ぬるぽ
ギィヤアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
BIO HAZARD × ROZEN MAIDEN
朝が来た。
真紅は眠りから覚めた。今日もいつもと変わらない平穏な朝が訪れた。
いつもの様に朝食をとり、くんくんのDVDを観賞して平和な一日を過ごす…
筈だった。
真紅「ここは…何処?」
真紅の居た場所はいつもの寝室では無かった。周囲にゴミの様なガラクタが渦高く積まれた薄暗い奇妙な部屋に居た。
ゴミの山からは時折きしめく様な物音がしており、部屋に充満している腐卵臭が真紅の鼻をついた。
ふと見ると、翠星石の鞄も近くにあった。ひとまず真紅は鞄を叩いて起こす事にした。
真紅「翠星石。起きて頂戴」
翠「何ですか?もう少し眠らせやが…えええええ!?」
翠星石は通常の二倍程の大きさに目を見開き叫んだ。その直後、暗闇に目がまだ慣れていない真紅には見えなかったが、
部屋にはまだ鞄がいくつも置いてあり、それらの中のドール達が次々に目を覚まし始めた。
蒼星石「…ここは何処だい?」
金糸雀「うっさいわねー…ええっ!?」
雛苺「うにゅーが食べたいのー!」
水銀燈「何であんたがそこに…ハッ!?」
どうやら此処に計6体のドールが揃っているらしい。しかし、何故こんな所に居るのか、また何故ドールが集まっているのかは全く見当が付かなかった。
?「…皆さんお目覚めの様ですね」
真紅「あなたは…ラプラスの魔!」
?「それは人違いというものです、真紅殿。 私は『カワイソな兎』と申します。 あ、兎で結構です」
突如現れたカワイソな兎と名乗った、兎に酷似した外観を持つ人物は、ラプラスの魔に似て非なる者だった。
体色は薄青色で、白いハットを被っており、鋭い目は目薬をさしていないせいか酷く充血しており、真紅の服よりも遙かに赤かった。
翠「あんたが此処に連れて来やがったですか?」
兎「御名答、翠星石殿。そう、私があなた達を此処、『bのフィールド』に連れて参りました」
水「bのフィールド!? あんた何を言っているの?」
兎「クク、知りたいですか?ま、私もあなた方に教えなければ埒が開きませんしね」
ドール達は兎の口から発せられる第一声を固唾を飲んで待ち構えた。
兎「bのフィールド…それは私が造ったnのフィールドとは全く異なる異次元空間…」
兎「あなた方はこの空間内では特殊能力を使う事は出来ません」
真紅「な…何ですって!?」
雛「うにゅー、蔓轍が使えないのー!」
兎の言っている事は本当だった。ドール達は一切の特殊能力の使用を制限させられていたのだ。
兎「皆さん、驚くのはまだ早いですよ。この空間では生きる屍…ゾンビも存在します」
翠「な? ゾ、ゾンビ? 何ですかそれ?」
兎「それは、あなた方に挑んで貰う新アリスゲームには欠かせない存在でしてね…」
一同「新アリスゲーム!?」
兎「そう!新アリスゲーム! 私の用意した最高のゲームだよ!」
刹那、場の空気が凍り付いた。
兎「おやおや? 私の言う事が信じられないといった顔をしておりますねぇ? ククク…」
兎「あなた方には新アリスゲームに参加して貰う、という事です…!」
真紅「何を言っているの…?」
兎「クク…あなた方は互いに殺し合う事を良しとしなかった!」
兎「そこで私が、ルールを考案したんです!…言ってる事分かりますか?」
水銀「ふざけないで!あんたの垂れ事なんかに付き合ってられないわよ!」
兎「まあまあ、落ち着いて…!喚いた所でこの空間から出ることは出来ませんから」
そして、兎の口から衝撃的なルールが聞かされる事となる。
兎「基本ルールは同じ…あなた方には適度に殺し合って貰います」
兎「但し!この新アリスゲームでは、攻撃してくるのがドールだけとは限りません」
兎「先程申し上げた奇妙な生命体…ゾンビもあなた方を襲うでしょう」
兎「それこそが! 新ルールの骨頂です!」
兎「これにより確実にアリスを決定する事が出来るのです!我ながら素晴らしい!」
真紅「そんな…!」
水銀(これは良いかもしれない…)
兎「せいぜいズタボロになりながら生き長らえるこったな!」
兎「コホン…失礼。あなた方は特殊能力は使えませんが、各自の武器と」
兎は異次元を出現させ、中から巨大な工具箱を引っ張り出した。
兎「こちらの『銃器』を使用する事が出来ます」
そう言うと兎は工具箱の蓋を開いた。
中には幾つかの金属の棒の様な物が入っていた。
水銀「これが…銃器って奴?」
雛「あー!ヒナね、これ知ってるのー!」
雛苺はそう叫びながら小型の金属を指さした。
雛「これね、とりがーを引くとね、お水がピューってでるのよ!」
兎「ハッハッハ…雛苺殿、これらは本物の銃ですよ」
雛「うゆ?ほんものー?」
真紅「ひょっとして、あの弾を発射する為の道具かしら…?」
兎「真紅殿、その通りです。よくご存知ですな。弾を撃って人を殺す為の、いわば凶器です」
水銀「何であんたがこんなのを知っているのよ?」
真紅「以前JUMから教わったのよ。JUMは最近危ない方に興味が移っていたから…」
金「中が筒みたいになってるかしら」
兎「では、あなた方に一つ選んで頂きます。水銀燈殿、まずはあなたからお選び下さい」
水銀「え、私から?」
水銀「ちょっと待ちなさいよ!銃がどういう仕組みなのかも分からない上に、こんなたくさんの種類の中から選べって言うの?」
兎「その通りです、水銀燈殿。但し、選んだ銃器の説明だけはして差し上げましょう」
金「待つかしら!何故水銀燈から選ばせるのかしら?私が先に選びたいかしらー!」
兎「ドールの番号通りに選ばせて貰います。従って、なんら不公平ではありません」
水銀「ねぇ真紅。あなたどれが一番良い奴か教えてくれるぅ?」
真紅「私もそこまで詳しく無いわ」
水銀「んー…じゃあこれにしとくわぁ」
水銀燈が選んだ銃は直線状の金属だった。よく見ると比較的複雑な構造をしている。
兎「それはAK-108という突撃銃です。作動不良が特に少なく、優れた傑作銃です」
兎「では、次は金糸雀殿、あなたの番です」
金「ムムム…どれにするか迷うかしら」
金「大きい物程強いとは限らないと思うのよ」
