と男の約束』だって、ね」

スタスタ

青年(……港街、か。さて)
青年(母さんの話では、確か……この辺、か?)
青年(教会に行く道が…… ……!?)
青年(…… ……平地になってる!? 小さい丘があった筈……!)
老婆「何か捜し物かね?」
青年「! ……あ、ああ……この辺に、教会に続く道が」
青年「あったって聞いて……るんだけど」
老婆「教会……? ああ。そういえば会ったらしいね」
青年「らしい……?」
老婆「アタシも最近、始まりの大陸からこっちに来たところなんだ」
青年「!」
老婆「知り合いにずっとこの街に住んでるバァさんが居るけど」
老婆「聞いてみるかい?」
青年「……ああ。お願いできるなら」
老婆「…… ……」ジロジロ
青年「? ……何」
老婆「否。お兄ちゃん綺麗な顔してるな、と思ってね」
青年(何だ、この婆さん……)
老婆「いやいや、悪いね。商売柄、ね……」ハハッ
青年「商売……?」
4641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:38:05.53 ID:VRQZbvv0P
老婆「まあ、それは良いよ。着いておいで」
老婆「この時間なら店にいるはずだ」
青年「…… ……」
老婆「しかしお兄ちゃんも、随分古い話を知ってるんだね」
青年「え?」
老婆「この街の教会がちゃんと教会として、あった時代なんて」
老婆「もう、随分昔だって聞いてるよ」

スタスタ

青年「……母から聞いただけだ」
老婆「ああ、そうかい……ほら、此処だよ」
青年「随分……でかい建物だな。何の……」
老婆「段々人と、需要が増えてね。さ、入っておくれ」

キィ

青年「…… ……」
老婆「すぐに呼んでくる。茶も運ばすよ」
老婆「……まあ、寛いでておくれ」
青年「おい、此処は何の店……」

バタン!

青年「……ッ ……糞。どいつもこいつも、人の話を聞かない……」
青年(ベッド……に、浴室?)
青年(宿……か? それにしては、随分華美だな)
青年(……趣味は悪く無い、が。しかし……)

コンコン

青年「! ……はい」
少女「失礼、します」

カチャ

青年「!」
少女「お茶をお持ち…… ……!?」
4651 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:45:28.98 ID:VRQZbvv0P
青年「……何、やってる」
少女「……貴方、は、青年!?」
青年「! 危ないッ」ガシャン!
少女「あ……ッ 熱……ッ」
青年「……遅かった、か」
少女「ご、御免なさい……」ハッ
少女「……すぐに、片付け……」
青年「手当が先」パァッ
少女「!」
青年「……良し。他には?」
少女「……貴方の方が濡れている。すぐに着替えを……」
青年「良い……中身はただのお湯だろう?すぐに渇く」
青年「……ティーカップとポットは、粉々だけどね」
少女「…… ……」
青年「何処も切ってない。大丈夫だ」
少女「…… ……」
青年「こっちへ……踏むなよ」グイッ
少女「…… ……」
青年「座れよ…… ……此処は、何だ?」
青年「さっきの老婆はどうした。この街に古くから住む婆さんを」
青年「連れてくると言ってたはずだ。君じゃない……何故」
青年「君が来る? ……否、此処に。港街に居るんだ」
少女「…… ……」
青年「少女?」
少女「…… ……」ハァ
青年「此処は、宿か?」
少女「……違う。此処は娼館だ」
青年「娼館!?」
少女「港街に、魔導の街から……娼館が移された話は知っているだろう」
青年「……違う。そうじゃなくて!」
青年「どうして、そんな場所に君が居るんだ!?」
青年「……以前より、腹も目立つ」
少女「!」ビクッ
青年「そんな身体で、君は……!」
4661 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/03(月) 13:48:17.80 ID:VRQZbvv0P
おむかえー
467名も無き被検体774号+:2014/03/03(月) 13:49:33.29 ID:tunDaJWM0
468名も無き被検体774号+:2014/03/03(月) 17:35:02.09 ID:oGAbfIaFi
乙やで!
469名も無き被検体774号+:2014/03/03(月) 22:52:23.84 ID:D2St0pqG0
ほしゅ
4701 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 10:08:35.95 ID:4K1MtLfpP
少女「……客は取っていない」
青年「え……?」
少女「貴方の様に、此処に通された客に……茶を振る舞ったり」
少女「その客が買った女が来るまでの話し相手、をしているだけだ」
青年「……僕は客じゃ無いぞ」
少女「解って居る……だが」
青年「あわよくば、って事か……全く」ハァ
青年「しかし、だからってな。お前、そんな身体で……」
少女「……金も何も持たない身重の女が、安くても給金を貰えるだけ」
少女「ありがたいと思わねばならんのだろう」
青年「……他に、仕事なんて幾らでもあるだろう?」
青年「今は……それで良いかもしれないけどね。お茶出して、喋って……」
青年「……産まれたらどうするんだ。身体が回復すれば……!」
少女「客を取れと言われるだろうな」
青年「!」
少女「……老婆はその後、やりたければやれば良いと言っていたが」
少女「随分、世話になっている……恩を返せと言われるだろう」
少女「……客と居る間、手の空いている女達に子供を見て貰う事も可能だし、な」
青年「お前、解ってるなら、何故……!」
少女「善意だけで、困ったときはお互い様、なだけで」
少女「……こんな待遇に置いてくれている等とは流石に思わない」
青年「…… ……」
少女「今回を例にとっても解る……こうして、顔と名を売れば」
青年「産んだ後、客の覚えがあれば売れるだろう、ってか……!」
少女「……私に、他に出来る事等」
青年「馬鹿か、君は!」
少女「…… ……」
青年「……そりゃね。君がそれで良いって言うのなら、止める権利は無い」
青年「この仕事をしてる人達を蔑む気も無い。だが……!」
青年「…… ……」ハァ
少女「不思議だな」
4711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 10:24:45.83 ID:4K1MtLfpP
青年「何がだよ」
少女「……あの時、私を放って……転移、だったか」
少女「逃げ出した貴方達が。貴方が……今更、私の何を案じる必要がある」
青年「…… ……」
少女「……ご免なさい。責めている訳では無いんだ」
青年「……否。責められても当然だろう。確かに僕達は……」
少女「私まで助ける義理は無かった、んだろう?」
青年「…… ……まあ、ね」
少女「ならば尚更だ。何故今になって?」
青年「……后様は気にしてた。少女は大丈夫だったか、と」
少女「それだけか?」
青年「知らせてやれば、ほっとはするだろうけどね」
少女「驕りで無ければ……貴方自身の言葉の様に聞こえたけれど」
青年「……子供に罪は無いんだ」
少女「貴方と……何の血の繋がりも無いのにか」
青年「そう言う問題じゃ無い。蔑む気は無いとは言ったが……!」
少女「……此処でこうして産まれ、育てば、か」
青年「…… ……」
少女「二の轍を踏ますのは、な。確かに……な……」
青年「……本当に。解って居るのなら」
青年「もう少し、考えればどうだ」
少女「…… ……」
青年「始まりの国を焼け出された人は君だけじゃ無いだろう」
青年「……こんな、安易な道に逃げなくても」
青年「救済の手立ては、あった筈だ!」
少女「……そう、だな」ハァ
青年「…… ……」
少女「…… ……」
青年「まあ、良いよ……確かに。僕には関係の無い話だ」
青年「君がどうなろうと。君と……衛生師の子が、どうなろうと」
少女「…… ……」
4721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 10:40:01.50 ID:4K1MtLfpP
コンコン

少女「!」
青年「……あのババァか」

カチャ

老婆「お待たせ……おや、まあ」
少女「あ、すみません……すぐに片付けます」
老婆「ああ、悪かったねお兄ちゃん、とんだ粗相を……」
青年「……良いよ、怪我も無いし。それより、アンタの知り合いの婆さんってのは」
青年「どうしたんだ」
老婆「ああ、今手が離せなくてね……どうだい、お兄ちゃん。時間があるなら」
少女「…… ……」カチャカチャ
青年「此処が娼館だって最初からなんで言わなかったんだ」
老婆「ん? ……ああ、別に、ね? 女を買う気が無かったのなら、ほら」
老婆「関係無いだろう?」ニヤニヤ
青年「……フン。で、時間があるなら何だって言うんだい」
老婆「いや、ね。粗相もしちまったみたいだし」
老婆「……どうだい。少し割り引いておくよ。そうやって待ってりゃ」
老婆「時間なんてあっと言う間だ」
青年「……どれぐらい、掛かるの。そのばあさんは?」
少女「!?」
老婆「ん? そうさねぇ……まあ、1時間……否」
老婆「2時間ぐらいかな」
少女「お、おい……いや、あの!?」
老婆「ほら、さっさと片付け!」
少女「…… ……」チラ
青年「……2時間、ね。じゃあ、新しいお茶持ってきて」
青年「話し相手してくれるかい」
少女「……わ、たし?」
老婆「え? いや、この子は……」
青年「彼女でないなら帰る。日を改めるよ」
老婆「……いやいや。構わないけどね。でも、この子は身体が……」
青年「話し相手、って言っただろ」
4731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 12:27:49.71 ID:4K1MtLfpP
青年「身重の女を抱く趣味なんか無い……し、他の女にはもっと興味が無い」
老婆「おやおや、まあまあ……そうかい。それはそれは」ニヤニヤ
老婆「じゃあ、此処はアタシが片付けておくとしようかね」

スタスタ

少女「あ……すみません」
老婆「ほうら、ね。お茶出しでもこういう奇特な客が居るんだから」ボソ
少女「…… ……」
青年「……良いよ、此処で。面倒臭い」
老婆「そうかい? じゃあ、すぐに片付けるからね」
老婆「魔法使い、アンタはすぐに新しいお茶を用意しておいで」
青年「!? 魔法使い!?」
少女「あ…… ……いや、あの」
老婆「何だ、この子自己紹介もしてなかったのかい」
少女「…… ……」フイッ

スタスタ、カチャ、パタン

老婆「いやあ、でも良かったよ。あの子は何て言うかね」
老婆「……ま、あんな身体じゃ、仕方無いけど」
老婆「中々綺麗な顔してるんだから、もっと笑えば良いのにねぇ」

カチャ、カチャ……

青年「…… ……」
老婆「何、産まれて少し経てばね。ほら……まだ若いしね」
老婆「うん、でも良かったよ。アンタみたいな綺麗な兄さんに気に入られたら」
老婆「魔法使いも、嬉しいだろうよ……良し、と」
老婆「じゃあ、まあ……2時間程度。ごゆっくり?」

スタスタ、パタン

青年「…… ……」ハァ
青年(本当に良く喋るババァだな)
青年(……2時間、か)

カチャ

少女「……貴方は、何を考えて居るんだ!?」
青年「今度は零さないでくれよ」
少女「青年!」
4741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 12:58:49.58 ID:4K1MtLfpP
青年「心配しなくても、そんな気になんかなれないよ」
青年「……あの後の事を聞きたかっただけだ」
少女「あの後の事……ああ。貴方達が消えてから、か」
青年「それから、君の名前の事も、ね」
少女「…… ……」
青年「何故、『魔法使い』だ等と名乗った」
少女「……解らない。あの老婆に名を問われたときに、つい口から出ただけだ」
青年「本名を名乗るのは厭だったのか」
少女「……それも、あるのかもしれない。でも……」
少女「本当に……自分でも解らないんだ」
青年「……フン。まあ、別に何でも良いけど」
少女「…… ……」
青年「で?」
少女「え?」
青年「あの後の事、だ。衛生師は外に飛び出していっただろう」
少女「……彼のその後は解らない。すぐに……姿は見えなくなった」
少女「衛生師は……あの炎からは逃れられなかった筈だ」
青年「君は……炎の優れた加護を持っている、んだろう」
少女「……でなければ、助かっていない」
少女「私も、一つだけ聞いても良いだろうか」
青年「……聞くだけなら、どうぞ」
少女「あの時……貴方達が消える直前……否。急に炎が噴き出した時の事だ」
青年「…… ……」
少女「魔法使いさん……后、だったか? 彼女……は、『熱い』と」
青年「魔法の事に関しては、僕に聞くまでも無いだろう、君は……」
少女「……ああ、いや。そうじゃ無い」
少女「彼女が、優れた加護を持っていないと言うのは……それは」
少女「勿論……初めは驚いた、が。そうでは無くて」
青年「……何だよ」
少女「……あれは、勇者様から放たれた様に見えた」
青年「…… ……」
4751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 13:22:11.91 ID:4K1MtLfpP
少女「優れた加護を持たないならば、自らの魔法でも怪我をする事は解っている」
少女「……だがあの時、彼女は……勇者様を抱いている腕に、火傷を負ったように」
少女「見えた。だから…… ……だが」
青年「……だが?」
少女「あの赤子は、勇者……『光の加護』を受けている、んだろう?」
青年「…… ……」
少女「…… ……」
青年「…… ……」
少女「……聞くだけならば、だったな」
青年「君は」
少女「?」
青年「僕達が……消えた後。あの炎の中を逃げ出した、んだな」
少女「……そうだ。衛生師の姿は見失ってしまったし」
少女「いくら……炎に焼かれる事の無い身だとは言え」
少女「……腹に、子も居る。それに……崩れてくるだろう瓦礫や」
少女「倒れるだろう木から逃れる術は無い」
青年「…… ……まあ」
青年「こんな状況に身を置かれても、死のうとしないだけ……」
青年「偉そうな言い方かも知れないが。褒めてやるよ」
少女「…… ……」
青年「衛生師が発したあの『呪いの言葉』」
少女「…… ……」
青年「女の声だった。君は『お姉さま』だか何だと言っていたな」
少女「……忘れる筈の無い声だ」
少女「この世を、私を……『世界』を怨んで、死んで行ったのだろう」
少女「あの……衛生師の行動の絡繰りは解らない」
少女「彼は、確かに好奇心旺盛だった。知識を生かし、怪しげな研究をしていたのも」
少女「知って、は居た」
青年「研究?」
少女「私には知識が無いから良く解らないが。薬草?だとか何だとから……」
少女「良く解らないが……薬、の様な物を作っていたらしい」
青年「…… ……薬」
少女「そこは本当に良く解らない。が…… ……あれは」
少女「彼の実験……の類では無い、んだろうな」ハァ
青年「君達人間には解らなかった、だろうが」
少女「え?」
青年「……始まりの大陸は、黒い靄の様な物に覆われていた」
青年「魔導師も言ってたな。何も見えないし特に何かを感じる事もないけれど」
青年「妙にイライラする、てね」
少女「……黒い、靄」
4761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 13:31:02.93 ID:4K1MtLfpP
青年「『とてつもない悪意』『激しい憎悪』……『呪い』」
少女「!」
青年「……呼び方なんてどうでも良いけど。様するにあれは」
少女「……お姉さまの、怨念、か」ハァ
青年「だろうな。愚かな人間の末路だと。君も言ってたな。あの時」
少女「貴方には……見えていたのか」
青年「剣士にもね」
少女「! そうだ、あの男……!」
青年「……君には今更だ。詳細を話す気は無いが……后様にも見えていた」
少女「……優れた加護等」
青年「え?」
少女「それこそが至上、至高だと領主様達……魔導国の人々は言っていたが」
青年「……君もだろう」
少女「ああ……」
少女「……だが、魔法使いさんを……剣士や、彼女のあの魔力……」
少女「見てしまえば……そんな物だけに拘っていたのが馬鹿らしく思えた」
青年「…… ……」
少女「『出来損ない』だと呼ばれる筈の……立場に居たであろう彼女の」
少女「あの魔力は、能力は……凄まじい……!」
青年「…… ……」
少女「……だが、逆に」
青年「?」
少女「あんな物を見てしまえば、私達……『領主の血筋』とやらに」
少女「『古の魔の血』が混じっていると言われても、不思議では無いなと思ってしまう」
青年「!」
少女「……否、あ、あの。だからと、秘書と同じように……盲信している訳では……!」
青年「あ……ああ…… ……」
青年(『魔の血が混じってる』……まさか……ッ!?)
少女「青年?」
青年「!」ハッ
青年「……否。何でも無い」
青年「そうだな……そう思ってしまいそうになる、と言う気持ちは解る」
4771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 13:39:42.12 ID:4K1MtLfpP
青年(后様は、今は魔だ……元、人間の)
青年(僕は、その絡繰りを知っているから……転移しようが、遠見しようが)
青年(そんな物だと、知っているから……思いつかなかった。けど)
青年(……まさか……!)
少女「彼女は……何者なんだ?」
青年「え?」
少女「……『出来損ない』だからと、言いたい訳じゃ無い」
少女「この言葉も……その。使いたくて使っている訳では無いんだ」
青年「……まあ、それは良いよ。此処には僕しか居ないし」
少女「……ありがとう」ホッ
少女「彼女は、確かに優れた魔法の使い手だ。凄まじい魔力を持っているんだろう」
少女「だが、ただの人間に……あんな事ができる物なのか?」
青年「……聞くだけなら、と言った筈だ」
少女「…… ……そうか」
青年「…… ……」
少女「否、良い…… ……私は、もう魔導国の……否、書の街の人間でも」
少女「王妃、でも無い…… ……私は」
青年「……『魔法なんて使い様』」
少女「え?」
青年「『願えば叶う』…… ……そう言う事だ」
青年「……願ったところで、母さんは生き返らないけれどね」
少女「! ……貴方、は」
青年「言った筈だ。僕は僧侶と戦士の子供。エルフの血を引く……」
少女「……やっぱり、あの青年、なんだな」
青年「エルフは嘘はつけない」
少女「……産まれてすぐに、私は貴方に会っている」
青年「え!?」
少女「僧侶さんは、始まりの国で貴方を生んだんだ」
少女「……私は『王妃になる者』として、城に居た」
青年「…… ……ああ、そうか。そう……か」
少女「……亡くなった、のか」
青年「そう言っただろう」
4781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 13:49:34.35 ID:4K1MtLfpP
少女「……悪かった」
青年「…… ……」
少女「優しそうな人、だった。貴方と同じ蒼い…… ……」ジッ
青年「……? 何」
少女「……王が、言っていた」
青年「は?」
少女「思い出した。あ、ああ……否……」
青年「……なんだよ。ハッキリ言えよ」
少女「……私は、緑だと言ったんだ」
青年「? だから、何が…… ……」
少女「貴方の瞳だ……今の、貴方は……」
青年「…… ……?」
少女「僧侶さんと同じ、蒼」
青年「……そうだな。僕は水の加護を受けている」
少女「産まれたばかりの貴方を見た時…… ……私には、緑に見えた」
少女「それを王に伝えたら、蒼だ、と言い切られたのを思い出した、んだ」
青年「……何が言いたいのかさっぱりわからないんだけど」
少女「王は……貴方が僧侶さんにそっくりだと安堵していた」
少女「……戦士さんは、確か優しそうな緑の瞳をしていたな」
青年「父さんは……緑の加護を受けているからな」
少女「……王は、貴方の中に戦士さんの面影を見つけるのが厭だったんだろうが」
少女「あの時の、貴方の瞳は、確かに…… ……」
青年「似た色だよ。光の加減で蒼にも、緑にも見えても不思議じゃない」
少女「王だったか、衛生師だったか……他だったか忘れたが」
少女「……確かに、そう言われた覚えもある」
青年「……だから、何が言いたいんだ、よ」
少女「否……瞳の色を変える事だけは、出来ない」
青年「…… ……」
少女「ふと……思い出しただけだ。話の腰を折って悪かった」
青年「…… ……」
少女「……何の話を、していた……かな」ハァ
4791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/04(火) 13:50:58.96 ID:4K1MtLfpP
おむかえー
480名も無き被検体774号+:2014/03/04(火) 13:54:54.47 ID:WvACSwR50
>>479
いてらー
481名も無き被検体774号+:2014/03/04(火) 16:37:00.38 ID:r7wJ1aZDi
ほしゅ
482名も無き被検体774号+:2014/03/04(火) 22:56:59.64 ID:zzotH6od0
ほしゅー
483名も無き被検体774号+:2014/03/05(水) 08:13:08.75 ID:hdBP+hw3i
ほしゅっ
484名も無き被検体774号+:2014/03/05(水) 15:58:53.29 ID:hdBP+hw3i
もいっちょ
485名も無き被検体774号+:2014/03/06(木) 01:30:28.37 ID:ys0pwY100
486名も無き被検体774号+:2014/03/06(木) 06:32:35.72 ID:dk0Acv8y0
ほしゅ
4871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/06(木) 18:27:10.16 ID:ZBtEY4360
p2落ちてるみたい……
こっち書き込めるかしら
4881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/06(木) 18:29:44.02 ID:ZBtEY4360
あ、いけた。
お風呂まで少しだけ
4891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/06(木) 18:41:44.49 ID:ZBtEY4360
青年「…… ……」
少女「ああ、あれからどうなったか、だったか」
少女「……私が、貴方に伝えられる事は……もう、無いな」
青年「衛生師は死んだ……のか」
少女「……あの炎の中をフラフラとしていれば、そうだろうな」
青年「どこかで見た、と言う話とかは無かったのか?」
青年「あの国から出るには、あの港から船に乗るしか無い。それに」
青年「……偽物であれ、彼は『王』だったのだろう」
少女「衛生師が『王』を名乗りだしてから、彼の姿を見たのは」
少女「私と、城内警備の近衛兵だけだろう」
青年「……ああ、そうか。立入禁止、だったんだっけ」
少女「『衛生師』の顔を知っている者は多いはずだが……」
少女「……そんな話は、聞いていない。城一つ、街一個……」
少女「壊滅してしまうほどの火事だ……被害も大きかった筈だし」
少女「……皆、自分の事で手一杯で当然だろう」
青年「そうだな……」
少女「もし、生きていたとしても……」
青年(あの黒い靄。黒い触手……あれに、飲まれていたら)
青年(……どちらにせよ、タダではすまない、か)ハァ
少女「……力になれなくて、すまない」
青年「…… ……君、って人は」
少女「?」
4901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/06(木) 18:53:04.12 ID:ZBtEY4360
青年「…… ……」
少女「な、何だ」
青年「知りたい、とか。そう言う欲は無いの」
少女「え?」
青年「否、そう思われたって困る、んだけどね……でも」
少女「……疑問を口にし、問う割に……と言いたいのか?」
青年「物わかりが良すぎる、と言えば……聞こえは良いかもね」
少女「……人形の様だと言われたな」
青年「王に、か」
少女「衛生師にも……否。彼には、そんな風に言うな、とかな」
青年「…… ……」
少女「その癖、柳のように何でも受け流す事は得意なのだろう、と」
少女「……そんな事も言われた、かな」
青年「……君は」
少女「?」
青年「王を愛していたのか?」
少女「……二択の選択肢しか無いのだとすれば、NOだな」
青年「……じゃあ、衛生師か」
少女「…… ……それも、NOだ。多分」
青年「…… ……」
少女「王に……そうだな。情、はあったと思う。似ていると思ったことも」
青年「君と?」
少女「ああ。『責任』を押しつけられた傀儡に似た何か」
青年「…… ……」
少女「事実、そうであったかどうか、じゃ無い」
少女「そうであるに過ぎない、違い無いと……思ってしまっている節があった所」
少女「……かな」
青年「……君は書の街の代表者だったな」
少女「私は……ただのお人形さんだ。秘書達旧貴族の。王の妃と言う名ばかりの」
少女「……随分と立派な、鳥籠の中の」
青年「君のその、柳の様な何とかってのは」
青年「……傷付くのを防ぐ為の術だとでも?」
少女「『諦め』? ……そうだな。そうなのかもしれない」
少女「……『それ』は『そういうもの』なのだと」
少女「文言通りを受け入れられれば、何も揺らがないから」
青年「……ふぅん」
少女「…… ……」
青年「まあ、良いよ。こっちにとって不都合は無いしね」
少女「……興味を持たれないこと?」
青年「それもある……説明してやる義務は無い。僕にはね」
少女「……魔法使いさんと、勇者様は、元気にしていらっしゃるのだな?」
青年「え? ……あ、ああ。まあ、それは」
少女「貴方は、勇者様と共に行くのか」
青年「……勇者様が、選ぶ事だ」
少女「そうなのか?」
青年「そりゃそうだろう。誰も彼もついていきます!なんて言って」
青年「それを全て受け入れて居たら、どんな大所帯になる」
青年「……選ばれし光の子に、選ばれた一行。それが」
青年「『勇者達』だろう?」
491名も無き被検体774号+:2014/03/06(木) 22:39:16.79 ID:iBrN1rQ50
勇者様御一行
そんなの来たら流石に魔王も涙目(´Д` )
492名も無き被検体774号+:2014/03/06(木) 23:13:06.26 ID:fi5+vQZ/0
>>491
随分前にだれかが書いてたな、勇者が一個大隊クラスのパーティーを引き連れるSS
493名も無き被検体774号+:2014/03/07(金) 00:52:42.53 ID:hF1YH3a10
そういえば最初らへんにこれをまとめてどこかの出版社に持ってくって言ってたよね?
あれどうなったの?
494名も無き被検体774号+:2014/03/07(金) 14:48:52.33 ID:RWj1iucFi
495名も無き被検体774号+:2014/03/07(金) 23:50:04.42 ID:+oDqUvoj0
まとまってから考えようぞ
496名も無き被検体774号+:2014/03/08(土) 08:38:35.12 ID:EZLa2YVR0
497名も無き被検体774号+:2014/03/08(土) 15:50:22.25 ID:xu/p4rJbO
498名も無き被検体774号+:2014/03/08(土) 23:11:09.61 ID:ODDH4qyQ0
薄い本ならすぐにも出せそうな人いたけどなー
チラッしてももう居ないかも知れないが
499名も無き被検体774号+:2014/03/09(日) 01:42:25.75 ID:+AWA/5eg0
対話体形式ならこのままでもいいかもしれないけど
加筆修正は当たり前にしなきゃいけないだろ
てめえで持っていくならいいけど勝手にまとめて持ってくのはバカだな
500名も無き被検体774号+:2014/03/09(日) 12:36:44.78 ID:5wSJta+Ri
とりあえずホシュ
501名も無き被検体774号+:2014/03/10(月) 02:03:38.62 ID:C0DXSLyhi
502名も無き被検体774号+:2014/03/10(月) 04:30:23.34 ID:/J+YQp1S0
しゅ
5031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/10(月) 09:39:18.09 ID:b3MkO+0V0
おはよう!

