2 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 01:30:10.97 ID:jq71RGhP0
3 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 01:30:52.41 ID:mP2SImALP
使用人「あ……」
側近「……最後なんだぜ、使用人ちゃん」
使用人「……」
側近「式が終わったら、魔王様はすぐに姫様とあの北の塔へ行くだろう」
側近「俺もついて行く。どうにか……魔王様を連れて帰って来ないとな」
使用人「……はい」
側近「多分、俺も一緒に……眠る事になるんだろう」
使用人「……」
側近「後は任せたぜ」
使用人「…… ……」
側近「返事は?」
使用人「……はい」
側近「ん。じゃあ、姫様の用意頼むな」
使用人「はい。でも……どうやって港街まで行くのです?」
側近「俺は魔王様と、ここから直接転移する。お前は転移石いくつか持って」
側近「……姫様と一緒に行け。お前は優秀だし」
側近「姫様を抱えて飛べるだろう」
使用人「……ッ 解りました。やってみます」
側近「大丈夫だ。ね……」
使用人「願えば、叶う。 ……すっかり、呪文みたいになりましたね」
側近「……そうだな。さて、姫様はもう寝てると思うし」
側近「使用人ちゃんも、今日はゆっくり休みなさい。あの馬鹿の相手は俺がするから」
使用人「……はい」
側近「使用人ちゃん」
使用人「はい?」
側近「泣くなよ?俺たちは泣いちゃいけない。悲しんじゃいけない」
使用人「……はい」
スタスタ、パタン
側近「悲しんじゃいけない、か……辛いね」
4 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 01:36:42.61 ID:mP2SImALP
魔王「おや、使用人は?」
側近「休ませたよ」
魔王「……そうか」
側近「無理すんな……顔色悪いぞ。お前ももう休めよ」
側近「本当に、ずっと手を繋いでなきゃいけない状況とか、俺厭だぜ」
魔王「私も厭だ」
側近「だから!」
魔王「……解っている。明後日、と言っていたな」
側近「ああ。港街から……北の塔か」
魔王「……」
側近「魔王様?」
魔王「お前は、良いのか」
側近「他にどうしろって言うの。言いも悪いも……選択権無いでしょうが」
魔王「……しかし」
側近「美しい世界を守りたい、んだろう?」
魔王「……」
側近「俺だって、ヤダよ。俺が拒否したから世界が滅びました、なんてさ」
魔王「滅んでしまえば何も無くなる。そんな事考えなくても良くなるんだぞ」
側近「いや、だからってな……」
魔王「……すまん」
側近「謝るな。お前の所為じゃネェさ」
魔王「しかし……親父も、祖父も……きちんと、跡継ぎを作ったのにな」
側近「……腐った世界の腐った不条理、断ち切るんだろ?」
魔王「……」
側近「勇者様が魔王を倒して、みんなハッピーになる世界」
魔王「果たして……それは、美しい世界、なのか?」
側近「……」
魔王「人間は、良いだろう。しかし……」
5 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 01:43:30.13 ID:mP2SImALP
側近「……考えても仕方ねぇ。俺たちにはこれしか方法が無い」
魔王「……」
側近「お前をそのままにすれば、世界は跡形も無く滅ぶ……かもしれない」
側近「勇者、てなもんに望みを託せば、世界は救われるかも、しれない」
側近「……どっちも、不確定な未知の世界だ」
魔王「……ああ」
側近「選べるのなら、どっちだ?後者なんだろ?」
側近「希望のある方を選ぶ、んだろう……なら、拒否権は無いさ」
側近「少なくとも、俺には……な」
魔王「……すまん」
側近「もう謝るな。ほら……休めよ」
側近「今暴走されるのが一番困るんだからな」
魔王「解ってる……お休み、側近」
側近「おう」
側近「……」
側近(腐った世界の腐った不条理、ね)
側近(……今の侭、ずっと続けば……否)
側近(もし、はあり得ない。魔王様に世継ぎが居ない以上)
側近(……この世界は、美しいのか?)
側近(本当に俺に、拒否権は無いのか?)
側近(勇者が、魔王を倒す……そんな世界)
側近(本当に……あるんだかな)フゥ
……
………
…………
船長「久しぶりだな、知人」
船長(相変わらず、花で一杯だな。どうして枯れないんだか……)
船長「エルフってのは……おかしな生き物だな」
船長「……悪いな。折角の式だ。殺風景じゃ、な……」プチ
船長(…… …… ……)プチ、プチ
6 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 01:50:01.33 ID:mP2SImALP
船長(水色の、花……小さくて可愛いな)プチ
船長(娼婦に……)プチ
船長「良し。もう……良いか」
船長(これ以上は持てないしな。船まで戻る間に、魔物に襲われちゃたまらネェ)
船長(ここらで引き上げるか)スタスタ
船長(……娼婦)
船長(……)ブンブン
船長「チッ ……らしくネェぜ」
船長「ん?」
海賊「オラ!怠けんな魔法使い!」
魔法使い「痛ェ!蹴らないでくれよ!」
海賊「サボってるからだろ!」
魔法使い「体力、体力が……」ブツブツ
女海賊「おい!あっちの掃除は終わったぞ!」
海賊「じゃあ、こいつ手伝え!」
女海賊「……お前、まだやってたのか!?」
魔法使い「うるさい!」
船長「…… ……」
船長(何言われるかわからん。声かけるのはやめとくか)
海賊「お、船長おかえりなさ…… ……」
船長「……似合わネェのは解ってら!」
海賊「あ、いえ、その……いえ」プフ
船長「……ッ さっさと船出せ!」
海賊「あ、アイアイサー!」
7 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 01:58:41.56 ID:mP2SImALP
……
………
…………
神父「ああ、お帰りなさい盗賊さん……鍛冶師さんも一緒ですか」
盗賊「悪いな、神父さん遅くなっちまって……」
神父「いえいえ。大丈夫ですよ」
鍛冶師「娼婦ちゃんは……どうだい?」
神父「今はぐっすり休まれていますよ」
盗賊「そっか……良かった」
神父「もう夜も更けましたし……私は、これで」
盗賊「うん。ありがとう……神父さん」
神父「いいえ……では、おやすみなさい」
パタン
鍛冶師「……本当だね。ぐっすり眠ってるみたいだ」
盗賊「あの魔除けの石作ってから急に、な……体調、崩したからさ」
鍛冶師「魔除けの石?」
盗賊「……魔王の魔力の暴走、だっけ。なんだっけな」
盗賊「何しか、押さえる為に、って……」
鍛冶師「娼婦ちゃんは、魔王が好きなんだよね」
盗賊「ああ」
鍛冶師「……勇者様、だもんな。解らなくは無いけど」
盗賊「……」
鍛冶師「女剣士も、側近が好きだって言ってたし」
盗賊「……吃驚したぜ」
鍛冶師「そっちの話の方が吃驚したよ」
鍛冶師「ある程度、さ。聞いてたけど……」
盗賊「……知りすぎだ。俺たち」
鍛冶師「え?」
8 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:03:27.83 ID:mP2SImALP
盗賊「そりゃ、一番最初に首突っ込んじまったの、俺なんだけどさ」
鍛冶師「……」
盗賊「知らない方が、幸せって事だってある、んだな」
盗賊「……いや。使用人にも言われたよ。もし、とか。あの時……とか」
盗賊「考えても仕方無いんだ、ってさ」
鍛冶師「そう、だね」
盗賊「……なあ」
鍛冶師「ん?」
盗賊「お前、もう家は決めたのか?」
鍛冶師「ああ、ううん……荷物はありがたくここに置かして貰ってるけど」
鍛冶師「当分はまだ宿暮らしだな」
盗賊「金が貯まる迄?」
鍛冶師「……いや、うーんと」
盗賊「?」
鍛冶師「あの、さ。船長から聞いたんだけど」
盗賊「ん?」
鍛冶師「……町長にはならない、んだって?」
盗賊「ああ……そりゃな。俺、そんな器じゃネェもん」
盗賊「今はどうしようも無いから俺がやってるけど」
盗賊「落ち着いたら、きちんと町長選出してさ」
盗賊「……やっと、元の生活に……あ!」
鍛冶師「?」
盗賊「も、もう盗賊まがいの事はやんねーよ!?」
鍛冶師「ああ……それは心配してないよ」
鍛冶師「えーとね……」
盗賊「?」
9 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:09:03.92 ID:mP2SImALP
鍛冶師「……僕、さ。この街、気に入ってる」
鍛冶師「盗賊が居るからってのもあるけど、前も言った様に、さ」
鍛冶師「本当に、振られても此処には住もうと思ってたし」
盗賊「う、うん」
鍛冶師「……あの。さ」
盗賊「何だよ!ハッキリ言えよ!」
鍛冶師「……落ち着いたら、で良い」
鍛冶師「僕と、始まりの街に……引っ越さない?」
盗賊「…… ……はぁ!?」
鍛冶師「船長が言ってただろう。いずれ、あそこの街も。城も……って」
盗賊「だ、だからって……何で!?」
鍛冶師「盗賊がこの街に思い入れがあるのは解ってるよ。念願叶った、んだろうし」
鍛冶師「でも……その、姫?さんだっけ。その、子供のためにもさ」
鍛冶師「……知人も、眠ってるんだろう?」
盗賊「!」
鍛冶師「彼の墓も、守っていかなければならないだろう」
鍛冶師「も、勿論、僕個人でどうにか出来る話じゃないけどさ!」
鍛冶師「盗賊の行動力があれば、何とか出来ると思うんだ!」
鍛冶師「……いきなり住むとか、そんな事は決めなくて良い」
鍛冶師「でも……そうだな。一度、一緒に行きたい」
盗賊「鍛冶師……」
鍛冶師「清浄な土地、なんだろう。単純に興味もある。隠さずに言うよ」
盗賊「……うん」
鍛冶師「な、なんか先走って一杯言っちゃったけど」
鍛冶師「……落ち着いたら、一緒に行こう?すぐ近くだし、さ」
盗賊「うん……解った」
10 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:15:44.39 ID:mP2SImALP
鍛冶師「ありがとう……」ホッ
鍛冶師「じゃ、じゃあ帰るね。あんまり騒いだら、アレだし」
盗賊「あ、ああ……そう、だな」
鍛冶師「……ありがとう、盗賊」
盗賊「何がだよ」
鍛冶師「大好きだよ」チュ
盗賊「あ、な、なな……ッ」カァ
鍛冶師「そ、そんな吃驚しないでしょ。ほっぺじゃん」
盗賊「……お、おや、おやすみ……ッ」ギュ
鍛冶師「お、あ、うん!」ギュ
盗賊「……」ジィ
鍛冶師「……」ジィ……チュ
盗賊「……ッ ……ン」
鍛冶師「また、明日」
盗賊「うん……」
パタン
盗賊「……」カァッ
盗賊(ちゅ、ちゅーしちゃった……ッ !!)
……
………
…………
神父「おや、おはよう御座います……早いですね、船長さん」
船長「おう。これを、な」
神父「これは……見事な。どこで摘んでいらしたのです」
船長「ちょっと……な。明日まで位なら持つか?」
神父「ええ……大丈夫、でしょう。多分」
11 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:22:54.86 ID:mP2SImALP
船長「そうか……後、これ」
神父「……これは?」
船長「娼婦に。見舞い……だ」
神父「ご自分でお渡しになれば良いのに……」
船長「色々とやる事があるんだよ。それに……ガラじゃネェよ」
神父「……良いのですか?」
船長「何が、だい」
神父「……いえ」
船長「言ったろ。ガラじゃネェのさ」
神父「……」
船長「あいつの……心の中には、魔王しかない」
船長「……勇者様、には勝てネェよ」スタスタ
神父「……」
パタン
神父「神よ……」スッ
神父「どうぞ。光へと、お導きください……!」
……
………
…………
女剣士「おーい!船長!」
船長「あん? ……ああ、何だ女剣士か」
女剣士「教会の方はどうだった?」
船長「ああ……まあ、後は新郎新婦の到着を待つだけだろ」
女剣士「……ッ そうか……」
船長「お前は嬉しそうだな」
女剣士「……魔王と、姫……だったか。話は聞いた。さらっとだけど」
船長「……」
女剣士「喜んじゃいけないのか……な」
船長「良いんじゃネェの。脳筋なんだし」
女剣士「……やめてくれ」
船長「会いたかったんだろ? ……別に、自分の気持ち押しとどめる必要ねぇだろ」
船長「それに、めでテェ席だ」
女剣士「……ああ。そうだな」
船長「じゃあな。俺は船に戻る」
女剣士「あ、盗賊か鍛冶師知らないか?」
船長「しらねぇよ。街の中探し回ったら居るんじゃネェ?」スタスタ
女剣士「……なんだ、機嫌悪いな」
12 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:28:43.85 ID:mP2SImALP
女剣士(明日、とうとう……側近に会える……!)
女剣士(……どうしよう、今から緊張してきた)
女剣士「やる事も一段落したし……素振りでも……ん?」
盗賊「あ、女剣士!鍛冶師見なかったか?」
女剣士「いや、見てないな」
盗賊「そうか……」
女剣士「ラブラブ、て奴か」
盗賊「な、何いってんだ!そんなんじゃ……!」
女剣士「……良いなぁ」
盗賊「明日……会えるじゃネェか」
女剣士「まあ、な。だけど……」
盗賊「……」
女剣士「世の中って、旨く行かないものだな」
盗賊「え?」
女剣士「……望み通りには行かないな、と思って」
盗賊「……願えば、叶う」
女剣士「……」
盗賊「会える、だろ?」
女剣士「ああ……だけど」
盗賊「だけど?」
女剣士「……いや。会えるだけでも良いと思わないとな」
女剣士「魔王と、姫は……」
盗賊「あれも……愛の形なのかな」
女剣士「え?夫婦なんだろ? ……あ、夫婦になる、か」
盗賊「まあ、そうなんだけどな」
女剣士「……やっぱ落ち着かない」
盗賊「え?」
女剣士「ちょっと素振りしてくる!昼過ぎには戻るよ!」タタタ……ッ
盗賊「あ、ちょっと!? ……ああ。もう」
13 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:34:25.06 ID:mP2SImALP
盗賊「鍛冶師も居ないし……どうするかな」
街の人「あ、いた、盗賊ー!」
盗賊「ん?はーい!」
街の人「あっちの住居の件なんだけど……」
……
………
…………
鍛冶師「お、船長おかえり」
船長「鍛冶師? ……なんだ、どうした」
鍛冶師「……あれ、どうよ。あの小鳥」
船長「ああ。初めてにしちゃ上出来だぜ。やっぱり器用なんだな、お前」
鍛冶師「前にさ、緑の羽の小鳥を見ただろう」
船長「ああ……使用人の小鳥な」
鍛冶師「そうそう。あれ思い出してね」
船長「なんだ。態々感想聞きに来たのか?」
鍛冶師「まさか……昨日、さ。盗賊に始まりの街の事話したんだ」
船長「……おう」
鍛冶師「取りあえず、落ち着いたら……さ」
鍛冶師「一度、二人で始まりの大陸に行きたいんだけど」
船長「そうか……で、乗せてけ、て?」
鍛冶師「定期便が出てたら別に良いんだけどね」
船長「そうだな……俺も、落ち着いたら暫くは戻らネェつもりだ」
鍛冶師「え!?」
船長「……俺はそもそも海賊だぜ?」
鍛冶師「そ、そうだけど……」
船長「落ち着いたら……な」
鍛冶師「そう、か……」
14 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:43:07.97 ID:mP2SImALP
船長「タイミングが合えば連れて行ってやるよ」
鍛冶師「ああ……ありがとう」
船長「それだけか?」
鍛冶師「あの二人は?」
船長「魔法使いと女海賊か……ずっと海賊共にこき使われてるよ」
船長「暫くして音を上げりゃ、放り出すまでさ」
鍛冶師「そっか…… ……」
船長「何だ?」
鍛冶師「……いや。そろそろ戻るよ。日が暮れちゃったら何も出来なくなっちゃう」
船長「ああ。明日は……早いだろうしな」
鍛冶師「……そう、だね。でも僕まで行って良いのかな」
船長「女剣士も来る気満々だし、良いんじゃネェの」
鍛冶師「そ、そっか……」
船長「じゃあ、また明日な」
鍛冶師「うん。あ……教会のお花、綺麗だったよ」パタン
船長「……神父さんめ、喋りやがったな」
……
………
…………
姫(『「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」』)
姫(『はい。少年は、小さく相づちを落とす。王はそれに気がついたのか否か』)
姫(『先ほどと同じ口調で、少年へと問いを向ける』)
姫(『「今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?」一気にそう告げると、王様は』)
姫(『満足そうに一つ、フン、と鼻を鳴らした。大きく迫り出した腹が、一回り大きく、上下した』)
姫(『少年はその恰幅の良い腹から、たっぷりの間を持ってゆっくりと王様の双眸へと視線を投げる』)
姫(『金の視線が、王様の円らな瞳を射貫く。少年は、ゆっくりと頷いた』)
15 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:51:46.96 ID:mP2SImALP
姫(『「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」 』)
姫(『少年は己が手のひらに刻まれた、剣十字の印をぐう、と握りしめる』)
姫(『王様は、うむ、と大きく、ゆっくりと皇帝の頷きを見せ、スゥと息を吸い込んだ』)
姫(『「……頼んだぞ、選ばれし者よ!」』)
使用人「姫様、出来ましたよ」
姫「ああ……ありがとう………」
使用人「……とても、お綺麗です」
姫「もう……行くのね」
使用人「はい。こちらの転移の気配を感じれば、魔王様達も飛ぶと仰ってました」
使用人「……本、お預かりしてよろしいですか」
姫「結局、殆ど読めなかったわ」
使用人「……そう、ですか」
姫「ええ……熱出しちゃったしね。勇者が旅立とうってとこまで」
姫「本当に、ほんの数ページよ」
使用人「仕方ありません……残念、ですけど」
姫「良いの。随分我が儘ばかり言ったもの」
姫「……これぐらい、良いのよ」
使用人「……魔除けの石は、お持ちになりましたか?」
姫「ええ。大丈夫」
使用人「では、掴まってください……行きます」
シュゥン……!
……
………
…………
魔王「……行った、な」
側近「お前本当にその恰好で行くの」
魔王「勇者っぽいか?」
側近「いや、全然。どう見ても魔王にしか見えない」
魔王「……白金の鎧は無かったからな」
側近「あの真っ黒けの奴は辞めて!まだそのズルズルローブの方がマシ!」
魔王「どっちもどっちなんだろ」
側近「まあ、そうだけども」
16 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 02:54:53.11 ID:mP2SImALP
魔王「……私の剣は持ったか」
側近「ああ、此処にある」
魔王「良し……行こう、か」
側近「……おう」
魔王「……すまんな」
側近「もう良いって。もう謝るな」
魔王「……」
シュゥン
……オェ……
……
………
…………
スタッ
使用人「……姫様」
姫「うぅ……」
使用人「大丈夫ですか?」
姫「……平気。少し、酔った、かしら」
使用人「側近様みたいですね」
スタッ
魔王「……久しいな、姫」
姫「魔王……」
側近「……うぇぇ」
使用人「ムードが台無しです。側近様」
側近「悪かったね……!」
17 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 02:56:51.16 ID:VoK6Y/gN0
急速につまらなくなってきた
さっさと終わらせろBBA
18 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:00:28.64 ID:mP2SImALP
使用人「教会はあちらです」
使用人「側近様、私達は後ろから……」
側近「ああ……なんか、俺こんな禍々しい剣持って」
側近「不審者みたいじゃ無いか……」
魔王「気にするな……姫、手を」
姫「ええ……」ギュ
魔王「大丈夫だ。娼婦の石はちゃんと持っている」
姫「……平気よ」
スタスタ……
ワアアアアアアアアアアア……ッ
盗賊「魔王!姫!」タタタ
姫「盗賊!久しぶり!」
魔王「積もる話は後で……だ。時間があるかは解らんが」
盗賊「……教会の中に皆居るよ。ほら、行って行って!」
キィ……パタン
姫「……まあ、お花が、一杯……!」
魔王「綺麗だな……」
コツコツ……
神父「どうぞ、前へ……」
魔王「魔除けの石を作った神父……か」
神父「粗方の事情は聞いています。言葉は必要無いでしょう」
神父「……お祈りなさい、お二人で」
姫「……ありがとう」
神父「祈りが終われば、顔をお上げなさい」
19 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:05:41.93 ID:mP2SImALP
魔王「……」
姫「……」
神父「……二人を、夫婦と認めます」
盗賊「姫……良かった……!?」
鍛冶師「盗賊、どうした?」
盗賊「……花、が」
鍛冶師(急速に、枯れてる……!?)
鍛冶師(これが……魔王の魔力……!?)
姫「ありがとう、神父さん」
神父「……いいえ。では、どうぞご退場ください」
魔王「無茶を言ったな」
神父「……表で、娼婦が待っています。会って差し上げてください」
魔王「大丈夫、なのか」
神父「……」
魔王「…… ……側近、来い」
側近「ああ」
姫「……」
使用人「姫様はこちらへ」
姫「ええ」
パタパタ
女剣士「側近!」
側近「ん……え、お、女剣士!?何で、お前……!」
使用人「……女剣士さん。申し訳ありませんが」
女剣士「ちょ、ちょっと……!折角会えたのに……!」
使用人「時間がありません」ガシ
姫「……この人、は?」
使用人「……」
20 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:10:28.90 ID:mP2SImALP
……
………
…………
魔王「久しぶりだな、娼婦」
娼婦「魔王様……お久しぶりです」
魔王(さらに痩せた、な……足下もふらついている)
側近「俺はここに居るけど……あっち向いてるから」フイ
娼婦「良かった、です。最後に会えて……」
魔王「最後、等と……」
娼婦「……いいえ」
魔王「……」
娼婦「不思議、ですね。お会いしたらアレを話そう……これを話そうって」
娼婦「考えてたのに……何も、出て来ません」
魔王「無理して話さなくて良いんだぞ。何時でも……また……」
娼婦「……お料理、教えて貰う約束、果たせませんでした」
魔王「……」
娼婦「……魔王様」
魔王「ん……」
娼婦「最後の最後で、役に立てたなら良かったです」
魔王「だから、お前……」
娼婦「……魔王様。好きでした」
魔王「……」
娼婦「愛し……て…… ま、す……」ニコ
魔王「娼婦……ッ」
側近「……」
魔王「……」
21 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:15:15.73 ID:mP2SImALP
側近「神父……呼んでくるか?」
魔王「……お前は、離れるな」
側近「…… ……ほら、手貸せよ」
魔王「……」ギュ
……
………
…………
女剣士「離せよ、離して! ……側近と、話を……ッ」
使用人「聞き分けてください、女剣士さん!今は、駄目です!」
姫「……何なの、この人……」
盗賊「お、おいどうしたんだよ!」
鍛冶師「女剣士!?」
使用人「……姫様、魔王様が戻られました」
女剣士「側近!」
側近「……構ってやれねぇよ、今は」
魔王「行くぞ、姫」
鍛冶師「女剣士、こら!」
シュゥン……!
女剣士「側近!」
船長「おいおいおいおい!何の騒ぎだよ……!」
鍛冶師「あ、船長……!」
女剣士「うわあああああッ」
盗賊「……俺見てるから、鍛冶師と船長、あっち」
鍛冶師「……ああ」
船長「な、なんで女剣士は泣いてるんだ?」
鍛冶師「側近が、行っちゃった……から?」
船長「……糞ガキが」
鍛冶師「仕方無い……けど、ね」
22 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:22:01.21 ID:mP2SImALP
船長「それより、娼婦は?」
鍛冶師「あ、さっき……魔王と向こうに」
鍛冶師「……そっとしておいてあげたら。神父さんが様子見に行ったみたいだし」
船長「そうか……」
鍛冶師「それより、さ……凄いね。魔王って」
船長「……花、か?」
鍛冶師「気付いてた?」
船長「そりゃな……見た目は何も変わってネェのにな」
鍛冶師「僕は初めて会ったけど……人間と何も変わらないんだね」
船長「そう……だな」
鍛冶師「……側近、て人が持ってたの何だったの?」
船長「ぼろぼろの剣みたいなの握ってたな」
鍛冶師「やっぱり剣に見えたよね」
船長「……いきなり目の色変わったな、お前は」
鍛冶師「じっくり見せて貰いたいけどさ」
鍛冶師「……それも、もう叶わないかな」
船長「さあ、な」
……
………
…………
盗賊「いい加減にしろよ!」
女剣士「だ、だって……だって……!折角、折角会えた、のに……!」
盗賊「お前な、状況解ってるんだろ!?」
女剣士「……わかって、る、けど……ッ」
盗賊「……使用人に言われてたんだろ。聞いてたんだろ!?」
盗賊「子供みたいな事、すんなよ……」
女剣士「も、もう……戻って、こない、の……か、なぁ!?」
盗賊「しらねぇよ……」
女剣士「側近……ッ」ウワアアァ
23 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:26:30.60 ID:mP2SImALP
……
………
…………
神父「……娼婦、さん」
神父(悔いの無い顔、されていらっしゃるのが……唯一の救いですね)
神父「お疲れ様でした。どうぞ、安らかに……」
神父(……昨日、船長さんに頂いたお花……枯れてる)
神父「……神よ。どうぞ、光の導きを……ッ」
神父「皆に……話さなければなりません、ね」ガシ……ヒョイ
神父(軽い……力を失っていれば、重く感じる筈なのに)
……
………
…………
北の塔
シュゥン……スタ!
魔王「姫」
姫「……あ、待って、魔王!」
側近「おぅえぇ ……」
使用人「側近様、シッ」
姫「……」カチャカチャ……ス
魔王「これは……」
姫「貴方が、私にくれたペンダントよ」
24 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:32:01.86 ID:mP2SImALP
魔王「……しかし」
姫「今……解放するわ」
使用人「解放?」
姫「元はエルフの力でしょう。大丈夫……」グッ
パァアア……
魔王「……む」
側近「ん……」
姫「ちょっと息苦しいかもしれないわね」
使用人「……凄い」
姫「……これで、もうそれは……ただのペンダントに戻ったわ」
魔王「姫、しかし……」
姫「良いの。その代わり……娼婦のその石を、頂戴」
魔王「これを、か?」
姫「ええ。娼婦の愛が詰まってるのでしょう?」
姫「魔王が私の無事を願ってくれるのならば」
姫「……きっと、効果があるわ」
魔王「そうか……そう、だな」
姫「……魔王」
魔王「何だ」
姫「今まで、ありがとう。我が儘ばかりで……ごめんなさい」
魔王「……良いさ。楽しかった」
姫「私もよ」
魔王「美しい世界で、美しい子供を産んでくれ」
姫「……魔王」
魔王「……」
姫「貴方は、れっきとした『勇者』だわ」
魔王「姫……」
姫「魔王でもあり、勇者でもある」
姫「……ありがとう」
魔王「……おやすみ、姫」ス……
姫「……」スゥ
25 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:35:40.66 ID:mP2SImALP
魔王「……」
側近「……魔王様、済んだのなら……行こう」
使用人「ええ……何だか、息苦しいです」
魔王「……ぅ、う……」
側近「!? 魔王様!」
魔王「だい、丈夫……だ……ッ」
使用人「側近様、魔王様を、支えて……ッ」
魔王「……ッ」
シュゥン……ッ
スタ……ッ
魔王「……側近、済まない、私の……剣、を」
側近「あ、ああ!大丈夫だ。持ってる!」
側近「……使用人、早く外に出ろ!」
使用人「あ、は……はい!」バタバタ……ッバタン
側近「早く閉めて!」
魔王「側近」
側近「んァ!?」
ドンッ
側近「うわ……ッ」ゴロゴロ……ッ
使用人「……ッ 側近様!?」
バターン!
側近「!!」
側近「魔王様!魔王様!」ドンドン!
26 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:39:15.64 ID:mP2SImALP
魔王「……扉は封印した」
魔王「眠るのは私だけで良い……もし、私に何かあった時」
魔王「……その剣と、その目で……頼んだぞ、側近」
側近「魔王様!」ドン!
側近「こら、お前……ッふざけんな!開けろよ!糞!」ドンドン!
側近「いっつもいっつも……ッ 面倒事ばっか、押しつけやがって……ッ」ドン!
使用人「そ、側近様!手、血が……ッ」
側近「……魔王様!お前……ッ 最初っからそのつもりだったのか!」
側近「魔王様!!」ドン!
側近「……ち、くしょう……ッ 結局、俺は……また、お前のおもり、かよ……!」
使用人「……魔王様……」
側近「ナァにが、頼んだぞ、側近、だ!」ドン!
側近「……糞、馬鹿野郎……!!」
使用人「……」
27 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 03:40:09.30 ID:mP2SImALP
28 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 06:05:47.34 ID:erNouLn8i
おもしろっ
BBAの絵は天野喜孝みたいだなww
おはよう!
なんか船長も姫も娼婦も魔王も切なすぎる…
朝から泣いちまったじゃないか
BBAは無理せずに書いてくれよ
残りの人生読み続けたいので終わらせて欲しくない
30 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 12:41:41.67 ID:1jYwB+VT0
拒否権はないの世界とそれほど時代は離れてないな
出てきた登場人物的に
>>1はホリック読んでるだろww
31 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/02(日) 12:59:27.56 ID:mP2SImALP
おはよー!
幼女に拘束されてるorz
>>30 ホリックってクランプだっけ?
読んだ事ないなぁ
最近あんまり漫画読んでないや。
32 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 13:30:25.31 ID:1jYwB+VT0
>>31 あれww
色々被り過ぎてるから、絶対読んでると思ったwwww
33 :
◆4IVIhA2Og9cW :2013/06/02(日) 22:59:34.68 ID:bT2sHpXMP
34 :
名も無き被検体774号+:2013/06/02(日) 23:02:27.31 ID:BJ/DzLYm0
35 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 00:08:59.14 ID:DgbcVOHP0
36 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 00:47:15.54 ID:I16/h8P90
>>33 クソ下手なボケはすっこんでろカス
お前のオナニーのせいで台無しじゃボケ
37 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 01:34:52.28 ID:6f6qWtpq0
それが好きな読み物スレに書き込む言葉かよ……何のための酉だと。
39 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 07:22:59.75 ID:2qG44Jc9P
おはよー!
幼女放り込んだらつづきー!
>>33 すげぇえー( ゚д゚)
側近が強そう(笑)
何時もありがと!
40 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 07:40:00.24 ID:6f6qWtpq0
待ってるよ!
41 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 09:37:49.06 ID:2qG44Jc9P
側近「……」ドサッ
使用人「側近様!?」
側近「心配すんな……俺は何とも無い……ッ」
使用人「……」ガチャガチャ
側近「封印した、って言ってたろ……開かネェよ……ッ!?」パリンッ
使用人「!?」
側近「……割れた!?」
使用人「魔王様の剣……ッ あ……」
側近「違う。剣は無事だ……ぼろぼろだけどな。アレから変わっちゃ居ない」
使用人「……魔除けの石、ですね」スタスタ
使用人(全部……紫に染まって……!?)ボロボロ
使用人(持ったら、崩れる……)
側近「……使用人ちゃん」
使用人「はい」
側近「魔除けの石を集めて破棄しよう。もう……必要無い」
使用人「……私がやります。側近様は休んでてください」
側近「……」
使用人「貴方は、魔王様の目をお持ちです。どうかご無理なさらず」
側近「……悪い」
使用人「ついでに、姫様のお部屋を片付けて参ります」
使用人「…… ……失礼します」スタスタ
カチャ……パタン
側近「……ッ」ドンッ
側近「馬鹿、野郎ぉ……ッ ……ッ」
……
………
…………
神父「……」スタスタ
盗賊「あ、神父さ……ッ !? 娼婦、どうした!?」
神父「……お眠りに、なりましたよ」
盗賊「え……?」
神父「……」チラ
神父「船長さんと、鍛冶師さんは?」
盗賊「あ、ああ……あっちに……」
女剣士「……」
神父「呼んできてください……女剣士さんはどうされたのです」
盗賊「……こいつは、放っとけ」スタスタ
42 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 09:50:23.14 ID:2qG44Jc9P
女剣士「……」
神父「褒められた態度ではありませんよ、女剣士さん」
女剣士「……」
神父「……」ハァ
神父「気持ちは解ってあげたいですが……」
女剣士「……」クル、スタスタ
神父「何処へ……?」
女剣士「頭、冷やしてくる」スタスタ
神父「……」
盗賊「神父さん!」タタタ
鍛冶師「娼婦ちゃん、寝ちゃったって?」
船長「疲れたんだろ……!?」
神父「……」
船長「…… ……」
鍛冶師「え、何…… ……ッ!!」
盗賊「……な、何だよ!寝てるだけなんだろ!?神父さん、早く……ッ」
神父「…… ……」
船長「……この、花」
神父「貴方がお見舞いにと持ってきてくれた物です。船長さん」
船長「枯れてる、な」
神父「……教会のも全て、枯れてしまっているでしょう」
鍛冶師「……見てきたの?」
神父「いいえ……ですが」
盗賊「おい!聞けよ、娼婦を早く……!」
船長「神父、娼婦をこっちに」
神父「え?ええ……」ス…
船長「……」ギュ… スタスタ
船長「着いて来い。船を出す」
鍛冶師「……」
盗賊「船長!せんちょ……!」
鍛冶師「盗賊」ギュ
盗賊「嘘だろ!?娼婦、娼婦……!?」
43 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 10:08:39.60 ID:2qG44Jc9P
神父「……何処へ行くのです?」
船長「このままにはしておけないだろ」
神父「……」
鍛冶師「盗賊……」
盗賊「……ッ う、ぅ……ッ」ボロボロ
船長「乗れ」スタスタ
盗賊「ど、こ……ッい、くん……ッ だ、よ……ッ」
鍛冶師「……鼻拭いて、ほら」
神父「私もよろしいのですか」
船長「当然だろ」スタスタ
船長「……おい!船出せ!」
魔法使い「え、出港? ……! え、え!?」
女海賊「おいコラ!魔法使いお前…… あれ、何だよ大勢で」
魔法使い「!?」チラ、チラ
魔法使い「……えええええええええええ!?」
神父「こ、れは……」
盗賊「……しょ、 …うふ……に、そっくり……?」
女海賊「あン? ……前もそっちの兄ちゃんに言われたな」
女海賊「……寝顔は自分じゃわかんねぇけど、確かに似てらァな」
船長「油売ってネェでさっさと働け!」
魔法使い「あ、あいあいさー!?」
女海賊「あいよ……何処向かうんだ」
船長「……始まりの大陸だ」
つーか、BBAの絵に驚嘆したわw、やるなぁ
45 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 10:14:50.51 ID:2qG44Jc9P
……
………
…………
使用人「……ふぅ」
使用人(集めるとは言っても、全てぼろぼろに……あの、神父さん)
使用人(確かに、徳の高い聖職者だったろうに)
使用人「……姫様」
使用人(…… ……)
カチャ
使用人「……?」
側近「使用人ちゃん」
使用人「ああ、側近様……大丈夫なのですか」
側近「何ともネェよ……終わったか?」
使用人「掃除は……終わりましたよ」
側近「この侭にしておくのか?」
使用人「……私と、側近様しか居ませんからね」
使用人「どちらでも……支障はありませんし」
側近「……そうか」
使用人「どうされました?」
側近「少し、話をしようかと思ってな」
使用人「何のお話、です?」
側近「……昔話だ」
使用人「?」
側近「茶の用意しとくよ。フランボワーズ、好きか?」
使用人「え、ええ……まあ」
側近「そうか」
使用人「……側近様が作られたのですか?」
側近「まあ」
使用人「……胃薬、持って行きます」
側近「酷い!」
使用人「冗談ですよ……あ、側近様、これお願いしても良いですか」
46 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 10:16:23.03 ID:2qG44Jc9P
>>44 全部同じ顔になるよwww
アンパンマンとかなら上手よ!www
ありがと。はずかちぃわwww
47 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 10:25:25.63 ID:2qG44Jc9P
側近「ん?ああ……別に良いけど」
使用人「姫様が途中まで読んでらしたんですが……」
側近「……これ、あれか。前後編でばらばらになってた奴」
使用人「ええ。書庫に戻しておいて貰えます?」
側近「……ああ。忘れてたな」
使用人「はい?」
側近「何でもネェ。んじゃ、食堂で待ってるぜ」
使用人「はい。片づけたらすぐに行きます」
カチャ……パタン
側近(約束……したな)
側近(神父と、娼婦……に、貸すって)
側近(…… ……)スタスタ。カチャ
側近「……随分綺麗になってるなぁ」
側近「えーと……ここか」トン、ストン
側近「……」ス、パラパラ……
側近「だから、なんで勇者が魔王を倒すお話が魔王城にあるんだよ」ハァ
側近「……」ストン
側近「昔話、か」ハァ
……
………
…………
船長「……終わったか?」
盗賊「もうちょっとだよ。てか、船長も……!」
鍛冶師「盗賊……僕たちだけで良いだろ?そっと……しといてあげなよ」
魔法使い「珍しく、呼んで、くれたと、おも……ッた、ら……ッ」ハァ
女海賊「喋ってないで掘れ!手、動かせ魔法使い……ッ」
女海賊「って、土かけんなあ!」
神父「……安らかな顔、でしょう。船長さん」
船長「……ああ」
神父「最後に、娼婦さんの願いは叶いました。だから……」
神父「……泣かないで、あげてください」
船長「泣いてネェよ、阿呆…… ……出ネェよ。涙なんて」
神父「……」
船長「そういうのは、盗賊に任せておけばいいんだ」
48 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 10:28:32.05 ID:2qG44Jc9P
お買い物いってきまー
幼稚園から帰ったら今日はチョコレートケーキ作るんだと
49 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 12:09:33.23 ID:2qG44Jc9P
盗賊「おい、女海賊!花無茶苦茶にすんなよ……良し!」
盗賊「……良いだろう、神父さん!」
神父「はい……さ、船長さん」
船長「ああ……」ヒョイ
船長「……土、冷たくネェかな」トン
神父「大丈夫です。それに……ここには、エルフの加護もあるのでしょう」
神父「知人さんの……」
盗賊「姫が殆ど持って行ったけどな。それでも……知人は、此処にいるんだ」
船長「知人の時も……こんな事、やったな。鍛冶師、スコップ貸せ」
盗賊「あ、ああ……でも……」
船長「……こんなに、花はは無かったけどな」ドサ、ドサ
神父「……」
鍛冶師「ほら、盗賊も……」
盗賊「……」ドサ、ドサ
魔法使い「はあ、はぁ……」グッタリ
女海賊「情けネェなあお前は」
魔法使い「俺は、こう、いうの……向け、じゃ、ない……の……」
神父「……それぐらいで、よろしいでしょう」
神父「娼婦さん。此処だと……寂しくないでしょう」
盗賊「娼婦……」グス
鍛冶師「……」ギュ
船長「お疲れ、さん……」
神父「神よ……どうぞ、娼婦さんに永遠の安らぎを……」
船長「……良し、戻るぞ」
魔法使い「キュ、休憩とか……」
女海賊「ちょっと黙っとけお前……」
船長「神父さん」
神父「はい」
船長「俺はこのまま、南に行く」
神父「南、ですか……港街には、寄られない、ので?」
船長「……ああ。仲間の船が一隻、一緒に来ただろう」
船長「定期便の運びは説明してある」
50 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 12:16:44.79 ID:2qG44Jc9P
神父「……そうですか」
船長「送っていったら、そのまま発つわ」
盗賊「……もう行っちゃうのか」
鍛冶師「……」
船長「物資は定期的に届けるさ。盗賊、今のところ足りてるだろう?」
盗賊「それはそうだけど……寂しくなるな」
船長「俺は元々海の男だ。仕方ねぇだろ」
神父「南へ行って……何をされるのです?」
船長「珍しいモンでもあれば、一儲けできるだろ?」
船長「……ま、適当、だな」
神父「そうですか。くれぐれもお気をつけて」
船長「おう……さ、急ごう。陽が落ちる前には出発してぇしな」
……
………
…………
女剣士「…… ……」
女剣士(……解ってる。あんな事、するつもりじゃ無かったのに)
女剣士(側近……もう、会えないのか)
女剣士(…… ……)
ガサッ
女剣士「!?」
鍛冶師「……こんな所で何やってんの」
女剣士「鍛冶師……」
鍛冶師「探してたよ、盗賊。心配もしてた」
51 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 12:19:49.18 ID:2qG44Jc9P
おーひーるごはーん!
女剣士にイライラしてしまうわー
53 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 13:23:06.24 ID:2qG44Jc9P
女剣士「船……出て行ったろ」
鍛冶師「……娼婦ちゃんを埋葬しにね」
女剣士「え!?」
鍛冶師「君、それにも気がつかなかっただろう」
女剣士「あ…… ……」
鍛冶師「どうしても会いたかったんだろう事は解るけどさ」
鍛冶師「……それしか、解ってあげられないよ」
女剣士「……」
鍛冶師「もうすぐ夜だ。君も宿に帰った方が良い」クル、スタスタ
女剣士「あ……ッ」
鍛冶師「何?」
女剣士「……ご、御免……なさい」
鍛冶師「僕に謝っても仕方無いだろう?」
鍛冶師「……船長はもう出発したよ。明日からも仕事はあるんだ」
鍛冶師「ゆっくり休んで…… ……」
鍛冶師「……」
女剣士「あ、あの……ッ」
鍛冶師「……」
女剣士「……」
鍛冶師「……お休み」スタスタ
女剣士「……」
女剣士(どう、しよう……)ウロウロ
女剣士「……」ウロウロ
女剣士「……ッ」スタスタ
……
………
…………
神父「……神よ」
神父(…… ……どれだけ、祈っても。娼婦さんは戻らない)
神父(死は誰にも平等に訪れる。解ってる……だが)
神父(あんなに、彼女ばかり……ッ)
カチャ……キィ
神父「……?」
54 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 13:42:27.94 ID:2qG44Jc9P
盗賊「ごめん、神父さん……夜遅く」
神父「ああ、盗賊さん……どうしたんです、眠れないのですか?」
鍛冶師「神父さんこそ」
神父「鍛冶師さんも一緒ですか……いえ、そうですね」
神父「街の中とは言え……もう、暗いですから」
神父「どうぞ、中へ」
盗賊「花……片付けちゃったんだな」
神父「ええ。全て……枯れてしまいましたからね」
鍛冶師「僕は、初めて魔王に会ったから、全然知らないんだけど」
鍛冶師「魔族の王、って言ったって……人と変わらないんだね」
神父「私も同じですよ。ですが……想像以上に、普通の少年に見えました」
盗賊「……でも、凄い力を持ってる。転移魔法だとか、色々」
盗賊「そういえば、魔導の街に居る時に……枕とシーツを姫と魔王の姿に」
盗賊「変えたりしてたな」
鍛冶師「……何でもありだな」
神父「移し身……ですか。ええ、本当に…… ……しかし」
盗賊「神父さん?」
神父「……本当に、間近で見ると……不思議な瞳をしてあられた」
盗賊「紫の瞳、か」
神父「……前魔王、も。紫の瞳だったんでしょうか」
鍛冶師「そもそも、紫って……何なんだ?」
盗賊「え?」
鍛冶師「……僕はつい、さ。側近の持ってたボロボロの剣みたいなのばっかり見てたんだけど」
鍛冶師「あれも、紫の色をしてた。あれは多分……魔法剣だ」
盗賊「魔王の剣、かな」
神父「魔王の剣……」
盗賊「……『魔王の全てが揃っていると大丈夫』だとか、なんかさ」
盗賊「使用人が言ってた」
盗賊「魔王自身、目を持ってる側近、で……」
神父「魔王の剣、ですか」
鍛冶師「……じゃあ、間違い無いな、多分」
盗賊「お前は全く……魔法剣の話になると、目の色が変わるんだから」ハァ
鍛冶師「でも、ぼろぼろだった。時間が許すなら、見せて貰いたかった」
55 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 13:44:21.93 ID:2qG44Jc9P
お迎え行って、ケーキ作るわー
又後ほど、来れたらー
56 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 13:49:05.67 ID:q4GRe+Tp0
イッテラ━━━━━━ヽ(´∀`ヽ)━━━━━━ン!!!!
ケーキ食べたいな
58 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 16:04:39.86 ID:rxxuEJPa0
BBA様に触発されてブラウニー作るっ
59 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/03(月) 17:47:51.88 ID:2qG44Jc9P
なんだかんだしてるとこんな時間だなー
明日は朝から登録行くので、また明日夕方ー
ブラウニー良いなっ
今度幼女と作ろう(・ω・)
んじゃ、お風呂とご飯ー
60 :
名も無き被検体774号+:2013/06/03(月) 21:37:07.89 ID:yoX/0o+V0
うはぁ本編も挿絵もいい感じだぞ
61 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 09:37:14.31 ID:zGC15My9P
おーはよーぅ。
お出かけしてきます!
また夕方かけたら!
だんだん、まとまって来てwktkが止まらないけど・・・
今以上に、話膨らまして良いんだぜ?
