つらつらしたい

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1代行 ◆BU2rdf3Y.KPd
◆LPys9vWKYo 2012/11/05(月) 07:06:23.41 ID:v29lu1bx0

人目につくところで言葉をつらつら綴りたい。
のんびり書いていこうと思う。
2名も無き被検体774号+:2012/11/05(月) 10:45:51.05 ID:ha3KnxYz0
(`・ω・´)拝見スル
3名も無き被検体774号+:2012/11/05(月) 10:53:27.44 ID:5O/s8iiiO
いま、どっかでなんもできひんでぶらぶらしてる人らは社会との繋がり欲しいんやろなー
俺もやけど
41 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 14:31:11.71 ID:v29lu1bx0
>>1
代行ありがとうございます!

そんなわけでスレ主です。
まずスレに関して、自分のなかでの決まりごとを書く。

と思ったら本文長すぎとか言われてワロロン……。
51 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 14:38:37.79 ID:v29lu1bx0
こつこつ頑張る。決まりごと、フォーミー。

・たくさんつらつらして、文字と遊んで慣れて仲良くなること
・マイペースでいること
・分かりやすく、あまり考え過ぎずにつらつらすること
・いつも元気でいること

ということで早速つらつらする。
61 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 14:43:47.07 ID:v29lu1bx0
実家の玄関を開ける前から、掃除機の音がエレベータホールにまで聞こえていた。
扉を開けると案の定その音が大きくなる。
各部屋の扉は全て開け放たれていて、玄関から一直線上、最奥のリビングで母が掃除機を運転している。

扉を閉めたときの振動で来訪者に気付いたのか、ちらりとこちらを見た母が掃除機を止めて「おかえり」と言った。
71 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 14:52:51.98 ID:v29lu1bx0
「ただいま」と言い終わる前に母が言葉を続けた。「椿、豚汁食べたの?」
私は鞄を置きながら、マフラーをほどきながら、コートを脱ぎながら。母の顔も見ずに返事する。

「うん、今朝、ちょっとだけ戻ってきてたから」
「そうだったの!椿のぶん残してたと思ったんだけど、起きたらお鍋空っぽだったから……」
「わしが食べた。美味しかった」
「そう、なら良いの。また作るね」
81 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 15:00:09.79 ID:v29lu1bx0
家族仲は悪くなく、優良でもない。
それでも昔に比べたらだいぶ親孝行出来ていると思う。
ちゃんと実家に住んでいる時点で母は喜んでるだろうとすら思う。

成人した娘が実家に住んでいる、ということを非難する人は多い。
私もそうだった。親に甘えられるなんて、あなた幸せね、と心の中だけで毒づいていた。

世間にはいろいろな形の親孝行があると知ったのはつい最近だ。
91 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 15:10:51.19 ID:v29lu1bx0
「母さん、スマホ使えてる?」
リビングに出てようやく母の方へ顔を向けた。
齢五十を超えてスマホに機種変した母は、不安げに唸りながら「いつ送ったやつ?」と聞く。

それをきっかけに、しばらく二人でスマホをいじった。
こういうことも私が実家に住んでいるから出来ることで、だからやはりこれは親孝行だと自分に言う。
101 ◆LPys9vWKYo :2012/11/05(月) 15:16:26.85 ID:v29lu1bx0
ちょっとお出掛けしてくる。
と言うか本文長過ぎて書き込めんから2ちゃん逃避してくる。
こつこついこう。こつこつ。
11名も無き被検体774号+:2012/11/05(月) 15:31:03.40 ID:7PIayW540
覗きにきたw
12名も無き被検体774号+:2012/11/06(火) 03:04:22.05 ID:+ShQwHb60
いいぞがんばれ
131 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 15:58:39.55 ID:cSNZc6R80
母のスマホには、早くも彼女の思い出が詰め込まれていて、多くの番号が登録されていた。
私のスマホにはネットの海で攫った絵画の画像と、スクロール要らずのアドレス帳しか無い。

それでも、絵文字の出し方や画像の保存の仕方を教えると、母は子供のように、素直に感嘆の声をあげる。
「やっぱり若いって良いわねえ」
スマホを繁々と眺めながら、母がそう言った。
141 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:04:52.60 ID:cSNZc6R80
お、書き込めた。やったねたえちゃん!
つらつらの仕方が分からないので試行錯誤だ。