ちょっと体調不良でくったりしてます
のんびりー

p2駄目なんだね。規制大丈夫かなぁ
504名も無き被検体774号+:2014/03/10(月) 11:04:27.37 ID:C0DXSLyhi
運営がゴタゴタしてるからねえ。
無理せずお休みよー。
505名も無き被検体774号+:2014/03/10(月) 22:48:17.42 ID:5VabBWJvi
長寿スレにはありがちな事
ユックリして治ったらまたお話きかせてな

お休みスコーン
506名も無き被検体774号+:2014/03/11(火) 09:55:22.55 ID:Ap8ohys1i
保守するよ!
507名も無き被検体774号+:2014/03/11(火) 23:03:03.22 ID:wmx5iC5E0
508名も無き被検体774号+:2014/03/12(水) 05:49:15.07 ID:v8vpoFZe0
509名も無き被検体774号+:2014/03/12(水) 08:09:34.52 ID:bMpF6vxZ0
ゅ☆
5101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 09:59:05.50 ID:qhb22RQz0
少女「…… ……」
青年「何だよ」
少女「そう、だと解って居て、何故そこまで必死になれるんだ」
青年「……は?」
少女「自分が選ばれると決まった訳では無いのに……」
青年「…… ……」
少女「僧侶さんや戦士さんが、元勇者一行だから、か?」
青年「決まっては居ないけど、自信がある……そうにでも、見える?」
少女「否定はしない。だけど」
青年「選ばせれば良い」
少女「……その、保証も…… ……」
青年「無いのに何故、って?」
少女「…… ……」
青年「常に受け身で居たって、何も始まらない」
青年「……待っているだけで、望む状況が天から振ってくる、来てくれる」
青年「君は本当に、そう信じるの?」
少女「…… ……」

チリン、チリン……

青年「? 何の音だ」
少女「……時間、だ」
5111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 10:08:30.51 ID:qhb22RQz0
青年「……ああ」
少女「老婆等の目的も果たされた……すぐに、来るだろう」
青年「…… ……」
少女「ありがとう、青年」
青年「……別に礼を言われる様な事、しちゃ居ない」
少女「…… ……」

スタスタ、カチャ

少女「…… ……」
青年「行かないのか」
少女「……否」

パタン

青年「…… ……」ハァ
青年(お節介だな、僕も)

カチャ

老婆「どうだった? ……楽しい時間だったかい」
青年「……もうこれ以上文句を言うのも疲れる」
青年「見え見えのお前の手に乗ってやっただろう?」
老婆「まあまあ、そう言いなさんな……ちゃんと連れてきたよ」

カチャ

館長「私に用事があるってのはアンタかい、兄さん」
青年(……似た様なババァが二人、か)ハァ
青年(少女は、こいつ等の何処をどう見たら、純粋な人助けをしてくれそうに)
青年(見える、ってんだ?)
青年「……教会の事を聞きたいんだ」
館長「教会の何を、だい」
青年「墓があっただろう。始まりの国の小高い丘の上に。移されたと言うのは聞いている」
館長「ああ、そうだね……それで?」
青年「あの教会は朽ちる侭そのままに……そう言う約束だった筈だ」
青年「何故更地になってるんだ?」
館長「……アタシが買い上げたんだよ」
青年「何……?」
館長「この娼館だけじゃ、手一杯になって来たからね」
青年「!?」
館長「始まりの国のあの火災で、どれだけ人が流れてきたと思う?」
館長「……ま、働き手が増える事は、アタシにはありがたい話さ」
青年「王は、あのままにしておく事を了承していたはずだ!」ガタン!
5121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 10:17:30.93 ID:qhb22RQz0
館長「もう居ない王に、アタシら港街の住人が」
館長「何故従う必要がある」
青年「……ッ」
館長「結構前から王は替え玉だって噂、あったんだよ、兄さん」
館長「……頭がおかしくなっちまった、もう死んじまった、てね」
青年「お、お前達は、おば…… ……盗賊様の……!」
館長「恩を忘れたとでも責めたいのかもしれないけどね、兄さん」
館長「……アタシ達は生きていかないと行けないんだよ」
館長「さっきの魔法使いだってそうだ」
青年「…… ……」
館長「身重の身で。金も無く。ねぇ?」
館長「居るんだよね。金で女を買いに来た癖に、偉そうに説教する奴ってのはさ」
青年(聞かれていた!? ……否、それは無い筈だ)
館長「アンタだって、話だけ、だなんてさ?」
館長「格好つけているつもりかい? ……否、別にね。金さえ払って貰えれば」
館長「アタシとしてはそれで良いんだよ」
青年「……それと教会の話と、何の関係がある」
館長「変わってく、んだよ、兄ちゃん」
青年「…… ……」
館長「何時までも昔に縋ってちゃ何にもならない」
館長「……魔法使いだって、考えるさ。何れ」
館長「この老婆がね、厭ならやめれば良いって言ったのは事実だし、嘘じゃ無い」
館長「あの娘が、子を産んで、その後、自分で考えて『変わって』行くんだよ」
青年「だが……!」
館長「『過去』に固執した侭の『現在』を『未来』にして」
館長「……それは、必ずしも幸せなのかい?」
青年「…… ……ッ」
館長「アタシ達も、魔法使いも」
館長「……アンタだって。生きていかなくちゃ行けないんだ」
館長「『不変』を守って行く事だけが、未来の幸せに繋がる訳じゃ無い」
館長「……もう無い国に。もう亡い救世主……盗賊、って人に」
館長「操を立て続けて、食える飯があるかい?」
青年「…… ……ッ」
5131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 10:28:53.13 ID:qhb22RQz0
館長「……話は、終わりだね」
青年「…… ……」カタン
館長「又ね、兄さん」
青年「……もうこんな場所に用事は無いよ」

スタスタ

老婆「魔法使いに送らせようか?」
青年「結構」

バタン!

青年(『過去』に固執した『現在』に、幸せな『未来』は無い?)
青年(……糞。見透かされた訳でもあるまいし)ハァ
青年(僕達がやっている事は、模倣なのか?)
青年(……僕達は、間違えて居るのか?)
青年(母さん…… ……)
青年(…… ……)

……
………
…………
5141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 10:48:03.51 ID:qhb22RQz0
おむかえー
515名も無き被検体774号+:2014/03/12(水) 10:54:19.10 ID:xr9Ump4q0
乙ー
5161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 14:29:30.48 ID:qhb22RQz0
剣士「……此処から、北に向けて発ったのが……二週間前、か」
娘「それぐらいかな。航路とか良く解りませんけど……」
剣士「否……充分だ。ありがとう」

スタスタ

剣士(北、か……鍛冶師の村か、北の街)
剣士(……鍛冶師の村、か。寄っても良い……が)
剣士(二週間。ギリギリか……)

カチャ

司書「いらっしゃいませ……お探しの本はおきまりですか?」
司書「此処は広いですから。お手伝いさせて頂きますよ」
剣士「……人を探しに来た。深い青の瞳に、茶の髪の」
剣士「少年は、来ていないか?」
司書「ああ、魔導師君かな? ……今日は、あっち……あの緑の棚の辺りに居ますよ」
剣士「……ありがとう」

スタスタ

魔導師(……成る程。こっちが、これだとすると……)ペラペラ
剣士「…… ……」
魔導師(あっちの本……あ、あれ此処じゃないや。えっと……)クルッ
魔導師「…… ……ッ け、け……ッ」
剣士「シッ」
魔導師「……ど、どうしたんですか!?」
剣士「静かにしろ…… ……様子を見に来る、と言ってあっただろう」
魔導師「……はあ、でも、こんなに早く……」
剣士「……海賊船の目撃情報を追いかけてたら、な」
魔導師「船長さんの船、ですか……」
魔導師「……青年さん、は?」
剣士「港街に向かった後は解らん。奴からは接触できる、だろう」
魔導師「小鳥、ですね……まだ便りは無い、んですか」
剣士「どうだ?」
魔導師「え? ……あ、ああ。僕ですか」
魔導師「……正直、どれだけ時間があっても足りないんじゃ無いかと思います」
魔導師「でも……気が済んだら、南の島に戻ります」
剣士「……ああ。まだ、時間はある」
魔導師「剣士さんは……今から何処へ?」
剣士「北へ向かったらしい……鍛冶師の村か、北の街か」
魔導師「……お願いがあります」
剣士「? 何だ」
魔導師「寄るのなら、で良いです……息子さんから」
剣士「……本を借りてこい、と?」ハァ
魔導師「此処にも、詳しい本は結構ありました。でも」
魔導師「……やっぱり、あれ……必要です」
剣士「……本当にお前は、さらっと無茶を言う」
魔導師「すみません。でも……」
剣士「……努力はしてみる」
魔導師「ありがとうございます!」
5171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 14:35:46.68 ID:qhb22RQz0
剣士「頻繁に顔を出す訳には行かないが……」
魔導師「合流した後でも良いですよ。本は……后様にでも」
魔導師「預けて置いて下されば」
剣士「……お前も青年も」ハァ
魔導師「? はい?」
剣士「人を便利屋か何かと勘違いしていないか」
魔導師「……そ、そんな事ありませんよ!」
剣士「まあ、良い……俺は、鉱石の洞窟に行った後」
剣士「すぐに、あの……南の島に戻る」
魔導師「……はい」
剣士「ついでに、これを」ガシャン
魔導師「わッ ……!?」
剣士「……何が重要なのかは解らんからな。持てる物だけだが」
魔導師「! これ、鍛冶師様の……!?」
剣士「大がかりな物は……起きっぱなしだ」
魔導師「あ……ありがとうございます!」
剣士「……じゃあな」

スタスタ

魔導師「剣士さん……はい!」

パタン
ゴリヨウアリガトウゴザイマシタ……

魔導師(……僕には『僕』が授かった『知』がある)
魔導師(できる限り、知り得る限りを、学んで……)
魔導師(……南の島へ。勇者様の元へ……!)

……
………
…………
5181 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 14:49:27.67 ID:qhb22RQz0
息子「……綺麗になりましたね、随分」
シスター「そうね。これで、後は……遊具が揃えば」
息子「船で運んでくれるそうですからね……もう数日すれば」
息子「着くんじゃないですか」
シスター「……仕方無い、って解って居るけど」ハァ
息子「海賊船、て言ったってね。何も、荒らして回るとか」
息子「略奪行為を繰り返す、とか……そう言うのじゃ無いらしいですよ」
シスター「らしいわね。まあ、信じるのなら……だけど」
息子「義賊みたいな物なんですかね」
シスター「だったら、海賊だなんて名乗らなければ良いのに」
息子「……まあ、まあ。助かる事に変わりは無いでしょう」
シスター「…… ……そうだけど」
息子「……船長、はまだ、ほんの子供だそうですよ」
シスター「え!?」
息子「……元気に、してますかね。魔導師」
シスター「…… ……」
息子「シスター……あの。貴女が、彼を心配しているのは、解って居ます」
息子「でも……」
シスター「……過剰に反応してしまっているだけ、ていうのは」
シスター「私にも……解って居ます。でも!」
5191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:12:12.12 ID:qhb22RQz0
息子「…… ……」
シスター「……もう一杯、如何」
息子「あ……いえ、俺は…… ……いえ。頂きます」
シスター「無理しなくて良いのよ?」
息子「付き合います。折角のお誘いですから」
シスター「……そう?」
息子「子供達も寝てしまいましたしね」
シスター「……兄が、よく見てくれる様になったから助かるわ」
シスター「魔王が……復活する、のよね」
息子「…… ……」
シスター「魔物の数が増えて、強くなって……」
息子「……勇者様は、どうなってしまった、んでしょうね」
シスター「…… ……」
息子「……黒髪に金の瞳の勇者様達も」
シスター「始まりの国は……本当に滅んでしまったの?」
息子「噂では、ね」
シスター「……新たな勇者様が、折角……現れた、と言うのに」ハァ
息子「魔法使いさん、ですよね」
シスター「え?」
息子「……『帰還者』」
シスター「……戦士さんと僧侶さん以外には、彼女しか居ないでしょ」
息子「……黒髪の勇者の、娘」
シスター「行方は……解らない、のよね」
息子「そう言う話、ですね。始まりの大陸にはもう、誰も……」
シスター「…… ……このまま、魔物達の力が強くなっていって」
シスター「このまま、魔王が復活したら……!」
息子「…… ……」
シスター「良かった、のかしら」
息子「え?」
シスター「確かに、鍛冶は……もう、この村では出来ない。でも!」
シスター「私達は……間違えたんじゃないかって……!」
息子「…… ……」
シスター「戦争の道具。人を傷付ける物……もう、魔法剣なんて……!」
シスター「今でも、確かにそう思うわ。でも……!」
5201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:16:55.05 ID:qhb22RQz0
コンコン

息子「!」
シスター「!」ビクッ
息子「……こんな時間に、誰が……」
シスター「あ、兄かしら……子供達に、何か!?」

コンコン

息子「はい……どなた、ですか?」
シスター「…… ……」
剣士「……俺だ」
シスター「!?」
息子「え!?」
剣士「……剣士だ」

カチャ

息子「剣士さん!?」
剣士「……ああ」
シスター「まあ、貴方…… ……! 魔導師は!?」
シスター「魔導師は、一緒じゃ無いの!?」
息子「シスター、落ち着いて……」
剣士「その魔導師に頼まれてきた」
息子「え?」
剣士「……否、先に……船は、来たか?」
息子「船……?」
シスター「……入りなさいよ。息子さんと私しか居ないわ」
剣士「…… ……ああ」
息子「あ、す、すみません!」

パタン

シスター「何故……貴方一人なの……いえ、どうやって来たの!?」
シスター「こんな時間に……!!」
息子「シスター、落ち着いて……ね」
5211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:25:11.59 ID:qhb22RQz0
シスター「…… ……ッ」
剣士「定期便が、機能していないのは知っている」
剣士「……この村に、用事のある者は、もう余りいないのだろう」
息子「それを知っている貴方が……どうやって来たのかは解りませんけど」
息子「……貴方ほどの腕の方だ。まあ……どうにでもなる、んでしょうね」
剣士「…… ……」
息子「船、と言うのは?」
シスター「待って!」
息子「な、何です」
シスター「どうなっているの!? 貴方達、始まりの国の船で……!」
シスター「魔導師は!? あの、もう一人の男性は……」
シスター「勇者様は、魔法使いはどうなったの!?」
剣士「……知りたければ話す、が。船の話を先に」
シスター「貴方ねぇ……!?」
剣士「時間が無いんだ、シスター」
剣士「……海賊船が、北に向かって行ったと聞いた。行き先はこの村か?」
息子「貴方が、海賊船に……用事、があるんですか」
剣士「…… ……」
息子「…… ……」ハァ
息子「……貴方には、世話になっています。隠すつもりはありません」
シスター「息子さん!」
息子「それを教えれば、俺達の質問にも答えて貰えますか?」
剣士「……時間が許すなら。答えられる範囲なら」
息子「充分です……心配、しているだけなんです」
息子「……海賊船なら、二、三日中にこの村に着きます」
剣士「間に合った、か」ハァ
息子「……取り壊した鍛冶場を、子供達の遊び場にするんです」
息子「その遊具を購入したので、運んで貰って居るんです」
剣士「……成る程な」
シスター「今度は、貴方が答える番よ、剣士さん!」
5221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:35:50.96 ID:qhb22RQz0
剣士「……魔導師は今、書の街に居る」
息子「魔法や、魔石の事……鍛冶の事を学ぶ為、ですか」
シスター「あの子、まだ……!」
剣士「……そうだ。あいつの力無くしては、魔王は倒せない」
シスター「え!?」
剣士「何度も言ったはずだ。俺は……俺達は、魔王を倒さなくてはならない」
シスター「……勇者様が選ぶんでしょう、そんなもの!」
シスター「それに、勇者様は……!」
剣士「始まりの国はもう無い……全て、失われた」
息子「…… ……ッ」
剣士「……だが、きさ……魔法使いも、勇者も無事だ」
シスター「え……」
剣士「……安全な場所に避難している」
息子「そ、う……でしたか」ホッ
剣士「……魔導師に頼まれたんだ」
息子「此処にある、鍛冶の本、ですか……」
シスター「! 息子さん!」
息子「持って言ってもらうのは、構いません。此処にあっても……もう、どうしようも無い」
息子「でも……魔法剣、なんて、もう……」
剣士「……光の剣を、修理せねばならん」
シスター「!」
息子「……! 黒髪の勇者様の持って居られた、あれですか!?」
息子「無茶だ! いくらなんでも……! た、確かに魔導師は優秀です!」
息子「でも、本の知識だけじゃ……!」
剣士「……彼で無くては出来ないんだ、息子。頼む」
シスター「…… ……」
息子「剣士さん……」
剣士「俺達は……勇者は、必ず魔王を倒す」
剣士「だから、その為に……頼む」
シスター「……必ず、平和にしてくれる、んでしょうね」
息子「シスター?」
シスター「私達に出来る事なんて何も無い。勇者様が魔王を倒して」
シスター「平和になるのを祈っている事ぐらいしかできない」
シスター「他力本願も良いところよ。解って居るわ」
シスター「……でも、もう本当に厭よ。厭なのよ!?」
剣士「……解って居る」
息子「…… ……シスター」
シスター「魔導の国も、始まりの国ももう無い!」
シスター「私達を守ってくれる者は、もう勇者様しか居ないのよ!」
剣士「…… ……」
息子「…… ……」
5231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:44:51.42 ID:qhb22RQz0
シスター「……無事、なのね。魔法使いも……勇者様も……ッ」ポロポロ
剣士「……お前は本当に良く解らないな。己の心配だけをしているのかと思えば」
息子「剣士さん!」
剣士「……魔法使いや、勇者を思って泣くのか」
シスター「巻き込まれたくなんか無いわ。蚊帳の外で居たかった」
シスター「戦争も、勇者様や魔王や……そんな物の何も無い」
シスター「小さくて、平凡でも……明るい、何も無い場所で!」
シスター「穏やかに、毎日を過ごしたいだけよ!何が悪いの!」
剣士「……何も。だが、それを魔導師に押しつけるのは間違えて居るだろう」
シスター「…… ……」
剣士「彼は自分で選んだ。この村……小さな『世界』を飛び出した」
シスター「…… ……」
息子「…… ……」
剣士「2.3日、だな?」
息子「え? ……あ、ああ、はい……あ、良いですよ、あの」
息子「……家に居て貰っても」
剣士「……どう考えても邪魔だろう」
シスター「私、そこまで言わないわよ。息子さんが良いなら」
剣士「……良いのか?」
シスター「? そんな所まで、私別に……」
剣士「…… ……まだくっついてないのか」
息子「け、剣士さん!?」
5241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 15:56:18.85 ID:qhb22RQz0
シスター「え?」
剣士「……否。悪かった」
息子「ほ、本、持ち出しやすいように纏めておきますね!」

パタパタ、バタン!

