1 :
名も無き被検体774号+:
2 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/01(金) 16:39:06.59 ID:1cMqDkzrP
王子「ありがとう……戦士。もう良い」
側近「手伝うのは……当然だ、と言っただろう」
王子「……そういう意味じゃ無いさ」
側近「?」
王子「勇者様と魔法使いにも……一緒ならば良かった、と言うのは」
王子「本音だけどな。確かに」
王子「お前達だけでも、戻ってくれて……本当に、嬉しいんだよ」
側近「…… ……」
王子「……弟王子も、最後にお前に会えて」
王子「嬉しかっただろうと思う……お前と僧侶の子供を見せてやりたかったけどな」
王子「…… ……」
王子「こればっかり……は、な」
側近「親父……」
王子「…… ……」
王子「僧侶の所へ戻ってやれ……俺の自分の家とは言え」
王子「身体も、心配だろう」
3 :
名も無き被検体774号+:2013/11/01(金) 16:46:53.37 ID:NrPvLdJcP
4 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/01(金) 16:48:39.92 ID:1cMqDkzrP
側近「…… ……」
王子「戦士?」
側近「……叔父上、安らかな顔をしてる」
王子「……肩の荷が下りた、んだろうな」
王子「お母様も同じような事を言っていたよ」
王子「すっきりした、だったか」
側近「……そう、か」フゥ
王子「……悪かったな。血塗れだな」
側近「親父もだ……構わん。こんなもの、洗ってしまえば……綺麗になる」
側近(…… ……胸が、痛む。しかし……親父に、何処まで話すべきなのか)
王子「……大変な戦いだったのだろう。そんな時に……こんな……」
側近「阿呆……何言ってるんだ」
王子「……勇者様のお怪我は、酷いのか?」
側近「え?」
王子「此処へ……戻って来れない位、だ」
王子「生きていると言っていただろう。魔法使いも……」
王子「二人は、傷を癒す為に……戻れなかったのでは無いのか?」
側近「…… ……」
王子「僧侶は、魔王は何れ復活すると言っていた」
王子「……また、勇者が産まれるのだ、とも」
側近「ああ……嘘じゃ無い。あいつは……嘘は吐けない」
王子「……エルフ、だからな」
側近「正確には半分だけどな」
王子「嘘が本当になる、と言うのは……良く解らんが」
側近「自分に関する事だけだ、と聞いた……がな」
王子「……すまん、引き留めるつもりは無かった」
側近「…… ……否、良いんだ」
王子「話して……くれるんだろう、戦士」
側近「…… ……ああ」
王子「悪い。今日は……戻ってくれ」
王子「お前から……話してくれるのを待っている」
6 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/01(金) 16:54:09.45 ID:1cMqDkzrP
王子「剣士にも話してやらんといかん……遺言、とあっちゃな」
側近「…… ……」
王子「弟王子と……約束、しちまったし」
王子「……落ち着いたら、また話す席を改めて設けよう」
王子「新王に……報告にいかねばならん」
側近「わかった……無理はするな。何かあれば……すぐに来るから」
王子「ああ」
側近「…… ……」スタスタ、ピタ
側近「親父」クル
王子「何だ?」
側近「……すまん」
カチャ、パタン
王子「…… ……?」
王子「……さしあたって……やらねばいかん事をかたづけるか」ハァ
スタスタ……コンコン
王「はい?」
王子「俺だ……大事な話がある」
王「……なんでしょうか」
カチャ
王子「……気をしっかりと持って、聞いて欲しい」
王「…… ……?」
王子「弟王子が…… ……死んだ」
王「な!? ……伯父上、何を仰るのです!?」
王「お父様は……!!」
王子「……戦士達と話している最中の事だ。大量の……血を吐いて」
王「! ……ッ どいてください!」ドンッ
王子「!」ヨロ
7 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/01(金) 17:04:06.99 ID:1cMqDkzrP
バタバタバタ……
王子「…… ……」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
癒し手「あ……側近さん。おかえりなさい」
癒し手「……随分、早かったですね」
側近「部外者に出来る事等……物理的な手伝いぐらいだ」ハァ
癒し手「……お父様に、叔父様でしょう」
側近「卑屈な言い方になったか……すまん」
癒し手「……いえ」
側近「……剣士には、口止めをした、が」
側近「やはり……伝えるべき、なのだろうか」
癒し手「貴方が……魔に変じられた事、ですか」
側近「……ああ」
癒し手「ど……う、なんでしょう、ね……」
側近「後ろめたい気持ちが無いと言えば、嘘になる」
側近「話してしまえば、俺の気分は……楽になるだろう。だが」
側近「……親父、は……」
癒し手「…… ……」
側近「落ち着いたら、改めて話す席を設けると言っていた」
側近「……それまでに考えておくことにする」
側近「身体は、大丈夫か?」
癒し手「あ、ええ……それは、大丈夫です」
癒し手「……魔王様の事、話されるのでしょう」
側近「……ああ」
癒し手「そうなれば……言わざるを得ない、でしょうね」
癒し手「そうで無ければ……色々と辻褄が合いませんし……」
側近「そう……だな」
癒し手「…… ……その時に、考えましょう」ギュ
側近「……ああ」ギュ
8 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/01(金) 17:06:00.14 ID:1cMqDkzrP
ちょっと早いけど、ここまでー!
明日からまた仕事!
9 :
名も無き被検体774号+:2013/11/01(金) 18:09:04.52 ID:NrPvLdJcP
おつー!
10 :
名も無き被検体774号+:2013/11/01(金) 21:22:00.56 ID:mhjOfrUf0
おつかれさまー
前スレの最後のスコーンのレスが
>>884 で、
BBAっぽいレス番とってたから、流石だなと感じた今日この頃
11 :
名も無き被検体774号+:2013/11/02(土) 01:46:17.09 ID:k2uAPqqyi
乙乙乙乙
保守しますぞ
13 :
名も無き被検体774号+:2013/11/02(土) 18:25:28.37 ID:RR+5W0iD0
楽しみですな
15 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/02(土) 22:12:49.36 ID:4mLwBm4vP
やっと終わった!
無理、もうむり((((;゚Д゚)))))))
16 :
名も無き被検体774号+:2013/11/02(土) 23:29:36.55 ID:C49Ilnrt0
>>14 えっなんか抜けてる?
抜けてるなら補完してくれ
18 :
名も無き被検体774号+:2013/11/02(土) 23:36:11.58 ID:C49Ilnrt0
>>17 拒否権のない選択などあるものか、が抜けてたのか
ありがと
おはよう!!BBAと幼女〜そしてオマイラ
21 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/03(日) 09:41:37.69 ID:g3ByD5+UP
おはよう!
働いてくる!
いてらー
23 :
名も無き被検体774号+:2013/11/03(日) 19:25:22.55 ID:I1rYoClsi
ほ
24 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/03(日) 20:51:05.09 ID:g3ByD5+UP
体調最悪だ。
暫くゆっくりしますわ。ごめん
無理すんなよ つ[粥]
ゆっくりしてくれ
お大事に(´;ω;`)
幼女「おかん、おかゆ作ったで」
おは
29 :
名も無き被検体774号+:2013/11/04(月) 11:25:12.25 ID:5Wm5xZmZ0
ほしゅ
30 :
!ninja:2013/11/04(月) 19:19:18.95 ID:JKrQmIZ50
ほ
スレ保守戦隊!
オトサナインジャー‼︎
紫魔王「私が指令のパープルマオウだ」
紫側近「いや、なんでいきなり指令が挨拶すんの?ここは隊員の自己紹介からでしょ!?」
紫魔王「側近、煩い」
紫側近「酷い!また俺は除け者扱い!?」
使用人「側近様、煩いです」
紫側近「使用人ちゃんまで!?」
32 :
名も無き被検体774号+:2013/11/05(火) 02:29:47.94 ID:vO41/WsGi
………が足りない
34 :
名も無き被検体774号+:2013/11/05(火) 10:05:26.54 ID:YpHVn3Dri
35 :
名も無き被検体774号+:2013/11/05(火) 10:06:07.36 ID:YpHVn3Dri
ご、ごめん、前のスレに書くつもりが誤爆した…
36 :
!ninja:2013/11/05(火) 17:49:43.47 ID:CRhUulic0
ほす(´・д・`)
38 :
名も無き被検体774号+:2013/11/05(火) 19:57:44.25 ID:xUXtn95z0
ほしゆ
40 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:05:28.56 ID:w8zJKGMFP
癒し手「騎士団長様は……?」
側近「まだ戻らん……戻れんだろう」
側近「新王にも告げねばならんだろうし……仕事は山積みだ」
癒し手「そう……ですよね」フゥ
側近「お前はもう休め。俺も……もう少ししたら眠るから」
癒し手「大丈夫なのですか……?」
側近「……体力にだけは自信があるさ、昔からな」
側近「皮肉な物だ。こんな事になって……初めて、この身を便利だと思ったかもしれん」
側近「人間であった時の様に、早々疲労を感じる訳でも無い」
癒し手「…… ……」
側近「少々食わずとも、眠らずとも……」
癒し手「……でも。ご無理だけは……」
側近「解ってる。此処には……居るから」
側近「余りにも親父が戻らない様ならば、ちゃんと眠る」
側近「お前は……とにかく」
癒し手「はい……身体を第一に。解ってます」
側近「……ああ」
……
………
…………
タタタ……
王「お……とう、さま」ハァハァ
王(顔色が宜しくないのも、体調が優れないだろう事も解ってた)
王(だけど……!)
タタタ……
騎士「! 国王の息子様!」
王「……ッ …… ……伯父上に聞きました」ハァハァ
王「そこを、通して下さい。お父様は……」
騎士「……安らかなお顔を、されております」
王「……ッ」
41 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:10:44.71 ID:w8zJKGMFP
キィ……
騎士「……あ、あの。騎士団長様は……」
王「…… ……」スタスタ
王(! ……血の、匂い)
王「お父様…… ……」
王(綺麗な……お顔をされている。伯父上が……清めて下さったのか)
王(否。戦士兄様か……)
王「……すみません。二人にして頂けますか」
騎士「あ……ッ し、失礼致しました!」
パタン
王(お父様は、『王』を絶やしてはならないと言って居られた)
王(魔導国……否。書の街の事があるから……あったから?)
王(……しかし、あれはもう『終わったこと』だ)
王(次が無いとも限らないからか。『世界』への便宜上……?)
王(……僕には。何も教えて下さらなかった)
王(何時も、お父様は……伯父上と、二人で)
王(……否。兄様が戻られてからは、戦士兄様も……)
王(僕には『王』になれと。それだけで……)
王(肝心の事は、何も教えて下さらなかった)
王「……な、ぜ。ですか。お父様」
王「…… ……」ナデ
王(頬……冷たい)
42 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:17:37.08 ID:w8zJKGMFP
王「…… ……」
王(確かに、戦士兄様は……『勇者の共』だ)
王(……戻られたと言う事は、魔王を倒したと言う事なんだろうか)
王(それに、あの得体の知れない男。お父様は随分と信用なさって居た様だけど)
王(……ちらとしか見ていない。話した事も無い)
王(『勇者』にそっくりな、紫色の瞳の男……何者?)
王(…… ……伯父上は、何を考えていらっしゃるのだろう)
王(戦士兄様は…… ……どうして、一人で……否)
王(僧侶と言う女性と共に戻った、んだったか)
王(……彼女も、勇者の仲間)
王(…… ……僕が産まれる迄。お父様は戦士兄様を我が子の様にも)
王(可愛がって居たと聞いている)
王(……違う。そうじゃなくて)
王(…… ……駄目だ。頭が働かない。考えがまとまらない)
王(僕は……本当に『王』なのか?)
王(僕に譲るのだと仰った時、お父様は……まだ)
王(あの鍛冶師の村からの船に、戦士兄様が乗っているとは知らなかったのだろう)
王(……もし、知っていたら、僕は…… ……僕には……!)
王(…… ……なんだろう。酷く、寂しい)
騎士「あ……騎士団長様……!」
王子「新お……国王の息子は?」
王(……伯父上か。追いかけてきたんだな)
騎士「中に……」
王子「そうか」
騎士「あ、待って下さい。二人にして欲しい、と……」
王子「…… ……」
王(…… ……)クル、スタスタ
カチャ
43 :
名も無き被検体774号+:2013/11/06(水) 04:21:51.45 ID:tu1J7QFDO
おはよう?
44 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:24:04.25 ID:w8zJKGMFP
王「……伯父上」
王子「……気にするな。待っているから」
王「いえ、どうぞ……入って下さい」
王子「…… ……」
王「お聞きしたい事も、あります」
王子「落ち着いてからでも良……」
王「聞く権利があるでしょう?」
王子「…… ……」
王「…… ……」ジッ
王子「騎士、皆に知らせるのは少し待て」
騎士「……は、はい。まだ、一部の者しか」
王子「城の中に居る者には構わん。が、それ以上はまだ……」
王「……明日にでも、街の人達にはすぐに、お知らせします」
王「今日は、そっとしておいてください」
王子「…… ……」
王「……戦士兄様は、呼ばなくて良いのですか、伯父上」
王子「あいつはもう休ませた」
王子「……お前は、気にしなくて良い」
王「……そう、ですか」
騎士「あ、あの……」
王「人払いを。それから、貴方ももう……休んで下さい」
王子「……ああ、悪いな、こんな時間に」
騎士「い、いえ……それは」
王子「通常通りの夜間勤務の者以外は、休む様に言ってくれ」
王子「それから明日の朝一、騎士は一端庁舎に集合後、待つ様に」
騎士「了解しました。通達しておきます」
王子「頼む」
王「……ありがとうございました」
パタン
45 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:26:49.26 ID:w8zJKGMFP
46 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:41:03.02 ID:w8zJKGMFP
王子「…… ……」
王「伯父上」
王子「な、んだ」
王「……僕は、本当に『王』なのですか」
王子「…… ……」
王「あの時、確かにお父様は、僕に…… ……」
王子「疑う必要など何も無いだろう。お前は……お前が、王だ」
王子「……あの後、あいつは」
王「…… ……」
王子「『何かあれば、権限を一時的に兄さんに預ける』……覚えてるか」
王「……魔導国に行ったとき、のですか」
王子「まだ有効だとか抜かしてたが……」
王「!」
王子「……正式に表明していないとはいえ『王』はお前だ」
王子「勿論、後ろ盾にでも何でもなってやる」
王子「伯父として、騎士団長として、全力でお前を、この国を守る」
王「……伯父上」
王子「心配はしなくて良い」ナデ
王「…… ……」
王(違う……!)
王(僕は……否。勿論、僕で務まるのか)
王(お父様の様に、立派に……顔も、知らないけれど。お祖母様の様に)
王(国を、民を率いていけるのか……勿論、そんな不安もあるけど)
王(そうじゃ無い……!)
王「戦士兄様は」
王子「?」
王「……騎士団長を継がれる、のですか」
王子「……そんな話は何もしてないさ」
王(ならばあの時、何の話をしていたのです?)
王「しかし……勇者と一緒では無いとは言え、この国に戻ってきたと言う事は……」
王子「俺もまだ、詳しい話は聞いては居ないんだ」
王子「……勇者様も。もう一人……此処に居ない仲間も」
王子「生きている、とは言っていたが」
47 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:48:41.96 ID:w8zJKGMFP
王「……では、魔王は倒した……のです、ね?」
王(世界中の魔物の力が、弱くなっていると耳にした。であれば……)
王子「…… ……」
王「……伯父上?」
王子「以前もそうだった。金の髪の勇者が…… ……」
王「あ……」
王(……そう、だ。お父様から聞いた)
王(弱体化していった魔物が、何時か又……力をつけ始め……)
王(そうして次の『勇者』が……)
王子「繰り返さねば良いと……思う、が」
王子「…… ……」
王「可能性はゼロとまだ、判断出来ない、と言う事ですか?」
王子「……そ、うだ……な」
王子(僧侶からの話を……どう、伝えたもんか。否)
王子(……伝えるべきか否か、も……)
王子「…… ……」
王「…… ……」
王「……明日、戦士兄様に会うことは出来ますか」
王子「? 勿論だ」
王「では、襲名披露の前にお会いしたいとお伝え下さい」
王子「……解った」
王「明日、お父様の訃報と、僕の……」
王子「正式な戴冠式はもう少し後だ」
王「……何故、です?」
王子「……よく考えなさい」
王「え?」
王子「あいつの様に、とか。早く、とか。焦る気持ちは解るけどな」
王「ぼ、僕は焦ってなんか……!」
王子「……悲しんでばかりは居られない。それは解ってるよ」
王子「でも、悲しむ自由もあるんだ。それには、時間だって要る」
王「……!」
48 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 04:56:53.47 ID:w8zJKGMFP
王子「『形式』は後で良い。お前が王であることに代わりはないからな」
王子「……明日から、葬儀が終わるまで、どれだけかかったって数日だ」
王「…… ……」
王子「その後、正式に『形』を見せてあげれば良い」
王「は……はい」
王子「そんな顔するな。怒っている訳じゃ無い」
王「…… ……」
王子「それにな、王」
王「?」
王子「『お披露目』が済んでしまうと、何より悲しむ時間が無くなるのは」
王子「お前自身だよ。弟王子がやっていた様に」
王子「仕事に忙殺される様になるんだ。ただでさえ」
王子「魔導……じゃない。書の街の事とか」
王子「勇者様の事もある。これからの『未来』の為には」
王子「足踏みしていられないんだ」
王「…… ……は、い」
王子「……ん」
王「すみません、伯父上……」
王子「謝る事は無い……混乱して当然だ」
王子「……見張りを立てておく。お前ももう休みなさい」
王子「俺も家に戻るよ」
王「はい…… ……あの、一つだけ宜しいですか」
王子「ん? ……ああ、聞きたい事があるって言ってたな」
王「あ、いえ……あの」
王子「?」
王「それは……また、明日にでも。そうでは無くて」
王(……何だか、言い出せなくなった。何を話していたのか、等……)
王「……僧侶と言う女性なんですが」
王子「…… ……ああ」
49 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 05:02:27.05 ID:w8zJKGMFP
王「あの方も……勇者の仲間、だったんですよね?」
王子「ああ…… ……戦士の子供を身籠もっているそうだよ」
王「……え!?」
王子「……見せてやりたかった、けどな」フゥ
王「…… ……」
王子「それがどうかしたか?」
王「……い、いえ。勇者の仲間、と言っても」
王「彼本人と、戦士兄様しか……知らない、ので」
王子「ああ……そういう事か」
王子「明日、会えるさ」
王「……はい」
王(勇者の共であり、戦士兄様の伴侶)
王(……子供、まで)
王子「……じゃあ、俺も戻る。お前も部屋に戻りなさい」
王「……はい。おやすみなさい、伯父上」
スタスタ、パタン
王(騎士団長の息子。そもそも……長子は伯父上だ)
王(…… ……)
王(もし、僕に……王を譲る前に、戦士兄様が戻っていたら)
王(お父様、貴方は…… ……!!)グッ
50 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 05:03:10.59 ID:w8zJKGMFP
もう一眠り〜
鬱屈した感じがすると思ってたら
なるほど、そういうコンプレックスもあるのか新王
BBAおはよ(´・д・`)
53 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 10:25:12.61 ID:w8zJKGMFP
……
………
…………
キィ、パタン
王子「…… ……」フゥ
側近「……早かったな」
王子「! ……起きてた、のか」
側近「…… ……」
王子「僧侶は?」
側近「眠っている……と思う、が」
王子「そうか……」
側近「母さんのベッド、使わせて貰ってる」
王子「……構わん」
側近「その侭に……してあったんだな」
王子「……中々家には帰れなかったからな」
王子「それに、ここに居る間、掃除やら片付けやら……やってくれてたのは」
王子「お前だろ、戦士」
側近「……随分昔の事みたいだ」
王子「そうだな。過酷……だっただろう、しな」
側近「…… ……」
側近「国……否。新王は」
王子「……ショックだろう、よ」
側近「…… ……」
王子「戦士、お前は眠らないで良いのか」
側近「……もう少し親父が遅いなら、と思っていたが」
王子「…… ……お前、さ」
側近「?」
王子「酒、飲めたか?」
側近「……付き合う程度、で良いなら」
側近「酔っ払うなよ」
王子「……迷惑、かけたな、あの頃は」
54 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 10:34:14.15 ID:w8zJKGMFP
側近「全くだ。弱い癖に」
王子「……お前と飲める機会が来るとはな」
側近「嬉しそうだな」
王子「突っ立ってないで座れ……子供が、大役を果たして」
王子「無事に……しかも、伴侶と孫まで……」
側近「…… ……」
王子「嬉しくない訳が無い……ほら」コトン
側近「ああ……」
王子「……お帰り、息子」
側近「……ただいま」
チィン……
王子「…… ……聞いても、良いだろうか」
側近「剣士は、良いのか」
王子「ちゃんと話すさ」
側近「……長く、なるぞ」
王子「どうせ、眠れないさ」
側近「…… ……」ハァ
王子「……やはり、お怪我は重い、のか?」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近(……黙って、居る訳にはいかん、か)
側近「……驚くな、と言う方が無理だろう」
王子「ん?」
側近「信じては……貰えんだろうと、思って話す」
王子「……戦士?」
側近「疑うのならば、僧侶……否、癒し手に問いただせば良い」
側近「あいつは、エルフの血を引いている」
側近「……嘘は、つけん」
王子「……癒し、手? おい、お前何を……」
55 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 10:43:06.28 ID:w8zJKGMFP
側近「……少年は、港街の勇者様だった」
側近「そして、あいつは……魔王だった」
王子「…… ……」
側近「金の髪の勇者……黒い髪の勇者の父親は」
側近「確かに、魔王を倒した。そして……」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「…… ……魔王に、なった」
王子「……な、に…… ……」
側近「…… ……」
王子「は……は、お前……もう、酔ってる、のか」
王子「お……親を、からかうもんじゃ……」
側近「……魔物が弱くなり、数も減っただろう」
側近「今、はどうだ?」
王子「!」
側近「……黒い髪の勇者の母君は、魔王となった金の髪の勇者との間に」
側近「息子を設けた。黒い髪の、勇者だ」
王子「な、何故だ! ……魔王と、人間の子が……!」
側近「……すまん。前後するが……」
側近「母君は、新たな魔王……金の髪の魔王の力で、その身を魔へと変じさせた」
王子「…… ……は?」
側近「共に旅立った仲間……もだ。『戦士』と言う男は『側近』となり」
側近「『魔法使い』と言う女は、『魔導将軍』となった」
王子「! な、ぜ…… ……人が、魔王に与する、ん…… ……だ、よ」
側近「……魔王は、新たな勇者が産まれれば」
側近「身に残るのであろう、光の残照に苦しめられ、意識を失う」
王子「…… ……」
側近「歩けない、話せない……目を開かない」
側近「……再び目を開いたときには、その光は闇に飲み込まれ」
側近「全き闇として、勇者に倒される運命にある」
王子「…… ……」
側近「勇者が、魔王の前に立つその時まで」
側近「苦しみにもがく、魔王の身を。守る為に……」
56 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 10:47:52.58 ID:w8zJKGMFP
側近「漏れ出す……強大な魔力から世界を守る為に」
側近「『仲間』は魔力を魔王にぶつけ、押しとどめなければならない」
王子「!」
側近「……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
側近「『人間達の大いなる勘違い』…… ……だ」
王子「…… ……ちょ、っと待て。じゃあ……!」
側近「……黒い髪の勇者は、金の髪の魔王を倒した」
側近「そうして……彼も、また…… ……」
王子「……待て、って! 戦士……!」
側近「俺は……『勇者』の仲間だ。勇者を……守らなければ行けない、んだ」
王子「戦士……!」
側近「だから……俺は……」
王子「戦士!!」
側近「あいつを……黒い髪の魔王を守る為、この身を、魔へと変じさせた」
王子「…… ……」
側近「……魔法使いも、だ。魔法使いは……『后』となり」
側近「次の、勇者を産むんだ」
王子「……せ、ん…… ……し……」
側近「……俺は、もう戦士じゃ無い」
側近「俺は…… ……『側近』だ」
57 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 10:49:07.20 ID:w8zJKGMFP
おむかえー
ヤバい鳥肌が
59 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/06(水) 18:46:47.10 ID:w8zJKGMFP
明日からまた馬車馬☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
…しにそー
60 :
名も無き被検体774号+:2013/11/06(水) 19:14:20.96 ID:AL9pd8ig0
イ`
61 :
名も無き被検体774号+:2013/11/06(水) 19:25:12.09 ID:tOhu8AYOi
こいつぁ働いてる場合じゃねえな!
>>62 いや、そこは働けよww
馬車馬の様になww
BBAおはよ(´・д・`)
ここまで来たら気長に待ってるから無理だけはするなよ〜
拒否権の無い仕事なんてあるものか!
って言ってみたい
65 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/07(木) 10:03:58.16 ID:NG3f1T78P
おはよう!
>>64 私も言いたい……(・△・)
でも選んでられんからね!働くよ!
66 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/07(木) 10:10:45.33 ID:NG3f1T78P
王子「…… ……」
側近「…… ……」
王子「……お前、は …… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」フイ
側近(……当然、だ)ハァ
側近(はいそうですかと信じられる訳がない)
側近(……認められる訳も、無い)
側近(すまない……親父)
王子「…… ……だ」
側近「え?」
王子「な、何が、あろうと…… ……お前は」
王子「俺の息子、だ。俺と祈り女、の……!」
側近「親父…… ……」
王子「……俺達の、子供、だ」ボロボロボロ
側近「…… ……ッ」ポロ
王子「…… ……ッ」ボロボロボロ
側近「!」フイッ ゴシゴシ
王子「……癒し手、と言うのは、僧侶か」
側近「…… ……ああ」
王子「では、彼女も……」
側近「あ……否。違う。癒し手は……違う、んだ」
王子「? しかし……」
側近「そもそもの寿命が違う……否、何もかも、違う」
王子「…… ……」
側近「……魔へと変じられるのは、人間だけの特権だそうだ」
王子「え……」
側近「どちらをも選び取れる……強くて弱く、弱くて強い、人間だけの特権」
王子「……回復魔法も、そうだと言っていた、な」
側近「あ、 ……あ。そうだな。そういえば」
67 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/07(木) 10:24:11.76 ID:NG3f1T78P
王子「……では、僧侶は……?」
側近「あいつは、あの侭だ。さっきも言ったが、寿命が……そもそも、違う」
側近「エルフは300年ほど生きる、らしい。癒し手は半分人の血が入っている」
側近「……丁度半分、と考えても」
王子「……次の勇者が産まれて、黒い髪のゆう……魔王が、倒される迄」
王子「旅立ちが16と考えても……生きている、か」
側近「……間に合う、んだ」
王子「……しかし、何故?」
側近「…… ……そ、れは」
王子「あ、ああ……違う。何故お前が魔……に、じゃ無くて」
王子「……悪い、混乱してて考えがまとまらん。だが、ああ……」
側近「…… ……?」
王子「……何故、繰り返すんだ?」
側近「そ、れは」
王子「『少年』も……元、勇者だった、と言うのか?」
側近「否。それは……違うと言っていた」
王子「……誰が」
側近「使用人、と言う……魔王の城に住んでいる女」
側近「……お祖母様の手記に出て来た筈、だ」
側近「少年……紫の魔王に、娼館から。あの街から救い出された一人」
側近「……『少女』と言う女だ」
王子「その……使用人、も」
王子「人から、魔……へ?」
側近「ああ。金の髪の勇者を連れて来た、盲目の……紫の魔王の側近」
王子「!」
側近「……彼も、だそうだ」
王子「…… ……ま、待て!待て!」
側近「な、なんだ」
王子「……すまん、理解が出来ん」
側近「無理もない……俺だって最初は、そうだった」ハァ
スコーン乙カレー!
働けるうちは働かんとなぁ
幼女のためにも貯蓄は必要だ
頑張れオカン!
王子「…… ……」フゥ
側近「……早かったな」
王子「! ……起きてた、のか」
ここだけ読んで
卑猥なイメージをした私はダメ人間
71 :
名も無き被検体774号+:2013/11/07(木) 18:33:50.38 ID:sQntUkBPi
>>72 聞かなかったことにしないw
1とほぼ同じ年齢&性別ですな
保守
どういう流れだよwwwww
……ふぅ
75 :
名も無き被検体774号+:2013/11/08(金) 01:15:54.44 ID:EZWARScf0
76 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/08(金) 01:16:48.69 ID:95zCM54VP
なんだこの流れwww
やっと帰れらので寝るorz
BBAお疲れ様
BBAお疲れ!
そしておはよ(´・д・`)
フゥ…
ほしゅ
81 :
!ninja:2013/11/09(土) 03:00:58.63 ID:S47uAtLv0
ほ
82 :
名も無き被検体774号+:2013/11/09(土) 09:33:37.28 ID:I6ku2zEg0
ほ
83 :
!ninja:2013/11/09(土) 10:55:02.63 ID:RCLQzsdci
ほ
84 :
名も無き被検体774号+:2013/11/09(土) 11:05:08.13 ID:yZTMzOzDP
用事すんだらちょっと来ます!
85 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/09(土) 11:06:22.70 ID:yZTMzOzDP
とりわすれた( ゚д゚)
正座して待ってます(AA略
ぱんつ脱いで待ってます
88 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/09(土) 17:13:31.74 ID:yZTMzOzDP
ご…ごめん、幼女と寝てしまった…
幼女との時間の方が大事でしょ
無理なさらずに
90 :
名も無き被検体774号+:2013/11/09(土) 18:03:23.59 ID:nEwXnfb+i
まさかこの話がBBAの実体験だとはな
幼女「真に美しい世界を望む為だ」
若(紫魔王)「…ぼくの世界(地球)を守って」
>>90 え!?と言うことはBBAは総てを知っている使用人ちゃん?!
94 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/10(日) 10:44:06.85 ID:X7n6q+PqP
王子「……何時、知った、んだ?」
側近「魔導国……を出てから、だな」
側近「剣士から聞いているんだろう?」
王子「光に包まれて……お前達四人が消えてしまった、と……」
側近「……ああ。あれは……黒い髪の勇者の母君の魔法だったそうだ」
王子「!?」
側近「転移魔法……母君は俺達の気配を探り当て、呼び寄せた」
王子「…… ……ど、こに」
側近「……最果ての地。魔王の城」
王子「…… ……」
側近「母君はあの……この国の、あの小屋から転移し」
側近「金の髪の魔王の傍へ戻った。俺達を……『勇者』が『魔王』を倒すのを」
側近「見届ける為。それまで……魔王を守る為」
王子「……で、でもお前達、は……」
側近「……『時間がない』んだと言っていた」
王子「え?」
側近「さっきも言っただろう。魔王が目を覚ましてしまえば……」
王子「……全き、闇?」
側近「そうだ。自我を失った……魔王、が理性の歯止めも無く」
王子「!」
側近「力を、奮えば、どうなる?」
王子「に、人間の大いなる勘違い、じゃ無いのか!?」
王子「魔王は、世界を滅ぼそう等とはしていない、と……!」
側近「自我があれば、だ!」
側近「……魔導国での領主の話を覚えて居るだろう?」
王子「…… ……」
95 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/10(日) 10:51:15.85 ID:X7n6q+PqP
側近「息子であろうが。何であろうが」
側近「…… ……」
王子「魔王が『復活』すれば……『世界』は、終わる……」
側近「だから……『仲間』は『魔王』を守る」
側近「美しい世界を……守るんだ」
王子「…… ……」
側近「……すまん。上手く……説明出来ん」
王子「…… ……」
側近「これ以上は、癒し手が居る時に話す」
側近「……親父も、もう……休め」
王子「……阿呆。眠れるか」
側近「伯父上の事を蔑ろにできんだろうが」
王子「…… ……」
側近「剣士にも……話さねばならん、のだろう」
王子「……俺や、弟王子が知っていた話など」
王子「一部、にも及ばなかった……んだな」
側近「……俺だって……否。俺達だって」
側近「何も、知らないんだ、まだ。本当に……」
王子「『世界の裏側を少しだけ』?」
側近「……ああ」
王子「…… ……」
側近「親不孝な、息子で……すまん」
王子「……お前は、俺の息子だって言っただろう」
王子「たった一人の……祈り女との……」
側近「…… ……」
王子「謝ってくれるな。その方が……親不孝だ」
側近「親父……」
96 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/10(日) 11:03:07.07 ID:X7n6q+PqP
王子「……今日は、寝る、よ」
側近「……ああ」
王子「明日……夜」
側近「ん?」
王子「……僧侶……癒し手の事もある。王を休ませたら」
王子「剣士を此処へ連れて戻る」
側近「……解った」
王子「無理だけはさせるなよ」
側近「当然だ」
王子「……家の中の物は自由に使えよ?」
側近「……ありがとう」
王子「礼を……言うところじゃ無い。お前の家でもあるんだから」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「……癒し手の、様子を見て……眠る」
王子「ああ……お休み、戦士」
側近「……ああ」
スタスタ、パタン
王子「……側近、か」
王子(……呼べるかよ!馬鹿野郎……!)
97 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/10(日) 14:00:46.43 ID:X7n6q+PqP
……
………
…………
癒し手「ん…… 側近、さん?」モゾ
側近「ああ……すまん、起こしたか」
癒し手「大丈夫……です」
癒し手「……騎士団長様は、まだ……?」
側近「否……話してた」
癒し手「……伝えた、んですね」ギュ
側近「……俺は、端で良いから。身体を伸ばして……」
癒し手「くっついて寝る方が落ち着きます。この子も……嬉しいです」
側近「…… ……」
癒し手「泣きそうな顔、してる」
側近「暗くて見えないだろ」
癒し手「解りますよ」
側近「…… ……」
癒し手「大丈夫……なんて、軽々しく言えません。でも」
癒し手「……話して、貰えない方が、悲しいです」
癒し手「多分……」
側近「……ああ」ギュ
癒し手「……騎士団長様は、何と?」
側近「明日、全て……詳しく話そう、と」
側近「王を眠らせた後、剣士と戻るそうだ」
癒し手「……王様には、お話しされない、のですね」
側近「今の所は、だろう」
癒し手「…… ……」
お疲れスコーン
保守
しえん
BBAおはよ(´・д・`)
101 :
名も無き被検体774号+:2013/11/11(月) 07:43:23.18 ID:E2nYTuMwi
おはよぉー(´д`)
102 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 10:09:30.08 ID:rDChF+gMP
側近「どう思う?」
癒し手「……?」
側近「王に、だ。話すべきか、否か……」
癒し手「私は……新しい王様の為人を知りませんから」
癒し手「何とも、言えませんが……」
側近「…… ……」
癒し手「『揃った』のであって、『次』で終わるのならば」
癒し手「……知らなくて、良いとも……思います」
側近「保証は、無い。どこにも」
癒し手「…… ……」
側近「終わって欲しい。終わらせてやる、と……思っては居る」
癒し手「……はい」
側近「だが…… ……」
癒し手「……世の中に。『世界』に絶対は……ありません、からね」
側近「…… ……」
側近「悪かった。眠ってくれ」
癒し手「……はい。明日は、どうしますか?」
側近「俺は……王の様子を見に行くつもり、だ」
側近「人でも居るだろうしな」
癒し手「私も、行っても?」
側近「……大丈夫なのか?」
癒し手「無理はしません。王様の……お話し相手ぐらいになら、なれるかな、と」
側近「そんな暇があれば……良いが」
癒し手「あ、そうか……お忙しいでしょうか」
側近「まあ……お前が行きたいというのなら止めはしない」
側近「……会わせて置くべきだとも思うしな。だが……」
癒し手「?」
側近「……否」
103 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 10:14:57.38 ID:rDChF+gMP
側近(癒し手は嘘は……つけない)
側近(大丈夫……だとは思う、が)
癒し手「……滅多な事は、言いませんよ」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「では……お願い致します」
騎士「は!」
バタバタ……
ガヤガヤ、ガヤガヤ……
王「…… ……」フゥ
王(誰も、何も言わない……僕が、この)
王(『王』の椅子に座っていても)
キィ
王「……? ……あ!」
剣士「騎士団長に呼ばれたんだ……彼は?」
王「伯父上はまだ……」
剣士「そうか」
王「伯父上は……何と?」
剣士「俺は何も聞いていない。ただ、此処に来い、と」
王「…… ……」
104 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 10:20:51.91 ID:rDChF+gMP
剣士「……堂々としていろ」
王「え?」
剣士「お前は……お前、が『王』なのだろう?」
王「聞いて、いるのですか」
剣士「国王からな」
王「…… ……そう、ですか」
王(お父様も、伯父上も……部外者であろう、この人に)
王(僕の知らない事を……話して、いた、のか)
王(……否。この人は、鍛冶師の村へ……)
王(しかし…… ……)ハァ
キィ、パタン
王子「剣士、もう来ていたのか」
剣士「……部屋はこの中だからな」
側近「おはよう……眠れたか、王」
王「戦士兄様……!」
側近「……大きくなったな」
王「……そ、の女性は」
癒し手「お初にお目に掛かります、王様」
側近「僧侶、だ……俺の、妻だ」
癒し手「…… ……」
剣士「…… ……」
剣士(騎士団長、目が赤い)
剣士(……眠れて、は居ないんだろうな。当然か)
剣士(人と言うのは……感受性が豊かな生き物……なんだろうな)
剣士(……船長の表情も、コロコロと変わっていた)
剣士(泣いて、笑って……怒って)フゥ
王子「何だ、ため息なんかついて」
剣士「……疑問に思わん方がおかしいだろう」
剣士「何故俺がここに居る?」
105 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 10:22:05.69 ID:rDChF+gMP
しゅっきーん!(・ω・)
106 :
名も無き被検体774号+:2013/11/11(月) 11:45:01.21 ID:P6oveC1Pi
いってらっしゃい!
4円
保守致します
109 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 23:26:02.86 ID:rDChF+gMP
王子「……聞く権利がある、と。俺が判断したからだ」
王「…… ……」
王子「だが。新王として……弟王子……『国王』から」
王子「『王』を託された、今」
王「!」
王子「貴方が決めるべきでしょう、王様」スッ
王「……か、顔を!上げて下さい!伯父上!」
王子「俺は、貴方に忠誠を誓います。俺として……『騎士団長』として」
癒し手「…… ……」
側近「俺も、誓おう」スッ
王「戦士兄様!?」
側近「……不安も、あるだろう。大きいだろう。だが」
側近「お祖母様、叔父上と受け継がれてきたこの国を」
側近「……再度、『勇者』が戻るだろうこの国の長としての新たなる王に」
癒し手「……王様」
王「は、はい!?」
癒し手「……魔王は、確かに倒されました」
王「!」
癒し手「ですが、魔王は又……復活するでしょう」
王「……どう、してそう言い切れる、のですか」
癒し手「『勇者』の共として、『戻って来てしまった』身として、申し上げます」
剣士「…… ……」
癒し手「魔王は、復活します。そうして新たな勇者が……現れます」
王「……新たな、勇者」
癒し手「はい。私は決して嘘は申しません。申し上げられません」
王「…… ……」
癒し手「この『血』に誓います」
王「……『血』?」
癒し手「此処に居る、私。傍に居て下さる……戦士さん」
癒し手「彼が、この国の『王』と血の繋がっている事実に誓って」
王「……!」
110 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 23:35:50.99 ID:rDChF+gMP
癒し手「その伴侶となる身として。血を受け継ぐ者を産む者として」
王「…… ……」
癒し手「信じて、下さいますでしょうか」
王「…… ……」
側近「聞いている、と思う。金の髪の勇者……先代の勇者が」
側近「魔王を倒し、この世にはつかの間の平和が訪れた」
側近「魔物は弱った……剣で首を切り落とそうと、即座に絶命しなかった」
側近「あの、強靱な命が」
王「…… ……」
側近「剣士の一太刀……否。戦闘経験の無い、村民の子供の詠唱一つで」
側近「身動きが取れなくなったのを、俺はこの目で見た」
側近「……だが、この仮初めの平和は決して長く続かない」
剣士「…… ……」
側近「『同じ』なんだ。あの時……と」
王子「魔物は弱り、この侭……平和になっていくかと思われたとき」
王子「黒い髪の勇者は、『勇者』として生を受け、俺達の前に現れた」
王子「……弟王子から、この辺の話は聞いているだろう?」
王「……は、い。それは…… ……はい」
剣士「……余りにも、手応えがなさ過ぎた」
王「剣士さん……?」
剣士「数は多いと言え、俺一人の手でも……殲滅できただろう、程に」
剣士「……故に、復活を遂げたとするならば」
剣士「確かに『勇者』は必要だろう。希望として」
剣士「……願えば、叶う」
王「!」
癒し手「お願い致します、王様」
癒し手「産まれて来るこの子の為にも」
側近「……俺も、親父も。叶う限りの手助けをしよう」
111 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 23:42:18.50 ID:rDChF+gMP
王子「剣士には申し訳無いが」
王子「……『王』。貴方が、決めるのだ」
王子「『始まりの国』の『王』として」
王「……必要だと言うのであれば、従いましょう。ですが!」
王「これでは、まるで……脅迫です!伯父上!」
王子「…… ……」
王「ぼ、僕は……! お飾りに過ぎない!」
王「貴方達は、僕を見ている様で、見ていない!」
王「僕を梳かして、お父様を……ッ お祖母様を、見ているだけだ!」
王子「……ッ」
王「僕は傀儡じゃない! 都合良く操れる人形じゃ無い!」
側近「……王!」
王「名だけじゃ無いか! ……ッ 誰も、『僕』等見ていない!」
王「襲名したから、何だと言うんです! 都合良く……ッ」
王「本心など、誰からも見えない!」キッ
癒し手「!」
王「『血』に誓って!? 馬鹿馬鹿しい!」
王「貴女が言っていることは、あの……ッ 母親と同じだ!」
王「魔導国と、何が違う!? 都合の良い様に……ッ」
王「何が、『導いて行く者』だ!『指導者』だ!」
王「僕一人、思う様に『支配』出来ず……!」
王子「王!」
王「僕は、父上の頭上の冠じゃ無い!」
王「『僕』は、『僕』だ!」
癒し手「王様!」
王「う、煩い!煩い……!」
王「都合の良い傀儡に等、ならないぞ!」
王「僕は……ッ」
剣士「…… ……」
王「…… ……ッ」
ダダダッ バタン!
112 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/11(月) 23:51:38.26 ID:rDChF+gMP
げんかいー(・△・)
おやすみスコーンAND幼女
良い夢を
BBAおはよ(´・д・`)
115 :
名も無き被検体774号+:2013/11/12(火) 10:36:01.97 ID:mWxO5X5ri
しえん
116 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 11:09:32.45 ID:SNzP+alOP
剣士「……一体、何の真似だ」ハァ
王子「…… ……」
剣士「こんな馬鹿げた三文芝居を見せる為に、俺を呼んだのか?」
王子「……人生なんて、茶番の連続だ」
剣士「…… ……」
癒し手「あの……本当に、これで良かったのですか?」
王子「良いんだ。これで……良い、んだ」
側近「…… ……」
剣士「?」
王子「……三文芝居か。その通りだな」
剣士「何……?」
癒し手「……王様は、知らない方が良いだろう、と」
癒し手「騎士団長様が……」
王子「……俺は、弟王子ほど頭が良い訳じゃ無いからな」
王子「こんな方法しか、思いつかなかったんだ」
剣士「……戦士や僧侶の言葉は、態とか」ハァ
王子「『側近』に『癒し手』だ」
剣士「! ……話した、のか」
側近「……ああ」
王子「お前は知ってたんだろう、剣士」
剣士「……聞くまでも無い。無かった」
剣士「見れば……解る」
王子「そう、か」
剣士「否、そんな話は……」
王子「王に隠れコソコソとやれば、不信感が増すばかりだろう」
剣士「だからといって、お前……」
117 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 11:17:16.99 ID:SNzP+alOP
側近「態とであろうが、嘘じゃ無い」
側近「俺は俺として、この国に居る限り……」
癒し手「私も、です。エルフの血に誓い……この子を産む……」
癒し手「この国の血を引く者を産む身として」
癒し手「決して、申しわげたことは嘘じゃありません」
剣士「……『母親』と同じだと、歪曲して受け取って居たぞ」
王子「あれはちょっと吃驚したけどな……言われてみれば」
王子「そう思われたって、不思議じゃ無い」
王子「……王だけをお飾りにして、俺達があいつを『支配』する」
王子「……だが、それで良いんだ。それで、反発してくれれば……」
剣士「……無茶苦茶だな。確かに……頭の悪い考えだ」
側近「剣士」
剣士「事実だ」
王子「戦士、寄せ……良いんだよ」
癒し手「ですが……これでは……」
王子「俺だって嘘じゃ無い。この命ある限り、俺として騎士団長として」
王子「あいつを、何としてでも守っていく」
王子「……だが、『王』はあいつだ」
王子「自分で考え、自分でやっていかなければならないんだ」
癒し手「…… ……」
側近「で、どうするんだ」
王子「……まあ、まさか逃げ出されるとは思わなかった、んだが」
剣士「…… ……」ハァ
癒し手「後で……様子を見に行きます」
側近「お前が?」
癒し手「消去法です……他に、誰が居ます?」
王子「俺じゃ会ってもくれなさそうだしな」
側近「……俺じゃ駄目か?」
剣士「部外者の方が無難だろう。俺か癒し手と考えれば……」
癒し手「……ね?」
118 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 11:22:46.72 ID:SNzP+alOP
王子「まあ、適任だろうな」ハァ
王子「事務的なことだけ、済ませてくる」
王子「今日の夜……と思っていたが」
剣士「……『世界の裏側』か」
王子「俺や弟王子より、戦士と癒し手に聞いた方が良いだろう」
王子「……俺も、聞く」
剣士「…… ……」
癒し手「あの、騎士団長様、今朝の……」
王子「ああ……本当に、良いのか?」
側近「癒し手が望むなら」
剣士「?」
王子「ならば先に向かってくれ。そこで……話そう」
王子「裏門の鍵は、これだ。スペアは無い」チャリ
側近「ああ」
王子「無くすなよ……剣士も一緒に行け」
剣士「……あの、小屋か」
王子「ああ。お前は便宜上『城内に軟禁』だからな」
剣士「…… ……」
王子「この国で、子供を産みたい、のだそうだ」
癒し手「黒い髪の勇者様の……母君の愛に守られた部屋ならば」
癒し手「安心、出来そうな気がするんです」
剣士「俺に確認する必要のある話でも無いだろう」
王子「……騎士に伝達したら、すぐに行く」
スタスタ、パタン
側近「……王に任せれば良いと思う、んだがな」
癒し手「……そう、ですね」
剣士「……過保護だな、騎士団長は」
119 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 11:37:19.86 ID:SNzP+alOP
側近「行こう。此処で話す訳には……な」
癒し手「はい」
剣士「結局……自分で話したのか」
スタスタ……
癒し手「避けては通れません。勇者様と魔王様の……お話しをする上で」
剣士「…… ……ああ」
側近「癒し手、手を。山道は……滑ると危ない」
癒し手「平坦な道ですから大丈夫ですよ……」フフ。ギュ
剣士「何処まで、話した?」
癒し手「この国に向かう船の中で、剣士さんに話したのと同じぐらい……」
癒し手「ですよね?」
側近「ああ……だと、思う」
剣士「?」
癒し手「親子の会話、邪魔できません……寝てました、し」
剣士「……そうか。俺も騎士団長も、予備知識がある、位に」
剣士「思っておいて良い、んだな」
癒し手「はい……騎士団長様が戻られたら」
癒し手「……全て、お話しします」
癒し手「使用人さんから聞いた、全て」
側近「……あれだな。とにかく、中に入って休もう」
剣士「…… ……不思議な心地だ」
癒し手「『母の愛』ですね。紛れも無く、強大な魔力、なのに」
側近「苦しくないのか?本当に……大丈夫なのか」
癒し手「私の……魔石もちゃんと持ってます。でも」
癒し手「……心地、良いですよ」
剣士「『世界の裏側を少しだけ』か」
側近「……? 何だ」
剣士「……何れ、『全て』を知れる、のか?」
癒し手「私達が無理でも……次、が。未来があります」
癒し手「担うのは、貴方達です」
剣士「……俺?」
癒し手「ついて行くのでしょう。『貴方の勇者様』に」
剣士「…… ……ああ」
120 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 11:42:26.30 ID:SNzP+alOP
剣士「今度こそ……魔王を、倒す」
……
………
…………
チビ「…… ……」
コンコン
チビ「…… ……」
コンコン!
男「おい、寝てんのか?」
チビ「……父さんだけ?」
男「……起きてんじゃネェか。返事ぐらいしろよ」
カチャ
チビ「…… ……」
男「何だ、泣いてんのか」ハァ
チビ「な、泣いてなんか無い!」
男「……ほら、ホットミルク。取りあえず落ち着け」
チビ「…… ……ありがと」
男「……嫌いになった、か?」
チビ「そう、じゃ無い……けど……」
チビ「でも……!」
121 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 12:09:06.58 ID:SNzP+alOP
男「言いたいことは解るけどな」
チビ「……冷たい、よ。母さんは……」
チビ「困ってる人が……絶対に、居るのに……!」
男「そんな事言っちまえば、世の中に『困ってない』人なんて」
男「ほっとんど居ネェぞ? ましてやこんな状況だ」
チビ「……わ、わかってるよ!」
男「それにな。あそこで、状況もわかんネェ場所に、たかだか……」
男「子供まで乗せた海賊船で突っ込んでって、何が出来る」
チビ「…… ……」
男「戦闘要員っつったって、ド素人だぞ?」
男「……俺も、母さんも。お前に何かあったら、って考えたら」
男「『突撃』と『避難』のどちらを選ぶかは……解る、よな?」
チビ「…… ……」
チビ「でも……あの街の人達、は……」
男「…… ……」ポンポン
チビ「……何で、戦争なんか起こるんだろう」
チビ「何で、魔物なんて居るの!?」
男「チビ……」
チビ「迷惑ばっかりじゃ無いか! 罪も無い、人……!」
男「……俺達だって、見る人から見れば『迷惑』なんだぜ?」
チビ「え……?」
男「そりゃ、虐殺だの強奪だの。そんなこたしねぇけどよ」
男「『海賊』ってだけで、100人居れば100人が」
男「『あの海賊さん達は、酷いことしないから』って」
男「言ってくれる訳、ネェだろ?」
チビ「!」
男「……片方だけから物事見たって、『世界』なんてモンは」
男「なりたたねぇんだよ、チビ」
チビ「…… ……」
男「でもな。困ってる人見たら、助けてやらなきゃってのは」
男「考え方としては、父さん立派だと思うぜ」
チビ「…… ……」
122 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 12:14:57.54 ID:SNzP+alOP
男「母さんだって……お前が、ここに居るから」
男「『避難』を選んだのさ」
チビ「居なかったら……?」
男「……仲間が、居るだろ? この船には」
チビ「…… ……」
男「『仲間』を危険にさらせるか?」
男「……この船の掟。海賊の掟……『船長の命令は絶対』だ」
男「だが、慕われる要員が無いと、そもそも『仲間』なんてモンは」
男「だぁれも、着いちゃこネェ」
チビ「…… ……」
男「母さんは、冷たいか?」
チビ「…… ……」
男「……ま、良いさ」フゥ
男「母さんが助けに行く、と言えば、海賊共は」
男「威勢良く『アイアイサー!』って、飛び出してっただろうさ」
男「それで誰かが……例え死んでも。船長の為ならって」
男「言う、かもしれん。だが…… ……」
チビ「もう、良いよ」
男「…… ……」
チビ「……寝るね」
男「…… ……おう」
チビ「おやすみ……」コロン
男「…… ……」フゥ
スタスタ、パタン
チビ(解るよ!解る、けど……!)
チビ(依頼だ、仕事だ、金だ……!!)
チビ(信頼が無いと、仕事は貰えない)
チビ(金は、貰えない!)
チビ(だけど……! 解ってる、けど……!)
123 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/12(火) 12:15:46.70 ID:SNzP+alOP
おひるごはーん
124 :
名も無き被検体774号+:2013/11/12(火) 12:53:51.11 ID:uWfP7Git0
いてらー
むりすんなよー
125 :
名も無き被検体774号+:2013/11/12(火) 15:42:25.53 ID:r4NVwVUyi
これって魔物サイドはどう思ってんだろう?
保守でございます!
ほっしゅ〜
128 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 09:21:12.89 ID:rLf9sUb4P
……
………
…………
ピーィ……コツン、コン
船長「……?」
船長(鳥……あの女か?)
スタスタ、キィ
パタパタ……
船長「あ、おい、コラ!」
ピィ!
船長「……蒼? ……ああ」
船長(客人の、か……しかし、随分早かったな)
船長(あの塔……先か見えなかったぞ。もう上って……降りてきた、のか?)
ピィ……
船長「どうしたんだよ。部屋の中飛び回って……ああ、水か?」
船長「ちょっと待ってろよ…… と、ほら。その前にお前、手紙を……」
ピィ……
船長「よ、っと……ん?」
129 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 09:27:28.39 ID:rLf9sUb4P
船長「『待つ必要はありません。依頼は完了として下さい』……え!?」
船長「…… ……」
船長(何か……あった、のか?)ギュ
ピィ!
船長「あ、ああ……はいはい。おい!誰か!」
カチャ
海賊「船長、呼びました?」
海賊「……あれ、蒼い」
船長「客人からの頼りだ。悪いがこいつに、水を……」
ピーィ!
海賊「ああ、はいは……いててて!」
海賊「……お迎え、っすか? ちょ、待てって!」
パタパタパタ……
船長「……出てっちまったか。まあ良い」
船長「あいつも何れ、消えるんだろ」
海賊「……はぁ」
船長「で、何だって?」
海賊「ああ、いえ。迎えに行くんでしょ?手紙届いたって事は」
船長「否……依頼は完了だ」
海賊「え!? で、でも……」
船長「……過ぎる詮索は身を滅ぼすぜ」
海賊「は、はあ……じゃあ、どうします?」
船長「進路は、南の侭か」
海賊「はい」
船長「…… ……」
130 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 09:36:41.93 ID:rLf9sUb4P
船長「……暫く速度を緩めて、そのままだ」
海賊「アイアイサー!」
船長「ついでに、小鳥を探してきてくれ」
海賊「わかりました……船長も、そろそろ休んで下さいよ」
海賊「……もう歳なんですから。目の下、クマすごいっすよ」
船長「……アタシはまだ若いよ!」ドン!
海賊「し、失礼しました!」
タタタ……バタン!
船長「…… ……」ハァ
船長(魔導国や始まりの国の動向が分からない以上)
船長(近づくべきじゃネェな……鍛冶師の村、も)
船長(避けた方が、無難……しかし、な)
船長(補給は必要……港街も無理、とくれば)
船長「……あそこしか、ネェか」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
王子「すまん。待たせたな」
側近「否……」
癒し手「あの、王様は……」
王子「報告だけは済ませたよ。わかりました、とは言ってたが……」
剣士「…… ……」
側近「どうなった、んだ」
王子「正午には逝去の知らせを出す。他の街にもな」
王子「同時に、新王の就任も……葬儀は、明日」
側近「……俺達も、出席して良いのか」
王子「当たり前だろ……何言ってんだ、お前は」
剣士「…… ……」
131 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 09:44:52.52 ID:rLf9sUb4P
癒し手「……就任式、は?」
王子「一週間後だ……あまり日を開ける訳にはいかん」
癒し手「そう、ですね」
王子「明日が過ぎれば俺も忙しくなる」
王子「……俺も今日はもう、休ませて貰う事にした」
側近「放って置いて良いのか?」
王子「言っただろう? ……明日から、だ」
王子「今日は……今は、そっとしておいた方が、良い」
剣士「……では、話して貰おうか」
王子「どこまで、知っている」
剣士「お互い予備知識があると思って良い、との事だ」
癒し手「私達が知り得るのは、使用人さんから聞いた過去と」
側近「俺達が、見、知り……感じた事。それが全てだ」
王子「……先に、言っておく。俺は……王に何も伝えるつもりは無い」
癒し手「……本当に、良いんですね」
王子「ああ……彼は……彼らは、未来を生きる者達だ」
剣士「成り行きに任す?」
王子「……言葉は悪いが、そうだな」
王子「どちらにしても……『勇者』は戻るのだろう?」
癒し手「……はい」
王子「何も、は言い過ぎか……差し障りの無い所だけ」
側近「そうだな。それは……王に伝えねばならん」
剣士「国王から……聞いていないのか?」
王子「ある程度は聞いていると思う……が」
王子「何もかも『模倣』を押しつける必要は無いだろう?」
癒し手「……そうですね。そこら辺は、後で……」
癒し手「騎士団長様に、判断して貰えれば良いかと思います」
側近「……癒し手」
癒し手「はい……では、ええと……どこ、から」
剣士「知りうる限りの『始まり』から『終わり』まで、だ」
132 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 10:02:26.48 ID:rLf9sUb4P
癒し手「……はい。前後したり、詳しくない場所は曖昧になりますけど」
王子「構わない。分からない事は聞く」
癒し手「……知りうる限りの『始まり』……時系列で行くと」
癒し手「紫の魔王の側近様が……まだ、人間だった頃の話です」
王子「……あの盲目の、男。あいつも……人間だった、んだったな」
癒し手「騎士団長様はご存じですね……彼は」
癒し手「今は大海の大渦と化した、小さな島の出身だったそうです」
癒し手「仲間と三人で……魔王を倒そうと旅立った」
癒し手「『勇者になる筈だった者達』」
剣士「…… ……」
癒し手「船で出立したすぐ後に、当時の魔王……紫の魔王のお爺様の」
癒し手「強大な火の玉で、島は、海に沈められてしまった」
側近「ここから遙か北。最果ての地に近い場所にある、小さな集落」
側近「そこに難破した彼らを救ってくれたのは、小さな男の子だったそうだ」
側近「……連れて行かれた先には、男の子の姉と名乗る女が居た」
剣士「それは……どこかの街か?場所的に……」
癒し手「北の街ではなかったと思います」
癒し手「その近くに……彼ら、その姉弟達の仲間達で集い」
癒し手「生活をしていた、と聞きました」
側近「……女は、三人に問うたそうだ」
側近「『優れた加護を持つ者はいるか』、と」
剣士「! まさか……」
王子「……え?」
癒し手「私の推測に過ぎません、けど……」
癒し手「それが……母親さん達の言ってらっしゃった」
剣士「『始まりの姉弟』」
王子「ある程度、国王に聞いて知っている……が」
王子「……ただの、伝承では無かった、のか!?」
133 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 10:31:02.81 ID:rLf9sUb4P
癒し手「先ほども言った様に、私の……推測に過ぎません。ですが」
剣士「『劣等種』……だった、か」
癒し手「優れた加護を持たない者の蔑称……で良いんですよね?」
王子「だと思う……が」
側近「その……『劣等種』をどんな風に扱っていたかまでは解らんが」
側近「三人が優れた加護を持たないと知ると、手のひらを返した様に」
側近「冷たい態度になった……んだったな?」
癒し手「はい。次の日、北の街へと送っていって貰ったのだと」
癒し手「……その姉弟は、共に茶の瞳を持っていたそうです」
剣士「……雷、か」
癒し手「近親婚を繰り返していては、血が濃くなりすぎて」
癒し手「産まれても、すぐに死んでしまう……人口が、増えない」
癒し手「故に、優れた加護を持つ他の血を入れて……栄える必要があるのだと」
癒し手「言っていた、そうです」
側近「どうにかして人を徐々に人を増やし……居を転々として……」
側近「……多分、それが『魔導の街』の始まりだ」
剣士「街、と言うか……『領主の血筋』のルーツ、か」
癒し手「北の街で船を手に入れ、魔王の城へと……三人は乗り込みました」
癒し手「……対峙した魔王は『黒い髪に紅い瞳』をしていた」
王子「え!? 少年は……!」
癒し手「紅い瞳の魔王は、少年のお父様です」
剣士「……何気なく聞いていたが、島を沈めたという魔王は……」
側近「少年の祖父、だ」
王子「……ちょっと待て、魔王は……!」
癒し手「……確かに、今の『魔王』は『黒い髪の勇者』です」
癒し手「その黒い髪の勇者様が倒した『魔王』は……」
王子「『金の髪の勇者』…… し、しかし!」
134 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/13(水) 10:42:52.32 ID:rLf9sUb4P
おむかえー
いてらー
ほしの
BBAおはよ(´・д・`)
138 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/14(木) 07:32:36.24 ID:bsVV5b6AP
おはよう!
はたらいてくる!
今度は朝早い仕事なんだな
無理はしなさんなよ
保守
140 :
名も無き被検体774号+:2013/11/14(木) 14:09:52.59 ID:6YT+rxkX0
おなかすいたー
どっかに、スコーンおちてないかなー
141 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/14(木) 20:56:49.12 ID:bsVV5b6AP
いやぁ、無茶するもんじゃないね
腰いたいいたい…寝る( ゚д゚)
腰が痛くなるまで頑張ったんだ。
幼女二号はもう直ぐかな?
143 :
名も無き被検体774号+:2013/11/15(金) 00:05:55.13 ID:RjMJkCSGi
なに?二号だと!?
力の幼女
技の幼女二号
保守
145 :
名も無き被検体774号+:2013/11/15(金) 03:13:12.01 ID:81srJOGDi
親戚のおっさんみたいだな
うわー超きもい
147 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 09:06:37.41 ID:UounOCTPP
おはよう!
用事済ませて帰ったら!
正座して待ってる!
149 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 15:35:10.29 ID:UounOCTPP
剣士「勇者は魔王を倒し、魔王となる……」
剣士「絡繰りはともかく……どこで、違えた?」
癒し手「……金の髪の勇者様、黒い髪の勇者様のお父様は、人間でした」
癒し手「人間として……否」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「何だ」
癒し手「どう、説明して良い物か……」
剣士「思考は後だ。説明を先に」
癒し手「……ですね。聞いたままを一端、伝えます」
側近「使用人の話では、紫の魔王の側近が……苦しみだし」
王子「…… ……」
側近「不思議な言葉を話し出した、そうだ」
癒し手「『生と死』『特異点』『王』『拾う者』」
癒し手「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
癒し手「『知を受け継ぐ者』『光と闇』『勇者と魔王』」
剣士「…… ……」
癒し手「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
癒し手「『我が名は、勇者』」
癒し手「『光に導かれし運命の子』」
癒し手「『闇に抱かれし運命の子』」
癒し手「『汝の名は、魔王』」
癒し手「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
癒し手「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」 」
王子「な……ん、だ、それは……」
側近「紫の魔王の側近は、紫の魔王に『瞳』を与えられて居たらしい」
王子「……瞳?」
側近「ああ。彼の『紫の瞳』の片方を」
剣士「与えられた、と……は?」
側近「文字通りだ。食わされたらしい」
王子「!」
150 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 15:55:30.81 ID:UounOCTPP
癒し手「少し、脱線しましたけど……」
剣士「構わん……終わりでは無いだろう?」
王子「食わされ……ッ」
側近「……心話、とか言う物も可能だったらしい。繋がっている、と」
側近「言う……事、かな」
癒し手「その、言葉を発せられた時……紫の魔王の側近さんの瞳は」
癒し手「紫に変じ……」
剣士「何……?」
癒し手「……その後、彼らは紫の光に襲われ、気がついた時には」
癒し手「紫の魔王の側近さんの光は奪われていた」
側近「使用人が、紫の魔王の傍へ行った時に……金の髪の赤ん坊を見つけたそうだ」
癒し手「紫の魔王様は『器』」
王子「器……?」
癒し手「はい。そして『中身』は……金の髪の勇者様」
王子「!?」
癒し手「紫の魔王様は再び、紫の魔王の側近様の身を通じて、そう言ったそうです」
癒し手「……唐突に『言葉』が流れ込んできた」
剣士「……さっきの奴か」
癒し手「はい……『全てを飲み込めば、全てが消える』」
癒し手「『世界は繰り返されている』……と。だから」
癒し手「ただ、願ったのだと……」
王子「何を、だ」
癒し手「……『否』と」
剣士「…… ……」
151 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 16:06:14.31 ID:UounOCTPP
側近「死んだ器は何れ、内包する魔力に耐えられなくなり」
側近「『暴走』する」
癒し手「だから……生きた中身がその前に……」
剣士「『勇者』が『魔王』を倒す必要が、ある」
王子「…… ……」
癒し手「……はい」
側近「癒し手、『欠片』を忘れている」
癒し手「…… ……」
王子「欠片……」
癒し手「紫の光が発せられたのは、紫の魔王様では無く、紫の魔王の側近様の」
癒し手「身からだった、そうです」
癒し手「紫の魔王様曰く……あの光は『魔王の剣』の……歴代の」
剣士「魔王の剣……?」
癒し手「『魔王達』の欠片……城の天井を突き破り」
癒し手「どこかへと消えていった、『欠片』です」
王子「! ……お母様とお父様に聞いた事がある」
王子「空を……駆け抜けていった光……!」
剣士「おい、魔王の剣って……」
癒し手「……光の剣です」
剣士「!?」
癒し手「紫の魔王様の力が、高まってく最中、彼は……徐々に剣の魔力を」
癒し手「……吸収、していっていたのだと聞いています」
癒し手「紫の魔王の側近さんが与えられた、『瞳』」
癒し手「そして、吸収してしまった剣の魔力」
癒し手「……紫の魔王の側近さんから放たれた光、城を飛び出した『あれ』は」
癒し手「まさしく『魔王』の『欠片』」
剣士「……それを、探し出せ、か」
152 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 16:15:39.10 ID:UounOCTPP
側近「……恐らく、それは」
癒し手「…… ……」
王子「……?」
剣士「…… ……俺、と言いたいのか」
癒し手「はい」
王子「!?」
側近「癒し手が立てた仮説、だ……あくまでも」
癒し手「紫の魔王様に、子供は……居ません」
癒し手「生殖以外での『世継ぎ』……金の髪の勇者様を生み出された」
癒し手「その絡繰りは知るよしもありません。ですが」
癒し手「あの小さな手が紫の刀身の魔王の剣、に触れた途端」
癒し手「……それは、光の剣に生まれ変わった、のです」
側近「『表裏一体』だ、そうだ……『魔王は勇者』『勇者は魔王』」
王子「……無茶苦茶だ!」
癒し手「……少し話を戻します」
癒し手「三人の『勇者になるはずだった者達』が対峙した魔王は」
癒し手「紅い瞳をしていた、と言いましたね」
剣士「……紫の魔王の父、だな」
癒し手「はい。紅い魔王の魔王の剣の刀身は、燃える様な赤だったと聞いています」
王子「な、に!?」
癒し手「……口々に怨みを吐きながら」
癒し手「魔王へと襲いかかった彼らを、魔王は……いとも容易く撥ね除け」
癒し手「満身創痍の三人へ……『生きたいか』と問うた」
剣士「…… ……」
癒し手「『応』としたのは紫の魔王の側近様だけでした」
癒し手「瀕死の彼に新たなる生を与え、彼の身は……」
剣士「魔と化した、か」ハァ
側近「後はざっとで良いだろう。紫の魔王の側近はそのまま、赤の魔王に仕え」
側近「赤の魔王と、后の間に、紫の魔王が産まれる」
王子「おいおいおい、ちょっと待て!」
153 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 16:23:49.78 ID:UounOCTPP
王子「どうして、仕える!? 島を……ッ」
癒し手「ああ、そうでした……えっと、島を沈めたのは」
剣士「紫の魔王の祖父、だったか」
癒し手「はい。赤の魔王様は先代……お爺様、を」
癒し手「自らの手で殺めたのです」
剣士「…… ……」
癒し手「『もう少し早く、殺していれば。すまなかった』と」
癒し手「……土下座、されたそうですよ」
王子「……『魔王』が? し、しかし、殺す、とは……」
癒し手「それが『世代交代の儀式』なのだそうです」
癒し手「……『血』の繋がった『次代』が『先代』を殺し」
側近「あらたな『魔王』となり、『魔王としての力』と」
側近「『魔王の剣』を手に入れるのだそうだ」
剣士「……『勇者』は『魔王』を倒し」
王子「『新たな魔王』となる…… ……!?」
癒し手「……そこは、受け継がれてしまった、んでしょうね」
王子「紫の魔王の……剣、は……紫の刀身をしていた、と言っていたな」
側近「そうだ。紫の魔王が、赤の魔王を倒し……『新たな魔王』となった時」
側近「手にしたその剣は、瞳の色……」
癒し手「……持つ者の加護の色を、写し取る、のでしょうね」
剣士「…… ……」
154 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/15(金) 16:25:36.65 ID:UounOCTPP
中途半端やけど、ご飯の支度( ゚д゚)
はーい、マッチョります
ほしゅ
ぽしゅ
158 :
名も無き被検体774号+:2013/11/16(土) 13:46:53.93 ID:J5+R7oXBi
今マジでスコーン食ってる保守
>>158 ブルジョアジーめ
こっちはお好み焼きだ
保守
ごめん、フリトレーのスコーンに浮気した
保守の魔石
163 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 19:53:48.85 ID:0zkF+TGoP
私もスコーン食いてぇな!
