「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 12:38:00.59 ID:zdWq5/480
よくある質問
Q
このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?
A
始めにこのスレを立てた
>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった
まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:40:57.78 ID:zdWq5/480
−−−−悪魔の囁きが消失してから、数日後
病室の前まで来て…翼は、一度立ち止まった
すぅ…と、軽く深呼吸する
こんこん、と、軽く病室の扉をノックした
「………誰だ?」
今まで聞いてきた声と、まったく変わらない、冷たさを含んだ声
その声に、反射的に萎縮しかけ、だが、首を左右に振って、顔をあげる
「親父、入るぞ?」
「……………」
返事はない
だが、気にせず、翼は扉を開けた
…窓を開けていたらしい
そよそよと、5月に入ったばかりの、まだ少し冷たさを含んだ風が頬を撫でる
病室のベッドの上で、朝比奈 秀雄は、静かに窓の外を眺めていた
灰色になった髪が、かすかに風に揺れている
「…親父」
「………来たのか、翼」
ゆっくりと、朝比奈が振り返る
振り返った、その顔の……否、その目を見て、翼は小さく息を飲んだ
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 12:42:59.53 ID:zdWq5/480
朝比奈の、典型的な日本人の黒い瞳の色が……金色に、変貌していたのだ
それは、朝比奈がもう二度と、平凡な、普通の人間の生活には戻れぬと言う、その証のようで
翼の様子に気付いた朝比奈が、小さく呟く
「…この目が、あの化け物共との契約の代償の一つ、だそうだ。「黄金伝説」のドラゴン共の多数と契約してこの程度ですんだのなら、まだ軽いと言われた」
「……そう、か。でも、親父。あんた、それだけじゃなく…」
……それ以上は言うな、とでも言うように、朝比奈が制す
自分の体の事は、自分が一番よくわかっているのだろう
多少、忌々しげな様子を見せながら、答えてくる
「………あの化け物の言葉に乗ったのだ。自業自得だろう…この身が朽ち果てなかっただけ、マシだ」
淡々と、そう告げてくる朝比奈
己の身に起きている変化を事実として受け止め、これからの事も覚悟している様子だった
「…それで、翼」
ゆっくりと
金色の双眸が、翼を真っ直ぐに、射抜いてくる
「お前は、私を殺しに来たのか?」
そう、問い掛けてきた朝比奈の表情は
翼の答えがどんなものであろうとも、受け入れる覚悟が出来ている表情だった
…病院の、待合室にて
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 12:44:56.66 ID:zdWq5/480
「「薔薇十字団」の保護下に?」
「えぇ、あの時、あの場には、先に「薔薇十字団」が駆けつけましたから」
あの日、朝比奈 秀雄との戦いが終わり、悪魔の囁きが消滅した直後
真っ先に、あの場に駆けつけてきた組織は「薔薇十字団」だった
恐らく、戦いが終われば、すぐにでも向かえるように準備していたのかもしれない
「組織」先んじてあの場に現れ、素早く、朝比奈 秀雄を確保してきたのだ
ここの病院も、「薔薇十字団」の影響下にある病院だ
よくよく気配を調べれば、スタッフの中に「薔薇十字団」のゴーレムが混じっているのがわかる
「「薔薇十字団」としましては、罪を断じて命を奪うのではなく、その償いをさせたいのでしょうね」
「……甘い考え方ね」
黒服が口にするその内容に、やや呆れた様子を見せる望
ちゅー、と他人事のようにジュースを飲んでいた詩織が、のんきに続ける
「ま、殺しちゃったらそこまでだけど、生かしておけば何かしらの役に立つかもしれなし、そう言う事なんでしょ?」
「……そうなのでしょうね、恐らくは」
小さく苦笑する黒服
彼としては、死を持ってしか償えぬ罪など、この世にはなく
死を持って制裁を加えるのは……他に、本当に、ただの一つも方法がなかった時だけだ、と考えている
だが、もし、翼が、朝比奈を止める為の手段として殺害を選ぶのであったならば、自分が、翼の代わりに朝比奈の命を奪うという選択肢を持っていたのも、事実だ
…翼の心は、肉親殺しには、耐えられないだろうから
幸いにして、結果的に、翼はその手段を選ばないでくれたが
「……黒服」
「どうしました?」
「…翼は、結局………あれだけのことを、されても、朝比奈 秀雄が他の連中にしたことは、ともかくとして…………自分にした事だけでも、許すのかしらね」
望の、そんな言葉に
黒服は、どこか複雑そうな表情を浮かべて見せた
「…そんなに、俺に殺されたいのかよ」
一歩
翼は、朝比奈に近づく
「お前には、その資格がある」
淡々と、そう告げる朝比奈
逃げる様子は見せない
今、翼がこの場において、朝比奈を殺害しようとする動きを見せたと、しても
朝比奈は、逃げようとしないだろう
一歩、一歩
ゆっくりと、翼は朝比奈に近づいて
手を伸ばせば、首にその手が届く
その範囲まで、近づいて
す…と、翼の手が、伸ばされた
それを見て、朝比奈は静かに目を閉じ…
……ぺし
脳天に、軽く、チョップが落とされる
「……何をする」
「何をする、じゃねぇよ、馬鹿親父が」
「………お前に馬鹿、と呼ばれるのは、マドカにそう呼ばれる事の次には、異議を申し立てたいものだ」
7 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:50:09.75 ID:zdWq5/480
「うっせぇ!………とにかく、俺は、あんたを殺す気はねぇよ」
はぁ、と呆れたように、翼はため息をつく
そんな翼を、朝比奈は酷く不思議そうに見つめていた
「…言っただろう、お前には、私を殺す資格がある、と。お前とて、私を恨んでいるはずだ」
「………そりゃあ、恨みはたっぷりとあったけど。殺したいと思うほどじゃねぇよ」
それに、と
小さく、肩をすくめて、続ける
「…あの時、思いっきりぶん殴ったら……もう、どうでも良くなった。許すのか、って聞かれたら、それは、自分でもよくわかんねぇけど……ただ、あんたを殺す気はねぇ」
「……………そうか」
翼の答えに、今度は朝比奈がため息をついた
「マドカと、同じ事を言うのだな。やはり、あれが産んだ子供か。似ているらしい」
「心の底から嬉しくねぇぞ、その言葉は」
「そうか」
淡々と答え……そして、どこか自嘲気味に笑う朝比奈
翼に視線を向け直したときのその表情は、酷く真剣で
「……私に、こんな言葉をお前にかける資格がないことなど、わかっている…………だが、言わせて欲しい…………すまなかった」
謝罪の言葉
それが、翼の心を揺さぶる
「お前は、私を父として見なくとも、良い………父と呼ばれる資格など、私は持っていない」
「…………」
8 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:51:07.48 ID:zdWq5/480
「…だが、それでも………私は、お前を息子だと、認識したい。お前は、マドカが命を賭して産み落とした……私と、彼女との、たった一人の、子供なのだから」
………朝比奈の言葉に
翼は、どう答えたら良いのか、迷ったような表情を、浮かべて
「……父、さ」
翼が
そう、口に出しかけたのと
それは、ほぼ、同時だった
「あぁ、いたいた」
「…?あなたは、山田さん…どうかなさいましたか?」
ぱたぱたと、黒服の姿を見かけて駆け寄ってきた青年、山田
やや慌てた様子で、辺りを見回している
「あー、その…ここ、朝比奈 秀雄が入院してる病院だよな?」
「そうだけど、どうかしたの?」
望に問われ
山田は、心底嫌そうな表情で答える
「…マゾが、な」
「うん、わかった」
「………とりあえず、私たちは、彼女の姿は見かけていませんが…」
9 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:52:02.16 ID:zdWq5/480
……あぁ
大体、予測できた
黒服と望、ついでに詩織は、病室で起こっているであろう惨劇を軽く予想しつつ…黒服は同時に頭痛も感じつつ、立ち上がった
翼がいるはずの、朝比奈の病室に向かう
「…そう言えば、朝比奈 秀雄の容態、ってどんな感じなんだ?」
「……それが、ですね」
何気なく尋ねてきた、山田の言葉に
黒服は、やや難しそうな表情を浮かべ、答え始めた
「改めましてこんにちは、お義父様!!このエムナ=ド=サンタ=クロース、この翼様と結婚を前提にお付き合いさせて頂いて」
じゅうっ!!!
突如、現れたマゾが、寝言をほざいていた、その最中に
マゾの体が、思いっきり、炎に包み込まれた
…翼の「厨2病」との多重契約の炎が発動したのだ
いきなり燃え始めたマゾを見て……朝比奈は翼に告げる
「…翼、女は選べ。この化け物だけはやめておけ。それと、その炎は多様は命に関ると聞いている。多様するな」
「こいつの寝言を真に受けんなっ!!妄想全開の妄言でしかねぇっつの!!……炎に関しては、俺だってよくわかってるよ」
今は、うっかりカっとなって使ったが
普段は、さほど多様してはいない
この炎を使うとなると、それこそ、この父のような厄介な相手や強い相手だけだ
翼の言葉に、そうか、と頷く朝比奈
とりあえず、マゾと翼が付き合っていないという事実を知ってほっとしたようである
10 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:53:05.16 ID:zdWq5/480
……がし
炭になったはずのマゾが、即時再生
翼の足を、掴んだ
「っふ、ふふふふふふ………翼様の燃えるような愛、しかと、受け取りました!!」
「愛じゃねぇええええ!!??こんなドメスティックバイオレンスな愛があってたまるか!?っつか、離れろど変態っ!!」
「あぁっ!?ツンデレさんな言葉の愛が心地いいっ!?」
げしげしげしげしげし!!
わりと容赦なく、マゾを蹴っている翼
が、マゾはむしろ喜ぶだけである
「翼、ここは病院だ。騒ぐな」
「っつてもよ。親父…」
「……とりあえず、これは邪魔だな」
むんず、と
朝比奈が、マゾの首根っこを、掴んだ
片手で軽々と、その体を持ち上げる
その様子は、とても、病室で安静にしているはずの男には見えない
「あら?お義父様?」
「……貴様に、義父などと呼ばれたくない」
冷たく、言い放ち
朝比奈は、少し空けていた窓を全開にすると………ぺいっ、と、その窓から、あっさりとマゾを放り投げた
そして、軽く息を吸い込み……
窓の外へ放り投げたマゾに、向かって
黒に近い紫色のブレスを、勢いよく、吹き付けた
11 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:54:21.61 ID:zdWq5/480
「……遅かったか」
毒のブレスに蝕まれ、落下していったマゾの様子を見て…盛大に、ため息をついた山田
病室にいた翼と朝比奈に、頭を下げる
「…すみません、家の馬鹿が迷惑かけて」
「埋めとけ、あれは。コンクリ詰めにでもして海にでも沈めて置けよ」
「………多分、そうしても、帰って来る」
山田の言葉に、ほぼ同時に舌打ちした翼と朝比奈
…翼は喜ばないかもしれないが、やはり、親子なのである
妙な所で息があう
「毒のブレスも、まだ使えるのね」
「まぁ、炎のブレスと毒のブレスが、西洋竜の特徴のひとつですからね」
望の言葉に、苦笑しながら答える黒服
…朝比奈から、解き放たれた「黄金伝説」のドラゴン達
だが、一匹だけが…朝比奈の中に、残っていた
あまり大きくない、人間より少し大きい程度の、小柄な竜が
恐らく、小柄な姿であるが故、巨大化した姿の時、その存在が表に出ていなかったのだろう
そのせいで、「ロンギヌスの槍」の影響を受けず、よって、「刃物は縁を切る」によって、朝比奈との契約を切られる事もなく、朝比奈の中に残ったのだ
…結果と、しては
そのドラゴンが、朝比奈の命を護ったと言ってもいい
多数のドラゴンとの無茶な契約、悪魔の囁きの影響による、年齢を考えぬ無茶な身体能力強化
そのせいで、朝比奈の体はボロボロだった
12 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:55:33.92 ID:zdWq5/480
通常ならば、寝たきりの状態や、植物人間状態になってもおかしくはない
しかし、朝比奈の中に、その一匹のドラゴンが残っていた事で…朝比奈 秀雄は、奇跡的に、一生寝たきり、と言う症状を免れた
とは言え、一匹のドラゴンとの契約が残っていたからこその、その状態
もし、そのドラゴンとの契約を切れば……今度こそ、命を落とすかもしれない
ドラゴンによって辛うじて保たれている体の状態が、契約解除によって、一気に崩れかねないからだ
…つまり
朝比奈は、ドラゴンと言う都市伝説なしには、生きられない体となったのだ
いまだ、朝比奈は都市伝説を「化け物」と呼び、心の底から受け入れた訳ではない
…そんな朝比奈が、都市伝説なしでは、生きられない状態となっている
都市伝説のお陰で、命を保っている
……本人にとっては、さぞや、屈辱的なことだろう
もっとも、先ほどのように、便利に使ってもいるようだが
「…じゃあ、俺、痙攣してると思うマゾ連れて帰るわ、迷惑かけた」
疲れきった様子で、病室を後にした山田
その後ろ姿を見送って、黒服も望とそっと手を繋ぎ、翼に告げる
「では、翼。私達はまた、待合室で待ってますから…」
「あぁ、いや、いいよ。話は終わったし」
そう言って、からからと窓を閉めてから、黒服に駆け寄る翼
…病室を出る、直後
朝比奈に、振り返って
「……ちゃんと、迷惑かけた人達に、償えよ?」
「…………わかっている。それが、私がこれから生き続ける、理由の一つなのだから」
朝比奈の言葉に、翼は満足したように、笑って
13 :
エピローグ1 父子 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:56:36.16 ID:zdWq5/480
「…それじゃあ、また今度な、糞親父」
そう、告げて、黒服達と共に病室を後にした
閉められた扉を見つめ……朝比奈は、小さく呟く
「……あのような呼び方でも、父親と認識されているだけマシ、か」
自嘲するように、朝比奈は笑って
これからの己の人生に、静かに想いを馳せた
「…そう言えばさ、翼」
「何だよ、詩織」
病室を後にしながら
黒服の後をついていく翼に、詩織が尋ねる
「翼、悪魔の囁きに、願いを叶える手段があるなら〜って囁かれてたよね?……やっぱ、そう言うのに叶えて欲しい願いとかって、あるの?」
「……まぁ、俺も人間だし、願いはあるっちゃあるけどよ」
「何、どんなの?」
「………どんなのだっていいだろ」
けーち、と言う詩織に、ほっとけ、と軽く頭を撫でる翼
どうしたの?と望に言われ、何でもない、と答える
………「小瓶の魔人」に願うとしたら、それは、「望や大樹達、今の家族が、これからの人生を、命の危険に巻き込まれることなく平穏無事に過ごせる事」だ、と言う事を
口に出したならば、果たして彼女達は、どんな反応を返してくるのか
翼には、予想できないのだった to be … ?
14 :
恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6 (代理):2010/05/25(火) 12:57:22.68 ID:zdWq5/480
学校町にある、とある病院。
その純白の外壁の前に、奇怪なオブジェが鎮座していた。
真上に向けて大きく足を広げた、赤と肌色の何か。
人間で言う所の下半身のみが突き出た状態で、それは痙攣していた。
院内を行く見舞い客や患者たちが、それを不思議そうに見ては去っていく。
それが本当に人であると思っていないのか、はたまたそれを見慣れた光景だと思っているのか。
誰も赤い造形物に近づこうとしない中、館内から出てきた男が一人、その光景を見てため息をついた。
またか、と唇がかすかに動く。
「――ほらマゾ、寝てないでさっさと帰るぞ」
埋められた少女に向けて言葉を発しつつ、男――山田はその歩を進める。
時折通りかかる人間の足音を除いて、院内は驚くほど静かだった。
アスファルトを鳴らし、草を踏んで、山田は少女の元へとたどり着く。
少女の着ている赤いワンピースが風にはためく。
ミニ丈であるはずのそれが全くめくれていないのが、山田には不思議だった。
鉄壁のスカート、なんて単語が頭に浮かんだが、山田は頭を振ってそれを振り払った。
心の中で小さく気合を入れて、痙攣するだけで返事の無い少女の足を掴む。
15 :
恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6 (代理):2010/05/25(火) 12:58:14.26 ID:zdWq5/480
「よい……しょっ、と」
そして、力任せに引っ張った。
これでも、数日前にはドラゴンの尾すら受け止めたほどの怪力の持ち主である。
一瞬の抵抗感の後に、少女は地中からその姿を現した。
未だ毒が残っているのか、その身体は依然として痙攣を続けたままだ。
紫色に変色した唇が、僅かに動く。
「け、契約者……な、仲人は任せました……よ……」
不可解な言葉を並べるだけ並べた後、少女はその身体から力を抜いた。
つい先ほど病室内で展開された場面を思い浮かべ、山田は首を傾げる。
「……どこに『結婚』に繋がる要素があったんだ?」
山田の質問の答えを持つ少女は、山田の手の中で気絶している。
その顔にはどこか、満足げな笑みが浮かんでいた。
その日から、マゾの勘違い発言がさらにヒートアップしたとか、していないとか。
真偽を知る者は一様に、その顔に嫌悪と困惑を浮かべ、どこか達観したような風を漂わせていたそうな。
【終】
16 :
エピローグ2 小さき蛇 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 12:59:23.45 ID:zdWq5/480
山田が、マゾを引きずって帰っている、その最中
にょろり、山田が羽織っていたジャケットのポケットから…小さな、黒い蛇が顔を出した
デビ田だ
マゾを、呆れたように見下している
『ッタク、毎度毎度変態ダナ。変態モ馬鹿も死ナナキャ治ラネェ、ッテカ?』
「…まぁ、死なないんだけどな、こいつの場合」
『一生、治ラネェジャネェカ。イヤ、コイツダッタラ、死ンデモ治ラネェ気ガスルケドヨ』
…それを否定できず、山田は小さくため息をついた
けたけたと、デビ田が笑っている
「とりあえず、デビ田。お前、口調とかもうちょっと、何とかならないのか?せっかく、別の存在になったらしいのに」
『ッケ。俺様ハ、元々ハ悪魔ノ囁キナンダ。ソウ簡単ニ本質ガ変ワルカッテンダ』
そーですかー、と諦めたように項垂れる山田
そんな山田の様子に、元・悪魔の囁きたるデビ田は、楽しげに楽しげに笑っているのだった
そう
元、だ
悪魔の囁きとして生まれたデビ田
だが、今は別の存在に変わっていた
朝比奈 秀雄と契約していた悪魔の囁きが消滅した、直後
デビ田は、山田の頭の上でぐったりとして、動かなくなった
ぽとり……と、その小さな体が、山田の掌に落ちてきた時
山田は、デビ田がそのまま、死んでしまうのではないかと思った
17 :
エピローグ2 小さき蛇 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:00:18.77 ID:zdWq5/480
デビ田は、朝比奈 秀雄が契約していた悪魔の囁きが大元となって生まれた存在だ
あの黒服が言うには、大元である悪魔の囁きが消滅すれば、それを元に生まれてきた悪魔の囁きも消えるだろう、という事だった
だから
デビ田は、もう、二度と目を開ける事なく
そのまま、死んでしまうのだと
……別れの言葉すら交わすことが出来なかったことを、山田は酷く後悔したのだ
しかし
デビ田は、眠り続けるだけで、一行に消える様子はなかった
もしかしたら、目覚めるかもしれない
そう考え、山田はデビ田が、子ライオンたちの玩具にされないよう庇いつつ生活し
そして、先日
デビ田は、ようやく目をあけたのだ
「…それにしても、「イマジナリーフレンド」、なぁ……まったく、以前と変わってないように思えるんだが」
せいぜい、変わった所と言えば、実体化した時、山田の頭の上から離れられない状態から、それ以外にも移動できるようになった事くらいか
『知ルカヨ。俺様ダッテ、自分ガ変化シタッツー感覚ガ、アマリナインダカラヨ』
−−−イマジナリーフレンド
子供の頃にだけ存在する、想像上の友達
あの銀髪の占い師の見立てによれば、デビ田は、悪魔の囁きから、それに変化したのだと言う
何故、デビ田がそんな、全く違う都市伝説へと変化したのか
理由は、よくわからない
ただ、山田と言う、ありとあらゆる意味で例外の存在にとり憑き、いくら囁いてもまったく効果も表れずに過ごし続け
18 :
エピローグ2 小さき蛇 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:03:20.00 ID:zdWq5/480
…そんな生活の中、デビ田の中で「生きたい」「消えたくない」と言う想いが生まれたこと
それと、何だかんだで、山田とうまく付き合ってこれていたのが原因ではないか…という事だ
あくまでも推測であり、それが真実かどうかはわからない
ただ、はっきりしているのは
デビ田は、消える事がなかった
今も、こうやって生きている
その、事実だけだ
「せめて、姿が変わっていればなぁ」
『ダカラ、知ルカッツーノ』
山田のジャケットのポケットの中で、しぱたんしぱたん尻尾をぺちぺちしてくるデビ田
小さな黒い蛇、という、悪魔の囁きの頃から変わらない姿
そのせいで、デビ田が別の存在になった、という感覚は、イマイチないのだが
……それでも
デビ田が消えなかったのなら、まぁ、良いか
山田は、そう結論付ける事にしたのだった
fin
19 :
Project-ACE ◇kemono..Qk (代理):2010/05/25(火) 13:06:18.38 ID:zdWq5/480
【Project-ACE_case01:Testing】
――――これは、朝比奈秀雄が倒される少し前のお話――――
「こちらNo.206。No.218、状況報告を。」
『黒服二名による誘導を継続中。数は17から変化なし。残り5分で目標地点へ誘導完了見込みです。』
「了解した。」
そう言うと黒服は一旦通信を切り、再度通信をつなげる。
「こちらNo.206。回収班、状況報告。」
『こちら回収班、そこから南へ180mの地点で待機中。いつでも向かえますよ。』
「了解。フェイズ2へ移行する。」
再び通信を切り、通信端末をしまう。
その黒服のナンバーは、A-No.206。いわゆる強硬派に属する黒服である。
No.206は一人の青年と共に、空き地の中央に立っていた。
青年の目はうつろで、ボーっと一点を見つめている。
黒服はその青年を見ず、一言呟く。
「code:06、スタンバイ。」
その言葉に青年がピクリと反応し、目にかすかに光を宿す。
「命令、『不殺』、『制圧』。目標、『コーク・ロア被害者』。」
「命令了解。」
黒服の言葉に短く返し、青年は宙の一点を見つめ続ける。
さきほどとは違い、その目は鋭い眼光を放っていた。
20 :
Project-ACE ◇kemono..Qk (代理):2010/05/25(火) 13:09:27.13 ID:zdWq5/480
誰かが走る足音が空き地に響く。
最初に空き地に入ってきたのは二名の黒服。だが青年はそれを一瞥すらしない。
それに続くように、目に狂気を宿し、うなり声を上げる男たちが…コーク・ロアの被害者集団が、空き地へと足を踏み入れた。
それを見た途端、青年が反応を見せる。
「目標補足。」
青年が呟くと同時に、その体がかすかに震えた。
それに呼応するように、彼の皮膚がピシリ、ピシリとひび割れる。
メキメキと音を立てながら、骨格や筋肉が太く、大きく肥大する。
身長もそれにあわせて伸びていき、2mは超えるであろう体躯へと成長する。
その現象が止んだとき、青年の容姿はおおよそ人とは言えない物へと変貌していた。
「ウオオオオオォォォオオオム!!!!」
”青年であったもの”が雄たけびを上げ、コーク・ロア被害者の集団へ駆ける。
そして彼と集団が激突…と同時に、コーク・ロア被害者のうち何人かが文字通り”吹っ飛んだ”。
そいつらが落下するのも待たず、彼は周囲の無事だった人間たちへ襲い掛かる。
あるものは足の骨を折られ、あるものは頭部への打撃で気絶し、あるものは腹部を殴られて血を吐く。
最初に吹き飛ばされた者たちが地面に落ちたとき、既に全体の1/3が地面に横たわっていた。
「ひっ…ひいいいぃぃぃ!!?」
それを目の当たりにした残りのコーク・ロア被害者たちが怯えている。
麻薬作用によって頭が狂っていても、彼は恐怖の対象となりえたのだろう。
彼はそんなものなどお構いなしに、手近なものから次々と倒していく。
中には刃物を持っていた者もいたが、鱗のように硬質化した彼の皮膚に傷一つ負わせることすらできない。
反撃しようと立ち向かった者も、逃亡しようと背を向けた者も、彼は残らず叩き伏せる。
21 :
Project-ACE ◇kemono..Qk (代理):2010/05/25(火) 13:12:48.11 ID:zdWq5/480
「この化け物があああああああ!!!!」
最後の一人が彼に襲い掛かる。
彼は近づいてきた男にあわせ、横なぎに腕を振るった。
それだけの動作で男の体が数メートルも吹き飛び、男は白目を剥いて気絶した。
彼は周囲を見回す。
空き地の中にいるのは、地面に倒れているコーク・ロア被害者たちと、彼らを誘導してきた黒服。そして最初に青年の傍らにいた黒服、A-No.206。
A-No.206が彼の元へと歩み寄る。
「code:06、ダウン。」
その言葉と同時に、彼の体が弛緩する。
メリメリと音を立てて体が細くなり、身長が縮み、皮膚がポロポロと剥がれ落ちていく。
その現象が止んだとき、彼の体は元の青年に戻っていた。
それを確認した後、A-No.206は通信端末を取り出す。
「フェイズ3へ移行。」
短く告げると、20秒もせずに黒塗りの高級車と黄色い救急車が数台、その場に到着した。
それらから黒服と白衣の男たちが次々と降りてきて、地面に倒れているコーク・ロア被害者へと歩み寄る。
それとすれ違うように、A-No.206と青年は黄色い救急車の一つへと乗り込んだ。
22 :
Project-ACE ◇kemono..Qk (代理):2010/05/25(火) 13:15:24.30 ID:zdWq5/480
白衣の男が倒れた男を確認した後、黒服の男がそれらを担いで黄色い救急車へと運んでいく。
最後の一人が救急車に乗せられると、白衣の男の一人がA-No.206の乗っている救急車へと駆けてきた。
「全員分のチェックと収容完了です。重傷者ばっかりですけど、全員命に別状はありません。」
「了解。そいつらの処置はそちらへ一任する。」
「了解しました。…その化け物、使えますかね?」
「対象を認識し、殺さない程度の力の加減もできている。事後検査の結果次第で実用も可能だろう。」
そう言って黒服と白衣の男は、傍らに横たわる大きなカプセルに目をやる。
その中には先ほどの青年が、多数の管を体につけて眠っていた。
「燃費の悪さは問題だと思うんですがね。活動のたびに大量の栄養と睡眠が必要ってのはいかがなものかと。」
「大量の栄養と睡眠さえ与えれば、優秀な自立兵器と同義だ。」
「燃料さえ補給してやればあとは勝手にやってくれる、と。たしかに兵器としてこれ以上、魅力的なものはないですねぇ。」
くっくっく、と低く、愉快そうに笑う白衣の男。
黒服はそれにはかまわず、通信端末を取り出す。
「任務完了。帰還する。」
『No.206、任務完了を確認。お疲れ様でした。』
黒服が通信を終えると同時に、黄色い救急車と黒塗りの高級車が走り出す。
その車列が見えなくなったとき、空き地には血の跡すら残っていなかった。
【Project-ACE_case01:Testing】 END.