と言うか、もっと膨らまして下さい、オナシャス
63 :
名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 13:01:43.49 ID:WtaQuCb10
女剣士・・・
64 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 15:38:51.52 ID:zGC15My9P
ただーいま。
今日はチョコケーキ作らされたよ……
毎日ケーキなんて食べたくないwww
65 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 15:57:33.15 ID:zGC15My9P
神父「魔王の全て……と、言う事はあの剣も魔王自身、と言う事ですか?」
鍛冶師「さあ、僕にはそこまでは解らない。間近で見た訳でも無いし」
盗賊「でも、魔王の世代交代の時に、剣も継承されるってんなら」
盗賊「やっぱり、魔王の一部、なのかもな」
鍛冶師「……触りたいなぁ」
盗賊「おい……」
鍛冶師「もう今となっては叶わないって解ってるって」
神父「今となっては……ですか。そうですね」
神父「……」
盗賊「あ……それで、さ」
神父「はい?」
盗賊「女剣士、来なかったか?」
神父「いいえ……始まりの街へ行く前にお会いしたきりですね。そういえば……」
盗賊「……宿にも戻ってないみたいで、さ」
鍛冶師「僕はさっき……丁度盗賊とご飯食べる前、かな」
鍛冶師「街の外れで膝抱えて拗ねてるとこ、声かけたんだけどね」
盗賊「……トゲのある言い方やめろって」
鍛冶師「…… ……御免」
神父「気持ちはね。わかりますよ」
盗賊「女剣士の、か?」
神父「……鍛冶師さんの、ですかね」
神父「鍛冶師さんが仰る様に、こうしたい、ああしたい、は皆あったでしょう?」
神父「鍛冶師さんは、剣を見たかったでしょう。魔王や側近さんともお話したかったのでは?」
神父「盗賊さんだって……叶うなら、姫さんとお話したかったでしょう」
盗賊「……それは、まあ」
鍛冶師「……」
神父「少し、ね……子供過ぎると言うか」
66 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 16:20:28.68 ID:zGC15My9P
鍛冶師「気持ちは解るんだよ。どうしても、会いたいって」
鍛冶師「色々話も聞いたしさ……でも」
鍛冶師「……ね」
盗賊「……ちょっと、言い過ぎたかな、て」
神父「……」
盗賊「皆がいい加減にしろよって思ったと思うんだけどさ」
盗賊「……寄ってたかって責めたみたいで、な」
鍛冶師「でも仕方無いよ。こればっかりはさ……」
神父「確かに、褒められた態度ではありませんでしたからね」
盗賊「魔王と姫には……もう、会えないんだろうな」
盗賊「側近と使用人にも……もう……」
神父「本当に……こればっかりは、願えば叶うとは言えないかもしれませんね」
神父「こちらからの連絡手段はありませんし……まさか」
神父「魔王の城まで行く訳にも、ね。でも……」
神父「……これが、そもそも本来なのでしょう」
鍛冶師「……」
盗賊「……本来、か」
神父「側近さんと使用人さんの話を全て信じる、との前提ですが」
神父「……真実ならば、世界は救われた、のですよ」
盗賊「……」
鍛冶師「……」
67 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 16:50:07.18 ID:zGC15My9P
神父「交わるべきで無いとは……言いません」
神父「ですが……魔王が望んだと言う、徹底的な不干渉……」
神父「それが、双方にとって良い結果になるのでは無いでしょうか、ね」
盗賊「力を持った魔族ってさ。結局……みんないなくなちゃったんだよな」
盗賊「過激派……魔王に反旗翻した奴らも、魔王自身も」
神父「魔物が居なくなるのかどうかは解りませんが……」
鍛冶師「……もし、そうなったら、武器も魔法もいらない世界になるのかな」
鍛冶師「そうなったら……」
盗賊「……魔法剣も無くなる、とか言いたいんだろ」ハァ
鍛冶師「既に失われた技術に近いんだよ、今でさえ」フゥ
神父「…… ……」
盗賊「神父さん?」
神父「え? ……ああ、いえ。何でもありませんよ」
神父「所で、何かご用事があった訳ではないのですか?」
鍛冶師「あ、すみません……神父さんも休まないと、だよね」
神父「ああ、いえいえ。追い返すつもりで言ったのではありませんよ」
神父「すみません……こうして、お話に来て下さっただけでも、ありがたいのです」
神父「……私も、今日はあまり、眠れそうにありませんしね」
68 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 17:47:32.98 ID:zGC15My9P
盗賊「……その、さ」
神父「はい?」
盗賊「……」
鍛冶師「盗賊」
神父「? どうしました?」
盗賊「えっと……」
鍛冶師「あー……僕が言おうか?」
盗賊「……」
鍛冶師「えっとね。まだ随分先の話になると思うんだけど」
神父「はい?」
鍛冶師「……僕たち、始まりの街に引っ越そうかと思って」
神父「え……?」
鍛冶師「勿論、やめるかもしれない、話なんだけど」
盗賊「でも……ほら、さ。娼婦可哀想じゃん」
盗賊「……知人の墓もある。ちょっと位さ……傍に、居たいって言うか」
神父「は、はあ……」
鍛冶師「そもそもは船長から持ちかけられた話なんだ」
鍛冶師「港街の町長を選出して、盗賊も手が掛からなくなったら、だけど」
鍛冶師「……お前達、一緒に始まりの街へ行かないか、てね」
神父「あちらも……街として機能させる、と言う事ですか?」
神父「私は……あのお墓のあるところまでしか行ってませんが」
神父「廃墟がある事は……知っています」
盗賊「ああ。俺もついこの間、鍛冶師から……その話を聞いたんだ」
盗賊「向こうに行かないか、てな」
鍛冶師「ここが大きくなれば、どうしても住居は足りなくなるし、てね」
神父「ふむ……」
69 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 17:55:37.55 ID:zGC15My9P
鍛冶師「さっきも言ったけど、勿論すぐに、なんて無理だ」
鍛冶師「何年も……ひょっとすれば、10年近く掛かるかも知れない」
鍛冶師「でも、何れ……盗賊も、考えてくれるって言ってくれたんだ」
盗賊「勿論、俺も鍛冶師も、港街は好きだ。だけど……さ」
盗賊「……あの墓の周辺は、手入れなんてしなくても花も枯れなかった」
盗賊「だけど、姫にエルフの加護を渡してしまったから、さ」
神父「成る程……ですが、私の許可を取る様な話ではないでしょう?」
鍛冶師「そういうつもりではないよ。相談、かな」
神父「……そうですか。正直、今は感傷的な部分も多いかと思います」
神父「ですが……良い事だと、思いますよ」
神父「すぐでは無いとはいえ……寂しくはなりますがね」
盗賊「神父さん……」
神父「……何時までも、この街も盗賊さんにおんぶに抱っこでは、ね」
神父「私も……一人になりましたし」
鍛冶師「……」
神父「頑張らねばなりませんね。何時までも……引きずっていては」
神父「怒られてしまいます。船長さんも旅立たれました」
盗賊「……船長は、娼婦の事が好きだった、んだ……よ、な?」
神父「どうでしょうね……本人の口から何か聞いた訳ではありませんから」
鍛冶師「思い通りには行かないよね。『願えば叶う』なんて」
鍛冶師「……魔王ぐらい、力があればこその呪文なんだろうな」
神父「……」
盗賊「……地道に、少しずつ、さ。努力してこそ、なんだよ」
盗賊「夢を叶える、てのは……さ」
70 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 18:00:01.31 ID:zGC15My9P
鍛冶師「……盗賊、そろそろ」
盗賊「あ……そうだな。御免、神父さん」
神父「いえいえ……ありがとうございました」
神父「お疲れでしょう。ゆっくり……身体を休めてください」
神父「『日常』は待ってはくれませんからね」
盗賊「ああ……じゃあ、おやすみ。ありがとう」
鍛冶師「また明日、神父さん」
スタスタ……パタン
神父「……おやすみなさい」
神父「…… ……」スタスタ コンコン
ガサ……
神父「……」キィ
神父「窓に影が映ってましたよ。そんな所に隠れてないで、入っていらっしゃい」
神父「ああ……扉からお願いしますよ?」パタン
カチャ
神父「突貫工事なのは否めませんからね。お話の内容、聞こえていらっしゃいましたか」
女剣士「…… ……」パタン
神父「どうぞ、こちらへ……女剣士さん。そんな所に立ってないで」
神父「……随分、目が腫れてしまっています。別嬪さんが台無しですよ」
71 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/04(火) 18:00:47.00 ID:zGC15My9P
お風呂とご飯!
72 :
名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 19:11:23.51 ID:MJyBXMjKP
女剣士かわゆす(´・ω・`)
いてらー!
女剣士、惚れた相手と状況が悪過ぎたな……
青いだけで良い子だろうとは思うんだが。
74 :
名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 19:22:16.43 ID:WtaQuCb10
側近以外みんな結構イヤな性格してるよな
ガキなだけなのはわかるんだけど女剣士くっそうぜえwwww
ここからの挽回に期待
76 :
名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 21:54:24.90 ID:R9qWIIaf0
イヤな性格っていうか書いとるBBAがひねくれとるからキャラもアホなんやろな
全員が素直なのがいいとは言わんが頭悪い奴が多すぎ
77 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 22:14:59.94 ID:MJyBXMjKP
余裕が無いと他人を理解するのもままならないんだよね
その辺り良くかけてると思う
キャラの性格に振り回されてるって事は、BBAが「やる」って事だよ?
つーか、今時、べっぴんさんは無いだろw
79 :
名も無き被検体774号+:2013/06/04(火) 23:35:13.17 ID:Yp+sNRED0
80 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 00:03:50.93 ID:WtaQuCb10
関西ではわりと使うが
べっぴんさん
81 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 00:38:12.33 ID:JV+w7nDp0
教会の聖堂の隅に申し訳程度におかれた手作りのテーブル
静粛に佇む三人が感傷を払拭するかのように語る
むしろ女剣士の我儘のおかげで各々が冷静でいられた事にやわら気づきつつ
各々思いを胸に新たな未来へと翼を拡げ始める
82 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 07:44:54.77 ID:3lOa9qFfP
おはよーう!
明日から五連勤フルタイム!
幼女放り込んだら少しだけ時間あったらー
駄目なら夕方来るよ
べっぴんさん、割とよく言うんだけどね(笑)
んじゃ後程!
83 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 08:12:40.97 ID:v2HEX8iL0
俺もべっぴんさんは使うなぁ
84 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 09:43:34.21 ID:3lOa9qFfP
女剣士「……」
神父「何か用事があったのでは無いんですか?」
女剣士「……」
神父「……」フゥ
女剣士「……御免、なさい」
神父「何を謝るのです?」
女剣士「え?」
神父「何に対してご免なさい、なんですか?」
女剣士「え……」
神父「悪い事をしたと思っていらっしゃるのでしょう……それはね、解りますよ」
神父「でも、ね。取りあえず『ご免なさい』だけを言われても。貴女が何について」
神父「悪いと思っていらっしゃるのか、解らない、でしょう」
神父「……その謝罪の相手が、私で良いのかどうかも、ね」
女剣士「……鍛冶師にも言われた。謝るのは……僕にじゃないだろうって」
神父「……で、取りあえず私に謝ってみた、んですか?」
女剣士「そ、そんなんじゃない!」
神父「では、何故私にご免なさいを言うのです?」
女剣士「…… ……」
神父「……」フゥ
神父「適当にお座りなさい。ずっと外に居たのでしょう」
神父「……お茶を、入れましょう」スタスタ。カチャカチャ
85 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 09:55:26.29 ID:3lOa9qFfP
女剣士「……」
神父「どうぞ……暖まります。気分も落ち着くでしょう」
女剣士「ありがとう……」
神父「……」
女剣士「……」
神父「……お話があったのでは無いのですか?」
女剣士「……」
神父「……」フゥ
女剣士「……迷惑かけたな、とは……思ってる、んだ」
神父「申し訳ないと言う気持ちがあるのはね、わかります」
神父「謝罪を口にする事で、貴女の気持ちは確かに楽になるでしょうしね」
神父「……良いですよ、と。許して欲しいと言う気持ちも痛い程解りますよ」
神父「ですが……中身が伴っていないと、意味が無いでしょう?」
女剣士「……」
神父「話したいと言うのであれば、お聞きしますよ」
女剣士「神父さん……」
神父「……眠れないのでしょう?」
女剣士「あ……ありがとう……!」
神父「神は全て、受け止めて下さいますよ」
女剣士「許して……くれるのか?」
神父「……私は聖職者です。神ではありませんよ」
女剣士「……」
神父「ですが……話してしまって、すっきりした後は……貴女次第ですよ、女剣士さん」
女剣士「…… ……そ、そう……だよな」
神父「……」
86 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 10:10:17.67 ID:3lOa9qFfP
女剣士「…… ……」
神父「……」
女剣士「いざ、ってなると……何言って良いか、解らないな」
神父「……ゆっくりで良いのですよ」
神父「ちゃんと、聞いています。ですから……私の顔色など伺わず」
神父「……何でも、思う事をお言いなさい」
女剣士「あ…… ……う、うん」
女剣士「……北の街は、頻繁に魔物に襲われてた」
女剣士「街の人は根本的な解決を望んでたけど……アタシは」
女剣士「アタシは、その……」
神父「……」
女剣士「……アタシが、いるから。ちゃんと追い払ってやるからって」
女剣士「率先して街を守ってたんだ。皆感謝してくれてたよ」
女剣士「お前が居てくれるからって、さ」
女剣士「……側近が街に来た時、丁度蝙蝠の群れが街に来て」
女剣士「追い払うのを手伝ってくれた」
女剣士「……親父は町長なんだが、側近ならやれるだろうって」
女剣士「船を貸すって言ったんだ。側近は街の北にある塔に行きたがってたから」
神父「……」
女剣士「北の塔には魔物なんて居なかった」
女剣士「なんかの魔法が掛かってたらしいけど……側近も解らないって言ってたけど」
女剣士「……アタシは、安心したんだ」
女剣士「今までと、変わらない。アタシは……変わらず、街の人に」
女剣士「必要と、されるんだ……って……」
神父「……」
87 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 10:12:20.75 ID:3lOa9qFfP
お買い物行って幼女拾って
飯食ってお出かけしてきます!
また夕方帰ったらー!
べっぴん使うね、関西のそこそこ歳のいってる人ww
楽しみに待ってるよ、べっぴんBBA
89 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 11:17:02.05 ID:1Mn54nfu0
道徳の時間ですね
国語の時間だろう?
なにげにBBAの日本語は、○○○には無い物を感じるね。
91 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 17:00:23.70 ID:3lOa9qFfP
女剣士「……ほっとした様に見えた、のかな」
女剣士「側近には、そんな様な事……言われた」
女剣士「側近は……アタシを責めなかった。興味が無かっただけかもしれないけど」
神父「……」
女剣士「アタシ達は塔を出て、街に戻った。そうしたら親父が……」
女剣士「…… ……」
神父「……」
女剣士「……アタシと結婚して街を守らないか、なんてさ」
女剣士「側近はやんわりだけど断った。主がいるからって」
女剣士「……まさか魔王だとは思わなかったけどさ」
女剣士「親父は行きたいなら行けば良いって言ったんだ」
女剣士「お前にばかり任せてた。だから……街は、俺たちが頑張るからって」
女剣士「それで、居ても立ってもいれなくて飛び出した。結局……さっき迄会えなかったけど」
神父「……」
女剣士「……だから。使用人から聞いて、解って……解って、るつもりだったんだ!」
女剣士「でも……!!」
女剣士「……断られたのはショックだった。だけど、後から、あいつが魔族だって聞いて」
女剣士「『結婚して一緒に村を守る』のは無理でも、『アタシを否定した』訳じゃ無いって思ったら」
女剣士「……ッ それに、あの時……あの、チャンス逃したら、もう会えないかもって、思ったら……!」
92 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 17:34:31.50 ID:3lOa9qFfP
神父「……」
女剣士「……」グスッ
神父「……お話は、以上ですか?」
女剣士「…… ……」
神父「……」フゥ
神父「主よ、神よ……愚かなる人の子を許し給え……」
女剣士「……」ゴシゴシ
神父「……少し、楽になりましたか?」
女剣士「……う、ん」
神父「先にも言いましたが……私は、神ではありません」
神父「ですから、これは……私の意見、になりますが」
神父「少なくとも、謝るのは私ではありませんよね?勿論、鍛冶師さんでも」
女剣士「……」コク
神父「貴女は……まだ、子供なのでしょう。普段はそうでは無いのかも知れませんが」
神父「こんな……特殊な状態、特殊な相手、ですから」
神父「我慢が効かなかったのだろうと想像はつきます……ですが」
神父「話してしまったから。聞いて貰ったから。反省したから……と」
神父「誰も、無かった事にはしてくれません」
女剣士「……そ……ッ ……う、ん。そう、だよな……」
神父「お父様の言葉や、状況に流され、煽られてしまったのでしょうね」
神父「……正直、貴女のその側近さんに対する気持ちが恋なのかどうかも判断が付きかねますよ」
女剣士「! 神父さん……ッ」
神父「勿論、それを判断するのは私ではありません。ですが、ね」
神父「もう一度、良く考えて見られるのも……」
女剣士「あ、アタシは、本当に……!」
神父「……強制等はしませんよ。ですが、貴女はまだ若い……いいえ、幼い。とても」
神父「それに、相手が相手です。魔族……生きてる世界が違うどころか」
神父「……もう、会うことすら叶わないでしょう」
93 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 18:00:43.13 ID:3lOa9qFfP
女剣士「……ッ ね、願えば、叶う! ……ん、だろう!?」
神父「それは……私に尋ねられても、お答えしかねますよ、女剣士さん」
女剣士「……そ……ん、なぁ……」ヘタヘタ……ペタ
神父「…… ……」
神父「忘れなさい、と……言うのは簡単です……です、が」
神父「……すぐに叶えられるものでは無いでしょう、が……これ、ばっかりは」
女剣士「……なんで、だよ……何時も、何時も……願えば叶うとか、言っておいて」
女剣士「アタシには、何で、そんな……!」
神父「……では、どうやって逢いに行くのです?」
神父「船長さんも居ません。連絡手段もありません」
神父「……それに、魔王は眠ると言っていた。全てが揃っていれば大丈夫、とも」
女剣士「す、べて」
神父「そうです。魔王自身、魔王の剣……そして、魔王の目を持つ側近さん」
女剣士「!!」
神父「……今すぐにとは言いません。諦めなさい、女剣士さん」
神父「それもこれも、全てを含め……これから、誰に何を伝えどうしていくのか」
神父「……お考えになると、良い」
女剣士「…… ……」ポロポロポロ
神父「具体的には、一つだけ。 ……盗賊さんが、心配していました」
神父「貴女の姿が、宿屋にも無い、とね……ですから、まず」
神父「先ほどの『御免なさい』は……盗賊さんに、言うべきでしょう?」
女剣士「……う、ぅ……あ、 ……ッ ああァ……ッ」ポロポロポロ
神父「泣いて良いんですよ、女剣士さん。ですが……」
神父「……何れ、泣き止んでください。人は……何時までも泣いてばかりはいられないんです」
神父「こればかりは……仕方無いんです」
女剣士「…… ……」ヒック、ヒック
神父「何れ、感傷は風化する……記憶は、忘却するのです」
神父「……覚えておいて、ください」
94 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/05(水) 18:02:06.12 ID:3lOa9qFfP
お風呂とご飯!
明日から暫くフルタイム勤務なので
また通勤時間中とかにかけたら!
無理すんなよ??♪
96 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 21:00:15.17 ID:v2HEX8iL0
やっぱりこの神父好きになれん、
なんとなく感じ悪いんだよなぁ
97 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 22:31:21.47 ID:sGEDzzK7P
正論だからこそ言葉は選んで貰いたいね。
二人の会話だと側近まで封印されたみたいな扱いだけど、
確かに外に残ってる方がおかしいんだよな……(´;ω;`)
98 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 22:42:51.64 ID:Rp4Pdhct0
正直本にしてほちい
99 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 23:01:29.06 ID:EleO6u/x0
側近も封印されていないという事実を街のみんなはまだ知らないからな
しかし女剣士のウザさゆえ神父さんも人間らしさを出してしまってるんじゃないだろうか
100 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 23:12:39.89 ID:JV+w7nDp0
101 :
名も無き被検体774号+:2013/06/05(水) 23:20:57.44 ID:1Mn54nfu0
ぶっちゃけ胸糞悪いよな
そこまで言うことないだろ!女剣士ちゃんかわいそうだろ!ちくしょう!
102 :
名も無き被検体774号+:2013/06/06(木) 00:00:10.45 ID:dTTL5EDg0
関西人だが、別嬪は
>>88の通りのおじさん世代かつ柄悪い地域しか
使わんイメージ
この神父、年いった聖職者の割には鼻につく敬語を使ってるのと、
普通は話聞くだけなのに変に行動を指示してるから、
胸くそ悪くなってるんじゃないか?
後、
>>1はムダな間・話が多すぎで、ムダに話が膨らんでる気がす
神父のわりには特定の人に入れ込んでるからかな
正論だけど余計な感情が混じってて棘があるような感じ
>>102 同意かな
何度も同じ流れを読んでるな〜と思ってたんだよね
でも毎日楽しみにしてるよ
105 :
名も無き被検体774号+:2013/06/06(木) 00:28:24.48 ID:Q06nQdU0P
無駄は多くても良いんじゃない? 紙幅も時間も無制限なんだし。
ケーキ談義とかゲームの勝ち負けとか、大局とは無関係でも
登場人物に親近感が湧いて好きだよ。
>>102 無駄に話が・・・、
>>1は今作以外は、超速で話まとめて
やっぱり、もすこし色々書いてくれても良いんじゃないかと思っていたので
自分は歓迎してるんですが・・・
そんな訳でBBAもっと書いてね?瞬殺やめてよね?w
107 :
102:2013/06/06(木) 03:00:05.58 ID:d0OKxbdr0
>>105 そういう場面は必要よ?
少年=勇者=魔王の説明を何人かにしてる場面を会話ですべて表現してるから、ダラダラに感じるんだと思う
心情+!表現でうまく割愛しつつキャラの性格が表せたら、
読み手もダラけない
>>106 今までのも過去ログ読んだが、
今までも周りの話は結構膨らんだのだが、一番大事な部分を駆け足ではしょられてた。
気分で言うならメインディッシュが見えたのに下げられたって感じ。
今回は鶏・豚・牛・魚とメインディッシュが見えてるのだが、どれがメインか霞んでる感じ。
真のメインが見えた瞬間に駆け足になるのはやめてほしいww
そんな時間もないから直書きなんだろうが、メモ帳にまとめてから投下しないとこうなるんだろうな〜と思う
ま、気にせず書いてくれ
書き終わった後で清書して、それがまとめに載ることを祈るww
(サラッと鬼発言ww)
>>107 駆け足の部分が怖いんよ、まさに瞬殺っすから
良い編集付けて、出版してほしいぞ
109 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/06(木) 08:18:11.32 ID:dpkeL2MTP
おはよー出勤!
なんか色々書いてくれてありがとー
気をつけてみるよ
長くなると難しいのぅ
>>107 そういう意味の無駄・必要じゃなくて、
書き手が話を運ぶ上では端折って問題ない要素っつーか。
今回むしろそっちが楽しいからつい。
前作は端折っちゃイカン部分まで瞬殺されてたから余計にだわ。
C
すみません、どなたか前作のまとめなどご存知なら教えていただけますか?
これ楽しみに毎日生きてるよー
BBAあんま無理するなよ!
ゆっくり待ってるからー
C♪
115 :
名も無き被検体774号+:2013/06/07(金) 01:37:07.87 ID:yRPlJgWf0
1作目
勇者「拒否権はないんだな」
2作目
魔王「世界は美しい…」
3作目
勇者「俺が魔王を倒す!」
だっけ?
116 :
哀和|ω・`) ◆dqBfY.oE.E :2013/06/07(金) 07:16:25.98 ID:S0hct1u80
男「俺が…勇者?」もあるだろ
117 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 08:00:26.51 ID:oJ2pRHOlP
おはようー
幼女熱出した。・°°・(>_<)・°°・。
仕事行きたくねーけど働いてくる(´・_・`)
また電車でかけたら……
拒否権読み返してみて思ったんだけど、拒否権の世界の続き?
世界感が同じだけ?
拒否権の続きなら魔王の存在が…と気になる
もう魔王出ないのかな…
120 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 10:07:30.82 ID:oJ2pRHOlP
再びおはよう。
幼女病院連れてって寝たので、出勤までもう少し〜
>>119 そうだよ〜
121 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 10:14:51.81 ID:oJ2pRHOlP
側近「随分トゲがあるなぁ、神父さんよ」
神父「!? ……誰です!?」キョロキョロ
女剣士「……ッ この、こ……え……!!」バッ
シュウン……
側近「……あぁ、気持ち悪ぅ」スタッ
女剣士「!! ……そ、 ……そ、っきん……!!」ダダ……ガシッ!!
側近「おう……ッ ああ、はいはい」ナデナデ
神父「側近さん……貴方、どうして……!!」
神父「……魔王は、姫さんは……!!どう、したのです!?」
側近「神父さんは幽霊さん的なもの信じてるのか?俺はちゃんと足はあるぜ」
神父「……」
女剣士「側近!側近……ッ」
側近「ありがたい歓迎だけどな。取りあえず……あー。離れてくれる?」
女剣士「……」
側近「ほら。お話出来ないでしょ。我が儘言わないの」
女剣士「……うぅ……ッ 側近……!」
側近「顔拭きなさい、顔。 ……全く、どうしようも無いおこちゃまだね」
122 :
名も無き被検体774号+:2013/06/07(金) 10:17:21.27 ID:+LurnV5bP
女剣士ぜったいシッポ振ってるだろ
123 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 10:22:14.90 ID:oJ2pRHOlP
神父「……」
側近「ね? ……よいしょ」グイ
女剣士「あ…… ……」ゴシゴシ
側近「はい、良い子良い子……しかしあれだな」
側近「少し会わない内に随分印象変わったねお前は……随分偉そうだったのに」
女剣士「そ、そんな事無い!」
神父「……」
側近「んな睨まないでくれる、神父さん……聞きたけりゃ説明してやるってば」
神父「睨んで等……」
側近「聞き耳立てるつもりは無かったんだけどね」
側近「……まあ、その前に……女剣士」
女剣士「何……」
側近「もう少し大人になりなさい。以上!」
女剣士「……え?」
側近「神父さんが言ったことは俺も間違えちゃないと思うよ」
側近「俺らは割と必死だったからな。見方はちょっと違うけど」
側近「『ご免なさい』言いたくなるって事は、そういう事だろ?」
女剣士「……」
側近「神父さんは聖職者様だからな。がっつり俺ら……魔族に対して」
側近「好意的な見方も、歓迎も出来ないのは解る」
側近「……娼婦ちゃんの事もあるしな」
神父「……」
側近「でも、やっぱ間違えちゃないから」
女剣士「……うん。ごめんなさい」
側近「俺は良いよ。怒りはしても、それは許さないとイコールじゃないから」
側近「だけど、な?」
側近「ちゃんと、自分の我が儘だけ押しつけないで」
側近「旨く、要領よく『良いよ』って言ってくれる様に」
側近「考えて、行動しなさい」
女剣士「側近…… ……ッ」
側近「取りあえず泣き止め。泣きながらの謝罪は反則」
124 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 10:28:57.48 ID:oJ2pRHOlP
神父「……」
側近「何か納得いかないって顔してんな」
神父「お聞き、してましたから。魔王の全てが揃っていると……と」
側近「そうだな。少し長くなる……し」
側近「できれば盗賊と鍛冶師にも聞いて貰いたいんだ」
側近「……慌てて転移してきたは良いんだが、よく考えたら夜中だもんな」
神父「……構いません。喜ばれると思います」
側近「ありがとう……取りあえず、こいつを渡しとく」ドサ
神父「これは……」
側近「『約束』したろ」
神父「前後編……あの本ですか」
神父「……覚えて下さっていたのですね」
側近「明日、また来る。今日は宿に泊めて貰うよ」
女剣士「側近、あの……!」
側近「お前も疲れてるだろうから今日はちゃんと寝なさい」
女剣士「い、一緒に!?」
側近「阿呆! ……ガキが何言ってやがるか!」
女剣士「……なんだ」
側近「お前な……」
神父「では……女剣士さんを送っていって下さいますか?」
側近「ああ、元よりそのつもりだ。明日、此処に来れば良いか?」
神父「ええ、それで構いません」
側近「ん。 ……ほら、行くぞ女剣士。お前も宿か?」
女剣士「うん!」
側近「……現金な奴だな」
125 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 10:29:46.69 ID:oJ2pRHOlP
出勤!
続きは電車で〜
126 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 11:01:15.34 ID:oJ2pRHOlP
側近「……神父さん」
神父「はい……?」
側近「魔王様と姫様の為に……ありがとう」スタスタ
神父「……いいえ」
女剣士「あ、側近……待って!」タタタ
女剣士「あ……神父さん、ありがとう……おやすみなさい!」
パタン
神父「……」ハァ
神父「やれやれ……勝手な物です」
神父(私も……人の事は言えない)
神父(……勝手な、生き物です。人間は)
神父「……」パラ
神父(勇者が仲間を一人失って……それから……)
女剣士が可愛いな…
128 :
名も無き被検体774号+:2013/06/07(金) 13:45:04.98 ID:ntU/nR0f0
女剣士乱と灰色の世界の大きくなった乱みたいな気がしてきたなーチラチラ
良い意味での子供扱いって、背伸びしがちな年頃には
凄くありがたかったりするよね。イイナー
幼女元気になったらアイスでも食いに行こうぜ!
131 :
名も無き被検体774号+:2013/06/07(金) 14:23:47.44 ID:f6HdTglnP
今後は側近が魔王の目を持ってるってとこが重要になりそうだな
それから女剣士と「勇者」かな
>>116 俺が事故〜救急車〜オペ〜時に書かれて居たわorz
拒否権はないんだなの最初から読んでいるぞ、女。
133 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/07(金) 23:45:06.86 ID:oJ2pRHOlP
おわた( ゚д゚)
帰った( ゚д゚)
また明日……もうだめ、寝る
134 :
名も無き被検体774号+:2013/06/08(土) 00:29:31.20 ID:nBO1AjaC0
おやすみ
おれもねるかの
BBAおやすみー
幼女ちゃん早く良くなりますよーに!
136 :
名も無き被検体774号+:2013/06/08(土) 13:17:01.74 ID:wsqzObvA0
C
137 :
名も無き被検体774号+:2013/06/08(土) 16:29:44.02 ID:+PU6IYO+0
同じく支援
BBA忙しいのかな?はよはよ!
139 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/08(土) 22:56:26.89 ID:ab++cYKZP
BBAは今帰ったよ( ゚д゚)
眠いです…
側近「美しい世界を守りたい、んだろう?」
wwwwwwwwww
141 :
名も無き被検体774号+:2013/06/09(日) 00:22:09.93 ID:Tnn3bSbI0
?
幼女の具合はどう?
143 :
名も無き被検体774号+:2013/06/09(日) 07:22:18.71 ID:AEakIqoI0
どーも拒否権は〜のスレの
>>9にまんことカキコしたものです
144 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/09(日) 16:07:39.60 ID:uEoLFgQjP
幼女は全快したけど私が寝込んでますorz
おいw
ママは強いんじゃないのかよwww
更新を楽しみにしてるが、まずはBBAが元気になってくれ
お大事にな
>>144 物語世界を滅亡させないためにも養生するんだ
いくらでも待つから!
BBA早く良くなってねー!
ゆっくり待ってるよー
149 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/10(月) 08:09:38.18 ID:myTGIvCGP
おはよーう
今日派遣最終日ー!
とりあえず頑張ってくる!
心配してくれてありがとう!
ママ頑張る( ゚д゚)
151 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/10(月) 14:38:35.49 ID:myTGIvCGP
ちょ、幼女水疱瘡かもだとよ( ゚д゚)
幼稚園から電話あったよ、ダッシュで帰るよ( ゚д゚)
>>151 ェェェェェエエ工工(´Д`)工工エエェェェェェ
>>151 水痘か・・・
幼稚園生、初夏、となりやすい条件(12-7月多い、9歳以下多い)はあるから、なるべくしてなったのかな?
成人で患うと悪化するから、早いうちで良かったと思うけど、病院行って薬貰ってきてくださいな!
キモい馴れ合いスレ
155 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 10:36:57.95 ID:DWBgcThmP
おはようー
やっと仕事終わったのでぼちぼっちやっていきますー
156 :
名も無き被検体774号+:2013/06/11(火) 10:42:02.72 ID:kOQzsucR0
朝に見たら「なにしてんだこいつら」ってなるよな
157 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 11:12:01.66 ID:DWBgcThmP
……
………
…………
宿屋
キィ、パタン
側近「ほら、お前ももう…… ……」
女剣士「……側近」ギュ
側近「……あのね、離れて貰わないと俺、自分の部屋に戻れないんだけど」
女剣士「ここで寝ないのか?」
側近「お前な……」
女剣士「やっと、やっと会えたんだ!今日ぐらい良いだろう!?」
側近「イコールで結べないから、それ」
女剣士「でも……!」
側近「会いたかった、て言ってくれる気持ちは単純に嬉しいよ」
側近「好意を向けられるのは確かに、厭な気はしない」
女剣士「じゃあ……!」
側近「けど、な? ……あのさ、お前の気持ちしかないでしょ、そこに」
女剣士「え……」
側近「俺の意見は無視ですかい。 ……きつい言い方かもしれんが」
女剣士「側近は……アタシと一緒は厭なのか?」
側近「ここで一緒に寝る理由は無い。それだけだ」
側近「……話は明日でも出来るだろ?どうしても今日が、今が良いのか?」
158 :
名も無き被検体774号+:2013/06/11(火) 11:12:53.29 ID:kOQzsucR0
(今でしょ!)
159 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 11:26:54.00 ID:DWBgcThmP
女剣士「……だって、また何時居なくなるか分からないだろう」
側近「いや、だから明日はまだ……」
女剣士「話が終わったら、城に戻るんだろう!?」
側近「……そりゃそうだろうよ。だからって別に急がなきゃいけない訳じゃネェよ」
側近「お前と話す時間ぐらいはあるさ」
女剣士「だけど……」
側近「あのな、色々あってお前だって疲れてるんだろう?」
側近「無理する必要は無いだろ、って」
女剣士「…… ……」
側近「……」フゥ
女剣士「だって、だって、本当に……ッ」ポロポロポロ
側近「聞いてはやりたいよ。言いたいことあるんだろう。それも解る」
側近「……けどな。俺はお前だけに会いに来た訳じゃない。それは解っとけ」ドサッ
女剣士「……?」
側近「寝るまで此処に居てやるから。話したい事あるなら言いなさい」
側近「……んでお前は横になりなさい。寝たら部屋に戻るから」
女剣士「側近……!」
側近「抱きつくな!寝るの!コロンしなさい!」
女剣士「……」クスクス
側近「泣いたり笑ったり忙しい奴だね……全く」
160 :
名も無き被検体774号+:2013/06/11(火) 11:27:26.51 ID:MIpBnrzA0
女剣士にはそのうざさ、貫いて欲しいねw
側近はたまったもんじゃないだろうが
見ている分には微笑ましいなコイツらw
162 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/11(火) 12:56:23.09 ID:wHT3YTLzP
側近にはこういう女がお似合いだなww
>>151 その姿勢を育児板のれん中に見せてやりたいよ(`・ω・´)
165 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 14:21:03.67 ID:DWBgcThmP
女剣士「……アタシ、側近が街を出てからすぐに後を追ったんだ」コロン
側近「……」
女剣士「急げば追いつくと思ったのに道に迷って……海に落ちた」
側近「……は!?」
女剣士「そんで、船長と鍛冶師に助けて貰った」
側近「随分あっさりと言うなぁ……」
女剣士「こうやって会えたんだ。だから良いんだ」
側近「あ、ああ、そう……お前が良いなら別に良いけどね」
女剣士「あの時、会えなかったのは……転移してどこかに行ったからだったんだな」
側近「……」
女剣士「魔族……なんだよな」
側近「そうだ」
女剣士「……人と魔族と、どう違うんだ?何が違う?」
側近「え?」
女剣士「こうして見ると、お前はアタシと違う様には見えない」
女剣士「……それは、お前が力の強い……魔族だから、なのか?」
166 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 14:41:15.84 ID:DWBgcThmP
側近「人間だって容姿の差ってのはあるだろうが。誰一人、全くの一緒なんてモンは無い」
側近「それと一緒さ。魔王様を見ただろう。一目見て魔族だと解ったか?」
女剣士「……」
側近「そういう事だ」
女剣士「……魔王は、どうなったんだ?」
側近「眠った……と、言うか、自分を自分で封印したんだろうな」
女剣士「じゃ、じゃあ……側近はもう、自由なのか!?」
側近「それは無い」
女剣士「……何で」
側近「お前なら自分が主と認めた奴を、今現在動けないからと言って放り出せるのか」
女剣士「……」
側近「俺は城に戻る。今回此処に来たのは……」
女剣士「……アタシに、会いに来てくれたんじゃ無いのか?」
側近「それもある。けどな……」
女剣士「け……ど?」
側近「神父さんにも言っただろう。話があるんだ。盗賊と鍛冶師にな」
女剣士「アタシ……は?」
側近「何でお前さんがここに居るかは不思議だったけど、それは漸く合点がいったよ」
側近「……気にはなってた。何でだ、てな」
側近「だけど、勘違いはするな。お前のあの……あの時の態度を見て」
側近「ちゃんと言っておかないと駄目だと思っただけだ」
女剣士「……ッ」ドキドキ
側近「好意は純粋に嬉しい。だがな、やめとけ」
女剣士「…… ……」ガバッ
側近「うお……ッ 何だよ、急に起き上がるなよ!」
167 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 14:50:25.41 ID:DWBgcThmP
女剣士「や、やめとけって、なんでだよ!」
側近「お前は何聞いてたの。俺は城に戻る。魔王様の全てを見届ける義務がある」
側近「……俺は、魔王様の『側近』だからな」
女剣士「お、お前が、側近が……ッ 魔王の目、とやらを持ってるからなのか!?」
女剣士「だからって……!!」
側近「……」ハァ
女剣士「アタシ、アタシ……ッ側近が好きだ!ずっと一緒に居たい!」
側近「無理だ。お前は人間だろう。俺は……魔族だ」
女剣士「人種なんて関係無いだろう?ま、魔王だって……ッ エルフの、姫と……ッ」
側近「……そうだな。言い方が悪かった」
側近「俺はお前をそういう目では見れない。はっきりそう言うべきだった」
女剣士「……そ、っきん……」
側近「生きる長さも違う。生きる世界も違う……それ以上に」
側近「俺は、お前の想いには応えてやれん」
女剣士「そ……ん、なぁ……」
側近「……北の街に帰るのなら、船長に頼んでおいてやる」
女剣士「か、帰れって言うのか!?」
側近「帰るなら、だ。経緯を聞いた限りじゃ、お前何も持ってないだろ」
側近「帰れなんて俺に言う権利はネェだろ。それはお前が決める事だ、女剣士」
女剣士「……アタシ、が」
側近「子供じゃ無いんだ。まあ……今すぐ聞き分けろとは言わん、けど……さ」
側近「恋とか愛とか、俺にはわからんよ。それにさ」
側近「……お前だって、解ってないだろ?」
女剣士「え……」
側近「疑う訳じゃないよ。でもなぁ……親父さんにたきつけられて」
側近「その気になってるだけの様にも見えるよ」
側近「解ってるか?そんなに……お前が俺を気に入る理由ってのが」
側近「好きだと言うけど。俺の何処が好きなの?何が好きなの?」
168 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/11(火) 14:56:38.00 ID:wHT3YTLzP
女剣士じゃなくて女犬子に見えてきた
169 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 15:11:34.42 ID:DWBgcThmP
女剣士「だ、だって……側近は……強い、し……さ」
側近「前に言っただろう。そもそも俺は戦闘向きじゃない」
側近「魔王様の目を持ってる。力の増幅はその所為だ」
側近「……俺自身の強さじゃ無い。そもそも『強い』ってのは何だ?」
側近「戦闘を旨くこなして、敵を倒すだけの純粋な力。それが……それだけが『強さ』か?」
女剣士「……ッ」
側近「だとすれば、俺は『強く』なんか無い」トン
女剣士「きゃ……ッ」ドサッ
側近「……変な顔しないの。何もしません。そんな気ありません」
女剣士「何で……何でだよ!こんなに……好き、なのに……!」
側近「恋に恋されてもね……」
女剣士「側近!」
側近「違うって言えるか? ……お前の望む形にはなってやれねぇよ」
側近「……寝ないなら、戻るぜ。この話は終わりだ」スッ
女剣士「……やだ、側近……ッ」
側近「…… ……ごめんな」
スタスタ、パタン
女剣士「側近!やっと会えたのに……ッ 何で、だよぉ……!」
ウワァァン……ッ
……
………
…………
170 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 15:47:22.44 ID:DWBgcThmP
船長「……なんだ、話って」
女海賊「まァまァ……飲むかい?」
船長「ん……随分上等な酒持ってんな」
女海賊「食堂に貰いに行ったら分けてくれたんだ」
船長「海賊相手に色気振りまいても仕方ねぇだろ」
女海賊「随分トゲがあるネェ……ほら、一杯やりなよ」
船長「……何の用だ。態々部屋に呼び出して」
女海賊「手伝わせたんだ。話聞く権利はあるだろう?」
船長「……魔法使いは?」
女海賊「一杯飲ませたら寝ちまったよ」
船長「確信犯だろう、お前……」
女海賊「別に独り占めしようってな訳じゃネェよ?」
女海賊「あいつには明日、ちゃんとアタシが話す」
女海賊「……エルフだとか、加護だとか。あの土地は何なんだ?」
女海賊「アタシ達が持ってきた地図には、『始まりの大地』ってあった」
女海賊「が、だ……街は愚か、港らしきモンはボロボロ」
女海賊「人が住んでる雰囲気も無い。確か、あのアタシにそっくりな女を埋めた先に」
女海賊「街と城があった、らしいが……滅びた街なのか」
船長「…… ……」
女海賊「……特別な土地なのか。だとすれば……あの隻腕の女は何者だ?」
船長「…… ……聞く権利がある、か」
女海賊「ネェとは言わせネェ」
船長「お宝の地図握りしめて海賊に志願してくる程のタマだ……が、過ぎた好奇心は身を滅ぼすぜ」
女海賊「ならなんで手伝わせた」
船長「……」
女海賊「……」
171 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 16:54:31.98 ID:DWBgcThmP
船長「始まりの大陸が何で滅びたかなんて、俺はしらねぇよ」
船長「今世界に出回ってる地図にゃ殆ど乗ってないしな」
女海賊「……」
船長「……お前が言う様に、お飾り程度の港も、街も、城も」
船長「地図上から消えてしまう程度の昔に滅びた、んだろう」
船長「無人島だと思ってた俺たちが……あの、場所に」
船長「ちょっとした知り合いのエルフの死体を埋めたのも少し前の話だ」
女海賊「……」
船長「あそこは……エルフの加護に守られた良い場所だ」
船長「滅多な事じゃ花も枯れん。だから……埋めてやった」
船長「それだけだ」
女海賊「……何であんな場所を知ってる?」
船長「たまたま見つけただけだ。もう良いだろ」
女海賊「惚れてたのか」
船長「……悪いか」
女海賊「……別に」ス…ストン
船長「…… ……おい。何してる」
女海賊「惚れた女と同じ顔の女に、こうして膝に乗られると興奮するかい?」
船長「俺にまで色仕掛けか」
女海賊「おいおい、勘違いしないでくれよ? ……アタシは結構最初から」
女海賊「アンタの事、気に入ってたんだ、船長」
船長「…… ……退け」
女海賊「このでかい腹もその白髪交じりの髭もセクシーじゃネェか」
船長「……ッ 退けって言ってるだろ……!」
女海賊「良いぜ、変わりで。娼婦、だっけ? ……無理すんなよ」
172 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 17:18:50.96 ID:DWBgcThmP
船長「やめろ、お前……ッ 俺は……!」
女海賊「ずっと船ン中じゃ出すモンも出せネェだろ?」
船長「そ……ッ その、顔で下品な事…… ……ッ ん、 ッ!?」チュ
女海賊「んン……ッ」チュ、チュ
船長「……ッ く、そ……ッ」ガシッ ……ガバッ
女海賊「ン……ふふ、そう急かな…… ……ン ……ッ」
……
………
…………
バタバタバタ……バタン!
盗賊「神父さん!」
鍛冶師「ちょ、盗賊……待って……」ハァハァ
側近「よう」
盗賊「側近!」タタタ……ッ
盗賊「……生きてる」ペタペタ
側近「殺さないでくれる……」
鍛冶師「……神父さん、は?」
側近「さぁな。今朝此処に来るって言っておいたんだが」
173 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/11(火) 17:20:48.68 ID:DWBgcThmP
お風呂とご飯ー
いてらー
175 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:12:41.47 ID:ESRn+XrfP
おはよう!
午後からでかけるので又夕方に!
お迎え行くまで少しだけ
176 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:19:43.21 ID:ESRn+XrfP
鍛冶師「……女剣士に会った?」
側近「ああ、昨日な。お前達の話、外で聞いてたから」
盗賊「え?」
側近「あんまり悪い方に取ってやるな。入るに入れなかったんだろ」
側近「……神父さんは気がついてたみたいだぜ」
盗賊「そっか……」
鍛冶師「一応、願いは叶った訳か」フゥ
側近「……さてな」
鍛冶師「?」
盗賊「今朝、早くに神父さんが俺たちの家に来たんだ」
盗賊「んで、側近が話があるからって……」
側近「俺『達』?」
盗賊「あ……そ、その……ッ」カァ
鍛冶師「転がり込んじゃったんだ、僕が」
側近「……あらまぁ」ニヤ
側近「あー、そう、そういう事」ニヤニヤ
盗賊「そ、その顔やめろよ!」
側近「良いじゃネェか、目出度い話じゃん」
側近「おめでとさん」
鍛冶師「……君だって、じゃないの」
側近「へ?俺? ……何で?」
鍛冶師「……気付いてる、んだろ?」
盗賊「……」
側近「ああ……あー。まあ、な」
側近「だが、だからって何だよ?」
盗賊「え?」
177 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:27:09.16 ID:ESRn+XrfP
側近「皆幸せになりました、めでたしめでたし、なんて」
側近「そりゃ、御伽噺だけの特権だろ」
側近「……そういうこった」
盗賊「そ、うか……」
側近「昨日女剣士にも言ったがな。俺には恋だの愛だの、わかんねぇよ」
側近「あいつに対してそんな気にもなれん」
鍛冶師「……誰もが皆、ハッピーエンドにはなれないよね」
鍛冶師「そんな事言い出せば、魔王と姫だって……」
側近「……あれも、愛じゃネェさ」
鍛冶師「え?」
キィ
神父「ああ……おはようございます、皆さん」
神父「遅くなってすみません。さあ……どうぞ?」
女剣士「…… ……おはよう」
側近「よう。おはよう」
女剣士「…… ……ッ」プイ
盗賊「お前な……ッ」
鍛冶師「ちょ、盗賊……ッ」
側近「朝早くにすまんね。早速だが本題に入って良いか」
女剣士「あ……アタシも、良い……よな?」
神父「……」
側近「別に構わんよ?そのつもりで此処にいるんだろ」
178 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:34:13.42 ID:ESRn+XrfP
盗賊「良いのか?」
側近「追い返すのもね、今更。さて……具体的に聞きたいのはさ……鍛冶師」
鍛冶師「僕?」
側近「ああ……こいつを見て欲しい」ゴト
鍛冶師「あ……ッ これ、魔王の剣!?」
盗賊「……ぼろぼろだな」
神父「……ッ」
側近「そんな顔すんな、てのも酷なのは解ってる。が……我慢してくれ、神父さん」
側近「アンタにも見て欲しかったんだ」
神父「私、に?」
鍛冶師「うわ、うわああああ……ッ ま、まさか本当に間近で見れるなんて……!」
鍛冶師「さ、触って良いんだな!?」
盗賊「ちょ、落ち着け鍛冶師……ッ」
側近「構わネェよ。じっくり見てくれ……あ、そろっと頼むぜ?」
側近「……神父さん。どう思う?」
神父「ど、う……どう、と言われましても……これは……」
側近「インキュバスの魔石も見抜いたアンタを見込んで聞いてる」
側近「……姫様はもう居ないからな。できれば……先入観なしで」
側近「思う事を知りたいんだ」
女剣士「これが……魔王の剣。魔王の……欠片……」
神父「魔王の欠片?」
女剣士「え?あ……ご、ごめん……ッ」
鍛冶師「凄い……これは……ッ」ブツブツ
盗賊「おい、これちょっと!話聞けって……鍛冶師!」
側近「あー……良いよ、盗賊。取りあえず放っておいてやって」
盗賊「で、でも……」
側近「満足するまで良いって。どうせ聞こえちゃいねぇよ」
179 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:45:02.11 ID:ESRn+XrfP
神父「魔王の欠片……ですか。ふむ」
側近「まあ、間違っちゃないかもな」
女剣士「だ、だって……『魔王の全て』がどうとか言ってただろ」
女剣士「……お前の持ってる目と、魔王本人と、これ……」
神父「……強大な気を感じはします。以前此処で魔王本人にお会いした時にも」
神父「彼自身からも感じました。 ……なんと言うのか……闇、と言うか」
側近「闇?」
神父「はい。 ……そうですね、彼は……漆黒の髪に紫の瞳をしておられた」
神父「何を連想します?勿論、私は彼の正体が魔王であると知っていたので」
神父「先入観があった事は勿論ですが……」
盗賊「連想する物は、闇……か。確かに『魔王』には相応しい印象かもな」
側近「ほう……」
神父「……以前、お聞きしようと思っていてその侭になりました」
神父「側近さんはお言葉を濁された様な気もしますが……」
側近「ん?」
神父「魔王と言うのは、代々……紫の瞳をされている、のですか?」
側近「…… ……」
神父「貴方は先代から仕えているのでしょう。先代の力で人から魔へと変じたと」
女剣士「え!?」
神父「紫の瞳など、聞いた事も見た事も無かった。差し支えなければお聞かし願いたいです」
女剣士「そ、側近!お前、人間だったのか……!? 側近!」
盗賊「女剣士、その話は後!」
女剣士「で、でも……!」
盗賊「でもも糞もネェ!」
側近「……聞いてどうする?」
鍛冶師「これが……何でこの……」ブツブツ
盗賊「お前も!独り言はもう少し小さく!」
神父「……好奇心、です。剣を持参され、こうして……私に感じたことを尋ねると言う事は」
神父「何かを探られようとしているのでしょう」
神父「……ヒントは、多い方が良いでしょう?」
180 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 10:46:44.35 ID:ESRn+XrfP
お迎え行ってお出かけしてきますー
また夕方これたらー
181 :
名も無き被検体774号+:2013/06/12(水) 11:44:07.58 ID:gtDZrdL30
行てらー
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・) バンバンバンバン゙ン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
183 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/12(水) 21:31:03.33 ID:ESRn+XrfP
す、すまん、明日早いんだ( ゚д゚)
今日は幼女と寝るッ
おやすみー
なんか冗長な感じになってきたなー
そんなら、後でまとめで読み飛ばせば良いだろ、構ってちゃんか。
正直に言おう
長いほうが嬉しい(*ノωノ) イヤン
今回はピンクの栞は無い感じだな
盗賊と鍛冶師だけだもん(船長と女海賊も居たな…)
魔王のピンクの栞が読みたかった!!
