むりやり小説ゲームでミサイル発射できますん

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1名も無き被検体774号+
このスレでは
作家さんが要所要所キーワードとなる部分を空白にして小説を書き、
その空白をレス番指定された人が埋めていって小説を完成させるという
読者参加型小説ゲームを行っています。
(例)
   18 名前: 作家さん 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:00
      主人公「よし、朝ご飯に>>20を食べよう」

   19 名前: 参加者 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:08
      シュールストレミング

   20 名前: 参加者 投稿日: 2011/11/01(火) 00:00:10
      ダイヤ

   21 名前: 作家さん 投稿日: 2011/11/01(火) 00:02:40
      主人公「硬いよ…」

と言う感じで書き込んでいきましょい!
2名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 21:59:28.48 ID:5arqcK5Y0
まとめ
http://www.geocities.jp/neetgundam/matome/
http://www.geocities.jp/yardoramatome/
http://www.geocities.jp/qxybb760/top.html
http://muriyari.web.fc2.com/
http://muriyari4th.rash.jp/site/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/computer/32524/

○募集○
・まとめサイトの人が持っていない過去ログをupしてくれる人
・他にまとめサイトを作ってくれる人
・過去の作品をまとめてくれる人
・作家さん。要するに書き手。 ←NEW

【タイムスケジュール】
http://kmix.dabits.net/ts/
(その時に予約されているスケジュールが書かれています)
※予約・確認にはタイムスケジュールスクリプトをご利用ください。(予約は随時受付中)
※開始時間より2時間前には予約するようにしてください。
※押す可能性が多々あるので、かなり長めに時間指定しておいてください
※予約する際は、前後の予定を考慮し、1人あたり2時間は確保できるようにして下さい。
※様々な都合で時間を指定出来ない作者さんもいらっしゃるので、 譲りあったりなどのご協力もお願い致します。
3名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:01:42.85 ID:5arqcK5Y0
>>2をもう少し削りたい……。

って訳で、もう暫くお待ち下さい。
4名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:09:40.93 ID:uZPcRq/s0
ほいな
5名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:11:27.54 ID:5arqcK5Y0
〜〜かんたん且つてきとうな登場人物紹介〜〜

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。人生もう直ぐオワコンです。

【アン・アンダルシア】
異世界の十二代目勇者のあんあんちゃん。歴代最強と謳われた十二歳。石頭なので融通も利きません。

【マール・マルグリッド】
異世界の十三代目魔王のまるまるちゃん。勇者を倒す為にやって来るのですが……。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。


〜〜あまりにも登場人物少ないのでかんたんあらすじ紹介〜〜
女神アルテナによって佐川急便を介し、主人公天野秀のアパートのゴミ捨て場に届けられたアン・アンダルシアは、
彼のパソコンモニターを頭突きで破壊してしまうのであった!! ってお話だったのさ……。
6名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:11:59.26 ID:5arqcK5Y0
―――― 勇者なムスメ 第二話

朝食、それは普段口にしないもの。面倒臭く、作るのも億劫だと思ってしまう難儀なもの。
しかし、それと向き合わなければならない日が、この歳になってやって来てしまった。

「おーい、アン、朝飯できたぞー」

とある異世界から女の子が届けられ、早二日。その少女は、朝に非常に弱かった。
寝相も悪く、自分のベッドを占拠しては、床に眠る俺にダイビングヘッドバッドしつつ、涎を垂らして眠り続けている。
そのダイビングヘッドバッドで目を覚ました俺は、頭を抑えつつフライパンを動かしていた。

「アイツ、まだ起きていないのか……」

そんな彼女は、食い気だけは盛んというか、美味しそうな匂いに敏感なところがある。
それを利用して、朝飯であるトーストと目玉焼きを彼女の前に持っていき、様子を眺める事に。

「すぅ……すぅ……」

「ふむ、流石に直ぐには起きないか。ならば……目玉焼き、更に接近せよ!!」

「すぅ……す……すんすん、すんすん……」

「お、鼻がひくついた。匂いを嗅いでるな……ククク」

寝間着姿でお腹を出し、大の字のようになっては床で眠るアンは、眠りながらにして鼻を動かし、匂いを愉しんでいる様子。
そろそろ目が覚めるだろうと、頬杖をついて彼女の寝顔を眺めていた矢先であった。

数秒後、俺の渾身の出来である目玉焼きは、>>8
7名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:13:52.77 ID:5arqcK5Y0
黄身だけ消える惨い仕打ち
8名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:14:08.98 ID:xqFsTJ8H0
魔王の僕である魔法剣士っ娘に食べられてしまった
9名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:15:07.16 ID:uZPcRq/s0
ゴキブリがダイビングアタック
10名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:22:13.32 ID:5arqcK5Y0
数秒後、俺の渾身の出来である目玉焼きは、魔王の僕である魔法剣士っ娘に食べられてしまった。
なんか居る。人間が居るのは間違いない。ただ言うならば、アンよりもお姉さんであるが、俺から見れば青臭いガキである。

そのような少女が、俺の分とアンの分の目玉焼きを手で掴んでは完食。
目をぱちくりとさせ、何でこんなのが居るのかと呆然とする俺に振り返ったそれは言った。

「小包、届いたー?」

「は? 小包?」

「おっかしいなぁ、アルテナ様が「魔王なら、ラッキョウで包装してヤマト運輸で配送しておいた」ってドヤ顔で言ってたのになぁ」

「……なんだ、そりゃ」

「うーん、じゃあまだ魔王様、届いていないのかぁ〜。……さっきの卵、おかわり!」

「もうねぇよ! ……ところでキミ、何歳?」

「まだ産まれて半年も経ってないけど」

「どう見ても十五歳くらいだろう!? 赤ちゃんサイズじゃないだろう!?」

「年齢を聞かれたから、ボクはそのまま答えたまででありまぁす」

なんだか凄く陽気なそれは、にこやかにそんな事を口にするのであった。
要するにこの少女が言うには、近い内に三百歳を過ぎたとんでもババア、アルテナの奴がまたまたラッキョウ包装で俺に人を送りつけたらしい。
そして、それを知ったこの少女は、そろそろ届くだろうと俺の家にやって来た訳だ。

その魔法剣士っぽい少女は、魔王が届いていない事を知ると残念そうに……>>11とかやり始めていた。
11名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:23:23.10 ID:uZPcRq/s0
魔物作成
12名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:25:03.63 ID:uZPcRq/s0
急いでいたのでよく本文を読まずに送信。ごめん!
13名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:29:58.20 ID:5arqcK5Y0
その魔法剣士っぽい少女は、魔王が届いていない事を知ると残念そうに……魔物作成とかやり始めていた。
なにやら粘土っぽいものを、勝手に俺の壊れたこたつの上で作り上げている。そして、彼女が吐息を吹きかけると……。

「メタルスライムのできあが〜りっ!」

「なんでよりによってメタルスライムのチョイス!?」

「経験値、1024も貰えるんだよ? 美味しいじゃん」

「じゃあはぐれメタルお願いしたいんですけど」

「あれはダメ。だってアレ、実はぶよぶよしてるんだもん」

「……というか、そろそろそのメタルスライムと一緒に帰ってくれませんかね」

これからアルバイトがあるというのに、こんなのが現れて、家の中でよくわからん生物を作られても困る、というか大迷惑だ。
なので出来るだけ優しくお帰り願おうと口にしてあげたというのに、その魔法剣士娘は話を一切聞かずに、二匹目のメタルスライムを練り上げていた。

そして、魔物の匂いを感じ取ったらしい。アンがあくびをしながら目を覚まし、魔法剣士娘とメタルスライムを交互に見ていた。

「……朝ごはん、魔物?」

「むっ、この娘が最初に天野っちの家に送られた、例の勇者?」

「天野っちっていきなり馴れ馴れしいなお前! ……そうだよ、それがどうかしたか?」

「ボクはこう見えても、魔王様によって生み出された一番の精鋭。……やる事、決まってるよね」

魔法剣士娘は剣を抜いた。そして、その剣は彼女が何やら呟いた途端、氷を帯びていく。
そして部屋が冷えていき、温度も下がっていく。最早我が部屋は冷蔵庫並みの寒さとなっていた。

で、勇者と対峙して何をやるのかと思えば……>>14
14名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:31:34.83 ID:uZPcRq/s0
水着になって寒中我慢大会
15名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:38:12.81 ID:5arqcK5Y0
で、勇者と対峙して何をやるのかと思えば……水着になって寒中我慢大会とか始めていた。
たった一人、スク水姿となり、寒そうに肌を擦りながら剣を構えている。寒いのならその良く分からん魔法剣をやめてくれと願う最中であった。

『どうも〜〜、ヤマト運輸っすー』

「げ、マジで来た……。で、出るべきなのか、出ないべきなのか」

『居ませんかぁ〜? ったく、クソだりぃなぁ……荷物置いて帰るか』

「……最近の配送業者は皆あんななのか……?」

部屋は魔法剣士娘と、すっかり冷え切ったトーストを難なく齧り飲み込むアンに占拠されたようなもの。
もうどうにでもなれといった思いで、俺は玄関の扉を開いて溜息を吐いた。

「……やっぱり、例のダンボールで送りつけてきやがった、あのババア……!」

そもそも、これ以上可愛い女の子を送りつけてくれるのは非常に嬉しく、万感の思いではあるのだが、
問題点を挙げるとするならば、彼女達はある意味人間じゃない。異世界の住人であること。
そして、生活費の観点からして、女の子を養えるのは精々一人が限界という算段が出来上がっていた。

その中でこのダンボールである。とりあえず部屋に持ち込もうとしてみるも、やはり中に人が入っている為、重いのである。

「ええい、面倒くさい! この場で開けてやる、開けてやるゥゥ!!」

玄関前でガムテープを剥がし、やはりラッキョウに包まれたそれを一枚一枚剥がしていく。
何故にラッキョウに包むのか、あのババアの思考は本当に読めないなんて思いつつも、全てを剥がし終えてぎょっとする。

「……やはりの、全裸だと……!?」

そして更なる問題が起きた。そのダンボールに入った全裸の少女を見て戸惑う俺の姿を、隣の住人である>>16に見られてしまったのだ。
16名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:39:25.71 ID:uZPcRq/s0
おまわりさん(今日は休み)
17名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:46:05.79 ID:5arqcK5Y0
そして更なる問題が起きた。そのダンボールに入った全裸の少女を見て戸惑う俺の姿を、隣の住人であるおまわりさん(今日は休み)に見られてしまったのだ。
隣人は残念ながら中年の男性である。その人が、中々に威圧感のある視線で俺を睨んでいる。

「あ、あの! 違うんです、これは誘拐とかそんなんじゃなくてですね……」

「…………小僧」

「ふぁ、ふぁいっ!!」

「……ロリコンも程ほどにしておけよ」

「す、すいません……気をつけます……」

その男性は何処かに出かけるのか、頭を掻き毟りながらアパートの階段を下りていったのである。
何事もなくて良かったと安堵する中、これ以上面倒事が起きてたまるかと、急いでその少女を抱えて部屋の中へ。

そして、相変わらず寒中我慢大会中である魔法剣士娘が、抱える娘を見て動きを止めていた。

「ま、ままま、魔王様が全裸で!! ……天野っち、貴様ァ!!」

「ちょっと待て! コイツは全裸でラッキョウに包まれていただけで、それを引っぺがしてきただけだ!
 頼むからその剣を置こう。というか、寒いから魔法剣をやめよう!」

「だがしかし! ボクは天野っちを斬らないといけない! さようならだよ天野っち!!」

「や、やめるんだ! 今俺を斬ると、魔王様まで斬る事になるんだぞ! それでも良いのか!」

俺がまだ名も知らぬ魔法剣士娘と口論する中、その魔王娘は俺の腕の中で目を覚ます事になる。
彼女は最初に俺を見た。そして、>>18
18名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:47:26.87 ID:xqFsTJ8H0
ステレオタイプのラブコメ的アクションを起こした
19名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:48:18.78 ID:uZPcRq/s0
仲魔を呼んだ
20名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:53:54.24 ID:5arqcK5Y0
俺がまだ名も知らぬ魔法剣士娘と口論する中、その魔王娘は俺の腕の中で目を覚ます事になる。
彼女は最初に俺を見た。そして、ステレオタイプのラブコメ的アクションを起こした。

「あっ――――」

「……め、目を覚ましたのか……!? それならば、お前の部下だろうアイツを止めてくれ!
 さもなければあの氷を帯びた魔法剣で斬られてしまう! というかそれ以前に凍死してしまう!」

「……あなたが……」

「……うん?」

「……私の王子様……」

ちょっと意味が分からないと首を傾げる俺の首筋に、いつしか腕を回す魔王娘。
そしてお姫様抱っこという体勢のまま上半身だけを起こし、俺の頬にキスなんてするのである。

「あ……天野っち、貴様ァァァ!!」

「ま、まて、誤解だ! 誤解なんてレベルじゃない、もう俺にも何が何だか分からないんだが!!」

「あぁ、王子様……私だけの、運命の人……」

「天野っちィィィ!!!」

「た、助けてくれアン、お前勇者だろ、こういう時、困ってる人が居たら助けてくれるよな!?」

最早、この状況を覆してくれるのは、冷え切った部屋で冷えたトーストを眠そうに齧っている勇者、アンしか居なかった。
最後の希望であるその彼女に助けを求めると……>>21
21名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 22:56:09.91 ID:uZPcRq/s0
付属品のメガネをかけさせた。
22名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:03:16.57 ID:5arqcK5Y0
最早、この状況を覆してくれるのは、冷え切った部屋で冷えたトーストを眠そうに齧っている勇者、アンしか居なかった。
最後の希望であるその彼女に助けを求めると……魔王娘に付属品のメガネをかけさせた。

アンが届く前に俺がkonozamaに注文しておいた、一枚だけモノが透ける眼鏡である。名づけてみえ〜る眼鏡。
それを俺に抱きつく状態で居た魔王娘が掛けた途端、彼女は絶叫。恐らく俺の皮よりも中が見えてしまった為であろう。

「ぎぃやぁぁっぁぁぁぁ!!!」

しかし、何故身体が熱いんだろう。なんだかぴりぴりと熱くって、そして痛い。
あぁ、これは身体が燃えているんだ。炎に包まれて、燃え盛って……って、これでは死んでしまう!!

「はぁ、はぁ、はぁ……王子様が突然白骨する夢を見たわ……」

「つ、つうか俺、燃えてる!? 今すっごくメラメラしてる!?」

「スケルトンなんて私の性に合わないの。そのまま燃え崩れてくれるかしら」

「魔王様、魔王様! お会いしとうございましたぁ!!」

「あらメルメル、どうしてこんな所に居るの? ……宮殿のお掃除係に任命したはずよね?」

「そ、それは、魔王様を案じてその……抜け出してきちゃいました、てへぺろっ」

「それより、誰か消化して! お願いだから消化してぇぇぇ!!」


―― その後、アンが「しゃわぁーびーむ」と呟きつつも俺に水を浴びせてくれた為、かろうじて一命を取り留めた。
そして髪の毛がちりちりになった俺は、魔王とその部下を正座させ、仁王立ちして説教を始めるのである。

「てめぇら……、人の家を勝手に冷蔵庫にしたり、挙句放火したり……何様のつもりだッ!」

「魔王様のつもりよ」

「その部下のつもりであります」

「……てめぇら、二人とも>>23にしてくれるッ!!」
23名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:05:36.22 ID:uZPcRq/s0
強制アルバイトの刑
24名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:14:04.61 ID:5arqcK5Y0
「……てめぇら、二人とも強制アルバイトの刑にしてくれるッ!!」

「アルバイト……って、メルメル、知ってる?」

「メルメル言わないで下さいよぉ。ちなみにアルバイトとは、低賃金で仕事に従事してくれる、要するにいつでも切り捨てられる手駒。
 所詮は下っ端モンスターのスライム同然の事を示しますのです」

「この魔王に向かって、下っ端の仕事をさせるだなんて、貴方何様のつもり?」

「俺はこの家の主様だ! つうか働かないなら出て行け!」

「むぅ、言っておくけど、私が本気を出したら、いくら王子様だからって焼いて灰にして持ち帰っちゃうんだからね!!」

「……この家の主つってるのに、まだ王子様とか言うし、物騒な事を言うし……」

「でも天野っち、魔王様はまだ十三歳という齢。この齢で働ける職場なんて無いのであります」

「ならば、せめて我が家で働け! 家事くらいは出来るだろう?

「むむむ……、メルメル、家事って何なの?」

「要するに、ボクみたいにお掃除していれば良いのではぁ?」

「そんなの嫌だわ。何故魔王になって掃除なんてしなければならないの。お断りよ」

このままじゃ、話は平行線だ。それよりも、無駄に時間を費やしアルバイトに遅刻する方が不味い。
とりあえず、この二人は今日一日外へ出ないように説得だけして、いい加減準備に入ろうとする中、魔王とその下僕の前に立つ勇者一名が居た。

「……二人とも、本当に魔族?」

「ええそうよ。魔族の中の筆頭であるこの私が、十三代目の魔王……マール・マルグリッドよ!!」

「……魔王は>>25
25名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:15:16.55 ID:xqFsTJ8H0
既に第3形態になっていたはず
26名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:23:00.07 ID:5arqcK5Y0
「……魔王は既に第3形態になっていたはず」

「そうね、お父様は第三形態となり勇者に敗れた……って、何故その事を!?」

「あのー、魔王様。こいつ、勇者っすー」

「何ですって!? こいつが私のお父様を破った十二代目の勇者……アン・アンダルシアッ!?」

「……コクリ」

「フ、フフフ、この世界に勇者を追ってきて早々に出会えるとはね。勇者アン! 今日こそ年貢の納め時よ!! 覚悟しなさいッ!!」

「……変身すら出来ない貴女じゃ、私に絶対に勝てない。一生勝てない」

「言ってくれるわね……、けど、口で言う前に実力で示しなさいッ!!」

なんだか突然、十二歳と十三歳の女の子の喧嘩が始まった。もうどうでもいいやと、俺はバイト先へ行く為準備を始めている。
何故か頬を抓りあい、もごもごと言い争っている様子だが……あの分なら問題ないだろう。

「ゆうひゃ、なひゃなひゃ、やるひゃなひっ!」

「あひゃふぁほそ、おもっふぁよひ……つよひふぁ」

寧ろこれは幼稚園児の喧嘩にしか見えなくなってきたと思う中、一人必死に魔王を応援するメルメルと呼ばれたその少女に声を掛ける。

「メルメルだっけか、家を散らかさないで、誰かが来ても勝手に出ないように。留守番頼んだぞ」

「メルメルって呼ぶなぁ! ボクの名前はメル・メルエッドだぁ!!」

「名前とかどうでもいいからさ。とりあえず頼むわ。それじゃ」


―― こうして我が家の珍妙な喧騒から逃れた俺は、バイト先へ向かう際、姉に連絡を入れた。
姉は電話越しで「>>27」といった言葉を俺に投げかけるのである。
27名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:24:07.27 ID:uZPcRq/s0
あんたに見合いの話が来た
28名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:31:57.63 ID:5arqcK5Y0
―― こうして我が家の珍妙な喧騒から逃れた俺は、バイト先へ向かう際、姉に連絡を入れた。
姉は電話越しで「あんたに見合いの話が来た」といった言葉を俺に投げかけるのである。

「今はそんな場合じゃないよ、姉さん」

「じゃあお金の話? それなら貸さないわよ。というか既に借金が百万あるの知ってる?」

「十万だろう……。それはいつか返すから」

「あんたも、彼女が出来れば本気になるハズよ。せめてお見合いの話、受けなさい」

「だから本当に、今はお見合いとかしてる場合じゃないんだわ。……つうか、冗談抜きで相談があるんだけど」

姉は、俺の話を聞いて笑い転げている様子。そんな姉は、一応雑貨メーカーの主任まで出世したちょっとしたエリート。
そんな二十八歳も、俺と同様に独身であり、仕事一筋の為男は全く近寄らない様子なのである。

「あは、あはははは、いきなり何? 女の子拾ったんだけど質問あるって? あはははは!!」

「しかも三匹も拾っちゃったんだ。一人は十二歳、一人は十三歳、一人は十五歳だけど生後一ヶ月」

「なにそれ、冗談にしても度が過ぎるわ。あはは……あんた、いい加減にしなさいよ?」

「何故急に怒り出すのか詳しく」

「二十六にもなって、ろくに職安にも行かず、遊び惚けて挙句に女の子拾ったって姉に相談する馬鹿が居る!?」

「だから事実なんだ。……分かった、証拠を見せるよ。今夜、俺の家に来てくれれば分かるから」

「ふぅん、言ったわね。それじゃあ……証拠、見せて貰いましょうか。あと、お見合い相手の写真も持っていくわ」

通話が切れ、やれやれと通話時間を眺める。姉は寧ろ、俺に見合い話を持って行きたいだけではないのか。
しかし、まともな職に就いていない俺を好いてくれる女性が何処に居るんだと、つい呟いては虚しくなってしまうのであった。

―― レストラン、チェリークロック。そこは小規模ではあるが、チェーン展開を行っており、
俺の働く職場は三号店。店内はそこそこに狭く、料理もそこそこに不味く、代金もそこそこに高いと三拍子揃っている。

しかし、この店だけの自慢があり、それが客に評判だったりするのだが、その自慢とは>>29
29名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:32:46.90 ID:xqFsTJ8H0
魔界で名を馳せる大賢者が★三つレシピを提供していること
30名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:34:48.76 ID:uZPcRq/s0
ウェイターが軍服。
31名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:39:50.44 ID:5arqcK5Y0
しかし、この店だけの自慢があり、それが客に評判だったりするのだが、その自慢とは魔界で名を馳せる大賢者が★三つレシピを提供していること。
あくまでそれは自称大賢者。勿論その三ツ星メニューも……程ほどにグロくて不味いのである。

だが、三号店が取り入れたこの珍妙なレシピが、この地域に金を呼び込むことになる。

「おっ、今日は大賢者メニュー、ばっくべあーどちゃんスープだってよ!」

「私、これ頼んでみるぅ〜。すいませ〜ん!」

「あ、はいはい、今いきまーす」

そして俺は、ばっくべあーどちゃんスープの注文を取るウェイターである。時給はたったの八百円。
文句は言えないと、客に呼ばれて1番テーブルから16番テーブルまで、駆け回る事になる。

「お客様、ばっくべあーどちゃんスープをお持ち致しました」

「うわ、真っ黒だぞこれ! ……マジで食えるの?」

「程ほどに食べれる程度の内容になっていると思いますが」

「でも、真っ黒スープに白いソースで目玉が描かれるのって、まさに大賢者らしくない?」

「だな〜、マジやべぇよ、リスペクトしちゃうよ、俺!」

「で、では、ごゆっくりどうぞ……」

こんなゲテモノスープ、実は海苔とミルクをミキサーに掛けて、煮込んでそして妙なスパイスを数種類振り掛け、
最後に生クリームで目玉を描いただけだぞ、と心の中で呟きながら、大賢者さんを見るのである。

某ポニーテールちゃんですらびっくりな小さなそのウェイトレスは、海苔をミキサーに掛けながら「>>32」と呟いていた。
32名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:42:23.31 ID:xqFsTJ8H0
最近魔王様の匂いがするなぁ
33名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:42:59.11 ID:uZPcRq/s0
いいくにつくろう鎌倉幕府
34名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:44:20.79 ID:uZPcRq/s0
>>32
どんな店だwwww
35名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:49:04.30 ID:5arqcK5Y0
某ポニーテールちゃんですらびっくりな小さなそのウェイトレスは、海苔をミキサーに掛けながら「最近魔王様の匂いがするなぁ」と呟いていた。
では試しにと、「勇者様の匂いはするか?」と尋ねてみると、ミキサーを睨みながらもうんうんと頷くのである。

「お前、ゲームのし過ぎだろ」

「むっ、私の背後に立つなと過去に三度言っただろう!」

「へいへい、すいませんすいません」

「すいませんは一度で良い! 貴様の態度、てんちょに報告だな!」

「いや、それはちょいマジで勘弁してくれませんかね」

「で、こんな所で油を売っていて良いのか? まだばっくべあーどちゃんスープは出来上がっていないぞ」

「一息入れに来たんですよ。ったく、なんでホールが俺一人なんだよ……」

「一応私も居るのだが〜?」

「お前ミキサー睨んでばっかだろ。お前こそ働け」

「大賢者様に向かってなんて口振り! やはりてんちょに報告しなければ……」

「やめてくれ、頼むから……アイス奢るから」

ちなみにこの大賢者様、名を練曲ネルと言う。略してネルネルであるこのお方のバックにはてんちょこと、相田様がついておられる。
相田お嬢様、独身、髪が長くて、ふんわりしていて、胸がおっきくて、優しい女性。ここまで来れば俺の好みだったりしたのだが……。

相田店長の恐ろしさは、>>36にある。それこそが真骨頂であった。
36名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:50:30.03 ID:uZPcRq/s0
女だけに優しい(レズ)
37名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:57:30.13 ID:5arqcK5Y0
相田店長の恐ろしさは女だけに優しい(レズ)にある。それこそが真骨頂であった。
ちなみに、俺はその店長の上司にもなるマネージャーの方に採用を貰った為、彼女と面接を行い採用に至ったわけではない。
その件もあり、相田店長は俺には特別冷たく、まるで奴隷を扱うような目つきで指示を出すのである。

なので、大賢者ちゃんのネルネルにアイスを奢ると交換条件を持ちかけた訳だが、
彼女はアイスと言葉にされると、直ぐにアイスを想像してしまうのか、よだれを垂らしてしまうのである。

「あ、あいす……でへ、でへへへ……」

「……こんな二十歳、絶対にご免だわ」

「むっ、天野、それはどういう意味だ!」

「ナンデモナイデース。アイスオゴルデース」

「ぜ、絶対だぞ! 61アイスクリームがいいんだからな!」

―― そんなこんなで、就業時間も終えて帰り道、練曲ネルにアイスクリームをご馳走することに。
まさかのトリプルを頼まれ、財布がちょっぴり冷えきり悲しみに暮れる中、彼女は満足そうにそのアイスを舐め回していた。

「んふぅ〜、この冷たさ、この味わい、まさに超魔界レベルッ!」

「なんだか全裸で槍投げするおっさんが出そうな言い方だな」

「そういえば天野、何故駅前に向かってるのだ? いつもと帰りが違うじゃないか」

「今日は姉と待ち合わせでね。……ちょっと色々あったんだ」

「ほう、姉と色々……じゅるり」

大賢者さんは何かを妄想していらっしゃるが、恐らく>>38といった内容であろう。
38名も無き被検体774号+:2013/04/12(金) 23:59:44.67 ID:uZPcRq/s0
宝の地図をめぐって取らぬたぬきの皮算用
39名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:02:04.72 ID:Y87WWhiAP
帰宅
40名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:08:42.21 ID:7rwZHn9H0
大賢者さんは何かを妄想していらっしゃるが、恐らく宝の地図をめぐって取らぬたぬきの皮算用といった内容であろう。
せめて禁断の愛でも妄想してくれるほうが良いのだが。違う意味で生々しく悲しくなってくる。

「ククク、なんとも恐ろしい、秘宝という遺産を巡り弟が姉の胸を貫く日は近いッ!」

「いや、流石に殺人とかしませんから!!」

「けど、天野のお父さん、具合悪いんじゃないのか?」

「まぁ……そうなんですけどね。でもあの父だ、今回も恐らく生き永らえる事でしょう」

「その言い方だと、何だか度々に病んでる様子だが?」

「我が家にも色々ありますって事で、そろそろ駅に着きそうなんで俺はこれで」

「天野、アイスクリーム、ご馳走様だぞ〜」

練曲ネルネル、彼女は正直変なところがあると、一言で片付けてしまっても良いのだが、
案外俺のことも時々は気遣ってくれる可愛い娘である。そんな女の子みたいな彼女に手を振られ、ほんの少し心が躍ってしまうのであった。

―― そして、そんな二十歳のロリ娘と一緒に居たところを、実は姉に目撃されていた事実を知らされ、
改めてロリコンと口走られてはへこむ俺に、姉は淡々と見合い話の内容を述べていた。

我が姉、天野杏の運転する車の助手席で、今頃家で留守番を頼んでいたあの三人はどうしているだろうと不安になってくるのであった。

「なあ、姉さん。……見合い話は置いといてさ。ちょっといい?」

「置いといてとは随分じゃない。というか、あんた、いい加減誰か彼女見つけないと、三十になるわよ?」

「それはそのまま、姉さんに返したいんだが。それは良いとして――」

そろそろ我がアパートが近くなると思った頃である。なんだか我が家の方角に、>>41が居るんです。
41名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:09:37.59 ID:NUg/yX6N0
オーク
42 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(-1+0:8) :2013/04/13(土) 00:16:04.26 ID:7rwZHn9H0
そろそろ我がアパートが近くなると思った頃である。なんだか我が家の方角にオークが居るんです。
嘘じゃ有りません、その証拠に写メを撮っとこう。パチリと、これで良し。

「……とかやってる場合じゃねぇ!! 姉さん、ちょっと割りとマジで急いで!!」

「いきなり何テンパってるのよ!!」

「姉さんに、あのどでかい豚が見えないのかよ!!」

「見えるけど……確かにどでかい豚が見えるけど……」

「というか、その驚き方がちょっと俺には分からないんだけど」

「で、普通に考えるならアレから逃げるべきだと思うんだけど、秀、どういうつもり?」

「いいから接近して! つうか、怪獣映画かよこれは……」

何がどうなってる、と推測し、先ず先に出てきたことは……我が部屋は、恐らく壊滅しただろうという絶望であった。
あそこには、同人があった。フィギュアもあった。エロ本も、エロゲーもあったんだ。
そして何より、パソコンに大量のロリ画像を溜め込んでいた! それが全て……ダメになったのだ。

そこまで考え、そしてそれだけで絶望し、俺はもう生きる気力が湧かないといった目つきで怪獣のような巨大さを誇るオークを眺めていた。
なんか吠えている。そして、その豚が炎や雷で包まれているが、全ての攻撃を払い除けているのである。

なんかよく分からないけど、俺のコレクションは全て水の泡なんだと思うと、最早生きる希望が見つからない。

―― 姉さんの車がドリフトを行い、そして停止した場所は、俺のアパートから五分程離れた場所である。
そこに例の巨大オークが、何やら斧のような武器を振るい、女の子二名と戦っている様子が視界に入るのである。

アンと、そしてマールと名乗った女の子だ。あれ、部下であるメルメルは何処へ行ったんだろう。

そして、巨大豚を間近で目撃することになった我が姉は、>>43
43名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:17:57.59 ID:SUskH11s0
金的キックで1体沈めた
44名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:18:45.26 ID:NUg/yX6N0
>>43
姉、強すぎんだろwww
45名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:24:31.07 ID:7rwZHn9H0
そして、巨大豚を間近で目撃することになった我が姉は、金的キックで1体沈めたのである。
実は二匹いたらしい。間近までその巨体が迫っているなんて気づかず、俺が振り返り逃げる暇なく、更なる絶望を味わった最中である。

姉があの巨体を、蹴りの一撃だけで沈めてしまうのだ。……俺は夢でも見ているのだろうか。

「はぁ……、ストッキング破れちゃったじゃない」

「って、姉さん? ……誰に電話を?」

「あー、もしもし? 私よ。そうね、久しぶり。それよりこれはどういうつもり?
 え、状況は知ってる? なら貴女が直々になんとか――出来ない? 私がやれ? ふざけるんじゃないわよ」

「……姉さーん、電話してる場合じゃ……」

「言っておくけど! 私がリィンガルドで十代目勇者をやったのって十年前よ! 魔王を倒して帰ってきて、
 なんでまたいざこざに巻き込まれなければならない訳!? アルテナ、あんたねぇ!!」

姉さんは電話しつつも、掌をもう一匹のオークに向けていた。というか、この姉さんは何者なのでしょう。
なんだか電話の相手はあのババア、アルテナだと言うし、姉さんは元十代目勇者だとか言うしで、さっぱりである。

そうして、更にさっぱりな出来事が直後に起こる。姉さんの掌から、魔方陣のような光が弾け飛んだと思えば、
途端それは収束され、一筋の線となっては……巨大オークの頭を破壊してしまっていた。

それにより、アンも、そしてマールも動きを止め、こちらに気づいては駆けて来る事になる。

「お、王子様! 王子様がさっきの光の魔法で助けてくれたのッ!?」

「あ、いや……その、実は俺じゃなくて……」

と、姉さんに視線を移すと、女神アルテナに激怒中の姉さんは>>46
46名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:26:33.40 ID:NUg/yX6N0
どこでもドアみたいな魔法でアルテナに直接対面
47名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:32:37.54 ID:7rwZHn9H0
と、姉さんに視線を移すと、女神アルテナに激怒中の姉さんはどこでもドアみたいな魔法でアルテナに直接対面。
実際に「どこでもドアー」とか叫んでその扉を展開していたのは秘密にしなければならない事項である――。

―― 女神を含めた家族会議が開かれることになったのは、夜の十時を過ぎた頃である。
相も変わらず芋焼酎の瓶を引っさげ、酒臭い女神はあぐらを掻いて、面倒くさそうに酒をラッパ飲みするのであった。

我が部屋、そしてアパートは無事であった。どうやらメルメルが護ってくれたそうだが、
例の豚騒ぎも、メルメルの仕業であり、彼女曰く、ちびオークに部屋を掃除させようとしたらこうなったのだそうだ。

「アルテナ、正座しなさい。というかしろ!」

「相変わらず、秀クンのお姉さんは怖いわねぇ」

「怖いわねぇ……じゃないわよ! どういうつもり!? リィンガルドから勇者と魔王を私の弟に遣わせるなんて!!」

「え、もうその話しちゃうのぉ? それって確信に迫る展開じゃない。もっと焦らそうよぉ」

「あのね、私、明日も仕事なの。忙しいの。早く帰って寝たいの。後、ストッキング代を請求したいのよ」

「ストッキングなんて百均のでも良いじゃない。ひっく」

「あのね、アルテナ……あんた人様の社会、舐めてる?」

なんだか、このまま放って置くと女神と元勇者の壮大でお下劣なバトルが始まってしまいそうだ。
そんな下らないことで、俺の聖域を荒らされる訳にはいかないと、慌てて俺が仲裁に入ろうとした。

しかし、女神アルテナに先に質問をぶつけたのはアンであった。

「アルテナ様、教えて。……リィンガルドに居た頃の力が発揮出来ないのは、何故?」

「あー、えと、それはねぇ……>>48
48名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:37:46.09 ID:NUg/yX6N0
おっぱいの大きさが力に比例
49名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:44:32.51 ID:7rwZHn9H0
「あー、えと、それはねぇ……おっぱいの大きさが力に比例してるのよぉ」

「……おっぱい……」

アンが自分の胸を弄る中、今はそんな話はどうでもいいと、俺のこたつを叩き……割ってしまう姉さん。
これ、姉さんに代金を請求しても良いのかな、と不安になる中、アルテナは彼女を諭すように言った。

「貴女には申し訳ないことをしたわ。でも、彼が適任だと私は思ったのよ。……勇者と魔王が争い続けて、そして傷ついて倒れて、
 紋を次世代に繋げて、そしてまた争う……そんなの、不毛じゃない」

「その世界を築いたのは、貴女でしょう!?」

「それは違うわ、杏。私も、所詮下っ端女神なのよねぇ〜……」

「でも、それでも貴女は神よ! 違う!?」

「そうなの。でも、彼女達を見てると可哀想になっちゃって。……だから、第二の人生を彼に任せようって、ラッキョウに包んでみたの」

「何故にラッキョウなのよ、アルテナ……」

「それはまぁ、趣味っていうか、お酒のおつまみっていうかぁ」

結局、アルテナは魔王のマールを送り込んだ理由も、復讐なんて忘れて第二の人生を歩むべきだというのである。
しかし依りによって父親を倒した勇者のところに送り込むとは本当に良い度胸をしているものだった。

だが、マールからはアンに対して思ったより敵意を感じられないのは、それもまた不思議なところである。

「ま、そんな訳でさぁ……秀クン、お願いしていい?」

「何をですか」

「二人を、メルって娘も居るから三人? ……養子にでもしちゃってくれない?」

三人も養えるか、と反論したのだが……>>50を条件に出されては、頷くしかなかったのだ。
50名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:45:37.75 ID:NUg/yX6N0
一生食えるだけのクリエィテブな才能
51名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:47:17.66 ID:NUg/yX6N0
メール欄の「ふわぁ」ってのは、「安価がつまらん」ってことですかね?
52名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:53:26.54 ID:7rwZHn9H0
三人も養えるか、と反論したのだが……一生食えるだけのクリエィテブな才能を条件に出されては、頷くしかなかったのだ。
それはどんな物でも構わない。彼女達が独り立ち出来るようになるまで奮闘して欲しい。さすれば、その願いは叶えようと女神は言う。

「それじゃ、早速だけど……彼女達を学校に通わせたいと思うの。秀クン、杏、どうかなぁ?」

「……あのね、アルテナ。彼女達はこの世界では異能者なのよ? そんな娘達が社会に馴染めるなんて……」

「でも、杏が十八歳で勇者だった頃は、随分と荒れていた。……なのに今ではすっかり馴染んでるじゃない」

「私は元々この世界の住人だったからで、引き合いに出されても……!」

「そういう訳で、杏も協力してね! 私、お役所仕事って大嫌いでぇ〜」

「うむ、俺も苦手なので姉さん、頼んだ」

「な、何で私が……私は仕事が、シゴトガー……!」

その日、姉さんは納得はせずとも、壊れながらこの話を呑む事になる。
そして女神アルテナは、去る間際にアンの右胸、マールの左胸に触れ、何やら呟いていた。
恐らくリィンガルドで用いていた力の話なのだろうと納得するのだが……、俺も出来れば触ってみたいと、その時は思ったものである。


―― あれから、一週間が過ぎた。この社会に早くに順応したのは、メルである。
今ではちびオークを飼いならし、部屋の掃除を全てそれに任せ、本人は洗濯担当という事になった。
豚臭い部屋で、料理をするのは俺の担当。買い物等も今の所俺の担当である。

では、アンやマールは何をしているのかと言えば……ゲーム三昧であった。

「ねぇ、このドラクエってゲーム、クソゲーよ! クレーム出してきて!」

「クソゲー、死滅すべし……」

勇者と魔王が仲良くゲームとか、なんて世界なんだとげんなりしつつも、彼女達の着るであろう制服にアイロンを掛けるのであった――。


―――― つづきます
53名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:55:12.07 ID:NUg/yX6N0
おつかれさまです。

今日はもう一人安価ゲッターがいて楽でした。
54名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:57:20.75 ID:7rwZHn9H0
仕事しなくて良い世界の住人になりたいですって訳で時間も時間なので終わります。
なんか一気にサブキャラ増えた感じでどうしましょう。

ともあれ、今日もお付き合いありがとうございますです。

>>51
想定外だと困っちゃうのでふぁっとか言っちゃいます。タスケテーみたいな感じです。
つまらないとなる場合、それはこちらの処理の仕方が悪い訳で、なんかごめんなさい。
55名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:58:09.24 ID:NUg/yX6N0
もう一人の安価取った人もありがとう。そしてお疲れさま。
56名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 00:59:42.12 ID:7rwZHn9H0
【04/13 (土) 00:58時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/13 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第三話 『勇者と中学校』


メルなんとかさんは本当に想定外でしたてへぺろ。
57名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 01:00:27.68 ID:NUg/yX6N0
「ふわぁ」安価取ったの自分ではなかった。なんか皮肉みたいになってしまってごめん。

ていうことは、隣のおまわりさんは想定内だったのか!
58名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 01:02:18.06 ID:7rwZHn9H0
>>57
そ、そんなの勿のロンなんですけど! とか明日までスレ残りそうなので保守がてら。
59名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:03:31.08 ID:7rwZHn9H0
スレが生きてるので再利用です。

何となく久しぶりに、暇つぶしにもならないモノを用意させて貰いました。実は三日前くらいからだらだらと(ry
最近30分もペンタブ触ってるとベッドに逃げたくなります。集中力ちょうだい。

http://muriyari4th.rash.jp/mngupload/src/mngup34.jpg ※画像はイメージですので、イメージを損ないたくない方はご遠慮下さい。

という訳でもう暫くお待ち下さい。
60名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:06:55.04 ID:SO0QPDP50
>>59
メルは?
61名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:14:55.22 ID:7rwZHn9H0
〜〜第二話までのてきとー登場人物紹介〜〜

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。人生もう直ぐオワコンです。

【アン・アンダルシア】
異世界の十二代目勇者のあんあんちゃん。歴代最強と謳われた十二歳。石頭なので融通も利きません。

【マール・マルグリッド】
異世界の十三代目魔王のまるまるちゃん。主人公を王子様と呼び、勇者と馴れ合う堕落っぷり。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。

【メル・メルエッド】
マールによって生み出された魔法剣士娘のめるめるちゃん。家事が無駄に得意なボクっ娘。

【天野 杏】
主人公の姉であり、かつて十代目の勇者だった人。雑貨メーカーの主任で独身の二十八歳。

【練曲 ネル】
チェリークロックで働くウェイトレス。自称大賢者で彼女のメニューが大人気。アイス大好きちびっこ二十歳。

【相田 沙織】
チェリークロック店長さん。女しか愛していない為男には非常に厳しい性格の持ち主。


>>60
ええっとぉ……その、また今度で!
62名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:15:28.92 ID:7rwZHn9H0
―――― 勇者なムスメ 第三話

公立鶏鳴中学校、そこは鶏が大量に飼われている事でも有名であり、朝は鶏の鳴き声で耳を塞ぎたくなるほどであるらしい。
そのような話をされた時は、頭の中で鶏が百匹くらい居て、それが一斉にコケコッコーと鳴くのかと想像してしまうのである。

そして、俺はこの中学校で三年間を過ごす事となるのだが、この頃はまだ全うな男子学生であり、
勉強は適当であったが、運動にそこそこに励み、体育祭が行われた日には女子のブルマお目当てに張り切ったものであった。

「懐かしいな、ここは」

つい声に出してしまう。それくらい、外観は変わっていなかった。
然程大きくない校舎、グラウンドも一般的。唯一他校と違う点は、やはり鶏であろうか。
どうして鶏がこの学校のシンボルになったのかは、かつてこの学校に通っていた俺も良く知らない話である。

「これが、学校……?」

「なんだかオンボロね。こんな所に毎日通うなんてげんなりするんだけど」

「お前等の世界じゃ、学校なんて無かったのか?」

「そんな物があったような……、無かったような……?」

「確か……魔法学校なんて所はあったけど、こんなオンボロじゃないわよ?」

「へぇ、リィンガルドの学校ってのはもっと綺麗だったのか。……女子はブルマだったのか?」

「「ブルマって?」」

アンとマールが尋ね返し、俺がそのブルマという存在の素晴らしさを力説している時である。
この鶏鳴中学校の教師と思われる女性が、俺達を見つけてはこちらに歩み寄ってくる。

「すいません、もしかして今日こちらに転入される予定の天野さんですか?」

その女性に視線を奪われてしまう。美人であるが、丸顔のせいなのか、鋭い雰囲気は持ち合わせていない。
しかし、それよりもこの女教師には魅力があった。それは、>>63
63名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:16:43.10 ID:SUskH11s0
元キャバ嬢
64名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:24:24.49 ID:7rwZHn9H0
その女性に視線を奪われてしまう。美人であるが、丸顔のせいなのか、鋭い雰囲気は持ち合わせていない。
しかし、それよりもこの女教師には魅力があった。それは、元キャバ嬢のようなメイクである。
なんと言うか、気合が入っている。頑張っている。その悲しい努力が逆に彼女の魅力を引き立てていると、俺は判断する。

「それじゃ、早速校長室へお招きするところなんですけど……、天野さん、ちょっと良いですか?」

「え、俺ですか? ……ええっと、何でしょうか」

「天野秀さん、この鶏鳴中学校に通っていらっしゃいましたよね?」

「ええ、まぁ……昔は随分ヤンチャした覚えがあります」

「女子のブルマをこっそり盗んで匂いを嗅いで、女子の笛を舐めて返す悪戯をして、
 挙句に女子のスクール水着を着ては授業に出て、白くてねばねばしたものを付けてお返ししてくれましたよね?」

「うぇっ!? 何故その事を……!!」

「ここまで言って気づきませんか? ……私よ、私。貴方の一番の被害者よ」

「ま、まさか……元キャバ嬢メイクして必死さをアピールしている女教師が、川下……なのか?」

「そうよ、川下浅海。って、誰がキャバ嬢メイクよ!!」

「元キャバ嬢メイクだよ」

「どっちも一緒よ! はぁ、まさか天野君の子供を私が受け持つことになるなんて……」

「……え、あ、いや、子供っていう訳じゃ……」

ワインレッドなスーツに、黒のタイツ、そして妙に高いヒール。そして元キャバ嬢のようなメイク。
此処まで来れば最早、男を釣るつもりでしか無いという格好であるのだが、いかんせん時代遅れである。

そんな女教師が、かつての俺の初恋の相手、川下浅海だとは思わず、美人なのに残念になった彼女を見て、>>65
65名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:29:32.23 ID:IwYVBPoo0
こいつ昔こんなんだったぜーと叫びながらみんなに卒業アルバムの写真をみせる
66名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:30:20.39 ID:SO0QPDP50
お面をかぶせた
67名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:34:19.16 ID:7rwZHn9H0
そんな女教師が、かつての俺の初恋の相手、川下浅海だとは思わず、美人なのに残念になった彼女を見て、
こいつ昔こんなんだったぜーと叫びながらみんなに卒業アルバムの写真をみせる事に。相手は主に校長だったりした。

「ほっほっほ、あれから十一年ですか。随分と時が過ぎましたなぁ」

「しっかし校長、まだ生きてたんだなぁ。というか退職しないのか?」

「ちょっと天野君!? 一応校長先生なんですから、当時のような言葉遣いは慎んでください!」

「良いんじゃよ川下君。しかし、天野君も成長したものだ。この頃は川下君にスケベェな事を良くしておったの」

「その度に、校長と教頭に怒られてたなぁ。あの頃の校長も若かったしなぁ」

「しかしまだ耄碌しとらんよ。時に天野君、仕事は何をしているのかね?」

「ぎくっ……!」

「ん、どうした天野君」

「あ、いえ、機密事項の為お話しづらい要件でして」

「都合が悪くなると敬語になるところも、相変わらずじゃのう」

卒業アルバムを眺め、今では柔和な顔をするようになった校長の顔を見て、時の流れを感じてしまう。
それと同時に、仕事が無くてアルバイトをしています、なんて恥ずかしくて言えない自分が情けないとも思ってしまう。

その間、アンとマールは昔の俺の写真をアルバムで眺めて、>>68と感想を漏らしていた。
68名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:35:19.49 ID:SO0QPDP50
霊がたくさんいるわ
69名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:41:39.94 ID:7rwZHn9H0
その間、アンとマールは昔の俺の写真をアルバムで眺めて、「霊がたくさんいるわ」と感想を漏らしていた。
さらっと恐ろしい事を言うなと突っ込むのだが、二人とも指でこの場所に居ると、的確に話すものだからぞっとしてしまう。

「な、何気に幽霊多いんだな、鶏鳴中って……」

「この人、目玉が飛び出てる」

「こっちの人なんて、顔の半分が潰れちゃってるわ」

「あのぉ、天野君、ちょっと良いかしら……」

「何ですか川下さん、藪から棒に」

「……貴方、今どんな子育てしてるの? 霊能力者でも育ててるつもり?」

「い、いや、あいつ等ちょっと変わっていてさ、他の子供とはちょっと違うんだよ」

「自分の子供でしょう? その割には随分他人のように扱うのね」

「言っておくが俺、まだ独身だぞ。あいつ等は、その、従姉妹だな」

「従姉妹……? 私、てっきり高一くらいで外国人の女の人と子作りなんてしたのかって軽蔑しちゃってたわ」

だとしても、年齢が合わないだろうと彼女に突っ込む中、アン達は校長と一緒に何処に幽霊が居るのかと、
ペンで丸印をつけながら雑談に耽っているのであった。ともあれ、あの校長さんが居るのなら、あいつ等もやっていけるかもしれない。

「まぁ、そんな訳で、一応娘の位置づけではあるんだけどさ……、あいつ等、頼むわ」

「それはまぁ……私も教師だし、最低限の事をするつもりだけど」

川下は何やら突然に自信の無さそうな顔をするものだから、どうかしたのかと尋ねてみれば……>>70
70名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:42:51.13 ID:SO0QPDP50
クラスに893の息子で番長がいる
71名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:43:09.31 ID:SUskH11s0
自分より成績のいいとび級クラスの生徒に授業を乗っ取られることがある
72名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:43:34.19 ID:IwYVBPoo0
学級崩壊してるとかしてないとか
73名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:52:16.28 ID:7rwZHn9H0
川下は何やら突然に自信の無さそうな顔をするものだから、どうかしたのかと尋ねてみれば……クラスに893の息子で番長がいるそうなのだ。
そのクラスに、アンが転入する予定となっている。ちなみにマールは一つ上の学年で、二年生となる。

「その男の子なんだけど、一年生で鶏鳴中をシメちゃったのよ。やり方は違うけど、まるで昔の貴方みたいにね。
 でも、彼に強く言えなくて。……怖いのね、私」

「成程なぁ。って、俺って当時ケンカなんて殆どしなかった筈だけど?」

「貴方は貴方で、学校の生徒全員を巻き込んで面白いことをするってタイプだったでしょう? だから人気者だったわね」

「はは、そうだっけ。……高校からは引きこもりの人生だったけどな」

「そうなの?」

「そうなんだ。人生、色々さ。そんな俺がお前にアドバイス出来る訳じゃないが……」

「ううん、それは良いの。それよりもアンちゃんね。……彼女、お人形さんみたいに可愛いわ。その彼に絡まれそうで……」

「心配してくれていたのか」

「そうね。彼、中一の癖に女の子を既に何人も食べてるって噂だし、性質が悪いの。私も正直、守り切れる自信がなくって……教師失格ね」

教師になった川下は、そのヤクザの家系であり、ケンカにも自信があるとされる男子生徒に難儀している様子。
とはいえ、俺は完全に部外者であり、流石に口を出す義理はないとは思っている。
しかし、アンに何かがあれば、例え相手がヤクザであろうとも、口を出す権利を得れるとも思っているし、手を出す勇気が無い訳でも無い。

それに、アンは腐っても最強の勇者の肩書きを持っている。そんなヤツよりも恐ろしいことは、仲間から炙れる事であった。

「川下、まぁ心配しないでくれ。寧ろ……アンに友達が出来るかの方が心配だ」

ふとアンの方を見ると、校長と相変わらず幽霊の話に興じているのであるが、彼女を見ていると……>>74だと感じる時がある。
74名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 21:55:45.25 ID:SO0QPDP50
「自分が法律よ。我を崇めよ」
75名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:02:50.11 ID:7rwZHn9H0
ふとアンの方を見ると、校長と相変わらず幽霊の話に興じているのであるが、彼女を見ていると……「自分が法律よ。我を崇めよ」と感じる時がある。
言葉には表さないし、寧ろぶっきらぼう。そして顔にも出すことは無いが、威圧的な空気を持っているのは間違いない。
共に話をするマールの方が口調こそ威圧的だと感じられるが、実のところ、彼女の方が人間味に溢れていたりする。

マールについては、特に心配することは無かった。寧ろ、もう少し魔王らしくしても良いんじゃないかと思えるくらい、女の子をしている。
しかしアンは別だった。彼女は一歩間違えれば、勇者なんて言葉が相応しくない人生を歩んでいたんじゃないだろうか。

ふと時計を見る。アルバイトの時刻が迫っていた為、後の事は川下に任せ、俺は鶏鳴中を出るのであった。
去り際、アンの後姿を眺め、制服に身を包み「幽霊は爆発だー」とか言っている彼女が、途端に心配になってくるのである……。


―― 自己紹介、それは必要なことなのだろうか。
教室と呼ばれるその空間に足を踏み入れた途端、その冷え切った空気は感じ取れた。秀の家の空気とは、全く違う。

「それでは、今日からこの学校に転入する娘をご紹介します。さぁ、どうぞ」

「…………」

「あの、天野さん?」

「……天野アン」

「そ、それだけ? 天野さん、もっとこう、何か言う事は無い?」

「…………」

皆、私に視線を向けている。冷たい視線というよりは、怯えているようにも思えるその眼差しが痛かった。
人間って弱い生き物だというのは、リィンガルドで十分に学んだ事。その住人達が私に向ける視線もまた冷たく、怯えていた。

しかし、一人私に鋭い視線を向けて敵意を示す男の子が居た。彼は机に足を乗せて、腕を組みながら私に向けて>>76と口にした。
76名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:11:19.56 ID:SO0QPDP50
「ちっぱいだなwwwwwww」
77名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:11:25.15 ID:IwYVBPoo0
さっき教室に入るとき俺のことチラチラ見てただろ
78名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:18:46.18 ID:7rwZHn9H0
しかし、一人私に鋭い視線を向けて敵意を示す男の子が居た。彼は机に足を乗せて、腕を組みながら私に向けて「ちっぱいだなwwwwwww」と口にした。
視線を移す。髪の毛が無駄に逆立っている。他の男子を見てみると、そういう訳でもない。

つまり彼だけが自意識過剰なだけであり、弱いながらもこの空間を支配しているのだと勘付く。

「と、とにかく、天野さんの席は窓側の一番後ろだけど――って、天野さん!?」

足はその男子生徒に向けて動いていた。皆が微かにざわつく中、その足を乗せた男子生徒の机の前に立ってみせる。
彼は更に繭に皺を寄せてこちらを睨みつけてきた。それで威圧しているつもりなのだろうかと疑問になってしまう。

「おい、川下。……こいつ、何なんだァ?」

「え、ええっと……天野さん、そっちじゃないわ、貴女の席は窓際の方で――」

「……私の胸、見たよね」

「そんな小さい胸、有って無ぇようなモンだろ、アホかテメェ」

「私の胸を見ていいのは、秀だけ」

「あぁ? テメェ、さっきから女の癖に調子に乗ってるなァ……。犯すぞ?」

「じゃあ、勝負する?」

「ッ! ……上等だ、テメェ……!!」

一人の女子生徒が悲鳴に近い声を発し、その途端教室全体が慌しくなった。
そして秀と仲の良さそうにしていた女教師の川下が、慌てて私の肩を掴み、私だけを落ち着かせようとする。

「やめましょう、天野さん。転入初日からこんな事、彼の親に知れたら……!」

この人も弱い。そう思うと悲しくなってしまう。けど、今は目の前で私の胸を見ては侮辱したこの男子生徒を、>>79する事に集中しよう。
79名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:20:09.12 ID:IwYVBPoo0
絞め落としてクラスメイト全員の前で無様に失禁させて笑いものに
80名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:24:41.33 ID:SO0QPDP50
>>79
やりすぎ!
81名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:26:32.69 ID:7rwZHn9H0
この人も弱い。そう思うと悲しくなってしまう。けど、今は目の前で私の胸を見ては侮辱したこの男子生徒を、
絞め落としてクラスメイト全員の前で無様に失禁させて笑いものにする事に集中しよう。

その男子生徒は、既に私の襟元を掴み、私に向けて顔を近づけては汚い言葉を吐き続けていた。

「おいクズ、ちょっと可愛くてイイ感じなのかもしれねぇがよォ、ちょっと調子に乗りすぎたな。
 アマの分際で立場も分かんねぇテメェの顔、人間の顔じゃ無くしてやんよォ?」

「放して。……息が臭いから」

「て……んめぇッ!!」

彼は当然のように暴力で訴えかけてきた。頬に衝撃が走る。しかし、まだこちらの方が全然心地良い。
皆に恐怖され、そして虐げられるような視線を浴び続ける方が余程痛い。
けれど、それは最終的に快感にも変わっていった。勇者である私が、人々の希望である筈の私が、皆に魔王のように恐怖され、遠ざけられる。

まるで人々を支配したかのような愉悦、それは今まで味わったことの無い感情でもあった。

「けっ、一発殴っただけで失神しそうになりやがって。テメェ、弱すぎんだろォ?」

「…………フフ」

「あ? 何笑ってんだよ、気でも狂ったかァ?」

「そう、私、狂ってるの……」

私に一撃を見舞った男子生徒の首根っこを掴んで持ち上げる。それだけで、この男子生徒を恐怖させることは出来た。
でも、それだけでは足りないと、頚動脈を握りつぶすように握力を強めてやると、その男子生徒は言葉にならない悲鳴を発し始める。

そろそろ失禁でもしてくれるだろうか、と、足をばたつかせる男子生徒を眺めていると……>>82
82名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:28:06.16 ID:DSNO3IOeP
ばたつきから新しい技が産まれた
83名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:28:08.54 ID:SUskH11s0
喧嘩の仲裁に一人の女生徒が入ってきた
84名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:35:20.04 ID:SO0QPDP50
>>82
何者だよそいつwww
85名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:38:09.90 ID:7rwZHn9H0
そろそろ失禁でもしてくれるだろうか、と、足をばたつかせる男子生徒を眺めていると……ばたつきから新しい技が産まれた。
その男子生徒の足が蹴りとなり、腹部に刺さろうかといった勢いで跳ねてきた時である。

足が邪魔だ。思いっきり捻ってみせようとその部分を掴み、そして回転させた。
教室の中では、その行為を合気道みたいだという人も居たが、その武道に関しては良く分からない。
ただ、捻るように回転させてあげれば、人の足程度、簡単に微塵となってしまうんだと感じてしまう。

「ぐ、ぁぁぁアァァァ!!」

獣のような人の悲鳴、それが今、目の前で聞けている事にちょっとした感動すら覚えてしまう。
恐らく足の骨がバラバラになったのだろう。悶え苦しむその男子生徒を見て、以前感じた愉悦感が溢れてくるのである。

「あ、天野さんッ!!」

川下が私を止めようと、羽交い絞めにするような行動を取った。この弱い人も、似たように悶え苦しんで貰おう。
そう思い、腕を捻ろうと掴み回転させようとした途端、彼女が秀と仲良く話をしていた事を思い出してしまう。

