またまた泣けるコピペを集めよう

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1ローカルルール変更議論中@VIP+
また俺です。
あまりの文章量に、前スレは683「従姉に恋をした」シリーズの途中で容量オーバーになってしまった。皆、たくさんの投稿ありがとう。

よければこちらで続きをやってくださいな
2ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 17:38:31.34 ID:6AEsFk1dO
>>1乙です。
3ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 19:26:56.09 ID:cEQj2E730
おお、今日中に復活してたか。
気づけば二カ月近く続いてんだもんな。またまったりいこうぜ。とりあえず前スレの終盤に頑張ってくれた奴乙!
4ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:07:15.06 ID:bIL5RLlZ0
小学生の時僕はイジメられていた。
無視されたり叩かれたり・・・死にたいとは思わなかったけど学校に行くのは
とても辛かった。イジメをするのは一部のクラスメートだけだったけど他の子たちは
自分もイジメられるのが怖くて、誰も助けてはくれなった。

ある日授業で「自分のお父さん」の事について作文を書く授業があった。
先生はなんでもいいんだよ。遊びにいった事とかお父さんの仕事の事とかで
いいと言っていた。けど僕はなかなか書く事ができなかった。
クラスの子達はみんな楽しそうに書いている中、僕一人教室のなかでひとりぼっちだった。 

結果から言うと作文は書いた。
書いたのだが「自分のお父さん」というテーマとは違う事を書いた。
あとで先生に怒られるかも・・・またこれがきっかけで
イジメられるのかなと子供心にとても不安だった。でもそれしか書けなかった。
5ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:08:33.34 ID:bIL5RLlZ0
作文は授業の終わりと同時に集められ先生は「来週発表会をします。」
と言った。先生はそのまま教室を後にした。その後は頭を叩かれて
イジメられているふだんの僕がいた。

「じゃあ今日は発表会をしてもらいます。」
今日は作文の発表会の日。
ただひたすら「僕の作文は選ばれませんように」
ただ祈って下を向いているだけだった。

発表会は順調に進みあと10分で授業も終わるところまで来ていた。
僕は少し安心していたのだがその期待は無駄だった。
「では最後に〇〇君に読んでもらいます」
頭の中は真っ白だった。

「あの、先生・・・僕はお父さんの事書いてないです。」
クラス中から非難の声が上がった。「バカじゃねえの?廊下に立ってろよオマエ」
様々な声が飛び交ったが非難の意見はみんな一緒だった。
もうどこにも逃げられなかった。

「静かにしなさいっ!」
突然の大声に教室は静まり返った。
「先生はどうしても読んでもらいたいの。だからみんな聞いてください」 
6ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:09:17.26 ID:bIL5RLlZ0
「さあ読んでください」


「ぼくのお父さん。
僕のお父さんはいません。幼稚園の時に車にはねられて死んだからです。
だからお父さんと遊んだのもどこかへ行った事もあまりありません。
それにお父さんの事もあまりおぼえていないです。
写真があるのでみましたがおぼえていないです。

だからおばあちゃんとお母さんのことをかきます。
お母さんは昼間しごとにいってお父さんののかわりに働いています。
朝はやくから夜おそくまでいつも働いています。
いつもつかれたといってますが甘いおかしやたいやきを買ってきてくれるので
とてもだいすきです。

おばあちゃんはげんきで通学路のとちゅうまでいつもいっしょに歩いてきてくれます。
ごはんはみんなおばあちゃんが作ってくれてとてもおいしいです。
お母さんが働いているので父兄参観の時にはおばあちゃんが来てくれます。
みんなはおまえの母ちゃんババァなんだとからかってくるのではずかしったけど
でもとてもやさしいいいおばあちゃんです」 
7ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:09:58.68 ID:bIL5RLlZ0
「だからお父さんがいなくても僕はあまりさびしくありません。
お母さんとおばあちゃんがいてくれるからです。
お母さんはお父さんがいなくてゴメンねと言ったりするので
早く僕が大人になって仕事をしてうちの家族のお父さん代わりになって
お母さんとおばあちゃんの生活を楽にしてあげたいと思います

だからおばあちゃんには長生きしてねといつもいっていて、
お母さんにはいつも肩をもんであげています。
二人とも泣いたりするのですこしこまるけど、
そんなお母さんとおばあちゃんが僕は大好きです。」

一気に僕はしゃべった。
先生には死んだお父さんのことを書けばいいのにと言われると思ったし、
クラスの子達からはおまえお父さんがいないのか?
もしかして捨て子だったんじゃねえか?とまたイジメられるのかなと思ったりしていた。
顔をあげる事もできなかった僕は救いを求めるように先生の顔を見てみた。

先生は立ったまま泣いていた・・・
8ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:10:43.27 ID:bIL5RLlZ0
先生だけではなかった。他の子たちもみんな泣いていた。
僕が始めて好きになった初恋の子は、机にうつぶして泣いていた。
イジメていた子たちもみんな泣いていた。

でも僕にはなぜみんな泣いているのか分からずにいた。
どうして?
お父さんがいないからお母さんとおばあちゃんの事を仕方なく書いたのに。
どうしてみんな泣いているのだろう?
「〇〇君・・・」
「はい・・・」
「先生は人の心が分からないダメな先生でした。ゴメンなさい。
世の中には親御さんのいない子もいるのにね。
そういう子たちの事も頭になくてお父さんの事を書いてだなんて
あなたの事も知らなかったとはいえ本当にごめんなさいっ!」
先生は顔を覆ったまま泣き崩れていた。

それがその日起こった出来事だった。
9ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:11:31.16 ID:bIL5RLlZ0
次の日からなぜかイジメられなくなった。
相変わらず口悪くからかったりはされたけど殴られる事はなく
イジメのリーダー格の子に遊びに連れていってもらえるようになった。

先生はその後の家庭訪問でその日の出来事をおばあちゃんに話して謝っていた。
作文の事は僕は話もしていなかったので少し怒られたけど話を聞いた母も、
今は亡くなったばあちゃんも、うれし泣きみたいなくちゃくちゃの顔で叱ってくれた。 

僕も立派な、人に誇れるような仕事はしていないけど
家族のおかげで一人前の大人の男にはなれたとは思う。

大人になった今でもその時の事はなぜか覚えているし
ふと思い出したりもする。これが僕がかける自分の思い出です。

私的な事を長々書きすぎましたね。でも読んでくれた方には
「ありがとう」と言いたいです。
10ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 21:44:59.00 ID:bigCYViFO
>>1乙です。
前スレ最後の続きが気になって仕方ないのだが、あとどのくらいなんだろう。
11ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 22:09:05.13 ID:MZLY/+F5O
>>1乙です
てか今の今まで容量オーバーしてたのに気づかなかったw

>>10
あと半分もないくらい
「泣ける2ちゃんねる 従姉に恋をした」でググればたぶんひっかかるはず
12ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 22:12:06.64 ID:QK5RAoa0O
>>10
まだ半分をちょっと越えたくらいのはず
2、3ヶ月前に読んで泣いた

ネタバレになるからあまり言えないが、翌日職場で気になってる子と会った時なんかものすごく「ありがとう。ただそこにいてくれて本当にありがとう」って気持ちになったな
13ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/21(日) 22:23:42.91 ID:MZLY/+F5O
向かいの家の犬が死んだ。

ちょうど飼い主だったお爺さんの一周忌の日だった。

お爺さんは犬の散歩の途中。

曲がり角で倒れこみ、そのまま帰らぬ人となった。

脳出血だったらしい。

それから一年。

主の来ない庭で、何を思ってその犬は生きたのだろう。

お爺さんの最初の命日に、お爺さんの息子が、犬を散歩に連れて行った。

気を利かせたつもりだったのだろうか。

お爺さんが死んでからは違う道順を辿るようになっていたのに、

その日は、お爺さんと犬が十年以上、ずっと辿っていた散歩道を歩かせた。

お爺さんが倒れた曲がり角を通った時、犬はそこで急に立ち止まり、座り込んだ。

しばらくそのままでいさせてやったが、さすがにずっと座っているわけにもいかず、息子さんは犬を引っ張ろうとした。


けれどもその犬は、そのまま眠るように死んでいた。

飼い主とペットには、少なからず、不思議な縁と絆が宿る。

たぶん、その曲がり角で犬は、お爺さんに再会できたのだと、僕は思うのだ。
1410:2009/06/21(日) 22:45:34.81 ID:bigCYViFO
>>11
>>12
ありがとございます。あれで半分なんですか!?
とりあえずぐぐってみます。
15ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 00:22:07.18 ID:IRxfBM/GO
需要上げ
16ヒロ:2009/06/22(月) 01:43:54.16 ID:1ARa4jZv0
泣けるかどうかは別として小学校3年〜中学3年までの記憶を書き込みます。
作り話と思う方もいると思いますがこれは実際にされた事です。
この期間俺はほとんど毎日のようにいじめられていました・・・
上履きを隠されたり意味もなく突然殴られたり黒板に自分の名前を大きく書かれ「死ね!!!」という事を書かれたりが毎日でした。
周りの人間や担任の先生も全く興味がない感じで無視していました。
毎日がとても辛くナイフで腕を切ったり屋上から飛び降りようとしたりしました。
クラスの人間や先生を全員殺してやろうかと思ったりもしました・・・
そんな事をずっとしていた中2の頃に進路の話が出てきはじめた頃に職場体験をするという話がありました。
色々あった職場の中から適当に選んだのが障害者施設(※現在は障がいという言葉)でした。

                               続く
17ヒロ:2009/06/22(月) 01:55:42.30 ID:1ARa4jZv0
続き

この時は正直とても後悔しました。(ああなんでこんな所を選んじゃったのかな・・・)
当然回りの皆からは「お前にはそういう所がお似合いだよ。バーカ!」という言葉があちこちから聞こえました。
こういう言葉はもう聞き慣れていたのでは気にも止めませんでした・・・
そして職場体験の日に施設に行きました。施設に到着しすぐに着替えて準備をしました。
しばらくして家族に送られて次々と車いすを押してくる家族がぞくぞくと入ってきました。
施設のスタッフや他のみんなは笑顔で迎えていましたが自分はとてもショックを受け、それでも必死で作り笑顔をしました。
18ヒロ:2009/06/22(月) 02:24:46.47 ID:1ARa4jZv0
ショックを受けたのは車いすに乗っている人たちはみな手足が変形していたり会話が全く成立しなかったからです。
中には奇声をあげたりする人もいて正直引きました・・・
それから利用者と一緒にボールを使って遊んだりしました。
しばらくして昼食の時間になり、食事を配膳しましたが自力で食べれない方がほとんどで施設スタッフだけでは手が足りず、「君もやってくれないかな?」と言われ
やり方を教えてもらい、やってみました。「次は○○ですよ」と教えながら介助をしました。
俺が介助をした人はほとんど喋らない人だったのですが、なんとか全部食べてもらいとても疲れました。
その時その喋らない人がたった一言「ありがとう」と僅かに笑って言ってくれました。聞こえるか聞こえないか位の小さい声で言いましたが自分にははっきり聞こえました。
何気ない言葉だったけどとても感動し、その場で泣きそうになったのを覚えています・・・
この時俺は「ああ、こういう人達って俺達みたいな健康が当たり前に思ってる人間より何倍も強いんだ。ただ病気でうまく動いたり喋ったり出来ないだけでそれ以外は俺達と一緒じゃん」
と思いました。
19ヒロ:2009/06/22(月) 02:40:02.71 ID:1ARa4jZv0
それから午後は食後休憩をし2時からゲームをし、3時頃迎えにきた家族に挨拶をして
その日の職場体験は終わりました。
最後施設スタッフに挨拶をしている時に「たくさんの笑顔を見てみたい。将来絶対に人の役に立つ仕事に就く!」と思いました。
あれから12年経ち俺は介護の仕事に就いている・・・あの時言われた「お前にはそういう所がお似合いだよ。バーカ!」と言った奴ら全員に
会えたら絶対言ってやる!「どうだ似合ってるだろう!」ってな!!!
20ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:29:19.62 ID:Iahs4OTaO
東京に上京したての頃、寂しさを紛らわすためインコを飼った。
言葉はあまり覚えなかったけど、俺の必死な特訓でやっと
「オチンチンキモチー」
と、だけ言えるようになった。
だが、先日僕のおちんちんより先にインコが逝ってしまった。
21ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:32:50.92 ID:cnaQnIKOO
>>13
いい話をありがとう。
22ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:39:40.36 ID:V88tLildO
前スレ最後投下してた者だけど、まさか容量オーバーになるとは…

ググれば出てくるという事で需要は無いかもだけど、中途半端じゃ嫌なので続き投下する。

前スレ
http://c.2ch.net/test/-/news4viptasu/1239626038

続き↓
23ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:41:10.36 ID:V88tLildO
研修は午後から始まった。
みんなお揃いかと思えるような、色も形も定番のリクルートスーツに身を包んだ初々しい新入社員たち。
中途採用で入社した俺の目に、彼らがとても眩しかった。
研修はとにかく忙しかった。
しかし友枝のサポートでそつ無く進行することができた。
昔はちょっと頼りない男だったが、この三年で見違えるように成長していた。
所作の全てに自信が覗える。
頼もしくもあり、ちょっとだけさみしくもあった。
無事に初日を終え、後片付けをしていると友枝が言った。
「大塚さん。今日この後、どうします?」
「んー。さすがに疲れたよ。帰る」
「ちょっと付き合っていただけませんか?」
「飲むのかぁ?やだよお前、うわばみなんだもん(笑)」
「そんなこと言わず(笑)お話、というかご報告があるんです」
「なんだ?」
エヘヘ、と意味深な笑みで友枝は俺の問いをかわした。
妙に気になった俺は、彼の誘いに応じた。
連れて行かれたのはとても洒落た店だった。
赤ちょうちんがステータスだった友枝だけに、意外で驚いた。
「こんな店ができたんだなぁ。というかお前、よく知ってたな(笑)」
「エヘヘ」
またあの意味深な笑いだ。
「この店、彼女から教えてもらったんです」
驚きの連続だった。
三年前まで『彼女いない歴=年齢』だった友枝。
とても嬉しそうだ。
俺も嬉しかった。
「やったなおい!彼女できたんかぁ」
「はい!しかも俺、結婚します!!」
おいおい、まだ驚かす気か、友枝。
「うわぁ、おめでと!…で、相手は?」
「大塚さん、おぼえてますかね?○×社の野田 芽衣子」
驚くにもほどがあった。
24ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:42:35.01 ID:V88tLildO
「式の日取りとか最近決まったばかりで、まだ会社の誰にも言ってないんです。それにまず、大塚さんに報告したくて」
前置きをした友枝が、こぼれる笑顔で話を続けた。
俺と芽衣子さんの関係を知っていたのは社内では東京の先輩だけ。
先輩は口の堅い人だったから、友枝は知らないはず。
俺は平静を装った。
付き合い始めたのは去年の6月だという。
以来、順調に時を重ね、半年後のクリスマスにプロポーズしたそうだ。
はしゃぎながら芽衣子さんとの惚気話に夢中になる友枝。
いちいち頷きながら友枝の話に耳を傾ける俺。
ふたりとも、頼んだ酒や料理にほとんど手をつけなかった。
早くホテルに帰って頭を整理したかったが、無邪気な友枝の顔を見ていたらいつしか帰る気も失せ、俺は誘われるまま2軒目の店へとついて行った。
転勤前によく友枝と通ったバーだった。
俺のことを覚えていてくれたバーテンは、あの頃いつも飲んでいた酒を用意してくれた。
「あらためて…おめでとう」
友枝のグラスにカチンと当てると、なんと友枝が泣き出した。
「な、なんだ!?どした??」
狼狽し、友枝の背中を摩る。
「い、いや、すんません。うれしいんス。うれしいんス」
ワイシャツの袖で、友枝は何度も目を擦った。
「大塚さんのっ、“ありがとう”がっ、うれしいんスっ」
可愛いヤツ。
こんなに無垢なヤツもいまどきいないだろう。
2杯目を注文した時は友枝も落ち着きを取り戻していた。
仕事でも見たことのない、至極真面目な表情で友枝が語り出す。
「実は彼女と付き合うことになる前、俺、一回告白したことがあるんです」
「…いつ?」
「一昨年の7月くらいでしたかね」
俺と芽衣子さんの交際が終わった頃だ。
「そん時は『好きな人がいるから』って、断られたんです」
「………」
「でも俺、彼女のことが、初めて会った時から好きだったから、諦められなくて、ずっと、想い続けてたんです」
知らなかった。
そんなにも深く、長く、友枝が芽衣子さんのことを想っていたなんて。
「彼女はいつも寂しそうでした。その顔を見るたび、好きな人とうまくいってないんだなって、俺は悲しくなりました」
胸にチクリと、何かが刺さる。
25ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:46:12.08 ID:V88tLildO
「だから俺、彼女の相談役になろうって、思って……あ、でも俺っ、別に変な下心は無かったっスよ!?そんなんじゃなくて、あの、」
…なんていいヤツなんだろう、こいつは。
あさっての方向を見ているバーテンが、ウンウンと頷いている。
俺たち以外に客はない。
アンタもそう感じたんだね、バーテンさん。
「それから一ヶ月に一回、彼女を食事に誘ったんです。俺、見た目こんなだし、嫌がられるかなって、ビクビクしながら彼女を誘ったんですけど、彼女は笑顔で応じてくれました。
ただ…俺、店のことなんて詳しくなかったから、いつも彼女に店を選んでもらってましたけど(笑)…食事に誘ってるのは俺なのに…かっこわるかったなぁ(笑)」
みるみる友枝のグラスが空になっていく。
俺はまだ一杯目だった。
「相談役って言っても、彼女はいつも多くは語ってくれませんでした。でも帰る時はいつでも『ありがとう』って、すごく綺麗な笑顔で言ってくれて。毎回ドキドキしてました」
初めて友枝の口から聞けた“女性の話”。
始めはその相手が芽衣子さんであることに驚きと戸惑いをおぼえたけれど、友枝の素直な言葉にいつしか俺は引き込まれていた。
「そしたら去年の6月、彼女のほうから『付き合ってください』って、言われたんス。俺ビックリして、『いいの?』って何回も聞いてしまいました」
よかったなぁ。
素直にそう思えた。
ふと、バーテンが俺たちにグラスを差し出した。
「これ、良かったら召し上がってください。お祝いです」
「やっぱり聞いてましたね(笑)」
「はい(笑)」
ばつの悪そうに苦笑しながらバーテンが言った。
「ウチのオリジナルです。本来はカップルの方にお出ししているんですが」
桃の香りと、微かな酸味。
シャンパンでアップされているそのカクテルは、この季節にピッタリな感じだった。
「なんという名前なんです?」
「“両想い”です。おめでとうございます」
「あ、ありがとうございますッ。ありがとうございますッ」
友枝がまた泣き出した。
26ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:47:02.94 ID:V88tLildO
友枝を宥め、店を出た。
千鳥足のくせに、友枝はホテルまで送ると言ってきかず、結局、肩を貸しながらホテルまで歩いた。
「ここでいいよ。ありがとな。気をつけて帰れよ」
「はい!ありがとうございました」
気になってたことを聞いた。
「…そのワイシャツとかネクタイとか、さ」
「はい?」
「野田さんの見立てかい?」
「はい!!」
酔ってるからか、照れ臭いからか、真っ赤な顔して元気に返事する友枝を、なんだか無性に抱きしめてやりたくなった。
のっそりと踵を返した友枝がタクシーに乗り込むのを見届け、俺は部屋へと上がった。
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを掴んだまま、ベッドへと倒れこむ。
夢も見ずに、深く眠った。
27ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:48:28.00 ID:V88tLildO
それからの一週間は、夜毎、宴会に興じた。
太田家にも一度顔を出したが、それ以外は友枝や他の同僚たちと飲み歩いた。
そして研修最終日の夜を迎えた。
「大塚さんのお別れ会をしますから!」
友枝の音頭で事務所の社員全員が集まり、宴となった。
いい加減、二日酔いなのか何日酔いなのかわからぬほど酒浸りの身体になっていたが、彼らの気持ちに付き合った。
「2軒目、カラオケ行きます!逃がしませんよぉ(笑)」
ニヤリとした友枝に、俺も観念の笑みを向けた。
珍しいことにカラオケ屋には年配の社員も参加した。
若手だけかと思っていたのに、事務所のほぼ全員が顔を揃えている。
「?珍しいな。部長までいるじゃん?」
「俺が誘ったんです」
友枝の鼻息が荒い。
「ふーん?」
その答えは一時間後に判明した。
「はい!みなさん!聞いてください!!」
最高潮を迎えた部屋の喧騒を友枝が制した。
「わたくし友枝、このたび結婚することとなりました!」
部屋中に『?』マークが飛び交った後、友枝は質問攻めにあった。
「誰と!?誰と!?」
当然の質問に、友枝が屈託の無い笑顔で答えた。
「実は…これからココに来ます!」
!!!!なんてこった。
今この空間で一番ドキドキしているのは俺だ。
間違いない。
やってくれるな、友枝。
ドキドキは何分経っても収まらず、心の準備はいつまでも出来なかった。
20分後、芽衣子さんは来た。
彼女がドアを開けて入ってきた時、顔を上げられずにいた俺の左右の耳に、とてつもない喚声が飛び込んできた。
男性社員からは悲鳴が。
女性社員からは歓声が。
それからはカラオケどころではなかった。
みんなが寄り添うふたりに群がった。
恥ずかしげに俯く芽衣子さん。
今まで見たこともないくらい、胸を張っている友枝。
さっきまで俺と一緒にあずさ2号を歌っていた男が、その時よりも数倍輝いていた。
彼らの姿をぼーっと眺めながら、俺は芽衣子さんと付き合うことになったあの夜を思い出していた。
まともに芽衣子さんと会話もできないまま、2次会はお開きとなった。
28ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:49:44.43 ID:V88tLildO
またもヘベレケになった友枝が俺をホテルまで送ると言う。
そして芽衣子さんも。
3人、肩を並べて歩いた。
だがホテルに着いても友枝は俺を放してくれなかった。
結局、友枝と芽衣子さんは部屋の前までついてきた。
「芽衣子ちゃん!俺ねぇ、大塚さん…だ〜い好き!」
愚にもつかないことを叫びながら、友枝が俺に抱きついてきた。
「俺も友枝、だ〜い好き!」言いながら友枝を抱き止めた。
互いに抱きしめ合う30男たちを、芽衣子さんは微笑みながら見ている。
ふっと友枝が軽くなり、そして重くなった。
ヘナヘナと、俺の身体を舐めるように崩れ落ちて行く。
床に大の字になった友枝を見、そして芽衣子さんを見やった。
芽衣子さんと目が合った。
今日初めて芽衣子さんと交わす視線だった。
一瞬の後、どちらともなく、ぷっと笑った。
「ひとまず部屋で寝かせよう」
俺と芽衣子さんは笑いながら友枝を抱え上げた。
「ほら、しっかり(笑)」
そう言って友枝の右腕を肩に抱え込んだ芽衣子さんの目は、なんとも言えない優しさに満ちていた。
俺は慌てて視線を外し、友枝の左腕で顔を隠した。
ベッドに友枝を寝かせると、静寂が部屋を包んだ。
「元気だった?」
芽衣子さんが切り出してくれた。
「うん」
なんとか芽衣子さんに顔を向けた。
「このホテル…だったんだよね?」
「そうだったね(笑)」
あの日を思い出す。
と、大いびきの友枝に、ふたりの視線が向いた。
「ラウンジに…行くかい?」
「うん(笑)」
ふたりでそっと部屋を抜け出した時、なぜだか悪いことでもしているかのような錯覚に陥った。
「ずっと…ちゃんと話をしたいと思ってたの」
軽めのカクテルを一口含みながら、芽衣子さんが言った。
「そう…なの?」
同じものを俺も注文した。
いつもなら飲まないであろう、甘ったるいカクテル。
しかしそれは渇いていた喉にとても優しかった。
「うん。でもね…」
ふたりともバーテンの振るシェイカーを眺めていた。
「もう…いいの。もう、いいんだ」
自分の言葉に、ウン、とひとつ頷いて芽衣子さんは笑った。
俺も芽衣子さんに笑みを向けた。
「招待状、もらえるよね?」
そう言った俺の顔を、芽衣子さんがじっと見つめる。
潤んだ瞳に柔らかな光を灯し、芽衣子さんは言った。
「…ありがとう」
その言葉で、胸に残っていた最後の何かが、すーっと消えた気がした。
俺も…ありがとう。
29ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:50:54.36 ID:V88tLildO
部屋に戻ると、友枝は本格的な眠りに突入していた。
「今日はこのまま、旦那さんは預かるよ(笑)」
「ごめんね。ダーリンをよろしく(笑)」
ロビーまで見送ることにした。
エレベーターの中、芽衣子さんが小さな声で言った。
「健吾君」
「うん?」
「今も…従姉さんのこと、好き?」
「うん」
ためらいもなく、素直に言えた。
微笑みながら、芽衣子さんは去っていった。
部屋に戻り、友枝のネクタイを緩めてやる。
しばらくその寝顔を見つめた。
(こいつは…勝ち取ったんだ)
“勝ち取る”という言葉に、改めて俺は自分が持つ劣等感を意識した。
だがそれは、友枝に芽衣子さんをとられた…などというものではない。
友枝が勝ち取ったもの。
しあわせ。
ひたむきに相手のことだけを想い、努力してきた友枝。
それを得るのは当然だった。
俺は…彼ほど努力しただろうか?
否。
いつもウジウジと後先ばかり考えていた。
親父と母の心情を障害と見なしていた。
あきらめる道だけをひたすら選び、“忍ぶ恋”などというものに酔っていた。
『どうにかするんなら、何かぶっこわさないと、な』
大の言葉が頭に浮かぶ。
俺が事を起こせば、壊れるのは親父や母の心だと思っていた。
だが本当に壊れるのは、いや、壊さなければいけないのは、俺の臆病さなのだ。
(ありがとな、ダーリン)
友枝の頭を、クシャクシャに撫でた。
30ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:52:12.00 ID:V88tLildO
東京に帰り、いつもと変わらぬ日常に戻った俺の元にメールが届いた。
恵子ちゃんからだった。
『ゴールデンウィークに親戚一同集まってバーベキューします。健吾君、来れるかな?ていうか、絶対来ーい!(笑)』
文字がやたら愛しい。
返信。
『喜んで参加させていただきます』
断る気はなかった。
一歩、前へ。
俺は歩ける気がした。