帰ってかけたらちょっとだけー!
パン屋にスコーンがあったので買って食った
すげぇうまかった!!
でも1個250円はたけぇよ
165 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:02:13.59 ID:0zkF+TGoP
癒し手「これも、使用人さん達の仮説に過ぎませんが……」
癒し手「光の剣……あれは、元々……」
癒し手「『勇者』……否。『人間達の知の結晶』だったのではないか、と」
王子「……?」
側近「魔は、力にどうしても頼りがちになってしまう、と言う事だ」
剣士「……成る程。溢れる程の力、魔力を持っていれば」
剣士「『知』は疎かになる、と言いたい……のか」
癒し手「……黒い髪のゆ……魔王様の、お母様が言ってらした」
癒し手「『魔法なんて使い様』と言う言葉は、確かに……納得出来るのです」
癒し手「何かを攻撃するだけが『魔法』じゃ無いんです」
剣士「転移や……魔導国でお前達が消えた時の、あれもあるな」
王子「あれ?」
剣士「どうやって居場所を知るんだ? 直接見る訳には行かないだろう」
剣士「恐らくは気配を追って……」
癒し手「でしょうね。確かに、私でも真似事は出来ます」
王子「お前は、エルフだからだろう? そんな真似は、人間には……!」
癒し手「否定はしません。ですが、やり方が解らなければ……どうしようもありません」
癒し手「裏を返せば、やり方さえ知っていれば、人間にも出来るかもしれないんです」
癒し手「……勿論、魔力の絶対量とか、素質とかは……必要になってきますけど」
側近「『絶対無理だ』とは言い切れん、な」
癒し手「……もし、無理だったとするのならば。では、どうします?」
王子「え?」
癒し手「……『知』です。足りない物を補う知恵、技術……」
王子「…… ……」
剣士「確かに、溢れる程の魔力があれば……」
側近「さっき剣士が言った様に、疎かになる」
王子「し、しかし……!」
癒し手「『仮説』です。どこまで行っても」
癒し手「私達に……過去を『見る』術はありませんから」
癒し手「でも、しっくりきませんか。『魔王』を倒しに言った『勇者』が」
癒し手「敗北し、魔王に『勇者の剣』を奪われたのだとしたら」
剣士「……それが、持ち手により加護を移す魔法剣だとするならば」
癒し手「それは、その瞬間に、『魔王の剣』となるのです」
166 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:12:36.69 ID:0zkF+TGoP
剣士「…… ……」
癒し手「……話、戻しますね」
側近「どこまで話したか」
癒し手「ええと……ああ、紫の魔王様がお生まれになった、あたりですね」
癒し手「……ごめんなさい、また脱線しちゃいます、けど」
剣士「何だ?」
癒し手「少し、エルフの……母の話を、しておきます」
剣士「? 関係はあるのか?」
癒し手「無いとは言えません……『強大な力を生む者の末路』ですから」
側近「…… ……」
王子「末路?」
癒し手「私の母……姫、は『長』であり『次代の長を産む者』でした」
王子「普通のエルフと、何が違うんだ」
癒し手「少しばかり強い力を持っている、のだそうです」
癒し手「……エルフは、生涯一人しか子を産むことが出来ないそうです」
癒し手「そして、『長』は『世襲制』……必ず、『長』を産むのです」
側近「…… ……」
癒し手「母のお父様が、当時の長であったと聞いています」
王子「……今は、姫、が長だと言うのか? しかし……」
癒し手「……母は、私を産んで死んでいます」
剣士「……北の塔、で、か」
癒し手「出てから、ですね……紫の魔王様に眠らされて……」
王子「お、おい! その辺はさっぱりなんだ!」
王子「やはり、順序立てて……」
癒し手「あ……その方が、良いですか?」
側近「話しやすい方で言い、だろう」ハァ
王子「戦士……?」
剣士「……全て聞くと言った、からにはな。側近の意見に同意、だが」
剣士「混乱して話半分になっては意味が無い」
癒し手「……わかりました。では……順序立てて、お話ししましょう」
167 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:20:52.89 ID:0zkF+TGoP
癒し手「紫の魔王様のお母様は、紫の魔王様をお産みになった後」
癒し手「……身体が、砂の様に音も無く崩れていく、奇病にかかられたのだそうです」
剣士「…… ……」
癒し手「毎日、少しずつ……崩れていって」
癒し手「最後には、何もなくなってしまった。全て……風に攫われてしまった、のだと」
王子「な……ッ」
癒し手「詳細は後にしますが、『共通点』は」
剣士「『強大な力を持つ者を生み出す』…… ……」
癒し手「言うなれば『代償』でしょうね」
側近「…… ……」
癒し手「その後、紫の瞳の魔王様はお父様を殺し、魔王になります」
癒し手「……この頃はまだ、血生臭い時代であった、とも聞いています」
側近「詳細は誰も解らない。紫の魔王の側近は体験しているんだろうが」
側近「……使用人も、詳しくは知らない様だったな」
癒し手「はい。赤の魔王様は……人との共存を望んでいられた」
王子「え!?」
側近「だが、そう簡単には行かなかった様だ。時代背景も勿論だが……」
側近「赤の魔王の先代は、先にも言った様に……酷く好戦的な輩だった」
剣士「……島を沈めてしまう程の力も持っていた、だろう」
癒し手「赤の魔王様が魔王として地位と力を継承された時に」
癒し手「先代に賛同する者達は……その」
癒し手「……粗方、排除されたそう、なのですが」
王子「…… ……ッ」ゾッ
癒し手「ですが、赤の魔王様も、歴代の魔族達も見た事が無い」
癒し手「加護を……紫の瞳を持って生まれた、紫の魔王様の事もあって」
側近「紫の魔王を、余り外へ……人目に出すことを良しとはしなかったらしい」
168 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:28:16.35 ID:0zkF+TGoP
癒し手「故に、紫の魔王様は……即位後には『無能』呼ばわりされていたそうです」
癒し手「……それが、あの……魔導将軍と、魔導の街の確執に繋がったようです」
王子「……反旗を翻そうとした、のか!?」
癒し手「はい。魔導の街からの劣等種達の解放は」
癒し手「……偶然、あの街であった紫の魔王様と、母と……盗賊様が……」
剣士「ちょっと待て」
側近「何だ」
剣士「……それは『偶然』なのか?」
側近「……紫の瞳の側近にその状況をどうにかしろと焚きつけられて」
側近「転移で着いた先が、エルフの森のすぐ近く」
側近「そうして妊娠中の姫様を伴い、お祖母様と知り合い……」
癒し手「……『偶然』です。そうとしか……判断材料がありません」
剣士「…… ……」
王子「……そうだ! 姫、様のお腹の中の子は……!」
癒し手「私です。人と、エルフのハーフ」
王子「な、何故……!?」
癒し手「……森に迷い込んだ人の子を介抱する内に恋に落ちたのだそうです」
癒し手「さっきの話の続きになりますけど……」
癒し手「身籠もった事を知るや否や、長……お爺様、ですね」
癒し手「……に、堕胎を強要されたのだと」
王子「……ッ」
癒し手「ですが、エルフは生涯一人の子しか産むことは出来ない」
癒し手「否……母は、愛した男の子を堕胎するなんて、考えられなかった……」
癒し手「の、かもしれません」
癒し手「……それに、殺してしまったら」
剣士「次は、無い……のか」
側近「…… ……」
癒し手「それに……『末路』」
王子「え?」
癒し手「紫の魔王様のお母様と同じです」
側近「……『強大な力を持つ者を生み出す代償』」
169 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:36:33.37 ID:0zkF+TGoP
王子「!」
癒し手「エルフの妊娠期間は、とても長いのだそうです。ざっと50年……」
剣士「!?」
癒し手「……ですが、母は、紫の魔王様の魔力で北の塔で眠りに着いていますから」
癒し手「あ……以前に、父、は……人間なので」
癒し手「当てはまるとも限りません、けど」
癒し手「……とにかく、エルフの森を逃げ出した母は……紫の魔王様と『偶然』」
癒し手「合流した、んです……そして、その時『森は閉じられた』」
剣士「……?」
側近「長を失ったんだ、永遠に」
王子「!?」
癒し手「……倣うのならば、私が『長』なのでしょう。ですが」
癒し手「私は、ハーフエルフです」
剣士「…… ……」
癒し手「『森の意思だ』とも言っていたそうです」
癒し手「永遠に……美しい鳥籠の中で、彼らは終わるその時まで」
癒し手「……ひっそりと、生きていくのであろう、と」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……続き、を」
癒し手「……はい」
側近「後は、大体知っているだろう。港街が出来、始まりの国が復活し……」
剣士「復活?」
王子「……此処も太古の昔、魔王に滅ぼされた場所だった、と言う奴だな」
癒し手「そうです。紫の魔王様が残された『不思議な言葉』に」
癒し手「『王』が出て来ました。故に」
王子「……ッ それすらも、偶然だと言うのか!?」
王子「それでは、まるで……ッ」
側近「『できの悪い三文芝居』か?」
王子「…… ……ッ」
170 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:41:26.48 ID:0zkF+TGoP
癒し手「騎士団長様」
王子「え……あ、何……だ」
癒し手「……この国で、子供を産むことを許して下さいますか」
王子「え!? ……そ、それは、勿論……構わない、が」
剣士「何だ、急に」
癒し手「……私は、この子の成長を見る事ができないかも知れません」
側近「…… ……ッ」
剣士「……『長を産む者』だからか」
癒し手「はい」
王子「そ、それは……」
癒し手「祖父が長だったと言いました。祖母は……祖母が『長を産む者』です」
癒し手「祖母は母を産み、死んだのだと聞いています」
癒し手「……母、も……です」
側近「……癒し手」
癒し手「半分人の血が入っているとは、言え」
癒し手「『倣わない』保証もありません」
剣士「……何が産まれる?」
側近「剣士!?」
剣士「当然の疑問だ。その腹の子は、お前が魔に変じてからの」
剣士「……種、だろう?」
王子「!」
癒し手「…… ……はい」
側近「…… ……」
剣士「癒し手の『エルフ』と『人』の血」
剣士「側近、お前の……『人』と『魔』の血」
171 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:49:03.93 ID:0zkF+TGoP
癒し手「……未知数、です」
剣士「しかも生きる時代は確実に……『次代の勇者』の時代だ」
側近「……何であろうとも、俺達の子供だ」
側近「『子の幸せを願わない親は居ない』!」
王子「…… ……」
側近「……だろう、親父」
王子「当然、だ」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……荒唐無稽な話、だと言うのは、解った」ハァ
側近「親父?」
王子「……もう、頭が着いていかん」
王子「話を聞いても、理解出来る気がしないんだ」
癒し手「……すみません。もっと上手く説明できたら良いんですけど」
王子「あ……否。そうじゃ無い。信じない訳では…… ……」
王子「…… ……否。信じようとすれば、余計に信じられなくなりそうだ」
側近「…… ……」
王子「……僻んだり、否定する訳じゃ無い。だが」
王子「俺は……『過去』だ」
剣士「騎士団長?」
王子「卑怯な言い方かも知れん。これから先は……お前達に任せる方が」
王子「良いだろうと思う、だけだ」
癒し手「騎士団長様……」
王子「逃げている、と言われればそうだろう。だが……」
王子「……新王の事にしてもそうだな。俺は…… ……」
側近「…… ……」
王子「これからを作るのはお前達と、『次代』だ」
王子「……だから …… ……」
癒し手「……『拒否する権利』はあります」
側近「癒し手?」
癒し手「『知らずに居る権利』ですね」
癒し手「……でも、ありがとうございます」
癒し手「信じて……否。信じようとする、努力をして下さって」
172 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:54:45.95 ID:0zkF+TGoP
王子「…… ……受け入れ、られる気はしないよ、正直」
癒し手「充分です」
剣士「…… ……」
側近「親父……」
王子「……王を、放ってはおけん。俺は先に戻る」
王子「家に戻るなら……」
癒し手「あ、あの!」
王子「ん? ……ああ、後で様子を、と言ってくれてたな」
王子「それだったら、城に寄ってくれれば……」
癒し手「あ、違うんです、あの……」
癒し手「私達、此処に済ませて頂くことは……出来ませんか?」
側近「え!?」
癒し手「……長居を、するつもりはありません。出来ません」
癒し手「ですが……」
王子「遠慮なら、しなくて良い……と、言ってやりたい、が」
王子「……良いのか、戦士?」
側近「……まあ、癒し手が望むなら」
王子「……なら、別に構わないだろう。ああ、でも……」
王子「今日は一端……否。落ち着いてから、改めて」
王子「……でも、良いだろうか。準備もあるし……」
癒し手「あ、勿論です! ……色々、お忙しいでしょうし」
王子「うん。じゃあ……それもついでに、報告しておくよ」
王子「……こっちから逃げる分、あっちは……向き合う」
剣士「王、か」
王子「…… ……」
173 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 22:59:44.85 ID:0zkF+TGoP
王子「……俺で、この様だ。そりゃ、若くは無いが」
癒し手「そんな……!」
王子「王には、何も話さない」
癒し手「……はい」
剣士「…… ……」
側近「…… ……」
王子「……剣士、お前はどうする? あの部屋で良いか」
剣士「…… ……否。俺は…… ……魔王の所へ行く」
癒し手「え!?」
側近「何……?」
剣士「真偽の程はともかく……『欠片』だとするのなら……否」
剣士「…… ……『魔法なんて使い様』なのだろう」
王子「……転移、するつもりか」
剣士「ああ。最果ての場所は解る筈だ」
癒し手「……ビジョンを、送ります」
王子「え?」
癒し手「城の内部の映像を、そのまま……剣士さんの頭の中に」
癒し手「……『願えば、叶う』んです」
側近「……まあ、お前ならば出来るだろうが」
癒し手「側近さんがやるんですよ?」
側近「え!?」
癒し手「……その方が、良いと思うんですけど」
癒し手「駄目でしょうか?」
側近「……そ、ま、そりゃ……え!?」
剣士「……頼んで良いのか、悪いのか」
側近「今!?」
王子「…… ……」
癒し手「……で、良いんですか、剣士さん?」
剣士「向こうへ行っても、同じ話は聞けるのだろう?」
癒し手「そう……ですね。使用人さんの方が、寧ろ詳しいかと」
側近「……解った」ハァ
174 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 23:04:31.52 ID:0zkF+TGoP
側近「……無茶言うな、お前」ボソ
剣士「…… ……大丈夫なんだろうな」
側近「願えば叶う、んだろう」スッ
側近(頭、頭の中……な。触れて……これで……ッ)グッ
剣士「…… ……ッ」
剣士(こ、れは……階段、カーテン……? それ、に……ッ)
癒し手「その場所に行きたいと、願って下さい……!」
剣士「……ッ 確かに、無茶……だ……ッ」
シュゥゥン……ッ
癒し手「……ッ ぅ、ウ……ッ」
側近「癒し手!?」
王子「消えた!?」
癒し手「……だ、い丈夫…… ……です……」
癒し手「…… ……成功、した……ん、ですかね」フゥ
側近「……横になれ。すまん。外でやるべきだった」
王子「…… ……」
癒し手「平気、です……」
側近「……阿呆。顔が真っ青だ」
癒し手「……一緒に、連れて帰って貰うのは無理そうですね」
王子「…… ……」
側近「親父?」
王子「……あ、ああ……否…… ……」
王子「……お、俺は……戻る。休んだら、帰れよ、戦士」
スタスタ、パタン
癒し手「……刺激が、強かった……んでしょう、ね」
側近「配慮が足りなかったな」
癒し手「私は……良いんです。でも……」
側近「親父なら…… ……大丈夫だ」
175 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/16(土) 23:05:25.57 ID:0zkF+TGoP
限界です!
又……明日、か明後日か、明明後日……時間ある時にー!
久々の大量更新嬉しいが無理はするなよ
乙!
☆
素晴らしい
真夜中の保守
180 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 22:43:40.68 ID:VzNBr81TP
側近「……癒し手。一つだけ」
癒し手「?」
側近「本当に……此処で。この国で……」
癒し手「……勝手を、言いました。ご免なさい」
側近「さっきの言葉に嘘は無い。お前が望むのならば構わない。だが……」
癒し手「『何が産まれるのか』ですか」
側近「違う!」
癒し手「!」ビクッ
側近「……何であろうと。どんな……『命』であろうと」
側近「俺とお前の子供だ。そんな事じゃ無い……」
癒し手「……ご免なさい」
側近「…… ……否。大きな声を出して……済まなかった」
癒し手「……私が、どうなるか、ですね」
側近「…… ……」
癒し手「こればっかりは、解りません……本当に。ですが」
癒し手「私だって……生きたい。死にたくなんかない!死ねない……ッ」
側近「癒し手……ッ」ギュッ
癒し手「貴方を残して、この子を残して、中途半端で」
癒し手「終わりたくなんか、ありません! でも……」ギュッ
側近「…… ……」
癒し手「我が儘、なのでしょうか」
側近「そんな訳あるか……ッ」
癒し手「……いえ……あの」
側近「?」
癒し手「……この子は、勇者様と運命を共にするかも知れないし」
癒し手「普通に、のんびりと……過ごすのかも知れない」
癒し手「それは……『未来』は私には解りません」
癒し手「でも」
側近「でも?」
癒し手「せめて、一年……否、半年でも。数ヶ月でも」
癒し手「数日でも、良いんです」
癒し手「貴方が産まれて、育った……この、始まりの街を」
181 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 22:49:47.71 ID:VzNBr81TP
癒し手「少しでも良いから、感じさせてあげたいんです」
癒し手「……親のエゴ、かもしれないですけど」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「…… ……勿論。もし、私が……居なくなってしまったら」
癒し手「ここに居ても、魔王様の城に戻っても」
癒し手「……誰かが、助けてくれる……と、都合良く、甘える気なんですけど」クス
側近「…… ……この場所は、この家は。本当に心地良いんだな?」
癒し手「はい。黒い髪の魔王様のお母様……前后様の『愛』は」
癒し手「私に、苦痛は……与えません」
癒し手「……この、魔石のおかげ、でもあるとは思います、けど」
側近「ならば、良い……此処で、良い。ここに居よう、癒し手」
側近「……期間は、限られるが」
癒し手「はい……あ」
側近「ん?」
癒し手「あ、あの……もう一つだけ、我が儘……言っても、良いでしょうか」
側近「何だ?」
癒し手「……娼婦様の像、戻して差し上げたい、んです」
側近「ああ……そうか。持ってきていたな」
癒し手「はい」
癒し手「……港街の神父様、寂しがってらっしゃる……と思います、し」
側近「……身体は大丈夫なのか?」
癒し手「何があっても、貴方がいますから」
側近「否、それはそうだが……こればっかりは、俺にもどうしようもないだろう」
癒し手「そうですね」クスクス
側近「ほら、何だ……つわり、とかだな」
癒し手「……確かに、船酔いとかは酷い気がします、けど」
側近「…… ……」
癒し手「そんな険しい顔しないでくださいよぅ……」
側近「心配してるんだ」
182 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 22:56:19.28 ID:VzNBr81TP
癒し手「……はい」
癒し手「里帰り……みたい」クスクス
側近「……そうか。暫く、あの教会に滞在していたんだったな」
癒し手「はい。報告も兼ねて……行きたいです」
側近「報告?」
癒し手「……鍛冶師の村の、神父様が父ならば」
癒し手「港街の教会の、女神官様は……母です。私に取っては……」
側近「……そう、か」
癒し手「それ程長い期間であった訳でも、幼かった訳でもありません」
癒し手「でも……」
側近「……ああ。体調の良い日を選んで、行こう」
側近「辛くなれば宿で休めば良い」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「気分はどうだ?」
癒し手「今、ですか? もう大丈夫です」
側近「このまま此処で……と、言いたいが」
側近「今日は、俺の家に戻ろう」
癒し手「……そうですね。流石に、お掃除ぐらいはしないと住めませんね」
側近「葬儀と……戴冠式が終われば」
癒し手「……ええ」
側近「……抱えて行こうか?」
癒し手「え!? だ、大丈夫ですよ!」
側近「遠慮は…… ……」
癒し手「本当に、大丈夫ですって! 違います!」
側近「……そんな必死にならないでくれ。本当に、心配しているんだ」ハァ
癒し手「わかってますけど……病気じゃ無いんですから」
側近「…… ……后も、何れ」
癒し手「…… ……」
183 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:01:40.43 ID:VzNBr81TP
側近「……俺以上に、心配しそうだな、魔王……」
癒し手「……想像に容易いですね」クス
……
………
…………
魔王「ッ くしゅん!」
后「キャッ ……何よ、急に」
魔王「…… ……風邪引いた、かなぁ」グズッ
后「…… ……魔王って、風邪引くの?」
魔王「…… ……だよな」
后「ほら、もっとちゃんと布団を……てか、服着たら?」
魔王「……裸でくっついてる方があったかい」ギュ
后「……もう」クスクス
魔王「大丈夫なのか?」
后「え?」
魔王「いや……さっき、痛いとか……言ってたから」
后「もう平気よ」
魔王「そっか……なら、良いんだけど」
后「そろそろ……なのかな」
魔王「何が?」
后「…… ……」
魔王「后?」
后「……月のモノ、よ。魔に変じても」
后「こう言うのって……変わらない、のね」
魔王「……ご、ごめん。そういえば……先月も言ってたな」
后「…… ……何時、出来るのかしらね」
魔王「大丈夫だよ。心配しなくても」ナデ
后「……随分楽観的ね?」
184 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:10:34.38 ID:VzNBr81TP
魔王「……出来なきゃ、どうにかなるのか?」
后「え?」
魔王「勇者が産まれて……俺の中に残る、光の残照が俺を苦しめる」
魔王「……使用人は、そう言ってた」
后「え、ええ……」
魔王「それは、俺の中に微かに残る光、が」
魔王「……勇者に、移って……」
后「貴方は、完全な……『魔』になるから、だろうって」
后「……そんな仮説、立てたわね」
魔王「母さんが……俺を産んで、回復魔法を使えなくなったり」
魔王「魔力が増したり……『親』の片方だけがそうであるとは思いにくい」
魔王「……俺も。父さんも……『魔王』を倒して時点で」
魔王「『勇者』から『魔王』になったのに、矛盾してるよな」
后「……うん」
魔王「『全き闇』になれば……俺は……」
后「…… ……」ギュッ
魔王「……でも、さ。俺達の間に『勇者』が出来なければ」
魔王「俺は、まだ……俺で居られる。50年でも。100年でも」
后「…… ……」
魔王「……あれ?」
后「え?」
魔王「……俺が、『全き闇』……『魔王』」
后「?」
魔王「なら、『勇者』は……『全き光』なのか?」
后「? え? ……え、っと……?」
魔王「…… ……『光と闇の獣』…… ……」
后「魔王?」
魔王「……ッ」ガバッ
后「キャッ!?」
魔王「悪い、后、先に寝ててくれ!」
后「あ、ちょっと、魔王!」
ダダダッ バタン!
タタタタ…… ……
后「…… ……」ハァ
185 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:16:00.32 ID:VzNBr81TP
キャー! マオウサマ!?
ゴメンシヨウニン、イソイデル!
ナンテカッコウデ!
ギャアアアア!ワスレテタ!
后「……下着ぐらい、着けて行けば良いのに……」ファ
后(まあ、良い…… ……か ……)スゥ
……
………
…………
王「……ご苦労様でした、伯父上」
王「お話しは、以上ですか?」
王子「ああ……夜にでも伝えておく」
王子「変わって礼を言う……ありがとう」
王「……戦士兄様の頼みですから」
王子「では……本題だが。これから……」
王「葬儀の後でも宜しいですか。もう時間が余りありません」
王子「……そうだな」
王「戦士兄様と、僧侶さんも列席されるのでしょう」
王子「ああ」
王「……さっき、チラッとだけですが」
王子「?」
王「……歩きながら、話しましょうか」
王子「あ、ああ……」
スタスタ
王「街は妙なムードだと、騎士の一人が言っていました」
王子「……そう、だな」
王「お父様の訃報を悲しむ声と、僕の……就任を喜ぶ声」
王「……お父様は、良い『王』だったのですね」
王子「……ああ」
186 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:22:22.97 ID:VzNBr81TP
王「…… ……」
王子「……お前は、弟王子の息子だ。聡明だと思うし」
王子「……お前も、良い王になれるよ」
王「…… ……」
王子「『未来』はお前の……お前達『次代』の手で紡ぐモノだ」
王子「……昨日、戦士達とも話したが」
王「…… ……」
王子「言った言葉に嘘は無い。本当だ」
王子「どんな形であれ、俺はお前を支え、守る」
王子「……命に代えても、だ」
王「……そうですね。僕は『王』ですから」
王子「それだけじゃない」
王「…… ……」
王子「弟王子の子……俺の甥だ」
王「…… ……」
王子「最初に聞いた話は、今日……伝えるのか」
王「そのつもり……でした」
王子「でした?」
王「……拗ねていた事は、認めます。ですが……」
王「……騎士達の事を考えると、僕の独断では判断出来ません」
王「でも、貴方は……『それが『王』の考えならば従う』と言って下さった」
王子「…… ……」
王「だから…… ……」
王子「……お前は、素直だねぇ」クス
王「なッ!?」
王子「あ、ああ……御免。子供扱いしてる訳じゃ無いぞ」
王子「……さっきは答え無かったが、お前の問いは当たってるんだよ。半分は」
王「……戦士兄様を、次の騎士団長にするのか、と言う奴ですか」
王子「反対する奴は居ないだろうな。俺の息子でもあるし」
王子「……それ以上に、『魔王を倒した勇者の仲間』だ」
王子「しかも『帰還者』だ。だが…… ……」
187 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:28:01.18 ID:VzNBr81TP
王子「…… ……」
王子(まさか、あいつは魔に変じたから無理だ、等とは……言えない、が)ハァ
王「……つなぎ止めてはおけない、んですね」
王「戦士兄様は……もう、家庭もあるし」
王子「……そういう問題じゃ無いさ。勿論、あいつの意思もあるけど」
王子「そう、だな……」ハァ
王「伯父上?」
王子「継いで欲しい、ってのは親のエゴだ」
王子「……強制的に『王』を押しつけられたお前に言う言葉じゃないけどな」
王「……否、それは……」
王子「自由に、生きたい道を選んで欲しい、ってのもある」
王子「……あいつが勇者様について行きたいだろうと思って」
王子「旅立つ前に、あいつが望んだ……騎士団への入団を拒み続けた事を」
王子「思い出したよ」
王「……え?」
王子「あいつが入団したって、勇者様について行けない訳じゃない」
王子「だけど……正直、俺は」
王子「金の髪の勇者について行きたかった。共に旅をしたかった」
王子「入団してしまえば…… ……」
王「…… ……」
王子「『俺の血』は、それを諦めざるを得なかった」
王「……でも、それこそ」
王「『願えば叶った』んじゃないんですか?」
王子「…… ……」
王「……違う、んですか?」
188 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:34:17.94 ID:VzNBr81TP
王子「……『勇者』に選ばれなければ、どうすることも出来ない」
王子「あいつは俺を選ばなかった。俺は、選ばれなかった」
王子「結果として、これで良かったんだと思ったが」
王子「……戦士の足枷には、してやりたくなかったんだ」
王「……『勇者』に、『運命』選ばれていれば」
王「戦士兄様の立場は、どうあれ……」
王子「うん。まあな。確かにそうなんだ。でも」
王子「……一緒だよ。これで良かった、と思ってる」
王子「色々……な。こう……でっかい出来事……なんだろうな」
王子「吃驚して、信じられない様な事実、ってのは」
王子「……受け入れるまでに、時間が掛かるんだよ」
王「伯父上……?」
王子(戦士……お前が、魔に変じたことも)
王子(勇者と魔王の絡繰りも……何れ)
王子(……受け入れられる時がくれば……良い、けど)ハァ
王「…… ……」
王子「……即答は出来なかったが」
王「…… ……」
王子「お前の提案の方向で、話を進めていこう」
王子「……取りあえず、俺の引退は限りなく不可能になった、てのは」
王子「受け入れたよ」ハハ
王「……申し訳ありません」
王子「謝る事じゃ無い。『王』の決めた事……思う方向へと」
王子「進んでいこうしているんだ」
王「…… ……」
王子「勿論、問題点の解決と、妥協点の発見は必要だぞ?」
王子「多少の無茶もな」
王「……はい」
王子「魔導国……書の街との確執も、漸く終わりが見えた」
王子「……なら、確かに……いらないかもしれないよな」
王子「『騎士団』なんて、さ」
王「…… ……」
189 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:41:23.63 ID:VzNBr81TP
王子「俺が最後の『騎士団長』だ」
王子「……たった二代、だ。だが」
王子「こんなに早く、騎士団を解体しても良いだろうって意見を出せたこと」
王子「……その事実に……『俺達は喜ばなくちゃいけない』んだ、王」
王「…… ……」
王子「自信を持て。形が変わっても」
王子「……示す言葉が変わっても、俺は……死ぬまでお前を守る」
王「伯父上……」
王子「……弟王子も喜ぶよ。あいつも……」
王子「本当ならば、争いなんて望んで居なかったはずだ」
王「…… ……」
王子「弟王子の息子として。新たなる『王』として」
王子「……誰もが見たいと望んだ、平和で美しい世界を作って下さい、王様」
王「……ッ はい!」
王「…… ……あ」
王子「ん?」
王「そういえば……剣士さんは?」
王子「……旅に出たよ。夜半にな」
王「え!?」
王子「あいつも……『次代』を担う一人、なのさ」
王「……え?」
王(剣士さんが……? 確かに、戦士兄様と同じ年ぐらいに見える、けど)
王(……まあ、良いか……? 彼が居れば……やりにくいのは確か、だ)
王(……これから、時代は変わる。変えてみせる……!)
王(誰にも文句なんか、言われない様に……美しい世界に!)
王(……伯父上には、まだ話していないけど)
王(反対……されるかな、否……)
王(僕は、『王』だ。僕が、王だ!)
王(……ッ 大丈夫だ。自信を……持て、と伯父上も言った)
王(だから……!)
王子「王?」
王「あ、いえ……行きましょう。もう、始まってしまいますね」
190 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/17(日) 23:43:41.80 ID:VzNBr81TP
寝ます!
おやすみ
192 :
名も無き被検体774号+:2013/11/18(月) 02:14:41.85 ID:G33MKuC00
使用人ちゃんには男難の相が出てますね
おはよー
BBA今日もガンバってね
保守するだよ
保守!
196 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/18(月) 23:38:07.60 ID:EHzLQMAkP
うぁー。疲れたー( ゚д゚)
今日は無理かも( ゚д゚)
…サンドマンが眠りの粉を貴女と幼女の瞼に
おやすみスコーン&幼女……
BBAおはよ〜(´・д・`)
199 :
名も無き被検体774号+:2013/11/19(火) 09:48:59.55 ID:nsXjkQkMi
ほしゅ
お疲れ様ー
ご飯前に保守!
202 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 22:52:12.37 ID:QXpu3lTZP
……
………
…………
船長「……何つった、今?」
チビ「…… ……俺、此処で暮らしたい、って言った」
男「…… ……」
爺「……おい、男」
男「何だよ、親父」
爺「何であんな……険悪なムードなんだ、あいつらは」
男「…… ……ま、色々あってな」
船長「……本気、か?」
チビ「冗談でこんな事口にしないよ!」
爺「補給したいって降りてきた時から船長は険しい顔してるし」
爺「愛しの孫も、同じ様な顔してるし……」
男「だから目に見えて項垂れるなって!気色悪い……」
爺「お前な、親に向かって言う事か!それが!」
男「歳を考えろって何時も言ってんだろうが!」
船長「降りて……どうするんだ」
チビ「……じいちゃんがいるじゃん」
船長「そうじゃネェだろ」
チビ「…… ……」
船長「…… ……」
爺「…… ……」
男「…… ……」
チビ「俺は…… ……」
船長「…… ……何だよ」
お疲れスコーン
力尽きる前に寝るんだぞ
保守は任せろ
204 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:11:05.56 ID:QXpu3lTZP
チビ「……母さんの事は尊敬してるよ」
チビ「立派な『船長』だと思ってる。でも…… ……」
船長「…… ……」
チビ「…… ……」
船長「……船を下りて、後悔ないんだな」
チビ「……はい」
船長「軽い返事をするな。お前が、次の船長になる保証はネェっつってんだ」
チビ「……ッ わ、わかってるよ!」
船長「もう一回聞く。良いんだな?」
チビ「……ああ!」
爺「ち、チビ……」オロオロ
男「親父がオロオロしてどうすんだよ……」
爺「だ、だってなぁ!?」
スタスタ
船長「……義父さん」
爺「お、おう!」
船長「……悪いが、あいつの面倒見てやってくれネェか」
船長「アタシ達は此処で補給を済ませたら、ウロウロする予定だ」
船長「……現実的に、今安定して補給やら何やら、済ませられるのは」
船長「この村しか無い。だから……」
爺「……こっそりでも良い。様子を見るってのを止めやしない」
船長「…… ……ありがとうございます」ペコ
チビ「…… ……」
男「……」チラ、ハァ
スタスタ
205 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:11:45.71 ID:QXpu3lTZP
>>203 ありがとう!
大丈夫だよー!
もう少しだけ
206 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:22:35.75 ID:QXpu3lTZP
男「チビ」
チビ「父さん……」
男「……じいちゃんに、あんま我が儘いうなよ」
チビ「そ、そんな子供じゃないよ!」
男「……良いんだな?」
チビ「……うん」
男「……そうか」クシャ
チビ「わ、ちょっと……ッ だから、子供じゃないって……!」
男「……俺は、船長と行くぞ」
チビ「…… ……うん」
男「じいちゃん、頼むぞ」
チビ「…… ……」コクン
男「泣くな。男だろ」
チビ「泣いてない!」
男「そうだな。自分で決めた事だもんな」
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「……父さん」
男「ん?」
チビ「……俺、色々知りたいんだ」
男「そうだな。海の上に居るだけが『世界』じゃネェからな」
チビ「……それでも、海に戻りたくなったら」
男「…… ……」
チビ「自分の力で、どうにかする」
男「……頼もしいこった」
チビ「……本気だよ!」
男「信じてるって」ギュッ
チビ「わっ …… ……ッ」
男「……補給も済んだだろう。母さんの事だ。もう、出るって言うぞ」
チビ「……俺、じいちゃんの家に行く」
男「……チビ」
チビ「……身体に、気をつけてね。二人とも」
タタタタ……
207 :
名も無き被検体774号+:2013/11/19(火) 23:23:31.26 ID:+O+mpasni
新しい風や…
208 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:26:09.06 ID:QXpu3lTZP
爺「お、おい、チビ!?」
船長「……放っておけ」
爺「良いのか? 本当に……」
男「言い出したら引っ込み着かないのは、母親似だろ」
船長「……チビ、なんか言ってたか?」
男「『身体に気をつけて』だってよ」
爺「優しい子だなぁ……」
船長「……行くぞ」クルッ
爺「おい、船長?」
スタスタ
男「言っただろ。引っ込みつかねぇんだって」
爺「しかし…… ……」
男「親父も、元気で居ろよ。補給ついでに、金は届ける」
爺「……んなもんいらネェよ」
男「妙なガラクタの方が良いって言うなよ」ハハ
爺「阿呆!」
スタスタ
爺「……全く」フゥ
爺「何があったんだかしらんが……難儀な奴らだな」
スタスタ…… ……
爺「……チビ?」
チビ「じいちゃん……ごめんな」
爺「何を。お前と暮らせるなんて、夢みたいだよ」
209 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:34:34.34 ID:QXpu3lTZP
チビ「……俺、母さんが嫌いとかじゃ無いんだよ」
爺「解ってるよ」
チビ「色々教えてよ、じいちゃん」
爺「おう! 骨董品の事なら任せとけ!」
チビ「え、あ……うん、そのほかの事もね?」
チビ「……『世界』の事とか、さ」
爺「『世界』か……難しいな」
チビ「難しい?」
爺「じいちゃんが生きてきた『世界』と今からお前が生きていく『世界』とは」
爺「……違うからな。勿論、『過去』を知る事は悪い事じゃ無いが」
爺「『未来』の方が大事だと、じいちゃんは思ってる」
チビ「…… ……」
爺「……お前は、殆ど海の上しかしらんだろう」
爺「陸の上の『過去』は話でしか得れんが、これからチビが」
爺「生きていく『未来』の陸の上での話は……決して、綺麗な物ばかりじゃ無い」
爺「……ああ、勿論、それは『過去』も同じだがな」
チビ「……うん。母さん達はちゃんと話してはくれなかったけど」
チビ「戦争とかがあったんだろう」
爺「……陸の上、とは言ってもな」
爺「ここは、名も無い様な小さな村の、小さな島に過ぎん」
爺「定期便なんつーもんも、ない」
爺「……じいちゃんはな。此処だけをお前の『陸の上』に」
爺「『世界』にして欲しくないと思うよ」
チビ「…… ……」
爺「大陸に渡ろうと思えば、船が居る」
爺「海を渡る、必要がある……その先には、『未来』がある。チビ」
チビ「…… ……」
爺「ま、良い……取りあえず、暫くはのんびりしよう、な?」
チビ「……うん」
210 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/19(火) 23:41:57.96 ID:QXpu3lTZP
限界(・△・)ねますーぅ
お疲れ〜
*゚゚・*+。
| ゚*。
。∩∧∧ *
+ (・ω・`) *+゚
*。ヽ つ*゚*
゙・+。*・゚⊃ +゚
☆ ∪ 。*゚
゙・+。*・゚
おやすみスコーン&幼女
BBAおはよ〜(´・д・`)
213 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 09:11:48.41 ID:OQGgYuc2P
おはよう!
お迎えまで!
214 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 09:35:20.05 ID:OQGgYuc2P
爺「んじゃま、片付けでも手伝って貰うかな」
チビ「また増えたの!?」
爺「死ぬまで収集はやめんぞ、じいちゃんは!」
チビ「いや、それは良いんだけど……」
チビ(じいちゃんの審美眼、怪しいからなぁ……)ハァ
爺「そうそう。この間土産で貰った奴、見せてやりたかったんだよ」
チビ「う、うん……行こうか、手伝うよ」
チビ(『世界』か……母さんに、ああいったけど)
チビ(俺も、いつか……!)
……
………
…………
少女「そうですか、始まりの国の国王の葬儀は無事に終わったんですね」
秘書「はい。それで……どうします?」
少女「……書簡の続き、ね」
秘書「『戴冠式へのご招待』か……立場としては、拒否できないけど……」
秘書「これではまるで、恋文だ! 頭がおかしいんじゃ無いか、あの新王……!」
少女「…… ……」
少女(『母の趣味である庭いじりが功を奏して、可憐な花が咲き誇っております』)ペラ
少女(『城の案内を兼ねて、貴女にも見せたい。堅苦しい儀式もありますが』)
少女(『そこで共に、貴女とのんびりと過ごせることを願っております』)ペラ
秘書「全く、どういうつもりなのか!」
少女「……返事を、出して置いて頂戴」
秘書「あ、はい……どうするんです? 少女様」
少女「……領主様達が住んでいた一角は、騎士団達の手に寄って」
少女「綺麗に……なりました。街に残った人達が今の所住むには困らないし」
少女「……店を構える人達も、一般区画に住んでいた人達は」
少女「何も……変わらない生活をしてる」
秘書「少女様?」
215 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 09:45:15.21 ID:OQGgYuc2P
少女「……寧ろ、以前より……のびのびと」
秘書「信じられません!あいつら……ッ」
秘書「私にまで、普通に接するんですよ! こんな、こんな屈辱……ッ」
少女「やめなさいと言った筈よ。もう……此処は魔導国では無いんだから」
秘書「……私、驚いているんですよ」
少女「え?」
秘書「少女様なら、機会をうかがって……何時か、反撃の手立てを」
秘書「整えるんだと思ってました」
少女「…… ……」
秘書「貴女があの時、私達貴族階級の者達に、それの廃止を伝えた時」
秘書「来るべきその時まで、我慢して下さいって、言ってくれると……!!」
少女「……そうして、貴方達は権威を笠に着て」
秘書「!?」
少女「『代表者』に全てを押しつけて、自分達は何もせず、のほほんと」
少女「弱きを見下す事だけを生き甲斐にするつもりだったの?」
秘書「少女様!?」
少女「……受け入れて下さい。私達は……私達の命の差違などもう……」
少女「否。本当は、最初からそんなモノ、存在しなかったのよ」
秘書「…… ……ッ」
少女「奴隷扱いをされている訳では無いでしょう?」
秘書「何が違うんです!? 以前のあの、当たり前の暮らしを阻害され……!」
少女「……それが、異常だったと知りなさい、と言っているの」
秘書「……貴女は、それで納得出来るのですか?」
秘書「貴女は、受け入れたとおっしゃるの? 少女様!」
少女「…… ……」
秘書「嘘です。貴女だって、以前の暮らしを取り戻したいと、どこかでは願っている筈だ!」
秘書「私達は、選ばれた……ッ」
少女「『選ばれた特別な民』など存在しないのよ!もう!」
秘書「…… ……」
少女「……幻想を捨てねば、生きてはいけないの。もう」
秘書「…… ……」
216 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 09:52:05.26 ID:OQGgYuc2P
少女「……返事を書くわ。騎士を呼んで頂戴」
秘書「私が届けますが」
少女「直接渡す、と言う約束よ」
秘書「…… ……」
少女「…… ……」ガサゴソ
秘書「……失礼します!」
スタスタ、バタン!
少女「!」ビクッ
少女「…… ……」ハァ
少女(……手が、震えてる。これじゃ書けないわ)
少女(私だって、私だって……ッ こんな、生活……ッ)
少女(だけど……ッ 嫌々従っている訳じゃない)
少女(居心地が良いとは、死んでも思えない。だけど)
少女(……これを徹底しないと。『旧貴族』の思いを全て、受け止めてしまったら)
少女(それを許してしまったら……ッ)
少女(……『出来損ない』と言われていた人達の、反乱が起きたら……!)
少女(私に、それを止める術は無い。騎士達が見回りに立ってくれているとは言え)
少女(絶対、は無い……!)
少女(……人を、纏めるなんて、私には無理……!)
少女(返事……書かなきゃ)カリ
少女(美しい庭で、新王と…… ……)カキカキ
少女(……素敵でしょうね。以前の、お父様やお母様達との)
少女(ガーデンパーティの様な…… ……)
少女(……心が、踊ってしまうのは否めない。だけど)
少女(これも、私の心を懐柔する為の、新王とやらの)
少女(策なのかもしれない……油断は、禁物)
コンコン
少女「は、はい!」
217 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:02:55.14 ID:OQGgYuc2P
騎士「少女さん、騎士です。入っても宜しいですか?」
少女「あ……はい。どうぞ」
カチャ
騎士「失礼致します」
少女「……丁度、お返事を書き終えたところです」
騎士「ああ、良かった……では、お預かりします。すぐに船で届けさせますので」
少女「……あの。新王、と言うのはどう言う方なのです?」
騎士「国王様の息子様です……若いけれど、お優しくて」
騎士「そうですね……しっかりようと頑張っている、方ですよ」
少女「……そう、ですか」
騎士「不安はご尤もです」
少女「いえ……あの。お会いできるのを、楽しみにしてると」
少女「伝えて置いて下さい」
騎士「はい。では確かにお預かりします。では」
カチャ、パタン
少女「…… ……」フゥ
ガチャ
少女「!?」
秘書「……行かれるのですか」
少女「……無視は出来ませんよ。一度訪ねて欲しい、とも」
少女「言われていたしね」
秘書「命令に素直に従って……貴女にはプライドは無いのか!?」
少女「……戴冠式を祝いに行くのに、プライドは必要なの?」
秘書「そうじゃ無い!」
少女「じゃあ、何だと言うの」
秘書「……自分の保身ばかり考えて居るのは、貴女の方では無いのか!?」
少女「!」
秘書「見た事も無いだろう新王に、気に入られれば」
秘書「……安泰だろうよ。貴女の身はな!」
少女「どう言う意味です!」
218 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:23:37.47 ID:OQGgYuc2P
秘書「その侭だ! あんな恋文紛いの書簡に」
秘書「素直に従う意の返答を返したのだろう……それがどう言う事だか」
秘書「解らない程、子供でもあるまい!」
少女「……な、にを言って……ッ」
秘書「貴女と新王が密通でもすれば、確かに街は安泰だろう。援助も受けれるだろう」
秘書「貴女は言葉上、それを街の為と謀るだろう」
少女「謀るですって!? そんな……!」
秘書「そうしないという保証が何処にある!? 我らには我慢だけを強いて」
秘書「貴女だけ甘い汁を吸う事等許されないぞ!」
少女「……ッ 落ち着きなさい。相手は、会ったことも無い人です」
少女「それなのに、恋文である筈などないで……」
秘書「本気で言っているのか!?」
少女「!?」
秘書「『出来損ない達』が……」
少女「その言葉は使うなと言った筈です!」
秘書「……彼らが、何をされてきたのか、知らない筈は無いだろう!」
秘書「同じ事である可能性を何故、否定出来るんだ!」
少女「…… ……ッ」
秘書「魔導国の国民だと言うプライドを捨てられる程、甘美な誘惑だったのか!」
少女「……ここはもう、書の街です。魔導国でも、魔導の街でも無いんです!」
少女「貴女も見たでしょう、目を通したでしょう、書簡の全てに」
少女「それとも、私がもう一通、隠しているとでも思っているのですか!?」
秘書「……それが正しくないと誰が保証してくれる?」
少女「…… ……わかりました。秘書業務は他の方にしてもらいましょう」
秘書「な……ッ 都合が悪くなれば、首をすげ替えると言うのか!」
少女「街の基盤を整える力になってくれると思ってお願いしたのです」
少女「そんな下らない事ばかり考えるのならば、いりません」
秘書「横暴だ!」
少女「……当然の措置と知りなさい!双子の姉だからと特別扱いをした覚えは無いと」
少女「何度も言ったはずです!」
秘書「……双子の妹であればこそ、不幸から庇ってやろうと思っていたのに」
秘書「何だ、その言いぐさは!」
秘書「……あの時、お前を代表者に立てた事が間違えて居た様だ」クルッ
少女「……騎士団長とは言え、『出来損ないの言葉等聞きたくない』と」
少女「言ったのは貴女です、お姉さま……その役割を最終的に」
少女「無理矢理、私に押しつけたのもね!」
219 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:33:34.63 ID:OQGgYuc2P
秘書「……似合いの役割だと推薦してやったんだ」
秘書「双子だと言え、雷の加護を持たなかったお前を」
秘書「これまで庇ってきてやったのは誰だと思ってるんだ!」
少女「……優れた加護を持つことに代わりは無い」
秘書「雷は『至高』なのだ。お前と、私は違う」
少女「……気がついては居ましたよ。貴女が、心の中で私を見下していた事には」
少女「貴女は私を庇い、守り、世話を焼くことで、優越感に浸っていただけです」
少女「……分け隔て無く育てて下さった両親には感謝すべきなのでしょうね」
秘書「……何時までも夢を見ているが良い。その両親も」
秘書「あの騒ぎに紛れて逃げ出したのだ……私を切れば」
秘書「お前を助けてくれる者等居ない……それとも」
秘書「『出来損ない』共に泣きつくか? ……とんだ『代表者』だ!」
スタスタ、バタン!
少女「…… ……ッ」
少女「…… ……」
少女(どうして……私、ばかり。こんな目に……ッ)
少女(……慰み者か。成る程……考えられない事では無いわね)
少女(戴冠式は……一週間後。姉は……何か、企むだろうか)
少女(同じ顔をしていても、瞳の色が違う)
少女(……騎士団長が迎えに来てくれるのであれば、姉がすり替わろうとしても)
少女(彼ならば気付いてくれるだろう……だが)
少女(……そうで、なければ……ッ)
少女「誰……ッ」ハッ
少女(『私を切れば、お前を助けてくれる者等居ない』)
少女(…… ……)
220 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:41:23.97 ID:OQGgYuc2P
少女(……『旧貴族』達は、私より姉の言葉に従うだろう)
少女(誰も……頼れない……ッ)
カタン、スタスタ……パタン
……
………
…………
騎士「急いで荷を運び込め! 船が出るぞ……ん?」
パタパタパタ
秘書「騎士様!」
騎士「ああ……ええ、と。少女さん、ですか?」
秘書「はい……あの!」ハァハァ
騎士「ああ、落ち着いて……どうしました」
秘書「……早急に、始まりの国の新しい王様に、申し上げたい事があります」
秘書「すでにこのく……街の、秘書には伝えて参りましたので」
秘書「私も、一緒に乗せていって貰えませんか?」
騎士「え?」
秘書「……『旧貴族』達が、良からぬ事を企んでいるみたいなんです」
秘書「その……さっき、私も……誰かに、急に……ッ」ポロポロ
騎士「……ッ」
秘書「お願いします、助けて下さい!」
騎士「し、しかし、秘書さんは貴女のボディーガードも兼ねられているんでしょう?」
秘書「……ッ で、でも、ああ! そうだわ!」
秘書「……ッ 秘書も、仲間なのかも……ッ」
騎士「そ、それは……ッ」
秘書「お願い、助けて……ッ」
シュッコウスルゾー!
騎士「! ……わ、解りました! とにかく、早く!」グイッ
秘書「は、はい……!」
秘書(……上手く行った)ニヤ
秘書(少女にああは言ったが……まさか、慰み者に、等)
秘書(……あの国王の息子であれば、まあ考えないだろう)
221 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:51:30.32 ID:OQGgYuc2P
秘書(屈辱的ではあるが、それが本心であったとしても……相手は『王』だ)
秘書(……悪いな、妹よ)
秘書(初対面であれば、誰も疑うまい。騎士と少女が面会する時)
秘書(……席を外せと言われていたことも功を奏した)
秘書(隙あらば、母親様も救い出さねばならん)
秘書(……『書の街』等、認めない……ッ 我ら魔導国の民は)
秘書(選ばれた者なのだ……!)
ボーゥ…… …… ……
バタバタバタ……ッ
少女「あ…… ……」
新米騎士「ん? ……え!? あれ、今……!?」
新米騎士「……否、瞳の色が違うな……少女さんの姉妹か何か?」
少女「! ……『少女』と名乗る者が、来た……のですね?」
新米騎士「…… ……」
新米騎士(『旧貴族』『秘書』……しかし)
新米騎士(……怪しいな)
少女「…… ……」キョロ
少女(居ない……まさか、船に……ッ!?)
少女「……騎士団長様に、お会いになりますか」
新米騎士「……騎士団長様に何の用があるんだ?」
少女「問うてみて下さい。『少女の瞳は何色だったか』」
新米騎士「……お前、何を……」
少女「それだけです。失礼します」
タタタ……
少年「こんな所にいたんですね『秘書様』」
少女「! お前……ッ」
少年「……さあ、皆が待ってますよ」ニヤッ
少女「!」
少女(お姉さま……ッ)
新米騎士「おい、ちょっと待て……『秘書』と言ったな」
222 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/20(水) 10:53:44.08 ID:OQGgYuc2P
おむかえ!
223 :
名も無き被検体774号+:2013/11/20(水) 13:54:17.83 ID:sXibZhJ60
あわわわわ
保守
225 :
名も無き被検体774号+:2013/11/21(木) 01:14:22.28 ID:qm9F0++X0
ほしゅだー
いつもワクワクしながら楽しんでます。始めから読んでやっと追いついた。このスレの過去スレまとめてくれた住人に感謝します。
私もBBA だが敬意を込めて...スコーンBBA 楽しみに待ってる...保守w
ほしゅー
228 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 09:25:51.44 ID:0rx8iDcjP
おはよう!
お出かけするまですこしだけー
おはよー
双子だったのか!
230 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 09:38:27.51 ID:0rx8iDcjP
少女「わ、私は……」
少年「そうです。何か?」
新米騎士「…… ……君、名は?」
少年「僕は少年と申します」
少女「違います、私は……ッ」
新米騎士「少年君、申し訳無いがこの『秘書』さんはここに残って貰う」
新米騎士「……良いね?」
少女「…… ……ッ」
少女(このまま、少年に連れ去られるよりも……)
少女(……この騎士の傍に居る方が、今は安全か……ッ)
少年「……『秘書』さん?」
少女「解りました」
少年「!? ……なッ」
少女「……?」
新米騎士「……こちらへ」グイッ
少女(痛い……ッ)
新米騎士「少年君。君は戻りなさい」
少年「で、でも……皆が、秘書さんを探して居られて」
新米騎士「……すぐに戻って貰うから、大丈夫だよ」
新米騎士「手荒なことはしないと約束する」
少年「……急ぎの案件があるのですが」
少女「……私は大丈夫です。戻りなさい、少年」
少年「……」キッ
少女「始まりの国との戦争は終わったのです。手荒に扱われる理由はありません」
スタスタ
衛生師「新米騎士? 何を……」
新米騎士「あ、衛生師様!」
衛生師「……何か、もめ事?」
新米騎士「……いえ、あの……ちょっと……」
231 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 09:45:15.54 ID:0rx8iDcjP
新米騎士「……此処で待っていて下さいよ。衛生師殿、此方へ」
衛生師「……?」
スタスタ
少年「無駄な事を。もう……『少女』様は船に乗られた」ボソ
少女「!」
少年「貴女は、大人しく僕たちと戻れば良いんです」
少女「……貴方の命令に従う義務などありません」
少年「……本当に、魔導国の民というプライドをお捨てになられたようで」
少年「所詮、雷の加護を持たない者等、その程度か!」
少年「大人しくしている方が身の為ですよ」
少女「……ええ。ですから大人しく、あの騎士の言葉に従うのですよ」
少年「……我らより、あの『出来損ない』を取ると!?」
少女「黙りなさい!」
少年「!」ビクッ
少女「……私達は、『書の街』の住人なのです」
少女「私を『代表者』に仕立て上げたのは、間違い無く貴方達でしょう!?」
少年「……代表者は『少女』様だ!お前では……ッ」
スタスタ
衛生師「……ええと、『秘書』さん?」
少女「…… ……」
少年「すみません、秘書様を連れて戻っても良いでしょうか?」
少年「ちょっと、急ぎの用事が……」
衛生師「君は新米騎士に送っていって貰ってね、少年君」
少年「え?」
衛生師「秘書さんには聞きたい事がある」
少女「…… ……」
232 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 09:54:10.49 ID:0rx8iDcjP
少年「あ、貴方達は僕たちに何も命令しないと言った筈だろう?」
衛生師「うん、僕たちの仕事は『書の街』の治安を守る事だからね」
衛生師「……で、さっき『少女』さんってのが、助けて欲しいって」
少女「え!?」
衛生師「あれ? 秘書さんはその話を少女さんに聞いてるんじゃないのかな?」
衛生師「……『旧貴族達』が何か企んでて、自分の身が危ないから」
衛生師「保護して欲しいって言ってたって聞いてるよ」
少年「……なッ!?」
少女(お姉さま、なんて事を……! 否……)
少女(……寧ろ、好都合だ。騎士団長は私を知っている!)
少女(助かる……かも、しれない……!)
少女「私は、貴方と行きます……衛生師、さん?」
衛生師「うん。助かります……で、少年君は」
衛生師「新米騎士『達』と戻ってね」
少年「達……?」
新米騎士「暴動を起こされては、一人では手に余りますからね」
新米騎士「……もう少し、待ってて下さいね」
少年「…… ……ッ」
ダダ……ッ
新米騎士「あ……ッ 待て……ッ」
衛生師「良い良い……放っておきなさい」
衛生師「……秘書さん」
少女「……わ、私は秘書ではありません」
衛生師「あれ? でもさっき、少年君は君の事をそう読んだんでしょう?」
少女「私は……少女です」
衛生師「……『少女』は船に乗って……」
少女「あれが秘書です! あれは……私の双子の姉です!」
233 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 10:03:42.58 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……ほう」
新米騎士「……見え透いた嘘を吐くと……」
少女「嘘じゃありません! ……言った筈です、騎士団長様に問うて欲しいと」
衛生師「ん?」
新米騎士「……いえ、何でも、少女の瞳の色は何色だったか、と」
新米騎士「聞け、とか……」
衛生師「……ふむ」
少女「私は、この……『書の街』の代表者です」
少女「今更……貴方達を、始まりの国を謀ってどうなるんです!」
衛生師「……額面通りに鵜呑みにはできないよ?」
少女「!」
衛生師「『少女』も『秘書』も、『旧貴族』達も……街の人も、皆ね」
少女「…… ……」
衛生師「ただ、それは『まず疑う』であって、『信じない』訳じゃ無い」
衛生師「即断はしない、ってだけ……まあ、解ってくれとは言わないけど」
衛生師「僕たちは騎士団長様から、そうやって接しろって言われてるしね」
少女「……いえ。それは……理解、できます」
衛生師「うん。まあ……話を聞かせて貰う事はできる、よね?」
少女「はい……あの」
衛生師「ん?」
少女「……保護を、お願いする事はできますか」
衛生師「自分から監視を願うの?」
少女「はい」
衛生師「……手隙が僕しか居ないから、僕で良ければ」
少女「勿論です」
新米騎士「……衛生師殿、少年の方はどうしますか」
衛生師「……あの子は、『旧貴族』って奴?」
少女「そうです。私を始め…… ……あ」
新米騎士「え?」
少女「……私が少女、で船に乗ったのが秘書だと言う前提で」
少女「お話しさせて貰います」
234 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 10:12:30.41 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……うん。一応、その前提で聞くよ」
衛生師「その前に。新米騎士君、今日の出来事、騎士団長様に報告ね」
新米騎士「あ、はい……でも、船はさっき出ちゃいました……けど」
衛生師「数刻後に来るって聞いてるよ」
衛生師「……騎士団長様が、少女を迎えにね」
少女「え!?」
衛生師「もう始まりの国を発ってるはずだ」
少女「そ……んな!?」
新米騎士「何か、不都合でもあるのかい?」
少女「……新王と私は、面識がありません!」
少女「新王が、秘書が私だと信じてしまったら……!!」
衛生師「…… ……君の身の潔白、って言ったらおかしいけど」
衛生師「それは、騎士団長様が来れば晴れるんだろ?」
少女「そ、それは勿論です! でも……ッ」
新米騎士「……なんか、言ってること無茶苦茶だな」
少女「姉は……ッ 私に成り代わるつもりなんです!」
少女「私だけ、甘い汁を吸うつもりかと……ッ」
衛生師「……ふむ」
新米騎士「……あ、あの?」
衛生師「とにかく、君は騎士団長様を此処で迎えて。新米騎士君」
衛生師「……貴女は、こっちへ、秘書さん」
少女「私は『少女』です!」
衛生師「…… ……」ハァ
少女(混乱させる名目だと思われても仕方無いけど……ッ)
少女(でも、騎士団長に会えれば……ッ 否!)
少女(新王と、姉が会ってしまったら、手遅れに……!)
少女(お姉さま、本当に……ッ何と言う事を言ってくれたの!)
少女(……あの人は、自分の事しか考えて居ない!)
少女(辻褄が合わず、この街に残された私……否)
少女(住民の事も、『旧貴族』達さえも)
少女(都合良く使えさえすれば、良いと言うのか……!)
235 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 10:25:59.76 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……で、『旧貴族達』ってのは、何を企んでるの」
少女「……解りません」
新米騎士「……アンタが代表者だとするなら、何でアンタが知らないんだよ」
少女「……旧貴族達の『至高』は雷の加護だからです」
衛生師「…… ……君は、紅い瞳をしてる」
少女「はい。代表者を決める時、誰も……その」
衛生師「進んでやりたがる者は居なかった?」
少女「はい」
衛生師「……何故? 何となく納得いかないんだよね」
衛生師「『トップ』になる訳でしょ。暫定であれ」
少女「……言葉通りに告げさせて貰えば『出来損ない達と話す言葉は持ち合わせていない』」
新米騎士「な……ッ」
衛生師「ああ、成る程……君が……否。『少女』が代表者に立ったのは」
衛生師「年長者だからだと聞いてるけど」
少女「……はい。私と、姉の秘書が年長者でした。私達は双子なので」
衛生師「……で、君に……ああ『少女』になった理由は?」
少女「私が雷の加護を持たないからです」
衛生師「んー。やっぱりおかしく無い? 本来ならば……雷の加護が至高だと言うなら」
衛生師「そっちを『代表者』にするでしょう……ああ、っと」
衛生師「ほら、新米騎士君。君は行った行った」
新米騎士「あ……は、はい」
衛生師「……外は寒いでしょ。取りあえずアッチに、騎士団員の簡易詰め所が」
衛生師「あるから、そっちに行きましょ」
少女「此処では、駄目ですか」
衛生師「え?」
少女「……疑う訳じゃ無いですけど」
衛生師「……否。最初に、ね。そういう話をしたのは僕だからね」
衛生師「君は、僕も『旧貴族達』と通じてないとは判断出来ない、訳だね」
新米騎士「な! 失礼な事を……!」
衛生師「否、結構な事だ。良い判断だと思う」
少女「……詰め所は安全だと思います、けど」
衛生師「話を聞く為に二人きりになるのは避けたい?」
少女「…… ……すみません」
衛生師「良いよ。此処なら船が来るのも見えるし」
衛生師「……その代わり、君も『書の街の目』に晒され続けるよ?」
236 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 10:32:26.59 ID:0rx8iDcjP
少女「……構いません」
衛生師「ふむ。じゃあ、新米騎士君にも立ち会って貰いましょ」
衛生師「良い?」
新米騎士「じ、自分で良ければ勿論です!」
少女「……ありがとうございます」
衛生師「まあ、じゃあ……せめて通行人の邪魔にならない隅っこに移動しよう」
スタスタ
衛生師「……で、続きは? 何で炎の加護の『少女』が代表者になった?」
少女「押しつけられたからです。姉は後ろから操るつもりだったのか」
少女「単純に厭だったのか……」
衛生師「ふむ」
少女「……なので、姉を補佐役にしました。……願い出てくれましたから」
新米騎士「……それが、秘書?」
少女「はい」
衛生師「『秘書』は茶の瞳をしてるんだね? 騎士団長様とあった事は?」
少女「ありません。断固拒否されていましたから」
衛生師「……で、さっきの『助けて!』にどう繋がるの」
少女「……新王からの書簡に目を通し、戴冠式のお誘いをお受けしました」
少女「その事に……姉は、自分だけ王の庇護を受けるつもりかと」
新米騎士「は!?」
237 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 10:34:41.64 ID:0rx8iDcjP
おでかけー!
もどったらまた!