金「うーん…これにしようかしら」
金糸雀の選んだ銃はユニークな形をした近未来的外観の銃だった。
兎「ほほぅ、それを選ばれましたか。さすがローゼン一の策士は見る目が違いますね」
金「それ程でも無いかしらー!」
兎「それはP90というPDW、もとい短機関銃です。特殊な弾薬を使用し、装填数も多い事から、非常に優れた銃となっています」
翠「ムッキー!何か無性にムカつくです!」
蒼「落ち着きなよ翠星石。次は君の番だよ」
翠「チビカナなんかよりずーっと良い奴を選んでやるです!」
そう言った翠星石の選んだ銃はプラスチック制の長筒の銃だった。
兎「それはレミントンM870という傑作散弾銃です。開発された年代は古いながらも、その信頼性故に現在も世界で広く使われています」
蒼「へぇ…銃器にも色々な種類があるんだなぁ」
蒼「おっと、次は僕の番だったね。僕は…」
兎「パス」
蒼「へ?」
兎「いや、だってさ、蒼星石殿の武器ってチート級じゃん? だからパス。銃は無し!」
蒼「そんなガーン!」
兎「次は誇り高き第五ドール、真紅殿、好きな物をお選び下さい」
真紅「そうね…どれにしようか迷うわ…」
真紅「これは…JUMが通販で注文してたのと同じ物…」
真紅「これにするわ」
真紅の選んだ銃は、これまで選ばれた中で一番小さな銃器だったが、堅牢な造りの銃だった。
兎「ほほぅ…それを選ばれるとは、あなたも通なものですねぇ」
兎「ガバメント呼ばれる傑作中の傑作銃。そのシリーズの一つ、それがガバメントシリーズ80です」
兎「その信頼性は他のどの銃器をも驚愕し、安定したパフォーマンスを発揮出来る素晴らしい物です」
真紅「小さい割に意外と重いのね」
兎「では最後に、雛苺殿、お選び下さい」
雛「うにゅー、雛これにするのー!」
雛苺の選んだ物は真紅の物と同等の大きさの銃だった。
兎「プッ!そ、それは…ククク…!」
雛「うゆ?」
兎「コホン!…失礼。それはイングラムM10という短機関銃です。まあ、ここにある中で一番の駄作でしょう」
兎「では、あなた方の精霊をこちらで預からせて頂きますので、各自の道具を出しておいて下さい」
真紅「えっ!人工精霊を?」
水銀「何よあんた!さっきから偉そうに!」
兎「おや?あなた方に抵抗する権利はありませんよ?さすれば只のドールにして差し上げるだけですが…」
ドール達はしぶしぶと兎の指示に従った。bのフィールドを造る程の者には勝てないと分かっていたからである。
水銀「メイメイ!」
金「ピチカート!」
翠「スィドリーム」
蒼「レンピカ」
真紅「ホーリエ!」
雛「ベリーベル」
兎「これで全部の様ですね、ではこちらで預からせて頂きます」
そう言うと兎は懐から小さなケースを取り出すと、人工精霊達を中へ誘導し、蓋を閉じてしまった。
兎「次に、銃器を扱う上での簡単な説明を致します」
兎「しかし! するのは私ではなく……この方です」
兎は再び異次元の中へ手を突っ込むと、中から誰かを引っ張り出した。
?「痛てっ!」
真紅「JUM!?」
JUM「おおおおおおお!?」
真紅「えええええええ!?」
そこに居たのは、JUM の筈なのだが、明らかにおかしな点が一つだけあった。
今まで腰の高さだった筈の場所には頭があった。つまり、JUMは驚く程小さくなっていたのだ。
JUMは目を限界まで見開き、ドール達を見つめたまま、今の状況が全く把握出来ないでいた。
というより、本当にこれがJUMなのだろうか?
JUM「だ、誰だお前等は!?ここは何処なんだ!?」
水銀「聞きたいのはこっちの方よ!何でそんなに小さくなった訳?」
真紅「JUM?あなた本当にJUMなの?」
兎「お取り込み中申し訳ないんですが!!!!」
そこで兎が大声を発した。そして今まで喚いてた奴等が静かになると
兎「では、これよりJUM殿から銃のレクチャーを受けて貰います。制限時間は一分! 始めッ!!」
JUM「え?え?え?」
真紅「JUM!落ち着いて!」
JUM「ちょ、ちょっと待ってくれ!お前ら、何で大きく」
真紅「今はそんな事どうでもいいわ!早く銃の扱い方を説明して!」
水銀「そうよ!早くしなさいよ!グズグズしてたら一分なんかあっという間よ!」
JUM「わわわ、分かった!何かよう分からんけどやってやる!真紅、銃貸せ!」
兎「あと残り40秒!!」
JUM「ええええとだな、こここれは確かここをこう引いて…あ、あれ?」
真紅「JUM!慌てないで!ゆっくりでいいから!」
金「先にカナの説明からして欲しいかしらー!」
雛「うゆー、JUM頑張ってなのー!」
翠「なにモタモタしてるですかチビ人間!早くしろですぅ!」
兎「残り20!!」
JUMはプチパニックを起こしており、説明する事が困難な状況にあったのだ。
蒼「暇だなぁ」
JUM「あああ!もう!何がどうなってんだよちくしょう!」
真紅「絆パンチ」
ドコオオオォォォォンンン(^ω^ )
一同「!!?」
JUM「ガハアアァァァッ!真紅ッお前何…」
真紅「JUM、冷静になって頂戴。 …今はあなただけが頼りなのよ」
JUM「…!!」
JUM「オーケー!任せろ!」
兎「10秒前!!」
JUMは何かに取り憑かれたかの如く、高速で説明をし始めた。
JUM「いいか!全員寄れ!このトリガーって奴を引けば弾がこっから出る!」「9!」「8!」「7!」
JUMは筒の先を指さした。
JUM「翠星石!!」
翠「な、何ですか?」「6!」
JUM「それは一発撃つ度にここを引け!いいな?」「5!」
翠「は、はいです!」
JUM「カナ ヒナ 水銀!」「4!」
金「なにかしら?」雛「うゆ?」水銀「なぁに?」
JUM「お前等のはトリガーを引き続けると連発出来る!」「3!」「2!」
JUM「弾が出なくなったらマガジンを交換する事!」「1!」
JUM「いいな!!」「0!!」
兎「終了ーーーーーーーーーーーーー!!」
JUM「ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ構え方の解説をしてないんだよ!」
兎「ダメダメダメダメ!絶対ダメー!やったらジャンクにしてやっから? な?」
JUM「うっ…!」