これからは話を区分していくだろうから、サブタイトル的なものを名前欄に入れることにする。
独りごちるときは名前を1にしておく。
レスさんくすこ。
15名も無き被検体774号+:2012/11/06(火) 16:08:32.84 ID:0g43O5FZ0
忍者のレベルが上がるまでは我慢だ。あとPCから書き込む場合は専ブラが捗るぞ。
16母と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:11:20.80 ID:cSNZc6R80
「椿、寝てないでしょ?ごめんね付き合わせて」
スマホの画面を撫でながら母が言う。
絵画を無料で何枚でも保存出来るよ、と教えてから、母はリャドの絵を何枚も見比べている。
彼女もネットの海にはまったことを確認して、私は「また出掛けてくるから寝ない」と答えた。
17名も無き被検体774号+:2012/11/06(火) 16:12:37.91 ID:V7LkNFTM0
俺も専ブラに変えたが忍法帳がオワタ
まだうまく使いこなせない新参でした
18母と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:21:19.20 ID:cSNZc6R80
また出掛けるの?と母が訊いたと同時に、私のスマホが軽やかな音で短く鳴いた。
これは、内蔵されてる着信音のなかで私が一番好きな音で、ある一人からの着信を知らせるものに設定している。
うん、と着信音より短く答えた。自分のスマホを手に持って椅子から立ち上がる。

「体壊さないようにね、また豚汁作っとくから」
コートを羽織った私の後ろで、母がリビングから声を掛けた。
191 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:31:33.10 ID:cSNZc6R80
母と私はこれで終わっておく。尻切れドラゴンフライとは俺のことさ。
最初だし、まあ良いか。そのうち起承転結とか則り始めてたら小説家でも目指そう。

レス嬉しすぎて全レスしそうな勢いだがわきまえてみる。しかしさんくす!
でも新しいPC買うまでは、こんな大きい専ブラ入んないよぉ……。(容量的な意味で)
201 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:36:07.91 ID:cSNZc6R80
あとで突っ込まれたときに言おうかなと思っていたが、このスレの特徴を幾つか書いておく。

・時系列はめちゃくちゃである
・実話、妄想もめちゃくちゃに入り混じっている
・なので一人称はころころ変わると思われる
・書き込む時間帯はおやつ時が多いと思われる
・レスを貰えるのは嬉しい

ということでつらつらしていく。
21女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:43:04.39 ID:cSNZc6R80
心地よい重みと温もりを感じながら微睡んでいると、遠くであの音が聞こえた。

この家に来たときには分からなかったが、あの音の少しあとにはいつも、扉が開く音がする。
つまりあの音は来訪者によるものなのだろう。
私の上で寝ていた兄弟を起こさないように、寝床からそろりと抜ける。
冷えた廊下に足をつけると、このまま進むか寝床に戻るか、少しばかり考えてしまった。
22女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 16:46:52.42 ID:cSNZc6R80
腹が減った。
廊下から玄関までの短い距離で、覚醒し切っていない頭でそう思った。
ちょうど良い、今から来るであろう女に飯を拵えて貰おう。そうも思った。

あの音が近付いてきて、続いて扉の向こうで金属の冷たい音がした。
そして扉を開けた女と目が合って、私は丁寧に「腹が減った」と言った。
23女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 18:38:33.17 ID:cSNZc6R80
「おお」
女が短く返事した。この女は口数が少なく、なにか喋ったと思っても、文字数が少ない。
「なんやお前、可愛いな」
珍しく饒舌な女が言う。しかし言葉が通じていないことが分かり、私は少し落胆した。腹が減っていく。

靴を脱いで腰を屈めた女が私の頭に手を置いた。そのまま指先で頭を掻かれる。
依然腹は減るが、その刺激は好きだ。目を細めて身を任せておいた。
24女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 19:57:51.02 ID:cSNZc6R80
しかし女はすぐに私から離れ、いつも女が入る部屋へと向かって行った。
私は体を玄関の方へ向けたまま、首を動かして目だけで女を追う。
女も、わざわざ出迎えていた私を気にしているらしかった。
分厚い上着を脱いで姿形の細くなった女が再び私の頭を掻く。私は目を細める。

