勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」

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1名も無き被検体774号+
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1375328067/

の続きです
2名も無き被検体774号+:2013/08/16(金) 23:31:01.35 ID:PwwHorVp0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
31 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:35:03.08 ID:+2nQ9S01P
『冗談じゃない!どうして、我らが……!』
『私達は優れた一族なのですよ!?それが、何故……!!』
『……愚かな人間共に解らせてやる必要があるな』
『では……とうとう……?』
『ああ、決起するぞ! ……王国に、反旗を翻す!』
『見せしめだ……勇者を擁護したあの国に!』
『この際、出来損ないでも構わん。数を集めろ……奴隷としては役に立つだろう』
『力の強い者同士、交配を繰り返すのだ』
『街を封鎖しろ……我が一族以外を放り出し、全国に散った仲間を呼び戻せ!』
『壁を築き、要塞となせ……許可無く、立ち入れぬ様に』
『時は満ちた……今こそ!』
『まずは、あの王だ……たかが人間』
『そうだ。魔物の居なくなった今、誰もが平和ボケしている』
『王を殺せ』
『我らが……この世界の覇者となる!』

紫の瞳の魔王「……どこで間違えたんだろうな」
魔王「あれは…… ……実際の歴史、なの……か?」
紫魔「青年から聞いたのだろう」
紫魔「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
41 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:42:45.05 ID:+2nQ9S01P
魔王(この光景は……夢でも見てるみたいだ。不鮮明)
魔王(……そりゃそう、だよな。『俺はこいつ』で『こいつは俺』)
魔王(しかも、『現実』では……)
魔王(黒い髪の勇者……俺の息子が、魔王を倒さんと……旅立った頃、の筈だ)
紫魔「……こうしてみると、お前はあの『青年』そっくりだな」
魔王「同じ顔して何言ってやがるんだよ」
紫魔「……そう、か。そうだな」
魔王「…… ……この後、どうなるんだ?」
紫魔「もう一度聞きたいのか?」
魔王「…… ……国王は暗殺されて、娘と息子は……連れて行かれた、んだよな」
紫魔「…… ……」
魔王「それで……近親姦、で……子供を、産む……」
紫魔「そうだ」
魔王「……でもさ、それって……あいつら、双子だろ?」
魔王「それに……何だっけな……あ、そうだ!」
魔王「『光と闇』だと言ってた!」
紫魔「……『光と闇の獣。汝の名は?』」
魔王「え?」
紫魔「……全てを見たいか」
魔王「…… ……?」
紫魔「ならば望むが良い『願えば叶う』」
魔王「あ……おい!」
魔王(何だ、眩暈……ッ)
紫魔「『選択を誤るな』」
魔王(おい、紫の瞳の魔王……! ……ッ)
魔王(また、だ。また……声が、出ない……!)

……
………
…………
51 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:52:59.45 ID:+2nQ9S01P
勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」
魔法使い「……」クスクス
戦士「……」ムス
勇者「え、ええっと……取りあえず、俺から……で良いかな?」
勇者「その……勇者ってのは、世界に一人、しか居ないらしいんだ」
戦士「そうなのか?」
僧侶「……それは、『光』と言う珍しい属性だから……そう、言われていると」
僧侶「そういう事……ですか?」
魔法使い「確かに珍しいけれど……」
勇者「俺も母さんに聞いただけだから解らない、けど」
勇者「……嘘を吐く様な人では、無いよ」
僧侶「あ……気を悪くなさったならご免なさい!そういう意味では……!」
戦士「嘘を吐く理由も無いだろう、そんな物。誰も疑っては居ない」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(『珍しい属性』か)
魔法使い(遠い昔……家に居たあの紫の瞳の人……)
魔法使い(良く考えて見れば、誰だったんだろう)
勇者「あ……!俺こそ御免……別にむっとした訳じゃ無いよ」
勇者「母さんははっきりと言い切っていた、からさ」
勇者「確かに、俺も聞いた事が無い……けど」
勇者「……俺は、母さん以外の人とは、会う機会が殆ど無かったから」
戦士「…… ……」
戦士(親父は……勇者様と母君様に何度か会いに行っている)
戦士(……勇者様とは、直接会っていない、のだろうか?)
戦士(しっかりと聞いておけば良かったな。否……これで良かった、のか)
61 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/16(金) 23:57:35.56 ID:+2nQ9S01P
僧侶(私が……昔感じた、輝かしい『光の誕生』は確かに……この方)
僧侶(……勇者様の物。だけど……いいえ、確かに)
僧侶(『他』に『特別』等感じたことは無い……!)
僧侶(……で、あれば確かに一人、なのだろう。嘘が無いと証明できる)
僧侶(でも……そんな事、口には出せない……!)
勇者「……えっと、母が言う、には」
勇者「俺の父も……勇者だった、と言うんだ」
戦士「何……!?」
魔法使い「貴方……が、前勇者様の……子供!?」
勇者「……旅立つ前に、これを母に渡された」カチャ
僧侶「……!こ、れ……は!」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「勇者様……あの。見せて頂いても?」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
僧侶(……ッ 微かに、微かに、だけど……!)
僧侶(光を感じる。刀身に光が宿ってる……!)
戦士「……どうした?」
僧侶「あ……ええと……」
僧侶(どうしよう……何処まで、話して……良い、んだろう……)
魔法使い「思う事があるなら言っちゃいなさいよ」
魔法使い「私達、仲間なんでしょう?」
71 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:06:01.30 ID:+2nQ9S01P
僧侶(仲間……ッ)グッ
僧侶「……この剣からは、光を……感じます」
僧侶「勇者様から感じるのと同じ……光」
勇者「俺と……同じ?」
僧侶「はい。刀身は……随分、ぼろぼろですが……確かに」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無い……わよね?」
戦士「俺にも見せて貰えるか…… ……そう、だな」
戦士「……傷付いて、随分経っている様に見える……が」
勇者「『貴方のお父様は、これで魔王を倒したの』……と」
勇者「母さんは言ってた。だから……その時に折れてしまったのだろうと」
勇者「思ってたんだが……」
魔法使い「……でも、勇者様。まさか……この剣一本で魔王城まで行くつもりなの?」
勇者「あ、いや……騎士団長様から貰った剣があるんだ」
戦士「!」
勇者「……これ、何だけど。当分はこれで良いかなと思っている」シャキン
戦士(……王国の剣の印が無い、が、これも古い物だ)
戦士(親父が昔……使っていた物、か?)
勇者「俺は……ここ一年ぐらいだけど、騎士団長様に剣を習った」
勇者「だから……手にもなじんでる、しね」
勇者「……それより、僧侶」
僧侶「は、はい!」
勇者「……その、さっきから言ってる『感じる』とか、さ」
勇者「そういうの……解る、の?」
81 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:17:15.50 ID:6WORrKgWP
僧侶「……え、ええ……まあ」
僧侶「でも、解る……と言うより、本当に『感じる』だけなんです」
僧侶「何となく……です。本当に」
勇者「ふうん……?聖職者、って凄いんだね」
魔法使い「ねぇ、勇者様と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど」
戦士「俺にはさっぱりだ」
勇者「俺は……初期の回復魔法ぐらいしか使えないし」
勇者「丁度話そうと思ってたけど……『光の加護』って言う割にさ」
勇者「『光の魔法』ってのは……使えないんだ」
僧侶「そう……なのですか!?」
勇者「あー……がっかりした、よね?」
僧侶「え、いえそんな!?」
魔法使い「意地の悪い言い方しないの、勇者様」
魔法使い(……とは言え。私……どこかでほっとしてる)
魔法使い(否……それより……この子)
魔法使い(この子の……『感じる力』……って、何!?)
魔法使い(……それこそ、聞いた事なんか無い……!)
勇者「……御免」
僧侶「…… ……その、すみません」
僧侶「そんなにも……身の内から光を溢れさせていらっしゃるのに」
僧侶「ちょっと……意外、だっただけ、です」
勇者「……母さんも、何れ使える様になるって言ってたんだけどね」
魔法使い「……身の内から、って?」
戦士「その話は後にしよう。さきに自己紹介を済ませてしまわないか」
戦士「……話があちこち行くと、混乱する」
91 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:24:07.75 ID:6WORrKgWP
勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもある」
戦士「……形見?」
勇者「『世界に一人しか存在できない』んだったら、そういう事だろう?」
戦士「……すまん」
勇者「それこそ気にするな」
勇者「……俺達が、倒せば良いんだ。今度こそ」
勇者「……俺は『勇者』ってだけで、まだまだ弱い」
勇者「七光りに頼ってばかり……じゃな。だから……頼りにしてるよ?皆」
戦士(どちらにせよ、この『光輝く剣』がこのままでは……この街近くの)
戦士(魔物すら倒せまい……)
戦士(やはり……守ってやらねば、なるまい)
戦士(俺も……強くならねば……!)
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「……では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。実戦経験は……無いに等しい」
戦士「まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
魔法使い「……そうなの?」
戦士「俺程度の奴など五万と居るのはわかりきっているだろう」
戦士「……闘技大会を見て、思った。正直、絶望にも近かった」
魔法使い「…… ……」ビクッ
僧侶「…… ……?」
101 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:30:32.45 ID:6WORrKgWP
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ」
戦士「…… ……父から譲り受けた鋼の剣だ」シャキン
戦士「……俺も、当分、新調しなくても大丈夫だろうと思う」
勇者「……王国の剣の紋章!」
戦士「……父が……」
僧侶「この国の騎士様でいらっしゃるのですか?でも……」
僧侶「譲り受けた、と言う事は……貴方も、騎士様……?」
戦士「……否。俺は……勇者様に着いていきたいと」
戦士「何となく、だ。本当に何となくだが、幼い頃から思っていた」
戦士「……それを知って知らず、か。父は、俺の入団を認めなかったんだ」
勇者「え?騎士だと……駄目、なのか?」
戦士「否……そうじゃない。『俺の轍を踏む可能性が高い』と」
僧侶「お父様の……?」
戦士「…… ……俺の父は、騎士団長だ」
魔法使い「!」
魔法使い(思い出した……! 私が、闘技大会に出場した時)
魔法使い(……手当を受けろと、話しかけてきた男)
魔法使い(確かに、『父が騎士団長だ』と言っていた……!)
勇者「騎士団長様の、息子!?戦士が!?」
戦士「……ああ」チラ
魔法使い「……!」
戦士「お前は忘れたかもしれないが……俺は、覚えている」
戦士「……試合も見ていた。結果は、残念だったが……」
魔法使い「…… ……恥ずかしい所、見せちゃった、わね」
僧侶「え!?」
111 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:36:31.82 ID:6WORrKgWP
魔法使い「……自己紹介ついでにその辺も話すわ」ハァ
魔法使い(……覚えて、等。居て欲しくなかった)
魔法使い(否。駄目よ、魔法使い!自信……持たなくちゃ……!)
魔法使い「……私の両親は…… ……」
魔法使い「魔導の街の、領主の血筋よ」
僧侶「!?」
僧侶(魔導の街……あの、街の人達は……)
僧侶(……しかも。領主の血筋……でも、この人……魔法使いさん、は……)
魔法使い「…… ……父と母と加護は違うけれどね」
勇者「ん?加護って……遺伝、とかじゃ無いのか?」
魔法使い「その辺は後にしましょう。長くなるわ」
魔法使い(……悪意なんて無いのは解ってる……けれど)
魔法使い(…… ……)ハァ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……ご免なさい。ええと。加護は違うけれど」
魔法使い「……私の師でもあるわ」
魔法使い「家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
121 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:42:52.04 ID:6WORrKgWP
魔法使い「加護とかの話は後にして……さ、次どうぞ?」
僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは……様々な教会に遣えていました」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……弓!?」
僧侶「え、あ、はい……」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……これ、です」ス……
勇者「随分と細いな……ちょっと失礼……うわ、軽ッ」
僧侶「これは『エルフの弓』です」
魔法使い「エルフ……の、弓?」
僧侶「はい……あの、私……孤児、なんです」
僧侶「……拾って、育てて下さった神父様のお話によると」
僧侶「…… ……」
僧侶(どこまで……いいえ、流石に……言えない……!)
僧侶(でも……!)
僧侶「……母、であろう方が残してくれたもの、と」
魔法使い「貴女も……形見、だと言う、のね」グッ
僧侶「……そう、ですね。あの……?」
魔法使い「いえ……その、何だか」
魔法使い「話しにくいこと、話させた様で……ご免なさい」
魔法使い(……ッ 嫉妬、じゃない!これは嫉妬なんかじゃ無い!)
魔法使い(私、この子に、妬いてなんか……ッ)グッ
勇者「…… ……」
僧侶「だから……大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
131 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 00:58:22.19 ID:6WORrKgWP
僧侶「あの。それより……一つ、お聞きしても宜しいでしょうか」
勇者「え……俺に?」
僧侶「あ……はい。その……勇者様の、その……『光の剣』」
僧侶「で、宜しいでしょうか……それ」
僧侶「……修理、されない、のですか」
戦士「俺から……話そう。知っていると思うが……」
魔法使い「……鍛冶師様、よね」
戦士「……ああ」
勇者「騎士団長のお父さん……だよな」
戦士「そうだ。お爺様が亡くなって……この国の騎士達は」
戦士「……その、光の剣の修理に使ったという鉱石の取れる洞窟から」
戦士「軍を引き上げた。鍛冶を研究していた部隊も……解散はしていないが……」
魔法使い「実質それに等しい?」
戦士「……俺も、聞いただけだけどな」
戦士「親父は……あまり詳しくは教えてくれなかったし」
僧侶「鍛冶師様は……確か、鍛冶師の村の出身、でしたよね」
魔法使い「詳しいわね」
僧侶「私を育てて下さった神父様の家が、鍛冶師の村のすぐ近くだったのです」
僧侶「……お若い頃は、よく鍛冶師の村の教会まで行ってらしたのですが」
僧侶「足を悪くされてからは……」
戦士「…… ……」
僧侶「ですが、色々、お話し下さいました。ですから……」
僧侶「盗賊様……この国の初代国王様と、その旦那様である鍛冶師様のお話は」
僧侶「……少しだけ、ですが知っています」
魔法使い「そうなんだ……」
僧侶「ええ。それに…… ……ッ」ハッ
魔法使い「ん?」
僧侶(……港街の教会に居たことは、言わない方が良い)
僧侶(時間の説明は……出来ない……!)
141 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:10:21.51 ID:6WORrKgWP
僧侶「……いえ。此処まで旅する間に、色々聞きましたし」
戦士「鉱石やら洞窟やら、詳しいことは解らん……が」
戦士「魔法剣、とやらの扱いは酷く難しいのだと聞いた事がある」
戦士「……失われて行く技術なのだと、お爺様は寂しそうに話していらっしゃった……と」
魔法使い「そう……魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いらしいわ」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できない、と」
魔法使い「……昔、魔導の街の図書館で読んだわ」
魔法使い(懐かしいわね。メイドの目を盗んで……)
魔法使い(……加護の勉強をする振りをして、読んだ本に書いてあった)
魔法使い(私に……優れた加護があると錯覚してから)
魔法使い(……手のひらを返した様に、信用を置いてくれたあの、女)
魔法使い(…… ……そうだわ。私、あの紫の瞳の男性に助けて貰ったんだ)
魔法使い(…… ……何となく、勇者様に似てた気が……する)ジィ
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「あ、ご免なさい……!」
勇者「何だよ、人の顔じっと見て……」
魔法使い「いえ……は、話を戻しましょ!」
勇者「?」
魔法使い「ええと、そうね……魔法剣ね!」
勇者「そもそも魔法剣って……何なんだ?」
僧侶「一般的には……剣に魔法を宿らせた物、ですよね?」
戦士「……だと思う、が」
151 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:19:09.46 ID:6WORrKgWP
魔法使い「人……否、生きとし生けるもの全ては加護を持つ、って言うのは」
魔法使い「知っている……わよね?」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
魔法使い「私の紅い瞳で連想する物は何? ……僧侶の蒼、戦士の緑……そして、勇者様の金」
勇者「……炎。水? ……ええと、緑。それから……光、か」
僧侶「そうです。100%見た目通りでは無いとも言われていますが……」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「稀に居るそうよ。私は会ったこと無いけれど……」
勇者「『絶対』は無い、って奴か」
勇者「……母さんが良く、言ってたな」
魔法使い「そう……100%瞳の色で判断できるわけじゃ無い」
魔法使い「でも……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「……はい。『感じ』ます」
魔法使い(て、事は……彼女には、ばれている、のね……)
魔法使い「……瞳の色だけは、変えられないとも言うのよ」
勇者「主に加護を表すから、か」
魔法使い「でしょうね……髪や肌の色は変えられても、ね」
魔法使い「……偽れないのね。人間は」ハァ
勇者(さっきから……時々、表情が曇る)
勇者(…… ……誰でも、秘密にしたいことの一つや二つ、あるよな)
勇者(いくら『仲間』だとは、言え……しかも、俺達は出会ったばかり)
勇者(知り合ったばかり、だ)
勇者(しかし…… ……このままで……良い、んだろうか)
勇者(だからって……食い下がって聞き出すのも……違う、よな)フゥ
161 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/17(土) 01:21:46.59 ID:6WORrKgWP
無事にスレも立てられた事だし、今日はこの辺でお休み!
また明日、お出かけするので時間があれば!
17名も無き被検体774号+:2013/08/17(土) 01:22:33.71 ID:Tx+ThSFei
まってたよBBA無理しないでね
181 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 10:01:07.73 ID:8SEL+NTvP
おはよう!
また電車でかなー
19名も無き被検体774号+:2013/08/18(日) 10:57:46.23 ID:8SEL+NTvP
僧侶「魔法剣が、刀身に魔法の力を宿したものであるのなら」
僧侶「……その、勇者様の光の剣は……」
僧侶「…… ……」
戦士「……どうした?」
僧侶「いえ……先程見せて頂いた時に、確かに剣からも光の力を感じました」
僧侶「……それも、勇者様から感じるものと、全く同じ力、を」
戦士「? ……勇者様の剣なのだから、別におかしく無いだろう?」
魔法使い「……形見、何でしょう?」
勇者「え?あ、ああ……」
魔法使い「それに……実際に修理されたのは鍛治師様……なのよね?」
戦士「??」
僧侶「勇者様のお父様も『勇者』でいらっしゃったのですから」
僧侶「光を感じるのは……おかしく無いんです。鍛治師様の技術で」
僧侶「『勇者の光』を剣に注いだとすれば」
戦士「だから……」
魔法使い「確かに、同じなの?」
201@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 11:11:26.82 ID:8SEL+NTvP
勇者「……父さんの力を感じないとおかしい、て事?」
僧侶「はい。親子で、同じ『勇者』と言えど……別の人間でしょう?」
僧侶「全く……同じ、と言う事は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「……理解してる?」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者「もう糖分消費したのかよ……」
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「……疑う訳では無いけど」
僧侶「いえ。言いたい事はわかります。勘違いじゃ無い……と、確かな事は言えません」
魔法使い「そもそも、どうして金の髪の勇者様の時に修理が必要だったのかしら」
勇者「あ……そう、だよな……」
戦士「元々が古い物なのかもしれん。修理したが魔王との激戦には耐えられず……」
僧侶「でも……困りましたね」
僧侶「もし、魔王を倒すのに、光の剣が必要だとするのなら」
勇者「そう……だな」
勇者「……これじゃ、な」ハァ
211@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 22:47:49.12 ID:8SEL+NTvP
やっと仕事おわた!
帰ってかけたら!
221 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/18(日) 23:42:14.55 ID:8SEL+NTvP
魔法使い「この王国の軍、って……確か、引き上げた、のよね?その洞窟から」
戦士「……と、聞いている」
僧侶「遠い、のですか?」
戦士「船があれば行けるだろうが……」
勇者「……この剣でしか、魔王が倒せないなら」
勇者「行く必要はあるだろう。だけど……」
魔法使い「『誰が直すのか』よね?」
勇者「うん。 ……鍛冶師様はもう……」
戦士「……お爺様の研究チームも、だな」
僧侶「取りあえず、この大陸を出ましょう?」
僧侶「……頼れば、勿論……船ぐらい、貸して頂けるでしょう。でも」
僧侶「もし、本当に必要なのなら」
僧侶「……自力で、得る方が」
魔法使い「そう、よね……」
勇者「……うん」
戦士「鍛冶師の村へ行けば……有力な手がかりがあるかもしれん」
戦士「お爺様の出身の地だ」
魔法使い「そうね。なら……魔導の街へも寄って見ましょう?」
魔法使い「……きっと、力を貸してくれるわ」
勇者「ああ、そうか。そうだよな、魔法使いは……」
魔法使い「……ええ」
僧侶「では、まずは船着き場へ行かないと行けませんね」
僧侶「この街へ来る途中、小さな街……村?がありました」
戦士「新しく出来たという街だな」
僧侶「はい。まずはそこを目指しましょう」
魔法使い「そうね……ゆっくり、進みましょう」
魔法使い「時間、掛かっても……じっくり経験を積んだ方が良いわよね」
戦士「……決まったな」
勇者「良し。じゃあ、まずはこの大陸の新しい街とやらを目指そう」
23名も無き被検体774号+:2013/08/19(月) 01:42:25.11 ID:iZMNLMC8i
BBA幼女といっしょに寝ちゃったかお疲れ
241 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/19(月) 13:31:27.21 ID:jlyi7of8P
おはよう!
今日は回線工事が二時からあるらしいorz

夕方これたらー
251@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/19(月) 22:43:00.70 ID:jlyi7of8P
何か工事入ってからPCが繋がりませんよ?
困ったのぅ( ゚д゚)
26名も無き被検体774号+:2013/08/19(月) 22:45:19.30 ID:EJUUGTHq0
線刺さってる?
271 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 09:48:31.76 ID:XMvQehRJP
おはよう!何とか復活しました!
281@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 11:06:42.42 ID:XMvQehRJP
……
………
…………

剣士(……勇者達は街を出たか)
剣士(俺が選ばれ無かった以上……もうこの街に用事は無いが……)

グイッ

剣士(!?)
剣士「……ッ 誰だ……ッ」
母親「シッ……私よ」
剣士「……お前……ッ」
291@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/20(火) 11:18:31.25 ID:XMvQehRJP
母親「……残念だったわね」
剣士「そう思ってる様には見えんがな」
母親「二人してフードすっぽり被ってれば表情なんかわからないでしょ」
剣士「……声だ」
母親「フン……」
剣士「…… ……何の用だ」
母親「行く当ては?」
剣士「お前に……何の関係がある」
母親「忘れたとは言わせないわよ?」
母親「……お父様の書類が無ければ、勇者との対面も果たせなかったでしょ」
母親「結果、連れて行って貰えなかったとしてもね」
30名も無き被検体774号+:2013/08/20(火) 17:48:57.81 ID:4vamoo2+0
okan
311 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:00:07.95 ID:XMvQehRJP
剣士「…… ……」
母親「……本当に歳を取らないのね」
剣士「……それこそ、フードを被っていて何が解る」
母親「知らないの?手や首にこそ……『人』って言うのは年齢が出るのよ」
剣士「…… ……」
母親「それじゃあ、困るでしょう?」
母親「……それに、勇者は必ず…… 『うちの街』に来るわ」
剣士「…… ……」
母親「貴方は否応にも目立つ。登録所では勇者が居たから霞んだだけだって」
母親「……解って居るんでしょう」
剣士「まるで見ていた様な口ぶりだな」
母親「『見ていた』……のよ。私では無いけれどね」
剣士(偵察……か)ハァ
母親「あの子は試合が終わっても帰って来なかった」
母親「……負けたから帰りにくかったんでしょうね」
母親「でも、きっちりと勇者の仲間になった。選ばれた」
剣士「だからと言って、何故『帰ってくる』等と断言できる」
母親「……此処では話せないわ」
剣士「…… ……そんな無茶な話があるか」
母親「でもこれは『事実』」
剣士「…… ……」
母親「誰も監禁しようなんて気は無いわ」
母親「……万が一、違えば出て行けば良いだけでしょう?」
321 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:07:27.06 ID:WJHyl8KsP
剣士「……『恩もある』と続けたいのか」
母親「そうね。貴方は借りは返すと約束した」
母親「……誰も、取って食いやしないから安心しなさいよ」
剣士「…… ……」
母親「続きは船でね。残念ながら、特別便は用意できなかったけれど」
剣士「……不要だ、そんな物」
母親「返事と受け取るわよ……半刻後。待ち合わせは甲板の上」スタスタ
剣士「…… ……」
剣士(……手や、首、な。成る程)
剣士(老けたのはあの女と……恐らく、伴侶の男や、メイドも)
剣士(そして領主も)
剣士(…… ……変わらないのは、俺だけか)ハァ
剣士(半刻後…… ……魔導の街、か)

スタスタ

魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(何を話してた、か迄は聞き取れなかったな)
魔導将軍(そんな事したら多分、向こうにも……ばれちゃう)
魔導将軍(……何処に行くのか、もう少し……追ってみる、かな)
魔導将軍(…… ……魔王に。勇者に、そっくりな紫の瞳の男)
魔導将軍(…… ……彼が、特異点?)
魔導将軍(でも、エルフの血を引く娘……あっちも気になるんだけど……)
魔導将軍(あっちは、そのうち会える……わね)
魔導将軍(……全く。后みたいに器用な真似、出来ないっての!)ハァ
331 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 00:33:32.79 ID:WJHyl8KsP
……
………
…………

勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる……んだよな?」
戦士「ああ。森の途中に小高い丘がある。その付近に街が出来ている……筈だ」
僧侶「そうです……戦士さん、行かれた事は……無い、のですか?」
戦士「俺は街から出ることは無かったからな」
戦士「幼い頃に連れて行かれた事があるかどうか……までは、覚えて居ない」
魔法使い「不思議な場所、よね」
僧侶「え?」
魔法使い「始まりの街に来る時にも通ったけど……」
魔法使い「……随分、空気が澄んでいて、心地良かったわ」
僧侶「……お墓、があるんですよね、確か」
勇者「墓?」
僧侶「ええ……その。聞いた話、ですけど」
僧侶「……『エルフの加護』が、どう、とか」
魔法使い「…… ……エルフ?」
僧侶「はい……あの。詳しい事は……解りません、けど」
戦士「お祖母様の知人、とか言う……エルフが眠っているらしい」
勇者「そうなのか?」
戦士「酔っ払って帰って来た親父が言ってたに過ぎん、がな」
戦士「……『エルフの加護』とやらで浄化された美しい場所だと」
僧侶「…… ……」
戦士「素面の時に訪ねた事もあったんだが、詳しい話は知らない、んだそうだ」
戦士「…… ……ただ、二つ。墓があるのだ、と」
僧侶「二つ…… ……」
僧侶(多分……『娼婦様』)
僧侶(私も、詳しくは聞いていないけれど……)
僧侶(あの教会にあった美しい女性の小さな、モニュメント)
僧侶(……隻腕の祈り女の)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「あ、いえ……」ハッ
僧侶「……エルフ、と言うのは、それ程……特別な物、なのでしょうか、ね」
34名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 03:05:58.23 ID:YJtC7+Ij0
BBA手うp
35名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 12:20:00.03 ID:K6vMAdf+i
B.B.A.
ま、だ、??
361@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 12:22:59.03 ID:WJHyl8KsP
おはよう!
今から出勤!
電車で!
371@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 12:59:56.15 ID:WJHyl8KsP
勇者「俺は……名前、てか」
勇者「存在してる、て位しか知らないけど……」
戦士「俺も似た様なもんだ」
僧侶「……」
勇者「僧侶と魔法使いは、街には行った事がある、んだよな?」
魔法使い「通過した、に等しいけどね」
僧侶「私も少し滞在しただけです」
戦士「そこで一度宿を取る予定で良いだろう。港まで辿り着けるだろうとは」
戦士「思う、が……」
勇者「無理する必要は無いし、出来もしないだろう」
381 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:14:17.74 ID:WJHyl8KsP
ただいま!
39名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 22:20:39.08 ID:kgdIaRl4P
おかえり!お疲れ様!
401 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:35:02.44 ID:WJHyl8KsP
戦士「……だな。こうして立ち止まって居ても仕方あるまい。行こうか」
僧侶「あ、はい……!」
僧侶「それにしても……いつ見ても。美しい流れですね」
魔法使い「こうやってると……一見平和に見える、けどね」
戦士「……油断するなよ」
魔法使い「大丈夫……ああ、僧侶! そんなにのぞき込むと危な……ッ」
僧侶「大丈夫ですよ……キャッ」

バッシャーン!

勇者「僧侶!」
僧侶「あ、ああ……吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくな……ッ ……!?」

ズズズ……
ズルズルズル……

魔法使い「!! 僧侶、後ろ!!」

ギャアアアアアアア!

僧侶「……ッ」バッ
僧侶(しまった、近い……これじゃ、弓が……ッ)
魔法使い「頭下げて! ……ッ 炎の手よ、その拳で焼き尽くせ!」
戦士「僧侶、動くな……ッ」
411 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:44:33.02 ID:WJHyl8KsP
僧侶「!」ギュッ
勇者「馬鹿、目を閉じるな……!」

ギャア……ッ ギャウゥ……ッ

魔法使い「……大して、効いてない……ッ !?」
戦士「糞……ッ 勇者、僧侶を引っ張り上げろ!」タタタ……ッ
勇者「あ、ああ……ッ 僧侶!」

剣士「動くな! ……ッ 雷よ!」

ピシャアァン!
ギャアアアアアアアアアアアアア!

……バシャアアアアアン!

僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「誰だ!?」
魔法使い(雷の魔法!?)
勇者「と、とにかく掴まれ!」グッ
僧侶「あ、あぁ……すみません……」クシュンッ
魔法使い(…… ……否。それより、今の……雷は……!?)
剣士「…… ……」スタッ
戦士(木の上から……!?)
勇者「あ!」
剣士「…… ……」
勇者(……登録所に居た、男……!?)
421 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 22:54:12.48 ID:WJHyl8KsP
勇者(間違い無い……!闇色の髪に、紫の瞳!)
勇者(……俺に、そっくりな……男……)
魔法使い(いくら……水棲の魔物、炎が聞きにくいのだろうとは言え)
魔法使い(……地面を伝って、痺れが伝わる。それに、紫の瞳……!)
魔法使い(まさか……彼!? 否……ッ まさか!)
僧侶(……紫、の……瞳……ッ 見た事無い!)
僧侶(それに……この、妙に……苦しい様な、悲しい様な、切ない様な)
僧侶(……否。歓喜にも似てる……何、これ……!これ、まるで……!)
戦士(勇者様にそっくりじゃ無いか……!)
戦士(……一撃、だった。一撃で……それに……)
戦士(何故、木の上……など、に。まさか……つけていた!?何者だ!?)
剣士「…… ……無事、か」
勇者「あ……ありがとう……御座いました」
剣士(何をしていたんだか……まだこんな所に居るとは)
剣士(……長居はできんと咄嗟に身を隠し、別の道を行こうと思ったが)
剣士(……まさか、捨て置いていく訳にも……否、しかし……)
剣士「悪いが急ぐ。ここら辺は水棲の魔物が多い」
剣士「……港を目指すなら、森を行け」クルッ
魔法使い「ま、待って!同じ方向に行くのなら……!」
勇者「魔法使い!」
魔法使い「!」ビクッ
勇者「……貴方、登録所に居た人ですよね?」
剣士「……俺は『共に行く者』では無い」
剣士「選んだのはお前だ、勇者様……自信を持て」

スタスタ

剣士(……余りにも未熟だ。だが……)
剣士(彼らは勇者に、運命に選ばれた者)
剣士(…… ……助けの手を差し伸べるべきでは、無いのだろう)

……
………
…………
43名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 23:02:52.08 ID:tf5cafLrP
話が・・・若干ずれてきているな・・・
441 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:04:40.10 ID:WJHyl8KsP
母親「随分遅かったわね。来ないのかと思ったわ」
剣士「……半刻、と言うのが短すぎやしないか」
母親「私はたどり着いているわ」
剣士「…… ……」
母親「部屋は二部屋。同じが良かった?」
剣士「……話の続きを」
母親「……フン」
剣士(まさか勇者達に会ったとは言えまい)
剣士(しかし……大丈夫なのか?俺の心配する事では無い……のだろうが)
母親「そんなに勇者が気になるの?」
剣士「何?」
母親「心ここにあらず、ね」
剣士「……話の続きを、と言った筈だ」
母親「……ッ まあ、良いわ」フゥ
母親「『何故魔導の街に来ると言い切れるか』ね」
剣士「…… ……」
母親「魔法使いが居るから、よ」
剣士「あの娘か……逆とは考えんのか」
母親「逆?寄りつかない、と言いたいの?」
母親「あはは! ……あり得ないわね。あの子はずっと、私達の顔色を伺って育ってきた」
母親「『今度こそ褒めて貰えるはず、喜んでくれるはず』って」
母親「思っているに決まっているわ」
剣士「…… ……」ハァ
母親「言った筈よ。違えば貴方は何処へでも出て行けば良い」
母親「『絶対は無い』のよ」
剣士「……矛盾を話していると気がつかんものか」
母親「『信じている』のよ。自分の娘をね」
剣士(……突っ込む気にもなれん)
母親「貴方に損は無いでしょうが。可能性を真っ向から否定するのも」
母親「馬鹿らしいでしょう? ……それに。そんな呆れた様な顔をするなら」
母親「それこそ『どうして着いた来たの?』と……聞きたいわね」
剣士「…… ……」
母親「反論できないでしょう」クスクス
45名も無き被検体774号+:2013/08/21(水) 23:10:28.12 ID:3ToP4iRwi
やっと追いついた
読むほどに面白い
461 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:12:40.88 ID:WJHyl8KsP
剣士「……魔法使いが望んだところで」
剣士「勇者が必要無しと判断すればどうするつもりだ」
母親「街に寄る必要?」
剣士「ああ」
母親「……まあ、それは着いたらゆっくり、ね」
母親「此処では言えない。それは解って頂戴」
母親「……今度こそ、歓待、受けてくれるわね?」
剣士「拒否権はあるのか」
母親「お客様をもてなしたいだけよ。物々しいわね」
剣士「…… ……」
剣士(何を企んでいるのか知らんが……)
剣士(……身を隠すには打って付け、か)
剣士(…… ……しかし、な。これで……良かったのか?)
剣士(選択を誤っていなければ……良いが)

……
………
…………

僧侶「あ、あの……すみません、私の……所為で……」
戦士「……そんなんじゃ無い。お前の所為では……」
勇者「そうだ。とにかく……無事で、良かったと……」
勇者(喜ぶべき……なんだよな?)
勇者(……空気が、重い)ハァ
魔法使い「……ご免なさい」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「……先を急ぎましょう。まだ、始まりの街から出て少しよ」
魔法使い「とにかく、次の街にたどり着かないと……!」スタスタ
僧侶「あ……魔法使いさん!」タタタ
勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……」
勇者「行こう、戦士。離れる訳には行かない」タタタ
戦士「あ、ああ……先頭は任せるぞ。殿に着く」

スタスタ……スタスタ……
471 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:17:55.20 ID:WJHyl8KsP
勇者(……俺にそっくりな、紫の瞳の男)
勇者(何者だ!?)
勇者(……随分と威力の強い……雷の魔法を使っていた)
勇者(俺は……選択を間違えた……否、違う!)ギュッ
勇者(……戦士も、僧侶も、魔法使いも)
勇者(『直感』で選んだ。目を引いたんだ。彼らしか居ないと……!)
勇者(俺は、勇者だ! ……間違えて無い。間違えてなんか、無い!)
勇者(『あの紫の瞳の男を選んでおけば』なんて……)
勇者(思っちゃ、いけないんだ……!)

クシュン!

勇者(……あ ……ッ)チラ
勇者(怪我は無かったみたいだが……僧侶、ずぶ濡れだった……)
勇者(……街まで、どれぐらいだ?)
勇者(日が……西の空が、紅い。もうすぐ日暮れ……)
勇者(……先に、身体を温めてやらないと、風邪を……否、でも……!)
勇者(しっかりしろ、俺!お前は、『勇者』なんだ!)
勇者(……でも、こんな所で野営なんて……!)
勇者(……あれ、でもなんで……僧侶、最初は……濡れて無かった、んだ?)
481 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:24:26.51 ID:WJHyl8KsP
僧侶(寒い……ッ)ブルッ
僧侶(……でも、我が儘なんて言えない……ッ)
僧侶(言える雰囲気じゃ無い……誰も、一言も喋らない)
僧侶(すぐ近くを歩いているのに、空気が……冷えてるのが解る)
僧侶(特に…… ……)チラ

魔法使い「…… ……」

僧侶(魔法使いさん……)フゥ
僧侶(……『同じ方向に行くのなら』)
僧侶(勇者様の一声で黙られた、けれど……)
僧侶(……気がついてない振りなど、出来ない)
僧侶(信用……されて、無いのかな)
僧侶(仕方無いですよね。出会ったばかり……でも)
僧侶(……あの人、誰? 何者……)
僧侶(あの『苦しくて悲しくて切なくて、それでいて喜ばしい』感じは)
僧侶(……覚えがある!)
僧侶(でも、そんな筈は無い!)
僧侶(命の喪失と誕生は、魔王と勇者様のもの……!)
僧侶(……ッ)クシュンッ
僧侶(ばれちゃった……よね……)
僧侶(勇者様と、戦士さんは…… ……魔法使いさん、は……)
僧侶(……ちゃんと、話さないと……私達は、仲間なのに……!)
491 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:35:18.86 ID:WJHyl8KsP
魔法使い「…… ……」

魔法使い(あの男の人は……私の知る紫の瞳の人とは別人、なの?)
魔法使い(……否。それは……良い。今は……)
魔法使い(勇者様……気分、害したわよね。私…… ……)
魔法使い(勇者様より、仲間より……あの人を頼ろうとした)
魔法使い(……知り合いかもしれないから、なんて……!)
魔法使い(…… ……言い訳にも、ならないわよね)
魔法使い(あの男の事は、街に帰れば解る)
魔法使い(……お父様もお母様も、お爺様も、許してくれるわ)
魔法使い(勇者様の仲間になったんだもの……!)
魔法使い(そうすれば、私に、優れた加護が無い事も…… ……!)
魔法使い(駄目! ……僧侶は多分…… ……ッ)
魔法使い(……負けたくない……ッ 僧侶には……ッ)
魔法使い(謝らなきゃ、勇者様に!許して貰わないと……ッ)
魔法使い(それに…… ……)チラ

戦士「…… ……」

魔法使い(彼は、戦士は覚えて居た)
魔法使い(……あの時は、光の剣とかの話で、うやむやになったけど)
魔法使い(闘技大会の事…… ……火傷の跡、覚えてるはず)
魔法使い(……もう、いや!幻滅されるのは……いや……ッ)ギュッ
501 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:41:18.68 ID:WJHyl8KsP
戦士「…… ……」

戦士(何者なんだ?あの男…… ……)
戦士(勇者様と同じ顔をしてた。色というのは……凄いな)ハァ
戦士(印象があんなにも違う。まるで『光と闇』だ)
戦士(…… ……しかし、この雰囲気は……まずい)
戦士(出会ったばかり、とは言え……)
戦士(……あの男の言葉通り、森の中を進んで居るが)
戦士(皆……気持ちが此処に無い。否、俺も……か)ハァ
戦士(勇者様……多分前が見えていない。闇雲に進んでも……)

勇者「…… ……」

戦士(……背に覇気が無い。それに……僧侶のくしゃみも何度目か)
戦士(魔法使いの……あの言葉も気になる)
戦士(…… ……仕方無い。未熟を未熟と認めることも)
戦士(大切な筈だ)
戦士(『決して驕るな』…… ……ですよね、女剣士様)ギュッ
戦士(……ここは、随分心地が良い。良い場所だ……此処、しかないだろう)ピタ
戦士「勇者様!」
勇者「え?」ピタ
魔法使い「……?」
僧侶「戦士さん……?」
511 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:45:46.28 ID:WJHyl8KsP
戦士「……休もう」
勇者「え!?」
戦士「始まりの街から大して離れていないのは解って居る」
戦士「だが、僧侶を火に当たらせた方が良いだろうし……」
僧侶「あ、いえ、私は……ッ」
戦士「……魔法使いも、顔が蒼い」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……戦士、野営の準備をしよう」
戦士「ああ。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがとう」
僧侶「す、すみません……」

……
………
…………

パチパチパチ……

僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
521 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:51:15.09 ID:WJHyl8KsP
勇者「……僧侶と魔法使いは、休んでくれ」
勇者「見張りは俺と戦士でやるから……良いよな?」
戦士「当然だ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「何してる?二人とも」
僧侶「……いえ。すみません、お言葉に甘えます」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「私がこの侭体調を崩したりしたら、それこそ足を引っ張ってしまいます」
僧侶「……だから」
魔法使い「…… ……」
戦士「お前もだ、魔法使い」
魔法使い「でも……ッ」
戦士「魔力、て言うのは無限では無いのだろう?」
戦士「……良いから、休め。明日、又……戦闘があれば」
戦士「頼ってしまうのだから」
魔法使い「…… ……ありがとう」
勇者「…… ……」
僧侶「では、おやすみなさい」
魔法使い「……おやすみ」
戦士「先に俺が見ていよう。勇者様も休ん……」
勇者「……戦士は、凄いな」
戦士「え?」
勇者「流石、騎士団長様の息子、だ」ハァ
戦士「…… ……勇者様?」
勇者「俺は……勇者なのに。僧侶の……仲間の体調とか」
勇者「…… ……その」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
531 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/21(水) 23:58:10.29 ID:WJHyl8KsP
勇者「俺達は仲間だ。だけど……俺は……」
勇者「『導いて』いける自信なんか…… ……ッ」
戦士「…… ……まだ、出会ったばかりなんだ」
戦士「俺は……多分、僧侶も魔法使いも」
戦士「まだ見ぬ『勇者』に幻想を抱いていた。それは……認める」
勇者「!」
戦士「だが、それは幻滅した、とかじゃ無い」
戦士「……上手く言えん。言えん……が……」
勇者「…… ……御免な、頼りない勇者で」
戦士「違う」
戦士「……『決して驕るな』なんだ」
勇者「驕るな?」
戦士「ああ。女剣士様が、ずっと言ってた言葉だ」
戦士「……親父にも言われ続けてきた」
戦士「絶対は無い」
勇者「……それは、母さんにも言われたな」
勇者「世の中に絶対は無い」
戦士「出来ない事は頼ってくれ。俺が頼りなければ」
戦士「僧侶でも魔法使いでも良いんだ」
戦士「……皆で、考えて一つずつ解決していけば良いんだ」
戦士「俺達は、未熟だ…… ……あの、紫の瞳の男」
勇者「……ッ」
戦士「あいつを選んでいれば、旅は楽だったかもしれん」
勇者「……違う!俺は、俺が選んだのは……ッ」
戦士「そう、思ってくれるなら」
戦士「……酷い言葉でも良いさ。思っている事を話して欲しい」
戦士「まずはそこから、だろう?」
541 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:05:33.08 ID:ILonk6kOP
勇者「戦士…… ……」
戦士「偉そうに言ってしまって済まない。だが……勇者様が悩んでいたら」
戦士「やはり……『仲間』として心配になる」
勇者「…… ……」
戦士「俺も……否、俺自身にも、もう一度」
戦士「『驕るな』と言い聞かせねばならん」
勇者「え?」
戦士「俺は……その、勇者様の小さな背を守ってやらねば、と」
戦士「そう、思っていた。だが……それは『驕り』だろう」
勇者「……共に、高め合って行けば良いんだよな」
戦士「ああ。それは……あの紫の瞳の男を選んでいれば出来にくかったかもしれん」
勇者「あの人……強そうだったもんな」クス
戦士「悔しいけれどな」
勇者「……なあ」
戦士「ん?」
勇者「『様』はやめてくれ。明日、僧侶と魔法使いにも言う」
戦士「……勇者がそういうなら」
勇者「ああ…… ……あの人、何者なんだろうな」
戦士「……解らん、が…… ……そっくり、だな」
勇者「妙な既視感は……顔の所為なんだろうけどさ」
戦士「既視感?」
勇者「ああ……どこかで、会ったことある様な……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「似ているのは作りだけだ。印象も表情も違うぞ」
勇者「そうか?」
戦士「……まるで『光と闇』だ」
勇者「光、と…… 闇」
戦士「…… ……」
551 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:11:30.91 ID:ILonk6kOP
勇者「……謎だらけだよな」
戦士「考え出したらきりが無い」
勇者「そう、何だけど……」
戦士「とにかく、先に休め。明日は朝から……狩りでもしよう」
勇者「狩り!?」
戦士「非常食など準備していないだろう?」
勇者「……そうだな」
戦士「何度か経験がある。起きれば、僧侶を連れて行く」
勇者「え?」
戦士「弓を使えるのなら、頼れるだろう」
戦士「……お前は魔法使いを見ておいてやれ」
戦士「少し……様子がおかしかった」
勇者「……本当に、よく見てるな」
戦士「気のせいであれば良いんだがな」
勇者「……否、解った。だけど、だったら戦士が先に休んでくれ」
勇者「朝早いだろうし……俺は、少し元気が出たよ」
戦士「……そうか。ならば甘えよう」
勇者「ああ。三刻で起こす。頼りにしてるぜ」
戦士「了解……おやすみ、勇者」
勇者「……ああ」

……
………
…………

勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(解ってる…… ……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(『決して驕るな』 ……大丈夫だ)フゥ
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だった……それに、あの、俺にそっくりな男)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
勇者(仲間だ。信じるんだ。俺は……『勇者』だ!)
561 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:22:37.44 ID:ILonk6kOP
魔法使い(……眠れない)
魔法使い(戦士と勇者様は、何を話してたの!?)
魔法使い(私の……火傷の事……ッ)
魔法使い(気にしても仕方無い……何れ、バレる……ッ でも……ッ)
魔法使い(……ッ 嫉妬じゃ無い! この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は……父と母の娘!)
魔法使い(……特別じゃ無い。『雷』は特別なんかじゃない!)
魔法使い(私は勇者様に選ばれた!あの紫の瞳の男は、選ばれなかった!)
魔法使い(僧侶は……ッ ……ッ ああ……ッ)

僧侶(ん……物音……?)
僧侶(あの……影は、勇者様)
僧侶(では……休まれたのは、戦士さん…… ……)
僧侶(…… ……静か。風が気持ちいい)
僧侶(戦士さんが選ばれた場所。ならば安心できる。だけど……)
僧侶(…… ……これは、何なのだろう?)
僧侶(どうして私は、こうして……『感じる』の)
僧侶(『勇者』……は、特別)
僧侶(では……あの紫の瞳、の…… ……彼、は ……)
僧侶(エルフ、って…… な…… に……)スゥ

戦士(随分、偉そうな事を言ってしまったな)
戦士(……出しゃばりすぎて無ければ良いが)
戦士(あの紫の瞳の男……もし、あいつが居れば)
戦士(……否。勇者に気にするなと言っておきながら)
戦士(気にしているのは俺自身だ)
戦士(あれほどの力があれば……ん?)
戦士(あいつは確か、剣を握っていたな)
戦士(……しかし、魔法を使ったのもあいつだろう)
戦士(…… ……)ハァ
戦士(嫉妬だ。これは……俺は、剣もろくに……)
戦士(否! ……出来る事をすれば良いんだ)
戦士(……眠るんだ、戦士。勇者と変わってやらねば……)
571 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:25:40.85 ID:ILonk6kOP
……
………
…………

魔導将軍「悩みなさい、思いなさい」
魔導将軍「それが生きると言う事」
魔導将軍「……なんてね」
魔導将軍「ああ、時間食っちゃった。あの事務員……無事だったかな?」
魔導将軍「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
魔導将軍「さて……どうするかな」
魔導将軍(あの紫の瞳の男は……船で行っちゃったし)
魔導将軍(港街から何処に行くのか…… ……もう少しだけ、見ておくか)
魔導将軍「勇者、頑張るのよ? ……貴方なら。貴方達なら、きっと……」
魔導将軍「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
魔導将軍「人間ごっこ、か……」ハァ
魔導将軍(……不思議よね。私も……確かに人間だったのにな)
魔導将軍「さて……船は、と」

バッサバッサバッサ………
581 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/22(木) 00:26:36.73 ID:ILonk6kOP
限界!
ねますー!
また明日来れたら!
59名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 00:29:53.48 ID:GwbTc8Xpi
60名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 03:32:44.69 ID:j+t/hBsx0
剣士かっこいいなあ
61哀和【695枚】 ◆Aiwa///ScE :2013/08/22(木) 07:11:30.80 ID:4cqN29G+0
勇者は選択を間違えたのか・・・?
62名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 13:58:49.60 ID:C4Xzr/zt0
どうだろ?
剣士加入はループ前には無かった選択肢だけど
現パーティは全員が次世代の親でもあるから
変更すると歪みどころの話じゃない
63名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 16:47:17.11 ID:38ULeAra0
魔法使いがんばれー
64名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 16:51:51.25 ID:TfkO/61D0
特異点が僧侶なのか、
今回でループ脱出なのか、
そういや使用人、前作では闇の手に交替時で千年近くって言ってたから、歪み発生もかなり早いのか?

とりあえず仕事子育て大変やろけど無理なく頑張って
65名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 18:02:01.40 ID:UvJi9+vZO
剣士と船長の子供って今回は居ないのか?

戦士と剣士が同時に出てるなんて美味し過ぎる!
66名も無き被検体774号+:2013/08/22(木) 19:00:36.16 ID:JJtgPELfO
>>65
剣士と船長は行為はあったけれど、子供は出来てない
67名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 01:06:45.36 ID:Nsa7Etp2O
>>66 「俺は…魔王を倒す」に出てくる船長が剣士&船長(女)の孫と言う事は
そろそろ子供が出て来て良いと思う
681 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:22:47.73 ID:jBmJHkjkP
おはよー!
幼女が起きるまでー
691 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:39:28.53 ID:jBmJHkjkP
剣士「! ……あれは……」
母親「どうしたの。港街に……この街に用事なんか無いわよ」
剣士「……何でも無い。船は、あれか?」
母親「ええ。それがどうしたの」
剣士「…… ……否」
剣士(『特別便の用意など』か)
剣士(……相変わらず信用の置けん女だ)
母親「安心しなさいよ。こっちもちゃんと二部屋取ってあるわ」スタスタ
剣士(…… ……魔導の街に着くのは明日、か)スタスタ
海賊「どうぞ、お乗り下さい……すぐに出港致します」
剣士(……見た事の無い顔。当然だな)
剣士(もう……随分と昔だ)
母親「船室に案内して頂戴」
海賊「はい。此方へどうぞ」
剣士「…… ……俺はもう休む。話も無いだろう」
母親「あら。一杯ぐらい如何?」
剣士「結構」
海賊「此方と此方のお部屋にどうぞ」
剣士「…… ……」スタスタ。パタン
母親「……本当につれない男ね」フゥ
母親「私も休むわ。船長は?」
海賊「舵を握ってますから」
母親「そう……着いたら起こして」パタン
海賊「…… ……」ハァ

スタスタ

剣士(……母親は隣室、か)
剣士(しかし…… ……懐かしいな)
剣士(変わらない。相変わらず趣味の良い調度品)キョロ
剣士(また……この船に乗ることになるとはな)
701 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:45:05.54 ID:jBmJHkjkP
剣士(足音……聞こえなくなったな)
剣士(タキシードなど着ていたが……この船に乗って居る、と言う事は)
剣士(……海賊の一人なのだろうな)
剣士(…… ……船長は操舵室か)
剣士(会うべきでは……無いのだろう、が……)

カチャ、パタン

剣士「……」
剣士(扉の音……母親が外に出たのか?)
剣士(……違うな。話し声までは聞こえないが)

カチャ……パタン

剣士(母親が船長に依頼したのだろうな。何処でつながりがあったのか)
剣士(そこまでは……解らん、が)
剣士(…… ……船長の事だ。手広くやっているのだろう)

コンコン

剣士「! ……誰だ?」
船長「ルームサービスです」
剣士(この声…… ……船長、か!?)
剣士「頼んでいないが」
船長「……母親様からです」
剣士「…… ……入ってくれ」

カチャ

船長「失礼します」
711 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 06:53:23.06 ID:jBmJHkjkP
パタン

剣士「……適当に」
船長「はい」カチャカチャ
剣士(…… ……随分、老けた。当然……か)
船長(部屋の中でもフードも取らず……怪しい男だな)
船長(酒を持っていってやってくれと言われたのはいいが)
船長(……仕事とは言え、相変わらず良く解らない女だよ)フゥ
剣士(気がついていない、か……当然だ)
船長「……ではどうぞ、ごゆっくり」
船長「到着は明日の朝で御座います」
剣士「ああ。ありがとう……ああ、すまんが」スッ
船長「はい?」
船長(…… ……?何だ?唇に手を当てて)
剣士「……声を、出すなよ」ボソ
船長「?」
船長(おいおいおい、何だよこい……つ……ッ)
剣士「……」パサ
船長「……ッ!! ……け……ッ!」
剣士「シッ」
船長(まさか…… ……ッ 剣士!?)
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」フラフラ……ギュッ
剣士「…… ……」ギュ、ゥ
船長「剣士……、か……!?本当に……ッ」
剣士「……シィ」
剣士「母親は?」
船長「……三刻後、甲板に」ボソ
剣士「?」
船長「あの女にも酒を振る舞った。少ししたら眠るだろう」
剣士「…… ……解った」
船長「お前は口をつけるな。随分きついモンだ」
剣士「……」スッ
船長(頬を撫でる指も、変わらない。あの時の侭だ……)
721 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:00:57.12 ID:jBmJHkjkP
船長(歳を取ったのは、アタシだけ……か)
船長(……本当に、人間じゃ無いんだな)
船長(触れたい。触れて欲しい。だけど……)スッ
剣士「……船長?」
船長「……では、失礼致します」

パタン

船長(剣士…… ……ッ)ポロポロポロ
船長「……ッ」グイッ
船長(…… ……アタシ、は)
船長(……ああ……ッ)

タタタ

船長「!」ゴシゴシ
海賊「あ、船長」
船長「……どうした?」
海賊「メイドが呼んでましたけど」
船長「酒は持っていったぞ」
海賊「……報告を、だそうです」
船長「相変わらず面倒臭ぇな……まあ良い」
船長「行くよ……悪いが三刻後、舵を変わってくれ」
海賊「え?ああ……そりゃ構いませんけど」
船長「あいつは?」
海賊「魔導の街の人間は苦手だって、もうぼっちゃんと寝てますよ」
船長「…… ……そうか」ホッ
海賊「??」

スタスタ
73名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 07:06:58.96 ID:81qqbUs10
>>67
船長の孫ではあるが
剣士と船長の孫ではない
741 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:07:52.04 ID:jBmJHkjkP
船長(…… ……今日だけだ。今日……だけ……)

カチャ、パタン

メイド「お疲れ様です船長様。ご報告を」
船長「母親と連れの男に酒は振る舞ったぜ」
メイド「母親様は何と?」
船長「なるべく早くに魔導の街に着く様に、だとよ」
船長「……金も受け取った」
メイド「そうですか」
船長「お前達は着いたらすぐに降りろと伝えておけと」
メイド「はい。承知しています。後は……」
船長「……また、当分街に近づくな、って言いたいんだろう」
メイド「はい。何かありましたら、使者が向かいます」
船長「…… ……」
船長(本当に不思議な奴らだ。世界中に密偵とやらを送り込んでるとか言うが)
船長(……嘘じゃネェんだろうな。じゃなきゃ、都合良く行く先々で)
船長(アタシらに接触できる筈もネェ)
メイド「では、魔導の街に着くまで、私も休みます」
船長「ああ。何時も悪いね、物置部屋で」
メイド「お気になさらず。では」スタスタ

パタン

船長「…… ……」
船長(様子見て戻るか……)スタスタ
船長(……今日だけ、だ。本当に……今日、だけ……ッ)

カチャ……

船長(…… ……真っ暗だな。寝てる、のか?)
男「……ん?」
船長「悪い。起こしたか」
男「ああ、船長か……良いよ。大丈夫」
男「あ、電気はつけるなよ」
751 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:17:53.52 ID:jBmJHkjkP
船長「解ってる……チビは?」
男「寝てるよ」
チビ(スゥスゥ)
船長「……そうか」ホッ
男「もう海の上か?」
船長「ああ。着くのは明日の朝だ。お前も寝てろ」
船長「……苦手なんだろう、あいつら」
男「あの手の人間共はねぇ……」
船長「……ま、アタシも、だ。すぐに寝たのか?あれから」
男「こいつも苦手なんだろ。本読みながら寝ちまったよ」
船長「……誰に似たんだかな」クス
男「俺に似ても船長に似ても、頭は良くならネェだろうになぁ」クスクス
船長「否定できねぇな……残念ながら」
男「……魔導の街に着いたらどうするんだ?」
船長「前回もそうだったが、当分近づくな、だろうさ」
船長「じーさんとこでも行くか」
男「里帰りか」
船長「お前のな。いやか?」
男「……あのジジィ、また妙な彫刻とか増やしてなきゃ良いけどな」
船長「良い趣味してんじゃネェか……いつも親父を思い出すよ」
男「俺には審美眼なんてネェからなぁ」
船長「……準備しとけよ。暫くはバカンスだ」
船長「…… ……現実忘れるぐらい、楽しい事しようぜ」
男「……どうした?」
船長「え?」
男「暗くて表情まで見えネェが……」
男「……なんかあったか?辛そうな声だな」
船長「……こんな恰好させられて、慣れない敬語なんか使わされてみろよ」
船長「疲れもするぜ」
男「違いネェ」クスクス
船長「……行くよ。海賊に任せっぱなしにはできねぇしな」
男「無理すんなよ」
船長「ああ……ゆっくり寝とけ」
男「おやすみ、船長」ス……ギュ
船長「! ……ああ」チュ
男「ほっぺにちゅーとか可愛いことするなぁ」クスクス
761 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:26:50.43 ID:jBmJHkjkP
船長「……じゃあな。お休み」
男「おう」

パタン

船長(…… ……今日だけ、だ……ッ)

……
………
…………

剣士(……船長は……ああ、あれか)スタスタ
船長「……良いのか。マント無しで」
剣士「『行き過ぎた詮索は身を滅ぼす』ってのが教育方針なんだろう」
船長「…… ……お前は、本当に変わらないんだな」
剣士「……みたいだな」
船長「勇者に……会えなかったのか?」
剣士「否……選ばれなかったに過ぎん」
船長「お前が!?」
剣士「……以前の闘技大会の時」
船長「?」
剣士「始まりの街に居ただろう」
船長「……え」
剣士「……見かけたんだ。声をかける事は不可能だったが」
船長「……そう、か」フィ
剣士「…… ……」
剣士「悪かった。今日も……黙っておけば、解らなかっただろうに」
船長「……そんなに、見ないでくれ」
剣士「船長?」
船長「アタシはもう若くない」
剣士「……美しさは変わらん」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「あの時、は」
剣士「?」
771 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:34:34.35 ID:jBmJHkjkP
船長「あの女の娘……領主の孫娘、か」
船長「そいつを港街まで運んだんだ」
船長「……国王達も警戒してたのかもな。始まりの街へは」
船長「王国の船でしか入港できない事になってたからな」
剣士「……良いのか。俺にそんな事話して」
船長「……仲間、だからな」
剣士「…… ……」
船長「何故、魔導の街に?」
船長「何故あの女を知ってる……の方が良いか」
船長「……否。答え無くても良いんだが」
剣士「……魔導の街に行く、とこの船を下りただろう」
剣士「そういう事だ……この瞳に興味を持つのは」
剣士「想像に易いだろう」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「……剣士」
剣士「何だ」
船長「…… ……否」
船長(チビや男の事を、剣士に話しても仕方無い)
船長(……仕方無いんだ……ッ)
剣士「……忘れない、と言っただろう」
船長「…… ……忘れてくれても構わん、ともな」
剣士「過去に拘る生き方は出来ない、だったか」
船長「…… ……」
剣士「……元気でいるのなら、それで良い」
剣士「声をかけるべきで無いと思った。だが……」
船長「…… ……」
剣士「嬉しかった。それだけだ」
船長(……今日、だけ。今日だけだ!)ギュウ……!
剣士「船長……?」
船長「……忘れる日など無かった」
剣士「…… ……」ギュ
781 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:42:51.96 ID:jBmJHkjkP
船長「会えるなんて思っては無かったさ。けど……ッ」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「……船長」グイッチュ
船長「ア……ッ ……ン、ぅ」
剣士「…… ……」ギュ
船長「…… ……」ギュウ…… ス
剣士「…… ……」
船長「お前達を下ろしたら、アタシ達は南へ行く」
剣士「南?」
船長「ああ……当分街に近づくな、ってのも」
船長「……金の内なのさ」
剣士「……そうか」
船長「気をつけろよ、剣士」
剣士「?」
船長「良からぬ噂の絶えない街だ」
剣士「……ああ」
船長「お前なら大丈夫だろうが……その瞳に、あの……加護に捕らわれない力」
船長「知られて居るのなら……尚更」
剣士「…… ……ああ」
船長「……もう、会うことは……流石に無いだろうな」
剣士「……南に、何がある?」
船長「……チ ……否」
剣士「?」
船長「バカンス、て言えば南だろ」
剣士「そういう物か」
船長「……こんな時間に呼び出して悪かった」
船長「もう、ゆっくり休んでくれ」
剣士「……船長」
船長「何だ?」
791 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:48:23.87 ID:jBmJHkjkP
剣士「……忘れはせん」
船長「…… ……アタシ、もだ」
剣士「……おやすみ」スタスタ
船長「…… ……」

パタン

船長(……潮風が、目にしみるんだ)ポロ
船長(今日、だけ……)ポロポロポロ
船長(…… ……)ポロポロポロポロ

……
………
…………

チチ……ピピピ……

僧侶「ん……」ムク
戦士「起きたか」
僧侶「あ、戦士さん……おはようございます」
戦士「体調は?」
僧侶「……ぐっすり、眠らせて貰いましたから」
戦士「そうか……ならば、着いてきてくれ」
僧侶「? 何処へ……です?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「……!」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
801 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 07:52:36.94 ID:jBmJHkjkP
僧侶「あの……」
戦士「何だ?」
僧侶「勇者様と、魔法使いさんは……」チラ
戦士「寝かしておいてやれ。勇者には伝えてある」
僧侶「そう、ですか……」
戦士「戻れば起きているだろう……行くぞ」スタスタ
僧侶(弱肉強食……は、わかってる)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)スタスタ
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(皆の、為に……!)