彼女は、秀の友達。その人を傷つければ、秀は悲しむだろう。ならば、傷つけてはいけない。

「天野……さん?」

最早教室では騒然となっている。泣き喚く人も居れば、逆に歓喜する人も居た。
何故喜べる人が居るのだろうと不思議に思うが、その人達ももしかすると、彼がこういう情けない末路を辿ることを願っていたのかもしれない。

そう、そんな人達も弱いんだと、私は何事も無かったかのように教室を出るのであった。


「あんた、こんな所に居たのね」

マールが校長室を訪れたのは昼休みである。勿論私が起こした行動はとんでもない問題となったようで、学校全体が騒然となるのも間も無くだった。
既に噂は飛び交っているらしく、番長格である男子生徒の足を複雑骨折させた女として、私は>>86というレッテルを貼られているようだ。
86名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:39:00.61 ID:SUskH11s0
レジェンド
87名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:41:04.20 ID:SO0QPDP50
アマゾネス戦士
88名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:45:09.26 ID:7rwZHn9H0
マールが校長室を訪れたのは昼休みである。勿論私が起こした行動はとんでもない問題となったようで、学校全体が騒然となるのも間も無くだった。
既に噂は飛び交っているらしく、番長格である男子生徒の足を複雑骨折させた女として、私はレジェンドというレッテルを貼られているようだ。

「レジェンドって、なに?」

「伝説的って意味じゃないの。要するに……この学校で貴女は勇者になった。それだけね」

「……そんなつもり、無いのに」

「じゃあどんなつもりだったのよ」

「私は……もう、勇者じゃない。アルテナ様に第二の人生を歩めと、この世界に捨てられたから」

「まぁ、そうかもしれないけど」

「……人を苦しめることが、楽しいの」

「アン……?」

そう、今まで勇者として生きて、苦しめられきた。ならば、最初から苦しめてやれば良い。
その捻じ曲がった感情が生まれだしたのは何時からだろう。気がつけば、心の奥底で蠢いているのだ。
私には力がある。その力を人の為に振るい、そして虐げられるのならば、いっそ逆の立場で在りたい。

しかし、私の言葉を聞いたマールは、逆の事を言い出すのだ。

「私は、人を笑わせてみたいわ」

「……貴女、魔王でしょう? じゃあ何故、人を殺そうとしないの……?」

「過去、魔王は人々を支配する畏怖の象徴だった。……かもしれない。お父様もそうだったし、その野望は私に託された。
 でも、私はこうして勇者打倒なんて忘れ、第二の人生を歩みなさいと、アルテナ様に申し付けられた……」

「それだけで、殺すのを止めたの?」

「……違うわ。私はただ……>>89
89名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:45:49.49 ID:SUskH11s0
普通の女の子として生きたい!
90名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:52:12.55 ID:7rwZHn9H0
「……違うわ。私はただ……普通の女の子として生きたい!」

「普通の、女の子……?」

「だって、私の傍に王子様が居るのよ。天野秀って王子様を射止める為に、私は女の子を磨いて生き抜くわ!!」

下らない、なんて思ってしまう。なのに、どこか胸が苦しいのは何故だろう。
ただ、少なくとも魔王の癖に、マールは輝いて見える。私なんかよりも、強い輝きを放つ、勇者のよう。

じゃあ、今の私は魔王のようなのだろう。それも良いとも思うのだが、その感情が無理をしている事にも気づいてしまう。

「コホン、君達、よく分からない話をするのは一先ず置いといてだね……」

「校長先生……」

「マール君のアン君を想う気持ちはよーく分かる。しかし、事は重大だ。何せ鶏鳴中学校の生徒に大怪我を負わせたのだ。
 公立なのでね、退学と言うような処置は取れないが……謹慎処分は免れない」

「あの、先生。アンはちょっと頭がおかしい子なんです。どうかその辺りも考慮してあげてくれませんか?」

「マール君の気持ちも分かるのだがね、何事も無いなんて、周囲が納得しないだろう。
 なので、私は極力アン君を重んじ、尚且つ厳罰に処する必要があると判断している。……アン君、いいかね?」

「…………」

「キミは、力を持っているのかもしれない。何せ教師陣ですら手を焼いた彼に、女子ながらケンカで打ち勝ったのだから。
 しかし、その使い方を間違っているとも私は思うのだよ。……だからだね――」

厳罰な処置、それを下された私は、鶏小屋に居る。何故かマールも一緒であった。
そこで私達が何をしているのかと言うと、>>91
91名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:55:06.55 ID:DSNO3IOeP
産まれてきた卵をひたすら割り続ける
92名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 22:55:23.41 ID:IwYVBPoo0
心を鎮めるために写経
93名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:01:10.26 ID:7rwZHn9H0
厳罰な処置、それを下された私は、鶏小屋に居る。何故かマールも一緒であった。
そこで私達が何をしているのかと言うと、産まれてきた卵をひたすら割り続けるという作業。

ちなみに、既に校長から鶏が卵を産んだ後の処分について話を聞かされている。
百匹以上居る鶏が象徴の鶏鳴中学校、それだけの鶏が居れば、当然卵も毎朝、相当数産み出されるらしい。

しかし、それらをこれまで皆に配っていたらしいのだが、それも貰い手が居なくなり、このまま廃棄するのも勿体無く、
だが鶏の数をこれ以上増やすわけにもいかないと、私とマールは特別飼育係りに任命される事になった。

「はぁ、いきなり女の子ロードから道を外しちゃった訳だけど」

マールが私を睨みつつ、卵を回収して回っている。女の子ロードとは何だろうと首を傾げる私に、彼女は更に続けた。

「誰かさんのせいで、私まで特別飼育係りってどうなんだろうなぁ〜」

「……私のせい?」

「アンのせいに決まってるでしょ! あぁ、もう、鶏臭いのやだぁ……」

「……じゃあ、勝負」

「あのねぇ、貴女……もしかして脳筋?」

「脳みそ筋肉違う」

「それじゃあ、ちょっとは謝るって事くらい覚えなさい。……怪我をさせた男子にも、お見舞いに行かないとなんでしょう?」

校長先生は私に更に指示を出した。それは、怪我をさせた男子生徒に謝りに行くことである。
誠心誠意お詫びをし、彼に許して貰う事。それだけは必ずやり遂げろと言われてしまうのだった。

しかし、謝り方を知らないと私が言えば、マールは呆れた顔で「>>94って言えば問題ない」と教えてくれた。
94名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:06:18.27 ID:IwYVBPoo0
てへっ、ごめりんこ。許してちょんまげ
95名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:09:50.59 ID:SO0QPDP50
ホイミ
96名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:12:35.10 ID:7rwZHn9H0
しかし、謝り方を知らないと私が言えば、マールは呆れた顔で「てへっ、ごめりんこ。許してちょんまげって言えば問題ない」と教えてくれた。

―― 牧都市民病院。そこに私が怪我をさせた男子生徒、吾妻は居た。
ギプスと呼ばれるモノで足を固定され、ベッドの上から動けない状態で、エッチな本を読んでいる。
そこへ連れてきてくれた川下先生は、一階のロビーに居て、私だけがこの病室までやって来た。

「……はぁ、今週のは抜けそうにねぇな。やっぱり快楽天のほうが良かった――ぁ……」

「…………」

「テメェ! 天野、何しにきやがった!! 殺しに来たのかッ!?」

「……てへっ、ごめりんこ。許してちょんまげ」

「……は?」

「こう言えば許してくれると教わったから。あと、卵も」

「……なんだ、こいつ……」

ダンボールいっぱいに卵を用意し、謝れば許してくれるとマールは教えてくれたのに。
なのに吾妻は、私を見て目を見開き、訳が分からないといった様子で眺めているのだ。

どこをどう間違えたのだろうと思案する。しかし解答は一切出てくれないまま、時間は過ぎていく。

「天野、俺を舐めてるよなァ……」

「許して貰えない?」

「許すかよ……。俺の足をこんな風にしやがって。……どうしても許して欲しいのなら、>>97
97名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:13:19.45 ID:SO0QPDP50
俺の舎弟になれ
98名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:19:43.46 ID:7rwZHn9H0
「許すかよ……。俺の足をこんな風にしやがって。……どうしても許して欲しいのなら、俺の舎弟になれ」

「やだ。弱い人の下に居たくない」

「なら許さねぇ! 絶対にだ!! ……クソが」

「でも、友達と言うのになら、なれるかもしれない」

「はぁ!? トモダチとかテメェ、舐め腐りやがって――って、何すんだよ、テメェ!!」

「握手って言う作法」

「そんな事知ってんだよ、クソが!!」

「……手、繋ぐのは、嫌い? ……ちなみに私は嫌い」

「テメェ、訳分かんねぇよ……」

吾妻は次第に落ち着きを取り戻し、そして私はその顔を始めて見る事になる。
辛そう、というのが第一印象だった。その表情を激昂で隠し、普段を過ごしているのではないかと、感じてしまう。

だからこそ、手に取った彼の掌を強く握り締めてしまったのかもしれない。微かにぽきっと鳴ったのは気のせいだ。

「痛てぇ! 痛てぇんだよ、この馬鹿力女が!!」

「……ゆるしてちょんまげー」

「真顔で言うな! ……あぁ、もう、訳分からんから帰ってくれ!! 俺はこれからエロ本を読むんだからな」

彼は私に一切視線を合わせようとはして来なかった。しかし、どこか照れた様子で私を追い出しに掛かるのである。
しかし、彼は暴力団の一人息子。その彼の知らせを受けた男連中が突如病室に居た私を囲み……>>99と脅迫するのである。
99名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:20:56.30 ID:SUskH11s0
これ以上うちに関わるな!お願いします!!
100名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:28:39.76 ID:7rwZHn9H0
彼は私に一切視線を合わせようとはして来なかった。しかし、どこか照れた様子で私を追い出しに掛かるのである。
しかし、彼は暴力団の一人息子。その彼の知らせを受けた男連中が突如病室に居た私を囲み……「これ以上うちに関わるな!お願いします!!」と脅迫するのである。

吾妻の父親もそこに居た。そして、頭を下げられた。その眼は、畏怖する眼そのものだった。
でも何故、と疑問に思うのだ。まだ私は彼等を傷つけていない。傷つけたのは吾妻である。その父親が何故恐怖する必要があるのだろう。

「話を聞いたが、君は随分強いようだね。仁は、正直そこらの不良には負けないよう、鍛え上げたつもりだ。
 だが、それを片手だけでこんな風にしちまうなんて、いやぁ……、頼むから関わらないでくれ、な?」

「でも、彼は友達だから」

「だからお嬢ちゃん、俺の息子から手を引いてくれねぇかなぁ? ……チャカまで持ち出したくねぇんだわ」

「親父、悪いんだけどさ……」

「仁、テメェは黙ってやがれ!!」

「……悪いんだけど、こいつとのケリは、自分で付けてぇ。……これだけは譲れねぇ」

そこで、吾妻は初めて私の事を見るのである。その視線は、何か強い意志のような物が感じられる。
実は少しだけ強い人なのだと、そこで彼を見直すことになる。その視線は、嫌いな視線じゃなかったのだ。


――― アンが登校初日から早速やらかしてくれた、という知らせを受けた俺は、鶏鳴中に走る事になる。
マールと校長が出迎えてくれ、経緯を聞き呆然となってしまう。まさか、男子生徒を複雑骨折に追いやるとは思っても居なかった。

「やべぇ、マジやべぇ! 賠償請求とかされたら払う金がねぇ!!」

「天野君、安心したまえ。先程吾妻君の親御さんから連絡を受けて、二度と関わらないようにしてくれれば、穏便に済ませると言ってくれたのでね」

「そ、それを聞いて安心しました……」

「しかし、アン君には随分と問題があるようだ。……だからこそあえて君に言おう、>>101を施すべきでないかね?」
101名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:33:38.66 ID:SO0QPDP50
劇団で女優に
102名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:34:44.46 ID:SO0QPDP50
演劇部で女優修行

の方が良かった。安価スレ急ぐから許して。
103名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:47:36.04 ID:7rwZHn9H0
「しかし、アン君には随分と問題があるようだ。……だからこそあえて君に言おう、劇団で女優になる道を用意すべきでないかね?」

「劇団なんてお金ないっすよ校長。それに、演劇部があるんじゃ?」

「演劇部は、いよいよ衰退してしまってね。……部員が一人しかいないんだよ」

「かつては二十人以上も居たあの演劇部が、ですか?」

「時代の流れだろう。演劇部なんて所属しても仕方が無いと、皆の心は離れてしまったのだろうね」

校長はそう、淡々と語る。しかし、アンには何か打ち込める物が必要だと校長は告げるのだ。
アンの人形以上の可愛らしさがあれば、劇団でも引き受けてくれる場所があるかもしれない。
しかし、お金が無いのも間違いなく、手っ取り早いのが演劇部となる訳だが……。

「部員が一人で廃部寸前、か……」

「秀様、何を考えてるの?」

「うん、まぁ、ちょっとね……」


―― 吾妻と別れ、私は川下先生が運転する車で家に戻ることになる。
だが、初めて乗った車と言う存在に興奮し、ついつい窓の外ばかりを眺めてしまうのだった。

馬や馬車とは違う乗り心地に光景。そして、この世界のびると呼ばれる建物達。
目新しいものが多すぎて目移りしそうで、結果的に目を回して気持ち悪くなってしまう。

「あ、天野さん!? 吐くなら窓の外で――って、見事に車内で吐いてくれたわね」

「ぅぅ……きもひ、わるひ……」

車酔いという物を初体験した私は、家に戻った際は見事にふらふらで、>>104
104名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:48:35.89 ID:SUskH11s0
メルにガチ笑いされた挙句、救急箱を投げつけられた
105名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:49:59.21 ID:SO0QPDP50
ドラゴンに載って克服しようとメルに魔物作成を頼んだ。
106名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:53:46.19 ID:7rwZHn9H0
車酔いという物を初体験した私は、家に戻った際は見事にふらふらで、メルにガチ笑いされた挙句、救急箱を投げつけられた。
酔い止めの薬を飲めばいいと言われ、それを救急箱から探す中、秀は手遅れなヤツに飲ませるなと、その箱を閉じてしまう。

「アン、今日は色々あったな」

「……秀、私、秀に迷惑、掛けてる?」

「そんな事は無い。でも、あまりヤンチャされると、心配にはなるな」

「心配、してくれるの……?」

「当たり前だろう? 今じゃ一応お前は俺の娘だ。養子だけどな。……川下も、迷惑を掛けたな」

「わ、私は良いの。寧ろちょっとだけ助かったのかもしれないし……」

「そうなのか? 例の生徒が病院送りになった事が?」

「それがね、上手く解決しそうだから。吾妻君も、これで少しは変わってくれると良いんだけど……」

正直言って、川下は教師に向いていないと感じてしまう。アンが吾妻という生徒を病院送りにする事によって、問題は回避されたかもしれない。
しかし、それを自力で解決しようと導かなかった彼女は、教師としてこれからやって行くのは難しいだろう。
だが、そんな事を俺が口にする権利は無かった。何せ、フリーターのご身分なのだから。

「それよりも、アン、お腹空いただろう。……何か食べるか?」

「今日の秀、ちょっと優しい……」

「魔王様、天野っちのヤツ、デレデレし過ぎじゃないですかね、ひそひそ」

俺とアンの様子を背後から眺め……いや、睨んでいた魔王様は、メルのデレデレという言葉に反応し、>>107
107名も無き被検体774号+:2013/04/13(土) 23:55:15.00 ID:SO0QPDP50
演劇部に入ってデレを磨くと宣言
108名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:02:15.23 ID:IzOWTX7E0
俺とアンの様子を背後から眺め……いや、睨んでいた魔王様は、メルのデレデレという言葉に反応し、演劇部に入ってデレを磨くと宣言するのである。
意味が分からないと彼女の方へ振り返る。だが既にマールは立ち上がり、決意を宣言中なのであった。

「私が演劇部を復興させてみせるわ! アンも演劇部に入りなさい。いいや、入れ! これは勝負よ!!」

「む……勝負と言われると、引き下がる訳にはいかない……!」

「フフ、勇者が果たして魔王の演劇に耐えられるかしら」

「私も十二代目勇者だった者。魔王の演劇なんて、へのかっぱ」

「言うじゃない。そうと決まれば、明日からは忙しくなるわよ!」

マールはアンを巻き込み、更に川下に顧問をお願いできないかと相談を持ちかけていた。
その中、俺はメルに聖アイリス学園はどうだったかと、感想を持ちかけていた。

「あ、あそこ? う〜ん、なんて言うか……薔薇の園っていうか……」

「どうなんだ、そこは。体育はブルマなのか!?」

「……割と本気で引いちゃうわー……。でも、ボクにはちょっと合わないかも」

「何故そう思うんだ?」

「なんていうか、魔王様以上にお嬢様の集いって言うか、しんどいんだよねぇ〜」

メルはメルで、高校生として聖アイリス学園に通うことになったのだが、確かに噂ではお嬢様学園と呼ばれている。
しかし我が姉、杏が推薦した学園であり、彼女の母校でもある。余り蔑ろには出来ない点もあった。

「でもまぁ、ボクは暫く大丈夫だと思うよ〜。それよりも……もう少し、魔王様を見てあげて欲しいかな?」

メルがそう俺にだけ聞こえるように囁くものだから、ついマールの方へ視線を向けてしまう。
演劇部を復興させると意気込んだ彼女は、アンと手を繋いで>>109の練習の真っ最中だった。
109名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:03:36.93 ID:FW/P7e2s0
貫一お宮のあれ(名前忘れましたごめん)
110名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:04:28.23 ID:gib9aH3c0
組体操の扇
111名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:04:38.91 ID:FW/P7e2s0
金色夜叉だった。
112名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:11:46.33 ID:IzOWTX7E0
メルがそう俺にだけ聞こえるように囁くものだから、ついマールの方へ視線を向けてしまう。
演劇部を復興させると意気込んだ彼女は、アンと手を繋いで貫一お宮のあれの練習の真っ最中だった。

しかし所詮は真似事。俺からすれば、何をしているのかさっぱりなのである。

「さぁ〜〜金を返して貰おうか、勇者よぉ〜〜!!」

「お金、1ゴールドも借りてないわ」

「なんだとぉ〜、借金を踏み倒すつもりかぁ〜!!」

確かに、マールを改めて見てみれば、少し無理をしているようにも見えなくも無い。
だがそれは、この世界に来て馴染もうとする彼女の努力の影響だろうと、この時の俺はそう判断してしまうのだった。


そして翌日の早朝、アンの書置きを見て俺はその紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ投げつけていた。

「何が、吾妻の病院に卵を持っていくだ! おのれ吾妻めぇ……俺の娘に手を出すとはぁぁぁ!!」

「うぅ〜〜ん、朝から煩いわねぇ……」

「お、マール、おはよう。……相変わらずお前も寝相が悪いせいで、髪の毛がぐちゃぐちゃだぞ」

「だって仕方ないんだもん、朝はよわいんだも……ふわぁぁ……」

「ほら、顔を洗って髪も直してきなさい。朝ごはん作っておくから」

「ふふ、ありがとう。だから秀様は好きよ。シャワー浴びてくるわね」

なんだか執事みたいな扱いにされているようで、少々癪だったりする。だが、そんな所も愛らしいと最近感じられるようにもなった。
一方、メルは俺のベッドの隅っこで、枕を抱いたまま眠り続けている真っ最中。

そして、この世界にやって来た魔王様の一日は、朝のシャワーから始まるのであった。正直言うと水道代が勿体無いので止めて欲しい。

「ふんふふ〜〜ん……はっ!」

「ど、どうした、マール!!」

「……>>113
113名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:13:08.63 ID:pSL5NP2Z0
そういや我が僕の賢者がこの世界に来てるんだった!
114名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:13:16.73 ID:FW/P7e2s0
今日から歌舞伎や狂言の口調でしゃべる。これ太郎冠者
115名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:18:48.10 ID:IzOWTX7E0
「……そういや我が僕の賢者がこの世界に来てるんだった!」

「は? 僕の賢者? 何言ってるんだお前……」

「それがね、十二代目魔王の時代から仕えてくれた女の子なのだけど――って、何扉開いて覗いてるのよ!!」

「へ、いや、何か問題があるのか心配だったからつい――げへっ!」

「い、いくら秀様だからって、お風呂を覗く殿方は許さないんだからッ!! ……って、秀様? 秀様ァァァ!!」

まさかであった。洗面器を投げつけられ、俺は気を失った。それ程魔王の洗面器攻撃は強烈であった。
その気を失う最中、ふと彼女の裸体を思い出し……、良いラインをしていると、夢心地になるのである――。


―― 牧都市民病院の312号室。この場所に吾妻が居るのは既に頭の中に叩き込んである。
先に鶏鳴中へ向かい、特別飼育係りの仕事を終えて卵を回収。それをまた小さなダンボールに詰めて病室へ持ってきた。
吾妻はどんな顔をするのだろうと扉を開けてみると、彼はエロ本を抱えて涎を垂らして眠っていた。

「……あづま、あづま」

「う、うぅぅ〜……、乳首が、襲ってくるぅぅ〜……」

「……卵掛けてみよう」

「うぅっ! 乳首から精液が、精液がぁぁぁ……!!」

寝言が面白い吾妻の顔に、三個、四個と次々と卵を割り顔にぶっ掛けていく。そして七個目で彼は目を覚まし、
卵塗れとなった自分の顔と、私の顔を確認して……>>116
116名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:20:56.85 ID:FW/P7e2s0
美人の看護師さん女性をナースコールで呼んで拭かせた
117名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:28:34.22 ID:IzOWTX7E0
寝言が面白い吾妻の顔に、三個、四個と次々と卵を割り顔にぶっ掛けていく。そして七個目で彼は目を覚まし、
卵塗れとなった自分の顔と、私の顔を確認して……美人の看護師さん女性をナースコールで呼んで拭かせた。
その看護師の女性は、既に吾妻が手を掛けたのだろう。随分と熱の篭った様子である。

「天野、羨ましいだろう。嫉妬するだろう。……拭いてもいいんだぞ」

「やだ、吾妻って汚いから」

「お前が汚したんだろう! ……なぁ、天野」

「はい、あまのです」

「お前、頭おかしいだろ」

「秀にも偶に言われる事がある……」

「……その、秀って誰だ? お前の好きな男なのか?」

「私の……パパな人、そして――」

「な、なんだ、父親か。びっくりしたじゃねぇか――」

「私の、一番特別な人――」

顔を看護師の手によって布で丁寧に拭かれる中、吾妻は随分驚いた様子で私を見ているのである。
何か変なものでもついているのだろうかと不思議に思う中、心の中がいつも以上にざわつくのを感じた。

最近、自分の心が分からないと思うことがある。それは、胸の奥に色々と渦巻いている。
けれど、その一つは恥ずかしいようで、心地良くも思うようで……わくわくとしてしまうのだった。

牧都市民病院から鶏鳴中へ、急いで戻ることになった後、私は授業というものを受けた。
吾妻の居なくなった教室は随分と騒がしく、活気に満ち溢れているように見える。でもそれは、ただ魔物から解放された人々の姿にしか映らない。

吾妻は魔物だったのだろうか。だとすれば、私はそれを退治し、その魔物と友達になってしまった。……それは、良い事? 悪い事? >>118
118名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:30:33.58 ID:FW/P7e2s0
悩んだ私は、ご神託を受けることにした。
119名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:32:53.70 ID:FW/P7e2s0
もう寝ます。>>1さんお疲れ。おやすみ!
120名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:37:01.86 ID:IzOWTX7E0
吾妻は魔物だったのだろうか。だとすれば、私はそれを退治し、その魔物と友達になってしまった。……それは、良い事? 悪い事?
悩んだ私は、ご神託を受けることにした。ちなみに、携帯電話というものが存在し、そのご神託を受ける神様の番号をそこに入れてある。

「ええと、こうして、こうして……」

「こら天野、授業中に携帯を弄るんじゃない!!」

「駄目ですよ先生! 先生まで吾妻みたいになってしまいます!!」

「え、あ……そうだな。では授業を進めよう――」

魔物から解放された人々は、私を崇めようとは一切せず、存在しなかったかのようにコミュニティを形成している。
そう、それは村を救った時に見せる人の反応そのものだった。だからこそ、私は勇者なんて、と思い続けていた。

「はいは〜い、女神お悩み相談室で〜っす!」

「アルテナ様、私……」

「おっとそこまで! 貴女授業中に電話なんて、女神様、めっしちゃうわよぉ?」

「……ごめんなさい?」

「よろしい。で、悩みってなぁに? そろそろ恋の相談とかしてきても良いのよぉ?」

「魔物とお友達になったの。……ダメだった?」

「別に良いんじゃない? でも、魔物から救ってあげた人達が、貴女を恐れて近づかない。それが辛くてどうしようもない。……そんなトコ?」

「……分からない」

「まぁ、それも良いんじゃない? 今の貴女には、天野秀やマール・マルグリッド、そしてメルとかいう女の子も居たわね。仲間が居るじゃない。
 それに、魔物君ともお友達になったのでしょう? それなら寂しくなんて無いわ。それに……」

女神アルテナは、もう間も無く良い事が起こるだろうと私を占うのだった。その良い事と言うと……>>121
121名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:39:47.56 ID:FW/P7e2s0
七福神がやってくる
122名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:39:51.07 ID:pSL5NP2Z0
過去に魔王と倒したパーティと再会できる
123名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:40:38.79 ID:FW/P7e2s0
まだ起きてました。今度こそ本当に寝ます。おやすみ!
124名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:41:43.09 ID:FW/P7e2s0
メール欄みたらラストだった。zzz。
125名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:47:24.77 ID:IzOWTX7E0
女神アルテナは、もう間も無く良い事が起こるだろうと私を占うのだった。その良い事と言うと……七福神がやってくるのだそうだ。
何だろうそれは、と思い問うのだが、「例えよ例えッ」と無邪気に言われ、電話を切られてしまうのだ。

七人の神と言うのだから、それは壮大な姿をしているのだろう。女神アルテナ様は俗物過ぎる普通の女性ではあるのだけど……。
どんな人なのだろう、なんて思いつつも、昼休み一人で給食と呼ばれる素晴らしい食事タイムを過ごしている最中であった。

「あ、あのっ!!」

「……はい、あまのです」

「天野さん! わ、私……七福 ことみって言います! ……お、お友達になって下さい!!」

「お友達……?」

女神アルテナは、七福神がやって来ると占った。そして、それは例えと告げていた。
そう言う事なのかと、手を差し伸べるその小さな神様を見て、つい笑ってしまう。
その姿を見た小さな神様は、安堵した様子で私の手を握り締めるのだ。

「実は、転入してきた時からお友達になれたらなって思ったんだけど、その……吾妻君をやっつけちゃったでしょ?
 だから、ちょっと怖くて……。でも、勇気出して良かったッ!」

「……勇気……」

「そう、勇気! でも天野さんはもっと勇気があるよ! だって、あの吾妻君に真っ向から立ち向かったんだもん! まるで勇者だよぉ!」

小さな神様は、私の手を握り締め、私をそう称えてくれた。そして私は気づいてしまった。
所詮、私も弱い人間だった。一生懸命頑張った姿を、誰かに見て欲しくて、褒めて欲しかったのだ。

「天野さん? あの、な、泣かなくても良いんだよ?」

気がつけば、私は涙を流しつつも、その小さな神様の掌をぎゅっと握りしめていたのだった――。


―――― つづきます
126名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:51:00.86 ID:IzOWTX7E0
寝る人も出てくる時間って事で、以上で終わりますー。
ちょっぴりミスしちゃってたり、後半安っぽかったりで後々大変だー!

ともあれ、お付き合いありがとうございましたー。

【04/14 (日) 00:48時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/14 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第四話 『勇者と大賢者』


ついでにべっとり。
127名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:51:01.25 ID:FW/P7e2s0
おつかれさま。

安価取る人も増えてきて何より。

じゃ本当に本当に寝ます。
128名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:51:40.52 ID:gib9aH3c0
乙です
129名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:52:23.60 ID:pSL5NP2Z0
乙―。
これは絶対に寝ない
130名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 00:54:00.77 ID:IzOWTX7E0
そしてスレは加速する……↓
131名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 01:19:32.94 ID:gWZk4xowP
132名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:01:50.31 ID:IzOWTX7E0
>>60とあったので、バストアップ気味なら4時間くらいで描けるかな〜なんて思ってました。
……これくらい2時間くらいでちゃっちゃと描けるようになりたいものです。ぬるぽっすね〜。

http://muriyari4th.rash.jp/mngupload/src/mngup35.jpg

とりあえず天野家三姉妹は終わったので、次は誰にしましょう。
ではでは、もう暫くお待ち下さい。
133途中で寝る人:2013/04/14(日) 21:05:19.58 ID:C94lv/rC0
今回はあんまり参加できないかも・・・。風呂とか・・・。
134名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:11:58.91 ID:IzOWTX7E0
〜〜第三話までのてきとー登場人物紹介〜〜(使い回し)

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。人生もう直ぐオワコンです。

【アン・アンダルシア】
異世界の十二代目勇者のあんあんちゃん。歴代最強と謳われた十二歳。石頭なので融通も利きません。

【マール・マルグリッド】
異世界の十三代目魔王のまるまるちゃん。主人公を王子様と呼び、勇者と馴れ合う堕落っぷり。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。

【メル・メルエッド】
マールによって生み出された魔法剣士娘のめるめるちゃん。家事が無駄に得意なボクっ娘。

【天野 杏】
主人公の姉であり、かつて十代目の勇者だった人。雑貨メーカーの主任で独身の二十八歳。

【練曲 ネル】
チェリークロックで働くウェイトレス。自称大賢者で彼女のメニューが大人気。アイス大好きちびっこ二十歳。

【相田 沙織】
チェリークロック店長さん。女しか愛していない為男には非常に厳しい性格の持ち主。

【川下 浅海】
鶏鳴中学校の教師であり、アンの担任。美人ですがメイクが濃い為、男が寄り付かないようです。

【吾妻 仁】
ヤクザの父親を持つ中学一年生で鶏鳴中の番長君。アンに敗れて柔らかくなっちゃいました。

【七福 ことみ】
アンの同級生でちょっぴりメンヘラちゃん。彼女が出しゃばるのはもうちょっと後……だと思う……。
135名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:12:35.74 ID:IzOWTX7E0
―――― 勇者なムスメ 第四話

鶏鳴中学校の演劇部は、既に部員が一人しか居ない為、廃部寸前だという。
しかもたった一人の部員も、一人じゃ演劇が出来る訳が無いという事で、退部を考えているらしい。

その演劇部を、アンと共に復興させる事を誓った私だったが、まだこの世界にやって来て二週間も過ぎていない。
慣れない毎日が続き、演劇部をどう持ち直すかなんてまだ頭が回らないのであったs。

「ねーねー、今日のロリティーン見た!?」

「あー、見た見た! あのコスメ可愛かったー!」

「ねぇ、天野さんもロリティーン、見たぁ?」

「へっ!? ろ、ろろろ……?」

「ロリティーン、知らない? 天野さんって帰国子女だから知らなくても当然かな?」

「でも天野さんって、結構何でも着こなしそう。普段どんな服着てるの?」

「え、えと! そ、そうね……、メイド服とか!?」

「「……メイド服ぅ?」」

魔王という役割を捨てたも同然の私は、普通の女の子として生きようと誓った。それも、天野秀の存在が非常に強い。
それに、元々私は魔王の後継者として、父に育てられた訳では無かった。だから余り魔王という役割に執着が無いのかもしれない。

それよりも問題は、女子生徒の友達作りが思ったより難航している事。……話についていけないのだ。

「それよりさぁ、あれ見た? バラエティのさぁ――」

彼女達について行くには、もっと女の子としての情報が必要である。リィンガルドではなく、この世界の情報が。
その為には、早く大賢者なる者を見つけ出し、女の子としての生き方を教授願う必要があった。

演劇部は一先ず後回しで、大賢者探しを優先しようと思案する中、一人の女子生徒が私に>>136と声を掛けたのだ。
136名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:15:08.35 ID:C94lv/rC0
今度のテスト教えて欲しい
137名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:23:12.42 ID:IzOWTX7E0
演劇部は一先ず後回しで、大賢者探しを優先しようと思案する中、一人の女子生徒が私に今度のテスト教えて欲しいと声を掛けたのだ。
え、と言葉を詰まらせ固まってしまう。まだこの世界の文化にすら慣れていないのに、勉学を教えて欲しいと頼まれても困ってしまうのだ。

「……駄目?」

「あのぉ、ええっと……私、まだ日本とかいう国に来たばかりだからぁ、そのぉ」

「でも、私より賢そうだし……」

「見た目だけで判断されても、その……ねぇ?」

「三枝さんさぁ、天野さんが困ってるじゃない」

「そうだよ、三枝さん。天野さんは今私達と話をしてるの、ねー?」

「え、ええ、そうね……」

三枝瞳という名前だっけ、と、気落ちした彼女の背をつい追ってしまう。
この二年三組のクラスで、女子生徒の中で恐らく一番陰が薄いタイプであろう。彼女は自分の席に座り、国語の教科書を開くのだった。
なんだか、このクラスでは彼女だけ一人浮いているような感覚だった。

この学校に転入し、二年三組のクラスの一員となった私は、アンとは違い自己紹介で笑顔を披露する。
そのお陰もあり、最初から皆に受け入れて貰える形になったまでは良かったのだけど……。

「おーい、天野!!」

「……また貴方? もうパンツの色なんて教えないわよ」

「何だよ、それが日本の文化だって教えてやったのに。さては田中と鈴木が本当の事チクったな?」

「「うっさいわねー、スケベ男は黙ってなさいよー」」

その転入日から、このどうしようもない男子生徒に付き纏われる事となっていた。そんな彼は、他にも私に、日本では>>138をするべきだと教えたのだ。
138名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:24:36.57 ID:C94lv/rC0
プール学習でスリングショット着用。
139名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:25:19.29 ID:gWZk4xowP
おじぎをするのだ、ポッター
140名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:30:50.93 ID:IzOWTX7E0
その転入日から、このどうしようもない男子生徒に付き纏われる事となっていた。
そんな彼は、他にも私に、日本ではプール学習でスリングショット着用をするべきだと教えたのだ。

なので、秀様にスリングショットを強請ると、プール開きはまだ早いし、スクール水着着用が普通だと教えられ、
ならばいっそ先に撮影会でも開こうなんて言い出す彼をとりあえず燃やしておき、そして嘘を教えた彼、栄田颯太に文句を言った。

で、今日は今日でまた違う嘘を私に吹き込むつもりに違いない、と、警戒心を強めるのである。

「で、天野さぁ、スリングショットは買ったのか?」

「いっそ、その武器で栄田君の頭蓋骨粉砕してあげてもいいわよ?」

「いや、武器じゃねぇんだけど……」

「「ホント、天野さんにセクハラな事ばっかりー」」

「部外者っつうかモブは黙ってろ!」

「「モブとは失礼ねーこのスケベ」」

こうして、休み時間は和やかに過ぎていく。他のクラスメイトも、それぞれの時間を過ごしている。
しかし、やはり三枝さんだけはどこか浮いた様子で、一人孤立しているようにも見えるのだった。

そうして昼休み、また栄田君が私に絡んでくるのである。もう面倒くさくなってしまい、机ごと動かして彼を拒否。
しかしそれでも食い下がる彼は、私に雑誌を見せてくるのだった。

「これ、知ってるか? チェリークロック三号店って言うんだけど、そこの大賢者メニューがヤバイらしいんだ!」

「大賢者……? 栄田君、詳しく! 三行で!!」

「三行って何だよ。とりあえず、何がヤバイって言うと……>>141
141名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:31:48.39 ID:pSL5NP2Z0
癖になる不味さ
洗脳されるような匂い
賢者は美人だが顔を拝めるのは稀
142名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:37:52.85 ID:IzOWTX7E0
「三行って何だよ。とりあえず、何がヤバイって言うと……」

癖になる不味さ
洗脳されるような匂い
賢者は美人だが顔を拝めるのは稀

つまりそういう事なのだそうだ。確かに大賢者は女性だと聞いた事があり、十二代目魔王であるお父様も、彼女の美貌を褒めていた覚えがある。
これは間違いないと確信するのだが、癖になる不味さに洗脳されるような匂いって何だろうと不安になる。

「でさ、今日の放課後行ってみないか? 今日は大賢者メニュー、ホットケーキらしいぜ!」

「でもこの記事に書かれてるのって、ミノタウロス風コンソメスープって書いてあるけれど」

「だってこれ、一昨日の話だぜ。つう訳で、俺と二人で……い、行って……みないか?」

「行ってもいいんだけど、あの、私ね……その」

「な、何だよ……」

「……お金、無いの」

「え」

天野家は貧乏である。厳密に言うと、天野家の長男となる天野秀が、マトモに働かずアルバイト三昧で、他の時間を遊びに費やす為、
貯金も余り無く、せいぜい一人で暮らしていける程度の収入しか無いそうなのだ。
その為、私達がやって来てから、秀様は随分と無理をしている様子である。低予算で、出来るだけたらふく食べさせてあげようとメニューを考え、
電気代も節約してか、パソコンという機械も余り触れなくなり、風呂も自分だけ入らないなんて日が増えている。

そんな中、私とアンに渡されたお小遣いというものが、たったの1000円。これは、リィンガルドでいえば十ゴールド程度の価値。
つまり棍棒すら買えないという状態。薬草も二つ買えれば良い程度であった。

私がお小遣いが1000円しかないと栄田君に話すと、>>143
143名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:40:30.47 ID:C94lv/rC0
クラスに金持ちのぼんぼんがいるからおごってもらえるように話をつける
144名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:47:37.04 ID:IzOWTX7E0
私がお小遣いが1000円しかないと栄田君に話すと、クラスに金持ちのぼんぼんがいるからおごってもらえるように話をつけると言い出す。
お金持ちのぼんぼんって誰だろう、なんて思っていると、なんと彼は三枝さんの方へ歩み寄るではないか。

「あの娘、お金持ちだったんだ……」

私も所謂王宮育ちと言うべきなのだろう。魔王城と言う王宮の中で育てられた私は、不自由の無い生活を送っていた。
ただ、周囲に居るのは大体魔物で、人間である私は疎外感を感じていた。

父親も、母親も人間だった。とはいえ、彼等にも、私にも魔族の血は流れている。
魔王は惨敗する結果が相次ぎ、魔族だけでは勇者に対抗できないと、八代目の魔王の時代から新たな試みを取り入れたらしい。

そうして、才覚のある人間を連れ出し、人体実験を繰り返し、魔族との融合を果たしたのが九代目の魔王。
それは、見事に勇者を打ち破る事が出来たのだが、紋まで消滅させる事は出来なかったそうだ。

で、私の代にはとうとう人間の血が濃くなり、十二代目魔王であるお父様も、私に魔王を継がせる意思は本当は無かった。

「……あの娘、どんな気持ちなのだろう」

境遇は正直言ってそこまで似ていない。しかし、孤立しているという気持ちは分からなくも無い。
栄田君と話し、何やら困っている様子の三枝さんの方へ、私も気づけば歩み寄ってしまっていた。

「三枝さん、栄田君の話はとりあえず置いておいて。……一緒に、チェリークロックってレストランに行ってみない?」

「わ、私、と……天野さんが?」

「お、おい、天野、お前お金がないんだろう!?」

「1000円あれば、ジュースくらいなら頼めるんじゃない? 多分だけど……」

「まぁ、それくらいならそうだけども……」

「ならば決まりね! 三枝さんも一緒に、行きましょう!」


―――― レストラン、チェリークロック三号店。今日の大賢者メニューは、>>145という名のホットケーキである。
145名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:49:53.81 ID:gWZk4xowP
魔王のおっぱい
146名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:51:39.30 ID:C94lv/rC0
ワルプルギスの夜

(名前合ってるかな?)
147名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:57:15.74 ID:IzOWTX7E0
―――― レストラン、チェリークロック三号店。今日の大賢者メニューは、魔王のおっぱいという名のホットケーキである。
いくらなんでもはしたないにも程があるだろうと思いつつも、度々目撃してしまったマールの胸を連想してしまう。
アンよりは育ってる。しかし、年齢も年齢の為まだまだこれから、発育途上にあるあの胸には、希望が詰まっている。

「おいこら、何を妄想して油を売ってるんだ!」

「ネルネルが魔王のおっぱいとかいうメニューを考案するからだろう」

「ちなみにこれは、小型で丸いホットケーキを二つ並べ、イチゴシロップのような血を混ぜて最後に練乳と見せかけた精液を――」

「そ、それ以上言うな! というか、誰の精液だ、誰の!!」

「むぅ、そんなの冗談に決まってる! 実際は本当にイチゴシロップだし、練乳だ!
 でも、生地にはちょっとした秘密の材料を混ぜているけども……ひぃっひっひ」

「……前から疑問なんだが、俺にもそのスパイスは企業秘密なのか?」

「勿論だとも。そう簡単には教えられないっ!」

「じゃあ、61アイスクリーム、六つ盛りならばどうだ?」

「ぐ、ぐぬぬ……、天野め、卑怯な手を使う……! 悩んでしまうではないかぁ!」

「……悩むのかよ」

アルバイトの休憩中、大賢者メニューとは実際何なのか、なんてちょっとした興味を持った俺は、練曲ネルと接触する。
要するに暇でもあった。今日は人数も足りているし、ちょっと俺がサボっていても店は回るだろう。

そんな訳で、大賢者様をじろじろ眺めて思うのだが……、こいつ、何でウェイトレスなんてしているんだろう。
これもまた、ちょっとした疑問であった。その話をネルネルに振ってみると……>>148
148名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 21:58:49.19 ID:pSL5NP2Z0
そりゃ、本来の世界でも名の通ったシェフだったわけですし、
生活のためならスキルを有効につかうっしょ!
149名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:04:46.38 ID:IzOWTX7E0
そんな訳で、大賢者様をじろじろ眺めて思うのだが……、こいつ、何でウェイトレスなんてしているんだろう。
これもまた、ちょっとした疑問であった。その話をネルネルに振ってみると……、

「そりゃ、本来の世界でも名の通ったシェフだったわけですし、生活のためならスキルを有効につかうっしょ!」

「……本来の世界?」

「ッ!? 貴様、私の心を読むとは何者だ!?」

「天野ですけど。いつもの天野ですけどもー」

「……コホン、という訳で、ウェイトレスをしていてもおかしくないだろう?」

「ならば厨房に立てよ! って、まぁ調理師免許要るし、無理か」

「そうなのだ……、おのれ資格め、私の手を煩わせおって! これでは洗脳計画が立てられないじゃないか……」

「何気にチェリークロックが倒産しそうな事さらっと言うなよ」

そんな話をしている間にも、休憩時間が終わってしまう。何だかんだで、料理人の道を志望している様子の練曲を見て、羨ましくも思うのだった。
俺には夢が無い。やりたい事が無い。厳密に言えばそれは嘘なのだが、何をすれば良いのか分からない。
ただ、流されて生きている。別にそれでも良いかと最初は思っていたのだが、それも……そろそろ限界なのだと感じている。

しかし時間は止まってくれる訳が無い。じっくり悩む事すら放棄した俺は、今日もホールで接客に励むのだ。

「いらっしゃーせー! 何名様でしょうか」

このような言葉を言うのも、いい加減飽きたし、げんなりしてしまう。でも、あいつ等を養う為でもある。
もっと気張らなければという、今まで感じた事の無い感情に悩まされている最中、またまた来客であった。

「いらっしゃー……せー……」

「……しゅ、秀様!?」

「ま、マール!? お前何しに此処へ!!」

そこには、マールの姿が在り……そして、隣に居る中学生の男は何者だ。こいつの顔を見て直感する、この男は>>150するべきだ。
150名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:07:31.76 ID:C94lv/rC0
俺が育てる
151名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:07:46.65 ID:gWZk4xowP
女装
152名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:10:21.01 ID:gWZk4xowP
日本語が……
153名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:13:06.67 ID:IzOWTX7E0
そこには、マールの姿が在り……そして、隣に居る中学生の男は何者だ。こいつの顔を見て直感する、この男は俺が育てるべきだ。
変態の目をしている。その目がマールに向けられているのが癪だが、この男は将来、俺以上の大物、つまり大変態になれる男だ。

「キミ、名前は?」

「お、俺っすか!? 栄田颯太っすけど……」

「キミ……イイね!! 素質は抜群だ! ちょっと来て貰おう」

「え、ちょ――な、何なんだ、これはぁ!!」

「秀様、彼を何処へ連れて――行っちゃった」

彼を誰にも見つからないようにして、倉庫まで連れ込むのは少々の苦労をした。
途中、別のバイト仲間がどうしたのかと尋ねてくるものだから、気分が悪いそうだと、栄田颯太と名乗る少年を犠牲にした。
そんな彼は、終始戸惑いを見せている。今も尚、暗がりな場所に連れ込まれ、不安顔であった。

「……マールと、何処まで行ったんだ」

「へ? 天野と、ですか? 別に何もっていうか、まだ全く……」

「ほう。ならば良い。……彼女には手を出すな」

「な、なんでそんな事を言われなきゃならないんだよ!?」

「ならば言おう。マールは……俺の娘だッ!!」

「……ま、マジかよ!?」

「だが、君には素質がある。大変態になれる素質がだ。……その点を、俺は高く評価する。
 よって君にはこれから、>>154という大任を任せよう」
154名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:15:17.02 ID:C94lv/rC0
妄想の語り部
155名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:20:37.91 ID:IzOWTX7E0
「だが、君には素質がある。大変態になれる素質がだ。……その点を、俺は高く評価する。
 よって君にはこれから、妄想の語り部という大任を任せよう」

「全く意味が分からないんすけど……」

「良いから、君はマールとお友達のところへ戻り、妄想を垂れ流すのだ。それだけで君は大成するだろう!」

「大成……!?」

「そうだとも。さぁ、行きたまえ! そしてマールに嫌われ――大成して来なさい!!」

「よ、良し! よく分からないけど、おっさん、ありがとう!!」

俺は涙する事になる。おっさんと呼ばれる歳になっていた事に。確かに最近身体が思うように動いてくれないし、
ちょっと身体を捻ると、関節痛で悩まされる事になる。腰も痛いしで、散々であった。

そんな情けない身体を引き摺り、俺は物陰に隠れつつマール達を監視するのであった。

「天野、お前……何してる」

「静かにするんだネルネル。今はミッション中なのだ」

「……では聞こう。仕事をサボる程のその任務とは何なんだ?」

「我が娘に、悪い虫が寄り付かないようにする為だ……!」

「お、お前! 娘が居たのか!? ど、どれどれ――」

練曲が驚きつつも、俺の娘という言葉に反応し、俺の頭の上からそのテーブルを確認し……様子が変わった。
何やら突然、時は来たとか呟いているし、挙句に>>156までしてしまう始末であった。
156名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:22:13.63 ID:pSL5NP2Z0
足をガクブルさせて冷や汗
157名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:28:07.60 ID:IzOWTX7E0
練曲が驚きつつも、俺の娘という言葉に反応し、俺の頭の上からそのテーブルを確認し……様子が変わった。
何やら突然、時は来たとか呟いているし、挙句に足をガクブルさせて冷や汗までかいてしまう始末であった。

「練曲、お前なんか震えてないか? つうか俺の頭の上で震えないでくれよ」

「ち、違う、これは武者震いというヤツだ! は、ははは……ついにこの時が来たんだ!」

「お前、何言ってるんだよ……」

「して、先程お前、娘がどうこう言っていたが……、勿論あの地味なおかっぱの方だろう?」

「いや違う。寧ろ妄想を垂れ流されてげんなりしている娘が、俺の娘だ」

「……貴様、今なんと言った?」

「将来巨乳に育つだろうあの可愛い娘が俺の娘だと言った」

「……ま、魔王様が、天野とかいう下劣な男の娘になった、だと……!!」

練曲が途端俺の頭の上で固まり、そのまま圧し掛かっては二人同時に倒れ込んでしまう。
その圧力に俺も巻き添えとなるのだが、悲しいかな、彼女の身体は下手をすると小学生。胸の感触が感じられず、楽しみが無い。

だが、それも普通の男ならばの話だ。俺はロリでもお姉さんでもイケる口。それが例え練曲であろうとも、今の感触を味わっておかなければ!
なんて思っていると、流石にホール担当と大賢者メニュー担当のそれぞれが欠けて、誰かが告げ口したのだろう。店長が現れる。

「……あぁまぁのぉ……!!」

「げっ、相田店長! こ、これはその……ネルネルとは一切何もッ!!」

>>158
158名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:29:25.59 ID:C94lv/rC0
罰として店内あひる歩きで20周
159名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:30:14.76 ID:C94lv/rC0
それでは抜けます。スレが続いていればまた会いましょう。
160名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:32:09.74 ID:pSL5NP2Z0
>>159
そういうの言わないで黙って抜ければいいんじゃない?
満月氏にも不安がらせないように
161名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:35:22.20 ID:IzOWTX7E0
「罰として店内あひる歩きで20周」

「あの、店長、ホールの仕事は……?」

「天野なんて居なくても十分回るしぃ。……あぁ、ネルネル、大丈夫だったぁ?」

「ふぁー……ぶるすこ、ふぁー……ぶるすこ」

「はっ! これは撫で撫でフラグ! ナデナデシテアゲルー!!」

「も……もるすぁっ!!」

「やん、ロケットみたいに逃げて行っちゃうネルネルも可愛ぃぃ〜! ……で、蛆虫は何時まで寝転がってるんだか」

「……い、行ってきます……」


――― なんだか店内が騒がしいような、そうでもないような。それすらも、栄田君の私への妄想のせいで、よく聞き取れない。
秀様に連れ出され、戻ってきた彼は終始私の妄想ばかり広げている。シャワー中、どこから洗うのか、そして足の裏のシワの数、
挙句の果てに無駄毛の処理を喘ぎつつやるなんて、変態にも程があると妄想を流している最中である。

「今、さっき……誰かがもるすぁって言って逃げてったような……」

「三枝さん、見間違いじゃない? それよりこの大賢者メニュー、どうしよう……」

「……おっぱい、だよね」

「おっぱいよね……誰かさんの」

魔王のおっぱい、と名づけられたホットケーキ。まさか私の胸をイメージしているのだろうか。
だとすれば大賢者恐るべしである。何故私のバストサイズまで分かっているのだろう。……でも、ちょっと大きいか。

でも、今って実はちょっとしたチャンスだったりする。三枝さんと仲良くなるという良い機会。
折角だし、魔王のおっぱいを食べる前に、>>162という話題でも振ってみよう。
162名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:37:12.42 ID:gWZk4xowP
バストサイズしかない
ない
163名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:41:31.62 ID:IzOWTX7E0
でも、今って実はちょっとしたチャンスだったりする。三枝さんと仲良くなるという良い機会。
折角だし、魔王のおっぱいを食べる前に、バストサイズしかない、という話題でも振ってみよう。

「三枝さん、……胸のサイズ、どれくらいなの?」

「えっ!? 急にどうして……!?」

「これがもし、私の胸だとすれば……もっと大きいの?」

「魔王のおっぱいよりも、って事だよね……その……コクン」

「…………どれくらい、大きいの?」

「もう一回り……。もう直ぐ、Cになりそうだし」

「しぃ!? しぃって何!? えーびーしぃーのしぃ!?」

「天野さん、ちょっと、その……興奮しすぎ……」

「ハッ、いけない、魔王の私としたことが、つい……!」

「天野さんって、楽しい人なんだ……」

三枝さんは、この店に来ても尚笑う事は無かった。寧ろ表情的に見て、不安が続いていたんじゃないかと思う。
誰かとコミュニケーションを取ろうとしても、皆に軽くあしらわれ、一人ぼっちだった彼女。
それが突然、私や栄田に誘われてファミリーレストランにやって来てしまう。彼女にとって、逆に不安になる展開だったのかもしれない。

けど、この時初めて恥ずかしがってくれたり、笑ってくれたりしたのだ。それが嬉しくて、つい三枝さんに抱き付いてしまう。
そうして抱きつかれた三枝さんは……>>164という反応をしてみせてくれた。
164名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:44:21.65 ID:gWZk4xowP
Cカップの弾力ではじき飛ばす
165名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:49:58.80 ID:IzOWTX7E0
けど、この時初めて恥ずかしがってくれたり、笑ってくれたりしたのだ。それが嬉しくて、つい三枝さんに抱き付いてしまう。
そうして抱きつかれた三枝さんは……Cカップの弾力ではじき飛ばすという反応をしてみせてくれた。

「あふんっ!」

「ご、ごめんなさい! い、痛かった……?」

「だ、大丈夫……よ……がくっ」

「天野さん、天野さぁん!!」

Cカップは伊達じゃない。厳密に言うとB+のランクの彼女の胸は、私の頬を襲った。その衝撃は一生忘れる事が出来ないであろう。
この歳でこの弾力と張りである。三枝さんは良い子だけれど、強敵だ。心してお友達にならなければ。

なんて思っていると、あひる歩きなんて事をしている秀様を発見し、その秀様があひる歩きしつつも、新たな客をテーブルに案内する姿を目撃する。
一人は見知らぬ女の子。だが、もう一人は私も良く知る女の子。……アンだった。

「な、なんであの娘がこの店に!?」

「お友達、なんだ……?」

「ええっと、妹みたいなもの? ……妹って普通に言えば良いんだっけ」

「さっきの金髪の女の子、妹さんなんだ……。って、もしかしてあの噂の勇者様!?」

「そう言えば、そんな噂あったわね。番長を倒した美少女勇者、だっけ……」

「凄い……そんな人のお姉さんだったんだ、天野さんって」

今度は逆に手を握られ、Cカップの胸元に手繰り寄せるように持っていかれ、その弾力に軽くへこんでしまう。
そんな中、私の席とは反対側に座ったアンともう一人の女の子は、>>166という話をしているのである。
166名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:52:52.95 ID:pSL5NP2Z0
スマホの使い方
167名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 22:59:27.72 ID:IzOWTX7E0
今度は逆に手を握られ、Cカップの胸元に手繰り寄せるように持っていかれ、その弾力に軽くへこんでしまう。
そんな中、私の席とは反対側に座ったアンともう一人の女の子は、スマホの使い方という話をしているのである。

あの子、まだ秀様の姉である杏さんから買ってもらった携帯の使い方、分かっていないのかと嘆く中、
アンを目撃してしまった栄田君は、妄想から復活してこんな提案をするのである。

「おい、今の……お前の妹だって本当か!? お前と髪の色違うぞ!? 染めてんの!?」

「あー……生まれが違うからね」

「なのに妹なのか? あれ、ヘンじゃね?」

「とにかく、妹なのよ! あんたは妄想に浸ってなさい!!」

「いやいや、そんな場合じゃねぇ! 相席しようぜ、相席ッ! うひょー、燃えてきた!!」

「……三枝さん、こいつ、ウザイわよね」

「あはは……そんな事言ったら可哀想だよ……」

「よし、俺ちょっくら妹さんに挨拶してくるッ! 少し待ってろ天野姉ッ!!」


―― チェリークロックというお店に誘われた。ことみは、にっこり笑顔でこの店にやって来た。
お目当ては大賢者メニューであるらしいが、大賢者とはもしかして、リィンガルドと繋がりがあるのだろうかと、私も共にやって来た。

しかし、秀がここで働いているなんて、マールも、そして私も知らされていなかった。
そこで偶然、秀とここで出会い、驚いてしまっただけではない。何故かちょっとだけドキドキしている。

スーツ姿の秀が、ちょっと格好良いなんて思ってしまったせいだろうか。

「それでね、ココをタッチするとねー……わ、最新機種って凄いねっ! クイック機能がいっぱいだよ!」

ことみは私にスマートフォンの使い方を教えてくれていた。しかしそれを邪魔する者が現れる。同じ鶏鳴中の制服を着た男子が、突然>>168
168名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:01:43.84 ID:pSL5NP2Z0
ガラケーを持って話題に食いついてきた
169名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:07:24.17 ID:IzOWTX7E0
ことみは私にスマートフォンの使い方を教えてくれていた。
しかしそれを邪魔する者が現れる。同じ鶏鳴中の制服を着た男子が、突然ガラケーを持って話題に食いついてきた。

「どいつもこいつもスマホばっか! 時代はやはり未だにコレ、ガラケーだぜッ!!」

「あ、あのっ、どなた様、ですかぁ……?」

「俺は鶏鳴中ニ年の栄田颯太! で、こっちの金髪のお人形ちゃんが、天野妹だな!?」

「……はい、あまのです」

「うおっ、姉とは違って思ったより憂い気な感じがまたグッド!!」

「あのー、すいません、先輩なのは分かりましたけど、私達に何か……」

「モブキャラは黙ってなッ!!」

「も、モブキャラ……しゅん……」

「……貴方、私の友達を悲しませた。許さない」

「へ? あのー、腕を掴んでどうするつもりですか――ひぇぇぇッ!!」

「くるっと回して転ばせる。大丈夫、死なない程度にするから」

「回した後にそんな事言うヤツ居るかッ!? って、ギブ、ギブアップだ!!」

ことみを悲しませた罪は重いと、その男子生徒を床へ倒し、トドメを刺そうとした時である。
その騒ぎを聞きつけた、見覚えのある顔が私を片腕だけで止めるのだった。魔王のマールが、私を止めた。

「ちょっと、やめなさい! こんな場所で、栄田君を殺そうとしたでしょう!?」

「……>>170にしようとしただけ」
170名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:11:11.60 ID:gWZk4xowP
大人
171名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:18:41.31 ID:IzOWTX7E0
「……大人にしようとしただけ」

「お、大人にぃっ!? ななな、なんて破廉恥なのよアン!!」

「そうだよアンちゃん、そういうの、アンちゃんが大人にならないと駄目なんだよっ!」

「ことみが言うなら……やめる……」

「わ、私の意見は無視ですか、そうですかー……ったくもう」

一応マールの意見も聞いての判断なのに、彼女は彼女で不貞腐れている。面倒な魔王だと舌打ちしたい。
そして倒された男子生徒、栄田は、本来の用件を床に倒れた状態で提案するのであった。

