「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/


2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 13:04:48.14 ID:fRzla/Pw0
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3Tさん ◇mGG62PYCNk (代理):2010/05/21(金) 13:07:27.66 ID:fRzla/Pw0


            ●


「……あの馬鹿亭主ッ」
 真っ黒で気味の悪い格好のドラゴンに変形した≪悪魔の囁き≫がまとわりついている朝比奈のおっちゃんを見て、マドカ姐ちゃんが苛立たしげな声を上げた。
 さっき殴られそうになったのが悔しいのかなと思ってると、ドラゴンの七つある首の内の一つが大声で喚いた。
『ッヒャッハハハハハハハハハハハハハ!! アアコイツァイイ! 力ガ溢レテクルゼェッ!!』
「あーうるせえっ!」
「うるさいの!」
 Tさんお手製の加護付きでも砂埃やら熱気やらでメチャクチャ不快指数が高い。
その上あんな耳心地の悪い声で大笑いされたらストレスが溜まってしょうがねえ。
 ってかそれよりも、
「あの姉ちゃん大丈夫なのか?」
 さっきから首の一つに咥えられてブラブラ揺れている姉ちゃんを見て言う。
「あれは大丈夫だ。むしろアレごと吹き飛ばす勢いで頼む」
 頭に喋る黒い物体を乗せた兄ちゃんがマジ顔で答えた。
 え? この兄ちゃん、頭のアレは≪悪魔の囁き≫じゃねえのか? 別モノ? 突然変異? ……敵?
 とりあえず殴っといた方がいいかと握り拳を作っていると、マドカ姐ちゃんが「やあ青年、さっきは助けてもらってわるいねぇ」と声をかけた。
 あ、マドカ姐ちゃんの知り合いか……敵じゃねえのか…………。
 ストレスを発散する場が失われた事を残念に思ってると、Tさんがチャラい兄ちゃんに目を向けた。


4Tさん ◇mGG62PYCNk (代理):2010/05/21(金) 13:10:03.60 ID:fRzla/Pw0
ドラゴンに咥えられてる姉ちゃんを示して、
「あれは以前見た事がある者だな……たしか」
「あの変態ストーカー……」
 チャラい兄ちゃんが鉄骨を拾い上げた。声にイラついている調子がある。
「あれが力を供給している、か?」
 おっちゃんを避けるよう祈った光弾で攻撃を連打しながらTさん。
 見た感じだと攻撃を受けても即復活してるみたいだ。
七つも首がある上におっちゃんが結構早いせいで下手な攻撃だと押し切る前に別の首が首を庇って前に出てくる。
「Tさん! マドカ姐ちゃん足を怪我してるっぽい!」
 忙しいところ悪いと思いつつTさんに伝えながら近寄ろうとすると、ドラゴンの首が転がっていた瓦礫を俺に放って来た。
「うお!?」
「リカちゃん!」
「はいなの!」
 Tさんの言葉に応えて宙に浮いたリカちゃんが瓦礫を受け止める。
「放り返しちまえっ!」
 俺の言葉と同時にリカちゃんが投げ返した。それを首が受け止めようと前に出て来て、
「破ぁ!!」
 光が横からドラゴンの首を切断した。
 寸断された首をリカちゃんが投げ返した瓦礫が押し潰す。


5Tさん ◇mGG62PYCNk (代理):2010/05/21(金) 13:13:11.19 ID:fRzla/Pw0
「舞、朝比奈マドカの状態は把握したが、しかし――」
 Tさんの言葉の途中で大口開けて笑いながらドラゴンの黒い首が復活した。
「あの≪悪魔の囁き≫、七頭十角の竜を模しているのは伊達ではないらしい」
 若干低い声で言う。
「あの少女、変態ストーカーと言ったか。煩悩がアレに力を与えているようだな」
「あの野郎はいつもいつも……っ!」
 チャラい兄ちゃんが赤く変色した鉄骨を姉ちゃんを首めがけてぶん投げた。
 その行方を最後まで見送ることをせずにTさんが俺の方を向く。
「今は手が離せん。それと、朝比奈秀雄からは距離をとれ」
「おう」
 答えながら俺はマドカ姐ちゃんを支えて数歩おっちゃんから退いた。
「さっさと消え失せろ化け物共!」
『ハハハハハッ! イイゾ! ヤッチマイナアアアアアアアアアァ!!』
 おっちゃんと≪悪魔の囁き≫が吠える。
 いなくなった筈のドラゴンの再出現を受けて、戦いはまだ荒れそうだった。


6留守電にメッセージがあるようです (代理):2010/05/21(金) 13:16:12.59 ID:fRzla/Pw0
10件のメッセージがあります
メッセージを再生します
『………私メリーさん。今あなたの後ろにいるの』
メッセージは9件あります
『……さっきのは間違いじゃないわ。あなたが帰ってきた時に
  怖がらせるため、直接話すのが恥ずかしいわけじゃないんだから』
メッセージは8件あります
『………私メリーさん。さすがに職場までついてはいかないわ。興味ないもの』
メッセージは7件あります
『……寂しくなんかないんだからっ』
メッセージは6件あります
『………私メリーさん。今あなたの家の前にいるの。
  小さいシールがドアに貼ってあったけど、気に入らないから剥がしちゃった』
メッセージは5件あります
『……隙間女がいたから倒したわ
  あなたを狙うのは私だけでいい……あ、今のは忘れて!』
メッセージは4件あります
『………私メリーさん。今職場の近くに戻ってきたわ』
メッセージは3件あります
『……今日もまだ帰れないのね』
メッセージは2件あります
『………私メリーさん。今帰宅途中のあなたの後ろにいるの
  勘違いしないでね。あなたが心配でこんなことしてるわけじゃないんだから』
メッセージは1件あります
『………私メリーさん。もうすぐあなたの家の前に着くわね
  今日はここまでにしてあげる。明日こそあなたを恐怖のどん底に陥れてあげるんだから』
新しいメッセージはありません
7悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:19:34.92 ID:fRzla/Pw0
 笑い声が聞える
 化け物の笑い声が
 耳障りだ、笑うな
 貴様は、ただ、私の役に立てば良い

 その為だけに、私は貴様と契約したのだから
 その為、だけに

 私は今を捨て、過去を取り戻す事に、決めたのだから






 じゅるり、じゅるり
 悪魔の囁きの7つの首の一つは、マゾの喉笛に噛み付き、そこから「欲望」と言う名の栄養素を吸い上げ続けている
 …このままでは、一撃で消滅でもさせない限り、悪魔の囁きはいくらでも再生を続けてしまう
 そんな状態が続けば、いかに朝比奈 秀雄がその年齢に似合わぬ強靭な肉体を得ていたとしても、体が持たなくなる

 黒服は、マゾを咥えている首を狙って、光線銃を放った
 が、それは悪魔の囁きの表面を軽く焼いただけで…すぐに、その傷は再生を始めてしまう
 光線銃程度の攻撃では、既に悪魔の囁きは怯まなくなっている

 けたけたと、不気味に笑い続ける悪魔の囁き
 それは、朝比奈 秀雄を攻撃から護り、かつ、近づく者に自分からも攻撃を仕掛けてくる
 …もはや、悪魔の囁きの本質からも、外れた存在になりつつあっていた
 既に朝比奈から離れたとは言え、「黄金伝説」のドラゴン達と多重契約していた影響が、悪魔の囁きにも出た結果なのかもしれない
 うねりながらけたけた不気味に笑う姿は、竜と悪魔が混ざり合ったような、奇妙な印象を与えてくる
8悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:22:38.05 ID:fRzla/Pw0
『サァサ、ゴ主人様、遠慮ナク戦ッチマエェエエ!!』
「…煩い、喋るな。貴様はただ、私の盾になっていろ…!」

 己が契約している存在に、やや苛立ちを感じた様子の声をあげながら、朝比奈は自分を取り囲む者達を殲滅しようと、戦い続ける
 身体能力を強化させている望や詩織の攻撃すら避け、受け止め、逆に鋭い攻撃を放ち続ける
 応戦する側も、いまだ致命的な一撃こそ受けていないが、このままでは力に押し切られてしまう

 咥えられているマゾサンタを、どうにか引き剥がさなければ………事態は、好転しそうにない

「ったく、どこまでも厄介な…!」

 翼のそのボヤキは、果たして朝比奈に向けられたものだったのか、それとも、マゾに向けられたものだったのか
 「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力を発動し、悪魔の囁きを睨みつけながら、朝比奈の懐にもぐりこんでいく
 狙いは、マゾを咥えている、首
 …決して、マゾを助けようという考えからではない
 いや、結果的にはそうなるのだが…単に、悪魔の囁きの再生を止めるという目的のみでの、行動だ
 触れただけで……いや、近づいただけで、重度の火傷を負いそうな程までの高温に達した翼の拳が、マゾを咥えている悪魔の囁きの、顎を捕らえた

 じゅうっ!!と、ゴムが焼けるような不快な臭いが辺りに立ち込めた
 そのまま、首を焼き切ろうとするように、マゾを咥えた首の頭の付け根に手刀を浴びせる
 ずぷ、と、まるでバターでも切っているかのように、翼の手刀が、マゾを咥えた悪魔の囁きの首に食い込んでいって…

『−−−甘ァアアアアアアアイ!!!!!』
「っんな!?」

 ぐるり、と
 別の首が、翼の体に巻きつき、捕らえた
 じゅぅううううううう………!と、鉄をも溶かすほどの高温に達している体に巻きついた事で、激しくダメージを負いながらも、悪魔の囁きは翼を離さず、がっちりと巻きついて動きを封じてくる

「……お前は、そこで大人しくしていろ」
9悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:26:18.51 ID:fRzla/Pw0
「っの、糞親父……!?」

 朝比奈を睨みつけ、巻き付く首から逃れようとする翼
 しかし、巻きついてきている首は焼かれるダメージを物共せずけたけたと笑い、翼を見下ろしてくる

『暴レルナヨォ?オ前ハ、ゴ主人様ノ願イヲ叶エル為ニ、必要ナンダカラナァ!?』
「ッ誰が、糞親父なんかのために……っ」
『ソウ言ウナヨォ?ゴ主人様ニトッテハ、人生捨テテノ決断ナンダカラヨォ!!』

 けたけたと、悪魔の囁きはどこか意地悪く笑い
 そして、続ける

『俺ト契約スルマデハ、今ノ状態ニ……オ前ヤ、アッチニ居ル女トヤリ直ス事モ、考エテタミタイダケドヨォ……願イヲ叶エル手段ガアルンダッタラ、ヤッパリ、ソレヲ諦メタクハナインダッテヨォ!!』
「………っ!?」

 悪魔の囁きが口にした、その内容に
 一瞬動揺したように、翼は動きを止めた

 Tさんや望、詩織の攻撃を、朝比奈を庇って受け止めながら、悪魔の囁きは笑い続けている

『…願イヲ叶エル存在。ソンナモンガアルナラ、手ニ入レタイダロォ?ゴ主人様ハ、ソンナ存在ガアル事ヲ知ッテモ、モウ手ニ入レルノハ不可能ダッテ諦メテタケドナァ…
 …俺ガ力貸スッテ言ッタラ、未練ガ戻ッタミタイデヨォ!!復讐心モ、折角抱タイノニ忘レヨウトシテ、勿体ナカッタカラナァ!!願イヲ叶エテ、復讐モ果タス。ソレガ出来タラ最高ダロォ!?』
「………余計な事は喋らなくていい、化け物」

