1 :
名も無き被検体774号+:
大学二年の夏、忘れたくない出来事の連続だった。
よかったらきいてほしい。
2 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:05:58.23 ID:3dRKcB5V0
おっけー☆
んふっ♪
3 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:08:53.73 ID:X8gR28iy0
まず俺スペック
身長はあるが顔はブサメン
運動オンチで、特に話が上手いわけでもない。
大学ではぼっちというわけでもないが充実もしていなかった。
まあ、いわゆるキョロ充というやつだ。
4 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:19:42.38 ID:X8gR28iy0
目標もなし、彼女もなし。
親友と呼べる奴もおらず、大学をサボり
一人暮らしの薄暗い部屋で一日中ネットに没頭することもしばしば。
ただの無気力学生だった俺は、ある決心をした。
「親孝行をしよう」
5 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:26:18.25 ID:X8gR28iy0
何故突然思い立ったかといえば、偶然テレビで放送していた
『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツオトナ帝国の逆襲』
に、いたく感動してしまったからである。
早速実家に電話をかけ、帰省の相談を持ちかける。
しかし俺の両親は限りなくクールだった。
「そんな事されなくても生きていける。学業に専念しろ」
6 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:30:57.40 ID:X8gR28iy0
しかし、諦めて学業に専念するわけにもいかず、模索した俺は
「祖父母孝行でもいいじゃないか」
と思い立った。当時謎の行動力に満ち溢れていた俺は早速準備に掛かる。
母方の実家がある和歌山県南紀白浜空港までの航空機チケットを、
思い立った当日におさえてしまった。
7 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:36:44.60 ID:ugWmDzaC0
期待
8 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:41:45.57 ID:X8gR28iy0
今思えば何故かは分からないんだけど
当時の俺は謎の気力に満ちていた。
無気力に終止符を打つために身体が無理していたのかもしれないけど。
『人に喜ばれることをしよう』って計画が無性に楽しくて、
異常なハイテンションでアパートの隣人に挨拶したりした。
本当に何故そうなったかは分からないんだけれど。
9 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:45:30.36 ID:iGzSgeHy0
躁鬱
10 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:45:45.70 ID:X8gR28iy0
気付いたら出発の日になっていた。
どうせ行くならアポ無しが面白いな、と思って一切連絡せずに
七年ぶりとなる祖父母宅へ向かう。
飛行機は、ジャンボジェットのようにでかくはなく、
いかにも利用者の少なそうなこぢんまりしたものだった。
何故かそれがまたワクワクを増大させる。
11 :
忍法帖【Lv=37,xxxPT】(1+0:8) :2013/04/22(月) 21:49:36.85 ID:yeIOREjE0
期待
12 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 21:52:22.54 ID:X8gR28iy0
飛行機に乗り込むと、意外にも乗客は少なくなかった。
お盆前ということで帰省するであろう家族連れもいて、
若干にぎやかな機内。
指定の窓際席に着くと、しばらくして隣に女性が座ってきた。
女「あっ、こんにちはー」
俺「こ、こんにちは」
突然の挨拶にキョドる俺。
13 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:01:59.45 ID:X8gR28iy0
女「隣、すみません」
俺「はい、どうぞよろしく・・・」
女「よろしくって・・・こちらこそ」
彼女はわりと整った顔立ちで、独特の雰囲気を持っていた。
中谷美紀に似ている。
14 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:11:21.73 ID:X8gR28iy0
美人と隣席というのは嬉しくもあったがそれ以上に気を遣ってしまう。
当時まだ童貞だった俺は相当挙動不審だったことだろう。
しかし空港を飛び立って十数分で、俺は眠りにおちてしまった。
すると
女「あの・・・」
俺「ふぁいっ?」
女「寝ないで。暇なんですよ」
俺「???」
きいてるよ
16 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:15:34.69 ID:X8gR28iy0