兎「コホン!!…失礼。では、あなた方にこちらの装備も配布しましょう」
そう言うと、兎は異次元から別の鞄を引っ張り出し、中から幾つかのベルト状の物を取り出した。
兎「これぞ名付けて『戦闘ベルト』! あなた方の銃に合わせた弾薬が既に装備されています」
兎「さらに、背面に道具や銃器をしまっておける優れ物!一人につき一本ずつ用意してあります」
兎「それでは、これを腹の辺りに身に着けて下さい」
ドール達は戦闘ベルトの着用に取り掛かった。
水銀「これ重過ぎてうまく着けられないわよぅ!」
雛「うゆー、誰か手伝ってなのー!」
JUM「はいはい…って、僕の分は無いのかよ?」
兎「フム、あなたもゲームに参加しますか?ゲスト出演としての扱いなら」
JUM「待て待て待て!ゲームって何だよ?つーか状況がまだよく分か」
兎「皆さん準備はよろしいですか!!!!答えは聞いて無いけどね!!!!」
兎「では待ちに待った『新アリスゲーム』の始まりです!深呼吸してる場合じゃねぇぞゴルァ!」
兎「さあ戦え!いざ勇め!勝利をその手で掴み取れ!!」
兎「クイックゥゥゥゥゥーーーロォォォォォディィィンン!!!!」
JUM「それなんて翠星石のギャ」
一同「ギャアアアアアアアアアア!!!!」
ドール達とJUMは次元の波に飲み込まれ、何処かへと消え去ってしまった。
兎「せいぜい抗うんだな、非常な現実という世界に!」
※これから先の話には暴力シーンやグロテスクな表現等が含まれています。
それを苦手とする方は読み進める事を控える様にして下さい。
翠「…うぅ…此処は…?」
翠星石は鉄製の床の上に横たわっていた。周りは鉄の壁に囲まれており、所々赤く錆びていた。
それはまるで、血がこべりついている様にも見えたのだが。
翠「ハッ!み、みんなはどこいったですか?」
翠星石の声は部屋中に響き渡った。だが、返事は無く、聞こえて来るのは液状化した赤錆の滴る音だけだった。
翠「なんだか…気味が悪いです…」
翠星石は背中のレミントンを手に取ると、静かに歩き始めた。鉄の床の音が嫌に響く。
翠「まずは皆と合流するです」
ギィィィィー…(`A`;)
真紅は木製の扉をゆっくりと開いた。
真紅「ホントに誰も居ないのね…」
真紅は右手にガバメント、左手に背中に装備されたステッキを持っていた。この構えなら遠近問わず万能に戦えるだろう。
真紅が先程居た部屋は、兎とドール達の居たあの部屋とにた様な感じであった。しかし、誰も居なかったのだ。
真紅「皆は無事かしら…」
その時、背後から物音が聞こえた。真紅は素早く振り返り様に銃を構えた。
そこに居たのは、水銀燈だった。しかし、彼女も真紅に向けてAK-108を構えていた。
真紅「水銀燈…!」
水銀「あらぁ、誰かと思えば真紅じゃない。こんな所でなにしてるのよぉ?」
真紅「…私を撃つ気?」
水銀「だって仕方無いじゃなぁい?新アリスゲームの真っ最…」
その時、水銀燈が見た物は、真紅に背後から襲い掛かる謎の生命体であった。
と同時に、真紅の目にも水銀燈に跳び掛かる不気味な生物が映り込んだ。
バァン!(`A` )
真紅は思わず引き金を弾いてしまった。それも、水銀燈に跳び掛かったゾンビに向けて。
しかし、水銀燈も引き金を弾いていた。真紅に襲い掛かったゾンビへ向けて。
二人共、自分が何をしたのか理解出来なかった。殺らなければ殺られる相手を何故かばったのか。
そして二人共、自分は相手に撃ち殺されたものだと思っていた。
「ゴハアアアアア!」
しかし、後ろのゾンビが断末魔を放ちながら倒れた音を聞くと、ようやく事態を理解する事が出来た。
二人の間には固い『絆』が今もそこにあったのだ。
真紅「なっ!? これは…ゾンビ!?」
水銀「うっ!まさかすぐ背後に居たなんて…」
真紅「…周りを見て。既に囲まれているわ。話は後よ」
水銀「フン、何か面白くなってきたじゃなぁい?」
二人は背中合わせになり、銃を構えた。共闘は久しぶりの事だった。
ゾンビは人形が腐った様な(腐る事は有り得ない事だが)感じの生命体で、意外にも動きが素早い様だ。
周りに居るゾンビも多種多様な種類がいる。それぞれ違う形状をしており、持っている武器もまた様々であった。
水銀「さぁて、あんた達をじっくりとジャンクにしてあげるわぁ!」
JUM「オエエエェェェェッ!!」(`O`;)
JUMは嘔吐した。 必ずや、かの兎に復讐する事を誓って。
JUMが居た部屋は、現実とはかけ離れた異常な部屋であった。
壁一面は血糊で赤黒く染まっており、床には足の踏み場が無い程に、腐った肉片や風化した骨片が大量に散乱していた。
おまけに血生臭かった部屋の臭いに、新たな臭いがブレンドされ、JUMの吐き気をさらに促進させる事となった。
JUM「ウップ・・・ウェェェェェアエ!」
JUMはこんな事態に陥れた兎に早速すさまじい嫌悪感と復讐心を募らせる事となった。
JUM「くっそ…!あの兎野郎…!許さね…オエッ!」
JUMはひとまず部屋から出る事にした。こんな部屋に居続けては発狂して死にそうだ。
JUM「ウプッ…あんな所にドアが…」
ドアまで歩いて行く際に、JUMによって踏まれた肉片や骨片の気味悪い感触や音が、さらに吐き気を激化させた。
JUM「ウオェェェェ!ちくしょおおおおおお!!」
JUMは半狂乱になりつつも何とかドアまで辿り着き、血糊でベタ付いたドアノブを回して部屋から出る事が出来た。
出た先は廊下になっており、幸いにも異常な点の無い普通の廊下だった。
JUM「やっと出れた…!これで新鮮な空気が…!」
JUMは脱力して、その場に座り込んでしまった。走った訳でも無いのに息が上がっている。
JUM「ハァ…少し…休憩しよう……」
JUMは袖で顔に付いた汚物を拭うと、頭で今の状況を整理する事にした。
JUM「確か、僕は真紅達を探して鏡の前まで来た時だった…兎に連れ去られたのは…」
JUM「つまり、ここはnのフィールドなのか…?だから真紅達がでかくなって…?」
JUM「兎野郎がゲームとか言ってたな…アリスゲームの事か…?」
JUM「ウプ…!何で僕がこんな目に…!あの兎野郎…!今度会ったら…」
JUMはポケットから銀メッキの施された拳銃を抜き出した。