ピピピ……チチチ……

戦士「……ん」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!」
戦士「……そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……そ、れは」
戦士「『守る』ためだ」
僧侶「……」
戦士「そして……『生きる』為だ」
僧侶「……はい」
811 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:00:11.06 ID:jBmJHkjkP
戦士「……命の重さに差違は無い」
戦士「確かに、矛盾してる……だが」
戦士「それこそが『生きる』と言う事なのだと思う」
僧侶「……はい」
戦士「……言い訳だ。自分を正当化する為の。だが……」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
僧侶「それは……動物たちが教えてくれます」
僧侶「その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……」
僧侶「誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶「あ、いえ、あの……ッ」ドキッ
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)

……
………
…………

勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」ボッ
勇者「ありがとう……よいしょ」
魔法使い「僧侶と戦士は?」
勇者「狩りに行ったよ」
魔法使い「狩り?」
勇者「食わないと元気も出ないさ」
魔法使い「…… ……御免、なさい」
勇者「昨日からそればっかりだな」
魔法使い「…… ……」
勇者「……僧侶が川に落ちて濡れなかった事」
魔法使い「!」
勇者「それから……あの紫の瞳の男」
魔法使い「勇者様!」
勇者「ん?」
魔法使い「あ、あの……ッ ……そ、の。あれは、あの……ッ」
魔法使い「……御免、なさい」
勇者「また謝る……」フゥ
勇者「……確かにさ、俺は頼りないと思う」
魔法使い「!」
勇者「彼みたいな人が居てくれたらって思うのは……」
魔法使い「そ、それは違う!そんな風に思った訳じゃ……!」
勇者「……違うよ。そう思ったのは俺自身だ」
魔法使い「え?」
勇者「…… ……勇者失格だよ。折角……さ。こうして」
勇者「君達を選んだのに……俺は……ッ」
魔法使い「勇者様……」
821 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:05:32.62 ID:jBmJHkjkP
勇者「……だから、君達がそう思っても当然だ」
魔法使い「…… ……ッ」
勇者「だけど、ね。何も知らないし、力も無いし」
勇者「まだまだ未熟だからこそ、みんなで力を合わせて、さ」
勇者「……一緒に、強くなって行きたいよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「言いにくい事とか、不安とか不満とか……」
勇者「あるのは、魔法使いだけじゃ無い」
魔法使い「…… ……」
勇者「多分、戦士も、僧侶も…… ……俺も、だ」
勇者「……話して欲しい。一気に、とも全部、とも。勿論そんな事は言わない」
勇者「言えない……だけど、さ」
魔法使い「…… ……」
勇者「ごめん。俺も余裕無くて」
勇者「僧侶が濡れてそのままの事とか」
勇者「……魔法使いの様子とか。気遣って……あげれなくて」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「え?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば」
魔法使い「…… ……私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無い」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火」
魔法使い「暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
831 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:11:18.72 ID:jBmJHkjkP
勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「…… ……」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(……)
勇者「気持ちは分かるが……」パァッ
魔法使い「…… ……戦士には、見られたの」
勇者「え?」
魔法使い「闘技大会に出場した時よ」
魔法使い「受付にならんでいる時に、声をかけられた」
魔法使い「『火傷の治療を受けてこい』ってね」
勇者「……騎士とか、その身内は出られないんじゃ?」
魔法使い「見に来ていたんでしょう……ああ、貴方も居たのよね」
勇者「試合は見てたよ…… ……御免、誰が出てたとかは覚えて居ないけど」
魔法使い「……逃げ出したかったわ」
魔法使い「優れた加護が無い事を知られるのも怖かった」
魔法使い「……勝てる訳無いとも、思った」
魔法使い「折角、家から親から離れられたのに……」
魔法使い「私は、『失敗』する事が怖かった……!」ポロポロ
勇者「魔法使い……」
841 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:19:02.76 ID:jBmJHkjkP
魔法使い「……こんな私じゃ、このままじゃ帰れない、と思ったの」
魔法使い「だから、絶対に勇者様の仲間になろうと思った」
勇者「…… ……」
魔法使い「おかしいわよね。離れられてほっとしたのに」
魔法使い「……私、まだあの人達の顔色を伺っている」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「簡単に出来る事じゃ……無い、と思うけど、さ」
魔法使い「え?」
勇者「……認める、って事も強さの内だと思うよ?」
魔法使い「認める……?」
勇者「うん。自分の弱さ……とかさ。そう言うの」
魔法使い「…… ……」
勇者「……嫉妬、しちゃうのは仕方無いよ」
魔法使い「!」
勇者「俺だって…… ……だけど」
勇者「嫉妬って醜い感情だけど」
勇者「そう言うのを持たない人は居ないと思うし」
魔法使い「…… ……」
勇者「だから……自分がそういう醜い気持ち、持ってるんだって」
勇者「認めるだけでも…… ……否、それこそ大変な事なんだけどね」
魔法使い「……私、自分に言い聞かせた。これは嫉妬じゃ無い、って」
勇者「……僧侶、に?」
魔法使い「ええ。どうしてこの子だけ。どうして……私には、って」
勇者「…… ……」
魔法使い「……でもどうしようも無いのよね。加護は生を受ける時の」
魔法使い「契約みたいな物…… ……違える事はできないのに」
勇者「…… ……」
851 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:27:21.08 ID:jBmJHkjkP
勇者「……大丈夫だよ。魔法使いなら、きっと」
勇者「『認める強さ』を持ってると思う」
魔法使い「認める強さ……」
勇者「……うん。信じてるから、さ。力を合わせて」
勇者「俺達で、魔王を倒す。倒せるって」
勇者「……『仲間』だろ?」
魔法使い「…… ……ええ」
勇者「取りあえず、『様』やめない?」
魔法使い「え?」
勇者「確かに、『勇者』は特別な存在だと思う。けど」
勇者「俺は俺だし……俺一人、仲間はずれはヤダし」
魔法使い「仲間はずれ、って」プッ
勇者「……言い方おかしいかもしれないけど!」
魔法使い「……解ったわ、勇者」ニッ
勇者「おう…… ……笑ってる方が可愛いよ、魔法使い」
魔法使い「え……」ドキッ
勇者「……あ、帰って来た!」
魔法使い(……ドキ、て何よ、ドキ、って……!)ドキドキ
勇者「…… ……え」
魔法使い「え、な …… ……に… ……!?」

ドサッ

戦士「悪かったな……遅くなった」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…… ……」
勇者「いや、お前、そ…… そ、れ……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」
魔法使い「……こ、これを、二人、で……!?」
僧侶「え?魔法使いさん、食べないんですか?」
魔法使い「違う!そうじゃ無くて!」
僧侶「これだけあれば、お腹いっぱいになりますね」クス
勇者「…… ……うわぁ、矢だらけ」
戦士「勇者、早く」
勇者「お、お…… ……う…… ……」
魔法使い「…… ……僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「アンタ、怖い子ね……」
僧侶「?」
861 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:48:45.44 ID:jBmJHkjkP
……
………
…………

国王「それで……戦況は?」
騎士「件の洞窟にて、魔導の街の私設軍隊と思わしき船団との交戦は」
騎士「正直……五分五分、と言ったところです」
国王「……魔法兵団との抗戦でそれだとすると、良くやっていると言わざるを」
国王「得ないのでしょうね……出来るだけ被害を最小に留める様に」
国王「……敵わなければ、撤退を指示する様に騎士団長に伝えて下さい」
騎士「しかし……ッ」
国王「人の命は……尊い物です」
国王「何の狙いがあってあの洞窟に目をつけたのかは……気になりますけど」
騎士「しかし、何時の間に私設軍隊など……!」

バタバタバタ……ッ バタン!

国王「…… ……」
騎士「おい!ここは国王様の……!」
王子「……ッ」ハァハァ
騎士「騎士団長様!」
国王「どうしました?」
王子「……ッ 魔導の街が、街の閉鎖を宣言した」
国王「閉鎖?」
王子「宣戦布告だ。洞窟への襲撃と騎士団との抗戦は目を反らす為の罠かもしれん」
王子「……洞窟から兵を引き上げる様にと、書簡を届けさせた文官が持ち帰った書状だ」ポイ
騎士「……わ、私は下がりましょうか」
国王「構いません……」ペラ
国王「……しかし、宣言、とは?」
王子「『街は今日をもって閉鎖するから、次からは来ても無駄だ』と言われたそうだ」
王子「……詳しくは王宛ての書簡に書いた、と」
騎士「ふざけた事を……!」
王子「…… ……所属不明の船が一隻、あの街に着いている」
国王「所属不明?」
王子「ああ。魔導の街を出てからはそのまま南へ向かっているらしい」
王子「……海賊の類かもしれないが」
国王「追跡は?」
王子「適当に引き上げろと伝えてある」
871 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 08:59:27.53 ID:jBmJHkjkP
国王「…… ……『本日をもって魔導の街を閉鎖する』」
国王「『これに伴い同街を『魔導国』と改め、王政とする』」
国王「『現領主を王とし…… ……』 ……確かに、宣戦布告でしょうね、これは」
王子「続きは?」
国王「…… ……」
騎士「国王様?」
国王「……『王はそれ以外を認めない物とする。始まりの国の国王はすぐに王政を解かれたし』」
国王「『従えずば武力行使も辞さない』」
王子「……!」
騎士「な……ッ」
王子「……そんな事を決める権限が何処にある!?」
国王「あの洞窟への攻撃は、力を見せつける為でもあるのかもしれませんね」
王子「国王、俺もあの洞窟へ行く」
国王「……それは、駄目です」
王子「しかし!このままでは……!」
国王「『騎士団長』の貴方が出て行くと、宣戦布告を受諾した事になります」
国王「……それこそ、戦争です」
王子「……ッ このまま、見ていろと言うのか!」
国王「折角……勇者が、魔王を倒しに旅立ったと言うのに」ハァ
国王「『人間同士』で争って何になるのですか……!」
王子「…… ……ッ」
騎士「国王様…… ……」
国王「『王』と言うのは……それ程特別な物ですか?」
国王「……指導者であるのなら、名など……こだわりはありません」
王子「思うつぼだろう、それこそ向こうの……」
国王「……しかし……」
王子「城への一般人の立ち入りを禁止しろ。それから、国王の警備を増やすんだ」
騎士「は、は……ッ」
国王「兄さん!?」
王子「……認めてくれ、国王」
王子「表向き、でも良い。お前を……守る為だ」
881 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:06:19.89 ID:jBmJHkjkP
王子「……俺は、騎士団長、だ」
王子「民を、国を……お前を、守る義務と権利があるんだ!」
国王「…… ……」

……
………
…………

魔導将軍「ただいま。 ……やっぱり、帰ってたね」
后「魔導将軍……おかえりなさい。ご苦労様」
魔導将軍「……側近は?」
后「魔王の部屋よ……行く?」
魔導将軍「当然よ」
魔導将軍「……旅立ちは見送ったわ。だけど……」
后「ん?」
魔導将軍「…… ……気になる男が居た。紫の瞳の」
后「……紫の瞳?」
魔導将軍「ええ。勇者に……いいえ。魔王にそっくり、だった」
后「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
后「一緒に……旅立ったの?」
魔導将軍「……いいえ。彼は選ばれなかった」
后「……選ばれなかった……」
魔導将軍「詳しくは向こうで話すわ。使用人は?」
后「呼んでくるわ。先に行ってて」

スタスタ

魔導将軍「…… ……」
891 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:15:29.92 ID:jBmJHkjkP
スタスタ、コンコン

側近「あーいー?」
魔導将軍「ハローダーリン?」
側近「魔導将軍!」
魔導将軍「入るわよー?」

カチャ

魔王「…… ……」
魔導将軍「……久しぶりね、魔王」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(やっぱり……似てる、なんてモンじゃ無い)
側近「……どうした?」
魔導将軍「ちょっと待って、すぐに后と使用人が……」

カチャ

使用人「魔導将軍様!」
魔導将軍「久しぶりね、使用人」
后「早速で悪いけど……」
魔導将軍「ええ。長居も出来ないでしょ」
側近「……魔王はあれからは大人しいもんだ」
魔導将軍「側近は大丈夫なの?」
側近「魔族ってな凄いよな。魔力の量が尋常じゃネェよ」
側近「……俺、魔法なんて使えないのにねぇ」
使用人「本の知識は……役に立ちました、か?」
魔導将軍「ばれてないと思いたい、けどね」
魔導将軍「……取りあえず、報告しちゃうわ。結構大変な事になってるわよ」
后「大変な事?」
魔導将軍「……まず、魔導の街が立ち入り禁止になってる」
側近「……何?」
901 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:25:28.84 ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「詳しくは解らない。状況だけね」
魔導将軍「それに……多分あれは使用人の言ってた鉱石の洞窟ね」
魔導将軍「始まりの街の騎士団と、魔導の街の船団で交戦中」
魔導将軍「……実質戦争状態よ」
使用人「そ……んな!こんな時に!?」
后「…… ……盗賊さん、亡くなって長い……から?」
魔導将軍「勇者達は旅立ったのにね……ああ、そうそう。さっき后には言ったけど」
后「……魔王にそっくりの紫の瞳の男、だね」
使用人「!?」
側近「何!?」
魔導将軍「勇者達は何れ此処にたどり着く……だから」
魔導将軍「その紫の瞳の彼の気配を追ったんだけど」
魔導将軍「……船はウロウロしてるし、まさか姿は消せないし」
后「で……見失った訳ね」
魔導将軍「間違い無く気配を追ったはず……なんだけどね」
側近「まさか……此処にたどり着いた?」
魔導将軍「……いいえ。魔導の街に続いてたから、諦めて帰って来たのよ」
使用人「……側近様は、何故此処に……と」
側近「……お前さん、気がつかないとは言わないだろう?」
使用人「…… ……」
后「『特異点』?」
魔導将軍「もしくは、『欠片』」
后「魔導の街……立ち入りが禁止されてる、んだっけ?」
魔導将軍「……流石に近づけないわよ」
側近「何でこのタイミングで戦争なんて……」
使用人「……『少年』」
后「紫の瞳の魔王?」
使用人「そっくり、何でしょう」
魔導将軍「そうか……!あいつら、あの男の事を『少年』と思ってる!?」
魔導将軍「……て、事は魔族と解ってて……!」
側近「きな臭ェなぁ……」
使用人「推測の域を出ませんが……」
后「当たらずとも遠からず、でしょ……ていうか」
后「それしか考えられない」
911 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 09:33:41.53 ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「……後、仲間の方だけど」
魔導将軍「『騎士団長の息子』と『魔導の街の領主の孫娘』それから」
魔導将軍「『エルフの血を引く娘』」
使用人「エルフ!?」
側近「……いやいや、すげぇメンバーだな、おい」
使用人「エルフ、の、娘って……まさか!?」
魔導将軍「姫様の、って言いたいんでしょうけど」
魔導将軍「……私はその姫様を知らないから、何ともね……でも」
魔導将軍「弓を持っていたわ。だから……」
使用人「……弓……ッ」
后「エルフの弓だとすると……間違い無いんだろうね」
側近「……『特異点』か」フゥ
魔導将軍「候補が二人、もね」
后「……エルフの血を引くだろう娘、と……紫の瞳の男」
側近「……魔王に、勇者にそっくりな男、か」ハァ
使用人「揃った……の、でしょうか……」
魔導将軍「『欠片』? ……解らないわね」
魔導将軍「見守りたいけど……でも、もう……私も、此処を離れられないわ」
后「仕方無いわ。勇者は……もう、すぐそこにいる」

魔王「…… ……」

使用人「……魔王様?」ピリッ
側近「どうし…… ……ッ」ピリピリ
魔導将軍「!」ピリピリ
后「魔王!」ピリピリッ
側近「使用人!后と魔導将軍を連れて部屋を出ろ!」

魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」

魔導将軍「駄目よ、私も……ッ」
使用人「后様、早く!」グイッ
后「あ……ッ 魔王!」
921 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 10:05:50.27 ID:jBmJHkjkP
バタバタ、バタン!

后「魔王!」
使用人(……また、魔力が大きくなってる)
使用人(勇者様……間に合うの……!?)

……
………
…………

魔王「…… ……」パチ
魔王(また……夢)
魔王「……あー… ……うん」
魔王(声は、出る)
魔王(あれは……魔導の街……)
魔王(……又、あの双子を見せられるのか?)ハァ
931 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/23(金) 10:07:18.88 ID:jBmJHkjkP
幼女起きたー
また後ほど、来れたらー
94名も無き被検体774号+:2013/08/23(金) 13:15:27.20 ID:TQWI+/Lui
良いところで(・∀・)
いてらー
951 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 11:43:15.79 ID:S1IGpuQHP
おはよう!出勤までー
961 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 11:58:40.74 ID:S1IGpuQHP
『娘の様子は?』
『もう少し掛かるかと』
『産まれたらすぐに隔離を……』
『これで我が国も……』
『赤子を連れて…… ……へ…… ……』
『王自ら…… ……』

魔王(……良く聞こえない)
魔王(しかし……あの二人は『光と闇』なのだろう)
魔王(……『何』が産まれるんだ)

シュゥン

魔王「……?」
紫魔「答えは、もう知っているだろう」
魔王「…… ……『世界』?」
紫魔「そうだ。『世界』」
魔王「……正解なのかよ。意味がわからねぇよ」
紫魔「『終わるだろう筈だった世界』だ」
魔王「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
紫魔「…… ……」
魔王「何故産まれた?」
紫魔「?」
魔王「『双子』だ」
魔王「金の髪の……ああ、っと。青年、か」
魔王「あいつは『魔王』を倒し、光を解放し世界を救った」
魔王「なのに何故……『光と闇』が産まれたんだ」
紫魔「人の世の理だろう。命の理」
魔王「……いや、そうじゃ無くて」
紫魔「『光と闇の獣。汝の名は』?」
魔王「…… ……また、それか」ハァ
971 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:06:57.61 ID:S1IGpuQHP
魔王(待てよ……なんか、聞いた事がある)
魔王(……何だっけ、な…… ……ッ)ドクンッ
魔王「……ッ ぅう……ッ」
紫魔「……もう少しだ」
魔王「…… ……え?」
紫魔「『揃った』」
魔王「な、に……?」
紫魔「『生と死』『特異点』『王』『拾う者』」
紫魔「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』『知を受け継ぐ者』」
紫魔「『光と闇』『勇者と魔王』」
紫魔「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
魔王「…… ……」

シュゥン……ッ

魔王「!」
魔王(また、光……!)
青年「『我が名は、勇者』」
青年「『光に導かれし運命の子』」

シュウゥン……!

魔王(…… ……)

??「『闇に抱かれし運命の子』」
魔王(!? 誰だ……!?)
魔王(赤茶の髪の……女!? ……しかも、また……同じ顔……!?)
女魔「『汝の名は、魔王』」
紫魔「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
紫魔「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
981 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:14:26.13 ID:S1IGpuQHP
女魔「『私は貴方』『貴方は私』」
魔王「……お前も『勇者』で『魔王』なのか」
女魔「そして『特異点』」
魔王「……特異点?お前が……?」
青年「代々……魔王は男しか居なかった」
青年「唯一の女勇者だ」
魔王「……別に、性別なんて……」
紫魔「……私の母も。姫も」
紫魔「『生の理』に耐えれなかった」
魔王「!」
紫魔「身に余る強大な力を生み出す代償」
魔王「……女勇者は魔王になり、その身体で自ら……」
女魔「そう。私は勇者を『育んだ』」
青年「……お前も『何れ知る』……魔王」
魔王「俺が? ……何、をだ」
女魔「『母の強さ』」
魔王「……ッ 后!」
紫魔「『全てを見、知り、感じる』んだ」

パアアアアアアアアアアアアッ

魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」

……
………
…………
991 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 12:18:08.85 ID:S1IGpuQHP
しゅっきーん!
100名も無き被検体774号+:2013/08/24(土) 16:02:18.47 ID:hEx0KsB2i
がんがれ。
101名も無き被検体774号+:2013/08/24(土) 17:11:15.15 ID:/OWZ9MMCO
今更だけど、剣士は紫魔王の魔力で染まった浄化の石から生まれたのかな?
世代交代前に分離していた紫魔王の欠片。
1021 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 22:33:54.78 ID:S1IGpuQHP
ただいまー
明日も仕事なので少しだけ
1031 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 22:43:55.74 ID:S1IGpuQHP
勇者「……僧侶?」
僧侶「あ……ごめんなさい」
魔法使い「この丘の上が……お墓、なの?」
戦士「…… ……どうする?」
勇者「ん……行ってみたい?」
戦士「ああ、いや……それもあるが。新しい街というのはあれだろう」ス……
魔法使い「向こうに小さく、だけど港も見えるわね」
戦士「宿を取る必要は無いだろう」
勇者「船の時間に寄る……けど、あの場所からはそれ程時間も掛からなかった、しな」
魔法使い「さっきからじっと見てるけど……そんなに気になるの?」
僧侶「あ……いえ」
僧侶(気にならないと言えば嘘になる……)
僧侶(……エルフの眠る、丘。だけど……)
僧侶(確かに、この場所……いえ、この大陸自体が)
僧侶(何らかの力に守られている気は、してた)
僧侶(……だけど、弱い。そんな特別な物だとは思えない程……)
勇者「船を逃すのは避けたいけれど……」
戦士「まあ、まだ陽が落ちるまでには相当時間もあるだろうが」
僧侶「……いえ、港へ向かいましょう」
勇者「良いのか?」
僧侶「はい」
魔法使い「……港街、か」
戦士「どうした?」
魔法使い「いえ……懐かしいな、って思って」
勇者「闘技大会に来る時によったんじゃ無いのか?」
1041 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 22:49:34.75 ID:S1IGpuQHP
魔法使い「本当に通過しただけなの。時間が無くてね」
戦士「宿を取るのか?」
勇者「行き先が決まっていない以上、な」
僧侶「…… ……」
魔法使い「取りあえず船に乗りましょ。話は戦場で良いでしょう」

スタスタ

勇者「そうだな……こんな時じゃ無ければ、満喫したいんだけど」
戦士「勇者は初めて……だよな」
勇者「戦士は?」
戦士「俺もだ」
魔法使い「僧侶はどうなの?」
僧侶「え……あ、私、は……」
僧侶(どうしよう。嘘を吐く訳には……)
戦士「! 船だ!」
勇者「汽笛が鳴ってるな……走れるか?」
魔法使い「あ、ほら……僧侶、早く!」
僧侶「あ、は、はい……!」

タタタ……

……
………
…………
1051 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 22:56:58.19 ID:S1IGpuQHP
僧侶「……良い、風です」フゥ
勇者「顔真っ青だけどな」
僧侶「ここから、港街まではそう遠くはありませんから……」ゥウ
勇者「……大丈夫、か?」
僧侶「どうぞ、勇者様もお部屋に戻って下さい」
僧侶「……私は、風に当たっていますから」
勇者「ああ……いや。俺は……まあ、僧侶が心配ってのもあるけど」
勇者「景色を見たくて、さ」
僧侶「…… ……」
勇者(それに……魔法使いは戦士と話をしたいと言っていた、しな)
僧侶「……勇者様」
勇者「ああ、そうだ。それ!」
僧侶「え?」
勇者「……『様』てのやめてくれないかな」
勇者「その、なんて言うか……」
僧侶「戦士さんから……聞きました」
僧侶「……ですけど」
勇者「仲間、なんだしさ」
僧侶「……努力、します」
勇者「……うん。ごめんな。でも……ありがとう」
勇者「ごめん。何か言いかけてたよね。何?」
僧侶「あ……あの、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……? 何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「? 別に良いけど……」スッ
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の文様)
僧侶「とても……強い光を感じます。混じり気なしの光、そのもの」
1061 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 23:03:38.43 ID:S1IGpuQHP
勇者「光……そのもの」
僧侶「はい……勇者は、世界に一人しか存在できない、のですよね」
僧侶「それは……やはり『特別』だから、なのでしょうか」
勇者「『特別』……か。そうだな。光の加護なんて、俺以外に見た事無いし」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは」
勇者「あんまり……詳しくは知らなかったけど……」
僧侶(光と闇の……喪失……)
僧侶(幼くて、ハッキリとは覚えて居ない。だけど)
僧侶(……その後、確かに輝かしい命の誕生を感じた)
僧侶(……あれ?)
僧侶(否、勘違い…… 幼くて、覚えて居ない。だから……!)
僧侶「…… ……」
勇者「……僧侶?」
僧侶(けれど、この手の文様から感じる光も)
僧侶(……あの時失われた光も)
僧侶(光の剣から感じた物も……)
勇者「僧侶!」
僧侶「あ、はい!」ビクッ
勇者「……大丈夫?」
1071 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/24(土) 23:05:28.77 ID:S1IGpuQHP
ねまーす!
又明日!
108名も無き被検体774号+:2013/08/25(日) 01:30:39.65 ID:ZAAyZRRt0
まってます^^
1091 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 11:47:27.84 ID:ylzV1/l3P
おはよう!
仕事行くまで少しだけ
1101 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 11:56:57.15 ID:ylzV1/l3P
僧侶「あ……すみません」
勇者「気分悪いなら、やっぱり横になった方が……」
僧侶「……いえ。すみません、もう一度見せて下さい」ギュ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶(…… ……同じ。あの失われた光も)
僧侶(この勇者様から感じる光も……)
僧侶(では、光の剣から感じたあれも……勘違いじゃ無い……?)
僧侶(……でも、それでは……)
僧侶(勇者様のお父様と、この勇者様が……全く同じ、と言う事になる……!)
勇者「僧侶、やっぱり……顔色が悪いよ?」
僧侶(『勇者』だから?でも、そんな事って……!)
僧侶「いえ……ごめんなさい。ありがとうございました」
僧侶「大丈夫です……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「……」ジッ
勇者「…… ……」ドキッ
勇者(……何で、こんなにドキドキするんだろう)
勇者(確かに綺麗な子、だけど……どこか、何となく……)
勇者(……懐かしい、様な。悲しい様な、寂しい様な……)
勇者(嬉しい、様な……?)
1111 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 12:30:47.67 ID:ylzV1/l3P
僧侶「……港街から、何処へ行くか……まだ決まっていないのですよね?」
勇者「え!? ……あ、ああ。うん」
勇者(何だろう……妙な気持ちだ)
僧侶「では……お願い、と言うか。提案が……」

……
………
…………

戦士「話、とは何だ?」
魔法使い「……闘技大会の時の事、なんだけど」
戦士「……?」
1121 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 12:32:14.48 ID:ylzV1/l3P
働いてきますー
電車でかけたらー
113名も無き被検体774号+:2013/08/25(日) 21:31:11.39 ID:LTKEC8BaP
仕事終わり!
帰ってかけたら!
114 忍法帖【Lv=38,xxxPT】(1+0:8) :2013/08/25(日) 22:29:37.56 ID:d74V2DQR0
BBA無理はするなよ。
1151 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 22:54:37.60 ID:LTKEC8BaP
ただいまー!
ちょっとだけー!
116名も無き被検体774号+:2013/08/25(日) 22:57:40.64 ID:+jm5jZsh0
いつも楽しみにしています。
1171 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:06:46.48 ID:LTKEC8BaP
魔法使い「アンタ……見たでしょ、私の火傷」
戦士「? ……ああ。手当を受けろ、と言った……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「それが……どうした?」
魔法使い「……僧侶に、話した?」
戦士「?? ……否?」
魔法使い「そう…… ……」ホッ
戦士「……言われたくない事情でもあるのか」
魔法使い「……いえ、そういう訳じゃ……ああ、でも」
戦士「…… ……」
魔法使い「ちゃんと、自分の口から言いたかっただけよ」
戦士「?」
魔法使い「……良いの。確認したかっただけ」
戦士「……そうか。少し……すっきりしたのか」
魔法使い「え?」
戦士「そんな顔をしている……気が、する」
魔法使い「…… ……」
戦士「旅籠で、自己紹介した時や……森の中でもそうだが」
戦士「随分と思い詰めていた様に見えたからな」
魔法使い「……そうね。負けたくないって思ってた」
戦士「……誰に、だ」
魔法使い「解らないわ……誰にも、かしら。いえ……特に……僧侶には」
戦士「僧侶に?」
魔法使い「ええ……彼女は優れた加護を持ってる」
戦士「優れた加護……」
魔法使い「……私は魔導の街の領主の血筋……正確には、孫なの」
魔法使い「あの人達は……皆、優れた加護を持っているのよ」
戦士「それは……どう言う物なんだ?」
魔法使い「文字通りよ。持たない人とは違う、特別な力」
戦士「……特別」
1181 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:14:25.91 ID:LTKEC8BaP
魔法使い「……僧侶が川に落ちた時、濡れなかったでしょ?」
戦士「しかし、あの紫の男が来てからは……」
魔法使い「その違いは『魔法の水か否か』」
戦士「……僧侶の加護は、水、か」
魔法使い「そう。彼女は水の魔法でダメージを受けることは無いのよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「私のあの腕の火傷は、自分の魔法で負った物よ」
戦士「……お前は、持っていないんだな」
魔法使い「…… ……」
戦士(成る程。それで『負けたくない』か)
戦士(……しかし)
魔法使い「どうして家が関係あるのか、と聞きたい、のよね」
戦士「……まあ、そうだな」
魔法使い「……問題は『私だけがあの家で、優れた加護を持つ者では無い』って事」
魔法使い「『出来損ない』なのよ。私は」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうであった血筋の者がどうなったかは知らないわ」
魔法使い「だけど、落胆され、絶望されて……見捨てられると思うと怖かった」
戦士「僧侶も勇者も、だからと……お前をどうこう思うとは思えないが」
魔法使い「……解ってるわ。拘っていたのは、私自身」
魔法使い「それに……僧侶は、気がついていると思う」
戦士「……感じる力、か」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「とにかく、自分の口から話したかったの。それだけ」
戦士「……解った。しかし……」
魔法使い「?」
戦士「それは……『特別』なのか?」
魔法使い「……え?」
戦士「まあ……戦闘に置いては確かに、便利だろう、が」
戦士「……だからといって、それ程特筆すべき物、なのか?」
魔法使い「…… ……」
1191 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:21:26.96 ID:LTKEC8BaP
戦士「あ……す、すまん!卑下するつもりなど無いぞ!?」
戦士「確かに、素晴らしい力なのかもしれん。だが……」
戦士「……お前はお前だろう?勇者が勇者であるように」
魔法使い「…… ……」
戦士「確かに僧侶の感じる力と言うのは……凄いとは思うが」
戦士「それも……だからといって人と比べ、一方的に何かより『優れている』と」
戦士「決めつけられる物でもあるまい」
魔法使い「…… ……」
戦士(……地雷を踏んだ……か?)
戦士(俯いた侭では……表情も見えん)
戦士「…… ……魔法使い」ス……グイ
魔法使い「!」ビクッ
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」ドキッ
戦士(…… ……顎を掴んで思わず上を向かせたが)
戦士(見つめられても……どうすれば良いんだ)ドキドキ
魔法使い「な、なな、何よ!?」
戦士「あ、いや、その…… ……」
戦士「…… ……大事な仲間だ。出来れば、その」
戦士「笑っていて、欲しいな……と」
戦士(な、何を言ってるんだ、俺は!)ドキドキ
魔法使い(…… ……笑って、って)ドキドキ
魔法使い「え、あ ……あ、りがと……いや、あの……」フィッ
魔法使い(なん、何なのよこれ!もう!)ドキドキ
魔法使い「…… ……そ、そうよね。仲間……だから」
魔法使い「私も……その、出来れば、何でも話したい、のよ」
戦士「あ、ああ…… ……そ、うだよな」

カチャ

戦士「!」
魔法使い「!」
1201 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:28:23.59 ID:LTKEC8BaP
勇者「……なんだ?二人して……こっち凝視して……」
僧侶「どうかされましたか……?」
魔法使い「な、何でも無いわ!僧侶!気分は!?」
僧侶「え!?あ、はい、その……大丈夫です、よ?」
戦士「…… ……」フィッ
勇者「?? ……そろそろ港街に着く」
魔法使い「あ……もう?」
勇者「ああ。取りあえず行き先の相談をしたいんだが……」
戦士「宿を取る、のか?」
魔法使い「港街から行ける場所って……何処があるんだろう」
勇者「まあ、宿は時間次第、かな」
勇者「のんびり観光は出来ないけど……」
僧侶「少し、街を見て回りましょう。道具の補充や、船の行き先なども」
僧侶「調べないと行けませんしね」
僧侶「……少し、話したい事もあるんです」
魔法使い「……奇遇ね」
僧侶「え?」
魔法使い「私も、話したい……聞きたい事があるの」
僧侶「…… ……では、どこかで腰を落ち着けましょうか、勇者様?」
勇者「様、やめてって……まあ、良いや。それには賛成」
僧侶「あ、すみません……」
戦士「無理はさせなくても良いだろう……取りあえず、行こう」

……
………
…………
1211 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:41:28.78 ID:LTKEC8BaP
剣士「…… ……」
母親「何をブスッとしているのよ」クスクス
剣士「……元々こんな顔だ」
母親「そうね。初めて会った時から。この『国』を出て行った時から」
母親「……貴方は、何も変わっていない」
剣士「…… ……お前が言っていたのは、これか」
母親「…… ……」
剣士(船長の船でここへ来たのは……あの船しかこの街に入れないからか)
剣士(……もう、南へ向かったのだろう)フゥ
母親「何のため息よ?」
剣士「……事実上軟禁と変わらんな」
母親「意味が分からないわね」
剣士「…… ……」
剣士(厳重な警備……否、あれではまるで軍隊だ)
剣士(……しかも、『魔導国』だと……)
母親「そんなに睨まなくても、ちゃんと説明してあげるわ」
母親「……約束だった物ね」
剣士「そう良いながら、もうこの街について一刻程経つ」
母親「『国』、ね」
母親「……もうすぐ『王』が戻るわ」
剣士「……領主、か」
母親「王だと言ったでしょう」
剣士(街並みも、建物の内部も……変わらん)
剣士(……変わったのは人だけ……否)
剣士(それも、変わらんのだろうな)

コンコン
1221 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:49:53.35 ID:LTKEC8BaP
母親「はい」

カチャ

領主「戻って居たか……おお!お久しぶりですな、剣士様!」
剣士「……領主、か。随分老けたな」
領主「王と呼んで頂けますかな……貴方は、やはり『変わられない』」ニヤ
領主「……否。少年様とお呼びするべきかな?『魔族の御仁』」ニヤニヤ
剣士「…… ……俺は少年では無いと言ったはずだが」
領主「記憶は戻っておられない様だ……まあ、良いでしょう」
領主「『貴方がこの街に戻った』事にこそ、意味がある」
母親「父親は?」
領主「すぐに来る……さて、色々とお話をお聞かせ願いましょうかな」
剣士「そんな義務は無い」
領主「……孫娘の動向を気にしない爺はおりますまい?」
剣士「…… ……」
領主「すぐに食事の支度をさせましょう」
母親「歓待、受けてくれる約束よね?」
剣士「…… ……」
母親「説明はその時に……ね」

コンコン、カチャ

父親「失礼します……ああ、お久しぶりで御座います、少年様」
剣士「俺の名は剣士だ」
父親「……剣士様。お食事の準備が整いましたよ」
父親「王様もご一緒されますよね?」
領主「当然だ」
父親「……さて、では……何処から話しましょうか?」
母親「気がついていると思うけど……」
剣士「……街を封鎖したのか」
母親「国だ、と言っているでしょう」
1231 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/25(日) 23:59:57.21 ID:LTKEC8BaP
領主「この国は、『魔導の街』から『魔導国』へと生まれ変わったのですよ」
領主「国と名乗るからには、王が必要でしょう?」
領主「僭越ながら……私が、ね」
剣士(思っても居ないことを……)
剣士「……では、あの港に居たのは兵士なのか」
領主「ええ。我が軍直属の魔法兵団の兵士ですよ」
剣士「……此処まで、街を歩いてきたが、随分人が少なかったが?」
父親「当然ですよ。我が国は今までと違って、封鎖国家となったのですから」
父親「……優れた加護を持つ人間以外は、追放しましたからね」
剣士「……何?」
母親「当然でしょ。今までも本来なら居住を許されるのはそういう者ばかりだったのよ」
母親「特別措置はもう終わり。『出来損ない』はいらないの」
剣士「…… ……」
父親「ただし、この街の出身者は別だ」
父親「世界各国へ散り散りになった者達へは、この国へ戻るようにと」
父親「使者を送り込んでいる」
剣士「……その、出来損ないとは何だ」
領主「お恥ずかしい話ですがね。我が血筋にも稀に」
領主「……優れた加護を持たない者が産まれて来るのです」
剣士「…… ……」
領主「ですが、血筋は血筋」
領主「……彼らには彼らの、役割があるのですよ」
剣士「……戻ると思っているのか?」
母親「世の中にはね、支配される者とする者が居る……否」
母親「結局はそれが全てなのよ」
父親「そこには、それが世界であるか、国であるかの差しかない」
剣士「……本気で言っているのか?」
1241 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 00:07:26.50 ID:V3ytwQB1P
領主「勿論ですよ」
領主「……我らは、特別ですから」
剣士「…… ……?」
領主「我らは元々、最果ての地に住んでいたのです」
剣士「!」
領主「魔族同士の争いの戦火から逃れ、優れた血だけで栄えてきた一族なのですよ」
父親「北の街の近くに集落を作り、数が増えれば土地を変え……そして、此処にたどり着いた」
母親「魔族に唯一、許された『種』なの。人間の中で唯一、ね」
母親「それが、私達『魔導国』の人間よ」
剣士「近親婚を繰り返した、のか?」
領主「優れた血を残す為です」
領主「……以前、貴方は鍛冶師の村の付近で、傭兵をされていましたな」
剣士「!?」
領主「この国を出て行かれてから、ですよ」
剣士(つけられていた……のか?)
領主「……その鋼から、華麗に雷を操られていたと聞いています」
剣士「…… ……」
領主「私も、この母親も父親も」
領主「……共に、雷の加護を受けています。勿論」
領主「最初に集落を作った、二人……祖先の姉と弟も」
領主「同じ加護を持っていたと……書に残って居ます」
剣士「…… ……それが、何だと言うのだ」
父親「知っていますか。瞳の色が、加護を表すのだと言う事」
剣士「……ああ」
母親「それが100%で無いと言うことも?」
剣士「…… ……」
母親「知ってるわよね。この国の図書館の本、あれほど熱心に読んでいたんだもの」
1251 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 00:16:49.79 ID:V3ytwQB1P
母親「魔法使いにも期待はしたけど……あの子は、違った」
母親「色通りの炎……でも、優れた加護は当然ながら、持っている」
父親「始まりの街で会ったのでしょう?そして、見事勇者の仲間となった」
領主「闘技大会で負けたのは残念だったが、しかしそこは流石……です」
領主「……そして、貴方はこの国にお戻りになった」
領主「加護と異なる属性を持ち、人と違う生を持つ……剣士様」
剣士「…… ……」
領主「貴方様が闇色の瞳を持つ事こそ」
領主「……魔族の証でしょう」
剣士「この瞳の色が魔族の証だと?」
母親「確証は無い。だけど……歳を取らないと言うだけで、充分でしょう」
父親「貴方の全てが『特別』なのですよ!」
父親「……少年様の瞳も紫だった」
父親「記憶を無くされているのは残念ですが……」
剣士「嘘を吐け。その方がお前達にとって都合が良いのだろう」
剣士「……それに、俺は少年じゃ無いと何度言えば……」
母親「それこそ確証の無い話でしょう?だって」
母親「貴方は何も覚えて居ない」
剣士「…… ……」
剣士(こいつらにとっては『雷の加護』も『特別』なんだな)
剣士(色彩と異なる加護……そして、『人で無いだろう』俺の身)
剣士「…… ……何をするつもりだ?」
父親「簡単なことです」
父親「……貴方は、魔法使いと貴方の間に子供を作って下されば良い」
剣士「…… ……何!?」
父親「勇者一行は必ず、この国へ帰ってきます」
剣士「……その自信はどこから来る?お前も、母親も……」
父親「封鎖されていては、入る方法はありません」
領主「だが、此処にはあらゆる知識が集結する」
領主「それは、貴方自身もよくご存じな筈だ」
剣士「!」
1261 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 00:25:53.60 ID:V3ytwQB1P
領主「……子が出来れば、貴方は魔法使いの変わりに、勇者に着いていけば良い」
剣士「……勇者に選ばれたのはあの三人だ。俺は……」
父親「『魔王を倒す』んだろう?」
剣士「…… ……」
剣士(狂ってる、としか言いようが無い)
剣士(……人、とは……こんな生き物なのか!?)
母親「心配しなくて良いわ。言ったでしょ?あの子は必ず帰ってくる」
剣士「……何処にそんな保証がある」
父親「現在、我が軍と始まりの街の軍は交戦中だ」
剣士「!?」
父親「……勇者は、どんな反応をするかな?」
剣士「彼らがあの街へ戻れば済む話では無いのか?」
父親「『魔導国の国王の孫娘』が居れば、利用しようとするだろう」
領主「王とは……国を導いて行く、と言うのは。政治とは」
領主「そういうもの、ですよ。剣士様」クック
剣士(……そう、上手くいく、かな)ハァ
剣士(あの国王……頭は切れそうに見えた、がな)
母親「……違えば出て行けば良いのよ」
剣士「この状態でか。船も近づかない、この……ッ」
母親「『魔族』って不死に近いんでしょ?」クスクス
父親「魔法使いの妊娠が解れば、ちゃんとお送りしますよ」
剣士「……見張りをつけて、か」
父親「…… ……」ニコ
剣士(…… ……厄介な連中だ)
剣士(まるっきり信用する気にはなれんが……)
剣士(……まだ、何か企んでいる、だろうな)ハァ
1271 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 00:26:41.44 ID:V3ytwQB1P
明日も仕事!今日はこの辺でー
128名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 02:19:15.67 ID:+mpaWJkm0
個人情報はだいじょうぶなのか?
129名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 02:32:10.99 ID:sqhvAW3Wi
BBAは●持ってるの?
1301@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 02:38:12.24 ID:V3ytwQB1P
え、なにそれ( ゚д゚)
私p2だよ?●は買ってないよー
モリタポ?は買ったけど…

つかトイレに起きたら何事だ?
((((;゚Д゚)))))))
131名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 11:03:43.66 ID:QB0FXyzKO
●持ちの個人情報が流出してて心配したんだけど、大丈夫そうで良かった!

続き楽しみにしてるよ!!
1321 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 11:49:06.06 ID:V3ytwQB1P
おはよう!
なんか大変な事になってるみたいだな……
とりあえず出勤まで少しだけ
1331@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 12:09:11.78 ID:V3ytwQB1P
と思ったけど時間ねぇ((((;゚Д゚)))))))
1341@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 13:16:04.93 ID:V3ytwQB1P
領主「さて、では私は失礼いたします」
領主「仕事が残っていますからね……行くぞ、父親」
父親「ああ……勇者達が来るまで、まだまだ時間はあるでしょう」
父親「どうぞ、ご自由にこの国でお過ごし下さい、剣士様」
父親「貴方の部屋は以前の侭、残してありますから」
剣士「…… ……」

パタン

母親「浮かない顔ね」
剣士「当然だろう……お前達、何を企んでいる」
母親「……随分よね。同じ血を持っているかもしれないのに」
剣士「……何?」
1351@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 13:23:04.10 ID:V3ytwQB1P
母親「お父様とお兄様は否定するけど」
母親「……私は、祖には魔族があるんじゃ無いかと思ってるわ」
剣士「……兄?」
母親「気付いて無かったの? ……まあ、良いわ」
母親「優れた人間であった、て拘りたい気持ちはわかるわ。だけど」
母親「……魔族の血が入っていると考える方が自然でしょ」
剣士「優れた加護、とやらか」
母親「ええ」
剣士「……だがあれは、『精霊との契約の様な物』なのだろう」
母親「後付の講釈なんてどうでも良いのよ」
剣士「…… ……」
母親「これで魔法使いが雷の加護を受けていたら、申し分無かったんだけどね」ハァ
剣士(『拘っている』のは誰よりも母親じゃないか……)
剣士(しかし……本当に無茶苦茶だな、こいつら……)
1361@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 13:29:35.59 ID:V3ytwQB1P
剣士「……この街の血筋の者を呼び戻す、と行ったな」
母親「それが何?」
剣士「……彼らの役割とは、何だ」
母親「…… ……『出来損ない』に出来る事なんてしれてるわ」
剣士「…… ……」
母親「言ったでしょ『世の中には支配する側とされる側しかない』のよ」
剣士(……ッ 奴隷化するつもりか……!)
剣士(あの時、助けて正解だった……のだろうな)
剣士(魔法使い……あの娘)
1371@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 13:32:10.78 ID:V3ytwQB1P
剣士(もし、あの娘の事がばれたなら)
剣士(……あっさりと、奴隷にでも何でもするんだろう)
剣士(そして……子ならまた作れば良いと言ってのけそうだ)
剣士(……俺が、優れた加護等持たないと知れば、さて)
剣士(…… ……どんな顔をするやら)
138名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 21:52:41.03 ID:rcKdfQnFP
9月1日までに、パー速とかTYPEとかに避難した方が良くね?

2ちゃんねる閉鎖ってまじなんかね
139名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 22:25:01.84 ID:qVFq3DLoi
閉鎖はガセだよ
1401 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 22:30:25.51 ID:V3ytwQB1P
ただいま!
んー……なんか偉い騒ぎになってる、んだよね?
とりあえず、こまめにログは取る様にしておく……

もう少しだけー
141名も無き被検体774号+:2013/08/26(月) 22:53:07.74 ID:GyV1gDaOP
実質パートスレになってるからなぁ
1421 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 22:57:41.51 ID:V3ytwQB1P
母親「どうして喜ばないのか不思議でならないわ」
剣士「……何?」
母親「念願だったんでしょ。勇者と旅に出るの」
剣士「……本気で言っているのか」
母親「勿論よ」
剣士「…… ……哀れだな」ハァ
母親「…… ……なんですって?」
剣士「『哀れ』だと言ったんだ」カタン、スタスタ
母親「ま、待ちなさい!」
剣士「……… ………」

パタン

母親「……ッ」ガンッ

ガシャン、ガシャン!
タタタ……カチャ

メイド「失礼致します…… 母親様!? ……あ、お怪我、は」
母親「……さっさと片付けて頂戴!」
メイド「は、はい……!」
母親(魔法使いさえ、戻ったら……!)
1431 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:08:08.64 ID:V3ytwQB1P
……
………
…………

魔法使い「……ッ くしゅん!」
僧侶「だ、大丈夫ですか、魔法使いさん」
魔法使い「ええ……」
勇者「しかし……想像してたより活気のある街だな」
戦士「船の行き先を聞いてこよう。此処で待っていてくれ」スタスタ
勇者「ああ。ありがとうな」
魔法使い「…… ……」
僧侶「どうしました?やはり……どこかお加減でも……」
魔法使い「あ、いえ……違うの」
魔法使い「あの……丘の上に、ね」スッ
僧侶「…… ……」
魔法使い「教会があったはず、なのよ」
勇者「教会?」
魔法使い「ええ。行った事は無いんだけど、あったのは覚えてる」
魔法使い「小さい頃、両親につれられてこの街に来た時に」
魔法使い「お姉さんに教会の場所を聞かれたのを覚えて居るのよ」
僧侶「!」
勇者「へぇ……」
僧侶(まさか……あの、小さかった女の子は……魔法使いさん!?)
魔法使い「でも、もう随分経つものね……無くなっちゃったのかな」
戦士「おい!」タタタ
勇者「ああ、戦士ありがとう…… ……どうした、険しい顔して」
戦士「……大変な事になっている様だぞ」
僧侶「大変な事?」
戦士「…… ……始まりの国と、魔導の街の兵士が交戦中、だそうだ」
魔法使い「何ですって!?」

ザワザワ……

勇者「大きな声を出すな! ……どう言う事だ!?」
1441 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:17:21.53 ID:V3ytwQB1P
戦士「お前もだ、勇者…… ……否、その前に」
戦士「場所を移そう。此処では……」
僧侶「……聞かれるとまずい、のですか?」
戦士「違う。勇者の双眸は目立つ……落ち着いて話が出来ん」
戦士「俺もちらりと聞いたに過ぎない」
魔法使い「ど、どう言う事よ!?」
戦士「……今後の事も話し合わねばならんだろう。魔導の街……否」
戦士「『魔導国』と名を改めたあの国に、行く船は無いのだと言われたんだ」
魔法使い「! ……そんな!?」
僧侶「魔導国……?」
勇者「…… ……宿を取ろう。飯屋で話す話でも無い」
僧侶「…… ……」
戦士「そうだな。だが、情報収集は必要だろう?」
魔法使い「…… ……」
勇者「ああ……でも……」
僧侶「勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「…… ひとまず、此方へ」スタスタ
僧侶(建物は残って居るはず…… ……それに、随分と険しい視線を感じる)
僧侶(否、場所を移しても同じかもしれないけど……)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「シッ…… 着いてきて下さい」
勇者「…… ……後で説明してくれよ」
僧侶(教会へ上がる道は一本道)
僧侶(……諦めてくれるとは、思わないけれど……!)

スタスタ、スタスタ

魔法使い「あ……!」
戦士「教会?」
勇者「なんだ、まだあるんじゃ無いか」
1451 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:21:37.30 ID:V3ytwQB1P
僧侶「多分……私達、見張られています」
勇者「え!?」
僧侶「一本道なので、間を開けて着いてくるでしょう」
僧侶「……聞かれてまずい事は無いと思いますけど」
僧侶「相手が解らない以上……」
戦士(背後……)チラ
戦士(……誰も居ない、が。僧侶の言う通りなら)
戦士(後で……来る、か)
魔法使い「ちょ、ちょっと!私達別に何も悪い事なんて……!」
勇者「大きい声出すな、って!」
僧侶「……どうぞ、中に」キィ
僧侶「荒れ果ててると思いますけど、ね」
戦士「……来た事、あるのか?」
僧侶「…… ……」
勇者「とにかく入ろう。ほら、魔法使い」
魔法使い「え、ええ……」

パタン

勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」

カサ…… ガサガサ……

僧侶「…… ……」フゥ
戦士「何者だろう、かな」
魔法使い「な、なんで私達を……!」
勇者「……実質、戦争って考えて良い、んだろう」
魔法使い「!」
僧侶「可能性が高いのは二つ、ですね」
勇者「どっちの国か……か」
1461 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:31:25.18 ID:V3ytwQB1P
魔法使い「そんな!?」
戦士「……俺だって考えたくは無い」
勇者「可能性が高いのは、魔導の街の方、かなぁ……」
魔法使い「勇者!?」
勇者「…… ……」
戦士「何故、抗戦等……」
僧侶「他には……何か、ありませんか?」
戦士「…… ……何処へ行く船があるのか聞いただけだからな」
戦士「鍛冶師の村、北の街方面へ行く船と、魔導の街へと行く船がある、が」
戦士「……魔導国は封鎖されたらしく、船は現在出ていないとの事だ」
魔法使い「……封鎖!?」
僧侶「魔法使いさん、あの街の出身なのですよね?」
僧侶「何か……知りませんか?」
魔法使い「し……ッ 知らないわよ!そんなの、何も聞いてない!」
魔法使い「それに……わ、私……ッ」
勇者「落ち着け。誰も責めちゃいない」
魔法使い「…… ……ッ」
戦士「後、北の街や鍛冶師の村の方への船も何時まで運航できるかわからんのだそうだ」
勇者「え?」
戦士「…… ……言いにくい、んだがな」ジッ
魔法使い「…… ……良いわよ。言いなさいよ」
戦士「……『魔導国』からの船の運航を中止しろとの要請がある、のだとか」
魔法使い「!」
戦士「詳しい事実関係も何も、解らないんだ」
戦士「…… ……」
勇者「……どう、なっている、んだ」
勇者「船が無いと……魔王の所へたどり着けないだろうに……!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……魔導の街へ行きましょう」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「私が……頼んでみるわ」
勇者「しかし……」
戦士「…… ……それが良いだろうな」
僧侶「戦士さん……?」
戦士「…… ……」ジッ
魔法使い「解ってるわよ。自分で話すわ……」
1471 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:39:47.64 ID:V3ytwQB1P
魔法使い「…… ……私は、魔導の街の領主の孫よ」
僧侶「!」
勇者「え!?」
魔法使い「だから……頼んでみる」
僧侶「……勇者様」
勇者「うん……」
戦士「?」
勇者「いや、甲板で僧侶と話をしていて、さ」
勇者「行き先が決まっていないなら、魔導の街に行かないか、てさ」
僧侶「あの街には、大きな図書館がある……ん、ですよね?」
魔法使い「え、ええ……そうよ」
僧侶「……話そう、と思っていた事があるのですが、此処ではちょっと……なので」
僧侶「詳細は省きますが、調べたい事がありまして」
戦士「……それは、重要な事なんだな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶(私の秘密……否、何れは話さないといけない事)
魔法使い「……それにしても、船が居るのね」
戦士「まあ……そう、だな」
勇者「始まりの街に戻るか? ……国王なら、船を貸してはくれる……だろうが」
僧侶「……そうしない為の抗戦の様な気もします」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「ごめんなさい、一方的に魔導の街を悪者にする気は無いんですが……」
戦士「……状況を見ればそう思うのは仕方無い」
魔法使い「戦士まで!」
勇者「……落ち着け、って」
勇者「育ってきた国だ……国王が、このタイミングで戦争を仕掛けるとは」
勇者「思えない……俺達が旅立ってすぐ、だ」
魔法使い「そ、れ……は……」
勇者「それに……閉鎖した、って話や、船の運航中止の要請や……」
勇者「そりゃ、何処までが本当なのかわかんないけどさ」
僧侶「噂は大袈裟になる物ですしね」
1481 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:49:23.16 ID:V3ytwQB1P
勇者「のんびりしてる時間は無い……否、無くなった、だな」
戦士「人間同士で抗戦等……こんな時に……!」
僧侶「……圧倒的に情報が足りませんね」
魔法使い「そ、そうよ!推測で疑いあったって……!」
戦士「少し街の人の話を聞いてこよう」
勇者「……僧侶、一緒に行ってやってくれ」
僧侶「あ、はい」
魔法使い「わ、私が……!」
勇者「君は駄目だ、魔法使い」
魔法使い「何で!?」
勇者「……つけてきているのが、魔導の街の人間だとしたらまずい」
勇者「頼むよ、戦士。僧侶」
僧侶「はい。此処で……待っています、か?」
勇者「ああ。戦士から離れるなよ」

パタン

魔法使い「…… ……」
勇者「君の素性を知れば、気持ちは解るよ……けど」
勇者「……あんまり、睨まないでくれよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「『魔導国』って事は……領主が王になった、のかな」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
魔法使い「僧侶は、どうしてあの街に行こうって言いだしたの?」
勇者「まだ聞いていない。後で……全部説明する、と言うから」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「……何?」
1491 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/26(月) 23:57:07.37 ID:V3ytwQB1P
勇者「忘れてるかもしれないけど、さ」
魔法使い「?」
勇者「……戦士は、始まりの国の王の……血縁なんだよ?」
魔法使い「だからよ!」
勇者「!」
魔法使い「そりゃ、勇者はあの街で、あの王達と過ごしたかもしれないけど……!」
勇者「…… ……御免」
魔法使い「じょ、状況を見れば、お爺様達がおかしいって思う事ぐらいは……!」
魔法使い「私にだって、解るわよ!だけど……ッ」
勇者「…… ……」ハァ
勇者「状況を整理しよう。戦士達が帰って来たら」
勇者「……僧侶の言う、見張りってのも何処の誰かわかんないけど」
勇者「小さな声で喋れば、街中や宿で話すより、聞かれる可能性も低いだろう」
魔法使い「…… ……僧侶は、どうして此処に教会がある事、知ってたのかしら」
勇者「それも含めて順番に、だ」
魔法使い「…… ……?」スタスタ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……何、これ……彫刻?」
勇者「え? ……随分ボロボロだな」
魔法使い「腕が取れちゃってるわね」
勇者「あ、本当だ」
魔法使い「……この教会のシンボル、かしら」
勇者「それにしては小さくないか」
魔法使い「…… ……」ス……
勇者「?」
勇者(窓の外……? ああ、庭、か…… ……墓、かな。あれ)
魔法使い「朽ちちゃってるわね」
勇者「ああ…… ……亡くなった、んだろうな」
勇者「この教会の神父さんとかかな」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(存在を忘れられるのは……寂しい物よね)
魔法使い(あの街に戻って、もし、私の加護の事がばれたら……!)
魔法使い(私も、あんな風に……!!)
1501 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 00:04:30.42 ID:ZSP+HJnIP
勇者「……魔法使い?」
魔法使い「大丈夫……お爺様も、お母様も……きっと……ッ」ブツブツ
勇者(……魔法使いも、色々ある……んだろう、な)
勇者(しかし……魔法使いをアテにして、あの街へ行って……大丈夫、なのか?)
勇者(かといって始まりの街に戻っても、そんな状態じゃ船なんか……)
勇者(それに、もし……その間に、この街からの船の運航がストップしてしまえば)
勇者(八方ふさがりだ……!)