 5円玉のチェーンを避けながら、忌々しげにぼそりと呟く朝比奈
 ハイヨ、とけたけた笑い…悪魔の囁きの、その翼に巻きついている首の先端、頭が……にゅう、と翼の顔に近づき、覗き込んでくる

『オ前ニモ、叶エタイ願イガアルンジャナイノカァ?折角ダカラ、オ前モコッチニ来イヨォ。魔人ニ、願イヲ叶エテモラオウゼェ?』
「……俺、は」
10悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:29:36.99 ID:fRzla/Pw0
 叶えたい願い
 それを指摘され、動揺が走る

 そんな願いが、ない訳ではない
 「小瓶の魔人」の話を聞いた時、心が揺れ動かなかった訳ではない
 願いを叶える手段が……どんな願いでも叶える存在が、あるのだとしたら
 そんなものが、存在すると聞かされたなら
 人は、心動かさずには、いられないから

 けたけたけたけたけたけたけたけた
 間近で聞えているはずの悪魔の囁きの不気味な笑い声が
 なぜか、酷く遠くで響いているように、翼には聞えた



「翼っ!」

 悪魔の囁きの長い首に巻きつかれた翼を助けようと、そちらに駆け寄ろうとする黒服
 しかし、急接近してきた朝比奈に邪魔され、それは叶わない
 繰り出される攻撃を、セレスタイトの結界で防御
 続けて襲い掛かってきた悪魔の囁きの首二本の攻撃も、同じ結界で防いだ

 視界の端を、小さな手鏡が弧を描いて飛んでいく
 朝比奈の真上に放り投げられたその手鏡から、望の5円玉のチェーンが襲い掛かる

 だが、朝比奈は人間離れした動きで、それを避けた
 望の能力をある程度把握しているのだろうか
 決して、望の能力をくらわないようにしている

「あぁ、もう、まだるっこしいわね……!ちょっと、そこのちっちゃいの。あんた、悪魔の囁きなら、あれの部下よね!?」
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 13:31:57.36 ID:Y4vNgGNY0
なんで都市伝説って言うのかな?
村伝説と闘う為に、村伝説と契約した能力者達....←だがこれがイイ
12悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:32:43.77 ID:fRzla/Pw0
『チッチャイノ言ウンジャネェヨちびっこ!ソレト、俺様ハモウアンナ野郎ノ部下ジャネェ!!』
「っそれじゃ駄目じゃないの、役立たず!!」

 ヤカマシイ!と山田の頭の上から、望の暴言に抗議するデビ田
 とは言え、山田にしがみ付くのに必死で、その抗議にすら集中できていないようだが

「…黒服さん、このままでは、キリがない。いざとなれば、朝比奈 秀雄もろとも、撃ち抜く事も視野に入れなければならないが…」
「………「黄金伝説」のドラゴンを無理矢理引き剥がした反動のある身に、これ以上のダメージは与えたくありませんが…」

 Tさんの言葉に、スーツの内側からパワーストーンを取り出しつつ、そう答えた黒服
 …朝比奈の様子を見る限り、悪魔の囁きによる無理な身体能力強化が、さらにその体にダメージを与えているようにも見えた
 できれば、悪魔の囁きだけをどうにかしたいところだが…

「あれほどの事をした相手でも、まだ、同情できるか」

 黒服の返事に、小さく苦笑しながら、そう言って来たTさん
 悪魔の囁きが放り投げてきた瓦礫を、白い結界が防ぐ

「………彼の運命を捻じ曲げ、悪事へと走らせた、原因は……………「組織」、ですから」

 かすかに俯き、そう答えた黒服
 軽く頭を振り、思考を振り払うと、取り出したパワーストーン…ガスピアイを、舞達の方へと放り投げた
 ぱし、と、リカちゃんがそれをキャッチする

「舞さん、それをマドカさんに!蝦蟇の油程の即効性はありませんが、傷を癒します!」
「わかった!」

 出来れば、そちらにまで攻撃が届かないようにはするつもりだが、いざとなれば身動きとりにくい状態は危険すぎる
 マドカの治療を舞に任せ、黒服は改めて、朝比奈に巻き付く悪魔の囁きを睨み付けた
 けたけたけた、けたけたけたけたけたけたと笑い続けている悪魔の囁き
13悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:37:13.24 ID:fRzla/Pw0
 7本の首のうち、一本はマゾを咥え欲望を吸い上げ続け
 一本は、翼に絡みつき、何やら囁きかけてけたけた笑っている
 残り5本の首が、攻撃と、朝比奈のガードに回っている状況だ
 たとえ首を切り落としても、一本の首がマゾから欲望を吸い上げ続けている限り、即座に再生する

 つまりは、先ほど翼が試みたように、マゾを咥えている首を落とせばいいのだ
 だが、それも中途半端では、やはり即座に再生される
 …完全に、彼女を悪魔の囁きから引き剥がさなければ、勝機はない
 せめて、彼女が意識を保っている状態ならば良かったのだが、と黒服は考える

 ……実際には、意識があっても、悪魔の囁きの牙が食い込むその激痛を快楽として捕らえているマゾが、その状態から脱出しようとするかどうかはさておき、だ
 黒服は、そんな特殊性癖を理解できるような性格ではない

「Tさん、あの少女を咥えている首を狙って攻撃はできますか?」
「できなくもないが、他の首がガードに回るだろうし、朝比奈 秀雄も、そう簡単には狙わせてくれないだろう」
「…あまり、こう言う方法はとりたくはありませんが…」

 望にも、相談することがあるのか 
 軽く彼女を手招きしつつ、黒服は続ける

「……朝比奈 秀雄の理性に、賭けてみようかと思います」



 −−一瞬、抱いた迷いを振り払う
 駄目だ、聞くな
 悪魔の囁きの本質は、囁きかけ、相手を堕落させる事
 その囁きに惑わされてはいけない

『ドウシタドウシタァ!?オ前ニモ、叶エタイ願イガアルンダロォ!?ゴ主人様ミタク、我慢ナンテヤメチマエヨォ!!』
14悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:41:06.84 ID:fRzla/Pw0
 煩い、喋るな
 とにかく、自分を締め上げる首から逃れようとする翼
 「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力は発動され続けていて、翼の周囲の景色が熱気で陽炎のように揺れて見えるほど、その体温はあがっている
 だが、それでも、ダメージを即座に再生させる悪魔の囁きは、翼を離そうとしない
 こうする事で、黒服達からの本気の攻撃を防いでいるのと同時に……いつでも、朝比奈が翼をつれて、この場を脱出できるようにしているのだろう
 翼さえいれば……「小瓶の魔人」にいう事を聞かせられる可能性は、あるのだから

 自分が逃れなければ、黒服達の足を引っ張ってしまう
 何とか、巻きついてきている悪魔の囁きから逃れようとする翼
 …その、掌に
 ちょこんっ、と……小さな温かみが、乗っかってきて
 ちゅう、と、小さく鳴いた



 迫り来る光弾を、悪魔の囁きを盾にする事で防ぐ
 翼を確保できた今、この場は撤退してもいい
 だが…化け物を一人でも叩き潰さない事には、気がすまない
 暴力的な衝動が、朝比奈を支配する
 けたけた笑う悪魔の囁きの声が酷く耳障りで、それがさらに苛立ちを加速させた

 光弾は、休む事なく襲い掛かってくる
 悪魔の囁きを盾にし、光弾を放ってくる対象を叩きのめすべく、接近しようとして

「………無駄な事を」

 己に近づいてくる気配に、気づき
 朝比奈は、悪魔の囁きに、そちらを攻撃させた
 いつの間に拾い上げていたのか、ロンギヌスの槍の穂先を手にした黒服が、朝比奈に接近してきていたのだ
 聖遺物であるそれは、悪魔的要素の強い悪魔の囁きにとっても、弱点になりうる
15悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:45:49.52 ID:fRzla/Pw0
 恐らくは、それを使って悪魔の囁きを引き剥がそうとしているのだろうが…

「同じ手を食うと思ったか…化け物が」

 ぎろりと、黒服を睨みつける朝比奈
 三本の首の攻撃を、黒服はパワーストーンで作り出した結界で防いでいた
 半透明の壁が悪魔の囁きの牙を受け止める
 黒服の手に握られた、ロンギヌスの槍の穂先
 …だが、黒服はそれを今、使うつもりはなかった
 これは、朝比奈にこちらを向かせるための、ブラフ

 ……すぅ、と
 黒服は、小さく息を吸い込んで
 そして、歌うように、言葉をつむぎだす

「−−−思い出して御覧なさい。あなたの中の暖かな記憶を」

 黒服は、サングラス越しに、真っ直ぐに、朝比奈の目を見つめている
 その視線が、そして、言葉が
 朝比奈の心に訴えかける

「思い出して御覧なさい。あなたの中の、家族との、記憶を」
「…っ支配系の能力か…!?」

 黒服の言葉を耳に入れまいと
 その視線から逃れようとする朝比奈
 だが、遅い
 そして、その予測は外れている
 この黒服に、支配系の能力などない
 彼が今、使っている能力は…記憶操作の、一種
16悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:49:49.62 ID:fRzla/Pw0
 失った記憶を呼び戻させる力だ
 朝比奈には、失った記憶など存在しない、だが
 …この能力は、記憶を引きずり出すキッカケに、なりうる

『バァアアッカジャネェノォ!?ゴ主人様ガ、ソンナモノデ揺ラグハズガァ………!!』

 悪魔の囁きの、耳障りな声が
 酷く、遠くへ、遠くへ、流れるような錯覚を覚えて…



 泣き声が聞える
 赤子の泣き声が

 マドカが、赤ん坊をあやそうとしているのだが…赤子は、一行に泣き止まない

「……子供をあやす事もできないのか、お前は」

 確か、あの日はたまたま、仕事が早く終わったのだった
 起きている赤子の…翼の姿を見るなど、久しぶりだった

「っう、煩いね!あんただってできないだろうに!」

 …そもそも、自分は赤子をあやした事などないのだから、できるかどうかはわからないが
 ただ、毎日あやしているはずのマドカが、全くそれをできないと言うのはどう言う事なのか
 かすかに呆れながらその様子を眺め続けるが、やはり、翼は泣き止まない

「…………貸せ」

 やり方など、わからないが
17悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:51:22.40 ID:fRzla/Pw0
 少なくとも、マドカがやるよりはマシだろう
 そう考え、マドカから翼を取り上げた
 見よう見まねで、その小さな体を抱き、軽く揺らす

「………ぅ?……………あ〜ぁ」

 ……泣き止んだ

「嘘っ!?」

 きゃっきゃっ、と腕の中で笑う翼
 激しい敗北感を感じたように項垂れるマドカを前に
 その笑う息子を前に……………なぜか、逆に自分があやされているような錯覚を、覚えた



 何故
 そんな事を思い出す?
 何故
 そんな事を………覚えていた?
 何故
 その記憶が、引きずり出された?