GW。たった一日だけだが休暇をとった俺は、心の急くまま新幹線に乗った。
早く行きたい。
バーベキューに行きたい。
いや、バーベキューなんてどうでもいいんだ、ホントは。
駅には恵子ちゃんが迎えに来てくれていた。
およそ一年ぶりに見る恵子ちゃんは…可愛かった。
とても。
恵子ちゃんの実家からほど近い、山裾の川原がバーベキューの場所だった。
すでに俺以外はみんな顔を揃えていた。
まずは一杯、と生ビールを手渡される。
だが手厚い歓待もほんの束の間、「健吾君、手伝ってぇ〜」調理部隊からお声がかかった。
転勤してからは年に1度会うか会わないかの親戚たちだったが、この頃になるとすっかり俺も彼らと遠慮会釈のない関係を築けていた。
ほいほいと軽く腰を上げ、一員であることを喜ぶ。
…などという気分は、一時間で吹っ飛んだ。
忙しい!
次から次へと焼き物に勤しむ俺。
うがー何しに来たんだ俺は。
恵子ちゃんと話してぇ。
しかしそんなレクレーションはとんと巡ってこない。
たまに恵子ちゃんが給仕として出来上がった料理をとりに来たが、汗だくになって調理している俺に、「ご苦労さま(爆笑)」一言声をかけ、すぐに女性陣の輪の中に帰っていった。
忙しなく手を動かしながら、心の中で指を銜えて“女の園”を眺めた。
午後3時を回った頃、救いの手が差し伸べられた。
「健吾君、少し休みなよ」
恵子ちゃんの父・守さんだった。
これ幸いとばかりに義弟に調理を押し付け、守さんから生ビールを受け取る。
そのままなんとなく守さんとツーショットになった。
31ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:53:14.92 ID:V88tLildO
実のところ守さんとはこれまであまり話したことがない。
親戚が集まる席といえば決まって酒席で、俺は酒豪ぞろいの彼らといつも馬鹿騒ぎに興じてきたのだが、守さんは下戸のため、正直、話すのが辛かった。
素面の相手と酔っぱらいではノリが違う。
それに守さんは真面目な人だったからちょっと近づきがたくもあった。
しかし親戚連中に強引に勧められたのか、今日はちょっとだけ守さんも酒を楽しんでいたようだ。
顔が少し上気している。
お互い酒が入れば自然と会話も弾む。
話の内容なんて他愛のないものだったとおもうが、小一時間も経った頃、「ようし、もう“健吾君”なんて他人行儀な呼び方はしない。健吾!って呼ぶからね」
そう言われた俺は守さんと打ち解けたような気がした。
そのうち、酔っぱらった守さんは高鼾で寝てしまった。
ブルーシートに大の字になっている守さんに、恵子ちゃんが上着をかける。
そして俺に向き直って言った。
「ちょっと散歩でもしない?森の中に、良いトコあるんだ」
どこへでも行きますとも。
「お父さん、あんなになっちゃうなんてなぁ(笑)」
恵子ちゃんの歩幅に合わせながら、森の中の小道を歩く。
「ごめん。ちょっと調子にのって酒勧めすぎたかな?」
「ううん(笑)たまにはいいんじゃないかな。大した量でもないし」
…たしかに。ビールを紙コップ3杯程度だった。
「きっと嬉しかったの、お父さん」
「俺と話したことが?」
「そう。ウチは私とお姉ちゃんとお母さんで女だらけでしょ?だから男同士の会話っていうのに飢えてるんだと思う」
「なるほどね」
「それにね。お父さん、健吾君のことは前から気にしてたの」
「なんで??」
「さあ(笑)昔、私と健吾君でよく飲みに行ってた時、実家に帰るたびに健吾君のこと聞かれた」
「…で、なんて答えたん?」
「変な人、って(笑)」
「あっそ(笑)」
32ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:54:25.19 ID:V88tLildO
木立が開け、目の前に小さな滝壺が現れた。
「到着」
「おおっ、いいねぇ」
「私のお気に入りなの、ここ。小さな滝だから、森の静けさを壊さないんだ」
滝壺のほとりにあった大きな岩塊にふたりで腰掛けた。
小さなサンダルを脱ぎ、恵子ちゃんは素足を水の中へと入れた。
ぱちゃぱちゃぱちゃいたずらに水を掻く白い足が、戯れる二匹の魚のようだ。
ふたりとも何も言わず、ただ水面と木々と空を眺めた。
恵子ちゃんがその時、何を考えていたのかはわからない。
だが俺は、この心地良い静寂を乱してよいものか、考えていた。
静寂を打ち破る俺の一言。
それはずっと言いたかった一言。
そして今にも言いそうになる一言。
だがここに至っても、俺はまだ踏ん切りをつけられずにいた。
押し黙っていたら、恵子ちゃんが俺の顔を覗き込んできた。
「なに考えてるの(笑)」
驚き、怯み、動揺が愚かな言葉を紡いだ。
「あ…あのね、恵子ちゃん」
「うん?」
「彼氏、できた?」

馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
自分に呆れた。
呆れてものが言えない。
いや、実際、次の言葉が出て来なかったのだが。
恵子ちゃんの顔が強張った。
俺を覗き込むのをやめた。
「そんなこと…健吾君に聞かれたくない」
「そ、そっか」
小さな滝がナイアガラにでもなった気がした。
「そろそろ戻ろっか」
恵子ちゃんはいつもの声音に戻っていた。
俺の右横を歩く恵子ちゃんに顔を向けられない。
かといって前を向いていても道なんて見ていない。
(告白してフラれた相手に「彼氏できた?」なんて…そりゃ聞かれたくないよな)
右肩が重い。
右頬が引き攣る。
(本当は…あんなこと言うつもりじゃなかったのに)
傾いた木洩れ陽が視界を濁す。
うっとおしい。
(ええい、言っちまえ!)
「あのね恵子ちゃん、さっきのね、あれはね、」
「あ。もうみんな片付け始めてるよ」
いつのまにか森を抜けていた。
「そろそろ帰るよ〜」
戻ってきた俺に母が言った。
今夜は太田家に世話になる予定だった。
「じゃーね、健吾君。今日はご苦労様」
「う、うん。さいなら」
恵子ちゃんの口調は優しかったが、守さんを介抱するその背中は怒ってる…ような気がした。
…いつまでも見てたって仕方ない。
諦めて、お父さんの車に乗り込んだ。
がっかりだ。自分に。
33ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:55:26.43 ID:V88tLildO
渋滞に巻き込まれながら太田家に帰り着いた時には陽はとっぷりと暮れていた。
さすがにみんな疲れていたため飲み直す気はなく、三々五々、各々の部屋で休息をとることとなった。
俺は身体に染み付いたバーベキュー臭を洗い流そうと、風呂をつかった。
身体だけはさっぱりとし、居間に戻ると母が座っていた。
「お茶、飲む?」
「ん。もらうよ」
「今日はお疲れさん」
「ホント疲れた(笑)でも楽しかったよ」
「守さんと盛り上がってたね」
「あんまり飲めないのに付き合わせちゃって、悪いことしたよ」
「よろこんでたよ」
「ならいいけど」
「アンタがいなくなってた時、突然ガバッと起きだして『健吾どこだ〜』って騒いでた」
「マジで?あはは」
「気にいられたね」
「だったらうれしいね」
「恵子ちゃんのこと、好きなの?」
はい、とお茶を差し出しながら、流れるように母が聞いてきた。
「…なんで?」
視線をTVに固定したまま、平静を装った。
焦点はぼやけていた。
「なんとなく。今日のアンタ見てたらそんな気がしたの」
もはや言い逃れることも、取り繕うことも、俺自身が許さなかった。
「…うん。好き、だ」
まっすぐに母を見た。
「そう」
「うん」
「いつから?」
「ずっと、前から」
母の表情に変化はなかった。
「お父さん(実父)は、知ってるの?」
「いや、言ってない」
「そう…」
ふたりのお茶が冷めていく。
母の目の光が強くなった。
「恵子ちゃんには伝えたの?」
「…ううん…」
光がしぼんだ。
顔を伏せた母の声が小さくなった。
「私たちのこと…考えたから…なのね?」
「………」
廊下を踏む足音がした。
誰かが起きてきたのだろう。
「考えさせてたのね…ずっと」
消え入るような声だった。
明くる朝、帰りの身支度を整え居間に下りると、母はすでに仕事に出た後だった。
結局、母はあれ以上なにも言わなかった。
(なんか…言ってほしかったな)
賛成にせよ反対にせよ、何かしら母の言葉が欲しかった。
賛成ならば感謝した。
反対ならば説得した。
昨日、絶好のタイミングを逃してしまった俺は、情けないが俺を後押しする何かを求めていた。
34ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:58:08.88 ID:V88tLildO
駅まで俺を送るために、お父さんが起きてきた。
玄関へ行き、靴を履く。
と、靴の中に何かが入っていた。
『健吾様』と書かれた小さな封筒だった。
お父さんに見つからないよう、あわててポケットに閉まった。
駅に着くと新幹線の時間にはまだ間があった。
お父さんは発車時間まで付き合うと言ってくれたが、二日酔いで辛そうだったのですぐに帰ってもらった。
なにより、封筒を早く開けたくて仕方ない気持ちもあった。
手近な喫茶店に入り、荒々しく封筒を破った。
中には母からの手紙が入っていた。
『健吾様 あなたの気持ちを聞き、とても悲しく思いました。それはあなたが恵子ちゃんを好きだということにではありません。あなたが私やお父さんのことを考え、恵子ちゃんへの気持ちを我慢していたことにです。
あなたには子供の頃から負担ばかりかけてしまいました。経済的にも、精神的にも。あなたは私たちの前では決して顔にも態度にも出さなかったけれど、心の中ではとても辛い思いをしてきたのだと思います。
欲しいものも買わず、友達との付き合いも控え、あなたはいつも笑顔でいてくれました。ごめんなさい。甘えてしまってごめんなさい。でもその上、恵子ちゃんへの気持ちまで押し殺してきたなんて。
私は自分が情けなくて仕方ない。いつだったか、あなたと恵子ちゃんが結婚したら、なんて話をした時、あなたの態度から私は冗談だと思っていました。あなたの本当の気持ちに気づきませんでした。
本当にごめんなさい。あなたにそんな考えを抱かせてしまって。でもね。親というものは子供の幸せを第一に考えるものなのです。いつもあなたに迷惑ばかりかけてしまい、親として失格な私でも、いつまでもあなたの親でありたい、そう思っています。
こんなことを言える資格はないけれど、あなたがうれしいと、幸せだと思える決断をしてください。あなたが決めたことは、きっと私にとってもうれしいことだと思っています』
冷めた紅茶に一口も口をつけず、何度も読み返した。
母の手書きの文字に、胸がいっぱいになった。
35ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 05:59:31.88 ID:V88tLildO
時間となり、新幹線に乗り込む。
発車後、何分か経った時、恵子ちゃんの実家の近くが車窓に映った。
(親父も…そう言ってくれるだろうか…)
様々な感情が綯い交ぜとなっていたが、向いている方向はひとつだった。
横浜に戻ると友枝から結婚式の招待状が届いていた。
(順調だな)
並び立つふたりの姿を微笑ましく思い浮かべながら、今夜の仕事のために身支度を整える。
家を出、近所のポストに返信葉書を投函した。
もちろん、“出席”にマルをして。

7月。
結婚式に出席するため、職場に休暇申請を出した。式は8月に入ってすぐ。お盆休みを避けた日程だったため、許可はすんなり下りた。
一週間の休み。
目的は結婚式と…もうひとつ。
俺は親父に電話を入れた。
「ずいぶんとご無沙汰じゃないか、おい!この薄情者!!」
親父の声は弾んでいた。
「いつも電話を返さなくてごめんな」
「ん、若いうちはそんなもんだ。気にすんな」
「8月、帰省するよ。そん時、メシでも食わないか?」
「おお!わかった!待ってるぞ!」
…自分の都合だけで連絡をとったりとらなかったり。
親父のうれしそうな声に罪悪感を覚えた。
そして8月はすぐにやってきた。

考えてみると、俺は新幹線の中でいつも考え事をしている。
今日のテーマは“親父への告白”。
恵子ちゃんのことを、親父に打ち明ける。
…でも、なんて言ったらいいんだろ。
いや、ストレートに言えばいいじゃないか。
ああ、こんなに悩むんなら電話で話した時に言えばよかった。
いや、こういう大事なことは、会って、顔を合わせて言わないと。
でも、親父の顔を見ながら言えるのか?
そしてなんて言えばいいんだよ?
…エンドレス。
36ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:00:51.09 ID:V88tLildO
太田家ではお父さんと母と義妹が俺を迎えてくれた。
いつものように和やかな宴会。
母もいつもどおりの笑顔だった。
お開きとなり、義妹が帰った。
お父さんは珍しく酔い潰れてしまった。
寝室に連れて行き、母の片付けを手伝う。
食器を運び、台所の母にバトンタッチする。
ふと手を休め、母の背中に言った。
「明日、親父に会うよ」
洗い物を続けながら、母が顔だけをこちらに向けた。
「そう」
笑顔だった。
「うん」
本当は『ありがとう』と言いたかったのだが、片付けに戻った。

翌日の夜、親父に指定されていた店へ向かった。
そこは親父のアパートから程近くにある小料理屋。
中年夫婦だけで切り盛りしているこじんまりとした店で、よく親父が晩飯に利用していた。
俺も2〜3度、一緒に来たことがある。
(ここなら落ち着いて話ができるな)
親父は仕事で少し遅れていた。
カウンターで持て余していた俺に、顔を憶えていてくれた旦那さんがビールとつまみを出してくれた。
今日は暑かったからビールが美味い!
…はずなのだが、冷たいだけで味がしない。
俺は緊張していた。
この期に及んでもまだ、これからの行動に自信が持てなかった。
ほどなく親父がやってきた。
俺の姿を認めるや、ニコニコとした笑顔で向かってくる。
俺は顔を背けた。
「大将!奥、いいかい?」
旦那さんの快諾を得、カウンターから奥の小上りへと移動した。
「女将さん、憶えてるかな?俺の息子。今、東京で働いてるんだ」
オーダーをとりにきた女将さんに、嬉々として、誇らしげに俺の話をする親父。
(年とったなぁ…)
アーノルド・シュワルツェネッガーのような筋骨隆々の体躯は今も変わらないが、頭髪はきれいに銀髪になっていた。
顔に刻み込まれたシワが、笑顔と共に一層目立った。
この笑顔が消えてしまうかもしれない話。
俺は今からそれをする。
くじけそうになる気持ちを、必死にささえた。
いつになく饒舌な親父と酒を酌み交わしつつ、二時間が過ぎた。
37ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:01:59.50 ID:V88tLildO
…未だ切り出せない。
だが突破口は他ならぬ親父が開いてくれた。
「この間、千夏と陽子から電話がきてなぁ」
千夏・陽子とは、亜矢(実妹)の娘たちのことだ。
「子供の日にオモチャ送ったから、その礼の電話だったんだけど」
親父の目尻は下がりまくっていた。
「年に一度くらいしか会わない俺に、じいちゃん、じいちゃん、ってなぁ」
「かわいいな」
「ああ…かわいい。…だけど、ちょっとさみしくなってしまった」
「なかなか会えないからか?」
「距離の問題じゃなくてな…所詮、あの子たちは他所様の内孫だ。会いたくても、おいそれと頻繁に会うってわけにもいかないから、さ」
「そんなに遠慮しなくてもいいじゃんか。親父にとっても孫なんだから」
「そういうもんなのさ」
「ふーん」
「だからお前に期待してんだよ、俺は(笑)」
「ん?」
「いつになったら俺は内孫持てるんだ?(笑)」
「孫って…その前に嫁さん見つけなきゃいけないだろが」
「そうだよ、それだよ。見つけたのか?」
「………」
「なんだよ、浮いた話のひとつもないのか?」
「………あるよ」
「おお!?やっとこさ彼女できたか!!」
「いや、彼女ってわけじゃ…。ただ…好きな人がいるんだ」
降ってわいたキッカケに俺は飛びついた。
思いつくまま、恵子ちゃんのことを語った。
彼女との出会い。
彼女の人となり。
彼女に告白されたこと。
それを無碍にしたこと。
そして、彼女が母の縁者であること。
何もかもを素直に、ありのまま、夢中でしゃべった。
気がつくと、親父はじっと下を見つめながら黙りこくっていた。
(あ………)
やはり…ダメか。
親父の表情は見えなかったが、突き刺さる沈黙に俺の口も動くのをやめてしまった。
その瞬間だった。
どん、と俺の頭に鈍い痛みが走った。
親父が、身を乗り出して俺の頭にゲンコツを落としていた。
拳を引き、無言で親父が俺をにらみつけている。
何が起こったのかはわかっていた。
母の縁者に惚れた俺に、親父が激怒したのだ。
…と、思っていた。
しかし、ようやく吐き出された親父の言葉は、俺の理解したものとは違っていた。
38ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:03:11.54 ID:V88tLildO
「ばかやろが…お前はその歳になってもまだ、俺のゲンコツが欲しいのか!」
「………」
「お前の結婚は、お前の問題だろ?好きにすりゃいいだろうが!!」
「………え?」
「それを…俺と母さんのことで…そのコの気持ちまで踏みにじるなんて…! …お前も俺も、情けねぇ!」
親父は怒っていた。
けれどそれは、優しい怒りだった。
「俺や母さんのことを心配してくれたお前の気持ちはうれしい。だけどな、それは親孝行じゃあ、ないぞ。お前は、お前のことだけを一番に考えてくれればいい。お前が選んだコなら心配はない。こう見えても俺、お前のこと信用してるんだぞ(笑)」
鼻の奥が痛い。
瞼が熱くなった。
「健吾、しあわせになってくれ」
とどめ。
もう耐えられない。
「泣くな馬鹿。いい歳こいて(笑)」
小さな店でよかった。
この顔はとてもじゃないが人前に出せない。
がびがびになった顔を隠しながら店を出た。
親父のアパートまで数百メートル、ふたりで歩いた。
さっきの余韻が抜け切れなくて、俺は一言もなかった。
親父は口笛を吹いていた。
ふいに、親父が俺の頭を撫でた。
「な、なんだよ!?」
「痛かったか?」
「ん?ああ、…ああ(笑)」
「ふふん…ばかやろ(笑)」
「うん(笑)」
「母さんも、賛成してくれたんだよな?」
「うん。同じようなこと言われた」
「そうか。…今度、彼女に会わせろよ」
「うん、もちろん」
「…といっても、もうお前、彼女に見限られてるかもしれんな(笑)」
「やっ、やなこと言うなよ!」
「ふふ。早めに会えよ」
「うん」
親父がまた口笛を吹き始めた。
親父が部屋に入っていくのを見届けた後、表通りに出てタクシーを拾った。
乗り込むや否や、どっと倦怠感が押し寄せる。
だが心地よい気だるさだった。
そっと、頭のてっぺんに手を当てた。
…膨らんでる。
恐るべし、アーノルド。
もうすぐ還暦を迎えるというのに。
じわじわと、小さな痛みを自覚した。
笑いがこみ上げてくる。
(30過ぎて…親父の鉄拳制裁を食らうとはな)
高校の時以来のこの痛みが、大切なものに思えた。
39ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:04:15.29 ID:V88tLildO
太田家に帰ると母がまだ起きていた。
待っていたのだと思う。
「おかえり。…お父さん、元気だった?」
「うん」
「そう。…で?」
「話したよ」
「うんうん。それで?」
「怒られた。んで、殴られた」
「え!?」
「俺のことなんて心配してんじゃねぇ、って」
「ああ…なんだ、びっくりしたぁ。…そっか。そっかぁ!」
緊張していた母の顔が緩んだ。
「よかったねぇ」
「うん…ありがとな」
母が笑顔で頭を振った。
出されたお茶をしみじみすすっていたら、母がいつもの軽口に戻った。
「でもさ」
「うん?」
「恵子ちゃん、もう彼氏できてたりして(笑)」
親父と同じようなことを言う。
いや、そんなこと………あり得る、あり得るよなぁ。
にわかに不安感が湧いてくる。
無意識に湯呑みを握り締めていた。

翌日は昼近くに起きた。
お父さんも母もとっくに仕事に出ていた。
居間のテーブルの上に母のメモ書きがあった。
『ごはんはテキトーに』
考えてみれば今日はまだ平日。
休みなのは俺だけ。
ちょっとした解放感に、スキップしながら台所へ行った。
冷蔵庫を漁り、朝飯にありつく。
ついでに缶ビールも失敬。
昼間のアルコールはよく効いた。
寝転がってテレビを観ながら、贅沢な閑暇を味わった。
ふと女性タレントに目がいった。
以前から恵子ちゃんに似ていると思っていたタレントだった。
親父と母の予言(?)が脳裏をよぎる。
がばっと跳ね起き、携帯を手にとった。
(昼休みだよな)
1…2…3…4…。
10コールを数えても恵子ちゃんは電話に出なかった。
留守電に繋がる。
けれどメッセージは吹き込まなかった。
1時間後。
また恵子ちゃんの携帯に電話した。
(もしかしたら、休憩は1時からかも)
あきらめが悪い。
しかし結果は同じだった。
缶ビールは5本目に入っていた。
悲観的な考えばかりが頭に浮かぶ。
明らかに酔いが手伝っていた。
(夜にしよう)
昼寝した。
40ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:06:01.98 ID:V88tLildO
気持ちの良い午後を過ごしたはずなのだが、仕事から帰ってきた母に起こされた時は気分がすぐれなかった。
すぐにでも恵子ちゃんに電話したい気持ちを抑え、夕飯をとる。
食事の最中、携帯が鳴った。
もしやと思い、画面を見ると案の定、恵子ちゃんからだった。
「あ、職場からだ」
棒読み。
今更、母に嘘をつかなくてもいいのだが、この時はわけのわからない恥ずかしさがあった。
足早に2階の部屋へと移る。
「昼間、電話くれたんだねー。ごめんね」
「こっちこそごめん。休憩中だと思って」
「そうだったんだけど気がつかなかった(笑)」
「そか(笑)」
「元気?そっちは死ぬほど暑いでしょ?」
「実は今、一足早く帰省中なんだ。土曜日に同僚の結婚式があって」
「そうなんだー」
「うん。それで、日曜日までいるつもりなんだけど、それまでの間、よかったらメシでも一緒にどうかなって」
「あ、なら明後日の金曜日はどう?土曜はウチの会社休みだから、私も気兼ねなくゆっくりできるし」
「気兼ねなくゆっくり飲めるし、の間違いだろ(笑)」
「そうそう…ってオイっ!(笑)私最近、お酒飲む量少なくなったんだよお」
「年のせい?(笑)」
「ちーがーいーまーすー(笑)耳の薬のせいだもん」
「え?耳って…ずいぶん前に三半規管の病気になったってやつ?あれって治ったんじゃなかったの?」
「ううん。今もバリバリ継続中(笑)」
「そっか。以前、快方に向かってるって聞いたから、てっきり完治したのかと思ってた」
「お医者さんには完全には治らないって言われたの。まあ、たまにめまいとか頭痛がする程度で、日常生活に支障はないんだけどね。薬を飲みつつ、一生付き合っていくって感じ」
「その薬が酒と相性悪いの?」
「飲んでもいいけど量は抑えなさいって言われた」
「なるほど」
「だから、私の目の前であんまり飲まないでね。誘惑に負けちゃうから(笑)」
「わかった。すっごく美味しそうに飲むことにする」
「わかってないじゃん!(笑)」
兎にも角にも、約束をとりつけた。
(決戦は金曜日、なんて歌があったな)
俺の大好きな言葉“悶々”がもうすぐ消滅する。
どちらに転ぶにせよ、だ。
41ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:07:00.73 ID:V88tLildO
インターバルのように空いた木曜日。
あの日、俺は何をしていたのだろうか。
最後の“悶々”を楽しんでいたのだろうか。
思い出せない。
だが確実に24時間は過ぎ行き、俺にとって生涯忘れえぬ金曜日が訪れた。

恵子ちゃんの仕事が終わってからということで、待ち合わせは夜8時に設定していた。
家にいても余計なことを考えるばかりなので、日中から街に出た。
しかし、何をしていればいいのか思いつかない。
映画館に行ってみた。
ストーリーがまったく頭に入らず、1800円をドブに捨てた。
本屋に入った。
知らず知らずのうちに恋愛ハウツー本を手にとっていた。
しかもよく見ると女性向けだった。
喫茶店で休んだ。
ぼーっと、恵子ちゃんのことを考えた。
…なんだよ。
これじゃ家にいるのと同じじゃないか。