驚いた。誰でも驚くだろうが。
俺「なんですか?」
女「・・・雑談を、しましょう」
俺「べつに、いいですけど・・・」
女「お名前は?」
俺「俺です」
女「俺さんですね。私は○○です」
俺「はあ・・・」
17 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:20:27.18 ID:X8gR28iy0
正直コミュ力に自信があるわけでもない俺は、
素敵なロマンスの始まりとかそんな事一切頭になく
むしろ恐怖心を抱いていた。(ここから女は中谷で)
中谷「私、話しかけちゃうんですよ。特に旅行中とか」
俺「そうなんですか」
中谷「今絶対変な女だと思ってるでしょう?」
俺「ちょっと思ってます」
中谷「はあー、こんなこと外国じゃ日常ですよ?何を警戒してんだか」
俺「す、すみません・・・・」
18 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:27:40.21 ID:X8gR28iy0
そこからはしばらく雑談をした。
彼女は読書好きで、音楽が好きで、人間が好きだという。
やはり若干の変わり者という印象だった。
中谷「俺くん、いくつ?」
俺「来週二十歳になります」
中谷「来週?わー、おめでとう」
俺「ありがとうございます」
中谷「ちなみに私は二十五ね」
見た目は幼めで、せいぜい同年代か年下なのではないかと
推測していた俺はかなりの衝撃を受けた。
19 :
名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 22:28:58.11 ID:X8gR28iy0
すみません一旦落ちます
まだまだ書き出しなのに、申し訳ない。
おもしろい
21 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2013/04/23(火) 01:02:18.73 ID:lDlHOZAY0
これは…期待
22 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:12:56.22 ID:M4Kl3GyY0
こんばんは
ゆっくり書いていきます。ペース遅くてすみません。
中谷美紀に似ていると言ったが、実際は中谷美紀をだいぶ幼くした感じで、
あくまでも雰囲気が似ているというだけ。
俺「え、俺より大分年上じゃないですか」
中谷「まあね。でもおばさんではないでしょ?」
俺「見た目より結構・・・」
中谷「若い?」
俺「逆です。高校生くらいかと」
23 :
名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:15:27.88 ID:NY65Y9gK0
24 :
名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:15:45.52 ID:QYgXBenc0
おっいちきた
25 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:16:59.84 ID:M4Kl3GyY0
中谷「それは・・・嬉しいのかな」
俺「女性ってそっちのほうが喜ぶんじゃないですか?」
中谷「色気は?艶は?」
俺「そこそこ・・・」
中谷「無理しなくていいって。コンプレックスなんだよね。幼い感じ抜けなくて」
こんな感じで、南紀白浜までの短い時間は過ぎていった。
26 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:20:21.31 ID:M4Kl3GyY0
空港着。
中谷「俺くんはなんで和歌山に?帰省?」
俺「あー、久しぶりにおばあちゃんの家に」
中谷「そっか。喜ぶよ。きっと」
俺「中谷さんはどうして?」
中谷「それは・・・」
中谷「どっかでまた会えたら教えてあげる」
俺「なんでですかwww」
中谷「そっちのほうがミステリアスでロマンティックでしょwww」
27 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:28:23.63 ID:M4Kl3GyY0
俺「そうかもしれませんね」
中谷「・・・じゃあね、またいつか」
連絡先を教えてもらいたかったかなーなんて思った頃には、
既に俺は祖父母宅への歩を進めていた。暑い。
電車を乗り継ぎ、懐かしい赤い屋根の駅舎に到着。
辺りは夏の夕日に照らされて、なんだかとてもノスタルジックに思えた。
28 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:38:25.03 ID:M4Kl3GyY0
さらに、一時間に一本という田舎らしいバスに乗り、
結局目的地に到着したのは薄暗くなった午後七時頃。
これまた赤い瓦葺屋根に、小学生時代の記憶が蘇る。
引き戸を開け放ち、
俺「ただいまー!!!」
奥のほうから何か話し声
祖母「ただいまってよ、変なんが来たんちゃうか?」
祖父「わしが見る・・・ああ!?」
祖母「どないしたんけえ!」
祖父「俺やないか!どしたんけ、え?」
俺「いや、ちょっとね、久しぶりにじいちゃんばあちゃんに会いたくなって」
祖母「俺ちゃんやないの!あんれまあああ!!」