23 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:18:07.84 ID:zdWq5/480
回想。
目を覚ましたら右腕が人外になってた。
回想終わり。
「…いやこんなことやってる場合じゃなくて」と、頭の中で繰り広げられる小劇場にツッコミを入れる。
「どういうことなんだ、黒服さん?」「…俺もこういうのは初めてだから、断言はできんが…」
「お前が都市伝説に飲み込まれる前に都市伝説にしようとしたら予想外に都市伝説が多くなってお前の形に影響が出た。終わり。」
「…は?」
…全くもって意味が分からん…早口でそんなこと一気に言われても…
…ん?…都市伝説に?
「えーと…つまり、俺は今は人間ではない、と?」「その通り。御名答。大正解」
満面の笑みで拍手をこちらへと送ってくる黒服。
なんというか小馬鹿にされてる感じで少し憎らしい。
「……大体理解はできたんだが」「お、理解が早くて嬉しいな」
「その、『予想外に都市伝説が多くなった』って何だ?」
「あー…それなんだがなぁ…」急に顔の笑みを無くし、深刻な面持ちになる。
支援
25 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:21:27.92 ID:zdWq5/480
「お前の意識が飛ぶ前に、何でかは分からないがお前の中に新たな都市伝説が入り込んで、多分そのまま強制契約ってことになったんだろうな。
で、既にいっぱいだったお前の中にさらに入れちまったもんだから都市伝説化の際にその影響が出たんだろうな」
「俺の…中に…?」
新たな都市伝説が…?
「一体、何が入り込んだっていうんだ?」「ああ、それは…」
黒服がその正体を言いかけた時……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「きゃあっ!」「な、何だ!?地震…?」
急に、建物全体が揺れだした。
「ぐぅ…どうせ死ぬんだったら……貴様らも、道連れだ…!」
声のしたほうを見ると、倒れたはずのQ-No.0がそこにいた。
いたるところから出血し、立っていられるのがやっとといった感じだ。
その手元では、いかにも危険と言っているかのような真っ赤なボタンが押されている。
「この建物を、破壊するスイッチを押したのさ…!これで、貴様らも…!ここもろとも…!」
26 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:24:25.73 ID:zdWq5/480
「くそ…!なんてことを」「No.0…やっぱり歪んでやがるな」
その声の主を見て、No.0は驚き、血を吐く…
「…No.8…何故、お前がそっちにいる…!ゲホォ!お前は…グフッ…俺の一番、近い…手駒だろう……!」
そんな状況でも、黒服はあっさりと言葉を返す。
「いや、そもそも俺Qナンバーの黒服じゃないし」
「……はぁ!?ゲボハァ!」先ほどとは比じゃないほどの血を噴き出し、No.0は膝を床につく。
「俺、本当はD-No.800なんだよ。諜報人としてQナンバーに入ってたけどな」
「な…嘘だ!俺は上層部だぞ!俺の手元にはすべてのデータが入ってくるんだぞ!お前はQナンバーに正式に…!」
「はぁ、やっぱり歪んでるな。上層部の数人が俺を送り込んだんだぞ?お前がいなくてもデータの改ざんなんて楽チンだろうよ」
口から血を垂らしながらも、No.0は憎悪に満ちた目でNo.800を睨みつけ、わなわなと怒りに震える。
「く…どこまでも俺をコケにしおって…許さん!許さんぞ貴様rボカーン!ゲボアッ!」
いきなり、さっき爆発したのとは逆方向の壁が吹き飛んだ。
その瓦礫がNo.0に直撃したようだ。倒れ込んでピクリとも動かない。
「な、何ですか一体ー!?」「これも奴の作戦の一つなのか!?」「いや、そいつもうのびてるんだけど」
27 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:27:26.07 ID:zdWq5/480
「お、ビンゴ。おーい昆虫少年ー」
どこからともなく、店長の声が聞こえる。
「……あ!」
砂煙が晴れた時、崩れた壁の向こうには…歴戦の巨大ロボ、アナザーモアーがいた。
「店長!どうしてここが!」「んー?協力者一名とこっちゃんの力。それと俺の直感」
「ふわ…これが、あのお店…」「これが、うわさに聞いてた巨大ロボか…」
No.800と雪歩ちゃんは、目の前に現れた巨大なロボをただただ見上げるのみである。
「す、すご…ぃ…」バタッ「ゆ、雪歩ちゃん!?」
いきなり倒れ込んでしまった雪歩ちゃんに駆け寄る。
「雪歩ちゃん、大丈夫か!?おい!」「…んくぅ…くぅ…」
…なんだ、疲れて眠っただけみたいだ。
「リミッターが再始動したか」いつの間にか俺の後ろに立っていたNo.800が言う。
「Q-No.0でも、『馬鹿は風邪をひかない』のリミッターを完全には外しきれなかったんだろうな。
能力を使用した疲れとリミッターの再ロックの二重の影響で、おそらく倒れちまったんだな」
「…おーい、とにかく雪歩ちゃんもロボ内に運べ。その建物、もうもたんぞ」
……
28 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:30:29.62 ID:zdWq5/480
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
三人がロボに乗り込んだのとほぼ同時。研究所は音を立てて崩れていった…
「ようやく、終わったか…」
その建物の崩壊を、なにやら複雑な面持ちで見つめるNo.800。
「しっかし、一人でこんな建物に突撃するたぁ…恋する男は勇敢だねぇ」
「…恋は、盲目」「全くですね」
にやにやとした店長と、呆れたような溜息をつく副店長とノミ沢さん。
「ん…んぅ……あれ?…ここは…」
倒れてからずっと眠っていた雪歩ちゃんも、ようやく目を覚ました。
「…お帰り、雪歩」「全く、心配掛けさせやがって…」
起き上がった雪歩ちゃんに、店長や副店長が駆け寄る。
「あ…店長さん…それに、こっちゃんさん…」「…こっちゃんでいいと、言っている…」
「大丈夫だったか?なんか変なこととかされてないか?」「だ、大丈夫です。全部、友人さんが…」
「おうおう、お熱いね〜このこのぉ」「ちょ、店長茶化さんでくれって」
「…感動の対面のところすまないが」
さきほどまで蚊帳の外と言わざるを得ない立ち位置にいたNo.800が、話し始める。
29 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:33:31.35 ID:zdWq5/480
「この少女、雪歩のことはすでに周知だろうから言わないが、友人君のことだ」
「いろいろとあって少年は都市伝説となった身だ。そんなわけだから、今までのような人間としての生活はできなくなる。
まぁ簡単にいえば、今までの学校生活はできないってことだ」
…大体は覚悟してたが…やはりそこか。
覚悟はしていたが、もう要とかと一緒に過ごせないと思うと、少し物悲しい。
「んだから、友人君の身柄はとりあえず『組織』のほうの所属、ということにしようと思う」
「…へ?」
『組織』に…?
「一体どういう…?」「色々と都合がいいんだよ、そのほうが。今までのとほぼ変わらない住民票の偽装もできるし、また力が暴走しだしたときの処置も容易いし」
…なるほど、そう考えれば確かに『組織』にいた方が何かと便利かもしれないな。
都市伝説になったばかりの身だから、やはり頼れるのはその道の先輩だろうし。
「よし、分かった。…だがこっちから少しばかり要求してもいいか?」「ん、出来る範囲でよろしく頼む」
30 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:36:27.90 ID:zdWq5/480
「まず一つは、雪歩ちゃんと『組織』の接点をこれ以上増やさないこと」
「…善処はする。とりあえず元実験体っていうデータは消すようにしておくから」
「そしてもう一つ。…俺と、雪歩ちゃんとが二人で住める住居を提供すること」
「え…えぇぇ!?」
その場にいた友人以外全員が驚き目を見開いているが、誰より驚いたのがその雪歩であった。
「え、あの…その、友人さん…今のは、どういう」「俺が、守るって言ったろ。ずっと一緒に、さ」
「…今のは」「プロポーズ…そうとしか思えない」
「おいおいおい、この年でもう結婚宣言かよ!最近の若いのは全くもって…」「…君も、十分に若い、よ?」
「…いやまぁ用意はするけどな。うん、まぁその、なんというか…お幸せに」
「…ゆ、雪歩ちゃんが嫌なら別に俺はそれで」「い、いやっ!……あの…その、よよろしくお願いします…!!」
「…あぁ、これから…よろしく」ギュッ
とまぁ、こうして雪歩の救出も無事終わり。
都市伝説と化した友人も特に問題なく、これまで通りに支障はないようで。
二人で歩む新たなる生活が幕を開けるわけですが、それはまたまた別の話ということで。
わが町のハンバーグ スピンオフ中編『バカ娘闘争期』 コレにて終わり。
31 :
One for All ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:39:25.73 ID:zdWq5/480
「あ、もう一点お前さんその入り込んだ都市伝説のことで」
あぁ、そういえばさっきは話の途中で中断されたんだよな…
「そいつの正体は…まぁ『仮面ライダー』の一種なんだがな」
「仮面ライダー?それって都市伝説か?」「…こまけぇこたぁいいんだよ。実際お前以外にも契約例はあるし」
「その中でも特に特殊な『仮面ライダー・シン』、がお前の中に入り込んだんだ」
「…シン?」
「まぁ作品としてもそこまで有名ではないか?いや原作見たことないから知らんのだが。
従来の仮面ライダーをよりグロテスクに、よりバッタっぽさを前面に押し出したらしい…
まぁ生活の上では何の問題もないだろうから安心してくれ」
「…でもこの腕…どう考えても危険だろ」
「その辺は問題ない。そんなときの為にカムフラージュ用の腕カバーがある」
「あるのかよそんなもの…用意がよすぎるだろ…」
「いろんな都市伝説で体に変化を及ぼす奴も多いからな、こういうのの需要は高いんだよ」
「…そんなもんなのか」
………きっと終わり。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 13:42:19.22 ID:3CLD7B5l0
ギャルゴ!!!!!!スレかと思ったのに
アレは地方都市伝説だったか。
33 :
エピローグ的日常 ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:42:36.34 ID:zdWq5/480
「金さーん、石炭ビビンバ一丁ー!」「はーい了解しましたー!」
「あのー、こっち魔導まんお願いしますー!」「分かりましたー!」
扉の修理も完了し、営業を再開した「レストラン うわさの産物」のお昼時。
いつもと変わらない忙しさ、騒々しさ。どこにでもある、いたって普通のレストランの光景。
「店長さーん!おすすめ定食3皿追加でーす!」「あいよー!」
「キノコステーキとブラックコーラ、あと海苔サラダお願い」「はいはーい!」
「お、お待たせしました〜…ダ、ダイナマイトパフェでsうひゃぁっ!」ドパァン!
「うわー!パフェが爆発したー!」「さすが店長!おれたちに予想できないことを平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!」
店長が謎の料理を作って。こっちゃんが冷静にツッコんで、時々デレて。
金さんやノミ沢さんが普通(?)の料理を作って。新入り君が材料仕入れたり、時々店長にひどいこと言って。
雪歩が二人目の看板娘として色々と頑張ってたり。
そんな、非日常的な日常の風景が、ここでは変わらず流れている。
「雪歩ちゃんの正体なんて、どうでもいい。お前はうわさの産物の一メンバーなんだから」
そう、店長さんは言ってくれた。
「女の子は、多いほうが華があっていい。…それに、私が寂しい」
そう、こっちゃんさんは言ってくれた。
みんなが、私を私でいさせてくれる。
こんな、ただの兵器として育てられた私を、受け入れてくれる。
34 :
エピローグ的日常 ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:45:44.08 ID:zdWq5/480
これが、外の世界の楽しさなんだ。
いままでずっと夢見てた、外の世界。
そこに私が今こうやっている。そのことが、たまらなく嬉しい。
……
「お疲れ様でしたー」「ういー、お疲れーっす」
仕事も終わり、店の外へと出ると、自然と家へと向かう足が速くなる。
「今日の晩御飯は何にしようかな〜」
「うーん、今日はスパゲティが食べたいな〜」
「それもいいですねー…え?」
突然の返答に、驚き後ろを振り返ると。
「あれ?友人さん」「おう」
「仕事が早く終わってな。帰り道だったからついでに寄ったんだ」
帰り道。久しぶりに二人で肩を並べて歩く家路を、二人はゆったりと歩く。
35 :
エピローグ的日常 ◇xhUOONoO3o (代理):2010/05/25(火) 13:48:52.09 ID:zdWq5/480
「で、今日の晩御飯は何にするの?」「色々考えてるんですけど…」
う〜ん、と頭を捻り…そして何かを思いついたようにぽん、と手のひらを叩いて。
「ミートパイなんてどうですか?」「欧米か」ペチッ「あうっ」
結構本気だったんですけど、と少し唇を尖らせて拗ねたように言う雪歩。
そんな仕草が可愛くて、つい。
「…ん」「むっ…ん」
つい、その唇にキスをする。
長い長い口付けの後、名残惜しそうに二人が離れ、その間には一筋の橋がかかり、消える。
「ぷぁ…もぉ、いきなりはやめてって言ったじゃないですか〜」
「悪い悪い、ついしたくなっちゃって」「もぉ〜」
そんな怒ったような口ぶりだが、満面の笑顔で友人へと抱きつく。
二人で過ごす時間一秒一秒が、とても愛おしくとても楽しい。
こうやって、好きな人と体を合わせて。抱きしめあっている時間がたまらなくいとしい。
お願いしたらいつでもしてくれるのかもしれないが、一回一回離れるのがとても惜しい。
でも、二人は名残惜しそうに離れ、どっちともつかず歩きだす。
「…まぁ、作れるんだったらミートパイでもいいぜ」「いいですか?えへへ〜、こっちゃんさんから直々に教わったんですから!」
そいつは楽しみだ、そう言いながら内心で、店長からじゃなくてよかった。心底そう思う友人である。
「じゃあ、晩御飯の後に、さっきの続きね」
その言葉に、先ほどのことを思い出してしまったのか ぽ、と顔を赤く染めて。
「…はぁい♪」
その腕にぎぅ、と抱きつきながら、嬉しそうに答えた。
このまま続けると作者に衛生上悪いので終わり。
36 :
エピローグ3 百獣の王 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:51:12.91 ID:zdWq5/480
ぎしゃー
てちてちてちてち
しゃぎゃー
ころころころころころ
二匹の猫……否、子ライオンが、じゃれあって遊んでいる
ぺちぺちてちてちころころころ
…普通に、愛らしい愛玩動物である、どう見ても
知らない人間が見れば、「ちょっと変わった猫」にしか見えないだろう
だが、この二匹は、間違いなく子ライオンであり
……そして
都市伝説たる「ツォボの人食い」、幽霊と暗闇(ゴースト&ダークネス)なのだ
飼い主たる山田としては、精神的衛生面から考えても、猫だと思い続けたいところである
現実逃避でしかないのだが
…とまれ
「…あれ以降、変わらず猫のままだよなぁ」
『らいおんダケドナ、正確ニハ』
「うん、まぁ、それはさておきだ。普通に愛玩動物だよなぁ」
ぎゃしゃー
しゃげー
楽しそうにじゃれあい続けている二匹
37 :
エピローグ3 百獣の王 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:52:26.03 ID:zdWq5/480
あの、二匹の戦い以降、両者とも、元の姿には戻っていない
…戻るつもりが、ないのかもしれない
あの銀髪の占い師によれば、二匹とも、人間を襲うという自分達の本質を拒絶し、それゆえにこの子ライオンの姿になっているのだろう、という事だった
よほどの事がない限り、きっと、二匹とも、変わらず愛らしい姿のままなのだ
………よほどの事がない事を、山田は心の底から祈る
「暇ー、遊んでよー!」
………ぎゃしゃー!!
しゃぎゃーーー!!!
……あ
佑香に手を伸ばされて、二匹とも毛が逆立ってる
…うん、まぁ、あんな思いをしちゃあなぁ
「逃げないでよー!」
ぎしゃ!
しゃぎゃ!
てちてちてち、二匹の子ライオンが山田に向かって駆けて来た
あぐらをかいて座っていた山田の膝の上にダイブし
そのまま、にじにじにじにじにじにじにじ
山田の体を、昇りだす
「っちょ、こら、流石に二匹同時に登られると少し重たい!?」
『…佑香カラ逃ゲタインダロ、痛イ思イシタクナイカラ』
にじにじにじにじにじ
38 :
エピローグ3 百獣の王 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:53:18.70 ID:zdWq5/480
二匹は山田の肩まで登り、そのまま、頭まで上ろうとする
「あーそーべー!」
ぎゃしゃー!!
しゃげーー!!
「あぁ、もう!人の頭の上で攻防戦をするなっ!?」
『土台トシカ見ラレテネェジャン、オ前』
ぎゃいぎゃい、山田の頭の上でやりあう佑香とダークネス、そしてゴースト
しゃっしゃっしゃっ!と佑香に向かって激しく威嚇の猫パンチを繰り出し続けているダークネスは、やはり、愛玩動物のようにしか、見えず
ツァボの人食い達は、その凶暴性を表に出すこともなく
ただ、穏かな日常の中に、存在し続けるのだった
fin
39 :
エピローグ4 彼女の結末 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:54:40.46 ID:zdWq5/480
目が覚めた、その瞬間
恐怖が彼女を支配した
「−−−−−−−ぁ」
自分は
何をしていた?
何をしてしまった?
ただ、彼に振り向いて欲しかった
ほんのちょっとでも、彼に想いを伝えたかった
ただ、それだけだった、はずなのに
「ぁ、あ…………あぁあああああ………」
自分は
何をしてしまった
そして
自分は、何の力を借りてしまった
にょろり
たこが蠢く
自分が生み出した、タコが
「っいやぁあああああああああああああああああああああああああ!!??」
彼女は悲鳴をあげた
40 :
エピローグ4 彼女の結末 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:57:24.66 ID:zdWq5/480
恐怖に、絶望に
自分が、このタコを生み出した?
こんな、あまりにも大きな……化け物じみた、タコを
いや、それよりも、人間がタコを生み出すなんて、ありえない
一体、自分の体はどうなってしまっているのだ?
そして、ここはどこだ?
