勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」

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1名も無き被検体774号+
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1375328067/

の続きです
2名も無き被検体774号+:2013/08/16(金) 23:31:01.35 ID:PwwHorVp0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
31 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:35:03.08 ID:+2nQ9S01P
『冗談じゃない!どうして、我らが……!』
『私達は優れた一族なのですよ!?それが、何故……!!』
『……愚かな人間共に解らせてやる必要があるな』
『では……とうとう……?』
『ああ、決起するぞ! ……王国に、反旗を翻す!』
『見せしめだ……勇者を擁護したあの国に!』
『この際、出来損ないでも構わん。数を集めろ……奴隷としては役に立つだろう』
『力の強い者同士、交配を繰り返すのだ』
『街を封鎖しろ……我が一族以外を放り出し、全国に散った仲間を呼び戻せ!』
『壁を築き、要塞となせ……許可無く、立ち入れぬ様に』
『時は満ちた……今こそ!』
『まずは、あの王だ……たかが人間』
『そうだ。魔物の居なくなった今、誰もが平和ボケしている』
『王を殺せ』
『我らが……この世界の覇者となる!』

紫の瞳の魔王「……どこで間違えたんだろうな」
魔王「あれは…… ……実際の歴史、なの……か?」
紫魔「青年から聞いたのだろう」
紫魔「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
41 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:42:45.05 ID:+2nQ9S01P
魔王(この光景は……夢でも見てるみたいだ。不鮮明)
魔王(……そりゃそう、だよな。『俺はこいつ』で『こいつは俺』)
魔王(しかも、『現実』では……)
魔王(黒い髪の勇者……俺の息子が、魔王を倒さんと……旅立った頃、の筈だ)
紫魔「……こうしてみると、お前はあの『青年』そっくりだな」
魔王「同じ顔して何言ってやがるんだよ」
紫魔「……そう、か。そうだな」
魔王「…… ……この後、どうなるんだ?」
紫魔「もう一度聞きたいのか?」
魔王「…… ……国王は暗殺されて、娘と息子は……連れて行かれた、んだよな」
紫魔「…… ……」
魔王「それで……近親姦、で……子供を、産む……」
紫魔「そうだ」
魔王「……でもさ、それって……あいつら、双子だろ?」
魔王「それに……何だっけな……あ、そうだ!」
魔王「『光と闇』だと言ってた!」
紫魔「……『光と闇の獣。汝の名は?』」
魔王「え?」
紫魔「……全てを見たいか」
魔王「…… ……?」
紫魔「ならば望むが良い『願えば叶う』」
魔王「あ……おい!」
魔王(何だ、眩暈……ッ)
紫魔「『選択を誤るな』」
魔王(おい、紫の瞳の魔王……! ……ッ)
魔王(また、だ。また……声が、出ない……!)