「買って嬉しいはないちもんめ!!」

 聞えてきた歌声で、思考が現実に引き戻される
 ぶちぃっ……!と、太い何かを力任せに引きちぎる音が響く
 見れば、肩に、10円玉を背負ったハツカネズミを乗せた翼が、己に巻きついてきていた悪魔の囁きを、力任せに引きちぎっていた
 …通常の人間の力で出来る芸当ではない、何らかの能力で、身体能力を強化されたのだろう
18悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:52:48.07 ID:fRzla/Pw0
 小さく舌打ちしながら、再生し始めた悪魔の囁きの首に、再び翼を捕らえさせようとするが

「燃えろぉ!!」

 ごぉう!!と
 翼の右手が、炎を纏い出した
 「黄金伝説」のドラゴンの力を使っていた朝比奈の炎のブレスを受け止めた、厨2病との多重契約の炎
 顎砕き飴の騒動以降、1日に使用できる回数が上がったとは言え、いまだ乱発はその命に関る炎の力を惜しげもなく使い…翼はマゾと、マゾを咥える悪魔の囁きに、その炎を叩き付けた
 灼熱の業火が、一瞬、マゾを消し炭に変える
 消し炭に変えられた体は、同じく消し炭となった悪魔の囁きから、一端離れる
 離れていく

『ッチィイイ!!!』

 別の首がマゾの喉笛に噛み付こうとするが、しかし

「っ破ぁ!!」

 Tさんの放った光が、その首を切り落とした
 そして、視界が光に包まれ…マゾの姿が、消えた
 否
 再生したマゾの体が、床に半分以上埋め込まれたのだ
 通常なら窒息死するところだが、マゾなので生きているだろう
 むしろ、その窒息死しかねない息苦しさを快楽と捕らえかねない
 …どちらにせよ、悪魔の囁きが、マゾを捕らえることが……不可能に、なったのだ

『グ、ァ………畜生ガァ!?』
「…っち……役立たずが」

 再生能力を失った悪魔の囁き
19悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:54:27.48 ID:fRzla/Pw0
 一本の首が切り落とされ、一本の首が消し炭に変えられた状態で苦しむ悪魔の囁きの様子に舌打ちする朝比奈
 だが、首はまだ5本残っている
 まだまだ、十二分に戦える!!

「…やってくれたな、化け物が…!」

 目の前の黒服を、朝比奈は睨みつける
 黒服によって、過去の記憶を呼び戻された
 …そのほんの一瞬の隙で、この惨状
 その隙を作り出した黒服を、朝比奈は殺意の篭った眼差しで睨みつけ


 しかし
 記憶が疼く
 呼び戻された記憶が……何か、違和感を訴えかけてくる
 己の行動に感じる、違和感、迷い
 それが、朝比奈の行動を、鈍らせる


「…あなたは、確かに復讐を望んだかもしれません。失ってしまった大切な人を、取り返したいとも願ったでしょう。ですが、それは……………手に入れた家族を捨ててでも、成し遂げたい願いでしたか?」
「何を……っ!喋るな、化け物!!私は……っ」


 私、は


 私が欲しかったもの、は


「…………っ」
20悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:56:01.42 ID:fRzla/Pw0


 記憶が疼く
 感じる違和感

 叩きつけられた離婚届
 それを持ったまま、仕事で、ヨーロッパに向かって
 ……自分は
 それを、どうした?
 それを、どうするつもりだった?

 …自分は
 日本に、戻ったら
 ……何をするつもりだった?


『……ッゴ主人様!避ケロォ!!』
「!?」

 悪魔の囁きが叫ぶ
 再び、呼び戻されていた記憶が、決定的な隙を作り上げた

 悪魔の囁きがそれを防ごうとはするが……防ぎきれない
 「はないちもんめ」の能力で身体能力を強化された翼の、「厨2病」との多重契約の炎を纏った拳が、朝比奈に襲い掛かる
 それを避けるには、同じく、こちらは悪魔の囁きの能力で身体能力を強化している朝比奈自身が避けるしかない

 だが
 朝比奈は、それを避けられなかった
 ………避けようと、しなかった
21悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:57:36.30 ID:fRzla/Pw0
 己に向かって、拳を振り上げている翼
 その顔が、一瞬、泣いているように見えて
 それが、翼が赤子だった頃、泣いていた記憶と、ダブって

 向かってくる翼を、拳を
 避ける事が、できず

「………っんの、馬鹿親父がっ!!」

 −−っご!!と
 翼の拳が、朝比奈に突き刺さる

『ッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』

 ごぉう!!と
 灼熱の炎が……悪魔の囁きの全身を、包み込んだ
 炎は、朝比奈には一切のダメージを与えず、ただ悪魔の囁きだけを焼く
 ドラゴンのブレスすら受け止めるほどの炎に包み込まれ、しかし、悪魔の囁きはまだ死なない
 死ねない
 マゾから欲望吸い上げ、能力をあげてしまった悪魔の囁きは、気が狂いかねないほどのダメージをくらいながらも、まだ、死ねないでいた

『グ、ァ……ゴシュジ、様……モット………モット、願エ、望メェ……!!ゴ主人様ノ欲望ノ力ガアレバ、俺ハァ………ッ』
「…………い」

 翼に殴られた痛みが、朝比奈のダメージが蓄積していた体に…決定的な、ダメージを与えていた
 体が、もう動かない

 そして
 翼に殴られた、痛みが
 記憶の疼きを、加速させた
22悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:58:44.03 ID:fRzla/Pw0
「これ以上…私に囁きかけるな、化け物………っ、貴様との、契約を……解除する………!」
『−−−−−−ンナァ!?』

 契約が
 繋がりが、解除される

 朝比奈との契約が解除された悪魔の囁きは…決定的な支えを失って
 勢いを増していく炎に、ただ、体を焼かれ続ける


 ……過去に、囚われはした
 だが、今の家族と、生き様とも、思った
 日本に帰ったら、鳥井との事は誤解であると、きちんとマドカに離そう
 翼にも……今までのことを、せめて、謝罪だけでも、しよう
 もう、無理かもしれないが

 せめて、もう一度
 あの時、笑ってくれたように
 家族が、笑ってくれたならば
 彼女が…門条 晴海が、かつて自分に向けてくれていたような
 それと同じ種類の、笑顔を……見せてくれた、ならば

 自分は、もう、過去に囚われずにすむのではないか


 馬鹿な妄想だ
 自分勝手な願いだ
 だが、確かに……そう、願ったはずだったと言うのに

 何故、こんな化け物の囁き程度に、自分は惑わされたのか
23悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 13:59:31.17 ID:fRzla/Pw0
「………所詮………私は化け物以下、か………」

 なんと、滑稽だろうか
 自分は所詮、忌み嫌う化け物にいいように扱われただけではないか
 利用していたつもりで、いいように利用されていただけではないか

 滑稽な己の無様な姿に、朝比奈は自嘲するように、笑って
 何か、言葉を紡ぎかけたが、それは音をなすことなく
 ……そのまま、意識を暗闇へと、沈めた



『ガ、ァ、ア…………』

 メラメラと、悪魔の囁きの巨体が燃え続けている
 朝比奈から引き剥がされ、その巨体を破壊され尽くした床の上で、のたうち回らせている

「…今度こそ終わった、か…?」

 頭の上でぐったりとし始めたデビ田の様子を気にしつつ、山田が呟く
 燃え続ける悪魔の囁きの体
 最早、助からないだろう

 …それでも、まだ油断はできない
 一行は、燃え続ける悪魔の囁きを警戒し続ける

『…………ッハ』

 その、悪魔の囁きが
24悪意は踊り狂いて燃える   ◇nBXmJajMvU (転載):2010/05/21(金) 14:00:23.86 ID:fRzla/Pw0
『ッハ、ハハハ……ッヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハアハハハハハハハハハアハッハッハッハハハハハハァ!!!!!!!』

 狂ったように、笑い出した 
 燃え続ける体の苦痛にのたうち回りながら、それでもけたけたけたけた、笑い続ける

『ザァアアアアアンネェエエエン!!!ゴ主人様トナラ、世界ヲアァット言ワセル悪事ヲ出来ルト思ッタンダケドナァ……ゴ主人様ナラ、ヤッテクレルト思ッテ、チョイト歪ムノニ一押シタノニナァアアア!!!』

 何とも無念
 そうとでも言うような言葉だが、だが、悪魔の囁きは楽しそうで

『マァ、イイサァ!!!俺ガ手伝ッタカラ、ゴ主人様ハジュブウウウブンニ悪党ニナッタシナァ!!楽シカッタゼェエエエ!!』

 意識を失った朝比奈を見下ろすように、最後にその体を起こし
 けたたけたけたけた、狂気の笑い声を、悪魔の囁きは上げ続ける

『アバヨォ、ゴ主人様ァ!!!今度ハ地獄デ会オウゼェエエエ!!!!』

 けたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけた
 狂ったように、悪魔の囁きは笑い続け
 炎につつまれたその体を踊り狂わせ続け……


 その巨体は、灰すら残す事なく
 火の粉に混じって、光と化して、この世から消滅した




to be … ?
25ソニータイマー (代理):2010/05/21(金) 14:06:10.06 ID:fRzla/Pw0
「坊池一人との戦闘」
NOW LORDING…