しかし、私の騒ぎが皆の注目を浴び、それと同時に妙に小さなウェイトレスが私達の前に姿を現すのだった。

「おっと、何か問題でも? ふむ、ふむふむ、何も言わなくて宜しいッ。……キミ、ちょっとこちらへ来たまえ」

「わ、私? あのぉ、何か……」

「少しお話しようではないか……。魔の紋を継承せし者よ」

「……ッ!?」

マールの顔色が変わる。私も、その小さなウェイトレスを注視してしまう。
紋章の事を知っている人間は、リィンガルドの住人の一部しか居ない筈。なのに、その少女はマールが魔王だと言い当てた。

彼女が連れ去られ、小さなウェイトレスが気になった私は、ことみに詫びて後を追うのであった。


―― そのウェイトレスは、私を裏口から連れ出し、車が数台停まっている駐車場で手を放すのだった。
何の話だろうと首を傾げる私に、彼女は名乗った。ネルティ・ネルシェイドと。

その名は、私のお父様に仕える大賢者の名そのものである。しかし何故か私の知っている彼女ではない。……というか小さいのである。
以前は美しく、胸も有り、何よりヒップラインが素晴らしいと褒め称えられた彼女が、小さくなった理由を、>>172と語っていた。
172名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:19:49.13 ID:pSL5NP2Z0
この世界に合わせての「調整」がなされた
173名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:26:01.57 ID:IzOWTX7E0
その名は、私のお父様に仕える大賢者の名そのものである。しかし何故か私の知っている彼女ではない。……というか小さいのである。
以前は美しく、胸も有り、何よりヒップラインが素晴らしいと褒め称えられた彼女が、
小さくなった理由を、この世界に合わせての「調整」がなされたと語っていた。

「調整って、私は特に何も無かったですけど……?」

「だってお前は調整のしようがないだろう。幼すぎる」

「……ちょっと、悲しくなりました」

「まぁ、そんな訳で半年前から練曲ネルって名乗り、この世界を調査しつつも、監視していたのだ。
 尚、このプランは一年以上前から計画されている。……お前が紋を受け継ぐ前からだ」

「私が紋を受け継ぐ前から……!?」

「アルテナは知っていたのだ。お前の父が勇者アン・アンダルシアに倒される運命を。
 そして何より、そんな事は些細な問題だと片付けられてしまうほど、重大な問題がこの世界、アスワルドに迫っているッ!」

「……ちなみに、アスワルドって?」

「アースワールドの略らしい。名付け親は頭が悪いのだろう」

「は、はは……。それで、リィンガルドの住人の私が、どうしてこの世界にヤマト運輸で運ばれたのですか?」

「魔王、一つ尋ねるが……ヤマト運輸で運ばれたのか……」

「……ラッキョウによって梱包されました。全裸にされて……ひっく」

「可哀想に、そして恐るべし女神アルテナ。……嗅いでみたかったなぁ」

何だか以前よりも姿が違うのはともかく、前より変態的になったような気がする。
そんな彼女が、アルテナがこの世界に私を配送した理由を述べるのだ。その一つは、>>174なんだそうだ。
174名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:30:05.46 ID:C94lv/rC0
地球温暖化を救え!
175名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:38:31.07 ID:IzOWTX7E0
何だか以前よりも姿が違うのはともかく、前より変態的になったような気がする。
そんな彼女が、アルテナがこの世界に私を配送した理由を述べるのだ。その一つは、地球温暖化を救え! ……なんだそうだ。

「それ、私と関係あるんですか?」

「大有りだ! そもそも、このアスワルドには異常な出来事が起こっている、頻繁に起こる地震もその一つ。
 温暖化により、南極や北極の氷が溶け出したのもまた一つ。そして北朝鮮が……これはいっか」

「で、それがどう繋がるんです?」

「呆れ顔で言うな。……世界には、リィンガルドのような世界が数あり、その母体となるのがこのアスワルド。
 そしてその母体となるアスワルドは、神々によって不干渉地域とされている。……つまり手が出せんのだ」

「そんな仕組み、初めて耳にしましたけど」

「この事実は、私のような大賢者や、女神アルテナのような存在しか知らない話だ。無理もない。
 で、神々も色々居てな。このアスワルドを支配したいと目論む連中も居るのだ」

「それで、私……ですか?」

「あの勇者では駄目だ。心が荒み濁りきっている。しかし、まだ魔王として紋を継いだお前なら、力も有り、対抗できる手駒となると考えたのだろう」

「アンではなく、私……。でもそれって、まるでお父様が倒される運命ではなく、そうする役割だっただけでは……」

「ま、そうだな。……本気を出せば、あの勇者ですら倒せただろう、それ程素晴らしかった。魔王ギース・マルグリッドは……」

つまり、簡単に言えば……この世界を他の世界の干渉から救う為、私のお父様は犠牲となってしまった訳である。
そして、私に紋を継がせ、まだ清い心を持つ私をこの場に派遣させたというのだ。

でもそれだと、話が食い違う。実際に勇者アンもこの世界に居るし、同居している訳なのだ。
これじゃ、益々勇者を憎めないじゃないかと、拳を握りしめる中、大賢者様は話を続けた。

「近々……もう一つのエルフの世界から、女王格の力を持つエルフが助っ人として加わってくれるだろう。
 そのエルフを、お前に迎えにいって欲しいのだ、>>176を持ってな」
176名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:42:03.04 ID:pSL5NP2Z0
手土産に雷おこし
177名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:42:04.33 ID:C94lv/rC0
つばくらめの子安貝
178名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:42:43.55 ID:gWZk4xowP
奴の恥ずかしい秘密の写真
179名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:49:50.53 ID:IzOWTX7E0
「近々……もう一つのエルフの世界から、女王格の力を持つエルフが助っ人として加わってくれるだろう。
 そのエルフを、お前に迎えにいって欲しいのだ、手土産に雷おこしを持ってな」

「雷おこしが分からないんですが」

「それはこちらで準備を進める。問題は無い。ちなみに、エルフ娘はお前と同じ歳なのだそうだ。
 何でもエルフは長寿命と言うし……、十三歳のエルフちゃんとは、どのような感じだろう。うぇっひっひ」

「……鼻の下、伸びてますよ」

「おっとすまない。シリアスな場面でもついギャグを入れたくなる性質でな――」

そんな訳の分からない性格だと口にした大賢者ネルは、そこで口を閉ざし眼光も鋭くなる。
気配に気づかなかった。気づかせようとしなかったからかもしれないが、それでも少々悔しくも思う。

「その話、本当……? 魔王ギースが、私にわざと倒されたって……」

「勇者……アン・アンダルシア……!」

彼女は立ち聞きしていたのだ。そして、アンはその話を聞いて、顔色こそ変えないが憤慨するような雰囲気を感じられた。
何故、勇者である彼女が私のお父様について訪ねているのか。そして声色を変えてまで憤慨するのか。

「……私とあの魔王の戦いは、そんなつまらないものじゃない……」

「アン……?」

「魔王ギースは、私と戦う最中、本気を見せてくれていた……。私を認め、それでこその力だと思っていた……。
 だからこそ、倒れる間際……魔王は>>180って私に託したの……!」
180名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:53:06.68 ID:gWZk4xowP
「やーらーれーたー」
181名も無き被検体774号+:2013/04/14(日) 23:54:04.42 ID:C94lv/rC0
先祖代々伝わる鏡餅
182名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:00:26.08 ID:IzOWTX7E0
「魔王ギースは、私と戦う最中、本気を見せてくれていた……。私を認め、それでこその力だと思っていた……。
 だからこそ、倒れる間際……魔王は「やーらーれーたー」って私に託したの……!」

「「そ、それってひょっとしてギャグで言ってるのか……!?」」

「あの魔王と、私は何日も死闘を繰り広げた……。あの人は、私を認めてくれていた。敵である私を……強い娘だって。
 嬉しかった。認めてくれる人が居なかったから……。だからこそ、あの人は本気を出そうと言ってくれた……!」

「ね、ねぇ、アン。何の話なの……?」

「マールには分かんない! 私と魔王ギースとの繋がりが! あの熱い猛りを……このちんちくりんは、否定した!!」

「……いや、その場に私は居なかったからなぁ……」

「許さない、ネルなんとかだろうが、大賢者だろうが、あの魔王を侮辱するのは、絶対にッ!」

「大賢者様、どうしましょう。アンは貴女がお父様を侮辱したと思いこんでるわ。それはそれで、ちょっと嬉しいんだけど」

「仕方ない……。マール、私は逃げる! 残りの仕事は天野秀に押し付けておいてくれッ! では、さらばっ!!」

「え!? ちょっと、大賢者様ぁ!?」

「逃げるのも許さない。……追いついて、殺す……!!」

「ま、待ちなさい、アンッ!!」

結局、私はアンと追いかけっこをして一日が終わってしまうのである。三枝さんとの友情を深めようとファミレスに来たのに、
なんだか実は妙な出来事に巻き込まれていた事を知り、正直言って意気消沈してしまう。

折角、第二の人生を普通の女の子のように過ごそうと決めたのに。その点では、女神アルテナを恨んでも良いとも思っている。

けど、少しだけ嬉しい事もあった。アンは、お父様との戦いを誇りに思ってくれている。とはいえ……。

「でもあの魔王、ストーキングだってしていたし、私の砕けた鎧から身体をじろじろ見てた……気持ち悪かった……」

お父様がロリコンだった事を知った私は、その話を聞いて>>183
183名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:01:02.79 ID:+wvBKs9JP
トイレとかお風呂とか心当たりがありすぎて参った
184名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:02:01.95 ID:H0Rz5R4T0
ママが悪いと思った。
185名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:08:46.92 ID:XAIlviZU0
お父様がロリコンだった事を知った私は、その話を聞いてトイレとかお風呂とか心当たりがありすぎて参ったのである。
特に残り香を嗅ぐ修正があった変態父である。……今の義理の父でもある天野秀は、そういった点では、本当に良く似ているのだった。

「すぅ〜〜〜、はぁぁ〜〜〜、やべぇ、マールの使ったトイレの後、堪らんぞ……!?」

とある夜、アパートの狭い部屋のトイレで、二十分くらい立て篭もる秀様が居た。
その香り、消臭剤の香りだって何故気づかないのだろうと、頭が痛くなってしまう。

そんな中、アンはテレビゲームのマリオカートで大暴走しながら、こんな話をしてくれた――。

―― 私の父は、勇者だった。その十一代目勇者も、十二代目魔王の接近によって不意打ちを喰らう形で敗れ去る。
そして、命の証でもある勇者の紋を、私は受け継いだ。その頃の私は、まだ僧侶として生きようと、父と共に旅路を歩んでいたのだ。

魔王打倒の仲間を集った。それは三人集まった。でも、私の力が強すぎた事もあり、私の心が幼すぎた事もあり、一人、また一人と離れていく。
最後まで付き従ってくれたのは、魔法使いのマリアだった。マリアは、回復魔法にも長けており、私をよく治癒してくれた。

「……また膝、擦り剥いちゃったのね」

「マリア……いつも、ありがとう」

「フフ、これくらい当然よ。でも……残り二人だけになっちゃったわね」

「それでも、魔王を倒さないと……!」

「でも、今回の魔王というのも変だけど……、かつて程の脅威は無いと思うの。それほど勢力を拡大しようと勤めている訳でもないし」

十二代目魔王は、私の父を殺した。それだけで十分な理由があった。
しかし、事実魔王は勢力を広げようともせず、虎視眈々と世界を伺っている様子に見えていた。しかし……事実は違った。

「あの村、魔物と人が共存してる……!」

その日から、マリアは考え方が変わっていった。人と魔物と過ごす村を訪ね、>>186という考えを持ったのだ。
186名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:10:11.91 ID:H0Rz5R4T0
ブサイクほどかわいい
187名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:17:27.67 ID:XAIlviZU0
その日から、マリアは考え方が変わっていった。人と魔物と過ごす村を訪ね、ブサイクほどかわいいという考えを持ったのだ。

「――村に残るって、マリア、嘘でしょ!?」

「……私は、この村の平和を見て気づいた。命が争う方がおかしいの。……分かるでしょう、勇者なら」

「分からない。私には、魔物は敵で、魔王は倒さないといけない相手で、仇で……」

「貴女、ただ勇者の力で仇を取りたいだけなのね」

「そんな事……ないっ……!」

「でも、貴女……既に何人も人を殺している。その時の貴女の顔って……笑ってるのよ。ぞっとするわ。
 そんな人が勇者だなんて、この世の中の方がおかしいと思う! 間違っているのよ!!」

「それは、私に襲い掛かってきたからで……」

「貴女は、命の重みを感じられない人よ。……貴女に勇者の資格は無い。さようなら」

最後の仲間であるマリアは、そうして私を見限って離れていった。辛かった。その辛さが、私の心を壊したのかもしれない。
まだ十一歳で、お礼くらいは言える自分は、その時から居なくなってしまった。

それでも、魔王城を目指して私は進んだ。仇を取る為、魔王を目指して剣を、魔法を振るった。
襲ってくる魔物も、人も、関係なく殺していき……次第にリィンガルドの住民は、私のほうこそ魔王のようだと、畏怖した。

そして私が人と言う存在が嫌いになり、更に数ヵ月後……魔王城に辿り着く事になる。

「魔王……会うのは、二度目……!!」

「だがあえて言おう、実は会うのは二十三回目であると! 実はこっそり監視していたのだよ」

「……尾けられていた!?」

「単に可愛い女の子が奮闘する様が見たかっただけだ。フハハハハッ!!」

この外道と、私は罵った。しかし魔王はそれが褒め言葉だったようで……>>188
188名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:18:43.27 ID:H0Rz5R4T0
画像コレクションやグッズを並べて自慢し始めた。
189名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:27:34.12 ID:XAIlviZU0
この外道と、私は罵った。しかし魔王はそれが褒め言葉だったようで……画像コレクションやグッズを並べて自慢し始めた。
写真という存在を知ったのはこの時だ。フィギュアという存在を知ったのもこの時が初めて。
何でも、某ルートにお願いしてそれを作ったり現像したりして貰っていたらしい。が、そんな事は問題じゃない。

「私は……失った。お父さんも、仲間も、信頼も、温もりも……!」

「知っているとも。貴様が辛い想いをした事は、今では私が一番知っているのだろうな……」

「それも全て、魔族……あんたのせいッ!!」

「かもしれん。否定はせん。……そして、挑もうならば、容赦もせん」

「とっとと変身して。……じゃないと、私に勝てないから」

「それも事実だろう。だが、あえて今は人の姿で戦おう……! 色々事情があるもんでな」

「何を、ブツブツと――!!」

剣が魔王を掠め取る。やはり一段階目の姿で、私に立ち向かおうとするなんて無謀にも程がある。
今の私は、様々な物を捨てた分強くなれた。力を手に入れることが出来た。勇者の紋が、一際輝くのもそのお陰。
渾身の一振りは、魔王の持つ剣を完全にへし折ってしまう。音と共に転がるその剣の破片を眺めつつ、魔王は告げる。

「我が剣では、勇者の剣に折られてしまうようだ……。クク、流石は勇者であり、娘にしたいと願うほどの愛らしさを持つ女よ!」

「……気持ちの悪い!」

「やれやれ、この戦……もう少し味わいたいものだ。許せよ――」

その魔王の第三段階目の姿は、最早人とは思えない化物である。それでも、彼は自我を保っている。
腕は数本も生え、足は巨大な丸太のように膨張し、悪魔のような羽が何枚も束ねられ、複数の眼を持つ化物。

それを打ち倒した時には、既に三日も時が流れていた。余りにも強く、途中何度も心が折れそうになる。
でも、魔王は私を認めてくれた。この戦いが楽しいと、私が強く、最後に戦えた事を誇りに想うと――。


私がこの話をマールにすると、彼女はピーチ姫を谷底に落としながら……>>190
190名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:29:27.28 ID:TpApIrLW0
憐れむ瞳で見ながら、同類じゃない?と言ってきた
191名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:31:26.19 ID:H0Rz5R4T0
>>190
きっつい!
192名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:36:05.71 ID:XAIlviZU0
私がこの話をマールにすると、彼女はピーチ姫を谷底に落としながら……憐れむ瞳で見ながら、同類じゃない?と言ってきた。
私の扱うクッパがピーチ姫と同様に谷底へ落ちていく。同類とはどう言う事だと彼女を睨む。

「お父様は、確かに変態だったけど……、魔王としては優しすぎたけど……、所詮、その程度だったのよ。
 そして貴女もその程度。可哀想な子。……同情は一切しないわ」

「マール、貴女はギースの娘なのに……」

「ええ、そうね。……でも、そういうの嫌いなのよ、私」

再びコースに戻ったピーチ姫は、今度は谷底に転落しないままゴールへ突き進む。
結果的に七位。私が八位となり、どっちもゲームの腕は下手だと彼女は舌を出して笑っていた。

「それにね、過去は所詮過去じゃない。それよりも……私は、この仕組みの方を恨むわ」

「紋章……?」

「何故、魔王と勇者が存在して、何百年もの間争い続けたのか。一時は決着が着いた筈なのに、再び魔王は復活し、勇者も現れた」

「リィンガルドの歴史は、よく知らない……」

「まるで、神様が故意に紋章を使って争わせてるようにしか思えない。……女神様は教えてくれないでしょうけど」

彼女は、寧ろ紋章の存在自体に疑問を持っていた。彼女が力を発揮する際、額に現れる紋章。
ちなみに、私は何故かお尻にそれが付いている。もし意図的ならば、それはもうセクハラだとしか思えない。

「……アルテナ様って、セクハラするかな……?」

「……一応、アレでも女だし……無いんじゃない……?」

そんなアルテナ様は、部屋の隅で芋焼酎を一気飲みした後、ぐーすかと眠りこけている。
彼女はどうして再びこの部屋を訪れたかと言うと……>>193
193名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:38:40.17 ID:H0Rz5R4T0
宇宙人との親善のために泊めてもらってる
194名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:43:13.29 ID:XAIlviZU0
そんなアルテナ様は、部屋の隅で芋焼酎を一気飲みした後、ぐーすかと眠りこけている。
彼女はどうして再びこの部屋を訪れたかと言うと……宇宙人との親善のために泊めてもらってる、という事なのだそうだ。

「ワーレーワーレーハーウーチューウージーン」

「貴女、扇風機引っ張り出して何してるのよ……」

「宇宙人ごっこ」

「ふあぁ、よく出したぁ……って、お前等何してるんだ。それよりメルはまだ戻ってきていないのか」

「それが、コンビニに買出しにいってから随分遅いのよ。どうしたのかな……」

「……ちょっと心配だな、アン、マール、そこのババアを丁重に葬りつつ、留守番しておいてくれ」

「分かったわ。丁重にね」

「葬る……フフ」

―― やれやれと、靴を履いて夜中となった外を歩く羽目となる。
女神のいびきのせいで、アンもマールも眠れそうに無いと呟いているし、とんだ疫病神である。
しかし、メルの帰りが遅く、コンビニの方まで様子を見に来たのだが……そのコンビニの前で、彼女は女子生徒の姿をした誰かと話をしているのだ。

「どうして、私を信じてくれませんの!?」

「あはは、ごめん……、私には、私の役目があるから……」

「そんな! 貴女の力があれば、この世界の天下だって取れるでしょうに……!!」

天下って、何の話だろう。まさか、世界制服のお誘いってヤツなのか!?
危惧しつつも、更に聞き耳を立ててみると……どうやら>>195のお誘いを受けている真っ最中のようだ。
195名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:46:41.98 ID:TpApIrLW0
本物のアイドルから
196名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:51:20.68 ID:XAIlviZU0
天下って、何の話だろう。まさか、世界制服のお誘いってヤツなのか!?
危惧しつつも、更に聞き耳を立ててみると……どうやら本物のアイドルからのお誘いを受けている真っ最中のようだ。

「貴女なら、真のアイドルマスターにだってなれます!」

「私がぁ? 冗談やめてよー、あはは」

「冗談じゃありませんわ! もう、どうして信じてくれませんの……!」

「とーにかく、今はまだそんな事考えられないし、オカルト部も辞めたくないしー!」

「オカルトだなんて、それこそ才能を無駄にして……もうっ!」

「あ、怒って帰っちゃった……」

コンビニのゴミ箱の陰からこっそり眺めていたが、メルを誘っていたあの女子高生、確かに美人だった。
恐らく彼女もアイドルの一人だったりするのだろう。そして、その彼女がメルを見込んでその道へ誘った。

だがしかし、メルがオカルト部に入っている事すら聞いていないと、彼女の前に姿を見せてやると、
メルはコメディのような驚き方をして尻餅をついてしまうのだった。

「き、聞いてた……?」

「アイドルがどうこうって話なら聞いた。……オカルト部に入ってたんだな」

「いやぁ〜、部員が足りないって誘われてぇ〜。魔王様と同じ歳なら演劇部に入ったんだけどぉ〜」

「……お前は、それで良いのか?」

「何がぁ?」

「アイドルだよ。……なれるのなら、なってみたいとか思わないのか?」

「分かんない。でも今は……>>197
197名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:52:39.97 ID:H0Rz5R4T0
ホムンクルスの研究がやりたい
198名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:54:37.55 ID:TpApIrLW0
>>197
確かメルは魔物を生成出来るから、この辺研究する必要ないような
199名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:55:32.45 ID:H0Rz5R4T0
>>198
人間式のやり方を知識として知りたいってことにしておきたい。
200名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:56:34.68 ID:H0Rz5R4T0
自分でも書き込んでからしまったと思った。
201名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:57:44.81 ID:+wvBKs9JP
むりやり様のご意志だ
202名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:58:37.80 ID:XAIlviZU0
「分かんない。でも今は……ホムンクルスの研究がやりたい」

「なんだそりゃ。……それもあってのオカルト部なのか?」

「まぁ、それは余り関係ないんだけど〜。一人で出来ちゃうし。……でも、嫌な予感、するんだ」

「嫌な予感?」

「近い内、嫌な事が起こる。……世界が滅茶苦茶になる事態が……。なぁんて、夢を見ちゃっただけなんだけど。
 あ、ちなみにこう見えても私って、予知能力がちょっぴりだけあるらしいよー!」

「ならば俺の将来の嫁を予知能力で頼む」

「う〜ん…………一生独身でしょう〜!」

「んなあほな! 俺の未来は明るい筈だぁぁ!!」

「えへへ、そういう事にしておこうっ! それじゃ、帰ろう〜!!」

メルは無理に明るい顔をして振舞っていた。しかし、本当は俺を予知して何か見えたんじゃないだろうか。
それがとても悪い事なのかもしれないし、口に出せない事だったのかもしれないし、実は違うかもしれない。
けど、未来なんて自分で切り開くものだ。それが出来ないから、こうしてこの歳まで燻っているしか無い。

そして、メルの持つ買い物袋から、アルバイト求人雑誌を見つけてしまい、俺の心は更に落ち着かなくなっていく――。

「ただいま〜……って、マールは寝ちゃったのか」

「魔王様、寝顔も可愛くて素敵ですっ!」

「メル、時々お前変態臭いぞ……。で、アンはパソコン画面見て、何してるんだ?」

「勇者プレイ……」

何だかアンの様子がおかしいような。と、ゲームの画面を見ていると……>>199
203名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:58:57.06 ID:XAIlviZU0
あ、あれ ↓で!
204名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 00:59:50.88 ID:TpApIrLW0
ゲームのタイトルが「外道勇者」だった上にショートカットに鬼畜王ランスが
205名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:02:21.04 ID:H0Rz5R4T0
>>204
どういう趣味の女性だwww
206名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:06:26.32 ID:XAIlviZU0
何だかアンの様子がおかしいような。と、ゲームの画面を見ていると……ゲームのタイトルが「外道勇者」だった上にショートカットに鬼畜王ランスが。
お子様にエロゲーをやらせる訳にはいかないと、アンをパソコンから引き摺り下ろそうとするのだが、これが梃子でも動かない。

「この鬼畜王っていうの、気になる……」

「うわあぁぁ、駄目、それは駄目!! 一応十八歳未満禁止ゲームだから!!」

「じゃあ、戦国ランスっていうの……」

「それも駄目ぇぇぇ!! それもお子様禁止ッ!!」

「じゃあ、ランス・クエスト……」

「それも駄目だッ!! お子様禁止ィィィ!!」

「どれなら良いの? ……このゲームは?」

「あ、それならいいかな。洋ゲーだけどな!」

「それじゃ、ぽちっと……」

『ワ、ワ、ワー ワ、ワ、ワー』

よく考えれば、パソコンにインストールしているゲームが殆どエロゲーだらけで、アンに触らせるにはまだ毒であった。
でも削除するのは勿体無い。しかし二代目のパソコンを買う余裕はなく、モニターだってアンに壊されて二代目となり、これに数万掛かったのだ。
だが、アンもマールもメルも、この世界で過ごすならば必須スキルであるパソコン操作術。やれやれ、どうしたものだろうと思っていると……。

「ねぇ、キャラメイク、これでいい?」

「……スカイリムで>>207を作るとは、こいつ天才か」
207名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:10:58.30 ID:+wvBKs9JP
マーカス・フェニックス
208名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:11:22.46 ID:H0Rz5R4T0
信長
209名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:18:19.12 ID:XAIlviZU0
「……スカイリムでマーカス・フェニックスを作るとは、こいつ天才か」

「もう一つ、金髪で裸の女の子のキャラがいるけれど……」

「うわぁぁ、そのセーブデータは駄目! つうか駄目、絶対ッ!!」

「……じゃあ、これで遊ぶ」

やはり、どこかアンの様子がおかしい気がする。何かに迷いを見せているような様子でもあった。
思春期だし、学校で何かがあったのかもしれない。俺がとやかく言う問題じゃ無いだろう。
それよりも、メルの方が気がかりだ。……アイドル養成学校って、どれくらいお金が掛かるのだろうと、携帯を用いて調べるのである。

―― そうして翌日の朝六時過ぎ、俺はババアのアルテナアタックを受けて目覚める事になる。
寝返りによる芋焼酎瓶攻撃は額に直撃し、激痛で目を覚ます。そういえば、アイドル養成学校について調べていた最中に眠ってしまったんだった。

そしてふとパソコンを見れば、何やら隈を作ってモニターに齧り付くアンが居た。

「ホワイトラン、壊滅してますね」

「人って、脆い……」

「お前も人間だけどな! って、タイトルバーに外道勇者が残り続けているのは何故でしょうか?」

「ちょっと遊んでみた……。エッチの仕方、覚えた……」

「アン、くれぐれも忠告しよう。……誰にもその方法、使ってはいけないぞ!」

「それくらい知識はある……。好きな人と……エッチ……」

アンがこちらをじっと見る。釣られて彼女の瞳を見てしまう。見つめ合う内にこちらが照れてしまい、視線を逸らそうとする。
しかし、アンが俺の腕を掴んできては放さない。何を考えているんだとお説教タイムに持ち込もうとしたのだが、次の言葉で硬直してしまうのだった。

「私……生きていて、良いのかな……?」


―――― つづきます
210名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:20:35.28 ID:H0Rz5R4T0
自我に目覚めるアイデンティティクライシスのアン。含みを持たせてつづく。

お疲れ!
211名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:22:07.55 ID:XAIlviZU0
結構長々やってしまったので、この辺りで一旦終わります。
やっぱりちょいちょいミスしちゃってるんけども、色々流してくれると幸いです。

ちょいちょいスカイリムステマする事に決めつつも、お付き合いありがとうございましたー。


【04/15 (月) 01:19時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/16 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第五話 『勇者とエルフっ娘』


いやぁ、神ゲーとか皆が言ってるから手を出してみたら……うん、海外のゲームって面白いね! PSO2ェ……。
212名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:24:49.67 ID:+wvBKs9JP
213名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:26:01.92 ID:+wvBKs9JP
Bioshock Infinite買っちゃいなよ……ナヨ……
214名も無き被検体774号+:2013/04/15(月) 01:30:56.24 ID:XAIlviZU0
剣と魔法大好きなんですぅ……ですぅ……。後スチーム実はよく分かんないwwwww
215名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:04:34.19 ID:hcrXNh9F0
まだスレ生きてるとかびっくりですん。いつまでミサイル状態。
そんな訳でもう暫くお待ち下さい。


最近規制多いのかな?
216名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:14:31.40 ID:hcrXNh9F0
〜〜第四話までのてきとー登場人物紹介〜〜

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。いつ本気になるの? 今でしょ。

【天野 アン】(アン・アンダルシア)
歴代最強勇者と名高い十二歳。気づけば凄い頑固な金髪ロリに。自分の存在に悩む三女。

【天野 マール】(マール・マルグリッド)
十三代目魔王となって間も無く現代に飛ばされた可哀想な娘。中々ツン度が上がらない次女。

【天野 メル】(メル・メルエッド)
魔王の付き人な魔法剣士ちゃん。天野家のムードメーカーであり、彼女が居なければ天野家は崩壊するでしょう。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。

【天野 杏】
主人公の姉であり、かつて十代目の勇者だった人。雑貨メーカーの主任で独身の二十八歳。

【練曲 ネル】(ネルティ・ネルシェイド)
チェリークロックで働くウェイトレス。結局本当に大賢者なのだそうです。アイス大好き二十歳のおばかさん。

【相田 沙織】
チェリークロック店長さん。女しか愛していない為男には非常に厳しい性格の持ち主。

【川下 浅海】
鶏鳴中学校の教師であり、アンの担任。美人ですがメイクが濃い為、男が寄り付かないようです。

【吾妻 仁】
ヤクザの父親を持つ中学一年生で鶏鳴中の番長君。アンに敗れて柔らかくなっちゃいました。

【七福 ことみ】
アンの同級生でちょっぴりメンヘラちゃん。彼女が出しゃばるのはもうちょっと後……だと思う……。

【三枝 瞳】
マールと同級生で大人しい女の子。そしてCカップに育つ予定の女の子。大事に育ててください。

【栄田 颯太】
マールに一目惚れしちゃった系の残念妄想男子。果たしてまた出番はあるのでしょうか。

【来島 元大】
主人公達が住まうアパートのお隣の刑事さん。今後度々に登場するようになります。
217名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:15:03.47 ID:hcrXNh9F0
―――― 勇者なムスメ 第五話

レストラン、チェリークロックへは現在週五の八時間勤務である。間に休憩が一時間挟まれている。
シフトは大体夕勤メインとなり、稀に昼間も入る事もあるのだが、これでは大した稼ぎに繋がらなず、養子となった娘三人を養えない。

養育費の一部、学費等は姉が負担していてくれているのだが、それもずっと甘える訳にもいかず、
何より生活費がヤバイ。マジヤバイ。あいつ等食いすぎなのだ。今朝もトースト十枚は消費する羽目となる。

「という訳で、店長、少しご相談が」

「却下よ、蛆虫」

「まだ何も言っていないのに……!」

「言わなくても分かるわ。その顔、蛆虫の顔をしてるから」

「いやいやいや、相談したら蛆虫の顔ってどんなんですか!」

「こんなんでしょ。まだ蛆虫なだけマシだと思って。ゴミ虫に降格してあげてもいいんだけど?」

「……どっちも似たようなモンだと思うんすけどね……」

今日、マールは放課後こちらに寄りたいと俺に話していた。その理由は、何でもネルネルに用事があるそうなのだ。
何時の間にあのアイス馬鹿と面識が出来たのだろう。まぁ、アイツもマールの事を知っていた気配もあり、
もしかすると元住んでいた世界で本当に縁があり、こちらで再開したなんてパターンなのかもしれない。

なので、今日はバイトが上がればマールと帰宅する予定でもあったのだが、その前にシフトを増やせないかと店長に相談を持ちかけた。
一応話は聞いてくれた店長だが、やはり他のアルバイトの事もあり、シフトをこれ以上増やすのは難しいとあっさり言うのであった。

「あのね、蛆虫天野。……事情は聞いてるわ。でも、そろそろ限界なんじゃないかな?」

「……やっぱり、そうですかね」

「それに、何時までフラフラしてるつもりなんだか。まぁ、私には関係ない話だし、蛆虫の人生だから、好きにすれば良いんだけど。
 ……でも、いい加減動く時なんじゃない? 今ならまだ>>218って仕事くらいなら見つかると思うよ」
218名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:20:46.73 ID:nzm7u5dy0
三交代勤務のペットボトルを起こす
219名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:29:34.86 ID:hcrXNh9F0
「それに、何時までフラフラしてるつもりなんだか。まぁ、私には関係ない話だし、蛆虫の人生だから、好きにすれば良いんだけど。
 ……でも、いい加減動く時なんじゃない? 今ならまだ三交代勤務のペットボトルを起こすって仕事くらいなら見つかると思うよ」

「……なんスか、その仕事」

「そのままよ、ペットボトルが転んだら直す仕事。蛆虫にはお似合いでしょう? 機械のように働く蛆虫……きゃはは、マジウける!」

「今の仕事でも単調だと思ってるのに、そんなの死んでしまいますん」

「でも、フラフラしていた蛆虫が悪いんでしょう? 言っておくけど、世の中全く甘くないって蛆虫も多少は知ってる筈よ」

「まぁ、そうですね……」

「働きたくないでござる、って言いたいのは分からなくも無いわ。私もネルネルちゃんを愛でる為に店長として顔出してるだけだから」

「その発言マネージャー辺りが聞いたら物凄い怒り狂いそうですけど」

「アレが? キレるって? またまた冗談を。思いっきり中間管理職顔じゃない」

店長である相田沙織は実は俺より一つだけ年下だったりする。しかし、普段蛆虫扱いされているせいか、年上のようなイメージを持ってしまう。
そんな彼女も、この店に赴任して二年、当初は殆ど仕事をしないという無気力店長で有名であった。

しかし、半年前にネルネルが現れてから、随分と女従業員に力を入れるようになり、今では女子に好かれる実力派に成長した。
と同時に、男従業員に厳しくなり、俺なんて最早ゴミ扱い。尻に蹴りを入れられるのも日常茶飯事である。

「ま、とりあえずさっきの話に戻るけど……本当に無理よ。他の子削って蛆虫だけって、今でも優先してあげてるの。
 これ以上優先させたら他の子に怒られるわ。あ、でも女の子に怒られるって……ゾクゾクするかも!」

「さり気無くドM発言やめてください。……なんか、すいませんでした」

「分かったならとっとと仕事に戻ってクソ虫」

「……気づけばクソになっていた。遺憾である」

結局、これ以上の勤務増は見込めないとなると、他のアルバイトを探す必要が出てくるのである。
体力も無く、勉学も疎い俺の行き先なんて、はてさてどうしたものか。そんな思いでホールに戻ってみると……>>220
220名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:34:03.53 ID:puwD0yBHP
スチームパンクな客がいらっしゃる
221名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:34:29.13 ID:nzm7u5dy0
マールとメルが魔界の遺産を売って生活を支える姿を見てしまった
222名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:41:25.92 ID:hcrXNh9F0
結局、これ以上の勤務増は見込めないとなると、他のアルバイトを探す必要が出てくるのである。
体力も無く、勉学も疎い俺の行き先なんて、はてさてどうしたものか。そんな思いでホールに戻ってみると……スチームパンクな客がいらっしゃる。

一言で語るならば、ムスカ大佐のような格好をしたアフロである。なんだあのおっさんは。……まだ二十台かもしれない。
とりあえず、アレからは注文を受けたくないなんて思っていると、マールがメルを連れてこの場へやってくるのだった。

「いらっしゃー……って、なんだマールとメルか。ほら、どこの席が良いんだ?」

「な、なんて適当な接客なの秀様! もうちょっとその、お姫様のように丁重にもてなしてくれても……」

「そうだよー、ちゃんと接客してくれないと人体練成のお勉強できないじゃないかー!」

「顔見知りにまであんな接客、恥ずかしくて出来るかッ! ……言っておくけど、支払いはお小遣いの中だけにしてくれよ?」

「大丈夫よ秀様、お水しか頼まないから」

「わったしもー! お水さえあれば生きていける! 氷にして遊べるしね!」

「店内で魔法禁止。後、ドリンクバーくらいは頼んでくれ、奢るから……。これ、アンには内緒だぞ?」

「さすが秀様! そこに痺れて憧れちゃう!」

「ねぇ魔王様、じゃなかった……お姉様! スペシャルドリンク作って遊ぼうよぉ!」

ドリンクバー代金は俺が払うと言った途端、特にメルが顔を輝かせてはマールを連れて空いている席にダイビング。
そんな彼女、外で魔王様と言ってしまうものだから、マールが外では言わないようにと今朝、お説教をしていた事を思い出す。
二人とも遅刻寸前で、トーストを口に押し込みながらの出来事であった。一方、アンはやはり変わらず淡々とトーストを齧るのである。

「私……生きていて、良いのかな……?」

あの台詞が思い起こされ、その時は何も返せず彼女を学校に送り出したが、今日も結局何の話も出来ていない。
時折心配になりつつも、仕事に専念しようと注文を取ろうとしていると……、練曲ネルが、何故か俺に手招きしている。

行くべきか、無視するべきか、あえてスカート捲りに挑戦するか悩んだ末、>>223
223名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:46:08.29 ID:nzm7u5dy0
すっとぼけようともしたが、後が怖いので行った
224名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:52:02.54 ID:hcrXNh9F0
行くべきか、無視するべきか、あえてスカート捲りに挑戦するか悩んだ末、
すっとぼけようともしたが、後が怖いので行った。すると途端腕を引かれ、観葉植物が飾られた物陰に連れ込まれる。

「しっ、静かにするんだぞ」

「何だよネルネル、仕事中に告白だなんて大胆なヤツめ」

「んな訳あるかっ! あ、ついでだから先に用事を済ませよう。今夜、マールを借りるぞ」

「マールを? 何故にってお前等どういう繋がりだよ」

「なんだ、まだ聞いていないのか。持ちつ持たれつ、更に言うと禁断の仲だったのだ」

「き、禁断の仲ッ!!」

「静かにしろ、ヤツに気づかれるッ!!」

「あ、あぁ……って、ヤツ? 誰だそいつ」

「あそこに居るムスカ大佐だ……!」

「例のアフロ、お前にもムスカ大佐に見えるんだな……」

「話は変わるがラピュタというアニメは非常に面白かった。アニメって素晴らしいのだな。今度お前の家でアニメを見せて貰おうと思うのだ」

「だが断る」

「んなっ! って……ヤバイ、またヤツが私の方を見てるッ!!」

要するに練曲ネルは、あのムスカもといアフロ大佐にじろじろ見られて気味が悪いというのである。
ならいつものように大賢者メニュー作りに励めばと薦めるのだが、今日のネタは何も考えていないと、何故か雷おこしを手にそう言われた。

じゃあどうすれば良いのかと尋ねれば、>>225
225名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 22:58:04.12 ID:nzm7u5dy0
うまく追い出せればいいんだけどなぁといわれた
226名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:04:17.02 ID:hcrXNh9F0
じゃあどうすれば良いのかと尋ねれば、うまく追い出せればいいんだけどなぁといわれた。
そしてやたらこちらに視線を向けてくる。ちらっ、ちらっと、いかにも的な視線である。

「……ったく、分かったよ。どうにかしてみる。でももし何かあった場合、店長には上手く言ってくれよ?」

「それは任せて貰おう。この私、ネルティ……じゃなかった、練曲ネルが61アイスクリーム二つで手を打とう!」

「何で俺がお前を助けて更にお前にアイスを奢らなきゃならんのだ」

「わっはっはー。……ではミッション、スタートだ!

何故にミッションなんだよと、げんなりしつつもアフロ大佐の所へ向かうのであった。
先ずはさり気無くお冷のお代わりはどうかと、様子を探ってみよう。

「えー、お冷、いかがっすかぁ?」

「……見えん」

「はい?」

「いや、何でもない。貰おうではないか」

「もし宜しければ、ご注文もありましたら、お伺い致しますがー」

「いや、ドドリア風のドリアを頂いたのでな、もう十分だ」

「そっすかー、ではごゆっくりー」

見た目はなんと言うかアレなのだが、思ったより気さくな人物であった。俺に笑顔で応対してくるとは参ったものである。
だが、見えんとか言っていた彼は、やはりネルネルを眺めていたのだろうか。

こんな調子で、俺は五分置きにアフロ大佐へ接触を試みる。指令はあくまでその男の天外追放。さり気無く追い出すという事である。

そして、七度目に俺がまたお冷のお代わりはと接触すると、彼はとうとう……>>227
227名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:06:02.19 ID:puwD0yBHP
駄天した
228 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) :2013/04/16(火) 23:07:11.83 ID:IyafhQF/0
谷口翔子(さきやみ):はやくスレッドを、立てたーーーーーい!!!!!!!!!
Lv=4,xxxP
229名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:15:18.53 ID:hcrXNh9F0
そして、七度目に俺がまたお冷のお代わりはと接触すると、彼はとうとう……駄天した。
アフロを脱ぎ去った彼は、まさかのスキンヘッドであった。一瞬ヤクザだったと見紛う程である。

「非常にしつこい。そのしつこさに私はついアフロを脱ぎ捨ててしまった。この意味、分かるかね?」

「へ、あの、ちょっと分からないんすけど」

「そうか、分からんか……低俗なる人間程度では、分からぬものなのだろう。
 だがしかし、ドドリア風ドリアに免じて完全なる駄天はまた今度にしよう。……御代はこれで良いかね?」

「すいません、レジの方でおなしゃす」

「ッ! 何処までも侮辱するか、低俗!」

「そう言われましても、一応当店のルールでして……」

「まぁ構わぬさ、うむ、構わぬさ……」

そうして、妙なアフロからスキンヘッドに転生した彼を追い出すことに成功したのだが、はてさて、何だったのやら。
しかしこの行為がネルネルの好感を高める事になったらしい。彼女は良くやったと俺の手を握りぶんぶんと上下に振り回す。

「何だかじろじろ見られて怖かったのだ! うん、お漏らしする所だった!!」

「すれば良かったのに」

「する訳ないだろう! それくらい怖かったって例えの内だ!!」

「……飲んであげるのに」

「……地獄に落としてやろうか?」

そんな下らないギャグを交えつつも、今日の勤務時間は過ぎていく。そして、俺より数分先に練曲ネルはタイムカードを押してしまい、
マール達のほうへ駆けつけ、雷おこしを掲げながら何かの話を進めている様子であった。

いったい何の話をしているのかと、その輪に混ざろうとすると……>>230
230名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:20:00.46 ID:nzm7u5dy0
3人ともシリアスな表情で入れそうな空気ではなかった
231名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:20:58.89 ID:puwD0yBHP
(だって天外追放って書いてあるから……)
232名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:26:59.31 ID:hcrXNh9F0
いったい何の話をしているのかと、その輪に混ざろうとすると……3人ともシリアスな表情で入れそうな空気ではなかった。
ならばと、聞き耳だけ立ててみる事に。すると、何やらエルフとか何とか話が聞こえてくるのである。

「今夜、このポイントに佐川急便に届けられる予定となっている」

「また佐川急便なの?」

「なんだマール、お前はヤマト運輸じゃなかったのか?」

「いやその、アンが確か佐川急便だったのよ」

「そう言えば、ゴミ捨て場に捨てられてたんだっけー、話を聞いたときざまぁって笑っちゃったぁ」

「こら、メル。一応貴女はアンのお姉さんとなってるんだから!」

「むー、でも一応勇者だし、倒すべき相手だしー……」

「その割には一緒に仲良くゲームしてるくせに……」

「二人とも、その話はともかく……、そのポイントにこの雷おこしを持って、迎えてやって欲しいのだ」

「で、その後どうすれば良いの、大賢者様」

「……媚びろ! ひたすら媚びるのだ!!」

なんだこの会話は。要するにまたババア女神の企みか? なんて疑うのだが、
その疑った直後、携帯が鳴り響き……その相手がまさかのババアだという事に息を呑んだ。まさか、内心で考えている事を読まれての電話だろうか。

「ははぁ〜い、私、アルテナちゃんですよぉ〜!」

「……ウザイ、切る。今大事な話を盗み聞きしているんだから」

「知ってまぁす。ノエルちゃんこと、えるえるちゃんのお話ね。……貴方に預けるわ! じゃっ!!」

「おいこら待てババア!! 無責任にも程が――あ……」

もう店内はクローズ状態で、隣のテーブルに隠れて盗み聞きしているのに、こんな大声を出せば当然気づかれる。
練曲ネルやマール達に気づかれた俺は……>>233
233名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:30:25.51 ID:puwD0yBHP
アフロを被って変装だ!
234名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:39:44.58 ID:hcrXNh9F0
もう店内はクローズ状態で、隣のテーブルに隠れて盗み聞きしているのに、こんな大声を出せば当然気づかれる。
練曲ネルやマール達に気づかれた俺は……アフロを被って変装だ!

―― アフロマンとなった俺は、ネルから大体の話を聞かされる羽目となった。
そもそも、俺が魔王であるマールと関わった時点で、俺にも話をするべきだろうと考えたのだろう。

「地球は、狙われているッ!」

そんな台詞から始まったネルの話は、どこかヒーロー物に感化されたような内容であった。
要約すると、この星、アスワルドと下の世界から呼ばれる母体となる世界、そこが下の世界に狙われているらしい。
それを悟ったアルテナは、先ず大賢者であるネルティ・ネルシェイド――即ちネルネルに相談を持ちかけたそうだ。

「そして、地球を救う美少女戦士が立ち上がったのだ!」

先にこの世界に降り立ったネルネルは、アルテナと共に他の下の世界と接触を試みようとする。
しかし、まともに話を聞いてくれたのは、エルフが住まう世界、アーライラと呼ばれる所だけだったそうだ。

そしていよいよきな臭いと感じた二人は、自身の国の強者を集う事にした。それが、メルとマールなのである。
しかし、アルテナは密かに勇者アンまでこの世界に送りだした、というのがアルテナとの相違点であった。

「けどババア、マールもアンも、ついでにメルも、皆第二の人生がどうたらって話じゃなかったのか?」

『本音を言うとそうなのよぉ。でも、世の中って本当に厳しいものなのよぉ』

まだ通話中のババアに相違を質そうとすれば、彼女はそんな風に誤魔化しつつも、芋焼酎を煽り飲んでいる様子。

「つーかさ、神々が干渉できないって……思いっきり干渉されてるよなぁ? そこんとこどうなの、ババア」

『お酒飲むくらい許されるわよぉ。でも、乗り込んではい、支配、なんて事は協定で禁止されているの〜』

うん、訳が分からんとアフロのヅラを被り直すのと同時に思う事は、この女神アルテナというババアがどうにも食えない存在だと言う事。
何故自力で解決しようとしないのか。関係ない人間を巻き込もうとするのか。そして俺まで巻き込まれるのか。

そうして面倒くさくなったアフロ状態の俺は……何故か例のポイント、>>235に連れ去られる羽目となる。
235名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:43:27.71 ID:puwD0yBHP
第一級特異点
236名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:49:14.34 ID:hcrXNh9F0
そうして面倒くさくなったアフロ状態の俺は……何故か例のポイント、第一級特異点に連れ去られる羽目となる。
ちなみに、既にこのポイントに向かえと指令を出した大賢者様は、用事があると先にるんるん気分で帰っていきやがった。
どうせ帰って大好きな某動画サイトの生配信でもするつもりなのだろう。

「それにしても、此処って……地図が滅茶苦茶すぎて分からなかったけど……」

「どう考えても、此処って俺のアパートの裏手の公園なんだが……」

「ねぇねぇ、ダンボールがあるよぉ〜!」

ちなみに今回、アルテナがラッキョウにわざわざ包んでダンボールに押し込んだ訳ではなく、
アーライラのエルフ神と呼ばれる存在が佐川急便を介して配送したのだそうだ。

つうか佐川急便といい、ヤマト運輸といい、何者なんだよと心の中で突っ込む中、
恐る恐る俺とマール、そしてメルはそのダンボールに近づいていく。そして間も無く手を伸ばせば届くといった距離となった頃。

『ぐごぉ〜〜〜……ぐごぉ〜〜〜……』

「い、今……何か聞こえたぞ」

「わ、私じゃないわ秀様! 私のお腹じゃないから!!」

「明らかにダンボールから寝息が……というか、いびきが聞こえるけどぉ」

「……マール、メル、良いな、ラッキョウに備えるんだ。ダンボールを開けばラッキョウ、覚えておけ!」

二人とも意を決して頷き、俺がそのガムテープを剥がしダンボールを開くと……、>>237に包まれた少女を発見する事になる。
237名も無き被検体774号+:2013/04/16(火) 23:55:07.32 ID:nzm7u5dy0
魔界で最強と謳われた伝説の鎧
238名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:03:34.59 ID:yO+DHG5T0
二人とも意を決して頷き、俺がそのガムテープを剥がしダンボールを開くと……、魔界で最強と謳われた伝説の鎧に包まれた少女を発見する事になる。
その禍々しい鎧姿のエルフ少女は、とんでもないいびきを発しつつ、すやすやと箱の中で眠っているのだった。

「……なあ、この鎧は?」

「魔界で最強と謳われた伝説の鎧よ。その名も、伝説の鎧ッ!!」

「な、なんだと!? ……そのままじゃねぇか!!」

「それよりもぉ、何で魔界で用いられる鎧がエルフの娘に?」

「その辺りは彼女から直接聞けば分かるんじゃない? ……それにしても、どうやって起こせば良いの?」

「普通に叩き起こせば良いと思うよ」

「そんなの可哀想よ。秀様、せめて優しく囁いてあげて」


―― その頃、臨海市に再び事件は起きる事になる。警部補の来島元大は、これで六件目だと苦虫を潰したような顔をする。
そして、共に居た彼の部下となる佐伯小夜が、口元を押さえて胃からの逆流を堪えている。

「ったく、いい加減慣れろ」

「無理ですぅ、こんなの……おえっぷ」

「しっかし、どうすりゃこんな死に様になるんだ……?」

「よくある話じゃないですか? 異世界からの来訪者による仕業ですよ、これ!」

「んな訳あるか! とにかく検視に回せ。あぁ、また怒鳴られるぞこりゃ……」

その裏路地で倒れた女性は、>>239という様子となって絶命しているのである。
239名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:06:03.17 ID:reUwZd5Y0
頭部を何者かに食い殺された
240名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:15:02.42 ID:yO+DHG5T0
その裏路地で倒れた女性は、頭部を何者かに食い殺されたという様子となって絶命しているのである。
顔だけが完全に無くなり、首元は食い千切られ、大の字に倒されている。その付近は、当然のように血の海となっている。

「どうせ検死の結果も、前と同じなんだろうなぁ」

「だからケルベロスの仕業ですよ、大さん!」

「誰が大さんだ! ったく、お前はちゃっちゃと仕事しろ! 極力情報は漏らすな」

「は、はい!」

佐伯小夜がぱたぱたと走り去る中、別の刑事と話をする来島元大は、腕を組み唸るしか無くなっていた。
手掛かりも一切無く、深夜に出没するというこの事件の首謀者。手口は五件とも同様に、頭部だけ食い千切られ、失われた状態。
そもそも、その後頭部が何処へ向かったのかなんて、彼は想像すらしたくないと首を振る。

「佐伯が言ってる事がもし本当だとすれば、前代未聞なんてモノじゃねぇ。しかし、余りにも……」

「来島さん、上からです」

「……出よう」

彼は上官となる存在からの連絡が来ていると耳にした直後、考えるのを止める。これ以上思考しても無駄だと判断した。
最早偶発性に賭けるしかないのかもしれないと、どこか不安な気配に飲み込まれていくのである――。


―― エルフ娘、名をノエル・エルと言った少女に、何故か俺は抱きつかれて、マールに睨まれる最中にあった。
家に戻り、アンがまたゲームに興じる中、そのエルフ少女は俺が耳元で囁いた適当な愛の言葉を本気で受け容れていた。

「そうですか、天野秀と言うお方なのですかぁ……」

「そうだよぉー、よっ、我が家の大黒柱ッ!!」

メルはそこでまた重い一言をさらっと口にする中、エルフ少女ノエルは、俺と>>241を決意するのであった。
241名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:18:35.04 ID:1Kv2uvMmP
幸せな家庭を築く
242名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:24:58.93 ID:yO+DHG5T0
メルはそこでまた重い一言をさらっと口にする中、エルフ少女ノエルは、俺と幸せな家庭を築く事を決意するのであった。
そんな事を決意されても困ると嘆く中、マールが筆頭となり反対してくれるのである。しかし反論の仕方がおかしい。

「貴女! ちょっとエルフで銀髪だからって調子に乗りすぎよ! そもそも耳! なんで尖っていないのよ! 尖らせなさいよ!」

「今時耳を尖らせている純血エルフなんて、居ませんけど」

「な、話が違うじゃない! それにエルフと言えば金髪でしょう!? 金髪出しなさい、金髪!!」

「じゃあ髪染めます。銀なので染まりやすいと思います」

「そういう問題じゃないでしょう!? 金髪でもなく、耳も尖っていないエルフなんて、秀様のお嫁様として不恰好過ぎよ!」

「じゃあ、貴女なら良いんですか? 胸も冴えない魔王様なら」

「あんただって冴えないでしょうがっ!!」

「……秀さん、この人怖いですー」

「そ、そこで俺を巻き込むのか……!」

女神たるババアの話はこうだ。ノエルも養子に加えてね。それだけである。
残りの問題は姉である杏に押し付けておくと彼女は言っていた。その影響か、修羅場で姉からの電話である。
出たくない、しかし、色々と世話になっている事もあり、疎かに出来ないとノエルに抱きつかれながら携帯を手に取った。

『もしもし、秀、あんたまだ生きてるの?』

「何故そこで殺しに掛かるんだ」

『あんたのお陰であの女神、調子に乗ってるの。……いっそ死んでくれない?』

姉は……病んでいた。ちょっと手遅れの予感もする。そんな姉を優しい姉に戻すには、>>243しかない。
243名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:40:43.10 ID:reUwZd5Y0
本気で労働
244名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:48:29.75 ID:yO+DHG5T0
姉は……病んでいた。ちょっと手遅れの予感もする。そんな姉を優しい姉に戻すには、本気で労働しかない。
その意思を告げると、姉は先程のような邪険な態度から、言葉を詰まらせるような様子となっていた。

『あんた……本気……?』

「娘が四人に増えそうなんだ。あのババアのせいで、俺もとんだ迷惑だ。
 けど、だからといって今更誰かさんに預けて、なんて出来る訳無いだろう?」

『そんな甘い物じゃないのよ、養うって』

「……どうにかするさ。それに、これ以上姉さんに迷惑掛けられないよ」

『……秀、あんた、少しだけ変わったわね』

「そうか? 寧ろ変化が起きたのは俺のアパートだけどな……」

「秀さぁん、いつまでその女とお話しているのですかぁ〜、早く私に夜のお勤めを〜」

『……一つ聞くわ。あんた、良からぬ事をしてる訳じゃぁ……無いわよね?』

「馬鹿な! 俺はロリコンだが娘には手をださん、絶対にだ! ……多分」

『やっぱりこの子に預けるの、危険な気がするわ……』

―― 結局、姉は渋々ながらノエルという娘の件を了解してくれた。
同じ鶏鳴中に手を回す、なんて事を言っているが、どう手を回しているのかは謎である。

そうして、更に狭くなった部屋に俺が寝る場所はもう存在しない。押入れにある同人やフィギュア等を片付け、そこで押し込まれ眠る事になる。
そして朝、何度も呼び鈴が鳴り……寝ぼけ眼で応対しようと玄関の扉を開くと、お隣に住む刑事さんが、俺に>>245
245名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:53:04.34 ID:reUwZd5Y0
最近物騒だからと妙な事件を教えてくれた
246名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 00:59:33.72 ID:yO+DHG5T0
そうして、更に狭くなった部屋に俺が寝る場所はもう存在しない。押入れにある同人やフィギュア等を片付け、そこで押し込まれ眠る事になる。
そして朝、何度も呼び鈴が鳴り……寝ぼけ眼で応対しようと玄関の扉を開くと、お隣に住む刑事さんが、俺に最近物騒だからと妙な事件を教えてくれた。
何でも、報道規制が敷かれているというその事件を、何故俺に教えるのだろうと疑問に思い、尋ねる。

「あのー、すいません、教えてもらえるのは助かるんですが……報道規制されてるんですよね?
 なのに何故、そんな重要な話を俺に?」

「……隣のよしみって奴だ」

「よしみ、ですか……」

「正直、無差別的な犯行だ。男、女構わず……まだ六十代以上の犠牲者は出ていない。若いほど危険かもしれないってな」

「はぁ……、ともかく、気をつけます。それじゃ――」

「ちょっと待て」

俺がTシャツにパンツという姿で出てしまっていた為、早々に部屋に戻りたいと扉を閉めようとした。
しかし刑事さんはそれを制し、俺の目を覗き込むように見た後、こんな事を聞いた。

「……身に覚えは、当然無いな?」

「ある訳無いでしょう。……話を聞くに、食い千切られてたんでしょう? 俺にそんな事、出来ますか?」

「すまんな、どうにも性分でな……。もし何か分かったりしたら、教えてくれ」

その刑事さんはようやく俺を解放してくれるのだが、随分と疲れが溜まっている様子にも思えた。
ふと彼が部屋に戻るのかと視線で背中を追っていれば、そのまま外の方へ出て行ってしまう。これも仕事なのだろう。

その姿を見て、途端働く気が失せた。何故疲労が溜まり、睡眠も取れず、それでも働かなければならないのか。
うん、アルバイトで良いや、なんて気持ちとなって部屋に戻ると……>>247
247名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 01:12:07.25 ID:1Kv2uvMmP
嘘がバレないか心配になった
248名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 01:24:10.93 ID:yO+DHG5T0
その姿を見て、途端働く気が失せた。何故疲労が溜まり、睡眠も取れず、それでも働かなければならないのか。
うん、アルバイトで良いや、なんて気持ちとなって部屋に戻ると……嘘がバレないか心配になった。

身に覚えが無い訳が無い。アン、マール、メル、そして昨日この世界に舞い降りたエルフ少女のノエル。
こんな異世界からやって来た連中がこの部屋に居るのだ。そして、この母体となる世界は狙われている――。

