「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」

このエントリーをはてなブックマークに追加
1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは
都市伝説と契約して他の都市伝説と戦ってみたり
そんな事は気にせず都市伝説とまったりしたりきゃっうふふしたり
まぁそんな感じで色々やってるSSを書いてみたり妄想してみたりアイディア出してみたりするスレです


「まとめwiki」 ttp://www29.atwiki.jp/legends/


まとめ(途中まで) ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/urban_folklore_contractor.html


避難所は↓だよ!規制中やスレが落ちている間はこっちでゆっくりしていようね!
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13199/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 11:53:55.92 ID:ZeAnttv60
よくある質問



 このスレってジャンプの某読みきりと関係あるの?



始めにこのスレを立てた>>1が何を考えて、スレを立てたのか
今となっては、その真相はわからない
ただ、ここに集まった者たちは、各自思い思いに妄想をぶちまけていき、今のこのスレの形となっていった


まぁ、結果としては関係あるかどうかとか、どうでもよくね?
ぶっちゃけ、ほぼ関係ない内容だし
3A-No.218_report ◇kemono..Qk(代理):2010/03/23(火) 11:58:09.38 ID:ZeAnttv60
A-No.218_report_03

 契約者・橘野悠司(以下契約者A)に対し、悪魔の囁きと思われる契約者(以下対象B)の討伐任務を与える。
 目標地点(以下C地点)までのルートをエイダによって走査、契約者Aをナビゲートする。

 C地点手前に二人の人物を確認。契約者Aに警戒するよう指示し、契約者Aとの通信を切断する。
 なお、後の報告で、D-No.962(以下黒服D)と、その担当契約者(以下契約者E)であると判明。

 契約者Aが、黒服Dと契約者Eに接触。C地点に進入し、任務を行う。
 その後、契約者Aが黒服Dと共にC地点から離れるのを確認。エイダによる追跡を行う。
 契約者Aが帰宅した後も連絡が無かったため、こちらから連絡。任務の報告を受ける。
 黒服Dが対象Bを保護したとの報告があったため、任務を破棄。保護された対象Bについては、一切の関与を行わない。

 後日、黒服Dに対し任務報告書の提出要請を行う。



以上で報告を終わる。
4恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/23(火) 12:00:28.48 ID:ZeAnttv60

 山田治重は都市伝説の契約者である。
 間接的な物も含めれば4つの都市伝説と契約した彼は、学校町の中でもそこそこ強力な部類に入るのだろう。
 不死を得、空間移動能力を得、脚力を得、そして鉄をも曲げる怪力を得た男。
 しかしもちろん、山田には出来ない事がいくつも存在する。
 どんなに都市伝説と契約した所で、それが「万能」を意味する事はない。
 穴を埋めるように網を張り巡らせたところで、必ずそこから漏れ出るように小さな穴が出現するのだ。

「…見逃して、やる、から………俺に、関わるな……」

 だからこそ、山田は悩んでいた。
 目の前には、一人血を吐き続ける黒服がいる。
 見捨てる事は容易い。
 見逃してくれると言っているのだから、今すぐにここから離れればいいだけの事だ。
 助けるのは難しい。
 山田にあるのは、人を殺し、また守るための力。
 それは「治療」という言葉から遠く離れた存在だった。

「さっさと、消えろ……俺の気が、変わらないうちに……」

 血を吐きながらも、黒服は山田を遠ざけようとする。
 明確な拒絶。
 山田元より、そこまで押しの強い性格ではない。
 きっぱりと断られればそれ以上踏み込む事はしないし、ましてやここまで拒絶されれば、普段なら落ち込みながら去っていく所だ。
 平凡に育ってきた山田は、一般的な倫理を元に行動する。
5恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/23(火) 12:03:24.12 ID:ZeAnttv60
「…………いいや」

 ――しかし、それは「普段」の事で、こんな緊急事態はその範疇の外だった。
 何もできないかもしれない。
 居ない方が良いのかもしれない。
 それでも、何もせずに立ち去る程、山田の倫理は崩れていなかった。
 結局の所、それは単なる自己満足でしかないのだろうが。

「見捨てられるわけないだろ、普通。いくらなんでもそこまで人間捨ててないぞ、俺は」
「……馬鹿、野郎が……」

 一瞬、その髪が山田を追い払うためにぴくりと動く。
 しかしそれ以上動かす気力も、体力も、黒服には残されていなかった。
 こんな状況下での無理な能力の使用は、それこそ本当に黒服を死に至らしめる可能性すらある。
 忌々しげに、黒服は血で染まった歯を食いしばって

「……そこの、ピルケースだ……それを俺に、渡せ……」
「ピルケース?」

 発作か何かの薬だろうか、と山田は黒服の周囲を見渡した。
 既に周囲は夜の闇に包まれ、電灯と辺りの家から洩れる明かりだけが二人を照らしている。
 そんな中でも、ピルケースはすぐに見つかった。
 倒れる黒服の、すぐ隣。
 ちょうど手から取り落とされたように、それは黒服の手の先に転がっていた。
 闇に紛れてしまいそうな黒い錠剤が、そこから零れ落ちている。

「これか……?」

 山田は屈んで、それを拾い上げた。
 周囲に散らばった錠剤を回収する事も忘れない。
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:03:47.83 ID:UWuy1ouL0
一晩寝かせたカレーは旨い

スレ立て乙です支援!
7恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/23(火) 12:08:48.90 ID:ZeAnttv60
 それを黒服の目の届く範囲に持っていくと、もう言葉を発する事も苦しいのか、こくりとだけ、黒服が小さく頷いた。
 取りあえず目的の物を見つけた事に山田は安堵して、ピルケースを黒服へ渡そうと手を伸ばしたのだが。

「……あれ? けどこれ渡しても飲めなくないか」

 渡す直前で、気付いた。
 そもそも取り出すまではこの黒服でもできたのである。
 それを開け、口に運ぶ事が出来なかったからこそ、ピルケースはアスファルトの上に転がっていたのだ。
 つまり、これを渡した所で、また落すのは目に見えているわけで

「……口移し?」
「…殺すぞ……」

 思わず呟いた山田に、黒服がほとんど動かないはずの口を動かして反発した。
 普段佳奈美に同じような冗談を口にしている黒服だが、今この生死にかかわるような状況でそれに応じるつもりはないらしい。
 少しでも場を和ませようと努力したつもりの山田としては、何とも不本意な結果である。

「いや、冗談だって」
「(何慣レネェ冗談言ッテンダ、馬鹿野郎。ヤルナラサッサトヤッテズカラロウゼェ?)」
「何だと、俺だってジョークの一つや二つ……」
「(いじケテネェデサッサトヤレッテ言ッテンダヨ。死ヌゾ、コイツ)」
「くそ……これ、直接口に放り込めばいいのか?」
「……ああ……」

 もはや突っ込む気力もなく、黒服は山田の問いにただ頷いた。
 それを確認して、山田がピルケースから落ちた物ではない方の錠剤を一粒取り出す。
 こんな黒い錠剤を飲んで大丈夫なのかと山田は少しだけ心配になったが、目の前で実際に吐血をしている人間が飲ませろと言っているのだ。
 さすがに劇薬という事はないだろう。
 手にした錠剤を、黒服の口へと持っていく。
 血を吐き続ける口の中へ押し込むようにして錠剤を入れると、残った力を振り絞るようにして、黒服はその口を閉じた。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:09:14.57 ID:UWuy1ouL0
しえーん
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:09:33.45 ID:w3ZRIbQt0
支援
10恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/23(火) 12:12:25.52 ID:ZeAnttv60
「……大丈夫か?」
「……ああ……」

 先程と同じ、しかし少しだけ張りのある声で、黒服は答えた。
 即効性の薬だったようで、どうやら窮地は脱したらしい。
 その様子にほっとしながらも、山田は懐から携帯電話を取り出して

「取りあえず救急車、呼んだ方がいいだろ?」
「(ハァ? 都市伝説ヲ人間ノ医者ナンカニ見セチマッテモ良イノカヨ)」
「何を言っているのかこの悪魔は。この人は人間に決まってるだろう、うん、きっとそうに違いない」

 山田の言葉を聞いて、黒服は少しだけ複雑そうな表情をしたのだが、内側に意識を集中させている山田はそれに気づかなかった。

「(……ソレ、テメェガ信ジテェダケジャネェカ)」
「いーや、初対面の人を都市伝説だと疑う方が異常なの。大体、『組織』の黒服だって全員が全員都市伝説なわけじゃないんだろ?」
「(知ラネェヨ。少ナクトモ大半ハ都市伝説ナンジャネェノ?)」
「だったらこの人も人間かも知れないだろ――――あれ?」

 携帯で救急車を呼ぼうとしていた山田の顔が、怪訝そうに歪んだ。
 先程から電源を入れようとボタンを押しているのだが、うんともすんとも返ってこない。
 何故だろう、と山田は首を傾げかけて、ここ最近携帯の充電をし忘れていた事に気がついた。
 大方、電池の残量に気づかずに電源を切って、そのまま自然消耗してしまったのだろう。

「……悪い、ちょっと電話ボックス探してくるから、ここで待っててくれ」
「(あほダナァ、オイ)」
「(誰にでもミスはあるだろ……)」

 嘲笑するデビ田に脳内で言葉を返しながら、山田は黒服の返答を待たずに駈け出した。
 その時の山田は、まだ知らない。
 絶滅危惧種の電話ボックスを探す事が、どんなに大変な事なのかを。
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:13:03.69 ID:UWuy1ouL0
支援
12恐怖のサンタ ◇c1fBPhtoT6(代理):2010/03/23(火) 12:17:22.77 ID:ZeAnttv60
**************************************************

 10分後、山田はようやく元いた場所へと走っていた。
 意気揚々と駈け出したつもりが、思いのほか時間を食ってしまっている。
 ようやく電話ボックスを見つけたものの、救急車が到着するまでにまた少し時間がかかってしまうだろう。
 あの黒服の状態から見て、それまで持つかどうか。

「俺が子供の頃はそこら中にあったはずなのに……」
「(時代ガ違ェヨ、時代ガ。今ハ携帯電話ガ主流ダロォガ)」
「いや、それでも2、3分で見つけられると思ったんだけどな……」
「(甘ェナ。大体テメェハてれぽーとガ使エンダカラソレデ運ベバヨカッタダロウニヨォ)」
「…………あ」
「(ハッ! ダカラ鶏頭ナンダヨ、テメェハ)」

 からかうデビ田の声に山田はうなだれて、最後の角を曲がった。
 この先で、あの黒服が死んでいなければいいと、山田は半ば願うようにしていたのだが――――

「……あれ?」

 ――――その先に、あの黒服はいなかった。
 それどころか、あれ程吐血していたはずの血の痕跡すらない。

「……え? あれ? 俺道間違えたっけ?」
「(勝手ニドッカ行ッチマッタンダロ。オレサマダッテ、テメェニ任セルクライナラ自分デ歩クゼェ?)」
「けど、あんな状態で……」

 不安そうに呟いた山田の声は、誰もいない空間に飲まれて、消える。
 後に救急車が到着して、山田は悪戯かと怒られた上に帰りが遅くなった事で恋人にも説教を喰らう事になるのだが
 少なくとも今はあの黒服の事を、山田はただ心配していた。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:18:33.14 ID:UWuy1ouL0
しえんー
14日々の鍛錬 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:19:40.10 ID:ZeAnttv60
 学校町 北区 古ぼけた教会裏手の山中にて………



 木々が、揺れている
 風で揺れている訳ではない
 何かが、たんっ、たんっ、と周囲の木々を足場にして跳び回っていて……足場にされた瞬間の衝撃で、揺れているのだ
 ごがっ!がごっ!!と、空中でぶつかり合っているのか、打撃音も時折、響き渡る

「−−−−−っふ」

 だんっ、と
 地面に着地した、髪を茶色く染めた青年…清川 誠

「−−−−−っは」

 どんっ、とやや太い木の枝に着地した人狼…マリ・ヴェリテのベート
 二人は、別に戦っているわけではない
 ただ、組み手をしているだけだ
 ……山の中を縦横無尽に駆け回り跳び回りながらのそれを組み手の範疇に入れてよいものかどうか、一般的な感覚から見れば大変と疑問なのだが
 少なくとも、本人達にとっては組み手の範疇である

 二人は睨みあい、小さく呼吸し…

 ……次の瞬間、再び跳ぶ

 その直前、誠は、どこか幽霊を思わせるような構えをとっていて………その気配が、忽然と消える


 −−−−背後か?
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:20:44.63 ID:UWuy1ouL0
なにそれこわい
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:21:26.01 ID:UWuy1ouL0
誤爆しえーん!
17日々の鍛錬 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:24:14.09 ID:ZeAnttv60
 足元か?
 それとも上か?


 ひく、とマリの鼻が動く
 気配こそ感じないものの、マリ・ヴェリテのベートたるマリは、匂いで相手の居場所を判断する事ができる
 背後に迫るそれに、マリは拳を突き出した

 とんっ、と
 マリの突き出した腕に片手を置き、くるり、逆立ちするように宙に舞う誠
 アクロバティックな、予測不可能な動き
 その不安定な状態から、マリに向かって踵落としを決めるべく、勢いをつけて足を振り下ろした

 響き渡る、鈍い音

 その一撃すらも、マリは受け止めた
 ぐるり、片脚を受け止められたまま体勢を入れ替える誠
 受け止められたのとは逆の足が、今度は横からマリに襲い掛かる
 が、マリはそれすらも、受け止めて

「っ!?」

 ぶんっ、と
 誠の体を、軽々と投げ飛ばした
 木の幹に叩きつけられそうになったものの、誠は木の幹に着地して、事なきをえる

 再び、2人が睨み合った………その時


「そろそろやめにしたらー?もうちょっとで夕食できるわよーーー」
18日々の鍛錬 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:26:25.33 ID:ZeAnttv60


 響き渡った、女性の声
 スパニッシュフライの契約者、桜門 留美だ

 恋人の言葉に、マリがそちらに視線をやる

「あ?もうそんな時間かよ」
「じゃ、今日はここまでにするか」

 誠も、伸びをしながら留美に近づいていく
 …見れば、空は随分と赤くなってきていた
 もう、こんな時間になっていたのか

「ほらほら、シャワー浴びる時間もあるんでしょ?行くわよ。コロッケはもう揚がってるんだから」
「コロッケー!」

 ちょーん
 幼女姿になって、てちてちと留美に駆け寄るマリ
 相変わらず、気分でコロコロと姿が変わる

「…それにしても、相変わらず人外の鍛錬してるわね、あなた達。途中の動き、全然見えなかったわよ?」
「そうか?」

 留美の言葉に、誠は首を傾げて見せた
 少なくとも、誠としては特に無茶な事をやっているつもりはない
 それは、マリも同じ事だ

「俺が師匠に稽古つけてもらってた時も、大体あんな感じだったぞ?」
「いつも思うけど、あなたに稽古つけたお師匠さんってどんな人だったのよ」
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:26:35.13 ID:UWuy1ouL0
糖分ウマー支援
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:28:07.59 ID:w3ZRIbQt0
支援!
21日々の鍛錬 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:28:44.69 ID:ZeAnttv60
「人間だったー?」

 …誠の戦闘スタイルは、一応、とある格闘技に即したものである
 マイナーの極みどころか、一部では外法扱いでもあるその流儀を誠が使えるからには、当然、師匠が存在する
 留美とマリの問いかけに、誠は大学に入ってすぐの頃の記憶を呼び戻しつつ、答える

「…多分、人間だった。気まぐれっつーか自分勝手つーか。ある意味、自己中の極みだったな。世界中気まぐれに旅して回ってるらしいから、今ごろどこにいるやら」

 正直、生きているかどうかもわからない
 いっそくたばっていれば世界平和に繋がる気もするが、誠個人としては、まだくたばられては困る

 自分は、もっと強くならねばならない
 そのためには、まだあの師匠から盗んでいない技も習得していかなければ

 護りたいのだ
 大切な親友も、今、共に生活している仲間達も
 全てを護りたいからこそ、もっともっと、強くなりたい
 もっと高みを、目指したい

 マリやマッドガッサーとの組み手に不満がある訳ではないが、相手が限られていると、どうしてもパターンが決まってしまう
 出来れば、様々な相手と組み手をしていくに越したことはない

 単純な力比べでは、マリに敵わない
 マッドガッサー相手では、間接を決められてしまえばそこまでだ
 組み手を通して、自分の弱点、足りない部分も認識していく


 …翼の父親である、朝比奈 秀雄
 あの男に、今の自分でどれだけ通用するか
 ……それが、今の一番の課題だ
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:30:06.66 ID:UWuy1ouL0
支援
23日々の鍛錬 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:31:18.70 ID:ZeAnttv60


 翼の契約都市伝説の力をものともせず、腕の一振りで小さなビル二つを破壊した力
 少なくとも、単純な力勝負では自分は敵うまい
 ならば、どうやって戦うか?
 力勝負で勝てない相手との戦闘を想定しての組み手相手は、今のところマリ相手くらいだ
 しばらくは、マリ相手を中心に、訓練していくしかない

「マリ、悪いけど、これからも組み手付き合えよ?」
「肉たくさん食わせてくれるならいいー」

 留美と手をつなぎながら、幼女の姿のまま、そう答えてきたマリ
 …仕方ない
 今度、食事当番になった時には、スキヤキでも作ってやるか、と考えながら
 わかった、と誠は適当に返事を返したのだった



 護るべき者の為に
 強くなりたいと、強く強く、願い続けながら


to be … ?
24デビ田の考察 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:33:28.89 ID:ZeAnttv60
 青年、山田 治重は悩んでいた
 原因は、テーブルの上に置かれた………どす黒い色の、錠剤

 先日、遭遇した「組織」の者らしい、黒服の青年が所持していたピルケースから零れ落ちた物だ
 ピルケースは黒服に渡したのだが…零れ落ちていたそれは、渡し損ねてしまっていて
 今朝方、ズボンを洗濯しようとしてくれた良子がこれに気づき、「はる君、これなんだろ?」と言ってきて、ようやく、うっかり持ち帰ってしまったことに気づいた
 ……………さて

「…どうしよう、これ」
『捨テチマエバイインジャネ?』
「いやいやいや、こう言う明らかに医薬品を気軽に捨てちゃ駄目だろ…」

 デビ田の言葉に、そう返す山田
 デビ田は、山田の頭の上に実体化して、にょろり、とぐろを巻いていた
 実体化しても、特に被害を与えられないと知ったら、たまに気まぐれで表に出てくるようになったのだ
 ……ただし、子ライオンがいる時は、うっかり獲物と間違えられて襲撃される為、出てこないが

「って言うか、どう言う薬なんだ、これ…」

 こんな色の錠剤、見た事がない
 暗闇に落ちれば、闇に紛れてしまいそうな、そんな色
 はたして、通常の医薬品がこんな色をしているものか?

 にょろ、と山田の頭の上からその錠剤を見下ろし、デビ田は呟く

『普通ノ医薬品ナ訳ネェダロ。都市伝説ガ服用シテル薬ダゼ?』
「いや、彼は人間だろう。うん。人間が服用してるんだから普通の医薬品だよな」
『マダ認メテネェノカ、コノへたれ』

 ぺちぺちぺち
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:33:41.71 ID:UWuy1ouL0
しえんー
26デビ田の考察 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:35:36.64 ID:ZeAnttv60
 尻尾の先で、軽くはたかれる
 まぁ、デビ田は小さな蛇の姿をしている為、はたかれてもダメージは一切ないのだが

『確カニ、元人間ノ「組織」ノ黒服モイルダロウケドヨ。都市伝説ニ飲ミ込マレテ「組織」ノ黒服ニナッチマッタ以上、ソイツは都市伝説ダロウガ』
「いやいやいや、もしかしたら、黒服の格好をしているだけでただの契約者かもしれなかったし」
『現実見ロヤ、へたれ。ッツカ、アイツばりばり都市伝説ノ気配サセテタジャネェカ』

 呆れたように、そう山田に告げるデビ田
 …続けて、呟くように言う

『マァ、アノ黒服自身、都市伝説ニナッチマッタ自分ヲ拒絶シテタミタイダガナァ?』
「………は?」

 デビ田の言葉に、きょとんとする山田
 にょろり、動きながらデビ田は疑問を抱いたらしい山田に伝える

『オ前ガアノ黒服ニ近ヅイタ時、微妙ニアノ黒服ノ心ガ見エタケドヨ。アイツ、魂れべるデ都市伝説ニナッタ自分ヲ拒絶シテタゼ。アノ状態ガ続ケバ、遅カレ早カレ消滅スルナ、アイツ』

 −−−都市伝説が何故生まれ、どうやって存在しているのか?
 諸説あるが、その原動力は人々の思い、願い、信じる力、恐怖などだと言われている
 通常ならば、「そんな恐ろしいもの、存在して欲しくない」と言う拒絶の思いすら、都市伝説を生む可能性がある
 だが、生まれた都市伝説が、全て存在し続けるとは限らない
 語れず、忘れ去られる事で消滅する可能性もあるし……生み出された本人が、生れ落ちた自分自身を拒絶する事もある
 その拒絶は、とくに、人間が都市伝説と化してしまった時に、よく起こる現象だ
 都市伝説に飲み込まれても自我を保ってしまった人間にも、よく発生する
 今まで人間であった自分が、人間ではない別の存在と化してしまった
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:37:04.30 ID:UWuy1ouL0
支援
28デビ田の考察 ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 12:38:21.36 ID:ZeAnttv60

 その恐怖や絶望、拒絶から、都市伝説になってしまった人間は……消滅してしまう事が、ある
 人間の思いで生まれる都市伝説と化してしまった人間が、己の拒絶から消滅する可能性があると言うのも、皮肉な話だ

 デビ田から、見て
 あの黒服は、存在し続けていられるのが不思議なほど……都市伝説と化した己を、激しく拒絶していた

『案外ソノ薬、アノ黒服ヲ無理矢理都市伝説トシテ固定化サセル為ノ物カモナァ?』

 「組織」にはそう言う薬も存在すると、デビ田は契約者の知識から知っていた
 …同時に、それが劇薬一歩手前の存在である事も

 あの薬を服用し続ける限り
 いや
 己の存在を否定し続ける限り
 あの黒服は、いつか死ぬ
 消滅する

 山田の頭の上で、他人事のように考えながら
 しかし、デビ田はそう、確信していたのだった




to be … ?
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:39:19.73 ID:UWuy1ouL0
支援ー
30笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:42:01.74 ID:ZeAnttv60
【電磁人の韻律詩22〜世紀末中華料理店『北斗神軒』〜】

カラコンコロン
笛吹探偵事務所のドアが開いてベルが鳴る。

「ココが笛吹探偵事務所アルカ?予約していた魁ダヨー!」
「あれ、お嬢ちゃん迷子?ここは探偵事務所でお菓子屋さんじゃないよ?」

恋路がその珍客に出会って最初にかけた言葉はそれだった。

「失礼な小娘ネ、コレデモ立派な成年女子ヨ。」
「え?」
「私が依頼の予約をしていた魁アル、笛吹は何処に行ったカ?」
「あ、魁さーん!もう来たんですか?予約より一時間早いですよ?
 笛吹さんなら今はNYに出張してます。」
「そうだったカ?そりゃあ済まなかったネ。うっかり忘れてたヨ」
「い、依頼者の方?」
「そうアル、さっきからそう言ってるネ。」

事務所の奥から向坂が出てきて彼女に応対する。
どうやら彼女は笛吹探偵事務所に来た依頼人らしい。
しかし恋路はそれを信じられなかった。
何故なら、目の前に居る「セイネンジョシ」はどう見てもバスなどの公共交通機関を半額で乗れそうな外見だったからである。
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:42:14.88 ID:1epcXLbb0
揚げ餅美味かったです支援
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:42:42.57 ID:UWuy1ouL0
sien
33笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:49:08.60 ID:ZeAnttv60
「ほんっっとうに申し訳ございませんでしたあ!」
「良いアル、この程度気にしていたら今まで生きてこられないヨ。」
「あのね、恋路ちゃん。この人は学校町の名物中華料理店『北斗神軒』の店長で、
 近くの道場で子供たちに太極拳を教えている魁喬さんって言うんだよ。
 この人の酢豚がすっごく美味しいの!」
「ちなみにNYに弟子が二号店出したね、今度NY言ったラヨロシクタノムヨ。」
「あの、ちなみにおいくつなんでしょうか……。」
「ふっ、女性は秘密を纏って美しくなるネ。」

恋路はますます目の前の女性のことが解らなくなっていた。
戸惑っている様子の恋路を見て向坂が話を切り替える。

「ところで今回の依頼ですが……。」
「オット、話してなかったネ。最近私の店の周りに都市伝説が出て困ってるヨ。
 退治して欲しいネ。」
「成る程……、どのような都市伝説でしょうか?」
「エットー、夕方歩いてたら追いかけられたラシイネ!
 口が裂けてたらしいヨ。
 それと女性しか狙わないらしいアル!
 卑劣ネ!女性の敵アル!」
「それは魁さんが直接会った訳じゃないんですか?」
「私が太極拳教えている子供が追いかけられたらしいアル!
 許せないヨ!」
「成る程、……解りました。」

向坂は魁の話を紙にメモするとすばやく笛吹に電話する。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:49:45.51 ID:5soSD5rI0
紫煙
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:50:13.20 ID:UWuy1ouL0
私怨
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:51:09.51 ID:1epcXLbb0
支援
37笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:51:29.88 ID:ZeAnttv60
「笛吹さん、魁さんがいらっしゃいました。
 はい、都市伝説関係です。
 はい、はい、……明日君は別件で今出てます。
 ………え?」
「どうしたアルカ?
 笛吹が居るなら替わって欲しいアル。」

魁は小さな手を電話に伸ばす。
向坂はとりあえず魁に受話器を渡す。

「笛吹君?ニューヨークに居るノカ?」
「はい、そうなんですよ。貴方のお弟子さんの店にも行きましたよ。」
「キイタネ、君には少し辛みタリナカタカ?」
「いえいえとんでもない、素晴らしい味でしたよ。」
「そうやって甘いこと言っているとあの馬鹿弟子つけあがるネ。
 もっとガツーンいったげなきゃダメヨ!」
「はぁ、すいません……。
 ところで依頼の件なんですけど、そこに居る恋路に任せても良いですかね?
 話を聞いた所、都市伝説退治をすればそれで大丈夫みたいですし。」
「ワカッタネ、君が言うんだタラこの子に任せルヨ。」
「じゃあよろしくお願いします。」

プツッ
電話は切れた。
魁はニコニコと微笑みながら恋路の方を見る。

「聞いてたカ?恋路チャン。あんたに何とかして貰うことにナッタヨ。
 ヨロシク頼むね。」

魁はそう言って恋路と握手した。
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:52:26.29 ID:UWuy1ouL0
支援ー
39笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:53:43.71 ID:ZeAnttv60
「さてさて、ここかなぁ?」

恋路は地図を確認しながら辺りを見回す。
しかし場所はあまり解っていない。
地図を読むのが苦手なのだ。
依頼人の話から考えると出没する都市伝説は恐らく口裂け女だろう。

「しかし、女の子しか狙わないって……どうよ?」

相手がもし口裂け女だとするならばだ。
自分が綺麗かどうかを女の子にしか聞かないなんておかしな話だ。
自分が綺麗かどうかなんてそれこそ異性に聞けば良いではないか。
恋路は違和感に囚われていた。

「ねーねーおねーちゃん、わたし綺麗?」
「――――――!」

恋路は驚いて後ろに飛び退く。
彼女の背後に立っていたのは唇を塗りたくった女の子だった。

「口裂け女!?」

恋路はその子供を警戒する。
もしかしたら子供の姿の口裂け女だって居るかもしれない。
そう思っていたのだ。
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:53:51.85 ID:1epcXLbb0
しえしえ
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:53:52.00 ID:UWuy1ouL0
外出前支援ー
42笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:56:09.52 ID:ZeAnttv60
唇を→口紅を
 
ですね、間違えてました。
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:57:25.57 ID:1epcXLbb0
支援!!
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 12:58:25.32 ID:5soSD5rI0
紫煙
45笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 12:58:45.02 ID:ZeAnttv60
「ふ、ふ、ふぇえええええええん!」

恋路が大声を出したせいで驚いてしまったのだろう。
女の子は泣き始めてしまった。

「……あれ、口裂け女じゃない?」
「えええええええええん!」

どうやら自分はこの少女を泣かせてしまった。
なんとか宥めようと思って恋路は少女の近くまで寄る。
すると、脅えた目をした少女は走りってそのままどこかに行ってしまった。

「あちゃあ、……悪いことしちゃったか。」

恋路はバツが悪そうに頭を抑える。
子供を泣かせてしまうというのはあまり気持ちの良い物では無い。

「あの、すいません。」
「なんですか?」

そう思っていると彼女は後ろから声をかけられた。

「ゴホッゴホ!さっきこの辺りに女の子は居ませんでしたか?
 口紅を塗りたくっていたと思うんですが……。
 ああ、彼女は僕の妹なんですよ。まだやんちゃ盛りで……。」

彼女に声をかけたのはマスクをした青年だった。
どうやら風邪を引いているらしい。
恋路はその青年に少女が向かった方向を教えると、
自分は近所の公園で少し休むことにした。
46笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:00:54.07 ID:ZeAnttv60
「どうしたネ、恋路ちゃん。
 なんかちょっと落ち込んでるミタイネ。
 調査も一日や二日でそう簡単に見つかる訳じゃないしそんなに落ち込むナヨ。」
「あ、魁さん。」

公園で休んでいると急に魁が現れた。
魁は暖かい缶コーヒーを恋路に投げて寄越す。

「魁さん、私、都市伝説と戦うのはまだしもこういう探偵の仕事って上手くできないんですよ……。
 その上、さっきは普通の女の子を口裂け女と間違えちゃったり……。
 向いてないのは解ってたんですけど……、凹むっていうか。」
「私ダテ若い頃上手く行かないことアッタネ。
 でもその度に必死で努力したヨ。
 駄目でも駄目駄目でも駄目駄目駄目でもとりあえず目の前の壁に身体ごと突っ込んでミルネ。
 意外とその壁も罅入ってたりするヨ。
 マァ、コーヒー飲め。」
「ありがとうございます……。」

恋路の飲んだコーヒーは苦かった。
缶を見てみるとブラックだ。

「魁さん……。」
「糖分と脂肪は乙女の敵ヨ。」
「はい……。」

しかし糖分大好き娘である恋路は苦い物が苦手だ。
ますます凹んだ気持ちになる恋路であった。
47笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:03:13.64 ID:ZeAnttv60
「それじゃあ私ももうイクヨ、店の仕込みアルね。」
「はい、私ももうちょっとこの辺りを探し回ってみます。
 日没まであと少し有るんで。」

そう言ってそれぞれベンチから立ち上がろうとした時だった。

「キャアアアア!」

どこからか子供の悲鳴が聞こえる。

「あれは……。ってアレ?恋路ちゃん!」
「ちょっと様子見てきます!」

魁が声を出す前に恋路は走り出していた。
先程聞こえた声に彼女は聞き覚えがあった。
そしてそれが正しかったとすれば、彼女はとんでもないことをしてしまったかもしれないのである。

「何をやっているの!」
「おや?」

彼女の予想は正しかった。
悲鳴を上げていたのは先程会った口紅の少女。
そして、

「何をやっているの、聞いているの!」

口紅の少女に襲いかかる都市伝説は……

「口裂け女、いいえ。
 ――――――――――――口裂け男!」
48笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:05:22.52 ID:ZeAnttv60
「おやおや、ばれちゃったか。」

男は口元も裂けんばかりに――いや実際裂けているのだが―――笑う。
その姿は間違いなく都市伝説。
この街に巣くう怪異。

「残念だなぁ、今日はこの可愛い女の子に僕が綺麗かどうか聞こうと思ってたんだがね。
 ほら、子供の感性ってピュアで美しいだろう?
 だから子供に聞いて美しいと言われれば僕は自分が美しいと自信を持てたんだが……。
 邪魔が入ってしまった。」
「そんな下らないことはどうでも良い!早くその子を放してやれ!」
「嫌だね、これから彼女には僕が綺麗かどうか判定して貰わねばならない。」

恋路は少女を救おうとすばやく走り寄る。
しかし、口裂け男はそれに気付いて鋏を少女に向けた。

「おぉっと!下手に近づいてみろ、子供がどうなっても知らんぞ?」
「子供を人質に取る気か!」
「当たり前だ何が悪い!」
「ゲス野郎め……………。」

恋路は憎しみ一杯に口裂け男をにらみつける。
彼女の拳では遠くの相手を倒すことが出来ない。
彼女が人間だった頃に修めていた拳法はあくまで護身術であって、
相手の攻撃が自分に向いた時にそれは始めて意味をなす類の物なのだ。
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:09:26.85 ID:1epcXLbb0
支援
50笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:09:40.93 ID:ZeAnttv60
「僕は足が速いからなあ、このままこいつを人質にして一旦逃げさせて貰うぜ?
 お前が何者だろうと僕の速さに敵うわけがない。
 それじゃあな!」

そう言って口裂け男はクルリと後ろを向いて逃げ出す。
恋路は、自分が黙っていたからと言って人質が安全とは限らないことも理解はしていた。
しかし動けなかった。
人間であった頃の彼女ならばもしかしたら子供ごと都市伝説で攻撃したのかもしれない。
だが今の彼女にそれはできなかった。

「オイ、待てヨ。」
「なんだガキィ!」
「その子置いてイクネ、そしてこの辺りにもう二度と出没しないと誓うなら許してやルヨ。」
「な、何言ってんだぁ?」

いつの間にか、口裂け男の後ろに子供が一人立っていた。
いや子供ではない。
魁喬だ。

「……何時から、其処に?」

恋路はポツリと呟いていた。
恋路は一応、人間であった頃は武術を嗜んでいた。
だからなのか人の気配とかそう言う物にはとてつもなく敏感である。
しかし、彼女は魁喬がそこにいたことに今まで気付かなかったのだ。
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:11:01.88 ID:1epcXLbb0
紫煙
52笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:11:54.49 ID:ZeAnttv60
「五月蠅い男アル、言うこと聞かないならこうダヨ!」
「え………」
「――――――――――――裡門頂肘!」

低い体勢から、全身の体重を肘一カ所に集めて口裂け男の顎を打ち上げる。
その勢いを利用して彼女は飛び上がると口裂け男の肋骨の隙間に靴の先端で蹴りを打ち込む。
遠くへ吹き飛ばす蹴り方ではない。
靴の先端を肋骨の隙間に引っかけて男を地面に叩き落とすような蹴り方だ。

「脳と肺を少しばかり弄らせて貰ったアル、ろくすっぽ立てない筈ヨ。」
「ガハッ……!なんだこれ……ゴホッゴホッ!」
「ほら、そこの少女、あのお姉ちゃんの所に行って守って貰うネ。」

少女は頷くと恋路の下に駆け寄った。
恋路は少女を抱きかかえると口裂け男と魁喬から距離を取る。

「ちくしょう、なんだこの化け物!」

そう言って口裂け男は恋路の方へ逃げてきた。
さすが口裂け女の系列の都市伝説だけあって動きは速い。

「そこをどけ!」

鋏を振り回して道を空けるように脅すが恋路はそれに応じるつもりはない。
恋路は少女を自分の後ろに立たせる。
彼女は腰を軽く落として左半身だけ前にむけた基本的な構えをとった。
口裂け男が鋏を振り下ろす隙を狙って彼の腕をつかみ取り、そのまま腰を一気に落として背後に回る。
まず最初に手首をひねり、次に片手で固定して肘を破壊、足払いをかけて体勢を崩した所で一気に肩を外した。
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:13:26.00 ID:1epcXLbb0
私怨
54笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:15:53.46 ID:ZeAnttv60
「ギャアアアアアアアアアア!!!」

口裂け男が叫ぶ。
いくら都市伝説と言っても間接を壊されると痛いのだろう。
腕を押さえて悶絶している。

「おー、なかなか上手ネ。何かヤテイルと思ってたがヨーロッパの方の技か。」

魁喬が前から近づいてきて感心したように言う。

「あ、どうも子供には目の毒だとは思ったんですけれど仕方なくて……。」
「良いよ良いよ、キニスルコトナイネ。お嬢チャン、もうこんな時間アル。
 早くお父さんお母さん所に帰るアルよ。」
「は、はーい……。」

魁喬にそう言われると少女は帰ってしまった。
恋路は組織に電話を入れて口裂け男を回収してもらうと魁喬と一緒に事務所の辺りまで帰ることにした。
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:17:35.31 ID:1epcXLbb0
四円
56笛 ◇rpv9CinJLM(代理):2010/03/23(火) 13:18:09.69 ID:ZeAnttv60
「あの……依頼達成できていないので報酬は……。」
「報酬は別に良いヨ、君が居たから見つかったネ。それより……ワタシの道場来る気ないアルカ?
 基礎は出来ているみたいだからすぐに八極拳覚えられるヨ。」
「へ?」
「考えておいて欲しいアル、悩み事とか有ったら訓練するのが一番ヨ!」
「はぁ……。」
「それじゃあもうそろそろ店に着くんでサヨナラアル。じゃーな。」
「解りました、考えておきます。あ、……さようなら。」

恋路は自分の手をジッと見て考え込む。
「単に守るだけじゃ誰かを助けられないよなぁ」
自分ももっと強くならなくてはいけない。
恋路はとりあえず急いで家まで帰ることにした。
【電磁人の韻律詩22〜世紀末中華料理店『北斗神軒』〜fin】
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:19:01.07 ID:UWuy1ouL0
帰宅支援!
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:20:11.71 ID:dj3trDqTO
つまんねえ厨二ラノベはパー即でやれゴミ
59魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:20:27.57 ID:ZeAnttv60
 夜の空を魔女が飛ぶ
 箒にまたがる魔女一人
 街を見下ろし、飛び回る

「ひっひ……相変わらず、夜もきらびやかだねぇ?」

 繁華街の上空を飛びながら、魔女は1人、そう呟く
 北区などはそうでもないが、この繁華街の辺りは、夜でもきらびやかで、まるで昼間のように明るく感じる
 …人間は文明を発達させ、夜を恐れなくなった
 夜の暗闇を作り出した光で照らし、恐れなくなっていった
 本当に、恐れていない?
 それは違う、と魔女は思う
 本当に恐れていないのならば…都市伝説は、生まれやしない
 人間が本能的に闇を恐れるからこそ、都市伝説は生まれ続ける
 少なくとも、魔女の一撃たる彼女はそう考えていた
 だからこそ、夜の明るい街の上空を飛ぶのが楽しいのだ
 …畏怖すべき対象から目を逸らし、明るさを保つ事でそれを忘れようとしているその様子が、滑稽で仕方なくて

 それでも、適当に飛んで見下ろしたら、後はすぐに帰るだけだ
 目撃されても面倒である


 ………ただ
 この日は、いつもと違った


 迫ってきた気配に、感じた悪寒
 急浮上し、超スピードで接近してきたそれを避けた
 まるで、竜のような巨大な生き物が、一瞬前まで魔女が飛んでいた場所を通過していく
 その尻尾の先では、ちろちろと赤い炎が燃えていた
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:21:40.82 ID:w3ZRIbQt0
支援
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:21:41.43 ID:1epcXLbb0
支援!
62魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:22:55.90 ID:ZeAnttv60
「ひっひっひ……話に聞いている、カイザーとか言う都市伝説かい!」

 ぐぉおおおおおおおおん!!
 魔女の言葉に答えるように、竜……カイザーが吼えた
 背中には、誰も乗せていない
 だが、カイザーの契約者は、恐らくこちらが見えている位置にいるだろう、と魔女は推理した
 どうやら、契約者が指示を出す必要がある都市伝説であるらしいから、相手がこちらを見えていなければ意味がない
 …もっとも、カイザーと契約者が視覚を共用できると言うのなら、別なのだが…

 おぉおおおおおん!!

 カイザーが吼える
 その口の中で、ちろちろと炎が燃えていた

「…っひっひっひぃ!まともに戦っても勝ち目はなさそうだねぇ?」

 ならば
 まともに戦わないに、限る
 魔女は、懐から小さな子瓶を取り出すと、カイザーに向かって投げつけた
 炎が吐かれる直前にカイザーに当たった小瓶は、ぱりん、と割れて薬品をカイザーにぶちまける

 ぐぉおん!?

 途惑った鳴き声をあげるカイザー
 体の自由が利かなくなったのだろう、飛び方がおかしくなる
 魔女が投げつけたのは、麻痺薬だ
 しばし、体が痺れてうまく動けない事だろう
 ……うっかり、地上に落ちたらどうするのか?
 まぁ、その時はその時だ
 多分大丈夫だろう、多分
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:23:15.66 ID:UWuy1ouL0
sien-
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:24:33.49 ID:1epcXLbb0
支援ー!
65魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:25:49.30 ID:ZeAnttv60
 万が一の時は、「組織」がどうにかするだろうし
 そう、他人事のように考えながら、魔女はさっさと逃走しようとした


 …………しかし


 ぐぉおおおおおん!!と再び聞こえてきた咆哮
 直後、魔女を灼熱の炎が掠った

「おぉっと!?………もう、回復したってのかい!?」

 見れば、カイザーは既に体の自由を取り戻していた
 …おかしい
 いくらなんでも、早すぎる

 ぎらり、爪を剥き出しにして、飛び掛ってくるカイザー
 ひらり、ひらり
 アクロバティックに飛び回りながら、魔女はそれを避けて…再び、麻痺薬を投擲した
 ばりん!と小瓶がくだけ、薬がカイザーを襲う
 再び、体の自由を奪われたカイザーだったが…

 …ぴろんっ♪と
 どこからか、電子音のような音が、響いた様な気がした

 どこからか現れた、小さな薬瓶
 その中身が、カイザーの口に注がれて
 次の瞬間、カイザーは体の自由を取り戻す!!

「っちぃ!!…ゲーム系の都市伝説、とか言ってたねぇ。まさか、ゲーム自体と連動しているのかい!?」
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:27:19.15 ID:1epcXLbb0
支援
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:27:22.53 ID:UWuy1ouL0
支援
68魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:29:19.49 ID:ZeAnttv60
 ゲームから生まれた都市伝説
 もし、その本体が、ゲームの中に存在するとしたら?
 傷ついても、毒や麻痺を喰らおうとも
 …ゲームの中でアイテムを使えば、回復する?

「冗談じゃなよっ!?」

 ますます、自分では歯が立たない
 魔女は、何とか逃げ道を確保しようとするのだが、カイザーは執拗に魔女に襲い掛かってくる
 契約者を探すのだが…どこにいるのか、わからない
 恐らく、繁華街のどこかのビルの屋上辺りから見ているのだろうとは思うのだが…

 どうする?
 仲間に助けを求めるか?
 だが、空中にいる自分を助けられる仲間など…

 ………いや

「…ひっひ。いいタイミングで来てくれたねぇ?」

 空が、曇りだす
 雲一つなかった夜空が、暗雲で埋め尽くされていく
 ばちっ、ばちっ、と
 その雲の中で…かすかに、雷が光った

「−−−−サンダーバード!!」

 魔女の一撃の呼びかけに、答えるように
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:29:50.92 ID:UWuy1ouL0
支援
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:31:30.44 ID:1epcXLbb0
…これを投下していた時、台詞の中に「い」を一個入れ忘れたとか恥ずかしくて言え内支援
71魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:31:39.53 ID:ZeAnttv60

 カイザーに向かって、特大の雷が落とされた


 ばちばちと、雷がカイザーの体を焼いた
 雄叫びを上げて、カイザーはビルに向かって落下していく

「……っとと!?」

 雷の衝撃は、あまりにも大きくて
 その衝撃破に、魔女の体も吹き飛ばされた
 慌てて、体勢を整える

「−−−っぶな……ひっひ、でも、助かったよ」

 空を見上げて礼を言うと、ごろごろと雷が鳴った
 …とりあえず、助かったようである
 ほっと、息を吐いた

「わたしゃ、ただ空を飛んでいただけなのにねぇ?………問答無用とは酷い相手だよ、まったく」

 ……とまれ
 相手が、想像以上に厄介らしい事はわかった
 恐らく、サンダーバードの雷で焼かれたとは言え……また、復活してくるだろう
 魔女の一撃は、さっさと教会まで逃げ帰る事にしたのだった




 そして
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:33:00.15 ID:1epcXLbb0
しぇん
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:33:11.54 ID:UWuy1ouL0
しえんー
74魔女とドラゴン  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 13:34:00.70 ID:ZeAnttv60
 魔女の一撃の予想は、当たっていた

「げんきのかけら」

 ぴろんっ♪

「まんたんのくすり」

 ぴろろんっ♪

 黒焦げになったカイザーだったが…契約者たる竜宮がゲーム内でカイザーにアイテムを使っていくと、それに連動するように、カイザーの傷が癒えていく
 あっと言う間に、元の姿に戻る

「ドラゴンタイプも持ってるから、でんきタイプの攻撃にも強いんだけどなぁ……うーん、もっと気をつけないと駄目だね」

 ぴこぴこ、旧式のゲームボーイを弄り、カイザーのステータスを見ながら、竜宮は考え込む

「「そらをとぶ」は秘伝技だから忘れられないとして…んー、「かえんほうしゃ」「きりさく」「はかいこうせん」じゃなくて、技を入れ替えてみようかな…?」

 むむむ、と少年は1人
 己の契約都市伝説の技の選択に、悩むのだった



to be … ?
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:35:11.77 ID:UWuy1ouL0
しえーん
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:35:42.13 ID:1epcXLbb0
支援!!
77なんだこれ!なんだこれ!(代理):2010/03/23(火) 13:36:16.94 ID:ZeAnttv60
ねぇねぇ、皆、どうして僕をいじめるの?

ねぇねぇ、皆、どうして僕を無視するの?

ねぇねぇ、皆、どうしてそんなに怯えているの?