自分と、よくわからない筋肉質の男二人以外には、誰もいない空間
どんなに助けを求めても、誰もない
誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰もだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれも……
恐怖と絶望が、彼女の精神を支配する
それは、彼女の精神の限界を、超えようとしていて
その精神を、完膚なきまでに、壊してしまいそうで……………−−−−−−−−−
ずる、と
その体が、どこかに引きずり込まれる
それは、彼女の心に新たな恐怖を生み出した
引きずり出された場所が、どこなのかもわからず、彼女は悲鳴を上げ、暴れ続ける
「嫌、嫌、嫌ぁああああああああああっ!!??」
「っちょ、せっかく出してやったんだから、暴れるなっ!?」
小さな女の子の声が聞えてきた気がした
でも、きっと違う
41 :
エピローグ4 彼女の結末 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:58:06.75 ID:zdWq5/480
これは、女の子なんかじゃ、ない
−−−−化け物だ
彼女の本能が、そう告げてくる
嫌だ
怖い
どうして、自分がこんな目に
「嫌だ、怖いよ……助けて、日景、く…………」
彼女の言葉は、最後まで続かなかった
暴れ、泣き喚く彼女の顎を、何かが強引に掴む
無理矢理顔をあげられ…そこには、ツギハギの傷をもった顔の男が、いて
それが、サングラスを外したのを見たのを、最後に
彼女の意識は、闇へと消えた
「…記憶の消去が完了した。この女性に、都市伝説と関わった記憶は一切、残っていない」
「そう………手間をかけさせたわね」
G-No.1の無感情な言葉に、そう答える望
G-No.1の代わりに、ヘンリエッタが望に告げる
「構わんよ。アフターケアも、「組織」の仕事のうちじゃからの」
「本当なら、永遠に鏡の中に閉じ込めておいても良かったんだけどね」
「私が鏡の前通るたんびに、発狂寸前の悲鳴が聞えまくりだよ?こっちが気が狂いそうになるってば」
42 :
エピローグ4 彼女の結末 ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/25(火) 13:59:52.67 ID:zdWq5/480
ため息をつく望の言葉に、そう訴える詩織
そう、藤崎 沙織から、悪魔の囁きが消滅して以降……元々、都市伝説と言う存在を受け入れてなかった彼女は、己の現状に発狂しかけていたのだ
そして、彼女のその悲鳴は、鏡と言うツールを通して詩織に伝わり続ける訳で
…いくら彼女が都市伝説とは言え、発狂寸前と言うか、ほぼ発狂した人間の悲鳴を聞き続けるのは、少々精神衛生面によくない
そこで、大樹に頼むのは、少々気が引けたのだ
ヘンリエッタを通して、G-No.1に、藤崎の、都市伝説に関する記憶の消去を頼む事にしたのだ
ついでに、藤崎が「タコ妊娠」と契約してしまっている状態も、どうにかしてもらうつもりだ
「…まったく、私も甘くなったわね」
こっそりと、望は苦笑する
翼が、なるべく殺すなと言ったから、藤崎を殺さなかった
…藤崎を、詩織の能力から解放したのも
鏡から綺麗な藤崎を出せばどうにかなるかとも想ったが、冷静に考えると、大樹にはその真実がバレるから、と言うのもあったのだ
大樹の胃痛の種は、増やしたくない
こうして
望の寛大な処置やらなにやらで、藤崎 沙織は現実の世界に戻ってきた
彼女から都市伝説が剥がされ、彼女が日常に戻った時
彼女は、今回の騒動に関わった、その全てを忘れ去っていた
ただ
残った恋心は、永遠に叶う事はないのだと言う
ほろ苦い想いだけを、残して
fin
43 :
再開、砕懐 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:00:45.19 ID:zdWq5/480
『コーク・ロア』や『悪魔の囁き』の騒動がようやく終息を迎えた頃
『組織』の方はと言えば、そちらへの対応で未だゴタゴタしているらしく、新しい担当者から連絡が入る気配は全く無い
宮定繰は普通に学校へ行き、普通に家に帰り、学校の課題や契約都市伝説『髪が伸びる日本人形』の菊花のお手入れなどをしている日々
中学以来の親友である佳奈美はといえば、体調を崩したのか学校を休んでいるらしい
学校ではクラスが違う事と、携帯の電源を切っているらしく連絡が取れない事から、状況は不確定なままだった
「こういう業界で過ごしてると、ちょっと連絡取れないだけで不安になるのよね……大丈夫かなあの子」
中学生時代、虐めの加害者と被害者という間柄だった繰と佳奈美
元々口数が少なく人付き合いを避けていたような佳奈美が、明るく話しやすい性格になった事もあり、和解する事ができたのだが
都市伝説と契約し、様々な異形や異常と接していくうちに、繰の中に妙な不安が湧いてくる
あの時、鏡の中で笑っていた佳奈美と同じ姿をした存在
佳奈美一人を置いてその場から逃げ出した事
あの日を境に性格が一辺した佳奈美
かつて虐めに荷担していて、彼女に謝罪しなかった二人の末路
「『組織』の方で佳奈美の事調べてみたいんだけどな……新しい担当とかいつ決まるんだろ」
実際には、学校を休んでいるのは呆れるような色恋沙汰で、過去の事件や性格の変貌にも関連は全く無い
ただ色々な不安が積み重なって解決されないままな事が、繰の更なる不安の種になっているだけなのだ
「……帰って宿題やろ」
空を仰ぎながら大きく溜息を吐き
その髪が濁流のようにうねり伸び、背後から触れようとしていた腕を絡め取り、そのまま思い切り空中へ放り投げる
「背後から気配消して襲うとか、いい根性してるわね……私、今すっごく機嫌悪いんだから覚悟しな……さ、い?」
44 :
再開、砕懐 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:03:33.87 ID:zdWq5/480
空中に放り投げられたものが、ぼとりと地面に落ちる
それは人間一人丸ごと放り投げたにしては、余りにも小さいもの
服の袖ごと引き千切れた右腕で
「余り物を繋いだだけではやはり脆いな」
『それ』は、とても良く知った顔で、とても良く知った声で
だがその顔色は生きているもののそれではなく、額に張り付いた符は容易に死者を操るものを連想させる
不安に駆られていた繰の感情を、一瞬で沸騰させるには充分な存在だった
かつて自分の担当だった黒服の姿をした『もの』を、圧倒的な質量を凝縮した髪の拳で真上から殴り潰した
砂袋を押し潰したようにひしゃげる身体と、それでも意に介した様子もない声
「なるほど、これの知り合いと当たったか。存外役に立つものだ」
「黙れ。あいつの声でそれ以上喋るな」
憎悪を煮詰めた声で吐き捨てる繰に、眉一つ動かさずに喉から音だけを搾り出すように笑う黒服だったもの
「かははははは……知は脳ごと我らに喰われ、房中の術で性も根も絞り尽くされ、もぎ取られた手足は別の木偶の部品となり、果てはこうして毒まで集める。実に役に立ったものだ」
「黙れって言ったでしょ」
懐かしい声で不快な音を発するそれを、布状に編み合わされた髪の毛で包み込み――コンクリートすら粉砕するその力で思い切り、絞る
拉げ潰れ、染み出したものがびたびたと地面を汚す
その折に貼り付けられた符や支配していた何かも壊れたのだろう、傀儡だったそれは黒服の死体となり、塵となって空気に溶けるように消えていった
「売られた喧嘩は買ってやろうじゃない……後悔すんじゃないわよ」
繰は元来気の短い性格であり、ついでに言えば思慮が足りないタイプ、端的に言えばバカである
多少の反省と担当であった女黒服のお陰で少しは丸くなったものの、過去に抱いていた都市伝説への恐怖感は力を得た事により丸ごと攻撃性へと変換されており
知り合いを殺し、その死体を弄び操る何者かという行為は、そんな繰を挑発するのには充分だった
それが敵意と殺意でより毒を濃くしようとする中華黒服達の誘いだと知らぬままに、彼女は『敵』を探し動き始めたのだった
45 :
毒蜘蛛の子を散らすように ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:06:50.89 ID:zdWq5/480
「呂布が将門公に喧嘩売る前にマジでどうにかしないとな……ったく、俺はデスクワークとかバックアップが本業だっつーのに」
ぶつぶつと呟きながら、動きやすいミニスカートのメイド服と、暗闇に忍ぶ黒いストッキングと長手袋を身につける犬メイド
そもそもがメイド服で活動する理由は無いのだが、なんだかんだでこの調子である
「おおよその位置こそ掴めてきてるんだが……結界か何かの類か、くそ」
聴覚を広範囲に展開する事で怪しい空間のおおよその位置は掴めているものの、その掴めたはずの場所が現地で認識できない
そんな場所をどうにか探るべく、犬メイドは呂布の居ぬ間に現地での探索活動を続けているのであったが
運が良いのだろうか悪いのだろうか、決定的な変化が訪れる事となる
―――
学校町にある霊園の一角
その敷地に踏み込む手前の道で、真紅の大型バイクが停められる
2メートル近くはある身長と、高密度の筋肉で覆われた大柄な身体は、明かりの少ない深夜の墓地でも非常に目立っていた
「このような時間に何ですか、珍走団の肝試しなら他所でやって下さいな」
夜闇の中に、明かりに照らされているわけでもなく、ただそこにいるという事がはっきりと見える女の姿
『怪奇同盟』の『盟主』たる女の姿に、男は怖れも驚きも無く手にした得物――方天画戟を構える
「貴様が、平将門の愛妾だな」
そう問うた男、呂布に対して即座に放たれた返答は、空気そのものを焦がすほどの巨大で高圧な紫電の塊
空気と大地を揺るがすほどの一撃は地面を抉り、辺りに火花を撒き散らす
「誰が、誰の、愛妾ですか」
全身から迸る怒気が髪を揺らめかせ、砂埃と煙と熱気が渦巻く空間を睨み付ける
46 :
毒蜘蛛の子を散らすように ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:09:44.40 ID:zdWq5/480
「く、くくく、ははははは、良い一撃ではないか! 流石は平将門の」
「お黙りなさいな」
こめかみに青筋を浮かべた盟主は、声の勢いが衰えない相手の様子に手加減無用と判断し、先程と同じ規模の雷を続け様に三発四発と叩き込まれる
だが、その雷撃を呂布はいともあっさりと斬り捨てる
正確には斬っているのではなく、方天画戟の先端に触れた雷撃を、斬る勢いのままに後方に投げ捨てるようにして弾き落とすという、出鱈目な力技だ
雷を帯びばちばちと火花を散らす方天画戟の穂先を、踏み込んだ勢いでそのまま盟主へと突き込む呂布
物理攻撃など通用しないはずの盟主だが、その勢いに気圧されたように大きく後方へと飛び退く
「何の術も施していないはずのただの戟で、私に傷を付けますか」
「斬れぬものなど、俺には無い」
物理法則を無視した回避運動でその一撃を逃れたものの、盟主の着物の袖の一部がすっぱりと切り落とされていた
傍から見れば服の一部が切れただけではあるが、霊的存在である彼女からすればその身を斬られたようなものである
「貴様に怨みは無いが、この町で強者と戦うのが俺の役目。そして貴様を斬れば……平将門は必ず俺の元に現れるだろう」
「なるほど、私はあの落ち武者のせいでとことん迷惑を被っているわけですね」
膨れ上がる敵意と殺意と、理不尽なまでの怒気
それに身を晒してなお、心地良いとまでに笑みを浮かべる呂布
ざり、と――呂布の足が地面を踏み締め
ばちり、と――盟主の周囲に紫電が張り巡らされ
「そこまでだ」
一触即発の状態で、その間に割り込んできた男の声に呂布は踏み止まり
「てい」
意に介した様子も無いどころか、むしろ狙いを定めて割り込んできた男、平将門目掛けて雷光を叩きつける盟主
47 :
毒蜘蛛の子を散らすように ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:12:38.60 ID:zdWq5/480
「ああきゅうにめのまえにでてきたからこうげきをとめられませんでしたわ」
「くく、かかか! 相変わらず激しい愛情表現だな?」
余りの激しい電圧と熱量で周辺の空気すら揺らめいて見える中、将門は意に介した様子も無くからからと笑う
「貴様が三国の時代に大陸最強を謳われた、呂奉先か。なるほど噂に違わぬ力量よ」
「俺を知っているか。ならば話は早い……俺と立ち合え」
「断る」
即答だった
「武を競うのは吝かではないのだがな、今この町で戦うわけにはいかん。理由は言わずとも……なぁ?」
「俺は奴らの企みなど知った事ではない。戦いによって約定を果たし、契約者の望みを叶えるのみ」
呂布の背後にいる黒服達の存在を知られている
だからと言って、呂布の行動が何ら変わる事は無いのだ
「ならば我も貴様の都合など知った事では無いなぁ? 竜が暴れ毒が濃くなったばかりだというのに、これ以上負担を増してやるわけにはいかぬ」
そして将門もまた、相手がどうであろうと己の行動を何ら変えるような男ではない
「私はまだまだ平気ですとも。妙な気遣いは無用です」
「そうかな? 以前までのお主なら、呂布に挑まれたところでさらりと受け流し姿をくらませているだろう。正面から打ち合いなどせずにな」
言葉に詰まる盟主を庇うように立ち、将門は呂布に笑みを向ける
「呂奉先よ。貴様と遊ぶのは、毒を湛えし壷を打ち壊してからだ」
つい、と
将門の指先が呂布に向けられ、そのまま何かを辿るように町の何処かへと向けられる
「随分と上手く逃げ隠れしたものだが……どんな形であれ縁ある者を我の前に出したのは失敗だったなぁ?」
場所、血縁、組織や団体、果ては国家
相手が『何』か判らなければ、括りが大き過ぎれば、祟りを成すにも様々な弊害が出る
『蟲毒』を成しながらも何者かを悟られずに身を隠していた中華黒服を、『呂布に指図し暗躍する者』として括り縁を手繰り寄せ――
―――
48 :
毒蜘蛛の子を散らすように ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/25(火) 14:15:42.97 ID:zdWq5/480
――ぱきん、と
澄んだ音を立て、薄い硝子が砕け落ちるように
中華黒服達の潜伏していた空間が崩れ落ちて、そこにあったものが空家の一室に傾れ落ちた
「知られたか」
「悟られたか」
「流石は有数の『祟り神』よ」
「備えが無ければ我らもただでは済まなかっただろう」
「しかし我らの存在が捉えられた以上、結界や空間そのものはもう堪えられぬ」
「『太歳星君』を御するには、いま少し毒が足りぬ」
「急がねば毒を満たすべき壷を打ち壊されかねん」
「ならば我々が、足りぬ毒を満たすまで」
「都市伝説でも契約者でも」
「男でも女でも童子でも」
「虫けらでも畜生でも」
「片端から殺し毒とし」
「掻き集めて壷を満たせ」
くたびれた漆黒の外套を身に纏い
一人、また一人と町の中へと放たれていく
やがて水鏡の傍らに立つ黒服は一人きりとなり
その一人は、放たれた他の黒服を監視するかのように水鏡を覗き込んでいる
「あと僅か、僅かなのだ。邪魔はさせぬぞ」
その首が人形のようにぐるりと真後ろを向く
その顔が向けられたのは、廊下へと繋がる扉が僅かに開いた隙間
「縛」
捻られた喉から放たれた音は、扉の向こうで息を潜めていた者の身体を一瞬で硬直させる
「しばらく前からこの辺りを探っていた、文字通りの犬か」
どさりと音を立てて倒れたそのメイドには、犬の耳と尻尾が生えていた
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 14:17:36.03 ID:zdWq5/480
以上で、代理投下終了
もうちょいたったらネタ投下する
50 :
エピローグ5 青年と白馬 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 14:25:23.92 ID:zdWq5/480
それは、悪魔の囁きが消滅してから、2,3日程たってからの事
「麗しきレディ!!先日は大変申し訳ない事をした。どうか、許していただきたい……そして!許してくださるならば、是非、膝枕を」
−−−すぱっかーーん!
突然、Tさんと舞の前に現れた変態は
ユニコーンによって、あっさりと突き飛ばされた
…ひひん
ユニコーンが、舞をじっと見つめてくる
「……えーと」
「どうやら、悪魔の囁きが外れても、本質はそのままらしい」
「…っつか、悪魔の囁きが憑いてても、あんまり変わってなかったっつー方が正しいのか?」
舞の、どこか呆れたような呟きに
そうらしい、と、Tさんは苦笑した
数分後
彼らは、人気のない公園へ移動していた
人目がないので、ひょこり、リカちゃんも舞の鞄から顔を出す
「…いや、本当にすまなかった。謝罪だけするつもりだったんだが、乙女を見たら、つい」
深々と
改めて、土下座してきたユニコーン契約者こと、ヘンリー
51 :
エピローグ5 青年と白馬 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 14:28:46.62 ID:zdWq5/480
ユニコーンも、その隣で頭をさげつつ……みし、とヘンリーの後頭部を踏んだ
ヘンリーの顔が地面にちょっとめり込んだように見えるが、大丈夫なのだろうか
………多分、大丈夫なのだろう、困った事に
「まぁ、俺はあんまり実害なかったからいいけど…」
「なの」
何だかんだで、舞は膝枕を懇願された事以外、ほぼ、ヘンリーとユニコーンからの実害は受けていない
乙女相手には、悪魔の囁きに憑かれている間をもってしても紳士だったのだ、この男は
ちらり、Tさんを見る舞
ふむ、とTさんは頷いて
「舞には実害がなかったのだし、舞が良いと言っているのだから、俺達への謝罪は、そこまででいい……だが」
Tさんの、言葉を
ヘンリーは、無言で制した
「…これから、ボス共々、罪を償っていく、さ」
「………」
…悪魔の囁きにとり憑かれていたから、とは言え
ヘンリーは、殺人を犯してしまっている
そして、とり憑かれている間の記憶は、消えることなくしっかりと残っているのだ
朝比奈 秀雄が、「薔薇十字団」の保護下で、今までの罪を償っていくように
ヘンリーもまた、その罪の償いをしていくのだろう
「そう言えば」
と、舞が口を開く
52 :
エピローグ5 青年と白馬 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 14:32:03.90 ID:zdWq5/480
「兄ちゃん、国には戻らなくていいのか?確か、「教会」だかってとこの、お抱えの契約者なんだろ?」
舞は、「教会」と言う組織については、よく知らないが
本来、ヘンリーが、その管理下から、あまり出てはいけない立場なのではないか…という事は、直感的にわかっていた
事実、舞の考え通り、ヘンリーは本来ならば、「教会」の管轄下から、出てはいけない存在だ
せいぜい、許されるのは国内のみで、国外に出るなどもってのほか
居場所がバレたならば、即刻、連れ戻されるところなのだが…
「あぁ、それか。俺が鉄の処女送りになるのを庇ってくれた人の言いつけで、しばらく、この街にいる事になったんだ」
「……Tさん、今、さらっと怖い単語が聞えたような気がするんだが」
「気のせいだろう」
「「てつのおとめ」−?」
リカちゃんは首を傾げているが
…つまるところ、ヘンリーは今回の件で、一歩間違えば処刑されていた、という事だろう
どう考えても、処刑ワード以外の何物でもない、「鉄の処女」など
「今、国に戻ると色々と煩いから、しばらく、この街で奉仕活動などをして罪を償うようと言われたんだ………日本風に言うと、「ほとぼり冷めるまで帰ってくんな」って事だと想うんだが」
「いや、それ、日本風に言う必要性ねぇだろ。つまりはそう言う事だろ」
び!と思わず突っ込む舞
つまりは、そう言う事なのだろう
「教会」内で、ヘンリーを庇ってくれた存在はいた
しかし、今すぐにヘンリーが帰ったとしても、彼は肩身の狭い思いをするだけだろう
だから、その辺りのほとぼりが冷めるまで、日本にいるように…と、いう事か
「教会」で、治癒の使い手が多数必要になったならば、即座に呼び戻されるのかもしれないが
「そっか、まぁ、頑張れよ」
もう、悪人じゃあないんだし、ならいいや、と
そんな感じで、やや軽い気持ちで、そう慰めの言葉をかけた、舞
が
数秒後、舞はその言葉をかけた事を、軽く後悔する
「慰めてくれるのですか、麗しきレディ!!あぁ、何と心優しい………!あなたの優しさに感動しました。つきましては、是非その膝にて眠らせていただきたくっ!?」
−−−っげしーーん!!
一気に捲くし立てたヘンリーは、その勢いに乗ったかのように
ユニコーンによって、わりと容赦なく、蹴り飛ばされた
ごがっ!と、木にぶつかって気絶する
すぐには起き上がらないところを見ると、ちょっと、当たり所が悪かったのかもしれない
「…何つーか…懲りねぇなぁ」
「ささやきがついてたときといっしょなの」
「まぁ、それだけ強い願望を持っていたからこそ、悪魔の囁きに憑かれたのだろうがな」
気絶しているヘンリーと、ヘンリーを蹴り飛ばしたユニコーンを見つめつつ、苦笑するTさんと舞
……と
そんな二人とリカちゃんの、脳裏に
『−−−−−感謝する。乙女と、乙女と契約せし、島国の都市伝説よ』
と
どこか老獪な印象の、男性の声が響き渡った
「…な、何だ!?」
54 :
エピローグ5 青年と白馬 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 15:05:15.56 ID:zdWq5/480
「だれかのこえが、きこえるの??」
「テレパシー…もしや」
じっ、と
ユニコーンが、Tさんたちを見つめてきている
Tさん達の脳裏に響いた、声は…この、ユニコーンのもののようだ
『私は、私の存在意義において、私の契約者が行った悪事を止める事ができなあった………私の代わりに、止めてくれた事を………感謝する』
…深々と、頭を下げたユニコーン
ぱから、ぱから、と気絶しているヘンリーに近づくと、ぺい、とその体を己の背に乗せて
ヘンリーを気遣いながら、ゆっくりと、この場を立ち去っていったのだった
fin
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 15:06:35.77 ID:zdWq5/480
改めまして、Tさんの人に焼き土下座orz
ヘンリーの謝罪と、ユニコーンからの感謝でした
とりあえず、この変態はまだ日本に、それも学校町に滞在しますとも、えぇ
犬メイドに、以前「何かあったら助ける」って約束してるしねー
さて、20分くらいしたら、もう一個ネタ投下します
知らなかった
彼女が子をなしていたなどと
あの頃、自分は、行方不明になっていた門条 晴海を探す事に精一杯で
見つけるための手段を手に入れる為、そして、その為ならば、手段も選ばずに行動していて
他人を切り捨てるのも、当たり前のその生き方の中
自分は、より、晴海を見つけ出す手段として有力な、日景家の娘であるマドカを選び、彼女を捨てた
……もっとも、マドカが日景家から勘当された事が原因となり、結局、晴海を見つける手段は手に入れ損ねたのだが…
あの時、既に彼女は身ごもっていたと言うのか
今、自分の目の前に現れた
この、娘を
「……空条 恵、と言ったな?」
「………くけっ」
こくり、小さく頷いてくる女
…空条
かつて、自分が捨てた女の姓を名乗ったその女を、朝比奈はじっと見詰めた
………あぁ
言われてみれば、似ている
もう少し、明るい顔をしていれば、まさしく、彼女だ
「…私を、恨んでいるのか?」
「…………?」
…朝比奈の、その問いかけに
恵は、今度は小さく首を傾げてきた
57 :
エピローグ6 父子2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 15:30:37.22 ID:zdWq5/480
もう一度
朝比奈は、ゆっくりと……より、具体的に告げる
「…お前の母を捨て、死に追いやり…………お前を孤独に追いやった私が憎いか?」
どこか、自嘲するような朝比奈の言葉に
恵は、少し、悲しそうな顔をして
…そして、小さく、首を左右にふった
恵のその反応に、朝比奈は理解しかねるとでも言うような表情を向ける
「私が原因で、お前は母を失い、孤独の中に放りこまれたのだぞ?」
「……母さんが、死んでいた、のは……………悲しい」
ぽつり、と
小さく、そう、口に出した恵
その口ぶりからすると、自分の母親の結末についても、つい最近まで、知らなかったようだ
自分に、家族がいる事すら
知らなかったの、かもしれない
「…………でも、父さんは、生きていた、から………生きていてくれたのが、嬉しい」
自分の家族が、生きていた
ただ、その事実を喜んでいる様子の恵
朝比奈を恨んでいる様子は……………まったく、ない
「…私のような男を、父と呼ぶか」
「……?俺は、母さんと、あなたの、子供だから………あなたは、父親、だろう?」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 15:31:52.10 ID:mSMBeAzM0
59 :
エピローグ6 父子2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 15:35:15.26 ID:zdWq5/480
……そう言う問題では、なく
自分の母親を、そして、自分自身をも捨てた相手を
恵は、平気で「父さん」と呼んできている
父親だと、そう、思ってくれているのだ
…恵から、すれば
いないはずの肉親が存在しただけで、嬉しく
肉親が生きていたという事実だけが嬉しいのだろう
父の顔も母の顔もわからなかった、恵にとっては
死んでしまった母親よりも、生きてくれている父親の方が、身近に感じられたのかもしれない
だと、しても
「…………優しすぎる」
「……くけ?」
朝比奈の呟きが、聞えなかったのか
聞えたとしても、その意図が理解できなかったのか
恵が、首を傾げてきた
………そして
じ、と朝比奈を、見つめてきて
「……俺、は………あなたと、父と呼んで………いい、のか……?」
と、どこか、控えめに聞いてきて
何を、言っているのか
それは、こちらのセリフだ
しえ
61 :
エピローグ6 父子2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 15:39:48.79 ID:zdWq5/480
私には、お前に父親と呼ばれる資格などないと言うのに
それでも、父と呼ぶというのか
翼から、父親だと認識されているだけでも、己の身に余るほどの奇跡だと言うのに
この、幼く見える娘までもが、私を父親だと認識してくれると言うのか
「………?」
そっと……どこか、恐る恐る、と言った様子で、頭を撫でられて
恵は、また、小さく首を傾げた
「……呼びたければ、呼べばいい」
恵の問いかけに対し
そう、短く答えた、朝比奈の言葉に
恵は、どこか嬉しそうに笑って
その、笑顔に
己は、こんな優しい娘の母親を死に追いやったのだ、と
朝比奈は、己の罪深さを、改めて自覚させられたのだった
fin
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 15:41:13.11 ID:zdWq5/480
裏設定のつもりで作りましたが、一応表沙汰にしておいてみた
正直反省している
とりあえず、16時になった時誰も投下とか始めてなかったら、このネタのオマケを投下しますねっと
63 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:00:18.94 ID:zdWq5/480
朝比奈 秀雄が入院している学校からの、帰り道
「…恵、あれで良かったのか?」
恵と並んで歩きながら、そう尋ねる辰也
こくり、恵は小さく頷く
「………父さん、と、呼ばせてもらえて、良かった」
「あー…」
…そっちの意味で聞いたのではなかったのだが
まぁ、良いか、と辰也は結論付けた
恵は、優しい
家族が生きていた、その事実を純粋に喜んで
あんな男を、許してしまうのだから
……いや、そもそも、恵は朝比奈を恨んですらいなかったのだから、許す、と言うのもまた違うのかもしれないが
「…恵、あいつが父親だとわかったんなら……あっちと、一緒に暮らすのか?」
ぼそり
そう、尋ねる辰也
恵は、小さく、首を左右にふる
「……それは…父さんの、迷惑になると、思う、から………」
「…そうか」
「………それに」
辰也を見上げて
恵は、やんわりと微笑んだ
64 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:05:22.64 ID:zdWq5/480
「…俺は、皆と一緒に、いたいから」
「……そうか。なら、今まで通りで、いいよな」
恵の言葉に、ほっとする辰也
恵が本来は男である事は、充分に承知している
恵の精神面は、今だって男性である事も承知している
…だが、それでも
辰也は、確実に恵に惹かれていた
別に、同性愛の気がある訳ではない
相手が、恵だったから
だから、惹かれた
ただ、それだけのことなのだろう
…とは言え
やはり、辰也は相手が本来男である事と、メンタル面は男のままである事などを考え、想いを告げる事もできないままだが
だから
恵が、朝比奈の元に行くのでは、なく
自分達と、今まで通り、生活していくのだと言う事実に
これ以上なく、ほっとした
ただ、傍にいられるだけで
共に生きられるだけで
……自分にとって、相応しくないほどの、幸福なのだから
恵と並び、ゆっくりと教会への帰路に着く
人通りの多い繁華街を、恵と逸れないようにしながら通り抜けていって…
65 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:10:16.35 ID:zdWq5/480
……その、途中
ーーーーーーっす、と
白衣を着た、眼帯をした男と、すれ違った
「近い内に迎えに行くぞ、H-No.96」
「−−−−−−−−−−−−−−っ!!」
「たつ、や?」
全身の、血の気が、引いて行く
慌てて振り返ったが、あの男の姿は、もう見えない
人波の中に、その姿は消えてしまった
「辰也?………辰也、どうしたんだ…?」
かたかたと、体が震える
ズキ、と……背中の火傷の痕が、痛んだ
恵の声が、酷く遠くから聞えるような気がする
ひや、と
冷たい指先が、頬に触れて
びくん、と大きく体を跳ねらせる
見れば、恵が酷く心配そうに、顔を覗き込んできていた
「…辰也、顔色、悪い………具合、悪いの、か?」
「………け、い」
66 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:15:20.63 ID:zdWq5/480
ズキズキと、背中の火傷の痕が痛む
……あの番号を消した、火傷の、痕が
あの声は
あの男は
あの、眼帯の、男は……
「…H……No.……1……」
「………?」
何故
何故、あの男が
やっと、自分は
あの男の呪縛から、逃れられたと思っていたというのに
背中のナンバーを消せば
逃れられると、思っていたと、言う、のに
真っ青になって、震え続ける辰也を心配したのだろう
恵が、その手をぎゅう、と掴んで
ぐいぐいと、人気のない路地へと、引っ張っていく
そして、改めて、辰也をじっと見つめた
「辰也、具合、悪いのか……?どこか、痛い、のか……?」
67 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:20:25.90 ID:zdWq5/480
心配そうに、見あげてくる恵
その、小さな体を
「……くけ?」
ぎゅう、と
辰也は、衝動的に抱きしめた
がたがたと、体は震え続けている
恵を抱きしめている状態でなければ、そのまま、座り込んでしまうかもしれない
「………嫌、だ……あ、あんな、場所……もう、二度と……………戻りたくねぇ…」
「辰也…?」
「も、う……実験体になんざ、戻りたく……ない……!」
もう
もう、二度と、あの場所に戻るのは嫌だ
H-No.96に戻るのは、嫌だ
自分は、広瀬 辰也
人間だ
あの連中のモルモットではない
実験動物ではない
−−−−人間、なのだから
たとえ
この、広瀬 辰也が、自分の名前でなかったと、しても
他人の名前だったとしても
支援
69 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:25:41.89 ID:zdWq5/480
自分は、この名前にすがるしかないのだ
いつかは、返さなければならない名前だとしても
せめて、名乗っていられる間、だけでも
「広瀬 辰也のままでいたい。もう、H-No.96に戻りたくない…………っもう、名無しには、戻りたくねぇ………!」
「辰也……」
泣き出しそうな声で、呟き続ける辰也の体を
恵は、そっと、優しく、抱きしめ返した
辰也を落ち着かせるように、優しく背中を撫でてくる
「…辰也は、辰也だ……それ以外の、何者でも、ない」
「恵…」
「……大丈夫……みんな、一緒なら………怖く、ないから」
辰也を気遣うように
辰也を、恐怖から解放させるように…優しく、微笑みかける恵
「だから……大丈夫、何も、怖がらなくて、いい…………俺達は、辰也の味方、だから……みんな、辰也の味方だから…」
「……み、な……」
もし
あの男が、本気で、こちらを回収しようとしてくるの、ならば
恵だけではなく、マッドガッサー達も、皆、巻き込んで…………−−−−−−−−
「……っくけ」
70 :
エピローグ6.5 宣告 ◆nBXmJajMvU :2010/05/25(火) 16:30:36.72 ID:zdWq5/480
ぎゅう、と
強く、強く
ただし、恵を壊さない程度の力で……辰也は、恵を抱きしめ続けた
恵を
仲間達を、護る為に
早く、復讐を完了させなければ
あいつらを、皆殺しにしなければ
たとえ、この身が朽ち果てたと、しても
恵を抱きしめ続けながら、しかし、決して口に出すことはなく
辰也は、その誓いを新たにしているのだった
待ち受けている、運命を
残酷な現実を、真実を
知る事も、ないままに
to be … ?