望夢「いやあ…死ぬかと思ったぜ」
堂寺「いや。死んだんですよ。じゃ無きゃここからになってるわけ無いでしょ」
セーブしたところからやり直した堂寺たち
光輝「それで兄さん。あいつの攻略法は見つかったの?」
堂寺「いや。まだ考えてる途中だよ」
ちなみに堂寺たちの会話以外は全ての動きは止まっている。堂寺が『ゲーム脳』の能力でポーズボタンを押したのだ
堂寺(うーん…あいつの能力は恐らく相手を確実に殺せる…。疾風君のより恐ろしいな…。そして、相手がリア充でないと使えない…)
じっくり、ゆっくり、攻略法を考える
堂寺(増援を要請すれば結構楽に行くんだろうけど…。皆忙しいって言うし…。ここは僕たちだけで何とかしないと…)
堂寺(まずは僕たちの能力の整理だ。まず、ぼくの『ソニータイマー』。対象物を指定時刻に破壊する。『電化製品は叩くと直る』。叩いたものの故障、破損を修復する。
『ゲーム脳』。ゲームでの出来事を現実にする。次に、光輝の『もりのようかんでは毒殺事件が起きた』。様々な種類の毒をつくり相手に攻撃する。『ダークライはカナダの子供が描いた絵が元』。
描いたポケモンを実体化する。『レジ三兄弟の背景には原爆の話がある』。爆発を起こしそこからレジ三兄弟のうちのどれかを召喚する。『ポリゴンショック』。ポリゴンを召喚し赤と
青の光で相手を気絶させる。そして小奈美の『エスタークを5ターン以内に倒すと仲間になる』。5分以内に倒した相手を仲間に出来る。で、望夢先輩の『流れ星に三回願い事をすると叶う』。
星が出ている時間に空を見上げることで流れ星を出現させる。そしてそれに向かって三回願いを唱えることで叶えさせる。後は…そうだ、メタモンも契約してたんだ。『サブリミナル効果』。
一瞬でも見たものを完全に記憶できる。メタモン自身の、一度みて記憶したものに変身できる。以上のことを踏まえると…)
じっくりと、ゆっくりと、しっかりと、考える
堂寺(…そうだ! ああすれば…)
どうやら攻略法を思いついた様子の堂寺
光輝「兄さん、何か思いついたのか?」
堂寺「うん。…」
メタモン「わかったよ、お兄ちゃん!」
望夢「了解した」
光輝「把握」
小奈美「おっけー!」
堂寺「それじゃあ、作戦実行!」
26ソニータイマー (代理):2010/05/21(金) 14:10:36.42 ID:fRzla/Pw0
堂寺がポーズボタンを押し、再び物が動き出す
堂寺「ゲーム脳、能力発動。『時○回廊』」
さっきの堂寺たちがエコーとなり、忠実に行動を再現する
そして、坊池の方にメタモンが行く。…坊池一人に変身して
一人「誰だ? お前。俺に何の用…!?」
坊池が驚いた表情を見せる。“自分”が現れたのだから、無理も無い
メタモン「…俺はお前の良心だ」
一人「なんだ、そのアニメみたいな展開。そういう時は闇の部分とか、悪の側面とかが出るもんじゃないのか?」
メタモン「お前がその悪の側面だろう」
堂寺(いいぞ、メタモン!なるべく時間を稼いでて。その間に僕らが準備をする)
メタモン「何故リア充を殺す? お前に彼女が出来ないのは彼らのせいではないだろう。
仕事が見つからないのは彼らのせいではないだろう」
一人「…煩い、黙れ。俺はリア充が大嫌いなんだ…! あんな奴ら、死んでもかまわない…」
準備が終わった堂寺が駆けつける
堂寺「ふざけるな! 人を殺して許されるわけないですよ! 人を殺して許されるのはゲームの中だけです!
…そんなに殺したければ、○双でもやっていればいい…」
その言葉とともに、坊池の目の前に光が現れ、吸い込まれていった…
一人「何処だここは…? それにこの格好は…」
坊池は戦国時代のようなところに来ていた。薙刀をもって、鎧をつけて
堂寺「ようこそ。戦国無○の世界へ。ルールは簡単。貴方を襲ってくる武将を片っ端から斬っていけばいいんです。
…もっとも、少しばかり難しく改造してますけどねぇ…」
数え切れないほどの武将が、坊池に襲い掛かる。坊池は薙刀で応戦するが…
一人「どういうことだ…? 斬っても斬っても、また起き上がってくる…」
27ソニータイマー (代理):2010/05/21(金) 14:14:34.90 ID:fRzla/Pw0
堂寺「言ったでしょう、改造してあるって…自動回復です。ホラホラ、早く攻撃しないとまた襲ってきますよ」
一人「クッ…いくら斬っても、全然…減らない…!」
一人の表情に疲労が見える
堂寺「…疲れてきたみたいですね。良いでしょう。ゲームタイムは終了です」
その言葉とともに、坊池は現実世界に戻ってきた
坊池「は、はぁ…はぁ…はぁ…」
堂寺「…どうします? これでもまだ、リア充を殺しますか?」
『惑ワサレンナ!!! アンナ奴ラ殺シチマエ!!』
一人「はぁ…はぁ…そうだ…殺したって…」
堂寺「…やはり話し合いには応じませんか…。仕方ありません。ならば、無理にでも止めます!」
堂寺がそう叫ぶと、木陰から…
光輝「毒ガス」
光輝の能力で発生した毒ガスが充満した
一人「…毒ガスか…ゴホ、…は、爆ぜ…」
堂寺「おや? 良いんですか? このガスは起爆性ですよ? それにあまり喋るとガスを吸うことになりますが…」
一人「…!」
坊池がまわりを見ると、坊池以外はガスマスクをつけていた
堂寺「…そろそろですね」
只今の時刻、17時39分
17時40分まで、あと10秒
一人(息が…)
堂寺「後5秒」
光輝「4」
小奈美「3」
望夢「2」
メタモン「1」
堂寺「…0。17時40分、ソニータイマー起動」
28ソニータイマー (代理):2010/05/21(金) 14:19:47.22 ID:fRzla/Pw0
パチーーーーーーーーーーン
伸ばしたゴムが切れるような激しい音とともに
一人「ぐ…ぁ…」
かかとを押さえながら、その場に座り込んでいる坊地の姿が。…アキレス腱が切れたのだ
そして、そのせいで思わず息を吸ってしまい…
一人「…ゲホ、ごほごほ、ごほ!」
毒ガスをモロに吸い込んでしまった
毒ガスを吸い込んだのと、足の痛み、そして今までの疲労で坊池の意識は朦朧としてきた
堂寺「ゲーム脳、発動」
堂寺が、『ゲーム脳』の能力、『ゲームをした相手の思考力、記憶力を低下させる』を発動する
これらの要因が重なり、坊池の意識と記憶力、思考力が低下したおかげで…
『何ダ? ドウナッテンダ!?』
悪魔の囁きは坊池から引き離された
堂寺「作戦成功。では、」
そういうと堂寺はポケットからた○ごっちを取り出し…ゲーム脳の能力で、悪魔の囁きを閉じ込めてしまった
『オイ! 何シヤガル! 出セヨ!!』
堂寺「一件落着」
こうして、堂寺たちは悪魔の囁きの仲間の一人、坊池一人を倒すことに成功した

一「さ…撮影成功です」
一人、命知らずすぎる新聞部もいたのだが



                   続く
29一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:23:40.75 ID:fRzla/Pw0
【上田明也の探偵倶楽部22〜暗路夜行〜】

〜前回までのあらすじ〜

何処にでも居る普通の私立探偵「上田明也」は
大金持ちの都市伝説コレクターでなにやら怪しげな陰謀を画策する男、
「サンジェルマン伯爵」に依頼されて、「朝比奈秀雄」の制御下から離れたドラゴン達を秘密裏に回収に動き始めることになる。
その依頼の開始直前で彼に恨みがある黒服に襲われたが無事に返り討ちにした上田明也は、
黒服からとても口では言えないような方法で情報を引き出した後に、
黒服達の配置の間隙を縫って夜の町を闊歩するのであった。

〜前回までのあらすじオワリ〜


30一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:27:38.60 ID:fRzla/Pw0
「さてと、向坂君、今回は君がとても重要な任務を帯びているのだが良いだろうか?」
「へ?」
「いや、これから退治に行く都市伝説ってドラゴンなんだよ。」
「…………え?」
「そういえば言ってなかったっけか?」
「はい、まったく聞いていません。」
「そいつはタラスクスと呼ばれているドラゴンだ。
 口からは猛毒の息を吐き、
 身体からは燃えさかる分泌物を出し、
 鋼も弾く甲羅とビルもなぎ倒す怪力を持つ、
 亀型のドラゴンだね。」
「…………わたし聞いてない!」
「ああ、言わなかった!」
「この外道!」
「安心しろ、女性一人竜から身を守る程度、俺には造作もない。」
「所長言ってることは格好良いんですけどわりと最悪です。」
「わりとじゃない、間違いなく最悪だ。」

少し長めの髪をオールバックにした鋭い目の青年と、
ショートカットで背は低めのマフラーをした可愛らしい高校生の少女が二人連れで歩いている。
年の差から色々と誤解を受けそうだが彼らの間には特に何もない。
強いて言えば少女の姉をこの青年が殺したのだが……
まあその事実に少女が気づかない限りそれは何の意味も無い因縁であろう。
31一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:31:44.20 ID:fRzla/Pw0
「タラスクスはその性質上、聖女とか汚れ無き乙女に弱い訳ですよ。
 俺の知り合いって探偵という仕事柄上汚れだらけの乙女だらけなんですよ。」
「え、恋路ちゃんとか私と違って戦闘までこなせるじゃないですか。」
「…………冷静に考えてだぞ。」
「冷静に考えて、ですか?」
「明日とはいえ恋人と水入らずで同居してるんだぜ?
 ……何もない訳無いだろ。」
「――――――――!」

ところがどっこい何もないのだが彼らは何も知らない。

「その上、あいつは一応都市伝説だ。
 乙女カテゴリーに入るのか限りなく怪しくてしょうがない。」
「言われてみれば……。」
「という訳で俺に頼めるのはお前しか居なかった訳だ。」
「まあ、まさかあそこの子供二名には頼めないですしねえ。
 ていうか彼女らは一体何者なんですか?
 学校行っている様子もないし〜、……まあバイトが立ち入れる話じゃないですけど。」
「都市伝説関係者だよ、故有って俺が預かっているの。」
「ふぅむ……。」
「さて、もうそろそろ着くぞ。準備しておけ。」

上田は向坂にバッグから瓶を取り出して投げ渡す。
それをキャッチした向坂はラベルを見てふむふむと頷いた。
32一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:35:08.22 ID:fRzla/Pw0
「聖水……ですか。」
「まだ瓶は開けるなよ、かけられると俺にもダメージが入るんだそれ。」
「笛吹さん悪魔か何かなんですか?」
「契約した都市伝説の問題だよ、おかげで身体が丈夫になったから文句は言えないさね。」
「これが本当の悪魔が来たりて笛を吹くですね!」
「はいはい、そうだねそうだね。あと十字架もってきてくれた?」
「これですか?」

何気なく十字架を上田に向ける向坂。
当然十字架も駄目な上田はもの凄い勢いで向坂から距離を取る。

「解った、解ったからしまってくれ。」
「本当に駄目ですねぇ、……色々と。」
「否定はしないからすぐにしまえ、as soon as possible!」
「その無駄な発音の良さに感激です。
 我が校の英語教師も裸足で逃げ出すレベルですよ。」
「良いから早く!」
「はいはい……。」

向坂が十字架をしまったことを確認すると、笛吹はすぐに向坂の傍に戻った。
本当に十字架が駄目らしい。
33一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:39:47.48 ID:fRzla/Pw0
「とりあえずターゲットが出てきたら俺がそいつを引きつけている間にそれを向けろ。
 動きを止めるはずだ。
 次に動きを止めたターゲットにその瓶に入った水をかけろ。
 そうしたら後は俺が全部こなすから。」
「わ、解りました。」
「……済まないな、これも町を守る為なんだ。」
「いえいえ、良いんですけど……。この仕事が終わったら……。」
「バイト代なら弾むぜ?命の保証はあるとはいえ危ない仕事には変わりないから。」
「うーん、そうじゃなくてえ…………。」
「なんだ?」
「いや、笛吹さんってどんな過去を過ごしてきたのかなって?
 付き合っていた女の人とか?友達とか?
 あと前ちょろっとだけ話していた大学時代の話とか?
 ちょっと気になったりして。」

上田は意外そうな顔で向坂を見つめる。
その後、一瞬だけ優しい顔をしたかと思うといつもの彼に戻ってしまった。

「……まあ良いぜ、ゆっくり聞かせてやるよ。」
「ゆっくり聞かせてくださいね!」

参ったぜ、とでも言わんばかりの顔でため息を吐く上田。
しかし向坂はそれには気づかない。
34一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:43:56.43 ID:fRzla/Pw0
「ほら、近づいて見てみろよ。」
「わあ綺麗!」
「だろ?」

いきなり向坂を抱き寄せる笛吹。
そして耳元でそっと呟く。

「わわわわわ!何しているんですか笛吹さん!わたしまだ未成年!」
「静かに、タラスクスが近くに居る、俺が引きつけている間にさっき言った通りのことをしてくれ。
 恐らくドラゴンなんて都市伝説の枠の外の生き物は俺でも十秒稼げるかどうかだ。
 その十秒の間に全部終わらせてくれよ。
 今回はお前が頼りだ、信頼してるぜ。」
「…………え、あ、なんかすいません。」
「来るぞ、あと三秒、二秒、……。」

上田が小さく息を吸う。
先ほどまで五月蠅かった魚の跳ねる音はもうしない。
一瞬だけ、向坂が瞬きをしている間に戦いは始まっていた。
彼女が目を開けるとワニのような巨大生物が上田に向けてまっすぐ爪を繰り出していたのだ。


35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 14:45:53.07 ID:cRpQFH9EQ
支援
36一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:48:10.80 ID:fRzla/Pw0
「笛吹さん、やりまし……!」

上田は素早く向坂を突き飛ばす。
次の瞬間、川面が炎に包まれた。
タラスクスはどさくさに紛れて川に自らの分泌物を流していたのだ。
上田と向坂が先ほどまで居た場所も当然火の海に包まれる。