しばらくそうしていたが、女が台所へと歩き出した。
もしかしたら私の飯を用意してくれるかも知れない。そう思ったところで、落胆しない為にと期待を打ち消した。
25女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 20:10:54.12 ID:cSNZc6R80
玄関に居ると、より体が冷えた。しかし瞼と四肢と頭が重く、眠気が後を引いている。動くのも億劫だ。
飯時までここで寝ておこうか。

そう思ったときに、兄弟が台所を歩く音がした。とことこ、と。小気味よく響いている。
続いて彼が「ご飯」と言った。彼は飯時だけは甘えた声になる。
幼い彼だから出来ることで、私には到底真似できない。想像しただけで寒さが増した。

「ちゃすけ」

台所から女が私を呼んだ。ゆっくり振り向くと、女も私を見ている。女と目が合った。
26女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 20:24:22.58 ID:cSNZc6R80
「ちゃすけ、おいで」

睡魔に呑まれている私には、女の要望に応えられるかも分からなかった。
しかし空腹も無視出来ない。
前へ向き直って無理矢理に瞬きをする。掌に力を入れたり抜いたりもする。僅かだが眠気が引いた。
文字通り重たい腰を上げ、台所へと向かった。女が皿に飯を盛っている。兄弟は既に食べ始めていた。

兄弟の隣に腰を下ろした。彼は食事に夢中だ。
私も食べようと鼻を近付けたところで、本日二度目の落胆を味わうこととなる。
あろうことか、私の好きではない飯が用意されていた。しかもここ数日はこればかり食わされている。
無意識に「またか」と呟いていた。
27女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 20:32:30.96 ID:cSNZc6R80
「食わんのか」

女の声で我に帰った。
どれだけ長いあいだ落胆していたのか、いつの間にか兄弟は飯を平らげ、寝床へと戻っている。
私は出来るだけ申し訳ない顔をしながら「すまん」とだけ言った。

「美味しくなさそうだしね。これ」

女が私の頭を優しく撫でる。その気持ち良さと、言葉が通じた安堵から、私は目を細めた。
28女と私  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 20:50:19.00 ID:cSNZc6R80
女が椅子に腰掛けたので、私も後を追い隣に座った。
眠たい目で女を見上げると、女も私を見ていた。私は思い出したように「おかえり」と呟く。

しかし女は返事せず、無表情のまま私の脇に手を差しこみ、私を持ち上げた。
無抵抗でいるとそのまま尻を抱えられ、女の膝の上に載せられる。
多少居心地が悪いのを自分で調整していると、寝床よりも女の膝の方が暖かいことに気が付いた。

しかしこのことを知っているのは猫である私だけだろう。
人間が人間を膝に載せているところを、私は見たことが無い。少しばかり人間に同情した。

女が私の体に手を置く。冷たい外気から守られているように、女に触れている部分だけが暖かい。
心地よい重みと温もりを感じながら、私は微睡みを堪能することにした。
291 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 20:54:54.97 ID:cSNZc6R80
女と私、了。
これからはつらつらの終わりに「了」を差し込もう。

激しく板違いな気がしないでもないがのんびりつらつらする。
マイペースであれ。
今夜はもう少しつらつらする。
30名も無き被検体774号+:2012/11/06(火) 20:56:07.62 ID:CMKdv3oz0
期待。
31connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:00:19.88 ID:cSNZc6R80
人と繋がっている、と思ったことが無い。

手を繋いでみる。人に触れてみる。普段人に見せないところを、普段人が見せないところと繋いでみる。
携帯電話には誰かに繋がる番号が多々ある。メールを送れば返事がくる。インターネットは、まあ多少難はあるが繋がっている。

繋がりたいと思ったことも無い。
それは私が、自覚はなくとも誰かと繋がっているからかも知れない。
32connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:03:56.74 ID:cSNZc6R80
いろいろなことをしてみた。