238 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:27:34.57 ID:0rx8iDcjP
少女「……私だけはそうでは無いと言うつもりはありません。でも」
少女「姉……否、あの人達……かもしれませんが」
少女「『王に手込めにされたらどうするのだ』と言う、意味の事を……」
新米騎士「無礼な……!」
衛生師「まあ、待って待って……心配してくれてる、んじゃ無くて?」
少女「どうでしょうね。結局、姉の中では、被支配者への処遇というのは……」
少女「……あえて、使わせて頂きますが、今まで、私達が」
少女「……『出来損ない』達にしてきた事に置き換えるしか出来ないのでしょう」
衛生師「…… ……」
少女「だけど、それが私の身に起こりうるかも知れないと言うのは」
少女「『心配』では無く、私だけがいい目を見る、と言う事に置き換わる様です」
少女「形は何であれ、庇護……それを私は、街の為だと姉たちを謀るつもりだろうと」
衛生師「……矛盾してるな。君達が……あー。『出来損ない』だと蔑んできた人達に」
衛生師「押しつけてきた事は『奴隷』って言う状態だろう?」
少女「王は、そんな扱いをする訳じゃ無いとどこかでは解って居るのかも知れません」
少女「私を接触させない為に……私だけに甘い汁を吸わせない為に」
少女「説得、と言うか……言いくるめようとしたのかもしれません、が」
衛生師「うーん……詰めが甘いなぁ。あ、それを信じるなら、だけどね」
少女「…… ……」
衛生師「まあ、取りあえずその話が事実だとして、だけど」
衛生師「成り代わったって、手込めにされるのが自分だったら……うーん」
少女「……自分が良ければ、良いんでしょうね」
衛生師「え?」
少女「助けて、と船に乗り込んだのもそうでしょう」
少女「残された私達の事は、お構いなしです」
少女「……さっきの少年というあの子に、何を話したのかは解りませんが」
少女「あんなに、すぐにバレる様な嘘を……」
衛生師「取りあえず、船に乗せて貰えればOKって事か」
少女「……新王にあって、自分が少女だと……信じて貰えれば」
少女「それで、良いのか…… ……」
239 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:35:30.13 ID:0rx8iDcjP
少女「少年にしても、姉から何か聞いたのは間違い無いでしょう」
少女「私を『秘書』と呼びましたからね」
衛生師「……まあ、此処まで君に聞いたこの話も、ひっくるめて」
衛生師「僕たちを騙そうとして……って、僕たちは疑わないと行けない訳だ」
少女「…… ……」
衛生師「それだけの事を君達……『魔導国』はしてきたって事」
衛生師「『書の街』って名前になったからって、はいそうですか、は無理だって」
衛生師「それは解るよね?」
少女「…… ……はい」
衛生師「取りあえず、騎士団長様が来るまで、君の事は監視させて貰う」
衛生師「……ま、保護も兼ねて」ハァ
少女「……ありがとうございます」
新米騎士「なんか納得いきませんねぇ」
衛生師「まあ、無茶苦茶な話だからね。本当にあの船に乗った子が」
衛生師「自分の事しか考えてないとは言え……」
少女「…… ……」
衛生師「……無鉄砲にも程があるなぁ」
少女「すみません」
衛生師「……さっき、君は、さ」
少女「?」
衛生師「自分だけがそうだと言うつもりはないと言ったよね?」
少女「え……ああ、はい」
衛生師「でも、随分協力的に思えるけど。あ、真実なら、ね」
少女「……それすらも、自分の保身の為だけ、と思いますか」
衛生師「はっきり言うなら思わなくも無い」
少女「……そう、ですね」
衛生師「うーん……そうだな」
衛生師「代表者の自覚、とも思えるし」
衛生師「……君が本当に『少女』なら、書の街も何れ、良くなっていくかもなぁ」
衛生師「とも思える、んだけど」
少女「……でも、私には……結局『旧貴族』達を押さえ込む事はできないみたいです」
衛生師「…… ……」
少女「押しつけられたのだと言う事は、自覚していましたが」
240 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:42:02.33 ID:0rx8iDcjP
少女「……姉に、なって貰った方がやはり、良かったのかもしれません」
衛生師「……どうかな」
少女「え?」
衛生師「『旧貴族達』はまとまっただろうね。でも」
衛生師「始まりの国、としてはやりにくいことこの上無い」
衛生師「信じるなら……って前提。だけど?」
少女「……反乱、ですか」
衛生師「物騒な言い方だけど、そうなるね」
衛生師「僕がさっきからしつこい位、『真実なら』と念を押すのは」
衛生師「そういう事だ。僕たちには決定権は無いから」
衛生師「個人的には信じてやりたいけど、って気持ちを、自戒する為」
少女「…… ……」
衛生師「さて、船が着くまで……どうしようかな」
衛生師「やっぱりまだ、詰め所に行く気にはならない?」
少女「……いえ。行きます」
衛生師「うん。ありがとう……大丈夫。他の騎士もいるから。一人とか」
衛生師「僕と二人きりにはならないようにするし、手荒なことも勿論しない」
衛生師「じゃあ、新米騎士君。船が来たら伝令、お願いね」
新米騎士「了解しました!」
衛生師「うん。じゃあ、いこうか」
少女「は、はい」
スタスタ
新米騎士(凄いなぁ、衛生師様……)
新米騎士(……あの噂は、本当なのだろうか。もし、騎士団長様が)
新米騎士(引退されたら、次期団長は……彼に……)
新米騎士(でも、始まりの国には、戦士様が戻られている)
新米騎士(…… ……否! 余計な事は考えずに居よう)
新米騎士(自分には……関係無い事だ)
241 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:46:54.51 ID:0rx8iDcjP
……
………
…………
王「……少女さん、が!?」
騎士「はい。自分に助けを求めてきまして……」
王「助け……」
騎士「ええ。何でも『旧貴族達』が何かを企んでいて、身の安全が……とか」
王「…… ……伯父上は?」
騎士「騎士団長様ですか? 入れ違いの便で、書の街に向かわれましたが」
王(……伯父上は、居ない)
王(僕が、一人で判断しなければならない……ッ)
王(否! 王、は僕だ…… ……僕が決めて良いんだ)
王(僕が、決めなくてはいけないんだ……!)
王(……まだ。話さなくて良かった)
騎士「新王様?」
王「あ……わ、解りました。詳しい話を聞くとしましょう」
王「……此処に、通して……良い……」
騎士「……良いんですか?」
王(良い、のか? ……否! ……良いんだ)
王「はい。連れてきて下さい」
騎士「……承知しました」
スタスタ、パタン
王(僕は、父上じゃ無い。何もかも倣う必要も無い……ッ)
コンコン
王「は、はい!」
騎士「失礼します。お連れしました」
王「……どうぞ」
カチャ
騎士「……失礼の無いように」
秘書「は、はい……お初にお目に掛かります、新王様」
王「…… ……!?」
242 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:53:02.70 ID:0rx8iDcjP
秘書「書の街の代表者の、少女と申します」
秘書「戴冠式のお誘い、ありがとうございました」
王「…… ……」
秘書「……こんな形で、先にお会いする事になってしまったのは……」
王「…… ……」
王(……誰、だ。これは)
秘書「残念……な話なのですが……」
王(確かに、少女さんと同じ顔をしている。だが……)
王(彼女は、燃える様な紅い瞳をしていたはずだ!)
秘書「大変失礼かと存じますが、新王様。できれば、お人払いを……」
王(それに、こんな気の強そうな雰囲気では無かった)
王(しっかりしよう、しなければ……と、必死な様子で……)
王(……もう少し……どこか、憂いる瞳を…… ……)
騎士「新王様?」
王「!」ハッ
秘書「…… ……」
王「……ああ、失礼。貴女は、助けを求めていらした、のですね」
秘書「お恥ずかしながら」
騎士「……如何致しましょう」
王(どうすれば、良い。しかし……今、この人は少女、と確かに口にした)
王(…… ……お父様……ッ)
王「……申し訳ありませんが、それは出来ません」
秘書「え……」
王「『少女』さんを信用しない訳では無いのです。一国を……まだ正式に」
王「襲名していないとは言え、僕は『王』ですから」
王「……貴女の街の前身を考えれば、念には念を……ね?」
243 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/21(木) 13:53:53.89 ID:0rx8iDcjP
おむかえー!
244 :
名も無き被検体774号+:2013/11/21(木) 14:04:40.24 ID:6vgGtcS+i
いてらー
いってら
よっしゃー新王頑張れ!!!
お迎えいってらっしゃーい
気をつけてー
相変わらず続きが気になる所で止まるなw
BBA応援保守
惚れた女の事を忘れる訳も無し……か
少しほっとした
ここで秘書を少女だと思ってたら俺の中で新王の評価かなり低かったな
250 :
名も無き被検体774号+:2013/11/21(木) 20:03:56.18 ID:Z58fqfZAi
秘書無農薬スギィ!!
251 :
名も無き被検体774号+:2013/11/21(木) 20:04:34.79 ID:Z58fqfZAi
お?無能の間違いです
無農薬に全部持っていかれた
253 :
名も無き被検体774号+:2013/11/22(金) 00:32:44.01 ID:wwb3eAYMi
無能役なら合うかもなw
ただ、このお話の上では双子は不吉過ぎる…
そういえば、「受け入れる者」は、新国王、王子、書の街の少女、鍛治氏の村の村長(&息子)、船長の娘(現船長)、他にもいろいろいるよな…
ループ回避できますように…保守
BBAおはよ〜(´・д・`)
255 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/22(金) 07:31:10.79 ID:oBwVK7e4P
おはよう!
出勤! …眠い( ゚д゚)
いてらー
ガンガレー
257 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/22(金) 14:50:48.14 ID:oBwVK7e4P
肉体労働辛い!
来れたら夜に!
寝るかもしれんが…
睡眠は大事だよ!
ゆっくり待つよ!
259 :
名も無き被検体774号+:2013/11/23(土) 00:27:31.08 ID:1ZMOYYbAi
しかし頑張るな…かと言って見習って働く気にはならぬ
>>259 いつか立ち上がれる日が来るさ
光は俺たちをあたためてくれるし、闇は休息をもたらす。ガンガレ
保守
261 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/23(土) 11:36:31.92 ID:T7SiE66rP
昨日は流石に寝ちゃったわ (´・ω・`)
今日の夜また!
明日休みやし!
無理すんなー
いくらでも待ってるでw
ほしゅー
264 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/23(土) 22:43:25.90 ID:T7SiE66rP
かーえーるー!
お疲れスコーン
ゆっくりでいいよ
疲れたら休んでくれよ
保守するぜよ
267 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/24(日) 17:59:48.83 ID:UuM90fTfP
おはよう…どうやら風邪引いたみたい (´・ω・`)
ちょっと休養してます…
うわ、大丈夫か?
ゆっくり休んでくれ
保守はみんなでするからさ
お大事に
ほしゅ
ほしゅ
お大事にの保守
早く風邪が治ります様に
273 :
名も無き被検体774号+:2013/11/25(月) 23:51:54.93 ID:o+NNne1Ni
……お見舞い、置いておきます
つ桃缶&癒(ら)しの魔石
保守
274 :
名も無き被検体774号+:2013/11/26(火) 06:41:02.69 ID:XYGmDAnL0
おぱよ
275 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/26(火) 07:33:40.87 ID:rHARhoFwP
おはよー何とか復活(`・ω・´)
幼女送って出勤!
276 :
名も無き被検体774号+:2013/11/26(火) 07:46:24.42 ID:pFTOiKnri
良かった、一安心ε-(´∀`; )
いてらー
277 :
名も無き被検体774号+:2013/11/26(火) 08:45:40.53 ID:Hcf6tJPj0
病み上がりに無理しちゃだめよ。
保守
279 :
名も無き被検体774号+:2013/11/26(火) 23:10:55.48 ID:mK2YqlAri
ほ!
280 :
名も無き被検体774号+:2013/11/27(水) 01:34:47.29 ID:pLn9PCZF0
捕手
保守
282 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 09:34:59.56 ID:zQnIbALwP
秘書「し、しかし……」
王「僕は新しい『王』として、この国を守っていく義務がある」
王「ですから……人払いには応じられません」
秘書「信じて……下さらない、のですか?」
王「鵜呑みには出来ません」
秘書「…… ……」
王「でもそれはイコール、『信じない』では無いんです」
王「……貴女と、僕は初対面。さっき貴女は、僕に『初めまして』と」
王「挨拶して下さいましたね? 『少女』さん」
秘書「はい」
王「…… ……」
王「……逆の立場であれば、貴女は解りました、とすぐに応じますか?」
王「『書の街』の『代表者』として」
秘書「…… ……ご尤も、です」
王「我らは貴方達の『支配者』では無い。折角新しく生まれ変わろうとする」
王「『書の街』を……貴女を含める『街人』達を、守り」
王「『指導』していく立場にあるに過ぎませんから」
王「困ったことがありましたら、できる限りお力になります」
王「ですので、ご安心を?」ニコリ
秘書「…… ……」
秘書(此処では……食い下がらない方が賢明か)
王「……助けを求めて、と言うのは、どう言う事でしょう」
王「ご説明願っても宜しいでしょうか?」
秘書「……『旧貴族達』がなにやら良からぬ事を企んでいる様なのです」
王「良からぬ事、とは?」
283 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 09:43:43.38 ID:zQnIbALwP
秘書「……新王様が先ほど、仰られたとおり」
秘書「我がく……我が街の前身は……ああであったので……」
王「『少女』さんから頂いた書簡には、『旧貴族達』の中から」
王「手助けして貰える人物を選んだ、とありましたが」
王「その人達、と認識して宜しいですか」
秘書「……恐れながら、新王様!」
王「はい?」
秘書「やはり、お人払いには応じて頂けないのでしょうか?」
王「……先ほどご説明申し上げたばかりだと思いますが」
秘書「確かに、『国』から『街』に変わったとは言え」
秘書「他国の機密に当たる事を、一介の騎士……様、の前で……」
秘書「話される、と言うのは……!」
王「ご安心下さい。信頼の置ける者です」
王「……どうしても話せない、と言うのであれば」
王「どうぞ、今はお下がり下さい。部屋は用意させましょう」
秘書「!」
王「貴女は保護を求めてこられた。ですよね?」
秘書「はい」
王「……身の危険を感じられた?」
秘書「そうです! あの侭、あの国に居れば……」
王「勿論、その申し出には応じさせて頂きます。ですが」
王「お話しするのを躊躇われると言うのであれば」
王「明日の朝には、騎士団長が戻ります」
秘書「……!」
王「騎士団長とは既知でありましょう? 内情もよく知っている」
王「それから、三人でゆっくりと話を聞くこととしましょう」
秘書「……騎士団長様は、何処に行かれているのですか」
王「忙しい身ですからね」
秘書「…… ……」
284 :
名も無き被検体774号+:2013/11/27(水) 09:51:02.28 ID:yGOcTXQpO
話が長い。
中弛みしてるし、
>>1の調子次第で未完になる。
だらだら続く某漫画みたい。
286 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:10:31.12 ID:zQnIbALwP
王「……どうされます?」
秘書(騎士団長……私は会ったことが無い)
秘書(少女から話は聞いているが……否……)
秘書(私と奴は同じ顔をしているんだ……堂々としていれば)
秘書(……それに、騎士団長は魔法には疎いと聞いている)
秘書「……わかりました」
王「結構です……ああ、もう一つ」
秘書「はい?」
王「戴冠式まで、その侭滞在されるおつもり、で宜しいのでしょうか?」
秘書「……許されるのであれば」
王「……そうですか」
王(やはり、この女性は…… ……)フゥ
王「わかりました。騎士」
騎士「はッ」
王「……『以前の客人』が使っていた部屋は?」
騎士「清掃は済んでいますが……」
王「結構。では、あの部屋にご案内してください」
騎士「宜しい、のですか?」
王「ええ、勿論……『特別』なお客様ですから」
秘書「…… ……」
秘書(特別、か……客人、と言ったな)
秘書(……悪く無い、と思って良い……んだろうな)
王「今からご案内するお部屋は、この玉座の間をでてすぐの角の部屋です」
王「護衛も兼ねての見張りはつけさせて頂きますが、宜しいですね?」
秘書「はい……結構です」
秘書(随分と警戒……否、『王』であれば。話を聞く限り)
秘書(用心深い人物の様だ……慎重な性格は父親譲り、か?)
秘書(……大人達からの話を聞きかじった程度の情報しか無いが)
秘書(取りあえず、明日……騎士団長との話までは)
秘書(大人しくしておくのが賢明だな)
287 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:24:52.94 ID:zQnIbALwP
王「では、宜しくお願いしますね」
騎士「は! ……では、どうぞ此方へ」
王「…… ……」
秘書「失礼致します」
パタン
王「…… ……」
王(……姉か、妹か……血族、には間違い無いんだろうが……)
王(調べて……否……どうやって?)
王(…… ……)ハァ
王(僕は……まだまだ無力、だ)
王(……お父様。僕は…… ……)
……
………
…………
癒し手「お帰りなさい、側近さん」
側近「ああ……体調はどうだ?」
癒し手「大丈夫ですよ。ちょっと……集中力がありませんけど」
側近「まあ、それは仕方な…… ……」コン
側近「?」
癒し手「あ……ご免なさい」
側近「魔石か……ほら」ヒョイ
癒し手「えっと……ご免なさい、その辺に転がして置いてあげて下さい」
側近「?」
癒し手「気分が、楽になるので」
側近「ああ……」キョロ
側近(部屋の四隅に……成る程)
側近「気分がマシになるのは解る……が」
側近「量産して……大丈夫なのか?」
288 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:30:55.52 ID:zQnIbALwP
癒し手「毎日少しずつ、無理のないようにって思ってたんですけど」
癒し手「……もう、作らないから大丈夫です」
側近「作れない、では無いんだな」
癒し手「違いますよ。何れは私の身体に……戻しますし」
側近「…… ……」
癒し手「ゴロゴロ作っても仕方無いですからね」
癒し手「……綺麗に、なったでしょう?」
側近「ん? ……ああ、掃除した、んだな」
癒し手「はい……折角、住むのを許して貰ったので」
側近「足りないモノは無いか?」
癒し手「産まれる迄は二人分、あれば充分ですよ」
癒し手「赤ちゃん、産まれてからも……当分はおっぱいしか飲みませんしね」
側近「……まあ」
癒し手「……それより、あの」
側近「ああ。大丈夫だ。明日、天気が良ければ行こう」
癒し手「ああ、良かった!」ホッ
側近「明日の朝、親父が書の街から戻るらしい」
側近「そうすれば、俺の役目も一端終わる」
癒し手「騎士団長様が留守の間の代役……でしたもんね」
側近「……確かに、今の俺ならば、何が起きようと」
側近「王も、街の人達も……守ってやれるだろうから、な」
癒し手「…… ……」
側近「娼婦様の像、忘れるなよ」
癒し手「勿論です …… ……どう、なってしまっている、のでしょうね」
側近「ん?」
癒し手「教会です。私達が立ち寄った時には既に、もう」
癒し手「ぼろぼろに……」
側近「…… ……」
癒し手「せめて、港街の神父様と、女神官様のお墓……だけでも」
癒し手「綺麗に、して差し上げられたら、良いんですけど」
289 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:38:44.18 ID:zQnIbALwP
側近「……今日、聞かれたよ」
癒し手「?」
側近「結婚式は何時だ、とな」
癒し手「??」
側近「……俺達の、だ」
癒し手「あ……」
側近「……したい、か?」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
癒し手「したくない、と言えば……嘘になります、けど」
側近「…… ……」
癒し手「でも、無理には、良い……んです」
癒し手「子供も、居ますしね」
側近「…… ……それは、別に……まあ」
癒し手「……側近さんもお疲れでしょう、もう休みましょう」
癒し手「明日、騎士団長さんをお迎えしたら出発、するんですか?」
側近「あ、ああ……書の街から戻った船で、港街へ送ってくれるらしい」
癒し手「そうですか……楽しみです」
側近「……癒し手」
癒し手「はい?」
側近「否…… ……休もう」
癒し手「はい」
側近(結婚式……な)ハァ
側近(……こっぱずかしい)
……
………
…………
王子「少女!?」
衛生師「お疲れ様です、騎士団長様」
少女「騎士団長様!」
王子「どうしたんだ、こんな場所で!?」
衛生師「んー、まあ、ちょっと色々ありまして」
290 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:46:05.33 ID:zQnIbALwP
王子「……色々?」
少女「あ、あの……!」
衛生師「ご説明します。此方へ……少女さんは、ちょっと待ってて下さいね?」
少女「え……」
衛生師「大丈夫、この部屋には居るから」
スタスタ
少女「…… ……」
少女(騎士団長は……信じてくれる、だろうか)
少女(否! ……大丈夫……!)
少女(……彼は、私の瞳の色を……覚えてくれている……筈!)
スタスタ
衛生師「少女さん」
少女「は、はい!」
衛生師「……僕は、これで失礼するよ」
少女「え……あ、あの!」
衛生師「後は騎士団長様に任せておくから」
少女「…… ……」
衛生師「僕は、この街に残らないと行けないから」
少女「?」
衛生師「……戴冠式で会いましょう、ね?」
少女「え? あ、あの……!」
スタスタ。パタン
王子「……俺は、明日の朝一の便で」
少女「あ……」
王子「始まりの国に戻る」
少女「……あ、あの、騎士団長様」
王子「君も一緒だ、少女」
少女「!」
王子「……船に乗っていった、のが『秘書』?」
少女「はい。私の……双子の、姉です」
王子「うん。話は聞いた……大丈夫」
291 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:49:57.20 ID:zQnIbALwP
少女「大丈夫…… ……?」
王子「ああ……王は馬鹿じゃ無いよ」
少女「で、でも……! 新王様とは会ったことがありません!」
少女「貴方は、私の顔を。瞳の色を覚えて居て下さった」
少女「……の、ですよね?」
王子「ああ、まあ……」
少女「ですが、私と姉は同じ顔をしています! それに……」
少女「あ……勿論、騎士団長様が説明して下されば」
少女「新王様も、信用して下さるとは、思います! でも……!」
少女「姉と、新王様がもう、接触してしまっていたら……!」
王子「……信じなさい」ポン
少女「…… ……」
王子「さっきも言ったけど、王は馬鹿じゃ無いよ」
王子「弟王子……前の国王に似て、聡明な子……人だ」
王子「大丈夫……安心して良い」
少女「……で、でも……」
292 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 10:50:48.56 ID:zQnIbALwP
おむかえー
いってらーしゃい
294 :
名も無き被検体774号+:2013/11/27(水) 18:16:17.76 ID:45LijAf70
ほしゅ
295 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/27(水) 19:33:06.87 ID:zQnIbALwP
昼寝してもた( ゚д゚)
疲れとりますわ…
また時間ある時に!
お疲れスコーン
しっかり休んでくれ
保守
お疲れ保守
298 :
名も無き被検体774号+:2013/11/28(木) 06:11:16.36 ID:4QyH1EBc0
寝れるとき寝とけー
お疲れ
300 :
名も無き被検体774号+:2013/11/28(木) 20:59:54.76 ID:VCGcrSfhi
保守
301 :
名も無き被検体774号+:2013/11/28(木) 22:49:46.30 ID:K3wQLFapi
ほしゅ
保守
303 :
名も無き被検体774号+:2013/11/29(金) 08:00:06.34 ID:YNF+wiZl0
おはおは
304 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/29(金) 11:05:22.61 ID:WaIIkyugP
王子「ここにも簡易だけど、宿泊できる場所があるから」
王子「その一室を使うと良い。見張りは立てるし」
王子「同じ建物の中に、俺もさっきの衛生師も居るから大丈夫」
少女「……はい」
王子「身の安全は保証する。明日一緒に行って、戴冠式まで滞在すれば良い」
少女「…… ……」
王子「どうした?」
少女「……保身を考えるべき、何でしょうが」
少女「でも……私は、『代表者』です」
少女「今、何も言わず始まりの国へ行ってしまったら……街の人達は……」
王子「……うん」
王子「厭な言い方になるかも、だけど」
少女「?」
王子「秘書が向こうへ行ってしまった以上、始まりの国としても」
王子「君を『旧貴族』達に接触させる事はできないんだ」
少女「それは…… ……はい。わかります」
王子「ああ、えっと。君が企み事をしてる訳じゃ無い、って言うのを」
王子「信じてる、って前提だ。これじゃ駄目なのかもしれないけどな」
少女「……?」
王子「まあ、良い。街の事は衛生師に任せておけば良い」
王子「……あれは頭の切れる奴だしね」
少女「は、はあ……」
王子「自由にして、とは言えないけど、ここに居ればちゃんと騎士が守るから」
少女「見張り兼、護衛、ですか」
王子「話が早くて助かるよ」
少女「……ありがとうございます」
王子「じゃあ、えっと……ああ、ちょっと、そこの騎士!」
新米騎士「はい!」
少女「あ…… さっきの……」
305 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/29(金) 11:14:37.72 ID:WaIIkyugP
王子「ん?」
新米騎士「あ、秘書……さん」
少女「いえ、あの、私は……」
王子「ああ……対応したのは君か」
新米騎士「……騎士団長様?」
王子「ん?」
新米騎士「『少女の瞳は何色だった』んですか」
王子「? 赤だろ? お前には何色に見えるんだ?」
少女「…… ……」
新米騎士「いえ……」
王子「?? ……ああ、悪いけど俺は今から衛生師達の所に行くから」
王子「お前、少女の護衛を頼む。もう一人すぐに寄越すから」
新米騎士「護衛?」
王子「見張り兼、な。必ず二人で頼む。この建物からは出すな」
新米騎士「は、はあ……?」
王子「明日の朝迎えに来る……頼んだよ」
新米騎士「了解しました」
少女「あ、あの、騎士団長様!」
王子「ん?」
少女「……ありがとうございました」
王子「どういたしまして……ああ、新米騎士、女の子なんだから」
王子「丁重に扱ってやれよ!」
スタスタ、パタン
新米騎士「……少女、さん。で良いのか?」
少女「だから、そうだと言っているでは無いですか」
新米騎士「そうか…… ……まあ、騎士団長様が仰るのなら」
新米騎士「信じる……よ」
少女「……ありがとうございます」
306 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/29(金) 11:20:02.67 ID:WaIIkyugP
新米騎士「ここから出すな、ってのは……」
少女「……私の身を案じて下さってるのと、接触を避ける為でしょう」
新米騎士「何なんだろうな」
少女「?」
新米騎士「俺はまだ、騎士になったばっかりで、未熟なのは解ってるし」
新米騎士「知らない事だらけだけど……」
新米騎士「お前達は、どうやったら、あんな風に」
新米騎士「自分に絶対の自信を持てるんだ?」
少女「え……」
新米騎士「優れた加護がどうとか、選ばれた民がどうとか」
新米騎士「……信じればそうなるのか?」
新米騎士「自分自身の力で、何かを成し遂げた訳でも無いのに?」
少女「!」
新米騎士「あ……別に嫌味じゃ無いぞ!」
新米騎士「何だろうなぁ……俺が馬鹿だから、理解出来ないだけなのかも」
新米騎士「しれないけど……」
少女「…… ……」
新米騎士「不思議だな。言われ続ければ、信じちまうもんなのかな」
……
………
…………
コンコン
使用人「…… ……?」
コンコン
使用人「后様?」
后「…… ……」
使用人「……開けても、宜しいでしょうか?」
307 :
名も無き被検体774号+:2013/11/29(金) 19:28:19.56 ID:YoUUhfSF0
ほしゅ!
308 :
名も無き被検体774号+:2013/11/29(金) 23:42:11.59 ID:/Wm/kbri0
話が進むのが楽しみだ!
ほしゅ
309 :
名も無き被検体774号+:2013/11/30(土) 00:50:31.91 ID:4XG8/Gml0
ほしゅ!
310 :
名も無き被検体774号+:2013/11/30(土) 02:15:44.28 ID:NmDN5FMIi
BBAの意図は知らんが何かしらのメッセージ性も感じるよなこの話
なんだろ…ほしゅ
BBAおつかれー( ゚д゚)ほしゅ
312 :
名も無き被検体774号+:2013/11/30(土) 15:09:20.08 ID:2Q4C+DfZi
保守
313 :
名も無き被検体774号+:2013/11/30(土) 18:00:00.35 ID:1y2NyrZj0
これはBBAの実体験に基づいたの物語である・・・
314 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 22:25:22.11 ID:hxspbOVUP
后「…… ……」
使用人「…… ……」
使用人「ッ ……失礼します!」
バタン!
后(すぅすぅ)
使用人「后さ……ッ …… ……あ」
使用人(寝てる……のか)ホッ
使用人(そういえば、少し前から身体がだるいと仰って居たけれど)
使用人(……ああ、そう言えば、もうすぐ……ツキノモノ、だとか)
使用人(人であれ、魔であれ……『命の営み』は)
使用人(何も変わらないのか…… …… ……あれ?)
使用人(……そう言えば、私…… ……)
后「ん…… ……んぅ」
使用人「……后様?」
后(すぅすぅ)
使用人(…… ……)フゥ
使用人(お茶にしようと思ったけれど、出直す、か……)カタン
后「…… ……」パチ
后「……使用人?」
使用人「あ……申し訳ありません。どうぞ、お休みになって下さい」
使用人「お返事が無いので心配で入ってきてしまいました。申し訳ありません」
后「ああ……そんなの、良いの……起きるわ…… ……魔王は?」
使用人「体調が優れないのでは? ……用事があった訳ではありませんし」
使用人「……書庫に服は投げ込んでおきましたので、ご安心を」
后「ん、良いのよ……寝てばっかりじゃ腐っちゃう」
后「全く、あの馬鹿は……」ハァ
使用人「大丈夫、ですか?」
后「なる前はやたら眠いのよね……それだけだから大丈夫」
315 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 22:46:30.10 ID:hxspbOVUP
后「用事は無いって……言ってたけど」
使用人「ああ、ええ……庭いじりも一段落しましたし」
使用人「お茶でも如何かな、と」
后「ああ、良いわね……着替えて、目を覚ましていくわ」
使用人「わかりました…… ……あ」
后「え?」
ザァアアアアア……
使用人「雨……」
后「珍しい、わよね?」
使用人「そうですね。空の色だけ見てると」
使用人「毎日毎日、振らない方が可笑しいような色ですけどね」
后「そうね……」
使用人「では、お待ちしております。くれぐれも無理はなさいません様に?」
后「ええ。すぐ行くわ」
スタスタ、パタン
使用人(……ツキノモノ、か)
使用人(『人間だった時』は確かにあった……)
使用人(ああ、そうだ。それに)
使用人(前后様も、同じような話をされていた。魔導将軍様も)
使用人(……気にもしなかった、けれど)
使用人(どうして……私は、止まってしまった、んだろう……)
使用人(……子を作る相手も居ないけど)フゥ
316 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 22:53:50.28 ID:hxspbOVUP
使用人(だからといって……不必要だからって)
使用人(来なくなる、なんて……そんな、無茶苦茶な)
使用人(……まあ、良いか。来て良いことも別に無い)
使用人(知を受け継ぎ、この城を、魔王様を……見守っていくのが)
使用人(私の役目であるのなら……不必要な物だ)
スタスタ
使用人(紫の魔王の側近様から、名以外の全てを受け継いだ)
使用人(……私も、何れ。誰かに……譲り渡す日が、来る……ん、だろうか)
スタスタ……
……
………
…………
王子「……もう少しの我慢だから。良いね」
少女「……は、はい」
騎士「お帰りなさいませ!騎士団長様……新王様がお待ちです」
騎士「? ……あの、そちらの方は?」
王子「知り合いの娘さんだ。訳あって身柄を保護している」
騎士「は、はあ……」
王子「王にそう報告してくれ……あと、『客』が来ているだろう?」
騎士「ああ、書の街の少女さんですね」
少女「…… ……」
少女(やはり……お姉様は、此処に)
少女(……目深にローブを被れというのは理解出来る、が)
少女(これでは、騎士の表情が見えない)
少女(……訝しまれているのでは……)
317 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:00:03.62 ID:hxspbOVUP
王子「今、何処に?」
騎士「新王様の命で、剣士が使っていた部屋に……」
王子「……へえ」ニヤ
騎士「騎士団長様?」
王子「いや、良い。それで?」
騎士「見張りは二名つけています。部屋を出てはいません。大人しくしていますよ」
王子「そうか。解った……この娘は『赤』だ」
少女「!?」
騎士「は?」
王子「新王様にそう伝えれば解る。待ってるから、許可が出れば呼んでくれよ」
騎士「は、はあ……では、少しお待ちを」
スタスタ
少女「あの、騎士団長様……?」
王子「心配する事は無いと言っただろう?」ニッ
少女(『赤』……私の瞳の事か? そうか!)
少女(『少女は、紅い瞳の女』と王に話が伝わっているとすれば……!)
少女(……否。会ったこともない相手だ。騎士団長は新王の伯父……)
少女(亡き国王の息子であると、聞いては居るが、だが……)
少女(紅い瞳の女等、掃いて捨てる居るんだ。何故……?)
王子「一つだけ、聞くよ」
少女「え?」
王子「君は、俺を信じてくれている?」
少女「……今、頼れるのは貴方しか居ません」
王子「答えの様なそうで無い様な、だな……まあ良い」
王子「じゃあ、質問を変える」
王子「……自分の事を信じれるか?」
少女「…… ……?」
王子「そうだな。自分の信じてきた物を信じられるか、かな」
少女「……そ、れは。色々な意味に取れるのですが」
318 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:08:44.63 ID:hxspbOVUP
少女(いくら、彼と新王が血縁関係であれ)
少女(否……それは無条件で信じられる物かと問いたいのか?)
王子「自分の想像の範囲を超える事が起こると、さ」
少女「…… ……」
王子「実際に、目で見た物を否定するのは、不可能に近い程に」
王子「難しい物、なのに……どこかで、拒否したくなるんだよな」
王子「……無意識、で」
少女(何が言いたい? ……血。我らの事を言っている、のか)
少女(……違うな。だが……話の意図が分からん)
少女(お姉様の行動の事? …… ……)
王子「……信じて欲しい。新王の事を」
少女「……唐突ですね」
王子「すがるモノが俺しかないのならば、それが王に置き換わっても不思議じゃ無い」
少女「…… ……」
王子「大丈夫だ」
少女「……は、い」
少女(何をどうもって、大丈夫だと言い切るんだ。だが……)
少女(新王には、自分が『少女』だと、信じて貰うしかない……!)
少女(……自分の保身ばかり、か。姉を責められやしない……)
少女(目で見た物を否定するのは難しい……初対面であった新王に)
少女(何を、どうやって……私が本当の『少女』だと、信じて貰う……!)
カチャ、パタン
騎士「騎士団長様、どうぞ……」
騎士「……あの」ヒソ
王子「ん?」
騎士「……お人払いを、と申されているのですが」
王子「俺が居るから大丈夫さ」
騎士「…… ……扉の外側で、待機しています」
王子「うん。頼んだよ」
319 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:14:15.95 ID:hxspbOVUP
カチャ、パタン
少女「…… ……」
少女(フードが邪魔……ッ 新王の顔が、これでは……)
王子「新王様、ただいま帰還致しました」
王「楽にして下さい、伯父上……彼女、が」
王子「……ああ」
王「そうですか……!」
少女(? ……聞いた事のある声……でも、何処で……)
王「どうぞ、貴女もローブを脱いで楽にして下さい」
王「……『少女』さん」
少女「!」
王子「……だから、大丈夫だと言っただろう?」クス
少女「…… ……」バサッ
少女「! ……ッ あ……!」
王子「……あの時、お前を連れて行っていたのがこんな所で役に立つとは、な」
王「初めまして、ではありませんからね?」
少女「貴方は…… ……ッ ……否、貴方が、新王、さ……ま!?」
王「あの時は申し訳ありませんでした」
王「身分を謀ったのは、謝ります」ペコ
少女「! か、顔を、上げて下さい!」
王子「……秘書、だったかな。彼女は剣士の部屋か」
王「ええ……人払いをせずば話さない風だったので」
王「騎士団長が戻ったら、それに応じると言って、ね」
王子「そうか……良く解ったな、と言うのは愚問だな?」
王「当然です」
少女「お……恐れながら、新王様」
王「はい」
少女「……何故、解った……のですか」
王「それも愚問ですね……初対面じゃ無いでしょう?」
320 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:21:47.06 ID:hxspbOVUP
王「勿論、『王』や『次期国王』、『国王の息子』として会った訳じゃ無いですけど」
少女「……し、しかし……」
王子「君が言った事だろう。『少女の瞳の色は?』」
少女「……魔法や加護に疎ければ……気がつかない可能性だってあります」
少女「覚えて居る保証も……!」
王「確かに、同じ顔をしていましたね。姉妹……なんですね?」
少女「……双子です。姉は……あの、秘書は……」
王「見張らせては居ますが、手荒なことは勿論していませんよ」
王「……先の保証は、出来かねますが」
少女「! ……いえ。当然、です」
王「不安だったでしょう。此処まで」
少女「……否定はしません。でも……」
王「忘れませんよ。少女さん」
少女「……?」
王「確かに同じ顔をしているが、表情が違う」
王「瞳の色だけで、与える印象も勿論違います。でも……」
王「……僕は、貴女を忘れたり、しません」ニコ
少女「?? ……はぁ…… ッ あ、いえ、あの……!」
少女「……良かったです。信じて頂けて」
王子「…… ……」ゴホン
王子「本題に入るぞ、新王」
王「あ、そ、そうですね……すみません」
王「……如何しましょうか、少女さん」
王「貴女も、この国の保護を願い出て参られましたか?」
少女「……そうして貰いたいと言う気持ちはあります」
少女「王様、書簡はお読みになられましたか」
王「ええ。快くお誘いを受けて頂けたようで、嬉しく思いました」
少女「……戴冠式まで、此処に居れば、私の身は安全でしょう」
少女「ですが……私は、暫定であれ仮であれ」
少女「書の街の代表者、ですから」
少女「……逃げ込むと言うのは、その」
321 :
名も無き被検体774号+:2013/11/30(土) 23:27:38.70 ID:ZJLySTk20
(^ω^)ペロペロ
322 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:29:19.22 ID:hxspbOVUP
王「後ろめたい?」
少女「……正直、申しますと、そうです」
王子「しかしなぁ……こうなってしまった以上、君をあの街に帰す訳にも」
王「そうですね。関係的にも、旧貴族達の思惑の片隅をかするのは御免です」
少女「…… ……」
王「折角の友好条約を先に反故にしようとしたのは書の街……否」
王「旧貴族達、ですからね……でも」
王「何故です? 代表者は貴女でしょう」
少女「力不足は……認めます。年長者として祭り上げられたのは事実です」
王「それならば秘書さんだって」
少女「……衛生師さんには話しましたが……」
王子「『出来損ないと話す言葉等持ち合わせていない』か」
王「……成る程。貴女を傀儡として祭り上げ、実権は……ですか」
少女「……申し訳ありません」
王「確かに、旧貴族達を傍仕えさせたのは貴女の失策だろうけれども」
少女「…… ……」
王子「……お前な、もう少し優しい言葉を選べるだろう」
王「事実です、伯父上……ですが、これで」
王「此方も反撃に出られます」
王「秘書さんから聞いた話やあの人の行動……勿論、これから」
王「少女さんの言い分も聞きますし、事実確認もします、けど」
王「行き当たりばったりにしても程がありますよ」
王子「……まあ、それはな」
王「目の前の状況を切り抜ける為の辻褄を後で無理矢理あわせようとしても」
王「これほど綻びが多ければ、不可能です」
王「……それだけ、『新王』としての僕の力量も」
王「足りていない、と言う事だ」
王子「…… ……」
少女(この人……は)
323 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:37:33.40 ID:hxspbOVUP
王「……不甲斐ないのは僕もです、少女さん」
王「正式に就任しては居ないとは言え、僕は『王』だ」
王「国、人……そういう物を、守っていかなければならないんです」
少女(……随分と、攻撃的にも見える。あの時、書の街で会った時と)
少女(印象が……違う)
少女(……だけど。そうか。同じなんだな)
少女(しっかりしなければ、頑張らなければ、と……)
少女(……私だけでは、無いんだ)
少女(国や街を作り、纏め、守っていくというのは……)
少女(……押しつけられ、すげ替えの聞く頭なだけ、では……)
王「……安心しました」
少女「え?」
王「正直に、仰ってくれた、のでしょう」
少女「……?」
王「自分の身は勿論、可愛いでしょう。でも」
王「……代表者としての自覚が、秘書さんには、見えませんでしたから」
少女「あ…… ……」
王「不甲斐ないと解って居ても。気持ちだけでも、持つことは大事なんだと」
王「思います。 ……偉そうな事、言えるほど」
王「僕だって立派じゃない。まだまだ……何も知りません」
王「だから、気持ちだけでも、持ってたいんです」
少女「…… ……はい」
王「……まだまだ、伯父上に頼りっぱなしになっていますし、ね」
王子「……俺はお前の盾であり剣だ」
王子「今はまだ、な」
王「…… ……」
王子「以上でも以下でも無い」
王「……そう、ですね」
少女「…… ……」
324 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:42:45.31 ID:hxspbOVUP
王子「……そんな、しょげた顔する名二人とも」
王子「これからの未来を作るのはお前達なんだ。それだけの事だ」
王「……はい」
少女「未来……」
王子「……で、どうするんだ、新王」
王「戴冠式まで、それほど日はありません」
王「ちょっと強引ですけど、少女さんにはちゃんと」
王「書の街の代表者、として、滞在して頂きましょう」
少女「宜しいのですか?」
王「帰りたいですか?」
少女「…… ……い、いえ」
王「はい。なら、どうぞ。遠慮無く過ごして下さい」ニコ
王「元よりそのつもりでしたしね」
少女「あ、あの……姉の処遇は……」
王子「それを今から話し合う……んだ」
王子「……俺は、どうする、王」
王「同席してくれないのですか?」
王子「どちらでも良い。そもそも、俺はただの『騎士団長』だ」
王子「……弟王子の時は、補佐だと良いながらこうして」
王子「良く色々話し合った。だが」
王子「お前が、必ずしもそれを倣う必要は無い」
王「伯父上……」
王子「……戦士達と話した時の事は、気にする事は無い」
王子「『王』はお前だ」
王「……僕が、決めて良い、んですか」
王子「……もう一回、言った方が良いか?」
王「……いえ。『王』は、僕ですから」
王「…… ……」
少女(……この人達は、強い)
少女(騎士団長は…… ……優しい、人なんだな)
325 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:50:26.24 ID:hxspbOVUP
王「……僕が正式に就任するまでの間、今までと変わらず」
王「補佐をお願いします、伯父上」
王「それから、先は……」
王子「了解した。後は、その時考えれば良い」
王「……はい」
少女「…… ……」
王「では、まず……秘書さんの事ですが」
少女「……はい」
王「あ、ごめんなさい。先に……聞きたい事があります」
少女「え?」
王「貴女は、母親さんに会いたいですか?」
少女「!」
王子「……街の代表者だと、初めて会った時に言っていただろう」
少女「……何とも、言えません。ですが」
少女「姉は、それを要求するかもしれません」
王「でしょうね」
少女「私は……正直、解りません」
少女「……不便だ、不自由だと思っていました。でも」
少女「私は、雷の加護を持たない私は、所詮……」
王子「…… ……」
少女「彼ら……姉も含めて、旧貴族達の中では『劣等』なのです」
王「…… ……」
少女「確かに失策です。傷をなめあっていても、何も産まれない」
王「……僕の考えは」
王「秘書さんは、立派な反逆者、です……書の街を支配している訳では」
王「無いとは、いえ……」
少女「…… ……」
王子「後で俺とお前と、少女と対面させるんだろう」
王「……少女さんは同席して貰わない方が良いと思います」
王子「ん?」
王「会わせてしまうと何するか解りませんし」
王「伯父上に同席して頂くとは言え危険は回避したいですし」
王子「……そうか。そうだな」
326 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/11/30(土) 23:56:20.16 ID:hxspbOVUP
王「処遇についてはその時の態度次第……ですが」
王「……母親に会いたいと言うのならば、会わせて差し上げるつもりですよ」
王子「え!?」
王「牢屋の壁越し、ですけどね」
少女「…… ……」
王「……で、ついでに旧貴族達の扱いですが……」
王「伯父上。この間のお話しを、ついでに進めても宜しいですか」
王子「この間の話?」
王「はい。騎士団の解体です」
少女「え!?」
王「世の中は平和になっていこうとしています」
王「……すぐに、『力』は捨てられません。残念ながら」
王「役割は正直、変わらないかも知れません。ですが」
王「『騎士団』と言う組織は、解体する予定なんです」
王「……最初は、名前が変わるだけ、になってしまうでしょうけど」
少女「そ、んな!」
王子「……以外だな。どうした?」
少女「……か、勝手な話になってしまいます、が」
少女「今、書の街は騎士団の人達によって、秩序が保たれて居ると言っても」
少女「過言じゃありません! なのに……!」
王「見捨てはしません」
少女「新王様……」
王「……伯父上から、引退の相談もされてます、から」
少女「騎士団長様が引退!?」
王子「歳を考えてくれよ」
王子「……もうすぐ、孫も産まれるんだぜ」
少女「!? ……騎士団長様の息子、さん……は……!」
王「その話は後にしましょう。伯父上……混乱させないで下さい」
王子「……スマン」
327 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:02:44.70 ID:hxspbOVUP
王「『軍隊』と言う物が必要のない世界になれば良い、と思ってます」
王「……確かに、戦争に事実上、勝利しました」
王「裏を返せば、負けた国が、負けた人達が居るんです。だから」
王「勝ってしまった我々が、形だけでも『武』を放棄する」
王「……簡単に、ぽいっと投げられる訳じゃ無い。だけど」
王「それを指し示す事が『美しい世界』への第一歩だと思うんです」
少女「美しい、世界」
王「はい。平和な……世界、です」
王「……魔王は、倒された。でも、魔物は居なくならない」
王子「…… ……」
王「魔王は、また……以前の様に復活するかも知れない」
王「でも、だからこそ。同じ種同士、人間同士……」
王「争うのは、馬鹿らしいでしょう?」
少女「あ……」
王「だから、ね……」
少女「…… ……」
王「就任式の前に、この事は発表するつもりです」
王「……まだ、僕と伯父上しか知りません」
少女「私に……話して良かった、のですか」
王「……何れは知る事です」
王子「最初から話すつもりだっただろう、お前」
王「伯父上?」
王子「何か話したい事があると言っていたし」
王子「言いにくそうにしていたからな……合点がいったさ」ハァ
王(……そう、じゃ無いんだけど)
王(まあ……良い。良い風に勘違いしてくれた、方が)
王(……まだ。話せない。話さない……)
328 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:08:15.96 ID:VGprxsz3P
少女「……他言は、しないとお約束します」
王「ありがとうございます」ニコ
王子「……とにかく、秘書の出方次第、だな」
王「そうですね……ええ、と。どうしましょうか」
少女「あ……私は、居ない方が良い、んですね?」
王子「聞いていたいのならば、その扉の奥に身を隠しておけば良い」
王子「……厭なら、部屋を準備させるよ」
王「聞かない方が良いと思います……けど」
王子「少女が決める事だ」
少女「…… ……聞かせて下さい」
王「やりにくいなぁ……」ボソ
少女「え?」
王「あ、ああ……いえ……」
少女「?」
王子「……では、こっちへ」
王「ああ、僕が……伯父上、騎士に指示を」
王子「ああ」
スタスタ
王「……少女さん」
少女「は、はい?」
王「後で、庭をお散歩しましょう?」
少女「え? ……ああ、書簡にありました、ね」
少女「……わかりました」
少女(こんな時に……暢気な……でも、まあ)
少女(気をつかってくれている、んだろうな)
王「では……此処に。声は出さない様にね」
少女「はい」
キィ……
王「……幻滅、しないで下さい」
少女「え? ……あ、あの」
パタン
329 :
名も無き被検体774号+:2013/12/01(日) 00:11:23.81 ID:5eORUF2Yi
ワクワク♪
さあどなる??
331 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:16:32.98 ID:VGprxsz3P
少女(幻滅……?)
少女(……確かに、新王の選ぶ言葉は……きつい、と言えばそうだが)
少女(内容に不備は感じない……同じ、なのだろう。私と)
少女(気張らねばと……必要以上、に。気にして……いるんだろうか?)
少女(……変な人。まあ、解らなくはないが)
少女(! ……扉の音……お姉様、か)
少女(……声が、遠い……な)ピト
王「お待たせ致しました」
秘書「騎士団長様、お久しぶりでございます」
王子「…… ……」
王「単刀直入にお聞きします」
秘書「……? あの、私の話を聞いて頂ける、のでは……」
王「母親に会いたいですか?」
秘書「! 会わせて頂けるのですか!?」
王子「『少女』と初めて会った時、会いたいと言っていただろう」
秘書「あ ……そ、そうです!そうでした!」
秘書「是非に! お願い致します!」
王「立ち会いはさせて頂きますよ?」
秘書「……そ、れは、はい」
王子「不満か?」
秘書「い、いえ……仕方ありません」
王「『剣士に会わせろ』と……それしか話しません」
秘書「剣士様、ですか……あの、お会いになられていないのですか」
王「……会わせられるとお思いですか?」
秘書「…… ……」
王「まあ、良いでしょう。では、今から行きましょうか」
王子「……新王、様?」
王「私と伯父上が着いていれば大丈夫でしょう」
王「ただし、話すのは壁越しです。宜しいですね?」
秘書「……勿論、です」
少女(母親様と接触させる……!? ……ああ、違う!)
少女(王は、そのまま、姉を……牢に放り混むつもり、か!)
332 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:22:50.13 ID:VGprxsz3P
少女(声が遠くなっていく……!)
少女(態度次第……否、確かに……お姉様……!)
少女(……仕方無い、んだろう。だろう、が……!)
少女(私は、どうしたら良い……!?)
少女(後を追っても……ローブの所為で道など解らない……!)
少女(……仕方が無いのか!? 否、確かに、反乱と言われればそれまで、だが)
パタン……
少女(扉の音!)
少女(…… ……何も、聞こえない)
少女(幻滅、とは……この事……? でも……!)
キィ……
少女「!」
騎士「……少女、さんですね?」
少女「あ……さっきの……」
騎士「騎士団長様が。来たいと望むなら叶えてやれと」
少女「あ、あの……」
騎士「……事情が飲み込めていないから、良く解らないけれど」
騎士「君が、本物、何だろう」
少女「……貴方は、どうして従うのですか」
騎士「え?」
少女「王、であれば……長であれば」
少女「言われた侭は、理解が及ばなくても真実なのですか?」
騎士「……そうじゃない」
少女「では、何故……」
騎士「そっくりそのまま返そうか?」
少女「え?」
騎士「今君が言った言葉は、君達の街の人達にも勿論」
騎士「当てはまると思う、んだけどな」
少女「!」
333 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:29:43.64 ID:VGprxsz3P
騎士「『知る義務も知らない権利もある』……選べるんだよ」
少女「…… ……」
騎士「御免。答えになってないな」
騎士「……言えるとすれば、これは仕事だから」
少女「仕事……」
騎士「『騎士』である以上、『従う』のは仕事だ」
少女「…… ……」
騎士「……国王様……新王様のお父様は、凄い人だったよ」
騎士「俺は知らないけど、盗賊様も」
少女「…… ……」
騎士「『王』を守りたいと言っていた両親の背を見て育ったから」
騎士「俺もそうありたいと思った」
騎士「だから、命令には従う。内容が分からなくても」
少女「…… ……」
騎士「知りたいって好奇心はあるけど……」
少女「…… ……」
騎士「君には無いの?」
少女「……連れて行って、下さい」
騎士「……了解しました」
スタスタ
騎士「…… ……」
少女「…… ……」
騎士「……新王様は、多分」
少女「?」
騎士「お父様に負けじと必死なんだ」
少女「…… ……」
騎士「吉と出るか凶と出るかは、俺にも……誰にもわからん」
少女「…… ……」
騎士「……けど、守る。守らないと行けない」
少女「守りたい……から?」
騎士「……仕事だから。今はね」
騎士「……この階段を下りて突き当たり。そっとね」
334 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:37:26.14 ID:VGprxsz3P
少女「一緒、には……」
騎士「……この先は許可が無いと入れないんだ」
騎士「君一人で、って聞いてる」
少女「…… ……」
騎士「少女さん」
少女「は、はい」
騎士「俺は、『魔導国』は嫌いだ」
少女「!」
騎士「船団同士の戦いで、魔法兵として出兵してた弟が死んだんだ」
少女「…… ……」
騎士「……『書の街』になったからって、消えないんだ」
少女「…… ……」
騎士「戦争、だった。船に乗るのを志願したのも弟自身だ」
騎士「『世界』に『もし』は無い」
騎士「……でも、君が頑張って変えてくれるなら」
騎士「……好きにはなれないけど」
少女「…… ……はい」
騎士「御免。何が言いたいのか解らない」
少女「いえ……」
騎士「一つの感情だけじゃ無いんだよね。人って」
騎士「裏表があって、当然なんだよな」
少女「…… ……?」
騎士「御免。忘れて……気をつけて降りて下さい」
少女「……は、はい。ありがとうございました」
コツン、コ…… ……
少女(足音、響く……そっと……)
少女(……彼は、何が言いたかったんだろう)
少女(仕事だから。知りたいから、知りたくないから……)
少女(……どれも、真理で。どれも、勝手だ……)
……ッ
ダマシタ……ッ ユルサ……ッ
少女(! お姉様の声……!)
335 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:43:59.57 ID:VGprxsz3P
秘書「出せ! 何故私がこんな場所に……!」
ガシャン!ガン!
王「……重傷ですね。当然でしょう」ハァ
王「『王』を謀り、自分の街の代表者である少女さんを謀り」
王「ましてや、反乱まで企てて居たんです」
王「……のこのこと乗り込んで来て、あからさまな誘いに乗って」
王「随分と、舐められたモノです」
秘書「この……ッ 私をどうするつもりだ!」
秘書「私は、少女だぞ!?」
王子「残念ながら、少女の瞳は赤だ。君じゃ無い」
秘書「!」
王「……旧貴族達にも、制裁を加えます」
秘書「な……ッ お前達は支配者では無いと言ったでは無いか!」
秘書「良くも……ッ」
母親「……剣士?」
秘書「! 母親様!?」
王「僕は約束は守りましたよ? 『どうぞ、壁越しにお話しを』と言ったでしょう」
秘書「隣に、母親様が……!? 母親様! 母親様!」
王子「おい、本当に隣の牢なのか!?」
王「……大丈夫、ですよ」
王子「え……?」
母親「剣士、剣士……どこ?」
母親「目が見えないの!此処は真っ暗よ!早く助けなさい!」
母親「お父様、お兄様……どこ!?」
秘書「!? 母親様!?」
母親「大丈夫、すぐにこんな所、出て行くわ! すぐに剣士が来るわよ!」
母親「私達は魔の血を引く、優れた血の一族なのよ!」
母親「剣士と私で、雷の加護を持つ娘と息子を作るわ!」
母親「そうすれば、魔導国は蘇るのよ!」
アーハッハッハッハッハ!
秘書「は……は、おや様…… ……?」
336 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:46:52.83 ID:VGprxsz3P
王子「! おい、これは……!」
王「……僕が初めて、此処に降りてきた時にはこんな感じでしたよ」
王子「知ってたのか!?」
王「……はい」
王子「……俺、が……最初に此処で見た時、は……」
王「少しずつ狂っていった、のか。例の魔石の影響かわかりませんけど」
王「……嘘では無いです。食事を持ってきても、それが男でも女でも」
王「『剣士、助けに来てくれたのね』と……ね」
秘書「そ……んな! ……これで、は……!!」
王「救い出して魔導国を再建する夢も潰えましたね」
秘書「!」
王「おや、図星でした?」
王子「…… ……」
王「……貴女達が考えそうな事ぐらい、解ります」
337 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/01(日) 00:49:46.14 ID:VGprxsz3P
限界ですorz
また時間のある時に!
お疲れスコーン
*゚゚・*+。
| ゚*。
。∩∧∧ *
+ (・ω・`) *+゚
*。ヽ つ*゚*
゙・+。*・゚⊃ +゚
☆ ∪ 。*゚
゙・+。*・゚
いい夢を
ほしゅ
340 :
名も無き被検体774号+:2013/12/01(日) 15:02:22.27 ID:M74eg3ly0
いい感じに黒いな新王
危なっかしいっちゃ危なっかしいが
新王応援あげ
341 :
名も無き被検体774号+:2013/12/01(日) 20:55:07.52 ID:AbkXRBa6i
ほしゅー
342 :
名も無き被検体774号+:2013/12/02(月) 05:06:17.15 ID:r2mRqB+ti
保守
343 :
名も無き被検体774号+:2013/12/02(月) 11:34:52.53 ID:EUHwZ96zi
ほ
ほっしゅっしゅ
345 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 21:41:09.78 ID:GhctEEdIP
帰った!
取りあえずお風呂とご飯!
元気だったら後ほど!
346 :
名も無き被検体774号+:2013/12/02(月) 21:44:43.12 ID:pn/4lliF0
おう、ただいま
347 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:28:59.03 ID:GhctEEdIP
王子「……何時から」
王「先ほども申し上げたとおり、です」
王「……戦士兄様や、伯父上は忙しくしていらして」
王「此処に、足を向ける事も無かったでしょう」
秘書「戦士!? ……では、魔王は……!」
王「…… ……」
秘書「勇者は戻ってきたのか!? 世界は……!」
王「……世界が、平和にならない方が貴女達にとっては良かったのでしょうね」
王子「…… ……」
王「母親はぶつぶつと、ずっと独り言を呟いていた」
王「……貴方からは知り得ないだろう話も、聞きましたよ、伯父上」
王子「!?」
王「真偽の程は解りません。何せ……狂人の戯言ですから」
秘書「お前……ッ 出来損ないの分際で……ッ」
王子「! 黙れ!」
王「出来損ない、と言うのは優れた加護を持たない人の事を指す、んでしたね?」
王「……ならば残念です。僕は、その優れた加護、とやらを有していますから」
秘書「! な……に……ッ!?」
王「お疑いならお見せしましょうか? 残念ながら僕は、風の攻撃魔法は」
王「使えませんから。人を呼ぶことになりますが」
王子「新王!」
秘書「…… ……ッ」
王「……冗談です。そんな怖い顔をしないで下さい」
王「ああ、でも僕に優れた加護があるのは確かですよ」
王子「…… ……」
王「悔しいでしょう? どうにか懐柔しようと企んでいらっしゃったのでしょうしね」
王「庇護を受ける『始まりの国』の、ましてや『新たなる王』」
王「優れた加護……貴女達の言う『選ばれた』者に必要な最低限の能力」
王「……御しやすそうに見えましたか。秘書さん?」
秘書「……ッ」
348 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:34:10.27 ID:GhctEEdIP
王子「……新王」
王「…… ……そこに、居るのでしょう、少女さん」
少女「!」
王「伯父上も人が悪い。未来を作るのは僕たちだと言っておきながら」
王子「……い、いや……」
王「構いません。出て来て下さい」
少女「…… ……」
王「此処は、思う以上に音が響くんですよ」
少女(……この、人……は……!)
少女「…… ……」
スタスタ
秘書「! お、前……ッ」
少女「…… ……」
王「何をどう、見間違うと思ったのです?」
王「確かに貴女達は同じ顔をしている」
王「だが、表情一つ、何を取っても違いすぎる」
王子「…… ……すまん、少女」
少女「……貴方の所為ではありません。騎士団長様」
王「見られない方が、やりやすいとは思いました。ですが」
王「……良いです。これも、僕です……から」
秘書「逃げ出してきたのか! お前は、それでも代表者か!」
少女「どの口がそういうのです、お姉様!」
少女「貴女は私を、新王様を……書の街すらも裏切って!」
秘書「ほざけ!何が書の街だ!」
秘書「雷の加護を受けもしない、出来損ない共を纏め上げたとて」
秘書「誰が喜ぶ! 何が良くなる!?」
349 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:40:07.95 ID:GhctEEdIP
秘書「我らは選ばれた……ッ」
ガシャン!ガシャガシャ……ッ!
少女「思い上がりも甚だしい! 何が選ばれた民です!」
少女「領主様達が『私達の支配する世界』……」
少女「『私達に支配される為の世界』等と望まなければ、そもそもこんな事には」
少女「ならなかった! 魔の血だの、どうの……それこそが恥ずかしいと思わないのか!」
少女「命の重さに差違など無いのだ! 人は……ッ」
秘書「黙れ! この『世界』は……ッ」
母親「……剣士、剣士! そこにいるんでしょう!?」
母親「さっさとこの部屋から私を出して!」
母親「……ねえ、魔である貴方と、優れた私と」
母親「良いのよ!良いの……お兄様など、魔法使いなど!」
母親「その紫の瞳は、私のモノよ! 勇者になんて渡さない!」
母親「魔法使いになんか、渡さないわ!」
少女「…… ……」
王子「…… ……」
母親「……ねえ、早く抱きしめて……此処は、寒い……ッ」
少女「……これが、末路。禁忌に手を出した、愚かな人間の末路だ」
少女「だから、お姉様……」
秘書「煩い! 黙れ! ……ッ この期に及んで、まだ……ッ」
秘書「まだ、お前だけ、自分だけ、甘い汁を吸うつもりなのか!」
秘書「出せ!出すんだ! ……私は、雷の優れた……!」
王「……話の通じない人と話すのは疲れますね」フゥ
350 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:46:07.87 ID:GhctEEdIP
少女「……新王様?」
王「先ほどの約束通り、庭を散歩致しましょう。花が見頃ですよ」
王「もう、此処に用事は無い……伯父上」
王子「え……な、なんだ」
王「衛生師に連絡を。旧貴族達を捕らえ、反乱の罪で投獄して下さい」
王子「!」
王「……許可を頂けますね、少女さん?」
少女「!?」
王「どんな形であれ……それが、秘書さんの口からであれ」
王「『少女』と名乗る『書の街の代表者』が」
王「『身の危機を感じる』と、我が国に、僕に」
王「……保護を求めたのです」
少女「……ッ」
王「その原因が『旧貴族』達であるのならば」
王「『貴女を守る為』に最善を尽くす……それが」
王「『新王』たる僕の勤めです」
王子「お、おい!」
王「……そうすれば、書の街は……今よりも、確実に」
王「僕たち、新しい世代が描いていく……行かなければならない」
王「『美しい世界』に近づきます」
少女「…… ……」
王「ご決断を。少女さん」
少女「…… ……ッ」
少女(幻滅しないで欲しい、と言うのは……これか!?)
少女(……発端が、私では無く、姉であるとは言え)
少女(『書の街の代表者』が口にした言葉)
少女「……私には、責任を取る『義務』がある、と仰る、のですね」
王「…… ……はい」
王子「…… ……」
少女「手荒な、事……は……」
王「『理不尽に、力に訴える事』等はしないと約束いたします」
351 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:50:45.71 ID:GhctEEdIP
王子「…… ……」
少女「…… ……」
秘書「やめろ! やめさせろ、少女!」
秘書「何の権限があって……!」
王「……貴女は。貴女が、代表者でしょう、少女さん」
少女「……お願い、致します」
秘書「少女ぉおおおお!!」
ガシャン、ガシャ!
母親「あははは、アハハハハハ!」
少女「!」ビクッ
王子「…… ……新王」
王「承知致しました……『騎士団長』、衛生師に指示を」
王子「!」
王「貴方は、このままこの街に居て下さい。僕の就任式もあります」
王「現場の指示は、衛生師に任せましょう」
王子「……おい……ッ」
王「補佐を、引き受けて下さるんでしょう」
王「戦士兄様も、僧侶さんの身体の事もある」
王「……二人は今日、港街に向かっているはずです」
王子「…… ……」
王「お戻りになられたら、彼らにもお願いしたいことがある」
王「僕一人では、身体が足りません。勿論……少女さんの事もあります、しね」
王子「…… ……」
王「騎士団長」
王子「…… ……了解、しました」
王「ありがとうございます…… ……では、少女さん」
少女「え……」
王「……行きましょうか。余り時間は無いと思いますけど」
王「僕は、ずっと貴女と、ゆっくりと話したいと思っていたんです」
352 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/02(月) 22:51:58.79 ID:GhctEEdIP
限界(・△・)
ねますー
新王の黒い感じが好きだ!たまらん!
354 :
名も無き被検体774号+:2013/12/03(火) 08:05:41.33 ID:g4L1cSoj0
およよー
355 :
名も無き被検体774号+:2013/12/03(火) 11:18:00.64 ID:hS4cYu0ri
保守
356 :
名も無き被検体774号+:2013/12/03(火) 16:40:01.00 ID:+O9xibb+i
新王クール…ベリークール…
保守
358 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2013/12/03(火) 22:18:56.43 ID:j3oubVin0
新王今までの登場人物の中で一番好きだわ
保守
360 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 09:57:15.07 ID:uOuD80j9P
……
………
…………
癒し手「ボロボロ、ですね」
側近「……人の住まない場所は、な」
癒し手「…… ……」
キィ…… ガタン!