7:00PM
散々、街を彷徨ったのに約束の時間までまだ一時間もある。
…酒の力を借りよう。
決戦に備えて景気づけにもなる。
友枝とあの時行ったバーへと向かった。
開店まもない店内には客の姿はなかった。
いつものバーテンが「お久しぶりです」と俺を迎えた。
「待ち合わせ前なんで、一杯だけもらえますか?」
「はい。何になさいます?」
しばし考える。
思いつくのはひとつしかなかった。
「この間いただいた“両想い”、アレ…いいですか?」
カップルにしか出さないというカクテル。
しかしバーテンは「憶えていてくださって、ありがとうございます」
快く応じてくれた。
淡いピンク色の水中を、ビーズのような気泡が踊っている。
今日は自分のために飲む。
軽く願掛けした。その様を、バーテンが微笑みながら見守っていた。
なんだか気恥ずかしい。
ちびりちびり、じっくりと時間をかけて飲み干した。
「次回は2つ、お出ししたいです」
店を出る時にかけてくれたバーテンの声が、とても心強かった。
42ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:08:01.79 ID:V88tLildO
8:00PM
時間ぴったりに、恵子ちゃんは待ち合わせ場所へと現れた。
久々に見る恵子ちゃんのスーツ姿。
…タイトスカートって、いいなぁ。
「行きたいお店があるの」
恵子ちゃんの先導で向かった店は、初めてふたりで食事をしたあの店だった。
ひとり、気分が高揚する。
なんだか恵子ちゃんにお膳立てをしてもらっているようだ。
その日のオススメのワインをオーダーし、乾杯した。
俺はその杯に、またふたりでここに来れたことへの祝杯を重ねた。
「電話ではああ言ったけど、気を遣わないで飲んでね」
彼女の気遣いが愛おしかった。
だが今夜は俺も酒は控えるよ。
飲んだくれてる場合じゃないんだもん。
今日ここで、すべてが決まる。
終わる。
終わらせる。
しかしそんな意気込みも束の間、一時間も経つ頃には俺の心は苛立ち始めた。
ふたりで話しているとどうしても馬鹿話で盛り上がってしまう。
望む方向に会話を持っていけない。
なんとも色気のない話ばかりが続いた。
楽しいんだけど…いや、楽しいからこそタチが悪い!
「デザートでも頼もっか」
彼女に品書きを渡し、無理矢理、会話を中断した。
流れに変化をつけようと必死だった。
“デザート作戦”は功を奏し、恵子ちゃんはデザート選びに夢中になった。
ようやくシンキングタイムを手に入れた。
…しかし、どうしたものか。
切り口がわからない。
大体、こんな公衆の面前で女性に告白したことなんて今まで一度もない。
気の利いた言葉がひとつも浮かんでこない。
どうしよう。どうしよう。
「はい。私は決まり。健吾君はどれにする?」
時間切れ。
「じゃ、じゃあ、俺は〜」
“イチゴとバナナの井戸端会議”なるものを注文した。
あれほど時間の観念がなくなった日はないだろう。
気づくと11時をまわっていた。
「そろそろ出よっか。終電も近いし」
おとなしく従った。
だがあきらめたわけではない。
駅までの道のりは徒歩10分。
当初の予定とは大幅に異なってしまったが、この際、四の五の言ってられない。
歩きながら、だ。
「あのね」
うわっ。
…恵子ちゃんに言葉を盗られた。
「実は、ね」
ここまでは俺の言いたいことと一緒だった。
「今、交際申し込まれてるの」
噴き出した脂汗が夜風に撫でられた。
(ああ、気持ちいいなぁ)
などと考えていた。
43ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:09:17.31 ID:V88tLildO
「…あ、相手は?」
現実に向き直った。
「同い年の、会社の人。職場でよく遊びに行くメンバーのひとり」
「じゃ、お互いによく知ってる仲なんだ…」
「うん」
「…恵子ちゃんは、その人のことどう思ってるの?」
「うん…すごく、いい人。ただ…」
「…ただ?」
「結婚を前提にって、言われたの」
熱帯夜、俺だけが凍りついた。
どうにか、口だけ解凍する。
「そ、そりゃ余程、恵子ちゃんのことが好きなんだねぇ」
「………」
「それで…ど、どうなの?」
「なにが?」
「い、いや、なにがって…悪い気はしないんでしょ?その人のこと」
「…わかんない。今まで仲の良い友達だと思ってたから…そんな風に見たことなくて」
「そうか…」
「ねぇ、健吾君。男の人って、付き合う前からいきなり結婚を意識するものなの?」
「そんなの…男も女も関係ないと思うよ。恵子ちゃんとその彼の間には、今まで身近に接してきた時間があったわけで、その中で彼が、恵子ちゃんを『この人だ!』って、感じたということでしょ?付き合う前の時間だけで、彼には充分だったんじゃないかな?」
なにを真剣にアドバイスしてるんだろ、俺。
「男女の仲になる前に…ってのは少し性急かもしれないけど、恵子ちゃんの良さに気づいたんだから、その彼、見る目ある人だと思うよ」
「やだなぁ、いつもの健吾君らしくないよ(笑)オチがないじゃん(笑)」
「いや、冗談じゃなくて(笑)」
本心なんだ。
「ありがとね、健吾君」
「いや…大したコト言えてないけど…」
「ううん…そうじゃなくて。…ありがとう」
?どういう意味か聞きたかったが、すでに改札の前まで来ていた。
「送ってくれてありがと!ここでいいよ」
「うん…」
最終電車が来るまでまだ5分くらいあった。
引き止めたい。
何か話題は………何か話題を…。
「じゃ、健吾君。さよなら」
俺の言葉は、待ってはもらえなかった。
…これで終わりか?
改札の向こう、恵子ちゃんが笑顔で手を振っている。
44ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:10:29.58 ID:V88tLildO
………。
あわててSuicaを取り出し、改札に叩きつけた。
振っていた手を止め、恵子ちゃんがキョトンと俺を見ている。
「送る。ホームまで」
「え?いいよぉ(笑)」
「いいから…いいから…」
恵子ちゃんが眉をひそめて俺を見つめた。
ホームには最終電車がもう止まっていた。
時間調節しているようだ。
恵子ちゃんは電車の中。
俺は白線の上。
「じゃあ、これでほんとにさようなら(笑)」
さようなら、って、こんなにさみしい言葉だったんだ。
発車のアナウンスが、俺の背中を押した。
俺は電車に飛んだ。
すぐにドアは閉まった。
口をポッカリ開けて、恵子ちゃんが唖然としている。
「乗っちゃった(笑)」
「な、健吾君、なにしてるのぉ!?」
恵子ちゃんの口を見た。
「ごめん、恵子ちゃん。次の駅で、降りてくれ」
恵子ちゃんの口が「うん」と言ってくれた気がした。
次の停車駅までのほんの数分間、恵子ちゃんは俺の顔をずっと見ていた。
俺も恵子ちゃんを見つめ、決して負けなかった。
扉が開き、トン、と足をホームに下ろした。
すかさず振り返る。
ちゃんと恵子ちゃんも後に続いていた。
電車が出発するのを待つ。
電車が去った。
他の乗客がホームからいなくなるのを待つ。
いなくなった。
恵子ちゃんはずっと黙っていた。
「恵子ちゃん」
「…はい」
「さっきの彼氏の話、断ってください!」
「………」
「俺、恵子ちゃんのことが、好き、です」
恵子ちゃんが俺を見上げている、気がした。
震える四肢。
「もし、恵子ちゃんが俺のことを、ま、まだ、想ってくれてるなら、お、俺と…つきあ…てく…さい」
最後のほうの言葉は恵子ちゃんの言葉でかき消された。
「…自惚れてるなぁ(笑)」
絶句。
多分、金魚のような顔をしていたに違いない。
うわーうわーうわー。
やっちまった。やっちまったよ、おい。
とんだ勘違い野郎だったんだ、オレ…。
「でも」
視線を泳がせていた俺の鼻に、恵子ちゃんの匂いが流れ込んできた。
「ずっと…自惚れててください」
恵子ちゃんが俺の腰に両腕を回していた。
45ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:11:58.98 ID:V88tLildO
サラサラとした恵子ちゃんの黒髪が、俺の右手の中にある。
砂糖菓子のように容易く砕けそうな肩が、俺の左手の中にある。
俺は恵子ちゃんを抱きしめていた。
恵子ちゃんの匂いが俺をくすぐる。
出会った時から変わらない、いつもと同じ香り。
両腕に、もっともっと力をこめたくなる。
「ごめんねぇ。そろそろ、ホーム閉めたいんだけど(笑)」
ふたりとも、ビクッとなった。
すぐそこで、駅員のおじさんが笑っていた。
お互いにお互いの顔の赤さを認めつつ、「す、すみませんでした!」ふたりで改札まで駆けた。
笑いながら。

改札を出るとすぐ、堰を切ったように俺は再び恵子ちゃんを抱き寄せた。
今度はもっとちゃんと、もっとやさしく。
10分。
灯りも消えた駅の入口に、ふたり、佇んだ。
このままいつまでも恵子ちゃんの髪を撫でていたかったが、思い切って、身体を離した。
恵子ちゃんが俺を見上げた。
たまらず、また抱き寄せてしまった。
三度、恵子ちゃんの匂いを思いっきり吸い込んだ。
くすくすと、恵子ちゃんが笑った。
「すっごくクンクンしてるね(笑)」
「うん(笑)恵子ちゃんの匂い、好きだ」
後から聞いたのだが、アリュールという香水だそうだ。
飽きることなどなかったが、さすがに今度はちゃんと身体を離した。
代わりに恵子ちゃんが指を絡めてきた。
つないだ手を子供のように振りながら、ふたり歩き始めた。
「…ごめんな。変なところで降ろしてしまって…」
ようやく頭が冷静に考えることを思い出した。
「ううん…うれしかったから…いい」
「俺もすごくうれしい」
「…照れるね(笑)」
「照れる(笑)」
照れてばかりもいられない。
「どうしよ?また街に戻ってどこかで飲む?」
「うーん…」
恵子ちゃんが俺の顔を覗き込んだ。
「あのね。敏夫叔父さん(お父さん)のとこ、行きたい」
そう言うや否やすぐに顔を伏せた恵子ちゃんの耳は、暗がりでもはっきりとわかるくらい、真っ赤だった。
「…わかった。行こ!」
すぐさまタクシーを拾った。
46ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:13:19.64 ID:V88tLildO
太田家にはまだ灯りがともっていた。
明日はお父さんも母も休みだから夜更かししているのだろう。
玄関の鍵は開いていた。
「ただいま!」
ことさら元気に扉を開けた。
出迎えた母が俺たちふたりを見て目を丸くした。
「ふたりで飲んでたんだ。調子にのって、終電間に合わなくしてしまって」
とってつけた言い訳。
だが母は気にするでもなく、うれしそうに恵子ちゃんを中へと誘った。
居間に行くと、お父さんがテレビ画面に張り付いていた。
どうやらこの夫婦はテレビゲームに熱中していたらしい。
…このふたりも来年、還暦を迎えるのだが。
お父さんも母同様、俺たちを見て驚いた。
俺は同じ言い訳をした。
「今夜は泊まってもらいますから」
母が恵子ちゃんの実家に電話を入れてくれた。
4人で茶を飲む。
無言。
だがお父さんも母もニコニコと俺を見ている。
恵子ちゃんから湯気が出そうだった。
(…バレバレじゃないか(笑))
もとからそのつもりだ。
用意していた台詞を口に出した。
「俺たち、付き合うことにしました」
お父さんと母の顔がパーッと輝いた。
「おお!そうかぁ、そうかぁ」
お父さんがはしゃいでいる。
「よかったねぇ、よかったねぇ」
母がティッシュを鷲掴みにして顔を拭っていた。
恵子ちゃんは恥ずかしそうに湯呑みを弄んでいた。

翌朝早くに恵子ちゃんは家へと帰っていった。
お父さんの車を借りて送るつもりだったのだが、「午後からお友達の結婚式でしょ?それまで休んでて。昨日は遅くまで起きてたし」という恵子ちゃんの言葉に甘えさせてもらうことにした。
彼女が帰った後、恵子ちゃんの実家に電話を入れた。
恵子ちゃんの母・浩美さんが出た。
「すみません。昨晩は恵子ちゃんを連れまわしてしまって」
「いいええ。健吾君なら安心。また誘ってあげてね」
安心…か。
(早いうちに恵子ちゃんの両親にも挨拶しなきゃな)
少しも気は重くはならず、むしろその日を焦がれた。
47ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:14:35.31 ID:V88tLildO
昼前。
式から参列することになっていたので、早めに式場へと向かった。
郊外の大きなレストランが式場だった。
レストランウェディングというやつだ。
東京などでは珍しくないが、まだまだこの街では目新しい。
控え室で待っていると、友枝が顔を見せた。
俺の姿を認めるや、小走りに駆け寄ってくる。
「おおおつかさぁぁぁん」
予想を裏切らず、友枝はガチガチに緊張していた。
真夏とはいえ、空調のきいた室内なのに、燕尾服の襟元が汗でびっしょりだ。
「だいじょうぶかぁ?」
「気持ち悪いです。吐くかも」
「緊張してるだけだよ。しっかりせい(笑)」
「ダメです。吐いてきます」
そそくさと友枝が手洗いへと消えた。
どうやら式に参列するのは新郎新婦の友人がメインのようで、会社関係は俺と上司だけだった。
上司と話しているのも飽きた俺は、式場内を当て所もなくうろついた。

一際賑わっている部屋があった。
覗いてみると、女友達に囲まれている芽衣子さんの姿があった。
純白のウェディングドレスが、窓から差し込む陽光にやわらかく包まれていた。
美しい。
この姿を見て、ため息の出ないヤツなどいないだろう。
見惚れていたら、芽衣子さんも俺の姿に気づいた。
何か言いたげに、首を伸ばしている。
近くに行きたかったが、デジカメや携帯を手に群がる女性たちに気圧され、(また後で)と手を振り、部屋を出た。
廊下で友枝と再会した。
文字通りスッキリとした顔だった。
「大塚さん!芽衣子さん、もう見ました?」
「うん」
「綺麗でした?綺麗でした?俺、まだ見てないんです」
軽〜く、友枝の頭をひっぱたいた。
「ああっ、セットが!セットが!なにするんスか!?」
「さっさと行け(笑)」
芽衣子さんの部屋の方向に、友枝をドンと押してやった。
やっぱりというか、式の間中、ずっと友枝は泣いていた。
芽衣子さんはこれ以上ないくらいやさしい顔で、友枝の顔にハンカチを宛がっていた。
ふたりの姿に、参列者から微笑みがもれた。
(でも…俺も泣いちゃうかもしれないな)
ブーケを投げる芽衣子さんの姿に、未来をダブらせた。
48ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:15:37.36 ID:V88tLildO
2次会は街中のレストランバーで行われた。披露宴から合流した同僚たちと、友枝を囲み、冷やかす。
いまだ興奮冷め遣らぬ体の友枝だったが、酒と時間がいつもの彼を呼び覚ましていった。
「大塚さぁん、今日は何の日か知ってますう?」
しな垂れかかっていた友枝が顔を近づけてきた。
「お前が裏切り者になった日(笑)」
「なんスか裏切り者って!大塚さんもさっさと独身にオサラバしなきゃダメっスよ」
「わかってるよぉ。早くお前のお仲間になりた〜い(笑)」
「んふっふっふ」
「なんだぁ?気色わりーな」
「だいじょーぶ。大塚さんも結婚できます」
「他人事だと思って(笑)」
「今日はね、大安じゃないんスよ」
「そーなの?…でも、だから?」
「友引っス」
友枝が俺の肩をバンバン叩いた。
「友引に結婚式すると、来てくれた人も結婚できるんですって。感謝してくださいよう!大塚さんのために、わざわざ大安避けて今日にしたんスからぁ」
「そっか。ありがとな」
「てことで、今日はがんばってください!芽衣子さんの友達いっぱいきてるんスから」
友枝。もう、がんばらなくてもいいんだぜ、俺。

やがて友枝が友人たちと余興を披露し始めた頃、友人や同僚から解放された芽衣子さんが俺のもとへとやってきた。
「だいじょうぶ?疲れたんじゃない?」
「うん、だいじょうぶ。健吾君、今日は本当にありがとう」
「いやいや。…あ。こっちこそ、ありがと(笑)」
「え?」
「わざわざ“友引”を選んでくれたんだってね。聞いたよ(笑)」
「ああ(笑)すっごく彼こだわってたの、友引に。『縁起でもかつがないと大塚さんは結婚できない!』って(笑)」
「失礼な(笑)」
「ねぇ(笑)」
友枝を見、ついで芽衣子さんを見た。
「…いいヤツだよな」
「でしょ?」
芽衣子さんのノロケがうれしかった。
「健吾君、これ…」
芽衣子さんが小さな紙包みを差し出した。
中には黄色い花が一輪入っていた。
「ブーケに使った花。メランポジウムっていうの」
芽衣子さんが花をやさしくつまみ、胸のポケットチーフにそっと挿してくれた。
「健吾君にあげたかったんだ」
“友引”と“メランポジウム”
ふたつの想いに応えたいと思った。
49ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:16:33.66 ID:V88tLildO
「芽衣子さん。俺もねぇ…芽衣子さんに招待状を送れると思う。まだまだ先の話になると思うけど…」
口をついて出た自分の言葉に照れ、俯いてしまった。
芽衣子さんの声が1オクターブ高くなった。
「ホントに!?…じゃあ…なのね?」
「うん」
「…よかったぁ…」
ウンウンと、芽衣子さんは何度も頷いていた。
お互いに、おめでとうと言い合った。

3次会は辞退した。
腕に絡まる友枝を芽衣子さんに押し付け、熱帯夜の街に出る。
時刻は8時を回っていた。
今一番聞きたい声を求めて、携帯を手にとった。
「お疲れ様」
ああ、恵子ちゃんの声だ。
もう俺はメロメロだった。
更なる欲求に引火する。
「会いたい…なぁ」
「会えるよ」
事も無げに恵子ちゃんが言った。
「今ね、健吾君の近くにいるの。友達と会ってたんだ。今、別れたから…」
「すぐ来て!今来て!早く来て!」
電話の向こうで恵子ちゃんが爆笑していた。
「会いたい」と言えることに感動した。
(“言える”関係になったんだ)
改めて昨夜の喜びを反芻した。
50ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:17:54.28 ID:V88tLildO
指定した喫茶店には恵子ちゃんが先に到着していた。
奥の席に座る恵子ちゃんに近づいていくと、自然に目が合った。
お互いの顔がほころぶ。
俺はどうしちまったのか。
十代の時のような、ふわふわとした感覚。
口にするのも恥ずかしい言葉が頭に浮かぶ。
ときめき。
落ち着いて、冷静に、衝動を抑えながら、恵子ちゃんの向かいに座った。
「お疲れ様!」
満面の笑みで俺を迎えてくれた恵子ちゃんの目線が、俺の顔から胸へと移動した。
「そのお花、最初から差して行ったの?」
「ん?ああ、違う違う(笑)もらったんだ、結婚式で」
「ああ、そっか。なるほど(笑)」
「ガラじゃないなって、思ったんだろ?(笑)」
「うん(笑)」
「(笑)メランポジウムって言ってたかな。ブーケに使った花だって」
「へぇ」
「…恵子ちゃん、これね」
「ん?」
「花嫁さんにもらったんだ」
なぜか、きちんと話しておかなくてはと思った。
「その花嫁さん、昔、俺が付き合ってた人なんだ」
「転勤の時に見送りに来てた人?」
「…憶えてた?」
「うん」
一瞬、場が凍りついたような気がして、慌てておどけた。
「や、妬ける?」
俺の馬鹿な質問に、恵子ちゃんは平然としていた。
「ううん。全然」
そして恵子ちゃんがニコリとして言った。
「だって、これからは私が健吾君のとなりにいるんだもん」
テーブルを飛び越え、恵子ちゃんに抱きつきたかった。
だが代わりに憎まれ口を言って我慢した。
「なぁんだ。つまんねーの(笑)」
「御生憎様(笑)」
その後一時間ほど、恵子ちゃんとのおしゃべりを楽しんだ。
チラチラと時計を見出した俺に恵子ちゃんが言った。
「まだ時間だいじょぶだよ。今日、車で来たし」
「いや、二日連続で俺のせいで帰り遅くするのは…。守さんたちも心配するだろうし」
伝票を持ってレジへと向かう。
のそのそと恵子ちゃんが後に続く。
視線を感じる。
じーっと俺を見てる。
なんとかかわして外に出た。
「さて…帰ろっか」
「やだ」
間髪いれずに恵子ちゃんが遮った。
ダダをこねるなんて珍しい。
いや、初めてのことだ。
51ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:19:06.07 ID:V88tLildO
「やだって…そんな(笑)」
「だって…」
「だって今日、初めてのデートなんだよ?恋人同士になって初めての!」
そっか。そうだった。
言われてみればそうだった。
恵子ちゃんが俺を見上げていた。
その瞳の中、ネオンがくるくる廻る。
2、3メートル先、隣の雑居ビルの非常階段まで恵子ちゃんの手を引いた。
向き直り、ぎゅーっと抱きしめた。
こんちくしょーめ、可愛いなぁ!
俺の中で、ある考えが首をもたげた。
「恵子ちゃん」
「…ん」
「やっぱり今日は帰ろう」
「………」
「その代わり」
「?」
「俺も恵子ちゃんの家に連れてって」
腕の中で俯いていた恵子ちゃんが、がばっと顔を上げた。
「んえっ!?」
その滑稽な声と表情に、腹を抱えて笑ってしまった。
「なに笑ってんのっ!?…ていうか、なに言ってんの!?」
目頭と痛む腹を押さえ、動揺する恵子ちゃんをもう一度抱きしめた。
「ちゃんとね…守さんたちに挨拶しときたいんだ。お付き合いさせてもらってます、って」
「えっ!?いいよぉ、そんなの(笑)」
「まだ早い?」
「ううん、早いとかじゃなくて…。ウチの親、そんなに形式張ってないから、だいじょうぶだよ?」
「俺がね、ちゃんとしときたいんだ」
我ながら相変わらずアタマのカタイ奴だと思ったけれど、ほんの一拍の後、恵子ちゃんが頷いてくれた。

恵子ちゃんの家までは高速で40分程度の道のり。
ふと車窓を流れる街灯を見送りながら、俺は自分に起こっている変化に気づいた。
なんだか恵子ちゃんとの会話に熱が入らない。
会話がブツリブツリと途切れる。
そのうち、押し黙ってしまった。
この緊張はなんだ?
まるで、結婚の挨拶に行く時のような…。
馬鹿な。
そんな大仰なものじゃないだろうに。
何度も自分に言い聞かせたが、一度意識した心が、頭の命令に従うはずもなかった。
52ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:20:43.00 ID:V88tLildO
「はい。着きました、と」
エンジンを止めた恵子ちゃんが、俺をまじまじと見つめている。
右顔面にその視線を感じてはいたが、俺は彼女に向き直ることも出来ず、フロントウインドウに熱い視線を投げ続けた。
「だいじょうぶ?」
看破されていることにたじろぎ、うろたえ、虚勢をはった。
「な、なにが!?…さ、さあ、行こう!」
恵子ちゃんに一瞥もくれず、玄関へとまっすぐ進んだ。
しかし…扉を開けられない。
チャイムに手が伸びない。
恵子ちゃんが一歩後ろで俺の様子を見ていた。
振り向き、懇願した。
「…ごめん、開けてぇ」
恵子ちゃんが、手で口を押さえながら笑いをかみ殺している。
彼女の気が済むまで俺は待った。
ようやく笑いを終わらせてくれた恵子ちゃんが、ゴホンとひとつ咳払いをして扉を開けた。
緊張復活。
「ただいま〜」
出迎えたのは浩美さんだった。
「あら、健吾君!?恵子を送ってくれたの?」
「い、いえっ、運転してたのは恵子ちゃんで、あの、その」
「とにかくあがって」
もう堪えられないとばかりに恵子ちゃんが吹いた。
ちょっと恵子ちゃんが小憎らしくなった。
居間に通され、茶を出された。
石像のように固まっている俺を見て、相変わらず恵子ちゃんは肩を震わせている。
浩美さんが台所に行った隙に、軽く恵子ちゃんの首を絞めてやった。
またも恵子ちゃんが吹き出した。
そこへ、風呂上りの守さんが姿を現した。
「おお、健吾君!よく来たよく来た!」
「す、すみません、またこんな遅くまで恵子ちゃんを引っ張りまわしてしまい…」
「うんうん。これからも誘ってやってね」
「は、はい。もちろんです…」
沈黙には到底耐えられそうにない。
俺は矢継ぎ早に言葉を続けた。
「それで…あ、あの俺、恵子ちゃんとお付き合いさせていただきたくて…今日…来ました」
伏せていた目を恐る恐る上げ、守さんと浩美さんを見た。
ふたりともキョトンとしていた。
「え…いや、ずっと前から付き合ってたんじゃないの?」
守さんの言葉に驚いた。
口から何かが出ちゃうんじゃないかと思った。
53ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:22:12.50 ID:V88tLildO
「いやぁ、てっきりそうなんじゃないかと思ってたんだけど。でもふたりの口からちゃんと聞くまでは、余計な口は挟まないようにしようって、私ら話してたんだよ」
「え…いえ、正式には昨日からで…」
「ああ、そう!そうかぁ、そうなのかぁ」
守さんと浩美さんが微笑みを交わしていた。
「これからもよろしくね、健吾君」
すぐには頭の整理がつかず、恵子ちゃんを見た。
あんぐりと恵子ちゃんは口を開け、呆けていた。
俺の視線に気づき、恵子ちゃんも俺を見る。
ふたりの口に笑みが浮かび、やがて大笑いした。
(やった!やった!やった!)
ひとりだったら、踊り狂っていたと思う。
守さんも浩美さんもしきりに泊まることを勧めてくれたが、丁重にお断りした。
かろうじて電車もあったし、なにより『厚かましいヤツ』と思われたくなかった。
守さんたちがそんな人たちではないことはよくわかっていたが、少しでも良い印象を与えたかったのだ。
相変わらず些細なことを気にするヤツだった。
再び恵子ちゃんの車に乗り、駅に向かう。
車が走り出すと同時に、ふたりとも口を揃えて言った。
「…びっくりしたねぇ」
また笑い合った。
落ち着き、余裕を取り戻した頭が考えた。
(あのまま…“結婚を前提に”って言っても、よかったんじゃないだろうか?)
…いやいや、いくらなんでもそれはまだ早いな。
恵子ちゃんの気持ちもあるし。
心の中でかぶりを振っていたら、恵子ちゃんがまた俺の心を見透かした。
「なんだか…結婚の挨拶みたいだったねぇ(笑)」
驚き、恵子ちゃんを見る。
俺の視線に照れたのか、自分の言ったことに照れたのか、恵子ちゃんはあわてて顔を右ななめ前方へと向けた。
そのさまに俺までも照れてしまい、俺も左ななめ前に顔を向けた。
倦怠期のカップルのように、互いに別の方向を眺めるふたり。
しばし間をおき、振り絞る。
「でも……いつか、…いや………いずれは…」
そうなったらいいなぁ…と、言葉を続けようとしたが、「ま、まぁ、先のことはわからないし……恵子ちゃんも…恵子ちゃんが…よければ…」歯切れの悪い言葉が続く。
だが恵子ちゃんの一言が、終止符を打った。
54ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:23:27.83 ID:V88tLildO
 
「早く結婚してくれ(笑)」

首がねじ切れるほどの勢いで恵子ちゃんを見た。
彼女は相変わらず明後日の方向を向いている。
「ほ、ほら、私も若くないし…もうすぐ35歳だし…あ、ほら35って、四捨五入すると40なんだよぉ…だから…だから…」
慌てて取り繕った言葉に、恵子ちゃんの照れが見えた。
こみあげる、今日、何度目かわからない高揚感。
「恵子ちゃん、車止めて」
なぜ?とも聞かず、言われるまま恵子ちゃんは車を路肩へと止めた。
止まるや否や、いまだにそっぽを向いている恵子ちゃんの顎に、そっと手を添えた。
くるりと彼女が俺に向いた。刹那。彼女のくちびるは俺のものに。俺のくちびるは彼女のものになった。
ゆっくりと、長く。呼吸など無ければいい。そうは思ったが、限界もある。
磁石を引き剥がすかのように離れた。
彼女の口から吐息がもれた。
たまらず、またくちびるを寄せた。
…結局、3回それを繰り返し、4回目にはふたりで笑い出した。
「俺って、しつこいなぁ(笑)」
「私も…しつこいよ」
5回目は恵子ちゃんのほうからだった。