JUM「こいつで脳天をブチ抜いてやる…!!」
JUMが常備しているコルトパイソンは優れたリボルバーピストルの一つである。
装填数は少ないが、一発の破壊力に長けている。よって、兎の頭部をブチ抜くにはうってつけと言える。
JUMはパイソンとさらにその予備弾薬を護身用と称して自宅で持ち歩いていたのだ。
もちろん、通販で購入した。
JUM「待ってろよ兎野郎…!」
JUMはふらふらと立ち上がると、廊下の奥まで歩いて行き、ドアを開けた。
翠星石「あ」
JUM「あ」
翠「あわわわわわわ!?」スチャッ
JUM「ままま待て待て待て!撃つな!バカ!俺だ!やめろ!」
翠「うっ!? ち…チビ人間!?どうして此処に!?」
JUM「そりゃこっちの台詞だよ…」
翠「…あんたホントにチビ人間ですか?」
JUM「取り敢えず…何があったのか説明してくれないか?」
翠星石はこれまで起こった事を一通り説明した。
朝起きたら既に皆あの部屋に連れ去られていた事、犯人はカワイソな兎と名乗ったラプラスの魔とは別の存在である事、ここは兎の造ったbのフィールドである事、
特殊能力が使えず、精霊も取り上げられたが、代わりに銃器が配布された事、新アリスゲームの事、そして謎の生命体である生きる屍、ゾンビの事。
JUM「成る程な…ようやく事態が飲み込めて来たぞ」
翠「…で、チビ人間は何でチビチビになったんですか?」
JUM「多分そのbのフィールドのせいだろ。僕から見たらお前達がでかくなった様に見える」
翠「とにかく、他のみんなとも合流するです!」
JUM「待て。まだ銃の構え方を教えて無かったろ?さっきの構えはヤバかったぞ」
JUMは翠星石の散弾銃を取ると、目の前で構えて見せた。
JUM「僕も詳しくは分からないが、大体こんな感じで構えるんだ。左手はここのフォアグリップを握る。右手はここをこう握って、人差し指でトリガーを弾く」
翠「へぇー ちょっとやってみるです」
JUMは翠星石にレミントンを渡し、細かい指導を行った。
JUM「トリガーを弾くと、爆音と共に弾が飛び散る。ちょうど節分の豆撒きみたいな感じだな」
JUM「これはポンプアクションだから、一発撃った後はフォアグリップを手前に引いて排庚をしないと次弾が出ない」
JUM「リロードはここの穴に直接弾薬を入れればいい。入れた後もフォアグリップを引くんだぞ。よし、試し撃ちしてみろ」
翠「ムム…なかなか難しいです…とうっ」
翠星石は壁に向けてレミントンを発砲した。
バアアァァァァン(^ω^ )
翠「キャアアッ!?」
JUM「うおおっ!破壊力抜群だな!」
「ヴオアアアアアア!」
JUM「な、何だ?」
翠「ま、まさか…!」
二人はゆっくりと振り返った。何者かが広間の奥からゆっくりと、しかし確実に二人の元へと近づいていた。
二人「ゾッ、ゾンビーー!!」
JUM達の居る広間は薄暗く、始めはそのゾンビの姿を視認する事だけでも難しかったが、だんだんとこちらに近づいて来るに連れて、その輪郭がはっきりとしてきた。
ゾンビは人型に近い人形の様なもので、ぼろぼろになった服を着用しており、本体の腐食が激しく、所々欠けている。
右手には鎌状の何かを持っており、それを振り上げた構えでこちらへと歩を進めている。
JUM「こっ…こいつが…ゾ、ゾンビ…!!」
翠「どっどっどうするですか? にっ逃げるですか?」
JUM「にっ、に、に、逃げよう!」
しかし、JUMと翠星石の足は恐怖のあまり硬直しており、駆け出す事が出来なかった。
JUM「あああ足が、ななななな何で動かないんだよ!?」
翠「わわわ私もです!もももう戦うしかなななないです!」
翠星石は軽いプチパニックを起こしていたが、JUMはその比では無かった。
それは先程の無惨な部屋の影響も少なからずあったからだろう。
JUMは頭が真っ白になった。殺される。奴の手で、首を引き裂かれて殺されるんだ。
そして、あの肉片の様な悲惨な運命を辿る事になるんだ。
JUM「い、い、い、嫌だ!し、し、死にたくない!」
翠「ち、チビ人間!おお落ち着くです!こっこの翠星石がなっ何とかするです!」
JUM「URYYYYYYYYYY!」
ゾンビが約3mの距離まで迫ったその時
翠「喰らいやがれですぅぅぅ!!」
バアアァァァァン!(^ω^ )
翠星石はレミントンの引き金を弾いた。銃口から至近距離で放たれた散弾は、ゾンビの頭部を粉々に砕き、吹っ飛ばした。
翠星石は撃った時の反動で後方に転んだ。
翠「ハーハーハー…ついにやったです…」
JUM「た…助かった…のか…?」
翠「チビ人間!やったですよ!この私がゾンビをやっつけたです!」
JUM「ハハ…や…やった!やったぞお!ハーハハー!」
二人はしばらくの間、狂喜乱舞した。
ガガガガガガガガッ!(`A` )
バンバンッ!(^ω^ )
AK-108とガバメントの発砲音が部屋中に鳴り響いた。
真紅「ふぅ、これで終わりかしら…」
水銀「もう終わりみたいねぇ? 早かったわ」
真紅「……それで、あんたは本当にこのゲームに参加するつもりなの?」
水銀「…………」
水銀「…じゃあね、真紅」
そう言うと水銀燈は羽を広げてその場から飛び去ろうとした。
特殊能力は使えない筈だったが、飛行能力だけは使えるらしい。
真紅「待って!まだあんたの答えを聞いてないわ!」
JUM「真紅! そこに居るのは真紅か!?」
真紅「JUM!それに翠星石!」
翠「真紅、今しゃべってた相手は誰です?」
真紅「水銀燈よ。 …彼女はゲームに乗り気なのか分からなかったわ」
JUM「無事だったんだな…」
蒼「うーん…」
蒼星石は目を覚ました。どうやら随分と長い時間気を失っていたらしい。それに寝違えた様だ。首が痛い。
蒼「痛てて…ここは…? …ん?」
蒼星石は目の前の光景にしばらく放心状態となった。何故、囲まれているんだろう?ていうか、こいつら何者なんだろう?
蒼「ああ…そうか死亡フラグか……」
蒼星石は背中の鋏を手に取り、ゆっくり構えたその時だった。
雛「蒼星石ー!今助けるのー!」
蒼「雛…苺…!?」
ゾンビ共の後ろから駆けて来る雛苺がかいま見えた。右手にはイングラムを握っている。これは新たな死亡フラグ、かな?