据え膳に箸も付けない側近ェ……
彼への好感度はむしろ上がったが
ピンクの栞で女剣士ちゃんを拝みたかった気持ちは別腹
新しい♪
恋の予感♪
わっふるわっふるぅー♪
192 :
名も無き被検体774号+:2013/06/13(木) 07:43:10.33 ID:cZebZ2zF0
隊長! 気色悪い馴れ合いスレを発見しました
隊長!スルースキルはこんな時に役立つのですね!
194 :
名も無き被検体774号+:2013/06/13(木) 07:53:57.16 ID:cZebZ2zF0
>>193 ちょっと違うな、もっと皮肉が効いたこと言えないの?
195 :
名も無き被検体774号+:2013/06/13(木) 08:50:15.18 ID:5WKyqlHjP
今日はくるだろうか(・ω・ )
196 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 08:50:59.22 ID:3rDqH+4cP
おはよー!
幼女幼稚園にぽーん、したら
用意して仕事ー!
くそあちぃな今日……溶けそ( ゚д゚)
197 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 09:53:49.12 ID:3rDqH+4cP
側近「ヒント、な……まあな」
側近「……前魔王様の瞳の色は赤だった。素晴らしい炎の使い手だったさ」
神父「……紫では、無い?紫の瞳は、魔王の特権では無いのですか?」
側近「俺にはノーともイエスとも言えん。魔王様が産まれた時、何で、と聞いたが」
側近「前魔王様も、初めて見たと言ってたよ。后様もな」
盗賊「后……えっと、魔王のお母さんだよな。お母さんも……」
側近「勿論、紫なんかじゃない。あの時城にいた奴みんなが驚いてたよ」
神父「そう……なのですか」
側近「いくら魔王……魔を統べる王だとは言え、複数の加護を持つなんて聞いた事が無い」
側近「魔王様は、小さい頃から規格外だったさ。前魔王様の力を受け継ぐ前から」
側近「歴代の中でも、多分……類を見ない程、強くなるだろう、てな」
198 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 10:02:47.84 ID:3rDqH+4cP
盗賊「なのに、無能扱いされてたのか……」
側近「故に、だな。前魔王様はあまり、魔王様を表に引き摺り出さなかったし」
側近「……幼い子供を利用されるのは嫌だったんだろ。先代の頃の幹部クラスを全滅に近い状態に追い込んだとは言え」
側近「まだまだ混沌としてた。血生臭い時代だったのさ」
神父「では……あの、魔王の剣は?あれも紫色をしています……あれは、ずっとあのままだったのですか?」
側近「前魔王様があれを使っているのは殆ど見たことないんだ。前に話しただろ?……実際に敵味方として対峙した、あの時、一度だけだ」
側近「だが……前魔王様があの時手にしてた魔王の剣は赤かった。まさしく、前魔王様の瞳の色をしていたのさ」
鍛治師「持つ者に寄って、色が変わる……? 否、属性が変わるのか!」
盗賊「うわ!ビックリした! ……鍛治師、お前聞いてたのかよ……」
側近「間違えちゃ無いだろうな。魔王様が前魔王様から全てを受け継いだ時には」
側近「その剣は、既に今の色……紫になっていた」
199 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 10:25:10.44 ID:3rDqH+4cP
鍛治師「……魔王の全て、か。成る程な」
盗賊「何が成る程、なんだよ」
鍛治師「魔法剣って言うのは、もう既に……失われた技術なんだ。ほぼ、だけどね」
鍛治師「鍛える者の魔力を注ぎ、物理的にだけじゃなく強化を施し、更にその力……魔法そのものも閉じ込める」
側近「ほう」
鍛治師「僕は魔法は使えないけど、生きている以上、加護自体は持ってるだろ?だから」
鍛治師「例えば、だけど……僕が、魔法剣を作れたと仮定するなら、僕の属性の魔法剣になるんだ」
側近「何故失われた?その話だと鍛治の腕があれば不可能には聞こえないが」
鍛治師「問題の一つは素材そのものだ。鉄や鋼じゃ話にならない……希少な上に丈夫な物を、となるとやっぱり腕が居るだろ?扱いにくい素材を扱えるだけの腕」
鍛治師「……しかも、それを更に注ぐ魔法に耐え得る強度に出来る腕がいるんだ」
盗賊「流石に……限られるな」
鍛治師「昔は確かにいた。が……後続を育てるのも難しくなる、段々とね」
200 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 10:27:16.28 ID:3rDqH+4cP
働いてきます!
201 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/13(木) 12:42:20.77 ID:3rDqH+4cP
神父「では……この、魔王の剣はいつかの魔王が自ら……?」
鍛治師「その可能性は高いんじゃないかな。多分……じゃ、無いと説明がつかない。でも……うーん……」
盗賊「何だよ」
鍛治師「持つ者に寄って属性が変わるなんて……聞いた事が無い。勿論見た事も、だ」
女剣士「でも、ここにあるじゃないか」
鍛治師「……これ以外に、だね。欠けてるどころか刀身が半分も残ってない」
鍛治師「……残りは、何処にあるんだ?」
側近「多分、だが……魔王様に吸収されたんだろう。剣の魔力を吸い取ってるみたいな事言ってたな」
神父「魔王の全て……ですか」
女剣士「え?」
神父「先程貴女が仰ったでしょう。これは魔王の欠片。で、あれば……魔王の全てが揃えば……」
神父「……彼は。魔王は、更に絶大な力を、手にいれた、のでしょうか」
202 :
名も無き被検体774号+:2013/06/13(木) 23:38:00.83 ID:joDbWVqf0
>>202 女剣士可愛い!
こんな可愛い子に言い寄られて、側近は断っただと…
けしからんな
204 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 09:49:14.05 ID:mqsOVJQ9P
おはようー!
女剣士えらい可愛いなwww
ありがとう!
おむかえまでのんびりー
205 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 10:17:36.82 ID:mqsOVJQ9P
盗賊「で、でも……魔王は、全てが揃ってれば大丈夫って言ってたんじゃ無いのか?」
側近「で、あれば自我を保てる、て言う意味だろう。あの時は、な」
盗賊「あの時……?」
側近「魔王様は……この剣も俺も放り出して勝手に一人で眠りにつきやがった」
側近「……何かあったら、その剣と目で頼むだとか言い残してな」
神父「……」
鍛冶師「もし、この剣が魔王の欠片、と仮定するなら」
鍛冶師「……刀身も柄も残らず、魔王に飲み込まれてしまっていたら」
鍛冶師「さっき神父さんが言った事が、正解になったんじゃないかな」
側近「絶大な力を、か……って事は」
側近「……結果的には正しかった訳だ。俺とこの剣を残したってのは」フゥ
盗賊「側近……」
側近「魔王様が知ってたかどうかはわからんがな。だが……剣の魔力を吸い取るのが」
側近「良い結果を招かない、と言うのは解っていたのかもな」
鍛冶師「……で、これを君が持ってきたのは?」
側近「ん?」
鍛冶師「まさか店に来ただけじゃ無いでしょ?」
側近「まあ……どうにか出来るかな、ってのが本音だ。だが……」
側近「話を聞く限り、な……無理だって事は解ったさ」
鍛冶師「悔しいけれど、こればっかりは……腕が未熟だからだとか」
鍛冶師「そういう良い訳すらさせて貰えそうにないな」
女剣士「直せない、のか……?」
鍛冶師「……無理だ。直せるとすれば、魔王自身だけだろうね」
神父「もし、これを直せたとして……貴方は、どうするつもりだったのです、側近さん」
206 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 10:33:25.42 ID:mqsOVJQ9P
側近「……俺も魔王様も、望んで居たのは徹底的な不干渉、だ」
側近「魔王様が自らを封印して、魔力の暴走は押さえられただろう。暫くは、な」
盗賊「え、でも……」
側近「『全てが揃っていれば』だろ?確かに魔王様が居て、目を持つ俺が居て」
側近「剣も、ある。揃ってる。だが……絶対は無いからさ」
側近「……もし直せるなら、ってな。備えあれば何とやら」
盗賊「……そう、か。でもさ、嬉しいよ」
側近「ん?」
盗賊「もう会えないと思ったからさ」
女剣士「……」
側近「そっか。ありがとうな……ああ、姫様な」
盗賊「ん?」
側近「……無事に、北の塔で眠ってる。娼婦ちゃんの石持ってさ」
鍛冶師「けどさ。魔王が眠るのなら、姫まで封印する必要、あったのか?」
側近「いつか、勇者が現れて自分を倒してくれるまで」
盗賊「え!?」
側近「……その後、守られたであろう美しい世界を見せてやりたいんだそうだ」
鍛冶師「……勇者じゃないか」
側近「ん?」
鍛冶師「勇者、なんだろう。港街の……魔王はさ」
側近「……こうも言ってたよ。魔王と言うのは、勇者に倒される為にあるのかも、てな」
女剣士「そんな!」
側近「そんな人間にだけ……勇者にだけ都合良い様には出来てないと思いたいよ」
神父「ですが、側近さん……貴方は……」
側近「……」
女剣士「そ、そうだよ!お前……元人間だったんだろ!?」
207 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 10:44:07.30 ID:mqsOVJQ9P
側近「あ? あ、ああ……」
女剣士「あ、アタシも魔族になる!そうしたら一緒に居られる!」
鍛冶師「あのさぁ、女剣士……」
側近「まあ、まあ……鍛冶師。あのな、女剣士」
女剣士「なあ、良いだろう!?そうしたら……!」
側近「結論から言うと無理だ。そんな芸当、魔王様にしか出来ん」
神父「……」
側近「それに……物理的に可能であっても、だ。昨日も言った筈だ」
側近「俺は……俺には、どうすればお前を愛せるかなんて解らない」
盗賊「お、おい側近、お前、それはいくら何でも……」
女剣士「…… ……」ヘタヘタ
神父「……」
側近「諦めて貰わなきゃ困るんだ。そんなつもりで会いに来た訳じゃ無い」
側近「……サンキュ、鍛冶師。無理言って悪かったな」
鍛冶師「あ、ああ、いや僕は別に……どころか」
鍛冶師「こちらこそ、ありがとう……夢が叶ったよ」
盗賊「おい!」
鍛冶師「あ……!」チラ
女剣士「…… ……」
神父「もう……お帰り、ですか。側近さん」
側近「ああ……邪魔したな」
女剣士「待っ …… ……」
側近「……」
神父「女剣士さん……」
女剣士「……」
側近「神父さん」
神父「あ、は……はい」
208 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 10:51:25.57 ID:mqsOVJQ9P
側近「……いや。良いわ。じゃ」クル
盗賊「側近!」
側近「……心配すんな。魔王様がどうにかなったって、俺がなんとかするよ」
側近「折角姫様の為に、魔王様が守ろうとしたんだ」
側近「俺だって全力で守ってやる」
鍛冶師「……」
神父「もう……お会いすることも無いのでしょうね」
側近「その方が良いだろう?徹底した不干渉、だ」
側近「……願えば、叶った。これで良いのさ」グッ
女剣士「……だ」
盗賊「ん?」
女剣士「厭だ!厭だ、厭だ………!」ダダダ……ッ ドンッ
側近「え!?ちょ、おま……ッ」
シュゥン……ッ
鍛冶師「女剣士ッ」
神父「女剣士さん!?」
盗賊「……う、そ……だろ」
鍛冶師「……」
神父「……」
盗賊「……」
鍛冶師「……側近、お気の毒に」
神父「腹をくくるしかないかもしれませんね、側近さん……」
盗賊「……願えば叶う、か」
盗賊「執念だな、もう……」
209 :
名も無き被検体774号+:2013/06/14(金) 10:57:25.06 ID:WhUxjYUQP
女剣士支援
210 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 11:14:42.86 ID:mqsOVJQ9P
神父「……行動力は素晴らしいと思います、が……」
鍛冶師「帰ってこれるのかな」
盗賊「……転移の石も魔王が作ってた筈だ。ストックがあれば……だけど」
鍛冶師「帰ってくる気、無いんだろうね、そもそも」
神父「良いのですか?」
鍛冶師「ん?」
神父「いえ、まあ……色々と」
盗賊「もう居なくなっちまったモン、どうしようもないさ」ハァ
鍛冶師「しかしまぁ、とんでもない事やってくれるね」フゥ
神父「諦めきれない、のでしょうね」
盗賊「……すげぇな」
鍛冶師「うん……」
神父「あ……」
盗賊「どうした?」
神父「いえ、これ……」トン
盗賊「あ!続き!」
鍛冶師「ん?」ペラペラ
神父「お借りしたのですよ。側近さんにね」
鍛冶師「えーっと……?」
盗賊「勇者が魔王を倒しに行く話だ」
鍛冶師「え……これ側近の?」
神父「魔王の城にあったそうですよ」
盗賊「返せなくなっちゃった……のかな」
神父「……娼婦さんが魔王に頂いたと言う本も、ここにあるのですが」
神父「どうしましょう、ね……」
盗賊「良いんじゃネェ?つか……仕方無いよな」
盗賊「もう、流石に……本当に会う事無い……んだろう、しな」
211 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 12:16:56.06 ID:mqsOVJQ9P
鍛冶師「魔法書とかなんだろ?教会に置いておいたら良いんじゃない?」
鍛冶師「魔除けの石とか……神父さん以外にも作れる人居たら助かるだろうし」
神父「ああ、そうそう。思い出しました」
神父「ここで修行したいと言う人が居ましてね」
盗賊「……娼婦の変わりか」
神父「変わり、ではありませんよ……誰も」
神父「誰の変わり、に等……なれません」
盗賊「……」
神父「私達は漸くスタートです、盗賊さん。側近さんの仰った、徹底した不干渉」
神父「……やはり、それが一番良い形なのかもしれません」
鍛冶師「僕も……頑張ろうかな」
盗賊「ん?」
鍛冶師「神父さん、良かったら、さ……何か作らせてくれない?」
神父「何か、とは?」
鍛冶師「僕、あんまり……その。神父さんや娼婦ほど、信心って無いかも知れないけど」
鍛冶師「この教会のさ。装飾的な……」
盗賊「お前……鍛冶、やめるの!?」
鍛冶師「いや……そうじゃない!そうじゃないけど……」
鍛冶師「魔法剣を、いざ……あんな凄いものを、さ。触って見ると」
鍛冶師「ちょっと、気遅れ……てか」
盗賊「おいおい……」
鍛冶師「あ、勿論諦めるつもりなんてないよ!?」
鍛冶師「ちょっと休憩。船でさ、船長になんか石彫らされて」
鍛冶師「まあ……ちょっと楽しかった、と言うか」
212 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 12:19:16.29 ID:mqsOVJQ9P
おひるごはーん
味わってらー
214 :
名も無き被検体774号+:2013/06/14(金) 12:55:33.16 ID:z5gwOj2D0
いちいち報告うざい、書くなら黙って書けよクソかまって女
俺は不毛なリロードが減らせてありがたいんだが。報告。
216 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 13:33:13.22 ID:mqsOVJQ9P
盗賊「酔うの忘れてた、て奴か」
鍛冶師「そうそう。船長にそんな意思があったかどうかはわかんないけどね」
盗賊「鳥、作ったんだっけ?」
鍛冶師「うん……まあ、腕はまだまだ未熟だけどさ」
神父「ありがたいですよ。心がこもっていると言うのは何よりです」
神父「……過装飾は、とは思いますが……そういうのは大歓迎ですよ」
鍛冶師「ありがとう、神父さん」ホッ
盗賊「俺ももう少し、やる事残ってるしな……町長の役割努めてくれそうな奴も」
盗賊「見つかりそうだし」
神父「そうなのですか?」
盗賊「説得中だけどな。でもまあ……全部終わらせてからだ」
盗賊「ある程度形にしたら……」
神父「……始まりの街へ?」
盗賊「ああ……何年か先にはなるよ」
神父「……ええ」
盗賊「本、読み終わったら貸してくれよ?」
神父「勿論です」
鍛冶師「僕も廃材か何か漁ってこよう。盗賊は?」
盗賊「ああ、一緒に戻る」
神父「私も薬草を集めに行って参りましょう……やっと」
神父「やっと……本当に、平常になった、んですね」
盗賊「……ああ」
……
………
…………
218 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 13:39:38.47 ID:mqsOVJQ9P
魔法使い「おーい!飯出来たぞー!」
女海賊「おう!」
海賊「あれ、船長は?」
女海賊「部屋だろう。アタシが呼んでくるよ」スタスタ
魔法使い「すっかり女房気取り……」ボソ
女海賊「聞こえてんだよ!」ブン!
魔法使い「あ? ……ッ !!」ゴン!
魔法使い「は、灰皿ぶん投げる奴があるか! ……いってぇ……」
海賊「……ま、良いんじゃネェの。船長にも春が来たってこった」
魔法使い「春ねぇ……」
女海賊「ウルサイ男は嫌われるぜ……ッ と!」
ガチャ
船長「ウルセェのはお前だ、女海賊。甲板まで聞こえてら」
船長「……で、何の騒ぎだよ」
魔法使い「飯だよ、飯!」
女海賊「今呼びに行こうと思ってたんだよ」
船長「そうか……おい、飯食ったら上陸するぞ」
女海賊「もう着いたのかい?」
船長「これだろうって島があったから、着岸する」
魔法使い「やっほーい!お宝だな!」
船長「騒ぐな!まだ何があるかわからねぇんだから」
船長「おい、腕に自信のある奴数人集めとけ」
海賊「アイアイサ!」タタタ
船長「後は……」
魔法使い「俺と女海賊は行くぜ!地図持ってきたの俺なんだからな!」
船長「……来るななんか行ってネェだろ」
219 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/14(金) 13:44:03.43 ID:mqsOVJQ9P
で、お迎えー!
220 :
名も無き被検体774号+:2013/06/14(金) 23:28:15.44 ID:61/QNXPCP
いやー、女剣士うざいなー
221 :
名も無き被検体774号+:2013/06/14(金) 23:36:30.53 ID:/KIju7TS0
はげどw
青くてウザいがこういう奴も必要かと
あ、まとめ全部読んできました
まかさこんな長編だったとは
紫煙
ホントだわー
いくら可愛く描いたイラスト挟まれても補正きかないわー
223 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/15(土) 07:21:31.58 ID:MP5MczW+P
おはよー!
働いてくるよー、眠い( ゚д゚)
また電車で書けたら!
224 :
名も無き被検体774号+:2013/06/15(土) 09:56:14.48 ID:fINrKg800
容姿が可愛かろうが可愛くなかろうが性格が子どもだからな
電車で寝ちゃった感じか?
乗り過ごしてなきゃ良いけど…
226 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/15(土) 13:49:55.60 ID:MP5MczW+P
>>225 正解( ゚д゚)
ちゃんと働いとりまっせー
>>226 MP3,MP4に次ぐ拡張子
MP5か…
228 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/15(土) 20:52:32.71 ID:MP5MczW+P
ごめん、無理や( ゚д゚)
寝るわ……
229 :
門番(見習い) ◆2ixQlIWmxc :2013/06/15(土) 20:53:48.64 ID:UwJCeXk50
名前ごめん
231 :
◆4IVIhA2Og9cW :2013/06/16(日) 03:26:24.14 ID:QYNyaZDZP
233 :
名も無き被検体774号+:2013/06/16(日) 10:17:23.59 ID:BDiBUadf0
うまいw
234 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/16(日) 10:23:43.11 ID:0rrEeIukP
働いてくーるわー( ゚д゚)
魂抜けそう
235 :
名も無き被検体774号+:2013/06/16(日) 11:51:59.51 ID:ZfxaoOSY0
大丈夫かー正座して待ってるぜー
C
237 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 08:58:19.01 ID:AqYop/YvP
おはよー!
幼女ぽーん、したら書くよー
238 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 10:40:30.04 ID:AqYop/YvP
女海賊「それらしい島ってのはどんなのなんだい?」
船長「地図自体が古いからな。正確さに欠けるのを考慮したとしても」
船長「……この大きさを考えると、これしか無いだろう、って程度だ」ガサ
魔法使い「こいつだろ?島の中心に×印が着いてる奴」トン
女海賊「ごちそうさん……この点々とした印は何だ?」
魔法使い「もう食わネェのか?珍しい……」
女海賊「この暑さでいまいち食欲がね」
船長「岩礁地帯なんだこの辺は。飯食ったら……とは言ったが」
船長「近くへ寄って、着岸できそうな場所探すのに時間がかかる可能性もある」
女海賊「着岸出来なかったら?」
船長「近くで碇を下ろして……小舟を下ろすか、泳ぐかだな」
女海賊「ひゃっほう!水着持って来なきゃ!」
魔法使い「何しに行くんだよ……」
船長「……ん?」
コツン、コツ……
女海賊「緑の……鳥!?」
船長「おい、窓開けてくれ……ヨシヨシ」ピィッ
魔法使い「何こいつ……可愛いなぁ……いてッ」ピー!
船長「手紙……ん?」カサ
女海賊「どれどれ……」
『お時間の許す時に城へお寄りください。お渡ししたい物があります』
魔法使い「……城!?」
女海賊「差出人は……書いてないな。迷い鳥……じゃネェよな」
船長「心配すんな……ん、もう一枚?」カサ
『可能でありましたら、花の苗を少々ご依頼したいです。無理ならば構いません』
239 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 10:47:13.50 ID:AqYop/YvP
女海賊「花…… 女か?」ジロ
船長「……ご馳走さん」ガタ
船長「魔法使い、そいつに……」
シュゥン……ピィ……
魔法使い「き、消えた!?」
女海賊「!?」
船長「あー…… 良いわ」
魔法使い「よ、良くネェよ!?良くないよな!?」
女海賊「ま……魔法、か? いや……」
船長「……さっさと支度しろ」スタスタ
魔法使い「あ、おい、船長……!」
パタン
魔法使い「いっちまいやがった……」フゥ
女海賊「……何なんだ」
魔法使い「流石海の男。謎だらけだねぇ」
女海賊「魔法使い」
魔法使い「あ?」
女海賊「早く食っちまえ。問いただすぞ」
魔法使い「へ?」
女海賊「良いからさっさと食え!」
魔法使い「お前さぁ……本気な訳?」
女海賊「……何が」
240 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 10:53:43.66 ID:AqYop/YvP
魔法使い「何が、じゃネェだろ。船長の事だよ」
魔法使い「お得意の色仕掛けで迫ったんだろうがサァ」
女海賊「ウルセェ!」
魔法使い「趣味悪いとは言わネェよ。いい男だと思うよありゃ」
魔法使い「……ま、見た目はともかく」
女海賊「……」
魔法使い「ご馳走さん」ガタ
魔法使い「……誰も変わりになんてなれねぇぞ?」
女海賊「…… ……さっさと来い」スタスタ
魔法使い「へいへい……全く」フゥ
魔法使い「女は素直な方が可愛いとおも……ッ」
ブゥン……ゴン!
魔法使い「……だから、灰皿、投げるなよ……」カラーン……
女海賊「アタシが素直だと可愛いか?」
魔法使い「いや、可愛くな…… ……可愛い!ちょーかわいい!」
女海賊「……フン」ス……
魔法使い「流石に……剣は厭……死ぬ」
……
………
…………
船長「準備できたか?」
241 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:01:40.87 ID:AqYop/YvP
女海賊「おう」
船長「……お前、目の周り青くなってるぞ」
魔法使い「……気にしないで」
女海賊「島は……あれか。遠いな」
船長「これ以上は近づけネェ。泳ぐしかネェな」
魔法使い「小さ……く、ね?」
船長「あン?」
魔法使い「いや、島……さ?」
船長「しかしな。地図で見る限りあれぐらいしかな……」
女海賊「行ってみりゃ解るだろ。間違えてたら探せば良いだけだろ?」
船長「……」
女海賊「アタシらには、時間はたっぷりあるんだ」
魔法使い「ま、泳ぐには良い季節だしな」
女海賊「そういう事……おっ先ィ!」ドボン!
魔法使い「お、おい、お前……ッ しゃあねぇ」ドボン……
船長「……」ハァ。ドボン
バシャバシャ……
船長「あの海岸だぞ!女海賊!」
女海賊「わかってらー!」
魔法使い「なあ、船長」
船長「ん?」
魔法使い「さっきの鳥だけどさ」
船長「……依頼人が人間じゃネェだけだ」
魔法使い「人間じゃない!?」
船長「魔族の……なんだろうな。ま、知り合いだ」
魔法使い「はぁ……」
242 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:10:54.97 ID:AqYop/YvP
魔法使い「……流石海の男?」
船長「俺に問われても」
魔法使い「いや、まあ……うん。顔広いんだな」
船長「……」
女海賊「おーい!早く来いよ!」
船長「……」ザバッ
魔法使い「よっと……」ザバザバ
船長「地図を見る限り……中心あたり、か」キョロキョロ
女海賊「あの辺りから上って行けそうだ。獣道……かな」
船長「気を抜くな……魔物が出たら、確実に一匹ずつ倒せよ」スタスタ
魔法使い「見た事の無い花が咲いてる……マッカッカだぞ、花弁」
女海賊「……持って行ってやれば。花の苗とか書いてたろ」ムス
船長「ああ……そうだな。良し、こいつを……」ガサガサ
魔法使い「おい。あの鳥の依頼人魔族だとよ」
女海賊「は!?」
船長「ちょっとした知り合いだ。金を払って貰えるなら仕事は選ばネェ」
船長「……それだけだ」
女海賊「魔族が……花の苗!?」
魔法使い「何か怪しげな実験でもするんじゃねぇの」
船長「ぐだぐだ行ってネェで手伝え。これも金の内だぞ」
魔法使い「はいはい……よっと」
女海賊「こっちも綺麗だな…… ……?」クラッ
魔法使い「……どした?」
女海賊「え?いや……」
船長「……顔色が悪いな」
女海賊「いや……大丈夫だ。海で冷やされたからだろ。この炎天下だしな」
243 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:16:35.14 ID:AqYop/YvP
船長「無理すんな。船に……」
女海賊「平気だっつってんだろ!」
魔法使い「何荒れてんだよお前は……」
女海賊「……悪い。も、もう良いだろう?持ちきれネェぞ」
船長「ああ……そうだな。行くか」スタスタ
魔法使い「……大丈夫か?」スタスタ
女海賊「ああ……お宝拝まネェと帰れないだろ」スタスタ
魔法使い「……強突く張り」
女海賊「お前にだけは言われたくないね…… ッ 船長、あれ……!」
船長「洞窟か……ん?」
グルルルルル……ッ
魔法使い「魔物だな」
女海賊「狼か……」
船長「頭が三つ程あるがな」
魔法使い「……やばくね?」
女海賊「任せろ……おい、魔法で援護しろよ」タッ
船長「あ、待て……ッ 糞、先走りやがって……ッ」
魔法使い「おいおいおい……ッ ああ、もう……ッ 雷よ!」
ピシャアアアンッ
ギャアアアアアアアアアッ グルル……ッ
魔法使い「あ、あれ…… き、効いてる?」
女海賊「オラアアアアアアアァァァ!」ザシュッキィンッ
女海賊「!!」
船長「剣が……ッ」
魔法使い「嘘だろ、口で受け止めやがった……!」
グルル…… ブゥンッ
船長「!! ……ッ 手を離せ、女海賊!」
244 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:25:17.65 ID:AqYop/YvP
女海賊「え……ッ ……う、アァッ」ブゥン…… ドンッ
女海賊「い、ア……ッ 痛ゥ……ッ」
船長「女海賊……ッ手を……ッ ち、無理か……立て、走れッ」ガシッグイ
魔法使い「先に行け……ッ 雷よ!」
ピシャアアアアンッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ
女海賊「う、ゥウ……ッ」
船長「早くッ」グイ、ダダ……ッ
魔法使い「良し、剣を通しゃちっとは……ッ」
船長「お前も早く来い、魔法使い!」
グルル……グル…… ガアアアアアッ
魔法使い「やべぇ、大して効いてネェよやっぱ……ッ」ダダダ
船長「海に飛び込め!水に入れば……ッ」ダダダ
ドボンッ
ザバァンッ
ギャアアアアアアアア!!
ガアアアアアアアアア!!!
魔法使い「あっちぃ! ……ひ、火拭きやがった!?」ドボン!
船長「……ッ ぷ、は……ッ 無事か!?」
魔法使い「お、おう……ッ ……追って、は来ない……か……?」
女海賊「……ッ」ゲホ、ゲホッ
船長「油断するな、船まで急げ!」
魔法使い「!! ……船長、こいつ……ッ」
船長「真っ青だな……良い、掴んで泳ぐ。船に着いたらお前先に上がって」
船長「こいつ、引き上げろ」
魔法使い「あ、ああ……」
ギャアアアアア!
ガアアア……
オオーン……
245 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:32:13.00 ID:AqYop/YvP
……
………
…………
側近「おわああああああああああああああ!」
使用人「!?」
シュウン……ドタ!ドサ!
女剣士「……」
側近「い、て、て…… ッ お前、何すんだよ!」
使用人「……私が聞きたいです、側近さん」
側近「重た……」ゴロン
女剣士「……」グッタリ
使用人「……気を失ってますね」
側近「無茶苦茶しやがる……」
使用人「……」
側近「んな顔すんなよ。連れてきた訳じゃネェよ」
使用人「ですが……では、何故一緒に?」
側近「転移した瞬間に抱きついて来やがったの!」
使用人「お断りされなかったのですか?」
側近「……割と冷たく突き放したつもりだったんだがな」
使用人「聞きませんでした、か」ガサガサ。カキカキ……
側近「何してんの」
使用人「転移石には限りがあります。もう……生産していただく訳にもいきませんし」
使用人「丁度、用事もありましたから」
『お時間の許す時に城へお寄りください。お渡ししたい物があります』
側近「手紙?」
使用人「はい。丁度書いていたところだったんです」
側近「何々……『可能でありましたら、花の苗を少々ご依頼したいです。無理ならば構いません』?」
側近「……船長、か」
使用人「はい。引き取って頂けるとすれば、彼ぐらいしか居ないでしょう」
246 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 11:41:16.65 ID:AqYop/YvP
側近「……」
使用人「転移で連れて行っても、また同じ事されるのは不毛なだけですしね」
側近「何で……花?」
使用人「……姫様が、庭のお手入れをされていたので」
使用人「枯らしてしまうのも、放っておくのも……幸い、もう少しスペースがありますし」
使用人「やる事も無いんです」
側近「……そうか。しかしどうやって届けるんだ?」
使用人「ご心配なさらず。残り少ない側近さんの髪、むしったりしませんよ」プチ
側近「す、すすすす、少なくないわ!」
使用人「……良し、これで。お願いね」パタパタ……ピィ
側近「しかしまぁ……本当に使用人ちゃんは優秀だな」
使用人「見よう見まねです……それに、一方通行ですよ」
使用人「以前も、戻っては来ませんでした。届くかどうかの保証も……」
側近「緑色の小鳥ね……俺もあんなんになるのかな」
使用人「やってみます?」
側近「……遠慮しとく」
使用人「時間は掛かるでしょうが……船長さんが来て下されば」
使用人「引き取って行って下さるでしょう」
側近「厭がらねぇかなぁ……」
使用人「正式に依頼をすれば厭とは言わないでしょう。仕事にはシビアな方でしょう?」
使用人「相当の額をお支払いすれば良いのです」
側近「……冷たく聞こえるな」
使用人「女剣士さん本人をどうこう思ってる訳ではありませんよ」
使用人「……理解しようとも思いませんけど」
側近「なんか……すみません」
247 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 12:03:57.96 ID:AqYop/YvP
使用人「とりあえず……どうにかしましょう」
使用人「ここに転がして置くのも……」
側近「ああ……そうだよな」
使用人「お茶の準備をしておきます。ひとまず私の隣の部屋へ」
使用人「掃除は済んでますから」
側近「ん、っと……重……ッ」ズシ。ズルズルズル
使用人「……やっぱり手伝います」
側近「ん?大丈夫だよ?」
使用人「いえ……流石に、不憫です」ガシ
側近「そ、そうか……」
使用人「扉……開けますね」カチャ
側近「良し、ベッドの上に……よっと」
ドサッ
側近「……ふぅ」
使用人「で、どうするんです」
側近「え?船長に引き取って貰うんだろ?」
使用人「それはそうですけど……素直に、言う事聞いてくれますかね」
側近「無理だろうねぇ」
使用人「……愛されてますね」
側近「押しつけられてもな」
使用人「……相手を間違えましたね」
側近「……」
使用人「では、改めてお茶にしましょう。剣の話を聞かせてください」
248 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 12:43:59.28 ID:AqYop/YvP
……
………
…………
使用人「……そうですか。鍛冶師さんでも……無理ですか」
側近「魔法剣ってのは鍛えるのも修理するのも難しいもんだってのは」
側近「知ってたが……流石にそれ以上は知らなかったからさ」
側近「ま……勉強にはなったよ」
使用人「魔法を込めると言うだけでも大変なのですね」
使用人「プラス、それに耐えうるだけの刀身を鍛える腕……」
側近「人間ってのは凄いよな。色々な事を考えるモンだ」
使用人「何言ってるんです」
側近「……」
使用人「……魔族、と言う者が凄いのだと言うべきなのでしょう。私達は」
側近「そうだよなぁ……」
使用人「側近様はともかく……私はまだ、つい最近ですから」
側近「力に頼っちまうんだよな。細かい技を使わなくても」
側近「力でどうにか乗り切っちまえる」
使用人「……はい」
側近「それがいつしか当たり前になって……繊細な部分を忘れるのさ」
使用人「……」
側近「……話が逸れたな」
使用人「? しかし、鍛冶師さんでも無理な以上、どうしようも無いのでは?」
使用人「……無くなってしまった訳でもありませんしね」
側近「魔王様に吸収されただけ、だからな。本人に剣、それから、目」
側近「全て揃ってる……でも、な?」
使用人「?」
側近「話しただろう。神父が言ってた事もあるが……」
使用人「魔王様の瞳の話、ですか?しかし……」
側近「ああ。それと誰が作ったか。何で作ったか」
使用人「……?」
側近「魔王の剣も魔法剣の部類だろう。魔族……元人間である俺たちですら」
側近「こんな有様だ。元々魔族として生まれついた奴らの技術だと思えるか?」
使用人「!」
249 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:03:37.60 ID:AqYop/YvP
側近「持つ物に寄って属性が変わる魔法剣」
側近「……魔王様の剣だから、何でもありだから、規格外だから」
側近「そんな事言っちまえばそれまでだけどさ」
使用人「……人が、作った、と?」
側近「否定は出来ないだろ」
使用人「……以前、側近様が『昔話』と称してお話して下さいましたよね」
側近「ん? ……ああ」
使用人「前魔王様の先代の魔王様は、人を滅ぼそうとしていた、んですよね」
使用人「その時代には、勿論……魔王様を倒そうと志す人間が多く居た筈ですよね」
側近「……」
使用人「そんな人達が作った物を……手に入れた、と言う可能性……」
側近「俺も同じ事考えたよ。先代は好戦的だったと聞いているしな」
側近「人が渾身の技術を結集して作った魔法剣を持って来た」
側近「そして返り討ちにあった勇者の物を……奪った」
使用人「勇者……」
側近「失われた技術に近い、とも言っていたからな」
側近「先代の時代と比べると、今なんて本当に平和なモンだ」
側近「……魔王様が眠りに着く前から考えても、だ」
側近「もっと血生臭い時代を生きてきた人間達の知恵や技術は比べものにならない程」
側近「今より高い水準にあったとしても不思議じゃないだろ?」
使用人「……はい」
側近「必要がなければ、後続を育てようと言う気を失ってもこれまた不思議な話じゃ無い」
使用人「必要がないから、ですか」
側近「さっき使用人ちゃんと話したとおり、で、さ……忘れていくのさ」
使用人「……」
側近「……」
使用人「では、魔王様の剣は遠い昔……まだ、鍛冶を生業とする者達の」
使用人「集大成であった……かもしれないですね」
250 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:10:29.34 ID:AqYop/YvP
側近「……」
使用人「いえ。その可能性が高いと思います」
使用人「我こそは……と、魔王を倒そうとする者」
使用人「勇者の持つ、魔法の剣」
側近「勇者の剣……か」
使用人「……」
側近「……そりゃ、勇者の剣なんて物を魔王なんて存在に与えりゃ」
側近「たかだか人間に、勝てっこない」
使用人「……推測、ですけど」
側近「昔に逆戻りして、確かめる事なんかできやしないんだ」
側近「……推測で良いのさ。これからに生かしていけるなら充分だ」
側近「それに……案外真実に近いかもしれん」
使用人「……」
側近「正解じゃなくても、役に立てば良い。大事なのはこれからさ」
使用人「側近さんは……赤かったと言っていましたね」
側近「ん?前魔王様の瞳か?」
使用人「それもそうですが……剣、ですよ」
使用人「貴方が、まだ人間で……前魔王様に、勇者一行として……」
バタバタバタ…… バターン!
女剣士「側近!?」
使用人「…… ……」
側近「よう。起きたか」
女剣士「居た……側近……!? え、な、なんで……使用人が……!?」
使用人「貴女が転移の瞬間に飛び込んだのでしょう。此処は魔王様の城です」
使用人「私が居ない筈がありません」
251 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:20:26.03 ID:AqYop/YvP
女剣士「あ……そ、そうか……御免……」
使用人「……」ハァ
使用人「どうぞ、お座りください。お茶をお入れします」
女剣士「あ、え……良いの?」
側近「放り出したらどうやって帰るの?」ハァ
女剣士「あ、ありがとう!」
側近「勘違いするな。足が到着するまでだ」
女剣士「え?」
使用人「どうぞ」カチャ
女剣士「あ、ありがとう……? …… ……」ジィ
使用人「何です?」
女剣士「う、ううん……あの……」チラ
側近「使用人ちゃん追い出そうとすんな。寧ろ俺らは話の途中」
使用人「…… ……ため息も出ませんね」ハァ
女剣士「でてんじゃん……」
使用人「揚げ足を取らないで下さい……まあ、良いです。覚めない内に召し上がってください」
女剣士「足……って? ……あ、美味しい」
側近「船長宛に使いを出した。ここへ寄って貰う用事があるから」
側近「船長が来たら、船に乗って北の街へ帰るんだ」
女剣士「い、厭だ!なんで!?」
側近「何で、じゃ無い。依頼料も渡航料もきっちり払ってやる」
側近「……ここは魔王様の城だ。お前を……人間を置いておく訳にはいかないんだ」
女剣士「だから、だから……ッ アタシも魔族になるって……!」
使用人「……」
側近「無理だってば。魔王様はもう……居ない。人を魔に変じるなんて真似は」
側近「魔王様にしか出来ないんだ!」
女剣士「じゃ、じゃあ……ッ人間の侭でも良い!良いから、此処に……ッ」
使用人「貴女がだんだん老いていき、私と側近様は何時までも若い侭ですけど?」
側近「使用人ちゃん……」
女剣士「え……」
使用人「私や側近様は不死ではありませんが、恐らくこれから数百年程度は」
使用人「老いていく事は考えられないでしょう。見た目も、力も」
側近「……」
252 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:31:25.21 ID:AqYop/YvP
使用人「貴女がおばあちゃんになっても、私達は何も変わりません」
使用人「貴女が死ぬ時も、です。それに……私達にとってそれは」
使用人「瞬き程の時間です」
女剣士「……」
側近「言っただろう?俺は……どうやってお前を愛して良いかなんかわかんねぇって」
女剣士「で、でも傍に居れば分からないだろう!?もしかしたら……」
側近「……お前は?」
女剣士「え?」
側近「お前は、自分を変えようとしないのに?」
女剣士「え……え?」
側近「……」ハァ
側近「俺、言ったよな?要領よくやれよって」
側近「お前がやってるのは、子供の我が儘と一緒だよ」
側近「駄目だと言われても自分の欲望だけを押しつける」
側近「私が厭だから厭なんだ、って、地面でバタバタして泣く子供と一緒だ」
側近「自分の言う事は聞いてくれないと厭だ。でも私の言うことは何でも聞いてくれ」
側近「聞いてくれないなら実力行使、相手を変えようと押しつける」
側近「……お前は、変わらないの?」
使用人「……」
女剣士「で、でも……アタシは、ただ、側近と一緒に……」
側近「うん。気持ちは嬉しいって言ったよな。好いてくれるのは。それ自体は」
側近「……で。俺の気持ちはどこだ?」
女剣士「側近……」
側近「変わらないよ。これじゃ……何も。何時までたっても」カタン
側近「使用人ちゃん、話の続きはまただ。俺、ちょっと調べ物してくる」
女剣士「ま、待って!アタシ……ッ」
側近「着いてくるな!」
女剣士「!」ビクッ
側近「……」スタスタ
カチャ。パタン
253 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:39:56.72 ID:AqYop/YvP
女剣士「……」ポロポロ
使用人「きついですね」
女剣士「使用人……」
使用人「勘違いなさいません様」
女剣士「え……」
使用人「こんな状況に置かれた、側近様が、です」
女剣士「……ッ」
使用人「……勿論、貴女に対する側近様の言葉もきついとは思います」
使用人「ですが、言わせたのは貴女自身ですよ」
女剣士「…… ……」
使用人「恋は盲目とは言いますが……これほどとはね」
女剣士「わ、わかッ わかん、ネェよ……ッ アンタら、魔族、に、は……ッ」ボロボロボロ
使用人「……では、『元人間』には解るのですか?」
女剣士「そ、側近……、は……ッ」
使用人「私もです。私も元人間です」
女剣士「……え!?」
254 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 13:40:51.84 ID:AqYop/YvP
お迎えー
255 :
名も無き被検体774号+:2013/06/17(月) 15:17:50.28 ID:8tg8dDIu0
イナフ!イナーフ!!もういい!やめてくれ!
256 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 15:39:07.42 ID:AqYop/YvP
使用人「私にも、解りません」
女剣士「……ズルイ、なぁ」
使用人「え?」
女剣士「アンタは、ずっと側近と一緒に居られるのか」
使用人「……」
女剣士「アンタも前に転移してきたよな?」
使用人「は? ……ああ、はい。何です、急に……」
女剣士「側近もだ。あれは……魔族は誰でも使える魔法なのか?」
使用人「いいえ。あれは……魔王様の残された魔力に寄る物です」
使用人「使い捨てのアイテムですよ」
女剣士「……そっか」
使用人「それが、どうかしたのですか」
女剣士「ううん……」
使用人「……」
女剣士「……側近は、どうやって人間から魔族になったの」
使用人「側近様に聞かれれば良いでしょう」
女剣士「……」
使用人「私から言う話ではありませんよ」
女剣士「魔王は、どうして……」
使用人「?」
女剣士「側近と一緒に、眠らなかったんだろう」
使用人「……はい?」
女剣士「もし一緒だったら、諦められたのに……ッ」
使用人「…… ……何なのです、さっきから」
使用人「何が言いたいのです?」
女剣士「アタシにだってわかんないんだよ!!」
使用人「……」
女剣士「あ…… ……ご、ごめん」
使用人「……」ハァ。スタスタ
女剣士「ど、どこ行くんだよ!?」
使用人「一人にされるのは厭、ですか?」
女剣士「……わ、我が儘だって言いたいんだろ!?わかって……!」
使用人「解っていらっしゃるのなら、結構です」
使用人「先ほど焼いたケーキがあるのです。甘い物は好きですか?」
257 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 15:54:47.80 ID:AqYop/YvP
女剣士「……え?あ、ああ、うん、まあ……」
使用人「そうですか、良かった……すぐ戻ります」パタン
女剣士「……」ポカーン
カチャ
使用人「お待たせしま…… ……口開いてますよ」
女剣士「え、や……だって……」
使用人「どうぞ。杏ジャムのロールケーキです」
女剣士「あ、う、うん……ありがと……」
使用人「紅茶、お変わり入れますね」
女剣士「……」
使用人「…… ……うん。この間よりかは上手に出来ました」モグモグ
女剣士「いただきます……あ、美味しい……」
使用人「良かったです」
女剣士「……な、んで?」
使用人「何がです?」
女剣士「いや、これ……」
使用人「甘い物食べると、幸せな気分になりませんか?」
女剣士「うん、まあ……それはそうかもしれないけど」
使用人「……今の貴女の態度とか。確かに褒められた物では無いと思います」
使用人「だけど、私は貴女の事あんまり……いえ、殆ど知りませんし」
使用人「そんな状態で責めても仕方ありませんから」
女剣士「…… ……」
使用人「情熱は素晴らしいと思います。素直に凄いな、と」
使用人「……理解は、できませんけど。押しつけるのが愛情では無いでしょうし」
女剣士「……押しつけ、て……る、のかな」
使用人「はい」
女剣士「!」
使用人「慰めて欲しかったのですか?」
女剣士「……違う」
使用人「嘘を吐いても仕方無いでしょう」
女剣士「……要領よく、て言われても、さ」
女剣士「好きな物は、好きなんだ……ッ」
使用人「……どうして、側近様なんです?」
女剣士「そ……」
使用人「て、聞かれても困りますよね」
女剣士「…… ……え?」
使用人「貴女程、良くも悪くも……行動的では無かったと思いますが」
使用人「私も一緒でした。だから」
258 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 16:58:15.79 ID:AqYop/YvP
女剣士「一緒?アタシと……アンタが?」
使用人「はい。魔王様と一緒に居たくて」
女剣士「…… ……」
使用人「……別に、恋や愛ではありません」
使用人「お仕えしたかった。それだけです。別に、人間としての生に未練もありませんでしたし」
女剣士「……人間としての、生……?」
使用人「一度死ぬのです。簡単に言うと、ですけど……そうして、生まれ変わる」
女剣士「……じゃあ、側近も、アンタも……」
使用人「簡単に言うと、ですよ?」
使用人「……複雑な話しても解らなさそうじゃないですか、貴女」
女剣士「……なんか失礼な事言われてる気がするんだけど」
使用人「事実でしょう? ……人には向き不向きがあるだけです」
女剣士「え?」
使用人「私は貴女程無謀……積極的にはなれませんから」
女剣士「無謀……」
使用人「……言い直したのに何故拾うんですか」
女剣士「でもアンタは願いを叶えた。魔族に……なったんだろう」
使用人「先ほどの話ですが」
女剣士「え?」
使用人「人から、魔へ……の話ですよ」
使用人「可能か不可能かで言えば、可能です」
女剣士「え、え?」
使用人「……勿論。お勧めはしませんけど」
女剣士「そ、それは……ッ アタシも、魔族になれるって事か!?」
女剣士「あ……でも……」
使用人「何です?」
259 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 17:56:55.69 ID:AqYop/YvP
女剣士「……側近が、魔王しか無理だって言ってた」
使用人「……」
女剣士「アンタ、嘘吐いてるとは思えない。だから……」
女剣士「……側近は嘘吐いて迄……アタシが、魔族になるの……厭だったのかな」
使用人「側近様も嘘はついてませんよ」
女剣士「……?」
使用人「私達の様に……魔族へ変じるのには、魔王様にしか不可能でしょう」
使用人「……膨大で強力な魔力が必要です」
使用人「生半可な力では、人は……自我を失い、知能も持たない獣と化す可能性の方が高い」
女剣士「!」
使用人「勿論、前提として魔になりたいと言う強い意思が必要ですよ」
使用人「耐えられなければ、例え魔王様であっても……与えられた魔力に」
使用人「新しい魔と言う命自体に器が耐えれず……」
女剣士「死ぬ、のか」
使用人「……はい」
女剣士「……」
使用人「いくら目を持ってるとは言え、側近様でも不可能でしょうね」
使用人「貴女を完璧に……魔へと変じさせる事は」
女剣士「や、やってみないと……!」
使用人「解らない? ……確かに。この世に絶対はあり得ませんからね」
使用人「ですが、お勧めはしないと言ったでしょう?」
使用人「……ほぼ成功しません。だから、側近様が嘘を吐いた訳じゃありません」
使用人「貴女は、側近様の手で獣に堕とされ、そして屠られたいのですか?」
使用人「……違うでしょう?」
女剣士「…… ……」
260 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/17(月) 17:59:08.75 ID:AqYop/YvP
お風呂とご飯ー!