大人数での会話に交じってみたこともある。終始誰もが笑っていた気がする。
一対一での会話で相手が泣き出して、その後に笑顔で「ありがとう」と言われたこともある。私も「何がよ」と笑った。

手を繋いでみる。人に触れてみる。普段人に見せないところを、普段人が見せないところと繋いでみる。
携帯電話には誰かに繋がる番号が多々ある。メールを送れば返事がくる。インターネットは、まあ多少難はあるが繋がっている。

しかし、人と繋がっている、と思ったことは無かった。
331 ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:12:38.63 ID:cSNZc6R80
厨二っぽい書き出しにしたら途端に筆が重たい、改めキーボードが硬い。
ちょっとハヴァブレイクしよう。
レスさんくすこ!
34connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:38:24.86 ID:cSNZc6R80
家に帰ると彼女がご飯を作っていた。
おかえりと言われ、半ば機械的にただいまと返す。彼女は笑顔だった。
「もうちょっとでご飯出来るよ」
薄い湯気の向こうで彼女が言う。私も「今日めっちゃ腹減ってるんよね」と言う。二人とも笑顔だ。

食卓に並ぶのは、至って質素な一汁一菜だ。しかし私に不満は無い。
彼女のほうはいつも「おかずこれだけだけど」と淋しそうに笑っている。
35名も無き被検体774号+:2012/11/06(火) 21:46:37.76 ID:SjvF+1B+0
つーらつら
36connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:46:47.27 ID:cSNZc6R80
食事を済ませると、彼女はゲームを始めた。
最初の頃は彼女から「見たいテレビある?」という断りがあったが、毎回私が「ないよ」と言うので、一カ月後には食事の後片付けが終わるとゲームの流れが定着していた。

画面に収まり切らないほどの大きいモンスターを攻撃している彼女を後ろから見る。
彼女はモンスターの動作に逐一反応して、興奮したり動揺したり、喜んだりしている。私もそれに合わせる。
巨大なモンスターを三体捕獲すると、彼女は満足したのか、ゲームの電源を落とした。途端に夜の静けさが強調された。
37connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 21:56:13.02 ID:cSNZc6R80
寝支度を整え、彼女と同じ布団に入る。
風呂上がりの彼女は体温が高く、シャンプーか何かの香りが高く上った。
「おやすみ」と言いながら、彼女が私に擦り寄る。私も同じ言葉で返事をし、彼女の背中に腕を回した。



「柊」

うとうとしているところに、私を呼ぶ彼女の声が聞こえた。囁いてるような、小さく掠れた声だった。
眠り掛けている私は、口を開けずに喉だけで返事をする。彼女は掠れた声で「好きだよ」と呟いた。
38connector  ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 22:55:34.21 ID:cSNZc6R80
既に覚醒していない頭で、彼女の言葉を反芻した。
彼女は好きだと言った。私のことを好きだと言っているのだろう。そしていま、恐らく返事を待っている。
「……ん」
そこから言葉を続けようとしたが、私は不意に眠りに落ちた。
その間際、彼女の細い腕が私を強く抱き締めた気がした。
39connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/06(火) 23:40:47.16 ID:cSNZc6R80
髪を切った。

考え事をしながら髪をいじっていると痛んだ毛先が憎らしくなり、ちょうど目の前のペン立てに鋏が居たので髪を切った。
手櫛で適当に毛束を取って、適当なところで鋏を入れる。
ヂョキ、という鈍い音と共に髪の毛が分裂する。指の隙間から短い毛がはらりと落ちた。

「あ、髪切ってる」
帰宅した恋人が私を見るなりそう言った。「さっぱりしたでしょ?」私はさも嬉しそうに、新しい髪形が気に入ってるかのように言う。
恋人もさも楽しそうに、新しい髪形が可愛いとでもいうように、私の頭を撫で回した。
40connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 00:54:15.38 ID:SksU85B10
自分で髪を切り落としてから事の重大さに気付き、帽子を被って美容院へ行った。
ただ衝動に任せただけの、なんの面白みも芸術性も美的センスも感じられない私のアシンメトリー頭を見て、美容師は苦笑していた。