雛「そこどけなのーーー!」
雛苺は走りながらイングラムをブッ放した。弾道はバラバラで、次々にゾンビに命中し、肉をえぐっていった。
しかし、蒼星石の所まで弾が届き、素早く伏せていなければ危うく射殺されていた所だっただろう。
「ヴエアアアアアア!!」
雛「おまえら死ねなのーーーー!!」
雛苺はゾンビに急接近し、理不尽な程に弾を浴びせ掛けた。集中放火されたゾンビは見る影も無く砕け散り、肉片と化した。
まだ生きているゾンビに次々に弾を浴びせかけ、
1マガジンを撃ち切る頃にはゾンビの姿はそこに無かった。
雛「蒼星石ー、だいじょうぶー?」
蒼「ハハ…助かったよ雛苺、ありがとう」
蒼(本当は雛苺に危うく殺されかけたんだけどね…)
蒼「こいつらが…例のゾンビって奴等なのか…?」
雛「ヒナも初めて見たのよ」
蒼「そうだ…他のみんなは何処に居るんだい?」
雛「うゆ…ヒナ分からないのよ」
蒼「そうか…じゃあみんなを探しに行こうか」
雛「うん!みんなもヒナが助けるのー!」
蒼星石と雛苺は部屋を出ると、早速探索を開始した。
次の部屋は細長い通路状になっており、壁の両側には幾つかの扉があった。
中には蜘蛛の足で守りを固めた様な奇妙な扉も存在した。かなり不気味な光景だ。
蒼「雛苺は、最初は何処に居たんだい?」
雛「うにゅー、ドアが多過ぎて分からないの」
蒼「この何処かの部屋の中に居たんだね。」
雛「誰も居なくて、怖かったのよ。でもね、ヒナ泣かなかったの!」
雛「ヒナがしっかりしないといけないって、そう思ったの!」
金「フッフッフ…蒼星石達はカナの存在に気づいて無いかしら!」
蒼星石達をドアの隙間からじっと監視し続けているのは、ローゼンメイデン一の頭脳派(自称)の金糸雀である。
彼女は蒼星石達が油断している隙に背後からP90の弾を浴びせかけ、ローザミスティカを安全に奪おうという計画を実行しようとしていた。
金「今回こそは、楽してズルして頂きかしら!」
その時、金糸雀の後方から何者かの不気味なうめき声が聞こえてきた。
金「ちょっと!今集中してる所なんだから、邪魔をしないで…って」
金「きゃあああああああ!?」
蒼「!? な、何だ?」
雛「カッ、カナリア!!」
金糸雀は腰が抜けてその場に座り込んでいた。
何故なら、金糸雀の目の前に、大人二人分はあろう巨大な斧を携えた、黒いフードを身に纏った大男が立っていたからである。
「ヌヲオオオオォォォォ!!」
金「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!」
JUM「ウッ…これ全部、真紅と水銀燈がやっつけたのか…?」
真紅「ええ、そうよ」
翠「こっ、こんなにたくさんのゾンビが居たなんて、信じられんです!」
JUM「オエッ…ちょっと…向こうで話さないか…?」
床に散らばったゾンビの残骸を見て気分を再び悪くしたJUMは、離れた場所で話す事を提案した。
JUM「・・・しっかしまあ、謎だらけだよな。今回の件に関しては」
真紅「何であんな厨二病炸裂の兎がゲームを施行出来るのかしらね?」
翠「ていうか、あの兎、一体何者なんです?私達の事を知っていたって事は、ラプラスの魔の仲間ですかね?」
JUM「とにかく、他のみんなとも合流して、ここから脱出しよう!」
真紅「でも、他のみんなが同じ空間上に居るとは限らないし、それにここから脱出する事なんて出来るのか疑問だわ」
翠「同じ空間上に居なけりゃ、新アリスゲームは成り立たないです。それに、空間の出入口が無い事は有り得んですよ」
真紅「それもそうね…」
JUM「しかし、あんなに多くのゾンビが居るんだったら、他のみんなの身も危険だ。すぐに探し出そう!」
蒼「金糸雀!今助ける!」
雛「へっ、変なのが居るの!」
大男は斧を振りかざし、足元にいる金糸雀に狙いを定めた。
「ヌヲオォォ!」 ズガァァァン!!(`A` )
蒼「とうっ!」
間一髪、蒼星石は金糸雀を抱き抱え、そのまま大男の足の間をくぐり抜けた。
蒼「怪我は無い?」
金「あ…ありがとうかしら…」
「ヌヲオオオォォォ!!」
大男は狂った様に斧を横に振り回し、木製の壁を引き裂きながら雛苺の方へ迫っていった。
雛「こ、こっちへ来るのー!」
蒼「雛苺!」
蒼星石と雛苺は大男を挟む形で位置している。その為、雛苺を直接カバーしに行く事は困難な状況であった。
金「ひぃぃぃぃぃっ!!」
蒼「喰らえぇっ!」 ドスッ!(^ω^ )
蒼星石は渾身の力を込めて、大男の背中に鋏を突き刺した。しかし、肉質が堅いせいか奥まで刺さらず、怯む事無く大男は前進し続けた。
雛「このー、死ねなのーーー!」
雛苺がイングラムをブッ放そうとした。しかし、マガジンの交換を忘れていた為、弾は出なかった。
雛「あ、あれ…? おかしいの!弾が出ないの!」
蒼「雛苺!逃げろ!」
蒼星石は雛苺に逃げるように指示をした。それを聞いた雛苺は全力で駆け出したが、戦闘ベルトが重いせいで通常より遙かに遅かった。
「ヌフゥオオオォォォ!!」 ズガァァァッ!(`A` )
雛「ハア、ハア、ハア…」
大男はなおも斧を振り回し続け、壁を斬り裂きながら雛苺に迫っていく。早くもスタミナ切れした雛苺に斧が直撃するのは時間の問題だった。
蒼「このっ!喰らえっ!」 ズサァッ(^ω^ )
蒼星石が必死に大男を鋏で斬りつけても、びくともせずに斧を振り回し続けた。
蒼「雛苺!何処かの部屋に隠れるんだ!」
雛「うゆ、分かった、なの…!」
部屋に入れば追い込まれる危険性があったが、もう他に打つ手立てが無かった。雛苺はすぐ横のドアを開け、部屋の中へと身を隠した。
しかし、大男はすぐに部屋の前まで来ると、斧を振り下ろして周囲の壁ごとドアを粉砕してしまった。
「ウヲオオオオオォォォォ!!」 ズガシャアアアアン!!(`A` )
雛「いやあああああ!助けてーー!」
蒼「やめろぉぉ!雛苺に手を出すなぁぁ!!」
蒼星石は大男に跳び掛かり、首を狙って一突きした。
「ウヲオオオゥゥゥゥゥ!!」 ドガッッ!(`O` )
ひるんだ大男は左手で蒼星石にバックブローを仕掛けた。攻撃を受けた蒼星石は数メートル程吹っ飛ばされた。
蒼「ガハァァッ!!」 ドサッ(`q` )
金「蒼星石!」
雛「いやああああ!もう止めてぇぇぇぇ!!」
「ウヲオオオォォォウゥゥ!!」
蒼星石の一撃で怒り狂った大男は、今度は蒼星石をターゲットに切り替えた。こちらへ振り返り、物凄い早さで斧を振り回しながら近づいて来る。
「ウウウヲオオオオオゥゥゥ!!」 ズガッドガッ!(`A`#)
金「ひっ!こっちに向かって来た!」
金「このままじゃ…蒼星石がやられてしまうかしら!」
金(いや…元々殺すつもりだった奴を、わざわざ助ける必要なんて…!)