へぇ、そっか ありがとう 僕が怖いんだ
でも、僕は怖くないから 一緒に遊ぼうよ
・・・どうして?どうして逃げるの?ねぇ、どうして・・・
・・・遊んでくれない人なんて、イラナイ

赤い赤い赤い どうして?
わかる 僕が殺した それだけ
いつか、僕を怖がらない人が見つかるといいな
でも・・・怖がらない人は全員
     ポワウフフ 
僕はどうして生まれてしまったんだろう 
ねぇ、どうして?
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:37:56.45 ID:UWuy1ouL0
支援ー
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:38:22.59 ID:1epcXLbb0
しえん
80一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 13:38:53.10 ID:ZeAnttv60
「侵入者が入口で暴れている!」「これ以上施設内に入らせるな!」
黒服たちが慌ただしく廊下をかけていく。

その上、天井。

「…急いでるときほど近くのことが見えないものだよなぁ」


赤と青に黒い網目が特徴的な全身タイツの男がへばりついている。

「流石蜘蛛。潜入捜査もお手の物だぜ…と言いたいところだが、生憎まだ天井を移動はできないんだ」
誰に言うでもなくそう言って、床に足をつけて廊下を歩いていく。
「しかし…」

雪歩ちゃんは一体どこに…


さっきから歩いているこの廊下、ところどころにドアがある。
不用意に開けて敵に気づかれてもまずい。
かと言ってこのまま廊下を歩いているだけでは雪歩を見つけることはできないだろう。

とにかく、今は進むしかない、か。


………
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:41:02.73 ID:UWuy1ouL0
しえーん
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:41:09.22 ID:1epcXLbb0
ネタ構想しつつ支援
83一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 13:43:05.55 ID:ZeAnttv60
「……?」

見覚えのない、金属質な壁。

…ここは…?
確か、お店で寝ていたはず…
「ようやくお目覚めか、No.28」

どこからともなく声が聞こえる。
聞いたことはないはずなのに、何故だか聞いたことがあるような感覚。

「あなたは…」「説明してる時間はない。早いうちにお前の能力を覚醒させる」
不意に、壁から筒のようなものが出てきて、それからガスのようなものが噴出される。
やがて、そのガスが部屋全体を包み込み―――――

「……かは…っ」


突如、雪歩は吐血した。
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:43:37.24 ID:UWuy1ouL0
支援
85一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 13:45:19.88 ID:ZeAnttv60
何が起こっているか分からない…

のどが痛い。体の節々が痛い。

体の中を壊されるような嫌な感覚。

頭が痛い。目が痛い。

頭の先からつま先まで、何かに侵されるような感覚。


―――― 一度、味わったような感覚――――

「…ゆ、…ゃ…、ゆう、と…しゃん…」



助けて――――――



「――――!?雪歩ちゃん!?」
不意に、雪歩ちゃんの助けを求める声が聞こえた。気がした。
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:45:29.16 ID:1epcXLbb0
支援
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:46:17.56 ID:UWuy1ouL0
しえしえ
88一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 13:50:02.87 ID:ZeAnttv60
「早く、早く…助けにいかないと」「連れて行ってやろうか?」
また、不意に、何かの声が頭の中を駆け抜けた。

「だ、誰だ!?」あたりを見回しても、声の主は見当たらない。


「ここだよここ、あんたの下」「え?」


Gだ。いつも見慣れている、Gだ。


「お前が、語りかけてるのか?」「あぁ、アメリカンな蜘蛛男さんよ」
今までいろんな昆虫さんと話してきたが、自分から語りかけてくる昆虫は初めてだ。
そんなことを考えている俺をよそに、Gは話を続ける。

「あんた、見る限り人探ししてるんだろ?しかも、今日連れ込まれた。
 俺はずっとこの建物の中にいたからな、人が連れ込まれた場所も知ってる」
「…本当か?」「もちろん。おれ、虫、嘘つかない」

…どうする…?もしかしたら敵の罠かもしれない…


いや。

どちらにしても、今はこのG以外に雪歩ちゃんの元へと行きつく手段はない。
だったらたとえこれが罠だとしても、ついていくしかない。
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:50:31.29 ID:1epcXLbb0
支援
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 13:51:15.10 ID:UWuy1ouL0
支援
91一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:00:43.47 ID:ZeAnttv60
「…よし。案内してくれ」「あいよ、任せときな」



………


「この先が、あんたの言う雪歩って子の連れ込まれた部屋だ」
ドアの上には、大きな文字で「所長室」と書かれている。

「おう、ありがとな」「気にすんな。あんたからは俺と同じ昆虫の匂いがする」
「はは、そいつぁどうも」

…この中に、雪歩ちゃんが…
俺が、助けださなば。

俺が、守らなば。

俺が、そばにいてやらなば。

「…よし」
一歩踏み出すと、自動でドアが開く。

どんな状況だろうと、俺は負けない。雪歩ちゃんを救いだすために…
その覚悟を胸に、友人は部屋の中へと入って行く…
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:03:09.80 ID:1epcXLbb0
支援!!!
93一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:03:40.81 ID:ZeAnttv60
自動ドアが閉まった、その直後。


「…これで、いい」
そこには、さっき友人を導いたGと、黒服。



「正義の味方は、自分で動くだけじゃなく別の正義を助けるものさ」
そう言って、懐からどら焼きを取り出し、食べる。



「助けてやってくれ。お前のお姫様と――――俺のお姫様を、よ」
94一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:05:47.92 ID:ZeAnttv60
ドアに入ると、一本の廊下が、ひたすらに続いていた。
その先には、開けた部屋があるのが僅かに見える。
「…進むしかない、よな」


部屋に出ると、そこは温室のような環境だった。
地面は芝生に覆われ、様々な木や花が一面に生えている。

その奥に、自然とは縁遠い、入口と同様の金属質のドア。


「ようこそ侵入者君。俺の部屋へと続く三つの箱の一つ、『植物温室』へ」

突然、どこからともなく声が聞こえてくる。
「生憎ながら、この部屋は強制的に変身能力を解除するガスを漂わせていてね。お前のその変身は勝手に解ける」

そう言われて体を見ると、指先からスーツがゆっくりと消え始めていた。
「成程な、侵入者に対する対策は万全、ってわけか」
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:05:52.88 ID:UWuy1ouL0
sien
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:06:10.66 ID:1epcXLbb0
支援!
97一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:08:22.16 ID:ZeAnttv60
「お前の目的は分かっている。お前が雪歩と呼んでいるNo.28だろう?」

「ッ…お前が主犯か!」「もちろん。俺はここの最高責任者であり、28直接の上司だ。連れ戻して何が悪い」
「何が悪い、だと?無理やり連れ去りやがって」「だって人間説得するのめんどいじゃんか?」

思わず聞き返したくなる、そんな台詞。だが聞き返す前に向こうのほうが話し始める。


「人間、いや生き物なんてみんな自分勝手なエゴイストじゃんか。それを俺の好きなように変えるのは骨が折れるもん。
 社会でもみんな自分の利益しか考えてないもん。俺はそんな社会、『組織』が嫌いなんだよ。だから、俺は『組織』をぶっ壊す。そして俺の好きなように組み直す。
 そのために俺は実験体に秘められた都市伝説の力を覚醒させ、反逆の戦士に仕立て上げるんだ!」


「…っざけんな!」友人がどこかにいるとも分からない声の主に対して叫ぶ。


「てめぇだって立派なエゴイストだろうが!てめぇの勝手な理想のために、雪歩ちゃんを巻き込むのかよ!
 てめぇだって自分の利益しか考えねぇで、される側の気持ちを全然理解しようとしてねぇだろうが!」
「理解?そんなものするだけ無駄じゃんか。俺は特別な人間なんだ。『組織』の改革を許されたただ一人のな!
 そのためにお前はここで死んでもらう。『組織』の未来のためにな!」
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:10:07.47 ID:1epcXLbb0
支援
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:10:18.36 ID:UWuy1ouL0
支援ー
100一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:10:57.90 ID:ZeAnttv60
「何を…っうお!」バヒュン!

とっさに体をかがめた友人の上を、種のようなものが掠めた。
飛んできた方向を見ると、白いユリが何本かこちらを向いて煙を吐いていた。
「…てっぽうユリ、ってか」

あたりを見渡すと、ユリだけでなく、ヒマワリ、タンポポなどさまざまな植物が周囲を取り囲んでいた。
それらすべてがこちらに向き、狙いを定めるかのようなそぶりを見せる。

「っ、とうとうコイツを使う時か…っ!」
そう呟いて、友人はGを呼び出し、唐突にそれを踏みつける。


ドドドドドドドドドド…!!

ユリが、ヒマワリが、種を友人に向けて乱射する。
タンポポの綿毛が、優斗のいる場所へとふわふわと舞い、爆発する。

(やったか!?)(もちろん、今までこの包囲網を抜けた奴はいない)
喋れない植物たちが、植物独自の意思疎通法で友人の撃退を確認する。


が。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:11:38.46 ID:1epcXLbb0
支援!!
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:12:34.43 ID:UWuy1ouL0
支援
103一寸の虫にも一人の人間 ◇xhUOONoO3o(代理):2010/03/23(火) 14:13:13.65 ID:ZeAnttv60
「綿毛が爆発って…どんな品種改良施したんだアレ」
その時友人はすでに、部屋の出口へと到達していた。
先ほどまで集中砲火の中心にいたはずなのに、その体には傷一つ付いていない。


「待ってろ雪歩ちゃん…必ず俺が助けてやるからな…!」ウィーン

(チリになって消えたか?)(かもな、我らが砲撃を突破できるはずがない)

(((ははははははははは!)))
元いた部屋では、植物たちが友人の通過を知らぬまま、笑い合っていた。

                 ……続く。
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:13:49.92 ID:1epcXLbb0
書きつつ支援
105謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:15:22.03 ID:ZeAnttv60
 その店の前に立ち
 青年は、そこに入ることを、やや途惑った
 …自分には、この店に入る資格はないのではないか?
 そう、問いかけてでもいるような状態

 肩まで伸びた髪を金髪に染め上げ、肌も春に入ってまだ間もないというのに随分と綺麗に日焼けしている
 まだ肌寒い季節なのだが、随分と薄着をしていて、ジャラジャラとたくさんのシルバーアクセサリーを身につけている
 そのわりには、ピアスだけは身につけていないのが、やや違和感を与えるかもしれない

「………」

 店の前で、青年はやや、迷ったように視線を彷徨わせていたが
 …店の前でこうしていても、店にとって迷惑にしかならない、と悟ったのだろうか
 決意した表情で、店内へと踏み込んだ


 カラン・コロン……カラン・コロン……
 喫茶店「ルーモア」の、来客を告げるベルの音が響き渡った


 いらっしゃいませ、とアルバイトらしい店員の少女が声をかけてきた
 席に案内されそうになったが…それを、青年は断って
 …店の奥にいた、店長に視線を向けた

 ぴくり、奥の席に座っていた…どこか、軍人のような雰囲気を纏った男が、青年の様子に、小さく警戒を見せた
 そのすぐ傍の席に座っていた少年も、同じく小さな警戒を見せる


 警戒されるだろう事はわかりきっていた
 拒絶されるだろう事も予測できている
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:18:24.24 ID:1epcXLbb0
しえしえ
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:18:58.02 ID:UWuy1ouL0
支援ー
108謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:19:56.11 ID:ZeAnttv60

 だが、それでも
 自分がやる、と自ら志願してきたのだから
 それを、やりとげない訳にはいかない


「あんたが、この店のマスターだな?」
「…?そう、だけど」

 あぁ、そうか
 やっぱり、この男が
 目当ての人物を見つけ……青年は、名乗る

「…俺は、「首塚」首領、平将門が臣下の1人。日景 翼だ」

 「首塚」
 その、単語に…少年と、軍人らしき雰囲気を纏った青年が即座に反応した
 が、それに構う事無く、青年……翼は
 床に膝をつき
 手をつき

「「首塚」所属を名乗る者として………あの男が、貴殿に犯した罪を、謝罪しに来た……………本当に、すまなかった」

 そのまま、頭を下げてきた、翼の姿に
 ルーモアの一同は、あっけにとられたように、その動きを止めたのだった


 いくら、他に客がいない時間帯だったとはいえ、いつまでも土下座を続けられても、困るだろう
 マスター達は、翼を落ち着かせて、とにかく席につかせていた
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:21:51.70 ID:1epcXLbb0
このシーンの後っぽいの書きつつ支援
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:22:21.59 ID:UWuy1ouL0
しえーん
111謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:24:45.36 ID:ZeAnttv60
 ……その、際に
 マスターは、翼が随分と、精神的に疲弊している状態である事に気づいた
 その原因が、自分への…自分達への謝罪ではないだろうと、それにも気づく
 この青年は、何か、大きな大きな問題を抱えている、最中で
 自身がそんな状態であるにも関わらず、「首塚」を代表して、謝罪に来たのだ、と

「…本当に、すまなかった。謝罪して、許される事ではないと、わかってはいるが…」

 俯いた状態で、再びそう告げてきた翼
 「首塚」の構成員が、このマスターを一度は殺めてしまった、その事実を
 翼は、「首塚」全体の責任として、捕えているのだ
 …それは、将門もまた、同じ考えで
 「首塚」を代表して来たと言う翼は……今、間違いなく、平将門の使者となっている

 輪とカシマが、翼を警戒しているのに気づいて
 マスターは大丈夫、とでも言うように、二人に目配せした
 そして、翼に向き直る

「日景 翼君……だったね。「首塚」の意志、確かに承ったよ…だから、顔をあげて」
「………」

 マスターの言葉に、顔をあげる翼
 …やはり、疲弊した表情
 なんらかの悩みに、押しつぶされそうになっている状態
 同時に、深い、まるで自分がその罪を犯してでもしまったかのような、マスターへの罪悪感を抱えているような状態
 …マスターは優しく微笑み、翼に告げた

「…確かに。私は、彼の力で一度命を落とした…けれど、私が今、ここにいるのも。同じ人物の力の影響だ」

 もう、共に過ごす事はできぬと、そう思っていた存在
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:26:56.43 ID:1epcXLbb0
支援
113謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:28:26.50 ID:ZeAnttv60
 それと、再び同じ時を過ごす事ができるようになったのも、また…その時間を奪ったのと、同じ人物がもたらした、奇跡

「私は、彼の事も…「首塚」の事も、恨んではいないよ」

 だから、もう

「だから…そんな、申し訳なさそうな顔をしないで。君達「首塚」の意志は、君から確かに承ったから」
「…………そうか。ありがとう」

 小さく笑う翼
 だが、その笑顔も、力がない

「…それじゃあ、俺は、これで」
「あぁ、待って」

 席を立とうとした、翼に
 マスターは微笑み、告げる

「せっかくだから、飲み物の一杯でも飲んでいったらどうだい?サービスするよ」
「…いや、俺は」

 小さく、首を左右に振ろうとした翼
 …その、翼の頭を
 マスターは、そっと撫でた
 ぴくり、翼の体が小さく跳ねる

 ……一瞬
 翼が、親から逸れて泣いている、子供に見えたような
 そんな、錯覚を感じて
 マスターは、優しく、翼を見つめた
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:29:31.40 ID:1epcXLbb0
しえええん
115謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:31:43.13 ID:ZeAnttv60
「君が、今、何に悩んでいるのか…何を抱えているのか…私には、それを知る力は、ない」

 たとえ、知ったとしても
 その悩みを払拭する手伝いを
 抱えているその重みを、共用する事はできないかもしれないけれど
 だが、それでも

「…けれど。せめて、話を聞くくらいは、できるから」
「…………いや」

 話す事などできないと
 そうとでも言うような表情の翼に、マスターは続ける

「悩みを、相談すること…誰かに打ち明ける事。それは、とても大切な事だよ」

 相談することで、打ち明ける事で
 その重みが、軽減される事もあるのだから
 だから

「ただ、聞く事しかできないかもしれないけれど………でも、せめてそれだけはできるから。悩みを1人で抱え続けていては…いつか、それに押しつぶされてしまうよ」

 子供にするように、翼の頭を撫でるマスター
 …翼は、どう見ても成人している
 あまり、適切な対応ではないように思える
 だが、翼は撫でてくるそのてを、振り払おうとは市内
 ただ、何か考え込むように、俯いて
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:32:11.96 ID:UWuy1ouL0
しえん!
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:33:52.48 ID:1epcXLbb0
しーえん!!!!!!
118謝罪と憂鬱  ◇nBXmJajMvU(代理):2010/03/23(火) 14:36:03.56 ID:ZeAnttv60
「…………ク」
「?」
「…アイスハニーミルク………注文しても、いいか?」

 ぼそり、と
 小さく、告げてきた言葉
 それに、マスターは微笑んだ

「ご注文、承りました。少々お待ちください」

 そう言って、カウンターの向こうに向かうマスター
 途中、輪となにやら話しているようで
 …その、後ろ姿を
 翼は、眩しいものでも見るように……そして、自分がけっして手に入れられないものを、見るように
 じっと、見つめていたのだった




fin
119(代理):2010/03/23(火) 14:38:11.71 ID:ZeAnttv60
第零話 


刀で切られた傷は、痛いというより熱いと感じる――という話は、どうやら嘘っぱちらしい。

「ッッ――ガハッ」

実際はムチャクチャ痛い、いや、もうこれは人間の形容できる言葉を超えている。


「ァ――」

そうだ、『刀』で斬られた――袈裟懸けでバッサリ、ザックリ。

その事を理解する前に、僕の体は床に倒れこんだ、腐った木の匂いと、腐った死体達の匂い。
同時に『痛い』という情報の大波が僕の脳味噌を押しつぶそうとする。

「―――――――――」

それでも、僕の意識は途絶えようとしなかった、いっその事、完全に事切れてくれた方が楽になれるのに。

『奴』は、そんな僕を嘲るように見下ろしていた。


『斬られ方は潔かったが、この程度ではスプラッターとは言えないなぁ少年』

奴――軍服のような、つなぎ服を着た、何処か時代錯誤な雰囲気をかもし出す男は。

手にした、その凶器を――倒れ伏した僕に、何の躊躇も無く突き刺した。
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:38:24.87 ID:1epcXLbb0
代理投下が終わったらネタ投下しますね支援
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:39:13.95 ID:UWuy1ouL0
wktkしえん!
122(代理):2010/03/23(火) 14:40:20.24 ID:ZeAnttv60

「ッッ―――!!?」

冷たい刃が、体を貫通する感覚
体が意に反して、痙攣する。
呼吸をする度に、穴の開いた肺からヒュウヒュウと空気が漏れる音がする。

死にたくない、逃げないと……
その一心で闇雲に腕を伸ばす。

『ふむ……ここが君の夢の中とは言え、まだ意識を保っている事には驚きを禁じ得ないぞ、少年』

奴は突き立てた刃を、肉を抉じ開けるように回す。

「ギッ――ぁ――」

『が――残念だ、私の求めるスプラッターには、まだ遠く及ばない』

奴は哀れむ様に言い捨てる、そして、ふと失望したような表情を浮かべると。
僕の体から深々と突き刺さった刀を引き抜いた。

『……どうやら君も違ったらしい――』

奴は気だるそうに言い捨てると。

『ではな、少年――邪魔をした』

そうして、奴は暗がりへ向けて踵を返した。

「…………」
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:40:31.10 ID:UWuy1ouL0
しえんー
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:40:48.41 ID:1epcXLbb0
しえーん
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:43:47.74 ID:UWuy1ouL0
しーえん
126(代理):2010/03/23(火) 14:44:35.08 ID:ZeAnttv60

ふざけるな――と、言いたかった。

しかし、とうに言葉を発する事なんて出来ない。
穴の開いた肺から、空気の漏れる音がして。
構内に大量の血がせり上がってくる。

血が流れすぎたこの体は、もう生命を維持するだけで……いや、それも後、数秒持つかと言った所だろう。

それでも――ふざけるな、と。
思考に在るのは、そんな怒りだけ――

僕をこんな目に合わせた、『奴』に対する殺意だけ。

「…………ッ」

もう殆ど見えていない目で、去って行こうとする奴の後姿を捕らえる。

鉛のように重くなった腕を伸ばす、その行為に何の意味も無いと知りながら。


と、不意に、伸ばした腕が何か硬い物に触れた――


霞む視界を凝らしてみる。
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:47:15.78 ID:UWuy1ouL0
支援
128(代理):2010/03/23(火) 14:47:16.88 ID:ZeAnttv60

斧だった。

何故、こんな所に斧が在るとか、刃の部分に乾いた血がこべり付いてるとか、そんな事はもう、どうでも良かった。

これは武器だ、今の僕には最高の武器だ。


それを何とか引き寄せ、柄を杖代わりにして立ち上がろうとする。
溢れ出た血液と内臓の一部と思われるものが、ボタボタと腐った床に零れ落ちるが――もう、そんな物もどうでも良かった。


在るのは、こいつを一発、奴に叩き込んでやろうという。

「グッ」

そんな激情だけ。

「ッ…ォオオオオオオオオオオおおオオオオおオオオオオオオ!!!」


後はもう、何も考えなかった。

『なっ!!?』

奴は今更驚いて振り返る、が――もう遅い。
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:47:18.38 ID:1epcXLbb0
支援
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:49:33.47 ID:UWuy1ouL0
支援
131(代理):2010/03/23(火) 14:51:39.67 ID:ZeAnttv60

叫んで、駆け寄って、その古い手斧を奴の頭に向けて振り下ろす。

奴の頭部から グシャ と小気味の良い音、同時に生暖かい何かが飛び散る。

「ッ!!」

もう一度、斧を振り上げる、二撃め――三撃め――見る見るうちに奴の頭の形が変形していく。


「ぁ―――」


だが、そこで限界だった――僕の手から斧が零れ落ちる。

体から一切の力が抜け、再び腐った木で出来た床に崩れ落ちる。




そして――僕の意識は―――暗闇に――――落ちて行こうと
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:53:02.81 ID:UWuy1ouL0
支援ー
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:53:51.37 ID:1epcXLbb0
よーし、二個目のネタ書くぞー支援
134(代理):2010/03/23(火) 14:55:45.54 ID:ZeAnttv60

『素晴らしい』


噛み締めるように、ポツリと奴が呟いた。



『すごい、凄いぞ少年っ!!素晴らしいいいいぃぃぃっ!!!!!』


おい……ふざけるな、斧で頭を原型が無くなるほど殴ったのに。


『そうだ、その必死さ!、その狂気!!、その躊躇の無さ!!!、その醜さ!!!!――ソレこそがスプラッターだッ!!!!!』


どうして、お前死んでないんだよ


それどころか、何を興奮した様子で訳の分からない事を叫んでいるんだよ。


『決めたぞ少年――やっと見つけた』


『お前が、私の契約者だ――』


『私の名は―――杉沢村』
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:57:06.86 ID:UWuy1ouL0
支援!
136ソニータイマー(代理):2010/03/23(火) 14:58:23.20 ID:ZeAnttv60
「新聞部の活動2」
お久しぶりです。一一です。さて、今日も新聞部室に行きますよ
真「赤マント、足売り婆さんに首なしライダー…結構ネタが集まったな」
一「はい。生徒の反応もなかなか良いものでしたよ」
真「ところでお前たち、最近『悪魔の囁き』や『コークロア』による被害が広がっている…というのは知っているな」
真が真面目な声を出す
文子「はい。ゲーム研究部の人も憑かれたみたいですよ」
真「こんな時にボクらがすることと言ったら…一つだよな?」
文子「ええ、もちろん」
真「この騒ぎに便乗して…」
一「都市伝説の記事を書きまくる」
真「ターゲットはもちろん」
「「「悪魔の囁き!!!」」」
3人の声が揃う
真「よし、そうと決まれば早速ネタを集めにいくぞ!」
「「はい!!」」
こうして新聞部3人は悪魔の囁き達の取材にいくのでした
一「とは言ったものの…誰が悪魔の囁きにとり憑かれているのか分かりませんね…契約していないからでしょうか…」
一は少し困っていた
一「…仕方ありません。悪魔の囁きの契約者の仲間でも探しますか…」
悪魔の囁きの契約者の仲間を探す一。すると空に大きな龍が…某RPGに出てくる2匹のキャラクターが混ざったような
そんな生き物が見えた。
一「!! あれが噂に聞く『カイザー』という奴でしょうか!?」
慌ててカメラを構える一
パシャ、パシャと何枚も写真を撮る
一「と言うことは…近くに契約者がいるはずですね」
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:59:05.13 ID:1epcXLbb0
あと1レス支援
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 14:59:15.30 ID:UWuy1ouL0
しえーん
139ソニータイマー(代理):2010/03/23(火) 15:00:36.37 ID:ZeAnttv60
そういって契約者を探す一。そして…
一「やっと見つけました!」
ぴこぴこと、旧式のゲームボーイを弄りながら考え込んでいる契約者…竜宮を見つけた一
「どうしようかな…?」
一「あの…」
一が声をかけてもまったく反応しない。よほど集中しているのだろう。仕方なく取材を中断しようとする一。
一「…そうだ」
何かを思いついたような顔で呟くと竜宮の姿をとり始めた。案の定、彼はこちらに気づく様子もない
一「結構撮れましたね…では、帰りますか」
そういってその場をあとにする一なのでした


                  つづく
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:01:56.06 ID:UWuy1ouL0
スレ立て&代理乙でした!

そして再び支援だ!
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:02:21.94 ID:1epcXLbb0
代理乙でありました!!!

では、こそこそと投下を開始しますねっと
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:02:44.99 ID:ZeAnttv60
代理投下終わったああああ!
トイレ行ってくる!
143首塚組織の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 15:04:33.03 ID:1epcXLbb0
「…それで。翼君にだけ行かせたのですか?」
「本当ならば、我が行きたかったのだがな。なぜか皆に止められた」
「でしょうね」

 −−−−深夜 学校町 とある墓地の一角

 体が半透明の女性と鎧武者が、そこで向き合っていた
 「怪奇同盟」の盟主と、「首塚」首領、平将門だ

 悪魔の囁き、及び、コーク・ロア支配型の騒動の黒幕と、今わかっている時点でのその部下の情報
 それを、盟主に持ってきた将門であったが…盟主はどこで知ったのか、あのお人好しの黒服の電話番号を手に入れていたようで、そちらからすでに情報を手に入れてしまっていた
 あの黒服の性格を考えれば、盟主相手であれば迷う事なく、情報を渡すだろう
 盟主と会う口実を潰された事は、やや面白くないが……まぁ、あの黒服相手では、仕方あるまい
 そう考えて、将門は諦めていた
 …口実を潰されたにせよ、どちらにせよ、盟主とは顔を会わせたかったのだ
 それを、誰かに阻止される言われはない

「…あれは、近頃酷く、気を落ち込ませている。これ以上の負担はかけたくなかったのだが、な」
「むしろ……他の事を請け負う事で、その時だけでも、背負っているそれから、目をそらそうとしたのかも、しれませんね」

 …情報のやり取りの、代わりに
 二人が話していたのは、この日、喫茶ルーモアに…「首塚」を代表して謝罪に向かった、翼のことだたt
 冒頭でのやり取りの通り、本来ならば、将門が自ら、出向くつもりだった
 しかし…たとえ、客足が途絶える時間帯に、とは言えだ
 喫茶店を訪れる、怨念とか色々と背負った鎧武者
 ………どう考えても、営業妨害以外の何物でもない
 よって、「首塚」メンバーほぼ全員(幸運の眉毛コアラと契約している幸太と、一年生になったらの契約者を除く)に全力で止められてしまったのだ
 …ならば、誰が行くか?
 そうなった時、立候補したのは、翼だった
 ルーモアのマスターの命を、一度は奪った男
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:05:08.71 ID:UWuy1ouL0
しえーん!
145首塚組織の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 15:08:03.05 ID:1epcXLbb0
 それと、交戦経験がある分、縁があるから、と
 翼に任せることを、「首塚」の構成員達は、迷った
 …翼が、今、何らかの精神的な問題を抱えている事は、明らかだったからだ
 普段から、どちらかと言えば明るい性分の彼が、このところ、心からの笑顔をほとんど浮かべていない
 口をつく言葉も、どこか威勢の弱いものになってしまっていきつつある
 −−−翼と、今、学校町を騒がせている悪意の大元…朝比奈 秀雄が実の親子である事は、「首塚」構成員達も、全員はまだ知らない
 だが、何らかの関係があるのでは…と、薄々、察してはいた
 翼が落ち込んだ様子を…何か、悩んでいるような様子を見せ始めたのは、悪魔の囁きとコーク・ロア支配型の騒動が、活発化し始めた時期と、重なっていたから
 そんな状態だからこそ、翼に任せることを、皆迷った
 しかし、翼は引こうとせず…結局、一人でルーモアに向かったのだ
 結果として、ルーモアでの出来事を将門に報告してきた翼は………少し
 ほんの、少し……背負っていた物の重さが、軽減したような
 そんな印象を、受けた
 …もっとも、それはまた時が経てば、元の重さに戻ってしまうのではないか、と言う危うさも含んでいたのだが
 朝比奈 秀雄を止めない限り…翼は、追い込まれ続けるだろう
 あの男は、ただ、翼を追い込む為だけに…翼を、自分にとっての都合のいい操り人形にするためだけに、この学校町を犠牲にしようとしていて
 その事実が、翼の心を追い詰め続けているのだから

「あれは、何もかも背負い込みすぎる」

 自分のせいで、と
 一瞬でも、そう思ってしまったならば
 その責任を、何もかも、自分1人で背負い込もうとしてしまって
 そして、自分1人で、その何もかもを解決しようとしてしまう

 今の、ままでは
 翼は、恐らく…朝比奈 秀雄と言う、己の父親を
 己の手で殺すという解決法を、選んでしまう
 あの、悪意の塊のような男を説得する事など、恐らく釈迦でも仏でも不可能な事なのだろう
 ならば、それを止める為に、どうするか?
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:10:24.40 ID:UWuy1ouL0
> そうなった時、立候補したのは、翼だった
> ルーモアのマスターの命を、一度は奪った男

ここだけ読むと、翼がマスターを殺したように見えて、???って思ったよしえーん
147首塚組織の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 15:12:25.12 ID:1epcXLbb0
 …………実力で止めるしか、ない
 その命の鼓動を止めるという、その手段で
 命の炎を吹き消す事でしか、止められない
 それが、今、示されている自体の解決法の中で、唯一、はっきりと認識できるもの
 翼は、それを己の手で実行しようとしてしまうだろう
 自分のせいだから、とそう考えてしまって

 子供が、実の親を殺す
 …親殺しの罪
 昔から、そのような事態は存在しなかった訳ではない
 将門も、盟主も……実の親子同士ですら、血で血を争う事も珍しくなかった時代を知っている
 知ってはいる、が
 それを肯定する訳ではない
 今の時代の流れの中、そんな悲劇や惨劇は起きるべきではない
 起こすべきではない、と心から思う

「あなたの言葉で、彼を止める事はできませんか?」
「…我に、その権利はない………翼にとって、父親を討つ事は、復讐でもある。幼き日の、物のように扱われ続けた日々への、復讐にもなり得る……ゆえに、我には止められぬ」
「あなたが、復讐を肯定する祟り神だから……ですか」

 「首塚」は復讐を肯定する 
 その復讐が正当なものである限り
 その復讐に、復讐に関係のない者を巻き込まない限り
 その復讐の相手を…………間違えない、限り
 「首塚」は復讐を肯定し、それに手を貸す
 将門は、祟り神になって以来、何人かの人間と契約をし、その復讐を手助けしたことすらある……もっとも、契約をした人間達は、復讐を果たした直後、将門という存在に飲み込まれたり、飲み込まれることを拒んで死を選んできたが

 そのような存在である、将門だから
 先ほどの言葉の通り、翼の決意を止める事ができないのだ
 都市伝説は、長く生きていればいるほどに、己を生み出した伝説から意識を外し、それに反した行動も取りやすくなる
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:15:16.87 ID:UWuy1ouL0
将門と契約って、どれだけ深い恨みを持てばできるんだろうか・・・支援ー
149首塚組織の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 15:16:50.14 ID:1epcXLbb0
 …だが、反対に
 長く生き続ければ生き続けるほどに、己を生み出した伝説に縛られ続ける可能性も、ある
 将門は、まさにその後者の典型的な例と言ってもよいだろう
 もっとも、祟り神と言う側面以外に、英雄としての側面が混ざるようになっただけ、まだマシなのだが

「翼を止める事は、我の役目ではない。他の、誰かだ」

 他の誰かに、その役目を譲るしか、ない
 …それしか、できないのだ

「…平将門公」
「うん?」
「あなたは……今の、彼が。朝比奈 秀雄に。打ち勝てると…そう、思いますか?」

 盟主の
 その、静かな静かな、問いかけに
 …将門は、ゆっくりと、答える

「…わからぬ。ただ…その男が契約しているらしい、最後の都市伝説の正体…それがつかめぬ限りは。そして、それを打ち破る方法を見つけぬ限り。それは、難しいだろう」

 それは
 翼が、朝比奈を殺そうとして
 逆に……殺されてしまう可能性を、示唆していて

「それでも。あなたは、彼を止める事ができないのですか?」
「……我は、このような存在だからな」

 止めたくても…止める事は、できないのだ
 将門は、静かに夜空を見上げた
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:17:21.98 ID:UWuy1ouL0
支援ー
151首塚組織の憂鬱  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 15:21:15.37 ID:1epcXLbb0
「我には、翼を信じる事しか、できぬ」

 「組織」に仇なそうと、配下を集め始めた時
 一番初めに見つけた青年だった
 「組織」への強い敵対心
 そして、かなえようとする願いへの執着の強さ
 …己の配下として加えるに、相応しかった
 だから、配下として選んだ

 あの日
 己の配下となる事を選んできた、翼
 あの時、自分に向けてきた表情は
 畏怖と、羨望と、そして


 手に入れられなかった、何かを
 こちらに、重ね合わせてみてきているような
 ……そんな表情だった


「…盟主よ」
「何です?」
「……場合によっては。我が、朝比奈 秀雄を討つ………邪魔をしてくれるなよ?」
「学校町が壊れない範囲でお願いしますよ?」
「相手の出方次第だ」

 将門の言葉に、盟主は全く…と、ため息をついてきたのだった


to be … ?
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:22:38.74 ID:1epcXLbb0
さて、俺は確か悪魔の囁き組変態代表のネタを書こうとしていたはずなのだが
なぜか、先に書きあがったのはこっちだった
アクマの人に焼き土下座であるorz
変態代表の方も今日中には書くよ!書くよ!!

>>146
にゃーん、言われてみると確かに
wiki掲載時に修正するんだぜぃ

>>148
言葉に出来ぬほどの、深い深い恨みだと思うぜ
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:23:23.60 ID:UWuy1ouL0
投下乙でした!

そういえば、盟主のプラズマは朝比奈秀雄に効くのだろうか?
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:25:10.78 ID:1epcXLbb0
>>153
電撃分のダメージはいくかもしれんが、熱量分のダメージがいかないかも?
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:30:32.24 ID:UWuy1ouL0
ふむ、スタンガンみたいに電気は流れるかもしれないが、体が焼け焦げることは無いか
物理的に倒せんのか…?
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:30:54.04 ID:ZeAnttv60
乙でした!
将門さんも父親的だなと思ったり
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:32:09.41 ID:1epcXLbb0
>>155
第三の都市伝説をなんらかの形で契約解除させるなり契約破棄させるなろ無理矢理引き剥がすなり封印するなりできれば物理的に倒せるんじゃないかな?

>>156
>将門さんも父親的だなと思ったり
翼もちょっとそう思ってる事実
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:39:58.15 ID:UWuy1ouL0
>>157
その発想は無かったわ…まさに逆転の発想
封印か…サンダーバードと「よだそう」の時みたいな方法は使えるのだろうか
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 15:41:21.60 ID:1epcXLbb0
>>158
>封印か…サンダーバードと「よだそう」の時みたいな方法は使えるのだろうか
よだそうがサンダーバードにやったアレをやられたら抗いようがないのはヒミチュなんだぜ
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:00:15.11 ID:1epcXLbb0
とけたかな
161小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:01:35.89 ID:1epcXLbb0
 白い馬が闇夜を駆ける
 獲物を探して彷徨い駆ける
 さぁさ、今宵の獲物はだぁれ?


 かつん、と
 足音が響き渡る
 夜道を1人の女が歩いていた
 恐らく、年齢は30代後半から40代前半といったところか
 だが、服装は20代の女性がまとうようなもので…若干、無理な若作りをしている感がいなめない
 もっとも、それは本人も最近ちょっぴり気にしてきつつある事実の為、指摘した瞬間に鉄拳か何かが飛ぶ可能性もあるのだが

 かつん、かつん
 暗い夜道に足音が響き渡る
 女はタバコを咥えながら、一人、ホテルへの帰路に付いていて


 背後に感じた気配
 殺気
 それに気づいて、横に跳んだ

 一瞬前まで、女がいた、そこを
 純白の毛並みを持った馬が、駆け抜けた


「……避けたか」

 かつんっ
 女の足音とは、別の足音
 そちらに視線を屋って…おや、と女は笑った
162小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:06:00.47 ID:1epcXLbb0
「いい男じゃないかい」
 
 そこにいたのは、西洋人と思われる男性
 女が口にした通り、俗に「イケメン」などと呼ばれる顔立ちだ
 人形とも形容されそうな、美しい容姿
 しかし、女を睨むその表情は、どこか恐ろしい

「あたしに何か用かい?お兄さん?……楽しい事なら、嬉しいんだけどねぇ?」

 別に、イケメン好みという訳ではないが
 まぁ、それなりに許容範囲の顔である
 そう考え、冗談交じりに彼女は尋ねた

「…………ビッチが」

 ぼそり、呟く男
 直後…再び、迫る気配
 女は、すんでのところでそれを避けた
 女を殺せなかった純白の馬が、男の横に並ぶ
 その馬の、額からは……一本の、長い、鋭い角が生えていた

「珍しい馬だねぇ?」

 軽口を叩きながら、女は考える
 どうする?
 問答無用で、こちらを殺しにかかってきた相手である
 半殺しにしてしまっても、正当防衛になるのではないか?
 うん、あれだ
 こっちは、なかなか息子と会えなくて、いらいらしているのだし
 正当防衛ならば、問題あるまい
163小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:10:36.10 ID:1epcXLbb0
 カっとなってボッコボコにしてもいいだろう

 そう考えて、彼女は能力を使おうとした
 己が契約している都市伝説の、力を
 それと同時に、角を生やした純白の馬は、再び女を突き殺そうと、駆け出して
 …だが、間に合う
 そう確信して、女が能力を使おうとした、その瞬間


「−−−−−−−破ぁっ!!」


 響き渡った、声
 純白の光が……彼女の真横を通り過ぎて、純白の馬にぶつかった
 馬は光に押され、苦しげに後退する

「…何!?」
「……おやまぁ?」

 男が、女の背後を睨み付けた
 女は、背後に誰か居たのかと振り返り…
 なんだか、見覚えがあるような気がしないでもないその相手に、驚いた


「Tさん!」
「大丈夫だ、舞…顔を出すな」

 ひょこん
 電信柱の影から、頭にリカちゃんを乗せた舞が顔を出してきた様子に、Tさんはそう告げた
 たまたま、女性が襲われている様子を見かけたら、助けてみたのだが
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:11:40.76 ID:ZeAnttv60
支援!
165小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:14:59.91 ID:1epcXLbb0
 …この、相手は

(…朝比奈 マドカ、か)

 初詣の時、顔を合わせた女性
 …翼の、実の母親
 あの黒服が嫌悪を示した相手だ

 角を生やした馬と言う、未知の相手に襲われたにも関わらず、落ち着いている様子だ
 先ほど、Tさんが放った光に付いても、特に驚いている様子はない

「見覚えのあるお兄さん。助けてくれるのかい?」
「あぁ……縁のある相手だしな」

 タバコを咥えたままそう言って来た女性…マドカに、Tさんはそう告げた
 そうかい、とマドカは笑う

「まったく、何だってんだい。あの馬は」
「ユニコーン…だな。恐らくは」

 ユニコーン
 西洋に伝わる、一角獣
 その額から生える一本の角は、ありとあらゆる毒を浄化すると言われている
 世間一般には、乙女に寄りそう大人しい姿がよく知られているだろう
 …その本性が、獅子を宿敵とし、象をも一撃で突き殺すほど凶暴である事は、はたしてどれだけ知られているだろうか

 恐らく、あの西洋人男性が契約している都市伝説だろう
 そう考え、Tさんは男性に視線をやって…

166小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:18:12.11 ID:1epcXLbb0
 …感じた、違和感


 西洋人男性は、先ほどまでの憎悪を込めた表情を消していた
 その表情は………まるで
 長年、探し求めていた何かを、見つけたような、そんな…

「っ!?」

 だんっ!と
 西洋人男性は、アスファルトの地面を強く蹴って……跳んだ
 人間離れした身体能力
 もしかしたら、ユニコーンとの契約により、ユニコーンの身体能力を手に入れているのかもしれない
 彼は、Tさんとマドカの頭上を飛び越えていって

「−−−−しまった!?」

 電信柱の影に隠れていた…舞の傍へと、着地した
 Tさんはしたうちして、西洋人男性へ攻撃を仕掛けようとした

 が

「汚れなき、麗しいレディよ。よろしければ、名前を聞かせていただいた後、膝枕をしてはいただけないだろうか!?」

 西洋人男性が、膝をついて舞へとかけた、その言葉に


 世界は、きっかり30秒ほど、停止した

167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:21:47.13 ID:ZeAnttv60
膝枕ww微妙に謙虚な変態さんだー!
168小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:22:11.47 ID:1epcXLbb0
「へ??」

 きょとん、と
 思わず、西洋人男性を見つめる舞
 えーと、何、何事?
 っつか、あれだ
 何、この赤い靴がリカちゃん相手に向けるような視線
 何こいつ、変態??
 舞が、返答に迷っていると……ごがっ!!と
 西洋人男性の体が、何者かに突き飛ばされた

 Tさんに、ではない
 …ユニコーンに、だ

 ユニコーンは、じっと、舞を見つめてきて
 …そして、跪いた

 理解不能な、その状況に
 舞は、目をぱちくりとさせるしかない

「がっは……ユニコーン!何をする!?」

 ひひん
 西洋人男性の抗議に、ユニコーンが小さく、嘶く

「………は?『処女(乙女)の膝枕は自分のもの』だ?何を言う!俺だって膝枕はほしいぞ!?」

 ……

 えぇと
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:23:55.01 ID:ZeAnttv60
仲ww間www割wwwれwwwwww支援
170小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:24:06.93 ID:1epcXLbb0
「えぇい、このわがままめ!?別に、俺は独占するつもりはない!順番に交代で味わえばいいだろう!!}

 ひひん

「っく、どこまで独占欲がありやがるこのエロホース!?」

 …………
 うん
 西洋人男性が、ユニコーンと言い争っているらしい間に
 舞は、こそこそと電信柱の影から移動して、Tさんの隣に来た
 そして

「Tさん、よくわかんねぇけど、やっちゃっていいと思う」
「そうだな」

 うん、とTさんも頷いて
 ついでに、Tさんの隣にいたマドカもうん、と頷いて

 次の瞬間、白い光が、ユニコーンとその契約者に、襲い掛かった




 結果として
 ユニコーンとその契約者には、逃げられてしまった
 Tさんの光が迫ってきた瞬間、ユニコーンは契約者を乗せて、一目散に駆け出したのだ
171小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 16:27:43.64 ID:1epcXLbb0

 そのスピードに、Tさんの攻撃はおいつくことができなかった

「にげられちゃったの?」
「そのようだ」

 難しい顔をするTさん
 …ただの都市伝説契約者だったのか 
 それとも…悪魔の囁きに、憑かれていたのか
 それだけでも、判断したかったのだが

「…まったく、この街も物騒になったねぇ?」

 新たなタバコに火をつけて、苦笑するマドカ
 Tさんと舞に、視線を向けてくる

「助けてくれてありがとうね。お兄さん達?」

 明るく笑ってきた、その様子からは
 あの黒服が彼女を嫌悪する理由は、察する事ができないのだった



to be … ?
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:30:38.50 ID:1epcXLbb0
Tさんの人に剣山土下座!!!orz
これは酷いとしかいいようがない
何この変態とエロ馬、ふざけてるの?

あれだよ
ユニコーンは、処女の膝枕で安らかに眠るというだろう
あれだよ、あれ
こいつらの弱点はそれです
ただし、ロリコンではないため処女ロリ相手は

「違う……っ!俺は、ロリではない…ロリコンではない………!!その世界の扉は、俺は開いてはいない!!!」

とか、都合2,3時間ほど悩んだ後に膝枕を要求してくる事でしょう

…ついでに、イギリス人な、このユニコーン契約者、名前決まってないので出したもん勝ちだとか秘密


この後、Tさん達がマドカと何か話したのか、特に何も会話せず別れたかはTさんの人にお任せするんだぜー!

さて、夕食作ってくる!!
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:38:04.21 ID:UWuy1ouL0
投下乙でした!

病院から帰還したら変態紳士がwwwwwww
これはあれか、相手が純潔かどうかを見極める能力を持っているのか
うん、変態だ、だがそれがいい
174Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/23(火) 16:42:25.52 ID:ZeAnttv60
乙です!
>>172
結局要求するのかよwww


せっかく朝比奈さんと会えた事ですしいろいろ会話をさせようと思っておりますが
翼と黒服Dの名を出した時、彼女は自分がチャラ男や黒服Dに嫌われる事になった理由をTさんたちに話すでしょうか?
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 16:59:24.81 ID:ZeAnttv60
ライオンと一角獣が同陣営に居ることになるなとふと思いつつ保守
176杉沢村  最悪の朝:2010/03/23(火) 17:13:24.21 ID:dKbamuTA0

「…………」

頭痛、吐き気、めまい、倦怠感、動悸、寒気、立ちくらみ――etc.etc

「最悪の朝だ……」

そう、その日は人生で最悪の朝だった。


「なんて夢を見てるんだよ、僕は……」

振り払うように呟いた声は、未だに震えている。


――あぁ、本当に酷い夢を見た――


細かい所までは思い出せないが、変な男に斬られて、刺されて、殺された事は覚えている。

ジークムント・フロイト先生もビックリな、色つき、臭いつき、痛みつき、と非常に豪華三本盛りな悪夢。

「…………」

しかし所詮、今のは夢だ、故に斬られた傷は当然無い、刺された傷も出血も――無い。
その事を自覚した瞬間、ぼやけていた思考がスッと覚醒する。


何時もの部屋、何時もの温度、何時もの空気――違ったのは夢見が悪かったという事だけ。
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:14:05.99 ID:dKbamuTA0
肺の中の空気を入れ替え、呆けた思考能力に喝を入れて、
次いで、おもむろに枕元の時計を確認する。


時刻は午前九時少し過ぎを示していた。

完全に遅刻だ――――だが。


「まあ、良いか……」

今日くらい、遅刻しても――いや、ともすれば休んでしまっても良い、体調が優れないのは事実なんだし。




『いや――休んでしまうのは、宜しく無いのではないか、実際』

むぅ、そうだろうか……?