……
………
…………
51 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:52:59.45 ID:+2nQ9S01P
勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」
魔法使い「……」クスクス
戦士「……」ムス
勇者「え、ええっと……取りあえず、俺から……で良いかな?」
勇者「その……勇者ってのは、世界に一人、しか居ないらしいんだ」
戦士「そうなのか?」
僧侶「……それは、『光』と言う珍しい属性だから……そう、言われていると」
僧侶「そういう事……ですか?」
魔法使い「確かに珍しいけれど……」
勇者「俺も母さんに聞いただけだから解らない、けど」
勇者「……嘘を吐く様な人では、無いよ」
僧侶「あ……気を悪くなさったならご免なさい!そういう意味では……!」
戦士「嘘を吐く理由も無いだろう、そんな物。誰も疑っては居ない」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(『珍しい属性』か)
魔法使い(遠い昔……家に居たあの紫の瞳の人……)
魔法使い(良く考えて見れば、誰だったんだろう)
勇者「あ……!俺こそ御免……別にむっとした訳じゃ無いよ」
勇者「母さんははっきりと言い切っていた、からさ」
勇者「確かに、俺も聞いた事が無い……けど」
勇者「……俺は、母さん以外の人とは、会う機会が殆ど無かったから」
戦士「…… ……」
戦士(親父は……勇者様と母君様に何度か会いに行っている)
戦士(……勇者様とは、直接会っていない、のだろうか?)
戦士(しっかりと聞いておけば良かったな。否……これで良かった、のか)
61 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:57:35.56 ID:+2nQ9S01P
僧侶(私が……昔感じた、輝かしい『光の誕生』は確かに……この方)
僧侶(……勇者様の物。だけど……いいえ、確かに)
僧侶(『他』に『特別』等感じたことは無い……!)
僧侶(……で、あれば確かに一人、なのだろう。嘘が無いと証明できる)
僧侶(でも……そんな事、口には出せない……!)
勇者「……えっと、母が言う、には」
勇者「俺の父も……勇者だった、と言うんだ」
戦士「何……!?」
魔法使い「貴方……が、前勇者様の……子供!?」
勇者「……旅立つ前に、これを母に渡された」カチャ
僧侶「……!こ、れ……は!」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「勇者様……あの。見せて頂いても?」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
僧侶(……ッ 微かに、微かに、だけど……!)
僧侶(光を感じる。刀身に光が宿ってる……!)
戦士「……どうした?」
僧侶「あ……ええと……」
僧侶(どうしよう……何処まで、話して……良い、んだろう……)
魔法使い「思う事があるなら言っちゃいなさいよ」
魔法使い「私達、仲間なんでしょう?」
71 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:06:01.30 ID:+2nQ9S01P
僧侶(仲間……ッ)グッ
僧侶「……この剣からは、光を……感じます」
僧侶「勇者様から感じるのと同じ……光」
勇者「俺と……同じ?」
僧侶「はい。刀身は……随分、ぼろぼろですが……確かに」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無い……わよね?」
戦士「俺にも見せて貰えるか…… ……そう、だな」
戦士「……傷付いて、随分経っている様に見える……が」
勇者「『貴方のお父様は、これで魔王を倒したの』……と」
勇者「母さんは言ってた。だから……その時に折れてしまったのだろうと」
勇者「思ってたんだが……」
魔法使い「……でも、勇者様。まさか……この剣一本で魔王城まで行くつもりなの?」
勇者「あ、いや……騎士団長様から貰った剣があるんだ」
戦士「!」
勇者「……これ、何だけど。当分はこれで良いかなと思っている」シャキン
戦士(……王国の剣の印が無い、が、これも古い物だ)
戦士(親父が昔……使っていた物、か?)
勇者「俺は……ここ一年ぐらいだけど、騎士団長様に剣を習った」
勇者「だから……手にもなじんでる、しね」
勇者「……それより、僧侶」
僧侶「は、はい!」
勇者「……その、さっきから言ってる『感じる』とか、さ」
勇者「そういうの……解る、の?」
81 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:17:15.50 ID:6WORrKgWP
僧侶「……え、ええ……まあ」
僧侶「でも、解る……と言うより、本当に『感じる』だけなんです」
僧侶「何となく……です。本当に」
勇者「ふうん……?聖職者、って凄いんだね」
魔法使い「ねぇ、勇者様と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど」
戦士「俺にはさっぱりだ」
勇者「俺は……初期の回復魔法ぐらいしか使えないし」
勇者「丁度話そうと思ってたけど……『光の加護』って言う割にさ」
勇者「『光の魔法』ってのは……使えないんだ」
僧侶「そう……なのですか!?」
勇者「あー……がっかりした、よね?」
僧侶「え、いえそんな!?」
魔法使い「意地の悪い言い方しないの、勇者様」
魔法使い(……とは言え。私……どこかでほっとしてる)
魔法使い(否……それより……この子)
魔法使い(この子の……『感じる力』……って、何!?)
魔法使い(……それこそ、聞いた事なんか無い……!)
勇者「……御免」
僧侶「…… ……その、すみません」
僧侶「そんなにも……身の内から光を溢れさせていらっしゃるのに」
僧侶「ちょっと……意外、だっただけ、です」
勇者「……母さんも、何れ使える様になるって言ってたんだけどね」
魔法使い「……身の内から、って?」
戦士「その話は後にしよう。さきに自己紹介を済ませてしまわないか」
戦士「……話があちこち行くと、混乱する」
91 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:24:07.75 ID:6WORrKgWP
勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもある」
戦士「……形見?」
勇者「『世界に一人しか存在できない』んだったら、そういう事だろう?」
戦士「……すまん」
勇者「それこそ気にするな」
勇者「……俺達が、倒せば良いんだ。今度こそ」
勇者「……俺は『勇者』ってだけで、まだまだ弱い」
勇者「七光りに頼ってばかり……じゃな。だから……頼りにしてるよ?皆」
戦士(どちらにせよ、この『光輝く剣』がこのままでは……この街近くの)
戦士(魔物すら倒せまい……)
戦士(やはり……守ってやらねば、なるまい)
戦士(俺も……強くならねば……!)
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「……では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。実戦経験は……無いに等しい」
戦士「まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
魔法使い「……そうなの?」
戦士「俺程度の奴など五万と居るのはわかりきっているだろう」
戦士「……闘技大会を見て、思った。正直、絶望にも近かった」
魔法使い「…… ……」ビクッ
僧侶「…… ……?」
101 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:30:32.45 ID:6WORrKgWP
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ」
戦士「…… ……父から譲り受けた鋼の剣だ」シャキン
戦士「……俺も、当分、新調しなくても大丈夫だろうと思う」
勇者「……王国の剣の紋章!」
戦士「……父が……」
僧侶「この国の騎士様でいらっしゃるのですか?でも……」
僧侶「譲り受けた、と言う事は……貴方も、騎士様……?」
戦士「……否。俺は……勇者様に着いていきたいと」
戦士「何となく、だ。本当に何となくだが、幼い頃から思っていた」
戦士「……それを知って知らず、か。父は、俺の入団を認めなかったんだ」
勇者「え?騎士だと……駄目、なのか?」
戦士「否……そうじゃない。『俺の轍を踏む可能性が高い』と」
僧侶「お父様の……?」
戦士「…… ……俺の父は、騎士団長だ」
魔法使い「!」
魔法使い(思い出した……! 私が、闘技大会に出場した時)
魔法使い(……手当を受けろと、話しかけてきた男)
魔法使い(確かに、『父が騎士団長だ』と言っていた……!)
勇者「騎士団長様の、息子!?戦士が!?」
戦士「……ああ」チラ
魔法使い「……!」
戦士「お前は忘れたかもしれないが……俺は、覚えている」
戦士「……試合も見ていた。結果は、残念だったが……」
魔法使い「…… ……恥ずかしい所、見せちゃった、わね」
僧侶「え!?」
111 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:36:31.82 ID:6WORrKgWP
魔法使い「……自己紹介ついでにその辺も話すわ」ハァ
魔法使い(……覚えて、等。居て欲しくなかった)
魔法使い(否。駄目よ、魔法使い!自信……持たなくちゃ……!)
魔法使い「……私の両親は…… ……」
魔法使い「魔導の街の、領主の血筋よ」
僧侶「!?」
僧侶(魔導の街……あの、街の人達は……)
僧侶(……しかも。領主の血筋……でも、この人……魔法使いさん、は……)
魔法使い「…… ……父と母と加護は違うけれどね」
勇者「ん?加護って……遺伝、とかじゃ無いのか?」
魔法使い「その辺は後にしましょう。長くなるわ」
魔法使い(……悪意なんて無いのは解ってる……けれど)
魔法使い(…… ……)ハァ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……ご免なさい。ええと。加護は違うけれど」
魔法使い「……私の師でもあるわ」
魔法使い「家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
121 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:42:52.04 ID:6WORrKgWP
魔法使い「加護とかの話は後にして……さ、次どうぞ?」
僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは……様々な教会に遣えていました」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……弓!?」
僧侶「え、あ、はい……」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……これ、です」ス……
勇者「随分と細いな……ちょっと失礼……うわ、軽ッ」
僧侶「これは『エルフの弓』です」
魔法使い「エルフ……の、弓?」
僧侶「はい……あの、私……孤児、なんです」
僧侶「……拾って、育てて下さった神父様のお話によると」
僧侶「…… ……」
僧侶(どこまで……いいえ、流石に……言えない……!)
僧侶(でも……!)
僧侶「……母、であろう方が残してくれたもの、と」
魔法使い「貴女も……形見、だと言う、のね」グッ
僧侶「……そう、ですね。あの……?」
魔法使い「いえ……その、何だか」
魔法使い「話しにくいこと、話させた様で……ご免なさい」
魔法使い(……ッ 嫉妬、じゃない!これは嫉妬なんかじゃ無い!)
魔法使い(私、この子に、妬いてなんか……ッ)グッ
勇者「…… ……」
僧侶「だから……大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
131 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:58:22.19 ID:6WORrKgWP
僧侶「あの。それより……一つ、お聞きしても宜しいでしょうか」
勇者「え……俺に?」
僧侶「あ……はい。その……勇者様の、その……『光の剣』」
僧侶「で、宜しいでしょうか……それ」
僧侶「……修理、されない、のですか」
戦士「俺から……話そう。知っていると思うが……」
魔法使い「……鍛冶師様、よね」
戦士「……ああ」
勇者「騎士団長のお父さん……だよな」
戦士「そうだ。お爺様が亡くなって……この国の騎士達は」
戦士「……その、光の剣の修理に使ったという鉱石の取れる洞窟から」
戦士「軍を引き上げた。鍛冶を研究していた部隊も……解散はしていないが……」
魔法使い「実質それに等しい?」
戦士「……俺も、聞いただけだけどな」
戦士「親父は……あまり詳しくは教えてくれなかったし」
僧侶「鍛冶師様は……確か、鍛冶師の村の出身、でしたよね」
魔法使い「詳しいわね」
僧侶「私を育てて下さった神父様の家が、鍛冶師の村のすぐ近くだったのです」
僧侶「……お若い頃は、よく鍛冶師の村の教会まで行ってらしたのですが」
僧侶「足を悪くされてからは……」
戦士「…… ……」
僧侶「ですが、色々、お話し下さいました。ですから……」
僧侶「盗賊様……この国の初代国王様と、その旦那様である鍛冶師様のお話は」
僧侶「……少しだけ、ですが知っています」
魔法使い「そうなんだ……」
僧侶「ええ。それに…… ……ッ」ハッ
魔法使い「ん?」
僧侶(……港街の教会に居たことは、言わない方が良い)
僧侶(時間の説明は……出来ない……!)
141 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:10:21.51 ID:6WORrKgWP
僧侶「……いえ。此処まで旅する間に、色々聞きましたし」
戦士「鉱石やら洞窟やら、詳しいことは解らん……が」
戦士「魔法剣、とやらの扱いは酷く難しいのだと聞いた事がある」
戦士「……失われて行く技術なのだと、お爺様は寂しそうに話していらっしゃった……と」
魔法使い「そう……魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いらしいわ」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できない、と」
魔法使い「……昔、魔導の街の図書館で読んだわ」
魔法使い(懐かしいわね。メイドの目を盗んで……)
魔法使い(……加護の勉強をする振りをして、読んだ本に書いてあった)
魔法使い(私に……優れた加護があると錯覚してから)
魔法使い(……手のひらを返した様に、信用を置いてくれたあの、女)
魔法使い(…… ……そうだわ。私、あの紫の瞳の男性に助けて貰ったんだ)
魔法使い(…… ……何となく、勇者様に似てた気が……する)ジィ
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「あ、ご免なさい……!」
勇者「何だよ、人の顔じっと見て……」
魔法使い「いえ……は、話を戻しましょ!」
勇者「?」
魔法使い「ええと、そうね……魔法剣ね!」
勇者「そもそも魔法剣って……何なんだ?」
僧侶「一般的には……剣に魔法を宿らせた物、ですよね?」
戦士「……だと思う、が」
151 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:19:09.46 ID:6WORrKgWP
魔法使い「人……否、生きとし生けるもの全ては加護を持つ、って言うのは」
魔法使い「知っている……わよね?」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
魔法使い「私の紅い瞳で連想する物は何? ……僧侶の蒼、戦士の緑……そして、勇者様の金」
勇者「……炎。水? ……ええと、緑。それから……光、か」
僧侶「そうです。100%見た目通りでは無いとも言われていますが……」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「稀に居るそうよ。私は会ったこと無いけれど……」
勇者「『絶対』は無い、って奴か」
勇者「……母さんが良く、言ってたな」
魔法使い「そう……100%瞳の色で判断できるわけじゃ無い」
魔法使い「でも……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「……はい。『感じ』ます」
魔法使い(て、事は……彼女には、ばれている、のね……)
魔法使い「……瞳の色だけは、変えられないとも言うのよ」
勇者「主に加護を表すから、か」
魔法使い「でしょうね……髪や肌の色は変えられても、ね」
魔法使い「……偽れないのね。人間は」ハァ
勇者(さっきから……時々、表情が曇る)
勇者(…… ……誰でも、秘密にしたいことの一つや二つ、あるよな)
勇者(いくら『仲間』だとは、言え……しかも、俺達は出会ったばかり)
勇者(知り合ったばかり、だ)
勇者(しかし…… ……このままで……良い、んだろうか)
勇者(だからって……食い下がって聞き出すのも……違う、よな)フゥ
161 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:21:46.59 ID:6WORrKgWP
無事にスレも立てられた事だし、今日はこの辺でお休み!
また明日、お出かけするので時間があれば!
17名も無き被検体774号+:2013/08/17(土) 01:22:33.71 ID:Tx+ThSFei
まってたよBBA無理しないでね
181 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 10:01:07.73 ID:8SEL+NTvP
おはよう!
また電車でかなー
19名も無き被検体774号+:2013/08/18(日) 10:57:46.23 ID:8SEL+NTvP
僧侶「魔法剣が、刀身に魔法の力を宿したものであるのなら」
僧侶「……その、勇者様の光の剣は……」
僧侶「…… ……」
戦士「……どうした?」
僧侶「いえ……先程見せて頂いた時に、確かに剣からも光の力を感じました」
僧侶「……それも、勇者様から感じるものと、全く同じ力、を」
戦士「? ……勇者様の剣なのだから、別におかしく無いだろう?」
魔法使い「……形見、何でしょう?」
勇者「え?あ、ああ……」
魔法使い「それに……実際に修理されたのは鍛治師様……なのよね?」
戦士「??」
僧侶「勇者様のお父様も『勇者』でいらっしゃったのですから」
僧侶「光を感じるのは……おかしく無いんです。鍛治師様の技術で」
僧侶「『勇者の光』を剣に注いだとすれば」
戦士「だから……」
魔法使い「確かに、同じなの?」
201@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 11:11:26.82 ID:8SEL+NTvP
勇者「……父さんの力を感じないとおかしい、て事?」
僧侶「はい。親子で、同じ『勇者』と言えど……別の人間でしょう?」
僧侶「全く……同じ、と言う事は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「……理解してる?」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者「もう糖分消費したのかよ……」
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「……疑う訳では無いけど」
僧侶「いえ。言いたい事はわかります。勘違いじゃ無い……と、確かな事は言えません」
魔法使い「そもそも、どうして金の髪の勇者様の時に修理が必要だったのかしら」
勇者「あ……そう、だよな……」
戦士「元々が古い物なのかもしれん。修理したが魔王との激戦には耐えられず……」
僧侶「でも……困りましたね」
僧侶「もし、魔王を倒すのに、光の剣が必要だとするのなら」
勇者「そう……だな」
勇者「……これじゃ、な」ハァ
211@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 22:47:49.12 ID:8SEL+NTvP
やっと仕事おわた!
帰ってかけたら!
221 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 23:42:14.55 ID:8SEL+NTvP
魔法使い「この王国の軍、って……確か、引き上げた、のよね?その洞窟から」
戦士「……と、聞いている」
僧侶「遠い、のですか?」
戦士「船があれば行けるだろうが……」
勇者「……この剣でしか、魔王が倒せないなら」
勇者「行く必要はあるだろう。だけど……」
魔法使い「『誰が直すのか』よね?」
勇者「うん。 ……鍛冶師様はもう……」
戦士「……お爺様の研究チームも、だな」
僧侶「取りあえず、この大陸を出ましょう?」
僧侶「……頼れば、勿論……船ぐらい、貸して頂けるでしょう。でも」
僧侶「もし、本当に必要なのなら」
僧侶「……自力で、得る方が」
魔法使い「そう、よね……」
勇者「……うん」
戦士「鍛冶師の村へ行けば……有力な手がかりがあるかもしれん」
戦士「お爺様の出身の地だ」
魔法使い「そうね。なら……魔導の街へも寄って見ましょう?」
魔法使い「……きっと、力を貸してくれるわ」
勇者「ああ、そうか。そうだよな、魔法使いは……」
魔法使い「……ええ」
僧侶「では、まずは船着き場へ行かないと行けませんね」
僧侶「この街へ来る途中、小さな街……村?がありました」
戦士「新しく出来たという街だな」
僧侶「はい。まずはそこを目指しましょう」
魔法使い「そうね……ゆっくり、進みましょう」
魔法使い「時間、掛かっても……じっくり経験を積んだ方が良いわよね」
戦士「……決まったな」
勇者「良し。じゃあ、まずはこの大陸の新しい街とやらを目指そう」
23名も無き被検体774号+:2013/08/19(月) 01:42:25.11 ID:iZMNLMC8i
BBA幼女といっしょに寝ちゃったかお疲れ
241 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/19(月) 13:31:27.21 ID:jlyi7of8P
おはよう!
今日は回線工事が二時からあるらしいorz