シスター「え、む……息子さん!?」
剣士(こういう所は鈍いのか)
剣士「…… ……」
シスター「…… ……」
剣士「……お前は、ずっと此処にいるのか」
シスター「帰る場所なんて無いわ……いえ。此処が……この村が」
シスター「私の『家』よ……子供達も居る」
シスター「……二度と、私の様に」
シスター「『誰か』の愛も知らない様な、子にしてはいけない」
剣士「……その為にも、必要なんだ。あの本が。魔導師が」
シスター「……元気にしているのね?」
剣士「ああ……確かに、優秀だな。あいつは」
シスター「……そう。なら……良いわ」
剣士「そうだ、シスター」
シスター「え?」
剣士「息子なら、『鍛冶師の村の伝承』を知っているよな?」
シスター「え? ……ああ、知っているんじゃ無いかしら。でも」
シスター「魔導師だって……」
剣士「あまり覚えて居ないそうだ」
シスター「……そう。聞いてみたら?教えてくれるかどうかは知らないけど」
剣士「……ああ」
シスター「……のんびりしてて。手伝ってくるわ」
剣士「あ、ああ……」

パタン

剣士(居辛い、か)ハァ
剣士(少し、時間がある。その間に……話を聞いて)
剣士(……海賊船。船長……女船長の、息子)
剣士(時間が合わん。俺の子供……では無い、な)フゥ
5251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 16:13:29.52 ID:qhb22RQz0
剣士(……生殖能力の有無。青年が言っていたな)
剣士(鉱石の洞窟へ行って。それが済めば……)
剣士(……南の島へ。勇者の元に……ッ)

……
………
…………

勇者「あー、ぅ」ヨチヨチ
后「そうそう、こっちよ!頑張って……勇者!」
勇者「だう!」ギュ!
后「凄いわ!」ギュ!
爺「ほーう……急に凄いなぁ、この子は」
后「ああ、おじいさん……こんにちは」
爺「はい、こんにちは……しかしまぁ、長生きはするもんじゃのう」
后「またそれですか」クス
爺「……僧侶さん、と言ったかな。この像にそっくりの美しい娘さんに会えたときにも」
爺「思ったが……青年という彼にまで」
后「…… ……」
爺「死ぬまでに一度、本物のエルフに会いたいと思っていたんじゃよ」
后「……青年は……」
爺「否、良いんだよ。本当にいるのかどうか、な……しかし」
爺「驚くほどにそっくりじゃった。僧侶さんにも。この像にも」
后「…… ……」
爺「いいや。それどころか。まさか……勇者様にまで、会えるとはなぁ……」
后「……本当に、助かります」
爺「女手一つで、育てるのは大変じゃろう。この島には何も無いが」
爺「気にする必要は無い」
后「……はい」
5261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 16:28:54.98 ID:qhb22RQz0
爺「……さて、儂も阿呆息子の様子を見てくるかな」
后「あ、あの……ご免なさい。私、お役に立てなくて」
爺「何。別に……仕方無いさ」
后「……青年がいれば、回復魔法を使えるのだけど」
爺「身体は丈夫な奴じゃよ……あれは、心の方さ」
爺「……望んで船を下りた癖にの。日がな一日、海を見て……」ハァ
后「チビさん……船長さんが心配なんでしょう」
爺「まあ、の……そりゃ儂もじゃよ。だが」
后「…… ……」

剣士『后』

后「!?」
爺「ん、どうした?」
后「……い、いえ」

后『剣士? ……ちょっと、待って頂戴』
剣士『…… ……』

爺「もうすぐ一年だな……アンタ達が突然現れて」
后「え、ええ……」
爺「……勇者様も、順調に育って居るようで、何よりじゃ」
爺「さて、邪魔したの……」

スタスタ

剣士『后? 聞こえるか?』
后『……ええ、もう大丈夫。どうしたの』
剣士『青年の気配を探って欲しい』
后『え?』
剣士『……拾って、戻る』
后『!』
剣士『とはいえ、場所に寄れば一年以上掛かるだろうが……』
后『……そうね。まさか転移してくる訳には……』
剣士『魔導師も迎えに行かねばならんからな』
后『解ったわ……ちょっと待って』
后『…… ……え!?』
剣士『何だ?』
后『…… ……北の街。いえ……北の塔……』
剣士『!?』
5271 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 16:38:33.84 ID:qhb22RQz0
剣士『北の塔……!?』
后『……ええ。それより、貴方は今どこに?』
剣士『鉱石の洞窟に向かっている所、だ』
后『! 船長の船!?』
剣士『ああ……もう、着く』
后『……そう』
剣士『化け物ももう居ないだろう。採取出来れば……北の塔に向かう』
后『勇者……歩いたわよ』
剣士『……そうか』
后『…… ……』
剣士『后?』
后『いえ……気をつけて』
剣士『……ああ』

后(……あの話。剣士には告げるべき、なのかしら)
后(女船長さん……彼女が、最後に見た物……!)
后(……人魚の魔詩。私達が見た、『夢』)
后(魔導師が受け継いだ『知』)
后(……もう少し。欠けている何か。それが、見えてくれば……!)
后(…… ……手が届きそうなのに。もどかしい……ッ)
勇者「あ……ま、ぁま」
后「はぁい?」
勇者「ちゅ、き」ギュ
后「……うん。私もよ」ギュ
勇者「んー」
后(……後五年もすれば、この子は残酷な真実を知る事になる)ギュゥ
勇者「ん?」
后(私は、全てを告げなくてはならない……!)
后(……それまでに、もっと……!)
5281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 17:09:24.98 ID:qhb22RQz0
……
………
…………

側近「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「なあ、魔王」
魔王「…… ……」
側近「俺達、何度もこんな事をしてきたのか」
魔王「…… ……」
側近「癒し手は……何度も……ッ」ポロポロ
魔王「…… ……」
側近「……癒し手は、もう……何処にも居ない。消えてしまった」ポロポロ
側近「もう、会えないんだ。変わったんだ」
側近「……喜ばなくてはいけない!?」
側近「喜べるか! ……ッ 俺は……ッ」
魔王「…… ……」
側近「……もう、繰り返さなくて良いと」
側近「今度こそ、終わるのだと、喜べだと!?」
側近「……ッ 冗談じゃない……ッ」

使用人「…… ……」
使用人(側近様、后様のあのお話しを聞かれてから……)
使用人(……魔王様の部屋から、出てこられない)
使用人(癒し手様……)ポロ……グイッ
使用人(喜べない。でも、喜ばなくてはならない)
使用人(……整理しないと。側近様を頼れない以上)
使用人(私が……一人で……)

スタスタ、カチャ……パタン

使用人(魔導師様に倣って、一応書き付けた、出来事)
使用人(……違う点だけ抜き出して……纏めて)カキ
使用人(…… ……あれ?)
5291 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 17:22:28.23 ID:qhb22RQz0
使用人(……否、あってる)
使用人(私は、『知を受け継ぐ者』)
使用人(……『過去』に倣うなら、受け継ぐのは魔導師様)
使用人(后様の話に寄ると、彼は……『夢』の中で、向こうの私から)
使用人(あの時点での全てを受け継いでいる)
使用人(……『過去』を『現在』にして『未来』にしようとしている)
使用人(『回り続ける運命の輪』から外れてる?)
使用人(否! そんな事は無い……でも……ッ)
使用人(……彼こそ『知を受け継ぐ者』。私が、知を授ける相手)
使用人(…… ……ああ、駄目だ)ハァ
使用人(一人では何も……出来ません、紫の魔王様)
使用人(……行き止まり、です。世界の謎を探り、紐解いていく……)
使用人(そんな事、本当に可能……なんですか……?)
5301 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 17:54:21.42 ID:qhb22RQz0
使用人「……泣き言、言ってても始まらない」
使用人(もう一度、最初から……って、最初って、何処……)
使用人(……ん?)

バタバタバタ……
バタン!

側近「使用人!」
使用人「! 側近様……ど、どうしたんですか」
側近「早く……! 魔王が……ッ」
使用人「ま……魔王様が何か!?」ガタン!
側近「……喋ってる」
使用人「え!?」
側近「否、目は覚ましていないんだ……だが……!」
使用人「す、すぐに行きます……!」

パタパタ

側近「……こんな事は、あったのか」
使用人「魘される様に、うわごとを言う事は……」

バタン!

魔王「……し、よ……に」
魔王「そ…… ……っき」
使用人「魔王様!?」
側近「…… ……」
魔王「……『干 ……渉』 ……で、き……て、 ……?」
側近「干渉……?」
魔王「……い、や…… ……は、こ…… ……」
使用人「魔王様!? 目覚められたんですか!?」
5311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 18:00:23.60 ID:qhb22RQz0
側近「魔王!」
魔王「…… ……」
使用人「魔王様!」
魔王「…… ……」
側近「…… ……な、んだったんだ今の、は」
使用人「魔王様……?」
魔王「…… ……」
使用人「……わ、かり……ません……でも」
使用人「こんな事、今まで……!」
側近「……『干渉』と、聞こえた気がする」
使用人「はい……でも、どういう意味……?」
側近「…… ……」
使用人「あの……側近様?」
側近「……否。長く……済まなかった」
使用人「あ、いえ……あの、それは。仕方……ありません」
側近「……癒し手は、嘘は吐けないと言った」
使用人「…… ……」
側近「『又後で』と……言ったのに、と。思うと」
使用人「…… ……」
側近「『向こう』では、器は間に合った。俺は……会えた筈だ」
側近「……だが、青年の話では……癒し手の身は風に攫われ消えてしまったと言う」
使用人「…… ……」
側近「もう、二度と会えないのかと思うと……ッ」
使用人「側近様……」
側近「……だが、俺だけ何時までも嘆き悲しんで居られない」
使用人「…… ……」
側近「まだ……后も戻っては来ない。それまで、何処まで出来るか解らんが」
側近「……出来る限り……ッ」ビリッ
使用人「……! 魔王様!?」ビリビリッ
5321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 18:03:34.64 ID:qhb22RQz0
魔王「……ゥ、う……あ、ァ……ッ」
使用人「魔王様!」
側近「……さっきのが、何か影響してるのか……!?」
使用人「そんな、勇者様は、まだ……!」
魔王「……あ、ァ……ッ」
側近「! 出ろ、使用人! 俺が……ッ」

シュゥン!

后「魔王!」

スタ……ッ タタタ、ギュウ!

使用人「后様!?」
側近「后……!」
魔王「…… ……」
后「……魔王」ギュ
使用人「どう、して……!? 后様、勇者様は……!」
后「……『仲間』に託してきたわ」
使用人「え!?」
5331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/12(水) 18:10:56.43 ID:qhb22RQz0
お風呂とご飯ー
534名も無き被検体774号+:2014/03/12(水) 20:31:27.33 ID:v8vpoFZe0
展開が早くなってきたな
535名も無き被検体774号+:2014/03/13(木) 01:31:02.56 ID:opuW5k6I0
5361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 09:25:10.18 ID:bUd5ZPqt0
おはよう!
おむかえまでー!
537名も無き被検体774号+:2014/03/13(木) 09:42:41.40 ID:6ryuNJNti
おはしえん
5381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 09:58:06.47 ID:bUd5ZPqt0
后「『仲間』よ…… ……剣士と、青年と、魔導師」
使用人「で、ですが、勇者様は、まだ……!」
側近「……勇者は人間だろう、后!」
側近「まだ、ほんの小さな……!」
后「五歳よ。五歳になった……理解して居るとは思えない。でも」
后「自分が『勇者』であり、倒すべき者が『魔王』であると、解ってる」
使用人「……全てを、告げるのでは無かった、のですか」
后「それも含めて、託してきたのよ」
后「何もかもを倣う必要なんて、無い」
后「……否。寧ろ否定しなければ行けない……ッ」
使用人「……『否定』」
側近「し、しかし、お前……」
后「……癒し手の、力は頼れない」
側近「!」
后「確かに、向こうでは『器は間に合った』」
后「……勇者が此処にたどり着くまで、癒し手が居なかったのは一緒よ」
后「でも、前にも話したとおり……こっちでは」
使用人「『間に合わない』」
側近「…… ……」
后「……合流してから、色々話し合ったの。向こうでは」
后「私が、あの子達を呼び寄せた。勇者として……勇者一行として」
后「『ほぼ何も経験していないあの子達』を」
使用人「…… ……」
5391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 10:31:48.69 ID:bUd5ZPqt0
側近「……ペンダント、か」
后「そう……勿論、あれも勇者に渡してきたけれど」
后「……色々、話し合って。達した結論が」
使用人「『否定』ですか」
后「……思い出して、使用人」
使用人「え?」
后「紫の魔王が、金の髪の勇者様と……『光と闇』に別れたときの事」
使用人「……!」
使用人「紫の魔王様の身体に急速に『言葉』が流れ込んできて」
使用人「ええ、と……『全て飲み込めば全てが消える』?」
后「そう。そして……紫の魔王は……願ったんでしょう」
使用人「ただ……『否』!」
側近「……否定」
5401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 11:35:47.59 ID:bUd5ZPqt0
后「……勇者は、まだ五歳。『魔王』を倒しに出るには早い」
使用人「向こうでは……『16歳』の時」
使用人「……『王』の元から、『仲間』を『選んで』旅立った」
側近「……成る程。しかし……」
使用人「何です?」
側近「……大丈夫なのか。間に合うのか?」
側近「魔王は、さっき……」
后「……大丈夫よ。私も此処に居る」
使用人「あ、いえ……その。后様が戻られる前に」
后「え?」
使用人「……喋った、のですよ」
后「……ッ 魔王が!?」
側近「『干渉』と聞こえた気がしたがな……ハッキリとは」
側近「その後、静かになったと思えば、あれだ」
后「…… ……」スッ
使用人「……后様?」
后「魔導師が言ってたわ。向こうでは、私……ずっと、あの子達を見てた」
使用人「ああ……前后様も、気配を追っていらっしゃいました」
后「……ううん、違うのよ。説明する前に…… ……見てて」
5411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 11:41:46.13 ID:bUd5ZPqt0
魔王「…… ……」
后「魔王……手伝ってね」スッ
使用人「后様!? むやみに触れられては……!」
后「……幻視を映し出すの」
側近「幻視?」
后「そう……魔王の魔気を取り込んで……ね」ポウ
使用人「! 無茶です、いくら后様で、も…… ……あ!?」
側近「……! こ、れは……ッ 青年、剣士……!?」
后「母は強し、よ……聞くより見る方が早いでしょ……」フゥ

剣士『……では、行こうか』
青年『今頃、后様と父さんと……使用人が見てるかな』
魔導師『ちょっと!二人で遊んでないで、抱っこ変わって下さいよ!?』
勇者『やだーまどうしがいいー』

使用人「……す、ごい……」
后「……私、ね。向こうでもこうやって、魔王の魔力を借りて」
后「あの子達の旅を、見てた……らしいの」
側近「……大丈夫なのか」
后「側近も手伝ってよ……魔王を、押さえて置いてくれないと」
后「暴走されると……危険だもの」
側近「あ、ああ……それは、勿論だが」
使用人「……それも、向こうの私が授けた、知……」
后「……ええ。私が魔王の力を使うだけでも抑止になる」
后「…… ……さて。勇者が、勇者達が。此処にたどり着くまで」
后「ゆっくりと……話しましょうか」
5421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 11:46:40.74 ID:bUd5ZPqt0
……
………
…………

船長「剣士、これ以上船で入るのは無理だ…… ……剣士?」
剣士「あ、ああ…… ……解った。降りる」
船長「……何ぼおっとしてんだよ。大丈夫か?」
剣士「……考え事だ」
剣士(青年は北の塔か……まさか、此処で放って帰れとも言えんな)
船長「で……俺達は此処で待ってれば良いんだな」
剣士「……やっと諦めてくれたか」
船長「それも料金の内だって言われりゃ、仕方ねぇだろ」
剣士「危険は無いとは思う、がな……何があるか解らん」
船長「……アンタが強い、てのは解った。解ったけどさ。そりゃ、あんな簡単に」
船長「海の魔物、やっつけちまったらな!? でも……」
剣士「……心配してくれているのか」
船長「だ、誰が!そんなんじゃネェや!」カァッ
剣士(……照れるところでは無いと思うがな)ハァ
剣士「……気持ちはありがたいがな。俺一人の方が動きやすい、し」
剣士「さっきも話しただろう……採取出来たら、の前提にはなるが」
剣士「分けて欲しいと言うのなら、わけてやる」
船長「…… ……おう」
5431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 11:52:00.43 ID:bUd5ZPqt0
剣士「……すぐに戻る」タッ……ドボン!
船長「気、気をつけろよ!?」

ザバザバ……

海賊「……凄い男だな、しかし」
船長「あ、海賊……」
海賊「……女船長さんの話は、聞けたんですかい」
船長「……ああ。でも、本当にあいつなのか?」
海賊「さてね……まあ、本当だったとしたら」
海賊「あいつが、最初にこの船に乗った時にいた奴は、全員、もう……」
船長「……老いて船を下りてる。死んでる……か」
海賊「魔法使いのジジィの事も知ってましたしねぇ」
船長「……じゃあ、あいつ。やっぱり人間じゃネェんだな」
海賊「…… ……仲間、ですからね。女船長の」
船長「不思議だよな。怖いとか……思えねぇんだよ」
船長「話が残ってたから、てのもあるけど。否、あんのかな。わかんねぇけど」
海賊「…… ……」
船長「剣を媒介?だっけ? に、様々な属性の魔法を使いこなす」
船長「……紫の瞳の男」
海賊「…… ……」
船長「母さん、綺麗な人だったんだって、若い頃」
海賊「……充分綺麗でしたよ?覚えてるでしょ」
船長「うん……」
5441 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 11:56:57.31 ID:bUd5ZPqt0
船長「……母さん、あいつのこと好きだったのかなぁ」
海賊「え?」
船長「だって、さ……はっきりどれぐらい前、ってわかんないけど」
船長「……父さんと結婚して、俺が産まれても、さ」
船長「ずっと……この船に語り継がれる位……さ」
海賊「……そりゃ、あんな規格外だからでしょ」
船長「……かな。でもさ」
海賊「?」
船長「みんな、案外あっさりと受け入れたよな。何でだ?」
海賊「……そりゃ、船長。当然でしょ」
海賊「『船長の命令は絶対』だ。それが……この船の掟ですからね」
船長「……船長。母さん、か」
海賊「女船長の意志を継いだのがアンタでしょ、船長」
海賊「……剣士が戻ったら、次はどこ行くんでしたっけ?」
船長「…… ……あ。聞くの忘れた」
海賊「おい……」
船長「で、でも待ってろって言ってたよ!?」
海賊「……はいはい。じゃあ、戻る迄お勉強しますよ……この岩礁地帯離れたら」
海賊「一人で舵握って貰うんですからね」
船長「お、おう!」

……
………
…………
5451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 12:35:26.70 ID:bUd5ZPqt0
ザバザバ……ザバッ

剣士「…… ……」フゥ
剣士(洞窟。あれか…… ……魔物の気配は無いな)