「くそ……、悪あがきしやがって!」
「笛吹さん!笛吹さん!」
「大丈夫だ、燃えた位なら死にはしない!
 それよりももうちょっと離れていろ!
 あとリュックから聖水の追加出しておけ!あとは耳塞いで物陰に隠れていろ!」

そう言い終わるか終わらないかのところでタラスクスの爪が笛吹に伸びる。
手持ちの銃器を捨てて素早く村正に持ち変える上田。
タラスクスの爪を破壊しながらも村正を真上にはじき飛ばされる。
だが、それすらも読んでいたと言わんばかりに彼は素早くナイフを投げつけた。
そのナイフ全てに青白い光が灯ったかと思うと滅茶苦茶な軌道でタラスクスに襲いかかる。
落ちてきた村正を拾うとそれにまで青白い光をともしてタラスクスに投げつけた。
村正、通称蜻蛉切は空を裂いて飛ぶ最中にも加速を続けてタラスクスを貫いた。
それを確認した笛吹はコートを脱ぐと、裏側に着いていたピンのような物を抜き取ってタラスクスに投げつける。

ゴゥン、と爆音が轟く。
川の水が強烈な勢いで炎ごと吹き飛んだ。
そしてその中心にはナイフとワイヤーで雁字搦めに縛られたタラスクスが居る。
37一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:51:54.92 ID:fRzla/Pw0
「向坂、今だあああああああ!」
「うう……、耳がキーンとして何も聞こえない。」
「しまった!」

ハーメルンの笛吹きと契約し、悪魔の身体を借り受けた上田と違い、
向坂境はあくまで只の女子高校生だ。
そもそも耳を塞いでいても手榴弾の轟音で耳が痛いに決まっている。
この状況で彼女に確実に指示をこなしてもらう為にはハーメルンの笛吹きの能力を使うしかない。
だがそれは当然彼女に自分の正体に関するヒントを与えることになる。
迷えば迷うほどタラスクスは竜の名前に恥じない再生力で傷を癒し始める。
その前に聖水の力で動きを止めて、向坂に前もって持たせていたある物で完全に動きを停止させるしかない。
上田明也は一瞬だけ迷った。
だがそんな迷いこそがもっとも愚かと決断した彼はハーメルンの笛吹きの能力を発動させる。

今度こそ聖水が向坂の手でタラスクスに直撃する。
タラスクスの動きが完全に沈黙したと同時に向坂の首のマフラーがタラスクスの身体をぐるぐる巻きにして陸に引きずりあげた。

このマフラーは上田がサンジェルマンのコレクションから借り受けた物で、
元々はとある聖人の帯に使われていた物だったのだ。
だが当然その事実を向坂は知らない。
38一方その頃、笛吹は ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 14:53:56.16 ID:fRzla/Pw0
【……おのれ、昔と同じ方法で我が輩ともあろう者が封じられようとは。】
【それは間違いだ、昔と同じ方法だから封じることが出来たんだ。】

すでに指一本動かせなくなったタラスクスを見て上田は安堵のため息を吐く。
今回の戦いは中々疲れたらしい。
古い英語で話し始めるタラスクスに上田は彼の言語の知識を最大限に生かして応えた。

【ふん、小賢しいことを言う童だ。】
【お褒めにあずかり光栄でございます、ご老体。】
【我が輩を再び封印しようと言うのか?】
【いいえ、貴方様には外の世界で自由を享受して頂きたく存じ上げます。】
【ふん、その気持ち悪い言葉遣いをやめよ。おぬしの狙いを話せ。】
【…………それじゃあさっくり行かせてもらいます。
 あんたに会ってもらいたい人間が居る。
 今からあんたを迎えに行くからそいつの話を聞いて欲しい。】
【よかろう、どうせ教会で長年封印されるよりはマシじゃ。】
【ありがとう。】
【それよりおぬし強いのう、鈍っていたかも知れんが手加減したつもりは無かったんじゃが……?
 さてはそこの女を守る為に気合いが入っていたのか?
 なんじゃなんじゃ、見た目に反して意外と優しい奴じゃのう。】
【そんなんじゃあないってばさ。】

どうやら目の前の竜は自分たちと話し合うつもりはあるようだ。
そう思った上田はサンジェルマンの携帯に電話をいれると気絶した向坂の介抱を始めることにした。
タラスクスはその様子をにやにやしながら見つめているのであった。

【上田明也の探偵倶楽部22〜暗路夜行〜fin】
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 14:54:39.87 ID:fRzla/Pw0
代理投下終了ー
もうちょっとたったらネタ投下するんだぜー
40悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:01:43.56 ID:fRzla/Pw0
 悪魔の囁きが、燃え尽きて
 …朝比奈 秀雄は、意識を失い、倒れている
 悪魔の囁きとの契約を解除した反動か…それとも、「黄金伝説」のドラゴン達との契約を強制解除された反動が、表面に出てきたのだろうか
 その年齢の割りに黒々としていた髪に、白が混じり灰色へと変わっていっている
 まるで、この一瞬の間に、数十歳も歳を取ってしまったかのような錯覚を覚えさせる光景だ
 死んではいないようだが、起き上がる様子も見せない朝比奈

 …今度こそ、戦いは終わったのだ、と
 一同は、それを実感した

「……っとと」
「翼!」
「ん、俺は大丈夫だよ」

 …それを実感して、気が抜けたのだろうか
 一瞬、体をふらつかせた翼の様子に、黒服が慌てて声をかけた
 が、翼は大丈夫だと言って、笑ってみせる
 …大丈夫、ではないだろう
 「厨2病」との多重契約による炎を、命に関るかどうかのギリギリの回数まで使った上、「はないちもんめ」の影響下に自分から入ることで、無理矢理に身体能力を上げたのだ
 ヘタをすれば、明日は起き上がることすら不可能な状態になっているだろう
 流石に疲れがにじみ出ているのか、翼はその場に座り込む
 ちょろり、ノロイが肩から膝へと降りていって、ちゅう、と心配そうに翼を見あげる

 …朝比奈を殴った拳は、握られたままだ

「翼」
「ん、望…お前、怪我とかしてないか?」
「してないわよ……それよりも、いいの?」

 望の言葉に、何が、と首をかしげる翼
41悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:06:24.93 ID:fRzla/Pw0
 望は、ちらりと、意識を失っている朝比奈に視線を向けて、続ける

「……一発、だけで」

 一撃、殴りつけただけで
 恨みは晴れたのか、と
 そう、問いたかったようだ

 望のその問いかけに、翼は力なく笑う

「…一発殴ったら、俺の分は、もう、いいや」
「そう……」

 聞いてしまったから
 知ってしまったから

 あの悪魔の囁きが、朝比奈が抱いた考えのその本音を、知らせたきたから
 …決して、恨みや怒りが軽減された訳ではない
 だが、一発殴ってしまったら……何だか、それで満足してしまったのだ

 だから、後は

「後は……どう裁かれるか、だろ」

 ……悪魔の囁きの影響があったとは言え
 朝比奈 秀雄が、数々の悪事を働いてしまった事破
 …命を奪ってきた事は、事実
 後は、それがどう裁かれるか

 ………翼には、それに口を出す権利は、ないのだ
42悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:11:33.81 ID:fRzla/Pw0


「…ありがと、何とか歩けそうだよ」
「そうか、良かった!」
「よかったの」

 ガスピアイの効力で、脚の傷を癒したマドカ
 まだ、完治した訳ではないが、もう歩行には支障は出なさそうだ

 マドカは、静かに、気絶している朝比奈に視線を向ける

「………あの、馬鹿」

 小さく、呟かれた言葉
 それは、ほんの少し、悲しそうで

 ややよろめきながらも、朝比奈に近づいていこうとするマドカ
 舞は、それを止めるべきかどうか、悩んで…


 −−−−ぐるるるるるる、と
 犬の呻き声が、聞えてきた


「………っ!!」

 マドカの「フィラデルフィア計画」の能力で、床に脚を埋め込まれていたクールトー
 それが、何時の間にか…床を、脱出していた
 その四肢は、血で染まっている
43悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:16:31.45 ID:fRzla/Pw0
 ……クールトーは、己の四肢を、全て噛み切ったのだ
 そうすることで床を脱出し、朝比奈との契約で得た強い再生力で、四肢を復活させたのだろう

 クールトーは、素早い動きで、一同には目もくれず、朝比奈の元へと駆けた
 そして、朝比奈を庇うような位置に立ち、威嚇するように唸る

「まだ、戦うつもりなのか!?」
「…朝比奈 秀雄は、お前達を目的の為の道具としてしか見なしていなかった…そんな男のために、まだ、戦うか?」

 山田とTさんの言葉を受けて
 しかし、クールトーは唸るのをやめない
 たとえ、この場にいる全てを敵に回したとしても、朝比奈を護る為に戦おうとする意志を、示していた

 そんな、クールトーに
 黒服が、一歩前に出て、静かに声をかける

「…私達は、朝比奈 秀雄が戦う意志を見せないならば……もう、彼と戦うつもりは、ありませんよ」

 クールトーは、唸り続けている
 黒服は、ゆっくり、静かに続ける

「「黄金伝説」のドラゴンも、悪魔の囁きも、もう朝比奈 秀雄には残っていません……彼に残っている牙は、残るはクールトー、あなただけです」

 まだ、クールトーは唸り続ける
 今にも飛び掛ってきそうなクールトーの様子に、Tさんが構えた
 しかし、それを制して、黒服は続ける

「…あなたが、戦う意志を見せなければ……もう、彼と戦う理由は、私たちにはありませんよ」

 ……クールトーが
44悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:21:42.23 ID:fRzla/Pw0
 唸るのを、止めた
 くぅん、と小さく鳴いて、朝比奈を気遣うように、その傍らに腰を下ろす
 ……その様子は、飼い主に忠実な、ただの犬に見えなくも、ない

 戦う意志を消滅させたクールトーの様子に、黒服がほっと息を吐いた

「…無茶をする」
「戦わずにすむのでしたら、それにこしたことはありませんから」

 やや呆れた様子のTさんの言葉に、そう答える黒服

 クールトーは、本来、人間とそう易々契約するような存在ではない
 朝比奈と契約したと言う事は、その存在を認めたか……もしくは、力で強引に屈服させられたかの、そのどちらか
 そのどちらだったとしても、クールトーが朝比奈を主と認めたことは事実なのだ
 ならば、クールトーは主である朝比奈のことを最優先にするだろう、と黒服は考えたのだ
 己の脚を食いちぎってまで、朝比奈の傍へ行こうとしたのが、その何よりの証拠だ

 …………かつん、と
 マドカが、そんな朝比奈に、ゆっくりと近づいていく
 かつん、かつん、と
 朝比奈の傍らまできて、そこで静かに腰を下ろし

 …………っべち!!