「なんだ、この不安……」

それは、楽しい事ばかりじゃない。それは、辛い事だって招き入れる可能性がある。
アン達が俺の傍へ舞い降りて、楽しく生活する日々。それは、楽しい事なのだろう。
では辛い事があるとすれば何だろう。決まっている、こうして過ごす日々が壊される事だ。

―― 電話の主は、三百歳と一ヶ月を過ぎたババアであるが、見た目は二十歳前半のモデルとも見紛う女性である。
なのに私は見た目は子供、頭脳は大人、どこぞの名探偵のような姿となっている。

「こんな早朝にいったい何の用だ……、配信で徹夜なのだが……」

『ちょっとね、真面目なお話。……魔犬が、闊歩しているのは勘付いているでしょう?』

「調べろと? ならばもう掴んでいる。だが……背後の存在が見えないな」

『それなのよ。誰があの魔犬を放ったのか。あれは、神々の手で封印された恐ろしい存在。その封印を破れるのは神の手でしかないの』

「それを調べるのはお前の役目だろう、女神アルテナ」

『……それもね、困った事にね――』

リィンガルドが隔離された、という話を聞いたのはその際である。彼女が、他の下の世界を統べる神々の反感を買うことになったのだ。
つまり、彼女の行動が知られていた。それは当然であろうが、手を打つのが早すぎる。まるで準備されていたかのように。

『そういう訳で、元の世界に帰れないのぉ! 助けてネルネルちゃぁん!』

「……何処まで行っても駄目な女神……」

なのに話の焦点は結局戻れないから何とかして、という話となり、私は頭痛を覚えるのであった――。


―――― つづきます
249名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 01:26:32.39 ID:1Kv2uvMmP
乙乙
おー
250名も無き被検体774号+:2013/04/17(水) 01:26:43.29 ID:yO+DHG5T0
という訳で以上で終わります。0時過ぎたらやっぱり続けるの難しいのかなぁ。
ともあれ、お付き合いありがとうございましたー。

ぼちぼち一度スレ落としたい気もしますので、予約はちょっと遠めにしておきますん。


そろそろ新しい作家さんとか来ないかしら〜
251名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:02:42.98 ID:qxTFbcnh0
うっそだぁ、まだスレ生きてるなんて! 前は三日もあれば落ちてたよーな。
こうなったら1000目指して頑張る事にしましょう。そうしましょう。……いろんな意味できついなー。

ではもう暫くお待ち下さい。


ところでもって、今日のひつまぶしの大賢者さん。色っぽいロリ目指したら配色が濃くなったというオチ。あれれ〜。

http://muriyari4th.rash.jp/mngupload/src/mngup36.jpg ※画像はイメージ以下略。
252名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:11:20.29 ID:qxTFbcnh0
〜〜第五話までのてきとー登場人物紹介〜〜 >>216のコピペとも言う。

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。いつ本気になるの? 今でしょ。

【天野 アン】(アン・アンダルシア)
歴代最強勇者と名高い十二歳。気づけば凄い頑固な金髪ロリに。自分の存在に悩む三女。

【天野 マール】(マール・マルグリッド)
十三代目魔王となって間も無く現代に飛ばされた可哀想な娘。中々ツン度が上がらない次女。

【天野 メル】(メル・メルエッド)
魔王の付き人な魔法剣士ちゃん。天野家のムードメーカーであり、彼女が居なければ天野家は崩壊するでしょう。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。

【天野 杏】
主人公の姉であり、かつて十代目の勇者だった人。雑貨メーカーの主任で独身の二十八歳。

【練曲 ネル】(ネルティ・ネルシェイド)
チェリークロックで働くウェイトレス。結局本当に大賢者なのだそうです。アイス大好き二十歳のおばかさん。

【相田 沙織】
チェリークロック店長さん。女しか愛していない為男には非常に厳しい性格の持ち主。

【川下 浅海】
鶏鳴中学校の教師であり、アンの担任。美人ですがメイクが濃い為、男が寄り付かないようです。

【吾妻 仁】
ヤクザの父親を持つ中学一年生で鶏鳴中の番長君。アンに敗れて柔らかくなっちゃいました。

【七福 ことみ】
アンの同級生でちょっぴりメンヘラちゃん。彼女が出しゃばるのはもうちょっと後……だと思う……。

【三枝 瞳】
マールと同級生で大人しい女の子。そしてCカップに育つ予定の女の子。大事に育ててください。

【栄田 颯太】
マールに一目惚れしちゃった系の残念妄想男子。果たしてまた出番はあるのでしょうか。

【加々美 麗華】
メルと同じ女子高、聖アイリス学園に通うお嬢様系。本人もアイドル志望でメルを引っ張り込もうとしております。

【来島 元大】
主人公達が住まうアパートのお隣の刑事さん。今後度々に登場するようになります。

【佐伯 小夜】
来島の部下であり新米刑事さん。ファンタジー精神旺盛で、何でも不思議だと片付けてしまう駄目駄目さん。
253名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:11:56.15 ID:qxTFbcnh0
―――― 勇者なムスメ 第六話

天野家の夕食は非常に貧しい。どう貧しいかと言えば、お肉が滅多に食卓に並べないほどである。
それでも肉が食べたい時は、スーパーのセール中である豚肉か鶏肉を選ぶ事と、大黒柱に命じられている。

買い物から戻り、いざ台所で料理を進める中、お隣で皮が剥けないと嘆く魔王様がいらっしゃった。

「あぁ、もう! じゃがいもなんて燃やしてしまえば良いのに!」

「これ、皮剥き器がありますよ〜」

「そ、それよそれ! 貸しなさいッ! 魔王特製マッシュポテトの野望は諦めないわッ!」

何故か無駄に気合が入っている彼女だったが、最近実はあまり元気が無いのである。
それもこれも、勇者アンが最近様子がおかしいと、秀はいつも彼女に構いっきり。
そんな勇者様は、夕食時ですらパソコンでゲームに興じている。

そして、新たに我が家に住まう事になったノエルと呼ばれる少女もまた、読書に耽っているのだった。

「くぅぅ〜〜、なんですんなりいかないの! すんなりと――痛ッ!」

「だ、大丈夫ですかぁ? なんなら全部私がやりますけど〜?」

「こ、これくらいどうって事ないわ! 舐めてれば傷なんて治るもの!!」

どうしても秀に振り向いて貰いたいと頑張る健気な魔王様の為に、私も一肌脱いであげたいところなのだが、
台所からふと彼の様子を見ると、アンに構いっきりの秀はちょっぴりはしたない顔でアンとゲームの話をしているのだった。

「そう、そこだアン、その女性を脱がすんだ!!」

「……スリで身包み剥いでみた」

「まさに外道……、そして服を脱がされて気づかないNPC……、何かが間違っているが、それがいい!!」

なんだか見てると頭に来てしまう。なので、頭を冷やそうと>>254
254名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:16:35.67 ID:M0NIIPah0
とりあえず勇者の自覚があるのか聞いてみた
255名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:23:32.15 ID:qxTFbcnh0
なんだか見てると頭に来てしまう。なので、頭を冷やそうととりあえず勇者の自覚があるのか聞いてみた。
包丁片手に彼女の背後に立つ。流石に気配は感じているのだろう、そのまま、私に声を掛けるバカ勇者。

「メル、何か用? 私は今大都市全裸化計画で忙しいの」

「何が大都市よ、ゲームの中の話じゃん! 秀も遊んでないで手伝ってよぉ!」

「あ、まぁ、そうだな、あはは……」

「でも今回秀はいいや、いつもご飯用意してくれてるもん。けど……あんたは別だよ、アン」

「スリ成功、鍛冶屋のおじさんも全裸になった」

「聞いてるの!? あぁ、頭を冷やそうと思ったのに、余計に腹が立ってきたぁ!!」

もう、この右手に持っている包丁に氷の魔法を用い、このバカ勇者に突き立ててやろうか。
そんな勢いで彼女を睨んでいると、背後から私を止めようと、マールが割ってはいるのだった。

「ケンカは駄目よメル。晩御飯の支度しなきゃ、夕飯抜きになるわよ?」

「ぐぬぬ……背に腹は変えられない……でも、でも、魔王様、このバカ勇者だけはもう許せないッ!」

「あらあら、今日は随分楽しいのですね、皆さん」

「中途半端エルフは黙ってて!!」

「ふえぇ〜ん、秀さぁん、メルとかいうキ●ガイさんが虐めますぅ〜〜」

最早、この場はちょっとした対立状況が生まれていた。ゲームを邪魔されて苛立ち始めるアン。
そして、私が怒鳴って泣き付く振りをして、こちらを見ては舌を出しているエルフのノエル。
私を止めようと未だに必死となるマール。そして……それらを見て、本来仲裁する立場にある筈の秀は、>>256
256名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:24:50.96 ID:wZbzvYLkP
俺のために争わないでくれなどと意味不明の供述
257名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:32:16.12 ID:qxTFbcnh0
最早、この場はちょっとした対立状況が生まれていた。ゲームを邪魔されて苛立ち始めるアン。
そして、私が怒鳴って泣き付く振りをして、こちらを見ては舌を出しているエルフのノエル。
私を止めようと未だに必死となるマール。そして……それらを見て、本来仲裁する立場にある筈の秀は、俺のために争わないでくれなどと意味不明の供述。

私は今日、意を決する事になる。それを食事後、魔王様にこっそりと告げるのであった。

「……魔王様、家出しましょう」

「家出!? い、いきなりだけど、どうして……?」

「秀は分かっていません。魔王様の魅力を! それに魔王様、貴女もこのような場所に居て良い訳がないんです!」

「なんかメル、いきなりキャラ変わってない? ……何かあった?」

「……思う所はあるんです。その、アルバイトを探していても見つからなかったり……、一人しつこい女の子が居て、必死にアイドルになれと誘われたり……」

「アルバイトの話も初耳だけど、アイドルに誘われるって、凄い話じゃない。私は賛成よ」

「駄目ですよぉ! 私がアイドルになったら、魔王様のお傍に居られません〜!」

「ふふ、そう言ってくれるのは嬉しいわ。でも……、勿体無いじゃない」

「そうですか? 私は魔王様のお傍に居られる方が嬉しいです。それが人生ですからッ!」

アパートの部屋の外、私と魔王様は肩を並べて、星空を眺めつつ家出の話をしていた。そのつもりだった。
しかし今では私のアイドル話がメインとなっている。魔王様は折角なのだからと、私の背を押そうと説得するのだった。

だが、家出を切り出した理由は他にもある。どうも最近、臨海市と呼ばれるこの土地が臭いのである。魔物臭いと言うべきだ。

「魔王様、どうしても……家出する気はありませんか?」

「う〜ん、ないわね。私、今の暮らしも、今の人生楽しんでるし」

あぁ、十二代目魔王のギース様、どうして貴女の娘はこうも野心が無いのでしょう。
やはりあのバカ勇者を追い出さない限り、平和は訪れない。ならば私は魔王様の為に鬼になろう。そして魔王様に>>258してもらうんだ……!
258名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:35:02.86 ID:wZbzvYLkP
アイドルデビュー
259名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:43:01.65 ID:qxTFbcnh0
あぁ、十二代目魔王のギース様、どうして貴女の娘はこうも野心が無いのでしょう。
やはりあのバカ勇者を追い出さない限り、平和は訪れない。ならば私は魔王様の為に鬼になろう。そして魔王様にアイドルデビューしてもらうんだ……!

あれ、魔王様にアイドルデビューして貰うのが目的だったっけ。確かに今の暮らしは魔王様に相応しくない。
何より、秀がいけない。彼が魔王様に構わないから、魔王様が拗ねてお料理なんて始めてしまう。そして、その料理で殺されるのは秀である。

それくらい、魔王マールの料理は酷く、不味い。見た目がまだ食べれそうなだけ恐ろしいのである。
だからこそのメイドの役割でもあった私だった。魔王城の城内で、彼女を喜ばせようと必死にメニューを思案した時が懐かしく感じる。

「さぁ、外はまだ冷えるわ。中に入りましょう?」

魔王様は私の頭を背伸びするように撫でては、そう言って部屋の中へ戻っていってしまう。
そんな優しい彼女を守りたい。もっと良い人生を歩んで欲しい。ならば……アイドルだって有りじゃないか。

「よし、決めたッ! 私が魔王様をアイドルデビューさせるんだぁー!! ……でも、その前にアルバイトも探さなきゃ……」


私がアルバイト探しに右往左往する理由は、魔王様との夢の二人暮らし……というのも有った。
しかし、それ以上に今の暮らしが不遇過ぎる。秀がまともに働かないから、というのも一応知っている。

だが、それよりもこの世界の厳しさが問題であった。どれだけ働こうとも下っ端では賃金が釣りあわない。
そんな状況に身を置く秀は何を考えているのかと、今日も学校でこっそりアルバイト雑誌を眺めるのである。

「……あぱれる? 何なんだろう、この仕事……」

「服飾関係の事ですわよ」

「ぬおっ! カガーミンいつのまにッ!!」

「私は加々美ですわ! って、さっきからずっと居たのですけど……?」

私は彼女が苦手だ。なんと言うか、お嬢様なのだろうけど、>>260する特徴がある為だ。
260名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:45:28.83 ID:M0NIIPah0
中二病なうえ病弱で時折吐血
261名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:52:31.13 ID:qxTFbcnh0
私は彼女が苦手だ。なんと言うか、お嬢様なのだろうけど、中二病なうえ病弱で時折吐血する特徴がある為だ。
現役アイドルという訳でもない彼女、確かに美人さんと呼ばれる美貌を持つのだろう。しかし、私の前で見事に吐血して倒れそうになるのはどうだろう。

「ごほ、ごほ……し、失礼しましたわ。こうなれば、私の甘美なる囁きを持ってお詫びさせてくださいまし」

「どんな囁きなのさ! い、いいから、そんなの……」

「でも、私の血で、制服もこんなにしてしまって……」

「これも自分で何とかするから、ね?」

「いけませんわ! アイドルになるべく生まれた貴女を、私の穢れた血で汚してしまった……あぁ、神はなんと嘆くでしょう!
 良いですから、共について来て下さい。悪いようにはしませんわ……」

「いや、怖いから! その最後の言い方ちょっと怖いから!!」

「もう、そのままだと私の魔王の血が染み付いて魔物になってしまいますわ」

「……もう既にそんなモノなんだけどね……」

「はい? 何か仰いました?」

「いえいえいえ、何でも! 何でもないですヨー」

加々美麗華、彼女と出会ったのは私がこの女子高に転入し、二日後の事だった。
すれ違い様に突然の吐血、その血がやはり顔に掛かり、最初私もどう対処すれば良いのか戸惑った。

彼女は当然のように私にハンカチを差し伸べ、何度も頭を下げたのである。次第にこちらが悪い気がする程に。
でも、その時から彼女という人を知る。何度もすれ違い、吐血しては私に接触。そしてこうして話すようになったのだ。

意図的なる吐血ってどうなんだろう、なんて悩む中、彼女はやはり今日もアイドルへの道を薦めるのだった。

いっそ、魔王様を彼女に紹介してみようか、なんて考えた私は、>>262
262名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 22:56:05.64 ID:M0NIIPah0
とりあえず加々美の言う魔王について聞いてみた
263名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:02:24.57 ID:qxTFbcnh0
いっそ、魔王様を彼女に紹介してみようか、なんて考えた私は、とりあえず加々美の言う魔王について聞いてみた。
この世界はアスワルドと呼ばれる大元なる世界。リィンガルドの魔王だって素晴らしいのだが、この世界の魔王とはどのようなモノなのか。

「という訳で、興味が出ちゃった訳でぇ」

「え、ま、魔王について、ですか……!?」

「もしぃ、その話をしてくれたらぁ……アイドルの話もやぶさかでは無いんだけどなぁ」

「な、なんですって!? し、しかし……うぐ、ぐぬぬ」

「あれれ〜、もしかしてかがみん、考え無しに言っちゃった系?」

「そ、そんな事ありませんわ! 後、どこぞのツンデレ風に言わないで下さる!?」

昼休みの間、私は手作り弁当に箸を伸ばし、彼女の様子を肴とするのだった。
今も腕を組んで必死に思案している。もしかして本当に知識がないまま言ってしまったのだろうかと、哀れになってくる。
私が作った卵焼き、これを彼女の口元に伸ばせば……食べてくれるかな?」

「え、えぇぇぇぇっとぉぉぉ……パクッ」

「……悩みながら食べた……」

「もぐ、もぐ……そ、そうですわ! この攻め方で参りますわ!!」

「お、何か閃いた様子……?」

「……私の魔王の力、お見せしたいのですが、実は封印が施されておりまして、今日はお見せ出来ないのです。残念ですわぁ〜おほほほっ!!」

要するにMPが無いためイオナズンが唱えられない、的な発言をようやく思いついた彼女であった。
情けない、実に情けない。嘘でたらめを並べた挙句のこの台詞は、魔王マールを侮辱したと同義である。

よって、彼女は>>264の刑に処さねばならない。
264名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:04:11.24 ID:wZbzvYLkP
キャラ付け禁止
265名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:10:23.54 ID:qxTFbcnh0
よって、彼女はキャラ付け禁止の刑に処さねばならない。それを宣言してやると、彼女は四つん這いになって吐血した。

「ごほっ、ごほっ……、私から中ニ病を取ってしまったら、何が残ると言うのですの……!」

「あ、そのですの〜ってのも禁止で!」

「何ですのぉ〜〜! ……あ、コレも駄目でしたっけ」

「ついでにかがみんも禁止ね」

「だからそこはツンデレしてませんから!」

「そう? じゃあ魅羅ちゃんも禁止で」

「……そのキャラ、分かる人居ないと思いますよ」

―― キャラ付けを禁止してみると、ちょっぴりだけまともな女の子となった加々美麗華。
そんな彼女は、どうしてもアイドルの道を志すつもりは無いと断言する私に、消沈しつつも食い下がる。

仕方ないと、レストラン『チェリークロック』で、先ず私の相談に乗って貰う事になる。

「ファミレスですか、うん、嫌いじゃないのよ。嫌いじゃ……」

「好きでもないんだぁ?」

「そうですね、この空気が……苦手なのです」

「……キャラ付け止めたら、陰うっすいなー……」

「誰のせいですか、誰の!!」

そんな加々美麗華に、我が家の大黒柱の話をし、彼をとある少女に構うように仕向けるにはどうすれば良いかと相談すると……>>266
266名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:17:30.61 ID:M0NIIPah0
趣味を合わせればいいと言われた
267名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:23:57.32 ID:qxTFbcnh0
そんな加々美麗華に、我が家の大黒柱の話をし、彼をとある少女に構うように仕向けるにはどうすれば良いかと相談すると……、
趣味を合わせればいいと言われた。あっさりである。そして、このファミレスで働いているその男に目を向ける。

「アレ、趣味って何だろう……」

「アレって……、あ、あの人の事が好きなのですかッ!?」

「えー? 違うよ? 全然違うよ?」

「何故そんなに手を振ってオーバーリアクションなのですか? 怪しいですわよ」

「というか……あの人の家で暮らしてるんだ、私」

「ななな……なんですって!?」

そこで取り乱す加々美さんを眺めつつ、時折店員として働く秀に目を向ける。
彼は私が来ていることに気づいてはいるが、居なかった事にしようともしている。要するに恥ずかしいのだろう。

そしてその時、別の店員が目に入り……こちらに歩み寄ってくる姿が見えた。

「ほう、これはメルメルではないか。今日もお布施ご馳走様なのだ」

「あら、大賢者ちゃん、やっほ〜」

「……大賢者? ま、まさか、この伝説の大賢者メニューの考案者の……!!」

「そう、この私こそ大賢者、練曲ネルであーる!!」

何故か加々美さんは大賢者ネルネルを崇める中、どうやって秀の趣味を聞きだそうと思案する。
やはりここは、直球勝負で>>268という方法で聞き出そう。
268名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:28:49.37 ID:wZbzvYLkP
加賀見さんのおっぱいと交換条件
269名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:33:30.33 ID:qxTFbcnh0
何故か加々美さんは大賢者ネルネルを崇める中、どうやって秀の趣味を聞きだそうと思案する。
やはりここは、直球勝負でおっぱいという方法で聞き出そう。勿論今目の前に居る女を使ってだ。

「ネルネル〜、秀呼んできて欲しいんだけどぉ」

「ほう、魔王の下僕が大賢者ともあろうこの私をこき使うとな?」

「そこを何とかぁ〜。なんか避けられてるし」

「確かに知り合いに接客をするのを凄く嫌がるのがアレだからな……良いだろう、連れてこよう」

「さっすがでこネルちゃん、心も広いッ!」

「……後で元素地獄の刑」

凄まれた。ちょっぴり怖いけどどんな刑なのだろうと、ちょっぴり期待してしまう。
そうして私が秀を連れてきて欲しいと頼んだ結果、案外素直に、そして余りにも早く彼は大賢者ネルに連れられ、やって来た。

「な、何なんだよ、大事な話って……!」

「大事な話なのだろう、なぁ、メルメル」

「ネルネルとメルメルって似てるよねぇ〜ってお話なんだけど」

「下らん、俺は仕事に戻るッ! そして帰らせて貰うッ!」

「ごめんごめん! そうじゃなくって……趣味を教えて欲しいんだぁ! 交換条件は、そこの女の子のおっぱいで」

秀の前で加々美さんの胸に指差し、彼もまた彼女の胸を眺める中、加々美さんは>>270という反応を見せていた。
270名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:34:44.10 ID:M0NIIPah0
何故か見られ、触られているのにまんざらでもない上に興奮
271名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:42:04.06 ID:qxTFbcnh0
秀の前で加々美さんの胸に指差し、彼もまた彼女の胸を眺める中、加々美さんは何故か見られ、
触られているのにまんざらでもない上に興奮するという反応を見せていた。

「ねぇ、ネルネル……」

「何だメルメル」

「普通、胸触るって……本当に良いのか、なんて断りくらい入れない……?」

「何気に飢えているのだ、あの男は」

最早、二人の世界とも言っても良い。秀にいきなり胸を触られ、最初は戸惑い声を発した加々美さん。
しかし今では、その私よりも大きなバストを掌で転がされ、雌の顔となりつつもあるのである。
もしかして彼女、秀の事悪く思っていない? もしかして私、魔王様の邪魔をしてしまっている?

「あぁぁぁぁ、ふ、二人とも、もう駄目、そこまで!!」

「な、何だよ、お前が触っていいって言うから触らせて貰ってたのに」

「真顔で堪能すんなバカ! かがみんもだよ、何で女の顔しちゃってるのさ!!」

「し、してませんわよ!? か、感じてなんてないですわ!!」

「何気にキャラ戻すのも禁止ィ!!」

「それより、キミ、メルのお友達かな? 良かったら携帯番号の交換でも――」

「そこで携帯番号交換するのも禁止ィ!!」

―― 私は疲れた。どっと疲れてファミレスのテーブルに突っ伏した。
秀を今度は追い出す事に成功したのだが、なんと肝心の趣味を聞きそびれてしまったのだ。これでは意味が無いと、突っ伏した。
その間、加々美さんと練曲ネルがまた下らない話に興じているのである。

「ほう、そなた、アイドル志望なのか」

「そうなのです、こう見えても気高き魔王の血を継ぐ家系。アイドルになれない訳がないのですわ〜おほほほっ」

「成程な、そなたから感じる淫靡なる魔力……そなた、>>272か」
272名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:46:16.30 ID:M0NIIPah0
ただのアホ
273名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:46:25.47 ID:wZbzvYLkP
セイレーン
274名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:52:54.97 ID:qxTFbcnh0
「成程な、そなたから感じる淫靡なる魔力……そなた、ただのアホか」

「アホとは失礼ですわね、魔法は扱えませんし人体練成も出来ませんけども、これでも魔王の素質を持つ女ですわよっ!」

「だが、餌には使えよう……。そなた、折り入って頼みがある」

「私に、ですか?」

「……魔犬に興味はないかね?」

突然の練曲ネルの話に突っ伏してる場合じゃねぇ、といった勢いで飛び跳ねる。
そして隣に座るネルに突っ込んでしまう。一応私達はこの世界では正体を隠しているのではないのかと。

しかし彼女もまた、小声で私にしか聞こえないように呟くのだった。

「正直に言おう、彼女の言っている魔王の素質とやら、実は違うが嘘ではないのだ」

「でも、餌に使うって何さぁ!」

「今、世間では魔犬による人間虐殺が横行している。その魔犬は捕らえられようが、それを放った存在が未だに掴めていない」

「それで、彼女を巻き込むの!? 正体バレちゃうよ!?」

「記憶なんていくらでも隠蔽できよう? フフフフフ」

あ、だめだこの大賢者、おでこが光ってる。企んでいる顔をしているのが丸分かりだ。
とはいえ、魔犬が人を喰らうなんて話は初めて耳にした。最近妙に魔物臭いと思った理由は、恐らくそれなのだろう。

「あのぉ、二人とも何をお話して……ともかく、私の中ニ病――じゃなくて、魔王としての資質を試すのでしたら、受けて立ちますわ!!」

加々美麗華は、そうして練曲ネルの話を快諾してしまった。そして夜、彼女は>>275という格好をさせられるのである。
275名も無き被検体774号+:2013/04/19(金) 23:56:39.32 ID:wZbzvYLkP
全裸に亀甲結び(いわゆるチャーシュー)
276名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:06:14.18 ID:CEjTiZd+0
加々美麗華は、そうして練曲ネルの話を快諾してしまった。そして夜、彼女は全裸に亀甲結び(いわゆるチャーシュー)という格好をさせられるのである。
私には何故チャーシューと呼ばれるのか分からないが、ちょっと美味しそうだと感じたのも事実。

しかし、閉店間際とは言えど、店内でこんな事に興じれば、当然視線がこちらに集中するわけで。
最初こそ泣きべそかいては辞めればよかったと嘆く加々美さん、今ではちょっとした悪女のようにもなっている。

「ふふ、私の身体……もっと見てください、そして崇めなさい、素晴らしいと、そして、美しいと!」

「ネルネル、やりすぎじゃないの……? 大事な所は隠してるけどさぁ……放送出来ないよ?」

「ふふ、やはり彼女には資質があったようだ……。サキュバスとしての素質が」

「……見られて感じてるだけじゃないのさぁ」

「いずれ彼女の中で資質が成長して、男を虜にする実力を身につけよう。問題は……、病弱な事だな」

「アハハハ、男が見てますわ、馬鹿な男達がげほっげほげほぉ!! ……と、吐血しましたわ」

「逆に精気吐き出すサキュバスとか嫌だよ……」

加々美麗華が、サキュバスとしての資質を持つ。それは、案外アイドル向きだったのかもしれない。
そうして彼女は案外アイドルとして大成し、世間の男を虜にするのかもしれない。
だが、そんな資質を開花させた彼女が起こす騒動に、当然ながらヤツが反応しない訳が無かったのだ。

「ハァ、ハァ……盗撮、最高だわ……」

秀が携帯カメラ片手に加々美さんを激写しているのである。もう情けなくなり、私が消えてしまいたいと思うほど。
しかし、ネルは舞台は整ったと誰かにメールを送信した後、例のポイントへ向かおうと指示を出すのだった。

―― 第一特異点が秀の住まうアパートであるならば、第二の特異点も存在し、そこは臨海市の海沿いの倉庫が並ぶ場所だった。
灯りも乏しく、殆ど真っ暗な中、加々美さんを餌にして魔犬を誘き出そうとする作戦である。

大賢者曰く、ただの人間を喰らうわけではなく、力を持つ人間を嗅ぎ分け喰らっているらしい。
果たしてその大賢者の罠、簡単に乗るのだろうかと案じていれば……あっさりとそれは罠に引っ掛かった。

だが、これは犬というより……>>277ではないか。
277名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:07:39.93 ID:VUu63QtS0
首が3つのチワワ
278名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:12:26.89 ID:nuiwY4BpP
チワワは凶暴だぜ
279名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:13:42.19 ID:CEjTiZd+0
だが、これは犬というより……首が3つのチワワではないか。
それを、加々美さんはケルベロスと称し、私の背後へ隠れてしまう。確かにケルベロスなのかもしれないけど、チワワだし。

何だかやる気が起きないと思う中、そのチワワは可愛らしい鳴き声を発しながらこちらに歩み寄る。

「かがみん、怖がらなくても良いよー、これ、チワワだし」

「って、首が三つもあるんですのよ! どう見てもケルベロスですわ!!」

「突然変異かもしれないよぉ?」

「そんな訳あるもんですか! と、とりあえず……逃げましょう!?」

「うーん、折角だから餌でもあげていこうかな?」

「な、何故私を見ましたの、何故今ちらっと見ましたのぉ!?」

彼女を餌にするのも面白そうだが、練曲ネルの話では、頭だけをがぶりと噛み千切ってしまうらしい。
その凶暴性がこのチワワに存在するのかはともかく、肝心のネルは既にこの場から姿を消している。
第二特異点に来たのもその理由の一つであった。彼女は、裏で誰かが下らない遊びに興じていると判断し、その何者かを捜しに向かったのだ。

「犯行に及んで、チワワを特異点経由で元の世界に戻し、再び犯行に及ぶときは償還する……、随分手の込んだやり口だとは思うけど」

チワワはとうとう私の足元にまで迫ってきた。愛らしい鳴き声で私の懐柔を企んでいる。
しかし私も魔族の端くれ、そして魔王様の第一の部下。この程度の声色で、私が流されるはずが――――鳴き声に流された。

「……可愛い……」

「駄目です、手を伸ばしては! 食べられてしまいますッ!」

加々美さんの制止も聞かず、私はその三つ首チワワの頭を撫でようとしたその時>>280
280名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:16:52.66 ID:nuiwY4BpP
チワワに襲われた(性的)
281名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:26:02.53 ID:CEjTiZd+0
加々美さんの制止も聞かず、私はその三つ首チワワの頭を撫でようとしたその時、チワワに襲われた。
顔を舐められ、胸を服越しに舐められ、そしてもう一つの首は器用に私の腹部から下へ舌を這わせている。

「ひゃあっ!」

突然の出来事だった。手を噛まれるだろうと踏んでいた私は、手を魔法で硬質化させていた。
そして噛み付いてきたチワワに「掛かったな、馬鹿めッ!」と、ふんぞり返るつもりで居たのだ。

なのに、ひたすらに顔を舐められ、首筋まで舌を伸ばされ、胸元の突起を責めるように別の舌が伸び、
もう一つの首が舌を下着の生地を味わうかのように舐め取っているのである。

「天野さんッ!」

加々美さんが私の名を叫び、助けようと手を差し伸べようとする。しかし、それは伸びきらない。
三つ首のチワワ、ケルベロスの六つの眼に睨まれ、彼女はそのまま動きを止め、畏怖してしまうのだ。

無理も無い、戦う力もないのだから。けれど、私には戦う力がある。しかし……肝心の剣を持ち合わせていない今、氷魔法だけで戦うしかない。

「……いい加減、退いてよねッ!」

「グルルゥゥゥ!?」

加々美さんの前で、出来れば目立つような行為を行いたくなかった。まだ、チワワ程度なら突然変異なりなんなりで誤魔化せると思ったから。
しかし、自分の命を、魔王様に捧げたこの命を、こんなつまらない下種に差し出す義理は無い。
氷の息吹を身に塗し、周囲の温度を下げていく。それだけでこのケダモノを怯ませるには十分だった。

「加々美さん、今から見ることは……クラスのみんなには内緒だよっ」

「は、はい? なんだか聞き覚えのある台詞ですけど――」

もう既に、魔犬は氷の彫刻と化している。流石に驚いて、私を怖がるだろうと加々美さんに振り返ると……>>282
282名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:28:07.77 ID:VUu63QtS0
初めて見た魔法に大興奮し、自分にかかった封印が解けないことに嘆いていた
283名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:34:51.65 ID:CEjTiZd+0
もう既に、魔犬は氷の彫刻と化している。流石に驚いて、私を怖がるだろうと加々美さんに振り返ると……、
初めて見た魔法に大興奮し、自分にかかった封印が解けないことに嘆いていた。
やはり今でも、自分は魔王の力が在り、その封印が解けるのを待ち望んでいる、なんて設定なのだろう。

「あぁ、魔法は存在した! 魔物も、魔族も、そして魔王も! 魔法少女だって負けない力が、私にもきっと在るのですわぁ!!」

「……凄く、興奮してる……。あ、あのね、加々美さん?」

「フフフ、天野さん、貴女のお陰で目を覚ませたわ。……私は、アイドルとして魔王にげほげほげほ」

「吐血しながら喋られてもぉ……」

それよりも、大賢者のネルネルちゃんは何処まで行ってしまったのだろう。
今回の事件がこのチワワケルベロスだったとして、裏からそれを操る首謀者を見つけ出すことが出来たのだろうか。
念のため、連絡でも入れてみようかと携帯を取り出したところで、聞き覚えのある声が背後からするのだった。

「やれやれ、今回は出番無しね。折角呼ばれたと言うのに」

「ま……魔王様……じゃなくて、マール!?」

「そう、私は魔王様じゃなくてマールちゃん。……で、そこの変態女子はどなた?」

「自称魔王のかがみんさん」

「おほほほ、私こそ美の魔王として相応しいのですわぁぁぁげほげほげほ」

「吐血してるんだけど……?」

「そういうキャラなんです……」

マールは、練曲ネルにメールによってこの場所に呼び出されていたらしい。内容は、私の貞操がピンチだから急いで駆けつけるように、だそうだ。
確かにちょっぴり貞操が危うかったのも事実。チワワケルベロスの涎まみれとなった私を見た魔王マールは、>>284
284名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:40:32.86 ID:VUu63QtS0
あまりこういう事態に慣れてないらしく失神
285名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:42:17.04 ID:nuiwY4BpP
写メって秀に転送
286名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:47:00.11 ID:CEjTiZd+0
マールは、練曲ネルにメールによってこの場所に呼び出されていたらしい。内容は、私の貞操がピンチだから急いで駆けつけるように、だそうだ。
確かにちょっぴり貞操が危うかったのも事実。チワワケルベロスの涎まみれとなった私を見た魔王マールは、あまりこういう事態に慣れてないらしく失神。
何故今気づいて、今倒れたのだろう、と苦笑い。しかし、これも魔王様の魅力なのだと、彼女を抱きかかえる。

「ところでその娘、何しに現れたのかしら」

「一応私を心配してくれたみたい。大事な妹なんだ」

「あら、妹さんだったの……。余り似ていませんわね」

「し、しょうがないじゃん。血は繋がってないしぃ」

「あら、私としたことが少し立ち入りすぎましたわね。お詫び致しますわ」

「それより、ネルネルが帰ってこないけど……ま、いっかぁ、帰ろう!」

「私、この亀甲縛りのまま帰らないと……なんでしょうか……」

「……さらばっ、かがみんっ!!」

「ああっ、先に行かないで、逃げないで下さいましぃぃぃ――――!!」


そういえば、チワワケルベロスも氷漬けのまま、加々美さんも放置したまま家まで戻ってきてしまった。
それもこれも、私が涎で汚されただけで失神してしまう、うぶな魔王様のせいという事にしておこう。

「あら、お帰りなさい。……臭いですよ」

どうにも好かないエルフ娘、ノエルに邪険そうに言われ、魔王様をベッドへ寝かせた後、私はシャワーを浴びる事に。
一先ず、大賢者の依頼は解決したし、後はアルバイトの件と……秀の趣味を聞き出さねば。

とはいえ、肝心の秀の姿が無いと不思議に思う。風呂上り、やはり読書に耽るノエルに尋ねてみると、>>287
287名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:50:08.92 ID:nuiwY4BpP
ずっとお風呂じゃなかったんですか?
288名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 00:56:09.07 ID:CEjTiZd+0
とはいえ、肝心の秀の姿が無いと不思議に思う。風呂上り、やはり読書に耽るノエルに尋ねてみると、
「ずっとお風呂じゃなかったんですか?」なんて妙な風に返されてしまう。

「いやいや、だったら私お風呂に入れないでしょうがぁ!」

「だから思ったんです、なんていやらしい女、不潔だと」

「わ、私が秀と一緒にお風呂に入る訳ないじゃんかぁ! あ、ありえないっ!」

「その割には顔が真っ赤ですね。……でも、彼は私のものですから」

「何をさらっと恐ろしい事を……。ねぇ、そこのバカ勇者は見ていないの?」

「ゲームで忙しい。……ソリチュード全裸化計画、大成功……」

「……起きて学校行って帰ってゲームの暮らし、楽しいの?」

「最高……」

「駄目だこの勇者、もう何ともならない……」

魔王様は相変わらずすやすやとお眠り中。朝まで起きそうにない気配。
そして、ノエルは秀はお風呂に入ったなんて勘違い。バカ勇者は最早アテにもならない。
恐らく出掛けたのだろうと、私はのんびりと座して待つことにしたのだが、その後、秀から連絡が入る事になる――。

―― 加々美さんと名乗ったJKの裸体を拝むべく、俺は臨海市の放棄された倉庫までやって来る。
しかし途中で彼女達を見失い、それでも尚加々美さんを捜し、そして胸をもう一度だけ揉ませて欲しいと願う気満々だったのだ。

だが、俺が見つけたのは砕けた氷塊、そして血だらけで横たわる練曲ネルの姿だった。

「おい、ネル、しっかりしろ、ネルッ!!」

「……しゅ、う……、きを、つけ……、>>289が……!」
289名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:03:46.08 ID:nuiwY4BpP
加賀見
290名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:12:38.60 ID:CEjTiZd+0
「……しゅ、う……、きを、つけ……、加賀見が……!」

「加々美? 加々美さんがどうした! まさか……殺されたのか……!?」

「やつじゃ、ない……、魔犬、を、あやつ……る……」

「魔犬って……! お、おい、ネル、しっかりしろ、ネルッ!!」

加々美さんではなく、別の苗字を語ったネルは、僅かに呼吸はしているが、放っておいては出血死しかねない。
それ程にまで身体中を切り刻まれ、肌だった部分が判らないほどであった。
救急車を呼ぶべきか。いや、しかしそんなのを呼んで大丈夫なのだろうか。もう頭がぐちゃぐちゃになった俺は、メルに電話をしていた。

『はぁ!? なんで秀がそこに居るのさ!!』

「とにかく、ネルが大変なんだ! 血塗れで死にそうなんだよッ!!」

『死にそうって、そんなに不味いの? ……え、うん、分かった……』

「おい、メル、どうすれば良いんだよ! 教えてくれよ!!」

『家に連れ帰って。ノエルが診てくれるって言ってる……』

ノエル・エル。エルフの世界からやって来たマールと同世代の少女。その少女が診てくれると言っている。
大人しく救急車を選ぶべきか、博打を打つべきか、悩んだ末に俺はノエルの存在に賭ける事を選んでいた。
これが外れれば、練曲ネルは死んでしまう。今も抱きかかえる中、こいつの温もりは消えて無くなろうとしているのだ。

―― 彼女は、俺よりも後にチェリークロックの職場に就いた。その態度は、皆から反感を買うほど悪く、自惚れていた。

「私が皿洗いなんて馬鹿な事出来る訳無いだろう!」

そう言って彼女の就業初日、突然俺にそう言っては皿洗いを放棄。怒った俺は>>291をした覚えがある。
291名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:34:26.79 ID:CEjTiZd+0
寝落ちしそうだし、誰も居ないみたいなので取っちゃいます

はいぱーでこぴんくらっしゃー
292名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:36:00.01 ID:nuiwY4BpP
デトロイトスペシャル
293名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:44:04.00 ID:CEjTiZd+0
そう言って彼女の就業初日、突然俺にそう言っては皿洗いを放棄。怒った俺ははいぱーでこぴんくらっしゃーをした覚えがある。
ただのデコピンではない、中指と人差し指を引き絞り、そのまま拳を突き出した後に追い討ちを掛けるのだ。

要するに額を殴ったようなものであった。彼女は謝罪と賠償を請求した。あまりにしつこかったので、アイスを奢ってみる事に。
アイスを間近にしたネルの顔は、まるで子供のようだった。アイスの存在を知らないような素振りすら見せていた。

「こ、この味は……、どの叡智にも勝る濃厚かつさらっとして、とろける味わい……!!」

「どんだけ美味さを語ってんだよ。まぁ、61アイスクリームは特別だからな」

「ううむ……、美味しい、これは美味しい! ……もうちょっと謝罪と賠償を請求したいな」

「ちらちら見るな! ……これで真面目に働いてくれるなら、手を打とう」

思えば、あのバイト先で一番話をして、そして仲が良い人間は誰かと言われれば、彼女であった。
他の面々とは所詮上辺だけの付き合いなのかもしれない。そいつ等が普段何をしているかなんて話は一切した事が無い。
しかし、ネルだけは違った。彼女自身が遠慮なんて知らない存在だった為、俺のプライバシーは侵害されまくりなのである。

だが、こいつと働くのは楽しかった。案外、俺があの店を辞められない理由は、この練曲ネルの存在が大きいのかもしれない――。

―― ネルは、今ではマールの隣で心地良い寝息を立てている。
まさか、この世に本当に回復魔法なんてモノが存在するとは思ってもいなかったと驚愕するのと同時に、安堵もする。
ネルが助かった。それだけで、涙が溢れそうになっていた。しかし、その立役者ともなったノエルが、今度は辛そうに呼吸する。

「回復魔法……ヒールバーストは、少々私には堪えますね」

「爆発するのかよ!!」

「他にも、ヒールフレアやヒールメテオもありますよ。……ヒールメテオなんて使った日には、私は恐らくこの世に存在しませんが……」

魔法名はともかく、彼女は回復魔法を用いると、消耗が大きく、命を削る行為なのだと説明した。
だがお陰で助かったとノエルを労うと、彼女は彼女でそのまま眠るように目を閉じるのだった――。


―――― つづきます
294名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 01:49:50.78 ID:CEjTiZd+0
30分くらい待ってみようと思ったら寝落ちしそうだったので、取ってみたらその後で安価が付いていた。
訳が分からないなんてモンじゃない、もっと恐ろしいもののなんちゃら。

という訳で、安価取ってくれる人も作者として活躍してくれる人も当スレでは大募集なのです。
なんて宣伝でもしつつ、お付き合いありがとうございましたー。


【04/20 (土) 01:45時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/20 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第七話 『魔王と演劇部と栄光と』



あまり人居ないから、譲り合わなくてもいいと思うんだ……。
295名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 02:10:44.77 ID:nuiwY4BpP
ああ
乙乙ー乙
296名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 20:55:49.32 ID:CEjTiZd+0
ぼちぼち、一度テンプレ貼り直しでもした方が良いんでしょうか。

なんて思いながらもちょっと面倒くさいなぁーってなったりする訳です。よくある話です。
そんな訳で、もう暫くお待ち下さい。


まだ300程度なんて先は長いっす。
297名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 21:02:26.43 ID:CEjTiZd+0
〜〜第六話までのてきとー登場人物紹介〜〜

大体一緒だから>>252を見てね!


〜〜じゃあこれまでのあらすじを三行で〜〜

異世界からロリ娘が一度に三人もやって来たせいで、人生詰み掛け二十六歳変態は人生を見つめ直す羽目に。
それでも染み付いたニート根性は直らずも、だらだらと働く日々。そしたら娘がもう一人増えていました。
娘達もそれぞれと問題を抱え、住んでいた世界毎巻き込まれつつも、現状打破の為に何とか歩んでいく、そんなよく分からない物語。


三行で解説できてしまう悲しみ。
298名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 21:11:34.41 ID:CEjTiZd+0
―――― 勇者なムスメ 第七話

春、桜が咲く時期は過ぎ去り、五月となったところで、大型連休と呼ばれるものが、この世に存在する。
人はそれを、ゴールデンウィークと呼び、プチ春休みと例える人も居れば、連休なんてねぇよ、と叫び働く人も居る。
連休数だって人によって違うものでもあるらしい。まだこの世界にやって来て一年目の私にはよく分からない。

だがしかし、こんな天気の良い日にだらだらと家の中に篭っていても仕方が無い。
私は皆を連れ出すことにした。勿論大黒柱である秀様も一緒であり、彼は折角の休みがと愚痴を零しつつも、私に腕を引かれるのである。

「秀様、お買い物とかどう?」

「ふわぁ……、買い物なら四人で行ってきなさい、俺は眠い……」

「こんなに天気が良いのに、篭ってるなんて勿体無いじゃない! ね、メル!」

「実は私も……ちょっぴり……ねむひ……ふわぁ」

私の僕でもあり、今では姉とも呼べる存在となったメル、彼女は大賢者の練曲ネルが大怪我を負い、今でこそ元気そうに振舞うようになったのだが、
その際数日アルバイト先であるチェリークロックをお休みする事になってしまう。
忙しい中での欠員は芳しくなく、そこでギリギリ十六歳として誤魔化せる年齢である彼女は、秀様と一緒に働くようになったのである。

勿論彼は反対した。が、ネルも、そして姉であるメルも乗り気となり、彼女はチェリークロックの一員となるのだが……、
意外とお仕事が忙しいらしく、彼女は最近常に眠そうにあくびをするのであった。

そして振り返れば、繁華街までやって来たのに文庫本ばかりを見るエルフ娘、ノエル。
その隣に、携帯ゲームを涼しい顔で夢中となる勇者アンの姿がある。

どいつもこいつも、折角の晴れた日のお買い物を満喫しようとしてくれないと憤慨した私は、>>299
299名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 21:41:38.43 ID:CEjTiZd+0
ふえぇぇ誰も居ないから進められない\(^0^)/オワタ ↓
300名も無き被検体774号+:2013/04/20(土) 22:01:21.21 ID:CEjTiZd+0
流石に自分で安価取って進める訳にもいきませんし、明日辺りにまた出直すことにします…。
301名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 20:44:13.65 ID:9AgRK7quP
テスト

【04/20 (土) 22:02時点でのタイムスケジュール】
04/21 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 土曜日誰も居なかったので仕切り直しで
302名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 20:54:29.54 ID:PPD4MhcqP
始まってた!
終わってた!!
303名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:02:07.59 ID:PQWbeKJP0
〜〜昨晩の わたしさん〜〜

21時頃 「ふっ、金曜の後の土曜日ならば人は来るだろう。予定通り進めさせて貰おう!」

10分後 「ふっ、まだ皆気づいていないようだ……、仕方があるまい、ビスコでも食べながら待たせて貰おう」

20分後 「ふっ……、その内誰か気づくさ、誰か……。ビスコが残り少ない……」

40分後 「まだだ、まだ終わらんよッ! 動画でも見ながらポッキー食べよう……」

1時間後 「もう無理ィィ!! ソブンガルデに行って来るんだもん! もう知らないんだもん!!」

3時間後 「……久々のTERAでエリーンちゃん可愛いでござるwwwwげふぅwwwwww」


という訳で仕切り直しで……ってこんなパターン初めてなので、>>298の安価再指定で>>304でお願いします。
304名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:04:27.00 ID:9AgRK7quP
近くの柱に八つ当たり
305名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:05:48.23 ID:PPD4MhcqP
編みぐるみの製作に没頭
306名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:11:33.56 ID:PQWbeKJP0
どいつもこいつも、折角の晴れた日のお買い物を満喫しようとしてくれないと憤慨した私は、近くの柱に八つ当たり。
電柱をぶん殴り、それでも腹立たしさは収まらず、電柱にヘッドバッドをくれてやると、それは真っ二つに折れてしまう。

それでも秀様以外は気にしてくれない天野家の連中に、更に苛立ちを募らせてしまうのだった。

「お、おい、マール、お前……そんな暴力的だったか?」

「だって、こんな良いお天気で、お買い物を……ぐすん」

「アンはゲーム、ノエルは本、メルは……歩きながら寝てるな。まぁ、メルは仕方が無い、あの人のスパルタ特訓が効いているからさ」

「スパルタって? そんなにあそこのお仕事、厳しいものなの?」

「うちの店長、メルを随分気に入ったからなぁ。ネルネル以上の好感度だな、ありゃ」

「ふふ、流石は私の僕。大賢者様を越える程の好感度を得るなんて。……って、そんな事はどうでもいいのっ!!」

「うぉ、笑ったりキレたり忙しいなお前!」

「私は、このごぉるでんうぃーくとやらを満喫したいの!!」

それでお買い物なのかと呆れ顔の秀様である。しかし、他にこの休日を楽しむ方法を私は知らない。
クラスメイトの三枝さんは、何でも祖父の家に戻るとかお話していた。栄田君は……割りとどうでも良かったので聞いていない。

「GWの楽しみ方、ねぇ……」

「そう、GWの楽しみ方! ならではっていうのは無いものなの?」

「GWならではと言えば……>>307
307名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:13:14.25 ID:PPD4MhcqP
家族で温泉旅行……とか
308名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:18:41.88 ID:PQWbeKJP0
「GWならではと言えば……家族で温泉旅行……とか」

「温泉なら知ってるわ! 皆で裸のお付き合いをするのよね! それは良いアイデアだわ!!」

「乗り気になるのは良いが、マールよ、よく聞け。……予算が無い」

「……よ、予算が……ない……!?」

我が家の大黒柱でもある秀様の発言は、私に衝撃を与える事になる。
予算、つまる話お金、それは我が家を苦しめる存在であり、それが無いとパン一つも買えない恐ろしい存在。
私の元居た世界、リィンガルドの通貨であるゴールドよりも価値が重いと感じられるそれが、また再び私の前に立ち塞がったのだ。

「つう訳で、家族で温泉旅行は無しな」

「そんな! 秀様、何とかならないのッ!?」

「涙目で訴えられてもなぁ……」

秀様は困り顔で頭を掻く素振りを見せる。そして、アンは相変わらずゲームに夢中であり、メルもまた、あくびの連続。
二人とも温泉旅行に興味が出ないなんて、何の為にこの世界で第二の人生を過ごそうと言うのか、とまた憤慨しそうになった時、
ノエルが本を片手にこちらを見て、こんな事を言うのである。

「お金が掛からずに温泉を楽しむ方法、ありますよ」

「ノエル、お前、まさか……ッ!」

「そう、そのまさかです」

ノエルが提案したその場所は、スーパー銭湯と呼ばれる場所であった。そこでは、>>310が有名であるらしい。
309名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:19:15.53 ID:PQWbeKJP0
ジェット噴射式コーヒー牛乳
310名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:21:13.02 ID:9AgRK7quP
アルティメットフジヤマ
311名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:21:27.09 ID:PPD4MhcqP
東京ドームの広さを誇る混浴風呂
312名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:28:28.83 ID:PQWbeKJP0
ノエルが提案したその場所は、スーパー銭湯と呼ばれる場所であった。そこでは、アルティメットフジヤマが有名であるらしい。
何だろうそれはと、胸をときめかせていたのは私だけ。アンもメルも、そしてスーパー銭湯を提案したノエルもまた、素の顔で電車に揺られている。

メルはともかく、どうして彼女達はこんなにもこの世界にときめかないのだろう。もしかして、心だけ老人なのだろうか。
こんな娘達を、演劇部に入れてしまって良いのだろうかとも苦悩する羽目となる。

―― 演劇部の元顧問である田口先生は、もう廃部になるんだからと顧問を下りていた。
ならばと、私は何度もアンの担任でもある川下先生に頭を下げる。そして彼女はとうとう折れてくれた。

「仕方ないわね……、分かりました。でも、テニス部の顧問もしているから、そちらがメインになってしまうけれど、それでも良い?」

「は、はいっ! ありがとうございます、先生!!」

「ふふ、そんな風に笑顔でお礼を言われると、何も言えなくなっちゃうわね。でも……演劇部って、部員、居ないでしょう?」

「それはまぁ……これから集めます!」

「皆、嫌がるかもしれないわ。でも……その意気込みガあればきっと大丈夫ね」

川下先生はそう言って私を送り出してくれたのだが、勧誘作業は正直捗っていなかった。
転入して間も無くの私が勧誘する事で、皆は話こそ聞いてくれたのだが、口を揃えてこう言った。

「「あの演劇部じゃあ……」」

演劇部は、かつて相当の人数を擁し、鶏鳴中でも随分を名が知れた部であったそうだ。しかしそれも十年以上前の話。
今となっては完全に廃れたその部は、部員も幽霊部員が一名。その部員すら、部を辞める決心をしているらしい。


――スーパー銭湯の中は広く、様々なお湯が楽しめる。その脱衣所となる場所で私が演劇部の話で悩んでいると、ノエルが私達を一瞥した。

「……皆、下着……真っ白ね」

「それがどうしたのよ、ノエル」

「……お買い物、下着を買いに行きましょう。私は>>313が良いですね」
313名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:32:20.17 ID:PPD4MhcqP
葉っぱ
314名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:35:41.97 ID:hn742WJs0
葉っぱ……だとっ?
315名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:37:16.29 ID:PPD4MhcqP
エ……エルフだしっ!
316名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:38:35.62 ID:PQWbeKJP0
「……お買い物、下着を買いに行きましょう。私は葉っぱが良いですね」

「葉っぱなんて、リィンガルドでも下着にしてる人居ないけど……」

「アーライラでは緑が豊かな世界なので、割と普通です。……破廉恥な目で見ないで下さい」

「そ、そんなつもりで見てたわけじゃないけど……。そういえば、アンはどんなの履いてたの?」

「……履いてない日のほうが多かった」

「服脱ぐ時くらい、携帯しまいなさいよ……」

何気にアンはとんでもない発言をしつつも、携帯でゲームに夢中となっている。
一方、ノエルは葉っぱの下着と決めてる割には、どんな葉っぱにしようかと耽っているのであった。
葉っぱなんてどれも一緒だろうと思いつつも、ふとあくび交じりのメルを見てしまう。

「ふわぁぁ……、お風呂、面倒くさいよぉ……」

「メル、貴女スタイルは良いんだから、汗臭かったら幻滅されるわよ?」

「ふえぇ、だってぇ……くたくただし、眠いし……」

「あのアルティメットフジヤマを見なさい。ほら、元気出てこない?」

「……おぉぉ……、な、何あれ、凄い……大きいです……」

アルティメットフジヤマ、それは湯船となっていた。このスーパー銭湯の名前もスーパーフジヤマだけに、それが売りである。
この湯船を見つけたメルは、子供のように全裸となってはアルティメットフジヤマにダイブするのであった。
そして、周囲の幼女達に混じり、水掛け遊びに興じるあの娘を見て、ちょっぴりほっとする。

「メルは、不思議な娘ですね」

ノエルがそう呟いた。そしてふとノエルという娘の胸元を見て、>>317
317名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:43:51.51 ID:9AgRK7quP
それから1時間ほど記憶が無い
318名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:48:54.48 ID:hn742WJs0
な、何が起こったんだww
319名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:51:55.12 ID:PQWbeKJP0
ノエルがそう呟いた。そしてふとノエルという娘の胸元を見て、それから1時間ほど記憶が無い。
アン並に小さいなんて思ったような、そしてぷっと笑い出してしまったような気もするが、それも曖昧である。

あれ、どうしたんだろう、なんて漢方温泉と呼ばれるお風呂に浮かんでいた私は、メルを見る。
何故かアルティメットフジヤマは凍りつき、メル以外の幼女は追い出され、彼女だけがフジヤマを登頂していた。

「あの子、氷魔法使ったわね……まったく」

そして今度はアンを捜してみる。が、この場に姿は見られない。まさかゲームしたくてもうお風呂から出たのだろうか。
ついでに記憶を飛ばしてくれたであろうノエルの姿を捜そうとする。彼女はバブル温泉と呼ばれる所でまた本を読んでいた。

「ノエル、貴女こんな所まで本なの? 本が濡れるわよ?」

「防水仕様なのでご安心下さい。記憶の方は大丈夫ですか?」

「え、ええ……まだハッキリ思い出せないけど、特になんとも無いわ」

「それは良かったです。……一年あれば、貴女に勝ちます、覚えておいてください」

「な、何の話か分からないけど、私も一緒していい?」

「……どうぞ」

ノエル・エル、彼女もまたこの世界に佐川急便で送られてきた少女である。ちなみに、私はヤマト運輸で送られたそうだ。
私やアン、そしてメルは第二の人生を、という名目でこちらに送られてきたのだが、実は違う。
女神アルテナの意図には、この世界を守り通すガーディアンの役割を私達に担わせた。その話を、大賢者ネルから伝えられ、その時は僅かながらもショックを受けた。

だが、ノエルもまた同じ役割を持つ筈なのだが、彼女がどうにも掴めないでいる。
秀様に寝起きの際に愛を囁かれ、彼に夢中ではある様子。しかし、普段は常に本を読み、他人と接触しようとしないのである。

それは、学校でもそうだった。彼女が私のクラスに転入した際、栄田君がこの世の春が来たと泣き叫んでいたが、
彼女の態度は冷たく、早速口説き落とそうとする栄田君に、>>320
320名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:53:44.79 ID:hn742WJs0
1万3千冊の魔導書をインストール
321名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:54:08.11 ID:PPD4MhcqP
栄田くんバグるで
322名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 21:59:32.63 ID:PQWbeKJP0
それは、学校でもそうだった。彼女が私のクラスに転入した際、栄田君がこの世の春が来たと泣き叫んでいたが、
彼女の態度は冷たく、早速口説き落とそうとする栄田君に、1万3千冊の魔導書をインストール。彼はインデックス化する前に倒れたのである。