夕方これたらー
251@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/19(月) 22:43:00.70 ID:jlyi7of8P
何か工事入ってからPCが繋がりませんよ?
困ったのぅ( ゚д゚)
26名も無き被検体774号+:2013/08/19(月) 22:45:19.30 ID:EJUUGTHq0
線刺さってる?
271 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 09:48:31.76 ID:XMvQehRJP
おはよう!何とか復活しました!
281@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 11:06:42.42 ID:XMvQehRJP
……
………
…………

剣士(……勇者達は街を出たか)
剣士(俺が選ばれ無かった以上……もうこの街に用事は無いが……)

グイッ

剣士(!?)
剣士「……ッ 誰だ……ッ」
母親「シッ……私よ」
剣士「……お前……ッ」
291@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 11:18:31.25 ID:XMvQehRJP
母親「……残念だったわね」
剣士「そう思ってる様には見えんがな」
母親「二人してフードすっぽり被ってれば表情なんかわからないでしょ」
剣士「……声だ」
母親「フン……」
剣士「…… ……何の用だ」
母親「行く当ては?」
剣士「お前に……何の関係がある」
母親「忘れたとは言わせないわよ?」
母親「……お父様の書類が無ければ、勇者との対面も果たせなかったでしょ」
母親「結果、連れて行って貰えなかったとしてもね」
30名も無き被検体774号+:2013/08/20(火) 17:48:57.81 ID:4vamoo2+0
okan
311 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:00:07.95 ID:XMvQehRJP
剣士「…… ……」
母親「……本当に歳を取らないのね」
剣士「……それこそ、フードを被っていて何が解る」
母親「知らないの?手や首にこそ……『人』って言うのは年齢が出るのよ」
剣士「…… ……」
母親「それじゃあ、困るでしょう?」
母親「……それに、勇者は必ず…… 『うちの街』に来るわ」
剣士「…… ……」
母親「貴方は否応にも目立つ。登録所では勇者が居たから霞んだだけだって」
母親「……解って居るんでしょう」
剣士「まるで見ていた様な口ぶりだな」
母親「『見ていた』……のよ。私では無いけれどね」
剣士(偵察……か)ハァ
母親「あの子は試合が終わっても帰って来なかった」
母親「……負けたから帰りにくかったんでしょうね」
母親「でも、きっちりと勇者の仲間になった。選ばれた」
剣士「だからと言って、何故『帰ってくる』等と断言できる」
母親「……此処では話せないわ」
剣士「…… ……そんな無茶な話があるか」
母親「でもこれは『事実』」
剣士「…… ……」
母親「誰も監禁しようなんて気は無いわ」
母親「……万が一、違えば出て行けば良いだけでしょう?」
321 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:07:27.06 ID:WJHyl8KsP
剣士「……『恩もある』と続けたいのか」
母親「そうね。貴方は借りは返すと約束した」
母親「……誰も、取って食いやしないから安心しなさいよ」
剣士「…… ……」
母親「続きは船でね。残念ながら、特別便は用意できなかったけれど」
剣士「……不要だ、そんな物」
母親「返事と受け取るわよ……半刻後。待ち合わせは甲板の上」スタスタ
剣士「…… ……」
剣士(……手や、首、な。成る程)
剣士(老けたのはあの女と……恐らく、伴侶の男や、メイドも)
剣士(そして領主も)
剣士(…… ……変わらないのは、俺だけか)ハァ
剣士(半刻後…… ……魔導の街、か)

スタスタ

魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(何を話してた、か迄は聞き取れなかったな)
魔導将軍(そんな事したら多分、向こうにも……ばれちゃう)
魔導将軍(……何処に行くのか、もう少し……追ってみる、かな)
魔導将軍(…… ……魔王に。勇者に、そっくりな紫の瞳の男)
魔導将軍(…… ……彼が、特異点?)
魔導将軍(でも、エルフの血を引く娘……あっちも気になるんだけど……)
魔導将軍(あっちは、そのうち会える……わね)
魔導将軍(……全く。后みたいに器用な真似、出来ないっての!)ハァ
331 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:33:32.79 ID:WJHyl8KsP
……
………
…………

勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる……んだよな?」
戦士「ああ。森の途中に小高い丘がある。その付近に街が出来ている……筈だ」
僧侶「そうです……戦士さん、行かれた事は……無い、のですか?」
戦士「俺は街から出ることは無かったからな」
戦士「幼い頃に連れて行かれた事があるかどうか……までは、覚えて居ない」
魔法使い「不思議な場所、よね」
僧侶「え?」
魔法使い「始まりの街に来る時にも通ったけど……」
魔法使い「……随分、空気が澄んでいて、心地良かったわ」
僧侶「……お墓、があるんですよね、確か」
勇者「墓?」
僧侶「ええ……その。聞いた話、ですけど」
僧侶「……『エルフの加護』が、どう、とか」
魔法使い「…… ……エルフ?」
僧侶「はい……あの。詳しい事は……解りません、けど」
戦士「お祖母様の知人、とか言う……エルフが眠っているらしい」
勇者「そうなのか?」
戦士「酔っ払って帰って来た親父が言ってたに過ぎん、がな」
戦士「……『エルフの加護』とやらで浄化された美しい場所だと」
僧侶「…… ……」
戦士「素面の時に訪ねた事もあったんだが、詳しい話は知らない、んだそうだ」
戦士「…… ……ただ、二つ。墓があるのだ、と」
僧侶「二つ…… ……」
僧侶(多分……『娼婦様』)
僧侶(私も、詳しくは聞いていないけれど……)
僧侶(あの教会にあった美しい女性の小さな、モニュメント)
僧侶(……隻腕の祈り女の)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「あ、いえ……」ハッ
僧侶「……エルフ、と言うのは、それ程……特別な物、なのでしょうか、ね」
34名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 03:05:58.23 ID:YJtC7+Ij0
BBA手うp
35名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 12:20:00.03 ID:K6vMAdf+i
B.B.A.
ま、だ、??
361@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 12:22:59.03 ID:WJHyl8KsP
おはよう!
今から出勤!
電車で!
371@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 12:59:56.15 ID:WJHyl8KsP
勇者「俺は……名前、てか」
勇者「存在してる、て位しか知らないけど……」
戦士「俺も似た様なもんだ」
僧侶「……」
勇者「僧侶と魔法使いは、街には行った事がある、んだよな?」
魔法使い「通過した、に等しいけどね」
僧侶「私も少し滞在しただけです」
戦士「そこで一度宿を取る予定で良いだろう。港まで辿り着けるだろうとは」
戦士「思う、が……」
勇者「無理する必要は無いし、出来もしないだろう」
381 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:14:17.74 ID:WJHyl8KsP
ただいま!
39名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 22:20:39.08 ID:kgdIaRl4P
おかえり!お疲れ様!
401 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:35:02.44 ID:WJHyl8KsP
戦士「……だな。こうして立ち止まって居ても仕方あるまい。行こうか」
僧侶「あ、はい……!」
僧侶「それにしても……いつ見ても。美しい流れですね」
魔法使い「こうやってると……一見平和に見える、けどね」
戦士「……油断するなよ」
魔法使い「大丈夫……ああ、僧侶! そんなにのぞき込むと危な……ッ」
僧侶「大丈夫ですよ……キャッ」

バッシャーン!

勇者「僧侶!」
僧侶「あ、ああ……吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくな……ッ ……!?」

ズズズ……
ズルズルズル……

魔法使い「!! 僧侶、後ろ!!」

ギャアアアアアアア!

僧侶「……ッ」バッ
僧侶(しまった、近い……これじゃ、弓が……ッ)
魔法使い「頭下げて! ……ッ 炎の手よ、その拳で焼き尽くせ!」
戦士「僧侶、動くな……ッ」
411 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:44:33.02 ID:WJHyl8KsP
僧侶「!」ギュッ
勇者「馬鹿、目を閉じるな……!」

ギャア……ッ ギャウゥ……ッ

魔法使い「……大して、効いてない……ッ !?」
戦士「糞……ッ 勇者、僧侶を引っ張り上げろ!」タタタ……ッ
勇者「あ、ああ……ッ 僧侶!」

剣士「動くな! ……ッ 雷よ!」

ピシャアァン!
ギャアアアアアアアアアアアアア!

……バシャアアアアアン!

僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「誰だ!?」
魔法使い(雷の魔法!?)
勇者「と、とにかく掴まれ!」グッ
僧侶「あ、あぁ……すみません……」クシュンッ
魔法使い(…… ……否。それより、今の……雷は……!?)
剣士「…… ……」スタッ
戦士(木の上から……!?)
勇者「あ!」
剣士「…… ……」
勇者(……登録所に居た、男……!?)
421 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:54:12.48 ID:WJHyl8KsP
勇者(間違い無い……!闇色の髪に、紫の瞳!)
勇者(……俺に、そっくりな……男……)
魔法使い(いくら……水棲の魔物、炎が聞きにくいのだろうとは言え)
魔法使い(……地面を伝って、痺れが伝わる。それに、紫の瞳……!)
魔法使い(まさか……彼!? 否……ッ まさか!)
僧侶(……紫、の……瞳……ッ 見た事無い!)
僧侶(それに……この、妙に……苦しい様な、悲しい様な、切ない様な)
僧侶(……否。歓喜にも似てる……何、これ……!これ、まるで……!)
戦士(勇者様にそっくりじゃ無いか……!)
戦士(……一撃、だった。一撃で……それに……)
戦士(何故、木の上……など、に。まさか……つけていた!?何者だ!?)
剣士「…… ……無事、か」
勇者「あ……ありがとう……御座いました」
剣士(何をしていたんだか……まだこんな所に居るとは)
剣士(……長居はできんと咄嗟に身を隠し、別の道を行こうと思ったが)
剣士(……まさか、捨て置いていく訳にも……否、しかし……)
剣士「悪いが急ぐ。ここら辺は水棲の魔物が多い」
剣士「……港を目指すなら、森を行け」クルッ
魔法使い「ま、待って!同じ方向に行くのなら……!」
勇者「魔法使い!」
魔法使い「!」ビクッ
勇者「……貴方、登録所に居た人ですよね?」
剣士「……俺は『共に行く者』では無い」
剣士「選んだのはお前だ、勇者様……自信を持て」

スタスタ

剣士(……余りにも未熟だ。だが……)
剣士(彼らは勇者に、運命に選ばれた者)
剣士(…… ……助けの手を差し伸べるべきでは、無いのだろう)

……
………
…………
43名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 23:02:52.08 ID:tf5cafLrP
話が・・・若干ずれてきているな・・・
441 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:04:40.10 ID:WJHyl8KsP
母親「随分遅かったわね。来ないのかと思ったわ」
剣士「……半刻、と言うのが短すぎやしないか」
母親「私はたどり着いているわ」
剣士「…… ……」
母親「部屋は二部屋。同じが良かった?」
剣士「……話の続きを」
母親「……フン」
剣士(まさか勇者達に会ったとは言えまい)
剣士(しかし……大丈夫なのか?俺の心配する事では無い……のだろうが)
母親「そんなに勇者が気になるの?」
剣士「何?」
母親「心ここにあらず、ね」
剣士「……話の続きを、と言った筈だ」
母親「……ッ まあ、良いわ」フゥ
母親「『何故魔導の街に来ると言い切れるか』ね」
剣士「…… ……」
母親「魔法使いが居るから、よ」
剣士「あの娘か……逆とは考えんのか」
母親「逆?寄りつかない、と言いたいの?」
母親「あはは! ……あり得ないわね。あの子はずっと、私達の顔色を伺って育ってきた」
母親「『今度こそ褒めて貰えるはず、喜んでくれるはず』って」
母親「思っているに決まっているわ」
剣士「…… ……」ハァ
母親「言った筈よ。違えば貴方は何処へでも出て行けば良い」
母親「『絶対は無い』のよ」
剣士「……矛盾を話していると気がつかんものか」
母親「『信じている』のよ。自分の娘をね」
剣士(……突っ込む気にもなれん)
母親「貴方に損は無いでしょうが。可能性を真っ向から否定するのも」
母親「馬鹿らしいでしょう? ……それに。そんな呆れた様な顔をするなら」
母親「それこそ『どうして着いた来たの?』と……聞きたいわね」
剣士「…… ……」
母親「反論できないでしょう」クスクス
45名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 23:10:28.12 ID:3ToP4iRwi
やっと追いついた
読むほどに面白い
461 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:12:40.88 ID:WJHyl8KsP
剣士「……魔法使いが望んだところで」
剣士「勇者が必要無しと判断すればどうするつもりだ」
母親「街に寄る必要?」
剣士「ああ」
母親「……まあ、それは着いたらゆっくり、ね」
母親「此処では言えない。それは解って頂戴」
母親「……今度こそ、歓待、受けてくれるわね?」
剣士「拒否権はあるのか」
母親「お客様をもてなしたいだけよ。物々しいわね」
剣士「…… ……」
剣士(何を企んでいるのか知らんが……)
剣士(……身を隠すには打って付け、か)
剣士(…… ……しかし、な。これで……良かったのか?)
剣士(選択を誤っていなければ……良いが)

……
………
…………

僧侶「あ、あの……すみません、私の……所為で……」
戦士「……そんなんじゃ無い。お前の所為では……」
勇者「そうだ。とにかく……無事で、良かったと……」
勇者(喜ぶべき……なんだよな?)
勇者(……空気が、重い)ハァ
魔法使い「……ご免なさい」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「……先を急ぎましょう。まだ、始まりの街から出て少しよ」
魔法使い「とにかく、次の街にたどり着かないと……!」スタスタ
僧侶「あ……魔法使いさん!」タタタ
勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……」
勇者「行こう、戦士。離れる訳には行かない」タタタ
戦士「あ、ああ……先頭は任せるぞ。殿に着く」

スタスタ……スタスタ……
471 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:17:55.20 ID:WJHyl8KsP
勇者(……俺にそっくりな、紫の瞳の男)
勇者(何者だ!?)
勇者(……随分と威力の強い……雷の魔法を使っていた)
勇者(俺は……選択を間違えた……否、違う!)ギュッ
勇者(……戦士も、僧侶も、魔法使いも)
勇者(『直感』で選んだ。目を引いたんだ。彼らしか居ないと……!)
勇者(俺は、勇者だ! ……間違えて無い。間違えてなんか、無い!)
勇者(『あの紫の瞳の男を選んでおけば』なんて……)
勇者(思っちゃ、いけないんだ……!)

クシュン!

勇者(……あ ……ッ)チラ
勇者(怪我は無かったみたいだが……僧侶、ずぶ濡れだった……)
勇者(……街まで、どれぐらいだ?)
勇者(日が……西の空が、紅い。もうすぐ日暮れ……)
勇者(……先に、身体を温めてやらないと、風邪を……否、でも……!)
勇者(しっかりしろ、俺!お前は、『勇者』なんだ!)
勇者(……でも、こんな所で野営なんて……!)
勇者(……あれ、でもなんで……僧侶、最初は……濡れて無かった、んだ?)
481 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:24:26.51 ID:WJHyl8KsP
僧侶(寒い……ッ)ブルッ
僧侶(……でも、我が儘なんて言えない……ッ)
僧侶(言える雰囲気じゃ無い……誰も、一言も喋らない)
僧侶(すぐ近くを歩いているのに、空気が……冷えてるのが解る)
僧侶(特に…… ……)チラ

魔法使い「…… ……」

僧侶(魔法使いさん……)フゥ
僧侶(……『同じ方向に行くのなら』)
僧侶(勇者様の一声で黙られた、けれど……)
僧侶(……気がついてない振りなど、出来ない)
僧侶(信用……されて、無いのかな)
僧侶(仕方無いですよね。出会ったばかり……でも)
僧侶(……あの人、誰? 何者……)
僧侶(あの『苦しくて悲しくて切なくて、それでいて喜ばしい』感じは)
僧侶(……覚えがある!)
僧侶(でも、そんな筈は無い!)
僧侶(命の喪失と誕生は、魔王と勇者様のもの……!)
僧侶(……ッ)クシュンッ
僧侶(ばれちゃった……よね……)
僧侶(勇者様と、戦士さんは…… ……魔法使いさん、は……)
僧侶(……ちゃんと、話さないと……私達は、仲間なのに……!)
491 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:35:18.86 ID:WJHyl8KsP
魔法使い「…… ……」

魔法使い(あの男の人は……私の知る紫の瞳の人とは別人、なの?)
魔法使い(……否。それは……良い。今は……)
魔法使い(勇者様……気分、害したわよね。私…… ……)
魔法使い(勇者様より、仲間より……あの人を頼ろうとした)
魔法使い(……知り合いかもしれないから、なんて……!)
魔法使い(…… ……言い訳にも、ならないわよね)
魔法使い(あの男の事は、街に帰れば解る)
魔法使い(……お父様もお母様も、お爺様も、許してくれるわ)
魔法使い(勇者様の仲間になったんだもの……!)
魔法使い(そうすれば、私に、優れた加護が無い事も…… ……!)
魔法使い(駄目! ……僧侶は多分…… ……ッ)
魔法使い(……負けたくない……ッ 僧侶には……ッ)
魔法使い(謝らなきゃ、勇者様に!許して貰わないと……ッ)
魔法使い(それに…… ……)チラ

戦士「…… ……」

魔法使い(彼は、戦士は覚えて居た)
魔法使い(……あの時は、光の剣とかの話で、うやむやになったけど)
魔法使い(闘技大会の事…… ……火傷の跡、覚えてるはず)
魔法使い(……もう、いや!幻滅されるのは……いや……ッ)ギュッ
501 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:41:18.68 ID:WJHyl8KsP
戦士「…… ……」

戦士(何者なんだ?あの男…… ……)
戦士(勇者様と同じ顔をしてた。色というのは……凄いな)ハァ
戦士(印象があんなにも違う。まるで『光と闇』だ)
戦士(…… ……しかし、この雰囲気は……まずい)
戦士(出会ったばかり、とは言え……)
戦士(……あの男の言葉通り、森の中を進んで居るが)
戦士(皆……気持ちが此処に無い。否、俺も……か)ハァ
戦士(勇者様……多分前が見えていない。闇雲に進んでも……)

勇者「…… ……」

戦士(……背に覇気が無い。それに……僧侶のくしゃみも何度目か)
戦士(魔法使いの……あの言葉も気になる)
戦士(…… ……仕方無い。未熟を未熟と認めることも)
戦士(大切な筈だ)
戦士(『決して驕るな』…… ……ですよね、女剣士様)ギュッ
戦士(……ここは、随分心地が良い。良い場所だ……此処、しかないだろう)ピタ
戦士「勇者様!」
勇者「え?」ピタ
魔法使い「……?」
僧侶「戦士さん……?」
511 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:45:46.28 ID:WJHyl8KsP
戦士「……休もう」
勇者「え!?」
戦士「始まりの街から大して離れていないのは解って居る」
戦士「だが、僧侶を火に当たらせた方が良いだろうし……」
僧侶「あ、いえ、私は……ッ」
戦士「……魔法使いも、顔が蒼い」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……戦士、野営の準備をしよう」
戦士「ああ。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがとう」
僧侶「す、すみません……」