癒し手「キャッ」
側近「癒し手!」
癒し手「……だ、大丈夫です。ドアが……」
側近「蝶番が外れているな……怪我は無いか?」
癒し手「はい。驚いただけ……ですから」
側近「……手を離せ……ん」
ギギギ……キィ
癒し手「……床も、腐ってます、ね」
側近「ああ……入らない方が良さそうだ、が」
癒し手「……あの、小屋」
側近「ん?」
癒し手「いえ……放置されていた期間は比べものにはならないのでしょうけど」
癒し手「私達が住ませて貰って居る、あの小屋は……」
癒し手「きちんと、管理されていた、んですね。弟王子様か、騎士団長様か……」
側近「……掃除をしに、入るだけでも違うんだな」
癒し手「家を、建物を作る木にも、土にも……命がありますから」
癒し手「手をかけられている、と言うだけで……喜ぶのかもしれません」
癒し手「あそこには、確かに『愛』もあった」
側近「黒い髪の魔王の母君様の……か」
癒し手「でも……ここは。これ、では」
側近「…… ……」
361 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:02:35.02 ID:uOuD80j9P
癒し手「…… ……」
癒し手(祭壇も、ぼろぼろ……前に、旅の途中に来た時は)
癒し手(……これほど、では無かったのに)
側近「……癒し手。娼婦様の像を置いて、戻ろう」
癒し手「……そう、ですね」
側近「貸せ……お前は入るなよ。足を取られたら困る」
癒し手「……はい」スッ
側近「…… ……」
スタスタ
側近「何処に?」
癒し手「その、祭壇の上……置けます?」
側近「……落ちない、とは思うが」
癒し手「何れ……此処と同じくして」
癒し手「……朽ちて、行くのでしょうか」
側近「…… ……」コトン
癒し手「もう一度……裏庭の、お墓に手を合わせて、帰りましょうか」
側近「あっちも……荒れ放題、だったな」
癒し手「出来るなら……少しでも、綺麗にして差し上げたい、けれど……」
側近「……お前がやれというのならば」
癒し手「わからないんです」
側近「え?」
癒し手「……弔いは残された者の自己満足……とも思います」
癒し手「このまま、自然の摂理に任せ」
癒し手「……土に、空に、世界に……還って行かれるに任せる方が」
癒し手「良いのか……と、か」
側近「…… ……」
癒し手「……お待たせ致しました、娼婦様」
癒し手「港街の神父様も。女神官様も……」
側近「…… ……」
362 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:09:37.08 ID:uOuD80j9P
癒し手「……ここで、結婚式……なんて」
癒し手「夢の又夢、でしたね」
側近「癒し手……」
癒し手「…… ……行きましょう、側近さん」
側近「…… ……」スッ
癒し手「側近さん? どうしたんです……」
側近「あそこ……」
癒し手「? 天井?」スッ
側近「……屋根が落ちて、光が差し込んでるから」
癒し手「ああ……」
側近「娼婦様の像に当たって、綺麗だな、と思って」
癒し手「……はい。きっと、戻れて……お喜びに、なってると……」
側近「…… ……ああ」
側近(娼婦様は……紫の魔王の傍に、行きたかった、んではないのだろうか)
側近(……癒し手の想いに、水を差すような事は言いたく無い……が)
側近(…… ……否。これも、それも……生者の自己満足だ)
側近(癒し手も……多分、解って居るのだろう)
癒し手「……行きましょう。今日は久しぶりに、宿を取るのでしたよね?」
側近「ああ。明日の船に拾って貰う予定だ」
側近「……街を見て回って、食事をして……のんびり、眠ろうか」
癒し手「…… ……はい」
……
………
…………
スタスタ
少女「……新王様」
王「はい? ああ、ご免なさい。歩くの早いですか?」
少女「あ、いえ……あの、その。手、を……」
王「……厭ですか?」
少女「…… ……」
王「お待たせしました。ここ、です」
少女「え……ま、あ……ッ」
363 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:14:37.18 ID:uOuD80j9P
王「……お祖母様、が。作らせていたそうです」
王「本人は花には疎いと言って居られたようですが」
王「……父も、良く僕と母を連れて、此処に散歩に来ていました」
少女「綺麗……!」
王「貴女は、存じているかどうか解りませんが」
少女「?」
王「伯父上の前の……初代の騎士団長です」
少女「……女剣士さん、ですね」
王「ああ、ご存じでしたか」
少女「名前、はですけど」
王「……そうですね。僕も……それに近い程度の間柄、ですが」
王「女剣士様も、花を愛でるのがお好きだったそうです」
王「お祖母様と同じく、詳しくは無いけれど、と」
少女「……どうして、これを私に見せたいと?」
王「うーん……短絡的で申し訳無いのですけど」
王「女性は、皆こういう物が好きなのかな、と」
少女「…… ……」
王「母も、今でこそ部屋から出ては来ませんけど」
王「幼い頃は良く、此処で父と……ああ、さっき言いましたね」
少女「…… ……仲の良い、ご家族だった、のですね」
王「そ……うですね。否定はしません」
少女「え……」
王「お父様はお忙しい方でしたからね」
王「……戦争が、始まってからは特に」
少女「…… ……」
王「……幻滅、しましたか?」
少女「……何処から、計算していらっしゃったのです?」
王「…… ……」
少女「嫌味……とか。その。責めるつもりは……ご免なさい」
364 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:28:03.89 ID:uOuD80j9P
王「……色々、想定はしましたよ。結果的に言うと」
王「随分と、都合良く動いてくれたなぁ、とは思いました」
少女「…… ……」
王「確かに、計画……計算は狂いました。ですが、僕に取っては悪く無い物でした」
王「……あえて言葉は選びません。秘書がああして」
王「短絡的に、感情的に動いてくれたおかげで」
王「……旧貴族達を反乱の罪に問うことも出来た」
少女「…… ……」
王「彼女自身も含めて、ね」
少女「……それは……仕方ありません」
王「……貴女は、あの時……初めて会った時に比べて」
少女「?」
王「変わりましたね」
少女「え……?」
王「勿論、僕は……今も。貴女の為人を殆ど知りませんけど」
王「……でも、僕は代表者が貴女で良かったと思っています」
少女「それは……お姉様や、旧貴族達に……少なからず、私が」
少女「劣等感を抱いているから?」
王「…… ……」
少女「貴方の言葉を借りるなら。『御しやすそう』だから、ですか」
王「……近い思考をしている方が、政策としてはやりやすいでしょうね」
王「確かに。でも……そんな事じゃありません」
王「秘書は、『代表者』だ『少女』だと偽りながら」
王「ご自分の欲を唯一と、考えて要らした」
王「母親の事だってそうです。崇め奉り、盾として剣として」
王「自分達を……自分を、己の思う都合の良い環境に置いてくれるだろう」
王「道具の様にしか、思っていない様に……思えました」
365 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:34:43.23 ID:uOuD80j9P
少女「…… ……」
王「保護を願うのかと問うた時、秘書は己の身だけを案じ」
王「欲が満たされるだけを願って、肯定した」
少女「……変わりません、私だって」
少女「あの街に戻れば、私は旧貴族達に何をされるか……解りませんから」
王「でも、貴女は少しかも知れないけれど。街の代表者としての」
王「自覚を垣間見せられた……勿論。それが、演技か否か……なんて」
少女「!」
王「僕にはわかりませんけどね。でも……その思案の余地があると言う事は」
王「貴女は、秘書の様に馬鹿では無いと言う証拠でもある」
少女「……本当に、言葉を選ばない方ですね」
王「素直な気持ちを聞きたいから。僕も、隠し事や飾った言葉は使いません」
少女「…… ……」
王「……貴女が、あの書簡にあったとおり。僕の戴冠式に来てくれて」
王「こうして、お話しする事ができた時に」
王「貴女が望むのであれば、僕は母親に会わせて差し上げようと思っていました」
少女「!」
王「貴女も望んで居られたでしょう?」
少女「……ですが。私が、姉と同じように、母親様をどうにか救い出して……と」
少女「案じていたとは……貴方は、お考えにならない筈が無い」
少女「なのに……ですか?」
王「はい。貴女に、代表者としての自覚が無く……秘書と、同じであるのなら」
王「……ここから先の話をするのは、諦めようと思っていたのです」
少女「……?」
王「ですが、貴女は……先も言いましたが」
王「……貴女が、代表者で良かった、と。僕に安堵をくれた」
王「ますます、貴女が好きになりました」
少女「!?」
366 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:41:01.27 ID:uOuD80j9P
王「有り体に言えば一目惚れ、です」
王「……年も変わらないだろう、今まで、苦労もしてこなかっただろう」
王「小さな少女が…… ……まあ、お話を聞く限り」
王「その、紅い瞳でご苦労も、あったのでしょう。が」
少女「…… ……」
王「一生懸命、緊張と不安を抑え、しっかりしよう、しなければと」
王「憂いた瞳で頑張っていらっしゃるのを見て」
王「可愛いな、と思いました」
少女「あ、あの……新王様!?」
王「……この先は、誰にも話していないんです。伯父上にも」
少女「新王様!」
王「『始まりの国の新王』と『書の街の代表者』としての」
王「政の上でも、貴女とならばどうにか、美しい世界へと導いていけそうな」
王「その為に、頑張って行けそうな気もします。でも……」
少女「…… ……」
王「それだけでは、無く。人生のパートナーとして」
王「僕と、結婚して下さいませんか、少女さん」
少女「え!?」
王「……勿論、すぐに、なんて言いません」
王「考える時間も必要でしょうし、それ以上に」
王「僕の事を知って貰いたい気持ちも、貴女を知りたい気持ちもあります」
王「その時間も、必要です」
少女「…… ……貴方の、その願いが叶えば」
王「……はい?」
少女「この国と、書の街の未来も盤石……と、仰りたいのですか」
王「……否定は、しません。出来ませんね」
王「でも、僕が貴女を愛おしく思う気持ちは嘘じゃ無い」
王「……旧貴族達は反発するでしょうね。否。書の街の人の中にも」
王「少なくは……無いでしょう。支配だなんだと、不安を煽りもするでしょう」
367 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:47:51.03 ID:uOuD80j9P
王「伯父上や騎士達……この国の人々も。口さがなく……」
少女「それが解って居ながら、どうして!?」
王「……言い方は悪いですが、未来の為でもありますから」
少女「…… ……」
王「で、でも、勿論それだけじゃありませんよ!?」
少女「……私を、好いて下さって居る、と」
王「……はい。貴女が、好きです。少女さん」
少女「…… ……」
王「僕も……人間ですから。欲だけでとは……思いたくありませんが」
王「……そういう部分があるのは勿論、否定はしません」
王「僕は、貴女が良い」
少女「……あ、あの」
王「父と母は、政略結婚……では無いですが」
王「恋愛を経て結ばれた関係ではありません」
少女「え……」
王「愛し合っていたと思います。父は母を大事にしていたし」
王「母も、大人しい女ですが、父の身を何時も案じていた」
王「一緒に居た時の二人は、本当に幸せそうでした」
王「世継ぎの問題、等もあったんでしょうけど」
少女「…… ……」
王「僕も、それで良いと思ってました。貴女に会うまでは」
王「……でも、『王』は僕だ。伯父上にも言われた」
王「何もかもを、お父様に倣う必要は無い」
少女(この人……は)
少女(……どうして、こんなに辛そうな顔で……話す、んだ)
少女(反発……なのだろうか。先の、騎士団長との会話を聞いても……)
少女(……似ている、のか。否……私とは、違う。だが……)
王「……他意は無い。純粋に貴女を想っているのだと言っても」
王「こんな会話の中では、信じられないでしょうね」
少女「……い、え……」
王「信じて下さる、のですか?」
少女「……御免なさい。良く解りません」
368 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/04(水) 10:49:11.39 ID:uOuD80j9P
おーむかえー!
乙!いってらー
370 :
名も無き被検体774号+:2013/12/04(水) 10:55:09.98 ID:8zu/LEmni
テイラー
371 :
名も無き被検体774号+:2013/12/04(水) 19:31:10.43 ID:LVSTngfPi
保守
372 :
名も無き被検体774号+:2013/12/04(水) 22:17:30.92 ID:pK7Sim770
373 :
名も無き被検体774号+:2013/12/05(木) 07:24:39.47 ID:ZqvIR3/S0
ほ
ほしゅほしゅ
375 :
名も無き被検体774号+:2013/12/05(木) 20:04:46.75 ID:vgJpnLA9i
保守
376 :
名も無き被検体774号+:2013/12/05(木) 21:18:41.93 ID:FwV2QlaH0
すこし
377 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/06(金) 01:18:43.23 ID:wo0CycAmP
残業続きで死んでる(・△・)
今日は寝る!
378 :
名も無き被検体774号+:2013/12/06(金) 01:40:43.06 ID:GV+YSUeSi
んじゃ俺もねるは
6時に起こして
379 :
名も無き被検体774号+:2013/12/06(金) 01:58:57.39 ID:2JX0w+I90
あげとこう
380 :
名も無き被検体774号+:2013/12/06(金) 02:15:58.96 ID:BljwDDIq0
俺も
381 :
名も無き被検体774号+:2013/12/06(金) 02:26:16.19 ID:O7EWPKeQi
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2013/12/02(月) 23:06:36.27 ID:Gs/U8pvri
子猫可愛いよねw近所にいるのよ可愛い子猫がさ、多分飼われてるのかな?たまに家の前にいるんだよなw
可愛いくてさ、本当に癒しだよw
この前、初めて恐る恐る近づいて触ったの、したら子猫の方から頭を俺の手に押し付けてくるのよw
本当にしねって思った。すぐに首根っこつかんでアスファルトに叩きつけてやったわwカエルみたいな声だしてたw
そんで大きな石をもって子猫の頭の上から叩きつけたのよ。
グチャグチャの脳汁?っていうのかな?トロトロトロトロ石のしたから湧き出してきてさwああー、思い出したダケで勃起しちゃうよぉw
上げてるからこういうのくるのはしょうがないよな…見たくなかったけど…
383 :
名も無き被検体774号+:2013/12/06(金) 13:24:24.06 ID:nHzeB2GR0
il||li (つω-`。)il||li
ほしゅー
385 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/07(土) 00:16:22.71 ID:Al7ekfdd0
か、帰って寝る( ゚д゚)
386 :
名も無き被検体774号+:2013/12/07(土) 01:10:44.14 ID:KoKJM61Oi
おやすみスコーン
*゚゚・*+。
| ゚*。
。∩∧∧ *
+ (・ω・`) *+゚
*。ヽ つ*゚*
゙・+。*・゚⊃ +゚
☆ ∪ 。*゚
゙・+。*・゚
いい夢見ろよ
387 :
名も無き被検体774号+:2013/12/07(土) 01:33:05.81 ID:OlyUwYVhi
>>386 が荒らしっぽいとか自動あぼんされてた
世知辛い世の中になったもんだ
>>387 …送った本人が一番吃驚してる
結構ショックだ…
389 :
名も無き被検体774号+:2013/12/07(土) 12:39:08.58 ID:A3/B+I9zi
>>388 ちんくるとかAAを自動であぼんにする設定とかになってる
単純に文字数や使われる記号のパターンで判断してるだけで、文意や意図を悪だと判断してあぼんにしてるわけではないから気にすんな
390 :
名も無き被検体774号+:2013/12/07(土) 17:56:07.44 ID:UmP8FljBi
391 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/07(土) 23:37:41.07 ID:9XYSl3uAP
王「……当然、ですね。何を……期待しているのでしょうか、僕は……」ハハッ
少女「……貴方は、何故」
王「…… ……え?」
少女「姉に、貴方が優れた加護を持っている……と……」
王「…… ……父も、伯父上も」
少女「……?」
王「戦士兄様も。 ……この、国を作ったお祖母様、お爺様も」
少女「…… ……」
王「誰も、優れた加護など持っていなかった」
少女「…… ……」
王「貴女達の言う『血』 ……本当に関係無いのですね」
王「……僕が気がついたのは偶然です。初めて貴方に会った時」
王「船の上での、魔物との戦いの中で。騎士達は必死に僕を守ってくれた」
王「勿論、伯父上もね……今、言われている通り」
王「魔物達の力は弱っている。放たれた風の魔法が僕の頬を掠めたときに」
王「怪我も、痛みも無かったのは、その所為だと思いました。最初は」
少女「…… ……」
王「ああ、ご免なさい……何故告げたのか、ですね」
王「……許せない、と思ったんです。腹が立ちました」
少女「え?」
王「下らない血だ、何だと。理不尽に貴女を蔑み、虐げてきたであろう」
王「あの女に絶対的な屈辱を与えてやりたかっただけです」
少女「……新王、様」
王「甘い汁を吸えるだろうと目論んでいた矢先、案内された先は牢屋の暗くて」
王「狭い、檻の中。これからその秘書の言う、甘い汁を吸えるだろう選択肢を」
王「与えられるであろう、少女さんの目の前で」
王「……絶対的な恥辱を味会わせてやりたかったんです」
少女「!」
392 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/07(土) 23:45:12.75 ID:9XYSl3uAP
王「……伯父上ならば、貴女を呼ぶだろうと思いましたから」
王「呼ばなくても構わなかった、んですけどね」
王「悶々と絶望と屈辱を抱えた侭、あそこに居れば」
王「何れ、母親と同じ道を辿るでしょうから」
少女「……ッ」
王「でも貴女は、来た……僕に優れた加護があることが」
王「貴女の自尊心を満たすことは無いのかも知れませんけど」
少女「……お返事は、ほ、保留にして頂けるのでしょう」
王「勿論ですよ。でも……可能性が0で無い限り」
王「貴女の口と、心と体で全力で僕への拒否を示さない限り」
少女「!?」
王「……ああ、ご免なさい。無理に何かをしようなんて思っていませんよ」
王「えーと。 ……まあ、叶わないのだと、僕が思い知らない限り」
王「諦めません、と言いたかっただけです」
少女(こ、の人…… ……は……ッ)
王「『願えば叶う』 ……お父様が良く、口にしていらした」
王「お祖母様の口癖だったと聞いています」
王「……少女さん」スッ ……ギュッ
少女「あ……ッ は、離して……ッ」グイッ
王「……どうぞ。本気で厭なのならば、突き放して下さい」ギュウ
少女「…… ……ッ」
少女(痛い……ッ こんな、細い腕で、どうして、こんなに……ッ)
少女(抱きしめる力が、強い……!!)
王「……でも。出来れば拒否はされたくない」
王「僕の……傍に居て下さい。何でも叶えます。貴女が願うなら」
少女「そ……ッ それが、『魔導国の再建』だと、言ってもですか!?」
王「『本心から貴女が望んで居る』のであれば」
少女「な……ッ !?」
王「……即答できないのですか」
少女「あ、貴方は『始まりの国の王』だろう!?」
王「……それが、答えと受け取ります」グイッ
少女「あ……ッ !?」
王「…… ……」チュ
少女「!!」
393 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/07(土) 23:48:39.98 ID:9XYSl3uAP
王「貴女は、僕の今の言葉に食らいついては来ない」チュ、チュ
少女「し、ん……ッ お……ッ ……ッ ンッ」
王「それが貴女の答えだ」チュ……ッ
少女(! 舌、が……ッ)
王「花でも、ドレスでも。何だって」チュ、チュ……ッ
少女(……あ、ぁ)ハァ……ッ
王「……だから。僕を、愛して下さい」グッ
少女「きゃ、ァ……ッ !?」 グラ……ッ ドサッ
少女(痛ッ ……ッ)
王「少女さん……ッ」チュ…… チュ
少女「い、や……ッ や、め……ッ ……ンッ」
王「……お願い。拒否しないで。僕だけを……ッ」スッ
少女「ぁ、アッ いや、ィ……ッ」
王「少女さん……ッ」
少女「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
……
………
…………
394 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/07(土) 23:50:22.94 ID:9XYSl3uAP
あ、御免、無理orz
明日も早いから、寝る……
395 :
名も無き被検体774号+:2013/12/07(土) 23:56:48.60 ID:0Tusq26c0
BBA乙
新王怖い…
インキュバスを思い出した
397 :
名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 02:23:31.30 ID:DdV+p5dyi
光も闇もあったもんじゃねぇな…
……人はどこまで堕ちて行けるのか
スコーンが鬱エンドのUPを始めマスタ保守
どうも優れた加護を持つ人間はその代償に性格が破綻するようだな。
確かに、今まで優れた加護持ちで人格まともだったのは前ループの魔法使いだけだな
400 :
名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 12:48:53.33 ID:ga4JvK0r0
ループは脱しても新鬱エンドなのか
新王様怖いけど、かわいそうでなんか切ない
加護はあるけど属性で軽んじられて来た少女が代表者になったのは、
経緯はさておき適切だったんだな。
別の方向に気の毒になって来たけど。
403 :
名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 17:54:04.70 ID:DdV+p5dyi
>>402 少女は優れた加護は無いんだっけ?
……やっぱり少女というと使用人の転生前を思い出してしまうからなぁ
紅い眼の少女とかどうだろう(提案)
あ、いや優れた加護あったか
でないとあの街では蔑まれるもんな
連投失礼
>>404 少女(使用人)は優れた加護が無いから、娼館に居たんじゃ無かったっけ?
>>405 いや、書の街の代表の少女の事です
ゴッチャになってスマソ
>>405 確かに元少女/使用人は優れた加護がなくて娼館にいた。
現少女には炎の加護はあるから上流階級に属していたが、
雷至上主義のせいで扱いが悪かった。
名前が共通だから混乱するよなっていう話。
408 :
名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 21:23:11.85 ID:DdV+p5dyi
>>407 それが言いたかった!
代弁感謝‼︎
保守
410 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/08(日) 22:56:38.18 ID:P6GTYpsq0
かーえーる!!
411 :
名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 23:30:35.61 ID:DdV+p5dyi
お疲れスコーン
つ旦
辛かったら寝とけよ
チャンと待ってるからさ、気長に気楽に行こうぜ
なんならスコーンが休みの日限定でも俺は構わん
>>409 お気になさらずに〜
つ旦
412 :
名も無き被検体774号+:2013/12/09(月) 08:30:50.60 ID:L6Wm6fhR0
ぐっもーにん
413 :
名も無き被検体774号+:2013/12/09(月) 11:56:35.30 ID:iAOjmdXMi
ほしゅ
414 :
名も無き被検体774号+:2013/12/09(月) 21:29:20.66 ID:kEWo18ABi
ほ
なるほど支配者側ではあるが虐げられて来た身でもあるのね
416 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/09(月) 23:01:55.16 ID:74baJmIh0
やっと帰れるー( ゚д゚)
師走は忙しいね。
保守してくれてありがとう。
BBAは無理せず、休みますわ…( ゚д゚)
ほんま、年考えて仕事入れるべきやった…
417 :
名も無き被検体774号+:2013/12/09(月) 23:14:59.73 ID:T6POIGUki
ゆっくり休みやー
418 :
名も無き被検体774号+:2013/12/10(火) 00:45:07.49 ID:8hMpAzLmi
お疲れスコーン
今更だが女剣士のビジュアルは幻想水滸伝のバレリアで脳内再生されてた
保守
ほ
420 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 10:01:57.02 ID:4WfmF+0v0
おはよう!
用事済ませて帰ったら
今日はかけそうだ!
後ほど!
421 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 13:24:26.23 ID:CwSetPtvP
衛生師「……成る程ね、了解」
新米騎士「書簡もお渡ししましたし、私はこれで」
衛生師「何言ってるの、君も行くんだよ?」
新米騎士「え?」
衛生師「貴族共を捕らえる……秘書は檻の中だし」
衛生師「少女は新王様の庇護の元……僕は」
衛生師「戴冠式までには戻らないと行けないし」
衛生師「時間が無いよ」
新米騎士「わ、私も宜しいんですか!」
衛生師「……まあ、少々手荒な事になるだろうしねぇ」
衛生師「数は多いに越したことが無い」
新米騎士「え……でも」
衛生師「……不必要に暴力には訴えないよ?」
衛生師「ただ、向こうから手を出してきた場合は別」
新米騎士「……ま、まあ……それは、そうですけど」
衛生師「……僕たちは『事実』を伝えに行くんだよ」
衛生師「秘書の所行と、今の状況をね」
新米騎士「で、ですが……そんな、刺激したら……!」
衛生師「うん。多分激昂するね。何するか解らないね?」
新米騎士「!」
衛生師「先に手を出しちゃ駄目だよ。魔法部隊に編成急がせて」
衛生師「指揮は僕が執る」
スタスタ
新米騎士「…… ……」
新米騎士(戦争は、終わった。終わった……んだよな?)
新米騎士(……貴族達、反乱分子を捕らえてしまえば)
新米騎士(本当に……平和になるのか?)
……
………
…………
王「どうしたんです、伯父上。こんな朝早くに」
王子「おはよう、王」
王「……おはようございます」
王子「今日の昼過ぎには、戦士達が戻って来る」
王「はい。お聞きしていますよ」
422 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 13:31:47.85 ID:CwSetPtvP
王「それにあわせて、少女さんを紹介するつもりです」
王子「……騎士団の解散の発表も、だろう」
王「はい」
王子「……それについては文句など無い……だが、昨日」
王子「あの後……何してたんだ?」
王子「その話を詰めようと思っていたんだが」
王「…… ……」
王子「お前と少女は、揃って姿を消してしまった、から」
王「少女さんと、ずっと話し合っていました。今後について」
王子「…… ……」
王「衛生師が上手くやってくれていると思います」
王子「……まあ、あいつなら大丈夫、だろうけど」
王「はい……伯父上も、次期騎士団長を彼に、と」
王「そのつもりだと、仰って居たでは無いですか」
王子「そうだな。適任だとは……今でも思っている」
王子「あいつは実践向きじゃ無いが、頭は切れると思うし」
王子「……『騎士団』で無くなると言うのであれば、尚更だ」
王「はい……それと」
王子「ん?」
王「戦士兄様と、僧侶さんにも、結婚式を挙げて頂きたいと思っているんです」
王子「え?」
王「港街の教会……随分、思い入れもある様でしたし」
王「あそこで、良いのではないのでしょうか?」
王子「……あの場所は、随分放りっぱなしだ」
王子「それに、墓もあると聞いているぞ」
王「僧侶さんの願いならば、国をあげて叶えてあげることも出来ます」
王子「……どうした?」
王「え?」
王子「……お世辞にも、お前が……戦士を、慕っているとは……」
王「……まあ。実際、殆ど一緒に居ることなんかありませんでしたからね」
423 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 13:38:27.00 ID:CwSetPtvP
王「でも、折角……ですから」
王子「…… ……」
王「これから、平和になっていこうかと言う時に、希望は多い方が良い」
王子「……『勇者と旅立ち、戻った者』だし、と?」
王「否定はしません。出来ないでしょう?」
王子「…… ……」
王「……母には、もう伝えました」
王子「……?」
王「まだ、返事は貰っていませんが」
王「僕は、少女さんにプロポーズしました」
王子「…… ……え!?」
王「書の街で、一目会ったときから、好きでした」
王「……だから」
王子「少女、は…… ……な、何と?」
王「正式なお返事はまだです、と言いましたよ」
王「……でも、昨日は一緒に、過ごしましたから」
王子「!」
王「なので……」
王子「…… ……」
王「…… ……まさか」
王子「え?」
王「反対はしませんよね? 伯父上?」
王子「し、しかし……ッ」
王「『世界』の為です」
王子「?」
王「これから、僕たちが築いていく美しい世界」
王「始まりの国と、書の街が手を取り合って行けるのならば」
王「……反対される理由が、僕にはわかりません」
王子「…… ……愛し合っている、と言うのであれば、止める理由、等……」
王子「し、しかし……」
王「……僕の両親だって、最初は愛から始まった訳じゃ無い」ボソ
王子「え?」
王「いえ……とにかく、伯父上は戦士兄様と僧侶さんに、伝えて下さい」
王「援助は惜しみません……と」
424 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 13:42:45.54 ID:CwSetPtvP
スッ
王子「お、おい?」
王「少女さんが待っていますから。失礼します」
王「……戦士兄様達が戻られたら、呼んでください」
王子「王! ……ッ おい!?」
スタスタ、パタン
王子「…… ……」
……
………
…………
癒し手「…… ……」
戦士「……どうしたんだ、あいつ」
王子「俺が聞きたいよ……」ハァ
戦士「少し、様子がおかしい……と思いはしたが」
戦士「……否。それほどあいつを知っている訳では無いな」
王子「正直、それは俺も同じだ」
癒し手「騎士団長様も?」
王子「……俺は国にずっと居た訳じゃ無いし」
王子「弟王子にしてもそうだな。政からは遠ざけていた節はあったが」
王子「……新王は、いつもあいつの母と本を読んだり、して過ごしていた」
王子「って言う……イメージがある」
癒し手「あの……新王様の、お母様……は?」
王子「良くも悪くも大人しい女なんだ。身体が弱い、とかでは無いが」
王子「……弟王子は、中々子供が出来なかったからな」
王子「プレッシャーもあったのだろうが……」
王子「殆ど、部屋からは出てこない」
425 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/10(火) 13:44:24.80 ID:CwSetPtvP
おむかえー
いってらー
ほしゅ
427 :
名も無き被検体774号+:2013/12/10(火) 15:42:58.45 ID:mVk/2EJT0
やっと追いついた
ほす
428 :
忍法帖【Lv=24,xxxPT】(1+0:8) :2013/12/10(火) 17:26:59.68 ID:CLo2tSv90
ほ
429 :
名も無き被検体774号+:2013/12/11(水) 00:54:20.76 ID:yvRL/H1a0
ミッドナイトほしゅ!
430 :
名も無き被検体774号+:2013/12/11(水) 08:11:52.88 ID:7/Ec9bv40
ほ
431 :
1@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 08:33:56.26 ID:/xYU/nPp0
おはよう!
午後から頑張るよー!
432 :
名も無き被検体774号+:2013/12/11(水) 12:29:48.63 ID:ouJmrs6Yi
時間ができたので拒否権は〜から読み直してるんだが
初期三部作と私が勇者に〜以降はパラレルでいいのかな?それともif?
まぁ何にせよ面白いからいいか
ガンガレスコーン
433 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 14:41:23.45 ID:DqOkCxzvP
癒し手「ご自分の……ならば解るのですけれど」
癒し手「……否。あの教会を又、と言うのも……」
癒し手「嬉しくは……あるのですが」
王子「解らなくは無い。未来の為に……とな」
王子「……そこは、良いんだ。必要か否かと問われれば」
王子「無論、皆喜ぶだろう」
側近「……唯一帰還した勇者の仲間、か」
王子「だが …… ……」
側近「そこから先を告げる必要などは無い……新王にも……」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……」
側近「だが、整備すると言っても、どうするんだ」
側近「……あそこには、墓もある」
王子「癒し手」
癒し手「は、はい」
王子「……港街の新婦と、女神官……だったか」
王子「彼らの墓を、小さな村のあの丘の……場所に移しては駄目だろうか」
癒し手「え!?」
王子「勿論、丁重に取り扱う。身体が大丈夫なのであれば」
王子「戦士と共に立ち会ってくれても良い」
側近「……俺は労働要員だろう」
王子「……まあ」
癒し手「…… ……」
王子「……こんな事、言って良いのかどうか解らんが」
王子「例え、あそこを修繕し、結婚式を行ったとして」
王子「その後……の、保証は無い」
癒し手「……まあ、それはそうでしょうね」
癒し手「側近さんと二人で見てきましたが、教会を管理する人も」
癒し手「居ないのでしょうし……」
434 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 15:21:34.74 ID:DqOkCxzvP
王子「……手入れ云々で言えば、あの丘の上にしたって」
王子「誰が手をかける訳でも無いが……」
癒し手「……あそこには、娼婦様も眠っていらっしゃいます、から」
癒し手「港街の神父様も、お喜びにはなると思いますが」
側近「……しかし、勝手に決めて良いのか?」
王子「勿論、新王に相談はするさ」
王子「……建物は、何れ朽ちても……あの丘の上ならば」
王子「姫の為に力を、使用人が移したとは言え」
王子「……多少の、加護とやらは残っているだろう」
癒し手「許可が下りるのならば、私は構いません」
癒し手「……いえ、そもそも、私に決定権がある訳でも……」
側近「ちょっと待て。その結婚式とやらは、決定なのか?」
王子「……提案してきた本人に聞いて見ろ。そろそろくるだろう」
コンコン、カチャ
王「すみません、お待たせしました」
王子「……少女は?」
王「少し、体調を崩して眠っています」
癒し手「まあ……私で良ければ、見ましょうか?」
王「いえ、大丈夫です。僕も回復魔法は使えますし」
王「僧侶さんは、ご自分の身体を第一に……どうか」
側近「新王、港街の……」
王「はい。結婚式の話ですね」
435 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 15:31:13.12 ID:DqOkCxzvP
側近「……い……僧侶が望むのならば、俺は構わないんだが」
側近「無駄な投資で無いとは決して言えないぞ」
王「……ですが、この国でするのも、少し違いませんか?」
王子「!?」
癒し手「……確かに、私達はずっと此処に住ませて貰うつもりではありません」
癒し手「騎士団長様にも伝えてありますが、子供が産まれればまた、旅に出るつもりです」
癒し手「……式に固執するつもりは無いのです。ですから……」
王「ですが、『戻って来た勇者の仲間』が結婚し」
王「その子孫……ましてや、戦士兄様は、伯父上の子供です」
王「だから……」
王子「おい、ちょっと待て……さっきの『この国でするのは違う』と言うのは何だ?」
王「……人々は、きっと期待します。『騎士団長の息子』が『この国で挙式する』事に」
側近「……騎士団は廃止するのだろう?」
王「ええ……ああ、言葉が悪かったのは謝ります」
側近「…… ……」
王「僧侶さんにとって、思い入れもある場所なのでしょう?」
王「丁度、良いかとも思ったんですが……女性は、そう言うのが好きな物でしょう?」
癒し手「…… ……」
王子「確かに、『勇者の仲間』が戻り、未来を担う『子供』を産むというのは」
王子「目出度いことだ。平和の象徴にもなる」
王「はい」
王子「それはお前も認めていたな。ならば、別にそこに制約など……」
王子「……なんて、言うか。危惧しすぎる必要は……」
王「『未来』は僕たちが作って行く物なのでしょう、伯父上」
癒し手「……私は、式は特に必要ありません」
王「……僧侶さん?」
癒し手「憧れはありますけれど、もう子供も居ますし」
癒し手「ただ、確かに……あのまま朽ちていくのは悲しいです」
王「…… ……ええ、ですから」
癒し手「でもそれは、建物に執着がある訳じゃ無いんです」
癒し手「……勿論、新王様の『人々に未来の希望を』と言うお考えも解ります」
436 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:04:13.61 ID:DqOkCxzvP
側近「僧侶?」
癒し手「……騎士団長様、先ほどのお話、私からお願いしても宜しいですか?」
王子「え? ……あ、ああ……まあ」
王「?」
癒し手「新王様、あの教会の裏手にはお墓があります」
王「ええ、聞いています……港街の神父と、もう一人」
王「あの教会に住んでいた方……ですね」
癒し手「はい。あの方達のお墓を、この国の近くの」
癒し手「小さな村の丘の上に、移動させて頂けないでしょうか」
王「……それは、意味はあるのですか?」
癒し手「…… ……」
王子「新王!」
癒し手「あの丘の上も、私に取っては特別な場所です」
癒し手「……そこで、戦士さんとの結婚の、誓いを立てさせて下さい」
王「…… ……」
癒し手「式、と呼べるかは解りませんけど。同じ大陸であるとは言え」
癒し手「国内ではありませんし……港街ほど遠くも無い」
王「……宜しいのですか、戦士兄様?」
側近「俺は何でも構わん。僧侶の望むのならば」
癒し手「……国として、負担には変わりないでしょうが」
王「わかりました」
癒し手「……ありがとうございます」
王「あの教会は、どうします?」
癒し手「許されるのであれば、朽ちていく侭に」
王「…… ……はい」
王「伯父上」
王子「な、何だ」
王「戦士兄様と僧侶さんの祝言の話と、騎士団の解体の話」
王「この後に、ふれを出そうと思っています」
王子「!? 団員達にはまだ何の説明も……!」
王「僕が説明します。解体とは言え、すぐには無理ですし」
王「腕の立つ者は、近衛兵として、残します」
王子「何……!?」
王「選定はお任せしますよ、取りあえず」
王「……衛生師にも、通達の書簡を託してあります」
王「就任式終了後、彼を近衛兵長として取り立てます」
王子「お、おい!」
437 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:12:32.69 ID:DqOkCxzvP
王「……引退の件、これにて承諾させて頂きます」
王子「お前、この間俺にはまだ補佐を、と……!」
王「ええ……お願い致します。『伯父』として」
王子「!」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
王「僕も忙しくなります。就任式の日に、お会い致しましょう」
王「どうぞ、ご自愛下さい……僧侶さん。戦士兄様も」
スタスタ
側近「待て」
癒し手「…… ……」
王「何でしょう」
側近「……少女、を紹介して貰える、んでは無かったのか」
王「……就任式の日には、必ず」
側近「…… ……」
スタスタ、パタン
王子「……ッ あいつ、何を考えて居るんだ!?」
癒し手「……酷く、不安定ですね」
側近「あんな性格してたか……?」
王子「……反発、しているんだろう事はわかる、んだが」
王子「否……俺……出しゃばりすぎ、なのか」
438 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:21:34.44 ID:DqOkCxzvP
癒し手「……悪く、言ってしまう様な、感じになりますけど」
癒し手「利用できる者は、利用したいのでしょうね」
癒し手「『勇者の仲間』として戻って来た私達の結婚式は確かに」
癒し手「未来への希望の光の一端になるんでしょうけれど」
側近「……俺は、『騎士団長の息子』だからな」
側近「そちらに期待をかけられるのは、怖い……か」
王子「……騎士団は解体されるんだ。それすらもあいつの案ではある」
王子「新王の言う様に、平和への道を歩いて行くのだという主張は」
王子「良い物だろうと思うが、近衛兵等としてしまえば」
王子「何が変わるというのだ!?」
側近「……書の街の出方を考えれば、まあ……必要無いとは言えん、が」
側近「反乱者を捕らえた、んだろう?」
王子「……衛生師という男に指揮を任せる様に通達した、迄は聞いている」
王子「確かに、俺は引退を告げた……が」
癒し手「……身を引いて良いのか、とお考えですか?」
王子「……年も年だ。引退しようと思ったことを、言った事を」
王子「後悔している訳じゃ無い。だが……」
王子「……否。お前達も、新王も……何時までも子供じゃ無いんだ」
王子「何時までも、面倒を見てやる必要も無い……んだが……」
王子「……次の魔王、の。黒髪の魔王の復活を考えると、な……」
癒し手「…… ……全て。お話しすべきだったと思います、か?」
王子「…… ……」
側近「新王は……あいつは、確かに、自分だけ仲間はずれの様だと」
側近「感じて……拗ねている様にも見受けられた、が」
側近「……どうも、それだけじゃ無い、っぽい、な」
王子「俺には、あいつが何考えてるんだかさっぱり解らん」
癒し手「……負けじと、意地を張っていらっしゃる様にも」
癒し手「見えなくは無い、んですけど……」
癒し手「……不安ですね。主に話に聞いただけ、ですが」
王子「……俺達と……自分達は違う、と必要以上に差別化をしたい様、だな」
側近「……『過去』と『未来』か」
439 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:36:59.57 ID:DqOkCxzvP
癒し手「それだけであれば、良いです」
側近「ん?」
癒し手「確かに、次代の勇者が……生きるのは、新王様達の時代」
癒し手「だけど……少女さんの為人も解りませんし」
癒し手「……お節介ですね。悪い影響が無ければ良いな、何て」
癒し手「ちょっとだけ……思っちゃいます」
側近「…… ……」
王子「……就任式、か」
側近「もう、すぐだな」
王子「俺も……行く。多分、騎士達は混乱しているだろう」
側近「……親父、気をつけろよ?」
癒し手「…… ……」
王子「……サンキュ」
パタン
癒し手「…… ……」
側近「どう、思う」
癒し手「わかりません……でも」
癒し手「焦って、居られるのでしょうね、新王様」
側近「……ああ」
癒し手「模索中、であられるだけなら…… ……ッ」グッ
側近「……癒し手!?」
癒し手「う……ッ」
側近「あ、き、気分が悪いのか!? 大丈夫か!?」
癒し手「……だ、大丈夫、です……悪阻、ですかね……これ……」
側近「……この間から思ってた、が」
側近「少し、腹が目立って来たな」
癒し手「……そ、うですか? 自分じゃ解りませんけど……」
側近「……少し、此処で休んで小屋に戻ろう」
440 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:56:58.03 ID:DqOkCxzvP
……
………
…………
后「…… ……」スゥ
魔王「……良く、寝てるな」ボソ
使用人「最近……本当に、よく眠られますね」ボソ
魔王「剣士は?」ボソ
スタスタ
使用人「……書庫に」ボソ
パタン
魔王「普通に喋っても、起きないとは思うけどな」
使用人「……まあ、一応、です」
使用人「でも……后様……心配ですね」
魔王「あれ……の、前なんだろ?」
魔王「今までも、寝ても寝ても眠い、とか言ってたぞ。機嫌も悪いし」
使用人「気のせいであれば良い、んですけどね」
魔王「……ん?」
コツン、コツン……
使用人「蒼い小鳥……癒し手様ですね」
使用人「ちょっと待ってね……」
カチャ…… ……ピィッ
441 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 16:59:43.66 ID:DqOkCxzvP
魔王「痛い、いてぇって……ッ」
魔王「何でこいつは何時も俺を突っつくかな……」
ピーィ……
使用人「魔王様、お手紙です」スッ
魔王「え、もう読んだの?」
使用人「……私は、後でしょう。先に小鳥に水とクッキーを……」
ピィ!
使用人「はいはい。お腹すいたね」クス
魔王「……順番とか、気にする事じゃないだろ?」
使用人「気分の問題です……すぐに戻ります」
スタスタ
魔王「……律儀、ってか、何て言うか」カサ
魔王「…… ……」
スタスタ
剣士「おい」
魔王「あれ、お前書庫に居たんじゃ無いのか」
剣士「ああ…… ……なんだ、それは」
魔王「癒し手からの手紙……定期便だな」
剣士「……ああ」
442 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 17:09:37.67 ID:DqOkCxzvP
魔王「……就任式もつつがなく終了。墓の移動も終わり」
魔王「側近と……あの丘の上で夫婦の誓いを立てた、んだそうだ」
剣士「……港街の教会は、手を着けない侭、か」
魔王「……結局、少女には会えずじまい、だとさ」スッ
剣士「読んで良いのか」
魔王「気にする必要無いって毎回言ってるだろ」
剣士「…… ……」カサ
剣士「后は?」
魔王「まだ寝てるよ……天気も悪いし」
魔王「別に、用事も無いさ、これと言った、な」
剣士「まあ……そうだが。癒し手はあの街で子供を産む、んだな?」
魔王「そうだろうな……おい、続きを読んでくれ」
剣士「途中で寄越したのか……?」カサ
剣士「……書の街の旧貴族達は始まりの国の地下牢に捕らわれた」
剣士「騎士団は解散し、騎士団長は引退。王の親衛部隊と言う名目で」
剣士「側用人に『衛生師』と言う男を取り立てた……だ、そうだ」
魔王「……前の手紙で、随分と癒し手が心配していたな」
剣士「……新王、か」
魔王「ああ……」
剣士「優れた加護を持っている、んだったな」
魔王「……お前、一度様子を見に行くとか言ってたが……」
剣士「……否。何度かの癒し手からの手紙の内容からして」
剣士「俺は、暫く……傍に寄らん方が良いだろう」
剣士「……定期的に手紙は寄越してくれるんだ。必要も無いだろう」
魔王「まあ、情報は得られるからな。少し……遅くはなるが」
魔王「……あれ、もしかしてもうすぐ産まれる、のか?」
剣士「どれぐらいタイムラグがあるのかは解らんが」
剣士「……流石に、早すぎないか」
魔王「そ、そうか…… ……解らん、しなぁ、こればっかりは」
魔王「后か使用人に聞いてみるか」
剣士「……それ以前に、あいつはエルフの血を引いているんだろう」
魔王「……そうだった」
443 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 17:14:16.50 ID:DqOkCxzvP
スタスタ
ピィィィー!
バタバタバタ……バシッ
魔王「ん?」
使用人「あ……ッ」
ピィ…… ……ッ
剣士「……嫌われたモンだ」
使用人「飛んで行ってしまいました、ね……」
魔王「元が癒し手、と思えば……仕方無いだろう」
使用人「私も、后様も魔族なんですけどね……魔王様に至っては魔王、だし」
剣士「船長の所に来た緑の小鳥には妙になつかれたんだがな」
使用人「……すみません」
魔王「謝る事じゃ無いだろ……って言うか」
魔王「思いっきり壁に激突したけど、大丈夫だったのか、あいつ……」
使用人「すぐに霧散……するでしょう。風を伝って癒し手様に戻ります」
魔王「……解ってても、不思議な感じだ」
使用人「如何でしたか、お手紙?」
魔王「まあ、何時もの定期連絡、だよ」
魔王「……そろそろ産まれんのかな?」
使用人「いくら何でも早すぎませんか?」
魔王「あ……やっぱそうか」
剣士「ほら見ろ」
魔王「わからねぇんだってば……」
使用人「……まあ、癒し手様、ですから。確かに未知数ですけど」
使用人「…… ……」
魔王「使用人?」
使用人「……何か、聞こえませんか?」
剣士「? ……否……」
ゥウ……
魔王「! 后の声!?」
444 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 17:30:17.19 ID:DqOkCxzvP
ダダダ……バタン!
魔王「后!?」
后「……うぅ、気持ち悪い……御免、使用人……ッ」ゥゥ
使用人「后様!?」
后「……あんまり、食べてない、から……吐く物、無い……ん、だけ ……ッ」
剣士「おい、魔王」
魔王「后!大丈夫か!? 水、水だな!?」
剣士「おい、って」
使用人「ああ、起き上がらないで……后様、まだ気持ち悪いですか?」
后「寝てたら、急に…… ……」
剣士「……子供、出来たんじゃ無いのか?」
后「え?」
魔王「え?」
使用人「え?」
剣士「…… ……何でお前達全員、それに思い当たらないんだ」
剣士「身に覚えが無い訳でも無いんだろう」
后「え、え!? でも……!」
使用人「……后様、あの……」
后「…… ……そ、そう言えば……来て、ない…… ……ッ」
ウェ……ッ
魔王「わー!?」
剣士「…… ……邪魔、だな。俺は」
魔王「后、后!!」
后「煩い、魔王! ……ッ ぅ……ッ」
使用人「き、着替えお持ちします!」
バタバタ……
剣士「…… ……」ハァ
スタスタ、パタン
剣士(……とうとう、か。否。もう……か)
剣士(産まれる迄、一年程…… ……)
剣士(……それから、15年程度)
445 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 17:32:31.72 ID:DqOkCxzvP
剣士(否……必ず、選ばれると言う保証は無い。だが)
剣士(……俺は、魔王を、倒すんだ)
剣士「必ず……ッ」
ウエェェエ……ッ
チョ、キサキ、ハナシテ、ダキツイテハカナイデ!
マオウサマ、モウソノローブデフイチャッテクダサイ!
エエエエエエエエエエエ!?
ドウセセンタクスルンデスカラ!
イヤアアア、キモチワルイー!
剣士「…… ……」
剣士(書庫に戻るか……続きを読もう)
スタスタ
446 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/11(水) 17:37:44.35 ID:DqOkCxzvP
お風呂とご飯!
書き手男だったらあまり描写ないよなぁ月のモノはww
448 :
名も無き被検体774号+:2013/12/12(木) 00:19:10.58 ID:8DTyKHME0
ていきほ
449 :
名も無き被検体774号+:2013/12/12(木) 11:53:25.49 ID:csCQeM5K0
女が書くと生々しいと思うのは俺が童貞だからですよねわかります
ほすゅ
451 :
名も無き被検体774号+:2013/12/13(金) 00:55:41.50 ID:ElXXjZiV0
ほしゅ
452 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/13(金) 01:57:32.60 ID:nSmTmt8oP
もーあかん、寝る(・△・)
453 :
名も無き被検体774号+:2013/12/13(金) 06:05:51.44 ID:ANqhnc5AP
おはよぅじょ
454 :
名も無き被検体774号+:2013/12/13(金) 12:10:33.51 ID:NYIL/XGOi
ほしゅほしゅ
455 :
名も無き被検体774号+:2013/12/13(金) 15:53:20.78 ID:NYIL/XGOi
ホッシュ
456 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2013/12/13(金) 20:26:32.17 ID:N5OqyrLe0
阿部慎之助
457 :
名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 01:59:58.14 ID:6FuVTcfY0
Zzz...
458 :
名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 07:10:48.37 ID:xMnVf1u/0
ほ
459 :
名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 16:56:01.30 ID:8vNcOQMAi
しゅっ
460 :
名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 23:19:47.92 ID:8vNcOQMAi
スコーンは規制に巻き込まれたか?
461 :
名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 23:59:22.19 ID:31q9Rf/LP
いや、P2だから関係ないはず
>>1が書き込めないなら俺も書き込めないはずだし
462 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 01:16:27.77 ID:BOAWzyRKP
生きてるよ!
世の中忘年会シーズンらしいわ。
強制連行される毎日。
ただ酒?よろこんでー!
残業? ハイ……ヨロコンデ……
て訳で、ちょっとだけ!
463 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 01:27:35.08 ID:BOAWzyRKP
……
………
…………
癒し手「お疲れ様でした……大丈夫ですか」
王「……すみません」
癒し手「お気になさらず」
王「……本当に、港街の教会で無くて、良いのですか」
癒し手「……場所、が重要な訳では、無いのですよ。王様」
王「…… ……」
癒し手「確かに思い入れのある場所です。でも、ね」
癒し手「それよりも、あの建物だけを改修し、墓そのもの……」
癒し手「……貴方の、お祖母様。お爺様……共に、同じ時代を生きられた」
癒し手「港街の神父様や…… ……女神官様」
癒し手「彼らの魂を、蔑ろにされる可能性のある方が、私は……悲しいです」
王「…… ……」
癒し手「あ、ご、ごめんなさい! あの……!」
王「……いえ。解ってます。他意、も悪意も、無いのは」
癒し手「…… ……御免なさい」
王「情けないですね」クス
癒し手「え?」
王「あんなに、何度も練習した、言葉なんて出てこなかった」
王「……折角の、戴冠式、だったのに……」
癒し手「……いいえ。用意された台詞より、貴方の心のこもった『本心』の方が」
癒し手「聞き手は、何倍も……心に、刻めます」
王「…… ……」
癒し手「これから、もっと大変になるでしょう」
癒し手「……側近さんの妻だと、言っても。私達には、貴方の手助けは……」
癒し手「これといって、して……差しあげられない。だから」
癒し手「『未来』は、貴方達が、紡いでいく物語です。王様」
王「…… ……」
癒し手「本音を言えば、少女さんには……お会いしたかった、な」
王「……すみません。体調不良、だと……」
癒し手「ああ、ご免なさい。嫌味とかでは無いんですよ」
遅くまでお疲れ様
465 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 01:36:13.18 ID:BOAWzyRKP
王「解ってます。貴女は……嘘を、つけないのでしょう」
癒し手「…… ……ッ」ドキッ
王「……素直な、方だと思います。戦士兄様は、良い伴侶に恵まれたのですね」
癒し手「…… ……」
王「……すぐに、墓を……彼らの亡骸を、あの……丘の上へと移す」
王「手配を致します。そうしたら…… ……」
癒し手「……はい」
王「あの。ものすごく、不躾なことを……聞いても、宜しいでしょうか」
癒し手「……なん、でしょう?」
王「貴女と、戦士兄様の、子供。赤ちゃんは……」
王「後、どれぐらいで産まれて来る、のでしょう?」
癒し手「…… ……」
王「伯父上は、少しお腹が目立って来た、等といってらっしゃいました、が」
王「……幾分、僕にはその辺の知識も、経験もありません」
王「……ご免なさい。単なる、好奇心に過ぎません。不快でしたら……謝ります」
癒し手「……いいえ。正直、ね、私にも解らないのです。でも」
癒し手「今日、明日……なんて事は、流石に無いと思いますよ」クス
王「そりゃそうでしょうけど……」
癒し手「定期的に、医者に掛かっている訳では無いので……私にも、解らないのですけど」
癒し手「もう少し、私と……母子、水入らずかな、って。思います」
王「一般的に、十月十日、と言いますね」
癒し手「……そうですね。最後のツキノモノがあってから数える、ので……」
癒し手「ややこしいですよね。その辺」
王「……貴女に、似れば良いのに」
癒し手「え?」
王「きっと、美しい子になるでしょうね」
癒し手「……ありがとう、ございます……」
王「……僕は、もう大丈夫です」
王「戦士兄様、きっと心配してます……戻ってあげて下さい」
癒し手「ええ……お疲れ様でした、王様」
王「…… ……」
466 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 01:40:31.84 ID:BOAWzyRKP
癒し手「では、失礼致します、ね?」
王「…… ……」
癒し手「王様……?」
王「…… ……」
癒し手(ああ……寝てしまった、のか。無理もないですよね)
癒し手(……お疲れ、様でした)
ソロ……パタ、ン
王「…… ……」
王「……少女?」
…… シィン……
王「…… ……」
キィ、パタン
少女「……癒し手様、は?」
王「戻ったよ……こっちへ」
少女「…… ……」
王「少女」
少女「…… ……」
スタスタ
王「……とうとう、僕が。王だ!」グイ、ギュウ!
少女「! …… ……」
王「君には、何不自由させない。もう、あの街へも返さない」
王「ずっと、ずっと……! 君は、僕の傍に居るんだ!」
王「……僕の傍で……ッ 僕と、『未来』を作るんだ!」ギュッ
少女「……ッ」
467 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 02:04:03.70 ID:BOAWzyRKP
少女(……私は、どうして彼を拒めない!?)
少女(こうして無理矢理抱き寄せられ……否!)
少女(あの時、あの庭で……ッ 強引に犯されて、事実軟禁と行ってもおかしく無い)
少女(こんな、こんな……ッ 状況に、身を置かれ……ッ)
少女(……なのに、何故…… ……)
少女(今、この腕に抱かれ、感じる『安堵』は何だ!?)
少女(……所詮、似たもの同士、と言う事か)
王「……少女?」
少女(秘書の……姉の言葉を否定できない)
少女(『慰み者』か…… ……何が、違う)
少女(愛など無い。此処に。そんなもの、存在しない!)
少女(……しょうも無い。傷の……舐め合い、だ)
王「…… ……」ギュ。チュ……
少女(私を抱きしめるこの背に、腕を回す事はできない)
少女(私の唇に、触れる彼のそれに応える事はできない)
王「少女。少女……!」チュ、ちゅ……
少女「……ん、ウ」
少女(……なのに。拒む事は出来ない!)
少女(何故!? ……彼を、哀れと思うからか。どこか……共感できるところがあるからか!)
少女(否! …… ……私は)
王「……しょう、じょ」ギュウ……ッ
少女(私は、欲されたい、だけなんだ。誰かに。誰でも良い)
少女(『お前が良い』と…… ……それ、だけを……ッ)
王「少女……ッ !」
少女(…… ……アァ)
……
………
…………
468 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/15(日) 02:12:25.66 ID:BOAWzyRKP
むりー
おやすみー
当分、仕事と忘年会に忙殺されるんっすよ……
469 :
名も無き被検体774号+:2013/12/15(日) 02:43:30.28 ID:MBV8VsYIi
無理せんでええでー
470 :
名も無き被検体774号+:2013/12/15(日) 21:21:25.50 ID:f2qFajO70
ほしゅ
471 :
名も無き被検体774号+:2013/12/16(月) 08:04:40.39 ID:M/D9G46ui
朝ほしゅ
ほ
473 :
名も無き被検体774号+:2013/12/16(月) 18:23:07.16 ID:JwCS1H0d0
ほっ
474 :
名も無き被検体774号+:2013/12/17(火) 00:07:25.22 ID:/rABqfDh0
しっ
475 :
名も無き被検体774号+:2013/12/17(火) 08:04:35.89 ID:XL7wD1lg0
476 :
名も無き被検体774号+:2013/12/17(火) 10:37:39.79 ID:YrcyJkIx0
ゅっ
478 :
名も無き被検体774号+:2013/12/18(水) 07:20:15.18 ID:G2rTXeRr0
BBAおはよう
479 :
名も無き被検体774号+:2013/12/18(水) 16:21:35.99 ID:FhBfmKBCi
ほっほっほっ
しゅっしゅっしゅっ
480 :
名も無き被検体774号+:2013/12/19(木) 02:07:04.95 ID:T4IV/NEC0
ホッホッホッと 声がする
シュッシュッシュッと 風が鳴る
481 :
名も無き被検体774号+:2013/12/19(木) 10:33:23.84 ID:1lWCi9WNi
元気 元気〜
482 :
名も無き被検体774号+:2013/12/20(金) 00:50:08.34 ID:osTg//wT0
がんばれ元気って、若い子にはわからんよね
ほしゅ
483 :
名も無き被検体774号+:2013/12/20(金) 09:52:18.97 ID:alQJ6ef+i
☆
484 :
名も無き被検体774号+:2013/12/20(金) 15:38:49.17 ID:3whvDsNT0
ボクシングかな?
485 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/20(金) 17:41:51.61 ID:AWe0/T34P
生きてるよ!(・△・)
あと三日、もういやや、死ぬ……ッ
486 :
名も無き被検体774号+:2013/12/20(金) 18:39:47.57 ID:9sUdtFJ+P
死ぬなー!!
487 :
名も無き被検体774号+:2013/12/20(金) 20:38:46.92 ID:noZU6Og80
雲にのれ〜
488 :
名も無き被検体774号+:2013/12/21(土) 06:33:14.38 ID:KVgWxsYL0
BBAはまだ雲に乗ったらアカンでー
489 :
名も無き被検体774号+:2013/12/21(土) 19:50:15.65 ID:KVgWxsYL0
ほしゅ
490 :
名も無き被検体774号+:2013/12/21(土) 19:57:52.86 ID:FGZ6E05m0
え、BBA死んでしまうん?
491 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/22(日) 03:02:42.25 ID:ZZRhKsz9P
ころさんといてえぇ……
あと、二日で終わるねん、この残業地獄……ッ
492 :
名も無き被検体774号+:2013/12/22(日) 03:39:20.71 ID:5dGKVrlY0
BBA乙
ssを書き終えるまではスコーンBBAは死なん!!
ほーほーしゅっしゅっ
494 :
名も無き被検体774号+:2013/12/23(月) 03:17:27.25 ID:5+4MVoBd0
おやすみついでにほしゅ
495 :
忍法帖【Lv=31,xxxPT】(1+0:8) :2013/12/23(月) 09:24:58.94 ID:ki8XiwyU0
あさ☆
496 :
名も無き被検体774号+:2013/12/23(月) 19:18:33.68 ID:nJtNBkcbP
あんま保守ばっかだと削除されっかもねー
俺昔3〜4ヶ月くらい一人で保守してたことがあるけどいきなり削除されたことある
497 :
名も無き被検体774号+:2013/12/23(月) 21:48:16.44 ID:sFmrZEW1P
つまり3〜4ヶ月は無事だということか
レス進んでるからと思って開いたら保守か
おはようスコーン
幼女のクリスマスプレゼントは用意できた〜?
500 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/24(火) 08:55:24.37 ID:JKq2WiwHP
おはようメリークリスマス!
今日で漸く今の職場仕事納め!!
残業地獄から解放されるし、明日は休みだから
今日の夜は頑張る!
プリキュアさんスタンバイOKだよ!
iphoneから規制されてて書けないし、p2経由でも書けないし
それが一番痛いわ……
んじゃいてきま!
>>500 BBA、きもちはわかるがっ・・・・やすめっ・・・
メリクリ保守
503 :
名も無き被検体774号+:2013/12/24(火) 20:47:23.58 ID:MrolgQzU0
休め…クリスマスだぞ…幼女とすごせ…無職の俺が落とさせはしない…
…
……
メリクリ保守
あれ?
506 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/25(水) 12:25:23.86 ID:JnAgM2eFP
ご、ごめん……
プレゼント用意して寝顔見てたら寝てもた(・△・)
お昼食べたらちょっとだけ!
507 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/25(水) 14:45:59.13 ID:JnAgM2eFP
衛生師「騎士団ちょ……いえ、王子様」
王子「ああ、衛生師か……どうした」
衛生師「どうした、じゃ無いでしょ、おじいちゃん」
ウロウロ、ウロウロ
衛生師「……落ち着いたらどうです」ハァ
王子「無茶言うな!」
衛生師「大丈夫でしょう、元衛生部隊が着いてるし」
マダイキンジャダメデスヨ!
ソウリョサン!
ウゥウー!
ダイジョウブカ!ガンバレ!
衛生師「……ああ、戦士君も居るんですね」
王子「…… ……」
センシサン、ウルサイデス!
…… ……スマン
衛生師「……」クスクス
王子「……お前、こんな所にいて良いのか」
衛生師「王様も落ち着かないみたいでしたけど」
衛生師「『伯父上の方が心配だ』って仰ってましたからね」
王子「……少女は?」
衛生師「…… ……さぁ」
王子「…… ……」
508 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/25(水) 14:55:16.47 ID:JnAgM2eFP
衛生師「……随分な早産、なんですってね?」
衛生師「僕、詳しくないですけど」
王子「……ああ。しかし、明確な妊娠時期が解らないから」
衛生師「診察した医師に寄れば、問題なさそうだと言ってました、けど」
衛生師「……可笑しいですよね。妊娠に気がついた時期とか」
衛生師「色々、考えると?」
王子「……俺も、詳しくないから解らんよ」
衛生師「でも、早い、って……僧侶さん自身が言ってたんでしょ?」
王子「…… ……」
衛生師「七ヶ月から八ヶ月? 位だとか」
王子「……ずっと、ちゃんとした医者に診て貰ってた訳じゃ無いからな」
王子「現に、陣痛が始まったんだろう?」
衛生師「……これが正期産であれば、本当に問題無いんだろうけど」
王子(エルフの血……未知数だから、か?)
王子(……確かに、早い。早すぎる。だが……)
王子「僧侶が、大丈夫だと言うのだから。大丈夫なんじゃない、か」
衛生師「……そんな、簡単に言っちゃって良いんですか」
王子「信じるしかないだろう……頑張るのは、母親と……赤ん坊だ」
衛生師「……まあ、そうですけどね」
衛生師「彼女、優れた加護……持ってるんだそうで」
王子「ん? ……ああ」
衛生師「……影響しなきゃ良いですけど」
王子「え?」
衛生師「確かな話じゃ無い。だけど…… ……王様と、少女さんにも」
衛生師「まだ、出来てませんから」
王子「……戴冠式から、半年も経ってないんだぞ?」
衛生師「…… ……ま、そうですけど」
王子「俺は……騎士団の解体以来、王にべったりって訳じゃ無いから」
王子「解らん、が……少女は、元気にはしている、んだろう」
衛生師「ええ。そうみたいですよ。僕ですら……書の街で会って以来」
衛生師「顔、見てませんから」
王子「……正式な祝言を進言したらどうだ」
509 :
名も無き被検体774号+:2013/12/26(木) 01:19:46.97 ID:JdNA6X4U0
スコーンサンタ乙
510 :
名も無き被検体774号+:2013/12/26(木) 02:21:46.35 ID:kmNS7J9W0
おー、来てたのか。乙乙
511 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/27(金) 08:36:10.60 ID:Eiw9jBbSP
おはよう!
正真正銘、今日で年内仕事納め!
夜来れたら良いけど、どうやらお疲れはお疲れなので
いらんことはいわんとく……
後は大掃除と忘年会の合間に
無理なく進めることにします
今年ももう少し、今日も頑張ろうな!
行ってきます!
512 :
名も無き被検体774号+:2013/12/27(金) 13:19:50.60 ID:q8PV+h7L0
>>511 お仕事おつかれBBA
俺は年越し中も仕事だー
少しサボってまったりここ見る事にするお( ^ω^ )
ほ
しゅっ
515 :
忍法帖【Lv=19,xxxPT】(1+0:8) :2013/12/29(日) 10:01:58.45 ID:mlsj1Kx90
あさほしゅ
ほしゅ
ほしゅ!
518 :
名も無き被検体774号+:2013/12/30(月) 21:09:11.54 ID:NxsHj2uo0
ほす
ほしゅー
規制解除記念保守
521 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/31(火) 18:49:26.14 ID:pzAb5LnoP
書き込めるかな?
522 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/12/31(火) 18:51:16.85 ID:pzAb5LnoP
あ、書き込めた!
規制やったんかなぁ、うちの回線がおかしかったんか
ずーっと書き込めなかった、ごめんなさいorz
年越し前の時間のある間にすすめたかったけど
どうにもこうにも……きぃ(・△・)
携帯からは書き込まれへんし、p2意味ねえええええ
それでは、良いお年を……
また、すきみてがんばります……
良いお年を
良いお年をー!!
よいお年を!!
526 :
名も無き被検体774号+:2013/12/31(火) 19:34:42.97 ID:nfsiOuOs0
よいおとしをー!!!
年越しイヤラシのマセキ置いときますね
有難う!
来年も良い年でありますように
BBAお疲れ様
無理しないようにな
528 :
名も無き被検体774号+:2013/12/31(火) 20:13:55.20 ID:zwQ+Cx4fi
今年は良いお話をありがとうございました
来年も良いお話をよろしくお願い申し上げまスコーン
良いお年を♪
529 :
名も無き被検体774号+:2013/12/31(火) 22:04:17.15 ID:1qndID1T0
良いお年を!
>>526 除夜の鐘でかち割ってもらって来いw
良いお年をー
531 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 00:20:43.43 ID:C5l5EqA20
あけおめー
始まった時に、年またぐとは思わなかったけどw
ことよろー!!!
あけおめ!
あけおめー!
スコーンも幼女も、中の皆も幸せな一年を!
534 :
!ninja:2014/01/01(水) 00:40:47.14 ID:tPQl+aBj0
あけおめ!
535 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 01:14:54.85 ID:qI5w6lri0
あけましておめでとうございます
規制解除されてたー!
あけましておめでとうございます!
今年もBBAのペースでよろしくお願いします
537 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 04:03:50.91 ID:LSm/ScOyi
あけおめ!
538 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 04:59:26.00 ID:gbp5bRWBi
おめでとう
あけおめー
540 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 08:11:04.25 ID:T7nR98Sqi
あけましておめでとうごさいます
本年もよろしくお願い申し上げます
勝手ながらスコーンの健康と幼女の健やかな成長を祈念させて頂きます
今年一年がスコーン&幼女とここの皆んなにとって良い年でありますように
541 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/01(水) 09:54:31.05 ID:ftQlWh4/P
あけましておめでとうございます!
今年もどうぞ、宜しくお願い致します!
本当にね、まさか年越しちゃうとは私も思わんかったよwww
幼女起きるまでちょっとだけー
542 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 09:59:02.82 ID:C5l5EqA20
年始めからがんばるねー!