キィ

戦士「……戻った」
僧侶「お待たせしました」
魔法使い「! ……どうだった!?」
勇者「悪いな……大丈夫だったか?」
戦士「ああ。まあ、噂、に過ぎないが」
僧侶「……私達が旅立った後、二つの船団が交戦状態に入ったそうなのです」
戦士「場所は、南の小さな洞窟の傍、らしい」
戦士「……多分、鉱石が取れるとか言う島だろうと思う」
魔法使い「鉱石……戦士が言ってた場所、ね」
戦士「ああ。そして……魔導の街は国の設立と封鎖を宣言した」
戦士「……同時に、この街にも船の運航中止の要請を出したそうだ」
僧侶「詳しい話は町長さんに聞きに行けと言われましたが」
僧侶「……どうやら、聞かない場合武力行使も辞さないと……」
魔法使い「そんな……!?」
1511 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 00:18:30.97 ID:ZSP+HJnIP
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……勇者様」
勇者「あ……何?」
僧侶「これからの道行きを考えても、先ほど申し上げたとおり」
僧侶「……魔導の街……魔導国、には一度、足を運んだ方が良いと思います」
戦士「何故なんだ?確かに、足止めは困るが……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……僧侶がそう思う理由は何なの?」
魔法使い「私が言うのは、おかしいかもしれないけど」
魔法使い「その……あんた達が聞いて来た話が本当なら」
魔法使い「…… ……お爺様達が、何を考えて居るのか、解らない」
魔法使い「けど……貴女、どうしてこの教会を知ってるの?」
魔法使い「見た感じ、無人になって何年も経ってる」
魔法使い「……私は、知っていたわ。小さい頃はまだ、看板も出てたし」
魔法使い「上がってくる道も、こんなに草が生い茂ってなくて」
魔法使い「もう少し……ちゃんと、通れるって、解る位だった」
戦士「魔法使い?」
僧侶「…… ……」
魔法使い「孫の私でさえ、どこかおかしいって。思うのに」
魔法使い「……どうして、そんなに魔導の街に行きたがるの?」
魔法使い「つけられてるみたいだ、とか……ッ」
勇者「お、おい、魔法使い!落ち着け、って……!」
魔法使い「何企んでるのよ!うちの街の見張りって、あんた自身じゃ無いの!?」
魔法使い「優れた加護だって持ってるんでしょう!?」
僧侶「そ、それは違います!」
魔法使い「じゃあ、何でそんな事、解るのよ!」
魔法使い「……その、アンタの『感じる力』って何なの!?」
魔法使い「そんなの、普通の人間には無いわよ!」
戦士「魔法使い!」
魔法使い「……ッ アンタ、人間じゃ無いんじゃないの!?」
僧侶「…… ……はい。私は、人間ではありません」
魔法使い「…… ……え?」
戦士「!?」
勇者「…… ……な、に?」
1521 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 00:45:18.90 ID:ZSP+HJnIP
僧侶「……私は、人間ではありません」
戦士「…… ……どう、言う事、だ」
勇者「ま……さか!?」
僧侶「あ……!で、でも魔族でもありませんよ!?」
魔法使い「アンタ、そんな都合の良い……!」
僧侶「……それは、魔法使いさんが照明してくれるのでは無いのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「……回復魔法を、使えます、から」
魔法使い「あ……!」
戦士「…… ……なんだ?」
魔法使い「……回復魔法はね。人間にだけ許された特権なの」
勇者「え?」
魔法使い「魔法を使う者なら誰でも知ってる」
魔法使い「……弱くて、強い人間だけの特権」
戦士「ちょ、ちょっと待て!僧侶は今、自分は人間では無いと……!」
僧侶「正確には半分だけ、なんです」
僧侶「……私は、孤児です」
僧侶「鍛冶師の村近くの小屋の傍で、神父様という方に拾われました」
勇者「……それは前も聞いた……よな」
僧侶「はい。私を産んで、託し、息絶えた母は……エルフだった様です」
魔法使い「エルフ……!?」
戦士「……弓を持っている、と言うだけでは無く……確かなのか?」
僧侶「神父様も、母が亡くなる前にそう聞いた訳では無いと仰っていました」
僧侶「……ですが、私は……」
魔法使い「他に……確証は、あるの?」
僧侶「……はっきりと何年、とは……覚えて居ないので、解りませんが」
僧侶「…… ……私は、何歳に見えますか?」
戦士「!?」
勇者「俺より……少し、下ぐらい、かな」
僧侶「……そうですね。ですが……私は、もう少し、長い間生きています」
魔法使い「え!?」
1531 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 00:54:19.35 ID:ZSP+HJnIP
僧侶「魔法使いさん。先ほど仰っていた事、はっきりは……覚えて居ないと」
僧侶「思いますけど……」
魔法使い「…… ……?」
僧侶「……昔、この街に来た時、私は小さな女の子に」
僧侶「『教会はどこか』と訪ねた事があります」
魔法使い「!」
戦士「ま、さか……!?」
僧侶「……その子は言いました」
僧侶「……『パパとママはとても強い魔法が使える。私も何時かそんな風になりたい』と」
魔法使い「……あ、の時の……あの人が、アンタ、だと言うの!?」
僧侶「覚えて居ますか……?」
魔法使い(容姿までは覚えて居ない。だけど…… ……そういえば)
魔法使い(優しい……どこか、悲しそうな笑顔は……)
僧侶「船で、魔導の街へ帰るのだと言っていました」
僧侶「……紅い髪に紅い瞳。キラキラと目を輝かせて」
僧侶「パパとママに、手を引かれて……楽しそうに」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「そして私は、しばらくの間、この教会に従事していました」
僧侶「……女神官様は目を患われて。私には……幸いしたのです」
僧侶「何時までも変わらないだろうこの身を、隠すにはもってこいでしたから」
戦士「……待て。おかしいだろう。お前はエルフの娘なのだろう?」
戦士「回復魔法は、人だけの特権、では無いのか」
僧侶「神父様も不思議に思っていられましたが……多分」
僧侶「私の父は、人であった、のでしょう」
魔法使い「……な、によ……じゃあ、アンタは……!」
僧侶「……ハーフエルフ、と言う言葉が存在するのかどうかは、解りませんけど」
僧侶「そういう、特異な存在なのでしょうね」
勇者「…… ……確か、なのか?」
僧侶「生きた証ですよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「……ハーフ、エルフ……」
1541 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:02:06.93 ID:ZSP+HJnIP
僧侶「……私がもっと幼い頃」
僧侶「神父様のお話では、成長のスピードが人とは違ったらしく」
僧侶「産まれて数ヶ月で歩き、しゃべり……知恵をつけたと仰っていました」
僧侶「……そして、感じたのです」
勇者「感じた?」
僧侶「はい。『光と闇の喪失』を」
戦士「…… ……?」
僧侶「今から考えると……多分、前勇者様と魔王の命の喪失だったのでしょうね」
魔法使い「ちょ……ッ 待ってよ、おかしいじゃ無いの!」
魔法使い「勇者のお父様は前勇者様なんでしょう!?」
魔法使い「だったら……!」
僧侶「私が、魔導の街へ行って……世界一を誇る図書館で調べたいと思ったのは」
僧侶「それ、なのです」
勇者「え……?」
僧侶「16年前。私は確かに、光の誕生を感じ取りました」
僧侶「……その光は、まさしく貴方の物なのです。勇者様」ジッ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶「……光と闇の喪失を感じたのは、本当に幼い頃」
僧侶「だから勘違いと言われればそれまでなのですが…… ……」
僧侶「失われた光と、産まれた光…… ……同じ、なのです」
戦士「同じ?」
僧侶「はい」
勇者「……それは、俺と親父が『勇者』だからじゃないのか」
僧侶「それも勿論、考えました。思いました。しかし…… ……覚えて居ますか?」
僧侶「始まりの街で、貴方の光の剣を見せて頂いた時の事」
勇者「……! 全く同じ光を感じる!」
魔法使い「!」
僧侶「……はい。あれがお父様の形見であり、お父様の光の残照だとするなら」
僧侶「やはり……おかしいのですよ」
魔法使い「ちょ、ちょっと……待って、よ……!?」
戦士「…… ……」
1551 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:08:43.03 ID:ZSP+HJnIP
魔法使い「……それが正しいなら、勇者と前勇者様は」
魔法使い「『同一人物』って事になるじゃないの!」
僧侶「……そう、なんです」
勇者「そうなんです、って…… ……」
僧侶「でも『時間が合わない』んです」
僧侶「もし、生まれ変わりであられるのなら」
僧侶「…… ……否。あり得ません、よね」
戦士「生まれ変わりであるのなら、喪失と誕生を一緒に感じていないとおかしい、か」
僧侶「……不思議な感情でした」
僧侶「光と闇の喪失を感じ取った時」
僧侶「とても……その、なんて言うか……」
僧侶「『悲しさと寂しさと切なさと……嬉しさ』を感じたんです」
勇者「!」
勇者(同じだ……!)
勇者(甲板の上で、僧侶と話した時)
勇者(僧侶に見つめられて、どきっとした時)
勇者(……そして、今。だ)
勇者(……同じ気持ちを、抱いた)
僧侶「…… ……それから。私が川に落ちた時」
魔法使い「え……?」
僧侶「あの、紫の瞳の方と出会った時です」
僧侶「……あの時も、同じ事を思ったんです」
僧侶「ですが、あの時は…… ……その、漠然とですが……」

勇者「『貴方じゃ無い』」
僧侶「『貴方じゃ無い』」

魔法使い「!?」
戦士「……勇者?」
勇者「……戦士には話したな」
1561 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:14:32.44 ID:ZSP+HJnIP
勇者「もし彼を選んでいたら、と」
僧侶「…… ……」
魔法使い「勇者……」
勇者「……違うんだ。自分の直感を信じたい気持ちと」
勇者「……もし、と思う気持ちと」
勇者「だが、違うんだ!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……私、多分あの人を知ってる」
戦士「え!?」
魔法使い「…… ……私には、優れた加護が無い」
魔法使い「……アンタは気がついてたわよね?」
僧侶「……はい」
魔法使い「勇者には話したし、戦士にも闘技大会の時にばれてた」
戦士「…… ……」
魔法使い「お爺様達は……私は、自分の孫だから。子供だから」
魔法使い「優れた加護があって当たり前だと、テストをすると言ったの」
魔法使い「私がまだ幼い時にね」
勇者「…… ……」
魔法使い「同じ属性を持ったメイドが、私に向かって炎の魔法を放つだけ」
魔法使い「……簡単な事だから、怖がる必要なんか無いって言って、ね」
僧侶「そんな……!?」
魔法使い「……助けてくれたのは、紫の瞳の男だった」
戦士「な、に……?」
魔法使い「少し前から滞在してるのは知ってたのよ」
魔法使い「丁度、加護の勉強をしている時だったし」
魔法使い「……珍しい色の瞳には興味があったの」
魔法使い「そして、あの男は……助けてくれたのよ」
魔法使い「メイドの魔法が私に届く前に……恐らく、だけど」
魔法使い「……魔法で、相殺して誤魔化してくれた」
1571 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:22:25.21 ID:ZSP+HJnIP
勇者「……ん?」
僧侶「べ……別人では!?だって……!」
魔法使い「……そうよね。川辺であの人は、雷の魔法を使ってた」
戦士「…… ……?」
魔法使い「二つの加護を持つ人なんて、聞いた事が無い!」
魔法使い「……それに、もしあの男が彼ならば」
魔法使い「僧侶と同じよ。彼は……歳を取っていない事になる」
勇者「…… ……まさか都合良く、エルフがもう一人、なんて言わない、よな」
僧侶「あの人はエルフではありません!あの人は……!」
戦士「……魔族、か?」
僧侶「…… ……わかりません」
魔法使い「解らない?」
僧侶「じっくりと観察した訳では無いですし、あんな時だったし……」
僧侶「だけど…… ……」
勇者「『悲しくて寂しくて切なくて嬉しい』?」
僧侶「……はい。だけど『彼じゃ無い』」
魔法使い「…… ……」
戦士「……紫の瞳をした、勇者にそっくりな男、か」
戦士「俺は何故魔導の街に居たのか、の方が気になるが」
勇者「あ…… ……そ、うだよな」
戦士「あの男が本当に歳を取らない……『人』で無い者だとしても、だ」
戦士「……注意するに越した事は無い、だろう」
魔法使い「…… ……あの男、何処へ行ったのかしら」
僧侶「…… ……もし、魔導の街へ戻ったのだとしたら」
勇者「!」
魔法使い「……確か、『剣士』と呼ばれて居たわ」
勇者「……その、剣士と言う男の力……後ろ盾を得て」
勇者「強硬手段に踏み出した!?」
戦士「待て! ……あいつは登録所に居ただろう!」
僧侶「…… ……選ばなくて正解だったのかもしれません」
僧侶「勇者様の直感は、やはり正しかった……のかも」
1581 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:31:38.59 ID:ZSP+HJnIP
魔法使い「……こういう状況に追い込んで、私達が魔導の街へ」
魔法使い「行く様に仕向けられたのだとしたら!」
勇者「…… ……罠、か」
僧侶「…… ……急いで船に乗りましょう」
勇者「え!?」
僧侶「離れた方が良いです。もし彼らの狙いが私達が魔導の街へ行く事なら」
僧侶「船の運航停止を求める理由に繋がります!」
戦士「!」
魔法使い「…… ……私なら、魔導の街へ行ける。何時でも」
勇者「……魔法使い」
魔法使い「大丈夫。 ……大丈夫よ。私は冷静だわ」
勇者(顔が真っ青だぞ……)
戦士「…… ……図書館は良いのか」
僧侶「まさか、私の思考まで読まれていたとは……とても思えませんが」
僧侶「……目的が解らない以上、接触は避けるべきでしょう?」
戦士「あ、ああ……だが……」
魔法使い「僧侶に賛成。必要があれば、逆に何時でも行けるわ」
魔法使い「……見張りがもし本当にあの街の人間なのなら」
魔法使い「何処でも接触できる筈!」
戦士「……何処に行くんだ」
勇者「鍛冶師の村へ行こう」
魔法使い「え?」
勇者「頭も冷やす必要があるし……罠を仕掛けるってだけで」
勇者「鉱石の洞窟近くを戦場に選んだ訳でも無いだろう」
勇者「…… ……俺達の目的は、魔王を倒す事だ」
勇者「忘れちゃ、行けない」
魔法使い「!」
戦士「……急ごう。今日の便はまだ出てる筈だ」
僧侶「時間が間に合えば、ですけど……!」
勇者「走れ!」タタタ
僧侶「あ……!」
魔法使い「僧侶!早く!」
僧侶「は、はい……!」
僧侶(ごめんなさい、女神官様……!)
僧侶(平和になれば、必ず……必ず!戻って参ります!)ガシッ
僧侶(それまで……預からせて下さい!)タタタ

……
………
…………
1591 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 01:32:21.14 ID:ZSP+HJnIP
げーんかい!寝ます!
160名も無き被検体774号+:2013/08/27(火) 01:34:54.45 ID:rq/3Fcsf0
規制解除された今のうちに言っとく
1乙いつも楽しみにしてます。すごい面白いです
絵師さんもすごいきれいな絵で楽しみです
ありがとう
161名も無き被検体774号+:2013/08/27(火) 01:35:16.38 ID:LOu8E+ppi
お疲れゆっくり休んで
162 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2013/08/27(火) 01:35:42.34 ID:NAVDcI0/0
おやすみノ
1631 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/27(火) 13:00:04.99 ID:ZSP+HJnIP
おはよう!
避難先考えといた方が良いのかなー
お出かけるので、帰って、来れたら!
後ほど〜
164名も無き被検体774号+:2013/08/27(火) 17:02:09.73 ID:t2OA78AD0
いや、気にしないでいいと思うよ
管理会社もサーバー移転するらしいし、こんなんで2chはつぶれないよ

ま、つぶれてくれた方が、次の覇権争い見れるから楽しいけどw
165名も無き被検体774号+:2013/08/27(火) 17:10:25.00 ID:w5AlYhkYP
大きくなりすぎたからつぶしてみるのも一興
166名も無き被検体774号+:2013/08/27(火) 22:57:31.06 ID:EPbGudR80
酉、割れてたよ
8月に書き込んだ酉は全部漏れたらしいし
167名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 00:11:03.05 ID:agI8mnCoi
BBAの酉も割れたのかよ
168名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 00:52:15.99 ID:wHVVwgvh0
BBAの酉なんて考えるまでもないくらいイージーだったじゃん
169名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 01:37:15.50 ID:agI8mnCoi
勇者か魔王か拒否権か幼女あたりか
1701 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/08/28(水) 04:59:51.25 ID:W/pTVQ9VP
おはよう!

やっぱり割れてたのね、酉……
一応変えておくよー
1711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:01:53.99 ID:W/pTVQ9VP
幼女が起きるまで!
1721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:21:39.73 ID:W/pTVQ9VP
使用人「…… ……」
后「使用人、お茶……覚めちゃうわよ」
使用人「あ……ええ……」カチャ
后「随分思い詰めた顔、してる」
使用人「……間に合うのかな、と」
后「…… ……」
使用人「紫の瞳の魔王様の時よりも……随分、早いのです」
使用人「……それに、随分不安定な様だし」
后「魔導将軍も戻った。私も居るよ」
后「……大丈夫。『願えば叶う』んでしょ?」
使用人「そう、思いたいですが……」

カチャ

后「……?」
使用人「魔導将軍様!?」
魔導将軍「少し落ち着いたよ」
后「私が言うの、あれだけど…… ……離れて、大丈夫なの?」
魔導将軍「うーん……最後、かなぁ」
使用人「最後?」
魔導将軍「側近と話してたんだけどね……」
魔導将軍「……もうちょっとだけ、どうにかなりそうだし」
后「城を離れるの?」
魔導将軍「どうしても気になるのよ」
使用人「……どうぞ、お座り下さい。お茶の準備をして参ります」

パタパタ……パタン

后「……魔王にそっくりな男?」
魔導将軍「後、魔導の街……あ、国か。の事もね」
后「…… ……」
魔導将軍「知れたとしても、何か出来る訳じゃないんだけどね」
1731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:27:48.97 ID:W/pTVQ9VP
后「でも、近づけないでしょ?」
魔導将軍「そう、なんだけどね……」ハァ
后「…… ……ちょっと待って」
魔導将軍「?」
魔導将軍(目閉じて……何してんのかしら)

カチャ

使用人「お待たせしま…… ……后様?」
魔導将軍「シ……ッ」
后「……見えた」パチ
魔導将軍「見えた?」
后「勇者達の気配を探ってみたら……ん、ちょっと待って」
使用人「…… ……」ハァ
魔導将軍「何ため息ついてんの……」
使用人「いえ……何だか、随分紫の瞳の魔王様に似てきたな、と」
魔導将軍「……后が?」
使用人「何でもあり、なところがですよ」
魔導将軍「……『魔族って本来こういう物』なんじゃ無いの」
使用人「以前仰ってましたね」
魔導将軍「それも后の受け売り、だけどね」
使用人「…… ……かもしれません、でも」
使用人「だからといって、はいそうですかって簡単にできる物でも」
使用人「無いと思うのですけどね」
魔導将軍「……愛って奴よ」
使用人「愛?」
魔導将軍「魔王への愛。勇者への愛」
魔導将軍「……一つじゃ無いでしょ、そういうの」
1741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:33:05.79 ID:W/pTVQ9VP
后「この場合は原動力、かな」
魔導将軍「どうにかしてやりたい、何でもしてやりたい、って奴よね」
使用人「…… ……」
后「そういう事。 ……北の街へ向かってるみたい」
魔導将軍「北の街?」
后「うん……鍛冶師の村付近だね」
使用人「遠見……ですか」
后「そうなのかな?気配を追えば見えたよ」
魔導将軍「……その為に仲間の詳細、探らせた訳?」
后「純粋な興味もあったけど……まあ、それもあるかな」
魔導将軍「北の街、か……なら、近いね」
后「もう少し掛かりそうだけどね」
魔導将軍「OK。お茶ご馳走様、使用人」
魔導将軍「近づいたら教えてよ、后」
后「……解った」
魔導将軍「それまでは……側近の所に居るよ」
魔導将軍「……アンタは、まだ駄目よ」
后「解ってるよ」
魔導将軍「……羨ましい?」
后「少しね……でも、解ってる」
使用人「…… ……」
魔導将軍「じゃあね」

スタスタ、パタン

后「…… ……」
使用人「后様」
后「ん?」
使用人「……身体、と言うか……その。大丈夫なのですか」
后「私? ……大丈夫だよ」
使用人「…… ……」
1751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:42:20.45 ID:W/pTVQ9VP
后「さて、私も書庫に行くよ」
使用人「調べ物ですか?」
后「遠見って何処まで出来るのかわかんないし」
后「……魔導の街とかまで、見えちゃったりはしないだろうけど」
使用人「紫の瞳の男の気配を追えれば……」
后「私自身は接触してないから難しいだろうね……」
使用人「しかし、勇者様のお仲間の方は……」
后「勇者の気配は一番よく知ってるからね」
后「……それをより確かな物にする為、ぐらいにしか、ね」
使用人「……そう、ですよね」
后「でも……随分進んできた、んだね」
后「…… ……もうすぐ、だよ」
使用人「……はい」

……
………
…………

勇者「船酔いは大丈夫か?」
僧侶「……はい、何とか」
魔法使い「整理しましょう。頭が混乱しそうよ」
戦士「先に少し休んだ方が良くないか?船には間に合ったんだ」
勇者「鍛冶師の村まで時間はあるけど……」
魔法使い「……休めるの?」
戦士「…… ……」
僧侶「無理の無い範囲で、やりましょう」
僧侶「……すっきりしないと、休めないのも……解りますし」
勇者「…… ……」
戦士「……現状がどんな状態なのかはっきりわからんのが、な」
1761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 05:59:52.03 ID:W/pTVQ9VP
僧侶「やっぱり、町長さんに話を聞いてくれば良かった……ですね」
勇者「仕方無いさ。丁度出航時間だったんだ」
魔法使い「これを逃したら……それこそ、魔導国に行くしかなくなってたかもね」
勇者「……大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否。あんなに、その……」
魔法使い「……仲間、でしょ」
魔法使い「私達の目的は『魔王を倒す』事」
僧侶「でも……」
魔法使い「気にならない筈は無いわ。でも……」
魔法使い「こんな時に、戦争を始めるなんて……」
戦士「……時系列に沿って話を進めよう」
戦士「こんがらがるばかり…… ……ッ」

グラグラグラッ

勇者「な、んだ……ッ」
僧侶「……ッ」グッ
戦士「大丈夫か!?」
魔法使い「随分揺れるわね……」
僧侶「だ、大丈夫です……多分、あれです……」
僧侶「……大渦の傍……」
勇者「大渦?」
僧侶「……はい。大海の大渦……海が、荒れる地域を通るのは」
僧侶「解ってました、から……」
戦士「横になれ。話していては……」
魔法使い「舌噛みそう……大丈夫?」
僧侶「…… ……すみません」ハァ
1771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 06:20:59.67 ID:W/pTVQ9VP
勇者「長いな……」
僧侶「当分、揺れます……」ウゥ
魔法使い「……これじゃ話所じゃ無いわね」ハァ
戦士「仕方無い。やはり少し休むべきだ」
勇者「うん、僧侶……眠れるのなら眠った方が良い」
僧侶「はい……」
魔法使い「…… ……」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「お爺様達……何を考えて居るのかしら」
勇者「どんな人達だったんだ?」
魔法使い「……言葉にするのは難しいわね」
魔法使い「なんて言うか……そうね。プライドは間違い無く高い、わね」
魔法使い「……自分達……の血は特別で……」
勇者「血?」
魔法使い「領主の血筋、って言うのもあるけど」
魔法使い「あの街は、『優れた加護を持つ者しか住む事を許されなかった』のよ」
戦士「しかし、それでは……」
魔法使い「人口的に、でしょ?」
魔法使い「……富があったり、色々『利』のある人とかは住んでたわ」
勇者「領主にとって……その血筋の人にとって、か」
魔法使い「そう。居住区は別だったけどね」
戦士「……そもそも、どれぐらいの割合なんだ?」
魔法使い「え?」
戦士「その、『優れた加護を持つ者』だ」
魔法使い「…… ……はっきりとは解らない、けれど」
魔法使い「お母様は『我が血筋には優れた加護を持つ者しか居ない』って」
魔法使い「言ってたわ」
勇者「それは……遺伝する、のか?」
魔法使い「だったら、私にだって無いとおかしいわよ」
勇者「…… ……悪い」
178名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 06:36:49.93 ID:eC/LI4GL0
なんでこんな時間にオンタイムなんだよ
1791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 06:55:49.23 ID:W/pTVQ9VP
戦士「しかし、遺伝しないのであれば……」
魔法使い「……私、自分に優れた加護が無い事を隠す事ばかり考えてたけど」
魔法使い「私みたいな人が、他に居ない方がおかしいのよ」
勇者「街を出て行った、のか?そういう人達は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「出て行かざるを得なかった、の方が正しいんじゃないかしら」
魔法使い「……でも」
勇者「でも?」
魔法使い「私が試されたのは、随分と幼い頃よ」
魔法使い「…… ……私は、剣士と言う男に助けられた、けれど」
戦士「それは、お前が領主の直系だから……では無くてか?」
魔法使い「確かな事は言えないけれど……」
魔法使い「魔力の発現や……優れた加護もそうね」
魔法使い「個人差はあるけど、多分……遅くても、10歳まで、には」
戦士「…… ……」
勇者「もし、優れた加護を持たない子供が産まれたら……」
戦士「……想像したくない、が」
勇者「そんな幼い子供まで、放り出すのか!?」
魔法使い「家には、メイドも居たわ。直系では無いにしろ」
魔法使い「血のつながりはあったんでしょうね。皆……」
魔法使い「…… ……優れた加護を持つ者だったんだと、思う」
勇者「メイド、まで?」
魔法使い「……『出来損ない』って言葉を何度も耳にした」
魔法使い「多分……優れた加護を持たない人達の事だと思うの」
戦士「随分な話だ」ハァ
1801 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 07:26:10.57 ID:W/pTVQ9VP
魔法使い「試された時……凄く怖かった」
魔法使い「……私に優れた加護なんて無い事はもう、知っていたし」
魔法使い「もしばれたらどうなるんだろうって」
勇者「……知らない、のか?」
魔法使い「あの時、お爺様だったかお父様だったか……忘れたけど」
魔法使い「『それなりの役割がある』とか言ってたけど……」
魔法使い「……よく考えれば、碌な物じゃ無い事ぐらいは解る」
戦士「…… ……」
魔法使い「無かった事にされるんじゃ無いかって思ったわ」
勇者「無かった事? ……まさか、殺される訳じゃ……!」
魔法使い「その方がましだったかも知れないわ」
勇者「そんな!」
魔法使い「……どう考えたっておかしいじゃない」
魔法使い「閉鎖的とは言えなくも無い場所だった。だけど」
魔法使い「まさか、罪の無い人を殺して良いなんて訳じゃ無かったでしょう」
魔法使い「だったら……『役割がある』って、何よ?」
戦士「…… ……」
勇者「……しかし、無かった事って……」
魔法使い「『領主の血筋の者』では無かった、て事にはなったんでしょう」
魔法使い「……生きるより死んだ方がマシだと思わされる目に遭うぐらいなら」
魔法使い「……そんな人生、厭よ!」
戦士「生きているだけで素晴らしい物だ」
戦士「……そんな風に言うな」
勇者「戦士の言うとおりだ、魔法使い」
勇者「だけど……天と地程の差のある態度を取られれば」
勇者「ましてや、幼い子供なら……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「なのに……私」
魔法使い「それでも、勇者の仲間に選ばれた時、まっさきに思ったのが」
魔法使い「……『これであの街に帰る事ができる』だったわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「あの人達に褒めて貰える。認めて貰える」
魔法使い「……許される、ってね」ハァ
1811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 08:12:25.46 ID:W/pTVQ9VP
戦士「根深い問題だな……」ハァ
勇者「それにしたって、凄い確率だよな」
勇者「『優れた』と言う位なのだから……そうそう発現する物でも無い様な」
勇者「気はするんだけどな……」
魔法使い「だから……『私達は特別だ』って事になるんでしょう」
戦士「お前もそうなのか」
勇者「……戦士?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうね……もし、私に優れた加護があれば」
魔法使い「此処には居なかった、でしょうね」
勇者「人生にもし、なんて無い。お前はお前だよ、魔法使い」
勇者「俺達の仲間、だろう? ……戦士」
戦士「……解っている」
魔法使い「……良かったと思ってるわ。こうして、一緒に居られて」ジッ
戦士「…… ……」
魔法使い(戦士も……彼も、王の血筋。なのに、どうしてこんなにも違うのだろう)
勇者「……? ……?」キョロ、キョロ
戦士「俺も……そう思っている」ジッ
戦士(親や環境がどうであれ……勇者の言うとおり。魔法使いは魔法使いだ)
勇者(……なんだよ、見つめ合って……)
戦士「……俺は『決して驕るな』と言われて、育ってきた」
魔法使い「……それは、お父様?」
戦士「親父もそうだが……元は女剣士様の言葉だ」
勇者「……初代騎士団長、だっけ?」
戦士「そうだ。己の力に驕る事の無い様に、と」
戦士「……訳も分からず、強くなりたいとだけ……思っていた時に」
戦士「そう、言われたんだ」
1821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 09:29:45.90 ID:W/pTVQ9VP
戦士「『強さは力だけでは無い』と」
魔法使い「……女剣士様、って生涯独身だった、のよね?」
戦士「ああ。だが……血の繋がりこそ無いが」
戦士「……祖母を知らない俺にとっては、その様なものだった」
勇者「…… ……」
1831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 09:31:12.98 ID:W/pTVQ9VP
幼女起きたー
後ほどこれたらー
184 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) :2013/08/28(水) 10:12:13.10 ID:qufo/5b+i
C
185名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 10:18:19.70 ID:qufo/5b+i
書けるとは思わんかった
拒否権からズットROMってた

書籍化の際のペンネームはぜひ、シェヘラザード・スコーン・BBAで!
186名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 11:19:23.68 ID:pMTOoLFQ0
拒否権はないんだの時から読んでます。どうなるか楽しみです。
187名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 11:38:47.79 ID:81neQRQ+0
auスマホで書けた
俺も拒否権は〜からずっとROMってる
BBAいつも楽しみにしてるよ
188名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 11:44:33.89 ID:3wnbhWCI0
拒否権が書かれたのが2月という現実
もう9月じゃないか
1891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 11:55:10.44 ID:W/pTVQ9VP
暫く仕事休みなのでがんばるー!
けど、今日はチョット幼女とおでかけてくるー

つか、そんな長い事やってんだな、私www

では後ほど!
190名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 12:44:58.92 ID:Ce7ghkmq0
俺もauスマホだから、はじめての書き込み
ずっと見てるぜ
191名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 13:39:56.72 ID:jPwM+VlBP
あんだけみんなにウザいウザい言われてた女剣士が
こうやって他人の一生に関わるような教えができるなんてなんか感慨深いな

俺も拒否権〜から読んでるぜ!何を隠そうBBAにP2勧めたの俺だしwww
192名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 15:23:48.55 ID:eC/LI4GL0
こんだけおおっぴらに規制も解除されてるってことは
やっぱり一時的にしろ閉鎖されるんだと思うな
スレまで立てないにしろ、閉鎖されたときの移転場所ぐらいは決めておいてもいいんでないか
193名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 15:39:46.38 ID:Odr3/PgKP
パー速あたりが妥当か?
194名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 15:41:55.32 ID:lc//EJ7T0
SS速報、パー速、SS深夜とか色々あるよね
1951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/28(水) 15:58:18.55 ID:W/pTVQ9VP
ただいま!

一応SS速報とやらに避難所作っておこうかな
まだ立てなくて良いよね??
196名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 21:37:49.90 ID:Odr3/PgKP
SS速報が良さそうだね
いつ閉鎖するかはぶっちゃけわからんから早く立てておけばいつでも行けるから立てといたほうが良いかも
197名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 22:29:55.97 ID:fjqF3S1P0
auも解除されたと聞いて
拒否権からずっと見てますよー
198名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 22:38:19.90 ID:HH+DuMVz0
規制解除された!
応援してるよBBA
199名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 23:19:14.78 ID:3BvEVIQZ0
まだ規制さ
200名も無き被検体774号+:2013/08/28(水) 23:21:30.74 ID:qufo/5b+i
愛されてるなスコーン
身体にきをつけてスコーン
どこに行っても最後まで読むよスコーン(リンク貼ってくれたら)
もちろん次回作もだぜスコーン





ガンガレスコーン!with幼女
201名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 00:30:19.27 ID:rp/cFS4w0
立てたら貼って
ついてくから
202名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 00:39:35.92 ID:pmH/LDBb0
やっぱみてるやつ多いなw

新サーバーに移っても、ログがなくなるだけでしょ?
ま、やりやすいようにやったらいいさー
203名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 00:42:29.55 ID:sr0XTnFL0
うむ。
拒否権からずっと見てるし、ログも全部置いてるよ。
SS速報やらパー速でも付いてくから待ってるー
204名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 00:52:33.50 ID:iUckgQSBO
今回は勇者&僧侶 戦士&魔法使いのカップリングなのか?
戦士&僧侶夫婦好きなので気になる…

移動するにせよ着いて行くからな!!
205名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 01:04:06.90 ID:uuvUpjIVi
裏2ちゃんねるとか出てきてマジで閉鎖しそうだしはやく移った方が良さそうだな
206名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 02:21:35.16 ID:pmH/LDBb0
>>205
いや、閉鎖はないよ
サーバー移転だけらしい
いろいろ、変なの乱立してるけど、どこもすぐつぶれるよ

ってか、のんびり>>1を待たないか?
207名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 03:31:42.81 ID:uuvUpjIVi
なんとかなると思うしのんびり待つか
2081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 04:44:11.65 ID:r8kB/gSuP
おはよーう!

じゃあSS速報に立てるよー
でも、とりあえずで立てて良い物なのかな?
てかこのスレタイで良いのかしらん
もし落ちちゃってもそっちに行くね
2091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:02:55.91 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「もし私に、本当に優れた加護があれば……」
魔法使い「……私、勇者に選ばれなかった様な気がするの」
勇者「……魔法使い?」
魔法使い「だって、それは確かに『私』だけど」
魔法使い「……『今の私』と全く同じじゃ無い筈だもの」
戦士「育った環境や、廻りの大人によって……変わるだろうからな」
魔法使い「ええ。だったら……これで良かったんだわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「ありがとう、勇者。選んでくれて」
勇者「……なんか照れるよ」
魔法使い「出会えて良かったわ。戦士……勿論、僧侶にもね」ニコ
戦士「……あ、あ」ドキ
僧侶「ん……」モゾ
勇者「僧侶?」
僧侶「私……眠ってました……か」
戦士「気分はどうだ?」
僧侶「……少し、ましになりました……」ムク
魔法使い「ああ、まだ横になってなさい。揺れもマシになったけど」
僧侶「ええ……すみません……あ」ゴロン、ゴトッ
戦士「ん、何か…… ……これは?」ヒョイ
僧侶「あ……」
魔法使い「持って来たの?」
勇者「これ……あの教会にあった……?」
戦士「……腕が折れてるな」
僧侶「…… ……隻腕の祈り女様の像、なのだそうです」
勇者「え? ……知ってるの?」
210名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 05:03:22.39 ID:pmH/LDBb0
おはよう!はやいなー
あんまり無理すんなよー

ブクマしとくから、urlだけおねがいね
2111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:13:11.18 ID:r8kB/gSuP
僧侶「港街の教会に居る時に、女神官様からお話だけ聞きました」
僧侶「……始まりの大陸の、美しい丘の上」
僧侶「そこに、エルフとこの……娼婦様、と仰ったそうですが」
僧侶「お二方が眠っていらっしゃるのだ、と」
魔法使い「エルフ!?」
勇者「…… ……エルフ」
僧侶「それも聞いたに過ぎません、から。ハッキリとは……」
魔法使い「でも、貴女……その、感じる、のでしょう?」
魔法使い「何か、解らない……の」
僧侶「確かに、なんて言うのか……清浄な力を感じました」
僧侶「でも……それはあの丘付近になると大きくはなっていますけど」
僧侶「それ程……特別な物では無いと思うんです」
勇者「そうなの?」
僧侶「あの大陸全体が、とても気持ちの良い場所です」
僧侶「魔王城から遠いので、魔物も言う程強く無い、と言うのもあるんでしょうけど」
僧侶「……初めてあの大陸に行った時、とても……そうですね。本当に」
僧侶「『気持ちの良い場所だな』と、思ったんです」
魔法使い「……だから、勇者は代々、あの土地から……旅立つのかしら」
勇者「代々って……言ったって。俺と親父だけだろ?」
魔法使い「……あ、そうか」
戦士「清浄な土地……か……」
僧侶「……そこで育まれ、産まれた戦士さんが、大地に愛されているのも」
僧侶「とても、良く解ります」
魔法使い「…… ……」
2121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:14:43.08 ID:r8kB/gSuP
>>210

おはよー
建て方決まったら此処にurl置いとくねー
2131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:25:33.28 ID:r8kB/gSuP
戦士「……待て。気分も良いのなら、時系列に沿って話そう」
勇者「そうだな。知りたい事は山程あるけど」
勇者「……とりあえず、整理しないと」
戦士「……女剣士様や、親父に、もっと話を聞いておけば……良かったな」
僧侶「前勇者様の事、ですか?」
戦士「それもある。ある……が……」
戦士「……どうにも、変な気持ちだ」
魔法使い「変?」
戦士「時系列に、と言い出しておいて……脱線してしまうが」
戦士「……ああ。あれに似ている。教会でお前達が言ってた様な、あれだ」
勇者「『寂しくて苦しくて悲しくて……嬉しい』?」
魔法使い「解る……気がするわ」
戦士「念願だった勇者との旅路……なのに『何かが違う』」
僧侶「……無理もありませんよ」
僧侶「私達の目標は魔王を倒す事なのに」
魔法使い「……実質の戦争状態。振り回されてる気はするわね」フゥ
勇者「関係無いとは言えないよな」
勇者「……魔王の事だけ、とは言えないよ」
勇者「俺の育った国だ。仲間の……育った国の事でもある」
僧侶「世界を平和に、と言うのは、皆の願いであろう筈ですのに、ね」
魔法使い「……『特別』、か。それ程良い物なのかしら」
僧侶「それは私も……思った事があります」ジッ
勇者「ん? ……お、俺?」
僧侶「自分で言うのも……あれですけど」
僧侶「どうして私にはこんな力があるのだろう、と」
魔法使い「…… ……」
僧侶「同じにしてはいけません、けど……『勇者』も」
僧侶「『特別』ですから」
勇者「…… ……」
2141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:36:20.73 ID:r8kB/gSuP
僧侶「どんな気分で過ごされているのだろう」
僧侶「どんな…… ……その」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「……楽しい事ばかりで無いのは、私だけでは無いのですが」
僧侶「上手く言えません。でも……」
戦士「良くも悪くも、『他』と違う時点で見る物から見れば」
戦士「それは『特別』なんだ」
勇者「俺に取っては普通でも、人に取ればそれは……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「『言葉』に振り回されてはいけない」
僧侶「……そう、ですね。そうで無いと……見失う」
魔法使い「見失う?」
僧侶「はい。感情を。目的を……自分を、見失います」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「今迷路に迷い込む訳には行かないな」
勇者「……そうだな」
魔法使い「……少し、怖いわ」
勇者「怖い?」
魔法使い「真実を知る事。お爺様達が何を考えて居るのか」
魔法使い「……あの、剣士と言う男は何者なのか」
戦士「そうだ。あいつの事もあったな」
魔法使い「僧侶が言ってた、勇者の光の力の事も」
勇者「……親父と同じ光を感じる、と言ってたな」
僧侶「……はい」
魔法使い「これから、どうなるのか。魔王を倒して……」
魔法使い「……本当に、終わるのか」
僧侶「…… ……」
勇者「確かに……怖くないと言えば嘘になる」
勇者「だけど……俺は、知りたい」
2151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:45:34.60 ID:r8kB/gSuP
勇者「知る権利はあるはずだし……知らなくちゃならない」
勇者「……俺は、『勇者』だ」
戦士「そして俺達は仲間だ」
僧侶「……私も、知りたいです。世界の謎。エルフとは何者なのか」
僧侶「そして……貴方の事も、勇者様」
勇者「……ッ」ドキッ
魔法使い(……戦士の事、知りたい)
魔法使い(否、自分の気持ち……かしら……知るのは、やっぱり少し……怖いけど)
僧侶(光だから惹かれるのか、彼だからなのか……)
僧侶(見失いたくない。すべてを、知りたい……!)
戦士(魔法使いへの……この、妙な感覚は何だろう。似ているからなのか?)
戦士(……知りたい。俺の知らない、何かを。全てを)
勇者(親父と同じ光……どうして俺は、『勇者』は光を持つのか)
勇者(今度こそ……確実に魔王を倒す為に、知りたい! ……僧侶の、事も)
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「……良し。今度こそ話を戻そう」
魔法使い「どこから話す?」
戦士「時系列……ああ、そうだ。僧侶は……実質どの程度生きている?」
僧侶「……小さい頃の事は正直、曖昧なのですが……」
魔法使い「私と港街で会った時は、もう今ぐらいの見た目だった筈よね?」
勇者「期間はまあ……良いだろう?」
僧侶「ええと……そうですね」
僧侶「……『光と闇の喪失』を感じていますから」
僧侶「その頃当たりから……お話しします」
2161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 05:56:42.06 ID:r8kB/gSuP
僧侶「『光と闇の喪失』は、前勇者様と魔王であったと思います」
魔法使い「でもそれだとおかしいのよね」
僧侶「はい」
戦士「まあ、先を聞こう」
僧侶「そして、数年……後、だと思います」
勇者「光の誕生を感じた、んだよな」
僧侶「……はい。これはハッキリ解ります。勇者様がお生まれになった」
僧侶「16年前、です」
戦士「俺は既に産まれてたな」
魔法使い「私もよ」
勇者「……実質俺が一番年下なんだな」
僧侶「その後……私は、育てて下さった神父様を看取り、あの小屋を出ました」
魔法使い「鍛冶師の村の近くなのよね」
僧侶「歩くと少し距離がありますが……」
勇者「……連れて行って貰う事は、可能?」
僧侶「良い、んですか?」
魔法使い「貴女が良いなら、勿論……よね?」
戦士「ああ」
僧侶「……はい。ありがとうございます」
僧侶「私は姿が変わりません……歳を取りませんから」
僧侶「最初は、魔導の街を目指そうと思っていたのですが……」
魔法使い「図書館?」
僧侶「はい。ですが……路銀もそれ程ありませんでしたし」
僧侶「仕事を見つける必要がありました」
魔法使い「それで……あそこで私と出会った、のね」
僧侶「……女神官様はとても良くして下さいました」
僧侶「ですが、私は……エルフの血が入っているので」
僧侶「何時までも……居られない」
勇者「実際は何時まで居たんだ?」
僧侶「……出会った頃にはもう、初老の女性だったので」
僧侶「すぐに目を患われて……」
僧侶「……私には、都合が良かったんです。見られなくて済む」
戦士「…… ……」
2171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:07:48.64 ID:r8kB/gSuP
僧侶「女神官様は、私は鳥籠の中の鳥では無いのだから」
僧侶「好きに生きなさいと仰られましたが、放ってはおけませんでした」
僧侶「……神父様の時にも、感じましたが」
僧侶「命の炎が、どんどんと小さくなっていくのも、感じていたのです」
魔法使い「…… ……」
僧侶「不思議ですよね。あれほど……神父様の時に、あれほど」
僧侶「……人の死など、みたく無いと思っていたのに」
戦士「……看取った、んだな」
僧侶「…… ……はい」
魔法使い「じゃあ、あの庭のお墓は……」
僧侶「一つはあの教会を作られた神父様の物だそうです」
僧侶「……女神官様の亡骸は、その隣に」
勇者「あれ……?その、娼婦、って人じゃ無いのか?」
魔法使い「……あ、ああ。そうよね。実在してた人の像まであるのに」
僧侶「あの教会に実際にいらっしゃった、と言うのは聞きましたけど」
僧侶「何故か、と言うまでは……」
戦士「……僧侶は、女神官様の死も知っている、のだな」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「そちらは……お話に聞いた程度、ですけれど」
魔法使い「どうしたのよ、戦士」
戦士「……否」
僧侶「後は、始まりの街に向かい……闘技大会を見たり……」
魔法使い「……そうか。貴女もあの場に居たのね」
僧侶「はい。どうしても勇者様にお会いしたかったのです」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
戦士「あ、いや…… ……その、娼婦と言う人とエルフの墓、だとかは」
戦士「……前にも言っただろうが、幼い頃に連れて行かれているのだと思う」
戦士「覚えては居ない、んだがな」
魔法使い「……寄ってくれば、良かったわね」
戦士「……女剣士様か、親父に連れて行かれたんだろう」
2181 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:14:31.16 ID:r8kB/gSuP
戦士「……お祖母様が亡くなった時」
勇者「ええと……盗賊様、だな」
戦士「ああ。本当はここ……その丘の墓に入れて欲しかったのだろうと」
戦士「聞いた事がある」
魔法使い「え?」
戦士「詳しくは知らんが、知人であったらしい。多分……二人とも」
僧侶「そうなのですか!?」
戦士「……親父か国王様も余り話したがらなかったが」
戦士「昔、港街を作ったのも、始まりの国を再興させたのも」
戦士「お祖母様とお爺様だと習った」
魔法使い「習った?」
戦士「王国史、の様な物だ」
勇者「……港街、まで!?」
戦士「…… ……何時言おうかと思っていたんだが」
戦士「魔導国とは、その頃からいざこざがあったらしくてな」
魔法使い「!?」
戦士「お前は知らないのか、魔法使い」
魔法使い「……私は、魔力の発現を認められたのが早かった、らしいの」
魔法使い「それからは……魔導書ばかり与えられて……」
僧侶「隠蔽……では無いのかも知れません、けど」
僧侶「魔導国は昔から……その……」
魔法使い「良いわよ。遠慮せずに話して」
僧侶「……優れた加護を持つ者しか住む事が許されない、とか……」
勇者「ああ、それはさっき魔法使いが話してくれた」
僧侶「……ご存じでしたら、そこは省きます」
僧侶「神父様が話して下さった事、ですが」
僧侶「以前お仕えしていらっしゃった教会で、神父様と同じように」
僧侶「そこから独立し、魔導の街に行きたいと仰る神官様がいらっしゃったらしく」
僧侶「あの街は……と、誰もあまりいい顔をしなかった、と」
魔法使い「……港街とのいざこざ、の所為……なんでしょうね」
2191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:21:27.41 ID:r8kB/gSuP
僧侶「で、しょうね」
戦士「結局どうなったんだ?」
僧侶「先に教会を出てしまったのが神父様なので、後の事は解らないと仰ってましたが」
僧侶「でも……魔法を志す者ならば、誰もが憧れた街だから」
僧侶「仕方無いのだろうけど、と」
戦士「今は当たり前の様に取引されているが、魔石……」
魔法使い「魔除けの石の事?」
戦士「そうだ。昔は……様々な魔石があったらしい」
勇者「炎とか、水とか……って事か?」
戦士「ああ。俺は見た事がある」
魔法使い「え!?」
戦士「城に補完されていた。あれは魔法を使える者で無くても」
戦士「作れるのだとか……」
僧侶「え!?」
戦士「……いや、本当にそれしか知らないんだがな」
魔法使い「私の家やお爺様の家にもあったわ。魔除けの石、だけだけど」
魔法使い「徳を積んだ聖職者の作った物だとかで……随分高価な物だって」
魔法使い「触らせてくれなかった、けどね」
勇者「……僧侶は?」
僧侶「神父様は……その話は、何も……」
勇者「おいくつぐらいで無くなられたか解らないけど……」
勇者「知っててもおかしく無い、よなぁ……」
戦士「……『鉱石の洞窟』」
魔法使い「戦士?」
戦士「資金源、か?」
勇者「魔導国が狙う理由? ……しかし」
僧侶「色々と思惑はあるんでしょうけど、それも一つかもしれませんね」
僧侶「始まりの国の国王様は、一度船を引き上げられたのでしょう?」
2201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:28:51.40 ID:r8kB/gSuP
戦士「まあ、そうだが……だが、あれは魔石に関係する物なのか?」
勇者「光の剣の修理に使った、んだよな?」
戦士「そう聞いている」
魔法使い「私達鍛冶師の村に向かうんでしょう?」
魔法使い「……話を聞けば良いじゃないの」
戦士「しかし……お爺様の時代で既に『失われていく技術』だと言っていたぞ」
僧侶「聞いてみる価値はあると思いますよ」
戦士「……まあ、それはそうだが」
魔法使い「港街と始まりの国……」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……お爺様達が何を考えて居るのか、本当の事は解らないけど」
魔法使い「昔、何かしらの確執があったのなら、プライドの高い人達の事だもの」
魔法使い「……これ幸い、って……それだけでも、あり得る気がするわ」
僧侶「でも、魔石って……ああ、そうか」
戦士「何だ?」
僧侶「いえ。魔法を使わない物でも作れて」
僧侶「魔法剣の修理まで出来てしまう物ですから。当たらずとも遠からずなのかと」
勇者「ん?」
僧侶「あ……えっと」
僧侶「……もし、魔法使いさんと一緒に、勇者様を魔導の国に、と考えて居るなら」
僧侶「その鉱石の洞窟を欲するのも解る気がします」
僧侶「確執、プライド……えっと、その」
魔法使い「! ……そうか」
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……もし、私達が倒しきれなければ」
魔法使い「時代の勇者様は、魔導国から旅立つ可能性が0じゃ無い」
勇者「!?」
魔法使い「……急に、国、になんて考えたのも……それかもしれないわよ」
戦士「手柄は全て、自分達の物……プライドな。成る程」
勇者「そ……そんな事だけで!?」
2211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:36:06.92 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……間違えてる。勿論間違えてるわ。だけど!」
僧侶「可能性はある……でしょうね。ご自分達を……」
魔法使い「確実に『特別』と思って疑わないわ。あの人達は」
戦士「だからと戦争を起こす等……間違えている」
勇者「…… ……」
僧侶「決めつけは禁物ですけど……確かな事は何も解っていないので」
僧侶「ですけど……」チラ
魔法使い「気を遣わなくて良いって言ったでしょう、僧侶」
魔法使い「……でもね。魔法剣の修理は本当に、技術がいるのよ」
魔法使い「鍛冶師様って凄い人だったらしいけれど、それでも…… ……」
戦士「俺にも気を遣うな、魔法使い」
戦士「折れてしまったんだ。光の剣……は」
勇者「…… ……魔王の力が半端ない、って可能性もあるけどな」
僧侶「! ……勿論、私達の足止めの可能性も否定できませんけど」
僧侶「武力行使の文言までちらつかせて、船を止めようとした理由……!」
魔法使い「……! 鍛冶師の村へも手を伸ばすつもりで……!」
勇者「そんなの、本当に全面戦争じゃ無いか!」
戦士「……実質の武力を持つのは、始まりの国しか無い筈だ」
僧侶「…… ……もう一つ、忘れています」
魔法使い「え?」
僧侶「剣士さん」
勇者「!」
僧侶「あれほどの力の持ち主です……あの方、確かに剣を握っていらっしゃった」
僧侶「そして……魔法まで行使される」
魔法使い「……ッ お爺様達は、雷の加護よ」
戦士「? ……それは、何か関係が……」
魔法使い「私の瞳は何色?」
魔法使い「……落胆されてきた理由の一つよ。私の加護は雷じゃ無い」
僧侶「え?でも……」
2221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:45:17.54 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「あの家の血筋には、雷の加護を持つ者が多いの」
魔法使い「……だから、それも特別だと思っているのよ!」
魔法使い「紅い瞳でも、雷を使うかもしれない」
魔法使い「ああ、やっぱり炎だった」
魔法使い「……でも、優れた加護は持っていた、と一応の安心をしていたわ」
勇者「…… ……」
戦士「だが、あの剣士と言う男は……炎の魔法でお前を助けたんだろう」
僧侶「!?」
魔法使い「だからよ!二つの加護を持つ者なんて聞いた事も無い!」
勇者「……『特別』!」
僧侶「ちょ、ちょっと待って下さい!あの方は……!?」
魔法使い「そう。複数の加護を持つ……ん、でしょうね」
戦士「……そして闇色の瞳。これも……『特別』だな」
僧侶「そ……ん、なの……聞いた事、ない……」
勇者「……もし本当に剣士が魔導国に居て」
勇者「それを後ろ盾とすると……まずいぞ」
戦士「まだ忘れてる事があるぞ」
僧侶「え……?」
戦士「あの剣士と言う男……お前にそっくりだっただろう、勇者」
勇者「!」
勇者「…… ……」
魔法使い「……やっぱり、何れあの街に戻る……必要がある、かしら」
僧侶「のんびり図書館に、とは言っていられないかもしれませんけど、ね」
勇者「……どこかで、船を手に入れて」
戦士「?」
勇者「始まりの国へ戻ろう」
勇者「……騎士団長や国王に話を聞こう。勿論、魔王を倒す事が目的だが」
勇者「だからこそ、人同士で争っていて良いはずがない!」
勇者「…… ……それに、母さんが居る」
僧侶「! 前勇者様の奥様……!」
2231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 06:59:49.87 ID:r8kB/gSuP
今更の訂正orz

>>217

戦士「……僧侶は、女神官様の死も知っている、のだな」



戦士「……僧侶は、女剣士様の死も知っている、のだな」
2241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:07:35.80 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「貴女が言ってた、あの矛盾も……とけるかも知れないわね」
僧侶「『光と闇の喪失』と『光の誕生』ですね」
戦士「……鍛冶師の村まではまだかかるな」
戦士「少し休んでおこう……船の上では鍛錬も出来ん」スッ
魔法使い「どこ行くのよ」
戦士「食事の用意を頼んでくる」
僧侶「…… ……」グゥ
勇者(腹、鳴ったな)
僧侶「あ……ッ」カァッ
戦士「……すぐ伝えてくる」クス
魔法使い「一緒に行くわ。ワインが飲みたい」
勇者「おい……」
魔法使い「ぐっすり眠りたいのよ。勇者もいる?」
勇者「……ま、良いか。うん。俺にも貰ってきて」

パタン

僧侶「……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「私……ずっと、貴方の事を考えて居ました」
勇者「え!?」
僧侶「光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか」ジッ
勇者「……ッ」ドキッ
僧侶「……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい」
勇者「…… ……」
僧侶「不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど」
僧侶「貴方と共に行かなければ、と思いました」
勇者「僧侶…… ……」
2251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:12:59.78 ID:r8kB/gSuP
僧侶「この気持ちが……何なのか、良く解らないのです」
勇者「…… ……」ドキドキ
僧侶「だけど…… ……」
勇者「そ、うりょ……」スッ
僧侶「!」ドキッ
僧侶(ゆ、勇者様の手が、頬に……ッ)
僧侶(……ドキドキする。手のひら、暖かい……)
勇者(柔らかい、頬だ。暖かい……)
勇者(……緊張、する)
勇者「…… ……目、閉じて」
僧侶「は、い…… ……」ソッ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」

『違う!』

勇者「!」
僧侶「!?」
勇者「…… ……え?」
僧侶「あ、あの……?」
勇者(……い、今の声、何だ!?)
僧侶(確かに、聞こえた……!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(『違う』と…… ……あれは、俺の声!?)
僧侶(『違う』と…… ……今、のは……私の声!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(何だろう……この……感じ)
僧侶(『苦しくて、切なくて、悲しくて…… ……嬉しい』)
2261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:18:58.64 ID:r8kB/gSuP
カチャ

魔法使い「お待たせ…… ……何やってんの、アンタ達」
戦士「何でそんな所突っ立ってんだ?」
勇者「あ!いや、その!?」
勇者「……あ、ありがとう!魔法使い!」グイッ
魔法使い「あ、ちょっと!?」
勇者「ゲホッゴホッ」
魔法使い「ば、馬鹿ね!ワイン一気飲みしてなにやってんの!?」
戦士「…… ……どうしたんだ、勇者は?」
僧侶「あ、いえ……考えすぎて、あの……」
勇者「……ッ お前、こそ、な……ん、だよ、その……ッ」
勇者「ケーキの山、は……ッ」
僧侶「……美味しそうです」
魔法使い「食事は運んでくれるそうよ……ちょっと、大丈夫?」
勇者「……お、おう……ッ」
勇者「お、お水……貰って来る……」フラフラ

カチャ、パタン

勇者(……ッ)ゲホッ
勇者(うわ、クラクラする……よく考えたら、俺、酒なんて……ッ)
勇者(…… ……)フゥ
勇者(さっきのは、何だったんだ……確かに、俺の声だった)
勇者(『違う』 ……何が、違う?)
勇者(……何なんだよ、この気持ち……胸が、熱い)
勇者(あ……酒の所為か。否…… ……それだけじゃ無い)
勇者(…… ……な、ん……だよ)フラフラ

……
………
…………
227名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 07:20:27.48 ID:nRF/vpKk0
規制解除なので支援。
最初からrom専だったが、気がつけば半年以上か。幼女も成長していることだろう。ムリせず続けて頂きたい。
2281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:26:18.52 ID:r8kB/gSuP
僧侶(『違う』 ……確かに、確かにあれは私の声だった)
僧侶(……何が、違う……の?)
僧侶(…… ……何なの、この……気持ち……)
魔法使い「僧侶?どうしたのよ」ゴク
戦士「気にしなくても大丈夫だ……すぐ戻って来るだろう」
僧侶「あ、は……はい」
魔法使い「……ッ」ゲホ、ゴホッ
戦士「何なんだ、お前まで…… ……」
魔法使い「……勇者、私のワイン飲んじゃったのよね……そういえば」
僧侶「それは何ですか?」
戦士「あいつが飲めると思わないからって、貰ったのはお前だろう」
魔法使い「ジュースみたいなもんよ、これ……甘ッ」
戦士「我慢しろ」
魔法使い「……もう」ハァ

コンコン

僧侶「開いてますよ?」

船員「失礼します。お食事をお持ちしました」カチャ
戦士「……あいつは?」

カチャカチャ

僧侶「…… ……どこ行かれたんでしょう、ね」
船員「では、ごゆっくりどうぞ」

パタン

戦士「大丈夫か……」
魔法使い「良いわ、見てくる。ついでにワイン貰ってこよう」
僧侶「飲み過ぎないで下さいよ?」

カチャ、パタン
2291 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:44:53.85 ID:r8kB/gSuP
戦士「……で、何があった?」
僧侶「え!?」
戦士「気付いてないと思うのか」ハァ
僧侶「……あ、いえ……」カァッ
戦士「……全く」ハァ
僧侶「べ、別に何もありません!本当に……!」
戦士「そんな紅い顔して何を言う……」
僧侶「……本当にそんなんじゃ無いんですよ」
戦士「……まあ、それならそれで良い、が」
僧侶「驚き、ます」
戦士「ん?」
僧侶「……あの方は、本当に……全き光、です」
戦士「……『勇者』だからな」
僧侶「確かに、惹かれます……ですけど」
戦士「けど?」
僧侶「……人間は『光と闇の獣』だと、神父様が仰っていました」
戦士「何だ、それは」
僧侶「神父様が昔読まれた……神話?に、あった一節だと言うのです」
戦士「神話……」
僧侶「創世記の物語、と言うのでしょうか」
僧侶「それらしき本が、港街の教会にもありました」
僧侶「……御伽噺、ですけどね」
戦士「御伽噺、と言うと……『昔々ある所に』って奴か」
僧侶「まあ、そうです」クス
僧侶「勇者が、魔王を倒すお話でしたよ」
戦士「……教会に似つかわしいのかそうで無いのかわからんな」
2301 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 07:57:12.69 ID:r8kB/gSuP
僧侶「前後編だったんです。前編の頭に、そういう……古詩の様な物が」
僧侶「ありました……後編の最後にも」
戦士「……どういう物だったんだ?」
僧侶「魔王が産まれ、勇者も産まれた」
僧侶「勇者は仲間と旅立ち、仲間を失い、魔王を倒す」
僧侶「……そして、自分も居なくなる、と言うだけの物です」
戦士「…… ……全員死ぬ、話なのか」
僧侶「その古詩がね、最初と最後で……反対に繋がっていくんですよ」
戦士「……ん、ん?」
僧侶「あ、えーっと……要するに、『表裏一体』であると」
戦士「表裏一体」
僧侶「はい。勇者と魔王を失い、残された者は血を交えながら」
僧侶「最後は『命』になるんです」
僧侶「だから……『人』イコール『命』は『光と闇の獣』なんです」
戦士「……さっぱりわからん」
僧侶「…… ……」クスクス
僧侶「人……命、と言うのは」
僧侶「器が闇、中身が光で構成されている、と書かれてありました」
僧侶「それが混じり合って、成り立つもの。だから、光と闇の獣」
戦士「獣か……確かにな」
戦士「……こんな時だと言うのに、人間同士で……」
僧侶「…… ……」
戦士「知能を持たない獣は確かに欲望に忠実だ」
戦士「だが、故に純粋なんだろう。なのに、人間は……」
僧侶「……エルフは、どんな生き物なんでしょうね」
戦士「お前は生きた証、なのだろう?」
僧侶「でもエルフそのものを知りません。見た目は変わらないのかも知れませんが」
僧侶「…… ……」
戦士「美しい顔をしている」
僧侶「え……」ドキッ
戦士「器が闇と聞かされても、説得力が無いな」クス
僧侶(……私、節操ないなぁ……)
2311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:04:07.09 ID:r8kB/gSuP
僧侶(こんなにも勇者様に……光に、惹かれると言うのに)
僧侶(……そういえば、森の中で見た戦士さんの笑顔)
僧侶(柔らかく笑うあの表情は、とても素敵だった)
僧侶(どこか……暖かくて、懐かしい様な)トクン
僧侶(あれ……? ……喉が、苦しい)
戦士「どうした?」
僧侶「あ、いえ……その、恥ずかしいです」
戦士「嘘じゃ無い」
僧侶「あ、あ、あんまり、見ないで下さい……ッ」フイッ
僧侶(ドキドキする……の、に。厭じゃない)
僧侶(勇者様の傍に居る時は……否。今も、苦しい)
僧侶(……だけど…… ……悲しく、ない)
戦士「…… ……僧侶、こっちを見ろ」
僧侶「む、無理です……ッ」
戦士「……」スッグイッ
僧侶「きゃッ!?」
戦士(…… ……魔法使いに触れた時と、違う)
戦士「……僧侶」
僧侶「は、ははははは、はい!?」
戦士(確かに、あの時は胸が苦しかった。否、しかし……)
戦士(何だろう。どこか……懐かしい様な……この、感じ)
戦士「どこかで……逢った事がある……のか?」
僧侶「え……?」
戦士「あ……いや……ッ ……すまん」スッ
僧侶「……び、吃驚しました」
戦士「わ……悪かった」フイッ
戦士「……エルフと言うのは、皆……お前の様に美しいのかもしれないな」
僧侶「え、あ、あの……ッ そんな……ッ」
戦士(何を言ってるんだ、俺は……エルフ、等。僧侶以外に……知らんぞ)
戦士(……何なんだ、これは)
僧侶「ゆ、勇者様、と……魔法使いさん、遅いですよね」
戦士「そうだな……先に…… ……」
僧侶「え?」
2321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:09:06.20 ID:r8kB/gSuP
戦士(休もうか、って……一部屋しか取れなかった、んだ)
戦士(…… ……僧侶と、二人で寝る、と言うのは……ッ)カァッ
僧侶「戦士、さん?」
戦士(しかし……部屋に一人にするのは、避けた方が……ッ)
僧侶「……あの、戦士さん、どうしました?」
戦士「さ……ッ」
僧侶「?」
戦士「さっきの、話の続きを……聞かせてくれ」
僧侶「え? ……あ、えっと……『光と闇の獣』?」
戦士「ああ」
戦士(理解出来るとは思えん、が……どうしようも無いだろう、こんなもの……!)