シフトレバーをはさんだ無理な体勢で抱き合っていた。
心とは裏腹に、無理矢理、身体を離してお互いの席に戻った。
と、膝に花びらが一枚落ちた。
見ると胸のメランポジウムがぐったりしていた。
抜き取り、恵子ちゃんの小さな手のひらに置いた。
「あげる」
「ありがとお」
恵子ちゃんが両手で花を包んだ。
「…明日、帰っちゃうんだよねぇ」
「うん」
「…あーあ…」
「近いうちにまた帰ってくるから」
「…うん、待ってる。でも無理しちゃダメだよ?」
「ありがと」
「私も今度そっちに行くから!健吾君の住んでるトコ、見たい」
「いっぱい、見せたいものがあるよ」
「楽しみだな〜」
無理して明るく振舞う恵子ちゃんがとてもいじらしかった。
身体が壊れてしまわないように、力加減をして抱きしめるのはとても難しかった。
「明日、見送り行くね」
腕の中の恵子ちゃんの声はか細かった。
55ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:24:41.80 ID:V88tLildO
翌日。太田家での朝食の席で、昨晩田中家に挨拶に行ったことを報告した。
お父さんも母も、微笑みながら俺の報告を聞いてくれた。
よろこぶふたりの顔を見て、自分が満ち足りていることを、温かなメシと一緒に噛みしめた。
いつものようにお父さんの車で駅へと向かった。
駅に着くなり、ふたりには悪いが早々に帰ってもらう。
恵子ちゃんが待っているのだ。
秘密にする必要はないが、やっぱりまだ照れくさかった。
駅ビルの喫茶店で恵子ちゃんと落ち合った。
今日も笑顔で俺を迎えた恵子ちゃんだったが、時折、少しだけ浮かない表情を見せた。
(俺と離れるのが辛いのかな?…んもう、愛いやつめ)などと気を良くし、恵子ちゃんの手を握る。
(え…?)
その手の熱さに驚いた。
「恵子ちゃん!熱あるんじゃないか!?」
「あ、ちがうのコレ。薬の副作用」
耳の薬を飲むと一時的に熱や軽い頭痛が起こるのだという。
「今日は朝ごはんの時に飲むの忘れちゃったから、ついさっき飲んだの。だいじょうぶ。あと30分もすれば収まるから」
眉が八の字になっているのに、精一杯の笑顔で俺に答えている。
これまで病気で辛そうにしている恵子ちゃんを見たことなどなかった。
もしかしたら、俺の前で我慢していたこともあったのかもしれない。
そう思うと、とにかく何かしてあげたくなった。
だから彼女のソファに並んで座った。
「俺に寄りかかってなよ」
よくファミレスなどで当人たちしかいないのに並んで座っているカップルを見ると、(バッカじゃねーの)などと胸の中で悪態をついていたものだが、この時は自分も馬鹿のひとりになった。
髪を撫でるたびに恥ずかしさは消えた。
案外、こういうのも悪くないな。
…いや、けっこう好きかも。
56ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:25:43.92 ID:V88tLildO
すっかり元気を取り戻した恵子ちゃんはホームまでついてきてくれた。
列車がホームに入ってくるまで15分。相変わらずこの時間はイヤなものだ。
芽衣子さんとの時にも味わった、やるせない、切ない気持ち。
それを誤魔化そうと話し続けても、浮かぶ言葉は虚ろで他愛のないものだけだった。
ふと見ると恵子ちゃんは無言で俯いていた。
あ、と思い、「だいじょうぶ?また具合悪くなった?」と、彼女の顔を覗き込んだ。
泣いてた。
初めて見る、恵子ちゃんの泣き顔。
言葉も出ず見つめた。
「さみしいの。さみしいの」
感情が加速していくのが見て取れた。
「ごめんね…ごめんね…」
嗚咽まじりに何度も謝る恵子ちゃんを抱き寄せた。
彼女の震えを止めてあげたくて腕に力をこめた。
新幹線のデッキに乗り込んでからも、恵子ちゃんの手を放せなかった。
このまま、かっさらってしまおうか?
簡単なことだ。
この腕を引くだけ。
しかし未練を断ち切ったのは恵子ちゃんのほうからだった。
絡めた指をほどき、バイバイとその手を振る。
かろうじての笑顔。
言葉はない。
ドン、と無慈悲な音を立ててドアが閉まった。
あわてて小窓から恵子ちゃんを探す。
彼女の顔はまたクシャクシャになっていた。
そんな顔しないでくれ。
こっちまでつられてしまうじゃないか。
なんてことない。
しばしの別れなのだ。
自分に言い聞かせ、笑顔で彼女に手を振った。
57ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:27:59.30 ID:V88tLildO
横浜に戻ったその日の晩、恵子ちゃんからメールが来た。
「無事に着いたかな?昼間はごめんね。突然泣いたりして。いい歳して自分でも呆れます(笑)健吾君と離れるかと思ったら、急にさみしくなってしまったの。でも今はだいぶ落ち着きました。
今とても健吾君の声を聞きたいけれど、聞いたらまた泣いてしまいそうなので、今日はメールだけで我慢します。電話しちゃやだよ?(笑)」
俺も自信がないよ。
きっととんでもないことを口走ってしまいそうだもの。
なんとかメールだけにした。
5回も6回も送ったが。

仕事が無い日は夜に電話を、夜勤の日は昼間にメールをした。
毎日、彼女の声や文字に触れた。
仕事が忙しくても苦にならなかった。
短気な性格なのに腹を立てることがなくなった。
せっかちな性格なのに駆け込み乗車もしなくなった。
毎晩のように、良い夢ばかり見た。
気づくといつも笑顔だった。

「作品できたの!」
その日の恵子ちゃんの声はいつにも増して弾んでいた。
毎年4月に開催される書展の作品が仕上がったのだという。
「ずいぶん早く完成したんだね〜」
「うん!びっくりするほど筆がすすんで。今までで最高傑作だと思う。もちろん自分の中でだけど(笑)」
「へぇ。今回の題材は?」
「んー…内緒(笑)」
「なんじゃそりゃ(笑)」
「知りたかったら、来年一緒に観に行くこと!」
「そりゃ絶対行けるようにするけど…なんだよ、気になるなぁ」
「健吾君」
「ん?」
「ありがとう」
「?なにが?」
「あのね、今回の作品つくってる時、心がすごく落ち着いてたの。今まで無いくらいに。それはね、きっと健吾君のおかげなんだと思う」
「俺、なんかした?」
「ううん。なんにもしてない(笑)」
「ワケわかんねぇ(笑)」
俺も君にお礼が言いたかったんだ。
俺は毎日、笑顔でいられるよ。
そんな照れ臭いこと言えやしなくて、別の話題に入った。
「9月になったらそっち帰るね」
「だいじょうぶなの?」
「うん、休みとる。デートしよう。ちゃんとしたデート(笑)」
「うん!(笑)」
「できれば8月中にもう1回くらい帰りたかったけど、仕事忙しくて…ごめんな」
「ううん!うれしい」
その後はあれこれとふたりでデートの予定をたてた。
気づけば電話は4時間にも及び、ふたりとも惜しみつつ受話器を置いた。
58ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:29:21.85 ID:V88tLildO
9月といえば恵子ちゃんの誕生日でもあった。
8月最後の休日、プレゼントを物色しに街に出かけた。
恋人へのプレゼントほど選んでいて楽しいものはない。
何を贈ったら彼女は喜ぶだろう。
自分の物を買うよりもウキウキする。
何軒もの店を巡った。
喫茶店で手早く昼食を済ませ、再び物色しに歩き出した時だった。
アクセサリーショップが目に止まった。
リングのいっぱい詰まったショーケースに引き寄せられる。
「そちらはエンゲージリングに最適ですよ」
俺の心を見透かしたかのように女性店員が言う。
エンゲージリング。
その言葉を意識した時、他の何物もプレゼントとして考えられなくなった。
食い入るように何分、何十分もケースを見つめた。
子供の頃に見たCMが頭に浮かぶ。
黒人の少年が雨の中、ショーケースの中のトランペットを見つめるCM。
たしかクレジットカードのCMだったか。
ふと、財布の中のクレジットカードを思い出した。
今はなんのローンも抱えてはいない。
(買えるな、コレ)
0がいくつも並ぶ値札。
その数が増えるほど恵子ちゃんの笑顔が増えるような、そんな馬鹿な錯覚を覚えた。
さっきから何度も声をかけてきた女性店員を手招いた。
嬉々とした顔で店員は駆け寄ってきた。
「サイズのお直しは後日でも結構ですので」
店員に愛想良く見送られ、店を後にした。
右手に提げた品の良い紙袋に何度も目を落としながら、まっすぐ家路についた。
家に着くなりバタバタと晩飯を済ませた。
風呂はカラスの行水。
髪を乾かすのもそっちのけ。
小さな化粧箱をテーブルにのせ、なぜか正座。
ゆっくりとリボンを解く。
指紋が消えるほどきれいに洗った指で、震えるほどやさしく指輪をつまんだ。
買ってしまった。
思わずニンマリとした。
渡す時のシチュエーションに思いを巡らし、楽しい妄想に何時間も浸った。
我ながら性急かなと、ちらと思ったりもした。
しかし、あらゆる事どもにいつも必要以上に悩む俺が、コレを勢いで買った
(どれにしようか悩みはしたが)
その勢いが俺の気持ち。
それだけで十分。
確信と自信が漲った。
59ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:32:17.65 ID:V88tLildO
9月9日 金曜日 午後11時過ぎ。
恵子ちゃんとのデートまで一週間と迫った夜。
夜勤明けのその日、夕方から床に就いていた俺は1本の電話で起こされた。
母からだった。
「恵子ちゃんが倒れて、病院に運ばれたそうなの」
母の声は落ち着いていた。
それは、俺にも落ち着けと言っているようだった。
「とりあえず守さんからそのことだけ連絡がきたんだけど、状況がよくわからないの。詳しいことがわかったらすぐ連絡するからね?いい?」
わかってる。わかってる。だいじょうぶ。だいじょうぶ。
冷静に自分の言っていることを反復した。
10分。
20分。
30分。
電話はぴくりとも声をあげない。
この間、何をすべきか考えることもなく、自然に身体が動いた。
まるでこれから会社にでも行くように、歯を磨き、髪を整えた。
0時。あらかじめセットしていた目覚まし時計が鳴った。
それが徒競走の合図でもあるかのように、俺は携帯と車のカギを握り締め、外に飛び出た。

車で故郷に向かうのは初めてのことだった。
なんとか高速道路に乗り、記憶をたどりながらひた走った。
家を出て1時間も経った頃、携帯が鳴った。
お父さんだった。
「今、向かってますから」
「そうか。とりあえず、状況を説明するね」
恵子ちゃんが倒れたのは午後9時頃。風呂の脱衣所で。
医者の診断はくも膜下出血。
現在、集中治療室で手術中。
お父さんの言葉のひとつひとつが、まるで新聞の見出し文字のように頭に入ってきた。
「私達も今、病院にいるから」
恵子ちゃんの家から少し離れた市立病院だった。
そこで初めて、病院がどこかも知らずに家を飛び出したのに気づいた。
60ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:33:59.78 ID:V88tLildO
5時間ほどで病院に着いた。
当直の看護師に案内され、集中治療室へと向かう。
治療室の前、長椅子に守さんと浩美さん、お父さんと母が座っていた。
「来てくれてありがとう」と、守さんと浩美さんが力なく、それでも笑顔で言った。
手術は未だ続いていた。
守さんに話を聞いた。
仕事から帰ってきた時、恵子ちゃんはいたって普通だったそうだ。
それが食後、頭痛を訴えた。
恵子ちゃん自身も、守さんたちも、それは耳の薬のせいだと気にも留めなかったという。
そして恵子ちゃんは倒れた。
皆、言葉もなく、時が経つのをひたすら待った。
夜が明けた。
沈黙を守っていた治療室の扉が、拍子抜けするほど軽薄な音をたてて開いた。
一斉に立ち上がった俺たちを、出てきた医者が別室へと誘った。
医者の説明には守さんの希望で俺たちも同席した。
手術は無事に済んだ。
やはりくも膜下出血だという。
この時、初めてこの病気に対する知識を得た。
この病気は、脳を取り巻く動脈に“動脈瘤”というコブができ、それが破裂してしまうことだそうだ。
高血圧だったり、乱れた生活を送っていたり、疲れやストレスが原因になり得ると医者は言った。
だがそのどれもが恵子ちゃんには該当しなかった。
「遺伝的なものかもしれません」
医者の言葉に守さんが頷いた。
田中の一族には何人も脳の病気を患った人がいるそうだ。
そして最後に医者は言った。
24時間以内に再破裂の恐れがあり、そしてそれはかなりの高確率だと。
再破裂したら、その先は…。
誰もその質問を口に出すことはなかった。
61ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:35:16.00 ID:V88tLildO
集中治療室には誰も入れてもらえなかった。
当然といえば当然の対応なのに、俺は理不尽な怒りを覚えていた。
憔悴しきった4人に仮眠をとることを勧め、俺はひとり治療室の前に残った。
時折り開く扉の隙間から室内を覗ったが、様々な機材が俺と恵子ちゃんを隔てていた。
こういった場面ではよく「どれほど時が経ったのだろう」などと、時間の感覚を失くすようだが、そんなことは俺には微塵もなかった。
壁に掛かった時計と共に、冷徹なほど、時を認識し続けた。

昼。ただ時計の針を追うだけの時間に終わりが来た。
何かが起こったのはすぐにわかった。
滅多に開かなかった治療室の扉が、目まぐるしく、せわしなく、医者や看護師を吸い込んでいく。
知らせを受けた守さんたちが駆けてきた。
30分後。治療室の扉がやっと俺たちを招き入れてくれた。
物々しい機械に囲まれたベッドに、恵子ちゃんが横たわっていた。
浩美さんが恵子ちゃんの身体に覆い被さった。
その傍らで守さんが立ちすくんだ。
お父さんと母も立ち尽くしていた。
数分後、医者がなにか説明を始めていた。
だがそれは、俺にとってなんの意味もない説明だった。


恵子ちゃんはもう、笑わない。
62ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:36:27.39 ID:V88tLildO
守さんが看護師と“今後”について相談を始めていた。
母は浩美さんに付き添っていた。
お父さんは俺の肩を抱き、俺は彼に導かれるまま治療室の外に出た。
ふたりで喫煙所に行った。
ジュースの自販機があった。
ジーパンのポケットを弄り、気づいた。
(あ、サイフ忘れてら)
いいよ、とお父さんがコインを出し、俺にコーヒーを買ってくれた。
熱いコーヒーが腹に流れ落ちていく。
今日初めて口にした食物だった。
「だいじょうぶ?」
タバコを差し出しながらお父さんが言った。
銜えると、すかさず火を点けてくれた。
これも今日初めての喫煙。
旨かった。
驚くほど。
そのことに自分の精神状態を推し量った。
「だいじょうぶです」
自分では力強く言ったつもりだった。

夕方。
電話で職場の先輩に事情を説明した。
恵子ちゃんとの関係を知る由もないのだが、先輩は気を遣ってくれ、あらかじめとっていた来週末の休みまで続けて休めるよう、手配をしてくれた。
ほどなくして、お父さんたちが手配した葬儀屋が、恵子ちゃんを葬儀場へと運んでいった。
俺も車で随伴した。
式場に着くなり、守さんとお父さんは葬儀屋と打ち合わせに入った。
何か手伝いをと申し出たが、守さんもお父さんも「休んでて」と気を遣ってくれた。
何かしてなければ恵子ちゃんのことばかり考えてしまう、そう思っていたが、頭の中は空っぽだった。
駆けつけた親戚の人たちと交わした言葉も、すべて頭を素通りした。
63ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:37:42.35 ID:V88tLildO
一時間ほど経った頃。
することも、考えることもなく喫煙所に入り浸っていた俺の元に母がやってきた。
「今、湯灌が終わったの。浩美さんが呼んでるから来て」
母に案内され、湯灌室へ。
まるで診察台のような飾り気の無いベッドの傍らに、浩美さんが立っていた。
その顔が見れない。
ベッドも見れない。
虚空に視線を漂わせていたら、浩美さんが言った。
「健吾君、お願いがあるの」
顔を上げた。
「恵子に、服を着せてあげてほしいの」

「はい」
膝に力を入れ、ベッドへと近づいた。
浩美さんが覆っていた白い布をまくった。
起きている時と少しも違わぬ恵子ちゃんが、そこにいた。
胸には下着をつけ、腰にはサラシが巻かれている。
鼻や耳には脱脂綿が詰められ、なんだか息苦しそうだった。
澄んだ白い肌には一点の生気の欠片すら残っていないはずなのに、触れれば恥ずかしがる恵子ちゃんを感じた。
首と肩を右手で支え、半身を起こした。
こんなに軽いものなのか。
俺の顎のすぐ下にあの日束の間の愛撫を重ねた恵子ちゃんの小さなくちびるがあった。
浩美さんが白い着物を差し出しながら、手伝おうと手を伸ばしてきた。
「ひとりでやらせてもらえませんか」
浩美さんは頷いてくれた。
恵子ちゃんを胸に抱き、虚脱した四肢を着物に通していった。
身体を動かすたびに、きつい薬品の匂いが鼻をかすめ、大好きだったアリュールの香りは今はもう残り香すらしない。
手を握った。
肩を抱いた。
顔に触れた。
着せ終わった恵子ちゃんをいつまでも抱いていたかった。
浩美さんが「ありがとう」と言った。
その言葉がすべてに終わりを告げているように感じた。

棺に入れる遺品を用意するため、浩美さんと母が家に帰った。
今夜は守さんとお父さんと俺が、恵子ちゃんの側にいてあげることになった。
すっかり夜も更けた頃、寝酒にとお父さんが酒を用意してくれた。
守さんも付き合い、三人で淡々と飲んだ。
ほとんど会話もない酒盛りだったが、酔いなどまわろうはずもなかった。
そろそろ寝ようかと、ふたりが式場内の寝室に引揚げた。
俺は恵子ちゃんの元へ向かった。
恵子ちゃんが眠っている部屋は、通夜の場ともなる広間だった。
飾られ煌々と照らされた祭壇前。
聞こえるはずのない恵子ちゃんの寝息を探し、静かな彼女の寝顔を見続ける。
もう、いいんだぞ。
だが俺の目は期待を裏切り、沈黙していた。
64ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:38:38.28 ID:V88tLildO
翌日。
葬儀の雑用で日中を慌しく過ごし、あっという間に通夜を迎えた。
読経の最中だった。
突然、守さんが泣き出した。
ウオオオとも、ウアアアともつかない、激しい慟哭だった。
俺は守さんを羨ましく思った。
蚊取り線香のように螺旋状になった線香。
朝までもつというこの線香が寝ずの番を不要としていたが、それでも恵子ちゃんの側にいたかったから、俺は線香を点け続けた。
深夜1時をまわった頃だったか。
皆寝静まり、俺ひとりだけとなった祭壇の前に、最年長の従兄・勲夫さんが現れた。
「恵子と付き合ってたんだってね」
酒を酌み交わしながら勲夫さんが言った。
「あの子は、従妹というより妹みたいなもんだったんだ。だから、健吾君と付き合ってるって聞いた時、俺もすごく嬉しかったんだよ」
祭壇を眺める勲夫さんの右目から、涙が筋をつくった。
「よかったよ。あいつに…最後に大切な人ができて」
飲んだ酒がそのまま出てきているかのように、勲夫さんの目は乾くことを忘れていた。
勲夫さんが寝室に引き上げた。
またひとりとなった部屋で、俺はゴロンと寝転んだ。
“男は人前で泣くべきではない”
子供の頃からの親父の教え。
頑なに、なぜ守っているのか。俺の身体は。そんなにも深く、刻み込まれているというのか。その言葉は。
恵子ちゃんのために泣くことが、彼女への手向けとなるはずなのに。
泣け。泣けよ、俺。
65ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:39:58.08 ID:V88tLildO
いつのまに眠っていたのか。早朝、守さんに起こされた。
「側にいてくれてありがとう」
守さんの言葉が、まるで恵子ちゃんの言葉のように聞こえた。
午後からの葬儀、俺は受付を買って出た。
参列はしたくない。
理由はわからなかったが、ただその一心だった。
守さんは了承してくれた。
勲夫さんから借りたサイズの合わない喪服を身につけ、ふたりで受付に立った。
多くの人が記帳していき、やがて恵子ちゃんの会社の人たちが訪れた。
その一団の中、ひとりの男性が目についた。
その男性は、止め処なく溢れる涙を必死に拭っていた。
彼は…きっと、彼だ。
直感が決めつけた。
覚束ない筆遣いで書かれた彼の名。
もちろん見覚えなどないその名前に視線を落とし、俺は彼の姿を決して見ようとはしなかった。

葬儀が始まった。
静まり返った受付の席にじっと座る。
訪れる者はなかった。
かすかに聞こえる読経に耳をすませながら、俺は恵子ちゃんを思い浮かべた。
何度も何度も、繰り返し繰り返し。
そうすることによって、無理矢理に感情を呼び起こそうとしていた。
華奢な背中。
屈託のない笑顔。
俺を見上げる瞳。
何かをささやく小さなくちびる。
そして、別れ際に見た泣き顔。
頭の中を恵子ちゃんが舞う。
だが、それだけだった。
どうして、守さんや勲夫さんや“彼”のようにできないんだろう?
ひょっとして俺は、まだ現実を認識できていないのか?
動かなくなった彼女に触れただろ?
まだ無意識に我慢してるのか?
それとも、単に冷たい男なのか?
それとも。それとも。それとも。
「お別れよ。お花を手向けてあげなさい」
母の声が俺を現実に引き戻した。
葬儀は終わっていた。

他の参列者はすでに終わっていて、俺と勲夫さんだけとなっていた。
それぞれ恵子ちゃんの左右にまわり、オレンジ色の花をそっと顔の近くに置いた。
じっとその顔を見つめる。
どんなに生きているかのように化粧が施されていても、動かず、表情もなく、ただそこにあるだけの存在。
眠そうに目をこすりながら、『おはよう!』と笑いかけてくる、そんな気配はもう消え失せていた。
棺に蓋が被せられた。
参列者が一打ち一打ち、一本一本、釘を打ち付けていく。
蓋の小窓が閉じられようとしていた。
そこからのぞくものを決して目に焼き付けないように、俺は視線を逸らした。
66ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:41:02.25 ID:V88tLildO
冷たい、ねずみ色の鉄の蓋。
読経の中、俺の目はそこ一点に釘付けになった。
火葬。
あの向こう側に、恵子ちゃんがいる。
恵子ちゃんが、焼かれている。
恵子ちゃんが、消えていく。
突然のことだった。
奥歯が鳴った。
加速する鼓動と連動しているかのように。足が、一歩、また一歩と前に踏み出した。
俺が憶えているのはここまでだった。

開いた目に、母の顔が飛び込んできた。
「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
泣き顔だった。
周囲に視線をめぐらす。
十畳ほどの和室。
そこに床が延べられ、俺は寝かされていた。
そこは火葬場の控え室だった。
「大変だったのよ」
一生懸命、涙を拭いながら、俺の身に起きたことを母が話してくれた。
俺は突然、叫び出したという。
そして意味不明な言葉を発しながら、閉ざされた焼却炉の扉を叩き始めた。
あまりの異常さに驚いたお父さんや従兄たちが、俺の身体を制した。
俺は激しくそれに抗い、そして十数秒後、ヘナヘナと失神してしまったそうだ。
俄かに信じ難い話だったが、掛け布団をめくって愕然とした。
ズボンを穿いていなかった。
驚き、白黒させた目に、見覚えのない真新しい下着が映った。
気を失った俺は、失禁していたそうだ。
「本当に…気でも違ったのかと思ったんだから」
せっかく拭った母の頬がまた濡れていた。
首筋から頭のてっぺんまで寒気が走った。
羞恥心とは違う、得体の知れない感情に戸惑いながら、俺は母の泣く姿を呆然と見つめた。
67ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:42:07.63 ID:V88tLildO
控え室に明かりが灯り、時刻が夜であることを告げた。
すでに火葬は終わり、ほとんどの参列者が帰っていたが、お父さんや母、弟妹たち、守さん夫婦、それに勲夫さんが帰らず残っていた。
俺を気遣ってのことだった。
「だいじょうぶかい?病院に行ったほうがよくないかい?」
皆、口々にそう言って心配してくれたが、別段、身体に異常は感じなかった。
それよりも気になっていたことを尋ねた。
「あの…恵子ちゃんは?」
勲夫さんが俯き加減に目配せをした。
部屋の片隅、即席の祭壇に、冗談とも思えるくらい小さくなった恵子ちゃんがいた。
母の用意してくれたジャージに着替え、恵子ちゃんの前に正座した。
線香に火をつける。
静かに手を合わせ、目を閉じた。
一切の静寂が、恵子ちゃんと俺を包んだ。
語りかけるべき言葉も思い浮かばず、自分に苛立つ時間だけが過ぎた。
俺は断念し、目を開けた。
目の前に鎮座する、白く、小さな四角い箱。
君は、そこにいるの?
しゃべるはずもない箱に、心の中で問いかけた。

翌日、俺は熱を出して寝込んでしまった。
母は会社を休み、看病してくれた。
「ゆっくり休んでいきなさい」
母の言葉がありがたかった。
今、ひとりになるのは、辛い。
怖い。
熱は三日間続いたが、四日目の朝にはすっかり復調した。
「もうだいじょうぶだから」
心配そうにしている母を会社に送り出した。
まだまだ日差しの強い縁側に座り、ぼーっと外の空気に触れた。

昼。
用意されていたお粥を腹に流し込んでいたら、電話がかかってきた。
守さんだった。
「身体の調子はどお?」
寝込んでいたこの三日間、守さんは毎日電話をくれたと、母に聞いていた。
「すみません、ご心配をおかけして。もう、だいじょうぶです」
「そうか…よかった」
本来なら俺のほうが守さんたちを気にかけなければいけないのに…。
ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちが胸を締め付けた。
「健吾君、いつ横浜に帰るの?」
「休みは日曜日までなので…明日か明後日には帰ろうかと思ってます」
「そうか。なら帰る時でかまわないから、ウチに寄ってもらってもいいかな?」
「ええ、かまいませんけど…」
「渡したいものがあるんだ」
「なんです?」
「恵子の手紙を見つけたんだ。健吾君宛ての」
68ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:43:56.03 ID:V88tLildO
手紙…?
恵子ちゃんからの?
「あの…今からお邪魔してもいいですか?」
「別にかまわないけど…だいじょうぶなのかい?無理しちゃダメだよ?」
守さんの気遣いを他所に、俺はただちに家を出た。
気持ちが急いて仕方ない。
それでも普段よりゆっくりと運転するよう心がけ、一時間半ほどかけて守さんの家に着いた。

浩美さんも在宅していて、ふたりで俺を迎えてくれた。
やつれた顔で明るく振舞うふたりは痛々しかった。
俺も無理矢理、笑顔を作った。
恵子ちゃんの元へ案内された。
型通りに線香を手向け、手を合わせた。
相変わらず、箱は何も語らなかった。
居間に通され、茶を出された。
それに口をつけるのもそこそこに、守さんに目で促す。
守さんは黙って頷き、件の手紙を差し出した。
桜色の小さな封筒。
表に“健吾君へ”という文字。
俯きながら浩美さんが言った。
「今日ね、恵子の部屋の整理、始めようと思ったの。でも…途中でやめちゃった。あの子の物を触ってたら、まだそのままにしておきたくなって…」
当然だろう。
遺品の整理をすることが、心の整理につながるとは限らない。
いや、心の整理がつかないからこそ、遺品も整理できないのかもしれない。
「今はまだ…そのままでいいんじゃないですか」
「そうよね。まだ…いいよね」
顔を上げた浩美さんは、許しを得たかのようにほっとした顔をしていた。