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 16:33:51.64 ID:zdWq5/480
以上、復讐完了編に向けての伏線と、辰也の死亡フラグでした
ついでなんで、辰也はもげておけ
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 16:49:46.97 ID:zdWq5/480
途中、支援してくださった方に感謝
そして、俺は夕食を作ってくる
夜戻ってきた時、スレが残っていれば幸せだ
ついでに、ネタが投下されていればもっと幸せだ!!
ほ
ほし
もろもろ乙でした!
≪ユニコーン≫が……老人ボイス、だと?
でもこっちはヘンリーよりも抑えが利く性格だたかww
秀雄は恵が性転換(違)しているのを知ったらどうなるのだろうとかどうでもいい事を思ったぜ!
ほ
投下乙ほ
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 19:19:00.95 ID:M5EhhymQ0
色々と乙です。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 19:19:47.90 ID:vT0talqz0
>>75 >≪ユニコーン≫が……老人ボイス、だと?
わりと爺ですよ、このユニコーン
>秀雄は恵が性転換(違)しているのを知ったらどうなるのだろうとかどうでもいい事を思ったぜ
俺には反応が一切予測できませんwwwwww
自分のキャラなのにな!
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 19:41:52.81 ID:vT0talqz0
あ
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:01:41.23 ID:vT0talqz0
く
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:20:25.44 ID:vT0talqz0
ま
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:39:20.62 ID:vT0talqz0
の
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 20:54:10.24 ID:M5EhhymQ0
さ
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:12:10.94 ID:vT0talqz0
さ
み
み
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 21:47:45.69 ID:m9e8acCg0
あくまのささみみ
悪魔の笹耳
…かぁいい??
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:06:12.76 ID:m9e8acCg0
みー
保守
初期の頃によく来てたけどまだ続いてたのかこのスレ
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:14:09.53 ID:m9e8acCg0
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 22:45:48.17 ID:m9e8acCg0
っと
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 23:04:05.26 ID:m9e8acCg0
ほ
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 23:24:09.19 ID:m9e8acCg0
も
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/25(火) 23:30:42.29 ID:m9e8acCg0
力尽きる、お休みー
明日もスレが残っていたら…おれ、アクマの人ってか盟主様に土下座するネタ書くんだ…
一時くらいまで頑張るほ
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 00:19:35.48 ID:fNvQpiTmQ
ほー
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 00:44:27.76 ID:fNvQpiTmQ
睡魔の波状攻撃にやられた
寝るぞー
ほー
め
ど
ろ
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 06:16:14.52 ID:fNvQpiTmQ
ー
あ
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 08:35:11.98 ID:fNvQpiTmQ
く
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 10:08:57.38 ID:E3+yz4n20
おはよう
あ
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 12:22:27.11 ID:fNvQpiTmQ
ごちそうさまでしたほ
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 12:39:40.01 ID:H2Asnc4G0
食後のデザートごちそうさまでした
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 12:58:49.06 ID:H2Asnc4G0
みー
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 13:21:17.06 ID:H2Asnc4G0
みーみー
113 :
エピローグ7 盟主と祟り神 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 13:38:23.89 ID:H2Asnc4G0
−−−悪魔の囁きの騒動が終結してから、数日後
学校町 北区の霊園にて
「…本当に来たのですか」
若干、嫌そうな顔でそう告げる
歓迎されていないその様子にも、将門は笑うだけだ
「まぁ、そう言うな、盟主よ。約束の物は持ってきたぞ」
…ちゃぷり、瓢箪型の入れ物に入れられた酒が、音を立てる
あの騒動の最中、将門は盟主に約束した
−−盟主でも、飲食できる物を持ってくる、と
そんな物、あるはずがない、と盟主は考える
盟主は、実体化できない
物に触れているように見えても、それはポルターガイスト現象で動かしているだけにすぎず…触れる事など、できていないのだ
しかし、あの時の将門の言葉に、嘘はなかった
嘘は、感じられなかった
そして、事実、将門は酒と、そのつまみになるような物を持ってきて見せたのだ
………あとは、本当に、盟主がそれに触れられるかどうか、だが
とぷり、将門が、持ってきた杯に、酒を注ぐ
盟主はそれを、いつものようにポルターガイスト現象で持ち上げ、自分の口元まで持ってきた
……触れられるはずがない
自分はもう、何百年も、飲食とは無縁の生活を送ってきている
飲食せずとも生きられる体
だが、それでも……かつては、人として生まれたその身
何かを食べたい、飲みたいという欲求がない訳ではない
叶わなかった、その願い
114 :
エピローグ7 盟主と祟り神 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 13:41:22.16 ID:H2Asnc4G0
叶う、訳が…
「………!」
…口元にふれた、それ
冷たい酒の感触を……盟主は、確かに感じた
く、とそれを飲み込もうとする
酒は、盟主の口内へと注がれて…ゆっくりと、彼女の体に染み渡る
「……飲めた……」
「言っただろう。お前でも飲食できる物を用意する、と」
くっく、と将門が笑う
自分の分の杯に注いだ酒を、ぐい、と将門は飲み干した
「どう言う事です?」
「なぁに。昔、仇討ちを手伝った者の身内に、贖物司がいた。そちらとの縁がまだ続いていてな」
「…なるほど。贖物、ですか」
贖物
形代、などと呼ぶこともある
罪の償いや自分自身の身代わりとして、差し出す物品
穢れを移して何者かに差し出されるそれ
それは、神に差し出される場合も多い
神に差し出された物品に、神が触れなくては意味がないだろう
だから、盟主でも、触れる事ができる
盟主は、この学校街の土地神的な性質を持っているのだから
「つまり、あなたは、その知り合いの贖物司…と言っても、今はそんな役職はありませんから、その子孫でしょうが。それに、わざわざこれらを用意させたと?」
115 :
エピローグ7 盟主と祟り神 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 13:42:18.64 ID:H2Asnc4G0
「あぁ。その者は、我等祟り神と縁が深くてな。お前のように、通常では飲み食いできぬ者にも、代々贖物として飲食物を提供しているからな」
…この男もまた、妙な縁を持っている
あの、お人好しな「組織」の黒服程ではないものの…この祟り神の人脈もまた、底が知れない
何かの目的の元、集結したならば……それは、大きな勢力となり得るのだろうか?
「……仇討ちを手伝った、といいましたね………その、あなたが手を貸した、相手は」
「…仇討ちをとげた直後、我の力に飲み込まれることを拒否し、我に、己を斬るよう懇願してきた」
だから、切り捨てた、と
短く答える将門
祟り神、「首塚」平将門
人の身では、この大きすぎる存在と契約しても、耐えられない
激しい復讐心を持っていれば、極短い期間であれば、耐えられる場合もある
しかし、その復讐を遂げてしまえば…最早、その身は耐え切れず
平将門と言う存在に飲み込まれるか、命を落とすか
その、どちらかなのだ
祟り神となって以降、この男は、どれだけの人間の復讐に手を貸してきたのか
……そして、その度に
己と契約した存在を飲み込んだり、命を奪ったりしてきたのだろう
己の契約者の命を奪うという行為は、将門の本心ではないはずだ
……だが、契約したが故に、結果的にそうなってしまうのだし
…そうするしか、なかったのだろう
切り捨ててくれ、と懇願されたならば、将門はそれに答えるしかなかったのだろうから
116 :
エピローグ7 盟主と祟り神 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 13:43:25.32 ID:H2Asnc4G0
(…それを考えれば……今の「首塚」と言う集団は、この男にとって、さぞや心地のいいものなのでしょうね…)
将門が持ってきた酒のつまみを口にしつつ、そんな事を考える盟主
たとえ、契約者という仲間が出来たとしても、それはいつか、自分という存在が、その仲間の命を奪ってしまう
だが、今の「首塚」と言う集団は、契約者ではなく、将門の部下として集まった集団
……将門が、己の手で、命を奪わずともすむ仲間
それらとの交わりは、長く生き続けた祟り神にとって、たとえ刹那の時間であったとしても、安らぎなのかもしれない
(……だから。「首塚」に何かあれば、容赦しないのですね)
祟り神 平将門は、「首塚」を汚す者を祟る
それは、「首塚」と言う「場所」だけではない
…いまや、「首塚」と呼ばれる組織、集団すらも、この祟り神が護ろうとする範疇に入っている
……それだけではなく
「首塚」傘下に直接入ってはいなくとも、ある程度の関わりさえあれば、そちらを害しても、祟る
…祟り神としての力が及ぶ範囲が、広がっている、事実
「…より厄介で迷惑な存在になっていっている、という事なのでしょうね」
「む?何か言ったか?」
「いえ、何も」
せめて
この学校町で、あまり騒ぎを起こさないで欲しい、と
盟主は心から、そう願うのだった
fin
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 13:47:50.79 ID:H2Asnc4G0
アクマの人には土下座せざるを得ないorz
そして、贖物の解釈を間違っている自信があります
細かい事は突っ込んじゃいやんです
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 14:08:48.11 ID:H2Asnc4G0
wiki編集しながらほ
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 14:27:44.92 ID:H2Asnc4G0
ほ
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 14:46:49.07 ID:H2Asnc4G0
ら
国の偉い人とかは都市伝説についてどの程度知ってるんだろう
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 14:55:27.00 ID:H2Asnc4G0
>>121 単発ネタで登場した「神風」契約者な総理大臣は、都市伝説の存在を完全に把握していたうえ、「組織」とつながりがあった
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 15:15:56.91 ID:H2Asnc4G0
にゅ
wikiとにらめっこしながらほ
125 :
エピローグ8 天使使い達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 15:46:39.94 ID:H2Asnc4G0
「ふむ、つまり、結論から言ってしまえば、君はまた、謹慎処分を喰らった訳だな?」
『まぁ、そう言う事だな』
電話の向こうの声は、やや力がない
友人、天地のその様子に、直希は申し訳なさを感じた
「……すまない。僕が、君に助力を願ったばかりに」
『いや、お前のせいじゃないさ。俺がうまくやれなかっただけなんだから』
「………むぅ」
天地はこう言ってくるが、直希としては、申し訳なくて仕方ない
天地が謹慎処分をくらった原因は、つい先日の悪魔の囁きの騒動で、命令なしでモンスの天使を動かしたのがバレたせいだ
……まぁ、あれだけ大々的に動かせば、バレるだろう、どう考えても
直希としては、少数のモンスの天使にこっそりと動いてもらって、コーク・ロア契約者を見つけてもらえば充分だったのだが
………過ぎた事は仕方がない
『まぁ、謹慎とけたら、また映画でも見に行こうぜ』
「あぁ、そうだな……せめて、君の謹慎中も、君が望む物があるならば、僕が君の元に運ぼう。少しは、恩を返させてくれ」
『恩なんて…俺こそ、お前にゃ世話になってるんだから。気にするなって』
明るく笑う天地
…その笑い声に、直希は少し、救われたような気がした
二言三言話して、電話を切る
ふぅ、と小さくため息をついて、直希はベンチから立ち上がった
悪魔の囁きの騒動は終結した
今は、いつくかの組織が事後処理で動いている最中、と言ったところだ
「仲介者」たる直希も、今回の件に関わった関係者への説明やら何やらで、このところあまり休んでいない
天使達にはそろそろ休むように言われているのだが、そう言う訳にもいかないのだ
126 :
エピローグ8 天使使い達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 15:51:49.52 ID:H2Asnc4G0
「……少しでも、翼の役に立ちたいしな…」
かつて、迷惑をかけてしまった親友の力に、少しでもなりたい
それが、直希の原動力の一つだ
朝比奈 秀雄との直接の戦いに参加できなかった分、事後処理面では役に立ちたい
そんな事を考えながら、帰路につく直希
……そんな、直希に
迫る影、一つ
「愛しい人ーーーっ!!ここで出会えたのも、きっと何かの運命ですよn」
「貫け、カマエル」
ずさしゅっ!!
周囲に人目がないのをいい事に、直希は遠慮なく、「光輝の書」の天使を召還した
槍を構えた天使は、直希に飛び掛ってきていた少女…マゾを、容赦なく貫き、すぐ傍の木に縫い付けた
「うわー…またか」
そんな、マゾの様子に
がっくりと項垂れながら、青年が駆け寄ってくる
直希には、見覚えのない青年だ
だが、どうやら、マゾの知り合いらしい
「かはっ………一瞬の迷いもない、心臓狙い……流石は直希様……!」
「…むぅ」
そこは、褒められても嬉しくないのだが
複雑な心境を抱く直希に、青年が頭を下げてくる
127 :
エピローグ8 天使使い達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 15:56:56.31 ID:H2Asnc4G0
「何と言うか…………うちのマゾが、申し訳ない」
「…あぁ、もしや、あなたがあれの契約者か」
「……その通りだ」
深々と、頭を下げる青年…マゾの契約者、山田
マゾに苦労しているらしいその様子に、直希は小さく、首を左右にふる
「あなたが謝る事ではないだろう。僕は、あなたからは迷惑をこうむってはいないのだから」
「そう言ってもらえると、ありがたい」
苦笑する山田
そんな山田の様子に、直希はカマエルを消して、マゾを貼り付け状態から解放した
マゾがちょっともの足りなさそうな表情を浮かべたが、無視することにする
「…翼から、話は聞いている。あなたも、朝比奈 秀雄との戦い、力を貸してくれたそうで」
「……まぁ、関わってしまったからな」
もう一度、苦笑する山田
山田のジャケットのポケットで、デビ田が居心地悪そうにもぞもぞ動いたが、直希はそれには気づいていない
「理由はどうあれ、翼の助けになってくれた事、感謝する。そちらの変態も、どうやら邪魔にもなったようではあるが、役に立たなかった訳では多分ないだろうし…………………一応、感謝しておく。ありがとう」
淡々と、いつもの、感情の薄い声で、感謝の言葉を告げた直希
山田と、マゾへと告げられた感謝
先に反応したのは、マゾだった
「愛する者のためなら、当然ですとも!!……と、言うか、今、ありがとう、って言いました?言ってくれました!?これは関係前進の証拠ですねわかります!!!契約者、こちらの仲人も是非お願いしますy」
「屠れ、ゼルエル」
128 :
エピローグ8 天使使い達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 15:59:09.35 ID:H2Asnc4G0
−−−話の途中ですが、ただ今、グロテスクなシーンが展開されております
無邪気にじゃれあっている子ライオンでも想像して、しばらくお待ちください
129 :
エピローグ8 天使使い達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 16:01:38.00 ID:H2Asnc4G0
「…いや、本当、申し訳ない」
「あなたが気にする事ではない」
斧で惨殺された状態のマゾを背負いつつ、頭を下げた山田
…何と言うか
これだから、マゾは油断できない
「じゃあ、またマゾが目を覚ますと面倒だと思うんで、俺はこれで…」
「あぁ。もし、何かあれば、僕はあなたの力になろう。これでも、都市伝説関係の人脈は、少しはある方なのでね」
…できれば、そう言う状況にはなりたくないなぁ、と
平穏で普通な生活を願う山田は、こっそりと苦笑して
マゾを背負ったまま、この場を後にした
直希も、ぱたん、と光輝の書を閉じて
「…さて、と。蟲毒の影響が街中に展開されている件も、気になるしな……姉さんやマステマ達の手伝いもしなければ」
…仲介者は、まだまだ多忙らしい
直希は疲労がたまってきている体を引きずりながら、街中の喧騒へと身を躍らせていくのだった
fin
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 16:04:55.64 ID:H2Asnc4G0
占い師の人に焼き土下座orz
まさかのフラグ前進のような、結局いつも通りのような
多分、マゾ的にはフラグなんだろうなぁ
もうちょいたったら、オマケも投下しますね
131 :
エピローグ8,5 心酔 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 16:12:00.56 ID:H2Asnc4G0
…それは
天地が、直希との電話を終えた、その直後
天地の携帯に、別の人物からの通話が入った
それが誰なのかを理解し、天地は表情を明るくする
「先生?どうしました?」
『天地、謹慎を食らったそうだが』
「う……は、はい」
…その相手からかけられた言葉に、肩を落とす天地
……呆れられてしまうだろうか
そう、考えたのだが
『それは、都合がいい。少し、お前に話したい事があってな。今からそちらに向かう』
「え、あ、でも、いいんですか?」
『私がお前に用があるのだ。誰にも文句は言わせん』
…久しぶりにあの人に会う事ができる
天地は、それが嬉しくてたまらない
マッドガッサーの騒動以降、担当の黒服が穏健派の黒服に変わり、あの人と会う機会が、めっきり減ってしまっていたのだ
父親のように慕うその人と久しぶりに会えるのなら、謹慎処分も捨てたものではないのかもしれない
『……天地』
「何です?」
『お前は。私を信じるか?』
……かけられた、その言葉に
天地は迷わず答える
「当たり前ですよ。俺は、あなたを信じています!」
132 :
エピローグ8,5 心酔 ◆nBXmJajMvU :2010/05/26(水) 16:14:07.31 ID:H2Asnc4G0
『そうか、ありがとう』
何故、突然、そんな事を聞かれたのか
天地は、それを考えない
電話の向こう側の相手を、天地は無条件で信じているのだ
『これから、そちらに向かう。構わないな?』
「はいっ!」
元気に答えた天地
電話の向こうの声が、小さく笑う
その、笑いに
邪悪な意思が含まれている事に、天地は気づかない
電話の向こう側の相手に、己はただ、利用されているだけの事実を
天地は、いまだ、気づかない
to be … ?
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 16:15:30.82 ID:H2Asnc4G0
さて、無事天地にも死亡フラグがたちました
まぁ、本当ならマッド編唯一の死亡者になるはずだったんだし、問題はあるまいて
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 16:27:03.10 ID:H2Asnc4G0
夕食の仕込みしてくる
帰ってきてもスレが残っていれば幸せだ
ほ
乙でした
ああ、マッドガッサーの時に死亡フラグを奇跡的に回避したと思われた天地に再びの死亡フラグが……
まあいいか。天使姉ちゃん侍らしてるんだからな!(マテ)
そしてwikiだけんどもコーク・ロア悪魔の囁きの所
マッドガッサー辺に輪をかけて見ずらいことになってる気がする
前回のは時間で区切りが入っていたけど今回そういうのもないから仕方ないというのはあるけどどうにかならないものかね?
ほ
でかけるほ
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 18:13:35.54 ID:fNvQpiTmQ
投下乙ですー
天地の死亡フラグ復活か…
もげろキャラとはいえ、いいう奴には生きててもらいたいぜ
>>136 むう、今までの分はスレで見てたからわからなかったが、見づらいのか…
帰宅したらPCてwikiを確認してみよう
ほし
tst
書きたいけど時間がない……
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 19:23:05.78 ID:b6wzEy5C0
ごっそさまっしたー
>>136 wikiの悪魔の囁き編は後で編集しなおしますー
今はとりあえず、関係ある(はずの)話をばっと乗っけただけなんで
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 19:44:43.14 ID:b6wzEy5C0
にー
>>143 せっかく話が繋がっててそれが醍醐味だと思うので余計な口出しなんてしてしまいました。
申し訳ない
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 20:00:35.87 ID:b6wzEy5C0
>>145 お気になさらずなんだぜー
どうやって編集し羊羹考えつつネタ構想中だぜ
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 20:18:45.09 ID:b6wzEy5C0
お
か
き
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:11:00.25 ID:b6wzEy5C0
ウ
他スレに誤爆したおかげで規制解除されてたことを知った
これも怪我の功名か…
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 21:46:22.03 ID:b6wzEy5C0
>>151 解除おめ!
このブラックコーラは俺のおごりだ!
おおありがと…あり…鬼!鬼!!!
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:02:23.37 ID:b6wzEy5C0
>>153 OK,冗談だ
さぁ、好きな物を選んでくれ、俺のおごりだ
・店長のおすすめ定職
・翼の手作り料理
・直希がオーナーの店のデカ盛りデザート
・マドカの手作り料理
・メルちゃんの手作り料理
>>154 >・店長のおすすめ定職
業務内容は料理の試食ですねわかります
翼の料理を選びたいところだが、ここはマドカの料理を選ばせて貰うぜ!
あの翼の母だ、料理の才能はあるはず…!
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:18:03.50 ID:b6wzEy5C0
>>155 >翼の料理を選びたいところだが、ここはマドカの料理を選ばせて貰うぜ!
その言葉、後悔はないな………?
彼女の料理の腕前については、近々、花見ネタでも彼女の料理披露する予定です
(元)旦那「お前の作る料理は石炭と産業廃棄物とダークマターだ」
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:40:20.47 ID:b6wzEy5C0
>>157 秀雄「今思えば、あれを石炭と呼ぶのは石炭に申し訳がなかった。訂正しよう……新種の生物兵器だ」
マドカ「どう言う意味だいっ!?」
少なくとも、当時20代の秀雄を一撃ノックアウトした事は確か
>>158 >秀雄「今思えば、あれを石炭と呼ぶのは石炭に申し訳がなかった。訂正しよう……新種の生物兵器だ」
まさかの生ものwwwwというか生き物wwwwwww
…よし、花見の前に一筆手紙をしたためるとしよう
書き出しは「お父様、お母様」でいいだろうか…
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 22:53:47.67 ID:b6wzEy5C0
>書き出しは「お父様、お母様」でいいだろうか…
それは誰の両親に向けた手紙なのかw
>それは誰の両親に向けた手紙なのかw
はっはっは、もちろん自分の両親に決まってるじゃないか
…もう会えるという保障はないんだから、最期に感謝の気持ちを伝えなければ…ね
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:05:46.56 ID:b6wzEy5C0
>>161 そこまで悲壮な覚悟を決めなくともwwwwwwwwwwww
その場に黒服Dがいれば、「ユニコーンの角の粉末」で助けてくれるさ!
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/26(水) 23:35:18.93 ID:b6wzEy5C0
力尽きるぜおやすみー
俺…あしたスレが残っていたら、笛の人ってか明日に土下座なネタ描くんだ…
風呂上りほ
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 00:09:35.87 ID:4wiDY5z20
ほ
お休みなさいほ
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 01:25:15.43 ID:4wiDY5z20
ほ
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 02:47:01.84 ID:7DE7IkajP
し
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 03:11:36.02 ID:4wiDY5z20
を
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 04:53:31.95 ID:7DE7IkajP
み
る
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 07:54:37.75 ID:UX3Du91jQ
き
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 07:55:48.80 ID:7DE7IkajP
と
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 09:32:48.14 ID:7DE7IkajP
き
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 10:44:06.16 ID:7DE7IkajP
に
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 11:59:23.93 ID:7DE7IkajP
な
る
木
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 12:31:11.39 ID:3hr5vbXc0
何
と
も
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 13:02:07.86 ID:3hr5vbXc0
不
179 :
エピローグ9 少年達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 13:24:48.86 ID:3hr5vbXc0
それは、悪魔の囁きの騒動が集結してから数日後
「電子レンジで猫をチン!」の契約者 明日 真の怪我も、黒服Hから受け取った「魔女の一撃」特性の薬の力で完治した頃
明日のクラスメイトである、獄門寺 龍一が、カイザーの契約者である竜宮 海造を連れて、明日の家を訪れてきた
この二人が知り合いである事を、明日はこの日、初めて知った
「……話を聞いてみれば、海造が、お前に迷惑かけたらしい…申し訳ない」
「あぁ、いや、お前が謝る事じゃないだろ」
まるで、自分の非であるように謝罪してきた獄門寺に、そう告げる明日
長い前髪で目元がよく見えない獄門寺の表情は察しにくいが、心の底から謝罪しているように見える
「…ほら、海造」
「……うん」
つ、と
竜宮が、一歩、前に出た
じ、と明日を見あげて……深々と、頭を下げてきた
「ガチホモのおにーちゃん、酷い事して、ごめんなさい」
「ちょっと待てぃ!!」
待て
何、その盛大な誤解!!
「え、だって、童貞は否定したけどガチホモは否定しなかったじゃん」
「したよ!?もっと違うって否定したよ!?いや、あの状況だから聞えていなかったかもしれないけど!?」
…どうやら
あの戦いの時、竜宮が発した「ガチホモ童貞野郎」と言う言葉に対し、最初、童貞だけを否定したのが不味かったようである
180 :
エピローグ9 少年達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 13:27:47.43 ID:3hr5vbXc0
同時に、両方否定しなければならなかったようだ
ちょうど、恋路が買い物に出かけていたから、良かったものを
彼女がいたら、盛大な誤解を受けていたところである
………もっとも
今、この場にいる獄門寺にも、盛大な誤解を与えていると思うのだが…
(……あれ?)