スタスタ……ガサガサ……

剣士「……中、は」スッ
剣士(鉱石……洞窟の壁一面に……!)コンッ
剣士(……堅いな。削り取れるか。しかし……もし、これで光の剣を修理すると)
剣士(するならば……どれぐらい必要なんだ?)
剣士(……確か、随分と扱いが難しい、と聞いたはず、だが)コンコン
剣士(……魔法で何とかなるものなのか……)グッ
剣士「……風よ」ビュウ……ッ

キィン……ッ
パラパラパラ……

剣士「!」
剣士(砕けた!? ……専用の器具……道具が、いるか)
剣士(もう一度……今度は……)
剣士「炎よ!」ボゥ……ッ

パリィン……ッ

剣士「……駄目、か」トン
5461 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 12:47:00.69 ID:bUd5ZPqt0
剣士(確か……金の髪の勇者、は)
剣士(…… ……否。鍛冶師の部隊の者が採取した、しか聞いていない)
剣士(魔導師を連れてくるべき、だったか)
剣士(…… ……欠片)パラ
剣士(そろっと拾わねば崩れる……無理か)
剣士「…… ……」コンコン
剣士(剣の柄で小突いた位では無理か……仕方無い)
剣士(……少しだけでも、持って帰るか)サラサラ
剣士「……泳いで戻るのも面倒、だが……」
剣士(船長の手前。仕方無い……)

スタスタ…… ……ドボン!
ザバ……ザバ……

剣士(……三つ頭の化け物が居た、と言っていたな)
剣士(男の魔法使い……あのジジィが、持っていた、古い地図)
剣士(……×印の着いた、この洞窟。誰が、何の為に)
剣士(守、を置いた? ……魔導の街の手が入らなければ、否)
剣士(……それこそ海賊でも無ければ、あんな場所……それに)
剣士(普通、では。使い道も無い鉱石。何故……)

ザバ……ザバ……ッ

船長「あ、剣士!」
剣士「……待たせたな」
船長「お、おい!上げるの手伝え!」

アイアイサー

剣士「……すまん」
船長「どうだった?」
剣士「……駄目だな。専用の道具……の様な物があるのか、わからんが」
剣士「俺にどうこう、出来る代物じゃ無い」
船長「え……」
剣士「……無駄足、に近かったかもしれん。悪かったな」
海賊「俺達ゃ構わネェよ。仕事だからな」
剣士「…… ……」
船長「ほら、身体拭けよ…… ……で、どうするんだ?」
剣士「? ……ああ、もう出してくれて良い」
船長「いやいや、何処に行くんだって」
剣士「…… ……良いのか?」
船長「……いきなり最果てに行けとか言われたら、追加料金頂戴するけど?」
剣士「そんな事は…… ……」
船長「おい?」
剣士「……北の街、否。北の塔へ」
船長「え!? また遠いな……」
剣士「無理なら構わん」
船長「……いや、そりゃ別に構わネェよ。 ……ええっと、どの航路を……」
剣士「否、待て……待ってくれ」
船長「ん?」
剣士「……先に書の街へ。一人……拾う」
船長「お、おう……?」
剣士「大丈夫だ。料金は払う」
船長「……それ、もしかして勇者か?」
5471 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 13:25:39.26 ID:bUd5ZPqt0
剣士「……何?」
船長「勇者、を拾うのか?」
剣士「……違う。魔導師という少年だ」
船長「金の瞳の? ……あ、違うか。勇者って、女の子だっけ……」
剣士「…… ……青年か」ハァ
船長「約束したんだ。アンタの助けになってやって欲しい、てのと、もう一つ」
船長「勇者を連れて来たら、船に乗せてやる、ってな」
剣士「……成る程」
船長「……あいつ、人間じゃ無いんだろ? あ。あいつも、か」
剣士「本人に聞いたのか」
船長「青年は肯定も否定もしなかったよ」
船長「……アンタまで、自分は嘘は吐けないとか言い出すんじゃないだろうな?」
剣士「…… ……」
船長「ま、良いよ……行き過ぎた詮索は身を滅ぼす」
剣士(……女船長の……この海賊船の掟、か)
剣士(こいつは……本当に、女船長の息子……なんだな)
剣士(……複雑な気分だ)
船長「ま、良い……書の街な、オーライ」
剣士「……ああ、その後、北の塔まで運んでくれ」
船長「OK……その後は?」
剣士「そこまでで良い」
船長「え!? でも、あんな場所で……」
剣士「……身を滅ぼす、んだろう?」
船長「…… ……」グッ
剣士「もう少し、世話になる……甲板に居る。魔物は任せろ」

スタスタ

船長「あ、おい……! ……チッ」
船長(知りたいよ、そりゃ! だけど……!)
船長(……母さんは、もっと何か知ってた、のか?)
船長(俺は…… ……俺には。知れない、のか?)
船長(……我慢、って辛いな)グッ
船長「野郎共!船を出すぞー!」

アイアイサー!

……
………
…………
5481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 13:49:36.96 ID:bUd5ZPqt0
魔導師「おはようございます、司書さん」
司書「ああ、おはよう御座います、魔導師君」
司書「……しかし、毎日頑張るね。この街に来てからずっとでしょう」
魔導師「そうですね……でも、折角お勉強させて頂ける機会ですから」
司書「偉いねぇ……三年、だっけ? もう」
魔導師「そんなもの、ですかね……じゃあ、今日もお願いします」
司書「はい、ごゆっくり」
魔導師(……流石に、世界一の図書館と言うだけはある。これでも)
魔導師(随分選んで、本を読んでいる筈だ。それでも……まだまだ……!)
魔導師(……『僕』の鍛冶の知識があって助かった。あれが無いと)
魔導師(倍の時間があっても、足りなかっただろうな……)
魔導師(……勇者様が、魔王城に向けて出発する迄はまだまだある。だけど)
魔導師(駄目だ……焦っても仕方無い。ある程度、纏めてはみた物の)
魔導師(まだまだ、パズルの完成にはほど遠い……!)
魔導師(……剣士さんの、事。光の剣……魔王と、勇者……!)
魔導師(『世界』…… ……)ブツブツ

キィ、パタン

魔導師(……ん、こんな朝早く、誰か? ……珍しいな)
魔導師(何時ものあの男の子は、昼からだし……おばあさんかな?)ヒョイ
剣士「……ここに居たか」
魔導師「! ど、どうしたんですか!? また……!?」
剣士「迎えに来た」
魔導師「え…… ……で、でも、勇者様は……」
剣士「……充分だろう、とは言わん。だが……」スッ
魔導師「……小瓶? ……中身は、砂……ですか?」
剣士「……あの鉱石の欠片だ」
魔導師「!」
剣士「船長の船で行ってきた……が、専用の道具でも無い限り採掘は無理だ」
剣士「……魔法をぶつけると、そんな風に割れてしまう」
魔導師「…… ……」
剣士「もし、あれを用いて……と言うのであれば、お前の力が要る」
魔導師「まさか……これからそこに向かう、と!?」
剣士「……否。青年が北の塔に居るらしい」
魔導師「北の、塔…… ……」
剣士「……青年を拾って、一度南の島に戻ろうと思う」
魔導師「し、しかし勇者様は、まだ……」
剣士「……始まりの国はもう、無いんだ。15だか16迄」
剣士「旅立ちを待つ必要は無い」
魔導師「! ……で、でも、后様は……!?」
剣士「……それを話す為にも、だ」
魔導師「…… ……」
剣士「まだ、此処に居たいか?」
魔導師「……いえ。仲間の提案、ですから」
剣士「我慢する必要は無いぞ」
魔導師「正直、キリはありません。それに……」
魔導師「……何か。考えがある、んですよね?」
剣士「……ああ」
魔導師「わかりました。行きましょう」
剣士「……大きくなったな」
魔導師「三年、経ちましたからね」
5491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 17:04:06.86 ID:bUd5ZPqt0
剣士「……そうだな。もう、と言うべきか、否か」
魔導師「貴方には……正直、余り実感が無いでしょう」
剣士「……かもな」
魔導師「北の塔まで、てん…… ……その、魔法で?」
剣士「否。船長の船で行く……鉱石の洞窟も、俺はハッキリとした場所が解らなかったからな」
魔導師「ああ、成る程……では、青年さんも最近ですか……あれ、でも」
魔導師「……ここから、北の街まで結構掛かるでしょう。間に合いますか」
剣士「……青年が北の塔にいる様だと后に聞いたのは、もう随分前になる」
魔導師「え!?」
剣士「俺が、鉱石の洞窟に向かう前だからな……ああ、丁度」
剣士「勇者が歩いた、とか言ってたな」
魔導師「え、ええ!? それからずっと……塔に!?」
剣士「否。どうやら街と塔を行き来しているようだ、と……」
魔導師「……ど、どうやって!? あの塔には、確かに魔法がかけられていると」
魔導師「言っていた筈ですが、でも……!」
剣士「……それを確かめる為にも、だ。最悪……俺が居る。どうにでもなる」
魔導師「ま、まあ……そうです、けど……」
剣士「……此処から北の街までは、補給無しで行ける」
魔導師「……そこから、先は?」
剣士「船長達とはそこで別れる……どうせ、俺達も塔に上ることになるだろう」
魔導師「……もう一回、聞きますけど」
剣士「解って居る。考えあって、の事だ……鍛冶師の村から持ち出した」
剣士「息子の本は……」
魔導師「!」
剣士「……船に置いてある。お前は、退屈しないだろう」
魔導師「はい……!」
5501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 17:25:49.94 ID:bUd5ZPqt0
……
………
…………

キィ……シュゥ……

青年「……また、か」
青年(振り向くと……もう、見えない)ハァ
青年「…… ……」キョロ
青年(何度も見ても……同じ場所。北の街の、僕が泊まってる宿の、裏側)
青年(何故だ……? 否、確かに。父さんと母さんも)
青年(扉を開けたら、全然違う場所に出た、と言っていた)
青年(……お祖母様も、か。鍛冶師の村の神父に、産まれたばかりの母さんを)
青年(託したのだと、言う事は……あの、小屋のすぐ傍だったはずだ)
青年(……父さんと母さんは、剣士の居た辺り……小屋から少し離れて居た筈、だが)
青年(何故、僕だけ此処に? ……否)
青年(…… ……そもそも、どういう絡繰り、なんだか)ハァ

ガサ…… ……

青年「!」
男性「あ……ッ と、アンタか」
青年「……ああ、宿屋の」
男性「何やってんだ、こんな所で……」
青年「いや……別に。雑草に混じって薬草が生えていたからね。ほら」プチ
男性「……へ?それが薬草?」
青年「まあ、ありきたりな物だけどね」
青年「……小さな怪我ぐらいには効く、かな」
男性「何だ……アンタ、そんな弓持ってる位だから」
男性「……そっちにも強い、のかい」
青年「そっち、て?」
5511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 17:34:38.04 ID:bUd5ZPqt0
男性「いや、小舟で海に出て行くぐらいだから、腕には自信あるんだろうと」
男性「……思ってたが」
青年「ああ……こういうのの知識、って事か」
男性「……まあ。こんなご時世に、いくらすぐ傍だとは言え、なぁ」
男性「北の塔に行くんだって聞いたときはびっくりしたが」
青年「船を貸して貰うか、譲って貰おうと思ったんだけどね、最初は」
青年「……街長には、断固拒否されちゃったし」
男性「まあ……そりゃ仕方無いさ。あの塔は……な」
青年「聞いたよ。昔……」
男性「誰も話したがらない話だ」
青年(言っておいて、これ以上言うな、ってか……まあ、仕方無いけど)
青年「……もっと止められるかと思ったけどね」
男性「正気の沙汰じゃ無いと思ったよ。瓦礫集めて何やってんだかと思えば」
男性「……小舟、着くって……行って、帰って来ちまったんだからな」
青年「僕は海の魔物には強いのさ……空の魔物、にもね」
男性「……翼のある魔物は、風の魔法や弓に弱いんだってな」
青年「ああ」
男性「アンタは弓に長けるし、優れた水の加護があるから……」
青年「……そう。ダメージを受けない」
男性「人魚の……魔詩も平気なんだって?」
青年「そうだよ。実際何度も遭遇したけど……あれが効かなきゃ、あいつ等」
青年「僕に手出しは出来ないからね」
男性「…… ……」
青年「……なんだよ。未だに歓迎されてないのは知ってるよ」
男性「否、違う……そうじゃ無いんだ」
青年「? 何だとよ」
男性「……アンタが、小舟で海に出る度に、蝙蝠共をやっつけてくれるから、さ」
青年「…… ……」
男性「いや……勝手な事を言ってるのは解ってる。だがな」
男性「……まあ、なんだ。気をつけてな?」
青年「ああ……まあ」
5521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 17:47:24.61 ID:bUd5ZPqt0
男性「……じゃあな。もう、夜も遅い。ほどほどにしろよ」

スタスタ

青年(……女剣士様と、紫の魔王の側近の時は、まあ……仕方無いとは言え)
青年(疑心暗鬼になった上に、当時の町長……女剣士様の父親を追い出して置いて)
青年(……今になれば、どうやら、街を助けているらしい僕には)
青年(取りあえずのお礼でも言っとけ、てか?)ハァ
青年(……まあ、歓迎されてないのは解ってたさ。長居するつもりもないけど)
青年(無事に行って、無事に帰ってくる、て……さ)
青年(そりゃそうだ。何回上っても、部屋に入っても。もう一度扉を開ければ)
青年(……此処に出て来るんだから。無事に決まってる)ハァ

ガサ、ガサガサ……

青年「……? 何だい、まだ僕に何か、用…… ……」
魔導師「ああ、居た。居ましたよ、剣士さん!」
剣士「ああ」
青年「!? 剣士…… ……に、お前、魔導師か……!?」
剣士「……静かにしろ」
青年「お前達、なんで…… ……」
剣士「迎えに来た……否、一緒に行く為に、か」
青年「……どうやって、は愚問だな。后様か」
魔導師「船長さんの船で、来たんですよ、此処までは」
青年「え!?」
魔導師「あ、勿論……居場所を教えてくれたのは、后様ですけど」
剣士「……北の塔に、何かあったのか」
青年「否……そう言う訳じゃ無いんだ。だけど」
青年「……何度言っても、此処に出る」
魔導師「此処?」
青年「塔の扉をくぐれば、後は……階段が続くだけだ」
青年「突き当たりに扉があって、小さな部屋がある」
魔導師「……姫様、が眠っていた場所、ですよね」
青年「そうだ。そして、もう一回扉をくぐると」
剣士「……此処に出る、か」
青年「……別に、これと言って用事がある訳じゃ無いんだ」
青年「だけど、勇者様が……旅立つ年齢になるまで。時間はあるからな」
5531 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 17:55:04.69 ID:bUd5ZPqt0
魔導師「……それ、何ですけど」
青年「ん? ……ああ。お前達が二人揃って僕の所に来るぐらいだ」
青年「何かあった、んだろう」
剣士「そう言う訳では無いんだけどな……一度」
剣士「あの島へ戻る気は無いか」
青年「……考え無しに行っている訳じゃ、勿論ないよね」
剣士「当然だ。魔導師にはもう話したが……后の同意も居る」
青年「……話は聞くよ。夜も遅いし、もう寝ようか……と、言いたいところだけど」
剣士「塔に行く気か!?」
青年「……君達と三人揃って、朝まで待つ方が酔狂だろ」
魔導師「まあ……それはそうかも知れませんけど」
青年「あっち……あの入り江に、僕が作った小さな小舟がある」
青年「その辺で待っててくれ。荷物を取ってくる」

タタタ……

剣士「おい、青年……せっかちだな」ハァ
魔導師「嬉しいんじゃ無いですか?」
剣士「……気持ち悪い事、言うな。行くぞ」
魔導師「はいはい」クス

スタスタ

剣士「……小舟、てあれか!?」
魔導師「青年さん…… ……ある意味、器用ですね」
剣士「……まあ、ある意味」
魔導師「これ……瓦礫、かな? ……しかしまぁ、よく沈みませんね」
剣士「…… ……俺とお前も、これに乗るんだろう」
魔導師「拒否して良いですかね。剣士さん、居ますし」
剣士「お前達を抱えて転移しろと!?」
魔導師「だって、塔あれでしょ……見えてますし」
5541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 18:08:18.70 ID:bUd5ZPqt0
魔導師「……『夢』でも見てるでしょう。癒し手様と側近様のラブシーンとか」
剣士「……お前は、歳を取って可愛げが無くなったな」
魔導師「向こうの『僕』は今の僕よりまだ、大人でしたよ」
剣士「……もう良い。面倒だ」
魔導師「向こうの剣士さんは、もう少しぶっきらぼうでしたよね」クス
剣士「……お前からの話しか聞いてないんだ。判断のしようが無い」
魔導師「青年さんとは、仲よさそうでしたけどね」
剣士「……だから、気持ち悪いと言っているだろう」
魔導師「僕は……貴方の方が好きですよ。向こうの貴方より」
剣士「…… ……」
魔導師「そんなウンザリした顔しないで下さい……あ、来ましたね」

タタタ……

青年「何だ、先に乗っていれば良かったのに」
魔導師「拒否します……僕、泳げないんで」
青年「……お前ね」
魔導師「剣士さんが居るから大丈夫です……それに」
剣士「おい」
魔導師「……塔から、南の島に飛ぶつもりなんでしょう。だったら」
魔導師「小舟もどきは置いておいた方が賢明です。同じ、唐突に姿を消してしまった男、に」
魔導師「なるのなら、塔より街から出たんだろう、って思われる方が、ね」
青年「……まあ、そうか、もな」
剣士「…… ……」
魔導師「こっちからあっち、あっちから南の島、じゃ剣士さんも疲れるでしょうけど」
剣士「……まあ、海に落ちるよりはマシだな」
青年「…… ……魔導師さぁ」ハァ
剣士「かわいげが無くなっただろう」
青年「全くだ」
魔導師「……あのね」
剣士「まあ、良い……掴まれ。この海域には人魚も居るだろうしな」
青年「……ああ、そうか。僕だけが平気でも意味無いな」
青年「剣士が魅了されたら目も当てられない、所じゃ無い」
剣士「……行くぞ」

シュゥン……!
5551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 18:27:41.98 ID:bUd5ZPqt0
スタ……スタ!

魔導師「……おっと…… ……うわ!?」
魔導師「……間近で見ると、まあ……本当に凄いですね。圧倒される」
剣士「! 扉が、見えている……!?」
青年「……言っておくけど、僕じゃ無いぞ」
剣士「側近か……癒し手と二人で訪れた時、か」
魔導師「剣士さんがラブシーンを覗き見した時、ですね」
剣士「……殴るぞ、魔導師」
魔導師「厭です……ええっと。これか、鎖の欠片」チャリ
青年「……可愛げが無くなったと言うより、図太くなった、かな」クス
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「……随分、古い。錆びてるし……」
剣士「紫の魔王の側近が……そう言っていた位だ。相当、だろう」
青年「海風での腐食もあるんじゃないか。いくら……目に見えない、と言ったって」
青年「確かに『此処』にあるんだから」
魔導師「……よ、いしょっと」グッ

ギギギギ……ギィ

魔導師「開いちゃいましたね」
青年「僕も何度も入っているからな」
魔導師「ああ、そうか……あれ、ほんのり明るい……?」
剣士「おい、待て……先に……」

スタスタ、コツン、コツン…… ……バタン!