金(でも蒼星石は…動けなかったカナを助けてくれた…)
「ウヲオオオウウゥゥゥ!」
金「…そっ、そこの大男!このカナが相手してやるかしら!」
金糸雀は背中につ吊るしたP90を両手に持ち、バイオリンを演奏するかの如き構えで銃口を大男に向けた。その構え方は偶然にも、P90の正式な射撃姿勢と一致していた。
金「喰らえーーーっ!!」
パパパパパパパパパパパパパン(^ω^ )
P90の銃口から高速で弾が連続発射され大男の体中に着弾し、その特殊な形状によってすさまじい破壊力を発揮した。
蒼星石の鋏ですら貫通出来なかった体を徐々に削っていき、1マガジン撃ち切る頃には奴の肉体を貫通したのだ。
「ヌフウウウゥゥゥゥ!!」
体を蜂の巣にされた大男は大きく仰け反った。しかし、それでも倒れる事は無く、再び斧を振り回し始めた。
金「なんてタフな奴かしら!早くマガジンの交換を…!」
しかし、P90のマガジンは上部に設置されており、またその特異な形状から素早い交換には熟練を有した。
これまでマガジンの交換どころか銃にすら触れた事の無かった金糸雀は悪戦苦闘する羽目になる。
金「う、うまく出来ないかしら!」
「ウヲオオオォォォ!!」
大男は倒れた青星石の目前まで迫っていた。そして、斧を高く振り上げて、青星石の首目がけて振り下ろそうとしたその時だった。
パララララララララララ(^ω^ )
突如大男の後方から聞こえて来たタイプライターの様な音の正体は、マガジンを交換して再び銃撃可能となった雛苺のイングラムの発砲音だった。
「ヌフヲオオオォォォゥゥ!!」
雛「みんなはヒナが助けるのよー!誰も殺させやしないのー!」
弱小弾をばらまくイングラムも深い傷を負った大男には効果覿面だった。大男はうなり声を上げながら体を捩った。
中には大男を貫通した弾丸が金糸雀まで飛来してきたが、幸いにも命中はしなかった。
雛「このー、死ねなのーーー!」 パラララララララララ(^ω^ )
雛苺はついにイングラムの弾を1マガジン分撃ち切った。しかし、未だ大男は倒れる事は無かったが、前のめりになってうめき声を上げていた。
金糸雀「とどめかしら!!」
雛苺の足止めのおかげでリロードを終えた金糸雀は恐怖心を押さえつけて大男に接近し、至近距離から垂れ下がった頭部に向けてP90を発砲した。
パパパパパパパパパパパパパン(^ω^ )
「ヌフヲウウオオオォォォォォォ!!」
P90から放たれた弾丸は容赦無く大男の頭部を徐々に削っていき、ついに頭部も貫通させると、大男は後ろに倒れ込み、その後動く事は無かった。
金「や……やったかしら…?」
雛「蒼星石ー!」
雛苺はすぐに蒼星石の元へ駆け出した。金糸雀はしばらく放心状態でその場に突っ立っていた。
雛「蒼星石ー! だいじょうぶー?しっかりしてなのー!」
蒼「う…雛苺…?」
雛「よかった!無事だったのね!」
蒼「…ハッ!あの…化け物は…?」
雛「あれね、ヒナとカナでやっつけたのよ!だからもう安心して!」
蒼「そっか…それは良かった…」
金「…あのー……」
金「あなた達に…謝っておく事があるかしら…」
雛「ううん、もういいのよ!」
金「えっ?」
蒼「金糸雀は、僕たちのローザミスティカを狙っていたんだろ?」
雛「もう気にしなくていいの。反省したなら、それでいいのよ!」
金「あ…ありがとう…二人とも…」
三人はしばらくの間そこに居座っていた。しかし、新たな追手が近づいて来てる事を、まだ知る由も無かった。
JUM一行は、謎の研究室の様な部屋を探索していた。部屋には何かの液体に漬けられた内蔵の様な物体の入った容器や、天井に吊り下げられたカプセル等、奇妙な物が数多く設置されていた。
その為、気分を悪くしたJUMは部屋の外で待っている事にしていた。
JUM「どうだー? 何か見つかったかー?」
翠「これといった物は無いですね…変なのばっかですぅ」
真紅「どうやらここもハズレみたいね…次に行きましょう」
真紅と翠星石が部屋から出てきた。ふと見ると、真紅は何かを手に持っていた。
JUM「真紅、それは何だ?」
真紅「これは傷薬よ。JUMが怪我した時の為に取っておいたわ」
翠「…それホントに傷薬ですか? ちょっと見せやがれです」
JUM「よし、じゃあ次はこっちを探索しよう」
次にJUM達が向かった先は、濁った水が溜めてあり、その上に鉄板で通路が造られている場所だった。
JUM達が鉄板の上を歩いて移動する度に金属音が鳴った。周りには鉄柵が取り付けられておりうっかり水の中に落ちない仕様になっている。
時々水面に泡が浮かび上がったが、一体何だろうか。酸素ボンベでも取り付けてあるのだろうか。
JUM「…何か出そうな雰囲気だな」
真紅「大丈夫よ。その時は私が何とかしてあげるわ」
翠「何言ってるですか人間!この翠星石がいる限り、心配ご無用ですぅ!」
JUM「余計心配なんだけどな。……ん…?」
突然弱い地震が起きだした。隠れる場所の無かった三人は柵にしがみついて凌ぐ事にした。
真紅「…これは地震かしら?何か違う様な気がするわ」
翠「きっとすぐに治まるです」
しかし地震は激しさを増していき、鉄板が音を立てて揺れ始め、水面も激しく波が立ち始めていた。
JUM「こいつはやばいぞ!水の中に落ちるなよ!」
真紅「やっぱり何かおかしいわ!只の地震なんかじゃない!」
翠「これっ、かなり激しいです!こんなのは初めてです!」
そして地震が最高潮に達するか否かの時、目の前の水面が5m程に大きく盛り上がった。
JUM「な、何だぁ!?」
「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!」
水面の盛り上がりの正体は、超巨大な謎の生命体だった。体長は頭と首だけで8mはあり、全身が薄青色の鱗で覆われており、頭部は蛇の様な形をしている。
JUM「でっ、出たあああああ!!」
真紅「何…こいつ……!」
翠「にっ、にっ、逃げるですぅぅぅぅ!!」
JUM「あっ、あ、あ、足がっ!!たっ、助けて!」
JUMと翠星石はすぐに逃げだそうとしたが、またも足が硬直してる上に、揺れが激しく、柵に掴まったまま身動きが取れなかった。
「クゥゥゥゥゥゥゥン!!」
真紅「…私とやろうって言うの? いいわ、相手になってあげる」
それに引き替え真紅は至って冷静で、右手に持ったガバメントをJUM受け売りの構えで蛇竜の頭部に狙いを定め、引き金を弾いた。