一般人にそんな事覚えさせる方がおかしいと私はその時ノエルにお説教したものだが、彼女は涼しい顔で読書に耽るだけだった。

「ねぇ、貴女って……この世界を護る為に来たのでしょう?」

「まぁ、それもありますね。正直どうでも良いんです……そんな事」

「だとすると、他にも何か、理由があるのね?」

「魔王、例え貴女が強大な力を持とうとも、関係ありません」

「家族なのに、冷たいのね……」

「家族だからこそ、言えない理由があるって、格好良いと思いません?」

「……ラノベ読みすぎよ、貴女」

ノエルはもう一時間程、バブル温泉で本を読んでいる。その隣で、どうにも冷たくあしらわれる私は、
どう彼女を演劇部に入部させようかと、横目で睨みずっと考えていた。

この際、ストレートに入部を頼んでみようか、と思い立った矢先、彼女が先に本を閉じて立ち上がる。

「私にずっと付き纏って……、いったい、何の用件なのですか?」

「家族なんだから、一緒に居てもおかしくないでしょ?」

「でもその目、何か企んでますよね。……その赤い瞳、余り好きではありません」

「随分じゃない。じゃあ、今、此処で、貴女に用件を言うわ。……演劇部に入部しなさいッ!!」

ノエルは私をじっと見た。その顔色は、こいつ何言ってるの的な冷たすぎる表情とも取れる。
そして、私が彼女を演劇部に入部させる企みは……>>323
323名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:02:29.46 ID:eKH8XNLh0
弓道部に既に入ってると言われ崩れた
324名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:03:27.51 ID:hn742WJs0
企みは……たくらみ……え?
325名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:04:46.05 ID:PPD4MhcqP
Ohエルフ
326名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:05:14.28 ID:hn742WJs0
>>323
orz
327名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:09:27.91 ID:PQWbeKJP0
ノエルは私をじっと見た。その顔色は、こいつ何言ってるの的な冷たすぎる表情とも取れる。
そして、私が彼女を演劇部に入部させる企みは……弓道部に既に入ってると言われ崩れた。
何時の間に、と私は絶叫する。すると彼女は、転入早々誘われたと、何故か手を腰に当ててふんぞり返っていた。

やはり私にはノエルが分からない。そして、これでは演劇部復興が遠退いてしまう。
何とかノエルを弓道部から演劇部へ転部させようとしたが、この時は結局成果は実らなかったのである。

―― ランジェリーショップと呼ばれるお店が、この世界には存在する。
そこは、私達のような世間的には子供と呼ばれる年齢の娘も、そして大人の女性も様々が闊歩する大規模な店。
そこで、メルは物珍しそうに色んな下着を手に取り、私に合わせようとしていた。

「魔王様、こんなのが似合うんじゃないかなぁ!」

「って、殆ど紐じゃない! 後、お外で魔王様禁止!」

「だって……マールって呼び捨てにするの、恥ずかしいし……」

「なんで貴女が照れるのよ! 後こっそり紐を履かせようとしないッ!」

「えー、似合いそうなのに。悩殺魔王って感じで!!」

「……そんなのサキュバスにくれてやりなさい」

「加々美さんねぇ、あの娘、最近顔を会わせてないんだよね〜。なんか吹っ切れたせいで、グラビアのお仕事が舞い込んだらしくって」

「へぇ、凄いじゃない。あの事件で覚醒したって訳ね」

加々美麗華、彼女はサキュバスとしての素質を持ち合わせており、その素質を開花させてしまったのは、大賢者ネルのせいであろう。
しかしそれが彼女にとってプラスとなる。アイドル候補生として奮闘していた病弱な彼女は、その魅惑で数日でステップアップを果たしてしまうのだった。

「んで、魔王様も覚醒して欲しいんだけどぉ……」

等と供述するメルは、私に>>328という下着を履かせたくて仕方が無いらしい。
328名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:12:55.17 ID:9AgRK7quP
バカには透けて見える
329名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:12:57.52 ID:PPD4MhcqP
股間からビームがでる
330名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:19:39.11 ID:hn742WJs0
>>328
い、イヤ過ぎる下着だwww
331名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:20:12.68 ID:PQWbeKJP0
等と供述するメルは、私にバカには透けて見えるという下着を履かせたくて仕方が無いらしい。
ちなみに、この世界にはバカには透けて見れるという眼鏡が存在し、秀様がそれを持っていた。
時折、私達をその眼鏡で眺める為、私がそれを叩き割ると、秀様は随分とへこんでしまった覚えがある。

つまり、その類の下着なのかと、私はそれを掴んでは投げ捨てた。

「こ、こんなの、き、着ないんだからねッ!」

「ああっ、魔王覚醒アイテムがぁ! ……折角秀を口説けるチャンスなのに、ぶつぶつ」

「メル、ちょっと待って。……今、なんて言ったの?」

「この下着で〜、秀を〜メロメロに出来るんだよ〜って言ったのぉ〜」

「……メル、急いでさっきの下着、持ってきなさい。……着るわ、着て見せるんだからッ!!」

「はいは〜い、じゃあ、秀もついでに呼んで来るぅ〜」

メルは一瞬、してやったりといったような表情をした気がするが、きっとあの娘も考えがあってこそなのだ。

メル・メルエッド。私はそう彼女に名づけた。そして、世間的には私は彼女を造り出したという事になっている。
しかし、生命体を生み出す技術に関しては、メルの方が圧倒的に長けていた。私にはせいぜいスライムベス程度しか造れないのである。

彼女は、魔王城の暗室で冷凍保存されていた。それを、私が火炎魔法の暴走により起こしてしまう羽目となる。
その件については、お父様に随分と叱られたものだが、結果的に私が面倒を見るようにと、彼女を私に託し、数日後アンに破れ去った。
つまり、メルは魔族では無いのかもしれない。ただの人間……とは思えないけれど、こうして私に尽くしてくれる彼女に、改めて嬉しさが込み上げるのだった。

……なのに、メルが持ち込んできたバカには透けて見える下着、いざ履いてみると私も透けて見えるのです。
大事な部分が丸出しなのです。お尻もくっきりしているのです。そして、試着室の前には既に秀様が居るのです。

「お〜い、マール、大事な用って何だ〜?」

秀様が私に声を掛ける物だから、もうどうにでもなれとカーテンを開いてみせると……>>332
332名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:22:33.67 ID:eKH8XNLh0
何故か秀の隣には見たこともないような女の子が
333名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:23:06.46 ID:hn742WJs0
そこには全裸がいた。
334名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:29:55.49 ID:PQWbeKJP0
秀様が私に声を掛ける物だから、もうどうにでもなれとカーテンを開いてみせると……、
何故か秀の隣には見たこともないような女の子が。金髪で、髪を二つに編んだ蒼い瞳の女の子だ。

落ち着いてみよう。さもないと、訳が分からない。先程まで、私とアン、そしてノエルにメルが居た。
そしてメルは何やら気まずそうにこちらを見ている。それと何か関係あるのだろうか。

そもそも、アンって金髪だったし蒼い瞳だったしで、彼女の姿を捜してみるのだが、この場に姿は無いのである。

「……秀様、その娘は……だ、誰なのッ!?」

「えーと、これはだな、少々訳ありでな……」

「……変態魔王、覚悟」

「その声、まさか……勇者アンッ!?」

「はい、ゆうしゃです」

「で、何でツインテにして……ドレスっぽい服に変わってるの?」

秀様は訳を話す。ノエルが読んでいた本は、不思議の国のアリスという物語の本らしい。
その主役として、案外アンが似合うのではないかと、この店でコーディネイトを行ったそうなのだ。
何気にこの上の階は、ランジェリーショップではなくロリータファッション専門店があるそうで……。

「……痴女魔王、覚悟」

「う、うっさいわぁぁぁ!!」

秀様は私に視線を向けてくれないし、アリス風に変身したアンは、何やら自慢気に覚悟とか言うしで、もう死にたくなるのである。
しかしその時、救世主が現れたかのように隣の試着室のカーテンが開き、声がした。

「秀さん、私の姿も見てください。……どうですか?」

全裸であった。全裸のノエルが、バカには見えない葉っぱ下着を試着したと言って、秀様に裸体を見せている。
その姿を見た彼は……>>335
335名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:32:28.03 ID:PPD4MhcqP
馬鹿にしか見えない顔をしている
眼鏡なしでも全裸が見えそうだ
336名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:40:14.21 ID:PQWbeKJP0
全裸であった。全裸のノエルが、バカには見えない葉っぱ下着を試着したと言って、秀様に裸体を見せている。
その姿を見た彼は……馬鹿にしか見えない顔をしている。眼鏡なしでも全裸が見えそうだ。
鼻血を垂らしている為、最早見えてしまっているのだろう。その馬鹿面を、私は燃やしてしまおうと指を鳴らす。

「変態なる醜悪な者を浄化する炎――ブラスト・フレアァァァッ!!」

「ぶわぁぁぁ、熱い、熱いッ、死ぬ、顔が焦げて死んじゃうぅぅ!!」

「マール、MP80消費の魔法はやりすぎ」

「……煩いわね、乙女の純情を汚された罪は重いのよぉっ!!」

再びカーテンを閉めた為、その後の顛末は後ほど知る事になる。メルが秀様の顔を冷やし、ノエルがやはり全裸で回復魔法を施した。
それにより、秀様は顔がつるつるとなり、ちょっぴりだけイケメンとなってしまうのである。
コレを繰り返せば、案外お金になるのかもしれない、なんてつまらない野望と共に、ノエルやアンに破れ、悲しさにより涙するのであった。

だが、その時、微かだがぞくりと背筋を貫くような悪寒を感じた。ふとその際だけ、カーテンを開いて周囲を見渡す。
何かが見ていたような気がするのだが、その視線は最早感じられない。その視線は、憎悪に満ちていたとも思えたのだ。

―― 家に戻り、ツインテールに挑戦しつつ鏡を見る中、その話をアンにしてみるも、彼女はまたまたゲームに夢中となっていた。
ならばノエルなら気付いているのではと、話を振れば……。

「だからといって、秀さんの顔を燃やした罪は消えません。……どうするんですか、アレ」

「……彼もまた、常に鏡を見てるわね」

「ジョジョ立ちです。今頃内心では、俺イケメンになってんじゃね? カッコよくなってんじゃね? と思っています」

そう、家に帰ってからの秀様は常にジョジョ立ちし続け、夕食の準備すらしてくれないのである。
困った私は、彼に>>337と話しかけてみた。すると彼は>>338
337名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:45:34.74 ID:eKH8XNLh0
魔界ではよくある
338名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:46:15.40 ID:PPD4MhcqP
それより、気づいていたか?
339名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:54:13.86 ID:PQWbeKJP0
そう、家に帰ってからの秀様は常にジョジョ立ちし続け、夕食の準備すらしてくれないのである。
困った私は、彼に「魔界ではよくある」と話しかけてみた。すると彼は「それより、気づいていたか?」と切り返す。
いきなり話を摩り替えられ、きょとんとする私に彼は言った。

「……俺、覚醒したんだ。イケメンという覚醒になッ!!」

「は、はぁ……秀様、どうしたの、本当に……」

「マール、俺の顔を燃やしてくれてありがとう。それによって、醜悪なブサメンの俺は消えた!!
 そしてこんにちは新しい俺! 新しい俺の顔!! ありがとうマールおじさん!!」

「あのぉ……私、おじさんじゃないんだけど……」

「フッ、マール……お父さんである俺に、惚れるなよ……?」

彼は再びジョジョ立ちを決めて、壊れてしまった。私がいけなかったんだと何度後悔した事か。
くねくねと食事中もポーズを取り、イケメンになったと何度も口にする彼に、ノエルも最早呆れ顔。
アンは相変わらずパソコンが恋人のように齧り付き、メルは……逃げるように隅っこでテレビを眺めているのである。

ゴールデンウィーク中、天野家は、こうしてある意味崩壊したのである――。


―― ゴールデンウィーク明け、鶏鳴中は旅行話で随分と賑わっていた。
それは勿論私のクラスでも賑わいを見せ、私に早速栄田君が話しかけてくるのである。

「いやぁ、楽しかったぜ、グアム! サイパン!! 見ろよこの日焼け、カッケーだろぉ?」

「……一万三千冊の魔道書の内容を口にしてみて」

「ぐぉぉ、俺はグアムの話を――炎と呼ばれる元素を生み出す為には先ず――サイパンの話をぉぉ――掌に魔力を集中させ――ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

栄田君が居なくなった今、私は改めて行動に移さなければならない。そう、演劇部の復興を目指すのである。
同じクラスの三枝さんを誘ってみようと思うのだ。そして、早速三枝さんに話しかけてみると……>>340
340名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 22:57:16.34 ID:hn742WJs0
ハリウッドらしき場所からのお誘いの手紙が
341名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:02:26.37 ID:PQWbeKJP0
栄田君が居なくなった今、私は改めて行動に移さなければならない。そう、演劇部の復興を目指すのである。
同じクラスの三枝さんを誘ってみようと思うのだ。そして、早速三枝さんに話しかけてみると……。

「ハリウッドらしき場所からのお誘いの手紙が来ていて……ごめんなさい」

「……はぃ?」

「その、私、演劇指導をあの名監督、スティーブン、スッパイバーグさんから受けていて……」

「……もしかして、三枝さんって、Cカップで名家なの?」

「やだ、胸の話はしないでって……」

顔を赤らめ、胸を両腕で隠す三枝さんは、お金持ちという話を聞いたことがある。
しかしそれ以上に彼女は陰が薄く、その設定すら目立たないほどの存在であった。その彼女が、俳優としてスカウトされていると言う。
意味が分からないと、何度も問い質した結果……、陰を薄くするというのもまた、設定であった事を知る。

「ごめんなさい、私、素の性格がこうだから……、割と……すんなり陰薄く出来て……」

「それって、つまり演技なのかどっちなのよ……」

「どっちも、かなぁ……。とにかく、ごめんなさいっ!」

頭を下げられ、お断りされてしまうのである。正直に言えば、彼女は最後の砦でもあった。
三枝瞳という砦が陥落した今、最早私に打つ手は無い。……もうこうなれば、栄田君でいいから、数だけ合わせようかと自暴自棄になる。

「栄田君。ちょっと話、いい?」

「マナとは大気の中に溶け込みそして何物にも干渉されない特殊な物質であり――うんたらかんたら」

「……駄目ね、コレ、使い物にすらならないわ。こうなったら……>>342!!」
342名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:04:23.44 ID:9AgRK7quP
記憶を書き換えるしかない
343名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:10:27.12 ID:PQWbeKJP0
「……駄目ね、コレ、使い物にすらならないわ。こうなったら……記憶を書き換えるしかない!! ……でもどうやって?」

ちなみに私、魔王の癖に炎の魔法しか得意分野が無い。これは、言い方を変えれば誰にも負けない特化分野でもあるのだが、
それが逆に弱点でもあった。要するに、他の分野がてんで駄目だったのだ。
それもあり、魔王ギースには私には魔王は向いていないなんてレッテルを貼られたものである。

だが、先代魔王であるお父様よりも、魔力と炎の魔法には自信がある。つまり、努力すれば報われる可能性が高い。
そして、記憶を書き換える知識は、恐らく同じクラスになったノエルが知っている筈と、私は本を読む彼女に声を掛けた。

「ノエル、ノエル! 教えて……記憶の書き換え方を!!」

「いきなりなんですか。学校では親しくしないで下さい」

「じゃあ、家でなら良いの?」

「出来ればやめてください」

「むぅ、とにかく、今ちょっと急いでるの! 記憶の書き換え方、教えて!」

「はぁ、そんなの簡単です。こうして手刀を作って、首筋目掛けて四十五度にして打って下さい」

「ふむふむ、なるほどね……って、これって気絶させるやり方でしょ!?」

「それで貴女は気絶し、記憶を一時間程失いましたが何か?」

「ぐぬぬ……、いいわ、それでいくわ。見てなさいよ、ふふふ」

ノエルにやり方を教わった私は、今も目が虚ろな栄田君の背後に立つ。そして、手刀を首筋に打つのであった。
すると彼は、ふらふらと倒れ、そしてまた直ぐに起き上がる。そして私に向き直って言ったのだ。

>>344
344名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:18:01.84 ID:9AgRK7quP
俺は悟りを開いたぞぉぉぉ!!
345名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:23:49.25 ID:PQWbeKJP0
「俺は悟りを開いたぞぉぉぉ!!」

「わっ、い、いきなり何よッ!」

「女の子はなぁ、女の子はなぁ……守ってあげなきゃいけないんだよォ……!
 この手で優しく包んであげなきゃならないんだよォ……!!」

「マズイ、目が更にイッちゃってるわ……」

「そうさ、女の子は脆いモノなんだ。だからこそ大事に愛でなきゃならないんだッ!
 だから安心して良いんだマール。俺が付いている……。俺に愛でられげふぅっ!!」

「貴方の記憶の書き換え、失敗したみたい。そのまま死んでいて」

「あぁぁぁ〜……、おにゃのこはぁ……、やわらかぁぁい……」

そうして放課後がやって来る。結局この日も成果無しなのかと、演劇部の復興すら諦めそうになってしまう。
私一人では当然演劇部なんて復興できるわけが無い。しかし、ノエルも駄目、三枝さんも駄目となれば、後は誰が居るだろう。

「……あの勇者の力は、借りたくないなぁ……」

部室目指して廊下を歩く最中、アンの事を思い浮かび、首を振った。
そもそも、この世界で彼女が生甲斐を見つけたのはゲームだけであった。そんな腑抜けた彼女に演劇なんて務まらない。
それに私が勧誘したところで彼女は首を縦には振らないだろう。

「メルさえ、同じ学校だったらなぁ……。あの子、高校生だし、ううぅ〜〜ん……」

そうして悩み果てる中、生徒達が妙に騒いでいる事に気が付いた。「あの子が登校してきてた」なんて話をしている。
あの子とは誰なのだろう、と興味を持ち始めた最中であった。それが、私の傍を通り過ぎていった。

まるで……>>346みたいな女の子だった。
346名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:28:53.10 ID:PPD4MhcqP
アフリカ系原住民
347名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:29:15.74 ID:hn742WJs0
ねぷた
348名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:36:26.80 ID:PQWbeKJP0
まるで……アフリカ系原住民みたいな女の子だった。制服じゃなく、格好が原住民みたいであったのだ。
そして肌の黒い女の子。俗に言う褐色の肌を持つ少女は、すたすたと廊下を横切って進んでいく。

その方向は、演劇部の部室がある方向でもあった。まさかと後を追ってみれば、彼女は部室の扉を開き、入っていく。

「葉っぱと藁の格好をしていたし、あれってノエルの仲間、じゃないわよね……何者なの?」

私もまたその部室に近寄り、すぅっと扉を開き中の様子を眺めてみる。……なんか踊っている。
不思議な踊りでMPが吸われてしまいそうなそんな踊り。これ以上あの踊りを見ていると、気を失ってしまいそう。

その時、不思議な踊りをみせていた彼女は動きを止めて、私に視線を向けたのである。気付かれたと、慌てて扉を閉めて逃げ出そうとした。
しかし、彼女の動きの方が俊敏であり、私は既に腕を取られてしまっているのである。

「…………」

「……あ、あの……その」

「……演劇、したい?」

「いやぁ、その……演劇部員、じゃないですよねー……?」

「私、演劇部だよ。心の底から演劇部。演劇に興味ある? ある?」

彼女は黒くて丸い瞳を私に向けていた。純真そうなその視線に、私のMPが奪われそうになる。
まさか、こんな奇妙な娘が演劇部に所属していたとは。こんな幽霊部員が居るとは知らなかったと、今となって嘆くのである。

―― そうして私は演劇部の部室に招かれた。そこで、私は彼女の不思議な踊りの振り付けを教わる羽目となる。

「腕はぁ〜、こうするの。こうしてくねくね、イカさんみたいに〜くねくねっ!」

「……はは、はははは……」

私は踊りに来たのではない。演劇をしたかったのだ。そして、第二の人生に生甲斐を見出したかったのだ。
なのに何故イカ踊りなんて踊っているのだろう。涙しそうになる私に、褐色娘は>>349
349名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:37:49.72 ID:hn742WJs0
感激の涙をこらえているのだと勘違いされ、優しく抱きしめられた。
350名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:44:53.34 ID:PQWbeKJP0
私は踊りに来たのではない。演劇をしたかったのだ。そして、第二の人生に生甲斐を見出したかったのだ。
なのに何故イカ踊りなんて踊っているのだろう。涙しそうになる私に、褐色娘は感激の涙をこらえているのだと勘違いされ、優しく抱きしめられた。

「演劇、楽しんでくれて……嬉しい……!」

「た、楽しんでるわけじゃ……って、そろそろ、放して……!」

「やだ、やだやだ、折角演劇してくれる人見つけたもん。放したくない。一緒に居たい〜」

彼女は、それまで自分が孤独だった事を私に話したのである。演劇を始めて目にしてから、やってみたいと彼女は思い描いてきた。
しかし、いざ演劇部に入ってみても、皆やる気を示さず、そして一人、また一人とこの部から姿を消す。
理由は、彼女自身にもあった。余りにも一人浮きすぎて、そして気概を見せすぎた為、他の人間は冷めてしまったのである。

お遊び感覚のそれに、彼女の本気は伝わらなかった。そして、彼女の本気もまた、少々曲がったものであった。

「……あの、貴女、お名前は?」

「トルテ。お菓子みたいな名前の変な娘なんだぁ」

「トルテ? そう、外国の生まれの方なのね。私もなのよ」

「あ、うん、そうかも! あなたも海外の生まれなんだぁ〜?」

「ええ、一応フランス出身って事になってるのよ。じゃなくて、フランス生まれなの!」

「ふぅ〜ん……。でも、不思議、同じニオイがするね!」

匂いという言葉に反応し、びくっと身体を震わせてしまう。もしかして、僅かながらに身体に流れる魔族の血を嗅ぎ取られたのだろうか。
彼女もまた、異世界の住人で、何か目的を持つ少女なのだろうかと警戒心を強めてしまう。

しかし、ニオイという言葉を女の子のニオイと置き換えた彼女は、またくねくねと踊りだすののだった。

「演劇、練習しよっ、しよぉ〜っ!!」

彼女は悪い娘ではない、そのあどけない笑顔がそう思わせてくれた。だからこそ、私は彼女と共に演劇部の仲間を集めようと決心するのだ。
だが翌日、私がトルテと絡んでいたことが噂となり……>>351と、皆が密かに話を交えていた。
351名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:47:34.10 ID:9AgRK7quP
明日世界が滅んでしまうんじゃないか
352名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:48:05.76 ID:hn742WJs0
期待の新百合姫候補
353名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:52:34.94 ID:hn742WJs0
>>351
ざわ・・・ざわ・・・
354名も無き被検体774号+:2013/04/21(日) 23:55:18.62 ID:PQWbeKJP0
彼女は悪い娘ではない、そのあどけない笑顔がそう思わせてくれた。だからこそ、私は彼女と共に演劇部の仲間を集めようと決心するのだ。
だが翌日、私がトルテと絡んでいたことが噂となり……「明日世界が滅んでしまうんじゃないか」と、皆が密かに話を交えていた。

その後、栄田君が噂の話を切り出した為、どうしてこんな風に囁かれなければならないのかと問い質す。
すると彼は、話しづらそうに私に教えてくれた。トルテ・トールソンは、この学校では嫌われていると。

「ほら、アイツって……色黒じゃん。目立つのさ。だから、同じ人間じゃないみたいにアイツを見るんだ。
 要するに人種差別。……日本人だって、ある意味差別されてるのにな」

「人種差別……だけなの?」

「だけってなんだ? それ以外に理由はないぞ。あぁ……でも、アイツって変わってるからな。妙に馴れ馴れしいというか、人懐っこいというか。
 それが嫌われやすいってのもあるかもしれないけどさぁ」

「そうなの……、だから、あの子一人なのね」

「悪い事は言わない、お前がどうしてあんなのとって皆が噂してるんだ。……余り関わらない方が良いと思うぞ」

「嫌よ。そんな理由でトルテを邪険にするつもりはないわ。それに、私ももう演劇部の一員なんだから!」

「マジかよ。……ちぇ、サッカー部のマネージャーやってくれないかって思ったのによぉ」

「何で私がマネージャーにならなきゃなのよ。あそこの銀髪にでも頼みなさい」

「ノエルなぁ、近寄りづらいんだよぉ。可愛いのにさぁ、愛でたいのにさぁ――うげっ、睨まれた……」

ノエルの話を持ち出しては、ノエルに睨まれしゅんと落ち込む栄田君の話を聞いて、私は思う。
トルテを、何とか演劇部の中心に据え、そして演劇部を復興させる為には……、やはり、もう少し注目が欲しい。悪い注目でも構わない。
その為には、やはりノエルを、そしてアンを引き入れた方が話は早い。そして……、鶏鳴中の演劇部の栄光を、もう一度取り戻すのだ――。

―― 放課後、私の前に魔王が現れる。そして見知らぬ褐色娘も一緒であった。
隣の娘は何者だろう。柔和な表情をしているが、視線までは誤魔化せない。……この娘は、普通の娘じゃない。

「ねぇ、アン、やっぱり貴女も演劇部に入りなさい!」

マールは突然そんな事を切り出した。すると隣に居た私の友達である七福さんが>>355
355名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:02:23.77 ID:9AgRK7quP
勝手に私の入部をかけて勝負を始めた
356名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:09:40.07 ID:K36h3A+G0
マールは突然そんな事を切り出した。すると隣に居た私の友達である七福さんが勝手に私の入部をかけて勝負を始めた。
何故か神経衰弱と呼ばれるゲームで勝負を持ちかけ、そして敗れそうになる彼女を見て、溜息を吐いてしまう。

「携帯ゲームでもしよう……」

お小遣いが毎月1000円の為、中々PSPというゲーム機を入手するには至らない。
そして、この世界では私の年齢で働ける仕事は無い。人や魔物を殺してゴールドを手に入れるリィンガルドとは大違いだった。

なんて面倒な世界だろう。でも、住み心地は悪くなく、寧ろ元の世界よりは好きなのだ。
此処の世界の人は優しい。秀も、七福ことみもまた、私に微笑みかけてくれる。そして、今ではギプスを巻いて退院してきた吾妻もそうだ。

「ふえぇ、負けそうだよ〜、どうしよう〜……」

ことみが泣きそうな声で私に言い、これで勇者アンは私のものだと言い出す魔王マール。彼女もまた、この世界を気に入っているのだろう。
同じ世界からやって来た、倒すべき相手。しかし、その間には秀が居て、この世界が有って、この世界には優しい人が居る。
だからこそ、魔王に手を出すつもりは既に無くなっていた。そして、その打倒する意味すら、最早見出せない。

「フフフフ、勝ったわ、これでアンは演劇部に所属決定よッ!!」

ことみが敗れたらしく、ついにごめんと謝りつつ泣き出した。ふと魔王を眺めると、勝ち誇った笑みが少々憎たらしい。
魔王を打倒する意味は最早無い。けれど、たった今打倒する意味が生まれた。ことみを泣かせた事と、笑みが憎たらしい事だ。

「……マール」

「いきなり何よ、立ち上がって。……演劇部に入る気になったのね?」

「……ことみを泣かせた。許さない。……ここで全てを終わらせる」

「はぁ? いきなり何を言ってるのよ――」

彼女が言い終える前に一撃をと、私は得意の雷撃魔法で刃を作り出し、そして彼女の胸元目掛けて繰り出した。
しかしそれを何と、隣に居た褐色少女が止めてしまう。挙句に……>>357
357名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:15:53.20 ID:rcgFXLX+P
目にも留まらぬ速さの不思議な踊りでMPがスッカラカンに
358名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:16:06.66 ID:4dYkIu+D0
辛いのはあなただけじゃないわと、優しくネックハンギングツリー
359名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:21:34.64 ID:4dYkIu+D0
>>357
シャカシャカシャカシャカ
360名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:24:31.65 ID:K36h3A+G0
彼女が言い終える前に一撃をと、私は得意の雷撃魔法で刃を作り出し、そして彼女の胸元目掛けて繰り出した。
しかしそれを何と、隣に居た褐色少女が止めてしまう。挙句に……目にも留まらぬ速さの不思議な踊りでMPがスッカラカンに。
MP、つまり魔力と置き換える人も居れば、精神力と置き換える人も居る。それが尽きれば、HPが無くなったのと同様、本来は死に至る。

魔法を用いる事は、それだけ本来危険なもの。そして、魔力を奪われると言う事は、命が危ういという事。
この褐色の娘、何者だと油断した私は気を失いそうになる。そして、私の身体をマールが抱きかかえた所で、私は完全に気を失った。

―― 外は既に薄暗かった。保健室で私は寝かされていたらしい。ベッドの傍に、ことみの書置きがあった。

『なんだかよく分からないけれど、とにかく明日、また笑顔で学校で会える事を祈ってます ことみ』

彼女の書置きが素直に嬉しかった。こんな風に私を想ってくれる人は、リィンガルドに居なかった。
いや、厳密に言えば二人だけ存在した。私の父と、そして魔道師マリア。でも、マリアは後に私の傍から離れる事になる。

そして身体を起こし、椅子に座って看病してくれていた存在に気付くのだった。マールである。
彼女はくたびれたのか、眠っている様子だ。魔王に看病される勇者なんて、実に情けないなんて想いと共に、不思議な感情が生まれていた。

「……お姉ちゃん……か……」

天野秀の養子の私は、彼女にとって妹に至る。しかしどうにも実感は無く、妙な素振りを見せれば即斬るつもりでいた。
しかしマールは、想像した以上にこの世界に溶け込もうとしている。女子力がなんたらとも言っていたが、その辺りは良く分からない。

けれど、魔族だろうが魔王だろうが、彼女はこうして私の傍から離れてくれない。離れようとせず、傍に居てくれる。
それがほんの少しだけかもしれないが、私の心を突き動かしていた。彼女の掌にそっと自分の手を重ねようとする。その時だった。

「あら、勇者様と魔王様の百合シーンでしたか。お邪魔してごめんなさい」

「……ノエル」

ノエルが現れ、そして彼女は突飛な話を口にした。臨海市に不穏な動きが見られるという。

「明日、世界が滅びるかもしれません。……割と冗談抜きで、です。臨海市の各地で特異点が広がり、>>361が出没しています」
361名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:27:49.94 ID:ES5r5tekP
リヴァイアサン
362名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:35:42.80 ID:K36h3A+G0
「明日、世界が滅びるかもしれません。……割と冗談抜きで、です。臨海市の各地で特異点が広がり、リヴァイアサンが出没しています」

「水竜、リヴァイアサン……!?」

「この世界では水神とも呼ばれるそうですね。ですが、所詮アレもまた、神と呼ばれた人間のペットに過ぎません。
 さて、問題はその水竜によって、臨海市が水の底に消える可能性が出てしまっています」

「……それを私に話して、どうするの?」

「貴女は勇者です。腐ってもリィンガルドで最強と謳われた勇者。貴女がこの世界を救うのもまた義務ではありませんか?」

「……興味無い。関係の無い人を、助ける義務なんてないから」

「では質問を変えます。この臨海市には、秀さんが住んでいます。彼の事は貴女も好きな筈です」

「秀は好き。妄想で犯してしまいたくなるくらい好き」

「あ、貴女ちょっと病んでますね……。ともあれ、秀さんも、そして貴女のお友達も、リヴァイアサンに飲み込まれてしまう。
 貴女には今、護るべき相手が二人も居ます。……立ち上がるべきでは無いですか?」

私は頷いた。彼女の言う事がもっともだったから。そして、少しだけでもこの世界、この街が好きになってしまっていたから。
けれど、どうしてそんなとんでもない存在が突然出没したのか、私には理解できないで居る。しかし、ノエルは何かを掴んでいる様子だった。

「では、魔王を起こしましょう。炎しか操れないながらも、水なんて消し飛ばす力の持ち主です。……恐ろしいですよ、特化された力というのは。
 まぁ、それは貴女にも言えることですね。雷しか操れない勇者様」

「……密かに馬鹿にされてる気分」

「いいえ、尊敬してますよ。力では私では及びませんから」

「ところで……、リヴァイアサンを償還した存在は、誰?」

「最初はトルテ・トールソン……通称とるとるちゃんかと思いました。でも違うみたいです。……もっと捻じ曲がった何かを感じます」

彼女は魔王の頬を何度も打ちつつも、今回のリヴァイアサン討伐に有効な手段を私に教えてくれるのだった。それは、>>363
363名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:40:01.58 ID:rcgFXLX+P
一本釣り
364名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:47:35.48 ID:K36h3A+G0
彼女は魔王の頬を何度も打ちつつも、今回のリヴァイアサン討伐に有効な手段を私に教えてくれるのだった。それは、一本釣り。
そして今回の武器はこれだと、私に木の釣竿を手渡してくるのだった。尚、リィンガルド通貨にすれば10ゴールド程度の代物だ。

「それでは、頑張ってください。初の勇者と魔王のコラボレーション、楽しみにしております」

「ノエルは……、手伝ってくれないの?」

「貴女方お二人が敗れるような事があれば、手を出すと思います。けど、それまでは見物させてください」

まるで試されているような視線が癪に思いつつも、私は釣竿を握り締めた。そしてノエルは頬が痛いと涙目になる魔王に、事情を説明する。
彼女はまさかと、話を聞いて目を丸くする。それと同時に、遠くから轟音と、獣が吠えるような声色を耳にした。

「時間がありませんね。……急ぎましょう。私の風の魔法でお運びしますからッ!」

―― ファミレス、チェリークロック。そこの店内は最早滅茶苦茶であった。カップは砕け、テーブルは散乱し、
おまけに大賢者メニューであるバックベアードちゃんの目玉焼きは、無残にも踏み潰されている。

「……秀、お前は下がっていろ」

「というか、何でこんな直ぐ近くに、こんな化物が!!」

「ヤツはリヴァイアサン。……水神とも呼ばれる竜だ。とうとうこのような物まで償還されるようになったのか、この世界は……!」

「ど、どういう事なんだ!?」

「特異点、それは要するに他の世界と繋がりを見せている。そしてそれは、徐々に広がりを見せつつある……。
 これも恐らく、償還の実験の類なのだろう。次はもっと恐ろしいモノがやって来るだろうな」

「って、ネルネルお前、アイス食べながら話す事かよ!!」

「でもアイスはやめられないのだ。……うぅ〜ん、美味しいッ!!」

緊張感の無い大賢者様は、片手で己を守護するバリアを張っている。それに、俺も一緒になって中に入っているのである。
しかし、この様子を見た一般人でもある相田店長は、当然のように錯乱中であった。何やら>>365なんて事を繰り返し呟いている。
365名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:55:25.52 ID:ES5r5tekP
死ぬ前にアンちゃんとマールちゃんで3Pしたかった!
というかしよう!
366名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 00:57:52.70 ID:rcgFXLX+P
>>365
本音がだだ漏れしとるw
367名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:01:59.24 ID:K36h3A+G0
緊張感の無い大賢者様は、片手で己を守護するバリアを張っている。それに、俺も一緒になって中に入っているのである。
しかし、この様子を見た一般人でもある相田店長は、当然のように錯乱中であった。
何やら「死ぬ前にアンちゃんとマールちゃんで3Pしたかった! というかしよう!」なんて事を繰り返し呟いている。警察に突き出すべきだろうか、これは。

「まぁ、てんちょがあんな風に錯乱するのも無理は無いな」

「だからアイス食いながら冷静に分析してんじゃねぇよ!! 何とかしてくれよ!!」

「うむ、何とかしたい所なのだが……、生憎、実は補助魔法専門であってな!」

「つ、使えねぇ!! メドローアとか打ってくれよな!!」

「う、撃てないことも無いんだぞ。ただ今日はアイス分が不足してて調子が悪いというかだなッ!」

「……何そのどうでもいい言い訳」

「ふぅ、分かった分かった。そんな目で見るな。……じゃあ放ってやろう、メドローアというヤツを。
 でもバリアが解けるから、津波が来たら流されて死んでくれ」

「……ごめんなさい、バリア、貼り続けてください、お願いしますから」

何気に彼女の守護魔法のバリアは、店全体まで影響を及ぼしているらしく、何度か迫ってきた津波から、店を護ってくれている。
しかし、片手をそれに用い、もう片方の手でアイスを舐める彼女は、要するに現状で精一杯なのだそうだ。
だが、彼女は直ぐに彼女達が現れてくれると、俺にしたり顔で呟いた。その後、暴風が水竜全体を覆い舞う中、二人の少女達がその風から姿を現した。

「アンに、マールッ……!」

「不安か? 娘のように育ててきた二人が、あの竜に立ち向かうのが」

「当たり前だろう! やめさせてくれ! じゃないと、あいつら二人とも……!!」

「見ていろ。ほら、リヴァイアサンがアンの持つ釣竿に食いかかって……>>368となってしまっただろう?」
368名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:03:48.55 ID:rcgFXLX+P
あっという間に活造り
369名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:07:37.69 ID:ES5r5tekP
忙しい主婦にはありがたいですね
370名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:13:47.65 ID:K36h3A+G0
「見ていろ。ほら、リヴァイアサンがアンの持つ釣竿に食いかかって……あっという間に活造りとなってしまっただろう?」

「……あの、強すぎじゃないですか? 主にアンが」

「だから言っただろう、彼女は最強の勇者……。その力、恐らくどんな神々ですら打ち倒せる程の――」

凄かった、その一言だった。マールが目くらましにするかのように、メラゾーマのような炎の火球を水竜の顔にぶつけ、
そして隙が生まれた中、アンがその炎を掻い潜って水竜に突撃し、釣竿をその竜に食わせてしまう。

その釣竿から雷が放たれたかと思ったら、内から徐々に分解されていく水竜は、もうこの世界に存在しなかった。
レストランのすぐ傍で、活造りとなったそれを、おいしそうに見つめるアン。そして何故か悔しそうにするマール。

「あの二人は別格なのだが……、やはりアンだけ飛びぬけているのだな」

「何悟ってるんですか、大賢者さん」

「……加賀美目羅、ヤツを止められるのは、やはり……。でもしかし……」

練曲ネルは、守護魔法を解除しアイスを深刻な顔で舐め取っている。全く持って絵にならない構図であった。
そして、その直後俺は不思議な光景を目にするのであった。ぐん、と視界が歪んだかと思えば、辺り一帯、何事も無かったかのように元に戻ってしまう。
アンやマールと寝たいと豪語していた相田店長もまた、ふと我に返った様子で……俺を見た。そして言った。

「何仕事さぼってるの? 蛆虫のくせに」

俺は早速相田店長に蛆虫と呼ばれ、涙しそうになる中、ネルが俺にしか聞こえないように状況を説明してくれた。

(お前、俺の脳内に……ッ!?)

(こうでもしないと、変な話をしているとてんちょに怒られるだろう? ……補正力が働いた。だからこそ、何事も起こっていない世界が戻ってきた)

彼女は、かつて公園に巨大なオークが二匹も現れ、周囲を滅茶苦茶にしただろうと話をする。
確かにそんな事があり、すっかり忘れていたと思い出す。それもまた、補正力が働いて皆記憶から忘れ去られているのだという。
そして、滅茶苦茶となった残骸もまた元に戻ってしまう。それが、この世界に住まう神の力だと彼女は話した。

(で、加賀美目羅と名乗る人物……そいつはこの世界の神を排除し、>>371にしようと企んでいるのだ)
371名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:14:43.23 ID:ZQfFsULG0
徳川暗黒将軍が支配する魔の江戸時代
372名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:17:11.45 ID:ES5r5tekP
剣と魔法とお江戸のファンタジー
373名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:22:59.92 ID:K36h3A+G0
(で、加賀美目羅と名乗る人物……そいつはこの世界の神を排除し、徳川暗黒将軍が支配する魔の江戸時代にしようと企んでいるのだ)

(って、歴史がおかしいだろ! 魔の江戸時代ってなんじゃそりゃ!!)

(歴史とは改竄される為に有るのだ。今の歴史の教科書が真実と飲み込むほうが愚考なのだ)

そんな滅茶苦茶な話をする大賢者ネルであったが、目の前で起こる事全てを納得するとなると、彼女の話も納得せざるを得なかった――。


―― 廃ビル、誰も使われなくなったその場所に、使えるものを持ち込んでは、ちょっとした秘密基地に仕上げる。
それは現代の子供の夢でもあろう。そして、その遊びが存外面白いものだと気付いたのはつい最近。

「……状況は分かったわ。ご報告ありがとう、アフロ大佐」

『そろそろ、スキンヘッドもアフロも勘弁して貰いたいのだが』

「それでは、貴方がムスカ大佐そのものになってしまうわ。駄目よ、私が許さないもの」

『そうか、貴女がそう仰るならば仕方が無い。……引き続き、準備を進めよう』

「そうして頂戴。後、トルテの様子はどう?」

『勇者と魔王、二人と接触した様子。……偶然ではあったようですが』

「随分動きが遅いものね、あの子。雷神の紋が泣いてしまうわ。それで……仲間に引き入れそうなの?」

『魔王はともかく、勇者は難しいでしょう。調査によると、ゲーム厨となった様子。……ネトゲに没頭するのも時間の問題かと』

その話を聞いて、ワイングラスを握りつぶしてしまう。なんて落ちぶれ方だと、この世界の楽しみ方を知らない者なのかと、怒りで狂ってしまいそうになった。
破片は私の掌を傷つけ、まっすぐに落ちていく。その様を見て、そして改めて冷静さを取り戻す事が出来た。

「勇者アン、私の姉。……絶対に救い出すわ、あのクソ女神の手から……!!」

私には仲間が居る。トルテ、そしてアフロ大佐、そして他にも、我が秘密結社>>374を慕う仲間が。
374名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:28:37.58 ID:rcgFXLX+P
フラーメイソウ
375名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:39:40.00 ID:K36h3A+G0
私には仲間が居る。トルテ、そしてアフロ大佐、そして他にも、我が秘密結社フラーメイソウを慕う仲間が。
目の前で、グラスを割り、怯える様子を見せた数人の従者に、私は命じる。

「今こそ、我が秘密結社フラーメイソウが力を身につけ、神々に対してラグナロクを行う刻が来た!
 その為、その第一の作戦を決行するわ! あ、後、ワイングラスとグレープジュースを頂戴」

「「畏まりました、我が主、有栖川アリス様――」」

瞑想なるひと時を、この世界に齎す為……建前は、こうだった。だがしかし、私は変えてみせたい、この世界の有り方を。
神々に支配された世界達を解き放ち、人々が本来の自由を模索する世界を。勇者のように取り戻してみせるのだ。

計画には幾つかの手直しが必要だったが、それも今、この日を前にすると、些細なものだったと感じてしまう。
そうして私は、主自ら動く必要がある。最初の作戦を決行する――天野家の一員となるのだ。

―― 天野家のアパートは、秘密基地よりもボロいんじゃないかと思えてしまう程廃れていた。
これ、震度三くらいの地震が来れば、一気に壊れてしまうんじゃないかと思うのだ。こんな所に私も居候するのかと思うと、少々気が滅入る。
しかし、計画の為に、ラグナロクにより神々の手から世界を取り戻す為に、そして姉を……アン・アンダルシアを救う為、私は此処へ来たと、呼び鈴を押した。

『おーい、アン、ゲームばかりしてないで、お前が出ろー』

『マールが出てくれると言ってる』

『嫌よ、リヴァイアサンのお造り食べたいもの。メル、お願い』

『私も忙しいんだよぉ〜、うぅ〜〜ん、おいしいッ!! 』

『私も読書で忙しいです。秀さん、お願いします』

中から声がするのだが、にぎやかではあるのだが、私はどうにも歓迎されていないらしい。
というか、来客に応対するのが面倒だなんて、天野家とは随分ふざけた家庭だ。私が修正しなければ、と意気込んだ矢先であった――。

「はーい、どなた……って、……ロリがダンボールではなく、その身のまま尋ねてきただと……!?」

天野秀、以前下着売り場で彼や彼女達を見て、確認はしていた。しかし、彼を目の前にした時、私の心は跳ねてしまう。
有栖川アリス、私は勇者に相応しい女。だが所詮は十二歳の乙女な私は、彼を目前に、一目惚れしてしまうのだった――。


―― つづきます
376名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:41:28.15 ID:rcgFXLX+P
おつー
377名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:42:15.92 ID:ES5r5tekP
なんという続きが気になる引き……

乙乙乙
378名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:43:06.71 ID:K36h3A+G0
酷い家庭に、また新しい娘が居候しにやって来ます。
美少女五人を、主人公は果たして養えるのでしょうか。なんて感じで終わります。

いや、無理でしょ。って感じの次回……って、土曜日駄目だったしで、果たして出来るのだろうか不安だったり。
ともあれ、長々お付き合いありがとうございましたー。

そろそろ息子という名の男の娘も必要だと思うんです。
379名も無き被検体774号+:2013/04/22(月) 01:45:39.86 ID:K36h3A+G0
【04/22 (月) 01:44時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/23 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第八話 『勇者と天野アリスと生活費』


最後にべっとり。平日も21時からやりたいなーネオニートしたいなー
380名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:01:11.50 ID:AwsRvsI00
OCNとDIONが死んでるって話は知ってるけど、そんなに大規模規制なんです?
何が起こってるんです? ジハードでも起こるんです? ノインツェーン倒します?

うーん、冗談抜きでどうしたものかなぁ。とりあえず今日はこのままやっちゃいます。
もう暫くお待ち下さい。


シベリアにお世話になるのもありだけど、うーんwwww
381名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:01:12.46 ID:6iQKh0EjP
【04/22 (月) 01:44時点でのタイムスケジュール】

04/23 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第八話 『勇者と天野アリスと生活費』
382名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:01:48.79 ID:OBTzIaOP0
てs
383名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:09:40.82 ID:AwsRvsI00
〜〜第七話までのてきとー登場人物紹介〜〜(増えすぎ笑えない)

【天野 秀】
本編主人公。二十六歳フリーターでひたすら遊び歩いていたオタク。いつ本気になるの? 今でしょ。

【天野 アン】(アン・アンダルシア)
歴代最強勇者と名高い十二歳。気づけば凄い頑固な金髪ロリに。自分の存在に悩む三女。

【天野 マール】(マール・マルグリッド)
十三代目魔王となって間も無く現代に飛ばされた可哀想な娘。中々ツン度が上がらない次女。

【天野 メル】(メル・メルエッド)
魔王の付き人な魔法剣士ちゃん。天野家のムードメーカーであり、彼女が居なければ天野家は崩壊するでしょう。

【天野 ノエル】(ノエル・エル)
エルフ世界からやって来た娘で、寝起きに主人公に愛を囁かれ夢中となってしまう残念エルフ。

【天野 アリス】(アリス・アリストテレス)
ラグナロク計画の一環で主人公家の養子に。負けず嫌いな為何でも張り合っちゃう駄目な子。

【アルテナ・アルメリア】
異世界の駄目駄目女神なあるあるさま。アン達を主人公の下へ送りつけ、焼酎飲んでにやにやする役目。

【天野 杏】
主人公の姉であり、かつて十代目の勇者だった人。雑貨メーカーの主任で独身の二十八歳。

【練曲 ネル】(ネルティ・ネルシェイド)
チェリークロックで働くウェイトレス。結局本当に大賢者なのだそうです。アイス大好き二十歳のおばかさん。

【相田 沙織】
チェリークロック店長さん。女しか愛していない為男には非常に厳しい性格の持ち主。

【川下 浅海】
鶏鳴中学校の教師であり、アンの担任。美人ですがメイクが濃い為、男が寄り付かないようです。

【吾妻 仁】
ヤクザの父親を持つ中学一年生で鶏鳴中の番長君。アンに敗れて柔らかくなっちゃいました。

【七福 ことみ】
アンの同級生でちょっぴりメンヘラちゃん。彼女が出しゃばるのはもうちょっと後……だと思う……。

【三枝 瞳】
マールと同級生で大人しい女の子。そしてCカップに育つ予定の女の子。大事に育ててください。

【栄田 颯太】
マールに一目惚れしちゃった系の残念妄想男子。果たしてまた出番はあるのでしょうか。

【加々美 麗華】
メルと同じ女子高、聖アイリス学園に通うお嬢様系。本人もアイドル志望でメルを引っ張り込もうとしております。

【来島 元大】
主人公達が住まうアパートのお隣の刑事さん。今後度々に登場するようになります。

【佐伯 小夜】
来島の部下であり新米刑事さん。ファンタジー精神旺盛で、何でも不思議だと片付けてしまう駄目駄目さん。

【加賀美 目羅】
今の所名前しか登場して無い人。何が目的かも安価次第なそんな人。その内出てきます。
384名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:10:19.30 ID:AwsRvsI00
―― 勇者なムスメ 第八話

世の中はつまらないなんて言った奴は沢山居るだろう。そして、世の中が理不尽だと嘆いた奴もまた、沢山居るだろう。
自分もまた、そのような一人であり、このまま人生適当に過ごし、適当に首でも吊るのだろうなんて考えていた。

しかし、自分の人生は急転なんてモノを通り越しており、次第に身の危険すら危うく感じることとなっている。
他人から見ればそれは、実に恵まれた話になるだろうし、この事を話せば当然誰も信じるはずが無い。

試しに、ネット上での知人に話を持ちかけた事がある。突然ロリと暮らすようになったらどうすると。

『そんなの決まってるし。まずは触るし。ついでに匂いも嗅ぐし』

『その対象が四人、そして五人となったら……お前はどうする?』

『何その触り放題ハーレム。マジうらやましすwwww ……で、なんで急にそんな話を?』

『……この画像を見るがよい』

『ちょwwwwおまwwwwwふざけんなしwwwww リア充とはもう付き合いきれないわ。じゃあな』

こうして、俺はネット上の友を失った。世の中とは、やはり理不尽なものなのかもしれない。
そうしてふとパソコンモニターから背後を振り返る。そこには夕食の鶏肉で大喧嘩となる天野家の一員が居た。

「鶏肉は一人一個までと決めたでしょう!?」

「マール、ケチ臭い。食べないと勇者は育たない」

「そうよ、お姉ちゃんと私と、二つずつが決まりよ!!」

「メル、ノエル、貴女達からも言ってちょうだい、この我侭金髪軍団に」

「いやぁ、魔王様の命でも、ちょっとこの二人に対抗する気力がぁ……」

「私は読書で忙しいの。邪魔しないで」

ある日突然、一人、また一人と我が家の住人は増えていく。しかもそれらを、俺は養子として受け容れる形となっていた。
だがそこまではまだ良い。有栖川アリスと偽名を名乗ったそれが現れた日には、ちょっとした内乱が起こったのだ。

その内乱とは……>>385
385名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:12:53.25 ID:6iQKh0EjP
命がけの部屋の奪い合い
386名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:12:58.92 ID:OBTzIaOP0
マールが異世界から召喚させた宝石類をアンが勝手に売り払っていたこと
387名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:22:31.33 ID:AwsRvsI00
その内乱とは……命がけの部屋の奪い合いである。有栖川アリスという存在は、かな〜り我侭なお嬢様であった。
六畳一間のアパートで、部屋を寄越せと言われれば、当然この六畳間となってしまう。では俺はともかく、アン達は何処で寝起きすれば良いのか。

そもそも、この娘が現れた時は、姉に会いに来たなんて事を口にしていた。しかし、その時からどうにも様子が変だった。
中々話を切り出そうとせず、玄関前でもじもじと手を動かす彼女に、俺は言うのである。

「姉って、……あのぉ、まさかとは思いますが」

「アン・アンダルシア……その人が、私の姉なんだけど……」

「……確かに風貌がよく似ている。っていうか……ドッペルゲンガーじゃないのか、コレ」

「ち、違うもん! わ、私は、その……うぅ、まっすぐに彼を見れない……」

「うん? どうかしたのか? 熱でもあるのか?」

「ひ、ひぃ!! さ、触らないで! 今触られたら、私ッ!」

女の子に免疫って奴が出来たのだろう、気付けば顔を真っ赤にするその娘の熱を測ろうと、掌を伸ばしてしまっていた。
それを慌てて払っては、また俯いてもじもじと指を動かしだす為、中々話が進まない。

そういう訳で、俺は彼女を招き入れる事にした。立ち話もなんだと、彼女を座布団の上に座らせる。
何やら随分と荷物が多い。まるで家出でもしたかのようなバッグの数である。

「おい、アン、お前の妹さんらしいぞー。ゲームしてないで、こっち向け」

「今、ぶりにょんクエストで忙しい……後にして」

「ぶりにょんって、ブリニョルフ様と言わないと闇の一党に殺されるぞ。……って、妹が尋ねてきたのにゲームに夢中ってどうなんだ」

その時、アンはちらっとこちらを、有栖川アリスと名乗った少女を見た。そして、彼女は即座に否定した。
妹なんて居ないと。で、またパソコンモニターに齧り付くのである。

その言葉を聞いたアリスは、>>388
388名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:23:53.96 ID:fFx2E61Z0
電気を止めた(ブレイカー)
389名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:24:59.82 ID:MhZUioSqP
アンの黒子の数からケツの穴のシワの数まで言い当てた
390名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:32:44.97 ID:AwsRvsI00
その言葉を聞いたアリスは、電気を止めた。一瞬魔法かとも思ったが、まさかのブレイカー落としである。
何故我が家のブレイカーが玄関にあるのを知っているのか。そして夕刻、薄暗くなった室内で彼女は宣言した。

「やっぱり、決めた! 私を……貴方のモノにして! 貴女の娘にして!!」

「……はい?」

「だから言ったの。お姉ちゃんも貴方の娘なら、私も娘にしないと不公平よ! それに、その……」

これまで、流れという形で次々と娘が増えていった。俺に拒否権は何故か無かった。
しかし、今回は少々流れが違う。まさかの娘にして宣言である。流石に免疫が無かった俺は、戸惑った。
そんな俺は、次のアリスの台詞で陥落してしまう。

「その……、ひ、一目惚れ、しちゃったから……!」

顔を燃やされ、治癒魔法を受け、イケメンとなった俺は随分罪作りな男となってしまったらしい。
こんなアンよりも年下と思われる少女を惚れさせるなんて、いけない男だと。しかし、何故に恋人ではなく娘なのか。
それでは手が出せないではないか。心の中で葛藤が始まる中、彼女は突然仁王立ち。

「そういう訳で、私もこのボロっちい家で暮らすわ! いいわね!? ……後、この部屋は私のものだから!!」

「……いきなり土足で人の家に上がりこんで、随分と横暴ですね」

この彼女の振る舞いに、最初に意を唱えたのがノエルだった。読んでいた本をぱたりと閉じ、アリスを睨みつける。
しかしそれには一切動じないアリスは、早速荷物を開き始めるのだった。

「色々買い置きして正解だったわ。こんな汚い部屋で暮らすなんて……。でも、彼が居るのだから、私、幸せかも……」

「貴女、私の話聞いていましたか? 秀さんが許しても、私が許さないと言っているんです」

「……何よ銀髪、この勇者候補でもある私に、ケンカ売るつもり?」

内乱の幕開けである。六畳間を奪おうとするアリスに、彼女の存在を認めないノエル。
俺はこの場合どうすれば良いのか、長女でもあるメルに相談する。すると……>>391
391名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:33:56.44 ID:OBTzIaOP0
メルが黙って魔法を唱え、二人の周りの重力を重くさせた
392名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:34:30.43 ID:fFx2E61Z0
生活保護の申請をおねだり
393名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:41:59.99 ID:AwsRvsI00
内乱の幕開けである。六畳間を奪おうとするアリスに、彼女の存在を認めないノエル。
俺はこの場合どうすれば良いのか、長女でもあるメルに相談する。すると……メルが黙って魔法を唱え、二人の周りの重力を重くさせた。
随分だんまりを決め込んでいたとは思っていたが、まさかの重力魔法さんの登場である。

「二人とも、ちょっと騒がしいよ! 反省しなさいッ!」

「あのさ、メル。……ここ、アパートの二階なんだ。下には人が住んでいるんだ。だから……」

「秀はちょっと黙ってて! さっきから聞いていたら、勝手な事ばっかり! 挙句にノエルまでこんな挑発に乗って……!!」

「わ、私は読書の邪魔されて、それだけです……!」

「私だって! 彼氏の娘になるのは別におかしい事じゃないでしょ!?」

「どっちも、静かにしなさぁぁぁいッ!!」

ミシリ、ミシリと部屋が鳴り、そして崩れるのは時間の問題であった。長女として無駄な覚醒を遂げたメルは、違う意味で暴走してしまう。
それを止めたのがマールなのである。彼女は、今まで見たことの無いような恐ろしい顔をして、聞いた事の無いような恐ろしい声でメルを叱り付けた。

「メルも、いい加減にしなさいッ!!」

「ひっ、ま、魔王様……ごめんなさい」

「はぁ、とにかく、皆座って、ちょっと話し合いましょう。アリスちゃんもよ」

そこで皆を座布団に座らせ、そして最後にマールが座布団に座った時であった。
重力魔法は既に切れている。しかし、既に崩壊寸前となっていた我が家の床は、マールが座ったのと同時に崩れ落ちた。

―― マールは暫し再起不能となる。太ったんだと何度も口走り、精気が抜けたような顔となっていた。
幸い、下の階に住んでいた人は外出中であり、床が抜けた箇所を慌ててメルが修復するのである。

「久々の出番だぞぉ〜ぷちオーク達ッ! ついでにメタメタスライムも修復手伝ってね!」

こうして部屋も修復され、改めて夕食をとなれば、今度は鶏肉争奪戦が繰り広げられるのだ。
どうすれば良いのだと、金の件もあって姉に相談すれば……>>394
394名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:42:57.95 ID:fFx2E61Z0
生命保険に加入をすすめられた
395名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:44:49.55 ID:6iQKh0EjP
>>394
金は自分の命で調達しろとw
396名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:47:35.16 ID:fFx2E61Z0
>>395
あの毒舌姉さんなら、就職活動のやる気をおこさせるためにあえて愛のムチ。
397名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:49:17.68 ID:AwsRvsI00
こうして部屋も修復され、改めて夕食をとなれば、今度は鶏肉争奪戦が繰り広げられるのだ。
どうすれば良いのだと、金の件もあって姉に相談すれば……生命保険に加入をすすめられた。割と本気で考えても良いのかもしれないと返してしまう。

『で、その娘……どうするつもり? それもアルテナの仕業なの?』

「あのババア、最近連絡取れないんだよ。でも、アリスが言うには関係無さそうなんだ。
 そもそも、姉を……アンを連れ帰る為にこっちに来たそうで、今じゃ一緒に暮らしたいなんて言い出してるけど」