『然り、勉学と言うものは人の為ではなく、自分の為に行うものだ――ここで怠けては将来の為にならないぞ?』

一理ある、なら……遅刻して行くか。

『それが良いだろう』


僕は、やれやれと気だるい体を起こし――――
178杉沢村  最悪の朝:2010/03/23(火) 17:14:51.01 ID:dKbamuTA0

「…………」

数秒後、再び、寝床に倒れ伏した。


『どうした?』


――やはり駄目だ、こんな幻聴が聞こえるようでは、学校に行ったところで勉強にならない……もう一度寝よう。


『ほう、幻聴が聞こえるのか、それは良くないな』


だろう?ああ、だから幻聴よ早く消えてくれ――――


僕は何処かから聞こえてくる、謎の声を掻き消すように、力任せに布団を引き寄せ、潜り込むようにスッポリと被って見る。


『ならば、医者に行く事を進めるぞ、少年』


しかし、幻聴は消える所か、僕の事を心配してきやがった。

どういう事だ、僕はノイローゼにでもなったのだろうか……?
そう言えば、この連休はひきこもってネットゲームばかりしていた――それが原因だろうか。
しかし、あんな悪夢を見て、あまつさえ幻聴まで聞こえるようになってしまうとは、恐るべしゲーム脳。
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:15:49.01 ID:UWuy1ouL0
支援!
180杉沢村 最悪の朝:2010/03/23(火) 17:16:02.72 ID:dKbamuTA0
『……少年よ、現実逃避の真っ最中に悪いんだが』

そんな折、声は呆れたような声色で、諭すように話しかけてくる。

謎の声よ、そう思うなら喋らないでくれ、頼むから。
半ばヤケクソにも似たような感情で答える――

『謎の声とは心外だな、自己紹介は昨晩済ませた筈だが?』

いいや、知らない、僕はお前なんて知らない――


目を硬く閉じる、そうだ――もう一度寝てしまおう、そうすればこの変な声も聞こえて来なくなるかも知れない。





『―――何時まで呆けている、我が契約者―――』


不意に――

喉元に抜き身の刃を押し付けられている様な、そんな圧迫感を全身に感じた。
それは、そう――悪夢の中で感じた『殺気』と同種の類のもの。

「っ―――!?」


自然と体が動いた、覆いかぶさっている布団を跳ね除け、飛び起きる。
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:16:36.95 ID:UWuy1ouL0
支援
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:18:10.14 ID:UWuy1ouL0
しえーん
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:19:47.82 ID:w3ZRIbQt0
支援
184杉沢村 最悪の朝:2010/03/23(火) 17:20:08.53 ID:dKbamuTA0

『そうだ、それで良い、我が契約者よ』

声は満足そうに、しかして、先ほどまでとは打って変わって、
その有り余る殺意と狂気をむき出しにしていた。

「っ何なんだよ……お前一体、何なんだよッ!!!」

叫ぶ――

後から思えば、それは余りにも愚かな質問だっただろう。


『愚問なり、無知蒙昧、知らぬと言うのならば今一度答えよう――私の名は、杉沢村』

最悪の夢を見た?細かい所は覚えていない?

そんな筈は無かった、夢の中とはいえ、僕が自分を殺した奴を忘れるはずが無い。


『おはよう――そして始めまして、契約者よ――良い夢は見られたか?』


「……あぁ、おかげさまでね――」


やはり――――その日は人生最悪の朝だった。


続く
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:21:29.65 ID:w3ZRIbQt0
杉沢村の人乙です!

さて、僕もネタを投下しようと思います
186ソニータイマー:2010/03/23(火) 17:22:09.89 ID:w3ZRIbQt0
              「ゲーマー3兄妹とカイザーの契約者」
久しぶりの休日。なのでゲーマー3兄妹…任天堂寺と光輝と小奈美は散歩をしていた
光輝「そういえば兄さん。最近、『悪魔の囁き』の被害が広がっているみたいだよ」
堂寺「うん。友達の疾風君もかかったらしいよ」
悪魔の囁きの話題。もうかなり広まっているようだ
小奈美「ねぇお兄ちゃん。この前、新しい都市伝説と契約したらしいけど…」
堂寺「ああ、『ゲーム脳』ね。」
ゲーム脳…ゲームをやり過ぎると脳に異常が出ると言う都市伝説。能力は、ゲーム内の現象、物体、
生物などを現実世界に召喚する、ゲーム内でしか出来ないことを現実でも出来るようにする(セーブ&ロードなど)
ゲームの世界に入るなどである。ちなみにこれらの能力は対象となるゲームソフトとそれがプレイできる
ハードが無いと使えない。そしてもう一つ、『ゲームをした人間の記憶力など脳の力を低下させる』と言う
能力もある。ちなみにこちらはしばらくお手玉をしていれば解除できる。

まあ、そんな話をしながら歩いていた3兄妹であったが…

「うーん…かえんほうしゃ…きりさく…どうしよう…」
旧式のゲームボーイをぴこぴこ弄りながら悩んでいる少年と、その姿をパシャ、パシャと撮影している青年…
新聞部の一一をみつけた
堂寺「…ん? あれは新聞部の一君じゃないかな…」
一の傍に近づく3人。その時はもう撮影を終えて帰る頃であったが
一「ああ、貴方はゲーム研究部の。 隣にいるのは弟さんと妹さんですか?」
堂寺「うん、そうだよ。弟の方が光輝で妹が小奈美。どう? 可愛いでしょ?」
光輝「いやほんと自重しろよシスコン。 あ、弟の任天光輝と言います。」
一「…。あ、はい。よろしくお願いします」
187ソニータイマー:2010/03/23(火) 17:23:05.06 ID:w3ZRIbQt0
小奈美「私は妹の小奈美です。」
堂寺「ところでそこでゲームをしてる男の子は誰なの? 結構可愛いけど」
光輝(ああ、そうだ…こいつショタコンでもあったんだ…)
一「ああ。この子は竜宮。『カイザー』の契約者ですよ。『悪魔の囁き』の契約者の仲間です」
光輝「…『カイザー』?ああ、初代ポケモンの。 彼、なかなかのポケモン好きだと思いますよ」
同じ『ポケモン』系の契約者である光輝が呟く。そんな会話を4人はしていた。ちなみにこの会話は全て小声で行われている
堂寺「ちょっと話しかけてみようかな。でもその前にセーブを…」
セーブをしています 電源を切らないで下さい…

セーブが完了しました

堂寺は『ゲーム脳』の能力を使いセーブをした。これで死んでも、記憶をのこしたまままたここからやり直せる
堂寺「ねぇ、何してるの?」
堂寺が話しかける
「…お兄ちゃん、誰? 僕らの敵?」
ぴこぴこと旧式ゲームボーイを弄りながら言う竜宮
堂寺「…味方じゃないけど、場合によっては敵でもないよ(可愛い…可愛い!)」
竜宮の髪の毛を(勝手に)弄りながら答える堂寺
光輝「へぇ…「そらをとぶ」「かえんほうしゃ」「きりさく」「はかいこうせん」ね…。技選択で悩んでるんだ…。あと自重しろショタコン」

188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:23:52.29 ID:UWuy1ouL0
支援!
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:23:59.21 ID:jIzw7DRc0
支援 支援
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:24:06.27 ID:dKbamuTA0
支援
191ソニータイマー:2010/03/23(火) 17:30:32.31 ID:w3ZRIbQt0
竜宮のゲームボーイを覗き込みながら呟く光輝
光輝「積み技とかもあったほうがいいかも…「こうそくいどう」とか…」
ブツブツと呟いている光輝
「「こうそくいどう」ね…なるほど…そういうのもあるのか…さて、どうしよう」
聞こえていた。思わぬ形でヒントを与えてしまった光輝
「あ、お兄ちゃん達、今は忙しいから見逃してあげる」
堂寺「そう。じゃあね、バイバイ」
そう言いながらも堂寺達は不意打ちを警戒しソフトを入れたゲームハードを構えたり、DSを構えたり、エスタークを召喚
する準備を整えたりしていたわけだが…
堂寺達はその場を離れていった


ちなみに…こうしている間にも新聞部の記事やこの事件の効果で少しずつ、しかし着実に『都市伝説は実在する』と言う噂が広がっていた…


                   続く…
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:31:00.61 ID:UWuy1ouL0
しえーん
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:33:07.85 ID:IlaSzwA90
カイザーの種族値が気になる所
194ソニータイマー:2010/03/23(火) 17:34:21.64 ID:w3ZRIbQt0
P.S.
花子さんとかの人へ
襲ってもいいけど、任天兄妹の存在も忘れないで下さいね!
あと、カメラは!カメラだけはやめて下さい!お願いします!←一の必死の叫び
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 17:37:01.07 ID:UWuy1ouL0
お二方投下乙です!

杉沢村の文体が綺麗で羨ましい限り
私もあんな感じで書いてみたいものだ…
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 18:03:30.26 ID:UWuy1ouL0
ネタ書きつつほー
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 18:35:39.13 ID:UWuy1ouL0
ほし
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 18:56:28.40 ID:w3ZRIbQt0
保守
199単発じゃなくなってきた単発ネタ ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/23(火) 19:14:51.75 ID:UWuy1ouL0
「この見積もりがおかしい。というか単価間違ってる。そもそも計算すら合ってない」
禁煙パイプを咥えた『もげろ』の契約者、最上椿は、同僚の男の持ってきた書類をパンパンと叩きながら語る
低く唸るようなその喋り方は野生動物の威嚇にも似ており、周囲の同僚達は一様に目を合わせないように仕事に没頭しているふりをしていた
「ミスとか云々以前の問題だろ。このまま出したら大事だぞ、やり直し」
書類の束をつき返された男は、ぷるぷると震えながら何かを訴えかけるような目で椿を見詰めている
「どうした、何か言いたい事でもあるのか?」
「ええ、前々から一度言っておきたかった事が」
どうせ昔からよく言われている事だろう
入社一年目の癖に態度がでかいとか、言い方が怖いとか、人を殺しそうな目で睨むなとか
だが同僚の男の言葉は、今まで一度も聞いた事の無いものだった
「最上さんのスーツ姿ですら持て余すほどの乳が気になって気になって仕事にも手がつかんのです! いっぺん揉ませて下さい!」
空気が凍った
雪女も裸足で逃げ出す程に
そして一瞬遅れて、バックドラフトのように殺気が膨れ上がる
鬼ですら土下座して謝る程に
だがただ一人、その神をも恐れぬ発言をした本人だけはそれに気付いた様子は全く無い
「一揉みで今日一日何のミスもなく仕事ができそうな気が! 服の上からでも構いませんので是非!」
「寝言は……」
腕とネクタイをがしりと掴み、身体を捻りながら思い切り腰で相手の身体を跳ね上げる
「……死んでから言えっ!!!」
「のわ――――――っ!?」
軽々と宙を舞った同僚の男は、そのまま窓ガラスに叩きつけられた
ばしゃん、と派手な音を立ててガラスが割れ、悲鳴が尾を引いて小さくなっていき、数秒後にカエルが潰れたような音を立てた
僅かな沈黙の後、椿は席を立つとこの部署の責任者である課長の前に立ち、ぺこりと頭を下げる
「すいません課長、ガラス代は弁償しますので」
「いや、ガラス代が先!? 落とした彼は!?」
「……そういえば、普通の人間は5階から落ちたら死にますね。やり過ぎました」
「やり過ぎたで済むの!? この場合は呼ぶのは救急車!? 警察!?」
パニックを起こしてあたふたとしている課長(42歳・妻と二人の子あり、この部署に異動したばかり。最近の悩みは薄毛の進行)
200単発じゃなくなってきた単発ネタ ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/23(火) 19:15:34.16 ID:UWuy1ouL0
「下に人がいたら大惨事でした。反省しています」
「だから落とした彼は!? 仕事できないからって5階から落とすのはやり過ぎでしょ!?」
「ただいま戻りました!」
どばんとオフィスの扉を開いてずかずかと闊歩してくるのは、つい先程窓から外に消えていったはずの彼だった
一瞬落ちていなかったのかと思ったが、ガラスの破片まみれであちこちから流血している様子から、やはり気のせいではなかったらしい
「申し訳ありません! 服の上からでも構わないなどというのは失礼でした! やはり女性の乳は直に揉んでこそその価値を」
がしりと両襟を掴まれて、ヒールの踵を鳩尾に抉り込まれながら綺麗な放物線を描いて割れた窓から吸い込まれるように外へ放り投げられる同僚の男
「失礼しました。仕事が出来る出来ない以前にストレートにセクハラですので、私が手を下さなくてもアレが反省するよう上へ掛け合っていただければ幸いです」
ぺこりと頭を下げて、何事も無かったかのように席に戻り仕事を再開する椿
周囲の同僚達もまた、状況が落ち着いたと察したのかそれぞれの仕事に戻り始める
「ね、ねえ、なんかこれ日常茶飯事的な事なの? それとも異動してきたばっかりの僕へのドッキリ? 歓迎されてないかな僕?」
うろたえるばかりの課長に、席が近かった一人がこっそりと耳打ちする
「彼、美人さんだった前の課長に対してもあんな調子でして。その時はもっと酷かったんで大丈夫じゃないですかね」
「大丈夫なの? 本当に大丈夫なの? 彼、二回も落ちてるよ? ここ5階だからね?」
「ただいま戻りました!」
不安げな課長をよそに、元気良く戻ってくる血塗れの男
「この際、形の良い尻やすべすべの太股で構いませんので触らせてもらえんでしょうか!」
彼が三度目の放物線を描くまでは、ものの数秒と掛からなかった

―――
201単発じゃなくなってきた単発ネタ ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/23(火) 19:16:17.76 ID:UWuy1ouL0
「すいません、ちょっと病院に行ってきてもいいでしょうか」
ひびの入ったアスファルトの上で大の字になて寝転がり、奇跡的に無事だった携帯電話でオフィスに電話を掛ける
《そのまま野垂れ死ね》
即座に通話が切られた事、仕事に戻らなくてもいいという意味の言葉から了承と判断し、男はふらふらと立ち上がる
「いやー死ぬかと思った。野上さんてばリアクションが激しいなー、なんつーか親しくなってきた証拠? 脈あり?」
どう見ても瀕死の重傷という有様なのだが、その顔はにやけて緩んでおり、傍から見れば不気味な事この上ない
「一昔前に流行ったツンデレってやつか! という事は俺ラブ! あのないすばでぃが俺のものになる日も近いわけだな!」
そうやって独り言を垂れ流しているうちに、彼の身体の怪我はあっという間に治癒されていく
彼が知らぬ間に有している『馬鹿は死ななきゃ治らない』という都市伝説能力のお陰で、彼は馬鹿でいるうちは死ぬ事は無いのである
「身体はそんなに痛くなくなってきたけど、頭打ったからなー。一応病院ぐらいは行っておかんと……ん?」
掛かりつけの病院へと足を向けたその時、目の前に大きなマスクを付けた赤いコート姿の女性が立ちはだかった
どう見ても口裂け女です、本当にありがとうございました
「ねえ……私、綺麗?」
「そらもう綺麗ですとも! 目元を見ただけで判る別嬪さんやー! でもコートなんか着てたらちょーっと判断が鈍ると思いませんか!」
「綺麗なのね? じゃあ……」
「一丁ずばーっとそのコートを脱いでみませんか! 脱がなくてもいい乳してるのは判りますが是非そのボディラインを拝ませていただきたく!」
「これでも……」
「コートの裾から覗く足首も良い感じで! そのおみ足も拝見すればより美しさを判断する事ができますとも! できれば触らせていただければもっと良し!」
「えーと……」
「ああこれは失礼致しました! 一人では脱ぎ辛いですよね! そりゃもう俺で良ければお手伝いしますとも! でも手が滑ってどっか触っちゃったりしても不可抗力ですよね!」
202単発じゃなくなってきた単発ネタ ◇W5H6Y5Rl3M(代理):2010/03/23(火) 19:16:58.70 ID:UWuy1ouL0
「こ、これでも綺麗か!」
終始ペースを奪われながらも、果敢にマスクを外す口裂け女
「わざわざマスクを外すだなんて! 口付け求められてる!? 一目惚れ!? 大丈夫、俺は口が裂けてるぐらい気にしませんから!」
「ちょ、何こいつ!? や、放せ、はーなーせー!?」
「痛っ!? ちょ、鋏!? 刺さってる抉ってる切ってる!? ツンデレじゃなくヤンデレ! なるほど、いける! というわけで俺と清くセクシャルな交際をごふぅっ!?」
押し倒されながらも果敢に反撃し、都市伝説の身体能力で思い切り振り上げた足が男の股間にめり込んだ
涙と鼻水を噴き出し、股間を押さえ悶絶する男を押し退けて、涙目で逃げ出す口裂け女
「痴漢、変態、レイパー! 悪魔を殺して平気なのー!」
本来は追うための脚力であっという間に逃げ出してしまった口裂け女
「げふ……照れ屋さんにはちょっと押しが強過ぎたみたいだな……」
残された彼の姿は馬鹿そのもので
当分死ぬような目には遭っても死ぬ事は無さそうだったとさ

終われ
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 19:18:57.19 ID:UWuy1ouL0
以上、代理投下でした!

うん、ユニコーン契約者に続いて、こちらもすがすがしいほどの変態ですね。…いやむしろ馬鹿か?
まあ馬鹿と変態は紙一重と言いますし

では風呂前保守ー
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 19:28:57.70 ID:JuXLgOrY0
豚汁ごちそうさまでした
過ぎ沢村の人とソニータイマーの人と三面鏡の人乙!!
>あと、カメラは!カメラだけはやめて下さい!お願いします!←一の必死の叫び
っく、狂犬病わんこに襲わせて壊すか藤崎に襲わせて壊そうと思ってたのに!?


>>173
>これはあれか、相手が純潔かどうかを見極める能力を持っているのか
あー、それ能力違う
彼のある意味で天才的な勘です、見極めは

>>174
>翼と黒服Dの名を出した時、彼女は自分がチャラ男や黒服Dに嫌われる事になった理由をTさんたちに話すでしょうか?
曖昧にですが、話すと思います
…彼女、隠し事苦手なんですよ

>>175
実はお互い、お互いの存在に気づいてないとか秘密でいいと思った
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 19:48:54.90 ID:JuXLgOrY0
ソニータイマーの人との新聞部の面子のところには、いつか優しくない黒服が来そうで怖い保守
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:06:53.01 ID:UWuy1ouL0
>>204
>彼のある意味で天才的な勘です、見極めは
なん・・・だと・・・
よし、まごうことなき変態ですね。この変態め!(褒め言葉)
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:08:13.42 ID:ZeAnttv60
>>204
了解です
隠し事は苦手なのに息子への愛情は伝わらないという悲しい出来事……
にしても、微妙な立ち位置なマドカさんとの会話、どうしたものか……
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:10:57.24 ID:JuXLgOrY0
>>206
今現在、悪魔の囁きサイド唯一の変態ですからwwwwwww

>>207
>隠し事は苦手なのに息子への愛情は伝わらないという悲しい出来事……
ついでに言うと、黒服Dとか誠にも誤解されっぱなしだしねー
まぁ、Dの場合、翼や誠と言うフィルターを通してしか情報が入らないのと、契約で翼に対する情が強くなったせいもあるのですが…

ちなみにマドカ、秀雄が翼に会ったら悪い事が起きるような予感はしていますが、具体的に秀雄が翼を狙っている事実は知りません
わかったら、秀雄を見つけてぶん殴る!!な状態になるかと
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:18:14.86 ID:ZeAnttv60
なるほど
ちょっと説教的なアレになるかもしれません
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:19:34.98 ID:JuXLgOrY0
>>209
問題ないんだぜー!

あ、そうだ
マドカは、翼に関して「あたしのたった一人の息子」みたいな言い方をします
聞く側からは、「たった一人」と言うのがやけに強調されて聞こえるかもしれません
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:21:20.83 ID:ZeAnttv60
了解です
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:31:06.97 ID:JuXLgOrY0
注文多くて申し訳ないんだぜorz
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:51:17.04 ID:JuXLgOrY0
ネタ構想しながらほ
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 20:57:19.32 ID:ZeAnttv60
>>212
とんでもない!
ウチの子たち共々貴方には頭が上がらない!
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:09:57.17 ID:JuXLgOrY0
>>214
頭が上がらないのはこっちなんだぜー


むしろ、俺はこのスレの作者様方ほぼ全員に頭があがらない
216隻腕の鹿島 篇  ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:19:02.99 ID:cX1UhlM10
学校町南区

道を行く人々は皆、寒さから逃れる様に足早に歩いて行く
冷気が静かに降り積もり、大気を重く冷たく押しつぶしている様だった
それでもまだ
人々の巻き起こす活気にあたり、街は芯まで凍えてはいない

喧騒を縫う様に、足早に進む男がいた
険しい表情をして、何かを探す様に周囲に視線を配る

ひとつの路地に視線が固定される
喧騒にまぎれる様に
ガラの悪い男達が二人で、一人の若い女性に声を掛けている最中だった
男達の後ろにはウィンドウに黒いスモークの張られたワンボックスカーが止められ
運転席からも男が顔を覗かせている

男の足は既に彼らへと向かって動き始めていた

──数分後

男は、悠然と歩を進める

先に逃がしていた女性に追いつくと二言三言交わし別れる
女性は去り際に、何度もお辞儀をして男を見送っていた
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:20:07.29 ID:JuXLgOrY0
おぉっと、ルーモアの人支援!!
218隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:21:00.38 ID:cX1UhlM10
「こんばんは、カシマ」

男は不意に声を掛けられ、一瞬の緊張が走るがすぐに声の主に気付き息を吐く

いつもの外套は無く、現代的な暗色のコートを着てはいるが
まぎれも無くジャック・ザ・リッパーである

町へ溶け込む為にカシマもまた、いつもの軍装ではなく帽子も被ってはいない

「……ジャックか」
「どうしたのですか?こんなところへ貴方が来るなんて」
「いや……例の魔術師が……目撃されたという話があってな」
「例の魔術師……そうですか、輪の……
 ですが、こんな人通りの多い所へ来るなど……少し妙な気がします」
「木は森に隠せとも言う……とは言え確かに妙だな、まるで……」
「まるで、見つけてくれとでもいう様な?」
「うむ……もしそうだとして、何のメリットがあるというのだろうか」
「……さぁ……皆目見当もつきませんね」
「あの日からもう半年だ、単純に気を緩めているのかもしれん」
「自分は見つからないという、小物にありがちな根拠のない自信かもしれませんよ」
「それならば楽なのだがな……」
「詮無き事です」
「うむ……考えても意味のない事だったな」

この時はまだ、誰も正確に予測しえなかっただろう
彼らを待ち受ける運命を……
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:21:41.95 ID:ZeAnttv60
支援せざるを得ない!!
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:21:56.59 ID:JuXLgOrY0
しええん
221隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:22:02.13 ID:cX1UhlM10
「ところでカシマ、先程の……見ていましたよ」
「ん……そうか」
「貴方の性格上、仕方の無いことだとは思いますが……あまり感心しません」
「判ってはいるのだがな……つい、体が反応してしまう」
「人間達の揉め事は人間達で解決すべきかと」
「……そうだな」

少し悲しそうな顔をするカシマをジャックは見逃さない

「すみません、余計な事を言いました」
「いや、キミの言う事は正しい……ワタシが未熟なのだ」

そんな事はないとジャックは思う
ただ、優しすぎるのだ

きっと、ジャックを助けた時も先程と同じ様にしただけのこと
そうと思うと、どうしようもない程の虚無感に襲われる

つい、カシマにとって自分はどういう存在なのかと考えてしまう
二人はただの知人だ
それ以上でも、それ以下でもない
ただ、ジャックがカシマに好意を抱いている……それだけだ
222隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:23:38.52 ID:cX1UhlM10
「……もし…………」
「ん……何だね?」
「もし、私が危険な目に遭っていたら……貴方はまた、助けてくれますか?」
「……キミが危険な目に遭うなどそうそう無い、ワタシ如きで救えるかどうかも疑問だ」

ジャックはそういう現実的なことを聞いているわけではない
自分はただ、カシマと何かで繋がっていたいだけなのだと……

だが、カシマは真面目な男だ
その場の雰囲気で……軽い気持ちで助けるなどとは言わない
彼が助けると言うならば、必ず助ける、勝算あっての言葉という事だ
カシマは嘘をつける様な男ではない

「そう……ですね……すみません、つまらない事を訊きました」

カシマはそんなジャックを見て怪訝な顔をするも、深くを聞きはしない
ジャックが何を言わんとしているか、カシマも判ってはいる
だが、それでも軽はずみな言葉を、出来もしない約束をするわけにはいかない

お互いに、次の言葉が見つからない
どちらからともなく目を逸らし、その日はそのまま別れてゆく



吐く息は白く
吹き付ける風は、人々の心まで凍りつかせるかの様だった
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:24:17.78 ID:JuXLgOrY0
支援支援
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:24:18.39 ID:ZeAnttv60
時系列把握した支援!
225隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:25:01.62 ID:cX1UhlM10
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

暗い、ここは暗い
何も見えず、何も感じず、何も分からない

時間の感覚が麻痺し
長い時間が過ぎたのか、それとも一瞬だったのか

かつて覚えていた激情は過ぎ去り
今はただ、静かに受け入れている、この状況を

うな垂れていた首を上げると
遠くに小さな光が見えた

腰を上げ、歩き出す
一歩一歩、引き寄せられる様に

男の声が聞こえた気がした
懐かしい、落ち着いた声

男の苦悩が、悲しみが、怒りが、喜びが
伝わってくる

だが、その中に
自分達を想う心はなかった

"俺は……ひとりになってしまった……俺達を必要とはしてくれないのか"

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:25:41.35 ID:JuXLgOrY0
支援!!
227隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:26:13.82 ID:cX1UhlM10
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

着物がはだけ、胸元が露になり

ほどけた長い黒髪は、扇の様に広がり布団の上で艶めいている

若い女だ

濡れた瞳が扇情的に揺れる

「お願いです……後生ですからっ……」

聞いているこちらが切なくなる様な、すがり付く様な哀願

「すみませんが……キミの願いを叶える事はできかねる」

女の上に跨る様にして、両肩を押さえつけながら男が言う

「お願いですから……おねがい、です……から……」

涙が頬を伝い、滑る様に落ち、布団を濡らす

「……すまない」

その男の顔は───

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:26:34.64 ID:JuXLgOrY0
しーえん
229隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:27:05.74 ID:cX1UhlM10
"くっ……っ……はぁ……はぁ……"

かかっていた毛布を跳ね除ける様にして起き上がる

"なんだ?今のは?!……夢?!……いや、あれは……ワタシの……記憶なのか?"

汗が首筋を濡らし、不快な感覚が全身に広がる

"一体……いつの?……どこで?"

抑えきれない焦燥感が心を絡めとっていく

"アレは……あの女性は……誰だ?"

カシマは記憶の糸を手繰る

"ワタシは……ワタシは何をしていた?"

だが、在るべきはずの記憶が……過去が……思い出せない



"ワタシは……一体……誰だ?"
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:27:17.35 ID:ZeAnttv60
支援!
231隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:27:46.86 ID:cX1UhlM10
「おい、お前さぁ……ちょっと聞いてくれよぉ、ついこのあいだの話なんだけどよぉ」

輪は唐突に話し掛けてきた馬鹿の馬鹿そうな話し方に
きっと馬鹿な内容の話なのだろうと、心の中で溜息を吐きながら応じる

「何、ボクサーさん……稽古中なんだから、くだらない話なら後にしてよ」

以前は朝から昼過ぎ、もしくは夕方まで稽古をしていたが
ルーモアの営業を再開することになり、稽古は早朝だけ行うことになっていた
そして、いつの間にか……
カシマさんとの朝稽古にボクサーも来る様になっていたのである

「お前さぁ、俺の話はくだらないって決め付けてるだろぉ」
「うん」
「たはぁあぁぁぁぁぁ、これだよっ!真剣に悩んでるのにこれだよっ!!」
「真剣に……ねぇ……」
「これだから子供は……カシマさんならちゃんと聞いてくれるんだけどなぁ」
「そうだね、カシマさんも大変だね」
「カシマさんはなぁ、俺のボケにもちゃんとツッコんでくれるんだぞっ!」
「それはね、ボクサーさんの間違いを正しているだけでしょ」
「……お前、冷たい」
「それとね、今日はカシマさん、寝過ごしたとかで遅れて来るって連絡あったよ」
「……」
「珍しいよね、カシマさんが稽古に遅れるのは初めてだし」
「……俺、悲しい」
「……」
「……」
「はぁ……わかったよ、ボクが聞くよ、聞きます、是非、話してください」
「おぅ!そんでなっ!この前なっ!」
「立ち直り早ッ!」
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:28:32.50 ID:JuXLgOrY0
ボクサーwwwwwwww支援
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:29:44.17 ID:jIzw7DRc0
支援
234隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:29:54.93 ID:cX1UhlM10
ボクサーが新しいトレーニンングウェアを買いに行った時のことだ

サチがいた、偶然会えたのが嬉しくなって
いや、もうこれは運命だなぁ……ほら、アレだ……この町って
惹かれ合う二人は必ず出逢えるっていうかだな……何かあるだろ?そういう不思議なこと
まぁ、そんな事をだな……思いながら声を掛けようとしたら
黒いスーツをきっちり着たイケメン(綺麗な顔だったのは認める)が来て
サチに声を掛けやがったんだよぉ
そしたら、普通に二言三言の挨拶交わして一緒に歩き出しやがったんだよぉ
いやもう気になってさぁ、お前も気になるだろぉ?仕方ないよなぁ
まぁ、俺もストーカーとかそういうのはダメだって思ってる
で、後をつけるとかはしないでだな
俺も買い物の続きをだな
そしたら偶然にもだ、同じフロアにサチ達も買い物に来ていてだな
え?……だから違うって、偶然だ、いや、運命か
ああ、それでな
何件か服のショップ見てまわって、ランジェリーショップに入ったんで
これは!と思ってだな、俺も何故か隣にあったエロ下着屋に入ってだな
そしたら話し声が聞こえてきてだな
うんまぁ、俺は下着自体には興味ないんだ
え?……これはホントにな、大体だな、サチに余計な飾りはいらねぇのさ
何を身に着けていようが、中身は何も変わらねぇ……
だってよ、どうせ脱がせば一緒だろ?
ん?……なんだ?一瞬見直しかけたけど、やっぱ違った?
お前も色々ツッコミが大変だな
途中、エロ下着の説明を受けつつだな
ここにスリットが入っていて、下着付けたまま出来るぅぇっ!!
痛っ?!!舌噛んだぞっ!!
何すんだっ!このガキっ!!……って何だっけ
どこまで話したっけ……ああ、そうな、サチ達の下着選んでる時の会話な
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:30:38.84 ID:JuXLgOrY0
wwwwwwwww支援
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:30:53.43 ID:ZeAnttv60
うおいwwww
237隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:31:00.68 ID:cX1UhlM10
池面「これは……下着としての意味があるのですか?」

サチ「ぇぇ……まぁ……透けてますけど……一応は」

池面「今回の目的としては……アリでしょうか」

サチ「ぇぇとですね……まぁその、最終的には好みの問題だとは思いますね」

池面「確かに……ですが、防御力がかなり低そうな感じがします」

サチ「ぼ、防御力、ですか……確かに、そう、ですね……でも……」

池面「でも?」

サチ「ある意味……こ、攻撃力は相当なものかと……」

池面「なるほど……確かに攻撃力は高そうです」

サチ「やっぱり、その……あっちの方のものにしませんか?」

池面「こういうランジェリー、サチは嫌いなのですか?」

サチ「ぇぇと……わたしにはまだ経験がありませんので、何とも……」

池面「そうですか……分かりました、あちらの方が無難そうですね」

サチ「色はどうしますか?わたしはパステル系が好きなんですが」

池面「好きな色ですか?……やはり、黒でしょうか」
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:31:34.53 ID:JuXLgOrY0
ネタ書いてる最中なのに笑い止まんねぇwwwwwww支援
239隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:32:33.69 ID:cX1UhlM10
サチ「黒……ですか……まぁ、そうですよね……ぅ〜ん……どうかなぁ」

池面「……何色が好きでしょうか……ああ、そう……私は純白も好きですね」

サチ「そうですか……うん、白なら間違いありません」

池面「白は……この辺りですか……たくさんありますね」

サチ「これなんてどうでしょうか?レース使いも綺麗で、尚且つ清楚です」

池面「確かに清楚さを演出してくれそうですね」

サチ「これなら防御力も高そうですよ!」

池面「攻撃力はどうでしょうか?」

サチ「かなりのものかと……恐らく、これは聖属性……聖属性には弱いと思います!」

池面「なるほど……では、先ほどまで見ていたのは闇属性だったというわけですね?」

サチ「はいッ!闇属性の場合、相性が悪い可能性もありますから」

池面「流石ですサチ、素晴らしい解説ですね」

サチ「恐れ入ります……わたしも解説役としての責務を果たせて良かったです」

池面「これに決めました、これを買いましょう!」

サチ「良い買い物だと思います!……ってアレ?何かおかしい?かも?」
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:32:55.75 ID:JuXLgOrY0
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww支援
241隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:33:52.89 ID:cX1UhlM10
「っていう話なんだけどよぉ……なぁ、これってどう思う?」
「……なにそのコピペから、肝心なボーイッシュな女の子という萌え要素を抜いちゃった様な話」

頭痛をこらえる様に顔をしかめながら、こめかみに指を添える

「……っていうかカシマさんにこの話をしようとしてたの?」
「え?……ダメだった?」
「駄目じゃないけど、困るんじゃないかな……」
「そうか……そうかもなぁ」
「あと、声色マネてるつもりかもしれないけど……」
「あ、やっぱ似てなかった?」
「似てない……でも問題はそこじゃない」
「何だよ、どこが問題なんだよぉ?」
「もの凄く……とてつもなく……これ以上ないほどに……キモイ」
「な!!……キモイ?!……いや、そうだよな……キモかったよな、スマン」
「いや……判ってくれればいいんだ、判ってくれればさ……」
「お前に話しといて良かった……また、話聞いてくれよな……」
「全力でお断りします!!……で、話を戻すけど……この話のどこを悩んでるのさ」
「おぅ?!……っと、中々イイ仕切りだな、やるじゃんお前!」
「はいはい、どうも、話、続けて」
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:34:41.86 ID:JuXLgOrY0
どこから突っ込んだらいいのかわかんねぇwww支援
243隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:35:19.76 ID:cX1UhlM10
「最初はサチに男が出来たのかと思って焦ったんだけどよぉ」
「ん〜、それは無いと思うよ」
「だよな、やっぱお前もそう思うよなぁ……ということは、だ」
「下着選びの相談みたいに聞こえるよね」
「だよな……じゃあアレか、あのイケメンが女性モノの下着つけるのか?」
「う〜ん、そう感じるんだけど……いま流行の男の娘ってことかな?」
「男の娘?……乙男とは違うのか?」
「オトメンとはちょっと違うかな?……でもカテゴリーとしては同じかも」
「ややこしいなぁ」
「男性目線が男の娘、女性目線が乙男……かな?よくは知らないけど」
「難しいなぁ……正直、意味がわからん」

「まぁそれは置いといて、話を戻すけどね……スーツ着てるし女装趣味では無い様な」
「お前ホント、話の筋の修正うまいな……で、どう考える?」
「妹の下着を買う相談とか……どうかな?」
「何だと?!じゃあ、母ちゃんが死んじまって父と兄が、幼い妹を一生懸命育てています的な?!」
「……そこまでは言ってないよ」
「幼かった妹のつぼみの様だった胸が花開き始めました、どうしたら良いですか?的な?!」
「あの、ちょっと……」
「あのイケメン、スーツ着て、金髪で、ホストか何かやってる様なヤツだと思ったのに!!」
「ボクサーさん?」
「うぉおぉぉぉぉぉ!イイハナシダナー!!」
「いや、だからね……ボクサーさん?話聞いてる?」
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:35:49.05 ID:JuXLgOrY0
同じカゴテリーなのか?wwwwwww支援
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:36:48.44 ID:ZeAnttv60
ボクサーwwww
246隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:37:19.77 ID:cX1UhlM10
「駄目だ、話を修正できない……でも、なんかこういう展開、前にもあった様な……」

下着選び、サチ、黒いスーツで金髪のホスト、暴走するボクサー

「う〜ん、記憶が……でも、下着は憶えが無い……服だったかな……」

服選び、サチ、黒いスーツで金髪のホスト、暴走するボクサー

「確か……サチは関係なかった様な……でも話し相手が暴走して……」

服選び、黒いスーツで金髪のホスト、暴走する話相手

「金髪で……男の……そうだ、あれは……」

服選び、男装の金髪、暴走する話相手

「ヒキコさんの時の……ジャック!!」

そういえば最近、ジャックはサチのことを気にしなくなっていた
カシマさんとの仲が進展した様な気もするし
誤解が解けて仲良くなったのかな……いや、でも……
うん、あり得るかも……
という事は、ジャックが自分で着る為の(勝負?)下着を買っていた、と
カシマさんが聖属性に弱くて、闇属性は好みではない可能性あり、か
なるほど、そういう事か……
247隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:38:30.32 ID:cX1UhlM10
さて、どうしよう……ボクサーに言うべきか……

「ボクサーさ〜ん!」

あ、駄目っぽいな……興奮して、猛烈にシャドウしてるし、聞こえてなさそう

「おい!この馬鹿!!ボクの話を聞けぇえぇぇぇぇ!!!」

あ、やっぱり聞こえてないな

「この変体ストーカー野郎ぉおぉぉぉ!!でも、きらいじゃない!!ふしぎ!!」



自身の行いに、自身が呆れながらも
輪はただ、過ぎ行く時を楽しんでいた

愚かで微笑ましい日常
そしてそれは、いつまでも色あせずに輝き続ける記憶

大切なものとは、いつでも日常の中に隠されている
だが、それに気付ける者は少ない
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:38:46.99 ID:JuXLgOrY0
支援!!
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:40:13.65 ID:JuXLgOrY0
あぁ、そう言えばあんな事あったね!!wwwwwwwwwwwwwwww
…輪に同情する翼の様子を幻想した支援
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:40:33.08 ID:UWuy1ouL0
遅ればせながら支援だ!
251隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:40:44.98 ID:cX1UhlM10
輪とボクサーが仲良く遊んでいるのを見つめる視線が二つ

白髪混じりの口髭を綺麗に整えた中年の男
そして、眼鏡をかけた神経質そうな男の二人だ

どこからともなく現れ、輪とボクサーに向かい歩を進める
明確な目的を持った、迷いのない足取り

「輪廻転生の都市伝説だな?」

口髭の中年が問い掛ける
白い軍服を着た二人は、紛れも無く旧日本軍・海軍所属の将校
輪とボクサーは、慎重に観察しながらも相手との距離を測る

眼鏡の男が言葉を継ぐ

「君に恨みはないが、訳あって同行してもらう」
「同行?……そんなこと、誰が許すってんだよぉ」
「そちらの君には関係の無いこと……そして、拒否権は無い」

眼鏡の男が、チラとボクサーを見やり言う……が

「ボクは、貴方達について行く理由も無ければ、この町から離れる気もない!」

輪もまた、自分の意志を伝える

「だ、そうだ……どうする?このまま帰るかやりあうか……」
「ならば、仕方あるまい……力ずくで奪うまでよ」

張り詰めた空気が、場を支配する
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:41:42.13 ID:ZeAnttv60
支援!
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:41:43.43 ID:UWuy1ouL0
支援
254隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:43:02.77 ID:cX1UhlM10
「待っていただこうか」

緊迫を破る声……だが、口調は穏やかで自然と皆の視線が男へと移る
カシマだ

「貴様……カシマ……か?」
「おぅ、カシマさんいいところに来たなぁ」
「カシマさん、この人たちがボクを連れ去ろうとしているんだけど」

ふぅ、と息を吐きながら輪も声を掛ける

「遅れてすまない……夢見が悪くてな……さて、話は大体聞かせてもらった、手を引いてもらえないだろうか」

カシマがやんわりと提案し、口髭の中年が答える

「カシマよ……輪廻転生を護る意味など無いだろうに」
「確かに……」
「流石はカシマだ、話が早くて助かる」
「ワタシには輪廻転生を護る意味も必要も無い……」
「では、引き渡して頂こう」
「断る」
「……済まない、もう一度言ってくれないか……よく聞き取れなかった」
「断ると言った」
「何故だ?」
「ワタシが護っているのは、都市伝説ではない……この少年個人──輪個人だ」
「ふん、詭弁だな」
「ワタシが語るは真実のみ」

静寂が辺りを包む
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:43:36.27 ID:UWuy1ouL0
支援!
256隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:44:02.78 ID:cX1UhlM10
「ふはははは! 相も変わらず生真面目な男だな!」
「ワタシはこういう冗談は好きではありません、艦長殿……ご無沙汰しております」

カシマは頭を下げながらも警戒を解かない
だが、艦長と呼ばれた口髭の中年からは既に先程までの威圧感は無く
柔和な表情で言葉を吐きだす

「久しいな、カシマよ」
「あの時以来となりますから……」
「そうだな、時の流れは早いものだ……その後、具合はどうだ?」
「一時は消えかけましたが、今では契約者を得る事ができました」
「そうか……契約したか」
「今のワタシにもまだ護れるものがあると、恥を忍んで生き永らえております」
「それで、その少年だが……お前が護る程の価値があるわけだな?」
「はい」
「そうか……では、諦めよう」

無言で付き従っていた眼鏡の男が一瞬だが顔をしかめる

「宜しいのですか、艦長」
「構わん」
「では、我等の行く末はどうされるおつもりですか?」
「他を当たるか……いや、いっそのこと幕を引くのも一つの選択肢と言えよう」
「諦めると?」
「既に、我等が何かを変えられる様な時代ではないのかもしれぬよ」
「……潮時、ですか」
「そうよな、潮時だ」
「分かりました……その旨、兵員にも伝えて宜しいですか?」
「頼む」
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:44:32.56 ID:JuXLgOrY0
支援!!!
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:44:52.52 ID:UWuy1ouL0
しえーん!
259隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:45:33.73 ID:cX1UhlM10
眼鏡の男はきびすを返そうとするが、カシマと視線が合い足を止めると
眼鏡の位置を直し、言う

「カシマ……あの時の事、よもや忘れてはおるまいな?」

語気の鋭い詰問に、カシマは困った様な顔で言葉を返す

「副官殿、以前にもお答えしましたが自分は」
「貴様の答えなど訊いてはおらん、憶えていればそれで良い!」

遮る様に言い放つと、今度こそ踵を返して去っていった

「すまんな、アレも悪い男ではないのだがな」
「……」
「さて、カシマよ……大方の想像は付いているだろうが……」
「艦長殿らも都市伝説としての存在が消えようとしている……と?」

艦長は、カシマから少年へと視線を移し

「カシマが消えかけたという話は、今聞いた通りだが……君も知っているな?」

自分へと向けて発せられた言葉に、輪は頷く

「うむ、我等もカシマ同様"今の日本は平和か?"という都市伝説だ……
 そして、我等もまたカシマの言った通り、カシマ同様に消えようとしている……時代の流れよな」

輪廻転生の力があれば、輪廻転生の力を自分達に取り込むことが出来れば
自分達が消えようとも、輪廻し転生出来るのではないかと考えた

出来るかどうかは分からない……だが、彼らはそう考えたのだという
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:45:58.11 ID:UWuy1ouL0
支援!
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:46:03.54 ID:JuXLgOrY0
しえしえ
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:47:20.74 ID:ZeAnttv60
上官達か支援
263隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:47:48.56 ID:cX1UhlM10
「もし、輪廻転生が人々を恐怖におとしいれるだけの者であったなら
 我等は躊躇い無く、この案を実行するつもりでいた」

だが、そこにカシマが立ちはだかった

「我等と端を同じくするカシマが護るというのだ……
 ならば、我等もまた彼を護る側におらねばなるまい」

そう言って、深々と頭を下げ

「我等の都合で迷惑を掛けた事、許されざる事かとは思うが
 私も多くの部下を預かる身、簡単に彼らの消失を受け入れるわけにもいかず……どうかご容赦頂きたい」

と、輪へと謝罪した

「艦長さん、頭を上げてください……ボクのことを諦めてくれるなら良いんです」
「ご容赦頂けるか……」
「……でも」

続く言葉を待つ

「ボクのことは諦めてもらわないと困るけど、存在を諦めるのはまだ早いと思うんだ」
「……では……まだ、我等にも出来ることがあると?」
「例えば活動の拠点を広島や長崎とかにするのは?」
「ふむ、確かに……だが、それならば既に行っている」
「じゃあ地道にインターネットで工作するのは?」
「インターネットか……確か前にも……そう、先程の眼鏡の副官だが……
 あやつが諜報活動に利用したことがあったのだが……」
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:48:19.54 ID:UWuy1ouL0
しええん!
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:48:42.63 ID:JuXLgOrY0
支援だ!!
266隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:50:22.25 ID:cX1UhlM10
どうも、説教臭いせいか食いつきが悪かったらしい
他にも、暗号板かと思い入り込み……
やたらと食いつきが良いと思ったら、何やら精神的外傷を受けたこともあったらしい
その後しばらくの間
"馬鹿な、この私が艦長とだと?!" "裏2ちゃんねるだと?……しまった!罠か!!"
"現代の婦女子は腐っている……これ以上読んでは、精神が……"
等々、医務室のベッドで毎晩うなされていたらしい

「嗚呼……書き込む板の選択を誤ってしまったんだね……」
「そうか……選択を誤っていたのだな」
「たぶんその話、暗号板じゃなくて801板だと思うんだよね」
「801板……確かに暗号の様だな……危険なのかね?」
「不用意に入り込むと精神が汚染されると言われていて、もう都市伝説レベルだよ」
「ふむ、その様な危険な所があるとは……気を付けるとしよう」
「うん、一度失敗してもまだ二度目があるよ」
「不思議と説得力を感じるものだな……実感が伴っているという事か」
「まぁ……何度も繰り返して来ているからね……」
「……そうか、そうであったな……すまぬ」
「いいんだよ、今は凄く幸せだからね」
「よし、また皆で模索して行くとしようぞ」
「頑張ってね」
「ああ、世話をかけたな……では、戻って出港の準備をするとしよう」
「すぐに発つの?」
「着いたばかりだ、数日は休息と準備に充てる事となろう」
「そっか、じゃあまた会えるかもね」
「その時はまたご教授願おう」
「ははは、またね艦長さん」
「また会おう、少年……では、カシマ、そちらの青年も元気でな」

敬礼するカシマに背を向け歩き出す
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:50:30.91 ID:ZeAnttv60
支援!
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:50:34.93 ID:UWuy1ouL0
支援!!
269隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:51:07.55 ID:cX1UhlM10
艦長は去り行く途中、
思い出した様に踵を返し、声を張り上げる

「おっと、言い忘れていたが!輪廻転生の少年を捜索している内に気付いたことがある!
 このところ、何物かにより都市伝説が立て続けに負傷させられている!
 同じ通り魔により負傷したと思われる都市伝説は全て少年型の都市伝説だった!
 少年も気を付けるのだぞ!良いな!」

「わかったよ〜!忠告ありがとうね〜!」

大きく手を振り応える

「少年の都市伝説を狙った犯行か……」
「気を付けるって言っても、携刀しておくことくらいかなぁ……」

カシマと輪は視線を交わし、思案する

「謎の通り魔ねぇ……意外とどっかですれ違ったことのあるヤツだったりするんだよなぁ」

ぎょっとする二人、だが……

「でもよぉ……考えたってしょうがないよなぁ……頭使うと疲れるから嫌だぜぇ」

ボクサーが発したのんきな一言に掻き消される
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:51:46.16 ID:UWuy1ouL0
しえーん!
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:51:56.45 ID:JuXLgOrY0
どこを見たんだよwwwwwwwwwwwww支援
272隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:52:05.12 ID:cX1UhlM10
「む、もうこんな時間か……朝稽古はこれまでにして引き上げるとしよう」
「そうだね……じゃあ、今夜またルーモアで!」
「うむ」
「よっしゃ!今夜は宴会だもんなぁ!」
「逢魔ヶ刻からだからね、ボクサーさん遅れないでよ」
「おぅ!今日の為にかなり絞って来たからなぁ!」
「じゃあね!」

今夜はマスターの帰還を祝い、関係者を招いての宴会が催される
規模は小さいが、マスターとサチと輪が用意した軽食と
皆が持ち寄ったお酒で、楽しい時を過ごす事が出来るだろう
それを思うと、輪は自然と高揚するのを感じていた

三人はそれぞれの道へと散っていく

近づきつつある雨雲に、ある種の予感を抱きつつも
誰もが春の柔らかい日差しに心を遊ばせていた

─ 続 ─
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:52:50.25 ID:ZeAnttv60
よwwりwwwwにwwwよwwっwwwwてwwwwww
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:53:44.80 ID:UWuy1ouL0
なぜその板を踏んだwwwww
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:54:33.98 ID:JuXLgOrY0
乙でしたー!!
よりによってなんでそこなんだよwwwwwwwwwwwwwwwww
2ちゃんねる最強(凶?)とも呼ばれてる場所じゃねぇかよwwwwwwwww
276隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/23(火) 21:55:22.48 ID:cX1UhlM10
まだ100レス以上あるので、一旦休憩入れま〜す
明日休みなんで、また深夜に保守がてらチマチマ投下しま〜す

支援どうもでした〜
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:56:29.58 ID:UWuy1ouL0
投下乙でした!