261 :
忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) :2013/06/17(月) 19:32:17.73 ID:KEalsoWd0
いってらっさい〜
262 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 09:35:21.71 ID:wxhJYAeHP
おはよー
お迎えまでー
263 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:00:39.60 ID:wxhJYAeHP
使用人「此処に、居たいですか?」
女剣士「…… ……」
使用人「何もありませんよ。魔物が出る事も無い……そもそも、やる事がありません」
女剣士「え……?」
使用人「魔王様は……お眠りになったとは言え、ご不在な訳じゃありませんから」
使用人「……この城が襲われる事はありません。考えられるとしたら」
使用人「人間の襲来ぐらいでしょうが……私と側近様が居れば、負ける事は考えられません」
女剣士「……そういえば、魔王が復活するとか言う話があったな」
使用人「誰かが故意に流した可能性は否定できません」
女剣士「何の為に……」
使用人「長くなりますよ?」
女剣士「か、簡単に!」
使用人「……魔族、人間、エルフ……種族は一つじゃありません」
使用人「それすらも関係無く、生きる者同士……争いもありますよね?」
女剣士「う、うん……多分……」
使用人「友達同士の喧嘩も同じです。人……『生』ある者が二人以上居る限り」
使用人「皆が皆、同じ考え方をするはずが無い」
使用人「貴女は、こんなに愛しているのに、と言う。でも……側近様はそうでは無いと言う」
女剣士「……ッ」
使用人「では、振り向いて貰う為にどうしましょう」
使用人「自分の思うとおりの結果になるために、どうしましょう?」
女剣士「……」
使用人「情報を操作したり。体当たりでぶつかってみたり」
使用人「……色々、試行錯誤します」
女剣士「……うん」
使用人「そういう事なんです。何かが、誰かがどこかで良かれと行動した事に」
使用人「賛同し喜ぶ者ばかりでは無い、と言う事」
女剣士「……」
264 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:10:54.66 ID:wxhJYAeHP
使用人「魔王様が復活し、人間を支配しようとしていると聞いて」
使用人「……喜ぶ者も、悲しむ者も居る。勿論、額面通りじゃありませんけど」
使用人「色んな感情、色んな思惑があって当たり前ですからね」
女剣士「…… ……」
使用人「北の街……」
女剣士「え?」
使用人「離れられて、どうなってるか心配にはなりませんか?」
女剣士「あ……」
使用人「もう、どうでも良いですか?」
女剣士「そ、そんな事は……ッ」
使用人「そんな事は、考えもしなかった?」
女剣士「!!」
使用人「……ご免なさい。責めてる訳じゃありません」
使用人「気になるのでしたら、戻ってみられれば良いんです」
使用人「此処に、また戻ってくる事は可能でしょう?」
女剣士「え?でも……」
使用人「私はこの城の使用人です。さっきも言いましたけど、やる事、本当にありません」
使用人「船長さんには必要な物を届けてもらったりもします」
使用人「貴女が『要領よく』連れてきて貰うのが可能なら、また会えますよ」
使用人「……勿論、その時まだ魔王様にお変わり無ければ、と言う条件付きですけど」
女剣士「それは……帰れ、って言ってるのか」
使用人「いいえ。選択するのは貴女です。女剣士さん」
使用人「……転移石に余分があれば、私がお連れして、また一緒に戻る事もできますが」
使用人「それは……できませんから」
女剣士「余分が無い、から?」
使用人「はい。もし何かあった時、私や側近様は自分自身の力で転移する事はできません」
女剣士「魔族、なのに?」
使用人「……魔王様は規格外ですからね」
265 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:21:11.04 ID:wxhJYAeHP
女剣士「目を持ってるのに、か?」
使用人「側近様ですか……」
女剣士「その気になれば出来そうじゃ無いか。魔王の欠片を持ってるんだろう?」
使用人「出来ると仮定しても、その気にならなければ一緒でしょう?」
女剣士「そ、そりゃそうだけど……」
使用人「必要に駆られれば、側近様でしたら、選択される方法かもしれません」
使用人「ですが……今、貴女の為にしてくれる、と思えます?」
女剣士「…… ……」
使用人「焦ってもろくな結果になりませんよ……それは、私と側近様には無限に近い時間が」
使用人「あるから、言える事かもしれません。ですが」
使用人「……明日、魔王様の身に変化があれば」
使用人「もし人間が攻めてきたら?」
使用人「……平穏が約束された訳ではありませんから。未来など、誰にも解りませんから」
女剣士「……」
使用人「無限と有限は決してイコールにはならないけど、そこに絶対の保証もあり得ないんです」
女剣士「……明日、魔王が目覚めたら」
使用人「はい?」
女剣士「今日、やっておけば良かったと思うかもしれないじゃないか」
使用人「ええ……そうですね」
女剣士「焦る必要は無いかもしれないけど、やらないで後悔するのはもっと厭だ!」
使用人「……では、確実に一つずつ、やりましょう」
女剣士「一つ、ずつ……」
使用人「はい。今貴女が一番したいことは?」
女剣士「…… ……側近と、話がしたい」
使用人「多分、ご機嫌斜めですよ」
女剣士「う…… ……」
使用人「それでも良いですか?」
女剣士「せ、せめて謝りたい!」
使用人「何を謝ります?」
266 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:30:35.82 ID:wxhJYAeHP
使用人「意味の無い謝罪程、火に油を注ぎます」
使用人「貴女が謝りたいと思う理由は、何です?」
女剣士「む、無茶ばかり……言ったこと、とか」
女剣士「……側近の気持ち、無視した事、とか……皆に迷惑かけた事、とか」
使用人「皆、とは?」
女剣士「……盗賊とか」
使用人「謝ってこなかった、んですか?」
女剣士「た、タイミングが!」
使用人「それは言い訳でしょう。仕方無い部分もあったとは思いますけど」
女剣士「でも、もう……」
使用人「先ほども言いました。行って、戻ってこれる様に」
使用人「貴女が、すれば良いのです」
女剣士「……うん」
使用人「どうします?」
女剣士「側近に、話してくる!」
女剣士「……船長が来たら、一回帰る。でも……また、会いに来たい」
使用人「機嫌悪くても?」
女剣士「うん。やっぱり……アタシは、待てない」
使用人「側近様は多分、書庫でしょう。あの扉を出て、階段を上って」
使用人「左手の奥の扉です」
女剣士「ありがとう、使用人……!」カタン
タタタ……ッ バタン!
使用人「…… ……」フゥ
……
………
…………
267 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:38:34.74 ID:wxhJYAeHP
側近「あった……!」バン!ペラペラ
側近(糞、所々掠れて読めないな……ッ 遙か、み……南、か?)ペラ
側近(島の奥のどう…… 洞窟、かな……)ペラ
タタタタ……
側近「ん?」
バタン!
女剣士「側近!」
側近「おわ……ッ お前……着いてくるなって行っただろうが……」
女剣士「御免!」ペコ
側近「へ?」
女剣士「アタシ、盗賊達に謝ってくるのも忘れたし、側近にも我が儘ばっか言った!」
女剣士「北の街もほったらかしだし、えっと……!」
側近「……お、おう。落ち着け?」
女剣士「取りあえず!」
側近「は、はい?」
女剣士「……船長の船で、一回帰る」
側近「……そう、か。 ……ん、一回?」
女剣士「ああ…… 会いたかったら、会いに来る。船長に頼んで、さ」
側近「……そうか」
女剣士「アタシ、やっぱり側近が好きだよ。だから、気が変わらない内は諦めない」
側近「……」
女剣士「でも、やり忘れた事、先に済ませてくる」
側近「……おう」ニッ
女剣士「……」ニコ
側近「取りあえず今、邪魔しないでくれるとありがたいな」
女剣士「解った……あ、でもさ。アタシ何かやる事ないか?」
側近「あー……使用人ちゃん手伝ってやれ……あ。待て、お前……」
女剣士「?」
268 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:45:28.67 ID:wxhJYAeHP
側近「……お前、こいつ覚えてるか」ガサガサ
女剣士「え?」
側近「お前の親父さんに貰った地図だ。で、こっちが……」ポイ
女剣士「?」
側近「この城にあった地図。どっちも古いモンだ」
女剣士「あ、ああ……」
側近「多分、使用人ちゃんもやる事無くて庭いじりばっかしてると思うから」
側近「二人でこいつを検証してくれ」
女剣士「懸賞?」
側近「……見比べて見てくれ」
女剣士「わ、解った」
側近「使用人ちゃんに言えば解るよ。俺も後で行く」
女剣士「使用人は庭、か?」
側近「今まで食堂に居たのか?」
女剣士「あ、ああ……」
側近「食堂の奥にテラスに出る扉がある。そこから庭見渡せるから」
側近「庭に居たら呼び戻してくれ。頼んだ」
女剣士「わ、解った!」タタタ
側近「こ、こら!地図持ってって!」
女剣士「あ……ご、御免……」
パタン
側近「……いきなり物わかり良くなったな」
側近(使用人ちゃん……何吹き込んだんだか)ハァ
……
………
…………
269 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 10:54:21.63 ID:wxhJYAeHP
パタン
船長「おう……どうだ?」
魔法使い「手当受けて寝てるよ。打ち身だけだと思うが……」
船長「そうか……お前は大丈夫か?」
魔法使い「俺は軽い火傷ぐらいだ。ついでに手当して貰ったよ」
船長「……」フゥ
魔法使い「心配か?」
船長「仲間の心配しねぇ奴が居るか?」
魔法使い「嬉しいね、仲間って言って貰えるとは」
船長「……ありゃ、何だ?」
魔法使い「え?女海賊?」
船長「違うわ阿呆……あの三つ頭の化け物だ」
魔法使い「俺に聞かれて解る訳ねぇだろうが……」
魔法使い「魔族の知り合いが居るんだろ?そいつに聞いてみてくれよ」
魔法使い「……ああ、俺のお宝……」ハァ
船長「確かに、お宝の匂いはするがな」
船長「……手、出さない方が賢明だろう」
魔法使い「……そのお知り合いさんに、討伐とか頼めない訳?」
船長「……時期が悪いな。今は……無理だ」
魔法使い「何で」
船長「誰にでも事情ってのはあるもんだ」
魔法使い「まーじーかーよーォ……」
船長「……女海賊の様子次第だが、容態が変わらないとも限らんだろうし」
船長「一端、この海域を離れるぞ」
魔法使い「……だよな」
船長「様子を見ながら……最果ての大陸を目指す」
魔法使い「……はい?」
270 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:00:24.10 ID:wxhJYAeHP
船長「聞こえなかったか?」
魔法使い「聞こえたから聞いてんだろうが!」
船長「依頼人は魔族だと言っただろう。花を届けにゃならん」
魔法使い「さ、さ、最果て!?最果て!?あんな所に住んでる魔族に」
魔法使い「え、知り合い!?マジで!?マジで言っちゃってんの!?」
船長「……お前もういい歳なんだろ?もうちょっと落ち着けよ」
魔法使い「歳関係ねぇだろ!びっくりするわー!」
船長「……お前も女海賊も幾つだよ」
魔法使い「話逸らすな!俺はもう30超えてるよ!」
魔法使い「女海賊は……あー、まだ20代半ばぐらいだと思うけど」
船長「……いい歳じゃネェかやっぱり」
魔法使い「ウルサイよ!夢追いかけるのに、歳なんか関係あるか!」
船長「夢、な……」
魔法使い「な、なあ……マジで言ってんのか?最果ての地に住む魔族って……」
船長「……マジだよ。行き先は魔王の城だ」
魔法使い「…… ……へ?」
船長「依頼主は魔王の使用人だ」
魔法使い「…… ……」ポカーン
船長「……口閉じろ、だらしねぇ」
コンコン
船長「おう」
魔法使い「……」ポカーン
海賊「船長……ちょっといいっすか」
船長「何だ?」
海賊「女海賊なんすけど」
船長「! ……どうした!?」
271 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:04:41.53 ID:wxhJYAeHP
海賊「あ、いや……それが、どうもね?」
船長「何だ、早く言え!」
海賊「……孕んでるみたいなんすけど」
船長「……は?」
魔法使い「ええええええええええええええええええええええ!?」
船長「うるせぇ!」ゴン!
魔法使い「……痛い」
海賊「相手、心当たりあります?」
船長「…… ……」
魔法使い「……いい歳こいて、ってそのままそっくり返して良いよな、船長?」
船長「…… ……」
……
………
…………
盗賊「鍛冶師、入るぞ?」
コンコン、コツンコツン……
鍛冶師「…… ……」
盗賊「鍛冶師」
鍛冶師「あ……ッ 御免、盗賊……来たんだ」
盗賊「お前、本当に彫刻家かなんかに転職したら」
鍛冶師「冗談。僕は……」
盗賊「あれ、これ……」ヒョイ
鍛冶師「……聞いてる?」
272 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:14:38.54 ID:wxhJYAeHP
盗賊「これ、魔王が書いたエルフの本じゃネェか」
鍛冶師「聞いてないね……まあ良いけど」フゥ
鍛冶師「この絵、あんまり綺麗だからさ……教会に飾ったら良いかと思って」
盗賊「んでまた、こんなばかでかい石彫ってんのか……」
鍛冶師「定期便で石売りに来た人が居たからさ……でも」
盗賊「ん?」
鍛冶師「…… ……」
盗賊「何だよ……」
鍛冶師「……本当は、娼婦ちゃんの顔にしようと思ってたんだ」
盗賊「……この像、か?」
鍛冶師「うん。だけど……」
盗賊「これ……姫にそっくりだ」
鍛冶師「……だよね。作って行けば行く程、この人の顔でしかあり得ない気になってきてさ」
盗賊「どっちにしたって、こんな大きいのあの教会にはおけないぞ」
鍛冶師「…… ……だ、よね」
盗賊「こっちの小さい石で作れば?」
鍛冶師「うん……」
盗賊「これはこれで、作れば良いじゃネェか」
鍛冶師「……そうだね」
盗賊「町長、決まったよ。まだ任せっきりにはできねぇけど」
鍛冶師「そうか。まあ、完成させるにも時間かかるしな……まだ」
鍛冶師「神父さんに約束しちゃったし……こっちは一端置いておいて」
鍛冶師「先に……ちっちゃいの作るかな」ハァ
盗賊「取りあえず飯にしようぜ?」
鍛冶師「え、もうそんな時間!?」
盗賊「おう。神父さんにも声かけたんだけどさ」
盗賊「……見習い神官共の世話で大変そうだったよ」
鍛冶師「え、また増えたの……」
273 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:20:24.93 ID:wxhJYAeHP
盗賊「……気が紛れて良い、とか言ってたけどね」
鍛冶師「そっか……」
盗賊「ほら、アタシもまだやる事あるんだ」
盗賊「さっさと飯食いに行こうぜ」
鍛冶師「ん……なあ、盗賊」
盗賊「ん?」
鍛冶師「……この、小さい娼婦ちゃんの出来たらさ」
盗賊「おう?」
鍛冶師「…… ……引っ越す前に、神父さんに式、挙げて貰わない?」
盗賊「式?何の?」
鍛冶師「…… ……け、けっこ、ん、しき……僕、達の」
盗賊「…… ……え、え!?」
鍛冶師「結婚、して欲しい。始まりの街に行く前に」
鍛冶師「向こうに、言ったら……その。こ、子供!とか!ほ、ほし、い!し!」
盗賊「お、おう!」
鍛冶師「え?」
盗賊「え!?」
鍛冶師「……」
盗賊「……」
鍛冶師「あー……えっと。もう一回、言うね」
鍛冶師「僕と、結婚して下さい」
盗賊「…… ……」ポカーン
鍛冶師「口開いてる」
盗賊「は、はい!」
鍛冶師「え、どっち!?」
盗賊「……ッ はい、つってんだろ!」
鍛冶師「……うん」ギュ
盗賊「……うん」ギュ
鍛冶師「幸せに……なろう、ね?」
盗賊「……うん!」
274 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:35:31.59 ID:wxhJYAeHP
……
………
…………
使用人「見比べろ、ですか」
女剣士「ああ。これが……アタシの親父が側近にあげた奴」
使用人「こっちが城の、で……これが、今のですね」ガサガサ
女剣士「随分……違うんだな。三枚比べると」
使用人「時代がかなり違いますからね……城の物も相当古い様ですが」
使用人「……側近様の地図は、さらに古い……様です」
女剣士「あれ?ここ……こっちは渦が書いてあるのに」
女剣士「……こっちは、島がある」
使用人「それは…… ……」
カチャ
側近「悪い、遅くなったな」
女剣士「側近!」
使用人「側近様、早速ですけど」
側近「……おう」
女剣士「調べ物、終わったのか?」
側近「お前眠そうだな……」
女剣士「……だ、大丈夫だ!」
使用人「無理せず寝てください」
女剣士「で、でも……!」
側近「どうせこれから俺たちは地図とにらめっこだ」
女剣士「そ、その地図、アタシの親父がくれた奴だろ!?」
女剣士「アタシにも……」フワ……
側近「欠伸してんじゃねぇか……」
使用人「仲間はずれになんかしませんよ。明日、聞きたい事があれば」
使用人「お尋ねします。だから今日は、寝て下さい」
女剣士「……ん」
側近「……素直」
275 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 11:48:15.21 ID:wxhJYAeHP
女剣士「我が儘言って、嫌われるのやだし……」
使用人「私の隣のお部屋、解ります?」
女剣士「さっき寝てたとこだよな?大丈夫……」スタスタ
パタン
側近「……何言ったの、使用人ちゃん」
使用人「これと言って、別に?」
側近「何か……急に聞き分け良くなったな」
使用人「一つずつちゃんと説明しただけです」
使用人「頭ごなしに否定し続けたら、余計意固地になりますしね」
側近「……お見事」
使用人「飴と鞭、のつもりだったんでしょう?」
側近「へ?」
使用人「きついなぁ、と思って聞いてましたけど、憎くて言ってる訳じゃないんだろうなって」
使用人「思ってたので」
側近「……まあ」
使用人「恋慕は抱けなくても、嫌う理由にはなりませんしね」
側近「程度はあるけどな」
使用人「私は嫌う程知りません。し……まあ、理解は出来ます」
使用人「同意はしかねますけど」
側近「……ありがとな」
使用人「どういたしまして」
側近「さて、話戻すか……で、どうだった?」
使用人「さっと見ただけですけど……これ、貰った地図の方が古いですね」
側近「だな」
276 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 12:07:10.28 ID:wxhJYAeHP
使用人「この……大海の渦。ここに島があります」
側近「…… ……」
使用人「この島……側近様の出身の島、ですね?」
使用人「……先代の魔王様に沈められた」
側近「何で……そう思う?」
使用人「単純な消去法です」
側近「……ま、そうだよな」
使用人「この地図にあって他に無いのが、この島と」
使用人「……ここ」トン
使用人「正確さがどれほどの物か解りませんが、小さな島ですね」
側近「……あと、こっちもだな」
使用人「あ、始まりの大陸……ですか」
側近「始まりの大陸は、俺がまだ人間だった頃にはもう……無かった筈だ」
使用人「……でも、地図には乗ってるんですね」
側近「先代に……直接的では無いにしても滅ぼされた、んだろう」
側近「……俺の住んでた島みたいに、沈められた訳じゃ無い」
使用人「……」
側近「違いはこれぐらいだな」
使用人「この……小さな島、岩礁地帯の中にありますね」
使用人「……エルフの森では無いのですか?」
側近「まあ、可能性はあるだろうが……ちょっとこの本を見てくれ」ドサ
使用人「これは?」
側近「さっき書庫で見つけたんだ。随分掠れてるが……」
使用人「……」ペラ
使用人「南の……に、眠……る?」
側近「多分、南の島の洞窟の奥に眠る鉱石、だ」
使用人「鉱石……」
側近「……問題は、次。ここ」
使用人「……魔法伝導率の高い…… ……石!」
側近「非常に脆く打つのは困難……とな」
使用人「……続きは読めませんね」
277 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 12:17:50.45 ID:wxhJYAeHP
使用人「しかし……」
側近「……言いたい事は解る。調べてどうする、だろ?」
使用人「……」
側近「鍛冶師にその石を与えたとしても、だ」
側近「……まさか、魔王様の剣を打ち直せるとは思わん」
使用人「魔王様の剣の半身は、魔王様自身に取り込まれましたからね」
側近「石を用いて修理が叶ったとしても……それは、『魔王の剣』じゃ無い」
使用人「……」
側近「一つだけ解ったのは、やっぱり俺があのぼろぼろの剣で」
側近「魔王様に何かあった時、どうにかしないと行けネェ、って事だ」
使用人「…… ……側近様」
側近「大丈夫だ。この世界は守る。魔王様の思いを……無駄にはしないさ」
使用人「いえ、そうでは無くて」
側近「へ?」
使用人「……一つだけ、気になっていた事があるんです」
側近「な、何だよ」
使用人「エルフは、嘘は吐けない」
側近「……?」
使用人「嘘を吐いたら、それは本当になるのですよね?」
側近「あ、ああ……」
使用人「……姫様が眠られる時の事、覚えていますか?」
側近「……何が言いたい?」
使用人「…… ……」
使用人「『貴方は、れっきとした勇者。魔王であり勇者でもある』」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「それは……『嘘』か?」
使用人「わかりません。ですが……」
側近「『勇者と言う存在でない』事は明白だな」
使用人「……はい」
278 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 12:20:54.76 ID:wxhJYAeHP
おひるごはーん
279 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/18(火) 12:24:29.95 ID:G44zQXbEP
おひょーん
280 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 13:27:35.08 ID:wxhJYAeHP
側近「……『魔王』は」
使用人「?」
側近「『魔王』は『魔の王』だ。文字通りな」
側近「しかし、『勇者』てのは……」
使用人「……貴方は、『勇者』の仲間だったのでしょう、側近様」
側近「そうだ。だが……」
使用人「『勇者』と言う『者』自体は存在しない?」
側近「……ああ。勇者と呼ばれては居たが、ありゃただの人間だ」
側近「確かに強かった。魔法にも剣にも長けてたし、人を引きつける魅力もあった」
側近「だが……人間だった。ただの、な」
側近「勿論王に成る者でも無い。本当に、ただの人間だ」
使用人「……勇者と呼ばれて居ただけ、ですか」
側近「『魔王』を倒して居れば、『勇者』と呼ばれ史実には残っただろうな」
側近「……あの時代、あのタイミング、でなしえていれば」
使用人「…… ……ですが」
側近「ん?」
使用人「魔王様の剣が、勇者の剣であったなら」
使用人「……いえ、すみません。忘れて下さい」
使用人「ちょっと……混乱してきました」
側近「……勇者の剣が魔王の剣になったなら」
側近「……『魔王であり勇者でもある』」
使用人「……?」
側近「姫様の言葉を……思い出しただけだ」
使用人「表裏一体」
側近「……」
側近「魔王様は勇者だ。確かに……」
使用人「そうです。私達……劣等種の、勇者」
使用人「港街の人々の、勇者です」
側近「使用人ちゃん……」
使用人「……姫様の言葉は、間違いではありません」
使用人「気に……しすぎです。大丈夫です」
281 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 13:34:44.31 ID:wxhJYAeHP
側近「そ……う、だよな」
使用人「……すみません。気にしすぎは私ですね」
側近「いや……」
側近「……一つずつ、説明していけば良い、だろ?」
使用人「……はい」
側近「見に行くべき、か?」
使用人「?」
側近「南の島か……」
使用人「鉱石ですか……しかし」
使用人「手に入れたところで」
側近「……だよな」
使用人「余り、離れられない方がよろしいかと。様子なら私が、と言いたいですが」
側近「……転移石、か」
使用人「はい。残り少ないです。本当に必要な時に」
側近「……だな」
使用人「さっき、女剣士さんと話していたのですが」
側近「ん?」
使用人「……出来ませんか?転移」
側近「……」
使用人「……」
側近「多分、目の力を使えば可能だろうと思う、が」
側近「……魔王様の力を引き出すのは怖いな」
使用人「そう……ですよね」
側近「それに……離れない方が良いってのも同意だ」
側近「……何時なにがあるかわからないからな」
側近「今は、女剣士も居るし」
使用人「……船長さんも何時になるかわかりませんしね」
側近「ああ……届く保証も無いんだろ?」
使用人「はい」
側近「……女剣士には?」
使用人「言っていません」
側近「…… ……そうか」
282 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 13:40:57.19 ID:wxhJYAeHP
使用人「言った方が良いでしょうか」
側近「どうかな……もし、手紙が届いていたとしても」
側近「時間は掛かるだろう。船長の居場所もわからねぇしな」
使用人「そうですね……」
側近「仕方ねぇさ。暫くは大人しくしてるしかなさそうだ」
使用人「……はい」
側近「女剣士が、死ぬまで此処に居たって」
側近「……俺たちには、それもあっと言う間、だろ?」
使用人「……」
側近「それも……あいつの運命だ」
使用人「受け入れるのですか、彼女を」
側近「……俺には、わからねぇよ。そういうの……は」
……
………
…………
魔法使い「起きてるか?」コンコン
女海賊「おう」
カチャ
女海賊「……今、どの辺だ?」
魔法使い「もうちょっとで北の街の岬を回るってよ」
魔法使い「一端降りるそうだ」
女海賊「え、なんで」
魔法使い「補給だろ。食料も仕入れないとな」
283 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 13:46:57.93 ID:wxhJYAeHP
女海賊「そっか」
魔法使い「……お前の腹がでかいってのもなぁ」
女海賊「毎日見てるのに解るもんか?」
魔法使い「そりゃな。自分でも気付くだろ?」
女海賊「……まあ」
魔法使い「……しかし、すげぇ確率だよな」
女海賊「何回目だよその話」
魔法使い「一回っきりなんだろ」
女海賊「……押し切ったみたいなもんだからな」
魔法使い「……」
女海賊「船長、は?」
魔法使い「舵握ってるよ、ずっと」
女海賊「……」
魔法使い「仕方ねぇだろ。惚れた女にそっくりなお前に迫られて」
魔法使い「……いや、まあ、押し切られたのは船長の所為だけどさ」
女海賊「……」
魔法使い「戸惑って当然だろ。愛し合ってる訳じゃネェのは理解してんだろ」
女海賊「……当たり前だ。ガキじゃネェんだ」
魔法使い「じゃあ……んな顔すんな。子供に罪はネェんだから」
女海賊「……そろそろ、半年か」
魔法使い「あの島を出てか?そうだな……最果ての城まで一年は掛からネェって」
魔法使い「言ってたからな」
魔法使い「波も良いみたいだぜ。ゆっくり進んでる割にゃ」
魔法使い「順調すぎる位早いんだ」
284 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/18(火) 13:48:34.09 ID:wxhJYAeHP
お迎えー
285 :
名も無き被検体774号+:2013/06/18(火) 23:42:26.60 ID:+3gEZWga0
おつかれー
286 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 08:57:42.85 ID:TtLirpKGP
おはよー
帰ったら書くよー
287 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 09:31:36.76 ID:TtLirpKGP
女海賊「そうか……」
魔法使い「で、どうすんだ」
女海賊「? 何がだよ」
魔法使い「……産んだ後、だよ」
女海賊「……」
魔法使い「……」
女海賊「港街、かな」
魔法使い「ん?」
女海賊「船に乗ってはいたいが迷惑だろうし」
女海賊「子供の事考えりゃ、な」
魔法使い「……ま、ゆっくり考えれば良いだろ。まだもう少し先だしな」
女海賊「ああ……ッ」
グラグラ……
魔法使い「な、何だ?」
チャクガンスルゾー!
アイアイサー!
魔法使い「……着いたのか」
女海賊「何処に、だ?」
魔法使い「北の街って所だそうだ。最果ての大陸に一番近い街だ」
女海賊「……」
魔法使い「あの有名な塔の傍の街さ」
女海賊「! 天まで届くって……あれか!」
魔法使い「どうする?気分転換に降りるか?」
女海賊「……ああ、良いなら」
魔法使い「すぐっつったって、夜まで位は掛かるだろうしな」
魔法使い「ほら、掴まれ」
288 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 09:38:47.12 ID:TtLirpKGP
女海賊「サンキュ……っと」
女海賊「ったく、腹重くて厭んなるよ」
魔法使い「んなにやついた顔で言われてもな」
女海賊「……フン」
女海賊「そういえばお前、仕事は良いのか」
魔法使い「当分お前の世話係だとよ。他に女も居ネェしな」スタスタ
女海賊「……」スタスタ
魔法使い「お前でもやっぱ嬉しいモンかね」
女海賊「アタシでもってどういう意味だよ」
魔法使い「……俺は男だからナァ。わかんねぇしさ」
女海賊「この子が大きくなった頃、お前ジジィだな」
魔法使い「阿呆!俺はまだ若いわ!」
女海賊「……アタシぐらいの歳になったら、お前幾つだよ」
魔法使い「…… ……60位?」
女海賊「ジジィじゃネェかよ」
魔法使い「気持ちは若いの!何時までも!」
船長「おい、寝てなくて大丈夫なのか」
魔法使い「ずっと船の中じゃ気分も滅入るだろ?」
女海賊「無茶はしねぇよ……なあ、船長」
船長「ん?」
女海賊「最果ての地を出たら、港街に寄るか?」
船長「あ?ああ……まあ、一辺顔出さなきゃな。資材も下ろすし」
女海賊「……アタシと子供も下ろしてくれ」
船長「…… ……良いんだな」
女海賊「寂しさは我慢しろよ。子供の事考えりゃ一番良いだろう」
船長「阿呆…… 良いだろう。俺からも盗賊達に頼む」
女海賊「……ああ。魔法使い、どっかで休もうぜ」スタスタ
魔法使い「……本当に良いのか?」スタスタ
女海賊「優先事項はアタシじゃネェ。子供さ」
289 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 09:49:18.25 ID:TtLirpKGP
親父「失礼、今……あの船から下りてきましたな?」
女海賊「あ?ああ……どうした?」
魔法使い「何か問題でも?」
親父「あ、いや……以前も、確かあの船がこの街に寄ったことがあったはずだと」
親父「思いましてな……」
魔法使い「? 船長呼んで来ようか?」
親父「そうして頂けるとありがたい」
魔法使い「んじゃ、悪いけどどこかゆっくり休める所にこいつ案内してやって貰えないか?」
魔法使い「見ての通り身重だしよ」
親父「ああ……これは申し訳ない。宿をお探しですかな?」
女海賊「いや、補給だとか済ませたら発つって言ってたから……」
親父「では、良ければ我が家へどうぞ。あの赤い屋根です」
魔法使い「んじゃ、船長連れてそっち行くわ。悪いけど……えーと?」
親父「……失礼。私はこの街の町長です」
魔法使い「あいよ。んじゃ女海賊、先行っとけ」
女海賊「ああ……すみません。お世話かけます」
親父「いえいえ。どうぞ」スタスタ
女海賊「……あれ、噂の塔……か」スタスタ
親父「ん? ああ……近寄らない方が身のためですぞ。まあ、貴女は身重でいらっしゃるし」
親父「関係の無い話でしょうが……さ。どうぞ」カチャ
女海賊「あ……すみません」
親父「今お茶を入れましょう」
女海賊「あ……お構いなく」
親父「……興味がおありか、あの塔に」
女海賊「有名ですよ。アタシ達、か……旅人にとっちゃ、ね」
女海賊「どんなお宝が眠ってるやら、てな」
親父「……少し前にね。あの塔に上った者が居りました」
女海賊「え!?」
親父「話に寄ると……」
カチャ
魔法使い「お待たせ!」
船長「アンタが町長か……」
親父「ああ、貴方が船長ですか。お呼びだてして申し訳ない」
親父「まあ、座って下さい」
女海賊「お、おい、続きは?」
290 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:01:46.72 ID:TtLirpKGP
船長「続き?」
女海賊「少し前にあの……塔に上った奴が居るって」
魔法使い「まじで!?」
親父「あ、ああ……私の娘と、旅人がね」
船長「娘……女剣士か?」
女海賊「え!?」
魔法使い「知り合い?」
親父「娘をご存じなのですか!?」
船長「……この街を出て、鍛冶師の村へ行く途中だとか行ってた時にな」
船長「海に落ちて……」
親父「え!? ……そ、それで、娘は!?」
船長「……海に落ちた所を、俺の船が拾ったんだ」
親父「で、では……無事、なのですか……娘は、どこに?」
船長「……用事はそれじゃ無かったのか?」
親父「ま、まあ……そうなのですが……」
魔法使い「まあまあ、順番に聞こうぜ。塔の話も聞きてぇし」
船長「ああ……女剣士はもう船を降りた後だ。一緒じゃネェが」
船長「無事には違いネェよ」
親父「そうですか……」ホッ
親父「……一緒で無いのなら、良かった」
魔法使い「どういう意味だ?」
親父「……以前、貴方はこの街に側近と言う男を下ろしたでしょう」
船長「ああ」
親父「あの頃、頻繁にこの街は蝙蝠の群れに襲われていましてな」
親父「……それを退治し、街の治安維持に努めていたのが娘です」
親父「蝙蝠達はあの北の塔の方からやってくる」
親父「……興味本位で塔に行きたがる者は多かったが、行って帰ってくる者は居らず」
291 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:09:39.81 ID:TtLirpKGP
親父「私どもも追い払うので精一杯だったんです。ですが」
親父「丁度襲撃を受けている時に居合わせた側近が……あっと言う間に倒してしまった」
船長「……」
親父「彼も塔に興味を持っていたのでね。私は、塔の様子見と」
親父「……もし、ボスの様な者が居たのなら倒して欲しいと依頼し、船を貸したんです」
魔法使い「……で、無事に倒してきたのか?」
親父「いや……話に寄ると」
親父「あの塔の入口は……娘には見えたが側近には見えなかったそうだ」
親父「二人はどうにか内部に入ったらしいのだが」
親父「塔の中にも何も無かったらしい」
女海賊「馬鹿な!天辺は雲の上だったぞ!?」
親父「入口も、あの見てくれも……なんらかの魔法が掛かっていたのでは無いかとの」
親父「話だった……娘と側近に何の違いがあるのかは分からないが」
親父「結局……今までと何も変わらない。街の事は街で守らなければ仕方無い」
船長「……」
親父「私は、側近にこの街に残ってくれと頼んだんだ。娘の婿にならないかとね」
親父「娘もまんざらではなさそうだったしな」
船長「…… ……原因はそれか」ハァ
親父「え?」
船長「いや、何でもない」
女海賊「で……その側近てのはどうしたんだ?」
親父「仕える者がいるからと出て行ったよ。娘も後を追っていった」
親父「……寂しいとは思ったが、この街に縛り付ける訳にもいかないし」
親父「今まで……娘にばかり街の治安維持を押しつけていたからな」
292 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:18:54.13 ID:TtLirpKGP
船長「ふむ……で?用事ってのは娘を知らないか、か?」
親父「いや……そうじゃない」
女海賊「? じゃあ、何なんだよ」
親父「……あの後、蝙蝠の襲撃はぴたりと止んだんだ」
親父「身構えていた私達は安心した。側近はああは言ったが、実は解決してくれたんじゃないかとね」
魔法使い「なんだ、じゃあめでたしめでたし、じゃネェか」
親父「……最初は、な」
船長「?」
親父「ある日、また蝙蝠共がやってきた……んだが」
親父「数も少なく、力も弱い。酒場の女将でも追いやれる程度……なんだ」
女海賊「じゃあ……良いじゃネェかよ」
親父「……同時に、農作物が枯れ始めた」
船長「ん?」
親父「北の……最果ての大地の空を見た事はあるか?」
船長「……紫色の空か」
親父「あそこは昔からそうだ。だが……今では、北の塔の近くまであの闇色の雲が迫っている」
船長「…… ……」
親父「塔の魔法に惹かれ、蝙蝠達が集まっていたのでは無いかと言う」
親父「側近の推測はまだ納得が出来たんだ。だが……」
親父「彼と娘があそこへ言ってから、雲は広がりだし、街の農作物が枯れ出した」
親父「そして……止んでいた筈の蝙蝠達がまた集まり始めた」
女海賊「でも、随分弱くなったんだろう?」
船長「……一度平穏になっちまえば、再度、があれば必要以上に」
船長「不安になってもおかしくはないだろうな」
魔法使い「だが、その側近とやらも、女剣士って娘ももう居ないんだろう?」
魔法使い「だったら……」
船長「居ないから、だろう」
魔法使い「へ?」
293 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:28:11.65 ID:TtLirpKGP
船長「守ってくれてた筈の女剣士はもう居ない。自分たちでどうにかしなくちゃいけネェ」
船長「……不安と、疑心が浮き彫りになった、んだろう?」
親父「そうだ。側近と言う奴が……何かをしていったんじゃないか」
親父「女剣士は騙されてそそのかされて連れて行かれたのでは無いか」
親父「……いや、そもそも招き入れたのは女剣士じゃないか、とな」
魔法使い「んな無茶苦茶な……」
親父「勿論、言葉通り簡単にそうなった訳じゃ無い。だが……」
船長「一度火の付いた疑惑はそう簡単に止められない、か」
親父「ああ。側近は魔族だったんじゃないかと言い出す者も居た」
船長「…… ……」
親父「彼は……本当に強かった。だから……」
親父「塔の入口が見えなかったのも、人間では無かったからだ、とかな」
女海賊「そんな事言い出せば、側近とやらの言い分全て信じなくなりそうだがな」
親父「……街の人達は、私にも口を聞いてくれんよ、もう」フゥ
親父「だから、な……船長の船に見覚えがあったから、もし」
親父「もし、女剣士が居るのなら、降りて来るな、帰ってくるな、と」
親父「……伝えて貰おうと思ってな」
魔法使い「ひでぇ話だなぁ……」
船長「アンタはどうするんだ、町長さんよ」
親父「私ももうすぐ街を出るつもりだ。女剣士の無事が解れば……良いのだ」
親父「帰って来たら殺されかねん。私も……恐ろしい」
親父「もし、どこかで女剣士にあったら伝えて置いて欲しい」
親父「……船を下りたのは、遠い場所か?」
船長「港街……魔導の街のすぐ近くに出来た、新しい街に居るはずだ」
船長「そこから先は俺にもわからんが……此処へ戻ろうにも船がいる」
船長「……会えば、伝えておこう」
親父「そ、そうか……ありがとう」
294 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:38:43.21 ID:TtLirpKGP
船長「……用事はそれだけか?」
親父「ああ。君達も用事が済めば、すぐに出発した方が良い」
親父「街の人達は、余所者を嫌っている……害は無いと思うが」
親父「用心するに越したことは無い。妊婦さんもいるしね」
魔法使い「いや、女海賊と一緒に降りて正解、だろ」
魔法使い「身重の女連れた一行が、街を襲うとは思わないだろ、流石に」
女海賊「それすらも偽装と取られりゃ一緒さ……」
船長「そうだな。何もかも疑って掛かる連中に、普通、は通用しねぇ」
船長「魔法使い、女海賊を船室に連れて行ったら荷物の積み上げ手伝え」
魔法使い「あいよ」
女海賊「……お茶、ご馳走様でした」
親父「いや、こちらこそ……ありがとう」
親父「……肩の荷が下りた。娘の無事が解れば、後は……もう心配する事は無い」
女海賊「……」
魔法使い「オラ、行くぞ女海賊」
女海賊「あ、ああ……」
親父「ありがとう……」
パタン
船長「ジロジロ見られてると思ったら、そういう事か」スタスタ
魔法使い「襲いかかっては来ない……よな?」
女海賊「しがみつくな暑苦しいッ」
魔法使い「だ、だってよ……」
女海賊「ほら、荷下ろし手伝ってこい。アタシは一人で戻れるよ」
船長「船はそこだし……大丈夫、だな?」
女海賊「海賊共もウロウロしてるしな、平気だ」
女海賊「……さっさと出発しようぜ。空気が悪い」
魔法使い「気分が、だな……良し、ちゃっちゃっと終わらすか」
船長「おう!お前ら!手休めるなよ!」
アイアイサー!
295 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:44:08.01 ID:TtLirpKGP
……
………
…………
神父「……では、今日はここまでにしましょう、か」
新米神官「はい!ありがとうございました……あ、神父様」
神父「はい?」
新米神官「今日も本をお借りしてもよろしいですか?」
神父「ええ、どうぞ」
女神官「あ、私もお借りしたいです」
神父「ええ、どうぞ」
女神官「……こっち、読んだ?」
新米神官「あ、ええ……今日はこのエルフのお話をお借りしようかと」
女神官「じゃあ、私はこっち……この魔導書、お借り致します」
神父「ええ、順番に…… ……ッ」グラッ
新米神官「神父様……? 神父様!?」
女神官「え…… ……きゃあああああ!?」
神父(め、まい…… ……?)バタンッ
女神官「神父様!神父様!?」
新米神官「あ……ッ だ、誰か呼んできます!」バタバタバタッ
女神官「か、回復魔法……ッ」パアッ
神父(……からだが、うご、かな ……い…… ああ……)
神父(わたく、し ……は、 ……ま、だ…… ……)
296 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 10:45:37.68 ID:TtLirpKGP
おむかえー
297 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 10:54:05.99 ID:eH7rj8KdO
神父におむかえ?
298 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 10:56:16.21 ID:tKJwIdDCP
神父ぅー!!!!(;`・ д ・´ )
299 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 13:11:36.13 ID:ajdZkBbT0
神父逝ったあああああ!
300 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 13:13:40.93 ID:ajdZkBbT0
とはいえ神父って多分あの神父だろうから何らかのマジカルパワーでマジカルにマジカルからマジでマジカル
301 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 14:11:50.65 ID:TtLirpKGP
女神官「神父様、神父様!!しっかりなさってください!!」パァアッ
女神官「神父さ……ッ」
バタバタバタ……ッ
盗賊「神父さん!」
鍛冶師「神父さん!」
神父「…… ……」
新米神官「女神官さん、神父様は……ッ」
女神官「……ッ みゃ、脈が、弱くて……ッ」
盗賊「神父さん……ッ 鍛冶師、医者はまだか!?」
鍛冶師「すぐ来る! ……どいて、取りあえずベッドに運ぼう」ヒョイ
鍛冶師「……神父さん、すぐ、お医者様来るから……ね」スタスタ
神父「…… ……」
新米神官「そんな……回復魔法、が……効かない、なんて……」
女神官「効かないんじゃないわ……命の炎が、もう……」
新米神官「え……?」
女神官「……追いつかないだけよ。死神の鎌から、逃げるお元気が、もう……」
新米神官「死神……そんな……ッ」
盗賊「静かにしてろ……もう、医者が来る」
バタンッ
医者「神父さんが倒れたって!?」
盗賊「奥の部屋だ。鍛冶師が着いてる」
医者「ん。ちょっと待ってなさい……ああ、そんな顔しなくて良い」
医者「……大丈夫、じゃよ」
新米神官「……」
女神官「……」
パタン
302 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 14:29:42.48 ID:TtLirpKGP
盗賊「……お願いします」
新米神官「神父様……ッ」
女神官「…… ……」
カチャ……パタン
鍛冶師「……」フゥ
盗賊「鍛冶師、神父さんは……」
鍛冶師「……今、先生が見てくれてるけど、多分……」フルフル
女神官「そんな……ッ」
新米神官「神父様……ッ」
カチャ
医者「お入り……神父様、目を覚ましたよ」
盗賊「本当か……!?」
医者「……時間が無い。許す限り……話してやると良い」
盗賊「……!」
新米神官「神父様!」タタタ
女神官「神父、様……!」タタタ……ッ
鍛冶師「……」
神父「ご、めんなさい……ご心配、おかけ……しました……」
盗賊「全くだぜ、焦ったよ……びびらせんなよな」
新米神官「盗賊さ……ッ」
盗賊「まだ港街、できあがってネェんだ。神父さんには」ポロポロ
盗賊「魔除けの石、一杯作って貰って、売り上げに協力……し、して……ッ」ポロポロ
新米神官「…… ……ッ」
鍛冶師「そうだよ、神父さん。娼婦ちゃんの像もこの間出来た所だ」
鍛冶師「ずっと見てたい位綺麗だって、褒めてくれたとこだろ?」
303 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 14:37:31.49 ID:TtLirpKGP
神父「……ええ、そうですね。まだまだ、頑張らないと……」
神父「女神官さん、新米神官さん」
女神官「は、はい!」
新米神官「はい……ッ」
神父「私、暫くゆっくりしますから……魔石の作り方は、もう覚えました、ね?」
神父「私の……変わりに。街の為に、人の……冒険者や、力を持たない者の為に」
神父「頑張って下さい、ね……?」
新米神官「ぼ、僕はまだ、旨く出来ません!しん、神父様が、もっと、お、教えて……ッ」
新米神官「教えて、下さらない、と……ッ!!」
女神官「……ッ」ヒック、ヒック
神父「泣いて、いるのですか……? ……ああ、もう。見えて……」
神父「…… ……」
鍛冶師「神父さん?」
神父「盗賊、さん。鍛冶師……さん ……結婚式、どうぞ……」
神父「ここ、で……して下さい。見たかった、な……」
神父「…… ……娼、婦 ……さ …… 待っ」
神父「…… ……」
女神官「神父様!神父様!?いやあああああああああああ!!」
新米神官「神父様!!」
盗賊「……」ポロポロ
鍛冶師「……」ギュ
医者「魔除けの石、てのは……魔力も精神力も随分消耗するんだろう」
医者「……体力の急激な衰えは、少し前から気になっておったんだ」
鍛冶師「先生……」
医者「自分で煎じて、薬草なども採っておった様じゃがな」
医者「……随分、しんどかったんじゃろう」
盗賊「そう……か……」
医者「もう……大丈夫じゃ。苦しみは去った」
医者「……見てみぃ。晴れやかな顔、しとるわい」
盗賊「神父さん……御免な。アタシら、無茶ばっか……」
304 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 14:52:20.58 ID:TtLirpKGP
医者「……私は、これで。もう出来る事は無いからの」スタスタ
パタン
女神官「……」ヒック、ヒック
新米神官「神父様、神父様……ッ」ポロポロ
盗賊「……鍛冶師」
鍛冶師「あの場所に、って訳にはいかないよな」
盗賊「うん……この、奥に墓地を作ろう」
盗賊「此処も……丘の上だし。気持ち良い風が吹くさ」ポロポロ
女神官「新米神官さん」
新米神官「は、はい……?」
女神官「皆を集めて下さい……これからの事を、話し合わなければ」
新米神官「……ッで、でも……ッ」
女神官「此処は、神父様の作った教会です!神父様は、神の御許へと」
女神官「……私達より先に旅立つ事を許された、それだけなのです!」
女神官「泣いて、いては行けない……の、です……!」
新米神官「……ッ」
女神官「さあ、皆を呼んできてください」
女神官「……盗賊さん、鍛冶師さん、お呼びだてして申し訳ありませんでした」
盗賊「……いや。呼んでくれてありがとう」
鍛冶師「何かあったら、呼んでくれよ?」
女神官「……はい」
盗賊「行こう……鍛冶師」スタスタ
鍛冶師「ああ……」スタスタ
パタン
盗賊「……娼婦の名前、呼んでたな。神父さん」
鍛冶師「会えたんじゃない? ……娘みたいだって言ってたしな」
盗賊「うん……」
タタタ……
盗賊「?」クル
305 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 15:05:05.57 ID:TtLirpKGP
新米神官「盗賊さん、待って下さい!」
鍛冶師「……どうしたの、みんなを呼びに行くんじゃ?」
新米神官「はい……それは、そうですけど」
新米神官「……あの。魔石の事なんですが……お医者様が仰った様に」
新米神官「本当に……」
鍛冶師「精神力や魔力を消耗する、のか……か?」
新米神官「……はい」
盗賊「否定はしないよ。魔力を具現化する訳だしな」
盗賊「……神父さんは、徳の高い聖職者だった。込もる魔力も質の良い物だろう」
盗賊「加えて、高齢だった。アタシは……随分無茶をさせたのかもしれない」
新米神官「…… ……」
鍛冶師「だからって盗賊を責めるのは間違えてる」
盗賊「鍛冶師……良いんだ」
鍛冶師「僕は君の恋人だからって、ひいき目で言ってるんじゃない」
鍛冶師「……作ると言う選択肢を選んだのは神父さん自身だ」
鍛冶師「確かに、教えたのは盗賊だ。だけど……」
新米神官「……盗賊さんを非難すると、神父様の選択を……神父様自身を」
新米神官「否定する事になる、と言いたい、のですか」
鍛冶師「…… ……」
盗賊「……御免、な」
新米神官「……ッ 謝って頂きたい、訳じゃ……ッ …… ……」
新米神官「失礼……します」クル。スタスタ
盗賊「……」
鍛冶師「大丈夫?」
盗賊「気持ちは解るよ。あいつ……親みたいに慕ってたって話だし」
鍛冶師「……まあ、ね」
盗賊「教会の事はアタシらにはわかんねぇよ。コッチから率先して首突っ込むのもな」
鍛冶師「うん……でも……」
盗賊「勿論、ちゃんと見送ってから、の話だぜ?」
鍛冶師「…… ……」
306 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 15:23:45.20 ID:TtLirpKGP
盗賊「みんな、居なくなって行くな」
鍛冶師「ん?」
盗賊「魔王、姫、側近……使用人も、か」
盗賊「……船長も行っちまったし、娼婦と、神父さんは……もう……」
鍛冶師「…… ……」
盗賊「……なあ、鍛冶師」
鍛冶師「ん?」
盗賊「あのでっかい像、出来たのか?」
鍛冶師「あ、ああ……もう少しだよ」
盗賊「そっか……」
鍛冶師「何で?」
盗賊「ううん……もっと、時間かかるかと思ってたけどさ」
盗賊「よく考えたら、この街……完成するまで待つことも無いんだよな」
鍛冶師「……まあ、軌道にさえ乗っちゃえば、ね」
鍛冶師「けど、君の立場的に……」
盗賊「この間も言っただろ?町長も決まったんだ。魔導の街の役人とも」
盗賊「引き合わせたしな……」
鍛冶師「……出たいのかい?街」
盗賊「手を離れて言い頃合いかな、と思っただけだ」
盗賊「……て、言うのもな。別にアタシの街じゃ無いから」
盗賊「だから……さ。偉そうな言い方になった、けど……」
鍛冶師「うん。良いよ……解った」
鍛冶師「あれが完成したら、行こう。でも……その前に」
盗賊「ん?」
鍛冶師「約束しただろ。結婚式」
盗賊「……うん」
……
………
…………
307 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 15:37:58.63 ID:TtLirpKGP
使い魔「側近様?」コンコン
側近「おう。入れよ」
使い魔「失礼します……側近様、大陸の外れに船が見えるんですが」
側近「船? ……船長か!」ガタ
側近「急いで馬車を向かわせろ。客だよ」
使い魔「は、はい!」パタパタ……
側近「……使用人ちゃんは庭、かな」スタスタ
側近(どれぐらい時間が経ったんだかな……)
側近(ん……人影が、二つ。あれか)キィ
側近「使用人ちゃん。女剣士もいるか?」
使用人「側近様?どうされたんです……やっと手伝って頂ける気になりましたか」
側近「虫が撲滅されない限り俺は厭だってば」
女剣士「情けないなぁ……」
側近「うるさいな……それより、船長が来たみたいだぞ」
女剣士「え!?」
側近「馬車を向かわせた……船が着いた様だ」
使用人「そうですか……早かったですね」
側近「そうか?えっと……」
使用人「手紙を出してから、一年ぐらいですかね」
女剣士「……もう、一年経つのか」
側近「もう、かまだ、か……わかんねぇけどな」
女剣士「……」
側近「どうした」
女剣士「やっぱり……帰らないと駄目、か?」
側近「自分で決めた事だろう」
使用人「……お先に、準備してきます。後ほど、食堂に来て下さいね」スタスタ
カチャ、パタン
側近「……おう」
女剣士「……」
側近「女剣士?」
308 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 15:49:51.69 ID:TtLirpKGP
女剣士「……ううん。そうだよな」
側近「俺達……魔族と、人間のお前と、この侭此処で、ずっと……て訳には」
側近「いかねぇよ。毎日見てるからわかんねぇけど」
側近「……お前は、確実に一つずつ……大人になる」
女剣士「でも……アタシ、は……」
側近「中身がそう簡単に変わる訳じゃネェ。そりゃ解ってるよ」
側近「……だがな、最初に言われただろう?使用人ちゃんに」
側近「お前が……おばあちゃんになっても、俺はこのまんま、だ」
側近「……結論は後回しで良い。だけど、取りあえずは決めたとおりにしてみろよ」
側近「帰って来ようと思えば、何時でも帰ってこれる。だろ?」
女剣士「……うん。でも、でも…… ……もし、魔王に……ッ」
側近「魔王様に何かあれば、それは……お前が此処に居ようが否」
側近「……俺には、すべき事をするしかできん」
女剣士「…… ……」
側近「逃げろ、としか言ってやれない」
側近「……それはもし、俺とお前が愛し合っていたとしたって、同じだ」
女剣士「…… ……うん」
側近「……ありがとう。良し、行くか」
女剣士「ああ……そうだ、側近。賭けないか」
側近「あ?何をだ?」
女剣士「船長の腹が育ってるかどうか」
側近「……育ってる、に使用人ちゃんのケーキ」
女剣士「アタシもそっちだ」
側近「賭けにならねぇよ ……ん?」
バタバタバタ……ッ
使用人「側近様!早く来て下さい!私の部屋です!」
側近「え?え?」
使用人「女剣士さん、お湯を沸かして、持ってきて下さい!」バタバタ
女剣士「え!?あ、ああ……な、何だ!?」
側近「と、とにかく行くぞ!」
309 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 16:07:20.21 ID:TtLirpKGP
……
………
…………
船長「あ……そ、側近!」
側近「おう、船長久しぶりだな……一体何の騒ぎだ?」
側近「つか、使用人ちゃんは?」
ギャアギャア
オチツイテクダサイ!ダイジョウブデスカラ!