『つまり、あの馬鹿女神は関係ないのね。じゃあ多少は援助しないでもないわ』

「姉さん、何気にあのババアの事嫌ってたんだな……」

『人遣いは荒いわ、嘘ばっかり言うわ、挙句に報酬無しで元の世界に戻すわ、散々だったのよ。思い出すだけで腹が立つッ!』

姉はかつて、十代目勇者としてリィンガルドに招かれ、勇者の紋を継いで魔王を打ち倒した経緯がある。
だが、その当時もまた女神に振り回され散々であったらしい。お酒も入っているせいか、随分長い愚痴を聞かされた。そして……。

『ねぇ、秀。……何故あんたなの?』

「へ? 何の話だよ」

『前から疑問だったの。あの馬鹿女神、何故あんたを選んで彼女達を送りつけたのか。……アリスは別みたいだけど』

「さぁ、その辺りは何も……いや、適当に送りつけたら俺だったとか言ってたな」

『臭いわね』

「姉さんが?」

『馬鹿女神よ! 私は臭くない! まだ加齢臭なんてしない筈ッ!!』

要するに、姉は俺の傍に実力のある人間を集めている理由が気になるそうである。
それが偶々若い女の子ばかりであって、実は他に何か意図があるのではないかと疑っている。

しかし、加齢臭が気になりだす年頃の姉さんは、酒が回りだしたようで……、>>398と泣き喚くのである。
398名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:52:46.84 ID:MhZUioSqP
あっちでモテモテのうちに結婚しておせばよかった
399名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:53:36.47 ID:fFx2E61Z0
セーラー服が似合わなくなった。
400名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:54:00.79 ID:6iQKh0EjP
親父と同じ臭いがするぅ〜
401名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 22:56:44.35 ID:fFx2E61Z0
>>400
ポマードですか?
402名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:00:30.55 ID:AwsRvsI00
しかし、加齢臭が気になりだす年頃の姉さんは、酒が回りだしたようで……、あっちでモテモテのうちに結婚しておせばよかったと泣き喚くのである。
向こうじゃモテてたのかと、苦笑するしかない。つまり今は誰も姉に寄り付かない事を示していた。切ない話である。

『戦士のバッカス、武道家のチャン、僧侶の全身タイツの髭親父、色々居たわ。気付けば私のパーティ、男だらけだったのよ。
 むさ苦しかったけど、今思えば……良い時代だったのよ。まだ十八歳だったから……あぁぁ、勿体無い事しちゃったぁぁぁ!!』

「僧侶だけはやめておいて正解だったと思うよ、姉さん」

『とにかぁく、私はまぁだ大丈夫ぃ……きっと、誰か、お嫁さんに……ぐぅ、ぐぅ……すぴぃ……』

「電話しながら寝やがった……どんだけ酒弱いんだよ……」

通話を切るのは忍びなかったが、俺から姉に電話をかけた為、通話料節約の為だと断腸の思いで通話を切るのである。
そしてまた振り返れば、今度はマールがアリスと大喧嘩中なのである。理由は、鶏肉をアリスが三つも食べていた疑惑であった。

「その鶏肉ぅぅ、吐き出しなさいよぉぉぉ!!」

「魔王がぁぁぁ、鶏肉程度でぇぇぇぇ、喚くなぁぁぁぁ!!」

最早、メルも苦笑し、ノエルもまた本の虫となり、彼女達を止める存在は居なくなった。
いや、まだ一人居る。俺では成し遂げられないが、彼女ならば二人を止める力を持っている。それは……今日もゲーム三昧なあの娘。

「アン、今度ゲームを買ってやろう」

「……ホントッ!?」

「但し条件がある。……二人を止めてくれ……」

「うん、直ぐ止める! 今すぐ止める!! PSP欲しいから!!」

しかし、その後俺はアンに二人を止めるよう願った事を後悔する。気付けば部屋の中が>>403となっていたからだ。
403名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:01:51.33 ID:OBTzIaOP0
高級ホテル
404名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:02:07.71 ID:MhZUioSqP
スライムまみれ
405名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:02:08.95 ID:fFx2E61Z0
鶏100羽召還
406名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:11:53.28 ID:AwsRvsI00
しかし、その後俺はアンに二人を止めるよう願った事を後悔する。気付けば部屋の中が高級ホテルとなっていたからだ。
どういう原理だよと先ず突っ込みたいのだが、最早気力が出ない。それは、勇者ならではのリフォーム術なのだろうと、勝手に納得する事にした――。

―― 天野秀、彼に一目惚れして、娘になる事を覚悟し、決心した私は、翌日起き上がり、彼の寝顔を眺めていた。
隣で眠れたことが幸せだった。途中、様々な障害が発生したが、すべてベッドから蹴り落としてやったのだ。

姉のアン・アンダルシア……天野アンと名乗るようになっていた彼女は、とんでもない力を発揮した。という事にしておこう。
高級ホテルの一室に変化させた。それは幻術の類とも呼べるのだが、アンが起こした奇跡ではない。

「良くやったわ、アフロ大佐……いいえ、ムスカ大佐……」

アパートに入る前、余りにも汚く、そしてこんな家で暮らすのは耐えられないと嘆いた私は、彼に頼むことになる。
幻術に長け、そして何気にお金も持っている彼に私は随分頼ってきてしまった。そして今回もまた頼るのである。

彼は当初、姉を仲間に引き入れる事にそこまでするのかと、私に反論した。
しかし、既に計画は決めた事。私があの家に潜入し、姉を徐々に懐柔の後、最後に仲間に引き入れる。
その計画は、実は既に頓挫しそうになっていた。私が天野秀に一目惚れする事態が想定されていないからである。

「予想外ってつきものよね。でも……寝顔も素敵よ、秀……」

心の底から、彼の娘になってみたい、なんて願ってしまった私は、計画を遂行しなければならない。
しかし、彼の傍で、姉と一緒に暮らし、のんびりと平和を満喫したい。そんな気持ちが生まれ始めていた。

それでも、神々は打倒しなければならない。手始めに、秀や姉のアンを惑わした張本人、アルテナを倒す。
その為に私はこの家に潜入したとも言えるのだと、高級ベッドと化したボロベッドの上で、私は秀に被さるように抱きついた。

「……そう言えば、お姉ちゃんも学校って所に行ってるのよね……」

ふと、地べたでおへそを出して眠る姉を見て呟いてしまう。学校、そこは通う価値のあるモノなのだろうか。
何でも、既に姉の杏に手続きを頼んであると秀は言っていたけれど……。

視界にハンガーに掛かった制服を目にした私は……>>407
407名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:13:08.76 ID:fFx2E61Z0
それを着て近所の高校へ(なんとそこは男子校)
408名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:15:22.91 ID:OBTzIaOP0
>>407
メルさんの制服でしたか
409名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:21:09.45 ID:AwsRvsI00
視界にハンガーに掛かった制服を目にした私は……それを着て近所の高校へ。まだ朝の六時過ぎなせいだろうか、人気はあまり無い。
しかし、何故か男子ばかりが映るのだが、確かこの中学校は共学なのではと、未だに勘違いに私は気付いていなかった。

「トルテも、演劇がしたいって理由で学校に入ったんだっけ……」

次第に時間は過ぎていく。景色もまた、歩く度に移り変わっていく。此処は教室だろう、此処は実験室だろうか。
此処は体育館と呼ばれているらしい。この銅像はハゲている。散策は意外と楽しく思えてしまう。

次第に、男子達のざわめきが聞こえ、周囲が煩くなっていく。ざわめきに苛立ちすら覚えだした私は、場所を変えようと廊下を進む。
時折生徒とすれ違うのだが、随分と風変わりな視線を向けられ、更にもやもやが心の中に渦巻いていくのである。

「通り過ぎる人、皆……物珍しそうに私を見て……汚らわしい……」

ただ、歩いているだけなのに。制服だって着ているのに、何がおかしいと言うのだろうか。
次第にまた新たな男子生徒が複数現れ、私を指差しては色々話をしている様子が目に入ってしまうのだ。

「そんなにジロジロ見て、どういうつもりッ!?」

とうとう痺れを切らしてしまった私は、その複数、実質四人居た男子生徒達に絡んでしまっていた。
何の恐怖も無い。ただの人間に私が負ける訳が無い。しかし、何故か妙に孤独感が有り、それが僅かな恐怖を呼んでいた。

「お、おい、どうするんだよ……なんか絡んできたぞ!?」

「でも、このコ可愛いじゃん。なんか良く分からねーけど、美味しい場面じゃね?」

「マジ、今日授業サボってこのコとシケこんじゃうって?」

何の話をしているのか知らないが、態度からして気に入らない、と私が手を出そうとした瞬間である。
もう一人居た、やや大人しそうな男子生徒が、私に素直に教えてくれたのだ。此処、鶏鳴中学校じゃないよ、と。

恥ずかしくなった私は、>>410
410名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:24:02.77 ID:fFx2E61Z0
ほうきにまたがった。
411名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:24:09.02 ID:K+ABz8c+0
俺が形成
412名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:32:46.52 ID:AwsRvsI00
恥ずかしくなった私は、ほうきにまたがった。恥ずかしくて逃げ出したい時に、箒が道端に転がっていたら、跨りたくなるものである。
すると、彼等は当然のように笑い転げてしまう。しかし、その中のグループの一人が、私に親切に教えてくれた男子生徒に掴みかかっていた。

「お前、何親切ぶってんだよ……、アァ?」

「ご、ごめん……、つい……」

「ついで警察いりませんつうのッ!!」

箒に跨りつつも、私は目の前の状況が理解できなかった。何故親切に教えてくれた彼が、殴られているのだろう。
何故、お腹を蹴られて、それでも尚髪の毛を掴まれ、また殴られるのだろう。
この世界では当たり前なのか。私の住まう世界、魔界と皆から呼ばれたその場所では、このような光景、先ず無いのだ。

「オラ、聞いてんだろうが……よォ!!」

「ご、ごめ――がはっ、はぁ、はぁ……ぐぁっ!!」

「おいおい、このコ箒に跨ったまま固まっちゃったぜ? どうすんの、啓、お前のせいだぞぉ?」

「オレかよ!? いやいや、このクソ野郎の責任だろう。……つう訳で、コイツシメてからあのコとフケようぜ」

「そうすっかぁ! 俺もちょっと気が乗ってきたわ」

「も、もう言わないから、ごめん、許し――」

また殴られた。また蹴られた。この世界に住まう連中は理不尽だ。親切にしたら、殴られ、蹴られ。
それもまた、神によって毒された為だろう。神々によって不干渉世界と認定されたこの世界とはいえ、神の意志に毒されていない訳が無い。

可哀想だった。だから、暴力を振るう彼等を私は消してしまっていた。自分の為ではなく、殴られ、蹴られた彼の為。
人の為に力を発揮する事は無いだろうと思っていた。しかし、この理不尽さが私を突き動かす。素直に見ているのが辛くなったのだ。

箒に跨ったまま彼等を消し去った私を、暴力を振るわれた男の子が眼を震わせてこちらを見る。
怖くなったのだろう。逃げ出したくなったのだろう。ならば、素直に私の前から立ち去ればいいと思っていた。

しかし彼は……>>413
413名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:34:16.75 ID:6iQKh0EjP
厨二病に目覚めた
414名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:36:43.80 ID:MhZUioSqP
男の子だもんな
415名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:42:56.49 ID:AwsRvsI00
しかし彼は……厨二病に目覚めた。彼にとって、私の持つ力が、理解できないものだと思っていた。
だがその斜め上を歩んだ彼は、口元を拭い、立ち上がっては私を見据える。

「……キミが、運命のコだったんだ」

「は、はい!?」

「キミが、僕を救ってくれた……。こんなにも弱い僕を、あの暴漢から……」

「そ、そうなると思うけど……、何故そこで運命とか出てくるの?」

「分かってたんだ。こんな理不尽な人生のまま終わる筈が無いって。いつか、きっと、救いの手が差し伸べられるって。
 それがキミなんだ。そして僕に力を与えてくれる、天使……」

「……天使?」

「そうだよ、キミと力を分け与えてくれた僕と、進むんだ。この歪んだ世界を変える為に!
 そして、皆が分かり合い、僕とキミと一緒になった人生を自分のように喜んでくれるんだ……!!」

なんだか、凄く不味い存在と出くわした、そんな気分だった。彼はいつしか私の手を取り、様々な事を語りかけてくる。
天使の存在だの、魔法の存在だの、世界の有り方だの、神様は実は居るんだ、とかちょっとした核心すら突いてくる。

この男の子と、これ以上関わってはいけない。彼は違う意味で危険だ。ではまた消すかと言われれば、先程の光景が浮かんでくる。
殴られ、蹴られ、屈する少年の姿。力を持たず、周囲と協調出来なかった彼は、何も希望も抱かず人生を終える。
それは余りにも虚しいものだと、私は改めて箒に跨った。そして……走って逃げたのだ。

―― 箒に跨って走り去る鶏鳴中の少女。その下らない噂は無駄に広がりをみせていく。
翌日、改めて鶏鳴中に転入する事になった私は、早速例の噂をされてしまうのであった。

「ねぇ、あの子じゃないの、箒に跨って走って逃げた子って……」

「箒に跨って走るとか半端ないよねー」

担任の川下浅海と名乗る女性が私を自己紹介させようとする中、そんな話がクラス中で飛び交い、
反論しようと私はつい、>>416とか口に出してしまうのだった。
416名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:44:12.37 ID:OBTzIaOP0
全員魔法少女に改造してやる・・・
417名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:47:31.84 ID:6iQKh0EjP
改造だと…!?
418名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:52:18.84 ID:AwsRvsI00
担任の川下浅海と名乗る女性が私を自己紹介させようとする中、そんな話がクラス中で飛び交い、
反論しようと私はつい、全員魔法少女に改造してやる・・・とか口に出してしまうのだった。

するとどうだろう、皆興味本位で私に話しかけてくるではないか。そう、これはつまり作戦だったのだ。
一時間目の授業なんて放っておき、女子生徒が私を囲んでは、魔法少女が好きなの、とか、魔法少女にどうやってなれるの、とか、声を揃えてくる。
しかし、その中で女子生徒の輪を掻き分けるようにして、一人性質の悪そうな男子生徒が私の前に立つのであった。

「おい、お前……天野って言ったな?」

「そうよ、天野アリス。よろしくね、目つきの悪い男子生徒クン」

「お前、アンの何なんだよ。つうか、勝負しろ」

「はぁ? いきなり何? アンは私の姉で、私達、双子として生まれたのだけど?」

「ならば尚更勝負だ! お前を倒し、天野アンをぶっ倒してやらぁ!!」

先日といい、今日といい、随分目つきの悪い男子に絡まれるものだと、私も立ち上がる。
既に女子生徒達は私の傍から離れ、壁際に散ってはひそひそと話を交えていた。
ふと、姉のアンを見る。……授業中にも関わらず、携帯ゲームに夢中であった。駄目な姉だと一瞬たりとも感じてしまう。

「おい、テメェ、余所見してんじゃねぇよッ!!」

その男の子が殴りかかってくる。しかし遅い。余りにも遅く、あくびが出そう。
すっとその拳を掌で避け、どうやって闇の底に落としてやろうかと思案する。その時、アンと視線が合ってしまう。

その眼は、余りにも恐ろしい視線だった。眼力だけで動きを封じるなんて、流石はリィンガルドで最強となった勇者であり、私の姉である。
そうして、恐怖により動きを封じられた私に、目つきの悪い男子生徒の一撃が頬に入ってしまう。

「あ、あれ……お前、意外と弱い……?」

その男子生徒、吾妻仁と名乗るらしい。弱いと呟かれ、舐めるなと魔法を発しようとすると、またアンが鋭く睨みつける。
要するに彼を傷つけるなと視線で訴えているのだ。ではどうすれば良いんだと嘆いた私は、>>419
419名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:54:24.03 ID:MhZUioSqP
乙女捨て身のディープキス
420名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:55:04.44 ID:fFx2E61Z0
彼と一緒に異世界へ移動
421名も無き被検体774号+:2013/04/23(火) 23:56:47.77 ID:6iQKh0EjP
>>419
なんと大胆な
422名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:00:54.30 ID:Fpvj82ke0
その男子生徒、吾妻仁と名乗るらしい。弱いと呟かれ、舐めるなと魔法を発しようとすると、またアンが鋭く睨みつける。
要するに彼を傷つけるなと視線で訴えているのだ。ではどうすれば良いんだと嘆いた私は、乙女捨て身のディープキス。
それは所詮予行練習に過ぎない。ファーストキスを大事にする女性も居るそうだが、そんなの何の価値がある。

秀と将来たくさんキスをする予定なのだから、この一度くらいどうでも良い。それよりも、この場を何とか収めたいと、私は動いてしまった。

―― 放課後、箒に跨り走り出す女の子の噂は既に誰も話さなくなっていた。
代わりに、私と吾妻仁と授業中にディープキスをした、という噂が学校中に広まるのである。

どうやら、私は転入早々行動を間違えてしまったらしい。どうしたものかと、姉のアンに相談を持ちかける。
しかし、何を話そうとも無視。とにかく無視。本当にこれが私の姉かと疑いたくなるほど、彼女は私を気にも留めなかった。

この分だと、彼女を仲間に引き入れるのは相当先になりそうだとげんなりする中、七福ことみと名乗る少女が私に話しかけてきた。

「ねぇ、アリスちゃん。さっきのキス……本当に良かったのかなぁ?」

「どうして貴女がそんな事を気にするの? キスなんて減るものじゃないわ」

「でも、最初は大事な人とするものじゃないのかなぁ。……アレとキスして、良かったの?」

彼女はアレを指差した。アレは放課後の今に至っても尚、放心状態となっている。
女性を何度も手玉にして犯したなんて噂は嘘なのではないかと思えるほど、彼は純真な反応を示すのだった。
そして、七福ことみは私の唇を見てこんな事を言う。

「どんな味、したの?」

「味? ……何だか、辛かったような、苦かったような、そんな感じ……? 不味かったわ」

「キスって、辛くて苦くて不味いんだ……」

そうして私と七福ことみが話をする中、教室に見覚えのある顔が現れる。
一つ上の学年で演劇部に所属する女子生徒、そして私の仲間であるトルテ・トールソンである。

彼女は私の噂を聞いたらしく、いきなり飛びついてきては>>423
423名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:02:34.58 ID:MhZUioSqP
乙女上書きディープキス
424名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:10:41.46 ID:Fpvj82ke0
彼女は私の噂を聞いたらしく、いきなり飛びついてきては乙女上書きディープキス。今度は舌を入れられてしまう。
トルテの味はなんだか甘くて、というか、チョコレートの味がして……、そのままの味を流し込まれる気分だった。

「――ぷはぁっ! アリス、キスは大事な人とするのっ!」

「何故貴女とキスしなきゃ――んんっ!!」

「うわぁ……大胆だなぁ……わ、私も頑張らなきゃぁ……」

七福ことみが何かを意気込む中、トルテを引き剥がそうと必死になり、そして気付けばまた女子生徒に囲まれる。
作戦の一貫ですっかり人気者となった私は、そうして色んな女子に話を持ちかけられる中、逃げるように教室を去ることに。

学校、それは想像以上に恐ろしい場所であった。いきなり暴力沙汰は当たり前。
そしてキスだって当たり前。そして包囲して話しかけてくるのも当たり前。なんて恐ろしい場所だと再認識するのである。

「といっても、キスの下りは……私のせいなのかな」

演劇部の部室に逃げ込んだ私は、チョコレートを貪り食うトルテを眺め、そんな事を呟いていた。
トルテは先にこの世界に送り出され、今では演劇に夢中となっている。演劇に夢中となった理由は私には分からない。
しかし、共に神を打倒する仲間であり、彼女も勿論私の事情を知っている。……筈なのだが、天真爛漫な性格のせいか、どうにも本心が掴めない。

「ねぇ、トルテ。……貴女、こっちの世界を楽しんでない?」

「楽しいよぉ〜。すっごく楽しいっ!」

「目的、忘れてないわよね?」

「覚えてるけど……、それって、必要なのかなって思っちゃう」

「勿論必要よ。私達はその為にこの世界に来たのだから。神の支配からすべての世界を解放するの。その為に――」

その時、突如部室の扉が開く。天野マールが演劇部に所属していた事を失念していた私は、先程の話を聞かれたのではと恐々する。
しかし、演劇部復興を掲げる彼女は、新たな部員が増えたと勘違いし……>>425
425名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:11:55.37 ID:t8rdpVhR0
小道具の製作を要求
426名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:18:13.46 ID:Fpvj82ke0
その時、突如部室の扉が開く。天野マールが演劇部に所属していた事を失念していた私は、先程の話を聞かれたのではと恐々する。
しかし、演劇部復興を掲げる彼女は、新たな部員が増えたと勘違いし……小道具の製作を要求。そして即辞退。

この学校に通うようになった以上、そしてトルテが居る以上、演劇部に所属するのはやぶさかではなかった。
しかし、何故に小道具担当なのだと意を唱えるが、既にダンス練習に入った彼女二人を止める者は居ない。

「ふっしぎなおっどり、ふっしぎでふっしぎ〜!」

「トルテ、は、恥ずかしいけど歌わないとなのよね……?」

「そうだよマールっ! ふっしぎでふっしぎで〜!」

「すってきなおっどり〜……やっぱり恥ずかしいぃぃ……」

その踊りは気味悪いとしか言えなかった。トルテのセンスは最早私でも理解できない。
仕方ない、こうなればちょっとした悪戯小道具を製作してやろうと、金槌を手にした直後、また部室の戸が開くのだった。

「……お姉ちゃん?」

「…………」

「お姉ちゃんも部員になったの?」

「……ゲームしにきた」

「……一応、演劇部なんだけど、ココ」

「……ことみが、踊るから」

「ちょっと、アンちゃん!? わ、わわ、押さないでよ! な、なんだか、踊りのせいなのか、MPが吸い取られるぅぅ〜〜……」

どうやら、姉のアンと七福ことみも、演劇部に所属する羽目となっているらしい。そうして、天野家が三人演劇部に集うのだが、
同じ鶏鳴中のノエルの姿が居ないのはこれも理由があるのだろうか。あのエルフ娘もどうにも食えない存在な為、近付き難いのではあった。

そして、部員が五人揃っても尚、小道具担当にされた私は……>>427
427名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:20:18.57 ID:sOgVkE4zP
小道具作りの世界にのめり込んでいくのであった
428名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:27:19.27 ID:0LJCTvwiP
ちゃんちゃん
429名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:28:55.71 ID:Fpvj82ke0
そして、部員が五人揃っても尚、小道具担当にされた私は……小道具作りの世界にのめり込んでいくのであった。
役者を引き立てる為の小道具という存在、それは意外と面白い物だと、小道具作りに夢中となり、ふと気付く。

「……なんだか私って、小者みたい……」

「ふっしぎっで、ふっしぎっで〜すってきな〜……この後の振り付け、どうしよぉ?」

「そうね、トルテの動きは良いんだから、センターでこう、皆を煽るように……でどう?」

「……これ、クソゲー……別のDLしないと……」

「アンちゃん、余りゲームにお金費やすのはやめたほうが……」

「……この部を辞めて小道具部でも作ろうかな……」

マールとトルテは何故かダンスの振り付けに、そしてアンはゲームばかり。そして七福ことみは彼女を止める役割。
それを部室で行う必要があるのだろうか。そして、演劇部でやる必要はあるのだろうか。そして、私は小道具を作る意味があるのだろうか。

色々と間違えていると皆が気づくのは、もう少し後の話だった――。

―― チェリークロックの夕刻は、大賢者メニューのせいで異様に忙しい。俺も、そしてまだ新人のメルもまた、あちらこちらと駆け回る。
その様子をにやついた笑みをしては眺める大賢者ネルネル。そして、彼女は気分次第でスパイスの料を変えていた。

「ふふ〜ん、今度はどんな味付けにしてやろうか……」

アイツは大賢者メニューという名の遊びを行っている。とはいえ、ホールに出た際は割りと真面目に働くのだから、訳が分からない。
そうして、夕刻の掻き入れ時がいよいよ終了を迎えそうになった時間、俺を名指しで呼ぶ男性が居ると、別のスタッフから呼ばれるのであった。

「俺を、名指しで……? もしかして、ロリロリな女の子かっ!?」

「うーん、男の人だったよ。でも、どこか憂い気な感じがステキでぇ〜……」

「けっ、男かよ。……一応出向いた方が良いのかな」

わざわざ俺を呼びつけるとは良い度胸だと、せめて顔でも拝んでやろうとレストランの外へ出る。
レストランの入り口、そこで中の様子を見ていた男性は、俺を見つけては……>>430
430名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:30:14.85 ID:pnECb25E0
数億が入ったケースとマールの名前が書かれた領収書を手渡した
431名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:39:28.69 ID:Fpvj82ke0
わざわざ俺を呼びつけるとは良い度胸だと、せめて顔でも拝んでやろうとレストランの外へ出る。
レストランの入り口、そこで中の様子を見ていた男性は、俺を見つけては……数億が入ったケースとマールの名前が書かれた領収書を手渡した。

アタッシュケースの中身は異様に重く、俺の力では運べない。そしてその中は数億と彼はさらっと口にした。
呆気に取られる中、更に領収書を見せられる。何故かマールの名前が書かれており、何の領収書だとそれを掴み、握りつぶしてしまう。

「彼女を、売ってくれないかな? このお金で」

「……テメェ、俺の娘を売れ……だと……?」

何故この男がマールの名を知っているのか、それは最早どうでも良くなっていた。頭に血が上った状態で、冷静に考えられる筈が無い。
彼女は、既に俺の家族であり、娘だ。アンも同様で、メルも、そしてノエルも家族なのだ。アリスは……もう少しだけ時間が欲しかったりする。
だが、アリスを数億で売れと言われても俺は似たような反応を示しただろう。命を、人を、金で売れるはずが無い。

「困った、億じゃ足りないようだ。……生活費の足しになると思ったんだけど」

「ふざけるなよ、生活費がなんだ……、娘を売るくらいなら、金なんていらねぇ!!」

「そうか、それは残念だよ。……でも、本当にお金、要らないのかな?」

「どういう意味だ?」

「君は、娘をたくさん抱えているのだろう? しかも理不尽な理由で娘を抱えることとなって、自分の為に使うお金が無い。
 そして、彼女達を養う為に君は必死に働いている。貴重な時間を割いている。……それって、果たしてどうだろう」

「……何が言いたいんだ」

「僕はね、君を少しでも自由にしてあげたいと思った。マールを買おうと思ったのもその理由に過ぎない。
 尤も、一番良い手段は、君があの娘達全員を元の世界に帰してあげる事だと思うけども」

「元の世界に……帰す……?」

そんな発想、今まであったようで、実は無かった。いきなりな毎日が続きすぎて、麻痺してしまっていた。
そうだ、何故彼女達が俺の傍に居る必要があるのだ。別に、元の世界で暮らしても良いし、もっと良い暮らしを求めたっていい。
俺の収入は僅かだ。そして、生活費に苦悩する日々が続いている。そんな中、思春期な少女達を満足させる事が可能だろうか。

「苦悩しているようだね。……でも、良く考えて欲しい。君は今、凄く理不尽な出来事に巻き込まれていると言う事を。
 このお金は、ちょっとしたプレゼントという事にしよう。……余り無駄遣いはしないで欲しいな」

その白の背広を着た男は去っていこうとする。今ならまだ金を突き返すことだって可能だ。しかし、俺はどうすれば良いのか悩んでいる。
そして、俺の取った行動は……>>432
432名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:42:58.14 ID:0LJCTvwiP
増やしてから返そう
433名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:42:58.26 ID:sOgVkE4zP
  ┌┐         / //
 [二  ] __     〔/ / 
   | |/,ー-、ヽ      /.       (~)
  / /  _,,| |     ./       γ´⌒`ヽ
 レ1 |  / o └、  ∠/    {i:i:i:i:i:i:i:i:}
   .|__|  ヽ_/^     ,/     ( ´・ω・)       ))
      __       /      /つ( ̄`ヽO_ノ⌒ヽ
   [二二_  ]    /     ノ:::::::::)        \ ))
       //    {..    (__丿\ヽ ::    ノ:::: )
     / ∠__    ̄フ..      丿        ,:'  ))  
    ∠___  /  /    (( (___,,.;:-−''"´``'‐'    
     _   / /  \      
    / o ヽ/  /   /      
    ヽ__ /    \
434名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:50:54.49 ID:Fpvj82ke0
その白の背広を着た男は去っていこうとする。今ならまだ金を突き返すことだって可能だ。しかし、俺はどうすれば良いのか悩んでいる。
そして、俺の取った行動は……増やしてから返そう、というものだった。その金に手をつけた俺は、人の道を外れたのかもしれない。

メルには、先にバイトから家に戻るよう指示し、大賢者ネルにも見つからないようにバイト先から抜け出した俺は、
その金の一部を手につけ、スロットにつぎ込み……惨敗した。二十万も一日で飛ばすなんて、普通じゃ考えられない事を俺はした。

「うぉぉぉ……二十万とかマジどうするんだよ、俺ぇ……」

完全に夜の帳が下りた繁華街を、とぼとぼと俺は歩いていた。アタッシュケースは一先ずバイト先のロッカーに保管してある。
あの中には、恐らく一億も入っていないだろう。しかし、数千万は確実に存在した。

そして、そこから二十万だけを使い、そして見事に失ったわけである。物凄く情けないと、繁華街から家に向かおうとした最中だった。

「あら……天野君?」

「……げ、川下……!」

そこでばたりとアンやアリスの担任となる川下浅海に出会ってしまう。彼女と俺はかつての同級生でもあった。
折角だからと、彼女の誘いもあり、小規模な居酒屋の敷居を跨ぐことになる。

「あー、悪い、ちょっと外食するから、皆ちゃんと食べといてくれ。え、マールの料理が不味い? 文句言わないでくれよ、ノエル」

電話で帰りが遅くなると、ノエルに報告して愚痴られる。その様子を川下はくすくすと笑って眺めるのだった。

「なんだか、ちょっぴりお父さんの顔してる」

「……マジかよ、まだ二十六でフリーターなのに」

「でも、一瞬そんな顔してたわ。……後、何だかツルツルになってるよね、お肌」

「いやぁ、ちょっと俺イケメンになっちゃってさぁ、アハハ」

「エステでも行ったんだ。……まぁ、確かに久しぶりに出会った時よりは、格好良くなったかな?」

彼女がチューハイのグラスに口をつけながら、そんな事をさらっと言うものだから……>>435
435名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 00:53:08.20 ID:sOgVkE4zP
照れ隠しに一気飲み→倒れて搬送
436名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:00:02.43 ID:Fpvj82ke0
彼女がチューハイのグラスに口をつけながら、そんな事をさらっと言うものだから……照れ隠しに一気飲み→倒れて搬送。
終わってる。見知らぬ男に金を貰い、そしてその金をスロットにつぎ込み、惨敗。挙句初恋の女の前で倒れるなんて……最低だ。

更に最低な事があるとすれば、何故か川下の家に泊められているのである。日付が変わったころ、俺は目を覚まし、あたふたしてしまう。
綺麗な部屋だった。ワンルームマンションだろうか、白い壁紙が眩しく、家具も白で統一されている。
そして、彼女の大人の香りがするベッドで眠っていた俺は、慌ててそのベッドの上で正座してしまう。

「か、川下、悪い、俺が悪かった!!」

「あ、起きたのね。……もう、困ったんだから。急に倒れるから、タクシー呼んで、運んで貰ったのよ?」

「でも、何で川下の家に……?」

「……気分、かな?」

は、と首を傾げてしまう。そして、彼女の格好に更に首を傾げて首を痛めてしまう。
何故キャミソール姿で居るのだろう。スーツを脱いで、家着に着替えた彼女は、キャミソールに、下着だけという格好だった。
まるで、見せ付けるようだった。臀部に食い込むショーツに目がいってしまう。……いくらなんでも、これは出来すぎじゃないだろうか。

「川下、お前……なんでそんな格好を?」

「これも気分……って言ったら、どう思う?」

「お前、とうとう俺にまで手を出すようになったのか」

「……それも、いいかなぁ、なんて……」

昔の川下は、もっとしっかりした女の子だった。クラス委員だって勤め、俺をよく叱ってきたものである。
そんな彼女に、性的な悪戯だってしたし、時には優しい男子の振る舞いだって見せていた。かなり本気だった。

その女性が、今、俺を誘惑しようと迫ろうとしている。このまま手を伸ばせば、恐らく一夜を簡単に過ごせるだろう。
でも、その時何故かアン達の、娘の顔が浮かび……彼女に手を出せなかった。そんな俺に、川下は>>437
437名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:03:45.15 ID:0LJCTvwiP
激烈な殴打
438名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:12:53.97 ID:Fpvj82ke0
その女性が、今、俺を誘惑しようと迫ろうとしている。このまま手を伸ばせば、恐らく一夜を簡単に過ごせるだろう。
でも、その時何故かアン達の、娘の顔が浮かび……彼女に手を出せなかった。そんな俺に、川下は激烈な殴打である。
酷いなんてモノじゃない。何度も打たれ、ツルツルイケメンお肌が真っ赤に腫れ上がった。その最中、川下は泣いていた。

「あんたが、あんたが……あんな面倒な娘を押し付けてくるから! ただでさえしんどかった仕事なのに、余計に辛くなった!!」

吾妻仁の一件で彼女は手を焼いていた。しかし、その件はアンの登場で片付いたと思われた。
しかし実際、吾妻仁が更正する訳でもなく、大人しくはなったものの、やはりヤンチャな時期である。他の生徒に手を出さない訳では無かった。
そして、何よりアン、そして新たにアリスが転入した。この出来事が彼女を壊してしまったのである。

「問題児が、一人じゃなくて、二人、三人……! 他の保護者に、私はなんて言われてると思う!?
 役立たず、ろくでなし、教師なんて向いてないって散々よ!!」

アンは授業中、常にゲームばかりしており、他の生徒に悪影響を及ぼしていると陰口を叩かれている事をそこで知る。
そして、何より問題になったのが、七福ことみという生徒の存在。彼女の母親が、アンを理解しようとせず、川下に何度も抗議しているのであった。

「ふざけないでよ……! 何で、あんたは私を苦しめるの!? なんで……私を……」

俺の胸元で崩れるようにしがみつき、泣き叫ぶ川下を見て、俺はふと思う。こんな経験、した事が無いと。
所詮はフリーター。時にはニート。アルバイト程度の仕事で満足し、何とか生きていければ良いと過ごしてきた人生。
女なんて捨ててきた。人との関わりだって捨ててきた。過去の思い出だって捨ててきた。そんな俺の胸で、川下が泣いている。

「……昔は、いつも私に変態的な悪戯ばかりで、でも、時には相談に乗ってくれて……、ちょっとは、嬉しかったの。
 でも、お互い……時間、たくさん過ぎちゃったんだね。戻りたいのに、戻れないって、今思っちゃった……」

川下もまた、俺と同級生として過ごしていた時期を思い出し、そして今という時間を経て、口に出していた。
それが異様に心に響くのだ。俺は、川下とは違う、とてつもなく無駄な時間を過ごしてきたと。でも、それが幸せでもあったんだと。

でも、今の幸せとは何だろう。この先の幸せとは何だろう。そして……目の前で涙する川下の幸せって、何だろう。

「川下、あのさ……」

言葉に出来ない。何を言えば分からない。こんな時、彼女を慰める術を、経験を、俺は持っていないのだ。
それでも何か言わなければならないと、俺は振り絞るように言葉にした。>>439と。
439名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:17:50.58 ID:sOgVkE4zP
卒業アルバム、持ってるか?
440名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:26:05.94 ID:Fpvj82ke0
言葉に出来ない。何を言えば分からない。こんな時、彼女を慰める術を、経験を、俺は持っていないのだ。
それでも何か言わなければならないと、俺は振り絞るように言葉にした。「卒業アルバム、持ってるか?」と。

「そんなの、とうの前に捨ててるわ。何度も引越しがあったし、もう要らないって……」

「……俺は、実はまだ持ってるんだな」

「……そうなの。でも、見てないんでしょ?」

「そうだな……。……今度、休みの日に見に来るか? 一緒に見よう」

彼女は、俺の胸を拳で軽く突っついた。そして、眼を真っ赤にしながらも、俺に笑い掛けてきた。
それがまた凄く嬉しいと素直に感じてしまった。彼女の問題は何一つ解決していないのに、なのにその笑顔が嬉しかったのだ――。

―― 帰宅すると、アンはまたお腹を出して眠っている。そして、ノエルは壁際にもたれ、毛布を被り眠っていた。
メルはアリスに蹴落とされたのだろう、ベッドから転落した状態で頭で支えながら眠っている。
そしてマールとアリスは、互いをけん制しあうようにベッドの上で眠っていた。器用な奴らだと、頬が緩んでしまう。

ジャケットの中には、まだ数万程残っていた。例のお金である。あの男は何者で、どうして俺に金を寄越したのか分からない。
だが、この金はもう使うつもりはないと、改めてポケットに仕舞う。そして、皆を起こさない様に押入れを漁り始めるのだ。

「……あったあった。埃塗れだけど……」

俺と川下が通っていた鶏鳴中学校のアルバムである。そして、不思議だとそのアルバムの表紙を見て思う。
今では、川下がこの中学校の教師をしていて、俺の養子であるアンやマール、ノエルにアリスがこの学校に通っている。
そして、川下が高校の時進学した聖アイリス学園にメルが通っているのだ。

俺の娘達は、縁を齎してくれたのかもしれない。俺と川下という縁を再び繋ぎ合わせてくれたのかもしれない。
そして、次はどのような縁を結ばせてくれるのか。そして、俺とどんな不思議を齎してくれるのか。

ふと、ちゃぶ台テーブルに視線を向ければ、焦げた豚肉とぶっきらぼうに切られたキャベツ。そして書置きが残っていた。
そこには、>>441と書かれているのである。
441名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:31:42.38 ID:sOgVkE4zP
食うなよ!絶対に食うなよ!
442名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:32:06.74 ID:0LJCTvwiP
浮気者
443名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:39:47.86 ID:Fpvj82ke0
ふと、ちゃぶ台テーブルに視線を向ければ、焦げた豚肉とぶっきらぼうに切られたキャベツ。そして書置きが残っていた。
そこには、『食うなよ!絶対に食うなよ!』と書かれているのである。これはメルの字だ。料理は恐らくマールなのだろう。
娘の作った料理でもあるのだ。食うなと言われても、食べなければ父親として失格だろうと口にして、俺は失神した――。

―― 久々の休日がやって来た。俺は朝からマールを叩き起こし、料理の勉強をさせる事にした。
最初は「料理なんて出来るわよ!」と息巻いていたが、今では隣で大人しく俺の話を聞いてくれている。
何故か頬が赤いのは気のせいだろうか。そして、いつもの元気が無いというか、ぎこちない。

「あ、あんまりジロジロ見ないでよ!? 手、切っちゃうから……」

ジロジロ見たら手を切っちゃうって、どんだけ集中力無いんだよと突っ込んでしまいそうになる。
そんな中、背後からニヤニヤと魔王様を見守るメルの姿があり、それに押さえつけられるようにアリスが様子を伺っていた。

「何よ、マール、デレデレしちゃって……。私も料理教えてもらうんだった……」

「駄目駄目、今日は魔王様の日なんだから。頑張って豚のしょうが焼きに挑戦してよかったね、魔王様」

「あんなのしょうが焼きどころか、ただの丸焼き――んんぅ!!」

「余計なおしゃべりは禁止ぃ〜!」

全部丸聞こえだと背後の二人にも突っ込みたくなる中、更に部屋の奥を眺めれば、ソブンガルデを冒険するアンに、
やっぱりベッドで読書に耽るノエル。しかし、ノエルも時折こちらを見ては、視線を逸らす辺り、何かが気になる様子であった。

「ね、ねぇ、秀様。アスパラガスって、皮を剥いたほうが美味しいの……?」

「ああ、そのまま湯がいても皮が口の中に残るから、余計な部分はばっさり落として――」

この時、呼び鈴が鳴り、メルはアリスを押さえつけるので必死な為、ノエルが代わりに応対してくれる事になる。
そして、聞き覚えのある声が部屋の中に響き渡るのだった。今ではすっかり笑顔な駄目教師、川下の到来であった。

「はいは〜い、退いて退いて〜、家庭訪問に来たわよ〜!!」

昨日の今日でもうアルバムを見に来たのかと、背筋を振るわせる。そして彼女は彼女で、豪華となった我が部屋を見て……似合わないと口走るのだった――。


―――― つづきます
444名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:41:25.17 ID:sOgVkE4zP
おつー!
445名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:42:14.12 ID:Fpvj82ke0
なーんだかちょいちょい文字足らずだったり誤字ったり、文章上おかしかったりしましたが、
適当に補正してあげてね! 頭弱いから!

仕事もあって疲れてるんです。なんて言い訳しつつ、今日もお付き合いありがとうございました〜!


大人な濡れ場って嫌いじゃないって今気付いた。
446名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:44:12.40 ID:Fpvj82ke0
【04/24 (水) 01:43時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/26 (金)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第九話 『勇者と怪事件』


ついでにべっちょり。
447名も無き被検体774号+:2013/04/24(水) 01:52:16.52 ID:0LJCTvwiP

448名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 21:47:53.59 ID:Wax6ZYPc0
5分程ですが遅れます…
449名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 21:49:02.70 ID:8Ud7sT1EP
【04/24 (水) 01:43時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/26 (金)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第九話 『勇者と怪事件』
450名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:01:21.99 ID:Wax6ZYPc0
コンタクト落としたと思ったら案外早く見つかったのでちょっと幸せ。
でも寝不足続きで安定剤が欲しくなってて鬱気味。ほええ。

なんか規制な人がまた現れたようで……。その辺りちょっぴり避難所で意見募集しちゃいます。
このスレ1000まで通すか或いは、なんてお話ですが。というか勝手にあちこちスレを移して良いものなのかー。

あ、登場人物は>>383をご覧下さいってことで、もう暫くお待ち下さい。


〜〜ほんじつの おまけ〜〜

http://muriyari4th.rash.jp/mngupload/src/mngup37.jpg  ※画像はイメージの為、見ないほうが幸せかもしれません。

とるとるさん急いで付け足したオマケです。褐色処女でした。わはー。
451名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:06:58.49 ID:KX3P/P3b0
規制だと・・・?ts
452名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:08:49.59 ID:Wax6ZYPc0
―――― 勇者なムスメ 第九話

平凡な家庭だった。父親はサラリーマン、母は専業主婦。姉が居て、そして妹の私と四人暮らし。
一軒家の家はローンがまだ残っており、地道に支払っていく父の背中は、徐々に小さく感じるのである。
一方の母は、昔のような優しさは残っているものの、長い生活で麻痺したのか、歪んだ愛情を感じることもある。

「ことみ、ちょっと来なさい」

母が呼んでいるが、部屋から出たくない。話の内容が想定出来てしまったからだ。
最近はずっとこうだった。同じ話を繰り返し、私を説得しようと試みる。しかしそれが出来ない母は、強硬手段も辞さない構えであった。
嫌だと、心が否定している。足取りも重い。それでも、ベッドから何とか抜け出して、母が待つリビングへのろのろと歩いていく。

「……呼んだら直ぐに出てきなさい」

「ごめんなさい」

「最近ずっと落ち込んでる様子だけど、学校で嫌な事でもあった?」

「……分かってるくせに」

「やっぱり、あの子なのね……」

母は噂やイメージだけで勝手に決めつけ、そして彼女を否定している。それが許せない。
けれど、彼女を母と会わせようだなんて、流石に彼女に失礼だと首を振る。では、どうすれば母を納得させられるのだろう。
ただ、友達のままで居たいだけなのに。それすらも許そうとしない母は、今日も私にお説教するのである。

「良い? もうあんな不良娘に近づいちゃ駄目よ。悪さばかりしてるんでしょう、ことみに悪影響を及ぼすわ」

過保護すぎる母をつい睨みそうになる。でも堪える。それの繰り返し。そして、私は肝心な事を言えずにいる。
私は臆病なのだ。母に嫌われたくないとご機嫌を伺い、そして友達のご機嫌も伺ってしまう卑怯で臆病な存在。

「ことみ、聞いているの? ことみ!!」

突然母が怒鳴った為、私は咄嗟に母に>>453と切り替えしてしまった。
453名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:11:09.54 ID:KX3P/P3b0
お母さんなんて現中二病のくせに
454名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:11:15.08 ID:8Ud7sT1EP
怒ると美容に悪いんだよバーカバーカ!
455名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:19:35.32 ID:Wax6ZYPc0
突然母が怒鳴った為、私は咄嗟に母に「お母さんなんて現中二病のくせに」と切り替えしてしまった。
すると母はテーブルを叩き、私を威嚇した。眼差しも先程より更に鋭くなっている。小皺が目立っていた。

「私はね、ことみの事を心配して言っているの! 私の二の舞にならないようにって……心配なのよ!」

「二の舞?」

「そ、それはね、……ことみには関係ない話なのよ。とにかく、あの子は駄目、絶対近づいちゃ駄目よ!」

その話を、姉も扉越しに聞いていたらしい。リビングを出る際、鉢合わせとなる。
姉の七福まこと。聖アイリス女学園に通う一年生の彼女は、私が部屋に戻る際に呟いた。

「天野って、何処にでも居るのね」

その時は何を言っているのか分からず、そして関わろうとも思わなかった私は、そそくさと部屋に戻るのだった。

姉も母を継いでの中ニ病。時折、眼が疼く等と意味不明な供述を繰り返す癖のある姉は、嫌いではない。
寧ろ、最近までは好きだった。姉にべっとりだった私が、姉離れするようになったのは、姉が中ニ病を母から継いだ時である。

「まこと、さぁ、破魔のオーラを感じなさい……集中して、気を練り、高めるのです……」

「……うん、感じる……。邪悪を祓うこの力の息吹を、そして絶対なる力を……」

「さぁ、今日もいつものアレをやりましょう」

ある夜中、私は眠れなくて麦茶でも飲もうと一階へ降りては、冷蔵庫を漁ろうとリビングからキッチンに抜けようとした。
その時、母と姉が奇妙な事をしていた為、咄嗟に隠れて様子を見ていたのである。

あれは紛れも無く中ニ病そのものだった。だって、母と姉は私に隠れて……>>456をしていたんだから!
456名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:21:14.52 ID:8Ud7sT1EP
イオナズンの練習
457名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:28:31.93 ID:Wax6ZYPc0
あれは紛れも無く中ニ病そのものだった。だって、母と姉は私に隠れて……イオナズンの練習をしていたんだから!

「今日はMPが足りないみたいね、まこと」

「今日もだよ、お母さん……」

「その内扱えるようになるわ。まだ、これからだもの。フフフフフ」

「そうだよね、うん、いつか……フフフフフ」

イオナズンって、両手をばんざいするだけで使えるものなのでしょうか。そして、この光景は何なのでしょうか。
それから、姉と母がちょっぴり怖くなり、距離を置こうと考え出したのである。それが丁度一年前の話だった。

尚、今もイオナズンの練習は続いている模様であり、最近ではギガデインも練習しましょうなんて話をしている。
そんな母と姉を抱える私の家庭で、信じられるのは最早父だけとなっていた。しかし……。

「……そうか、成程な」

「お父さん、真面目に聞いてよぉ……」

「聞いているさ、母さんとまことが変な遊びをしているんだろう?」

「もう、新聞読みながら話を聞かないで!」

「新聞を読むのも仕事なんだ。話なら、またゆっくり聞いてやるさ」

父もまた、私の話を真面目に聞いてくれようともせず、新聞ばかりを読んでいる。
頭も最近は寂しくなり、次第に父が頼れない存在となっていくのを感じてしまう。では、誰を頼ればよいのだろう。

別に、母と姉の奇行を無視して生きる事だって出来る。見なかったことにすれば良いだけ。
それでも、何だか気持ち悪いと思ってしまう自分が居る。そして、今日も私は鶏小屋にやって来た。

「アンちゃん、鶏さん今日も元気そうだね」

「……いつも通り」

母は、天野アンと友達になってはいけないと諭すのだ。特別飼育係りに任命されたアンちゃんは、今日も鶏のお世話をしている。
こんなに良い子なのに、何故……と思っていると、アンちゃんは突然鶏を使って、>>458
458名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:34:19.58 ID:8Ud7sT1EP
手から炎を出して丸焼きに
459名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:43:28.13 ID:Wax6ZYPc0
母は、天野アンと友達になってはいけないと諭すのだ。特別飼育係りに任命されたアンちゃんは、今日も鶏のお世話をしている。
こんなに良い子なのに、何故……と思っていると、アンちゃんは突然鶏を使って、手から炎を出して丸焼きに。

良い子……の筈なのだ。多分。だって、彼女は魔王のような番長の吾妻君を倒し、クラスを、学校を救ってくれたし、
その吾妻君はすっかり更生しちゃったし。そして、鶏のお世話をちゃんとやっていたし。多分……。

不思議な子ではあった。クラスに転入し、突然吾妻君にケンカを売る形で対峙し、そして彼を片腕だけで倒してしまった。
複雑骨折となった吾妻君を見たクラスの人たちは、気が晴れたと感じた人が殆どであった。しかしそれもその時だけ。
翌日となれば、彼女はやりすぎだと、陰口を叩く人も増えていった。そんな彼女が不憫で、私は思い切って声を掛けた。

アンちゃんはあっさり私と友達になってくれた。今では、私の事を大事な友達とも呼んでくれる。
そんな彼女は、授業中もゲームばかりしていて、勉強しようとしない。体育の時間だって、着替えてゲーム。
とにかくゲームで時折ご飯、それが日課の彼女は、優等生とは流石に呼べないのである。

「アンちゃん、どうして……そんな事を」

「ちょっとした練習」

「練習って、さっきの炎のマジック? って、そうじゃないよ! どうして鶏さんを……」

「……理由、知りたいの?」

真顔だった。不思議だとは感じたけれど、この時ばかりは背筋が凍りついた。
命を奪っておいて、どうしてこんな表情が出来るのだろう。やはり、この娘は他の娘とは違うんだと感じた瞬間だった。

彼女は焼け焦げた鶏に視線を移す。周囲の鶏達はざわめき、それが音楽を奏でていた。そんな中、彼女は言った。

「もう、永くは無かったの」

彼女は視線を落とし、最早鶏を見ようともしなかった。ただ、微かに声が震えていたような気もした……。

―― そんな彼女と途中まで下校する日は、割と多い。今日も鶏の出来事がありながらも、私は彼女と行動を共にした。
ただ、今日ばかりはいつものように話しかけられない。なんだか怖いと、横目でアンちゃんを伺ってしまう。

信号待ちとなった。学校からこの信号まで、ずっと会話が無い。どうしよう、何か話をするべきだろうか……>>460
460名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:49:39.63 ID:8Ud7sT1EP
と考えている間にいかにも悪そうな黒服軍団に囲まれた
461名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:55:53.55 ID:Wax6ZYPc0
信号待ちとなった。学校からこの信号まで、ずっと会話が無い。どうしよう、何か話をするべきだろうか……。
と考えている間にいかにも悪そうな黒服軍団に囲まれた。黒ずくめの男達。しかしサングラス無しで、全員何故か黒のシルクハット付き。
それが突然、私達を囲んだは良いものの、何やらひそひそと話し合っている様子なのである。

「あ、アンちゃん、どうしよう……これ」

「……ゲームしとく」

「って、こんな時にゲームッ!? と、とにかく逃げないと……!」

その間も男達は何やら打ち合わせるような話をし、とうとう話が纏まったらしい。リーダー格だろうと思われる男がずいっと前に出る。
目つきは寧ろ優しそうにも見えるし、マジックペンで描いた無理のある傷跡が私に笑いを誘ってくるのである。

とはいえ、彼等の狙いは恐らくアンちゃんだ。流石に彼女が強いといっても、こんな大人な人達に囲まれては太刀打ちできない筈。
何とか逃してあげないと、と機会を伺う中、その男は私達に言った。

「……貴様だな、七福ことみというお嬢さんは……」

「は、はぁ……って、わ、私ぃ!?」

「貴様に用がある、七福ことみ。……ちょっと来て貰おうか」

「え、でも、あの……狙いは、アンちゃんじゃなくて……私、なんですか……?」

「な、何度も言わせるんじゃねぇ! 来ないと……姉の命は無いぞ」

「姉……お姉ちゃんをどうしたんですかッ!?」

私は叫んだ。そして、その声が周囲の人々の視線を惹く行為となったらしい。皆が気付けば私やアンちゃん、そして黒服の男達を見つめているのである。
これにどうやら焦ったらしい黒服の皆さんは、>>462
462名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 22:59:39.02 ID:KX3P/P3b0
スプリンター並の速さを持つ黒服を呼び出し、ことみをさらっていった
463名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:02:33.01 ID:8Ud7sT1EP
>>462
ハ○ターか…!?
464名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:05:35.57 ID:Wax6ZYPc0
私は叫んだ。そして、その声が周囲の人々の視線を惹く行為となったらしい。皆が気付けば私やアンちゃん、そして黒服の男達を見つめているのである。
これにどうやら焦ったらしい黒服の皆さんは、スプリンター並の速さを持つ黒服を呼び出し、私を攫っていった。お姫様抱っこで。

「ひぇぇ! あの、その、私なんか攫っても美味しくありませんッ!」

「黙っていろ。これは任務なんでな……悪く思うな」

「に、任務……。もしかして、私……殺されるんですか?」

「さぁな。そしておしゃべりはそこまでだ――って、何ィッ!?」

その人は体格も良く、足も異様に速かった。きっと、昔は五輪大会に出るような選手だったに違いない、なんて思わせるほど。
しかし、それを上回る小さな女の子が居た。それは、ゲームしながらも、彼と肩を並べて走り、そしてゲーム画面を覗き込んだまま言うのだ。

「私の友達、返して」

「くそ、俺の速さについて来れる奴がいるとは! だが、まだだ、まだ終わらんッ!!」

彼は再び気力を振り絞り、彼女を引き離そうとした。それはもう自転車のペダルを全開に漕いだ程の速さである。
なのに、ゲームに夢中な少女はその速さを上回る。そして、彼を止めようと先回りしては、彼の進路を塞いでしまった。

「……返して貰うから」

「うわぁぁぁ、ぶ、ぶつかるぅぅぅ!!」

お姫様だっこされながらも、必ず床に落ちる衝撃が走ると眼を閉じる。しかし、その時は中々やって来ない。
何か先ほどの男の人の悲鳴が聞こえたような気もする。何が起こってるんだろうと恐々と眼を開くと……>>465
465名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:07:56.16 ID:KX3P/P3b0
何故か自分が気を失った黒服の胸倉をつかみ、まさに殴りかかる瞬間になっていた
466名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:14:53.81 ID:Wax6ZYPc0
お姫様だっこされながらも、必ず床に落ちる衝撃が走ると眼を閉じる。しかし、その時は中々やって来ない。
何か先ほどの男の人の悲鳴が聞こえたような気もする。何が起こってるんだろうと恐々と眼を開くと……、
何故か自分が気を失った黒服の胸倉をつかみ、まさに殴りかかる瞬間になっていた。しかも、倒れた男を片腕で引き上げてしまっていた。

正気を取り戻した、というのはこの事を言うのかもしれない。我に返ったと思われた私は、その男の重さに耐え切れなくなり、
そのまま地面に落としてしまい、自分もふらついては道端に倒れこんでしまう。
それをアンちゃんが抱きかかえてくれた。そして、ゲーム機と化していた携帯をしまい、私の様子を診てくれるのである。

「……多分、大丈夫。だけど念の為、ノエルに診て貰った方が良いかも」

「へ……。の、ノエルって?」

「……ちょっとした天野家のお医者さん」

「は、はぁ……。でも、私、大丈夫だから――」

強がりだったのかもしれない。大丈夫だと言い放った瞬間、また力が抜けてアンちゃんの腕にしがみ付いてしまう。
すると、今度は彼女が私をお姫様だっこしてしまう。余りにも軽々と持ち上げられたものだから、つい変な声が出てしまった。
その様子を彼女は見下ろして、そして……ちょっぴりだけ笑顔となっていた。


―― 任務失敗。その事を報告すると、その主は舌打ちをするのである。申し訳ないと、私は詫びた。

『……仕方ないわね。次の手を講じたいから、状況を教えて』

「えー……、天野アンと思われる金髪に妹が拉致されました、どうぞー」

『な、なんですって!? おのれ悪魔の娘め、とうとう私の娘に手を出し始めたか……どうぞ』

「そこで返されても困るよお母さん、どうぞー」

『作戦中、私の事はマァムと呼べと言った筈よ! どうぞ』

「これは失礼しました! マァム!! ……で、どうすれば良いのか教えてどうぞー」

『こうなれば……貴女の力を見せてもらうわ、まこと。……>>467の作戦を発動します、どうぞ』
467名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:18:00.04 ID:8Ud7sT1EP
天野家分裂工作
468名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:27:18.72 ID:Wax6ZYPc0
『こうなれば……貴女の力を見せてもらうわ、まこと。……天野家分裂工作の作戦を発動します、どうぞ』

母は事前に天野家の調査を探偵に依頼していた。どこからその費用が賄われたのかは定かではない。
そして、私の周囲を集う黒服のアルバイト達も、いくら払われてこんな茶番に付き合ってくれているのかも定かではない。

しかし、妹を中ニワールドへ誘う為にも、この行為は必要である。何せ彼女はまだ中一なのである。
そろそろ年齢も良い頃合であった。今のうちに彼女には免疫を持ってもらいたい。しかし……私にはもう一つ、思うところがある。

「天野メル……。あの女、絶対ぎゃふんといわせてやる……」

聖アイリス女学園に突如転入してきた彼女は、今ではすっかり人気者である。それは別にどうでも良い。
だが、私の想い人を彼女はあっさりと奪っていった。加々美麗華は、今では天野メルの虜となってしまっている。

「奪い返すんだ。その前に、絶対にぎゃふんと……フフフフ」

その時、黒服に囲まれ薄ら笑いを浮かべる私に、奇異の眼差しを向けている人々が多数居た事を、私は気付く事すら無かったのだ――。

―― 天野アンの家、そこはおんぼろアパートであった。そして、そこで娘五人の父親一人、計六人も暮らしているらしい。
アンちゃんのその境遇に私はつい涙を流しそうになった。余りにも貧乏で可哀想だと。

だが、アパートの中に入ってみればその考えは覆された。最早私の家よりも豪華としか言いようが無いのである。
エアコン完備、ベッドもふかふかで豪華。机も、椅子もなんだか高級ホテルで使われてそうだし、パソコンだって備わっている。

なのに、壊れかけのちゃぶ台が中央に座しているのは何故だろう。これだけ、凄く古臭く見えるのだった。

「ノエル、居る?」

「……私は読書中です。って、あら……見慣れない顔ですね」

「彼女を診てほしいの。……主に頭を」

「頭まで悪くないよぉ、アンちゃん……」

ノエルと呼ばれた女性は、アンちゃんの話に頷き、私をふかふかのベッドに横たわらせるのだった。
そして、どんな風に私を診るのだろうとドキドキしていると……>>469
469名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:32:06.26 ID:KX3P/P3b0
普通に頭に聴診器を当てられた
470名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:39:21.39 ID:Wax6ZYPc0
ノエルと呼ばれた女性は、アンちゃんの話に頷き、私をふかふかのベッドに横たわらせるのだった。
そして、どんな風に私を診るのだろうとドキドキしていると……普通に頭に聴診器を当てられた。
ちょっとだけ拍子抜け。でも、なんだか綺麗な人だと、その瞳を見続けてしまう。そんな夢心地な時間は、そのノエルさんの次の一言で消え失せた。

「……頭、悪いですね」

「やっぱり悪い?」

「ええ、そこそこに悪いです。成績は恐らく中の下、でもアン、貴女の成績は下の下でしたね」

「明日から本気出す。今日はゲームする」

「駄目駄目勇者ですね。……後、気になることがあります。アン、ちょっとこちらへ――」

気になるって何だろう。頭の事を散々言われた挙句、実は頭に腫瘍が出来ていますなんて悲劇なオチが待ち構えているのだろうか。
ふかふかなベッドでつい震えてしまう。もしかすると、本当は残念な頭過ぎて、アンちゃんにしか話せないとか……?