無理せずにねー
543 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/01(水) 10:09:26.87 ID:ftQlWh4/P
衛生師「……僕が?」
王子「お前以外に誰に出来るというんだ」
衛生師「……書の街から、ね」
王子「?」
衛生師「『少女様を帰せ』って……書簡は愚か」
衛生師「そんな声もね。聞こえてこない、んですよ」
王子「……聞いたよ。お前からな」
衛生師「そうでしたっけ」
王子「お前が俺に報告してくるんじゃないか」
衛生師「貴方は必要無いと仰います、が。一応ね」
王子「…… ……俺は」
衛生師「解ってます。『未来はお前達が作る物』って言いたいんでしょ」
衛生師「それこそ、ご報告する度に聞いてます」
王子「…… ……」
衛生師「戴冠式に前後して、旧貴族達を全員捕まえて」
衛生師「最初はね……少女の身を案じる人も居たんですけど」
王子「……戴冠式への招待は知っていたんだろう」
衛生師「ええ。勿論、無事に返すとお約束もしたんですけど」
王子「…… ……」
衛生師「彼女……少女自身も、所詮」
衛生師「あの街の人達からすれば『支配者の中の一人』に過ぎない」
王子「……少女は、街の為に尽力して……」
衛生師「勿論、それは街の人達も解ってるでしょ。でも」
衛生師「目の上のたんこぶが一掃されて」
衛生師「新王の命で、僕たちも大方引き上げた。本当に最低限の人数しか」
衛生師「残してこなかった……そして、新王は正式に『始まりの国の国王』に」
衛生師「なった…… ……騎士団も、解体した」
王子「…… ……」
544 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/01(水) 10:30:41.89 ID:ftQlWh4/P
衛生師「…… ……」
王子「お前、何が言いたいんだ」
衛生師「……僕たちは、喜ばないといけないんだろうなぁ、って」
王子「?」
衛生師「思うんですけどね」
王子「だから……」
衛生師「このまま、で良いのかなぁって思うんですよ」
王子「……?」
衛生師「戦士君と僧侶さんの子供、産まれて、お祝いムードになって」
衛生師「『魔導の街』と共に、旧貴族達や少女さんの事が」
衛生師「人々の記憶から、薄れていって」
王子「…… ……」
衛生師「何となーく、世界も、始まりの国も安泰、って……ね」
王子「そんな上手く……行かないさ」
衛生師「……魔王、復活するんですか。本当に」
王子「する……んだろうな」
衛生師「僧侶さんがそう仰った?」
王子「……ああ」
衛生師「嘘は言わないって言ってましたね。まあ、元勇者の仲間ですから」
衛生師「信じちゃうのは、解りますけど」
王子「……衛生師?」
衛生師「……だからね、僕、思うんですって」
衛生師「『このままで良いのかな』って」
王子「…… ……」
衛生師「王と少女さんに、早く子供が出来れば良いと思ってます」
衛生師「……そうすれば、さっき王子様が言った『進言』って奴も」
衛生師「やりやすくなる、んだけど……ね」
545 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/01(水) 10:42:53.98 ID:ftQlWh4/P
王子「……今の状態じゃ、聞く耳持たないって事、か」ハァ
衛生師「一日の大半を少女さんと過ごされてますからね」
王子「……本当に、会ってないのか」
衛生師「王は……優れた癒やしの魔法を使いますから」
衛生師「体調についてなんて言及できません。それに」
衛生師「執務はきちんとこなしてくれてますよ」
王子「……やる事はやってるんだから、放っておけ、ってか……」
衛生師「騎士団の解体と同時に、引退を余儀なくされたでしょう」
王子「それは……そもそも俺が望んだ事だ」
王子「……歳も歳だ。もう、おじいちゃんだよ」
衛生師「…… ……」
王子「…… ……だから、さ。お前……」
衛生師「何が言いたいのか、ですか ……取り留めの無い、愚痴です」
衛生師「……すみません。こんな時に」
王子「……こんな時、だから言いにきたんだろ」
衛生師「王が、王子様と戦士君を案じていたのは本当ですよ」
衛生師「勿論、一番大変なのは僧侶さん、ですが」
王子「……解ってる。ありがとうと伝えておいてくれ」
衛生師「……はい。もう少し、ここに居ても?」
王子「ん? そりゃ構わんが……お前、仕事は……」
衛生師「…… ……」
オギャア、オギャ ……ァ……ッ
王子「! 産まれた!?」
バタン!
側近「親父! 産まれた!」
王子「戦士!」
側近「……男の子だ! 五体満足、だよ……ッ」
王子「い…… ……母親、僧侶は?」
側近「……ッ 無事、だ……ッ!!」
王子「! ……そ、うか……」ホッ
546 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/01(水) 10:45:57.57 ID:ftQlWh4/P
幼女起きた!
初詣いって、まったりお節つっつきますわー
547 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 11:34:06.98 ID:UIVWV1sai
あけおめことよろー
今年がみんなにとって良い年でありますように。
願えば、叶う。かな?
あけおめーーー!
あけおめ!!
550 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 19:59:58.98 ID:PUNcKViV0
願えば叶う
なんか、スゲーいい言葉に聞こえてきた
ほーほーほー
552 :
名も無き被検体774号+:2014/01/01(水) 22:06:28.31 ID:T7nR98Sqi
青年が生まれたか…
俺たちは喜ばなければ…ならない…のか…?
規制解除は5日間限定らしい(未確認)
書き込めなくなっても応援してるぜスコーン
553 :
名も無き被検体774号+:2014/01/02(木) 18:47:20.03 ID:gOOcptG2i
ほし
腹へったー
スコーン食べたいわぁ
あけおめー!
願えば叶う、って信じて今年もがんばるぜ!
というわけでBBAもがんがれー!
556 :
名も無き被検体774号+:2014/01/04(土) 01:35:35.62 ID:CLtN2KZz0
ほしゅ
557 :
名も無き被検体774号+:2014/01/04(土) 09:04:55.52 ID:pPYZFSFj0
王子「お前、仕事は……?」
俺「…… ………」
三点リーダばっかで読みにくいな
559 :
名も無き被検体774号+:2014/01/04(土) 11:35:00.69 ID:i/bAsYDti
慣れればどってことない
560 :
名も無き被検体774号+:2014/01/04(土) 12:20:06.18 ID:Ayt+7gY/0
逆に三点リーダがあった方が俺はいいな
自分が一番しっくり来るように想像出来て助かる
561 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/05(日) 01:55:30.36 ID:g8AYEEVKP
死ぬかと思ったわ、初売りセールなんてきーらーいー!
寝ますorz
思うように更新できないなぁ……
562 :
名も無き被検体774号+:2014/01/05(日) 06:13:28.46 ID:T6CVFyqy0
忙しくときはしゃーない!
ほしゅ
564 :
名も無き被検体774号+:2014/01/07(火) 03:35:56.66 ID:zB6ZVpHm0
保守
ほしゅ
566 :
名も無き被検体774号+:2014/01/08(水) 03:22:15.88 ID:O2Zuh6dB0
ほしゅん
567 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:00:08.49 ID:JvyJe+XLP
衛生師「おめでとうございます」ポン
側近「……衛生師?」
衛生師「王が心配されてたのでね」
側近「そうか……ありがとう」
衛生師「母子共に……無事、なのですね?」
側近「……ああ」
王子「会える、のか?」
側近「後で呼ぶから、と言われたが……」
衛生師「では、僕はこれで」スッ
王子「え?」
衛生師「こういう時は家族水入らず、でしょ」
スタスタ
側近「……王に、ありがとうと伝えて置いてくれ」
衛生師「勿論です。喜ばれますよ」
王子「…… ……」ジッ
衛生師「…… ……」
側近「?」
衛生師「後ほど、改めてお祝いに伺います……では」
パタン
側近「……何かあったのか」
王子「否……お前は気にしなくて良いさ」
王子「それより……」
側近「……癒し手にそっくりだ。綺麗な……男の子だ」
568 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:07:25.99 ID:JvyJe+XLP
王子「……無事なら良い。二人とも元気なら」グスッ
側近「親父……」
王子「歳を取ると……涙もろくなるもんなんだな」
王子「おめでとう、お前も……父親、か」ゴシ
側近「……ありがとう」
王子「お前の泣き顔なんて、何年ぶりだかに見たな」ハハ
側近「な、泣いてなんかッ」
王子「真っ赤な目して何言ってやがる」クス
側近「親父もな」フッ
カチャ、パタン
産婆「お待たせしました、戦士様、王子様……入って良いですよ」
側近「あ、ああ」
王子「俺も?」
産婆「当然でしょ。見てあげて下さい、おじいちゃん」
王子「お、おう」
産婆「では、私はこれで。次の間に控えてますから、何かあれば呼んでください」
産婆「改めて……おめでとうございます。お父さん。おじいちゃん」
スタスタ、パタン
側近「……癒し手?」
癒し手「側近さん……」ニコ
王子「おめでとう……お疲れさん。身体は、平気か?」
癒し手「はい。大丈夫です」
王子「……金の髪に、緑の瞳……か…… うわ、ちっちゃいなぁ」ツン
側近「抱いてやってくれ」
王子「お前が先だろ、お父さん」
側近「…… ……」
癒し手「側近さん?」
側近「……壊しそうだ」
癒し手「大丈夫ですよ」クスクス。スッ
側近「わ……ッ …… ……ん、以外と、重い」
569 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:14:07.30 ID:JvyJe+XLP
癒し手「……ほっと、しました」
王子「え?」
癒し手「……随分小さいのでは無いかと、お医者様に言われたんです」
王子「…… ……」
癒し手「人の子の……命の理、を考えると、確かに早かった、から」
側近「……よ、し。よし」
王子「お前自身も、そう言ってたな」
癒し手「はい……大丈夫だろうと思ってました。信じてました」
王子「……願えば叶う、んだろう。叶ったんだ」
癒し手「そう、ですね……私も、自分に凄く……言い聞かせてたのかもしれません」
癒し手「……正確には分かりませんけど、でも」
癒し手「無事に……産まれてくれて、本当に良かった……!」
側近「お前は……大丈夫なのか、癒し手」
側近「……姫様、は……」
癒し手「お母様がどんな風に私を産んで、どんな風に」
癒し手「……息絶えられた、のか。何時、そうなったのか」
癒し手「知る術はありませんから、何とも言えないですけど」
王子「…… ……」
側近「親父」
王子「え? ……わッ」
王子「……ふ、ふ。ちっちゃい、な」
癒し手「…… ……」クス
側近「元気そうに、見える。顔色も悪くない」
癒し手「ええ……流石に、疲れましたけど。でも」
癒し手「……大丈夫です。もう少し……いえ、まだまだ」
癒し手「側近さんと、この子の傍に……いられます」
王子「寝顔見てると……戦士にも似てるな」
側近「そうか?」
王子「お前が産まれた時よりも重いかもな」
側近「覚えてるのか」
王子「……こういうのは、忘れないもんさ」
570 :
名も無き被検体774号+:2014/01/08(水) 06:25:06.36 ID:3T/s9nNf0
朝からキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
571 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:26:32.74 ID:JvyJe+XLP
癒し手「王子様」
王子「……ん?」
癒し手「……少し、落ち着けば」
王子「この国を出る、んだろう?」
癒し手「…… ……はい」
王子「ある程度の話は……戦士からも聞いてる」
王子「……出産もそうだが、この子は……この子の成長は……」
癒し手「推測に過ぎません、が……でも、多分」
癒し手「私と同じで、この子の成長はきっと、人寄りも早いと思います」
側近「…… ……」
癒し手「私のお腹に居る期間も、純粋な人間に比べると、随分早かった様ですし」
癒し手「神父様からお聞きした話では、私も……」
王子「……エルフの血を、引いているからな」
癒し手「……はい」
側近「癒し手」
癒し手「はい?」
側近「取りあえずは、お前と息子の体調管理が最優先だ」
側近「……まだ、期間は決めなくても良いだろう」
癒し手「……はい」
王子「それで、一つ相談なんだが」
癒し手「?」
側近「何だ?」
王子「今の話の憂いはあるだろうが、何かしら支障が出るまで」
王子「……此処で過ごしては貰えないだろうか?」
癒し手「城で、ですか?」
王子「ああ。お前も初めての出産で、不安もあるだろうし」
王子「……此処が厭なら、俺の家でも構わん」
癒し手「……そうですね。小屋では……何かあったときに、確かに不安、ですが」
王子「戻るな、と言っている訳じゃ無い。だけど……」
側近「俺も、親父の話に賛成だ。もし不都合が生じれば、都度考えれば良い」
癒し手「はい……では、お言葉に甘えます」
王子「ありがとう」ホッ
ふえぇ……フエェェ……
王子「う、わ!?」
572 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:31:42.58 ID:JvyJe+XLP
癒し手「ああ……お腹、すいたんでしょうか」
王子「は、はいッ」スッ
側近「…… ……」クス
癒し手「良し良し、おっぱいね」
王子「ちょ、ちょっと待て!俺は出て行くからッ」クルッ
スタスタ
王子「……あ。すまん、これだけ……」
側近「ん?」
王子「名、は?」
癒し手「側近さん」
側近「……ああ。青年、だ」
王子「……ん。ありがとう」
カチャ、パタン
側近「…… ……器用に飲むもんだな」
癒し手「おっぱい、でなかったらどうしようかなって思いましたけど」
側近「美味い、か? ……青年」
癒し手「飲んでみますか?」クス
側近「…… ……遠慮しとく」
癒し手「ふふ……」
側近「……俺に、似てるか?」
癒し手「似てますよ? ……目元は、貴方そっくりです」
側近「癒し手にうり二つに見えるがな」
癒し手「……瞳の色が、貴方と同じですからね」
側近「この金の髪は誰譲りなんだかな」
癒し手「これも側近さんじゃ無いんでしょうか?私は蒼ですし」
側近「……まあ、茶色系統と言えばそうかもしれんが」
癒し手「でも……」
側近「どうした」
癒し手「いえ、あの。文句とかそういう意味じゃ無くて」
癒し手「あっさりと、名前決められたなぁ、と思いまして」
573 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:38:03.03 ID:JvyJe+XLP
側近「ああ……なんだろうな。自分でも不思議なんだが」
側近「……青年、しかありえないと思った、んだ」
癒し手「私も……なんだろう。しっくりきた、んです」
側近「でも、正直な」
癒し手「?」
側近「お前にそっくりな女の子……なら、と思って、他も考えたんだが」
癒し手「息子、な気がしてたんでしょう?」
側近「……ああ」
癒し手「私もです」
側近「……不思議だな」
癒し手「無事であるなら……少しでも。この子の成長を見守れるなら」
癒し手「……これ以上の幸福はありません、側近さん」
側近「…… ……」ギュッ
癒し手「……ッ 側近、さん?」
側近「不安が無かったと言えば、嘘になる、癒し手。だが……ッ」
側近「良かった。本当に……ッ 二人とも、無事で……ッ」
癒し手「…… ……はい」
癒し手「あ……寝ちゃった? ……うとうとしてる」フフ
癒し手「こんなに小さいのに、一人前ですね」
側近「……加護は、緑、か」
癒し手「そうですね……ん? ……でも」
癒し手「……光の加減? 見ように寄っては……蒼、にも見えます、けど」
側近「ん? ……ああ。そう言われてみれば …… ……あ。寝た、か」
青年(スゥ)
癒し手「王子様は緑、と仰ってましたね」
側近「……まあ、どっちでも良い、さ」
側近「健康に、まっすぐ……素直に、元気に育ってくれれば」
癒し手「そう、ですね」クス
574 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:58:03.33 ID:JvyJe+XLP
側近「……お前も、休め。疲れただろう」
癒し手「はい……青年と、一緒に……眠ります」
側近「ああ」
癒し手「側近さんは?」
側近「一応、王にも報告に行かないとな」
癒し手「ああ……そうですね。お願い致します」
側近「城内にはいるし……すぐに戻る、から」
癒し手「はい」
側近「大丈夫だ。すぐ傍に産婆達もいるだろうし」
癒し手「……不安は、無いんです。不思議と」
側近「母は……強いと言うから」
癒し手「……未来を、繋げられた」
側近「え?」
癒し手「何となく……そう、思うと。安心しました」
側近「…… ……」ポンポン
癒し手「ふふ」
側近「これから、育てて行かなくてはいけないんだ」
側近「休めるときに……休んでおけ」
癒し手「……はい」
側近「何かあったら、すぐ誰かを呼べよ」
スタスタ、パタン
癒し手「……青年」ナデ
青年(スゥスゥ)
癒し手「貴方が見る未来は……どんなもの、になるのかな」
癒し手「……明るく、あれば良い」
癒し手(だけど…… ……きっと、過酷な運命を背負わせて……しまう)
575 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/08(水) 06:59:19.65 ID:JvyJe+XLP
しゅっきーん!
おは乙
577 :
名も無き被検体774号+:2014/01/08(水) 18:33:17.30 ID:3T/s9nNf0
青年生まれたねー
やっぱ世界がループしてる感じなんだね
赤ちゃんなのに青年っていうのもなんだかシュールだな
579 :
名も無き被検体774号+:2014/01/10(金) 08:14:08.75 ID:/J16DrEHi
ほしゅ!
580 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 12:03:14.44 ID:idJps7pnP
癒し手(……神父様。どうか……この子を。また産まれて来るだろう光の子を)
癒し手(『世界』を……お救い下さい……!)
……
………
…………
少女(……う、ぅ)ゴソ
少女「!」パチ!
少女「…… ……」ムク、キョロキョロ
少女(王は……居ない?)
少女「……だ ……ッ」
少女「…… ……」
少女(誰か、と呼んで……来た試しなんか、無い)
少女(……ああ、そう言えば)
少女(彼が達して、私がまどろんでいる間、誰かの声が聞こえてた)
少女(聞き覚えがある様な気がする……が、誰だったんだろう)
少女(ええと……ああ、そうか)
少女(戦士……王の従兄弟?か。子供が産まれるだとか言っていたか)
少女(……ならば、あの声は騎士団長……否。王子、だったのだろうか)
少女(王子、様は)スッ ……スタスタ
少女(就任式以後……引退。騎士団の解体以後)
少女(王の傍には近づいて来ない)
カチャ……ガチャガチャ!
少女(扉は開かない、か)フゥ
少女(……彼から近づいてこないのか。王が近づけないのか、わからないが)
少女(…… ……姉は、どうなったのだろうか。母親様は?)
少女(貴族達も捕まったと聞いた。就任式には、衛生師も帰ってくると)
少女(王は……言っていた筈、だ)
スタスタ。コロン
581 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 12:14:43.36 ID:idJps7pnP
少女(……柔らかいシーツに、ふかふかの枕)
少女(『始まりの国』の居城、王の寝室。そのベッドの上で)
少女(私は……自国、否……街、の民達を放ったまま)
少女(朝も夜も無く、王に抱かれ……何をしているんだ?)
少女(結局、就任式に出席することも許されなかった)
少女(王は……子供の様だ)
少女(乱暴に私を抱いたかと思えば、子供が母親にするように)
少女(私の身体を掻き抱く……否、すがりついてくる)
少女(酒など召した後であれば、涙ぐむ事さえあった)
少女(……事細か、とは言わずとも。大概のことは教えてくれる)
少女(聞いても居ないのに。聞けば、さらにを告げてくれるのだろうか)
少女(……あんなに厭だ厭だと思っていたのに、慣れてきたのかなじんできたのか)
少女(諦めてしまえば……楽な物だ)
少女(……慰み者、か)ハァ
少女(こんな物に焦がれたのか、姉は)
少女(これは、贅沢か?甘い汁か?)
少女(……彼の。王の……これは。愛、なのか?)
少女(喋る相手も、共に眠る相手も……王しか居ない)
少女(強引に婚姻を結ばされるのかと思えば、そうでも無い)
少女(……書の街は、どうなったのだろう)
少女(もう……私は、いらないのか。否……)
少女(そうであるなら、それで良い。街の人達にとって)
少女(……いくら、私が……己なりに尽力した、とて)
少女(所詮私は、私達は『旧貴族』)
少女(……街人達にとれば、『目の上のたんこぶ』に過ぎんかったのだろう、か)
少女(…… ……考えれば考える程、億劫になっていくな)ハァ
少女(案外、この辺が狙いなのかもな)フッ
少女(……用済みの人間を囲うた所で。何の特も無いだろうに)
コンコン
少女「…… ……」
少女(戻って来た、のか)フゥ
コンコン…… ……カチャ、カチャ……キィ
少女「…… ……!?」
582 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 12:18:24.56 ID:idJps7pnP
おひるごはーん
583 :
名も無き被検体774号+:2014/01/11(土) 13:23:56.80 ID:yY1OFy260
少女を訪れる人物、それはッ……!?
584 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:02:37.65 ID:idJps7pnP
衛生師「失礼しま……ッ おっと」
少女「…… ……」ポカーン
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……ええ、と。服、着て貰えると、助か……」
少女「きゃああああああああああ!?」
衛生師「……まあ、うん。そうだよね」
スタスタ
衛生師「見てないから……えっと。これで良いか」バサッ
衛生師「……取りあえず、シーツ巻いて」
少女「……ッ」グイッ ……シュル
衛生師「……良い?」
少女「…… ……」
衛生師「……王は、戦士君と僧侶さんの所に行ったよ」
少女「…… ……」
衛生師「で、伝言を頼まれた」
少女「伝言……貴方、が。私に?」
衛生師「うん。 ……後で、一緒に赤ちゃんを見に行こう、だそうだ」
少女「!?」
衛生師「で、少女に着替えとか、まあ準備をして待っててと」
衛生師「着替えが済んだら食事を運ばせるから」
少女「……衛生師、さん」
衛生師「良く覚えてたね」
少女「……さっき、も来た……わ、よね?」
衛生師「数時間前ね。君は疲れて寝てる、と聞いたよ」
少女「!」カァッ
衛生師「……随分、信用されたモンだよね、僕も」フゥ
少女「……え?」
585 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:09:53.82 ID:idJps7pnP
衛生師「君がここに来て軟禁……ああ、失礼」
少女「…… ……」
衛生師「王と生活を共にするようになって、誰かにあったかい?」
少女「……軟禁、なんでしょう」
衛生師「食事の取り次ぎも、全て王様がしていたんだよね」
衛生師「……話には聞いてた、けど」
少女「…… ……」
衛生師「王子様達が不思議がっていたから。少女が姿を現さない、とね」
少女「戴冠式の事ですね」
衛生師「……体調は、悪く無いの」
少女「王……様は、優れた回復魔法の使い手なんでしょう?」
衛生師「それすらも管理されているって事か」
少女「……別に、食べるのも眠るのも……何も、不自由はさせてもらっていません」
衛生師「随分痩せたな……まあ、勿論裸を見た事がある訳じゃ無いけど」
少女「……ッ」
衛生師「ああ、御免。変な意味じゃ無くて。書の街であった時の君はもう少し」
衛生師「子供然、としていた気がするから」
少女「……?」
衛生師「背伸びをしてる、って事じゃ無い……無理矢理、女にされたと言えば」
少女「!?」
衛生師「……言葉は、露骨だけれど。まあ、あれだよ」
衛生師「月並みに言えば、『綺麗になったね』?」
少女「……嬉しくなど無いッ」
衛生師「解ってるよ…… ……それが、素か」
少女「…… ……」
衛生師「取りあえず先に着替えたら。王様が戻る迄に食事を済ませよう」
衛生師「……待ってはくれないよ。彼はね」
少女「……ッ」
衛生師「僕は向こう向いてるから」クルッ
少女「……出ては行かないのか」
衛生師「そんな命令は受けてないから」
少女「……ッ」
ガサゴソ
衛生師「……良いのか、君は」
少女「……何が」
586 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:18:30.88 ID:idJps7pnP
衛生師「これで」
少女「……私に拒否する権利がある様に見えるのか、貴方には」
衛生師「……権利はあるだろう。それが叶えられるとは限らないだけで」
少女「面倒は御免だ、と思ってしまうのは、毒されている証拠……なんだろうな」ハァ
少女「……もう、良い。ありがとう」
衛生師「……それも、王様の趣味?」
少女「彼は……私を人形か何かと勘違いしているんじゃないだろうか」
衛生師「文句を言わず……否、言う事を厭うて」
衛生師「黙って抱かれているだけの人形か」
少女「…… ……」
衛生師「……戦士君と僧侶さんに、子供が産まれたよ」
衛生師「金の髪に、緑の瞳の綺麗な男の子だ」
少女「……見に行こう、と言っていたな」
衛生師「ああ……そうだったね」
少女「…… ……」
衛生師「王子様にもお会いした。正式に王様と君の祝言を進言したらどうだと」
衛生師「言われた」
少女「……王は、私と本当に結婚する気なのか?」
衛生師「…… ……」
少女「既成事実でもなんでも、やってしまった者勝ちじゃ無いのか」
少女「こうして、私を軟禁しておく意味が分からない」
少女「……母親様は狂ってしまわれた」
少女「姉も……秘書も、遠からず同じ運命を辿るのだろう」
衛生師「……否定は出来ないねぇ」
少女「……旧貴族達も、全て捕らえたと聞いている」
衛生師「王様から?」
少女「他に誰が居る? ……私に接する者は彼だけだ」
衛生師「……だった、ね」
少女「……一つだけ。聞いても良いか」
衛生師「答えられる事だったら答えてあげるよ」
少女「書の街は……」
衛生師「……必要最低限の者だけ残して、引き上げたよ」
衛生師「近々、図書館を建て替えるのそうだ」
少女「え……」
衛生師「人出も金も、始まりの国が援助する」
衛生師「もっと、人に見て貰えるように。以前のイメージを払拭する為に」
衛生師「……新しい街長からね。申し出があったんだ」
少女「新し、い」
衛生師「…… ……」
587 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:29:08.58 ID:idJps7pnP
少女「……そうか」フフ
衛生師「……何故?」
少女「え?」
衛生師「何故君は……笑う」
少女「…… ……」
衛生師「少女?」
少女「……肩の荷が下りた、のかもしれない」
衛生師「…… ……」
少女「必要とされてないのなら、必要にされないだけの理由があると言う事だ」
少女「……それで街が幸せであるのなら、それで良い」
衛生師「君、って人は」ハァ
少女「?」
衛生師「……否」
少女「これで……良かったのだろう」
衛生師「……駒が駒の役割を果たさなくなった事が、か」
少女「利用価値が無くなった、と言いたいのか?」
衛生師「書の街にとって、じゃ無くって、ね」
少女「解って居るさ。私が……王にとって、だろう」
衛生師「……解って、言ってたのか?」
少女「……驕りでは無く」
少女「王は確かに、私を愛しているのだろう」
衛生師「…… ……」
少女「些か、狂気も感じるがな」
衛生師「…… ……」
少女「驚かないのか?」
衛生師「逆に聞くけど。歪んでいないと思うのかい」
少女「……主、だろう。王は。貴方の」
衛生師「……まあ、ね」
衛生師「ある意味、王の器には相応しいのかもしれないよ」
少女「…… ……」
衛生師「弟王子様の様に、聡明ではある。確かに」
衛生師「だが、激情に捕らわれると制御が聞かなくなる」
衛生師「……残酷な面も、持ってると思う。優しいだけでは、王には……」
衛生師「『覇者』にはなれない。だから」
少女「……子供の様な人だ」
衛生師「同意するよ」
少女「愛されて……育ってきたのだろう?」
衛生師「王様かい? ……と、思うけどね」
衛生師「……弟王子様は、勇者や……魔王の事で」
衛生師「出来るだけ、王様をその事実から遠ざけてきたから」
588 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:37:48.65 ID:idJps7pnP
少女「……僕だけを見てくれと、私にすがりつく」
衛生師「え?」
少女「事に及んだ後、だ」
衛生師「……真顔で、君は」
少女「良く解らない。酷く乱暴な時があれば、壊れそうな花を愛でるが如く」
少女「私を抱くときもある」
衛生師「…… ……」
少女「確かに、貴方が言うように」
少女「……結婚の必要など、無いのかもな」
衛生師「確かに愛されている、と君がさっき自分で言い切ったんだろうに」
少女「…… ……」
衛生師「少女?」
少女「貴方ならば、人形と結婚したいか?」
衛生師「…… ……」
少女「そこに血は通わない。否……心、かな」
少女「心の底から、彼は……誰かに。多分、私に」
少女「愛されたいのだろう。弟王子様とお母様は」
少女「……仲睦まじかったと聞いた」
少女「だが、誠の愛だったのか?」
衛生師「…… ……」
少女「確かに、愛ではあっただろう。愛し合っておられた……と」
少女「聞いた気も、する。だけど……」
少女「王の、私に求める愛は。彼が与えられたい愛は」
少女「多分、それでは無い。形だけの婚姻でも、無い」
衛生師「……食事にしようか。他に質問は?」
少女「答えられる物ならば、なのだろう……あ」
衛生師「ん?」
少女「……姉に、会うことは」
衛生師「たかだか僕に会うだけで、これだけの時間を要したんだ」
衛生師「……解るだろう。君ならば」
少女「……では、一つだけお願いがある」
衛生師「直接王に言えば良いんじゃないの」
少女「……死んだら、教えてくれ」
衛生師「……覚えておく」
少女「あんまり、お腹はすいていない、んだけど」
衛生師「軽い物を用意してる……でも、ちゃんと食べないと駄目だよ」
589 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 14:45:19.26 ID:idJps7pnP
衛生師「スレンダーな女性は好きだけど。君はもう少し肉をつける必要がある」
少女「…… ……」
衛生師「……セクシーだけど、ね」
少女「……ありがとう、と言うべきか」
衛生師「お好きに……ああ、汚さない様にね?」
少女「子供じゃ無い」
衛生師「……真っ白だからさ」
少女「王は、私に白以外を着せたがらない」
衛生師「…… ……」
少女「白いドレスに紅い瞳。出来損ないの人形だな、本当に」
衛生師「……卑下するな。綺麗だよ」
少女「…… ……お、お世辞は、結構」
衛生師「すぐ戻る。少し待ってて」
パタン
少女(……随分、気分が高揚している)
少女(無理も無い。王以外と言葉を交わしたのなんて……何時ぶりだ?)
少女(……衛生師は、王に信頼されている、のだろうな)
少女(私に……易々と異性を近づける事等、無いと思っていた)
少女(……衛生師)
少女(食えない男、だが。彼との会話は……楽しい)
少女(……赤ん坊を見に行くのだとか言っていた、が)
少女(彼も……衛生師も、一緒、なのだろうか)
……
………
…………
王「おめでとう、戦士兄様」
側近「ありがとう、王様」
王「衛生師と伯父上から聞いています。男の子だったんですよね」
側近「ああ。青年と名付けた」
王「僕も……後で会いに言っても?」
側近「勿論だ」
王「……でも、本当にほっとしました」
王「随分早いと聞いていたから」
側近「……そうだな」
590 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 15:15:22.93 ID:idJps7pnP
王「……少女を、連れて行きます」
側近「え?」
王「駄目ですか?」
側近「ああ……否。そういう訳じゃない」
王「良かった」ホッ
側近「体調は……良いのか」
王「え?ええ……大丈夫ですよ」
側近「なら、良いが……」
王「今、衛生師に様子を見に行かせています」
側近「……近衛兵、だったか」
王「彼は実戦向きではありませんから。主に僕の補佐や代行を任せています」
側近「…… ……」
王「それに……もう、争いは……」
王「書の街の図書館の建て代わりが終われば、もっと……きっと」
側近「……何れ、勇者は……この国に戻るぞ」
王「……僧侶さんの話を、信じていない訳じゃありませんよ」
王「その時の為に、あの小屋を残しておけと、伯父上からも言われています」
側近「…… ……」
王「それだけは……引いて下さらなかった」
側近「俺からも、頼む」
王「……貴方は、『帰還者』ですから、戦士兄様」
王「僧侶さんも含めて……この『国の英雄』の申し出を」
王「無下には出来ません」
側近「…… ……」
王「心地よく『勇者』を迎える為にも」
王「……『未来』を紡いでいく為にも。尽力すべき所だと心得ています」
側近「……頼む」
王「戦士兄様達は、この国で青年を育てて行くのでしょう?」
側近「……否」
王「え?」
側近「俺達は……勿論、すぐに、は無理だが」
側近「何れ……国を出る」
王「……そうですか」
側近「…… ……」
591 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 15:21:07.34 ID:idJps7pnP
王「それまでは、あの小屋で?」
側近「……暫くは、城の中に、と親父は言うんだがな」
王「その辺は、僧侶さんと良く相談して下さい。お好きなように」
王「子供が、一番ですから」
側近「ああ……甘えるよ」
王「では、一度少女の様子を見に戻ります」
側近「……待っている。では、失礼する」
スタスタ
側近(反論も、何も無い……か。まあ、当然だろうな)
側近(……疎まれているとは思わない、が)
側近(歓迎される立場でも無い。引き留められたら……とは杞憂だったな)
カチャ……パタン
王「衛生師」
キィ……カチャ
衛生師「気付いてましたか」
王「少女は?」
衛生師「食事も済ませたし、何時でも行けますよ」
王「……うん。じゃあ連れてきて。ああ。ローブはかぶせて」
衛生師「……王様、僕で良かったんですか」
王「え?」
衛生師「誰も近づけてなかった、んでしょ」
王「君なら信用出来るよ」
衛生師「……後衛です」
王「少女は何か言ってた?」
衛生師「ご自分では聞かないんですか」
王「……何もかも、僕に話すとは思えないからね」
王「君になら話す事もあるだろう」
592 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 15:29:18.87 ID:idJps7pnP
衛生師「……秘書に会えるのかと」
王「……精神衛生上、良くないと思うけどな」
衛生師「察してくれと言ったら」
王「?」
衛生師「……死んだら教えてくれ、と」
王「……ふふ」
衛生師「王様?」
王「流石、僕が惚れた人だ」
衛生師「…… ……」
王「彼女は強い」
衛生師「…… ……」
王「……勿論だ。良いだろう……ありがとう、衛生師」
衛生師「……い、え」
王「これからも少女を頼む。僕には言わない話を」
王「僕には見せない少女を、君が代わりに見て、教えて」
衛生師「……はい」
王「じゃあ、少女を呼んできてくれる? 青年を見に行こう」
衛生師「青年……ああ、戦士君の子供、ですか」
王「ああ。叔父として、顔ぐらいは見ておかないとね」
……
………
…………
チビ「父さん!」
バタバタバタ……ッ
男「おー!チビ! ……背、伸びたな!」ギュッ
チビ「え、ちょ、苦しい、苦しい……ッ」
男「爺は?」
チビ「家の裏で彫刻洗ってる」
男「……は?」
チビ「苔でね……」
男「……ああ、そう。まあ、元気なら何よりだ」
男「放っとけ、と言ってやりたい、が」
チビ「え? ……うん……あ、の父さん」
男「…… ……」
チビ「母さん……は……」
男「……呼んできてくれネェか」
チビ「じいちゃん? うん、そりゃ良いけど……?」
593 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 15:35:17.01 ID:idJps7pnP
男「…… ……」
チビ「……ちょ、ちょっと待っててね」
パタパタ
海賊「……良いんですかい」
男「何がだ」
海賊「いや……その……」
男「……笑っちまうよな」
海賊「え?」
男「涙、堪えるのに必死だなんてよ」
海賊「…… ……」
男「悪いが、家族だけにしてくれねぇか」
海賊「あ……すみません、気が利きませんで」
海賊「……修理、続けてます」
男「ああ……俺も戻ったら、手伝うから」
スタスタ
爺「おー息子よ! ……相変わらずむさ苦しいのう、お前は」
男「間違い無くお前の息子だからな……口の減らネェ爺だな、全く」
爺「……船が入港するって聞いたから、お前さん達だと思ったがな」
チビ「……久しぶりだな、あの船見るの」
男「何だ、恋しくなったか?」
チビ「そ、そんなんじゃないよ!」
爺「跳ねっ返りのは?」
男「船長の事か」
チビ「……俺に、会いたくないのか? 母さん……」
男「…… ……チビ」
チビ「は、はい」
男「母さんな…… ……死んだ、んだ」
594 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:00:29.31 ID:idJps7pnP
チビ「……え?」
爺「何!?」
男「…… ……会わせて、やれん。すまん」
爺「……質の悪い病気か何かか。否、だとすれば、お前達も……」
男「おやっさんと一緒さ」
チビ「おじい、ちゃん?」
男「……ああ。前船長」
爺「…… ……食われたのか」
チビ「!?」
男「話した事、あっただろう。おやっさんは…… ……人魚に、食われちまった」
チビ「…… ……ッ」
男「……北の街付近で、人魚の群れに襲われた。あいつら、魔詩で……」
爺「進路を狂わせ、幻覚を見せて……海に引きずり込む、んだったか」
男「だと、思ってたんだがな」
チビ「え……」
男「後で間近で船、見てみろ。ぼろぼろだ」
チビ「!?」
男「……随分と攻撃的になってた。船長は……耳栓をして、操舵部分に取り憑いた」
男「人魚を倒しに出た……んだが」
チビ「……かあさ、ん……ッ」
男「……耳栓、意味無かったみたいだ」
爺「…… ……」
チビ「そ、んな……ッ」
男「剣を落としたと思えば……人魚に抱きついていった」
チビ「……ッ」
爺「……男! もう……良い……ッ」
男「チビ」
チビ「!」ビクッ
男「聞きたいのなら聞かせてやる」
チビ「…… ……」
男「聞きたくなければ、それで良い。お前が選べ」
チビ「…… ……ッ」
男「……今で無くて良い。爺」
爺「……なんじゃい」
595 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:05:16.15 ID:idJps7pnP
男「悪いが、当分滞在させてくれ。船の修理をしにゃならん」
爺「そりゃ構わんが……海賊共はどうすんだ」
男「幸い、金はある……宿なり、船の中の無事な部分になり」
男「……ま、男ばっかだ。どうにかなる」
チビ「…… ……」
男「……チビ」
チビ「は、はい」
男「……俺は、船を下りる」
チビ「え!?」
男「情けない父ちゃんだよな…… ……怖いんだよ。海が、な」
チビ「……!」
男「……お前さえ、爺さえ良ければ、この村で父さんと暮らそう」
爺「…… ……」
男「三ヶ月もありゃ、修理は終わるだろう」
男「……ま、考えといてくれ」
爺「お前一人ぐらい、済む部屋はあるがな …… ……良いのか」
男「……駄目なんだよ、もう。水面見てると、吐き気がしてくんだ」
チビ「父さん……」
爺「……ま、好きにしろ」クルッ
スタスタ
チビ「じいちゃん!?」
爺「苔がな。まだ落ちてないんだ」
チビ「……じいちゃん」
男「爺は爺なりにな。母さんの事……娘みたいに、さ」
男「可愛がってた、んだって」
596 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:12:48.97 ID:idJps7pnP
ご飯の支度で離席ー
597 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:42:06.72 ID:idJps7pnP
チビ「…… ……」
男「……我慢、しなくていいんだぜ」
チビ「え?」
男「…… ……いや。何でもねぇよ」
チビ「…… ……」
チビ(ああ、そうか。父さん、目が真っ赤だ)
チビ(……当たり前、だよな。母さん……死んだ、んだ)
チビ(居なくなっちゃった。もう会えない)
チビ(……俺、薄情なのかな? 涙……出ない)
チビ(……実感なんて、沸かない。なんだろう)
チビ(母さん……)
男「……船、戻るわ」
チビ「え?」
男「修理、手伝わないとな」
チビ「……大丈夫なの」
男「悲しんでるのは、皆一緒さ」
男「…… ……何かしてる方が、気が紛れるのさ」
チビ「俺も……行って良い?」
男「え?」
チビ「……久しぶりに、見てみたい。船」
男「好きにしろ……邪魔になるなら放り出すぞ」
チビ「手伝うよ」
男「……気をつけろよ」
チビ「…… ……うん」
スタスタ
男「なあ、チビ」
チビ「……何」
男「……否」
チビ「母さん……何の幻、見たのかな」
男「…… ……」
598 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:48:22.23 ID:idJps7pnP
……
………
…………
衛生師「…… ……」
コツン、コツン
キィ……
見張り「近衛兵長様!」
衛生師「……名前で呼んでって、何時も行ってるだろ、物々しい」ハァ
見張り「あ、すみません……衛生師様」
衛生師「……様子は、どう?」
見張り「相変わらずですよ」
衛生師「……随分、頑張るよね」フゥ
秘書「衛生師! ……ッ 何をしに来た」
衛生師「君に会いに?」
ガシャン!
秘書「否……ッそんな事はどうでも良い! 早く……早くここから出せ!」
衛生師「喚かなくなって随分経つ、と思ってたけど……どうしたの、今日は」
秘書「昨夜から、母親様の声が聞こえない!」
秘書「私を出さなくても良い!母親様は……ッ」
衛生師「…… ……」
秘書「衛生師! 聞いているのか!」
衛生師「……死んでるよ」
秘書「…… ……な、に ……!?」
衛生師「少女が言ってたんだっけな。哀れな人間の末路」
衛生師「……狂人の最後は、憤死か」ハァ
秘書「嘘を言うな! 母親様は最後の希望だ!我々の……ッ」
秘書「魔導の国の!」
衛生師「……君は正気を保ったまま、最近は随分大人しくしてると思ってたけど」
衛生師「やっぱり狂っているのか? ……全く」
秘書「黙れ! 母親様が生きてさえ、居れば……!!」
コツン、コツン……
衛生師「! 誰」
王「僕です、衛生師」
599 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 16:54:56.83 ID:idJps7pnP
衛生師「王様!?」
秘書「王! ……ッ 嘘を吐くな!母親様を何処にやった!?」
王「……会いたいなら会わせてあげます。顔を見れば安心しますか」チャリ
王「牢の鍵は此処にありますから」
衛生師「王!」
王「ああ、少女ならご心配なく。君が出て行った後、僧侶さんと楽しそうに」
王「話していましたから、部屋に残してきました」
衛生師「……目、離して良いんですか」
王「見張りは立たせています。青年に何かあったら大変ですから」
王「……僕も、少し用事があったので。君は入れ違いで、戻って下さい」
衛生師「……何をなさるつもりで?」
王「昔話、です。聞きたければどうぞ。戦士兄様も居るし、もう少しぐらい大丈夫でしょう」
秘書「王!出せ!早く、早く母親様を……!」
王「……前に言いましたよね。母親の口から、色々……」
王「知り得ないだろう話も、聞いた、と」
秘書「ご託は良い!早く……ッ」
王「僕とのおしゃべりに付き合ってくれるのだったら」
秘書「え……」
王「……その後で良ければ、母親を牢から出しましょう」
衛生師「王!」
王「どうです?秘書さん」
秘書「……ッ い、良いだろう……ッ」
衛生師「おい!」
王「『始まりの姉弟』の話です」
秘書「!」
王「母親は、魔の血が混じってると信じていたようですが」
王「強ち、間違いでも無いかも知れませんよ」
秘書「!?」
王「近親婚を繰り返した所為で、随分と人口は減った様ですが」
王「それでも、ああして……一つの街を支配する迄になった」
衛生師「…… ……」
王「永い年月は必要だったんでしょうけど」
衛生師「……僕は、失礼しますよ。王様」
王「……興味、ありませんか?」
600 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:01:03.75 ID:idJps7pnP
衛生師「『知らない権利』もあるって所で」
王「……貴方らしいですね」
衛生師「過ぎた好奇心は身を滅ぼしますし……では、少女を見て参ります」
衛生師「……随分久しぶりに、貴方以外と沢山会話をしてるんだ」
衛生師「……そっちを知りたいでしょう、王様?」
王「……頼みます」
コツン、コツン……キィ…… ……
秘書「……ッ 始まりの姉弟が、どうした!」
王「最果ての地に住む事を許された人間。そして、優れた雷の加護を持つ……」
秘書「そうだ! それこそが我ら、選ばれた血の……ッ」
王「下らないですよね」
秘書「……何!?」
王「色々、ね。まあ……聞いたんですけど。狂人の話は支離滅裂で」
王「……一つの結論に繋げる迄、結構大変だったんです」
秘書「…… ……」
王「知識として。話としてとても面白かったですよ」
王「僕も、色々と読んだり、調べたりした」
王「……多くを貴女に語る必要はありませんけど。一つの結論に至ったんです」
秘書「な、何だと言うんだ」
王「……魔王が、復活し。次こそ。次の勇者こそ」
王「魔王を……完全に滅ぼした、のならば」
王「僕は、魔法の『放棄』を提案します。全世界に向けて」
秘書「!?」
王「我が国は騎士団を解体し、『武』を放棄した。あれは……その第一歩です」
秘書「ふ……ッ ふざけるな! 世迷い事だ、そんなもの……ッ」
王「勿論、簡単には行きません。何十年も何百年もかかるでしょう。ですが」
王「魔法なんて、存在しない世界……それこそが」
王「僕の考える『真に美しい世界』です」
601 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:06:32.23 ID:idJps7pnP
秘書「お、まえ…… ……ッ」
王「魔導国も無くなった…… ……まあ、ちょっと心配なのは鍛冶師の村ですけど」
王「『武』も『魔法』も、無くなれば、武器を手にする必要も無くなる」
王「鍛冶なんて物も、何れ廃れていくのです」
王「……お爺様が目指しておられた、魔法剣だなんて言う物も」
秘書「黙れ! 黙れ、だまれだまれだまれええええええええええッ!」
王「ああ、内緒ですよ? まだ……誰にも、ね?」
王「貴女と僕の秘密です。少女も知らない二人だけの、ね」
王「……嬉しいですか?」クス
秘書「……ッ 狂っているのはお前の方だ、王!」
王「大丈夫ですよ。見張りも下がらせていますし。此処には僕と貴女しか居ません」
秘書「大嘘つきが! 母親様も、捕らえられた他の貴族達も……ッ」
王「ああ、そうでしたね。母親に会わせる、のでした」
王「ちょっとだけ、待ってて下さい」
スタスタ、カチャ、チャリン……ギギィ
秘書「…… ……母親様!母親様、ご無事ですか!?」
ズルズル……ズル……
秘書(!? 何の音、だ…… ……ッ!?)
秘書「ひ、ィ……ッ」
王「……どうぞ、感動のご対面、でしょう?」
秘書「は、はおや…… ……さま …… ……!?」
王「貴女の牢を開ける訳には行きませんけど……」
ドサッ
秘書「!」
王「何を怯えるのです。貴女の大好きな母親、ですよ」
王「……死んでます、けどね」
秘書「う、そだ……ッ うそだ、うそだあああああああああああああああ!!」
602 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:11:37.12 ID:idJps7pnP
王「ああ……それから、他の貴族達、ですが……」
秘書「母親様! 母親さまああああああああああああ!」
王「……勿論、他の牢の中に居ますから。どうぞ」
王「僕が出て行った後、ゆっくりとご対面を」
秘書「母親様、母親様!」
ガシャン、ガシャン!
王「……聞こえてない、かな」
王「鍵、此処におきます。手が届いたら、牢屋開けられますよ」
王「貴女の細い腕なら、通るでしょうしね……」
チャリン、コツン、コツン…… ……
秘書「!? おい、王……ッ 王!?」
ギィィィ……バタン!
見張り「王様……!」
王「手筈通り、鎖と厳重な鍵で施錠を」
見張り「は、はい!」
王「衛生師は?」
見張り「戦士様達の所へ戻ると……」
王「……伯父上は?」
見張り「自分は姿を見てません、けど」
王「そうか。施錠が済んだら……この廊下に続く扉にも封を」
王「……壁を塗り込めて、誰も入れない様に」
見張り「し、しかし……母親は、あの……死んだ、と……その……」
王「大丈夫です…… ……中に、生存者は誰も居ません」
見張り「は!?」
王「……良いんです。皆、死んだんです」
王「……さ、さっさとやっちゃって下さい。僕は向こうの扉の準備をします」
見張り「じ、自分がやりますよ!?」
王「こっちを先に……施錠はしたので、後は鎖だけお願いします」
603 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:14:46.84 ID:idJps7pnP
見張り「は、はい!」
ガチャガチャ、カチャカチャ……
スタスタ
王「…… ……」
カチャリ
見張り「出来ました、王!」
タタタ……
ガチャ……ガン!
見張り「!?」
王「……ここから先、誰も居ないんです」
ガチャガチャ、ガチャン!ジャラ…… ……
見張り「ご、ご冗談を、王様!」
ドンドン!ガンガン!
王「……身寄りの無い、年老いた貴方が居て下さって助かりました」
王「ありがとうございます。礼を言います」
見張り「王様! おうさ……ッ」
ガン!
王「…… ……」
スタスタ
604 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:19:23.57 ID:idJps7pnP
見張り「王様ああああああああああああああああああ!!」
……
………
…………
秘書「……ッ も、う……ッ ちょ、っと……ッ」ググッ チャリッ
秘書(鍵を置いて言った……どう言う事だ!? 否!)
秘書(……今は、考えても仕方が無い……ッ もう、少し……ッ)チャラン……ッ
秘書「!」
秘書「つ、つかめた! これで……ッ」ガチャガチャ
キィ……ッ
秘書「母親様!母親さまあああああ!」
タッ ……ギュ!
秘書「……う、そ……だろ、う……ッ 母親様!」ガシ!ギュ!
秘書「…… ……ッ」
秘書(他の貴族達……! 他の牢に居るのか!)
タタ……ッ
ガシャン!
秘書「おい!無事……ッ ひ、 ……ッ」
タタ……ガシャン!
ガシャン!ガシャン! ……タタッ
秘書「こ、っちも……ッ」
秘書(……あっち、も。彼……も…… ……皆、死んでいる……!?)
秘書(そういえば……衛生師が連れて来た、時から)
秘書(……知った声など、聞かなかった。まさか、皆……既に殺されて……!?)
秘書「な……ッ に、が、手荒なまねはしない、だ、王ぉおおおおお!!」
秘書「……ッ」
605 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:26:39.73 ID:idJps7pnP
秘書「扉……!」
バタバタバタ……ガチャン!ガン!
秘書「……閉じ込められた、か」ペタン
秘書(食事も……期待など出来ん)
秘書(……このまま、此処で……死体に囲まれて……ッ)ゾッ
秘書(飢え、死を待つだけ……なのか!?)
秘書(誰も居らず、空腹と寒さと……真の闇の内で!?)
秘書(厭だ……ッ いやだ、いやだ……ッ)
秘書「ぅ、う ……ッ うわあああああああああああああああああああ!!」
秘書(いっそ……ッ いっそ、狂って仕舞えれば……ッ)
秘書「……ぅ、う」ぽろぽろぽろ
コツン、コツン…… ……
秘書「母親、様……ッ」ギュッ
秘書(……どうして、どうして私だけが! こんな目に……ッ)
秘書「許さん……許さんぞ、少女おぉぉおおおおおおおおおおおお!」
秘書(魔法の無い世界だと!? 真に美しい世界だと!?)
秘書「愚か者め……ッ 争いの無い世界など、ただの世迷い事だ!」
秘書「他があれば絶対の同一などあり得ない!」
秘書「お前の思うとおりに等行く物か!王!」
ギュッ
秘書「……母親、様」
秘書「お助けできず、申し訳ありませんでした……ッ」
秘書「……領主様の、血筋が……ッ」
秘書「…… ……血」
秘書(血……領主の、血。ああ、そうか……ッ)グッ
秘書「母親様、そうです。領主様の血……を……残せば良いのです」
秘書「貴女が死んでも、私が……生きています……ッ」グググ……ッ バキッ
606 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:34:39.89 ID:idJps7pnP
秘書「……母親様の、腕」ガブッ …… ……ピチャ
秘書「貴女を喰らい、身に宿せば、血は繋がります」ピチャ、ピチャ
秘書「私は、生きてみせる!」
秘書「……少女!お前を呪ってやる!」
秘書「この身に宿る、選ばれし民の血と、母親様の血に、誓って!」
秘書「最果ての、魔物の血に願って!」
秘書「……ッ 何時か、必ず……ッ 我らは蘇るのだ!」ガブッ ……ブチブチィッ
秘書「少女! 行っただろう、お前にだけ、甘い汁は吸わせんと……ッ」
秘書「己が運命を嘆け! 必ずだ!必ず、呪ってやる……ッ」
秘書「我が選ばれし民の血は、何時か……ッ 何時か、必ず……ッ」ゲホッ
ゲホゴホッ ……ッ ウ、ェ……ッ
秘書(……何処だ。何処で間違えた)
秘書(どうして、こんな事になってしまったんだ!?)
秘書(……ああ、母親様。領主様。遠い、始まりの姉弟よ!)
秘書(狂い違った選択肢を、どこかで選び直す事ができるのならば……ッ)
秘書「……ふ、フ……ふふふ……ッ」
秘書「血は、滅びん……ッ 必ず、必ず……ッ」
秘書「お前を不幸にしてやる、少女!」
秘書「『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ」
秘書「虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ」
秘書「……ああ、紅い。暖かい……母親様……ッ」ピチャ、コリコリコリ……
秘書「ああ……世界は、美しい……ッ」
……
………
…………
607 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:50:18.00 ID:idJps7pnP
癒し手「……側近さん?どうしました」
側近「あ……否」
癒し手「……随分、緊張していらっしゃる様ですね」
側近「仕方無いだろう……戻るんだ」
癒し手「まだ、先ですよ……南へ行くんでしょう」
側近「……そう、だな。だが」
側近「何れ、行き当たる。何れ……帰るんだ。俺達は……」
癒し手「……はい」
側近「蒼い小鳥が、戻った時のあの手紙……」
癒し手「后様のご懐妊の知らせ、ですね」トントン
側近「……重いだろう。俺が抱こう」
癒し手「すみません……」
側近「赤ん坊の成長、てのはこんなモン、なのか?」
癒し手「どうなんでしょう。男の子ですし、良くおっぱいも飲みますしね」
側近「……まあ、毎日見ている俺達が疑問に思い出してからでは……遅い、な」
癒し手「はい」
側近「親父が、手配してくれると言っていた船……はもうすぐだな」
癒し手「良いんでしょうか。こんなに……我が儘聞いて頂いて」
側近「……まあ、そこは甘えよう」
側近「俺は……いくら何でも剣士の真似事は出来ん……それに」
側近「……お前の身体の事を考えると、どちらにしても不可能だ」
癒し手「転移……ですか……」
側近「……! シッ」
癒し手「え……あ、王様!?」
タタタ……
王「ああ、良かった間に合いました」ホッ
側近「少女は良いのか?」
王「衛生師と話していたので、今のうちに」
王「伯父上は?」
608 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 17:55:52.15 ID:idJps7pnP
側近「船を見に行く、と」
王「そうですか……」
癒し手「随分、疲れた顔をされていらっしゃいますが……大丈夫ですか?」
王「え、ええ……大丈夫です。ちょっと、夢に魘されまして」
側近「寝てないのか?」
王「大丈夫ですよ、戦士兄様……疲れが溜まっているんでしょう」
王「書の街の様子を見に行って、帰ったばかりですから」
王「……兄様達も、寄られる、んでしょう?」
癒し手「ええ。丘の上の墓に手を合わせて、船に乗ってから」
側近「書の街と、港街と……それから」
王「南へ、ですか」
側近「まあ、のんびりと、な」
王「……帰って、来られる、んでしょう」
癒し手「宜しいのですか?」
側近「癒し手」
癒し手「あ、いえ……あの」
王「……当然です。偶には、青年の顔も見せて下さい」
癒し手「……はい。すみません」
王「そういえば、青年は緑の瞳……でしたよね?」
側近「ん?」
王「いえ……少女が、蒼に見えると言っていたので」
癒し手「曖昧な色をしていますからね。もう少し大きくなったら」
癒し手「ハッキリ解るのかもしれません」
王「ああ、そうですね」
側近「それがどうかしたか?」
王「いえ。特に……話が食い違ったので、覚えて居ただけです」
スタスタ
王子「戦士、僧侶!」
側近「ああ、親父……」
王子「もうすぐ港に着くようだ……丘の上へ寄るんだろう」
王子「青年も居る事だし……て、ああ。寝ちゃったのか」
609 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 18:04:32.58 ID:idJps7pnP
側近「……まあ、ゆっくり出るか」
癒し手「そうですね」
王「では、戻りましょうか、伯父上」
王子「ああ、俺も港までついて行くよ」
側近「良いのか?」
王子「家に居てもやる事ないからな。偶に……引退した団員が酒飲みに来るぐらいで」
側近「……弱いんだから、ほどほどにしておけよ」
王子「わ、解ってるって! ……偶には、身体動かさないとな」
王「では……僕は戻ります」
王「……旅の無事を、祈っています。戦士兄様、僧侶さん」
王「青年も、ね」ナデ
青年(スゥスゥ)
王子「良し……行くか」
癒し手「……色々と、ありがとうございました、王様」
王「いいえ……では。失礼します」ペコ
スタスタ
王子「……予定より、早かったんじゃ無いのか」
側近「さっき癒し手とも話してたんだが。俺達が気がついてからじゃ、遅いだろう」
王子「まあ……そう、だな」
癒し手「…… ……」
側近「どうした、癒し手?」
癒し手「……王子様」
王子「ん?」
癒し手「王様……気をつけて、上げて下さい」
王子「え?」
癒し手「……随分、お顔の色が悪かったです」
王子「ああ……何でも最近、夢見が悪いとか言ってな」
癒し手「何か……随分と、黒い物が……」
側近「黒い物?」
610 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 18:13:27.43 ID:idJps7pnP
癒し手「……あ、いえ。イメージ、何ですけど」
癒し手「何て言うか……気を、着けてあげて下さい、としか」
王子「ん……わ、解った。しかし、どう……」
側近「……王は、まだ結婚しない、のか?」
王子「衛生師にも、進言してみろとは何度か……言った、んだがな」
王子「……子供が出来たら、と。聞かないらしい、んだ」
癒し手「…… ……」
側近「……?」チラ
王子「……様子を、さ。見てきてくれないか」
癒し手「え?」
側近「書の街の、か」
王子「ああ……寄るんだろう?」
側近「の、つもりだ。図書館を見たいと癒し手も言うしな」
王子「少女の事について、な」
癒し手「解りました……小鳥で、お知らせします」
王子「……うん。助かる」
側近「親父……」
王子「……過保護、なのは解ってるんだよ。首を突っ込むつもりは無いんだけどな」
癒し手「あ……こっちの道、でしたっけ」
王子「ああ……戦士、大丈夫か?青年……」
側近「平気さ……行こう」
癒し手「誓いを立てた以来、ですね」
癒し手「……港街から、お墓を移して頂いて……嬉しかった、です」
癒し手「エゴと言われれば、それまでですけど」
側近「……出来れば、鍛冶師の村の神父様も此方へ、と思っているんだろう」
癒し手「流石にそれは無理だって……解ってます」
癒し手「……もう、最後でしょうから。此処に……来られるのも」
王子「魔法使い……后、か。懐妊した、んだったな」
側近「……ああ。次は、俺達の代わりに、『時期勇者』が戻る」
王子「……俺、生きてるかな」
側近「何言ってる」
611 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 18:17:46.62 ID:idJps7pnP
王子「……大きくなった青年にも、会いたいけどな」
癒し手「我が儘で……すみません」
王子「謝る事じゃ無い……どう頑張っても、お前の方が」
王子「……俺より、遙かに後に逝くんだ」
側近「親父……」
王子「……親より先に死ぬ事ほど、親不孝なことは無いんだ、戦士」
王子「年功序列なんだ。だから……それだけでも」
王子「俺は、幸せだ」
側近「……すまん」
側近「俺は……魔王の城に戻れば、もう……」
王子「……言うな!」
青年「……ッ」フエ……ッ
王子「あ、ああ……す、すまんッ」
癒し手「大丈夫です。側近さん、青年をこっちへ……」
側近「あ……ああ」スッ
癒し手「よしよし……」
王子「……解ってる。知ってる……だから、言わないでくれ」
側近「……すまん」
王子「癒し手」
癒し手「は、はい」
王子「……戦士を、息子を、頼む」
癒し手「…… ……は、い。はい、お義父様」
王子「お義理……!? ……あ、そ。そうか!そうだよな!」ハハッ
側近「……何照れてんだ」
王子「……本当に、ありがとう。二人とも」
612 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/11(土) 18:19:37.06 ID:idJps7pnP
お風呂とごはんー
また、時間のあるときに!
613 :
名も無き被検体774号+:2014/01/11(土) 19:15:07.96 ID:mYVBZ2W70
初めてリアルタイムで…!
とりあえず乙!
614 :
名も無き被検体774号+:2014/01/11(土) 21:51:55.03 ID:yY1OFy260
王様くるっとるなー。
615 :
名も無き被検体774号+:2014/01/12(日) 00:05:15.33 ID:KoLsiwDvP
心配や(´ω`)
616 :
名も無き被検体774号+:2014/01/12(日) 00:12:17.29 ID:E2nI15y80
魔王よりも魔王っぽい
本人が知りたくないならともかく、
大人の勝手な判断で知らせなかったのは、さすがにどうかと。
王にはきちんと伝えるべきだったんじゃないかな、
とか思ってみたり。
618 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 10:24:02.57 ID:gjEhcpBoP
619 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 10:33:03.99 ID:gjEhcpBoP
癒し手「あ……この道、ですよね」
側近「ああ……大丈夫か?」
癒し手「お散歩ですよ。平気です」
王子「……結婚式以来、か」フゥ
側近「親父も大丈夫か?息が上がってるぞ」
王子「俺はまだまだ元気だ……と、言いたいが」
王子「……休み無く往復するのは流石に堪える、な」
癒し手「ご無理なさらない方が……」
王子「癒し手もいるし、ゆっくり行ってくれるなら大丈夫さ」
王子「……今生の別れ……とは、思いたく無いが」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
側近「泣き止んだな。癒し手、青年をこっちへ」
癒し手「あ、は、はい……」
青年「…… ……」
側近「ん、どうした?」
王子「……急にご機嫌になったな」
癒し手「嬉しい、んでしょう。いえ、心地良い……のかな」
王子「エルフの加護……か?」
癒し手「……薄れてしまったとは言え……私も、気持ちいいです」
癒し手「この空気」
王子「そうか。青年も……解るんだな。俺にはさっぱりだが」
側近「草花しか無くて、気持ちいい風が吹いてて」
王子「?」
側近「海が望めて、美しい……何も解らない人間でも、俺達でも」
側近「それだけで、気持ちいいと思うモンだろう?」
王子「……そう、だな」
側近「俺は……魔に変じても。魔法だなんだ、良く解らないからな」
王子「……あえて突っ込まなかったのに、お前は」
癒し手「……この『世界』は、何なんでしょうね」
側近「ん?」
癒し手「何の為にあるんでしょう。人間、魔族、エルフ……」
癒し手「どこで、どうやって……別れてしまったのでしょう」
王子「…… ……」
癒し手「加護、とか。それが優れてるとか、優れてないとか……」
癒し手「……『個』は以上でも以下でも無い筈ですのに」
側近「…… ……」
癒し手「何かと比べ、それに優劣をつけるだなんて……下らない事です」
王子「だが、そうで無ければ生きていけないのも『命』だ」
側近「親父?」
620 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 10:39:59.92 ID:gjEhcpBoP
王子「……弱肉強食、だ。食物連鎖と言うべきか」
癒し手「…… ……」
王子「全てが等しく、どれも同じ……だなんて事は」
王子「あり得ない、決して」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
王子「行こうか」
癒し手「あ……すみません」
王子「否、時間は良いんだ。船だって……待ってくれる。だが」
王子「……青年、寝ちゃったみたいだ。今のうちに船に乗せた方が良いだろう」
側近「ああ……そうだな」
癒し手「……後、少しだけ」
王子「?」
癒し手「もう……見れるとは限りません。だから」
癒し手「……だから」
王子「…… ……」
癒し手「皮肉ですね。確かに景色も良くて、本当に美しい場所なのに」
癒し手「……この丘自体が、強大な墓、何ですね」
側近「…… ……」
癒し手「私達は、犠牲の上に立っている。そうして、未来を紡いでいく」
側近「癒し手……」
癒し手「『過去』……死者は土へ……否、空へ還り、世界へ孵っていく……んです」
癒し手「……何れ、私達も『過去』になる。それが……『世界の理』なんですね」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
……
………
…………
キィ、パタン
少女「おかえりなさ…… ……衛生師?」
衛生師「王様を待っていた、のかい」
少女「……そういう訳では無い。此処は彼の部屋だからな」
少女「主が何時帰って来ようが……どうした?」
衛生師「…… ……ん?」
少女「珍しく、元気が無い様に見える」
621 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 10:47:06.83 ID:gjEhcpBoP
衛生師「僕はそんなに、何時も何時も元気いっぱい!ってタイプじゃ無いと思うけど」
少女「……何かあったのか」
衛生師「……王様から伝言だ」
少女「…… ……死んだ、のか」
衛生師「…… ……」
少女「言い淀む何て珍しい」
衛生師「……悲しくないのか、てのは愚問だね」
少女「覚悟はしていた……否」
少女「寧ろ、今まで生かされていたのだと思う方が不思議……だと」
少女「良く、考えて見ると……思う、のかもしれない」
衛生師「歯切れが良くないね。その方が珍しい」
少女「……良く解らないんだ。忘れてしまえる事では、無いだろうに」
衛生師「いよいよ本当に毒を抜かれたのか」
少女「…… ……」
衛生師「王様は、地下牢に行った、けど」
少女「…… ……」
衛生師「……弔いが済めば、壁を塗り込めてしまうらしい」
少女「え?」
衛生師「もう牢など必要無いだろう、とね」
少女「……早計じゃ無いか?」
衛生師「さてね……君は、必要だと思う?」
少女「…… ……」
衛生師「それが済めば……君の部屋を用意すると言っていたよ」
少女「え!?」
衛生師「城の中に限る、けれど。自由に出歩いて良い、てさ」
少女「……王は、どうしたんだ?」
衛生師「喜ぶ所じゃないのか」
少女「…… ……」
衛生師「……まあ、良い。食事にしようか」
少女「最近、貴方とばかりだな」
衛生師「……王様に一緒に食事が取りたいって言えば」
衛生師「飛び跳ねて喜ぶと思うけど」
少女「……寝て、と言うか横になってばかりだろう」
衛生師「僕も回復魔法は使える。まあ、王ご自身も、だけど」
少女「……心のケアは魔法では出来ない」
622 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 10:55:33.60 ID:gjEhcpBoP
衛生師「とうとう狂った、とでも?」
少女「そうじゃ無い!」
衛生師「…… ……」
少女「……共に眠ると魘されている。否……それすら、最近は減った」
衛生師「…… ……」
少女「私を抱く事もだ」
衛生師「部屋には、戻ってるんだろう?」
少女「……私が寝入った頃に戻って来てはいる様だ」
少女「気配で一瞬目を覚ます。だが……まあ、すぐに寝てしまうから、私も」
衛生師「……随分慣れたな」
少女「…… ……」
衛生師「別に嫌味じゃ無いよ」
少女「今更だな……適応してしまえば平穏に暮らせるんだ」
少女「……気がかりも、消えた」
衛生師「……秘書?」
少女「青年を見に行く前に、書の街の新しい代表者、の話を聞いたことが大きい」
衛生師「……ああ、成る程」
少女「……複雑だった、が。勿論……姉の事もある。だけど」
少女「私が死ねば、終わるのだなと言う安堵の方が大きい」
衛生師「!」
少女「そんな顔をするな……自ら命を絶つ気等無い……王を、放っては置けない」
衛生師「そう言って貰えるのはありがたいけど。何、情にでもほだされたの」
少女「……そう、じゃない。私は…… ……本当に、何なのだろう」
少女「心配には、なる……彼は酷く不安定だ」
衛生師「……まあ、そう、だろうな」
少女「貴方が言っていた事だ。彼を歪んでいないと思うのか、と」
衛生師「…… ……」
少女「……私がこの国に、王子様に連れてきて貰って」
衛生師「?」
少女「正式に『新王』と対面したときだ」
少女「……秘書を牢にぶち込んだとき、と言えばいいか」
衛生師「……報告は聞いてるけど」
623 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:04:44.48 ID:gjEhcpBoP
少女「王子様の気遣い……と言っていいのかは解らないが」
少女「地下の、あの牢屋へ案内してくれた騎士が」
少女「……魔導国との船団同士の争いで、弟が死んだのだと言っていた」
衛生師「誰、かは解らないけど」
少女「名は聞いていない。若い騎士だった。彼は……」
少女「……否。彼に、私は、どうして王に従うのだと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「彼はそれが『仕事』だからだと」
少女「『王を守りたい』かどうかは解らないが、『仕事だから』従うのだと言っていた」
衛生師「……何が言いたい?」
少女「貴方もなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「言い方は悪いかも知れないが、私は……此処で自分の心に波風が立たないよう」
少女「……楽に、安らかに過ごしていく方法は、慣れてしまうことだと思った」
少女「それが情かどうかは解らない。愛では無いと思う、が」
少女「……良く、解らない不思議な感情だ。放って置けない」
衛生師「…… ……」
少女「貴方は、自分が仕える主を『歪んでいる』と言う。だけど……」
衛生師「僕、は」
少女「…… ……」
衛生師「……君と同じなのかもしれないな。その、若い騎士とも」
衛生師「『仕事』だ。守る家族も、大事な人……恋人も別に居ないけれど」
衛生師「……ま。放って置けないね、彼は」
少女「…… ……」
衛生師「…… ……」ジッ
少女「…… ……」ドキ
衛生師「……戦士君達が旅立ったというのは、聞いている?」
少女「え……あ、ああ。今朝だろう」
少女「王が、見送りに行くと言っていた」
衛生師「……王様を良く見ておいた方が良いと、僧侶さんが言ってたそうだ」
少女「え?」
衛生師「随分顔色が悪かった、とね」
少女「……あれだけ魘されていれば、まともな睡眠も取れないだろうな」
衛生師「……具体的な内容は?」
少女「…… ……」
衛生師「言えない?」
少女「そう言う訳じゃ無いが……何と言うか」
少女「殆どが悲鳴だ」
衛生師「……悲鳴」
624 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:10:21.24 ID:gjEhcpBoP
少女「最初は悪い夢を見ているんだろうと思っていたが」
衛生師「…… ……」
少女「……心当たりがあるのか」
衛生師「……否? 別に」
少女「…… ……」
衛生師「ああ、御免。食事にしよう」クルッ
スタスタ、パタン
少女(…… ……)フゥ
少女(そう、か。死んだか)
少女(……実感が無い。否……良く解らない)
少女(私は悲しいのか?)