恋人と同棲を始めてから、度々衝動的になる。
料理中、出来上がったばかりの麻婆春雨をシンクに皿ごとぶちまけたのが最初だった。
もみくちゃになりながら湯気を立てている春雨や野菜を見ているうちに我に帰り、なんとか恋人が帰ってくるまでに片付けることが出来た。

その日の食事はいつもより質素だった。
「おかずこれだけなんだけど」と言うと、恋人は「今日はそんな腹減ってへんから、大丈夫」と笑っていた。
41名も無き被検体774号+:2012/11/07(水) 00:57:27.30 ID:oCo+TUWi0
私の中で>>1はつらつらさんとなっている
支援
42connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 01:04:27.70 ID:SksU85B10
髪が短くなって、シャンプーやリンスをすすぐ時間も短くなった。そのお陰でいつもより長く湯船に浸かれた。
浴槽にもたれながら、考え事をしていた。
私は、ときどき全てぶち壊したくなる。

料理が苦手な私を、恋人は優しく受け入れてくれる。
勝手にゲームを始めても気にしていない。
新しい服を着ているとそれに気付き、新しい髪形にも気付いてくれる。
たまに私がいつもより高い鞄を買っても、お金のことには口出ししてこない。
二人で買いに行ったチープな観葉植物を勝手に剪伐して枯らしてしまっても、怒らなかった。

ちなみに剪伐は衝動的にしたわけではなかったが、出来上がったそれはなんの面白みも芸術性も美的センスも孕んでいなかった。
43connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 01:14:06.03 ID:SksU85B10
日に日に枯れていく観葉植物を見て、――これは衝動的にだが――燃やしてしまおうかと思った。
いっそ燃やしてあげたかった。
もう一度青々と繁って欲しくて水を遣った。その葉に艶は戻らない。新たな芽も出ない。
結局燃やすことはなかったが、その葉も茎も灰色になったとき、新聞紙に包んで燃えるごみに出した。
そうしてそれは燃えてしまった。燃やしてしまった。

浴室の靄が頭の中にまで蔓延し始めているようだった。
浴槽の縁に手を掛けて、ふらつく体を支えながら立ち上がる。水音が立たないほどに、私はゆっくりと湯船から出た。
44connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 01:20:59.91 ID:SksU85B10
「のぼせたー」
舌足らず気味の、甘えた声で恋人に言う。彼は柔らかく笑って、冷蔵庫から水を出してくれた。

二人で布団に入る頃には、私の爪先は冷え切っていた。
先週買ったフリース地のルームソックスを履いたが、爪先の感覚は戻らない。
そのままおやすみを交わして、恋人がうとうとし出すのを待った。

彼の呼吸のリズムが長く、緩やかになってから、彼を呼んでみる。彼が眠そうな声で「んー?」と言う。
私は小さく、しかし彼に聞こえるように、「好きだよ」と囁いた。
45connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 01:45:24.95 ID:SksU85B10
恋人も私も、好きだなどと言うことは滅多にない。
だからなのか、二日連続で好きだと言う私に、恋人は昨日のように寝落ちしなかった。
「好きやで、桜」
眠たい声の恋人がそう言って、弱々しく私を抱き寄せた。

何故か。
なんの根拠もなく、勘といえる程の確信もなく、卑屈な私の本能が、彼の返答は機械的だと思った。
46名も無き被検体774号+:2012/11/07(水) 01:51:48.42 ID:BTvPXCYN0
>>1のプロフィールが凄く気になる今日この頃
47connector ―seaside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 01:59:00.10 ID:SksU85B10
connector ―seaside―


海が見たいと彼女が言うので、十一月の半ば、人気がなく足跡すらついてない砂浜に彼女と並んで腰を下ろした。
マフラーをぐるぐるに巻いている彼女は、足元だけは靴を脱いで、素足を晒している。
「寒くないん?」と訊くと「爪先の感覚がない」と震える声で返された。私は素直に笑った。

まだ夕方の四時だったが、日が落ち掛けていた。
恐らく天気は曇りで、街中に居ても少し肌寒いのだろう。
太陽をぼかすように薄雲が広がり、それでも強烈な熱と光のお陰か、丸い輪郭が確認できた。
48connector ―seaside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 07:27:00.04 ID:SksU85B10
普段明るい彼女は、このときは静かだった。そして普段は明るい私も何も言わなかった。
ただただ柔らかい朱色の太陽に照らされ、彼方からこちらに押し寄せる波が特攻機のように溶けていくのを見ていた。