……
………
…………

パチパチパチ……

僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
521 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:51:15.09 ID:WJHyl8KsP
勇者「……僧侶と魔法使いは、休んでくれ」
勇者「見張りは俺と戦士でやるから……良いよな?」
戦士「当然だ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「何してる?二人とも」
僧侶「……いえ。すみません、お言葉に甘えます」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「私がこの侭体調を崩したりしたら、それこそ足を引っ張ってしまいます」
僧侶「……だから」
魔法使い「…… ……」
戦士「お前もだ、魔法使い」
魔法使い「でも……ッ」
戦士「魔力、て言うのは無限では無いのだろう?」
戦士「……良いから、休め。明日、又……戦闘があれば」
戦士「頼ってしまうのだから」
魔法使い「…… ……ありがとう」
勇者「…… ……」
僧侶「では、おやすみなさい」
魔法使い「……おやすみ」
戦士「先に俺が見ていよう。勇者様も休ん……」
勇者「……戦士は、凄いな」
戦士「え?」
勇者「流石、騎士団長様の息子、だ」ハァ
戦士「…… ……勇者様?」
勇者「俺は……勇者なのに。僧侶の……仲間の体調とか」
勇者「…… ……その」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
531 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:58:10.29 ID:WJHyl8KsP
勇者「俺達は仲間だ。だけど……俺は……」
勇者「『導いて』いける自信なんか…… ……ッ」
戦士「…… ……まだ、出会ったばかりなんだ」
戦士「俺は……多分、僧侶も魔法使いも」
戦士「まだ見ぬ『勇者』に幻想を抱いていた。それは……認める」
勇者「!」
戦士「だが、それは幻滅した、とかじゃ無い」
戦士「……上手く言えん。言えん……が……」
勇者「…… ……御免な、頼りない勇者で」
戦士「違う」
戦士「……『決して驕るな』なんだ」
勇者「驕るな?」
戦士「ああ。女剣士様が、ずっと言ってた言葉だ」
戦士「……親父にも言われ続けてきた」
戦士「絶対は無い」
勇者「……それは、母さんにも言われたな」
勇者「世の中に絶対は無い」
戦士「出来ない事は頼ってくれ。俺が頼りなければ」
戦士「僧侶でも魔法使いでも良いんだ」
戦士「……皆で、考えて一つずつ解決していけば良いんだ」
戦士「俺達は、未熟だ…… ……あの、紫の瞳の男」
勇者「……ッ」
戦士「あいつを選んでいれば、旅は楽だったかもしれん」
勇者「……違う!俺は、俺が選んだのは……ッ」
戦士「そう、思ってくれるなら」
戦士「……酷い言葉でも良いさ。思っている事を話して欲しい」
戦士「まずはそこから、だろう?」
541 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:05:33.08 ID:ILonk6kOP
勇者「戦士…… ……」
戦士「偉そうに言ってしまって済まない。だが……勇者様が悩んでいたら」
戦士「やはり……『仲間』として心配になる」
勇者「…… ……」
戦士「俺も……否、俺自身にも、もう一度」
戦士「『驕るな』と言い聞かせねばならん」
勇者「え?」
戦士「俺は……その、勇者様の小さな背を守ってやらねば、と」
戦士「そう、思っていた。だが……それは『驕り』だろう」
勇者「……共に、高め合って行けば良いんだよな」
戦士「ああ。それは……あの紫の瞳の男を選んでいれば出来にくかったかもしれん」
勇者「あの人……強そうだったもんな」クス
戦士「悔しいけれどな」
勇者「……なあ」
戦士「ん?」
勇者「『様』はやめてくれ。明日、僧侶と魔法使いにも言う」
戦士「……勇者がそういうなら」
勇者「ああ…… ……あの人、何者なんだろうな」
戦士「……解らん、が…… ……そっくり、だな」
勇者「妙な既視感は……顔の所為なんだろうけどさ」
戦士「既視感?」
勇者「ああ……どこかで、会ったことある様な……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「似ているのは作りだけだ。印象も表情も違うぞ」
勇者「そうか?」
戦士「……まるで『光と闇』だ」
勇者「光、と…… 闇」
戦士「…… ……」
551 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:11:30.91 ID:ILonk6kOP
勇者「……謎だらけだよな」
戦士「考え出したらきりが無い」
勇者「そう、何だけど……」
戦士「とにかく、先に休め。明日は朝から……狩りでもしよう」
勇者「狩り!?」
戦士「非常食など準備していないだろう?」
勇者「……そうだな」
戦士「何度か経験がある。起きれば、僧侶を連れて行く」
勇者「え?」
戦士「弓を使えるのなら、頼れるだろう」
戦士「……お前は魔法使いを見ておいてやれ」
戦士「少し……様子がおかしかった」
勇者「……本当に、よく見てるな」
戦士「気のせいであれば良いんだがな」
勇者「……否、解った。だけど、だったら戦士が先に休んでくれ」
勇者「朝早いだろうし……俺は、少し元気が出たよ」
戦士「……そうか。ならば甘えよう」
勇者「ああ。三刻で起こす。頼りにしてるぜ」
戦士「了解……おやすみ、勇者」
勇者「……ああ」

……
………
…………

勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(解ってる…… ……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(『決して驕るな』 ……大丈夫だ)フゥ
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だった……それに、あの、俺にそっくりな男)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
勇者(仲間だ。信じるんだ。俺は……『勇者』だ!)
561 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:22:37.44 ID:ILonk6kOP
魔法使い(……眠れない)
魔法使い(戦士と勇者様は、何を話してたの!?)
魔法使い(私の……火傷の事……ッ)
魔法使い(気にしても仕方無い……何れ、バレる……ッ でも……ッ)
魔法使い(……ッ 嫉妬じゃ無い! この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は……父と母の娘!)
魔法使い(……特別じゃ無い。『雷』は特別なんかじゃない!)
魔法使い(私は勇者様に選ばれた!あの紫の瞳の男は、選ばれなかった!)
魔法使い(僧侶は……ッ ……ッ ああ……ッ)

僧侶(ん……物音……?)
僧侶(あの……影は、勇者様)
僧侶(では……休まれたのは、戦士さん…… ……)
僧侶(…… ……静か。風が気持ちいい)
僧侶(戦士さんが選ばれた場所。ならば安心できる。だけど……)
僧侶(…… ……これは、何なのだろう?)
僧侶(どうして私は、こうして……『感じる』の)
僧侶(『勇者』……は、特別)
僧侶(では……あの紫の瞳、の…… ……彼、は ……)
僧侶(エルフ、って…… な…… に……)スゥ

戦士(随分、偉そうな事を言ってしまったな)
戦士(……出しゃばりすぎて無ければ良いが)
戦士(あの紫の瞳の男……もし、あいつが居れば)
戦士(……否。勇者に気にするなと言っておきながら)
戦士(気にしているのは俺自身だ)
戦士(あれほどの力があれば……ん?)
戦士(あいつは確か、剣を握っていたな)
戦士(……しかし、魔法を使ったのもあいつだろう)
戦士(…… ……)ハァ
戦士(嫉妬だ。これは……俺は、剣もろくに……)
戦士(否! ……出来る事をすれば良いんだ)
戦士(……眠るんだ、戦士。勇者と変わってやらねば……)
571 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:25:40.85 ID:ILonk6kOP
……
………
…………

魔導将軍「悩みなさい、思いなさい」
魔導将軍「それが生きると言う事」
魔導将軍「……なんてね」
魔導将軍「ああ、時間食っちゃった。あの事務員……無事だったかな?」
魔導将軍「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
魔導将軍「さて……どうするかな」
魔導将軍(あの紫の瞳の男は……船で行っちゃったし)
魔導将軍(港街から何処に行くのか…… ……もう少しだけ、見ておくか)
魔導将軍「勇者、頑張るのよ? ……貴方なら。貴方達なら、きっと……」
魔導将軍「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
魔導将軍「人間ごっこ、か……」ハァ
魔導将軍(……不思議よね。私も……確かに人間だったのにな)
魔導将軍「さて……船は、と」

バッサバッサバッサ………
581 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:26:36.73 ID:ILonk6kOP
限界!
ねますー!
また明日来れたら!
59名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 00:29:53.48 ID:GwbTc8Xpi
60名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 03:32:44.69 ID:j+t/hBsx0
剣士かっこいいなあ
61哀和【695枚】 ◆Aiwa///ScE :2013/08/22(木) 07:11:30.80 ID:4cqN29G+0
勇者は選択を間違えたのか・・・?
62名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 13:58:49.60 ID:C4Xzr/zt0
どうだろ?
剣士加入はループ前には無かった選択肢だけど
現パーティは全員が次世代の親でもあるから
変更すると歪みどころの話じゃない
63名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 16:47:17.11 ID:38ULeAra0
魔法使いがんばれー
64名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 16:51:51.25 ID:TfkO/61D0
特異点が僧侶なのか、
今回でループ脱出なのか、
そういや使用人、前作では闇の手に交替時で千年近くって言ってたから、歪み発生もかなり早いのか?

とりあえず仕事子育て大変やろけど無理なく頑張って
65名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 18:02:01.40 ID:UvJi9+vZO
剣士と船長の子供って今回は居ないのか?

戦士と剣士が同時に出てるなんて美味し過ぎる!
66名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 19:00:36.16 ID:JJtgPELfO
>>65
剣士と船長は行為はあったけれど、子供は出来てない
67名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 01:06:45.36 ID:Nsa7Etp2O
>>66 「俺は…魔王を倒す」に出てくる船長が剣士&船長(女)の孫と言う事は
そろそろ子供が出て来て良いと思う
681 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:22:47.73 ID:jBmJHkjkP
おはよー!
幼女が起きるまでー
691 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:39:28.53 ID:jBmJHkjkP
剣士「! ……あれは……」
母親「どうしたの。港街に……この街に用事なんか無いわよ」
剣士「……何でも無い。船は、あれか?」
母親「ええ。それがどうしたの」
剣士「…… ……否」
剣士(『特別便の用意など』か)
剣士(……相変わらず信用の置けん女だ)
母親「安心しなさいよ。こっちもちゃんと二部屋取ってあるわ」スタスタ
剣士(…… ……魔導の街に着くのは明日、か)スタスタ
海賊「どうぞ、お乗り下さい……すぐに出港致します」
剣士(……見た事の無い顔。当然だな)
剣士(もう……随分と昔だ)
母親「船室に案内して頂戴」
海賊「はい。此方へどうぞ」
剣士「…… ……俺はもう休む。話も無いだろう」
母親「あら。一杯ぐらい如何?」
剣士「結構」
海賊「此方と此方のお部屋にどうぞ」
剣士「…… ……」スタスタ。パタン
母親「……本当につれない男ね」フゥ
母親「私も休むわ。船長は?」
海賊「舵を握ってますから」
母親「そう……着いたら起こして」パタン
海賊「…… ……」ハァ

スタスタ

剣士(……母親は隣室、か)
剣士(しかし…… ……懐かしいな)
剣士(変わらない。相変わらず趣味の良い調度品)キョロ
剣士(また……この船に乗ることになるとはな)
701 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:45:05.54 ID:jBmJHkjkP
剣士(足音……聞こえなくなったな)
剣士(タキシードなど着ていたが……この船に乗って居る、と言う事は)
剣士(……海賊の一人なのだろうな)
剣士(…… ……船長は操舵室か)
剣士(会うべきでは……無いのだろう、が……)