さすが100kbの書き溜めだwwww
wktkして待ってます!
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:56:57.13 ID:JuXLgOrY0
ネタ書きつつwktkしてるぜ!!
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:57:35.80 ID:ZeAnttv60
乙でしたー!
くそ、俺明日の夜家に居ないのに、くやしい!

宴会か〜
すっかり居酒屋になりつつある喫茶ルーモア……それもまたよし!
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:10:09.00 ID:IlaSzwA90
ちょっとwiki見てきたけど、なんか新規には入りづらい環境というか、内輪っぽい感じだな
誰がどの作品を書いてるのかもよく分からないし、他の連載とつながってるのかリンクもなしで急展開だったり
話に着いていきたいけど厳しそう
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:12:43.95 ID:JuXLgOrY0
>>280
新規参入はいつでも大歓迎さ!!!

>他の連載とつながってるのかリンクもなしで急展開だったり
に関してはまだ全部リンクはりきれていない俺としては土下座せざるを得ないorz
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:15:56.34 ID:UWuy1ouL0
>>280
新規参入、いつでもウェルカムです!

>誰がどの作品を書いてるのかもよく分からないし
>他の連載とつながってるのかリンクもなしで急展開だったり
たしかにこの二点は改善しなきゃならないな…
夢の国騒動なんかは、横のつながりが多い分、特にそう思う
283Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/23(火) 22:22:01.94 ID:ZeAnttv60
新規に参入したくても状況が整えられていないというのはやっぱり問題かなと思ったり

≪夢の国≫については見やすくしようにも他の方の作品を俺の一存ではどうしようも無かったりするし

とりあえず自分の書いたページだけを見ても(〜騒動Tさん編)として見れるようにはしているつもりなんだけど他の人にはどう見えているんだろうと思うとなぁ
284花子さんとかの人 ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 22:27:21.67 ID:JuXLgOrY0
ぶっちゃけ、縁会やらマッドガッサー編ももっと見やすくしないとなぁ、と悩む俺

一応
>誰がどの作品を書いてるのかもよく分からないし
に関しては、俺が書いているのは

・「花子さんと契約した男の話」のページの作品全部
・「とある組織の構成員の憂鬱」のページの作品全部
・「黒服Hと呪われた歌の契約者」のページの作品全部
・「蝦蟇と髑髏は黄金の夢を見るか?」のページの作品全部
・「首塚組織の憂鬱」のページの作品全部
・「ビター・スウィート・ビター・ポイズン」のページの作品全部
・「マッドガッサーと愉快な仲間たち」のページの作品で、似非関西弁視点のネタ以外ほぼ全部
・「悪意が嘲う」のページの作品も現時点では全部
・「ハーメルンの笛吹き」のページの穀雨関連のネタ

となります
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:29:10.56 ID:dHJIBpqG0
新規参入用のガイドラインとか作ったほうが良いのかね?
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:32:05.96 ID:UWuy1ouL0
>誰がどの作品を書いてるのかもよく分からないし
これを解決するために、作者別作品一覧を作ったほうがいいのかしら?
少なくとも>>284を見て、花子さんの人の項目は必須だと感じたわけですがwww
287Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/23(火) 22:32:06.08 ID:ZeAnttv60
俺はタイトルの最初にTさんと付いている作品全てですね

スレにて聞かれれば説明しますぜ! とどこかにでかでかと書いておく必要がありそうですね
288先に言っておきますいろいろとごめんなさい 電気人間:2010/03/23(火) 22:32:26.58 ID:f/LeVjZx0
「キャハハハハハハハハハハハ♪」
光速で僕の周りを飛び回る人形 かなりうざい

キャベツ畑人形 この世に一つしかないこの人形は、しばしば悪魔やら悪霊やらが宿ることがあるという

僕の能力は電気、光
光速で攻撃が出来るのだが、構えてから放出までに少し時間がかかる
まぁそれでもコンマの世界なのだが、この人形はその時間の中で確実に電気を避けていく
先程から放っているのだが当たる気配が全くしない
ていうかそもそも何このスピード なにが憑いたんだよ
「キャハッ♪」
と、人形の体に火がつく ・・・もしかして「悪霊が憑いた人形を燃やそうと持ち主が火をつけたところ、狂ったように暴れだし、火が家に燃え移り家事になった」なんて事件があったそうだが・・・ まさかその話からか?
いや、避け続けてるだけじゃ駄目だろうから何らかの攻撃が来ることはわかっていたが・・・火なんて危なっかしいもの纏われちゃ少し不都合だ
・・・だが、逆に好都合でもある 遠くから射撃なんてされたら勝ち目はない 
話通りなら、恐らく攻撃は体当たりだろう
「ッケケケケケケケケケ♪」
笑い声がおかしなものになり、目はぐるぐると回っている
・・・正直怖いというか気持ち悪い
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:32:51.49 ID:UWuy1ouL0
支援だ!
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:33:34.63 ID:JuXLgOrY0
と、ネタ欠きながら支援だ!!
291先に言っておきますいろいろとごめんなさい 電気人間:2010/03/23(火) 22:33:54.83 ID:f/LeVjZx0
「ッケ!」
人形がこちらへ突進する 一撃 肩をかすっただけだが、火のせいで火傷を負ってしまう
しかし、あまり痛みを感じない 否、感じないわけではない 痛みを無視する
怪我を痛みとして受け取らなければ簡単だ
振り返り、人形を睨む
「ケケケケケケケケケケッ♪」
ただただ狂った笑い声をはなつ人形 笑い人形とかになればいいのに
「ッケケッ!!」
二撃目 人形はもう一方の肩に噛み付く
人形のくせに猛犬並の顎の力で離そうとしない
好都合
「ッケ?」
ようやく気付いたのか、人形は空、真上を見る
そこには、巨大な電気の塊が浮かんでいた
今まで外れていた電気を操って一点に集めたもの
逃げようとする人形を手で押さえつける 炎に焼かれるのも、特に気にならない
もう片方の手を空へ向け、人差し指を立てる
これが、合図
大きな放電の音とともに電気の塊が歪み始めた
「終了、です」
立てた人差し指に、まるで避雷針へ集まるようにして雷が落ちる
雷は指を伝わり、腕を伝わり、体を伝わり・・・そして、人形にも伝わった
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:34:33.45 ID:ZeAnttv60
しえ
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:34:42.72 ID:JuXLgOrY0
>284のリストに「仲介者と追撃者と堕天使と」のページの作品全部、を入れ忘れたorz支援
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:35:12.27 ID:UWuy1ouL0
支援!
295電気人間:2010/03/23(火) 22:36:00.38 ID:f/LeVjZx0
抉れた地面 焼けたゴムと肉のにおいが鼻につく
ゴムのにおいは人形のもの 軽く焦げており、体には雷による穴が開いている
今のところ動き出す気配はなく、倒したと考えてよさそうだ
肉のにおいは・・・

僕はため息をつき、視線を落とす
右手、その人差し指は黒く焼け焦げ、黒煙が立ち上っていた
・・・やはり、電気を使う上で電気無効ではないのは困りものだな
一応耐性はあるのだが、それでも都市伝説一体を倒すにはそれを上回る電気を使わなくてはいけない
・・・まぁ、その程度、どうでもいいのだが
とりあえず黒服が来るまで、何をしていようか
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:36:53.02 ID:UWuy1ouL0
そういえば完全遮断じゃなかったか支援!
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:37:20.25 ID:ZeAnttv60
支援!
298電気人間:2010/03/23(火) 22:37:47.60 ID:f/LeVjZx0
END

自分の作品は基本的に勢いで書いてるのでおかしいところや誤字があっても知りません
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:38:56.75 ID:JuXLgOrY0
乙でした!!
戦うたびに傷つくのか…
…Dと知り合わせて心配させてぇ
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:40:26.46 ID:ZeAnttv60
乙でした
なんという体内電気……あまり使いたくない能力だ
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:42:12.33 ID:UWuy1ouL0
投下乙でした!

能力に代償がある、って設定は大好きです
しかし指が焼け焦げるって、大丈夫なのか・・・?
302カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 22:43:50.38 ID:5soSD5rI0
あー、突然で恐縮なんですが、朝比奈 秀雄と直接戦闘した人って、誰誰でしたっけ?
303電気人間:2010/03/23(火) 22:45:30.28 ID:f/LeVjZx0
ちなみに電気人間 は一応自らを「電気人間」に変える(飲み込まれるとかじゃなく)なので
回復スピードがかなり早く、指が焦げた程度なら一週間もあれば動かせる程度にはなります
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:48:02.87 ID:JuXLgOrY0
>>302
んーと、今のところは
・翼、望、詩織、黒服D
・かごめかごめの契約者(警官上司もその場にいた)
・ハーメルンの笛吹きこと、上田

辺りだけ…の、はず
305カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 22:49:37.04 ID:5soSD5rI0
>>304
サンクス

…さて、先にクロス先にエターナルフォース冷やし土下座でもしておくかorz
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:50:47.68 ID:JuXLgOrY0
>>305
wktkしつつ、俺もクロス先に土下座しつつネタを書き続けよう
今夜中には投下したいが間に合うか…!?
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:50:58.51 ID:UWuy1ouL0
>>302
広瀬美緒(警察幹部)
影守蔵人(かごめかごめ)

戦ったっていうか、遭遇して襲われただけかもしれないけど、この人たちも秀雄に会ってますね


>>303
黒服が回復系の都市伝説かと思ったけど、自然治癒するのか
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:52:05.92 ID:UWuy1ouL0
おっと、>>304の二つ目を見逃してたぜ…
多分それで全員ですね
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:59:11.66 ID:UWuy1ouL0
むぅ、今日中に投下できるかと思ったが、眠気が酷い
明日の朝にスレが残ってたら、ひっそりと投下するんだ…
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:59:56.08 ID:JuXLgOrY0
>>309
wktk
代わりに、俺がもうちょっとたったら投下すりゅー
311黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:08:51.26 ID:JuXLgOrY0
 繁華街を、二人の男が歩いている
 どちらも、黒いスーツを身に纏い、サングラスをかけている
 オールバックの髪形の方が少し背が高く、重たそうなスーツケースを持ち歩いていて
 もう一方、短髪の男は、そんな物は持っておらず、身軽な様子だ

 オールバックの男は、周囲からこう呼ばれる
 D、と
 短髪の男は、周囲からこう呼ばれる
 H、と

「そう、ですか…影守さんが」
「あぁ。まぁ、命に別状はないらしいがな」

 Dは、Hから「かごめかごめ」の契約者が、朝比奈 秀雄と交戦し、負傷したのだと言う話を聞いていた
 命に別状はないという事にはほっとしたが、やはり心配だ
 後で、見舞いにでも行こうとDは考える

「炎……ですか」
「多分、朝比奈 秀雄の三つ目の都市伝説の能力だろうな。悪魔の囁きにもクールトーにも、炎を吐くなんて能力はないはずだろ?」
「ですね。クールトーに、ブラックドッグの伝承が混ざってしまっているなら、別ですが…」
「どっちも犬関連ではあるけど、混同するにゃあ無理があるからな。それは考えない方がいいだろ」

 Hの言葉に、そうですね、と頷くD
 …朝比奈の、第三の都市伝説の正体
 それを、早く掴まなければ
 被害者が増える前に、何とかしたい
 それが、Dの考えだ

「…お前さん、無理するなよ?正直、あのおっさん戦闘能力高すぎだろ。戦闘向きの都市伝説とでも契約していない限り…いや、それでも、勝ち目は薄いぜ」
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:12:00.99 ID:ZeAnttv60
公正に見たらDさんじゃあキツイよな支援
313電気人間:2010/03/23(火) 23:12:45.62 ID:f/LeVjZx0
支援
>>307
黒服はピンクの悪魔の掃除機です
でもあれですかね 「絆創膏を貼ると傷が一瞬で治る」の契約者でも出した方がいいですかね
確実にバランスブレイカーになりそうですけど
314黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:12:53.13 ID:JuXLgOrY0
 考え込んで入る様子のDに、そう告げたH
 Hの言葉に、そうかもしれせんが、とDは答える

「それでも、何も手を打たないわけには、いきませんから」
「お前さんの場合、契約者が狙われてるから余計、だろ?」

 はい、と正直に頷いてきたD
 …正直な男だ、とHはそう考える
 ある意味で、こちらが信用されている証拠でもある
 ……自分は、この善良な慈悲深い男に信用される資格などないような、大嘘つきの大悪人であると言うのに
 Dに気づかれないよう、自嘲気味にHは笑った

 せいぜい死なないように頑張れ、と
 そう声をかけようとした、その時

「…おや、橘野さん」
「あ、黒服さん」

 おや
 どうやら、Dの知り合いのようだ
 高校生らしい少年と顔を合わせて、Dが小さく、頭を下げている
 Dは、「組織」内において、扱いにくさが禿についでトップクラスと言われている某契約者を担当しているから、他の契約者は担当していない
 恐らく、「組織」外での知り合いか、もしくは「組織」内の者だとして、合同任務か何かで知り合った相手だろう、と認識する

「知り合いか?」

 そう判断しつつも、Hは一応Dに尋ねた
 はい、とDは頷いてくる

「橘野さんも、「組織」の契約者です……私としましては、まだ学生の身分である彼には、あまり「組織」の仕事を任せるべきではないと思うのですが…」
315黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:17:24.50 ID:JuXLgOrY0
 こいつらしい意見だ
 Hはそう感じた
 …Dは、決して、橘野というこの少年が学生だから実力に不安がある、という意味でそう言ったのではない
 時として…いや、かなりの高確率で、汚れ仕事となる「組織」の仕事
 それを、未成年にさせたくないのだろう
 本当に、どこまでも優しい男だ
 「組織」の黒服らしくない

 橘野、という名前らしい少年は、Hに視線を向けて、首を傾げてきた

「えぇと、そちらは…」
「彼は、私と同じ「組織」の黒服です」

 ……同じ、か
 二人に気づかれぬよう、Hはこっそりと、自嘲した笑みを浮かべた
 同じ?
 違う
 自分とDでは、あまりにも違いすぎる
 自分は化け物に成り果てたが…Dは都市伝説に飲み込まれてもまだ、人間らしい存在だ
 自分とは、あまりにも違いすぎる

「そう言うこった。よろしくな、坊や?」

 そんな考えはおくびにも出さず、こう言って笑うH
 はぁ、と橘野がやや、途惑ったような表情を浮かべてきた
 …この、反応
 恐らく、この少年を担当している黒服は、純粋な「組織」の黒服である可能性が高い
 感情の薄い、元人間ではない、黒服である可能性が

「………と、すみません。私はこれで…」
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:20:03.03 ID:ZeAnttv60
Hさんも内心大変だな支援
317黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:21:00.26 ID:JuXLgOrY0
「ん、あぁ。相変わらず忙しい男だな。ちったぁ休めよ?」

 誰かと会う約束でもしていたのだろうか
 時間を確認して、慌ててこの場を立ち去ろうとするD
 …その、直前
 橘野に、どこか心配しているような視線を向けていた

「先日の任務の際、お体を痛めていらっしゃったようでしたが…もう、大丈夫なのですか?」
「え、あ……い、いえ、あれはただの筋肉痛ですから。大丈夫ですよ」

 わたわたと、慌ててそう返している橘野
 良かった、とDはほっとした笑顔を浮かべていて

 …その、笑顔に
 複雑そうな表情を浮かべている、橘野
 その様子を見て…ふと
 Hの中に、悪戯心が芽生えた

 立ち去るDを見送って
 くっく、と笑いながら、Hは橘野に視線をやった

「…変わった奴だろ?」
「え?」
「あいつ。黒服らしくねぇだろ?」

 Hの、その言葉に
 橘野は、複雑そうな表情を浮かべて…答えてくる

「…優しい人、だと思います」
「だろ?まぁ、あいつは元人間だからな。人間時代から、あんな感じだったらしいぜ?」
318黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:24:30.49 ID:JuXLgOrY0
「…元、人間…」

 考え込んでいる様子の橘野
 …やはり、元人間の黒服との接触経験があまりないか
 ニヤリ、Hはますます悪戯心を働かせた

「俺も、元人間だけどよ。その俺から見ても、あいつは優しいし人間らしいと思うぜ」
「あなたも、以前は人間だったのですか?」
「あぁ」

 …そう
 かつては、人間だった
 今は、都市伝説に飲み込まれて化け物と化してしまったけれど
 ……自分は、人間だったのだ

「えぇと…あなたの、ナンバーは…」
「H-No.360だ。Hナンバーはほとんどいねぇからな。Hとでも呼んでくれや」

 もしくは、と
 Hはにやり…ひどく意地悪く、笑った

「広瀬 宏也。こっちの名前で呼んでくれてもいいぜ?」
「……え?」

 きょとんとした橘野
 あぁ、楽しい
 くっくっく、とHは笑い続ける

「広瀬 宏也。人間としての俺の名前さ」
「人間として、の…?」
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:25:45.86 ID:ZeAnttv60
支援
320黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:26:56.85 ID:JuXLgOrY0
「あぁ。身分証明とかする時、Hとか、ナンバーで名乗る訳にもいかねぇだろ?だから、ちゃんと人間としての名前も用意されてんだよ」

 ほら、と身分証を見せてやる
 Hがもつそれには、確かに「広瀬 宏也」と書かれていた

「ま、俺の場合、偽名だがね。人間の頃の名前は忘れちまったから」
「そう、ですか…」
「Dの場合、大門 大樹って名前を名乗ってるが、あっちは人間だった頃の名前らしいな」

 …もっとも
 それが人間の頃の名前だった、と思い出したのは、彼が契約者を得てからの事
 彼は、無意識に人間だった頃の名前を覚えていて、それを人間としての名前に選んでしまったのだ
 名前を思い出した今となっては、それを偽名ではなく本名として、きちんと認識しているらしい

 ……DとHの、人間としての名前を知って
 橘野が、途惑ったような様子を、見せたのが
 Hは、楽しくて楽しくて、仕方ない

 この少年の担当契約者は、感情のない、面白味の一切存在しない「組織」の黒服なのだろう
 あの連中は、人間としての名前も持っていない奴も多い
 …だから
 そんな黒服とばかり、接し続けてきた少年が
 自分達のような、元人間の黒服と接触したら
 そうして、そんな自分達の、人間らしい部分を見たら
 …自分の担当黒服を、どう見るようになるか?
 彼は、その様子を見るのが酷く楽しくて仕方なかった
 意地が悪い、とそう言う自覚はある
 しかし、やめられないのだから、仕方ない

「お前さんを担当してる黒服が、どんな奴かは知らねぇが」
321黒服H  ◆nBXmJajMvU :2010/03/23(火) 23:28:54.72 ID:JuXLgOrY0
 嘘だ
 いや、半分嘘ではないか
 所詮、予想にすぎないから
 だが、わかる
 自分達の名前を聞いて、途惑ったような様子を見せた橘野

 さぁ、こいつはこれから
 自分の担当者を、どう見るだろうか?

「あいつは、お人好しで善良だからな。自分を担当してる奴に相談できない事でも、悩み事があったら相談するにいい相手だと思うぜ?」
「そうなんですか?」
「あぁ。ただし、あいつは「組織」内過労死候補ナンバー1と呼び名が高いからな。相談タイミングを考えないと、過労でぶっ倒れる可能性も高いが」
「…それって、相談するの申し訳ないと言うか躊躇いますよ!?」
「大丈夫だ。少なくとも、あいつは気にしない。親身になって相談してくれるだろ」

 耳に心地よい突っ込みの言葉を聞きながら
 Hは、これからのこの橘野という少年の変化の可能性を、どこか意地悪に、楽しみに思うのだった



to be … ?
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:30:50.78 ID:JuXLgOrY0
ケモノツキの人に鉄板焼き土下座……!!orz
Hとも関わらせちまいました
一応、変態面は見せなかったが…いつか見ることになりそうな予感がしないでもないです

極悪な黒服が少年を誑かす話、と書くと誤解を招きそうだが、つまりはそう言うネタですた
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:31:35.62 ID:ZeAnttv60
乙でした
純朴な少年がまた一人Hの毒牙にww
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:35:29.28 ID:JuXLgOrY0
ちなみにH、今回明確な嘘を一個ついてます

>>323
>純朴な少年がまた一人Hの毒牙にww
それもまた誤解を招く表現だwwwwwwwwwwww
間違っちゃいないんだがwwwwwwwwwwwwwwwww
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:43:04.53 ID:JuXLgOrY0
力尽きるぜおやすみー
とうとう、俺は書きたいネタリストを二つまでに減らしたぞジョジョーォ!
326カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 23:44:49.00 ID:5soSD5rI0
取りあえず、小ネタでも落とすか…

327カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 23:46:28.20 ID:5soSD5rI0
いきなりだが、俺はカニの姿をしている



「ガッ、ガッ、ガッ」



だが、精神はカニじゃねえ、どっちかっつったら人間に近い



「ゴッ、ゴッ、ゴッ」



だから、今目の前で起きている事に、特に思う事はない のだが…



「ハムっ、ん?どうした?食わんのかい?ほれ」
「ちったぁ自重しやがれぇぇぇ!!!!!!」
「うおう!?」

自分の脚と同じものを差し出してくるソイツには、流石に腹が立つ
328カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 23:49:04.68 ID:5soSD5rI0
「流石の俺も、堪忍袋の緒が切れたぜ…この際だからいろいろとお説教させてもらおうか…」

「え?カニ袋がどうしたって?」

「真面目に話を聞けえ!!」「すまんすまんw」

あぁ…クソッ!調子狂うぜ…


「最初に、家ん中だからって、素っ裸でいるんじゃねえ!!」

「いいじゃないか、誰に見せるってわけでもねぇしさ」

「次!、ここの住所を勝手に人に教えんな!!」

「いいじゃないか、それに息子に教えたってなんの問題もないだろ?そのお陰でカニが食えるんだ、感謝しやがれ」

「どっから足がつくかわかんねぇだろうが!次!掲示板の名前欄に本名書くな!!」

「あ、それはすまん、初めて触るもんだったから勝手がわからなくってさ」

「何が『清水 キヨ』だ!漢字にしたらどっから読んでも清水清かっ!!!」

「いや、最後のは、関係ないじゃろ…」
329カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/23(火) 23:51:06.34 ID:5soSD5rI0
はぁ、何かどっと疲れた…なんでこんなのと契約したんだろう…
へらへらしやがって…糞むかつくぜ…
見れば見るほど、むかつく顔だ…って あれ?

「お前、目の色…」

「え?あ、あぁ灰がかってるだろ?遺伝なんだ」

親父が、ロシアの生まれらしい とキヨは言う
「生憎、その親父はあたしが生まれてすぐにどっかへ行っちまったから、本当かどうかもわからんがね」

そう話すキヨの眼に、懐かしさと悲しさが見え隠れする
「…まああたしも自分のガキに居場所も教えず、日本中をふら付いてたからねぇ…似たようなもんさ」

「どうしようもねぇな、そりゃ」

「まぁ、なんでか知らんが三男には、居場所ばれちまったんだ。孫に会うこともできたから、結果オーライなんだけどさ」

「…上と真ん中は今頃、何してんのかねぇ」

普段、あまり年齢を感じさせない彼女が、急に老けこんだように…一瞬だったが、カニにはそう見えた。



.................to be?



330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:51:17.45 ID:jIzw7DRc0
支援
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:53:39.96 ID:jIzw7DRc0
と思ったら終わってた乙!
332カニとババアの人 ◆O1qyI9JUPg :2010/03/24(水) 00:04:33.94 ID:LQdUOARP0
サーセンw

…今後の話を練るか、寝るかは風呂に入ってから決めよう
333隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:16:29.12 ID:WW+Mr6pE0
今日は、マスターの件でお世話になった都市伝説の関係者を招待しての宴だ
顔馴染みもいれば、初めて顔を合わせる様な者達もいる

輪は店内を見回して、顔ぶれをチェックするが
つい先日会った黒服のサンタにもこの宴会の事を伝えておけば良かったと今更ながらに思う
他にも来ていない者達もいる
皆それぞれに、今日もどこかで事件と遭遇しているのだろう
無事を祈り
生きていればまた逢えるさ
そう再会を願う

「こんばんは、輪」
「こんばんは、ジャック……ええと、マスターとは初めてだったね」
「はじめまして、ジャックさん」
「ジャックと呼ばれています……今日はお招き頂きありがとうございます」
「うちの子がお世話になっているそうで、本当にありがとうございます」
「いえ……礼には及びません……むしろ、お世話になっているのは私の方ですから」
「輪が?本当に?」
「ええ、まぁ……その……言い難い事ではありますが、情報提供をしてもらっています」
「情報提供……ですか」
「うん、確かに情報提供だね……ある人物についての……ね」

輪の視線が左右へと動き、一点で固定される
視線を辿るとそこにはサチ……そして、カシマの姿
334隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:18:03.74 ID:WW+Mr6pE0
「ああ、なるほど……軍人さんとの話は輪から聞いていますよ」
「なッ?!……話したのですか?輪ッ!」
「うん、口止めされてなかったし」
「そこはそれ、暗黙の了解というものがですねッ」
「暗黙の了解?ボクこどもだから難しい事を要求されても困るよ」
「ッ……貴方……判っていてやっていますね?」
「わざとじゃないよ、ジャックは気持ちを隠す必要ないと思っているだけだから」
「……それは……どういう意味ですか?」
「うまくいく……と、輪はそう考えているそうだよ」
「本当ですか?!」
「この子は中々勘が働くからね」
「勘じゃないよ、観察の結果だよ」
「観察した結果、直感するんだろう?勘と同じ様なものじゃないか」
「受ける印象が違うのっ」
「私が……カシマと……」
「印象や雰囲気は大事だとは思うよ、でも、言葉はその本質を捉えていれば良いんじゃないかな?」
「もうっ、これだから……この場合はジャックの受け取り方の問題だから
 勘よりも、観察した結果って言われた方が説得力あるでしょ?!」
「なるほど……確かにそうだね……まぁ、でもね……彼女を見てごらんよ」
「……何か……ふわふわしてるね」
「だろう?」

などと親子が仲良く議論していると……
335隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:18:57.35 ID:WW+Mr6pE0
カラン・コロン……カラン・コロン……来客を告げるベル

ボクサーが少し遅れてやって来た様だった

「よっ、遅れて悪ぃな」
「どうせ遅れてくると思ってたよ」
「遅れてくるのはヒーローの条件のひとつだからなぁ」
「ボクサーくん、こんばんは」
「マスターこんばんは〜、今日はたくさん食べれる様に激しくないヤツを長めにやってきたんだ」
「後でカロリー低めの料理を教えるから、たくさん食べていっておくれよ」
「あざースッ!いつも気ぃ使ってくれてうれしいっス!」

言うと、今度はきょろきょろと見回してサチを探すボクサー

「全く、マスターはボクサーさんに甘すぎるよ」
「まぁ、毎日の様に通ってくれるから……お得意様は大事にしないとね……ふふ」
「お得意様っていうか、アホの子で面白いからだよね」
「そんな事を言ってはいけないよ、輪……ふふ」
「もう……笑ってると説得力ないよ?」
「ごめんごめん……でも、本当に何だか微笑ましくてね」
「むぅ……」
「?……ほら、そんな顔しないで」
「……」
「でも、嬉しいよ……この先いつかは邪魔者扱いされる日が来るだろうからね」
「?!……ボク、べ、別に嫉妬とかしてないからッ」
「ああ、わかっているよ」
「それって、絶対わかってるフリだよね……大人って……ずるいよ」

店内に流れる緩やかなBGMに合わせる様に、優しい時間が流れる
336隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:21:40.66 ID:WW+Mr6pE0
そんなゆっくりとした時の流れに逆行する様にして、彼らは出逢う
出逢ってしまう

「あッ!アイツ?!……シスコンイケメンホストじゃねぇかっ!!」

唐突に指された指に、びくりと驚くジャック
しまった!という表情の輪

「うぉぉぉぉ、お前イイヤツだよなぁ!!」
「は?!」

困惑するジャックをよそに、一方的に話しを続けるボクサー

「感動したぞ、お前の優しさに!下着選びに俺は感動したっ!」
「はいっ?!何なんですか?!貴方は」
「おぅ、俺の名前は、ぼぼぉりッ?!!」
「ボボーリ?!」
337隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:22:23.77 ID:WW+Mr6pE0
配膳用のトレーで、ポカンとボクサーの頭を叩くサチ

「ちょっとボクサーさん、静かにしてくださいっ」
「サチ?……お、おぅ……悪ぃ」
「ちょっとこっちに来て下さいっ」

隅の方へと連行されていく

「何だったんでしょうか……ボボーリさん、ですか……」
「いや、違うと思うが……」
「?!……カシマ?!」
「こんばんは、ジャック」
「……こんばんは」
「ボクサーと知り合いではないのか?」
「ボクサー?先程のボボーリさんの事ですか?」
「いや、だからだな……まぁ、良いか……そのボボーリだが」
「知り合いではありません」
「そうか……何やらキミの優しさに感動していた様だが?」
「さぁ?良く分かりません……逢った記憶もありませんし」
「ふむ、ボボーリは野生的な勘を持っているからな……それで分かったのかも知れぬ」
「何をです?」
「だから、キミの優しさをだ」
「……」
「……」

二人の会話が止まる
賑やかな店内、周りからも切り離されて時も止まる様な───錯覚
338隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:26:35.88 ID:WW+Mr6pE0
隅の方でしゃがみ込み、ヒソヒソと会話をする二人

「ボクサーさん、静かに出来ますか?」

人差し指を立て、唇にあてるサチ

「ぉぅ……静かにする……ところでよぉ」

静かに応えるボクサー

「何です?」
「あの金髪のヤツって誰?」
「ジャックさんですか?」
「ジャックって言うのか……で、お前とどんな関係なんだ?」
「わたしとの関係というか、カシマさんとの関係があるんですよ」
「カシマさんと?」
「ええ、まぁカシマさんの恋人?というかですね」
「ぅお?……どゆこと?……カシマさんってソッチの世界の人だったの?!」
「ソッチってどっちですか……彼らは至ってノーマルなですね……」
「男女?カシマさんとアイツが?……じゃあ……え?!カシマさんって女だったの?!!」
「なんでそうなるんですかっ!!」
「だって、ジャックって男だろ?格好も名前も男名だし……」
「名前は男名ですけど、ジャックさんは女性なんですよ」
「難しいな」
「難しくありませんっ!良く見て下さいっ!」
「サチ、声でかいよ」
「すみません……ってもう……ボクサーさんのせいですよ?」
「そうだな、悪かった」
339隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:27:49.28 ID:WW+Mr6pE0
「はい、それで……良く見て下さい……彼女の体型」
「背が高くて、足もスラッと長くて、引き締まった腰……胸板も厚いな」
「胸板って……胸です、ムネ」
「おっぱい?」
「そうです、おっぱ……」
「チッ」
「チッってなんですか、チッて……」
「反省してま〜す」
「どこのボーダーですか貴方は……はぁ……」
「おぅ……なるほど……確かに胸だ……女だと思って見たら女にしか見えねぇ」
「だからさっきから言ってるじゃないですか」
「そうか、ジャックはカシマさんの女なのか……」
「女というか……恋人になる予定というか、応援しているというかですね」
「ま、いいんじゃね?イイヤツそうだし」
「やっぱり、そう思いますよね?」
「という事はだ……ジャック……さんは……ええと呼び捨てはまずいよなぁ」
「呼び捨てはまずいですね」
「じゃあ、姐さんだな」
「姐さん?」
「いや、カシマさんの女になる予定なんだしな」
「……ま、まぁ、良いですよ……呼び方はボクサーさんの自由ですもんね」
「おぅ!……そういや、呼び方と言えばよぉ」
「何です?」
「俺の名前なんだけどよぉ」
「名前ですか……」
「何で未だにボクサーって言われてるんだ?」
「……」
「TVで試合が放送されてたりするだろ?知ってるよな?俺の名前……」
「……」
340隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:29:09.08 ID:WW+Mr6pE0
「ぉぃ……何か言ってくれょ」
「……創造主……神の意思です(ボソッ)」
「神の意思?」
「……触れてはいけない話題なんです」
「そうだったのか……じゃあ、仕方ない」
「仕方ないです……でも、確かに名前は大事です……例えば、わたしは"碓氷サチ"ですが」
「おぅ」
「わたし……明らかに幸が薄いです」
「ぉ、ぉぅ……そうだな……でもよぉ」
「何です?」
「お前……名前変えられるだろ」
「え?……あ、家庭裁判所で審議してもらって許可されれば良いんですよね」
「いや、俺が言ってるのはもっと簡単な方法でだなぁ」
「簡単な方法……ですか?」
「結婚すれば変わるだろぉ?」
「?!」
「まだ結婚できる年齢ギリギリくらいだろうから、考えつかなったかもしれねぇけどなぁ」
「……わたしが結婚するんですか?」
「お前が結婚しないでどうやって名前変えんだよぉ」
「そう……ですよね……だ、誰と?」
「そこはそれ……やっぱ、俺じゃね?」
「……どんなヒトと結婚するんだろうなぁ〜わたし」
「おい……サチさんやぁ」
「……素敵な姓のヒトがいいなぁ〜」
「お〜い、聞いてるかぁ〜、未来の旦那はここにいるぞぉ〜」
「……え〜と、確か……水を張った洗面器とカミソリで……」

などと、会話が成立しなくなった二人をよそに
宴は和やかに進行する
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 00:30:34.01 ID:LQdUOARP0
紫煙
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 00:32:15.91 ID:2tAXUosT0
試演
343隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 00:32:37.04 ID:WW+Mr6pE0
「あれ?カシマさん今日はお茶なの?」

ジャックとカシマが気まずそうにしているのを見かねて、輪が声を掛ける

「ん?……楽しいと酒が美味くて、つい飲み過ぎてしまう……
 まぁ、情けない話……以前ここで呑んだ時には二日酔いになってしまってな」

マスターが戻ってから数日後の事だっただろうか
Tさん達がやってきて昼間からお酒を呑んでいた時のことを思い出す

「じゃあ、今日は控えめにしてるんだ?」
「うむ……酒は好きなのだがな、あまり強くは無いので今日は気を付けているよ」
「ふ〜ん」
「しかし、この店は何故か……懐かしいというか、何というか……」
「まぁ、確かに……居心地は良いよね」
「……居心地とはまた……違う気もするのだがな」

一方、ジャックにはマスターが声を掛ける

「これは店の住所へ届いたんだけれど、貴女へ宛てられたものだと思ってね」

そう言ってマスターは一通の封筒をジャックに渡す
宛名を見ると"男装の麗人×軍装の男へ"と書かれている

「私とカシマへ……ですか」
「軍人さんに渡しても良かったけれど、やはり先に女性に確認してもらった方が良いだろうと」
「恐縮です」
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 00:43:43.15 ID:o81p+YnY0
おっと支援!
345隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:02:03.13 ID:WW+Mr6pE0
封を切って、中身を確認すると
プリントアウトされた文章と何枚かの写真が入っている

「……これは……何と……何と素晴らしい」

写真を確認したジャックが、ほぅ……と、溜息が漏らす

「ですが、一体いつ?……場所は林……山道……魔術師の時の……」

続いて文面を確認していく

───────────────────────────────────

文章書くの面倒くせぇッス

同封した写真で分かると思うんスけど、カメラの男ッス
こういう時、ホントに写真て便利だと思うんスよ

結構イイ感じに撮れてたんで、モデルさんにもちゃんと見といてもらおう
というわけなんス
普段はラーメンとか廃墟ばっか撮ってて、久々に人物撮れたんで気分良かったッス
なんかこう、燃えたなーっていうか、楽しかったんス

あの時、ホントはオレ
あんた等に勝てたと思うんスよ、マジで
あんた等みたいな霊タイプになら勝てたはずなんスよ
望遠レンズでちまちまスナイプしてれば勝ててたはずなんス

でも、あまりにも被写体として魅力的で、つい近くまで寄せちまって
そうでなけりゃ勝ってたんスよ
346隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:04:22.33 ID:WW+Mr6pE0
つまり何が言いたかったというと、そんだけイイ感じだったんスよ
あんた等二人の組み合わせが

足止めだけできりゃ、良かったはずなんス
童貞の旦那がケリをつけるまでの間、時間かせげりゃ良かったはずなんス

だからホントに、あの時のあんた等のやり取りには痺れたんス
つい夢中になっちまったのも仕方ないッス

それにオレ、旦那のこと嫌いになれなくて
あんた等が行ったら、やられちまうと思って、焦って、何とか止めたくて

童貞の旦那もホントは悪いヤツじゃなかったんス
だから嫌わないでやって欲しいんス

童貞の旦那が死んじまった事も全部、将門の大将にも報告しておいたッス
だから、謝罪に来るヤツがいるかもしれないッスけど
そいつは事件には関係ないヤツラなんス
許してやって欲しいッス


追伸

ッスって、いちいち入力が面倒ッス

───────────────────────────────────
347隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:05:49.87 ID:WW+Mr6pE0
まとまりの無い文章だった……
つまり、まとめると

"良い写真が撮れたから見てくれ"
"童貞魔術師の事を恨まないでくれ"
"首塚からの使者を許してやってくれ"

こういう事らしい

「私と輪に宛てたもの届いていて、たぶん同じ様な内容だと思うんだ」

内容について確認しあう

「どうやら、写真の点以外は同じ内容の様ですね」
「私は彼の書いてきた内容通りにするつもりでいるんだけど」
「甘いと思います……ですが、それは輪のマスターらしい回答だと思います」
「そうかい?……まぁ、こうして生きて帰って来れたからね」
「私も帰って来れました……遺恨はありませんし、カシマも同意してくれるでしょう」
「なら、この件は私に預からせてもらうよ」
「お任せします」
「うん、これで一件落着だ……よかったよかった」
「それに、何よりも……この写真は素晴らしい」
「ん?……見せてもらっても?」
「ええ、どうぞ」
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:06:56.38 ID:o81p+YnY0
文章書くの面倒くせぇッスってカメラ男wwwww
349隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:11:52.00 ID:WW+Mr6pE0
写真は───

ジャックがカシマに掴み掛かっているところ

『私よりも少年を!輪を!早く!カシマ!私など放って行きなさいと言っているのです!』

カシマがジャックの両肩を左右から押さえているところ

『ジャック!輪は、大切な誰かを犠牲にしてまで助かることを望みはしない!』

カシマがジャックを庇い、それをジャックが見つめるところ

『そして、それはワタシも同じだ』
『カシマ……』

───等々

「うん、よく撮れているね……情感が伝わってくるよ」
「はい、とても」
「軍人さんにも見てもらうといい」
「そうですね、これならば話しもしやすい」
「うん、頑張って」
「ありがとうございました、マスター」
350隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:14:16.09 ID:WW+Mr6pE0
今度はボクサーが寂しそうな顔をして、ふらふらと近づいてくる

「ボクサーくん、どうしたんだい?」

マスターが見かねて声を掛ける

「いや、何でも無ぇ……」
「まぁまぁそんな顔しないで……話しを聞こうか?」
「……マスター……結婚て、夫婦ってなんなんだよぉ」
「結婚?……う〜ん……私も今は独り身だしねぇ……中々難しいものだよね」
「マスターでも難しのかぁ……じゃあ俺なんか無理だよなぁ」
「あ、いや別にそういう意味で言ったわけじゃないんだよ……」
「いいんだよぉ、どうせ俺なんて……」
「ああ……ええと……そ、そうだ!私の前に、この店をやっていたご夫婦がいてね!」
「え……この店、マスターが建てたんじゃなかったのか?」
「うん、そうなんだよ!いや〜ホントに仲の良い老夫婦だったよ」
「で、そのヒト達がどうかしたのか?」
「石上さんっていうんだけど……元々、奥さんの方は別に旦那さんがいてね」
「NTR?」
「え?……いや、そういうワードは不用意に言わない様にね」
「すんません」
「で、奥さんの方は元の旦那さんをとても愛していたらしいんだ」
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:15:40.63 ID:o81p+YnY0
NTRというスラングをマスターが知っていたことに驚きだw支援
352隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:17:56.14 ID:WW+Mr6pE0
でも、奥さんの元の旦那さんは戦争で亡くなられてしまってね
まぁ、そういう時代だったから仕方ない事ではあったんだ
多くの人が同じ様な状態で、特別珍しい境遇ではなかったんだね

当たり前の様に家族が亡くなって……凄いことだよね
それが戦争というものなんだと、この話を聞いた時初めて意識したよ
教科書で知る事が出来るものも多いけど、人の想いを感じた事は無かったから……

それでね、ものの無い時代だったから、当然食べるものにも困っていたらしくて
食べられそうな草は何でも食べたし、トカゲや蛇はもちろん幼虫なんかも食べたそうだよ
生きるのに必死だった、それでも徐々にやつれていってしまう
それを見かねたのか、石上さんが食べ物を別けてくれる様になってね
段々と、体力も回復して……

でも、ある日……気付いてしまったそうだ
石上さんが少しづつだけど痩せていっている事にね
そして訊いてみた……何だか痩せてきていませんか?とね
"少し、体を鍛えようと思ってね"
なんて事をいうけども、全く鍛えられた様な体ではない
そうだ、奥さんはそういう事はすぐ判るって言ってたな

それで、問い詰めて……理由を聞くと
"以前から貴女の事が気になっていて……食べ物が喉を通りません"
どうしたら、ちゃんと食べてくれるのですか?と聞くと
"貴女が自分と結婚してくれるなら"
353隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:19:51.38 ID:WW+Mr6pE0
「まぁ、そんなノロケ話をよく聞かされたものだよ」
「へぇ、その人達……今は死んじまったのか?」
「残念ながらね……でも、十分長生きしたんじゃないかな」
「そりゃ良かった……店の名前ってその頃からルーモアだったのか?」
「いや、違うんだけど……レシピも何もかも引き継げてなかったからねぇ」
「そっかぁ……そりゃ残念だったなぁ」
「内装はほとんど残して、使っているんだけどね」
「ああ、年代モノっぽい感じはしてるよな」

少し離れた所で立っていたカシマが、ふらりとよろける
ジャックがすっと手を差し出し、支える
どうやら、カシマが酔い始めている様だった

「軍人さん……まぁ、大丈夫そうだね……で、話しを戻すけど……」
「おぅ……ん?何かこういう展開、前にもあったような……」
「そうなのかい?」
「まぁいいや、続けてくれよ」
「食事っていつの時代でも大切で、美味しい不味いはあるけれど……」
「ここの料理は美味いよなぁ」
「ふふ、ありがとう……じゃあ、これ食べてみてくれるかい?」
「おぅ!……美味いっ!!」
「そうかい?作った甲斐があるよ……でもそれ、凄く低カロリーなんだ」
「そうなのか?!こんなに美味いのに?!」
「毎日食べても太り難くて、体力も維持出来るようなメニュー
 ……簡単に言ってくれるけど、中々に難しい注文だったよ」

思い出して溜息を吐く……だが、その顔は楽しげだ
354隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:22:08.83 ID:WW+Mr6pE0
「へぇ……そんな注文するヤツがいたのか……」
「まぁ、新作のメニューを考え中だったからね」
「じゃあ、そいつのお陰で俺も助かってるって事なんだよなぁ?」
「そうだね……ふふ」
「そいつ、どんなヤツなの?」
「普段は大人しいけど、芯が強くて……」
「うんうん、それで?」
「繊細で、優しい心を持った……」
「優しいのか……で?」
「眼鏡の女の子だよ」
「メガネ?」
「分かったかい?」
「ぉ?……ぉぅ……?!」
「本当に?」
「分かったぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

コロンビアのポーズを決めるボクサー(AA略

 / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
 | 答 |    碓   氷   サ    チ   │|
 \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ

「それは良かった」
「あざースッ!!マスターに話し聞いてもらえて良かった!!」
「どう致しまして」
355隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:23:55.80 ID:WW+Mr6pE0
「あ〜〜そっか、分かった……アイツに似てるんだなぁ」

思い出した様にボクサーが言う

「え?」
「マスターって、輪に似てるんだよぉ」
「私達が似てる?」
「何となくだけどよぉ、似てるって思った!」
「……そうかい?」
「やっぱ親子なんだなぁ……ぅお?輪がマスターに似てるのか?」
「……」
「お?……マスターどうしたんだ?」
「なんでもないよ……ちょっと嬉しかっただけさ」
「おぅそうか、なら、問題ねぇなぁ!」
「ああ、問題ない……何の問題もない……」
「この店って、ホントいいよな……サチもマスターも、ホントいいよな」
「ありがとう、ボクサーくん……君もとても良い人だと、私は思うよ」
「へ?俺が?……んなこと無ぇよぉ」
「君は不思議な人だね」
「それは、まぁ……たまに言われるけどよぉ」
「気を悪くしないでくれ、とても良い意味で不思議だと言ったんだ」
「全然!気分悪くなんか無ぇよぉ」
「ありがとう……じゃあ、まだまだ料理はあるから、説明していこうか」
「うぃーッス」

太陽は沈み、店の外は既に暗い
だが、その闇を寄せ付けぬほどに店内は明るく輝いていた
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:24:54.39 ID:o81p+YnY0
みんなお熱いなあちくしょー支援!!
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:30:17.09 ID:o81p+YnY0
む、サルさんかな?
のんびり続きを待つ構え!
358隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 01:43:48.29 ID:WW+Mr6pE0
ワタシは眠っている──これは夢だ──と自覚している

場景から、過去の事だと判る……だが、これは……

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

戦争は終わり、鹿島は日本へと帰って来ていた

戦地で負傷した者も多い
そして鹿島もまた、仲間の踏んだ地雷に巻き込まれ左腕を失っていた

大きな外傷を受けつつも生き残った者達は、帰国したものの
すぐに故郷へは帰れず、帰り着いた港辺りで療養をしてから帰った者もいる

だが、戦地で戦後の処理にあたった者もいる
現地の言葉を覚え、尚且つ現地民との問題を解決できる能力を持つ者
鹿島もまたその一人であった

その為、日本へと帰国した時には終戦から数年を遅れる形となってしまっていた

家族へと連絡を取ろうと苦心したが戦後の混乱残る中
とうとう連絡はつかず、自分が帰る事でしか家族の安否は確認できそうにない

やっとの思いで地元へと帰り着いた時には、想定以上の月日が流れており
懐かしいあの町並みはどこにもなく
鹿島の生家も、稽古場も空襲で焼失していた

父と母は、老人達の避難を助けているところを空襲に巻き込まれ死亡
恩人である先輩は、数年前に戦地で死亡している事が確認されている
そして、唯一生き残ったはずの姉の行方を知ることが出来ないままでいた
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:46:54.94 ID:o81p+YnY0
カシマさんの過去か支援
360隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:03:50.27 ID:WW+Mr6pE0
そんな途方にくれていた時、鹿島はひとりの青年と出逢う
青年も戦争で負傷していた

"こんな格好では家族に会うのも躊躇われたから……まだ家には帰っていないんだ"

そう言って快活に笑うので

"お互い、大変な目に会ったものだ"

と笑いあった

意気投合した彼等は、次第に顔を合わせる機会も増える

鹿島は雨をしのぐ為、橋の下にねぐらを決め
食べられるものは何でも食べた
小銭を稼ぐ為にどんな雑用でもした
だが、障害のある鹿島には辛い毎日が続く……
その日を生きるので精一杯だった

青年の方も似た様なものだった
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 02:05:28.39 ID:o81p+YnY0
しえーん
362隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:07:33.52 ID:WW+Mr6pE0
ある日、鹿島は提案した

"帰る家があるのだから、帰郷してみてはどうだ?"