どうやらサプライズは成功したらしい。
29 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:46:14.41 ID:M4Kl3GyY0
俺「大学生の夏休みって暇でさ。しばらく泊まっていい?」
祖母「あったりめえよ。ずうっと居てくれても構わね」
久しぶりに聞く祖母の、関西弁と東北弁が混ざったような独特の喋りに
なんだか涙がこぼれそうになる。
その日は旅の疲れもあり、貸してもらった客間で即行、眠りについてしまった。
30 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 22:51:51.92 ID:M4Kl3GyY0
翌朝。
自堕落な一人暮らし部屋ではなく、
朝日差し込む明るい部屋で目覚められたことが妙に嬉しかった。
時計は午前六時をさしていたが、早朝徘徊に出かけた。
畑や、遠くには山々が見える THE 田舎 って感じの景色。
たまに通りかかる近所の人に、できるだけ爽やかに
「おはようございます!」
と挨拶をしてみる。我ながら爽やかさ満点だったと思う。
31 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 23:00:13.35 ID:M4Kl3GyY0
人の心というのは周りの環境にほぼ100%影響されると思う。
薄暗い部屋にいれば薄暗い気持ち。
そしてすがすがしい場所にいればすがすがしい気持ち。
当たり前だが、不健康で無気力だった俺にはとてつもなく良い変化だ。
一時間ほど散歩をし、祖父母宅へ戻る。
それだけで異常なまでに健康体になった気がして、また妙にテンションが上がっていた。
32 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 23:09:43.21 ID:M4Kl3GyY0
午前中は祖父が趣味でやっている畑仕事を手伝ったり、
祖母の肩を揉んだり、小学生に戻ったかのようなスケジュールで時間が過ぎていく。
ああ、ずっとこんな生活ができれば最高、なんて思ったりしながら昼食をとっていると
祖父「なあ俺、せっかくだし、熊野のほうへ行ってみたらどうだ」
俺「熊野?熊野古道の?」
祖父「そうだ。お前は昔、ユーレイとかそんなものが好きだっただろ?」
俺はオカルトティックなものが好きな子供だった。
祖父はそんな俺に以前、熊野古道にまつわる神話などを聞かせてくれた。
しかし実際に訪れたことはなかった。
これは行くしかない。
33 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/23(火) 23:10:42.45 ID:M4Kl3GyY0
今日はこれで落ちます
たらたら書くのでのんびりお付き合いください。
すみません。
お疲れ、楽しみにしてる
同上
36 :
名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 05:26:28.49 ID:dcLpFP6A0
今日も来てくれよ
37 :
名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 05:29:46.71 ID:dWNtqr5W0
これは期待
まだかのぅ
39 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 21:43:45.01 ID:CSZjzLCT0
こんばんは。
たらたら書いていきます。
祖父母宅は熊野古道からそう遠くない場所だったので、思い立ったが吉日。
早速リュックにお菓子やら鈴やらを詰め、遠足気分で繰り出した。
おかえり、まってたぜ
なんだ、来たのか
待ってたぜこのやろう
42 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:02:32.73 ID:CSZjzLCT0
ルートは特に考えていなかったが、熊野速玉大社を一応のゴールとして設定。
だいたい二時間くらい歩けば到着するはずだった。
年間通じ最も暑いお盆前の直射日光を浴びつつ、いにしえの熊野へ突入。
とんでもなく高い木々に日光は遮られ、幾分か楽にはなったもののやはり暑い。
息を切らせつつ紀伊路を辿る。
最近でこそパワースポットとして注目されている熊野だが、
しっかり整備されてきたのはごく最近の話で数年前は本当に手付かずの森だった。
確かに何か神秘的なものの息吹を感じさせる雰囲気で、気持ちは妙に高揚していたが
ロクに身体を動かしていなかった大学生の脚はすぐにへたばった。
43 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:08:09.84 ID:CSZjzLCT0
一時間もしないうちに体力の限界を感じ、休憩処を求める俺。
すると、いい感じに大きな岩を発見。そのすぐ隣に小さなお地蔵様が居た。
若干気が引けたものの、
俺「少しのあいだ・・・お隣、失礼します」
仏様の寛大な心に甘え、しばらく休ませてもらう。
いいね
45 :
名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 22:13:01.12 ID:K0EqeWNr0
そこで運命の再会!