……
………
…………

魔法使い「……何やってるのよ、アンタは」
勇者「あ……魔法使い」
魔法使い「戻って来ないから、心配するでしょ」
勇者「……あんまり一人でフラフラしない方が良いぞ。女の子なんだから」
魔法使い「だから此処に居るんじゃないの」
勇者「嘘吐け。酒飲みに来たんだろ」
魔法使い「…… ……それもあるけど。隣良いわよね」
勇者「ああ…… ……」
2331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:14:55.18 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……なんて顔、してるのよ」
勇者「え?」
魔法使い「……思い詰めた顔、してる」
勇者「……御免」
魔法使い「別に謝る必要は無いでしょ」
勇者「違う。その……魔導国の事とかで、さ」
勇者「……魔法使いも、複雑だろうに」
魔法使い「それこそ……謝る必要なんて無いわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「大丈夫よ。そりゃ……勿論、複雑だけど」
魔法使い「勇者達が……居るもの」
勇者「俺達?」
魔法使い「そうよ。仲間……でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「ずっと……お父様もお母様も居たけど」
魔法使い「お爺様もそうね。メイドも。だけど……」
魔法使い「私……寂しかったわ。褒めて欲しい、とか」
魔法使い「抱きしめて欲しい、とか……」
勇者「…… ……」
魔法使い「剣士に助けられて、私に優れた加護が無い事をごまかせた時」
魔法使い「お父様は、抱きしめてくれた。でもね……」
魔法使い「……少しも嬉しくなかったの。寧ろ悲しかった」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「今なら解るわ」
魔法使い「あの人達の目に映ってたのは『優れた加護を持つあの人達の娘』で」
魔法使い「……『私』じゃないのよ」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
2341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:23:45.65 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「アンタ、言ってたでしょ」
魔法使い「『俺は確かに『勇者』だけど、俺は俺だ』って」
勇者「あ?ああ」
魔法使い「……私は私。それで良いんだなって」
魔法使い「優れた加護とか……そんなのに捕らわれずに、さ」
魔法使い「仲間って言ってくれて、嬉しかったのよ」ニコ
勇者「……ッ」ドキッ
勇者(酔ってるからか? ……俺、節操なさ過ぎだろ……!)
魔法使い「ありがとう……選んでくれて」
勇者「……直感、だ」
魔法使い「え?」
勇者「あの……登録所の事務員にも言われたんだ。直感で良いって」
勇者「それは……一番真実に近いかもしれない、みたいな事をさ」
魔法使い「……真実?」
勇者「うん」
魔法使い「…… ……」
勇者「さっき言ってただろう?もしお前にさ、優れた加護があったら」
魔法使い「……ええ。私、きっとここに居なかった」
勇者「戦士だって、騎士団長様の息子じゃ無かったら」
勇者「勿論、居たかも知れない。居なかったかも知れない」
魔法使い「……『もしも』なんて……あり得ないわよね」
勇者「うん。あったとしても……やっぱりそれは」
勇者「『俺達』じゃ無いよな」
魔法使い「そう、ね……」フフ
勇者「何だよ」
2351 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:26:52.91 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……いえ。あんなに、僧侶に嫉妬してたのが馬鹿みたいだなって」
勇者「……そう、か」
魔法使い「さっき……僧侶が、言ってたこと」
勇者「え?」
魔法使い「私は……いえ、私も。あれが真実に近いんだろうなと思うわ」
勇者「私……も?」
魔法使い「多分、戦士も……貴方も」
魔法使い「そんなに長い時間じゃ無いけど、僧侶と一緒に居て……」
魔法使い「僧侶の、感じる力って……推測だけど」
魔法使い「それをそれ、これをこれ、って……そのまま、文字通り、形通りに」
魔法使い「すとん、って受け止める力、だと思うの」
勇者「……うん」
魔法使い「わかりにくい、かな」
勇者「いや……寧ろ、それ以外の表現が思いつかないな」
魔法使い「うん……だから……」
勇者「真実に近い、か」
魔法使い「そう……でも、所詮近い、だけ。言葉は悪いのだけど」
勇者「ああ……真実そのものは、俺たちの目で確かめるべきだ、だろ?」
魔法使い「……確かめたい、かしらね」
勇者「確かめなくちゃいけない。そうでないと……『見失う』」
魔法使い「見失う……」
勇者「そうだ。俺は……自分を、勇者である意味を見失う」
魔法使い「……『強さ』ね」
勇者「え?」
魔法使い「森の中で、アンタが私に言ったじゃないの」
2361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:35:22.87 ID:r8kB/gSuP
魔法使い「『認める強さ』」
勇者「……御免、なんか……あの時、偉そうに」
魔法使い「何で謝るの、馬鹿ね」
勇者「俺も……認められなかった。否、今もかな」
勇者「……どうしても気になるんだ」
魔法使い「『剣士』ね」
勇者「ああ……まるで『表と裏』だ」
勇者「『光と闇』」
魔法使い「…… ……」
勇者「……船を手に入れて、魔導国へ行こう」
魔法使い「罠かもしれないわよ」
勇者「尚更だ…… ……俺は『勇者』だ」
勇者「魔王を倒すだけが終わりじゃ無い」
勇者「『世界を平和にする』事は……それだけじゃないだろう?」
魔法使い「……ええ。そうね」
勇者「良し……部屋に戻ろう。寝て起きたら……鍛冶師の村だ」
勇者「……心配、してくれてたんだろ。ごめんな、魔法使い」
魔法使い「当たり前、でしょ……仲間なんだから」
勇者「見失うわけにはいかないな。俺自身の事も……お前の事も」
魔法使い「え……」ドキ
勇者「大事な仲間だからな」
魔法使い「あ、ええ……そうね」
魔法使い(……厭ね、自分でも言った事、じゃないの……)ドキドキ
魔法使い(何だろう……私……喜んでる、のかしら)
魔法使い(単純ね……)ハァ
勇者「なあ、魔法使い」
魔法使い「……何よ」
勇者「……」ジッ
魔法使い「な、によ……?」
魔法使い(……真っ直ぐな金の瞳。厭だわ、この間より緊張する)
魔法使い(色の所為? ……戦士とは、もっと……近かったのに)
魔法使い(……胸が、苦しい。だけど…… ……不思議な感覚)
魔法使い(どこか、懐かしい様な……)
勇者「……手、繋いでも良い?」
魔法使い「え!? ……い、良いけど……どうしたのよ」ドキドキ
勇者「……立てない」ハァ
魔法使い「……はぁ!?」

……
………
…………
2371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:44:22.47 ID:r8kB/gSuP
爺「おお、おお!良く来たな!チビ!」ガシッ
チビ「じいちゃん!久しぶりだなぁ!」ギュッ
船長「そんな長い事離れてないと思うんだけどなぁ」
男「……おい親父。またガラクタ増えてネェか」
爺「ガラクタじゃ無い!お前は本当に、審美眼の無い奴だな!」
爺「……俺の息子とは思えん」ハァ
チビ「相変わらず綺麗だね、この女の人の像」
爺「そうだろう、そうだろう!手入れも欠かさんからな!」
船長「……義父さんが掃除してんの!?」
爺「……街の人は誰も、やってくれんからな」
男「わかりやすく項垂れるな、いい歳こいて……」
チビ「俺も花に水やるの手伝うよ!」
チビ「また、このエルフの話聞かせて!」
爺「おう!良いぞ!ちょっと待ってろよ、準備してくるからな」スタスタ
船長「……えらいご機嫌だな」
男「まあ、そりゃ……孫だしな」
船長「しっかしお前も好きだねぇ……この糞暑い空の下で……」
男「あー……船長、酒飲むか?」
船長「おう」
男「露店で買ってくる。チビと此処に居ろよ?」スタスタ
チビ「母さん、また酒飲むのかよ」
船長「当分船も出さネェし、良いだろ別に」
船長「お前もお茶か何かこまめに飲めよ。ぶっ倒れるぞ」
チビ「大丈夫だよ……暑いならじいちゃんちの中入ってりゃ良いのに」
船長「見張っとかないと何するかわかんねぇだろあの爺は」
船長「……すぐに船から何か持ちだそうとしやがるからな」
2381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 08:55:10.55 ID:r8kB/gSuP
チビ「……船の奴って、海のおじいちゃんが揃えたんだよな?」
船長「あ?ああ……あの親父もああいうの好きだったからなぁ」
船長「生きてりゃ、義父さんと気が合ったかもしれねぇが……」
チビ「でも、じいちゃんより多分、センス良かったよね」
船長「……お前、んなさらっと……」
チビ「このエルフの像は凄いと思うけど」
チビ「じいちゃん、他はなぁ…… ……」
船長「不憫だなぁ……」

スタスタ

男「ほらよ」
船長「お、サンキュ」
男「親父はまだか?」
船長「張り切って家の中物色してんじゃネェの」
チビ「父さんはこう言うの興味ないの?」
男「ガキの頃からガラクタに囲まれて生活してみろよ、お前……」
船長「男もこういうセンスねぇよな」クス
男「いやぁ……初めて船長の船に乗った時はびびったな」
男「海賊船の筈が、中はお城みたいだったもんな……」
船長「……古参の海賊に聞いたら、アタシが産まれた少し後ぐらいから」
船長「取り憑かれたみたいに色々改装したらしいからな」
男「……まあ、だから魔導の街の奴らも目をつけたんだろうけどな」
船長「まさか海賊船とは思わないだろうしな」
チビ「この花壇もじいちゃんが作ったんだろ?」
男「花は死んだお袋が好きだったからな」
船長「……ま。何か生き甲斐やり甲斐、あるのは良いこった」
チビ「あ、じいちゃん、早く早く!」

タタタ

男「……どうすんだかな」
船長「何がだ?」
男「チビだよ……このまま行けば、次の船長はあいつだろ」
船長「……アタシはまだまだ現役だぜ」
男「そりゃ解ってる。解ってるが……」
船長「あいつが選ぶことさ」
船長「……義父さん、反対なのか?」
2391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 09:02:38.45 ID:r8kB/gSuP
男「そうだとすりゃ、お前と結婚するってなった時に」
男「ぶち切れてるだろうよ」
船長「……お前が海賊になるって行った時の間違いだろ」
男「ああ……そうか。そうだな」ハハッ
船長「アタシにも、調度品買ってこい、だもんなぁ」
男「毎度チビが選んでる奴喜んでるんだし」
男「良いんじゃねぇの?お前さんよりセンス良いしな、あいつ」
船長「アタシは母親似なんだろ」
男「チビも……お前に似れば良かったのになぁ」
船長「こればっかりはなぁ」
男「俺ともちょっと違うもんな……死んだ親父さんに似てる、んだろ?」
船長「外見も中身もな」
男「……お前のお袋さん、美人で良かったなぁ」
船長「お前ね、自分の息子だろうが……」
男「男は顔じゃネェよ」
男「じゃ無きゃ、俺だってお前に惚れられたりしねぇだろ」ハッハッハ
船長「…… ……笑い事かよ」

爺「このエルフの娘の像はな、どこかの国の王様だかなんだかが」
爺「その娘に惚れて作ったって言われてるんだ」
チビ「『叶わぬ恋』って奴なんだよね!」
爺「なんせ人間とエルフだからな!」

船長「……まぁたホラ話が始まった」ハァ
男「案外真実かもしれねぇぞ?」
船長「エルフなんて居るのかね」
男「居たんだろ?紫の瞳の男とやらが」
船長「……ありゃ、エルフじゃねぇだろ」
2401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 09:12:05.21 ID:r8kB/gSuP
男「魔族なんてモンも生きてるんだ」
男「エルフだって、想像上の生き物じゃ無いかもしれネェだろ」
船長「男ってのはロマンチストなんだろ?」
男「さぁな」
船長「……魔族、だったんだろうかな、あいつ」ボソ
男「見た目……変わらなかった、んだろ」
船長「……さあな。随分昔の話だ」
船長「今逢ったって、わかりゃしねぇさ」
男「船長の事が、か」
船長「そりゃそうだろ…… ……アタシは人間だ」
船長「老いない理由が無い」
船長(老いないあいつと……生きる世界が、違う)
船長(あの日だけ、と誓ったんだ)
船長(…… ……忘れはしない。だが……思い出すのも、やめないとな)
船長(だが……あいつは覚えて居てくれた)
船長(……アタシを、忘れていなかった)
男「あっつい、ナァ……」
船長「……ああ」
船長(それで……充分だ)
チビ「母さん!俺も何時か、エルフに会えるかなぁ!?」
船長「しらねぇよ…… ……まあ、海を渡ってりゃ会えるかもなぁ」
船長(平和な海を渡りたかった…… ……約束、守ってくれるかな、剣士)
船長(アタシは無理でも……チビ。お前が、叶えてくれる……かな)
男「審美眼だけは爺を真似すんなよ!」
爺「親になんちゅー口聞くんだ、お前は!」

ハハハ……アハハハ……
2411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 09:16:21.44 ID:r8kB/gSuP
船長(いつか……この平和が、常の物になれば良い……けどな)
チビ「俺も何時かエルフに逢う!んで、一緒に海を渡るんだ!」
男「おーおー……でっかい事いってら」
船長「……『願えば叶う』さ」
男「親父さんの口癖か?」
船長「ああ」
船長(もう一度剣士に会いたい……そう思ってた)
船長(アタシは、『叶った』 ……だから)
船長(チビも……きっと、叶う)

……
………
…………

国王「戦況はどうです」
騎士「……我が騎士団の方が、若干不利になってきてます」
騎士「魔法部隊は向こうの方が、力も、数も……」
国王「…… ……騎士団長は?」
騎士「勇者様のお母様を保護しに行くと……」
国王「……そうですね」
国王(兄さんは、女剣士様の……あれを心配しているのだろう)
国王(道は閉ざされたとは言え……)
騎士「国王様?」
国王「……あ。……しかし、もう限界でしょう」
国王「兄さんが戻るのを待っていると、間に合わないかもしれません」
騎士「し、しかし……此処で引いたら……」
国王「命には代えられません……撤退を命じます」
騎士「……ッ ハッ」

バタバタ……バタン!
2421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 09:22:48.95 ID:r8kB/gSuP
王子「国王!」
騎士「騎士団長様! ……あれ、母君様は……?」
王子「……居ないんだ」
国王「え?」
王子「小屋の中に、誰も居ない」
国王「…… ……まさか、連れ去られた……!?」
王子「否。争った様な痕跡は無かった」
王子「……それに、この城を通らないと、何処にも行けない筈だろう!?」
騎士「で、ですが……!」
国王「……今は城にも、一般人の立ち入りを禁じています」
国王「申請して許可を得たものだけ、ですが…… ……」
騎士「! ……急ぎ、調べて参ります!」

バタバタバタ

王子「この抗戦のどさくさで、誰か……!?」
国王「確かに、貴方が不在の事は多かったけれど、まさか……!」
王子「…… ……焦れても仕方が無い。船団の方はどうなった」
国王「……撤退命令を出しました」
王子「!」
国王「……騎士は駒ではありません。解って下さい」
王子「……否。解ってる。解って居る……が……!」
国王「使い道の無い鉱石の洞窟です。勿論……」
国王「物理的にあれを欲しているだけとは思いません、けど」
国王「……裏に何かあるとするなら、尚更」
国王「……力は、温存しておかないと……」
王子「…… ……ッ 糞!」
2431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 09:24:01.50 ID:r8kB/gSuP
幼女起きたー
いったん離脱ー!
244名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 10:07:48.20 ID:tBR9eb7KP
>>208
ここの過去ログと避難所だということを明記した上で、sage進行さえ守れば立ててもいいと思う
2451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 10:28:58.21 ID:r8kB/gSuP
>>244

じゃあ

勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
(url)
の避難所です
sage進行でお願いします

な感じで良いのかな?

幼女と買い物に行ってくるので、またお昼食べた後に来れたらー!
246名も無き被検体774号+:2013/08/29(木) 10:46:30.99 ID:IzL7uBGZ0
乙乙

本当に閉鎖されるかどうか分からんのに2ch閉鎖される前にSS速報にスレ建てるのは
やめた方が良いんじゃないかな
避難所的な使い方は許可されているのかは分からないけどあくまでSSに特化された場なわけだし

もし閉鎖されたら
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
に同じタイトルで建てるよとスレ内で周知させるだけで充分じゃない?


あと参考に■ SS速報VIPに初めて来た方へ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364178825/
2471 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/29(木) 13:58:49.13 ID:r8kB/gSuP
>>246
ありがとう!
一通り読んできました

ルール違反はしたくないので
一応、もし落ちた時は

http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

こっちに、その時のスレと同タイトルで立てることにします
名前も1 ◆Vwu55VjHc4Yj で立てますね

幼女とおやつを作るので後ほど来れたら!
2481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 08:17:40.07 ID:ug9b6d/UP
おはよう!
幼女が起きるまで!
2491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 08:30:45.76 ID:ug9b6d/UP
国王「こんな時に……」ハァ
王子「港街の方へも船の運航停止を求めていると言ってたな」
国王「はい。町長へは無視して構わないと言ってありますが」
王子「騎士を向かわせてはいる。まだ間に合うと思うが……」
国王「……騎士団はそもそも、国の警備と住民の職の一つとして」
国王「お母様が作った物です」
国王「人口の増加と共に、数は増えたとは言え……」
王子「……そもそも、有事に備えて作った物では無いからな」
国王「…… ……」
王子「士気も実力も……魔導国の魔導兵団には叶わないだろう」
王子「一対一ならともかく……」
国王「……船団の抗戦ともなれば尚更です」
王子「…… ……何故『王』を認めない等と言うんだ」
王子「国が複数あれば、王の存在もあって当然だろう」
国王「…… ……」
国王(恐らく……次代の勇者を庇護する為……も一つなのだろうけれど)
国王(狙いは、それだけだろうか……)
王子「国王?」
国王「あ……すみません」
国王「……目的がどうであれ、こんな……戦争の様な事を続ける訳には……」

カチャ、バタン!

騎士「国王様!騎士団長様!」
王子「何か解ったか?」
騎士「…… ……魔導国に、紫の瞳の男が居るとの情報があります」
国王「…… ……」
王子「……! まさか……俺が見かけた、あいつか!?」
騎士「騎士団長様……?」
2501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 08:43:44.04 ID:ug9b6d/UP
国王「…… ……」スッ
王子「国王?」
国王「……着いてきて下さい、兄さん」
王子「え?」
国王「宝物庫へ行きます」
王子「……な、何だよこんな時に」
国王「以前、一度だけ戦士を案内したことがあるんですが……」
王子「王国史を学ばせた時か……魔石を見たいとか言って聞かなかった時だな」
国王「はい。鍵は……貴方が持っているでしょう?」
王子「ああ……騎士団長の地位と一緒に、女剣士様から譲り受けた」
国王「あの時は女剣士様も一緒でしたね」
王子「……戦士には甘かったからな。女剣士様」
王子「見せてやれと言ったのもあの人だったか」
国王「……お母様が生きている時……本を一冊、預かったのです」
王子「本?」
国王「『世界の裏側』を記した物だとか」
王子「…… ……」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に』」
国王「『読んでみれば良い』と」
王子「……世界の、謎」
国王「はい…… ……『世界の裏側を少しだけ』記してあるから、と」
王子「!」
王子(……母君様も同じ事を言っていた)
国王「……けれど、必要に感じなければ決して、開いてはいけない、とも」
王子「…… ……騎士!何としても母君様を探せ!」
騎士「は……はッ!」
国王「あの方も……母君様も同じ事を仰っておられたのでしたね」
王子「ああ。世界の裏側を、ほんの少しだけ知っている、と」
国王「…… ……行きましょう」
王子(あの時……聞いておけば良かったのか!?)
王子(選択を……俺は、誤った……のか……!?)
2511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 09:12:39.29 ID:ug9b6d/UP
……
………
…………

僧侶「……地面に足が着いてる」
魔法使い「大袈裟ね、アンタ……」
戦士「…… ……」フラフラ
勇者「大丈夫か?」
戦士「すまん……寝不足なだけだ」
勇者「……吃驚したけどな。魔法使いと部屋に戻ったら」
勇者「僧侶がお前の膝枕で寝てるし」
僧侶「す、すみません!お話ししている間に、気がついたら……!」
戦士「……話してくれと言ったのは俺だ。気にすることは無い」
魔法使い「笑えたわね。戻ったら戦士が固まってて」
魔法使い「『助けてくれ』ですもの」クスクス
僧侶「ま、魔法使いさん!」
戦士「……魔法使いに手を引かれて戻って来たのも滑稽だろうに」
勇者「ちょ、ちょっと飲みすぎただけだろ!」
僧侶「この港から、鍛冶師も村まではすぐですよ」
僧侶「……今日は宿を取ります……か?」
戦士「お前の言っていた小屋までは遠いのか?」
僧侶「それ程ではありませんが……でも、それ程広い場所では無いので」
勇者「宿を取って行って帰って、できるならそれで良いだろう」
魔法使い「あ……あの村、かしら?」
僧侶「そうです……あら?」
勇者「ん……誰か来る、な」

タタタ……タタタ……
2521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 09:30:48.17 ID:ug9b6d/UP
戦士「子供だな…… ……二人?」
兄「……あ、あの!船が見えたので、鍛冶師の村からお迎えにあがりました!」
勇者「え?」
兄「村長が、もしかしたら勇者様かも知れないから、って……!」
弟「……きんいろ!」ジィ
勇者「うん。そうだよ」ナデナデ
弟「……」ニコ
僧侶「可愛い」フフ
魔法使い「貴方達は……兄弟?」
兄「あ、はい……僕は兄と申します」
兄「こっちは、弟の魔導師です」
魔導師「きれいだね。おめめ」
勇者「ありがとう……よっと」ダッコ
魔導師「きゃあ!」キャッキャ
兄「あ……!す、すみません、勇者様!」
勇者「すぐ近くとはいえ、子供の足で……大丈夫だった? ……いてて」ムニ
魔導師「ゆうしゃさまだー」ムニムニ
兄「こ、こら、魔導師! ……あ、はい!」
兄「村長が、待ってます……どうぞ。ご案内します」
戦士「……剣?」
僧侶「え?」
兄「あ…… ……この辺は、随分魔物が強くなっているんです」
兄「大人達がちゃんと、見張りや見回りはしてくれてるのですけど」
兄「僕も、役に立ちたくて……」
戦士「見せてみろ……ほう。ちゃんと手入れしてあるな」
僧侶「……あら、手にまめが。ちょっと待ってね」パァ
兄「わ、あ……!」
魔法使い「ほら、村に行ってからにしましょ」
253名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 10:05:55.23 ID:ZS6r5h6c0
マメ治すなよ!
254名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 10:11:36.49 ID:dCUNqKUm0
闇の手?
2551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 10:23:58.19 ID:ug9b6d/UP
勇者「魔物が……強くなってる、って言うのは?」
兄「あ、はい……その」
兄「……北の方から、紫色をした雲が流れてくるんです」
兄「大人達は、その影響だろう、って……」
魔法使い「……魔王の復活が近づいてる、のね」
戦士「…… ……」
兄「村の中まで入ってくる事は無いんですけどね」
僧侶「……自警団、の様な物がある、って事、なんでしょうか」

タタタ……

村長「ああ、やはり勇者様方でしたか!」
勇者「ええ、と……あなはがそんひょうはん?」ムニー
魔導師「ゆうしゃさまー」ムニムニー
魔法使い「……」プッ
兄「こら!魔導師おりなさい!」
勇者「……痛い痛い。失礼。貴方が村長さんですか」
村長「す、すみません!」
魔導師「あははー!」タタタ
兄「こ、こら!」タタタ
勇者「いえいえ……」
村長「失礼致しました……兄に着いていくと聞かないもので」
僧侶「悪戯盛りでしょうしね」クスクス
村長「遠いところをはるばる、お疲れ様でした」
勇者「……いえ。ですが、何故俺達だと思ったんです?」
勇者「兄から、魔物も強くなってると聞きましたし」
戦士「……そうだな。不用意に村から出ない方が良いのではないか」
戦士「……ましてや、あんな幼子を連れて」
2561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 10:32:02.23 ID:ug9b6d/UP
村長「魔導師はともかく、兄の方は……大丈夫です」
魔法使い「?」
村長「いえ。まあ、あれも言い出したら聞かなくて」
村長「……一人でも戦力になるのなら、と。お恥ずかしい話ですが」
僧侶「自警団の様な物があるのですか?警備をしていると……」
村長「そんな立派な物ではありませんがね」
村長「ここらは山岳地帯なので、元々魔物の数も多かったんですが」
村長「……山から、降りて来る事は滅多に無かったのですけどね」
村長「あいつらは、炎に弱いのですよ」
魔法使い「……ああ、それで入口に松明があったのね」
村長「ええ。昔は夜だけ見張りを立て、火を灯して居たのですが」
村長「今は昼夜問わず、です……」
勇者「やはり……魔王の影響、ですか?」
村長「それしか考えられない、でしょうな」
村長「……幸い、と言うかなんと言うか」
村長「昔から、鍛冶を生業にしてきましたのでね」
村長「まあ……腕が無いとそれもどうにもならんのですが」
戦士「……勇者」
勇者「うん……村長さん」
村長「はい?」
勇者「……魔法剣について、聞きたい事があるのですが」
村長「! ……魔法剣、ですか……しかし……」
戦士「『失われていく技術』だと……聞いています」
勇者「どんな些細なことでも構いません。何か……教えて頂けませんか?」
村長「お力になれるかどうかは解りませんが……」
2571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 10:39:11.90 ID:ug9b6d/UP
船長「後で、詳しい者を呼んで参りましょう」
村長「まずは、どうぞごゆっくりなさって下さい」
勇者「ありがとうございます!」
村長「何も無い村ですが……すぐに発たれるご予定ですか?」
勇者「あ、いえ……まあ、船も長かったので……」
村長「では、本日は我が家にお泊まりになられますか」
村長「これと言ったもてなしも出来ませんが……」
魔法使い「良いんですか?」
村長「勿論です。魔法剣に詳しい者も、夕刻には戻ります」
勇者「では、お言葉に甘えます」
村長「はい。では……準備しておきますね」

スタスタ

戦士「夕刻……か。それまでに行って、戻れるか?」
僧侶「そうですね……」

タタタ……

戦士「ん?」
兄「あ、あの!」
勇者「君はさっきの……」
兄「お、お願いがあります!」
勇者「え?」
兄「村長から、今夜はこの村に泊まるとお聞きしました」
兄「だから、あの……!」

タタタ、ドン!

魔法使い「きゃッ ……!?」
魔導師「おねーちゃーん!」ダキッ
2581 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 10:45:49.61 ID:ug9b6d/UP
兄「魔導師!家に居なさいって言っただろう!?」
魔導師「おねーちゃんは、ほのおのひと?」
魔法使い「え?私? ……うん、そうね」
魔導師「あのねー、ぼくねー、こーりー!」
僧侶「こーりー? ……あ、氷、ですかね」
魔導師「みてて! こーりよ!」パキパキパキ……ッ
戦士「……冷た……ッ」
兄「ま、魔導師!」
戦士「……大丈夫だ。痛くは無い」
魔法使い「まあ、凄い……でもね、魔導師君」
魔導師「?」
魔法使い「人に向けて魔法を使っちゃ駄目よ」
魔導師「…… ……なんで?」
魔法使い「んーっとね」
魔法使い「……魔導師君、こんなにちっちゃいのにね」
魔法使い「もう、魔法が使えるのは、凄い事だと思うの。でもね」
魔法使い「……そうだね。お兄ちゃんとか。村長さんとか、好き?」
魔導師「うん!」
魔法使い「そういう人が、痛い痛いって泣いたら、どう思う?」
魔導師「……え ……いや、だ」
魔法使い「うん。そうだよね」
魔法使い「人に向かって魔法をかけるとね、そうなっちゃうかもしれないのよ」
魔導師「……でも」
魔法使い「上手に使えるから、見て欲しいのは解るし」
魔法使い「やってみたいのも、良く解る」
兄「…… ……」
2591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 10:57:07.93 ID:ug9b6d/UP
魔導師「…… ……ぼくは、おにいちゃんとか、そんちょーさんとか」
魔導師「あのね。つよくなってね。まもってあげるんだよ?」
魔法使い「うん。そうだね」
魔法使い「練習することは悪い事じゃ無い。だけど……」
魔法使い「強くなって守ってあげるんだったら」
魔法使い「何に向かって魔法を使えば良いと思う?」
魔導師「……わるいやつ?」
魔法使い「このお兄ちゃんは怖い顔してるけど、悪い奴かな?」
戦士「……おい」
魔導師「うーん。ちがうとおもう。ゆうしゃさまのおともだちだし」
魔法使い「うん。じゃあ、駄目だったんじゃない?」
魔法使い「お兄ちゃん、痛い痛い、って泣いたらどうする?」チラ
戦士「……え?」
僧侶「戦士さん」
戦士「…… ……い、痛い痛い」
勇者「棒読み……」プッ
魔導師「…… ……ごめんなさい」
魔法使い「うん。偉い偉い」ナデナデ
戦士(ものすごく恥ずかしい)
魔法使い「魔導師君」
魔導師「…… ……」ションボリ
魔法使い「何で、人に向かって魔法、使っちゃ駄目なんだろうね?」
魔導師「……いたい、から」
魔法使い「うん。後は?」
魔導師「うーんと……」
魔法使い「痛い、って言われたら……どう思った?」
魔導師「……かなしい。ぼくも、いやだ」
魔法使い「うん……魔法、守る為に強くなって、使いたいんだよね?」
魔導師「うん!」
2601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 11:10:33.11 ID:ug9b6d/UP
魔法使い「……お姉ちゃんもね。難しい事は解らないけど」
魔法使い「みんなが痛い、とか、悲しいとか、厭だよね」
魔導師「うん……」
魔法使い「だから、そうならない様に……使える様に」
魔法使い「守れる様に…… ……」
魔法使い(『悪い奴』だったら……遠慮無く使って良いのかってなると)
魔法使い(また……ちょっと違うんだろうけど……)
魔法使い(……どう、説明したら良いのか、解らない)
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねえちゃんは、どうやってれんしゅうしたの?」
魔法使い「え?」
魔導師「ゆうしゃさまといっしょに、わるいやつやっつけにいくんでしょう?」
魔導師「ぼくも、れんしゅうしたい!」
魔導師「ひとには、まほうつかわないから!」
魔法使い「……う、ん…… ……そう、だね」
兄「……あの」
勇者「うん?」
兄「この村の者は、魔石を作って……その、練習してるんです」
僧侶「……魔石!?」
兄「はい。昔……この村に居た聖職者様が、魔除けの石を作っていらして」
僧侶(え!?)
兄「その聖職者様はシスターと駆け落ちしたとかで居なくなってしまったんですが」
兄「この村から旅立って言った若者が、生成方法を知っていた、とかで」
戦士「…… ……鍛冶師、か?」
兄「ああ!そうです!ご存じなのですか!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「それで……作って、いるの?」
兄「本当に作るだけ、なのですけど」
兄「……鍛冶を生業にしている村ですから、それで特殊な武器を作ったり、ですね」
勇者「まさか……魔法剣!?」
兄「僕は詳しくはわかりませんけど…… ……」
2611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 11:15:28.42 ID:ug9b6d/UP
兄「……魔導師は、まだ幼いですから。力が不安定なので」
兄「やらせていなかったんです」
僧侶「貴方も……出来る、のですか」
兄「あ……はい。魔法そのものは使えませんけど……」
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねーちゃん、おねーちゃんってば!」
魔導師「ねえ、どうやってれんしゅうしたの!」
魔法使い「あ……えっと……」
兄「…… ……水、よッ」シュゥ
勇者「!」

ポトン……ザァ

魔法使い「……!」
兄「僕は、保てなくてすぐに戻ってしまう、んです……」カァッ
勇者「凄い……」
魔法使い「……魔導師君、ちょっと離れてね」
魔導師「……?」
魔法使い「炎よ!」ボゥッ ……ポトン
僧侶「!」
戦士「……ッ 出来た……!?」
魔導師「わあ!うわぁ! ……さわってもいい!?」
魔法使い「……え」チラ
兄「大丈夫だと……思います、けど」
魔導師「きれい!」ギュッ
魔導師「おねえちゃん!ちょーだい!?」
魔法使い「え、ええ……良いわよ」
魔導師「すごいね!こうやってれんしゅうするんだね!」
魔導師「おしえて!ぼくもやりたい!」
2621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 11:16:34.89 ID:ug9b6d/UP
幼女起きたー!
また後ほど!
2631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 12:20:42.58 ID:ug9b6d/UP
戦士「さっき、何か言いかけてたな」
兄「あ……あの」
戦士「何だ?」
兄「……その。もし宜しかったら、勇者様に剣を教えて頂けないか、と」
勇者「俺?」
魔導師「ねえ、おねえちゃん!いっしょにやろ!」
魔法使い「……良いわよ。一緒に練習しましょうか」
魔法使い「勇者、良いわよね?もう少し時間もあるし」
勇者「あ、ああ……それは良いけど」
魔導師「わーい!」
魔法使い「じゃあ、あっちの広いところに行きましょう」
勇者「村からは出るなよ!」
兄「あの……駄目でしょうか」
勇者「そうだな……だったら、俺より戦士の方が良い」
戦士「俺が?」
勇者「きっちり訓練受けてるのは俺よりお前だろ」
戦士「……まあ、良いだろう」
勇者「俺より絶対厳しいけど」クス
兄「あ……!宜しくお願い致します!」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶?」
戦士「では……俺達もあちらに行こう。魔導師も見ていられるしな」
兄「はい!」
僧侶「……勇者様。私は……あの、教会の方へ行ってきても良いでしょうか?」
勇者「ん? ……ああ。うん。そうだね、神父様の……」
僧侶「はい…… 先ほどの兄君の話は……」
勇者「神父様のこと、だよね?」
僧侶「……いえ。神父様は魔石の事は、全く……」
勇者「あ……そう、か」
僧侶「でも……気になるのです」
僧侶「私を育てる為に、もしかしたら……嘘を吐かれたのかもしれません」
勇者「…… ……うん」
2641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 12:25:37.58 ID:ug9b6d/UP
僧侶「ご一緒……されますか?」
勇者「ああ……えっと……」
勇者「……御免。俺、村長さんの所に行ってくるよ」
僧侶「え?」
勇者「魔法剣の事以外でも、聞きたい事もあるしさ」
僧侶「……わかりました。では、後ほど」
勇者「ああ」

スタスタ

勇者(一人……か)
勇者(何か、不思議な感じだな。皆、すぐ傍に居るのに)
勇者(ええと、村長さんの家は……あれだっけな?)

コンコン

勇者「……あれ?」
勇者(留守……か?)
2651 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 12:27:20.40 ID:ug9b6d/UP
お昼ご飯ー!
266名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 12:29:26.46 ID:YpIjDx3ci
今までにない展開だ
期待!
267名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 12:33:17.87 ID:7K62TuKy0
ここまでの展開を見るに、やっぱりこの代では終わらないのかな
2681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 13:59:23.57 ID:ug9b6d/UP
老女「村長さんにご用事?」
勇者「わッ ……あ、ああ、そうです」
老女「ああ、ごめんなさいね。驚かせて」
勇者「い、いえいえ……大丈夫です」
老女「貴方が勇者様、ね……まあ、本当に」
老女「綺麗な、金の瞳をしているのね……」
勇者「えっと……あの」
老女「ああ、ご免なさい……すぐ戻られると思うけれど」
勇者「やっぱり、お留守ですか」
老女「この時間なら鍛冶場でしょうね」
老女「あの人も腕の良い方なのでね」
勇者「……そうなん、ですか」
勇者「ええと……失礼ですが、貴方は……奥様、ですか?」
老女「え?いいえ……私はあの」スッ
勇者(入口の方?)
老女「……飯屋の元女将ですよ」
老女「今は娘がやってるのでね。私はお手伝い……よいしょ」
勇者「あ……持ちましょうか?」
老女「ああ、大丈夫よ」
勇者「……これ、は?」
老女「お店で使うハーブよ。育てるのに村長さんのお庭を借りてるの」
勇者「…… ……」グゥ
老女「あら、ま」クス
勇者「……やっぱり、持ちます」
老女「え?」
勇者「……お腹すいたんで、何か食べたいんです」
老女「まあ」クスクス
勇者「一緒に行っても良いですか?」
老女「勿論よ……いらっしゃいませ。娘も喜ぶわ」
2691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 14:40:31.32 ID:ug9b6d/UP
……
………
…………

僧侶「……静か、ですね」
僧侶(誰も居ない……のかな)

キィ

僧侶「……ッ」ケホッ
僧侶(埃が…… ……無人になって、長い……のだろうか)スタスタ
僧侶(港街の教会よりも……古い)
僧侶「……あ」
僧侶(本…… ……一杯ある、けど)
僧侶(ぐちゃぐちゃ……破れたり……)

カタン……

僧侶(……!)ビクッ
シスター「…… ……どなたか、いらっしゃいます?」
僧侶「あ……!す、すみません!あの……!」
シスター「…… ……」
僧侶「ご、ご免なさい!開いていたので……!」
シスター「貴女は……?」ジロジロ
僧侶「……あ、あの……ご免なさい。先ほど、船で着いたばかりで」
シスター「……船?」
司書「どうしたんです、シスター」
シスター「司書さん、この人が……」
司書「……!!」
2701 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 14:49:27.30 ID:ug9b6d/UP
僧侶「…… ……?」
僧侶(な、何だろう……私、変な顔してるのかしら)
司書「……ああ、ご免なさい。貴女は……どなたです?」
僧侶「あ、僧侶と申します」
僧侶「先ほど……勇者様と共にこの村に着きまして」
シスター「勇者様と!?」
僧侶「はい。今は村長さんの所へ行かれている様ですので」
僧侶「……ごめんなさい。教会があったので、気になって」
司書「そうでしたか……」
司書「ここは、もう教会では無いのですよ」
僧侶「……え?」
司書「聖職者もいらっしゃらないと言う事で、私達が買い取らせて頂いたのです」
僧侶「買い取った……?」
シスター「……失礼ですが、その勇者様と言うのは……」
司書「シスター!」
シスター「本物ですの?」
僧侶「ど……どう言う意味ですか?」
司書「やめなさい、シスター」
司書「……連れが申し訳無い」
シスター「司書さん、でも!」
司書「教会に興味があると言う事は、貴女は……」
僧侶「あ……はい。勇者様と旅に出るまでは、教会に仕えていました」
司書「そうですか……でも、残念ですが」
僧侶「……いえ、勝手に入ってしまった非礼はお詫び致します」
僧侶「申し訳ありませんでした」ペコ
司書「いえ……鍵もかけずに離れたのは私達の方ですので」
シスター「…… ……」
司書「…… ……」
僧侶(な……なんか……妙な雰囲気……)
僧侶(……戦士さん達の所に、戻ろう)ハァ
2711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 15:00:16.89 ID:ug9b6d/UP
僧侶「失礼、します……」スタスタ
僧侶(でも……教会を買い取って……どう、するのだろう?)
司書「……僧侶、さん」
僧侶「は、はい?」
司書「…… ……後で、勇者様にお会いする事はできますか?」
僧侶「え? ……あ、はい。大丈夫だと思いますよ?」
僧侶「今日は村長さんのお家に泊めて頂けるとの話でしたし」
司書「……そうですか。ありがとうございます」
僧侶「……?」

パタン

シスター「司書さん!危険ですよ、もし……!」
司書「大丈夫です……もう、『あの国の人達』は我々に用事等無いでしょうから」
シスター「でも…… ……」
司書「貴女は……嫌っていらっしゃるけれど」
司書「……剣士さんも、悪い人では無いと思います」
シスター「……ッ 信じられません!あんな……ッ」
司書「頑固ですね、貴女も」フゥ
シスター「私は、関わりたくないだけです!」
司書「……鍵をかけ忘れたのは私達が悪いんですよ?」
シスター「……そうですけど」
司書「とにかく、片付けてしまいましょう。奥の部屋は書庫にするんでしたね」
シスター「……はい。ざっと見た感じでは、随分童話の類も多くあった様ですし」
司書「…… ……」
シスター「司書さん?」
司書(……昔、港街で見せて頂いた、あのエルフの姫のお話)
司書(そして、此処にあった……あの、本)
司書(手書きであった事を考えれば、同じ物である可能性は高い)
司書(やはり…… ……貴方ですか?新米神官……)
シスター「……司書さん」
司書(それに……今の、僧侶と言う人)
司書(あのエルフの姫の挿絵にそっくりだった……!)
シスター「司書さん!」
司書「あ……は、はい!」
シスター「どうしたんですか! ……そりゃ、綺麗な人でしたけど」」
2721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 15:21:21.43 ID:ug9b6d/UP
司書「貴女も、読んだでしょう、あの……エルフの……」
シスター「……それが、何か?」
司書「……そっくりだったじゃ無いですか」
シスター「……あんな古そうな本、はっきり解らないじゃ無いですか」
シスター「挿絵って言ったって、色もあせてたし……」
シスター「まあ…… ……言われてみれば、そんな気もします、けど」
司書「…… ……」
シスター「それであんなに驚いた顔してたんですか?」
司書「……まあ」
司書(それだけじゃありません、けど……)
シスター「あれも置いておくのですか?」
司書「え?」
シスター「だって、あれ……途中のページがありませんでしたよ?」
シスター「表紙も、表側の絵の所しか残ってないし……」
司書「……まあ、一応」
シスター「……司書さんがそう言われるのなら、残しておきますけど」
司書「後で……子供達を迎えに行くついでに、勇者様を探してみましょう」
シスター「……本当に本物だと思うんですか?」
司書「さっきの僧侶と言う方が、嘘を吐いている様には見えませんでしたけど、ね」
シスター「…… ……」
司書「狭い村ですし……すぐに解りますよ」
シスター「……絶対、偽物です!」
シスター「そんな……そんなほいほいと、そっくりな人間が何人も居る訳ありません!」

スタスタ……バタン!

司書「……ッ ……やれやれ」ハァ
司書(彼女の気持ちも、解らなくは無い、ですけどね)
司書(……剣士さんは、確かに勇者様にそっくりだった……だけど)
司書(…… ……いくら魔導国の人達であっても、瞳の色までは変えられない、んだ)
2731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 15:32:27.46 ID:ug9b6d/UP
……
………
…………

兄「あ……ッ あり、が……ッ 」ゼェゼェ
魔法使い「……アンタね。もうちょっと加減ってモンを知りなさいよ」
戦士「継続して指南できる訳では無いからな」
魔法使い(毎日こんなメニューこなしてる訳? ……そりゃ)
魔法使い(凄い筋肉にもなるわね……)
兄「だ、だい、じょ…… ……ぶ、で……す……」フラフラ
魔法使い「ほら、座りなさい……よ、いしょ」
魔導師(すぅすぅ)
兄「すみません……」
戦士「しかし、お前も普段からきっちり鍛えているんだろう」
戦士「……着いて来られるとは、正直思わなかった」
魔法使い「だからって、ねぇ……」
戦士「お前だって、疲れて寝るまでやらすこと無いだろうに」
魔法使い「……まさか、急にこてん、て行くとは思わなかったんだもん」
兄「……」クスクス
戦士「……なんだ」
兄「いえ……魔導師のあんな必死な顔、初めて見たので」
魔法使い「子供なのに……凄い集中力だったわね」
兄「遊びの範疇、の練習しか……やらせてないんです」
兄「僕は魔法の事は良く解らないんですけど」
兄「……大人は皆、魔導師は凄い、って言うので」
兄「勿論、子供なので……喜んでるだけなのは解ってるんですが」
兄「……やはり、我が儘なので」
魔法使い「余程、楽しかったのね。でも……羨ましいわよ」
戦士「…… ……」
兄「え?」
魔法使い「大人だって褒められたら嬉しい物よ」
魔法使い「褒められたい、上手くやりたいって言うのが、嬉しい、に」
魔法使い「……望み通りに繋がれば、伸びて当然よ。まだ子供ですもの」
魔法使い「……純粋、なのね」
戦士「……しかし、どうなんだ?魔導師は」
魔法使い「素質は充分だと思うわ。一応、だけど……出来たじゃ無い、魔石」
2741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 15:40:01.44 ID:ug9b6d/UP
魔法使い「コントロールできる、ってのは凄い事よ」
魔法使い「……良い氷の使い手になるでしょう」
兄「……ありがとう、ございました」
戦士「さっき、飯屋があったな。腹も減っただろう」
魔法使い「そうね……魔導師は起きそうに無いけど、皆で行きましょうか」

タタタ

僧侶「戦士さん、魔法使いさん!」
魔法使い「あら、僧侶…… ……勇者は?」
僧侶「話を聞く、って村長さんの所に」
戦士「一緒に行ってたのか?」
僧侶「あ、いいえ……私は。あら、魔導師君、寝ちゃったんですね」
兄「え?村長さんは……この時間だったら、お仕事してらっしゃると思います」
戦士「仕事?」
兄「はい」
魔法使い「僧侶は何処に行ってたの?」
僧侶「私は……あちらの教会に行った、んですけど……」
兄「……あ、ごめんなさい。言っておけば良かったですね」
魔法使い「え?」
兄「あそこは、もう教会では無いんです」
僧侶「ええ……聞きました」
兄「え?」
僧侶「鍵、開いてたので中に入ったんですが……戻って来た、その」
僧侶「買い取った、と言う方に……」
戦士「買い取った?」
兄「……孤児院にするのだそうです」
魔法使い「…… ……孤児院?」
戦士「こんな……あ、いや、言い方は悪いが……」
兄「いえ……この村の人達の、では無くて」
兄「魔導国から来られた方達の…… ……」
僧侶「え!?」
魔法使い「…… ……魔導国!?」
戦士「…… ……あの街から、どうして、此処へ?」
2751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/30(金) 15:42:46.45 ID:ug9b6d/UP
離席ー
戻れたら後ほどー
276名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 17:28:19.84 ID:yz1OBx6N0
規制されてて言えなかったけど
四月くらいの書き始めからずっと見てます
紙媒体で読みたいと思うほどはまりこんでます
頑張ってください
277名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 17:29:39.72 ID:PU2rn3CKi
次世代に続いちゃいそうだな
278名も無き被検体774号+:2013/08/30(金) 20:29:48.86 ID:aelR/c9nP
俺は三世代目の勇者(青年)が男らしくて好きだからそこまでは続いて欲しい
279名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 00:21:56.51 ID:PDkUxhwF0
次世代とか何世代とかって、流れがらせんと言う感じで、まったく同じ処に着地しないと思ってるよ。
最近は話を急ぎすぎて無いので、もっと続けろ下さい。
280名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 09:06:10.24 ID:XNWTiKu+0
全く同じになる思ってる人はほとんどいない、はず
個人的には少なくとも今の船長の孫の代までは続くと予想
2811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 11:25:01.89 ID:eMFqkBx1P
おはようー!
今日はのんびりー
282名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 11:33:08.42 ID:aGS4owgr0
おはよー
2831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 11:46:47.34 ID:eMFqkBx1P
兄「……司書さん達……あ、その買い取った人達です、けど」
兄「あの人達が乗って来た船が、魔導国からの直通便の最終便だったと」
兄「……お聞きしてます、けど」
戦士「……ちょっと待て、直通便!?」
兄「え? は、はい」
戦士「……魔法使い」
魔法使い「わ、私は……解らないわよ。あんまり自由に出歩くことは無かったから」
戦士「船は……全て港街を経由していたのでは無かったのか?」
兄「僕は……その、余り詳しくは……」
僧侶「その辺は村長さんに聞きましょう?」
魔法使い「……魔導国の封鎖に伴って逃げてきた、のかしら」
戦士「…… ……」
僧侶「……勇者様、何処に行かれたんでしょうか」
戦士「夕刻には村長さんも戻るのだろう」
戦士「こうして話していても解らん……取りあえず、行くか」
魔法使い「そうね。大食漢も戻ってきたし」
僧侶「……え!? そ、それ私の事ですか!?」
戦士「もう少し時間もあるし、軽く食事でも、と話していたんだ」
戦士「お前も行くだろう、僧侶」
僧侶「あ、はい……」グゥ
魔法使い「……お腹も素直ね」クス
戦士「魔導師は俺が抱こう……寝てしまうと重いだろう」
魔法使い「ええ、お願い」
魔導師(すぅすぅ)
兄「あ、僕が……!」
僧侶「大丈夫ですよ。貴方も疲れているでしょう?」
魔法使い「……良いお兄ちゃんね。任せておきなさい」
兄「……はい。ありがとうございます」
2841 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 11:55:04.94 ID:eMFqkBx1P
僧侶「あ、あれですね…… ……良い匂いがする……」
魔法使い「またお腹なるわよ」
僧侶「だ、大丈夫です!」

……
………
…………

ザワザワ……キャア、アハハ……

勇者「美味い!」
老女「お口に合って良かったわ」
老女「はい、これはサービスよ」コトン
勇者「……ん、ミントが入ってる……これ……ジュース、ですか?」
老女「お酒よ……あ、苦手だったかしら?」
勇者「あ、いえ……大丈夫です」
老女「ゆっくり召し上がれ。飲み口は爽やかだけど、少しきついから」
勇者(あ、美味しい……けど、ゴクゴク行くと……また立てなくなりそうだな)
勇者(……魔法使いが喜びそうだなぁ。連れてきてやれば良かったかな)
老女「騒がしくてご免なさいね」
勇者「繁盛してて良いじゃ無いですか。子供は……大人しくなんかしていないでしょうし」
勇者「大丈夫です」
勇者(……しかし、子供だけ?親は……皆、鍛冶場とやらで働いているのか)

オカワリー!
ボクモー!ワタシモー!

老女「はいはい、すぐ行きますよ……じゃあ、勇者様、ごゆっくり」
勇者「あ、はい……」

キィ、コロンコロン……

勇者(また来客か……凄いな)
勇者(小さな村とは言え、ここ一軒だけでも無いだろうに)
勇者(……まあ、確かに美味しいよな)
勇者(僧侶も喜んだだろうな。それこそよだれ垂らして)クス
2851 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:10:43.86 ID:eMFqkBx1P
司書「こら、静かにしなさい……女将さん、何時もすみません」
シスター「まあ、老女さんまで……ご免なさい、ご迷惑おかけして」
老女「いいえ、育ち盛りの子のお腹を育てられるなんて」
老女「光栄な事よ」
司書「一杯食べて下さいね。食事が済んだら、又…… ……」チラ
シスター「……司書さん?」
司書「…… ……! ……勇者、様!?」
勇者「え!?」
シスター「! ……ッ あ……ッ」
老女「まあ、お知り合い?」
勇者「え、いえ……あの……」
司書(……髪の色こそ違う。だけど……金の瞳……!)
司書(やはり、そっくりだ……!)
シスター「……貴方、が……勇者様…… ……!?」
勇者「あ……は、はい。あの……?」
司書「……先ほど、貴方のお仲間だと言う方にお会いしまして」
勇者「仲間……あ、僧侶、かな?教会の方ですか?」
シスター「……本物、だった……の!?」
勇者「え?」
司書「……ご同席宜しいでしょうか」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
シスター「…… ……」
司書「貴女もお座りなさい、シスター」
司書「私は司書と申します……こちらは、シスター」
勇者「あ、勇者です……えっと、聖職者様、ですよね?」
司書「いえ、私達は……」

キィ、コロンコロン

戦士「何人だ……えっと、4人、5人、か」
魔法使い「混んでるわねぇ」
僧侶「美味しそうな匂いがしますもの、仕方ありませ……あら?」
2861 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:19:59.21 ID:eMFqkBx1P
兄「勇者様!」
魔導師(すぅすぅ)
勇者「戦士、魔法使い……僧侶も!?」
司書「兄君じゃないですか……あ……」
僧侶「あ……先ほどは失礼致しました」
魔法使い「……あの人達?」
兄「え、ええ……司書さんと、シスターさんです」
老女「まあ……!大変、皆座れるかしら……」
勇者「……魔導師、寝ちゃったのか」
シスター「……司書様、食事は後にして、先に子供達を連れて帰りましょう」
司書「シスター?」
シスター「僧侶さん、でしたね。貴女達もお食事、今からなのでしょう?」
僧侶「あ、は……はい」
シスター「……その頃に戻って来れば良いでしょう。子供達は」
シスター「私が見ていますから。ごゆっくり」
司書「……ありがとうございます」ジッ
シスター「…… ……何ですか、その目は」
司書「いえ……あれほど嫌がっていたのに素直だな、と」
シスター「……あんな色の瞳を見れば、疑いようもありません!」
シスター「それだけです!」
戦士「……悪いが、魔導師を寝かせて貰えないか。流石に重い」
司書「あ、すみません此方にどうぞ……ほら、貴方達!」
司書「食事が済んだら戻りますよ」
勇者「あ、あの……」
司書「……後ほど、お話頂けます、か?」
勇者「あ、はい……それは構わないですけど……」
僧侶「…… ……あ、戦士さん……魔導師君、ここに……よいしょ、と」
兄「あ、ご、ごめんなさい……!」タタタ
魔法使い「そろっとね……起きないと思うけど」
司書「では、失礼致します」
シスター「ほら、行きますよ?」

ゾロゾロ……キィ、コロンコロン……
パタン……

戦士「子供の多い村……と言う訳では無いな」
魔法使い「あの子達が……孤児、なのでしょうね」
勇者「孤児?」
僧侶「……急に静かになりましたね」
2871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:36:33.46 ID:eMFqkBx1P
勇者「て、言うか…… ……何?」
僧侶「チキンのバターソテーと、トマトクリームパスタと……」
戦士「チキンか……美味そうだな。俺も」
魔法使い「あ!勇者、それモヒートじゃないの!ズルイ!私も!」
勇者「聞けよ!」
僧侶「後、オニオングラタンスープと……ハーブパンのガーリックトースト」
魔法使い「私はミネストローネ……兄君は?」
兄「ぼ、僕はミートソースのパスタで……」
戦士「俺も聞きたい。お前……村長さんの所に行ったんじゃ無いのか」
勇者「あ? ……ああ。丁度老女さんに会ったからな」
僧侶「食いしん坊さんですね」
勇者「僧侶だけには言われたくないな、それ……」
兄「すみません、言うの忘れてしまって……」
勇者「ああ、ううん。良いんだよ……お仕事されてるんだよな」
兄「はい。村長さんと息子さんは……とても腕の良い鍛冶職人さんなので」
勇者「うん。老女さんに聞いたよ。で…… ……どう言う事?」
勇者「さっきの……司書って人とシスターって人は……聖職者なんだろ?」
僧侶「あ……いいえ。あの教会は……もう、教会では無いのだそうで」
勇者「え?」
魔法使い「魔導国から来たんですって、あの2人」
勇者「……!」
戦士「あの教会を買い取って、孤児院にするって話だったな」
兄「はい」
勇者「孤児院……じゃあ、さっきの子供達は……」
僧侶「戻って来られる、と言っていましたし……」
勇者「そうだな。憶測だけで物を言っても……」
僧侶「お腹も、すきましたし」
勇者「…… ……うん、そうだよね」ハァ
戦士「……」プッ
2881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:48:26.16 ID:2GrV20oR0
p2繋がらない……
2891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:49:18.96 ID:eMFqkBx1P
と、思ったら繋がりましたorz
2901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:54:52.92 ID:eMFqkBx1P
兄「あ、あの……」
勇者「ん?」
兄「さっき、戦士様が言ってらした、その……」
戦士「俺?」
兄「……はい。良ければ、鍛冶師様のお話を聞きたい、のですが」
勇者「ああ……始まりの国の王様と……って言うのは?」
兄「それは聞いています。あの人は……鍛冶師様は」
兄「『鍛冶師の村の勇者様』ですから」
戦士「……『勇者』」
兄「はい。鍛冶師様のおかげで、この村にはまだ、魔石の生成方法が」
兄「伝えられていますし、その前にも、聖職者様が魔除けの石を作られたと言う」
兄「伝説が残されています」
僧侶「!」
魔法使い「さっき言ってた、シスターと駆け落ちしたって話、よね」
兄「はい。とても綺麗な方だったそうです。お二人とも」
兄「聖職者様のお話は……随分昔の話なので、本当に……『伝説』なのですが」
2911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 12:56:57.22 ID:eMFqkBx1P
お昼ご飯!
292名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 13:01:03.71 ID:AL46aNTDi
あ、BBA俺のも
2931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 13:17:48.12 ID:eMFqkBx1P
>>292

つ スコーン
2941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 13:55:59.35 ID:eMFqkBx1P
僧侶「昔…… ……では……」
勇者「……その、聖職者様、が居なくなってからずっと」
勇者「この村の教会は無人だったの?」
兄「あ、いえ……どうなんでしょう」
兄「僕が物心ついた頃にはもう……誰もいらっしゃらなかったので」
戦士「……魔除けの石を作っていた、んだよな?」
兄「はい。あの……今は、魔導国からの出荷分しか」
兄「無い、んですよね?」
魔法使い「……魔除けの石? ……まあ、封鎖されたと言うのなら」
魔法使い「それも……もう、出回らないのかもしれないけど」
兄「港街……に、昔教会があって」
僧侶「!」
兄「……そこに居た神父、と言う聖職者様が」
兄「魔除けの石を初めて作られた人だと言う話があるそうなんですが」
勇者「…… ……」
兄「発祥は、この村のあの聖職者様なんです」
兄「……この村の人達はそう、信じています。僕も……」
魔法使い「…… ……」
兄「……魔導国の人達が、この村に来た時に」
兄「村に、魔物が入ってこないのは、そのおかげだと言っていたそうなんです」
戦士「……その、聖職者の作った石があるのか?」
兄「村の奥の……北の山脈に続く道の途中に、小さな小屋があるんです」
僧侶「え…… ……」
兄「小屋、と言うより倉庫……ですかね」
兄「そこに、いくつか残って居るそうですよ」
僧侶「……川の傍の、ですか?」
魔法使い「僧侶?」
兄「え?いいえ……森の中だそうですけど、詳しい場所は、僕は……」
僧侶(じゃあ、あの小屋……じゃ、無い)
僧侶(それに、そんな魔石等…… ……見た事、無い)
2951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 14:30:05.41 ID:eMFqkBx1P
勇者「それは……見せて貰う事ができるのかな」
戦士「勇者?」
兄「それは……わかりません。誰も近づきませんし」
魔法使い「そうなの?」
兄「はい。僕たちも近づいては駄目だと言われています」
僧侶「……盗まれるのを恐れて、とかでしょうか」
戦士「だが……魔除けの石だと言うのなら、村の中に置くべきじゃ無いのか?」
魔法使い「そうよね。そんな森の奥においておいても、ねぇ?」
兄「……それで、その」
兄「…… ……」
勇者「どうした?」
兄「……魔導国の人達は、とても残念だと……言っていらしたと」
戦士「残念?」
兄「はい。港街を作ったのは、始まりの国の前国王様と鍛冶師様、でしょう?」
兄「鍛冶師様の出身の村であるこの村の……その、伝説を知っているだろうに」
兄「港街の……その、神父と言う人を…… ……」
魔法使い「要するに、この村の聖職者様の話を信じていないから残念、って事?」
兄「はい。確かに、大昔の伝説なのですけど……」
兄「それを広めれば、この村も豊かになる筈なのに、と」
戦士「…… ……」
勇者「それで……話を聞きたかった、の?」
兄「それもあります。僕は……この村の勇者である鍛冶師様も」
兄「聖職者様も信じています。だから……」
戦士「……それが、魔導国との直通便を結んだ理由、か?」
兄「父から聞いた話では、魔除けの石の知識を伝えて欲しいと言われて」
兄「一つ、持ち帰られたのだと聞いています」
僧侶「魔導国の人達が、ですか?」
兄「はい……だから、あの街での生産量も質も上がった……」
兄「……ん、じゃ無いんですか?」
2961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 14:52:34.95 ID:eMFqkBx1P
勇者「……まあ、俺達もそこまで知ってる訳じゃ……無い、けど」
戦士「……兄」
兄「は、はい」
戦士「俺達が……勇者、が、始まりの国から旅立った、と言うのは」
戦士「知っている、のか?」
兄「あ、それは勿論……」
兄「でも、鍛冶師様はもう随分前に……亡くなられたんですよね?」
兄「だから……あの。勇者様はお名前ぐらいはご存じかと思っていたのですけど」
兄「……戦士様まで知っていらっしゃるって事は、その」
兄「この村以外でも、有名……なんですよね」
戦士「……お前は、幾つだ?」
兄「もうすぐ12歳になります」
戦士「……そうか。そうだな、確かに……随分昔、だ」
魔法使い「貴方、さっき……この村の聖職者様の伝説が」
魔法使い「有名になれば、この村も豊かになるのに……と、言ったわよね」
兄「え?……はい」
魔法使い「それは……魔導国の人達が……そう言ったのよね?」
僧侶「魔法使いさん?」
魔法使い「……いえ。だからって直通便を結んだって……どう言う事なのかと」
魔法使い「思って、ね……」
戦士「…… ……」
勇者「この話は、村長さんも勿論、知ってるんだよね?」
兄「はい、勿論です」
僧侶「でも……『この村の勇者様』なんですよね?」
兄「鍛冶師様ですか? ……はい」
勇者(何か矛盾してるなぁ……子供に順序立てて喋れって言っても)
勇者(無茶な話かもしれないけど……)
2971 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 14:58:52.31 ID:eMFqkBx1P
魔導師「……ぅ、うん」
魔法使い「あ……起きた?」
兄「あ……じゃあ、そろそろ……」
魔導師「うーん……あと、ごふん……」スゥ
兄「お、おい……起きろよ!」
戦士「……送っていこうか?」
兄「いえ……大丈夫です。抱いて帰ります。家、すぐそこですし……」
魔導師(スゥスゥ)
兄「……ご馳走様でした。ありがとうございました」
戦士「大丈夫か?」
兄「はい。あの……お話も、ありがとうございました」
魔法使い「……気をつけてね?」
兄「はい。では……失礼します」ペコ