カチャ、パタン

剣士「……」
剣士(扉の音……母親が外に出たのか?)
剣士(……違うな。話し声までは聞こえないが)

カチャ……パタン

剣士(母親が船長に依頼したのだろうな。何処でつながりがあったのか)
剣士(そこまでは……解らん、が)
剣士(…… ……船長の事だ。手広くやっているのだろう)

コンコン

剣士「! ……誰だ?」
船長「ルームサービスです」
剣士(この声…… ……船長、か!?)
剣士「頼んでいないが」
船長「……母親様からです」
剣士「…… ……入ってくれ」

カチャ

船長「失礼します」
711 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:53:23.06 ID:jBmJHkjkP
パタン

剣士「……適当に」
船長「はい」カチャカチャ
剣士(…… ……随分、老けた。当然……か)
船長(部屋の中でもフードも取らず……怪しい男だな)
船長(酒を持っていってやってくれと言われたのはいいが)
船長(……仕事とは言え、相変わらず良く解らない女だよ)フゥ
剣士(気がついていない、か……当然だ)
船長「……ではどうぞ、ごゆっくり」
船長「到着は明日の朝で御座います」
剣士「ああ。ありがとう……ああ、すまんが」スッ
船長「はい?」
船長(…… ……?何だ?唇に手を当てて)
剣士「……声を、出すなよ」ボソ
船長「?」
船長(おいおいおい、何だよこい……つ……ッ)
剣士「……」パサ
船長「……ッ!! ……け……ッ!」
剣士「シッ」
船長(まさか…… ……ッ 剣士!?)
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」フラフラ……ギュッ
剣士「…… ……」ギュ、ゥ
船長「剣士……、か……!?本当に……ッ」
剣士「……シィ」
剣士「母親は?」
船長「……三刻後、甲板に」ボソ
剣士「?」
船長「あの女にも酒を振る舞った。少ししたら眠るだろう」
剣士「…… ……解った」
船長「お前は口をつけるな。随分きついモンだ」
剣士「……」スッ
船長(頬を撫でる指も、変わらない。あの時の侭だ……)
721 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:00:57.12 ID:jBmJHkjkP
船長(歳を取ったのは、アタシだけ……か)
船長(……本当に、人間じゃ無いんだな)
船長(触れたい。触れて欲しい。だけど……)スッ
剣士「……船長?」
船長「……では、失礼致します」

パタン

船長(剣士…… ……ッ)ポロポロポロ
船長「……ッ」グイッ
船長(…… ……アタシ、は)
船長(……ああ……ッ)

タタタ

船長「!」ゴシゴシ
海賊「あ、船長」
船長「……どうした?」
海賊「メイドが呼んでましたけど」
船長「酒は持っていったぞ」
海賊「……報告を、だそうです」
船長「相変わらず面倒臭ぇな……まあ良い」
船長「行くよ……悪いが三刻後、舵を変わってくれ」
海賊「え?ああ……そりゃ構いませんけど」
船長「あいつは?」
海賊「魔導の街の人間は苦手だって、もうぼっちゃんと寝てますよ」
船長「…… ……そうか」ホッ
海賊「??」

スタスタ
73名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 07:06:58.96 ID:81qqbUs10
>>67
船長の孫ではあるが
剣士と船長の孫ではない
741 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:07:52.04 ID:jBmJHkjkP
船長(…… ……今日だけだ。今日……だけ……)

カチャ、パタン

メイド「お疲れ様です船長様。ご報告を」
船長「母親と連れの男に酒は振る舞ったぜ」
メイド「母親様は何と?」
船長「なるべく早くに魔導の街に着く様に、だとよ」
船長「……金も受け取った」
メイド「そうですか」
船長「お前達は着いたらすぐに降りろと伝えておけと」
メイド「はい。承知しています。後は……」
船長「……また、当分街に近づくな、って言いたいんだろう」
メイド「はい。何かありましたら、使者が向かいます」
船長「…… ……」
船長(本当に不思議な奴らだ。世界中に密偵とやらを送り込んでるとか言うが)
船長(……嘘じゃネェんだろうな。じゃなきゃ、都合良く行く先々で)
船長(アタシらに接触できる筈もネェ)
メイド「では、魔導の街に着くまで、私も休みます」
船長「ああ。何時も悪いね、物置部屋で」
メイド「お気になさらず。では」スタスタ

パタン

船長「…… ……」
船長(様子見て戻るか……)スタスタ
船長(……今日だけ、だ。本当に……今日、だけ……ッ)

カチャ……

船長(…… ……真っ暗だな。寝てる、のか?)
男「……ん?」
船長「悪い。起こしたか」
男「ああ、船長か……良いよ。大丈夫」
男「あ、電気はつけるなよ」
751 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:17:53.52 ID:jBmJHkjkP
船長「解ってる……チビは?」
男「寝てるよ」
チビ(スゥスゥ)
船長「……そうか」ホッ
男「もう海の上か?」
船長「ああ。着くのは明日の朝だ。お前も寝てろ」
船長「……苦手なんだろう、あいつら」
男「あの手の人間共はねぇ……」
船長「……ま、アタシも、だ。すぐに寝たのか?あれから」
男「こいつも苦手なんだろ。本読みながら寝ちまったよ」
船長「……誰に似たんだかな」クス
男「俺に似ても船長に似ても、頭は良くならネェだろうになぁ」クスクス
船長「否定できねぇな……残念ながら」
男「……魔導の街に着いたらどうするんだ?」
船長「前回もそうだったが、当分近づくな、だろうさ」
船長「じーさんとこでも行くか」
男「里帰りか」
船長「お前のな。いやか?」
男「……あのジジィ、また妙な彫刻とか増やしてなきゃ良いけどな」
船長「良い趣味してんじゃネェか……いつも親父を思い出すよ」
男「俺には審美眼なんてネェからなぁ」
船長「……準備しとけよ。暫くはバカンスだ」
船長「…… ……現実忘れるぐらい、楽しい事しようぜ」
男「……どうした?」
船長「え?」
男「暗くて表情まで見えネェが……」
男「……なんかあったか?辛そうな声だな」
船長「……こんな恰好させられて、慣れない敬語なんか使わされてみろよ」
船長「疲れもするぜ」
男「違いネェ」クスクス
船長「……行くよ。海賊に任せっぱなしにはできねぇしな」
男「無理すんなよ」
船長「ああ……ゆっくり寝とけ」
男「おやすみ、船長」ス……ギュ
船長「! ……ああ」チュ
男「ほっぺにちゅーとか可愛いことするなぁ」クスクス
761 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:26:50.43 ID:jBmJHkjkP
船長「……じゃあな。お休み」
男「おう」

パタン

船長(…… ……今日だけ、だ……ッ)

……
………
…………

剣士(……船長は……ああ、あれか)スタスタ
船長「……良いのか。マント無しで」
剣士「『行き過ぎた詮索は身を滅ぼす』ってのが教育方針なんだろう」
船長「…… ……お前は、本当に変わらないんだな」
剣士「……みたいだな」
船長「勇者に……会えなかったのか?」
剣士「否……選ばれなかったに過ぎん」
船長「お前が!?」
剣士「……以前の闘技大会の時」
船長「?」
剣士「始まりの街に居ただろう」
船長「……え」
剣士「……見かけたんだ。声をかける事は不可能だったが」
船長「……そう、か」フィ
剣士「…… ……」
剣士「悪かった。今日も……黙っておけば、解らなかっただろうに」
船長「……そんなに、見ないでくれ」
剣士「船長?」
船長「アタシはもう若くない」
剣士「……美しさは変わらん」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「あの時、は」
剣士「?」
771 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:34:34.35 ID:jBmJHkjkP
船長「あの女の娘……領主の孫娘、か」
船長「そいつを港街まで運んだんだ」
船長「……国王達も警戒してたのかもな。始まりの街へは」
船長「王国の船でしか入港できない事になってたからな」
剣士「……良いのか。俺にそんな事話して」
船長「……仲間、だからな」
剣士「…… ……」
船長「何故、魔導の街に?」
船長「何故あの女を知ってる……の方が良いか」
船長「……否。答え無くても良いんだが」
剣士「……魔導の街に行く、とこの船を下りただろう」
剣士「そういう事だ……この瞳に興味を持つのは」
剣士「想像に易いだろう」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「……剣士」
剣士「何だ」
船長「…… ……否」
船長(チビや男の事を、剣士に話しても仕方無い)
船長(……仕方無いんだ……ッ)
剣士「……忘れない、と言っただろう」
船長「…… ……忘れてくれても構わん、ともな」
剣士「過去に拘る生き方は出来ない、だったか」
船長「…… ……」
剣士「……元気でいるのなら、それで良い」
剣士「声をかけるべきで無いと思った。だが……」
船長「…… ……」
剣士「嬉しかった。それだけだ」
船長(……今日、だけ。今日だけだ!)ギュウ……!
剣士「船長……?」
船長「……忘れる日など無かった」
剣士「…… ……」ギュ
781 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:42:51.96 ID:jBmJHkjkP
船長「会えるなんて思っては無かったさ。けど……ッ」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「……船長」グイッチュ
船長「ア……ッ ……ン、ぅ」
剣士「…… ……」ギュ
船長「…… ……」ギュウ…… ス
剣士「…… ……」
船長「お前達を下ろしたら、アタシ達は南へ行く」
剣士「南?」
船長「ああ……当分街に近づくな、ってのも」
船長「……金の内なのさ」
剣士「……そうか」
船長「気をつけろよ、剣士」
剣士「?」
船長「良からぬ噂の絶えない街だ」
剣士「……ああ」
船長「お前なら大丈夫だろうが……その瞳に、あの……加護に捕らわれない力」
船長「知られて居るのなら……尚更」
剣士「…… ……ああ」
船長「……もう、会うことは……流石に無いだろうな」
剣士「……南に、何がある?」
船長「……チ ……否」
剣士「?」
船長「バカンス、て言えば南だろ」
剣士「そういう物か」
船長「……こんな時間に呼び出して悪かった」
船長「もう、ゆっくり休んでくれ」
剣士「……船長」
船長「何だ?」
791 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:48:23.87 ID:jBmJHkjkP
剣士「……忘れはせん」
船長「…… ……アタシ、もだ」
剣士「……おやすみ」スタスタ
船長「…… ……」

パタン

船長(……潮風が、目にしみるんだ)ポロ
船長(今日、だけ……)ポロポロポロ
船長(…… ……)ポロポロポロポロ

……
………
…………

チチ……ピピピ……

僧侶「ん……」ムク
戦士「起きたか」
僧侶「あ、戦士さん……おはようございます」
戦士「体調は?」
僧侶「……ぐっすり、眠らせて貰いましたから」
戦士「そうか……ならば、着いてきてくれ」
僧侶「? 何処へ……です?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「……!」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
801 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:52:36.94 ID:jBmJHkjkP
僧侶「あの……」
戦士「何だ?」
僧侶「勇者様と、魔法使いさんは……」チラ
戦士「寝かしておいてやれ。勇者には伝えてある」
僧侶「そう、ですか……」
戦士「戻れば起きているだろう……行くぞ」スタスタ
僧侶(弱肉強食……は、わかってる)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)スタスタ
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(皆の、為に……!)