剣士「!」
魔導師「うわ!?」
青年「……勝手に締まる、んだよ」
魔導師「あ、ああ……成る程。後は……一本道、ですか?」
5561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 18:37:21.93 ID:bUd5ZPqt0
青年「そうだ。暫く上れば小部屋がある」
魔導師「……剣士さん?どうしたんです?」
剣士「……紫の魔王、の魔力……か?」
青年「え?」
剣士「…… 否、違う。これは…… ……」
魔導師「何か、感じますか……青年さんは?」
青年「……僕に解るのは、何らかの魔法が掛かってる、て事ぐらいだよ」
青年「確かに、力の強い魔族、の。どこか懐かしい気はするけど……」
青年「……でも、それは多分、お祖母様……姫様の、だろう」
剣士「……『魔王』には違い無い」
魔導師「紫の魔王様、ですか」
剣士「……否、ああ確かに……それも感じる。俺、の魔力とよく似ているから」
青年「君は、欠片だからね」
剣士「……だが、それだけじゃ無い。それだけじゃ無い……んだが」
剣士(何だ……? また、だ)
剣士(悲しくて切なくて、苦しくて……嬉しい。だが)
剣士「……俺が、もしくは、紫の魔王。代々の魔王が……」
剣士「知っている、『誰か』」
青年「……その誰かの判別は着かないのか」
剣士「魔法そのものが古い物だ。流石に……」
魔導師「……ふむ。でも、無駄では無かったですよ」
魔導師「青年さん、姫様は、始まりの国のあの地から」
魔導師「使用人さんが、ペンダントに移したエルフの加護を……」
青年「ああ。あの小部屋の中で放った、筈だ」
魔導師「……剣士さん、息苦しさとかは?」
剣士「魔族の魔力と相殺されているのかは解らんが……特に感じないな」
魔導師「うーん……」
青年「……なんだよ?」
魔導師「いえ。人間、の僕はまあ、当然の様に何も感じないんですけどね」
青年「……それだって、もう『古い物』さ」
魔導師「まあ、そうですけど……」
青年「魔族が魔法をかけた割に、僕もどうにもないって事は」
青年「……相殺、ってので当たらずとも遠からず、何じゃないのかな」
剣士「……扉。あれか」
青年「ああ。開けるぞ」

キィ……
5571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/13(木) 18:43:09.51 ID:bUd5ZPqt0
お風呂とご飯ー
558名も無き被検体774号+:2014/03/13(木) 19:04:40.46 ID:yqmuoTEs0
おつー

北の塔とか、南の洞窟とか、謎だよねー。
559名も無き被検体774号+:2014/03/14(金) 07:03:16.18 ID:yOy4MO9cO
560名も無き被検体774号+:2014/03/14(金) 20:51:45.97 ID:tgyyey9B0
保守
561名も無き被検体774号+:2014/03/15(土) 02:48:18.67 ID:v/+l18lR0
追い付いてしまった…続きが気になってしょうがない!
562名も無き被検体774号+:2014/03/15(土) 03:59:47.03 ID:b7Op0JU00
保守
563名も無き被検体774号+:2014/03/15(土) 04:11:25.40 ID:LcHknbON0
もうすぐ一年
二ヶ月くらいで、読めなくなってしまったが
応援はしている
頑張れスコBBA
5641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/15(土) 12:00:56.61 ID:XhP4eHcC0
今日はおでかけ!
帰って時間があったら!
565名も無き被検体774号+:2014/03/15(土) 15:47:51.22 ID:2Vu/C0eb0
保守
566名も無き被検体774号+:2014/03/15(土) 22:38:00.67 ID:F6Tsa4bGO
567名も無き被検体774号+:2014/03/16(日) 13:28:19.66 ID:fTZJnmiK0
ほしゅ
5681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/16(日) 18:24:27.66 ID:o5Jtb2Gz0
折角の休日、ねちまったよ!
ああああああああ

又明日……orz
569名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 06:43:56.89 ID:gEJ6Dwc70
お疲れ
ゆっくり寝れるとき寝といた方がええぞー
570名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 06:51:37.39 ID:Kl7k2U9+0
期待しちゃうから書けるときに来てくだしあ
571名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 06:52:08.15 ID:Kl7k2U9+0
無理しないでね!
572名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 06:57:10.62 ID:y3J/pOyf0
いや、折角の休日は寝てくれw
休日なんだぞ
5731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 09:40:03.97 ID:U4iir8Rn0
魔導師「…… ……ッ」ゲホッ
剣士「何も無い、な」
青年「おい、魔導師。扉締まらないように押さえて置いてくれ」
魔導師「埃っぽい……ッ は、はい」ケホ。グッ
剣士「……扉を閉めなければ、どうなる?」
青年「塔の下までは行ける」
剣士「と言う事は……何らかの魔法が掛かっているとすれば、この」コン
魔導師「……『扉』ですね」
青年「だが、さっきくぐった入口は開かない、んだ」
剣士「勝手に締まったな」
青年「もう見えないはずだ」
魔導師「見えない?」
青年「そう。壁になってしまっている」
剣士「……成る程。完全な一方通行か」
青年「そう言う事。今は君達が居るから良いけど」
青年「僕一人じゃ、結局この」コン
青年「……扉を閉めて、開くしかない」
魔導師「剣士さん、下に戻って、さっきの入口見てきて下さい」
剣士「…… ……良いだろう」

スタスタ、コツンコツン……

青年「剣士が素直に従ってる、てのも……ね」
魔導師「青年さんは扉押さえて下さいよ。僕も部屋の中が見たい」
青年「……人使いが荒くなったな」ハァ……スタスタ。ギュ
5741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 09:51:44.76 ID:U4iir8Rn0
魔導師「お互い様でしょ……それに」

スタスタ

魔導師「こういうのは目を変えてみる方が良い……し、そうすべきだ」コンコン
青年「…… ……」
魔導師「僕は、青年さんみたいに『感じる力』も、剣士さんみたいに」
魔導師「『察知出来る程魔力』も持ってませんからね」キョロキョロ
青年「……何も、目立った物は無いよ」
魔導師「……ですね」

コツンコツン……

剣士「確かに、壁しか無かったな」
青年「……だろ?」
剣士「消えてしまう入口、に……どこかへ転移する扉か」
魔導師「! 転移……!」
青年「え?」
魔導師「青年さん、その扉から、何か感じませんか!?」
青年「え……? い、否……特に……あ、いや」
青年「……そうか。扉に、転移魔法をかけた!?」
剣士「出産を控えた姫を、無事に……彼女の望む場所に送り届ける為、か」
魔導師「そうなると…… ……魔法をかけたのは、間違い無く紫の魔王様って事になります」
青年「……否、それはおかしい」
魔導師「え?」
青年「ああ、悪い……紫の魔王が魔法をかけた、は良いんだ。多分……それであってる」
青年「……と言うか、それしか考えられないだろう。気分は悪くは無いんだが」
青年「確かに『力の強い魔族』の魔力は感じる」
魔導師「え、では……」
青年「『お祖母様の望む場所』だよ。僕は男だから解らないけど」
青年「……否、出産だけじゃ無い。自らの命の炎が今にも消えようとしている」
青年「『幼子を抱いた母』が望む場所って……どこだよ?」
魔導師「……姫様の場合、紫の魔王の傍、ですか? いや……違うな」
魔導師「癒し手様はエルフの血を引いている。それだけは駄目だって思うはず」
剣士「現に、姫の行き先は……お前が育った小屋の傍、なのだろう、青年」
青年「……お祖母様にとって、母さんにとって」
青年「『一番都合の良い場所』だよ」
剣士「!」
魔導師「……で、でも、姫様はエルフですよ!? もし、変な人に見つかったら……」
剣士「……『拾う者』か」
魔導師「『拾う者』?」
5751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 10:00:39.29 ID:U4iir8Rn0
剣士「……紫の魔王が、紫の魔王の側近の身から発した言葉だ」
青年「鍛冶師の村の神父……か」
魔導師「……姫様を見つけ、秘密裏に癒し手様を育てた……人!」
剣士「『一番都合の良い場所』なのだろう」
青年「……父さんと母さんは、お前の居るすぐ傍に出た、んだよな」
剣士「俺が『欠片』で、この……この塔の紫の魔王の魔力とリンクして」
剣士「引き寄せた、と言う可能性もゼロとは言えないかもしれないが」
剣士「……それは俺の『意思』じゃ無い」
魔導師「お話しを聞く限り……確かに都合は良かったでしょうね」
魔導師「青年さんを始まりの国の庇護下で生み出すことが出来た」
青年「……僕が、何度この扉をくぐっても、北の街のあの宿屋の裏に出た、のもか」
剣士「『都合が悪い』とは言えないだろう……塔の麓にあった」
剣士「あのガラクタ船を何隻か、作らないと行けない位、のもんか?」クス
青年「……ちゃんと浮かぶし、ちゃんと進むんだからな」ムッ
魔導師「成る程。此処から一方通行じゃ、船置き去りですもんね」
青年「転移するのは僕だけだからな。最低三隻無いと、もう一回こっちに来れないだろ」
魔導師「……船だけ引きずって戻ったんですか、態々」
青年「僕は剣士みたいに便利屋じゃないんだよ」
剣士「おい……」
5761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 10:07:09.63 ID:U4iir8Rn0
青年「……そんな話はどうでも良い。扉閉めるぞ……どいて」
剣士「…… ……」ハァ

キィ……パタン

魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「これで、もう一度扉を開いて、くぐれば」
剣士「……俺達の一番『都合の良い場所』に出る、て訳か」
魔導師「……本当に凄い人……凄い魔族、だったんですね」
魔導師「紫の魔王様、って」
青年「そりゃ、なんてったって規格外、だからね」
青年「……剣士見てれば解るでしょ」
剣士「お前は、さっきから人を何だと」
青年「『欠片』だろ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「始まりの国で、自分で后様に言ったんじゃ無いか」
青年「『紫の魔王に出来て、自分に出来ない筈が無い』」
剣士「……そうだが」
魔導師「でも。『知』によれば、剣士さんは」
魔導師「……『代々の魔王の欠片』の筈ですよ。残留思念」
剣士「『回り続ける運命の輪』の『欠片』だ。紫の魔王自体も」
青年「解けないのか」
剣士「?」
青年「その理屈で行くと、だ……お前は、紫の……『魔王』の『欠片』」
青年「で、あれば……だ。この塔の魔法を、だ」
剣士「……俺に、解けと?」
魔導師「……不可能では無いかもしれませんけど」
青年「さっきも言ってただろう。自分の魔力とよく似ているって」
剣士「『1』が『10』を上回ることは不可能だ、青年」
青年「……そうか」ハァ
剣士「やってみる価値はあるかもしれん、が……俺が無事で居られる保証は……」
5771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 10:19:37.38 ID:U4iir8Rn0
ちょっとお買い物ー
578名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 10:52:18.99 ID:WTLLYcwI0
いってらー
5791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 11:32:56.32 ID:U4iir8Rn0
青年「…… ……」
魔導師「剣士さん、似てませんか」
剣士「?」
魔導師「船の中で、僕に話してくれた話に、です」
青年「ん? ……ああ、一度南の島に戻る、って言う」
青年「『考え』か」
剣士「……ああ。成る程な」
青年「何だよ?」
剣士「『願えば叶う』だ…… ……そもそもは姫の言葉だったはずだ」
青年「?」
剣士「何かを『こうしたい』『こうなって欲しい』と言う強い思い」
青年「…… ……」
剣士「俺達は、そもそも……それに振り回されていないか」
青年「? どういう意味だ?」
剣士「魔導師が『知』を受け継いだ事も、こうして」
剣士「今、俺達がやっている事も……『あっち』には無かった事だろう?」
青年「あ、ああ……」
剣士「……前と同じにならないように。『未来を変える為に』」
剣士「『回り続ける運命の輪』を『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に」
青年「……『願えば叶う』」
魔導師「そうです。『勇者は必ず魔王を倒す』」
魔導師「……そうしないと、『世界』終わってしまう」
剣士「だが、俺達が……否、黒髪の魔王……黒髪の勇者がやったことは何だ?」
青年「! ……模倣……」
剣士「そうだ……既に、俺達は……『あっち』を知っている」
青年「倣う必要は無い、と言いたいのか」
剣士「……少し違う、な」
魔導師「良いところは倣えば良いんですよ。折角……僕達は」
魔導師「今まで、知り得なかった事を知ることが出来た、んですから」
青年「……じゃあ、何だって言うんだい」
剣士「『倣わない』……すなわち?」
青年「反対の行動を取る、と言うのか? しかし、何の意味が……」
魔導師「『表裏一体』何でしょう……」
剣士「『倣う』……過去を『肯定する』事、だろう」
青年「! 『否定』しようと言うのか!?」
5801 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 11:39:22.82 ID:U4iir8Rn0
魔導師「……全てが全て、じゃ無くて良いとは思います」
魔導師「今も言った様に……」
青年「間違い探しをして、良いとこ取りしよう、てか」
剣士「……お前達が散々、俺に詰め寄った事だろう」
青年「え?」
剣士「『欠片』である俺が、自らを解放し」
剣士「……光の剣を完璧に為すのは、最終手段だと」
青年「…… ……」
剣士「出来る事はやれば良い。だが……何もかも、倣う必要は無い」
剣士「……そもそも、倣えない事だってあるだろう」
青年「! ……始まりの国からの旅立ち」
魔導師「はい。登録所を利用する事だってできません。国が無いんですから」
剣士「勇者が仲間を選ぶ、事もだ」
青年「…… ……」
剣士「お前、自分で言っていただろう。選ばれないなら選ばせれば良い」
魔導師「勿論、后様のお許しは必要です。その為には」
青年「……僕達『三』人が揃っていないと、か」
剣士(……『三』)
魔導師「そうです」
青年「……しかし、勇者様はまだ……」
剣士「そろそろ、五歳ぐらいになるはずだ」
魔導師「后様さえ宜しければ……僕達が、勇者様に世界を見せてあげられます」
魔導師「『あっち』では……僕達は、殆ど何の経験も無い侭」
魔導師「『世界』を青年さんの口から聞いただけで、受け入れてしまった」
5811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 11:44:48.69 ID:U4iir8Rn0
魔導師「……今度は、勇者様本人に、ちゃんと」
剣士「受け止めて貰う。それで……それでも、もし終わらなければ」
青年「……それすらも『否定』させるつもりか!?」
剣士「それは勇者が決める事だ」
魔導師「…… ……」
剣士「だが、后は全て、勇者に話すつもりだ、と」
青年「…… ……」
魔導師「『黒髪の勇者』様は、その仲間は」
魔導師「『何も知らずに旅立った』」
魔導師「……僕達は、それを否定するんです。青年さん」
青年「…… ……無茶苦茶だな」クス
剣士「ならば何故笑う」
青年「決まっているだろう。面白そうだと思うからさ」ニッ
魔導師「……では、長居は無用、ですね」
青年「僕達に取って、一番都合の良い場所は?」
剣士「……扉を、開けてみれば解る」
魔導師「必要があれば、また来れば良いんです」
魔導師「……勇者様を連れて、ね」
青年「そうだな。僕達は何処にでも行ける」
剣士「……人を便利屋扱いするのはやめろ」
青年「何も言ってないだろ」
剣士「顔に書いてあるんだ!」
魔導師「仲、良いなぁ」クス
青年「何処が!」
剣士「何処がだ!」
魔導師「開けますよ……」クスクス

キィ……

……
………
…………
5821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 12:16:36.73 ID:U4iir8Rn0
魔王「……伝わった、かな?」
癒し手「どう、でしょうね」フゥ
魔王「ああ、悪い……疲れただろう、癒し手」
癒し手「いえ……大丈夫です」
癒し手「……不思議ですね。まだこうして、魔王様のお役に立てるなんて」
魔王「考えて見ればおかしな話だよな。俺は……俺だけ」キョロ
金魔「…… ……」
魔王「まだ、死んでないのに此処に居る」
金魔「『曖昧』なのさ。お前も、俺も」
魔王「曖昧?」
金魔「前にも言っただろう。紫の魔王、紫の側近……奴らはもう」
金髪紫瞳の男「失われてしまった。彼らはもう、この世界の何処にも居ない」
魔王「……ああ」
癒し手「…… ……」
金魔「しかしまぁ、無茶するよなお前達」
魔王「え?」
金魔「一回干渉できた……干渉してしまったからって」
金魔「もう一回やってみましょう、って……」
癒し手「す、すみません……」
金魔「あ、悪い……責めてないって」
魔王「でも、癒し手が言ってくれなかったら、思いつきもしなかったよ」
魔王「もう一回、なんて……」
5831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/17(月) 13:14:57.94 ID:U4iir8Rn0
癒し手「可能なのか、どうかは……やってみるまで、解りませんでしたけど」
癒し手「……いえ。成功したのかどうか、確かめる術もありません、ね」
魔王「…… ……」
金魔「俺達は『過去』しか見られない筈だった。それが……こうして」
金魔「お前達にとっての『現在』、俺達にとっての……」
魔王「『未来』だな」
金魔「……ああ」
金髪紫瞳の男「『過去』に干渉できたから、『現在』にできない保証も無い」
金髪紫瞳の男「……癒し手は、そう言いたいのだろう、が」
癒し手「金の髪の魔王様は……『想い』だと仰いましたから」
金魔「…… ……」
癒し手「側近さんや、后様は、魔王様の為に……世界の為に」
癒し手「力を……想いをぶつけて、魔王様を押さえていらっしゃる筈です」
癒し手「『向こう』から出来るなら、『こちら』からも可能であっても」
魔王「……おかしく無い、か」
金魔「まあ……確かに可能性はゼロじゃ無い」
金髪紫瞳の男「影響が無ければ良いが」
584名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 15:53:09.33 ID:8jzuT6dxi
VIPが危険なので保守
585名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 18:24:00.04 ID:nUJaylYJO
びっぱー来襲age
586名も無き被検体774号+:2014/03/17(月) 20:32:50.35 ID:bY5xjNFJi
もいっちょ保守
587名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 01:11:47.89 ID:eF5+qoNKO
588名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 09:39:24.23 ID:kAXFwRpB0
魔王「……影響?」
金髪紫瞳の男「こっちから向こうに『干渉』した……『代償』だ」
癒し手「そ、そんなものがあるんですか?」
金髪紫瞳の男「定かでは無い……何も、な」
魔王「……まあ、あっちはあっちでどうにかしてくれる、んじゃないか?」
魔王「何かあったって」
金魔「お前な……」
魔王「ここで見てるだけ、であったって……どうせ、俺は」
魔王「……側近や后の力を借りないと、何れ……な」ハァ
金魔「そりゃそうだが……」
魔王「それに、悪い影響だけだとは限らないだろ?」
金魔「……無駄にポジティブだな」
魔王「無駄って言うな!」
癒し手「……何かを変えるには、多少の犠牲も必要です」
金魔「癒し手……」
癒し手「『器は間に合った』……それも、変わってしまった」
癒し手「側近さんにとっては……自分で言うのは、ちょっと恥ずかしいですけど」
癒し手「私に……もう会えない、と言う……『代償』です」
魔王「…… ……」
癒し手「以前……『あっち』ですっけ」
癒し手「では、どうだったか解らない、ですけど」
癒し手「同じように、私は……器、に戻る迄」
金髪紫瞳の男「ここで、こうしていたかもしれない、と?」
癒し手「……はい」
5891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 09:48:45.00 ID:kAXFwRpB0
金魔「それは無いな。俺がこうして、此処で」
金魔「お前さんに会うのは初めてだよ、癒し手」
癒し手「……そう、ですか」ハァ
金髪紫瞳の男「確かに変わってる、んだ」
金髪紫瞳の男「……お前達が、変えようともしている。今も」
魔王「ああ」
癒し手「…… ……?」キョロ
魔王「癒し手?」
癒し手「いえ……今、光った……様な」
金魔「何か見えたか?」
金髪紫瞳の男「……否」
魔王「光……?」

パアアアアアアアアアア!

魔王「!」
魔王(な、んだ…… ……紫…… ……否!)
魔王(……金色、の…… ……光!)

剣士『……う、うわああああああああああああ!』

ガシャン!

魔導師『あ、つ……ッ 剣士さん!?』

剣士『……!!』

バタン!

勇者『剣士!……ッ 青年、離して……ッ』

青年『駄目だ、勇者様…! ……危ない!』
剣士『………う、ぅ……』
魔導師『剣士さん、剣士さん!』
青年『……どいて、魔導師……勇者様を』
魔導師『は、はい……! ……勇者様、こちらへ……』
勇者『…… ……』ガタガタ、ギュ……
青年『……剣士?』ポウ……

魔王(……あれは『あっち』、の出来事……だよな?)
魔王(『過去』…… ……勇者は、まだ子供の筈だ)
魔王(……時間の経過が解らんから、何とも言えないが)
魔王(でも、俺がまだ此処に居る、って事、は)
魔王(勇者は……まだ、俺にたどり着いてない、んだよな?)
5901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 09:54:52.04 ID:kAXFwRpB0
剣士『……う、ぅ』
青年『……気を失ってるだけだろう、が……』
青年『…… ……』チャキ
青年『……光が弱くなってる』
魔導師『……え?』
勇者『失敗……した、の……』

魔王(失敗……? 否、でもあれは……!)

青年『……否。刀身は……完璧に治ってた……よね?魔導師』
魔導師『は、はい!后様の魔法の炎で……』
青年『……前ほどの光を感じない』
勇者『貸して……!』チャキン

魔王(……后の、魔法の炎。魔導師は鍛冶を学んでた、んだよな)
魔王(鍛冶師の村の……あれ?)
魔王(……魔導師って、こんな歳だっけ?)