…が
獄門寺が、一連のやり取りに無反応な事に、明日は首を傾げた
そんな明日の様子に……獄門寺は、やや顔を逸らしつつ、告げる
「……人の性癖関係に、口を挟む気はない」
「っちょ、誤解!!誤解だから!?真面目に受け止めないでお願いっ!?」
クラスメイトの、ボケなのか素なのかわからぬそのコメントに、盛大に突っ込む明日
獄門寺とは、正月の時少し話した以外、学校ではあまり会話した事はない
休み時間は机に突っ伏して寝ているか、ふらりと教室を出てどこかに行っている獄門寺と、あまり接点がないのだ
…明日が何となく苦手としている委員長が、獄門寺と仲が良いらしい?のも、彼とあまり接点がない原因の一つだったりするが、それは今はあまり関係ないことだ
とまれ
この、あまり接点のないクラスメイトが、竜宮と知り合いだったのにも驚いたが
どうやら、都市伝説契約者らしい、という事にも、明日は驚いた
そうか、学校に居た時、獄門寺の周囲を、おかっぱ頭で白いブラウスで真っ赤な吊りスカートの女の子がちょろちょろしていたように見えたのは気のせいじゃなかったのか、と今更ながらも思う
……じ、と
明日は、竜宮を見つめた
明日に見つめられると、竜宮はやや怖気づいたように、獄門寺の背後に隠れてしまう
181 :
エピローグ9 少年達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 13:30:18.79 ID:3hr5vbXc0
「俺への謝罪は、いいんだ。今まで迷惑かけた人にも、同じように謝罪するんだぞ?」
「………うん」
こくり
しっかりと頷く竜宮
獄門寺も、ぼそりと告げる
「…海造が、しでかした事は……ちゃんと、けじめをつけさせる。海造のバックにいた奴も、どこかの組織の保護下で罪の償いをするそうだ」
「……そうか」
多分、黒服Hからも後で聞かされるのだろうな、と思った
明日は、竜宮に関する事以外、あまり深くは関わらずにすんだが
…悪魔の囁きの騒動は、この学校町を中心に、深く、広く、悪意を撒き散らしてしまったのだから
その罪の償いには、はたして、どれだけの時間がかかるのか?
…恐らく、生涯かけて、という事になるのだろう
それでも、足りるかどうか
(……それでも)
罪を償う為に、命を犠牲にするのではなく
…生き続け、償う事を選んだ、という事
恐らく、それでいいのだろう
罪を償う為に死を選ぶ事は、見かたによっては死に「逃げた」とも、とられてしまうから
「…それじゃあ、俺達はこれで」
「おにーさん、本当にごめんなさい…」
もう一度、頭を下げてきた竜宮
そんな竜宮に、明日は小さく苦笑して
182 :
エピローグ9 少年達 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 13:32:43.09 ID:3hr5vbXc0
ぽんぽん、と軽く、その頭を撫でた
「反省してるなら、それでいいさ…もう、悪い事しちゃ駄目だぞ?」
「うん……いつか、お兄さんが危ない目にあったら、僕がカイザーで助けてあげてもいいからね」
そう言って
す、と旧式のゲームボーイを取り出して見せる竜宮
なるほど、あれだけのダメージを受けてもなお、「カイザー」は消えてはいないらしい
「…そんな事態にならない事を、祈ってるよ」
と、竜宮の申し出に、明日は苦笑しながらそう答えたのだった
fin
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 13:34:22.72 ID:3hr5vbXc0
笛の人というかむしろ明日に土下座orz
竜宮から、明日への謝罪でした
なお、獄門寺が受けた誤解がちゃんととけたかどうかは知らね
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 13:53:07.16 ID:3hr5vbXc0
にーにー
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 14:12:26.23 ID:3hr5vbXc0
にーに
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 14:53:24.41 ID:3hr5vbXc0
兄
187 :
単発ネタ:2010/05/27(木) 14:59:29.91 ID:oddu0ppfQ
わたしは正義の味方だ。
弱いものいじめを許さず、嘘もつかず、るーるを守り、ぴーまんも残さず食べる。仮面らいだーのような正義の味方なのだ。
わたし、仮面らいだー見たことないけど。女の子なんだからぷりきゅあとかの方がよかったかな。でもあにめとかあんまり見ないしな。
かんわきゅーだい。わたしは難しい言葉もいっぱい知っているのだ。
正義の味方を名のるのだから悪者を退治しないといけないのです。
だから、わたしはこの廃工場にきた。なんでもここには悪者があつまっているそうなのだ。
「どうした、お嬢ちゃん?ここは子供の来る場所じゃァねェよ。帰りな。」
「こんにちは!組織です!」
まずは元気よくじこしょーかいです。人間かんけーの基本ですよ。
わたしの挨拶に、えと、いち、よん、さん、えーと、なな、きゅう。そこにいた九人がふり返った。
九人は多いきがする。でもさんすうは苦手だし、難しいことはいいや。どーせ0人になるんだし。
それじゃ、さっそく。真っ赤な右目でだーんでどーんでずががーんと、ちょっとおおげさな表現。
ほんとは右目で睨むだけで終わるのですよ。あ、一人おとこの人が生きのこった。
なんで生きてるんだろ。えーと、手にもってる赤いのはー……思いだした。「さるぼぼ」だ。魔よけかぁ。
「くっ、いきなり何を!?何の契約者だ!!」
188 :
エピローグ10 「組織」 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 14:59:49.29 ID:3hr5vbXc0
暗い部屋の中、アルファベットが刻まれた板が並ぶ
それが、光を放ち始め……「組織」上層部会議が、始まった
『朝比奈 秀雄の確保に失敗したか』
『「薔薇十字団」如きに、先を越されるとは…』
『現場には、D-No.962がいたのだろう?どうなっている!』
『あの男は「薔薇十字団」とも縁がある…そちらに譲ってしまったのだろう』
強硬派・過激派の上層部メンバーが、口惜しそうにそう口にする
「組織」の存在理由上、一般市民への対応を優先せざるをえず、騒動の中心人物である朝比奈 秀雄の確保に失敗してしまったのだ
「薔薇十字団」の保護下に入られては、手を出す事はできない
どちらかというと、他組織とは中立的な立場を貫いている「薔薇十字団」と敵対することは、「組織」として得策ではないのだ
特に、「アメリカ政府の陰謀論」との仲がこじれている現状では、尚更だ
『朝比奈 秀雄から解放された「黄金伝説」のドラゴンをある程度確保できたのじゃ。それで、良しとすればよかろ?』
『問題は、「薔薇十字団」が確保したドラゴンと、朝比奈 秀雄の中に残っていたドラゴン。それを合わせても、一匹足りないと言う事だが…』
『足りない個体はどれだ?シルスウェルのドラゴンではないだろうな?あれは、疫病をばら撒くから厄介だぞ』
『…タラスクス。甲羅持つ竜だな、行方がわからないのは』
「黄金伝説」のドラゴン
それを確保できれば、「教会」との取引材料になる
そもそも、「黄金伝説」のドラゴン達は、「教会」が厳重に封印していたはずの存在なのだ
…それが、朝比奈 秀雄と言う、一人の日本人がどこからかそれと接触し、契約してしまった
「教会」の失態だ
しかも、それと契約した存在が、日本で騒ぎを起こした
その暴れたドラゴンを、「組織」が確保すれば…それは、「教会」との取引のカードになりうるのだ
出来る事ならば全てを確保したかったが、「薔薇十字団」に先を越されてしまった分は仕方ない
やはり、問題となるのは、行方がわからないタラスクスだ
「黄金伝説」のドラゴンは、一体一体が強大な存在であり、もし万が一にでも暴れ出したら、大変な騒ぎになる
189 :
単発ネタ:2010/05/27(木) 15:01:48.40 ID:oddu0ppfQ
「『組織』の敵になる悪者さんを退治しにきました!あとあとっ、わたしの右目はかー君の目です!」
しつもんにはちゃんと答えてあげないとね。わたし優しぃ。
「かー君?いやそれより、何故僕たちが悪者だと決めつける!?君のような子供に人殺しなんてさせる組織こそ悪じゃないか!!
僕たちはただそんな組織を変えようとしているだけだ!」
むむ、言い訳をはじめたぞ。組織が悪者だなんて言いはじめたよ。嘘ついたらいけないんだぁ。だいたい黒服さんは人殺しが悪いなんて言ってなかったよ。
「嘘つきはどろぼーのはじまりですよ!それとそれと、かー君はかとぶれぱすのかー君です!」
「カトブレパス!!っ…………ぐ、ガっ…………」
あ、やっと死にましたね。魔よけのがーどで効き目悪かったなぁ。
かー君の目はべんりです。この右目は組織の人がくれたんですよ。契約しないで能力をつかえるようにする実験だかなんだかで。移植?とかいうのをして。
その実験はしっぱいで、さいごは契約しないといけなくなったんですけどね。
あ、これないしょですよ。黒服さんと他の人に言わないってゆびきりしたんですから。とくにおんけんはって人たちに言ったらおしりぺんぺんですよ。
わたしは正義の味方だ。悪者退治がおわったら、何か決めぜりふがあると正義の味方らしいんだけど、おもいうかばない。
まあいいや、はやく帰って黒服さんになでなでしてもらおぅっと。
終
190 :
エピローグ10 「組織」 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 15:03:00.76 ID:3hr5vbXc0
何か問題を起こす前に、何としてでも確保しなければならない
……実際には、タラスクスは既にハーメルンの笛吹き契約者事上田に捕獲されているのだが、「組織」はまだ、その情報を把握していないのだ
近々、その情報を把握そ、ハーメルンの笛拭きを討伐対象に戻すか否かで、また大問題が起こるのはもう少し先の話だ
『タラスクスについては、CNo及びSNoが追跡調査。ただ、無理はしない事だ』
『朝比奈 秀雄に関しては、「薔薇十字団」との交渉で、少しはこちらが受けた被害の賠償でもしてもらうか』
…もっとも、朝比奈 秀雄から受けた被害の大半は、中途半端に彼にちょっかいを出した強硬派や過激派が中心な訳で
穏健派としては、自分達が受けた被害よりも、朝比奈 秀雄が罪の償いをすることに関して、重点をおくのかもしれないが
『それでは、今回の議題は終了とするが…………他に、何か話し合うべき問題はあったか?』
『あぁ、以前、妾が提案したことについてだが』
…H-No.0の発した、その言葉に
強硬派と過激派が、反応を示す
『全ての黒服に、人間としての名前をつける事を義務付ける…であったか?馬鹿馬鹿しい。「組織」の歯車に名前などいらん』
『その考え方が問題だと言うておるのじゃ。お前達がそうやって、黒服や契約者を使い潰すから、いらぬ敵まで増やしてしまうし、力をそがれていっておるのじゃぞ?』
全ての黒服に、名前を持つ事を義務付ける
それは、H-No.0が提案した事だ
つまり、純粋な「組織」の黒服にも名前を与えるという事
…人格を認める、と言う事だ
黒服を「組織」の歯車としてしか見なさず、道具のように扱う者が多い強硬派や過激派にとっては、厄介な思想である
だからこそ、と言う訳でもないが
H-No.0としては、是非とも通したい提案なのだ
『俺、さんせー。いいんじゃないか?名前くらい』
191 :
エピローグ10 「組織」 ◆nBXmJajMvU :2010/05/27(木) 15:07:41.37 ID:3hr5vbXc0
『S-No.0、珍しく発言したと思ったら…』
『俺も、賛成だ。正直、人の姿をした者を道具扱い、ってのは嫌だしな』
『…G-No.0…!』
日和見派…と言う事になっているS-No.0や、H-No.0と同じく穏健派であるG-No.0が、H-No.0の考えに賛同する
発言権を強めている、穏健派達
そうとは言え、強硬に考えを通そうという気はない
ただ……相手が折れるまで、この考えは主張し続けるつもりだ
これ以上、強硬派や過激派達に、黒服や契約者を使い捨てるような行為はさせたくない
それ以上に何とかしたいのは、非人道的な実験は禁止していると言うのに、未だにそれを行っている者がいる、と言う事だ
つい先日、死亡したQ-No.0も、かなり非人道的な実験を行っていたようだし
元・H-No.0の部下であるH-No.1も、裏で何をしているかわからない
……まだまだ、「組織」は歪なのだ
それでも、彼らは存在し続ける
都市伝説の存在を、一般市民から隠す為に
そして、穏健派は願う
「組織」が、人間と都市伝説とが、必要以上に争う事がないよう、その間に立てる存在になる事に
人間にも、都市伝説にも、優しい存在になれる日を
…D-No.0が望んだ「組織」の形を実現できる日を
今でも、彼らは模索し続けている
to be … ?
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 15:09:51.66 ID:3hr5vbXc0
単発ネタの人、割り込み申し訳ないorz
これまた、実験被害者的幼女ががががががが
しかも、これは「組織」に育てられて考え方が捻じ曲げられていますね、よくわかります
立ち上がれ、世界中の幼女の味方達
こんな幼女にだって、救いが必要です
で、俺のほうのネタは、朝比奈戦後の「組織」の対応的なものとかでした
書いているうちによくわからんようなってしまった
残りエピローグは、マドカ関連くらい…かな、多分
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 15:13:47.29 ID:3hr5vbXc0
出かけてくる
夜にもスレが残っていてくれれば幸せだ
乙
ほ
し
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 17:30:33.21 ID:7DE7IkajP
の
お
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 18:16:51.28 ID:7DE7IkajP
ふ
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 18:55:38.04 ID:7DE7IkajP
ろ
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 19:24:14.02 ID:Hrldrt6G0
星のお風呂
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 19:48:58.72 ID:Hrldrt6G0
うー
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 20:12:45.67 ID:Hrldrt6G0
あとエピローグ書いてないの誰だっけと構想しながらほ
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 20:17:51.82 ID:7DE7IkajP
うん
205 :
やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q (代理):2010/05/27(木) 20:23:08.82 ID:Hrldrt6G0
三尾 「何でそんなところに居たんですかっ!」
Y-No.0「そこが私の行くべき場所だと思ったからだ」
口裂け(何故なら"そこにドラゴンが居たから"!)
三尾 「不用意に外に出たりしないで下さいといつも言ってるはずです!」
Y-No.0「用意をしていては間に合わない事態と言うのもあるのだよ」
口裂け(遊びに出る用意だけはいつでも出来てるからな、はははは)
Y-No.0「ドラゴンを不可視化する結界だってぎりぎりだったんだ。動けるものが動いたほうがいいだろう?」
三尾 「でも……」
Y-No.0「私が結界を出していたから被害も多少は減ってるんだ。流れ弾も防いだし、竜の咆哮もかなり緩和されている」
口裂け(それに何より、ドラゴンを間近で見れた?)
三尾 「むぅ……確かにそうですけど〜……」
口裂け(くくくっ、理由は無視すりゃ、やることは真面目にやってるからな、説得されてら)
Y-No.0「おい、そこの笑い堪えてる赤い馬鹿。いらん事言ったら潰すぞ」
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 20:42:10.80 ID:Hrldrt6G0
ほ
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 21:01:16.49 ID:Hrldrt6G0
ら
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 21:21:01.89 ID:Hrldrt6G0
ほ
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 21:40:08.94 ID:Hrldrt6G0
ら
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 21:41:00.59 ID:vTjBbudc0
ら
211 :
仙と血みどろ祟り神 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/27(木) 21:54:47.82 ID:Hrldrt6G0
「なるほど、逃げ隠れが上手いだけの事はある、実に巧妙よ」
町を覆っているであろう蟲毒の結界を探りながら、将門は楽しそうに笑う
「笑い事ではありません。あの連中の主目的は『蟲毒』ではなかったのですよ?」
結界が破れその中に隠されていた存在を知った盟主が、うんざりとした顔で呂布を睨む
「方位さえ定まればそこに『ある』とはいえ……大陸のものをよくもまあ」
「俺が知るか」
将門と盟主、二人からやや距離を取って座り込んだまま、呂布はじっと動かない
「手出しはせん。それが最大限の譲歩だ」
「それはどちらに対して言ってるのですか?」
「両方だ」
その言葉に呼応するかのように、音も気配も無く、影が浮かび上がるように現れる黒服達の姿
「我らの命令に背くか」
「所詮は裏切り者の性という事か」
「まあいい、事は充分進んでおる」
老若男女様々な数十人の黒服が、いつの間にか周囲を取り囲む
「ほう、随分と増えたものだな。まるで鼠か御器噛りよ」
将門の挑発じみた言葉にも、まるで動じた様子も無くじりじりと間合いを詰める黒服達
「『祟り神』とはいえ所詮は元人間」
「それを制するが我ら『仙』よ」
「陰陽五行天地万物、制する我らに抗うか」
212 :
仙と血みどろ祟り神 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/27(木) 21:57:52.99 ID:Hrldrt6G0
将門は蟲毒の術式を読み取りそれを打ち砕くために気を割いている
戦いながらでも事は進むが、流石に多少なりとも作業に遅れは出てしまう
「その割には、やってる事は小物臭いですね?」
それを察してか、即座に動いたのは盟主だった
放たれた空気を焦がす紫電の規模は、呂布に向かって放たれたものよりも遥かに大きい
だが、それは黒服達に届く事無く、各々が手にした刀剣や放たれた鋲によって霧散してしまう
「雷とてそれは木行。我らが御せんとする『祟り神』の対策のついでで充分よ」
「そもそも我らがこの町を『蟲毒』に選んだのも、何より貴様の存在あってこそ」
「雷の力を御する者の守護する地」
「歳星、それ即ち木星なり」
「世の東西問わず雷の星なり」
「五時は春、この桜咲き散る季節にて」
「五方は東、東の果てのこの島国にて」
「五声は呼、数多の異形が呼ばれる地」
「五畜は犬、犬が集まり狂い果て」
「五虫は鱗、竜が集いて暴れ散り」
「五志は怒、守護者が怒りに蝕まれる」
「ここまで木行に偏る地と時はそうそうあるまいて」
それまで無表情だった黒服達が、けたけたと声を上げて笑い出し
213 :
仙と血みどろ祟り神 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/27(木) 22:04:58.25 ID:Hrldrt6G0
「我らを殺し早急に毒を満たすか」
「我らに殺され毒に成り果てるか」
「将門よ、盟主よ、さあどちらを選ぶ」
さも楽しそうに声を揃えて告げる
「「「「「「「「「「五情は喜、これもまた木行よ」」」」」」」」」」
―――
一方その頃
どういう仕組みか床一面に広がる水鏡の縁に、指一本動かせずに転がされている犬メイドの姿
水鏡には町のあちこちを徘徊する中華黒服達の中で、一際大きく将門と盟主の姿が映し出されている
その奥、水の底に沈む脈動する肉塊とそれに包まれた女性の姿を見て、それが呂布の契約者が救いたい人なのだろうと把握する
(さて、声一つ出せない状況でマジどうするか)
辛うじて呼吸だけはできたため、呼吸の長短でモールス信号のように意図を伝え、胸の谷間に潜んでいた小悪霊をこっそりと放つ事に成功した
問題は伝えるべき事が正確に伝わっているかだが、そこまでは期待はしていない
最悪自分がどうなろうとも、この場所だけでも誰かに伝わって、この女性がどうにか助かればそれでいいとは考えていた
(ていうか今の俺が助かったらヒロイン扱いだろ。『MI6』の下っ端なら、くたばった方が旦那の登場の切っ掛けになった方がマシだっての)
時間が無い、そう判断できる材料の一つ
犬メイドの視界の片隅に見える、中華黒服の持つ符が隙間無く貼り付けられた壷
あくまで視覚的に具現化しているだけで実体はそこには無いのだが、だからこそ中身の見えない角度からでも感覚的にその中身が察知できた
その中に満たされた表現しようのない色合いの液体は、徐々に溢れるほどの量へと近付いていた
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 22:25:42.37 ID:Hrldrt6G0
人いねぇ
いねぇ
いねえ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 23:00:12.91 ID:Hrldrt6G0
いた!!
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 23:21:20.31 ID:Hrldrt6G0
ほ
帰宅ほ
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/27(木) 23:39:26.61 ID:Hrldrt6G0
>>219 お帰りなさいませほ
お風呂にする?
ご飯にする?
それとも、プロテインにする?
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 00:01:00.49 ID:YyjlBbns0
おやすみー
明日もスレが残っていますように
ほ
う
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 02:18:14.78 ID:OcvFdmTd0
き
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 02:51:14.84 ID:OcvFdmTd0
ぼ
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 06:22:33.24 ID:TQ0iGJ51P
し
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 08:07:07.12 ID:TQ0iGJ51P
に
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 09:27:15.49 ID:IlfWrjRE0
ね
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 09:42:47.78 ID:TQ0iGJ51P
が
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 10:08:10.28 ID:IlfWrjRE0
い
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 10:26:13.49 ID:TQ0iGJ51P
を
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 10:50:44.39 ID:IlfWrjRE0
ほうき星に願いを
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 11:47:34.08 ID:TQ0iGJ51P
うん
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 12:42:04.64 ID:XWIDJqJw0
しょう
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 13:01:05.78 ID:XWIDJqJw0
三姉妹
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 13:19:25.82 ID:XWIDJqJw0
よ
237 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:35:53.56 ID:XWIDJqJw0
過ぎた時間は戻らない
時を巻き戻す事などできない
それは、人間に許された領域ではない
それは、神の領域
そこまで踏み込む覚悟は出来ていたはずだった
救えなかった彼女を、救う為に
………だが
今の家族を捨ててまで、その領域に踏み込むつもりは
今は、もう、ない
「…へぇ、さっきの子。あんたの隠し子かい」
「………そう言う事らしい」
しゃりしゃ……り、しゃり、じゃり
林檎の皮をむきつつ、若干、不機嫌そうに言ってきたマドカ
秀雄は、そんな不機嫌そうな声にも、淡々と応じる
恵と入れ替わりで、秀雄の見舞いに来たマドカ
病室に入る時、すれ違った恵の事が気になったらしく
いらない誤解を抱かれても困るので、秀雄は正直に真実を話したのだ
……まぁ、それでも、ある程度彼女が不機嫌になる事を阻止する事はできなかったようだが
「ちゃんと、その子に関しても責任取るんだよ?」
238 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:38:56.22 ID:XWIDJqJw0
「………出来る限りの事はする」
しゃ………っり、じゃりじゃり
先ほどから、ちっとも一定のリズムを刻めていない、皮をむく音
…相変わらずだ、と秀雄はぼんやりと、そんな事を考える
「…他に、あの子みたいな子は、いないだろうね?」
「…………いない」
…そのような関係になった女性は、恵の母親と、マドカだけだ
それ以外には、本当に、誰もいない
「…あの陰気な女とは、どうなんだい」
「……鳥井の事か?」
「他に、誰がいるってのさ」
俯いているマドカ
リンゴの皮をむく手は、何時の間にか止まっていた
「………彼女とは、そのような間柄には、なっていない」
「本当に?」
「あぁ」
違う
本当に、彼女とは、そのような間柄にはなっていなかった
…確か、6年前にも、そのように説明したはずだったのだが…
……恐らく、きちんと聞いていなかったのだろう
あの時のマドカは、相当激昂していたから
「……それじゃあ。どうして、あの女を傍に置いていたのさ」
239 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:41:12.65 ID:XWIDJqJw0
「秘書として有能だったからだ。それと…」
「それと?」
「お前と違って、人を殺しかねない料理は作らなかった」
「どう言う意味だいっ!?」
どう言う意味だ、と聞かれても
その通りの意味なのだが
「翼も、彼女の料理は喜んで食べていたしな…数回程しか、その機会はなかったが」
「そりゃ、冷凍食品やレトルトよりは喜んで食べるだろうけど……って、あんた、あたしにゃ料理するなって言っておきながら…」
「育ち盛りの子供に、お前の料理は毒だ。冷凍食品やレトルトの方がまだマシだ」
「そこまで言うかいっ!?」
…マドカの抗議に対して
秀雄は小さくため息をつき、告げる
「………私はお前の手料理で、三日三晩寝込んだのだが?」
「うっ………」
…どうやら、思い出したようである
あの時は、まだ見た目がマシな料理であったはずなのだが……それ以降、練習したと言った彼女の料理は、見た目すらも酷くなる一方だった
あれは、どう考えても、子供の発育に悪い
場合によっては、命に関るかもしれない
……思えば、マドカは調理の際、味見をしているのだろうか
いや、それ以前の問題のような気もするのだが
「……と、とにかく……あの陰気女とは、そう言う関係じゃあ……なかったんだね?」
「………あぁ」
240 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:44:44.01 ID:XWIDJqJw0
気まずくなったのか、視線をそらしたマドカに、改めて答える
…そうかい、と短く呟いた声は、酷くほっとしているように見えた
「…結局………あたしが、勝手に勘違いしただけだった、って事かい」
「……私が、誤解を解く努力をしなかった、とも言うがな…………ある程度は、あの頃のお前へのあてつけもなかったわけではない」
うぅ、とますます視線をそらしてくるマドカ
…己の非は、感じているらしい
「………あたし、は。あんたの事が嫌いで、あぁしていたんじゃ、なくて………その……」
「…………」
口ごもるマドカ
静かに次の言葉を待つが、なかなか、切り出せずにいて
「…私の気でも、引こうとしたか」
「う、あ、そ、その」
視線をそらした、その顔が
かすかに赤みがかる
「〜〜〜っそ、そうだよ!悪かったね!!」
「…何故、そこで怒る。そして、ここは病院だ。あまり大声は出すな」
逆切れした様子のマドカに、秀雄は呆れたように小さくため息をついた
マドカは、6年前と全く変わっていなかった
強気な性格も、直情な面も、考え足らずな所も
全て、あの頃のままだ
241 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:47:49.73 ID:XWIDJqJw0
そして
あれだけ傷つけても、なお
まだ、こちらを愛するというのか
「……なぁ」
「何だ」
「あんたは……これから、どうするんだい?」
…これから
この病院にも、そう長く入院している訳ではない
「黄金伝説」のドラゴンを無理矢理引き剥がした反動や、無理な身体強化の反動の影響さえ消えれば、すぐにでも退院する
そして、その後は………−−−−−−
「……私がしでかした事の、始末をつける。私に残された時間で、どれだけ出来るかはわからないが…………罪を償う。それだけだ」
「……そうかい」
ことん、と
マドカが、リンゴを切っていたナイフを置いた
かなり、歪な形に切られた…それも、身が大分皮についたままで、相当小さくなった…リンゴを皿に載せ、秀雄に渡しながら
マドカがぽつり、告げる
「…あたしは、そのあんたの、傍にいても………いいのかい?」
「………お前が、付いて来る必要など、ないぞ」
これは、自分の犯した罪だ
マドカは、関係ない
秀雄はそう考える
だが
242 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:50:21.57 ID:XWIDJqJw0
「必要があるとかないとか、そんなのじゃないんだよ……傍にいてもいいのか、って聞いてるのさ」
「…………勝手にすればいい」
傍にいて欲しい、などと
言える資格は、自分にはない
自分が答えられる答えは、それしかない
「…そうかい……それじゃあ、勝手にさせてもらうよ」
秀雄の答えに、そう言ってマドカは笑った
彼女の笑顔を見たのは、酷く久しぶりで
酷く、懐かしく感じて
己の目的のために、彼女を選んだ
ただ、それだけのはずだった
……それだけの、はずだったと言うのに
この笑顔に、惹かれなかった訳では、なかったのだ
思えば、その時点で
過去にしがみ付く事をやめてさえいれば、彼女や翼を傷つけずにすんだのかもしれない
(…全ては後の祭り、か)
過ぎ去った時間は戻らない
己の罪が消えることはない
ならば
己に残された時間で、その罪を償う
己に残された時間で、今度こそ……少しは、家族に対して、家族らしく接する事ができればいい
秀雄は、表には出さず、そう考える
243 :
エピローグ11 男と女 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 13:54:38.48 ID:XWIDJqJw0
「………マドカ、お前は、翼とは………」
「…その事、なんだけど、ね」
歪な形のリンゴに口をつけ始めた秀雄を見つめながら
マドカは、かすかに表情を暗くする
「…今度、ね。会って、話す事にはなってるんだよ……糞爺と糞婆も一緒なんだけどさ」
「………自分の親をそう呼ぶ事はないだろう」
「い、いいんだよ。あたしの親の事は。とにかく、翼とは、今度、きちんと会って…話すんだけど、さ」
マドカの顔に浮かぶのは、不安
彼女らしからぬ、表情
「……あたしは、翼に、許してもらえるのかねぇ……?」
「………」
しゃり、と
ほぼ一口サイズのそのリンゴの切れ端を、飲み込んで
…そっと、秀雄はマドカに手を伸ばした
ぴくり、マドカの肩が、小さく震える
「…翼は、私でさえも許してきた。私のような、許されるはずもない存在を」
「…………」
「……お前が、向き合ったならば……翼は、それに答えてくれるはずだ。話し合う前から、結果を不安に思うなど、お前らしくもない」
「……そう、か」
許されれば、いいんだけどね、と
答える顔は、どこまでも不安そうで
……そんな彼女にどう言葉をかけてやればよいのか、秀雄には、わからなかった to be … ?