「あ」

 朝比奈を、叩いた
 その様子に、クールトーがぐるるるるる!!と再び唸るが…マドカは、それを恐れた様子もなく

「…まったく、この馬鹿亭主が」
45悪意が消えて  ◆nBXmJajMvU :2010/05/21(金) 15:28:16.10 ID:fRzla/Pw0
 と
 今度は、そっと…朝比奈を、撫でた
 その様子に、クールトーは唸るのをやめ、首をかしげる

 意識を失っている朝比奈を、静かに、優しく撫でるマドカの様子は
 今までの、どこか猛々しい様子とは違い……酷く、優しげな
 一人の男の、妻としての顔で

「………本当に………馬鹿、だよ………」

 俯いた、その顔が、泣いていたように見えたのは
 きっと、目の錯覚では、なかったのだろう



 戦いが終わった雑居ビル……いや、最早、元・雑居ビルと言うべき、崩れ落ち、は解され尽くしたその場所
 今度こそ、完全に、戦いの終止符は打たれたのだった





to be … ?
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 15:33:14.85 ID:fRzla/Pw0
悪魔の囁き消滅直後の様子を少々
あとはそれぞれのエピローグ書けば悪魔の囁き編終了、かなぁ?
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 15:51:24.80 ID:fRzla/Pw0
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:09:31.62 ID:fRzla/Pw0
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:28:04.22 ID:fRzla/Pw0
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:30:42.80 ID:p6o2CS080
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:40:03.46 ID:IhPhhd+DQ
代理&投下乙でしたー!
いろいろと感想はありますが、とりあえず一つ

やった!翼の家族にマスコットキャラが増えたよ!
忠犬クールトーかわいいよクールトー
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:48:19.50 ID:fRzla/Pw0
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 16:49:11.89 ID:fRzla/Pw0
>>51
>忠犬クールトーかわいいよクールトー
ドーベルマンみたいなデカい犬ですがwwww
54結ばれ切れる縁 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/21(金) 17:16:58.39 ID:fRzla/Pw0
夜闇に溶け込むような黒髪がざわりと蠢き、信じられない速度でその長さを伸ばしていく
見た目はただの髪の毛でしかないそれは、路上で暴れる鉈を持った男に絡みつくとその全身を覆い尽くし、ぎちぎちと締め上げる
「きっ……さ、ま……『組織』、の……この、髪……Hと、呼ば、れ、る……黒服……」
「違うわボケっ!」
怒号と共に締め上げる力が一気に増し、更には振り回されて地面に叩き付けられ、男は意識を失いぐったりと動かなくなった
「どいつもこいつも、あんなのと間違うとか! 性別も格好も違うでしょ!?」
しゅるしゅると髪の毛を縮めながら怒りに肩を震わせるのは、制服姿の女子高生
「菊花、携帯電話取ってー」
怒りで荒くなった呼吸を整えて、道端のスポーツバッグに向かって声を掛ける
ちりちりと音を立ててファスナーが開くと、中から携帯電話を抱えた着物姿の日本人形がもぞもぞと這い出してきた
てちてちと携帯電話を運んできた日本人形を抱き上げ、受け取った携帯で電話を掛ける
「もしもし繰です、目標確保しましたよ」
『髪の伸びる日本人形』の契約者である女子高生、宮定繰(みやさだ・くくる)の連絡を受け、その数分後
現場に現れた女黒服は、荷物でも梱包するかのようにてきぱきと気絶した男を拘束する
「お疲れ様。私に戦闘力が無いばかりに苦労を掛ける」
「適材適所ってやつでしょ。私としても戦ってた方が何かと実感があって良い感じだし……アレと間違えられるのだけは業腹だけど!」
携帯を弄りながら不貞腐れる繰に、女黒服は苦笑を向ける
「そうは言っても彼は有能だ。以前、不覚を取ったところを助けられたしな」
「私を助けてくれた時? その後? その辺の事、あんまり覚えてないんだけど」
「後ぐらいだな。君の一件が片付いて、その原因を追っていた時だ」
55結ばれ切れる縁 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/21(金) 17:18:18.49 ID:fRzla/Pw0
繰には記憶の欠落がある
中学三年の頃に家族で海外旅行に行ったらしいのだが、その事を丸ごと覚えていないのだ
家族の話によるとブティックで姿を消して、数日後にひょっこり戻ってきたらしい
その後、とあるアンティークショップで出会った菊花と共に都市伝説との戦いを切り抜け、この女黒服の誘いで『組織』に身を置く事になった
そして女黒服とは、出会いではなく再会である事を知らされる
海外で起きた人攫い都市伝説から繰を助けてくれたのは彼女で、恐怖の記憶を消す措置を行ったために事件も彼女の事も忘れていたらしい
「私、あいつ大っ嫌い! 女と見れば誰彼構わずセクハラ三昧、挙句に都市伝説が違うのに能力が被るとか!」
憤る繰を、抱き上げられた菊花がまあまあと宥める
「菊花がいてくれるから、あいつと能力が違うって理解してもらえるのよね……大丈夫よ、菊花の能力が被ってるのが悪いんじゃないの。あのセクハラ大魔王が全部悪いの。あいつ死ねばいいのに」
「『組織』の中ではかなり強いし頭も切れ、何より人脈がある。味方にすると頼もしい代わりにアレだが、敵には回さないようにな」
拘束した男を黒塗りの車に放り込み、一仕事終えた女黒服
ふと何かに気が付いたように繰の肩を掴む
「な、何? 仕事終わったし私は帰るよ?」
「左手、見せてみろ」
その言葉に、びくりと身を竦ませる繰
「気にするような事じゃないってば! ちょっと切られたけどすぐ血も止まったし痛くないし!」
「傷跡があっては家族に怪しまれるだろう」
ぐいと強引に引っ張り出された左手の甲に、血を拭った跡と深くはないが目立つ傷跡があった
「これぐらい誤魔化せるってば! っていうか黒服さんの治療は、その!」
「嫌悪感があるのは判るが、我慢してくれ」
56結ばれ切れる縁 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/21(金) 17:20:25.02 ID:fRzla/Pw0
「いや、そうじゃなくっ、ぅんっ!」
繰の左手を口元に引き寄せ、その傷にそっと舌を這わせる女黒服
温かく濡れた舌先が触れると、『唾でも付けておけば治る』という能力でその唾液で濡れた部分からゆっくりと傷跡が消えていく
「これで大丈夫、跡も残らない」
唾液で濡れた繰の手を、ウェットティッシュで丁寧に拭う女黒服
「……どうした?」
「何でもないっ!」
空いた右手で真っ赤になった顔を覆い、あらぬ方向を向いたまま声を荒げる繰
その足元では「何も見ていない」という自己主張でもするかのように、菊花が背中を丸めて座り込んでいた
他に負傷が無い事を確認した女黒服が車で走り去って行くのを確認し、繰は負傷前よりむしろ艶の出た左手を見詰め溜息を吐く
「あいつの能力っていうか舌遣いは充分セクハラよねぇ……自覚無いのかな」

―――

「あ」
「ん?」
それからしばらく経ったある日、ばったりと道端で出会う繰と黒服H
「珍しいな、いつもはガン無視するくせに」
「あんたにはできたら一生関わりたくなかったわよ……ただ、私に仕事回してくる黒服、最近何の連絡も無いんだけどさ。何か知らないかなって」
「お前さんの担当……何て奴だ?」


57結ばれ切れる縁 ◇W5H6Y5Rl3M (代理):2010/05/21(金) 17:21:31.09 ID:fRzla/Pw0
「名前なんか知らないわよ。『組織』の黒服ってしか名乗られてないんだし」
「それだけで判るわけないだろ。せめて外見の特徴とか無いのか」
「黒い服と黒いサングラス、髪はセミロングの女の人」
「胸は?」
「そこそこ」
「となると、あいつか」
「そんだけの情報で判るとかあんた何者よ」
「そんな事はもっと細かい情報を寄越してから言え」
実際のところは『組織』の人員はおおよそ把握しているので知ってはいたのだが、敢えて誤魔化すために妙な遠回りをしていたりする
「雑用じみた探索任務中に消息を絶った、原因は目下調査中。上層部は死亡と判断してるはずだ」
「そう」
「淡白な反応だな」
「テンパってもあいつが戻ってくるわけじゃないし。担当居なくなっちゃった私はどうなるの?」
「そのうち別の担当が付いて、そいつから連絡が入ると思うぞ」
「ん、ありがと。用事が済んだらあんたの顔なんか見てたくないから。じゃあね」
「嫌われたもんだねぇ」
「うっさい女の敵。私の友達に手ぇ出したりしたらぶっ殺すからね」
「いやいや、お前の友達が誰とか判らんから。紹介してくれんのか?」
「んなわけないでしょ!? いい、この界隈の女子高生には決して近付かない事ね!」
やや呆れた様子の黒服Hに捨て台詞を残して、繰は駆け出していた
ただ闇雲に走り続け、周りに人が居ない路地裏でぺたりと座り込み
「あ、もしもし、佳奈美? ちょっと急用でさ、買い物の約束……うん、ごめんね。この埋め合わせはまた今度……判ってるってばー、それじゃまたね」
明るい声で友達に電話を掛けた後
膝を抱えて顔を伏せ、誰にも知られないようにこっそりと
名も無い黒服のために泣く少女の繰の背中を、物言わぬ菊花がそっと撫でていた
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 17:29:09.78 ID:fRzla/Pw0
代理投下を終えたところで、夕食作ってくる
夕食食べ終わった後もスレが残ってますように!
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 18:10:19.10 ID:cRpQFH9EQ
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 18:43:31.19 ID:p6o2CS080
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 19:12:20.24 ID:aEwo+Asd0
スレ立て、その他もろもろ乙です。

中華黒服に殺された、モブ黒服の担当契約者ですね。
Hさんの事を知っているなら、女性として彼と間違えられるのは辛いですよねぇ。
佳奈美と友人らしいが、Hと付き合ってる事を知ったら如何思うか。その前に、彼女は佳奈美が契約者だって知ってるのか?
ただ、おそらく彼女も中央高校の生徒なんでしょうね。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 19:25:18.79 ID:A6LGIbFL0
にゃあ
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 19:43:32.58 ID:A6LGIbFL0
にー
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 20:12:58.63 ID:w2sxSb1n0
にーにー
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 20:32:02.93 ID:w2sxSb1n0
にーにーにー
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 20:51:08.70 ID:w2sxSb1n0
にーにーにーにー
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 21:09:14.14 ID:w2sxSb1n0
にーにーにーにーにー
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 21:26:55.28 ID:w2sxSb1n0
まだまだ規制民が多いんだなぁ、と言う事を避難所を見て実感する日々
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 21:44:27.51 ID:w2sxSb1n0
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 22:05:39.71 ID:w2sxSb1n0
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 22:07:10.66 ID:IhPhhd+DQ
72一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:20:47.43 ID:w2sxSb1n0
【上田明也の探偵倶楽部22〜暗路夜行〜】

〜前回までのあらすじ〜

何処にでも居る普通の私立探偵「上田明也」は
大金持ちの都市伝説コレクターでなにやら怪しげな陰謀を画策する男、
「サンジェルマン伯爵」に依頼されて、「朝比奈秀雄」の制御下から離れたドラゴン達を秘密裏に回収に動き始めることになる。
その依頼の開始直前で彼に恨みがある黒服に襲われたが無事に返り討ちにした上田明也は、
黒服からとても口では言えないような方法で情報を引き出した後に、
黒服達の配置の間隙を縫って夜の町を闊歩するのであった。

〜前回までのあらすじオワリ〜


73一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:22:56.43 ID:w2sxSb1n0
「さてと、向坂君、今回は君がとても重要な任務を帯びているのだが良いだろうか?」
「へ?簡単な仕事って言ってませんでした?
 都市伝説退治のついでに荷物運びちょっと手伝うだけって……。」
「いや、これから退治に行く都市伝説ってドラゴンなんだよ。」
「…………え?」
「そういえば言ってなかったっけか?」
「はい、まったく聞いていません。」
「そいつはタラスクスと呼ばれているドラゴンだ。
 口からは猛毒の息を吐き、
 身体からは燃えさかる分泌物を出し、
 鋼も弾く甲羅とビルもなぎ倒す怪力を持つ、
 亀型のドラゴンだね。」
「…………わたし聞いてない!」
「ああ、言わなかった!」
「この外道!」
「安心しろ、女性一人竜から身を守る程度、俺には造作もない。」
「所長言ってることは格好良いんですけどわりと最悪です。」
「わりとじゃない、間違いなく最悪だ。」