太陽が半分以上海に落ちて、世界の朱色が濃くなった。
ふと振り返ると背後が夜になっている。時計を見ると五時を少し過ぎたところだった。

「柊」

彼女の震える声がした。その声が余りに頼りなく、所在なさげで、私は危うく聞き逃しそうだった。
「呼んだ?」と確認すると、彼女はその声のまま「呼んだ」と言った。
49connector ―seaside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 07:37:12.26 ID:SksU85B10
「柊、好きだよ」

間を置かず、彼女に告白された。
沈み掛けの太陽が、彼女を刺すように雲間から顔を出した。

最近彼女に好きだと言われることが増えた。言われ慣れていない私は、正直どう対応すれば良いのか分かっていない。
不安がっている女に好きかどうか確認されることは今までにもあった。
彼女の告白もそれと同じなのだろうか。不安ゆえに、好きだと言い、好きだと言われたいのだろうか。

そんなことを考えて、彼女の告白を無視していることに気が付いたのは太陽が沈んでからだった。
先程とは一転して藍色に染まった空の下で、私は取り急ぎ「うん」と答えた。
50connector ―seaside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 07:50:50.74 ID:SksU85B10
「俺も、す」
言い掛けたところで私の指先に彼女の指が絡みついて、その肌の冷たさに思わず言葉が途切れた。
私の指までがじんじんと冷えていく。少しだけ身震いした。
「返事はいいの」
彼女が小さくそう言った。声は震えていなかった。
「いいの。挨拶みたいにしなくていいから。挨拶じゃないから」
ぽつぽつと言葉を落としていく彼女は、遠い目で海の方を見ていた。

彼女の言葉の意図が分からず、彼女の意思も汲み取れず、私はいよいよ困ってしまった。
51名も無き被検体774号+:2012/11/07(水) 08:01:43.89 ID:eLb+EurC0
支援
52connector ―seaside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 08:05:52.93 ID:SksU85B10
私が困っていることに気付いたのか、「なにも言わなくていいよ」と彼女が言った。
なのでなにも言わないことにした。
ただ彼女と手を繋いで、お互いなにも言わないで夜の海辺に身を置いた。

彼女の手は尚冷たく、私の指先は尚冷えていく。凍ったように硬く動かなかった。
そうして冷気が静かに腕を這って、心臓あたりまで侵食されている気になった。心なしか、吐く息が白くなった気もする。

ふと。

彼女と繋がっている、と思った。
53connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 08:24:07.24 ID:SksU85B10
connector ―sheside―


隣に座る恋人が本当になにも言わなくなったので、私は彼が寝ているのではと不安になった。
横目で恋人を見遣ると、先程までの私と同じように、ただただ海を見ていた。

最初は温かかった恋人の手も、すっかり冷たくなってしまった。私が熱を奪い尽くしたのだろう。
表情が硬いのは、寒さの所為か、はたまた。
いつもたたえている柔らかい笑みの面影はなく、無表情とも言い難い。注視すると、唇が僅かに震えていた。
541 ◆LPys9vWKYo :2012/11/07(水) 08:34:08.58 ID:SksU85B10
ハヴァブレイク。
とりあえず分かったのは、話がだらだらんごすると大変。つらつらんごしたい。
レス&支援さんくすこ!
これ書き終わったら1改めつらつらを名乗ろうかな。
551 ◆LPys9vWKYo :2012/11/08(木) 19:12:20.44 ID:zq9eWUmzI
おし、まだスレ残ってる!
とりあえずあげておく。
56名も無き被検体774号+:2012/11/08(木) 19:32:02.42 ID:MfN26kM90
>>55
>>1のスペック
571 ◆LPys9vWKYo :2012/11/09(金) 16:08:28.14 ID:ctTG+MhJI
>>56
スペックコンプレックスなんだがつらつら出来そうにないし、スペッコ書く