少女(……悲しむ、べきなのだろうか)
少女(これで……私が、死ねば)
少女(『劣等種』だの『出来損ない』だの)
少女(……『優れた血』だの)
少女(全て、闇に葬り去られてしまう……のだろうか)
少女(……それを喜ばしいと思うのは)
少女(駄目な事ではない筈だ……お姉様)
少女(我らの罪は重い……心安らかに逝けなかったではあろうが)
少女(……因果応報だ)
少女(甘い汁……か)フッ
少女(……怨んでいる、怨んでいた……のだろうな)
……
………
…………
625 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:27:05.44 ID:gjEhcpBoP
后「…… ……」ブツブツ
コンコン
后「……んー……」
コンコン!
后「は、はい!?」
カチャ
剣士「……物音がするから起きているとは思っていたが」
后「ああ、剣士……」
剣士「あんまり根を詰めると身体に触るぞ」
后「平気よ、本を読んでるだけなんだもの」
剣士「まあ、それは……そうだが」
后「……検証を始める!なんて魔王が言ってたけど」
后「これを読まなきゃ始まらないんでしょ」
剣士「だが、そこに全ての答えが乗って居る訳でもあるまい」
后「まあ、そうだけどね……」
剣士「使用人が心配していた。ちゃんと寝ているのかと」
后「私より魔王の心配した方が良いと思うけど?」
剣士「……殺してもしなんだろう、今は」
后「…… ……」
剣士「…… ……」
后「時間が無いのよね、彼には」ハァ
剣士「……まだ腹が目立ってる様には見えん、が」
后「そりゃね……だって、この子は……『人間』だもの」
剣士「…… ……」
后「あと数日あれば読み終わるわよ」
剣士「……時間が無いとは言え……産まれてからも」
剣士「すぐに、と言う訳では無いんだろう?」
后「……一ヶ月ぐらい、って言ってたかしらね」
剣士「『光を集めて瓶に詰めるような物』か」
后「……足りないわ。否、永遠の時間があったって」
后「全ての絡繰りを、私達が知れる訳では決して無い」
剣士「…… ……」
626 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:37:25.26 ID:gjEhcpBoP
后「……癒し手達、今どの辺なのかしら」
剣士「文が何時出され、どれぐらいの時間をかけて届いたのか」
剣士「解らんからな」
后「……南、か。貴方は行ったことあるの?」
剣士「船長の船に乗って居る時には……その方角に、ならばあるだろうな」
后「ああ、そうか……船長、さんって」
后「……私を、始まりの国まで連れて行ってくれた人、なのよね」
剣士「大会の時か」
后「そう…… ……ご大層よね。小娘一人に」
剣士「…… ……」
后「娘を大事にしてた訳じゃ無いって位じゃ、もう傷付かないわよ」
剣士「……不思議な縁だ」
后「そうね。世界はこんなにも広くて、こんなにも謎だらけなのに」
后「……どこかで、誰かが繋がっている」
剣士「俺とお前もだな……初めて見たとき……お前はまだほんの子供だったのに」
后「貴方は今と変わらないものね……ねえ」
剣士「?」
后「あの時……どうして助けてくれたの」
剣士「……忘れた」
后「…… ……」
剣士「…… ……気まぐれ、だろうな」
后「……そう、か」フフ
剣士「何故笑う」
后「不思議ね。私は貴方に生かされた……で、今、ここに居る」
剣士「…… ……殺されはしなかっただろう」
后「そうね。有効に利用する為にね……死んだ方が、マシだったでしょうけど」
剣士「…… ……」
后「その私が……今は魔王の妻で、次期勇者を産むのよ」
后「……お母様とお父様が……お爺様が生きてたら」
后「どんな顔をしたのかしらね?」
剣士「……后」
后「……生きてるのかしら」
剣士「魔王も言っていたのだろう。王の事だ。手荒なまねは……」
后「私は、今の『王様』を知らないもの」
627 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:50:02.73 ID:gjEhcpBoP
剣士「だが……あの国王の息子なのだろう?」
后「……私もあの人達の子供よ」
剣士「…… ……」
后「疑う訳じゃ無いけど。わからないわよ。何も」
后「『過去』も『未来』も……全てを確実に、知れる者なんていないのよ」
剣士「……だが、可能な限り、知らねばならん」
后「……そうね。私達にはその義務がある」
剣士「今日はもう休め……無理だけはするな」
后「書庫に居る魔王にも伝えて置いて頂戴。行くんでしょ、貴方も」
剣士「……使用人にも、だな」
后「使用人も居るの?」
剣士「魔王がそこら中に本を散らかすからな」
后「……殴って良いわよ、って言っておいて」
剣士「必要無いだろう」
后「……御免って言っておいて」
剣士「承知した」
スタスタ、パタン
后「全く、あの馬鹿は……」ハァ
后(…… ……)ペラ
后(『可能な限り紐解く』か…… ……限界はあるわよ、魔王)
后(それに、その事実が……この子)ナデ
后(勇者に……伝わるのは……)ハッ
后「……次で終わるのなら、どうやって伝えるのよ!?」
后(『勇者』が『魔王』を倒してしまえば、魔王は愚か)
后(私達も……『魔』その物が居なくなる……!?)
后(……否、それすら確証の無い話……でも……)
后(『魔の王』に命を与えられた者……使用人も……!)
628 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 11:56:05.24 ID:gjEhcpBoP
后「……あ」
后(そうだ。前にも話し合ったじゃないの)
后(……『紫の魔王』はもう居ない。『紫の魔王の側近』も)
后「違う!」
后(『紫の魔王の側近』に魔としての命を与えたのは、『赤の魔王』)
后「……でも、役割が……そうよ。やる事が残ってた、から」
后(『金の髪の勇者』を育てる? それ以上に……『紫の魔王の瞳』を吸収したから)
后(役割……使用人は『血を受け継ぐ者』)
后「…… ……誰に?」
后「検証だけならば、全てを私達が受け取れば、彼女の役目は終わる!」ガタッ
后「…… ……私達が、今からやろうとしている事」
后「『知ろう』としている『知』は」
后「……誰に、繋げるの……ッ !?」
后(……ま、さか……ッ)
バサバサッ ガタンッ
タタタタ……ッ
バタン!
……
………
…………
629 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 12:08:23.63 ID:gjEhcpBoP
ピィ……ッ
チチチ…… パタパタ……
カチャ
側近「癒し手?」
癒し手「ああ、おはようございます側近さ……ッ」
ビュゥ……ッ
側近「……ッ 窓が、空いてるのか」
癒し手「きゃ……ッ す、すみません!」
パタン
側近「否、良いんだが……どうした?」
癒し手「魔王様と王子様に、小鳥を飛ばしたんです」
側近「……もう?」
癒し手「……確かに、始まりの国を出て一週間、ですけど」
側近「…… ……」
青年「あー。あー」
側近「……まあ、な」
癒し手「御免ね、お待たせ、青年」ギュ
青年「まー ……ァ」
側近「……生後半年、位に見える……か?」
癒し手「比較対象が居ないので、何とも……」
青年「あー!」ヨチ、ヨチ
側近「!?」
青年「あー♪」ギュ
側近「…… ……」ギュ
癒し手「……産まれて、三ヶ月ほどで、あの国を出る決断をしたのは」
癒し手「ギリギリ、だったのかもしれません」
側近「おはよう、青年」ダッコ
青年「キャッキャ」
癒し手「……流石に、半年じゃ歩きません……よね」
側近「お前は、どうだったんだ」
癒し手「人の子に比べると、随分成長が早かった、としか……多分」
側近「……まだ、抱いて出れるな」
癒し手「殆ど、港街の中……見れませんでした」ハァ
側近「……毎日毎日、俺達が驚いている位だ」
側近「行ってくるか? ……遊んでいるが」
癒し手「いえ……ある程度側近さんが教えて下さいましたし」
癒し手「……此処は、私達の顔も随分、知っている人が多いです、から」
側近「そうだな……」
癒し手「でも、船で着いた夜に、三人でご飯食べに行けましたし」
癒し手「……充分ですよ」
630 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 12:16:18.59 ID:gjEhcpBoP
側近「教会は……残念だった」
癒し手「……仕方ありません。思い出は詰まっていますけど」
癒し手「娼婦様の像も、お墓を移して貰うときに……一緒に埋めて頂きましたし」
側近「……立ち入り禁止、とはな」ハァ
癒し手「……それより、私は……まだ、未だに」
癒し手「魔除けの石が販売されている事に驚きました」
側近「観光みやげの様な物だろう。魔導の……否、書の街では」
側近「流石に、生産も禁じられて長いと聞いたしな」
癒し手「定期便も復活したんですよね?」
側近「ああ。図書館も建て直ったそうだしな」
癒し手「では……早い内に行きましょうか。長居はできそうにありません」
癒し手「できる限り、知識は仕入れたかったのですけど……」
側近「……大丈夫だ。剣士が居る」
癒し手「…… ……」
側近「あ、否……自分の目で見てみたい、と言うのは、勿論……解る、んだが」
癒し手「いえ……良いんです」
側近「…… ……すまん」
癒し手「あ……こ、こっちこそご免なさい!」
側近「ぐずり出す前に出よう。船の時間ももうすぐだ」
側近「……朝一の便なら、人も少ないだろうし」
側近「一泊したら……否。出来るのならもう少し……」
癒し手「昨日ヨチヨチ歩いてたと思ったら、明日には喋ってる、なんて」
癒し手「洒落にもなりません……大丈夫です」
青年「あーあー」ムニ
側近「いてっ ……抓るな、青年」
青年「キャッ」
側近「…… ……?」
癒し手「側近さん?」
側近「否…… ……」
側近(……気のせいか。随分と……瞳が、蒼く見える……?)
631 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 12:26:06.98 ID:gjEhcpBoP
おひるごはーん
なに食べるの
633 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 13:30:05.04 ID:gjEhcpBoP
634 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:14:59.02 ID:gjEhcpBoP
側近「……せいれんろひろひが」ムニー
側近「…… ……」
青年「あー♪」
癒し手「青年、ほら……お父さんのほっぺた離して」プッ
側近「こいつの瞳、こんなに蒼かったか?」
癒し手「え? ……ああ、船でも思いましたけど……光の加減じゃ無いですか」
癒し手「加護は、何れ解りますよ……気になりますか?」
側近「……いや、気にしても仕方無いことは解ってる、んだが」
側近(何だ……? この、違和感…… ……?)
癒し手「緑なら……貴方。蒼なら私……」
癒し手「……優しい子に、なってくれれば、それで良いです」
癒し手「加護なんて……どちらでも」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「……ん、ぅん……ッ」
王(真っ暗だ……随分と、息苦しい……)
王(……これは、何だ。此処は……何処だ?)
ボコボコボコ……ッ
王「!」
王(地面から、何かが……ッ)
ズル……ッ ザァッ
王「ひ、ィ……ッ !?」
王(手……、朽ちた、腕……ッ!?)
ガシッ
王「うわああああああああああああああああああッ」
王「は、離せ!離せぇえええええええええええええええええええ!!」
635 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:21:11.76 ID:gjEhcpBoP
秘書「おぉ、ううぅ……王……ッ」
王「ヒ……ッ」
秘書「……う、して。どうして母親様を殺した!」
秘書「旧貴族達を、私を……ッ」
秘書「どうして殺したんだ!!」
秘書「……どうして。どうしてえぇぇええぇ……」
ズルズル……
王「ち、違う! 母親は勝手に死んだ!」
王「あの狂人は、僕が殺したんじゃ無いッ は、はなせ……ッ」
秘書「なぁんでぇ……殺した……ッ」
王「僕じゃ無いって言ってるだろう! そ、それに、旧貴族、達は……ッ」
王「あれは、僕じゃ無い! 手を下したのは、僕じゃ……ッ」
ボコボコ……ッ ズルズルズル……ッ
見張り「じゃあ…… だれ、なん……で、す……?」
王「うわああああああああああああああ!」
見張り「……見て、ください。手……」
見張り「びくとも、しない……堅い扉……」
見張り「叩いて、叩いて……ッ もう、骨が見えて……ッ」
王「…… ……ッ や、やめろッ やめてくれ……ッ」
見張り「……飢えて、渇いて、喉が、ほら!」
ガバッ
王「! や、やめろ、離せッ 抱きつくな……ッ」
見張り「見てくださいよぉおおお…… 喉、かいてかいて……爪が、もう……」
秘書「人殺し! ひぃとぉごろしぃいいいい!」
王「違う!違う! 僕じゃ無いんだ!僕じゃ……ッ」
王「……ッ 助けてくれ、衛生師……ッ」
636 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:34:19.50 ID:gjEhcpBoP
チカチカチカ……ッ
シュゥ……
衛生師「……命令、ですから」
王「衛生師……ッ」ホッ
衛生師「『不必要な力に訴える事はしない』って少女に約束したから」
衛生師「僕に、貴族達を煽るように命令したんでしょ?」
王「え、衛生師…… ……?」
衛生師「結局、捕らえて牢に入れる時には、みんな」
衛生師「……貴方の命令で、死体だったんだ。王様」
衛生師「ずっとあの中に居た狂人と、秘書は気がつかなかったかもしれないけど」
衛生師「……凄い匂いがしてたんですよ。地下牢」
王「や、やめろ……ッ」
衛生師「確かに、貴方はご自分の手は汚されていない」
衛生師「身寄りの無い見張りを近衛兵団の一員に迎えたのも」
衛生師「怨みを吐く貴族達の息の根を止めたのも、僕だ」
衛生師「……『君にしか任せられない』って、当然だよね」ハァ
衛生師「僕と貴方しか、知らないんだ」
見張り「ひとごろし……ひとごろしぃ……ッ」
秘書「そうして最後は、場所毎隠蔽し満足かッ」
秘書「人殺し!」
王「や……ッ やめろぉぉおおおおおおおおおおおおお!」
秘書「呪ってやる!怨んでやる!」
秘書「健やかに歩んでいけると思うな、『最後の王』よ!」
王「な……ッ に……ッ!?」
秘書「少女とお前に、幸せなど訪れやしない」
秘書「末代までも、祟ってやる! 呪ってやる!」
秘書「忘れるな!王ッ!」
……
………
…………
王「うわあああああああああああああああああああああああ!!」
637 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:41:15.70 ID:gjEhcpBoP
少女「王様!」
王「……ッ」ハッ
少女「……大丈夫、ですか」
王「…… ッ ひ……ッ …… ……あ、ァ……ッ」
王「……少女、か」ハァ
少女「また、酷い夢を?」
王「……いや……あ、ううん。大丈夫……です」フゥ
少女「……水をお持ちしま……ッ」
王「…… ……」ギュッ
少女「痛……ッ」
王「…… ……」
王(毎晩……同じ、夢を……見る)
王(……『最後の王』って、何だ)
王(僕は……ッ)
少女「……王様?」
王「……もう少し、こうしてて」
王(暗い中で見ると……少女の顔が……瞳の色が、一瞬)
王(……茶色く、見えるときがある)
王(表情も、何もかも似ても似つかないと言ったのは、僕なのに……ッ)
少女「……それは構いません、けど。何時戻られたんです」
王「……黙ってて」
少女「…… ……」
王(呪い等……ッ 祟り等、あるものか! 信じる物か!)
王(……秘書は、もう死んだんだ。死んだはずだ)
王(衛生師だって……僕に、あんな感情を、言葉を向けたりはしない)
王(……王、だ。僕は、王なんだッ)ギュッ
少女「…… ……ッ」
王(『最後の王』だと!? ふざけるな……ッ)
王(僕は、少女と……子供を……ッ 次の、王を……ッ)グイッ
少女「きゃ……ッ」ドサッ
638 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:45:37.02 ID:gjEhcpBoP
少女「お、うさ……ッ ……んッ!」
王「少女、少女……ッ」チュ、チュ……ッ
少女「ん……ゥ」
王「……ッ 少じょ…… ……!?」
秘書『呪ってやるぞ、最後の王よ……!』
王「うわああああああああああああああああああ!」
ドンッ
少女「きゃッ !?」
王「……あ、ァ……ッ」
バタバタ……ッ バタン!
少女「…… ……? ……ッ」ズキッ
少女(打った、か…… ……ッ)
コンコン
衛生師「僕だ、少女」
少女「……衛生師、様?」
衛生師「王様は居ない……入るよ?」
少女「あ、ああ……」
カチャ
衛生師「……酷い顔色で、王が自室に駆け込んでいったから」
少女「……ああ、そうか」
少女(此処は……私の、部屋……だ)
639 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 14:56:26.95 ID:gjEhcpBoP
衛生師「……適応は得意だと思ってたけど?」
少女「……王の悲鳴で目が覚めた、からな」
衛生師「今日は珍しく君の部屋を訪ねると言って玉座を立たれたからね」
少女「……見に行かなくて良いのか」
衛生師「屈強な近衛兵二人がかりで暴れる王様を押さえ込んだんだ」
衛生師「……医師に鎮痛剤を打たれて、今頃眠ってる……と」
衛生師「思いたい、けどね」
少女「……酷くなっている、な」
衛生師「…… ……」
少女「しかるべき治療を受けさせる必要があるんじゃないのか」
衛生師「……本人が嫌がるんじゃ、仕方が無いだろう」
少女「『命令』が無いと……動けないか」
衛生師「珍しいな。嫌味か?」
少女「……ご免なさい」
衛生師「…… ……否。僕こそ済まない。君の言う通りだ」
少女「もう、随分になる」
衛生師「何が?」
少女「……何もかも」
衛生師「…… ……」
少女「城を許可無く立ち入れなくしたのも。私が部屋を与えられたのも」
少女「……広すぎる鳥籠の中の、自由をてにしたのも」
衛生師「……今日の君はやっぱり、少し皮肉めいているな」
少女「一つも言いたくなる……さっき、酷い顔色をしていたと言ったが」
少女「……鏡を見たか? 貴方も、王の事等言えない程だ」
衛生師「心配してくれているの」クス
少女「…… ……」
衛生師「……明日、王子様が城に来る」
少女「?」
衛生師「『広すぎる鳥籠の中は自由』何だろう?」
少女「…… ……私に、王子様に会えと?」
640 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 15:10:11.27 ID:gjEhcpBoP
衛生師「……黒い物が見えた、んだそうだ」
少女「黒…… ……?」
衛生師「僧侶さん曰く、ね」
少女「……彼女は、何者だったんだ」
衛生師「え?」
少女「……人間離れした美しさだった」
衛生師「まあ、それは認めるけど……何、急に」
少女「青年の瞳が『蒼』に見えると言ったとき、王はほっとした顔をしていた」
衛生師「……?」
少女「金の髪に緑の瞳だと聞いていたんだ」
衛生師「……僕も、そう聞いているけど」
少女「……戦士の瞳は、緑だったな」
衛生師「青年は僧侶さんにそっくりだったよ?」
少女「それは私もそう思う……否、何が言いたいのか解らなくなった」
少女「……王は。戦士と仲が良くなかった、のか?」
衛生師「さあ……そもそも殆ど接点が無い、だろう」
少女「…… ……」
衛生師「どうした。君らしくないな……要点を得ない」
少女「……上手く説明出来ん。が……」
衛生師「ばったり会う可能性が無いとは言えないかもね、って」
衛生師「……それだけ、言っておこうと思っただけだ」
少女「…… ……」
衛生師「戦士君達が旅立って、城の改修も終わって」
衛生師「…… ……魔物も、強くなってきた」
少女「?」
衛生師「また、醜い戦争が起こるとは思わない。思いたく無い。だけど」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……戻るよ。施錠はしっかりね」
カチャ、パタン
641 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 15:24:18.39 ID:gjEhcpBoP
少女「……施錠、ね」フゥ
カチャ
少女(この部屋に用事があるのは、王と衛生師しかいないだろうに)
少女(……始まりの国の国民が、自由に城に入れない以上)
少女(王の傍仕えは、少数精鋭の近衛兵のみ)
少女(……私に、誰が用を覚えると言うんだか)
少女「王子様、か……」
少女(……私に、何をさせようとしているんだ、衛生師は)
……
………
…………
カチャ、バタン
剣士「すまん、待たせたな」
使用人「いえ……あら、魔王様は?」
剣士「…… ……」
后「? どうしたのよ」
剣士「……これを」カサ
使用人「手紙……ああ、癒し手様からですか?」
后「小鳥は? また魔王突っついてるの」クス
剣士「……否。死んだ様だ」
使用人「え!?」
カチャ
后「魔王!? ……癒し手の小鳥は……!」
魔王「……霧散したよ。何時もみたいに水をやったら……急に、苦しそうにして」
魔王「…… ……そのまま」
剣士「魔王の魔力の及ぶ範囲にある水を、ハーフエルフの力の具現でしかない小鳥に与えたから、か?」
后「待ってよ、今までも何度もこうして」
后「癒し手の蒼い小鳥で文のやりとり、したじゃないの!」
使用人「勇者様が……宿られた、から」
后「……そ、んな……」
剣士「……あれは、癒し手に戻るのだろう。魔力として」
642 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 15:55:27.54 ID:gjEhcpBoP
后「け、けど……ッ ついこの間、は何とも無かったじゃ無いの!」
后「子供が……青年が産まれた、って……金の髪に、緑の瞳の……ッ」
使用人「……状況は、毎日変化していくんでしょう、后様」
使用人「貴方のお腹の子……『次期勇者』様の……成長も」
使用人「……止まりは、しません」
后「…… ……」
使用人「………恐らく」
使用人「后様の中で新しいお命……勇者様が育ち行くに連れ」
使用人「……魔王様の身、そして力に変化が現れたのでしょう」
魔王「…… ……」
使用人「『もしくは』……癒し手様の身に、何か」
魔王「……あんまり不吉なこと言わないでくれ、使用人」
后「側近が付いてる限り……何も無いと思うんだけど」
后「二人には……子供も居るのだし、無茶はしないはずよ」
魔王「……そうだな」
魔王「何にしても……もうすぐ、だ」
后「そうね……もう、すぐ」ナデ
魔王「喜ばなくちゃいけない……んだ、后」
后「ええ……新たな、命の誕生」
魔王「勇者の、誕生。光に導かれし……運命の子」
剣士「『勇者は、必ず魔王の子』」
魔王「……おかしな話だよな……本当に、腐った話だ」
后「ええ……腐った世界」
魔王「腐った世界の、腐った不条理、か」
魔王「誰が……言ったか知らんが……よく言ったモンだよ」
使用人「……時間が無い、です」
使用人「さっそく本題です……后様、先ほどお話しされていた話を」
后「あ……ええ。そうね」ドサッ
剣士「……読んだのか、もう!?」
后「寝てる場合じゃ無い、って思ったの。大丈夫よ」
后「……続きが気になって一気に、ってのもあるけれど……」
使用人「……『誰に何を受け継ぐのか』」
使用人「私の役目は……まだ、終わらない、ですね?」
魔王「え?」
643 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:04:56.61 ID:gjEhcpBoP
剣士「待て……手紙に目は通したのか」
后「……あ」
使用人「あ、ああ……そうでした」
魔王「この間の手紙は、青年が産まれた、と言う事だった」
剣士「……港街を経て、魔導国……じゃない。書の街を駆け足で巡ると書いてあった」
后「…… ……!?」カサ
使用人「后様?」
魔王「……書の街には、始まりの国に保護された少女の代わりに」
魔王「新しい代表者が立ち、図書館を新しく建て替えた」
剣士「……で、今から見に行くが『時間が無い』」
使用人「……時間が、無い……や、やはり、癒し手様の身に何か!?」
后「……違うわ。青年の方よ」カサ
剣士「図書館は……必要があれば、俺が行けば良いだろう、ともあったな」
使用人「青年様……に?」
魔王「……親である二人が驚くほどのスピードで成長している、んだそうだ」
后「エルフの血を引いてるんだもの。それほど……驚く事じゃ無い様な気はするけど」
后「……まあ、確かに何処にも、長く滞在は出来ないでしょうけど」
后「私は……こっちの方が気になるわ。はい……使用人」
使用人「え……し、失礼します」カサ
使用人「…… ……!?」
魔王「王……国王の息子だな。の顔色が悪い」
魔王「……何か、黒い物が見えた、とな」
剣士「国王自身も、それほど身体が強い方では無かったんだろう」
使用人「……しかし、これだけではどうとも判断が……できませんね」
使用人「癒し手様が何かを感じられた……と言う事は、気のせいでは無いのでしょうが」
后「……うん、そうよね」
魔王「書の街の問題は解決したのか?」
后「それこそ、手紙だけじゃわかんないわよ」
剣士「……あいつらが戻れば、俺が様子を見てくる」
剣士「俺ならば、何かあってもすぐに戻れる……だろう」
后「……そうね。どうしようも無い事を思い悩んでも仕方無い……じゃあ」
后「改めて。本題……これ」トントン
使用人「……本当にもう読んでしまったんですね」
644 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:14:42.67 ID:gjEhcpBoP
后「確かに、何処にでもある『善と悪』……『勇者と魔王』の物語」
后「……類似点が多くある様な気がするのは、事実に基づいているから?」
魔王「まあ、『発想』てのはそんなモンかもしれんけども」
使用人「『物語』を真似たのが『私達の生きる世界』だと言うよりかは納得出来ますが」
使用人「それが『真実』だった保証はありませんよ」
剣士「繰り返されている、と言う事実とイコールでも無い」
后「繰り返されている?」
剣士「物語が先であるのならば、そうだろう? ……随分古そうな本だ」
魔王「まあ、どっちが先でも後でも良いけど」
魔王「……矛盾だらけなんだよな。似すぎてる」
后「あれ、持ってきた? 魔王」
魔王「ああ……なんちゃらっつー古詩な」
后「見せて…… ……」ペラ
使用人「……剣士は、人魚には会っていないのよね?」
剣士「? ……ああ、船長の父親を喰らった、て言うあれか」
后「側近……は期待できないな。癒し手が戻ったら、見てもらいましょう」
魔王「ん?」
后「魔王……覚えてる?」
魔王「最果てに着くまでに襲われた奴だろう? ……ああ、そう言えば妙な夢を見たな」
魔王「話した事の無い会話。覚えの無い状況……だけど、知ってる気がした」
使用人「魔導将軍と……北の塔で対峙した、と言う奴ですか」
后「……そう。泣いてる癒し手……僧侶を、私が慰めた」
后「『貴女、戦士が好きなのね』だったかしらね……」
魔王「そうそう。俺が側近を説得してた」
剣士「……似ている、な。前にも思ったが」
使用人「キーワードが同じですよね。『北の塔』」
魔王「え?」
使用人「此方は現実ですけど……剣士さんが鍛冶師の村に居る時に」
魔王「ああ……北の塔を訪ねてた側近と癒し手の様子を覗き見してたって奴な」
剣士「……不可抗力だ」ムッ
后「喧嘩しないの……そう、それでね」
魔王「それが何だ? 『北の塔』と『人魚』。『人魚』と『夢』が繋がってるてのは」
魔王「……ちょっと強引だぜ?」
645 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:28:01.65 ID:gjEhcpBoP
魔王「しかも、この古詩……」
后「最後まで聞きなさいよ! ……『詩』よ」
使用人「詩…… ! 人魚の『魔詩』!?」
后「……流石ね使用人。そう。彼女たちの魔詩の『詩』よ」
后「この古詩を読んだとき、覚えがあると思ったの」
后「……旋律はともかく。内容は、これよ」
剣士「……偶然……では、無いな」
魔王「お、覚えてるのか? 確かなのか!? 俺にはほにゃほにゃとしか……」
后「だから癒し手に確かめるの!」
后「……魔王も、側近と同じぐらいアテにならないでしょ、その辺は」
魔王「お前、酷いな……」
后「反論できる?」
魔王「……」ショボン
剣士「最後まで読んだんだな?」
后「ええ。だから持ってきて貰ったのよ。これも」ポン
后「……ねえ、使用人は随分前だって言ってたわよね? 読んだの」
使用人「え、ええ……うろ覚えなので、もう一度后様が読まれたら、とは思って他のですが」
后「取りあえず、一番最後。見て」
使用人「……?」ペラ
后「……逆さまになってるだけなのよ。この古詩」
使用人「あ……!」
魔王「それは、俺も剣士も気がついた」
剣士「まずがこの『名も無い古詩』で、『顔色の悪い蒼空』と名付けられたこの神話……童話?だ」
使用人「…… ……どう、して……気がつかなかった、のでしょう……」
后「……『表裏一体』よ」
魔王「実は『この世界は、小説でしたー』なんて落ちだったらなぁ……」
后「あのね……」ハァ
使用人「……『繰り返される運命の輪』」
剣士「?」
使用人「そこから、はじき出された者は……存在するんでしょうか」
后「え?」
使用人「あ、いえ……『世界』がこうして、『勇者と魔王』を繰り返して……」
使用人「……いえ。紫の魔王様が出発点である以上、まさか、あり得ませんね」
使用人「終わりはともかく、始まりは確実にあるんです」
646 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:39:18.50 ID:gjEhcpBoP
剣士「何でも良い……思いついたことは、言ってみろ」
使用人「……運命の輪が回り続けている、と仮定して」
使用人「『世界』その物が、何度も何度も……と……いえ」
使用人「……いくら何でも、荒唐無稽、です」
魔王「良いから!」
使用人「……ッ そ、その、『運命の輪』からはじき出された者が」
使用人「もし、何らかの方法で居た、としてです」
使用人「……著者が、そう言う者であったなら、と」
后「……まあ、論理も糞も無い」
使用人「すみません……」
魔王「后……」
后「あ、ご、ごめんなさい! 馬鹿にしてる訳じゃ無いのよ!」
后「……余りにも使用人らしくないな、と思ったから……」
剣士「……何故、そう思うんだ?」
使用人「……『夢』です」
魔王「夢?」
使用人「ええ……魔王様と、后様、側近様……癒し手様が見た、夢」
使用人「……それが『以前の運命』の一部分だったら、と……」
使用人「…… ……」
使用人「……すみません」
魔王「謝る事じゃ無い……確かに、矛盾が解消された訳じゃ無いけど」
魔王「……成る程。『前』の俺達……か」
后「……まあ、嘘だ! ……とは言えない、かな」
剣士「だが『始まり』は確かにあったんだろう?」
使用人「それが『紫の魔王様』と仮定して良いのなら、です」
使用人「……あれも、その一部であったのなら?」
剣士「ん……」
后「……まあ『勇者と魔王』だけが繰り返す、とは」
后「名言されて無いもんね……」
剣士「……さっきの、使用人の役目が終わらない、と言うのは?」
后「ああ……そうそう。前にも話したかもしれないけど」
647 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:48:35.62 ID:gjEhcpBoP
后「紫の魔王の側近が、赤の魔王のが死んでも、居なくならなかったのは何故?」
后「……紫の魔王の瞳を与えられたのは、随分後、よね?」
使用人「私も、ですね。紫の魔王様はもう、いらっしゃらないのに」
魔王「……役目があったから、って言ってなかったか」
后「そう。そこよ!」
剣士「……『知を受け継ぐ者』……そうか『誰に』だ」
后「もしかしたら……この子、が」ナデ
后「魔王を倒したときに、使用人は…… ……」
使用人「はい。消えてしまう可能性は高いでしょうね」
后「それなら、私達が『受け継ぐ』のかもしれないわ」
后「……でも。こうやって、推測するだけ……よ。もう」
魔王「……まさか、何か隠してる……なんて事は無いわな」
使用人「当然です!」
剣士「責めている訳じゃないだろう」
使用人「…… ……」
后「まだ、受け継ぐ者が……そうしないといけない必要があるのかもしれない」
后「……だ、とすればよ?」
魔王「! ……終わらない可能性が高い、のか!?」
剣士「倒した後に、勇者に伝えなくてはいけない、と言うのは」
魔王「可能不可能はともかくとして、だ」
魔王「……勇者の物心がついたときに、告げたって一緒だぜ、それだと」
后「……言い方、悪いけど。生き残っているのは使用人だけなのよ」
后「……貴女、も。『特異点』の一つなのでは無いの……かしら?」
使用人「私が!?」
剣士「そもそも、特異点って言う物の意味が曖昧すぎる」
剣士「以前の『勇者一行と違う』と言うだけであれば」
剣士「確かに……『エルフの娘』はそうだろうが」
魔王「……三人、魔に変じてるからな。今回は二人……」
剣士「それに……『大海の大渦の島』の三人」
剣士「あれも『勇者一行』と取る事もできる」
使用人「え?」
648 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 16:57:43.96 ID:gjEhcpBoP
后「……まあ、確かに魔王を倒しに旅立ってる、わよね」
魔王「光の加護を持つ『勇者』は居なかったが」
魔王「……成し得ていたら『勇者になっていた』んだもんな」
使用人「そんな事言ってしまえば、言葉遊びの域になりますよ」
使用人「そもそも、勇気のある者、英雄……でしょう、『勇者』って」
后「まあ、そう言う『種族』じゃないもんね」
剣士「……この、神話……童話、の勇者一行も……三人だ」
魔王「こじつけすぎ……ってのは、早計なんだろうな」ハァ
剣士「しかも、一人ずつ……死んで行く」
后「……最後、読んで吃驚したわよ」
魔王「俺もだ」
使用人「……繋がりますよね。古詩と」
剣士「…… ……検証、か」ハァ
魔王「ん?」
剣士「否……今更、だが。意味はあるのか、と」
后「アンタ、そんな事いったら……」
使用人「……本当の真実なんて、わかりません。確かに」
使用人「過去に戻る事なんか、誰にも出来ないんですから……」
后「使用人まで!」
魔王「……まあ、な」
后「魔王!?」
魔王「……いや、そりゃさ。出来るだけ紐解いてやりたいよ」
魔王「次、の為に。『勇者』の為にさ……でも」
魔王「まさか、俺達が今知り得る事全てを」
魔王「……最初っから最後まで、伝えてやる事は……出来ない、だろう?」
后「……そ、りゃ…… ……そう、だけど」
剣士「何もしないよりは良い……こういう、話し合いに」
剣士「……もしかしたら意味は無いのかも知れないと言う事には」
剣士「少なくとも、気付けた」
魔王「……なんか、すまん。俺から言い出しておいて」
剣士「……だが、知りたいと思う事は事実だろう」
后「そうね」
使用人「…… ……あ、の」
649 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:08:12.69 ID:gjEhcpBoP
魔王「ん?」
使用人「……三代分の物語、でしたよね」
后「え?」
使用人「矛盾とか、ちょっと置いといて」
魔王「あ、ああ……そうか。それで俺、勝手に次で終わりだとか思ってたんだ」
后「あ……この本ね」
使用人「はい。魔王様は確か『金の髪の勇者』『黒い髪の勇者』……現魔王様ですね」
剣士「で、産まれて来る子……で『三』か」
使用人「もし、全てが『繋がっている』……全てが『三』だとするのなら」
使用人「……『名も無き古詩』『顔色の悪い蒼空』 ……もう一つ、ある筈です」
后「それこそこじつけも……まあ、良いわ。でも三冊あるじゃない?」
剣士「……これは『三』に数えて良いのか?」
魔王「まあ……前後編、だもんな」
使用人「……エルフの話、出て来ましたよね」
后「え? ……ああ『地上であり地上でない、この世の物とも思えない楽園』……ッ」ハッ
使用人「……癒し手様は、この本から引用された、のですか?」
剣士「! ……ッ 違う!」
魔王「え?」
剣士「……遙か南の小さな島だ。船長と訪ねた事がある」
剣士「癒し手にそっくりの……エルフの娘の像だという、ものを見た」
剣士「……何かが引っかかると思っていたが、俺が紫の魔王の欠片ならば」
剣士「俺が…… 何かを『知っている』と思ったエルフは『姫』だ」
后「…… ……」
剣士「その時にその言葉を、聞いた」
使用人「……ならば、これが『三冊目』かもしれません」スッ
后「エルフのお姫様のお話……でも、これ……紫の瞳の魔王が書いたんでしょう?」
使用人「……紫の魔王様も、この運命の輪の一部であるのなら?」
魔王「……それすら、必然だと?」
剣士「……この腐った『世界』を作った『神』とやらは」
剣士「随分と酔狂な…… ……『奴』だな」
使用人「……今、思い出しました」
后「え?」
使用人「ご本人から聞いたのか……姫様か誰かに言われて」
使用人「それを、人様の口から耳に入れたのか、忘れてしまいましたが」
使用人「……紫の魔王様が、口にされたのは、確かです」
魔王「……何を?」
使用人「……『顔色の悪い蒼空』だと」
650 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:19:44.04 ID:gjEhcpBoP
后「…… ……」
魔王「…… ……」
剣士「…… ……」
使用人「……それに」
后「?」
使用人「『三代』の初めが、『金の髪の勇者様』とは限りません」
魔王「え!? でも……」
使用人「……彼も確かに『始まり』とも取れます……でも」
剣士「……人の命の理において……産まれた者では無い、な」
后「!」
使用人「『勇者が魔王になり、それを倒した者』は……」
魔王「……俺が『始まり』か。それで行くと」
后「それは流石に考え過ぎよ!」
使用人「でも確実な『繰り返し』は貴方からですよ、魔王様」
使用人「……次代があり、その次もあるとするのなら」
使用人「確かに私は、まだ死ねません」
剣士「……否定はできん、な」
后「そ……んな……ッ」
使用人「…… ……」
剣士「……書の街へ行く」
魔王「あいつらが帰るまで待つんじゃ無いのか」
剣士「此処にある本もあらかた読んだ……これ以上、話しても」
剣士「答えなど出ないだろう」
后「……何時でも戻れるわ。剣士なら」
使用人「……新たなキーワードも手に入れたんです」
使用人「私は、賛成です……違う目で、外を見られるのも良いんではないでしょうか」
魔王「使用人……」
使用人「……それに、正直……癒し手様に接触しない方が良いと思います」
后「……そうね。勇者を宿したことで、私の力も強くなっていくんでしょうし」
魔王「……母さんがそうだったから、か?」
后「そう……それに、魔王もね」
剣士「……勇者が産まれてしまえば、お前こそが俺の『脅威』になるかもしれん」
魔王「…… ……」
651 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:31:12.20 ID:gjEhcpBoP
剣士「文の……小鳥のタイムラグを考えれば」
剣士「……今発っても、あいつらとぶつかることは無いだろう」
后「戻って……来る、わよね?」
剣士「…… ……」
シュゥン……ッ
魔王「…… ……」
使用人「……魔王様?」
魔王「いや……『三人』か、と……思ってな」
后「……捕らわれ過ぎよ」
魔王「なら良い……否、そうだよな」
使用人「……そこに私を含めるのが、そもそも間違えて居ます、魔王様」
魔王「……『傍観者』」
后「え?」
魔王「いや、さっき使用人が言ってただろう」
魔王「……もし、弾かれた奴が居るのなら」
后「…… ……」
魔王「案外、使用人だったりしてなーって……」
使用人「……だったら、どうして私が此処に居るんですか」
后「ね」
魔王「……そ、っか」ハァ
后「そんなに落ち込まないの。意味はあったわ」
魔王「……だと、良いけどな」
使用人(皆、何かを『産みだしている』)
使用人(……確かに、私には役割はある……だけど)
后「……使用人?」
使用人「!」ハッ
使用人「疲れたでしょう……お茶にしましょうか」
后「そうね。なんか食べないと気持ち悪くなってきた」
魔王「……食えるのか?」
后「『食べづわり』って奴よ……食べてるとマシになるの」
使用人「すぐに何かご用意しますね」
スタスタ、パタン
652 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:41:31.07 ID:gjEhcpBoP
使用人(……私、だけ?)
使用人(違う……何か、忘れてる)
使用人(……なんだろう。違う……筈、なのに)
使用人(…… ……)ハァ
使用人(私は、何時まで生きれば良いのですか、紫の魔王様)
使用人(……もう、悠久の空へ。世界へ……還られた、のですか)
使用人(否。それで良い……それが、彼の幸せならば)
使用人(……永年に近い『生』終わる迄貴方の傍にと)
使用人(『全てが終わる迄見届ける事』……それが、貴方の望みであるのならば)
使用人(喜んで従います。ですが……)
使用人(……私だけ、繰り返さない?)
使用人(私が、特異点…… ……まさか)
使用人(……特異点。どう言う、意味なのだろうか)ハァ
……
………
…………
王子「成る程」ハァ
少女「…… ……」
王子「許可の無い者の城への立入禁止……なんて言うから、病気かと思ったら」
少女「……病気です。ある意味……と、言うか。立派な」
王子「偶に、ね」
少女「?」
王子「ふらっと衛生師が来るんだよ、家に」
少女「え?」
王子「まあ、街の視察なんか兼ねて、何だけど」
少女「……彼は、何を」
王子「俺には良く解らない、取り留めの無い愚痴をこぼしてくだけだ」
少女「……あ、の」
王子「ん?」
少女「王子様、は城では……生活されないのですか」
王子「……まあ、王のそんな様子を聞いたら、ね。気にはなるけど」
王子「でも、俺が傍に居ると……余計こじれる気がするよ」
少女「…… ……」
王子「……今になって、やっと女剣士様の気持ちが少し、解った気がする……なぁ」
少女「え?」
653 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:46:38.38 ID:gjEhcpBoP
王子「……血が繋がってる。俺の大事な……弟の、息子。甥っ子だ」
王子「助けてはやりたいよ。でもな」
王子「……近くにいると、やっぱり過保護になるんだよな」
少女「…… ……」
王子「駄目だ、と思いつつ……だから」
王子「少し、離れて居る方が良い、とも思う。けど」
王子「…… ……」
少女「あまり……その」
王子「ん?」
少女「……仲が良い風には、見えませんでした」
王子「……うん、そう、だな。そうかな」
王子「せめて……あいつからは逃げないようにしようと思ったんだけどな」
少女「え……」
王子「……否。それより」
少女「? ……はい」
王子「……最近、あんまり良くない噂が、ね」
少女「王、の事ですか」
王子「まあ、急に立入禁止、になんてなっちゃったから……病気じゃ無いのかってのも」
王子「勿論あるんだけどね……」
少女「……? 何です」
王子「……まあ、その。知人から聞いたんだ」
少女「?」
王子「書の街での噂、なんだけどさ」
少女「……ッ 私、の事ですか」
王子「……一向に、少女と王の結婚話が聞こえないのは」
王子「君が死んだからじゃ無いか、とね」
少女「…… ……そ、れは」
王子「……御免」
654 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:52:40.60 ID:gjEhcpBoP
少女「仕方ありません」
王子「え?」
少女「……戴冠式へと言い出て行った途端」
少女「私と姉……秘書と揃って帰って来ず」
少女「しかも、旧貴族達は捕らえられた」
少女「……言い方は悪いかもしれませんが、処刑されたのではないか、と言う」
少女「噂で無い事に……驚きました」
王子「……半々、かな」
少女「でも、正直……誰も悲しんでいないでしょう?」
王子「少女……」
少女「私も秘書も含め、『旧魔導国の貴族達』です」
少女「……平和に安堵こそすれ」
王子「…… ……」
少女「ありがとうございます」
王子「え?」
少女「……もう、未練は無かったけれど……ほっとしました」
少女「街の様子も、ご存じですか?」
王子「聞いただけ、だけど」
少女「差し支えなければ、聞きたいです」
王子「……一日だけの滞在だったらしいけれど」
王子「定期便も復活したそうだし……図書館を訪れる人も多いのだそうだよ」
少女「そう……ですか」
王子「残念ながら、鍛冶師の村との直通便は無くなったままだけどね」
少女「ですが、港街を経由していけるのでしょう?」
王子「みたいだよ」
少女「……広く、誰もが気楽に利用できる図書館ならば」
少女「本も喜びます」
王子「……領主の館にあった古書なんかも、あるらしい」
少女「え……」
王子「……流石に、持ち出しは禁止みたいだが。まあ、価値のある物だろうしね」
少女「……無事、だったのですか?」
王子「無事だったものを避けて置いたんだそうだ。衛生師がそう言ってた」
少女「彼、が」
655 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 17:59:48.07 ID:gjEhcpBoP
王子「……後、あ、いや……」
少女「……?」
王子「さっきの話に戻るけど」
少女「? はい」
王子「……噂の話を衛生師に伝えたら」
少女「ああ……母親様と……秘書が死んだと言う話、ですか」
王子「…… ……」
少女「王は、地下牢に続く廊下の扉を、塗り込めてしまいました」
王子「え!?」
少女「……もう、牢など必要無いだろうと」
王子「…… ……そう、か」
少女「王子様。私も聞きたい事があります」
王子「何だろう」
少女「……王に子供が出来なければ、この国は……青年が継ぐのでしょうか」
王子「……何、急に」
少女「何時からか……ああ、戦士さん達が旅立たれた位から」
少女「……王は、私を抱かなくなった」
王子「……ッ」
少女「露骨な話で申し訳ありません。ですが」
少女「……何と言うのか。その。途中で……駄目になったり」
少女「どこか……怯えた顔で、私を見るように……その、避ける様に」
王子「……まあ、うん。さっきの……病気の話、だな」
少女「……はい」
少女「あれでは、相手が私で無くても、多分…… ……」
王子「…… ……」
少女「青年の瞳が蒼に見えると」
王子「え?」
少女「……私がそう言うと、随分とほっとしておられた」
少女「戦士さんには全く似ていない。僧侶さんにうり二つだ、とも」
少女「……嬉しそうに」
王子「固執……していた、のか」ハァ
少女「何か……あったのですか」
王子「うん……まあ、否」
王子「……大丈夫だ、間違い無く……彼が『王』だよ」
少女「え……?」
656 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 18:10:12.34 ID:gjEhcpBoP
王子「しかし……そうか」
王子「……『国』を考えると、世継ぎ問題どころか」
王子「まあ……その、婚姻そのもの、もな」
王子「問題にはなってくる、んだろうけれど……」
少女「……『血』に拘るの……ですか? やはり」
王子「…… ……君達に言われると、重いね」
少女「すみません」
王子「謝る事じゃ無い……だが、『王』を絶やす訳には行かない、んだ」
少女「え?」
王子「……否、何でも無い」ハァ
少女「私の問題か、彼の問題か……」
少女「……今の彼は、解らない。だけど」
王子「?」
少女「以前の……『今と比べてまだまともだった』彼と私に」
王子「…… ……」
少女「子を授からなくて、良かったのでは無いかと……私は思います」
王子「それは……何故?」
少女「解りませんか……?」フッ
少女「……きっと、私を独り占めできなくなると……」
王子「!」
少女「同じように狂っていただろうと……思います」
王子「…… ……」
少女「あの人は、無条件で妄信的に……狂おしいほどに」
少女「自分だけを愛して欲しいのだと、言っていました」
少女「……彼は、子供だ。確かに頭は良いのだろう。優しいだけでは……と」
少女「王にはなれない。衛生師もそう……言っていました」
少女「彼の純粋さは残酷だ。子供や……魔物のそれとは……また、違う意味で」
王子「…… ……」
少女「……『知』を持つ者の残酷さは、恐ろしいです」
少女「確かに彼は『王』だろう。だけど……」
王子「……もう、良いよ」
少女「! ……す、すみません!」
657 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 18:16:38.89 ID:gjEhcpBoP
王子「否、違う……君を責めたい訳でも……反論とか、したい訳でも無いんだ」
王子「……酷く不安定なところがあるとは思っていた」
王子「だけど……どうして、ああまでなってしまった、のか」
少女「会った、のですか」
王子「……ああ。ちらっとだけ、ね」
少女「……わかりません」
王子「君の所為では無い……これは、国王とか、俺とか……」
少女「…… ……」
王子「『大人』の所為だ」
少女「……しかし」
王子「勿論、彼自身にそう言う因子があってこそであろう事は……ね」
王子「だけど……俺達は、意図して彼を……『王』から遠ざけていた」
王子「……なのに、結局は『血』だと、強引に押しつけた」
少女「…… ……」
王子「君達を……下らないと、蔑んだのも、俺達だ」
王子「……身勝手な、大人だ」
少女「……選ぶのは、彼自身です」
少女「彼は何かに……負けてしまった。多分……」
少女「……自分の弱さに」
王子「…… ……」
少女「だけど、それは責められない」
王子「……ああ。選ばしてしまった一端は……」
少女「…… ……」
王子「ああ、そうだ」
少女「え?」
王子「……旅立つ前の僧侶に言われたんだ」
少女「黒い物?」
王子「聞いてたのか」
少女「……はい。衛生師から」
王子「イメージだ、とは言っていたが……」
少女「勘の鋭い方、何でしょうね、僧侶さんは」
王子「……なの、かな」
658 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/13(月) 18:17:36.68 ID:gjEhcpBoP
おふろとごはんー!
659 :
名も無き被検体774号+:2014/01/13(月) 19:29:45.35 ID:DGyKejHG0
BBA乙
訳が分からなくなってきた
使用人が特異点で『運命の輪』からはじき出された者で小説を書いた者である?
つまりBBAは使用人…?
660 :
名も無き被検体774号+:2014/01/13(月) 23:29:18.81 ID:O6zjMWhK0
保守
661 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 00:06:56.61 ID:z0OejtYC0
続きが気になってしょうがない
超乙なんだけど、もうホント訳わからんよ。
663 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 07:55:20.76 ID:e1R0pdyX0
乙!
俺は正直もう雰囲気だけで読み取ってる感じw
なんとなーくの浅ーい理解で終わらせてしまっているw
664 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 09:01:20.46 ID:BZnBQ4oPP
少女「余り長い時間ではありませんでしたが、お話しさせて貰った時に」
少女「思いました。感じる力、と言うか」
王子「…… ……」
少女「そういう、方なのかと」
王子「何か黒い物が見える……見えたような気がした、だったかな」
王子「ただのイメージだと言っていた。だけど、気をつけてあげて欲しい、とね」
少女「……王の、ああいう気質を見抜いていらっしゃったのかもしれませんね」
王子「ただ……こればかりはな。気をつけろと言われても」
少女「……医術、と言うか。そう言う関係に詳しくはありませんが」
少女「回復の見込みは……無いんでしょうか」
衛生師「……君はどう思う?」
王子「うわ!」
少女「衛生師!」
衛生師「……そんなに驚かなくても良いと思うんだけど」
王子「お前、何時から……」
少女「……良い匂い」
衛生師「話し込んでたんですか……王子様まで気がつかないなんて」フゥ
衛生師「……まあ、誰も時間に縛られないでしょうから」
衛生師「お茶、お持ちしましたよ」
少女「……三人分?」
衛生師「僕がいたらまずい?」
王子「俺は構わないけど……お前、仕事は良いのか」
衛生師「……なんか、何時もそれ聞かれてる気がしますね」
少女「王の傍に居たんじゃ無いのか」
衛生師「『発作』起こしたから、ね」
王子「発作?」
衛生師「……彼にたったいま必要なのは、僕じゃ無くて鎮静剤」
王子「…… ……」
少女「思う、んだが」
衛生師「ん?」
少女「多用は……あまり」
衛生師「……だからって、放って置けない」
王子「悪循環だな……そんなに酷い、のか?」
665 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 09:09:48.55 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「さっき会ったでしょう、王子様?」
王子「……まあ」
衛生師「とにかく、夢を見ない程深く眠らないと、どうしようも無いらしい」
衛生師「はい、どうぞ……それより」カチャ
少女「いただきます」
王子「ありがとう……ん?」
衛生師「……もう少し詳しく、書の街の方の『噂』を」
少女「さっき……聞いた」
王子「ああ、そうだ……忘れてた」
少女「え?」
王子「……否、途中だった」
王子「君達が……死んだのでは無いか、殺されたのでは無いかって」
王子「噂があるようだってのは話した、よね」
少女「はい」
衛生師「どうでも良い、とは言わないけど」
衛生師「そこは正直、想定の範囲内、だろう?」
衛生師「気になるのは……否、これも気にしても仕方無いのかもしれないけど」
王子「……『呪われている』と言うんだ」
少女「え? ……書の街が!?」
王子「違う……始まりの国が。と言うか……」
衛生師「昔もそう言う噂があったんでしょう」
王子「……立て続けに人が死んだからな」
少女(! ……祈り女、に鍛冶師……だったか)
少女(王子様の細君に……父親だ)
衛生師「加えて、国王様には中々世継ぎが出来なかった」
王子「あの時は……戦争状態でぎすぎすしてた、ってのもあったんだけどね」
少女「……それも、仕方の無い事、では」
衛生師「多分、だけど発端は……まあ、我が国、だ」
衛生師「……街を見て回ってるとね、偶に耳にするんだよ」
衛生師「『城の庭の方で、黒い影を見た』だとか」
少女「!?」
衛生師「……悲鳴が聞こえる、とかね」
王子「……王の、声……が、漏れてる可能性は否定できないんだろうけど」
王子「城も、新しいとは言えないし。お母様達も、それほど立派に」
王子「きっちりと建てた訳じゃないって聞いている」
衛生師「……それだけじゃないでしょ、王子様」
王子「…… ……」
少女「まだ何か?」
666 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 09:40:01.50 ID:BZnBQ4oPP
王子「……その噂を、書の街でも耳にした、って聞いたんだ」
少女「は、あ……」
衛生師「伝わってしまってる、て事だよ、少女」
衛生師「始まりの国と書の街の行き来だけじゃないだろ?」
衛生師「口から口を伝って……世界中に広がってしまったら」
衛生師「根も葉もない噂……と、仮定しても、だ」
少女「!」
王子「……折角、これから『世界』を平和に導いて行こうとしているのに」
王子「歓迎される事態、では決してない」
少女「……そうか。王の発言力が低下する」
王子「『王』を絶やす訳には行かないんだ」
王子「……ましてや、魔王の復活も……近いだろうに」
衛生師「被害の報告が増えているからね……『武』を放棄した以上」
衛生師「否が応でも、『勇者』に縋らざるを得なくなる。こんな時に……」
王子「……『勇者』が戻るのはこの国だ」
王子「それが……『呪われた国』では……」
少女「……王子様は、さっきも言って居られた」
王子「え?」
少女「『王』を絶やす訳には、と」
王子「…… ……」
王子「……遺言、なんだ。お母様の」
衛生師「初耳ですね」
王子「俺はもう引退した身だからな」
王子「……国だろうが街だろうが、形なんてどうでも良い」
王子「『血』もどうでも良いのかも、しれない」
少女「…… ……」
王子「だが……『世界』に『王』は必要なんだ……絶対に……!」
衛生師「……遺言、だから、ですか?」
王子「それも、ある……だけど」
667 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 09:51:29.12 ID:BZnBQ4oPP
王子「…… ……」
衛生師「王子様?」
王子「……否。それすらも、俺が決める事じゃ無いな」
王子「駄目だなぁ……つい、口出しちまう」フゥ
衛生師「……そこは、ね。心配しなくても大丈夫ですよ」
王子「え?」
少女「私もそう思う……思います」
少女「誰よりも……『王』であることに固執しているのは」
少女「王、自身でしょうから」
衛生師「……て、事です」
王子「…… ……」
衛生師「世継ぎだの、何だの。それこそ『血』に拘らないのであれば」
衛生師「……否。青年がいるじゃないか」
王子「……それは、さっき少女にも言われた。と言うか、聞かれた」
少女「はい」
衛生師「彼は王子様の孫……戦士君の息子です」
衛生師「もし、王と…… ……王に、子が出来なくても」
衛生師「彼は、正当な後継者だ」
王子「…… ……まあ、そうなる、ね」
王子「だけど……」
王子(エルフの血が入っている、事は問題じゃ無い……否、問題か)
王子(……僧侶は、生きている年齢だけで言えば、あの四人の中で一番長い)
王子(出産だの長のどうとか……だの、無ければ)
王子(これからも……まだ……)
王子(……青年も。ある程度の年齢の侭、成長が止まるのだろう)
王子(…… ……大問題だ)
少女「王子様?」
王子「あ……いや……王、に。俺達が身勝手に押しつけておきながら」
王子「……青年には押しつけられない、なんて言うのは、勝手だけれど」
衛生師「まあ、ね……戦士君も僧侶さんも、旅立ってしまった」
衛生師「……ふらりと立ち寄る事はあるだろうけど」
衛生師「この国に住む保証すら、ありませんから」
668 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 09:56:51.42 ID:BZnBQ4oPP
王子「……さて、ご馳走様。俺はそろそろ行くよ」
衛生師「泊まって行かれないのです?」
王子「家はすぐそこだぞ?」
衛生師「そうですけど」
王子「……さっき、王にあった時も思ったけれど」
王子「俺はあまり……傍に居ない方が良いだろう」
王子「……俺は、もう『過去』だ」
少女「…… ……」
王子「『傍観者』で居なくてはいけないんだろうにな。つい……首を突っ込んでしまう」
衛生師「……助かるんですよ。僕たちだって」
王子「お前は放って置いたって、ふらっと家に来るだろ」
衛生師「……次はお酒持って行きます」
王子「ちゃんと帰れよ……ありがとう。美味かった」
少女「王子様!」
王子「ん?」
少女「……良ければ、またお話し下さい」
王子「……爺で良ければ、ね」
スタスタ
衛生師「ああ、送ります……ちょっと待ってて、少女」
パタン
少女(……『大人』。『過去』)
少女(知らない事が……まだまだあるのだろうな)
少女(……否、決して、知り得ない『過去』か)
少女(時は戻せない……私は、知りたいのか)
少女(……人形、にそんな感情は必要無いのだろうか)
パタン
少女「……早かったな」
衛生師「まあ、顔パスみたいなモンだしね……僕がちょっと話したかっただけだ」
少女「?」
衛生師「……流石に、老けたなぁと思って」
少女「孫がいらっしゃるんだから」
衛生師「それでも年齢的にはまだ若いよ」
669 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 10:02:18.63 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……楽しかった?」
少女「え? ……まあ、それは」
衛生師「ここに居たって、まともに会話する相手は僕ぐらいだろうからね」
少女「……気を遣ってくれた、んだな」フゥ
衛生師「それもある、けど……僕が、時々王子様を訪ねる理由は」
衛生師「……ま、大体が愚痴なんだけど」
少女「ああ……聞いた」
衛生師「どうしてもアドバイスが欲しい時がある」
衛生師「……王は、もう……駄目だよ、少女」
少女「そんなに、悪いのか」
衛生師「悪く無いように見えるのか?」
少女「…… ……」
衛生師「普段は良い。平時は」
少女「……もう、戦争なんて」
衛生師「……さっき王子様も言ってただろう」
衛生師「『勇者』は何れこの国に戻る」
少女「確かなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「前例があるのは勿論知っている。金の髪の勇者、黒い髪の勇者」
少女「……僧侶さんも言っていた。必ず、戻って来ると」
衛生師「王子様が盲目的に戦士君と僧侶さんを信じるのは……」
少女「勿論、自分の子供だから……と言う以上に」
少女「彼らは『帰還者』だからだろう」
衛生師「……まあ」
少女「……僧侶さんから直接、聞いている」
衛生師「え?」
少女「何れ、勇者はこの街に戻り、この国から旅立ち、魔王を倒すのだと」
衛生師「…… ……」
少女「だから、お願いしますね、と……」
衛生師「……あの笑顔で言われたら、ハイ、としか答えられないな」
少女「……嘘は吐かないんだと言っていた」
衛生師「……『願えば叶う』だとか言ってなかった?」
670 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 10:14:32.12 ID:BZnBQ4oPP
少女「……ああ」
衛生師「僧侶さんは……元神官の様な物だと聞いているから」
衛生師「解らなくも無いが……王子様や戦士君まで、同じような事をいうからね」
少女「盗賊様の口癖だったのだろう?」
衛生師「らしい、けどね」
少女「……信じる事は悪い事じゃ無いんだろう」
衛生師「……君は、変わったなぁ」
少女「え?」
衛生師「子供然とした姿から大人の女っぽくなって」
少女「…… ……」
衛生師「人形だなんて言ってたけれど……随分、表情が柔らかくなった」
少女「……人形に代わりは無い。言っただろう。此処はたかが鳥籠だ」
少女「その中で少しばかりの自由を手にしただけだ。だから……」
衛生師「それでも、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「……人形だとか、言うのやめなさい」
少女「王子様にそんな口は聞いていない」
衛生師「……なら、良いけどね。寧ろ……」
少女「?」
衛生師「狂ったお人形さん、どうにかしないとな」
少女「! 衛生師、それは……ッ」
衛生師「さっき、平時は良いと言っただろう?」
衛生師「……さしたる問題は無いんだ。僕が……代行しても」
少女「!?」
衛生師「……まともに政に関われる筈が無いだろう」
少女「…… ……」
衛生師「僧侶さんや、王子様を疑う訳じゃ無い。だけど」
衛生師「本当に……勇者が戻ってくる、ここから旅立つのだとすれば」
衛生師「頭が痛いよ。呪いってのも、信じたくなる」
少女「貴方らしくも無い」
衛生師「……ね」ハァ
少女(……呪い、か。馬鹿らしい。だが……)
少女(根拠の無い口伝ほど、恐ろしい物は無い)
少女(それは……衛生師も、良く解っている……んだろうな)
671 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 10:21:28.47 ID:BZnBQ4oPP
少女「……私、で出来る事ならば」
衛生師「え?」
少女「否……助けになるかは、解らないが」
衛生師「……本当に、君は変わったねぇ」
少女「何だ」ムッ
衛生師「王の為?」
少女「……え」
衛生師「僕は『仕事』だ」
少女「…… ……私、は」
衛生師「本当ならば、自由にしてあげたいんだけどね」
少女「どうせ『そんな命令は受けてない』と言うのだろう」
衛生師「……それもあるけど」
少女「?」
衛生師「僕も君と居ると楽しいよ」
少女「衛生師……」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……会議だ。戻らなくちゃ」
少女「あ……」
衛生師「御免ね?」
スタスタ、パタン
少女(……自由に、なんて。今更)
少女(私には、帰る所も無い。もう)
少女(……飼い慣らされた鳥が、鳥籠を奪われても)
少女(否。野垂れ死ぬだなんて……御免だ!)カタン
少女(私も部屋へ戻ろう……もう少し、本でもあれば良いんだけどな)
少女(…… ……力になる、か。誰の。何の?)
少女(衛生師…… ……)
スタスタ、カチャ、パタン
672 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 10:39:45.58 ID:BZnBQ4oPP
……
………
…………
剣士「……ありがとう。世話になった」
司書「またお越し下さい」
バタン
剣士(領主の館で見た本も何冊があったが……既に読んだ物だったな)
剣士(『違う目で』と言われてもな……実質)
剣士(……収穫は無し、か)フゥ
剣士(始まりの国へ……行くか?)
剣士(……城への立入が禁止されている、と言うのは……な)
剣士(忍び込もうとすればどうにでもなる、が)
剣士(……街の噂も、気にはなる……が……『呪い』か)
剣士(癒し手の言っていた『黒い物』)
剣士(……それが、噂の正体か。もしくは……故の、噂か)
剣士(王に会うのは無理……だろうな。顔も知らん……国王や)
剣士(騎士団長に似ているのかもしれないが…… ……ッ)
剣士(……そうか。騎士団長)
スタスタ
剣士「始まりの国行きの船は、ここから出るのか?」
船員「あの国へ行こうと思えば、港街を経由しないと行けないよ?」
剣士「……ああ、そうだったな」
船員「この船で港街へは行けるけど……今日はもう」
船員「始まりの国行きは終わっちゃったんじゃないかな」
船員「それでも良いかい?」
剣士「…… ……」
船員「お客さん?」
剣士(面倒だな……急ぐ訳じゃ無いが)
剣士「否、良い……明日の朝にする」
船員「そうか。悪いね」
スタスタ
673 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 10:49:28.00 ID:BZnBQ4oPP
剣士(ローブを被っているとは言え……)
剣士(……書の街、となったとは言え。長居は……危険だろうな)
剣士(俺の顔、俺の瞳……誰もが、忘れてしまったとは思えん)
剣士(…… ……仕方無い)
スタスタ……キョロキョロ
剣士(この辺で、良いか)
シュゥウン……ッ
…… ……
スタッ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(見様見真似……とは言え。不思議だな)キョロ
剣士(川沿い……ああ、あの辺りか……街は……あっち…… ……!?)