イタイ!イテェッテバー!
オ、オイオチツケ!オンナカイゾク!
ナンデオマエガココニイルンダ、デテケー!
ゴン!
側近「……な、何事?」
イテェッオマエ……ッ
イイカラ、デテイッテクダサイ!
シゲキシナイデ!
バタン!
魔法使い「……何で俺がこんな目に……」ハァ
船長「……お疲れ」
側近「えーっと……こいつ、は?」
船長「船の魔法使いだ」
310 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 16:17:56.21 ID:TtLirpKGP
船長「こっちが…… ……側近だ」
魔法使い「側近!アンタが!」
側近「あ?ああ…… ……なんだ?」
魔法使い「へーぇ……」ジロジロ
側近「な、何だよ。気持ち悪ぃな」
魔法使い「いや。魔族っても……俺たちと変わらネェなぁ、と思って」
側近「はぁ?はあ……そりゃ」
バタバタ
女剣士「側近、お湯!」
側近「お、おう! ……て、どうすりゃ良いんだ、これ」
船長「女剣士!? お前、なんで此処に……!?」
魔法使い「え、え……ええ!?」
女剣士「な、な、何だよ!?」
側近「あー……えっと、な。使用人ちゃんはこの中、だよな?」
魔法使い「あ、ああ……えっと、持って行ってやってくれるか?」
女剣士「う、うん…… ??」
スタスタ。カチャ
イタアアアアアアアアアアアイ!
マダイキンジャダメ!
側近「いや、なあ……マジで、中で何やってんの!?」
魔法使い「……産気づいたんだよ。女海賊、って奴がな」
側近「……産気づいたぁ!?」
船長「馬車の中で苦しみだしてな、急に」
船長「……ああ、すまん。随分汚しちまった。血が……」
側近「おいおいおい、そんなのどうでも良いよ!」
側近「大丈夫なのか!?」
311 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 16:32:27.12 ID:TtLirpKGP
魔法使い「……随分出血が多かったんだ。使用人って子が慌てて運んでくれたんだが」
魔法使い「あんなけ叫んでるんだ。大丈夫……だろ」
魔法使い「遠慮無く俺の事ぶん殴りやがったし……」
側近「……」
船長「いざとなりゃ、お前……回復、出来るよな?」
側近「あ、ああ……そりゃそうだが……」
オギャアアアアアアアアアアアアア!
魔法使い「産まれた!」
船長「……」ホゥ
側近「いや、しかし……お前、あの船、女なんかいたか?」
魔法使い「俺とあいつは新参だよ。んで、子供は…… ……」
船長「魔法使い!」
魔法使い「…… ……んだよ」
側近「……?」
バタン!
使用人「側近様!早く!」
側近「な、何だ!?」
使用人「母体の出血が止まりません!」
側近「!! ……ッ 糞、俺は医者じゃねえぞ!?」バタバタ
船長「……」
魔法使い「おい」
船長「……」
魔法使い「おい!船長!」
船長「聞いてんのか!!」
船長「……なんだよ」
312 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 16:33:16.83 ID:TtLirpKGP
魔法使い「おい!船長!」
船長「聞いてんのか!!」
船長「……なんだよ」
↓
魔法使い「おい!船長!」
魔法使い「聞いてんのか!!」
船長「……なんだよ」
訂正orz
313 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:02:10.49 ID:TtLirpKGP
魔法使い「何だよ、じゃネェだろ、何とか言えよ!」
魔法使い「心配じゃねぇのか!?」
船長「…… ……側近がついてんだ。大丈夫だろ」
魔法使い「て、めぇ……ッ!!」グイッ
船長「……ッ」
魔法使い「テメェらの間に愛なんてネェのは知ってるよ!」
魔法使い「あいつが無理矢理、押し切ったってのも解ってるよ!」
魔法使い「だがなぁ、あいつは、マジで……ッ テメェの事……!!」
船長「…… ……」
魔法使い「何時まで死んだ女思ってやがるんだ!あいつは……ッ」
魔法使い「死んだ、娼婦って女の変わりじゃネェぞ!!」ブン……ッ バキッ!
船長「……ッ」
ドン!
ガタガタ……ッ
女剣士「何やってんだ!」バタン! ……オギャア、オギャア
魔法使い「……ッ」
女剣士「ヨシヨシ。ウルサイおっさん共だなぁ」
船長「…… ……子供は、元気……なのか」
女剣士「……子供は、な」
魔法使い「女海賊は?」
女剣士「…… ……今、側近が魔法かけてるよ」
女剣士「船長。粉ミルクが無いんだ。船に無いのか?」
船長「あ……ああ…… ある、な」
女剣士「そうか、良かった」ホッ
女剣士「じゃあ、すぐに取ってきてくれ。母乳は……無理だ」
魔法使い「無理って、何で……!」
女剣士「お母さんの体調、戻ってからじゃないと!」
魔法使い「…… ……あ、ああ……そういう意味、な」
314 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:11:27.84 ID:TtLirpKGP
船長「解った……すぐ、戻る」スタスタ
パタン
女剣士「頬、赤かったな。殴ったのか」
魔法使い「…… ……」
女剣士「父親、船長なんだな」
魔法使い「……何で」
女剣士「お母さん、言ってたよ。船長を責めないでって」
魔法使い「……ッ」
女剣士「……はい」
魔法使い「え、え!?」オギャアオギャア!
女剣士「ちょっと抱っこしてな」
魔法使い「え、ちょ、俺、無理!」
女剣士「……これから、育てて行かなきゃいけないんだろ?」
魔法使い「……な、何でだよ。女海賊は……ッ」
女剣士「……側近は医者じゃない」
魔法使い「!」
女剣士「中、入って良いよ。アタシは此処で、船長待ってる」
魔法使い「赤ちゃん、預かってくれよ……」
女剣士「駄目。ちゃんと血も拭いたし、暖めたから大丈夫」
女剣士「どうせミルク飲む迄泣いてるよ。ちょっとは慣れな」
魔法使い「…… ……」スタスタ
キィ……
側近「…… ……魔法使いか。すまん」
魔法使い「いや……アンタの所為、じゃ……」
使用人「申し訳……ありません」
魔法使い「だから……謝るな、って……」
魔法使い「…… ……真っ青だな。女海賊」
側近「出血がひどかったみたいだな。回復魔法はかけたが……」
側近「……間に合わなかったみたいだ」
315 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:17:30.95 ID:TtLirpKGP
使用人「女剣士さんと、船長さんは?」
魔法使い「船長は……ミルク取りに、船に行った」
魔法使い「女剣士は外に居るよ。少し慣れろって……赤ちゃん、渡されたけど」
使用人「……預かります」オギャア……
側近「とにかく、赤ん坊寝かすのが先だな。後は……まあ、準備しとくわ」
使用人「……では」スタスタ。パタン
側近「……後で、呼びに来る」スタスタ
パタン
魔法使い「……冗談だろう、おい。お前……俺と宝探して」
魔法使い「派手に暴れて、世界の海渡ろうぜって……!!」
魔法使い「……何勝手に男に惚れて、何勝手にガキ作って」
魔法使い「何勝手に死んでんだよ!畜生!」
魔法使い「……しかも、ここ……魔王の城だぜ!?」
魔法使い「冗談、きっつい…… ……!?」
グラグラグラ……ッ
魔法使い「な、んだ……ッ ……地震……ッ !?」
グラグラグラ…… ……グラグラ…… …… ……
魔法使い「……収まった…… ……?」
魔法使い「何なんだよ……全く……ッ」
魔法使い「……女海賊」ナデ
魔法使い「…… ……」
キィ……
側近「おい、大丈夫か?」
316 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:24:08.64 ID:TtLirpKGP
魔法使い「あ、ああ……地震だろ?平気だよ」
側近「……なら、良いが。落ち着いたら、食堂に来い。正面の扉だ」
魔法使い「……ああ」
側近「…… ……」
パタン
側近「ふぅ……」
使用人「側近様。船長さん、戻られましたよ」
側近「ああ、そうか……あれ、赤ん坊は?」
使用人「女剣士さんに任せました。慣れていらっしゃる様ですし」
側近「……意外な事実だな」
使用人「街で何度かお産は見られて居たようですしね」
側近「そっか……まあ、そうだな」
使用人「……気がつかれましたか?」
側近「さっきの地震か」
使用人「……封印の間から、魔王様の魔力が……感じられます」
側近「…… ……声が、聞こえた」
使用人「声?」
側近「『揃った』だそうだ」
使用人「……?」
側近「何が、かは解らネェがな」
使用人「……赤ちゃんが眠れば、皆を集め手短に用件を伝えましょう」
使用人「時間がなさそうです。それに……赤ちゃんに、良い環境じゃありません」
側近「……ああ。急いだ方が良さそうだ」
使用人「魔法使いさんを呼んできます」
側近「ああ、待て……あいつはそっとしておけ」
使用人「え、でも……」
側近「……船長だけで良い。今は……」
使用人「…… ……はい」
317 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:35:20.85 ID:TtLirpKGP
……
………
…………
女剣士「そんな!」
船長「……事実だ。お前は、北の街には帰らない方が良い」
側近「まじかよ……」
使用人「……人間だって馬鹿じゃありませんよ。紫の空が広がっているのは事実です」
商人「恐らく、魔王様がお眠りにならなければ、さらに……広がって言っていたでしょう」
側近「……ついでに、インキュバスの野郎が流した『魔王の復活』の話が」
側近「信憑性を高める結果になってる、て訳か……」
女剣士「……親父まで……疑われてるのか」
船長「町長は街を出ると言ってた。お前が無事と解れば心配も無い、とな」
女剣士「……側近、アタシ……」
側近「ストップ。今から話そうと思ってたが……お前をこの城に置くことは出来ん」
女剣士「何で!?」
船長「しかし……いや、連れて出るのは構わん。好きなところで下ろしてやる、が……」
側近「……さっきの地震、気がついただろう?」
側近「魔王様の声が……聞こえたんだ」
船長「魔王の声?眠りについたんじゃ……」
使用人「期限が決まっている訳ではありません。今かもしれないし、何十年も後かもしれません」
使用人「ですが……確実に、魔王様の魔力が高まっています」
女剣士「…… ……」
側近「俺には、やる事がある。もし、魔王様に変化があれば」
側近「……使用人ちゃんの事すら、構ってる余裕は無い」
女剣士「……側近、顔色が悪い」
側近「ばれたか……」
船長「……どうした?」
側近「さっきから、体内で魔王様の目が……疼いてる」
側近「力が溢れそう……なんだ」
カチャ
使用人「! ……魔法使いさん」
318 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:47:13.76 ID:TtLirpKGP
魔法使い「船長、話が済んだら行くぞ。ここに、こいつを置いてはいけねぇだろ」
使用人「…… ……お連れする、のですか」
魔法使い「悪い。途中から聞いてた……俺は、事情は殆どわかんねぇけど」
魔法使い「……こいつを置いておいて、魔王とやらに取り込まれるのは御免だ」
魔法使い「女海賊は仲間だ。ちゃんと……俺たちで弔ってやらなきゃ」
女剣士「……アタシ、暫く船に乗ってて良いか」
船長「女剣士?」
女剣士「赤ちゃん、どうするんだよ。女いないんだろ?船に……」
船長「…… ……」
女剣士「誰かが、お母さんの変わりになってやらなきゃ」
使用人「…… ……」
側近「サンキュ、女剣士」
女剣士「落ち着いたら、会いに来て良いんだろ?」
女剣士「……ちゃんと連れていてくれよ、船長」
船長「……すまん」
側近「……追い出す様で悪いが…… ……ッ う、ぅッ」
使用人「側近様!?」
女剣士「側近!!」
側近「……ッ 早く行け!赤ん坊、居る、ん…… ……ッ 」ウゥ……ッ
側近「『揃った』…… ……」ハァ、ハァ……!
使用人「……ッ 早く、走って!」
魔法使い「……先に行くぜ!」タタタ
船長「女剣士、赤ん坊……貸せ!」ダダダッ
女剣士「側近……ッ 糞、絶対、会いに来るからな!」ダダダッ
使用人「馬車は乗り捨てて構いません、早く……ッ」
バタァン……ッ !
使用人「側近様……!」
319 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:57:01.28 ID:TtLirpKGP
側近「う、ぅ……ッ」
側近「…… …… 『生と死』 ……ッ」
使用人「側近、様……?」
側近?「……『特異点』 ……『王』『拾う者』」
使用人「……ッ」
使用人(側近様の瞳が、紫に……!? ……これ、は……ッ)
側近?「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
側近?「『知を受け継ぐ者』……」ジッ
使用人「……ッ」ゾクッ
側近?「『光と闇』『勇者と魔王』」
使用人「……そ、側近……さ、ま……ッ」
側近?「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
側近?「『我が名は、勇者』」
側近?「『光に導かれし運命の子』」
側近?「『闇に抱かれし運命の子』」
側近?「『汝の名は、魔王』」
側近?「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
側近?「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」
パアアアアアアアアアアッ!
使用人「な、に……ッ」
使用人(紫色の……ッ 光……ッ !!)
使用人(息が、つ、ま……ッ)
パキィィイイン!
使用人「ああああああああああああ!」
側近「うわあああああああああああああああああああああ!」
320 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 17:58:17.27 ID:TtLirpKGP
お風呂とご飯ー!
側近!!
ちょ!マジか!!側近!!!!!
323 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 19:50:09.50 ID:tKJwIdDCP
鳥肌が…
BBAの書くストーリーでは山場では必ずゾクゾクッとしてしまうな
側近がどっきんどっきん!
325 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 20:06:38.71 ID:YLL8TE9q0
おい暫くロムったが早く〜
326 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/19(水) 20:08:05.03 ID:TtLirpKGP
幼女とご飯です(´・_・`)
明日は朝から仕事やから
明後日かな……すまん、えらい所で
終わらしてしまった……
>>326 。゚(゚´Д`゚)゚。
がんばれ
幼女が彼女に見えた(`・ω・´)
今日はたくさん読めて幸せでした。
329 :
名も無き被検体774号+:2013/06/19(水) 23:57:30.64 ID:X4wY0kcq0
あわや今日は眠れないかと思ったわ
わくどきしながらねるわ
330 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 09:02:14.29 ID:OitLkm8hP
……
………
…………
船長「出せ! ……全速力でこの海域を離れろ!」
女剣士「よしよし、大丈夫だよ ……怖くない、怖くない……」フギャァ、フギャア……
魔法使い「……」ギュ
船長「! ……空が!」
キィイイイン!
女剣士「うわ!」ギャアア、ウワァアア!
魔法使い「何だ、この音……ッ」
女剣士「大丈夫……!大丈夫!!」ギュ。ナデナデ
船長「耳鳴り……!? ……あ!?」
女剣士「船長、何…… ああ!?」
魔法使い「紫の雲が……迫って……いや……!」
船長(……光、か!? 雲を、切り裂く光……!!)
パアアア……パァン!
船長「うわ!」
女剣士「!?」
魔法使い「ぎゃあ!」
ウワァアアン、アアン……
女剣士「あ、ぁあ……」ギュ
女剣士「……よし、よし」
魔法使い「な、何だったんだ、今のは……」
船長「魔王……」
船長(側近……無事、なのか!?)
331 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 09:07:54.49 ID:OitLkm8hP
……
………
…………
盗賊「な、何だ、今の……」
盗賊(北の方……まさか、魔王……!?)
バタバタバタ
鍛治師「盗賊!」
盗賊「……見たか、今の」
鍛治師「ああ……北の空の紫の雲の間を、光が走り抜けた」
盗賊「……」
鍛治師「魔王か……側近に、何か……」
盗賊「わからねぇ。わからねぇけど…… あ……」
ポツ……ポツポツ……ザアアア……ッ
盗賊「雨……」
鍛治師「濡れるよ、盗賊!ほら、走って!」
盗賊「あ、ああ……」タタタ
盗賊(側近……魔王……!)
332 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 09:20:28.78 ID:OitLkm8hP
……
………
…………
使用人「う、ぅ……ッ」ズキズキ
使用人(……生きて、る)ハッ
使用人(側近様!)ガバッキョロキョロ
使用人「……ッ 側近様!!」タタタ……ガバッ
使用人「側近様!側近様!?」
側近「……ぅう」
使用人(生きてる……)ホッ
ヒュウ……
使用人「寒…… ……!?」
使用人(風…… 城内なのに!?)バッ
使用人(でも……側近様……目を離す訳には)
333 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 09:21:48.58 ID:OitLkm8hP
働いてきまーす
334 :
名も無き被検体774号+:2013/06/20(木) 09:24:39.73 ID:N9utBov+0
なんという引き……
予告篇かよ!w
335 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/20(木) 09:36:55.50 ID:Fmzf8bPLP
予告編ワロタww
確かに予告編ww
終らないで下さいお願いです
終らないでくださいお願いです
>>1も大変なのによく続きかいてくれた!
ありがとう!
がんばってね!
339 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 13:28:18.01 ID:OitLkm8hP
側近「そこに……い、るの……使用人ちゃん、か…… ……?」
使用人「側近様!」
側近「あ、あ…… 正解。怪我は……」
使用人「わ、私は大丈夫です!それより……ッ」
側近「う……ッ」ズキズキ
使用人「側近様!急に起き上がっては……」
側近「……目、が」パチパチ
使用人「……目?魔王様の目ですか……?」
側近「目が、見えない」
使用人「え……?」
側近「すげぇ光が見えた。輝く光……なのに、真っ暗だ」
使用人(光……確かに、あの時……まさか、あの光に焼かれて……?)
側近「……風が吹いてる。ここは……外、か?」
使用人「いいえ……ここは食堂です。風は多分、奥から……」
側近「奥……魔王様!!」ガバッ
側近「う、痛……ゥッ」
使用人「無茶しないで! ……私が見て来ます。側近様はここに。良いですね?」
340 :
名も無き被検体774号+:2013/06/20(木) 15:32:01.08 ID:m2cvdHWT0
気になる
341 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/20(木) 15:46:45.29 ID:OitLkm8hP
側近「……やだ、て言っても聞かないわな」
側近「大人しく待ってるよ……でも」
使用人「確かめたらすぐ戻ります」
側近「……ん」
使用人「……」スタスタ
使用人(目が……見えない?)
使用人(魔王様の目は……関係ない?いや、でも……私も、あの光を浴びた)
使用人(……違う!光を発したのは、多分……側近様自身。やっぱり……ッ)ハッ
使用人「……!! 魔王様!?」タタタ
使用人(封印した筈の扉が開いてる……!!)
使用人「……ま、魔王、様……?」ソロ……
使用人(……寝具に人影……否、あれは、あの……黒い髪は魔王様)キョロ
使用人(……あれか。天井に、穴。 ……!?)
使用人「……下から、突き上げた様な」
使用人(魔王様の身に何か……しかし……)
カタン……
使用人「ひ……ッ」ビクッ
使用人「だ、誰です!?」
342 :
名も無き被検体774号+:2013/06/20(木) 23:28:23.58 ID:7ugQTaET0
最後の欠片は女海賊だったてことか?
よんどいてよかた
>>342 赤ん坊じゃないのかな?
過去作品と矛盾するけど、赤ん坊=勇者=最後の欠片かと思った
誰が出て来るのか気になる…
せめて魔王と側近は幸せになって欲しいなぁ
赤ん坊=勇者だと思った
姫の子供はハーフエルフだし勇者にはなり得ない気がする
続き気になるぅ!
345 :
名も無き被検体774号+:2013/06/20(木) 23:47:51.43 ID:Fmzf8bPLP
ってか姫の子供は僧侶でしょ
「拒否権はないんだな」に繋がっているとしたら、
寿命的には居るはずのキャラが使用人しか
登場していないのがずっと気になってる。
いっそ別世界であってくれ……
>>343 赤ん坊だけじゃなくて、女海賊が死んだことも併せて欠片の一つだと思った
赤ん坊が産まれただけでもダメだし、女海賊が死んだだけでもダメ
そのすぐあとの側近?の台詞にもあるように、生と死の表裏一体の事象が同時に起きたことが肝だと思ったんだが
348 :
名も無き被検体774号+:2013/06/21(金) 00:32:00.64 ID:HMgIU35QP
赤ん坊の誕生と女海賊の死か
349 :
名も無き被検体774号+:2013/06/21(金) 00:36:03.25 ID:fBC0Uv1Z0
ゲーム化オネシャス
351 :
名も無き被検体774号+:2013/06/21(金) 01:14:04.99 ID:c8G2ueu50
女海賊が魔王欠片戦士と女船長の血族だったんじゃないかとおもた
ここで赤子イコール勇者になり
あとは光の剣をどう修復に導くか
それとも今回はこれまでか
いちど治してるからなぁなんて考えたり
前作読んでない奴はいまのウチにはよ
352 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 08:44:15.97 ID:8ZimG/J2P
おはよー!
幼女ぽーんしたら書くよー
353 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/06/21(金) 09:01:32.94 ID:HMgIU35QP
ぽーん(・ω・ )
354 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 09:49:00.60 ID:8ZimG/J2P
使用人「……?」
使用人(気のせい…… ……?)ソロソロ……
使用人「!!」タタタッガバッ
使用人「……こ、れは……!!」
??「…… ……」スゥスゥ
使用人「あ、か……ちゃん?何で……?」ダッコ
使用人(寝てる……)ギュ
使用人(金の髪……いや、なんで、こんな所に……)
使用人(……!! ……『生と死』 ……まさか!?)タタタッ
使用人「魔王様!!」ソロリ……ナデ
使用人(暖かい……生きてる……? 否、でも……)
使用人「失礼します!」バッ バサバサッ
使用人(……微かだけど、胸が上下してる。考えすぎ?)
使用人「で、でも……じゃあ、この子は……!?」
カタン
使用人「!」ビクッ
側近「使用人ちゃん?大丈夫か……」
使用人「側近様!」
側近「ああ、居た……良かった。魔王様の部屋だよな、此処」
使用人「あ、あの、側近様!金色の、あか、赤ちゃんが!」
側近「…… お、落ち着け。何言ってるんだ?」
使用人「ここに赤ちゃんが落ちてたんです!」
側近「赤ちゃん落としちゃ駄目だろ……」
使用人「そうじゃなくて!」
側近「……いや、御免。赤ちゃんならさっき、船長が……」
使用人「ここにも居るんですよ!金の髪の赤ん坊が!」
側近「な、なんで……幻覚じゃなくて!?」
使用人「貴方こそ落ち着いて下さい!」スタスタ
使用人「ほら、ここ……触って!」グイ
側近「……ふにふにしてる」カチャ
側近「おっと……」ギュ
使用人「それは、魔王様の剣!?」
355 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 09:58:00.93 ID:8ZimG/J2P
??「……」スゥスゥ。パタ……トン
使用人「あ、危ない!手が……ッ」
側近「……傍に落ちてたから、拾って…… ……ッ」
パアアアアアアッ
使用人「うぅ……ッ」
側近「な、何だ……ッ」ドクンッ
使用人(また、光……ッ !?)
??「……」スゥスゥ
側近「……う、ぁ……ッ」
使用人「側近様!?」
側近?「……使用人、か」
使用人「え……」
使用人(この声……魔王様!?)
側近?「? ……目が見えん」
使用人「ま、魔王様!!魔王様ですか!?」
側近?「使用人、側近の目はどうした?」
使用人「…… ……」ポカーン
側近?「使用人?」
使用人「あ、ああ……すみません。余りに突飛な出来事が重なりすぎて……」
側近?「……無理も無い。そうか、側近の目は……そうか……」
使用人「あ、あの……魔王様?」
側近?「今私の手が剣に触れただろう……どうなっている?」
使用人「え? ……!! な、何故……!?」
側近?「…… ……」
使用人「……金、色…… ……に……」
側近?「ふむ……成る程」
使用人「あの……魔王様?」
側近?「余り長居すると側近の身に負担が掛かるな。すまんが使用人」
側近?「腕に掴まらせてくれ。この場所に居ない方が良い……そうだな」
使用人「あ、は、はい」
側近?「食堂の方へ案内してくれ。歩きながら……手短に話す」
356 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 10:06:14.57 ID:8ZimG/J2P
使用人「は、はい……」スタスタ
側近?「……どうやら私は、死んだ様だ」スタスタ
使用人「え!?」
側近?「否、違うな……それ、が私だ」ス……
使用人「それ……こ、この赤ちゃんですか!?」
側近?「証拠は剣だ。私の手が触れたら、金色になったのだろう」
使用人「は、はい」
側近?「……意識のある内に手短に話す」
側近?「失った『欠片』を探し出せ」
使用人「欠片……ですか」
側近?「……大きな光が、抜け出ていくのを感じた」
使用人(天井を突き破ったあの光……!)
側近?「恐らく、吸収してしまった……魔王の剣の欠片。歴代達の意識だ」
使用人「……歴代の意識?」
側近?「『生と死』『表裏一体』『光と闇』……」
使用人「さっきの……言葉ですね。側近様が発せられた……」
側近?「……私の身体に急速に『言葉』が流れ込んできた」
側近?「全て飲み込めば全てが消える……咄嗟に、願ったのだ」
使用人「……何を、です」
側近?「ただ……『否』と」
使用人「……」
側近?「世界は繰り返されている。何度も」
側近?「歴史は繰り返されている。生と死、破壊と再生……全て、表裏一体」
使用人「そ、れは……どういう……?」
側近?「私にもハッキリとは解らない。だが、あの部屋にあった私は死んだ『器』」
側近?「そしてそれ……赤子は、生きた『中身』だ」
使用人「……」
側近?「欠片を探せ。器は何れ……内包する魔力を押さえきれなくなり」
側近?「暴走する」
使用人「!!」
357 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 10:21:54.90 ID:8ZimG/J2P
側近?「……側近は私の目を持っていた」
使用人「何故、過去形なのです」
側近?「恐らく……私が言葉を、あの意識を撥ね除けた時に」
側近?「欠片が吸収して言ったのだろう」
使用人「そうか!あの光は、側近様の身体から……!」
側近?「……ついでに光を奪っていったのだろう」
側近?「剣を手にしていたのはあいつだろう?」
使用人「……で、では、側近様の目は……」
側近?「……今も見えていない。だが、残照がある」
使用人「え?」
側近?「長く体内に取り込まれていたからな。あいつの一部として残っているんだ」
側近?「で、なければ、こうして私が話すこと等できん」
使用人「……魔王様、規格外ですから」
側近?「……お前、酷いな」フフ
側近?「だがそれももう終わりだ。その赤子は……人間の筈だ」
使用人「え!?」
側近?「魔族が光等抱きえん。 ……目が覚めたら、瞳を覗き込んでみるが良い」
使用人「し、しかし!魔王様は魔族の王です!転生されたのなら、何故人間などに……!」
側近?「魔王は今や『器』だ。そして、すべて、は……表裏一……体 ……」
使用人「魔王様!?」
側近?「良いな、欠片……を、探し…… だ、せ。そして、必ず ……」
側近?「『魔王』を…… 倒、せ……! ……『勇者』!」バタン!
使用人「魔王様!」
側近「……いってえええええええええええええええええ!?」
使用人「!」ビクッ
??「……う、ァ ……うわああああああああああん!」
側近「わぁッ!?」
使用人「あ、ああ、えっと!? ……よ、ヨシヨシ……」
??「うわあああん、うわああああん」
側近「え、え、え!?」
使用人「……ん、冷たい…… ああ!?」
使用人「そ、側近様!お、おむつ!」
側近「え!?そ、ちょっと待っ」ガバッダダ……ゴン!
使用人「そこ、壁です!」
??「うわあああああああああああん!」
側近「あれ!?ここ何処!?」
使用人「あああ、ちょっと待ってね!?ええっと……ッ」
側近「何、何がどうなってるの!?」
使用人「あ……!と、取りあえず私が探してきますから、側近様抱っこ!」グイ
358 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 10:31:34.18 ID:8ZimG/J2P
側近「ええええええええええええええ」ダキ
使用人「待ってて下さいね!」タタタタ……
側近「えええ!?よ、よーしよーし……?」
??「うわぁ……あ……ん」
……
………
…………
使用人「……」グッタリ
側近「……」グッタリ
??「…… ……」スゥスゥ
使用人「バタバタで、船長さんが粉ミルク置いて行ってくれて助かりました……」
側近「……で、こいつが……魔王様だって言ったのか。魔王様、が」
側近「ややこしい……」
使用人「はい……」
側近「で、こいつどうすんの」
使用人「どうするの、って放置しておく訳にいかないでしょう!」
使用人「魔王様ですよ!?」
側近「いや、そりゃまあ……魔王様じゃ無くても赤ちゃん放置する訳にはいかんけどもさ」
使用人「……そうですよ」
側近「とりあえず……整理しよう。うん」
側近「何がなにやらさっぱりだ」
使用人「側近様の身体を借りて、魔王様が仰ったのはさっきの話で全部です」
使用人「……船長さん達がいらっしゃった時、ご自分で発せられた事は」
使用人「覚えてらっしゃらない、のですよね?」
側近「ああ……ええと、何だっけな」
使用人「『揃った』『生と死』『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』知を受け継ぐ者』」
使用人「それから……『光と闇』『勇者と魔王』」
側近「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
側近「『我が名は、勇者』」
側近「『光に導かれし運命の子』」
使用人「『闇に抱かれし運命の子』」
使用人「『汝の名は、魔王』」
使用人「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
側近「……で、『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』か」
使用人「……『生と死』は、女海賊さんと、赤ちゃん……ですか」
359 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 10:41:59.14 ID:8ZimG/J2P
側近「魔王様だろう。否……どっちも、かな」
使用人「女海賊さんの『死』と赤ちゃんの『生』」
側近「魔王様……『死』んで『器』になった。そして、転生……って言って良いかわからんけど」
側近「こいつ……が『生』まれた『中身』」
使用人「……表裏一体、ですか。『破壊と再生』にも当てはまりますね」
側近「さっき、ミルクやってる時に見たんだろう」
使用人「……はい。美しい金の瞳をしていらっしゃいましたよ」
側近「金……光、か」
使用人「『光と闇』『勇者と魔王』……こちらも、表裏一体」
側近「……姫様が言ってたこと、本当になっちまったな」
使用人「『貴方は魔王であり勇者だわ』……ですか?」
使用人「……こじつけ、とは言えませんね。もう」
側近「女海賊とあの赤ん坊の生と死が引き金になったか……」
使用人「その辺は何とも言えませんよ……わかりません」
側近「……で、欠片、てのが……俺から光を奪っていった、と」
使用人「先ほど、回復魔法使っていらっしゃったでしょう?」
側近「痛みは引いたが、目は見えん…… ……ま、仕方無いな。魔王様の所為じゃ」
使用人「……なんかトゲがありますね」
側近「当たり前だろう!?俺、またこいつ育てないといけないんだよ!?」
使用人「ま、まあ……そうですけど……」
側近「肝心の本人は消えちまいやがるしさああああああああ!」
使用人「……魔王様、本当に……」
側近「また、魔王様になるのさ。あ、いや……『魔王』じゃ無いんだな、もう……」
側近「……男だよな?」
使用人「はい。男の子です」
側近「また引っかけられるのかなぁ……」
使用人「何をです?」
側近「聞かないで!」
360 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 10:53:18.55 ID:8ZimG/J2P
側近「そ、それで……残りは何だ?」
使用人「え?あ、はい……えーっと」
使用人「『欠片』はそのまま……飛び出していった魔王様の『欠片』で良いのでしょう」
使用人「後は『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』……『知を受け継ぐ者』ですが……」
側近「ん?」
使用人「……いえ、あの時『知を受け継ぐ者』と、じっと私を見据えて……言われた、ので」
側近「……ふーむ」
使用人「……」
側近「まあ、とにかく」フゥ
側近「こいつのおもりをしながら、俺たちは欠けたパズルのピースを集めて」
側近「完成させなきゃいかん、て事だな」
使用人「……やはり、そうなるのでしょうか」
側近「……魔王様、言ってたんだろう」
側近「欠片を探し出せ。そして……」
側近「『魔王を倒せ、勇者』」
使用人「……『勇者』」
側近「名前もつけてやらなきゃいかんだろ」
使用人「……」
側近「魔王様の命令は絶対だ。俺は……魔王様の『側近』だからな」
使用人「……はい。私も、死ぬまで魔王様にお仕えします」
側近「良し!お前の名前は勇者だ!」
勇者「…… ……」スゥスゥ
使用人「『勇者が魔王を倒す』……『中身』が『器』を殺すのですか」
側近「『表裏一体』なんだろ? ……それにもう一度『揃え』にゃならん」
使用人「……『欠片』はどこに?」
側近「さあな……俺たちが探すのか、こいつが探すんだろう」
使用人「まずは、城の修復ですね」ハァ
側近「……使い魔共は?」
使用人「もうやらせてます……が、何人かはあの光に驚いて逃げ出したか」
使用人「……飲まれたか」
側近「勇者に必要な物も揃えないとな」
361 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 11:04:48.64 ID:8ZimG/J2P
使用人「……船長さんに、と言いたいところですが」
使用人「急を要しますね」
側近「ああ……転移石、まだあるか?」
使用人「行って帰る分ぐらいは」
側近「そうか、じゃあ……」
使用人「私が行きます」
側近「え。俺がこいつのおもり!?」
使用人「城の中は良いですが、どうするんです。貴方目が見えないでしょう?」
側近「……それこそ、こいつのおもりどうすんの」
使用人「使い魔が居ますよ」
側近「あ……そうか」
使用人「……その前に、もう一度剣を見せて下さい」
側近「? ああ……はい」
使用人(刀身が殆ど無い……亀裂も入っているし)
使用人「……これじゃ、魔王様は倒せませんね」
側近「……南の島!」
使用人「え?あ……!鉱石、ですか!」
側近「……しかし、鍛冶師には頼めないな」
使用人「え?何故です?」
側近「どうやって、誰が取りに行くんだよ」
使用人「あ……そ、そうか……流石に、あっちこっち回ってくる訳にはいきませんね」
側近「まあ、もし本当に剣が必要になる頃まで、まだ時間がある」
側近「ゆっくり考えても間に合うだろうさ」
使用人「……取りあえず、港街に行きます。街も大きくなったでしょうし」
使用人「勇者様に必要な物は一通り揃うでしょう」
側近「解った。俺は書庫で……あ、目、見えないのか」ガックリ
使用人「……なんか、すみません」
側近「いや、良いさ……使い魔に読んで貰うよ」
使用人「ものすごく嫌がられそうな気がしますけど」
側近「……やっぱりそう思う?」
362 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 11:24:02.42 ID:8ZimG/J2P
勇者「うわあああ、うああああ……」
側近「お、腹が減ったか……ヨシヨシ、今作ってやるぞ」
使用人「お願いしますね……行ってきます」
側近「おう……あ、先におむつか」ゴソゴソ
使用人「適当に使い魔捕まえて下さいね!」シュゥン
側近「おう、まあこんぐらい……わぶっ」
勇者「うあーぁ……」
側近「…… ……」ベショベショ
側近「……誰かー」
……
………
…………
シュゥン
使用人(ええと……こっち……え!?)
使用人「ここが……港街!?」
ザワザワ……ガヤガヤ……
使用人(凄い人……随分、大きくなったのですね)
使用人(……確か、あっち……)スタスタ
使用人(ここ、盗賊さんの……)コンコン
カチャ
女「はい?」
使用人「!? ……お、恐れ入ります、あの、ここ……盗賊さん、の……?」
女「ああ!盗賊さんのお知り合い?」
女「あの方は結婚されて、隣の小さな島にお引っ越しされましたよ」
使用人「結婚……ですか……」
女「ええ。一日に一本、船も出てますよ」
使用人「そうですか……ありがとうございます。申し訳ありません」
女「いいえ。それじゃ」
パタン
使用人(隣の小さな島……始まりの大陸?)スタスタ
使用人(……船が、何隻もある。船長の船は……流石に無いか)
使用人(あの距離じゃ……まだまだかかる)
363 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 11:33:42.86 ID:8ZimG/J2P
使用人(仕方無い……先に買い物……あ!)スタスタ
使用人(そうだ、教会に……)
コンコン。カチャ……
使用人「……失礼します」
女神官「ようこそ……何かご用でしょうか?」
使用人「? ……あの、神父さんはいらっしゃいますか」
女神官「……どっちの、でしょうか?」
使用人「どっち?」
女神官「あ……ご存じないのですね。ここを作られた神父様、でよろしいですか?」
使用人「え、ええ……多分」
女神官「……」ス
使用人(窓の外……? ……! あれは、十字架!?)
女神官「魔除けの石、と言う……石を作られていたことはご存じですか」
使用人「え、ええ……あれ、その……棚の上の、そうじゃないのですか……あ!」
使用人「この顔……娼婦さん!?」
女神官「まあ……娼婦様もご存じなのですか?」
使用人「……これ……誰が……」
女神官「大変敬虔な、隻腕の祈り女であられたと聞いております」
女神官「……神父様が亡くなられる少し前に、鍛冶師さんと仰る方が作られたのですよ」
女神官「神父様が、娘さんの様に可愛がっていらっしゃった、とかで」
使用人「え、ええ…… ……やはり、亡くなられた、のですか」
使用人「神父さん……」
女神官「ええ。私達……神官の皆と、盗賊さんと仰られる方と鍛冶師さんと」
女神官「皆で……看取らせて頂きました」
使用人「そう……でした、か……」
女神官「あの、失礼ですがどういったご用件で……」
使用人「あ……いえ、昔、神父さんや盗賊さん、鍛冶師さんにお世話に、なったもので」
使用人「……近くまで来たので、お顔をと……思っただけです」
女神官「そうでしたか……盗賊さん達は……」
使用人「お引っ越しされた、と伺いましたが」
364 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 11:46:00.58 ID:8ZimG/J2P
女神官「ええ……ここで、結婚式を挙げられてすぐに」
使用人「……そう、ですか。あ!あの……すみません、話逸らせてしまって」
女神官「え?」
使用人「あの、魔除けの石……」
女神官「ああ……そうでしたね。神父様は、娼婦様が亡くなられた後」
女神官「魔除けの石の生成に没頭されましてね」
使用人「……」
女神官「ご高齢であられたので……ご無理されていたのかもしれません」
使用人「そうですか……あ、あの」
使用人「差し支えなければ、で結構ですが、もう一人の神父さん、と言うのは?」
女神官「……神父様がご存命であられた頃……と、言っても」
女神官「娼婦様が亡くなられた後、の話ですが」
女神官「私も含め、多くの聖職者を志す者が、神父様の元に集ったのです」
女神官「その中に、もう一人の神父……新米神官と言う者が居たのです」
使用人「……」
女神官「彼は優秀でしたし、誰よりも神父様を慕っていました。ですが」
女神官「魔除けの石の生成には反対していたのです」
使用人「何故……です?」
女神官「……神父様も、それを売買する事には否定的……であられました」
女神官「しかし、街を大きくする為と、一応了承はされていたのですが」
女神官「……娘の様に思っていた娼婦様が亡くなってから、本当に……」
使用人「没頭されていた、と仰っていましたね」
女神官「はい。取り憑かれた様にと迄は申しませんが……」
使用人「……方法を教えたのが娼婦さんだとお聞きしています」
女神官「ええ……寂しさを紛らわせていらっしゃったのかも知れません」
女神官「背景をしっているだけに、お止めして良い物かと私達も……」
使用人「……」
女神官「新米神官は神父様の身を案じていたのだと思います」
女神官「……優秀で、真面目でした。金銭に換える事も良く思っていなかった」
女神官「神聖な物なのに、と……何時もいっていましたから」
365 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 11:55:50.42 ID:8ZimG/J2P
使用人「……」
女神官「神聖な物だからこそ、ある程度の金額をつけないと、と」
女神官「神父様は笑っていらっしゃいましたけれど、ね」
使用人「……偽物が出回らない様、ですか」
使用人(神父さんはインキュバスの魔石を知っている……彼が、娼婦さんにした事も)
使用人(……神父さん)
女神官「それで……神父様の死を切欠に、此処を出て行くと、言って」
使用人「本当に……出て行かれた、のですか」
女神官「ええ……ただ、神父様の事は本当に尊敬しているのだと」
女神官「だから、神父様の教えは守っていくと。それで……」
使用人「?」
女神官「……神父、の名を名乗るのを許して欲しい、と……」
使用人「ああ……だからどちらの、とお聞きになったのですね」
女神官「……そうでないと、この娼婦様の像を壊すのだと言われまして、ね」
使用人「そんな……」
女神官「彼には、魔除けの石の生成を教えた娼婦様も、これを作った鍛冶師さんも」
女神官「……魔石を流通させようとする盗賊さんも、憎しみの対象になってしまっていた様でした」
女神官「私達、残された神官の中で、私は年齢が一番上だったので」
女神官「暫定的に此処を管理する立場になっています。ですから……」
女神官「私は、彼のその申し出を受け入れざるを得なかったんです」
女神官「……神父様が愛された娼婦様の像を、壊されるのは阻止したかった」
使用人「……」
女神官「それに、ここから離れて言ってしまった者が、何処でなんと名乗ろうと」
女神官「止められる物ではありません……不器用ですが」
女神官「彼は……真面目故に、許しが欲しかったのでしょう」
使用人「そして、真面目故に本当に壊してしまう可能性もあった?」
女神官「……はい。多分」
使用人「愛し方の違い……ですね」
女神官「私達も確かに、神父様を敬愛して止みません。差違は無い筈なんですけれど……ね」
女神官「出来れば、何時か……彼の憎しみが溶けてしまう事を祈るばかりです」
366 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 12:03:16.58 ID:8ZimG/J2P
使用人「……ありがとうございます。お話下さって」
女神官「いいえ……お礼を言うのは此方です」
女神官「私も……誰かに話したかった、のかもしれません」
使用人「え?」
女神官「……鍛冶師さんや、盗賊さんには……言えなくて」
使用人「そうですか……いえ、そうですよね」
女神官「貴女は……盗賊さん達に会いに行かれるのですか?」
使用人「え、ああ……いえ。どうしようかな、と……」
女神官「もうすぐ、始まりの大陸行きの船が出ますよ」
女神官「あちらの街も、既に復興準備が始まっていますし……」
使用人「そうですか……ありがとうございます」
使用人「……神父さんのお墓、寄らせて貰っても?」
女神官「ええ、勿論です。喜ばれますよ」
使用人「ありがとうございます。それじゃ……」
女神官「貴女に、神のご加護があります様に……」
カチャ。パタン……
使用人(…… ……)スタスタ……ス
使用人(神父さん……)
使用人(貴方も、娼婦さんを愛して居られた?)