駄目だ、怖くなってきた。そしておトイレに行きたくなってきた。勝手に使わせて貰っても良いのかな、と、アンちゃんを見る。
何やら台所の方で、ノエルさんが深刻そうにアンちゃんに話を告げている。……本気で超残念な頭の持ち主だと言われかねない勢いだ。

「あ、あのぉ……お、おトイレ、借りまぁす……」

私はアンちゃんがノエルさんと二人だけで話をする背に声掛け、そのままトイレに逃げ込んだ。
その扉はあっさり開く。そして、誰かが座りながら漫画を読んでいた。私よりも背の高い女の子だった。

「んー、今入ってるよー……って、ありゃ、見た事のない娘だぁ」

「あ、あの、あの、す、すいませんッ!!」

「いいって、いいってぇ〜、まぁ入りなさいなぁ〜!!」

「へ? ――ひゃあっ!!」

これはどういう状況だろう。何故かトイレに天野家の人と思われる女の子と、二人きりとなっている。
しかもこの人、また平気で漫画を読み進めたし、トイレから出たくても今度は出られなくなってしまった。

こんな時は思い切って、>>471するのが良いのだと、誰かに教わった覚えがある。
471名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:47:28.91 ID:8Ud7sT1EP
妄想の世界へ逃避
472名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:54:32.36 ID:Wax6ZYPc0
こんな時は思い切って、妄想の世界へ逃避するのが良いのだと、誰かに教わった覚えがある。
妄想の世界ではお姫様なのだ。そして、お城で白馬の王子様をずっと待つ、孤独な少女。
あぁ、これ以上妄想していると涎が出てしまいそうだとあへあへと夢の世界を描いていると……。

「……トイレ、しないの?」

「あへぇ……おうじしゃまぁ……って、はい?」

「だから、トイレ、しないの?」

「ななな、何言ってるんですか!! 誰か居たらその、おトイレなんて……!!」

「うーん、私は気にしないんだけどなぁ。……で、何であへあへ言ってたの?」

「それは、ちょっとお姫様プレイの妄想を……って、あへあへしてませぇん!!」

「うん、中々に賑やかだね! 気に入ったよぉ〜!」

「って、そこでなんで抱きついてくるんですか!?」

「ちょっと可愛いって思っちゃったからかなぁ? あ、ちなみに私は天野メルって言うんだぁ。よろしくぅ!」

その人が、この姉妹の長女なんだと知ったのはトイレの中であった。ちょっと、いや、かなり変わった人だとは思う。
けれど、気さくな雰囲気を持ち、この人を鬱陶しいとは思えど、本気で嫌いになる人は中々居ないんじゃないかと思えてしまう。

「ねぇねぇ、ところでどうしてこの家に来たの? あ、もしかしてまお……マールのお友達!?」

「あ、いえ……アンちゃんに招かれまして。というより、診て貰いにきたっていうか?」

「ちっ、アンの友達かぁ……。はぁ、でも可愛いから許すぅ〜!!」

「だから、抱きつかないで下さいってばぁ!」

そうして、私が天野家長女にトイレの中で抱きつかれていると、外から随分騒がしい声が聞こえてきた。
何でも、アンちゃんを叱っている様子である。その内容は……>>473
473名も無き被検体774号+:2013/04/26(金) 23:56:29.54 ID:KX3P/P3b0
これ以上変な行動をすると魔王と勇者の立場が入れ替わる
474名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:04:08.09 ID:BkdYcAPA0
そうして、私が天野家長女にトイレの中で抱きつかれていると、外から随分騒がしい声が聞こえてきた。
何でも、アンちゃんを叱っている様子である。その内容は……これ以上変な行動をすると魔王と勇者の立場が入れ替わるとか、なんとか。

先ほどから、妙な言葉を耳にする。アンちゃんを勇者とノエルさんは言っていたし、ノエルさんをアンちゃんはエルフとか言っていた。
そして、今度は魔王なんて単語を耳にする。もしかして、そういったプレイが流行っているのだろうか。

ふと、家庭事情を思い返してみる。母と姉は中ニ病である。そして、天野家の皆さんももしかすると中ニ病。
つまりこれは、下手をすると私だけが残念な娘なのかもしれないのだ。つまり、世間では中ニ病が大流行なのかもしれない。

「あららぁ、マールったら、ご機嫌斜めだなぁ」

「マールさんって……アンちゃんのお姉さんの……?」

「そうそう! アンなんかよりも美人で愛らしくて、それでいて優秀な魔王……じゃなくて、妹なんだぁ!」

「って、アンちゃんも妹ですよね。なんだか随分な言われ方……」

「う、それはその、アンもそこそこに可愛くてそこそこなんだけど、マールには敵わないっていうかぁ!」

どうやら天野家長女は次女マールを高く買っているそうで、ちょっぴりアンちゃんが可哀想になってしまう。
そんな中、やはり外ではマールさんが恐らく怒鳴っているのであろう。随分甲高い声が聞こえてくるのだった――。

―― 天野家アパートを双眼鏡で監視する任務に就いた私は、手を施すまでもなく仲間割れする光景を目にしてほくそ笑む。
どうやら、次女が四女とケンカ中である。この二人は仲が悪いようで、これを使わない手はないとまたほくそ笑む。

しかし、天野メルの姿が見えないのは何故か。既に下校時刻は過ぎていて、帰宅していると思われる。
おかしいと首を傾げつつこの作戦の指揮を執る母に状況を告げた。

「―― という訳で、次女と四女は使えそうですどうぞー」

『割と調査通りね。後、三女も四女と仲が悪いと見ているのだけど。どうぞ』

「そうでもなさそう……。中立っぽいですーどうぞー」

『ところで、五女の姿は見える? アレに工作を仕掛けたから、面白い事になる筈だけど、どうぞ』

「うーん、姿は……って、今帰ってきた模様でーす。おっと、突然>>475という行為に走りました、どうぞー!」
475名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:06:50.05 ID:6F9ccEov0
長女らしき方がわたしのことを羽交い絞めする
476名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:09:09.83 ID:THDRgdo3P
>>475
あっさりバレとるw
477名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:14:36.02 ID:BkdYcAPA0
「うーん、姿は……って、今帰ってきた模様でーす。おっと、突然長女らしき方がわたしのことを羽交い絞めするという行為に走りました、どうぞー!」

『はい? ……羽交い絞めにされているの? どうぞ』

「どうやらその模様でーす。どうぞー……って、貴女、何時の間にッ!!」

「いやぁ〜、ちょっと悪い視線を感じたのでトイレから緊急脱出的なカンジで?」

「ッ! 私とあろう者が不覚を取るなんて……!!」

「で、何で双眼鏡で監視していたのかなぁ……。よかったら教えて欲しいなっ!」

「近寄らないで、この不埒者!! ……私から、加々美さんを奪っておきながら!!」

「かがみん? かがみんがどうかしたの?」

『応答しなさーい、作戦無視は夕飯抜きですよーどうぞー!』

母が未だに無線で私に訴えかけてくる中、それどころでは無いと無線を切り、目の前に立ち塞がる女と対峙する。
天野メル、今日こそ私の力を発揮し、ぎゃふんと言わせるのだと――私は武器を抜いた。

―― それは突然だった。天野家長女のメルさんが居なくなったと思えば、また外が慌しくなり、
そして家の外から轟音が聞こえ、慌ててトイレから飛び出す事になる。

そこには、天野家の娘達が次女から五女まで揃っていた。そして、皆が素っ頓狂な顔で外を眺めている。
ふと私も部屋から外を見れば、玄関の扉が吹っ飛んでいた。そして……、氷と光る矢が踊り狂う世界が垣間見えていた。

「天野メルッ、この破魔の紋を持つ私が、貴女を粛清するッ!!」

「えー、粛清されるのは嫌だなぁ〜……、という訳で、ブリザードバリアー、相手は死なないッ!!」

「そんなふざけた魔法で、私の破魔の矢が砕けると思ってるのッ!?」

私は夢を見ているのだろう。中ニ病という夢の世界に導かれたのだ。さもなければ、こんな意味不明な光景を拝める訳が無い。
外、寒そう。破魔矢、痛そう。ついでに、近隣の家で飼われていたわんこが被害を受けていて、可哀想。

どうしてこの二人がこのような喧嘩をしているのかは知らない。けれど、止める人が必要だ。それは……>>478しか居ない。
478名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:17:48.69 ID:THDRgdo3P
レフェリーをしているお隣さん
479名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:28:36.26 ID:BkdYcAPA0
どうしてこの二人がこのような喧嘩をしているのかは知らない。けれど、止める人が必要だ。それは……レフェリーをしているお隣さんしか居ない。
天野家の右隣は刑事さんが住んでいるらしい。では左隣は誰が住んでいるかと言えば、ニートが住んでいるそうな。
でも、そのニートは、何と女子高生である。時代はJKニートを求めているという雑誌の記事に感化されたのだろうか。

「さぁ、そこ、もっともっと、矢で危ないトコロを突いて! 違う、氷魔法の使い方はそうじゃない。そこでエターナルフォースブリザードをっ!!」

「あのぉ、すいません……、そこの方、レフェリーさんですよね?」

「只のレフェリーではない。私は、解説兼レフェリーの名を持つ選ばれし者!」

「……意味分からないんですが、アレ、止めてくれませんか?」

「う〜ん、でも私、自宅警備員だし……ぽりぽり」

「お願いしますぅ! ほら、わんこちゃんがきゃんきゃん鳴いてるんです。可哀想なんです!」

「良いけどね。良いんだけど……、貴女が止めればいいんじゃないかな。かな」

その女子高生自宅警備員は、私が止めれば良いなんて事を言うのだから、頭の中が真っ白となってしまう。
何を言ってるんだろう、この人。こんな意味不明で訳分からない状況の中、飛び込んだら死んでしまうじゃないか。
光る矢が飛び交っているのだ。氷の刃がミサイルのように姉を襲っているのだ。それを光る盾で防いでいるのだ。意味分からないじゃないか。

「んー、まぁしょうがないかぁ……。あぁ、めんどくさ……」

彼女は、そのまま二階から飛び降りた。びっくりして階下を見下ろすと、彼女は着地に失敗しずっこけている。
あんな人が、ファンタジーな喧嘩を止められる訳が無いと思っていると、その人は改めて立ち直り、埃を払いつつも二人の間に割って入ろうとする。

「……あの人、誰?」

アンちゃんがいつしか私の隣に居た。そして、あの人の素性を尋ねてくるのだが、さぁ、と返すしかないのである。
そうして、自宅警備員な女子高生は、膝に矢を受けながらも>>480という方法で喧嘩を止めるのだった。
480名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:34:50.64 ID:6F9ccEov0
うるせぇ!!と一括し、二人をげんこつで沈める
481名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:44:05.58 ID:BkdYcAPA0
アンちゃんがいつしか私の隣に居た。そして、あの人の素性を尋ねてくるのだが、さぁ、と返すしかないのである。
そうして、自宅警備員な女子高生は、膝に矢を受けながらも、「うるせぇ!!」と一括し、二人をげんこつで沈めるという方法で喧嘩を止めるのだった。
割と物理的であった。そしてその物理的行為は、彼女達二人を黙らせ、一件落着を迎えようとするのである――。

―― それは、チェリークロックでアルバイト中の俺が、大賢者練曲ネルちゃんの持つ水晶玉を通して見た光景だった。
ネルネルの顔も引き攣っており、そして俺も玄関が吹っ飛んだ我が家をどうすりゃ良いのだと頭を抱えるのである。

「しかし、あのお前の住んでいる家のお隣さん……何者だ?」

「うーん、俺も実は初めて見たんだ。美少女で凄く嬉しかった」

「お前はあれだけ娘を養子にして、まだ美少女を求めるか」

「それは、男の宿命である」

「無駄に意気込むな変態。……あの娘、私と同じ匂いがする……」

「ん、ネルネルの匂いがするのか、あの娘。よし、ならば……お前の匂いを嗅がせろッ!!」

「黙れ変態!」

ネルネルに飛び掛り、見事に回し蹴りを喰らう中、俺は突如時間の進みが緩やかになった事に気づく。
これは、俺が吹っ飛ばされ、そして俗に言う走馬灯を見ようとしているのかもしれない。
なんて思った直後、その奇妙な感覚は戻り――頭を壁に打ちつけ、悶絶するのであった。

「痛ってぇぇぇ……、くそ、あの馬鹿賢者め、いつかパンツ盗んでやる……!」

「やれやれ、キミは……面白いね」

「俺が面白いだと、馬鹿な、イケメンになった俺が面白い筈が――って、お前は……!」

その時、俺の視界に映ったのは白い背広を着た、白尽くめな男。髪の色まで真っ白な奴であった。
その男の登場を俺は待っていた。こいつに貰った金を返さなければならなかったからである。

しかし、その男は奇妙な事を言った。それは……>>482
482名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:46:50.55 ID:THDRgdo3P
あの程度の金では3日持たず無くなると思っていたが…やるではないか
483名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 00:54:47.73 ID:BkdYcAPA0
しかし、その男は奇妙な事を言った。それは……。

「あの程度の金では3日持たず無くなると思っていたが…やるではないか」

「いやいや、億近い金を三日で使える筈がないだろっ! つうか、あれは……返す」

「ほう、何故かな。アレはキミへの餞別のつもりだったのだけどね」

「どういう訳か知らないが、あんな気味悪い金、使える筈が無いだろう? ……でも、二十万ほど使っちゃいましたけど」

「じゃあ、駄目だね。僕のお金に手をつけたんだ。……キミが貰ってくれないと、僕は警察に訴えてしまうかもしれない。君にお金を不正に使われたと!」

「何故に!? 俺にくれるって言った金だろう!?」

「だから……キミが使ってくれて良いんだ。足りなければ、更にいくらか積んであげよう。
 でも、この事は出来れば僕とキミだけの秘密にして欲しい。そして、僕とキミが出会っているという事も――」

その男は店から出ようとする。それを追いかけようと立ち上がるのだが、先ほど蹴りを喰らって壁に激突したのが効いている。
フラついて、思うように進めない。あの男の背中が遠くなる。そもそも、アイツは何者なのだと、せめて名くらいはと、手を伸ばす。
すると、白い背広の男はまるで俺の心を察したかのように、背を向けながらも俺に告げるのだ。

「――余計な詮索はして欲しくないんだ。ただ、僕はキミに協力したいだけなんだ。
 そう、まだ見ぬ世界がやってくるかもしれない。その可能性に、僕は興味を抱いたんだ」

「な、何の話だよ、それはッ!」

「……そうそう、キミのアパートの扉、きちんと直してあげているから、安心してくれて良いよ――」

男は夕陽の光の中に消えていった。そう見えただけなのかもしれないが、明らかに普通の存在じゃないと、己の直感がそう訴えかけていた……。

この男の話を、大賢者と自称する練曲ネルに相談しようとも思った。しかし、あの男はこの件は俺と奴の内密事にして欲しいと言っている。
ではどうするか、自力であの男の正体を暴こうか、それとも……>>484
484名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:00:13.02 ID:THDRgdo3P
本当に扉が直ってるのか確認
485名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:09:18.42 ID:BkdYcAPA0
この男の話を、大賢者と自称する練曲ネルに相談しようとも思った。しかし、あの男はこの件は俺と奴の内密事にして欲しいと言っている。
ではどうするか、自力であの男の正体を暴こうか、それとも……やはりここは、本当に扉が直ってるのか確認してみよう。

そうして、アルバイトを終えて帰宅したのは午後十時。扉は……見事に直っていた。
ふと周囲を見渡すも、何かが崩れたりしていた訳ではなく、安堵すると同時に恐怖を覚えてしまう。
その時の自分は、ふと視界に入ったまだ子犬とも呼べるそれの眼差しと似た眼をしていたのかもしれない。

「ただいま〜……」

家の中に入る。喧嘩をしていた相手の少女は居ないが、メルは少々気まずそうに俺の顔を見ている。
やはり、あの水晶玉を通して見た光景は本当だったのだ。しかし、吹っ飛んだり、壊れたりした物はすべて直っている。

ある日、水竜リヴァイアサンがレストラン、チェリークロックの前に姿を現し、猛威を奮った事がある。
しかし、それにより壊されたモノは全て直ってしまい、当事者と思われる人間の殆どはその時の記憶を失っている。

それを、大賢者ネルは補正されたと述べていた。つまりこれも補正されたと呼べなくも無く、そしてあの白の背広の男は言った。
扉のアパートは直してあると。つまりそれは、あの男が補正力を持っていることになる。それは即ち――。

「あの男は……まさか……」

肩を震わせる。何故そんな男が俺に金の融資なんてするのだ。俺に協力するなんて事を言うのだ。
そもそも、何故俺なのだ。俺の娘達が目的ならば、彼女達を手伝うと言うのではないか。なのに、俺の前にだけ、奴は現れる。

「あの、どうかしたの、秀様……」

マールが俺の様子を伺ってくる。しかし、奇妙な感覚が味わえるようになったせいなのだろうか、彼女に返事をする事すら出来ないでいる。
妙な悪寒、胃の中が咽返りそうになる。視界が震える。何故俺はこんなに怯えているのだろう。

―― その日は、皆が気遣ったせいなのか、俺はベッドの所有権を得ることになり、そのまま昏睡してしまった。
長い時間眠っていたようで、朝起きれば、皆が学校に出掛けようとする中であった。

ふと、アンが俺の顔を覗き込む。俺が眼を擦りつつ、何だと返事してやると……>>486
486名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:15:30.81 ID:THDRgdo3P
先生が今日また家に来るって
487名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:23:30.75 ID:BkdYcAPA0
ふと、アンが俺の顔を覗き込む。俺が眼を擦りつつ、何だと返事してやると……、
「先生が今日また家に来るって」と、恐怖の言葉をさらっと吐き捨てるのだ。

「……マジ、かよ」

「しかも先生、今日学校サボってこっちに来るって言ってた」

「……なんて社会人なんだ……」

「じゃあ、学校行って来る。……浮気は駄目だから」

そう言って、小さな背中は扉を通して消えていく。その少女は、最初にこの家に来た際、やっていけるのかと不安に思わせた。
何事も知らない少女を突然拾った形になった俺は、その後マールが現れるまで色んな知識を教え込んだものである。
しかし、その少女も姉妹に囲まれ、今では割りと普通の暮らしが出来るようになっていた。

割と、つまり思ったよりである。普通に朝起きて、普通に学校に行く、普通の女の子として。

「……勇者に、魔王に、魔法剣士に、エルフに、……勇者候補? とにかく、滅茶苦茶だ」

そう、思えば滅茶苦茶なのだ。女神という存在が齎した出来事は、俺に滅茶苦茶な人生を与えてくれた。
あの女神は、未だに連絡が取れないでいる。死んだのではないか、なんて思ってしまう時もあるのだが、思えば何故俺なのだろうと、改めて問い質したいのである。
今の暮らしは楽しい。幸せなのかもしれない。しかし、それは恐らく長くは続かないと、どこかで感じてしまっていた。

そうして、今日は非番だとベッドで再び横になると、玄関の呼び鈴が鳴るのである。
あの女、本当に押しかけてきやがったと、慌てて部屋の中を片付けるのであった。

「うわ、なんでエロ本が出てるんだよ! メルの奴、またこっそり読んでいたな。
 今度はこっちにフィギュアが……、これはアリスか、あのガキぃ〜〜!!」

呼び鈴は二度、三度、いや、連呼されている。はいはいと声を発し、大急ぎで宜しくない一品を押入れに。
そしてようやく一息吐いては玄関に立ち、扉を開く。するとそこには……>>488
488名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:29:26.60 ID:THDRgdo3P
川下と近寄りがたい雰囲気の母娘が
489名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:38:26.90 ID:BkdYcAPA0
呼び鈴は二度、三度、いや、連呼されている。はいはいと声を発し、大急ぎで宜しくない一品を押入れに。
そしてようやく一息吐いては玄関に立ち、扉を開く。するとそこには……川下と近寄りがたい雰囲気の母娘が。
川下は何やら苦笑いしつつも、その母娘を紹介するのであった。

「……という訳で、この人が七福ことみちゃん。それで、こちらが――」

「七福ことこと申します。今回、貴方の娘さんの件でお話があります。あ、先生はもう結構なので、お帰りになってください」

「は、はい? でも私、二人の担任でもありますし――」

「ならば、少しの間席を外して下さいませんか。……この方と込み入った話がありますので」

その母親と思われる女性、七福ことこと名乗った人は、川下浅海を暫くの間追い出してしまうのである。
挙句の果てに、勝手に俺の家に上がりこんでは、下品な部屋だと罵るのだ。これでも豪華ホテルのような内装になったのだと訴えたい心境であった。

「……粗茶ですが」

「本当に粗茶ですね。……まぁ良いです、今回、貴方に先ずお詫びをしなければなりません」

「はぁ、お詫び、ですか?」

「どういう訳か、玄関が直っているようですが……、我が子のまことが、玄関を壊してしまい、申し訳ありません」

「あー、あれですね。いや、どうってこと無いですよ、ええ」

「そして、今回の件で私は貴方にお願いしたい事があります。この娘を――ことみを、暫くの間だけ、預かってくれませんか?」

「あはは、それくらい容易い御用で……はぁぁぁぁぁッ!?」

それは余りにも突然な話で、おまけに何を言い出しているんだと突っ込みそうになる中、七福ことこは事情を説明するのである。

七福家、代々破魔の紋と破邪の紋を受け継ぐ家系、そしてその家系は、この国を、そしてこの世界を守護する護手。
その破邪の紋を告ぐ娘、ことみの能力を覚醒させる為、そして、他所の世界からやって来た娘達を制する役割を持たされた彼女は……割と暢気に饅頭を食べていたのである――。


―――― つづきます
490名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:40:29.12 ID:THDRgdo3P
更に人が増えるのか
おつー!
491名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:42:31.23 ID:BkdYcAPA0
おかしいなぁ、ちょっとしたホラー話を交えたかったのにカオス話になっていた。
本人が混乱しております。おのれお隣さんめ、貴様の出番は永遠に無かった筈なのに!

という訳で、お付き合いありがとうございましたー。


今更ですが、演劇部を異世界のコが復興するだけのお話だったのです。うわー……どうしようこれ。
492名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:45:06.39 ID:BkdYcAPA0
【04/27 (土) 01:44時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/27 (土)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十話 『駄目男と神々の社会』

俺達の冒険はこれからだ〜べっちょり
493名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:50:07.91 ID:5yDNWSMY0
参加できなかった乙
494名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:50:13.80 ID:BkdYcAPA0
後こっそりと、新しい作家さんも募集してるのですよ〜。
495名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 01:53:10.09 ID:BkdYcAPA0
>>493
下校時刻ですので速やかにうんたん
496名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 20:51:02.39 ID:BkdYcAPA0
カサコソ カサコソ

ヨシ マダダレモイナイ  ハジメルナライマノウチ

って、誰も居ないと出来ないじゃないですかやだー!
そんな感じでもう暫くお待ち下さい。


ゴキブリを足で踏み潰してしまった感触は忘れない……。
497名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:02:42.50 ID:BkdYcAPA0
―――― 勇者なムスメ 第十話

改めてご紹介致しますのは、余りにもコアなスポットで有名なファミリーレストラン『チェリークロック三号店』。
そこには、一号店や二号店、そして最近オープンをした五号店にも無い特殊なメニューが存在し、それが人気を呼んでいるのです。
そのメニューとは、何と大賢者と名乗る人物が作る日替わりメニュー、名づけて大賢者メニュー! そのままなんですが、これが大人気!

では、どのようなお料理が出てくるのかと言えば、意外とゲテモノ料理が多く、先ず視界で食欲を奪われます。
今回記者が食した料理は『ヒトデメダマの岩盤欲』と謎の名をした料理であり、ヒトデとメダマが強引に合わさったメニューでありました。

尚、ヒトデには何故かフライドポテトを使われており、メダマには何故か温泉卵を使われており、
謎のソースで模様を描き、熱した岩で温めただけの料理であり、味はというと……真面目に考えると恐らく不味いでしょう。

しかし、何故か次々とフォークが、スプーンが、お箸が進んでしまうのです、あら不思議!
名もへんてこ、見た目もへんてこ、味もへんてこ! でも癖になるのが大賢者メニュー! しかし、この店には、もう一つ隠れた人気が有ります。

それは、変態ホールスタッフと、恐らく店長そして美少女スタッフが繰り広げる変態的なコント。これが何気にお客さんに大人気なのだそうです――。


「……なんだ、この記事は」

「先週、廻れファミレス全日本選手権に載っていた記事だ」

「それは雑誌のタイトル見れば分かる。問題は中身だ。……誰が変態ホールスタッフだ」

「あながち、間違いじゃないだろう。そして美少女大賢者のこの私についても、割と真実を述べているッ!」

「ちんちくりんが抜けているぞ、ちんちくりんが――ぐほぉぁっ!!」

「次言うと、お前をヒトデメダマの岩盤欲にしてやるから覚えとけ」

本日、このファミレスのチェリークロック三号店には、大賢者さんも働いていないし、イケメンホールスタッフも非番である。
代わりに、相田店長がホールに出てはあちこち奔走する姿が見受けられるが、内心ざまぁ、と感じていたりもする。

そして、俺と大賢者さんはこの店で寛いでいる訳だが、彼女の隣には七福ことみが「ふえぇ」と呟きながら店内を見渡していた。

ちなみに、この三人+一人が集まっているには理由があるのだ。それは>>498がメインだったりする。
498名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:07:02.44 ID:THDRgdo3P
集会と言う名の愚痴ばなし
499名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:16:37.01 ID:BkdYcAPA0
ちなみに、この三人+一人が集まっているには理由があるのだ。それは集会と言う名の愚痴ばなしがメインだったりする。
尚、基本が愚痴であり、一応俺がネルとことみちゃんを集めたのには目的はあったのだが……、集まって早々、何だかどうでもよくなっていた。

そう思わされた原因はたった一つ。オマケでついて来たもう一人の人物、その名を天野ノエル。
本名をノエル・エルという、エルフの世界アーライラからやって来た少女である。耳はハーフエルフだそうで、尖っていない。

「それよりそもそも私の存在って何なのでしょう。満を持して銀髪エルフの登場かと思えば、ハーフエルフ設定で耳が尖っていないとか、
 実は耳を尖らせたくないという理由があったとしか思えません。更に言えば、恐らく凄くどうでもいい理由で尖っていないのだと思います――」

俺の隣で、彼女はひたすら独り言を話し続けている。それを、ことみちゃんは受け流すように「ふえぇ」と呟いては、視線を泳がせていた。

「大体、何故私は弓+風属性なのですか。当初の設定では実は槍術に長けた設定で、弓に長けた設定ではありません。
 なのに気付けば弓道部。入りたくも無かったのに気付けば弓道部とはこれいかにです――」

「なぁ、ネルネル……これ、どうしよう」

「言わせてやれ。未だに何も語られていない為、ストレスが溜まったのだろう」

「そもそもですね、私は出番当初から大活躍する予定だったのです。予定は未定とは言いますが、未定以前の問題です。
 私が純潔もとい純血エルフを捜し求めてこちらにやって来た大前提の設定は何処へ行ったのですか、何処へ!」

「ふえぇ……、ふえぇ……」

「ことみちゃん、無理に相槌打たなくてもいいんだぞ?」

「でも、ノエルさん、見てるとなんだか可哀想なんで……見ないように話を聞くしかなくってぇ」

彼女は、自分の扱いの不遇さを誰かに訴えかけているが、元々そんな集いではなかったのだ。
七福ことみの母、七福ことこから、多少の事情を知ることになった俺は、あえてことみちゃんとネルと三人で話を交えたかった。

なのに、出番が無く、陰が薄いと突然読書すらやめて俺に問い詰めてきた彼女は、こうして出しゃばっているのである。

「余りにもノエルという少女の私は不遇です! なので、私は要求します。>>500を!!」
500名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:21:39.82 ID:6F9ccEov0
優遇される地位とやら
501名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:24:43.10 ID:2HlTVcJ5P
ノエルから満月さんの心の声が聞こえる……
502名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:28:17.80 ID:BkdYcAPA0
「余りにもノエルという少女の私は不遇です! なので、私は要求します。優遇される地位とやらを!!」

「と言っているぞ、天野秀」

「おいネル、俺に振るな。……ええっと、何故俺をじっと見てるんですかね、ノエルさん」

「優遇される地位とやらを要求する為睨んでみています」

「……俺に、どうしろと」

「先ずは結婚しましょう。そして子作りもしましょう。そして家庭が円満になり物語は終わります」

「一応言っておくが、お前は俺の娘なんだが……?」

「私の読んでいる本の多数は、父親と娘が結婚する物語です。中には父親を殺害して亡骸を保存して愛し続けるものもありますが」

「お前の読んでる本ってそんなのばっかだったのかよ……」

「主にラノベです。これは設定……いいえ、趣味なので何とも思っておりませんこの設定もとい趣味に意味はありませんけども」

「何気に次々とメタ発言するとは、相当ストレスが溜まっているんだな……。良し、分かった!」

これ以上一人だけ開かれている愚痴大会に付き合わされていては、俺の話も進まず、貴重な時間が失われていく。
彼女を強引に止めるにはこれしか無かった。彼女の肩を掴み、眼をじっと見据える。
すると、最初こそこちらを迎え打つような視線をしたノエルだったが、次第に根負けしたのか、ネルやことみちゃんの方へ視線を向けて、助けを求めていた。

「あ、あの、これは……皆が見ていますし、ここでは、ちょっと……」

「ちなみに問おう、俺はこの後何をするつもりなのか、お前には分かるか?」

「……子作り、ですか?」

「否ッ!! これから行うことは即ち>>503であるッ!!」
503名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:34:37.53 ID:2HlTVcJ5P
そんな曖昧な言葉ではなくセックス
504名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:35:29.45 ID:THDRgdo3P
御仕置き
505名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:38:54.09 ID:THDRgdo3P
>>503
ダメ人間だー!
506名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:42:37.25 ID:BkdYcAPA0
「否ッ!! これから行うことは即ちそんな曖昧な言葉ではなくセックスであるッ!!」

「は、はいっ!? ほ……本気、ですか?」

生唾を飲み込み、何度も瞬きを繰り返しこちらを見るノエルに、幸福を与えてやろうと宣言した言葉。
それは彼女にとって、思った以上に斜め上を歩んでいた様子である。この発言以降、ノエルはがたがたと震えだすのである。

「ええと、私も秀さんの事は好いていますし、この身体もいずれ……とはお、思いますが!?
 でも、まだ私、年齢的には十三歳でもありますし!? 何より此処、ファミレスですし!?
 今目の前に練曲さんやことみさんも居ますし!? おすし!?」

「お寿司も含めて関係ねぇ。……欲しいんだろ、俺の子供がぁ!!」

「ひっ、ちょ、ちょっと、秀さん、強引過ぎ――や、やだ、服を脱がす手つき、慣れて――」

俺がノエルを座席に強引に押し倒し、ブラウスに手を掛ける。彼女はいやいやと言いながらも、抵抗しようとはしない。
これならいける。ある意味念願でもあった、父娘という間柄での性的恋愛、その一歩手前までやって来たところで、閑話休題。ネルが口を挟んだ。

「えー、ノエルの発言に見苦しい点があり、安価を否定しがちな発言には実は意味があったりするのだ」

「い、いきなりなんだノエル。貴様、俺のハーレムルートを邪魔するかッ!」

「お前が言ったのだろう、補正力とか何とかを知りたいと、神について知りたいと。それで私を呼んだのだろう?」

「まぁ、そうだが……」

「ノエルは、本来自分はこうだったんじゃないか、なんて事を言っているに過ぎない。しかし、突然彼女は補正された。
 つまりこれも神の所業でもあるのだ。……ちなみに私も、何かしらの補正を受けている。……本来、もっとグラマーだったのだ……」

練曲ネルは、リィンガルド時代は胸も大きく、グラマラスな女性だったと供述する為、>>507しておく事にした。
507名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:48:32.40 ID:THDRgdo3P
今とのギャップをネタに精神攻撃
508名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 21:58:51.21 ID:BkdYcAPA0
練曲ネルは、リィンガルド時代は胸も大きく、グラマラスな女性だったと供述する為、今とのギャップをネタに精神攻撃をしておく事にした。

「背は140cm程、バストもアンと同レベル、挙句におでこだし、アイス魔人。それのどこをどうすればグラマーになると言うんだ?」

「お、おでこは関係ないだろう、おでこはぁ!!」

「……気にしてるのなら隠せよ」

「これには語られていない理由があるのだ。その……、生放送中にドラクエ賢者のコスプレをして出てるものだから、
 サークレットを見せる為に……そしたら、おでこがチャーミングって言われて、その……えへへへへへ」

「さぁ、あそこでゲスな笑いを浮かべているネルなんて放っておいて、俺と今日、ここで父娘の一線を越えよう、ノエル」

「へっ? それ、まだ続いていたんですか? それより私もう一つ訴えたい事があるのですが」

「処女を散らす前の思い出話ならば、聞こう」

「違います。……アン風に言わせればデイドラ鎧なのですが、魔界最強の鎧……名づけてさいきょーの鎧はどこへやったのです?」

「……捨てた、かも?」

「一応、あれ、探し出しておいて下さいね。あの中にアーライラの神様が宿ってますので」

「……鎧に宿る神ってどんなだよ、それ」

その後、鎧なんてどうでもいいと再び押し倒そうとしたところを、相田店長に見られた俺は、
次に店内でセクハラ行為をすれば減給すると宣告された為、座席に正座して大人しくなるのである。

そうして十分後、妄想世界から帰ってきたでこ魔人ネルネルはバニラアイスを頬張りながら話の続きをするのだった。

「えー、つまり……何の話だっけ、補正力? 要するに、私も何かしらの影響を受けているし、ノエルもまた、その影響を受けている点が見受けられる。
 とはいえ、存在を消すなんて事も出来ないし、性別を変えたりといった大幅な補正は出来ない。精々、記憶の一部を書き換えたりする程度なのだ」

「で、そんな事が出来る神様が、この世界の神様だと?」

「そういう事になる。とはいえ、実際今の神様は神様でもないのだ――はむはむ」

アイスを飲み込むように次々と頬張る練曲ネルは、そこで更に解説役とすべく、>>509というなかまをよんだ。
509名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:01:20.14 ID:6F9ccEov0
大賢者の書に宿る式神
510名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:10:12.70 ID:BkdYcAPA0
アイスを飲み込むように次々と頬張る練曲ネルは、そこで更に解説役とすべく、大賢者の書に宿る式神というなかまをよんだ。
俺も初めて見る分厚く小汚い本。それを大賢者の書と言うネルは、そこから何やら魔法を施し、妙な小人を生み出すのである。
ノエルは、この存在を妖精だと言っていたが、ネルはそれを否定し、あくまでこれは式神の一種だと言い張る意味が分からない。

「という訳で、面倒なのでここから先は大賢者の書に宿る式神、シキちゃんにお願いするとして――アイスお代わりぃ〜!!」

「ではでは、この先はマスター、ネルネルのお申し付けで現世に復活したこのワタシ、シキがお話を続けますねッ!」

「……なんか無駄に順応性が高いな、こいつ」

「そうですね、それより妖精のように羽が生えてるのが気になります」

「ふえぇ……訳がわかんないよぉ」

妖精のような姿をした癖毛な式神のシキちゃんは、そうして突然妙な話をするのである。
例えるならば、それはちょっとした社会。そして、とある会社が存在すると彼女は指を立てて説明するのだ。

「ゴッドカンパニー……この存在を、天野さんはご存知ですか?」

「……何そのロマサガ3辺りに出てきそうな会社名」

「あくまで例えです。とはいえ、実在するのですが……。尚、有限会社だったりします」

「株式じゃねぇ!!!」

「そこの社長さんは、所謂絶対神であり、全知全能の神様、創造神様だったりしたのです。しかしある日、突然吐血して倒れちゃいました」

「大層な割に神様しょぼいッ!!」

「そして、社長さんは後継者を万民から選び、とうとう亡くなりました。その間、社員の一人にこの世界、アスワルドを託したのです。
 ですが、他の七つの世界の部長クラスの神々はお怒りになりました。何故平社員を抜擢したのかとー!」

「うーん、まぁ、分からない話じゃないが……実力主義なのか、その会社」

「そういう訳でもないのです。というか、実際には>>511なんて適当な会社なのです」
511名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:11:56.89 ID:THDRgdo3P
サイコロで人事を決める
512名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:22:28.86 ID:BkdYcAPA0
「そういう訳でもないのです。というか、実際にはサイコロで人事を決めるなんて適当な会社なのです」

「という事は、運が良ければ俺でも社長になれる可能性がッ!?」

「うーん、どうでしょう。顔だけで運が無さそうなので、無理じゃないですかね、と言っておきます」

「何気に酷い事を言うね、シキちゃん」

「言う時には言うのが座右の銘です。まぁそんな話は置いておきまして……、七福さん、何気に彼女の家系もゴッドカンパニーの息が掛かっているのです」

「本当なのか、ことみちゃん」

「う、うぅ〜ん、私も、この破邪の紋章の話とか、昨日聞かされたばかりだしで……」

七福ことこが訪れた先日、俺はこの世界と、七つの世界について話を聞かされることになる。
元々、世界は勿論の如く一つしか存在せず、平行した鏡の世界が無数連なっている程度であったそうだ。
しかし、その世界に住まう人々の願いや欲望、それらが生み出したのが、七つの世界。天国や地獄といったような世界である。

だが実際には、あくまで舞台が整った箱庭が用意された程度である。それを動かす担当が、七人の神様なのであった。
女神アルテナもその一人であり、七人の中では一番の下っ端であったらしい彼女は、リィンガルドを七つの世界の中で、最大級にまで育て上げた功労者なのだそうだ。

しかし、絶対なる神、即ち社長が数十年前に没し、そこから情勢が傾き始めたそうだ。
七つの世界を統べ、実力を発揮してきた神様連中は、社長の座を伺うようになった。勿論全員が全員ではないそうなのだが……。

「そして、私はアン・アンダルシアやマール・マルグリッドなる存在を刺客と踏んで、いずれ彼女達をこの世界から護るべく、打ち倒そうとも考えていたのです。
 ですが……、貴方方を見て、少々考えを変えました。どうやら女神アルテナは、単に成り上がりを考えていた訳ではなさそうなので――」

そうして送られたのが七福ことみちゃん、新米の世界の護手の一人である。尚、まだ力は上手く扱えない模様。
それを、アン達の存在により刺激を受け、力を扱えるようになって欲しいとも母親の七福ことこは願っている――。

「で、何の話でしたっけ。あ、アイスお代わりでしたっけ?」

「ちっがーう! ゴッドカンパニーという例え話の続きだ!」

「そうでした! ちなみに、会社も一枚岩じゃないのはご存知そうなので、もっと突っ込んだお話をします。
 神様って、実は人間なのです。人間が神クラスの紋章を継いで力を得ただけで、割と強欲さんが多いのです。

 で、分かっている事は、加賀美目羅となる人物も人の姿をした神であり、恐らく……>>513でしょうって事です」
513名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:24:13.86 ID:6F9ccEov0
悪魔72柱の一人
514名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:24:25.51 ID:2HlTVcJ5P
トイレの神様
515名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:32:19.36 ID:BkdYcAPA0
「そうでした! ちなみに、会社も一枚岩じゃないのはご存知そうなので、もっと突っ込んだお話をします。
 神様って、実は人間なのです。人間が神クラスの紋章を継いで力を得ただけで、割と強欲さんが多いのです。

 で、分かっている事は、加賀美目羅となる人物も人の姿をした神であり、恐らく……悪魔72柱の一人でしょうって事です」

「悪魔72柱……デスカ?」

「ソロモン72柱とも呼ばれますが、詳しくはWikipediaでも見やがれなのです。尚、恐らくはバアルと呼ばれる存在なのです」

「何だか色々さらっと言いやがるな、この妖精……」

「式神ですっ! 次間違えると式神術の敷き紙にしちゃうぞ〜をしちゃいます」

「……女の子のお尻で踏まれるって、割と幸せじゃね?」

「うぅ、この人ワタシの脅しが通じないのです……しんどいのです……」

要約すると、彼女の例えを用い、ゴッドカンパニーとなる会社があるとする。
そこには社長不在で、代理として社長に座するこの世界の神様がおり、そしてその存在を不満に思う連中が多数居る。
更に言えば、その部下達も割りと適当に動いたりするものだから、度々に混沌な出来事が起こるようである。その悪魔72柱の一人の件も、そうらしい。

しかし、神様とはいえ結局それらは人間なのである。そして彼女は、その絶対神やら全知全能な神様すら、紋章の影響でそうなっただけだと言うのだ。

「ちなみに、紋章持ちさんは、特に神格化されたタイプは長生きできます。下手すると1000年まで生きちゃいます。
 で、この大賢者ネルネルさんもまた、ゴッドカンパニーの平社員でもあるのですよー」

「この、アイスばくばく食って今にも太りそうなおでこ魔人もなのか……?」

「最近アルテナ様にスカウトされまして、晴れてゴッドカンパニーの社員に! でもでも、年収はたったの100万円! 死んじゃいますよね」

それもあって、彼女はこのレストラン、チェリークロックで働いているらしいのだ。何と世知辛い世の中なのだろう。
しかしながら、そんな薄給に悩まされながらも、幸せそうにアイスをばくばく食っているネルを見ていると、不思議と>>516という気分になってしまう。
516名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:34:22.15 ID:2HlTVcJ5P
正社員に対する心の底からの憎悪
517名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:42:20.75 ID:BkdYcAPA0
それもあって、彼女はこのレストラン、チェリークロックで働いているらしいのだ。何と世知辛い世の中なのだろう。
しかしながら、そんな薄給に悩まされながらも、幸せそうにアイスをばくばく食っているネルを見ていると、
不思議と正社員に対する心の底からの憎悪という気分になってしまう。もとい、感じてしまう。

「むはぁ〜〜、アイスうまうま、アイスうまうま」

何故か座りながらもくねくねと踊り出す練曲ネル、事実を知る前、つまりまだ新入りとしてバイト仲間となった彼女は、
俺と同じ境遇、即ち駄目人間仲間だと思っていた。だが違う、彼女は異世界の住人でもあり、魔法も扱え、謎の知識も有り、ニコ生で大人気。
そして何よりおでこがチャーミング。つまり……俺とは違う。これは裏切りであり、許される事ではないと、おでこを睨む。

「わ、わ、マスター、ネルネルマスター! 天野秀がマスターを狙ってます!」

「むはぁ〜〜、やっぱアイスはうんまうま――痛っ!」

「……社員は滅ぶべし」

「……でこぴんしたな、大賢者である私のおでこに……でこぴんを!!」

―― 彼女が怒り狂い、店が崩壊した直後、補正力と言う便利な設定もとい出来事が起こり、店はまたまた元通り。
だがしかし、流石の補正力も人の命まで補正して蘇生される訳でもなければ、俺のおでこの腫れを除去する事は出来ない。

「……秀さん、たんこぶできてます。おでこに」

「知ってる……ぐすん」

「アーティファクトの一種、ネルネルハンマーの実力、思い知ったかぁ〜わっはっは」

もう、なんだかどうでもいいや、と思っている最中、ふえぇと戸惑うだけであった七福ことみが口を挟む。
彼女の家は、代々ゴッドカンパニーの用心棒的な存在であり、この世界の守護者でもある。

では、具体的にどう世界を護ってきたのかと、疑問をシキちゃんに告げたのだ。するとシキちゃんは、>>518と返事する。
518名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:46:03.87 ID:6F9ccEov0
タブレット端末を使って指先一つで
519名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:46:22.61 ID:THDRgdo3P
無意識にとんでもない殺人拳をお見舞いする
520名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:48:19.08 ID:THDRgdo3P
>>518
便利な世の中ですねえ
521名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:54:09.48 ID:BkdYcAPA0
では、具体的にどう世界を護ってきたのかと、疑問をシキちゃんに告げたのだ。するとシキちゃんは、タブレット端末を使って指先一つでと返事する。

「『元脇役は黙ってろ』って言われましたぁ……ふえぇ……」

「だって元々活躍する予定無く、アンに守られるマスコット的存在だったのです。それが出しゃばり、メインヒロインになり代わろうなんて甘いのです」

「メタ発言までされちゃったぁ……ふえぇ……」

「ちなみに、世界を滅ぼそうとする悪い輩、つまり悪神とも呼ばれますが、それらは結構多数存在しておりました。
 過去の第二次世界大戦だって、実は悪神の手中によって踊らされた結果でもあるのです。
 そういった悪神を、まぁ要約すると悪役をばっさばっさと物理的に倒していったのが、護手なのですが――」

だが、護手という職はゴッドカンパニー平社員よりも薄給であるそうで、割に合わないと紋章を会社に戻し、
一般人として振舞う人が増えていき、今では七福家と三枝家、そして二野家しか存在しないらしい。
漢数字が入っているのが特徴らしいが、三枝という苗字にはちょっとばかり聞き覚えがあった。

「……三枝って、マールの親友の……」

ノエルが口を挟み思い出す。マールは帰宅しては、友達が出来たと俺に嬉しそうに話をしてくれた事があった。
それが三枝瞳である。彼女の家もまた、護手という薄給で苦労する家であるようだ。

「まぁ、そんな訳で……、お話は以上です。皆さん頑張ってください、シキは大賢者の書に帰って昼寝するのです。ふわぁ……」

「お疲れシキちゃん。後でチョコボール買ってあげよう」

「わーい、マスターがチョコボをくれるのです。これで良い夢が見れそうなのです――」

シキちゃんが大賢者の書の中に消えるように戻り、そして数分後。
俺はやはりと、気になる存在が居ると練曲ネルに話をする事になる。秘密事ではあったのだが、やはり話しておくべきだと踏んだのだ。

しかし、俺がその謎である白の背広の男から、億近い金を貰っていると聞いたネルは……>>522
522名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 22:55:48.91 ID:THDRgdo3P
超嫉妬
523名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:03:07.18 ID:BkdYcAPA0
しかし、俺がその謎である白の背広の男から、億近い金を貰っていると聞いたネルは……超嫉妬。
わざわざ「超shit!!」と口にする程嫉妬され、アイス奢れと手を差し出すのである。

既にチェリークロックではこの日、アイスの在庫が切れてメニューから削除される事となっている。
なのに更にアイスを食おうとするこの女の腹はどうなっているのかと、げんなりしてしまう。

「お前なぁ……、あの金は使わないって決めたんだ。だから駄目だ」

「何故なのだ、大金を貰えたのだろう? ……使わない理由が無いじゃないか!」

「よく考えろよ、いきなり見知らぬ奴から、お金あげるよって言われたら気味悪いだろう?」

「そうか? 割と良くある話じゃないか?」

「お前、こっちでどういう人生送ってんだよ……」

だが、練曲ネルにこの話を振ってみたものの、思い当たる節が無いと返されてしまう結果となった。
そうして、気付けば夕陽も沈み、辺りは真っ暗となった所で解散となる。夕食を待つ娘達が居るからだ。

ネルと別れ、夕食の素材を買い出しつつも、俺はある事を考えていた。
俺の周りは気付けば、異能者だらけである。あえて言えば、俺と似たような存在は相田店長、そして川下くらいなのだ。
その他の連中は、皆異能者。つまり特技を持つわけだ。……俺は、何も無いと人生を嘆いてしまう。

一方で、ノエルはスーパーをことみちゃんと散策、色々と買い物カゴに突っ込んでいくのである。

「トマトも美味しそうですし、白菜も美味しそうです。しいたけも、ほうれん草も――」

「あのあの、あんまりカゴに突っ込んでると、予算がオーバーしちゃいますけどぉ」

「お鍋の予定らしいですから、良いんじゃないですか? 闇鍋が楽しみです」

「それはやらないと思います、ノエルさん……」

意外と二人は仲良く話をしてくれている為、その辺りは心配はしていない。
だが、彼女が我が家に居候するようになり、アンの様子が更におかしくなっていた。かつては、自分の存在意義に疑問を感じていた様子だが……。

今では、何故か>>524と振舞うようになっている。
524名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:15:58.85 ID:BkdYcAPA0
ツンデレお嬢様
525名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:16:15.67 ID:THDRgdo3P
すべてのものを焼けるかどうかで判断
526名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:22:35.32 ID:BkdYcAPA0
今では、何故かツンデレお嬢様と振舞うようになっている。
どうして突然そのような振る舞いをするようになったのかは、流石に誰にも理解出来ないで居た。
帰宅する際も、俺がアンの振る舞いについて心当たりがあるかと、ことみちゃんに尋ねてみたが、首を傾げるばかりであった。

そうして家に戻ってみれば、突如エプロン姿をしたアンが出迎えてくれるのだ。

「か、帰ってこなくても良かったのに、嬉しくなんかないんだからね……!」

「すげぇ、棒読み感……。ノエル、解説を」

「本当は言いたくないのですが、言わなきゃ秀さんを落とせないと踏んだアンの最後の秘策のようです」

「そこまで解説しちゃうの? それでいいの? というか、俺のせい?」

「最近川下先生とラブラブイチャイチャが続いている為、我が家の娘不満値はイエローゾーンですから」

ちなみに、最近我が家に良く訪れるようになった川下浅海は、アンやアリスの担任でもある。
そんな彼女は、今日も家に上がりこんでいて、アリスに勉強を教えていた。そのアリスは、俺に助け舟を出している。

「もーむり、もーむりぃぃぃ!! このオバサンいらないッ!!」

「誰がオバサンですってぇぇ!? 罰として漢字ドリルもう十冊追加ッ!!」

「ひえぇぇ、助けて秀、このままじゃ漢字ドリルとオバサンに押し潰されてしまうのだわ」

「……俺には無理だ、許せ、アリス」

そして思うこと。家が狭い。台所にマールとメルが居て、料理の下ごしらえをしてくれているのだが、そこでもう台所はいっぱい。
六畳間にアリスと川下、そしてラノベを読もうと寛ぎだすノエル。で、玄関側に俺とことみちゃん、そしてツンデレ化しているアンが居る。

「秀、中に入らないの? 別に中になんて入らなくてもいいんだからね……」

「無理に棒読みせんでいいわ。……いや、家が狭いなって思ってさ」

「それなら……>>527すればいいなんて提案しないんだからね……!」
527名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:24:58.75 ID:THDRgdo3P
お隣さんとの壁を破壊
528名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:31:57.48 ID:BkdYcAPA0
「それなら……お隣さんとの壁を破壊すればいいなんて提案しないんだからね……!」

「ふむ、それは良いアイデアだ。……って、アン、それはもうツンデレじゃないんだが?」

「そう? ……ちが、そんな訳ないでしょ、ばかー」

「で、そのアイデアだが、良いアイデアなんだ。だが……家主の許可が絶対下りん!!」

「家主って、そう言えば何方なんですか?」

「実は俺も顔を見た事が無いんだ。電話でやり取りした程度で……女性なのは知ってる」

「そうなんですかぁ……」

ことみちゃんに言われるまで、俺は家主の顔なんて気にも留める事は無かったのだが、
思えば電話でのやり取り程度で、後は振込みで家賃を支払っているのである。どんな人なのかと気になりだしてしまう。
とはいえ、いきなり連絡しては、隣の壁破壊していいですか、なんて……言える訳が無い。

「引越し、考えるかなぁ。……でも金が……はぁ」

「お金なら例の数千万があるんじゃないですかぁ?」

「ことみちゃん、あのお金の話も、というかファミレスの話は出来るだけ秘密な。娘達にも!」

「うぅん、そう言われるなら黙ってますけど……」

ファミレスで行われた話は、ノエル以外の娘達には伏せておく事にした。特に金の話については、余り触れられたくない。
あの金はやはりあの男に返すべきだと未だに思っている。だが、彼は受け取ってくれないかもしれない。
どちらにしても、まともな金じゃないのは明白だと俺は踏んでいる。スロットで費やした二十万以外、これ以上使い込みたくなかった。

では、家のこの手狭な状態はどうするか、と悩み……やはり隣の壁を破壊させて貰おうなんて強引なお願いと駄目元でしてみる事に。

『――はいはーい、もしもし。家主ですけど』

「どうも、天野です。突然ですが隣の部屋の壁、破壊して繋いでもいいですかね?」

>>529
529名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:36:38.10 ID:THDRgdo3P
破壊できるもんなら破壊してみなさいな
530名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:47:47.43 ID:BkdYcAPA0
『破壊できるもんなら破壊してみなさいな』

家主は分かっていない。我が天野家に普通の人間は俺しか居ない事を、彼女は知らないッ!
と、してやったりと思った瞬間辛くなる。俺だけ無能じゃんと思い、そして鬱となるコンボが待ち受けていた。
だが、これは家主からの挑戦状である。夕食はどうやら、壁を破壊した後の宴となりそうだ。通話を終えた俺は、皆に告げた。

「……皆、聞いてくれ。我が家は住人が増えすぎ、俺の部屋だけでは最早狭すぎる!
 よって、これより隣の家の壁を破壊し、繋げる作業に移るッ! この作戦を――明日の未来の為作戦を命名する!!」

「「……壁を破壊するぅ?」」

アンとことみちゃん以外の皆がハモった。そして、後ほど俺は、ちょっぴりだけ後悔する事になる――。

―― ニコネコ生放送中の私は、常に賢者の衣装を身に纏う事にしている為、今日も例の衣装にお着替えするのである。
そして、今日も色々と私を褒め称えるコメントが寄せられ、その時だけは良い気分となるのだが、
今日だけはいつもと違う、余計な事を考えてしまうのだった。

「……やはり、連絡を取ってみるべきか……」

気付けば、ニコネコ生放送枠は終わってしまい、三十分を無駄に使いきってしまうのだった。
今日はもう良いとノートパソコンを閉じ、手元の携帯を手繰り寄せた。時刻は九時半を過ぎている。

暫く呼び出し音が続いた。六回、七回、八回と呼び出し音が続き、いよいよ今日は諦めようと思った矢先、彼と連絡が取れる事となる。

そうして再び普段着に着替えた私は、子供はご遠慮的なバーで、その人物と待ち合わせをする事になる。
まさか、彼が会う気になるとは思わなかった。人を寄せ付けず、遠ざけては自分だけの空間を愛する、ある意味変態的な男である。
その人物がこの店に訪れ、私は相変わらずな衣装だとげんなりしてしまう。白の背広だった。

「まさか、重役のキミが僕に連絡を取ってくるとはね……。どうやら、彼は話をしてしまったのだろうけど」

「そのまさかだ。……どういうつもりだ、白渡矜持」

「その名で呼んでくれる辺り、僕はキミに好意を持つよ。平社員と偽った実は重役で、年収一千万越えの練曲ネルさん」

一千万越えなんて天野秀の前で言えば、今頃私は信じられないほど恨まれ、下手すると消されかねないだろう。
それ程奴の卑屈精神は強く捻じ曲がっている。その彼の話となると、白渡矜持は少々嬉しそうであった。

「彼、気に入っているんだ……。是非、>>531としたいくらいに」
531名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:54:54.02 ID:BkdYcAPA0
ネトゲでネカマして添い遂げる
532名も無き被検体774号+:2013/04/27(土) 23:55:00.06 ID:THDRgdo3P
会社で言うところの部長の付人
533名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:04:03.66 ID:z3jOliHB0
「彼、気に入っているんだ……。是非、ネトゲでネカマして添い遂げたいくらいに」

「どうしてネトゲになるのか一行で。あ、やっぱいい」

「そんなの決まっている。彼が可愛いから、愛しているから! その為にはボイチェン使用だって辞さないッ!!」

「声は割りと女っぽいぞ、白渡」

「そうか、それはまた嬉しい事を言ってくれる……。ところで、僕を呼び出した用件を聞こう」

「そんなの決まってる。……やっぱり、アレなのか?」

「間違いないよ。それに黙示録にもあったじゃないか。つまり、天野秀が僕達の主となるお人だ」

「……あんな変態で馬鹿がねぇ……」

「とはいえ、まだ覚醒の時期は迎えていない。まだ四年もあるしね。彼が三十を向かえ、人生に絶望し、尚且つ童貞のままであり続け、
 そしてビルの上から飛び降り自殺を行った上で彼は僕達の主、全知全能の神となる……」