剣士「な、んだ……あれ、は!?」
剣士(……『黒い物』!?)
剣士「…… ……」クルッ
タタタ……ッ
剣士(確か。丘の上……あの墓の上からだと、城が見下ろせた筈だ)
剣士「…… ……ッ」ハァ
タタタ……スタ、スタ……
ザアアァアアアア……ッ
剣士「…… ……」
674 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:02:43.11 ID:BZnBQ4oPP
剣士「な、んだ……あれは」
剣士(城の一角……否、城全体、か?)
剣士(……黒い、靄が掛かっているみたいだ)
剣士(『黒い物』……王、か? ……違う)
剣士(……否。ここからではそれ以上は……解らんな)
剣士「…… ……」
剣士(……相変わらず。居心地の悪い場所だ)
剣士(そう思うのは俺が魔……否。『人では無い』からか)
剣士(エルフの加護だったな。使用人が姫のペンダントに移した、と言う)
剣士(……しかし、あんな物が……蔓延っていれば……)
剣士(……麓に小さな街が会った筈だ)
スタスタ
剣士(屋根……あそこだな)
剣士「……すまん、が」
娘「はい?」
剣士「……始まりの国は、あっちで良かっただろうか」
娘「ああ、はい。この森を抜けるとすぐですよ」
娘「あ、でも……少し遠回りになりますけど……」
剣士(川沿いの道、か……)
娘「丘の方から、川沿いの道を行った方が、安全かもしれません」
剣士「ほう」
娘「最近、急に魔物が強くなったんです。あ、でも!」
娘「あんまり川に近づき過ぎても……水の魔物に引きずり込まれちゃいますけど」
剣士「……そうか、ありがとう」
娘「あんまり、良い噂無いですから……お気をつけて」
剣士「え?」
娘「王様、病気らしくて」
剣士「…… ……」」
娘「お世継ぎどころか……婚姻が中止になったのも」
娘「王様の病気の所為だとか……」
剣士「…… ……」
娘「書の街の貴族達を皆殺しにしたから……」
剣士「……何?」
娘「……う、噂ですよ。でも」
675 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:07:19.13 ID:BZnBQ4oPP
娘「それで……呪われてるんじゃないか、って」
剣士「……婚姻の予定はあったのか?」
娘「政略結婚でしょうけどね。書の街の貴族の一人を、とか」
娘「無理矢理……その。あの……」
剣士「……王が、か?」
娘「国王様は……立派な方でした。お優しくて」
娘「……でも、急逝されてから立たれた王様は……」
剣士「息子……だろう?」
娘「だと思います……でもね。戴冠式、言ったんですけど」
娘「何て言うか…… ……」
剣士(話半分、と聞いても……随分だな)
剣士「…… ……」
娘「あ、ご免なさい! ……でもねぇ」
娘「……火の無いところに、でしょ?」
剣士「……ありがとう」
スタスタ
娘「あ……しゃべり過ぎちゃった、かな?」
娘「おきをつけてー!」
スタスタ
剣士(城には……入れない)
剣士(……騎士団長に会うことは……出来るだろうか)
剣士(ああ……そうか。引退したんだと……文にあった)
剣士(……闇雲に街を歩き回っても……な)
676 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:15:58.01 ID:BZnBQ4oPP
剣士(…… ……)キョロ
剣士(久しぶり、だ…… ……街の雰囲気は変わらない……が)
剣士「…… ……」
剣士(……あれか。城……地下、か?)ジッ
剣士(鋭い者ならば……近付かなくなる……だろうな)
剣士(……早々にこの国を発ったのは正解か、癒し手)
剣士(あのエルフの血を引く娘ならば……耐えられなかっただろう、これは……)
衛生師「旅人かい? ……残念だけど、今城には入れないよ」
剣士「!」
衛生師「騎士団は解散してしまったからね……まあ、防犯上」
剣士「…… ……」
衛生師「……僕の顔に、何か?」
剣士(見た事がある……元騎士団の人間、か?)
剣士「騎士団長……王子、に会いに来たんだが」
剣士「城に、は……通しては貰えないだろうか」
衛生師「……王子様の知り合い?」
剣士「……ああ」
衛生師「…… ……君」
剣士「…… ……」
衛生師「名は?」
剣士「……剣士」
衛生師「! 鍛冶師の村の討伐に参加した……あの剣士か!?」
剣士「…… ……お前は、元騎士団員か」
衛生師「……紫の瞳の」
剣士「…… ……」
衛生師「……こっちだ」クルッ
剣士「? あ、ああ……」
スタスタ
衛生師「王子様は引退されてから、ご自分の家にいらっしゃる」
衛生師「……ああ、フードは取るなよ」
剣士「…… ……」
677 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:23:42.40 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……旅に出た、んじゃなかったのか?」
剣士「別に、住み着く気等無い……俺は……」
衛生師「……王に、会ったことは?」
剣士「ある」
衛生師「ああ……そうか。国王様が亡くなった時……居たよね」
剣士「……王子は、元気なのか」
衛生師「ああ。孫が産まれたんだよ……って、知ってるよね」
衛生師「戦士君と僧侶さんとも、既知だった筈だ」
剣士「……あの二人はどうした?」
衛生師「この間発ったよ……王子様もね、あまり……城には近づかれない」
剣士「……そうか」
衛生師「元気な男の子だったよ」
剣士「子供、か……どっちに似てた」
衛生師「僧侶さんかな……綺麗な子になるだろう」
剣士「…… ……」
衛生師「今頃、何の用だい?」
剣士「……顔を見に寄っただけだ」
衛生師「……そう」
コンコン
衛生師「王子様。いらっしゃいます?」
王子「……衛生師!? お前、昨日来たばっかりだろ?」
カチャ
王子「毎日毎日、仕事は良いの……か……」
衛生師「随分ですねぇ……お客様をお連れしたんですよ」
剣士「……久しぶり、だな」
王子「け……ッ 剣士!?」
678 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:32:24.59 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……じーっと、城を見ていらっしゃったので声をかけたらね」
王子「……お前達、面識あったか?」
剣士「どこかで会ってはいるだろうが……話したのは初めてだな」
衛生師「……では、僕はこれで」
王子「あ、ああ……悪かったな、ありがとう」
衛生師「いえ……」
パタン
剣士「良かったんだか、悪かったんだか」ハァ
王子「衛生師か?」
剣士「……おめでとう、おじいちゃん」
王子「お前に言われると変な感じだな……ありがとう」
王子「戦士達は……もう、着いたのか?」
剣士「否。 ……俺は、何処にでも行ける」
王子「ああ……そうだった」
剣士「癒し手からの文を見て、書の街に行ってきたんだ」
剣士「……あと、『黒い物』」
王子「! ……王にあったのか!?」
剣士「不可能だろう……城には入れない」
王子「……あ、ああ……しかし……」
剣士「……地下、だ」
王子「え?」
剣士「城の地下……何がある?」
王子「…… ……」
剣士「否……何が居る」
王子「……え」
剣士「黒い靄が広がっている様に見える」
剣士「……王は、病気なんだそうだな」
王子「…… ……ああ。何と言うか……どう、説明して良いものか」
剣士「お前、こんな所に居て良いのか?」
王子「……行こうと思えば何時でも行ける」
剣士「…… ……」
王子「俺は……もう、引退したんだ」
剣士「『未来』は『王達が作る物』と言いたいんだろが……」
679 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:48:48.41 ID:BZnBQ4oPP
王子「…… ……」
剣士「…… ……」
王子「すぐに……向こうに戻るのか?」
剣士「否……俺は、もう戻らない」
王子「え!?」
剣士「……癒し手も戻って来る。青年も」
剣士「青年は大丈夫……だろうが」
王子「……そ、うか。ま……『元黒い髪の勇者』も居る、からな」
王子「暫く、ここに居るのか」
剣士「否。それも……出来ない」
王子「……別に、家に居ても良いぞ?」
剣士「『黒い物』だ」
王子「え?」
剣士「……俺に引きずり出されないと言い切れるか?」
剣士「俺は……『欠片』だ」
王子「!」
剣士「ただでさえ、魔物は強くなっているんだろう」
王子「しかし……お前、次の勇者に……ついていくんじゃ無いのか」
剣士「尚更だ。この国にも……魔王の城にも居られないだろう」
王子「…… ……」
剣士「たかだか、16年程だ」
剣士「……また、転々としていれば良い」
王子「剣士……」
剣士「……お前は、あの時『知る事を拒否した』」
王子「…… ……」
剣士「本当に、顔を見に寄っただけだ」
王子「……うん。嬉しいよ」
剣士「元気そうで……何よりだ。ただ……」
王子「……『黒い物』?」
剣士「ああ……王が可笑しくなった、元凶かもな」
王子「地下……しかし……」
剣士「俺にはさっぱりわからんが」
王子「……気をつけろ、か?」
剣士「それ以上、言いようが無い」
未来は託したと言いたいけど、そんだけ関わっとったら無理だろjk
きっちり最期まで責任持ってほしい
↑は元騎士団長(王子)のことです
682 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 11:59:55.79 ID:BZnBQ4oPP
王子「……次は何処へ行くつもりなんだ」
剣士「鍛冶師の村へ」
王子「え……」
剣士「あそこは、魔物の数も多い……もう、インキュバスの魔石の」
剣士「影響も無いとは思うが……」
王子「……そうか。仕事か」
剣士「ああ。傭兵の仕事は、あの辺が一番多いはずだ」
王子「…… ……」
剣士「王子」
王子「ん?」
剣士「……否。元気で」
王子「え、おい……もう……ッ」
シュゥウン……ッ
王子「!」
王子「…… ……」
王子「地下……か」
王子(……地下牢は封鎖したと聞いてる……まあ、環境の良い場所じゃ無いのは)
王子(解ってるが……衛生師に聞いてみる、かな……今度)ハッ
王子(いかんいかん……俺は、もう……引退したんだ)
王子(……何も、知らせないと判断したのは、俺だ)
王子(弟王子……お父様、お母様……祈り女)
王子(……俺、間違えたのかな?)
王子(今……何より大変なのは……衛生師だよな)
王子(……あいつの愚痴、聞いてやるぐらいで……丁度良いんだよな)
……
………
…………
683 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:08:20.26 ID:BZnBQ4oPP
側近「……暑い、な」
癒し手「暑い……ですね」
青年(スヤスヤ)
側近「……よく寝れるもんだ」
癒し手「子供ですから……」
側近「しかし、参ったな……」
癒し手「……結果オーライ、じゃ無いですか?」
側近「……『南』には違い無いが」
タタタ……
側近「ん?」
チビ「お兄ちゃん達!さっきの船に乗って来た人!?」
癒し手「え? ……ああ、はい。そうです」
チビ「良かった! ……あのさ、あの船邪魔なんだよ!」
側近「邪魔?」
チビ「うちの船が出せネェの! 動かすように行ってくれよ!」
癒し手「え……あ、ちょっと待って下さい、あれは、別に……」
チビ「はーやーく!」
男「こら、チビ! ……悪いな、あれ、定期船だろ?」
側近「あ、ああ……」
チビ「え!? この島に定期船なんて……」
癒し手「鍛冶師の村に向かう筈だったんですが、海が凄く荒れてて……」
癒し手「それで、大幅に遅れてしまったので、此処で給油を済ます、と」
男「ああ……だよな」
側近「?」
チビ「……なんだ、お兄ちゃん達の船じゃないのか……」
側近「あんな大きな船、個人では持てないだろう」
男「……ま、普通じゃ要らない大きさだわな」
男「ほら、チビ! 謝っとけ……んでさっさと手伝いに戻れ!」
チビ「ん、ん……ごめんなさい」
癒し手「いいえ……大丈夫ですよ」クス
タタタ……
684 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:14:04.28 ID:BZnBQ4oPP
男「……ん?」ジロ
癒し手「え?」
男「……ねえちゃん、どこかで……」
癒し手「え、え?」
爺「こーらー! お前はこの間連れ合いを亡くしたと思ったら」
爺「もうナンパか!」
男「ッ ひ、人聞きの悪い事言うな、ジジィ!」
側近「……あの」
爺「すみませんな、お嬢さ…… ……」ジィ
癒し手「え、え……え?」
爺「おおおおおおおおおおお!」
男「な、何だよ!」
爺「エルフじゃ!」
側近「!」
癒し手「!?」
爺「あの、エルフの像じゃ! ……あれにそっくりなんだ、この娘さん!」
男「あ……!」
側近「エルフの、像……?」
男「ああ……どこかで会ったことあると思えば……!」
癒し手「……あ、あの……」
男「あ、ああ悪い悪い……いや、この糞爺は骨董品って名のガラクタ集めが趣味でな」
爺「お宝と言え!」
男「……あっち。村の中心にある、花畑のど真ん中に」
男「エルフの姫様だとか言う像と」
癒し手「! み、見せて貰ってもいいですか!?」
爺「あ、ああ……勿論、だ……いや、しかしそっくりだなぁ……」
側近「……妻に、か?」
男「ああ。しかしまぁ、お前さん羨ましいねぇ。こんな別嬪さん嫁にして」
爺「……お前」
男「あ、いや! そりゃ船長も綺麗だったぜ!?」
側近「!」
癒し手「!」
685 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:24:43.37 ID:BZnBQ4oPP
爺「……つか、お前早く戻ってやれ。チビ一人にすんな」
男「おっと……ああ、兄ちゃん達、悪かったな」
癒し手「あ……いえ……」
爺「儂で良ければ案内するが……」
側近「あ……ああ……」
青年「……ん、ん」
癒し手「あ……起きましたね」
爺「おお……これまた、お嬢さんそっくりな子だな」
爺「……綺麗な蒼い瞳をしている」
青年「あれ……いつのまに、ふねおりたの」
側近「お前が寝る間にだよ」
青年「……んん」
癒し手「青年、歩ける? ……お父さん、重たいですよ」
青年「うん……」
爺「五歳ぐらい、ですかな」
癒し手「……ええ、そうですね」
爺「僕、お名前は?」
青年「せいねん……」
爺「はは、まだ寝ぼけているな……何、それほど遠くはありません」
爺「こっちです」
側近「ああ……ほら、行くぞ」
青年「……んー」ゴシゴシ
爺「……あの像は」
癒し手「え?」
爺「何だったかの、何かの……市でな」
爺「偶然、手に入れたんですわ……まあ、古い物なんですが」
スタスタ
686 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 12:26:14.88 ID:HknenIlEP
沢山更新あってとても嬉しい
剣士「おめでとう。おじいちゃん」
にある王子と剣士の関係になんかワロタ
687 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:30:40.19 ID:BZnBQ4oPP
爺「何でも、どこかの国の王様だか王子様だかが、エルフのお姫様に恋をして……」
チビ「じいちゃん!」
側近「うわ!?」
チビ「もう、またそんな下らない話を……」
癒し手「あ、さっきの……」
チビ「……父さんに聞いたから急いで戻って来たんだ」
チビ「じいちゃん、悪い人じゃ無いんだけど話長いんだよ」
爺「……なんじゃい。小さい時は、目きらきらさせながら聞いてくれたのにのぅ」
チビ「俺も一緒に行って良い?」
癒し手「え、ええ……でも、お手伝いは良いんですか?」
チビ「定期船が出ないとどうしようも無いんだよ」
側近「……あれは、お前の船、か?」
チビ「……正確には母さんの、だね。でも……」
爺「…… ……」
癒し手(! そうだ、さっき……『連れ合いを亡くして』と……!)
チビ「母さん、人魚に食われて死んじゃったんだって」
側近「海賊船……か」
チビ「あ、で、でも……!悪い事はしなかったんだぜ!?」
爺「……さっきのは儂の息子でしてな。もう……船長が居ないんじゃ……」
爺「廃業するのかと思ったら……」ハァ
チビ「……俺が、居るだろ。廃業しちまったら、海賊達どうすんだよ」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
青年「おとうさん、はいぎょうってなに?」
側近「ん? ……お仕事を辞めること、かな」
青年「ふぅん……?」
チビ「うわ! ……綺麗な子だな」
チビ「お姉ちゃんそっくりだね」
癒し手「そう、ですか?」
688 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 12:33:28.60 ID:eKPEBSAo0
面白い
毎回更新が待ち遠しい
689 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:38:39.65 ID:BZnBQ4oPP
チビ「……んー。確かに似てるけど」
癒し手「え?」
チビ「……でも、ちょっと違うね」
爺「そりゃ、このお嬢さんや……お嬢さんのお母さんがモデルって訳もないだろうが」
癒し手「…… ……」
側近「その像にはモデルが居るのか」
爺「どうだろうかの。まあさっきの話も……聞いただけ」
爺「売る為に誰かがでっち上げた、御伽噺なんだろうけどな」
チビ「ほら、あれだよ!」
癒し手「……!」
側近「確かに……似てる」
青年「おかあさんだー」
癒し手「……お母さんじゃ無い、ですよ。青年」
チビ「君、青年って言うの?」
青年「うん!」
爺「まあ、所詮彫刻だが……確かに、人間離れした美しさだからなぁ」
爺「モデルは居たのかもしれないが……憧れ、が詰め込まれているんだろうな」
側近「…… ……姫様、か」
チビ「うん、お姫様みたいだよね。童話のお姫様ってこんなんなのかな」
側近「あ、ああ……そうかもな」
癒し手「『エルフの姫』……です、か」ポロポロ
チビ「お、おねえちゃん!?」
爺「……人はな。本当に美しい物をみれば、感動して涙の一つも出るもんだ」
チビ「何どや顔してんだよ……じいちゃんが作ったんじゃないだろ」
側近「……作者は、不明……なのか」
エルフ母さん…(´;ω;`)
691 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 12:40:53.66 ID:BZnBQ4oPP
おひるごはーん!
692 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 13:45:55.11 ID:BZnBQ4oPP
爺「そうだな……有名な人なのかどうかも」
側近「……そうか」
癒し手「彫刻の彫刻たるや、なんて……素人には解りません。けど」ポロ……グイ
青年「おかあさん……?」
癒し手「ああ……ごめんね、大丈夫ですよ」
癒し手「……でも。何でしょう。嬉しいです……ッ」
爺「うんうん」
チビ「じいちゃん……だから」
青年「おひめさま?」
側近「ん? ……ああ。姫様……だな」
ポーゥ…… ……
チビ「あ……船!」
スタスタ
男「おい、チビ!」
チビ「あ、父さん……」
側近「もう出れるのか?」
男「ああ、あんた達あれに乗って来たんだったな……いや、給油はまだだ」
男「取りあえず場所ずらしてくれるってよ」
チビ「あ……そっか! じゃあ、お姉ちゃん、お兄ちゃん……さようなら」
青年「おにいちゃん、どこかいくの?」
チビ「ああ! 俺は、あの船の『船長』になるんだ!」
癒し手「え!?」
男「……こいつもずっと、あの船には乗ってたんだ」
男「まあ……暫くはここでこの爺と暮らしてたんだけどな」
爺「本当に行くのか、チビ」
チビ「……うん。海賊達放って置けないだろ」
男「なぁにを偉そうに……お前が居なくてもどないにでもならァ」
癒し手「貴方は、行かれない……のですか」
男「……俺は」
側近「…… ……」
693 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:14:56.63 ID:BZnBQ4oPP
青年「せんちょー! かっこういいね!」
チビ「お? ……ありがとな」ナデ
爺「本当に良いのか、男……」
男「……こいつが自分で決めた事だ」
青年「おとうさん、おかあさん! ぼくもふねにのりたい!」
癒し手「……ええ。乗って来た船の準備が出来たら……」
青年「せんちょーのふねにのりたいの!」
側近「青年、そんな無茶は……」
青年「ねえ、せんちょー! いいでしょ!?」
チビ「え!? えっと……?」チラ
男「……アンタら、何処まで行くんだ?」
男「ああ……鍛冶師の村って言ってたか」
側近「いや、しかし……」
青年「ぼくとおかあさんとおとうさんは、さいはてのちにいくんだよ!」
癒し手「青年!」
爺「最果て……?」
側近「……世界中を旅して回ろうか、と話していたんだ」
側近「だから……」
チビ「……良いぜ、乗りなよ」
男「チビ!?」
チビ「母さんだって、最初は見様見真似だったって言ってた」
チビ「おじいちゃんは何も教えてくれなかったって」
チビ「でも……もう、俺は船長になったんだ!」
癒し手「あ、あの……」
チビ「た、ただし、金は貰うぜ!?」
爺「…… ……」ハァ
爺「血は争えんなぁ」
694 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:21:09.60 ID:BZnBQ4oPP
チビ「おいで、青年! 船の中、見せてやるよ!」
青年「うん!」
タタタ……
癒し手「あ、ちょ、ちょっと!待って下さい!?」
タタタ……
側近「……なんか……その。すまない」
側近「すぐに連れ戻すから」ハァ
男「……アンタらが悪い訳じゃネェよ」ハァ
男「良いんじゃネェか? ……チビが。『船長』が良いって言うんだし」
爺「しかし、お前……」
男「……今は……海の魔物も強くなってる」
男「最果てまで乗せてってやるって船なんか、どうせ無いさ」
男「……俺達の時代だって、船長の……嫁の船ぐらいのもんだったさ」
側近「…… ……」
男「金を払って貰えるんだったらな。あいつも文句はネェだろう」
男「……初航海から客がいるなんて、あいつも幸せなこった」
クルッ ……スタスタスタ
側近「あ、おい……」
爺「……すまんの」
側近「じいさん、アンタこそ謝る事じゃ……」
爺「さっきも言った通り、な。嫁は……あいつの嫁、船長は」
爺「人魚に食われてしまってな……」
側近「!」
側近(人魚……あれか。魔詩で……人を迷わす……!)
側近(……皮肉だな。船長の親父も、たしか……)
695 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:27:52.97 ID:BZnBQ4oPP
側近「……孫、だろう。あの……チビ、と言うのは」
爺「止めてもきかんだろうさ……それに、あいつは」
爺「『世界』を知りたいとも言っていた」
側近「…… ……」
爺「船に乗ってるだけでは知り得ない世界を教えてくれ」
爺「……陸、を教えて欲しいと」
爺「だがな……陸だけがまた、世界でも無い」
爺「……海をかけ、この目で見る物。それが……『世界』だろう?」
側近「…… ……」
爺「アンタ、傭兵か何かか」
側近「……否」
爺「しかし、腕に覚えはあるんだろう?」
爺「……海での敵は手強い。孫を……頼む。航海の間だけでも」
側近「それは……勿論だ」
爺「あとな、奥さんにありがとうと伝えて置いてくれ」
側近「え?」
爺「……あのお嬢ちゃんも、人間離れした美しさだな」
爺「青年だったか? ……あの、蒼い目の子供も」
側近「…… ……」
爺「死ぬ前に……本物のエルフに会えるとは思わなかった」
側近「!」
爺「ああ、いや。エルフの様に美しい生き物に、かな」
爺「夢でも構わん……嬉しかったよ」
側近「……解った」
青年「おとーさーん! はーやーくー!」
チビ「おいてくぞー!」
側近「……す、すぐ行く!」
爺「じゃあな、旅人さん……アンタの旅が良い物であることを願っておこう」
スタスタ
696 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:34:18.93 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「青年! こら! いい加減にしなさい!」
青年「わーい! せんちょーのふねだー!」
側近「……青年」ヒョイッ
青年「……わッ」ギュウ
側近「全く、お前は……」
癒し手「本当に、良いんですか……チビ君」
チビ「……俺が船長だ、って言ったろ?」
チビ「最果て、だな……真っ直ぐで良いのか」
側近「……どうする?」
癒し手「それ……しかないでしょうね」
側近「だな……どれぐらいかかる?」
チビ「えっと…… ……どれぐらい、かかる?」
海賊「そっすねぇ……まあ、一、二週間……ですかね」
海賊「北の街の海域は、全速力でぶっとましますよ、チビさん」
チビ「……人魚か」
側近「……魔物が出たらすぐに言え。俺達が何とかしよう」
癒し手「はい」
チビ「え……お兄ちゃんはともかく、お姉ちゃん……!?」
癒し手「……私は、優れた水の加護を持っていますから」
癒し手「人魚の魔詩は平気です……が、青年が居ますから」
癒し手「……まあ、回復はお任せ下さい」
青年「ぼくもたたかうー」
癒し手「青年は駄目……何かあったら、お母さん泣いちゃいます」
青年「……それは、いや」
癒し手「うん……ありがとう」ナデ
チビ「…… ……良いな」
癒し手「え?」
チビ「母さん……」
側近「…… ……」
癒し手「あ……ッ」
チビ「……だ、大丈夫だよ! ……俺、男だし!」
697 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:42:08.49 ID:BZnBQ4oPP
チビ「俺……母さん、死んだって聞いて、涙……出なかったんだ。最初」
側近「…… ……」
チビ「どうやって食われたのか、父さんに聞いた。途中まで、だけど」
チビ「……母さん、耳栓してたけど意味が無かったって」
チビ「剣を離したと思ったら、自分から人魚に抱きついていったんだって」
癒し手「……人魚は、その人が心から望む幻影を見せるんです」
チビ「…… ……」
癒し手「本当に会いたい人の姿……とか」
チビ「……うん。父さんは、ここから先は聞くか聞かないか自分で選べっていった」
チビ「今すぐじゃ無くても良いって」
側近「…… ……」
チビ「俺は、何日かして……父さんに聞いたんだ」
チビ「……教えてくれって。母さんは……」ポロ
癒し手「チビ君……」
チビ「『チビ!会いたかった!』 ……って」ポロポロポロ
癒し手「……ッ」ギュッ
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「だから、俺……船長になるって決めたんだ!」
チビ「母さんは、冷たくなんかない!ずっと、何時も……」
チビ「俺や、海賊達の事を考えて、最善の策を取ってたんだ」
側近「…… ……」ギュ
青年「おと、うさん、いたいよ」
側近「……すまん」
チビ「最後……喧嘩して、船降りて……その侭だった。会えなかった」
チビ「だから……母さんの代わりに、ちゃんとこの船守って行くんだ!」
癒し手「……うん。頑張って。君ならきっと、立派な船長になれます」
青年「おにーちゃん、よかったね。おかあさんはね、うそはつかないんだよ!」
青年「おかあさんはね、えるふだからね!」ナデナデ
チビ「……え?」
癒し手「……青年」
側近「…… ……」
チビ「ああ、そうだな。さっきのエルフのお姫様にそっくりだもんな」
チビ「青年の、お母さん」
698 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:47:15.14 ID:BZnBQ4oPP
チビ「ありがとう、お姉ちゃん」グイ、ゴシゴシ
チビ「……良し、じゃあ……出発だ!」
チビ「あ……ちゃんと、料金は貰うぜ?」
癒し手「勿論です」クス
海賊「はい、じゃあ……まず最初に何やるんでしたっけね、チビさん」
チビ「え、えっと……」
青年「がんばれ、おにいちゃん!」
チビ「そ、そうだ! 俺はもう、船長だ!」
船長「わ……解ったら、返事は!?」
海賊「あいあいさぁ」クスクス
海賊「……んじゃ、行きますか。どうぞ、お客さんはお好きに……あ、船室使います?」
癒し手「良いんですか?」
海賊「金払ってくれるんでしょ? ……勿論っすよ」
船長「んじゃ、案内……」
海賊「船長はこっち!」グイッ
ズルズルズル
船長「ちょ、自分で歩けるって!」
海賊「野郎共! 出港だー!」
アイアイサー!
ソレ、オレノセリフ!
ハイハイ、ツギカライツデモイエマスヨー
癒し手「…… ……」クスクス
側近「人魚……か、厄介だな」
癒し手「……耳栓をしても届いてしまう、のは」
癒し手「貴方はともかく……否、側近さんが可笑しくなったら」
癒し手「それこそ一大事、所じゃないですね」
699 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 14:56:42.47 ID:BZnBQ4oPP
側近「……人よりか、ましであると思いたい……が」
癒し手「私達は船室に篭もっている方が安全かもしれません」
癒し手「……青年も、居るし」
青年「ふねだー! ふねだー!」
側近「落ち着け……船室はあっち、だったか」
癒し手「まさか……また船長の船に乗る事になる、とは」
側近「……何の因果……だかな」
癒し手「……剣士さん、には、伝えるべきでしょう……か」
側近「…… ……」
青年「ねえ、おとうさん」
側近「ん?」
青年「さいはてにいけば、ゆうしゃがいるんでしょう?」
癒し手「……まだ、お母さんのお腹の中ですよ」
青年「ゆうしゃのおかあさんの?」
癒し手「そう……産まれてきたら、ちゃんと可愛がってあげてね」
青年「うん! もちろん!」
側近「……少しずつ、スピードが遅くなってて助かった、な」
癒し手「二週間程度では……ばれないと思いますが」
青年「たのしみだなぁ、ゆうしゃー」
側近「……何事も無く……着けば良いが」
癒し手「……大丈夫、です。願えば、叶います……」
側近「……ああ」ギュ
……
………
…………
ボーゥ…… ……
男「…… ……」
爺「本当に行かせて良かったのか」
男「……あん時、聞きたくないって言えば、な」
700 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:06:45.94 ID:BZnBQ4oPP
男「ぶん殴ってでも……止めてたさ」
爺「……なら、何故真実を告げなかった」
男「言えるか!? ……自ら、人魚を抱きしめていって」
男「…… ……ッ」
爺「…… ……」
男「……『剣士、会いたかった』だ、なんて……ッ」
爺「まあ……な」ハァ
男「あいつの心に、誰かが居る事ぐらいは知ってたさ」
男「……それでも良かったんだ。俺は!! だが……ッ」
爺「…… ……」ハァ
男「あれで良いんだ。チビには……あれで」
爺「……未練はないのか」
男「海にか? ……ねぇよ」
男「言っただろう……水面見てたら、吐きそうになるんだよ」
男「……あの時の、あの……見た事もネェような、船長の笑顔……ッ」
男「思い出しちまうんだよ……ッ」
爺「…… ……」ポンポン
男「……ぅ、ウゥ……ッ」
爺「暫くは……ゆっくりしろ、男」
爺「……な?」
男「ほっと……してんだよ、俺は……」
爺「ん?」
男「……チビは可愛いんだ。だが……あいつ見てると……ッ」
男「辛い、だなんて…… ……父親、失格だぜ……なぁ?」
爺「……そんなに自分を……責めるな。な?」
男「…… ……」
男(無事で、いろよ…… ……チビ。御免な……)
……
………
…………
701 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:17:21.59 ID:BZnBQ4oPP
息子「ぐ、ぅ……ッ」
グルルルルル……ッ
兄「息子さん!」
タタタ……ッ
息子「兄君!? ……来るな!君は魔導師と家の中に……!」
兄「で、でも……ッ 息子さん、血が……ッ」
息子「大丈夫だから……ッ」
剣士「頭を下げろ……雷よ!」
ピシャアアアアアアアアン!
ギャアアアアアアアアアアアア!
息子「!?」
兄「あ……ッ ……剣士、さん!?」
スタスタ
剣士「下がれ……兄、息子を連れて行け」
兄「は、はい!」
息子「どう、して……」
剣士「……話は後だ。一掃する」
タッ
兄「立てますか、息子さん」
息子「あ、ああ……ッ」ズキッ
兄「……取りあえず、腕縛ります……」
息子「ぅ、う……ッ」
兄「すぐに、回復魔法を使える人の所に! ……掴まってください」
息子「……す、まない」
702 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:26:42.47 ID:BZnBQ4oPP
息子「しかし……何故、彼が……!?」
兄「…… ……俺も、吃驚しました」
タタタ……
魔導師「お兄ちゃん!息子さん!」
兄「! 魔導師、回復を使える人……ああ、シスターさん!早く……ッ」
シスター「酷い怪我……ッ早く、入って!」
バタン!
シスター「すぐに……ッ」パァッ
息子「…… ……ッ」ハァ
シスター「……やっつけた、の?」
兄「……それが……あの……」
息子「……剣士さんが、な」
魔導師「剣士、さん?」
兄「魔導師は覚えて無いかな」
魔導師「……覚えてるよ。何となく、だけど……」
魔導師「僧侶のお姉ちゃんとか、戦士のお兄ちゃんとかと……」
魔導師「一緒に居た、人だよね? ……一年、二年前ぐらい?」
シスター「二年……にはならないかしらね」
シスター「……始まりの国の騎士達と一緒に居た人よ」
シスター「でも、何故彼が……!?」
息子「……船も復活しているんだ。居ても可笑しくは……ない、が」
コンコン
魔導師「!」ビクッ
シスター「……どなた」
剣士「俺だ」
息子「……兄君、開けてあげて」
カチャ
703 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:34:56.45 ID:BZnBQ4oPP
シスター「…… ……剣士、さん」
剣士「扉を早く閉めろ……施錠も」
兄「は、はい!」
剣士「……取りあえず、粗方片付けてきた」
息子「…… ……助かります」
剣士「火を……絶やさなければある程度は大丈夫だろう」
兄「……急に、魔物が強くなって……」
剣士「あの時、あの一帯は……炎で浄化したんだろう」
息子「はい……もう大丈夫だろうと思っていたんですが……」
剣士「……もうすぐ、魔王が復活する」
魔導師「え!? ……魔王は、僧侶のお姉ちゃんと戦士のお兄ちゃんが倒したんじゃ!?」
剣士「魔導師……か?」
魔導師「は、はい」
剣士「……大きくなったな」
シスター「剣士さん、思い出話なんて後にして」
剣士「……魔物の数が増え、力を増してきているのはその所為だ」
息子「貴方は……どうして……」
剣士「……旅の途中で立ち寄った、に過ぎん」
息子「偶然……ですか……?」
剣士「それ以外に何がある」
魔導師「……魔王が、復活……」
剣士「……村長は?」
シスター「……去年の今頃ね。ご病気で亡くなられたわ」
剣士「…… ……そうか」
息子「今は……俺が村長です。あの……」
剣士「何だ? ……ああ、倒れていた松明は元に戻して置いたが」
息子「あ、ああ……! では、見張りを立てなくては……!」ガバッ
シスター「息子さん! 急に動いたら……!」
息子「そうも言っていられない。大丈夫だ……ありがとう、シスター」
バタン!
シスター「…… ……」
704 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:41:46.52 ID:BZnBQ4oPP
剣士「……随分、荒廃したな」
シスター「質の悪い風邪が流行ったの……幼い子供や老人が」
シスター「……何人も亡くなったわ」
兄「此処よりも……北の街の方が酷いそうですよ」
剣士「北の街……ああ」
兄「此処も、元々小さい村ですから……随分、寂れました」
剣士「……鍛冶場は?」
兄「騎士様達が引き上げた後……知識や技術を持った老人達が」
兄「その風邪で随分……亡くなって」
兄「……今は、もう……殆ど機能していません」
魔導師「……どうして、騎士様達は……国へ帰ってしまったんですか?」
剣士「……俺は」
魔導師「いくら炎で清めたと言っても……!」
兄「やめなさい、魔導師……騎士様達は随分良くやってくれたんだよ」
兄「……それに、剣士さんは騎士様じゃない……ですよね?」
剣士「ああ」
魔導師「……ご免なさい。でも……」
シスター「騎士様が居ても一緒よ、魔導師」
シスター「……病を完全に防ぐ術は無い。あの……魔寄せの石も関係無いのよ」
魔導師「……でも、あれがあれば、こんな事には……!」
兄「魔導師!」
魔導師「…… ……ッ 僕、もう寝るよ」
スタスタ、バタン!
剣士「……此処は、兄と魔導師の家か」
兄「ええ……両親もその風邪で亡くなってしまいました」
剣士「…… ……」
シスター「貴方が来てくれて……助かったわ、剣士さん」
シスター「……又、助けて貰っちゃったわね」
705 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 15:44:21.03 ID:QnJQ5IuC0
青年とチビ改め船長かわいい
706 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:49:05.17 ID:BZnBQ4oPP
剣士「……宿は、機能しているのか」
兄「え?」
剣士「特に目的も無い旅だ。迷惑で無いのなら……少しの間滞在しても良いだろうか」
兄「あ、ああ……それは、歓迎致します、でも……」
シスター「宿屋の女将さんも、ね」
剣士「……そうか」
シスター「息子さんの家に泊めて貰うと良いわ……一緒に行ってあげる」
剣士「助かる」
兄「……すみません。家に泊まって頂いても良いんですけど……」
シスター「反抗期なのよ。魔導師君は」
剣士「……幾つになった?」
兄「……もうすぐ、8歳です」
剣士「そう、か……随分しっかりしてる……な?」
シスター「……ならざるを得ない、のよ」
剣士「…… ……」
シスター「うちの孤児達も良く……面倒を見てくれているわ」
シスター「さあ、行きましょ……兄、ちゃんと施錠するのよ」
兄「あ、はい!」
スタスタ、パタン
剣士「……もう、二年……か」
シスター「そんなもん、ね。さっき魔導師達ともそんな話をしてたわ」
シスター「……魔王が復活するって、本当なの」
剣士「…… ……ああ」
シスター「そう……」
剣士「北の街は……そんなに酷いのか?」
シスター「噂だけよ。船も無かった物……あれ以来」
シスター「陸路であの街まで行こうとする人なんか、居ないわ」
707 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 15:56:24.06 ID:BZnBQ4oPP
シスター「あ……息子さん、あそこにいるわ」
スタスタ
息子「シスター!? 危険ですよ」
シスター「剣士さんがね、暫くこの村に滞在したいんですって」
息子「え!? でも、宿は……」
シスター「貴方の家は駄目なの?」
息子「ああ……家で良ければ、良いですけど」
剣士「……できる限りの手助けはしよう」
息子「はあ、それは願っても無い……ですが……」
息子「……良いのですか? 貴方は……」
剣士「……急ぐ旅では無い、と行っただろう」
息子「はい……では、どうぞ……あ、でもちょっと待って貰えますか」
息子「松明をもう少し……」
剣士「……ならばあの山道の方に……」
息子「ああ……そうですね」
剣士「……俺が行こう。他には?」
息子「ええっと……」
シスター「…… ……」フゥ
シスター「じゃあ、お願いね息子さん」
息子「あ、あ……すみません、シスター」
スタスタ
シスター「…… ……あ!」クルッ
シスター「剣士さん!」
剣士「?」
シスター「僧侶の、子供は……!」
息子「思い出話は明日、ゆっくりしましょう」
息子「……ご免なさい、今はちょっと急ぎます」
シスター「あ、あ……そうね、ご免なさい」
708 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:01:39.70 ID:BZnBQ4oPP
息子「おやすみなさい、シスターさん」
シスター「ええ、おやすみなさい」
スタスタ
シスター(魔王の復活……か)
シスター(人同士の戦争と……どちらが、マシなのかしら)
シスター(…… ……)ハァ
シスター「…… ……?」
シスター「やだ、随分……西の空、暗いわね」
シスター(……雨、振らなきゃ良いけど)
……
………
…………
コンコン、カチャ
癒し手「おはよう御座います、側近さん」
側近「起きてたか……もうすぐ、最果ての街だの港に着く」
癒し手「ええ……気配で」ギュ。ナデナデ
青年「…… ……」ギュ
側近「そうか…… 青年は……どうした?」
癒し手「……さっきから『離れないんです』」ナデナデ
側近「どうした、青年……」ナデ
青年「……なんか、いやだ」ギュ
癒し手「何か……感じているんでしょう、ね」
側近「お前の子だから……な。エルフの血が受け継がれているから」
癒し手「……ハイ」
側近「そんな不安そうな顔をするな」
癒し手「ですが……」
コンコン
青年「!」ビク!
709 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:07:23.03 ID:BZnBQ4oPP
カチャ
船長「おはよう……起きてるか?」
青年「……おにいちゃん」ホッ
船長「ど、どうしたんだ、青年?」
癒し手「もうそろそろ、ですか?」
船長「あ、ああ……大丈夫か? 酔った?」
青年「……ううん。だいじょうぶ……」ギュウ
側近「……下船の準備をするか」
癒し手「はい……さ、青年。歩けます?」
青年「……うん」
船長「甘えたさんだな、青年は」ハハ
側近「……世話になったな、船長」
船長「こっちこそ、だ……お兄ちゃん、強いんだな」
癒し手「……人魚に会わずにすんで、良かったです」
癒し手「この海域を抜けるまでは……お気をつけて、船長さん」
船長「ありがとう……俺も、楽しかったよ」
青年「お、おにいちゃん!」
船長「ん?」
青年「あのさ……こんど、ゆうしゃつれてくるから」
船長「勇者ぁ?」
側近「…… ……」
青年「そしたら、またせんちょーのふねに、のせてくれる!?」
船長「……良し! 男と男の約束な!」
青年「うん! やくそく!」
癒し手「……さあ、行きましょう……青年。側近さん」
側近「ああ」
スタスタ
船長「気をつけて行けよ……っても、何にもないだろうに」
側近「……まあ、な」
船長「本当に待っていなくて良いのか?」
癒し手「大丈夫です……お気になさらず」
710 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:14:13.47 ID:BZnBQ4oPP
船長「でも…… ……」
ガラガラガラガラガラ……
船長「!? 馬車!?」
側近「あれは…… ……」
キィ……ガタン!
海賊「……船長。海賊の掟その1」
船長「詮索は時に命取り、だろ……解ってるよ」
海賊「良し、野郎ど……」
船長「野郎共! 船を出すぞー!」
海賊「……ああ、忘れてたわ」
船長「俺の台詞だっつったろ!」
ボォ…… ……ゥ…… ……
スタスタ
使用人「お待ちしておりました。側近様、癒し手様……それから」
使用人「『青年様』……どうぞ、馬車にお乗り下さい」
癒し手「まぁ……良く解りましたね」
使用人「ええ、后様の遠見術で……お二人とも、自分が行くと言い張って」
使用人「お止めするのに苦労しました」
癒し手「ふふ……変わりませんね、あの人達は」
側近「ああ……全くだ」
青年「……おねえちゃん、だあれ?」
使用人「私は、使用人と申します……初めまして、青年様……あら?」
青年「え?」
使用人「……いえ。文には確か、緑の瞳、と……」
側近「ああ……大きくなるにつれ、蒼くなっていったな」
癒し手「どちらにも見える色だったのですよ。光の加減で」
使用人「ああ……成る程」
711 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:21:44.00 ID:BZnBQ4oPP
青年「ここが……さいはての、ち?」
使用人「ええ……さあ、どうぞ。急ぎましょう」
バタン……ガラガラガラ……
……
………
…………
バタバタバタ……!
魔王「側近!癒し手!」
側近「魔王自ら出迎えとはな」
癒し手「所謂王様、の所行ではありませんね」クスクス
側近「后は?」
魔王「部屋に閉じ込めてきた!」
側近「……おい」
魔王「いや、だって、なぁ?大事な時期だぞ!?」
魔王「夜風は身体に悪いだろう!?」
側近「……ああ、うん、まぁ」
癒し手「後で燃やされちゃいますよ、魔王様」クスクス
魔王「俺が燃やされない為にも、早く中に入ってくれ」
魔王「疲れただろう?それに……子供も寝かしてやんない……と……」
青年(すぅすぅ)
癒し手「ええ……そうですね。『馬車の中で寝てしまって』」
魔王「『え……青年だよな?』」
側近「『ああ』」
魔王「『産まれたの……何時だっけ』」
側近「『……これでも、ゆっくりになってきたんだ』」
魔王「……すぐに食事を準備させるよ」
魔王「こっちだ……后も、すぐに呼んで……」
バタバタバタ……
魔王「!?」
712 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:26:41.60 ID:BZnBQ4oPP
后「ああ、側近、癒し手………!」
魔王「わああああ、ストップ、ストップ!后!」
癒し手「き、后さん! 走っちゃ駄目です!?」
后「良かったわ、無事について……」
后「魔王! 後で覚えておきなさいよ……抜け駆けして……ッ」
魔王「だ、だって……!!」
側近「俺がついてて何かあるわけ無いだろう……久しぶりだな。体調は如何だ?」
側近「……まあ、見る限り元気そうだが」
癒し手「まだお腹目立ちませんね」
后「ふふ、そうね……お腹がすくとちょっと気持ち悪くなる位」
后「……魔族になっても、こういうのは一緒なのかしらね」
后「それより……『青年君』抱っこしてる側近って……笑える」
側近「……一応父親なんだぞ」ムス
后「分かってるけど、さ……」クスクス
后「『……でも、想像してたより随分大きいわね』」
癒し手「ええ……『五歳、ぐらいになるのでしょうか』」
后「『でも、手を握って……赤ちゃんみたい……あら?』」
后「何か……握ってる?」
癒し手「……あ、ええ。私の……その。浄化の石、を」
后「浄化の石……?」
魔王「おい、后」
后「あ……そうね。とにかく食堂に行きましょ」
后「話は、食べながら……ね?」
713 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:35:39.11 ID:BZnBQ4oPP
側近「……剣士は?」
后「少し前ね……貴方達に会わない方が良いだろうって」
癒し手「…… ……」
魔王「癒し手、どうした?」
癒し手「あ、いいえ……お腹、すいたなぁ、って」
后「もう」クスクス
スタスタ、カチャ
使用人「……改めて、おかえりなさいませ。食事の用意は済んでいます」
魔王「ああ、毎日見ても美味そうだなぁ……」
使用人「さあ、どうぞお座り下さい……あ、青年様はそちらに……」
側近「ああ……起きるかな」ソッ
青年(すやすや)
癒し手「……緊張して疲れたんでしょうね」
側近「何だったんだ、あれは」
后「え?」
癒し手「……先に、乾杯しましょう?」
側近(……?)
魔王「良し、じゃあ……改めて。久しぶりの再会に!乾杯!」
使用人「では、私はこれで……」
后「何言ってんの……貴方も同席して頂戴」
使用人「でも」
癒し手「……おいやですか?」
使用人「まさか! ……宜しいのですか。久しぶりでしょうに」
側近「当然だろう」
魔王「そうだよ、使用人」
使用人「……では、失礼致します」
后「まずは……報告、よね」
癒し手「文では限界もありますし……ね」
714 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:40:18.45 ID:BZnBQ4oPP
后「……変わったんでしょうね、街や……人も」
癒し手「そういえば……遠見術で私達を見たんですよね、后様」
后「……ええ。何だか……妊娠してから、凄く……魔力が強くなったみたいなの」
后「いろんな事ができる様になった……みたいね」
側近「みたい、とは?」
后「試した訳じゃ無いのよ。だけど使用人曰く……願えば」
側近「……叶う、か。便利なもんだな、魔族ってのは」
側近「『未だに』……実感が無い」
魔王「そうだな……俺が一番実感が無いよ」
魔王「勇者から魔王になりました、なんて……」
癒し手「前魔王様達も……こうして、すごして居られたんでしょうね」
魔王「ああ……」
側近「……喜ばねばならん。時間が無い」
側近「意味が良く解らなかった言葉が、今となっては……重い」
后「…… ……」
癒し手「避けては……通れない道です」
癒し手「これからの……未来の為に」
后「……先に、さっきの石の事、聞いても良い?」
癒し手「ああ……はい」
魔王「石?」
后「青年君が、手に何か握ってたのよ。だから……」
癒し手「……文。小鳥の事なんですが……」
魔王「あ……そうだ。最後の便りの時に……」
癒し手「……はい。気がついて居ました。何時もならどこかで霧散してしまっても」
癒し手「風を伝って……魔力は、私に戻って来るんです。でも……」
側近「でも?」
癒し手「……書の街で、王子様と后さん宛てに飛ばした二羽の小鳥は」
癒し手「私の元には戻っていません」
側近「……何?」
魔王「あの小鳥は……俺の魔力が高まっている所為、なのか?」
魔王「でも、だとすれば王子様に向けた物は……」
715 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:44:57.41 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「……ここへ、来るまでハッキリしなかったんです」
癒し手「でも……この島に近づくに連れて……ハッキリ感じました」
癒し手「魔王様、貴方のお力は……強くなっておられます」
癒し手「恐らく……勇者様が、宿られたから、でしょうね」
魔王「……やっぱりか」
側近「気付いてたのか?」
魔王「さっきも言っただろう……小鳥の件でな」
癒し手「はい……死んでしまったんでしょう?」
后「ええ……水を飲んですぐにね」
癒し手「……私の力で具現化した……仮初めの命ですから」
癒し手「本来ならば……たとえば、普通の小鳥の様に弓で射られた等で死んだ場合」
癒し手「遠く離れて居ても私の元に魔力として戻るのですが……」
后「それで……気がついたんじゃ無いの?」
癒し手「いえ……魔力が失われたのを感じただけです」
癒し手「戻って来ていません……多分、魔王様に吸収されたのではないかと」
側近「……そうなのか?」
癒し手「推測ですが。私の中には……戻って居ない、のは確かです」
魔王「……そうか」
癒し手「次代の勇者様がお生まれになれば、魔王様は……」
魔王「ああ……使用人の話だと、産まれてから一ヶ月ほどしか俺は……俺として居られない」
魔王「話さなくなり、動けなくなり……笑わなくなる」
魔王「そして……勇者がたどり着くまで、お前達に押さえて貰わなければ」
癒し手「……世界を滅ぼしてしまう、ですね」
后「…… ……」
癒し手「『はっきりと感じます』……魔王様と后様のお子様は……」
癒し手「紛う事無き、光の子でいらっしゃいます」
后「……喜ばなくちゃいけないのね、私達は」
側近「これで、『魔王』を倒す事ができる……『世界』を救うことが出来る」
癒し手「…… ……はい」
716 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 16:50:47.97 ID:BZnBQ4oPP
后「『私の魔力……自分でも吃驚するぐらい強くなってるわ』」
使用人「前后様もそうでした。あの方も……」
后「あの人は……私達を一瞬の内に、この城まで呼び寄せた」
側近「転移術……剣士は、いとも容易くやってのけた」
魔王「……あれはびびったぞ。急に何かのでかい気配を感じたからな」
使用人「頭にビジョンを送る……と言うのは、癒し手様の案ですか?」
癒し手「ええ……実際、送られたのは側近さんですけど」
后「…私も、側近も魔王の力で魔族になって、莫大な力と、永遠に近い生を得た」
后「だけど、二人とも……まあ、側近の場合は特に元々魔法が使えた訳じゃ無いから」
后「特にこれと言って、分からなかったかも知れないけど……」
側近「そうだな……魔法が自由自在に使える様になった訳じゃない」
側近「……癒し手に言われた時だって、正直できるとは思わなかった」
后「そう……私だってそうよ」
后「炎以外の属性の魔法が使える様になった訳でも無い」
后「基礎能力が底上げされた、って感じなだけ……だったのよね」
癒し手「なのに……遠見が出来たり、するようになった、ですか」
后「それぐらいなら、身体にも負担かからないだろうし、って」
后「ええ。使用人の言う通りに、試しにやってみたら、ね」
魔王「願えば、叶った……か」
使用人「前后様のお言葉があったから、です」
癒し手「『魔法なんて使い様』」
后「……あの石や、小鳥にしたって、要は使い様、でしょ?」
癒し手「勿論、そうです。使用人さんに教えて貰って、出来る様になっただけです」
后「……魔除けの石、よね? ……あ、浄化の石って言ってたか」
717 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:01:12.94 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「呼び方は何でも良いんですけど……えっと」
側近「……すまんが、難しい話をする前に」
后「はいはい、糖分足りないのね、使用人、パフェとか甘い物、山盛り持ってきて!」
側近「……」ムス
使用人「はい」クス
魔王「照れんな」
后「…… ……」プッ
癒し手「…… ……」クスクス
青年(スヤスヤ)
癒し手「……エルフの寿命は、大凡300年……だそうです」
使用人「ですね。姫様もそう仰って居ました」
癒し手「ハーフエルフの私は、単純に半分として……150年程かな、と思います」
癒し手「旅の途中……魔王様達に会う前にも、様々なエルフの本を読みました。でも」
癒し手「ハーフエルフについては、驚くほど知られていなくて……」
癒し手「……記録も残されていません」
癒し手「ですから、寿命についても……本当に推測でしか無いのですが」
癒し手「ですが……」ヒック
后「癒し手……? ど、どうしたのよ!?」
癒し手「すみません……どうやら、私の寿命は……もう、それほど長くはないと思います」
側近「……な、ん……ッ」ガタッ
魔王「落ち着け、側近。お前が取り乱してどうする」
側近「…… ……ッ」
后「貴女も落ち着きなさい、癒し手……それは、感じた、の?」
癒し手「……前魔王を倒した時に。この城で、后様と側近さんが魔族へと転じられた時」
癒し手「魔王様、部屋に結界を張られたのを覚えていますか?」
魔王「あ、ああ……」
癒し手「あの時……あの結界の……魔王様の、黒い結界の中で」
癒し手「私は、息が出来なくなりました……正確には、息苦しくなった程度、ですが……」
癒し手「使用人さんの緑の防護壁が無ければ……気を失っていたかも知れません」
癒し手「……今、多分……これが無いと、息が詰まりそう、になると思います」コロン
后「綺麗な蒼い石……これは?」
癒し手「私の……水の力を…浄化の水の力を封じ込めた魔石です」
后「……魔導師君に、作り方を教わった、のよね」
癒し手「……そうです。剣士さんや魔王様……やはり、傍に居ると少し……辛いので」
癒し手「これがあれば……気分が楽でした」
魔王「でも……かなり体力を消耗するんじゃ無いのか?」
718 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:07:08.06 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「……人であれば、そうでしょうね、いえ」
癒し手「確かに、今の私にも……随分辛い。でも」
癒し手「……あると無いとでは、随分違うんです。だから……」
側近「……始まりの国のあの小屋に居る時も、部屋に置いていたな」
癒し手「……はい」
后「ちょっと待って……あの場所でも辛かったの?」
癒し手「……言い方は悪いですが、剣士さんが居られなくなってからは、特に」
魔王「……あいつが会わない方が良いと言っていたのはそれを知ってたから、か」ハァ
側近「……癒し手」
癒し手「今、『青年が持っているのは私の作った魔石です』」
癒し手「……后様と側近さんが魔に変じたあの時」
癒し手「結界が消えた時……息苦しさは感じなくなりました」
癒し手「ですが……魔王様のお力が、強くなった今」
癒し手「私の……寿命が、少なくなった今」
癒し手「これが無いと……私は確実に、ここで……命を削られて行くでしょう」
側近「癒し手!」
癒し手「……この事を告げれば、貴方は……ここに戻りましたか、側近さん」
癒し手「私とこの子の命を、取ってしまう様な方とは思っておりません」
癒し手「ですが……悩まれたでしょう」
癒し手「だから……推測で、告げるのはやめようと思ったのです」
癒し手「……黙って居て、ご免なさい」
側近「……何時、解ったんだ」
癒し手「さっきお話ししたとおりです……はっきりとは解らなかった」
癒し手「……ここへ、来るまでハッキリしなかったんです」
癒し手「決め手に欠けてたのでどう説明して良いか迷って……」
癒し手「いえ。言い訳ですね、ごめんなさい」
側近「…… ……」
癒し手「魔王様と、私……どちらかだけであれば」
癒し手「……もう少し、気分……ましだったのだと、思うのです、けど」
側近「……癒し手!」ギュ
后「…… ……」
魔王「…… ……」
癒し手「なので、魔王様」
魔王「ん……」
癒し手「この石……魔族の方には、不快な物かもしれません」
癒し手「ですが……」
魔王「阿呆」
癒し手「……は?」
魔王「俺は魔王だぞ、そんなもん、何とも思わんわ!バカタレ!」
癒し手「……ッ」
側近「おい、まお……」
后「……側近。待ちなさい」
魔王「生成するのが負担にならないなら、城中においとけ!」
魔王「使用人」
使用人「は、はい?」
魔王「船長に頼んで、山盛り持ってきて貰ってくれ!魔除け石!」
719 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:15:03.64 ID:BZnBQ4oPP
使用人「あ、は……はい!では、早速……」
側近「……待て」
使用人「え?」
癒し手「すみません……言うの、忘れていました」
側近「船長は……亡くなったそうだ」
后「え!?」
癒し手「魔王様の復活……それが近いと言う事は、魔物の力も増していると」
癒し手「……言う事、です。それで…… ……ッ」
側近「人魚に……食われてしまった、らしい」
魔王「な……ッ」
使用人「人魚…… ……そん、な……! 側近様達は、船長の船で……!」
后「……え?」
側近「ああ……乗せてきてくれたあの船……今の船長は」
癒し手「女船長さんの、息子さんだそうです」
魔王「…… ……」
魔王「じゃ、じゃあ……その、息子は……」
癒し手「……見てはいらっしゃらないそうです。幸いにも。ですが……」
后「お母さんの……跡を継いだ、ので」
癒し手「……はい。小鳥の話等……ご存じかもしれませんが」
魔王「…… ……そうか。知ってしまった以上……はいそうですかと」
魔王「頼るのは、憚れる……否! 癒し手の為だ」
魔王「そうも言って……」
癒し手「……大丈夫です。勇者様が産まれるぐらいまでは」
癒し手「これがあれば、大丈夫です」
側近「し、しかし……お前の命は……!」
癒し手「青年を産んで、失ってしまうのだけは厭だと思っていました」
癒し手「……寿命、なんです。きっと」
使用人「魔王様は苦しいかも知れませんが」
魔王「ん?」
使用人「まし、だったんでしょう? ……緑の防護壁を張ります」
使用人「……魔王様は我慢して下さい」
魔王「……いや、俺は良いよ、うん。そんぐらい。うん」
后「あのカーテンとやらに使った布、残ってないの?」
使用人「すぐに術を施してご用意します」
后「手伝いましょうか?」
使用人「后様は安静に!」
后「……はい」
720 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:17:54.88 ID:BZnBQ4oPP
使用人「魔王様の部屋から一番離れた場所に部屋をご用意します」
使用人「魔王様は部屋から出ない様に!」
魔王「えええええ!?」
后「仕方無いでしょ。アンタは我慢しなさい」
魔王「……はい」
使用人「では、失礼します」
パタン
側近「……あいつは段々強くなるな」
魔王「最初っからあんな感じだと思うけどな」
癒し手「お心使い、感謝します……魔王様」ヒック
后「な、なんで泣くのよ……」
癒し手「だって、私……まだ、仲間で居て、いいのか、なって……」
魔王「はぁ!?当たり前だろ!阿呆!」
后「そうよ。貴女が居なきゃ」
癒し手「……ハイ」
側近「しかし……」
后「……側近が心配するのも分かるけどね」
癒し手「あの……大丈夫です。ですが……」
魔王「何だ?まだあるなら、全部聞いてやる」
魔王「側近じゃ無いが……隠し事はなしだ、癒し手」
后「そう……私達は、仲間よ。癒し手」
側近「…… ……」
癒し手「はい……我が儘を、一つ」
癒し手「お子様が……勇者様が、お生まれになったら」
癒し手「青年を連れて、もう一度……旅に出させて下さい」
魔王「……ああ、その方が良いだろうな」
側近「待て!俺も……ッ」
癒し手「貴方は、駄目です、側近さん」
側近「何故だ!俺は……ッ」
癒し手「勇者様がお生まれになれば、后様は……後に、勇者様を連れて」
癒し手「ここを出られます」
癒し手「誰が……魔王様を守るのです!」
側近「……!」
癒し手「……貴方は、何の為に魔族になったか……忘れた訳では無い、でしょう?」
側近「……ッ」ガタンッ
スタスタスタ
バタンッ
癒し手「…… ……ッ」
后「……そっとしておきなさい、癒し手」
癒し手「……ハイ」
魔王「俺が……見てくるから。な?」
スタスタスタ
721 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:22:57.85 ID:BZnBQ4oPP
后「ねえ、側近や……私は平気なの、癒し手」
癒し手「……? あ、ああ……ハイ。大丈夫です」
后「そう……魔王だけ、なのね」
后「……あ、剣士も、か……」
癒し手「はい……正直、こうして魔王様が傍に居ないだけでも随分……ましです」
后「泣いちゃうわね、あいつ」クス
癒し手「す……すみません」
后「あ、あああ、違うのよ……責めてる訳じゃ」
后「……仕方ないわ。魔王は……魔王だもの」
癒し手「ハイ……でも、大事な仲間です」
后「うん……それだけで、充分よ」
青年「ん、んん……」
癒し手「あ、起きた……青年?」
青年「おかあさん……ここ、どこ?」
癒し手「船着いて……馬車に乗ったの覚えてる?」
青年「……ああ、うん。じゃあ……まおうじょう? ゆうしゃは?」
后「勇者はね、まだ……ここよ」ポン
青年「おかあさんのおなかのなか……」
后「そ…… ……隠してないのね」
癒し手「……はい。側近さんが、全て話そう、と」
癒し手「勇者様が産まれる迄……此処で過ごすんです」
癒し手「成長のスピードを鑑みなくても……隠しようもありません」
后「……そう、ね」
癒し手「もうすぐですよ、后様も」
后「うん……ふふ。産まれたら遊んであげてね」
青年「うん! ……あ、おいしそう……おかあさん、おなかすいた」
后「遠慮せず食べなさい。さっきの馬車に乗ってたお姉ちゃんが作ったのよ」
青年「しようにん!」
后「そうそう……美味しいわよ?」
癒し手「ちゃんと頂きます、して?」
青年「いただきまーす!」
722 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:25:07.83 ID:BZnBQ4oPP
后「ふふ……悔しがるわね、魔王」
癒し手「?」
后「青年君、抱っこしたがってたもの」
癒し手「……もう、赤ちゃんじゃないですけどね」クス
癒し手「でも……そうですね……この子は、多分……大丈夫ですよ」
癒し手「生命力に満ちあふれて居ますから……私の様に、魔王様の傍に居て」
癒し手「命を吸い取られるなんて事は……無いと思います」
癒し手「私の力が……それだけ弱ってる、と言う……事だと思います」
后「でも……緊張してた、んでしょう?」
癒し手「……初めての気配、しかも強大な魔族の物……」
癒し手「エルフは、いろんな事に敏感なので、魔王様の力を察したんだと思いますが」
癒し手「……すぐに、慣れるでしょう。そしたら……平気です。きっと」
后「……そう。ならいいんだけど」
癒し手「……さっき、お話しましたよね」
癒し手「魔王様の力が、強まっているだけで無く、私の力も弱くなっているのだと」
后「……ええ」
癒し手「感じる事が、できなかったんです、ここに来るまで」
后「……?」
癒し手「后様にお会いして、直接目で見て……やっと、宿る物が光であると」
癒し手「確かに、勇者様が産まれてくるのだと……感じました」
癒し手「あの……死んだ小鳥を飛ばした時には、感じなかったんです」
后「…… ……」
癒し手「ここまで来て、感じられて……ほっとしました」
癒し手「ですが、やはり……」
后「残酷な事を聞くわ……後、どれぐらい?」
723 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:32:46.39 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「『こればかりは、解りません』」
癒し手「『自分の死期を悟れるのか否かも……でも』」
后「ここに居る限り、分からない……わよね」
癒し手「はい。それでも……次の勇者様が、魔王様を倒すのには……ぎりぎり」
癒し手「間に合えば、良い、ですけど……」
后「『願えば、叶うわ。きっと……ッ』」
癒し手「…… ……」
癒し手「ああ、そうだ……後で書庫を見せて頂いても?」
后「勿論よ? ……ああ、そうだわ。私も聞きたい事があったの」
癒し手「? はい……なんでしょう」
后「人魚の事よ」
癒し手「……魔詩ですか。私には……効かなかった、けれど」
后「そう……見てもらいたい物もね」
癒し手「?」
后「長くなるし、明日にしましょ……剣士達と立てた仮説、と言うか」
后「……紐解いた結果、とかね」
癒し手「何か……解ったのですか?」
后「解った……とは、言い切れないかなぁ……」
后「……でも、何もしないよりマシ、よね」
癒し手「……はい」
后「とりあえず、その魔石……生成するのに負担は無いの?」
癒し手「魔力を具現化するので……多少は。ですが……」
癒し手「無いとあるのとでは、全然違いますし……」
癒し手「『緑の防護壁……それから、カーテンで』、少しは楽になる筈です」
后「ええ、すぐに準備『してくれるわ。使用人ですもの』」
癒し手「ありがとうございます」
后「『青年君の食事が済んだら、部屋に案内させるわ』……貴女も、今日は休んだら?」
癒し手「ええ……そうですね」
后「後で……ちゃんと側近、行かすから」
癒し手「ええ……」
后「……大丈夫。大丈夫よ、癒し手」
后「私達は……仲間ですもの」
724 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:36:26.79 ID:BZnBQ4oPP
……
………
…………
魔王「おい、こら脳筋」
側近「…… ……」
魔王「返事ぐらいしろよ……俺が、憎いか?」
側近「……否。そんな事は無い」
側近「自ら望んで……魔族になった。お前を守ると誓ったのは……そのもっと前だ」
側近「その時その時……自分の選んだ道だ。選び取った結果だ……怨むのはお門違いだ」
魔王「…… ……」
側近「辛くないと言えば……嘘になる」
魔王「ああ」
側近「……『側近』と言う立場に居ながら、殆ど……間を置かず癒し手と旅に出た」
魔王「それは良いだろう、別に。やることも殆ど無いし……俺なんか本しか読んでない」
魔王「まさか魔王自らふらふら出歩く訳にいかんしな……だけど」
魔王「お前と癒し手が……代わりに見て、知って……触って感じて来てくれるからな」
側近「『色々あった……な』」
魔王「ああ……后が出産するまで、一年近くある」
魔王「また、ゆっくり聞かせてくれよ、后も……楽しみにしてる」
側近「……ああ」
魔王「…… ……」
側近「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「癒し手の事だが………」
魔王「……心配するな。傍には寄らん」
側近「すまん」
魔王「……ちょっと寂しいけどな」
側近「分かっていたことだ」
魔王「……ん?」
側近「俺と……癒し手の、生きる時間が違う事」
側近「俺が人の身であれば、あいつを残して行くだけだった」
側近「魔族となった今は……逆になった。最期を見てやれる」
側近「だが……」
725 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:41:20.03 ID:BZnBQ4oPP
魔王「…… ……」
側近「勇者の誕生を待ち、魔王を倒すのを待つ」
側近「それまで……」
魔王「俺たちの方が、先……『と、思いたい、よな』」
側近「それまで、あいつの命が持てばな」
魔王「…… ……」
側近「旅立ちを、許してやってくれ、魔王」
側近「……ぎりぎりまで、俺が一人で……どうにかしてみせる」
側近「だから……ッ」
魔王「……他力本願ってのも、格好悪い話だよな。でも」
魔王「信じてるから……仲間、だからな」
側近「……ああ」
魔王「明日には、甘い物一杯用意しておいてやるよ」
側近「?」
魔王「……お前達が居ない間、色々話し合ったんだぜ」
側近「……全く理解出来る気がしないな」
魔王「努力してくれ……まあ、俺も半分ぐらい解ってないけど」
側近「おい……」
魔王「……仮説しか存在しないんだ。使用人や癒し手……后ほど」
魔王「頭が良い訳でもないしな」
側近「……お前でそれじゃ、俺はもうお手上げだ」
魔王「ま、死にゃしねぇって」
側近「わからん……」
魔王「……おいおい」
側近「船長達に会った……小さな島にな」
魔王「ん?」
726 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 17:46:41.88 ID:BZnBQ4oPP
側近「……エルフのお姫様、の像があったんだ」
魔王「え!?」
側近「作ったのが誰かは解らんが……姫様がモデルなのは確かだろう」
魔王「……いや、だったら!お前……」
側近「消去法で行けば、お爺様かもな……だが、真実はわからん」
魔王「…… ……」
側近「エルフの里を……見てみたい、と言う」
側近「……癒し手の願い一つ、俺は……叶えてやれなかった、んだ」
魔王「…… ……御免、な」
側近「何でお前が謝る……お前のせいじゃない。誰の所為でも無い。それに」
魔王「……『森は閉じられた』か」
側近「ああ……空に浮かぶあの月を欲しがる様な物だ」
側近「……『願えば叶う』」
魔王「側近……」
側近「願って、叶うのならば……!」ポロポロ
魔王「側近……ッ」ギュ
側近「…… ……」
魔王「……せめて、せめて……終わらせよう」
側近「ああ……『地上であり地上でない、この世の物とも思えない程の楽園』」
側近「この世界が……どこもそんな物に『美しい世界』になれば……良い」
魔王「……ああ」
……
………
…………
727 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 18:05:36.25 ID:BZnBQ4oPP
コンコン
癒し手「はい?」
カチャ
使用人「失礼します……癒し手様、お茶にしませんか」
癒し手「ああ……喜んで」
使用人「あら、青年様は?」
癒し手「庭で、魔王様に遊んで貰ってます」フフ
使用人「まあ……」
癒し手「良い天気ですしね」
使用人「后様も此方に来られるそうですので、そのままお待ち下さい」
癒し手「え……私が行きますよ!?」
使用人「防護壁と、カーテンで保護してるこの部屋が一番居心地が良いでしょう?」
使用人「……大丈夫です。すぐに戻りますから」
パタン
癒し手「……何だか、申し訳ないなぁ」ハァ
コンコン、カチャ
后「御免、お待たせ、癒し手!」
癒し手「わ……な、何ですかその本! 持ちますよ!」
后「だ、いじょうぶ……よ!」ドサ!