「私らのことは気にしないで。早く帰って、読んであげて」
俺の気持ちを察してくれたのか、守さんがやさしく言ってくれた。
俺は深く頭を下げ、その場を辞去した。
車の運転がもどかしい。
早く。早く。
しかし俺の邪魔をするように道はどんどん混み始め、とうとう高速のインターの手前で渋滞にハマった。
タバコをくわえ、イライラしながらハンドルを何度も叩く。
もう、その辺に車を止めてしまおうか。
なにも家に帰ってからじゃなくてもいいんだ。
そう思い始めた時、バックミラーに遠くの山々が映った。
(そうだ。あそこに行こう)
それはバーベキューの時に行った、恵子ちゃんのお気に入りの場所。
俺はすぐさま渋滞の列から抜け出し、Uターンした。
69ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:44:54.81 ID:V88tLildO
川原の土手に車を止め、車外へと躍り出る。
封筒を握り締め、あの日恵子ちゃんと歩いた森の小道を駆けた。
緑は数瞬で流れ去り、あっという間にあの滝が目に飛び込んできた。
乱れた息を整えながら、あの時ふたりで座った岩に腰を下ろす。
と、背後に人の気配を感じ振り向いた。
今日は先客がいたようだ。
小学生くらいの男の子がふたり。
ほんの少しの間、彼らは俺を見つめ、やがて興味を失ったのか、また遊びに戻っていった。
封筒に視線を落とす。
一呼吸。
二呼吸。
そして最後にもう一呼吸。
そうして心を落ち着け、封筒を開封した。
ふわっと、アリュールの香りが鼻先を漂った。
封筒と同じ桜色の便箋が2枚。
そこには俺が愛した、しなやかで美しい文字が詰まっていた。
70ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:48:53.65 ID:V88tLildO
 
『健吾君へ 今度のデートの時に渡そうと、この手紙を書いています。いつもおちゃらけてばっかりいる私だから、こんな手紙を書くと健吾君はきっと笑うだろうけれど、今日はガマンしてね。私の素直な気持ちです。
健吾君、ありがとう。いつも笑わせてくれて。いつも話を聞いてくれて。いつも励ましてくれて。いつも心配してくれて。いつも素敵な言葉をくれて。いつも、私を幸せな気分にしてくれて。ありがとう。
でも私は、その何分の1でもお返しできていますか?最近思ったの。私は健吾君からもらうばっかりで、何ひとつお返しできていないんじゃないかって。つき合う前の、もうずっと昔のこと。
健吾君は言ったね。「俺は親戚とか少ないからみんなと親戚になれてうれしい」って。そしてその言葉どおり、健吾君は今までいつも、私やイトコ、親戚たちに優しく接してくれたね。私たちを、大事にしてくれたね。
私はそれがすごくうれしかったけれど、反面、こう思ったの。健吾君はずっと、さみしかったんじゃないかって。健吾君はいつも堂々としていて、言葉も力強くて…私はそんな健吾君をいつも“すごいなぁ”って思いながら見てきました。
でもいつだったか健吾君がご両親の話をしたとき、いつもと違う健吾君を感じたの。健吾君が、泣いてるような気がしたの。健吾君はあまり詳しくは話してくれなかったけれど、きっと辛い体験をしたんだね。そのとき私は何も言えなかった。何もできなかった。
はじめて健吾君の心に近づけた気がしたのに、どうしたらいいかわからなかった。私が勝手に感じたことだし、気のせいかもしれないけれど、でもこれからは、さみしいと感じたとき思い出して。
私はいつでも、健吾君の横にいます。私はずっと、健吾君の手をにぎっています。
 健吾君 愛してます
 2005.8.21 恵子』

恵子ちゃんからの、最初で最後のラブレターだった。
71ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 06:50:20.39 ID:V88tLildO
ドボン、ドボンと、先程の子供たちが滝壺に飛び込んでいる。
大きな水しぶき。
楽しげな嬌声。
入れ代わり、立ち代わり。
咄嗟に口を手で押さえた。
そんなことをせずとも、彼らには聞こえなかったかもしれない。
俺は泣いた。

あれから二ヶ月。
俺は俺の日常に戻った。
時折、無性に腹が立つ。
君という大事な要素を欠いているのに、この世界は変わらず機能しているから。
いつもと同じ朝。
いつもと同じ夜。
まるで君を忘れてしまったかのような世界。
でも俺は、この世界のそこかしこで、君を感じている。
職場に君と同じロングヘアの女の子がいる。
その後姿が君を思わせるから、見るたびいつも視線をはずしてしまうけれど、ついついもう一度見てしまう。
通勤電車でアリュールの香りがした。
香りの主を探してキョロキョロしたんだけど見つからなかった。
でも、それでもあきらめられなくて、電車を降りるのをためらった。
本屋に行くと必ず、君からもらった本を探す。
そして見つけては安心し、指でそっとなぞる。
見つからないと落ち着かなくて、ただそれだけのために別の本屋に行ってしまう。
いなくなった君に、ずっと恋をしている。
『早く結婚してくれ』と、君は言ったね。
見たかったなぁ。
あの時君は、どんな顔をして、その言葉を言ったんだい?
毎日のように俺は、その顔を想像してる。
そしていつのまにかその顔が、俺が思い出す君の顔になってしまった。
君の願いは、俺の願いでした。

恵子ちゃん。さよなら。
72ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 07:00:13.94 ID:yF5vtqO00
7310:2009/06/22(月) 10:53:27.60 ID:9QUZXZAMO
ぐぐって1度、そしてこのスレでもう1度読みました。
ありがとうございました。
74ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 15:45:00.92 ID:cqyXjOiqO
>>22
1です。途中で書き込めなくなって申し訳ない

ううむ、やっぱり従姉シリーズは凄いですね
75ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/22(月) 22:35:44.03 ID:IRxfBM/GO
ほっしゃん
76ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 00:04:07.92 ID:V88tLildO
私がまだ小学2年の頃、継母が父の後妻として一緒に住むことになった。
特に苛められたとかそういうことはなかったんだけど、なんだか馴染めなくて、いつまで経っても「お母さん」と呼べないでいた。
そんなぎくしゃくした関係だったけど、継母が私のために一生懸命だったことはよくわかってた。
小学校4年になった夏休み、私は継母の提案で二人で川に遊びに行くことになった。
あんまり気が進まなかったけど、断る理由もなく言われるままにしぶしぶついていった。
現地に着くやいなや、私は継母のことを放ったらかしで川に浸かって遊んだ。
しばらく水と戯れてた時、急に深みにはまって溺れて息が出来なくなった。
すごく苦しかった。
でもそのうち喉の奥が「クッ、クッ」と鳴ってだんだん苦しくなくなってきて、意識が飛んだ。

気が付くと、私は病院のベッドで寝ていた。
一時心臓が止まって危なかったんだよと涙ぐんだ父が言ってた。
ベッドの傍に、継母はいなかった。
私は父に「あの人は?」と訊いた。
父は一呼吸置いてゆっくりとした口調で教えてくれた。
私が溺れた時に継母が服のまま飛び込んで私を助けてくれ、そのまま力尽きて下流まで流された。
その後救助されたものの、今も意識が戻らないのだ、と。
私は次の日に継母のいる病室に行った。
継母は機械に囲まれて、いっぱい管をつけられていた。
彼女は、そのまま我が家に戻ってくることなく…。

葬儀が終わって母の遺品を整理してたら、鍵のついた日記が出てきた。
私は父と一緒になんとか鍵を探し当てて、日記を読んだ。
そこには私との関係に悩む継母の苦悩など、私のことばかり書いてあった。
ずっと読み進めていくと最後のほうの日記に
「ちょっとはにかみ屋さんだけどとてもいい子。
あの子なら、命かけてでも守れる自身がある。
○○ちゃんを私に託してくれた△△(実母の名前)さん、本当にありがとうございます。」

継母は、あの日記を書いた数日後に命と引き換えに私を守ってくれた。
いつだってとても優しい目で私を見てくれていた。
いつも私の目線と同じ高さになるように中腰になって話し掛けてくれた。
そんな気持ちはちゃんと伝わってきてたのに私はあの人に何一つしなかった。
愛情をもらいっぱなしでそれに答えなかった。
私は愛情どころかあの人の命まで奪ってしまった。
日記を読んではじめて、私は「お母さん!」と大声で叫びながら、声が出なくなるまでごめんね、ごめんね、と言って泣いた。
ぐしゃぐしゃになって泣いても、後悔ばかりで気持ちは晴れなかった。
年月が過ぎても、私は未だに「母」に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
数十年経った今でも夏になるたびに思い出す。
77ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:37:30.20 ID:n0QPTZ00O
少し長編になるかもしれませんが最近気持ちの整理もできたので書いてみます。
今から6年前の話です。
僕がまだ10代で、あまり携帯電話は普及してなくてポケベル全盛期の時代のことです。
僕はその頃高校を出て働いていたんですけど2つ年上の女性と付き合っていました。
お互いの親にも会ったりして僕は結婚する事を信じて疑いませんでした。
毎朝ポケベルに「オハヨウ」とか「ガンバッテネ」みたいなメッセージのやりとりをしていたのですが、ある日僕がメッセージを送るのがめんどくさくて送らない日があって、彼女からもメッセージは送られてきませんでした。
ちょうどその日は給料日で僕は今日は彼女にメシでもおごろうとどこに行こうか考えていました。
仕事が1段落つき、昼休みに入り食事に行こうとした時に僕宛の電話がなりました。
その電話は彼女の交通事故を告げる電話でした。
僕はその電話を置いた後、しばらく何のことかわからなかったんですが、「今意識不明だ」という言葉に体中汗ばんだのを覚えています。
78ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:39:09.26 ID:n0QPTZ00O
すぐに無理やり会社を早退し彼女が運ばれた病院へ向かいました。
電車の中で「実はたいした事ないんちゃうかな?」とか自分に都合のいい方にしか考えたくなかったんですが、「もしかしたら・・」って考えると周りに人がいるのにボロボロと涙が出てきて、すごくさみしい気持ちが溢れてきました。
僕が病院に着く頃には、意識が戻っている事を祈りながら病院まで走っていきました。
彼女の家族に出会い、容態を聞いてみると彼女は集中治療室に入っている、という事を聞いて事態の深刻さを悟りました。
外傷はほとんどなく、脳にショックを受けたらしくまだ意識は戻っていませんでした。
僕はとりあえず会社に彼女の意識が戻るまで休む事を電話で伝えて病室の前で、意識が戻るのを待つ事にしました。
その日は病院のソファーで、ほとんど眠れずに夜を明かしました。
目の前のストーブで背中は寒かったのに顔だけがすごく火照っていました。
79ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:41:37.94 ID:n0QPTZ00O
結局その日は意識が戻る事なく次の日の朝1番で着替えなどを家にとりに帰りました。
病院に帰ってみると明日手術がでできるかどうかがわかるだろうという、医者からの話があったそうです。
そして5分だけ面会時間がもらえるとの事で、僕は会いたいような会いたくないような、複雑な気持ちでしたが、給食当番の時の様な服を着て彼女に会いに部屋にはいりました。
部屋の中は訳のわからない機械がいっぱいでその中のベッドの一つに彼女が寝ていました。
まるで眠っているだけの様な顔で名前を呼べば今すぐにでも起き上がってきそうでした。
手を握ると腕のあたりに、点滴などの管が何本も刺されていて容態の悪さを物語っているようでした。
それと唇が妙にカラカラになっているのが気になりました。
5分間をいうのは短いもので、何か話しかけようとしたのですが、なんとなく周りの目が恥ずかしくて言葉らしい言葉をかけれませんでした。
80ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:43:21.71 ID:n0QPTZ00O
その日は少し気分も落ち着いてなぜか「絶対大丈夫!」という根拠のない自信でいっぱいでした。
それからは彼女の意識が戻ってからの事ばかり考えるようになり、頭の手術するんやったら髪の毛剃らなあかんから、帽子がいるし買いに行こう!と看病の事を考えて買い物に行く事にしました。
この時僕は目を覚ました彼女を喜ばせる事だけを考えていました。
さっそく帽子を探しに行き、キャップは似合わんし、ニット帽だとチクチクするからという事で、綿で出来た帽子を探して買いました。
買い物が済んで、帰ろうとした時に街中を歩く女の子を見てると、なんか自分が現実から少しズレた場所にいるような気がして妙な不安を感じました。
その不安からか、彼女の意識が戻ったら正式にプロポーズしようと安物ですが指輪まで買って帰りました。
その日も結局容態に変化はなく過ぎていきました。
81ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:44:40.58 ID:n0QPTZ00O
次の日のお昼前、彼女の父親だけが医者に呼ばれて病状の説明を受けるとの事だったのですが、無理を言って僕も同席させてもらいました。
どうしても自分の耳で医者から聞きたかったんです。
多分あれほど緊張した事は今までになかったと思います。
医者の部屋に入って、医者の顔色を見てみるとどっちともとれない無表情な顔をしていました。
医者が口を開いて、簡単な挨拶が終った後喋り出したのですが、病状はよくなるどころか病院に運ばれた時点ですでに手遅れでした。
僕はこれを聞いて頭がグラグラして椅子から落ちないようにする事しか考えれませんでした。
どうやら今治療をしている様に見えるのは、家族に心の準備をさせる為に無理やり心臓を動かして、体だけ生かして少しずつ悪い方向へ持っていくというものでした。
僕は部屋を出て彼女の父親に、家族にはまだ言わないで欲しいと言われ泣き出しそうなのをこらえて、母親に話かけられても「用事が出来た」とだけ言い残して、誰もいない場所まで走りました。
街中であれだけ涙を流して大声で泣いたのは初めてでした。
それからちょうど涙が枯れた頃、病院へ戻りできるだけ普通に振舞いました。
82ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:45:56.79 ID:n0QPTZ00O
その夜、彼女の父親と銭湯へ出かけました。
二人ともほとんど無言で風呂に入り、話す事といっても関係ないどうしようもない会話ばかりでした。
僕は彼女の父親にはどうしても聞いておきたい事がありました。
僕が彼女と結婚するって言ったら許してくれるかどうかでした。
今考えると絶対に聞くべきではない時に聞いたような気がします。
病院に戻る前に父親を呼び止めてストレートには聞けなかったのですが、買ってきた指輪を彼女の指につけてもいいか?と聞きました。
彼は黙ってうなずくだけでした。
その夜は眠る事ができなくて、家族と顔をあわせると泣いてしまいそうで外で一人で過ごしました。
次の日また5分だけ面会できるということだったので、もう1度彼女の顔を見に行きました。
彼女の顔は相変わらず眠っているようでもう目を覚まさない事がウソのようでした。
僕は彼女の左手にこっそりと指輪とつけました。
もう何の意味もないのはわかっていましたが、少しでも彼女に近づきたいという気持ちでいっぱいでした。
みんなが部屋を出た後僕は忘れ物をしたそぶりをしてベッドの側に戻り、彼女のカラカラの唇にキスをしました。
それからしばらく経ち、彼女は一般病棟の個室に移ることになりました。
医者が言うにはもう長くないので少しでも家族が長く一緒に居れるようにとの配慮だそうです。
僕は1日のほとんどをその部屋ですごすようになりました。
何もする事もなかったのですが、話かけると声が届いてるような気がして耳元で歌を歌ったり、話し掛けたりしていました。
83ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 09:47:08.36 ID:n0QPTZ00O
そして夜が明けて昼すぎになると、医者と看護婦が入ってきてみんなを呼んでくださいみたいになって、みんなが見守る中、心拍数を表示しているピッピッってなる機械に異変が見られるようになりました。
最後まで僕に片方の手を握らせてくれた彼女の家族に感謝しています。
それから1時間ほど経った後、そのまま静かに心臓が停止しました。
僕も含め部屋にいる人みんなの泣き声だけが聞こえてきて、覚悟はしていたものの、本当にこうなった事が信じられなかったのですが、医者の何時何分とかっていう声に現実に引き戻されました。
そして部屋にいる全員が驚く事が起こりました。
僕が握っていた彼女の手がものすごい力で僕の手を握り返してきたのです。
僕は本当に驚いて多分変な声を出していたと思います。
しばらくして彼女の手からスーっと力が抜けていきました。
僕は涙はふっとんで、全員にその事を伝えました。
すると彼女の母親が「きっと一生懸命看病してくれたからありがとうって言ってるんやで」って言ってくれました。
冷静に考えると死後硬直だったのでしょうけども、その彼女の母親の一言で僕は今まで道を間違わずにこれたと思います。
年上だった彼女は今では僕の方が年上です。
長くなってすみませんでした。
84ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 15:46:46.10 ID:o5Etfjz30
それより今日スーパーでお寿司買ってきたんだよwww
そしたらさwww賞味期限切れでさwww
時すでにお寿司ってなwwwwww
ってやかましいわwwwwww
85ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 23:00:32.76 ID:AHDYan56O
従姉妹の続きが読みたいっす!このままじゃあ気になって仕方がない…。なんとかお願いします。
86ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/23(火) 23:07:05.54 ID:AHDYan56O
↑ごめんなさい。勘違いしてました。
87ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/24(水) 12:14:31.10 ID:xxdsgTe4O
あがれ
88ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/24(水) 12:21:09.86 ID:LMrHAMEA0
さがれ
89ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/24(水) 13:02:40.00 ID:ZtgjYZVRO
おお! 前スレ止まってて絶望したぞ。容量オーバーとかあるんだな
保守
90ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/24(水) 20:54:47.65 ID:RjxOdSLC0
小田和正 言葉にできない
91ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 11:25:48.06 ID:9h3rtMnKO
昨日このスレ見つけて従姉の話ググって読んできた。
正直涙が止まらない。
92ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 11:58:44.05 ID:ocm8uZTmO
前スレとあわせて保管庫がつくられるべき
93ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 14:56:15.51 ID:giktU++uO
従姉の話萌えコピにあるぞ。たしか『はやく結婚してくれ』てタイトルだ
った。
94ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 15:09:07.28 ID:Wl0onwP3O
従姉の話は職場で読んでて泣いた。
はずかしい。
95ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 18:07:40.76 ID:IWSsIL4QO
従姉の話、引き込まれて全部読んだけど
主人公の男にイラつくなぁ…。
最期あっけなく死にすぎだし。
96ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/25(木) 18:12:28.41 ID:ocm8uZTmO
萌える話ではあるまい……

>>95
不謹慎
97ローカルルール変更議論中@VIP+ :2009/06/25(木) 21:13:11.36 ID:yRjyhKVR0
ムゥ〜おやつが食べたいな〜
あっ、シュークリームだ
おいしそう 食べよう
モグモグモグモグ おいしいな
モグモグモグモグ
もう一個ある これも食べちゃえ
モグモグモグモグ
モグモグモグモグ
あ〜おいしかった

ねえムーくん、ここにあったシュークリーム知らない?
知らないよ
変だなぁ 後でムーくんと一緒に食べようと思ったのに
おかしいな どうしたんだろう?
あんなおいしいシュークリーム どうしたんだろうね?
あんなおいしいシュークリーム?
それじゃまるでムーくん
あのシュークリームを食べたことがあるような言い方じゃないか?
ワッ しまった
さてはムーくん シュークリーム食べたでしょう?
知らないよ
ほら 白状しないと コチョコチョコチョコチョ
ムヒヒヒヒ 食べた 食べた
ほら やっぱりムーくんが犯人じゃないか
もう おしりペンペン
ムッヒーミンミンミン ムッヒーミンミンミン
ようし ムー汁にして食べちゃおうかな
ムッヒーミンミンミン ゴメンナサイ ムッヒーミンミンミン
98ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/26(金) 07:10:59.04 ID:JDHQheEa0
♪泣けるイイコピペ〜 たった1行でぇ〜
 レス数が伸びる そんな瞬間♪
99ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/27(土) 00:45:59.03 ID:Ti3FsDez0
728 名前:わんにゃん@名無しさん[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 20:22:13 ID:LlJp9vYu

「…おい。しっかりしろ」
寒い寒い風の吹く、冬の日だった。
お腹がすいて草むらにへたり込んでいた僕に1匹の猫が声をかけて来た。
「ちいさいな…おまえ、母ちゃんやきょうだいはどうした」
「…わかんない。いつのまにかひとりになってた」
「そうか…。どこか行くあてはあるのか」
「……ううん」
「……」
「……」

「…おい、ちび。包丁はもっているか」
しばらくの沈黙のあと、その猫は僕に言った。
「?」
「もってないのか…なら、これをつかえ」
そう言って彼は、一本の小さい包丁を取り出した。
ちょっと古ぼけてはいたが、それでもきらりと光っていた。
「おれは…もう、つかえないから」
彼は、ちょっと寂しそうにそうつぶやいた。
よく見ると、彼の体はうっすらと透けているように見えた。
「いいか、これからおしえるにんげんのいえへ行け。
そしてこの包丁をだして、今からいうとおりにしゃべるんだ。
しっかりおぼえろよ。…」
僕は彼から教わったとおりに、人間の家へ行ってこう言ったんだ。
「かっ…かねをだちぇ!」

…その後のセリフを上手く言えたかは、あまりにもハラペコ過ぎて正直よく覚えていない。
人間は最初目をまあるくして、そのあと目からぽろぽろ水を出して僕の頭をわしわしなでてくれたのは覚えている。
きみにはまだカリカリは早いな、かんづめとミルクだね、って言っていっしょにお店へ行ってくれたんだ。

…僕はそのまま、その家の猫になった。
風のぴゅうぴゅう鳴る音を聞くと、あの時のことが思い出されてふっと振り返ると、あの猫―先代猫が、小さな四角い枠の中ですまして座っていた。

あの時もらった包丁は今も、大事に手入れして持っている。
100ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/27(土) 14:19:07.53 ID:zNYhrt6sO
100げと
101ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/27(土) 17:27:00.31 ID:sJg3TERpO
何かしなきゃって思いながら
何をすればいいんだろうって思いながら
このまま大人になっちゃうのかなって思いながら

ねぇ 私 あの頃の私
心配しなくていいよ
すぐ見つかるから
私にも出来ることが 夢中になれることが
大切な大切な大切な場所が!
102ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/28(日) 15:17:20.01 ID:/qBfMZ0gO
103ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/29(月) 10:48:07.66 ID:qpTMn47FO
しゅ
104ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/29(月) 23:02:17.25 ID:VunsOvDd0
なにこのオナニースレ。長過ぎて全然読む気になれん。
105ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 00:55:03.73 ID:W5NEyVE+O
このスレの団結を知らんと見える。
保守
106ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 07:22:15.02 ID:Ue/Ex3iuO
a
107ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 09:11:28.18 ID:kmaF+KWL0
俺は前スレの最後がマジでうざかった。
あんな長いのURL張ればいいじゃん。
108ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 10:59:03.22 ID:W5NEyVE+O
別に不都合はあるまい
109ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 12:04:32.02 ID:kmaF+KWL0
>>108
非常に楽しくここに来てるからあんまり長いのがあると
他のが読みにくい。

別にみんなが楽しそうだったからromってたけど
>>104に便乗してみた。まぁ楽しいから別に何でも良い
ただレスをやたら消費するのはURL張ってくれると嬉しい
110ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 14:58:54.31 ID:W5NEyVE+O
貼らない奴ほどお客様気分、っと。
111ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 16:04:29.08 ID:yxnYV4zE0
君が天国へと旅立ってからもう1年。
君は今も天国から僕を見てくれてるのかな。
君は僕の生まれて初めて出来た彼女だった。
ものすごく嬉しくて、ものすごく幸せだった。
でもある日突然君は倒れて病院に運ばれた。
医者から白血病だって宣告された君は病室で日に日に弱っていった。
「入院ってヒマよねえ」って笑う君に合わせて一緒に笑っていた僕。
でもその後、僕は一人になって泣いた。
そうそう、君は僕が使って手あかやスリ傷のついたノートパソコンをあげたらとっても喜んでくれた。
そして、ネットをするようになった君がいつも見ていた掲示板、それが「2ちゃんねる」だった。
ある日、君はいつものように笑いながら言った。
「ほら見て、今日も2ゲット出来たよ。」
「あまりパソコンばっかいじってると身体に障るよ。」
なんて僕が注意すると、
「ごめんね。でもね、これ見てよ。ほら、この3のひと、
2げっとぉ!なんて言っちゃってさぁ、ふふ。」
僕は黙っていた。君がすごく楽しそうで、僕はそれ以上何も言えなかった。
「ほらみて、この3のひと、変な絵文字使って、くやしぃ〜!だって。かわいいねえ。 ふふ。」
僕はまだ黙っていた。笑う君を見て、どうしようもなく悲しくなった。
「憶えててくれるかなあ」 
君がふと言った。
「…この3のひと、私がいなくなっても、あのとき変な奴に2をとられたんだよなー
なんて、憶えててくれないかなあ…無理かな……憶えてて、ほしいなぁ…」

それから数ヶ月後、君は家族と僕に看取られながら病室で静かに息を引き取った。

君はもうこの世にいない。なのに今僕は一人でF5ボタンを押し続ける。
君の事を、3のひとが忘れないように、いつまでも、いつまでも忘れないように。

天国にいる君と一緒に、今ここに刻み込む

        2 ゲ ッ ト
112ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 16:23:55.90 ID:kmaF+KWL0
前スレと重複しまくってるのとかは別に気にしないの?
113ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/06/30(火) 20:12:43.03 ID:Fy+Tx8zg0
>>112
(´;ω;`)ブワッ
114ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/01(水) 08:53:36.21 ID:JtZeznTLO
かき揚げ
115ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/01(水) 13:53:13.81 ID:dSTOF+iA0
>>111 不覚にも泣いてしまった
116ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/01(水) 14:51:36.56 ID:SMuFVhenO
イ、イサキは?お兄ちゃん、イサキは?
117ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/01(水) 15:01:33.04 ID:b6zI9HaWO
>>111
それ2ゲットした時しか使っちゃダメ
118ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/01(水) 22:11:22.82 ID:5hji5gXX0
別の意味で泣けた