使用人(否、娘の様……とは、嘘ではないのだろうけれど)
使用人(…… ……愛、か)
使用人(難しい、な)ス……
使用人「さて……急がないと。買い物済ませて……」タタタ
……
………
…………
盗賊「あー……これ、どうするよ、鍛冶師」
鍛冶師「城ねぇ……必要?」
盗賊「だよなぁ。王様っていやぁ、血がーとか血統がーとか……」
鍛冶師「一緒だから、それ」
盗賊「……うっせぇな」
367 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 12:11:54.20 ID:8ZimG/J2P
鍛冶師「これだけの土地があれば結構家とか建てれると思うけど」
鍛冶師「……それ程要る、かな」
盗賊「だよな。移住希望する人達、殆ど船でこっち来たけど」
盗賊「足りてるしなぁ……しかし、城なんか建設しようと思ったら」
盗賊「それこそ、資材が……」
ポー……ゥ……
鍛冶師「お、汽笛だ……船が着いたよ」
盗賊「良し、資材運ぶか。あっちで余ったの回して貰えるのはありがたいね」
鍛冶師「魔石も順調に売れてるんだろ?」スタスタ
盗賊「……どうだかな。魔除けの石は何時の間にやら、結構な高額で」スタスタ
盗賊「取引されてるみたいだけどな」
鍛冶師「……神父さんが亡くなったから、か」
盗賊「こんな言い方したくは無いが……女神官のと比べるとな」
盗賊「まあ、彼女はまだまだこれから、だろう。まだ若いんだし」
鍛冶師「僕と同じぐらいだっけ?」
盗賊「20前後だろ?そんなもんじゃネェの」
鍛冶師「……一番優秀だったのって、新米神官なんだろ?」
盗賊「あいつは魔除けの石作るの嫌がってたからな」
盗賊「それに修行に出たんだろ?」
鍛冶師「らしいね」
盗賊「ま……仕方無いよ。魔石も最初程じゃないけど、そこそこ売れてるんだ」
盗賊「大事な収入源だけど、やろうと思えば誰にでも作れるし……」
盗賊「それだけ、港街が大きくなった。それだけ人が自立してきたって考えれば」
盗賊「嬉しいことだよ」
鍛冶師「まあ、ね……あれ!?」
盗賊「ん?」
使用人「お久しぶりです」
盗賊「使用人!」
鍛冶師「やっぱり使用人ちゃんか!」
368 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 12:19:05.28 ID:8ZimG/J2P
使用人「……お元気そうで良かった。ご結婚おめでとう御座います」
鍛冶師「ありがとう」
盗賊「お、おう……」
盗賊「しかし、どうしたんだ?態々船で……」
使用人「港街に用事がありまして。こっちにお引っ越しされたと聞いたので……」
鍛冶師「転移石、は?」
使用人「……魔王様が眠られてからは、作る事ができませんから」
使用人「城に帰る分で、最後なんです」
鍛冶師「そ、そうか……」
盗賊「……でも、良かった。元気なんだな」ホッ
盗賊「……北の方で、さ……なんか、光が……」
使用人「…… ……」
鍛冶師「やっぱり……何かあった、のか」
使用人「お時間、あります?お仕事があるのでは?」
盗賊「あ、ああ……でも……」
鍛冶師「僕が行ってくるよ。盗賊は使用人ちゃんと一緒にいな」
盗賊「鍛冶師……」
鍛冶師「大丈夫。一人でもなんとかなる」
鍛冶師「使用人ちゃん、戻らなくて大丈夫なの?」
使用人「ええ。用事も済みましたし、私は大丈夫です」
盗賊「でっかい荷物だな…… ……粉ミルク!?」
使用人「……どこかで、お話しましょうか」
盗賊「あー……え、ええっと。じゃああっちの城跡んとこで」
盗賊「雨上がったばっかだから、影の下じゃ無いと濡れてるしな」
鍛冶師「じゃあ、行ってくる。後でね、使用人ちゃん!」タタタ
使用人「……さて、どこから話しましょう、か」
369 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 12:20:26.76 ID:8ZimG/J2P
おひるごはん〜
370 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 12:57:50.17 ID:8ZimG/J2P
盗賊「やっぱり何かあったんだな」スタスタ
使用人「まあ……一応、無事ですよ。私も側近様も」スタスタ
盗賊「お前が城を離れてるって事は魔王も……だろ?」
盗賊「……ここなら影になってるし……座れるな。よっと」トン
使用人「その、魔王様……なのですが……」トン
盗賊「……その粉ミルクと関係ある?」
使用人「まあ。そうですね。必要無ければ買いに来ませんし」
盗賊「……そりゃそうだ。 ……あ!」
使用人「?」
盗賊「あれか!?姫に子供が生まれたのか!?」
盗賊「……あ、でも姫は……産まれたら……」
使用人「盗賊さん、違いますよ」
盗賊「へ?」
盗賊「それに……姫様は50年程妊娠された侭、なんでしょう?」
盗賊「……あ、そうか」
盗賊「でも……完全なエルフだったら、の話だろう」
使用人「まあ……そうですけど。半分人間の血が入ってると考えて」
使用人「妊娠期間も半分としても、まだ20年以上ありますよ」
盗賊「……そ、そうか……じゃあ、誰の子……?」
使用人「…… ……ここ、お城なんですよね」
盗賊「あ?ああ……何だよ急に」
使用人「……『揃った』……『王』……」
盗賊「??」
使用人「……知人さんのお墓」
盗賊「おい?」
使用人「ここは……清浄な土地、何ですよね?」
盗賊「? あ!そうだよ、お前……ッ 大丈夫か!?」
371 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 13:15:11.21 ID:8ZimG/J2P
使用人「え?ええ……あ、そうか……いえ」
使用人「知人さんの加護はペンダントに移したましたから」
盗賊「あ……そうか……」
使用人「あの場所……何か、変化はありましたか?」
盗賊「……そうか、お前はしらないか」
盗賊「娼婦も、あそこに埋めたんだ。寂しくない様に、って」
使用人「神父さんは……何故、あちらに?」
盗賊「聞いたのか」
使用人「ええ」
盗賊「……神官共もいたしな。単純に、定期便で……運んでくれとは」
盗賊「言えない、てのもあったさ」
使用人「……」
盗賊「確かに、此処は空気も環境も良いよ」
盗賊「あの丘の上に眠る二人のおかげ……かもな」
使用人「娼婦さんも、ですか?」
盗賊「……魔王を愛してた、んだろう?」
盗賊「魔王が守りたいと思ってるなら、娼婦だって同じ筈」
使用人「……魔王様の、為に」
盗賊「……」
使用人「愛…… ……」ブツブツ
盗賊「おい、使用人?」
使用人「……『王』!」
盗賊「何なんだよ、さっきから!オウ、てなんだ?」
使用人「『王』です!『王様』の『王』!」
盗賊「だから……!」
使用人「ここ、そもそもお城だったんですよね!?」
盗賊「おい!解る様に話せよ!」
使用人「……ッ」
使用人(一つ、欠片が揃う……!『欠片』その物じゃ無く、全てが欠片なのだとしたら)
使用人(些か……否、殆どこじつけに近いけれど……ッ)
使用人「盗賊さん!」
盗賊「んあ!? ……な、何だよ!」
使用人「……今から、全て話します。しっかり、聞いて下さい」
372 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 13:41:34.96 ID:8ZimG/J2P
……
………
…………
魔法使い「おい、女剣士」
女剣士「ん? ……ああ、魔法使い。終わったの?」
魔法使い「ああ……船で死んだら、水葬ってのにする、て言うからさ」
女剣士「水葬……」
魔法使い「あいつは、海賊だったんだ。だから」
女剣士「……」
魔法使い「魔王に届けるはずだった花しか無かったけど。充分だろ」
女剣士「そうか……」
魔法使い「枯れさせるよりマシだ。あそこには当分……近づけねぇだろ」
魔法使い「……俺は、二度と行かネェ」
女剣士「好き、だったのか?」
魔法使い「……違うな。あいつは仲間だ。仲間として、大事だった。それは否定しねぇけど」
魔法使い「好きだの惚れただの、そんなんじゃネェ。男と女しか居ないからって」
魔法使い「愛か否か、単純に二分されるもんじゃネェってのは覚えておけ」
女剣士「…… ……」
魔法使い「チビは?」
女剣士「ちゃんと娘って名前があるだろ。寝てるよ、アタシの部屋で」
魔法使い「見て無くて大丈夫なのか?」
女剣士「海賊が一人、一緒に昼寝してる。アタシは、船長に呼ばれたんだよ」
魔法使い「お前もか」
女剣士「……アンタも?」
魔法使い「ああ。気が済んだら来い、てな」
女剣士「……今、どの辺なんだろ」
魔法使い「陸伝いに走ってる訳じゃなさそうだ。とにかくあそこから離れろとしか」
魔法使い「……言ってなかったからな」
女剣士「そっか……」
魔法使い「とにかく、行こうぜ。さっさと済ませて、寝たいよ俺は」スタスタ
女剣士「あ、ああ……」タタタ
コンコン
魔法使い「船長。入るぜ」
373 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 13:46:42.26 ID:8ZimG/J2P
船長「おう……ご苦労だった」
魔法使い「……嫁とは言わネェよ。愛が無かったのも」
魔法使い「あいつが押し切っただけなのも理解はしてら」
魔法使い「でもな、お前……!」
女剣士「お、おい、魔法使い、お前……そんないきなり……!」
船長「……構わん」
女剣士「……」
魔法使い「娘は……チビは間違い無くお前の子だろうが!」
魔法使い「お前の子供の母親だぞ!?女海賊は……!!」
船長「言い訳はせん。責めたい気持ちは当然だろうしな」
船長「だが……その娘を守る為にも、急いで離れる必要があっただろう」
船長「……俺が舵を握らなけりゃ進路を見失う」
魔法使い「……充分言い訳じゃネェか」チッ
魔法使い「……殴った事は謝らネェからな!」ドサッ
魔法使い「疲れたんだ。座らせて貰うぜ……さっさと用件言え」
女剣士「そ、そうだ……よ、用事って何なんだ?」
374 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 13:47:53.61 ID:8ZimG/J2P
おむかえー
幼女とクッキー作るので、夕方来れたらまたー
375 :
名も無き被検体774号+:2013/06/21(金) 13:52:34.45 ID:fBC0Uv1Z0
富野みたいに皆殺しルートかとヒヤヒヤします
376 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 17:10:17.41 ID:8ZimG/J2P
船長「魔法使い、お前……船、降りろ」
魔法使い「!?」
女剣士「な……ッ!?」
船長「……好きな場所まで連れて行ってやる」
魔法使い「……どういう意味だ」
船長「辛いだろう。無理に乗ってる必要はネェ」
魔法使い「…… ……邪魔になったのか」
船長「そういう意味じゃネェ」
魔法使い「じゃあ、どういう意味なんだ!」バン!
女剣士「!」ビクッ
船長「……蹴るな」
魔法使い「女海賊が、あいつが死んで、俺がこの船降りりゃ」
魔法使い「お前に文句言う奴も居なくなるってか!?」
船長「そんな意味じゃネェっつってんだろ!」
船長「……ここに残ったって、お前は辛いだけ……」
魔法使い「信じられるか!んな事!!最初っから、俺たち乗せるのに」
魔法使い「いい顔しなかったしな!これ幸いとお払い箱かよ!」
船長「……だから、違うって言ってんだろ」ハァ
船長「お前が乗っていたいと言うのなら、乗っていれば良い」
船長「確かに、お前の雷の魔法は助かる。海の魔物には良く効くからな」
船長「……降りない、と言うのなら歓迎するさ」
魔法使い「……ッ ふざけやがって!」バンッ
女剣士「蹴るな、って……」
魔法使い「煩ぇ!」
女剣士「…… ……」ハァ
魔法使い「俺はぜってぇ降りないからな!覚えとけ!」スタスタ
バターン!
女剣士「……船長」
船長「すまんな、女剣士」
女剣士「いや、アタシは良いけどさ……」
377 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 17:20:41.05 ID:8ZimG/J2P
船長「……良かれと思って提案したんだがな」
女剣士「今は……そっとしておいてやれよ」
女剣士「多分、何言ったって……反発しかしないよ」
船長「お前は、ちょっと見ない内に随分物わかり良くなったジャネェか」
女剣士「……」
船長「ま……あんなの見せられちゃ、な」
女剣士「娘……どうするんだよ」
船長「どうするって……育てるさ。俺の娘だ」
船長「聞いてただろ、今」
女剣士「……アタシ、女海賊からも聞いてたよ」
船長「……何?」
女剣士「船長を怨むな、だっけ?あ、責めるな……だったかな」
女剣士「……なんか、そんな感じの事」
船長「そうか……」
女剣士「娼婦、だっけ。そっくりだったな」
船長「……何が言いたい」
女剣士「いや……御免。何でも無い。何でも無いけど……」
船長「……暫く、娘を頼んでも良いのか?」
女剣士「え? ……ああ。それは別に良いよ。子供好きだし」
船長「正直……助かる」
女剣士「アタシも、北の街には帰れないしな」
船長「取りあえずは……港街を目指そうと思う。お前も、降りたければそこで」
船長「降りれば良い……盗賊と鍛冶師がいるし、生活はどうにかなるだろう」
女剣士「そりゃ……まあ。だけど、娘はどうするんだよ」
船長「……急ぐ理由もネェ。随分変な航路通っちまってるからな」
船長「港街に着くまでに、一年以上はかかる。途中、補給も済ませないといかんしな」
女剣士「……北の街に、寄るのか?」
船長「否。ここからだと……そうだな。随分掛かるが」
船長「それでも鍛冶師の村が近いだろうな」
女剣士「……そうか」
船長「それまで、頼んで良いか」
女剣士「解った。娘に必要な物とかは揃ってるのか?」
船長「女海賊が随分買い込んでたからな」
378 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 17:29:32.98 ID:8ZimG/J2P
女剣士「そっか。ならまあ……心配無いな」
船長「魔法使いがいるから、戦闘もどうにかなるだろう」
船長「……素直に、言う事聞いてくれりゃ、だが」
女剣士「大丈夫だろ。娘が乗ってんだし」
船長「ん? ……ああ、成る程な」
女剣士「……なあ、船長」
船長「ん?」
女剣士「落ち着いたら……側近の所、連れてってくれよ」
船長「……料金は頂くぜ。娘に免じて、格安にはしてやるよ」
女剣士「……サンキュ。んじゃ、娘んとこ戻るな」スタスタ
船長「ああ……頼む」
パタン
船長「…… ……」ハァ
……
………
…………
鍛冶師「……は?」
盗賊「…… ……なあ」
使用人「無茶は、承知しています」
鍛冶師「無茶、て言うか……申し訳ないけど」
鍛冶師「流石にこじつけにも程がある、と思う……よ?」
使用人「…… ……」
鍛冶師「話は分かった。けど……魔王は『揃った』って言ったんだろう?」
鍛冶師「だったら……僕が、僕たちが此処の『王』になったところで」
鍛冶師「意味が……無いと思うんだ」
盗賊「……うん」
鍛冶師「『王』になる、なれる……うーんと、資格?のある人?が」
鍛冶師「どこかに、出てくるって事じゃ無いのかな」
379 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 17:42:37.70 ID:8ZimG/J2P
使用人「……やはり、そう……でしょうか」
盗賊「何か、お前らしくネェなあ、使用人……」
盗賊「……いや、まあ。流石に。聞く限り……そりゃ、慌てるってか」
盗賊「なんてっか……焦るのも解る、けど」
鍛冶師「それに、魔王だって『王』だろう?」
使用人「あ……!」
鍛冶師「『魔王と勇者』って対にされてるけど……」
盗賊「……人間の王、って限定されてる訳じゃないもんな」
使用人「……そうか。『王』はもう……居た、のですね」
盗賊「って、訳だ。悪いな。いきなり言われてっての除いても……」
盗賊「アタシ達、王様だとかそんな器じゃネェよ」
鍛冶師「そうだね。それに……いきなりこの島に住んで、中心になってるからって」
鍛冶師「『私が王様だ!』なんて言ったって、誰も着いて来ないよ」
使用人「それは……鍛冶師さんと盗賊さんなら問題無いと思いますけど」
盗賊「買いかぶり過ぎさ」
鍛冶師「そうだよ。しかし、まあ……今までの経緯知っててもおいそれとは信じがたいよな」
盗賊「何だよ、疑ってるのか?使用人達の事……」
鍛冶師「いや、そういう訳じゃ無いけどね」
使用人「……私だって、信じられませんよ。ですが……確かに、赤ん坊の手が触れた途端」
使用人「魔王様の剣が、金に輝き出したんです。あれは……」
鍛冶師「……今、なんて言った?」
盗賊「あ、剣の話忘れてたな」
使用人「え、ええ、ですから……魔王様の『中身』だと言う赤ちゃんが……」
鍛冶師「その次!」
使用人「……ッ 輝き出したのですよ、剣……刀身が」
鍛冶師「紫だった刀身が、金に……闇が、光に転じた!?属性が、変わった!?」
使用人「え、ええ……だって、そういう剣なのでしょう、あれ……」
盗賊「落ち着け、鍛冶師……あれは魔王の持ち物だったから」
盗賊「その、『中身』?が……確かに、魔王だと確信した、んだよな」
鍛冶師「ちょ、初耳!」
盗賊「御免、忘れてた」
380 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 17:57:14.24 ID:8ZimG/J2P
使用人「はい。側近様や私が触れた所で、何の変化もありませんでしたから」
鍛冶師「そ、その目で見たのか……! 良いなぁ……!」
盗賊「鍛冶師!」
使用人「……魔族が光など抱きえない、と。魔王様は仰っていました」
使用人「だから、中身は……人間であると。ですが……」
使用人「赤ん坊は、金の瞳をしていました……光の加護、と思って良い、んでしょうけど……」
盗賊「……魔王の紫の瞳が闇の加護だと考えれば、正反対だけど……」
盗賊「だからこそ、納得できる、のかもな。表裏一体……」
鍛冶師「……それで、魔王である器を倒せ、てか」
使用人「はい。欠片を探し出せ、そして倒せ、と」
使用人「……ですが、あれが……光の剣と仮定しても」
使用人「あの侭では……とても、魔王様を倒す事等できません」
使用人「そもそもあれでは剣とも呼べませんよ」
鍛冶師「……欠片が見つかれば、復活するんじゃ?」
使用人「と、思いたいですけどね。『欠片』だけで良いのか」
使用人「全てを欠片と捕らえて良いのか……」
盗賊「で、『王』に据えようとした訳な」
使用人「……すみません」
鍛冶師「光の剣……光の剣……」ブツブツ
盗賊「おーい、鍛冶師。戻って来い」
鍛冶師「どこかで、何かで読んだぞ、なんだっけな……!」
盗賊「聞けよ」
使用人「まあ、まあ……何か思い当たることがあるのでしたら」
使用人「聞かせて頂きたいですし」
盗賊「……長いぜ?大丈夫か?」
使用人「勇者様には側近様も使い魔も着いてますから」
鍛冶師「!! それだ!」
使用人「え?」
盗賊「わあッ ……急にでかい声だすな!」
鍛冶師「それだ!『勇者の剣』だ!」
381 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 18:03:06.85 ID:8ZimG/J2P
鍛冶師「ずっと引っかかってたんだ……ッ」
鍛冶師「持つ者が持たなければ真価を発揮しない、幻の魔法剣」
鍛冶師「勇者のみが持つことを許され、勇者のみが使用する事ができる」
鍛冶師「勇者の剣……ッ 『光の剣』だ!」
盗賊「おい。盛り上がってるとこ申し訳無いんだけどな」
盗賊「それ……神父さんから借りたあの、物語の中の話じゃネェのか」
鍛冶師「……え?」
使用人「え? ……あ、側近様が持って言った……あれ、ですか」
盗賊「ああ。あれにそんな一節があったぞ」
鍛冶師「違う、違う違う!子供の頃に鍛冶師の村に居る時に読んだ」
鍛冶師「魔法剣に関する本で読んだんだ!」
盗賊「……それも、御伽噺じゃないって確証あんのか?」
鍛冶師「…… ……」
382 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/21(金) 18:04:10.36 ID:8ZimG/J2P
ご飯とお風呂ー!
明日も仕事です!
383 :
名も無き被検体774号+:2013/06/22(土) 00:27:58.86 ID:X9eYIFnj0
C
384 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 08:02:39.43 ID:SNKKy0NvP
おはよう!
また電車で書けたら!
385 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 08:57:04.43 ID:SNKKy0NvP
使用人「ま、まあまあ……でも」
盗賊「ん?」
使用人「……モデルがあったから、お伽話になったのかもしれません。勿論……お伽話から、ヒントを得た可能性、も」
鍛治師「そ、そうだよね!そうだよ!」
盗賊「いや、そりゃ別に頭ごなしに否定する気はネェけどさ」
使用人「あの本は、私も読みました。まあ……だからと言ってはっきり覚えている訳じゃありませんけど」
使用人「それに……鍛治師さん程、剣に興味や知識がある訳じゃ無いので、その辺は特に曖昧ですが……」
鍛治師「……一応、僕の知識が、そのお伽話の類から得た物じゃない、と前置きしとくけど」
盗賊「拘るなぁ」
鍛治師「……ちょっと位プライド保たせて」
鍛治師「そ、それで、だ」
386 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 09:07:07.47 ID:SNKKy0NvP
鍛治師「……鉄や鋼じゃ魔法剣には向かないんだ。かと言って、希少な鉱物は中々手に入らないし」
鍛治師「勿論、打つには腕もいる」
鍛治師「……そんな条件をクリアして、最高の鍛治師が鍛えた剣が世界の何処かにある、と言う」
盗賊「それが……持つ者が持てば真価を発揮する、勇者の剣?」
鍛治師「可能性はあるだろう。光の加護を持つその子が触れたら光の剣に変じたんだ!」
盗賊「けど、元は魔王が持ってたんだぜ?」
盗賊「魔王の剣、だったんだ」
鍛治師「……あ、そうか」
盗賊「しかも、前魔王の時は赤、魔王は紫に……それぞれ炎、闇に変じてるぞ?」
盗賊「選ばれた奴しか使えないんじゃ無いのかよ」
鍛治師「…… ……」
387 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 13:13:49.97 ID:SNKKy0NvP
使用人「……以前、側近様とお話してたのですが」
鍛治師「ん?」
使用人「魔族は、強大な力を有する故に、それに依存しがちです。側近様や、私ですらも」
盗賊「?」
使用人「要するに、技より力を選び……ます。勿論皆が皆そうでは無いしょうが……」
盗賊「ああ、まあ……そうだよな。弱い、ちゃ語弊があるが、細かい細工や技巧にゃ人間の方が長けそうだ、て事か」
使用人「はい。だから……魔族が作ったと考えるより、人が作った物を奪ったと言う方が」
使用人「……しっくり来ません?」
388 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 13:21:41.60 ID:SNKKy0NvP
盗賊「……んん?」
鍛治師「……人間が作った勇者の為の剣を魔王が、勇者から奪った、と言いたいのか」
使用人「魔族が作ったと言うより納得できる、と思うだけです。先代……魔王様のお爺様ですね……は、好戦的であったとも聞きました」
使用人「本来の魔族の性質が先代様のものに近いなら、遥か昔……そうして魔王の剣と成した可能性は否定出来ないでしょう?」
鍛治師「し、しかし……勇者の剣は、勇者にしか……!」
使用人「表裏一体」
盗賊「魔王は……勇者になった」
使用人「魔王様はこうも言っておられました。世界は、歴史は繰り返される、と」
鍛治師「し、しかし、いや……えーと?」
盗賊「落ち着け、て」
鍛治師「わ、わかってるけど、ややこしくて……」
389 :
名も無き被検体774号+:2013/06/22(土) 14:16:06.11 ID:azCTsit00
どうなるのか楽しみだ!
無理せず書いてねー
390 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/22(土) 19:17:58.64 ID:SNKKy0NvP
仕事終了!
今日は帰ってまったりするので
また明日!
391 :
名も無き被検体774号+:2013/06/22(土) 19:55:48.70 ID:FzcZO9Rr0
りょうかーい
392 :
名も無き被検体774号+:2013/06/23(日) 07:09:39.31 ID:sOVS9zUL0
C
393 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/23(日) 09:11:13.87 ID:91x0c+4gP
使用人「仕組みを理解している必要はありません。『勇者』の光の剣が『魔王』の手に渡り……」
鍛治師「持つ者に寄り、属性が変わる……だから必然的に闇の……『魔王の剣』になった、のか!」
使用人「表裏一体であるのなら。『勇者と魔王』がイコールで結ばれる存在ならば……考えられる話です」
盗賊「でもさ。前魔王は炎の加護を受けてた……んだろ?」
鍛治師「加護が何だろうが、魔王が使える……魔王の加護に変じる、てのが重要なんだよ」
盗賊「……あ、そっか」
使用人「繰り返されていると言うならば、歴代の中に闇の加護を持つ方がいらっしゃった可能性もあります」
使用人「まあ……全て推測、ですけどね」
394 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/23(日) 09:17:24.72 ID:91x0c+4gP
盗賊「んー……」
鍛治師「どした?」
盗賊「いや、剣の話は面白いし良いんだけどさ。話逸れてるなぁと」
鍛治師「え?」
盗賊「そりゃ無関係じゃないけどな。欠片を集めなきゃ、魔王の器だっけ?の……暴走を止められない、んだろ?」
使用人「はい」
鍛治師「それは確かな話なの?」
使用人「魔王様の言い置きですから……私は……」
鍛治師「あ、ごめん。疑ってる訳じゃ無いんだ」
使用人「いえ……何にしても見えない物が多すぎて、私も……混乱してます」
使用人「南の島に何やら不思議な鉱石があるらしいのですが」
使用人「取りに行くわけにも……」
鍛治師「……鉱石!?」
盗賊「何だそれ」
395 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/23(日) 09:18:12.77 ID:91x0c+4gP
働いてきまーす
396 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/23(日) 12:30:57.31 ID:91x0c+4gP
使用人「城の本の中にそう言うのが……」
鍛治師「希少な……鉱石?」
使用人「さ、さあ……私も見ましたが、そもそも掠れててはっきり読めませんし」
使用人「ただ、南の島に、えっと……魔法に強い?だとか……何だったか」
鍛治師「……」ブツブツ
使用人「鍛治師さん?」
盗賊「またどっかいっちゃってるからほっとけ」ハァ
盗賊「……で?」
使用人「それがあれば鍛治師さんならどうにかできるかな、とは思いましたけど……」
使用人「取りに行く手段が無いのです」
使用人「転移石ももう……」
鍛治師「場所は?」
使用人「え? ……あ、えっと。側近様が女剣士さんのお父様に頂いた地図にそれらしきものは載ってましたが……」
使用人「確証がありません。さっきも行った様に、手段も……」
鍛治師「足ならある。船長がいる」
盗賊「お前……」ハァ
397 :
名も無き被検体774号+:2013/06/23(日) 12:38:31.19 ID:spd6a4L10
乙
無理せんごとー
398 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 09:30:50.25 ID:dDCoWkGKP
おはよう!
お迎えまで〜
399 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 10:27:35.49 ID:dDCoWkGKP
鍛冶師「その地図、今持ってたり……」
使用人「……流石に、しません」
鍛冶師「だよな……」
盗賊「地図があったとしても、船長がそんな依頼受けてくれるかわかんないだろ?」
鍛冶師「いやいや、それは……大丈夫だろう。魔王が世界を滅ぼすとあっちゃ、ね?」
盗賊「そんな事言えば、世界を滅ぼさない為に、王様になってくれって言われて」
盗賊「はい、って言うのかよお前は」
使用人「と、盗賊さん……」
盗賊「いや、別に船長に頼むのを反対してる訳じゃねぇんだ」
盗賊「……こいつ、本当に魔法剣の話になるとさ……」
鍛冶師「そうか!王様になったら可能か……!」
盗賊「血迷うな、阿呆!」
使用人「……」クスクス
盗賊「何で笑うんだよお前も……そもそも言い出したのは……!」
使用人「すみません……笑ってる場合じゃないんでしょうけど」
使用人「仲良しだなぁ、と思って」
盗賊「……あのな」
鍛冶師「御免、ちょっと話戻すけど」
使用人「はい?」
盗賊「何だよ」
鍛冶師「さっきのその、『王』の話だけどさ」
鍛冶師「魔王は確かに『王』だ。魔族の王」
鍛冶師「……人の世界に、王って……居るのか?」
盗賊「……ここに居た、んだろうな。城があるって事は、さ」
使用人「私も世界の全て、なんて知ってる訳ではありませんから、何とも言えませんが……」
使用人「……あ」
盗賊「何だ?」
400 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 10:48:22.74 ID:dDCoWkGKP
使用人「……側近様が人間だった頃、住んでいらした街」
盗賊「ああ……前魔王、ん?先代だっけ、に吹き飛ばされたって奴な」
使用人「はい。王様に旅立ちを急かされた……とか」
盗賊「あ!」
鍛冶師「え、何それ」
盗賊「ああ、そうか……あん時、お前居なかったっけ?」
盗賊「まあ、その話は取りあえずややこしいから後な」
使用人「すみません……そうです。その街にも……『王』が居ました」
鍛冶師「……今はもう無い、んだよな」
使用人「はい。此処と違い……島毎沈められたと仰ってました」
盗賊「その側近の居た島と、此処には昔王が居た」
盗賊「……が、両方とも『魔王』に滅ぼされた、か」
使用人「何か理由があったのかもしれません。単純に邪魔、だっただけかもしれませんが」
鍛冶師「魔王が『王』に拘る理由って……これといって思いつかないな」
盗賊「え?」
鍛冶師「だって……人と魔を比べるだけでも、圧倒的な力の差がある訳だろ?」
鍛冶師「島まで沈めちゃうんだしさ」
使用人「……勇者に関係しているのかもしれませんよ」
使用人「側近様達も、王様に旅立ちを……と言ってましたし」
盗賊「指導者がいれば捗る、的な?」
鍛冶師「戦争とかだったらまあ、そうかもしれないけど……」
使用人「技術を持たれるのは厄介だった、とか……」
使用人「推測の域は出ませんけど、勇者の剣……光の剣、なんて物を作れる技術があるのなら」
使用人「立場を脅かされる可能性は否定は出来ません。やられる前にやっとけ、的な……」
鍛冶師「まあ……考えられなくは無い、かな」
盗賊「……勇者の剣を奪って、魔王の剣に変えちゃう位の力があっても、か?」
401 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 10:58:51.02 ID:dDCoWkGKP
鍛冶師「その技術すら『人間』がもたらした物なら……重要だろう?」
盗賊「……ああ、そうか。だけど……いや、うーんと……」
使用人「乱暴な思考で多分正解です。勇者をけしかけられるのも、面倒」
使用人「だったら国を、人を纏める『王』を滅ぼしてしまえ……と」
鍛冶師「統率者が居なくなれば、魔王ほどの力を持っていれば」
鍛冶師「人を支配し、滅ぼすのも簡単、て事ね」
使用人「……それに、その南の島が乗っていた地図……女剣士さんのお父様にもらった地図には」
使用人「側近様の島も乗っていたのです」
盗賊「相当古い物なんだな」
鍛冶師「鉱石のある場所を記憶から消し去れば、まあ……でも」
鍛冶師「それこそ、吹き飛ばしちゃえば良かったんじゃ?」
鍛冶師「……いや、良くは無いけど」
使用人「側近様が魔王様のお城にたどり着いた時には、既に前魔王様に世代交代していたと言ってましたから」
使用人「前魔王様が地図を改ざんした可能性だってありますよ」
使用人「人の記憶から、とか、魔族に有利に、と言うより」
使用人「争いの記憶を消してしまいたかったのかも知れません」
使用人「……前魔王様は、人との共存を願っていらっしゃったらしいですし」
盗賊「複雑だなぁ……」
使用人「やはり……『王』は重要なのでは無いでしょうか」
盗賊「え?」
使用人「鍛冶師さんは、魔王様が既に『王』だと言われましたが」
使用人「人の子の『王』が……必要、なのでは」
鍛冶師「……そんなじっと見ないでよ」
盗賊「だ、だからって、さ……アタシらに王になれってのも暴論だって!」
402 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 11:21:42.88 ID:dDCoWkGKP
使用人「充分承知してます。先ほどの話……じゃ無いですけど」
使用人「船長さんの……」
鍛冶師「世界を滅ぼすのを阻止するためなら……?」
使用人「……はい」
盗賊「鍛冶師!」
鍛冶師「自分で言っちゃった事だからね……」フゥ
鍛冶師「勿論、鉱石の話も魅力的さ。だからって、まあ……勿論解ったとは言えない」
盗賊「……そうだよ」ホッ
鍛冶師「言えない、し……こればっかりは、此処に住もうとしてる人に聞く必要もある」
盗賊「おいおいおいおいおい!」
鍛冶師「し、俺たち二人で話し合う必要もある、だろ?」
盗賊「……お、おう。だけど……!」
鍛冶師「確かに、そんな器じゃないさ。けど……イエスもノーも、今言う必要は無い、よね?」
使用人「勿論、です。無茶苦茶言ってる自覚はあります」
盗賊「……」ハァ
使用人「もし、そうなれば良いな、とは思ってます」
盗賊「お前達に取って都合が良い、だろ?」
使用人「姫様も喜びます」
盗賊「それは卑怯!」
使用人「……解ってますよ」
盗賊「……良く、話し合うよ。それで……勘弁してくれ」
使用人「当然です……それに」
使用人「別に、私に宣言する必要もありませんよ」
鍛冶師「不可能、の間違いだろ」
盗賊「え?」
使用人「…… ……」
鍛冶師「もう転移石が無いんだろ?」
盗賊「あ……」
使用人「船長さんに連絡が取れたら、必要な物を届けて貰います」
使用人「……良いと言ってくれたら、になりますけど」
403 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 12:07:40.08 ID:dDCoWkGKP
盗賊「勇者、だっけ……のだったら、請け負ってくれるんじゃね?」
鍛冶師「船長、優しいからね」
使用人「だと、良いですけど。当分の物はまあ……買いましたし」
使用人「……荷が重いです。子育てなんて」
鍛冶師「まあ……側近、いるんだろ?」
使用人「使い魔も居ますし、ね」
盗賊「……」
使用人「すみません、長々と」
盗賊「そんなの、良いよ。でも……」
使用人「はい?」
盗賊「……いや。頑張れよ」
使用人「貴方達こそ、です」
鍛冶師「……うん」
使用人「では、失礼致します……また」
シュゥン……
盗賊「……また、か」
鍛冶師「どうなんだろう、ね」
盗賊「何が」
鍛冶師「ん? ……んー。世界の謎?」
盗賊「解る訳ねぇだろ、んなもん……」
鍛冶師「明日……街の人達と話してみよう」
盗賊「え?何を?」
鍛冶師「城の再建。もし……必要って事になったらさ」
404 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 12:14:53.51 ID:dDCoWkGKP
鍛冶師「誰かが……王、になる必要はある訳、だ」
盗賊「お前……まじで王になったら南の洞窟?行けるとか思ってるだろ」
鍛冶師「否定はしない。しない、けど」
鍛冶師「……なるとしたら僕じゃ無い」
盗賊「誰か祭り上げるつもりか!?」
鍛冶師「……君しか居ないでしょ」
盗賊「…… ……アタシ!?冗談……!!」
鍛冶師「必要とされるとしたら、だよ」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「そういう声があれば、無視は出来ないだろ」
盗賊「……やだな。何か踊らされてるみたいだ」
鍛冶師「使用人ちゃんに?」
盗賊「魔王に……か?」
鍛冶師「世界に、かなぁ……」
盗賊「ついこの間まで、劣等種だなんだって蔑まれて来たアタシが」
盗賊「王様!冗談じゃないよ!」
鍛冶師「……解放したのは確かに君だろ?」
盗賊「劣等種達を、か? ……魔王だろ」
鍛冶師「でも、君が魔王を見込んで声をかけなかったら」
鍛冶師「こうはなって無かったんだ」
盗賊「……お前、何その気になってんだよ!」
鍛冶師「魔法剣だ鉱石だって……ま、関係無いよ。本当に」
盗賊「どうだか……」
鍛冶師「触れられる機会があれば、そりゃ嬉しいけどね」
盗賊「ほら見ろ!」
鍛冶師「でも、僕か君かで言うと……君だ」
鍛冶師「そこは……確かだと思うよ」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「ま、明日だ。仕事は待ってくれないしさ」
盗賊「そりゃ、な……港街の勇者とまで言われた魔王の為、と思えば」
盗賊「頑張ってやりたいとは思うよ。思うけど……!!」
405 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 12:23:49.06 ID:dDCoWkGKP
鍛冶師「まあ、まあ」
鍛冶師「何にしたって街を作る。それが最優先だろ?」
鍛冶師「……港街だって、始めに比べれば立派になった」
鍛冶師「余計な事はおいておいても、城を再建しようとした時点でぶつかっても」
鍛冶師「おかしく無い問題だったってだけさ」
盗賊「……うん、まあ」
鍛冶師「使用人ちゃんも帰っちゃったし、僕たちも休もう」
鍛冶師「身体に触るよ」
盗賊「あ……使用人に言い忘れた」
鍛冶師「えー……」
盗賊「し、仕方無いだろう、あんな話……!」
鍛冶師「まあ……船長だって何れ戻ってくるし」
鍛冶師「伝えておけば、耳には入る……か、な?」
盗賊「……だったら良い、けど」ハァ
鍛冶師「……人と魔の共存、か」
盗賊「え?」
鍛冶師「皆が皆、使用人ちゃんや側近みたいな人なら」
鍛冶師「余裕で可能な気がするな、と思って」
盗賊「……側近は魔王と同じだぜ。徹底した不干渉、だ」
鍛冶師「そっか……て事は、使用人ちゃんも、か」
406 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 12:25:28.01 ID:dDCoWkGKP
お昼ご飯〜
407 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 13:15:50.10 ID:dDCoWkGKP
盗賊「魔王の意思に従って、こうやって……」
鍛冶師「盗賊……」
盗賊「徹底的な不干渉の為に、アタシ達に手を貸してくれる、に過ぎないんだよな」
鍛冶師「……世界を救う為、だろ?」
盗賊「最終的には……まあ、そうだよな。それすらも」
鍛冶師「勿論、魔王の為。でも……当然だよ」
鍛冶師「僕たちは人……人間達の為、引いてはやっぱ自分の為だろ?」
鍛冶師「大事な人の為、って言っても、結局は自分の為さ」
鍛冶師「『自分の大切な物』を『守りたい自分』の為」
盗賊「……うん」
鍛冶師「皆が自分勝手で良いんだよ……程度はあるけどね」
盗賊「だからって、王様になって魔法剣……とか駄目だからな!」
鍛冶師「解ってるってば」
鍛冶師「……技術が失われたは、勿論……利害とか、色々あったんだろうけどさ」
鍛冶師「世界が必要としない、からだろう。身に余る力を持つと」
鍛冶師「人……生き物、は狂うのさ」
盗賊「……魔導の街の人達、思い出す」
鍛冶師「力ある者に媚びて我先に、って?」
盗賊「それが全てとは思わないけど、さ」
鍛冶師「五年、だったっけ。保護期間って」
盗賊「ああ…… ……」
鍛冶師「どうした?」
盗賊「アタシが、その5年が過ぎるまでの間に」
盗賊「……王様になれば、抑止も効くか、と思って」
鍛冶師「結構その気なんじゃん」クス
盗賊「求められるのなら、だよ! ……ああ、でも」
盗賊「やっぱり踊らされてる様で、むかつく……!」
鍛冶師「何にだよ……ほら、イライラしないの」
408 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 13:43:32.95 ID:dDCoWkGKP
鍛冶師「本当に休もう……お腹冷やしちゃ駄目だよ」
盗賊「……ん」
鍛冶師「この子の為にも……一番良い方法をチョイスしよう。ね?」
鍛冶師「……世界が滅ぶのは、厭だ。子供には美しい世界を見せてやりたいよ」
……
………
…………
女剣士「大丈夫か?」
魔法使い「…… ……話かけんな」
女剣士「何だよ、冷たいな。なぁ?」
娘「あう?」
魔法使い「糞、船長の野郎……!こき使いやがって……!」
女剣士「仕方無いだろ、アタシ娘見てなきゃいけないんだし」
女剣士「アンタの魔法は海の魔物には有効なんだし」
魔法使い「…… ……」
女剣士「船降りないって決めたの、自分だろ」
魔法使い「……そうだけど」
女剣士「無事に鍛冶師の村に着いたんだから。飯でも行こうよ」
娘「だー。う……」
女剣士「おう。ちゃんと娘のミルクも持ったからなー」
魔法使い「飯……ああ、腹減った……」
女剣士「だろ?ほら……行こうぜ。あそこに飯屋あるよ」スタスタ
魔法使い「……船長は?」
女剣士「船に居るってさ。補給とか済んだら声かけろって」
魔法使い「自分もちっとは動けよな……」カチャ
イラッシャイマセー
女剣士「あれ?」
魔法使い「おい、早く閉めろよ扉」
409 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 13:44:43.21 ID:dDCoWkGKP
おむかえー
410 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 16:19:58.87 ID:dDCoWkGKP
女剣士「あ、ああ……悪い」パタン
魔法使い「何だよ?」
女剣士「いや、教会?の前に随分人が居たからさ」
魔法使い「ふぅん……あ、おばちゃーん!注文良いー?」
おばちゃん「はいよ。何にする?」
魔法使い「えーっとねぇ……」
女剣士「あ、なあ……おばちゃん、あの教会ってさ……前からあったよな?」
おばちゃん「ああ、建物自体は古いよ。無人の期間が長かったけど」
魔法使い「ん?聖職者が居ないって事か?」
おばちゃん「……何年か前まで、男前の神父さんが居たんだけどねぇ」
おばちゃん「その神父さんの後追いかけてきたシスターと駆け落ちしたって噂でね」
女剣士「駆け落ち!」
娘「だぁ。あ〜」
女剣士「あ、ごめんごめん、ミルクだな」
おばちゃん「おや可愛いお嬢ちゃんだね……若いお母さんで良いねぇ」
女剣士「いや、アタシの子じゃ……」
魔法使い「それより飯だって!俺、ペペロンチーノ」
おばちゃん「パンとサラダで良いかい?」
魔法使い「ああ……んで、駆け落ちして何だって?」
おばちゃん「いやね、二人ともある日突然消えちまったんだよ」
おばちゃん「神官とシスターの禁断の恋とか、羨ましいねって」
おばちゃん「一時期凄い噂になってたのさ」
女剣士「禁断の恋……」
おばちゃん「そりゃあもう綺麗な男だったんだよ!」
おばちゃん「この村の女は皆、魅入ってたしね」
魔法使い「不公平だなぁ、世の中ってのは」ハァ
おばちゃん「あら、お兄ちゃんも良い線言ってるって!」アハハ
魔法使い「……わっかりやすいお世辞ありがとよ」
おばちゃん「で、教会が何だって?」
女剣士「アタシカルボナーラ……ああ、いや。随分人が集まってたからさ」
おばちゃん「あいよ……ああ。そうそう。久しぶりに教会に神父さんが来たのさ」
魔法使い「またあれか。男前って騒いでんのか!」
411 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 17:06:44.90 ID:dDCoWkGKP
おばちゃん「いやいや。まあ、可愛い顔してるけど」
おばちゃん「若い子だよ。真面目そうだったかな」
魔法使い「しっかりチェックしてるんだな」
おばちゃん「港街からの船で来たんだよ、あの子」
おばちゃん「新しくできた街だって言うから、みんな話を聞きたがるのさ」
女剣士「!」
魔法使い「へぇ……」
おばちゃん「まあ、心のよりどころが出来るのは嬉しい事だよ……ああ、ちょっと待ってね」
魔法使い「……港街から、ねぇ」
女剣士「娼婦や……神父さんの事、知ってんのかな」
魔法使い「さあな。俺ゃ興味ねぇよ」
おばちゃん「はい、お待たせ!」
魔法使い「お。旨そう……いただきます」
女剣士「……頂きます」
魔法使い「気になるなら散歩がてら見てくりゃいいんじゃねぇ?」
魔法使い「俺は飯食ったら船に戻る。どうせまたこき使われんだろうからな」
女剣士「ああ……うん」
魔法使い「若いとミーハーだな。可愛い顔とやらに興味あんのか?」
女剣士「馬鹿!そんなんじゃネェよ!アタシは……」
魔法使い「側近が好きだから、かよ」
魔法使い「…… ……ま、良いさ。ご馳走さん」
女剣士「もう食ったの!?」
魔法使い「ゆっくり食ってけって……俺は眠いの!」スタスタ
女剣士「……すっかりひねくれたよな、あいつ」
女剣士「て、程……知らないけど……なぁ?」
娘(すやすや)
女剣士「……ありゃ、ミルク空っぽ。お前も良く飲むね」
女剣士「まあ……赤ちゃんは寝て飲んで、が仕事だな……」カタン
女剣士「おばちゃん、ご馳走様」
412 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 17:15:33.44 ID:dDCoWkGKP
おばちゃん「はいよ、お粗末様」
おばちゃん「旦那は先に出てったのかい?」
女剣士「だ、旦那じゃ無いって!」
おばちゃん「なんだ、違うのかい」
女剣士「……やめてくれよ、もう」スタスタ
おばちゃん「また来ておくれよー?」
カチャ、パタン
女剣士「……お、さっきより減ってる」スタスタ
女剣士(神父さん、ね……港街から、か。アタシの知ってる人かな)
女剣士「あー、えっと……すみません。アンタが此処の……聖職者、さん?」
神父「おや、可愛い赤ちゃんですね……はい。と言っても」
神父「この間、この教会に居を移したばかりですが」
女剣士「……えっと、港街から、来た……って人、で良いんだよな?」
神父「ええ。そうです。神父、と言います」
女剣士「え!?」
神父「……え?」
女剣士「あ、いや……え?」
女剣士「港街の教会にも、神父って……高齢の、さ……」
神父「!!」
女剣士「……? どうした?」
神父「……いえ。今日は風も強いですし、どうぞ……よろしければ中へ」
女剣士「良いのか」
神父「ええ、赤ちゃんも居ますし」
女剣士「じゃあ……えっと、ちょっとだけ。準備が出来たら船に戻らないと行けないんだ」
神父「船……」カチャ
女剣士「お、お邪魔します……?」
神父「……貴女は、神父様にお会いした事が……?」
女剣士「あ、ああ……まあ。元気にしてんのかな」
女剣士「もう、随分前だけど……さ」
神父「……神父様はお亡くなりになりました」
女剣士「え!?」
413 :
名も無き被検体774号+:2013/06/24(月) 17:25:58.46 ID:2W78EXM00
BBA腹へった
414 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 17:26:01.25 ID:dDCoWkGKP
神父「……僕は、新米神官、と言う者です」
神父「ですが……あの街を出る時に、神父様の教えを忘れない様」
神父「……敬愛する神父様を忘れない様、名前を頂いたんです」
女剣士「あ、ああ……そうだったんだ」
女剣士「そっか……神父さん……」
女剣士「あ、じゃあ……アンタはもう、港街には戻らないのか?」
神父「ええ。この街の奥に……小さな小屋があるのです」
神父「見晴らしの良い、丘の上です。あの街の教会とどこか似ていて……」
神父「……そこに、居を構えさせて頂ける事になったので」
女剣士「丘……へぇ?そんな場所あったっけ?」
神父「……貴女は、この村の方、ですか?」
女剣士「いや、違うよ。アタシは……出身は北の街だ」
神父「ああ……山の向こうの。そうですか……」
神父「小屋まで、結構歩きますよ。でも川沿いの……美しい場所です」
神父「僕は……あの場所に骨を埋めるつもりです」
女剣士「そっか……港街から来たって言えば、皆話を聞きたがるだろう?」
神父「そうですね。確かに活気のある街です」
女剣士「まじで?アタシが居た時は、まだまだ……作ってる途中!って感じだったのにな」
神父「……随分前に離れられたのですね」
女剣士「ああ。でも多分……これから港街に向かうんじゃないかな」
神父「そう……ですか……」
女剣士「……なんだ?」
神父「いえ。僕は……ああいう、活気のある場所より」
神父「こういう静かな方が好きなので……」
女剣士「……さっきちらっと見たけど、あれだけ騒がれてたら」
女剣士「充分煩いと思うけどな」
神父「物珍しいだけですよ。何れ落ち着きます」
女剣士「そういうモンかな」
神父「多分、ですけどね」
女剣士「……神父さんの、お墓は?」
神父「港街のあの教会の裏に」
女剣士「そっか……寄ったら、会いに行くよ」
神父「ええ……喜ばれますよ」
娘「ふえぇ……」
女剣士「お。起きちゃったか」
415 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/24(月) 17:26:59.79 ID:dDCoWkGKP
>>413 奇遇だな、BBAもだ……
そろそろ飯の支度せにゃー
って感じで、ご飯とお風呂!