「ほんと、散々な末路なんだな。アレ。……にわか信じ難いのだけども」

「それが本来の世界の運命だったのだけどね。……アルテナが仕掛けたギミックのお陰で、その予定調和は崩れそうだ。
 でもそれも面白いと思ったんだ。もし世界が変わるのなら……彼女の思惑に乗ってみるのも良いとね」

あの変態的で、いつも私の匂いを嗅ごうと企む男が、私の上に立つべく存在だというのは、正直言うと認めたくない。
しかし、天野秀という存在は嫌いじゃない。彼は小心だが、意外と気遣いも出来るし、優しい面もある。
それは辛い時、アイスを奢ってくれた出来事がそう思わせているのかもしれない。

私はそのバーの席を立つ。その話さえ聞ければ良い。確信さえ得られればそれで良かった。だが、去り際に彼はこんな事を言う。

「女神アルテナ、そして悪魔72柱の一人、或いは僕……、キミは誰の味方で在りたいんだい?」

「……>>534
534名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:05:22.57 ID:w2Rf3d+jP
神のみぞ知る…って奴ね
535名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:16:34.86 ID:z3jOliHB0
「……神のみぞ知る…って奴ね」

「やれやれ、キミが気取ってもお子様体型のせいで、格好がつかないね」

「誰がこんな風にした! ……アルテナ様の入れ知恵なのは知ってるけど」

「この方が、天野秀とよくやっていけると思ったんだ。彼、ロリコンだからね」

「ったく……。でも、余りアレに入れ込むのはどうかと思うがな。デウス・エクス・マキナ――あんまり補正しすぎると、死ぬぞ?」

「ご忠告ありがとう。でも、僕も所詮前主が造り出したギミックに過ぎない。……しかし、何故僕は男なんだろう」

「……帰っていいか?」

「ああ、話が出来て嬉しかったよ。そうそう、今度彼と結ばれる方法を――」

下らない話が始まりそうだったので、慌ててバーを飛び出した。外は六月に入ったというのに、思ったより肌寒い。
ふぅ、と息を吐いては駅のある方向へ歩き出す。通り過ぎる人々は、皆それぞれだった。幸せそうなカップルも居れば、帰りたくなさそうにするサラリーマン。
塾帰りでげんなりする学生に、家族で食事しては嬉しそうにする子供。

その人々の幸せを、そして道標となるべく存在が私達、ゴッドカンパニーの社訓でもあった。
しかしそんな社訓、最早誰も口にしようとしない。皆我侭放題に力を行使し、己の人生を謳歌している。

そしてそれは私もそうなのだろうと、隠してある手の甲の紋を眺めてしまう。ふと、天野秀の変態的笑顔が頭に浮かんだ為、首を振って振り払った。

「……いつもそうだ、アイツは……勝手に私の空想に現れて、実際にも現れて……もう……」

私がスカウトされたての新米だった頃、右も左も分からずあたふたし、そして彼に近づいた最中、私は彼の前でぼろを出しそうになった事がある。
それを、彼は鈍感でもあった為、私が悲しんでいると、落ち込んでいると考えたのだろう。アイスを奢ってくれた。
その存在は美味だった。そして、その存在を教えてくれた彼が……いつしか好きになっていた。

「次代の神と部下の恋って、実るんですか……神様」


―― 天野家総動員の隣の壁破壊作戦、名づけて明日の未来の為作戦。それは失敗に終わった。
どうなってるんだと皆が眼をぱちくりとさせていた。どんな力を持ってしても、隣の壁が破壊できない。
尚、この隣は自宅警備員であるJKが住んでいる。彼女とお近づきになりたいという邪な気持ちがいけないのだろうか。

こうなれば……>>536しかない。
536名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:20:15.32 ID:w2Rf3d+jP
壊す以外の方法で壁を取り去る
537名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:28:33.70 ID:z3jOliHB0
こうなれば……壊す以外の方法で壁を取り去るしかない。でもそんな事どうすれば良いのか。
作戦会議が始まった。川下は最早唖然として様子を眺めていたが、彼女は意外と順応性が高い。今では指揮を執る立場となっていた。

「えーと、雷とか炎とか氷とか風とか矢とか、挙句に空間が捻じ曲がったりとかもした気がするけれど、
 それもすべてひっくるめて、この私、万能美人教師の川下浅海が提案するわ!! ……壁を引越しさせればどう?」

「壁を外せるのなら壊せるだろう、アホ教師」

「はぁぁ!? 誰がアホ教師よ! 昔はいつも私のスク水とか着替えのブルマとか嗅いでた癖に!!」

「うわぁぁぁ、娘達が居る前でそれをバラすなぁぁぁぁぁ!!!」

「……本当なの、秀様」

「うーん、秀らしいと言えば秀らしいけど……」

「……変態ですね、秀さん」

その話をバラされ、マールは不安そうな視線で、メルは納得するような視線で、そしてノエルは軽蔑するように俺を見た。
必死で弁解しようとする中、アリスが何故か押入れからこんなの見つけたと、川下の名が入ったブルマを引っ張り出した。

「これ、ちょっとイカ臭いというか……うん、がびがびなのよね〜」

「アリス、貴様……貴様という奴はぁ!!」

「えへへ〜、でも、こんなオバサンより、私のほうがイイでしょ? なんなら履いてあげるよ……ブルマ」

「誰が……オバサンですってぇぇぇ!!!」

そうして川下がまた琴線に触れたアリスを追い回す。これでは作戦会議もなにもない。
しかし、気付けばアンの姿が無く、あいつは何処へ行ったのだと部屋の中を見渡していると……、ふっくらとした感触の赤いブルマが目の前に現れた。

「……こういうのが好きなんて……変態、変態……!」

「あの、アンさん? お尻、顔に当たって――ふごっ!!」

「……もっと積極的になるって決めたから……べ、別にあんたの為じゃないんだからね……!」

その時、俺は新たな視線を感じた。それは……>>538という視線であった。
538名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:33:19.41 ID:w2Rf3d+jP
手錠をちらつかせた刑事さん
539名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:44:14.23 ID:z3jOliHB0
その時、俺は新たな視線を感じた。それは……手錠をちらつかせた刑事さんという視線であった。
近所迷惑だったそうで。それに、器物破損の容疑すら掛かっているそうで。では何を破損させたかと言えば……。

「両隣の壁、消えてますね……」

「……挙句に203号室の女性を全裸にした疑いもある。署まで来てもらおう。これは任意では無いぞ」

「へ……? ……あ」

「…………マジデスカ」

お隣の自宅警備員さんは、小声でそう呟いていた。全裸でパソコンの前に座っていた。
どういう理由で壁が取り払われたかは分からないが、助けて補正力と願っても、壁は復活しようともしない。
そうして、どこからか一陣の風が吹いた後、俺は手錠を填められ、刑事の来島さんに連れられる事となる――。

―― お隣の天野秀が、壁を取り払うという行為を行い、私の部屋との境が消えてしまう事となる。
天野家の住人達は皆、天野秀が居た場所と、全裸の私を呆然と眺めている。皆状況が掴めていないらしい。

あの、馬鹿騒ぎの下りを私はパソコンを通してモニタリングしていた。要するに、彼を四六時中監視していたのである。
しかし、こうなれば最早監視する意味も無い。それにしても、覚醒が早すぎると、改めて壁が消えた瞬間を再生させた。

「勇者のお尻に顔を踏まれて……一時的に発動したのですか。つまり……まだ限定的……」

キーボードをかたかたと打ち鳴らし、現在の天野秀をチェックする。泣きながらパトカーに乗りたくないでござると叫んでいる模様。
そして、そんな私を皆がじっと見つめている模様。……カーテンでも閉めとこう。

私は、彼を監視する目的がある。それは、彼を狙う存在を護る為でもあったのだが……今では私自身の存在に異議を唱えている。
折角だから、面倒くさくなって抜け出した天界の神様に戻ろうか、なんて思うほど、状況は進展しすぎていた。

「とはいえ……、あのはみ出し者を完全に駆逐するまで、安心できないのです……」

懸念すべきは、悪魔、そして悪神。それらが彼を取り込もうと企むのを防ぐ為、私は職務放棄して彼を監視する事にした。
しかしそれは、ただ面倒くさいだけ……という本音を隠す建前でもあった。でも、壁は消え、それが切欠で私の運命すら彼が定めてしまう事を、まだ知る由も無い――。


―――― つづきます。
540名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:45:52.73 ID:H4y0EveZP
乙ー
541名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:47:15.58 ID:w2Rf3d+jP
おつー!
542名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:49:55.49 ID:z3jOliHB0
前回話が広がりすぎた為、補填しようと頑張ったら最早勇者話じゃなくなったでござる。
まぁそれよりも……、もう少し安価の振り方考え直した方が良さそうですね。このままじゃ取る面白味がないかもですし。

ともあれ、今日もお付き合いありがとうございましたー。
543名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 00:52:39.59 ID:z3jOliHB0
【04/28 (日) 00:51時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/28 (日)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十一話 『勇者さん@がんばらない』

ついでにべっちょり。
544名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:04:04.56 ID:z3jOliHB0
ふえぇ、もう時間だったよぉ……。

安価の振り方考えてみたけど特に思い浮かばないよぉ。
とか言いながらもゲームしてたら世話ないですね。はい、ごめんなさい。

という訳でもう暫くお待ち下さい。


無双7やっとクリアできました。魏だけだけどwwwww
545名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:15:13.65 ID:z3jOliHB0
〜〜新キャラ及び今回出てきそうな主な登場人物紹介〜〜 (増えすぎたので一部紹介に切り替えます)

【天野 秀】
本編主人公であり絶対神なのですが、覚醒条件がシビアすぎて未だに凡人以下の蛆虫状態。尚、顔だけイケメンになりました。

【天野 アン】(アン・アンダルシア)
歴代最強勇者と名高い十二歳。気づけば凄い頑固な金髪ロリに……と思ったら只の情緒不安定。

【天野 マール】(マール・マルグリッド)
十三代目魔王なのに全然魔王らしくない十三歳。主人公にアピールしつつも、すっかり演劇部馬鹿に。

【天野 メル】(メル・メルエッド)
魔王の付き人な魔法剣士。彼女が居ないと天野家は描写出来ないほどのムードメーカー。氷魔法や重力をも操ります。

【天野 ノエル】(ノエル・エル)
出番が薄い為前回メタな活躍をした三女。読書好きは只のラノベ中毒でした。さり気なく主人公を狙っている模様。

【天野 アリス】(アリス・アリストテレス)
ラグナロク計画の一環で主人公家の養子に。負けず嫌いな為何でも張り合っちゃう駄目な子。神様が嫌いなのだそうで。

【練曲 ネル】(ネルティ・ネルシェイド)
チェリークロックで働くウェイトレス。そして大賢者でゴッドカンパニー重役。おまけに主人公に惚れてるフラグ付きで大出世。

【七福 ことみ】
アンの同級生。今では破邪の紋を持つ七福家の次世代エース。割とのんびりしています。

【七福 まこと】
聖アイリス女学園に通う女子高生。ことみの姉であり、破魔の紋を継ぐ護手。でもレズ度が高く残念な人。

【七福 ことこ】
七福ことみとまことの母親であり、没落気味の七福家の再興を目指してます。尚四十路手前で中ニ病の模様。

【シキ】
練曲ネルの持つ大賢者の書に眠る式神。妖精のように羽が生えているそうです。貴重な解説要員。

【観笠 ミカ】
主人公のアパートのお隣に住む女子高生自宅警備員もとい神様。面倒くさがりで機械に囲まれていないと発狂します。

【白渡 矜持】
ゴッドカンパニー現社長であり、デウス・エクス・マキナの力の一部を持つ真っ白な人。主人公とホモホモしたい様子。


〜〜三行で語る、これなんの物語?〜〜
将来自殺ルートまっしぐらの主人公を覚醒させる為、異世界の娘が次々送り込まれましたが、
神様社会も色々大変で、様々な思惑が錯誤し、今では神様バーゲンセール中なのですが、
やっぱり基本はラブコメしてて、前回アパートの家主でもある大天使みかみかさんと接触しちゃいました。そんな物語。 ……なんだこれwwwww
546名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:16:03.59 ID:z3jOliHB0
―――― 勇者なムスメ 第十一話

アパートにあった両隣の壁、この部屋の狭さを訴え続けていた壁は、今では完全に取り払われている。
それに伴い押入れが無くなり、お隣の機械だらけの部屋にエロ本、フィギュア、エロゲーの類が流れ込んでいる。
逆隣の方、こちらは逆に殺風景でもあり、そこに住んでいる刑事の人は現在外出中である。

梅雨の時期がやって来て、アパートの三つの部屋が一つとなったその中央の部屋の窓には、てるてる坊主なるものが吊るされている。
これを吊るすと、雨が降らなくなるそうだ。でも所詮それはまじないの一種であり、相当の呪術師でもない限り、そんなまじないは天に通じないだろう。

「…………」

「…………」

雨が降り続いている。湿気を含んだ空気が部屋を包む中、アパートの管理人でもあった人物は、今日もパソコンに夢中。
そして私もまた、パソコンを通じてゲームを知った存在。やはり興味が湧いてしまうのであった。

「…………」

「…………うざ」

パソコンのモニターには不思議な画面が移っていた。リアルな風景。そして、それは主に天野秀を映し出している。
何故秀ばかりを映し出すのだろうと不思議に思った私は、それを食い入るように眺めていた。
ちなみに彼は、壁が取り払われた時には刑事の来島と名乗る人物に事情聴取された後、ふらふらとした足取りで家に戻ってくる。

そして今日、彼はやはり元気にレストランで働いている。時折、練曲ネルのスカートの中を伺う様な素振りを見せるのを、
モニターはきちんと、そしてしっかりと捉えているのである。

「……あのですね」

「……はい、あまのです」

「ずっと>>547しながらモニター覗き込まれてたら、かなりウザイのです」
547名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:18:25.57 ID:hsM75MSy0
カバンで顔を隠
548名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:18:31.70 ID:H4y0EveZP
反復横跳び
549名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:29:31.08 ID:z3jOliHB0
「ずっとカバンで顔を隠しながらモニター覗き込まれてたら、かなりウザイのです」

「いやぁ〜みかみかさ〜ん、もっとデレデレと甘えてくださいよぉ〜この天野アンにぃ〜!」

「いきなり真似とか、キャラ崩壊してるじゃないですか。あのですね、言っておきますけど、私はこのアパートの管理人であって――」

「そろそろ学校に行きましょうよぉ〜みかみかさ〜ん、実は頑張れる人だって知ってるんですよぉ〜?」

「……お願いだから、話、聞いてくださいよ」

お隣に住んでいた観笠ミカ。それは壁が消え、そうして天野秀が戻ってきた直後の話である。
彼女は基本全裸で生活しているのがまずいけないと、彼は早速彼女の改革に取り掛かる。その最中、彼はこの娘が実はアパートの管理人だと知った。

「で、壁……どうしてくれるのですか?」

「むむむ、それを言われると……、ドウスレバイインダロウー」

「……まぁ、壊せるものならって言ったのは私です。なので、別に開通した状態のままでも、もう構わないんですが……、
 来島さんの住む方だけでも塞ぐべきじゃないかとは思うのです」

「俺も出来れば塞ぎたいのだが、壁を用意するスキルが俺には無いッ!!」

「威張るなアホ神」

そして彼女は仕方ないと、後に来島さんと電話で話をした結果、現在に繋がるのである。
結局、アパートに二階の三部屋は、一部屋となり、共同生活を強いられる結果となったのだ。
刑事の来島は、多忙なのもあってなのか、基本は家には戻らないと私達を安心させるように言っていた。

だが、この人物、家主でもある観笠ミカだけは別である。何が別なのかと言えば、先ずは女だという事だ。
ある日、私は押入れの本を取り出し、読み進めていた事があった。そこでは、男を口説くには先ずスク水やブルマ攻撃が良いそうである。
そして、この部屋にはそういった知識本や、道具が存在する。それらを彼女に用いられ、秀を口説かれては私も困るのだ。

「だから学校行って」

「い〜や〜で〜す〜」

彼女を昼間は学校に追いやろう大作戦その一は、たった一言で失敗した。では作戦そのニ、>>550を強行するしかない。
550名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:33:03.31 ID:w2Rf3d+jP
ニート度を悪化させてお荷物化
551名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:40:57.90 ID:z3jOliHB0
彼女を昼間は学校に追いやろう大作戦その一は、たった一言で失敗した。では作戦そのニ、ニート度を悪化させてお荷物化を強行するしかない。
という訳で取り出したのはピンクのナイトキャップ。マール達がしめむらと呼ばれるファッションセンターで購入したそうだ。

この作戦には、天野秀以外の天野家全員が取り掛かって行われている。そして今日の昼、学校をサボる許可を得た私は、
ことみを説き伏せ、こうして観笠ミカを何とかこの家から取り除こうと努力しているのであった。

「……なんか、頭が重いような」

「気のせいですよ〜みかささみさん」

「なんか、名前が変わったような」

「気のせいですよ〜ささみかささん」

「また名前が……って、何被せてんじゃごるぁ!!」

「ちっ、バレてしまった……」

「鞄で顔を隠しながら舌打ちされるって、意外と腹立ちますね」

その間も、四台もあるパソコンモニターにはすべて天野秀が映し出されている。
恐らくシステム名も、天野秀監視システムなんて安直な名前だったりするのだろう。
だが、四六時中彼を第三者視点で眺められるのは、案外面白そうだと、時折モニターに食い入ってしまうのだった。

そうして一時間が過ぎる。何事も会話も無く、私と観笠ミカは、淡々と天野秀を監視し続けていた。

「……もう、学校行けとか言わないんですね」

「うん、寧ろそのままご飯も食べるの面倒になって、いっそ死んで」

「さらっと恐ろしい事言われても困りますけども。……確かにお腹、空いたかもしれない……」

「動いたら自宅警備員失格」

「動かないと何も食べられないじゃないですか! でも、冷蔵庫に買い置きないし……」

彼女は、自室にあった小さめな冷蔵庫を見た後、私達の住んでいた部屋を見る。そこの台所も、一部がこの部屋と貫通してしまっていた。
そこから冷蔵庫を見て、その裏が真っ黒なのを見てげんなりした彼女は……>>552
552名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:46:21.27 ID:H4y0EveZP
よく見ると全部ゴキブリの死骸で二度げんなり
553名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:46:26.02 ID:w2Rf3d+jP
霞を食べて我慢
554名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:50:47.27 ID:otUIVYCn0
罪の懺悔
555名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:52:12.17 ID:z3jOliHB0
彼女は、自室にあった小さめな冷蔵庫を見た後、私達の住んでいた部屋を見る。そこの台所も、一部がこの部屋と貫通してしまっていた。
そこから冷蔵庫を見て、その裏が真っ黒なのを見てげんなりした彼女は……よく見ると全部ゴキブリの死骸で二度げんなり。
そして私も気持ち悪くなってげんなり。このまままた、暫くの時間をげんなり気分で過ごすのだった。

家にマールが戻ってきたのは、げんなりして二時間後の事である。いつしか、時計の針は四時過ぎを指していた。
その割には帰宅が早いと彼女を見る。今頃演劇部で無駄なダンスの練習をしている筈なのに、どうしてと首を傾げてしまうのだった。

そんな彼女は、私を見つけた途端、手招きして私を呼び寄せていた。

「アン、ちょっと……、作戦、どうなってるのよ!?」

「作戦その一、秀が非番な日が危険なので学校へ追いやれ大作戦は失敗。そのニを慣行中」

「……それであのナイトキャップなのね。……なのに服はTシャツにパンツのアンバランスさは一体……」

「その前にちょっとしたトラブルがあって、二人でげんなりしてたから」

「……トラブル?」

「こっち、こっち」

今も尚、天野秀をぼーっとした目つきで眺める観笠ミカは、私達がこそこそ動き回る事を全く気に留めようとしなかった。
そうして観笠ミカ側の部屋に入り、こちらから冷蔵庫を見ると大変な事に気付くと、マールを誘導。

「これ、これ」

「……冷蔵庫じゃない。それがどうかした?」

「げんなりする筈」

「一面真っ黒で―― って、こ、これはっ……!!」

その真っ黒な何かがゴキブリの死骸だと言う事にようやく気付いたマールは、>>555
556名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 21:54:43.14 ID:w2Rf3d+jP
「虫けらどもがッ!!」と大暴れ
557名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:02:11.82 ID:H4y0EveZP
戦う魔王さま
558名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:02:29.77 ID:z3jOliHB0
その真っ黒な何かがゴキブリの死骸だと言う事にようやく気付いたマールは、「虫けらどもがッ!!」と大暴れ。
観笠ミカの部屋は炎に包まれ、業火に包まれたパソコンは次々とシャットダウンの後、爆発。
そうして、等々私達は神の逆鱗という奴に触れたらしい。今では秀の部屋で正座させられるのであった。

「うわぁぁぁぁ、もぉぉ、どうしてくれやがるんですかぁぁぁぁ!! パソコンが、10TBも詰まったデータ達がぁぁぁぁぁ!!」

「10てらばいとって、なぁに、マール」

「さぁ、わたしにも、わからないわぁ〜」

「棒読みすんじゃねぇです!! もうキレましたよ、私。……私が只の自宅警備員のJKだと思わない事です」

「じゃあ、何だって言うのよ……」

ゴキブリの死骸を焼き尽くし、ちょっぴりご満悦のマール。そして、私は燃やされたアパートのその場所を眺めていた。
この世界には、補正力と呼ばれる存在が有るらしく、部屋が気づけば元に戻っていることに気付いてしまう。
なのに、壁は取り払われたままであり、やっぱり不思議だとその場所を眺めてしまうのだった。

「フフフ、この私、観笠ミカの名は仮の名であって、自宅警備員をしているのも、そして女子高生なのも仮の姿ッ!!」

「だから、何だって言うのよ……あ、虫けら発見!!」

「そう、この私は天界を統べる部長クラスの神――って、早速虫見つけて焼いてんじゃねぇですっ!!」

「だって、私だって……偶には魔王げふんげふん、悪い事をしたい年頃なのよ」

「……ふぅん、悪い事をしたいんですかぁ……にやにや」

彼女はふと思いついた言い訳をマールが口にした事を逆手に取るのである。
部屋を焼いた、もといパソコンを焼いて爆発させた罪は重いのらしい。今では、>>558という悪事に手を貸す羽目となるマールであった。
559名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:02:58.53 ID:z3jOliHB0
わ、わわ、↓で
560名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:07:54.16 ID:H4y0EveZP
誘拐、監禁
561名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:17:06.77 ID:z3jOliHB0
彼女はふと思いついた言い訳をマールが口にした事を逆手に取るのである。
部屋を焼いた、もといパソコンを焼いて爆発させた罪は重いのらしい。今では、誘拐、監禁という悪事に手を貸す羽目となるマールであった。
対象は、秀なのかとも思われた。しかし彼女は想定外な人物を口にした。

「アルテナ・アルメリア。慈愛の女神の紋を持つ女。……まだ臨海市に潜伏してるはずなのです。
 それを見つけ出し、此処まで連れて来て下さい」

「女神アルテナを!? って、どうして貴女が、そんな事を……!?」

「……私も、天界を統べる部長であり、ゴッドカンパニーの社員だからですよ」

何故、アルテナ様を見つけ出す必要があるのか、そこまでは彼女は教えてはくれなかった。
そして、アルテナと同等の存在である観笠ミカが、またどうしてお隣でアパートの家主なんて事をしていたのかも、教えてくれない。
そんな中で、マールは使命を与えられ、嫌々ながら街中を駆け回される事になる。

そして取り残された私は、現実逃避も兼ねて秀のパソコンから例のゲームを起動させる。

『ワ、ワ、ワー ワ、ワ、ワー』

「何時聞いても、OP曲は胸熱……」

「ふぅん、勇者アンはそんなゲームが好きなのですか」

「……覗かないで」

「さっきじろじろ見られましたから、お返しするのもいいかなと」

「嫌がらせ反対、ささささみ反対」

「それ、違うささみが入りましたよね、絶対」

私は、見られ続けながらも必死にゲームに夢中になろうとするのだが、視線が気になってマウスを正確に捌けない。
見られると凄く嫌なんだと、そこで私は改めて勉強する事になった。なんと言うか、だんだん恥ずかしい気持ちになってくる。

一方、観笠ミカは、私の気持ちを知ってか否か、ゲーム画面を見ながらも私に>>562と口出してくるのだ。
562名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:19:42.79 ID:w2Rf3d+jP
やってて楽しい?
563名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:30:01.44 ID:z3jOliHB0
一方、観笠ミカは、私の気持ちを知ってか否か、ゲーム画面を見ながらも私に「やってて楽しい?」と口出してくるのだ。
正直に話せば、今までの人生の中で、この時間が一番幸せであり、楽しいとも呼べるのだが、他にも一番が無くもない。
皆とご飯を食べるのも楽しいし、皆と寝るのも楽しい。そして、皆と話し合ったりケンカしたりするのも、楽しかった。

「……楽しい。すっごく楽しい」

「でも……楽しそうには見えないですね。あ、ダークプリーストです、やっつけましょう」

「わ、分かってるから……話し掛けないで」

「例のゲテモノ仮面、ゲットですね。……ほんと、淡々とゲームしてるって感じです。一種の廃人ですね」

「……何が言いたいの?」

「ズバリ言いましょうか、神様のカンってヤツを。……まぁ、あくまで神掛かりな力を持ってるだけの、ただの人間のカンですが――」

彼女は、あっさりと私が悩んでいることを言い当てる。私が、こうして平凡ながらも楽しい人生を送って良いものかと、悩んでいることを。
そして、人の命を、魔物の命を多数奪ってきた殺戮者が、こうして平穏を過ごして良いのかと。
ある日、ある魔道師に言われた言葉が、今もまだ心の中に残っている。それが、次々と今の暮らしの中で、葛藤を生んでいく。

「いっぱい、い〜〜っぱい、命を奪った勇者様。このドヴァーキンのように、たくさん命を奪いました。そして、自分自身に疑問を抱くのです。
 竜だって、ゾンビだって、皆生きているんです。……ゾンビはちょっと言い難いですが、人、それを常命の者と言うッ!
 それらをたくさん殺してきた私は、生きていていいんだろうかぁ〜、なんて思っちゃってるんですね」

「…………」

「でも、私からするとそれは、つまらない悩みなのだと、一蹴するのです」

「……でも、私、それだけで悩んでるんじゃない……」

「命の重さに悩まされる中の恋の悩み、うぅ〜ん、悪くは無いです。無いですけど……ブルマコスプレはやり過ぎですね」

「それはもう、恥ずかしいから言わないで」

「……本気で、天野秀を落としたいとお考えですか?」

彼女の言葉に、素直に首を縦に振れなかった。こんな私が果たして、幸せになんてなって良いものなのか。
だが、彼女は私の肩をとんと叩き、そして……>>564
564名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:36:09.73 ID:w2Rf3d+jP
こういうことは先に行動を起こしたものが勝ちですよ
565名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:44:29.88 ID:z3jOliHB0
彼女の言葉に、素直に首を縦に振れなかった。こんな私が果たして、幸せになんてなって良いものなのか。
だが、彼女は私の肩をとんと叩き、そして……「こういうことは先に行動を起こしたものが勝ちですよ」と、耳元で囁いた。

後に彼女はパソコンのテキストを立ち上げ、カタカタと文字を打ち込んでいくのである。
そこには、天野秀を取り巻くライバル候補をリストアップされ、格付けすらされていた。

「えー、先ずは一人目、先ほど無意味なお使いを出してあげた魔王ちゃんこと、マール・マルグリッドですね」

「……私の宿敵だった筈が、今ではお姉さん」

「そう。ある意味一番厄介な相手なのですけど、逆に一番倒しやすい相手でもあります」

「というと……?」

「実際に殺し合うなんて物騒な話も嫌いじゃないですが、彼女、まだメンタルが未熟なのです。
 つまり、彼女がリードして天野秀を連れ回し、アピールするなんて出来ないのです。ですが、彼女にはあの娘が居ます」

「……メルのこと?」

「その通りです! あのお邪魔虫が居る限り、マール・マルグリッドの優位性は保たれます。逆に言えば……アレさえ居なければ、貴女の方が優位です」

「でも、メルもお姉さんだし……殺すなんて、そんな……」

「って、貴女、直ぐに殺人に結びつける癖、この世界では危険だからやめた方がいいですよ?
 で、第二候補、川下浅海。二十六歳にしてメイクがちょっぴり残念な美人教師。貴女の担任ですね」

「授業中、直ぐに脱線して合コン話してくれるから、嫌いじゃない……」

「そんな現国担当の彼女ですが、ぶっちゃけ敵ではありません。そして第三の候補の――」

そうして、何故か観笠ミカの天野秀を監視した結果から導き出したリサーチを聞かされる羽目となった。
ダークホースはメタ発言すら厭わないノエル・エルであり、アリス・アリストテレスもまた、危険な存在だと指摘する。

そして、では彼女達を出し抜く方法はどうすれば良いかと、観笠ミカは何故かキーボードを持ち上げ宣言した。

「彼女達を出し抜き、勇者アンが勝利するには……>>566しかないのですッ!!」
566名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:48:21.92 ID:H4y0EveZP
本妻らしく威風堂々と何もせず静観
567名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:56:38.60 ID:z3jOliHB0
「彼女達を出し抜き、勇者アンが勝利するには……本妻らしく威風堂々と何もせず静観しかないのですッ!!」

「じゃあ、もう……コスプレとかいうのをしたり、ツンデレお嬢様というのを演じなくてもいいの?」

「その通りです。アンはそのままで、そのままの存在を彼にアピールするだけ! それだけで……勇者は駄目男を救うのです!」

「うーん……でも、神様が言うのなら、納得する……」

「ふむ、案外心配性なのですね。ならば、一つだけ策を練るのです。大丈夫、この私にお任せあ〜れ」


―― 何故か指令を受けた私は、街中を無駄に駆け回っている。目的は、この街に潜伏しているらしい、女神様を捜す為。
それって、本当の話だろうか。それに、臨海市のどこかと言われても、そこは相当に広く、私一人で捜し回るのでは埒が明かない。

「こうなったら……スライムっぽい奇妙な物体に捜し出して貰うしか――」

商店街に入ったところで、私は一計を案じそれを行動に移そうと思った最中であった。
道行く人が、度々に面白い事を言っていた為、ついその話に耳を澄ませてしまうのだ。

「はぁ〜? おいおい、魔法少女とか本気で居るとか思っちゃってる系?」

「ホントなんだよぉ〜? ホントに居たんだよぉ〜!?」

「私も見た見た! あれは紛れも無く魔法少女だったよ!? しかもなんかどばーっとピンクの光を放ってたし!」

「蛍光灯の光か何かじゃねーの?」

「だから嘘じゃないも〜ん、お星様と戦ってたの見たんだもん!」

「星っていうか……ヒトデみたいだったよね、あれ」

魔法少女VSヒトデ。それは果たして面白いのだろうか。気になった私はついその話をする三人の見知らぬ高校生を追ってしまっていた。
話から察するに、街を護る為突如現れた少女が、魔法使いであり、それが何やらヒトデの怪物と戦っていたらしい。
勝負はヒトデの撤退により魔法少女の勝利となったらしいのだが……ヒトデって、またかつての水竜事件のような存在だろうか。

そして、その高校生達の直ぐ背後で話を聞いていた私に気付いた彼等は……>>568
568名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 22:59:35.52 ID:w2Rf3d+jP
露骨に残念そうな顔をした
569名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:09:09.76 ID:z3jOliHB0
そして、その高校生達の直ぐ背後で話を聞いていた私に気付いた彼等は……露骨に残念そうな顔をした。
何故、どうしてそんな残念そうに私を見たのだろう。そして、「あ〜あ」と皆がハモって去っていったのだろう。
慌てて鏡を見る。特に落書きもされていないし、何もおかしな点は無い。あれ、もしかし自分が匂うから? と、今度は衣服の匂いをチェックする。

「……おかしいわ、残念な点が見当たらない」

女子力は常に高め続けているはず。なのに、何故残念そうにされなければならないのか。
ああ、この世界の人間というのは度し難い。私には判別できない何かがまだ存在するのかもしれない。

「女神様捜しはまた今度でいいわ。……女子力を高める為に今必要なのは、一般ぴーぽーチェックね!!」

そうして、早々に任務を放棄した私は、道行く女性をベンチに跨りチェックする。そして、一つ一つメモを取っていくのだった。

その一、観察者この私。対象は黒髪のロングが美しい女性。お仕事の帰りなのか、黒のスーツを着ていた。
この世界で好まれて履いているヒールというのを確認。やはり女子にヒールは必要であろう。

そのニ、観察者この私、対象は小学生くらいのおかっぱ女の子。学校帰りにしては少し遅すぎる時間、
どうやら隣の男子とデートらしい。後にメルに氷の壁を用意してもらい、殴りつけなければならない。

その三、観察者この私、対象は……三枝さん? やっぱりちょっぴりおかっぱヘアー。制服の姿なのでファッションチェックは不要。
裏路地に侵入し、その後姿が見えなくなった為、疑問に思った私は後を追う事になる。

「……三枝さん、この辺に住んでいる訳じゃないって聞いたけれど……」

裏路地をずいずいと進んでいくその背中を、見失わないように接近してガン見しつつも尾行。
だが、それは世間的には尾行と呼ばないらしい。あっさりを私を見つけた彼女は、一瞬だけ残念そうな顔をした。

「あ、あれ……どうして、天野さんが……」

「あは、あはは! 偶々見つけちゃったからつい! って、さっき残念そうな顔、しなかった?」

「……してないよ?」

目線を逸らし、明後日の方向を見ては苦笑いする三枝さん。これは間違いない、残念だと思われたのだ。
どこが残念なのかをこの際教えてもらおうと彼女の肩を掴もうとした瞬間……>>570
570名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:12:20.38 ID:hsM75MSy0
身体からミサイルが飛び出してきた
571名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:20:42.85 ID:z3jOliHB0
目線を逸らし、明後日の方向を見ては苦笑いする三枝さん。これは間違いない、残念だと思われたのだ。
どこが残念なのかをこの際教えてもらおうと彼女の肩を掴もうとした瞬間……身体からミサイルが飛び出してきた。
身体、頭がぱかっと開いて、上空目掛けてミサイルが一発、どーんと打ち上げられたと思ったら……空が弾けた。

「は? ……はぁぁ!?」

「……あ、あぁ、どうしよう、私、また発作的に……やっちゃった……」

「やっちゃったって……あの……三枝さん?」

「私、私……ひっく、だからこんなの、嫌なのにぃ……」

そして突如涙する三枝さんの頭は既に戻っていた。もしかして、幻想でも見てしまった系だろうかと、空を見上げる。
未だに空の一部がちかちかと点滅している。ミサイルが弾けた跡なのだろうと、改めて三枝さんを見る。
なんか、こんなおかっぱで黒髪で、制服は違えど羽を生やしたりするモノをアニメで見たような……。

「お、思い出したわ! ささせがわ@がんばらない、じゃない!!」

「それ、タイトル間違えるよ……ひっく」

「……あ、そう」

―― ファミリーレストランのチェリークロック三号店は、商店街を抜けて駅の方向に向かい、
駅の傍から数分歩いた場所に存在する。何気に駐車場も完備している、この付近では外食屋として人気のある場所。

そして、今日の大賢者メニューは『ささみ尽くしでがんばれない』だそうだ。
本当にささみの切り身を湯がいて、塩コショウしただけのモノである。ちなみに、鶏は鶏鳴中学校産だそうで、余計に箸が進まない。

「……で、訳、話してくれる?」

先ほど、頭の部分がかぱっと開き、ミサイルが打ち上げられた理由を尋ねてみると、彼女はまた泣き出してしまう。
どうやら、その事を話すのが相当辛いらしい。これは、無理に聞かないほうが良いのかもと、メロンソーダに口を付けた時である。

「……私、魔装神機なんです」

「ぶふぅぅぅぅ――――」

「やだ、メロンソーダ掛かった……サビちゃう……」

錆びるの、と三枝さんを改めて見る。彼女はメロンソーダが掛かった場所を丹念に拭いた後、サビないようにと>>572を行っていた。
572名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:24:16.34 ID:w2Rf3d+jP
気合で自然乾燥
573名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:33:15.43 ID:z3jOliHB0
錆びるの、と三枝さんを改めて見る。彼女はメロンソーダが掛かった場所を丹念に拭いた後、サビないようにと気合で自然乾燥を行っていた。
何故か唸っている。そして、そんな風に唸る彼女を、変態で駄目男だけど格好良くて私の王子様な秀様が見ているのである。

その後、彼は練曲ネルのドロップキックを喰らいダウン、相田店長に連れられ、奥へ引っ込んでいくのであった。
と同時に、私の僕でもあるメルが私に遠くから手を振っていた。何やら忙しそうにあちらこちら駆けて行く姿を見て、安心する。

メルはいつも私の面倒ばかりを見ようとするお節介なところがあった。しかし、こうして独り立ちしてる姿を見ると、感動すら覚えたのだ。
だが今は、三枝さんの問題である。自然乾燥を終えたのか、改めてティッシュで拭った後、涼しい顔でミルクティーを啜っていた。

「で、その魔……なんたらってなぁに?」

「略して魔神って言うんだけど……、意味、分からないよね。突然だもんね」

「要するに神様なの? 貴女って」

「ううん、神様って訳じゃないの。……造られたって言うか」

それは、突然の告白でもあった。私は人間の格好をした機械だと告げられた衝撃は、小さくは無い。
彼女は親友だと思っているからこそ、余計にショックがあったのかもしれない。話を聞いていると、次第に気持ちが重くなる。

国を、世界を護る守護者、護手。それは次第に数を減らし、そして等々三つの家しか護手が居なくなったそうだ。
その一つが三枝家であり、彼女はお金持ちの家庭に生まれ、そしてある程度成長した時、手術が行われた。
普通の手術ではなく、魔術の心得を持つ者が施術するそれは、彼女を一種の機械人形を化した。

「とはいえ、実際は普通の人間なの。その……要するに変身さえしなければ……」

「で、さっきは私に肩を掴まれそうになったから、つい頭だけ変身したって訳?」

「うん……。見た目も変わらないんだけど、中は魔装具だらけになっちゃうの……」

「……サイフラッシュ、出来ちゃうの?」

「はい? なに、それ……。目からビームと、羽からファングくらいは出来るけど……?」

そんな実はとんでも少女だった三枝さんが、ではあの時裏路地で何をしていたのかと尋ねると、>>574
574名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:39:22.02 ID:hsM75MSy0
ヤンキーをしめていた
575名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:47:48.59 ID:z3jOliHB0
そんな実はとんでも少女だった三枝さんが、ではあの時裏路地で何をしていたのかと尋ねると、ヤンキーをしめていたのだそうだ。
だが、私が見たのは紛れも無く彼女だけ。その先は行き止まりであり、それらしい人物は居なかった。
そこを突っ込むのは野暮なのかもしれないが、気になってしまったせいなのか、既に口に出してしまっていた。

「へ? 居なかった? やだなぁ天野さん、ちゃんと居たよ……?」

「……まさか、ゴースト……?」

「そうだよね、天野さんって普通の女の子だもん、『見えるハズが無い』よね……」

三枝さんは、一体何と戦っているのだろう。彼女は、私を普通の女の子と称した事は嬉しい。女子力がレベルアップした証拠なのだから。
しかし、見える筈が無いと言った。私にだって、力は在る。魔王としてのそれが、そして、神の存在だってきちんと認識できる。
そんな私ですら見えない存在が、彼女には知覚出来てしまうのだろうか。

「ごめんなさい、変なお話ばかりで。……折角、友達になれたのに……」

色んな思考が頭を過ぎり、過ぎ去っていく中、三枝さんはまた涙声となった。
友達になれた、その言葉が嬉しかった私は、彼女の手を握り締めてしまっていた。その温もりを感じては、やはり人なのだと再認識する。

「……私達は、友達よ。ううん、親友よ……! 三枝さんが、魔神に変身して目からビーム撃とうが、羽からファング出そうが、
 核ミサイル持って特攻しかけようが、ずっと、親友よ……!!」

「い、いや、核ミサイルは流石に持ってない、けど……」

「ううん、三枝さんは私に秘密を教えてくれた。でも、私の秘密を教えないと、きっと親友になれないと思うの。
 だから、私も教えるわ。……ずっと、隠していた秘密を……」

彼女はカップを置いて、私を恐々と見つめる。その視線が私に突き刺さり、つい話をするのも躊躇ってしまった。
しかし、三枝さんはとんでもない秘密を教えてくれたのだから。私は、彼女と親友になりたいと、全てを話す。

掻い摘んで説明すると、約十分程度だろう。三枝さんは、私の話をただ頷いて聞いてくれた。
そして、全てを話し終えて、それでも親友となってくれるかと、改めて彼女に話したところ……>>576
576名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:49:09.12 ID:hsM75MSy0
枕を抱いて寝ていた
577名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:54:53.64 ID:z3jOliHB0
掻い摘んで説明すると、約十分程度だろう。三枝さんは、私の話をただ頷いて聞いてくれた。
そして、全てを話し終えて、それでも親友となってくれるかと、改めて彼女に話したところ……枕を抱いて寝ていた。
頷いていたのは、眠くてうとうとしていたから。そして、眼を開いているのは、眼だけ変身させたから。

つまり、彼女は私の話を全く聞いていなかった! これでは親友になれないッ!!

「わ、わわわ、わわあぁぁぁぁぁぁッ!!」

私は叫んだ。明後日の方向に叫んだ為、メルがすっ飛んで来たのである。
だが、彼女がすっ飛んできた理由はそれだけでは無かった。客席も何だか騒がしい事に気づく。

「ま、魔王様! じゃなかった、マール、一大事だよぉ! アンが、アンが……!!」

「アンがどうしたのよ」

「秀を……口説いてるッ!!」

「はぁ? 馬鹿も休み休みに――って、口説いてるですってぇ!?」

ふと店内を見渡せば、秀はホールスタッフの制服を纏い、客席のテーブルによじ登っている。
それは一種の避難行動。そして、アンは何故か服を脱ぎ出し、余りにもおかしな台詞を言っていた。

「私、服が着れない。頑張れないの……。だから、着せて」

「お前、いきなり店に来て服脱いで、挙句に着せてって何のつもりだ!!」

「ボロアパートのペットはがんばれない……着せて」

「色々混ぜんな! つうか、頼むから服着てくれ……そのままだと、全裸が中継されて店が潰れるぞ……!」

「大丈夫……。今、この店のお客さんは、私より>>578に夢中だから……」
578名も無き被検体774号+:2013/04/28(日) 23:56:01.94 ID:w2Rf3d+jP
リヴァイアサン2世
579名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:03:54.69 ID:z3jOliHB0
「大丈夫……。今、この店のお客さんは、私よりリヴァイアサン2世に夢中だから……」

「はぁ? アレって前にお前達が倒して――って、ホントに居るぅぅぅッ!!」

「だから、秀が服を着せてくれないと、私、戦えない……」

たった今、アンは微かに頬を歪めたような気がする。まるで誘うような視線と、一瞬の笑み。
そして、それよりも大事となるのがリヴァイアサン二世なのであるが、私も、メルも、そしてアンも今はそれどころでは無い。
遠くからまた、聞き覚えのあるような竜の遠吠えが聞こえるのも事実だが、今はそんなの関係ない。

「アン、貴女、何してるのよ!!」

「……第一候補にして最大のライバルのマール?」

「第一候補って、何それ」

「こっちの話……。それより、マールはあの水竜と遊んでて。今、パンツ脱ぐので忙しいの」

「忙しくなぁぁぁい!! 秀様の前から離れなさいよ、このアバズレッ!!」

「うるさい、放っといて。コレも計画なんだから……。あ」

「計画……? さては……」

「観笠ミカは悪くない。だけ言っとけば大丈夫って教えられた」

「やっぱり……って、水竜の件も、実はアレの仕業なの!?」

「ううん、街を歩いてたらなんか居たから、挑発して連れてきた……」

水竜リヴァイアサン二世、ちなみに全長は何十メートルもあるだろう。更に言えば、一世よりも巨体で、魔力も高い様だ。
それがまた一つ吠えれば、再び津波が押し寄せ、全てが飲まれていく。それを黙って見過ごすわけにはそろそろいかなかった。

「……アン、挑発した件に関してはこの際どうでも良いわ。一緒にアレを潰すわよ!」

「観笠ミカなら、そこでメドイからやだって言う。だから私もメドイ」

ああ、もう、この馬鹿勇者はどうすれば言う通りに動いてくれるのか、と苛立っていると、
店のテーブルに乗っては、水竜リヴァイアサン目掛けて、>>580を仕掛ける三枝さんを目にしてしまうのだった。
580名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:06:54.91 ID:XokNlGL6P
撒き餌
581名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:14:05.06 ID:Fb1weuUc0
ああ、もう、この馬鹿勇者はどうすれば言う通りに動いてくれるのか、と苛立っていると、
店のテーブルに乗っては、水竜リヴァイアサン目掛けて、撒き餌を仕掛ける三枝さんを目にしてしまうのだった。

「撒き餌ランチャー、スタンバイ――90%、100%、120%……臨界突破で発射――」

撒き餌ランチャーって何だろう、とぽかんとして眺めていると、右腕が大砲のように化けたそれから、
玩具の効果音のような音がして、ぽぽぽぽぽんと次々と水竜目掛けて放たれる餌。何故か鶏肉だった。

「今日の大賢者メニューがささみで良かった……!」

これには大賢者ネルも激怒する。突如現れては三枝さんに文句を言おうとした為、私がどうどうと抑えるのだった。

「むきぃ〜〜! こいつが、こいつが私の渾身の頑張らないメニューを考えたのに!! それを、それをぉぉ!!」

「食べ物は後でスタッフが美味しく頂くから大丈夫よ、ネル」

「むぐぅ……、ともかく、マールよ、ちょっとこっちに」

「はい? いきなり何よ、こんな時に」

「あのリヴァイアサン……、幻術で生み出された偽者だ。二世ではない」

「何ですって? じゃあ、誰があんな事を……!?」

「そこまではまだ分からないのだ。……しかし、嫌な気配を感じなくも無い。ほら、あの辺りに」

「え、あの辺りって、店の前にあるテナントビル――の屋上に何か居るぅぅぅ!!」

何か居る、という表現しか私には出来ない。とりあえず、あれはヒトデなのだろうか。
それがテカテカと光っているようにも見えるし、それを合図に水竜が暴れているようにも見えた。

そして、撒き餌ランチャーによって翻弄される水竜リヴァイアサンの幻影。翻弄する少女を、見つめるようにちかちか光るヒトデ。
ネルは、恐らくアレが幻影を生み出しているのではないかと判断した。そして、私にアレを叩くよう指示した直後であった。

そのヒトデの存在するビルが、鮮やかな光に包まれ……>>582
582名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:18:24.99 ID:XokNlGL6P
クリスマスツリーとその星に
583名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:27:41.79 ID:Fb1weuUc0
そのヒトデの存在するビルが、鮮やかな光に包まれ……クリスマスツリーとその星に。
六月なのにクリスマスツリー。それが出来上がり、その星のてっぺんに乗っかるのは、桃色づくしの小さな少女であった。

「説明するのです! あれは御三家となる最後の護手、二野家の理子ちゃんなのです!」

「……最後の護手? って、こいつ誰ッ!?」

「マール、それは俺から教えよう。この存在は、妖精族のシキちゃん――げふぅっ!!」

「式神のシキちゃんなのです! ホントに次間違えたら、敷き紙にしてやるのですよ!?」

シキちゃん、何それ、とそのちんまい小動物を眺めてしまう。するとそれは、私の視線に気付き、途端にあたふたし出す。
ペットとしては可愛い妖精だが、飼うとなると少々お転婆なのがネックだと踏んだ最中、店は津波の攻撃を受けるのであった。

「駄目……、ツインファングバリアーでも、持たないッ……!」

「……って、なんで水竜が消えていないのよ! どういう事!?」

「シキが説明するのです! 幻術によって生み出されたそれは、実はリヴァイアサンより先に無くなった二世、つまり息子なのです!」

「そんな説明要らないわよ!」

「えー……、とりあえず実体あるんですから、倒してきて下さいよー」

「なんか突然投げたわね、この妖精――げふぅっ!!」

「貴様もですか! 貴様もワタシを妖精扱いするのですかぁぁ!!」

妖精の蹴りは重く、私をダウンさせ地に伏せさせるには十分な破壊力であった。これ程強いのなら、お前が戦えと言いたいほどである。
すっかりHPゲージが無くなった私は、そのまま全てを流れに任せることにした。すると、再び鮮やかな光が水竜を包み、消し飛ばしてしまうのである。

「……ねぇ、勇者アン」

「何、魔王マール」

「私達って……結構要らない子かもね……」

「ちょっとそう思ったから服を脱ぎます」

相変わらずマイペースなアン、そして最早付いていけないとサジを投げた秀様。その前に桃色づくしな少女が舞い降りてくる。
二野理子。御三家最後の護手であるそれは、秀様を見て一言……>>584と告げた。
584名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:32:39.79 ID:XokNlGL6P
結婚を前提に付き合ってください!…というように言われています!
585名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:41:25.36 ID:Fb1weuUc0
相変わらずマイペースなアン、そして最早付いていけないとサジを投げた秀様。その前に桃色づくしな少女が舞い降りてくる。
二野理子。御三家最後の護手であるそれは、秀様を見て一言……結婚を前提に付き合ってください!…というように言われています! と告げた。
しかも、彼女は彼の事を『お兄ちゃん』と呼んだ。その言葉を聞いた私とアンは、同時に彼女に言い捨てていた。

「「私達のパパをお兄ちゃんと呼ばないで!!」」

「……え? まさかの子持ち?」

「はは、ははは……、でも、お兄ちゃんという響きも割りと中々……」

「あー、ごめんなさい、流石に子持ちは無いです。無い無い。という訳で、さっきの話は無かった事にー……」

「何だと!? さっき宣言したじゃないか! 結婚を前提にって――げふぅぅ!!」

「ちょっと、パパは黙っててくれる!?」

「パパ、静かに」

「……突然こいつら、パパとか言いだして、折角の童貞脱出チャンスを、この親不孝者めぇ……!」

秀様が怨み節を聞かせる中、二野理子と名乗ったツーテールは、改めて子持ちは無理だと彼に宣言。
そして等々がくりと肩を落とす秀様を見てほっとする私。アンも同様のような表情をしていた。

「けど、一応コレを護りなさいとも言われてるし……、仕方ないよね。という訳で、二野理子です。特技は魔法少女!
 あ、言っておくけど、私に惚れないでね。子持ちは無理だから! あは、あははは!」

「何、このツインテ……」

ついそれをジト目となって見てしまう中、いつしか店内も元通りとなっている事に気付く。
そして、三枝さんが私の隣に並び立ち、まるで聞こえるように言葉を紡いだ。「あの子、普通じゃない」と。

何が普通じゃないのだろう。と、ドヤ顔魔法少女の顔を見てしまう。確かに魔力はズバ抜けて高い。下手をすると私以上である。
でも、恐らく彼女が言った事はそれだけではない。それが私は気になって仕方が無かった。

だが、更に普通じゃない事が起きた。それが転入生として鶏鳴中にやって来ては、私と同じクラスになり、
挙句に私と同じ部、演劇部に所属する事を決めた彼女は、今では演劇部の部室で>>586を行っている。
586名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:47:06.00 ID:XokNlGL6P
ハリボテに魔力を送り込みまるで本物のようにする
587名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:55:46.63 ID:Fb1weuUc0
だが、更に普通じゃない事が起きた。それが転入生として鶏鳴中にやって来ては、私と同じクラスになり、
挙句に私と同じ部、演劇部に所属する事を決めた彼女は、今では演劇部の部室でハリボテに魔力を送り込みまるで本物のようにしてしまう。
これで小道具の類は一切不要。下手をすれば村人Aだって不要だと彼女は言う。

「そして、そんな事が出来るこの私こそ、部長に相応しいと思うのよねっ!」

「ぶ、部長はこの私、天野マールよ!! そうよね、トルテ!」

「え? あ、ああ、そうだよ〜、うん、部長はマールっ!」

「はぁ? そんな事、この私が演劇部に所属した以上許さない。私が部長になるの!」

「いいえ、私よ! ぼっと出の貴女なんかに負けないわ!!」

「「ぐぬぬぬぬ……!!」」

それは勇者なんかよりも厄介で、面倒な魔法少女であった。一方、一応の部員であるその勇者、アンは今日もゲーム三昧。
学校に居る間はゲームしかしないと決めたそうだ。だが、家に帰れば秀様と一緒にゲームをしようと企む少女に変貌するようになる。
そして、もう一人、天野家の姉妹であり部員でもあるアリスは、トルテとずっとひそひそ話を続けるのだった――。

―― 二野理子。例の護手と呼ばれる世界の守護者。それが神々打倒を許す筈が無い。
トルテは動くのが遅いと、私を密かにお説教するのである。普段は陽気で適当でのんびりしている彼女だが、
こういう時は私以上に頭の回転も速く、言葉も鋭くなる。そんな彼女が、実はちょっとだけ苦手であった。

「し、仕方ないじゃない! だって……面白いんだもん、あまのけ」

「みなみけ風に言っても意味無いよ! とにかく、アレはかなり厄介だし……、例の計画、大幅な変更が必要だと――」

「そんな変更は必要ないのだわ! 私だって勇者の素質があるんだから。神すら打倒できる力を持つお姉ちゃんさえ、味方になってくれれば……!」

そうして、私はふと姉を見てしまう。彼女は私を避ける節が度々見受けられた。私が話しかけても、大概はゲームに夢中の為、
未だに仲間に引き入れるという説得が出来ないでいる。

「こうなれば……、アフロ大佐に>>588を頼むしかないのだわ」
588名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 00:59:36.88 ID:XokNlGL6P
超大規模ドッキリ
589名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 01:08:49.62 ID:Fb1weuUc0
「こうなれば……、アフロ大佐に超大規模ドッキリを頼むしかないのだわ」

「え〜、もう面倒くさいよ……というか、普通に演劇やりたいな……」

「トルテ、貴女が弱気になっちゃいけないの! ここが踏ん張り所なんだから!」

そうして、早速アフロ大佐に連絡をと、携帯からメールを打っている最中であった。
マールがどういう訳か二野理子を憤慨させたらしい。彼女は胸元を両腕で隠し、宣言する事になる。

「やっぱり決めた! 子持ちだからどうかって思ってたけど……イケメンだし、母親としてコキ使うのもありよね。
 だから、天野秀を私のモノにする! これは絶対の絶対よ!!」

「な、なぁんだってぇぇぇぇ!!!」

ついメールを打つ指が止まり、私が叫んでしまっていた。その最中、計画はまたまた頭の中からすっ飛んでいた。
二野理子に詰め寄る私。一瞬怯むも、食い下がる二野理子。そして、私に味方するマール、そしてアン。

それをトルテは冷めた目で見つめていた。ただ、彼女がその時、何を呟いたかは定かではない。

「言っておくけど、あれはパパよ、私達のお父さんよ!? 二十六歳でほぼ無職なのよ!?」

「そう、アレ、甲斐性なし」

「貴女達、散々ね。まぁ、私のお尻でメロメロになっちゃう変態さんも付け加えるのだわ」

「で、でも!? 顔はイケメンだし!? まだ更生の余地ありそうだし!? ……というか、神様に玉の輿ってのも……」

「「神様? 玉の輿?」」

「な、何でもないのよ、あは、あははははー!!」

そうして、演劇部にニ野理子という少女が加わり、演劇部の部員は七福ことみも含めて六人となる。
そろそろ本格的な活動が出来そうだと、マールは脚本家を捜す事になる。しかし、次第に演劇に浮かれる日々は失われる事になる。

七月の手前、プール開きも行われる頃。演劇部は一つの目標を掲げる事になるのだが、
大規模ドッキリ大作戦もあり、それが一種の災いを齎す羽目ともなるのだった――。


―――― つづきます
590名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 01:11:47.00 ID:XokNlGL6P
乙!
591名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 01:13:13.99 ID:36/kND5fP
乙ー
592名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 01:13:25.29 ID:Fb1weuUc0
という訳で、回を追う毎にしっちゃかめっちゃかな感じとなる中、時間も時間なので終わります。
次回からもうちょっと真面目に頑張ってみたい。でもきっと頑張れない。

そんな訳で、今日もお付き合いありがとうございましたー。
593名も無き被検体774号+:2013/04/29(月) 01:14:10.60 ID:Fb1weuUc0
【04/29 (月) 01:10時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

04/30 (火)
  22:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十二話『魔界のプリンセスと演劇部』

アフロ大佐回でもありますべっちょり。
594名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:07:32.31 ID:Mew6JN0Q0
うーんと、避難所の方にもちょっぴり書き込んだのですが、こっちでやっていいのかな?
規制されてる人が今日居られるようでしたら、スレ立てに行かないとなのですが、どうでしょう。
595名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:13:06.07 ID:91D+h53yP
相変わらずPじゃないと書けませんねえ
他の人はわかりませんが…
596名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:13:47.94 ID:txdM7aQY0
まだ始まってなかったか。とりあえずここは満月氏に任せますよ。
自分は規制されてないみたいですが
597名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:18:03.07 ID:Mew6JN0Q0
未だに規制な人も多そうですし、テストも兼ねてあっちにスレ立ててみます。
もう暫くお待ち下さいな。
598名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:21:11.70 ID:Mew6JN0Q0
って、多い……訳でもないっか。とほほ。そんな訳でとりあえず今日はこっちで〜

むりむり言わないむりやり小説ゲーム 
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1367327976/
599名も無き被検体774号+:2013/04/30(火) 22:23:08.63 ID:91D+h53yP
あれ、その板創作発表板じゃないですか?
600名も無き被検体774号+
【05/01 (水) 01:21時点でのタイムスケジュール】 : ttp://kmix.dabits.net/ts/

05/03 (金)
  21:00〜/ ◆MOON69mNOA氏 - 勇者なムスメ 第十三話『女神さんの追憶』