ピピピ……チチチ……

戦士「……ん」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!」
戦士「……そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……そ、れは」
戦士「『守る』ためだ」
僧侶「……」
戦士「そして……『生きる』為だ」
僧侶「……はい」
811 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:00:11.06 ID:jBmJHkjkP
戦士「……命の重さに差違は無い」
戦士「確かに、矛盾してる……だが」
戦士「それこそが『生きる』と言う事なのだと思う」
僧侶「……はい」
戦士「……言い訳だ。自分を正当化する為の。だが……」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
僧侶「それは……動物たちが教えてくれます」
僧侶「その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……」
僧侶「誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶「あ、いえ、あの……ッ」ドキッ
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)

……
………
…………

勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」ボッ
勇者「ありがとう……よいしょ」
魔法使い「僧侶と戦士は?」
勇者「狩りに行ったよ」
魔法使い「狩り?」
勇者「食わないと元気も出ないさ」
魔法使い「…… ……御免、なさい」
勇者「昨日からそればっかりだな」
魔法使い「…… ……」
勇者「……僧侶が川に落ちて濡れなかった事」
魔法使い「!」
勇者「それから……あの紫の瞳の男」
魔法使い「勇者様!」
勇者「ん?」
魔法使い「あ、あの……ッ ……そ、の。あれは、あの……ッ」
魔法使い「……御免、なさい」
勇者「また謝る……」フゥ
勇者「……確かにさ、俺は頼りないと思う」
魔法使い「!」
勇者「彼みたいな人が居てくれたらって思うのは……」
魔法使い「そ、それは違う!そんな風に思った訳じゃ……!」
勇者「……違うよ。そう思ったのは俺自身だ」
魔法使い「え?」
勇者「…… ……勇者失格だよ。折角……さ。こうして」
勇者「君達を選んだのに……俺は……ッ」
魔法使い「勇者様……」
821 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:05:32.62 ID:jBmJHkjkP
勇者「……だから、君達がそう思っても当然だ」
魔法使い「…… ……ッ」
勇者「だけど、ね。何も知らないし、力も無いし」
勇者「まだまだ未熟だからこそ、みんなで力を合わせて、さ」
勇者「……一緒に、強くなって行きたいよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「言いにくい事とか、不安とか不満とか……」
勇者「あるのは、魔法使いだけじゃ無い」
魔法使い「…… ……」
勇者「多分、戦士も、僧侶も…… ……俺も、だ」
勇者「……話して欲しい。一気に、とも全部、とも。勿論そんな事は言わない」
勇者「言えない……だけど、さ」
魔法使い「…… ……」
勇者「ごめん。俺も余裕無くて」
勇者「僧侶が濡れてそのままの事とか」
勇者「……魔法使いの様子とか。気遣って……あげれなくて」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「え?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば」
魔法使い「…… ……私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無い」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火」
魔法使い「暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
831 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:11:18.72 ID:jBmJHkjkP
勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「…… ……」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(……)
勇者「気持ちは分かるが……」パァッ
魔法使い「…… ……戦士には、見られたの」
勇者「え?」
魔法使い「闘技大会に出場した時よ」
魔法使い「受付にならんでいる時に、声をかけられた」
魔法使い「『火傷の治療を受けてこい』ってね」
勇者「……騎士とか、その身内は出られないんじゃ?」
魔法使い「見に来ていたんでしょう……ああ、貴方も居たのよね」
勇者「試合は見てたよ…… ……御免、誰が出てたとかは覚えて居ないけど」
魔法使い「……逃げ出したかったわ」
魔法使い「優れた加護が無い事を知られるのも怖かった」
魔法使い「……勝てる訳無いとも、思った」
魔法使い「折角、家から親から離れられたのに……」
魔法使い「私は、『失敗』する事が怖かった……!」ポロポロ
勇者「魔法使い……」
841 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:19:02.76 ID:jBmJHkjkP
魔法使い「……こんな私じゃ、このままじゃ帰れない、と思ったの」
魔法使い「だから、絶対に勇者様の仲間になろうと思った」
勇者「…… ……」
魔法使い「おかしいわよね。離れられてほっとしたのに」
魔法使い「……私、まだあの人達の顔色を伺っている」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「簡単に出来る事じゃ……無い、と思うけど、さ」
魔法使い「え?」
勇者「……認める、って事も強さの内だと思うよ?」
魔法使い「認める……?」
勇者「うん。自分の弱さ……とかさ。そう言うの」
魔法使い「…… ……」
勇者「……嫉妬、しちゃうのは仕方無いよ」
魔法使い「!」
勇者「俺だって…… ……だけど」
勇者「嫉妬って醜い感情だけど」
勇者「そう言うのを持たない人は居ないと思うし」
魔法使い「…… ……」
勇者「だから……自分がそういう醜い気持ち、持ってるんだって」
勇者「認めるだけでも…… ……否、それこそ大変な事なんだけどね」
魔法使い「……私、自分に言い聞かせた。これは嫉妬じゃ無い、って」
勇者「……僧侶、に?」
魔法使い「ええ。どうしてこの子だけ。どうして……私には、って」
勇者「…… ……」
魔法使い「……でもどうしようも無いのよね。加護は生を受ける時の」
魔法使い「契約みたいな物…… ……違える事はできないのに」
勇者「…… ……」
851 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:27:21.08 ID:jBmJHkjkP
勇者「……大丈夫だよ。魔法使いなら、きっと」
勇者「『認める強さ』を持ってると思う」
魔法使い「認める強さ……」
勇者「……うん。信じてるから、さ。力を合わせて」
勇者「俺達で、魔王を倒す。倒せるって」
勇者「……『仲間』だろ?」
魔法使い「…… ……ええ」
勇者「取りあえず、『様』やめない?」
魔法使い「え?」
勇者「確かに、『勇者』は特別な存在だと思う。けど」
勇者「俺は俺だし……俺一人、仲間はずれはヤダし」
魔法使い「仲間はずれ、って」プッ
勇者「……言い方おかしいかもしれないけど!」
魔法使い「……解ったわ、勇者」ニッ
勇者「おう…… ……笑ってる方が可愛いよ、魔法使い」
魔法使い「え……」ドキッ
勇者「……あ、帰って来た!」
魔法使い(……ドキ、て何よ、ドキ、って……!)ドキドキ
勇者「…… ……え」
魔法使い「え、な …… ……に… ……!?」

ドサッ

戦士「悪かったな……遅くなった」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…… ……」
勇者「いや、お前、そ…… そ、れ……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」
魔法使い「……こ、これを、二人、で……!?」
僧侶「え?魔法使いさん、食べないんですか?」
魔法使い「違う!そうじゃ無くて!」
僧侶「これだけあれば、お腹いっぱいになりますね」クス
勇者「…… ……うわぁ、矢だらけ」
戦士「勇者、早く」
勇者「お、お…… ……う…… ……」
魔法使い「…… ……僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「アンタ、怖い子ね……」
僧侶「?」
861 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:48:45.44 ID:jBmJHkjkP
……
………
…………

国王「それで……戦況は?」
騎士「件の洞窟にて、魔導の街の私設軍隊と思わしき船団との交戦は」
騎士「正直……五分五分、と言ったところです」
国王「……魔法兵団との抗戦でそれだとすると、良くやっていると言わざるを」
国王「得ないのでしょうね……出来るだけ被害を最小に留める様に」
国王「……敵わなければ、撤退を指示する様に騎士団長に伝えて下さい」
騎士「しかし……ッ」
国王「人の命は……尊い物です」
国王「何の狙いがあってあの洞窟に目をつけたのかは……気になりますけど」
騎士「しかし、何時の間に私設軍隊など……!」

バタバタバタ……ッ バタン!

国王「…… ……」
騎士「おい!ここは国王様の……!」
王子「……ッ」ハァハァ
騎士「騎士団長様!」
国王「どうしました?」
王子「……ッ 魔導の街が、街の閉鎖を宣言した」
国王「閉鎖?」
王子「宣戦布告だ。洞窟への襲撃と騎士団との抗戦は目を反らす為の罠かもしれん」
王子「……洞窟から兵を引き上げる様にと、書簡を届けさせた文官が持ち帰った書状だ」ポイ
騎士「……わ、私は下がりましょうか」
国王「構いません……」ペラ
国王「……しかし、宣言、とは?」
王子「『街は今日をもって閉鎖するから、次からは来ても無駄だ』と言われたそうだ」
王子「……詳しくは王宛ての書簡に書いた、と」
騎士「ふざけた事を……!」
王子「…… ……所属不明の船が一隻、あの街に着いている」
国王「所属不明?」
王子「ああ。魔導の街を出てからはそのまま南へ向かっているらしい」
王子「……海賊の類かもしれないが」
国王「追跡は?」
王子「適当に引き上げろと伝えてある」
871 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:59:27.53 ID:jBmJHkjkP
国王「…… ……『本日をもって魔導の街を閉鎖する』」
国王「『これに伴い同街を『魔導国』と改め、王政とする』」
国王「『現領主を王とし…… ……』 ……確かに、宣戦布告でしょうね、これは」
王子「続きは?」
国王「…… ……」
騎士「国王様?」
国王「……『王はそれ以外を認めない物とする。始まりの国の国王はすぐに王政を解かれたし』」
国王「『従えずば武力行使も辞さない』」
王子「……!」
騎士「な……ッ」
王子「……そんな事を決める権限が何処にある!?」
国王「あの洞窟への攻撃は、力を見せつける為でもあるのかもしれませんね」
王子「国王、俺もあの洞窟へ行く」
国王「……それは、駄目です」
王子「しかし!このままでは……!」
国王「『騎士団長』の貴方が出て行くと、宣戦布告を受諾した事になります」
国王「……それこそ、戦争です」
王子「……ッ このまま、見ていろと言うのか!」
国王「折角……勇者が、魔王を倒しに旅立ったと言うのに」ハァ
国王「『人間同士』で争って何になるのですか……!」
王子「…… ……ッ」
騎士「国王様…… ……」
国王「『王』と言うのは……それ程特別な物ですか?」
国王「……指導者であるのなら、名など……こだわりはありません」
王子「思うつぼだろう、それこそ向こうの……」
国王「……しかし……」
王子「城への一般人の立ち入りを禁止しろ。それから、国王の警備を増やすんだ」
騎士「は、は……ッ」
国王「兄さん!?」
王子「……認めてくれ、国王」
王子「表向き、でも良い。お前を……守る為だ」
881 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:06:19.89 ID:jBmJHkjkP
王子「……俺は、騎士団長、だ」
王子「民を、国を……お前を、守る義務と権利があるんだ!」
国王「…… ……」