と……青年は最初、拒んでいたが

"家族とは暖かく、優しいものだ……きっと受け入れてくれるさ"

鹿島の言葉に、意を決し帰る事に決めた様だった

"君には世話になった……帰る時には一緒に行ってくれないか?"
"いや、迷惑になるだろうからな……謹んで辞退するよ"
"そうだ、この町を出る前に挨拶もしておかないといけないヒトもいるね"
"おい……"
"君もちゃんと挨拶は済ませておけよ?"
"辞退すると言ったんだが……"
"そうと決まれば早速行動だ!明日にしよう!"
"待ってくれ……"
"時間は……そうだな、午前11時に駅で待ち合わせよう"
"仕方ない……乗りかかった船だ……最後まで付き合うとしよう"

そう言って、その日は別れた
お互い世話になった人はたくさんいる
別れの酒を振舞われ、朝方まで呑んでそのまま駅へと向かう
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 02:14:03.63 ID:o81p+YnY0
支援
364隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:14:43.84 ID:WW+Mr6pE0
帰るその当日、青年は自宅に電話をした

"これから帰るんだけど、他に行くところがない友達を連れて帰りたいんだ
 家で一緒に住んでもいいかな?"

息子の連絡に狂喜した両親は、勿論!と泣きながら答える

"でも、一つだけ言っておきたいことがあるんだ……彼は地雷に巻き込まれてね
 片腕と両足を失ってしまったんだよ……でも、僕は彼を家に連れて帰りたいんだ"

その台詞に、両親は押し黙ってしまう

"数日ならいいけれど、障害者の世話は大変よ……家にいる間に
 そのお友達が住める所を一緒に探しましょう……あなたにも私たちにも
 自分達の人生があるのだから、そのお友達の世話に一生縛られるなんて無理よ"

やっとのことで母親がそれだけ言うと、息子は黙って電話を切った

翌日、約束の場所へと鹿島が行くと……青年はどこにもいなかった
1時間ほど待ったが青年は現れなかったので
仕方なく、ねぐらにしていた橋の下へと帰ろうと諦めた
その帰り道で、小さなビル街を通ると……人だかりが出来ている
嫌な臭いがした……血の臭いだった
囁かれる言葉の断片を組み合わせていく……

"男ががビルの屋上から飛び降りて死んだ……どうやら自殺らしい"

運び出されていく死体、ぐしゃりと潰れた体が目に入る
両足は無く……奇跡的に潰れず残った顔……あの青年だった
鹿島は絶句し、泣き崩れていた
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 02:16:15.84 ID:o81p+YnY0
うわあああああああああああああ!
366隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:21:44.14 ID:WW+Mr6pE0
後に青年の親から電話でした話の内容を聞いた

そして

心の中で

死を選んだ彼を責めた

負傷兵を、自分の息子を受け入れてくれなかった彼の母を責めた

そして何よりも、彼に帰郷するようにと勧めた己を責めた


この苦しい想いから逃げる様に、安酒を飲み
ひとを殴り、ひとに殴られ、ゴミ屑の様に打ち捨てられた
何の意味も持たない行為を何十回と繰り返し、それでも忘れられず
いつしか鹿島は自責の念に押しつぶされていた

アイツに足があれば、俺に腕があれば
家族がそばにいてくれたら、姉がそばにいてくれたら、先輩がそばにいてくれたら
少しはましな結末が待っていたのか……

先輩だったらどうしていたのだろう……
先輩ならきっとアイツを救うことが出来たのではないだろうか……
憧れた、先輩の様になりたいと思い、先輩を目指し
判断に迷った時はいつも"先輩ならどう判断するか"を考えることで乗り切ってきた

だが、この時ばかりは乗り切れそうに無かった……
367隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:23:25.28 ID:WW+Mr6pE0
父さん……母さん……先輩……もう逢えないのか……
姉さん……何処にいるんだ……
そうか……相手は……だが、あの人以上の人など……

ふ、と気付いた様に左腕を見る
腕が……ない……うで……が……ない……
ウォァアァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァ!!
うでがッ!ウデガっ!!ウでがッ!!!
何処だ?!どこにある?ない?何故?!!何処に?いない?!ドコ?!
ドコにある?!どこにイル?!カアさん?ネエさん?トオさん?センパイ?
ドコだ?ドコだ?!!どこにイッタ?!!
何処に?無い?どこに?どうして?いない?

何処にいってしまったんだろうか……ミンナは……

ドコにあるんだろうか……自分のウデは……

おい、君……ウデをミなかったか?
あ、そこのカタ……そう、アナタだ……そのウデ……カしてもらえないか?
アナタのソレはジブンのウデではないのか?
カエシテクレナイカ?ウデヲ
チガウ?ジブンニハウデガナイ?
ソウカ……セキワンナノカ……セキワンノカシマトヨバレテイタノダツタ……
ハハハ……ハハハ……ソウカ……
セキワンノカシマ……ソウダツタ……
ジブンハ、セキワンノカシマトヨバレテイタノダツタ

ドウホウカラハ、セキワンノカシマトヨバレテイルノダツタ

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
368隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:24:54.15 ID:WW+Mr6pE0
携帯が着信を告げていた
マスターから、そのまま使って良いと言われているが
掛けるのも掛けてくるのも相手もはサチとジャックくらいのものだ

「ん〜、サチ?……おはよう」
「寝てた?ごめんね輪君、でも大事な用があるの、聞いてくれる?」
「……え?……うん、大丈夫、目が覚めてきた……あ、もうお昼前だったんだ……」
「うん、もうお昼前なのに、カシマさんが起きてくれないの」
「え?カシマさんが?……二日酔いなの?」
「そうじゃないみたいで、息はちゃんと規則正しくしてるのに……」
「声を掛けたり、揺すったりしても起きないの?」
「うん、いつもだったら……わたしが起きる前には絶対起きてるのに……」
「お酒のせいじゃないんだよね?」
「あんまり強くはないって言ってたけど、昨日は帰る時の足取りもしっかりしてて」
「確かに昨日はあんまり飲んでなかったと思う」
「わたしじゃ対処できそうにないの……病院に行くわけにもいかないし」
「そうだね……」
「だから、ジャックさんなら何か分かるかもしれないと思って……」
「分かった、連絡してみるよ」
「お願い」
「すぐに行ってもらうから、落ち着いて……むしろジャックがあわてちゃいそうだけどね」
「あはは、そうだね〜、じゃあ、待ってるね」
「うん」


舞い散る桜花の様に、ゆっくりと日常は終わり始めていた
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 02:29:52.23 ID:o81p+YnY0
カシマさん!?
370隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:45:30.00 ID:WW+Mr6pE0
場面が変わる

ワタシは眠っている──まだ、夢を見ている──と自覚している

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

少年時代の鹿島は、所謂やんちゃな子供であった

生家は、古来より伝承される鹿島流という古武術の道場を営み
当然の様に、幼少の頃より鹿島も稽古を積んだ
稽古は厳しく、遊びたい盛りの鹿島には辛い日々
逃げ出して近所の子供たちと遊びまわったことも一度や二度ではない
谷へと落ちて大怪我を負ったこともあれば
山で採った茸を食べて寝込んだこともあった

"道場で稽古をしている小さな子供は自分ひとりだけ"
"どうして自分だけが辛い稽古をしなくてはいけないのか"
"友達と同じ様に遊んでいたい"

そんなことを思い、姉に泣き付いた事もある
気の強い姉は弟に優しかったが

"いずれは貴方が道場を継ぐのだから仕方のない事なのですわ"

と言ったあと

"もちろん、わたくしが跡継ぎのお婿さんを貰えれば別のお話ですけれどね"

などとませた事を言う
371隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:49:48.33 ID:WW+Mr6pE0
そんな鹿島に転機をもたらした男がいる
後に"先輩"と呼ばれる、香取という名の男である

鹿島より3つ年上の香取は、幼い鹿島からすれば十分に大人に見えた
幼少の頃の3歳差は大きく、それは当たり前のことではあったのだが
姉よりも1つ年下ではあるにも関わらず、
そうは感じさせない、姉以上に大人びた印象を受けたこともその一因であり
周囲の大人達も香取の落ち着き振りには関心している様であった

"心と体を鍛えたく思い門戸を叩きました、入門の許可を頂きたい"

それが香取の第一声

"ようこそ、鹿島流道場へ"

道場主の父はそんな彼を喜んで受け入れた

"何でこんな子供が自分からこんな苦しいことをしようと思うのか"

鹿島は不思議なものを見るかの様に香取を見つめていたものである

鹿島が年の近い香取に興味津々であった為だろうか
それとも、稽古に参加させる良い理由と考えたのかは判らないが
鍛錬の基礎は鹿島が教える事と決まった
372隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 02:55:43.96 ID:WW+Mr6pE0
香取はとても聡明で我慢強い男ではあったが
体を動かすのには慣れていない様だった
自分よりも3つも上の香取が教えた事をろくに出来ない
偉そうな事を言っていたが、何だこんなものか
そう思った
苛立ち、不満をぶつける様に厳しく当たった
そんな不満を口にすると、姉は

"貴方は長く鍛錬を重ねているのですから出来て当然、でも彼は違うのですよ"
"そもそも、貴方の教え方で理解してくれる彼に少しは感謝しなくてはいけません"
"彼はよくやっているじゃないの、もう少し付き合ってあげなさいな"

と言って、鹿島をたしなめた
しばらくは我慢して稽古に付き合った鹿島だったが
我慢ならず、以前と同じ様に抜け出して遊びまわる様になった
それでも香取はたった一人で鍛錬を積み続けた

香取が基礎を修める頃には、3年以上の歳月が流れており
鹿島は、やっとまともに竹刀を振るえる様になったのかと
内心で馬鹿にしていたものである
373隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:03:18.18 ID:WW+Mr6pE0
更に2年が経った頃だろうか、鹿島が14歳の時の話である
町に野犬による被害が出ていた事があった
狂犬病に罹った野犬で、噛まれた者は体から徐々に脳へと犯されいき確実に死に至る
発症まで、顔を噛まれたとして2週間、手など脳から遠い部分で数ヶ月以上と
潜伏期間が長かった事が被害を拡大させてしまってもいたこともあり
狂犬病と判った頃には既に遅く、人々は混乱していた

そんな折、鹿島の友人は何を思ったか
野犬退治をするなどという無謀な事を考えていた
町を救った英雄にでもなろうとしたのだったか
今となっては理由は判らない

鹿島は稽古に出る様にと再三に亘り注意されて、ムシャクシャしていた所でもあり
日頃の憂さを晴らそうと、その誘いに乗る事とした

野犬を追い、ねぐらを突き止めた後
木刀や鉄パイプ、手製の槍などを準備し、野犬を仕留めんと襲い掛かった
相手は野犬の極一部であり、たった3匹ではあったが
野生の動物の恐ろしさを理解していなかっと、鹿島たちは身をもって知ることとなる
まずは早さが違った
素行が悪く、喧嘩慣れしていた彼らだったが
人間の動きとは異質な動きでもあり、全く捉えることが出来ない
野犬に組み伏せられ、喉笛に食いつかれそうになる
蹴り飛ばし、木刀を叩き込む鹿島
だが、野犬はひるまない
効いていないのか、効いていても倒すには足りないのか
表情も読めない
374隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:08:07.17 ID:WW+Mr6pE0
次第に彼らは勝てないことを悟り始めていた
一人が逃げ出す
二人目が逃げ出す
三人目が逃げ出すが途中で転び、鉄パイプを落とす
四人目が槍で牽制してから逃げ出す
鹿島も逃げる
が、倒れた友人を引き起こそうと肩を貸す
それでも友人は自分で立つことが出来ない
恐怖から完全に腰を抜かしている

野犬は、既に背後まで迫っていた
犬特有の荒い息遣いが聞こえる

友人を肩から下ろし
振り向き様に木刀を振るう
頭部に当たり、"どう" と倒れる野犬
偶然だった
だが、泡を吹いて倒れている野犬を見て他の二匹が警戒する様に距離をとる
一定の距離を保ち、二人の周りをぐるぐると回る
汗がじっとりと肌を濡らし、時間がゆっくりと流れる
恐怖がゆっくりと首を絞めるかの様で、息が苦しくなる
次に飛び掛られれば終いだ
10分が経っただろうか、それとも3分か
時間の感覚が無くなり、永遠に続くかの様な非現実的な感覚
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 03:12:10.36 ID:2tAXUosT0
支援
376隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:13:23.27 ID:WW+Mr6pE0
土を蹴って近づく足音
人の立てる足音
手製の槍を手に持ち、走って来る男
手に持つ槍は友人のそれだが、持っているのは友人ではない

犬たちは男を警戒して片側に集まっていた
ザザッと靴が地面を擦る音がして鹿島の横に男が立ち止まる

野犬が男に刺激を受けたのか飛び掛って来る
男は槍を器用に回し、流れる様に打ち据える
そしてそのまま体を捻り、勢いを殺さず、えぐる様に
鹿島の方へと迫るもう1匹の野犬の腹へと槍を突き立てた

打ち据えられた野犬が立ち上がり、咆哮する
野犬に突き立てた槍から手を放し、息を鋭く吸い込む
地にしゃがみ、落ちた鉄パイプを拾い上げる男
地を蹴る野犬
男の喉笛へと迫る牙
野犬の喉笛へと迫る鉄パイプ

そして
立つは男
倒れるは野犬
唖然として見上げる鹿島

"あんたは……"
377隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:15:57.57 ID:WW+Mr6pE0
その男は、かつて自分よりも弱かった香取であった
香取は鉄パイプを捨て置き
カランカラーンという甲高い響きが収まると、穏やかな口調で話しかけた

"狂犬に噛まれるといずれは死ぬ、腕を噛まれれば腕を切らねばならないかもしれん"
"死ぬ覚悟、片腕になる覚悟があってここへ来たのか?"
"師範はそれを許してくれたのか?キミの姉上はそれを許してくれたのか?"

鹿島はただ首を振る事しかできない

"ならば、覚えておきたまえ"
"事を起こすには踏まねばならない手順と、周りを想う気持ちが必要なのだと"

頷く

"さて、帰ろうか"

拍子抜けした
説教はこれで終いなのかと問う

"聞きたいならば続けよう、だが……"
"説教をされる必要があるという自覚があるならば、後はキミ自身の反省に任せる"

鹿島の友人も助かったことに安堵したのか、自分で立ち上がる
こうして何事もなく、皆が無事に家路へとつく事ができた
378隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:22:20.10 ID:WW+Mr6pE0
帰路の途中、香取が助けに来てくれたのは
先に逃げた友人たちと遭遇し、事態を知ったからだったと聞いた

家に帰り着くと、疲れと緊張が解けたせいか
あっという間に眠りに落ちていた
翌朝、いつも通り食卓へと向かう
家族といつも通りに挨拶を交わし、食事を摂り始める
父も姉も叱り付けてこない
母はいつも通りに配膳していく
鹿島は不思議に思ったが、反省は自分でする様にと言った香取の言葉を思い出し
あれは本当に、全てを自分に任せられたのだと理解した

何をもって反省とするのか、その時の鹿島には判らなかった
今までは、父から厳しい鍛錬を言い渡されたり
姉の説教を正座で長時間聞いたりと
誰かに与えられたものを受けるだけであったからだ

そして、ふと香取のことを考える
"香取はどうしてあんなにも強くなっていたのか"
"香取はどういう人物なのか"
直接聞くわけにもいかず、かといって父に聞くのも躊躇われ
結局、姉に訊くこととした
379隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:30:15.35 ID:WW+Mr6pE0
姉、曰く

"絵に描いたような真面目なひとね"
"鍛錬は毎日欠かさず、勉学にも勤しみ、品も良い"
"ガラの悪い男たちに絡まれたところを助けられたという女学生の話もあったかしら"
"女学校でも彼のことを私に尋ねてくる方々が何人かおられるわ"

そんな話を聞いていると
鹿島が稽古をつけていた頃の香取とは別人の様に感じてしまう

"何でも卒なくこなすひとの様に聞こえるかしら?"
"でも、貴方は知っているでしょう?彼が最初から何でも出来たわけではないと"
"彼は努力のひとよ、その努力がどこから来ているのかは知りませんけれどね"

"後は自分で訊きなさいな"
"訊いたら、わたくしにも教えてね、彼の話を聞きたがる方々も中々諦めてはくれないのよ"

そう言って、姉はふふふと朗らかに笑った
380隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:41:43.59 ID:WW+Mr6pE0
それからというもの、鹿島は香取の後をつけて様子を伺ったが
香取のする事といえば
鍛錬、読書、家の手伝い、鍛錬、読書、家の手伝い、ひと助け、鍛錬……
ただひたすらに、それの繰り返しであった
こんな事の繰り返しの何が楽しいというのか
鹿島には判らない

ある日、香取が公園で本を読んでいるところに遭遇し
声を掛けられた
この本を読んでみないか、と
毎日の様に後をついて回っていたことを気付かれていたのだろう

本の内容は星座にまつわる話をまとめた物で
船乗りが目印にしている星の話だとか
星の名の由来だとか、地球から星への距離の推測値だとか
一言でいうならば、一貫性のない雑多な内容である
一つ一つの話は短く読みやすい
それでいて、星を多角的な方向から見ている内容からは
筆者の星への好奇心が見て取れる様だった

読み終わる頃には2時間以上が経過し
顔を上げると、香取も自身の手にした本を読み終えた様だった

恥ずかしさからか、無言で本をつき返し
そのまま何も言わず、場を去った
381隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:48:25.42 ID:WW+Mr6pE0
次の日も、その次の日も香取は本を用意してくれていた
時には人間の心理について、時には経済の流れについて
時には心踊る剣術譚、時には涙流るるほどの悲哀
その何もかもが鹿島に充実した時間を与えた
二人は何も語ることなく
同じ時を共有し、同じ知識を共有していった

そんなことが2ヶ月くらい続いた頃だっただろうか
香取が口を開いた
稽古に付き合わないか、と
長らく稽古から離れていた鹿島からすれば、それは受け難い言葉であった
少なくとも2ヶ月前ならば断っていたはずだろう
だが、この時は抵抗なく受け入れることが出来ていた
不思議な気分だった

道着に着替えて稽古場へと顔を出すと
門下生たちの驚いた顔に迎え入れられた
一番驚いていたのは師範である父だったのかもしれない
だが、一礼し入る鹿島を見て師範は大きく頷くと
鹿島には何も言わず、手の止まった皆に続けなさいと促すだけであった

体をほぐし、素振りを行う
打ち込みを香取に受けてもらい
香取の打ち込みを受けさせてもらう
そして、師範も門下生も手を止め、見守る中
実戦を模した乱取り稽古を行うこととなった
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 03:49:26.57 ID:2tAXUosT0
支援
383隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:51:48.80 ID:WW+Mr6pE0
いざ香取と竹刀を向き合わせると
泰然とした雰囲気とその懐の深さに飲まれそうになる
たゆまぬ鍛錬により得たのであろう力強さと彼の持つ冷静な眼差しが
今はただ恐ろしく感じる
恐怖を振り払い、自身の持ちえる力を振り絞り、竹刀を振りかざす

"はぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!"

気合とともに、右足が前へと出る

"せいッ!"

己の右足が地の感触を得るよりも先に、ダンッとういう音が聞こえ
一瞬後には頭上でぴたりと止められた竹刀があった
勢いを殺せずに前へと出るが、それを予測していたであろう香取は
そこには既におらず、鹿島の左へと回り込んでいた

音無しの太刀

鹿島流の教えの一つに、音無しの太刀というものがある
これは、刀を打ち合う事なく、鍔迫り合う事なく
すなわち音を立てない、初撃必殺の太刀の事を指す
384隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 03:56:19.93 ID:WW+Mr6pE0
普段穏やかであった香取から受けた実戦的な苛烈な太刀に
鹿島は己の中に残っていた瑣末なモノ全てを削ぎ落とされた様な、清々しい様な
そんな感覚を得ていた

そして、師範へと向き直ると自然とひざを折り、言葉が出ていた

"これまでの行いを恥じ、心と体を鍛え直したく思います"
"これより先、この場での鍛錬の許可を願います"

張り詰めた静寂

師範はただ一言で応える、いつもと同じ様に

"ようこそ、鹿島流道場へ"


*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*
385隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 04:03:47.57 ID:WW+Mr6pE0
今宵の物語は、ここまでにさせて頂きます

眠い、これで半分くらいかな

昼過ぎにもスレが残っていたら、再開します

では、お付き合い頂きましてありがとうございました
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 06:51:16.61 ID:54llIHdGO
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 08:02:32.12 ID:VOFCgUmj0
保守
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 09:15:28.22 ID:o81p+YnY0
うおっと寝落ちしてたルーモアの人乙!
続き楽しみにしてるぜ!
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 09:37:11.26 ID:4jr9/a1P0
おはよう
カニの人とルーモアの人乙なんだぜー!!
続きwktk

俺もお昼ご飯の後スレ残ってたら何か書くー!
390Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:01:58.78 ID:o81p+YnY0


            ●


「なんなんだよありゃ……」
 見えなくなった白い馬とその契約者っぽい外人の兄ちゃんが走って行った方を見て、俺は半ば呆然と呟いた。
「≪ユニコーン≫だったんじゃないかい?」
「ああ、≪ユニコーン≫で間違いないだろうな」
 姐ちゃんが煙草をふかしながら言い、「半信半疑だったが先程の行動を見て確信した」とTさんも頷く。
 先程の行動ってアレか? あの膝枕がどうとかいうアレなのか?
「≪ユニコーン≫ってーと、あの≪ユニコーン≫だよな?」
 伝説の生き物っぽいあの白い馬を連想する。
「つののついたおうまさんなの」
 頭の上でリカちゃんが言う。うん、角の付いたお馬さんだ。ただちょっとばかし行動とかが異常だったが。
「≪悪魔の囁き≫が憑いてたのか?」
 異常な行動の辺りで閃くものがあってTさんに問いかける。
 確認は出来なかったな。とTさん。
「元々≪ユニコーン≫は獰猛な生き物だ。契約者が男であることから見ても元来の獰猛な性格が出ただけなのかもしれない。
まあ最初見た時に狙われていた相手が彼女では、≪悪魔の囁き≫の件の方が濃厚かもしれんがな」
 Tさんが初詣の時に会った姐ちゃんを見て呟いた。……ん? 知り合いなのか?
「なんでおうまさん、お姉ちゃんをみておとなしくなったの?」
 リカちゃんが訊く。そう言えばそうだ。
暴れていた≪ユニコーン≫もその契約者の兄ちゃんも俺を見るとなんかあまりお近付きしたくない雰囲気の目で俺を見て戦う事をやめてた。
 Tさんに疑問顔を向ける。Tさんは俺たちの表情を見て一つ頷き、口を開いた。
「それは舞が純潔だからだろうな」
 普段からあまり使われてない脳みそが考えるのを完全に放棄した。
391Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:04:22.01 ID:o81p+YnY0
 …………は? 
 数秒で復帰、同時に全身がカッと熱くなって考えがうまくまとまらなくなる。
 ……いや、まあ確かにTさんとはまだそこまでいってはいないけども、いやいや、え? あ、そうか、そういやあの馬はそういうのが好みだったっけ?
「ってあれ? 馬だけじゃなくてなんかあの馬の契約者の兄ちゃんも俺にヤバ気な目を向けてたけど?」
「契約してそこら辺の嗜好が共有されたのかもしれん」
 興味深げにTさんが呟いた。
「じゅんけつ?」
 リカちゃんが更に疑問を発した。しかぁし!
「まだリカちゃんは知らなくてもいいことだって、な!?」
 頭のリカちゃんを引っ掴んで顔の前に持ってきて言い聞かせる。ぶっちゃけ、言ってもリカちゃんにはよく分かんねえ事だと思うしな。
「ん、そうだな」
 Tさんも言うつもりは無いようで、俺の言葉に同意した。
「ひみつなの?」
 リカちゃんは面白く無さそうに言う。自分にだけ秘密にされるのが嫌なお年頃なんだろう。
どうしたもんかと思っているとTさんが「まだその手の知識を得るには早いというだけだ」と諭した。
 リカちゃんもちょっと首を捻りながらも「わかったの」と頷いてくれる。
 Tさんはリカちゃんにいい子だ、と言って、
「さて」
 と首を捻り、姐ちゃんへと顔を向ける。
「朝比奈マドカだな」
「姐ちゃん、初詣の時に会ったよな……って、え?」
 朝比奈マドカ……?
 咄嗟にTさんへと顔を向ける。Tさんは俺の動作に構わず続けた。
「あれから探し人は見つかっただろうか?」
「なんだい? あれからもう数カ月経ってるのにまだ見つからないとでも思っているのかい?」
 のんびり答える姐ちゃん。
 そりゃそうだよな、普通なら会ってて当然だよな。ただの知り合いの俺たちだって初詣以来何度かチャラい兄ちゃんには会ってるわけだし。
「ああ、会ったという話を聞かないからな」
「……へぇ?」
 ……どうも会ってないみたいだった。どうしてだ? 状況がよく分からない。
392Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:07:37.33 ID:o81p+YnY0
「ち、ちょっと待てよTさん。朝比奈マドカって、この姐ちゃん、チャラい兄ちゃんの?」
「ああ、母親だな」
 こともなげにTさんが答えた。この人が、チャラい兄ちゃんの母親……?
「翼を知ってるんだ?」
 姐ちゃんがチャラい兄ちゃんの名前を言った。初詣の時には咄嗟に知らないと答えた名前だ。
「……ああ」
 Tさんが首を縦に振る。俺もリカちゃんもそれぞれ知っている旨を示す。
姐ちゃんは口の端を軽く歪め、「なんであの時教えてくれなかったんだい? 意地悪だねえ」と言って少し皮肉気に笑った。
「あん時はチャラい兄ちゃんの本名なんて知らなかったんだよ」
「へえ、私はてっきり誰かに口止めでもされてるのかと疑っちまったよ」
 姐ちゃんは日景の家を勘当されているってこの前≪魔女の一撃≫の兄ちゃんに聞いた。
もしかしたらチャラい兄ちゃんの親父と組んでチャラい兄ちゃんを狙ってるとか?
 そっとTさんに目配せするとTさんはいや、と首を軽く横に振った。
「大丈夫だ。黒服さんが確認に行っていて尚あの人が無事なのがその証拠と見ていい」
 そう言いながら俺の手からリカちゃんを取り、俺の頭にぽんと置いた。その動きと同時に俺に耳打ちする。
(それに一家は今離散していた筈だ。夫婦仲も悪かったようだし、おそらく朝比奈秀雄と彼女は連絡を取り合っていないだろう)
「それはそうと……」
 Tさんはそのまま何事も無かったかのように俺の横に立つ。
393Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:12:23.28 ID:o81p+YnY0
「先程≪ユニコーン≫を見ても特に驚いてもいないようだし、リカちゃんについても普通に受け入れているということは、少なくとも都市伝説の存在は理解しているのだろうな。
 そしてこの感じ、おそらく……」
 そう言って相手の反応を確かめるかのようにTさんは目を少し細め、何かを探るように注意深く姐ちゃんを見た。
「何らかの都市伝説と契約しているな?」
 一瞬の間、
「……さてね?」
 姐ちゃんはそう言って肩をすくめた。Tさんは頷き、
「まあこのようなことをいつまでも議論することもない」
 小さくあの青年の問題の方が先決だと呟いた。
「随分とあの青年――翼に嫌われているようだな」
「それがどうしたんだい? そんなことより私は早く翼に会いたいのだけどねえ?」
 少し強い語調で姐ちゃんが言う。チャラい兄ちゃんの居場所を知っているのなら早く話してもらいたいんだろうと思う。
でもTさんはそんな語調の変化なんぞどこ吹く風で話を続けた。
「苗字を名乗る事すら拒否しているな。それに、青年に親しい者もまた貴女を疎んでいた。何故そんなにも嫌われているのだろうな?」
「そんなもの関係ない。私は家族、それもたった一人、そう……たった一人の息子に会いたいだけなんだ。そこになんの問題もないんじゃないか?」
 姐ちゃんの語調がまた変わった。少し早くなった気がする。なんか焦ってるのか? チャラい兄ちゃんをそんだけ大事に思ってんのかな?
 Tさんは姐ちゃんに容赦なく言う。
「そのたった一人の息子の、今の家族が貴女を疎んでいるんだ」
「家族?」
「黒服さんと言って、分かるか?」
「あぁ……」
 Tさんの言葉に何か納得したように姐ちゃんは気の抜けた声を上げた。
 肩を落とした姐ちゃん、俺はそのどこか落ち込んだような表情を見て問いかけたくなった。
「なあ姐ちゃん、チャラい兄ちゃんに一体何したんだ?」
 姐ちゃんはしばらく悩むそぶりを見せて、
「……そうさねえ」
 観念したようにため息をつくと、ゆっくりと語りだした。
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:13:24.93 ID:6aOJCFGH0
おはようしえーん!
395Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:14:44.87 ID:o81p+YnY0



            ●


 ここにある女の日記のリンクを張らせていただこうかと思います。


            ●
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:16:11.10 ID:6aOJCFGH0
一瞬、何事かと思ったwww支援!
397Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:17:56.71 ID:o81p+YnY0
 姐ちゃんの話は所々ボカされてたから詳しいことはよく分かんなかったけど、とりあえず、
「そりゃあ、まあ嫌われちまうと思うな」
 というのが俺の感想だった。
「まあ、よく考えればそうだろうなとは……思う」
 姐ちゃんがそう言うけどなかなか罪状は重いと俺は思う。
男遊びに夫婦喧嘩、んでもって子供はほとんどほったらかしと来たもんだ。俺ならグレる。
「が、一応反省もしているようではあるな」
 Tさんが難しい顔で言う。Tさん自身は親という存在を幼くして亡くしちまってるから感覚がよく分からないのかもしれない。
まあ確かに、言葉に後悔というか反省というか、そんなものが滲んでいたような気がする。それも含めて考えると、
「あの黒服さんが嫌うほどの人間にゃあ見えないけどなー」
「だがあの黒服の男に私はかなり嫌われている」
「うーん……」
 まだ反省とかしないで遊び続けてるぜやっほぃ! とか言いだす人間ならともかく、
今の姐ちゃんと比べたら去年マッドガッサーの騒動の時に会ったコーラの兄ちゃんの方がよっぽど嫌われる素質はあると思うんだけどな。
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:18:51.60 ID:6aOJCFGH0
しえーn
399Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:21:51.48 ID:o81p+YnY0
「おそらく、話し合いの場が持たれないか、胸襟を開いて話をしたことがないのだろう」
 違うか? とTさんが姐ちゃんに問いかける。
「……」
 姐ちゃんは無言。どうも図星っぽい。
 ああ、それで皆が皆誤解したままってことか?
「おはなし、とってもだいじなの」
 俺の頭上からの声に姐ちゃんもTさんも視線を俺の頭にしがみついているリカちゃんに向けた。
「このまえね、お兄ちゃんとお姉ちゃんもね、すきどうしなのにすれちがってるって言ってね、夢のお姉ちゃんがとってもしんぱいしてたの!」
 だからお話は大事だとリカちゃんが一生懸命に言って締めくくった。
 …………う〜ん、そうか、夢子ちゃんに心配かけてたのかぁ……。
 確かにあの時は俺もTさんがまさか俺に疎まれてるとか思ってやがったとは考えもしなかったけど……。
 衝動に任せてリカちゃんを頭上から掴み上げて上下に激しくシェイクしながら思う。
数秒振って落ち着くとTさんと顔を見合わせた。
「全くその通りだ。話をするのは大事だな」
「ほんとにな」
「ぐらぐらするの〜」とリカちゃんがふらふら感あふれる声で言うのをバックに俺とTさんは姐ちゃんの手前、苦笑するしかない。
「朝比奈マドカ」
 Tさんが一息ついて言葉をかける。
「少し、手を貸す努力をしてみよう」
 そう言って取り出されたのは携帯電話。画面には黒服さんの電話番号が表示されている。
それを姐ちゃんに向けて、Tさんは訊ねた。
「素直に向き合う覚悟はあるか?」
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:23:25.61 ID:6aOJCFGH0
リカちゃん振って落ち着くのかよwwwwww支援!
401Tさん ◆mGG62PYCNk :2010/03/24(水) 10:24:06.08 ID:o81p+YnY0
と、ここで切れます。ええ切りますとも!
こっから先は作者さんに丸投げですよ!? だって話の根幹にかかわりそうだし!
差し当たってTさんはこれから携帯で黒服さんに電話をかける事にします。

そして>>395は正直、すまない。俺が説明を入れるよりも既にあるものを使った方が俺が楽ゲフンゲフン――皆も分かりやすいかと思ったんダ! ホントダヨ?

マドカに対してウチの子たちは反省しているという印象を受け、ついでに何故か焦っているという感じを受けました。
Tさんは黒服Dに一度対談の席に着いてもらい、マドカの方にも素直な対話をしてもらうことを望みます
が、この後電話をしても黒服Dが突っぱねるようならばその席に無理に着いてもらう気も無く
また黒服Dの頭越しに翼へマドカの事を伝えることも以前黙っていてくれと依頼されたため、決してありません

もしストーリー的にやばかったらなんか適当に理由つけて電話を切っちまってください

他、不都合等ありましたら言ってくだされ!


舞のマドカに対する呼称が「姐ちゃん」になってるのが彼女の年齢に対する評kうわなにをするやめ――――
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:28:02.56 ID:6aOJCFGH0
Tさんの人、ならびに深夜投下の皆様方乙でした!

これは、とうとうマドカの愛情が翼に伝わるのか…?
そして舞wwwwwリカちゃんがかわいそうだwwww
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:32:31.94 ID:o81p+YnY0
舞「口が軽い子にはお仕置きをだな」

まあ照れ隠しですww
リカちゃん的には兄と姉と慕う二人が仲良しだと言いたいだけですが直接的なもの言いなのでw
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 10:41:09.12 ID:6aOJCFGH0
まあ以前、電柱の影でリカちゃんを引きちぎ…お仕置きしたときよりは、遥かに軽いなwwww


さて、ほぼ出来かけてたネタはあるが、その前に黒服Hによる悠司の葛藤を書かざるを得ない

だが、まずは朝飯だ!
405流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:41:30.04 ID:44hWCsK30
※いつも勢いで書いているんですが、今回は勢い取ったら何も残らないぐらい勢いで書いているので普通の人が読むと頭痛・吐き気・目眩・腹痛・腰痛・脱臼などの症状が表れ、最悪の場合死に至ることもあります ご注意ください
406流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:42:58.14 ID:44hWCsK30
バサッバサッバサッバサッ
大きな鳥の羽ばたく音
空に現れた巨大な鳥
こちらへ向かうと同時に羽毛が抜け落ち始め、人の姿になっていく
僕の目の前に降り立つ頃には、大きな翼を背につけた一人の少女になっていた
「・・・・・・・・・」
えー、何この状況
「貴方・・・昨日はよくもやってくれたわね!」
ビシッと人差し指を立てて僕に向ける 人を指しちゃ駄目って教育受けなかったのか
「・・・なんのこと?」
とりあえず少女が言ってることがなんなのか理解できない 昨日・・・?
笑い人形を倒したぐらいしかなかったと思うが
「だから昨日!私に電撃やったでしょーが!」
・・・あー もしかして
407流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:43:49.28 ID:44hWCsK30
笑い人形を倒しにいく少し前になんかこっちに突っ込んできた巨大鳥に電気あびせて撃退したんだが・・・
「まさかアレですか?」
「そのアレよ!」
ビシッ もう片方の手も使い、両手で僕を指差す 何そのポーズ
「あの時から私は貴方に復讐することばかり考えてたわ・・・・」
あの時からも何も昨日のことだろうに
「そして今こそが!復讐の時!」
バサッ 翼を大きく開く少女
その衝撃で数十枚の羽根が宙を待った
羽根は徐々に形を変え、菱型の鏃のようなものとなり、ふわふわと浮遊しながらこちらに狙いを定める
外見を見る限り、それなりの硬度も持っているようだ
「いけっ!」
少女が腕を振るう と、同時に羽根がこちらへ向けてとんでくる
風を切る音とともに高スピードで僕を傷付けに来る羽根を
「え?」
背に、少女と対峙する
少女の顔に浮かんだのは驚愕
それとは正反対に、僕の顔には恐らく笑みが浮かんでいたことだろう



408流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:45:24.44 ID:44hWCsK30
おかしい おかしい おかしい おかしい
思考がその四文字で支配される
羽根を放った次の瞬間までは羽根の軌道上に青年はいたはず
それなのにさらに次の瞬間には目の前へ移動していた 
頭の中でリピートされ続ける「おかしい」の中には、「こわい」が混ざり始めていた
「っ!!」
恐怖を拭う様にして、再び青年に羽根を飛ばす
今度は数百という数を 
その量は羽根同士の隙間を埋め、壁のようにも見えるほど
羽根の壁が通過し、そこには地面に突き刺さった大量の羽根以外残っていない
「倒し・・・」
「・・・・・・」
「・・・な!?」
違和感を感じ、後ろを向くとそこには先ほどと同じく笑顔を浮かべた青年が立っている
一見優しそうな笑みだが、そこには狂気だか殺気だかよくわからないものが含まれていた
それに恐怖し、一歩後ずさる それでできた空間を、青年は一歩踏み出して埋めた
「それで終わりか?」
先ほどとは全く違う口調 笑みと同じく禍々しいなにかを孕んだ声 一歩 一歩 ゆっくりと青年が近づいてくる
バチッという放電の音とともに、その手には雷が宿った
「く、来るな・・・」
青年はそれを無視する いや、そもそも聞こえているのだろうか
「く・・・来るなって言ってるでしょ!?」
叫ぶと同時に羽根を飛ばす 避けられるのはわかっていた それでも、何かをしないとその威圧だけでやられてしまいそうだった
・・・私の予想は外れることとなる だが、攻撃が成功したわけでもない
409流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:47:08.58 ID:44hWCsK30
その電気を纏った腕で、羽根を消し炭に変えられたのだ
そして、再び私のほうへ歩き出す
「・・・っ し、仕方ないわね!今日はコレぐらいで勘弁してあげるわ!」
勝てない そう判断し、逃げようと後ろを向いたところで
ガラガラガラガラガラ
瓦礫に行く手を阻まれる 瓦礫には軽く電流が走っていた
「逃がすとでも思ったか?」
私を嘲笑うようにして青年が言う
まずい 本格的にまずい
逃げることが出来ない 飛んで逃げようものなら離陸した瞬間雷に叩き落されてしまうだろう
かといって、今の技では青年を倒すこともかなわない
・・・・・・仕方がない やろう


410流石に今回はひどすぎると思う 電気人間:2010/03/24(水) 10:48:45.95 ID:44hWCsK30
楽しい とても楽しい
少女が怯える様は見ていて実に面白い、
もっと怯えた顔がみたい そう思い、電気で威嚇をしようとした瞬間
少女の怯えた顔が決意をした顔に変わる 
・・・なんだ、つまらないな
「これは使いたくなかったけど・・・自業自得よ?」
今まで何度か見たように、少女が羽根を広げる
ただ、その翼は今までのふわふわとした柔らかさが消え、鋭くとがった針の集合体となっていた
その羽根の形は、先ほどの攻撃のものに似ている なるほど 羽根の形状変化、硬質化を翼ごと行ったか
もう後ずさることはせず、凶器と化した翼を広げて飛び掛る
近距離で、かなりのスピードをもって襲い掛かるそれを僕は避けることは出来ない
・・・だから、弾く
バチチチッ
右手に再び強い電気を纏わせる それを圧縮し、光の球にして掌に集めた
電熱により火傷をおったが、その痛みを無視してさらに強く、強く溜める
ギュオッ
翼が目の前まで迫る
それを、右手を払うようにして横から叩く
棘の塊を叩いたため、手にいくつかの羽根が深く刺さった
無視 痛みなど所詮ただの電気信号 意識を向けなければどうということはない
少し遅れて、纏わせた電気が大きく弾け、一瞬で全てを包み込んだ 



411電気人間(代理):2010/03/24(水) 11:12:14.88 ID:6aOJCFGH0
「ぐ・・・」
私は倒れていた 体からは煙が上がっている 
青年の能力により倒されたのだろう 体が麻痺し、動くことが出来ない
「・・・・・・」
青年はそんな私を無言で見下ろす 
・・・焦げた右腕 あの攻撃によるものだろうか
「・・・・・・」
右腕を出そうとして怪我に気づいたのか、代わりに左手を出す
止めを刺すつもりだろう
だが、私の予想はまた外れる ・・・また、悪い方向に
「いいこと思いついた 貴様を奴隷にする」
「・・・は?」
ニッコリ微笑みながら放った青年の言葉に、私は理解不能の意味を持つ声を漏らす
「聞こえなかったか鳥頭」
先ほど出した左腕で頭を掴まれ、耳元でもう一度、ゆっくりと繰り返された
「貴 様 を 奴 隷 に す る と い っ て い る の だ」
言い終わった後、左手が若干前に押すようにして離される
それのせいでそのまま寝転ぶような体制になってしまう
その私の顔の真横に両手をつけ覆いかぶさるような体制となり、狂気・・・と呼ぶには淡すぎ、普通というには異常すぎる笑顔で続ける
412電気人間(代理):2010/03/24(水) 11:12:57.68 ID:6aOJCFGH0
「僕のいうことを何でも聞き、僕に決して逆らわない奴隷だ 代償として衣食住を与えてやろう」
「・・・どっ・・・奴隷!?」
やっとその言葉の意味を理解した私は抗議をしようとする が、遮られた
「断るというのなら・・・」
黒焦げになった右腕を先程私の逃げ道を塞いだ大量の瓦礫に向ける
一瞬右腕が光を発し、次の瞬間、瓦礫が一瞬にして消し飛んだ
「こうなるが・・・どうしたい?」
「奴隷にしてください・・・」
・・・そんなわけで、私はこの青年の奴隷となってしまったのでした

「ちょっ!何で首輪なのよ!?」
「む?どうした 手錠の方がよかったか?銀杏」
「そういう問題じゃ・・・ぎんなん?」
「「いちょう」  貴様の名前だ いやなら変えるぞ 「から揚げ」あたりか:」
「いや、特に不満はないけど・・・ から揚げ!?」
「そうか なら帰るぞ 銀杏」
「いたたたたた!?首輪を引っ張るな! 」

413電気人間(代理):2010/03/24(水) 11:13:51.34 ID:6aOJCFGH0
――――――
○月×日
今日はいいものが手に入った 怪鳥の少女、銀杏だ
多少は戦闘力もあるようだ
―――――――

黒く焦げた右腕で鉛筆を持ち、日記をかく
最初は暇つぶし程度で、10日も続けばいいほうだと思っていたがすっかり習慣となってしまった
右腕は動かすたびに激痛が走るが、やはり無視をする 書き終わってから治療をしよう

――――――
衣食住を与えることを条件に奴隷にすることに成功する 
・・・これで、家が少しでも賑やかになればいいのだが
―――――――

続けばいい
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 11:17:12.39 ID:6aOJCFGH0
以上、代理投下でした

奴隷と聞くといけない妄想が頭をよぎる私はいけない子
よい子はイメージ検索なんかしちゃ駄目だぞっ!!