女 二十三歳 フリーター
非処女で喫煙者っていうよろしくない感じ
つらつらしてると煙草の本数増えるから気分は芥川。
実家で猫飼ってる。可愛いがうpはしない。
58名も無き被検体774号+:2012/11/09(金) 16:29:26.91 ID:zGDZFxQj0
つらら〜
591 ◆LPys9vWKYo :2012/11/09(金) 17:14:14.19 ID:ctTG+MhJI
つららーん。
折角なので理想のスペックも書く。

男、院生、非童貞、喫煙者
背は高めでやや筋肉質とか至高。ピアニストだと尚よし。
そんな男になりたひ。

妄想が捗る。次のつらつらはこれにしよう。
60名も無き被検体774号+:2012/11/09(金) 19:38:22.53 ID:ok2VlqIb0
せっかくなので胸のサイズもよろ
611 ◆LPys9vWKYo :2012/11/11(日) 01:28:16.58 ID:taiUpnhX0
>>60
だが断る。

何故かは察してくれ。
ということでちょびっとつらつらする。
621 ◆LPys9vWKYo :2012/11/11(日) 01:39:14.16 ID:taiUpnhX0
「さむいね」

鼻を啜りながら言うと、恋人も「そやな」と小さく返してくれた。
穏やかな風にも消されそうなほど頼りないその声を、海の方を見ていた私は危うく聞き逃すところだった。
一拍遅れて彼の声をキャッチする。彼を見遣ると、視線に気付いた彼も私を見た。ゆっくりと目が合って、どちらかともなく口角を上げる。

「帰ろうか」

そう言って立ち上がる。彼の指はかちかちに凍って動かないので、二人の指先はなかなかほどけなかった。
631 ◆LPys9vWKYo :2012/11/11(日) 01:41:57.30 ID:taiUpnhX0
あ、だめだ、ねむい。むしろ寝てる。
誤字脱字が悲しいのでまた今度つらつらする。くそう。
6453 :connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/11(日) 12:50:49.11 ID:taiUpnhXI
ざくざくと音を立てながら、砂浜に一歩ずつ足を埋めて進んだ。ゆっくりと進んだ。
恋人の手を取って指先を絡めようとする。しかし彼の指は未だ凍っていて、二人の手はなかなか繋がらなかった。

「手、繋がらんね」

指をぎこちなく動かしながら、おどけた口調で言った。恋人は苦笑いして「指先の感覚がない」と呟く。
「でも繋がってる」
続けて呟く彼の唇は震えている。「桜の所為で指が冷たいまんまやわ。さむい」

お互いに指先をこすり合わせて、血液を巡らす努力をする。
なかなか繋がらない、もどかしい掌に、それでも次第に熱が戻り始めた。
65connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo :2012/11/13(火) 19:12:09.68 ID:nSj38nQV0
やっと二人の手が繋がったのは、海辺を後にして、波の音も聞こえなくなってからだった。
駅までの短い距離、短い時間を惜しむように、指に力を入れたりもした。
多少冷たいものの湿り気を帯びた掌に二人で笑った。

「桜さん、手汗が凄いですよ」
「うちじゃないし!柊やろ!」
「こんな冷たいのに汗なんかかかんわ」
しかし親指で彼の掌をさすってみると、やはりしっとりとしていた。

氷が溶けたグラスみたいだ、と思った。
キンと冷たく、霜が垂れ始めたそれを想像する。
恋人が「くすぐったい」と言っても、私は彼の掌をさすり続けた。
66connector ―sheside― ◆LPys9vWKYo
帰りの電車の中でも、二人にしては珍しく手を繋いだままだった。
切符を買う際に私からほどいた指先は、改札をくぐるといつの間にか元の鞘に――彼の掌に収まっていた。

恋人の肩にもたれてうとうととしていた。

手を繋いでいても、触れ合っていても、言葉を交わしても。
連絡をすれば返事がきても、朝起きれば隣で彼が寝ていても。
比喩的でも、或いはそうでなくても、私の中に恋人がいても。

私と恋人は繋がっていない。
繋がっていると思える程、私は彼を知らないし彼もまた私を知らない。
彼は、私が髪を切った理由すら知らないのだ。
なぜ彼が私の行動を気にしないのか、その理由だって私は知らない。