……
………
…………

魔導将軍「ただいま。 ……やっぱり、帰ってたね」
后「魔導将軍……おかえりなさい。ご苦労様」
魔導将軍「……側近は?」
后「魔王の部屋よ……行く?」
魔導将軍「当然よ」
魔導将軍「……旅立ちは見送ったわ。だけど……」
后「ん?」
魔導将軍「…… ……気になる男が居た。紫の瞳の」
后「……紫の瞳?」
魔導将軍「ええ。勇者に……いいえ。魔王にそっくり、だった」
后「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
后「一緒に……旅立ったの?」
魔導将軍「……いいえ。彼は選ばれなかった」
后「……選ばれなかった……」
魔導将軍「詳しくは向こうで話すわ。使用人は?」
后「呼んでくるわ。先に行ってて」

スタスタ

魔導将軍「…… ……」
891 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:15:29.92 ID:jBmJHkjkP
スタスタ、コンコン

側近「あーいー?」
魔導将軍「ハローダーリン?」
側近「魔導将軍!」
魔導将軍「入るわよー?」

カチャ

魔王「…… ……」
魔導将軍「……久しぶりね、魔王」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(やっぱり……似てる、なんてモンじゃ無い)
側近「……どうした?」
魔導将軍「ちょっと待って、すぐに后と使用人が……」

カチャ

使用人「魔導将軍様!」
魔導将軍「久しぶりね、使用人」
后「早速で悪いけど……」
魔導将軍「ええ。長居も出来ないでしょ」
側近「……魔王はあれからは大人しいもんだ」
魔導将軍「側近は大丈夫なの?」
側近「魔族ってな凄いよな。魔力の量が尋常じゃネェよ」
側近「……俺、魔法なんて使えないのにねぇ」
使用人「本の知識は……役に立ちました、か?」
魔導将軍「ばれてないと思いたい、けどね」
魔導将軍「……取りあえず、報告しちゃうわ。結構大変な事になってるわよ」
后「大変な事?」
魔導将軍「……まず、魔導の街が立ち入り禁止になってる」
側近「……何?」
901 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:25:28.84 ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「詳しくは解らない。状況だけね」
魔導将軍「それに……多分あれは使用人の言ってた鉱石の洞窟ね」
魔導将軍「始まりの街の騎士団と、魔導の街の船団で交戦中」
魔導将軍「……実質戦争状態よ」
使用人「そ……んな!こんな時に!?」
后「…… ……盗賊さん、亡くなって長い……から?」
魔導将軍「勇者達は旅立ったのにね……ああ、そうそう。さっき后には言ったけど」
后「……魔王にそっくりの紫の瞳の男、だね」
使用人「!?」
側近「何!?」
魔導将軍「勇者達は何れ此処にたどり着く……だから」
魔導将軍「その紫の瞳の彼の気配を追ったんだけど」
魔導将軍「……船はウロウロしてるし、まさか姿は消せないし」
后「で……見失った訳ね」
魔導将軍「間違い無く気配を追ったはず……なんだけどね」
側近「まさか……此処にたどり着いた?」
魔導将軍「……いいえ。魔導の街に続いてたから、諦めて帰って来たのよ」
使用人「……側近様は、何故此処に……と」
側近「……お前さん、気がつかないとは言わないだろう?」
使用人「…… ……」
后「『特異点』?」
魔導将軍「もしくは、『欠片』」
后「魔導の街……立ち入りが禁止されてる、んだっけ?」
魔導将軍「……流石に近づけないわよ」
側近「何でこのタイミングで戦争なんて……」
使用人「……『少年』」
后「紫の瞳の魔王?」
使用人「そっくり、何でしょう」
魔導将軍「そうか……!あいつら、あの男の事を『少年』と思ってる!?」
魔導将軍「……て、事は魔族と解ってて……!」
側近「きな臭ェなぁ……」
使用人「推測の域を出ませんが……」
后「当たらずとも遠からず、でしょ……ていうか」
后「それしか考えられない」
911 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:33:41.53 ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「……後、仲間の方だけど」
魔導将軍「『騎士団長の息子』と『魔導の街の領主の孫娘』それから」
魔導将軍「『エルフの血を引く娘』」
使用人「エルフ!?」
側近「……いやいや、すげぇメンバーだな、おい」
使用人「エルフ、の、娘って……まさか!?」
魔導将軍「姫様の、って言いたいんでしょうけど」
魔導将軍「……私はその姫様を知らないから、何ともね……でも」
魔導将軍「弓を持っていたわ。だから……」
使用人「……弓……ッ」
后「エルフの弓だとすると……間違い無いんだろうね」
側近「……『特異点』か」フゥ
魔導将軍「候補が二人、もね」
后「……エルフの血を引くだろう娘、と……紫の瞳の男」
側近「……魔王に、勇者にそっくりな男、か」ハァ
使用人「揃った……の、でしょうか……」
魔導将軍「『欠片』? ……解らないわね」
魔導将軍「見守りたいけど……でも、もう……私も、此処を離れられないわ」
后「仕方無いわ。勇者は……もう、すぐそこにいる」

魔王「…… ……」

使用人「……魔王様?」ピリッ
側近「どうし…… ……ッ」ピリピリ
魔導将軍「!」ピリピリ
后「魔王!」ピリピリッ
側近「使用人!后と魔導将軍を連れて部屋を出ろ!」

魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」

魔導将軍「駄目よ、私も……ッ」
使用人「后様、早く!」グイッ
后「あ……ッ 魔王!」
921 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 10:05:50.27 ID:jBmJHkjkP
バタバタ、バタン!

后「魔王!」
使用人(……また、魔力が大きくなってる)
使用人(勇者様……間に合うの……!?)

……
………
…………

魔王「…… ……」パチ
魔王(また……夢)
魔王「……あー… ……うん」
魔王(声は、出る)
魔王(あれは……魔導の街……)
魔王(……又、あの双子を見せられるのか?)ハァ
931 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 10:07:18.88 ID:jBmJHkjkP
幼女起きたー
また後ほど、来れたらー
94名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 13:15:27.20 ID:TQWI+/Lui
良いところで(・∀・)
いてらー
951 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 11:43:15.79 ID:S1IGpuQHP
おはよう!出勤までー
961 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 11:58:40.74 ID:S1IGpuQHP
『娘の様子は?』
『もう少し掛かるかと』
『産まれたらすぐに隔離を……』
『これで我が国も……』
『赤子を連れて…… ……へ…… ……』
『王自ら…… ……』

魔王(……良く聞こえない)
魔王(しかし……あの二人は『光と闇』なのだろう)
魔王(……『何』が産まれるんだ)

シュゥン

魔王「……?」
紫魔「答えは、もう知っているだろう」
魔王「…… ……『世界』?」
紫魔「そうだ。『世界』」
魔王「……正解なのかよ。意味がわからねぇよ」
紫魔「『終わるだろう筈だった世界』だ」
魔王「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
紫魔「…… ……」
魔王「何故産まれた?」
紫魔「?」
魔王「『双子』だ」
魔王「金の髪の……ああ、っと。青年、か」
魔王「あいつは『魔王』を倒し、光を解放し世界を救った」
魔王「なのに何故……『光と闇』が産まれたんだ」
紫魔「人の世の理だろう。命の理」
魔王「……いや、そうじゃ無くて」
紫魔「『光と闇の獣。汝の名は』?」
魔王「…… ……また、それか」ハァ
971 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:06:57.61 ID:S1IGpuQHP
魔王(待てよ……なんか、聞いた事がある)
魔王(……何だっけ、な…… ……ッ)ドクンッ
魔王「……ッ ぅう……ッ」
紫魔「……もう少しだ」
魔王「…… ……え?」
紫魔「『揃った』」
魔王「な、に……?」
紫魔「『生と死』『特異点』『王』『拾う者』」
紫魔「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』『知を受け継ぐ者』」
紫魔「『光と闇』『勇者と魔王』」
紫魔「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
魔王「…… ……」

シュゥン……ッ

魔王「!」
魔王(また、光……!)
青年「『我が名は、勇者』」
青年「『光に導かれし運命の子』」

シュウゥン……!

魔王(…… ……)

??「『闇に抱かれし運命の子』」
魔王(!? 誰だ……!?)
魔王(赤茶の髪の……女!? ……しかも、また……同じ顔……!?)
女魔「『汝の名は、魔王』」
紫魔「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
紫魔「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
981 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:14:26.13 ID:S1IGpuQHP
女魔「『私は貴方』『貴方は私』」
魔王「……お前も『勇者』で『魔王』なのか」
女魔「そして『特異点』」
魔王「……特異点?お前が……?」
青年「代々……魔王は男しか居なかった」
青年「唯一の女勇者だ」
魔王「……別に、性別なんて……」
紫魔「……私の母も。姫も」
紫魔「『生の理』に耐えれなかった」
魔王「!」
紫魔「身に余る強大な力を生み出す代償」
魔王「……女勇者は魔王になり、その身体で自ら……」
女魔「そう。私は勇者を『育んだ』」
青年「……お前も『何れ知る』……魔王」
魔王「俺が? ……何、をだ」
女魔「『母の強さ』」
魔王「……ッ 后!」
紫魔「『全てを見、知り、感じる』んだ」

パアアアアアアアアアアアアッ

魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」

……
………
…………
991 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:18:08.85 ID:S1IGpuQHP
しゅっきーん!
100名も無き被検体774号+:2013/08/24(土) 16:02:18.47 ID:hEx0KsB2i
がんがれ。