全く関係ないけど、トースト+牛乳は朝の定番だよね
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 11:59:02.48 ID:LRjYfLnZ0
ho
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 12:31:17.31 ID:h+J/PD+s0
Tさんの人と電気人間の人乙ー!!
っつか、舞wwwwwwwwリカちゃんがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>こっから先は作者さんに丸投げですよ!? だって話の根幹にかかわりそうだし!
あいあいさー、了解っす
不都合は特になかとですよー
ちょっくら時期とか考えてやってみます
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 12:32:51.38 ID:h+J/PD+s0
あ、ちなみに
>「契約してそこら辺の嗜好が共有されたのかもしれん」
契約のせいじゃなくて、元々っす
性格が似てたから契約できたんだね!
最低だね!!!!
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 12:53:50.36 ID:h+J/PD+s0
419笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 12:56:33.07 ID:h+J/PD+s0
【上田明也の探偵倶楽部17〜禿、降臨〜】


「笛吹さん、もうすぐ着きますよ。」

何処までも続く森林、長く伸びてうねる道の先が見える事なんて無い。
わずかに窓を開けると吹き込んでくる風には、わずかに木々と太陽の香りが混じっていた。
今回の事件の舞台はそんな山の中にポツンと佇む町だ。
名前を、プレゼントパレスと言う。
意味は『安らぎの村、心地よい村』だそうだ。

『解りました。それにしても極秘作戦番号801、『プレゼントパレス奪還作戦』か……。』
『巫山戯た名前に聞こえますが深刻な問題なんだて。
 この村に住んでいる女性は全員保護されているけれど男性は未だ見つかってないんだがね。
 私の父や叔父も今頃どうなっているか……。』
「そうは言っても村が突然裸の男に支配されて、女性の居ない変態の王国になっているだなんて……。
 正直誰が聞いても信じられませんよ?」
『それは知っているけど………これが事実なんだがね。』

黒いスポーツカーに乗っているのは俺と善良なアメリカ市民であるユナさん。
彼女は普段はアメリカのとある組織に勤めているらしいが、
日本から来た友人である笛吹君と偶々郷里で休暇を過ごそうとした所、
偶然謎の変態に占拠された自分の故郷を見つけてしまう、という設定になっている。

アメリカ政府が『組織』の構成員に攻撃したのではない。
あくまで偶然であってそもそもアメリカの町を支配していたそちらが悪い。
……ということにしたいらしい。
世の中そんな物である。
420笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 12:57:48.70 ID:h+J/PD+s0
もうすぐ着きますよ、と言われてから5分ほどすると、山の中に一つの看板が立っていた。
「pleasantpalace」という文字を塗りつぶして「gay♂place」になっている。
俺達は車から降りて村への入り口へ向かう。

「……ここです。」
「こりゃあ、………ひどい。」

ユナの故郷であるというのどかな田舎町は筋肉と男だらけのハッテン場になっていた。
馬達の代わりに筋肉達磨が野山を優雅に駆け回り、
草をはむ牛たちの代わりにガチムチな全裸男が牧場でその裸体を誇示している。
その姿はまさにこの世の地獄と言うべきだった。
故郷の惨状を目にしたユナはその場で貧血を起こして倒れてしまう。
すかさず受け止めて介抱していると村の入り口に有る小屋から黒いブーメランパンツを履いた男が歩いてきた。
『お客サーン、貴方もハッテンしに来たノデスカァ?』
『はい、妻と一緒にガチムチに憧れて来たのですが……。』
『ちょ、ちょっと笛吹さん何言ってんだがね! ……ってベン叔父さん! 』
「え、親族の方? 」
「叔父です、農作業と家畜の世話を愛する心優しい人だったんですが……。
 事件が起きた際、他の村の男性と同じように行方不明になっていた筈です。」

男はどうやらユナの叔父らしい。
それにしても……マッチョである。
恐らく禿の黒服がハッしている兄気とやらの効果に違いない。

『ベン叔父さん!ベン叔父さんよね!? 』
『おや、ユナじゃないか! 妻ってことは……旦那さんきゃあ? ずいぶん良い男を連れてきたねえ?
 鍛え込みが足りないがここで二ヶ月も過ごせば立派なガチムチになれるぞぉ!
 アジア系の男がこの【ゲイパレス】には丁度足りなかったんだよ!』
背筋を冷えた汗が伝う。
ヤバイ、掘られる。
421笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 12:58:48.36 ID:h+J/PD+s0
『叔父さん、キャシー叔母さんが心配しているわ!
 私達と一緒にこの村から逃げて! 』
『ハッハッハ、逃げるぅ?何を言っているのだ?
 マ神様は我々に尽きる事なき無限の筋肉と男同士の建設的な愛の形を教えてくれたのだ!』

どうやら新たな世界に目覚めていらっしゃるらしい。
ユナが必死で説得しているがどうにも埒が明かない。

『そんな! ベン叔父さん、目を覚まして! 』
『どうにも解ってくれないようがね、ユナ。
 ならば仕方がない。
 ……ケビン! ジョン! ボブ! アレを持って来させろ!
 そしてそこの男はマ神様に献上する! 』

ベンが村の方向に向けて大声で叫ぶ。
するとやはり全裸の男が村の方向から駆けてきた。

『ユナさん、説得は無駄なようだ。一旦逃げるぞ。』
『待ち給えそこの男♂性! 』

俺がユナの手を引いて一旦車まで逃げようとすると
人間とは思えない素早い動きでベンが回り込んできた。
これも兄気の影響なのだろうか? どうやら人体が強化されているらしい。

『君は我々と共に、このゲイパレスから始まる新世界の民となるのだ! 』

ジワジワとベンが距離を詰めてくる。
422笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:00:04.92 ID:h+J/PD+s0
『おいおいベン、俺達を呼ぶなんてどうしたんだい? 』
『ウホッ、良い男! 筋肉さえ付けば俺は大好きだぜ。』
『ほう、これは我々の仲間になって貰うしかないな。』
『ケビン、ジョン、ボブ!あんた達まで!』
「こいつら誰? 」
「まぁ、幼馴染みです。彼らは村を離れていた筈なんですけど……。」

前方にはベン、左右と後方にはそれぞれ村から新たにやってきた三人が立ちはだかる。
簡単に言うと……囲まれた。
黒いブーメランパンツの男達に囲まれるというのは中々嫌な状況である。

「笛吹さん。ここは私に任せて下さい。」

ユナはそう言うと腰から銃を抜き取る。

「おいおい、親戚やら故郷の友人やらを撃つ気か? 」
「麻酔銃です。」

続けざまに四発の銃声が響く。
麻酔が効いたのか四人は簡単に崩れ落ちて眠ってしまった。

「うっひゃー、容赦ねえ。」
「無駄口を叩いていないで早く行きますよ、何時起きるか解らない。」

とりあえず俺達二人は村の外、車があった地点まで戻ることにした。
423笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:03:41.63 ID:h+J/PD+s0
「こいつは……! 」
「やられましたね。」

俺達が村の近くに停めていた車は何者かの手によって破壊されていた。
恐らくガチムチ兄貴の手の物だろう。

「笛吹さん、これはこの村を開放するしか無いみたいですね。」
「しかし車が無い状況だと逃げ道が無いのが………。」
「確かにそれは気になりますね。応援も呼べないし……キャッ! 」
突然、白濁したガスを吹きかけられた。
「くそっ、何だこれ!? 」
『やめてえええええ! 』
「――――――ユナ!? 」
ガスを振り払って周りを見回すとユナはガチムチの男によって抱え上げられていた。

「あれは………!」
『男体化ガスですよ、笛吹丁、いいえ、ハーメルンの笛吹きさん。』
後ろから声をかけられる。
振り返るとそこには赤いブーメランパンツの男が居た。

『誰だお前は! 』
『この村の村長をしていた者です。ユナは我々の鍛錬の末に開発された男体化ガスの被験者になったのです。
 彼女への実験が成功すればいよいよ、我々の人類兄貴化計画が本格的に始動する。』
『人類……、兄貴化計画? ゾッとするね。』
『ふっ、筋肉のすばらしさが解らない愚かな民よ……。
 まあ貴方の処理は部下に任せましょう、貴方もまたガチムチ兄貴になるのです! 』

村長が号令を出すと良く引き締まった身体の全裸の男達が俺の周りを囲んだ。
424笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:07:35.61 ID:h+J/PD+s0
『それではさようなら、笛吹さん。マッシブな肉体になったらまた会いましょう。』
『くそっ待て!』
俺はユナを取り返そうと村長に走り寄る。

『おっと』
『そうは』
『問屋が』
『おろしませんよー』

すると謎の筋肉四人組は俺の前に立ちふさがって、奇怪なポージングをとる。
『なんだお前ら!さっさと通せ!』
『くっくっく』
『それは』
『我々四人のポージングを』
『堪能してから言うのだな! 』
『『『『マッシブポージングZ!!!!』』』』

男達は四人で協力してボディビルディングのポーズのような物をとっている。
正直言って気持ちが悪い。
「この笛吹丁、容赦はせん!」
何時も持ち歩いているスタンロッドをロングコートの袖から取り出す。
ちなみに先程容赦はせんと言ったが勿論嘘である、元村人のようなのでちゃんと容赦はする。
俺は殺人鬼ではないのだ。
『われわれの……』
『ポージングを……』
『見ても……』
『平気だとは……、ガクリ』
とりあえず四人組を気絶させると俺は村の中に進んだ。
425笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:11:54.96 ID:h+J/PD+s0
村の中には大量の兄貴が居た。
できるだけ目立たないように建物の影などに隠れながら村を進む。
さすがに村などと言ってもこの近代社会に於いて、村の中央付近はそこそこ都市化されていた。
当然、スーパーマーケットなどもある。
勿論、兄貴しか居ないのだが。

『おい! 居たぞ! 』
『あそこだ!追え!追え! 』
「やっべ見つかった! 」

ズボンの裾に仕込んでおいたスタングレネードを投げつけて兄貴軍団を足止めする。
その間にスーパーマーケットの段ボール置き場に身を隠す。

『お、こんな所に段ボール。』

丁度自分の身体がすっぽり入る。

「こちらス●ーク!大佐、聞こえるか! 」

…………アメリカに来てまで何をしているのかと。
いい年して何をしているのかと。
いや、アメリカだからある意味本場ではあるのだが。
自分のあまりの情けなさに涙を流していた所、ガチムチ兄貴に気付かれてしまったらしい。
まずは村の中央付近までまた逃げることにした。
426笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:14:59.21 ID:h+J/PD+s0
「ぜぇ……、ぜぇ……、はぁはぁ……。」

そうだ、忘れていた訳ではないが俺は運動が苦手だ。
100mで言えば14秒より速く走れない。
だから必死になって走ってみても当然兄貴達に追いかけられて追いつかれる。
シカタナイヨネ。

『待ちなさいおにいさーん! 』
『貴方もここでガチムチ兄貴化して頂きマース! 』
「ええぃ! 五月蠅い奴らめ! 」

俺は村の中央付近の高台に追い詰められていた。
ちょっとした崖を背にして立ちすくむ俺。
周りを囲むのは当然黒いブリーフの変態筋肉軍団。
彼らは自らの筋肉を誇示しながら徐々に包囲網を詰めてきた。
俺、ピンチ。
かくなる上は崖を飛び降りて逃げてみるか?
崖の下を覗く。
『A・NI・KI!A・NI・KI! 』
なんということだろう。
崖の下には俺を追い詰めていた以上の筋肉軍団が居る。
ハーメルンの笛吹きの能力を限界まで使用して伝承の如く崖崩れを起こせばこの場はしのげる。

しかし

おれはもう殺人鬼は廃業しているのだ。
罪もない一般市民、訂正、罪もない変態兄貴の命を摘み取るのは
穀雨との、穀雨吉静との、組織から俺が奪った少女との約束を破ると言うことだ。
それだけは絶対にできない。
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:17:15.71 ID:6aOJCFGH0
ぼたもちおいしいです支援!
428笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:17:56.72 ID:h+J/PD+s0
『ま、まあまあ少しお待ち下さいな。
 話せば解る、お互い理解し合える、ね? 』
俺は筋肉の集団に語りかける。
すると、その中の一人から返事が返ってきた。
『オーケィ、ただし肉体言語によるハッテン的な会話に限りマース! 』

今の変態兄貴の言葉を日本語で訳してみよう。
……さっさと掘られろ、ということである。
残念だ。
会話できる状態じゃないらしい。
じゃあ仕方がない、会話が出来ないならば戦争だ。
話合いなんて下らない、武器を取れ、一心不乱の大戦争だ。
先程殺さないと言ったが、あれは裏を返すと【殺し以外は何でもする】ということでもある。
手段に関して贅沢は言っていられない、俺は奥の手を使うことを決めた。

『わかった、それなら仕方がない。
 ところでせめて掘られるならばあなた方の中で一番マッチョな漢にお願いしたい。
 この場所に集まっている男の中で誰が一番マッチョな男なのでしょうかね?』

TEAM筋肉に動揺が走る。
これだけの数のマッチョマン達だ。
みんなそれぞれに我が筋肉こそは、という自負を持っているに違いない。
変態とてそこは人間である。
そのプライド―――酷く下らない自尊心―――を刺激してやれば……
あとは普通の人間と変わらない俺の思い通りに動く人形になるのだ。
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:18:06.26 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
430笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:21:01.00 ID:h+J/PD+s0
誰かが言った。
「詩人の言葉は胸を貫く剣であり得る。
 だが同時にその胸の傷を癒す薬でなくてはいけない。」と。
俺の言葉はそのどちらでもない。
麻薬だ。
毒薬だ。
劇薬だ。
その薬は誰も癒しなどせず、悲しみとどす黒い微笑みばかりをそこに残す。

動揺し始めた筋肉達にさらに言葉を投げかける。

『この林檎を見て頂きたい。』
俺が懐から取り出したのは金色の林檎だ。
『この林檎は、かつて女神達が美の証明として競い奪い合った林檎だ。
 私はここに集まるあなた方の筋肉に古の女神に勝るとも劣らぬ美を見いだした。
 故に、この林檎を貴方達の中のもっとも美しい筋肉を持つ人に贈呈したい。』

林檎の黄金の輝きが一瞬だけ強くなる。
俺が瞬きしている間に林檎の表面には「もっとも美しい筋肉の持ち主へ」という刻印が為されていた。

『だが、私にはもっとも美しい筋肉の持ち主を判別することが出来ない。
 ――――――――――――故に!
 君たちでこの林檎の持ち主を決めて欲しい。』

筋肉グループの中から口々に我こそはという叫びが聞こえる。
良いぞ、この調子だ。
もっと欲せよ。
もっと望め。
もっと渇いてもっと飢えろ。
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:25:08.88 ID:6aOJCFGH0
しえーん
432笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:26:17.77 ID:h+J/PD+s0
そうだ、古今東西、人を陶酔させる言葉が有った。
それを自在に操り、群衆を自在に動かし、自らはぬくぬくと安楽椅子に腰掛ける人間は何時だって居た。
今此処で、おれはきっとそれだ。
扇動者(アジテーター)と呼ばれた人間達の一人だ。
殺人鬼(シリアルキラー)よりは自分に似合った呼び名である。
そう思うと今までにないしっくりとした感覚が身体を支配し始めた。
舌はしっかり動く。
呼吸は正常だ。
態度は堂々としていて卑屈な所は一つもない。
さぁ、扇動者を始めよう。

『諸君 私はガチムチが好きだ
 諸君 私はガチムチが好きだ
 
 諸君 私はガチムチが大好きだ

 男が好きだ 漢が好きだ 兄貴が好きだ
 筋肉が好きだ 男●が好きだ 変態が好きだ
 レスリングが好きだ クソミソが好きだ ハッテンが好きだ

 平原で 街道で
 塹壕で 草原で
 凍土で 砂漠で
 海上で 空中で
 泥中で 湿原で

 この地上で行われる ありとあらゆる男色行動が大好きだ
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:30:02.10 ID:6aOJCFGH0
支援!
434笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:30:02.22 ID:h+J/PD+s0
 戦列をならべた男達の一斉発射で 意識が快感と共に吹き飛ぶのが好きだ
 空中高く放り上げられた筈のパンツが もう一枚有った時など心がおどる

 立派な物の持ち主の操るティ●● でアハンアハン と 男が撃破されるのが好きだ
 悲鳴を上げて 燃えさかる公衆便所から飛び出してきたノンケを
 MBでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

 先をそろえた男達の横隊が 敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
 恐慌状態の新兵が 既にイキ絶えた敵兵を 何度も何度も掘削している様など感動すら覚える

 敗北主義のノンケ達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
 泣き叫ぶノンケ達が 私の降り下ろした手の平とともに
 金切り声を上げる●●●に ばたばたと堀り倒されるのも最高だ

 哀れなK察達 が 雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを
 18cm の棒と42gの玉で ハッテン場ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

 801の腐女子団に滅茶苦茶にされるのが好きだ
 必死に守るはずだった男達が蹂躙され 女子供に妄想で犯され殺されていく様は とてもとても悲しいものだ

 ノンケの物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
 世間の目 に追いまわされ 害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:30:45.19 ID:6aOJCFGH0
ネタ書きつつしえーん!
436笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:34:17.34 ID:h+J/PD+s0
 諸君 私はハッテンを 公衆便所におけるハッテンを望んでいる
 諸君 禿の黒服に付き従う筋肉戦友諸君
 君達は一体 何を望んでいる?

 更なるハッテンを望むか?
 情け容赦のない クソミソの様なテクニックを望むか?
 鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を殺す 嵐の様なスパンキングを望むか?

 『 ハッテン!! ハッテン!! ハッテン!! 』

 よろしい  ならばハッテンだ


437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:36:25.76 ID:6aOJCFGH0
しええん
438笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:38:18.30 ID:h+J/PD+s0
 我々は満身の力をこめて今まさに突き上げんとする固い●●だ
 だがこの田舎町で 堪え続けてきた君たちに ただのハッテンでは もはや足りない!!

 大ハッテンを!! 一心不乱のホモ・セクシャルを!!

 君たちはわずかに一個大隊 千人にすら満たぬマイノリティーにすぎない
 だが諸君は 一騎当千 のテクニシャンだ と私は信仰している
 ならば君らは 総兵力100万のガチホモ集団となる

 君たちを忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
 髪の毛をつかんで引きずり降ろ し 眼を 開けさせ思い出させよう
 連中に男根の味を思い出させてやる
 連中に我々のスパンキングの音を思い出させてやる

 天と地のはざまには 妖精哲学でなければ思いもよらない事があることを思い出させてやる

 一千人の兄貴 のガチホモ団で
 まずはこの村を燃やし尽くしてみろ

 「最後の変態 変態指揮官より全アニキへ」

 第二次 ゾーベリン(妖精)作戦 状況を開始せよ
 
 征きたまえ 諸兄
 君たちの手にこの林檎はある。』


そう言うと、俺は林檎を崖の下に放り投げた。
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:42:35.71 ID:6aOJCFGH0
支援ー
440笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:44:58.93 ID:6aOJCFGH0
あとの事は正直あまり覚えていない。
わずかに記憶に残っているのはまるで氾濫した大河のような兄貴の群がその林檎に向かっていったことだけだ。
その結果として、俺は安全にこの騒動の原因の元まで近づくことが出来た。
安全と言うにはあまりに混沌とした状況ではあったが。
騒動の原因の傍では男性の身体になってしまったユナが眠っている。

「あんたが禿の黒服だな?そこの女性、まあ今は男性か、を返して貰おう。
 そしてこの村の兄貴汚染を解除して出て行くと良い。」
「おや、貴方は……! 」

俺の目の前には一人の黒服―――今回の騒動の原因―――が立っていた。
日本では禿の黒服と呼ばれていた漢だ。
彼は俺を見ると悲しげに首を振った。

「この村の平和を乱したのは貴方ですか………。」
「正当防衛だよ。」

蜻蛉切に手をかけて禿の瞳を真っ直ぐに見つめる。
向き合ってすぐにわかった、彼は強い。
自分では勝てるかどうか解らない、いいや、自分では勝てない。

勝てないと解っていても、それでも何故か俺の心は何故か躍っていた。
441笛 ◇rpv9CinJLM (代理):2010/03/24(水) 13:45:45.76 ID:6aOJCFGH0
「良いでしょう、ここは私が譲ります。」
「――――――――――――エッ!? 」
「私は一旦この村を諦め、新たなゲイパレスを作ると言っているのです。
 幸い女性を男性にするガスも完成しましたしね。
 これで世界人類みんなが平和にハッテンできるのです。」

……見逃せばここで仕事は終わりか。
それならばそれで良い。お互い楽をしたい。

「解った。それじゃあその女性を寄越して貴方にはこの村を立ち退いて貰う。」
「ただし、ハーメルンの笛吹き、貴方を説得する組織の任務。
 それを果たしてからです。」
「なに……? 」

そういえば黒服Hが教えてくれた気がする。
禿の黒服が俺の説得に当たっているという話だ。
こいつからの説得なんて殺害の方が幾分か優しいと言う物である。

「行きますよ殺人鬼、心の力は存分に? 」
「かかってこいマ神、筋肉の鍛錬は完璧か? 」
俺の尻をかけた戦いがどうやら今此処で始まったようである。
【上田明也の探偵倶楽部17〜禿、降臨〜fin】
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 13:49:15.81 ID:6aOJCFGH0
さるってた様子なので、代理引き継ぎました
笛の人と代理乙でしたー

上田の台詞回しはかっこいいのに、内容は酷くksmsだwwwwww
上田頑張れ!自らの尻を守りきるんだ!!
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:00:42.56 ID:h+J/PD+s0
さるから復活!
代理引継ぎ乙であります!!

さぁ、皆で上田の尻の無事を祈ろうじゃないか
444隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:07:35.68 ID:WW+Mr6pE0
輪がサチの家の前に着くと
そこにはウロウロと家の前を行ったり来たりしている不審人物がいる

「……はぁ……疲れるんだよね、こういう展開」
「ん?……おぅ!輪、遅かったなぁ」

ボクサーだった

「サチに呼ばれたんでしょ?何で入らないのさ」
「いや、まぁ……緊張するっつうか」
「今、そういう状況じゃないでしょ?」
「でもよぉ……ピンチをチャンスに変えるのがヒーローだろ?」
「それはねぇ……自分のピンチをチャンスに変えるのが格好良いんであって
 他人のピンチをチャンスに変えるのは悪役だから……分かる?ボクサーさん」
「へへへ、そっか……でもさ、アレだろ?カシマさんだし、大丈夫だよな?」
「……何その信頼……ちょっと……格好良いじゃないか……ちょ、ちょっとだけだからねッ」
「よしッ!いくかッ!!」
「……ふぅ……スルーされるとはね……じゃ、いくよ……」
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:08:28.55 ID:h+J/PD+s0
ネタ欠きながら支援
446隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:09:07.02 ID:WW+Mr6pE0
二人がサチに案内されて一室に入ると、カシマが眠っていた
規則正しく胸が上下し、呼吸が乱れていない事が判る

縁側のある畳敷きの部屋で、布団に寝ているカシマを見ていると
問題など、どこにも無い様に思える

ジャックが静かに座していた
真剣な眼差しでカシマを見つめる

「ジャック……カシマさんは?」
「……眠っていますね……私が来てからも10分の間ですが……
 外部の刺激に対して反応が無いところをみると昏睡と言っても良いかもしれません」
「原因は分からないの?何かこういう病気があるとか……」
「呼吸や反射機能には問題ありませんし、もう少し様子を見てみましょう」
「そう……」
「サチ、お茶を頂けませんか?少し、リラックスしてから考えてみようと思います」
「あ、はい……ハーブティーは嫌いじゃないですか?」
「好きですよ、ハチミツもあれば尚良い」
「お湯は沸かしてありますからすぐに用意できます……リビングへ移動しましょうか」

リビングへと移動する4人
それぞれがソファーへと腰をかけ、サチがキッチンへと向かう
数分で人数分のお茶が運ばれてくる
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:09:27.88 ID:h+J/PD+s0
しえーん
448隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:10:51.18 ID:WW+Mr6pE0
「手際いいなぁ」
「サチはルーモアでの仕事もよく出来てるってマスターが褒めてたよ」
「やだ、改まって言われると、何だか照れちゃうね」
「ローズヒップティーですね……いい香りです」
「ぅぉ……すっぺぇ……」
「すっぱいと思う方は、ハチミツを入れるか舐めながらどうぞ」
「このハチミツの瓶、うちのと同じだ」
「そうなの、これマスターに取り寄せてもらったの」
「あれ?……これ、うちのと味が違う?」
「これはオレンジの花のハチミツですね」
「ああ、そっか、うちでミルク用に使ってるのは違う花のハチミツなんだ」
「確かに、オレンジっぽい様な柑橘系の匂いがするなぁ……流石、姐さん良く判るなぁ」
「アネさん?……私の事ですか?ボボーリさん」
「……姐さんは確かにアンタのことをいったんだけどよぉ……ぼぼーり?って何?俺のこと?」
「そうですよ、ボボーリさん……違いましたか?」
「いや、明らかに違うだろ?!どこの国の名前だよ!!俺の名前は、ぼごぉりッ?!!」

トレーで、ポカンとボクサーの頭を叩くサチ

「ちょっとボクサーさん、静かにしてくださいっ」
「サチ?……お、おぅ……悪ぃ」
「ボボーリではなく、ボゴーリでしたか……失礼しました」
「違うだろッ!今、明らかに頭叩かれたからだったろ?!」
「もうイイでしょ……ボボーリでもボゴーリでもボクサーでもさ、似た様なものだよね」
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:11:26.92 ID:h+J/PD+s0
ボボーリwwwww支援
450隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:12:12.97 ID:WW+Mr6pE0
「でも確かに、ジャックさん、よくオレンジの花のハチミツって判りましたね」
「そうだね」
「ラベルに"Arancio"と書いてありましたから」
「あらんちょ?」
「イタリア語で、オレンジの木という意味です」
「なるほど……ジャックさんイタリア語も話せるんですか?」
「話せませんが、少しだけ読めます」
「あ、このハチミツとローズヒップ合うね」
「組み合わせはマスターから聞いてるから間違いないですよ」
「確かに良いマリアージュです……
 ローズヒップの酸味、柑橘の香りと甘みが調和していると思いますよ」
「ぉ?……確かに飲みやすくなったなぁ……でもこのハチミツお高いんでしょう?」
「高いですよ……聞きます?値段」
「……やめとくわ」
「さて、大分リラックスできましたね……ごちそうさまでした、サチ」
「美味しかった、ごちそうさまでした」
「おぅ!俺も緊張が解けて来た、ごちそーさん」
「お粗末さまでした」

ジャックがカシマの様子を確認しに行き、数分で戻ってくる
変わりは無い、少し時間を置き、様子を見に行くを繰り返す
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:14:15.67 ID:h+J/PD+s0
支援!!
452隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:14:19.86 ID:WW+Mr6pE0
お茶を飲んでから、1時間と少しが経過した頃だろうかジャックが口を開く

「現状では何ともいえませんが、気になる事が一つあります」
「気になること……ですか」
「人は眠る時、2つのパターンを繰り返しながら体と脳を休めています」
「2つのパターン……レム睡眠とノンレム睡眠のこと?」
「そうです、Rapid eye movement sleep──レム睡眠
 ……これは急速眼球運動がみられる睡眠のことを言います」
「レム睡眠の時に夢を見ているんでしたっけ?」
「概ねその通りです……脳が情報を処理している時に見ている映像──夢を……
 現実の眼も追いかけている……だから、レム睡眠の時に夢を見る事が多いと言われている様です」
「それで、そのレム睡眠がどうかしたのかよぉ?」
「この1時間半──90分の間、10分毎に様子を見に行きましたが……」
「うん」
「常に急速眼球運動が見られました」
「つまり……レム睡眠中ってことなの?」
「ええ、通常……」

入眠時にはまずノンレム睡眠が現れ、続いて約1時間から2時間ほどでレム睡眠に移る
以後、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、レム睡眠はほぼ90分おきに20〜30分続く

「長すぎるんです、レム睡眠が……それどころか、ノンレム睡眠をしていない様に思える」
「ずっとレム睡眠のままでいるってことですか……」
「言い換えれば……カシマは、寝ている間ずっと……」

"夢を見続けている可能性がある"
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:15:49.23 ID:h+J/PD+s0
しええええええn
454隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:15:49.76 ID:WW+Mr6pE0
「夢に関連した都市伝説による攻撃の可能性は?」
「否定は出来ません」
「もし、そうなら……いつ、その都市伝説と接触したんだ?」
「私は心当たりがありません……サチ何か憶えていませんか?」
「わたしも記憶にありません……ごめんなさい」
「輪はどうです?」
「……昨日の朝稽古に遅れたよね……夢見が悪いって言ってたかな?」
「そういやぁ、昨日はカシマさんの知り合いの軍人達に会ったなぁ」
「カシマの知り合いの軍人……都市伝説ですか?」
「うん、カシマさんと同じ"今の日本は平和か"っていう都市伝説の人達」
「……その彼等と話していた時のカシマは?」
「普通だったし、攻撃を受けたとかは無かったと思うよ」
「でもよぉ……あのメガネの副官とか怪しくなかったかぁ?約束とか言ってたし」
「……約束……ですか」
「そうかなぁ……あの人達は信じても良いと思うけど……」
「いずれにせよ決め手に欠けますね……直接、話しを聞きましょう、その都市伝説に」
「しばらくは学校町にいるって言ってたから……あの場所に行けば会えると思う」
「では、私と輪で行きましょう……仲介役、頼めますね?」
「うん、いいよ」
「俺は?」
「貴方はサチとカシマの様子を看ていて下さい、眼球運動があるかの記録も頼みます」
「分かりました……気を付けて下さいね」
「心配無用ですよ……輪は私が護ります」
「たぶん、敵対する様な人達じゃないから心配しないで待っててよ」
「うん……行ってらっしゃい」
455隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:17:12.43 ID:WW+Mr6pE0
1時間ほど経った頃だろうか、輪とジャックはサチの家へと戻ってきていた

「お帰りなさい、どうだった?」
「うん……たぶん、戦っているんじゃないかって」
「攻撃を受けているんですか?」
「私達もまだ何も知りません……詳しくは一緒に来て頂いた彼に話を聞かせてもらいましょう」
「"今の日本は平和か"の艦隊の副官さんに来てもらったから」

ジャックの後ろから、白い軍服を着たメガネの男が玄関内に入って来る

「失礼、お嬢さん……上がらせてもらう」
「あ……はい、どうぞ」

カシマの寝ている部屋へと向かう

「サチ、カシマの様子はどうでしたか?」
「ジャックさんの言っていた通り、ずっとレム睡眠が続いています」
「やはりそうですか……」

副官がジャックがしていた様にカシマの状態を診ていく

「ふむ……聞いていた通りだな」
「この状態に心当たりがあるのですね?」
「ああ、カシマが "隻腕のカシマ" となった時もこういう状態になったからな」
「カシマさんが隻腕のカシマになった?!」
「ああ……あの男は元々、カシマレイコに類似する都市伝説ではなかったという事だ」
「おい?……どういうことだ?」
「全く、揃いも揃って貴様等は……不自然だとは思わなかったのか?」
「不自然?……何が……ですか?」
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:18:10.23 ID:h+J/PD+s0
支援!!
457隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:19:21.49 ID:WW+Mr6pE0
誰もが怪訝な表情をする

「"傷痍軍人の鹿島"と"今の日本は平和か"という……
 本来は別々の都市伝説であるものが……ひとつの都市伝説として存在している事に、だ」

確かに最初は違和感を持った
だが、共に過ごす内に……自然とそれを受け入れていた
カシマはそういう都市伝説であると、疑いすらしなかった
むしろ、副官の言った言葉の方が受け入れ難いとさえ思える

そして、その事がカシマに異常を引き起こしている原因であるというのか

「じゃあ、カシマさんて……何なの?……普通の都市伝説じゃないってこと?」
「それをこれから説明しようというのだ」

副官の話が始まる
それは長い物語だ

カシマの過去が……今、語られ様としていた……
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:20:11.06 ID:h+J/PD+s0
過去wktk支援
459隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:21:58.42 ID:WW+Mr6pE0
「思い出したか?」

何処からともなく聞こえる声

「誰……だ?……お前は?……ワタシは一体……」

「私……ね……随分、他人行儀だな……いいさ、もう少し付き合おう」

夢が再開される
場面は……


*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

銀幕に照らし出されているのは、非日常的な光景

観客が息をのむ

歓声や悲鳴が上がり、溜息や嗚咽が漏れる

─終─ が照らし出され、部屋が明るくなっていく

目が痛む

やがて明順応が完了し視界が明瞭になる
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:22:50.49 ID:h+J/PD+s0
しえええーーーーん
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:23:42.42 ID:6aOJCFGH0
おっとしええん!!!
462隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:24:45.61 ID:WW+Mr6pE0
"今回の作品は面白かったですね"
"ええ、以前に観た活動写真はひどい作品でしたから"
"今は映画と呼ぶのが通なのだそうですよ?"
"そうなのですか……知りませんでした"
"あら、香取さんでも知らないことがお在りなのね?"
"買い被るのは止めて下さい、鹿島さん"
"ふふふ、楽しくてつい……でも……ええ、そうね……"
"何です?"
"貴方が知らない事も、きっとたくさん在るのでしょうね"
"それはもちろん……オレの知っている事など、ほんの僅かばかりの事です"
"そうね……わたくし、貴方の知らない事を少なくともひとつは知っていてよ?"
"ひとつどころではないと思うのですが……しかし……そうですね……
 そうも自信満々といった体で言われると気になりますね"
"教えて差し上げましょうか?"
"可能ならば、是非に"
"やはり、やめておきます……こういった事は、冗談で言う事ではありませんでした"

彼女は、その艶めいた形の良い唇をへの字に曲げる

鹿島少年──今ではもう青年と言うべきだろう──の姉は
最近、香取と活動写真──映画──を見に行くことがある
だが、そういう時は大抵、こうやって急にムッとしたり気分が沈む事がある

"何か気に障る事を言ってしまいましたか?"
"いえ、何も言ってはおりませんわ、香取さん"
"では、その……やはり、先日の御見合いの事が?"
"もちろんそれもひとつの理由ですけれど、それだけではないのです"
"ふむ、複雑な事情がお在りの様ですね"
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:25:39.97 ID:h+J/PD+s0
支援を止める訳にはいかぬ!!
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:26:51.88 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
465隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:28:05.58 ID:WW+Mr6pE0
年頃の娘である鹿島青年の姉は、御見合いの話が回って来ることも多い
だが、ことごとく断っていると……香取は、そう鹿島青年から聞かされていた

"香取先輩……姉が御見合いから帰って来るたび、食卓が険悪な雰囲気になるのです"
"先輩に力添え頂く事が出来るならば、姉の気分も鎮まると思うのですが……"

その結果、香取は鹿島姉と映画を観ることとなったのだった
確かに、家族ではない者が話しを聞いてやることで
気分が晴れることもあるだろうとは香取も思う

"そもそも、御見合いなどというのは前時代的な制度の様な気がしますわ"
"はぁ……そうなのでしょうか……"
"あら?香取さんは自由恋愛に否定的な立場をとっておられるのかしら?"
"いえ、そういうわけではありません……ただ、出会いの場がない者達もいるでしょうから"
"わたくしは、出会いに不自由はしておりませんわ"
"そうなのでしょうね"
"何故、そうお思いになられるのかしら?"
"貴女はとても社交的であり、教養もあれば人望もある……これでは出会いが無い方が不自然だ"
"香取さん……貴方……"
"はい、なんでしょうか?"
"女性を褒める時には少しくらいは服飾の嗜好性や仕草についても触れて差し上げた方がよろしくてよ"
"……すみません"
"いえ……何も、わたくしの事を褒めろと言っているのではありませんが……"
"失礼……では、出会いに不自由していないはずの貴女が何故、自由恋愛をしないのですか?"
"していないわけではありませんのよ?"
"では、既にお相手がおられたのですね?"
"そうなのですが……その相手の方が少々問題なのですわ"
"ほう……問題が……では、師範もお許しになられないと?"
"いえ、父上はその方をとても気に入っておりますの"
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:28:40.89 ID:6aOJCFGH0
支援!
467以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:28:58.94 ID:h+J/PD+s0
支援!!
468隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:29:19.59 ID:WW+Mr6pE0
"?……では一体何が問題なのですか?オレには全く想像がつきません"
"鈍感なのです"
"鈍感?"
"ええ、その方はとても鈍感な方で……わたくしの想いに気付いてくれないのです"
"気持ちの伝え方に問題はないのですか?"
"ふたりきりで出掛けて、娯楽を楽しむというのは……気持ちあっての事と気付くものでは?"

この時代、男女がふたりきりで出掛けるとなれば相応の仲という事だ

"なるほど、そういう事をされる仲ならば……それは確かに鈍感と言えましょう"
"……"
"どうかしましたか?"
"……ふふふ……本当に鈍感ですわ"
"?……何かおかしな事を言ってしまいましたか?"
"いえ、何でもありませんわ"

彼女は楽しげに笑う
何故、急に気分が晴れたのか……香取には分からなかった
何はともあれ、鹿島姉は会話を楽しんでくれている
そう思い、香取はたわいの無い話しを続けてるのであった

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*


ひとつの物語が終わり
場面が変わる……
469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:30:22.91 ID:6aOJCFGH0
しえーん
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:30:35.21 ID:h+J/PD+s0
しえええん
471隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:30:47.13 ID:WW+Mr6pE0
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

戦争が近づいていた
人々の顔からは笑顔が奪われ、ぴりぴりとした空気が世界を包み込んでいる

だがそんな中、鹿島は喜びを押さえ切れずにいる
何故なら───

ある日の夕食での出来事だった

"見合いの事なのだがな……"
"お断りしますわ"

父の一言にすぐさま返す姉
一刀を持って切り裂かれた様な形で父が唸る

"では、今回はお断りしましょうね……いいですね、あなた?"
"……"

母がすぐさま場を取り持つ

"ですが……あまりお断りしてばかりだと悪評が立つのでは?"

鹿島も余計な事とは思いつつも、つい言ってしまう

"……"

姉もその点は重々承知している
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:31:03.86 ID:VOFCgUmj0
支援
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:32:01.22 ID:h+J/PD+s0
ネタ欠きながら支援!
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:32:18.93 ID:6aOJCFGH0
しえん!
475隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:33:14.31 ID:WW+Mr6pE0
"では、そろそろ香取さんへ頭を下げに行きましょうか……いいですね?貴方"
"なッ?!お母様?!"
"……むぅ……こういう状況では仕方あるまい"
"お父様まで?!……弟子に頭を下げるなど!……"
"俺も賛成です……いつまでも、『行かず』では何か問題でもあるのではと思われかねない"
"頭を下げる事など、どうでも良い……お前の気持ちはどうなのだ?"
"……"

うつむく姉

"俺達は皆、香取先輩の事が好きだ……そうだろ?"

鹿島の言葉に、父も母も頷く

"ですが、あの方は……わたくしの事など……"
"だから頭を下げようと言うのです"
"香取先輩は崇高で、鈍感で、ある意味どうしようもない人だから"
"お前のせいではないさ……香取が鈍いのがいけないのだ"

皆が笑う

"では、良いですね?"
"……少しばかり、お時間を……わたくしが直接、お話しして参ります"
"出来るのですね?"

母の問いに無言で頷く姉

"では、今後の御見合いはお断りしていきましょう"
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:34:13.43 ID:h+J/PD+s0
ルーモアの人の投下が終わったら投下しますね支援
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:34:28.81 ID:6aOJCFGH0
香取さんは黒服D並みに鈍いのかしえーん!
478隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:34:32.96 ID:WW+Mr6pE0
いつもの様に、映画を見た帰りのふたり

"香取さん……また、映画を観に参りましょう"
"ええ、喜んで"
"来月も……"
"ええ"
"来年も……"
"ええ……まぁ……"
"10年後も……"
"可能であれば……"
"可能にして頂きたいのです"
"……"
"お判り頂けますか?この意味を……"
"……"
"お慕いしていると申し上げているのです!"
"……"
"……何かおっしゃって下さい"
"オレなどで……良いのですか?"
"貴方でなければ良くはないのです!"
"……そうか……オレは何と……"
"鈍感過ぎますわ!"
"……すみません"
479隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:35:16.54 ID:WW+Mr6pE0
───この日、この時をもって

憧れであり、目標でもある香取が鹿島の兄となると決まった
この時まで、全ては巧く運んでいた

祝言を挙げるふたり
これ程似合いの夫婦もいまいと、鹿島は思う
何もかもが幸せで包まれていた

だが、戦争という嵐が近づいてきている
彼らの運命を引き裂き、何もかもを奪い去ろうと牙を剥き出しにして
避けられぬ運命が、悲しい現実が、この先に待っている事をこの時の彼らはまだ知らない

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

─ 続 ─
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:36:14.82 ID:h+J/PD+s0
乙でした!!
あぁ…カシマさんの過去が……


>>477
そう言われると、めっちゃくちゃ鈍感に思えるなwwwwwwwwwwww
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:36:53.15 ID:6aOJCFGH0
カシマさん、生前はいろいろあったんだなぁ…
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:38:57.49 ID:6aOJCFGH0
おっと、大事なことを忘れていた

ルーモアの人、投下乙でしたー!
そして再び支援の構えだ!
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:39:06.56 ID:WW+Mr6pE0
支援、感謝致します!
区切りが良いので、とりあえずここまでにして
また後ほど

では、投下にwktkしつつ、誤字チェックしてきます!
484小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:41:23.50 ID:h+J/PD+s0
 将門の言葉に、ため息をついていた盟主
 が、ふと……思い出したように、口を開く

「…それにしても。日景家、ですか」
「盟主よ、知っておるのか?」

 えぇ、と頷く盟主
 学校町で古くから続く旧家の事だ
 知らないはずがない

「はるか昔は「日蔭」と言う姓でしたね。元々、別の旧家の影となり、そちらを支えていた家系でした」
「だが、今は、そちらが権力を得ているのであろう?我は、あの黒服から聞いた知識でしか知らぬが」
「はい…ある時、日蔭家の当時の当主が、とある都市伝説と契約しました。異国の都市伝説である小瓶の中の魔人は、契約者の願いを叶え、日陰者の立場から脱出させたのです」

 古い古い、昔の話だ
 まだ、都市伝説…当時は、そう言う呼ばれ方ではなかったが…と人間が、近しい位置にいた頃の出来事
 人間という光と、都市伝説と言う闇の境目が、曖昧だったころの事だ
 だからこそ、都市伝説の力で、日蔭家は今のような立場を得た

「日陰者の立場から脱出した際に、姓を「日景」に変えたようですね」
「なるほど…ある意味で、都市伝説に縁のある家なのか」
「はい。歴代当主の中でも、何名か都市伝説契約者が存在したようです…最も、今の当主や当主代行は、都市伝説の存在こそ知っていますが、契約はしていないようです」

 その方が良いのでしょうが、とため息をつく盟主
 都市伝説との契約
 …それが、必ずしも良い方向に動くとは限らない
 ならばいっそ、契約などしない方が幸せな事も多いのだ
 ……特に、この学校町においては

「…しかし、盟主よ。突然、どうしたのだ?そのような話をして」
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:41:39.59 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
486小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:44:54.50 ID:h+J/PD+s0
「かつての日景家の当主が契約していた、小瓶の中の魔人が問題なんです。契約者が死亡したことにより、当然、契約は解除されていますが…その小瓶自体は。つまり、都市伝説自体は、まだあの家にあると聞いています」

 ほぅ?と声をあげる将門
 …かつて、日景家の当主の願いをかなえたと言う、その都市伝説
 どんな都市伝説かは知らないが、盟主の言葉を聞いた限りでは、契約者の願いをかなえる能力でも持っていたようだ
 もっとも、その能力には、代償が存在する可能性も否定はできないが…
 だが、どちらにせよ

「その都市伝説が、願いを叶える存在であるならば…あの男の狙いに、それが含まれる可能性もある、か」
「そう言う事です。まぁ、朝比奈 秀雄が、日景家のその都市伝説の存在を知っているかどうかは、わかりませんが…」

 ふむ……と、思案している様子の将門
 日景家の、願いを叶える都市伝説
 …あの黒服は、それを把握しているのだろうか?
 確認をとる必要が、ありそうだ

「盟主よ、有益な情報、感謝する」
「そうですか。では、とっとと帰りやがりなさい、落ち武者。いつまでもここにいられては迷惑です」

 盟主の、その棘を含んだ言葉に
 くっく、と将門は、笑う

「おや、そこまで嫌う事はなかろう?」
「そこにいるだけで空気が悪くなるんですよ。どれだけ怨念を背負っているんですか、あなたは」

 祟り神、平将門
 その身は、常に無数の怨念を背負っている
 人間ならば、耐性がなければ、体調を崩してしまいかねないほどである
 盟主の言う空気が悪くなる、と言うのも、あながち間違いではない
 …正直、「首塚」の側近組や保護されている者たちが将門に慣れている、あの現状が異常なのだ
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:46:27.17 ID:WW+Mr6pE0
しえん!
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:46:42.26 ID:6aOJCFGH0
支援!!
489小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:48:35.41 ID:h+J/PD+s0
「やれ、仕方ないな…では、帰るとするか」
「えぇ、とっとと帰りなさい」
「…近頃、強き者を相手に、問答無用で勝負を挑んでくる者がいるそうだ。お前も気をつけた方が良い」
「あなたに心配されなくとも、気をつけますよ。その話も知っていますから」

 そうか、と将門は笑う
 相変わらず、気の強い女だ
 ……だからこそ、気にいっているのだが

 とまれ、将門は盟主の言葉に従い、立ち去ろうとした
 …だが、その時
 感じた、覚えのある気配

「……盟主よ」
「……えぇ」

 盟主も、この気配の主がわかったのだろう


 悪魔の、囁き


 ゆらり
 墓場に現れた…西洋人の、男性
 都市伝説契約者の気配がする
 そして……その、内側に
 悪魔の囁きが憑いている、気配も

 将門は、刀の柄に手を当てた
 悪魔の囁きは、敵だ
490以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:49:50.47 ID:6aOJCFGH0
支援!
491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:50:52.31 ID:WW+Mr6pE0
支援だ
492小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:51:48.93 ID:h+J/PD+s0
 己の部下を苦しめている者の、契約都市伝説
 刀を抜ける条件は、整っている
 盟主もまた、その男を警戒し…いつでも攻撃できるよう、構えていた

 …じゃり、と
 男が、墓場に入り込んでくる
 真っ直ぐに、真っ直ぐに
 将門と盟主を…

 否

 盟主を、目指して

「……レディ!!」

 盟主を見つめながら、歩み寄り
 そして、男はこう、口にする

「麗しき、汚れなきレディよ!!俺に膝枕をしてくれ!!」
「お断りします」

 きっぱり
 目の前までやってきた、その男に
 盟主はきっぱり、即答した
 その間、約0.1秒
 素晴らしき即答である

「何故!?」
「と、言うか、物理的に無理です」
493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:52:29.80 ID:6aOJCFGH0
この変態かwwwwwwww支援!
494隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 14:54:17.19 ID:WW+Mr6pE0
また膝枕なのかwww
495小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:54:46.39 ID:h+J/PD+s0
 すぅ……と
 すぐ傍の墓石を、透過してみせる盟主
 彼女の体は霊体だ
 ポルターガイスト能力の応用で、実体のある物を動かす事は、できる
 ……しかし
 その体は、実体ある者に触れる事は叶わないし、触れられる事もない
 …………あぁ、いや
 以前、なぜか触れる事ができた女医が存在した事はさておき、だ

 墓石を透過してみせた、盟主の様子に
 しかし、男は食い下がる!!