勇者『軽い……前より、手になじむ。でも……』
勇者(……光が、少ない)
勇者『……どうして』

魔王(光が、少ない…… ……)
癒し手「……吸い込まれた様に、見えましたよね」
魔王「癒し手」
癒し手「剣を握った、剣士さんの手に……と、言うか身体、に」
魔王「剣士は、魔王の……『紫の魔王』の欠片、なんだろう?」
癒し手「……それを知っているのは、私達、だけなんですよね」
癒し手「私達は、何度も何度も、こうして……見た、から」
魔王「そうだな。どうにか伝えてやれる術があれば……」
魔王「……さっき見たいに、もう一回干渉できたら……!」
金魔「俺はお勧めしないけどね」
魔王「父さん……」
5911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 10:05:46.69 ID:kAXFwRpB0
金魔「気持ちは解る。んだがな」
金魔「あいつが言ってた様に、何らかの影響が出て」
金魔「……ああ。勿論、癒し手の言う、さ」
金魔「多少の……てのも、理解した上で、だぜ?」
癒し手「…… ……」
金魔「もし、勇者がまだ幼い時期に、お前が耐えきれなくなったら?」
魔王「!」
金魔「……まあ、何事も恐れるばかりじゃ何も出来んけども、さ」
魔王「そりゃ、どこまで伝わってるかもわかんないからな……」
金髪紫瞳の男「どうにか、伝える術があれば……」
金髪紫瞳の男「何か、変わるのか?」
癒し手「え……」
魔王「……さっきの、光は、さ」
癒し手「剣士さんが、光の剣の…… ……まさしく、光を吸い取ってしまった」
癒し手「……ん、でしょうか」
魔王「だけど、あいつは魔王の欠片だろ?」
金魔「『表裏一体』だろ」
魔王「……あ、そうか」
癒し手「もし、彼が紫の魔王の……代々の魔王の残留思念だと」
癒し手「気付かせてあげる事ができれば……光の剣は……否」
癒し手「彼は、失われずにすむ、んでしょうか……」
魔王「……もしくは、此処で終わるのだろうか、だろ」
癒し手「はい」
金髪紫瞳の男「…… ……」
金魔「そうしたら、お前は消えるな『青年』」
癒し手「あ……!」
金髪紫瞳の男「『犠牲』はつきものなんだろう?そんな顔するなよ」
癒し手「…… ……」
魔王「どっちにしたって。お前は……」
金髪紫瞳の男「……『魔王』にはなれない」
5921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 10:30:35.64 ID:kAXFwRpB0
癒し手「……でも。彼がまた……『世界』を産んでしまったら……!」
金魔「堂々巡りだな……この『回り続ける運命の輪』とやらも」
金魔「俺達のこの議論もどき、もな」
魔王「…… ……」ハァ
金髪紫瞳の男「もし、俺が『世界』を産んでしまっても」
癒し手「え?」
金髪紫瞳の男「『変わってる』よ。その『世界』そのものが」
魔王「……紫の魔王は、もう何処にも居ない」
癒し手「…… ……で、でも!」
金魔「ん?」
癒し手「『悠久なる空の彼方へ還り、世界へ孵る』のでは無いのですか!?」
癒し手「金の髪の魔王様は、紫の魔王様はもう……!」
金魔「そうだよ。彼は何処からも失われた」
癒し手「……思い出しました。前后様……魔王様の、お母様は、確かに……!」
金魔「『悠久なる空の彼方へ還り、世界へ孵る』……か」
魔王「……世界へ、『孵る』……!」
金髪紫瞳の男「だが、確かだ。紫の魔王も。彼の側近も」
金髪紫瞳の男「何度も、言う。もう……彼らは『亡い』」
金魔「……最初に言っただろう。もう、お前は……お前達は」
金魔「違う道を歩み始めたのさ、魔王」
魔王「…… ……」
593名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 12:41:41.03 ID:aQ8mjBX30
ほしゅー
5941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 15:24:16.26 ID:kAXFwRpB0
癒し手「……もどかしいですね。自由に繋がれない以上」
金魔「全て後手後手だからな。だが」
金魔「……こうして、何度も何度も繰り返す不毛な議論も」
金髪紫瞳の男「積み重なって……やっと、此処まで来たのかもしれない」
魔王「そうか……何度も、繰り返している筈、だもんな」
金髪紫瞳の男「何も無駄にはならない。確かに代償はあるかも知れないが」
金髪紫瞳の男「お前達が……試みた事も」
魔王「……だったら、良いがな」
癒し手「願います。叶う様に…… ……勇者様が、今度こそ」
癒し手「腐った世界の腐った不条理を、断ち切ってくれると……!」

……
………
…………
5951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 15:38:03.85 ID:kAXFwRpB0
后「……『否定』」
剣士「……ああ」
青年「『世界』はまだまだ、謎だらけだ……后様」
青年「僕が行った北の塔もそう。剣士の行った……南の洞窟も」
魔導師「……始まりの国の呪いだってそうです」
后「…… ……」
剣士「あの国が滅んでしまった以上、勇者の行方は知れず……と、されている」
青年「そうだな。僕が転々としている間も、その話は結構聞いた」
魔導師「書の街でも、ですよ。でも…… ……たった、五年」
魔導師「なのに……人々はもう、忘れている」
后「……勇者は、死んでしまった、と?」
剣士「そうじゃ無い。何時か、勇者様が現れて……と」
剣士「そんな期待は、胸の内にはあるのだろう。だが」
后「……日々の生活からは、かけ離れた話題、なのね」
青年「確かに、魔物も力をつけてきているだろうが」
青年「……『受け身』なんだよ。世界も……『あっち』の僕達も」
后「…… ……」
剣士「全てを否定する、と言ったって、出来る事は知れている。だが」
后「……実際に勇者を連れて世界を回り、その目で見てもらえば」
后「希望は大きくなるわね」
魔導師「魔王が復活する、って言う恐怖もより身近な物になりますけど」
魔導師「……それで良いんだと思いますよ、僕は」
魔導師「『あっち』の僕達もそうでした、けど」
魔導師「……本当に、何と言うか……どこか遠い世界のお話、なんですよね」
5961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/18(火) 16:10:45.02 ID:kAXFwRpB0
剣士「…… ……」
魔導師「『願えば叶う』……それは、勇者様や、一緒に旅をする僕達だけの」
魔導師「特権じゃ無い筈だ。世界中の人達が」
魔導師「『勇者は魔王を倒すんだ』と願ってくれれば……!」
后「……解ったわ」ハァ
后「勇者を呼んでくる。少しだけ待ってて頂戴」

スタスタ

青年「后様は、反対はしない、と思っていたけど……」
剣士「……なんだ」
青年「否。それにしても随分あっさりだな、と思って」
魔導師「……そうでしょうか」
青年「何だよ」
魔導師「本来なら、って言い方もおかしいですけどね。決まってる訳じゃ無いし」
魔導師「でも、16歳まで後、10年以上……あるんです」
魔導師「……10年以上も早く、離ればなれになってしまう」
青年「…… ……」
魔導師「辛い選択を迫ってしまった、のかもしれません」
剣士「……これも、自分で選んだ道、だ」
魔導師「剣士さん……」
597名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 23:34:31.11 ID:ULnlwmzQ0
598名も無き被検体774号+:2014/03/19(水) 01:39:57.77 ID:B3U57BElO
5991 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:07:34.49 ID:EUXpJI9r0
剣士「『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為の』通過点」
青年「…… ……通過点、ね」
魔導師「…… ……」

タタタ……ガシッ

魔導師「わッ!?」
勇者「…… ……」ギュ……ジィ
魔導師(赤茶の髪……金の瞳!)
魔導師「勇者様……ですか?」
勇者「おにいちゃんが、せいねん?」
青年「青年は、僕だ。それは、魔導師だよ」
勇者「まどうし!」
魔導師「はい……こんにちは、勇者様」
勇者「じゃあ、あなたが、けんし」
剣士「……ああ」
勇者「ぱぱににてる」
剣士「!」
青年「…… ……ッ」ブフッ
剣士「……青年」
青年「い、いや、うん……ご、ごめ……ッ」アハハ
魔導師「気持ちは、わ、わか……わかります、けど……ッ」プッ
剣士「…… ……」ウンザリ
勇者「ぱぱじゃないのは、しってるよ。ままがいってた」
剣士「……覚えて居るのか」
勇者「ぱぱのこと? ……うーんと」

タタタ……

后「勇者、もう……!」ハァ
青年「…… ……」クスクス
魔導師「…… ……」クスクス
后「……??」
6001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:13:37.53 ID:EUXpJI9r0
勇者「わかんない。けど、にてる。きがする、よ?」
剣士「……そうか」ハァ
后「勇者」
勇者「まま!」ギュ!
后「…… ……」ギュ
勇者「どうしたの、まま?」
后「勇者……良い、良く聞いて」グイッ
勇者「ないてるの?」
后「……貴女は、『勇者』ね?」
勇者「うん!あたし、ゆうしゃ! ……おおきくなったら、なかまといっしょに」
勇者「まおうをたおすの!」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
后「……ええ。その為には、一杯剣の練習もしないといけないし」
后「一杯、強くなって……辛いこと、とか。色々……」ポロ
勇者「だいじょうぶだよ、まま。しんどくても、こわくっても」
勇者「あたしは、ゆうしゃだから! がまんする! できるよ!」
后「……ママが、居なくても?」
勇者「……え?」
后「ずっと話してたでしょう。貴女は、仲間と一緒に……旅に出るの」
勇者「…… ……」
后「その為には、ママと離れないと駄目なの」
勇者「ままは……ぱぱのそばに、いないと、だめ」
后「……そう。パパを一人にしておくと、寂しくって泣いちゃうからね」
勇者「…… ……じゅうろくさい、じゃなかったの」
勇者「あたし、まだごさい、だよ?」
后「…… ……」
勇者「やだ、よ……ままも、いっしょじゃなきゃ、やだ……!」ポロ
后「勇者……!」ギュッ
6011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:20:40.84 ID:EUXpJI9r0
青年「……勇者様」
勇者「え?」
青年「ほら、これ……何だか解る?」コロン。チカチカ
勇者「! どうしてせいねんがもってるの!?」
勇者「……あ、あれ。あたしの、ある」ゴソ。コロン。チカチカ
后「…… ……」
魔導師「僕も。持ってますよ」コロン。チカチカ
勇者「ひかるいし。いやしてさまのおまもり……」
青年「これ、どうして光っているかわかるかい?」
勇者「……ううん」
青年「喜んでいるんだよ。きっと」
勇者「よろこんでる?」
青年「ああ。勇者様が、勇気を出して……僕達と一緒に」
青年「旅に出てくれる……なら、嬉しいな、って。きっとね」
勇者「……いやしてさま、って。せいねんのおかあさん、でしょ?」
青年「ああ。もう……死んでしまった、けれど」
勇者「なんで?」
青年「……寿命、かな」
勇者「じゅみょう??」
青年「んーと…… ……難しいな」
魔導師「癒し手様は、勇者様に……託されたんですよ」
魔導師「ああ、えっと……お願い、されたんです」
勇者「おねがい……あたしに?」
魔導師「はい。辛いでしょうけど……寂しいでしょうけど」
魔導師「頑張って、魔王を倒して……この、世界、をね」
魔導師「救って欲しい、って」
6021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:27:30.42 ID:EUXpJI9r0
勇者「せかいを、すくう……」
剣士「そうだ。お前にしか出来ない……勇者、様」
勇者「あたしに、しか?」
剣士「『勇者は必ず魔王を倒す』んだろう」
勇者「う、うん!」
后「……勇者。貴女には、まだまだ理解出来ない事だと思う」
后「もっともっと、知る事は一杯あるし……厭だな、って思う事も」
后「……一杯、ね。あると思うの。でも」
勇者「…… ……いい、よ。まま」
后「勇者……」
勇者「ままは、あたしが、まどうしや、せいねんや、けんしと」
勇者「たびだって、『りっぱなゆーしゃ』になったら、うれしい?」
后「……ッ ええ、勿論よ」ポロ
勇者「それに、そうなったら、ぱぱは、めをさますんだよね?」
勇者「ぱぱ、よろこぶんだよね?」
后「…… ……ッ」ギュ
勇者「……」キョロ
青年「ん?」
勇者「みんな、いっしょにいてくれる、んでしょう?」
青年「……当然だ。僕達は『勇者の仲間』だからね」
勇者「じゃあ……あたし、がんばる」
勇者「まま、また……すぐ、あえるんだよね?」
后「勿論よ。パパと一緒に、待ってるから……」
勇者「……ッ うん。じゃあ、あたし……がんばる」
后「勇者…… ……」
6031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:39:57.43 ID:EUXpJI9r0
勇者「あたしは、ゆうしゃ、だから」
勇者「ままと、ぱぱがよろこんでくれるなら、がんばって」
勇者「まおう、をたおすよ。それに……」コロン。チカチカ
勇者「いやしてさまも。せいねんのおかあさんも、よろこんでくれるなら」
勇者「あたしも、うれしい、かな?」エヘ
后「…… ……ッ」ギュッ
剣士「……后。勇者様には何処まで?」
后「理解出来るだろうところまでしか……ほんの少ししか話していないわ」
后「自分は、勇者で……何時か、魔王を倒さなくてはいけないんだ、と……ぐらい」
剣士「解った……後は」
青年「僕達に……任せて、后様」
后「……ええ」
魔導師「さて……じゃあ、さしあたってどうしましょう、か」
剣士「何処へでも行ける……とは言え、な」
后「……私は、戻るわ」
魔導師「え、もうですか!?」
后「決めてしまった以上、長居すべきではないでしょう」
后「……勇者の、気の変わらないうちに、ね」
勇者「まま?」
后「……勇者。その癒し手のお守りと……これ」スッチャリン
勇者「…… ……ペンダント?」
后「そう。パパがママにくれたの。これを、パパとママだと思って」
后「大事にして?」
勇者「……わ、わかった」ギュッ
后「……それから、これ」チャキン
勇者「さ、さわっていいの……ひかりの、けん」ソッ……
后「これは、貴女の物よ、勇者」
后「……今はぼろぼろだけど。これをどうするかは、皆で良く相談して。ね?」
勇者「う……うん」ギュ
后「…… ……」スッ
勇者「まま……?」
后「いってらっしゃい……私の可愛い勇者」チュッ
后「……又後で。ね?」

シュゥン……!

勇者「!? まま……ッ …… ……まま!?」
6041 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:49:56.39 ID:EUXpJI9r0
魔導師「随分……あっさり、ですね」ハァ
剣士「長引かせても辛いだけだ」
勇者「まま…… ……」ギュッ
青年「……いいかい、勇者様。君のママは、とても強い力を持つ」
青年「炎の、魔法使いだ。君も、その血を受け継いでいる」
勇者「……ッ」グッ
青年「君のパパも、とても強い勇者だった」
勇者「……うん。あたしも、りっぱなゆうしゃになる」
勇者「それで……まおうを、たおす……ッ」
青年「……うん」ポンポン
剣士「勇者様」
勇者「ん?」
剣士「……大切な事だ。良く聞いて欲しい」
勇者「う、うん!」
剣士「これから、この島を出て『世界』を巡る」
勇者「…… ……」
剣士「剣は俺が教えよう。魔法は、青年と魔導師に教われば良い」
青年「僕は回復魔法担当だね。勇者は確か……使える筈だ」
勇者「うん……まほうのつかいかたは、ままがおしえてくれたよ」
魔導師「まあ……回復も攻撃も……っていうか」
魔導師「后様は、基礎がしっかりしていらっしゃいますしね」
青年「魔導の街の出身だもんな……良し、じゃあ、見せてくれる?」
勇者「良いよ…… ……炎よッ」ボゥッ
剣士「…… ……」
青年「!」
魔導師「…… ……ッ」
勇者「……あ、あの……まだ、ちっちゃいの、しか、できないけど……」
6051 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 15:56:27.12 ID:EUXpJI9r0
剣士「……何故驚く。向こうでもそうだっただろう?」
青年「否……やっぱりか、と思っただけだよ」
勇者「あ、あの……?」
魔導師「上手です、勇者様。小さいのに、上手なのでね」ナデ
魔導師「吃驚したんですよ、僕ら」
勇者「あ……うん!」ニコッ
魔導師「回復魔法は、使えますか?」
勇者「やり方は教えて貰ったんだけど……」
青年「大丈夫……勇者様なら出来る筈だよ。僕がちゃんと教えてあげるし」
剣士「……さて。ひとまずどうするか」
青年「ここに居たって仕方が無いだろう?」
魔導師「そうですね……とは言え」ハァ
魔導師「……北の塔の扉を開けたら此処に出た、てのは、助かりましたけど」
魔導師「睡眠が足りてないのは結構辛いです……」フア
青年「まあ、な……あの時間に后様たたき起こす訳にも行かず」
青年「結局野宿みたいなもんだったしな……」
勇者「あたしのおうち、くる? ……まま、どこか……いっちゃった、し」
剣士「まあ、荷物も纏めねばならんだろう……が」
剣士「……どこか、転移で…… ……」
魔導師「? 剣士さん、どうしました?」
青年「! 誰か、来る」

スタスタ
6061 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 16:01:41.88 ID:EUXpJI9r0
男「……アンタが、剣士か」
剣士「……あ、あ」
勇者「あ、おとこさん」
青年「何だ、知り合い?」ホッ
勇者「おとこさんはね、そんちょーさんのむすこさんだよ」
魔導師「村長……あのおじいさんの、ですか」
男「親父から、聞いた。勇者様達を連れに来た奴の中に」
男「……闇色の瞳を持つ、男がいるってな」
剣士「……何の用だ?」
男「どこかへ行くのか」
剣士「……お前に話す必要は無い」
男「……海賊船を頼るつもりか」
剣士「!?」
男「現船長は俺の息子だ」
青年「!」
魔導師「……勇者様、おうちに案内して貰えますか?」
勇者「え?」
魔導師「旅立つ為の支度を調えて、おやつにしましょう」
勇者「おやつ……」
魔導師「はい。美味しいお店教えて下さい……よっと」ダキッ
勇者「キャッ」
魔導師「……意外と重い」
勇者「まどうし、しつれい!」
魔導師「ご、ごめんなさい」
青年「……僕も行くよ。お腹すいたし。剣士は甘い物食べないでしょ」
剣士「…… ……」
青年「後でおいで……じゃあね。行こうか、魔導師」
魔導師「は、はい……」フラ
男「…… ……」

スタスタ

剣士「…… ……」
6071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 16:09:10.58 ID:EUXpJI9r0
男「……そう警戒するな。別に…… ……」
剣士「何も無いと言うのであれば、何故態々此処まで来た」
剣士「村長から聞いている。女船長を亡くして船を下りて以来」
剣士「……日がな一日、海を見て過ごしている息子が居る、と」
男「知ってたのか」
剣士「……初対面だろう」ハァ
男「…… ……アンタ、なんだな」
剣士「…… ……」
男「恨み言の一つ、言えりゃ……良かったのかもしれねぇな」ハァ
剣士「……?」
男「聞いてるんだろう。あいつが、死ぬ瞬間」
男「……俺でも、チビでもない。お前の名を呼んだ事を……!」
剣士「!?」
男「……ッ 態とらしい反応すんな!」
剣士「…… ……」
男「あいつの心の中に、誰か他の男が居たのは知ってたさ」
男「……俺は、こんなご面相だ。腕っ節に自信があると行ったところで」
男「お前にゃ遠く及ばネェ……あいつが、なんで俺を選んだのか不思議な位だ」
男「だがな……だが、ナァ!?」グイッ
剣士「……ッ」
男「…… ……チビには、言うな。絶対にだ!」
剣士「い、う……ッ わ、けないだろう……ッ は、な……ッ」
男「…… ……ッ」ギリギリ
剣士(凄い力……ッ く、首、が……ッ 締ま……ッ)
男「…… ……」パッ
剣士「…… ……ッ」ゲホッ
男「……もう、巻き込まないでくれ」
剣士「…… ……」
男「お前、人間じゃネェんだろう。しかも、勇者様と旅に出るんだろう」
男「……協力してくれる奴なんざ、わざわざ海賊を選ばなくたって」
男「なんぼだって…… ……居るだろうよ」

クルッ スタスタ

剣士「…… ……おい」
男「悪かったな」
剣士「…… ……」ハァ
6081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 16:17:41.01 ID:EUXpJI9r0
剣士(……女船長が。俺を)ケホッ
剣士(こういう時……人、と言うのは泣くんだろうか)
剣士(…… ……)ハァ
剣士(悲しい……切ない? ……否。嬉しい……苦しい)
剣士(……女船長は、もう居ない。もう…… ……)

スタスタ

青年「……やあ、お帰り。色男は大変だね」
剣士「お前にだけは言われたくないな」
青年「何でだよ」ムッ
勇者「けんしはたべないの、けーき」
剣士「俺は良い……口についてるぞ、クリーム」
勇者「……ん」ゴシ
魔導師「さて、どうしますか? ……勇者様の荷物は、持ってきましたけど」
青年「村長さんにも挨拶しておいたよ……君は、複雑だろうし?」
剣士「……取りあえずは、この島から出ないとな」
魔導師「定期便は来ませんし……青年さんに、船長さんに手紙出して貰いますか?」
魔導師「時間は掛かるかもしれませんけど……」
青年「まあ、船長なら喜んで乗せてくれるんじゃない。今度は」
青年「正真正銘、勇者様、が一緒だしね」
剣士「……否。港街まで転移しようと思う」
魔導師「え……大丈夫ですか?四人抱えて……」
剣士「その後は全て、定期船を利用する」
青年「…… ……まあ、良いんじゃないの」
魔導師「青年さん?」
青年「その方が、勇者様の経験にもなるだろうしね。全て僕達頼り、じゃ」
青年「こんな事した、意味も無い」
勇者「ふねにのるの!?」
魔導師「……そうですね。ひとまず、大きい街に行きましょうか」
6091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/03/19(水) 16:25:35.47 ID:EUXpJI9r0
青年「港街、か……」ハァ
魔導師「どうしました?」
青年「……別に。ご馳走様」ガタン
勇者「まどうし、だっこ!」
魔導師「え!? ……ちょ、ちょっとだけですよ……」
青年「…… ……」
剣士「どうした、空を見て」
青年「『向こう』でもそうだった。后様は……ちゃんと見守ってくれている筈、だ」
剣士「……そうか」
青年「港街に着いたら……どうするんだ」
剣士「ひとまず、勇者に必要な物を買いそろえないとな」
剣士「……子供用の剣などもあそこなら手に入るだろう」
青年「ついでに、勇者様は無事ですよ−、って触れ回らないと、だろ」
剣士「……ああ」
青年「…… ……」
青年(母さん……とうとう、此処まで来たよ)
青年(……全て、『否定』する。きっと、終わらせてみせる、から……!)
剣士「……では、行こうか」
青年「今頃、后様と父さんと……使用人が見てるかな」
魔導師「ちょっと!二人で遊んでないで、抱っこ変わって下さいよ!?」
勇者「やだーまどうしがいいー」
青年「年も近いし、良いじゃ無いか……なつかれて嬉しいでしょ」クス
魔導師「……体よくお守りを押しつける気ですね……ッ」
剣士「さっさ歩け……人気の無い場所で飛ぶぞ」
魔導師「……勇者様、歩いて下さいよ……ッ」
勇者「もーちょっとー!」