キィ。コロンコロン……

僧侶「…… ……なんか、良く解らない話、でしたね」
戦士「お爺様の話……結局出来なかったな」
魔法使い「いえ……正解だと思うわよ」
戦士「え?」
勇者「そうだな……良く理解していないだけかもしれないが」
勇者「随分矛盾……否、無茶苦茶、が正解だな」
魔法使い「親や、他の大人から色々聞かされたんでしょう」
魔法使い「……司書って人、戻って来ないし少し整理しましょうか」
僧侶「そうですね。すみません、デザートって何かありますか?」
戦士「俺も欲しい」
勇者「……まだ食うのか」
老女「はいはい……ケーキで良いかしら」
僧侶「あ、はい!」
魔法使い「急に大きな声出さないでよ……」
老女「何か……ごめんなさいね?」
勇者「え?」
2981 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 15:11:33.04 ID:eMFqkBx1P
老女「いえ……口を挟むべきじゃ無いかと思ってたんだけど……」
戦士「聞いてたのか」
魔法使い「そんな言い方しないの」
老女「あの子の父親が、鍛冶職人でね。母親は魔法に長けた女だったのよ」
老女「……この村の鍛冶職人は、どうしても鍛冶師様を英雄視するのよ」
僧侶「『この村の勇者様』です……よね」
老女「そう。始まりの国の王様が鉱石の洞窟を発見して、勇者様の光の剣を」
老女「修理したんだ、って話も知ってるわ」
勇者「…… ……」
老女「何年も昔の話では無いから……」
老女「……一転、魔法を使う者ってのは、ね」フゥ
魔法使い「魔導国は……憧れの街、なのね」
老女「そう。だから……魔導国との直通便、ってなると」
老女「話に飛びつくのも無理は無い、って事よ」
勇者「そこで出て来たのが、聖職者様とシスターの話か」
老女「伝説って言うと大袈裟だけど、確かにそういう話は残ってるのよ」
老女「……時代的にそっちの方が先なんだけどね」
僧侶「それは……鍛冶師様達が始まりの国を作られるより前、なのですよね?」
老女「遙か昔、ね。もう、実際に見た者だって、皆死んでしまってるよ」
戦士「魔除けの石が残されている、と言うのは確か……なのか?」
老女「ああ……そうらしいんだけど」
老女「そこは村長さんに聞くと良いわ。私達は殆ど知らないから」
勇者「……わかりました」
老女「えっと……何だったかしらね、ああ、そうそう」
老女「聖職者様と、隻腕の祈り女様の話ね」
僧侶「え!?」
魔法使い「!」
勇者「……隻腕の、祈り……女?」
2991 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 15:21:14.55 ID:eMFqkBx1P
老女「ええ。何があったのか、までは知らないけれど」
老女「聖職者様がこの村に来られた後に、追いかけてこられたとか」
老女「二人とも、それはそれは美しい方だったらしいわ」
老女「神に仕える者だから……ね。どう言う仲だったのかは解らないけど」
僧侶(まさか……娼婦、様!?)
老女「だけど、ある日突然、二人とも居なくなってしまわれた……と」
魔法使い「駆け落ち?」
老女「こんな田舎の村ですもの。誰も気にしなかっただろうに、ねぇ……」
戦士「それで……魔除けの石だけが残された、のか」
老女「その後、港街の教会で魔除けの石を売る様になった、って噂があってね」
老女「まだ、定期便なんか無かった時代だったそうだから、はっきりとは」
老女「解らないんだけど……」
勇者「それで……それからは、教会は無人、なのですか?」
老女「まだ、私がこの店の女将として働いている時にね、いらっしゃったわ」
老女「神父さん、って言う方が」
僧侶「!!」
老女「……ある日、赤ん坊を連れていらしてね」
魔法使い「…… ……」
老女「ああ、そうそう。そっちのお嬢さんの様にね」
老女「水色の髪に、水色の瞳をした、可愛い赤ちゃんでね」
僧侶「…… ……」
老女「神父さんも、最初の頃はこの街の教会に通っていらしたんだけど」
老女「何時からか、赤ちゃんも神父さんも見かけなくなったわ」
勇者「…… ……」
老女「もう、随分大きくなったでしょうね」
老女「そのお嬢さんより、もう少し年上だろうと思うけどね」
戦士「…… ……」
3001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 15:34:59.68 ID:eMFqkBx1P
キィ。コロンコロン……

司書「……ああ、良かった。まだいらっしゃいましたか」ホッ
シスター「だから先に行って下さい、って言ったのに……」
勇者「あ……」
司書「遅くなってすみません。勇者様のお姿を見たからなのか」
司書「中々、寝付かなくて……」
シスター「…… ……」
老女「あらあら、二人とも来られたのね」
シスター「一時間程お昼寝するでしょうから……私は、すぐに戻ります」
老女「あ……ごめんなさい、ケーキだったわね」
司書「私達も、何か食事をお願いします」
老女「ええ、わかりました……少し待っててね」
勇者「……貴方達は、魔導国から来られた……んですよね」
司書「兄君に聞きましたか……彼は?」
魔法使い「魔導師君を連れて、家に戻ったわ」
シスター「…… ……」ジィ
勇者「あ、あの……何か……」
司書「……シスター」ハァ
シスター「信じられないわ……こんなにそっくりだなんて」
魔法使い「そっくり?」
司書「さっき、信じざるを得ないと……」
シスター「そういう事を言っているんじゃ無いですって!」
勇者「……俺が、誰かに似ているんですか?」
司書「先に、これを見て頂けませんか?」スッ
僧侶「!!」
魔法使い「……この絵、僧侶に似てる」
戦士「随分古い……物だな」
3011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 15:47:15.69 ID:eMFqkBx1P
司書「先ほど……教会で僧侶さんに会った時、驚きました」
司書「……この本に、見覚えとかは……ありませんか?」
僧侶「…… ……あ、あの!中を見せて頂いても!?」
司書「勿論です……が、多分落丁していると思いますので」
司書「意味が分かるかどうか……」
僧侶「か、構いません!」ペラ
魔法使い「……この本が、何なの?」
司書「中身は、御伽噺です。エルフのお姫様のお話……です」
戦士「エルフ……!」
司書「……どこから、お話して良い物か……迷う、のですが」
魔法使い「見覚えって……どう言う事よ?」
司書「……昔、私がまだ若い頃……私は、港街の教会に仕えていました」
魔法使い「え!? ……だって、貴方達魔導国から来たんじゃないの?」
司書「はい。 ……私は、港街の教会から、魔導国へ移り住んだんです」
戦士「移住を許された……のか? と言う事は……」
司書「……優れた加護は持っていません、よ」
魔法使い「…… ……待って、貴方……」
司書「思い出して頂けましたか?」
勇者「え?」
司書「……お久しぶりです、魔法使いお嬢様」
魔法使い「!!」
シスター「…… ……」
勇者「知り合い……か? いや、でも……」
魔法使い「図書館の……人、よね……?」
司書「……はい。お話した事は殆どありませんでした、けどね」
魔法使い「…… ……」ギュッ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……いえ。ちょっと……吃驚、して……」
魔法使い(こんな所で……私を知ってる人に、会うなんて……!!)
魔法使い(……手が、震える。大丈夫……大丈夫よ、落ち着きなさい、私!)
3021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:03:54.61 ID:eMFqkBx1P
司書「……港街を出て、私は……魔導国の司書として働き出したのです」
勇者「ちょ、ちょっと待て。いや、確かに魔法使いから」
勇者「優れた加護が無くても、何か『利』があればあの街に」
勇者「住む事はできる、と聞いた、けど……」
司書「この街に来て、漸く合点がいきました」
司書「確かに、『利』があったのですよ」
勇者「え?」
司書「私は……港街の教会から本を数冊持ち出したのです」
司書「魔石の生成方法や、具現化の方法……等の本、です」
魔法使い「え!?」
司書「お嬢様は……多分、お読みになられていないと思いますけど」
魔法使い「……そうね。メイドの目を盗んで他の本を読んだ事もあったけど」
魔法使い「そんな物は……見つけられなかったわ」
司書「……最初は、厳重に別室に補完されていましたから」
戦士「最初……は?」
司書「ええ。始まりの国の国王様が……いらっしゃった時に」
司書「全て誰でも閲覧出来る様にしろ、と指示されるまで、ですけど」
戦士「……!」
勇者「それが……『利』? 確かに、稀少な本なんだろうけど……」
勇者「合点がいった、と言うのは……?」
司書「兄君から聞いていませんか?」
魔法使い「……この村では、魔石を作る方法が伝わっている……て、奴?」
勇者「否……魔除けの石の話の方だろう?」
司書「そうです、勇者様……では、『聖職者様の伝説』のお話も」
司書「……聞きました、よね」
戦士「それとこの本と何の関係があるんだ?」
司書「……港街を出たのは、私だけでは無いんです」
司書「新米神官、と言う者も、あの教会から他の土地へと旅立ちました」
司書「……その男が、この……エルフの本を持ち出した、のです」
勇者「ん……うん?」
司書「そして……あの、買い取った教会で見つけたのです」
魔法使い「……同じ本だ、と言いたいの?でも……」
3031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:12:59.57 ID:eMFqkBx1P
司書「勿論、唯一品と言う絶対の証拠もありませんけど……」
司書「……他で、見た事が無い物ですし。内容が内容ですから」
戦士「……話の内容、か? ……僧侶?」
僧侶「……こ、れ……は……本当に、御伽噺、なのですか……?」
魔法使い「え?」
僧侶「……落丁、してるのかもしれない、のですよね?」
司書「ええ……多分、ですけど」
僧侶(確かに、この絵は私にそっくり……! だけど……!)
魔法使い「……私にも見せて頂戴」ペラ
僧侶(しかし、これが真実だなんて言う証拠も、何処にも……!)
司書「老女さんに聞いたんです。あの教会に……神父、と言う聖職者が居たと」
僧侶「!」
勇者「ああ……それは、さっき俺達も聞いたよ」
司書「…… ……港街の教会を作られた偉大な聖職者様の名前も……」
僧侶「……ッ 神父様!」
司書「え……あ、ご存じ、なのですか!?」
僧侶「あ…… いえ、あの……ッ」
僧侶(どうしよう……!もし、この話が本当なら……!)
僧侶(私は……エルフは、嘘が吐けない、と言う事になる……!)
僧侶(でも……では。嘘を吐いたら、どうなるの!?)
戦士「……鍛冶師は、俺のお爺様だ」
司書「え!?」
戦士「盗賊がお祖母様……父は現騎士団長」
司書「…… ……」
戦士「……幼い頃には、女剣士様にもお会いした事がある」
戦士「少しだけだが……話は聞いている」
僧侶(戦士さん……)
勇者「…… ……」
3041 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:22:39.84 ID:eMFqkBx1P
司書「そ、う……なのですか……」
シスター「貴方が、騎士団長の息子……!?」
戦士「……なんだ、急に」
シスター「……勇者様のお供が、魔導国のお嬢様に騎士団長の息子」
司書「シスター!」
シスター「…… ……ッ 私、先に失礼します」スッ

スタスタスタ、バタン!
コロン、コロン……

勇者「な……なんだ?」
司書「……すみません。彼女は……その。そういうあの……家柄、とかに」
司書「ちょっと……コンプレックスが……」
魔法使い「…… ……」
司書「何処まで話しましたか……ええと」
僧侶「……神父様、と仰るのですよね。港街の……」
司書「……ああ、そうです。新米神官は……神父様をとても敬愛していました」
司書「それで……教会を出る時に、当時あの教会を管理していらっしゃった」
司書「女神官と言う方に、神父様の名を名乗る事を許してくれ、と……」
勇者「……それで、ここでこのエルフの本を見つけたから」
勇者「同じ人物だと思った、て事か」
司書「はい……ただ、彼はとても……魔除けの石を作る事を」
司書「嫌っていたと聞いていたので……」
僧侶「え……?」
司書「……選んだ先がこの村であったならば、随分な皮肉だと思いまして」
魔法使い「…… ……聖職者様の伝説、ね」フゥ
戦士「もう読んだのか」
魔法使い「次、どうぞ?」
勇者「嫌ってた、てのは……どう言う事なんだ?」
司書「女神官様に聞いたに過ぎないのですが……」
司書「……私と新米神官は、少し歳が離れて居たので」
司書「あまり、話し込んだこと等は無いんですけれど」
司書「……娼婦様、と言う、隻腕の祈り女様が昔、港街にいらっしゃったそうで」
勇者「!」
僧侶「…… ……」
3051 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:39:39.13 ID:eMFqkBx1P
司書「港街の神父様に、魔除けの石の生成方法をお教えしたのが」
司書「その、娼婦様だったらしいのです」
司書「……そして、神父様は彼女を敬愛していらした、と」
僧侶「…… ……隻腕の、祈り女、様」
司書「お聞きになった、のですよね。この村の『伝説』」
魔法使い「ええ。聖職者様と駆け落ちしたシスターも……」
司書「はい。同一人物かどうかの保証などありませんが……」
司書「……はっきりした時代も、解りませんしね」
勇者「…… ……成る程。確かに皮肉だな」
司書「老女さんにお聞きした話では、いつの間にか姿を見せなくなったと」
司書「言いますし……ただ」
司書「余りにも……余りにも、僧侶さんが、この本の絵に……似て、いらしたので」
勇者「話したい事、と言うのは……それか?」
司書「……あ、いえ。すみません、こんな話は……私の、自己満足に過ぎません」
司書「私ですら……もう、老人です」
司書「彼は、もう……生きては居ないのかもしれません」
司書「ただ……健やかであってくれたのなら、と……」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者」スッ
勇者「ん? ……ああ」パラ
魔法使い「でも……その、合点がいった、てのは何、なの?」
魔法使い「この本は関係無いんでしょ?」
司書「……魔石は、魔除けの石を残して、もう生産されていません」
司書「発祥は港街……盗賊様だと知っておられます、か?」
戦士「ああ……聞いている」
司書「そして……この村には、鍛冶師様がお伝えになっている」
魔法使い「……魔導国の者が、この村に来ている、のよね?」
司書「ええ。直通便を繋ぐと言う契約を結んでいますから」
僧侶「兄君のお話では……少し、わかりにくかったのですが……」
3061 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:47:11.59 ID:eMFqkBx1P
司書「……魔導国は、この村に残された魔除けの石を持ち帰り」
司書「その石の生成方法を、私の持ち込んだ本を使って研究していました」
魔法使い「それが……『利』?」
司書「……あの国が封鎖されたのは勿論、ご存じですよね?」
戦士「ああ。お前達は……それがあって逃げ出した、のでは無いのか?」
司書「私達は……優れた加護を持つ者ではありませんから」
司書「『追放された』の間違いです」
魔法使い「!」
勇者「追放……?」
司書「はい……この村へ来たのは、確かに船があったから、ですが」
司書「……他に居るより、安全だと思ったから、です」
僧侶「どう言う事……ですか?」
司書「この村が……魔石を作り、特殊な武器等を作っている事は?」
勇者「ああ。兄君に聞いた」
司書「……表だっての直通便等は無いでしょうが、あの国と取引をしている」
司書「船があるのです……何度か、見かけています」
勇者「定期便以外……と言う事か?」
司書「はい。海賊船との噂もありますけど……」
魔法使い「海賊船!?」
司書「……噂に過ぎませんが、ね。何処にも所属して居ない船が一隻、あると」
魔法使い「……そ、んな……!」
司書「その船を使えば、ここから魔導国への行き来は出来ますから」
司書「……それに、この村に居れば……シスターを守る事もできますから」
戦士「守る?」
司書「彼女は……領主の一族の一人です」
魔法使い「え!? ……嘘でしょ? ……見た事、無いわよ」
司書「…… ……優れた加護を、持っていませんから」
魔法使い「!!」
司書「……奴隷の様な扱いをされていたらしいです」
司書「それに、私達は追放されましたが、一族の中の……そう、言う」
司書「加護を持たない者は、『出来損ない』と呼ばれ……」
3071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 16:57:59.16 ID:eMFqkBx1P
魔法使い「……ッ」
司書「……改めて、奴隷や……人体実験に使う為に、呼び戻されていると」
司書「言うのです」
僧侶「そんな……!」
司書「…… ……彼女以外は全て、あの国の血筋の者ではありませんから」
司書「良いのですが……シスターは……」
戦士「それで……あえてこの村に、来た、のか」
僧侶「き、危険では無いのですか!?」
司書「様々な場所に、使者を送り込んでいると聞きますから」
司書「……表だっては居なくても、交流がある分、マシかと思ったのですが」
司書「わかりません……選択を誤っていなければ良い、と」
司書「願うばかり……です」
勇者「……しかし、おかしく無いか?」
僧侶「え?」
勇者「持ち帰って、研究って……魔導国の聖職者だって、作れるんだろう?」
勇者「魔除けの石……それに」
戦士「……そうだな。村の外れに残ってる、と言う」
戦士「兄の説明も腑に落ちん」
魔法使い「本来なら村の中に置くわよね。魔物が来ない様、に」
僧侶「……村の外れにおいても、効果がある程凄い石……?」
魔法使い「それもおかしいわよ。それに……もし、それがそんなに効果のあるものなら」
魔法使い「それ程『特別』な物なら、お爺様達なら、全部奪っていきそうなのに」
戦士「……全部は奪わない変わりに、武器の輸出を約束させた……とか?」
勇者「……最初から戦争を起こすつもりだったのなら、それも考えられる……けど」
魔法使い「独占するために? でも……」
僧侶「……だから、鍛冶師様の不評を流したのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「始まりの国に不信感を持つ様になれば、自ずと独占に傾きますよ?」
戦士「……だが、鍛冶職人達は変わらず、お爺様を『勇者』だと……言うのだろう」
僧侶「……あ、そうか。そうですね……」
3081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:20:25.37 ID:eMFqkBx1P
司書「……内部分裂とまではいかないも知れませんが」
司書「混乱のある場の方が、支配しやすいのかもしれません」
魔法使い「……これだけこんがらがってると、目的以外の相乗効果はあるものよ」
魔法使い「良くも悪くも、ね」
勇者「…… ……」
僧侶「とにかく……確かめないといけませんね」
魔法使い「村長さんに……ね」
勇者「魔王の復活も止めないと行けないのにな……糞ッ」
勇者「人間同士で、争っている場合じゃ無いのに……!」
司書「……本当に、よく似ていらっしゃる」
勇者「そうだ。さっき言っていたな。シスターが……」
勇者「信じられない程、そっくりだ……だったか」
司書「…… ……」
僧侶「司書さん?」
司書「……お嬢様は、覚えていらっしゃいますか、剣士さんと言う……」
魔法使い「!」
戦士「……ッ 紫の瞳の男、か!」
司書「…… ……ご存じでしたか」フゥ
勇者「闇色の髪に、紫の瞳の男、だな」
勇者「……俺と同じ顔をした、男」
司書「今……また、魔導国にいらっしゃいます」
司書「お嬢様は覚えていらっしゃるかどうか解りませんが……」
魔法使い「……幼い頃、お爺様の家に居たのよね?」
司書「……はい。毎日、図書館においでになっていました」
司書「今でも覚えて居ます……『此処の本を全て読むのにはどれぐらい掛かる』と」
司書「訪ねられた……事を」
魔法使い「でも……何時からかみかけなくなったわ」
司書「ええ……どうしたと領主様達に訪ねる事はできませんでしたが」
司書「……シスターを迎えに行った時に、会いました」
勇者「奴隷の様な扱いをされていた、んだよな」
司書「……はい。いい歳をして、恥ずかしいのですが……」
僧侶「恋人……ですか?」
司書「いえいえ!まさか……! ……娘の様な物ですよ」
3091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:29:30.84 ID:eMFqkBx1P
司書「……何時からか、図書館に来なくなりましてね」
司書「どうしたのかと訝しんでいると……優れた加護が無い事が」
司書「はっきりと解ったから、下働きの様な事をさせられているらしいと」
司書「噂を聞きまして……」
僧侶「……連れ出した、のですか?」
司書「私達の追放は決まっていましたから。出立の朝早くに、迎えに行ったんです」
司書「良ければ一緒に行こう、と」
戦士「……そんな都合良く……」
司書「……ええ。ですが、彼女は剣士さんに連れられて、外に居ました」
魔法使い「助けてくれた……って、事?」
僧侶「…… ……」
司書「昔と、寸分違わぬ姿で……驚きましたよ」
司書「……ただ、彼女を危険な目に遭わす訳にも行かないので」
司書「特に会話もせず、すぐにその場を離れましたけど……」
僧侶「教会でお会いした時、私に本物なのかと聞いたのは……?」
司書「……領主様が、仰っていたそうです」
司書「『剣士様は、魔導国の勇者様』だ、と」
戦士「!?」
司書「……港街の勇者様のお話はご存じ、でしょうか?」

キィ、コロン、コロン……

村長「すみません、勇者様……!仕事が長引いてしまって……」
村長「おや、司書さん……」
司書「……本日は、村長さんのお家にお泊まりになるのでしたね」スッ
勇者「あ……」
司書「また明日、時間があればお寄り下さい……本は、その時で結構ですよ」
司書「それでは、村長さん。私はこれで……」
村長「あ、ああ……」

キィ。コロンコロン
3101 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:39:03.41 ID:eMFqkBx1P
勇者「あ…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「もうそんな時間なのね……」
村長「すみませんでした、遅くなりまして」
勇者「……いえ。此方こそ。訪ねて行く約束だったのに、すみません」
村長「ここに居ると言うことは、お食事はお済みですかな」
僧侶「あ……はい」
村長「いや、良いのですよ。此処は美味い飯を出しますしね」
村長「この、コロンコロンというドアベルの音を聞くだけで」
村長「腹が減ってしまう位です……いや、お待たせしました」
村長「家には息子も待たせてありますので、どうぞ。ご案内致します」
勇者(……しかし、今日一日でどれだけの話を聞いたんだか)
勇者(流石に疲れてきた……しかし、港街の勇者?)
勇者(……聞いた事が無い)
僧侶(この……本。もし、本当に神父様の持ち物だとするのなら)
僧侶(私の母……エルフの事を、知ってた?)
僧侶(否……そうとは限らない。でも……!)
魔法使い(剣士が、魔導国に居る……!)
魔法使い(……何の為に。何が目的で!?)
魔法使い(お爺様達は……本当に、何を考えて居るの!?)
戦士(魔除けの石だの、直通便だの……)
戦士(この村は……どこか怪しい、な)
戦士(兄の話もそうだが……どうにも、当を得ない)
勇者(真実は……余りにも遠い)
僧侶(……知りたい!だけど……)
魔法使い(私達の目的は、魔王を倒す事、なのに……!)
戦士(……見失う訳には、いかない!)
3111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:46:22.96 ID:eMFqkBx1P
……
………
…………

息子「ああ、お父さんお帰りなさい」
息子「初めまして……息子と言います」
勇者「初めまして。勇者です。こっちは仲間の……戦士、魔法使い、僧侶です」
村長「ええと……さっそくですけど……魔法剣の話、でしたな」
勇者「はい。その前に……お聞きしたいのですけど」
村長「? はい、何でしょうか」
勇者「村の奥にあると言う……昔、聖職者様が作られたと言う、魔除けの石」
村長「!」
勇者「……見せて貰う事は、できるんでしょうか」
村長「いや、あの……それは……」
息子「構いません」
村長「息子!?」
勇者「…… ……」
息子「……ですが、今日はもう日も暮れています」
息子「勇者様と言えど危険ですので……明日、ご案内すると言う事で」
息子「宜しいでしょうか?」
勇者「ええ、結構です……ありがとうございます」
村長「待ちなさい!そんな……そんな勝手はゆるさんぞ!」
戦士「…… ……」
僧侶「あ、あの……!」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「でも……」
息子「何が勝手だ!勇者様だろう!?」
村長「しかし、それでは……!」
息子「魔導国が何だ!戦争なんかおっぱじめやがって!」
息子「しかも、直通便だってもう止まったんだろう!?」
息子「顔色を伺う必要が、何処にある!?」
勇者「あ、あのう……?」
3121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:52:19.23 ID:eMFqkBx1P
村長「約束が違う!」
息子「ああ言わないと、親父は俺に勇者様を会わせてくれなかっただろう!」

ギャアギャア、ギャアギャア

戦士「……親子げんかを見せて貰いに来た訳じゃ無いんだがな」ハァ
魔法使い「探りを入れる手間が省けた、んじゃないの」
僧侶「あ、あの、村長さん、息子さん……!」

村長「お前、まさか、態と……!」
息子「子供の口に戸を立てられる訳が無い!」

ギャアギャア、ギャアギャア

勇者「…… ……」ハァ
勇者「あの、悪いけど、ちょっと……」
息子「いい加減にしろ!騙されてるのが解らないのか!」

シィン……

魔法使い「……騙されてる?」
村長「…… ……ッ」
息子「……兄を使ったことは、直接謝っておく」
息子「だが、いい加減目を覚ませ!お父さん!」
勇者「…… ……説明、して頂いても良いですか、ね」
息子「……兄から、何処まで聞きました?」
勇者「魔石や、特殊な武器の話と、聖職者様とやらの伝説……とか」
戦士「司書からも聞いたぞ。魔除けの石を持ち帰り研究してるとか、どうとか」
3131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 17:53:33.29 ID:eMFqkBx1P
お風呂とご飯!
314名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 18:19:28.41 ID:wiQgNsZw0
いてら。
3151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/08/31(土) 18:25:31.89 ID:eMFqkBx1P
日付が変わる前には来られないかもしれん……

ので、もし落ちた場合は

SS速報
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

こっちに
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」のスレを
1◆Vwu55VjHc4Yj で立てます

では!
316名も無き被検体774号+:2013/08/31(土) 18:26:49.75 ID:MGJzH5Rq0

なんとなく、酒好きっぽいなw
3171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 00:12:33.28 ID:ktOuhzjGP
村長「やめなさい!息子!」
息子「いい加減に目を覚ませ! ……勇者様は目の前にいらっしゃる」
息子「言い逃れできるとでも思うのか!」
魔法使い「……この村は、何か魔導国に弱みでも握られているの?」ハァ
僧侶「兄君を使った、と言うのは……どう言う意味です?」
息子「順番にお答えします」
村長「……やめろ、と言っているのに……ッ」
村長「ああ……もう、私は、知らん!知らんぞ!どうなっても……!」
村長「この村は……終わりだ……!」
勇者「ちょ、ちょっと……そんな、大袈裟な……ッ」
息子「……港街からの船に、勇者様が乗っているかもしれないと」
息子「船が着く度に……兄に、様子を見に行かせていたのです」
村長「…… ……」
勇者「毎度、ですか……!?」
息子「ええ。幸い、距離は離れていませんから」
息子「……それに、魔物は殆ど、襲ってこないと解って居ましたから」
魔法使い「解って居た……?それは、あの……魔除けの石、の効力、って事?」
息子「……そうですね」
村長「どうするんだ!どう責任を取る気だ、お前は!」
息子「黙れと言っているんだ! ……この村が本当にこの侭で」
息子「良いと思っているのか!お父さん!」
村長「…… ……」
息子「……失礼しました」
勇者「そりゃ、船の着く時間は大体解るでしょうけど……」
戦士「俺達が何時、ここへ来るか。本当に来るのか、なんて……」
戦士「解らなかっただろうに」
僧侶「……そうですよ。魔導国の人達は、港街からの」
僧侶「船の運航の差し止めを要求しているんでしょう?」
息子「…… ……」
勇者「……息子さん?」
3181 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 00:37:30.53 ID:ktOuhzjGP
村長「……勇者様達が、船に乗るまでは、差し止めはせんと言う約束だったんだ」
僧侶「村長、さん?」
息子「お父さん……」
村長「……港街から出る船は、始まりの国行き、魔導の国行き、そして」
村長「この大陸行きの三本だ」
村長「……魔王の城へ向かおうと思えば、まずはこの大陸行きの船に乗らざるを得ない」
息子「…… ……」
勇者「約束……と言うのは、どう言う意味です?」
魔法使い「まさか……おじ……領主と、って事!?」
息子「……そうです。見張られているのには……気がつかれませんでしたか?」
戦士「! ……では、あれは……やはり……!」
息子「気付いて……おられましたか」ホッ
勇者「……どうして、安心した様な顔をするんですか」
息子「……兄を使ったと言うのはどう言う意味か、と」
息子「お聞きになられましたよね、さっき」
僧侶「え、ええ……」
息子「言葉通りの意味です。子供の好奇心は抑えられないだろうと」
息子「……利用した迄です」
勇者「……さっきもちらっと言ってたな。口止め……してたのか?」
息子「いいえ。お父さんからはそう言われてましたけど」
村長「お前……!」
息子「どちらにしても、俺が話すつもりだったんです」
息子「……だけど、兄はともかく、俺は素直に言う事を聞いている振りでもしないと」
息子「こうして、貴方達とお話しする機会もなかったでしょうから」
勇者「……俺達が魔法剣の事について、訪ねるだろうってのは」
勇者「解ってた、と言いたい訳だな」
息子「ええ。そうでないと……魔導国があの鉱石の洞窟を」
息子「狙った意味もありませんから」
魔法使い「…… ……」
3191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 00:45:35.90 ID:ktOuhzjGP
息子「俺達……鍛冶職人は、鍛冶師様を尊敬しています」
戦士「『鍛冶師の村の勇者様』か」
息子「はい。魔法に長ける者達は……魔導国と聞くだけで」
息子「憧れや、様々な思いもあるのでしょうけど」
僧侶「……ですが、それだけでは利用した事にはならないのでは?」
僧侶「口止めはされなかったのでしょうけれど……」
魔法使い「そうよね。兄君自体……言っちゃ悪いけど、話はぐちゃぐちゃだったわよ」
魔法使い「支離滅裂、とは言わないけれど……矛盾が多かった……わよね?」
戦士「……そうだな。聞かされていない、と言葉に詰まる事が多かった」
息子「あいつの両親もそうですが、この村の人間の思想は」
息子「……鍛冶師様側か、聖職者様側か、に別れています」
僧侶「……お父様は鍛冶師様側、なんですね?」
戦士「老女が言ってたな……母親は魔法に長ける者だった、と」
息子「…… ……」
勇者「しかし、村の思想を二分してどうするって言うんだ」
勇者「……その聖職者様ってのも、鍛冶師様ももう、居ないんだぞ?」
息子「だから、ですよ。まさか……魔導国の人達が」
息子「村人を争わせるだけにやったとは思わないでしょう?」
戦士「……他に目的があるのか?」
魔法使い「魔除けの石ってのが怪しい、わよね」
魔法使い「魔導国での生産量が一番多いんでしょ?」
僧侶「……そうですよね。いくら素晴らしい技術だからって」
僧侶「今更、持ち帰って研究すると言うのもおかしい話です」
戦士「それに魔法使いが言っていたとおり……もし、本当に素晴らしいもので」
戦士「あるのならば、全て我が物にしてもおかしく無い、んだろう?」
村長「…… ……あれは、魔除けの石等では無い」
勇者「…… ……え!?」
3201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 00:57:50.60 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「どう言う事……!?」
戦士「おかしいだろう。ならば何故、この村には魔物が寄りつかない!?」
勇者「……村の中に置けない理由、か?」
村長「……言うなればあれは、『魔寄せの石』だ」
僧侶「魔……寄せ?」
村長「そうだ! ……禍々しい、血色の石だ!」
息子「…… ……村の奥に置いているのは、そういう理由ですよ」
息子「魔物達はその石に惹かれ、此方まで……村まで、降りてこない」
勇者「ま、待て! ……じゃあ、聖職者の伝説ってのは……!?」
息子「あれは本当です……と言っても、俺達がこの目で見た訳じゃ無いけど」
息子「だけど、作り事じゃ無い」
僧侶「そ……んな……!? では……!?」
僧侶(隻腕の祈り女様……娼婦様、は!?)
僧侶(……否。同一人物であると言う保証は無い……し、確かめようも無い……!)
魔法使い「…… ……成る程、ね」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「その事実を盾に、脅されて」
魔法使い「……石を持って帰られた、が正解なのかしら」
村長「…… ……」
息子「お父さんですら……もっと古い代の人に聞いたに過ぎないんです」
村長「……村長だけに伝えられてきた事なんだ」フゥ
村長「あの石を置いている限り、村は魔物に襲われない」
村長「その秘密を黙っておく変わりに……魔法剣の技術を確かな物にし」
村長「魔導国だけに伝えろというのが……あいつだの言い分だ」
勇者「……しかし、鍛冶師様が居ただろう!この村に魔石生成の」
勇者「技術を残したのだろう!?」
3211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 01:10:12.08 ID:ktOuhzjGP
勇者「本物の魔除けの石だって作れた筈だ!」
勇者「何故……!」
息子「魔石と言うのは、そもそもは盗賊様が作られた物だと言われています」
戦士「……流通は魔除けの石を残して、全て廃れてしまった、がな」
息子「ええ。でも……『鍛冶師様はこの村の勇者様』ですから」
息子「鍛冶職人を目指す物達は、別に金にならなくても言い、と」
息子「その手法は守ってきた、のですよ」
僧侶「……では、兄君が言っていた特殊な武器、と言うのは……」
息子「……隠れ蓑です。あれは、魔法剣と呼べる代物ではありません」
勇者「村長さんは……俺が教えて欲しいと請うた時」
勇者「……その隠れ蓑、で誤魔化すつもりだった……んだな?」
村長「……まさか、勇者様をだませるとは思っていなかった」
村長「時間稼ぎで良かったのだ」
魔法使い「……直通便を望んだ村人は……確かに、居たんでしょうけど」
魔法使い「あっさりと実現したのは……脅されていたから、なのね?」
村長「……私に拒否する権利などなかったからな」
勇者「それにしても……!」
息子「……他にも、色々と狙いはあるのだと思います」
息子「私もこれ以上ははっきりとは……知りません」
村長「…… ……」
魔法使い「司書達のあれは……」
息子「あれは……流石に偶然だと思いたい、ですが」
息子「魔導国は確かに封鎖されましたし……」
勇者「……頭がこんがらがってきた」
戦士「俺もだ」
僧侶「……魔導国と、港街、始まりの国、は……」
僧侶「色々と、確執があった、のですよね?」
3221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 01:16:14.14 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「え?」
僧侶「……旅をしている間に、聞いたに過ぎません、けど」
僧侶「戦士さんは、何かご存じないのですか?」
戦士「……僧侶、その話は……」
息子「さっき、魔法使いさんは言い淀まれましたが」
息子「……知っていますよ。『国王の孫であり、騎士団長の息子』」
戦士「!」
村長「……お前さんは、『魔導国王の孫』だろう」
魔法使い「……まあ、そりゃばれてるわよね」フゥ
勇者「魔法使い……」
魔法使い「要するに、この村は魔導国……お爺様達の言いなりだったのでしょう?」
村長「もういいだろう!全部話したんだ!」
戦士「……俺達が港街を出たら、船を差し止めると言ったんだよな?」
息子「え?ええ……まあ」
戦士「……僧侶。覚えて居るか」
僧侶「! ……武力行使も辞さない……!」
勇者「あ……!」
魔法使い「……まさか!いくら何でも……!」
勇者「……『魔導国の勇者』!?」
僧侶「!!」
魔法使い「冗談じゃないわ!本当に全面戦争じゃないの!!」
村長「…… ……魔導の街に、戻るんだ」
勇者「え……?」
村長「そうすれば、止まる」
息子「お父さん!?」
村長「……お前のじいさんからの、伝言だ」
3231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 01:29:45.46 ID:ktOuhzjGP
息子「お父さん! ……何故、何故黙っていた!」
村長「お前もいい加減に目を覚ませ! ……正義感は結構だがな!」
村長「お前も、次期村長なんだぞ!?」
村長「……ッ 村人を、危険にさらすつもりか!」
息子「! ……ッ じゃあ、何故……ッ 何故、勇者様に話したんだ!!」
息子「騙されていると、解って居るんだろうに……!」
村長「騙されているんじゃない!」
村長「……知らされている、んだ!」
勇者「……知らされている?」
村長「…… ……鉱石の洞窟を手中に収めれば」
村長「『光の剣の修理』は、この村の鍛冶職人にやらせてくれるという」
村長「……約束なんだ!」
勇者「!」
戦士「何を馬鹿な事を!光の剣は勇者の物だ!それを……何を、勝手に……!」
村長「だが、お前達は戻るのだろう?」
魔法使い「!」
村長「……盗賊様と鍛冶師様が救った、港街を」
村長「生まれ育った始まりの国を、放って置けるのか!」
僧侶「……ッ そ、れでは……ッ まるで、脅迫、です!」
村長「……なら、見捨てるのか?」
勇者「物理的に不可能だろう!いくら、魔法使いが領主の孫だからって!」
村長「……北の街に行け」
戦士「北の街……?」
村長「あの街の町長が、船を所有している」
村長「……魔寄せの石がある限り、道中はそれ程危険では無い」
魔法使い「……ッ はい、そうですかって……!」
村長「『勇者』なのだろう!?世界を……未来を救う、勇者なのだろう!!」
勇者「!」
村長「……魔王を倒すだけが勇者か!?正義なのか!?」
3241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 01:37:19.79 ID:ktOuhzjGP
勇者「……そ、れは……ッ」
戦士「……詭弁だ。聞くな、勇者」
戦士「犠牲はつきものだ、等とは言わん。だが……」
戦士「……自身で蒔いた種だろう、村長!」
魔法使い「そうよ! ……紛い物の平穏に屈するからよ」
魔法使い「見つかった時に……砕いていれば……!」
僧侶「今からでも遅くありません。その、魔寄せの石とやらを」
僧侶「破壊してしまえば……!」
村長「……村人が魔物に襲われるのを良しとしろというのか!」
村長「孤児院なんて物も出来てしまったんだぞ!?」
村長「……お前達ほどの腕があれば可能だろうが」
村長「何時までも、お前達が守ってくれる訳でもあるまい!」
村長「……それこそ詭弁だ。偽善だよ!」
息子「お父さん……」
村長「……お前も、あの石を砕いた方が良いと」
村長「言うのか!まだ!」
息子「…… ……ッ」
僧侶「息子さん……!」
勇者「……僧侶。もう良い」
僧侶「勇者様!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
村長「もう…… ……遅いのだ……」
勇者「…… ……」

……
………
…………
3251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 01:48:19.37 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「で……どうする、んだ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……何だか、手のひらの上で踊らされている気分だわ」
僧侶「一体……何処までが、用意されたシナリオ……なんでしょう、ね」
戦士「どう言う意味だ?」
僧侶「考えれば考える程、後手後手じゃありませんか」
僧侶「……魔導国の目から逃れてきたはずが……」
勇者「どこまで行っても手のひらの上、か」
勇者「……確かに、な」
魔法使い「一辺に情報が入ってきて、本当に混乱しそうよ」
魔法使い「部屋に案内して貰ったのは良いけど……これじゃ眠れないわよね」
勇者「北の街にも……魔導国の目があると考えて良い……んだろうな」
魔法使い「……村長さんも、被害者よね」
戦士「実際に脅されたのは……前の村長か何か……なんだろうな」
魔法使い「お爺様は一体……いつから、こんな事を企んでいたの……!?」
勇者「しかし……俺達が魔導国に戻って……どうなると言うんだ?」
僧侶「『魔導国の勇者様』ですか……」
戦士「後ろ盾、とは言え……確かに、実力があるのだろうとは言え」
戦士「……否。魔族であるのなら……」
戦士「あいつ一人で、充分……なのか?」
魔法使い「……司書はああ言ってたけれど」
魔法使い「あれも、手のひらの内、なのかしらね」
勇者「……孤児院の子供達。なんの力も持たない子供達を」
勇者「危険にさらさない為には……魔寄せの石は、砕けない……か?」
戦士「……あのシスターと言う女、領主の血筋なのだろう?」
僧侶「……ですが、スパイと言えば大袈裟ですけど……」
僧侶「その。そんな風には……見えませんでしたよ?」
魔法使い「私もよ。でも…… ……何を信じれば良いのか……」
3261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 02:01:33.38 ID:ktOuhzjGP
勇者「……『魔王を倒すだけが勇者か?』 ……か」フゥ
戦士「……港街へは、始まりの国が騎士達を派遣するだろう」
戦士「親父は強い。国王様も頭の良い方だ」
戦士「……心配しなくても良いと思う……が」
僧侶「ですが……鉱石の洞窟付近での抗戦で、疲弊していらっしゃらないでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「どうして呼び戻したいのか……その目的が解らない限り」
魔法使い「近づくのは危険……よね」
勇者「目的……か」
僧侶「さっさと魔王を倒してしまう……にしても」
僧侶「…… ……確かに、それだけでは『平和』ではありません、よね」
勇者「……まだまだ、パズルのピースは足りないんだろう、な」
僧侶「明日……北の街へ向かう、のですか?」
勇者「この街に何時までも居ても……仕方無いだろう」ハァ
勇者「……息子さんも、最後……黙っちゃった、しな」
僧侶「……あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「……少し、道は逸れますけど……もし、良ければ」
僧侶「小屋へ……寄って貰えませんか」
魔法使い「あ……! そうだわ、あの司書に見せて貰った、あの本……!」
戦士「……あれは、真実、なのか?」
勇者「でも……御伽噺だろ?」
魔法使い「……驚く程そっくりだったわよ」
魔法使い「水色の髪に、水色の瞳……」
勇者「……あれ?緑じゃ無かったか、髪……」
魔法使い「え!?」
戦士「俺も緑だと思った。若草色、と言うのか……」
魔法使い「色あせて……そう見えた、のかしら」
魔法使い「で、でも……!本当に僧侶そっくりだったわよ!?」
3271 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 02:09:12.16 ID:ktOuhzjGP
勇者「……あれが真実なら、僧侶は」
勇者「エルフは、嘘が吐けない、って事になる……よな」
僧侶「……はい。昔から、心のどこかで……嘘は吐いてはいけないんだと」
僧侶「その……なんと言うか。思っていた、んですけど」
僧侶「……神父様に、そう言われて育ったからかもしれませんけど」
魔法使い「……小屋に行けば、何か……解る?」
僧侶「あ……いえ。そういう訳では無いんです」
僧侶「何も……神父様のお墓以外、何も……ありませんから」
戦士「そうか……」
勇者「気分転換も必要だよ。これじゃ……本当に、何か見失ってしまいそう、だし」
勇者「……何処で誰に、何を聞かれているかも、正直解ったモンじゃ無い」ハァ
僧侶「……私も、あの小屋から旅立つ時」
僧侶「魔寄せの石……の、恩恵にあずかっていたんでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「……俺には、村長の言葉を否定し続ける事はできそうに無い」
僧侶「勇者様……」
魔法使い「見せて貰うのは……諦める、の?」
勇者「否…… ……それは、一応、見せて貰うつもり」
戦士「何故だ?」
勇者「……僧侶の力を頼って良いか?」
僧侶「え? ……あ、はい。それは勿論……」
勇者「持ち帰った、んだろう……」
勇者「……それが、少し気になる、んだ」
魔法使い「魔物を寄せ付ける……んですものね」
勇者「それで一体、何をしようとしているのか……」
3281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 02:13:30.94 ID:ktOuhzjGP
戦士「解らない事だらけ、だな」
魔法使い「……魔導国に戻ったら解る……のかもしれないけど」
魔法使い「危険すぎるわ。お爺様達の目的も、何も解らない」
魔法使い「……それに、剣士……が、居る」
勇者「…… ……」
僧侶「私には、それ程……悪い人にも思えない、のですけど……」
魔法使い「……私だって、そう信じたいわ。だけど……」
勇者「事実、彼はあの街に居る……ん、だろうけど」
勇者「…… ……何を信じて良いのか、解らなくなってきた、よ」ハァ
僧侶「…… ……」
戦士「どうして……どうして、人間同士で争うんだ……!」
戦士「……何処で……道を間違えたんだ……!?」
勇者(道を間違えた…… ……)
勇者(誰かが……何処かで……選択を誤った……のか!?)
3291 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 02:14:34.79 ID:ktOuhzjGP
又明日ー!
限界(・ω・)ノ
330名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 03:11:53.37 ID:D4RgMp+ui
選択間違えちゃったのか…
331名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 03:28:07.32 ID:hFZmUDRu0
全く違う道になってきて面白いんだがこんがらがってきたぞ…
3321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 07:54:56.51 ID:ktOuhzjGP
おはよー!
今日ものんびりー!
3331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:17:01.20 ID:ktOuhzjGP
……
………
…………

『オギャア、オギャア……!』
『産まれた……!』
『おお、ついに……!』
『娘と子供を隔離しろ……これで、漸く……』
『『我らの世界が始まる』んだ!』

魔王(……子供。あれが、『世界』)
魔王(あれ……?)キョロ
魔王(…… ……誰も、居ない。紫の瞳の魔王も……青年も)
魔王(あの……俺そっくりの女性……も……)
魔王(…… ……一人、か)

『オギャア、オギャア……!』
『うわああああああああああああああ!!』

魔王(え!?)

『オギャア、オギャア……!』
『ぎゃあああああああああああああああああ!!』

魔王(……!!)

『た、たすけ……ッ 誰か……!!』
『ぎゃあ、アアアア!?』

魔王(な……ん、だ……ッ)
魔王(赤ん坊が、泣く度に…… あれは、魔法!?)

娘『良し良し、どうしたの、『世界』』
『お、おい!泣き止ませろ!どう、に……ッ ギャアアア!』
娘『お腹がすいたの?ほら……おっぱいよ』
娘『赤ちゃんは、おっぱいを飲むんですって』
娘『大きくなるのよ、『世界』』

魔王(……あの娘……あの紫の瞳、は)
魔王(…… ……双子の片割れ、だよな?)
魔王(血塗れで……赤ん坊に、乳を……うぅ……)
魔王(軽くホラーだな……しかし……)
3341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:23:37.27 ID:ktOuhzjGP
『む、息子を連れて来い!どうにか……!うわぁッ』

魔王(泣く度に……魔法が放たれている)
魔王(……炎に、風に……!?)
魔王(……どう、言う……事、だ……ッ!?)

息子『離せよ!僕を何処に……! ……ッ あ!?』
娘『……ああ、息子。ほら、見て……『世界』』
息子『産まれたのか。どうして君はそんなに、怪我をしているの』
『オギャア!オギャア……ウアァ……ッ』
息子『……ッ!!』
娘『赤ちゃんがおっぱいを飲まないの』
娘『……泣き止ませないと、殺してしまうのに』
息子『この死体は…… ……『世界』が作ったの?』
娘『そう……ほら、良し良し。赤ちゃんって、おっぱいが好きなんでしょう?』
『…… ……』
息子『あ……』
娘『ああ。やっと泣き止んでくれた』

魔王(…… ……)

『……王様に……ッ 報告、を……ッ』ズルズル……

魔王(娘も……赤ん坊も……血塗れじゃないか……)

息子『……おいで。回復してあげる』
娘『『世界』は怪我なんかしてないよ?』
息子『君だよ、娘……ほら…… ……あれ?』
娘『どうしたの』
息子『おかしいな……回復魔法が使えない』
娘『だって、貴方……紫の瞳をしてる』
息子『…… ……そうか。『世界』が持って行ったんだね』
娘『え?』
3351 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:29:50.59 ID:ktOuhzjGP
息子『だって、ほら。『世界』の瞳は『光みたいに輝く金』だ』
娘『ああ。本当だ……『光』みたいだね』
息子『僕は『君と同じ』になったみたいだ』
娘『私の瞳は変わらない?』
息子『ああ。変わらないよ』
娘『そう…… ……よか……ッ …… ……』

ボロボロボロ……

魔王(!?)

息子『娘。君の腕が……』
娘『ああ、大変。『世界を抱けない』』
息子『落としちゃ駄目だよ、おいで『世界』』

ボロボロボロ……

娘『……足、が』ドサッ

魔王(身体が……崩れ落ちていく!?)

バタバタバタ……!

『娘!赤ん坊は……!』
息子『王様』
娘『息子、『世界』におっぱいをあげれない。どうしよう』
娘『お腹いっぱいにならないと、『世界』が死んじゃうわ』ボロボロ……
『ひ、ィ……ッ こ、これは……どう、言う……!!』
息子『僕じゃ、おっぱいは出ないな……ねえ、王様。どうしよう?』
娘『『世界』…… 『世界』…… ……せ、か……』

ボロボロ……ザァア……

『…… ……こ、これ、は……ッ』
336名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 08:32:58.09 ID:tDScpXZj0
oh…
3371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:40:47.41 ID:ktOuhzjGP
息子『ああ……娘が消えちゃった』
息子『ねえ、王様。どうしたら良い?』
息子『『世界』は大切なんだろう?』
『……ひ、ひ……ィ……ッ』
息子『『支配するための世界』だっけ、『支配されるための世界』だっけ』
『だ、誰か……!誰か……ッ!!』
『ふ、ふえぇ……ッ オギャア!オギャア!』
『誰か、早く……ッ う、うわああああああああああああああ!!』

魔王(……な、んだ……これ、は……!!)

シュゥン……

女魔「……『世界』を産みだしてしまった、代償」
魔王「あ……」
女魔「娘は『全き闇』だった」
魔王「……全き、闇?」
女魔「そう。紫の瞳の魔王のお母さんはどうだった?」
女魔「エルフの姫は?」
魔王「!」
女魔「……一緒、だよ。身に抱くには強大すぎて」
魔王「で、でも!あの娘は……人間だっただろう!?」
女魔「見たでしょ。青年の瞳が……殺される前に、金から紫に変じたの」
魔王「……あいつは、世界に光を放ったんじゃ……無いのか?」

シュゥン……

青年「そうだ。『世界』に……ね」
魔王「!」
女魔「…… ……」
青年「俺は魔王を倒し……本当ならば魔王になる筈だった」
青年「……産まれてきた子供は?」
魔王「……勇者、になる……んだよな」
女魔「あの双子は、初めは……幸せな頃、は」
魔王「…… ……」
女魔「『人間』だった」
3381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:49:10.50 ID:ktOuhzjGP
シュゥン……

紫魔「光でも闇でも無い、普通の色の瞳を持つ、双子だったのだ」
女魔「だけど……『人は、唯一、選び取ることが出来る』」
魔王「…… ……」
青年「『光と闇』のどちらにも、変じる事ができる生き物だ」
魔王「ま、待て! ……え、ええっと!?」
女魔「瞳の色は変えられない。だけど」
魔王「この世界は『願えば叶う』」
魔王「……いや、だからって……!」
青年「あの双子は『特別』だったんだ」
青年「……俺達の元から、奪い去られ……『願わされてしまった』」
魔王「願わされた?」
青年「そうだ」
紫魔「『支配する為の世界を作れ』と」
女魔「そして『支配される世界を作れ』ともね」
魔王「……!」
紫魔「……青年は、世界に向けて光を放った。今度こそ、平和になるようにと」
女魔「選択を間違えたのかな……」ハァ
魔王「え……」
紫魔「『光と闇』が失われたとしたら、後には何が残る?」
青年「……何も、残らないんだ。光も闇も、どちらを欠いても……存在は出来ない」
魔王「ちょ、ちょっと待てよ!そんな事言ったら……!」
魔王「勇者が、魔王を倒したって! ……平和に何か、ならないじゃ無いか!」
魔王「……存在が無くなってしまうことが……平和なのか!?」
女魔「……だから言った筈だよ」
青年「『選択を誤るな』」
魔王「ど……どうしろって言うんだよ!」
魔王「勇者が魔王を倒さずに居たって、世界は滅びてしまう、んだろう!?」
青年「……そうだな。全てが『無』に帰る」
青年「存在していたことすら、無かった事になってしまう」
魔王「……何度も言うけど、俺にはもうどうすることも出来ないって!」
魔王「勇者に……倒されるのを待つだけだろう!?」
3391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 08:56:53.52 ID:ktOuhzjGP
女魔「……さっき、娘は『全き闇』だった、と言ったね」
魔王「……あ?ああ……」
女魔「同じように……息子は、『全き光』だったんだ」
魔王「……でも、あいつの瞳は闇色に染まっていたぞ」
青年「勇者は何になるんだ?」
魔王「!」
紫魔「……赤子の瞳は、何色だった?」
魔王「そ、んな……!」
魔王「この侭、繰り返すと言うのか!?」
魔王「ずっと……永遠に……同じ事を繰り返すって……言いたいのか!」
青年「前にも言っただろう、魔王」
青年「……僕たちは、ずっと、何度も何度も」
青年「過去も未来も現在も、ずっと……!」
魔王「!」
青年「……こうして、不毛な旅を繰り返しているんだ」
紫魔「ループから逃れる事はできなかった」
紫魔「同じ事の繰り返し。永劫、逃れる事のできない……」
魔王「……『繰り返される運命の輪』か」
女魔「『光と闇は混じり合い』」
青年「『新たな世界が生まれ』」
紫魔「『破壊と再生を繰り返し、紡がれ続けて行く』」
魔王「…… ……」
紫魔「…… ……見ろ」
魔王「え……」

『オギャア、オギャア……!』
息子『あ、ああ……困ったな。お腹すいてるよね……ッ』

ボゥッ…… ……ザクザク……ッ

魔王「!」
3401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 09:03:51.52 ID:ktOuhzjGP
息子『ちょ、ちょっと、『世界』! ……ッ うわッ』

ザザァ……ピシャアアアアアン!

魔王「……何で、なんで産まれたばかりの赤ん坊が……ッ」
魔王「あんな、あんな……ッ魔法を使えるんだよ!」
青年「『世界』だからさ」
女魔「『支配し、支配される事を望まれた世界』だからよ」
紫魔「『世界』には炎しか存在しないか?水だけか?」
魔王「……無茶苦茶、だ……!」

息子『うわあああああああああああああああ!?』

ドサッ

『オギャア、ウワアアアアアッ』

魔王「あ……!」
青年「……『光は、闇を失った』」
紫魔「赤子は一人では……生きてはいけん」
女魔「だけど、あれは『世界』」

グニャ…… ……

魔王「……ッ」
魔王(視界が歪む……ッ 違う、眩暈……!?)

女魔「よく見て!魔王!」
紫魔「……破壊と再生の始まりだ」
魔王「な……に?」
3411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 09:17:30.11 ID:ktOuhzjGP
魔王(う、わ……ッ 目の前が、真っ暗……ッ!!)

バチバチバチ……ッ

魔王(眩しい……ッ閃光……!?)

『光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ』

魔王(あれは……俺!? ……否)

『……拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺は……魔王を、倒す!』

魔王(否……あれは……青年か?)
魔王(……金の髪に金の瞳……じゃ、解らない)
魔王(……魔王、は……黒、否。闇色の髪 ……って、事は……)

グニャリ……

魔王(う……ッ また、かよ……ッ)
3421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 09:24:40.88 ID:ktOuhzjGP
『待ちなさいってば!若!』

タタタ……

『側近、遅いな!』
『……風邪引くって言ってんだろうがあああああ!』
『僕は魔王だ。そんな訳ないだろ!』
『魔王様はアンタのお父さんでしょうが!』

魔王(…… ……?)
魔王(! ……そうだ!紫の瞳の魔王は……!!)