少し長めの髪をオールバックにした鋭い目の青年と、
ショートカットで背は低めのマフラーをした可愛らしい高校生の少女が二人連れで歩いている。
年の差から色々と誤解を受けそうだが彼らの間には特に何もない。
強いて言えば少女の姉をこの青年が殺したのだが……
まあその事実に少女が気づかない限りそれは何の意味も無い因縁であろう。
74一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:27:50.43 ID:w2sxSb1n0
「タラスクスはその性質上、聖女とか汚れ無き乙女に弱い訳ですよ。
 俺の知り合いって探偵という仕事柄上汚れだらけの乙女だらけなんですよ。」
「え、恋路ちゃんとか私と違って戦闘までこなせるじゃないですか。」
「…………冷静に考えてだぞ。」
「冷静に考えて、ですか?」
「あの明日真とはいえ恋人と水入らずで同居してるんだぜ?
 ……何もない訳無いだろ。」
「――――――――!」

ところがどっこい何もないのだが彼らは何も知らない。

「その上、あいつは一応都市伝説だ。
 乙女カテゴリーに入るのか限りなく怪しくてしょうがない。」
「言われてみれば……。」
「という訳で俺に頼めるのはお前しか居なかった訳だ。」
「まあ、まさかあそこの子供二名には頼めないですしねえ。
 ていうか彼女らは一体何者なんですか?
 学校行っている様子もないし〜、……まあバイトが立ち入れる話じゃないですけど。」
「都市伝説関係者だよ、故有って俺が預かっているの。」
「ふぅむ……。」
「さて、もうそろそろ着くぞ。準備しておけ。」

上田は向坂にバッグから瓶を取り出して投げ渡す。
それをキャッチした向坂はラベルを見てふむふむと頷く。
75一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:30:55.15 ID:w2sxSb1n0
「聖水……ですか。」
「まだ瓶は開けるなよ、かけられると俺にもダメージが入るんだそれ。」
「笛吹さん悪魔か何かなんですか?」
「契約した都市伝説の問題だよ、おかげで身体が丈夫になったから文句は言えないさね。」
「これが本当の悪魔が来たりて笛を吹くですね!」
「はいはい、そうだねそうだね。あと十字架もってきてくれた?」
「これですか?」

何気なく十字架を上田に向ける向坂。
当然十字架も駄目な上田はもの凄い勢いで向坂から距離を取る。

「解った、解ったからしまってくれ。」
「本当に駄目ですねぇ、……色々と。」
「否定はしないからすぐにしまえ、as soon as possible!」
「その無駄な発音の良さに感激です。
 我が校の英語教師も裸足で逃げ出すレベルですよ。」
「良いから早く!」
「はいはい……。」

向坂が十字架をしまったことを確認すると、笛吹はすぐに向坂の傍に戻った。
本当に十字架が駄目らしいと知って向坂はにやにや笑っている。
76一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:33:45.88 ID:w2sxSb1n0
「とりあえずターゲットが出てきたら俺がそいつを引きつけている間にそれを向けろ。
 動きを止めるはずだ。
 次に動きを止めたターゲットにその瓶に入った水をかけろ。
 そうしたら後は俺が全部こなすから。」
「わ、解りました。」
「……済まないな、これも町を守る為なんだ。」
「いえいえ、良いんですけど……。この仕事が終わったら……。」
「バイト代なら弾むぜ?命の保証はあるとはいえ危ない仕事には変わりないから。」
「うーん、そうじゃなくてえ…………。」
「なんだ?」
「いや、笛吹さんってどんな過去を過ごしてきたのかなって?
 付き合っていた女の人とか?友達とか?
 あと前ちょろっとだけ話していた大学時代の話とか?
 ちょっと気になったりして。」

上田は意外そうな顔で向坂を見つめる。
その後、一瞬だけ優しい顔をしたかと思うといつもの彼に戻ってしまった。

「……まあ良い、そのうち“ゆっくり”聞かせてやるよ。」
「“ゆっくり”聞かせてくださいね!」

参ったぜ、とでも言わんばかりの顔でため息を吐く上田。
しかし向坂はそれには気づかない。
77一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:36:49.74 ID:w2sxSb1n0
ところで二人は先ほどから川縁を歩いていた。
勿論それは狙いの竜に遭遇する為なのだが、
二人の歩く春先の川辺には水のせせらぎと星の瞬きが心を和ませる美しい風景が広がっていた。
月影が水面に映ってその周りをゆらゆらと魚が泳いでいる。
チャプン、と魚が撥ねる度に月も揺れる。
魚の動きを見て上田は何かに気づいたらしい。
ゆっくりと川に近づいていく。

「そうだ、向坂よ。月が欲しくないか?」
「へ?月ですか?」
「そうだよ、月だ。」
「まあ……、あったら欲しいですけど……。」
「そうかあ……。」

上田は川の中の様子をチラっとのぞき見る。
ハーメルンの笛吹きとの契約で強化された彼の聴覚には、
魚たちの跳ねる音以外にも別の呼吸音が捉えられていた。

「じゃあちょっと待ってろ、月をとってくるよ。」
「はぁ……。」

上田は川に近づいて手のひらで水を掬う。
その手の中には小さな水たまりが出来ていた。
そしてそこには綺麗な月が映っている。
78一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:39:45.91 ID:w2sxSb1n0
「ほら、近づいて見てみろよ。」
「わあ綺麗!」
「だろ?」

川辺に立つ上田にゆっくりと近づく向坂。
彼はいきなり彼女を抱き寄せる。

「わわわわわ!何しているんですか笛吹さん!わたしまだ未成年!」
「静かにしろ、タラスクスが近くに居る、俺が引きつけている間にさっき言った通りのことをしてくれ。
 恐らくドラゴンなんて都市伝説の枠の外の生き物は俺でも十秒稼げるかどうかだ。
 その十秒の間に全部終わらせてくれよ。
 今回はお前が頼りだ、信頼してるぜ。」
「…………え、あ、なんかすいません。」
「来るぞ、あと三秒、二秒、……。」

上田が小さく息を吸う。
先ほどまで五月蠅かった魚の跳ねる音はもうしない。
一瞬だけ、向坂が瞬きをしている間に戦いは始まっていた。
彼女が目を開けるとワニのような巨大生物が上田に向けてまっすぐ爪を繰り出していたのだ。
79一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:42:43.63 ID:w2sxSb1n0
ガイィィイイイン!
上田は爪による第一撃を蜻蛉切で器用に斜め後ろにそらす。
戦う前からすでに力比べをすれば敵わないと悟ったのだろう。
攻撃をいなされたことによる驚きがその竜――タラスクス――にほんのわずかな隙を作る。

「向坂!」
「はい!」

その一瞬の隙を突いて向坂が十字架をタラスクスに向けて突き出す。
上田の顔も日焼けしたように真っ赤になっていくがタラスクスはそれを見るなり足が完全にすくんでしまったようだった。
それを見た上田は村正をしまうと今度は着ていたコートの裏から二丁のサブマシンガンを取りだした。
H&K MP7
H&K社がFN社のP90への対抗馬として、1999年に『PDW』の名で発表された、携帯用の小型サブマシンガン。
のちに『MP7』と改称され、更にトライアルを経て改良された『MP7A1』が現行の生産型となっている。
非常に小柄ながら、同社のG36譲りのロータリーロックボルトとガスオペレーション機構を備える。
装弾数は限界ギリギリ40発。
貫通力が高い為に少々使いづらいところもあるが、
今回のような化け物相手であればそれがむしろ功を奏すとも考えられた。

嵐のような銃撃に竜の動きですら止まる。

その間に向坂境は聖水を投げつけた。

直撃。
竜は情けない声を上げてその場にうずくまった。
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 22:45:13.05 ID:p6o2CS080
支援!
81一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 22:45:48.64 ID:w2sxSb1n0
「笛吹さん、やりまし……キャッ!」

上田は素早く向坂を突き飛ばす。
次の瞬間、川面が炎に包まれた。
タラスクスはどさくさに紛れて川に自らの分泌物を流していたのだ。
上田と向坂が先ほどまで居た場所も当然火の海に包まれる。

「くそ……、悪あがきしやがって!」
「笛吹さん!笛吹さん!」
「大丈夫だ、燃えた位なら死にはしない!
 それよりももうちょっと離れていろ!
 あとリュックから聖水の追加出しておけ!あとは耳塞いで物陰に隠れていろ!」

そう言い終わるか終わらないかのところでタラスクスの爪が笛吹に伸びる。
手持ちの銃器を捨てて素早く村正に持ち変える上田。
素早く振り抜いてタラスクスの爪を破壊しながらも村正を真上にはじき飛ばされる。
だが、それすらも読んでいたと言わんばかりに彼は素早くナイフを投げつけた。
そのナイフ全てに青白い光が灯ったかと思うと滅茶苦茶な軌道でタラスクスに襲いかかる。
落ちてきた村正を拾うとそれにまで青白い光をともしてタラスクスに投げつけた。
村正、通称蜻蛉切は空を裂いて飛ぶ最中にも加速を続けてタラスクスを貫いた。
それを確認した笛吹はコートを脱ぐと、裏側に着いていたピンのような物を抜き取ってタラスクスに投げつける。

ゴゥン、と爆音が轟く。
川の水が強烈な勢いで炎ごと吹き飛んだ。
そしてその中心にはナイフとワイヤーで雁字搦めに縛られたタラスクスが居る。
82一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理の代理):2010/05/21(金) 22:54:41.65 ID:wWH82Z9P0
「向坂、今だあああああああ!」
「うう……、耳がキーンとして何も聞こえない。」
「しまった…………!」

ハーメルンの笛吹きと契約し、悪魔の身体を借り受けた上田と違い、
向坂境はあくまで只の女子高校生だ。
そもそも耳を塞いでいても手榴弾の轟音で耳が痛いに決まっている。
この状況で彼女に確実に指示をこなしてもらう為にはハーメルンの笛吹きの能力を使うしかない。
だがそれは当然彼女に自分の正体に関するヒントを与えることになる。
迷えば迷うほどタラスクスは竜の名前に恥じない再生力で傷を癒し始める。
その前に聖水の力で動きを止めて、向坂に前もって持たせていたある物で完全に動きを停止させるしかない。
上田明也は一瞬だけ迷った。
だがそんな迷いこそがもっとも愚かと決断した彼はハーメルンの笛吹きの能力を発動させる。

今度こそ聖水が向坂の手でタラスクスに直撃する。
タラスクスの動きが完全に沈黙したと同時に向坂の首のマフラーがタラスクスの身体をぐるぐる巻きにして陸に引きずりあげた。

このマフラーは上田がサンジェルマンのコレクションから借り受けた物で、
元々はタラスクスを退治したとある聖人の帯に使われていた物だったのだ。
だが当然その事実を向坂は知らない。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 22:57:28.70 ID:aEwo+Asd0
し・えーん
84一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理の代理):2010/05/21(金) 22:59:28.45 ID:wWH82Z9P0
【……おのれ、昔と同じ方法で我が輩ともあろう者が封じられようとは。】
【それは間違いだ、昔と同じ方法だから封じることが出来たんだ。】