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 13:57:19.74 ID:XWIDJqJw0
いつまで引っ張ってんだよ、って感じの悪魔の囁き編エピローグ
ようやく、この二人まで書けました
さて、後は親子の話し合いだけか…
何か書き忘れている連中もいるような気がしないでもないが、別の機会でいいやって思った
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 14:15:37.37 ID:XWIDJqJw0
よ
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 14:37:08.76 ID:XWIDJqJw0
ぞ
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 14:57:37.16 ID:XWIDJqJw0
ら
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 15:20:16.03 ID:XWIDJqJw0
を
おばさんが赤面しても可愛くn
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 15:38:15.65 ID:XWIDJqJw0
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵。∴∵
∴∵∴∵:。∴∵∴∵∴: --─- ∴∵∴∵∴∵∴∵
∴∵゜∴∵∴∵∴∵ (___ )(___ )
>>249 ∵。∴∵∴∵ ゜
∴∵∴∵∴:∵∴∵_ i/ = =ヽi ∴∵∴∵。∴∵∴
∴∵☆彡∴∵∵ //[|| 」 ||] ∴:∵∴∵∴∵:∴∵
∴∵∴∵∴∵ / ヘ | | ____,ヽ | | ∴:∵∴∵∴∵:∴∵
∴゚∴∵∴∵ /ヽ ノ ヽ__./ ∴∵∴∵:∴∵∴∵
∴∵∴∵ く / 三三三∠⌒> ∴:∵∴∵:∴∵
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∴∵∴∵
∧∧ ∧∧ ∧∧ ∧∧
( )ゝ ( )ゝ( )ゝ( )ゝ 無茶しやがって・・・
i⌒ / i⌒ / i⌒ / i⌒ /
三 | 三 | 三 | 三 |
∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪
三三 三三 三三 三三
確かに、事視で40歳になろうと言うおばさんが赤面しても可愛くないのは同感だが(このレスは壁に埋め込まれた後フルボッコにされました)
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 16:00:55.46 ID:XWIDJqJw0
ほ
252 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:07:35.12 ID:XWIDJqJw0
某日、学校町 東区の旧家が建ち並ぶ一角にて……
「…でっけぇ」
「おっきーの」
大きい
旧家が建ち並ぶこの一角、どの家も大きい事は確かだが…日景家は、その中でも大き目の家だ
門構えからして、格が違う
古いながらもしっかりとしたつくりで、歴史を感じさせるそれは、しかし同時に、どこか重苦しさすらも感じる
「…昔は、この門をくぐるたんびに、息苦しさを感じたもんだよ」
小さく苦笑するマドカ
目の前の門を、少し憂鬱そうに見あげている
…この日、マドカは、以前から約束していた、翼や黒服との話し合いの為、生家である日景家に赴く事になったのだ
………が
何分、絶縁宣言を叩きつけられた身であるし、一人でここに来るのは心細いものがあったようだ
Tさんと舞、それにリカちゃんに、門の前まででもいいから、一緒に来てくれないか、と頼んできたのだ
ちょっとした好奇心も手伝って、舞達はマドカについて日景家の前まで来ていた
……門の前で、立ち止まり
マドカは、その門の中への一歩を踏み出せないでいる
翼とは和解したいものの、両親との確執があるせいで、なかなか中へと踏み込めないようだ
「…マドカ姐ちゃん、大丈夫か?」
「……大丈夫さね」
舞に声をかけられ、マドカは笑って見せてきた
253 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:11:46.92 ID:XWIDJqJw0
軽く首を振り、懸念を振り払う
「いつまでも、逃げてばかりじゃあ、いられないしねぇ」
…そう、言って
マドカは、決意したように、門の中に踏み込んだ
その後ろ姿を、舞はリカちゃんと一緒にじっと見つめる
「Tさん、俺達はどうする?」
「…まぁ、門の前までだけでも、と言われていたしな」
ひとまず、約束は果たした
これ以上付いていく必要は、とりあえずない
ゆっくりと、門の向こうの大きな屋敷へと向かっていっているマドカ
とりあえず、大丈夫そうだが…
……と
そんなマドカに、小さな影が駆け寄ってきた
和服に身を包んだ、鞠を持った幼い少女
マドカには弟がいると言っていたから、その子供だろうか
少女は、駆け寄ってくる少女にやや途惑った表情を浮かべるマドカに
「おばちゃん、だぁれ?」
と、声をかけた
むじゃきなこどもの ざんこくなことば!
きゅうしょにあたった!!
こうかはばつぐんだ!!
254 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:16:01.07 ID:XWIDJqJw0
「……あ、姐ちゃん、落ち込んだ」
「かたまってるの」
「………子供は時として残酷だな」
その様子を、門の外から眺める舞達
……リカちゃんですら、「おばさん」と呼ぶのを堪えたというのに
その少女は、なんとも容赦なく、その言葉を言い放った
少女が門の外にいた舞達にも、気づく
小さく、愛らしく首を傾げてきた
「…おねーちゃん達も、だーれ?……もしかして、翼にーちゃんに会いにきたの?」
「……!翼は、もう来てるのかい!?」
少女の言葉に、舞達ではなく、マドカが反応を返した
うん、と少女は頷いてくる
「うん。黒服着たおじさん達と一緒に来たよ」
「そうかい…」
目的の相手は、先に来ていた
………ならば
後は、自分がそれに向かい合う、だけだ
屋敷に視線を戻すマドカ
その屋敷から、人影が姿を現していて
「武、どうしたんだ………。……………!姉さん!」
255 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:21:16.45 ID:XWIDJqJw0
「…薫、ただいま」
その人物…弟である、日景 薫に対して
マドカはどこか申し訳無さそうに、笑って見せた
役者は揃っている
後は、覚悟を決めるだけなのだ
なお
マドカが、弟とそうやって向かい合っている間
「……武……?……あれ、男……?」
と、無邪気な一言を言い放った少女……否、少年の正体を知って
思わずカメラを構える舞の姿があったのだが、それはどうでもいいことである
数分後
結局、舞達も、日景家の門をくぐっていた
事情を聞いた薫が「せめて、お茶でも飲んでいってください」と誘ってきたのだ
屋敷の奥まで案内され、その古く由緒ありそうな中の様子に、舞はやや落ち着かない
……Tさんは、門をくぐると同時に感じた、大きな都市伝説の気配に、別な意味で落ち着かなかったが
(…恐らくは、この家に封印されていると言う「小瓶の魔人」の気配、か…)
256 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:26:14.37 ID:XWIDJqJw0
気配からしても、願いをかなえると言う力は本物なのだろう
悪魔の囁きにとり憑かれた状態の朝比奈 秀雄の手に、それが渡ることがなかったのは幸いだ
「どうぞ、こちらでお待ちください」
そう言って、薫が襖を開けた
…そこにいた、人物に
「あれ?」
と、舞が思わず声をあげる
以前、顔を合わせたことのある相手が、そこにいたからだ
「……あなた方は」
「みー?」
そこに、いたのは
高校生くらいの少年と、おかっぱ頭の少女
マッドガッサーの騒動の時に顔を合わせた、花子さんとその契約者だ
「おや、龍一君、知り合いかい?」
「……以前、とある縁で知り合いました」
薫の問いかけに、そう短く答える花子さん契約者…龍一
まさか、「都市伝説関係者です」とは言えないだろう
薫も特に追求してくる様子はなく
「それでは、ここでお待ちください」
と、部屋を後にした
257 :
エピローグ12 本家にて その1 ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 16:29:53.64 ID:XWIDJqJw0
ひょこん、と薫の目がなくなってから、リカちゃんが舞の鞄から顔を出す
「みー、久しぶりなの」
「よ、花子さん、久しぶり…って、どうしてここに?」
「……俺の家がこの家と縁があるので。当主が娘さんと和解するらしいと聞いて、様子を見てくるよう言われたので」
舞の疑問に、そう答える龍一
どうやら、花子さんはそんな龍一に、付いてきただけのようである
…花子さんの姿は、薫には見えていないのだろう
龍一達の前の大き目のちゃぶ台の上には、お茶が一つしか置かれていない
「あなた方は?」
「こちらは、その当主の娘…マドカと、縁があってな」
「………そうですか」
妙な所で、縁が重なったものである
そんな事を考えながら、Tさんはちらり、と、自分達が入ってきたのとは、反対側の襖に視線をやる
…Tさん達が部屋に入るまで、龍一が見ていた、そこを
うっすらと開けられた襖の向こう側
そこに、翼や黒服、それに望と詩織の姿が見えて
その奥に、見覚えのない老人二人…恐らくは当主と、その伴侶であろうと辺りをつける、その姿が見えて
……隣の部屋の、襖が開く
そこから、マドカが部屋に入って
−−ぴぃん、と
部屋の中の空気が張り詰めたのが、襖越しに伝わってきたのだった
to be … ?
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 16:32:08.87 ID:XWIDJqJw0
Tさんの人に焼き土下座!!orz
最後のエピローグ、最後まで一気に書ける気がしないのでここで一端切りー
このエピローグを書ききれば、悪魔の囁き編、完全終結です
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 16:44:57.43 ID:XWIDJqJw0
帰ってきてもスレが残っていますように
ほ
し
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 18:47:15.49 ID:WJr1xwjPQ
投下乙ですー
ツンデレの40代……
……無いな(ボソッ
乙ですー
アラフォーツンデレ……か(遠いものを見る目)
マドカさんは家族と仲直りできるのだろうか!?
あと武君の格好は荒神避けの護法ですよね!? 日景家は子供に女装させる趣味がある家系じゃないですよね!?
そしてどうでもいいけど花子さんの写真を中央高校で撮っていることにしてしまっているが大丈夫でしょうか!?
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 19:25:42.64 ID:RkyP3MBG0
ごちそうさまでしたー
>>262 >……無いな(ボソッ
俺もないと思うwwww
>>263 >あと武君の格好は荒神避けの護法ですよね!? 日景家は子供に女装させる趣味がある家系じゃないですよね!?
はい、荒神避けってか魔除けの一種ですね
日景の家系は女装の似合う男が生まれやすいですが、趣味ではないです
>そしてどうでもいいけど花子さんの写真を中央高校で撮っていることにしてしまっているが大丈夫でしょうか!?
何ら問題ないんだぜ!!
>>264 >>はい、荒神避けってか魔除けの一種ですね
おお、よかったww
だが女装男子が生まれやすい家系かww
……なんと、舞って霊体撮影可能なのか……
舞「ちーちゃんとかウガツンジャーとか撮って来る」
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 19:38:34.49 ID:RkyP3MBG0
>……なんと、舞って霊体撮影可能なのか……
んー、多分、写真に写っているその姿も、都市伝説関係者とか霊感ない人には見えないかも
普通よりは見やすくなってるでしょうが
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 19:56:25.75 ID:RkyP3MBG0
にゅ
>>266 ですよねー
まあネタに使う事も無いだろうけども
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 20:18:29.28 ID:RkyP3MBG0
ネタ構想中ほ
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 20:36:40.24 ID:RkyP3MBG0
にゃ
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 20:55:36.20 ID:RkyP3MBG0
にゃー
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 21:15:27.86 ID:RkyP3MBG0
にゃーにゃー
,,,,,┯,,,,,
彡 ミ
彡. (・) (・) ミ<保守ですぞ!
彡 ミ
彡 ▲ ミ 彡ミミ,.
彡彡 " ゛ ミミ彡 ,し
彡 ",,,,,.,, " 彡
彡 ミ "" ミ 彡彡彡
彡,,щ9 ミ
ミ"" ミ
ミ ミ
ミ ミ
ミミ ミ
彡 ミ ミ
ミ 彡ミ,,, ミ
ミ ミ "ミ,,, ミ
ミ ミ "ミ,,, ミ
彡 彡 彡 彡
"""" """"
新手の都市伝説ッ!?
都市伝説『中の人』
能力は知らん
空気を読まずに投下します。
アクマの方風 4コマ風劇場(補足や小ネタ)―
7月×日
今日はお母さんのお母さんが住んでいる学校町におとまりに行きました。
せっかく学校町に来たので友達が言ってた都市伝説が
本当にいるのかたしかめるためにさんぽをしていました。
すると空から、黒いマントをはためかせて人がふってきました。
その時ボクはこう思いました。
少年「(カッコイイ・・・)」
そしてその人とけいやくしました。うれしかったです。
実はかっこいいから契約した少年。
大王を見ていったい何と重ねたんでしょうか?アン○ンマンあたりが妥当でしょうか。
いとこの家にて
少年「[大王]ー。ゴハンだよー。」
大王「俺はお前たちとは違って摂食はしない、つまり飯は食わないんだ。」
少年「ふーん」
少年「ゴハンいらないんだね。分かったー。」
大王「(だいたい、もし必要だと言ったらどうする気だったんだ?)」
少年「あ、トイレはだいじょうぶ?」
大王「摂るもん摂らなくて出すもん出すとか
お前は俺の事をゴミ生成機とでも思っているのか?」
他の都市伝説がトイレに行くシーンはあまり見ないなぁと思ってみたり。
花子さん達は行ってましたが。
大王、ふと思う
大王「ところで少年、お前は何故、悪い事をしてはいけないと思うんだ?」
少年「あぁ、それはね―」
少年「(前略)アン○ンマン(中略)バーン!(中略)
だから(中略)それでウル○ラマン(後略)」ペラペラ
大王「・・・」
少年「(前略)○○戦隊(中略)ドカーン!(中略)
だけど(中略)○面ライダー(後略)」ペラペラ
大王「・・・」イライラ
少年「(前略)ぐわぁ!(中略)バンバーン!(中略)
ズバァッ!(中略)ドカーン!(後略)」ペラペラ
大王「(なんかこいつと分かり合える日が来ない気がしてきた・・・)」
少年はすっごい漫画・アニメ・特撮好きです。
おそらく彼の知識の大半がヒーロー物関連です。
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 21:35:26.97 ID:RkyP3MBG0
しえーん
家へ
契約した少年が自分の家に帰ると言うので
仕方がないので俺も付いて行く事にした。
支配しようとは思ったものの、仮にも俺の故郷。
いざ離れるとなると、寂しいものだ。
少年の母の故郷だから、また来る事になるだろうか?
またな、学校町。
あれ?オチは?
こうして物語は小学校編に移ります。2〜3話しかないですが。
第2話に続きます。
281 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 21:43:40.44 ID:RkyP3MBG0
恐怖の大王の人乙でしたー!
少年かぁいいよ少年
大王も何かかぁいいよ大王
投下乙でしたー
一方向に知識を究めすぎだろ少年wwwwww
大王はこんな少年にずっと振り回されるのか…
強く生きてくれ、大王
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 22:12:02.41 ID:RkyP3MBG0
ほ
乙です
少年は特撮ファンか……将来が楽しみだww
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 22:25:53.31 ID:OcvFdmTd0
現在の学校町には、某特撮ヒーローが居るが……。
再び学校町に少年が来るとして、彼と出合ったら如何なるのだろうか?
286 :
保守ネタ ◆nBXmJajMvU :2010/05/28(金) 22:40:19.03 ID:RkyP3MBG0
エピローグ12のちょっと前と言うか何と言うかそんなシーン
マドカとの、和解に向けての話し合い
その場に向かう翼と黒服に、望と詩織、ついでにこっそりとノロイも付いてきていたのだが
「おねーちゃんたち、だーれ?」
武が、初めて見る望と詩織に、興味を持ってきた
一切の遠慮のない好奇心の眼差しに、望がやや、途惑っていて黒服の後ろに少し隠れていると
「あぁ、望と詩織。俺の家族だよ」
と、翼があっさりと答えてきて
その、答えに
武は、つ、と黒服と、望と詩織を交互に見つめてきて
……うん、と
何か、納得したような表情を浮かべた
「翼にーちゃんの家族なんだね!」
「あぁ、そうだ」
納得した様子の武の頭を撫でる翼
そんな、様子に
「…何か、ものすっごい誤解を与えたような気がするんだけど」
「気のせいじゃない」
思わず呟いた望に、詩織は気楽な様子で、そう答えたのだった
終われ
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 22:41:34.12 ID:RkyP3MBG0
武は、望と詩織が黒服Dの子供と判断
翼が子持ち男性と同棲していると判断したようです
この場合、誤解の一番の原因は何だ
>翼が子持ち男性と同棲していると判断したようです
武君、君はそんな特殊な考え方をどこで学んだんだwwwwwww
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 22:50:23.82 ID:OcvFdmTd0
あれ? 確か、望の今の戸籍って……。
断ってたっけ、記憶違いかな?
>>287 >この場合、誤解の一番の原因は何だ
何でしょうね。親子に見えるほど、Dさんと2人が似ている訳じゃ無いでしょうし。
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 22:52:57.38 ID:RkyP3MBG0
>>288 武「おかーさんがお昼に見てたドラマでやってたー」
子供が見ている前で昼メロ見ちゃらめぇ
>>289 >あれ? 確か、望の今の戸籍って……。
戸籍上で考えれば間違ってはいない
が、武は実の子供だと判断したわけで
>何でしょうね。親子に見えるほど、Dさんと2人が似ている訳じゃ無いでしょうし。
推察するに
翼が家族と言った→が、どう考えても翼の子供じゃない(年齢的に無理がある)→じゃあ、きっと黒服の子供なんだ
と、言う感じに判断したかと
>>290 >武「おかーさんがお昼に見てたドラマでやってたー」
よし、テレビを没収しなさい、お母さんから
子供の教育に悪すぎるwwwwwww
…いや、むしろ早期からの英才教育?
このまま行けば翼を超える誤解ワード要員になる可能性も…
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 23:13:13.54 ID:RkyP3MBG0
>>291 >…いや、むしろ早期からの英才教育?
やだそんな英才教育wwwwwwwwww
>このまま行けば翼を超える誤解ワード要員になる可能性も…
誤解ワード要員と言うか、今のところ誤解する方ですがwwwwwww
せいぜい、彼が他人を誤解させたことと言えば、赤い靴を誤解させた程度
つっても、あれは赤い靴の契約者が主だったからまた違うか
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 23:28:00.08 ID:RkyP3MBG0
おやすみー
明日もスレが残っていますように
おやすみー
風呂上りほ
ネタ書きつつほ
296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 01:15:24.00 ID:6yygKfTd0
ほ
Project-ACE case02:Experiment /実験風景/
そこは直径40m、高さ100mの、円柱状の空間。
その空間の最上部の一角に、窓が取り付けられている。
窓の向こうの部屋には、さまざまな計器やモニターと向き合い、作業をする大勢の黒服たち。
すっと、音も立てずにドアが開き、一人の黒服と一人の白衣の男が部屋に入った。
その黒服は巨大なモニターの前へ歩み寄り、近くにいた黒服に目をやる。
「進捗状況を報告しろ。」
「実験室を無酸素にしてから30時間、加えて摂氏マイナス60度にしてから10時間が経過しました。現在まで異常はありません。」
「code:06の状態は。」
「体表温度、マイナス58.6度。脈拍、68分に一回。呼吸は無し。脈拍と連動するように、強い生体電気が発生しています。」
「code:01、これをどう分析する。」
code:01と呼ばれた白衣の男は、正面の巨大なモニターをじっと見る。
そこには、異形の姿をしたcode:06が、膝を抱えるようにしてうずくまる姿が映し出されていた。
「そうですね…体内の水分が不凍液になっているのは実験No.59で確認済みです。
実験No.84のケースと同じように、生体電気で体内の水を分解、酸素を生成しているのでしょう。」
「既にこの環境にも適応している、と。」
「そういうことです。」
満足そうに頷くcode:01。
A-No.206は数瞬、考えるそぶりを見せたのち、モニターの前に座る黒服に指示を出す。
「実験室を摂氏マイナス100度まで低下。」
「了解しました。室温、低下します。」
黒服がカタカタとキーボードを鳴らす。
その手が止まると同時に、モニターに表示された数値が急激に変化する。
「…室温、摂氏マイナス99.8度。code:06、体表温度低下中。」
「予定通り8時間後に実験終了。その後の検査も予定通り行う。」
「了解しました。」
淡々と指示を出す黒服に従い、淡々と作業をする黒服たち。
その様子をただ見ていたcode:01が口を開く。
「相変わらず容赦のないことで。」
「あの環境にも耐えるのならば、更なる極限状態の中で、更なる”進化”を促すまでだ。」
「くっくっく…。ま、死んだら死んだでレアなサンプルが入るんで、私はどちらでもいいんですがねぇ。」
低く、愉快そうに笑いながら話すcode:01。
狂気を孕んだ微笑みを浮かべつつ、No.206に向き直る。
「行き過ぎた”進化”が行き着く先は、”破滅”。…それまでは存分に協力させていただきますよ。」
そう告げると白衣を翻し、部屋の外へと歩いていった。
去り行く背中をじっと見つめ、ゆっくりと口を開く。
「……”Project-ACC”が成れば、”破滅”など問題ではない。実験体は黙って従っていろ…。」
憎憎しげに放たれた呟きは白衣の背中に届くことはなく、静かに部屋へと埋もれていった。
Project-ACE case02:Experiment /実験風景/ END.