「いや!!きっとできる!できるはずだ!と、言う訳でお願いしまごはっ!!??」

 どごっ!!
 突如、現れた、角生えた純白の馬
 それが、西洋人男性を、突き飛ばした
 …盛大に頭から落下しているように見えたが、はて、生きているだろうか?

 ひひん、と
 馬は、小さく嘶いて
 盟主の目の前で、跪く

「がっは………。……っの、エロホース!いきなり突き飛ばすのはやめろって言ってるだろ!!」

 すぐに復活して、戻ってきた西洋人男性
 …何故、このような変態は、復活が早いのだろうか

 ひひひん
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:56:07.22 ID:6aOJCFGH0
また仲間割れwwwwwwwwしええん!
497以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:57:17.50 ID:WW+Mr6pE0
しえんだw
498小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:57:33.59 ID:h+J/PD+s0
「何?自分なら霊体でも触れるから膝枕してもらえる?…くそ、俺との契約で得た力だろ、ソレ!俺に感謝して先に譲れ!」

 ひひん

 何やら、言い争いを始めた西洋人男性と白馬
 さて、一体、どのような能力者かは、わからないが…
 将門がすべきことは、決まっていた

「っ!?」

 向けられた、刀に、殺意に
 西洋人男性と白馬が、盟主から距離をとった
 将門が、男と盟主の間に、立つ

「…引くが良い。異国の者よ。我の女を渡しはせぬぞ」
「いつ、誰があなたのものになりましたか」

 にっこりと、将門の背後で盟主が怒っているのだが
 声からその怒気を感じつつも、将門は気にしていなかった
 そのうち、自分のものにする予定なのである
 なんら、問題はあるまい

「何だとっ!?…汚れなき処女に相手がいた、だと…!?」
「違います、誤解しないでください」

 西洋人男性の叫びに、盟主がますます、不機嫌になっているのだが
 しかし、男はそれに気づいていない

「…と、言うか。このレディが霊体ならば、お前も触れないんじゃ…」
「我は祟り神……霊体をとれぬとでも、思うか?」
499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 14:59:02.45 ID:6aOJCFGH0
盟主様の手で同じ霊体にしてもらえば、晴れて膝枕が可能に…ならないな
500小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 14:59:07.47 ID:h+J/PD+s0
 くっくと笑い、将門は盟主がしたように、その片手を軽く、墓石に透過してみせた
 …霊体同士ならば、当然、触れ合える
 当然、膝枕以上のことも、行えるわけで

「ぐ……!ユ、ユニコーン!!汚れなき乙女を護る為、こいつを倒すぞ!!そして、膝枕ゲット!!!」
「くっかかかかかか!!我を倒す!?身の程をわきまえるが良い、異国の契約者よ!我を倒すと言うのならば、その命、捨てる覚悟があるのだろうなぁ!?」
「………だから、あなた達」


 ばち
 ばち、ばちっ、と
 そんな音が、聞こえてきて


「−−−−何を、勝手に話を進めているのですか!!」


 ばちぃんっ!!!と
 リミットブレイクゲージがMAXまで溜まったらしい、盟主が放った、特大のプラズマが……将門と、西洋人男性、そして白馬に、問答無用に襲い掛かった




「…盟主よ。折角、悪魔の囁きを切ろうとしたと言うのに、逃げられたではないか」

 …プラズマが消えた、その時
 西洋人男性と白馬は、姿を消していた
 逃げ足はかなり早いようだ
 そして、プラズマの直撃を受けたはずの、将門は
501以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:00:40.81 ID:6aOJCFGH0
祟り神に嫉妬とは、まさに神をも恐れぬ行為wwwwwwしええん!!
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:02:00.40 ID:WW+Mr6pE0
変態、一回しんでみればいいんじゃね?霊体になれんじゃね?
霊魂残らず消滅するかもだけどな!

支援だ!
503小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 15:02:37.80 ID:h+J/PD+s0
「…何故、無傷なのですか、この落ち武者」
「くっかかか!だが、あれは流石に効いたぞぉ?」

 楽しげに笑う将門
 どうやら、身にまとう怨念で、プラズマを防いだようだ

 …っち、もっと手加減なしでやれば良かったか
 盟主はこっそりと、そんな事を考える
 ………いや、そんな事をしたら、墓地が破壊されるから、駄目か

「あれも、悪魔の囁きがかなり深く憑いていたな」
「……そうですね。長く憑かれている所を見ると、朝比奈 秀雄の部下なのかもしれません」
「ふむ…その可能性も、あるか」

 かきん、と
 将門は、刀を鞘に収める

「次に会った時は、問答無用で切れば良いな」
「放ってはおけませんからね……まったく、厄介なものです」

 この時の、盟主のため息の中には
 朝比奈の部下の厄介さに加えて…この祟り神を黙らせるには、どうしたらいいだろうか、という
 そんな悩みもまた、込められていたのだった




終われ
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:03:43.34 ID:h+J/PD+s0
アクマの人にスライディング焼き土下座!!!orz
先日、避難所で話していた通り、書いてみたよ!!!
その結果、ご覧のありさまだよ!!!orz


うん、ちょっくら盟主のプラズマ喰らってきます
駄目だこの祟り神、早く自重させないと
505以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:03:45.79 ID:6aOJCFGH0
投下乙でした!

さすが変態、自重というものを知らないwwww
だがそれがいい
506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:05:20.90 ID:h+J/PD+s0
>>496
こう考えてみよう
膝枕を求めし存在二つ
しかし、一度に膝枕できる相手は一人だけ

…取り合いになるのは必然!!!!
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:06:03.61 ID:WW+Mr6pE0
乙でした!
やっぱ変態はいいな!
きっと、生き生きしているからだなwww
508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:09:47.42 ID:6aOJCFGH0
>>506
なるほど…互いに契約関係にあり、ライバル関係でもあるということか…
穢れなき乙女を巡る戦いが、今、始まる!!!

…いや、毎回始まった直後に終わってるか
509以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:10:54.66 ID:h+J/PD+s0
このスレでは変態が人気すぎるだろうと思う今日この頃wwwwwwww

>>508
その通り、契約関係と同時にライバルなのさ!!
510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:31:38.75 ID:h+J/PD+s0
ネタ構想ほ
511隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:46:26.56 ID:WW+Mr6pE0
「かつて、隻腕の鹿島と呼ばれる都市伝説がいた」
「かつて?」
「昔の事だ……我々がこの学校町に滞在していた時……隻腕の鹿島に遭遇した」

副官が語り始める

当時の鹿島は手をつけられぬ程に荒れていた
我々艦隊もヤツを止め様としたのだが、相手も手練であったからな
拘束した時には、我々も相当の痛手を負っていたよ
誰も命を落とさなかったのが不思議ですらあった

鹿島の処遇については、粛清すべきという意見が大半を占めた
だが、それに真っ向から反対した者がいる
この都市伝説の存在を消してはいけない、と
戦争の記憶を、凄惨な過去を人はもっと知るべきだ、そう利用すべきだ、と
そう言って、その男は皆を説き伏せて回った
元々、人望のある男だったからな
皆の意見をまとめるのには、そう時間は掛からなかったよ
もちろん、私は最後まで反対したがね
だが、彼らの意思は強かった
結果、過半数の賛同を得たことで、鹿島の鎮静をもって放免する事と決まった

残された問題は、どの様にして鹿島の心を鎮めるか、だった
鹿島は暴れ、牙をむき、錯乱していた様に見えた
長い時間を掛けたが、心を閉ざし、ついに誰にも開こうとはしなかった
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:46:48.12 ID:h+J/PD+s0
支援!!
513隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:47:18.74 ID:WW+Mr6pE0
そして、考え付いた方法が
我々の内から、ひとりを鹿島と同化させる
というものだった

そんな事が可能なのか
誰もが疑問に思った
そして、誰が犠牲となるのか

その方法を考えたのも、それに志願したのも、あの男
粛清に反対し、存在を護る事に導いた、あの男だった

これには誰もが反対した、私を除いてな
だが、私はその男がやるべきだと思った
他の誰かを犠牲にしては、その男が納得するはずも無かっただろうからな

代案が見つからない以上、その方法を行うしかない
実行したよ

簡単に言うと、方法はこうだ

鹿島の意識を奪い、その間に例の男が隻腕の鹿島に成りすます
514隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:48:01.73 ID:WW+Mr6pE0
そんな方法で同化できるのか?

まぁ、聞け
我々、都市伝説は情報を核とする存在だ
故に、ネットで工作する事で、存在を知らしめ、力を増幅する事も出来るだろう?

だから、我々は
例の男を隻腕の鹿島として見立てる事
現代の言葉で例えるならば、そう……ミラーサーバーを設けたのだ

メインサーバーがダウンしている間は、誰もがミラーサーバーにアクセスする
そうして、長い時間をかけ、ミラーを馴染ませていく
やがて人は皆、ダウンしているメインには見向きもしなくなり
ミラーは、メインとして認識され、利用される事となる

メインサーバー、つまりは隻腕の鹿島が活動を停止している間
例の男を隻腕の鹿島とほぼ同じ姿に変え、ミラーサーバーとした

陸軍の軍服に着替え
本来あった、左腕を……切断した

ほぼ同じ姿に変えるとは、そういう事だ

だが、そこまでしても
同一視されるには至らなかった

その男自身が、隻腕の鹿島という存在を演じきる事が、成りきる事が出来なかったからだ
アレは……嘘をつけぬ男だったからな……
515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:49:13.74 ID:h+J/PD+s0
しえーーーーん
516隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:49:52.92 ID:WW+Mr6pE0
左腕を犠牲にしてまで行った策は、徒労に終わろうとしていた

そこで考えた

男の過去を消し去り、自身が元から隻腕の鹿島であったと思い込ませる

つまり、暗示をかけたのだ
我ながら、冷酷な事を思い付くものだと思ったよ

成功した時には、隻腕の鹿島の体は無く
隻腕のカシマの体、ただひとつが残っていた

こうして生み出されたのが "隻腕のカシマ" という存在だ

行動原理は "今の日本は平和か" のままに、都市伝説としての能力は "傷痍軍人の鹿島"

あの男は、そういう存在なのだ

これが "傷痍軍人の鹿島" と "今の日本は平和か" という本来は別々の都市伝説が
ひとつの都市伝説として融合し、存在しているという理由だ


今回の様に、人為的に話を融合させられたモノ
基本の話を元に、拡大解釈され新たに話が追加されたモノ
別個の話であったものが、その共通性から自然と同一視される様に変化したモノ

いずれにせよ……それぞれの都市伝説ごとに相応しい物語があるものだ

もし、納得できる様な物語りなき都市伝説がいるとするならば
それは最早、都市伝説などではなく、ただの……化け物だろうな
517隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:51:33.54 ID:WW+Mr6pE0
「そうですか……何だか納得してしまいました」

ふぅ……と、サチが息を吐き、静かに語る

わたし……幸が薄いというか、不幸体質というか……そういう感じだから
カシマさんの様な善意から生まれた都市伝説と契約出来るなんて……
おかしいなって……でも、隻腕の鹿島さんがヒトに迷惑を掛ける様な
都市伝説だったことを聞いて、何だか納得してしまいました

それでね、わたしが契約していたのは隻腕の鹿島さんで
その鹿島さんを押さえ込んでいたのがカシマさんだったんだっていうなら
本当にそうだったんだなって……すごく納得出来るなって……

そう言って、サチは寂しそうに笑った



「では何故、この男はそこまでする事が出来たのか……答えはこの記録に書かれている」

再び、副官は語る

この記録は、隻腕のカシマとなった男の過去を綴ったものだ

記憶を改竄するにあたって、私が聴取し記録した
我々の技術では、記憶全てを書き換える事は不可能だった
故に、記憶を部分的に改竄する事で、信じ込ませる事にした

その為に聴取したものだったが……疑問の答えとなる事が全て書かれている
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:51:42.87 ID:h+J/PD+s0
うあああああああああああああああああああ支援
519隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:54:01.60 ID:WW+Mr6pE0
時間をかけ、読んでいく

長い、長い物語だった……それは、とても幸せな過去だった

こんなに大切な記憶を失ってまで
カシマは、鹿島という都市伝説の存在を護ろうとした

「じゃあ……ボクらが知っているカシマさんは……本当は、この香取さんで……」

輪が、うめく様に言葉を漏らす

「つまり、隻腕の鹿島とは本来……カシマの、香取の義弟のこと」

ジャックが、感情を押し殺した声で言う

「そう、カシマは……香取は……鹿島家に婿養子として入り、鹿島という姓を得たのだ
 だからこそ、あの男は……カシマは、自分がカシマと呼ばれる事に疑問すら抱かなかったのだよ」

副官が言葉を添える

「そうか……鹿島流の跡を継ぐ為に……ってことかぁ……」

ボクサーが、眉根にしわを寄せてつぶやく

「だから……都市伝説の……義弟さんの存在を護る為に……自分の腕と……記憶を……」

サチが、まつ毛を震わせながら言う
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:54:51.55 ID:h+J/PD+s0
支援!
521隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:55:02.61 ID:WW+Mr6pE0
皆が沈鬱な表情を浮かべる中

「変わりありませんよ」

不意に、ジャックが言う、はっきりとした意思をもって言う

「カシマに、過去が在ろうと無かろうと、変わりありません……
 いつだって、カシマはカシマらしく行動してきた……この記録、過去でも……
 香取の行動には……カシマらしさ……カシマの強さや優しさが感じられる
 それは、私達と行動した、現在でも……何も、変わりは無い……カシマはカシマです」

ジャックの言葉に、皆が頷く
そして、もうひとつ問題がある事にも気付いてしまう

「……ジャック……その……なんていうか……」
「気を使わなくても良いですよ、輪」
「カシマさんが既婚者だったなんて……知らなくて、勝手に煽ったりして……」
「目覚めてもカシマはきっと何も変わらない……仮に記憶を取り戻していたとして……
 カシマの心に、妻に対する想いがまだあるというならば……私は……」
「諦めるっていうの?……嫌だよ、そんなの……」
522隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:55:49.71 ID:WW+Mr6pE0
静かに首を振る

「いいえ……私は、カシマのその想いも含めて……全てを含めて愛しますよ」
「ジャック……」
「例え、義弟に体を渡そうとも……カシマが望んだ事なら、仕方ありませんし、恨みもしません
 私も今までと変わらない……ただ、それだけの事です」
「ジャックさん……」

この時のジャックの表情は、輪とサチの脳裡に深く刻まれている

後にこの事件を振り返る時……

"あの時のジャックは普段に増して格好良く
 そして、あまりにも美しい存在だと思った"

と、彼らは必ず口を揃えて言う事となる
523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:56:29.92 ID:h+J/PD+s0
支援!
524隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 15:56:36.30 ID:WW+Mr6pE0
「さて、これで全てを話した事になるな」
「カシマの弟は、どうなったのです?既に消えてしまっているという事ですか?」
「それは私にも判らん……だが、恐らく……」
「カシマさんならきっと……義弟さんの事を心のどこかに迎え入れていたんじゃないかしら……」
「そうだよなぁ……都市伝説を消さない為というよりは、義弟を消さない為の方がカシマさんらしいぜ」
「きっとそうだよ……想いに嘘はなかったんだろうけど、他にもそういう理由があったんだと思う」

「全く……貴様等は本当におめでたいヤツらだな……」

副官があきれた様に口をはさむ

「カシマさんを信じるのが、わたしの、契約者としての唯一、出来ることですから」
「そうだね、ボクも信じてるよ、弟子として」
「俺も信じてるぜぇ、カシマさんは恩人だからな」
「言わずもがな……ですね」

「ふたりともを救う方法はないの?」
「仮にふたつの意識があったとして……
 残念ながら、体はひとつだけしかない……今となっては分離は不可能だろう」
「じゃあ、どちらかが消えるしかないって事なの?」
「最悪、どちらの存在も消える可能性もある」

カシマを信じて待つ

結局、これが今の彼らにとって唯一、出来る事であった
525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:59:12.70 ID:h+J/PD+s0
支援!!
526隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 16:00:39.14 ID:WW+Mr6pE0
長い話しが終わり、感謝の言葉を受けると、副官は玄関へ向かう

「長居をしてしまったな」
「教えてくれてありがとう、副官さん」

輪もまた、自分の帰るべき場所へと向かう

「もう少し、話しを聞いても良い?」
「ああ、構わんよ……早く帰らねばならんので、歩きながらで良いならば」
「ありがとう」

ふたりは、ゆっくりと歩き出す

「ひとつ断っておく事がある……君を取り込む様に進言したのは私だ」
「そうなんだ」

気にしていないといった体で輪

「私を恨まないのか?」
「害意ある都市伝説であれば、この国の平和の為に、その自由を奪い、役立ってもらうってことだよね?」
「ああ、そうだ」
「一石二鳥だね」
「そうだな……そうなると考えていた」
「もし、ボクがカシマさんと関係の無い、ただの都市伝説だったら計画を実行してた?」
「……恐らく、すぐにでも実行に移していただろうな」
「それは……嘘だよ……ボクとよく話してから実行するかを決めようとしたんじゃないかな?」
「……どうかな、私はカシマの様に甘くは無い」
527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:02:16.04 ID:h+J/PD+s0
しーえん
528隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 16:02:28.60 ID:WW+Mr6pE0
「だってさ……カシマさんが、弟さんを護ろうとした時……副官さんが反対したのって……
 皆の意思をちゃんと確認する為だよね?……それでその後、カシマさんの志願に賛同したのは
 自分が最初に賛同を示す事で、責任を被る為……悪役を買って出た……
 ついでに言うなら……カシマさんが、必要とはいえ自分の過去を話していたこと……
 副官さんを信頼していなければ、弟さんの為にしているってばれるような事を話せないよ
 だからさ……そんな人が、何も確認せずにボクを利用しようとするかな?……違う?」

「……」

沈黙する副官

「……正直に言うと、今でも君を取り込みたいと考えている」

輪の問いかけに答えず、話しを進める

「以前とは別の意味でだがな……私は君を高く評価している、我等の下へと来て欲しい」
「ありがとう……でも、ボクにはもう帰る場所があるんだ……だから、謹んでお断りします」
「分かっているさ……私はカシマが羨ましいよ……君の様な弟子がいて……」
「……あと二つだけ、聞かせて欲しい事があるんだけど、いいかな?」
「構わんよ……もちろん、答えられる範囲の事ならば……ではあるがな」
「まず一つ目……カシマさんは何でこのタイミングで眠りについたんだと思う?」
「元々暗示が解けかけていたか、我々に接触した事が契機となって暗示が緩んだか……それとも」
「それとも、他にも別の理由があるかもしれない?……う〜ん、何だろう?」
「そうだな……何か、カシマの過去に関わるものを見聞きしたか……」
「なるほど……過去に関わる何か……か……それらが全て重なった為かもしれないね」
「うむ、これ以上の事は何ともな……二つ目はなんだ?」
529以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:03:17.12 ID:h+J/PD+s0
支援!!
530隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 16:03:48.72 ID:WW+Mr6pE0
「二つ目はね……カシマさんに言っていた "あの時のこと" って何?」
「ああ……アレか……」

副官は苦笑いをしてから口を開く

「もし、私が死ぬような事があれば、カシマに副官代行を頼むと約束していた」
「それだけ?……それなら、カシマさんも拒みそうには思えないんだけど……」
「全く……君には適わんな……」
「あ、やっぱり他にもあるんだ?」
「仮にだ……艦長が亡くなるような事があれば、カシマに艦長代行を頼んでいた」
「それは、副官さんが生きていても?」
「もちろん、そういう条件での話だ」
「序列からいったら、副官さんが代行するべきでしょ?確かにそれなら、カシマさんも断るよね」
「そうだな……だが、私はその器ではない」
「厳しい上司だから……部下には嫌われている?」
「そういう事だ……皆が納得して付いて行ける者が、代行者にならなくてはならんのだよ」
「ふ〜ん……でも、それはどうかな……」

副官は、輪の言葉を怪訝な顔で受ける
531隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 16:04:51.34 ID:WW+Mr6pE0
「まぁ、ここまで教えてもらえば十分かな……」
「では、ここまでとしよう……こういう事態ではあるが……
 例の通り魔の事、忘れてはいないな?……気を付けるのだぞ」
「大丈夫だよ、ちゃんと刀も携帯しているし、皆にも話してあるからさ」

肩に掛けた竹刀袋を揺らし答える

「もちろん、まずは逃げるよ」
「懸命な判断だ」
「副官さんに評価されると嬉しいよ、じゃあ、ここで……さよならだね」
「そうか……では、元気でな」
「うん、副官さんもね」

ふたりは別れを告げ、別々の道を歩む

彼らが再び出逢う事はあるのだろうか

いつかまた……と、ふたりは……そう、想い、願う
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:05:10.13 ID:h+J/PD+s0
支援!!
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:07:07.74 ID:WW+Mr6pE0
区切りが良いので、ここまで

あとは出来るだけ一気に投下したいので
19〜21時くらいに再開予定です

支援どうもでした!
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:08:47.25 ID:h+J/PD+s0
乙でしたー!
うぁあああああああああ切ないよカシマさん
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:17:30.00 ID:6aOJCFGH0
投下乙でした!!
カシマさん…過去が重いなぁ…
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:21:25.49 ID:h+J/PD+s0
夕食準備で離脱
晩御飯後もスレが残っていてくれれば幸せだ
537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:57:16.13 ID:6aOJCFGH0
名前って重要だよね保守
538以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:29:41.03 ID:WW+Mr6pE0
539やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q(代理):2010/03/24(水) 17:48:32.94 ID:6aOJCFGH0
 雑草の生えてない乾いた地面が広がっている
 そこに1メートル程の太さの、ギリシャの神殿にあるような白い石柱だけが並んでいる
 並んでいるといっても建物のように規則的に並んでいるのではなく、子供が積木遊びで適当に並べたような感じである

 そこを黒いメイド服を着た少女が駆け抜けて行く
 普段は付けている白いエプロンを今は外しているため、遠目にはワンピースドレスにも見える

 そしてメイド服の少女を追うように、石柱の上を赤い影が跳んでいく

「ハッハー!!」

 赤い影の掛け声と共に3本の草刈鎌がメイド目掛け投擲される
 メイドは石柱の影に身を翻し、鎌を躱した

 しかし躱されることを読んでいたのか、メイドが避けた先にも鎌が飛んで来ていた
 メイドは迫る草刈鎌に向けて、腕を振って鎌鼬を飛ばし相殺した

 それと同時にメイドは背後で微かな足音を聞いた
 振り向き様に音のした場所へ鎌鼬を飛ばすもそこには誰もいない
 とっさに、メイドが頭を守るように両腕を交差させた
 赤い影が高く飛び上がって斬りつけてきた刃物とメイドが腕に纏う鎌鼬がぶつかり、ギィンと甲高い音がなる
 赤い影はそのままメイドを飛び越え着地し、両手に3本ずつの鎌を出現させ、回転しながら遠心力にまかせて投げ付けた
 メイドは鎌鼬を飛ばして旋風を起こし4本の鎌の軌道を逸らした
 残りの2本は腕に纏う鎌鼬で叩き落とした

 動きを止め向かい合う2人
 赤い影の正体は赤いコートを着た女だった
 肩まで伸びた髪は毛先が外に広がっていて、そして、口は耳元まで裂けていた
540やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q(代理):2010/03/24(水) 17:49:16.25 ID:6aOJCFGH0
 口裂け女が踏み出そうと足に力を入れた時

「は〜い時間切れ〜、げーむおーばー」

 呑気な声が響いた
 その声を聞き、2人とも力を抜き能力を解いた
 メイドの周囲に吹いていた風は止み、口裂け女の裂けていた口は普通の口の大きさに戻った
 メイドが息を整えていると口裂け女が話しかけてきた

「もっと体力つけた方がいんじゃねえの?」
「あのですね……身体強化系の能力の、訓練に付き合う身にもなって欲しいんですが」
「それでもしっかりこっちの動きに反応してくるんだからすげえよな。さすが切り裂きメイドだ」

 腕を組んで頷く口裂け女に、呼吸を整えおわったメイドは言い返す

「変な名前付けないで欲しいです。それに、生成する刃物にもっと力を集中させてと言」
「あんたのその3本の尻尾のような可愛い髪が気になって集中出来ない」
「そんなんだから鎌も包丁も全部砕けちゃ」
「あんまり切れ味上がると、あんたの綺麗な腕に傷が付いちゃうだろ?」
「だ、か、ら! 斬れ味って言うのはこういうのを言うんです、"クレイジーチェーンソー"!」

 メイドの叫びとともに腕の先に1メートル程の長さの風の刃が形成され、ヒュィィンと風の鳴る音がする
 それを口裂け女に対して胴を薙ぐように、大振りで思いっきり斬りつけた
 口裂け女は背後の石柱に軽やかに飛び上がり避けた
 しかし石柱はメイドに斬られた事によって斜めに傾き倒れていく
 倒れて砕け、ただの瓦礫になるかと思われた石柱は途中で薄い紅の靄になって消えた

「おいおい、いきなり危ないじゃないか。……おっと、そういや用事があるんだった。訓練ありがとな、じゃまたな!」

 口裂け女は石柱の上を跳びながら帰って行った
541やる気なさそうな人 ◇HdHJ3cJJ7Q(代理):2010/03/24(水) 17:49:58.66 ID:6aOJCFGH0

「……もう」

 メイドはため息を吐き、先ほどの呑気な声の主のもとへ歩いていった
 この場所に似合わないテーブルとイスに座っていた少女、Y-No.0はメイドに尋ねた

「なー、今日もう一人来るんじゃなかったっけ?」
「そのはずですけど……確認して見ますね」

 メイドは携帯電話を取り出し電話をかけた
 しばらく話した後、Y-No.0と話した

「なんか急に仕事が入っちゃって来られないそうです」
「なんだ来れないのか」
「どうしましょう」
「適当な奴呼ぶか。この結界使い捨てだけどこのまま消すのもったいないし」
「誰をです?」
「暇そうな奴を適当に……」

 そう言ってY-No.0は電話をかけだした


終わる
続かなん
542以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:54:43.06 ID:6aOJCFGH0
以上、代理投下でした

このメイド…ただのトリプルテールかと思いきや、かなり強いじゃないか
そして口裂け女から漂うほのかな百合のかほり…いいぞいいz(切り裂かれました)
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 18:17:14.45 ID:6aOJCFGH0
ネタ書きつつ保守
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 18:52:51.34 ID:2tAXUosT0
保守
545電気人間 今日夢で見たなにか :2010/03/24(水) 19:09:02.69 ID:44hWCsK30
蒼俊「外道とドSが弾けて混ざり!形作るは「蒼俊道」!
泣け!悔やめ!貴様は一番愚かな選択をした!
貴様が倒さんとする外道の本気・・・見せてくれよう!!」
546隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:13:48.67 ID:WW+Mr6pE0
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

「思い出したか?……なぁ……先輩」

鹿島が姿を現す

「……思い出したよ……全てをな」
「俺は怒っているんだ……分かるかい?」
「……」
「先輩が俺を……先輩のせいで……俺がこれまで、どれだけ……苦しんだか」
「……すまない」

すらりと、軍刀を抜き放つ鹿島

「愚痴を言っても始まらないよな……勝負をつけよう」
「我等が争う必要は無いだろう……」
「勝った方の言う事を聞く……先輩が勝てば、先輩の言い分を受け入れよう」
「……話し合いで、解決する気は無いのだな?」
「ああ、話し合っても……どうせ、俺の望みは叶わないだろうからな……」
「分かった……勝った方の言い分を認める……ここに、約束しよう」

カシマもまた、軍刀を抜き放つ

「昔は全く勝てなかったが……お互いに片腕になった今なら、勝敗は分からないだろ?」

鹿島が問い掛け

「昔から実力に差はなかったさ……本当はな……」

カシマが答える
547隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:15:07.88 ID:WW+Mr6pE0
高まる剣気

「はぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」「せいッ!」

裂帛の気合と共に放たれる斬撃

刃がぶつかり

「どうして、俺達を捨てた!」
「?!」

火花が散る

「どうして、俺達が苦しんでいる時に傍にいてくれなかったんだ!」

鍔を迫り合い

「どうして、死を選んだ!」

鎬を削る

「あんたが生きていれば!帰ってくれば!助かった者達がいると考えなかったのか!」

同じ流派

「慕う者の為に、生きて帰ろうとは考えなかったのか!」

同じ太刀筋

「あんたはいつもそうだ!何かを切り捨てる時、最初に自分を捨てようとする!」
548隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:16:18.00 ID:WW+Mr6pE0
伯仲する実力

「それが、どれだけ他人を苦しめる事になるのか、考えた事があるか!」

共に学び

「死を選んだ時に、俺達の事を想いはしなかったのか!姉さんの事を想いはしなかったのか!」

共に考え

「ワタシとて、簡単に諦めたわけではない!」
「分かっているさ!だけどな!」

共に過ごし

「他人を押し退けてでも、生きて帰って来て欲しかったんだ!」

共に生きた

「姉さんは、あんた以外の男と再婚して、本当に幸せだったとでも思うのか!」
「くっ……」

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
549隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:17:56.52 ID:WW+Mr6pE0
着物がはだけ、胸元が露になり
ほどけた長い黒髪は、扇の様に広がり布団の上で艶めいている
妻だ
濡れた瞳が扇情的に揺れる

「お願いです……後生ですからっ……」

聞いているこちらが切なくなる様な、すがり付く様な哀願

「すみませんが……キミの願いを叶える事はできかねる」

妻の上に跨る様にして、両肩を押さえつけながらカシマが言う

「お願いですから……おねがい、です……から……」

涙が頬を伝い、滑る様に落ち、布団を濡らす

「……すまない」

カシマの顔は、哀しみと、苦悩で満たされている

「どうして……どうして抱いてくれないのですか……」

しがみ付き、すがり付く
祝言を挙げたものの、出兵はすぐだった……生きて帰れない可能性が高い
半年後には死ぬかもしれない、こんな時代に、産まれた子は幸せだろうか……
ならば、今、この時代に、子を残す事は、はたして良い事なのだろうか……

「せめて、貴方の……何か、貴方の生きた証を、遺してください……」
「すまない……オレには判らない……どうしていいのか……すまない……」
550以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:17:58.09 ID:Bhte/PPE0
なるほどな・・・そうつながってくるわけか
551隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:20:07.18 ID:WW+Mr6pE0
眩い光、視界が白く染まり、場面が変わる

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

「香取先輩はどうしてそんなに優しいんだ?」

ふいに鹿島が聞く

「……夢……なんだと思う」
「夢?」
「ああ……将来の夢は?と聞かれたら何と答える?」
「……夢ねえ……そうだな……道場の跡を継いで……いや、香取先輩の様になりたいな」
「はは、それは夢ではなく目標や中継点さ」
「そんなこと……ないだろ……」
「もっと、大事なことが、きっとあるさ」
「もっと大事なことか……夢ね……それで、先輩の夢が優しさ?」
「優しい大人になる事……だと思う……夢を聞かれれば、職業やある人物の様に……
 と答える者も多いだろう……もちろんそれは構わない……だが」
「うん」
「どんな職業に就こうとも、結局のところ、大事なのは心だと思う……
 優しさを貫ければ、どんな職業に就こうとも、きっと満足した人生と成る」
「……だから、優しい大人か」
「優しくある為には、自分が苦しい時も耐えられる心と体が必要だ」
「だから、鍛錬……」
「その通りだ……さて、休憩は終わりだ」
「……」
「どうした、オレが目標なのだろう?」
「……よし……やってやる!」

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
552隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:21:35.37 ID:WW+Mr6pE0
「俺の力じゃ、どんなに頑張っても、何も出来なかった!」

優しくあろうとするカシマ

「あんたにしか出来ない事があったんだ!それを少しでも考えた事があったのかよ!」

それに憧れた鹿島

「アイツを、俺の友だって救えたかもしれないんだ!」

カシマとて唯の人間だったのだ、出来ぬ事などいくらでもある

「あんたがいてくれたら、俺は都市伝説にならずにすんだかもしれないんだ!」
「すまない……」

だが、八つ当たりの様な言葉でもカシマは受け止める

「どうしてだ!どうしてなんだ!どうして俺達を捨てた!どうして俺達家族の記憶を捨てた!」
「救う為だ……お前を救う為だ……」

お互いに、枯葉色の軍服が破れ、皮膚が裂け、肉が剥き出しになる

「誰がそんな事を頼んだ!あんたはいつもそうだ!」
「都市伝説となった今、お前を救えるかもしれなかったのだ……」
553以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:21:48.29 ID:Bhte/PPE0
支援!
・・・それにしても、上手いなあ
554隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:23:12.20 ID:WW+Mr6pE0
距離をとり、間合いをはかる

「今更、遅いんだよ!」
「遅くなどない!お前には、自分で更生する力がある!」
「そんなものは必要ない!今の俺に必要なのは、あんたを打ちのめす為の力だけだ!」
「……そんなにワタシが憎いか」
「分かってないんだよ……」
「……分かっていない?」
「あんたは大事な事を……たった一つ、大事な事を……分かっていないんだ」

思い出す、過酷な日々を

「戦争から帰ると、俺は独りきりだった……」
「……妻は……彼女は生きていたのだろう?」
「皆……苦労して、地べたに這いずる様にして生きていたよ」
「……」
「食べるものも無く、仕事もなく、女が独りでまともに生きれる時代じゃなかった……」
「……」
「姉さんは……石上と言う男と再婚したと聞いたよ……どうせ碌な男じゃないさ……」
「?!……」
「生まれ育った土地から離れ、店を構えるなんてこと……
 あの時代にできた者など僅かだ……どうせ、口だけで果たせたわけがない」
「……待て……その石上という男……その姓の老夫妻の話を……どこかで……」
「……」
「そうか……そうだったのか……あの喫茶店……あの懐かしい空気」
「喫茶店……それがどうしたよ」
「その石上と言う男が喫茶店をしていたそうだ……」
「……」
555隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:24:55.85 ID:WW+Mr6pE0
「妻とふたりで、幸せに生きていたと聞いた」
「……それが、姉さんだとは限らない」
「ああ、そうだな……だが、感じたんだ……懐かしい空気を」
「俺達家族の記憶を捨てたあんたが、それを言うか……」
「確証は無い……いや、彼女なら……自らの手で、必ず幸せを掴み取ったはずだ」
「放り出しておいて……」
「ワタシは信じている、己の妻の、優しさも、賢さも、強さも」
「……そうか……なら、これで最後にしよう」

鹿島が、にやりと笑う
勝利を確信した笑みの様に見えた

「次の一撃で決めよう……手を抜くなよ、先輩」
「もう一度……話し合えないか……」
「もう、話す必要はなくなった」
「そうか……分かった……ならば、手加減はしない……」

軍刀を構える

鹿島が息を静かに吐き出し、カシマが強く口を結ぶ

その様、阿吽の如く

勝敗は一瞬でつく

鹿島が上段に構えを取り、カシマが下段で迎える

間合い、気迫、呼吸

全てが整う
556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:26:54.88 ID:Bhte/PPE0
しえーん!
557隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:27:55.24 ID:WW+Mr6pE0
音も立てずに──静寂

魂が泣き叫ぶ──慟哭

斬り合いの果てに──終焉

残るはただひとり──孤独



鍔元まで握り込まれた軍刀───

───鋭く延びる、腕と脚、回転する、手首と腰

ほんの僅かに引いた脚───

───渾身の突き

投げる様に、滑る様に、手のひらを、柄がすり抜ける───

───空気の壁を突き破る切っ先

柄頭、柄の先端で掴み直される刀───

───延びきった体、驚愕、目を見開く

頭上へと振り下ろされる、鹿島の刀───

───届かない、カシマの刀は、脇腹の寸前で止まる
558隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 19:29:31.76 ID:WW+Mr6pE0
全てが止まる

片腕だからこそ、隻腕だからこそ

鍛えられた右腕が、右手が、一度手放した刀を掴み取り

柄の長さの分だけ、より長い間合いを得る

それは、一度手放したものを、もう一度掴み取る力

だが、何も斬られる事はない

止められた刃

「これで……俺の勝ちだ」

鹿島は静かに、刀を鞘に収める

「……っ」

カシマが刀を地に落とす

「負けを認めるな?」
「ああ……ワタシの負けだ……」
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:32:54.88 ID:6aOJCFGH0
しええん!!
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:32:57.35 ID:z//n4TzT0
ごちそうさまでした支援!!
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:38:06.58 ID:6aOJCFGH0
風呂前しえーん!
562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:47:54.47 ID:z//n4TzT0
サルったかな?
ネタ書きつつ支援
563隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:01:38.15 ID:WW+Mr6pE0
「では、俺の好きにさせてもらうぞ」
「ああ、ワタシの存在を消し去るのも……この体を使うも……お前の自由だ」
「ふん……最後に何か言う事はあるか?」
「……ワタシには契約者がいる……彼女を護り、彼女の仲間を護ってくれ」
「そんな事が出来ると思うか?」
「彼らなら、お前を受け入れてくれる……必ずだ」
「どうかな……」
「そして、ルーモアを、お前の姉が暮らしたあの店を護ってくれ」
「他に言う事は?」
「……ジャックに……ジャック・ザ・リッパーという都市伝説に……
 自分らしく生きれば、それだけで……それだけで、美しかったのだと……伝言を頼む」
「惚れてるのか?その女に……」
「……」
「まあ、いいさ……姉さんだって、他の男と幸せに暮らしてたんだからな」
「……お前……知っていたのか?」
「さあ……どうだかな……」
「最後にもうひとつ……お前に言っておきたい事がある」
「何だ?」
「お前はワタシを目標としていた様だが、もっと上を目指すべきだった……
 ワタシに追いつかない事をどこかで望んでいた
 言っただろう?昔から実力に差はなかった……本当はな……
 お前が無意識に自分に枷を嵌めていたんだ……ワタシが強くなるのに合わせて……
 お前がワタシに合わせて力を調節していたのだと……ワタシはそう考えている」
「……」
「ワタシは、お前の事を、お前の心の強さを信じている……超えてゆけ、ワタシを」
「……」
「託して良いな?」

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:02:58.06 ID:z//n4TzT0
ああああああああああああああああああ支援
565隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:04:20.98 ID:WW+Mr6pE0
サチの家───

カシマは眠っている
安らかな寝顔だった……幸せな夢でも見ているのだろうか……

ジャックは願う、カシマの無事を

どうして自分はカシマの無事を願うのか……

ジャックは、何故こんなにもカシマに惹かれているのか考えていた事がある

カシマは自分の命を救ってくれた恩人であり、紳士でもある
惹かれるには十分な要素であるとも言える

だが、それだけでは自分を納得させる事が出来ないでいた
この浮ついた恋の様な感情をどうにか押さえ込みたいと思った

だから輪に接触し、情報を集めた
結果、信用できる人物であることが判る
カシマは嘘やお世辞を言う人物ではない

女性を胸や顔立ちといった外見的なことで測る事はしない、と彼は言った
では、あの時……自分へと向けて言ったカシマの言葉は?