バンッバンッ(^ω^ )
一発目は額に命中し、二発目は奴の左目を潰した。
「グゥゥゥゥゥゥウウー!」
顔を撃たれた蛇竜はしばしの間もがき苦しんだ。しかし、真紅に向き直ると、大きな口を開けて襲ってきた。
真紅「動きが鈍いわよ!」
真紅は素早くサイドステップし、蛇竜の噛みつきは鉄柵に命中した。
真紅はすぐさま蛇竜に狙いを定めて引き金を弾いた。今度は三発、内一発は右目に命中した。
「クゥゥゥゥゥゥゥン!!」
真紅「今よ、逃げるわよ!」
真紅はパニック状態のJUMと翠星石の手を取ると、元来た道を駆け出した。
真紅「ほら、ちゃんと走りなさい!」
JUM「あっ、足が言う事聞かないんだ!」
すると突如、前方の水面が数メートル程盛り上がり、波と揺れが再び襲ってきた。
「クゥゥゥゥゥゥン!!」
真紅「うっ!!…もう一匹いたのね…!」
蛇竜は一匹だけでは無かったのだ。水飛沫を上げながら現れたもう一匹の蛇竜は、大きさはさっきのと同じ位だが、全身が薄翠色の鱗で覆われており、その姿は…
翠「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!ワ、ワ、ワ、ワ、ワニ!!!!」
ワニそっくりであった。
翠「嫌ああああああああああああ!!」
真紅「翠星石!落ち着いて!」
「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!」
蛇竜は翠星石を狙って噛み付いてきた。大きな口を開けた蛇竜の頭部が翠星石の目前まで迫った時…
バアアァァァァン!(^ω^ )
翠星石のレミントンが炸裂した。蛇竜の頭は粉々に吹っ飛び、首をうなだれて水中へと沈んでいった。
しかし撃った時の反動と床の鉄板の揺れとが相まって、翠星石は後ろに倒れ込み、後頭部を強打してしまった。
真紅「翠星石!大丈夫?」
JUM「URYYYYYYYY!」ガクブル(((’A’;)))
真紅「JUM、あなたも落ち着きなさい!……気絶しているわ!JUM、翠星石をーー」
真紅「絆パンチ」
ドコオオォォォォォン(^ω^ )
JUM「グハアァァッ……オーケー、任せろ!」
冷静さを取り戻したJUMは翠星石を抱きかかえ、真紅と共に出入口へ飛び込んだ。
JUM「ハー、ハー、ハー、死ぬかと思った…!」
真紅「情けないわね…それでも私の下僕なの?」
JUM「あんなのに遭遇してビビんないお前が異常だ」
翠「痛たたた……ハッ! ここは何処ですぅ?」
真紅「元いた場所よ。さっきの怪物から避難して来た所よ」
JUM「…あんなのも居やがるなんて、この空間どうかしてるぞ…!」
翠(…蒼星石が心配ですぅ)
JUM「…おい、どうした翠星石?具合でも悪いのか?」
翠「い、いや、何でもねーですぅ…」
真紅「さては…蒼星石の事が心配なんでしょう?」
翠「う…」
真紅「あの子ならきっと大丈夫よ。あんな怪物にあっても楽々ねじ伏せられるわ」
翠「だと…いいですけど…」
JUM「とにかく、心配してるのはお前だけじゃない。以前話した通り、僕だってみんなの事が心配だ。」
JUM「だからみんなが危険な目に遭わない内に、早く探しに行こう。」
翠「はいですぅ」
真紅「…そうだわJUM、紅茶が飲みたいわ。いれて頂戴」
翠「翠もお腹が減ったですぅ」
JUM「そういや僕たち朝から何も口にしてないな」
翠「腹が減っては戦が出来ぬです。チビ人間、何か食べさせるです!」
JUM「そんな事言っても、何も持って無いぞ」
JUM「…さっきの蛇竜……意外とイケるんじゃないか…?」
紅・翠「!?」
翠「あっ、あんなワニみてーなのなんか、死んでも喰いたくねーです!」
真紅「…JUM、冗談はやめて頂戴」
JUM「いや僕はマジだ、大マジだ」
ドコォッ(^ω^ )
JUM「いてえっ!」
翠「もうチビ人間なんか知らねーです!ワニの餌にでもなりやがれです!」
翠星石はJUMのみぞおちにパンチを喰らわすと、怒って何処かへ行ってしまった。
JUM「何なんだよ一体…」
真紅「…それで、どうやってそいつを料理するつもりなの?」
JUM「…意外と乗り気なんだな」
真紅「背に腹は代えられ無いわ」
JUM「じゃあ真紅、一匹狩って来てくれないか?」
真紅「嫌よ」
水銀「…まったくおバカさんねぇ、あの子達…あの蛇竜もゾンビかもしれないのに…」
真紅とJUMの会話を壁を挟んで盗み聞きしているのは、AK-108所持の第一ドール、水銀燈である。
水銀「もしゾンビだったら死肉を食べる事になるのよぉ…」
JUM「何故断る」
真紅「私は紅茶が飲みたいの。だから私には無関係よ」
真紅「それに、そういう事は下僕の役目でしょう? しかも銃も持っている筈よ」
JUM「まあな…でも僕じゃ確実に餌になる」
真紅「…分かったわ。私も一緒に戦うわ」
水銀「駄目だこいつら、早く何とかしないと…」
翠「…何してるですか水銀燈?」
水銀「……ハッ!」
水銀「…翠星石…何しに来たのかしらぁ?」
翠「…何時からそこで盗み聞きしやがってたですか?」
水銀「先に質問したのは私よぉ」
翠「べ…別に何でもねーです…」
水銀「私も別に何も無いわぁ」
翠「なっ…ふざけんなです!どうせ水銀燈の事だから、何か策略を…」
水銀「…私はこの偽アリスゲームに興味なんて無いわぁ」
水銀「無論…あんたが乗り気なら別だけどぉ…」
翠「…水銀燈…」
真紅「居たわ、両目を潰した奴。まだあそこで暴れているわね」
JUM「…お、お、落ち着け僕!KOOLになれ!こ、こんな時は素数を数えるんだ!素数は僕の…」
真紅「殴るわよ?」
蒼「…さて、そろそろみんなを探しに行こうか」
雛「蒼星石、もう大丈夫なの?」
蒼「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
そう言うと蒼星石は雛苺の頭を撫でてやった。
雛「えへへー」
金「でも、みんなが何処に居るかなんて、検討も付かないかしら」
蒼「確かにね…こうなったら手分けして探そうか?」
雛「別に構わないのー!」
金「三人別々に探せば効率が上がるかしら!」
蒼「よし、決まりだね。僕は向こうを探すから、雛苺は右の、金糸雀は左の通路の探索を頼むよ」
雛「はいなのー!」
金「ここはローゼンメイデン一の策士が、効率良く探索するかしら!」
「………ヴオアアアアア…」