またあしたー!
416 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 09:53:49.36 ID:9y+OQNiUP
おはよう!
面接でかけるまでー!
417 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 10:14:18.27 ID:9y+OQNiUP
女剣士「お邪魔しました。何か言われたら、元気だったって伝えておくよ」
神父「……ええ」
女剣士「じゃあ……頑張ってな」
神父「貴女の旅の無事を、お祈りしておきます」
カチャ、パタン
神父「…… ……」フゥ
神父「返すべき、だったか……」ガサガサ……トン
神父(黙って……持ってきてしまった、この本)
神父(……童話の類かと、軽い気持ちで……)ペラペラ
神父(神父様は、一度だけエルフの娘にお会いしたと言っていた)
神父(この絵の……お姫様の様に美しかったと)
神父「…… ……」
神父(皮肉だ……この村が、魔除けの石の発祥であっただなんて)フゥ
神父(否……僕には、寧ろ丁度良いのかもしれない)
神父(神父様の教えを広げ……魔石等。魔除けの石等……)
神父(人々の記憶から、払拭しないと……!)
コンコン、カチャ
神父「はい?」
女「神父様、良ければ外でお茶にしませんか。良い天気ですし」
女「また、港街のお話をお聞かせ下さい」
神父「……ええ、良いですよ」
女「あら……綺麗な絵」
神父「あ……これは……」
女「教会に置かれる本ですか?」
神父「……これは、ただの童話ですよ。御伽噺です」
女「まあ!子供達が喜びますね!」
神父「子供に読ませる内容では……」
女「え……」
神父「……ああ、いえ。死等……なんて言うか」
神父「ちょっと、暴力的な表現も多いのですよ」
神父「めでたしめでたし、で終わる本では無いのでね」
女「ああ、そうなのですか……」
神父「僕も……頂き物、ですので」
神父「…… ……」
女「私は、読んでも……良いですか?」
神父「ええ……それは、ご自由にどうぞ。こちらに置いておきますから」
神父「とりあえず……行きましょうか」
418 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 10:31:00.24 ID:9y+OQNiUP
女「ああ、そうですね。皆待ってますし」
神父「どうぞ、またお時間のある時にお越しになって下さい」
女「ええ、ありがとうございます!」
神父(焦る必要は無い……どうせ、港街の話と同じように)
神父(何れ……落ち着く)
女「では、行きましょう」スタスタ
神父「……はい」スタスタ
神父(神父様……僕は……)
カチャ
ボーゥ…… ……
女「あら、あの船……出発したんですね、もう」
神父「……便利になった物ですね」
女「ええ、本当に。私も何時か、港街に行ってみたいわ」
神父「賑やかで……良いところですよ」
女「今は神父様のお話を皆、楽しみにしていますよ」
神父「この間、何処まで話しましたっけ」
女「街がどうやって大きくなったか、です」
女「魔王の復活が囁かれている中、人が集まって」
女「こうして……力を合わせて街を作ったりできるのって素晴らしいですよね」
神父「……ええ。そうですね。人一人はか弱くても、力を合わせ」
神父「負けない、屈しないと言う意思が原動力になりますから」
女「此処の者は鍛冶を生業にしてますから。潤うのは嬉しいけど」
女「争いは厭ですものね」
神父「そうですね」
女「そういえば、以前此処に居られた神父様は魔除けの石を配っていらっしゃいました」
女「……お話しましたっけ」
神父「ええ。居なくなってしまった、と言うのは……残念ですけど」
神父「…… ……」
女「神父様?」
神父「あ……すみません。残念ですけど、あれは随分体力や精神力を消耗しますから」
女「まあ……!」
神父「ですから……僕は」
女「あ、ほら、神父様、あっち!皆待ってます!」タタタ……
神父「あ…… ……」ハァ
神父(焦らない、焦らない……何れ、風化する)
神父(僕は……僕の思うとおり。神父様の、様に……!)スタスタ
神父「お待たせ致しました。港街のお話、ですね」
女「ええ、お願い致します!」
おばさん「楽しみにしてたんだよ!ほら、神父さんも座って!」
419 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 10:41:18.35 ID:9y+OQNiUP
……
………
…………
使用人「もうちょっと!もうちょっと……頑張って下さい、勇者様!」
側近「痛い痛い痛い!」
使用人「勇者様が頑張って立とうとしてるんですから、我慢して下さい」
側近「ちょ、爪切ってやってよ使用人ちゃん!」
側近「食い込んでる食い込んでる!」
勇者「うー!」
使用人「歩いた!コッチですよ、勇者様……っと!」ダキ!
勇者「あー!」
使用人「うんうん!凄いです!歩けましたね!」
側近「……痛かった」
使用人「よく頑張りましたー!」ナデナデ
側近「俺も撫でて欲しいわ……いてぇ」
使用人「何気持ち悪い事言ってるんですか」
側近「ひでえ!」
勇者「そっきんー」
側近「ん?」
勇者「かちこい」ナデ
側近「……ありがとよ」
使用人「にやけないで下さい、気持ち悪い」
側近「もうちょっと労れ!」
使用人「さて、じゃあ勇者様はそろそろねんねしましょうか」
勇者「うん」
側近「おう……俺もそろそろ休むかな」
使用人「あ、側近様はもうちょっと待ってて下さい」
使用人「……ちょっと気になる事があったので」
側近「ん?ああ……別に良いけど」
使用人「勇者様寝たら戻りますから」スタスタ
勇者「おやすみ!」
側近「あいよ、おやすみ」
パタン
420 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 10:51:07.67 ID:9y+OQNiUP
側近「気になる事、ねぇ……」
側近「…… ……」
側近「茶でも入れておいてやるか……」スタスタ
側近(えーっと……)トン
側近(壁と……扉。って事はここから、いち、にい……)スタスタ
側近「……お、ビンゴ」
側近(コーヒーはどれかなーっと……)
カチャ
側近「ん?」
使用人「何やってるんです?」
側近「お茶でも入れてやろうかと」
使用人「……慣れ、って凄いですね」
側近「まあ、見えないは見えないなりに、な」
使用人「後は私がやります……大丈夫ですか?」
側近「俺?別に眠くないけど」
使用人「いえ……まあ、体調とか」
側近「……なんだよ、急に」
使用人「…… ……何時言おうかと迷っていたんです」
側近「?」
使用人「毎日見てますが……側近様……」
側近「な、何だよ」
使用人「……老けて、ます」
側近「…… ……俺が」
使用人「はい」
側近「えーと……それは、確か?」
使用人「嘘吐いても仕方無いでしょう……お茶、置きます」
側近「あ、ああサンキュ……老けた、てどんな風に?」
使用人「髪の色が……抜けてます」
側近「……はい?」
使用人「色がだんだん薄くなってます。目に見えて解る位だから」
使用人「……ちょっと、気になって」
側近「…… ……他に、変化は?」
使用人「…… ……」ゴトン
側近「何の音だ」
421 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 10:58:14.07 ID:9y+OQNiUP
使用人「ま……勇者様の剣です」
側近「……?」
使用人「微かに、何ですけど……光が、増えてます」
側近「何?」
使用人「感じる力……魔力、で良いのか解りませんが」
使用人「勇者様の成長に伴って、大きくなってます」
側近「…… ……ふむ」
使用人「以前、魔王様が仰ってました。側近様には残照があると」
側近「魔王様の目、のか」
使用人「はい。 ……側近様は、『欠片』に目の光を奪われた」
使用人「もし、残りの……その、残照とやらが」
使用人「……剣に、奪われて行っているのだと、したら」
側近「気がついたのは何時だ?」
使用人「本当についこの間、なんです」
使用人「急速に……なので。気になって……」
側近「勇者様の成長に合わせて、か?」
使用人「そんなに徐々に、だったら……毎日顔会わせてるのに」
使用人「気がつきませんよ、多分」
側近「…… ……」
使用人「私が港街から戻って、もうすぐ一年ぐらいです」
側近「まあ、勇者様が歩く様になる位だからなぁ」
使用人「あの時点で、船長さんには小鳥を飛ばしましたが」
側近「……たどり着いてると仮定しても、来るかどうかの保証は無い、だろ?」
使用人「はい。どこに居るのかもわかりませんからね」
側近「うん」
使用人「外の様子が全く分かりませんから……何とも言えませんが」
使用人「……お話、したじゃないですか」
使用人「盗賊さんと、鍛冶師さんに……」
側近「王になれ、て奴な」
使用人「はい」
422 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 11:11:37.27 ID:9y+OQNiUP
側近「それがどうした?」
使用人「それが、叶ったのかな、って……」
側近「ピースが一つはまった? ……しかしなぁ、都合良すぎないか」
使用人「……ですよね」
側近「それに、光は成長に伴って増えてるんだろ?」
使用人「と、思います……ただ、側近様の、その……変化が」
使用人「急に……だったので。確かめて見たら……その」
側近「別に気にしなくて良いだろ。俺は結構な時間生きてるしな」
側近「寿命的に、そろそろであったっておかしく無いんだぜ」
使用人「…… ……」
側近「で……何か外で変化があったのか、と思った訳ね」
側近「しかし……確かめる方法がネェからな」
使用人「そうなんです。もう少し勇者様が大きくなられたら」
使用人「船で出る事も可能なんですが……」
側近「……どうだかな」
使用人「え?」
側近「勇者様は人間なんだろう。此処にずっと……大きくなる迄置いとくってのは」
側近「どうだかな、て」
使用人「し、しかし……!」
側近「……場合に寄っちゃ、俺や使用人ちゃんだって敵になるんだ」
使用人「!」
側近「まだ何も解っちゃ居ない子供だ。だが……」
側近「『勇者』として育てるのなら……」
使用人「…… ……」
側近「……何れ、旅立たせないと行けないんじゃないか、と」
側近「思うんだけど、な」
使用人「…… ……その為の、王」
側近「…… ……」
使用人「やっぱり……私、もう一度、港街へ……!」
側近「まあ、待てって……後一年、待とう」
使用人「え?」
423 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 11:32:55.27 ID:9y+OQNiUP
側近「……勇者様は、まだ子供だ。船長が一年、この城に来なかったら」
側近「俺が、勇者様を連れて此処を出る」
使用人「ど、どうやって、ですか!」
側近「残照がある内に……魔王様の目の残りの魔力を使えば」
側近「行くだけなら、どうにか……」
使用人「……ッ だ、駄目です、そんな事したら貴方の身が……!」
側近「…… ……お前なら、身を案じて違う方法を探すか?」
使用人「…… ……」
側近「一年。船長を待とう。来たら……」
使用人「私が、それで港街へ……」
側近「違う。俺が……勇者様を連れて此処を出るんだ」
使用人「!?」
側近「前に行っただろう。俺は『側近』の地位を使用人ちゃんに譲る、と」
使用人「そ、それはお断りした筈です!」
側近「『側近』の名を継ぐ事は、だろ? ……俺の仕事は全部」
側近「引き渡したつもりだぜ」
使用人「で、ですが……『魔王様』はどうするのですか!」
使用人「そ、そりゃ……全力で、どうにか、しようとは……」
側近「間に合わす為の勇者様、だろ?」
側近「……『中身』が『器』を倒さないと、多分意味が無い」
使用人「…… ……」
側近「俺は目が見えない。だから……申し訳無いが誰かを頼らざるを得ない、だろうが」
側近「ここを守る者も必要だろう。幸い、魔王様は眠ってる。動かない」
側近「……そんで、それはお前に任せる方が良いのさ」
使用人「城を……私が、守る、のですか」
側近「ああ……魔王様の目も、魔王様の剣も……もう」
側近「俺にはどうにも出来ない。なら」
側近「……勇者様を安全な場所に送り届けるのが、俺の最後の役目、だろうさ」
使用人「側近様……」
424 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 11:33:47.28 ID:9y+OQNiUP
おっひるごはーん!
乙〜
側近…死んじゃ嫌だ…
426 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 11:52:52.92 ID:9y+OQNiUP
グラタン焼けるまでもうちょっと……www
427 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 12:05:12.40 ID:9y+OQNiUP
側近「魔王様、言ってただろ?何かあったら、目と剣で自分をどうにかしろって」
使用人「……はい」
側近「魔王様は勇者様、だ。目と剣を必要とするのは?」
使用人「勇者様です。器を……魔王様を、倒す為に」
側近「ほら。俺の役目、だ」
使用人「……何も、文句などはありませんよ。ただ……」
側近「俺か? ……ま、大丈夫さ」
側近「俺は魔王様の側近だ。最期は……ちゃんと、帰ってくるさ」
使用人「さ、いご……だなんて」
側近「さて、寝ようぜ。明日も勇者様、早起きだろ」
使用人「……そう、ですね」
側近「転がって目瞑ってな。勇者様に蹴られネェようにな」
使用人「毎日ですから、慣れましたよ」
側近「……ご苦労さん」ハハ
使用人「……明日は側近様、一緒に寝ます?」
側近「使用人ちゃんと!?」
使用人「勇者様と、です!」
側近「ですよねー」
使用人「もう…… ……では、おやすみなさい」チラ
側近「おう。おやすみー」
使用人(…… ……もう一度、船長さんに手紙を出しておこう)
使用人(間に合って……!!)
……
………
…………
女神官「まあ、船長さん!」
船長「……これ、神父さんの墓か」
女神官「……ええ」
船長「…… ……」
女神官「何時、お戻りに?」
船長「さっき、船で着いた。随分時間掛かったみたいだな」
船長「一瞬街を間違えたかと思ったぜ」
娘「とーちゃん!」タタタ
女神官「……? とー…… ……船長さんの、お子様ですか?」
船長「ああ、まあな……ほら、娘。こんにちは、は?」
娘「こんにちは!」
女神官「はい、こんにちは」ニコ
428 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 13:23:09.69 ID:9y+OQNiUP
女神官「吃驚しました……何時の間に、ご結婚されたのです?」
船長「ま、色々あってな……おい、女剣士は?」
娘「なんかくってた」
船長「『食べてた』 ……ったく」
娘「あ!おんなけんし!」タタタ……
女神官「可愛い……お母さん似、ですか?」
船長「……だな。俺に似てるのは口の悪さ位か」
船長「……否、あれの母親も大概だったが」
女剣士「急に走っていくから吃驚しただろ!もう!」タタ……
娘「えへ」
女剣士「あ、船長。なんか魔法使いがキレてたけど」
船長「あ?ああ……買い物頼んだからな……おい、娘と先に船に戻れ」
船長「用事済んだら出るぞ」
女剣士「え!?もう!?」
船長「のんびり……するつもりだったが、用事が出来た」
女剣士「用事、って?」
船長「女神官、だったな。始まりの街はどうなってる?」
女神官「あちらへも既に定期便が出ているらしいですね」
女神官「私も詳しくは解りませんが……でも」
女神官「確か、一週間後に戴冠式があったはずです」
船長「戴冠式……マジ、だったのか」
女剣士「あ、そうそう!さっき、定食屋のおっさんが言ってたよ」
娘「おっさんー!」
女剣士「……アタシが悪かった。おじさん、な」
娘「おっさんー!!」
船長「何を、だ?」
女剣士「城が出来たって奴さ。王様に子供が生まれたとかさ」
船長「…… ……」
女神官「ええ、そうらしいですね。どちらに似ているのでしょうねぇ」
女剣士「へ?」
娘「あかちゃん!」
女剣士「あ、ああ。赤ちゃんだな。でも、どっちって……?」
船長「盗賊か、鍛冶師か……だろ?」
女神官「ええ、そうです」ニコ
女剣士「ええええええええ!?」
429 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 13:23:57.93 ID:9y+OQNiUP
面接いってきまーす!
430 :
名も無き被検体774号+:2013/06/25(火) 13:50:32.75 ID:+fOCCSQCP
かばれよー(`• ω •´ )
431 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/25(火) 20:53:09.10 ID:9y+OQNiUP
明日も早いから今日は寝るー
もうすぐ終わらせますよー
乙乙
もうすぐ終わってしまうのか…
結末は気になるが寂しいな
434 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/26(水) 08:53:39.44 ID:0SXJL3UjP
娘「おんなけんし、うるしゃい」
女剣士「ご、ごめん。でも……ええ?」
船長「俺に娘が居るぐらいだ。別におかしくネェだろ」
女剣士「そっちじゃ無いよ!」
船長「あ? ……ああ、そうか」
女神官「城を再建、となると……王を立てる必要が出てきます。妥当では?」
女神官「あの二人以外……おりますまい」
船長「一週間後、か……」
女神官「……喜ばれると思いますよ?」
船長「……」
女神官「火急の用事ならば仕方ないですけど……」
船長「女剣士」
女剣士「ん?」
船長「魔法使い手伝ってやってくれ。ついでに、この手紙渡してくれ」カサ
女剣士「あ、ああ……別に良いけど」
娘「むすめがもつ!」
船長「無くすなよ」
娘「おんなけんし、よんで!」
女剣士「見て良いのか?」
船長「構わん。使用人からだ」
女剣士「!」
船長「俺は出航急がせる……始まりの街に行くぞ」スタスタ
435 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/26(水) 09:05:38.12 ID:0SXJL3UjP
娘「よんでー」
女剣士「待て待て……えっと」カサ
『お買い物をお願いしたいです。リストは別紙にて』
『何度も申し訳ありません。港町まで二人、運んで頂きたいのです。叶う限り、早急に』
女剣士(二人……? 使用人と、側近?)
女剣士(でも……何でわざわざ船で?)
娘「おかいもの!おかし!」
女剣士「え?あ、ああ……わかったわかった。とりあえず魔法使いんとこ行こうか」
娘「だっこ!」
女剣士「……歩いてよ。重いんだから」
娘「やだ」
女神官「ふふ……」
女剣士「……はいはい。よいしょ……じゃあ、えっと……」
女神官「ええ……あ、女神官と申します」
女剣士「……新米神官、に会ったよ」
女神官「……え?」
女剣士「神父さんの名前、貰って頑張る、てさ」
女神官「あ、あの……彼は、どこに!?」
女剣士「鍛治師の村に。ちょっと話しただけだけど、元気そうだったよ」
女神官「そうですか……あ、あの……それ、だけ……ですよね」
女剣士「ん?うん、まあ……?」
女神官「……いえ、良いのです」
女神官「教えて下さって、ありがとうございました」
436 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/26(水) 09:17:27.80 ID:0SXJL3UjP
女剣士「どういたしまして……じゃあ」
娘「はやくー」
女剣士「はいはい」スタスタ
女神官「貴女方に、神のご加護があります様に……」
女神官「……神父様。申し訳ありません」
女神官「あの本は……」
女神官(言付けてくれていないかと……思ったけれど)
女神官(……せめて、大事にして下さい。新米神官……)
……
………
…………
魔法使い「んで?後何だ?」
魔法使い「なんで俺がこんな事……」ブツブツ
ここ数日コレのせいでソワソワしっぱなしだわ……
438 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/27(木) 08:55:43.19 ID:zz0YbUxSP
魔法使い「これは買った、これも……後は……」
娘「まほうつかいー!」
魔法使い「お、娘……歩いて来たのか、賢い賢い」
女剣士「アンタが見える迄抱っこだよ……」
魔法使い「やっぱりか」ハハ
娘「おかいもの?」
魔法使い「後は花の苗だけだ。めんどくせぇし、お前が選べ、娘」
娘「ぴんくー!」
女剣士「買い物リストはやっぱり、魔法使いが持ってたんだな」
魔法使い「やっぱ?」
女剣士「船長が渡しとけ、て」カサ
魔法使い「…… ……」
魔法使い「……花の苗、で怪しいと思ってたよ」
魔法使い「使用人とやらからか……」
女剣士「……どうするんだ?」
魔法使い「……船長は?」
439 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/27(木) 08:59:55.98 ID:zz0YbUxSP
女剣士「出航急がせるって戻ったよ」
娘「きいろ!みろり!」
女剣士「みどり、な」
娘「みろり。あと、しろー!」
女剣士「おいおい、んな一杯……」
魔法使い「とーちゃんの金だ。好きなだけ買え」
女剣士「……先に始まりの街だとさ」
魔法使い「戴冠式か。ガキも産まれたらしいな」
女剣士「知ってたのか」
魔法使い「噂で持ちきり、て奴だ」
娘「むらちゃき!」
女剣士「そんくらいにしな。持てないよ」
440 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/27(木) 09:09:09.94 ID:zz0YbUxSP
魔法使い「……良し。荷物運ぶか」
魔法使い「娘、船すぐそこだし歩けよ。俺も女剣士も荷物あるからな」
娘「えー」
女剣士「頑張れ。娘なら出来る!」
娘「……えー」
女剣士「……行く、だろ?」
魔法使い「どーすっかな」スタスタ
女剣士「……」スタスタ
……
………
…………
男「鍛治師様!花届きましたよ!」
鍛治師「あ、こっちに……て、凄い量になってきたなぁ」
男「そりゃ、祝い事続きだからねぇ」
鍛治師「後、様、て……やっぱさ……」
男「まだ言ってんですか。いい加減慣れて下さいよ」ハハハ
鍛治師「笑い事……かなぁ」
男「城の再建も、王になるのも、うちら街の人間皆が言い出した事だ」
男「鍛治師様達も気にしてたってなら」
男「何の問題も無いじゃないか」
男「……言っただろ。アンタ達二人しか居ない、てさ」
鍛治師「正確には王は僕じゃ無くて盗賊だけどね」
男「ああ、そうだ。二人はどうです?」
441 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/27(木) 12:30:04.22 ID:zz0YbUxSP
鍛治師「さっき見に行ったけど、同じ格好して寝てたよ」
男「あはは!」
鍛治師「後……一週間、か」
男「派手にやりましょうや。盗賊様の言う通り、魔道の街の抑止効果も狙って、ね」
鍛治師「ああ……そうだね」
鍛治師「……」
男「鍛治師様?」
鍛治師「……いや。やっぱり、運命に踊らされてるのかな、て」
男「はい?」
鍛治師「ううん……何でもないさ」
みろり・・・あるあるw
443 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/28(金) 08:49:52.72 ID:h8HD8waiP
鍛治師(運命、か……盗賊の言う通り)
鍛治師(……否。結局は使用人ちゃんの……魔王の言う通り。思う通り……願う通り)
鍛治師(叶った……満足か?魔王……)
男「ん?」
鍛治師「どうしたの?」
男「何か下が騒がしいな……見てきますわ」
鍛治師「ああ、僕が行くよ」
男「んじゃ俺は仕事に戻りますわ」
鍛治師「うん、無理しないでよ」スタスタ
鍛治師(玄関……じゃないや、城門の方か)
娘「かじしー?」タタタ
鍛治師「……え?何で僕の名前……」
娘「かじし?」
鍛治師「うん、そうだよ。君は何て言うの?」
娘「とーちゃん!かじし!いた!」
鍛治師「? お父さ……え!?」
船長「よう。久しぶりだな」
娘「とーちゃん!」
鍛治師「え、えええええ!?」
444 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/28(金) 09:20:23.41 ID:h8HD8waiP
船長「何でそんな驚くんだよ」
船長「お前だって父親だろ、もう」
鍛治師「……だ、誰の子か聞いても良いかな」
船長「そこら辺も含めて話しようや」
船長「娘、女剣士んとこ……」
娘「やだ。とーちゃん」
鍛治師「……女剣士も居るのか!?」
鍛治師「あれ、て、事は……魔王の城に行ったんだ……よね?」
船長「ああ……色々あってな」
船長「その辺も含めて……」
鍛治師「じゃあ……勇者の事は知ってるんだな?」
船長「……勇者?」
鍛治師「……あれ?」
娘「とーちゃん!あちょぶ!」
船長「お、おう、ちょっと待て、娘」
船長「……勇者、て誰だ?」
鍛治師「え、え?だって城に寄ったんだろ?」
船長「……話を整理する必要があるな。女剣士を呼んで来る」
娘「とーちゃん!」
鍛治師「僕が呼んで来るよ。娘ちゃん?と居てあげなよ」
船長「盗賊は?」
鍛治師「1番上の寝室で子供と寝てるよ」
娘「あかちゃん!」
鍛治師「うん、赤ちゃんだよ……見てくるかい?」
445 :
名も無き被検体774号+:2013/06/29(土) 00:42:17.28 ID:oJ6h7HsR0
乙カレー
446 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/29(土) 08:03:35.58 ID:tteP4v7wP
おはよう!
久しぶりの連休!
家族サービスしてくる!
癒されて来る!
月曜から又多分仕事なのでのんびりやりますー
いてら〜
C
449 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/06/30(日) 22:00:05.65 ID:ofnmDE1XP
また明日!
おやすみなさい!
450 :
名も無き被検体774号+:2013/06/30(日) 23:53:27.42 ID:cFNlq4KE0
おやすみー
451 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 10:37:40.09 ID:h8QhxO/vP
娘「あかちゃん!」
船長「駄目だって、こいつ起こしちまうぜ」
鍛治師「お話、の仲間はずれにする方が後が怖いよ」
鍛治師「呼んで来たらすぐに戻る。この奥に広い部屋があるから、そこに」スタスタ
カチャ、パタン
娘「とーちゃん、あかちゃん!」
船長「わかったわかった……起こすなよ?」
娘「つんつんする」
船長「駄目!」
452 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 10:52:12.92 ID:h8QhxO/vP
……
………
…………
女剣士「じゃあ、アタシ達が城を出てすぐに……その、勇者ってのは産まれた、て事になるな」
船長「あの飛び出して行った光と関係は……ある、んだろうな。魔王の言うところの『欠片』」
鍛治師「探し出せ、か」
船長「一つは見つかっただろ?」
盗賊「……『王』か。断ったんだけどな。一応」
船長「結局はなった訳だろう。使用人は願いを叶えた」
鍛治師「引いては魔王が、だね」
盗賊「この件に関してはな……仕方なかった気はするが」
盗賊「あんな言い方されたら、身構えちまうよ……しかも、揃わなければどうなる?」
盗賊「……アタシ達は嫌と言う程、魔王の力を知ってる」
船長「ならざるを得ない?」
盗賊「状況を加味すりゃ、確かに……アタシ達しかいない」
鍛治師「盗賊が王に立てば助かるんだ、確かに」
船長「魔道の街への牽制、な」
453 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 16:22:56.17 ID:h8QhxO/vP
盗賊「劣等種と呼ばれたアタシが街を作り、ついには王様になっちまった」
盗賊「……魔王の後ろ盾あってこそ、だ。感謝してもしきれネェ」
盗賊「やれる事ならしてやりたい。協力だって惜しまない」
盗賊「だがなぁ……何が出来る?」
船長「良いんだろうよ。出来る事をやる……それで、さ」
盗賊「……アタシが王になったのも、意味はある。死ぬ程厭って訳でも無い」
盗賊「もうすぐ、魔導の街からの援助も終わるんだ。タイミングも何もかも」
盗賊「上出来過ぎて怖くなるぐらいだ。だからこそ」
鍛冶師「しっくり来ない……んだよね」
女剣士「どういう意味だ?」
盗賊「……街を作り、国を作り、子供……未来を作るのさ。今、生きているって事はな」
盗賊「で、あれば……それを守って行きたい、良くしていってやりたいって思うのは当然だろう?」
鍛冶師「盗賊は頑張って……ここまで来たんだ。充足感だって随分あったんだと思う」
鍛冶師「……魔王から、使用人ちゃんから聞いた限りじゃさ……どうにも」
鍛冶師「敷かれたレールの上、歩いてる様な気にもなっちゃってさ」
船長「……気にしすぎ、とは言えんかもな」
女剣士「船長!?」
船長「だからといって、別に文句だとか言う気はネェぞ」
船長「……魔王の為なら、と思うのは俺も一緒……だ」
盗賊「ああ……ま、言っても仕方無い事なんだけどな」
盗賊「……良し。チビ共、寝てる間に本題に入ろうか」
鍛冶師「ああ……あ、そうだ、船長。魔法使いは?」
船長「俺よりそっちに聞いてくれ」チラ
女剣士「え? ああ……『俺には関係のネェ話だ』ってさ」
盗賊「……ま、ご尤も、だな」
454 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 16:41:30.81 ID:h8QhxO/vP
船長「…… ……」
鍛冶師「起きるまでに相談しちゃおう。船長、もう一回手紙を見せてくれ」
船長「……おう」カサ
盗賊「『港街まで二人』か……側近と勇者、か使用人と勇者、だろうな」
女剣士「……だよな」
鍛冶師「勇者が人間で、子供である以上……あの城に置いてはおけないと判断した、のか」
盗賊「何かがあったか、だ。早急に、と言うのが気に掛かる」
船長「俺に頼むって事は、転移石はもう無いと考えて良いんだろうな」
盗賊「あいつらは『王』を探してた。魔王も王だろうとは言ったけれど」
盗賊「人の子の王、と言う意味なら……港街よりこっちに呼んだ方が良いだろう」
女剣士「城はどうするんだ?」
船長「『二人を運べ』ってあるだろ? ……どっちか残ってるじゃネェか」
女剣士「あ……そ、そっか」
船長「育てて、と考えると着いてくるのは使用人だろうな」
盗賊「ついでに、頼みたい事もあるんだ、船長」
船長「ん?」
盗賊「使用人でも側近でもどっちにでも良いんだが」
盗賊「南の島の洞窟、とやらを調べてくれないか?」
船長「……さっき行ってた魔法に強い鉱石だとか言う話だな」
鍛冶師「使用人の話では、古い地図の小さな南の島に×印だかが着いてたって言ってた」
船長「…… ……」
鍛冶師「現行の地図からは存在を消されたんだろうって話だ」
女剣士「アタシの親父から貰ったって奴だろ……側近の住んでた島も乗ってた、んだよな」
盗賊「そうだ。もしその鉱石とやらがあれば……」
船長「……無理だ、と言えば?」
女剣士「え?」
船長「女海賊と魔法使いが、俺の所に来た時に持ってきた地図に」
船長「……南の小さな島に、×印が着いていた」
女剣士「古い地図、だったのか」
455 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 16:58:53.40 ID:h8QhxO/vP
船長「ああ。地図自体は……もう魔法使いに返しちまったが」
船長「船に乗せてくれたら、何でもする。だから連れて行け、とな」
船長「……持ち逃げもしネェ。だから……と」
鍛冶師「……行ったんだな?」
船長「理由も無く反対はしネェよ」
盗賊「……何があった?」
船長「三つ頭の魔物が居た。魔法使いの魔法も言う程効かなかった」
女剣士「……まじか」
船長「ああ。お前は……暫く船に乗ってたからあいつの実力は知ってるだろう」
船長「……女海賊が怪我したのもあの島だ」
船長「直接の死因だとは言えないが……出来れば、魔法使いの前で」
船長「あの島の話してやりたくは無いな」
盗賊「……」
船長「依頼なら受ける。だが……島へ渡すだけだ」
船長「生半可な腕なら……危険に飛び込むだけだと忠告はしておく」
鍛冶師「そう……か……」
船長「あいつは……魔王の城にももう行かんと言っている」
女剣士「…… ……」
盗賊「解った……悪かったな」
船長「俺は……良いさ」
盗賊「……娘の母親だろう。一度しか会った事無いけど、よく似てる」
船長「…… ……」
鍛冶師「船長、行って帰ってどれぐらいだ」
船長「幸い、潮の大人しい時期だ。行って帰って……1年半て所だな」
盗賊「娘はどうするんだ?」
船長「女剣士と置いて行っても良いが……」
女剣士「アタシはどっちでも良いよ。娘について行く」
女剣士「……娘は、とーちゃんと行くって言うと思うが」
船長「……だろうな」
456 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 17:27:27.37 ID:h8QhxO/vP
鍛冶師「戴冠式……には、出られない、よな」
船長「一週間後だろう……出席したいのは山々だがな」
盗賊「仕方無いさ……次に会う頃には、王子も今の娘ぐらいになってるか」
船長「……良し、女剣士、娘連れて来い」
女剣士「もう行くのか!?」
船長「魔法使いにも話さなきゃならんだろう。あいつは……今度こそ、降りると言うだろう」
女剣士「…… ……」
盗賊「アタシ達は受け入れの準備をしておく」
盗賊「……人として、王として、出来るだけの事はする。惜しまない、と」
盗賊「伝えておいてくれ」
船長「……解った」
女剣士「娘……娘?」ユサユサ
娘(すうすう)
王子(ぐうぐう)
女剣士「……駄目か、よいしょっと」ダッコ
船長「ああ……すまん」
女剣士「抱き変えたら起きるだろ。このままで良いよ」
鍛冶師「慌ただしいな……久しぶりに会えたのに」
船長「依頼は依頼として、きちんと遂行しねぇとな」
女剣士「先行くぜ……準備しとくよ」スタスタ……パタン
盗賊「……なあ、船長」
船長「ん?」
盗賊「アタシ達は人間として……親として、さ」
盗賊「……出来る事、やれば良いんだよな」
船長「当たり前だ……そりゃ、王としての責任ってのはあるだろうが」
船長「……人として、ってのとそう変わりはしねぇだろ」
鍛冶師「今まで、君が街の為に、劣等種の為にとやってきた事と同じだ。そこは」
457 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 17:55:19.30 ID:h8QhxO/vP
盗賊「…… ……」
船長「どうした?珍しく不安そうな顔をして」
盗賊「こいつが……王子が居るからな」
盗賊「……意地でも守りたいと思うものが増えた。魔王が姫を、と」
盗賊「……美しい世界を、だっけ……思った様に、さ」
鍛冶師「…… ……」
盗賊「思う事は同じ筈、なのに……守りたいと動く、魔王が同時に滅ぼす者であるって」
盗賊「……思うと、やりきれないな」
鍛冶師「今なら、ちょっとは理解できるよ」
盗賊「え?」
鍛冶師「……徹底した不干渉、さ」
盗賊「…… ……ああ」
船長「……行くぜ」スタスタ
盗賊「あ……船長……気をつけてな!」
王子「ふ…… ふやあぁ、おぎゃああぁ」
盗賊「あ、お腹減ったか。よしよし」ダッコ
鍛冶師「……また、船長」
船長「おう……またな」パタン
鍛冶師「勇者は……金の瞳をしているんだったね」
盗賊「ん?ああ……よっと、ほら、おっぱいだよ、王子」
鍛冶師「……住居、少し離した方が良いだろう」
盗賊「え? ……城の中じゃ駄目か?」
鍛冶師「あんまり人目につかない方が良いだろう」
鍛冶師「……側近か使用人ちゃんか……どっちが来るかわかんないけど」
盗賊「……ああ、そうか」
鍛冶師「まあ、一年の間に考えよう」
盗賊「そうだな。まだもう少し……街だって、落ち着いて無いし」
盗賊「やる事は一杯だ」
鍛冶師「……後、もうちょっと胸元、しまって?」
盗賊「……お父ちゃんえっちだなぁ、王子」
王子「あー」
鍛冶師「え!?」
……
………
…………
魔法使い「俺は降りない、って言っただろ?」
船長「……魔王の城に行くんだぞ?」
魔法使い「城には行かネェよ。船で留守番してら」
魔法使い「話はそれだけか?」
458 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/01(月) 17:57:17.01 ID:h8QhxO/vP
お風呂とごはーん
459 :
名も無き被検体774号+:2013/07/01(月) 22:16:58.69 ID:nlGYRKuB0
つ○×4
460 :
名も無き被検体774号+:2013/07/02(火) 00:04:07.33 ID:k13GobUg0
ドラクエのメンツ
ロマンだな
てすてす
bbaがんばれー
462 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/02(火) 12:34:23.31 ID:awhFNJYIP
ちょっとくたばってます…
463 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/07/02(火) 12:34:56.17 ID:ojG4HbECP
お疲れ…(・ω・`)
464 :
忍法帖【Lv=10,xxxPT】(1+0:8) :2013/07/02(火) 19:45:45.49 ID:lDxu3IF90
BBA大丈夫か!
無理は禁物だす
お疲れ様。無理はしないでね〜
ゆっくり休めよ〜!
正座して待ってる
467 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 08:12:10.29 ID:QrtmNKDvP
おはようーごめんなーありがとう!
そろそろ冷えピタ煮えなくなった(((o(*゚▽゚*)o)))
よかったね
でも無理すんなよ
469 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 09:58:39.44 ID:QrtmNKDvP
船長「……良いのか?」
魔法使い「何度も言うな」スタスタ
女剣士「……」
カチャ、パタン
船長「……」
女剣士「何でそんな……頑なに魔法使いを下ろしたがる、んだ?」
船長「そう言う訳じゃネェよ……娘は?」
女剣士「甲板で海賊と走り回ってるよ」
船長「……良かれ、と思ってんのは俺だけなのかね」
女剣士「半分、意地になってるのもあると思うけど」
船長「俺が?」
女剣士「向こうが……かな」
船長「…… ……」
女剣士「アタシも……船に居るよ。娘連れて行くのも大変だしな」
船長「お前も?」
女剣士「どうせ戻ってくるだろ、船長は」
船長「もし……一緒に来るのが使用人だったらどうするんだ」
女剣士「?」
船長「側近に会えないぞ」
女剣士「ああ……うん。だけど」
女剣士「……会っちゃったら、又……一緒に居たくなるだろ」
船長「……冷めたのか?いや……違うか」
女剣士「何だろうな。でも……流石に、な」
女剣士「もう随分……会ってない、しな」
船長「……そう、か」
女剣士「側近とか使用人にとっては、実感無いのかもしれないけどさ」
女剣士「一年、二年とか、って」
女剣士「けど……アタシ達は、アタシは、違う」
女剣士「人間と魔族の差、って奴、やっと、ちょっと解った気がするんだ」
470 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 10:14:54.49 ID:QrtmNKDvP
船長「……お前が良いなら、良いさ」
女剣士「随分……色々あったな」
船長「…… ……」
女剣士「なあ、船長」
船長「ん?」
女剣士「ちょっと相談があるんだけどな」
船長「ああ……だが先に出港したい。後でも良いか?」
女剣士「何時でも良いよ。んじゃアタシも、娘を拾いに行ってくる」
船長「ああ……舵は俺が取る。寝でもしたらこっちへ来てくれ」
女剣士「ああ」スタスタ
カチャ、パタン
女剣士「えっと、娘、は……と」スタスタ
娘「きゃー!」
海賊「む、娘ちゃん、もうそろそろ……」ハァハァ
女剣士「……まだやってんのか」
女剣士「おーい、娘!そろそろバターになっちまうよ、お前」
娘「だいじょぶ!」
女剣士「海賊もしんどいってさ。それに船が出るよ」
女剣士「船室に戻らないと、落っこちちゃうぞ」
海賊「た、助かりました……」
女剣士「お疲れ……魔法使い知らねぇ?」
海賊「さあ……こっちには来てねぇっすよ」
女剣士「そっか、サンキュ……ほら、娘おいで」
娘「んー……」ゴシゴシ
女剣士「疲れて眠くなったか?」
娘「だっこー……」
女剣士「はいはい」ダキ
娘「……」ウトウト……ポテ
海賊「子供って凄いっすねぇ……」
女剣士「ん?」
471 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 10:25:00.65 ID:QrtmNKDvP
海賊「チャージした体力、全部使い切って一気に燃料切れて寝るっていう……」
女剣士「ははは。止まらないからなぁ」
海賊「寝かしてきましょうか?」
女剣士「……がっしり捕まえられてるから良いよ。アンタも休んできなよ」
海賊「すんません。じゃあ……遠慮無く」
女剣士「さて、アタシらも早く中に入るか、娘」
娘(スゥスゥ)
シュッパツダー!
アイアイサー!
女剣士「…… ……」
女剣士「側近……」
女剣士「…… ……」スタスタ
……
………
…………
側近「はっくしょん!」
使用人「風邪ですか」
側近「……魔族って風邪引くのかね」
使用人「どうでしょうねぇ」
側近「……もうすぐ、一年だな」
使用人「…… ……」
側近「そんな顔すんなよ」
使用人「見えてないのに何言ってんですか」
側近「何となく解るよ……船長、間に合えば良いが」
使用人「待てない、んですか。来るまで……」
側近「何回目だよその話……」
使用人「……」
472 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 10:38:13.92 ID:QrtmNKDvP
側近「もうすぐ三歳だ、ぎりぎりだろ」
使用人「……です、けど」
側近「この間も話しただろう。三歳の誕生日まで、だ」
側近「……連れて行くぐらい、大丈夫だ。願えば叶う」
側近「魔王様の目の力……俺の中の残照とやらを使えば」
使用人「……」
側近「港街に着けば、どうにでもなる。誰か、居る」
側近「……勇者様が無事に、人として……成長さえ、してくれれば」
使用人「……もう、誰にも死んで欲しくないだけです」
側近「それも何度も話しただろう?」
側近「俺は、もうそろそろ寿命が来てもおかしく無いんだって」
使用人「……」
側近「お前には授けるだけの『知』を授けただろう」
使用人「……『知を受け継ぐ者』に私を無理矢理据える気ですか、やはり」
側近「無理矢理じゃネェだろ? ……魔王様は、お前を見据えて言ったんだろ」
側近「それに、盗賊と鍛冶師に『王』を押しつけようとしたお前が言うな」ハハ
使用人「……それを言われるとぐうの音も出ません」
側近「『側近』の名を受け継ぐのを拒否しただけで」
側近「その役目はもう、お前に譲ったんだよ、使用人ちゃん」
側近「相応しいのさ。充分に」
使用人「……」
側近「一人じゃ寂しいか?」
使用人「そういう問題じゃありません!」
側近「……城を。魔王様を……守ってくれ」
側近「俺は……勇者様を守る。だから……」
パタパタパタ……バタン!
使い魔「申し訳ありません、側近様、使用人様!」
側近「どうした?」
使い魔「……船が、見えます!」
使用人「!!」
側近「馬車を用意しろ。すぐにだ」ガタン
側近「使用人ちゃん、勇者様はまだ眠ってるな?」
使用人「は、はい」
側近「良し、じゃあ……起こさない様に連れてきてくれ」
使用人「え、でも、船長さんが此処に着く迄は……」
側近「こっちから出向く方が早い」
使用人「!」
473 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 10:43:35.23 ID:QrtmNKDvP
側近「……剣も忘れるなよ」
使用人「私も、行きます」
側近「へ?」
使用人「貴方は目が見えないんですよ、側近様」
使用人「……剣も勇者様も持たせては、不安です」
側近「寂しいなら寂しいって……」
使用人「違いますってば!」
側近「……悪い。じゃあ、頼む」
側近「馬車も、城に戻さないと行けないしな」
使用人「……そうですよ」
使い魔「ば、馬車でしたら僕が……」
側近「しぃ……」
使い魔「…… ……」
側近「そこは、察するところ」
使い魔「も、申し訳ありません」
使用人「違います! ……とにかく、勇者様をお連れします」
使用人「側近様、手を」
側近「ん?」ス……
使用人「……勇者様の、剣です」
側近「……ん」ギュ
使用人「使い魔、側近様を連れて先に城門へ」
使用人「……すぐに、行きます」スタスタ
パタン
側近「……頼んだぞ、使い魔」
使い魔「はい?」
側近「使用人ちゃん、多分泣いちゃうから」
使い魔「使用人様、お強いでは無いですか。まさか……」
474 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 10:53:03.59 ID:QrtmNKDvP
側近「解ってないねぇ。女の子だよ?」
側近「……ついこの間まで、ただの人間の女の子だったんだよ」
使い魔「……泣き顔なんか見たら、ぶっとばされませんか」
側近「まあ、そこは責任持たないけど」
使い魔「そんな……行きましょう」スタスタ
側近「……おう、掴まらせてくれな」スタスタ
側近「使用人ちゃんには、結局全部押しつけちゃったからなぁ」
側近「…… ……」
使い魔「……側近様?」
側近「……何でもネェよ」
パタパタパタ
側近「お、来たか」
使い魔「はい。勇者様、起きてますよ」
側近「え!?」
使い魔「一緒に走ってきました」
使用人「すみません、起きちゃったみたいで」
勇者「そっきん、ぼく、ふねにのるの!?」
側近「お、おお……まあな」
勇者「どこいくの!?どこいくの!?」
側近「嬉しそうだなぁ……そうだな。ここから、ちょっとばかし遠い国だ」
側近「俺も一緒に行くからな」
勇者「うん!」
使用人「……ほら、勇者様。マントを……海の上は、冷えますから」
側近「良し、馬車に乗り込め。入れ違いになると面倒だ」
勇者「ぼく、しようにんのひざのうえ!」
使用人「はいはい。ちゃんと掴まってて下さいね」
使い魔「……では、出します!」
カラカラ……
側近「……」
使用人「……」
勇者「ねえ、そっきん、うみって、あのうみ!?」
勇者「まえにはなしてくれた、あの、うみ!?」
475 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:00:50.03 ID:QrtmNKDvP
側近「あんまり喋ると舌噛むぞ……ああ、そうだよ」
側近「青くて、広いでっかい海だ。船に乗ってな」
側近「……遠い街まで、行くのさ」
勇者「たのしみ!」
使用人「……勇者様、ちゃんと側近様の言う事を聞いて下さいね」
使用人「あんまり、我が儘言っちゃ駄目ですよ」
勇者「……しようにんは、いかないの?」
使用人「私には城を守る義務があります。ですが……」
勇者「……い、かないの……?」
使用人「そんな悲しそうな顔をしないで下さい、勇者様」
使用人「私は、ずっとあの城に居ますから。何時でも、会おうと思えば、会えますから」
勇者「……でも」
使用人「じゃあ、お約束、しましょう」
勇者「やくそく?」
使用人「はい。お約束……必ず、戻って来て下さい。会いに来て下さい」
使用人「……お友達、連れて。ね?」
勇者「……うん!」
使用人「美味しいお茶と、美味しいフランボワーズケーキ、ご用意して」
使用人「……待ってます、から」
勇者「うん!うん!やくそく!ね!」
使用人「…… ……はい」
側近「そろそろ、か?」
使用人「はい……誰か歩いてきますね……船長です」
側近「良し、止めろ!」
カラカラ……カラ……
使用人「勇者様、掴まって……よい、しょ」
勇者「あ、うん……っと」
側近「…… ……」
タタタ
船長「使用人……! ……その、ガキが勇者、か……」
勇者「……」ジロジロ
使用人「勇者様、船長さん、です。こんにちは、は?」
476 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:11:55.09 ID:QrtmNKDvP
勇者「こん、にちは……」
船長「おう。こんにちは……娘と同じぐらい、か?」
使用人「そうですね……殆ど、同じに産まれた、と」
使用人「……言って、良いのだと思います」
側近「ある程度の話は聞いてるみたいだな」
船長「新しい王様から、な」
使用人「! ……では……!」
船長「お前さんの願いは叶った、てこった……使用人」
使用人「……魔王様の願い、ですね」
側近「『欠片』が一つ、か」
側近「……話は船でしよう。ほら、勇者様……行くぞ」
勇者「う、うん……!」
勇者「しようにん!またあとでね!」スタスタ
側近「あ、待って、手、手!」スタスタ
船長「……側近が一緒に行くのか」
使用人「女剣士さんは喜びますね……会える距離が近くなって」
使用人「港街に居るのですか?」
船長「否、結局……あれからずっと船に居てくれてるんだ」
船長「……ガキだガキだと思ってたが……頭があがらねぇよ」
使用人「そうですか……」
船長「側近……暫く見ない内に、老けたな」
使用人「…… ……彼の、魔族としての寿命は……もう」
船長「……それで早急に、か」
船長「やれやれ、ぶっとばしてきた甲斐があった……と」
船長「思って良いんだろうな」
使用人「間に合って良かったです。三歳になれば」
使用人「勇者様を連れて港街へ飛ぶと……仰ってました、から」
船長「転移石、まだあったのか」
477 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:19:05.63 ID:QrtmNKDvP
使用人「いいえ……身の内にあるだろう、魔王様の目の残照で、と」
船長「……やばくないか、そんな事すりゃ」
使用人「ええ。ですから……助かりました」
船長「……アンタはどうするんだ」
使用人「私には、魔王様を守る義務があります。ですから……」
船長「……そんで赤い目してるのか」
使用人「ちょっと擦っちゃっただけです」
船長「……先に乗せちまって良かったのか」
使用人「約束しましたから」
船長「『またあとで』?」
使用人「…… ……はい」
船長「何かあれば、すぐに手紙寄越せよ」
船長「……一方通行だが、今までもちゃんと届いてる」
使用人「……はい。ありがとうございます」
海賊「船長、これ、荷物どうします!?」
船長「おう。馬車に積み込んでやれ」
使用人「え?」
船長「頼まれてたモンだ。勇者のだろうってのは、船に残してある」
船長「娘がやたらめったら花の苗を買いやがったからな」
使用人「……ありがとうございます」
船長「おう。代価は……側近から貰えば良いな」
使用人「あ、いえ……こちらでお支払いします」ジャラ
船長「え……おいおいおいおい。随分多いぞ」
使用人「二人分の渡航代も入ってます」
船長「それでも、だよ」
使用人「残りは側近様にお渡し下さい」
使用人「……詳しくは、側近様がお話しすると思いますが」
使用人「側近様……視力を失われています」
船長「!?」
使用人「……港街に着いたら、色々不便もおかけすると思いますが」
船長「……いや、行き先は始まりの街だ」
使用人「え?」
船長「こっちからも様子を知らせられると良いんだがな」
478 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:27:29.74 ID:QrtmNKDvP
使用人「いえ、それは……」
船長「今は王政のあの街の方が、過ごしやすいだろう。それに」
船長「……あそこには、エルフの加護がある」
使用人「あ……!」
船長「『勇者』が育つには打って付けだろう」
使用人「…… ……ありがとうございます」
船長「俺に言うこっちゃネェだろ」
船長「……積み込みも終わったな。行くぜ」
使用人「勇者様を……宜しくお願い致します」
船長「心配すんな。世界を救う勇者様だ……無事に、港街に送り届けるさ」
使用人「……はい」
船長「じゃあな……元気で」
使用人「はい。また……です、船長さん」
スタスタ
使用人「…… ……」
フネヲダスゾー!