……
………
…………
610名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/19(水) 19:39:54.87 ID:ZeDqumlv0
もーちょっとー!
611名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/19(水) 21:55:11.85 ID:WS+TsckG0
幼女可愛いよ幼女
6121 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/20(木) 09:35:54.87 ID:UkSoO2uj0
少女(やっと、寝てくれた……)フゥ

コンコン

少女「はい」
女性「『魔法使い』、お客様が見えたよ」
少女「あ、はい!」

カチャ

女性「子供は見ておくから……ああ、寝ちゃったんだね」
少女「はい……すみません、お願いします」

パタン、スタスタ

少女(…… ……)ハァ
少女(あっと言う間だ。あっという間に……!三年……否、もうすぐ四年、か?)
少女(健康に……育ってくれるのは嬉しい。こんな場所で、と思いはする、が)
少女(だが……おかげで、食うには困らない)
少女(暖かい布団で眠れる。客に買われる為だとは言え)
少女(……綺麗な、服を着て…… ……)ハッ
老婆「全く、遅かったね『魔法使い』」
少女「……すみません」
老婆「子供は?」
少女「寝ました……女性さんが見てくれています」
老婆「そうかい……ほら、お待たせしてるんだから、さっさとしなよ」ニヤニヤ
少女「…… ……?」
少女(何だ、不気味だな……)
老婆「アンタには感謝して欲しいね、本当に」
少女「……それは、勿論」
老婆「ほら、さっさと行きな」

コンコン。カチャ

少女「失礼致します…… ……!」
青年「……元気そうでなにより」
6131 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/20(木) 09:42:58.39 ID:UkSoO2uj0
少女「青年…… か!?」
青年「何で驚くの」
少女「…… ……」
青年「聞いてる?」
少女「あ、ああ……」
青年「……大人っぽくなったね。少し見ない間に」
少女「貴方は……変わらないな」
青年「そりゃね。僕はエルフの血を引いているから」
少女「……どうして」
青年「『君の事が忘れられなくて』……とかは、口が裂けても言えないけど」
少女「…… ……」クス
青年「何故笑う?」
少女「否……変わらないな、と思って」
青年「客を取ってるんだって?」
少女「……ああ。子供達を食わしていかなければいけないからな」
青年「子供……達? ! お前……」
少女「……客の子を孕んだ、とかでは無い」
青年「…… ……」
少女「双子、だったんだ…… ……茶の瞳のな」
青年「!」
少女「しかも男女の、だ」
青年「…… ……」
少女「『始まりの姉弟』を思い出したか?」
青年「…… ……」
少女「……私もだ。出産時、女の子が先に出て来た」
少女「老婆に、もう一人いると言われた時には血の気が引いた」
青年「…… ……」
少女「言葉も無いか?」
青年「否、そん…… ……いや」
少女「似た様な心地だった。いやに腹は大きくなるし」
少女「……陣痛も、思っていたよりも早かったからな」
6141 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/20(木) 09:59:44.00 ID:UkSoO2uj0
青年「『始まりの姉弟』は……双子では無いんだろう?」
少女「……と、聞いては居る。が、遙か昔の……確証も無い話だ」
少女「ただ、雷の加護を持つ姉と弟としか……」
青年「…… ……」
少女「私自身が双子だ。だからか……と思った、が」
青年「……雷、か」
少女「始まりの姉弟、の事と共に……姉の事を思い出した」
青年「秘書、だったか。彼女は、雷の加護を持っていたんだったな」
少女「……それだけじゃない」
青年「え?」
少女「忘れた訳では無いだろう……『呪い』だ」
青年「!」
少女「姉は私に言っていただろう……『お前を呪ってやる』と」
青年「考えすぎだ。あの土地は……」
少女「解って居る。始まりの国はもう無い」
少女「……魔導の国、もな」
青年「……此処で、育てて行くのか」
少女「当分は」
青年「…… ……そう、か」
少女「不思議だな。あれほど……厭だと思っていた」
少女「生娘でもあるまいし……とは思うが」
青年「……職業に貴賎は無い。と、思いはするけれど……ね」
6151 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/20(木) 10:17:38.67 ID:UkSoO2uj0
少女「姉は……喜んでいるのだろうか」
青年「は?」
少女「……炎の加護を持つ私から、雷の加護の……しかも、男女の双子」
青年「呪いなんて物は…… ……」
少女「解って居る。だが、喜んでいるのだろうな」
青年「おい」
少女「……ご免なさい」
青年「良いけどね、別に」
青年「……誰にも言えないだろうし、な」ハァ
少女「今日は、どうしたんだ」
青年「え?」
少女「態々此処に……私に会いに来た、訳ではないんだろう?」
青年「君が忘れられなかった訳じゃ無い、と言っただけで会いに来たのに違いは無い」
少女「?」
青年「……勇者様を連れて来た、のさ」
少女「え!?」
青年「今は仲間と買い物に行っている……君は外に出る事はあるのか?」
少女「……別に、外出は自由だ。客が来る時間が無ければ」
少女「私は……用事が無い限り、あまり出ないが……」
青年「あの火事騒ぎ……で、勇者様の行方も解らなくなっていた筈だからね」
少女「……しかし、旅立つ、と言うにはまだ……!」
少女「では、魔法使いさんも一緒、なのか!?」
青年「否。后様は…… ……やらなきゃ行けない事があるからね」
少女「……そう、か」
青年「君は、后様の事を……気にするよな。何故だ?」
少女「え? ……ああ」
青年「『魔法使い』なんて、名を偽るぐらい」
少女「…… ……解らない。だが」
少女「勝手な親近感、かな。失礼な話……なのかもしれないが」
青年「…… ……」
616名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/20(木) 19:49:21.86 ID:bGFH7Gje0
少女は運命に翻弄されとるなー
617名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/21(金) 07:15:33.01 ID:qHAUW6yK0
618名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/21(金) 11:10:29.21 ID:GQTZ3lSE0
追いついてしまったorz

続きが気になる(-_-)
619名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/21(金) 13:07:28.58 ID:cw6ukP4qO
6201 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/21(金) 18:25:57.78 ID:1bJSABns0
少女「あんな出会いで無ければ。もし……まだあの国があって」
少女「勇者様と、彼女が……いて。許されるのならば」
青年「姉のように、慕いたかった……か」
少女「……青年」
青年「何だよ」
少女「貴方は私に会いに来た……と、言ったが」
青年「ああ」
少女「勇者様をお連れしたのだ、と……態々、告げる為に?」
青年「……君を、これっぽっちも気にしなかった、と言えば嘘になるかもしれないが」
青年「一つには、噂を広げて……否」
青年「君に伝えておけば、広がるかもしれないな、って言う期待」
少女「……成る程。あの一件以来、行方不明と言う形になっていたから、か」
青年「まあね」
少女「…… ……」
青年「後は、言った通り。少しばかり……気にしてた」
少女「…… ……」
青年「君を抱く気にもならないし、好意を抱いたりもしていないけど」
青年「……君が無事だと教えたら、良かった、と言っていたから」
少女「魔法使いさん、か」
青年「案外、后様も……同じだったのかもな」
少女「?」
青年「……妹のように、かな」

チリン、チリン……

青年「時間だな」
少女「……ああ」
青年「名は?」
少女「え?」
青年「子供の名前だよ」
6211 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/21(金) 18:34:10.34 ID:1bJSABns0
少女「……『少年』と『少女』」
青年「…… ……」ハァ
少女「言いたいことは……解るさ」
青年「顔に書いてでもあったかい」
少女「……否」
青年「良く解らないね、君は」
少女「そう、かな……そうだな」
青年「本来、自分の名である物を娘に与えてどうなるんだか」
少女「自己満足だ……ただの」
青年「それ以外の説明はつかないね、僕にも……じゃあ」
青年「今度こそ、さようなら『少女』」
少女「…… ……あ、あ」

スタスタ、カチャ……

少女「青年!」

タタ、グッ

青年「……ッ 何だ、よ」
少女「行くのね」
青年「当然だ」
少女「引き留めたい……訳じゃない」
青年「そうされる理由は無い」
少女「……『解って、る』」
青年「……優しくする理由も無い」
少女「『否……貴方は、優しいよ』」
青年「『…… ……』」
少女「貴方達が世界を救うのと……私が死ぬの。どっちが早いかな」
青年「……さぁな」
少女「できれば、貴方が作った平和な世界を生きて『みたかった』」
青年「願えば、叶うさ」
少女「……そうか」
青年「…… ……」
少女「……青年」
青年「何さ」
少女「……ありがとう」
青年「……ああ」
6221 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/21(金) 18:37:42.03 ID:1bJSABns0
少女「『時間、だな……』」
青年「……そうだね」
少女「『…… ……』」
青年「…… ……」

カチャ

少女「……青年!」
青年「……なんだよ」
少女「世界を救って! ……願ってる」
青年「世界を救うのは、僕じゃなくて勇者様だけどね」
少女「願えば叶うんだろう」
青年「そうだよ……勇者は、魔王を倒す」
少女「……ありがとう。元気で」
青年「…… ……」

パタン

少女(さようなら、か)
少女(……当然だ)
少女(自己満足。その通りだ。彼に縋っても仕方が無い)
少女(……寂しいだけなんだ。誰も、居なくて)
少女(否。子供達が居る…… ……大事な、娘と息子)
少女(なのに……嬉しかった。寂しかったし……悲しかった)
少女(……切ない、な。馬鹿らしいと思うが)
少女「……戻らないと、な」ハァ
少女(さようなら、青年……貴方達が、世界を救うだろう事を)
少女(…… ……祈っている。心から)
6231 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/21(金) 18:39:48.31 ID:1bJSABns0
おふろとごはんー
624名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/21(金) 19:43:00.25 ID:R5h59Pnd0
リアルタイムだと
待ち時間がすごく辛いな(-_-)
625名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/22(土) 01:18:08.99 ID:/BtF75T20
気長に待つべしー
626名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/22(土) 09:21:14.15 ID:tJS7kWj80
いつかの紫魔王と、魔導国の少女の関係ようだな
627名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/22(土) 09:28:37.10 ID:tJS7kWj80
あの娼館の少女じゃなくて、家から追放されてボロボロになってた女の子いたよね?
うろ覚えだ…
628名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/22(土) 09:34:36.24 ID:6tv3hD8X0
>>627
「ああ、世界は美しい」の番外編で出てたはず
「魔法使い」を自称する少女と前ループでは勇者が仲間だと直感したにも関わらず亡くなってしまった「船長」がどうなるのか気になるところ
629名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/22(土) 11:01:26.56 ID:wGpY1Mxe0
名前が役柄だからそろそろ混乱してきそうだわ
630名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/23(日) 00:34:19.29 ID:LzUcsfb60
631名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/23(日) 08:17:42.44 ID:XELF+hzqi
ほしゅ
6321 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/23(日) 11:06:33.33 ID:DL1GVqF80
おはよう!
幼女春休みでなかなか思うように時間が取れないから
暫くのんびりですー

で、公園行くので……orz
また!
633 忍法帖【Lv=7,xxxP】(1+0:8) @転載禁止:2014/03/24(月) 01:12:12.85 ID:hbCZOV2E0
634名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/24(月) 08:11:55.91 ID:wfv6Kuc2O
635名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/24(月) 17:51:42.02 ID:wrftqSoR0
636名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/24(月) 22:29:14.88 ID:cJ5ytYTc0
だれか世代別に分けてくれた奴持ってない?頭ごっちゃごっちゃしてきた…
637名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/24(月) 22:39:11.37 ID:wrftqSoR0
激しく同意(-_-)
これで終わらないと本当に訳わかんなくなりそう~_~;
638名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/25(火) 03:41:27.34 ID:zIGPjtHl0
639名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/25(火) 11:31:48.43 ID:zIGPjtHl0
640名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/25(火) 23:06:28.67 ID:y2c8iSW3O
641名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/26(水) 04:49:32.17 ID:D7laJy2/0
642名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/26(水) 13:42:04.76 ID:7+7hcoZC0
6431 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/26(水) 14:15:37.84 ID:X6k4OSqU0
……
………
…………

剣士「もう良いのか」
青年「! 剣士……」
剣士「顔を下げて歩くとは珍しい。惚れたか?」
青年「……冗談でしょ」
剣士「…… ……」
青年「魔導師と、勇者様は?」
剣士「教会跡を見に行っている」
青年「……更地だろう。ああ……工事が始まっている、のか」
剣士「大きな建物になるんだ、と……勇者は喜んでいたがな」
青年「…… ……」
剣士「……墓も無い。全て始まりの国のあの丘の上に……」
青年「解ってる!」
剣士「……悪い」
青年「否…… ……悪かった。母さんが……あそこには」
剣士「何も無くなっても、思い出は無くならん」
青年「…… ……」
剣士「昼過ぎには書の街行きの船が出る」
青年「……ああ。それまでに買い物と食事を済まさないとな」

スタスタ

剣士「元気だった、か?」
青年「……双子が産まれたそうだ。茶の瞳の」
剣士「!」
青年「……皆、同じ事を思うんだな」
剣士「…… ……」
青年「始まりの姉弟、は双子では無かったんだろう?」
剣士「……話で聞いたに過ぎない、が」
青年「…… ……」
剣士「お前が前に言っていた話は……」
青年「それを調べる為に、行くんだろう。書の街に」
剣士「…… ……」
魔導師「あ、青年さん、剣士さん!」
勇者「せいねーん!おそいー!」
6441 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/26(水) 14:33:31.21 ID:X6k4OSqU0
青年「……もう用事は終わったよ、勇者様」
青年「ご飯食べたら船だ」
勇者「しょのまち! ……ねえ、えほんあるかな?」
剣士「ここに居ても仕方が無い、行くぞ、勇者」
勇者「だっこ!」
剣士「……歩け」ハァ
魔導師「……もう、良いんですか」
青年「お前までそんな顔するなよ」
魔導師「いえ、別に……変な意味じゃ無いですよ」
魔導師「場所も……その。場所ですから、あの……」カァッ
青年「……あのね。彼女を抱きに行った訳じゃ無いんだから」
魔導師「だ……ッ」
剣士「……青年。魔導師はまだ子供だぞ」ハァ
青年「そう言う場所だって知識はあるんだろ……そう言うつもりじゃ無いって」
青年「行く前にも言っただろう」
魔導師「あ……あの、お元気……でしたか?」
青年「先に移動しよう、魔導師」
青年「……お腹減ると、勇者様煩いしね」
勇者「やだ!だっこ!」
剣士「……結構重いんだって事を自覚してくれ」ハァ
魔導師「……そうですね。食べてると大人しいですから……」ハァ