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 01:53:44.58 ID:RNOFra0tQ
こんな夜更けに代理乙でしたー
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 03:08:35.65 ID:6yygKfTd0
代理乙ほ
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 05:32:04.24 ID:IOfeNqZaP
ほ
ほし
303 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 09:07:46.96 ID:IOfeNqZaP
ゅ
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 09:47:52.63 ID:bKad5Dj80
おはよー、代理乙なのですよ
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 10:23:28.59 ID:bKad5Dj80
ほ
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 11:22:57.40 ID:6yygKfTd0
ほ
保守
ほ
ら
でかけるほ
311 :
ソニータイマー:2010/05/29(土) 13:43:50.90 ID:2O6kO/BN0
「嫉妬少年と悪魔の囁き」
悪魔の囁きが倒された
そんな情報を仕入れた新聞部
真「そんなわけだ。さ、記事を書くぞ」
一「了解です」
そして、新聞部は悪魔の囁きが倒されたことを伝える記事を書くのだった
そして…
疾風「あれ? 新聞?」
新聞部が書いた新聞を手に取り、悪魔の囁きの記事を見る疾風
疾風「悪魔の囁きの本体が倒された…? なるほど。と言うことは他の悪魔の囁きも消えるはず…だよね?」
後ろを見て、
疾風「なのになんでお前は生き残ってるんだよ…」
『知ルカヨ、ソンナン』
疾風に取り憑いていた悪魔の囁きはどういうわけか消えていなかった
「貴方の嫉妬心が強すぎたせいじゃない…?」
ちなみに疾風は悪魔の囁き騒動の最中、新たな都市伝説と契約していた
それは『宇治の橋姫』。嫉妬深いことで有名な妖怪である
疾風「なるほどね…。それじゃあ、悪魔の囁きが巨大な海蛇と竜が合わさった生き物みたいになってるのも
そのせいなのか…?」
彼に取り憑いていた悪魔の囁きは、彼の強すぎる嫉妬心と『宇治の橋姫』が集めた嫉妬心を食べ、
成長して別の都市伝説に変わっていた。『レヴィアタン』。七つの大罪において、嫉妬を司るとされる悪魔だ
『アー、ソウイウコトカ。ツマリ俺ハ悪魔ノ囁キカラ正真正銘ノ悪魔ニ進化シタワケダ』
312 :
ソニータイマー:2010/05/29(土) 13:45:11.33 ID:2O6kO/BN0
疾風「まあ、悪魔の囁きが倒されても僕のすることは変わらない…。滅びろカップルども…ああ、妬ましい」
早速人前でイチャついているカップルを見つける疾風たち
疾風「…人前でイチャつきやがって、妬ましい…! 爆発しろ!」
「本当妬ましいわね…」カツーン、カツーン
疾風がカップルの座っているベンチを爆破し宇治の橋姫が呪いをかける
疾風「くくくくく…いい気味だ…。滅びてしまえばいい…!」
「カップルなんて要らない…。妬ましいだけ…」
『俺ノ出ル幕ネェナ…』
坊池一人が倒されても、カップルは『リア充爆発しろ』の被害にあうのだ。死にはしないが
疾風「今日はそんなにカップルが多くないみたいだね…良かった良かった」
「坊池一人とか言う人が暴れまわったからでしょうね…。平和が一番だわ」
『頼ムカラ無視シナイデクレ…』
疾風「いや、だって流石にお前を召喚したら目立つだろ…」
『ソウカ…ソウダヨナ…』
疾風「まあ、他の都市伝説に襲われたらお願いするかもしれないけどね」
『ソレマデオ預ケッテコトカ…』
疾風「そういうこと」
こうして、疾風のリア充狩りはますますエスカレートしていくのであった…
続く…
やることかわってねえw
314 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 15:17:32.16 ID:5/o+QBZv0
ただいまー
ソニータイマーの人乙ー………って、うぉおおおおおおおおおおおい!?wwwwwwwwwwwwwwwww
疾風君もいつ都市伝説に飲み込まれるかわからない状況になってきて心配だ
ソニータイマーの人の登場人物は、全体的にいつ人間やめてしまってもおかしくない状況に陥ってるのが多い気がするんだぜ
疾風が悪人に見えてならないwww
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 15:26:11.78 ID:5/o+QBZv0
>>315 そんな疾風君にトラウマ刻むネタの構想が浮かんだが、人様のキャラに勝手にトラウマ植え付けるわけにもいかんしなぁw
317 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 15:47:38.30 ID:5/o+QBZv0
よ
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 16:08:12.07 ID:5/o+QBZv0
ぞ
319 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 16:31:09.95 ID:5/o+QBZv0
ら
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 16:51:40.81 ID:5/o+QBZv0
を
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 17:09:57.23 ID:5/o+QBZv0
み
あ
323 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 17:54:51.90 ID:5/o+QBZv0
げ 夕食終わったら母子の和解投下する
る 外出前ほ
し
ん
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 19:24:11.32 ID:DnZW0KEY0
だ
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 19:42:44.39 ID:DnZW0KEY0
お
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 20:02:57.73 ID:DnZW0KEY0
ん
な 完成した?
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 20:22:20.02 ID:DnZW0KEY0
の もうちょい
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 20:32:29.16 ID:DnZW0KEY0
人 10分後くらいに投下開始すりゅ
333 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:40:30.16 ID:DnZW0KEY0
しぃん、と静まり返った部屋
…その部屋の中で、望はどこか、居心地の悪さを感じていた
翼が、黒服も交えて、マドカと話し合うと言うから、少し心配になってついてきたのだが
……まさか、日景の家の人間に盛大に歓迎されるとは思っていなかった
いや、歓迎されると同時に、何か盛大に誤解されたような気がしないでもないのだが
それに関しては、高確立でその誤解の原因の一端であろう翼を軽く殴っておくとして、だ
翼とマドカが、向かい合っている
一度は、徹底的に仲がこじれた母子
しかも、二人ともどちらかと言えば直情的であり、また、一度相手を嫌ってしまえばどこまでも徹底して嫌い続け、なかなかその認識を改める事が出来ないタイプだ
その二人が、果たして、和解などできるのか?
(……まぁ、多分大丈夫なんでしょうけど…)
ちらりと、望は隣に座っている黒服の様子を覗き見た
…黒服は、落ち着いている様子だ
静かに、翼を見守っている
彼が、こんなにも落ち着いているのだから…きっと、大丈夫なのだろう
望は、そう信じる事にしたのだ
「……つば、さ」
沈黙を破ったのは、マドカ
かすかに俯きながらも、じっと、翼を見据えて
…翼も、その視線から、逃げない
真っ直ぐに、それを受け止めている
「御免、ね………まだ、小さかった、あんたに、寂しい思いをさせて…」
334 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:44:01.63 ID:DnZW0KEY0
それは、マドカの精一杯の、心からの謝罪
らしくもなく考え込んで、話すべきことを考え込んで、伝えるべき謝罪の言葉だって、考えてきたはずだと言うのに
だと言うのに……いざ、その時になってみれば、口から出たのは、こんなにも短い言葉
違う
これじゃあ、足りない
これっぽちの謝罪で、許されるはずもない
……違う
自分は、許されるはずもない
自分なりに、翼を愛していた
己が産んだ、たった一人の息子である翼を、自分なりに愛していたつもりだった
けれど…それを、うまく伝える事ができなかった
自分の行為は、結局、翼を傷つけ続けただけだったのだ
許してもらえるはずがない
だが、それでも
せめて、謝罪の言葉だけでも、伝えたかったのだ
「お袋」
翼が、口を開く
「黄金伝説」のドラゴンの力を全開にしていた朝比奈 秀雄との戦いの最中、口にしたあの呼び方とは違うけれど
だが、口にしたその呼び名は、確かに、マドカを「母親」と認識している呼び方だった
翼は、自分を孤独にした両親を恨んでいた
自分は両親に愛されていないのだと、深い孤独を抱え続けていた
だが、その誤解も、今は緩和されている
あの戦いの最中、マドカが現場に駆けつけた時、マドカが翼を救おうとしたことを、翼はわかっているから
支援
336 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:47:32.06 ID:DnZW0KEY0
「あたしの息子に何しようってんだい」と言い放った、マドカのその言葉から
翼はようやく、母からの愛情と言うものを、感じ取る事ができたのだから
「俺は……あんま、頭よくねぇから。こう言う時、どう言う言葉を言えばいいのか、よくわかんねぇ」
けど、と
軽く笑って、こう、マドカに告げる
「お袋が、俺の事を、ちゃんと息子だと思ってくれていたんなら…………それで、いいや」
「…翼」
自分は、親から愛してもらえていなかった、と
そう感じていたから、何よりも辛かったし、孤独を感じていた
だからこそ、自分をわかりやすく心配してくれていた黒服にすがっていたのだ
…マドカが、自分のことを息子だと思ってくれていて、母親として愛情を向けていてくれていたのだと
それが、わかった今は……恨む気持ちは、薄れていた
完全に消えた訳ではない
完全に許せた訳でもない
今でも、文句言いたいことは山ほどある
だが、今は……それを口に出す気にも、なれなかった
そう言う事は、後でいくらでも言えるのだし
「いいのですか?翼さん」
どこか、心配そうに口を開いたのは、日景 千鶴……マドカの母、翼から見れば、祖母である女性だ
千鶴の隣では、日景 宗光、マドカの父であり、翼から見れば祖父にあたる男性が、静かに黙り込んでいる
この二人からしてみれば、勘当した娘が子供にまともな愛情すら注げなかった、と自分達の教育が悪かった生だと、孫である翼に申し訳なさを感じていたし
この馬鹿娘が、と言う気持ちが、なんとも強かったようだが
支援
338 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:50:28.17 ID:DnZW0KEY0
「いいんだよ、俺は」
…娘に対しては厳しかった、癖に、孫に対してはとことん甘い孫馬鹿二人
翼にこういわれては、納得するしかなく
「…だから、さ」
そして
「前から言ってたけど…爺ちゃんと婆ちゃんも、お袋のこと、許してやってくれよ」
翼の、その言葉に
マドカが、「え?」と、どこか気の抜けた声を出した
黒服、大門 大樹は思い出す
翼と共に、初めて日景家を訪れたその日の事を
「初めて、この日景家に来た時…翼さん、私たちがマドカを勘当したときの話を聞いて………私達に、頼んできた事が、あるのですよ」
どこか、困ったようにそう言った千鶴
大樹は、小さく首を傾げた
「頼んできた事、ですか?」
「あぁ……私達に、その勘当を解いて欲しい、とそう、言ってきたのだよ」
そう言って、宗光は軽く目を閉じる
その時の光景を、思い出しているかのように
339 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:54:14.07 ID:DnZW0KEY0
「朝比奈 マドカの勘当を、ですか?」
「あぁ………親子と言う繋がりを、断ち切ったままでいるなんて悲しいことだから、と」
その時、家族がバラバラになってしまっていた翼にとって
実の両親からも縁を切られてしまっていたマドカが、酷く憐れに思えていたのだ
それは、その時の自分の状態と、全く違うはずなのに、どこか、重なっていて
だからこそ、必死に頼み込んだのだ
母親を、許してやって欲しい、と
母親が祖父母から勘当された経緯を叔父から聞いて、母親に同情するものもあったのかもしれない
必死に頼み込む孫の様子に、結局、宗光も千鶴も折れたのだ
……とは、言っても
自分達から勘当した手前、素直に許す事も出来ずに
翼が「日景」の苗字を名乗る事になった件について怒鳴り込んできたマドカ相手に、また盛大に大喧嘩をしてしまい、許すどころの騒ぎではなくなったのはさておき…
……その話を聞いた時、大樹は気付いていた
翼はとっくに、母親であるマドカのことを、許していたのだ、と
ただ、それを素直に表に出すことができなかっただけだ
顔を合わせる機会はあったはずなのだが、心の準備が出来ていない状況ばかりで、顔を合わせる事もままならなかった
だが、確かに……マドカのことを、翼は既に許していたのだ
許していなかったのは、翼の周囲だけだった
……自分が、翼がマドカと和解する機会を、奪ってしまっていたのではないか
話を聞いた当初、大樹はそう自分を責めた
千鶴達から話を聞いた時、大樹はそれに気付き……気付きながらも、それをすぐに認められなかったのも、事実
翼が両親と不仲である事を嘆きながらも
それを、改善する手伝いを、結局自分はできなかったのだ
340 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 20:58:00.35 ID:DnZW0KEY0
だから、こそ
翼に、話し合いの場に一緒にいて欲しいと頼まれた時、大樹は承諾した
翼の不安を感じ取り、傍にいる事で、少しでも翼の不安を和らげることができるなら、と
今、少しでも
翼を支えている事が、できていればいいのだが
望と詩織と共に翼の傍にいながら、大樹はそう考えているのだった
きょとん、としているマドカ
思わず、己の両親を見つめる
「…ぇ」
「………そう、だな」
ふぅ、と
宗光が、小さくため息をついた
マドカを見つめ、尋ねる
「…翼が許しているのなら……私達も、認めるしかあるまい」
「………父、ちゃん?」
「私達も、あの時は少し、頭に血が上っていましたしね」
「………母ちゃん」
ゆっくりと
積り、凍り付いていた雪が、融けていくかのように
決定的なまでに広がってしまっていた溝が……埋まっていく
「家に戻りたければ、いつでも戻ってくればいい」
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 20:59:08.16 ID:Juzn1q7Y0
支援
342 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:02:18.68 ID:RNOFra0tQ
しえ
343 :
エピローグ12 本家にてその2 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:02:35.04 ID:DnZW0KEY0
短く、簡潔に告げられたその言葉
第三者が聞けば、どうと言う事のないその言葉も、当人達にとっては、今までの関係をひっくり返す、大きな意味を持つ言葉で
俯いた、マドカ
その口元には、かすかに笑みが浮かんでいて
「…………ありがとう」
という感謝の声が、かすかに涙声だったのは
決して、その場にいた者の聞き間違いでは、なかっただろう
過ぎた時間は戻らない
だからこそ、その後悔を繰り返さない為に
これからの時間を、生きていくのだ
Happy End
344 :
エピローグ12,5 蛇足 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:10:50.28 ID:DnZW0KEY0
「ところで、翼」
話し合いが、無事終わったところで
詩織が、くいくい、と翼の服の裾を引っ張って、尋ねる
「翼は、親と仲直りしたんなら…これからは、そっちと一緒に暮らすの?」
「いいや」
きっぱり
翼は、即答する
「お前等の事心配だし、今まで通りだよ」
「…別に、心配されなくても平気よ?」
望は、そう言うのだが
翼は、更に続ける
「……あえて言うなら、家事方面が心配なんだよ、主に料理」
翼の言葉に、つつ、と視線をそらす望と大樹
……大分、望に料理を教えてきたつもりだし
そろそろ、望も恐ろしい食材はあまり、使わなくなってきたが
まだまだ、油断はできない
今でも、時々油断すると、虫料理とか作ってくるし
「ほんとに、そいつらの事が大事なんだねぇ?」
マドカの、その言葉に
あぁ、と、翼は誇らしげに、笑った
支援
和解乙です支援
347 :
エピローグ12,5 蛇足 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:14:26.63 ID:DnZW0KEY0
「俺は、大樹達の事が好きだから。大切な家族だからな」
きっぱり、はっきりと言い切った翼
その言葉には、一切の迷いは、ない
…若干の誤解を含んだ視線が翼に向けられたのだが、翼はそれに気付いていない
「……そうか…それなら、それでいいのだが」
「?爺ちゃん、どうしたんだ?」
何か、色々と達観した様子の宗光の言葉に、首をかしげる翼
本当に、何も気付いていない
いや、何も、と宗光は言って……ため息をついて、顔をあげた
「………すまないが……私と千鶴で、少し、マドカに話があるので、席をはずしてくれるだろうか?」
「??あぁ」
黒服達と共に、立ち上がる翼
…この、瞬間
望のポケットの中で、ノロイが何かを感じたように、ごそごそと落ち着きを失っていた
「…あぁ、話し合いは終わったかい?じゃあ、こちらに」
す、と
襖が開き、薫が顔を出す
翼達を伴って、部屋を出て
…そして、部屋にはマドカ、宗光、千鶴の三人が残される
「…翼は、本当に。あの大門 大樹と言う青年に惹かれているのだな」
348 :
エピローグ12,5 蛇足 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:18:39.90 ID:DnZW0KEY0
「……あぁ……小学生の頃に会って以来、ずぅっと懐きっぱなしさね」
「そうか……その頃から、か」
遠い目をする宗光
何か、悟ったような表情だ
「マドカ……その頃に、翼をその道から、引き戻す事はできなかったのか?」
「そりゃ、あたしだって同性同士はどうかと思ったから、どうにかしようと思ったけど…「あ、道踏み外してそう?」って気づいた時には、遅かったんだよ」
…当人達がいないからと、誤解全開の会話である
翼がいれば、突っ込みに忙しくなりそうな現状だ
「そう、何とかしようとはしたのですね。面白がるのではなく」
「……ちょいと、母ちゃん。あたしを何だと思ってるのさ?」
「そう言う娘だと思っていますよ?」
……沈黙
やや、空気が気まずくなる
「そりゃあ…あたしは、どう言う娘だと思われているのかねぇ?」
「考え無しの直情娘だと思っているが」
「男を見る目がない事は、秀雄さんの件で十二分にわかっていますよ」
「秀雄をあたしの見合い相手に連れて来たのはあんたたちだろうがっ!?」
流石に、反論するマドカ
が、宗光達も、その点に関しては視線を逸らしつつも、それ以外を否定する気は一切合財、ないようで
そして、マドカとしても、そこまで言われて、怒らない訳がなく
「……翼がいる前じゃあ、喧嘩する気にもなれなかったけど…やっぱり、あんたらとは、一回決着つけないといけない気がするよ、糞爺に鬼婆……!」
「あらあら、相変わらずですこと」
こりてないww
そして誰か(一応)誤解だと言ってやれよ支援w
350 :
エピローグ12,5 蛇足 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:23:44.70 ID:DnZW0KEY0
ころころと、千鶴が笑う
……が
その手元には、いつの間にやら、薙刀が
「少しは丸くなっているかと思ったが、そう言う事もなかったか…」
「あんた達だって、人の事は言えないだろう?」
マドカに睨まれている宗光の手にも
いつの間にやら、一振りの、日本刀が
親子は、静かに睨み合い……
次の、瞬間
「っの、馬鹿娘がぁ!!!息子一人道が外れるのを止められないかっ!!」
「あんたたちが言えたことじゃないだろうっ!?子育て云々だけは口出されたくないよっ!!」
「あらあら、困った娘です事。翼さんのためにも、少しは矯正しないといけませんねそうですね」
部屋の、中は
一気に、戦場へと変わったのだった
「……っちょ!?何か、凄い音が聞えてくるんだけど!?」
「あぁ……大丈夫、父さんたちが元気になった証拠だから」
聞えてきた物騒な音に、思わず戻ろうとした翼を押し止め、苦笑する薫
……何が起きているのか、何となく、理解して
頭痛と胃痛を感じ始めた黒服を、望が慌てて気遣うのだった
351 :
エピローグ12,5 蛇足 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 21:30:56.30 ID:DnZW0KEY0
そして
その、壮絶なる数年ぶりの親子喧嘩は
「……えーっと」
こっそりと、隣の部屋から和解の様子を見ていたTさんと舞、リカちゃん
それに、龍一と花子さんにも、ばっちりと目撃されていて
どうコメントしたらよいのかわからず、固まるまい
Tさんは、そっとリカちゃんの目を塞いでおき
そんなリカちゃんは、花子さんと一緒に「みー?」と首を傾げていて
そんな、中
龍一は一人、冷静に携帯電話を取り出して
「…あぁ、親父?……ん、宗光さん、大丈夫。もう体調崩す事もないと思う。娘さんと和解したんだし」
「っちょ、あれ、いいのか!?和解できたって言うのか!?」
「………昔と変わらない親子喧嘩だから、問題ないと思う……色々と突っ込みたい事実ではあるが」
舞の突っ込みにも、冷静にそう答えて
龍一は、どこか呆れたように、ため息をついたのだった
今度こそお仕舞い
352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:32:32.86 ID:DnZW0KEY0
ふぃ、無事に書き終われた
はないちもんめの人とTさんの人に焼き土下座しつつ、悪魔の囁き編、全エピローグ、これにて終了です
後は、クールトーどうなったのか書くのと、DからTさんに、事後報告みたいなシーンのネタ書けば完全に終了
事後報告は、帰り道でするか日景家の縁側でするか、どうでもいいことに悩む現実
とまれ、無事に親子和解も完了しました
誤解が続いている面もありますが、まぁ、別にいいよね!!!
乙でした!
これで悪魔の囁き編も終了かな?
なんにせよお疲れ様だあ!
親子仲もそれなりに落ち着いたようでなにより
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:47:36.90 ID:6yygKfTd0
乙でした!
うん、和解が出来た様でなによりです。
ケンカするほど仲がいい、なんて言葉も有りますしアレで良いのかも知れませんね。
さて、今度はこっちが投下させて貰いますか。
乙でしたー。
五階はまあ仕方ないよね!
356 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:48:20.71 ID:DnZW0KEY0
支援準備はできているぜ!
357 :
残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/05/29(土) 21:50:55.75 ID:6yygKfTd0
床に散らばった資料の整理を終え、紗江良を待つついでに、書類を纏めていたSに報告が入った。
その内容は、《悪魔の囁き》事件が収拾したと言う物だった。
「そうか、終ったのか」
「はい。ただ、朝比奈秀雄の回収は失敗した様です。それでは失礼します」
「ご苦労さん」
他の人間への報告のために、《組織の黒服》はその場を離れる。
その背に一言を告げて、Sは、先程まで見ていた資料から知った事実に思考を伸ばそうとしたが。
何の接点も無い自分がしても、そんな事は意味が無いと思い止めた。
そこに、同じ様に報告を聞いていたらしい紗江良が、帰って来た。
「終わったみたいですねぇ」
「やっと、解放されたか。こんな時だってのに、人気者は辛いな」
「まぁ、どんな時でも、女の人にとって恋愛は無視できない事ですからぁ」
358 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:52:17.45 ID:DnZW0KEY0
貴殿に土下座すべきネタが浮かんでいる俺が支援!!
のんびり支援
360 :
残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/05/29(土) 21:54:03.59 ID:6yygKfTd0
紗江良は今まで、組織本部に居た女性陣に捕まっていたのである。
彼女の《女の勘》は、恋愛を含む『愛』に関わる事象に関してはチートが働くのだ。
だから、恋に悩む女の人達に、恋愛診断を頼まれていたと言う訳だ。
この様な非常時だと言うのに、だ。
もっとも、的確過ぎる故に、良い結果ばかりでは無いのだが、それでも頼んでくる女性は尽きない。
「さてと。んじゃあ、こっちも報告に入るとするか」
「……《七人みさき》の事、ですよねぇ」
書類を渡して立ち上がるSに、受け取った書類を軽く見ながら紗江良が返す。
《七人みさき》は殺した相手から、エネルギーを奪って居るなどの情報がそれには書かれている。
と、その中に《七人みさき》以外の事が書かれているのに気が付いた。
それは、《兄鬼》と名乗った漢に付いての報告だ。
「《兄鬼》さんの事も、報告するんですかぁ?」
「強い奴と戦いたい、って言ってただろ。組織の中にも、狙われる奴が居るかも知れないからな。
それと、予想でしか無いが戦いに関して、アイツは躊躇を持たないぞ」
「なるほど、確かに報告した方が良いかもしれませんねぇ」
「だろ」
サラッとだが、内容を読み終わったらしく、紗江良は書類を返す。
Sは返された書類を受け取り、上司へ提出に行くために、そのまま部屋を出る。
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:55:10.09 ID:6yygKfTd0
トントン
「S-No.560です。《七人みさき》諸々の報告書を持ってきました」
「あ〜。今忙しいから、そこに置いといて」
「大変そうですね。J-No.4」
今回の件の事後処理に追われているらしく、上司である女性はSに顔を向けずに言う。
その様子を見て、労いの言葉をSは告げる。やはり、顔を向けずJが言った。
「ええ、見ての通りよ。まったく、私が行けばイチコロだってのにさ」
「……いや。アンタの場合、無差別すぎるだろ。朝比奈秀雄だけじゃ無く、他の奴らも殺す気か?
その上、死因が笑い死に何て不憫すぎるだろ」
支援
363 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 21:57:10.15 ID:DnZW0KEY0
しえーん
364 :
残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/05/29(土) 21:57:17.53 ID:6yygKfTd0
うわ、書いてたやつ消してしまった!!
チョッと、待ってて下せぇ。
呆れと共に、口調がフランクになり、ツッコミを入れるS。
その中に、笑い死に等と言う単語が出て来たが、これは彼女の能力に因る。
彼女ことJ-No.4が、人間時代に契約していた都市伝説は、《殺人ジョーク》と言う。
その名の通りに、人を殺すジョークだ。簡単に言うと、あまりの可笑しさに、笑い過ぎて死んでしまうジョークだ。
第二次世界大戦中に、ある作家が考え出し様々な人を殺し、遂には軍事利用まで計画されたとも言われている。
「むー」
「むくれんで下さい。じゃあ、俺は失礼させて貰いますよ」
「ん。じゃあね〜」
片手をヒラヒラとさせて、出て行くSを送るJ。
結局、Sが部屋を出るまでJは顔を上げる事は無かった。
おおっとお!
ドンマイww
367 :
残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/05/29(土) 22:04:00.85 ID:6yygKfTd0
「さて。俺も戦いの準備、しとくかね。はぁ」
先程の部屋で休んでいた紗江良を迎えに行き、Sが次の目的を果たすための部屋へ進む。
その部屋の中に、所狭しと置かれているのは様々な武器だった。
この武器の全てが誰かがかつて使って居た事のある、言うなれば中古品なのである。
そして、中古品だからこそSにとっては、最高の武器に成るのだ。
続く
368 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:04:29.86 ID:DnZW0KEY0
殺人ジョーク…だと支援
乙でした
みさきさんをどう相手取るのかに期待しとります!
乙でした―。
さて、そろそろこっちも書き上げねば
371 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:08:51.96 ID:DnZW0KEY0
おぉっと、乙でしたー!