こいっ!
とりあずパンツ脱いだ
はよ
48 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:18:32.12 ID:CSZjzLCT0
俺(よし、そろそろ行くか)
俺「お地蔵様、ありがとうございました」
歩を進めようとしたその時、背後から声が
???「おーい」
お地蔵様に話しかけられた。
・・・そんなことはなかった。登山スタイルのおっちゃんが歩いてきた。
おっちゃん「君は学生か?」
俺「はい」
おっちゃん「この暑いなか山歩きとは、こりゃ関心」
俺「気分転換ですかね・・・でもすぐくたびれちゃって・・・」
おっちゃん「うちで作った梅のジュースあるんやけど、飲むかー?」
俺「えっ?」
おっちゃん「元気出るで。遠慮せんと」
俺「あっ、ありがとうございます!」
おっちゃん良い人や、そして作った梅のジュースはうまいぞ
50 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:25:07.06 ID:CSZjzLCT0
話を聞くと、おっちゃんは元ホテルのコックさんだったとか。
しかしホテルの廃業とともに料理人の道から退き、今は隠居生活をしているらしい。
おっちゃん「ごめんなあ、こんな爺に話しかけられちゃ、たまったもんやないやろ」
俺「いえいえ、そんな事ありません」
おっちゃん「話しかけてしまうんよ。性分や。かんにんな」
その台詞で、俺は彼女のことを思い出していた。
51 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:36:12.09 ID:CSZjzLCT0
ちなみに疲れた身体に染み込む梅のジュースは最高に美味かった。
おっちゃん「これから、どこへ向かうん?」
俺「一応、速玉大社まで行きたいんですけど」
おっちゃん「速玉ぁ?そいつはご苦労さん。遠いで」
俺「まだまだ遠いですよね・・・」
おっちゃん「いやしかしな君、一度定めたゴールは、這いつくばってでも辿りつかんと」
おっちゃん「気分転換とか言ってたな。君は多分、なんか心に引っ掛かってるんやろ?余計なお世話かもしれんが」
おっちゃん「一度目標を定めたら、それに向かって死ぬ気で努力してみい」
ほんの少しの時間だったが、おっちゃんの言葉はとてつもなく重く、
また、俺の心の重荷を少し軽くしてくれた。
52 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:42:30.05 ID:CSZjzLCT0
おっちゃん「わしは帰るわ。いっつもこの仏さんまで歩いて戻るんや」
おっちゃん「若者、頑張りや」
俺「ありがとうございました!」
無気力な俺を変えるため、お地蔵様が巡りあわせてくれた。
なんて言えば聞こえがいいが、ドラマティックモードに入っていた俺はそう信じ、
蝉時雨の降り注ぐ林道を歩き始めた。
53 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:47:38.65 ID:CSZjzLCT0
淡々と歩き続け、遂に到着――――したのは目標の速玉大社ではなく、
俺(那智大社・・・?)