『違うよ!僕が魔王だよ!』
『何でも良いから服着なさい!パンツ一丁で走り回んなあああああああああ!』

魔王(紫の瞳の魔王は、魔王の息子だ!)
魔王(……何時から、勇者の子……否)
魔王(魔王の子が勇者になって、あれ?違う……勇者の子が魔王?ん?)
魔王「何なんだよ!訳わかんねぇよ!」

シュゥン……

魔王「おい!どう言う事なんだって、これ……!」
紫魔の側近「相変わらずお馬鹿さんだねぇ、お前は」
魔王「……ッ ……え!?」
3431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 09:39:29.15 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「……本当、紫の瞳の魔王様そっくり」クスクス
魔王「…… ……ッ そ……ッ」
紫魔の側近「まあ、同一人物だし当たり前だわな」
魔王「側近……!?」
紫魔の側近「……おう。大きくなったな……勇者」
紫魔の側近「ああ……もう魔王、か」
魔王「…… ……ッ」
紫魔の側近「……何泣きそうな顔してんの」ポンポン
魔王「あ、阿呆!そんな訳……!」
紫魔の側近「はいはい。解った解った」
魔王「お前……ッ」
紫魔の側近「…… ……『特異点』って何だと思う?」
魔王「え?」
紫魔の側近「ほら、考えた考えた」
魔王「え、え……ちょ、ちょっと待てよ……」
紫魔の側近「……複雑だよな。神様って奴は、何考えて」
紫魔の側近「こんな世界を作ったんだか……」
魔王「……『世界』」
紫魔の側近「まあ、本当に神様なんてもんが、居るのかどうか」
紫魔の側近「俺にゃわかんねぇけど」
344名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 10:01:07.18 ID:GRbdm/rzP
側近でてきて泣きそう(`; ω ;´ )
3451 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 10:12:30.49 ID:ktOuhzjGP
魔王「……なあ」
紫魔の側近「お。もう解ったのか?」
魔王「何で……紫の瞳の魔王は、魔王の息子なんだ?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「お前達の……出身の街を滅ぼしたのも、確かに魔王なんだよな?」
魔王「『勇者』になる為に……お前達は旅立った、んだよな?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「俺達みたいな……『勇者』は何時から存在してたんだ!?」
紫魔の側近「『光と闇』だよ。勇者……あ、いや。魔王」
紫魔の側近「……呼びにくいなぁ」ハァ
魔王「側近!もうちょっとわかりやすく……」
紫魔の側近「人に頼ってばっかじゃ無くて、少しは考えなさいお馬鹿さん」
紫魔の側近「……お前が紫の瞳の魔王様を倒した時の事」
紫魔の側近「覚えてるだろ?」
魔王「俺が……倒した時……」
紫魔の側近「お前はどうやって産まれたんだ?」
魔王「!」
魔王「…… ……『俺はあいつ』」
紫魔の側近「そう。んで……『紫の瞳の魔王様はお前』だ」
魔王「…… ……『光と闇』」
紫魔の側近「双子を見ただろう」
紫魔の側近「……お前達と一緒だ。『全き光』と『全き闇』」
魔王「……だが、あいつらは『世界』を産んだぞ」
魔王「! ……そうだ!あの後どうなったんだ!?」
魔王「娘と息子が死んで、赤ん坊は……『世界』は!?」
紫魔の側近「それは自分の目で確かめなさいよ」
紫魔の側近「……望めば、見る事ができる」
魔王「……『願えば叶う』か…… ……」
紫魔の側近「……怖いか?」
魔王「だ、誰が……!」
346名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 10:17:29.58 ID:25QEtIFWi
わかっていたけれども
あまりにも悲しくて切なくて
それでも先が気になる
3471 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 10:21:07.31 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「知る権利があるんだよ……義務も、な」
魔王「義務?」
紫魔の側近「そうさ……『拒否権のない選択を受け入れて』」
紫魔の側近「『美しい世界を守る為に』」
紫魔の側近「『勇者は魔王を倒す』んだろう?」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「ほら……見ろよ」
魔王「!」

『おぎゃあ……ッ オギャ……ッ あぁああん、アアァ……』

魔王「!」
魔王(赤ん坊が泣く度に……魔法が……否、あれは、魔法……か?)
魔王(……木々は風になぎ倒されて、炎は、全てを焼き尽くす)
魔王(荒れた海に雷が落ち、水は……全てを、飲み込んでいく)
魔王「…… ……」
紫魔の側近「『世界』は寂しいのさ」
魔王「寂しい?」
紫魔の側近「産まれたばかりの赤ん坊だぜ?乳をくれる母も居なければ」
紫魔の側近「優しく抱いてくれる、父も居ない」
魔王「…… ……あ!」
魔王(赤ん坊が……水……海、に……!!)
紫魔の側近「……消えちまったな」
魔王「……『世界』が消える……!!」
紫魔の側近「心配するな。全てを作り直すだけだ」
魔王「……え」
紫魔の側近「大地は生きてる。海も。空も……」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「水があれば『命』は産まれる」
魔王「!! ……あ……ッ」
紫魔の側近「ん?」
3481 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 10:38:57.08 ID:ktOuhzjGP
魔王「……『神話』だ……!」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「『始まりは終わりだった』……ええと……」
魔王「……『古の神との忘れられた契約』!!」
紫魔の側近「お前も読んだんだな」

シュゥン……

紫魔「『限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地』」
魔王「!」
紫魔「『神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした』」
紫魔「……久しぶりだな、側近」
紫魔の側近「おう。又会えるとは思わなかったぜ……『魔王様』」
魔王「……紫の瞳の魔王……!」
紫魔の側近「……『一つ、命が産まれた』」
紫魔の側近「『それは紛れも無い命だった』……なあ、さっきの答え、わかったか?」
魔王「え……?」
紫魔の側近「『特異点』だよ」
紫魔「意地悪な問題だな」
紫魔の側近「仕方無いだろう。もうすぐなんだから」
魔王「もうすぐ……?」
紫魔の側近「……ヒント一杯出してあげたのに、お前って子は」ハァ
紫魔の側近「もーう……赤ん坊は何だった?」
魔王「え……せ、『世界』……だろ?」
魔王「な、何だよ!わかんねぇよ!」
紫魔の側近「……やっぱり、魔王様か」ハァ
紫魔「側近……お前、今……私も一緒くたに馬鹿にしたな」
紫魔の側近「お前もこいつも、元は同じモンでしょうが!」
魔王「『世界』は『命』……」
魔王「え、ええええ、っと……!?」
紫魔の側近「あーもー。しょうがないなぁ。宿題な?」
魔王「え!?」
紫魔「……流石にわからんだろうと思うんだが」
紫魔の側近「何でこんなにお馬鹿さんなんでしょうかね!」
紫魔「私を見て言うな!」
紫魔の側近「だから!こいつも……『勇者も魔王』様でしょうが!」
魔王「!」
魔王「……俺、か!?」
3491 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 10:55:44.23 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「惜しい!」
紫魔「……だから、無理だって」
魔王「……なんだよ!お前らは! ……全部知ってます、見たいな顔しやがって!」
紫魔の側近「全部、なんかしらねぇよ」
紫魔の側近「俺達は……お前も含めて、だけど」
紫魔の側近「『過去』しか知らないんだよ」
魔王「過去……?」
紫魔「お前ちょっと黙ってろ。ややこしくしてるだけだ」
紫魔の側近「ちょ……ッそれ、魔王様の専売特許でしょうが!」
紫魔「黙れと言うのに……しかし、なんでお前が出て来るんだ、側近」
紫魔「……お前は『魔王』では無いだろう」
紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
魔王「…… ……」
魔王(何なんだよ、こいつらは……)ハァ
紫魔の側近「ほら!勇者呆れてる!」
紫魔「お前の所為だろう、間違い無く」ハァ
紫魔の側近「ええええええええええ!?」
魔王「あのさ……わかりやすく……説明して貰えないもんですかね」
紫魔「……ふむ」
紫魔の側近「ふむ、じゃ、ねえええええ!」
紫魔の側近「お前が自分で気がつかないと意味が無いだろ!?勇者!」
魔王「そ、そうなの!?」
紫魔「お前が……今まで見てきたものは全て『過去』だ」
魔王「……何回も繰り返されてるんだろ?だったら……」
紫魔「だが『過去』なんだ」
紫魔「……『世界』を見ただろう。ああやって、何度も何度も再生されている」
紫魔の側近「…… ……」
紫魔「今……『黒い髪の勇者』は、新たな道を歩んでいる筈だ」
魔王「え……」
紫魔「……選択を誤るな、と何度も言っただろう」
紫魔「これ以上、繰り返さない為に」
魔王「…… ……だけど」
3501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 11:18:45.68 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「正しくは歩んでると思いたい、願ってる、だな」
紫魔「……『神話』を思い出せ」
魔王「……最初のあれしか、覚えてネェよ」
紫魔の側近「『始まりは終わりだった』んだ、勇者」
魔王「……!『世界』か!」
紫魔「『世界』は全てを破壊した。だが……『無』に帰った訳では無い」
紫魔「『紛れも無い命』はまた、産まれ……再生していくんだ」
紫魔の側近「見ただろう。金の髪の勇者が、魔王に対峙した瞬間を」
紫魔の側近「何度も何度も、繰り返されてきた不毛な会話、だ」
紫魔「勇者は魔王になり、魔王は勇者を産む」
紫魔「……本当に。何処で間違えたのだろうな」
魔王「…… ……特異点。そうか」
紫魔の側近「お?」
魔王「……紫の瞳の魔王。お前だ」
紫魔「…… ……」
魔王「器と……中身。俺とお前に別れてしまった」
魔王「……俺も、『特異点』か」
魔王「だから……『惜しい』だったんだな?」
紫魔の側近「まあ……及第点、かな」
魔王「え?」
紫魔の側近「さっき魔王様が言っただろう。どうして俺がここに居るんだ、って」
魔王「……ああ、そうか。側近は……魔王じゃない」
魔王「勇者でも……無い」
紫魔の側近「勇者になり損ねたからね。俺は……俺達は」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「俺は魔王様に『目』を食わされたからな」
紫魔「……せめて与えられたとか言えんのか」
紫魔の側近「言えるかあああああああああああ!」
魔王「!」ビクッ
紫魔の側近「あ、ああ……悪い悪い……」
紫魔の側近「……俺も『特異点』なのさ」
魔王「え?」
3511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 11:33:45.74 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「魔王様の魔力を、その一部を身に内包した」
紫魔の側近「元人間の、魔族」
紫魔の側近「……瞳の色を変えた『勇者と魔王』以外の唯一の者」
魔王「!」
紫魔の側近「これ以上は、宿題!」
紫魔「……全く、意地の悪い」ハァ
紫魔の側近「いやいやいやいや!本当に!お前にだけは!」
紫魔の側近「言われたくないわああああああああ!」
紫魔「……側近、煩い」
魔王「…… ……」
魔王(さっぱり意味がわからん……)
魔王(俺が……紫の瞳の魔王が、特異点?側近も?)
魔王(じゃあ……『探し出せ』ってのは……どう言う意味だよ……!?)
魔王「……ッ」ハッ

シィン……

魔王「紫の瞳の魔王?側近!?」
魔王「…… ……」キョロ
魔王「また……一人、か」ハァ

『…… ……アァ、あ』

魔王「……ん?」
魔王(赤ん坊の泣き声……『世界』?)

『…… …… …… ……』

魔王(違う……あれは、風の音。木々のざわめきだ)
魔王(……目まぐるしい。くるくる、変わっていく)
魔王(……命、だ。)
魔王(人が出来て……あれは、魔物……か?)
3521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 11:54:24.02 ID:ktOuhzjGP
魔王(夜になって、朝になって……また、夜になって……)
魔王(……あ、街が出来てる)
魔王(……産まれて、死んで……繰り返し……)
魔王(過去、か……よく考えたら)
魔王(何かが産まれて、死んで……産まれて……って)
魔王(繰り返しなんだよな、本当に……)
魔王「……ん?」
魔王(……炎……戦争、か?)
魔王(……あれは……最果ての地にそっくり……だ……)

『魔を倒せ!この世界に、魔など必要無い!』
『身の程を知らぬ愚かな人間め……己の弱さを嘆くが良い!』

魔王(…… ……種族間の争い、か?)
魔王(人と……魔……)
魔王(…… ……儚いものだ。人は、弱い)

『く……ッまだ、立つか……ッ』
『個々は弱くとも、力を合わせると言う事を知らない、独りよがりな魔に』
『力を驕る魔には……ッ人の『知』は負けはせん!』

魔王(…… ……否。人は……強いのか)
魔王(后が言ってたな……回復魔法は、強くて弱い『人間の特権』)
魔王(成る程なぁ……)

『トドメだ!』
『ぐ……ッ ぅ……ッ いい気になるな、人間よ!』
『……ッこの世界に、光のある限り!』
『闇もまた、あるのだと……ッ 覚えておくが良い!』

魔王(……光と、闇……か)
3531 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 12:05:17.10 ID:ktOuhzjGP
魔王(……そんな事言い出したら、何もかも……『世界の理』全てが)
魔王(繰り返し、じゃ無いか……)
魔王(……それを断ち切れって、どう言う意味だよ!)
魔王(まるで……『世界』が出来た事が、駄目みたいじゃないか……!)
魔王(……あ…… あれ!?)

『良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ』
『は……』
『魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ』
『はい』
『今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?』
『……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!』
『うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!』

魔王(……何時の間に)
魔王(あれは……誰だ!?勇者の印!?)
魔王(あれは……あの顔は、俺だ!)
魔王(……って、事は……!?)

『拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺は……魔王を、倒す!』

バチバチバチ……ッ

魔王(また、これか……ッ ぅ、ウ!?)ドクンッ
魔王「うぅ……ッ」
3541 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 12:15:09.97 ID:ktOuhzjGP
魔王(あ……あ……ッ!?)

『いやだああああ、はなしてえええええ! おかーさ……ッ おかーさーん!』

『そう?怖いよ……その、闇の様な紫』

『我らが……この世界の覇者となる!』

『頼んだぞ、光に選ばれし運命の子、勇者よ!』

『私は最強の盾となる』

『汝の名は、人間!』

魔王(なん、だ、これ……頭の中に、どんどん言葉が……溢れて……ッ)

『拒否権はないんだな』

魔王(駄目だ! ……それは……ッ また、繰り返す……!)

『ああ……世界は美しい』

魔王(違う! ……そうじゃない……そうじゃ無いんだ!)

『俺は……魔王を倒す!』

魔王(だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ)
魔王(……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ)
魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」
3551 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 12:22:37.02 ID:ktOuhzjGP
……
………
…………

勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(空気、重ッ)
戦士(……一度もこっちを見ないな、村長)
魔法使い(息子さん……表で待ってるって出て行っちゃったし……)
僧侶(お腹……すいてるのに、喉を通らない……)
村長「……もう、発たれるのですか」
勇者「そう……ですね。司書さんにご挨拶して……行きます」
村長「…… ……」
村長「……息子に、伝えて置いて下さい」
村長「用が済んだらすぐに戻れ、と」
戦士「……解った」
村長「では、私も仕事がありますので。失礼致します」

スタスタ、パタン

勇者「……ふぅ」
魔法使い「司書さんは、教会ね」
僧侶「行きましょう、か……」
戦士「もう良いのか?」
僧侶「……流石に、喉を通りません」
3561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 12:24:36.67 ID:ktOuhzjGP
お昼ご飯ー
357名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 12:37:10.44 ID:QKraObSf0
>>349
紫の魔王に側近と現魔王も再会出来て何よりなんだが
漫才だけで充分シリアスへし折ってんのにwww名前wwwwww
358名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 12:42:27.59 ID:tfanVltX0
側近久しぶりー
なんか懐かしくてなきそう
359名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 12:46:25.08 ID:8LRbHglj0
紫の魔王様と現魔王だとシリアス展開
側近と現魔王だと感動しつつシリアス展開

紫の魔王様と側近になるといきなり漫才になる不思議wwww

やっぱ仲良いなぁ
360名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 12:46:39.04 ID:fwZAnzrK0
側近再登場うれしい!
361名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 12:56:16.39 ID:HNL4zMAo0
シリアスへし折りまくる側近さんさすがです
362名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 13:00:59.67 ID:QKraObSf0
お前ら現側近のことも……呼び方ややこしいのぅ
3631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 13:25:23.24 ID:ktOuhzjGP
勇者「……行こう」カタン
戦士「『港街の勇者様』……だったか」スタスタ
僧侶「……盗賊様、の事では無いのでしょうか」
魔法使い「その……確執って何なの?」
僧侶「……私も、人伝に聞いただけなので、はっきりとは……」
勇者「戦士は、何か知らないのか?」
戦士「……解らない。聞いた事は確かに無い……が」
戦士「親父達も、知らない可能性がある」
魔法使い「……司書も、何処まで知ってる……かしら」

キィ、パタン

勇者「あ……息子さん」
息子「……行きましょうか」
僧侶「すみません、息子さん。司書さんに挨拶だけしていきたいんです」
息子「……では、村の入口で待っています」

スタスタ

魔法使い「……機嫌悪そう、ねぇ」
戦士「どんな顔して良いのか解らないのだろう」
勇者「俺達だって……同じ、だよ。多分」
僧侶「……いらっしゃる、かしら」

コンコン
3641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 13:32:38.16 ID:ktOuhzjGP
司書「はい」カチャ
司書「……ああ。おはようございます、勇者様方」
魔法使い「……シスター、は?」
司書「子供達と食事をしに言っていますよ」
勇者「悪い、司書さん……俺達、もう行かないと行けないんだ」
司書「……そうですか。そうですね。魔王は……待ってはくれません、から」
戦士「『港街の勇者様』とやらの話だけ……聞かせて欲しい」
司書「……『少年』様、と仰る方が、居られたそうなのです」
魔法使い「少年?」
司書「ええ。私も詳しくは存じませんが……」
司書「……何度か、領主様の口から聞いた事のある名前だと」
司書「シスターが言っていた、のです」
僧侶「シスターさんが、ですか……?」
司書「……ええ。剣士さんに向かって、そう呼んでいた、と」
魔法使い「え……?」
司書「……少年様は、紫の瞳に、闇色の髪をされていたそうで」
勇者「!」
司書「…… ……昨日は言いそびれましたが、私は……前勇者様に」
司書「お会いした事があるのですよ」
戦士「……何!?」
司書「……金の髪に、金の瞳の、神々しいお姿でした」
勇者「…… ……」
司書「今の貴方達と同じように、仲間と共に魔導国の図書館へいらっしゃったのです」
僧侶「……前、勇者様、は……」
司書「……とても、よく似ていらっしゃいます。勇者様……貴方に」
勇者「……そう、か」
司書「そして、剣士様に……で、しょうか」
魔法使い「…… ……」
司書「……本当に、同一人物かと見間違う程」
勇者「どっちと……だ?」
戦士「勇者?」
3651 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 13:51:14.26 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「…… ……」
勇者「剣士が……俺と、同じような顔をしているのは解ってる」
勇者「……知っている……だけど……!」
司書「……瞳の色だけで、随分と印象は違ってくる物です」
司書「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「……勇者」
勇者「……ありがとうございました、司書さん」
司書「私は、もう……聖職者ではありませんが」
司書「貴方達の旅の無事を……祈っています。勇者様」
僧侶「……子供達の健康をお祈りします。勿論、シスターさんも、司書さん……も」
魔法使い「……」
司書「ええ……ありがとうございます」
司書「また……お時間があれば、どうぞお寄り下さいね?」
僧侶「あ、あの……ありがとうございました。この本……」
司書「ああ……忘れていました。ありがとうございます」
僧侶「!」ビクッ
魔法使い「?」
僧侶「……貴重な物、見せて頂いて嬉しかったです」
司書「妙な話をしてしまって、すみませんでした」
戦士「…… ……神父さん、だったか」
司書「? はい……ええと……どちら、の」
戦士「……この村に居たかもしれん人、の方だ」
司書「新米神官ですね……それが、何か?」
僧侶「……戦士さん?」
戦士「どんな……人だったんだ」
司書「……真面目で、真っ直ぐな男でしたよ」
司書「魔除けの石を作るには、酷く体力と精神力を消耗する」
司書「……何時も、港街の神父様を心配されていた」
僧侶「…… ……」
366名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 13:57:55.77 ID:NoUdifL6P
>>357
せっかくスルーしたのに読み返して吹いてしまった
間違いだとは分かるけど
3671 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:11:25.49 ID:ktOuhzjGP
戦士「……そうか」
司書「あの……?」
僧侶「……どこかで、お会いしたら伝えておきます」
僧侶「司書さんが心配していらした、と」
司書「……ええ。もうこの世には居ないかもしれません」
司書「神の御許へと還った後……会えるのなら、もう一度……」
司書「……いえ。私はもう聖職者ではありませんからね」
司書「叶わぬ……夢かもしれません」
勇者「…… ……」
司書「でも……ありがとうございます。さあ、行って下さい」
司書「……失礼します、勇者様」

パタン

勇者「……盗賊様じゃ無かったな」
戦士「…… ……」
魔法使い「僧侶……さっき、どうしたの?」
僧侶「え?」
魔法使い「本を返した時に……貴女……」
僧侶「……あの人……多分、もう余り……長く、ありません」
勇者「え?」
僧侶「神父様や女神官様と同じです。命の……炎が…… ……」
戦士「……息子だ」
息子「ああ、勇者様……こっちです」
勇者「すみません、お待たせしました」
魔法使い「……後にしましょうか」
僧侶「…… ……はい」
3681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:17:21.43 ID:ktOuhzjGP
>>357
>>366

え、え!?どれ!?
わからんwww
3691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:19:10.55 ID:ktOuhzjGP
解ったorz

ごめんなさい……
誤字ばっか探してたorz

訂正

紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」



紫魔の側近「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
370名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 14:26:43.87 ID:NoUdifL6P
ちゃんと指摘しなくてすまんぬ
キャラ崩壊じゃなかった良かった
3711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:31:31.91 ID:ktOuhzjGP
息子「少し歩きますが……大丈夫ですか?」
勇者「はい……あ、村長さんから伝言です」
戦士「……用が済んだらすぐに戻れ、だったか」
息子「……解りました」
魔法使い「……あの、息子さん。良いんですか?」
息子「何がです?」
魔法使い「私達に……その、石を……見せて」
息子「…… ……約束ですから」
戦士「もし……俺達が、石を壊すと言えばどうするんだ」
勇者「戦士!」
戦士「…… ……」
息子「……昨日までは、俺もそのつもりでした」
息子「あんな物があるから、魔導国なんかの良いなりになってしまうんだ」
息子「……俺一人じゃ、あの狼の群れを全滅させることは出来ないでしょう」
勇者「狼……」
息子「ええ。勇者様達が一緒なら……と、思って、居たんです」
息子「村の者達は、自衛の手段ぐらいは心得ている」
息子「……だから、最初は戸惑うだろうけど」
息子「力を合わせればいつかは……と、思って……」
魔法使い「『思っていた』…… ……過去形なのね」
息子「…… ……」
魔法使い「責めているつもりは……無い、のよ」
息子「……いえ。責められても……仕方ありませんから」
勇者「…… ……」
僧侶「……ッ」ビクッ
戦士「……僧侶?」
僧侶「な、ん……ッ で、すか……これ、は……!!」
魔法使い「な、なによ……まだ何も見えてないわよ!?」
3721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:32:44.43 ID:ktOuhzjGP
>>370

紫の魔王様ご乱心だな……www
いやいや、>>357もありがとうwww
373名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 14:40:56.36 ID:AyviKKNfP
今更かもしれんけど、兄君って書かれるとどうしても「あにぎみ」って読んでしまうwww
3741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 14:48:28.19 ID:ktOuhzjGP
息子「……もう少し先ですが……どうしました?」
僧侶「……ッ ひ、酷く……禍々しい、気を……感じます……!」
僧侶「な……な、んなんですか……ッ これ……!?」
勇者「僧侶……」
戦士「……ッ シッ」
魔法使い「な、何よ……ッ」
戦士「静かにしろ……ッ」

グルルル……グルルル……ッ

勇者「……ッ」
息子「……動かないで下さい!」
戦士「僧侶。大丈夫か……」
僧侶「……ッ は、はい……ッ」
僧侶「……凄い、殺気を……感じます……ッ」
魔法使い「これ……やっつけちゃって……大丈夫、なの!?」
息子「わかりません……」
魔法使い「え!?」
息子「ば……場所は聞いて知っていましたが、実際に行ったことは……!」
魔法使い(……何時の話か解らないけど、お爺様達……魔導国の人達は)
魔法使い(この群れを……片付けて……進んで……行けた……!)
勇者「…… ……シッ ……こっちへ来る……」

グルルル……グルル……ッ

戦士「……目が血走ってるな。正気を失っている……のか?」
僧侶「これだけの禍々しい気を発してるんです……」
僧侶「……それに、これ…… ……魔気、ですよ」
魔法使い「そりゃ、魔物なんでしょう!?」
僧侶「…… ……違います。あ、いえあの狼は魔物に違い無いんですけど」
僧侶「石の……方です」
勇者「……え!?」
3751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 15:03:51.56 ID:ktOuhzjGP
息子「魔 ……なんです?」
僧侶「……要するに、魔力……ですけど……多分、これ……」
僧侶「……『人間』のじゃありません……だから……」
息子「! ……では、あの聖職者様、は……!」
戦士「……そもそも、おかしいじゃないか……ッ」
戦士「何で聖職者が……ッ『魔寄せの石』等……作るんだ!」

グルルル……ッ

魔法使い「! ……気付かれた……! く……ッ 炎…… ……ッ」

ガアアアアアアアアァ!

魔法使い(! 早い!)
僧侶「……ッ」ドシュ!
勇者「僧侶!」
息子「! ……急所、に……一発……!?」

ギャアアアアアアアアアアアアア!

戦士「……ッ 戻るぞ!大群に囲まれたら……!」
息子「だ、駄目だ!村の方へは……ッ」
魔法使い「下がって……!炎よ!」ボゥ……ッ
勇者「おい!そんな広範囲に……!」
魔法使い「弱点なんでしょ!? ……ほら、今のうちに……!!」

タタタタタ……ッ

息子「……」ハァ、ハァ
戦士「……入口付近に逆戻り……か」
勇者「追いかけては……来ない、な」フゥ
魔法使い「……当分近づかない方が良い……でしょうね」
3761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 15:21:47.04 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……ここまで、降りて来る事は無いとは思います……けど」
僧侶「暫くは……見張りを立てておいた方が、良いでしょうね」
息子「…… ……」
勇者「息子さん?」
息子「…… ……あれは……何、なんです」
僧侶「え?」
息子「……あの、化け物……!血色の瞳の……!」
僧侶「……恐らく、ですけど」
僧侶「その……石の力に惹かれて、離れるに離れられないのでしょう」
僧侶「……『魔寄せの石』とは、言い得て妙、です」
魔法使い「……確かに、結果的に村にとっては……『魔除け』になってるけどね」ハァ
戦士「……その伝説の聖職者、と言うのは……人間では無い、のか?」
戦士「昨日までは……あまり、不思議に思わなかったが……」
魔法使い「……そうね。聖職者の魔力で『魔寄せ』だなんて」
魔法使い「よく考えたら、おかしな話だわ……」
勇者「……僧侶が居なければ、俺達にだって解らなかったさ」
僧侶「……実物を見ていないので、何とも……その、言えませんけど」
僧侶「魔物達とは別の……禍々しい気を感じました」
僧侶「それが……本当にその、聖職者様の魔気だとするのなら」
僧侶「……作られた方は……人間では無い、でしょうね……」
息子「……だとすれば、やはり……壊す訳には、行かない」
勇者「だろう……な」
戦士「勇者!?」
勇者「……戦士の言う様に、今、正気を失っていて」
勇者「石を壊すことで、元に戻ったとしても、だ」
勇者「……あの数が一斉に、村に降りてきたら……!!」
戦士「…… ……ッ」
3771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 15:48:33.49 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……正気に戻る可能性は、低いと思います」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「彼らは……もう……」
勇者「…… ……駆逐するしか無い、のか」
僧侶「ですけど……それは、厳しい、でしょうね」
僧侶「それこそ、魔王を倒し……世界中から、魔と言う物を消し去ってしまう」
僧侶「……それぐらいで、無ければ」
魔法使い「…… ……」
息子「…… ……」
息子「すみません、勇者様。ご案内する等といって置きながら」
勇者「……いいえ。俺達の……力不足、です」
勇者「結局……魔王を倒すしか方法が……」
息子「昨夜、お父さんはああ言っていましたけど……」
息子「俺は……魔王を倒す、と言う事が……直接のイコールでは無くても」
息子「……平和への、近道だと思います」
勇者「近道……」
息子「……はい。鉱石の洞窟も、魔除けの石も……必要、無くなるでしょう」
息子「そうすれば……人同士の醜い争いも……!」
魔法使い「……そう、簡単に行く……かしら」
戦士「……魔法使い?」
魔法使い「結局……この世界は『支配する側』と『される側』に別れるのよ」
魔法使い「……もし、魔導国が無くなったって」
勇者「!」
魔法使い「何れ、別の物がその地位に据え置かれる事になる」
魔法使い「……程度の差はあれ……ね」
3781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 16:21:30.17 ID:ktOuhzjGP
戦士「……それでも、俺達は前に進まねばならん」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
息子「……鍛冶師様の言うとおり」
戦士「……?」
息子「魔法剣の技術等……失われてしまって良い、ものなのかもしれません」
息子「こんな物があるから……ッ 『力』に。『権力』等に……ッ」
勇者「だけど、貴方達のその……技術が無ければ」
勇者「……前勇者も、俺も。此処まで来られなかった」
僧侶「『生きる』と言うのは、それだけで……欲深い物なのかもしれません」
勇者「だからといって、欲する事をやめてしまえば、それこそ……」
勇者「魔王に……世界は、滅ぼされてしまう」
息子「…… ……」
息子「……村に、戻ります」
僧侶「息子さん……」
息子「…… ……」クルッスタスタスタ
戦士「……行くぞ、勇者」
勇者「……ああ」
魔法使い「私達は、私達に出来る事をすれば良い」
魔法使い「……私達にしか出来ない事を、優先して……すれば良いのよ!」
僧侶「私達にしか出来ない事って……なんでしょう、ね」
勇者「さしあたっては……『魔王を倒す』事だ」
勇者「……息子さんも言っていたとおり、イコール平和に直結しなくても」
勇者「近道にはなる。 ……否、それ無くしては、平和など遠い筈だ!」
魔法使い「……そう、ね」
戦士「僧侶。小屋への道は……」
僧侶「先の十字路を左の方へ……川沿いを通って、北の街の方へ続くはずです」
勇者「…… ……」
魔法使い「……小屋へ着いたら、ちょっと話を整理しましょう」
戦士「今の所……着いてきている者は居ない様だ……な」
僧侶「……なるべく気配を探りながら歩きます」
勇者「無理はするなよ……魔導国の奴ら、直接手は出しては来ないだろうし」
魔法使い「…… ……」
3791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 16:57:17.89 ID:ktOuhzjGP
僧侶「近くはありませんけど……遠くもありません」
僧侶「今日は……小屋で、休みましょう。何も無いですけど」
戦士「待て、僧侶……俺の後ろに」
僧侶「あ、はい……」
勇者「先に行け、魔法使い……一番最後は、俺が歩く」
魔法使い「…… ……ええ」

スタスタ…… ……

僧侶「あの……戦士さん」
戦士「何だ?」
僧侶「……ありがとうございました」
戦士「?」
僧侶「昨日……司書さんとお話ししている時に……」
戦士「……何か、したか」
僧侶「今日、も……その。神父様の、事……聞いて下さって」
戦士「…… ……」
僧侶「……あ、あの……?」
戦士「何故だろうな。聞いておかなければ行けない気がしたんだ」
僧侶「え……」
戦士「……自分でも良く解らない。正直、情報が多すぎて」
僧侶「……そう、ですね」
僧侶「世界を知りたいと思っておきながら……振り回されています」
戦士「…… ……」
僧侶「見失ってはいけないと思えば思う程」
僧侶「……するりと、指先から逃げていってしまう様です」
戦士「『後手後手』……か」
魔法使い「……お爺様の考えは、解る様で解らない」
魔法使い「読まれている様でもあるし、これが必然である様な気にもなる」
勇者「……真実は……何処にあるんだろうな」
勇者「俺達は……本当に、ちゃんと…… ……」
勇者「正しい選択を……繰り返してきてる……んだろうか」
勇者「……世界を、救う為の道を、歩いているんだろうか」
380名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 17:08:55.96 ID:djEsv/WUi
今日は更新たくさんで嬉しいが、無理すんなよ

昨日はスコーンありがとうございました
嬉しくてチョットづつ食べてたのに食べ切ってもた…
お話の続きとスコーンのおかわりのと幼女くれさい(`・ω・´)キリッ
3811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 17:13:06.15 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……信じることを放棄してしまえば、それこそ……全て」
僧侶「……終わってしまいます、よ」
戦士「信じる……か」フゥ
勇者「何を信じるか解らなければ、自分を信じれば良い」
勇者「……今の俺達には……それしか無いんだろう」
魔法使い「自分を……か……」
僧侶「あ……あれです!」
魔法使い「……綺麗ね。それに……随分、風が気持ちいい」
勇者「結構歩いた……な。お言葉に甘えて、少し休もう」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士さん?」
戦士「あ…… ……すまん」スタスタ
戦士(何だ……? 随分と……懐かしい様な)

キィ、パタン

魔法使い「日暮れまでにはもう少しあるけど……今日はもう、休みましょう」
戦士「……そう、だな」
勇者「早く出発したい気持ちは……解るよ、戦士」
戦士「否……大丈夫だ。俺は……親父も、国王も信じている」
僧侶「……港街への攻撃、ですか……」
魔法使い「北の街へ行って、すぐに船が借りられたとしても」
魔法使い「……始まりの国までは随分掛かるわ」
戦士「魔導国、の間違いじゃ無いのか」
魔法使い「まさか……本当に言いなりに、直接魔導国に行くつもり?」
勇者「え?」
魔法使い「……此処まで後手後手に回るのが必然でも偶然でも何でも良いけど」
魔法使い「始まりの国には寄るべきよ」
魔法使い「…… ……それも手のひらの上、な気がしてしゃくだけどね」
僧侶「そうですね……『港街の勇者様』が『少年』であり」
僧侶「……本当に剣士さんであるのなら、国王様に確かめてみる、べきです」
3821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 17:14:09.20 ID:ktOuhzjGP
>>380
大丈夫だよー!ありがとうー!
スコーンはともかく、幼女はやらん!www
3831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 17:36:36.56 ID:ktOuhzjGP
勇者「しかし……ご存じなのだろうか……」
戦士「……そればっかりは、わからんな」
僧侶「私も……昔港街と魔導国で何らかの確執があったのだとしか」
僧侶「……解らないんです」
魔法使い「それは一端置いておきましょう?解ることから整理すべきよ」
魔法使い「でないと、本当に見失うわ」
勇者「……しかし『港街』に『鍛冶師の村』に……『魔導国』の『勇者様』か」ハァ
戦士「『真の勇者』はお前しか居ない……勇者」
僧侶「そうです。 ……確かに、少年さん、と言う人も」
僧侶「鍛冶師の村の人々にとっての鍛冶師様も勇者には違い無いんでしょうけど……」
魔法使い「『英雄』には間違いないものね…… ……あら?」
勇者「どうした?」
魔法使い「……港街と、始まりの国を作ったのは盗賊様……よね?」
戦士「あ、ああ……それは間違い無い」
僧侶「作るきっかけになったのが……『確執』ですよね」
魔法使い「内容は置いておいてってば」
魔法使い「……さっき、私達は『港街の勇者様』は『盗賊様』だろうって」
魔法使い「話してたわよね……貢献者には間違い無い物」
僧侶「!」
魔法使い「……まだよ、僧侶。少しずつ…… ……!」
勇者「な、何だよ……」
魔法使い「でも、実際は……誰だったの」
戦士「……『少年』と言う……紫の瞳の男だ」
勇者「剣士と同一人物かもしれない、と言われてる……んだよな」
僧侶「そして、剣士さんの見目は変わられていない」
僧侶「もし、盗賊様達がお若い時代から生きていらっしゃるのだとすれば」
僧侶「確実に……人ではありません」
魔法使い「……それに、よ。もう気づいてるわよね、僧侶?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「何だ。解る様に話せ……」
僧侶「……『少年』が『港街の勇者』であるなら」
僧侶「盗賊様の……お知り合いと言う事になります……よ、ね?」
勇者「! ……あ……ッ」
戦士「!」
魔法使い「しかも、味方と言う事になるわよ」
魔法使い「どんな確執だか解らないけど」
魔法使い「……言葉の意味は、良い物を表す物じゃ無い!」
3841 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 17:47:37.02 ID:ktOuhzjGP
戦士「待て! ……だったら、剣士が『魔導国の勇者』と言う事自体」
戦士「どう考えたって成り立たないぞ!?」
僧侶「…… ……では……どこかで……誰かが……」
僧侶「『大いなる勘違い』をしていると言う事になります」
勇者「……大いなる勘違い?」
僧侶「だって、何もイコールでは結べませんよ!?」
魔法使い「……お爺様達が、利用されているのか」
魔法使い「盗賊様達が……ずっと、利用されてきた、のか……!」
戦士「気が長いにも程がある!そんな馬鹿な……!」
僧侶「……でも……ッ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者?」
勇者「…… ……鉱石の洞窟を、狙ってた、んだよな?」
戦士「……? ……その話は今は関係ないだろう?」
魔法使い「待って……!」
勇者「あれは……鍛冶師様が、光の剣の修理に使った」
勇者「罠か、フェイクか解らんが……意味の無い物を狙うとも思えない……」ブツブツ
戦士「おい、勇者?」
勇者「……魔導国は、鍛冶師の村に……技術を要求した」
魔法使い「魔寄せの石……聖職者様の秘密を守る変わりに」
魔法使い「それに……石も持ち帰ってる」
勇者「それはちょっと置いておいて……」
戦士「お、おい……解る様に話してくれ!」
勇者「……『失われて行く技術』だと鍛冶師様は仰っていた」
勇者「何より、この光の剣はぼろぼろだ。この侭では魔王を倒す事はできない」
勇者「……だが、魔導国がその技術を得たとすれば?」
戦士「! 無理だ!お爺様でも、無理だった物を……!」
魔法使い「……持ち帰った石、だけど」
勇者「魔法使い、だから、それは……」
魔法使い「違うわよ! ……その『技術』に生かす為だとすれば!?」
勇者「!」
3851 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 17:56:11.44 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……で、でも……あれは、魔の気です!」
僧侶「もし、あの力を取り出そうとしたって……!」
戦士「……剣士がいる」
魔法使い「あいつが、人間で無いとすれば……」
勇者「違う!」ハッ
僧侶「え?」
勇者「あいつは、魔族だろう!? ……いや、多分、だけど……」
勇者「……魔導国は、魔族を味方につけて、何をする気だ……!」
僧侶「!!」
戦士「まさか……!魔王に、与するつもり……か!?」
魔法使い「……勇者を、捕らえるつもりで……戻れ、と……!?」
魔法使い「そんな……!」
僧侶「……辻褄は、あいますよ……人の知……『失われていく技術』を得て」
僧侶「現存する魔法剣……光の剣を、手に……」
戦士「……『魔導国の勇者』に、魔王への貢ぎ物として持たせる……」
勇者「な……ッ」
魔法使い「じょ……ッ 冗談じゃないわ!」
魔法使い「だったら、何故私達は旅立ったの!」
魔法使い「勇者は『光に選ばれた勇者』なんでしょう!?」
僧侶「……全ての話に魔導国が出て来るんです」
僧侶「そして、その話の先は……必ず、魔導国に帰結する」
魔法使い「…… ……ッ ち、違うわ!」
魔法使い「だって、お爺様達は……私に、勇者様の目に留まる様に、って……!」
戦士「……それも、だ。封鎖した国へ入る為の手段……なら?」
魔法使い「そ…… ……ん、な……ッ」
勇者「……確かに、辻褄が合う様に思える……けど」
魔法使い「……え?」
勇者「さっきの仮説がおかしくなってくるぞ」
僧侶「……あ……そうか……少年さんと、盗賊様の関係……」
3861 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 18:00:23.37 ID:ktOuhzjGP
戦士「……堂々巡りだ。全てが繋がらない以上……それは真実とは呼べん」
魔法使い「そ……そうよ……そう……よ、ね……」
勇者「『大いなる勘違い』……か」
勇者(何を勘違いしてる……?)
勇者(俺は……選択を誤る訳には……!!)
僧侶「……ッ」ハッ
戦士「どうした?」
僧侶「何か……」
魔法使い「え?」
僧侶「…… ……何かが、来ます!」
勇者「!?」
僧侶(私……この気配を知っている……!?)
僧侶(でも…… これ、は……ッ)
戦士「……ッ」ガバッ
魔法使い「待ちなさい、戦士!一人で出たら、危ない……!」タタタ
勇者「おい、お前ら……!」
僧侶「勇者様、待って…… ……!」

バタン!

戦士「……? ……何も、見えない……が」
魔法使い「いつの間にか……真っ暗、ね……外」
僧侶「こ、の……気配、は……!!」
勇者「! ……居るのか!?魔法使い、僧侶……下がって……!」

バサバサバサバサ……ッ
3871 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/01(日) 18:03:01.19 ID:ktOuhzjGP
お風呂とご飯!
多分、またあしたー!
388名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 18:22:41.20 ID:4giitlZy0
乙!
今週末はいっぱい楽しめたよBBA
389名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 19:01:55.26 ID:djEsv/WUi


突然ですまないが誰かまとめのURLを貼ってくれないか?
拒否権からループまでは残ってるけど紫魔王からの過去ログ消しちまったorz

できれば名無しのレスも入ってる所が良いんだが(絵師の絵がみたい!)
無論マナー違反になるなら取り下げる
長文失礼しますた
390名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 19:23:07.30 ID:tfanVltX0
まとめは知らん
魔王「私が勇者になる……だと?」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1364816859/
ここからログたどれん?

1乙ー
391名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 19:48:25.99 ID:GRbdm/rzP
http://log.shipweb.jp/
ここで探せない?
392名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 19:48:29.30 ID:djEsv/WUi
>>390
ありがとうございました
…が、サーバーから消えちまったらしい

わざわざ貼ってもらったのにすまないm(_ _)m
393名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 19:53:49.36 ID:djEsv/WUi
>>391
ありがとうございました
地道に探してみます

お邪魔しますた(・ω・)ノ
394名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 20:22:10.52 ID:RpBunEdI0
自分も過去ログ読みたいときもあるし、漁ってみた

魔王「私が勇者になる……だと?」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1364816859/

魔王「私が勇者になる……だと?」 【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1366599266/

魔王「私が勇者になる……だと?」 【3】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1370104139/

勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1372895662/

勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【2】
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1375328067/

で、現スレか
その前のは読まなくても、追い付けそうだしね
chromeのログ速の拡張機能はおすすめ

自分用メモがわりにすまそ

今日いっぱい更新したから、スコーンも魔力消費したんじゃねーか?
つ 癒しの魔石
395名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 20:40:41.42 ID:djEsv/WUi
>>394
おお、貴方が神か……

ありがとうございました(*´∀`)ノシ
396名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 20:57:08.12 ID:RtErNnWgi
ゲーム化まだ?ケイオスリング思い出した
397名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 21:05:18.16 ID:NoUdifL6P
本当だ、まとめ見当たらない……
漫画の人もすごい量だったのにもったいない
398名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 21:35:52.48 ID:8rhR2uOO0
そういえばここのところの回想では息子が光、娘が闇だけど「俺は…魔王を倒す!」では娘が光、息子が闇だった気がする
地味に重要?
399名も無き被検体774号+:2013/09/01(日) 23:39:32.14 ID:6eKNGLPwi
魔王「私が勇者になる…だと⁈」http://chomosoku.net/archives/27621700.html

は見つけたよー。
遅かったらごめんね。
4001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 09:27:52.96 ID:mHiDyfm4P
おはよー!

癒やしの魔石、マジでほっしいwww
ありがとー!

゚・*:.。..。.:*・゜ヽ( ´∀`)人(´∀` )ノ・゜゚・*:.。..。.:* パァア

お迎えまで!
4011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 10:02:04.71 ID:mHiDyfm4P
勇者「! ……何の、音……ッ」

フッ

魔法使い「……?」
魔法使い(影……月が、雲に隠れた…… の……)スッ
魔法使い「! ……ッ 翼……ッ ……!?」
戦士「上か……ッ」バッ
僧侶(……ッ 影になって、顔が見えない……、けど、この……気配、は!!)

バサバサ…… ……バサ……ッ

魔導将軍「…… ……」

勇者「魔…… 物……ッ !?」
魔導将軍「あら厭だ!あんなのと一緒にしないでくれるぅ?」
魔法使い「そ……ッ そんな真っ赤な翼で、空飛んで何言ってるのよ!?」
戦士「…… ……此処は、もう……魔除け……否」
戦士「魔寄せの石の効力から外れるのか……?」グッ シャキン!
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶!弓を…… ……僧侶!?」
魔導将軍「ああ、インキュバスの魔石ね……残念だけど」
魔導将軍「私には効かないなぁ……」
魔法使い「……ッ 炎よ!」ボゥッ
僧侶「あ……ッ 待って、魔法使いさん……ッ」

ボボォ……ッ

魔導将軍「手荒い歓迎ねぇ……まあ、そうで無くっちゃ、ね……っと」スッ

シュゥウ……

勇者「!」
戦士「炎が……ッ!?」
魔法使い「……ッそんな!? 消え、た……ッ」
魔法使い(手をかざすだけで……あっさり……と……!?)
4021 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 10:21:23.38 ID:mHiDyfm4P
魔導将軍「はいはい、物騒な物しまってね、別に攻撃する気ないから」
戦士「お前……何者だ?」グッ
魔法使い「そ、んな言葉……信じられると思う……の……?」
魔導将軍「あらあら……余裕ないなぁ」
僧侶「…… ……貴女、は……」
魔導将軍「うん、僧侶ちゃんには隠せないよねぇ」
勇者「……僧侶 ……?」チラ
僧侶「…… ……」
魔法使い「……何で、名前まで」
魔導将軍「戦士君に魔法使いちゃんも落ち着いて、ね?」
戦士「…… ……」
魔導将軍「さて…… ……勇者君?」
勇者「……僧侶、こいつは……誰だ?」
勇者「何故……皆の事まで……!」
戦士「僧侶!」
魔導将軍「もう……人の話を聞かない……」
僧侶「皆、始まりの国で会っています……よ」
勇者「……始まりの、国!?」
戦士「何を言ってるんだ!あの国に魔族なんて……!」
魔法使い「そうよ!僧侶、貴女……!!」
僧侶「お久しぶりです、事務員さん」
勇者「じ……」
魔法使い「事務員!?」
戦士「…… ……な、ん……ッ!?」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「……どうして解った、て聞くのは愚問かしら?」
魔導将軍「でも……あの時私は完璧に魔族の力を封印してたはず、なんだけどな」
僧侶「……魔力、は関係ありません。事務員さんと貴女が同じ、と……」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「『感じた』……のね。流石……エルフの娘、ね」
勇者「!」
戦士「…… ……」
魔法使い「……どうして」
僧侶「驚いているんですよ?私……まさか、って」
僧侶「……まさか、魔族だったなんて……!!」
魔導将軍「うん、そうね……心臓、ばくばく言ってるモンね」
僧侶「!!」
戦士「僧侶……俺の後ろへ」ス……
4031 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 10:22:35.56 ID:mHiDyfm4P
おーむーかーえー!

お昼食べたら又きますー!
来れたら、やけどorz
404名も無き被検体774号+:2013/09/02(月) 11:28:28.21 ID:EvjwIoYE0
相変わらず良いところで
405名も無き被検体774号+:2013/09/02(月) 12:17:12.50 ID:RDING8X9i
焦らし上手のいけずぅ〜

でも待ってる
4061 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 15:04:07.55 ID:mHiDyfm4P
僧侶(……心臓が飛び出しそう。これほど……強い、力……)
魔法使い(殺気は感じない……のに、何、この……圧倒される、力は……ッ)
戦士(肌を刺すぴりぴりしたこの力……隙が、ない)
勇者(これが…事務員!? そして、魔族……)
勇者「魔王の……手下……か」
魔導将軍「せめて『仲間』って言ってくれないかなぁ……」ハァ
戦士「何が……目的で、あの国に姿を現した」
魔導将軍「んー……まあ、老婆心かなぁ」
魔法使い「な……ッ 何言ってんのよ!魔王の手下の癖に……!」
魔導将軍「だーかーらー……仲間、だってば」
僧侶「……勇者様に着いていくだろう者を、探っていたんですか?」
僧侶「そうまで……そうまでして……!」
魔導将軍「まあ、そりゃ否定しないけど……でも、そこから続くだろう言葉はね」
魔導将軍「多分……『貴方達の大いなる勘違い』」
僧侶「!」
戦士「……聞いてた、のか!?」
魔法使い「……ッ う、そ……でしょ……あの距離、で……!?」
勇者「ふ……ッ ふざけるな!何が目的だ……ッ!!」
勇者「俺達は……むざむざと、やられはしない……ッ」グッ
魔導将軍「落ち着きなさい、勇者君。貴方は『勇者』なのよ?」
魔導将軍「『光に導かれし運命の子』……その君が取り乱してどうするの」
魔導将軍「……危害を加える気は、無いって、言ったでしょ?」
4071 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 15:49:51.75 ID:mHiDyfm4P
勇者「そん……ッ そんなもの……ッ信じられる……か!」
戦士(……勇者、足が震えている)
戦士(当然……か。魔力のなんたるかも解らん俺でさえ……)
戦士(……肌に、ピリピリと何かが、突き刺さるのが、解る)
僧侶「……では、何故、貴女は此処に……こうして、居るのですか」
僧侶「確かに、殺気は感じません……ですが……!!」
魔導将軍「流石ね、僧侶ちゃん……」
魔導将軍「……さっきの言葉の続き……ね?」
魔導将軍「『そうまでして、世界を滅ぼしたいのか』」
魔導将軍「……って、言いたかった、のよね?」
僧侶「…… ……」
魔法使い(こんな、圧倒的な力の差で!? ……私も、こいつも)
魔法使い(……同じ、炎の加護。なのに……!! こんなにも……!!)
魔法使い「な……んでよ……!!何で、そこまでして……!!」
魔法使い「……世界を滅ぼして、どうしようって言うの!」
勇者「魔法使い!」
魔導将軍「だから、さぁ……それは、貴方達の……ああ、違うな」
魔導将軍「『人間の、大いなる勘違い』」
勇者「……え?」
4081 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 16:29:34.66 ID:mHiDyfm4P
魔導将軍「……魔王はね、一言も言ってないわよ、そんな事」
魔導将軍「勿論……信じられないだろうけどね」
魔導将軍「魔王は……この世界を守ろうとしてるのよ」
勇者「…… ……な、ん……だと?」
魔導将軍「……だから、君は」
魔導将軍「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
戦士「!?」
魔法使い「……な、何……馬鹿な事言ってるのよ!?」
魔法使い「アンタ……魔王の手下……ッ」
魔導将軍「な・か・ま!」
魔法使い「…… ……」
僧侶「……貴女は、それを……伝える為に、来た、のですか」
魔導将軍「あら。僧侶ちゃんは信じてくれるの?」
僧侶「…… い……いえ……その……」
魔導将軍「そうね。嘘は吐けないわよね……だって、貴女にはエルフの血が流れてる」
僧侶「!!」
魔導将軍「今じゃ無くて良い。北の塔に行きなさい、僧侶ちゃん」バサッ
僧侶「え…… ……」
戦士「ま……待て!」
魔導将軍「御免ねぇ、戦士君。ゆっくりしたいのは山々なんだけど」
魔導将軍「……『時間が無い』の」
勇者「…… ……時間が、無い?」
魔導将軍「……よく考えなさい、『勇者』」
魔導将軍「『世界を滅ぼそうとしているのは、誰?』」
勇者「!」
魔法使い「惑わされないで!勇者! ……魔王が、世界を守るだなんて……!」
4091 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/02(月) 17:46:30.27 ID:mHiDyfm4P
ちょっとばたばたやりながらだと時間が無くなったorz
又明日……
410名も無き被検体774号+:2013/09/02(月) 23:58:52.31 ID:RDING8X9i


>>1と幼女が良い夢をみれますように
   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚
4111 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 09:23:59.86 ID:QAkpRo5dP
おはよう!
おむかえまで!
4121 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 10:09:39.91 ID:QAkpRo5dP
戦士「……そうだ。それに……言っている事がおかしいだろう!」
戦士「『魔王が世界を守ろうとしている』のなら」
戦士「何故、『勇者が魔王を倒す』必要があるんだ!」
勇者「……ッ」ハッ
勇者「お前……始まりの国で、俺が登録所に行った時に……」
魔導将軍「ん?」バッサバッサ
勇者「……俺に、言ったな」
勇者「『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』……」
魔法使い「……え?」
僧侶「あ……ッ」
戦士「?」
勇者「……俺は、母さんから聞いて知っていた」
勇者「だが、何故お前が……ッ 魔族のお前が!」
勇者「『勇者』は世界に一人しか存在しない事を……知っているんだ!?」
魔導将軍「……僧侶ちゃんや、戦士君。魔法使いちゃんは……」
魔導将軍「どうして、それを知ったの?」
勇者「……仲間だからだ。俺が話したからだ! ……お前、まさか、母さんを……!?」
戦士「!!」
魔導将軍「……同じよ?」

バッサバッサ……

魔法使い「ま……待ちなさい!」
戦士「やめろ……ッ 追える相手じゃない……!」
僧侶「同じ……?」
勇者「……ッ 待て、魔族……ッ」
魔導将軍「……大きくなったね、勇者君」
勇者「……!?」
魔導将軍「ここから、ずっと北。最果ての街のさらに奥、最果ての城。魔王様の居場所」
魔導将軍「……また、後でね?」
4131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 10:42:09.43 ID:QAkpRo5dP
戦士「…… ……」
魔導将軍「ああ、そうそう。私は魔導将軍、よ?」
魔導将軍「覚えておいて……ああ、急がなくっちゃ」

バサバサバサバサ……

勇者「……魔導、将軍……」
勇者(同じ、と言った……!? それは……)
勇者(『仲間』……である、魔王から聞いた? 否……ッ)
勇者(……同じ。母さんから聞いたと言う事か!?)
勇者(母さん……!!)
戦士「…… ……」
戦士(『老婆心』だと!?)
戦士(……もし、『剣士』が『少年』だとしたら)
戦士(『魔導将軍』……と、言ったか)
戦士(あいつも……お祖母様やお爺様を……知ってる、のか!?)
魔法使い「…… ……」
魔法使い(……『魔物』と『魔族』は違う……!?)
魔法使い(何にせよ、『魔寄せの石』は……『インキュバス』と言ってた。誰……!?)
魔法使い(同じ炎の加護……だろうに、圧倒的な力の差……!!)
魔法使い(魔族って……何? お爺様達は、あんな者に……!?)
僧侶(……やはり、エルフは嘘を吐けない……?)
僧侶(どうして、知っているの……真実、なの?)
僧侶(それに……北の塔? ……何故……そんな場所に……?)
僧侶(見抜かれていた。警戒していなかったとは、言え……!!)
4141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 11:10:58.27 ID:QAkpRo5dP
勇者「…… ……僧侶」
僧侶「は、はい……?」
勇者「確か、何だな?」
僧侶「え……?」
魔法使い「事務員が、魔導将軍だった……って事、よね」
戦士「……中に入ろう。いくら魔寄せの石の効果だあっても」
戦士「この暗い中、襲われたら……」
勇者「……そう、だな」
僧侶「裏に、薪が……残っていれば、ですけど……あります」
僧侶「魔法使いさん、火を」
魔法使い「……ああ、そうね。この辺の魔物は、火に弱い、んだっけ」
戦士「俺が見てくる」
僧侶「あ……私も行きます……!」

タタタ……

魔法使い「…… ……」
勇者「大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否」
魔法使い(暗くて見えないのが幸いね……多分、私……酷い顔してる)
魔法使い(否……私だけじゃ無いわね。勇者も……多分、戦士も、僧侶も……)
魔法使い「……大丈夫、とは言えないわ。でも……ッ」
勇者「…… ……そうだな。落ち込んでても何も進まない」
魔法使い「どうするの」
勇者「……朝になったら北の街へ出発する」
勇者「それまでに出来るだけ、情報を整理しておこう」
魔法使い「……船を手に入れたら……始まりの国、ね」
4151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 11:42:01.88 ID:QAkpRo5dP
勇者「…… ……魔導国、も気になる……が……」
魔法使い「国王様も、騎士団長様もいらっしゃる」
魔法使い「……大丈夫だと思いたい、けど……」
勇者「世の中に『絶対』は無い……これも……母さんの言葉、だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……遅いな、二人とも」
魔法使い「僧侶が此処を離れたの、随分前なんでしょう?」
魔法使い「無理も無いわよ……でも、安全の為には火を…… ……あ!」
勇者「え?」
魔法使い(……出来る、かしら。作れはしても……)
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い(使い方が解らない……!いえ、でも……!)
魔法使い「…… ……炎、よ!」グッ
勇者「お、おい!?」

ポトン……コロコロ……

魔法使い「……炎よ!」ボォ……コロン
勇者「……魔石、か……」
魔法使い「ええと…… ……」ヒョイ、グッ
魔法使い(逆に考えれば良いのよ……少しずつ……燃える、様に……!)

