1 :
名も無き被検体774号+:
2 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 09:46:04.79 ID:73chsone0
3 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 11:53:21.81 ID:WkApe1dv0
4 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 16:11:14.06 ID:OU/z+jqN0
夢か、現実か。
ぼやける視界の端に、小さな頭。
聞こえてくる歌声。
だんだんと意識がはっきりしてくる。
「えっちゃん」
そう呼ぶと、小さな頭の主は振り返った。
少しだけ、ばつが悪そうな顔だった。
「起こしちゃった?ごめんね?」
「ううん。ええよ、全然」
おいで、という言葉を言う変わりに、手を伸ばす。
でも彼女には届かない。
伸ばして届くほど近くに、彼女は居なかった。
どんなに追いかけても、腕の中に居ても、いつも不安で。
たまに追いかけるのが辛くなるほどで。
5 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 16:12:33.58 ID:OU/z+jqN0
「どうしたん?」
いつも心の中で叫んでる。
置いていかないで。側にいて。
手を伸ばしたまま、何も言わない私の元へ彼女が近づいてくる。
ぎし、とベッドが音を立てた。
「あっこちゃん?」
簡単に私の手を掴んで、もう片方の手で私の頬を触る。
やさしい顔、でも少しだけ困った顔。
心臓が、痛い。
声が出ない。
いや、出ないんじゃない。何を言えばいいのかわからないのだ。
少しだけ強引に彼女の手を引っ張る。
あっ、と小さな声が聞こえた。
腕の中にすっぽりと納まってしまう華奢な身体。
それでもやっぱり不安で。
6 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 16:13:36.32 ID:OU/z+jqN0
「・・・なんか怖い夢でも見たん?」
違う。
首を横に振る。
背中に回す手に力を入れる。
「・・・大丈夫、私がおるよ、大丈夫やで。だからそんな泣きそうな顔しんといて?」
あぁ。彼女はこういう時、勘が鋭い。
「あっこちゃんが悲しいと私も悲しいけん、な?」
知らぬ間に背中へ回された彼女の手が、やさしくとんとん、とリズムを刻む。
そのリズムはとても心地よくて、私の勝手な被害妄想を飛ばしていく。
7 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 16:14:35.24 ID:OU/z+jqN0
本当はわかってる。
彼女が近くにいること。
手の届く位置にいること。
私が一番に触れられること。
それでも不安になってしまうのは、彼女にこうして欲しいからだろう。
ずるい人間なのだ、私は。
わかってるはずなのに、確かめたくて、不安になるのだ。
勘のいい彼女はもうわかってるかもしれない。
それでも、こうして何度も私を救ってくれる。
「ごめん、ありがとう」
「ごめんはいらんよ?」
「うん、ごめん」
「だから、ごめんはいらんって」
そう言って、えっちゃんが笑ったから、私も笑った。
8 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 16:15:25.58 ID:OU/z+jqN0
これは現実。
とても大切な現実。
一人じゃない、いつだって一緒に居てくれる彼女は現実で。
夢で置いていかれそうになっても、現実では彼女は立ち止まって待ってくれていて。
待ってるだけじゃなく、こうして抱きしめてくれて。
だから、私は夢でも追い続ける。
強く、やさしい彼女が待っていてくれるから。
9 :
名も無き被検体774号+:2011/03/21(月) 17:00:28.48 ID:ItNp33HXO
つまらんスレ立てやがって
立てるのは俺のチンコだけにしろ!
10 :
名も無き被検体774号+:2011/03/22(火) 23:26:05.28 ID:frKvD3Wv0
11 :
名も無き被検体774号+:2011/03/24(木) 05:26:15.80 ID:7cIrHF5i0
12 :
名も無き被検体774号+:2011/03/24(木) 07:01:41.77 ID:uZ1G4hW5O
たな
14 :
名も無き被検体774号+:2011/03/27(日) 00:54:18.58 ID:uGolCzSW0
15 :
名も無き被検体774号+:
「えっちゃん、ちょっとこれ着けてみて」
と、あっこちゃんがある日、見せてくれた指輪は
正直苦手な感じのものだった。
私だってつけたいけどもっと質素がいい。
でも、なんで急にあっこちゃんは
指輪を見せて「着けて」と言ってるんだろ?
謎だ。だから、訊いてみた。
「何で?」って。すると、あっこちゃんはこういった。
「ん? いいでしょ。さっき、近くのお店で見て思わず買っちゃった。
で、どうせならえっちゃんのも買おうかな、と思って。」
「久美子は?」
「別にいいって。ああ見えてあいつ先輩だから。
欲しいものは自分で買ってもらおう。」
「なんで私だけなの?」と訊くとあっこちゃんは恥ずかしそうに
「だって、寂しかったの。急にえっちゃんが遠くに行きそうで。
いつかは絶対そうなるかもだけど、今はなんか嫌で。
あと、知りあって私たち10年じゃん?その記念で。」
成程、なんだか納得いく。
単純と思われてしまうかもしれないけれども。
でもなあ…
「あっこちゃん。」
「ん?」
「あっこちゃんは、馬鹿だなあ。」
「馬鹿とは…」怒って言いかけてるあっこちゃんの身体を私は抱きしめて
「友達じゃん。だから、離れないよ。ずっと一緒だもん。
指輪、ありがとう。大切に使うから。」というと
「うん…」と恥ずかしそうに言った。
まだ春も始まりかけた3月のある日のこと。
私たちは、「絆」をさらに強くしたんだ。