……
………
…………
645 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) @転載禁止:2014/03/26(水) 15:21:16.04 ID:yTzGWb7+0
紫煙
646名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/26(水) 21:12:38.13 ID:D7laJy2/0
私怨
647名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/27(木) 06:47:42.65 ID:DQ8NzBvH0
試演
648 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) @転載禁止:2014/03/27(木) 07:02:55.44 ID:TLb9tQ980
支援
6491 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 11:12:02.68 ID:ZA/ILpCp0
勇者(すぅすぅ)
魔導師「……幸せそうな顔、してますねぇ」クス
青年「勇者だ、なんて言ったってまだ子供だよ。ほんの小さな」
剣士「食べて寝て、か……何時かは話さねばならん……が」
剣士「今は、寝ていてくれるほうが助かるな」
青年「……で、話戻すけど」
魔導師「茶の瞳の双子、ですか……でも」
青年「引っかからない、と言えば嘘になるだろ?」
魔導師「それは解ります。でも……」
青年「…… ……」
魔導師「青年さん?」
青年「……本人が気付いているかどうかは解らない。多分、気がついて居ないだろうが」
青年「多分……あいつは、長く無い」
魔導師「え?」
青年「……母さんと一緒なのかどうかは解らない。だけど、僕にも」
青年「『感じる力』があるんだ。彼女の命の炎は……」
魔導師「!」
剣士「……病か」
青年「僕は予言師じゃ無い……不慮の事故なんかで死ぬだろうって」
青年「人の寿命が解ってしまう訳じゃ無い」
青年「そう、だろうと思う、だけだ」
魔導師「少女さん……が」
剣士「……無茶な扱いをされてきた、んだろうな」
青年「話を聞く限り、王様は大事にはしていたんだろうけど」
青年「……少女からは何が何でも生きてやる、って気概は感じないな」
魔導師「……不思議な人ですね。何か……うーんと」
魔導師「全て、諦めてしまっている様な……感じの方です」
青年「そうして生きてきた、って側面はあるんだろうけどね」
魔導師「……でも、そうしたら……子供達は……」
剣士「冷たい言い方かも知れないが、それは……俺達の関知する問題じゃ無い」
魔導師「…… ……」
青年「さっきも言ったけど、引っかからない訳じゃ無い。だけど」
青年「……少女は、多分長く無い。それに彼女はきっと」
剣士「『話さない』か」
青年「……ああ」
6501 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 11:19:56.08 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「……そうですね」
青年「『魔法使い』だなんて名を名乗るぐらいだ」
青年「……否、関係無いのかもしれないけど。彼女の言う通り」
剣士「時代が違えば、立場が違えば……か」
青年「多分どこかで血は繋がっているんだろう。境遇も……似て無くは無い、って」
青年「言って、差し支えも無いとは思う」
青年「……下らない感傷だとも取れる」
魔導師「もう……魔導の街、国も。領主の血筋、も……」
剣士「蔑称すら存在しない……教える必要も無いだろうしな」
青年「子供達がどんな生活をしていくのか……剣士も言う通り関係無い」
青年「……僕達に出来るのは、魔王を倒す事だけだ」
魔導師「勇者様をお守りする事も……ですよ」
剣士「しかし…… ……お前の、仮説はどうする」
青年「まあ、時間はあるんだから。調べて置いて損では無いだろう?」
魔導師「……今更、では無いんですか?」
青年「君は興味無いとは言わないだろう、魔導師?」
魔導師「まあ……そりゃ、そうですけど」
6511 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 11:36:15.63 ID:ZA/ILpCp0
青年「……まさか、と気がついたのは、あの娼館で最初に」
青年「少女と話したときだ」
剣士「……ああ」
魔導師「僕達は『知っていた』から思いつかなかった」
青年「ああ。魔導国の領主……后様のジジィと、父親は否定していたんだったな」
魔導師「ジジィ、て……領主、ですよ」
青年「呼び方なんてどうでも良いだろ」
剣士「母親は信じていた様だがな」
青年「秘書も、だろ」
魔導師「旧貴族達の総意……では無いのが不思議、ですけど」
剣士「男女の差、性格の差、と言うのはあるだろうが」
剣士「……前者が大きいのでは無いか。女の方が強かな生き物だ」
魔導師「……魔の血が混じってる、か」ハァ
青年「どう思う? 魔導師」
魔導師「成る程、とは思いましたよ。確かに考えられない事じゃ無い」
魔導師「……インキュバスさんの魔石で、領主さんが魔……に、いえ」
魔導師「『魔物』になってしまった、て前例も確かにありますし。でも」
剣士「『魔王』以外に可能かどうか、だろう」
青年「……可否だけで言うなら可能だろう。魔導師が今言ったように」
青年「立派な前例がある」
魔導師「ただそれが、后様や、側近様の様に」
魔導師「理性も感情も残ったままに……と言うのが可能なのか」
魔導師「しかも……その状態で、子を成せるのかどうか、ですよね」
剣士「青年の言うとおり……魔導の街の領主の血筋……」
剣士「あの『一族』が、魔に変じた元人間の末裔だと言う仮説が」
剣士「信憑性のある物にしようとすれば、それが前提、だ」
青年「…… ……」
6521 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 11:49:18.17 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「でも。昔……あの最果ての街は」
魔導師「……僕達がこうして暮らしている様に、魔族達が……暮らして、いたんでしょう」
剣士「……どれもこれも、確かめる術など無い、がな」
青年「今よりももっと、力のある魔族が居たって不思議じゃ無い」
青年「……紫の魔王の時代がそうだっただろう?」
青年「男の魔導将軍、狼将軍……鴉、にジジィ、だっけ?」
青年「紫の魔王の母親だって魔族だったはずだ」
魔導師「……そうですね。それに、紅の魔王様は、好戦的な魔王様から」
魔導師「力を受け継いだ時に……」
青年「自分の意にそぐわないだろう奴らを殺した、筈だ」
剣士「……戯れに人を魔に帰る位、やってのける輩が居た、と」
剣士「否、居なかった、とは言い切れないな」
魔導師「……でも。そもそも……その」
魔導師「『元人間の魔族』間……もしくは、タダの人間、と」
魔導師「ええと。異種族、で……子供を作れる物、なんですか」
青年「そんな事言っちゃったら僕はどうなるんだよ」
魔導師「あ」
剣士「それこそ前例がある……エルフの姫と旅人の子供」
青年「……母さん、か」
魔導師「そ……そうか……」
青年「僕もだ、魔導師。僕は……『側近』の子だ。『戦士』ではなくてね」
魔導師「……うぅん」
剣士「加護……」
青年「ん?」
剣士「『産まれて来るときに精霊と交わす契約の様な物』」
剣士「……だったな」
青年「と、言われているね」
6531 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 12:04:51.92 ID:ZA/ILpCp0
剣士「位の高い精霊と契約する事が易い、エルフは優れた加護を持って生まれることが……」
青年「多い、らしいだけだ……し、後付の可能性だってあるぜ」
青年「説明をつけただけ、ってね」
魔導師「ふむ」
青年「どうした?」
魔導師「『魔王』だから『勇者』だから、と……その『特別』を」
魔導師「一度取っ払って考えて見ても良いかもしれませんね」
剣士「……?」
魔導師「勇者様は……回復魔法を使えます、よね?」
青年「あ、ああ……」
魔導師「回復魔法は人間の特権……でも、僕は使えません」
魔導師「水……まあ、氷の加護、を受けているから、かもしれませんけど」
青年「『魔法を使う』と言う基礎は一緒でも、得手不得手はあるからな」
魔導師「水の加護、大地や緑の加護を受けている人が得意とするんですよね?」
青年「ああ……勇者様は『光の加護』だ。唯一の」
魔導師「そして、炎の魔法も使える」
青年「……何が言いたい?」
魔導師「すみません、僕も手探りなんで、上手く説明出来ませんけど……」
魔導師「使用人さんの仮説、だと」
剣士「『魔王』……否、『父と母』の『人間の部分』を奪って、か?」
魔導師「それです。黒い髪の魔王様と、勇者様との違いです」
魔導師「后様は、自分の身の内に『人間の時の后様の炎の魔力』を押しとどめた」
青年「……『人間部分を奪う』の一部、か」
魔導師「はい」
剣士「だが、なら青年はどうなる?」
魔導師「癒し手様の優れた水の加護と、回復魔法を使える部分」
魔導師「……風の魔法が使えるのは、側近様の緑の加護、です」
青年「そりゃ解ってるけど。母さんは后様みたいになんかした訳じゃない」
青年「それに……父さんにそんな真似が出来るとは思えないだろ?」
剣士「側近の人間の部分の緑の加護を奪った、とは言え」
剣士「あいつは魔法はからきしだぞ」
魔導師「加護自体は平等ですよ。『魔法を使えるかどうか』が別なだけです」
654名も無き被検体774号+@転載禁止:2014/03/27(木) 12:12:03.19 ID:TMDWMBgO0
C
6551 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 12:22:00.94 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「で、さっきも言いましたけど、僕は回復魔法は使えません」
魔導師「『魔法なんて使い様』って言う、前后様の考えや言葉を否定する訳じゃないんですが」
魔導師「やっぱり『素質』って大事なんだと思うんですよ」
青年「素質……」
魔導師「突き詰めちゃえば、何でもありになっちゃいます。でも」
魔導師「……本当に『使い様』なら、それって使いこなせるかどうか……ええと」
魔導師「『力の引き出し方をしっているかどうか』でしょう?」
青年「…… ……成る程」
魔導師「で。さっき青年さんが言った様に……貴方は」ジッ
青年「な、なんだよ」
魔導師「『側近様』と『癒し手様』の子供。ですよね?」
青年「あ、ああ…… ……ッ」ハッ
魔導師「勇者様と同じ条件は揃ってますよ。貴方は純粋な『人』ではないけれど」
魔導師「『魔』の部分は受け継がれず、『側近様の人間部分』と『癒し手様のエルフの部分』を」
剣士「……『奪って、産まれてきた』」
青年「…… ……」
魔導師「その上、力の引き出し方を知っている、とあれば」
魔導師「……不思議、じゃないかもしれません」
青年「成る程な。その説明で行けば突き詰めれば……」ジィ
剣士「なんだ」
青年「君が規格外ってのも説明もつくって事さ」
剣士「……俺は『欠片』だから、だろう」
魔導師「一緒ですよ。紫の魔王様は規格外だったんですから」
剣士「……それは、まあ」
魔導師「『魔法なんて使い様』って言ったって、はいそうですかって出来るもんじゃ」
魔導師「無いでしょ? ……勿論、加護にも寄るんでしょうけどね」
剣士「青年が言ってた得手不得手、だな」
魔導師「はい。僕に回復魔法が使えないのは……加護の力も勿論ありますが」
魔導師「それ以上に『素質』が無いからだと思います」
青年「でも君は、鍛冶師の村で……」
魔導師「……あれぐらいなら、出来ると思いますよ。ギリギリ迄力を押さえたに過ぎません」
魔導師「傷付けたく無い、と『願った』に過ぎないんです」
青年「一緒じゃ無いのか?」
魔導師「……解りません、けど。でも。書の街で、勉強して……」ゴソ
魔導師「これを読んで、そう思いました」ドサ
6561 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 14:15:57.37 ID:ZA/ILpCp0
青年「息子から借りてきた鍛冶の本か」
魔導師「僕には『向こうの僕』の『知』があります」
魔導師「全部、此処」トントン
剣士「……頭の中に入っている、か」
魔導師「はい。本来の僕なら、とても理解出来る様な内容じゃありません」
魔導師「……鍛冶の知識を有し『魔法剣の鍛え方、作り方』を……まあ、盤上の知識に」
魔導師「過ぎません、けど。それでも……持っているから、理解出来ます」
魔導師「『剣に魔法を注ぐ』とか、ですけど……」
青年「そこは良いよ。僕達は全く知識がないから、聞かされてもちんぷんかんぷんだ」
魔導師「……ですね。まあ、詳しくは割愛します、けど」
魔導師「要するに、これだって『使い様』でしょ?」
剣士「まあ、そうだな」
魔導師「でも、多分これって……『素質』とは別です」
魔導師「一人で書の街に居る時に、回復魔法の練習もしてみましたが」
魔導師「……やっぱり僕には出来ませんでした」
青年「剣士は……まあ、規格外だから良いとして」
剣士「おい……」
青年「僕にその『素質』とやらがあったとして」
青年「それがどうしたって言うんだよ」
魔導師「……勇者様に、その『素質』があると思いますか?」
青年「え……?」
魔導師「女勇者様……この、小さな子供は」ナデ
勇者「うぅん…… ……」スゥ
魔導師「光の加護を受けています。それ自体は『特別』です。確かに」
魔導師「他の誰もが持ち得ない、光に選ばれし運命の子……でも」
魔導師「この子が使う炎の魔法は……『素質』だと思います、か?」
剣士「……難しいな。使用人の仮説が正しいと仮定しても」
剣士「俺は……少し違う気がする」
青年「…… ……」
魔導師「僕もです。どちらかと言えば、後天性の物だと思うんですよ」
青年「……后様の『愛』か」
魔導師「え?」
青年「母さんが言っていたんだ。僕が……父さんの緑の加護を」
青年「……風の魔法を使う事ができるのは、『子を思う親の愛』だと」
魔導師「…… ……」
青年「だが、一緒だとなると、勇者様の炎だって」
青年「『素質』じゃないのか?」
魔導師「僕は……ですけど。『素質』は『力の引き出し方を知っている』事だと」
魔導師「言いました……だけど」
魔導師「……一つだけ、疑問が残るんですよね」
剣士「…… ……」フゥ
青年「剣士?」
剣士「『光の魔法』だろう」
青年「!」
6571 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 14:25:34.40 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「……そうです」
青年「光の魔法……」
魔導師「勇者様は、まだ赤ん坊の時……始まりの国で」
魔導師「無意識に炎の魔法を使っていらっしゃいます」
魔導師「……南の島では、見せて下さいました」
剣士「それに……俺達はそもそも」
青年「『光の魔法がどんなものか』を知らない……!」
魔導師「……はい。昔、南のあの鉱石の洞窟で」
魔導師「金の髪の勇者様が、全身から光を発され……三つ頭の化け物を倒された」
魔導師「……多分、それだけしか知らないんです」
青年「ま、まてまて。それと素質とどう関係が……」
魔導師「無意識で使える、と言うのは、例えば……大きくなれば、とか」
魔導師「習えば、とかで、克服できる類の物だと思うんです」
魔導師「……紫の魔王の側近様がそうだった筈です。赤の魔王様に……」
剣士「教えて貰って、風の攻撃魔法を使える様になっている、な」
魔導師「はい」
青年「でも、あいつは紫の魔王の瞳を…… ……ッ 否、その前か!」
魔導師「そうですよ。それに、紫の魔王様の瞳を持っていたから、と言って」
魔導師「……転移まで、されている」
剣士「それについては待った方が良い、魔導師」
剣士「……『人間の部分を奪われた』と言う仮定が成立するとしても、だ」
魔導師「……ああ。そうか」
剣士「前后、も……后も、使えているんだ」
青年「…… ……」
魔導師「さっきも言った様に、『勇者と魔王』とか『特別』を取っ払って考えても……」
青年「いや、違う! ……金の髪の勇者も、あれ一度きりだった筈だ!」
魔導師「……いいえ」
青年「え?」
魔導師「推測です……けど」
魔導師「……紫の魔王様と対峙したとき、です」
剣士「……?」
魔導師「握っていた剣の…… ……始まりの国の、剣の文様が焼き付き」
魔導師「それが『勇者の印』になったんでしょう?」
青年「!」バッ ……ギュ
勇者(すぅすぅ)ゴロン……
青年「……光が、溢れてる。んだよな? 光ってる、て事は」
6581 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 14:59:21.89 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「……今見てらっしゃる通りでしょう。それに」
魔導師「貴方なら感じられるでしょう、青年さん」
青年「…… ……」
剣士「……これ、だな」チャキ
青年「剣士?」
剣士「これも確かな話ではないが……使用人、曰く」
剣士「これが、多分……金の勇者の使っていた剣だ」
魔導師「え!? は、初耳なんですけど!?」
剣士「……そうだったか?」
魔導師「そうですよ!」
青年「……騒ぐなよ。起きるぞ……船室だからとは言え」
魔導師「あ……す、すみません」
青年「剣の話は後でにして、続きを、魔導師」
魔導師「あ……は、はい。えっと」
魔導師「……凄い光が、溢れたんでした、よね?」
剣士「その筈……だ。扉を隔て、魔王と勇者が叫び声を上げ……眩い光が溢れた」
剣士「そして、勇者の手と、魔王の手に…… ……この剣の『印』」
青年「……勇者様のこの光は『全き光』だ」
魔導師「はい……僕は感じる事はできないので、推測ですけど」
青年「大丈夫だ……僕が保証する。母さん程じゃないが」
青年「……それでも、僕にでも解る。混じり気のない光」
魔導師「混じり気のない光が、勇者様の手のひらから溢れた。皮膚を焼いた」
魔導師「……『勇者と魔王は表裏一体』です。ましてや紫の魔王様と、金の髪の勇者様は」
剣士「人の子の命の理を介していない……まさしく『光と闇』」
魔導師「そうです……だから、お二人の手に」
青年「同時に、剣の文様が出来た、と言いたいのか」
魔導師「……光が溢れ出しているのなら、闇が溢れ出してもおかしく無いと思いません?」
青年「溢れ出す……」
魔導師「……否、言葉のアヤですけど」
剣士「……どうした?青年」
青年「いや…… ……そうか。しかし……」
剣士「……なんだ。ハッキリ言え」
青年「溢れた光は、闇は……何処に行くんだ」
魔導師「え?」
青年「…… ……いや、良い。後だ」
青年「それが光の魔法だと言いたい、って事だよな?」
魔導師「……だと、思ったんです、けど」
剣士「成る程、と素直には納得できん……な」
魔導師「……です、よね」
6591 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 15:10:04.28 ID:ZA/ILpCp0
青年「……その話で行くと、いや」
青年「『光と闇』は『表裏一体』で行くと……『光の魔法』てのは」
青年「『闇の魔法』と同一、って考えられなくもない」
魔導師「……実際、光や闇の魔法、ってのは、どんな文献にもないんです」
魔導師「『勇者』と『魔王』であるなら、無くて当然……かもしれないですけどね」
青年「さっきの『素質』の話に戻る、が」
魔導師「はい」
青年「……要するに、自由に力を引き出せないから、勇者様には『素質』が無いと」
青年「言いたい訳、だな?」
魔導師「まあ、そうなんですけど……」
青年「何だよ?」
魔導師「……言い方、悪くなるのは先に謝っておきます、けど」
剣士「?」
魔導師「あの……その。『勇者と魔王』って……その」
魔導師「段々、劣化してません、か?」
青年「劣化……?」
魔導師「はい。后様の炎の魔法を受け継いだ、とか」
魔導師「そう言う事実だけ見ると、強化されている様に見えるかもしれませんけど」
魔導師「外的要因……要するに、後天性の部分が、多くなるにつれ、です」
剣士「……始まりを紫の魔王とみるのなら、そうかもしれないな」
剣士「何せ……『勇者』は人間だ」
青年「…… ……」
魔導師「金の髪の勇者様が『始め』とするなら」
魔導師「黒の髪の魔王様達が建てられた仮説……と言うか、キーワードは」
青年「『三』か」
魔導師「……はい。女勇者様で『三人目』です」
6601 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 15:28:44.80 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「紫の魔王様の分身でもあった……金の髪の魔王様」
魔導師「彼と、前后様の子供である黒い髪の魔王様……『人間部分』を奪って」
魔導師「産まれた、純粋な人間、ですよね?」
青年「……まあ、勇者は人間だからな」
魔導師「いえ、そうでは無くて……ちゃんと、命の理……ええと」
魔導師「その。『二人の子』でしょ?」
青年「二つの血が混じって出来た……『人間』か」
剣士「金の髪の魔王の『血』は、段々薄まっていく、な」
魔導師「はい……青年さんが、血の分量で行くなら」
魔導師「『1/4のエルフの血』と言うのと一緒ですよ」
青年「……それと素質と……」
魔導師「直接関係ないかもしれませんけどね。でも」
魔導師「後天性の部分が多くなる、ですよ。さっきも言った……」
魔導師「もし、素質があるのなら。そんな……事に負けず」
魔導師「『特別な勇者様』の名の通り……そうですね」
魔導師「紫の魔王様と同じように、規格外でもおかしく無い、と思いません?」
剣士「……些かこじつけの様な気がしなくもない、が」
剣士「言いたいことは理解が出来る。実際……俺という『欠片』があるんだ」
剣士「それだけでも充分『劣化』と取れる」
青年「…… ……」
魔導師「僕は」
剣士「何だ」
魔導師「……素質を持つのは、貴方と」
青年「僕?」
魔導師「使用人さんと……紫の魔王の側近さん。その『三人』だと思うんです」
青年「……まあ、その二人については。否定は出来ない、かな」
魔導師「これから書の街に行って、色々調べたり、勇者様の魔法の練習したり」
魔導師「……する、つもりなんですけど。あの」
青年「? 何だよ」
6611 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 15:34:35.66 ID:ZA/ILpCp0
魔導師「……僕達、『否定』するんですよね?」
青年「あ、ああ……だから、何だ?」
魔導師「…… ……」チラ
剣士「? ……ハッキリ言え」
魔導師「もし……もし、です。もし、これで終わらなければ」
青年「…… ……」
魔導師「……次、の勇者様が必要になるじゃないですか」
剣士「…… ……」
魔導師「だから、あの」カァッ
青年「……まさか、愛の告白じゃないだろうね」
魔導師「は!? な、なななな、なんで、僕が青年さんに!?」
勇者「……うぅん……もう、ついた……?」
青年「……ああ、もう」ハァ
魔導師「あ、す、すみません……」
勇者「あぅ……せいねん、だっこ……」ギュ
青年「はいはい……」

ポーゥ……

剣士「……タイミング的には、丁度だな」ハァ
魔導師「すみません……」
青年「話の続きはまたにしよう」ダキッ
勇者「……もうちょっと、ねりゅ」スゥ
青年「仕方無いな」ハァ
魔導師「……荷物、持ちます。あ! ……剣士さん、後で剣見せて下さいね!」
剣士「あ、ああ……それは構わん、が」
魔導師「先行きます……よいしょ」

タタタ……

剣士「……終わらない、と確信しているんだろうな」
青年「魔導師か? ……かもね」
6621 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 15:45:38.31 ID:ZA/ILpCp0
剣士「次の勇者が必要……か」
青年「……『三』じゃないのか?」
剣士「始まりを何処にするかで自由に変わる、ぞ」
青年「…… ……」
剣士「だが、使用人も言っていた通り。此処で食い止めない事には」
剣士「……女勇者は、確実に最強の魔王になる」
青年「劣化しているのに?」
剣士「『母は強い』……それは後天性の物だと言えるか?」
青年「……微妙、だけど」
剣士「それに、俺が……『欠片』で無くなれば尚更だ」
青年「! 君、まだそんな事を……!」
剣士「……避けて通れると本当に思っているのか?」
青年「…… ……」
剣士「さっき、魔導師が言いかけた事……何となく解る、がな」
青年「え?」
剣士「……紫の魔王の側近と使用人の共通点は?」
青年「? ……元人間」
剣士「それだけじゃ無いだろう」
青年「…… ……?」
剣士「『親ではない』」
青年「?? ……それが何だよ」
剣士「……俺達は『否定』するんだ」
青年「…… ……ッ !?」
剣士「思い当たったか」クス
青年「べ、別にお前でも良いだろう!? 僕は……!」
剣士「俺に生殖能力があるとは思えないが」
青年「……出来る癖に」
剣士「それとこれとは別だろう」
青年「ま、まだ五歳だぞ!?」
剣士「……勇者が『女性』になる頃、お前は変わっていると思うか?」
青年「……じょ、冗談じゃない! 僕はそんな趣味は……!」
剣士「魔導師が言いたかっただろう事を言っただけだ」
青年「…… ……」チラ
勇者(ぐぅぐぅ)
青年「……冗談きついよ」
6631 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 15:53:29.78 ID:ZA/ILpCp0
剣士「やってみなければ解らん、さ」
青年「……そんな羽目にならない為にも、僕は意地でも終わらせるさ!」

スタスタ

剣士「…… ……」フゥ
剣士(『三』『劣化』…… ……な)

スタスタ

……
………
…………

側近「……どう思う?」
后「私は……終わらないと思う、わ」
側近「…… ……」
后「解き明かされていない謎が多すぎる、とか……そんなんじゃないの」
后「……そりゃ、勿論……解放して欲しい。勇者に……娘に」
后「こんな……あの小さな方に。大変な重責を背負わせたくなんて無かった」
后「だからこそ、今度こそ……! そう、思うけど」
側近「お前も……『三』だと思うのか」
后「魔王が勝手に言い出したキーワードよ。盲信してる訳じゃ無い」
后「……だけど。紫の魔王と金の魔王……あの二人は」
側近「始まりではない?」
后「……ええ」

コンコン

使用人「失礼致します……后様」
后「ああ、ご免なさい使用人、使ってしまって」
使用人「いえ……これで良いですか」ドサ
側近「お前、こんな本……」
后「人魚の話、したでしょ。折角青年が確かめてきてくれたんだもの」
6641 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止:2014/03/27(木) 16:34:48.74 ID:ZA/ILpCp0
使用人「……魔詩、やっぱりあの古詩だったんですね」
后「ええ……それも『逆さまの詩』ね」
側近「しかし……物語の最後に、逆さまからの詩が乗って居るんだろう?」
后「……ええ。人魚の魔詩はその逆さまの方、みたいなのよね」
使用人「……確か、ですか?」
后「青年が言っていたのよ。何度も確かめたって」
后「『終わりは、始まりだった』から、歌い出すのだと」
側近「……終わりだの始まりだの、何がなんだか」ハァ
使用人「チョコレート、食べます?」
側近「…… ……ああ」
后「古詩の方は『始まりは、終わりだった』から始まるの……だから」
后「小説の最後に乗って居る、こっちであってるのよ」
使用人「……しかし、だからなに、って話ですよね」
后「…… ……そうなのよね」ハァ
側近「……本当に、何か意味があるのか?」
后「さっぱり解らないわ。それこそ、人魚にでも聞かない限り」
使用人「そんな無茶な……」
后「謎を探っておいてくれ、何て言われたけれど」ハァ
后「……これ以上、どうしようもないもの」
使用人「本当に、なんか…… ……これに振り回されてる、感じですね」
后「古詩、小説…… ……そうなのよね」
后「私達、こじつけが過ぎて迷路に迷い込んじゃったのかもしれないわ」
后「……魔王の『三』にしたってそう」
側近「あいつらが……それに惑わされなければ良いがな」
后「…… ……」
使用人「しかし……后様、疲れないのですか」
后「え? ……ああ、大丈夫よ。魔王の魔力を借りているし」
使用人「……あれ以来、大人しいですね、魔王様」
后「……『干渉』だったかしら」
使用人「はい」
6651 ◆Vwu55VjHc4Yj @転載禁止
側近「……さっくりと物語の様には進まん」
使用人「本当に……誰が書いた、んでしょうね」
后「使用人……まさか、まだ信じてるの?」
使用人「え? ……あ、いえ。そう言う訳では無いんですけど」
使用人「……でも、本当に振り回されている気がするんです」
使用人「いえ……捕らわれすぎ、なんでしょうけど」
后「でも……いったん全部をクリアにして考え直せ、と言われても」
后「正直……もう無理よね」
使用人「…… ……」
側近「…… ……書の街に着いたな」
后「え? ……ああ」
使用人「私達に……出来る事は、本当にもう、無いんですね」
側近「使用人?」
使用人「見守るしか、できません」
后「……そう、ね。勇者…… ……」
使用人「…… ……」
側近「良いんだ、それで。俺達は、あいつ等が此処に、自力でたどり着くまで」
側近「あいつ等の『否定』を……邪魔しないようにする、だけだ」
后「…… ……ええ」

……
………
…………

勇者「ん…… ッ!」

キィン!

剣士「遅い!」ビュン!
勇者「! ……キャッ ……ッ」バシッ
青年「……ああ、今のは痛い」クス
勇者「……笑い事、じゃない……ッ」
青年「ほら、こっちおいで、勇者様」パァッ
勇者「……ああ、痛かった」
剣士「魔法を使っても良いと言っただろう」
勇者「なんかヤダ」
青年「もうちょっと手加減してやれば?」