そう。暑さと疲れで朦朧としていた俺はいつのまにか方向を間違え
見事、熊野那智大社に到着したのであった。
滝と社殿に陽が差し込み、それはそれは美しさを極めていた。
54 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:53:25.79 ID:CSZjzLCT0
後に分かったことだが、そもそもはじめから速玉大社ではなく
那智大社に一直線に向かっていたらしい。
俺(まあこれはこれでいいか・・・)
那智の滝をデジカメで撮影し、本殿に参拝したあとはおとなしくバスで帰ろう。
そう思っていた矢先
???「・・・こんにちは」
俺「え?」
55 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 22:56:20.75 ID:CSZjzLCT0
そう。そこに居たのは、紛れもない中谷美紀似の彼女だった。
中谷「俺くん・・・だよね?」
俺「はい。中谷さんですよね?」
中谷「そう。まさか、こんな、ねえ」
俺「はい」
中谷「あはは!もうびっくりしちゃった!」
俺「俺だって、相当びっくりしましたよ!」
56 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:01:01.94 ID:CSZjzLCT0
中谷「あれ?おばあちゃんの家に・・・って」
俺「ああ、行きましたよ。それで、今日は一人で遠足してました」
中谷「遠足、か。そうかそうか」
西日に照らされた彼女の横顔が本当に綺麗で、そこで俺は恋に落ちてしまったのだと思う。
少し会話を交わし、俺はずっと聞きたかった二点に触れた。
俺「あの、中谷さんはなんで和歌山にいらしたんですか?」
中谷「ああー、そうだ。次会えたら教えるとか言っちゃったんだっけ」
57 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:08:55.27 ID:CSZjzLCT0
彼女は若干ためらいを見せたあと、言葉を繋ぎはじめた。
中谷「私ね、高校生の頃、このへんに住んでたの」
中谷「中学生の頃までは横浜に住んでたんだけど、お父さんの仕事の都合で引っ越して」
中谷「元々お母さんは居なくてね。私が小さい頃に、交通事故で死んじゃったの」
中谷「兄弟もいないし、ずっとお父さんと二人っきりで暮らしてたんだけど」
中谷「お父さん、去年の秋に倒れて・・・」
彼女の声が、だんだんとくぐもっていく。
58 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:15:24.79 ID:CSZjzLCT0
中谷「意識・・・なくして・・・そのまま・・・」
彼女は、俺の腕にすがりながら嗚咽混じりに泣き出してしまった。
戸惑いと、胸を締め付けてくるような感情に襲われる。
しかし俺は何をすることも出来ず、ただひたすらに冷静を保とうとした。
ここで気を緩めてしまったら、俺まで泣き出してしまいそうだった。
59 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:22:28.49 ID:CSZjzLCT0
しばらくして、だいぶ落ち着いた彼女がまた言葉を紡ぎはじめた。
中谷「高校生の頃ね、引っ越したことが本当に嫌でお父さんをずっと責めてたの」
中谷「でもお父さんは私が責めたてるたびに、悪かった、本当にごめんな、って」
中谷「今になって後悔しても遅いんだけどね」
中谷「東京の大学に進学したくて、都合よく無理言ってお金を出してもらって」
中谷「大学受験のときに、お父さんがここのお守りを買ってくれたの」
60 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:25:49.62 ID:CSZjzLCT0
中谷「それを貰ったとき、はじめて、ああ、私悪いことしたな、ってね」
中谷「だから、お盆にはお墓参りに行くけど、その前にどうしてもここに来たかったの」
中谷「ロマンティックの欠片もないでしょ?」
そういって彼女は、滝が望めるデッキに向かっていった。
61 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/24(水) 23:27:10.98 ID:CSZjzLCT0
今日はこれで落ちます
読んでくださっているみなさん、本当にありがとうございます。
また、明日
おう、お疲れ
明日も待ってるぜ
63 :
名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 23:34:58.16 ID:2Tw4UQ04O
おやすみん
お疲れー
この心地良い描写、まさか…
65 :
名も無き被検体774号+:2013/04/25(木) 01:21:14.76 ID:l9fCG+XB0
おお、面白い!
66 :
名も無き被検体774号+:2013/04/25(木) 11:41:40.24 ID:ODsPFA7LO
お
はよ
う
俺もこういう出会いしてみたいわ
おお〜いいスレ見っけ
頑張って書いてね〜
69 :
名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 01:25:57.86 ID:zFBBWjqcO
ほ
70 :
名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 02:56:16.16 ID:XaXvgE+10
おもしろい!