蒼「………? 気のせいかな…」
蒼星石は何者かの気配を一早く察知した。
蒼「…嫌な予感がするな」
蒼星石はひとまず雛苺と金糸雀に招集を掛けた。
蒼「雛苺!金糸雀!ちょっと戻って来て!」
雛「はーいなの!」
蒼「………金糸雀が見当たらない…まさか…!」
蒼「雛苺!僕についてきて!」
蒼星石と雛苺は金糸雀が探索していた左側の通路を走り出した。
蒼「金糸雀ー!居たら返事してくれー!」
雛「カナリアーーー!」
金「・・・よ・・・」
蒼「金糸雀!? 何処に居るの?」
金「カナは・・・ここよ・・・」
蒼「……!!金糸雀!!」
雛「カッ、カナリア!」
金「……たっ…助けて!!」
なんと通路上にぽっかりと開いた穴に金糸雀は落ちていたのだ。
しかし…それだけでは無かった。
金糸雀の周囲を…十人程のゾンビが武器を持って襲い掛かろうとしていたのだ。
蒼「金糸雀ッ!今助ける!」
雛「あっ、雛も!」
二人は自ら穴の中へ降り立ち、蒼星石は鋏を、雛苺はイングラムを構えて臨戦体勢に入った。
蒼「くそっ、こんな所にもゾンビがいたなんて…!」
雛「金糸雀は雛が守るのよ!」
金「あわわわわわわわ…」
「ヴオオオオオオ!」
蒼「来るぞっ!」
JUM「……なあ、また沈んでいったんだけど…」
真紅「ちょっとやり過ぎたみたいね」
JUM「……腹減った…」
翠「………やっぱお前の言う事は信用出来んです」
水銀「…何でよ?」
翠「お前は…私たちを散々痛めつけてきた…」
翠「全てはアリスになる為に…それが私たちの宿命…」
翠「でも…翠はそんなの嫌でした。誰かを殺してアリスになる位なら死んだって構わないと思ったんです」
水銀「………」
翠「だけどお前は違った…!アリスになる為なら…手段を選ばない…!」
翠「…それが…お前の本性です」
水銀「…だから何だって言うの? 私はこの偽ゲームに乗る気は無いと言ってるのよ」
翠「…お前は何時気が変わって攻撃して来るか分からないです」
水銀「………」
翠「だから…」
水銀「……だから…?」
翠「……今この場で始末しておくです」
ザクッ!ドスッ!(`A` )
パラララララララララ(^ω^ )
蒼星石の鋏が肉を斬り裂き、雛苺のイングラムが肉をえぐり取る。
二人の活躍のお陰で、あれ程いたゾンビ共はあっという間に片づいた。
蒼「怪我は無い?金糸雀」
雛「金糸雀ー、だいじょうぶー?」
金「………うっ…うっ…」
蒼「金糸雀…?」
雛「何で泣いてるのー?」
金「…カナ……二度も…うっ……助けられて…」
蒼「そんな…助けるのは当たり前じゃないか」
金「カナ……あれだけ悪さ…してきたのに……うっ…それなのに…!」
雛「カナー、泣かないで」
金「それに…比べて……カナは……役立たずで……!」
蒼「金糸雀……」
JUM「チッ…結局手に入ったのは僅かな肉片だけかよ……しかも臭せぇ」
真紅「それよりJUM、早く紅茶を準備して頂戴。まさか携帯紅茶パックを持って無い、なんて事は無いでしょうね?」
JUM「もちろん持ってるさ、ちょっと濡れたけど。紅茶はここの水でならいれてやるぞ?」
ガスッ(^ω^ )
JUM「痛てっ…分かったよ、隣の調理室みたいな場所で…ん?」
真紅「翠星石はまだ帰ってきて無いのね」
JUM「さすがにこれはマズイんじゃないか?」
真紅「その肉片が?」
JUM「事態だよ。…ちょっと探してくる」
真紅「あら、一人で行くの?翠星石はゾンビに襲われたかもしれないのよ?」
JUM「だったらついて来てくれよ…気の利かない奴だな」
真紅「何か言った?」
JUM「気のせいだ」
真紅「でも、そういう訳にもいかないわ」
JUM「…紅茶を先にいれろって?」
真紅「違うわよ。…もし私たちが探しに行っている間に翠星石が帰って来たらどうしようも無いでしょ?」
JUM「うーん…あ、良い事思い付いたぞ」
JUM「取り敢えず銃の発砲音で翠星石を呼び寄せよう」
真紅「あら、なかなか良い考えじゃない」
JUM「よし、僕の愛銃コルトパイソンで…」
ガガガガガズドンガガガガガズドンガガガガガ!!(`O` )
JUMがパイソンを撃とうとした時、突然隣の壁から激しい銃撃音が聞こえてきた。
JUM「うおおおぉぉぉ!?何者だ!?」
真紅「この壁の向こうから聞こえてくるわ!」
JUM「何!? 緊急事態だ!とにかく急ごう!」
JUMと真紅は急いで戦地へと向かった。その際肉片は置いておく事にしたのだが…
これが後の不幸を招く事になる。
今なお…蒼星石達のもとに着実に追手が近づいていた…。
蒼「…ほら、元気出して」
金「うっ……クスン…」
雛「いい子いい子なのー」
蒼「…金糸雀は何も悪くないさ…。悪いのは…」
兎「そう、この私ですな」
兎「ククク…だんだん面白くなって来ましたよ…!」
兎「今、蒼星石達のもとへ向かっている『追跡者』…またの名を『タイラント』は…」
兎「なにせ、ゾンビの中で屈指の戦闘力を誇る怪物ですからね…!」
兎「ククク…!これは本当に愉快極まりありませんな…!」
兎「果たしてどうなってしまうのか?楽しみでしょうが無いですねぇ…!」
兎「ククク…クハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
!vip2:stop:
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見習い戦士のふつうの攻撃
MP382使ってへっぽこの呪文を唱えた。★ミ (スレのダメージ 0)
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ぼうそうがはじまった!! さらにこのスレは2回目のダメージを受けた (300/402)
!vip2:stop:
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見習い戦士のふつうの攻撃
MP238使ってへっぽこの呪文を唱えた。★ミ (スレのダメージ 300)
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ぼうそうがはじまった!! さらにこのスレは4回目のダメージを受けた (600/90)
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