癒し手「……これ、は……?」
后「読めば解る……取りあえず、この古詩からお願い」
后「……昨日、人魚の話がしたいって言ってたでしょう?」
癒し手「あ、ああ……はい……えっと?」
コンコン、カチャ
728 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 18:14:10.07 ID:BZnBQ4oPP
使用人「! 后様! 私が運びますって言ったのに!」
后「大丈夫だってば……過保護ねぇ、皆揃って」
使用人「妊婦だって言う自覚を持って下さい! 后様!」
癒し手「…… ……」クスクス
使用人「癒し手様も! 此処が一番安全なんですから!」
癒し手「は、はい!」
后「……使用人も、何か話があるんでしょう?」
使用人「え? ……あ、ああ……はい」
癒し手「取りあえず……これを、読めば良い……んですね?」
癒し手「……えっと、全部?」
使用人「そうですね。読んで頂いてからの方が良いかと……思います」
使用人「后様のお話も、私の……も」
癒し手「……分厚いですね」
后「焦らなくて良いわよ?」
癒し手「……まあ、そうですね。2.3日頂ければ……」
后「……ええ。じゃあ、取りあえず一端置いておいて、お茶にしましょ」
后「男共は……放って置いて良いか」
使用人「庭で何して遊んでいらっしゃるんでしょうか」
癒し手「さあ……そこまでは……」ペラ
癒し手「……あれ? 私、これ……知ってる気がします」
后「え!?」
癒し手「……神父様に聞いた……のかな……」
后「だったら……話は早いわ。人魚の『魔詩』よ」
癒し手「ああ……はい。それが何か?」
后「……あれ、その『古詩』と同じじゃ無かった?」
癒し手「え!? ……ちょ、ちょっと待って下さい!?」ペラペラ
癒し手「……そ、そう言われれば、そう……かも、うう、でも……」
癒し手「あの時は、夢中で……はっきり、とは……」
后「……そりゃ、そうか……私達三人とも、ぐったりだったもんね」ハァ
使用人「癒し手様、此方も……この、後編の最後」ペラ
癒し手「……あ!」
729 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/14(火) 18:15:28.88 ID:BZnBQ4oPP
おふろとごはーん!
あしたから又、馬車馬さんの如くはたらいてきまっさ……
730 :
名も無き被検体774号+:2014/01/14(火) 18:31:54.55 ID:HknenIlEP
怒涛の投下、乙!!!
保守
732 :
名も無き被検体774号+:2014/01/15(水) 11:08:41.77 ID:x3j5lYrE0
まじでめっちゃ面白い。数少ない楽しみだわ。
733 :
名も無き被検体774号+:2014/01/16(木) 00:44:10.32 ID:ix/amAEz0
ほしゆ
734 :
名も無き被検体774号+:2014/01/16(木) 21:39:59.35 ID:Ea0xrm/D0
ほ
し
ゅ
735 :
名も無き被検体774号+:2014/01/17(金) 11:54:42.68 ID:Xeyg5WKO0
やっとおいついたー!
面白いほしゅ
736 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 15:59:45.49 ID:zvBn60dLP
后「ね」
癒し手「……繋がって、いる、のですか」
使用人「作者も何もわからないのです。だけど……」
后「普通に考えれば、同一人物が書いた、んでしょうね」
后「使用人が言ってたじゃ無い。もし、この『回り続ける運命の輪』から」
后「何時か、どこかで離れた者がいるのなら、居たのなら……って」
癒し手「……え?」
使用人「そう言う者が居たのなら。これを書いたのかな……いいえ」
使用人「もし、この本と。この世界が繋がっているのなら……」
使用人「違いますね。そうで無ければ、繋がっている、説明にならない」
癒し手「……全てが推測の域、なんでしょうし」
癒し手「全ての真実は……手には入らないんでしょう、けれど」
后「あの、『魔詩』だけれど」
癒し手「はい?」
后「……貴女は、優れた水の加護を持っているから」
后「効き目が無かった……でも、あの時癒し手以外の……私達が見た、あの『夢』」
癒し手「……ええ。知らない筈なのに、随分懐かしい気がしたと」
癒し手「側近さんも……言っていました」
后「使用人の、その話……一つだけ、納得出来ないのがさ」
癒し手「……ああ。そうか」
使用人「言いたいことは……解ります。この本の作者だと仮定して、ですが」
使用人「……『傍観者』が、途中で作られてしまった場合」
癒し手「はい……それは……ッ」ハッ
后「癒し手?」
癒し手「…… ……」
使用人「后様は、弾かれ者が出た時点で、『繰り返しでは無い』と言いたいのですよね?」
后「……まあ、厳密には、ね。厳密にする必要があるのかどうかはわかんないし」
后「『何か』が繰り返されてるとして、少しずつは違ってくる、って事だって……」
癒し手「……それが、本来の意味の『特異点』ですか?」
后「!」
737 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 16:19:15.64 ID:zvBn60dLP
癒し手「……そもそも、特異点、って」
癒し手「『基準が適用出来ない』と……そう言う意味ですよね?」
使用人「……基準」
癒し手「まあ、確かに……以前と今回……私達を比べてみれば」
癒し手「私は『特異点』かもしれません」
后「……癒し手はエルフの血を引いているから、魔には変じられない、からね」
使用人「癒し手様も、お読みになれば何か『感じられる』かもしれませんが」
使用人「……この、本も……徐々に仲間が減っていくのです」
后「『三』ね」
癒し手「さん……?」
使用人「魔王様が仰って居た、キーワード、です」
癒し手「ああ……『古詩』『小説』『童話』」
后「それに、『三世代』の物語、ね」
使用人「……金の髪の勇者様を1とするならば、確かに、次で終わるんですけど」
癒し手「今回が最初だとすると……ですね」
使用人「そうです。私が『受け継ぐ者』であるのならば」
使用人「……何故、私は生きているのか。まだ」
后「……魔に変じさせた『魔王』が……消えて、しまえば、って言う疑問もね」
使用人「何を『基準』として何を『特異点』と定めるのか」
使用人「……そんな事言ってしまえば、何だってこじつけられてしまいます」
癒し手「…… ……」ペラ
后「癒し手?」
癒し手「母様も……読まれた、んですか」
使用人「姫様、ですか? ……ああ、そう言えば」
使用人「でも……小説の途中まで、だった気が、します」
癒し手「……綺麗な、旋律でした」
后「え?」
癒し手「人魚の魔詩、です。歌詞……と言うのか。言葉までは覚えていませんが」
癒し手「……ですが、途中から随分禍々しいものに変わった、様な気がします」
使用人「美しい旋律で注意を奪い、魅了し……支配する、んでしょうか」
738 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 16:28:16.02 ID:zvBn60dLP
癒し手「当たらずとも遠からず、なんでしょうね」
癒し手「……気がついたときには……否。そもそも、気なんて着けないんでしょうけど」
后「もう、遅い……幻覚を見せて、奪い去るのね。『命』を」
使用人「……あれ?でも、あれって」
使用人「その人が本当に望む者の姿を見せる……のでは無いのですか」
后「……私達の本当に望む姿が、あの……『夢』?」
癒し手「……うーん。話に聞く限り、なんか違います、ね?」
后「そうね……本当に『夢』みたいだったわ。感覚的に」
使用人「寝ている時に見る、あれですか」
后「……ああ。そうか。どっちも『夢』なのね」
癒し手「寝てみる『夢』、現実に描く『夢』……」
使用人「……共に、必ず『願い』が含まれています、ね」
癒し手「……複雑、ですね。何が何だか」
バタバタバタ……バタン!
青年「おかあさん、みてみて! ばった!」
側近「……こら、青年! 持って行くなって!」
癒し手「え? バッ…… ……きゃあああああああああああ!?」
后「……でっかいのよね……この庭の虫、って」
使用人「流石に見慣れましたね……触れませんけど」
青年「かわいいね!」
癒し手「こ、拳ぐらいありますよ!?」
后「魔王は?」
側近「……いや、その……もう、来ると思うが」
青年「まおうさまがくれたー!かあさんにみせてやれって!」
青年「かあさん、はい!」スッ
イヤアアアアアアアアアアアアア!
739 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 16:51:32.09 ID:zvBn60dLP
魔王(後で行くよ、とか言っちゃった物の、よく考えたら)
魔王(俺、入れないじゃん……癒し手の部屋……ん、悲鳴?)
魔王「…… ……まさか、本当に持って言った?」
魔王「…… ……」
魔王「……逃げよう」
スタスタ
……
………
…………
シスター「何だ、じゃあ……僧侶の子供は見てないのね」
剣士「……俺は旅に出た、からな。すぐに」
息子「魔導国……いえ、書の街は、どうでしたから」
剣士「人も多く行き来していたし……そうだな」
剣士「普通の街の様に……見えた、な」
シスター「……変わった?」
剣士「あの頃の……あの街に比べれば」
シスター「……そう」
息子「ほっとしました、か?」
シスター「……複雑だわ」
息子「え?」
シスター「戻れる訳でも無いもの。今更」
剣士「何故だ? 行こうと思えば行けるだろう」
シスター「……戻りたくなんか無い」
シスター「いくら、変わったと言ったって……」フゥ
息子「……そう、ですか」ホッ
剣士「?」
息子「あ、いや……ッ そ、その、剣士さん!」
剣士「あ、ああ……?」
息子「き、北の街には何時行きますか!?」
剣士「……俺が一人で行くのが一番早いだろう?」
740 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:10:29.50 ID:zvBn60dLP
剣士「それに、お前はもう村長なんだろう。村を開けない方が良い」
剣士「……魔物だって強くなっているんだ」
シスター「そうよ、息子さん」
シスター「……兄や魔導師だって、決して一人前だなんて言えないんだから」
息子「で、ですが……」
剣士「……そもそも、仕事を探しに来たんだ。無償で宿まで提供して貰ってる」
剣士「遠慮無く使えば良い」
息子「……すみません」
剣士「……兄や魔導師まで、実戦要員、なのか」
シスター「大人が居ないの。最初から、若い人達で一杯の村でも無かったわ」
息子「兄君はともかく……魔導師は」ハァ
剣士「まだ……子供だな」
シスター「……強い魔力を秘めている様だけどね」
剣士「故に……怖い部分はあるな」
シスター「丁度難しい年頃、って言うのもあるのよ」
剣士「…… ……」
息子「……ああ、酒が無くなりましたね。取ってきましょう」
スタスタ、パタン
シスター「……ねえ、ずっとこの村に居るの」
剣士「長くて……2.3年だな」
シスター「誰も……何も言わないわよ」
剣士「……ああ、そうか。お前は……」
シスター「知ってるわ。貴方の見た目が、ずっと変わらない事」
シスター「……命の恩人だって思ってるのは、私だけじゃ無い」
剣士「…… ……」
シスター「あの時も、今も。この村の人達は……」
741 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:17:31.60 ID:zvBn60dLP
剣士「……一所には留まれん」
シスター「……無理矢理引き留めはしないけど」
シスター「暫くは、居てくれるんでしょう」
剣士「…… ……」
シスター「…… ……あ」
剣士「?」
シスター「いやね……雨だわ」
ザアアアアアアアアアアアアアアアア……
剣士「……火が消えるとまずいな」
バタバタ……バタン!
息子「すみません、剣士さん!」
剣士「……ああ」
スタスタ、バタン!
シスター「…… ……」フゥ
シスター(書の街、か……今更)
シスター(子供達を放ってなんて、行けない)
シスター(……帰りたい?)
シスター(帰る場所なんて…… ……)
742 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:18:20.01 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
ザアアアアアアアアアアアアア……
后(ん……雨……?)
金の髪の男『……か、あ ……さん』ナデ
后(あれ……あの男の子……誰かに似てる)
后(金の髪に……蒼い瞳……誰、だっけ……)
金の髪の男『…… ……』
金の髪の男『ご丁寧に、自分で棺桶まで用意しちゃってさ』
金の髪の男『……死期まで、悟れるんだったら、さ』
金の髪の男『雨が降りそうな日に、わざわざ……花の手入れなんて……』
后(雨の中に倒れているのは……癒し手!? まさか!)
金の髪の男『全く……間抜けだよ、母さんは……』
后(母さん……じゃあ、あれは……青年!?)
青年?『今日は、久しぶりに……一緒に寝て、良いよね?』
青年?『昔みたいにさ、子守歌、歌ってよ……夢の中で……良い、から』ギュ
青年?『……ふ、小さいな、母さんの身体』
后(!! あの顔は……癒し手! 癒し手……そんな!?)
青年?『明日……雨が上がったらあの丘へ行こう。母さんと、神父様の為に……両手一杯の花を抱えて、さ』
后(青年!せいね……ッ 癒し手!!)
青年?『母さん……おやすみ』
青年?『もう、明日から……朝ご飯を作って、中々起きない僕を起こさなくて良い』
青年?『気にしないで、ゆっくり眠ってくれて良いんだ。母さん………』
青年?『………おやすみ、母さん』ポロポロポロ
后(厭よ、いや……ッ 癒し手……ッ!!)
743 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:24:52.04 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
后「いや……ッ」ガバ!
后「…… ……」ハァ……
后(ゆ、め……?)
魔王「んー……?」
魔王(すぅすぅ)
后「…… ……」
后(夢……か…… ……なんて、厭な夢……)ハァ
后(……ああ、でも。夢で良かった……まだ、心臓がどきどきと……)
后「……癒し手…… ……ッ」ズキン
后「ん……? あ、いたた……あら、やだ、これって……」
后(まさか……もしかして、これ……じん、つ……ッ !!)
后「……お、う ……魔王……ッ!」トントン
魔王「なんだよ、后……もうちょっと……」ムニャ
后「あ……ッ い、た……ッ ……ちょ、魔王!起きてよ!」バシッ
魔王「いってぇ!なに……」ムク
后「陣痛よ……癒し手、呼んで…… ……ッ」ウゥ
魔王「あ、え!?うそ、産まれるの!?」ガバ!
后「早く! ……痛いのよ!」バシバシッ
魔王「いてぇ! ……ちょ、使用人ー!」
パタパタパタ……コンコン、バタン!
使用人「魔王様? 如何…… ……!!」
使用人「后様!?」
魔王「癒し手! 産まれる! 早く、早く!」
后「煩い!」バシッ
魔王「ええええええええ」
……
………
…………
744 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:27:35.68 ID:zvBn60dLP
使用人「8分間隔……ですね、もう少し、いきむのは我慢して下さいね、后様」
后「……う、ぅ……ッ ちょっと、痛いのよもっとちゃんと腰さすって!」バシッバシッ
魔王「いてぇ! ……やってるんだってば……」サスサス
后「うぅうう……」
ガチャ
側近「癒し手連れてきたぞ。魔王、出ろ」
魔王「お、おう……癒し手、すまん頼むな」
癒し手「はい!お任せ下さい!」
タタタタ!
側近「……妊婦の怒りは理不尽だぞ。癒し手の時も大変だった」
魔王「おう……大丈夫だ、気にしてない」
癒し手「大丈夫です、魔王様……8分ですか……明け方頃には産まれますよ」
魔王「そんなかかるの!?」
側近「任せておけば大丈夫だ……とにかく、お前は外に出ろ」
魔王「……もうちょっと労って?」
スタスタ、パタン
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「……落ち着け!鬱陶しい」
魔王「落ち着けるかああああ!」
側近「気持ちは分かるがな……実際、男に出来る事は何も無い」
側近「傍に居てやりたいだろうが……」
魔王「いや、それはな。癒し手の事を考えると仕方ないだろう」
魔王「俺より癒し手の方が、今は必要な筈だし」
魔王「……遠慮無しの后のパンチは痛い」
側近「……」プッ
側近「心配するな。俺も……癒し手に相当どつかれた」
魔王「妊婦ってのは……そんなもんか」
側近「そんなもんだ」
魔王「……明け方って言ってたな」ウロウロ
側近「ああ」
魔王「今、何時だ?」
側近「雨だからはっきりは解らんが……もうすぐ日が暮れる位だろう」
745 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:30:13.84 ID:zvBn60dLP
魔王「……さっきから、どれぐらい経った?」
側近「まだ30分も経ってない」
魔王「……」ウロウロ ウロウロ
側近「……お前やっぱり鬱陶しい!」
魔王「お前だって似たようなモンだったんだろ!?」
カチャ
魔王「産まれた!?」
側近「そんな訳無いだろう! ……落ち着け」
使用人「側近様の仰るとおりです、魔王様……落ち着いて下さい」
使用人「順調に陣痛も強くなってますし、このままの調子でいけば」
使用人「日が変わる頃、には」
魔王「……それでもまだまだだな」
使用人「大丈夫です。癒し手様がついていらっしゃいます」
使用人「……僭越ながら、私も」
側近「ああ……青年は?」
使用人「さっきまで興奮していらっしゃった様ですけど」
使用人「今は、后様のベッドの傍で……眠っていらっしゃいます」
側近「……この、大騒ぎの中?」
イヤーオナカイタイーモウヤダー!
キッテー!オナカキッテー!
ダイジョウブデスカラ、キサキサン、オチツイテ!
アアアア、マダイキンジャダメ!
使用人「……はい」
魔王「……大物になるよ、お前の息子は」
746 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:33:59.85 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
魔王「ウロウロするの疲れた」グッタリ
側近「……そんなお前を見るのにも疲れた」グッタリ
魔王「日、落ちたな……完全に」
側近「あれから……3時間程か」
魔王「もうすぐ日が変わるか?」
側近「……お前は時間の計算もできんのか」
魔王「…… ……酷い」
側近「ん……?」
キサキサマ、モウチョットデス!
アタマガミエテマスヨ!
イヤアアア、モウデル、モウデル!
魔王「!」
側近「……随分早いな」
ハイ、イキンデ!
ダイジョウブデス、ダシテイイデス!
魔王「……無茶言うな、癒し手」
側近「使用人もついてるし……大丈夫だろう」
ウゥウウ、アアアァ……ッ
フ…… フエエエエエ……ッ
オギャアアアアッ!
魔王「産まれた!? 産まれたよな!? 側近!!」ガシ!ユサユサ!
側近「……い、痛い痛い……離せ、バカタレ!」
カチャ
使用人「魔王様、側近様、産まれましたよ」ニコ
使用人「可愛い、女の子です」
747 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:43:59.58 ID:zvBn60dLP
魔王「女の子! ……え、女の子!?」
使用人「はい……どうぞ、と言いたいですが」
使用人「先に、癒し手様をお部屋にお連れしますので、魔王様はあちら」スッ
魔王「……ハイ。部屋に戻ります……」
使用人「側近様も、あちら」
側近「……ああ。すまん、青年は?」
使用人「まだ寝てらっしゃいます……一緒にお連れしますから」
側近「……すまん」
パタン
使用人「……もう、良いですよ、癒し手様」
癒し手「ええ……最後まで、寝てましたね、青年……」フゥ
后「……つ、疲れた……ッ」
使用人「お疲れ様でした……后様」
后「うん……でも……可愛い……」
癒し手「……本当に、魔王様にそっくりですね」
使用人「でも……女の子、ですか」
后「え?」
使用人「……いえ。前例、だなんて言う程、見ていません。ですが」
使用人「まさか……男の子以外が産まれると……その」
使用人「思っていませんでした、から」
癒し手「……そう、ですね」
癒し手「私も少し……吃驚しました」
癒し手「でも、おめでたい事に変わりは無いんです」
癒し手「……新たな、命が産まれた、のですから」
后「……そう。そうよね。私達は……喜ばないと……いけないんですもの」
使用人「癒し手様も……もう、お戻り下さい」
使用人「魔王様、きっとまだ部屋の中ウロウロしてますよ」
癒し手「……そうですね」クス
使用人「青年様は私が抱っこしましょう……では、后様」
使用人「すぐに、魔王様を呼んで参りますから」
748 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:48:32.95 ID:zvBn60dLP
スタスタ……パタン
后「……勇者」ツン
勇者(すぅ)
后「…… ……ふふ」
后(勇者……光の、子)
后(……この子は、人間。私は……これで、きっと……)
后(前后様……魔王の、お母様の様に……!)
カチャ、パタン
魔王「后……あの、うん」
后「魔王……」
魔王「お、おぅ……ええと、お疲れさん」
后「女の子、だって……ほら、見て?」
魔王「うん……あぇ、俺そっくりじゃん……」
后「うん、吃驚するぐらい似てる」
魔王「……お前に似たら美人だっただろうになぁ」
后「ふふ……手、見て」
魔王「ああ……あるな、勇者の印」
后「うん……」
魔王「……勇者」
后「……ええ」
魔王「色々、話したい事はあるけど……今日は……ゆっくり休んでくれよ」
后「魔王は?」
魔王「俺も今日は休む……と、横で寝る訳にいかないか、勇者いるしな」
魔王「……明日にでも、ベッドを運ぶ」
后「うん……じゃあ、おやすみなさい」
魔王「ああ……寝ぼけて踏むなよ?」
后「は!?赤ちゃん踏むわけ無いでしょ!?」
魔王「違うわ!俺だ!」
后「……なんで」
魔王「……床で寝るから」
后「……馬鹿?」
魔王「何とでも言え。もう決めた。此処で寝る」ゴロン
后「全く……」フゥ
魔王「……時間が無いんだよ、后。産まれちまった」
后「…… ……」
魔王「死ぬほど嬉しいんだぜ? ……お前と、俺の子供だ」
后「……ええ」
749 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:53:41.21 ID:zvBn60dLP
魔王「それが『勇者』だったってだけだ」
魔王「……ちょっと、金の瞳で」
魔王「魔王と……魔族の、妻の間に産まれた、ってだけだ」
后「…… ……」
魔王「なのに、人間に産まれて来て……」
魔王「……世界を救う為に」
魔王「魔王を……俺を。父親を……倒す、って。そんな運命に……」
后「魔王……」
魔王「…… ……」
后「…… ……」
魔王「誰なんだろうな。こんな……腐った世界作った奴ってさ」
后「え?」
魔王「良くわかんねぇよ。何で、大人しく……否、仕方無いとは言え、さ」
魔王「……こうやって、大人しく……俺達が、従ってるのか」
魔王「……何で……なんだろう、な」
后「……魔王」
魔王「これすらも決められてる、とか。思いたくネェよな」
魔王「ましてや、ずっとずっと……こんな事繰り返してきてる、とかさ」
后「…… ……決まった訳じゃ無いわ」
后「私達が、勝手に立てた……仮説に過ぎないのよ」
后「真実なんて、誰にも解らないの」
魔王「…… ……」
后「……魔王?」
魔王(すぅ……)
后(寝ちゃった、のか)
勇者(すぅ)
后「……ふふ」チュ
后(ごめんね……勇者)
750 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/17(金) 17:55:16.37 ID:zvBn60dLP
お風呂とご飯ー
明日からまた仕事!
751 :
名も無き被検体774号+:2014/01/17(金) 18:18:19.09 ID:fEYhkxSQP
おつ!!
BBAが何の仕事してるか気になる(`・ω・´)
753 :
名も無き被検体774号+:2014/01/17(金) 20:29:00.54 ID:YBGVVQkq0
BBA乙
女の子か…
俺の予想では男の子が生まれて『回り続ける運命の輪』から外れると思ってました(´・ω・`)
754 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/18(土) 13:36:14.88 ID:IQZlSXwDP
……
………
…………
側近「ご苦労だったな、癒し手」
癒し手「いいえ……貴方も、ご苦労様でした」
側近「……可愛かったか?」
癒し手「ああ、まだ見ていなかったんですね……ええ、それはもう」
癒し手「魔王様にそっくりの女の子ですから」
側近「『女の子と聞いて、少し……期待、してた』」
癒し手「『……似ていない事をですか。何か……違うなら、と?』」
側近「『后に似ていれば…… ……』」
癒し手「……でも、大きくなれば似ていらっしゃるかも知れませんよ」
癒し手「髪の色は、后様と同じ赤に近い茶ですし……雰囲気は、ね」
側近「そうか……『解って居たはずだったのにな』」ハァ
癒し手「……勇者の印を戴いて、産まれて来られました」
癒し手「取り上げる前から、溢れんばかりの……光を感じたんです」フゥ
側近「……すまん、疲れただろう。青年は俺が見てるから、休め」
癒し手「……あの」
側近「ん?」
癒し手「……青年も、眠っています。だから」
側近「……まさか、もう行くと言うのか!?」
癒し手「…… ……ごめんなさい、側近さん」
側近「落ち着け、癒し手! ど……どうやって、何処に行く!?」
側近「船も無い! ……それに……!」
癒し手「側近さん」
側近「…… ……」
癒し手「……限界、なんです」
側近「え……?」
癒し手「……もし。もしも、の話です」
癒し手「船長さん……あの、女性の方の、です」
癒し手「……生きていらして。もし、魔除けの石がまだ、出回っていて」
癒し手「ここに……あれば、少し……違ったのかもしれません」
側近「…… ……」
癒し手「もう、小鳥を具現化する事もできません」
側近「!?」
癒し手「それどころか……楽になるからと作った、この」
癒し手「浄化の石をもう一度生成することも」
癒し手「……私の身に、魔力として……戻す事も」
755 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/18(土) 13:53:01.78 ID:IQZlSXwDP
側近「……癒し手」
癒し手「…… ……」フラッ
側近「!」ガシ……ギュウ
癒し手「……離れれば、まだもう少し。生きながらえる事ができるかもしれません」
癒し手「もう少し、青年が……大きく、なるまで」
側近「癒し手……ッ」
癒し手「……すぐに、使用人さんが来て下さいます」
側近「え……」
コンコン
癒し手「……はい」
カチャ
使用人「失礼しま……大丈夫ですか!?」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「気にしないで下さい。ありがとうございます、使用人さん」
使用人「……本当に、良いのですか、癒し手様」
側近「どうする……つもりなんだ……」
使用人「……一つだけ、残りがあるんです」
側近「残り?」
使用人「はい…… ……転移石、です」
側近「! 紫の瞳の側近が使った奴か……!」
使用人「ええ……紫の魔王様の魔力の結晶です」
側近「し、しかし、そんな物を使えば、癒し手は……!!」
756 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/18(土) 17:54:36.50 ID:IQZlSXwDP
癒し手「ここに居ても……同じです」
癒し手「いえ……魔王様の魔力に、晒され続ける事を考えれば……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……選択肢が、無いんです。側近様」
使用人「危険では無いとは言えません。ですが……」
癒し手「まだ小さい青年を連れて、一人で旅をするよりも……」
癒し手「直接、目的地に飛べるのなら。そこで……ゆっくり、癒すことも」
癒し手「できるかもしれません。だから……」
側近「目的地……? 始まりの国か?」
癒し手「いいえ……私が育った、教会へ」
側近「し、しかし……!」
癒し手「王子様はともかく。他の人に……どう、貴方が一緒で無い説明をするのです」
側近「…… ……」
癒し手「……神父様が、守って下さいます」
側近「……寄ってくれば良かった。そうすれば……!」
癒し手「もしもの話は……」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
癒し手「……そうだ、使用人さん。これを」コロン
使用人「? ……これは、癒し手様の浄化の石……」
癒し手「勇者様に……何か、力になれれば、良いのですけれど」
使用人「……宜しいのですか、と言うか……大丈夫、なのですか」
癒し手「……私の、自己満足ですけれど。もし良ければ」
使用人「…… ……お預かり、致します。私からも、これを」
側近「布……? 否、袋か」
使用人「防護の魔法をかけてあります。浄化の石……割れてしまわない様に」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「…… ……」
757 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/18(土) 18:00:17.63 ID:IQZlSXwDP
使用人「では、癒し手様……青年様をお抱きになって下さい」
使用人「……先に、緑の防護壁でお二人を包みます。それから……」
使用人「転移石を握り、願って下さい。行きたい場所を……」
癒し手「……イメージ、するのですね」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、お離れ下さい」
側近「転移石を、俺に」
使用人「え?」
側近「……魔法をかけるのだろう? 俺も場所は知っている」
側近「防護壁毎……俺が、向こうへと送れば良いのではないか」
使用人「……か、可能ですか、それは」
側近「『願えば叶う』…… ……少しでも負担を減らしてやりたい」
使用人「……解りました。風よ!」
ゴウッ
癒し手「…… ……ッ」
使用人「側近様、これを」コロン
側近「……癒し手!」グッ
癒し手「側近さん……側近さん!」
癒し手「例え、この世が終わっても……貴方を愛しています!」
シュゥウンッ
側近「…… ……癒し手ッ …… ……ッ」
パリンッ
使用人「…… ……」
側近「……ッ」ウ、ゥ……ッ
側近「……癒し手…… ……青年…… ……ッ」
758 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/18(土) 18:02:32.46 ID:IQZlSXwDP
おふろとごはーん
759 :
名も無き被検体774号+:2014/01/18(土) 20:14:33.62 ID:jWifAHkp0
ああ、この世代の話も、もうすぐ終りだな……
側近(´;ω;`)ウッ…
ホントに今更新が楽しみです!
BBA無理せず、幼女と仲良くな!
でも、たまに集中投下してくれよ!
761 :
名も無き被検体774号+:2014/01/19(日) 22:38:56.91 ID:1g5aveyU0
このスレのはなし最初から読んで見たいんだけど誰か貼ってくれない?
私が勇者になるだと?だけよんだ!
できれば最初全部はってくれるとありがたい!
762 :
名も無き被検体774号+:2014/01/19(日) 22:39:35.11 ID:1g5aveyU0
訂正最初から、全部
764 :
名も無き被検体774号+:2014/01/19(日) 23:11:44.73 ID:1g5aveyU0
>>763 すまん、一から全部読んでくる!
ババアさん頑張って!
カタカナでババアとかなんかアレやね
766 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 00:30:04.23 ID:7M7c5oXD0
ばばあはばばあだからばばあなんだよばばあ
767 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 00:55:41.95 ID:2toJdyevP
768 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 04:55:37.31 ID:N2Tm7yPj0
魔王「私が勇者になる……だと?」
からでいいよね、今の流れは
769 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 08:39:35.30 ID:nDq5XBuO0
770 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 09:03:43.77 ID:2toJdyevP
おさらい
お話のリンクは
>>17 プロローグ三部作
■勇者「拒否権はないんだな」
■魔王「ああ……世界は美しい」
■勇者「俺は……魔王を倒す!」
紫魔王の話
■魔王「私が勇者になる……だと?」
今の流れ
■勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
■勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
■魔王「真に美しい世界を望む為だ」(←イマココ
プロローグ三部作と、紫魔王の物語まで登場した
≪登場人物≫
第ゼロ世代
【炎魔王の時代】
魔王パーティ
炎魔王、后、鴉、狼、(あとだれか…?)
勇者パーティ
戦士、魔法使い、僧侶(側近)
第一世代
【紫魔王の時代】
魔王パーティ
紫魔王、姫、側近、使用人
勇者パーティ
勇者(魔王)、僧侶(后)、魔法使い(魔導将軍)、戦士(側近)
第二世代
【金髪金目魔王の時代】
魔王パーティ
金髪魔王、后、側近、魔導将軍、使用人
勇者パーティ
勇者(魔王)、魔法使い(后)、僧侶(癒し手)、戦士(側近)
第三世代
【黒髪金目魔王の時代】
黒神魔王、后、側近、癒し手、使用人
勇者パーティ
勇者(女魔王)、青年、魔道士(闇の手)
第四世代
女魔王、闇の手 (使用人は闇の手に知識を受け継ぎ引退)
勇者パーティ
勇者、青年、魔法使い
第五世代?
第四世代の勇者、魔法使いの子供は男の子と女の子の双子
平穏に暮らすも、魔導国の領主らによりとらわれ、一方は魔に、一方は光に転じた…?
771 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 09:05:56.44 ID:2toJdyevP
>>769 ありがとう!
それ実は規制とかれてたときにiPhoneから俺が書いたやつなんだけど、
思うところあって
>>770に新しくまとめてみたので、そちらの方よろしくお願いします
772 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 09:29:11.48 ID:niuENoiuP
おはよう!
諸事情あって仕事セーブすることになったから
暫く更新時間が増えそうです、が
その諸事情の所為で減るかもしれんwww
取りあえずお迎えまで用事の合間にちょこちょこと
773 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 09:54:27.72 ID:niuENoiuP
使用人「……側近、様」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……すまん。暫く……一人にしてくれ」
使用人「……はい。失礼します」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
使用人(……すすり泣く、声が聞こえる)
使用人(…… ……)ハァ
スタスタ……コンコン
后「……使用人ね。どうぞ」
使用人「はい」
カチャ
使用人「失礼いたしま……魔王様?」
使用人「……なんで床で寝てるんですか、この人」
后「放っておいてあげて……後でベッドを運ばせるわ」ハァ
使用人「え、ああ……はい……」
后「『……癒し手の気配が消えたわ。青年のも』」
使用人「『!』」
后「『行ってしまった……のね』」
使用人「……私の気配も解った、のですね」
后「ええ……不思議ね」
使用人「え?」
后「確かに、勇者を身籠もってから私の力は強くなってた」
后「……癒し手達が此処に帰って来た時も、気配を探れば」
后「見つけることができた……けど、今は」
使用人「……見つけようとせずとも、解る、のですね」
后「まあ……同じ城の中に居るから、だろうけどね」
使用人「……前后様もそうでした。不思議ではありませんよ」
使用人「ああ……いえ。違いますね。前例があるから、そう思うだけ……」
使用人「……なの、ですね」
后「……私も、完全な『魔』になってしまった、のかしら」
774 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 10:06:08.54 ID:niuENoiuP
使用人「……計る術はありませんね」
后「そうね……私、回復魔法が使えた訳じゃ無いし……まあ、良いわ」
后「……強大な力を感じたわ。癒し手……大丈夫、だった?」
使用人「私の緑の防護壁でお守りして……側近様が、転移石で」
使用人「……教会へ飛ばされました」
后「教会?」
使用人「はい……癒し手様が育たれた……場所と」
后「ああ……鍛冶師の村の近くの小屋、ね」
后「……そこまで、気配をたどれるかしら」ハァ
使用人「……相当、弱っておいでのようでした」
后「!」
使用人「……干渉されない方が、癒し手様の身は安全かもしれません」
后「そう……そうね……いえ、場所さえ解って居れば……」
使用人「…… ……」
后「側近は?」
使用人「……暫く、一人にして置いて欲しい、と」
后「…… ……」
使用人「ああ……それから、癒し手様が、これを」コロン
后「これ……癒し手の浄化の石?」
使用人「はい。勇者様に、と」
后「……嬉しいわ。けど……」
使用人「戻す力が……もう、無いのだそうです」
后「!」
使用人「……后様が仰る様に、場所さえ、解って居れば」
后「……そうね。無事で居てくれるのなら良い……」
后「そう……思わないといけない……のね」ハァ
后「……大丈夫。また後で会える……ッ」
使用人「…… ……」
后「信じてるわよ、癒し手……ッ」ポロポロポロ
775 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 10:15:09.74 ID:niuENoiuP
使用人「…… ……」
后「……魔王!」グイッ
魔王(すぅすぅ)
使用人「良く寝ていらっしゃいますね……お疲れなのでしょうけれど」
使用人「……床、寝にくいと思うんですけど」ハァ
后「ごめん、それ、起こして?」
使用人「分かりました……魔王様?」ユサユサ
魔王「あとごふん……」
使用人「魔王様!」ユサユサユサッ
勇者「ふぇ……おぎゃあああ!」
魔王「はい!?」
魔王「何、どうした! 産まれたの!?」ガバッ
后「起きろ」
魔王「……ああ、そうだ産まれてた」
使用人「…… ……」ハァ
后「しっかりしなさいよ、もう……」
后「……癒し手は、行ったわ」
魔王「え!?」
勇者「うわあああ、あぁああ!」
魔王「お、おう、勇者! どうした」ヨシヨシ
后「お腹すいたのね……はい、どうぞ」
勇者(ちゅっちゅ)
魔王「……そっか」ハァ
使用人「魔王様?」
魔王「俺達……喜ばないと行けないんだよな」
魔王「……癒し手が、此処に居られない、程に」
魔王「こいつは……勇者は、それだけ大きな希望なんだ」
后「…… ……」
魔王「……故に、俺は……俺の力は……」
776 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 10:52:55.64 ID:niuENoiuP
使用人「…… ……」
魔王「側近は?」
后「そっとしておいてあげなさい」
魔王「……そっか、そうだよな……悪い」
勇者「ばぶー」
魔王「お?ご機嫌だなぁ……腹一杯になったか?」
后「…… ……」
后(私も何れ……癒し手の様に)
后(……勇者を連れて、此処を離れないと行けない)
使用人「……では、私はそろそろ失礼致します」
后「ありがとう、使用人」
スタスタ、パタン
魔王「…… ……」
后「何へこんでるのよ」
魔王「そりゃ、お前…… ……解ってた、とは言えさ」
魔王「……見送りもしてやれない」
后「……貴方だけじゃないわよ」
魔王「うん……」
后「あ……寝ちゃった、わね」
勇者(すぅ)
魔王「おっぱい飲んで、寝て……それが仕事だもんな」ナデ
魔王「抱っこして良い?」
后「え、ええ……勿論」
魔王「……出来るときに、抱っこしとかないとな」
后「…… ……」
魔王「……お前も、何れ……行くんだろ?」
后「…… ……」
魔王「悲しむな。それだって解ってた筈だ」
后「……魔王」ポロポロ
魔王「泣くなよ、后」
魔王「……喜ばなければ行けないんだ。俺達」
后「……ッ」ギュッ
魔王「これで、終わるかもしれないんだ。この子で……否」
魔王「終わらせてくれる。そう……願えば叶うんだよ、后」
……
………
…………
777 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 10:54:47.03 ID:niuENoiuP
バタン!
少女「!」ビクッ
衛生師「…… ……」
少女「な、なんだ……ノックぐらい、してくれ」
スタスタ
衛生師「…… ……」ジィ
少女「…… ……?」
衛生師「正式に、決まった」
少女「な、何がだ?」
衛生師「…… ……」
少女「お、おい……衛生師?」
衛生師「……『王』に、もう……政を任せる事はできない」
少女「……今までも、代行していたのはお前だろう。今更……何を」
衛生師「それだよ」
少女「え?」
衛生師「…… ……僕が、『王』になる」
少女「!?」
衛生師「否、言葉が悪いな……影武者、と言えばいいのか」
少女「な……ッ !?」
衛生師「……今は、許可無く城に誰も……立ち入る事はできない」
衛生師「許可を出さなければ良いだけだ」
少女「……謀る気か!街の人達を……『世界』を!?」
衛生師「王は回復したんだ」
衛生師「……王子様が言っていただろう。『王』を絶やすことは出来ないんだ」
少女「し、しかし、あれは……!」
衛生師「盗賊様の遺言だ。だから……」
少女「……王であると言うだけで良いのならば」
少女「正式にお前が、就任すれば……!」
衛生師「……確かに」
衛生師「『血』に拘る訳じゃないだろうね。王子様も」
衛生師「……盗賊様、も」
少女「で、あれば……尚更だ!」
778 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:07:38.22 ID:niuENoiuP
少女「……王子様も、賛成されているのか?」
衛生師「彼は……何も知らない」
少女「!? な……ッ」
衛生師「そもそも、政から……王を遠ざけたのは」
衛生師「王子様と、前国王様だ」
衛生師「それに彼は……もう、引退した身だ」
少女「だからって……!」
衛生師「決定したことだ、少女」
少女「……何故、態々私にそれを知らせに来たんだ、衛生師」
少女「私こそこの国の政に何の関係も無い人間だ!」
少女「……城の中に軟禁されているだけの……ッ」
衛生師「…… ……」
少女「まともな精神状態じゃ無いと聞かされ、王にも長くあっていない」
少女「偶に訪ねてくる王子様か、お前ぐらいとしか話す事も無い!なのに、何故……!」
衛生師「……君は、王子様と話すのを楽しみにしていた様だからね」
少女「それでもだ! ……来られなくなったのならば、心配もするだろう」
少女「だが……!」
衛生師「まあ、確かに僕を問い詰めたりはしないだろう……君は」
衛生師「柳の様にしなやかに受け流し、何れは認め……否、諦めただろう」
少女「……解って居るのならば、尚更」
衛生師「一つ、聞くけど」
少女「え?」
衛生師「……君の位置づけは何?」
少女「は?」
衛生師「この城において、だ」
少女「…… ……」
衛生師「表向き……とかは置いておいて、だ」
衛生師「君は『王の婚約者』だろう?」
少女「今更何を! どれだけの時間が経っていると思っているんだ!」
少女「私がこの国に来てから……王が、あの状態になってから!」
衛生師「……王が言っていた事、覚えて無いの?」
少女「……さっきから、貴方は何が言いたいのだ!」
779 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:14:34.93 ID:niuENoiuP
衛生師「……君は何時も、素直に口にするから」
衛生師「僕も臆せず君に倣うけど……少女、ツキノモノは?」
少女「…… ……!?」
衛生師「どれだけ経つと思っている、って言葉、そっくり返す」
衛生師「……僕と、肌を重ねる関係になって?」
少女「!」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「それと。僕が『王の影武者』になる事が関係無いと思う?」
少女「で……ッ」
衛生師「でも、じゃ無いんだよ」
衛生師「『王の婚約者』が本当に身籠もっていると言う事になれば」
衛生師「表向き、『王』は健在だと思わせておく必要がある」
衛生師「……それに、もし『世継ぎ』が産まれるのであれば」
衛生師「それは……国に取って」
少女「……ッ 都合が良いと、言うのか」
衛生師「勿論だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕が正式に『王』になって君との間に『世継ぎ』を作る」
衛生師「……余程良い。それに、僕が王になるのであれば」
衛生師「どう考えたって、君を『伴侶』に選ぶ必要が無い」
少女「…… ……」
衛生師「そこに例え、『愛』があったとしても、だ」
少女「……許されない、と言いたいんだな」
衛生師「……当然だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕に『権力』に対する、私利私欲は無い。だが……この国のことは」
衛生師「大事に思ってる」
少女「…… ……」
衛生師「『血』に拘らないのであれば……」
少女「例え誰を謀っても、一見平和な……この国の存続を喜ぶと!?」
衛生師「……否定のしようが無いね」
780 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 11:16:28.02 ID:z32tTok6i
お城の中はドロッドロやな
781 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:23:50.34 ID:niuENoiuP
少女「……私は、魔導国の出身だぞ!?」
少女「『王』本人の希望であるのならば、良い! だが……」
少女「貴方が言うように、本来ならば……この状態であるのならば!」
少女「……否。腹に子が居る保証も無い!」
少女「こんな……ッ こんな茶番を演じる必要が何処にある!?」
衛生師「……盗賊様は、魔導国の出身だよ?」
少女「!」
衛生師「領主の血筋がどうとか。あんまり詳しいこと僕は知らないけど」
衛生師「…… ……議論の必要は無いよね」
少女「覆らない……と。言いたいのか」
衛生師「決定した、と言った筈だ。それに……」
衛生師「『人生は茶番の連続』…… ……盗賊様ご本人の言葉、だそうだ」
少女「…… ……」
衛生師「後で医師を連れてくる」
少女「……ッ い、いやだ!」
衛生師「少女」
少女「こんな……ッ こんな事、許される物か!」
衛生師「……諦めてくれ。『未来』の為だ」
少女「何が未来だ! こんな……ッ 偽りだらけの事実に、意味等……!」
衛生師「『美しい世界を望む為』……何れ、勇者が戻ってくる」
衛生師「国に目出度いことがあれば、それだけ……世界も勇気付けられる」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は君が好きだよ。王の寵姫とわかっていたけど」
衛生師「止められなかった。愛してると言ったのも嘘じゃ無い」
衛生師「……けど、何を捨てても守らなければ行けないのは」
衛生師「『王』の居るこの『国』と」
衛生師「……『王』が望んだ、『美しい世界だ』」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は『影武者』だからね」
少女「……ッ」
衛生師「…… ……」
スタスタ、パタン。ガチャン!
782 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:27:43.38 ID:niuENoiuP
少女(! 鍵をかけられた!?)
ドンドン!
少女「衛生師!」
衛生師「…… ……」
スタスタ…… ……
少女「衛生師! 開けろ!開けてくれ……ッ あけ……ッ」
ドンドン! ……ドン!
少女(…… ……私が、懐妊!? まさか……ッ)
少女(衛生師…… ……ッ)
少女(本当に……居る、として)ナデ
少女(何れ、『王』になるだと!? ……ッ 冗談じゃない!)
ドン!
少女(…… ……これが)
少女「これが、本当に王の望みだと思うのか! 衛生師!」
少女「これが……ッ 本当に美しい世界に繋がる未来だと言うのか!!」
……
………
…………
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「……なんだ」
魔導師「!」ビクッ
剣士「俺に何か用か?」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
783 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:40:11.95 ID:niuENoiuP
剣士「……用が無ければ、行くぞ」
魔導師「あ……ッ」
剣士「……出てこい。それで隠れているつもりか?」
魔導師「…… ……」
ガサ。スタスタ
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さん」
剣士「……なんだ」
魔導師「……魔石は、悪いものなんですか」
剣士「?」
魔導師「始まりの国の騎士様達が、この村の……聖職者様の魔石を」
魔導師「良くない物だと……」
剣士「……ああ。以前俺がこの国に来たときの事か」
剣士「お前は言っていたな。あれを壊さなければこんな事には、と」
魔導師「…… ……」
剣士「あれがあれば」
魔導師「え?」
剣士「……魔王が復活し、勇者が産まれ……」
魔導師「……勇者、様」
剣士「魔物が増え、力を増してきた……今この時に」
剣士「もっと最悪の事態になっていた可能性もあるだろう」
魔導師「……あんな物がなければ。騎士様達があれを壊さなければ」
魔導師「この風邪も、流行らなかったかもしれない」
剣士「…… ……」
魔導師「魔石なんて存在しなければ!」
魔導師「……両親は、そう言って、死んだんだ」
剣士「『もし』なんて言葉には……意味が無い」
魔導師「…… ……」
剣士「もし俺がこの世に……産まれ、なければ」
剣士「もし、魔王がいなければ。勇者が居なければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「お前が産まれていなければ」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「魔石は悪い物か、だったな」
魔導師「え……あ、はい」
784 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:48:09.57 ID:niuENoiuP
剣士「……聖職者の魔石。あれ自体は確かに……良くない物だ」
魔導師「!?」
剣士「だが、魔石そのものが悪いかどうか。それは俺には解らん」
魔導師「で、でも徳のある聖職者様……この村の、伝説の……」
剣士「俺は詳しくは知らん。だが」
剣士「……魔物を引き寄せ魅了する石。結果として村が守られていただけだ」
剣士「さっきも言った。魔物が力を増し、石に惹かれるだけに留まらなければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「それを『聖職者』が本当に作ったと思うか?」
魔導師「え…… ……」
剣士「……まあ、良い」フゥ
魔導師「……剣士さんも、僕が子供だから……」
剣士「子供に間違いは無いだろう……ああ」
魔導師「?」
剣士「……お前、い…… ……僧侶に、何か貰っただろう」
魔導師「え……あ、は、はい。ああ、そうですね」
魔導師「剣士さんは……僧侶様とお知り合いでしたね」ゴソゴソ
魔導師「……僧侶様は、魔除けの石だと……僕に、くれました」
剣士「……あいつの魔石か」フゥ
魔導師「? ……聞いてたんじゃ無いんですか?」
剣士「ああ……そうだな」
剣士(気配で解る、とは……言えんな。気をつけないと)
魔導師「…… ……落ち着くんです。身につけていると」
魔導師「癒されている気に、なります」
剣士「……それは、良くない物か?」
魔導師「! まさか!」
剣士「ならば、魔石そのものが悪い訳では無いと」
剣士「……お前は身をもって知っている、のだろう」
魔導師「……あ」
剣士「お前はまだ幼い。だが……」
剣士「……視野を広げる事は大切だ。物事を正しく……見る為に」
魔導師「正しく……?」
剣士「真実は一つでは……無いかも知れん」
剣士「……だが、目で見てしまった物を、否定するのは難しいだろう?」
785 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 11:58:50.74 ID:niuENoiuP
おひるごはーん
786 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 12:31:19.60 ID:niuENoiuP
魔導師「…… ……良く、わかりません」
剣士「……だろうな」
魔導師「あの!」
剣士「……まだ何かあるのか」
魔導師「魔王が復活するから、魔物が強くなっているのですか」
魔導師「でも……勇者、様も復活される、んですよね?」
剣士「僧侶からそう聞いている」
魔導師「僧侶様が……」
剣士「それが真実かどうか……信じる事はできる。疑うこともな」
魔導師「??」
剣士「……知りたいと思うのならば、己が目で確かめろ」
魔導師「僕、が」
剣士「魔王や勇者の事だけじゃない。何事も……だ」
魔導師「……自分、で? 自分の目で?」
剣士「…… ……」クルッ
魔導師「あ……」
スタスタ
魔導師(自分の目で、僕が……確かめる?)
魔導師(目で見たことは……信じないのが難しい?)
魔導師(……わかるような、わからないような)
魔導師(大人になったら、解る……のかな?)
魔導師(……魔石。僧侶様の)ギュッ
スタスタ
シスター「魔導師?」
魔導師「!」ビクッ
シスター「孤児院に来ないから心配するじゃないの」
魔導師「あ……ご、ごめんなさい」
シスター「ただでさえ物騒なんだから」ハァ
魔導師「……でも、剣士さんが来てから、村の中には魔物は……」
シスター「確かにね。入ってこなくはなったけど」
787 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:00:22.94 ID:niuENoiuP
シスター「でも……前と同じ。彼だって何時までもここに居る訳じゃ無いのよ」
シスター「……その間に、自衛の術を身につけないと」
魔導師「……うん」
シスター「さ、行きましょう。皆待ってるわよ」
魔導師「兄さんは?」
シスター「息子さんと一緒に見回りに行ったわ」
シスター「……貴方は、もう少し大きくなったらね」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方が、優れた氷の魔法の使い手なのは解ってるけど」
シスター「まだ、子供なんだから」
魔導師「……わかってるよ。皆に本を読んであげれば良いんだろう?」
シスター「相手をしてくれて助かるのよ? ……皆、不安なのは一緒なのよ」
シスター「戦うだけが、誰かを守る事じゃないの」
シスター「不安を取り除いてあげる為に、傍に居てあげるだけでも……」
魔導師「わかってる、ってば!」
スタスタ
シスター「あ ……もう」フゥ
シスター(仕方無いんでしょうけど……)
タタタ……
シスター「午後からは鍛冶場の片付け、手伝ってね!」
魔導師「え?」
シスター「お昼を食べたら子供達を寝かさないと」
魔導師「……解ったよ。やれば良いんだろ」ハァ
……
………
…………
788 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:10:06.15 ID:niuENoiuP
カチャ、パタン
魔王「……ん、后か?」
后「ええ……」プッ
魔王「な、何だよ」
后「背中に、勇者が乗ってる……」クスクス
魔王「……重いと思ったら、やっぱりか」ハァ
魔王「振り落とさなくて良かった……后、それより」
后「え?」
魔王「明かり着けてくれよ……よく寝てるなら起きないだろ?」
魔王「つか、こんな暗い中でよく見えるなお前」
后「…… ……」
魔王「后? ……ッ」ハッ
魔王「……俺の目が、見えてない、のか」
后「……目、開けて。魔王」
魔王「ん? ……ん」
后「…… ……」
魔王「何だよ」
后「……まだ、金色だな、と思って」
后「勇者、だっこするわ……起き上がれる?」
魔王「あ、ああ…… ……ッ」ズキン!
后「魔王!?」
魔王「……ッ」ゥ……
后「……痛むのね。使用人!使用人!」
魔王「い、い……后、だい…… ……ッ」
パタパタパタ……バタン!
使用人「后様、魔王様!?」
后「…… ……」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
使用人「! ……痛みますか、魔王様」
魔王「…… ……ッ」
789 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:16:01.86 ID:niuENoiuP
使用人「……側近様を呼んで参ります」
后「…… ……」
使用人「魔王様、少しお待ちを……后様」
后「……大丈夫よ。ちゃんと……覚悟はしてたわ」
使用人「……魔王様を別のお部屋へ移しましょう」
后「私達が移動すれば良いんじゃないの?」
使用人「……いえ。何れ、本当に動けなくなった時に」
使用人「ありったけの魔力をぶつけ、魔王様を押さえるには……此処では」
后「…… ……」
カチャ
側近「今のは何だ…… ……ッ 魔王!?」
使用人「側近様!」
側近「……大きな魔力を感じた。俺が感じるぐらいだ」
側近「これが……そう、なんだな」
后「…… ……」
使用人「側近様、魔王様を…… ……玉座の奥のお部屋へ」
側近「……俺達が、金の髪の魔王と対峙した部屋か」
使用人「……はい」
后「…… ……」
使用人「后様はお近づきになられませんよう」
后「え!?」
使用人「すぐに……『魔王』の闇が、『勇者』の光の残照を飲み込みます」
使用人「いくら、勇者様が……溢れんばかりの光を持って居られようと」
使用人「幼子です……ですから」
后「……解った、わ」
790 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:22:17.18 ID:niuENoiuP
側近「……良い、俺一人で行ける」
使用人「し、しかし……」
側近「他にやる事があるだろう?」チラ
后「!」
側近「…… ……時間が無い。后」
側近「魔王、ちょっと我慢しろよ」
魔王「……お、ぅ……ッ」
側近「ん、重いなお前……使用人、ドア開けてくれ」
使用人「は、はい! ……すぐ、行きますから」
カチャ
側近「良い。そっちを優先しろ」
スタスタ、ズルズル……
使用人「……后様」
后「……癒し手の石も、持ったわ。行く場所も解ってる」
使用人「……はい」
后「後は…… ……」
使用人「すぐに、光の剣をお持ちします」
后「…… ……」
パタパタ……
后「魔王……ッ」ギュ
勇者「あぅ」
后「あ、ご、御免ね……!?」
勇者「うー」
后(私は……この子を、育てなければ行けない……ッ)
后(この子、を……未来へと、送り出さなければ行けない……ッ)
791 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:26:39.09 ID:niuENoiuP
カチャ
使用人「……お待たせ致しました!」
后「使用人、ちょっとだけ勇者を預かってて頂戴」
使用人「え、あ……はい!?」
后「……忘れ物、したわ」
使用人「え、ええ……」
后「大丈夫よ。すぐに戻る……すぐ、行くわ」
后「……御免ね、勇者。ちょっとだけ待ってて」
パタパタ……
勇者「ぁうー」
使用人「良し、良し……」ナデ
使用人(魔王様……随分、早い気がする。でも)
使用人(……前も、こうだった筈だ)
使用人(何度……繰り返すのだろう。本当に……これで終わる、の?)
……
………
…………
カチャ
后「…… ……」
側近「后!?」
后「大丈夫。勇者は使用人が抱いてくれてる」
側近「……あ、ああ……どうした?」
后「時間が無いって言ったのは貴方よ、側近」
側近「……そう、か。そうだな……すまん」
后「……忘れ物、したの」
魔王「き、さき…… ……? どう、し……た」
后「魔王……行ってくる」
792 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:31:18.60 ID:niuENoiuP
魔王「……あ、ぁ ……そう、だな」
后「ねぇ……ペンダント、まだしてる?」
魔王「……わ、すれ ……てた」
魔王「おま……え、に。ゆ…… ……しゃ、に」
后「うん。頂戴……良いわよね?」
魔王「あ…… た、ま……え。だろ……」
魔王「……はず、し…… ……く、れ」
后「うん……」ポロポロ
側近「…… ……先に、戻るぞ」
后「良いのよ。話したい事もあるの。ちょっと待って」
側近「?」
后「……ありがとう、魔王。愛してるわ」チュ。チャリン
后「ちゃんと、勇者に渡すから。ね?」
魔王「……ん」
側近「…… ……」
后「じゃあ、行ってきます。泣いちゃ駄目よ?」
后「すぐ……たった16年よ。すぐに戻るんだから」
魔王「…… ……」
后「……行きましょう、側近」
側近「あ……ああ」
パタン
側近「……話、とは?」
后「……この子を産む前の日。妙な夢を見たわ」
側近「夢……?」
后「青年だろう……と思う。金の髪に蒼い瞳の男が」
后「……雨の中に伏して、息絶えた美しい女性を母さんと呼んでた」
側近「!?」
后「目を開けてくれ、と……泣いてた」
側近「な……ッ」
后「夢よ、側近……でも……ッ」
后「……伝えて、置くわ。どうするかは……貴方に任せる」
側近「…… ……」
793 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:37:09.69 ID:niuENoiuP
スタスタ、カチャ
使用人「后様……側近様、も」
后「ご免なさい、使用人……ありがとう」
側近「…… ……」
使用人「側近様……? お顔の色が……」
側近「……后が先だ」
后「……不思議よね。この子を産んでから、本当に力が沸いてくる様だわ」
后「…… ……側近、使用人。魔王を……お願いね」
使用人「……はい」
側近「后」
后「……また後で、よ、側近」
后「大丈夫。癒し手だって、そう願ってる筈!」
使用人「……?」
后「……勇者」ギュ
勇者「だぁ」
后「……行くわ」
シュゥン……ッ
側近「!」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、大丈夫ですか」
側近「后が見た、と言う夢……聞いたか?」
使用人「夢……?」
側近「ああ……大きくなった青年らしき男が、雨の中で……息絶える」
側近「……ッ 癒し手らしき女を見て、泣いている夢、だったか」
使用人「!?」
側近「……たかが、夢。されど…… ……」
使用人「…… ……」
794 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/20(月) 13:47:04.58 ID:niuENoiuP
おむかえー
いてらー
796 :
名も無き被検体774号+:2014/01/20(月) 23:03:38.92 ID:dI/3Wogr0
保守
今がんばって最初から読み始めた!
こんなに人少なかったっけ?
797 :
名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 00:04:33.96 ID:dI/3Wogr0
ババアさん楽しみにしてるからがんばって!
保守
798 :
名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 08:03:44.98 ID:esuEMZgci
ところでスコーンはもしかしてご懐妊かね?
799 :
名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:36:02.55 ID:k/AJcfja0
ほ
800 :
名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 22:20:48.99 ID:1yjbJkFC0
しゅ
801 :
名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 23:37:13.62 ID:k/AJcfja0
楽しみ
802 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 09:23:37.17 ID:ofgIcMWeP
おはよう!
ご懐妊ちゃうわwww
お迎えまでちょっとだけー
803 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 09:49:19.38 ID:ofgIcMWeP
使用人「……以前、人魚に見せられた夢は」
使用人「知っている筈なのに、初めての事の様だ、と仰ってましたね」
側近「ん? ……ああ」
側近「『繰り返される運命の輪』の中の『欠片』か」
使用人「え!?」
側近「な、なんだ」
使用人「……『欠片』」
側近「……?」
使用人「『欠片を探し出せ』」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王様の……お言葉です!」
側近「あ、ああ……」
使用人「…… ……」
側近「使用人?」
使用人「……『夢』……『欠片』……」ブツブツ
側近「……使用人」
使用人「しかし、剣士さんが……」ブツブツ
側近「……おい」
使用人「! ……あ、す、すみません」
側近「……悪いな、俺が相手では……」
使用人「ち、違います! ……意外と、深く理解しようとしない方が」
使用人「……『真実』が見えてくる物なのかもしれません」
側近「…… ……」
使用人「眉間に皺寄せないで下さい」
側近「……聞くだけしか役に立てんぞ」
使用人「甘い物は大量に用意させて頂きます」
側近「…… ……」ハァ
側近「……先に魔王の様子を見てくる」
使用人「わかりました」
側近「どうせ……暫く、二人きりだ」
使用人「違います。魔王様が居ます」
側近「……ああ、そうだな。すまん」
使用人「では、お茶の準備を致しましょう」
側近「……砂糖たっぷりの紅茶にしてくれ」
使用人「畏まりました」
スタスタ、スタスタ ……パタン
804 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 10:08:25.37 ID:ofgIcMWeP
……
………
…………
后(…… ……え、なあに、これ!?)
勇者(すぅすぅ)
后(勇者! ……居た)ホッ……ギュ!
后(光の剣も持ってる……でも……!?)
后(私……空に浮いてる!?)
后(前后様に引き寄せられた時は一瞬だった……何、これ……)
后「……!」
后(……声、出ない…… ……な、んなのよ……)ゾクッ
后(!?)バッ
后(始まりの城!? ……黒い……何、あの靄……!?)
后(癒し手が言っていたのは……これ!?)
后(……酷い……何……!? 憎悪……?)
后(……一体、何があったの……!?)グッ
后(身体が……引っ張られる!! 勇者!)ギュウ!
シュゥン!
后「キャッ……!」
后「……ッ ……あ、あ……」
勇者(すぅ)
后「…… ……」ギュ!
后(ここ、は……)キョロ
后(……街の外れ)スッ
后(空、真っ黒じゃないの……!)
后(これじゃ、まるで……最果ての地……)
后「……『顔色の悪い蒼空』」
后「…… ……」
后(行くしか無い……の!? でも……)
勇者(すー)
后「勇者……」
805 :
名も無き被検体774号+:2014/01/22(水) 10:24:25.41 ID:X7pJEW98P
むむむ…
806 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :2014/01/22(水) 10:41:50.51 ID:ofgIcMWeP
后「…… ……」
后(寝てる……けど、目を覚ましたら)
后(……この子の、瞳は目立つ。私のローブでくるんで……)
后「良し。苦しくないかな……」
スタスタ
后(……街の中は変わらない。人も……普通に見える、わね)
后(王子様は……お城かしら。否……)
后(……引退された、んだったわね……確か、街に家があるって行ってたっけ)
后(場所、ちゃんと聞いてくれば良かったかな……)キョロキョロ
后(人に聞いてみるか……否)
后(……あんまり目立つ事は……ん? 城の方が騒がしい……?)
后「あ!」
王子「どうしても駄目なのか!? 王は……!」
近衛兵「誰も通すな、とのお達しなのです、王子様……」
近衛兵「……申し訳ありません」
王子「お加減が悪い、のか」
近衛兵「……とにかく、お引き取り下さい」
タタタ……
后「騎士団長様!」
王子「!?」
近衛兵「ん?」
后「……王子様、ですね」
王子「…… ……魔法使い!?」
近衛兵「娘さん、旅の人かな……今、城は……」
王子「! 子供、を産んだ……のか……!?」
后「…… ……」
近衛兵「王子様?」
王子「……否、迷惑をかけて済まなかった」
王子「王に、お大事にと伝えてくれ」
近衛兵「はい……ありがとうございます」
807 :
1 ◆Vwu55VjHc4Yj :
后「……あ、あの?」
王子「こっちだ。話は後で……寝てる、んだな?」
后「はい……城には、入れないのですか?」
王子「雨が降りそうな空模様だ……行こう」
スタスタ
后「は、はい!」
スタスタ
カチャ、パタン……ガチャン!
王子「……勇者、だな」
后「……はい」スル
勇者(すぅ)
王子「! ……そっくり、だな」
后「これでも、女の子なんです」クス
王子「…… ……え!?」
后「髪の色は私ですね……瞳、は……」
王子「勇者の瞳は金の色……光に選ばれし運命の子……だったか」
后「…… ……」
王子「では……魔王は……もう?」
后「……はい」
王子「…… ……」
后「お城、入れないのですか?」
王子「……少し前から、許可の無い者の入場は禁止されていたんだ」
王子「俺は……一応、大丈夫だったんだが」
王子「数日前からは……誰も通すな、と」
后「……王様、どこか悪くされてるのですか?」
王子「……どこから、話して良い物か」ハァ
后「…… ……」
王子「お前は……勇者の保護を求めに来た、んだよな」
后「はい」
王子「……繰り返し、だな」
后「…… ……」