ポゥ…… ……

勇者「…… ……すげぇ」
魔法使い「こ……これで、少し……は……」フラッ
勇者「魔法使い!」ギュッ
4161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 11:48:45.90 ID:QAkpRo5dP
魔法使い「……ご、ご免なさい!」
勇者「大丈夫か!?」
魔法使い「少し、眩暈がしただけよ……平気」
勇者「掴まってろ……先に中に入ろう」
魔法使い「……すぐ傍に居るでしょう、大丈夫」
勇者「二人か? ……かといって大声で呼ぶ訳にも……」

スタスタ……

僧侶「ご免なさい、勇者様…… ……魔法使いさん!?」
戦士「薪は使い物に……どうしたッ ……?」
僧侶「炎……どうして……」
魔法使い「……兄君と魔導師君に感謝、ね」フゥ
僧侶「魔石! ……無茶を……ッ」パァッ
戦士「大丈夫か……?」
魔法使い「平気……ありがとう、僧侶」
僧侶「……真っ青です、魔法使いさん」
勇者「俺達もだが……緊張もあっただろう」
勇者「……魔法使いと同じ、炎の加護を持つ……魔族だ」
戦士「……魔導将軍」グッ
僧侶「とにかく中へ!」
魔法使い「……朝までは到底持たないわ。又、作らないと……」
僧侶「そんなの後です!」
4171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 12:11:06.48 ID:QAkpRo5dP
おひるごはーん!
418名も無き被検体774号+:2013/09/03(火) 12:42:14.68 ID:Bf6H1FbfO
乙!
4191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 13:43:46.54 ID:QAkpRo5dP
キィ、パタン

僧侶「勇者様、魔法使いさんを座らせてあげて下さい!」
勇者「あ、ああ……」
魔法使い「大袈裟ね……大丈夫だってば……」フゥ
戦士「……魔石を、どうしたって?」
魔法使い「話して理解出来るの、アンタ……」
戦士「……失礼だな」ムッ
勇者「こらこら……とにかく、話を整理しようってば」
僧侶「そもそも、その予定……だったんです、しね」
魔法使い「……『大いなる勘違い』ね」
勇者「俺達の……否、人間の、とも……言ってたな」
僧侶「信じるとすれば……ですけど」
戦士「お前はどうなんだ、僧侶」
僧侶「…… ……」
戦士「さっき、裏庭でも聞いた……が」
勇者「薪を探している時、か」
僧侶「……はい。戦士さんは……」
戦士「魔導将軍は、信じてくれるのか、と問い」
戦士「僧侶は言葉を濁した」
戦士「……そして『嘘は吐けないよね』……と、言ったから」
魔法使い「……僧侶だって、わかんない、わよね」
僧侶「……はい。あの時、一瞬……心を読まれたのかと思ったのですが」
僧侶「もし、『エルフは嘘を吐けない』と言う真実を知っていたのなら」
僧侶「……否、真実かどうかも、わからないですけど……」
勇者「あんな混乱の中じゃ、言い淀んでも仕方無いよな」
僧侶「司書さんにあの本を見せて貰ってなかったら……」
僧侶「……いえ、それも関係無いですね」
4201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 13:50:38.14 ID:QAkpRo5dP
おーむーかーえー……
時間なくなっちゃったorz
4211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/03(火) 17:49:50.74 ID:QAkpRo5dP
僧侶「……信じる、とはとてもじゃ無いけど言えません。でも……」
戦士「信じられないとも言い切れない、んだったな」
僧侶「…… ……はい」
勇者「あいつは……魔導将軍は、確かに俺に言ったんだ」
魔法使い「……始まりの国の登録所でどうとか、言ってたわね」
勇者「ああ。『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』」
勇者「……何で、あいつがそれを知っている?」
魔法使い「まだあるわよ……戦士が、魔寄せの石の効力が、って言った時」
魔法使い「……『インキュバスの魔石ね』って」
戦士「それは……誰だ?」
魔法使い「……鍛冶師の村で聞いた話を考えると……伝説の聖職者様?」
僧侶「どうして……そんなにも、色々な事……私達の知らない事を」
僧侶「……彼女は。魔導将軍は……知っていた、のでしょうか」
勇者「……解らない。何も……俺達は……」
勇者「俺達には、知らない事が多すぎる……!」
魔法使い「……この『世界』は一体……どうなっているのかしら」フゥ
戦士「……『世界を滅ぼそうとしているのは誰?』か」
勇者「戦士は……信じる、のか?」
戦士「解らん。だが……魔王以外に、混乱を招こうとしている者が居るのは」
戦士「……事実、だ」
魔法使い「…… ……」
僧侶「やはり……始まりの国に向かう、のですよね?」
勇者「北の街で船を借りることが出来たら……だけどな」
魔法使い「『世界を救う勇者様』の協力を惜しむ可能性は低いと思うけど」
勇者「……『北の塔』か」
僧侶「魔導将軍は、今で無くても良いとは言っていましたが……」
422名も無き被検体774号+:2013/09/03(火) 20:50:07.83 ID:v87F0L8z0
来たか
4231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 09:29:14.03 ID:/1lNz7AVP
おはよう!
おむかえまでー
4241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 09:59:08.54 ID:/1lNz7AVP
戦士「……何がある、んだろうな」
僧侶「わかりません……でも」
僧侶「私が、エルフの娘であると知っていて」
僧侶「……私を、名指しして」
魔法使い「どこにあるのよ、その北の塔、とやらは……」
勇者「始まりの国と魔導国の戦争さえ、なければ……」
勇者「……船を手に入れて、行ってみよう、って言いたいところなんだけどな」
魔法使い「…… ……」ハァ
僧侶「魔法使いさん、横になって下さい……辛そうです」
魔法使い「大丈夫だって……それに、そろそろ魔石が……」
戦士「無理をするな」
魔法使い「……でも、多分もうすぐ消えちゃうわ」
僧侶「すぐ近くが森ですから……木の枝を拾ってきます」
戦士「俺が行く」
勇者「あ、じゃあ俺も……」
僧侶「勇者様は駄目ですよ……何かあったらどうするんです」
僧侶「戦士さんが一緒だったら、安心ですから」
勇者「……そうだな。解った。気をつけろよ?」
戦士「皮肉だな……その、魔寄せの石とやらに守られてる、なんてな」
魔法使い「今更ね……」
戦士「…… ……」スッ スタスタ
僧侶「じゃあ、お願いします、ね」

パタン

魔法使い「……ご免なさい」
勇者「何で謝るんだよ」
魔法使い「だって……こんな時に」
4251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 10:20:40.60 ID:/1lNz7AVP
勇者「……いくら魔除けの……ああ、魔寄せ、か」
勇者「その石があったからって、危険が無いとは言い切れない」
勇者「……フラフラになってまで、俺達を……仲間を守ってくれてるんだ」
勇者「……ありがとう、魔法使い」
勇者「ごめんな、頼りない勇者で」
魔法使い「勇者……」
勇者「……皆を、さ。導いて行かないと行けないのに」
勇者「俺は……もしかしたら、母さんがって……」
勇者「…… ……」
魔法使い「仲間、でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「頼って良いの……良いんでしょ?私も。そうして……」
勇者「…… ……そうだな」
魔法使い「勇者、始まりの国に帰って、話を聞いて」
魔法使い「……魔導国に行きましょう」
勇者「……しかし」
魔法使い「……魔王を倒すだけが、勇者、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……」
魔法使い「あれからずっと……考え込んでる顔、してる」
勇者「魔王だってずっと待ってはくれない」
魔法使い「……ええ」
勇者「確かに、魔王を倒すのが近道になるのかもしれないけど」
勇者「それでも……俺の産まれた国だ。俺の育った国だ」
勇者「……放って置けない」
魔法使い「…… ……」
勇者「始まりの国だけじゃ無い。鍛冶師の村だって……」
魔法使い「……うん」
勇者「これから行く北の街にも、何かがあるかもしれない」
魔法使い「……魔導国は、私の故郷」
魔法使い「私も、放っては置けない……!」
4261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 10:35:18.50 ID:/1lNz7AVP
魔法使い「……もし、お爺様達が、本当に……」
魔法使い「剣士を連れて、魔王に与しようって考えてるなら」
魔法使い「何としてでも止めないと……!」
勇者「……良いのか?」
魔法使い「大事だからよ。大事な……家族だから……」
勇者「…… ……辛いぞ、多分」
魔法使い「……私は、何?」
勇者「え?」
魔法使い「『勇者』の仲間よ。『勇者の直感』に、選ばれた……仲間、よ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者の役目は何?」
勇者「……魔王を、倒す事」
魔法使い「それだけ、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……『世界』を平和にする事……ッ」
魔法使い「…… ……うん」ニコ
勇者(……ッ)ドキ
勇者(暗くて、はっきりと顔が見えないけど)
勇者(…… ……何となく、解る。魔法使い、笑ってくれてる)
勇者「……壁にもたれてたら、しんどいだろう?」
魔法使い「え……まあ、でも……」
勇者「……おいで」グイッ
魔法使い「きゃッ …… ……ちょ、ちょっと、勇者!?」
勇者「これで、頭痛くないだろ」ドキドキ
魔法使い(こ、これって……膝枕……ッ)ドキドキ
魔法使い(……な、何だろう…… ……恥ずかしい、けど)
魔法使い(…… ……落ち着く)ハァ
勇者「あ、ご、御免!」
魔法使い「……ら、楽だわ!だから……! い、良い、のよ」
魔法使い「……もう、少し……この……まま、で……」
勇者「…… ……不思議、だな」
4271 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 10:43:50.37 ID:/1lNz7AVP
魔法使い「…… ……」
勇者「何か……前にも……違うな」
勇者「……初めて、の筈なのに。何回も……何て言うか……」
魔法使い「そう? ……私、逆だわ」
勇者「え?」
魔法使い「何度もやってる事なのに……まるで、はじ……め、て」
魔法使い「…… ……」スゥ
勇者「魔法使い?」
魔法使い(すぅすぅ)
勇者(寝ちゃった、か……疲れた、んだよな)
勇者(俺だけじゃ無い。魔法使いだけでもない)
勇者(……僧侶も、戦士も……)
勇者(肉体的な疲労より、精神的な方が……疲れるよな、何倍も)
勇者(…… ……魔法使い)チュッ
勇者「…… ……」
勇者(……ッ な、なななな、なにやってんだ、俺は!?)
勇者(……おでこ。おでこだ。大丈夫だ!)
魔法使い「…… ……ん」モゾ
勇者「!? …… ……」
勇者(起きて、ない…… ……大丈夫、だ)ホッ
勇者(……なんだろうな。しっくりくる)
勇者(魔法使い……)ナデ

……
………
…………
4281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 10:45:14.69 ID:/1lNz7AVP
お迎え行ってお昼ご飯!
429名も無き被検体774号+:2013/09/04(水) 10:47:30.32 ID:ga/urgk/P
幼女とBBAはどんな会話してんだろうな

いてら!
430名も無き被検体774号+:2013/09/04(水) 10:53:34.64 ID:cbuC1TqK0
いってらー

更新待ちながら、大会で魔導将軍倒すとこから領主交代あたりまでよみなおしてた
この下り好きすぎる
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1364816859/660

いまのスレ読んでると
少年の唯一の失敗は、領主の息子に権限与えたことじゃねー?とさえ思うくらい、どっぷりハマってる俺ガイル
4311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 13:53:16.07 ID:/1lNz7AVP
僧侶「……間に合いました、ね」フゥ
戦士「ぎりぎりな…… これで、どうにか……朝まで炎は持つだろう」
僧侶「交替で見張っていれば、炎も耐えません……大丈夫です」フゥ
戦士「俺が見てるから、お前も中で休め、僧侶」
戦士「……辛くなったら、勇者を呼びに行くから」ストン
僧侶「……もう少し、ここに居ても良いですか」
戦士「…… ……大丈夫か?」
僧侶「はい…… ……もう、朽ちて……しまいましたけど」
僧侶「ここに居れば……神父様が、見えます、から」
戦士「……あの小山、か」
僧侶「…… ……」
僧侶「きっと……もう、土に還っています。神の御許へ……」
僧侶「……何時か、戻って来るつもりでした」
戦士「此処へ、か?」
僧侶「はい。小さいし、何も無いけど……」
僧侶「私の『家』ですから」
戦士「…… ……」
僧侶「もし、勇者様の旅のお供が出来て、魔王を倒して……」
僧侶「そうしたら、最後は……この家で、と」
僧侶「……思っていたんです。不思議と……本当に、そうなる様な気がして」
戦士「『願えば叶う』と言うのは、そういう……気持ちなのかもしれないな」
僧侶「え?」
戦士「こうなって欲しいと思う事を、実現させる為に働かせる力」
戦士「……魔法、等では無く、様は……努力、とか」
僧侶「……そうですね。一生懸命実現させる為に、頑張るって……事」
僧侶「困難に立ち向かっていく力、くじけない気持ち……」
僧侶「そうすれば……叶う。自分の力で、叶えてみせる」
戦士「…… ……」
4321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 14:57:16.96 ID:/1lNz7AVP
僧侶「……戦士さんは、どう思いますか」
戦士「俺は、そもそも魔法の事等……良く解らん」
戦士「この小屋に着いたとき、勇者も言っていただろう」
戦士「……何を信じて良いか解らないときは、自分を信じれば良い」
僧侶「……はい」
戦士「今が正にそうだ。真実の一文字も解らん」
戦士「だが、俺達は……進まなければならん」
戦士「……何を。どれを信じれば良いのか」
戦士「真実は何処にあるのか……」
僧侶「そう……ですね。願いを叶えるにしたって」
僧侶「自分を、信じないことには……」
戦士「……エルフの話、だな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶「私に、人の子の血が入っていることは解って居ます」
僧侶「回復魔法を使えるのは……人間だけの特権」
僧侶「……世の中の摂理は、変えられません」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』か」
僧侶「……御伽噺、ですよね?司書さんに見せて貰った、あの本……」
僧侶「なのに……魔導将軍さんは、言い切った」
戦士「それは信じるに値するのか?」
僧侶「解りません……ですけど」
僧侶「……まさか、あの本を魔導将軍さんが読んだ事があるとは……思えません」
戦士「……そう、だな」
4331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 15:20:17.42 ID:/1lNz7AVP
僧侶「『世界』は……謎だらけ、ですね」
僧侶「こんなにも……何も、知らない私が」
僧侶「……『世界』を知りたい、等と思うのは」
僧侶「烏滸がましかった……のかも、知れません」
戦士「知らないから故に、欲するのだろう?」
僧侶「……戦士さん」
戦士「全てを知ってしまえば、探求心など生まれないと……俺は思う」
戦士「興味が無いとは言わんだろう?」
僧侶「え?」
戦士「……『北の塔』だ」
僧侶「そ、れは…… ……はい」
戦士「何処にあるかも解らん。何があるのかも」
戦士「……だが、お前は」
僧侶「…… ……」
戦士「何か解るかも知れないから、行ってみたいと思っている、のだろう?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「それは少なからず、魔導将軍を信じていると言う事になる」
戦士「……だが、俺もそれで良いと思う」
戦士「良く解らない。良く解らない……が」
戦士「何だろうな。酷く懐かしい気がする」
戦士「……こういうのは、なんて言う……んだろうな」
僧侶「デジャヴュ、ですか?」
戦士「で……何?」
僧侶「……初めて見る場所や、人なのに、会ったことがある様な……」
戦士「……否。違う……」
僧侶「え?」
戦士「寧ろ、逆だ」
僧侶「??」
4341 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 15:30:55.72 ID:/1lNz7AVP
戦士「……何度も、会っているはずなのに……まるで初めて会う様な」
戦士「そんな……否、錯覚だろうと、解っては居るんだが」
僧侶「……錯覚……なんでしょうか」
戦士「ん?」
僧侶「私も何度も感じてます」
僧侶「……凄く……懐かしい感じがするんです」
僧侶「でも、知らない。確かに知らないのに……」
僧侶「……悲しくて、寂しくて……苦しくて」
戦士「嬉しい?」
僧侶「…… ……」
僧侶「……ジャメヴュ、って言うんだそうです」
戦士「…… ……発音も出来ん」
僧侶「……」クスクス
戦士「さっきの、デ、何とかと言い、それと良い……何なんだ」
僧侶「既視感と未視感です……私達は確かに」
僧侶「始まりの国で初めて会った筈……否」
僧侶「私と魔法使いさんは、港街で、戦士さんと彼女は始まりの国で」
僧侶「もう少し前に、会ってます、けど」
僧侶「……こうして、勇者様と一緒に」
僧侶「何度も……旅をしていた様な気も、するんです」
戦士「それがその、でじゃぶ、か」
僧侶「……はい。でも……言われる迄気がつきませんでしたけど」
僧侶「確かに、逆なんですよね」
僧侶「……知っている筈なのに、まるで……初めてみたい」
戦士「それが、じゃ……じゃめ…… ……まあ良い」
僧侶「……」クス
戦士「笑うな、と行っただろうが……」ムス
4351 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 15:44:10.74 ID:/1lNz7AVP
僧侶「ご免なさい……可愛くて、つい」クスクス
戦士「……俺の何処が可愛いんだか」フゥ
僧侶「明日……北の街に……行くんですね」
戦士「……船を手に入れれば……始まりの国へ戻るのだろう」
僧侶「……それから、魔導国、でしょうか」
戦士「勇者の事だ……そう、なるだろうな」
僧侶(魔法使いさん……)
戦士「……僧侶、信じろ」
僧侶「え?」
戦士「俺達は『仲間』だ ……大丈夫だ」
僧侶「……はい!」
戦士「何時か……」
僧侶「はい?」
戦士「……否、良い」
戦士(何時か……なんだ?僧侶と共に、北の塔に行きたい?)
戦士(……行かねば、ならん気がする。だが……何故だ?)
戦士(魔王を倒し……世界が平和になったら)
戦士(…… ……そうなったら、僧侶は此処に帰ってくるんだ)
戦士(……何だ。胸が、締め付けられる様だ)
僧侶「あの……戦士さん?」
戦士「…… ……」ジッ
僧侶「…… ……」ドキッ
戦士(懐かしい。悲しい。苦しい、切ない……嬉しい)
戦士(……初めてなのに、そうで無い様……でじゃぶ、違う)
戦士(じゃめ、ぶ?だったか……)
戦士「何度も会っているのに……」
僧侶「……戦士、さん」
4361 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 16:06:37.23 ID:/1lNz7AVP
戦士「……もう、中に入れ。風邪を引く季節では無いにしても」
戦士「夜風は……身体に良くは無いだろう」
僧侶「あ……あの……?」
戦士「勇者に伝えておいてくれ……適当に変わってくれ、と」
僧侶「は……はい」スッ

スタスタ、パタン

戦士(……何を考えて居るんだ、俺は)
戦士(あいつは……エルフ後を引いてる)
戦士(ただの人間の……俺とは、違う)

カチャ

戦士「ああ、勇者、まだもう少……し……」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶?」
僧侶「勇者様と……魔法使いさん……が……」
戦士「! ……どうした!?」
僧侶「…… ……あのッ 抱き合って……その……」
僧侶「ね、寝てる、んです……ッ」カァ
僧侶「ど、どうしましょう、戦士さん……!?」
戦士「ど……どうしましょう、ってお前……」
戦士「…… ……どう、しよう、か」

……
………
…………
4371 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 16:31:49.36 ID:/1lNz7AVP
后「……お帰り、魔導将軍」

カチャ

魔導将軍「ノックする前に気がつくとか……」ハァ
后「だって、解っちゃったんだもん」
后「……おかえりなさい、魔導将軍」
魔導将軍「ただいま……間に合った、かな」
后「あんまり……話してる時間は、無いね」
魔導将軍「そうだね。使用人に聞いた」
魔導将軍「……側近、寂しがってるだろうし。もう行くね」
后「……元気そう、だった?」
魔導将軍「うん。随分……逞しくなってたよ」
后「……そっか」
魔導将軍「もうすぐだね」
后「うん……ありがとう、魔導将軍」
魔導将軍「……伝えといたよ」
后「え?」
魔導将軍「『北の塔』」
后「貴女も、お節介だね」
魔導将軍「見て、感じて……知るよ。あの子は」
魔導将軍「じゃあ……行くね」
后「うん……後で」

パタン

后「……もう、少し」
后「ごめんね……」
后「……すぐに、行くから」

……
………
…………
4381 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:10:43.40 ID:/1lNz7AVP
魔王「……ゥ、ウ」
側近「なあ、魔王さぁ」
魔王「…… ……」
側近「俺、前から思ってたんだけど……何で、そんな苦しんでんだ?」
魔王「…… ……ァ」
側近(表情は変わらない……だけど)
魔王「……ゥ ……」
側近(声は…… ……苦しそう、なんだよな。ずっと)
魔王「…… ……ァ」
側近(これも……絶え間なくなってきた。こうやって……)
側近(……魔力を注いで、こいつの力を押しとどめるのって)
側近(本当に……正しい、のか?)
魔王「…… ……」
側近「……使用人は、魔王の身体の中に残ってる光の所為じゃないかとか」
側近「言ってた、けども、さ」ハァ
魔王「……ア……ゥ」
側近(身が、完全に闇になっていくのに……その光の残照が)
側近(……お前を、苦しめてるのか?魔王……)

コンコン、カチャ

側近「……ん?」
魔導将軍「はぁい、ダァリン」
側近「魔導将軍か……」
魔導将軍「何よぅ。もうちょっと嬉しそうな顔、してよね」
4391 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:17:47.80 ID:/1lNz7AVP
側近「これ以上無い位、嬉しいんだぜ、俺は」
魔導将軍「……今にも泣きそうな顔して、何言ってんのよ」スタスタ、ギュ
側近「……喜ばないと行けないだろ」ギュ、チュ
魔導将軍「……ん」チュ
側近「もう……良いのか」
魔導将軍「うん。僧侶ちゃんに、北の塔の事も伝えたしね」
側近「……お節介め」
魔導将軍「それ、后にも言われたな」
側近「…… ……随分、苦しそうなんだ」
魔導将軍「大丈夫だよ、魔王。私も……もう、側近と一緒に」
魔導将軍「ここに居るからね……よ、っと」
側近「……もう一回、お前を抱きたかったなぁ」
魔導将軍「まだ……やる事、残ってるでしょ」
魔導将軍「お楽しみは一番後よ、側近」
魔導将軍「…… ……」
側近「……どうした?」
魔導将軍「今更だけど、さ」
側近「ん?」
魔導将軍「魔導部隊作る迄は行かなくても、欲しかったなぁ……赤ちゃん」
側近「……御免な」
魔導将軍「責めてないわよ。お馬鹿さん。でっかい独り言よ」
側近「全くだな……」
魔導将軍「……出来ない気は、してたんだ」
側近「奇遇だな」
魔導将軍「え?」
4401 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:22:48.96 ID:/1lNz7AVP
側近「……俺もだ。何時だったか忘れたけど」
側近「そんな事、考えた事があった」
魔導将軍「…… ……」
側近「そういう……運命なんだろうなって、な」
魔導将軍「側近って、本当にロマンチストよね」
側近「……なんだよ」
魔導将軍「まだ、さ。まだ……アタシが『魔法使い』で」
魔導将軍「アンタが、『戦士』だった頃」
魔導将軍「……にも、さ。『運命』だとか言ってなかった?」
側近「仕方ネェだろ。本当にそう思ったんだから」
魔王「……ゥ、ウ」
魔導将軍「クサイよねぇ?魔王」
側近「おい……」
魔導将軍「でもね、アタシもよ、側近」
魔導将軍「何だろうな。初めて会った気が……ううん」
魔導将軍「何回も会ってるのに、初めて会った様な変な感じだったよ」
側近「……お前も充分、ロマンチストだよ」
魔導将軍「お似合いね、アタシ達……」フフ
側近「……これ、何時まで続くんだ?」
魔導将軍「……わかんないわよ」
側近「だよな」
魔導将軍「大丈夫……『今回』は」
側近「特異点、か?」
魔導将軍「……どうなるかはわかんないけど」
側近「そうか。じゃあ、『今まで』より……」
魔導将軍「そうね……きっと、近づける」
側近「断ち切れるか?」
魔導将軍「どうかしらね。でも…… ……」
4411 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:30:27.32 ID:/1lNz7AVP
魔導将軍「まだ『やる事が残ってる』わよ、側近」
魔導将軍「まだ……ぎりぎりまで……ッ」
魔王「……ウ」
側近「ああ……泣くなよ、魔導将軍」
魔王「……ゥウ」
魔導将軍「アンタもよ、ダーリン」
側近「阿呆……俺たちは……」
魔導将軍「そう……喜ばないといけない」

魔王「ゥウ、アアアアッ」

ビリ……ッ

側近「……魔王! ……糞、后は……ッ まだ、駄目だ……ッ」
魔導将軍「何の為に、アタシが此処に居ると思ってんのよ! ……ッ」

ビリビリ……ッ

魔王「あ。ァ……ッ 『だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ』」

ビリビリ……ッ

側近「!?」
魔導将軍「魔王!?」

ビリビリビリ……ッ

魔王「『……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ』」

ビリビリビリ……ッ

側近「な……ッ 喋った!? ……ま、魔導将軍、后か、使用人……!!」
魔導将軍「む……ッ 無茶言わないで、無理よ……!!」

ビリビリビリ……ッ

魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」

ビリ……ッ

側近「しっかり、しろ……魔王!!」
魔導将軍「……知る…… ……義務と、権利……ッ ウゥッ」
4421 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:38:44.72 ID:/1lNz7AVP
……ビリ…… ……

側近「…… ……な、んだ……?」
魔導将軍「……止、まった…… ……?」
側近「大丈夫か、魔導将軍……」
魔導将軍「……え、ええ……魔王?」

魔王「…… ……」

バタバタバタ……ッ

后「側近!魔導将軍!」
側近「! ……大丈夫だ。大丈夫だから、入るな!」
后「……何が、あったの」
魔導将軍「ちょっと、待って…… ……ちゃんと、話す、から……」
側近「そこに居ろよ、后……糞、勇者……ッ 早く、来いよ……ッ」
側近「……間に合ってくれよ……ッ」
魔導将軍(魔王…… ……貴方は、何を……?)

……
………
…………

僧侶「朝、ですね……」
戦士「……朝だな」フワァ
勇者「えっと、その……御免」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「余程……疲れたのですね、魔法使いさん」
勇者「や、その、な? ……壁は固いし、しんどいだろうと思ってな!?」
戦士「別に何も言ってないだろうが」
勇者「さ、さっき、僧侶に聞いたから!悪かった!戦士……ッ」
4431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:48:58.22 ID:/1lNz7AVP
戦士「まあ……仕方無いだろう。動けなかったんだろうしな」
戦士「そりゃ構わん……が」
僧侶「がっちり抱き合ってましたね……さっきまで」
勇者「あ、暖かかったから、つい……」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「……見てるこっちが恥ずかしいです」ハァ
戦士「起きるまでそうしておいてやれ……起きたら、出発しよう」
勇者「…… ……ご免なさい」
僧侶「別に勇者様が謝る事じゃないでしょう」クス
僧侶「……ぐっすり眠れた様で、安心しました」
勇者「御免……僧侶は、ちゃんと……寝れた、か?」
僧侶「大丈夫です。戦士さんが膝を貸してくれましたから」
勇者「え」
戦士「…… ……」フィッ
僧侶「ちょっと、神父様の所に行ってきますね」タタタ
勇者「……お前、随分寛大だと思ったら」
戦士「の、野宿でも無いのに、放っておく訳にいかんだろうがッ」
戦士「……そ、それにお前みたいにやましいことはしてない!」
勇者「お、俺も、な、なな、何もしてネェよ!」
魔法使い「……う、ぅん……?」モゾ
勇者「わあッ」
戦士「……何動揺してるんだ」
勇者「ち、ちが……ッ」
魔法使い「……もう、朝…… …… ……きゃあ!?勇者!?」
魔法使い「あ……ッ」カァッ
勇者「お、おはよう!魔法使い!」
魔法使い「あ、私、あのまま……!? ご、ご免なさい!」
勇者「……い、いや、大丈夫。大丈夫だから!」
勇者「そ、その……身体は……大丈夫、か?」
魔法使い「あ……え、ええ……あ、あり、がとう……」
勇者「いや……大丈夫なら、良いんだ。うん」
戦士「…… ……俺も居るんだがな」
4441 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/04(水) 17:50:27.44 ID:/1lNz7AVP
お風呂とご飯!
また明日ー!
445 忍法帖【Lv=7,xxxP】(1+0:8) :2013/09/04(水) 18:33:46.85 ID:pni6zdYAi


今回は掘り下げ深くて面白い
チョット間違い探しな所もあるがパラレルな感じで良いな

また明日、スコーン&幼女(・ω・)ノシ
446名も無き被検体774号+:2013/09/04(水) 18:45:52.58 ID:1XAOTSpE0
野郎の膝枕という駄目じゃないけど何か違う感
447名も無き被検体774号+:2013/09/04(水) 20:22:00.80 ID:f/Nbhh25i
デジャ・・・ジャデヴュ・・じゃ.@m
448名も無き被検体774号+:2013/09/04(水) 20:55:46.02 ID:m0oIHAXc0
女の子に膝枕するの結構いいですぜ?
449名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 00:35:36.27 ID:j15+4efXi
たまにこういう抑揚あると楽しくてイイや
やっぱりうまいね
4501 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 10:19:42.46 ID:3hno3GFkP
おはよう!
のんびりー
4511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 10:39:53.75 ID:3hno3GFkP
魔法使い「……あ、そ、僧侶は!?」
戦士「外だ……神父の墓の所に」ハァ
魔法使い「わ、私も挨拶してこよう!」

タタタ、バタン!

戦士「……何やってんだ、お前らは」
勇者「だから、何も無いって……」

……
………
…………

僧侶「……良し、と」
僧侶(……墓標の変わりにと……建てた木はもう朽ちてしまっていたし)
僧侶(丁度……小さな、苗を見つけたんです)
僧侶(どんな花が咲くかは、解りませんけど……)

スタスタ……

僧侶「戦士さん?」クル
魔法使い「……私よ」
僧侶「あ、ま、魔法使いさん! ……あの、大丈夫ですか?」
魔法使い「うん……なんか、ご免なさい」
4521 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 10:54:15.15 ID:3hno3GFkP
僧侶「え?」
魔法使い「……いや、その」
僧侶「体調は、良くなったのですか?」
魔法使い「え、ええ……ぐっすり……眠れたみたい」
僧侶「なら、良かった」ニコ
魔法使い「……何、してたの?」
僧侶「随分、長い事放って置いてしまったので……」
4531 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 10:55:42.61 ID:3hno3GFkP
ちょっとお買い物にいってきますー
454名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 11:22:11.51 ID:HOEle/r10
いってらー
455名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 13:31:26.37 ID:0WsWzFqFP
随分、長い事故
ってなんだろうって一瞬考えてしまったwww
4561 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 14:30:55.38 ID:3hno3GFkP
僧侶「……せめて掃除だけでも、って思ってたんですが」
魔法使い「その割りには土だらけよ、アンタ……」
僧侶「はい。丁度、蕾の出来ている小さな苗を見つけたので」
魔法使い「……ああ」
僧侶「少しでも、咲いていれば……寂しくないかなって」
僧侶「……こういうのを、自己満足って言うんでしょうね」
魔法使い「…… ……」
僧侶「私は何れ……此処へ帰って来ます」
僧侶「魔王を倒して、平和になったら」
魔法使い「……『北の塔』は良いの?」
僧侶「『今じゃ無くて良い』って、言ってました」
魔法使い「信じるの?」
僧侶「……私に、問うと言う事は、少なからず魔法使いさんも」
僧侶「信じて、いらっしゃるんでしょう?」
魔法使い「…… ……そうか。そういう事……よね」
僧侶「戦士さんに言われました」
僧侶「何を信じて良いか解らなければ……」
魔法使い「……自分を信じれば良い?」
僧侶「…… ……はい。そうですね。そもそもは、勇者様のお言葉でした」
魔法使い「随分、複雑な迷路に迷い込んだわよね、私達」
4571 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 16:24:36.52 ID:3hno3GFkP
予定外のお出かけ!
きぃ(・△・)
458名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 17:25:57.37 ID:MNIlLLsPi
いてらー
459名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 20:03:25.12 ID:VTKjz7IT0
らー。
4601@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 20:25:22.56 ID:3hno3GFkP
帰って書けたら書く!
461名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 20:36:07.85 ID:MNIlLLsPi
無理すんなよ
ここの奴らは待たされても文句なんか言わない訓練されたVIP+民だから大丈夫だ
4621@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/05(木) 20:40:35.89 ID:3hno3GFkP
ちゃうねんー私が消化不良( ゚д゚)
まあ、帰って元気やったら、の話やけども…
463名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 23:15:26.11 ID:H462FgP2i
元気出せよ…Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
464名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 23:19:21.71 ID:a+Y7gDh10
つ いやらしの魔石
465名も無き被検体774号+:2013/09/05(木) 23:44:28.89 ID:kJgb6a4Ri
>>464
インキュバスが作ったのか
466名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 00:54:54.55 ID:Pbj7rZJQ0
>>464>>465
ワロタwww
467名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 01:14:27.92 ID:88RCMLcFi
さすがに寝たか

BBAと幼女が良い夢をみれますように

   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚
4681 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 05:02:04.79 ID:gMU3kZr0P
おはよう!

いやらしの魔石www
イタダキマスwww


゚・*:.。..。.:*・゜ヽ( 。∀゜)人(゜∀。 )ノ・゜゚・*:.。..。.:* パァア
4691 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 05:15:20.78 ID:gMU3kZr0P
僧侶「出口は……いえ」
僧侶「……見つければ、良いんですよね」
魔法使い「…… ……そうね」

スタスタ

戦士「おい……良ければ出発…… ……」
戦士「……何でお前は泥だらけになってるんだ」
僧侶「あ、戦士さん……いえ、ちょっと片付けを」パサパサ
魔法使い「ほら、後ろ向いて……払うから」パンパン
僧侶「す、すみません」
勇者「戦士と地図を見てたんだが」
勇者「……北の街、とやらのすぐ傍に、大きな塔があるみたいだ」
魔法使い「勇者……」ドキ
僧侶「塔、ですか」
勇者「多分、これが『北の塔』だろうと思う」
戦士「北の街で聞いてみれば、確かなことはわかるだろう」
僧侶「そうですか……ありがとうございます」
魔法使い「とにかく、船……ね」
勇者「ああ。二人とも、大丈夫か?」
僧侶「はい。行きましょう」
魔法使い「今日の夜までには着く……かしらね」
僧侶「北の街へは私も行ったことが無いので……解らないですけど」
勇者「野宿は避けたいな。魔寄せの石の効力も」
勇者「まさか、北の街の方まで有効とは考えにくい」
戦士「……地図を見る限り最果ての地に随分近い様だしな」
勇者「ああ。無理はするなよ……辛くなったら、すぐに教えてくれ」
魔法使い「ええ」
4701 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 05:48:26.90 ID:gMU3kZr0P
僧侶「……何者、なのでしょうね」
戦士「ん?」
僧侶「魔寄せ……インキュバス、でしたっけ」
魔法使い「……魔気、だって言ってたわよね」
勇者「魔族が作った石、なのに……鍛冶師の村では」
勇者「聖職者、と言われてる、んだよな」

スタスタ……スタスタ……

僧侶「物事は全て、一面通り、では無いんですね」
僧侶「……誰が何の意図で……インキュバスと言う者がどうして」
僧侶「そんな事をしたのかは……わかりません、けど」
魔法使い「……そうよね。少なくとも、鍛冶師の村の人達は」
魔法使い「こうして、守られている。皮肉にも、ね」
戦士「そこにつけいったのが……」
勇者「…… ……」チラ
魔法使い「大丈夫よ、勇者…… ……お爺様達ね」
戦士「魔導国の奴らが発見し、持ち帰った……と言う事は」
戦士「……否、自作自演、もあり得るか」
僧侶「どうでしょうね。本当に利用しただけ、とも思えますけど」
魔法使い「インキュバスだけじゃ無いわよね。魔導将軍……」
魔法使い「魔族って、何なのかしら」
勇者「僧侶」
僧侶「はい?」
勇者「……魔気、だっけ? ……俺達の持つ魔力と、どう違う?」
僧侶「説明が難しいですね……簡単に言うと」
僧侶「『質』が違います……あ、えっと。感じた侭を言うと、ですけど」
4711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 06:12:28.70 ID:gMU3kZr0P
魔法使い「……『質』」
僧侶「はい。『魔法を使う力』と言ってしまえば、同じなんですけど」
戦士「俺は魔法が使えないから、魔力、と言う物は持っていない、んだな」
勇者「『加護』とは又別なんだな?」
僧侶「はい。話した事があるかもしれませんが」
僧侶「『加護』は命ある者が産まれて来るときに、精霊と交わす契約の様な物」
僧侶「動物にも、人にも……『命』があるものは全て、持っていますから」
魔法使い「優れた精霊と契約した者は、優れた加護を持つ……のよね」
僧侶「そうですね……まあ、便宜上そうであろうと言われているのみ……」
僧侶「……ですけど、ね」
魔法使い「『感じる力』なんて持っていない私でも……」
魔法使い「魔導将軍の、強大さは解ったわ」
魔法使い「同じ炎の加護を持っているのに……私とは」
魔法使い「……『人間』とは、随分……違った」
僧侶「『質』が違えば、確かに……強力ではあるんでしょうけど」
僧侶「なんて言えばいいのか……」
勇者「……不思議だよな。『世界』は……どうして」
勇者「種族、なんて物を作ったのか」
戦士「人間、魔族……エルフ、か」
魔法使い「不平等よね」フゥ
戦士「生きていく上では、必ず『弱肉強食』になる」
戦士「……人より顕著なのが動物達だ」
僧侶「力の差が歴然であれば、自然と……『支配する物』と『支配される物』に」
僧侶「別れてしまいますからね。でも……」
魔法使い「進化の過程、であるなら理解出来るわよ」
魔法使い「……でも、産まれ持った『質』が違うなんて言われてしまえば……」ハァ
4721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 06:18:01.54 ID:gMU3kZr0P
勇者「俺達は……それを覆さないと行けないんだな」
僧侶「……突き詰めて考えれば、どうして『魔族』なんて産まれたんだって」
僧侶「そんな話になってしまいますけど……」
僧侶「それは『私達』の主観ですよ、勇者様」
勇者「…… ……」
僧侶「『魔族』から見れば、また……違った話、なのかもしれません」
戦士「『平等』なんて絵空事だ。それこそ」
戦士「『昔々』から始まって」
戦士「『めでたしめでたし』で終わる御伽噺の世界だろう」
魔法使い「それだって悪い奴はやっつけて、そうじゃ無いのだけが」
魔法使い「幸せになりました、ってだけじゃない」
勇者「……勝った者。強かった者が……『正義』なのさ」
勇者「俺達は『人間』の為に、『魔族』……魔族の王である」
勇者「『魔王』を倒す」
僧侶「…… ……」
勇者「俺はその為に……産まれてきた『勇者』だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……魔族達からみれば、魔王こそが『勇者』なのかもしれないな」
戦士「…… ……」
勇者「『人間』の為に『力の差』……『命の差』を覆し」
勇者「『人間達の為』の『平和』を……勝ち取らないといけないんだ」
僧侶「……命の重さに、差違なんて……!」
戦士「それが『戦争』だ、僧侶」
僧侶「…… ……」
473名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 07:13:13.84 ID:SWkPALV6i
つまり火の加護を受けた野菜は魔法で料理できない・・・と
4741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 07:14:55.93 ID:gMU3kZr0P
戦士「……泣きそうな顔をするな、僧侶」
戦士「俺達が『それ』を否定したら、『見失う』」
僧侶「! …… ……はい」
勇者「だから……もう、そんな顔をしなくて良い様に」
勇者「『終わらせよう』」
魔法使い「自分達を……勇者を」
魔法使い「私達の『勇者』を信じるしかないのよ」

……
………
…………

領主「ゲホッ ……ごほ……ッ」
母親「お父様、大丈夫!?」
領主「……構わん。続けろ、父親」
父親「あ、ああ……ええと」
母親「鉱石の洞窟は無事に手に入れたのね?」
父親「そうだ。始まりの国の船団は引き上げていった……まあ、賢明な判断だろう」
父親「港街の方へも警備の兵を裂かざるを得ないだろうしな」
母親「弟王子……国王の事だわ。これ以上犠牲者が出るのも」
母親「良しとしないんでしょう」
父親「こちらの被害も……まあ、無いとは言えないが」
父親「所詮兵士だ。変わりは幾らでも居る」
母親「……魔法の鉱石、ね」
母親「採取してすぐに、あの魔寄せの石の魔力を移させましょう」
領主「……剣士は、どうしている?」
母親「相変わらず図書館に篭もりっきりよ」
領主「そうか……話したのか」
父親「まだです……が、先ほど、勇者達が北の街に着いたとの連絡がありましたよ」
領主「そうか!とうとう……か」
4751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 07:48:36.21 ID:gMU3kZr0P
母親「まだよ、お父様……多分、勇者達は始まりの国に行くでしょうね」
父親「だろうな。真っ直ぐ此処に来るとは考えられない」
領主「……む。何の為の魔法使……ッ げほ、ゴホッ ……」
母親「誰か!来て頂戴!」
領主「大丈夫だと……ッ」ゲホッ

カチャ

メイド「失礼致します」
母親「お父様を寝室へ。お薬を飲ませて頂戴」
領主「母親!儂は……!」
父親「大丈夫じゃないだろう、お父様」
父親「……まだ、元気で居て貰わないと困るんだからね」
メイド「さ……王様、行きましょう」
領主「糞……ッ」
母親「そうよ。魔法使い達が戻る迄に、体調を戻して貰わないと」

スタスタ、パタン

父親「…… ……」
母親「……長く無いでしょうね」
父親「だろうな」フゥ
母親「お父様も人が悪いわ。あんな……あんな代物を隠していただなんて」
父親「『時期を待っていた』て言葉を信じてやれよ」
母親「お兄様は信じられるの?」
父親「……強きに巻かれるのは、お父様の長所だろ」
母親「短所の間違いでしょ!」
4761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 08:38:27.34 ID:gMU3kZr0P
父親「……剣士が居る限り、この国の敗北は無いんだ」
母親「剣士の『協力』があれば、でしょ」
父親「俺とお父様を一緒にするな、母親」
母親「死ねば……自分が王になるからって」
母親「頭をすげ替えた位じゃ、何も変わらないわよ」
父親「なら何故、あいつは文句もいわず此処に居る?」
母親「勇者と一緒に魔王を倒したいから、って言いたいんでしょうけど」
母親「……勇者は間違い無く、始まりの国の肩を持つわよ」
母親「どうするつもりよ……王子の息子も居るって言うのに」
父親「……お父様の功績は、あの魔石だろう?」
父親「まあ、見ておけ。俺にもちゃんと、考えがある」
母親「……信じるわよ、お兄様」
父親「勿論だ。俺は…… ……お父様とは違う」

……
………
…………
4771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 09:01:26.34 ID:gMU3kZr0P
はたらいてきまっす
478名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 09:26:46.29 ID:265lB5MGP
いってら!
479名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 20:24:19.22 ID:VxruIbsB0
wktk
4801@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/06(金) 20:41:23.84 ID:gMU3kZr0P
帰って幼女寝かして
私が寝かしつけられなかったら頑張る!
481名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 20:48:59.63 ID:88RCMLcFi
お疲れ〜
何度も言うが無理の無いペースで良いぞ
幼女の為にも(・ω・)
482名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 20:49:31.85 ID:265lB5MGP
幼女の睡眠の巻き込み力は異常
483名も無き被検体774号+:2013/09/06(金) 22:35:11.64 ID:X0pNMIj90
寝かしつけるつもりが先に寝てしまうこともあるしなw
無理すんなよおやすみ〜
484名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 00:16:34.37 ID:TDZ5fPFoi
マ・キ・コ・マ・レ・タ・カwwww

良い夢ミロよ…

   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚幼女の健やかな成長を祈る
4851 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 00:39:30.70 ID:jZjoAyyLP
起きてたりする!
486名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 00:48:36.07 ID:JnZ/xThE0
起きてたりする!
487名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 00:49:43.34 ID:TDZ5fPFoi
ならば語っていただこう
シェヘラザード・スコーン・BBA
今宵はどこまで語るのか?




てか、本当に無理すんなよ?(´・ω・`)
4881 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 00:53:40.29 ID:jZjoAyyLP
町長「船はご自由にお使い頂いて構いません……ですが」
町長「一つだけ……お願いがあります」
勇者「……俺達に、出来る事でしたら」
魔法使い「何か……随分あっさりね」ヒソ
僧侶「聞こえますよ……」ヒソ
町長「北の塔には……近付かないで頂きたいのです」
勇者「……え!?」
僧侶「!」
戦士「それは……理由は聞かせて貰えるのか」
町長「…… ……はい」ハァ
魔法使い「…… ……」
町長「何がある訳でも無いんですが……禁忌、なのですよ」
勇者「禁忌?」
町長「この街から少し海の方へと進んで貰えれば」
町長「……最果ての地の方向に、天まで届く巨大な塔が見えます」
魔法使い「それが……北の塔?」
町長「ええ。まあ……その、色々言い伝えが残っていましてね」
町長「……随分昔に、この街へ来た旅人と、この村の者が」
町長「あの塔へと出向いたのですが……」
魔法使い「……戻って来なかった、とか、そういう落ち?」
町長「いえ、逆です。二人は無事に戻ってきたのですが……」
町長「……何かしら、あったのでしょうね」
町長「街は……それまで、蝙蝠の様な魔物の襲撃に度々、あっていたんです」
町長「だが、それを切欠にぴたりと止んだ」
僧侶「では、そのお二方が、塔の魔物……か何かを倒された、と?」
町長「…… ……」
勇者「?」
町長「何があったかは、はっきりわかりません」
町長「ですが……旅人が去った後、一緒に塔へと出向いた」
町長「この村の者……当時の町長の娘です」
町長「その娘も、姿を消してしまった」
4891 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 00:54:24.45 ID:jZjoAyyLP
>>487
ありがとー!
大丈夫、少しだけー
4901 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:05:21.31 ID:jZjoAyyLP
戦士「そ、れは…… しかし…… ……?」
町長「旅人に攫われた、だとか。色々、ね……人々は言うのですけど」
町長「まあ、本当に……ただの、言い伝えなのです、けど……」
魔法使い「……そんなに言いにくい事なの?」
町長「……街の人達は、その娘と旅人が共謀して」
町長「街を襲わせていたのでは無いかという……思いに囚われ」
僧侶「!?」
町長「……娘の父親、その……当時の町長を追い出してしまったのですよ」
僧侶「な、何故です!?」
僧侶「本来ならば、この街を魔物の襲撃から守った本人では無いのですか!?」
町長「……真相は分かりません。娘も、どこかで生きていたとしても」
町長「……否。それも、人の子であるのなら、あり得ない程の昔話です」
町長「ふらりとやってきた旅人は、とても強く……まるで人では無いようだった、とも」
勇者「人では……無い……!?」
町長「……本気になさらないで下さいよ。遙か昔の……この街の住人の」
町長「『過ち』なのです」
町長「……居なくなった後、随分と噂に尾ひれ背びれで足りない程の物がついて」
町長「そんな話になっただけだとは思うんですけどね」
町長「……ともかく、この街の住人にとって、あの塔は」
町長「『触らぬ神に祟りなし』……触れてはいけない、禁忌なのですよ」
勇者「……確かめに、は……誰も行かない、のか?」
町長「冗談じゃありませんよ!此処はただでさえ、最果ての地に近い!」
町長「……街の外へ出るにも、勇気がいると言うのに」
戦士「……それで、その約束さえ守るのならば、船は貸して貰えるんだな?」
町長「ええ……わ、私は伝えましたからね!?」
町長「この街を……巻き込むことは、やめて下さいよ!」
町長「……お願いしますよ、勇者様」
勇者「え……」
町長「一刻も早く魔王を倒し、こんな風に怯える毎日から」
町長「……私達を、解放して下さい」
4911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:27:12.00 ID:jZjoAyyLP
勇者「……わかりました。お約束します」
魔法使い「勇者!?」
勇者「俺達には船が必要だ……それに」
勇者「……俺達の目的は『魔王を倒し、世界を平和にする事』だ」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
町長「申し訳ありません……」
勇者「いえ……」
僧侶「……その、娘さんは……戻られなかった、のですか?」
町長「ええ……英雄視する者も居ますが……」
町長「所詮、ね……ただの、こんな……辺境の街のね」
町長「……人間の一人が、『勇者』になんて……なれる訳では無いんですよ」
魔法使い「…… ……」
町長「悪いとは思いますよ。本当に……何もなかった、のなら」
町長「ですが……もう、遠い昔の話です」
町長「今更……どうすることも出来ませんから」
勇者「……魔王を倒した暁には、船は……お返し致します」
町長「……ええ、まあ……そう仰るのでしたら」
町長「お気をつけ下さいね。この辺の海域には、厄介な人魚が住んでいます」
僧侶「人魚?」
町長「はい。魔詩を紡ぎ、海を渡る人を惑わし……喰らうのですよ」
僧侶「……魔詩」
町長「人間の望む者の幻覚を見せ、海に引きずり込むのだそうです」
町長「……ですので、ね。まあ……どちらでも……」
戦士「わかった……感謝する。行こう、勇者」
勇者「あ、ああ……では、失礼します」

スタスタ、パタン

僧侶「……随分な話ですね」
4921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:35:36.39 ID:jZjoAyyLP
魔法使い「真相が分からないから何とも言えないけど……」
戦士「……本当に近づかないつもりか?」
勇者「あの様子じゃ、な……一応の釘差しの様なモンだろうとは思うけど」
魔法使い「私達が約束破ったって」
魔法使い「知らぬ存ぜぬ、注意はしたぞって……感じだけどね」ハァ
僧侶「でも……初めて聞きました、けど……」
戦士「人魚、か」
勇者「……うん。流石に……ちょっと厄介だな」
魔法使い「耳を塞いでれば良いんじゃないの?」
僧侶「どんな魔法……なのか解らない以上……」
勇者「最果ての地の方向、って言ってたな。何れは避けては通れない」
戦士「……取りあえず、出航しよう。どうやら……この街は」
戦士「魔導国とのどうこうは無いようだし」
魔法使い「そうね。様子を見て……決めましょう」
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「あ……すみません、行きましょう」

……
………
…………

魔法使い「潮風が気持ちいい! ……ッ を、通り越して寒い、わね」ブルッ
勇者「雲が……重いな」
戦士「最果ての地はすぐそこだ」
戦士「……随分と顔色の悪い空だ」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者、舵を」
勇者「あ、ああ……」スタスタ
魔法使い「大丈夫?」スタスタ
勇者「ま……何とかなるだろ」
戦士「……僧侶、大丈夫か?」
戦士「随分と……さっきから険しい顔をしているが」
4931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:42:24.73 ID:jZjoAyyLP
僧侶「あ……ご免なさい」
戦士「謝る事じゃ無い……どうした」
僧侶「いえ……」
戦士「……塔の事か」
僧侶「…… ……」
僧侶「気にならないとは言えません。これから魔王に対峙する……と」
僧侶「考えれば、私は……私を知る必要があるんじゃないか、って」
僧侶「……でも、平和になってからでも遅くないのかもしれない」
僧侶「自分の事ばかり……欲しても…… ……」
戦士「……見ろ」スッ
僧侶「え…… ……あ……ッ」

魔法使い「あれが……北の塔!?」
勇者「……雲の上まで続いてる……のか!?」

戦士「……僧侶、こっちへ」スタスタ
僧侶「あ、は、はい……」タタタ
勇者「戦士。どう……思う?」
戦士「こいつが北の塔に間違いは無いんだろうが……」
魔法使い「あんなの、どうやって上るのよ!?」
僧侶「す、ごい…… ……天辺が見えない……」
勇者「近づいてみるか?」
魔法使い「でも……人魚、とやらが……」
戦士「……流石に水面に目をこらしても、解らんな」
勇者「どうする、僧侶」
僧侶「え……でも…… …… ……」
魔法使い「…… ……待って!」

〜♪ 〜♪

魔法使い「何か……聞こえない?」
494名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 01:45:32.04 ID:TDZ5fPFoi
なぜだろう、昭和ガンダムの音楽が頭の中を蹂躙している
BBAはそんな年じゃない筈なのに

ああ、俺がオッチャンだからか…(´・ω・`)
4951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:46:47.71 ID:jZjoAyyLP
パシャン…… ……

僧侶「! ……ッ 人魚!?」
戦士「勇者、舵を切れ!」
勇者「お、おう!?」
戦士「……海域を離れろ!」
勇者「……ッ 喋るなよ、舌噛むぞ!」

グラグラ……ッ

僧侶「キャッ……ッ」
戦士「僧侶!」ガシ!
魔法使い「きゃああああ!」
勇者「喋るなって!」

〜♪ 〜♪

戦士「掴まってろ」
僧侶「は、はい!」
勇者「……ッ !?」クラ……ッ
勇者(何だよ、こんな時に……ッ 眩暈……!?)
魔法使い「……勇者!?」
勇者「……大丈夫、だ!」

〜♪ 〜♪

戦士「う…… しつこい、な…… ……ッ」クラッ
僧侶「戦士さん!?」
魔法使い「……な、に、 ……こ……れ……ッ」フラッ
僧侶「魔法使いさん! ……ッ 勇者様!!」
4961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:53:51.28 ID:jZjoAyyLP
僧侶(これが……魔詩!? ……確かに、美しい声、だけど……!)
勇者「……ッ」フラッバタ……ッ
僧侶「……!」
僧侶(舵が……ッ)ガシッ
僧侶(方向は!?方法は…… ……ッ)
僧侶(三人とも、気を失ってる……!?)
僧侶(で、でも……ッ どうしたら……!!)
僧侶「……ッ」グッ
僧侶(とにかく、振り切らなきゃ……ッ)

……
………
…………

勇者?(どういうことだ……大きくなった?あいつと……事務員とあったのはつい数ヶ月前だ)
勇者?(いや、そもそも……事務員…なのか?いや……でも僧侶が……)
勇者?(………僧侶に)バッ

勇者(……え、これ……俺?)
勇者(随分……視界がぼやけてる)

魔法使い?(……僧侶には分かる、ていうのは理解できる。あの話を聞いたから)
魔法使い?(でもどうして……あいつがそれを知ってるの!?)
魔法使い?(……ッ力の、差…ッ私は……ッ 僧侶ッ)バッ

魔法使い(あの話……? あ……私、あれ……船に……?)
魔法使い(あれは……私? ……でも……?)

戦士?(どういうことだ……あいつは、僧侶の口から聞け、と言った)
戦士?(それよりも、あいつの言っていたことは、一体……!?)
戦士?(魔王は……滅ぼすとは…言っていない?勘違い…!? …僧侶!)バッ

戦士(僧侶の口から……? 何を……聞く、んだ)
戦士(魔王……ああ、そうだ俺達は……船で……)

パアアアアアアアアアア……ッ
4971 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 01:58:20.00 ID:jZjoAyyLP
魔法使い(眩しい……ッ)

魔法使い?『僧侶?……』ギュ
僧侶?『……ッ』
魔法使い?『……大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと……二人とも貴女を信じてる』
魔法使い?『私達は仲間……大事な仲間でしょ?』
僧侶?『…ッ ま、ほ……つか……さ………ッ』
魔法使い?『……』ナデナデ
僧侶?『わ、わかってます……信じて、くれるって信じて……ッ』

魔法使い(……僧侶、泣いてる……何故?)

僧侶?『でも、痛い……痛いんです。胸が……戦士さん、に、にら、にらまれ……ッ』
僧侶?『……戦士さんから、悲しみを感じ、ました……そしたら、胸……ッ いた、く……て!』
魔法使い?『……僧侶?、貴女』
僧侶?『はい……?』ヒック
魔法使い?『戦士が好きなのね?』
僧侶?『……!?』ビクッ
魔法使い?『……違う?』

魔法使い(僧侶が……戦士を好き?)
魔法使い(……こんな、場面……知らない。知らない筈……なのに)

僧侶?『……多分。良く、わかりません、けど……多分……』
魔法使い?『……貴女、こんなに聡いのに、そういうのには鈍感なのね』クス
僧侶?『……』
魔法使い?『大丈夫。戻って来てまだぐだぐだ言う様なら』
魔法使い?『私があの脳筋、丸焦げにしてやるわ』クス
僧侶?『……そ、それは、駄目です』クスクス

魔法使い(不思議……懐かしい…… ……?)
魔法使い(……私……知って、る……?)
4981 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 02:04:07.09 ID:jZjoAyyLP
勇者?『おい、戦士!待て!』スタスタ
戦士?『……勇者か』
勇者?『気持ちは分かるが……あれは無いだろう、戦士』
勇者?『仲間割れ……させるのが目的だとすれば、思うつぼだぞ』

勇者(仲間割れ? ……何の事だ?)
勇者(……あれ、俺と……戦士、二人だけ?)

戦士?『! …お前』
勇者?『俺だって信じたい。僧侶は、仲間だからな』
戦士?『……仲間、か』
勇者?『魔導将軍とやらの目的や真意はわからん。が……少なくとも僧侶は……』
戦士?『ああ……あいつは、嘘は言わないだろうな』
勇者?『お前、分かって……』
戦士?『……エルフは嘘をつけないんだそうだ』

戦士(これは……なんだ?)
戦士(……エルフは嘘を吐けない……僧侶から確かに聞いた、が……)
戦士(何か……おかしい?)

勇者?『は?』
戦士?『種族の特徴だ。精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』
戦士?『……思い出したんだ。いつかの街で、僧侶が教えてくれた』
勇者?『戦士……』
戦士?『さっき言っただろう。エルフは人に干渉しないと聞いたことがあると』

戦士(!?)
勇者(え……!? どうして、そんな事を戦士が知っているんだ!?)

勇者?『ああ……』
戦士?『その話を教えてくれたのも、僧侶だ』
勇者?『……』

戦士(否! ……そんな話は、聞いた事が……!)
勇者(……こんな会話……聞いた事、無いぞ!?)
4991 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 02:06:48.84 ID:jZjoAyyLP
戦士?『この世界のどこかに、エルフの隠れ里があるという』
戦士?『地上であり地上で無い、祝福された楽園』
戦士?『この旅が終われば、可能ならば訪ねてみたい、と』
戦士?『……僧侶が、言ってた』

戦士(……知っている!?俺は……どうして……!?)
勇者(エルフの里……!? そんなもの…… ……否……ッ)

戦士?『僧侶は大事な仲間だ、勇者』
勇者?『…ああ』
戦士?『だが……いや、信じてる。だが…ッ』
勇者?『裏切られるのが怖いのか?』

戦士(……エルフ、そうだ。僧侶は、エルフの血を引く……)

戦士?『いや……そうじゃない。よくわからん』
勇者?『……?』
戦士?『何となく……喉が苦しい』
戦士?『胸が締め付けられるようだ』

勇者(ああ、そうだった……戦士と、僧侶は……ッ)

パァアアアア……ッ

『せ……ん、ま……つか……さ ……』
『ゆ……しゃ、さ……』

僧侶「しっかりしてください!戦士さん、魔法使いさん!」
僧侶「勇者様!!お願い……ッ」
5001 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 02:09:46.91 ID:jZjoAyyLP
魔法使い「!」
戦士「……ッ 僧侶!!」
勇者「あ……ッ」
僧侶「あ、あ……ッ 良かった……ッ」ポロポロポロ
魔法使い「僧侶…… ……」
戦士「……俺は……否、俺達、は……」
勇者「あ……ッ 人魚、は!?」ガバッ
僧侶「す、すみません、夢中で舵を……!」
勇者「…… ……」キョロ
戦士「……逃げ切った、のか……」
魔法使い「あ、アンタ、大丈夫!?怪我とか……してないわね!?」
僧侶「あ、は、はい! ……私は、大丈夫……です」
僧侶「それより、皆様は……」
戦士「魔詩……とやらにやられた、のか……」ハァ
魔法使い「じゃあ……さっきのは……夢?」
僧侶「夢?」
勇者「……幻覚がどうの、って……言ってたな」
5011 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 02:14:16.83 ID:jZjoAyyLP
あっかん、限界(・△・)
またあしたー!おやすみなさい!
502名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 02:18:37.22 ID:TDZ5fPFoi
急展開ktkr!こんな夜中になにしやがるBBA!!面白スグルwwww

なるほど、こうして勇者一行、いや「世界」は知っていくか…



BBAと幼女に安らぎアレ!

   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚
503名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 03:00:34.38 ID:oD4dEF5mi

ゆっくり休んで
5041@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 15:04:29.40 ID:jZjoAyyLP
今日は無理ぽい( ゚д゚)
帰って時間あったらー
505名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 16:05:03.44 ID:dLVLCbb8i
ラーメン食って待ってるー。
506名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 17:28:09.32 ID:TDZ5fPFoi
>>505
奇遇だな俺もまさに今ニンニク大辛堅麺ネギ抜き喰って待ってる
5071@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/07(土) 18:59:19.76 ID:jZjoAyyLP
どうやら熱あるっぽ( ゚д゚)
帰ったから寝るわ…あー……
508名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 19:02:12.16 ID:pkOrDMHP0
つ 氷の魔石
つ 水の魔石
つ いやしの魔石
つ 熱さまシート

のんびりおやすみなさいー
509名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 19:04:08.55 ID:s/gG0N2e0
大丈夫?
お大事に
510名も無き被検体774号+:2013/09/07(土) 19:36:25.91 ID:TDZ5fPFoi
無茶しやがって……
回復魔法かけてやるから大人しく寝てれ‼

   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚
幼女の為にも元気でいてくれ(´・ω・`)
おやすみスコーン&幼女
511【宇宙人】:2013/09/08(日) 00:08:35.13 ID:0X8MA1jf0
じゃあ俺からも

ベホマ‼
512名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 02:05:52.37 ID:/bp25imJ0
つ金
5131 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 05:13:41.95 ID:eRUiuBk4P
僧侶「幻覚……?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
僧侶「……あ、あの?」
勇者「あ……ああ、悪かった……否。ありがとう、僧侶」
戦士「お前は……お前には、あの魔詩……と、やらは効かなかった、のか?」
僧侶「え? ……確かに……美しい詩でしたけど」
魔法使い「……僧侶は水の……優れた加護を持っている、から?」
僧侶「……ま、まあ……確かに人魚は水棲の魔物……ですけど」
勇者「あれは……魔法、なのか? ……否、そうか、まあ……」
勇者「……とにかく、変わろう。進路を戻さないと」
僧侶「あ! ご、ごめんなさい……!私、多分無茶苦茶に……!」
戦士「何故謝る……礼を言わねばならんのに」
魔法使い「そうよ……ありがとう。助かったわ、僧侶」
勇者「戦士、地図……否、航海図でなければ……一緒か」
戦士「そんな物があったとしても俺にもお前にも読めないだろう」
勇者「……そうか」
戦士「とにかく、陸地を目指そう」
魔法使い「僧侶、後ろの方を見に行きましょう、舵は二人に任せて」
僧侶「え、ええ……魔法使いさん、休まれなくて大丈夫ですか?」
魔法使い「……吃驚したけど、大丈夫よ」
魔法使い「あの二人も、ね……それに」
僧侶「?」
魔法使い「…… ……いえ。ほら、行きましょう」スタスタ
僧侶「は、はい…… ……?」
5141 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 05:21:46.68 ID:eRUiuBk4P
魔法使い(……さっきのは……夢?)
魔法使い(不思議と懐かしい……何故?)
僧侶「……北の塔、見えませんね」
魔法使い「そんなに長い間、気を失ってた?」
僧侶「どうでしょう。とにかく離れないと、って夢中で……」
僧侶「……それ程長時間では無いと思いますけど」
僧侶「あの海域を離れる迄は……と思って」
魔法使い「そう……よね」
僧侶「あの……魔法使いさん?大丈夫……ですか?」
魔法使い「え?」
僧侶「いえ……詩とは言え、魔法の類には間違い無いでしょうから」
魔法使い「物理的なダメージは無いと思うんだけどね……別に何処も痛くないし」
僧侶「……夢、と仰ってました、ね」
魔法使い「町長さんも幻覚だとか言ってたわね」
僧侶「はい。勇者様も仰ってましたね」
魔法使い「あの二人がどんな……夢、幻覚?を見せられたのか解らないけど」
魔法使い「……私は、僧侶と二人で話してる夢を見たわ」
僧侶「え?」
魔法使い「貴女が泣いてて……私が…… ……」
僧侶「?」
魔法使い「私が、貴女を慰めている場面。『貴女、戦士が好きなのね』って」
僧侶「…… ……え!?」
魔法使い「『二人とも』……多分、勇者と戦士の事ね」
魔法使い「『二人とも、ちゃんと貴女を信じてる』とか」
魔法使い「『仲間だから大丈夫』だとか……そんな感じだったかしら」
僧侶「そ、それと戦士さんと、何の関係が!?」カァ
5151 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 05:29:10.37 ID:eRUiuBk4P
魔法使い「……解らない」
魔法使い「でも、夢の中の貴女は否定してなかったわよ」クス
僧侶「な、なんで笑うんです……」
魔法使い「ご免なさい」クスクス
魔法使い「……なんて言うのかしら」
魔法使い「不思議と懐かしくて……ううん……」
魔法使い「でも、悲しくて、切なくて……苦し……くて……」ジッ
僧侶「……ッ 嬉しい……?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「…… ……前に、貴女と勇者がそんな事、言ってたわね」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「それは……あれ、は。本当に夢、なのでしょうか?」
魔法使い「……どう言う事?」
僧侶「いえ……」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(夢にしてはリアルだった。けど……)
魔法使い(夢で無ければ……なんだと言うの?)