ジュンビハイイカ、ヤロウドモー!
アイアイサー!
使用人「…… ……」
勇者「しようにーん!」
使用人「! 勇者様、そんなに甲板から身を乗り出したら、危ない……!」
勇者「ぼく、ぜったいかえってくるからねー!」
勇者「なかまと、いっしょにもどってくるから!」
勇者「だから、またあとでー!」
使用人「勇者様……」
勇者「やくそくだからー!だから……」
勇者「いってきまーす!」
使用人「……いって、らっしゃい。勇者様……」ポロポロ
勇者「ばいばーい!!」
ボオオォ……
使用人「お気をつけて、勇者様……」
使用人「…… ……」グイ。ゴシゴシ
使い魔「あの……使用人様……」
使用人「……城に戻りましょう……あ」
使用人「随分……一杯ありますね、花の苗」
使い魔「……」
使用人「戻ったら、植えてやらないと。手伝って下さいね?」
使い魔「は、はい!」
479 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/07/03(水) 11:32:48.17 ID:+U5Buza4P
(`; ω ;´ )
480 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:37:18.36 ID:QrtmNKDvP
……
………
…………
女剣士「側近!」
側近「よう……その声、女剣士か」
女剣士「え?」
側近「勇者様は?」
女剣士「娘と遊んでるよ、操舵室で走り回って船長がキレてたけど」
側近「はは……そうか。そりゃ良かった」
女剣士「……みんな吃驚してたよ」
側近「ん?」
女剣士「金の髪に、金の瞳……あんな神々しい子供、見た事無い、て」
側近「……目立つ、んだろうな」
女剣士「側近……目が、見えないって本当だったんだな」
側近「船長から聞いたのか」
女剣士「ああ……後、航路が落ち着いたら皆で話そうって言ってたから」
女剣士「迎えに来たんだ……食堂まで行こう」
側近「ああ……しかし」
女剣士「子供達は大丈夫だ。海賊達が遊んでてくれる」
側近「そうか……助かる」
側近「……始まりの街に行くんだってな?」
女剣士「ああ。盗賊と鍛冶師が居るからな」
側近「お前達もある程度……知識があると思って良い、んだよな?」
女剣士「うん。使用人があの二人に話した位は、かな」
側近「重畳……」
女剣士「あ、そこ柱……!」
側近「え? ……ッ」ゴン!
側近「……いってぇ」
女剣士「ご、ごめん……」
側近「あー大丈夫大丈夫……悪いけど、手、繋いで貰って良い?」
女剣士「え!?あ、うん!喜んで!」ギュ
側近「なんだそりゃ」ハハ
481 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 11:46:47.69 ID:QrtmNKDvP
女剣士「…… ……」ギュ
側近「老けただろ、俺」
女剣士「え!?」
側近「使用人ちゃんに言われたんだよ。急激に老けた、てな」
側近「何でも、勇者の剣に光が増えた、とかな」
女剣士「光……」
側近「まあ、ゆっくり話すよ ……ん?」
女剣士「魔法使い!」
魔法使い「…… ……」
側近「足音がすると思ったら。久しぶりだな」
魔法使い「……お前、目見えてない、ってマジ?」
側近「おう。マジ。だから……ほれ」ブンブン
側近「なれて無いから、手繋いで貰わないとな」
魔法使い「…… ……」
側近「これから話し合い、するけど。お前は来ないの?」
魔法使い「俺には関係ネェよ」
女剣士「魔法使い……」
魔法使い「……なあ」
側近「ん?」
魔法使い「何で、そこまで他人の為に必死になれるんだ?」
魔法使い「……何で、怒らないんだよ」
側近「何で、て言われてもなぁ……」
魔法使い「そりゃ、勇者とやらに罪はネェ……んだろうけどさ」
魔法使い「視力奪われて、さ…… ……ッ」
女剣士「…… ……」
魔法使い「厭にならネェのか!?」
魔法使い「こんな、こんな目に……ッ て、むかつかネェのかよ!!」
側近「魔王様だからなぁ。仕方無いだろ」
魔法使い「投げ出したくならネェの!?なるだろ!?」
側近「……じゃあ、なんでお前、まだ船に乗ってんの?」
魔法使い「……ッ お前に、関係ねぇだろ!」タタタ……
女剣士「あ、おい……!」
482 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 12:00:12.49 ID:QrtmNKDvP
側近「……気持ちは解る、けどね」フゥ
女剣士「側近?」
側近「んや、何でもねぇよ……船長んとこ、急ごうぜ」
……
………
…………
船長「じゃあ……本当に見えてないのか」
側近「ああ。話したとおり、だ」
側近「……あの後、勇者様が産まれ……うーん、まあ、産まれた時には」
側近「もう、な……」
女剣士「その、老けだしたってのは……」
側近「使用人ちゃんも気がついたのは……話したとおり」
側近「急激だったから、って言ってたが」
船長「『王』と言う欠片がはまったから、か」
側近「……こじつけな様な気もするけどな」
女剣士「明確な時期がわからないからな……つっても、なあ」
側近「パズルが目の前にある訳じゃないからな」
船長「もう一回聞いても良いか?」
側近「おう。『揃った』」
側近「『生と死』『特異点』『王』『拾う者』」
側近「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
側近「『知を受け継ぐ者』『光と闇』『勇者と魔王』」
女剣士「揃った、てのが……『生と死』だって言ってたな」
側近「多分、だ。女海賊の死、娘の生」
側近「そして……勇者様の生。魔王様の死。『勇者と魔王』も消えるな」
船長「『光と闇』にも当てはまる」
船長「で……『王』か」
側近「『知を受け継ぐ者』 ……は、使用人ちゃんだ」
女剣士「『表裏一体』てのもじゃないか?」
483 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 12:11:45.80 ID:QrtmNKDvP
女剣士「……て言うかその後のがさっぱりわかんねぇな」
側近「『欠片』だってわかんねぇんだよ。飛び出していった『アレ』の事なのか」
側近「この言葉の全てを『欠片』と取って良いのか……前にも」
側近「使用人ちゃんと同じような話はしたがな」
船長「……考えても仕方無い、な。それで答えが出る様なモンじゃなさそうだ」
船長「剣に光が……と言うのも同じ、か」
側近「それについては一つ聞きたい事があるんだが」
船長「南の島の魔法の鉱石の話、だな」
側近「何だ、知って……ああ、そうか」
側近「……使用人ちゃんだな」
船長「ああ。盗賊達から聞いた」
側近「鍛冶師はキラキラしてたんだろうな」ハハ
女剣士「……でも、女海賊が怪我した、んだろう。そこで」
船長「……そうだ。あいつらが持って来た地図が……あ」
船長「見えなかったな……すまん」
側近「否、気にするな……場所が同じだったとすれば」
側近「もう一度、と言いたいが?」
484 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 12:12:29.24 ID:QrtmNKDvP
おひるごはーん
485 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 12:52:01.48 ID:QrtmNKDvP
船長「俺たちは逃げ帰った、のさ」
船長「三つ頭の化け物が居た。剣も……魔法も、大して効かなかった」
側近「三つ頭……」
船長「お前さんだと解らんがな、俺たち三人じゃ歯も立たんかったよ」
側近「成る程な…… 解った。それも保留にしておこう」
女剣士「良いのか?」
側近「……この剣は勇者様のものだ。必要とあれば、勇者様が行けば良い」
女剣士「え!?」
側近「その……魔物も倒せない程度じゃ、魔王様を倒す事なんて」
側近「到底できねぇよ」
女剣士「そ、そりゃそうだろうけど……」
側近「してやれる事はしてやりたいが、な」
側近「あいつが……そうだなぁ。勇者として旅立つ頃まで」
側近「俺が無事でいれるかどうかなんかわかんねぇしな」
女剣士「……!」
船長「おい。女剣士」
女剣士「え?」
船長「……さっきの話、側近にしてみたらどうだ」
側近「ん?」
女剣士「アタシ……側近と一緒に、始まりの街で船を下りようと思ってるんだ」
側近「お前……」
女剣士「あ!勘違いするなよ! ……そりゃ、一緒に、てのが」
女剣士「無いとは言わない。言わないけど」
女剣士「……船長にも、一緒に鍛冶師と盗賊を説得して貰うつもりなんだ」
側近「……?」
船長「ちなみに、俺も女剣士の話には賛成だ」
女剣士「始まりの街に、城が出来ただろう。て、事は」
女剣士「それを守る……騎士みたいな奴ら、必要じゃないかなって」
側近「!」
女剣士「盗賊達の事だから、アタシなんかが言い出す前に考えてるかもしれないけど」
486 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 13:00:50.82 ID:QrtmNKDvP
女剣士「もし、まだ考えられてないのなら、進言してみても良いかなって」
女剣士「で、もし……もう、案が出ていれば、アタシは志願するつもりなんだ」
側近「女剣士……」
女剣士「アタシはもう、北の街には帰れない」
女剣士「だけど……そりゃ、アンタほど強くは無いけれど」
女剣士「それでも、街の人や王様達を守る一段に入る位は可能だろうと思うんだ」
船長「女剣士の腕はお前も知ってるんだろ?」
船長「海の魔物退治に随分協力して貰ったからな。俺は充分だろうと思うよ」
側近「……成る程な。そっか……そうだな」
側近「自分で決めたんだな?」
女剣士「うん」
側近「……うん。良いと思うよ。できれば、勇者に剣を教えてやって欲しい」
側近「俺はもう目も見えない……し、ま、そもそもそっちは本職じゃないしな」
側近「しかし娘はどうするんだ?」
側近「随分、お前になついてるんだろ?」
女剣士「アタシはお母さんじゃないし、一緒に降りるのはアタシは良いけど」
女剣士「娘本人が嫌がると思うよ」
船長「俺はどっちでも良いさ。娘がしたい方にすれば良い」
女剣士「それに……さっきも言ったけど」
女剣士「お母さん、海の女、て奴だろ?」
船長「…… ……」
側近「…… ……」
女剣士「てか、それはアタシが娘に聞く事じゃない」
女剣士「お父さんの役目。だろ?」
船長「……ああ」
側近「随分……」
女剣士「ん?」
側近「いや……随分。うん、そうだな」
側近「大人になったなぁ……」
女剣士「惚れ直した?」
側近「……ああ」
女剣士「え、え!?」
側近「聞いといて照れるなよ」
487 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 13:14:01.27 ID:QrtmNKDvP
女剣士「え、あ、いや、うん……あの」
バタバタバタ……
コラ、マテオマエラ!
バターン!
魔法使い「待てってば!」
勇者「やーだよ!」
娘「まほうつかい、おそーい!」
側近「おっと……」
女剣士「こらこらこら、甲板以外で走り回っちゃ駄目って言ったろ!」
娘「だって、うごいてるあいだはだめっていうもーん」
女剣士「だからって部屋の中でおっかけっこするんじゃないの!」
魔法使い「こ、こいつら、すばしっこい……」ゼェゼェ
女剣士「あー、もう。ほら、あっちでおやつ貰おう、ね?」
勇者「おやつ!」
娘「おやつ!おやつ!」
女剣士「手洗ってからね!ちゃんと洗える人!」
娘「はーい!」
勇者「あ、は、はーい!」
女剣士「良し!じゃあ、二人とも着いておいで」
女剣士「走っちゃ駄目だよ!」スタスタ
パタン
キャッキャッ
側近「……」
船長「……」
魔法使い「……」
側近「生きてるか?」
魔法使い「水、くれ……」
488 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 13:26:48.36 ID:QrtmNKDvP
船長「子供の順応力ってのはすげぇな……ほらよ、水」
魔法使い「おう……サンキュ」
側近「…… ……良いのか。女剣士下ろして」
船長「本人が望んだ事だ。それに、あいつはそもそも海賊じゃネェよ」
魔法使い「始まりの街の騎士に、て話か……」
船長「聞いたのか」
魔法使い「ちらっとな……娘は、どうするんだ」
船長「…… ……あれの母親も海賊だ。それに、俺の娘だ」
魔法使い「!」
船長「……海賊は、海に生きるモンさ」
魔法使い「……フン。好きにしたら良いさ」
船長「女剣士が居なくなったら、皆で娘の面倒を見ないといけないな」
魔法使い「そりゃそうだろ。まだまだガキんちょ何だから」
船長「……頼むぞ、魔法使い」
魔法使い「何で俺が!」
船長「お前も海賊だろう。この船の。降りないと決めたのはお前自身だろ」
魔法使い「…… ……」
側近「……」
魔法使い「……側近」
側近「ん?」
魔法使い「さっき、悪かったな」スタスタ
側近「いや?」
船長「どこ行くんだ」
魔法使い「見張りだよ。これからは女剣士に頼れないだろ」
魔法使い「精々こき使われてやるよ、船長」
パタン
側近「……お前ら、もしかしてアレからずっと喧嘩してたのか?」
489 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 13:36:18.86 ID:QrtmNKDvP
船長「喧嘩って訳じゃネェだろ」
側近「……あいつ、女海賊に惚れてたのか?」
船長「さあな。だが……蟠りがあって当然だろう」
側近「……随分嬉しそうってか……すっきりした声してたジャネェか」
船長「そうか?」
側近「目が見えなくなってから、そういうの結構敏感になってね」
船長「…… ……」
側近「お前は……ふっきれたのか」
船長「……二人とも、死んじまったからな」
船長「本来なら……母親に似てきた、と思うべき何だろうな」
側近「俺には、見えないから解らないけどな」
船長「…… ……」
側近「でも、お前の娘だ」
船長「……ああ」
側近「それは、愛だろ?」
船長「…… ……ああ」
船長「何だったんだ?」
側近「ん?」
船長「魔法使いが悪かったな、て……奴だ」
側近「ああ……まあ、他人の為にそこまでして、振り回されて」
側近「それで良いのか、てさ」
船長「……鍛冶師と盗賊も言ってたな」
船長「運命に踊らされているみたいだ、てな」
側近「……『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
船長「?」
側近「『我が名は、勇者』『光に導かれし運命の子』」
側近「『闇に抱かれし運命の子』『汝の名は、魔王』」
側近「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
側近「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
490 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:01:48.79 ID:QrtmNKDvP
船長「魔王の言葉、か」
側近「ああ……全貌を紐解く事は、俺らには多分……出来んよ」
側近「確かに、踊らされてるのかもしれないがな」
側近「……俺の意思は、魔王様の意思だ」
船長「人と魔の違い……か?」
側近「個々の、だな。何もどれも一括りには出来ん」
船長「人に取っても、魔族に取っても……魔王が、意思もなく」
船長「この世界を滅ぼそうとするのは、阻止せねばならん」
側近「そうだな……」
船長「勇者に……『魔王』を倒す『勇者』に未来を託すために」
側近「……未来を守る為に」
船長「出来る事を無条件でしてやりたい、と思うのが『親』だな」
側近「俺は親じゃ無いけどねぇ……」
船長「勇者にとりゃ、親みたいなモンだろ」
側近「何。俺お父さん?使用人ちゃんはお母さんか……」
側近「……聞かれたらぶっ飛ばされそう」
船長「ははは!」
側近「何大笑いしてんだよ……」
船長「お前達はそういう関係じゃ無かったのか?」
側近「違うなぁ……同士、かな」
船長「……使用人も、魔王に惹かれてた?」
側近「俺も、みたいな言い方しないでくれる」
側近「あれも愛、だろうけどな。でも所謂男女の愛、じゃネェさ」
船長「姫も、娼婦も……まあ、勇者様と考えれば、な」
船長「仕方ねぇんだろうけど、よ……」
側近「姫様のもちょっと違うと思うけどな」
側近「でも愛の形も千差万別。コレ、て決まってる訳じゃネェからな」
船長「……わかんないねぇ」
側近「俺もだよ」
491 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:16:04.56 ID:QrtmNKDvP
船長「……お前と、愛について語る日が来るとはな」
側近「俺も吃驚だよ」
船長「さて……始まりの街に着くまで、まだ暫く掛かる」
船長「船の中は自由に使え……この季節だと、一年は掛からずに着くだろう」
側近「そうか……」
船長「娘と遊んでりゃ、あっと言う間だと思うけどな」
コンコン
船長「はい?」
女剣士「船長、側近は……ああ、居た居た」
側近「女剣士か、どうした?」
女剣士「ずっと船の中も退屈だろう。娘との遊びに勇者も入れてやって良いかと」
女剣士「思ってさ」
側近「遊び?」
船長「丁度良いじゃネェか……まあ、遊びって言う名の剣の稽古、だな」
側近「お。そりゃ願っても無いね」
女剣士「娘用の小さい木刀もあるしな。側近が良いなら、一緒にやるよ」
側近「おう。是非是非頼むぜ。そろそろ体力もつけないとな」
女剣士「良し、じゃあ早速だ!邪魔したな!」
パタン
船長「お前も、遠慮無く何でもいえよ?」
船長「その目じゃ不便じゃネェことが寧ろ無いだろ」
側近「んじゃ、海賊一人貸してくれねぇ?」
船長「おう、適当にその辺のとっ捕まえていきゃ良い」
側近「この船には確か書庫があっただろう」
船長「……? あ、ああ……だが」
側近「借りて良いんだろ?読んで貰うさ」
492 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:29:05.80 ID:QrtmNKDvP
船長「そ、そりゃ構わネェが……」
船長「……とりあえず、じゃあ書庫まで連れて行ってやるよ」
側近「おう、頼むぜ」
船長(側近に読み聞かせ……想像したら噴き出しそうだな)
……
………
…………
盗賊「あ……おい、鍛冶師知らないか?」
男「鍛冶師様は王子様を連れて、庭で遊んでましたよ」
盗賊「そうか……じゃあ良い。ありがとう」
男「それより盗賊様。魔導の街の使者が来てます」
盗賊「又かよ!用件は?」
男「直通の船がどうとか……」
盗賊「却下!船は全て要の港のある港街を通す以外は認めない」
盗賊「そう伝えて追い返せ」
男「は! ……それから、騎士団の件ですが」
盗賊「あー…何?」
男「街の人達からの嘆願書です」
盗賊「嘆願書!?」
男「街への出入りが激しくなって、人も物も情報も入ってきますから」
男「……魔王復活の噂がある以上、王を守る者は必要だと」
男「騎士団設立を願う声と、志願書、ですね」ドサ
盗賊「うわ……ッ こ、こんなに!?」
男「全て目を通して下さいね。では」スタスタ
盗賊「……こ、こういうのは鍛冶師に……あ……ッ」
盗賊「アタシがやらなきゃ行けない、んだ、よな……ッ 解ってる、けど!」
493 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:35:17.63 ID:QrtmNKDvP
盗賊「……ハァ」パラパラ
バタン!
盗賊「何……ッ」
王子「おかあさま!」パタパタ
盗賊「あ、ああ王子か……鍛冶師は?」
王子「ふねー!」
盗賊「船?」
王子「うん!こっち、こっち!」グイグイ
盗賊「え、ちょっとちょっと、アタシが此処を離れる訳に……」
王子「ほら!みて!」
盗賊「バルコニーか……ん? ……!あの船、は……!」
ザワザワザワ……
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!
盗賊「な、何の騒ぎ……」
バタバタバタ……バタン!
男「失礼します、盗賊様!」
盗賊「何だ何だ!?」
男「……ッ ゆ、勇者様が現れました!」
盗賊「! ……落ち着け、勇者と名乗る者が現れた、のか?」
男「あ……ッ いえ、その……」
男「……船長様の船から、金の髪に金の瞳を持つ男の子を連れた者が……」
盗賊「!」
男「……街の者は、口々に……光の子だの、勇者様だの……と」
盗賊「……鍛冶師が港に向かったはずだが」
男「は……ッ」
盗賊「共に戻れば、通せ。後の者は皆下がれ!」
男「は!」
494 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:44:58.50 ID:QrtmNKDvP
盗賊「…… ……」
王子「おかあさま?」
盗賊「ん?ああ……大丈夫。お友達がね……来るんだ」
王子「おともだち?」
盗賊「そう……お友達。ほら、こっちおいで」
王子「あそぶ?」
盗賊「ああ、そうだね……一緒に遊べるな。お兄ちゃんだよ、王子の」
王子「おにーちゃん!」
バタン!
鍛冶師「王子!」
王子「おとうさま!おにいちゃんは!?」
側近「よう、久しぶりだな」
勇者「そっきん、あかちゃんがいるよ!」
側近「……赤ちゃん、か?」
盗賊「赤ちゃんっていうにはもう大きいな」
女剣士「大きくなったなぁ……」
盗賊「女剣士!」
ボーォオオウ……
盗賊「……汽笛?」
女剣士「船長と魔法使いは、もう行ったよ」
盗賊「え!?」
側近「王城に海賊なんて出入りするもんじゃネェ、んだってよ」
盗賊「娘は?」
女剣士「……行っちゃヤダ、て泣いてたけどな……」
側近「勇者とも随分仲良くなってたからな……」
盗賊「……そう、か……ん?あれ、て事は……お前は?女剣士……」
495 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 14:55:46.53 ID:QrtmNKDvP
女剣士「えっと……」キョロ
盗賊「人払いはした。心配すんな」
鍛冶師「……良し、上の部屋で遊んでおいで、王子」
側近「勇者、一緒に行きな……面倒見てやれよ」
勇者「うん!えっと……おうじ?いこ!」
王子「うん!」
タタタ……
女剣士「船長にも一緒に説得して貰うつもりだったんだけどな」
女剣士「……盗賊、この城の騎士団を作るつもりは、無いか?」
盗賊「!」
鍛冶師「話ってそれか……」
盗賊「聞いてたのか?」
鍛冶師「いや、街の人に囲まれたからね。勇者の見かけがあれじゃ……」
側近「……魔王様の復活がどうとか、聞こえたな」
盗賊「ああ……この街も出入りが激しくなったからな」
盗賊「噂も……良くも悪くも色々入ってくるんだ」
鍛冶師「魔王が復活して、世界を滅ぼそうとしている」
鍛冶師「……人が増えたからかも知れないが、魔物の目撃情報も増えてるんだ」
鍛冶師「それも、噂に拍車をかけてる」
側近「成る程ね……」
盗賊「これを見てくれ」バサッ
女剣士「うわ、何この紙の束……」
盗賊「……騎士団設立の、嘆願書と志願書」ハァ
女剣士「……わーぉ」ペラペラ
側近「俺たちが言い出す迄も無かった、か」
盗賊「しかしな……今、そんな資金が出てこないんだ」
盗賊「給料は愚か、兵舎なんかも作ってやれないんだ」
496 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:04:23.45 ID:QrtmNKDvP
鍛冶師「……でも、逆に今しか無いんじゃないかな」
盗賊「え?」
鍛冶師「勇者を見た皆の様子をちらっとだけど見たけど……」
鍛冶師「……言い方は悪いが、利用させて貰ったら良いんじゃないかな」
側近「成る程な」
盗賊「え?え?」
側近「勇者は……まあ、見るからに神々しい、んだろう」
側近「その不穏な噂を利用して、最初は無給、もしくはただギリギリ、出せる分だけ、で」
側近「それでも良いならって交渉すれば良い」
盗賊「……お前、簡単に言うなぁ。見ろよその束……志願者だけでも凄い数なんだぞ?」
側近「そうなのか?」
女剣士「まあ……相当の数だな」
盗賊「? ……側近、お前」
側近「ああ、悪い。俺……目見えてないんだわ」
盗賊「え!?」
鍛冶師「え!?」
側近「……お前ら仲良いな」
女剣士「ふぅん……志願者の方はどうにかなるんじゃないか?」
盗賊「ん?」
女剣士「船で船長にも聞いたけど、この島の魔物は随分弱いんだろう?」
女剣士「その魔物に勝てる奴は一杯居るだろうが……」
女剣士「アタシは、北の街の出身だ。自分は強いって驕る気は無いけど」
女剣士「ここらで魔物を倒して満足してる奴よりかは、腕が立つと思う」
盗賊「ま、まあ……そりゃそうだろうな」
側近「それは俺も保証するよ。随分前だが一緒に戦闘した経験もあるしな」
側近「船長も言ってた。海の魔物を退治するにも、随分助けて貰ったってな」
鍛冶師「選出を任せても良い、て事……で良いのかな」
女剣士「ああ。アタシで良いなら、だが」
盗賊「そりゃ助かる……が、兵舎はどうすんだよそんな土地も、資金も……」
側近「強制にしなきゃ良い。城に開いている場所があれば」
側近「狭くても寝具だけぶちこみゃ良いんじゃないか?」
側近「基本この島の住人に限れば、その問題も解決するだろう」
盗賊「……ふむ」
497 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:15:39.48 ID:QrtmNKDvP
鍛冶師「そうだな。仕事はこの街と城を守る事、だからな」
鍛冶師「……それなら、どうにかなる」
側近「さっき鍛冶師が言った通り、当分無給に近ければどうにかなるだろう?」
側近「……勇者の噂が広がれば、街に噂も人も、金も集まってくる」
盗賊「しかし……」
側近「ただでさえ、この街の世話になるつもりで来たんだ。それぐらい利用してくれて構わん」
側近「……俺がこんな状態で、何時どうなるかもわからん以上、どうせ守って貰わにゃならん」
盗賊「……え?」
鍛冶師「…… ……」
側近「老けたろ?俺……ま、詳しい話は後でな」
盗賊「アタシ達、一応さ」
側近「ん?」
盗賊「……この、城の横の細い道を上った先にある丘……の中程に」
盗賊「小さな小屋を建てておいたんだ」
盗賊「……お前の見た目は、時を重ねても変わらないだろう」
側近「…… ……」
盗賊「お前か使用人か解らなかったからな。勇者が大きくなるまで」
盗賊「この街で過ごすと言うのなら……人目に付かない方が良いと思ってな」
側近「そうか……なら、尚更だ。良い様に利用しろ」
側近「そこまでして貰って、アレは駄目コレは駄目、なんて言えないよ」
女剣士「……アタシは、騎士団に入れて貰えるのなら何だってする」
女剣士「盗賊達も、側近も勇者も、守ってみせる」
盗賊「女剣士……」
鍛冶師「盗賊」
盗賊「……女剣士。お前には、騎士団初代団長の地位を与える」
女剣士「え!?」
盗賊「今の段階では、どれほど腕の立つ奴が居ようとお前には敵わないだろ?」
盗賊「城の一室を使え。すぐに整えさせる……けど」
盗賊「……期待はすんなよ」
女剣士「アタシは……飯食わせてくれりゃ、給金なんていらねぇよ」
鍛冶師「女剣士?」
女剣士「……充分だ。守りたい者を守れる。それだけで良い」
盗賊「…… ……解った。足りない物があればすぐに言えよ?」
女剣士「ああ」
498 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:26:49.18 ID:QrtmNKDvP
盗賊「……女剣士、悪いがそこの階段を上がって、王子と勇者を呼んできてくれ」
女剣士「え?ああ……」スタスタ
盗賊「鍛冶師、城の者を集めろ」
鍛冶師「OK」スタスタ
側近「……すっかり王様らしくなったな」
盗賊「アタシはそんな器じゃないって言ってんのにな」
側近「そんな事ないさ。見えなくても解る」
盗賊「……アタシは、う……」
側近「『運命に踊らされてるみたい』?」
盗賊「…… ……ああ」
側近「存分に踊ってやれよ。舞台があって、じっとしてる方がもったいないぜ」
盗賊「側近……」
側近「……もし、俺に何かあれば、勇者様を頼む」
盗賊「…… ……ああ」
トントン……
王子「おかあさま?」
勇者「そっきん、どうしたの?」
女剣士「呼んできたぞ」
側近「…… ……」スタスタ
側近「勇者様」ガシ
勇者「え? ……な、なに」
側近「いや……『勇者』」
勇者「……は、はい!」
側近「お前は、光に導かれし、運命の子……勇者だ」
勇者「ゆ、うしゃ」
側近「そうだ。今、魔王が世界を滅ぼそうとしている」
側近「……それを、阻止できる……止められるのは、お前だけなんだ。勇者」
勇者「ぼく……だけ……?」
側近「……そうだ。その為には、強くならなければいけない」
側近「皆を、街を、世界を……お前が、守るんだ」
勇者「ぼくが……まもる……」
盗賊「……」
女剣士「……」
499 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:35:27.67 ID:QrtmNKDvP
側近「……大丈夫だ。お前なら出来る」
側近「俺も、女剣士も……ここに居る王様も、皆お前の味方だ」
側近「だから、強くなれ。最強の剣となれ」
側近「世界を守るんだ、勇者」
勇者「……うん!ぼく、つよくなる!」
勇者「しようにんとも、やくそくした。いつか、かえるって」
側近「…… ……ああ」
勇者「しようにん、とおいところにいるんでしょう?」
勇者「あいにいけるぐらい、つよくなる!」
側近「うん…… ……そうだな」
女剣士「明日から特訓だな、勇者」
勇者「うん!がんばる!」
コンコン
鍛冶師「集めたぞ、盗賊」
盗賊「良く聞け!ここに居るこの、光の子供は、魔王を倒すべく産まれた勇者だ!」
ザワザワザワ……!
盗賊「我が国は、この勇者を保護する事とする!」
盗賊「これを持って我が国の騎士団の設立を同時に宣言する!」
ザワザワザワ……!
盗賊「だが、恥ずかしい話、この国はできたての弱小国に過ぎない」
盗賊「資金も乏しいと言って過言では無い」
盗賊「……街の人や、皆からの嘆願書も読んだ」
盗賊「勝手な話だが、志願した者に充分な給金を出す余裕が無い」
500 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:42:25.33 ID:QrtmNKDvP
盗賊「それでもと思う者は集え!ただし、この国に住居を構える者のみに」
盗賊「志願資格を与えるものとする」
盗賊「……そしてその中から、この騎士団長、女剣士の認めた者のみ」
盗賊「騎士団への入団を許可する者とする」
ザワザワザワ……!
ダレダアイツ、ミタコトナイゾ……!
女剣士「お、おい……!?」
側近「し……ッ」
女剣士「お前、何ニヤニヤしてんだよ……!」
鍛冶師「……」クスクス
盗賊「静かに!」
シー………ン
盗賊「……以上、街に向けて宣言を出してくれ」
盗賊「ああ、それから勇者は確かに保護するが、その確かな居所は内密とし」
盗賊「口外する事は相成らん。良いな!」
アレガ、ユウシャ……サマ?
シカシ、タシカニコウゴウシイ……
キンノカミニ、キンノヒトミ……
ヒカリ……ヒカリノカゴ?
ヒソヒソ……
ガヤガヤ……
盗賊「解散!」
501 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 15:52:54.44 ID:QrtmNKDvP
ザワザワ……
ヒソヒソ……
パタン
女剣士「……」ポカーン
側近「……」クック
王子「おかあさま、かっこういい!」
鍛冶師「ねー」クスクス
勇者「すごー……い……」
側近「そうだな」クックック
盗賊「……何時まで笑ってるんだよ」
勇者「ひと、いっぱいいた……!」
側近「そっち!?」
女剣士「おいおいおい、あんな事言って良いのかよ!?」
盗賊「ん?」
側近「良いんじゃないの、秘密は知りたいと思うのが真理だし」
側近「条件としちゃ、甘い位だと思うけどなぁ?」
女剣士「ち、違う違う!そうじゃなくて!」
女剣士「いきなり知りもしない女が騎士団長って……!」
盗賊「ああ、なんだそんな事か」
盗賊「そこは、実力でなんとかしてくれ。それこそ甘い条件だろ?」
側近「……食えない女だなぁ」
鍛冶師「だろ? ……僕よりよっぽど王様に相応しいよ」
盗賊「さて、じゃあ小屋に案内しようか」
盗賊「積もる話は夜にして、少し休んでくれ」
鍛冶師「女剣士もおいで。部屋を用意させてるから」
鍛冶師「そこを見たら少し……街を案内するよ」
女剣士「あ、ああ……」
鍛冶師「盗賊、そっちは任せたよ」
盗賊「おう。お互い様」スタスタ
側近「勇者、手繋いで?」
勇者「うん」
鍛冶師「王子は僕と一緒に来るかい?」
王子「ゆ、ゆうしゃといっしょにいってもいい?」
502 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 16:11:34.81 ID:QrtmNKDvP
鍛冶師「うん、行っておいで……じゃあ、盗賊、宜しく」
盗賊「あいよ」
パタン
鍛冶師「……何時まで口開けてんの。行くよ」スタスタ
女剣士「いや、その……ねぇ」スタスタ
鍛冶師「……今、盗賊達が行った方」
女剣士「え?」
鍛冶師「小屋までの途中に、小さな物置が設置してある」
鍛冶師「……そこに、勇者達の食料や、衣料品を届けるのは」
女剣士「アタシの役目、って言いたいのか」
鍛冶師「ああ。今の段階で……勇者が人目に触れる事は正直、メリットの方が」
鍛冶師「大きいと思う。目で見た物は信じるしかないのが人間だろ?」
女剣士「……」
鍛冶師「だけど、何年経っても見た目が変わらない側近を人前にさらす訳には、ね」
鍛冶師「……勇者が産まれたって噂は、あっと言う間に世界中に広がるだろう」
鍛冶師「利用しようと言う者だって、出てこないとは限らない」
女剣士「……ああ」
鍛冶師「その存在を明らかにする必要はあるが、さっき盗賊が言ったとおり」
鍛冶師「居所の詳細は……知らすべきじゃ無いと思う」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「実力の件は勿論、疑っては居ないけど」
鍛冶師「今のところ、色んな意味で……君以上の人材は居ないんだ」
女剣士「……解ってる」
鍛冶師「まあ、でも本当に期待してるよ」
鍛冶師「……対魔族だけ……とは、限らないしね」
女剣士「え?」
鍛冶師「人同士の争いの可能性をさ……100%否定できるとは言えないだろ?」
鍛冶師「僕らは厭でも『支配する側』なんだ」
女剣士「……ああ」
キィ
鍛冶師「良し……取りあえず、一杯やりますか。飲めるだろ?」
503 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 16:21:10.02 ID:QrtmNKDvP
女剣士「街の案内じゃないのかよ」
鍛冶師「小さい街だ。すぐに終わる……あっちが、宿。あの奥が……」
タタタ……
鍛冶師「ん?」
女「あの!お城の方ですよね?」
女剣士「この人は……ッ」ムグッ
鍛冶師「お城の方に用事?」
女剣士「……ッ」ドンドン……ップハ!
女「あ……御免なさい、お城から出ていらっしゃったので……」
鍛冶師「いえいえ……貴女は、どこから?」
女「先日、船で観光に来ました。先ほど、港で……光の様な子供を見たと聞いたので」
女「勇者様がこの街にいらっしゃったと聞いたので……!」
女「是非……この、お花を!」
女剣士「……可愛い」
鍛冶師「摘んできたの?」
女「は、はい。川辺に、綺麗に咲いていたので……」
鍛冶師「ありがとう。僕は会えるかどうかわかんないけど……お城の人に渡しておくよ」
女「ありがとうございます!あ……!」
女「勇者様に……光の子、万歳!」
バンザイ……ヒカリノコ……
バンザイ!ユウシャサマ、バンザイ!
ユウシャサマ、バンザーイ!
ユウシャサマ、バンザーイ!
ユウシャサマ、バンザーイ!
女剣士「…… ……」
鍛冶師「…… ……」
女「勇者様、万歳!」
鍛冶師「……飲みに入ろう。ね?」
女剣士「……ああ」
504 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 16:29:10.18 ID:QrtmNKDvP
……
………
…………
側近「……街の方が随分騒がしいな」
盗賊「勇者様フィーバーだろうさ」
勇者「ふぃーばー?」
盗賊「……しかし良く聞こえるな」
側近「目が見えない分、だろうな」
勇者「…… ……」ウトウト
盗賊「眠いのか?」
勇者「ん……」
側近「布団入れ、寝て良いから」
盗賊「疲れた、んだろう」
側近「……当てられたんだろ。立派な王様の姿に」
盗賊「やめろよ……」
王子「ぼくも……」コテ
盗賊「おいおい……抱えて帰るのかよ……」
側近「ん? ……ああ、何だ。王子も寝たか?」
盗賊「いきなり燃料切れになるからな」
側近「子供はそんなもんだろう」
盗賊「……アタシや鍛冶師はあんまり城を開ける訳には行かないからな」
側近「そりゃそうだろう。あの城は誰でも入れるんだろ?」
盗賊「ああ。これからまた、志願だのなんだので煩くなるだろうしな」
側近「…… ……ま、仕方無いな」
盗賊「女剣士にも場所は教えておく。ちょこちょこ顔出して貰う様にするから」
盗賊「何かあれば言ってくれよ」
側近「ああ……あ、そうだ、これ」ジャラ
盗賊「…… ……何のつもりだ」
側近「当面の宿代にするつもりだったんだがな。預けておく」
盗賊「いや、しかし……」
側近「使い道は好きにしろ。余れば返してくれれば良い」
盗賊「側近!」
側近「……勇者の為に使う事も多いはずだ。俺にはもう、必要ない……し」
側近「使おうと思っても、俺はここから離れるのも侭ならん」
側近「やる、って言ったって受け取らないだろ?」
側近「……だから、預けておく」
盗賊「…… ……解った」
側近「使い道は……本当に、任せるから」
盗賊「阿呆……着服なんかしねぇよ」
側近「ハハ!」
505 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 16:48:37.31 ID:QrtmNKDvP
盗賊「…… ……女剣士は」
側近「ん? ……俺とは、何の関係にも無いぞ?」
盗賊「そうなのか? ……随分、大人になったもんだ」
側近「そうだな……俺も驚いた」
盗賊「……言おうかどうしようか、迷ってたんだがな」
側近「ん?」
盗賊「……魔導の街との、約束の五年がもうすぐなんだ」
側近「もう、そんなになるのか」
盗賊「金銭面での押さえはきかなくなる。アタシが王に着いた事で」
盗賊「事情を知る者故の押さえにはなると思うんだが」
盗賊「……勇者の件を知れば何か企むかもしれん」
側近「何か動きがあるのか?」
盗賊「否……今のところ、そういうのは無いんだがな」
側近「……覚えとくよ」
盗賊「ああ……さて」
盗賊「……これ、抱えて帰るしかないかぁ……やっぱり」
側近「盗賊」
盗賊「ん?」
側近「…… ……もし、俺に何かあったら」
盗賊「…… ……心配すんな。そんなこと」
側近「……ああ」
盗賊「よ、いしょ……重ッ」
側近「なあ……」
盗賊「何だ?」
側近「勇者は……そんなに、神々しいのか」
盗賊「顔は……魔王にそっくりだぜ」
盗賊「髪や瞳の色が違うだけで、こんなに印象が違うモンなんだな」
側近「……そっか。引き留めて悪かったな」
506 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:05:52.09 ID:QrtmNKDvP
盗賊「いや……しかし本当に一人で大丈夫か?」
側近「場所に慣れればどうにでもなる。勇者も居るしな」
盗賊「ああ……本当に、何かあったらすぐ言えよ!」
側近「サンキュ……お休み」
盗賊「おやすみ……またな」パタン
側近「……」
側近(ここが……壁……いち、にい……)ソロソロ
側近(こっち、が……)トン
側近(扉。で…… ……いち、にい……)フニ
側近(……ふに?)
勇者「うーん」
側近(……)フニフニ
側近「……勇者の手か」
側近(小さい手だ…… ……俺は、見る事は叶わん)
側近(思い出すな、魔王様が……産まれた時の事)
側近(……昔話、か)
側近(……良い。もう、良いんだ。全て……使用人ちゃんに与えた)ストン
勇者「そ、っきん……」
側近「ここに居る」ポンポン
勇者(スウスウ)
側近「…… ……運命に導かれし光の子、か」
側近(……昔話、だ。もう)
……
………
…………
使用人「で、何のお話です……昔話って」
側近「それより、俺の作ったフランボワーズ、どう?」
使用人「美味しいですよ? ……魔王様のには、及びませんけど」
側近「あ……そう……糞、あいつは本当に魔王かよ」
使用人「ケーキの話、ですか?昔話って……」
507 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:15:14.63 ID:QrtmNKDvP
側近「阿呆か、違うわ」
側近「……俺が、まだ人間だった頃の話、だ」
使用人「…… ……」
側近「姫様も眠った。魔王様も……だ」
側近「俺と使用人ちゃん、二人っきりだし?愛でも語る方が良い?」
使用人「貴方には女剣士さんが居るでしょう」
側近「……やめてくれよ。俺にそんな気はネェって……」
使用人「じゃあ、ふざけてないで話して下さい」
使用人「……『側近』の名以外の全てを譲る……魔王様とチェスやら将棋やら」
使用人「オセロやらに興じている時に、いってらしたアレの一端、のつもりなのでしょう」
側近「……本当に、優秀だねぇ使用人ちゃんは」
使用人「……褒められてる、んですよね?」
側近「間違い無く、ね」
側近「……でも、愛を語る、も間違いじゃないんだぜ」
使用人「え?」
側近「俺が知る限り、愛って言えば、アレなんだ」
使用人「……?」
側近「前魔王様と、后様……あれこそが、愛、なんだ」
使用人「…… ……」
側近「……俺が産まれたのは、今はもう大海の大渦の底の小さな島だ」
側近「小さな街に小さな城。仲間と一緒に……旅立ってすぐ。先代様に沈められた街」
側近「今はもう、地図からも消えちまった……美しい島」
側近「そこで出会った勇者になるだろうと言われた剣士と、俺と……魔法使いの三人の」
側近「……弱い人間の下らない昔話さ」
使用人「…… ……」
側近「聞くか?」
使用人「勿論です。側近様の……名以外の全ては、私が『受け継ぎ』ます」
側近「……ああ。ありがとう。安心して逝ける」
使用人「まだ早いです!」
側近「怒るなよ……さて、どこから話そうかな」
508 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:23:39.58 ID:QrtmNKDvP
側近「俺は……僧侶だった。それからさっきも言った剣士と、魔法使い」
側近「若いだけの、無鉄砲な……ちょっとばかし腕に覚えがあっただけの三人組」
側近「ある日、王様に呼ばれてさ。こんな話をされたんだ」
……
………
…………
王「良く来た、勇者達よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
剣士「は……」
魔法使い「は、はい!」
僧侶「……はい」
王「魔王が力をつけだして久しい。以前勇者と呼ばれた者が旅立ってからも同じく、じゃ」
剣士「聞いております。勇者と呼ばれた若者が……帰る事は無かったと」
魔法使い「魔王は大変好戦的で、この人の世を支配せんと、恐怖を振りまこうとしていると」
僧侶「そして……その凶悪な爪が、今正に振り下ろされんとしていると」
王「今日そなた達ををここへ呼んだのは……分かるな?」
剣士「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます」
魔法使い「旅立ちを許して頂いた名誉にかけて、必ず……!」
僧侶「今度こそ、本当の勇者、と呼ばれる為に!」
剣士「世界の平和の為に!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者達よ!」
……
………
…………
側近「……ここから、始まるんだ。物語は……ここから」
509 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:25:25.01 ID:QrtmNKDvP
魔王「私が勇者になる……だと?」
おしまい
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
に、続きます
510 :
1 ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:27:10.41 ID:QrtmNKDvP
とりあえず、ご飯の支度
乙!
いっぱい投下ありがとう!!
体調は大丈夫?
512 :
1@もしもし ◆wlrXk.nKvWpx :2013/07/03(水) 17:34:40.06 ID:QrtmNKDvP
さーんきぅ!
大丈夫よー!こっちこそありがとう!
とりあえず幼女とまったりするよ
近い内にスレたてます!
乙!!
おもしろかった
514 :
忍法帖【Lv=11,xxxPT】(1+0:8) :2013/07/03(水) 17:57:51.97 ID:Bbhoshjo0
おつかれちゃ〜〜んです!
続き楽しみに待ってま〜す
乙でした!
と言いたいが続く要素が多過ぎて
ここまで来て焦らしプレイとかおま……
ずっと待ってるからゆっくり英気を養ってくれ。
516 :
名も無き被検体774号+:2013/07/03(水) 19:29:38.64 ID:+U5Buza4P
ふええええええ!!!
乙!
517 :
名も無き被検体774号+:2013/07/03(水) 23:12:03.91 ID:FWF3AJcR0
乙なんだかワクテカなんだかもう笑うしか
寸止め感
BBA無理せず早く帰って来てね(´・ω・`)
520 :
名も無き被検体774号+:2013/07/04(木) 11:46:14.28 ID:CSY4kwMq0
急に終わったな
続きも楽しみにしてる
でさ、前作の使用人ってどうなったんだっけ?
まだ生きてる?
521 :
[―{}@{}@{}-] 名も無き被検体774号+:2013/07/04(木) 17:19:22.82 ID:X8YfVvHwP
闇の手が知恵を受け継いだのって、この使用人だよね
522 :
名も無き被検体774号+:2013/07/04(木) 19:01:44.36 ID:BYOUFK3n0
それっぽいけど、使用人の年齢が引っ掛かってる。
てか続くのはえぇよwww嬉しいけどwww
525 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 00:19:39.15 ID:IWMdQzi10
526 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 01:03:46.71 ID:onlgHAexP
527 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 01:20:47.49 ID:9e5G456I0
>>524 iPhoneでグッドリーダーつかって読んでる
いいぞもっとやれ
528 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 01:22:57.72 ID:9e5G456I0
これは批評してもいいんか?
529 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 01:57:20.29 ID:9e5G456I0
娼婦ちゃんめっちゃかわええ
530 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 05:39:11.65 ID:onlgHAexP
薄い本が出るな……数的に……
531 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 09:21:29.61 ID:IWMdQzi10
>>527 ヒントサンクスifilesとizipで無事みれた
ちょっくら読んでくる
533 :
名も無き被検体774号+:2013/07/06(土) 15:11:45.98 ID:NLNjjM2Z0
>>524 乙です!可愛かったーいろいろ見せてくれてありがとうございます
534 :
532:2013/07/06(土) 17:11:18.71 ID:cKVGzuc70
orzレスアンカまちごーとるがな
>>524ですた
535 :
名も無き被検体774号+:2013/07/07(日) 09:22:15.35 ID:USEW8Yes0
裏VIPにも魔王が勇者になるSSがあるな
>>524 遅くなったけど、ニヤニヤみました
ありがとぉおお!