マフラーに縛られて指一本動かせなくなったタラスクスを見て上田は安堵のため息を吐く。
今回の戦いは中々疲れたらしい。
古い英語で話し始めるタラスクスに上田は彼の言語知識を最大限に生かして応えた。

【ふん、小賢しいことを言う童だ。】
【お褒めにあずかり光栄でございます、ご老体。】
【我が輩を再び封印しようと言うのか?】
【いいえ、貴方様には外の世界で自由を享受して頂きたく存じ上げます。】
【ふん、その気持ち悪い言葉遣いをやめよ。おぬしの狙いを話せ。】
【…………それじゃあさっくり行かせてもらいます。
 あんたに会ってもらいたい人間が居る。
 今からあんたを迎えに行くからそいつの話を聞いて欲しい。】
【よかろう、どうせ教会で長年封印されるよりはマシじゃ。】
【ありがとう。】
【それよりおぬし強いのう、鈍っていたかも知れんが手加減したつもりは無かったんじゃが……?
 さてはそこの女を守る為に気合いが入っていたのか?
 なんじゃなんじゃ、見た目に反して意外と優しい奴じゃのう。】
【そんなんじゃあないってばさ。】

どうやら目の前の竜は自分たちと話し合うつもりはあるようだ。
そう思った上田はサンジェルマンの携帯に電話をいれると気絶した向坂の介抱を始めることにした。
タラスクスはその様子をにやにやしながら見つめているのであった。

【上田明也の探偵倶楽部22〜暗路夜行〜fin】
85一方その頃、笛吹は(修正バージョン) ◇rpv9CinJLM (代理):2010/05/21(金) 23:00:49.59 ID:w2sxSb1n0
「向坂、今だあああああああ!」
「うう……、耳がキーンとして何も聞こえない。」
「しまった…………!」

ハーメルンの笛吹きと契約し、悪魔の身体を借り受けた上田と違い、
向坂境はあくまで只の女子高校生だ。
そもそも耳を塞いでいても手榴弾の轟音で耳が痛いに決まっている。
この状況で彼女に確実に指示をこなしてもらう為にはハーメルンの笛吹きの能力を使うしかない。
だがそれは当然彼女に自分の正体に関するヒントを与えることになる。
迷えば迷うほどタラスクスは竜の名前に恥じない再生力で傷を癒し始める。
その前に聖水の力で動きを止めて、向坂に前もって持たせていたある物で完全に動きを停止させるしかない。
上田明也は一瞬だけ迷った。
だがそんな迷いこそがもっとも愚かと決断した彼はハーメルンの笛吹きの能力を発動させる。

今度こそ聖水が向坂の手でタラスクスに直撃する。
タラスクスの動きが完全に沈黙したと同時に向坂の首のマフラーがタラスクスの身体をぐるぐる巻きにして陸に引きずりあげた。

このマフラーは上田がサンジェルマンのコレクションから借り受けた物で、
元々はタラスクスを退治したとある聖人の帯に使われていた物だったのだ。
だが当然その事実を向坂は知らない。
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:02:09.16 ID:w2sxSb1n0
ぎゃああああああああリロ忘れてた御免支援orz
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:05:20.93 ID:wWH82Z9P0
気にすることでねぇでござんす
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:10:55.45 ID:w2sxSb1n0
本当申し訳ないorz
代理引継ぎ乙でした!!
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:17:28.49 ID:aEwo+Asd0
2人とも、修正版代理乙ですた。
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:41:27.27 ID:w2sxSb1n0
みー
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:42:57.83 ID:4qWCFYAZ0
投下乙ほ
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/21(金) 23:57:06.30 ID:w2sxSb1n0
おあすみ0−
明日もsルエガのこてちますように
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 00:02:55.77 ID:gmFJbpMw0
おやすみほ
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 00:19:36.32 ID:gmFJbpMw0
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 00:36:59.78 ID:hneiWjv1Q
眠いけど今寝たらこの脳内に浮かんでるネタが間違いなくすっとぶ
きりがいいところまで書き上げてやる
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 00:57:55.43 ID:gmFJbpMw0
がんがれほ
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 01:19:32.19 ID:hneiWjv1Q
ありがとほ
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 01:28:42.26 ID:gmFJbpMw0
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 01:58:01.22 ID:Yz/IIvc10
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 02:18:40.12 ID:gmFJbpMw0
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 02:26:18.78 ID:hneiWjv1Q
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 02:52:55.33 ID:Yz/IIvc10
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 03:38:38.49 ID:gmFJbpMw0
おやすみほ
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 07:36:31.63 ID:t1c0MOq30
保守
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 08:34:47.82 ID:gmFJbpMw0
おはようほ
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 08:52:29.99 ID:gmFJbpMw0
いってくるほ
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 10:10:42.12 ID:sYJykSVo0
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 10:31:56.88 ID:0tzlm+r70
おっはよー!
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 10:55:54.61 ID:0tzlm+r70
もうちょいたったらネタ投下すりゅー
今日は午後から出かけるから、午前中以外は夜しかパソ触れんのよ…
110敗北者達  ◆nBXmJajMvU :2010/05/22(土) 11:00:25.14 ID:0tzlm+r70
 −−−それはただの悪い夢だったのか?


(……違う)


 私は、確かに望んだから
 あの人と、一緒になりたいと
 永遠に、あの人の傍にいたいと


(…叶うはずなんて、なかったのに)


 あの人の心には、私の全く知らない女性が住み着いていて
 そして、あの人は、その女性の幻影を振り払って
 ……妻として選んだ人と
 かつては、手段の為だけに選んだはずの人と
 やり直そうとしていたのだから


(………馬鹿みたい)


 わかっていた癖に、未練たらしくあの人の傍に居続けて
 そのせいで、奥さんに誤解させて
 結果、あの人の家庭をバラバラにしてしまって

 それを、私は言い訳にした
 私のせいで、あの人の家庭をばらばらにしてしまったのだから
111敗北者達  ◆nBXmJajMvU :2010/05/22(土) 11:03:55.90 ID:0tzlm+r70
 私が、ずっと、あの人の傍にいなければ、と

 馬鹿な言い訳
 自分勝手すぎる言い訳
 結局、私はあの人を苦しめただけではないのか?


(…本当に………馬鹿、みたい)


 あの人の奥さんに、たっぷりと殴られて
 まだ、頭の中で、ガンガンとあの声は響き続けていたけれど

 …でも、もう、どうにもする気になれなかった
 自分の愚かさに、気づいてしまって
 目を逸らし続けていたそれに気づいてしまえば、もう
 ………悪魔の囁きの声は、私には届かなくなっていた


 自分の中で響いていた声が、消えた事を自覚する
 あぁ、あの人は負けたのだ
 誰かが、あの人を止めたのだ
 それを、理解した

 理解しても、体が動かない
 痛みだけが、ジンジンと続いて…………−−−−−−


「………え?」
112敗北者達  ◆nBXmJajMvU :2010/05/22(土) 11:07:20.85 ID:0tzlm+r70
 すぅ、と痛みが消えていく
 何かが、優しく触れている感触

「…意識が戻ったか?」

 聞き覚えのある声に、目をあけて、顔をあげる
 そこには、人形のように整った顔の青年と、額から角を生やした、純白の馬の姿があった
 …ユニコーンと、その契約者の、ヘンリーだ

「…ど、して……あなた達の考えじゃあ、私なんて、放っておいても…」
「見知った顔が怪我していたら、流石に放っておけるか。ビッチとは言え」

 …あぁ、そうか
 元々、この青年はこう言う性格だったのか
 自分は、悪魔の囁きが憑いた後の状態しか見たことがなかったから、知らなかった

「………ボス、負けたんだな」
「…………そう、みたい」

 むくり、体を起こす
 ユニコーンの力で、私の傷は完全に癒えたらしかった
 わりと、顔の原型が残らないほど殴られたはずなのに、顔の筋肉がちゃんと動くのが、その証拠だろう

「…あなたは…これから、どうするの?」
「…………」

 あの人が戦っていたであろう方向を見つめているヘンリー
 す、とユニコーンにまたがる

「とりあえず、ボスの所に行く。怪我してるようだったら、治療しないと」
113敗北者達  ◆nBXmJajMvU :2010/05/22(土) 11:10:32.75 ID:0tzlm+r70
「………あの人の周りには、きっと、あの人と戦っていた人達がいるわよ?」
「だろうけど。戦いが終わったんなら、もう、敵も味方もないだろ。怪我人は全員、治療するさ」

 ……ビッチ相手はあんましやりたくないが、と小さく呟くヘンリー
 ひひん、とユニコーンが同意したように嘶く

「お前は?」
「……私は……」

 ……きっと
 あそこにいけば、また、あの人の奥さんと顔を合わせるだろう
 多分、あの人の、息子さんだっているはず
 もう一度、殴られるかもしれない
 けれど

「…私も、行くわ……あの人の、家族に……謝らなくちゃ」
「そうか」
「……乗せてくれる?」

 じ、とユニコーンを見つめて、お願いしてみる
 ユニコーンは、じぃっ、と私を見つめてきて…

 ………ひひひん

「乙女じゃないから、嫌だってよ」
「……………酷い」

 まぁ、わかっていた事だけど
 私は小さく苦笑いて…走り出すことはなく、ゆっくり歩き出したユニコーンの後を付いて行った
 ………泣いている顔を誰にも見られることのないように、陰鬱に俯きながら            to be … ?
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:12:57.29 ID:0tzlm+r70
エピローグ…とはちょいと違いますが、秀雄敗北後(悪魔の囁き消滅後)のヘンリーとセイレーン契約者
大元の悪魔の囁きが消滅したんで、セイレーン契約者に憑きっぱなしだった悪魔の囁きも消滅しましたとさ
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:21:09.84 ID:hneiWjv1Q
投下乙ですー

いまさらで申し訳ないんですが確認を
支配型コークロア契約者が複数いて、セイレーンの歌を聞かされながら監禁中
その能力で支配下におかれたヤク中が多数(非契約者)
そいつらにも悪魔の囁きがついてたりついてなかったり

って認識であってるだろうか?
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:23:29.40 ID:0tzlm+r70
>>115
大体そんな感じであってますー
ただ、悪魔の囁きはコーク・ロアで操られている奴には憑いてないですね
囁きが憑いてるのとコーク・ロア操られ組は別。囁きが憑いてるのは、大抵契約者ですね(憑いた後に契約した連中も多いでしょうが)

一応、秀雄戦終了と同時に、支配型コーク・ロア契約者も大体、みんな解放されてることでしょう
描写全力で省いてますが
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:32:08.79 ID:hneiWjv1Q
>>116
了解ですー
悪魔の囁きの卵がわりと無差別にばらまかれてるとのことだったんで操られ組にもついてるかと思ったが、彼らは除外されてましたか

よく考えたらわざわざ操り人形に暴走させるような要素はつけないわな
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:33:38.05 ID:0tzlm+r70
>>117
卵が植え付けられてた可能性はありますが、まぁ、操り人形になってる時点で卵は孵ってないと思う
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 11:51:01.61 ID:0tzlm+r70
そろそろお昼ご飯ほ
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 12:14:25.33 ID:0tzlm+r70
ごちそうさまでした
ホットケーキウマー
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/22(土) 12:40:16.13 ID:0tzlm+r70
そして、俺はそろそろ出かけてくりゅー
夜帰って来てもスレが残っていれば幸せだ
ネタが投下されていればもっと幸せだ!!
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
保守ー