"あまりにも、美しい"

という、あの言葉はどういう意味か?
外見を指して言ったのでない……
566隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:06:19.02 ID:WW+Mr6pE0
そしてひとつの解答へと行き着く
カシマは、私の夢を、私の記憶を見て……

私の心を美しいと言ったのではないか、と

これに思い至った時、私の心は落ち着き
恋慕が愛情へ変わるのを感じた

だからきっと、あの言葉を聞いた時
私の心は、既にカシマに奪われていたのだろうと思う

それまで、何者でもなかった自分の形を決定付けたもの
それは、きっとあの言葉だ
あの時、初めて……美しくあろうと意識したのだから……



「カシマ……帰って来てくださいね」


ジャックもまた夢へと落ちていく
静かに寝息を立て、夢を見る

その柔らかな、緩やかに波をうつ、金色の髪を……
優しく撫でられ、眠る……
静かに、そっと、繊細なガラス細工にでも触れるかの様に……

白き軍装の男に見守られ眠る、夢を見る
567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:06:29.55 ID:z//n4TzT0
支援
568隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:12:03.29 ID:WW+Mr6pE0
カシマが眠ったままの状態になり、数日が過ぎた

あれからずっと、レム睡眠が続いている
夢を見続けているのだろうか
目覚める時が本当に来るのだろうか
目覚めた時、残っているのはどちらの人格なのか

何も判らない

毎日、見舞いに行ったが変化は無い
今日もまた、カシマは目を覚ましてはいなかった
日が傾き、後ろ髪を引かれながらもサチの家を後にする

輪は不安を隠せずにいた
戦いという事であれば、カシマは簡単には負けまい
だが、今回の件がもし……義弟を救う為の事であったなら……
カシマはもう戻って来ないかもしれない
義弟に体を差し出すかもしれない

そう思いながらも口には出さずにいた
ただ、帰ってきてくれる事を祈る
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:12:51.57 ID:z//n4TzT0
支援!!
570隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:14:30.21 ID:WW+Mr6pE0
ひとりでの帰り道は寂しいものだった
今までも朝稽古からの帰りはひとりだったが、こんな気持ちになる事はなかった

考え過ぎなのが自分の良い所でもあり、悪い所でもある
予知ではなく、起こり得る事を予測し、未来に備える

ボクサーの様に、もう少し楽観視できれば良いのか
ジャックの様に、現実を受け止められる心の強さが必要なのか
サチの様に、マスターの様に、ただ待つ事が出来る人達が羨ましかった

そんな事を考えながらも、重い足を引き摺り、帰る

顔を上げ、前を見据える

夕暮れにはまだ早い時間帯

黒い影が、ゆらりと、揺れる

全身が、粟立つ

その瞬間、輪は走り出す

逃げなくては、捕まったら、やられる、確実に

路地を抜け、角を曲がり

何度も背を振り返りながら走る、ひたすらに走る

あの黒い影をひとりで相手にするなど、到底かなわない
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:16:12.14 ID:z//n4TzT0
支援!!
572隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:16:20.02 ID:WW+Mr6pE0
「こっちじゃ!」
「!?」
「いいから、こっちじゃ!」

電柱から声がする
ひょいっと電柱の後ろから手が伸びて、おいでおいでと手招きする
いぶかしみながらも、電柱と壁の間を覗き込むと
何のことは無い
壁があると思ったそこには、細い通路があった

「ここにはな、電柱の影に隠れとるが道があるんじゃよ」

手招きしていた老紳士が、人懐っこそうな笑みを浮かべている

「なるほど……」
「早くするんじゃ!」
「……うん」

言われるがままに引き込まれ、道から姿を消す輪
追って来ていた黒い影が、標的を見失い立ち止まる

「助かったよ……サンタのお爺さん」
「なぁ〜に、こうなると分かっておったからの……」
「……もしかして、あの時からずっと見張ってたの?」
「そういうことじゃ……話しが早くて助かるのう」
「じゃあ、さっきの黒い影は……ひょっとして……」
「あの時の話に出ていた、融通の利かない黒服じゃよ」
573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:17:50.10 ID:z//n4TzT0
ネタ書きつつ支援
574隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:17:54.34 ID:WW+Mr6pE0
「それにしても……この状況……」
「いささか因縁じみておるがの……じゃが、これが現実なのじゃから仕方あるまい」
「取り敢えず、電話してジャックを呼ぶよ……ボク達じゃ敵いそうにない」
「うむ、そうしてくれるとありがたい」
「集合場所は、やっぱり……」
「例の公園が分かり易くて、人目にも付かんじゃろ」
「了解」

ジャックに掛ける、しばらくして回線が繋がる

「ジャック?!今、例の通り魔に追われてるんだ!あの、ボートに乗れる池のある公園に来て!」

不意に回線が切れ、ツーツーとだけ音声が流れる
ちゃんと聞き取ってくれただろうか……不安が押し寄せる
サチに掛け、確認を取る

「サチ?……うん、ジャックはいる?……寝てるかもしれない?
 そっか……カシマさんの様子をずっと記録してたんだもんね……
 あ、うん……ちょっとマズい状況で、例の通り魔に出逢っちゃってね
 大丈夫、今は組織の黒服さんと一緒に逃げてるから……うん、じゃあ、頼むね
 ボートがある公園……そう、そこ……なるべく急いでくれると助かる……
 分かってるよ……無理はしないで逃げ続けるから……じゃあまたね」
「どうじゃ?」
「ジャックはたぶん寝てる、疲れてるところで悪いけど、サチに頼んでおいたから」
「そうかね……ふむ……まぁ、疲れていても、3人で掛かればどうにかなるじゃろ」
「だといいんだけどね」
「いつまでもここに居るわけにもいかんからの……」
「じゃ、行こうか……」
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:18:54.56 ID:z//n4TzT0
支援だ!!
576隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:19:54.43 ID:WW+Mr6pE0
サチの家───

サチは、カシマの眠る部屋へと急ぎ、向かう
ジャックは疲れから寝ているのだろう……申し訳ないと思いつつも
輪の命が掛かっている事を考えると、そうも言ってはいられなかった

襖を開けると、心地よい風が入ってくる
和室の縁側に面したガラス戸が開けられ、更に奥の廊下の戸も開いていた
カーテンが風に柔らかく揺れている

違和感

ジャックは予想通り、眠っていた……だが……

そこに寝ているはずのカシマの姿がない

「カシマさん?!……起きたの?……でも、どこに?……どうして?」

サチの驚いた声に、ジャックが目を覚ます

「ん……どうしたのですか?サチ?」
「カシマさんが……いないんです……」
「?!!……カシマ?!何処へ?!」
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:20:31.92 ID:z//n4TzT0
支援!
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:22:16.10 ID:6aOJCFGH0
風呂上り支援!
579隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:25:00.94 ID:WW+Mr6pE0
ふたりは走り出す、公園へ向けて
走りながら、会話する

「どうして、あの黒服は少年の都市伝説を狙うの?」
「その昔、そういう指示が出ていたからじゃよ」
「昔?なんで昔の指示が今になって事件になる様な事になってるの?」
「おぬしのマスターがおぬしを助けた少し後に、当時のおぬしを始末する様に指示が出た」
「ボクを?!」
「あの時、死ぬはずだったからじゃよ」
「そうか……帳尻合わせの為に……ボクを……」
「しかし、見つからぬ内に……ヤツは、あの黒服は、上層部に使えない手駒として捨てられたのじゃ」
「捨てられた?!」
「もちろん外には出られぬ様に、拘束しておったさ……じゃが……」
「どうしたの?」
「憶えているかの?夢の国が事件を起こした秋祭りの時のこと……」
「うん、それが?何か関係あるの?」
「直接の関係は無い、じゃがあの日、組織ではもうひとつの事件が起こっていた」
「!!……暗部の?!」
「そうじゃ……暗部の地下施設が破壊された、あの事件じゃ」
「じゃあ、あの黒服が拘束されていたのは……」
「暗部の地下施設じゃよ……ヤツの受けた指示では、今のおぬしと顔も背格好も違う」
「そうか……それで最近になって通り魔事件が……」
「判別がつかん上に、既に正常な行動も出来なくなっておる様じゃった」
「だから、いずれはボクのところへ来ると踏んで見張っていた……」
「悪かったの、本当の事を言わんで……あまりにも幸せそうじゃったからの……言えなかったわい」
「そっか……うん、ありがとね」
「いや、礼はいらんよ……これは、組織の過失じゃ……さて、公園が見えてきたの」
「あの時の公園……昔とほとんど、変わってないね」
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:26:07.86 ID:z//n4TzT0
しえええん
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:26:54.06 ID:6aOJCFGH0
支援!
582隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:28:06.65 ID:WW+Mr6pE0
鬱蒼と生い茂る木々
他の場所よりも薄暗く感じる空間
比較的大きい池に小さな手漕ぎボートがひとつだけぽつんと浮かんでいる
辺りを見回すと、公園に人気は無い

今回は、ボートに乗る者もいない

「よし、いけそうだね!」
「うむ、後はもう少し時間が稼げれば……」

黒い風が目の前を横切る
黒服がいた
所々破れた服は、到底黒服とは思えぬ様な、異様な雰囲気を放っている

「もう、来ちゃったね……」
「参ったのう……やるしかないのかの……」

無言で対峙するのは、僅かの時間
放たれた矢の如く、動き出す黒

瞬間、膨れ上がる白

引き絞られた黒の脚が、放たれる

ボフっと音を立てて、サンタの持つ袋が黒を遮る

「くぅ……老体には堪えるのう……」
583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:28:26.84 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:28:32.24 ID:z//n4TzT0
これはまたDが胃痛を覚えそうな事態だ支援
585隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:29:15.89 ID:WW+Mr6pE0
「はっ!!」

すかさず、回り込んでいた輪の斬撃が鋭く、黒へと襲い掛かる
避けられ、そのまま、空を切り裂く
間合いをとる両者

「速いっ!?」
「やはり、ふたりでも無理の様じゃの……」

黒服が再び、重心を落とし……爆ぜる!

展開されるサンタの袋

が、それを飛び越え、サンタの後ろへと着地する

そしてそのまま、独楽の様に回転し、サンタの腰へと黒服の脚がめり込む

「ぐぅっ!!」

うずくまる、老紳士

激流の様な黒が輪へと襲い掛かる

避けられない
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:29:57.06 ID:6aOJCFGH0
支援!
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:30:51.84 ID:z//n4TzT0
支援
588隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:31:18.43 ID:WW+Mr6pE0
そう、輪は思った

だが

黒の奔流を遮る様に、白き疾風が駆ける
ぶつかり合う黒と白

黒服の腕は押さえ込まれ、すぐさま、弾ける様に距離をとる

立ちはだかるは、白き軍装の男

「?!……カシマさん!?……」

海軍の白い軍服に身を包み、立つ
装い違えどその顔、間違いなく隻腕のカシマ

瞬間、絶対的な安心感が生まれる

「輪、無事か?」
「うんッ!!」
「そちらの御仁は?……いや、詳しい話を聞いている時間は無い様だな、要旨を頼む」
「そやつは複数の都市伝説を純粋なエネルギーとして体に取り込んでおる
 組織によって生み出された、己の意思を持たぬ黒服じゃ」
「ひとつの体に複数の都市伝説……か」

新手の出現に警戒を強めていく黒服
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:31:49.57 ID:6aOJCFGH0
カシマさあああああああああああん!!!支援!!
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:32:00.10 ID:z//n4TzT0
しーえん
591隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:33:11.38 ID:WW+Mr6pE0
「都市伝説には付随する物語が必要不可欠、アレはもはや何も語られることのないモノ
 あやつを開放してやってはくれぬか……」
「そうか、あれが……物語られることの無い……化け物……」
「開放……斬ればよいのか?」
「うむ」
「……承知」

ふう、と息を吐く軍装の男

「繋がろうとするも拒絶され、尚も混ざり合おうとする……
 分かるよ……その苦しみ……
 オレが開放してやる……その苦痛から……」

少年は、軍装の男の発した言葉に違和感を感じる

"ッ!?……オレ?……カシマさんじゃ……ない!?"

だが、問い質している暇はない

「オレの名はカシマ、同胞には隻腕のカシマと呼ばれている
 意思無き黒服よ、お前にも還る場所は必ずある……平穏な場所が……」

黒服は既にボロキレの様になっているタイを、きゅっと締め直す

「還り支度は整ったか?……では……」

軍刀を抜き放つ、白き軍装の男
重心を落とし構える、黒服

対峙する白と黒
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:33:49.24 ID:z//n4TzT0
カシマさん……!支援
593隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:34:02.44 ID:WW+Mr6pE0
「参るッ!」

カシマの言葉を合図にして両者が駆ける

勝負は一瞬

カシマの持つ軍刀の長さでは、決して届かない間合いからの一振り

だが

"ふつ"と何かが斬れる音が、確かに、耳ではなく、心に響いた

音無しの太刀

両断された体の上体がずるりと袈裟に落ちてゆく

桜の花びらが舞う───幻視

斬り口が見える暇も無く、断面から桜花がふわりと舞う

風に揺られ、ゆっくりと、ゆっくりと、舞う

静寂の中、薄紅色の花びらに魅入り、消えゆく黒服を見守る

桜花が消えると何も無く

そこにはただ、清涼な空気があるだけであった
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:34:13.11 ID:6aOJCFGH0
カシマも白か…しえーん!!
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:34:36.26 ID:z//n4TzT0
ぺそぺそネタ書きつつ支援
596隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:35:27.08 ID:WW+Mr6pE0
鹿島神宮に、布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)という国宝がある
日本刀の中では、古例の一つであり、また刃長の点では最大の作品とされている
柄・鞘を含めると全長2.71m、刃長2.24mの直刀である
また、"ふつ"とは物を断ち切る音を表すとされる



間合いの外から振るわれたカシマの斬撃は
まるで長大な刀を振るったかの様にも見えた

だが、カシマの持つ軍刀はただの軍刀だ
少なくとも国宝だとか霊刀、妖刀と呼ばれる類のものではない
他との違いがあるとすれば、それは
振るう者の想いが、カシマの想いが、平穏への祈りが込められている点くらいのものだ
597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:35:44.64 ID:6aOJCFGH0
支援!
598隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:36:11.71 ID:WW+Mr6pE0
黒服の老紳士が口を開く

「さて、報告書をまとめねばならんでな……今日はこれでお別れじゃて」
「そっか、また助けてもらっちゃったね……ありがとう、サンタさん」
「ふぉっふぉっふぉっ、気にするでない、元々組織の過失じゃったからのう」
「ご助力、感謝致します」
「カシマ殿、頭を下げんで下され……頭を下げねばならんのはこちらの方なのじゃからのう」
「だが、組織の過失であって、貴方の過失ではない……この感謝は貴方個人へのものだ」

困った様に受ける老人

「……参ったのう……君も何とか言ってくれぬかの?」
「う〜ん……カシマさんはこういうヒトだからね、まぁ……諦めてよ」

笑いながら輪

そして同時に気付く
カシマは以前のカシマのままで、何一つ変わってはいない
ワタシがオレに変わったところで、カシマの本質に変わりはないのだ
安堵する
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:36:47.92 ID:z//n4TzT0
多分、後で胃痛と頭痛を抱えたDが輪のところに謝罪しに行ったと思う支援
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:37:08.06 ID:6aOJCFGH0
しええん
601隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:37:26.75 ID:WW+Mr6pE0
サンタの黒服と別れると

「輪……考えたことはないか?」

カシマが、ふと思い付いた様に語る

この学校町と呼ばれる都市には、どうしてこんなにも都市伝説が集うのか、と

オレたちはこの学校町へと引き寄せられる様にして辿り着いた
そして、簡単には離れることが出来ないでいる
離れようと思えば離れることは出来るのだろう……だが、それをしようとは思わない

最初は、この町が成す特殊な地形により出来る力に、引き寄せられたのだと考えていた
だが今は、力そのものに引き寄せられたのではなかった……と、そう思うのだ

いや、この町の力が無くてはここへは来なかったのであろうが……

この町の地形は、力は……
一体どの様にして、また何に対して作用しているのか?
602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:38:13.81 ID:z//n4TzT0
ルーモアの人の投下終わってちょっとたったら投下するね支援
603以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:38:34.39 ID:6aOJCFGH0
wktkしえーん!
604隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:38:49.94 ID:WW+Mr6pE0
例えば……
この力は、人々の想いを増幅する効果を持っているのではないか?

キミがマスターの想いに惹きつけられ、あの喫茶店に行った様に……
もちろんそこには、キミの意志も確かにあったのだろう
希望を掴み取ろうとする意志が……

そして、オレや……弟もまた……
あの喫茶店に……あの店を営んでいた彼女への懐かしさに……
だからこそ
この町に惹き付けられ、この町で再会したのではないか、と

そう考えてしまうのだ
これは、そう……ただの感傷なのかもしれんがね

誰もが繋がりを求めて、この学校町へ集うのではないだろうか

そう言って、カシマは締め括った
605以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:39:31.19 ID:6aOJCFGH0
支援ー
606隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:39:34.43 ID:WW+Mr6pE0
「さて、帰ろうか」
「うん、でも……帰るって?……サチの家?」
「オレ達が戦いを終えて帰る場所と言ったら、ひとつしかあるまい」
「うん!帰ろう!ルーモアへ!」
「ああ……帰ろう……ルーモアへ」

歩き出すふたり

「はぁ……これでやっと、日常が帰ってくるね」
「……迷惑をかけたな、すまない」
「ボクだけじゃなくてさ……カシマさんを待っていたのは、皆なんだよ」
「そうか……」
「あと、かけたのは迷惑じゃなくて心配ね」
「……うむ、以降気を付けよう……では、サチ殿へ連絡してルーモアへ来る様に伝えて欲しい」
「ジャックには?」
「……疲れが無ければ、来て欲しいと伝言を頼む」
「自分で話した方がいいんじゃない?」
「……携帯は苦手でな」
「あ!……そうか!あの時、ジャックが寝ていた時に携帯に出たのって……」
「オレだな……ジャックの眠りを妨げてはいけないと思ったのだが……」
「もう……一言ぐらいしゃべってくれないと!」
「……すまない……ボタンを押したら切れてしまってな」
「全く……今度、教えるから憶えてよ?」
「指導の程、宜しく頼む……」

溜息を吐きながら、カシマは笑った

輪は既に知っている

溜息を吐いても幸せは逃げないことを
607以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:39:36.67 ID:z//n4TzT0
繋がりか……支援
608隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:40:31.26 ID:WW+Mr6pE0
カラン・コロン……カラン・コロン……帰還を告げるベル

「カシマさん!おかえりなさい!!」
「軍人さん、おかえりなさい」
「カシマさん、おかえりぃ」

皆がカシマの帰還を祝う
ただひとりを除いて……

「……遅かったですね」
「ジャック……」

それは、寝ずに看病を続けていた、一番心配していたであろうジャックだった

「……待ちくたびれて寝てしまいましたよ」
「心配を掛けてすまない……」
「……」

ムッとした表情だったが、それはカシマに対してというよりは
彼が覚醒した時に、自分が眠ってしまっていた事に対する憤りだった

「オレは……」

二人から距離を開けつつも
カシマの次の言葉を聞き逃すまいとしていた皆が
"オレ"と言ったカシマに驚き、目を見開く

「やはり、おかしかったのだろうか……」

一同の態度に気付いたカシマが、困った様に言葉をもらす
609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:40:58.11 ID:6aOJCFGH0
しえーん
610以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:41:16.50 ID:z//n4TzT0
支援
611隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:41:19.12 ID:WW+Mr6pE0
だが、皆が掛ける言葉を探す暇も無く、ひとりが声を掛けていた

「おかしくありません」

ためらい無く放たれる言葉、ジャックだ

「ワタシがオレに変わろうと、カシマはカシマのまま、本質は何一つ変わりありません
 貴方も言っていたではありませんか、外見で測る事はしないと……それと同じです
 私も貴方を表面的な事で測る事はしません……大事なのは言葉に込められた想いです
 だから、カシマ……貴方は何も変わってはいない……
 寝ていた私を起こさずに、ひとりで勝手に行ってしまう様なところや
 帰る場所にここを選ぶところも……少なくとも私にとっては……何一つ……
 それに、私の国の言葉ではワタシもオレもI、キミもオマエもyouです……瑣末な事ですよ」

ジャックの言葉に今度はカシマが目を見開く

「瑣末な事……か……オレもそれなりの覚悟をもって言ったのだがな……
 そうか、瑣末な事か……うむ、そうだな……瑣末な事だ」

次第にカシマの顔は穏やかなものへと戻っていく
それを見て、皆もまた穏やかな表情へと戻っていく

「まぁ……私にかかればこんなモノです」

フフンと得意げにジャック

「うむ、流石はジャックといったところか……」

頷くカシマ
612隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:42:01.30 ID:WW+Mr6pE0
「どうです?惚れ直しましたか?」

冗談交じりにジャック

「ああ、惚れ直したよ」

深く頷くカシマ

「でしょう?────────────えっ?!!」

三番目に目を見開くのは、ジャック

「惚れ直したと言った」

再び、平然と言ってのけるカシマ

「私の知っているカシマのままで、変わってはいなくて、カシマは嘘をつけなくて……」

ボフンと音が聞こえてきそうな程に、急激に顔を真っ赤に染めていくジャック

「オレが語るは真実のみ……よく知っているだろう?」

そう言うカシマの顔は、とても優しい表情をだったが
周囲からの視線を感じた為か
ごまかす様に口元へと拳をあてコホンと咳払いをする

空間が広がり、世界は皆へと返される───幻視

くるくると回りながらソファーへと倒れ込むジャックを皆が微笑ましく見つめる中
カシマはマスターへと声を掛ける
613以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:42:09.76 ID:6aOJCFGH0
自分の呼称はささいなものか・・・しえーん!
614以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:42:45.93 ID:z//n4TzT0
ニヤニヤニヤニヤ支援
615隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:42:56.93 ID:WW+Mr6pE0
「時にご主人、この店の以前の屋号は何と?」
「昔の屋号かい?……え〜とね……ことむけ庵というんだ」
「ことむけ庵……ですか……なるほど」

納得した様子で深く頷くカシマに
興味を惹かれたマスターが言葉を繋ぐ

「由来が分かるのかい?」
「恐らく……漢字では、平和の平に国と書いて"平国庵"」
「平国庵か……ふむ」

鹿島神宮に在る国宝、布都御魂剣───

一振りすればたちまち国中が平穏になる霊剣とも伝えられるそれは
平国剣(ことむけのつるぎ)とも呼ばれることもあるという

───平国庵

鹿島の姉であり、かつて、カシマの妻であった女性とその夫もまた
この国の平和を願い、この屋号を付けたのだろう

戦争により人生を隔てられた者達が、時を超え、その心を伝えてくる

きっと、自分が刀を振るうよりも多くの人に平穏をもたらしたのであろう
そう想いながらカシマは店内を見回す
そこには、自分を受け入れてくれる、待ってくれている者達の笑顔があった

『またひとつ、この店を護る理由が増えてしまったな……』

カシマも笑みを浮かべる、晴れわたった空を思わせる様な笑みだ
616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:43:43.52 ID:6aOJCFGH0
しええん
617隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:43:50.96 ID:WW+Mr6pE0
夢───思い出す、何度でも

"いつでも観て良いんだ、家族の記憶ってやつはさ"

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

「ワタシは、お前の事を、お前の心の強さを信じている……超えてゆけ、ワタシを」
「……」
「託して良いな?」

カシマが問う

「断る」

鹿島が答える

「?!」
「断ると言った」
「何故だ?」
「そんな事を望んでいないからだよ」
「このままでは、どちらかが消える可能性があるのだぞ!」
「ああ、そうだな……だから、俺が消えると言っているんだ」
「何を馬鹿なことを……そんな事をワタシが許すとでも思っているのか!!」
「勝ったのは俺だ……さっきの約束、もう忘れてしまったのか?先輩」
「何?!……だが、それは……」
「約束通り、俺の言う事を聞いてもらうぞ」
「……くっ」
「俺は、先輩のやりそうな事は大抵、想像できるんだよ……俺の目標だったんだからな」
「こんな事の為に、わざわざ、あんな勝負を……約束をさせたというのか……」
「ああ、そうだよ……俺が消えると言ったところで、認めてはくれなかっただろうからな」
618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:44:30.34 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:44:56.50 ID:z//n4TzT0
支援
620隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:45:37.26 ID:WW+Mr6pE0
自信と誇りに満ちた顔で、鹿島は言い放つ

「不満があると言うのならば、何度でも勝負を受けよう

 だが、何度でも俺が勝つ! 俺は負けない!

 実力に差が無いというのなら、想いの差が勝敗を分ける!

 ならば、俺は、今の先輩に負けはしない!

 そして、先輩は、まだ、この世界に必要なヒトなんだ!

 先輩には、今を! この時を! 必要とされるこの時代を! 生きてもらう!!

 俺はその為に、今、ここにいるんだ!!」

揺るぎない意志が、カシマを打ちのめす
どんな斬撃よりも、速く、重く、強く、確かに、カシマの心を捉える

想いに気圧され、片膝ををつく
今度こそ、カシマは負けを認めざるを得なかった

自身の想い、自責の念とその優しさから、義弟の存在を護ろうとしたカシマ
カシマを想う、自身の為に、姉の為に、皆の為に、カシマの存在と記憶を護ろうとした鹿島
心で、想いの差で、負けたのだ

"それは、一度手放したものを、もう一度掴み取る力"

失ったもの──腕ではなく、想い──を、再び手にしようとする意志
傷痍軍人の鹿島が最後に求め、得た力、想いの力だった
621以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:46:30.55 ID:6aOJCFGH0
支援
622隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:46:35.31 ID:WW+Mr6pE0
「良いんだよ、先輩……俺は満足しているんだ……

 先輩がいれば助かる人がいたかもしれないって……知って欲しかった

 必要とされているって事……もっと、理解して欲しかった

 俺達がいた事を忘れないで欲しかった

 俺の事、父の事、母の事、姉の事……

 思い出してもらえて……嬉しかった

 俺達と共に過ごした記憶が、幸せな記憶だったって事を思い出して欲しかったんだ

 俺にとっての夢──幸せってのは、家族の笑顔だった……

 だから、何よりも護りたかったんだ

 先輩の中にある記憶を、記憶の中の家族の笑顔を護りたかったんだ……

 俺は……俺達は……幸せだったんだ……俺達家族は、幸せだったんだ」

成すべき事を成した男の顔だった

自身の心に克ち、家族の記憶を護り
心・技・体、ほんの一瞬、わずかにでも、目標であるカシマを追い抜いたのだ
思い残す事など何処にあろうものか

万感の想いを込め
鹿島は、兄へと手を差し伸べる
623以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:46:54.78 ID:z//n4TzT0
支援
624隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:47:17.31 ID:WW+Mr6pE0
「ワタシも……いや……オレも、幸せだったよ……まるで、夢の様だった」

カシマが差し出された弟の手を掴む

「いい夢……観れただろ?」
「ああ……最高の上映だった……」
「いつでも観て良いんだ、家族の記憶ってやつはさ」

繋がる手と手、心と心

「……ああ……そうだな……本当に……すまない……」
「良いんだよ、先輩……でも、もう忘れないでくれよ?」
「ああ……ああ、約束しよう」

カシマが掴む手に、地に着いた膝に、力を込め立ち上がる

「先輩は約束を必ず守る……そうだよな?」
「ああ、そうだ……オレは約束を必ず守る」
「うん、信じているよ」
「ありがとう」
「それと、これ……やっぱり、先輩にはこっちの方が似合っていると思う……」
「これは……そうか……すまない……」

手渡されたのは、海軍の軍服、白き軍装

「じゃあ……後は任せる……生きて、生き続けて……幸せにな……兄さん」
625以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:47:32.85 ID:6aOJCFGH0
支援
626以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:47:36.63 ID:z//n4TzT0
しぇん
627隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:48:04.90 ID:WW+Mr6pE0
鹿島の顔に、浮かぶは笑顔

少年の日のあどけなさを残し、英雄に憧れ、香取を、カシマを目指した男の笑顔

消え行く、姿、形

だが、想いは永遠

桜花舞う───幻視

強くも優しい風が桜花を運び、カシマを包み込む

儚いとは、人の夢と書く

だが、散り行く桜は人の心に強く残り、人の夢は永く語り継がれる

ならば、儚さこそが幻想

故に、鹿島の夢──家族の笑顔──もまた永く残るはずだ

鹿島の想いが、記憶が、技能が、魂が、今、カシマの一部となる

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


隻腕のカシマ───ひとの夢に現れ、国の未来を憂い
   平和を求め、家族を想う、白き軍装の───都市伝説

今、ここに、再び、目覚める
628以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:48:46.59 ID:z//n4TzT0
支援
629隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:48:47.57 ID:WW+Mr6pE0
カシマは思い出す、何度でも

人として生きた時代、幸せな時代
戦争が家族を隔て、繋がりを断ち切り、悲しみを生んだ時代

そして、考える

確かに戦争は多くのものを奪った
だが、それでも全てを奪っていったわけではなかった

人々が歩みを止めるのは
他人から与えられた絶望からではなく
絶望に対する、自身の心の内にある諦め

人々が歩みを進めるのは
他人から与えられた希望からではなく
希望を掴み取ろうという、自身の心の内にある意志

こうして今、この国は在る
多くの者達が諦めぬ意志をもって生き抜いたからだ
630以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:49:06.15 ID:6aOJCFGH0
支援!
631隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:49:45.69 ID:WW+Mr6pE0
平和とは、たったひとりの英雄によって護られているわけではない

英雄に憧れ、英雄を目指す、多くの者達によって支えられ

優しさを失わず、未来を諦めず、他者を愛せる
そんな、ただただ普通に生きようと思う、ごく普通な者達の努力によって成されるのだ

そして、その想いに触れた者の中からは
その想いを護ろうと、引き継ごうと想う者も出てくるだろう

こうして、人と人とが繋がってゆく

繋がった者達は
友人となることもあれば、恋人になることもある
同志となることもあれば、師弟となることもある

それらはまるで
家族の様に見えることもあるだろう

故に、この物語は───
632以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:49:56.38 ID:6aOJCFGH0
支援
633以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:51:00.08 ID:z//n4TzT0
支援
634隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:51:36.44 ID:WW+Mr6pE0
 名も知らぬ他人がすれ違う場所
 親しき者たちが約束を交わす場所

 時に別れの舞台となり
 時に出逢いの舞台となる


───人と人とを、心と心とを繋ぐ物語



     『喫茶ルーモア』




  これは───







          ───家族の物語だ




喫茶ルーモア / 隻腕の鹿島 篇    ─ 完 ─
635以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:53:10.11 ID:z//n4TzT0
乙でしたー!!
お帰りなさい、カシマさん!
家族、か…!
636以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:54:52.04 ID:6aOJCFGH0
ルーモアの人、大作乙でした!

小説と言うか、映画と言うか、一つの作品を見終わった後のような気持ち…
言葉を借りるなら、最高の上映でした!
637隻腕の鹿島 篇 ◆Rumor/.9.2 :2010/03/24(水) 20:55:30.02 ID:WW+Mr6pE0
まずは、皆さんに感謝!
支援ありがとうございました!!

ぷはぁ!
長かった!
でも、何とか終われた!
やり切った!
ネタを全部、搾り出した!
もうカスしか残ってない!

では、とりあえず、お茶飲んできます!
638以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:03:32.57 ID:z//n4TzT0
さて、大作の後で非常に申し訳ないが、こっそりと投下しますねっと
639小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:05:04.27 ID:z//n4TzT0
 Tさんの、言葉に
 彼女、朝比奈 マドカは、一瞬、迷いを見せた
 視線を彷徨わせ…しかし

「……あぁ」

 と、頷いてきた
 その様子を見て、Tさんは黒服への電話を繋ぐ
 短いコール音の後

『…Tさん?どうかなさったのですか?』

 すぐに、黒服が出た
 少々話が…と、Tさんは、それを切り出す

「朝比奈 マドカ。今、彼女がここにいてな」
『−−−−−』

 受話器の、向こう側で
 黒服が息を飲んだのが、わかった

『……いえ、何でもありませんよ、翼………Tさん、少々、お待ちください』
「あぁ」

 …すぐ傍に、翼がいたのか
 万が一にでも、話のカケラでも、翼に聞かせたくなかったのか
 どうやら、黒服が場所を移動しているらしい音が聞こえる

『…失礼………朝比奈 マドカが、どうかしましたか?』
「彼女と、会って話してもらいたい事があるのだが」
640小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:09:54.33 ID:z//n4TzT0
『……話、ですか』

 はっきりと伝わってくる、黒服のマドカへの、嫌悪
 …恐らく、あの青年と契約して情が強くなったせいもあるのだろうな、とTさんは判断した
 マッドガッサー騒動の最中の、とあるやり取りで…彼が、翼のことを大切に思っているのは、よく伝わってきたから

『できる事ならば……あまり、顔を合わせたくない相手では、ありますが。こちらとしても、彼女には話があります』
「ほぅ?」
『…今、朝比奈 マドカと話せるでしょうか?』

 わかった、と答え、携帯をスピーカーモードにするTさん
 少々道の脇に三人とリカちゃんで入り込み、そこで話を続ける事にする

『…朝比奈 マドカ、そこにいるのですか?』
「あぁ、いるよ」

 マドカの声に、一瞬、黒服が黙り込む
 それでも、やや間を置いて、感情を押し殺した声が、聞こえてきた

『私に、話があるそうで?』
「そうさね。できる事ならば、翼も一緒の方がいいんだけど」
『そうですか……こちらも、あなたと翼を交えて話がありましたので、丁度良いところです』

 感情を、押し殺してはいるものの
 黒服の声からは、隠し切れない嫌悪の感情が漏れ出してしまっている
 長く続いてしまった誤解
 それは、そう簡単にとけるものではない

『…………ただ。条件があります』
「条件?」
641以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:11:11.38 ID:6aOJCFGH0
おっとしえーん!
642小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:13:01.93 ID:z//n4TzT0
 …黒服が、条件と口にした事に
 Tさんと舞、それにリカちゃんも首をかしげる

『その話し合い……日景 宗光さんと、千鶴さんも、同席する事』

 黒服が提示した、その条件に
 う、と…マドカが、あからさまに、嫌そうな表情を浮かべてきた

「誰それ??」
「…姓から察するに、今の日景家の当主夫婦、か?」
『えぇ、そうですよ』

 舞達の疑問に、答える黒服
 …マドカに向けている声とは、かなり声音が違う

「ち、ちょいと待っておくれよ!?どうして、あの鬼婆と糞爺も同席しないと駄目なのさ!?」

 慌てて、そう黒服に尋ねるマドカ
 …現在の、日景当主夫婦
 それはつまり…マドカの、父親と母親だ
 それと顔を合わせることを、彼女は本気で嫌がっている様子だ
 マドカの、その疑問に……黒服は、ゆっくり、答えてくる

『…本日。翼と一緒に、日景家を訪問しました』
「−−−−っ!」

 マドカが、息を飲む
 それに構わず、黒服は続けてきた

『そして…翼には、日景家がどう言う家なのか…すべて、話しました』
643以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:13:26.76 ID:6aOJCFGH0
しえんー
644以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:14:44.00 ID:WW+Mr6pE0
しえん!
645小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:15:31.75 ID:z//n4TzT0
「話したのか?」
『はい。驚いていましたが、あの子はその事実を、きちんと受け入れましたよ』

 ですから、と
 黒服は、マドカに告げる

『…あなたが、何故、今になってあの子と会おうと思うのか。その理由が、私にはわかりません。しかし……もし、あなたが、翼との仲を修繕したいと望んでいらっしゃるのなら、あなた自身も、ご両親と和解なさってください』
「うぅ……」

 視線を彷徨わせているマドカ
 …よほど、両親との仲が最悪らしい
 翼とは、会いたい……昔の事を、詫びたい
 その気持ちは、強いのだろう
 しかし、それと同じくらい……自分の両親とは、顔を合わせたくない
 そんな感情が、伝わってくる

「どうしても、その条件を飲まないと駄目かい?」
『あなたの、実のご両親でしょう?翼は、あなたのご両親と良い関係を築いていますよ』
「……それは、その……わかってる、けどさ」

 殴りこんだ時に聞いたし、と若干、物騒な事を口にするマドカ
 …そう言えば、翼が日景の姓を名乗る事になった事で、怒鳴り込んだとか言っていたような言ってなかったような

 マドカは、俯いている
 感情が交錯し、迷いが生まれているようだった

「……話したいって言っておいて、申し訳ないんだけどねぇ………悪いが……時間を、くれないかい?」

 ようやく
 マドカが絞りだした答えは…それだった
646以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:16:35.93 ID:WW+Mr6pE0
支援!
647以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:17:01.69 ID:6aOJCFGH0
そんなに嫌なのか・・・しえーん
648小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:18:27.06 ID:z//n4TzT0
 自分の両親と顔を合わせるには、心の準備が必要なのだろう

『構いません……正直、こちらも、翼が難しい状況ですし。そちらの都合がつきましたら、ご連絡ください』

 すまないね、と
 マドカが、小さく苦笑する

「姐ちゃん、いいのかよ?」
「…正直、ね。翼と会えるんなら大歓迎だが。鬼婆と糞爺と顔合わせて、冷静でいられる自信がないんだよ」

 はぁ、とため息をつくマドカ
 …黒服は、マドカが両親とここまで不仲である事を、知っていたのだろうか?

「黒服さん」
『…すみません。ですが、これは本日、日景家を訪れて、宗光さん達とも話した結果、彼らも同席した方が良いと結論が出ましたので』

 マドカに向けていた声とは、何万倍も柔らかさが違う声で、Tさんにそう答える黒服
 それに……と、続けてくる

『…そんな事がない、とは思いたいのですが。朝比奈 秀雄が、朝比奈 マドカを見張っていないとも、限りませんし……』

 −−−−朝比奈 秀雄
 その名前にマドカがぴくり、と反応した

「…ちょいと、待っておくれ?あいつが、あたしを見張っているかもしれないって?どう言うこったい?」
『……あなたは、朝比奈 秀雄とは、接触していらっしゃらないですか?』
「自慢じゃないが、離婚して以来、姿を見たのはテレビに映ってんのを去年ちらっと見たくらい。連絡とろうにも連絡先もわからないし、正直、のたれ死んでたと思ったくらいさ」

 マドカのその答えに
 そうですか、と黒服は、かすかにほっとしたような声を出す
649以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:21:08.06 ID:6aOJCFGH0
支援!
650以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:22:24.60 ID:WW+Mr6pE0
しえん!
651小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:23:00.45 ID:z//n4TzT0
『万が一、朝比奈 秀雄があなたに接触を試みてきたら……決して、関わってはいけませんよ』
「元旦那との接触を禁止するたぁ、どう言うこったい?」
「…姐ちゃん、知らないのか?」

 舞の問いかけにも、何の事だい?と首をかしげるマドカ
 …だが、その表情は、どこか
 その答えを、予感しているような……そんな、表情にも見えた

 Tさんと、黒服の声が、重なる

『…今、あの子は、翼は。朝比奈 秀雄に、狙われ、精神的に、追い詰められようとしています』
「それも、日景家の権力を手にするために、あの青年を利用しようと、狙っているらしい」

 二人の、その言葉に

 ぷちっ、と
 わかりやすく、マドカが切れた

「−−−−っんの、バカ亭主!?まだ、そんな事を考えていたのかい!?」
『…やはり、知らなかったのですか。あの子が狙われていた事を』
「去年、テレビであいつが映ってる姿を見た時に、無性に嫌な予感はしたがね!!当たって欲しくはなかったよ!!」

 ぐしゃ!とマドカが怒りに任せて、タバコを握りつぶした
 まだ火がついていたそれに、あちち、とやや情けない声をあげる

『…念のために言っておきますが、朝比奈 秀雄の居場所を見つけ出して、殴りこもうなどと考えないでくださいね?
 どうやら、あなたも何らかの都市伝説と契約していらっしゃるようですが……朝比奈 秀雄は、三つの都市伝説と多重契約を結んでいる上に、三つ目の都市伝説の詳細が不明です。危険すぎますからね』
「う!?………わ、わかったよ」

 黒服の言葉が図星だったのか、うろたえるマドカ
652以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:25:36.94 ID:6aOJCFGH0
しえーん
653以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:26:32.44 ID:WW+Mr6pE0
支援!
654以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:26:35.55 ID:ETAMKAKR0
なんという厨二病・・・(^o^)
お前等なんだかんだでこういうの好きなのな
支援(^o^)
655小ネタ  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 21:27:06.65 ID:z//n4TzT0
 …もしかしたら、翼の性格はマドカに似た部分があるのかもしれない、とTさんはこっそりと考えた
 ……多分、それを指摘したら、翼は全力で否定してくると思うが

『…とにかく。こちらとしては、あまり翼を刺激したくありません……準備が整うまで、出来れば』
「わかったよ。翼に会わないように、って言うんだろ?……仕方ないから、我慢するよ」

 はぁ、とマドカがまた、ため息を吐いた

「テレビで、元亭主の顔見て嫌な予感がして。翼を護らないと、って思って来たけど………あの子はとっくに、あんた達に護られてたんだね」

 そう、口にしたマドカの表情は
 どこか、酷く寂しそうで
 だが、マドカはそれを、決して口に出そうとしない
 それは、彼女の中のプライドのせいなのかもしれなかった

 母親でありながら、息子に親として見てもらう事叶わず
 …他の存在を、親のように思って、自分から離れられ
 その、息子が親のように思う相手に、弱みを見せたくなどないという、そのプライド

「…あの子に何かあったら、容赦しないよ」
『………心得ています。私も、あの子の事は大切ですから』

 そう口にした、黒服の声は
 家族を大切に思う、父親のような声で

 その声を聞いて、また
 マドカはどこか…複雑そうな表情を、浮かべたのだった


to be … ?
656以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:28:49.19 ID:6aOJCFGH0
乙でしたー!

マドカの思いが翼に届く日は来るのだろうか・・・
657以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:29:37.88 ID:z//n4TzT0
Tさんの人に焼き土下座!!
えぇ、作者の陰謀(都合)により、翼とマドカはまだ会えません
後で大事な場面で合う予定、多分


…そして、あっるぇー?
マドカの能力、Tさんたちに見せようと思ったんだけどうまくいかなかった

とまれ、良い子のみんなは火がついたタバコを握りつぶしちゃ駄目だよ!
658以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:32:36.19 ID:WW+Mr6pE0
乙でした!
659以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:33:48.43 ID:z//n4TzT0
ちなみに
黒服が話の中で日景家に行った的な話をしてますが、それ、後で別のネタで書きます
以前から予定はしてたけど、ちょうどいいんでTさんの話と時期あわせてみたんだぜ
660以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:52:31.98 ID:z//n4TzT0
ネタ構想しながらほ
が、逃走中も気になる…!!
661以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 21:59:00.82 ID:6aOJCFGH0
ぎりぎり投下できなさそう・・・保守
662以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:00:19.43 ID:z//n4TzT0
>>661
諦めたらそこで試合終了だぜ!!
こうなったら、俺もも今夜中にもう一個投下すべく一緒に頑張ろう
663以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:19:48.74 ID:6aOJCFGH0
励まされてネタを頑張りつつ保守
664ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 22:33:57.29 ID:z//n4TzT0
○月×日


 久しぶりに学校町に来た
 …そうしたら、中央高校の上空を、何か随分と大きな鳥が飛んでいるのを見かけた
 多分、都市伝説だろう
 そして、街中を歩いていたら、白装束を来た女(なんだか、牛の刻参りでもするような格好だった)と、幽霊のような女性が、黒焦げた蝿の群れに追いかけられているのを見た
 どうにも、黒焦げた蝿はあんまりよくない存在っぽかったし、どう考えても都市伝説だったし、問題ないだろう
 あれで、あの二人も助かっただろうし、いいじゃないか

 …と、言うか、さ
 中央高校の上空を飛んでた鳥が、何時の間にかロボットっぽいのと大バトルを繰り広げていたり
 その周りを、何か筋肉っぽいのが飛んでいるのは何なのだろうか
 あれも都市伝説なのか?

 …相変わらず、この街は都市伝説が多い
 多すぎると言っていいくらいだ
 しばらくの間学校町を離れていて、それを実感する


 …翼は、無事だろうか?
 何か都市伝説に襲われていたりしないだろうか?

 と、言うか
 明らかに、中央高校で何か起きている最中な訳で
 まさか、巻き込まれてないだろうね?



(ここから数ヶ月、記述がない)
665ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 22:39:34.67 ID:z//n4TzT0
▲月□日


 昨日から、雪がちらつきだした
 これは、ちょっとつもるかもしれない

 それにしても、学校町に来て軽く二ヶ月くらいたつのだが、翼の姿が見つからない
 バイト先はほぼ全部見つけてチェックしているつもりなんだが…姿をまったく見かけない
 まぁ、あの子は厨房の方にいる事が多いみたいだけれども
 それでも、一切、姿を見る事ができないだなんて

 やはり、私は避けられているようだ
 当たり前といえば、当たり前ではあるのだが
 しかし、ここまで徹底されると、ちょっと傷つく
 どうしても、私と顔を合わせたくないというのか


 …一応、あの子と一緒に歩いている姿を目撃されたちみっこにも声をかけてみたけど、知らないと言われた
 今思えば、本当にあのちみっこは、翼を知らなかったのだろうか?

 …もしかして、知っていたのに、答えなかった?
 いや、まさかねぇ
 ちみっこってのは、純粋な心を持っているはずだろう?
 私は、それを信じたい


(ここから一ヶ月近く、記述がない)
666ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 22:44:37.40 ID:z//n4TzT0
◇月●日


 久しぶりに、あの黒服と顔を会わせた
 初めて、その姿を見た時から、全く姿の変わっていない、黒服と
 …今、ようやく気づいた
 あの黒服、人間ではなかったのだ

 あの黒服なら、きっと、翼の居所を知っている
 そう思ってたずねてみたが、答えてはもらえなかった
 きっと…いや、確実に
 あの黒服は、翼の居所を知っていたはずだ
 私は、翼の母親なのに…それでも、教えてはもらえない

 いや
「……あなたは、母親の義務を全うしていたでしょうか?…あなたに、あの子の母親を名乗る資格があると?」
 そう、黒服に言われた
 その通りだ
 私には、翼の母親を名乗る資格なんて、ない

 …だが、それでも
 翼に会いたいのだ
 あの子が、何か厄介事に巻き込まれそうな気がして、心配なのだ
 嫌な予感がする
 早く、翼の無事を確認したい


(ここから二ヶ月近く、記述がない)
667以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:46:44.33 ID:6aOJCFGH0
しえーん!
668ある女の日記  ◆nBXmJajMvU :2010/03/24(水) 22:46:51.54 ID:z//n4TzT0
◎月△日


 また、あの黒服と顔を合わせた
 黒服の対応から見て…黒服も、私を嫌っているようだ
 それは、そうだろう
 私は、翼に散々嫌われているし、翼の友人の誠君にも、あまりいい印象をもたれていない
 この黒服にだって、嫌われる条件は整っている

 …それは、わかっているさ
 わかっている、けどさ

 どうして、素直に事情話して、翼の居所を聞けなかったんだ、私は!?
 話せばいいじゃないか
 翼に謝りたいのだと
 母親として、認めてもらえなくてもいい
 ただ、会って、謝りたいのだと…どうして、言えなかったのだろう

 どうにも、あの黒服と顔を合わせると、張り合ってしまう
 翼に、きっと、父親のように思われているだろうあの黒服が、羨ましくて
「…あの子は…私の、家族ですから」
 なんて、言われたら
 余計、悔しいじゃないのさ
 私は、翼に家族として認めてもらえていないのに…血が繋がっていないあいつが、認めてもらえるだんなんて

 …だとしても、ちょっとは素直になって聞き出せば良かった
 翼に早く会いたい、謝りたい


to be … ?
669以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:47:36.40 ID:z//n4TzT0
ほぼ、現在に追いついた日記ですた
今回のTさんとのやり取りとかも、多分、彼女はあとで日記に書く事でしょう
670以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:50:26.29 ID:6aOJCFGH0
乙でした!

ふむ…日記の内容だけをみてると、ツンデレに見えなくもない…
年齢?外見?はて、なんのことやら
671以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 22:52:16.08 ID:z//n4TzT0
>ふむ…日記の内容だけをみてると、ツンデレに見えなくもない…
その発想はなかったwwwwwwwwwwww
672以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 23:07:04.76 ID:6aOJCFGH0
むう、やはり、この時間帯は眠気が酷い…一足先に夢の世界へ行かせてもらいます
明日の午前中は用事があるから、投下できるとしたら明日の昼以降か…

それまでスレが残ってたら俺、黒服Hにいじめられた後の悠司の葛藤を投下するんだ…
673以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 23:10:41.99 ID:z//n4TzT0
>それまでスレが残ってたら俺、黒服Hにいじめられた後の悠司の葛藤を投下するんだ
wktkしてるぜおやすみー
つっても、俺ももうちょいでねるんだが
674以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 23:31:26.79 ID:z//n4TzT0
力尽きる休みー
明日もスレが残っていれば幸せだ
675以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 23:43:43.93 ID:VOFCgUmj0
保守
676以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 00:19:20.85 ID:cmMRSJWN0
保守
677以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 00:42:26.09 ID:YRtH5iw70
678以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 01:18:09.78 ID:6At8AsN80
679以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 01:32:02.74 ID:1sHfxcGd0
ho
680以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 01:52:15.23 ID:cmMRSJWN0
ほしゅ
681以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 01:58:06.89 ID:D2RbFdVk0
H
682以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 02:40:00.29 ID:cmMRSJWN0
ホシュ
683以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 02:46:43.82 ID:/cbfmNJC0
保守
684以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 03:43:40.71 ID:cmMRSJWN0
保守
685以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 04:44:08.03 ID:4fMkR/cl0
ほしゅーん
686以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 05:06:18.23 ID:cmMRSJWN0
ほーーーーーーーーーーしゅっ
687以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
あっはん