アリクイってよ、1日に三万匹アリ食うんだってwww3日で九万匹wwwアリいなくなっちゃうよ!
フラミンゴって、なんで片足か知ってる?冷えるんだってよwwww
でも、水ん中入ってるんだぜ? だったら出りゃいいじゃんww
モグラのトンネル掘るスピードはカタツムリの進む速度の1/3だってwwww 遅いよwww
得技だろよwwそのスピードなら地上でろ地上でろ!
羊は前歯が下あごにしか生えてないんだって。
その代わり上あごの歯茎が歯より固いんだってwwww
生えればいいのにww歯が生えればいいのにww
カタツムリってすげぇんだぜ。カタツムリってよ、
−120℃でも死なないんだぜ。−120℃だぜ。
普通−120度だったら動物全滅するだろ。ただカタツムリだけは氷河期になっても生き残るんだよ。
すげぇ生命力だよな。
ただよ、−120℃になるとカタツムリのエサが無いんだってwwwwwwwwwwww
「草木が生えないから結果死にますね」だってwwwwwwww
人間ってよ血液型何種類か知ってる?4種類だろ。
じゃ馬。馬は何種類か知ってる?3兆wwwwwwwwwwwwwwwwww
ちなみにゴリラはみんなB型だってwww少なくねwwwww
全部自己中だよゴリラwwwwww
ゴリラってよ、あれ通称ってこと知ってんだろ。
あれの本名、つまり学名ってなんだか知ってる?知ってる?
ゴリラ・ゴリラだってwwwww
まんまじゃねえか。まんまじゃねえかおい。
それがローランドゴリラだとなんだか知ってる?
ゴリラ・ゴリラ・ゴリラだってwwwwwwww
まんまじゃねえか。まんまじゃねえかおい。
それがローランドゴリラだとなんだか知ってる?
ゴリラ・ゴリラ・ゴリラだってwwwwwwwwwちょwwおまwwwww
ヒネリナサイ!ヒネッテヒネッテヒネリナサイwwwってやかましいわww
119ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/02(木) 21:01:29.51 ID:YnvQtCUhO
120ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/03(金) 10:17:19.65 ID:1x7K+8nwO
ないた
121ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/04(土) 17:23:39.35 ID:mMGfHTf/O
122ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/06(月) 00:37:34.75 ID:E/fL2b+/O
保守!
123ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/06(月) 12:35:46.81 ID:+yTIKpzfO
あげ
124ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/07(火) 08:13:30.76 ID:dgImUua6O
死守
125ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 08:11:45.33 ID:R+WEl+PYO
h
126ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:23:39.64 ID:WucgJgtdO
デンマーク、皆さんはこの国をご存知ですか?
正式国名「デンマーク王国」。
北欧の端に位置し、面積は43000平方キロメートル、北海道の半分ぐらい首都はコペンハーゲン、人口は531万人いたって小さな国である。
言語は通常語はデンマーク語、英語でもほぼ通用する。
かのデンマーク、サッカーについては他の欧州国に遅れをとったデンマーク
サッカー自体の歴史は古いのだが・・・
世界に躍進しだしのは、つい最近のことである。
欧州選手権(ユーロ)に84年初出場、ワールドカップ初出場は86年、この80年代から、世界がデンマークのサッカーを認めだした。
このころから、彼らの躍進ぶりとスタイルから世界のサッカーファンは彼らのことを「ダニッシュ・ダイナマイト」と呼びはじめたのである。
127ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:25:54.75 ID:WucgJgtdO
そんな彼らが、2002年日韓ワールドカップに出場することとなった。
2大会連続、3回目の出場を決めたデンマーク・・・
そして、このデンマークが今大会のキャンプ地を和歌山県に決めた。
他の立候補地と同様に和歌山県側も誘致に必死であり、デンマークへ何度も訪れた。
この苦労が実りキャンプ地決定の知らせを受けた。
この一報に和歌山県の関係者は涙したという。
和歌山に決めた理由は「日本のほぼ中心地であり、関空に近いから」というそれだけの理由だった・・
アメリカ・イングランド・イタリア・スペインほど日本に名前は通ってないし、デンマークという国の存在自体は知っていても「どんな国民性なのか?」「どのような人種なのか?」って普通は誰も知らないものです。
もちろん、これは和歌山県民のほとんどが同じであった。
和歌山の街中ではこんな会話が交わされたという。
和歌山県民の声「今度のワールドカップでデンマークって国が来るらしいけど知ってた?」
「それは知ってるけど・・・誰か有名な人いるの?イングランドのベッカムとかイタリアの男前集団みたいに有名な人っているの?」
「う〜〜ん・・・知らない。だけど世界で有名なんやったら、一度は練習見に行こうか?」
デンマークの練習を訪れた人は”この手の会話”がきっかけとなった人たちばかりであった。
128ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:32:45.13 ID:WucgJgtdO
最初、いわゆる”野次馬”的な人が多かったのは事実である。
最初の見学者は数百人程度であった・・・
しかしこの数字が日々増えていった!
この数字が増えた理由には以下のことが一番大きかったと思う。
※ワールドカップ出場国のキャンプ地での練習というものは、”非公式・非公開”が通例。
イングランド、イタリア、スペイン、ブラジルといった強豪国はほとんど非公開だった。
練習初日からデンマークチームの意向で全ての練習を公開した。
さらに練習後には見学に来ていた地元サッカー少年たちを招きいれ、一緒にミニサッカーを行ったりもした。
この評判を聞きつけ、デンマークというチームが「むちゃくちゃフレンドリーで気さくな人たちばかりやで!」という口コミも相当あったという。
そして、この翌日から見学に訪れる人が徐々に増えていった。
初日はわずか数百人だった見学者が翌日には2000人、その翌日には2500人、そのまた翌日には3000人が訪れた。
練習後には気軽にサインに答える選手たち。
監督も練習後にはサッカー少年たちを招きいれ練習を指導したりもした。
この監督にある記者が「他国は練習を公開しないで、試合に備えていますけどデンマークはこれでいいのですか?」と聞いた。
すると、このデンマーク・オルセン監督はこの記者にこう答えた。
「我々の強さは練習を秘密にしたところで変わらない。絶対的な自信をもって試合にのぞむだけだ。何より、キャンプ地を提供してくれた和歌山の人たちが、喜んでくれることはどんどんするべきなんだ・・・試合も大事だが、この交流も大事にしたいと選手全員も言っている。」
129ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:34:35.44 ID:WucgJgtdO
このオルセン監督、この発言だけでも『いい人』をかもしだしているのだが、彼のエピソードをもう一つ語ろう。
ホテル入り初日のことである・・・
デンマークチームが来日し、ホテルでの歓迎セレモニーを受けた後、再度、宿泊先のホテルの支配人と料理担当のコック長が監督の部屋へ挨拶に訪れた。
「これからの数日よろしくお願いします」という言葉とともに、彼ら・・・支配人とコック長にはもう一つ言っておきたい・・聞いておきたいことがあった。
彼らにはもう一つ『心配のタネ』があった・・・
それは食事の問題であった。
ホテル側も選手たちには万全の状態で試合に臨んでほしかった。
食事が口に合わない・・・
それが原因ということだけは避けたかった。
他国の宿泊先ホテルに連絡をすると、食事でかなりもめたという事を聞いていた。
「口に合わない」「母国の材料で調理してくれ!」といった文句を言われたという事を彼らは聞いていた・・・。
デンマークが宿泊したホテルの支配人はこう言った。
「こういったトラブルだけはどうしても避けたかったんですよ」と。
それゆえ「最初に監督さんに聞いて、チームの意向を聞こうと思って挨拶にいったんですよね・・・」と言っていた。
その想いから、支配人とコック長は監督の部屋を訪れた。
そして通訳を介し、監督に聞いた。
「食事で何かご要望とかはございますか?」と支配人は聞いた。
するとオルセン監督はこう答えた。
「一切お任せします。そちらが用意される料理を我々はご馳走になります」と・・・
この言葉に驚いた支配人とコック長。
「いや・・やはり母国デンマークの食事の方がいいんじゃないでしょうか?」
「こちら和歌山をキャンプ地に決めたときから、食事もそちらにお任せしようと私と選手たちは言っていた。選手も理解している・・・全てをあなたたちにお任せします!」
「あの〜〜他の国とかのホテルにお聞きすると・・・食事はやはり母国のほうが好まれると聞いたものでして・・・。」
この言葉にオルセン監督はこう言った。
「他国は他国、我々は我々です!!」
130ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:35:30.34 ID:WucgJgtdO
この言葉に支配人は、「あの言葉で本当にホッとしましたよ・・・滞在中は無事に過ごせていただけるとあれで思いましたね。」と言っていた。
さらに、オルセン監督はコック長に向きなおし、言い出したという。
「我々は料理をあなたに全てお任せします。よろしくお願いします」
緊張しながらも「はい!こちらこそよろしくお願いします」と答えるコック長。
そして、コック長に聞くオルセン監督「和歌山で有名な食材は何ですか?」と彼は聞いた。
この質問の真意がわからずもコック長は監督に答えた。
「和歌山では魚が有名です、カツオという魚が特に有名です」と・・・。
するとオルセン監督は微笑みながらコック長に言った。
「それでは、そのおいしいカツオを我々に食べさせてください。あなたが腕をふるって、おいしいカツオを選手たちに食べさせてやってください!」と言った。
この言葉にコック長は大変感激した!
「世界の代表監督が、あんないい人だったからね〜〜いっぺんでデンマークのファンになりましたよ!」と言っていた。
131ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:36:28.26 ID:WucgJgtdO
この食事に対する『良き姿勢』は監督だけではなかった・・・
選手たちも同様だった。
最初の食事を迎えた時、ある選手が通訳に聞いた。
「デンマークでは食事するとき神への祈りをするのですが、日本では食事始める時に何かするんですか?」と聞いた。
デンマークは国民の9割がプロテスタントである。
神への祈りを終えてから食事を始める。
この選手は、日本ではこれの代わりに何かするのか?と聞きたかったのである。
これに答える通訳。
「日本でもキリスト信者は神に祈ってから食べるけど、たいていは手を合わせて『いただきます』と言ってから食べます。」と答えた。
すると彼は・・・ 「こうやるの?」と通訳に聞きつつ、手を胸の前で合わせた。
これに通訳は「そうそう!その両手をもう少し上に上げて!」と言った。
その言葉に彼は顔の前まで手を上げる。
「そうそう!」と答える通訳。
そして彼はその姿のまま、コック長の方へ向き頭を下げた。
それを見ていた他の選手たちも彼にならい、手を顔の前で合わせた。
この時から、食事のたびに手を合わせる選手たち。
コック長は言った。
「今の日本人でも『いただきます』『ごちそうさま』言えないヤツが多いのに・・・外国の人にあんなことされたらね〜〜むちゃくちゃ嬉しかったですよ!」と・・・
この最初に手を合わせた選手の名を・・・トマソンといった。
このトマソン選手・・・2002年のワールドカップでは、デンマークを決勝トーナメントに進出させた立役者である。
あの日本代表・小野選手と同じオランダ・フェイエノールトにも所属していました(現在はイタリアのACミラン)。
彼は少し神経質の面を持ちあわせているのだが、非常に心優しい青年だ。
132ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:37:24.89 ID:WucgJgtdO
トマソン、彼の優しき一面をもう一つ語りたい。
それはある握手会でのことである。
デンマークというチームは前述したように、練習を公開し、和歌山県民との交流を積極的に行った。
練習後は地元サッカー少年たちとミニサッカーを行い、握手会、サイン会もたびたび行った。
そのひとコマの話である。
あの日も、いつものごとくサイン会が行われた。
気さくなデンマークの選手たちを県民も大好きになった。
あの日もデンマーク選手たちのサインを求め長蛇の列が出来上がっていた。
気軽にサインをするデンマーク選手たち。
もちろんトマソンもその中にいた。
その最中のことである。
トマソンの前にある少年が立った。
彼はトマソンの前に立ちつつも・・・少しモジモジしていた。
後ろに立っていた母親らしき人が彼を促す・・・
「ほら!早くしなさい!」と彼に言っていた。
トマソンも少し「変だな」と思ったのでしょう・・・
通訳を通じ「どうしたの?」と彼に聞いた。
意を決した少年はポケットから一枚の紙切れを出し、トマソン選手に渡した。
それは学校の英語の先生に書いてもらったものだという。
英語で書いた、その紙切れにはこう書いてあった。
「ボクは小さいころに、病気にかかって口と耳が不自由です・・・耳は聞こえません、話せません・・・だけどサッカーだけはずっと見てきました、大好きです。デンマークのサンド選手とトマソン選手が好きです。頑張ってください。」と・・・
その手紙に通訳も・・・その場にいた我々記者も驚いた・・・言葉が出なかった・・・。
133ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 13:38:22.08 ID:WucgJgtdO
だが、トマソン選手はニッコリと微笑み少年に・・・「それなら君は手話はできますか?」と・・・「手話で語りかけた」のです。
その『言葉』に驚く少年と母親。
再度聞くトマソン・・・
「手話はわかりませんか?」と・・・
それを見ていた記者はトマソンに英語で言った。
「ミスタートマソン、手話は言語と同じで各国で違うんですよ」と彼に言った。
手話を万国共通と思う人が多いのだが国によって違う、ましてや日本国内でも地方によって違う。
「そうだったのか・・・」という顔をしたトマソン。
そして彼は通訳にこう言った。「ボクは彼と紙で、文字を通して話をしたいのですが手伝ってください」と言った。
微笑んで「わかりました」と答える通訳。
トマソンは「後ろの人たちにも彼と話す時間をボクにくださいと言っておいてください」とも言った。
後ろで順番を待つ人たちは何も文句を言わなかった・・・一言も文句を言わなかった・・・彼らに「2人の時間」をあげたいと他の人たちも思ったのでしょう。
そして通訳を介し、少年とトマソンの『会話』が始まった。
「君はサッカーが好きですか?」
「はい。大好きです」
「そうですか。デンマークを応援してくださいね」
「はい。あの聞いていいですか」
「いいですよ。何でも聞いてください」
「トマソン選手はどうして手話ができるんですか?正直、ビックリしました」
この少年の質問に彼は答える
「ボクにも君と同じ試練を持っている姉がいます。その彼女のためにボクは手話を覚えたんですよ。」と・・・
その彼の言葉をじっくりと読む少年・・・そしてトマソンは少年に言った。
「君の試練はあなたにとって辛いことだと思いますが、君と同じようにあなたの家族も、その試練を共有しています。君は一人ぼっちじゃないという事を理解していますか?」
この言葉に黙ってうなずく少年。
「わかっているなら、オーケー!誰にも辛いことはあります。君にもボクにもそして君のお母さんにも辛いことはあるのです。それを乗り越える勇気を持ってください!」とトマソンは言った。
このやり取りに涙が止まらない母親・・・。
この光景を見ていた我々記者も涙した。
その場にいた人たち、その2人を見ていた人たちも涙した。
134ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 14:06:49.20 ID:SVFp2+wl0
仕事中だというのに・・・つ□`)
135ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 14:20:05.63 ID:OpDURUQQO
残しておいて良かった
136ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/08(水) 15:42:43.88 ID:I2i57KDk0
前半どうでもいいなぁーーと思いながら読んでたら・・・・
馬鹿野郎!汗が止まらねぇ
137ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 01:09:05.66 ID:6+vdIu+ZQ
一昨日妹が死んだ。
原因は居眠り運転の車にはねられての事だった。
年齢はまだ23歳と若くこれから楽しい人生が待ってたはずなのに。
小さい頃両親が交通事故で無くなり兄妹離れ離れで暮らさなければ成らなかった。
生活能力の無い俺達にとってそれはごく当たり前の事だったと思う。
俺はその当時17歳妹は12歳だった・・・・。
俺は父親方の親戚に引き取られ、妹は母親方の親戚に引き取られていった。
2人とも引き取られたのは良いが、やはり他人が家に来ると言う事は受け入れがたい部分も有ったのだろう、俺はそれ位の事は重々承知している。
ただ12歳と幼かった妹にとっては非常につらかったと思う。
俺は何とか我慢をして生活していく事は出来たが、ある日俺の親代わりの親戚の父親が妹は親戚をたらい回しにされているんではないかと夫婦で話をしているのをふと耳に入れた。
いてもたってもいられず、その親戚の家に電話をしたらもう他の家に預けたと言う。
俺はその親戚に「何でちゃんと見てくれないのか?」と問いただしたら、大人には大人の事情がある!その一言でかたずけられてしまった。
そう言われた俺は、ただただ悔しくて悔しくて泣いた。
自分の無力さを恨んだ。
両親が交通事故で亡くなり、唯一の肉親がたった一人の妹だった。
そんな妹を毎日毎日「泣いてはいないか?」「元気にしてるのだろうか?」と毎日思っていた。
138ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 01:10:57.37 ID:6+vdIu+ZQ
そして俺が高校を出て21歳に成り就職を機に一人暮らしを始める時に妹に、「俺の借りているマンションに一緒に住まないか?」と言ったら、妹はすんなりと受け入れてくれた。
こうして一緒に住むことが決まりその日の夜に、これからとこれまでの生活の事を話し合った。
妹はやはり親戚の家ではあまり良くない扱いを受けていたそうで、俺のこの話を聞いた時その家で嬉しくて泣いていたと言う。
やっとこの生活から開放されるんだと。
それからの俺の生活は大変だった。
お金が無く公立高校にしか行かせてやれなかったが、普通に高校生として生活させてやりたいと、必死になって働いた。
毎日毎日働いた。
やりたい事もせず、俺の事は置いといて何よりも妹のために頑張って働いた。
こうして妹が高校を卒業して就職が決まり、その日は2人でささやかなお祝いをした。
あの小さかった妹が、大きくなりこうして俺の前で笑ってる。
俺は涙が出そうになった。
その時妹が、小さく小さく聞こえるかどうかの小さな声で、「ありがとう」と言ってたと思う。
本当にそう聞こえたかどうかは分からないが、その時俺はそう聞こえたと思いたい。
そしてある日妹が父の日だからとネクタイをプレゼントをしてくれた。
俺は、なんで父の日にプレゼントなんだよ〜って笑って聞いてみたら妹が、「両親が亡くなって代わりにここまで育ててくれたお兄ちゃんがお父さん代わり」なんだと。
俺はそれを聞いて嬉しかった。
両親が亡くなり妹のために何も考えず必死に働いてたから・・・
そういった心から嬉しがる事が無かったから非常に嬉しくてトイレで妹に気付かれないように声を殺してクゥクゥ泣いた。
ネクタイを締めて見せてくれとせがむ妹に恥ずかしいからと必死に断わった事を今更遅いが悔やんでいる。
何故あの時妹に見せてやらなかったんだと。
今でも妹のふくれっつらが目に浮かぶ。
139ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 01:13:16.12 ID:6+vdIu+ZQ
妹が事故に遭ったと連絡を会社で聞いた時、最初は何がなんだか理解できなかった。
病院に駆けつけた時には既に息を引き取った後だった。
眠るようにベッドに横たわる妹の顔見た時、俺は嘘だと思った。
何でなんだと。
両親が亡くなり兄妹離れ離れに暮らすはめになり挙句の果てに親戚にたらい回しにされ、邪魔者扱いを受けて暮らしていた妹。
こんなにも不幸な暮らしを受けて生きてきた妹にやっと見つかったと思う幸せな日々。
「お兄ちゃん、今まで見守ってくれててありがとう。私は十分幸せだから今度はお兄ちゃんが幸せになってね」と言ってくれていた優しい妹に、何でこんな仕打ちが有るんだと!!
俺の幸せなんかお前の後で十分なのに、何でお前が先に逝くんだと・・・・・。
何で両親ならずたった一人の妹までこうなるんだと、俺は病室で妹の顔を見ながらそう思った。
葬式には俺の友人・妹の友人とその彼氏。あと優しくしてくれた親戚の者だけで静かに行いました。
たらい回しにした親戚も来ていて「残念な子を亡くしたね」っと言った時に俺は怒った!激しく怒った!
小さい頃に邪険に扱っておきながら何を今更と、何であの時優しくせずに今そんな言葉をかけるのかと。
それを言うとその親戚の人達は何も言わずその場から離れた。
今思えば少し言い過ぎたかもしれないけれど、その時優しくしてくれてれば妹はもっとましな人生を送っていたかもしれないと思うと、俺は悲しかった。
140ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 01:16:01.29 ID:6+vdIu+ZQ
友人や親戚には言えないのでここで妹の事を少し話したい。

妹は俺が病気の時に必死で心配してくれていた優しい子だった。

妹はつらくっても中々俺に相談しない繊細な子だった。

妹の高校の卒業式には両親の遺影と一緒に参加した。

妹がご飯食べて帰るなら連絡しろって事を忘れて外で食って帰った時には怒られた。

妹に怒鳴りつけて泣かせた事もあった。

妹の帰りが遅いと怒りその事で喧嘩もした。

妹に彼氏が出来たと聞いて複雑な気持ちになった。

妹が泣いてた時も一生懸命話を聞いてあげた。

妹との色々と書き込めないくらいの思い出が一杯有った。

これからも喧嘩もしながら兄妹仲良く暮らして行きたかったけど妹はもう居ない。

結婚の挨拶に妹の彼氏が来たら追い返そうと思ってたけど、それすらもう出来ない。

それでも俺は当たり前の事だけど、これから妹の居ない生活を生きていかなければならない。
妹の言葉通り精一杯生き、そして幸せになる事が妹への最高のはなむけになると俺は信じている。

俺は無神論者だけどこれだけは言わせて欲しい。
この世に神様が居るとしたらあの世で妹が幸せで有る事を切に願う。
来世でも妹に会え、その妹が人並みの幸せな暮らしが出来ることを願う。
今度生まれ変わってもまたあの頃と同じ家族で出会いたいと俺は願う。

最後に俺の家族へのメッセージを言わせてください。

お父さんへ
「こんなに立派になりました。妹の事よろしく」

お母さんへ
「あなたの息子は精一杯生きています。先に逝った妹を可愛がってください。」

妹へ
「いろいろと迷惑かけたけど、安心してください。そちらに逝った時にはまた兄妹として仲良くしよう」

最後になりますが皆さんへのメッセージを大きな声で言わせてください

「ありがとう」
141ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 08:57:16.89 ID:2dQudcw00
長い・・・
要約したらどんなもん?
142ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 09:23:27.55 ID:eXwsQcIl0
>>141
妹が死んだ
悲しい
でもがんばる
143ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 16:38:04.34 ID:c9geQ4hRO
どこで泣けと?
144ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/09(木) 19:33:27.36 ID:tKo9PaDBO
そんな文句言わんでも
145ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/12(日) 09:21:20.10 ID:cyN7TPfwO
他の人が感動してるコピペにわざわざ文句つける人って、狭量だよね
146ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/13(月) 18:06:11.40 ID:xzLpqAXBO
うちは共働きで母親は海外出張で長期家をあけるなんてよくあった。
通ってる中学校はお弁当で父親がお弁当をよく作ってくれた。
色合いも全体的に茶色いしおかずが少なくてスカスカの弁当。
友達と皆で食べるのにそんな弁当が嫌で嫌でしょうがなかった。
恥ずかしくていつも隠して食べた。

でも長い事そうしてると友達に怪しまれる。
だからわざと弁当を忘れた。
何回も。
たぶんそんな気持ちに父親も気づいたんだと思う。
段々お弁当じゃなくてお金を渡されて自分で買いなさい。
って言われた。

皆の前でヘタクソな弁当広げなくていいと思うと毎日気が楽だった。

だけどある日起きたらお弁当が置いてあった。
父親は寝てる。
お金もらわないと昼は買えない。
でも昨日夜遅くまでなんかやってたし悪いなと思って弁当を鞄に入れた。

昼になって憂鬱になりながら弁当をあけた。

そこにはちらし寿司が入ってた。
ピンクとか黄色でめっちゃかわいい弁当。
食べながら黒板ボーッ見ててわかった。
そーだ。今日は3月3日だ。
いつもおひな様を母親が出してくれるのに今年はいないから出せない。
それで私が文句言ったから夜中に作ってくれたんだ。
一生懸命使ったんだと思う。
卵切ったりピンクの桜田麩かざったり。

もうね。バカかと。アホかと。

今日も忘れたフリしてったらどうしてたんだよ。

マジで泣きそうになった。
でも2年前に父親が死ぬまでこんな話忘れてた。

ありがとうっていっときゃよかった。
あとごめんねも。
147ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/13(月) 19:43:17.86 ID:m59OQ4ICO
お、これは初見だ
148ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/13(月) 19:50:27.27 ID:WcTnLtlbO
今日スーパーでお寿司買ってきたんだよwww
そしたらさwww賞味期限切れでさwww
時すでにお寿司ってなwww
やかましいわwww
149ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/14(火) 00:55:33.35 ID:jSz7Tzp/O
↑今回はクオリティ低すぎ。反省したまえ
150ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/15(水) 07:45:14.78 ID:T7bF/8JbO
あげ
151ウォスン@レベル7 ◆WOSSnEGCilV7 :2009/07/15(水) 07:48:48.51 ID:Fn/D/0QzO
うはwww東方ktkrwwwwwニコニコで俺超見てるし東方wwマジ俺オタクすぎwwwwwwwちょwwwww ( ゚∀゚)о彡゜えーりん!えーりん!wwwwwww
152ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/16(木) 03:12:34.79 ID:T/ZFmz2OO
153ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/17(金) 18:09:54.99 ID:iVjFDDpLO
そろそろ潮時ですかねage
154& ◆I96HovvxnIWS :2009/07/20(月) 22:59:52.72 ID:R/O71/zj0
79 :('A`):2009/07/14(火) 17:37:31 O
これは去年の話なんだが職場での雑談で「今度地元で花火大会が有るんだよな」
みたいな話をしていたらそこにある女が割り込んで来て俺に
「私も花火大会行きたいから連れてって欲しい」と言うんだ、
なんだか一人でwktkして、俺の地元の駅で待ち合わせして、三十分前から待ってたんだ
そうこうしているうちにその女が来たんだよ、彼氏つれて…orz
でも仕方が無いので会場まで案内してそこそこ良い場所が取れ、花火を見始めたらその女が
「喉乾いた〜」なんて言うので彼氏が俺に「すいませんがこれで何か飲み物を三人分買って来て下さい」
と俺に千円札を渡した、まあ初めての土地だから仕方が無いなと思い、
買いに行ったが、飲み物を買って戻って来るとそこにはもう誰も居なかった
これではもう俺はただのお人好しバカである、がその日はそのまま三人分の飲み物を持って、帰った
後日、その女に「お前は何を考えてるんだ、非常識にも程が有るぞ」と注意したら
「誰もあなたと二人で行きたいとは言って無いし迷ったのはそっちじゃないの」
なんて平然と言ってのけやがる、最初から俺を現地ガイドとして使うつもりだったらしい
泣くに泣けなかったよ…
嫌いだ、花火大会なんて

長文スマソ
155ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/21(火) 00:47:19.66 ID:oyBNdYbx0
スレチ
悲しいというより空しい話だな
156ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/24(金) 13:30:40.70 ID:bPZHY7er0
小学生のとき、めちゃくちゃ美人な外人のお姉さんが歩いてたんだ

俺「は、ハロー!」

美「こんにちは」  俺(゚д゚ )
157ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/25(土) 09:18:44.11 ID:HCdZbICfO
俺の中で一番はグリコアーモンドキャラメルだな。

アーモンドキャラメルにはちょっとした思い出がある。

うち、昔すげえ貧乏で余計な物なんて何一つ買ってもらえなかった。
親父は早くに病気で死んじまって、母親が働きながら必死に頑張ってる姿を見てたから貧乏でも我慢しなきゃって子供心に思った。

それでも毎年の学校行事の遠足や修学旅行で、お弁当の中身を見られるのが嫌で隠れて食べたり、おやつ代だって貰えるわけないから、みんながおやつ交換している時も羨ましくて仕方なかった。

そんな子供心を母さんは知ってたんだな。
あれは小学四年の遠足だったっけ一度だけ弁当の包みにグリコアーモンドキャラメルが一箱入ってた事がある。すげえ嬉しくてもったいなくて結局その場で食べられなかった。

手をつけずに持って帰ったキャラメルは、袋に半分こにして、母さんいつもありがとうって手紙を入れて渡したらボロボロ泣きながらニッコリ笑ってたっけ。あの顔は今でも忘れない。


あれから三十年近くになる。俺も子供が出来て、裕福ではないが、まぁそれなりに暮らしてる。
子供の遠足には毎回おやつとは別に弁当の包みにグリコアーモンドキャラメルを一箱入れる。
初めの頃は、なんでお弁当の包みにキャラメルが入っているのって子供に聞かれたもんだが。
天国のお婆ちゃんが入れてくれたんだよって教えてあげたら、不思議そうな顔してたっけ。

158ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/27(月) 11:02:31.42 ID:DX5jpL5H0
>>157  泣いた
159ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/28(火) 00:20:38.03 ID:eXdZ7lUb0
これ最後までよんだら涙が出た
http://muranishi-ch.com/new/news/blog.cgi
160ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/28(火) 01:16:03.61 ID:UCOx14qe0
読んでから左上の home 押してみろ
161ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 11:15:07.43 ID:tQgRssmx0
僕が就職した頃はバブルの末期で世の中はまだ勢い付いていた。 軽薄な時代だった。
(中略)
外注先のとあるプロダクションに女の子がいた。
専門学校を卒業したばかりの駆け出しのコピーライターだった。
大きな仕事を任されるわけもなく、彼女は納品の為にしょっちゅう来てた。 つまり使い走りである。
ショートカットの垢抜けない子だったけど、いつもニコニコと笑っていた。
メインじゃ無い仕事ばかりだけど、ミーティングに参加すれば、誰よりも真剣に話しを聞いていた。
僕がホワイトボードに書いたチャートを、一語も漏らすことなく写しとっていた。 そんな子だった。
(中略)
彼女は僕に好意を持っていた。


食事に誘い出した。日航のメインだった。 彼女は目を丸くした。
彼女が着ていたのは、母から譲ってもらったという古着のツーピースを仕立て直したものだった。
そこが、彼女に不釣り合いなのは分かっていた。分かっていて選んだレストランだった。
口説くには良い場所だった。彼女は簡単に交際をOKした。
僕はサイテーの奴だった。 彼女の事を本気で好きだったわけじゃない。
ボディコンに飽きて、ちょっと毛並みの変わった子にちょっかいを出した程度の感覚だった。
本当、胸くそが悪くなるくらいに最低の奴だった。
162ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 11:25:17.65 ID:tQgRssmx0
何度かデートをした。
彼女が着てくる服は普段着ばかりだった。
だから行ける場所は限られる。
映画か、せいぜいビリヤードくらいだ。
彼女のガードは固く、セックスに応じようとはしなかった。
それまで付合った女の子は、あからさまに言わなくても、
雰囲気でホテルに付いてくるような子ばかりだった。
だから、彼女の対応は不可解で不愉快だった。
僕はキレて「別れよう」と言った。
そう言うと、さすがに彼女も拒まなかった。

適当なラブホに入った。
入ってからも彼女は躊躇していた。
そこでは優しく振舞って何とか彼女を脱がせた。
そして彼女の体を見て驚いた。



胸部と腹部に大きな縫傷があった。
フランケンシュタインの縫い目のようなものだ。
実際その時、僕はそう思った。
彼女は手で隠そうとしていたけど隠せるものじゃない。
彼女は「ごめんなさい」と何度も言った。
僕は何も言えなかった。
ものすごく引いた。
気持ち悪かった。
163ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 11:38:58.88 ID:tQgRssmx0
けれど僕は彼女を抱いた。
なぜか?
気持ち悪さよりも性欲が優ったからだ。
なるべく傷跡を見ないようにした。

彼女は初めてだったが、そこまで考える余裕は無かった。
激しく動くと、どこかの縫い目が破れそうで恐かった。
ともかく何とか終わらせた。
終わると僕はすぐに仰向けになった。

彼女は泣いていた。
泣きながら、途切れ途切れに「こんな私を抱いてくれてありがとう」と言った。
ありがとう?
強烈な自己嫌悪が襲ってきた。
まるで病気のように体が震えた。
気付くと鳥肌が立っていた。
自己嫌悪で恐怖に陥るなんてことがあるのか?
自分で自分が恐くなった。
「一体、俺は何をしたんだ?」

僕は彼女を抱き締めた。
だけど、それは彼女が愛しかったからではなく、その時の状況を救って欲しかったからだったと思う。
抱き締めて背中に手を回すとそこにも傷跡の感触があった。
胸部と背中の傷跡の感触を感じているうちに涙が溢れ出た。
抱き合ったまま二人で泣き続けた。
164ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 11:53:14.52 ID:tQgRssmx0
それから数日間、彼女とは会わなかった。
僕から連絡することもなかったし、彼女も僕を避けてたと思う。
傷が何なのか疑問だった。
彼女は一切の説明をしなかったし、僕からは聞けなかった。

しばらくして彼女から電話があった。
「今日会えますか?」
約束の場所に行くと普段通りの彼女がいた。
普段通り過ぎて拍子抜けしたくらいだ。
だけど彼女が話したことはショッキングなものだった。

「会社を辞めました」と彼女は言った。
「え?いつ?」
「今日」
辞めた理由は話さず、彼女は唐突に「別れてください」と言った。

このまま彼女と付合い続けれるのか、とは僕も思っていた。
けれど、一方的に「別れよう」と言われるのは心外だった。
半ばケンカ別れのような形で僕らは別れた。
後味が悪かった。

彼女の事を考え続けた。
だけど、会社を辞めた彼女に連絡する術は無かった。
その頃はまだ携帯を持っている人は一部だったし、僕は彼女がどこに住んでいるのかすらも知らなかった。
165ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 12:07:05.30 ID:tQgRssmx0
半月くらいしてから彼女の弟が会社に僕を訪ねてきた。
突然で驚くと同時に、嫌な予感がした。
彼は最初に「●●●●を知ってますか?」と言った。
いやに芝居がかった言い方だなと思いながら「よく知ってるよ」と答えた。
彼はほっとしたような顔をして、「姉が入院してます、見舞ってくれませんか」と言って
病院と病室が記されたメモを僕に手渡した。
何の病気か尋ねると「詳しいことは知らない」と彼は言った。
嘘だと思った。
だけど、それ以上は聞かなかった。

その日のうちに病院に行った。
大きな大学病院だったが少し古い感じがした。

行ってから何も土産を買ってないことに気付いた。
幸い、病院の中に店があったので無難に花を買った。
病室は確か8人部屋だった。
個室じゃなかったので少し安心した。

部屋に入ると彼女は一番手前のベッドにいた。
彼女は僕を見ると「うそ‥‥」と呟いた。
どうやら弟は勝手に僕を呼んだらしかった。

166ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 12:27:21.51 ID:tQgRssmx0
彼女は元気そうに見えた。
パジャマ姿のせいで少し弱々しく見えるだけで、普段と変わらないんじゃないかと思った。
事実、彼女は病院内を自由に行き来することが出来た。
着替えれば病院を抜け出すことだって出来そうに思えた。

病名を尋ねたけど、彼女は「大した病気じゃないんですよ」としか答えなかった。
二人とも、別れ話のようなデリケートな話題は避けた。
するとすぐに話題が無くなった。
そうなるともう帰るしかなかった。

別れ際に彼女が言った。
「もう、来なくていいですからね」
彼女がどうしてそう言ったのかは推測の域を出ないけれど、それが切実な願いだということは理解できた。
彼女の目は真剣そのものだった。

だけど僕は翌日も病院に行った。
その翌日も、次の日も‥‥。
5日目に彼女が泣いた。
「もう私達、付き合ってないんですよ」といった。
「友達でもいいじゃん」と僕は言った。
たぶん、その時に僕も彼女も何かを振り切った。
167ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 12:30:54.00 ID:Lgg6+F8y0
168ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 12:41:44.80 ID:tQgRssmx0
毎日病院に通った。
仕事が忙しければ途中で抜け出して、残業で辻褄を合わせた。
半月も経てば彼女の病気が何であるかは一目瞭然だった。
だけど僕はその事には触れなかった。
平日は夕方の1時間くらいしか会えなかったけど、色んな話しをするようになった。
大抵は仕事に関する話しだった。
あの広告はどうだとか、あのライターのコピーはどうだとか、そんな話しをした。
休日の暖かい日は中庭を散歩したりもした。
そんな時はこのまま退院できるんじゃないか、とか言ってた。

おかしな話しだけど、見舞っているうちに 、僕は彼女のことが本当に好きになった。
会う度にどんどん彼女に惹かれていった。
惹かれるのに比例するように、彼女の体はやつれていく。
それがものすごく嫌だった。
代れるものなら代わりたかった。
169ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 13:01:41.91 ID:tQgRssmx0
春になる頃、急激に彼女の衰弱が進んだ。
本当にあっという間だった。
1日1日痩せていくのが分かるのだ。

自由に動き回っていたのに点滴が外せなくなった。
最初は1本だったのにどんどん増えていった。
鼻に管が付けられて寝たきりになってしまった。
それでも話すことは出来た。
少し眠そうだったけど酸素のせいだと言ってた。

でも、ICUに入ると会話なんか出来無かった。
手を握ったり、顔をさすったりできるだけだった。



そして、二日後に彼女は旅立った。

不思議なことに心の準備は出来ていた。
もちろん沢山泣いたし、やるせない気持ちもあったけど、何とか彼女の死を受け入れることができた。

後々、その事を考えると、彼女がICUで二日間、頑張ってくれたからだと悟った。
その二日間は恐ろしく短く、そして恐ろしく長い時間だった。
その間、強制的に心の準備をさせられていたのだ。
そんなことにまで気を使ってくれる子だったんだな、と思った。
170ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 13:13:35.95 ID:tQgRssmx0
「最後に苦しまなかったのが幸いでした」と彼女の母が言った。
この人はこんな時に何を言ってるんだろう‥‥と腹が立った。
しかし親が子供を苦しむ姿を見たくないのは当然だし、そう考えることが慰めになるなら仕方ない‥‥とか考えた。

だけどそれは間違った解釈だった。

後日、彼女の手紙を持って弟がやってきた。
手紙はあらかじめ預かったものだという。

その時、彼から始めて聞かされた。
彼女は、鎮痛剤やシャーベットを投与する時間を、僕の訪問時間に合わせていたというのだ。
どんなに周囲が反対しても彼女はそれを譲らなかった、という。
もちろん、その分のツケは後にくる。
夜明け頃が最も苦しく、ベッドの中で唸っている彼女の体を母親は毎日さすり続けた、という。

僕は大馬鹿者だ。一体、あの子の苦しみの何%を知っていたというんだ?
一張羅が母のお下がりだった意味を考えたことがあるか?

弟が帰ってから、非常階段で号泣した。
防火扉を何度も殴った。
今すぐ屋上に上って飛び下りてやる、と凶暴な気分になった。
けれど、手紙を読まずには死ねなかった。
そんな馬鹿な考えを制してくれたのも結局は彼女だった。
171ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 13:28:40.72 ID:tQgRssmx0
手紙は家に帰ってから読んだ。
二通あった。
泣きながら書いた手紙だと一目で分かった。

一通目は入院する前に書かれたものだった。
病気のことと、主に謝罪の言葉が書いてあった。

急に仕事を辞めてごめんなさい。
急に別れてごめんなさい。
いっぱい迷惑をかけてごめんなさい。
病気だったのに付合ってごめんなさい。

謝らなければいけないのは僕の方だった。
なのに僕は彼女に一言も謝れないままだった。
172ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 13:44:11.78 ID:tQgRssmx0
二通目の手紙には感謝の言葉が書いてあった。

仕事を教えてくれてありがとう。
付合ってくれてありがとう。
お見舞いに来てくれてありがとう。
CDを聞かせてくれてありがとう。
励ましてくれてありがとう。
人生の一部を私の為に使ってくれてありがとう。

そして最後に約束ごとが書かかれていた。
それは僕を気づかってくれたものだけど、同時に呪縛にもなった。

最後に一つ約束してね。
勝手な約束ごとだけど。
私が死んでちょっぴり悲しんだら、すぐに新しい彼女を見つけてください。
そして私に似ているところを見つけてね。
耳の形とか
ホクロの位置とか
話しかたとか
どんくさいとことか
何でもいいんだ。

そして時々は私のことを思い出してください。
時々でいいですよ。 新しい彼女に悪いから。
時々でいいけど、年をとってからも思い出してくれるとうれしい。
●●君が私を思い出してくれる時、私は●●君のそばにいるよ。必ずいるよ。

彼女は自分がああなることを知っていた。
恐らくは数年前から知っていたのだと思う。
その上で学校に通って自分の好きな仕事に就いたのだ。
時間は過ぎていくのに、自暴することもなく、普通の生活を普通に営んでいた。
彼女は強かった。
173ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 14:10:56.75 ID:v3ukT3Op0
ずいぶんはしょられたな。
174ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 16:41:57.11 ID:tQgRssmx0
>>173
眼鏡っ娘の話のほうは、このコピペ分の数倍の量だし、「泣ける」部分が少ないのではしょった。
関心ある人は、>>167のリンク先を見て下さい。
175ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/29(水) 22:21:52.92 ID:MxpWmy4b0
>>167のリンク先行くならTOPに戻って1,から見た方がいいな。
4時間近く掛かって完読した。
感動した、費やした時間は決して無駄じゃなかった、すばらしい
176ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 15:34:38.73 ID:oueSvzPO0
俺には歳が六つ離れた妹がいた。
俺は小学校の頃からずっと体育5とかで元気だけが取り柄みたいな子供だったんだが、妹はちょっと体が弱くて少し体調を崩すと何日も熱で寝込んじゃうくらいだった。
そんな事もあってかお互いケンカもほとんどなく本当に仲良く楽しく暮らしていた。
結構妹に甘くて、いつも何か頼み事されたら断り切れないでそれを聞いてしまう。

例えば、苺のショートケーキがおやつに出たら、出た瞬間にはもう妹が顔で合図してくる。
俺も馴れたものでそれだけで「はいはい・・・・・・」って感じで聞いてしまう。
そしたら妹は、たった一つの苺で大はしゃぎする。
あれを見たら苺の一つや二つなんかまじで安いもんだって思った。
本当にそんな何でもない日々を過ごしていた。
でもさ、現実なんて本当にもろいもんだった・・・・・・。

俺が高校2年生の時だった。
その日の朝もいつもと変わらない朝のはずだった。
いつもの目覚ましで起きて、いつもの制服に着替えて、いつもの道を通って学校に行く。
そんな何でもない日だったはずなのに、朝起きたら両親がやたらと騒いでいた。
177ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 15:53:36.67 ID:oueSvzPO0
朝からうるせぇなぁとか思いながら、両親が騒いでる居間に行くと、そこで顔面蒼白の妹が横になって呻いていた。
今までの熱とは明らかに違うような感じで、もう誰が見てもわかるくらいに
「苦しい・・・・・・辛い・・・・・・」って顔だった。
さすがに俺もびびって、すぐ妹に話しかけた。
そしたら、本当は苦しいはずなのに「いつもの熱だから大丈夫だよ。」って笑って言った。
そんなわけ絶対になかったのに・・・・・・。

親父が救急車を呼んですぐ病院に直行、すぐ集中治療室に運ばれた。
ドラマとかであるだろ?集中治療室の前で待ってる場面とか。
俺もよく見たけど、あの時は本当に気が狂いそうになった。
次から次へと嫌なことばかり考えてしまう。
本当に生き地獄だった。

その日の手術は無事終わったが、話によるとこれからもあと何回か手術を受けなければいけないらしい。
もちろん妹はそのまま入院。
退院の日にちを教えて貰うなんて甘い状況ではなかった。
次の手術の心配をしなければいけない状況だった。
178ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:01:24.76 ID:c33c+GSc0
かあちゃん殴った っていうこぴぺよろ
179ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:09:05.63 ID:c33c+GSc0
50 :おさかなくわえた名無しさん :2006/09/08(金) 03:00:46 ID:QAt0Hee6
ところでさ、一人暮らししてる人は年に何日実家に帰ってる?
俺は仕事が忙しくて夏休み3日正月休み3日の、計年間6日位なんだけどさ。

俺のカーチャン今50歳で、考えたくないけど
女性の平均寿命から考えてあと30数年とするわな。

単純計算すると、あと180日位しか会えないことになる。
冷静に考えてみたら、もう半年しかないんだぜ?

おまいらも数えてみ?
あと何日カーチャンと会える日があるか。


54 :おさかなくわえた名無しさん :2006/09/08(金) 21:33:35 ID:poxB7CWL
>>50
あと1年くらいって計算だ。これは笑えねぇよ。
180ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:09:44.06 ID:oueSvzPO0
妹はいつも「自分の熱のせいで、いつもみんなに迷惑かけてるから、あたしは悪い子だね」って言ってた。
今思えば、どんなに苦しくても、いつも笑いながら「大丈夫だよ。」って言ってたのか。
そんなことにすら気がつかなかったのに、俺は「心配するな、誰もそんな風に思ってないよ」って言ってた。

妹はずっと笑っていた。
恥ずかしい話だよ、本当に。
俺は、何で小学生の子供がこんな我慢しなきゃいけないんだって、本当に何度も思った。
年甲斐もなく「神様、助けてください」とかもやった。
無駄かもしれないってわかってたけど、本当に藁にもすがる思いだった。

お見舞いには毎日行ってたんだが、妹は全身チューブ姿。
俺は初めてその姿を見たとき、本当に怖かった。
このまま、もうだめなんじゃないかって・・・・・・。
でも、あいつの顔をみたら、そんなバカな考えが一瞬で吹きとんじまった。
その時、俺もしっかりしなきゃだめだって、改めて思った。

学校の部活も休部にさせて貰って友達の誘いも全部断ってずっと学校から病院に直行。
初めは恥ずかしいのか知らないけど「毎日来なくていいよ。」って言われたりした。
でも、病院なんてやっぱりつまらない場所だからすぐに「早く来てよ!」って言うようになった。
大抵は母さんがそばについていたんだがどうしても居ない日とかできたりしたから
そんな日はこっそり学校休んでずっとついててやってた。
俺あんまりしゃべるのうまくないんだけど、一生懸命話すと妹も笑って聞いてくれた。正直、何度も同じ話をしたと思う。
でもさ、ずっと笑いながら聞いててくれたんだ。
一度、「おまえはよ、俺には勿体ないぐらい良い妹だな。」って言った時、とびっきりの笑顔で答えを返してくれた。
あの時は本当にうれしかった。
これ書いてる今でも鮮明に覚えているぐらいだからな。
181ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:15:37.25 ID:8uN8ugaQ0
高校の頃、俺は一人の男子に虐められていた。
生まれつき体が弱かったのもあるが、抵抗する事すらできなかった。
今日もいつものように、トイレに呼び出され、いろいろと脅された。
毎日のように、チクろうかと何度も思ったが、勇気が出せなくて、まったく何も言えなかった。

しかし、ある日のことだった。

いつものようにトイレに呼び出され、やはり脅された。
しかし、今日は何かが違っていた。
「ごめんな・・・毎日こんなことばっかりして・・・」
俺は、複雑な気持ちになった。

それだけではない。

俺がそいつから盗まれたものが、すべて帰ってきたのだ。
何かがおかしい。そう思った俺は、彼に問うてみた。
「・・・どっ・・・どうしたんだ?」
俺は恐る恐る訊ねた。
「おまえの家の事情聞いてさ・・・」
182ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:16:50.28 ID:8uN8ugaQ0
俺は話のほとんどを理解した。
そういうことだったのか・・・

彼は、泣きながら謝ってくれた。


次の日・・・





そ い つ を チ ク っ た 。
183ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:22:51.08 ID:oueSvzPO0
それから二ヶ月ぐらいたった頃だった・・・・・・。
久しぶりに家族そろって病院に行った。
入院した頃に比べたら、妹は本当に痩せてて、触ったら折れてしまうんじゃないかってぐらい細い腕になっていた。
それはそうだ、ずっとベットの上で大して動けずに、ずっと、食べやすいようにされたどろどろの病院食と点滴だけだ。

一度、お見舞いの時に、苺のショートケーキを買って持っていったんだが、その時は食べることを許されなかった。
目の前にあるのに食べられないっていう辛い思いをさせてしまったから、その日以来、食べ物は持っていかないようにしてた。

でも、その日は違った。
親父がいきなり「何か食べたいものはあるか?」って言った。
俺は不思議に思っていたんだが、妹はそんな俺にはお構いなしで、大喜びだった。
案の定、苺のショートケーキが食べたいって言った。
親父は奮発して高いのを買ってやるって言ってた。
その日は本当に久しぶりにみんなが大笑いできた日だった。

病院の帰り、車の中で俺はさっき思っていたことを親父に聞いた。
「もう、普通の食事をしてもいいのか?ってことはよくなってるんだよな!?」って嬉しくて大声で言った。

そしたら、親父は黙り込んだ。
どういう訳か母さんも俯いてた。
さすがに俺も薄々感づいてた。

親父は言った。
「先生(医師)の話では、もう長くはないそうだ。」

そんな、本当にそんな素っ気ない言葉で、俺は頭の中が真っ白になっていた。
妹の体は、衰弱しきっていたらしい。

何のための苦しい手術だったんだ。

何のための長い入院生活だったんだ。

まだ何か言ってたけど、あんまり覚えてない。

母さんは横で泣いてた。
その時俺はどうして良いかわからなかった。
184ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:34:49.29 ID:8X8xQtfB0
夏休みに自転車でどこまでいけるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。
国道をただひたすら進んでいた。途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。
ペダルを漕がなくても。何もしなくても。
ただ、ただ気持ちよかった。自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。
子供心に凄く遠いところまできた事を知り、一同感動。滝のような汗と青空の下の笑顔。

しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。不安になる。怖くなる。いらいらする。
当然けんかになっちゃった。泣いてね〜よ。と全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。
交番で道を聞いて帰った頃にはもう晩御飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるは、
蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。
でも次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。絵日記の1ページになっていた。

今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。
家から電車でたかだか10個目くらい。
子供の頃感じたほど、大きくも長くもない下り坂。
でもあの時はこの坂は果てしなく長く、大きかった。永遠だと思えるほどに。

今もあの坂を自転車で滑り落ちる子供達がいる。楽しそうに嬌声を上げながら。
彼らもいつの日にか思うのだろうか。
今、大人になってどれだけお金や時間を使って遊んでも、

あの大きな坂を下っていた時の楽しさは、もう二度とは味わえないと。
もう二度と、友達と笑いながらあの坂を、自転車で下る事はないだろうと。
あんなにバカで、下らなくて、無鉄砲で、楽しかった事はもう二度とないだろうと。


185ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:42:22.77 ID:oueSvzPO0
次のお見舞いの日に、いつも食べていたような、スーパーで買う苺ショートケーキとは違って、専門店の高い苺ショートケーキを買っていった。
苺も本当に大きくて甘そうだった。
それをみて妹は大はしゃぎ。
苺のショートケーキを渡したら、本当に久しぶりに、顔で合図をしてきたんだ。
そのことが本当は嬉しかったけど、いつものように「はいはい・・・・・・」って感じで、苺を渡そうとした。

でも、それを妹が遮った。
「今日は兄ちゃんが、私の苺も食べて」って・・・・・・。
俺は一瞬呆気にとられていた。
だって久しぶりのショートケーキで、しかも高い奴なのに。

なんでそんな事するんだって聞いた。
理由を聞いても「いいじゃん。」ってくびを振るだけ。
俺も初めはしぶっていたんだが、どうしてもって言うから、素直に貰うことにした。
その様子を見て、妹は本当に嬉しそうな顔をした。
で、一緒に食べた、苺のショートケーキ。

それで妹が聞いてきた。
「苺、おいしかった?」って。
俺はうなずいた。
本当においしかった。

あの時改めて思ったのが「食べ物は一緒に食べる人によって、味がかわるもんだな」って。
どういうわけか、同じ苺なのに妹の方が甘く感じるんだ。
気持ち一つで、ここまで変わるんだなって正直びっくりした。

その後もいつものように、何気ない話をして笑った。
その中で、やっぱり親父が妹に言うんだよ。
「元気になって退院したら何処か行きたいところはあるかい?」って。
俺は、遊園地かそこらだろうかって考えてた。

妹はちょっと考えてから

「家に帰りたい。」

「家のテーブルでみんなと一緒にお母さんのごはんが食べたい。」って・・・・・・。

俺、自分の考えの浅はかさに怒りを覚えたよ・・・・・・。

今の妹には、そんな当たり前のことですら願いごとに値するほどなのに。

病室にいられなくなって、トイレに行って泣いた。
もう、わけがわからなくなって。
親父と母さんは、さすが大人だと思った。
家に帰るまでは、ずっと笑顔のままだったんだから。
186ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:45:15.87 ID:w3LEwgKTP
支援いる?
187ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 16:56:36.66 ID:oueSvzPO0
>>186 Thx


ついにその日がきた。
あのときも朝だった。
今度は目覚ましでなんて起きない、親父の怒声でおきた。
容態が急変したらしい。
着替える暇もなく、パジャマのまま車に乗って病院に行った。

妹は呼吸を荒げていた。
遠くからでも分かりそうなぐらいに荒かった。
病院に行ったあの日よりも、辛そうな顔にいっぱい汗をかいてた。
母さんが妹の手を握ってた。
母さんの手は真っ白になってた。
それぐらい力が入ってたんだと思う。

妹は俺たちが来たことに気付いたらしく、妹が本当に小さな声で言ったんだ。
苺、おいしかった?って。
それは前に何度も言った言葉だった。

荒げる呼吸の中なのに、何故かはっきりと聞こえた。
俺はうなずくことしかできなかった。
「次は俺のをあげるからまた一緒に食べような。」って言ったら、「今度、食べるときも、あたしのを、あげるよ。」って途切れ途切れに返してきた・・・・・・。
もう、我慢出来なくなってた。
俺はボロ泣きだった。

苺なんていらないからこれからも一緒に話しをしてくれよ。

これからも一緒に笑ってくれよ。

前みたいに一緒に遊びに行ってくれよ。

楽しい場所、いっぱい知ってるんだよ・・・・・・。

1人じゃつまんねぇよ・・・・・・。

俺は本当に・・・・・・本当にそう思っていた。
でも、そんなこと絶対に言えなかった。

辛いのは妹だったんだから。
188ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 17:13:30.04 ID:oueSvzPO0
「そんなこと言ってると、これからもずっとお前の苺を食っちまうからな。」
笑いながら、そんな冗談を飛ばした。
俺は泣いてたのに。
たぶん、変な顔になってたんだろう。
妹は笑っていた。
俺は泣いてるのに笑って、お前は苦しいのに笑って。
本当に変な兄妹だったな、俺たち。

あんなに苦しんでいたのに、逝く時は本当にあっさりだった。
治ってしまったのかと思えるほど朗らかな顔。
ただ眠っているだけにしか見えない顔。

なのに、なんでその顔に白い布をかけるんだよ。

俺たちの顔を見れなくなるじゃないか・・・・・・。

俺たちと、もう話せなくなるじゃないか・・・・・・。

もう泣くことしかできなかった。
あんなに泣いていたのにまだ涙は枯れなかった。

俺はダメな兄ちゃんだった。
ただ会いに行って話をするだけで。
俺はお前から、たくさんの大切な物をもらったのに、俺はお前に何か伝えてやれたんだろうか?
俺の気持ち、伝わってたか?
こんな俺たちの日々を誰かに伝えたくて、今こうして文字にしている。
あれから二年、俺は勉強したかいもあり、無事大学にも合格し、一段落ついた。
二年たった今でもはっきりと覚えているお前の笑顔。
遅くなっちまったけど、あの時言えなかった あの言葉を言わせてくれ。