……
………
…………

戦士「さっぱりわからんな」
勇者「……船首がこっち向き、て事はあっちから来たんだろうけど」
勇者「どの方角向いてるんだか……」
戦士「方角は解るだろう……日が沈めば……」
勇者「ああ、そうか……まあ、後退する選択肢は無いから、ええと……」
5161 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 05:37:44.57 ID:eRUiuBk4P
戦士「とにかく、前進するしか無いだろうが……」
勇者「……大渦とやらに巻き込まれるのは御免だな」
戦士「地図を、勇者 …… ……確かな場所は解らんが」
戦士「こう走っているとして……」ブツブツ
勇者「…… ……なあ、戦士」
戦士「何だ」
勇者「お前……どんな幻覚を見た?」
戦士「…… ……」
勇者「幻覚、て言うか」
勇者「魔法使いが言っていたとおり、夢、に近いかな」
戦士「不思議な感覚だったな」
勇者「……俺もだ」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』」
勇者「!」
戦士「『精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』だとか」
戦士「……なんだとか。僧侶が教えてくれた、んだと」
戦士「お前と、二人で話している夢だった」
勇者「…… ……」
戦士「『エルフは人に干渉する事を嫌う』だとか」
戦士「……ああ。後は、仲間割れがどうの。僧侶は仲間だからどうの」
勇者「……『俺だって信じたい』」
戦士「?」
勇者「『世界のどこかにエルフの隠れ里とやらがある』んだろう」
戦士「!」
勇者「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか?」
戦士「……『旅が終われば、何時か訪ねたいと』」
勇者「『僧侶が言ってた』んだな」
戦士「お前……!」
5171 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 05:44:57.27 ID:eRUiuBk4P
勇者「……俺と……同じ夢を、見た、のか?」
戦士「……魔詩とやらは、魔法の一種なんだろう」
勇者「え? ……あ、ああ。まあそうだろうな」
勇者「僧侶にだけ効かなかったのも、魔法使いが言う通り」
戦士「優れた水の加護、か」
勇者「……しかし、ありゃ、何だ?」
勇者「俺達はあんな会話……したことないだろう」
戦士「…… ……」
勇者「あんな話は、知らない…… ……よな?」
戦士「当然だ。僧侶から……聞いた覚えも無い」
戦士「……僧侶自身、知っているのかどうかすら」
勇者「…… ……魔法使いも、同じ夢を見てた……んだろうか」
戦士「どうだかな。あの場面に、あいつは居なかった」
勇者「……後で聞いてみよう」
戦士「やはり……北の塔に寄るべきだった、んだろうか」
勇者「言っても……仕方無いさ」
勇者「あの状態じゃ無理がある」
勇者「それに…… ……ん?」
戦士「何だ」
勇者「…… ……船、だ」
戦士「え?」
勇者「前見ろ……! ……魔法使い!僧侶!」
勇者「糞、波の音で聞こえないか……!」
戦士「呼んでくる。舵は任せるぞ!」タタタ
518名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 05:46:34.68 ID:b8pubaWfi
BBA東京五輪決定の裏で書いてくれてありがとう
5191 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:03:34.71 ID:eRUiuBk4P
……
………
…………

海賊「船長、船が見えますけど」
船長「何処の船だ?」
海賊「小さいっすね……なんでしょ?」
船長「魔導国の奴らだったら面倒臭ェなぁ……やり過ごすか」
海賊「無視して良いんっすか」
船長「『近づくな』っつったのは向こうだろ」

コンコン

船長「誰だ?」
海賊「チビっすよ」

カチャ

チビ「母さん、船!」
船長「おう」
チビ「甲板出て良い!?」
船長「阿呆!アブねぇだろ」
チビ「えぇ……」
船長「何処の船かもわかんねぇのに……何言ってやがる」
海賊「そこに双眼鏡がありますよ」
チビ「見て良い?」
海賊「良いっすよね?」
船長「まあ、そんぐらいはな」
チビ「わ、すぐ近くに見える……!」
海賊「……一般人の船、ぽいっすね」
5201 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:12:30.68 ID:eRUiuBk4P
船長「……余程の阿呆か?」
船長「こんな時にあんな小さな船でまあ……」
船長「正気の沙汰とは思えネェな」
チビ「あ、甲板に誰か居る!」
船長「……どんな様子だ?」
海賊「男が一人、女が二人……舵握ってる奴も居るだろうから」
海賊「少なくとも四人、ですかね」
チビ「あ!母さん!母さん!」
船長「何だよ、煩ェな……どした?」
チビ「舵握ってる男の人、金の瞳をしてるよ!」
船長「……は!?」
海賊「て、事……は……」
船長(勇者……か。魔法使いが……一緒に居る、んだったな)
船長「やり過ごせ。関わるのはまずいな」
海賊「……どこに向かってる、んでしょうかね」
船長「さあね……訳も分からず、進んでるんだろ」
海賊「……あの国じゃ無いんすか」
船長「領主の野郎が何企んでるかしらねぇけど」
海賊「王様でしょ、今は」
船長「うるせぇ! ……関係無いんだよ、アタシらにゃ」
チビ「母さん!無視しちゃうの!?」
船長「色々と大人の事情ってのがあんだよ」
船長「ほら、父さんとこ行っとけ」
チビ「まだ見てる!」
船長「…… ……」ハァ
海賊「まあまあ。やり過ごすなら良いでしょ」
5211 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:20:19.56 ID:eRUiuBk4P
……
………
…………

僧侶「大きな船ですね」
魔法使い「何処の船かしら……見た事ある様な……」
勇者「見覚えがあるのか?」
魔法使い「……解らないわ。船なんてどれも同じに見えるけど……」
戦士「定期船……か?」
勇者「……かもな。何処へ行くんだろう」
僧侶「近づいて……は、来ません、ね」
戦士「向こうも警戒しているのかもな」
勇者「それならそれで良い。しかし定期船なら……」
勇者「航路を逆に辿っていくと、どこかへ着くかもしれん……が」
戦士「……向こうの方角から来たな…… ……南、か」
魔法使い「南?」
僧侶「始まりの国……では、ありません、よね」
勇者「と、すると……西へ進めば良い、のか?」
戦士「……南へ下っても仕方無いしな」
勇者「良し。西へ向かおう」
勇者「……結果的に助かった、か」
魔法使い「あの船、早い……もう見えなくなりそう」
戦士「僧侶、船酔いは大丈夫か?」
僧侶「あ……忘れてました……」
勇者「小さい船だ。揺れるぞ……渦に近づけば、尚更」
戦士「誰も確かな航海術等身につけてないしな」
魔法使い「小さいけど船室もあるわよ。寝てれば良いわ」
僧侶「…… ……」
僧侶(思い出したら気分悪くなってきた……)ウゥ
戦士「どうせ時間も掛かる……来い、僧侶」
僧侶「…… ……すみません」
魔法使い「私が残るわ。魔物が出たら……」
戦士「俺もすぐに戻る」
勇者「…… ……」
勇者(僧侶と……話す、んだろうな)
5221 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:27:25.04 ID:eRUiuBk4P
勇者(俺も、魔法使いに聞いてみよう)
魔法使い「……どれぐらいで着く、のかしら」
勇者「はっきりとした位置が解らないからな……」
魔法使い「どこに居るのか、始まりの国が何処なのか……もね」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「ん?」
勇者「さっき、戦士とも話してたんだが……」

……
………
…………

戦士「大丈夫か?」
僧侶「すみません……」
戦士「良いから、横になってろ」
僧侶「……狭いですね。私が占領しちゃったら、皆が……」コロン
戦士「構わん……少し、話せるか?」
僧侶「? ……はい?」
戦士「魔法使いから、何か聞いたか? ……幻覚……夢、か」
僧侶「……ッ」ドキ
僧侶「は、はい」
戦士「どうやら……俺と勇者は同じ夢を見ていたらしい」
僧侶「え!?」
戦士「勇者と二人で、話している夢だった」
戦士「……魔法使いは、どんな夢を見たんだ?」
僧侶「…… ……な、泣いている私を、慰めていてくれた……様、です」
戦士「え……?」
僧侶「『仲間だから、信じてるから大丈夫』だとか……」
僧侶「前後が解らないので、何がなんだか……ですけど」
戦士「信じてる……」
僧侶「は、はい……『二人とも、信じてるから』とか」
僧侶「……多分、戦士さんと勇者様の事、なんでしょうけど」
5231 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:34:28.73 ID:eRUiuBk4P
戦士「似てるな」
僧侶「え?」
戦士「……夢の中の俺は」
戦士「エルフの事について、僧侶から教えて貰ったのだと」
戦士「勇者に、告げていた」
僧侶「え!?」
戦士「『エルフは嘘を吐けず、人に干渉するのも嫌う者』」
戦士「だから……僧侶を信じろだとか、何とかな」
僧侶「人に干渉するのを……嫌う?」
戦士「ああ。それに……『どこかにエルフの里がある』」
僧侶「エ……ルフの、里…… ……?」
戦士「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか」
戦士「『何れ訪ねてみたい』と」
戦士「……『僧侶が教えてくれた』と、言っていた」
僧侶「わ……私、そんな事知りません!」
戦士「……解って居る」
僧侶「……司書さんに見せて頂いた、あの御伽噺の一節の様、です」
僧侶「その……えっと、何と言うか」
僧侶「イメージ?の様な物を見た……のでは、無いですか?」
戦士「かも知れん……が」
戦士「勇者と同じ夢を見たと言う、説明が……それだけではつかん」
僧侶「あ……」
戦士「……随分と懐かしい感じだった」
戦士「お前の育った小屋で、話した様な感覚だ」
僧侶「……初めてなのに、知っている様な?」
戦士「何度も経験しているのに……の方、かな」
僧侶「…… ……」
戦士「それに……」
戦士「……喉が、苦しかった」
僧侶「え?」
戦士「胸が、締め付けられる様な……」
5241 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:44:55.27 ID:eRUiuBk4P
戦士「僧侶を信じたい、裏切られた等とは思っていない」
僧侶「…… ……?」
戦士「違うな。裏切られるのが怖いんじゃない」
戦士「……この気持ちは、何だ?」ジッ
僧侶「戦、士さん……」
戦士「そう、思っていた。夢の中の……俺は」
僧侶「…… ……」
僧侶(不思議……こんな事が、前にもあった気がする)
僧侶(ずっとずっと、昔……)
僧侶(否、初めての筈なのに……? ううん、違う)
僧侶(……何度も、経験している筈、なのに…… ……?)
戦士「最初……」
僧侶「え?」
戦士「……最初。俺は……魔法使いに惹かれているのかと思っていた」
僧侶「…… ……」
戦士「あいつも、どこか不器用で」
戦士「……育った境遇も似てる。性格こそ、違うが」
僧侶「…… ……」
戦士「だが……『違う』んだ」
僧侶「……『違う』」
戦士「ああ。違う……あいつじゃ、無い」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶」
僧侶「は、はい?」
戦士「もし……本当に、エルフの里とやらがあったとして」
戦士「行ってみたいと……思う、か?」
僧侶「え? ……あ、もし、あるなら……勿論、です」
5251 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:54:57.71 ID:eRUiuBk4P
僧侶「戦士さんの夢の中の私と同じです……」
僧侶「この旅が終わって、無事に……魔王を倒したら」
僧侶「いつか……訪ねて、み……た……」ポロポロ
戦士「……ッ お、おい!?」
僧侶(……胸が、苦しい……)
僧侶(何で? ……戦士さんが、魔法使いさんに、って)
僧侶(思ったら……ッ 何、これ……!?)ポロポロ
僧侶(『貴女、戦士が好きなのね』)
僧侶(……ッ 私、私……ッ)
戦士「そ、僧侶!?」
僧侶「……私、勇者様に憧れて、居ました」
僧侶「あの方に惹かれるのか、光に惹かれるのか、解らなかった」
僧侶「……でも、『違う』んです。勇者様……は、『違う』んです」
戦士「僧侶……」
僧侶「……この、気持ちは、何なんでしょうか、戦士さん」
戦士「…… ……」
僧侶「胸が、苦しい……ッ」ポロポロ
戦士「……ッ」ギュッ
僧侶「!?」
戦士「これが何なのかわからん。わからん、が……」
戦士「……北の塔、に……何時か、行きたいとお前が言った時も」
戦士「エルフの里に、行きたい、と言った時、も」ギュウ
戦士「……と、隣で、笑っていて、欲しい」
戦士「そう、思った」
戦士「……泣かないで欲しい。笑っていて欲しい……俺の」
戦士「あの。俺の……その、隣……で……」
僧侶「う、ぅ………うええええッ」ポロポロ
戦士「あ、お、おい!?」
僧侶「……う、ゥ……ッ戦士、さん……ッ」ギュウ
5261 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 06:59:12.46 ID:eRUiuBk4P
戦士「……魔王を倒して、一緒に……エルフの里を探そう」
戦士「何年、かかってもいいから」
僧侶「……ッ」ヒック、ヒック
戦士「……い、嫌……か?」
僧侶「ち、違いますッ ……違う、んです」
僧侶(胸が、苦しい。切ない……だけど、悲しくない)
僧侶「嬉しいんです……死んでも、良いぐらい……ッ」ニコ
戦士「阿呆、俺が困る」
僧侶「でも……私……」
戦士「……エルフの血を引いているから、か?」
僧侶「…… ……」
戦士「……何時までも若いお前の、可憐な顔を見れるのなら」
戦士「俺は幸せなのかもな」ニッ
僧侶「え……」カァッ
戦士「…… ……残すのは、辛いが」
僧侶「まだまだ、先の……話です」
僧侶「それまでに、一杯……一緒に、その……」
戦士「…… ……僧侶」グイッ
僧侶「あ……ッ」
戦士「………」チュ
僧侶「…ぁ ……戦士、さん……」

……
………
…………
5271 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 07:11:51.27 ID:eRUiuBk4P
魔法使い「……エルフの、里」
勇者「ああ……本当にあるかどうかは解らないが」
魔法使い「でも……多分、同じ夢を見ていたのね」
勇者「だろう、な。俺達が話している間、魔法使いは僧侶を慰めていた」
魔法使い「信じろ、とか……魔導将軍がどうとか」
魔法使い「……共通してる、ものね」
勇者「魔導将軍に何かを言われて……僧侶が泣いてた、って事……なんだよな?」
魔法使い「多分……僧侶は……隠してる訳じゃ無いわよね?」
勇者「ん?」
魔法使い「エルフが干渉を嫌うだとか……夢の中の戦士に語った内容を、よ」
勇者「……嘘は吐けない、んだろ?」
魔法使い「…… ……」
勇者「魔法使いが見たのは、それだけか?」
魔法使い「え?」
勇者「夢の中の話だよ。僧侶を慰めてただけか、って…… ……」
勇者「……何笑ってんだよ、お前は」
魔法使い「…… ……」ジッ
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……好き」
勇者「!?」ドキッ
魔法使い「……僧侶はね、戦士が好きなのよ」
魔法使い「夢の中の僧侶は、否定しなかったわ」
勇者「あ、ああ……」ドキドキ。フイッ
魔法使い「……現実の僧侶も、ね」フフ
勇者「……そう、か」
勇者(……吃驚、した。くそ、なんだこれ)ドキドキ
勇者(しかし……厭じゃ、無い)
勇者(俺は……僧侶に惹かれてた、と思ってた)
勇者(だけど……なんだろうな。何となく、嬉しい)
魔法使い(戦士に、何度もドキドキしたのに)
魔法使い(……厭じゃ無い。僧侶が……否定しなくて)
魔法使い(私……どこか、嬉しい……)
勇者(『違う』……そうだ。あれは……何だったんだろう)
勇者(あの時、僧侶に触れようとした時に聞こえた、声)
勇者(……魔法使いが小屋で寝た時は……聞こえなかった)
勇者(触れても……『違う』なんて思わなかった)ジッ
魔法使い「…… ……勇者?」
5281 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 07:24:22.94 ID:eRUiuBk4P
勇者「……遅い、な。戦士」
魔法使い「……顔、紅いわよ。何考えてんのよ、えっち」
勇者「……ッ ち、違うわッ そんなんじゃねぇよ!」
魔法使い「あははは……ッ」
魔法使い(これで……良い、のね)
魔法使い(頑張りなさいよ、僧侶)

スタスタ

戦士「すまん、遅くな…… ……」
勇者「…… ……」ニヤニヤ
魔法使い「…… ……」ニヤニヤ
戦士「…… ……」

……
………
…………

剣士(これは……読んだ。これも)パラパラ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(そろそろ……この図書館にも用事が無くなってきたな)
剣士(しかし……以前と違い、この街……国、か)
剣士(……自由に出る事も、な)
剣士(随分と……時間が経ったように思う、が)
剣士(……勇者は、今……どこに居る?)

カチャ……スタスタ

剣士(この気配……は……)
母親「やっぱり、ここに居たのね」
剣士「……何か用か」
母親「良い物を見せてあげる……いらっしゃい」
剣士「…… ……領主の具合はどうなんだ」
母親「良くは無いわね」
剣士「その割りには随分嬉しそうだな」
5291 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 07:31:57.60 ID:eRUiuBk4P
母親「『良い物を見せてあげる』と言ったでしょ」
剣士「…… ……」
母親「やっと完成したのよ」スタスタ
剣士「……完成?」スタスタ
母親「後は見てのお楽しみ……こっちよ」

キィ、パタン。スタスタ……

剣士「? ……何処へ行く」
母親「お父様の部屋の、その奥へ」
剣士「具合が悪いのでは無いのか」
母親「…… ……」

コンコン

領主「…… ……」
母親「入るわよ、お父様」

カチャ

領主「…… ……」
剣士(眠っている、のか…… ……!?)
剣士(随分顔色が悪い……それに……痩せたな)
母親「こっちよ」
剣士「……随分、厳重な扉だな」
5301 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 07:52:10.43 ID:eRUiuBk4P
母親「中へ入れば、納得出来るわよ」
母親「……貴方なら、ね」ニッ
剣士「……?」

キィ……ギギ……

剣士(……ッ !?)
母親「……顔色が変わったわね」
剣士「何だ……これは」
母親「ああ、余り近付かないで」
剣士(……石? ……魔石、か)
剣士(しかし、これは……)
母親「これは、そうね……言うなれば、魔寄せの石、かしら」
剣士「…… ……」
母親「……昔、鍛冶師の村の近くで見つけたらしいわ」
母親「あの村に残る伝承を知ってる?」
剣士「伝承……?」
母親「村人達は大層に、伝説だとか言うらしいけどね」
母親「神父が作った魔除けの石。始まりは港街では無くて」
母親「その神父だ、とか言う物よ」
剣士「……興味無いな」
母親「それが、これ……聖職者が作ったにしては」
母親「随分禍々しいでしょう?」
剣士「…… ……」
母親「どうやら人間の魔力では無い様でね」
母親「……結構な力を持つ魔族の作った物だとすれば」
母親「下等な獣はその力に惹かれて、集まってくるのですって」
剣士「…… ……」
母親「結果、あの村の付近にはそれ程魔物が出なくなった」
母親「……当時の村長はその事実は知らなかった様だけど」
5311 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 08:17:06.61 ID:eRUiuBk4P
剣士「……その事実につけ込んで利用した、か」
剣士(でなければ……実物が此処にある筈もない)
母親「……人聞き悪いわね」
剣士「間違いではあるまい。口を噤む代わりにと持ち帰ったのでは無いか?」
母親「破棄なんてすれば、あの村には大挙して魔物が押し寄せるわ」
母親「……合意の上での取引よ」
剣士「…… ……」
母親「……午後には、洞窟から採取した鉱石が届くわ」
剣士「……稀少な奴だとか言う、あれか」
剣士「それが……どうした?」
剣士「良い物、とは……それか」
母親「……満足のいく研究結果が出た。次の段階へ進む準備が整った事、かしら」
剣士「……?」
母親「この魔寄せの石の力を取り出して、量産するのよ」
剣士「……何?」
母親「もう一度言いましょうか?」
剣士「そんな事をして……どうするつもりだ!!」
母親「……『世界』を作り替えるのよ」
母親「『支配される為の世界』から『支配する為の世界』へね」

……
………
…………

国王「……船?」
騎士「はい!一隻、所属不明の……小さな船が港へ向かっている様です」
騎士「騎士団長様が向かわれていますが……如何致しましょう」
国王「魔導国の船で無い限り、着岸するのに許可などいりませんが……」
騎士「では、確認でき次第……またご報告に参ります」
国王「ええ……宜しくお願い致します」
5321 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 08:42:01.42 ID:eRUiuBk4P
スタスタ、パタン

国王(小さな船……そんな物まで、気にしなくてはならない世界……)ハァ
国王(……お母様。この国は、この世界は……一体、どうなってしまうのです)
国王「兄さんが向かっているのなら、心配は無用でしょうが……」

バタバタ……バタン!

騎士「し、失礼致します!国王様!」
国王「……今度は、何です……ッ!?」
騎士「勇者様が……!」
国王「!?」

……
………
…………

王子「……勇者様!」
勇者「騎士団長様!」フラフラ
王子「あ……!だ、大丈夫ですか……!?」
戦士「……親父?」フラ
王子「戦士!」
僧侶「……うぅ」フラフラ
魔法使い「…… ……」フラ
王子「……! ど、どうしたんだ、何があった!」
勇者「……た、頼む、から……」
王子「勇者様……!?」
僧侶「……ご飯……」グゥ
王子「…… ……は?」
5331 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 08:42:42.76 ID:eRUiuBk4P
働いてきます!
534名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 08:49:11.34 ID:b8pubaWfi
BBAいつもいいところで…
いってらっしゃい
535名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 08:54:29.19 ID:iLOD6Pu2i
熱は下がったのか?
無理すんなよ、スコーン
5361@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 13:14:17.67 ID:eRUiuBk4P
やっと休憩( ゚д゚)
万全じゃないけど仕事は休めんからね( ゚д゚)
ありがとねー!
537名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 17:07:05.81 ID:qW3cgWnTi
俺は仕事もしてないし風邪もひかない
5381@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/08(日) 21:06:27.96 ID:eRUiuBk4P
とりあえず、今日は寝る( ゚д゚)
また明日!
539名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 21:29:42.79 ID:QJp/jPx/0
お大事にー
540名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 22:03:06.10 ID:dCx3GWzWi
無理せず休むが良いよ

おやすみBBA&幼女!
   *゚゚・*+。
   |   ゚*。
  。∩∧∧  *
  + (・ω・`) *+゚
  *。ヽ  つ*゚*
  ゙・+。*・゚⊃ +゚
   ☆ ∪  。*゚
   ゙・+。*・゚
良い夢を!
541名も無き被検体774号+:2013/09/08(日) 22:20:02.73 ID:iLOD6Pu2i
>>540
うはwwwパクられたwwwww

>>1
頼むから体と心を休めてから更新しろください(´;ω;`)
スコーンのお話を読みたいのはヤマヤマだが語り部が倒れては本末転倒
保守支援はここの猛者どもがするから安心して休め

( ;・`ω・´)ー えーいっ、い・い・か・ら・休め!
スコーン一人の体じゃないだろ!
お前倒れたら幼女が泣くだろ!←重要

(´・ω・`)チャンと待ってるからシッカリなおしてからやっとくれマジで
542名も無き被検体774号+:2013/09/09(月) 08:50:37.68 ID:ecfjL6Kx0
なんか、このままだと1年くらいの付き合いになりそうだな
もう、逆に終わってほしくないけどねw
5431 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/09(月) 15:20:33.54 ID:z2i+iIlfP
グッタリ寝てます(・△・)
体調良くなったら再会します!
544名も無き被検体774号+:2013/09/09(月) 19:10:04.20 ID:0F8l9Iyp0
再会待ってるww
545名も無き被検体774号+:2013/09/09(月) 20:17:33.72 ID:RxQ+PWZR0
ほんまかまってちゃんやな
546名も無き被検体774号+:2013/09/09(月) 23:05:04.44 ID:DL+/CRkQ0
bbaゆっくり休め
おやすみ
547【宇宙人】:2013/09/10(火) 00:17:09.03 ID:DtKOlst40
お大事に
548名も無き被検体774号+:2013/09/10(火) 02:08:57.11 ID:gjaSaiaAi
BBA無理するなよお大事に
549名も無き被検体774号+:2013/09/10(火) 06:24:19.63 ID:LUA6VHSzi
BBAはそんなかまってちゃんじゃないと思うが外野がかまいたがりなんだよ
幼女ください金ならあります
550名も無き被検体774号+:2013/09/10(火) 09:05:45.73 ID:A94bD03yP
>>549
1億で漏れなくこのBBAも付いてきます
5511 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/10(火) 18:38:03.40 ID:8skL8Qz6P
ちょっと復活!明日は仕事なので
また電車の中とかで書けたら!
ありがとうね!

幼女はやらんちゅーの(・△・)
552名も無き被検体774号+:2013/09/10(火) 21:05:18.36 ID:g4VJ0ZHG0
じゃぁBBAをください
金はないぞ!
5531@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/11(水) 09:19:08.99 ID:9WaCRnaiP
戦士「船で……食糧が……尽きて……」
王子「…… ……」
勇者「すみません、騎士団長様……」
王子「と、とにかく城へ!お、おい、手を貸してやれ!」
騎士「は、はい!」
王子(何やってんだ、こいつらは……)ハァ

……
………
…………

国王「……そうですか。まあ……無事で良かった」クスクス
王子「笑い事か? ……否、笑えると言うのは、喜ばしい事、か」ハァ
国王「そうですよ、兄さん……で、勇者達は?」
5541@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/11(水) 09:54:22.03 ID:9WaCRnaiP
王子「食事と湯を使わせたら寝てしまったよ」
国王「そうですか……疲れていたんでしょうね。しかし……船は、どこから……?」
王子「明日、だな……起こしてやるのも、な」
王子「……俺達も、きっちり説明してやらんとな」
国王「……そう、ですね」ハァ
王子「魔道国も今は静かなもんだ。不気味な程に……な」
国王「嵐の前の……でしょう」
王子「全ては……明日、だ」
国王「……ええ」
王子「お前ももう休めよ、国王」
王子「ここんとこ……まともに寝てないだろう」
国王「……あの本、何度も読み返したのですが」
王子「…… ……」
国王「お母様が、お父様が……嘘をつくとは思えません。ですが……!」
王子「信じられない、か?」
国王「信じたい……ですけど、ね」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
555名も無き被検体774号+:2013/09/11(水) 12:27:23.49 ID:0zmKyoGUi
お疲れ様
無理すんなよスコーン
また倒れちゃうぞ(・ω・)ノシ
5561@もしもし ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/11(水) 13:41:39.49 ID:9WaCRnaiP
>>555
ありがとう!
仕事来てるし大丈夫だよ!
557名も無き被検体774号+:2013/09/11(水) 18:55:38.31 ID:HJPWOSzb0
いつもROMってるだけだけど、凄く楽しみにしてるよ!
応援してるから、無理しないように頑張って!!
558名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 04:39:02.40 ID:zqq1RIKui
ふぁいとー。
5591 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 09:12:31.93 ID:KTkYO8e1P
おはよう!復活!(・ω・)
5601 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 09:36:37.39 ID:KTkYO8e1P
王子「……まあ、信じろと言われても」
王子「はいそうですか、とは行かない内容だ……確かに」
国王「でも……私達には、知る権利も義務もあります」
国王「あんな小さな背に、『世界』を背負っている……勇者にも、です」
王子「……ああ。だが、逞しくなったよ。勇者も……戦士も」
国王「父としては嬉しい……ですよね」
王子「そりゃそうだよ……お前も父親だもんな」
国王「ええ。気持ちは……解りますよ」
国王「息子が大きくなって、彼がこの国の王となるまでには」
国王「……どうにか、平和な世界にしてやりたいものです」

……
………
…………

国王「良く戻ってくれました、勇者達」
国王「……貴方達が旅立った日が、それ程昔では無いというのが」
国王「信じられない程……逞しくなりましたね」
勇者「お久しぶりで御座います、国王様」
勇者「……昨日は、すみませんでした」
国王「騎士団長から聞いていますよ」クス
国王「……本当に、良く戻ってくれました。無事でなにより……です」
王子「人払いも済ませてある、皆楽にしなさい」
王子「……こうして、勇者とその仲間が揃うのが初めてだな」
国王「本来なら、単純に……喜びを分かち合いたいところ、ですが」
国王「……態々、此処に戻って来ざるを得ない事情が、あったのでしょう」
勇者「国王様に、聞きたい事が……あります」
国王「……私も、話さなければならない事があります。貴方達に」
5611 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 09:49:34.17 ID:KTkYO8e1P
王子「話を始める前に、一つだけ……先に良いだろうか」
勇者「? はい……」
王子「……勇者様のお母様の事だ」
勇者「!? 母さ……母が、どうか!?」
王子「……申し訳無い。どうやら……どこかへ、行かれてしまったようなんだ」
戦士「!」
魔法使い「え……!?」
僧侶「あ、あの……お母様は、この城で生活をされていたのでは……?」
勇者「否……俺と母さんは……この街の外れの小屋で……」
国王「城の方へと伝えはしてあったんですが、あの人は気が向いたらと」
国王「言うばかりで……」
王子「……勇者が旅立ってから、一度見に行ったんだ」
王子「そうしたら……小屋はもうもぬけの殻だった」
王子「……争った形跡も無し、部屋の中も綺麗に整理された侭だった」
勇者「…… ……母さん」
王子「あの小屋へは、この城の中庭を通り、裏にある小さな門をくぐらなければ」
王子「……たどり着くことは出来ない。知ってますね、勇者様」
勇者「はい……俺も、通りましたから」
王子「本来ならば、解る筈だ……門の所には見張りも増やした」
王子「……なのに、母君は……ッ」
王子「本当に……申し訳無い……!」
国王「……私からも、お詫びします……勇者」
国王「探させています。だから……ッ」
勇者「……いえ、あの……誤らないで下さい」
勇者「いつかの闘技大会の時、こっそりと母と……街へ行ったことがあります」
勇者「確かにあの時は、人も多かったし、見つからなかったんだろうけど」
勇者「……なんて言うか。どこか飄々としてますけど、しっかりした人ですから」
勇者「何か……理由が……あるんだと、思いますし」
魔法使い「勇者……」
勇者「……大丈夫、です。ただでさえ……今は実質の戦争状態で」
勇者「国王様も、騎士団長様もお忙しいでしょう」
勇者「……母は、どこかで……無事で居ると信じています」
勇者「だから……もう、謝らないで下さい」
5621 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 10:04:13.02 ID:KTkYO8e1P
王子「勇者様……」
戦士「…… ……」
勇者「早速ですが、魔導国の事をお聞かせ下さい」
国王「…… ……ありがとうございます」
勇者「いえ……」
魔法使い「あ、あの、国王様、私……!」
王子「知っている……魔導国の領主……否、王の孫娘、だろう」
魔法使い「……はい。魔法使いと申します」
僧侶「あ……ッ 遅くなって申し訳ありません、僧侶です!」
国王「どうか、楽にして下さい。それ程緊張されなくて良いですよ」
戦士「……叔父上、今……この世界は、どうなっているのです?」
国王「……どこから話した物か、と思いますけど……」
王子「順を追って話そう。補足があれば都度伝えてくれ」
勇者「解りました」
王子「……まずは、お前達が旅立ってすぐ、だったな」
国王「はい。魔導の街が、封鎖を宣言し、魔導国と名を改め……」
国王「領主は、王となりました」
魔法使い「お爺様達は、私に『何としても勇者様の仲間になれ』と言っていました」
王子「達、と言うのは?」
魔法使い「両親です……私は、直近の闘技大会にも参加しました」
王子「ああ……結果は、残念だったな。あれも……出ろと言われたのか?」
魔法使い「はい。やはり……優勝し、我が血筋の名を認知させろと」
魔法使い「……そして、勇者様の目に止まるように、と……」
国王「…… ……そう、ですか」
戦士「鉱石の洞窟の方はどうなったんだ」
王子「結果から言うと我らの負けだ。港街等に騎士を派遣する為には」
王子「後らにばかり余り、数を裂くことは出来ん」
国王「それに、命を無駄にはできませんから……それでも、犠牲者は……」
国王「……ゼロではありませんでした、けど」
5631 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 10:12:51.56 ID:KTkYO8e1P
王子「実際、あんな鉱石等……正直使い道があるとは思えない」
王子「……かといって、野放しにも出来んのだがな」ハァ
勇者「俺達を揺動させる為の罠かとも思ったんです」
勇者「港街に着いた時、定期便の運行停止を魔導国から求められてるとの」
勇者「話も聞きましたし……」
国王「そうです……港街には、今も騎士団が常駐しています」
国王「まだ……有事には至っていませんが、やはり船員達も怖がっていますから」
国王「渡航を希望する者の数も減りました、しね……」
勇者「……鉱石については、鍛冶師の村で不穏な噂を耳にしたんです」
王子「不穏な噂?」
勇者「……あの、街の聖職者……の話はご存じ、でしょうか?」
国王「!」
王子「…… ……」
戦士「親父?」
王子「国王、詳しい話は後にして……」
国王「……ええ。知っています。魔除けの石を作った、と言う……聖職者ですね」
国王「彼は、インキュバスと言う、名前です」
僧侶「え!?」
魔法使い「……インキュバス!?」
王子「知っているのか!?」
勇者「……では、魔石の……効果、は……」
王子「国王、話を続けて置いてくれ。あれを持って来る」
王子「……勇者様、少し失礼致します」

スタスタ、パタン

戦士「叔父上?」
国王「……貴方達も魔石の効果を知っていると言う前提で話します」
国王「インキュバスは……自分を聖職者だと偽り」
国王「魔除けの石と偽り……禍々しい魔石を残しています」
勇者「……魔寄せの石、ですよね」
国王「言い得て妙、ですね」クス
5641 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 10:29:22.95 ID:KTkYO8e1P
僧侶「国王様、話は脱線してしまいます、が……」
僧侶「……『少年』と言う名の、『港街の勇者』に聞き覚えは、御座いますか?」
勇者「僧侶……」
国王「……兄さんが戻ってきたら、話しましょう」
国王「勿論、知っています……と言っても」
国王「会ったことはありません。ですが……母とは既知だった様ですよ」
戦士「…… ……」
国王「余り、驚いては居ないのですね、戦士」
戦士「噂は……厭でも耳に入ってくるんですよ」

カチャ

王子「これは……お祖母様の日記の様な物だ」
戦士「日記?」
国王「……『世界の裏側』を少しだけ記してあるのだそうです」
魔法使い「世界の……裏側?」
国王「ええ」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に読んでみれば良い』」
国王「だが、必要で無いのなら決して目を通すな、とも」
国王「……言われ、預かった物です」
僧侶「お読みに……なった、のです……よね?」
王子「ああ……この国をお母様が作ったのは知っている、な?」
魔法使い「……港街も、ですよね。魔導の街との確執が……とか」
国王「……魔法使いさん」
魔法使い「は、はい!」
国王「……貴女にとっては、多分衝撃的な内容です」
魔法使い「!」
国王「聞く勇気は……おありですか?」
5651 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 10:37:04.07 ID:KTkYO8e1P
魔法使い「……ッ 大丈夫、です」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「大丈夫。私は……私達は、仲間でしょう?」
戦士「…… ……」
魔法使い「……大丈夫です。国王様」
王子「何処まで話したんだ、国王」
国王「インキュバスと言う男が作った事と」
国王「『少年』の話です……どちらも……名は、知っていた様ですね」
王子「!?……そうか。では、話を進める前に……伝えておく」
王子「それから……改めて紐解いていく事にしよう」
国王「断片的な知識しか無いでしょうから……これで、補完できると良いのですけど」
戦士「『世界の裏側』か……」
王子「……港街がある島は、魔導の街から逃げ出した……奴隷達がひっそりと」
王子「暮らす、島だったそうだ」
魔法使い「……ど、れい?」
王子「……ああ。『劣等種』と言う言葉を聞いた事は?」
勇者「……あり、ません」
王子「魔導の街の人達は、優れた加護を持たない者達を」
王子「『劣等種』と読んで蔑んで、奴隷のような扱いをしていたらしい」
魔法使い「……!」
王子「……お母様もその一人だったそうだ」
戦士「!?」
王子「港街へ人を逃がしたのもお母様と、そのお仲間……」
王子「だが、その仲間……エルフの青年は……」
僧侶「エルフ!?」
戦士「……僧侶」
僧侶「あ……も、申し訳ありません……ッ」
王子「否……続けて良いか?」
僧侶「は、はい……」
5661 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 10:46:30.68 ID:KTkYO8e1P
お買い物ー
567名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 10:57:57.25 ID:zqq1RIKui
てら。
568名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 12:38:12.82 ID:BRHaobYQi
治ったか良かった(*´ω`*)
元気が1番大事だぜスコーン

あ、お義母さん僕はスコーンで結構でふ
569名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 12:42:08.89 ID:6WSfGwW5i
BBA復活おめ!!!
570名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 14:22:06.40 ID:qWpq78jhi
BBA復活したか良かった
そして何でいつもいいところで…
5711 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 14:53:00.34 ID:KTkYO8e1P
王子「……そのエルフは魔導の街の者に殺された、と言う」
勇者「…… ……」
王子「手を下したのは、魔導将軍と言う魔族だったそうだ」
魔法使い「え!?」
戦士「魔導……将軍!?」
国王「……知って、居るのですか!?」
王子「何故……」
国王「……あ、ああ……すみません、続けて下さい」
王子「あ、ああ……それで、お母様は魔導の街で知り合った『少年』に」
王子「助けを求め、魔導の街で行われていた闘技大会で彼は優勝する」
魔法使い「魔導の街は……魔導将軍が魔族、と言う事を……」
国王「詳しく言及した等と言う記述はありませんが、少年は……」
国王「……魔導将軍も、当時の領主である者も……」
戦士「……殺したのか」
僧侶「……ッ」
王子「そうだ。そして、魔導の街に居た奴隷……娼館で働かされて居たと言う」
王子「者達を解放した。それが……港街の始まり、だ」
勇者「……この国は、どうして出来たのです?」
国王「港街には物資と共に移住希望者も押し寄せたのです」
国王「……住む場所も手狭になってきた、と言うのも一つの理由でしょうね」
王子「ここは……大昔、魔物に一度滅ぼされているらしい」
王子「お母様は、廃墟だったこの島に……この始まりの国を再建したんだ」
戦士「何も、国……などにしなくても良かったんじゃ無いのか?」
国王「それは……流石に、そこまでは解りません。ですが」
国王「……魔導の街への牽制と考えると、不思議では無いかも知れませんよ」
魔法使い「……では、私の……ひいお爺様、は……」
王子「…… ……」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「……ッ し、仕方無い、わ……ッ」
魔法使い「魔物に与し、そんな、罪も無い人々を、まるで物の様に……ッ」
5721 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 15:27:31.21 ID:KTkYO8e1P
僧侶「…… ……」
戦士「しかし……」
王子「何だ、戦士?」
戦士「……魔導将軍、とやらは魔族だったのだろう」
戦士「そんな、アッサリと……」
国王「……先ほど、『港街の勇者を知っているか』と聞きましたね?」
国王「少年の為人については……何も、知りませんか?」
僧侶「…… ……紫の瞳を持ち、闇色の髪をしている……男、ですね」
王子「知っているなら話は早い……彼は……否。彼も又、魔族だった様だ」
勇者「! ……しかし、同じ魔族同士であっても……否!」
勇者「……あ、いや……人同士ですら、こうして争うんだ」
勇者「魔族間での争いだって、あっておかしくは無いけど……」
国王「…… ……」
王子「…… ……」
僧侶「……あ、の……?」
王子「この本に寄ると、少年、は…… ……」
戦士「…… ……なんだと、言うんだ」
国王「……魔王だ、と記されて居る、のですよ」
魔法使い「え!?」
戦士「何だと!?」
僧侶「! ……ッそ、んな……!?」
勇者「『港街の勇者様』が…… ……魔王!?」
5731 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 15:57:49.47 ID:KTkYO8e1P
王子「……そうだ」
魔法使い「そんな……馬鹿な!」
国王「この事を知っている人は……意外と多かったようです」
国王「……名が記してあります」
国王「お祖母様、お爺様……それから、女剣士様」
戦士「! ……女剣士様、も……!?」
国王「…… ……それから、エルフの姫と言う女性」
僧侶「え!?」
王子「後は……港街に教会を作ったとされる神父様」
勇者「…… ……あの、教会の!? じゃ、じゃあ……娼婦って人も……!?」
国王「本当に良くご存じで。この辺りの人々の事は何も書かれていませんが」
国王「……娼婦さんと、少女さんと言う方は、港街に残らなかった……」
国王「……『劣等種』として、魔導国の娼館で働かされて居たと言う、女性だそうです」
魔法使い「あの……教会にあった……隻腕の祈り女、さん……」
王子「……お前達の方が詳しそう、だな」フゥ
戦士「地域地域で、様々な噂……伝承を耳にしたんだ」
戦士「聞きかじった程度、だが……」
王子「娼婦と言う女性を知っているのは解るが……何故、インキュバスを知っている?」
勇者「……え、ええっと……」
戦士「勇者」
勇者「……俺達は、鍛冶師の村の近くで……『魔導将軍』と名乗る魔族にあったんです」
国王「え!?」
王子「馬鹿な。魔導将軍は死んだはず……!」
魔法使い「彼女は、背に真っ赤な翼を生やしていました」
国王「……彼女、と言いましたか?」
魔法使い「え、ええ…… ……?」
王子「……」チラ
国王「……」チラ
戦士「何だ、顔を見合わせて……」
国王「……魔導将軍は確かに、少年が殺したんだと思います」
国王「それに……魔導将軍は、男であった、と……」
僧侶「え……?」
5741 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 16:05:58.36 ID:KTkYO8e1P
王子「……まあ、良い。続きを話してくれ」
勇者「あ、ああ……はい」
勇者「……魔導将軍は、はっきりと……自分は魔王の『仲間』だと言いました」
国王「では……やはり、魔王は……生きている、んですね」
魔法使い「それに…… ……」
王子「何だ?」
魔法使い「…… ……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
魔法使い「『魔王は、世界を守ろうとしている』」
魔法使い「だから……『人間達の、大いなる勘違い』だと」
国王「私達の……大いなる勘違い……?」
勇者「……それから」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
王子「…… ……」
戦士「俺達は、旅立つ前に一度、魔導将軍に会っているんだ」
国王「え!?」
戦士「……登録所の事務員として、潜り込んでいたらしい」
王子「何だと!?」
僧侶「……事務員さんと、魔導将軍の気配は、確かに同じでした」
僧侶「彼女は、魔力は封印していた、と……」
王子「い、いや……それが本当だとして、どうして……君に解るんだ?」
僧侶「魔力が、とか……種族だ、とかは……確かに、解りませんでした」
僧侶「ですが、『感じた』んです。同一人物である、と……」
国王「どう言う……事、です?」
勇者「……僧侶は、エルフの血を引いているんです」
王子「エルフ……の、血!?」
僧侶「…… ……はい。私を育ててくれた神父様曰く」
僧侶「私は人寄り早いスピードでこの姿まで成長し、それから……歳を取っていません」
国王「…… ……それで、『エルフ』の言葉に反応を示した、のですね」
5751 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 16:12:37.64 ID:KTkYO8e1P
王子「ま、待て!それは……信じられるのか!?」
戦士「親父!」
王子「……疑っている訳では無い。だが……!」
僧侶「私は、回復魔法を使えます」
国王「……え?」
魔法使い「回復魔法を使えるのは人だけの特権なんです」
王子「人の血が混じっている、と言いたいのか?」
王子「しかし……!」
国王「それは存じ上げています。私も回復魔法を使えますからね」
国王「……しかし、兄さんの言う通り、その半分がエルフという証拠、が……」
戦士「叔父上まで! ……僧侶は……ッ」
僧侶「……母が私を産んで、息絶えた時に、これを持っていたそうです」スッ
王子「弓? ……随分細いが……」
国王「!」
僧侶「神父様はエルフの弓では無いかと言っていました」
王子「!!」
僧侶「……力の弱いエルフでも、易く使える様にと鍛えられた」
僧侶「特殊な弓……だと、思います」
僧侶「私にも扱えます……し…… ……あ、あの」
僧侶「……証拠、には……ならないかもしれません、けど……」
戦士「僧侶は、魔族の血が入った者なんかじゃ無い!」
戦士「だから、親父……!」
国王「……戦士、落ち着いて。僧侶さん、その……母親の女性は」
国王「どんな姿をしていたか、聞いていますか?」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「新緑の髪に、済んだ湖の様な瞳をしていた、と……」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
5761 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 16:21:48.34 ID:KTkYO8e1P
僧侶「あ、あの……自分で言うのは、その、凄く烏滸がましいのですけど……ッ」
僧侶「……とても、美しい女性だったと、言っていました。その……」
僧侶「私に、良く……似ている、と……」カァッ
王子「…… ……」
国王「…… ……」
戦士「おい……親父!叔父上!」
王子「……エルフの姫、と言うのは」
勇者「え?」
王子「お祖母様が……少年と姫が協力してくれるならば……と」
魔法使い「?」
王子「……エルフの弓を、差し上げたのだと書いてある」
僧侶「え…… ……」
勇者「!?」
国王「……魔王、少年は、姫に『美しい世界を見せてやりたい』と」
国王「『北の塔』姫の身を封印したそうなのです」
魔法使い「!! 北の塔……!」
王子「……知ってる、のか。今更もう驚かないが、な」ハァ
国王「その姫の姿は大変美しく……新緑の髪に湖の様に透き通る蒼の瞳をしていたと」
国王「……ありました」
王子「エルフの姫の……娘、か……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「お母様……ッ」ポロポロポロ……ッ
魔法使い「……僧侶」ナデ
勇者「俺達が……魔導将軍に会った時に、言われたんです」
勇者「あ……僧侶が、ですけど……」
国王「何をです?」
僧侶「……今で無くて良いから、北の塔を訪ねなさい、と……」
王子「……魔導将軍が!?」
5771 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 16:49:28.59 ID:KTkYO8e1P
国王「……インキュバスの名前を知っていた」
国王「恐らく……エルフの姫の事も、知っている、んでしょうね」
勇者「何故……!?」
国王「……『勇者は必ず魔王を倒す』と言ったのでしょう」
国王「『魔王の仲間』である筈の彼女、が」
王子「……だからといって、アッサリと信用出来る訳でも無いだろう!」
戦士「親父…… ……」
王子「魔王が、世界を滅ぼそう等としていないなら」
王子「……何故、金の髪の勇者は……戻らなかった……!!」
魔法使い「…… ……あ、あの」
国王「兄さん! ……はい、何です?」
魔法使い「私……小さい頃に」
魔法使い「……剣士、と言う男に……家で会っているのです」
魔法使い「その男は……紫の瞳と、髪をして……居ました」
国王「……ええ、情報は入ってきています」
王子「…… ……ッ」
国王「兄さん、落ち着いて下さい……今剣士は、魔導国に居る、のですよね?」
勇者「あ、はい……」
王子「確か、なのか?」
勇者「……鍛冶師の村であった、司書さんと言う人に聞きました」
魔法使い「国の封鎖に伴い追い出された時に」
魔法使い「……剣士に助けられた、とか……」
国王「……やはり、彼が……少年?」
国王「だけど……そうだとすると、どうして魔導国へ……」
王子「……見かけは、やはり変わらない、のか」
魔法使い「そう、だと思います。まだ小さい頃だったので何とも言えないけど」
魔法使い「……でも……」
国王「何です?」
魔法使い「……私、彼には……助けられた、んです」
5781 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 16:55:44.81 ID:KTkYO8e1P
王子「助けられた?」
魔法使い「…… ……はい。あの……」
勇者「魔法使い…… ……」
魔法使い「……大丈夫」グッ
魔法使い「私には、優れた加護がありません」
国王「…… ……」
王子「!」
魔法使い「それを試そうと言い出した両親とお爺様にバレるのが怖くて」
魔法使い「……震えてた私を、炎の魔法で、その……相殺したんだと思います」
国王「それで……ばれずに、済んだ?」
魔法使い「はい」
勇者「魔法使いだけじゃ無い。俺達も一度助けられている」
王子「勇者様……達、も?」
戦士「この国を旅立ってすぐだ。川辺で魔物に引きずり込まれそうになった時に」
戦士「……あいつは、強大な雷の魔法を魔物に打ち込んだ」
王子「……後だしにするつもりはなかった、んだが」
勇者「え?」
王子「少年も加護に捕らわれず、様々な属性の魔法を使いこなしていたらしい」
国王「……ますます、同一人物だという可能性が高まってきます、ね」フゥ
僧侶「あの……一つ、忘れています」
勇者「え?」
僧侶「……剣士さん、勇者様と……そっくり、でした」
国王「あ…… ……そう、です。そうでしたね」
王子「……昔、初めてその剣士と言う男……だろう奴を見かけた時」
王子「俺も……金の髪の勇者かと思った」
国王「……そうですね。勇者、貴方も……金の髪の勇者と、同じ顔をしている」
国王「親子ならば……不自然で無いのかもしれません、けど」
5791 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 17:06:00.85 ID:KTkYO8e1P
僧侶「でも……剣士さんが少年さんであるのなら」
僧侶「……勇者様は、その……魔王、とも、そっくり、と言う……事、ですか?」
勇者「!」
国王「……そう、なります……ね」
王子「……ッ」
戦士「叔父上、魔導国は今、どうなっているんですか?」
戦士「……鍛冶師の村で、俺達は村長に」
戦士「魔導国に行けと言われたんです」
国王「今朝、この国にも通達が届きましたよ」
王子「……勇者様達が戻れば、速やかに魔導国に引き渡せ、とな」
勇者「!」
戦士「さもなくば港街への攻撃を開始する、と?」
国王「…… ……ええ」
魔法使い「鉱石を……奪った、んですね」
王子「そうだ。だが、あの石は……」
僧侶「……光の剣の修理を、鍛冶師の村の職人さん達にやらせてくれる、と言う」
僧侶「お約束だったそうです。守られるかどうかは……わかりませんけど」
国王「え……!?」
魔法使い「それに……鍛冶師の村から、昔、魔寄せの石を持ち帰ったと」
魔法使い「言っていました」
王子「!? ……インキュバスの魔石か!?」
勇者「あの魔石のおかげで、村には魔物が降りてこない」
勇者「伝説の聖職者が作るにしては……って、脅されたみたいです」
勇者「……伝承に残る聖職者様は、そのインキュバス、に間違いないのですよね?」
国王「……はい。インキュバスも、少年の手によって……殺されています」
僧侶「あれほどの……禍々しい気を放つ……魔族を、ですか……」
王子「見たのか?」
僧侶「いえ、近くまで言っただけです、でも……」
王子「……ああ。感じる、んだったな」
僧侶「……はい」
5801 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 17:52:52.94 ID:KTkYO8e1P
国王「……魔導国は何を……企んでいるのでしょう、か」
王子「勇者様を向かわせろ、と言う事は……」
王子「……否、しかし……」
魔法使い「魔石の力を引き出す……気では、無いでしょうか」
国王「そんな……ッ そんな事を、したら……!!」
勇者「……ちょっと待って下さい」
王子「え?」
勇者「もし、少年が剣士なら……彼が、魔王と言う事になるんでしょう?」
国王「……ッ」
勇者「で、でも……ええと、そうだ!魔法使い!ほら!」
魔法使い「え、え!?」
勇者「……鉱石を手に入れて、光の剣を修理して、剣士に持たせて、って奴だ!」
王子「何……?」
魔法使い「あ……! 魔王への捧げ物として……!」
戦士「魔族に、魔王に与する可能性……だな。しかし……」
僧侶「そ、そうですよ、仮説では無いですか!」
国王「……いえ、案外当たっているかもしれません」
国王「それが真実なら尚の事……勇者は、自分達の手の内に入れておく方が」
国王「……都合が良い」
王子「……ッ」
魔法使い「……剣士が魔族っていう可能性を、信じているとは思う」
魔法使い「だけど、少年が……剣士が、魔王である可能性については」
魔法使い「まだ、理解して居ない筈だわ!」
戦士「何故そう言い切れる?」
魔法使い「簡単よ。あの人達は『強きに弱く、弱きに強い』」
魔法使い「……世界を滅ぼすなんて噂の張本人って知ってたら」
魔法使い「こんな面倒な事、しないでさっさと全面戦争始めちゃうわ!」
僧侶「……だったら、今のうち、です」
勇者「僧侶?」
僧侶「……勇者様、魔導国へ行きましょう」
5811 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 17:58:46.38 ID:KTkYO8e1P
僧侶「利用するようで申し訳無いですが……」
僧侶「……魔法使いさんは、孫娘です。だから……」
魔法使い「そうね。私が居る限り、取りあえずは危害は加えない筈よ」
国王「ま、待ちなさい!そんな、貴方達に……!」
勇者「国王様」
国王「…… ……」
勇者「俺は、勇者です」
勇者「……魔王を倒すだけが、世界を救うことじゃありません」
王子「勇者様……」
戦士「どちらにせよ、魔導国に剣士……魔王かもしれない奴が居る以上」
僧侶「はい。私達が行くべき、です」
魔法使い「……決定ね」
国王「貴方達…… ……」
王子「……仕方無い」ハァ
国王「兄さん!?」
王子「ただし、もう少し準備を整えてから、だ」
王子「……魔導国も、明日にも攻撃を仕掛けてくる事は無いだろう」
王子「此処には、勇者様達がいるんだ」
戦士「しかし、港街は……」
国王「……あちらも大丈夫でしょう」
国王「此処に、確かに勇者達が戻ったと言うのは解っているんです」
国王「本気で急かしている訳でも無いはずですよ」
王子「……一度食事を挟んで、休憩しよう」
王子「用意をさせるから、部屋で待っていて下さい、勇者様」
勇者「あ……あの!」
王子「はい?」
5821 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 18:14:25.92 ID:KTkYO8e1P
勇者「……家に、戻ってみても良いでしょうか」
王子「それは……構いません、けど」
国王「……何も、手は着けていません」
国王「あの時の侭にしてあります……食事が済めば、皆で行かれては?」
魔法使い「そう……ね。勇者が良いなら」
勇者「うん。それは……勿論だ」
僧侶「あ、あの……国王様」
国王「何でしょう?」
僧侶「もし、宜しければ……もう少し、あの」
僧侶「……母の話を、聞かせて頂けませんでしょうか」
国王「ええ……それは構いませんけど」
僧侶「ありがとうございます!」
戦士「俺も同席して良いか?僧侶」
戦士「俺も……聞きたい事があります、叔父上」
僧侶「勿論です! ……一緒に、居て下さい。戦士さん」
王子「……俺は少し調べ物をしてこよう」
勇者「何処に……行かれるんですか?」
王子「登録所です……剣士の資料があった筈なので」
魔法使い「!」
王子「……随分古い登録だった様で、中々見つからなかったのですよ」
5831 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/12(木) 18:17:59.74 ID:KTkYO8e1P
お風呂とご飯!
584名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 20:10:07.17 ID:SipPGDcr0
俺も〜。
585!ninja:2013/09/12(木) 22:42:06.45 ID:TAKJ+rL50
何か色んな伏線が繋がり始めてる感じだな

おもしろいぞBBA
586名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 22:48:50.09 ID:BRHaobYQi
そして来る鬱エンド無限ループ

それだけはもう勘弁してスコーン(´;ω;`)ウゥゥ
587名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 23:28:23.41 ID:F0naaD0Z0
>>586
だいぶ逸れてきてるから大丈夫だと信じてる!
この世代ではダメでも青年の代までにはなんとかなると信じてる!









…信じたい!
588名も無き被検体774号+:2013/09/12(木) 23:49:26.49 ID:C5TQ5F+AO
願えば叶うんだぞ

鬱エンド回避を願おうぜ
589名も無き被検体774号+:2013/09/13(金) 00:44:24.84 ID:bjbWbpRui
良し!星に願おう!!

ゴールドもみじ…ゴールドもみじ…





ぎぇぇぇぇ〜〜〜〜?!(中国地方限定)
590名も無き被検体774号+:2013/09/13(金) 00:54:02.95 ID:ImSUrcpw0
ま、とりあえず、落ち着いて待とうぜ
成り行きは任せよう
5911 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 10:24:15.45 ID:aks3QNZ0P
おはようー!
お迎えまで!
5921 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 11:01:36.10 ID:aks3QNZ0P
魔法使い「そうね。私達が勇者に選ばれた時……剣士は、登録所に……」
王子「……一緒に行かれますか?」
勇者「良いんですか?」
王子「勇者様が宜しければ」
勇者「……はい。お願いします!」
魔法使い「あ、あの……私も、良いでしょうか」
王子「勿論だ……君には辛いかも知れないが、もう少し」
王子「詳しく聞かせて貰えると嬉しい」
魔法使い「……大丈夫です!」
国王「では、僧侶さんと戦士は、どうぞ此処に残って下さい」
王子「その前に……戦士、ちょっとこっちへ……」
王子「少しだけお待ち下さい、勇者様」スタスタ
戦士「?」スタスタ

僧侶「あ、あの……」
国王「はい?」
僧侶「盗賊様の知人のエルフの方、と言うのは……」
僧侶「この国の、あの丘の上の……?」
国王「ええ、そうです……行かれました、か?」
僧侶「いえ……エルフの加護、とあの近くの小さな街で聞いては居たのですが」
僧侶「……それほど、感じなかったので……」
国王「そうですか……私も詳しくは知らないのですが……」

魔法使い「そう言えば……剣士が、お爺様に何か頼んでいたのを覚えて居るわ」
勇者「頼んでた?」
魔法使い「ええ。内容までは分からなかったけど、その後に彼は」
魔法使い「街を出て行ったんだったと思う」
勇者「……うん。その辺も会わせて、騎士団長様にも話してみよう」

スタスタ
5931 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 11:10:05.89 ID:aks3QNZ0P
王子「お待たせしました……じゃあ、頼んだぞ、戦士」
戦士「ああ……すまん、僧侶」
僧侶「いいえ……」
国王「では、そちらはお任せしますよ、兄さん」
王子「ああ。では、行きましょうか」
勇者「はい」
魔法使い「はい!」

スタスタ、カチャ……パタン

国王「……兄さんは、なんて?」
戦士「叔父上は狙われているかもしれないから、と」
国王「……心配性だな」フゥ
僧侶「あの……狙われてる、と言うのは……」
国王「……この国を出てから、戻る迄……」
国王「そこら中に、魔導国の目があったのはご存じなのでは無いですか?」
僧侶「!」
国王「そういう事です。魔導国からの最初の要望は」
国王「……『王』は世界に一人で良い、との事でしたのでね」
戦士「さっき親父に……言われました」
僧侶「何故…… ……」
国王「王政を解いたところで、何が変わるとも思えませんけどね」
国王「……否、思いたい、ですね。驕ってはいけない……」
戦士「…… ……」
国王「戦士の聞きたい事は、女剣士様の事でしょう?」
戦士「……はい」
国王「順番に……ね。すみません、話の腰を折ってしまって」
僧侶「いいえ……」
国王「殺されてしまった、エルフの話……でしたね」
5941 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 11:45:59.32 ID:aks3QNZ0P
戦士「丘の上の墓……か」
国王「……エルフの青年であった、としか書いてはありませんでした」
国王「まだ廃墟だったこの大陸の、あの丘の上に埋葬したところ」
国王「どうやら、その加護のおかげで、この土地には」
国王「それ程、強い魔物も出ないのでは、と……」
僧侶「確かに……微かに、エルフの力を感じはします」
僧侶「ですが……随分古い様だし……」
国王「あまり力を感じなかった、と言っていましたね」
僧侶「はい。 ……関係無い事かも知れません、が」
国王「いえ……気になるのは当然だと思います」
僧侶「……はい」
戦士「俺は……行ったことがある、んですか?」
国王「ええ。小さい頃にね……兄さんが一緒だったかどうか迄」
国王「覚えては居ませんけど……女剣士様とね」
戦士「……そう、ですか」
僧侶「あのお墓には……エルフの青年さんと」
僧侶「娼婦様が眠っていらっしゃるんですね?」
国王「そうです」
戦士「娼婦、と言う人は……魔導の街から、お祖母様と少年に」
戦士「助け出された一人、なのですよね」
戦士「……もう一人、は?」
国王「少女さん、ですね」
国王「……残念ながら、名しか記されていないのですが……」
僧侶「あ、あの……」ゴソゴソ
戦士「……! 僧侶、それは……」
僧侶「ちゃ、ちゃんと戻すつもりなのですよ!?」
僧侶「……何となく、あの場所に置いておいては……行けない気がして」
国王「港街の教会の……ですか?」
僧侶「あ……そ、その……すみません!」
僧侶「今度、ちゃんと……!」
5951 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 12:15:45.51 ID:aks3QNZ0P
国王「…… ……」スッ、ギュ
戦士「……叔父上?」
国王「あ……ご免なさい、取り上げる様な真似をして」
僧侶「い、いいえ……」
国王「……見るのは初めてなのです」
戦士「?」
国王「これはね……お父様が作られたそうなのですよ」
僧侶「え?でも……鍛冶師様は……」
国王「仰りたいことは解ります。ですけど、元々手先の器用な方でしたからね」
国王「……港街の教会の神父様にお願いして、作らせてもらったのだと」
戦士「お爺様が……」
国王「僧侶さん」
僧侶「は、はい!」
国王「お父様がお作りになった物は、これと……もう一つあるのだと仰っていました」
僧侶「え?でもあの教会には……」
国王「ああ、いえ……もう一つは、随分と大きな物だそうで」
国王「どこかの愛好家に売り渡したのだと仰っていましたが……」
国王「それは、貴女のお母様……エルフの姫の姿を」
国王「模した物だと……思います」
僧侶「え!?」
戦士「確か……なのですか?」
国王「……絶対とは言い切れません、けど」
国王「昔の知人に、とても美しい人が居て」
国王「……この、ね。娼婦様の物を作る前に、一つ大きな物を作ったことがあるのだと」
戦士「しかし、それだけでは……」
国王「……ええ。ですが、この……お母様の残した本を読んで思ったのです」
国王「多分……間違い無いと思います」
僧侶「お母様の……」
5961 ◆Vwu55VjHc4Yj :2013/09/13(金) 12:20:16.02 ID:aks3QNZ0P
おひるごはーん
597名も無き被検体774号+:2013/09/13(金) 12:25:51.61 ID:bjbWbpRui
いてらー
5981 ◆Vwu55VjHc4Yj
ついでにお迎え!