さて、美咲ちゃんの情報が「組織」にいったか…
その綺麗な死亡フラグをへし折るべく、彼女にとあるキャラを会わせるネタを全力で構想するぜ!!
372 :
残された思いの読み手 ◆caHoDnkdag :2010/05/29(土) 22:12:07.59 ID:6yygKfTd0
《悪魔の囁き》が終って少しした位の、Sと紗江良の様子でした。
紗江良を、組織女性陣の人気者で良いのか? そんな位置付けにしてしまいましたが、良いですよね。
Sの上司である、J-No.4を登場させました。このJは、ジョークのJです。
《殺人ジョーク》は、都市伝説にカテゴライズして良いのか不安ですが……後悔はしません!!
373 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:13:28.96 ID:s2fQAcNh0
皆様乙です
無事ハッピーエンドで終了…と思ったらwwwww
ええい、翼に対する誤解が解ける日は来ないのか!?www
そしてみさきちゃんとの戦いにwktkしつつネタを書きあげる
374 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:17:12.84 ID:6yygKfTd0
>>369 >みさきさんをどう相手取るのかに期待しとります!
Sと紗江良が、美咲を相手に戦うか、如何かは……?
>>371 >さて、美咲ちゃんの情報が「組織」にいったか…
この情報から、過激or強硬派が彼女の元に向かう計画を建てた模様です。
条件付きとはいえ、擬似的な多重契約が可能な《七人みさき》は興味を引くでしょうし。
>>373 ご期待に添えるよう、精進いたします。
375 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:20:31.25 ID:DnZW0KEY0
>>373 >ええい、翼に対する誤解が解ける日は来ないのか!?www
まず、翼と黒服に誤解されている自覚がない罠
よーし、それじゃあ拝戸さんのシリーズ投下いっくぞー!
377 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:24:50.04 ID:DnZW0KEY0
よーし、お兄ちゃんネタ書きながら支援しちゃうぞー!!
【拝戸直の人殺し 第七話「アワセ鏡」】
「知っているか拝戸?この世の中には常識の外の存在が居るんだぜ。」
「だからなんだって言うんですか?」
「この大学の四階と五階の間の中四階。
そこに置いてある合わせ鏡って片方が割れているだろ?」
「ああー、そういえばそうですね。」
「あれは“会わせ”鏡と言ってな、真夜中にあの鏡の前に立つと会えるらしいぜ。」
「何にです?」
「そりゃあお前……。」
大学で俺を指導している教授。
彼は怪談が好きだった。
「――――――“常識の外の存在”だよ。
今度、見に行ってみてくれないか?」
俺にささやく彼の目は笑っていなかった。
379 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:27:52.18 ID:DnZW0KEY0
しええん
「……という訳なんだよ、みぃちゃん。
厄介なこと頼まれちゃったなあ。」
「へぇー、そうなんですかー。」
「なんだなんだ?興味なさそうじゃないか。」
「だってそんな変なことに興味沸かないよ、普通。」
教授とお化け談義をしてから数時間後、俺は家に帰ってきていた。
最近、みぃちゃんは近所で拾ったとかいう亀の世話に夢中である。
動物好きだと言っていたがそれはどうやら本当らしい。
「それよりもその亀の世話が大事らしい。
俺はコーヒー飲む時に妙なにおいがして嫌なんだケドネ。」
「むぅ、可愛いのにぃ……。」
亀はこちらを見て口を大きく開く。
亀のくせに喧嘩でも売っているのだろうか?
まったくもって腹の立つ奴だ。
「良いよ、じゃあ俺一人で行く。」
「はいはい、どーぞそうしてください。私は亀吉と遊んでいるモン。」
いつの間にか名前までつけていたのか。
女性の趣味というのはわからないものである。
俺はため息を吐くと自分の部屋に戻り大学の授業の復習を始めることにした。
勉強のさなか、ふとあの亀の顔が思い浮かぶ。
家に帰ってくるといつの間にかみぃちゃんが水槽の中で世話していたのだ。
確かに考えてみれば亀なら嫌われるも何もない。
彼女も中々良いペットを見つけた物だ、と最初は感心した。
しかしいつの間にか亀との日常を語るブログを作ったり、
そのブログが妙に人気が出てきてしまったり、
そのブログでいつの間にか俺のことまでネタにされたりしたのは少々ストレスだったりして、
俺は亀に対して少々嫌悪感を持ち始めていた。
まあ亀一匹にピリピリするのもかっこうわるいか。
と、独り言を言って自分を慰めてみたり。
しかしまずは明日の実験の準備である。
これをきっちりやらないと単位が取れないのだ。
留年などしてしまえば父に何を言われるかわかったものではない。
親が怖いなんて笑われてしまいそうではあるが
殺人鬼でも人の子、ということでどうか一つお願いしたい。
さて翌日。
夜遅くまで実験を続けていた俺は当然帰りが遅くなってしまった。
不運にも、俺たちの実験を指導していた教授に捕獲される。
「拝戸ぉ、実験の後片付け手伝ってくれよ。単位あげるからさぁ〜。」
「またっすか教授?」
「だってお前時々授業さぼるじゃねえか、それとおあいこっつーことで。」
「うぅ……。」
「まあサボっている間に何やってるかは俺知らないけどさぁ、
あんまり妙な物ひっつけてくるなよ?
“臭い”んだよねぇ。」
「臭いってなんですか臭いって。」
「いやぁ、君から“屍臭”するんだよねぇ〜、なんでかな?」
「はっ、そんな馬鹿な。」
笑みを顔に貼り付けて誤魔化す。
まあそんなごまかしが通じる相手なのかは別だが。
「ところで実験の後片付けが終わったらちょうど良い時刻だ。
俺の代わりに見に行ってくれよ。会わせ鏡。」
それが狙いか。
「なぁに“君”なら、死にはしないだろうさ。」
まるで死神のように彼は笑った。
383 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:32:56.69 ID:s2fQAcNh0
支援
384 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:33:01.55 ID:DnZW0KEY0
おい、まさかだがその亀は支援
俺は実験室を出て夜の大学の廊下を歩き始めた。
教授の言う会わせ鏡とやらを見に行くことになってしまったのである。
教授について少し話しておく必要があるかもしれない。
彼はとある有名な寺の跡取りで、平日は医大で教授をやっているが休日は自分の家でお経を読んでいる。
外科医としての腕前は相当だそうでわざわざ県外からやってくる患者も居るとか。
だがそんな教授にも変わったところがある。
“見える”そうなのである。
俺が彼と初めて会った時に彼が教えてくれたのだ。
その上で、彼は俺に大量の霊がついていると言った。
見えているならそれがなんで俺、拝戸直についているか解るだろうに。
トン
「あ、すいません。」
通りすがりの人が俺にぶつかった。不覚にもまったく気づかなかった。
真夜中とはいえ大学の医学部である。
まあ人が通っていてもおかしくはない。
「いえいえ。」
振り返って俺とぶつかった人の後ろ姿を見る。
その姿を見た俺は驚きを隠せなかった。
386 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:33:20.41 ID:6yygKfTd0
支援
387 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:34:22.50 ID:L9AoC18Q0
某ジップラ板に定期的に建つスレのいくつかは、
某国の外交官が本国との連絡のため建てたものである
1は建て逃げし、板が建ってから10分以内にそのスレ以外では
見たことないコテが毎回おんなじようなレスをするのは
その証拠だ
俺はキョロキョロと辺りを見回す。
腕の時計を見ると午前0時。
こんな時間まで大学に居るなんて俺はなんて不幸な大学生なのだろう。
だが今の問題はそれじゃあない。
さっきぶつかった人の後ろ姿。
それは間違いなく俺だった。
「――――――“常識の外の存在”だよ。」
教授の言葉が頭の中で反響する。
あれが、“それ”なのか?
「会わせ鏡が会わせてくれるのは悪魔なんかじゃない。
鏡が映すのは“あくま”で“人間”。
それでも理を外れた人間は悪魔と呼ばれるのだから……
君が会ったのはもしかしたら悪魔なのかもしれない。
君が、悪魔なのかな?」
後ろから教授の声が響く。
彼は俺の肩に手を置いた。
389 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:35:23.37 ID:DnZW0KEY0
しぇーん
「教授、一体此処はどこなんだ?あんたは一体何処に俺を連れてきた?」
「――――――――鏡の中の世界かなぁ?」
惚けた顔で笑う教授。
何かがおかしい。
何かがおかしい何かがおかしい。
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ
時計を見る。
文字盤が逆さまだ。
シャツが右前になっている。
これじゃあまるで死人じゃないか。
俺は一体何者なんだ?
信じられない信じたくない。
これじゃあまるで俺は………………
―――――――――――――――鏡像みたいじゃないか。
俺は脇目もふらずかけだした。
「おいおい、逃げるなよ」
後ろから笑い声が残響反響し続ける。
391 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:37:29.30 ID:DnZW0KEY0
支援!!
もうどれほど走ったのだろう?
流石に落ち着いてきたので辺りを見回す。
壁に掛けられた時計は至ってまともだ。
おかしくなっているのは俺なのか?
それともこの世界なのか?
窓ガラスを覗き込むと、俺の顔が映っている。
そうだ、窓ガラスを開けよう。
開けて外に出れば何とかなるはずだ。
真夜中にもう一度あの鏡を覗けば元の世界に戻れるはずだ。
戻ったらまずはあのふざけた教授をぶっ殺して……
いや、その前に俺を殺さなくちゃ、俺は二人も要らない。
「あぁ〜、やっぱり其処にいたか。」
俺が立っている。
真後ろ?隣?
俺の近くに俺が居る。
声はするのに窓ガラスには映っていない。
そうだ、あの俺は偽物だったんだ。
だから鏡には映らない、そうだ間違いない、そうに決まっている。
393 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:39:36.91 ID:DnZW0KEY0
書きながら支援!!!
394 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:45:33.38 ID:DnZW0KEY0
うにゃ、サルられたか支援
支援ー
396 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:53:55.79 ID:s2fQAcNh0
支援だぜ
ガチャッ!ガチャガチャッ!
窓ガラスは開かない。
留め具は開けているというのに。
「ほほぅ、ここから出られないのは本当らしいな。」
俺の声だけが響いてくる。
どこだ?
何処に居る?
「私の居場所がわからないのか?そりゃあそうだ、今の私は窓ガラスには映らない。
じゃあ後は簡単だ。
殺人(ゲイジュツ)の時間を始めよう。
お前みたいな贋作は徹底的に作り直さなくちゃならない。」
首筋に刃物が当てられる。
どうやら鋏らしい。
こんな巨大な鋏、どうやって出したのだ?
チョキン
恐ろしく軽い音が鳴ったかと思うと俺の首は宙に舞って、自らの胴体を眺めていた。
「教授、終わりましたよ。まだ息はありますけど……そこは趣味の範囲というか。」
「ご苦労拝戸君!君がそいつと遊んでくれた間に鏡のお祓いは終わったよ。」
「それで、単位は本当にくれるんでしょうね?」
どれほど時間がたったのだろう、教授が向こうから歩いてきた。
すると再び辺りに声が響き、俺とそっくりな誰かが天井から降りてくる。
さっきまで天井に張り付いていたのか?
教授が俺を見て哀れむように呟く。
「ねえ君、君の持っている記憶は本当に君の記憶なのかな?」
え?
「もっと正確に言おうか、君は拝戸君じゃあないんだ。
君は拝戸君の記憶を持った会わせ鏡の住人なんだよ。」
じゃあ俺は一体何者なんだ?
「君が何者かは私も知らない。
あの鏡に捕まった地縛霊なのかもしれないし、
拝戸君の言うような都市伝説なのかもしれない。
でも君はもう何者であっても良いんだ。
それが輪廻を巡るということだよ。」
俺は、自らの身体がすぅっと薄くなっていくことに気づいてしまった。
そうか、なんでこんな簡単なことに俺は気づかなかったのだろうか?
399 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:55:52.29 ID:DnZW0KEY0
支援!!
さる解けたか支援ー
「消えましたね。」
「消えたな。」
「教授、あいつは一体なんだったんですか?」
「うん?知らない。とりあえず普通の人々が巻き込まれたら危ないだろう?」
「いやそうですけど、危ないなら教え子巻き込まないでください……。」
“私”こと拝戸直はやれやれとため息を吐く。
俺そっくりの誰かさんの死体は光の粒になって消えていってしまった。
「とりあえずあのお化けみたいな奴はね。
化けた人間に成り代わろうとして本体を殺すのさ。
会わせ鏡に映ったった人間の記憶をコピーしてからね。
殺された人間の霊はそのまま鏡に閉じ込められる。
そしてあのお化けは会わせ鏡の犠牲者に成り代わって生き続けるんだ。」
「成る程ねえ。」
怖い怖い。ここまで詳しいとまるで教授が何か関わっているみたいじゃないか。
「それじゃあ俺は帰りますよ?」
「ああ、暗い夜道には気をつけなよ?この番屋町には“常識の外の生き物”が多い。」
あの霊については聞いても良いかもしれないが
あの霊についてこんなに詳しいのかは聞かない方が良いのだろう。
俺の屍臭とやらについても俺が天井を平気で歩けることについても彼は聞いてこないのだから。
聞いてしまえばきっとお互いに相手を殺さなくちゃいけないのだろう。
【拝戸直の人殺し 第七話「アワセ鏡」fin】
402 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 22:59:33.93 ID:DnZW0KEY0
乙でしたー!
何者だ教授ってか高確立で都市伝説関係者ですね、よくわかります
投下乙でしたー!
さて、どこからが拝戸でどこからが”俺”なのか読み返すとしよう
とりあえず新キャラ「教授」登場だぜー
わざと一人称っつか語り手を大混乱させたんだけど読みづらくなかったか心配で……
405 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:02:27.37 ID:DnZW0KEY0
進路が空いているならこっそりと投下開始すりゅ
支援の準備はオッケーだ!
407 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:04:26.47 ID:s2fQAcNh0
乙でーす!
やべぇ、本当にどこが切れ目なのか分からんwwww
408 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:04:54.05 ID:DnZW0KEY0
それは、学校町で悪魔の囁き騒動が終結する、少し前のこと
学校町の、隣町で…
「おじょうちゃーん?こんな時間に一人で歩いてちゃ、危ないよぉ?」
「お兄さん達が、安全な場所に連れて行ってあげようかー?」
柄の悪いチンピラたちに囲まれている、少女一人
その名前を、美咲という
七人みさきと言う、何とも物騒な都市伝説と契約してしまっている少女である
まぁ、当然、このチンピラたちは、美咲がそんな人間にとって危険極まりない存在になってしまっている事実など、知る訳もなく
ただの家出少女だと判断したのだろう、下卑た笑みを向けてきている
「ほら、一緒に行こうか?」
ぽん、とチンピラの手が、美咲の肩に触れる
殺してしまおうかな
美咲はそう考えた
都市伝説契約者ではないようだが、こいつらも、あいつらと同じだ
殺してしまおう、そうしよう
七人みさきの能力を、美咲が解放しようとした……その、直前だった
「その子から、手を離してあげて」
そんな声が、美咲の背後から聞えてきた
え?と、思わず美咲は振り返る
そこにいたのは、一人の青年だった
青年、と言っても、20代後半くらいだろうか?
>>404 こういう読み説きを求められる作品は大好きだから問題ないんだぜー
一回読み返したくらいじゃわからなかったから、あとでまた読み返すよ!
そして支援態勢に入る!
410 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:07:28.56 ID:DnZW0KEY0
黒い髪、黒い瞳……一見、日本人かと思ったが、よく見れば顔立ちは西洋人のそれだ
ひょろりと細い体で、背が高い
その青年は、駆け寄ってきて…美咲とチンピラの間に、割り込んだ
「あぁ!?何だぁ?兄ちゃん」
「このお嬢ちゃんの知り合いかぁ?」
「違うよ」
そうだ
美咲は、こんな青年知らない
もしかしたら、一方的に知られていたのかとも思ったが、そうでもないようだ
じゃあ、どうして、ここに割り込んできた?
警戒する美咲
この青年は、そんな美咲の様子を、怯えている、と捕らえたようで
「怖がっているみたいだし、やめてあげてくれないかな」
と、チンピラたちを静かに見据えて、そう告げた
あぁん!?とチンピラたちが不機嫌そうな声をあげてくる
「関係ねぇだろ、おらどけや!」
「どかないよ」
はっきりと、青年は言い切る
美咲を庇うように、しっかりと立ち、チンピラ達の殺気すら混じりだした視線を全て受け止めている
「困っている人を見捨てるなんて、できないから」
いや、困ってはいなかったのだが
これはあの危ない彼かな?支援ー
支援だぜー!
まあ切れ目はとりあえず決めてヒントも出したが
正直曖昧にしていた方が面白いかなあと
おっと違ったか支援ー
414 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:10:04.34 ID:s2fQAcNh0
これはまさかwww支援
415 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:10:10.55 ID:DnZW0KEY0
面倒かな、とは思っていたが
美咲のそんな思考が、伝わるはずもなく
「うっせぇ!どきやがれっ!」
「−−−−っ!!」
チンピラの蹴り上げた脚が、青年に直撃した
それでも、青年は引かない
反撃すら、しない
じっと、耐えていて
拳が、脚が
何度も、何度も、その体に食い込みながらも
青年は、美咲を守るように、その場を動かず
「…っな、何だこいつ…!」
「く、くそっ、ズラかるぞ!!」
そんな青年の様子に、恐れをなしたのか
チンピラ達は、逃げ出していった
「…だ、大丈夫だった?」
「それは、こっちのセリフだよ」
ぼろぼろになった青年の言葉に、思わずそう告げる美咲
…ただ、相当殴られ蹴られしたわりには、青年の傷は浅いように見えた
うまく、急所を外していたのだろうか?
ひょりとしていて、頼りなく見えるくせに、もしかしたら、強いのかもしれない
「…あぁ、良かった……君は、怪我をしていないんだね」
支援ー
おお、彼なのか?
418 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:13:15.40 ID:DnZW0KEY0
当たり前だ
何かされる前に、この青年が割り込んできたのだから
まぁ、何かされる前に、あんな連中、殺すつもりだったけど
「どうして、助けてくれたんですか?」
何気なく、美咲はそう尋ねた
正義の味方気取りだろうか?そんな事を考えながら
しかし
青年は、あっさりと答える
「だって、君が、困っていたようだったから」
だから、別に困ってなどいなかった
だが、この青年にはそう見えたのだろうか?
「どうして、殴られて反撃しなかったの?」
もう一度、尋ねてみる
すると、また青年は即答する
「だって、殴られたら痛いだろうから」
その、答えに
思わず、美咲はきょとんとする
「あなただって、殴られたでしょう?やり返そうとは思わないのですか?」
「僕は、殴られても平気だけど。でも、普通は痛いものだから」
支援ー
むぅ、誰だかわからないぜ…支援ー
421 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:16:15.10 ID:DnZW0KEY0
青年は、極々、当たり前のように、言い切ってくる
「人を傷つける、という事は、悲しいことだから」
酷く、偽善的な言葉
しかし、この青年は、心からそう考えて、そう言っているようだった
偽善とか、そんなものではなく
本当に、心から
この青年が、酷く優しい、慈悲深い存在であるのだと、美咲は理解した
そして
背筋に、寒いものすら、感じた
底抜けの優しさ
見知らぬ相手のために、平気で自分を犠牲にする
そんな青年の優しさに、美咲は逆に恐怖を感じた
多分、あのまま、あのチンピラ達に殺されそうになったとしても
この青年は、美咲を守るために、そのまま殺されたのではないか?
そんな、ifの光景が、まざまざと頭に浮かぶ
誰かのために、平気で命を投げ出せる
それが、理解できない
「…?どうしたの?どこか、痛いの?具合、悪い?」
じ、と
青年が、酷く心配そうに、美咲を見つめてきた
その黒い瞳から感じられる感情は、心から、美咲を心配しているもので
「う、ううん、何ともないよ」
422 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:16:25.44 ID:s2fQAcNh0
どうやら彼ではないようだ支援
彼じゃないのかー支援
424 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:19:45.38 ID:DnZW0KEY0
慌てて、美咲は後ずさる
駄目だ
これ以上、この青年に関わってはいけない
これ以上、関わったら
飲み込まれるのではないか
そんな、錯覚を覚えた
この優しさは、危険すぎる
自身以外をも巻き込み、飲み込むような優しさ
触れただけで飲まれるような……猛毒のようだ、と
美咲は、そう錯覚した
「…助けてくれて、ありがとうございました……それでは…」
「あ……」
逃げるように、美咲は青年の前から立ち去った
関わるな
あれと、関わってはいけない
もし、これ以上関わったら
自分が、自分でなくなるような
今の自分を構成している存在である「七人みさき」を、根元から否定されてしまうような
そんな錯覚と、恐怖を、美咲は抱いてしまったのだった
美咲が立ち去る姿を、青年は困ったように見つめていた
…あの年頃の少女が、こんな遅い時間、一人で歩いていたのだ
ちくしょうそりゃわからんわな支援ー
426 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:24:15.86 ID:DnZW0KEY0
何か、事情があるのだろう
呼び止めるべきだ
青年は、そう考えたのだが…
「…あぁ、良かった、見つけた……ダレン!」
名前を呼ばれて、振り返る
褐色の肌に黒い髪、黒い瞳の、青年と同じくらいの身長の青年が、慌てて駆け寄ってくる
「ディラン?」
「だ、ダメだよ、ダレン……君は、「組織」に見つかったら、危ないんだから…………あまり、「外」に出ていちゃ、駄目だよ…」
心配そうな褐色肌の青年、ディランの言葉に、青年、ダレンは「御免」、と謝罪した
しかし、美咲の事が気になって、立ち去った方向に視線をやる
暗い中、彼女の姿は、もうダレンには見えない
「…?あの女の子が、どうかしたのかい?」
ディランには、まだ、美咲の後姿が見えたようだ
小さく、首を傾げてくる
「…あの女の子、都市伝説の気配がするよ……何だか、飲まれかけているようにも見えるけど…」
「飲まれかけて、いるの?」
「うぅん……少なくとも、僕にはそう見えるけど…」
困ったように言ってくるディラン
都市伝説に、飲まれかけている
つまりは、契約者
ダレンは、じっと、美咲が立ち去った方向を見つめ続ける
ダレン・・・だと?
428 :
優しい人 ◆nBXmJajMvU :2010/05/29(土) 23:27:43.18 ID:DnZW0KEY0
「…ディラン、誰かに頼んで、彼女の事、見守る事、できるかな?」
「……?えぇと……うん、できる、と思うけど……どうしたの?ダレン。そんなに、あの子の事、気にして」
「………よく、わからないけど…何だか、嫌な予感がして」
それは、予感でしかない
自分を飲み込んだ都市伝説には、予知系の能力などないし、感知系の能力でもない
だから、これは、ダレン自身の勘でしかなかった
だが、酷く、彼女の事が気になるのだ
このままでは、あの少女は破滅への道をたどってしまうような
そんな、予感がした
チンピラに囲まれていた少女を見つけた、その瞬間から
その嫌な予感は、消えなくて
「ほら、ダレン、早く隠れないと…」
「あ……うん」
ディランに手を引かれ、ダレンはそのまま引きずられて行く
そうしながら、ぼんやりと考えた
…久しぶりに、学校町に戻ろうか
あそこには、ジブリルがいるはずだから
もしかしたら、力を貸してくれるかもしれない
二人の青年が、路地裏に姿を消していく
袋小路に入ったはずの二人の姿は、闇夜に溶け込むように、消え去っていたのだった
to be … ?
429 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:28:55.76 ID:DnZW0KEY0
七人みさきの人に剣山に向かって紐なしバンジー焼き土下座!!orz
えぇ、関わらせたいといっていた奴を関わらせてしまいました
以前、一階だけ名前出したことある奴で、出そうか出さないか悩んでましたが、美咲ちゃんに関わらせたくて出した
正直反省している
乙でした―。
駄目だ、頭がぼんやりしてきている……
もうそろそそ寝かせてもらうぜ。
明日もスレがのこってますように
乙でしたー
序盤の話し方からヤンデレ弟かと思ったが、彼は兄以外に興味はなかったなwwwww
432 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:33:28.80 ID:DnZW0KEY0
設定と言うか今出してもOKな情報というか
・ダレン・ディーフェンベーカー(Darren Diefenbake)
黒い髪に黒い瞳、ひょろりと高い背丈の20代後半ほどの外見の青年
顔立ちは、どちらかと言うと西洋的である
黒服D並かそれ以上に慈悲深いお人好し
どうやら、「組織」に狙われているらしい
都市伝説に飲み込まれ済っぽい
・ディラン・ドランスフィールド (Dylan Dransfield)
褐色肌に黒い髪、黒い瞳の青年
ダレンの知り合い
ちなみに都市伝説である
・ジブリル (Djibril)
詳細秘密
学校町にいるらしい
433 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:43:39.49 ID:DnZW0KEY0
力尽きるぜおやすみー
明日もスレが残っていますように
>>431 >序盤の話し方からヤンデレ弟かと思ったが、彼は兄以外に興味はなかったなwwwww
あぁ、あいつは兄以外はどうでもいいからなwwwwwwwww
投下乙ー
さて、読んでこなければ
435 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/29(土) 23:53:38.55 ID:6yygKfTd0
乙でしたー。
……まさか、Dさん以上の慈悲深さを持つかも知れないキャラが出て来るとは。
確かに美咲には、あの優しさはきついかも知れませんね。
《七人みさき》と契約……と言うか同化してからは、基本孤独でしたし。
5/30をお知らせします
ほ
寝るほ