苺、おいしかったよ。

ありがとう。
(後略)
189ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 17:16:56.97 ID:w3LEwgKTP
(T_T) ただいま号泣中
190ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/30(木) 17:38:38.65 ID:QUdFSesgO
このスレ残しておきたい
191ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/31(金) 14:06:26.18 ID:4wQ6k2Q+0
ある女の人が、学生の頃に強姦されました。

男性不信になった彼女は、ずっと男性を避けていましたが、
会社勤めをしているうちに、そんな彼女に熱烈にアタックしてくる人がいました。
その男性の優しさや「こんな自分でも愛してくれるんだ」という気持ちから、彼女も彼と交際を始めました。

そして交際を重ねて二年、ずっと清い交際を続けてきた彼が彼女をホテルに誘いました。
彼女は「大好きな人とできるのだから怖くない」と自分に言い聞かせましたが、
やはりベッドの上でパニックを起こしてしまったそうです。

その時、彼は彼女が泣きながら切れ切れに語る辛かった過去を、辛抱強く穏やかに聞き、
最後に泣き伏してしまった彼女に「ずっと大変な事を一人で抱えてきたんだね」と頭を撫でたそうです。
そして彼女の頭を一晩中撫で続けながら、彼女に語りかけていたそうです。
「これからはずっと俺が守るから。もう怖い思いはさせないから」
「焦る事は無いよ、ゆっくりと分かり合おう」
「君はとてもキレイだよ、ちっとも汚れてなんかいないよ」

「ごめんなさい」と繰り返す彼女に、彼は一晩中優しく語り掛け

「いつか、君が僕との子供が欲しいと思う時まで、心で深く分かり合っていこうよ。
僕が欲しいのは君の体じゃなくて君自身だよ」
と言い、その後彼女と結婚するまでの五年間、おでこにキスくらいまでの清い交際を続けました。
192ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/07/31(金) 14:17:53.37 ID:4wQ6k2Q+0
そして結婚してからも焦る事無く、ようやく初夜を迎えることができたのは、結婚後二年経ってから
だったそうです。

そして、私と弟が生まれました。

弟が二十歳になるのを待って、母が初めて子供二人に語ってくれた話でした。
その話を聞いたとき、母の苦しみや父の愛情、そしてそれに母がどれだけ癒されたのか、
今ここに自分の生がある事のありがたさを知って、ボロボロと泣きました。

お父さん、お母さん、愛し合ってくれてありがとう。

さらにその後、父とその件について話した事があったのですが、ホテルでの一件の後、
父は結婚してから母を一人にする事のないように自営業を始めるため、五年間貯金をしたそうです。

開業資金、結婚資金が貯まって、母にプロポーズをした時も「一生子供が作れなくてもいい」と思っていたそうです。
実際、振り返ってみても父と母はいつも一緒にいた所しか思い出せません。

そんな両親も今はこの世にはいません。
二年前に母がすい臓ガンで、昨年父が脳卒中でこの世を去りました。

母の命日に位牌を抱いたまま冷たくなっていた父を見て、弟と二人号泣しました。

「お父さん、本当にお母さんのことが大好きだったんだね」と大の大人が葬式でわぁわぁ泣きました。
法事まで母を一人にできなくて同じ日に亡くなったんでしょうか。

私たちを叱る時、精一杯厳しくしようとして、出来なくて、目に涙を浮かべながら一生懸命大きな声を出していた父と、
大きくなって「恥ずかしいよ」と文句を言っても私たちの頭を良く撫でてくれた母。
本当に最高の両親でした。
193(T-T):2009/08/01(土) 20:10:05.12 ID:XPgUD56CO
あげさせて…くれないか?
194ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/02(日) 00:08:15.04 ID:yufgI9FN0
涙腺が爆発しますた・・・( ;ω;)

あげさせてくれえええ
195ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/02(日) 00:15:42.19 ID:8tNt74kHO
このスレ、、
なんだよ、

ずるいよ。
見えなくなる、、画面が

196ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 08:08:02.23 ID:D2TNFm3sO
>>118
パンダP
197ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 13:12:00.56 ID:aVIHjv4R0
私は20代後半のオッサン会社員です。
私の幼馴染について書いてもいいかな、
と思えるようになってきたので書いてみたいと思います。
彼女との出会いはずうっと昔、もしかしたら生まれる前から知り合いだったかもしれません。
というのも、私達の母親どうしの仲が良くて、
小さい頃はよく一緒にままごとで遊んでいたという話をしてましたから。
残念ながらその頃の記憶はほとんど残っていませんが・・・
彼女と私は生まれた病院も一緒で、しかも生まれた日も一緒で、
近所に住んでいるという、幼馴染の典型みたいな感じです。
私の彼女との記憶の中で一番古い記憶は、
小学校1年の時に初めて学校に登校して、帰りに2人で並んで帰った時のことです。
あの時はまだ彼女の方が力が強くて、重い教科書を持ってもらいながら帰った記憶があります。
割と仲は良かったほうで、毎年バレンタインにはチョコをくれました。
と言っても直接持ってくるわけではなくて、
うち母が「はい、これ○○ちゃんから」とポンと義理チョコを渡してくれるだけだったのですが・・・
あまり憶えていませんが彼女とは保育園から一緒だったらしく、
小学校では1年生から4年間同じクラスになって、
中学では1年と3年で同じクラスになりました。
私はあまり目立たない存在でしたが、
彼女は中学になったあたりから徐々に不良として頭角を表し始め、
学校ではそこそこなスケ番(死語)でした。
私はどちらかといえば真面目な方だったので、次第に疎遠になって、
小学の時は仲の良さはどこへやら、中学3年の時はほとんど話さなくなっていました。
198ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 13:37:02.34 ID:aVIHjv4R0
ですが中学も終わろうかという2学期後半になって突如彼女が休み始めました。
今のワルな女子学生と違って、昔のワルは学校を休まないのが普通でしたから、
彼女がいきなり長欠したのにはクラス中が驚きました。

それから一週間たっても、二週間たっても、1ヵ月たっても彼女は戻ってきません。
さすがにクラスの仲間も「どうした?」という話になって、彼女の家に行ったりしたのです。

が、彼女のお母さんに「ちょっと今、体調がすぐれないから」と、丁寧に玄関で帰されました。
私達も「お母さんがそう言ってるから、大丈夫だろう」とそのまま帰ってきました。

ところが12月のある日の朝、私のところに1本の電話が掛かってきました。
その日はひどく冷え込む朝だったのを覚えています。

当時、まだ携帯どころかポケベルも無い時代でしたから、電話は家に1個、玄関の近くに置いてありました。
母が「○○ちゃんからだよ・・・」この時、母は少し落ち込んでいたような感じでした。
私は何か変な胸騒ぎを覚えつつ、保留のスカボローフェアが鳴る寒い玄関に出ました。
199ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 14:02:59.07 ID:aVIHjv4R0
「久しぶり」文字通り久しぶりに聞く彼女の声でした。
ですが彼女のイメージとは程遠い、どこか元気の無い声だった気がします。

「どうしたの?休んでるけど大丈夫?」
「うん・・・そっちこそ元気?」
「俺は元気だよ、皆心配してるよ?」

その言葉に彼女はしばらく沈黙しました。
私はどうしようもない胸騒ぎに襲われていました。

その後、彼女と少し話した後「暇なんだ、そのうち遊びにこない?」と彼女が言いました。

そして彼女が今居る所が病院だという事がわかりました。

まさか?・・・まさか・・・私は必死に悪い考えを打ち消していました。

母は「今日は学校はいいから、行ってあげな。先生には言っておくから。」
私は母の言葉を聞いて、嫌な感覚に襲われたのを今でも覚えています。
背中からジワーッと変な汗が出てきて止まりませんでした。
私は早鐘のようになる心臓を止める事が出来ません。
急いで病院に向かいました。
200ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 14:49:01.94 ID:aVIHjv4R0
教えられた病室を探しながら病院をウロウロと歩きまくります。
そのうち親切な看護婦さんが部屋まで案内してくれました。
「○○ちゃーん、彼氏が来みたいよ〜」
と看護婦さんがデカイ声で言うので、回りのベットの人が一斉に私を見ます。
心の中で「ちょっと待ってくれよ!」と思っていると、
中から「えっ?!ちょっと待って!」と彼女の声がして、ガサガサと音がします。
結構待ったと思います、いや針のむしろのような状態だったので、長く感じただけかもしれません。

「いいかな?」と看護婦さんが言った後に「いいよ」と返事がして、
看護婦さんは彼女のベットのカーテンをさっと開けました。

久しぶりに見る彼女です。
彼女はおっ!とした表情でこちらを見ています。
「よかったわね、じゃ、後はごゆっくり」と言うと、看護婦さんは消えていきました。

私はあまりの事に頭に血が上っていました。
彼女はベットから起き上がると、
「来たんだ?」と少し驚いた表情でこちらをみます。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
何を話していいのかわかりません。
私は伏し目がちにぼーっと立っていると
「座ったら?」
と椅子を勧めてくれました。

彼女は室内なのに毛糸の帽子を被っていました。

今ならその意味がわかるのですが、その当時は想像もつきませんでした。
201ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 15:34:37.38 ID:aVIHjv4R0
「来てくれたんだ?」
「もちろん」
「今日、学校は?」
「ん?休んだ」
「結構、度胸あるじゃん?」

この言葉に可笑しさが込み上げてきて、それを誤魔化すように
「そんなことねぇよ」と強く言い放ちました。
「ふ〜ん・・・」彼女の大きい瞳が私を捉えます。
漆黒で大きな瞳は引きずり込まれるような、そんな魅力を放っていました。
「ずーっと寝てばっかだと暇なんだよね、遊ぶ?」
私たちはトランプをしました。
彼女が治療を受ける時間や休む時間は待合室で待ちました。
そんな風にしていると、夕方に彼女のお母さんがやってきました。
「今日はありがとうね」おばさんからそう言われました。
「またこいよ」彼女はそう言って、手を振ってくれました。

それから三日に一回ほど、放課後に病院に見舞いに行くようになりました。
学校の話をすると
「へぇー」「ふーん」「いいなぁー」と私の話を食い入るように聞きます。

そしてそんな生活が結構続きましたが、
彼女が入院しているという話は、どこからともなく広まって、
私以外にもだいぶ見舞いにくるようになり、
私は徐々に見舞いに行く回数が減っていきました。
202ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 16:06:56.28 ID:aVIHjv4R0
そして高校受験も終わり、自由登校になった時の事です。
私は彼女から電話をもらいました。
その日はもう夜なのに「遊びに来なよ」という電話でした。

2月の寒寒とした夜。
私は黙って家を出て、無言でチャリを飛ばしました。

そして面会時間はとっくに過ぎている病院に入ると、気が付かれないように病室に向かいました。
彼女は同じフロアの個室に移っていました。

軽く部屋をノックすると、中から「はい」という彼女の声が聞こえてきました。
私は静かにドアを開けました。

そこにはいつも点滴などをして痛々しい姿の彼女は居なく、
代わりに綺麗なブルーのパジャマを着た彼女がいました。
部屋は月明かりでやんわりと照らされています。

そして、彼女はセミロングの髪型になっていました。
昨日まで毛糸の帽子だったのに・・・
しかしそれにしても似合っています。

「きたんだ?」
笑みを見せてベットから上半身を起した彼女が私に言います。
「うん」
203ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 16:50:19.74 ID:aVIHjv4R0
静けさの中、私はゆっくりと彼女に歩み寄りました。
ふわーっといい香りがしました。
ブーケのような、甘い・・・切ない香りです。

「こっちきなよ?」
私は彼女のベットに腰掛けました。

そして彼女は・・・彼女は化粧をしていました。
薄いピンクのルージュがとても似合っていました。

私が驚いた表情をしたのでしょう
「驚いた?」と軽く微笑みながら彼女が言いました。

「う、うん」彼女の姿は、もはやこの世の物とは思えないくらい美しかった・・・

そんな風に記憶しています。

パジャマの上に軽くカーディガンのようなものを羽織ると、
一度ベットから出て私の隣に並ぶように腰掛けました。

「ねぇ、憶えてる?昔さぁ・・・」そこから、滝のように2人で昔の話をしました。
運動会は一緒にリレー走ったよね・・・俺が何故かアンカーで彼女が俺にバトン渡したんだよな・・・夏のキャンプで朝、俺が寝てる彼女を起したよな・・・
何かドッチボールで彼女が俺ばっか狙ってきて、あんときは終わった後揉めたよね・・・
子供会のクリスマス会の時、2人でケーキ作ったよね・・・あれは失敗だったな・・・
中学の体育祭ではフォークダンスで順番が回ってくる直前で終わったんだよね・・・
今となってはそんな楽しい思い出しか浮かんできません。

「楽しかったね・・・」彼女がポツリと呟きました。

「うん・・・」
204ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 17:26:35.31 ID:aVIHjv4R0
彼女が私の手を握ってきました・・・とても冷たい手でした。
私は暖めてあげたい、そう思って彼女の手を両手で包みました。
彼女も両手で私の手を握ります。

あっ・・・
彼女と視線が合います、でも今の私は目を逸らさない。
そして彼女はゆっくりと目を閉じました。
彼女の息遣いが聞こえるほど静かな部屋で、私はゆっくりと彼女にキスをしました。

月明かりに照らされた彼女は本当に綺麗で、私は「俺はもうどうなってもいいな」と思っていました。
彼女がゆっくりと自分のベットに入ります。
私も手を引かれベットに入りました。

ベットの中で彼女の体を抱きしめました。

細い・・・あまりにも細い体でした。

私は涙を押さえる事が出来ませんでした。

「ばか、何で泣いてるの・・・」

彼女も泣いていました。
2人で泣きながらお互いの体を探りあうように抱き合いました。
そして、2人はお互いに初めての相手となりました。

その日はそのまま2人で寝ました。
次の日の朝、看護婦さんが部屋に入ってきて、
私達に「昨日は良く眠れた?」と何事も無かったように聞いたのを憶えています。
205ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 17:47:34.78 ID:aVIHjv4R0
そして彼女の容態が急変するのに、それほど長くはかかりませんでした。

寝ても覚めても、もうずっと覚めない夢を見ているようでした。

今までずっと近くにいた彼女が、近すぎて空気みたいな存在だったけど、常に自分の近くにいた彼女がいなくなってしまう。

そんな事は当時の私には理解不能でした。

葬式にも最初は行かないつもりでした。
ですが母が「最後くらいちゃんと挨拶しなさい」と言われ無理矢理連れていかれました。
クラスの仲間や知り合いに会いたくなかったので葬儀の最中、私は外で待っていました。
葬儀が終わっても式場に入っていく勇気が出ず、それでも1歩だけ踏み込むと、
彼女の遺影が飾ってあるのを見て、力が抜けてその場にへたり込みました。

そんな私を彼女の親戚の人と私の弟が棺の近くまで運んでくれました。
それでも彼女の顔は見れませんでした。

彼女の棺の前で泣き続けている私に彼女のお父さんが「ありがとうな・・・ありがとうな」と言ってくれました。
206ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 18:11:44.58 ID:NQHLB9gK0
しえん
207名無しさんがいませんよ:2009/08/03(月) 18:12:59.07 ID:2pmlQvHH0
-──- 、        _____
    /_____ \=@  //⌒ヽ ⌒ヽ  `\
    |/⌒ヽ ⌒ヽヽ | ヽ  /  |  ^ |^  |- 、   ヽ
    |  / | ヽ  |─|  l //  `ー ●ーU′  \   ヽ
   / ー ヘ ー ′ ´^V /  ─  |  ─    ヽ   i
    l \    /  _丿 i   二   |  二     |   |
.   \ ` ー ´  /   .l \     |     /  l   !
      >ー── く     ヽ  \  |   /    /   /
    / |/\/ \     ヽ   ̄ ̄ ̄     /  /   同じスレではこのままだけど
    l  l        |  l     >━━6━━━━━く    違うスレにコピペするとドラえもんがスネ夫
    ヽ、|        | ノ    /  く    /     ヽ    に変わる不思議なコピペ。
       |ー───j      l   (⌒(⌒)  /
208ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 18:19:16.26 ID:aVIHjv4R0
それからどのくらい経ったでしょうか、ある日彼女のお母さんが私を尋ねてきました。
「△△ちゃん・・・これ○○の病室の棚に入ってたんだけど・・・・」
それはバレンタインのチョコでした。
包みには私の名前が書いてありました。
私はびっくりして、急いで部屋に戻って中を開けました。
そこにはチョコレートと手紙が入っていました。

私は躊躇しました。
何が書いてあるのか・・・
私は悩みつつも手紙を開けてみることにしました。

中には写真が1枚入っていました。
それは中学3年の修学旅行に行ったときの写真、
私がぼーっと側にいる鹿を見ている横で、彼女がピースサインをしている、
ありふれたスナップ写真でした。
(この写真・・・いつ撮ったんだ?)
私はふっと裏側を見てみました。

好き

と書かれていました。
私は絶句しました。
そしてしばらく呆然と立ち尽くした後に座り込んで泣きました。
209ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/03(月) 19:15:05.71 ID:aVIHjv4R0
その後、あの夜について考えました。

なぜ、彼女の言った入口の鍵が開いていたのか?
なぜ、重篤な状態のはずの彼女が点滴を外していたのか?
なぜ、あの夜は誰も付き添いがいなかったのか?
なぜ、彼女はかつらを着けることができたのか?
なぜ、彼女は化粧をし、香水をつけることができたのか?
なぜ、翌朝私たち2人の姿を見ても看護婦さんは驚かなかったのか?
なぜ、中学生が無断で朝帰りをしても私は親に叱られなかったのか?

答えは一つです。
おそらくは、彼女は自分の死が免れえないものになったことを悟り、最後のお願いをしたのでしょう。
そして彼女の両親は勿論、病院の人も私の両親も、それを認めたのでしょう。
おそらくその願いとは、処女のまま死にたくないということではなくて、自分の肉体はほろんでも、私の心の中に永遠に生き続けたいということだったのでしょう。
そして、そのために最も美しい自分の姿を演出し、私の初めての女性となることを選んだのでしょう。
たとえ、それが自分の命を数日縮めることになっても。

毎年冬になると、ふっと彼女の事を思い出します。
彼女と遊んだ公園や坂道、一緒に通った道をもうどのくらい季節が過ぎたのか。
それでも彼女と一緒にいた季節は今も私の心を奮い立たせ、勇気付けてくれる大切な思い出です。
210ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/04(火) 13:56:20.50 ID:/WA0K5Y30
19の時、妹が産まれた。
友達から「お前の子供だろー!」なんてからかいも受けたりした。

でも、高齢出産だったかあさんはそれが元で、体がおかしくなった。

無理して産むから!
妹なんていらない!
なんで子供が出来るん?!
って、思った。

正直、その時は妹が嫌いだった。
余計な「物」だった。
気持ち良さそうに寝ている姿にムカついた。


結局、かあさんは出産のために入った病院から出ることなく、家には帰ってこなかった。


妹を殺してやろうと思った。
大嫌いだった。
絶対面倒なんて見ないって思った。

でも、父さんは違った。
自分の子供だからね。
かあさんとの子供だからね。
そう思った。
211ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/04(火) 14:43:32.14 ID:/WA0K5Y30
お葬式が終わって、四十九日の法要の日がきた。
それまでほとんど家には帰らなかった。
妹がいる家にはいたくなかった。

法要のあと、父さんに呼ばれた。
話があるって。
リビングのソファーに父さんが座ってた。
そばで妹が寝ていた。

泣いた。

すごく泣いた。

父さんの話を聞いてすごく泣いた。
そして、自分のバカさ加減に情けなくなった。

かあさんは元々体が悪かった。
ずっと昔から。
私を産む時も家族・親戚中から反対されてた。

でも、私を産んでくれた。

妹を妊娠した時も医者に止められていた。

せっかく授かったかけがえのない命を無駄にしない!って医者に言った。

どうせ長くないみたいだから、あなたとあの子に最後のプレゼント。

そう父さんに言った。

私が死んで、あなたが死んでも、これであの子は一人ぼっちにはならない。

そう父さんに言った。
ごめん、もうかけない。
212ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/05(水) 14:04:25.28 ID:l8vjA5nu0
2年付き合った彼に振られました。

それはもう、彼が言ったとは思えないほどのひどい言葉で。
どんなにまだ好きだと言っても復縁はかなわず、音信不通になってしまいました。

そんな彼の友達から、彼が亡くなったことを聞き、彼が書いた日記をもらいました。

「入院2日目、昨日は周りのモンがめずらしくて初体験ばっかだったけど、今日からヒマなんだよな〜。

 こうやって日記つけてみたわけだけど、オレのことだから続かんだろなぁ。

 N(私のことです)は今頃元気にしてるかなぁ。

 最後傷つけちゃったけど、新しい男でも見つけてくれんかなぁ。」

「今日テレビでディズニーランドの特集やってた。
 Nと行ったことを思い出した。

 あいつ買い物大好きだったから、あの時は疲れていい加減にしろとか思ってた。
 でも帰りにこっそり買っといてくれたミッキーはうれしかった。
 今枕元にあるわけだけど、友達なんかにからかわれるから皆が来るときだけは隠してる。

 別れちゃったしなぁ・・・

 好きなんだよなぁ。」
213ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/05(水) 15:10:44.37 ID:l8vjA5nu0
「夢にNが出てきた。
 半年は会ってないよなぁ。

 別にたいした夢じゃないけど喋った。
 それだけで幸せだなぁ。

 なんで目覚めちゃったんだろ。

 今ごろ誰と喋ってんだろ。
 宇多田の歌みたいだ。」

それは日記では無く、私のことばかり書いてありました。

「やっぱりNが好きだぁぁぁ忘れられねぇぇぇぇぇ。

 日常の一つ一つにNが出てくるんだよう。

 ばかやろぉぉぉぉぉぉ。」

そして、次のページが最後でした。
214ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/05(水) 15:25:17.92 ID:7lCef+aR0
さっきコンビニ行ったら、ガキが安いお菓子をポケットに入れて店を出て行った。
俺もそのまま追いかける形で店出たら、そのガキが5〜6軒先の本屋の前で立ち止まって、 店の外で回転するラックんとこで昆虫図鑑みたいの見始めたんで声をかけたのよ。

「さっきの店から持って来たモン、俺が謝って返しといてやるから。もうやるな」

って。
そのガキ、しばらく唇噛みながら俺をじっと見つめてたんだが、だんだん目に涙が浮かんで来て

「ごめんなさい」

って言いながらポケットから菓子出して俺に渡した。 色々有ると思うけど、男はどんな時でも間違った事だけはしちゃいけねえよみたいな事を軽く説教してやった。
ガキはずっと黙ってたが、俺がじゃあなって行こうとしたら、後ろから袖を引っ張って、俺の目を真っ直ぐ見つめながら

「もう絶対しない・・・男だから」

って強い口調で言った。










俺は、その菓子を食いながら家に帰った。
215ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/05(水) 16:19:34.58 ID:l8vjA5nu0
「オレはもうすぐ死ぬらしい。
 医者ははっきりとは言わんけど、わかるモンだなぁ。
 思えば治らない病気(病名は伏せ)だって聞いてからもう1年だ。
 結構長く生きた方だし、充分な人生だったんじゃねぇ?
 って思おうとしたけどやっぱりダメ。
 もっと生きたい。

 Nともっと一緒にいたかった。

 入院してる間、振ったことを、あんなひどい言葉を言ってしまったことを ずっと後悔してきた。
 でも、退院して完治なんて可能性が無かったオレにNを付き合わせるわけにはいかなかった。
 Nはキレイだし性格いいんだからすぐ次に男ができる。
 オレのために人生棒にふらせるわけにはいかん・・・
 って何回も納得したはずなのに。

 Nと喋りたい。
 今から電話したい、 会いたい。
 まだ死にたくない。
 まだフォアグラ食べてないし、USJ行ってない。
 大学卒業したかったし、母さんに親孝行もしたかった。
ベタでも父さんと酒飲みたかった。

 Nをもっと抱きたい。
 結婚して子ども欲しかった。
 おじいちゃんおばあちゃんになっても、手とつなぐような夫婦になりたかった。

 Nにあいたい。

 でももう叶わない。
 後悔してばっかりだった。

 死ぬときは笑っていきたいけど、 本音は辛すぎる。

 N、
 やっぱりまだまだ愛してる。

 オレのこと忘れて幸せになれよ。」
216ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/05(水) 17:10:56.16 ID:l8vjA5nu0
涙が止まりませんでした。
彼は私のことを常に考えてくれて、でも私は彼の体のことなんてまってく気付かずに、自分のことばっかり考えていました。

何で死んじゃったんだろう。

私には彼しかいないのに。

友達はこの日記を病院のゴミ箱で見つけたそうです。
私に見つからないようにだと思います。

私のことをここまで想ってくれる人はもういません。
お葬式には行けませんでした。

明日は彼の一周忌です。
最初は自暴自棄な私でしたが、
彼の遺志を尊重するために幸せになろうと思います。
217ローカルルール変更議論中@VIP+:2009/08/06(木) 13:22:21.62 ID:Ow5uN9ED0
妹からの最後のメールを見て命の尊さ、居なくなって残された者の悲しみがどれほど苦痛か・・・

白血病に侵され、親、兄弟でも骨髄移植は不適合でドナーも見つからず・・・


12年間苦しむだけで短い生涯を終えた・・・14才でした・・・。


妹が2才半のとき、微熱が続き、病院に行ったときには「白血病」と診断・・・
その日から母は毎日病院と家を往復する日々が続き、大型連休で家族そろってレジャーに行く日なんてありません。

妹の面会が我が家の大型連休の消化日課でした・・・

「妹がいなければ遊びに行けたのに!!」
当時は妹に憎しみさえ抱いたほどです。

でも、両親が妹ばかり世話し、愛情いっぱいあげてる姿に嫉妬したんでしょうね・・・。
その妹が亡くなって2年。
両親は抜け殻がとれたような静けさです・・・私もですが・・・。
218ローカルルール変更議論中@VIP+
99年の12月中旬、突然妹が「携帯電話がほしい」と、言い出しました。
私がメールばかりしていたので欲しくなったんでしょうね・・・
もちろん大急ぎで買いに行きました。
そしてイブの夜に携帯電話を渡し、一緒にメールの送信方法も教えてやりました。

そして、私が家に帰る頃には、零時を過ぎてクリスマスを迎えた寒い夜になっていました。
寝ようと思ったら妹からのメールです。

「さっきはイブだったけど、今日はクリスマスだよ。

迷惑ばかりかけてごめんね。おにいちゃん。

ありがとう」・・・

これを見た途端、母が息を切らして階段を上がり、「病院に行くから支度しなさい」
・・・さっき別れたばかりなのにまた行くの?なんで?と思いました。

病院に行くと、さっきまで元気だった妹が、顔に白いクロスをかけられて、亡くなっていました。

あとで看護婦さんに聞いてわかったことなんですが、

携帯電話を強く握り締めて離すのにたいへんだったと・・・

それを聞いて涙がいっぱいあふれました・・・。

妹の携帯電話は解約しましたが、2年経ったいまでも遺影の横にそっと置いてあります。

妹は、私にだけはきちんとお別れして逝きました。


天国でも携帯電話使えると良いなぁ・・・