ほっしゅ
71 :
名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 07:40:16.46 ID:zFBBWjqcO
ホ
72 :
名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 11:54:00.64 ID:sW2jaF9s0
期待アゲ保守
73 :
名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:30:04.30 ID:zFBBWjqcO
保
74 :
名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 11:00:37.06 ID:D9Z+ooUTO
ほ
75 :
名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:40:12.93 ID:55YeneqL0
し
76 :
名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 04:23:00.93 ID:hk/Fc2NV0
の
せ
78 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/28(日) 21:15:24.12 ID:Rv0CXWfh0
大変ご無沙汰しておりました
保守ありがとうございます
たらたらと再開していきます
79 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/28(日) 21:24:53.23 ID:Rv0CXWfh0
那智の滝。
それはそれは美しく、しかしどことなく寂しげな雰囲気もある。
そんな滝を、彼女と重ねてみたりして・・・
中谷「おーい!」
呼ばれた俺が彼女から受け取ったのは、一枚の名刺だった。
△△楽器 リペア担当 中谷
そう記されている小さな紙には、さらに小さな文字でメールアドレスが手書きされていた。
80 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/28(日) 21:30:34.04 ID:Rv0CXWfh0
俺「・・・△△楽器って、大企業じゃないですか」
中谷「まあまあ、そこそこかね」
俺「リペア担当ってことは、修理屋さんですよね?」
中谷「そうそう。管楽器ならなんでも見れるよ」
俺「凄いですね!でも俺、音楽は疎いからなぁ・・・」
中谷「それはよろしくないね」
81 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/28(日) 21:32:41.70 ID:Rv0CXWfh0
俺「中谷さんも楽器できるんですか?」
中谷「うん。音を出す程度ならなんでもできるよ。でも専門は・・・」
俺「専門は?」
中谷「いや、多分知らないよ。名前聞いたことくらいはあるかもだけど」
俺「ええー?教えてくださいよ!」
中谷「・・・オーボエ」
82 :
◆GlE2114Ypc :2013/04/28(日) 21:36:07.04 ID:Rv0CXWfh0
俺(本当に名前だけ・・・)
中谷「あーほら、知らないんでしょ?」
俺「いやいや、知ってますって!名前だけ・・・」
中谷「やっぱそうかー。まあいいや。名前知ってるだけ上出来としよう」
俺「すんません」
中谷「いえいえ。やっぱ知名度低いなーとは思うけどね」
俺「今度聴かせてくださいよ!」
中谷「ええー・・・また会う機会があればね。いつか」
83 :
名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 03:26:16.13 ID:W3UFojD+0
ほしゅ
84 :
名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 07:05:06.58 ID:8Qsw16QG0
ほ
し
86 :
名も無き被検体774号+:2013/05/01(水) 13:07:59.75 ID:Ar1NMKwsO
え
87 :
名も無き被検体774号+:2013/05/02(木) 00:54:32.11 ID:qY10rCvf0
あ
88 :
名も無き被検体774号+:2013/05/02(木) 19:36:13.80 ID:awZjZqsZO
い
89 :
名も無き被検体774号+:2013/05/03(金) 01:36:31.45 ID:R3jNN6d60
おい
90 :
名も無き被検体774号+:2013/05/03(金) 17:26:50.53 ID:o4UIM2Dl0
∧_∧
O、<丶`∀´>O
ノ, ) ノ ヽ
ん、/ っ ヽ_、_,ゝ
(_ノ ヽ_)
91 :
名も無き被検体774号+:2013/05/07(火) 12:50:31.81 ID:nOsDN47Z0
あ
お前らいつまでアフィブログ御用達作家の創作系スレに付き合ってるんだよ
そういう奴らの温床になってることに気づけ
まとめ大好き、まとめに載りたい
って層もいるびっぷらで何言っても無駄だとは思うけど
93 :
名も無き被検体774号+: